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1958-03-15 第28回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十五日(土曜日)    午前十時三十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     泉山 三六君    理事            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            高橋進太郎君            佐多 忠隆君            松澤 兼人君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            木島 虎藏君            小山邦太郎君            後藤 義隆君            佐藤清一郎君            塩見 俊二君            館  哲二君            鶴見 祐輔君            苫米地義三君            一松 定吉君            本多 市郎君            三浦 義男君            武藤 常介君            安部キミ子君            岡田 宗司君            坂本  昭君            鈴木  強君            曾祢  益君            高田なほ子君            戸叶  武君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            加賀山之雄君            千田  正君            市川 房枝君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松永  東君    通商産業大臣  前尾繁三郎君    運 輸 大 臣 中村三之丞君    建 設 大 臣 根本龍太郎君    国 務 大 臣 石井光次郎君    国 務 大 臣 郡  祐一君    国 務 大 臣 津島 壽一君   政府委員    自治庁財政局長 小林與三次君    自治庁税務局長 奧野 誠亮君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    外務省経済局長 牛場 信彦君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省移住局長 内田 藤雄君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    運輸省観光局長 細田 吉藏君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    大蔵省主税局税    関部長     木村 秀弘君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。  昭和三十三年度一般会計予算外二件を一括議題といたします。  昨日に引き続き、質疑を続行いたします。
  3. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 私は、昭和三十三年度予算案につきまして、従来政府みずからが重点を置くと言っておられ、また、われわれといたしましても、確かにこれは重点だと思われるべきものについて、その二、三の点について各大臣に御所見を伺いたいと思うのであります。割当て時間の関係で質問をできるだけ簡単にいたしたいと思いますので、あるいは言葉が足りない場合があろうと思いますが、御了承いただきたい。ただし、大臣の御答弁は別に私の割当て時間に何ら侵害を加えるものではございませんから、どうぞ十分にお考えをお聞かせ願いたいと思うのであります。  まず、経済外交ということにつきまして、藤山外務大臣に御所見を伺いたいのでありますが、大臣は、まあ国際的に申しても、国内的にも、非常に荒い波風と戦われておる、このお骨折りに対しては、まことにお察しを申し上げておる次第でございます。しかし、大臣が御就任に際して国民は、従来の経済界における御経歴にかんがみまして、これは一つ何か新しい、フレッシュと申しますか——経済外交の新方式、あるいは新理念一つ持ち出していただけるんじゃないかというよな考え方を、あるいは期待を申し上げたと思っておるのであります。で、一つ大臣として、いわゆる経済外交——まあこれもなかなかむずかしい問題だと思いますが、について、どういうようなお考えを持っているか、御所見を承わつておきたい。
  4. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日、一般に言われております通り政治的な外交、同時に経済的な外交と、まあ二つの面がある。さらには文化的な外交というふうに、三つにも外交の取扱い方の面であるかと思うのであります。経済外交を推進して参りますことは、当然日本の今日の立場から言いまして、必要だと思うのであります。経済外交というものが貿易伸張ということにあることは、むろん当然なことであります。ただ、私どもが経済外交を推進して参ります上において考えなければなりませんことは、やはり長い将来のことを考えて、そうして貿易伸張ということもその線に沿って考えて参らなければならぬと思います。経済外交には要するに二つの面があるのでありまして、貿易伸張ということと、それからそれぞれの国におきます経済建設計画に対する日本協力、まあこの二つが、従来の経済外交貿易一本であったのに比べまして、最近では二つになってきていると思うのです。貿易伸張につきましては、それぞれ従来から十分考えられておるところでありまして、日本がいい品物十分相手国の役に立つように、しかも適当な価格で売つていくということに重点を置いて、そうして新しい市場開拓等をあわせ考えながら進めていくことだと思うのであります。同時に経済協力という面につきましては、御承知のように各国においてそれぞれのいろいろな経済関係開発の問題がございますが、特に東南アジアからアフリカにかけまして、新しく植民地から脱却して国家を作りました国は、それぞれ五年計画なり三年計画なり、あるいはそういう計画なくとも、日常消費物資産業を興そうという、それによって自分たち政治的独立を裏づけていこう、政治的独立完璧を期していこう、こういうのがあるのでありまして、それらに対して日本技術、経験、ある場合には、日本財政の許す限りにおいて資金を加えて協力していく、で、今日ではやはりこの二つのものを並行してやらなければならぬ。ただ、経済外交というものの理念をどう考えるかといえば、やはり目前の利益のみを追求して、そうしていてはならぬのであつて、長い意味において、相手国利益とともに歩んでゆくということが、経済外交を結局大きくしてゆくと思うのであります。でありますから、粗悪な品物を不当に相手国業者マーケットを混乱するような形で、急激に増大さしてしまうというようなことも、永久に日本輸出貿易のためにならぬことであります。また経済協力というものの考え方は、単にキャピタル・グッズを売ればいい、あるいは向うの役に立たなくても、向うが欲するならば、りっぱな工場だけ作つてやればいいということではなくて、やはりその国の民情に応じたような機械を売り、また技術者を養成してやつて、そうしてゆくと、こういうことで、長い目において向う利益になる、それがはね返って日本利益になるというところに、経済外交理念がなければならぬと思う。一時の利益だけを追求するということは、基本的に日本経済外交はとるべきではないと、こう考えております。
  5. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 まことにごもっともな御所論で敬服いたしますが、その御所論に対する実行面といたしまして、まず貿易伸張ということから申しますと、本年は三十一億五千万ドル目標で、これは本委員会大蔵大臣の御答弁によると、必ずしも楽観はできない、容易にできるとは思わない。これに対して確たる、これは大丈夫だと言われた大臣がないように思うのです。これは実はこの輸出目標達成ということは、やはり本年度予算遂行の非常に大きな眼目、あるいは大きな前提となるものだと思う。これに対して外務大臣としてはどういうふうにお考えになるか、御所見を伺いたい。
  6. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大蔵大臣あるいは通産大臣が言われておりますように、日本としては外貨関係からも、ぜひとも三十一億五千万ドル輸出達成するようにいたしていかなければならない。ただ今日の世界景気経済界動きというものをみておりますと、ドルというものがアメリカに集中しているというような事情もあります。またアメリカ自身景気の問題もあります。そういうようなことで、各地における経済界動きというものが、必ずしも好調であるとは言えないのでありまして、そういう中にありまして、日本がこの三十一億五千万ドル輸出目標を立てていきますことは、決して楽なことではないと思うのでありますが、しかしながら、通産大臣も言われますように、不可能な数字でもないのでありますから、これに向って最大限の努力をして参らなければならぬのでありまして、それについては国内におきます通商産業上の施策十分完璧を尽していただくことと思うのでありますが、われわれ外務当局としましても、新市場の開拓なり、あるいは相手国の要求によって、それぞれの産物をバーター的に買って、そうして日本輸出市場を開いてゆく、あるいはアメリカにおきます関税なりあるいは輸入制限などというものに対して、十分対処してゆく。またただいま申し上げましたような経済協力方面によって、新しいそういう需要を喚起してゆくというようなことによりまして、この目標をぜひ達成するように、外務省としても努力をいたしたいと、こう考えております。
  7. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 この問題について、通産大臣のお考え一つ
  8. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 三十一億五千万ドル輸出目標につきましては、昨年の九月に、すでにわれわれとしてどうしてもこれだけはやらなければならぬ、そうしませんと、経済成長率も、三%の成長率達成できない、雇用の問題も解決しない、こういうことで決意をいたしたのであります。  その後におきまして、情勢は必ずしもよくはならないのであります。しかし、これは何といたしましても達成しなければならぬばかりじゃなしに、私は可能な数字であると言えると思います。と申しますのは、私は従来から早取りを見ておりますと、毎年三億ドルなり四億ドルはふえて参っているのであります。まあ三十一億五千万ドルは、本年度からみますと、三億五千万ドルぐらいの増であります。パーセンテージにして考えますと、一割一分の増加であります。で、昨年と一昨年を比べますと、一割六分、一六%の増をみているのでありまするし、その前におきましては、二二、三%、その前が二八%、こういうまあ——三三%台もあった。また戦前のことを考えますと、世界輸出日本輸出の割合をみますと、当時おそらく四%ぐらいであったと思いますが、まだ二%台でありまして、三%台にはなっておらない。こういうことを考えますと、少くとも戦前の水準ぐらいまでにはいかなければならない、それにつきましては、結局施策をそれに集中してゆくべきだと思っています。もちろん経済外交経済協力の国際的な問題も極力解決していただくとともに、国内におきましては、御承知のように金融引き締めもみなその施策でありまして、結局いい商品を安く作るということに集中していかなければならないと思うのであります。  また直接輸出の面におきましては、われわれのやっておりますこの輸出の直接な政策としましては、すでに輸出金融の優先、あるいは輸出保険の改善もいたしまして、今国会に御審議を願つているのであります。それから税法上の特典につきましては、すでに前国会におきまして、輸出所得の控除について相当な拡充をいたしまして、百数十億の減税になっていると思います。また輸出手続につきましても、思い切った簡素化をやりたいと、かように考えているわけであります。  また政府がみずからやるに適当しておりませんいわゆる海外の宣伝とか、あるいは貿易のあっせん、あるいは市場調査というようなことにつきましては、これまた本国会にお願いしております日本貿易振興会、これに二十億の出資をいたしまして、従来府県の寄付金で自然発生的にできて参りましたものを、これはもうやはり国の仕事で実際はあるべき全国的な問題でありまして、国が本腰を入れて、そうしてただいま申し上げましたような仕事をやつてもらうとともに、見本船とかあるいは巡航見本船というようなものにつきましても、相当な予算を組んでいるわけであります。これによってさらに市場開発をやってゆくというふうに考えているのであります。  それから業者方々には、御承知のように輸出最高会議、あるいは輸出会議というものを設けておりまして、まあいわゆる責任体制をとつてもらいたいと、こういうつもりでやつておるのであります。まあ目標達成につきましては、何商品に限らず、あるいは仕向地のどこを問わず、一割なり一割五分ふやしていく。それにつきましては、どこに隘路があるかということを互いに検討して、そうしてその隘路の打開につきましては、政府としても極力やっていくというふうにいたしておるわけでありますが、その責任体制の強化をする。最近になりまして、実はかなりの実績を私は上げておると思っております。これをいろいろ強化して責任体制を作っていきたい。と考えております半面におきまして、やはり過当競争ということが非常に障害になっておりますので、過当競争について今国会にも輸出入取引法の改正その他をお願いすることにしておるのであります。まあ政府がもう少し介入というと語弊がありますが、この問題につきまして、中に入っていろいろ勧告もし、協定のできておりませんものは協定を作つてもらう。あるいは協定の内容の不備なものにつきましては、政府が勧告して、その不備を改めて、その場合におきましては、貿易慣例によって、輸出承認品目という中に加えて、極力過当競争を防遏する、こういうような考えでやつておるのでありますが、まあこれらの施策の全般がうまくいけば、私は十分三十一億五千万ドル輸出達成できるというふうに、強い決心と覚悟を持って臨んでおるわけであります。
  9. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 今お話の出た過当競争の問題については、あとからちょっとまた伺いたいと思います。  続けて外務大臣に、そういった経済外交、これはもう一つ投資とか、あるいは借款とか、そういったものにも関連すると思いますが、広く海外事情を把握しなきゃいけない。単にマーケットというだけじゃなくて、あるいはその国々特有な流通組織というようなものや、広く国情、政情、そういったものを十分に把握しないと、思った通り進まないというおそれがあると思うのでありますが、最近アジア公館長会議が開かれたり、また特に最近移動大使を設けられて、広く海外相互理解や、あるいは事情視察をされておる。これは非常にけっこうだと思うのですが、一体そういった実情把握についての体制は今のところで十分と思われるのかどうか、その点について。
  10. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在外務省機能の上において、在外公使公館、相当活動はしていてくれております。が、しかしながら予算関係もありますし、あるいは人の不足等関係もありまして、必ずしもこれでいいというわけではないんでありまして、ますますそういう面からも充実をして、参らなければならぬと思っております。  また移動大使を昨年出したのであります。これは報告等を見ましても、相当結果がいいように思っております。移動大使の任務は、御承知のように一国の事情だけでなしに、それぞれのある地域内の総合的な判断をする、どうしても出先の大公使の諸君としましては、その任地においての十分な認識もあり、また任地第一主義になることも、これは当然のことであります。しかしながら、日本外交考えます上において、たとえば東南アジアなら東南アジア経済を総合的に考えてみるということも非常に必要なことなんでありまして、そういう意味におきまして、移動大使というようなものを今後とも活用して参りたい、こう考えております。   これは、昨年は経済関係だけの方に御足労を願ったのでありますが、将来はやはり先ほど申し上げましたように、文化方面外交についての移動大使というようなものも考えていいのであります。ある場合には政治的な意味移動大使考えられるのではないかと、そういう意味におきまして、現地事情を十分把握していくことが必要だろうと思います。同時にまた現地におられる方々が、日本事情を十分知らなければ実は今日の外交はできないのであります。国民がどう考え、また日本経済情勢、あるいは産業進歩がどのくらいにあるかという程度も、しょっちゅう知らなければいけないわけであります。残念なことに二年在外公館に勤務いたしますと、賜暇帰休制制度があるのでありますが、予算等の措置のためにこれが実現できないわけであります。そういう意味からいいますと、有力な方々移動大使になっていただきまして、日本経済の方でありますれば、産業進歩がどの程度にあるか、外国産業に比べてこの程度にあるというような事情、あるいは外貨不足のような現状というようなものについて、それぞれ各公館に回ってそれらの新しいニュースも入れますことが必要であります。両面から考えまして、移動大使制度は将来活用してしかるべきではないか、こう考えております。
  11. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 今の大臣の御答弁で、予算が足りないために思うように十分にはできないというお話がありましたが、これは非常に重要なことだろうと思う。私はこれは非常に——前になると思いますが、非常に長く、たとえば二十年あるいは二十数年一つの国に滞在して、その国のほんとうにはえ抜きのようになって、いわゆる商務参事官という制度があったと思う。今日海外に行ってみますと、なるほど通産省の方から参事官が行っておられる、しばらくたつとまた帰ってこられる、いわば、大へん悪い言葉になりますが、在外公館の中には外様のような格好でおられる。これは私は非常に遺憾なことではないか、もっとああいう制度を生かされる気はないか。  それからさらに移動大使、はなはだけっこうだと思いますが、ほんとうをいったらもっと身軽に動ける人で、向う実業界やどこへでも入って行って、向うの人と話ができる、こういう人が私は国内に、いわゆる海外経済通なり政治通というような人があろうと思う、岸首相の特使とかそういうことではなしに、もっと身軽な形で出される、あるいは向うからきてもらうということも必要でありましょう。そういうふうなことを考えられないかどうか、その点について。
  12. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 在外公館活動というものは、昔と違いまして非常に多岐にわたっております。また調査機能等も決して政治上の問題ばかりではなく、また政治上の問題を判断しますにも、その国の経済上の問題、金融上の問題を判断して参ることが必要なんであります。そういう意味におきまして、外務省としましても、従来大蔵省なりあるいは通産省なり、農林省なり、それぞれの方々に御参加を願いまして、仕事を分担していただいておるわけであります。お話のようにこれらの方々が十分活動して下すっておるのでありまして、過去においてはいろいろ任地で若干摩擦もあったかと思いますが、今日のような状態になって、それぞれの在外公館活動にそういうスタッフが要るということは、十分外務省自身の人も考えておるのであります。そういう意味でも十分今後とも協調を尽していくつもりでやつておりますので、今後はそういう摩擦はないと思うのです。  なお、商務官等現地に長期にわたって駐在するという必要は、私もこれは痛感するのであります。ある場合には商務官でなくとも、大公使すら相当長い年月賜暇帰省等活用によりまして、長い年月一定の国に滞在してその国の事情等にも通暁することも必要だと思うのでありまして、商務官等活用ということも将来は十分考えて参らなければならぬ、こういうふうに思っております。むろん経費が十分ありますことはけつこうでありますけれども、今日の国の財政からいいますれば、ほしいというだけで外務省が嘆いていてもいけないのでありまして、できるだけ努力をするように進めて参りたいと思っております。またさらにお話のように、移動大使ばかりでなく、適当な無官の大夫というか、そういう形においても有力な人たち活用したらどうだというお話でありましたが、これも私は非常に必要なことだと思うのでありまして、適当な方が海外に行かれますときには、それぞれ外務省からいろいろなことをお願いして、そうして便宜活動をしてもらうという道は進めて参りたい、こう思っております。
  13. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 次に、いわゆる経済協力の問題になりますが、昨日の本委員会で対外の借款民間投資の問題について外務大臣大蔵大臣がそれぞれ述べられた。私は外務大臣が述べられたことを非常に了承いたしますが、民間投資等について、たまたまきょうの毎日新聞にも出ている中南米とか、あるいはインドの鉄鋼といったものについてなかなか大蔵省が慎重である。私はその慎重なことはわかるのでございますが、先ほど述べられた経済外交の非常に大きな柱になるもので、しかも長い先にわたってのこれは問題になってくるということになりますと、慎重でなけりゃならぬことは当然ですが、また日本経済力が弱いということはもちろん考えなきゃなりませんけれども、しかしこれはできるだけ積極的に考えて、政府もこの民間投資等については積極的な援助、支援をしなきゃならぬと思うのでございますが、その点について御意見を伺いたい。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 海外経済協力につきましては、できるだけ積極的に考えたらどうだというお考えであります。私どもできるだけ積極的に考えて、そうしてそれぞれの国との関係において、ことに最近はAAグループ国等では先ほど申し上げましたように、経済建設計画というものをそれぞれ持っておるわけであります。ところが一方では若干ドル不足の国もあるわけであります。石油等のありますような国は別としまして、そうでない国はそういう問題もありますから、自然に協力が資金的な裏づけを必要とするというような場面も起ってくるわけであります。むろんそういうことを十分やつて参りませんければなりませんが、しかし同時に日本外貨事情、あるいは金融等関係等も十分考慮して参らなければならぬのでありますから、大蔵省が相当慎重であることも私は当然なことだと思うのであります。でありますから、外務省積極論を振り回し、大蔵省消極論を振り回し、ちょうどいいところに落ちつくのじゃないかと、こう思っております。
  15. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 ちょうどいいところに落ちつけば非常にこれは何よりのことだと思いますが、相手のある外交ということになりますと、相手方の見方というものが非常に重要になって参る。で、これはいつの時代でもそうでありましょうが、外交には何といっても一貫した方針、それから太い線を一本ぐっと貫いたような行き方というものが必要になってくると思うので、これがあっちこっち国内である程度意見が食い違っているのだとか、それから日本は今はこうしているけれども、あとはどうするかわからない、かような見解を、外国に少しでもそういう感じを与えるということは、きわめて外交上まずいと思うのでございますが、もう一度今の御見解について……。
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまお話のように、できるだけ相手国事情考えながら、今日の日本としましては、特に経済協力に力を入れますことは将来の輸出貿易振興になるわけで、経済的な面だけから見ましてもそうなるわけで、いわんや、それが大きな政治的な友好親善関係の基礎にもなる。それぞれの国の経済的独立の完成に寄与するということになりますれば、これは大きな外交の手なんでありますから、十分にこの経済協力という問題は、そういう意味において積極的に活用をして参らなければならぬと思うのであります。ただ一時のことだけではいけないわけでありまして、また思いつきでもいかぬわけでありますから、そういう点につきましては、財政事情等とも勘案しながら、われわれもできるだけ積極的な手を打っていきたい、こう考えております。
  17. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 次に観光の問題について、外務大臣、運輸大臣、きょうは総理府総務長官がおられないようでありますが……。
  18. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 代理が来ておりますから、もし何でしたら……。
  19. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 伺いたいのでありますが、後ほど通産大臣に御質問申し上げたいと思いますが、まず観光の問題についてお伺いしたいと思うのであります。これは申すまでもなく国際収支の改善をはかる、あるいは国外との親善をはかるということからいって、観光というものが大事であるということは、これはだれしも言う。現に政府とされても、昭和三十一年八月十日に、閣議決定をもって観光事業振興に関する基本要綱というものがきめられて、非常にりっぱな策定がされておる。その後これに基いて五カ年計画を立てられたようでありますが、この昭和三十二年度から始まる第一年度の五カ年計画、昨年の予算において、私の見るところによりますと、非常に微温的だという感じを受ける。道路は幾らか時世の波に乗ったと申しますが、あるいは入っておりますが、その他の問題についてはあるいは二〇%あるいは一五%よりこの計画に対して入っていない。非常に微温的だ。この問題について、実は藤山外相はかって国際観光事業審議会の会長もしておられた関係もある、この問題についてどういう考えを持っておられますか。
  20. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 観光事業の重要なことは申すまでもないわけでありまして、単に遊びに来るというだけでなしに、日本国民の心理を十分洞察してもらう。また日本の近代産業の発達状況も見る。しかも貿易外収支としてこれが相当な外貨バランスの上に寄与するのでありますから、その点については、私としては、申すまでもなく観光事業は非常に重大だと考えております。ただいま御指摘のように、観光事業審議会で政府を盛んに攻撃しておったわけでありますが、ところが、変りまして、今日受け身に立っておるわけでありますが、しかし観光事業の重要なことについては十分承知いたしておりますので、今後ともそういう面から閣内におきまして、観光事業の遂行に対してできるだけ力を入れる。ただいまお話しのように、五カ年計画を私の会長のときに作ったわけでありますが、予算からいうと、昨年が七億、今年は九億九千万しかついていないことは、まことに遺憾であります。今後とも関係大臣とも協力いたしまして、外交の面からも招待外交ということをやっておりますし、また今申し上げましたように、日本の国情を十分了解してもらうこと自体が今後の国際外交の上にも必要でありますから、そういう意味からも推進していくように努力をいたしたいと思います。
  21. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 本来ならば、これは大蔵大臣にお伺いすべきかもしれませんが、主管大臣として運輸大臣に御所見を承わりたい。
  22. 中村三之丞

    国務大臣中村三之丞君) 御指摘のごとく、観光事業振興五カ年計画の当面の担当者は私の方の観光局であります。もとより文部省、厚生省、建設省と関係があるのでございますが、本年度における予算として要求し、御審議を願っておりまするものの目新しいものは、青年の家の四千万、それから海外宣伝といたしましては、国際観光協会に対する宣伝の経費として一億三千百万円、それから日本航空あたりの出資等を入れますと金額はふえて参りますけれども、大体今申しました国際観光協会に対する補助として海外の宣伝をしておる。これが今観光局としても努力をいたしておるところであります。遺憾ながらこれは去年よりも一千万円減っておりまするけれども、これは先日一松委員に対してもお答え申し上げましたごとく、民間の醵出金をもって補いまして、海外宣伝を一そう充実したい、こういうふうに考えております。もとより将来といたしましては、単にカナダ、アメリカのみならず、戦前十三カ所もあったのでございますから、今後はパリ、あるいはロンドン、ベルリンあたりにでも私は設けなければならぬと思う。また東南アジア方面、南米方面、こういうふうに海外宣伝の拡大強化をはかっていくということに努めなければならない、また努めるつもりでおりますが、現在のところ国際観光協会をしてこの経費をもって宣伝に努めておる次第でございます。さらにまたこれは在外公館とも連絡をしておかなければなりません。またジェトロはこれは商品の宣伝でございますけれども、やはりこういうジェトロとも提携して観光宣伝を努力していくということも考えておるのであります。
  23. 鈴木強

    ○鈴木強君 関連して。国際観光事業が非常に大事なことであることは、藤山外務大臣も今おっしゃった通りでありますが、そこで私はこういうことを一つ考えてみたらどうかと思うのです。富士山はこれは世界的に非常に有名な山なんです。富士箱根国立公園にも指定されておりますが、何せ東京から非常に近いのですけれども、そのふもとの方にはオネスト・ジョンが飛んで非常に問題になつたのですが、米軍がやっと引き揚げた。ところが今度はそのあとに自衛隊を持っていこうという計画もあるようですが、そういうことでなしに、富士山を平和な山に私はしたらどうかと思うのです。そして山登りも歩いていくのもいいでしょうが、外国から人が来た場合にも、日本人でもそうですが、年寄りでも子供でもいつでも山に登れるような施設を作つてみたらどうかと思うのです。そのために今五合目ないし六合目までバスが行っておりますが、その上まで何かケーブル・カーでも登山電車でもいいが、そういうものをつけて、元日にも、いつの夜にも電車に乗って頂上へ行って御来迎を仰げるような施設でもしたらいいと思う。おそらく年間一千万くらいの人が登ると思う。そういうようなことをするために、この前ちょっと私は二、三回質問をしたのですが、たとえば中央線の複線化の問題にしても、あるいは富士吉田から大月までの富士山麓鉄道というものは、これは日本で五番目に高い電車なんです。こういう電車を運輸大臣は早速話し合いをして、この前はそんな意思はありませんということを言っておられるのだが、そういうことでなしに、やはり国が買収して、そうして安い料金で直接あすこに乗り入れるような方法をとれば、非常に国際観光の面から見てもいいと思う。そういうことに対していかがでございますか。運輸大臣はそういう考えは持ちませんか。
  24. 中村三之丞

    国務大臣中村三之丞君) 富士山まで今おっしゃったような計画は、これは民間ではございますけれども、今われわれとして考えておりません。しかし、バスなんかの発達によって非常に便利になっておることは御指摘の通りでございます。今富士山麓鉄道のことを、先日もお話がございましたけれども、私はそういう合併の意思はなしと申しましたが、現在は新宿から直接をもちまして河口湖に行っておる。そうして緊密な交通の連絡をやって観光客の便宜をはかっておるのでございまして、これを国鉄が必ず買収をするということは今は考えておらないのでありますが、事実上河口湖までそういう便宜をはかっておるということを申し上げたいのであります。
  25. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 この観光収入というものは、一つの特徴として外貨の手取り率と申しますか、これはほとんど百パーセント、非常に割のいい外貨源だと思うのです。ところが、その観光事業の主体というものは、どうしても政府が直接やるというのはどこの国もあまりなくて、民間企業というものが、これが主体になっておる。そこで政府としては、ともすればこれは民間がやることだということになりがちになるのではないかと思われるのですが、これは何といっても手取り率もいいし、それからこの五ケ年計画の一番あとでは一億二千万ドル、三十万人という外客の計画を立てておる。この計画自体は決して私は大きなものではないと思うのです。よく言われるイタリアは一年に千二百万人と言われておりますが、これは少し通行客なども入っておりましようが、スイスやイタリア、ヨーロッパの国々なども五百万、六百万の観光客を国内に入れておる。日本の五カ年後の三十万人、これはけた違い。ですから、この計画すら小さいのですが、かつて各省でお話をされて五カ年計画を策定された。ところがこれでは足りないということで、自民党の国際観光特別委員会というものでさらに修正して、最初の計画より大きくしたものが一億二千万ドル、三十万人という計画だそうですから、それほどにやっておられながら、先ほど運輸大臣外務大臣の御答弁のあったように、五カ年計画のその最初の年から予算がまるで全く微温的な、やらないと同じだ、こういう状態なんです。これは私はどうしても、せっかくそういうふうな機関できめられながら、なおそんな状態で放置されておるということは、はなはだ私は心外に思う。私はその計画にある——船を一ぱいなり二はいなり持って、昔郵船、商船の航路があったが、観光客というものは飛行機、ジェット機の時代になりましても、船というものに非常に郷愁を持っておりますから、ぜひ日本自体の船で運ぶということを考えてしかるべきである。特に飛行機の、日航の工合を見ましても、日本のサービスのよさということは、これはもう外国人全部が認めておる。必ず私は失敗はしまいし、またこれはペイしないまでも、日本一つの大きな観光の宣伝になることは確実だ。船をぜひとも作られたい。これに対するお考え——ただし、これはタンカーや貨物船のいわゆる計画造船に影響あらしめてはならぬことは当然であります。  それからもう一つは、先ほど民間企業が主体であると申しましたが、一番大事な機関はホテル、宿泊施設であります。これはぜひとも政府財政投資、あるいは融資に関する援助というものを十分にやっていただかなければならない。この利子が高いために、あるいは償還期間が短か過ぎるためになかなかこれが育っていかないのが現状であります。非常にたくさんの外客が来る。ことしすらまた来たい人を断わらなければならぬ、かような状態では私はいかぬと思う。この点について運輸大臣の御答弁を願いたいと思います。
  26. 中村三之丞

    国務大臣中村三之丞君) 観光収入の外貨の手取り高は観光局の調査したところによりますと、大体九三ないし九四%、こういう数字を出しております。そうして御指摘のごとく外国人の来遊は五カ年計画の三十六年度におきまして三十万、一億二千万ドルということで、これを目標として努力をいたしておるのでございまして、大体これは実現できると思います。と申しますことは、現に三十三年度はこれは十五、六万の来遊客はあると思います。三十二年度は十三万でございましたから、まあ二万人増加というこの歩調をもっていきますならば、三十万——ことに日本に対する国際認識というものもふえて参りますし、またヨーロッパの人々やアメリカの人々はみな国民生活の中に観光がとけ込んできておるので、いわゆる国民旅行といったような形をだんだん進歩せしめておるのでございますから、私はそういう方向に実現すると思いますし、またその目標に向って努力をして参りたい決心でございます。  この太平洋にいたしましても大西洋にいたしましても、非常に航空機が発達いたしましたけれども、やはり船によって来遊する人も多いのでございます。従って各国は非常に豪華船と申しますか、そういうものを作っておりまするが、わが国は遺憾ながら氷川丸一隻である。そこで二万二千トン級の客船を計画して、十億円要求したのでございますが、遺憾がら今の財政事情において許されなかったのであります。と同時に、今後この計画を変えていかなければならぬ。と申しますことは、英、米あたりその他の国が非常に豪華船をもって極東に来ておりまするから、日本もこの二万二千トン級ではどうも私はまだ十分ではないじゃないか、あるいは四、と五万トンとか三万トンくらいの外国の観光船に負けないものをやって、これを一隻でもよいから早く作る。この計画は私は来年度は変えなければいかぬと思います。ただ二万トン級だけでは満足できない時代になってきておるのでありまして、本年度は遺憾ながら実現をしなかったのでありますが、将来はそういう方向に努力をいたして参りたいと思っております。大体以上お答え申した次第であります。
  27. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 大臣のそのお考えは非常によろしいのですが、考えただけでは困るので、計画の変更も非常にけっこうですが、その実現をはかっていただかなければ何にもならぬ。口だけ四万トン、五万トンできたと言ってもこれは何にもならぬのですから、予算確保については主管大臣として非常な御努力を願わなければいかぬ、かように思うのです。大体観光がこれほど大事だということを考えながら、非常に解しかねるのは、先ほどの特別委員会がせっかくそういった決定をしながら、この五カ年計画遂行に熱心でない与党の態度にもまた大いに不満がある。経済企画庁長官に実はきょう出席を求めたのですが、自分は観光の専門家でないから、あまり研究しておらぬから、勝手だけれどもという話でございまして、私はしいてとは申しませんでしたが、そういうふうなことが観光に対する従来の政府考え方なり態度ではなかろうか。私はもしそうであるならば、これは非常に残念なことなんで、ぜひともこれはこのいき方を改めて、観光をもう一度見直していただきたい、これをぜひ私は要望いたします。  この観光行政がうまくいかない一つの理由は、だれしも言うことですが、ほとんど観光という仕事は各省に関係を持っておる。多かれ少かれみんなあります。行政機構の問題については、一松議員もお話しされたようでありますが、これを何とか総合一元化する方策がぜひとも必要だと思う。で、一つその点について石井副総理もお見えになったようで、これは当然でございますが、一つ考えがありましたらお聞かせ願いたい。
  28. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 観光関係の問題がいつも出てくるのでありますが、私も前に運輸大臣をしておった関係上、この問題と取っ組んで、何とかしてこれは一元化した方がいいのじゃないかということで、話し合いを各省の間にいろいろ進めたこともあるのでございますが、おのおの主として働く部面が違うのだというようなことで、今のような予算もたっぷりないときは、各省々々においてそれぞれの努力をした方がよかろうというような結論になっておりまして、まだその段階に入っておりません。しかし日本の観光事業というものがだんだん大きく取り上げられるようになって参りますので、ただいまのお話のような行政機構の問題につきましては、さらに一そうこれを何とか一元化するような方向に話し合いを進めるべきだと思います。私もそういうふうにやりたいと思っております。
  29. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 まだまだこの問題については申し上げたいことがたくさんございますけれども、時間がございませんので、あとは分科会等に譲らしていただいて、次に青少年対策についてお伺いをしたいと思うのであります。  岸総理大臣は施政方針の演説のごとに、青年奮起せよという言葉を必ず入れられておられるが、これは私どもも全く同感で、次代をになう青年に、ほんとうに今立ち上ってもらわなければならぬ、これに強い期待をかけておるのでございますが、これは今年にあるいは限っておらないのでございますが、予算を見回してみまして、青年対策とおぼしき費目が私は非常に少いように思う。この問題については何と言っても文部大臣は青少年問題の本家でございましょうから、文部大臣にまずその点について、大臣として一体この青少年対策として今度どんなものを新たに組んだか、この点についてお伺いいたします。
  30. 松永東

    国務大臣(松永東君) 青少年対策は、お説の通り特に重要な問題と存じます。この三十三年度予算にも相当三十二年度と比較いたしますと増強する予算を計上いたしております。対策といたしましては、主として特に学生に対する面と、それから一般社会的な施策とに分れておりますが、学生に対する問題といたしましては、毎度お耳を汚しておる科学技術教育の振興のために、相当科学技術方面に法文系を切りかえていくような施策をいたしまして、そうして三十三年度から相当数の学生を収容するように計画を立てております。さらに、社会教育といたしましても、青少年に対しまして、農村におきましても、いろいろな文庫を設けるとか、すなわち社会教育としての文庫を設けるとか、あるいは都会における中小企業団体についても、そうした先生を派遣して、そうしていろいろなそうした部面についての研究を増進するようにいたしておるのでございます。
  31. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連。さっきの加賀山委員の観光政策に関して、関連してちょっと承わります。それは、観光といえば国際観光と国内観光とあると思うのですが、修学旅行をやる場合に、九州並びに北海道から長途の修学旅行をやる場合に、国鉄は配車に便宜のはかり方が不足して、そうして特にゆゆしき問題は、一まず定員四人にかかわらず、五人、六人と乗車させて、北海道あるいは九州から長途の旅行をする学生が、あの廊下に新聞を敷いて寝て修学旅行をやっている。この事態は私は早急に是正さるべきであると思う。定員を厳守さすべきであると思うのですが、運輸大臣並びに文部大臣のお考えと、是正方策についてこの際承わっておきたいと思います。
  32. 中村三之丞

    国務大臣中村三之丞君) 修学旅行の、ことに学生諸君に対しましては、国鉄はできるだけ便宜をはかっております。また、将来ともはからなければならないのであります。修学旅行は一種の教育でございますから、これは私は国鉄に対して常に強く申し入れております。ただ、御指摘のようなことがあることも私も開いておるのでありまして、それがために、いとけない学生が、かえって疲労をして、あるいは病気にでもなったら、これは大へんなことでございますから、今後できるだけ車内の余裕を設けさして、そういうことのないように努力をさします。ことに、今こういう春のシーズンでございますから、御指摘のことは十分国鉄に対しまして、私は指示して参りたいと思いまして、全く同感であることを申し上げておきます。
  33. 松永東

    国務大臣(松永東君) 矢嶋委員のお尋ねに対してお答えいたします。実は、これはこうしたシーズンになりますというと、やはり学生あたりが旅行をしたいという気持が燃え上ってくることは、これは当然でございますが、それがために不測の支障や損害を来たすというようなこともちょいちょいあるのでございます。これを何とか根絶せんければいかぬと存じまして、文部省といたしましては、やはり運輸省や国鉄あたりに相談いたしまして、もっと朗らかに愉快な旅行、しかも不安なくして旅行ができるようにしてもらうために、緊密な連絡をはかりまして、協議を進めておる次第でございます。大体今年あたりから相当運輸省や国鉄あたりでも、去年のいろいろな例にこりまして、そうして注意を払ってもらうようでございますから、私はそう大した問題なくいけるのではないかというふうに考えておる次第であります。
  34. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 私は文部大臣が言われたほかに、育英資金の貸付金とかあるいは青年の家、あるいはさっき言われましたが、これはそれぞれ一億三千万円、あるいは六千万円、これは新しく出ている。これは非常にけっこうなことであります。私の言いたいことは、これで青年よ奮起せよというお言葉にこたえるだけのことになるかどうか、まあそういうことで申し上げたので、各省大臣のうちで青年を扱っておられる——きょう御列席の大臣で青年に御関係のない大臣はないと思いますが、各省大臣でわれと思わん方がございましたら、おれの省にはこういうものがあるぞということを承わりたい。
  35. 松永東

    国務大臣(松永東君) 加賀山委員の先ほどの御質問に対して、もっと詳細に申し上げればよかったのですけれども、実はところどころ拾って申し上げました。まことに御無礼したと存じている次第であります。  この勤労青年に対する問題といたしましては、社会教育面でも相当やらんければならぬと思いまして、ことに勤労青年の教育、とりわけ職業教育の振興等につきましては、何とかやらんければ時勢に沿わないと存じまして、青年学級の振興を初めといたしまして、社会通信教育の振興等にも努めて参ったのであります。しかし、農村青年の方にだけ偏しているじゃないか、中小企業の方に働く青年にも何とか手を打たなければいかぬじゃないかというような議論も承わっております。この方面に対しても、企業体ともいろいろ連絡をとりまして、そうしてその方面に講師を差し向ける、あるいは教師をやって、そうして円滑に教育をするとかいうふうに、職業教育の充実に努めて参っております。市町村によりましては、青年学級でこれらの中小企業に働く青年たちに対するいろいろな仕事の教授等についても、やはり努力をしていただいているものがございます。そういう面につきましても、いろいろ講師を差し向けるとか、あるいはりっぱな先生方によって教授をしてらうとかいうふうにやっておりますばかりでなく、職業教育以外にも、青年のスポーツとかリクリエーション、それから音楽、演芸等の情操陶冶につきましても、職業教育の振興、職場における演芸、音楽等の普及振興に努めている次第でございます。教育の機会に恵まれがたい中小企業の青年にきましても、今後相当努力をいたしまして、その教育の振興充実をはかりたいというふうに考えている次第でございます。
  36. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 ソーシャル・ツーリズムと申しますか、そういうことにも非常に意を用いておられることは、非常に敬服いたすのでありますが、各省の予算、私は青年に関係のあるものを一わたり見たのであります。農林省関係には農村青年隊、あるいは建設青年隊関係、あるいは建設省にも産業開発青年隊の予算が少しばかり入っております。非常に私不思議に思ったことは、労働省の予算の中に、婦人あるいは年少労働者の予算として入っている、わずかにそれぞれ二百三十七万円、二百九十万円程度予算が入っているのですが、それを見ますと、非常に説明に、「年少労働者の特殊性及び実態を調査し、強力なる啓蒙教育を行う」ためとあって二百三十七万円、婦人の地位向上に必要な経費として同じく二百九十万円ですが、「婦人の社会的自覚を促し、その生活を明朗かつ合理的にする必要がある。」というのですが、私はこれはおそらく事務費程度のものであろうと思いますが、一般にいって、まことに青年対策は心細いと言わざるを得ない。私は勤労青年についてのお話がございましたが、学徒について、これは、これこそ文部大臣の一番絶大な中心の御使命だろうと思うのです。ただいま受験の発表期になった。発表を見る青年の顔色はほんとうに青い、二年、三年浪人して、しかも志を屈することなく続けてやって、しかも根気が尽きて死を選ぶという青年も出ている。これらの問題について、文部大臣としてどういうふうに措置されるか、どういうふうに考えておられるか、何か方策があるのかないのか、その点について伺いたい。
  37. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました問題については、まことに重要な問題でございます。ことに子供をもっておる親といたしまして、保護者といたしまして、まことにこれは何とかせんければならぬ問題だと常々考えておる。(笑声)笑いごとじゃないです。御承知通り、高等学校の卒業者は年々増加いたしております。で、大学に進学する希望者も年々増加いたしておりまして、現在ではその実数は大体四十万、こういうふうに認められておるのであります。その四十万のうちに、大学の入学定員と申しますか、これは四ヵ年制の大学で約十一万七千人でございます。短期大学がざっと三万七千、合計十五万余人でございます。従って競争試験が激烈な状態になることは、これは免れません。従って劈頭に申し上げまするように、大学の入学試験はまことに一般的に考えてみてきわめて困難な問題となっておるのであります。文部省におきましては、こうした重要な問題でありますので、これの改善のためにどうすればいいかということをいろいろ研究いたしまして、まず何よりも一番まっ先に考えんければならんことは、大学の収容力を増加する、こういうことが第一だと思うのであります。すなわち近時科学技術振興の重要性にかんがみまして、理工系の学部、学科、それを増設いたしまして、そうしてまた既設の学科、学部等を拡充いたしまして、そうして学生の収容力を増加する、こういうふうに考えておるのでございますけれども、これも一年にはなかなかいきません。そうしてまたこれと申しましても、根本的にこれを解決するということを、即座に解決するということは、これはとてもできません。従ってその次には入学試験の選抜方法の改善をやろう。大学学試験は、その試験が大学の目的にも沿い、同時に高等学校教育が撹乱されるようなことなく公正に入学者を選抜するようにせんければならぬ。これがためには文部省では大学入学試験研究協議会を設けまして、そうしてどうすればいいかということを今検討をやっておる。なお、大学入学試験が大学卒業後の就職の難易等を予想いたしまして競争率を高めておる場合が多いようでございます。これはもうそうなるのが当然と存ずるのであります。このため受験者が有名大学に、つまり学校差と申しますか、有名大学に集中いたしまして、そうして都市の大学に集中するという傾向が多いようでございます。そこでこういうのにつきましては、特に地方大学にその特異性を発揮してもらう。そうしてその地方々々で、東京に上って来んでもよろしい。大阪に上って来んでもよろしい。その地方々における大学でその特異性を生かしていく。そうして卒業後に十分その地方の役に立つようなことにしたいというので、そうした地方の特異性を認識するように一つしたいというので努力を払っておるのであります。そういういろいろな進学指導を行なって参ろうと思っておるのでありますが、先ほども申した通り、なかなかこれは一ぺんには解決することができません。現在行われておりまする三十三年度の国立大学入学志願者の状況は、前年度に比べてみますというと、大体都市所在の大学の入学志願者数が減りまして、これに反して地方大学の入学志願者が増加いたしておるような傾向でございます。このことはやはりいろいろな事情もあると存じますが、前申し上げた通り、地方大学がそれぞれその大学の特色を生かし、そうしてその内容等についても充実してきたこともその理由の一つであろうと存じます。こういう問題については、非常にいろいろな大きな社会問題であると同時に、ことに学徒に対する大きな問題でございます。学徒ばかりじゃございません。これを保護しているところの父兄、保護者、その問題について非常に重要と考えますので、なお研究を怠らず、みっちりやってみる、こういうつもりでございます。
  38. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 加賀山君に申し上げますが、時間がだいぶ経過しておりますから、建設大臣に対する御質問を。
  39. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 時間も経過いたしましたので、私の考え方だけをまとめて申し上げたいと思いますが、ただいまの文部大臣の御答弁で、これは根本的には学制の問題も出てこようし、また大学偏重の考え方を変えてゆくとか、いろいろ根本的には問題があると思いますが、少くともただいまの六・三・三・四というよりは、現状からいえば六・三・三・五とか六になっている、大学課程をひっくるめれば。そういう状態になっている。この間のブランクになる一年、二年というものに対して、政府としてはこれに何か着目されて方策を講ぜられなければ、これは国として非常なマイナスである。青年にとってマイナスであるということは、すなわち国にとってのマイナスということになると思うのであります。大体重点を置いておられるようで、予算的にはあまり考慮されてない。いわばわれわれからみると、大へん失礼な言い分になりますが、何だかピントがはずれているようなちぐはぐな感じを与えるのでありまして、これでは、ことに世の中の非常にびっこな状態、たとえば一部の者は歌謡やあるいは運動神経が発達しているということで非常な高給だと思うと、せっかく教育学部を出ても半分も就職できない、こういう状態でほうっておいては、これは非常に私は心配になるわけであります。先ほどの例でいえば、労働省の予算としても青年や婦人対策が二百何十万円、そこへもってきて、労働協会というものに対しては十五億もぽっと出される、こういう感覚が私どもにはどうもわからんのであります。こういう状態でほうっておかれると、奮起するのは全く口カビリーとか何とかいうもので狂喜する子女ばかりということになろうと思うので、文部大臣一つ御奮起をお願いしたい。  建設大臣、せっかく見えておりますので、一つ農村建設隊でありますか、産業開発青年隊をどうもっていかれようとするか、私は非常にこまかくこれを伺いたいのでありますが、分科会に譲って、今後の御方針を伺いたい。  それからもう一つは、首都圏整備委員長として、いわゆる衛星都市というものを考えておられる。八王子地区あるいは原町田地区に考えておられるようでありますが、これは一つ、ただ東京の周辺に町を作るということだけでは、かえって交通を混雑させ、非常に不得策なんで、たとえばロンドン等でやっている衛星都市というものは、全く独立した都市を周辺に作っていくと  いう考えで、教会を作り、学校を作り、病院を作り百貸店を作って、そこで住めるようにする。しかもロンドンの住民を移すということを主眼としているようであります。私はこの問題について、あるいは学生のために学都というものを一つ考えてもいいし、そういうような構想で一つ首都圏整備の衛星都市の考え方について大いに御検討していただきたいと思います。この二点について伺いたい。
  40. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。産業開発青年隊の制度昭和二十七年から実施しておりまするが、現在北海道初め各県十五、六県実施しております。そのほかに中央に中央キャンプが三つありますので、三十二年度に比較しまして三十三年度は約千六百万の予算増加をいたしました。これは主として中央キャンプ三個を増設する方針になっております。御承知のようにこれは農村の次三男対策をも含めたものでございまするが、御承知のように公共事業の関係が相当年々にふえておるのにかかわらず、こういう方面に技術者も足らない、こういう意味におきましてこれを増設いたして参っておるのであります。なお、この産業開発青年隊の終了者のうちに、今日までブラジルを初めとしまして、海外に移住している者もございます。今日まで割合いに少くて四十数名でございまするが、最近南米におきまして、農村建設青年隊をも含めまして将来約一千名ばかりの受け入れ態勢を向うの方で作られております。ぜひこれに充当するようにとの申し出がありまするので、これは農林省とも連係の上、これにこたえるべく教育を進めて参りたい、かように考えております。  次に、首都圏の問題でございまするが、御指摘のように東京の過度集中が、現在でも全くこれは行き詰りの状況でございますので、将来を考えますれば、どうしても今までのやり方ではいけないというので、首都圏整備委員会ができ、これに基いていろいろの政策をやっておりまするが、そのうち特に御指摘になりました市街地開発地域いわゆる衛星都市の問題でありまするが、これは加賀山先生が言われるように、決して近郊の都市から東京の中心に通うための住宅地帯とは考えておりません。これは周辺の都市に独立の工業施設も含めた独立の開発地域を設けるという方針で進んでおるのでございます。現在大体内定しておりまするのは、三月六日の審議会の答申を得まして、八王子地区とそれから相模原地区と、この地区が内定されておりますが、漸次その他の地区にもこれを進めて参りたいと思っております。そのために具体的の措置といたしましては、指定されますというと、住宅公団におきましてまず工場用地それから住宅団地を買い取ります。これに基きまして今度は道路、上水道、下水道、それに交通施設、さらに御指摘になりました工業施設をも入れまして、そうしてこれを年次計画をもって実施するということになっております。大体昭和五十年までに約二百四、五十万程度の人口を新たに指定された地区に吸収する、こういうふうに考えておりまするので、大体一都市について十万程度の新たなる人口収容を考える、それでありまするから、約二十五ないし三十の衛星都市を作るということになろうと思います。そうしてこれには方向別に、一個所にこれは集中しては工合が悪いのでありまするので、それで神奈川県方面、あるいは埼玉、群馬、千葉、茨城、こういう方面を考えておりまして、その調査を現在やっておる段階でございまして、御指摘のような方針に従って運営いたしたいと考えておる次第であります。(高田なほ子君「関連々々」と述ぶ)
  41. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 時間の繰り合せの関係上、関連はなるべく御遠慮願います。高田さんはさっきからでもあるから、簡単にお願いいたします。
  42. 高田なほ子

    高田なほ子君 文部大臣は勤労青年の教育振興に非常に熱心なような御答弁をあまりなさるので、私はちょっとそれはおかしいと思うのですが、青年学級は昨年の予算よりは減らしておりますね。それから定時制高校の場合でも、教員の給与の四割国庫負担というのは、これは本会議でも満場一致で決議された問題です。この予算を全部ゼロにしてある。また定時制高校の場合の教員の配置等については、当然県が負担すべきものを強制的に市町村に教員の給与を負担さしておる、こういう地方財政法の誤まりをあえて侵さしてまでも、定時制高校に対する冷遇というものは実にひどいものです。だから学校給食施設などは、鶏小屋のようなところでこの給食をやっている、定時制高校なんかは。こういうようなものに対する給食施設の予算を前年度よりも減している、こういう予算の面から見ても、決して勤労青年に対してあなたがおっしゃるように積極的な政策をとっているとはのみ込みがたい、私はこの点を、なぜ本会議できめられたものを今度の予算で全部削ったか、お尋ねしたいのです。
  43. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりましたこの定時制教育ですね、これは予算が思うようにはとれなかったことは、全く御承知通りであります。しかしながらこのためには二千万円だけふやしまして、そうして各地に分校を作りまして、そうして青年教育に資したいというふうに考えておりまして、それは実現する運びになりました。それからさらに通信教育でありますが、二百万円減ったということでありまするが、これは物価が安くなるというので、これはたしか一般的に減らされたその影響を受けたことだと考えております。  それから給食の問題でございまするが、この給食の問題は、私は豚小屋みたいなところだとおっしゃいますが、(「鶏小屋だ」と呼ぶ者あり)私もずいぶん行ってみましたけれども、そういうそれほどまでのはないように思っております。しかしこれはだんだんこれから改善していきたいというふうに思っております。
  44. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それでは高田さんに御遠慮願いまして、分科会でお願いいたします。
  45. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 それじゃ私の時間は切れましたので、これで……。(「委員長々々々」と呼ぶ者あり)
  46. 泉山三六

    委員長泉山三六君) まだたくさん関連の実は要求がありますが、皆さんもだいぶお腹がすいてきたようですから、それでは岡田宗司君。
  47. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は沖縄の問題について若干と、なお主として防衛計画の問題等についてはお伺いする予定であったのでありますが、その前に大蔵大臣に対しまして、三月十日羽田の空港において起りました事件についてお伺いしたいのであります。  沖縄に社会大衆党から分離いたしまして、私ども日本社会党の分身である沖縄社会党というものが結成されたのであります。その創立者の一人である沖縄の立法院議員の宮良寛才君が二月二十一日に東京に参りました。そうして三月の十日に帰国することになったのであります。宮良君は自分の用でこちらに参りましたが、同時に当時開かれました社会党の大会にも出席し、現在行われておりますところの琉球の立法院の選挙について沖縄社会党の候補者並びに沖縄社会党の加入しております民連の候補者の応援方を要請していったのであります。社会党は大会においてそれを決定いたしまして、それに基きまして、社会党は、社会党の機関紙を三万部、さらに鈴木委員長、淺沼書記長の演説をテープに吹き込みまして、さらにその他マイク、アンプあるいは輪転謄写機等を持たして帰すことにいたしたのであります。ところが、三月の十日の夜、彼が羽田空港に参りまして、ノース。ウエスト機に乗ろうといたしましたときに、その前に羽田税関の係員から取調べがあるから特別室に来い、こういうことで特別室に連れてこられまして、そこで衣服をぬぐことを命ぜられ、ついには腹巻まで探られ、そしてパンツの中まで検査をされたのであります。このことは私ども知らなかったのでありますが、昨日宮良寛才君から社会党に対しまして手紙が参りました。その手紙の中にこのことが明らかにされたのであります。私はこの手紙を見まして非常に奇怪に思いました。大体私も外国へ何べんも行っております。羽田空港へもよく出かけております。羽田空港におきまして日本から出かける者、出国をする者が身体検査を受け、しかもそういうふうに特別室において裸にされて検査をされるということはきわめてまれなことであるらしいのであります。私は直ちにこの報に接しまして、羽田税関に電話をかけまして、そこの支署長に何ゆえにこういうことが行われたかということを問いただしました。ところが羽田の支署長は、ただいま係りの者が非番でおらぬので、わからないから、あとからお答えしますということでありました。私はしばらく時間をおきまして、再度電話をいたしましたところが、この支署長が言うには、宮良寛才氏は日本円を持ち出すという疑いがあったので、裸にして調べたのである、しかしこれは本人の承諾を得て調べたのだ、こういうことを言って参ったのであります。そこで大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、一体そういうような嫌疑がありましたときに、こういうふうな身体検査をするということは、常時行われておるかどうか、この点をまずお伺いしたいのであります。
  48. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 実は私も今朝の新聞を見まして、はなはだ遺憾と思いまして、先ほどまでその報告を聴しておったわけであります。それでそういうふうな今のお話とは——後ほどまた御説明申し上げますが、事情は若干違うようであります。がしかし、そういうふうな場合が、どういうふうになるかということを実は詳しく調べておらなかった。こういうような点、今ここに税関部長が来ておりますから具体的な説明ができると思います。ただこの機会に、その状況を一応申し上げておきますると、私の聞きました報告では、税関の官吏が信用のできる情報があって、そして日本の円を持ち出す疑念がある。それで通常のそういう前例にもよって、そういうふうなこれは身体開示とか、テクニックとか言うようでありますが、身体開示要求権を持っております。そのときには別室においでを願うというのが常である。そして別にお着物をどうということは申さないという報告であります。これはいずれが正しいか、私も立ち会っておりませんが、私の聞いた税務官吏の報告では、円の通貨をお持ちになっておるのではありませんが、こういうふうに申した。そういうものはないということで、御自身で非常に快く、御自身で上着を脱がれたと、こう言っております。これは報告ですから、一応ありのままの私の聞いた報告を申し上げる。脱がれた。それで、その次は、胴巻はおつけになっておりますかと、こうお話し申し上げたら、いやそんなものはしていないということで、ワイシャツをまくられてお示しになった。それで大へん失礼をいたしましたということで、まあその何は私よく……、むろん私は立ち会ってはおりませんが、その間に非常に御協力といいますか、非常に、別に御無理もなかったような状況で事態は経過した、こういう報告を受けております。まあしかし、こういう事件については、大蔵省としてもある程度もう少し私はこれを聞きまして、今後において考えてみなくてはならぬ点が多々あると思います。たとえば、そういう場合に、やはり私は、これは私の考えですけれども、パスポートは一つお見せ下さいといって御身分なんかは一応確かめる必要があるのじゃないかと思うのでありますが、そういうことは私の報告では十分……、そういう点は落ちておるようであります。これらの点は十分今後気をつけたいと思います。
  49. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまの大蔵大臣のおっしゃられました報告は、私も昨日羽田の税関支署長から電話で聞いたところであります。そういうふうな言いのがれは、これは私も戦前治安維持法だの、いろいろな関係で警察に取り調べられたことがありましたが、そのあとで警察が言うこととちっとも違いがない。そういうようなことでは私どもは納得できい。宮良君からの手紙はこういうふうに書いてあります。「夜十時自宅へ着いた、在京中は一方ならぬお世話になり、心から御礼を申し上げます。羽田で貴男等と別れて、下の方で荷物の検査等をうけたが、私だけは特別扱いらしく、荷物は全部破かれて、中身まで検査され、その上身体検査は人以上にきびしく、シャツはぬぎパンツの中まで調べられました。実に人権ジュウリンだと思います。税関の方に、調べるなら、私だけ特別扱いしないで、平等に調べろ、又同じ日本人が自分の国の中を行き来するのになんでこんなみじめな事をしなければいけないか、そんな事は沖縄を異民族の支配下においたからなのか、なんで、日本人が完全独立をなし得ないで、異民族の命令をうけて、こんなに同じ日本人を調べなければいけないのか、それは沖縄を奪還しないからだ、税関の皆さんも日本人ではないか、沖縄の返還のために総ケッ起して呉れと要求しました。調べをうけたときは、胸がかきむされる思いでした、実に残念です。」、こういう手紙が来ておるのであります。私はこの手紙にうそはないと、協力をしてみずから上着を脱ぎ、みずからシャツを脱ぎ、みずからパンツを脱いだなどということは、これはあり得ないことであると思うのであります。そういうようなことで言いのがれをしようといたしましても、私はそれを許さない。これは宮良寛才君一人に対する侮辱ではないのであります。宮良寛才君は社会党の分身である沖縄社会党の創立者また執行委員である。しかも立法院議員であります。その人に対して、何の情報に基くか知らぬけれども、こういうことをするということは、私はこれは沖縄社会党に対する侮辱であり、また同時に日本社会党に対する侮辱であると断ぜざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)その点をどうお考えになるか、お伺いしたい。
  50. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 税務官吏といたしましては通常の例にならってやったことと私は確信いたすのであります。むろん宮田良さんがそういうふうなお方であるということでありますれば、あるいはいわゆる信拠すべき情報、情報を信用する上において相手方がどういう身分であるかということは当然考慮に入れらるべきものと思うのでありますから、これは知っておれば……あとでいかようでも御非難を受けますから、私は一応申し上げたのですが、なかったろうと思うのであります。むろん人によって区分することはないのでありますが、しかし情報が信拠さるべきかどうかということについては、やはり相手方がどういう方であるかということも私は確める必要がある、こういうふうに思っております。その点について欠くるところが私の受けた報告ではあるようであります。しかし従来はそういうこともやっていないといいますから、そういうふうな扱いについては今後十分考える、従いまして宮良さんがそういう方であるという、そういう御職分に対して決して失礼を申し上げるというような考えは全然ありません。従いまして日本社会党に対してはなはだ非礼にあたることを意識してしたと、そういうことは全然ありません。その相手の方がわからぬその結果、しかしそういう御身分の方であるということにおいて、そういう結果を生じたということは、これはそういうふうに申されても仕方がないと思います。さように思うのであります。決して宮良さんがそういう人であるにもかかわらず、あえてそういうふうな検査をしたというのじゃなくて、全く税関の検査という個々の技術的な範囲にとどまって仕事をやったというところに、もう少しやはり場合によっては扱いを考えなくちゃならぬ点があるか、かように私は考えておる次第であります。
  51. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先ほどは信頼すべき情報に基いてといわれておるのであります。信頼すべき情報があるならば、その信頼すべき情報には宮良寛才とはどういう者であるかということが明らかに書かれてある。それはおわかりになるはずだと思う。そこで一体この信頼すべき情報とは何かということでありますが、私は昨日税関支署長にその点をただしたのであります。ところが税関支署長は、これは自分のところで勝手にやったのではございません、東京税関の審査課長の方からそういう情報がありましたので、それに基いてやったということをはっきり私に、自分で電話で答えているのであります。それじや一体審査課長はその情報をどこから得たのか、あるいはその上の役人から得たのか、あるいは他から得たのか、その点を一つお伺したい。
  52. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) その点については直接に扱っております税関部長が来ておりますから、税関部長が事実でありますから、事実として答弁させます。
  53. 木村秀弘

    説明員(木村秀弘君) 今審査課長とおっしゃいましたが、羽田税関麦所長が申し上げたのは東京税関の審理課長からの電話で身辺の開示を求めたというふうに申し上げているかと思うのであります。審理課長はそれじゃどこから情報を得たかというお問いかと思いますけれども、これは電話情報によるのであります。それで通例羽田の税関で身辺の開示を求めます場合には二つございまして、一つはその人、普通旅具の申告は現在口頭でいたしておりますけれども、口頭で申告してきたものと荷物の内容とがあまりにも違うというような場合、その他、挙動等によりまして非常に不審を起させるというような場合が一つあります。もう一つは電話とか投書とかによりまして、非常に具体的に、どういう人が何時にどういう飛行機でどこへいく、それが宝石、あるいは貴金属、あるいは通貨なり、どういうものを幾ら持って出るとか、幾ら持って入るとかというふうに、非常に情報の内容が具体的でありまして、かなり信憑性があるという場合でありまして、この二つの場合はわれわれ身辺の開示を求めておるわけであります。
  54. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまのお話を聞くと、ますます奇怪なんです。つまり審理課長のところからどこかから電話がかかってきた、それが信憑性がある、こう言う。一体その電話の信憑性とは何ぞや。その電話はどこからかかってきたのか。その電話をかけた人がどれだけ信憑性があるのか。それを伺いたい、
  55. 木村秀弘

    説明員(木村秀弘君) 今の場合はどういう御身分の方かというようなことは全然わかりません。ただ名前と、それからその方が十七時のノース・ウェストで羽田を立って沖縄に行く、その方が身辺に百万円ぐらいの金を隠匿して持ち出している疑いがある、そういうことだけでございます。それでその内容があまりにも具体的でありましたために、これはほんとうじゃあるまいかということで身辺の開示を求めたわけであります。
  56. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 一体それでは百万円出たのですか。幾ら出たのですか。金があったのですか。何物まで破いて調べて、そこに幾らあったのですか。
  57. 木村秀弘

    説明員(木村秀弘君) 身辺の開示を求めました結果は百円紙幣が一枚と、それからB円の五十円が一枚でございますか、ほとんど出ておりません。
  58. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そこで問題は審理課長にかかってきた電話の信憑性という問題、その信憑性というものはどうしてあなたが信憑できると思ったのか。これは審理課長はおそらくその電話がこれは国内の人がかけたのか、外国の人がかけたのか知らないけれども、その電話によってそういう行動を起したということになると、この電話のかけ主というものがしょっちゅう審理課長のところに電話をかけ、そしてしょっちゅう審理課長はそれに基いて行動しているとしか思えない。そうでしょう。ただどこからかかってきたかわからない電話を、信憑性があるといって直ちにそういうような行動を起すということは、これは官吏としてあるまじき行動だ。そうでしょう。これは大蔵大臣どうですか。
  59. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 税関の官吏といたしまして相手方にその身辺の開示を求めるということは、これはこの今日の世の中において非常に私は慎重でなくてはならぬ。従いまして税関の官吏がそういう情報について、これは十分信頼をおけるかどうか、これはそうまた時間をかけるわけにもいきませんが、十分そのときに判断して間違いないという、その程度の根拠はなくてはならぬ。今回のことにおいて私まだいまいろいろと報告を聞いて調べておるのですが、若干、そのとき私はすぐ気がついたのは、パスポートは見たろうか、こう言ったときに、どうも見てない。これは従来の例でもあるというふうに言うておりますが、私はそれはやはり見なくてはいけないのじゃないかと言って、いろいろ遺憾の点もあったようでありますが、まあ税務官吏において信拠すべき理由があるとして調べた、事実調べておるのでありますから、まあそういうような事情であるのであります。
  60. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は大蔵大臣にそういう弁解を聞いているのではない。そういうような電話がかかってきた、その電話に対して信用されたということが問題なんです。それはほかから一片の知らない人がかけてきた電話ならすぐにそれを信用してやるわけはない。だから向う側は常に信頼しておる人に違いない。どこから一体その電話がかかってきたのか明らかにして下さい。
  61. 木村秀弘

    説明員(木村秀弘君) 税関の通例の仕事振りといたしましては、かりにその電話が今おっしゃったように信頼している向きとか、あるいはよく知っておる方とか、そういうところからかかってきたのではございませんでも、かなり話の内容が具体的であって十分疑うに足る理由があるという場合にはやっておるわけであります。たとえば二十九印の二月に松岡某一名、これもやはり電話でございますが、電話が税関にかかりまして、米ドルを持っておるという情報が入りまして、やはり開示を求めたところが出てきた、あるいは無名の投書によって捜査した結果出てきたという例が過去においてしばしばございますので、今度の場合もおそらく何かそういう仲間割れじゃないかというようなことで……、(「日本人じゃないか」、「そんなばかなことを言うな」と呼ぶ者あり。)
  62. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 相手は立法院議員じゃないか、何だそれは……。
  63. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 木村説明員に注意をいたします。用語を慎んで下さい。
  64. 木村秀弘

    説明員(木村秀弘君) もちろんその人の身分なり何なりというものをこちらは存じておりません。
  65. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 存じておらないで、どうして調べたのか、どうしてそんなことを調べたのだ。
  66. 木村秀弘

    説明員(木村秀弘君) 通常、これは御承知かと思いますけれども、身体の捜査を、強制捜査をやります場合には、裁判所の令状をもらってやることになっております。それから今度の場合のように、身辺の開示を請求するというような場合には……、
  67. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 同じことだ。そんな手続を聞いておるのではない。その電話の信憑性を聞いておる。
  68. 木村秀弘

    説明員(木村秀弘君) それでこれは強制的にやったのではございませんので……、
  69. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そんなことを聞いていない。電話の信憑性のことだけ言いなさい。電話の出所だけ言いなさい。それ以外のことは要らぬ。
  70. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 木村君簡潔に明瞭に御答弁を願います。
  71. 木村秀弘

    説明員(木村秀弘君) 電話の出所はわかりません。
  72. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 わからないのに何で信用するのだ。
  73. 木村秀弘

    説明員(木村秀弘君) 過去においてもしばしばそういう電話の情報、あるいは無名の投書その他密告によってやった場合がございます。(「全都やるのか、そんな……。」と呼ぶ者あり)いや、相手はもちろんその内容によりまして……。(「委員長、整理したらどうだ、あっちこっちからおかしいよ。質問者ではない者ではない者に答弁したりしたらだめだ」と呼ぶ者あり)
  74. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 説明を慎重にして。  大蔵大臣所信を御表明願います。
  75. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 実は私今朝の新聞を見まして、それから実はこれは私も遺憾なことだと思いまして、すぐに大蔵省に登庁いたしまして、そうしてここの委員会がありますから早く出なくちゃならぬというので、私も事務当局から御報告したことを私も実は報告を受けておるのであります。しかし今御本人からのお手紙を事実お読み下さると、これは事実私が大蔵官吏から聞いている報告とは違うようでありますが、第一に身体に何もこちらは手をかけないのに、御自身で着衣をぬいで、そうしてワイシャツの下というのは御本人のお手紙とは大へん違うようであります。それで私は実は時間もなかった関係もあるので、一応事務当局の報告をとりあえず徴しまして、こちらに来て報告を申し上げようというので、こうしておりました。しかし私もう一ぺんこれは一つ大蔵省に帰りまして十分調査いたしまして、そういうふうな、具体的にそういうふうなお手紙を見ると、事実と違うような点もありますから、これは私責任をもって調査いたします。その上で御報告申し上げることをお許し願います。
  76. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまの私の質問の要点はですね、電話の信憑性の問題なんです。どこからかけた電話かわからぬ、それに基いてこういう重大なことをやっておる。しかもたびたび例があるというけれども、私これも支署長に尋ねたところが、出て行く人をそういうふうな調べ方をするということは、あまり例のないことである、こういうふうに言われておる。多い例ではないのであります。しかも立法院議員ということは、りっぱにパスポートでわかっていることじゃありませんか、何事ですか、一体。その電話は、おそらく、私ははっきり申し上げるが、アメリカ軍政当局からきたものである、こう推定せざるを得ない。(「その通り、その通り」と呼ぶ者あり)そうでないかどうか、はっきりさして下さい。
  77. 木村秀弘

    説明員(木村秀弘君) アメリカ軍政部とは私は聞いておりません。先ほども申し上げましたように、電話あるいは無名の投書でも内容が具体的である場合には、われわれとしては通例そういうふうにいたしております。それから大体そういう例が月五件ないし六件くらいかと思います。
  78. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 岡田君、ちょっと大蔵大臣が……。
  79. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今私も実は羽田に実際扱った税関の官吏を呼んで聞くだけの時間的余裕を持たなかったのです。  これはけさ私新聞を見て知ったようなことではなはだ遺憾でありますが、そうして大体今の関税部長の報告を、関税部長は、これは報告を受けてその話を聞きましてお答えしておる。そうして私先ほど申しますようによく調べまして、羽田の実際扱った人も呼びましょう、よく私話を聞きまして、全部そういうことをくるめてお返事申し上げることにいたします。
  80. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 岡田君に申し上げます。大蔵大臣は所信を表明せられました。木村説明員の説明はやや不十分でありますが、その信憑性の根拠をなすアメリカからの電話であるということについては、そうであるというような確証を持っておらないですから、そのへんでこの問題は一応お預け願いたい。
  81. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いやちょっと。あとで改めてですね、調査報告の結果をお聞きして、さらに質問をいたしますが、その大蔵大臣が当事者を呼んで聞かれるについて、私は一つ大蔵大臣に御注文を申し上げたい。それは審理課長がその電話を得たそのもとを知っておるかどうかということ、そうしてその二は、それが信憑すべきものであるという、審理課長が判断を下したその理由いかん、その根拠を、この二点を私ははっきりと聞きたいと思う。それを明らかにした上で、さらに私はこの問題について追究したいと思います。
  82. 戸叶武

    戸叶武君 議事進行について。
  83. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 戸叶君簡単にお願い申し上げます。
  84. 戸叶武

    戸叶武君 今の政府委員答弁の中に、沖縄の議員に対して密輸業者であるかのような印象を与える、仲間割れなどという暴言を吐いておりますが、通常におけるところの観念が、そういうすべてのものを犯罪人扱いで見る、眼でもって判断されているからこういう失言も起きるのだと思いますから、これは速記録に残っていることであつて、これは政府委員の陳謝なり、あるいは委員長からしかるべき措置をとらなければ、これは将来よそから問題が起ってきたとき、国会としてそのような、国会なるが故にそのような答弁を勝手気ままにやられるというような悪印象を与えると思いますから、適当に処置してもらいたい。
  85. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 戸叶君に委員長から申し上げます。委員長はこの点について木村説明員に不謹慎の用語を慎しまれたいことを申しております。
  86. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 議事進行について。各国を旅行してみて私の知っている範囲では、英国と日本が税関手続は一番うるさい。特に日本の税関の検査というものは非常に時間がかかり、非能率的である。そういうときに、今岡田委員が質問してしるような問題か起ったわけで、これは単に岡田質問者ひとりあるいは日本社会党に限った問題ではないと思う。いずれ大蔵大臣が詳細調査して、そうして報告されるということでございますから、それに基いてさらに究明がなされると思いますが、どうか委員長及び理事打合会において、この問題は岡田委員の持ち時間とは別ワークにおいて、国会という立場において究明されるよう、委員長、理事打合会において取り扱われるよう私は要望いたします。(「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり)
  87. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 矢嶋君に申し上げます。ただいまの御発言はこれまでに伺っておらない範囲以外の問題でありますから、せっかくの御発言でありますので、次の理事会の機会に議題として供します。
  88. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それでは後刻大蔵大臣調査の結果、御報告をされるのを待ちまして、この問題についての質問は続けたいと思います。
  89. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それでは午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十三分休憩    —————・—————     午後一時五十六分開会
  90. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これより委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を続行いたします。
  91. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まず沖縄に関する問題について二、三石井副総理にお尋ねをいたします。実は総理の御出席をお願いして総理の御意見を承わりたいと存じたのですが、一般質問で総理が出られない、こういうことでございますので、総理にかわって答えていただくつもりで石井副総理に御質問いたします。総理のお考えと私は同じであろう、そう信じてよかろう、こういうふうに考えて御質問申し上げますので、内閣見解としてお答えを願いたいと思います。  第一は、沖縄の施政権の返還の問題でございます。これは沖縄の人々も日本復帰を望んでおります。そして日本が一日も早くアメリカから施政権の返還をしてもらいまして、日本の施政のもとに入りたいということは強い念願であります。私ども国内の者もまた、沖縄が日本の一部でございますので、今の沖縄の情勢を見まして痛憤にたえない。そうしてこれは一日も早く施政権の返還が行われて、日本が沖縄を再び行政できるようにしたいと念願しておるのでございまして、この点は国内も沖縄も人々は皆共通の見解であろうと思うのであります。この点につきましては、強く前々から要望されまして、昨年岸総理がアメリカに行かれました際も、この問題はアイゼンハワー大統領との会談の際に持ち出しされたと思うのであります。しかしながら、アイゼンハワー大統領の答えは否定的であったようでありまして、ついに今日に至るまで、何ら施政権の返還の問題について具体的に話が進められておらない。岸総理とアイゼンハワーとが会見されました後に出されたあの日米共同声明のうちに、この点につきましては次のように書いてあるのであります。「総理大臣は琉球及び小笠原諸島に対する施政権の返還についての日本国民の強い希望を力説した。大統領は日本がこれらの諸島に対する潜在的主権を有するという米国の立場を再確認した。しかしながら大統領は、脅威と緊張の状態が極東に存続する限り、米国はその現在の地位を継続する必要を認めるであろうことを指摘した」云々となっておるのであります。これで見ますというと、施政権の返還ということは明らかに拒否されたと見られるのでございますが、その後におきましても、国会におきましてしばしば施政権の返還のことについて質問がなされ、総理あるいは外務大臣は今後これを努力する、こういうことを言われるのでありますが、そこでお伺いいたしたいのは、この日米共同声明の後におきまして、政府アメリカに対して、施政権返還についての交渉をした事実があるかどうかという点であります。
  92. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お答えいたします。お話しのように、この問題は沖縄島民だけでなく、全国民の熱望しておるところであり、また、国会においても数回決議が行われた問題でございまして、お話しのように、岸総理が昨年アメリカに参りましたとき、アイゼンハワー大統領並びにダレス国務長官ともこの問題を話し合ったのでありましたが、残念なるかな、結果はまだ今の国際情勢では、お返しするわけにはいかない、世界情勢、特に極東の情勢の将来の変化によって考慮することはあるが、今はこのままにというようなことで、お別れになっておりますことは、お話しの通りであります。その後の問題といたしましては、通常の外交のチャンネルを通しまし、数回アメリカ政府にやはりこの問題を取り上げていろいろ話し合いをいたさしたわけでございますが、これは一向に進展をいたしておりません。第一に、この問題の解決には、国際情勢がよくなるということが第一でありましょうが、同時に私どもがしんぼう強くこの問題を取り上げて話し合い、特に沖縄というものの立場というもの、日本の国とのつながりというようなものを、アメリカ国民に十分了解せしめていくというようなこと等にも努力をいたさねばならぬという方針でやっておる状態でございます。残念なるかな、まだそれ以上に進み得ない状態でございます。
  93. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今国会におきましても、衆、参両院においてしばしば今後この問題についてアメリカに交渉するかということが質問されて参ったのであります。ただいまのお話しによりますというと、国際緊張が緩和されないので非常にむずかしい、こういうお話しでございますけれども、私どもは国際緊張の緩和ということは、もちろんこの問題の解決を促進する道ではあると思うのでありますけれども、しかし、それが緩和されるまで待っておれるような性質のものではないのであります。もちろん、それが早く解決されますことが望ましいのでありますけれども、しかし、今日のような東西間に緊張がある間におきましても、日本国民としてはなおかつこの問題の解決について強い要望を持っておるのであります。  私は特に次の点を指摘したいのであります。それは沖縄における人々の考え方が漸次変ってきておる。従来は、すなわち戦後数年間は沖縄の島民諸君は、アメリカの軍政下におって半ばあきらめの状態にあったのであります。絶望的な考えでむしろ卑屈になっておったのであります。しかしながら、戦後十二年を経ておる、そうして島民諸君も、日本への復帰を強く要望して参りました。アメリカの軍政に対しまして強い批判を持ってきておるのであります。その結果が、那覇の市長の選挙にも現われておる。そしてアメリカが前瀬長市長を不当なる方法をもちまして追放いたしました後におきましても、沖縄の島民諸君は屈せず、兼次佐一氏を再び市長に選びまして、そして沖縄の島民の意向というものをはっきり示しておるのであります。明日沖縄におきまして立法院の選挙が行われるでありましょう。いろいろな干渉が陰に陽に行われておるのでありますけれども、しかし、沖縄の島民諸君の日本復帰の願望というものは、この選挙にも現われてくることは必至であります。また、こういうような情勢に応じまして、アメリカは沖縄におけるアメリカの政策というものを若干変更せざるを得ない事態に立ち至っておるのではないかと推測されるのであります。ムーア前高等弁務官が転任になりまして、新たなる高等弁務官が参ったのであります。もちろん、アメリカ側としてはムーア前高等弁務官が沖縄島民の意向に反してやりましたことが失敗に終ったために、その失敗の責を負って、あるいは失敗のゆえにかえられたということは、発表はしておりません。そして前と同じ方針を続けていくということを言っておるのでありますけれども、すでに微妙な変化が起っていると見ざるを得ないのであります。こういうときにおきまして、政府は当然アメリカに向って強くこの事態を指摘いたしまして、施政権の返還の問題について話し合いをすべきだろうと思うのでありますが、近くこの問題について、アメリカに施政権返還の交渉をされる用意があるかどうか、その点をお伺いしたい。
  94. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) ただいまも申しましたように、昨年の岸総理のアメリカ訪問以後も、数回外交のチャンネルを通して話を進めており、また同時に、この機会に注意してわれわれやらなくてはならぬことは、しんぼう強く、絶えずこれを要求する問題と、沖縄の事情をよくアメリカに知らしめるということは、ただいま申し上げたのは今あなたのおっしゃる趣旨に沿うつもりでございまして、アメリカ自身もいろいろ考え方を変えているかもわかりませんし、われわれとしてはこういう情勢にあり、こういう心持ちであり、日本とはこういう関係だというものを、もう一そうよく国民一般に知らしめるような方法をとること、並びに最後にお尋ねになりましたそういう情勢下において、さらにアメリカと折衝をするという問題は、これは必ず私どもとしては取り上げていくべきものだと思っておりますから、時期は申し上げられませんが、必ずそのような方法をとりたいと思っております。
  95. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今までどれだけの交渉をされたか、私どもはよく存じません。しかし、さきに東京新聞に、ワシントンから酒井米夫氏の通信としてきました記事には、岸総理は施政権の返還について何べんか交渉した、こう言っておるにかかわらず、向うの大使、あるいは公使は、そういう問題について向うと話したことはない、こういうことを言っておることを伝えてきておる記事を私はさきに見たことがあるのであります。そういたしますと、岸総理は国内に向っては施政権返還を大いにやっているのだ、向うに向ってはやらない、こういうことで、まあ二枚舌を使っておられるという印象を受けたのであります。これがほんとうでなければ幸いでありますけれども、どうもそういう印象が一般に感じられておるようでありまして、これではいけないのであります。今後はアメリカに対しまして、もっと真剣になって、その交渉をしていただきたい。特に私は外交チャンネルを通じてやるということは、これはもう当然のことでありますが、単に出先の大公使に電報を打って、そうしてそこでもっておざなりにやらせるというのではなくて、これは東京におきまして、外務大臣、あるいは場合によれば、岸総理自身が、マッカーサー大使と、この問題の交渉をする、また、向うに対しまして、特にこの問題につきましては、だれか特別の使節を出して、そうして交渉するくらいの強い決意でやっていただきたいと思う。その点はいかがお考えになりますか。
  96. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 岸総理は今度の議会でも何度か折衝をやっておると言うておることでありますから、私は必ずしておると思います。同時に、今のお話しのような筋のことは、どうやってやるかということは別問題といたしまして、必ず折衝をやるべきものであって、それにはどうしたらいいかという問題、お話しの趣旨も含んで、よく相談をいたすことにいたします。
  97. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それでは次に、沖縄の戦災の復興に対して、日本は援助をするかどうかという問題についてお伺いしたいのであります。沖縄が戦場になりまして、しかも、アメリカ軍から壊滅的な打撃を受け、沖縄の首都はもちろんのこと、多くの都市あるいは村落が荒廃に帰し、多くの人が死んだのであります。その惨禍は、国内における戦争の惨禍以上のものがあるといわれておるのであります。もし、沖縄がアメリカ軍の占領するところとなり、現在のようにアメリカ軍の施政のもとにないといたしますならば、日本国内の一部であるといたしますならば、政府は沖縄県に対しまして多くの地方交付金等を出す、あるいは沖縄も広島や長崎と同じような特殊な問題といたしまして、復興に金を出したろうと思うのでありますが、ここでまずお伺いしたいのは、もし沖縄が日本国内にとどまっておるとするならば、沖縄の戦災に対して今まで政府はそういう方針をとっただろうかどうかということをお伺いしたいのであります。
  98. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 日本国内にそのままとどまっておれば、情勢の判断によりまして、長崎であるとか、あるいは広島であるとかというようなもんと同じような扱いをしただろうと私も思いますが、はっきりとそうだとは申しませんが、少くもその方向で考えられたはずだろうと思います。
  99. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 もとより、それが当然のことだと思うのです。そこで、お伺いしたいのは、沖縄の戦災の復興状況でありますが、これはアメリカ軍はアメリカ軍の必要なる施設を作るには、非常に金を投じまして、軍事施設はりっぱなものができております。また、駐留するアメリカ軍の宿舎、娯楽施設、そういうものも非常にりっぱなものができておるのであります。しかしながら、沖縄の戦災によりまして失われました、荒廃に帰しました都市の復興、あるいは村落の復興等につきましては、至ってわずかな金しか出しておらぬ。しかも、沖縄は、御承知のように、経済的にまことに微力なところでありまして、従って沖縄の復興というものは遅々として進んでおらないのであります。写真で見ますと、那覇の正面の通りは、大通りだけはりっぱにできております。しかしながら、那覇市全体の復興は、きわめて微々たるものであります。また、村落、農村にいたしましても、同じであります。アメリカ軍の施設となっておりますところは、すべてアメリカ式にりっぱにできております。他はまるでひどいのでございますが、こういうような状況に対しまして、日本人としては、私ども同胞の立場といたしまして見るに忍びないものがあるのであります。そこで、どうしてもこれは日本の内地に、日本の一部であると考えなければならぬのでありまして、私どもはこの戦災の復興に対して、やはり他の日本内地の諸都市と同じように、これに財政的な援助をする方向がとられなければならぬ。今日でもそれはおそくないと思うのでありますけれども、その点について、そういう援助をされるおつもりがあるかどうか、これははっきりお答えを願いたいのであります。
  100. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 沖縄のいろんな焼けた、あるいは破損されました都市等の復興、その他について日本ほんとうにこれをよくしてやるために、アメリカの力が十分でないようだから、日本でも援助したらどうだというお尋ねだと思うのでありますが、これは根本の考え方一つあると思うのでありますが、沖縄島民諸君の生活がよくなるようにこいねがうことは当然でございますが、今あそこのさっきお話しに出ましたような沖縄の施政権というものが、アメリカ軍に渡されておりまする今日において、沖縄の復興の問題、沖縄の一般施政の問題というものは、これはアメリカ政府が責任を持ってやってくれるのでありまして、私どもの方でこの点がどうも足りぬようだから、そこは日本側でやるというようなことは、施政権が向うにあるという立場上、これは積極的にはやれない立場にあると、こういうふうに思うのであります。しかし、沖縄島民の生活状態に、今お話のような線等がはっきりいろいろ露骨にだんだん出て参りまして、こういうことではならぬという問題等が必ず、幾つか私どもの耳にも入っておるのでありますが、これらの問題については、今までも私は話し合いがされておったと思うのでありまするが、公式、非公式、どんな方法によってでも、アメリカ側と話し合いまして、そうしてアメリカ側でその施設をまずやってもらうというようにすべきではないかと思っております。また、何か問題によりまして、日本側でやってもしかるべきだというようなものがないとは、私は思わないのでありますが、そういう場合においては、よくその問題を取り上げて検討し、そうしてアメリカ側とも話し合いをつけて、あるいは日本側の援助ができるものかできないものかというようなこと等も十分研究して、沖縄島民の幸福になるような方向のことは考えなくちゃならない。今どの問題はどうする、どの問題はどうしないということは言えないのでありまして、一般的に言えば、積極的にやれないというふうに私は思いますが、消極的には、今のような方法で考えていくべきではないかと、こういうふうに思います。
  101. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 なるほど、施政権はアメリカにあるのであります。従ってアメリカが当然その復興についてやるべきであるということは、お説の通りなんです。ところが、あまりやっていない、金を出していない。自分の方へはいろいろ力を尽しておりますけれども、やっていないから、沖縄の島民は苦しんでおる。そうして日本の方から何か戦災の復興について援助はないだろうかということを期待しておるのであります。この期待にこたえられないような状況であるかどうかということは、これは一つの問題でございます。私はもし積極的に沖縄島民諸君が、あるいは那覇市なりその他のところから、あるいはまた、立法院なり、あるいは琉球政府なりが日本に対しまして、こういう問題についてこういうような戦災をこうむったのは、やはり日本が戦争に参加し、そうして日本が沖縄を守り得ずしてこうなったのであるから、日本政府が責任を継承して負うべきであるというような見地から、政府に向ってそれを要求してくる、あるいは陳情して参った場合に、石井副総理はそれをどうお取り扱いになるか、お伺いしたい。
  102. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) そういう場合もあると思います。そういう場合がありましたら、親切な心持ちをもってこれを取り上げて、そうしてどうやったら、一そう実効が上り得るかという問題について研究いたしたいと思います。
  103. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 日本は他国に対しまして戦争の責任を感じて賠償を払っております。また、賠償を放棄いたしましたラオスであるとか、カンボジアに対しては贈与をいたしておるのであります。こういうふうに諸外国に対しまして戦争の責任を感じ、そういうふうな賠償を払っておるわけでありますが、私は沖縄に対しましても、日本政府は当然責任を感じなければいかぬ、そうして沖縄の方から、そういうような要請がありましたときには、これは同情的にそうして具体的にこれを取り上げていかなければならぬと思うのであります。まあ、アメリカが施政権を持っておるから、そういうことはよけいなおせっかいだ、こういうふうなことをあるいは言わぬとも限らぬのでありますけれども、しかし、私どもはそうは考えない。そういう問題は、外交交渉でもって解決できる問題であろうと思うし、また、一々沖縄の内部において行われますところの計画に、具体的にこちらが指図をしたり何かするのではなくて、たとえば、他の国に対して贈与を贈るというような形で、戦争の責任について感じたところを行うということでございますから、方法は幾らもあろうと思います。そういう点で、政府は十分に今後御配慮を願いたい、こういうふうに考えるのであります。その点について、もう一度、向うからそういう要求がありました際に、政府はこれを具体的に取り上げて、これを有利に沖縄の諸君の満足のできる方向に解決する御意思があるかどうか、明らかにしていただきたいと思うのであります。
  104. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) ただいま申しましたように、沖縄の人たちに対しては、われわれ、深き同情を持っておるわけであります。そういう具体的の問題が出て参りましたら、具体的の問題として、慎重に、かつ好意をもって研究をいたしていきたいと思います。
  105. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、沖縄に対しまして日本から渡航をする問題についてお伺いしたいのであります。実は、今度の立法院選挙に当りまして、わが社会党の分身とも言うべき沖縄社会党から、五人の立候補者が出ておるのであります。さらに、沖縄社会党は、いわゆる民連という組織に参加しておりまして、この民連は、沖縄社会党を含めまして十九名の立候補者を出しておるのであります。明日が投票日でございますが、私どもはこの選挙に重大な関心を持っております。この選挙は、アメリカの沖縄に対する政策にいろいろな影響を持つものでありますし、また、日本といたしまして、沖縄に関心を持ちます場合に、この選挙を重要視しないわけにはいかないのであります。そこで、社会党といたしましては、過日行われました大会の決議に従いまして、沖縄社会党並びに民連の応援を決定いたしました。その一つの方法といたしまして、淺沼書記長を団長といたしまして計八名の議員並びに書記を沖縄に送りまして、一日でもいいから選挙の応援をする、そしてまた、沖縄の現状、政治経済、社会の状態、あるいは、今変化しつつある情勢、そういうものを調査しようということで、向う側に渡航の申請をいたしたのであります。で、少くとも十四日に出発いたしまして、十四日の晩に着いて、十五日、本日一日選挙の応援ができればしたいと思っておったのでありますけれども、ついに、十三日の三時までに回答を得ようといたしましたが、得られない。そして、私どもは渡航を断念せざるを得なくなったのであります。このことはこのことといたしまして、沖縄に日本から渡りますにつきましては、非常にむずかしいのであります。戦後十二年たっておるのであります。もちろん、沖縄は軍政下にありますから、普通の状況とは違うのでありますけれども、しかし、アメリカは民主主義を唱えておる。そして、沖縄における施設は民主的にやっておるんだ、沖縄の施設はりっぱにやっておるんだ、というふうに、よく方々に言っておるのであります。そうでありますならば、私どもが沖縄に渡りますことについて、そんなに厳重にする必要はないであろうし、また、アメリカとしても、それほど自信があるならば、そう軍といたしましても、私どもに窮屈にする必要もないだろうと思うのでありますが、実際は非常に窮屈になっておる、こういう状態であります。特に、私たち社会党の参議院議員の私どもの同僚であります島清君は、沖縄の出身でございますが、この島君さへ向うへ渡れない状態、これはまことに私どもにとって遺憾なことでありますが、こういうことでは、まあ今後いろいろなことで思いやられる点が多いのであります。アメリカも民主主義を唱えておりますのですから、こういう点で、もっと国として配慮すべきことであると、こう思うのでありますが、これは政府として黙って今のままでいいとお考えになっておるとは思わないのでありますが、政府は、こういうような日本国内から沖縄の渡航の問題につきまして、アメリカ政府と交渉をされて、もっと緩和されるようにするつもりはないか、その点をお伺いしたいのであります。
  106. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 出入国の管理は、御承知のように米国の施政権を持っておる立場上、現段階では、なかなかこちらの思うようにならない状態でございますが、しかし、何といたしましても、ここと日本の本国との間の交通というものを、もう少し楽にしてもらうようにということは、絶えず念頭に置いて相談もしておるわけでございまして、だいぶこのごろは手続は簡素化され、迅速化されておる。願い出て許可されるといいますか、渡航の許可に対する日数は相当短縮しておることは事実なんでございますが、その扱う場合に、不許可というようなものもまだ相当残っておる。これが問題だと思うのでありますが、日本と沖縄との間が、できるだけ自由な線で交通のできまするようにすることは、特にわれわれとして、こいねがいたいところでございますので、これに対する努力は、今後もどんどん続けて、もっと簡素化され、もっとそれが楽に出入りのできるようにいたしたいと努力いたしたいと、こう思っております。
  107. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 たとえば、沖縄出身の議員である島清君がアメリカへ行きます場合には、どんどんヴィザもとれるのでありますが、事沖縄に行くとなるというと、一向それがだめだというようなことは、これは日本国民に対しまして非常な侮辱をしておるように私は思うのであります。また、そういうふうなことを感ぜざるを得ないのであります。そういうことについて、特に政府としてはアメリカ側に強く交渉をしていただきたいと思うのであります。  沖縄関係につきましては、なお幾多あるのでございますが、本日はこれにて沖縄関係の問題は終えまして、次に防衛庁長官に対しまして質問をいたしたいと存じます。  私が申し上げるまでもなく、昨年の十月にソ連が第一号の人工衛星を打ち上げ、次いで十一月に第二号の人工衛星を打ち上げました。このことは世界を驚倒さしたのでありますが、これは単にいわゆる宇宙征服という点で一歩を進めたというだけではないのでありまして、もう一つこのことが世界を驚かしましたのは、これによってソ連が大陸間弾道弾ICBMを完成さしたということを世界に証明したということからきておるのであります。その後アメリカにおきましても、何べんかの失敗をやりましたけれども、ICBMはだんだん完成に近づいておるのです。また、それと同時にあるいは、IRBM、あるいはIRBMというようなものも実際に生産されまして、すでにこれが実用化されて各軍隊に配置されつつあるという状況になっておるのであります。このいわゆるロケット兵器、これが漸次完成を見るに至り、さらにこれが大量化されるということになりますれば、従来の戦略あるいは戦術に大きな変化があることは言うまでもありません。これは全世界にわたりまして大きな影響を与えておる。特に防衛の問題には直接大きな影響を与えておるのであります。自衛隊が生まれましたとき、あるいはさかのぼりまして警察予備隊、保安隊、自衛隊、一貫いたしましてとられて参りました防衛方針なり防衛計画というものは、この時代になりますと、当然大きく変化をしなければならぬと思うのでありますが、防衛庁長官はこの時代において防衛庁として現在の防衛計画をどういうふうに変更しようとされるのか、あるいはまた、変更する必要がないとお考えになっているのか、その点をお伺いしたいのであります。
  108. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。昨年の秋のソ連の発射しましたICBMその他人工衛星、これに伴って米国においても各種の中距離ないしは長距離の弾道弾兵器の実験、またはその実用化に向っておるという事実は、お説の通りでございます。このことが世界政治並びに軍事上に与えた影響も非常に大きなものがあるということは、おっしゃる通りだろうと思っております。現にその後の国際間のあらゆる会議において、また、最近の外交関係における交渉において、こういった事態から生じた幾多の問題が現に討議され、交渉され、また、論議されておるという実情でございます。これらの点について一々申し上げる必要はいかがかと存じまするが、そこで御質問の点は、こういった事態が、わが国の国防の基本方針、また整備の計画にどういう影響を及ぼすか、これが変更する必要ありやというような御質問と了解いたします。この点につきましては、わが国の国防の基本方針は、昨年の六月決定したものがあり、また、それに即応した防衛整備目標というものが決定されておるのでございます、これらはこういった事態において、事態の推移に応じて、その実行において、いろいろな点において改善を加え、刷新を加えるという必要は当然あると思います。しかしながら、国防の基本方針は、御承知のようにわが国があくまでも自衛の体制を作り上げる、それについては国力、国情に応じた最少必要限度の防衛の体制を作るのである。これについては、財政事情その他も考慮する、こういったようなことであり、特に対外関係においては、国連憲章の精神をもって平和に維持し、また協調をはかり、それによって世界平和に寄与しようという基本の方針をうたっておるわけでございます。なお、防衛直接の問題としては、国連によっての集団安全保障による防衛というものに寄与することができ得るまでに至る期間においては、日米安全保障条約によって、その日本の防衛力の足らざるを補う、これだけの基本的なものをきめておるわけでございます。この事態は、私は基本方針としてこれを根本的に変えるという今日の事情には、わが国にとってはないと思っております。  次に、これを実行すべく想定いたしまして、現に三十三年度予算においても御審議願っておりまする防衛の整備目標というものでございます。これは申し上げるまでもなく、ある一定の期間、すなわち三十五年ないし三十七年度にわたってわが防衛の骨幹をきめるというような意味において、陸十八万、また海十二万四千、航空機、航空自衛隊の方面でございますが、それを千三百機、こういったものをきめてあるわけです。これは一応の目標でございます。今後の事態においてこれが再検討して、これではどうもいけないという事態が起れば、再検討する必要のあることは、そこに示されておるわけでございます。ただ、それらの問題については、むしろ内容的に質的の増強、また装備の刷新をはかるということ、その目標自体の中に示されておるわけでございます。でありますから、今日この目標を直ちに変更するかということについては、まだ十分な腹案、検討を加えておりませんが、これは各年次計画においてその国力また財政事情、民生安定との関係を顧慮して弾力性を持たしてやろうということが示されておるわけでございます。現実の問題といたしましては、三十三年度予算においてもまた今後も当然でありますが、いわゆる科学の進歩に応じた装備の改善、開発、また、部隊編成においても同様な趣旨においての質的な増強をはかっていって、この時代に応じようという考えで、予算においてもそういった趣旨において必要な経費を計上して御審議をお願いいたしておるわけでございます。大体今日の事態においてわが国の国力、国情に応じてやり得ることは、いわゆる核兵器を装備して、こういった新事態の新科学兵器に対応するという方針はとらない。そのとらないうちにおいても、質的の改善、装備の改善を加え、科学研究開発によって、これらの装備を逐次改善していこう、こういう方針でやっておる次第でございます。
  109. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 三十二年六月の国防会議で決定しました目標といいますか、この計画はそのまま遂行する、多少の修正は加えるが、それを遂行していくということであります。この計画ができましたとき、世界の方は大きく変更しておるのであります。そういたしますと、私は、陸上兵力が十八万になろうが、あるいは保有艦艇が十二万四千トンになろうが、日本の持っております飛行機が千三百機になろうが、それは大部分時代おくれになって、役に立たないものになってしまうのじゃないかというふうに思うのでありますが、それでもなおかつ、この計画を遂行していって、これが時代おくれにならないという、はっきりしたお答えがあるのかどうか。そこを一つ明確にしていただきたい。
  110. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。これらが時代おくれにならないように、この計画を質的に増強していこう、こういう方針でございます。基本的に、これらの装備というものは、核装備というか、原水爆を持った自衛力ではございません。これらは絶対にもう今後は時代おくれで、防衛の目的を達しないというような考え方は、私どもはいたしておりません。すなわち、そういったような新兵器の時代においても通常兵器による、また進歩改善されたる通常兵器による防衛力を持っておる国というのは、今日ヨーロッパの国においても、今のようなミサイル基地を持たない国が多数あるわけであります。多数あると申しますが、相当にあるわけであります。また、アジア諸国その他においても、そういった態度をとっておるので、これは核兵器をもって装備された、またICBMとかそういったような長距離、中距離の弾道兵器を持った国においても、やはり依然として通常兵器というものを併用しておるという体制であります。これは一国が自分のもので全部を守りきれる国というものは、私は非常に少いだろうと思います。わが国のごときは、国力に応じて装備の改善をはかりつつ防衛の体制を作るということは、これは事情やむを得ないことであり、また、それが必要であると思うのでございます。でありますから、通常兵器によって装備されたる自衛力は無意味であるという結論を出すのは、私はそういったことにちゅうちょをするものでございまして最善を尽して一国だけで守れない部分においては、これは集団安全保障、また、現状においては日米安全保障の体制によって足らざるを補っていって安全をはかる、独立を維持する、こういう方向にいくのが、私は今日の状態においてはもうわれわれのとるべき道である、こう思っておる次第でございます。
  111. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまのお答えは、はなはだ抽象的なものでありまして、私が聞こうとしておるところに対するお答えとは受け取れない。私はこういうふうに兵器の進歩が早い、それに対して、今のような自衛隊では、これは実際作って完成してみたところで、これは何にも役に立たないものになるんじゃないかと、こういうことについてお伺いをしたわけであります。たとえば一例を申し上げますと、日本が、日本が現在持っておるより以下の装備を持っておる国とあるいはトラブルを起したという場合ならば、そういうことも言えるでありましょう。しかしながら、東洋における情勢から見まして、あるいは世界情勢から見まして、そういうような局地的な戦争、そういうものが、今のところ起ろうとは思われません。むしろ、危険は、東西両陣営の大国間の緊張から来る戦争の危険の方が大きいのであります。そういう場合日本が巻き込まれるという危険もあるのであります。そのときには、これは日本におりますアメリカ軍、あるいはアメリカ軍が仮想敵としておりますソ連なり中国なり、いわゆる共産圏の軍隊もそれぞれ核兵器を使うことになるでありましょう。そういうときに一体日本に対して、IRBMが射ち込まれる、あるいはまた、外国の潜水艦が近くに出没いたしまして、その潜水艦がIRBMをもって日本にあるアメリカ軍の基地を爆撃するというようなときに当りまして、一体これに対していかなる防衛ができるのか。日本の陸上自衛隊、あるいは海上自衛隊、あるいは航空自衛隊はこれをどうして防ぎ得るのか、そういうような点について具体的にお答えを願いたいのであります。
  112. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。将来起るべき不祥なる戦争の様相、範囲、規模、また、これに用いるところの兵器等がどうであるかということについては、これはいろいろ意見があるのであります。ただいま岡田委員のまあ御観測になるところは、日本に向ってもそういうような長距離大陸間弾道弾のようなものが来るというような場合も想定される。しかし、これはいろいろな見解があるわけでございまして、必ずしもこういったような殺人的な、人類を滅亡させるような殺傷兵器を全面的に使って、今後の戦争があるかどうかということに際しては、これは希望の分子が入るかもしれませんが、また、われわれはそうしなければならぬのでありますが、そういったことは、お互いに勝ったものも負けたものも共倒れで、いわゆるその目的を達成できないということに、世界政治家の反省があるということは、今日識者から、また一般国民からも言われておるところでございます。従ってそういった兵器が来るから、それの防備をどうするかという問題は、これはその国の国力、国情が可能であり……アメリカはそういう態度をとっておるわけでございます。いずれの国家に対しましても、そういった場合に対処し得るような防衛力を持っていくということは非常に困難である。一方こういったような手詰まり、起るであろういわゆる全面的な核兵器、原水爆戦争というだけが、将来の戦争であるかということになれば、ここにはいろいろな見解があり、特に米ソにおいても従来の陸あるいはその他の装備されたるところの軍隊というものが必要である、いわゆるあらゆる様相がここに起り得る可能性ありというのが、私は軍事専門家においても多く言われているところでございます。そこで、そういった時代において、わが国のこういった防衛力では、何ら価値がないというところに即断することは、私は防衛の責任ある政府、また、国民も同感であろうと思いますが、それは非常に危険なことだと思う。しかしながら、これで十分だとは申し上げられないのでありますから、先ほど申し上げましたように、防衛体制というものを一種の集団保障とか、あるいは日米安全保障体制というものによって補って、国の安全をはかるという方向に今日は向いているわけでございまして、これは大きないろいろな見方があるところでございまして、私どもはそういったような見方をして、今日最小限度必要な自衛の体制だけは整えていきたい、こう考えている次第でございます。
  113. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまの御答弁によりますると、これは今後起るべき戦争の様相の問題に触れられている。ただいまの津島防衛庁長官の御意見は、これはまあアメリカのキッシンジャーなんかの言ういわゆる限定核戦争論に類するものであろうと思うのであります。限定核戦争論につきましては、まあ、いろいろ批判もございますが、あの議論の根幹をなすものは、アメリカが原水爆をソ連に対して大量に持ち、また、アメリカの戦略空軍がソ連に対してすぐれており、さらにまた、アメリカがソ連に対しまして包囲の態勢をとっている、アメリカの軍事的優位性が大きいというところから、これを前提として組み立てられた議論であります。しかるに、ICBMがソ連において完成されまして以来、これは大きく動揺いたしております。そうして今日、ソ連はその包囲にもかかわりませず、アメリカの深層部に対してICBMを射ち込むことのできる能力を持っている。これは今後ますます大きくなるでありましょう。そうすると、アメリカの軍事的優位性、そうしてアメリカの力によって戦争を抑制していくということは、もはや可能ではない。私はそういう時代になって参りますと、この限定核戦争論というものも、根幹からくずれてくる危険は、あるいはこれが大きな全面的な戦争になる、核兵器を十分に使う、思うぞんぶんに使って射ち合う戦争になるという危険を感ぜざるを得ない、そうならないかもしれないけれども、そうなる危険があるということも指摘しなければならぬのであります。そういう時代におきまして、今あなた方の言われているような防衛体制というものは、これは何ら力を持たないことは、すでに御承知だろうと思うのでありますが、ジョージ・ケナンも昨年の冬イギリスにおいてラジオ放送を行いまして、「ロシア、西方、原子力」のうちにおきましても、従来の軍備というものがその価値を失いつつある、そうしてその機能を変じつつある、もうそういうものを持つ必要はないのだ。これは国内の治安維持用にでもしておればいいのだというような見解を表明しているのであります。すでにこういうふうな新たなる見解も生まれてきている。世界は急速に大きく変化しつつあるのでありますが、それをただ、今のようなことで、集団安全保障に頼っていけばいいのだ、その集団安全保障に頼るということは、同時に原子力の面におきましては、いわゆる集団防衛という問題でございます。日本の自衛隊というものは、前に私がどっかの委員会で御質問申し上げましたときには、局地戦争あるいは国内治安の維持のためのものであって、こういう大きな戦争に役に立つものではないのだという意味の御返事をいただいたのでありますが、集団安全保障のもとにおける集団防衛ということになって参りますと、単にそれだけの意義でなく、別の意義を持つようになると思うのでありますが、日本の自衛隊は、こういう全面的な核戦争の起るような場合においては、どういうような位置に置かれるのかということ、それからまた、この集団防衛というときにおいて、一体日本の自衛隊というものは、いかなる機構の中に繰り入れられていくのかという、この二点をまずお伺いしたいのであります。
  114. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お尋ねの初めの部分は、ICBM等が実用段階に入る場合、これが活用される戦争は必至という、言葉はお使いにならなかったが、必ず起るだろう、全面的核戦争、こういう御趣旨だったかと思います。これはそういったような想像というか、観測をする人も私はあることを承知しております。しかし、今日の世界の大勢において、われわれの念願するところは、現にまた軍縮会議においても、いわゆる大気圏外宇宙兵器というものは、他の軍縮と切り離してもこれを利用しない、使用しないというような空気は、これは世界の一大意見のようでございますが、しかし、これがなるかならざるかは、今後の問題でございますから、それだけに頼るということは、はなはだ危険であろうかと思います。で、これらは意見の、見方の違いであると思いますので、これ以上申し上げることは差し控えます。で、わが国の想定する戦争の様相は何であるか。いろいろな場合があると思います。しかし、局地戦争もあり得るだろう、全面的核戦争の公算よりも局地戦争の方が多いというような見方が、ずいぶんあるわけでございます。そういった場合にも対処して、わが国だけを守るのである、こういう観念をもって、いわゆる自衛の体制である、その意味においては、かりに集団安全保障の体制が何らかの形式でできるといたしましても、わが国の自衛隊としての、これに参加し得るその範囲なり程度というものは、おのずから憲法上制約があるものと思っております。すなわち、わが国が海外の侵略に応じて、これを援助するといったような海外派兵といったような問題は、現在においては不可能であろうと思います。そういった意味において、自衛隊は外国からの侵略、わが国の領土に対する。これに対してこれを未然に防ぎ、また侵略があった場合にはこれを防止する、撃退するというのが任務でございます。しかしながら、国際連合の一員である、加盟国であるわが国といたしましては、万一不正の侵略を行う国があれば、連合憲章の精神、並びにその規定するところに従って、これに対する種々の援助があるということも期待できるわけです。そういった点において、われわれの置かれた地位は、憲法上の関係からいって、いわゆる攻守同盟式な軍事同盟は、私は、これは私の解釈ですが、現状においては加盟することは困難ではないかと思います。いわゆる実力行使をするような攻守同盟というようなものでございます。そういった意味において、私らの今の自衛隊の、これは外国から侵略があった場合、わが国の可能な限度において、最小限度の実力をもって、これに処するというために、これだけの防衛の整備目標を作って、これを全幅に活用するということでわが国の防衛をする、こういう建前に相なっておるわけでございます。
  115. 鈴木強

    ○鈴木強君 ちょっと関連して。津島長官は軍備の必要性をとくとくとして説いておるのでありますが、私は非常に矛盾を感じ、また、国民として脅威を感じるのは、少くとも十三年前に日本が不幸な敗戦を喫して、多数の同胞が命を失い、再び私たちがああいう悲惨な戦争をやらないということで憲法を作ったのじゃないですか。その憲法の九条に、明らかに一切の軍備を放棄して、戦力を持たぬということを書いてある。にもかかわらず、岡田委員がおっしゃっているように、予備隊だ保安隊だ、自衛隊だといって、今日、陸海空軍をお持ちになっているのですが、私は今論議が、何かしら自衛隊というものが、もう既成事実のようになってしまっておるのですが、もっと本質的に考えてみると、憲法違反ということが明らかにあるわけです。私はそういう大きな問題を、何かしらもう常識的にして、国民をごまかして千五百億もお金を使っておる。あなたは白髪の老人で、こういう軍備を拡張しておっても、その直接の戦力として動員されることはないと思うのだが、迷惑するのは、若い国民ですよ、これからの。大体、今度の戦争がああいう日本が間違った行為をやったのですが、土台はやはり軍備を持っておったからじゃないですか。それは自衛のための軍備を持ったとか、あるいは戦力なき軍備とか、そんなことを言って国民を十三年間ごまかして、そうして陸海空軍をれっきとしたものを持っておる。こういうことを考えるときに、これを論議するだけでも、何かしらばかばかしい気がするのですよ、率直に言って。それをあなたはどう考えているのか知らぬが、あなたは防衛庁長官を動めて、そうして今一生懸命になって国民から非難されることをやっているのだが、あなたは矛盾を感じませんか。防衛庁長官なんかやめて、こんな間違った憲法に違反する政策なんか、あなたやめた方がいいじゃないですか。そういう矛盾を感じませんか。
  116. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 私個人のことはさておいて、憲法違反であるという、今の自衛隊が憲法違反であるかどうかという問題につきましては国会においてもしばしば、また相当の期間にわたって論議されたことでございます。私の了解しているところによれば、一国が独立を維持し、平和な社会を作っていこうというために、万一の場合に自衛権というものを持っておるということは、これは憲法の規定に違反しない当然の国家の権利である。こういう意味でこの問題が論議されて、そうして自衛権というものは、これは国あればすなわち自衛権あり、戦争というものは、国の種々の形態がございましょうが、外国から侵略を受けた場合に、これを自分で守っていくということは、当然の権利であるということが、これは認められておって、その自衛をどうするかというものとして、自衛隊法も法律を制定され、それに応じて最小限度のものをやろう、こういう趣旨で今日まできたと了解しております。その基本問題については、私は何ら疑いを持っておりません。従って、なるべく財政事情を考慮して国民の負担を、民主安定その他の施策と関連しつつ、考慮しつつ、ここに自衛上必要なだけの態勢を整えていくというのが、これは独立したる国家として必要じゃないかということを私は確信いたすのでございます。その意味において、今日私は職務においても、このことを忠実に、また、その趣旨に沿うて努力して参っておる次第でござ  います。
  117. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 鈴木君、簡単に、御意見の開陳はなるべく短かく……。
  118. 鈴木強

    ○鈴木強君 別に私は討論をするつもりじゃない、質問をしている。あなたは憲法の第九条の論議をやったのですが、ここに明らかに「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」と書いてある。今のそれでは自衛隊というのは、これは戦力じゃないという解釈ですか。私は少くとも日本の国防政策というのが、大きく変ってきた歴史的な経過を考えてみればわかると思うのです。朝鮮戦争が勃発して以来、アメリカの対日政策というものは変ってきているじゃないですか。おそらく、あなた自体も、自民党の諸君も、ほんとうの心の底には、こんな軍備は持ちたくないという気持を持っていると思います。向うから押しつけられて、千五百億も二千億もお金を使って、日本が軍備を持つ力はありませんよ。それをアメリカから押しつけられて向うに反対できないものだから、不精々々やつているのが、現在の気持だと思いますが、そういった国民をごまかす解釈をし、正当化しようとするところに間違いがある。私は国民全体が決して今のような自衛隊を持つことを欲してないし、第九条の解釈も、自民党の諸君が統一した解釈をきめて、これを押し通しているということになるじゃないですか。ほんとうのあなたの気持というものの中には、私は日本国民であるから、ああいう悲惨な戦争の終った今日、私はこの軍備を持とうということはだれも思っていないと思う。押しつけられているんじゃないんですか。それを皆さん方はやっておるというだけじゃないでしょうか。その点はどうでございますか。
  119. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。  ただいまの御質問は、先ほど私がお答えしたことで、一つどうぞ御了承を願いたいと存じます。
  120. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先ほどお伺いいたしましたところ、日本の憲法の規定に従いまして、いわゆる集団防衛の機構、すわなちSEATOとかそういうものに入らないんだ、ということは明白なのであります。    〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕  しかしながら、それならば日本の自衛隊は、一体日本におけるアメリカ軍と独立して純粋に日本の、もし外国から事が起されました場合に、防衛に従い、あるいは国内治安の維持のために限られるのかどうか、まずそこをお伺いしたい。
  121. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。  日米安保条約に関する限りにおいては、日本に、もし外国からの侵略行為があった場合は、駐留米軍はこれの防衛に寄与する、協力する、こういった趣旨のことが第一条にうたわれておるわけであります。一方、もしアメリカが何らかの事情によって外国からの攻撃を受ける、侵略を受けるといった事態があった場合に、わが自衛隊は、これの防御というか排撃に寄与するとか、協力するという規定はないのでございます。その意味においては、日米安保条約は、日本が侵略を受けた場合に、アメリカはこれに対して協力してこれに対処しよう、こういうことに相なっておるわけでございまして、ただ日本の防衛に関する限りにおいての約定であると、こういうように解釈いたしております。
  122. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それは言葉だけのことでありまして、私はそう解釈しないのでありますが、そこでお伺いしたいのであります。アメリカ日本におる、そうして日本を守る、日本に対して攻撃があった場合には、日本アメリカが防衛するんだという今のお答えでございますが、そのときに一体日本の自衛隊というものは、日本におって日本を守るといわれるアメリカ軍と、どういう軍事的関係に置かれるのか。それをお伺いしたい。
  123. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。  これは行政協定二十四条に、日本が侵略を受けるといったような場合、またはその脅威ある場合においては、日米両国政府間において、あるいは共同措置をとり、その他安保条約の第一条ですか、それの規定を実行するために協議をすると書いてある。そこでこういった事態が起ったならば、日米両国間でどういう措置をとるか、その中には共同措置をとるということも含めて協議をする、その目的は安保条約第一条の目的を達成するようなために協議をする、こういうことに相なっております。こういった事態にどういう協議の内容になるということは、これはもう全然ここに想定いたしておりません。あらゆる場合を考える必要があると思いますが、あらかじめ、こういうものについての協議はできておりません。そういう事態でございます。
  124. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 行政協定二十四条を引き合いに出されまして、そのときにおけるアメリカ軍と日本軍の関係に言及されたわけでございます。ところが、行政協定二十四条には、日本に対する侵略が起ったときなんということは一つも書いてないのであります。「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には」、云々となっておるのであります。日本区域というのは一体何かということ、敵対行為というのは単に侵略行為かどうか、これは日本に対する侵略ではなくて、米ソの関係が急迫をいたしまして、そのために戦争が起り、全世界が戦争になった場合にも、これは敵対行為であります。従い、まして、行政協定二十四条によれば、もしこの際に共同措置をとることをこれによって約束せしめられるとするならば、これはいかなる場合にも自衛隊は使われるということになる。つまりさっき言われたところとはまるで違うんです。この点はどうお考えになりますか。
  125. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) これは日本及び日本周辺という意味でございます。それから敵対行為というのは、これは安保条約そのものから出てきておる行政協定でございます。安保条約一条以外の場合は、これは協議の目的にならぬと私は解釈いたします。
  126. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 日本及び日本周辺とお考えになっておるのでありますが、実はこの問題につきまして、行政協定ができましたときに、行政協定二十四冬にある日本区域の解釈に対しまして、どう当局側の見解が変ったかということを調べてみました。それによりますと、一九五二年二月二十八日外務省は記者会見において次のごとき説明を行なった。「日本区域については、その時の状態に応じて両国間で協議することにした、しかしこの問題は極東における国際の平和と安全の維持に寄与するという米軍の駐留目的と関連してしる、」こういう当局の話があった。その後国会においても種々討議されておるのでありますが、これは非常に広い意味に解釈される。今申し上げたように伸縮自在のものだ。そういたしますと、これは全面的戦争が起り、あるいはこれが東洋に波及した場合にも、日本アメリカと共同措置をとらなければならぬという事態に置かれることは明瞭でありまして、このときはもう日本軍は、たとえ憲法上にそういうような規定があって、今日SEATOなりあるいは今後北太平洋条約というものができて、それに入らないといたしましても、なおかつアメリカと共同の作戦をとらざるを得ないような運命に置かれておることは明白であります。しかも今日の自衛隊はそういう目的のもとに計画が進められておる。アメリカ軍が相互防衛援助条約に基きまして日本に武器を供与し、アメリカ軍事顧問団を置き、そうしてまたアメリカにたくさんの日本の自衛隊の留学生を入れてやっておるということは、これは当然、アメリカ側から見れば、アメリカ世界戦略あるいはまたアメリカの対ソ政策に対しまして、日本軍を利用しようとしておることは明瞭なんです。だから私は、自衛隊が単に局限された戦争つまり局地戦争であるとか、あるいは国内の治安の維持のためだとか、それが主だ、われわれはアメリカ軍に守ってもらうんだというようなことは、これらの行政協定二十四条から見ただけでも、うそっぱちである、こう考えざるを得ないのです。  そこでそういうような観点から見まして、今日の自衛隊というものが拡張されていくその計画というものも、必然的に、これはアメリカの方から計画の変更を要求されてくるであろう、というふうにも見られるのでありますし、また日本におきましても、アメリカが対ソ戦略の上においてアメリカの防衛体制を変更していく際に、この日本の自衛隊というものも、それらと密接な関係にあるのでありますから、従って向う側からその変更を要求すると同時に、日本側もそれに応ずるように計画を変更していく、装備計画も変更していく、というふうに私には考えられるのですが、そういう観点から今後日本の自衛隊の計画を変更して、新たなる装備、新たなる編成、そういうものをおとりになるつもりであるかどうかお伺いしたい。
  127. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答え申し上げます。  前段のことにつきましては、一言補足的の答弁をいたします。自衛隊が行動をする場合、すなわちいろいろな種類のものがございます。おもな今の御質問の点はいわゆる防衛出動という部類に属するものであります。災害出動とか治安出動、防衛出動、いろいろなものがございます。これは自衛隊法にはっきり書かれておるわけでございます。すなわち外部からの武力攻撃があった場合に、わが国を防衛するために必要あると認めた場合には、国会の承認を得て、自衛隊というものは出動するのである。国会の承認を得ることになっている。しかもその目的は、外部からの武力攻撃、侵略という言葉は、この場合は使っておりませんが、法律用語として武力攻撃があった場合に、わが国を防衛するために必要があったならば、防衛出動するために国会の承認を得て初めて出動する、こういう規定ができているわけであります。自衛隊に関する限りは、この自衛隊法というものは、これは絶対に守らるべきものでございます。従って、行政協定においてどういうことを協議するかということは、これは共同措置をとるとか何とかということを協議をするのでありましょう。しかしながら、いかなる場合においても、特に防衛のために出動する——いろいろ災害出動等はございまするが、それは別といたしまして——こういう法制になっておるわけでございまして、そのわが国が武力攻撃を受けたのがどの地域であるかということは、そういった場合に、具体的に考えられるべき問題だと思うのでございます。  第二の点は、わが国の自衛隊の整備目標とか、今後のいろいろな整備編成、そういった面において、アメリカから強要されてこれをやるのでないかというような点であります。(岡田宗司君、「強要とは申しません」と述ぶ)まあ向うの要望に応じてですか、言葉はどうぞ一つごかんべんを願いたいと思うのですが、そういった趣旨によって、これがだんだん装備が変り、また、編成も変るというようなことでないかという御質問であったと拝聴するのでございます。その点につきましては、岸総理からも申しまするように、防衛の整備計画というものは、日本で国力、国情に応じて、必要と認める最小限度のものを計画していくのである。こういう趣旨は、言葉はどうかと思いますが、自主的にこういう計画をするのであるという線は、これは当然私は堅持していかなくちゃならぬと思っておる次第でございます。
  128. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまのお話ですと、これはアメリカからの要求に基くものでないように受け取れるのでありますけれども、しかし、日本の自衛隊の装備の半分以上は、これはアメリカからのいろいろな形の供与ではないですか。特に航空機の場合しかり、あるいはまた艦船の場合におきましてもそういう事態が起っておる。こう考えてみますと、そう簡単にあなたの言うことをまともに受けられないのですけれども……。どうもアメリカは、ただ武器が余ったから日本にくれてやるという慈悲心でやっているのではない。はっきり申し上げれば、やはりアメリカの対ソ戦略からくるいわゆる集団防衛行動の一部として日本の自衛隊の計画を進めておる。日本もそれに応じまして、それに協力をして、国内向きには、これは日本のためだと放送しておやりになっておるとしか受け取れないのであります。  それはそれといたしまして、次にお伺いいたしたいのは、現在自衛隊中の陸上自衛隊は十六万であります、三十三年度予算にこれを一万ふやして十七万にする、こういうふうになっております。また航空機、艦船もふえてくるのでありますが、特に陸上自衛隊の増強につきましては、これは先の臨時国会におきましても、私は問題にしたのでありますが、その後、自民党の内部の国防部会におきましても問題があったようでございますが、あなたがこの計画を実施するために、大蔵省予算を要求されました際にも、そこでこの計画を今日延ばすべきであるという意見が行われて、最後まで決定できなかった。それをあなたは大蔵省に対して、これはアメリカとの関係でそういう計画を進めておる、約束をしておるのであるから、従って、これはぜひ認めてもらいたいというようなことで、まあことしの一万増強ができた、こういうことであったようでございます。そこでお伺いたしたいのですが、まあ陸軍ですね、この陸上部隊というものは、今日各国でどんどんへずっておるのです。ソ連が何十万へずったとか何とかという報道は、あなたも聞いておられる。あるいはまたアメリカも減しております。イギリスのごときは、これを大幅に減らして、徴兵制度はやめてしまおうかというようなことを、今度の国防白書で明らかにしております。こういうふうに、陸軍というものは、今日の戦争の武器の発達の場合において、旧来とは非常に変ったものになってきている。それをろくに装備もない、そうしてまた実際には原子砲一発食うと吹っ飛んでしまうような陸軍を、いまさらたくさん増強しても、これはどぶに金を捨てるようなものだと私どもは考えるのでありますが、何ゆえにこの一万の増強をやるのであるか。また、来年度いわゆる防衛計画によって十八万にするために、これをさらに一万ふやすおつもりであるのか、あるいはそれをおやめになるおつもりであるのか、そこのところを明らかにしていただきたい。
  129. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 来年度における防衛庁予算の中の陸上一万の増勢に関して、その必要は、何ゆえこういうものをやるかという質問であり、また、来年度においてさらに一万の増勢を予定しているか、こういうことであったと思います。一万の増勢は、いろんな観点から、私どもはこれは必要だという結論に達したわけでございます。他の十八万の目標のための一万を、明年度これをさらに要求するかという問題は、決定いたしておりません。それじや、やめるかということについては、まだそういったような方針は、具体的な予算の編成時に当って考慮するものと思って、まだきまってないというのが適当だろうと思います。  さて、三十三年度における一万増勢の必要いかんということでございます。仰せのごとく、英国においても陸上部隊の縮減を逐次行なっております。しかし、一昨年以来のあの計画、国防白書の計画を見ましても、予定した通りにいかないで、三十万に減らすものが、なお今日六十万の陸上を持っているということで、予定の通りいっていないようでありますが、いずれにしましても、英米においても少数なる陸上兵数を減らしている実情があるのであります。それについては、明瞭なる計数は得られませんが、いろんな資料で推測いたしますと、二回、三回にわたって逐次陸上兵力の縮減を行なっております。そういった国は、たしかに陸上部隊の数を減らして行くという態勢にあることは、もう仰せの通りであります。しかしながら、これをこういったような核兵器、弾道弾、ミサイル、核弾道、これによって部隊の編成が非常に変ってきているわけでございます。そういった国においては、むしろそのミサイル兵器によって代替していくという観念でございまして、軍事力、国防力を減らそうという、いわゆる軍縮的な意味というものが直接に現われたというのではございません。いわゆる一般軍縮というものが、今日まだ討議の段階にあるという状態でありまするが、とにかくも、こういったような陸上兵員数の減少を見ております。しかしながら、その他の通常兵器を持った国が、ミサイル兵器に転換できないで、ここに大きく陸上兵員の数を削減、縮減をしつつあるかというと、これは資料においてはなはだ欠けているのでございまするがございます。日本の場合におきましては、これは陸上自衛隊発足以来、まだわずかな年所でございまして、そうして日本の国土、その地位、また防衛すべき重要な施設、人口の密集した状態、またいろんな状態を勘案いたしまして、この防衛整備の目標は十八万が最小限度のものだろうという決定を見たわけでございます。大体の観念としましては、北海道、九州、特に中部において、今の配置の異常な希薄、手薄である所、ここに置くことが、いろんな、重要な産業の防備、人口のいろいろな観点から必要ではないか、こういった観点からいって、六管区四混成師団、こういうような体制が必要であろうという結果になって、今回のこの一万増勢は、まず第四番目の混成団、これは大体五千人余のものであります。その他の部隊は、いわゆる機械化、科学の進歩に即応したところのそういったような部隊で大体四四%というものはこういった機械力によるもの、    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕  また通信部隊であるとか、そういうものでありまして、いわゆる鉄砲かついで歩く歩兵だというような観念は、もう全然われわれはとっておらぬわけでございまして、この程度のものはこの防衛の根幹として必要である。こういうような意味において今回はその増加をお願いする、こういうふうになったわけでございます。
  130. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまのお話ですと、一万の必要はある、来年度についてはまだきまっておらぬので検討する、こういう話であります。各国の例をお引きになりましてほかには核兵器、あるいはGMあるいはBMとかいうものができて、それで陸軍を減らしても国防力においては低下しないと、こういうお話であります。しかし私どもつまりそういうこともあろうけれども、しかし陸軍というものの価値が変ったから減らされたのだとまた見ざるを得ない。これは私は、新しい兵器の発達とともに当然起ることであって、日本でも十分考えなければ、こんなものはいくら使っても無駄であります。原子砲一発で消えてしまうようなものを、これをたくさん作ることは何ら意義がない。しかも今のお話ですと、まるでその一つの混成団を中部地方に配置して、電源地帯を守るとか産業施設を守るとか、何か戦争のためでなくて、何か国内の治安が撹乱されて国内において暴動か何かが起って、そういうようなことをするのを目的とされるようなことを言っておるのであります。これははなはだおもしろからざることでございます。それでこの点についてはいずれ追及いたしますが、ただいま時間がないので進みまして、次の点についてお伺いしたい。  今日日本の航空自衛隊の中心の勢力は、御承知のようにF86Fであります。これはアメリカからも供与を受け、また日本でも作っておるわけでありまして、ところが新聞の伝えるところによりますと、なかなかこれが乗りこなせない。今の兵員ではとうてい足らない。つまり飛行機の方が余ってあくびをしておる。しかも操縦士はなかなかこれが上手に操縦できないで、そこらへ落っこって死んでおるという事態なんです。しかもF86Fはアメリカにおいてもすでに時代おくれになっておる。おそらく日本におきましても、今後昭和三十五年以降においては、新しい機種の生産に変っていくというふうに言われておるのでありますが、これはもうすでに時代おくれなんです。もしF86Fよりもさらにすぐれた戦闘機を持っておる国がありますならば、あるいは爆撃機にいたしましても、より高度の所を飛んでくる非常に早いジェット爆撃機がありますならば、これは役に立たないことは、私が指摘するまでもない。そのために新機種を決定されるわけでありますが、こういうF86Fのごときすでにアメリカにおいて時代おくれになり、また今後数年後にはさらに時代おくれになるものを巨額の費用を投じてなお生産を続けるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  131. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 航空機のうち御質問の点は、戦闘機の問題であると思いますが、御承知のようにわが国の現在の戦闘機はF86Fを国産化して今生産の過程にある。三十五年三月までこの生産を続ける予定でございます。なお数は三百機の計画で明後年においてこの生産が完了するという状態でございます。この飛行機の何というか性能に関してお話もありましたように、その後新しい機種の性能のすぐれたものがだんだん出てきておる、ということも事実でございます。しかしながらF86Fという飛行機が全然無用であるとか、非常に性能に欠けるということも一がいに申せないのでございます。これはほかの国においても、もちろん財政の都合もありましよう、豪州のごときもやはりF86Fを採用して、今その装備の改善をはかっておる、こういう状態であります。で、この点につきましては高度の上昇のあれが一万三千メートルぐらいでございます。それ以上の高度には上昇能力がない、というところにやや欠陥を持っているわけでございます。この点については装備によってこれを補助し、補完していくということができるので、ほかの国においてもそれをやっているわけで、サイドワインダーといったようなものを利用することによって、非常な高能率になるということによって、私どもはこれを何とか装備したいというので、まず三十三年度においても若干のこのサイドワインダーを有償で買い取りまして、この実験を試みてこの性能を向上するということで、十分これは役に立つものだと思っております。  なおこのパイロットの関係で、多少余剰があるのじゃないかということでございます。このジェット・パイロットというか、これは日本でも初めてでございます。どうも三年ばかりの訓練、熟練が要るわけでございます。航空自衛隊発足以来まあ三年でございまして、この操縦の訓練はなかなか苦労をいたしておりまして、それがために非常にまあ事故を起すこともございます。最近は非常にその事故が減って、訓練の熟達した者が多くなったということでございまして、なお一そうこれは勉強いたしたいと思います。  そこで御質問の中にありましたが、今後の戦闘機のいわゆる新機種と申しておりますが、これについての問題も御質問の中にあったように承わるのであります。で、その後各種の新戦闘機があるわけでございますが、まだ実験の段階であり、あるいはまたこれが木型の段階であり、いろいろな点においてそうたくさん、特にわが国に向くような新戦闘機の新しいものが、この性能のいいものはそう数はないものでございます。しかし私どもは日本の国情というものを十分考慮し、あらゆる条件、滑走路の長さ、また性能は当然でありますが、整備の関係、補給の関係、その他を考慮いたしまして、よりすぐれたる性能の飛行機を選定をしたいというので、昨年来あらゆる角度から検討をいたしております。これは再来年三月に終了いたしますその現在の機種にかわるべき新機種を選択してやりたい、こういう次第で努力いたしているわけでございます。まだ最終的の結果をみておりませんが、そういったような各種の条件で最も適当なものを選定する考えでございます。
  132. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 新機種の問題についてはずいぶんいろいろなうわさもある。アメリカの飛行機会社が日本国内の飛行機会社と結んでだいぶせり合いをやっている。そうしていろいろなうわさも聞いているのであります。問題となっているのは、ノースアメリカンのF1〇〇D、あるいはロッキードのF104A、グラマンのF11F—1F、ノースロップのN156等があるわけでありますが、新聞で伝えるところによりますると、グラマンのF11F—1Fが大体決定したようにいわれているのであります。内定したようにいわれているのでありますが、果してそうであるかどうかこれらの四機種のうちあなたが見たところでは、どれが一番性能として、日本の自衛隊に採用するならば、適しているとお考えになっているのか。その点明らかにしていただきたいと思います。
  133. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 新聞等において、すでに新機種の選定は内定と申しますか、大体きまったのではなかろうかというような報道は私も見受けました。実際問題といたしましては、まだこれを決定するということには至っていないわけでございます。しかしながらなるべく早く決定いたしたいという考えを持っております。これは、国防会議に付議さるべきものでございまして、それに必要なる資料、利害関係、一長一短あるところをどうこれをさばくかといういろいろな問題がございます。私個人には、どれがいいかというお話でございましたが、まだそれの資料の全部を集めたものを完全に検討いたしておりません。従って、これらの資料について綿密に検討した上で、最も国家にとって、また、防空上最もいいと認められるものを一つ選定してこれを国防会議に付議したい、こういうふうに存念しております。
  134. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは国防会議において最後的に決定されるということでありますが、おそらく国防会議は近く開かれるだろうと私は予想しておる、なぜならこの新機種の決定の問題もあるけれども、それよりももっと大きな防衛計画全体の問題、防衛体制全体の問題を論議しなければならぬ事態にきておると思うのであります。それは過日マニラでSEATOの会議が開かれました、ここで、アメリカの東洋における戦略等がいろいろ論議されまして、アメリカ一つの何か考え方をまとめて帰ったであろうと思うのであります。このことは、おそらく今後、今月の末に開かれるであろう日米安保会議においてきっと議論されるものと、ある新聞はすでにそれを伝えておるのでありますが、そうなって参りますれば、国防会議は、日本の防衛計画全体を再検討しなければならぬ事態になると思うが、国防会議は一体果していつごろ開かれるのか、そのときにあなたが提出しようとしておる議題は何か、その点をお伺いしたい。
  135. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 国防会議は近く開かれるだろうということで、その議題は何かということでございます。もう一つは、SEATOの会議があるからこれがまたいろいろな問題の点になるのではないかということにもお触れになったように思います。国防会議は一月中旬に開かれまして、そのときは新機種の選定に関して必要なる資料を報告し、中間的な報告をしたわけであります。さらに検討を加えた上、国防会議を開こうと、こういうことで一月の中旬の会議は終ったわけでございます。従って、この会議を適当な機会に開くべく、まあ特に今申しました新機種のごときもその必要があると思います。それ以外の問題で、国防会議を要求し、また、提案する問題がありやということでございますが、さしあたりは今すぐ出す必要があるような迫った問題はございませんで、それらの問題があるとすれば、もう少し十分な、慎重な検討を加えたいと思います。SEATO関係情勢がどうであるかということも、これは重大な関心を持つべきことでありますが、私としては、この問題に関連しての国防会議の議題を想定するという段階には至っておりませんです。
  136. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今月の末に、日米安保委員会が開かれるということは事実でありますか。
  137. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) これは、外務大臣が議長役を勤めておりまして、アメリカ委員側とよく話し合って、いつ開くか、あるいは議題をどうするかということを打ち合せ、また、私にも相談をかけられるわけでございます。近く日米安保委員会を開くということは聞いております。しかし、議題を何にするかということについては、まだ何らの打ち合せをいたしておりません。会議の日取りについては、おそらく今月内というくらいのところにきまるだろうと想像いたしております。そういったような状態でございます。
  138. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、海上自衛隊の問題についてお伺いしたいのでありますが、最近の新しい情勢のもとにおいて海上自衛隊のあり方が変ってきたんじゃないかと思われるのであります。これは、まだあなた方の方で公式に発表はしておらぬのでありますけれども、前は、日本に予想せられるところの物資を運ぶ船団を護送するのが主たる任務である、そうしてまた、そういうふうに艦種等も選ばれてきた、また、訓練も行われてきたと聞いておるのでありますが、そうでありますか、まずその点をお伺いしたい。
  139. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 海上自衛隊の任務は、外航内航の船団護衛ということが非常に重大な任務でございます。なお、それに関連いたしまして、対潜哨戒をするとか、いろいろな任務がこれに伴って行われるわけであります。なおまた、港湾の防衛、さらにまた、航行の危険を除くために掃海する、機雷の敷設、投下に対して、これを除去していわゆる沿岸の航行を安全にして日本経済国民生活の安定をはかる、こういったのが主要な任務でございまして、海上自衛隊はいわゆる港湾防衛、それから船団護衛、外航内航並びに掃海といった部面が主要な任務としてこれに適応すべく艦種を選んで一定の艦船を整備していこう、こういう方針でございます。この基本方針は従来と変っておるわけではござませんです。
  140. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますと、本年の予算においてP2V等が非常にふやされることになっておる、これはアメリカからも若干供与されるけれども、今後日本におきまして、これが生産されていくということになっておるんでありますが、このP2Vをふやしていくということには、従来の方針と変ったものが含まれておるのではないかというふうに想定される。それは何かというと、潜水艦に対する警戒ということに主眼が置かれてきたのではないか、これはアメリカがソ連の潜水艦が漸次増強され、しかもその性能が非常によくなり、あるいは原子力潜水艦もでき、また、それがミサイルを持つようになってきたということに基いて潜水艦に対する警戒を厳重にする、日本の海上自衛隊もその方針のもとに再編成されていく過程にこのP2Vをたくさん作る、そうしてそれを海上自衛力の艦船でない方を主にしていくということになったように思うのでありますが、やはりそういう点は変化しつつあるのかどうか、それをお伺いしたいんであります。
  141. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) P2Vというものは船団護衛の上においても、また、沿岸の防御においても非常に効果的な航空機である、海上自衛隊としてはこれを整備する、装備するということは沿岸防衛、船団護衛の上においても必要であります。その意味において、特にこの方針が変ったからというような趣旨ではなくて、これはいわゆる海上自衛隊の編成を整備していくためには、これは必要なものであるんです。でこれが一番有効なのは、あるいは潜航艇を上から見つけるといったような機能が特にすぐれるということはございましょう。しかしながら、この海上防衛の関係からいけば、こういったものは空中から協力して防衛に当るというためには最も必要な機能を持ったものである、こういう趣旨でありまして、何か非常に大きな作戦の変更であるかというような趣旨には私は考えておりません。
  142. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 もう一つ。それじゃ最後にお伺いしたいのは、エリコンはまだ着かないのでありますが、このエリコンが間もなく着く、でこれを基本にいたしまして、防衛研究所ですか、今度の技術本部でこれをさらに研究して国産化するつもりであるかどうか。それからサイドワインダーを輸入された。これも今後アメリカから輸入されるだけでなく、国産化されるつもりであるかどうか。それから、なお昨年、小滝防衛庁長官の時代に、ナイキ、レギラス、テリア、ファルコン、スパロー、ボマーク、タロス、こういう七種のGMをアメリカから供与を受けることを求めた。ところがこれに対してまだ来ておりません。アメリカがそれをよこさないのは、日本に秘密保護法の制定がないから、それでそれを制定するならば出そうというようなことがあったように聞いておる。そうして岸総理も、宇都宮かどこかへ行きましたときに、日本において秘密保護法の制定の必要があるということを述べておるのでありますが、今後こういうふうな新しい防衛兵器を防衛庁において研究し、これを国産化していく、あるいはアメリカから供与を受ける上に、こういう秘密保護法をあなたの方で作るおつもりであるのかどうか、そこをお伺いいたしたい。
  143. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) エリコン、これは近く買い入れのものが到着することになっておりまして、これの研究を進めたいと思っております。これを国産化するかというようなことは、これは特許権の問題もありまして、果してこんなものをたくさん作っていいのか、また価格の点もございまして、一応これは、こういったミサイルの研究の資料として、技術研究所においていろいろ検討してみようというだけのことがきまっておるわけでございます。それからサイドワインダー、これも今年予算通りますれば、それから交渉を始めまして、いつ参りますか、約十発くらいを今度の予算で計上しているわけでございます。これは装備の関係でございますから、航空自衛隊の飛行機につけてみて、実験のある一定の期間を経て、うまく行くかどうかということもやりたいと思います。また、これも日本で国産するかということは、そういうことは全然話をしておらぬわけでございます。一応実験するために、将来装備するために、こういうものを有償で供与を受けるということで承諾を受けたわけでございます。なお、米国に要望しましたミサイルの七種でございますが、これは先方が当方の要求をまだ受け入れておりません。しかし、受け入れないということは、いろいろな事情があると思います。もちろん、この機密の擁護ということも一つであろうと思います。それから、このものの取り扱い——もしこれから研究開発、これは研究開発の目的でございますから、研究開発した成果について、どういう取り扱いを、するかということについてもいろいろな問題があるようでございます。最近は私はこれを強く要望しておりません、私の代に……。これは一昨年のことでございますが、そういうような事情で、まずエリコンが来、またサイドワインダーが来るということだけは確かな問題でございまして、この問題はどうしようかといって、こちらからは積極的に働きかけておりません、少くとも私は……。  さて、それに関連が、全体の問題だと思いますが、防衛関係において機密保護法、特にそういった装備関係についてはどうか。御承知のように、現在の機密保護法は、日米相互防衛の協定に基く装備については機密が保護されるような規定があるわけでございます。それをどういう工合に、何というか、必要に応じて改正するというか、新しくするかという問題は、これはあらゆる観点から研究を要する問題でございまして、現在においては具体案はまだできておりません。さらに十分な検討を得、またこれに関連してほかの問題もあるということであれば、またそういった研究もするというわけで、今日の段階では検討中ということでございます。
  144. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連質問。
  145. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 簡単にお願いいたします。
  146. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 きょうの岡田委員の質問のうち、装備、特に将来予想されるであろう日米共同行動に備えて、日本の自衛隊とアメリカ軍の装備との関連についてただした点について、防衛庁長官の答弁は不明確だと思う。私は、事実は事実として、防衛庁長官から率直にお答え願いたい、その立場で関連質問をいたします。  御承知のごとく、アメリカは局地戦争、特にその中でも限定原子戦争というものを想定している。それに対するところの、限定原子戦に備えるところの装備にアメリカは懸命になっている。その立場から、日本の自衛隊に対して、限定原子戦に備える装備に努力するように要請があっているということをあなた否定できますか。また、それにあなた方が努力しているということを否定できますか。具体的に言うならば、警備艦浦波の甲板の構造はどうです。従来の警備艦の構造と同じですか、それを同じだと肯定いたしますか。あなたは、そういう限定原子戦に備えて警備艦浦波の構造がそうなっておるということを否定できますか。また、あの板付にいるところのF100B、F102、F104、これらは原子航空戦に備えるものでございましょう。これらのF100B、F102、F104、これらの訓練をわが航空自衛隊の関係者が受けているということを否定できますか。私は岡田委員に対するあなたの答弁は、非常に事実を隠しておると思う。事実は事実として明確に答えるべきだと思う。
  147. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 自衛隊の装備について、いわゆる限定核戦争に対して直接に防衛し得るような装備をやっておるのでないか、または、これはアメリカから要求されているのじゃないかというのが第一質問だと思います。  私に関する限りは、核装備でこの核限定戦争というものを行うことに対処するような話は一回も受けたことはございません。私どもは、たびたび核兵器は日本自衛隊においては装備しないのだということをはっきり言っておるわけでございます。  第二の浦波の問題ですが、それはちょっと私は質問の御趣旨がはっきり受け取れなかったのですが、あれは浦波の上へ核装備をするような今度構想ができておるというふうにちょっと推測されるような御質問だったのですが……。
  148. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 防御できるようになっている。
  149. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 防御できるということは、いかなる場合にも防御の態勢というものはあるのですが、こちらが核装備するという問題とは別だとすれば、これはどういう装備が防御になるか、これはちょっと今の御質問の内容が具体的に了解できなかったのでございますが……。  それから第三の問題だと思いますが、駐留米軍の航空機というか、軍用機と申しますか、日本に駐留しておる。これはいろいろな種類があるようでございます。F104、またF100Bでございますか、あるいは若干B54というようなものもございましょう。それらのものは核装備しておるかということだと、私はしておらぬということを申し上げてもいいと思います。なおまた、こういった航空機が戦闘機でありながら爆弾の装備というのが可能であるかどうかという問題、これはその性能としてですね。これは爆撃をやるものは、爆撃機以外のものはもしこれができないかといったら、そういうことは可能であると申し上げることができると思います。それから、こういった、何というか、軍用機に、自衛隊が行って訓練を受けているということは承知いたしておりません。これらのこれに類したような、つまり訓練の必要なものはF86であるとか、また今度は86Dというものを近く受けることになっておりまして、ジェット機の訓練についてはF86で今やっておる、練習のためにはT33というものでやっておるわけでございます。
  150. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 岡田君、簡単にお願いいたします。
  151. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 最後にもう一点お伺いします。  それは、今の日本におけるアメリカの航空機の問題に関連するのでありますが、過日、衆議院の内閣委員会におきましても、アメリカの海軍機が核装備が持てる、原爆を積めるということをお答えになっておるし、また、ただいまも、原爆を積めるB47等が日本におるということも言われておるようであります。ほんとう日本におけるアメリカの空軍が、そういう原爆なり水爆を積めるものが、水爆を、原爆を持って  いないかということは、ただいまの防衛庁長官のお答えですと、否定的でありますけれども、最近のアメリカ世界における行動を見ておりますというと、イギリスにおいては、御承知のように、水爆を積んだものを常時飛ばしておる。それからアメリカにおきましても、最近原爆誤投事件というものが起りまして、非常に大きな問題になっておるんです。だから、積んでおらないというふうに、あなたが言い切れるかどうか。もし言い切れるとすれば、それはアメリカ軍の方で、はっきりそういうことをあなたの方に言ってきたのかどうか、その点をまず第一点としてお伺いしたい。  もしそうでなくて、単なる推定であるならば、これは持っているとも言えることでありまして、はなはだ、われわれは危険だと感じざるを得ない。これは、イギリスだの、最近アメリカ国内で起った原爆の誤投事件から見ましても、われわれは不安を感じる。そこで、今月の末には開かれる日米安保委員会におきまして、その問題について、あなたも外務大臣とともに出席されるわけでありますから、日本においてはアメリカ軍は原爆を持ち込んでおらぬ、水爆を持ち込んでおらぬ、それらを積んで飛行機を飛ばしておらぬということの、はっきりした言明をとっていただきたいと思うのですが、その点はどうか。
  152. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。  その中で、ちょっと一言つけ加えさしていただきたいと思いますが、御質問の中にB47がここへ来ておるというようなことの何があったように思いますが、これは機会がないために、本会議で御質問があった龜田先生の……、それ以来本会議に自分も出る機会がございませんので、即日お答えすべきものであったと思いますが、ちょっとこの機会を委員長にお許し願って拝借して……。  あの亀田議員の御質問は、B47が日本に来ている。これは非常な重爆撃機であり、これが日本でいろいろ飛翔し、練習し、こういったところへある者が乗ったということが小川某の著書に書いてあるという、その著書を引用して——何ページでしたか引用して、こういう事実ありやということでしたが、落書のことでありましたから、十分読まなかったので、私は調査の上いずれお答えすると申しましたが、あれは第一版のものでありまして、第二版にはB57と書いてある。著者はその誤まりを認めたわけで、57という字が次の第二版に出ております。57は、これは非常に小さい方の何で、47とは違うわけですから、今の御質問の中に、47があるということですが、それはそういう意味でございます。そこで今の、これらの飛行機が核装備、原爆を持って今日日本に飛来し、または飛翔しておるということでございます。これは総理がたびたびお答えをした以上に申し上げることはいかがかと存じます。すなわち、われわれは、その核装備、原水爆持ち込み禁止と、やらせないと、拒むという方針、または、自衛隊はこういったものを装備しないといういわゆる確固たる方針を持っており、その方針は、十分にアメリカ軍においても知っておるのであって、これは、われわれは信頼と友好の基礎の上において、このことが実現されておるということを確信しておると、こういうことに相なっておるのでございます。もし、万一これがあるのかないのかというと、これは水かけ議論になるということでございます。これはかつて重光外相の当時にも話し合ったようなことがありますが、私はまあその当時のことは十分承知いたしません。  また、ただいま日米安保委員会でこの問題を提議するかという——提議というか、話し合えるかということがございましたが、これはその必要性がどの程度あるかという問題で考えられるべき問題で、今のところこの問題を提議してこれをどうしようということには、少くとも私は考えておりません。
  153. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 岡田君に申し上げます。午前のあなたの御質疑に対し、一萬田大蔵大臣から発言を求めております。この際、これを許します。
  154. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 宮良寛才氏の件につきまして、羽田におきまする税務官吏及び東京税関の関係税官吏を本省に集めまして、そして厳密に実際を調査いたしました。その結果、この取調べの状態につきましては、私が午前中に御説明申し上げたところと変りはないように私は確認をいたしました。  それから、特に御質疑の重点でありました信拠すべき情報という、この信拠すべきということは、どういうふうな根拠の上に立つのかということにつきまして私十分の調査をいたしました。その結果、私といたしましても、この情報は、やはり税務官吏として取り上げて信拠すべきだというふうに考えるに至りました。しかしながら、しからばそれはどういうふうなところから出ておる情報かということにつきましては、これは従来の慣行から見ましても、やはり職務の秘密に属することですから、これを申し上げかねると申し上げなくてはなりません。ただ今回のこの事件につきまして、結果から見ますれば、初めの情報にあるような事態はなかったのであります。はなはだ私としても遺憾に存じます。
  155. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 情報の出所は教えるわけにはいかぬ、当局としては信憑すべきものと、こういうふうに考えてやったのだ、結果は何も出てない。こういうことでありまして、結果から見れば、これは信憑すべきものでなかったことは明瞭なんです。  そこで、まあお伺いしたいのは、先ほどの説明員の方のお話の中にありました審理課長への電話の中に、日本円を百万円持って出ると、こういう話だった。これを信憑すべきものとして、審理課長が電話をしてああいう措置をとったわけですが、その百万円を持って出るという出所については言えない。しかし、それを信憑すべきものと考えた審理課長のその根拠というもの、これはなるほどそういう情報があったと、これはほんとうらしいというのには幾つかの根拠があるはずだ、それをまずお示し願いたい。どうしてそれを信憑すべきものと確信するに至ったか、そこが明瞭にならなければならぬので、私は審理課長がここに来ておられるならば、説明員としてそれを説明してもらいたいと思う。
  156. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 木村説明員がかわって御説明申し上げます。
  157. 木村秀弘

    説明員(木村秀弘君) ただいま審理課長がこちらへ来ておりませんので、私から審理課長から聞いたことをお伝え申し上げます。  非常にその電話の内容が具体的でございまして、人の名前、それから乗る航空機の名前、日時等がはっきりしており、かつ百万円くらいということでありましたので、内容の具体性から推して相当確信を持ったということを言っております。
  158. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 さっき言っておるのと大差ない。飛行機は隠れて乗るものではない。ちゃんと切符を買って、いつ幾日、何の飛行機に乗る。それには名前も明らかにする。そんなことは問題じゃない。問題は、その百万円持っておるということに対して、どういう理由からそういうものがほんとうであると考えられたのか、それを聞きたい。それを明らかにしなければ、この事件を解明することはできない。私はあくまでも、どうしてそれを、百万円持っておるということをほんとうだと思うに至ったか、その理由を明らかにしない限りは、これは私としては断じてきかない。それを明らかにして下さい。
  159. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私が調べましたところに基いて御答弁申し上げますれば、これはやはり、出たところが、受け取る方の、言いかえれば、東京税関の審査課長が、なるほどさようであろうかということで、信拠するようなところから出た、かようなわけであります。
  160. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうすると、おかしいですね。その向う側が言うところが、なるほどそうだろうと思われる、信憑するに足る人から出たものならば、でたらめだろうが、何だろうが、全然それに対して検討を加えないでも、信用してそのままおやりになるのですか。たとえ、従来何べんか電話をかけてきて、その人の言うことはほんとうであっても、この問題については、人権じゅうりんとも関係のある問題であります。当然そこに検討を加えて、しかる後にこれが信憑性があるという確たる確信を持たなければ、できないのです。それを、向うからただ言ってきたと、これは従来からその人の言うことはほんとうであって間違いない、それではやろう、こんなことで一体どうしてこんな事態になるのか。私は、そういうようなことでここを糊塗しようなんといったって、それは許しません。もっとはっきり、なぜその百万円持っておるということを信憑するに足ると考えたか、その理由を明らかにしてもらいたい。審理課長の出席を要求します。
  161. 木村秀弘

    説明員(木村秀弘君) 過去におきましても、そういう電話なり、あるいは投書なり、その他の密告によりまして、今申し上げたような程度のことで相当の事件があがっております。今度の場合におきましても、もちろんその方の身分その他については、全然これは知らないことでありまして、相当具体的な、まあ過去の実績から見て、その程度の情報であれば信憑性ありと判断したわけであります。
  162. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は、その電話の主のことを今聞いているのじゃない。それを聞いて、どういう理由でもってそれを信憑するに足ると確信したかということを聞いておる。今のお二人の答弁なんか、それに何も触れていないのです。私はこれでは承知しません。審理課長を一つ呼んで下さい。
  163. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 委員長から岡田君にお諮りいたします。大蔵省側の答弁には、なお調査が不十分に委員長は判断をいたします。よって、これは次の機会、月曜日の劈頭に、重ねて大蔵省側の答弁を求めます。きょうはこの程度でこの問題はとどめたいと思う。
  164. 曾禰益

    ○曾祢益君 議事進行。委員長も確かに、今の大臣答弁とそれから係官の答弁の間に食い違いがあるし、非常に不十分であるということを言われた。私も不十分だと思う。しかし、これは不十分であるばかりでなくて、明確にその内容が食い違っておる。係官の説明によれば、具体性があるから信憑性がある。ところが、大臣はそうじゃなくて、情報のソースが信頼すべきであるから信憑性があると。これは明確に食い違っておる。そこで、この点については、やはりこの点を明らかにしてほしい。大臣は内容でなくて、情報の  ソースが信憑性がある。つまり、非常に信頼するたとえば官憲、あるいは日米官憲であるかどうかわかりませんけれども、それは言いたくないと言っておられる。こういう意味を含めて言っておられる。そっちにむしろ重点を置いておられる。ところが、係官の説明は内容から来ている。それはどっちなんですか。その点を明らかにしてもらって、いま一つお願いしたいことは、やはりこれは本人をここに喚問していただきたい。審査課長——審理課長というのですか、それをお願いしたい。
  165. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 曾祢君に申し上げます。御発言の御趣旨はよくわかりました。私は、大蔵省側、特に大臣を中心としての調査が不十分と認めます。よって、これには時間を要しますので、審議の都合上、特に月曜の劈頭にこの問題を上程したいと、かようにお諮りいたします。
  166. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今の問題について、ちょっとはっきりさしておきたいと思います。
  167. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それでは、特に一萬田大蔵大臣
  168. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は、答弁が食い違っておると言うが、そうではありません。情報が技術的に、実際こうこうこうといって具体的のことが……。現地の税務官吏が、従来の慣行もあるし、こういう程度の具体的な条件がそろえばこれはよいと、これはまあ現地の税務官吏の判断であります。それはずっと先ほどから説明がされておりますから、それにやはり私はそれだけではなかなか問題でしょうから、それにどういうところから情報が出たかということも、やはり一つの真偽をきわめる上に大きな影響力を持っておるので、これは双方であるということを一応申し上げておきます。
  169. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 岡田君、いかがでございましょうか。
  170. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 けっこうです。
  171. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それでは、次の質疑者に移りまして、月曜にこの問題を取り上げます。  次に、武藤常介君。
  172. 武藤常介

    ○武藤常介君 大臣の御都合はどちらがいいのでしょうか。
  173. 泉山三六

    委員長泉山三六君) どちらでもけっこうです。あなたの要求は大蔵大臣と自治庁長官ですから……。
  174. 武藤常介

    ○武藤常介君 それでは、自治庁長官が急いでおるようですから、郡自治庁長官の方からお伺いしたいと思うのでありまするが、私は、本予算の前提となりまする地方税の問題で、木材引取税が本年は非常な軽減になったのであります。これは非常に、大臣の英断によりましてこういう結果になったのであろう、こう考えるのでありまするけれどもが、この税の本質をよく考えてみまするというと、どうも木材引取税くらい理不尽な、不公平な、しかも不均衡な、あるいは課税に、徴税に困難な税はないのでありまして、これらは、私は、端的に申せば、こういう税金は撤廃した方がよろしい、かように私は論ずるものでございます。と申しますのは、この税につきましては、前々国会から、あるいは太田自治庁長官のときに、あるいは田中自治庁長官のときにも、この予算委員会におきまして質問いたしましたが、どうもきわめて税としてはおもしろくない税であるから、財源があるならば撤廃したい、こういうことをよく申されたのであります。かような税でありますので、今回は四鬼が二%に下ったようなことになっておりまするが、昨年は五彩が一%軽減になりまして四%になりましたが、一%軽減になりました結果、きわめて妙な問題が各方面に起りました。というのは、一面においては税が軽減されておったにもかかわらず、ところが、あるいは前年よりも二倍、三倍というような課税が行われた。これで各方面に種々なる紛争が起りまして、業界はえらい騒ぎをしております。それも実際はその通りなんでありまして、この算定の基礎がきわめてあやしいのであります。木材の生産量は、ある人に言わせるというと、調査によるというと、一億六千万石を年に生産するという。ところが、ある方面では一億一千万石であるという。そうして徴税の総額は昨年は十八億四百万円である。木材の単価というものは概して、大てい一石二千円あるいは二千五百円というような状態であります。こういうふうな方面から算定するというと、算定のしようによっては、価格の〇・六%ぐらい課税をすれば二十億以内の、あるいは十八億四百万円ですか、四千万円ですか、あるいは二十億ぐらいは徴税ができる、こういうふうなことにもなりますので、きわめてこれは不安定な税金である。この課税によりまして、山村の役場では相当の収入があることは事実であります。ところが、ある地方におきましては、せっかく予定はした、課税はしたが、実際においてはほとんど納まらない。ある町のごときは、三品万の予定を立てたが、入ったものは九万円である。ところで、五万円の徴税のためにむしろ五万円以上の経費を要した、こういうふうな結果でありまして、この税金ぐらいどうも、今日の場合にはきわめて不穏当な税金はない。ことに、先ごろは六団体ではこの課税に対して反対をしたようでありまするが、ところが、全県下の木材商というものは、まあほんとうに一%ぐらいは相当の資力を持っている人がありまするが、大体においてはみんな貧弱な業者でありまして、ほんとうに哀れな零細な業者なんであります。こういう者から税金をとるのでありますが、この根本は、木材というものは立木からは財産税をとらないけれどもが、売った場合にそれをとるということになっておりますので、ところが、買った者はきわめて貧弱なものであり、ようやっと資金を集めて買った。買ってもすぐ金にはならない。これを造材したり、あるいは搬出したり、種々なる経費を要するのにもかかわらず、またそこに税金をさっそく納めなくちゃならぬ。こういう非常に理不尽なところが存するのでありまするからして、やはりこれは私は相当考えねばならぬ税金ではないか、かように存ずるのでありまして、郡自治庁長官の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  175. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 木材引取税を主たる財源にいたしておりますところは、多く山村でございます。従って、そういうところに自主財源を与えようとすれば、木材引取税のような税のほかになく、また木材搬出等のためにいたします施設でありますとか、防災施設でありますとか、そういう方に相当の出費もございます。従って、もちろんこうした山村に適当な自主財源をどうして与えたらいいかということについては、地方税並びに財政両方を通じて検討をいたすことではありますが、木材引取税を撤廃するというようなことは、山村の実情、また山村の歳出の状況から見て、無理だと思います。  お話の中に徴税費の点がございましたが、これは確かに、木材引取税の御指摘のような性格から見まして、特別徴収義務者の強力な協力がないとできないことでございます。従いまして、特別徴収義務者の強力な協力を得、また素材価格等につきましても、昭和二十九年にきめて後、かなり素材価格が変ってきておりますから、そうした伸びをよく見まして、そうした課税客体を把握いたす。さようにいたして、何と申しましても、昭和二十五年に市町村税になりまして以来歴史が浅いものでありますから、若干の徴収上の紛議もございましたが、そういう点を、ただいま申し述べましたような点を改善いたしまして、そうして円滑なる徴収ができるようにいたして参りたいと考えております。
  176. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいま長官の御意見でありますが、この引取税に対しましては非常な誤解が多いのでありまして、たとえば搬出に相当の、その地方の町村に道路を整備してやるとか、あるいは種々なる施設を要するとか、そういうことのために、往々にして当然これは納むべきものである、こういうことを言われておるのですが、実際の場合、立木を買い入れた者は大体道路は自分で作ります。それから、その他の施設も全部やりまして、木材の搬出の場所はかえってそのためによくなるとこういうふうなことになっております。  それから、ただいまこの徴税上種々な問題が起る。これが実際円滑にいったならば、大体一%ぐらいならば現状では穏かにいくだろうと思うのですが、これが今回は二%でありますので、そうするというと、現在一%も納めないような県もあります。またそれ以上納めている県もある。その間の紛争というものは免れないと、かように実は心配いたしておるのでありますが、どうか、本年は決定になりましたからやむを得ませんが、自治庁長官におかれましても十分この問題を御研究になりまして、そうしてむしろ私は撤廃した方が穏かであろう、万一撤廃しないならば一%ぐらいのところでおさめなければ円滑にいかぬ、かように存ずる次第でございます。長官の御意見を伺います。
  177. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 木材引取税が、政府の部内におきましても、これの円滑な徴収のために一段と関係の機関が協力をいたす体制をこしらえております。従来の例を見ましても、北海道、東北等においては、かなり一ぱいにとっており、他の地方においてはそうでないというような、地域的の差も若干ございました。それらの点も実情に十分合せていくならば、歳入にさしたる変化を来たさずに済むということで、税率を半減いたしましたので、武藤委員よく御承知通り、この税につきましては、国の機関も、納税者自身も、非常に御協力を願いませんと、市町村がなかなかとりにくい税でありますので、私どももそうした特別徴収義務を、また民有林についても特段のこれから努力をいたしまして、適正な課税ができるようにいたしたいと思いますので、各方面の御協力をお願いする次第であります。
  178. 武藤常介

    ○武藤常介君 長官はだいぶ忙しそうでありますので、きょうははっきりお答えいただくというのも無理でございましょうが、代々の自治庁長官は、財源さえあればこれは撤廃した方がよろしい、むしろ町村の煩瑣も防げる、こういうことをみなよく言われたのでありまするから、十分御研究を願いまして、今日になりまして財源がないということは、ちょっと言いかねるような時代ではないか、かように思いまするが、今にわかにどうというわけではありませんから、きょうはこの辺の程度で、一つ御研究を願うことにいたします。
  179. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 十分に研究はいたしますが、ただ立木に対する課税というようなことは、これは実際の適令伐期前の伐採を起しましたり、また自然林道についてはほとんど評価が困難でございます。そういたしますならば、私は、木材引取税のような税は、山村についてはやはり必要な税だと思います。ただ繰り返して申しまするが、その税率につきましては、このたびのような措置を講じて、そうしてかえってそれによって紛議のないようにいたそうということでございますので、この税をむしろ適正な税として育てるようにして参りたいと考えておりますから、よろしく御協力をお願いいたします。(笑声)
  180. 武藤常介

    ○武藤常介君 長官がだいぶ急ぐので、私の方でも途中で切り上げようと思うが、なかなか切り上げになりませんですが、この課税は、この立木に課税するということが、緑化運動であるとか、あるいは植林の意欲を害するとかいうことで、われわれ業者間においても(笑声)御遠慮をしておるのであります。しかるにもかかわらず、買った方が、その固定資産税を負担するような形になるということは、きわめてこれは理不尽なのでありまして、こういうことは全くもう一般の定評になっておりまして、これは撤廃すべきものである、こういうことの世論であります。なお、撤廃について十分御研究をお願い申し上げまして、別に御答弁要りませんですが、よろしくお願いいたします。
  181. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 武藤君、今度は大蔵大臣ですか、どうぞ。
  182. 武藤常介

    ○武藤常介君 大蔵大臣——それじゃ、自治庁長官、けっこうです。  今回、昨年におきまして岸総理大臣東南アジアに二回ほど参りまして、国交をおさめに参りました。東南アジア開発のために非常に意を注がれたということは、非常にけっこうなことであると私は共感を覚えるのでありますが、ただ、ここに一つ伺いたいことがあるのでありまするが、東南アジア開発その他のことから、巨額の債権というものを日本が持つようになりゃしないか。国民の中には、一体これはどういうふうに落ちつくのであるかというので、非常に不安の念を抱くようなものもあるのであります。対外的なこの貸付、あるいは協力の約束というものにも、おのずから限度があるのでありましょうが、一体どの辺に目安を置いていくのか、その考え大蔵大臣にお伺いいたしたいと存ずるのであります。
  183. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この対外の投資ということになりますが、これはむろん各国との国交を深厚にするとか、あるいはまた、それらの特に相手国が後進国である場合には、これを開発して、そうして自国の経済との結びつきをよくして、言いかえれば、自分の国の経済市場とするというようないろいろの利点、また現になさねばならぬことが多いのでありまするが、しかし、むろんそれだからといって、今お話しのように、これが勝手に無限にできるものではありません。常に自国の力というものを考えなくてはなりません。  それで、それならどういうところが限界になるか、これは具体的には私非常にむずかしい問題であると思うのでありますが、それには、まずやはり自国、自分の国自体がどういうふうな状況にあるかということを、まず考えていかなくてはならぬと思うのであります。言いかえれば、国内投資海外投資との関係はどういうふうに置くべきか、さらにまた、海外投資については、特にその国の国際収支ということとの関連を深く考えていかねばならぬと考えておるのであります。  こういうふうな見地に立ちまする場合に、私はどういうふうな割合、どういうところが限界かは今数字的には申し上げかねるのでありますが、しかし、日本の場合におきまして、海外投資は今日おそらく実際上二億ドルになっておるだろうと思うのであります。そうして今日希望され、あるいは計画されておる、その他すべてを含めますと、おそらく十億ドルにも及ぶだろうかと考えておる。こういうふうなことを考えます場合に、一方賠償というものが大体おもな点において結末がつきまして、これが実行に移っておる。また政府借款というものもすでに結ばれているということを考えますれば、政府並びに民間を通じての対外の投資は、今日よほど慎重に検討を加えねばならぬ。言いかえれば、今後新しい海外投資については慎重な態度をもって臨むべきであるというふうに今日考えておるわけであります。
  184. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいまの大蔵大臣の御答弁、なおいろいろ伺いたいのですが、大体これに関連したものに次に移ります。  目下、農村はここ二、三年の間豊作に恵まれたと、こういうことでありまするが、しからば農村が果して経済が豊かになったか、生活が向上したかというと、多少はありましょうが、昨年のような、御承知のように、神武天皇景気であるとか何とかいう話は聞いたが、あれはまるで空の上を飛ぶ雲のようなもので、全く関係がないというので、地方では非常な不安の念を持っておられたのであります。また、中小企業に対しましては、昨年は御承知のように、団体法が通過いたしまして、非常に喜ばれたけれどもが、これら農村やあるいは中小企業に対するところの対策に対しては、まだまだ相当窮屈を感じている、こういうふうに私は考えるのであります。こういうときに、あまり海外投資であるとか、あるいは貸し付けであるとか、そういうことに熱心であるというような誤解を解かねばならぬではないか。そういう点から、私は、昭和三十二年の場合と三十三年の場合、こういう前年との比較等はどの程度になっておるか、伺いたいのであります。なおまた、国内投資関係がどういうふうになっておるか。ちょっとめんどうでもありましょうが、国民の納得のいくような御説明を承わらしていただきたいと存ずる次第でございます。
  185. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 仰せのように、国内投資海外投資の問題、これは非常に私はやはり注意を加えなくちゃならぬ。むしろ、やはり自国の開発といいますか、これに力を入れてそうして余るところで海外に向っていくのが、これが私、常道であろうと思う。また、海外投資することによって、自国の経済力を高めて、国内をよくする。これはまあ結局はまた循環にもなりますが、現実には、私は、先ほど申し上げたような国内開発ということが、やはり先になるべきだと思っております。まあそういうふうな見地からも、若干財政力にもゆとりが出た今日におきまして、あまり、海外投資投資という声もありまするが、これもまあもっともな点がありまするが、他面日本の道路なんかを見ますと、あるいは港湾においてもそうであると思いますが、非常に私、国際的な水準に劣っておると思うのであります。まあ道においては、おそらく諸外国で一番惑い道を持っている国であるかもしれません。そういうふうな見地から、今回この道について五ヵ年計画を立てました。あるいはさらにこれを今後も拡張し、りっぱな道路をまず建設していこう、こういうふうな政策をとりましたことも、そういうふうなところから来ておるのであります。  ここに試みに、国内投資海外投資との関係でありますが、若干の調べをさしたものがありますので、御参考に申し上げますると、昭和三十三年度の見込みになっておりますが、昭和三十三年度におきまする国内投資は二兆一千百三十億円程度考えられるのであります。これは昭和三十二年度の実績の見込みの二兆三千八百五十億円と比べると、今回は一一%程度これは減少になっておりまするが、これは言いかえれば、景気の上昇が非常に急であった。そのやはり余波を受けて、三十二年度投資が依然として盛んであったということに原因しておると思うのであります。従いまして、三十三年度減りましても、国内投資は特に少いというわけではない。これに対しまして対外投資は、現在各方面で計画が進まれておりまするが、それらの投資の希望も入れまして、概算的に総合してみると、三十三年度分として総計二億五千万ドルに達する見込みであります。むろんこれ全部実行するとは限らないのですが、一応計画を総計してみると、そういうふうになります。この金額は、昭和三十二年度におきまして実績見込みが九千二百万ドルでありますので、非常に大きい。言いかえれば、国内投資は減ったが、それだけ海外投資がふえているという状況を呈しているのでありまして、私は先ほど申しましたが、こういうふうな状況を見ましても、今後海外投資については、よほど慎重な態度をとらなくてはならぬ。  むろん日本の場合におきましては、まあいわゆる東南アジアにおいては先進国あるいは工業国といわれる国でありますから、他の、後進国といえば言葉が悪いかもしれませんが、開発のおくれている国々に対して、日本が相応の手を差し伸べることはむろんこれは当然であると考えます。従いまして、国内投資によって、国内のもろもろの資源の開発とか、あるいは施設の改善等をするとともに、余力をもって東南アジアに臨むということ、これはまあ当然のことでありますが、その辺をよほどバランスを持って考えていかなくてはならぬ。しかも、何か海外投資ということに走りたがる、そういう傾向をどうも持つ様相がありますので、財政当局としては、そういう点について今後慎重な態度を特に強めていきたい、かように考えます。
  186. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいま大蔵大臣の非常に慎重に今後やろうという御趣旨には、私は同感でありまするが、ただいまの数字を伺いまするというと、海外投資が本年はにわかにふえた。あまりに、急激にふえはしないか。これが国内産業にも、あるいは種々な方面に影響しわせぬか。なるほど大臣が仰せられるように、海外投資ということは、循環して、やはり日本産業振興にもなることは明瞭でありますけれどもが、東南アジア方面の投資というものは、よほどこれは考えないと、必ずしも循環してくるかどうか疑問である。ずいぶん焦げつきもできようし、いろんなそういうものも出て参りましょうから、これは十分考えなければならぬのではないか。かように考えるときに、ことしの投資の約束であるとかそういうもので、もうすでに実行したものは仕方がないのでありしまょうが、そういうものでないのは幾らか引き締めて、昨年から一割増しくらいとかいったような程度で引き締めた方がいいのじゃないかと、かように私は考えるのでありまするが、大臣の御意見はいかがでございますか。
  187. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいまも申し上げましたように、まあ私は大まかに見ても、賠償並びにこの約束した経済協力等の実行が今後実現されるのでありまして、ほんとうのこの問題はやはり今後にあります。そういうことを考えます場合に、今まで約束をされているその部分を着実に実行するということが、まず先決であると考えているのであって、かような見地からいたしましても、今後もやはり対外援助等につきましては、今後日本経済というものが特に大きくない限り、私はまあ限界にあるのではないか。従って、今後の海外投資日本の今後の経済の伸び、これは伸びという意味はいろいろな意味が含まれておりまするが、いわゆる海外投資余力というものを達成いたしまして、どういう程度これを具体的に投資として振り向けるかというようなことを考えていきたい、かように存じます。
  188. 武藤常介

    ○武藤常介君 なお申し上げたいことはありまするが、時間の関係で次に移ります。  現状におきましては、政府または地方自治団体の事業が、非常に長期にわたっておる。あるいは十五年、はなはだしきは二十五年、三十年、こういうふうに、だんだん引き延ばされまするというと、せっかくの財政の支出というものの効力が非常に低下して参る、こういうふうに私は考えるのでありまするが、こういう方面にいまちっとやはり財力を向けないならば、わが国の地方農山村というものは、かえって疲弊をしてしまう、また、政府施策にも協力しないようなことにもなるので、むしろ、きめたならば、総花的の傾向はやめて、重点的にやるようなふうにした方がいいのではないか、こういうふうに私は考えるのでありまするが、大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  189. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 公共事業が総花であってはならない、重点的でなくてはなぬらということは、まったくお説の通りであります。私ども財政当局としては、常にこれを念願して、この実現に力を注いでおるのでありますが、どうもこれは、なかなか思うようにいかないのでありまして、各方面でいろいろと要請が強うございます。しかし、今後それを一そう努めていきたい、かように考えておるのであります。  特に、公共事業が総花である結果、いずれの事業も不完全、また微弱である。そうしますと、これに天災でもありますると、もうみな総花的にだめになってしまう。ちょうど、さいの川原みたいに、毎年々々やりかえる、常に被害をこうむる、こういうような事態があるのであります。これは、できれば、財政当局なんかとしては、重点的に、一番やはり災害が予想される所で、しかも被害が大きく予想される、言いかえれば、国の財産を一番守り得る所にまず重点を置いて、そこをまず完成して、それから次に移っていくというような原則でいくことができれば、実に私はいいと思うのでありますが、どうもそれが、いろいろな政治的な理由からできない。これはまあ、ぜひとも国会の力で一つそういうことができ得るように、御協力を特に願いたいと、かように考えております。
  190. 武藤常介

    ○武藤常介君 この問題につきましても、細部にわたりまして論及すれば、いろいろありますが、時間の関係で次に移りたいと思います。  本年度予算編成に当りまして、種種なるとかくの批評があったことは、事実のようであります。私は、三十三年度予算編成に当りまして、編成の合理化ということをお考えになられた方がいいのではないか。それは、閣議とか、あるいは党議とかいうので、ほんとうの大体の方針だけきめるのでなくして、まずもって、まあ過去の経緯から申しまして、当然必要な経費というものは、これは計上しなくちゃならぬ。なおまた、歳入というものも明確に計上しなくてはならぬ。それからその差額というものをちゃんと算定して、そうして今度新規事業というものがあるならば、その新規事業を一々よく調査算定いたしまして、それをしっかり大蔵省がつかんで、その大体基礎のできたものを閣議に持っていって、そうして閣議で新規事業はどれをとるかということを決定するようにすれば、いまちっと整然たるところの予算編成ができるのではないか、かように考えるのですが、大蔵大臣としてはどういうふうなお考えをお持ちになっておりますか。
  191. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大体お考えの趣旨は私も賛成であるのでありまして、今回もいろいろと予算編成の過程についての批判があるのでありまするが、これは私必ずしも当らないと思うのでありまして、やはり予算編成につきましては、私はやはり国民経済との関係において、まず予算規模というものがどういうふうになくちゃならぬかということをきめなくてはならぬだろうと思う。そうして、その予算規模ができますれば、その予算規模の範囲内において、先ほどお話しのように、当然歳出に立てなくてはならぬ、そのものをまず厳密に査定をして考える。そうして、そこに余剰の財源、いわゆる歳出規模の中で余剰の財源というものが現われてくれば、それを従来の党の公約として国民に約束しておるうちの重点的な政策、それを政府が十分考えて、そしてこれをその範囲内において配分を考えていく、こういうふうな行き方であるのでありまして、むろん予算編成は、これは政府が当然やらなくちゃならぬ責任でありますが、しかしまた、政党政治でありますから、与党の政策というものはこれを取り入れていかなければならぬ、緊密な関係に置かなくてはなりません。今回の予算編成について考えても、実はそういうふうなことを、従来に比べて一そう強くやろうと思いまして、まず予算規模というようなものを考えて、ああいうふうな編成の基本方針をきめた。それからまず党の政調会とも十分接触をして、そうして党の重要施策を取り入れよう、こういうふうにいたしたのであります。  まあしかし、そういうふうな過程において、今回は少し新しい試みをいたしましたために、若干いろいろと議論もあった。しかし、これは議論が多かったということで、やはり進歩の過程である。何もこれは見苦しいことではない。方向としてはきわめて適切な方向に行っておると考えておるのであります。大体お説のような方向で今回は参ったつもりであります。
  192. 武藤常介

    ○武藤常介君 最後に一つお願いがあるのですが、国の財政というものは、どうしても国際収支の黒字赤字の問題に重点を置くことは当然であります。けれどもが、それにばかりあまり重点を置いて、そうして農村であるとか、あるいは地方の中小企業者であるとか、こういうものをどうも忘れ勝ちのようなことがあるならば、国の将来というものは私はないと思う。御承知のように、フランスなどは、赤字が相当あっても国民は相当裕福である。こういう国もあって、フランスはなかなか見識が非常に高い。われわれは世界の中心である。外国言葉を使わぬというようなことで、私ども行ったときには、われわれが想像したのとは違って、なかなか意気は盛んでありました。そういうことがありますので、私は、地方農村あるいは地方の中小企業者、こういうものを十分考えて、最初の予算の基礎を作ることに御注意を願いたい。希望を申し上げまして、私の質問を終ることにしたいと思います。
  193. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 明後十七日は、午前十時から委員会を開会することとしまして、本日はこれにて散会をいたします。    午後四時五十一分散会