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1958-03-10 第28回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十日(月曜日)    午前十時三十三分開会   —————————————   委員の異動 本日委員大谷贇雄君館哲二君、下條 康麿君、小山邦太郎君及び苫米地義三 君辞任につき、その補欠として石坂豊 一君、大川光三君、後藤義隆君、柴田 栄君及び前田佳都男君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     泉山 三六君    理事            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            高橋進太郎君            佐多 忠隆君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            植竹 春彦君            大沢 雄一君            大川 光三君            木島 虎藏君            古池 信三君            小山邦太郎君            後藤 義隆君            塩見 俊二君            柴田  栄君            田中 茂穂君            苫米地義三君            苫米地英俊君            中野 文門君            一松 定吉君            本多 市郎君            前田佳都男君            三浦 義男君            安部キミ子君            岡田 宗司君            亀田 得治君            坂本  昭君            鈴木  強君            曾祢  益君            高田なほ子君            戸叶  武君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            吉田 法晴君            加賀山之雄君            田村 文吉君            千田  正君            市川 房枝君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松永  東君    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  前尾繁三郎君    運 輸 大 臣 中村三之丞君    労 働 大 臣 石田 博英君    建 設 大 臣 根本龍太郎君    国 務 大 臣 石井光次郎君    国 務 大 臣 河野 一郎君    国 務 大 臣 郡  祐一君    国 務 大 臣 正力松太郎君    国 務 大 臣 津島 壽一君   政府委員    内閣官房長官  愛知 揆一君    内閣官房長官 田中 龍夫君    法制局長官   林  修三君    人事院総裁   淺井  清君    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    内閣官房内閣審    議室長内閣総    理大臣官房審議    室長      吉田 信邦君    総理府総務長官 今松 治郎君    総理府恩給局長 八巻淳之輔君    警察庁長官   石井 榮三君    調達庁長官   上村健太郎君    行政管理庁行政    管理局長    岡部 史郎君    自治庁財政局長 小林與三次君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    経済企画庁長官    官房長     宮川新一郎君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省移住局長 内田 藤雄君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    文部省初等中等    教育局長    内藤譽三郎君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省社会局長 安田  巖君    厚生省児童局長 高田 浩運君    厚生省保険局長 高田 正巳君    林野庁長官   石谷 憲男君    水産庁長官   奥原日出男君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君    海上保安庁長官 島居辰次郎君    労働省婦人少年    局長      谷野 せつ君    建設省道路局長 富樫 凱一君   —————————————    会計検査院長  加藤  進君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    宮内庁長官   宇佐美 毅君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○昭和三十二年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十二年度特別会計予算補正  (特第4号)(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。  まず委員の変更について御報告いたします。本日大谷贇雄君館哲二君及び下條康麿君がそれぞれ辞任せられ、その補欠として石坂豊一君、大川光三君及び後藤義隆君がそれぞれ選任せられました。   —————————————
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これより昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、並びに昭和三十二年度予算補正(第2号)及び(特第4号)を一括議題といたします。前回に引き続き質疑を続行いたします。
  4. 曾禰益

    曾祢益君 私は非常に短かい時間をちようだいいたしまして、駐留軍離職者対策関連する問題だけにしぼって御質問いたしたいと思います。  補正予算の中に八千八百九十六万円の離職者に対する特別給付金が計上せられたのでありますが、これに関連いたしまして、まず駐留軍撤退に関するいかなる期間的な見通しを持っておられるか、三十二年度年度何名離職者が出る、あるいは特需関係でどれくらいの離職者予想されておるか、また三十三年度中いかなる予想であるか、これらの問題についてまず伺いたいのであります。と申しまするのは、第一に岸・アイク声明以来、日本においても安全保障委員会ができまして、外務大臣防衛庁長官等がこのメンバーとして、アメリカとの間に、いろいろ先方駐留軍撤退に関する期間的な見通し計数等を十分にもはやお知りになっておると思いますので、この問題についての政府の今日までの折衝の結果に基いた予想をまず伺いたいと思います。
  5. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) お答えいたします。  在日駐留軍撤退につきましては、日米共同声明にありますように、まず陸上部隊戦闘部隊は大幅な縮減をし、明年度すなわち今年度でございますか、今年でありますが、全部撤退する、こういうことになります。その他の陸軍につきましては、補給関係、これには触れておりません。なお、海、空についても日本自衛隊増強に伴って撤退をする用意がある、こういうことが声明の中にうたってあるのであります。現実問題としては、まず陸上部隊第一騎兵師団、また第三海兵団等撤退は昨年末に完了いたしまして、補給部隊は残っております。従って今日までのところは、一万数千の陸上部隊がすでに撤退をいたした。こういうことになっておりまして、大体今陸に関する限りは一万七千くらいの米駐留軍がいると、こういうことになっております。空についても多少の減少がございますが、人数としては比較的少いのでございまして、大体四万人くらい今日駐留しておる、こう思っております。海については大体二万人残っておる。これもある数の撤退を見たのでございますが、大体、今日は七千三、四百か、あるいは七千までの問、正確の数字は、刻々の変動がございまするからわかりません。  駐留軍労務者関係は、全体で十二万幾千人、これは陸、海、空を通じてでございます。そのうちで、すでに解雇と申しますか、離職されるということになった者が二万七千名くらい、本年度でございます。来年度にはそれよりも半分くらいを見積っております。全体で四万数千人ということになるのでございます。この補正予算並びに三十三年度予算に計上して御承認を求めておりまするのは、特別給付金適用関係でございます。これは補正予算においては八千八百九十六万円を計上いたしております。この適用のある者は、一定条件基準による関係上、人数が、三十二年度補正における離職者特別給付金給付するだろうその基準に該当する者は一万五千六百五十七人、なお三十三年度における特別給付金の計上は、総額で四千七百八十万円でございまして、これに該当すべき者は、基準によりますと、大体八千六百人ということになって予算が計上されておるわけでございます。
  6. 曾禰益

    曾祢益君 ただいまのお話ですと、陸軍がまだ一万三千人ばかり残っておるわけですが、これは主として補給部隊かと思われるのですが、補給部隊撤退等についての今後の見通し、それから空軍並びに海軍撤退についての、あるいは減少についての今後の見通しについてはいかに算定されているか。これは申し上げるまでもなく、特別給付金の問題が今予算に問題になっておりまするが、その他一般の職業補導なり、いろいろな予算関係においても、いかなる実態であるかを把握することは、必要でございまするとともに、特需関係の方からいうならば、補給部隊がどれくらい今後残るかということは、非常に重大な問題だと思うのです。従って、それらの問題についてもう少し、三十二年度会計年度中並びに三十三会計年度における見通しをいかに把握しておられるか、いま少し詳細にお示しを願いたいのであります。
  7. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) お答えいたします。  補給部隊の今後の撤退と申しますか、縮減については、いまだ確定したものを情報としても得ておりません。大体この程度の者が駐留するのでないかということを、われわれの軍との話し合いにおいては了解いたしております。  なお特需関係がどうなるか、これもおのずから在留部隊縮減に伴って減っていく傾向にあるわけでございます。正確なる数字は、いろいろ話はしてみまするが、明年度についてまだわれわれは的確な数字を得ておりません。これは海、空の撤退ということと関連のあるものでございます。海、空の撤退は一にわが自衛隊の漸増の傾向、それと見合って逐次これを実現していこうということになりまして、基地の返還等においてもそういった、見合った状態におるわけでございます。しかし、来年度においては、この海、空の方においては相当の縮減を見るだろうということは予想されておりまするが、今見通しとしてはどの程度であるということは、的確にまだ数字的に把握をする段階ではないのでございますが、傾向としてそうあるということを話し合っておるわけでございます。
  8. 曾禰益

    曾祢益君 すでに三十三年度予算を計上されて、これに基いての、自衛隊の今年度におけるいわゆる増強計画が具体的にすでにきまっておる段階において、まだ海空軍がどのくらい減るかわからない、補給部隊がどのくらい減るかわからないということでは、これは予算が立てられない、かように考えるのでありますが、もっと明確にこれらの問題を日米間の間にはっきりときめなければ、駐留軍関係離職者対策を確立する余地がないと思う。そういう意味ではなはだ不満でありまするが、時間がありませんから、具体的な問題に入りまして、まず特別給付金の問題でございますが、ただいま防衛庁長官から言われましたように、今年の補正予算に関しては八千八百九十六万円ばかりで、これが一万五千六百五十七名を目標としておるというのでございますが、この積算根拠をもう少し明らかにしていただきたいと思うのであります。ただいまの防衛庁長官お話によりましても、約十二万一千名の駐留軍関係労務者、これはもちろん特需関係を含んでおらない数字でございますが、そのうち約二万七千が本年度、その約半分くらいが来会計年度、こういう計算であるとしますれば、二万七千のうち一万五千六百五十七名だけがどうして特別給付金の支給の該当者になるのか、それらの点、並びにこれをいかにして八千八百九十六万円というふうに計算したのか、その積算根拠を明らかにしていただきたいと思います。
  9. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。  この特別給付につきましては、金額といたしましては、三段階に分けまして、その職についておった年数が十年以上の者については一万円、講和会議後において十年未満、これには六千円、それから三年以上で十年以下、これには三千円、かような金額をきめたのでありますが、なお、これをどういうふうに割り当てていったかは主計局長から答弁いたさせます。
  10. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) ただいま大蔵大臣から御説明がございましたように、三つのクラスに分けております。一万円、十年以上のクラスの者が千八百七人、それから六千円、十年未満講和会議以前の者が九千七百八十人、これが六千円。三年以上で講和会議以前から引き続きというこのクラスが四千七十人、合計いたしまして一万五千六百五十七人、その金を合計いたしまして八千八百九十六万円ということであります。
  11. 曾禰益

    曾祢益君 私の伺いたいのは、防衛庁長官が言われた約二万七千名おるのに、なぜ一万五千六百人程度にこれがなっておるのか、これが第一点。  第二点は、三年以上十年未満、あるいは十年以上というふうに分けられましたが、各その三千円、六千円、一万円という給付金がどういう点から割り出されたのか、この根拠を示していただきたい。
  12. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 曾祢委員お尋ねになりました前段につきましては、あるいは担当局調達庁の方から申し上げた方がいいかと思いますが、今、申し上げました人数は、調達庁の方で、現在手元に持っておりまするもの、今申し上げました三年未満のものが幾ら、三年以上のものが幾らというおのおのの区分につきまして、一万五千六百五十七名という人数を算出いたしたのでありますが、なお金額の一万円、六千円という点でございまするが、これは現在駐留軍労務者が一昨日も防衛庁長官からお答えございましたように、相当にいい退職金をもらっておりますので、この際大体十年くらいのところで一万円という一つ目安を立てまして、それに対しまして、その後におきまする勤続年数のもっと短い者というものの関連を見まして、一万円、六千円、三千円というような金額を算出いたしたわけでございます。
  13. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) お答え申し上げます。人数の基礎につきましては、三十二年中に離職する総数約三万六千名のうち、三年以下のものを除きまして、一万五千六百五十七人というものを計算したわけでございます。
  14. 曾禰益

    曾祢益君 そういうお話ですけれども、実際問題としてここで問題になるのは、一つはいわゆるダイレクト・ハイヤーという、マスター・レーバー・コントラクトでなくて、直接駐留軍のサーヴァントみたいに働いている諸君にはなぜこれを出さないのか、特別給付を。第二にただいまのお話では、なぜ岸・アイク声明以後の労働者だけにこういう特別の給付金を与え、同様な条件において英連邦軍に働いておった人たちになぜ出さないのか。第三に、今、主計局長駐留軍に働く諸君退職金が割合にいいから、十年以上の者に一応一万円という特別給付金目安をつけた、こう言っている。しからば、これよりももっと劣悪な条件で働いている人、あるいは特需関係労働者にはなぜ特別給付金を出さないのか、これらについて明確なる御答弁を求めます。
  15. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 便宜私からお答え申し上げます。この特別給付金交付範囲ということは非常にむずかしい問題でございます。特に今回の給付金政府が直接に雇用して、駐留軍に提供している労務の関係だけについてと制限を設けて、その範囲でやるという基本的な方針をきめたわけであります。そのうちでも、一定年限以上の者に限ってこれを交付しょうという二つの原則のもとに予算の要求をしたわけでございます。お尋ねマスター・レーバー・コントラクト、直接調達庁において契約して雇用関係になっている者以外の、駐留軍が直接に雇用している者、これはその線から申しまして、日本政府と直接に関係のなかった方々でございます。その意味においてこの方々特別給付金範囲外にするのが適当であろうと、と申しますのは、日本政府、すなわち調達庁が直接これは雇用者としての責任をもっておるのである。で、相当長い期間にわたっていろいろ御苦労をかけ、また御努力を願った方々に対して、まあ何というか、慰労という意味において差し上げるので、正規解雇手当ないしは退職金というものは、これは正規の筋からそれぞれに差し上げる、こういうことにいたしておるわけでございまして、直接の役務特需労働者と申しますか、駐留軍直接の雇用にかかわるものは政府予算において今回の交付金は出さない、こういうことになって、その間に区別を設けたわけでございます。  なお御質問国連軍関係日本に駐留したその間に雇用された方々には、今回はこれには該当しないような取扱いをしたのでございます。今回の給付金一定年限以上という、やむを得ず財政都合でそういった制限を設けました関係から申しましても、この基準に入る方は、非常に国連軍駐留期間の短かったためにほとんど適用のないものが事実上多いのでございます。また理屈からいたしましても、国連軍撤退というものは、特に日本政府交渉の結果、撤退するというようないきさつでなかったというところにも違いがあるわけでございまして、昨年六月二十二日の日米共同声明に基いて、特に政策としてこの撤退という問題が起ったというところに限定した、こういうわけでございまして、その意味において、いずれの場合もわれわれとしては給付をしたいという気持がありますけれども、財政上の都合上こういったことに筋を立てたわけでございます。
  16. 曾禰益

    曾祢益君 私は、政府雇用者として特に日米共同声明に基いての離職者に対して特別給付金を出されるという親心は非常にけっこうだと思う。これに何ら異存はございません。しかし、ただいま筋道を立てたお話としてはこれはなっていない。なぜ岸・アイク声明のものだけがこれで特別な便益を受けるのか、英連邦軍に働いた人も同様な条件でなければならない。ダイレクト・ハイヤーも同様であり、また特需関係労働者は、あとで御質問申し上げるように、今非常に劣悪な条件で働いておる。同じ国の行政協定に基く国としての役務なり、あるいは需品関係に勤めておる労働者に対して親心がない。その基準を単なる岸・アイク声明という一つの時点にとらえて、またいま一つ調達庁自分使用人であるから特別給付金を出すが、ほかの自分が直接使用人でなければどうでもかまわない、こういうことは全く筋が立たないと思う。しかし議論してもしようがありませんから、今後そういう諸君に対しても特別給付金を認めるお気持があるのかないのか、これが第一点。  それから第二点は、この三千円、六千円、一万円というきわめて人為的なアービトラリーな特別給付金でありますが、これは言うまでもなく五万円ぐらいくれいということが予算都合上こうなったと思うのですが、これを今少し恩情ある気持でもう少しこれをふやしてやる気持がおありであるかどうか、この二点についてお答えを願いたい。これは大蔵大臣からお願いいたします。
  17. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 事情はいろいろ了とすべき点もあると思うのでありまするが、これまた全体の関係から、それから財政上の見地からもやはり判断しなければならない、さような次第でありますので、ただいまのところこの範囲を拡大し、また増加する考えは持っておりません。
  18. 曾禰益

    曾祢益君 そういう冷酷なお話を伺うのは非常に残念ですが、時間がありませんので、これに関連して私が先ほどから言っております特需企業における解雇手当、これは特別給付金の問題ではなくして、皆さんも御承知のように、昭和三十一年の十月に日米合同委員会分科会においては、労務者解雇手当の支払いに関して生じた合法的な諸経費の償還に対して、将来の契約交渉に際し、十分かつ完全なる考慮を払う、こういうことが認められたのです。すなわち特需契約出血受注の形をとる。従って労務者が当然に日本一労働慣行からいって一カ月分の予告手当プラスアルファというものはもらえる。ところが特需関係においては、れはもらえない。これは契約単価が無理に低い、こういうところからきている。この点はアメリカが認めたのですが、しかし今日なおこの問題が解決されておらない。一方において政府特需労働者には全く特別給付金を出さない、こういう状態になっているのですが、従って特需関係労働者に対して解雇手当について。プラスアルファを奨めるようにアメリカ交渉するお気持があるかどうか、この点を明確にお答え願いたい。
  19. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) これは調達庁の所管でないかもわかりませんが、あるいは関係を持っているということでお答えいたします。足りないところは他の閣僚からお答えすることで御了承願います。お説のように特需関係の仕事についての労務者に対する解雇予告手当というものが給付されないということについては、わが方といたしましては、非常にこれは残念に思いまして、すでに合同委員会においても給付に対しての勧告もあったということは、ただいまの御質問中にあった通りであります。その後この問題につきましては、米側との間に交渉を続けております。この勧告解釈については一応先方も了承したように思いますが、なおこの点についてはまだ一致した見解に達しておらぬわけであります。これはさらにこの分科会が設けてありますから、そこを通じてこの解釈に関しての意見を統一し、解決の道を進めたい、こう存じている次第であります。
  20. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 予告手当の問題につきましては、ただいま御答弁のありましたように、海軍空軍については大体解決したようでありますが、陸軍については通達がどうも不徹底なものが出たようであります。ただいまお話のように特別小委員会をさらに編成しまして、そして解決したい、かように考えております。
  21. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまお話のように、達しました協定につきまして、アメリカ側解釈というものと、日本側解釈と若干違いがありましたので、さらに特別小委員会を作りまして、今討議を進めております。いずれ結論に達するかと思います。
  22. 曾禰益

    曾祢益君 この点は防衛庁長官が一等よく御存じのようですが、ぜひこれは実現を期していただきたいと思います。  最後にもう一つ伺いたいのは、これは同僚吉田法晴君も質問された点ですが、今日この駐留軍関係労働者に対して、実質的な労働低下になるような、いわゆる特需に切りかえる。つまり、アメリカが直接に役務なり、ないし需品の形でこれを調達するという方式に切りかえようとしまして、この点については政府側においても、そういうことは困るという点で交渉を願っているわけですが、この問題は実は今日発生したのでは断じてないのです。少くとも特需関係労働者が常日ごろから劣悪な条件におかれていることは、労働者はもちろんそうですが、また特需産業関係者でも、これはアメリカ出血受注になるから、当然日本の国としてやらなければならぬアメリカに対する役務並びに需品の問題は、やはりアメリカが直接に出血の発注をしないように日本政府が勧奨して、日本政府がかかわることによって調達するように、こういういわゆる特需は間接調達方式で、日本政府を通じて調達する。こういう方式に切りかえてくれといういうことを過去数年にわたって実は政府に訴えてきた。これがされておらない。今度は駐留軍関係労働者がPDに切りかえられることに直面している。従ってこれはもとより駐留軍関係労働者がPDに切りかえられることに反対していただくことは当然であるけれども、問題の根本はやはりこういったような政府が干渉しないで、アリメカが業者をたたいて、そのしわ寄せが労働者にくるような特需という形による直接のアメリカのたたき買いを押えるように、間接調達方式に切りかえるという、こういう根本方針を立てて、これでやっていくことがほんとうではないか。このことは決して日米行政協定の改訂をしなくても、その解釈においてできるのではないか、かように思うのでありまするが、これは非常に重要な問題でありまするので、外務大臣防衛庁長官並びに労働大臣、通産大臣、それから総理大臣のお答えをいただきたいと思います。
  23. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま御質問のありました点につきましては、行政協定上は必ずしもどちらでなければならぬということには相なっておらぬと思います。しかしその意味におきまして、非常に重大な問題でございますから、われわれも十分考慮していかなければならぬと思います。また最近のPDの切りかえにつきましては、政府お話のありましたように取り上げ、二月八日の日米合同委員会以来、これに対して折衝を続けております。アメリカ側もある程度その日本側の申す趣旨については了承しておりますが、アメリカ側の立場をるる説明しております。なお所管関係その他の問題については、個々の事例に応じて相談をしていこうというような話し合いが進められております。
  24. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 間接方式と申しますか、それに対する要望は以前経団連からもいろいろ要望があったようですが、なかなか向うが承認しない。(「経団連ばかり相手にしないで、労働者の問題も考えなさい」と呼ぶ者あり)労働者の問題もさることながら、そういうふうな関係にあったようです。ただ問題は、これは、向うの責任というものがはっきりしていない点でありまして、この点は何とか明確にするようにということで、日米合同委員会等にもお願いしておるので、さらに責任の問題、あるいは直接、間接方式というような問題につきましても検討し、推進すべきものは推進していきたいと、かように考えております。
  25. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 調達方式の問題は、直接私の責任の問題でもございませんが、私どもの方といたしましては、労働者に対する正当の待遇と保障が与えられる方式が一番望ましいのでありまして、そういう方向へ向けて努力が傾注されることを望んでいるわけであります。それから今の特需切りかえの問題につきましては、これまた労働者条件が悪くなりますから、ただいま外務大臣その他からお答えを申し上げましたように、日米合同委員会を通じまして、とりやめ方を交渉願っておるわけであります。現にそういう形式で実行された場合、それが職業安定法違反になる疑いも生じます。労務供給事業類以の行為としての疑いも生じて参りますが、これは個々の事例をよく調査してみませんと、法律上の断定は下せませんが、そういう実情については厳格な態度を持って望みたいと思います。
  26. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) ただいまの問題は、各担当閣僚から御答弁になりましたように、二つの問題がございまして、現実に起っておる特需の切りかえという問題につきましては、過日も吉田委員お答えをした通りでございまして、われわれといたしましては、先方に対して最も厳重に反省を願って、この問題を処理したいと考えております。  間接調達方式につきましては、これは調達庁担当大臣といたしましても希望すべきものがあると思います。これはちょっと関係省とも連絡し、またそれに向ってどういう実現の方法があるかというようなことについてさらに考究を進めたい、こう思う次第でございます。
  27. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 曾祢委員の御質問の問題は、私もきわめて重大な問題だと思い、従来関係の各大臣にもそれぞれ事態の公正な解決について努力するように言っておるわけでありますが、具体的には各大臣が御答弁申し上げましたように、内閣としてもこの問題の適切な解決のために今後とも十分努力していきたいと考えております。
  28. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 曾祢君、だいぶ時間が……。
  29. 曾禰益

    曾祢益君 残念ですが、時間がありませんので、別の機会に譲りまして、  一応これで終ります。
  30. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、本日は主として岸総理に対する御質問を中心にお伺いしたいと思うのです。  私は岸総理がその組閣に当りまして、政策の中心を暴力と汚職と貧乏の三悪追放を広く国民に公約されました。私はこれにつきましては非常に賛成なんです。と同時に、この委員会におきましても、しばしば強くこれを主張されてこられた。そこで、まず第一にお伺いいたしたいのは、この三悪追放の具体的な所信をお伺いしたい。と同時に貧乏に対する総理のお考え、どこに理念をおいでおいでになるかという点についてお伺いいたしたい。
  31. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私が組閣以来、国民に向っていわゆる三悪の追放ということを申して参っております。この問題は御承知の通り、従来日本の社会に存している一つの私は悪である、だれもがこれを除いて明るい、きれいな、しかも国民全体がそれぞれ生活を楽しんでいくということのできるような世の中を願っているということは、これは申すまでもない。私があらためて申すまでもなく、政治の衝に当る人は何人もこういう心がまえで、またこういう施策をしてきたと思います。しかも、なおこれが除かれないところに現在のわれわれの悩みもあり、また同時にわれわれが政治を担当していく上において、これに対してより一そう強い決意を持ち、またこれをなくすることについての具体的の方策を進めていく処置をとっていかなければならない。そうしてこれを国民の諸君もよく理解してもらい、これに対して同様な心がまえをもって、これをなくしようということに御協力を願うということがあって望ましい、こう思っておるわけであります。そういう問題でありますので、なかなかこれを口に唱えましたからといって、一日にしてなくなるものでもなければ、またいろいろな施策を講じましても、なかなか容易になくすることができません。相当根強い害悪が日本の社会に私は根をおろしておる。そこでこれらのものにつきましては、何といっても今申しましたような立場に立って、まず政治家、私ども指導的立場にある者が、できるだけ身をもって垂範するという格好で臨まなければなりません。従って政党自身の内部においてもそういう問題がありますし、また公務員の立場におきましても、そういう問題に対して真剣に取り組んでいかなければならない。いろいろな制度の改革であるとか、あるいは法制の不備なものを何していくという問題もありましょうし、また取締りを厳重にし、その過程におきましては、今までそういう事態があったことに対して、いやしくも仮借せず、これを摘発して、将来の戒めとしていくということもやらなきゃならぬ。すなわち、その途上におけるある程度の犠牲もこれもやむを得ないと考えてこれに臨んでおるわけであります。  しこうして、貧乏の問題は、これは汚職やあるいは暴力と違って、私はほかのものももちろん個人が悪いことであり、その起る原因には社会的な原因もあると思いますが、貧乏の問題は、これはもっぱら一つの社会、政治の問題である。当の本人が悪とか善とかという問題じゃないと思います。そういう意味においてこの貧乏というものをなくするということは、要するに国民全体がその生活を安定し、そうして豊かにしていくということでありまして、貧乏という観念そのものは一種の相対的な問題であると思います。しかし現在においてわれわれの最も最初に考えなきゃならぬのは、最低の生活すらできないという階層といいますか、国民が相当にある。これに対してまず最低の生活を保障するということが、何といっても第一段にやっていかなきゃならぬ。そして、だんだん国民全体の生活を豊かにし、向上して行って、文化、福祉というものを増進するようにやっていくというふうに考えているわけであります。その方策もいろいろございますけれどもなお御質問もございましょうから、それについてお答えすることにいたします。
  32. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は総理の公約にもかかわらず、貧乏がふえている。本年度厚生省の白書によりましても、ボーダー・ライン層が千百十三万人、全国民の一割二分四厘を占めているのです。こういうことに対して、組閣されてもう一年を経過しておる。ところが総理の公約にもかかわらず、こうした貧困層が非常にふえてきた。しかも今回の予算を見ますと、社会保障費はふえたと言われるけれども、予算の総ワクにおきましてはむしろ減っておる。昨年度は一〇・一%、今年度は九・五%というふうに〇・六%は減になっておる。しかも、その中で生活保護費がまあ十五億ばかり組まれておりますけれども、これは米価の値上りであるとか、診療報酬改訂に要する費用とか、こういうものを引きますと、生活保護に実際に使われまする金額は三億とちょっとしかふえていない。こういうことで一体貧乏の追放ができるでございましょうか。その点について一つお伺いしたい。
  33. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 貧乏を追放するの道は、私は大きく言って二つ考えなきゃならぬと思う。第一は何といっても経済を繁栄せしめる積極的な施策をとっていく。そして安定した基礎の上にだんだんと経済を発展させ、繁栄さして、そうして、これの潤いを全体に与えるという考え方が一つと、もう一つは何といっても恵まれない人々に対して国家が社会保障の制度を拡充していくという、この社会保障制度の拡充という問題であると思います。今お尋ねになりました社会保障の問題については、私どもはかねてこの医療保障と、そうして老年になった場合におけるところの所得保障の国民年金と、全国民の皆保険のこの二つを柱として進んでいきたい、こう考えておるわけであります。しこうして、これらのものの何に対しましては、それぞれ準備を進め、また年次計画を立ててこれが実現に向っておるわけであります。しこうして、生活保護の問題に関しましては、われわれももちろん今回の増額をもってこれで一切が、貧乏が一挙にしてなくなるというような考えは持っておりませんがしかし、その方向にわれわれが努力していく。今申しました根本の方策とあわせて、そういう各種の社会保障のものにつきましても、われわれはできるだけこれに力を用いるという配意のもとに、今回予算を出しておる。もちろん十分ではございませんから、いろいろな御批判があろうと思いますけれども、方向は私どもそういうふうに考えております。
  34. 藤原道子

    ○藤原道子君 十分でなさ過ぎるのです。で私は、努力いたしておりますとか、いろいろそうしたお答えはもう聞き飽きているんです。総理も今言われましたように、社会保障制度の確立によっていろいろな社会的なこうした疾病を解決していくということは、これは当然のことなんです。政府はもう数年にわたって社会保障制度を確立いたしました。その具体的案はといえば、目下五人委員会に諮問しているとか、あるいは社会保障制度審議会に云々、こういうことによって今日までずるずる引きずってこられた。ところが本日の読売新聞でしたか、答申が出ておりましたが、社会保障省を作って、この際抜本的な政策を樹立するようにということが載っておりますが、政府におかれましては、この重大なる社会保障問題に対しまして、社会保障省をこの際一本打ち立てて、これによって総合、強化拡大して実現していこうというような御意思があるでしょうか。その点についてお伺いしたい。
  35. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私どもの第一段に考えなきゃならぬことは、言うまでもなく社会保障制度そのものの内容の拡充、強化ということであろうと思うのです。しかし、それに関連してこの行政機構の問題、これを強力に推進するために、また考えられるいろいろな制度の問題ということも、行政上の制度の問題ということもありましょう。しかし要は先ほど申し上げましたように、社会保障制度そのものの内容の充実と強化、これの実現にあると思います。今の厚生省の組織でもって私は現在のところそれが達せられないとは考えておりません。従って特別のこれがためにそういうふうな行政機構の問題については今は考えておりません。
  36. 藤原道子

    ○藤原道子君 今の厚生省の機構で十分やれる。こういう御答弁でございますが、十分でないからこそこういうことが起きてくると思う。私は歴代政府が公約されました、日ならずして実現いたします、こういうことを繰り返されておりながら、何らされておらないから、これは大内会長からこういうふうな答申が出てきておると思う。私は非常に不満足でございます。総理が言われましたように貧困追放に対しましては、社会保障制度の確立がこれはどうしても急がなければならない。あなたのおっしゃった通り、私も国民皆保険、それから国民年金制度の樹立、これを急がなければならない。この二本の柱に支えられてこそ初めて実現できると、私もそう信じておる。ただそのやり方について私たちは総理にお伺いしておるわけだ。そこで今までしばしば言われながらやってこられていないんでありますが、現在国民皆保険についてまずお伺いしたいんでございますが、保険制度に加入してない約三千万人のこの国民大衆に対して、具体的にどのような方策を持っておいでになるか、これをお伺いしたい。
  37. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私どもこれに対しましては、一つの年次計画を立てて進んでおりますが、その具体的内容については厚生大臣よりお答えをすることにいたします。
  38. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 御承知の通りに三十二年度から四カ年計画をもちまして、皆保険を推進いたしております。しかし私厚生省に参りましてから考えましたことは、どうしても医療費の問題及び地方財政との関係、この二つが非常に大きな国民皆保険推進の隘路になっておるというので、実はこの二つの問題をまず解決いたしたいというので、医療関係につきましては、三十三年度下半期から調整することができ、あるいは地方財政との調整につきましても、事務費の負担を上げますとか、あるいは医療給付費に対しまして、二割を二割五分に、もっとも五分は調整交付金でありますが、これらの問題を解決することによって、まず非常に大きな支障になっておる柱を除くことができるのでなかろうか。そのほかにも問題がございますが、さしあたりこの二つの問題が長い間の懸案になっております。三十三年度予算におきましては、これを解決することができると考えております。
  39. 藤原道子

    ○藤原道子君 その三十三年度において解決されるという具体的な方針をお示し願いたい。
  40. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 今申し上げましたように、まずこの皆保険を推進するのに、医療費問題が六年間そのまま放置されてあったわけであります。従いまして、これを八・五%上げますことによって、大体各医療機関の赤字及び適正な最近の医学の進歩に伴いますところの医療給付ができるのではなかろうか、地方財政とのものは、今、具体的に申し上げたような方法、従来事務費につきまして、これは毎年上げておりますが、六十八円から八十五円になり、三十三年度予算では九十円になっております。それから調整交付金の問題は、従来は二割でございました。ところが二割でございますと、財政上何と申しますか、必ずしも負担ができないような県及び非常に大都市等におきまして進捗いたしておりません。で、二割五分に大体五分の調整交付金をいたしますと、大体非常に貧弱な市町村に対しましては三割までいき得るというふうな考え方ができますので、これならば従来の支障が解ける。で、この問題でもう少し付加いたしますと、三十二年度に三千五百万人の被保険者というものを見込んでおったのでございますが、これが実績通り参りません。実績通り参りませんのは、この二つの隘路があるということでありまして、今のような問題を解決すれば、大体年間四百万人以上の人の加入を見込み得る、こういう考え方でいたしましたような次第でございます。
  41. 坂本昭

    ○坂本昭君 関連して。先ほど総理は、今の厚生省の組織でできるといって、非常に厚生大臣を持ち上げられましたが、それからまた厚生大臣は、今のような計画でできると言いましたが、私は絶対にできないと思う。それは第一、あと残っている国保に入らなくちゃいけないところの一千五百万の人、この人に対する分析が私は非常に不十分だと思うんです。で、この中に残っているのは、たとえば都会では東京あるいは大阪が残されております。それから今度は、もう一つ奇妙なことに残されているのは、鹿児島だとか高知だとか、そういうへんぴな所、こういう所が対照的に残っておる。ということは、何を物語るかといいますと、零細な企業、自家営業、それと零細な農民、こういう一番入りにくい人たちが残っているんです。だから今までのような考えでやったって、絶対に私はいくはずがないと思う。ことに今保険の一世帯に対する負担料というものは、だんだんとふえてきている。すでに二千円台から三千円を突破しようとしている。今この時代に、零細な農民や、あるいは零細な自家営業をやっている人たちが、三千円以上の負担を、喜んですぐ出すはずがあるか、私は非常に厚生大臣は甘い考えを持っておられると思う。さらに、現在の国保で行われている財政状態を見ればわかる通り、非常に政府はずるいのであります。人のふんどしで相撲をとるようにしている。たとえば各市町村の一般会計の繰入れが非常に多い。この間いただきました資料を見ても、国が補助する事務費の補助額、それよりももっとよけいに各市町村は一般会計の繰入れをやっている。さらに奇妙なことは、各県などでは、一人八円五十銭あるいは十五円といったものを、助成金といいますか、県が補助金を出しているんです。こういうような一般会計の繰入れや、あるいは県の補助金、こういったものに頼って、そうしてしかも先ほど、今まで二割国庫負担をしているというけれども、この負担の仕方には実にややこしい規則があって、これはもう総理は御存じがないかもしれませんが、第一方式、第二方式、第三方式と、その保険料の徴収が、九〇%であるか九六%であるかによって補助の率が違ってくる。で、こういうふうな、しかも補助率が違うだけでなく、非常に熱心な所でも、完全に二割の国庫負担を今までもらっていないんです。私はこういうような状態で、たとえ算術的な計算を、三十三年度、三十四年度、三十五年度と三カ年にわたってやったとしても、私はこれはでき得るはずがない。ことに一番の問題は、被対象者の零細企業家や、あるいは農民が好まないということです。保険料が高いだけじゃない、給付の内容が悪い。しかも傷病手当金もつかない、だから魅力がないんです。魅力があれば、これは岸ブームがわくように、魅力がなければ国民は去っていきます。現在の国民皆保険というものは全然魅力がない。この魅力をどうして起すかということ、先ほど藤原委員質問されたのは、具体的というよりも、この今取り残された千五百万の大衆をどうして国保の方に引きつけるか、その魅力をどうやって作るか、私はその魅力について厚生大臣のお考えをお尋ねしたい。いかにして魅力を作られるか。
  42. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 今いろいろお話がございましたが、事実何と申しますか、地方で国民皆保険を進めるための事務費が、実費を償わないというふうな情勢でありますが、しかし、ともかくも毎年にわたりまして、逐次上げて参りました。今回九十円まで上げることになった。医療費も六年間据置きであったのでありますが、この問題につきましても、ともかくも長い間の懸案を、ある程度目鼻をつけ得るというふうな情勢であります。それから一般会計から医療給付費に対しまして、二割及び五分の調整金をつける、これも長い間の問題であったのでありますが、ともかくも確かに今二割では、多い所は二割五分くらいいっております。と同時に、少い所では一割二、三分しかいっておりません。そういうことが私は国保を進展するためには、どうしても支障になっておる。だから給付内容に魅力のないことも私は御指摘の点だと思います。今回、国民健康補保険法を改正いたしまして、大体健保と同じ程度の療養給付を内容とするというふうにいたしたい。確かにこれらの問題について、国民自身が魅力を感ずるようなことは、私は非常に必要である。ただ先ほどおっしゃいました医療費が三千円くらいの支出になっておる。確かに毎年この問題につきましては、文化程度の進展に伴いまして、医療費のある程度かさんで参るということは、これは私は当然でなかろうかと思いますが、ともかくも各府県の給付内容というものについてのアンバランスを直して参るということが確かに必要である、こう考えております。
  43. 坂本昭

    ○坂本昭君 厚生大臣の説明を伺っても、なかなか納得できないのです。私はまあ総理も非常に熱心に社会保障を進められようと言っておられる。これは総理が悪いのだか、厚生大臣が悪いのだか、どっちが悪いか、こんなに仕事がうまくいかないのを非常な疑問を持っている。たとえば、これは今国保の問題を取り上げましたけれども、政府管掌の健康保険につきましては、従来は三十億の国庫補助金がついております。ところが、これが今度は、三十三年度は十億に削減せられる。これは衆議院の予算委員会におきましては、大蔵大臣は、政府管掌の方は次第に黒字になってきた。そうして三十億を十億に減らして、その二十億をもって他の保険の方の助けにしよう、その方に回すから、実質的には十分その金は補助金として生きているというような、実に詭弁を弄しておられるのです。ほんとうに国民皆保をなし遂げようとするならば、一番のむずかしい問題は、国保を拡充することと、もう一つは、五人未満人たち、この人たちをわれわれ社会党は健康保険に入れていきたい、政府管掌の健康保険に入れていきたい、そう考えている。そうすれば、この政府管掌の健康保険というものは当然今後とも財政的には非常な重荷を負うのであります。だから今まで三十一年、三十二年と三十億も補助金を出してきたならば、さらに国民皆保険の第二年度を始めるときに当って、三十億よりももっとぶち込んで、そうしてこの政府管掌というものを守っていく、育てていく、そうしてこそ、初めて国民皆保険というものが、この五人未満の事業所を、いな、さらに実は五人をこえるところの事業所においても入っていない人はたくさんある。当然入らなければいけない人たちがたくさん入っていない。こういう人たちをどうしても入れるというこの方針が成り立たないのであります。私は、これは一体だれがこうしてこういう三十億の予算を十億に削ったりして、われとみずからこの健康保険の拡充を阻害しているか。この責任は総理にあるのか、あるいは厚生大臣にあるのか、その辺をしかとお聞きいたしまして——私は実は総理を信頼して、社会保障は必ずできると思って考えてきたのですけれども、どなたがそういう措置をせられたか、その責任はどなたにあられるか、一つ総理の御所見を伺いたいと思います。
  44. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 大蔵大臣から……。
  45. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この政府管掌の健康保険に三十億出しておりましたのを、十億に減じました。これは私ども何も、健康保険が充実されていくことはむろんこれは望ましいことで、これについてこれでいいのだという考え方を持っているわけでもありません。がしかしながら、やはり健康保険を考える場合には、健康保険全体、保険制度全体について考えていかなくてはならぬということは、これはまあ財政上の制約もあるからでありますが、そうしてみました場合に、この健保におきましては三十一年において、非常な努力の結果でありますが、四十八億程度の黒字を出した。従いまして三十二年度におきましても、それ以上の黒字が出ることが予想されるのであります。かような状況でありますので、むろん国の補助というものを他の関係においてなくするということは、これは適当でない。がしかしながら、そういう状況であれば、今回は十億程度にとどめて、そうしてこの二十億は他の社会保険の充実に回すことは私は適当である。ひとり健保だけが充実するということだけでもいかないのであります。全体の社会保険がやはりバランスをとりまして、社会保険全体としての発達を念願するわけでありまして、そういう意味におきまして今申しましたようにこの二十億の減額をいたしましたわけであります。これは特に財政的見地からとともに、社会保険全体の発達ということからやりましたわけでありまして、だれもがこの保険制度の発達をこいねがっていることは変りありません。そういう意味において、だれに責任があると言えば、私が特にこういう点を強く主張したということは申し上げておきます。
  46. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はただいまの大蔵大臣の御答弁には絶対に承服いたしかねるものがございます。政府管掌の健康保険の改正に当りまして、あなたがた、どんなむごいことをしたとお考えになりますか。中小企業に働いておる労働者の平均賃金は一万二千円、そのうちに八千円以下の者が四六%ある。この人たちから、一部負担を強化し、保険料率を引き上げる、入院料を取る、こういうことがあのときの中心的な問題点であった。それからそのときに私どもは八千円の人がもし入院した場合には六割しかもらえない。この給与の中から一日三十円の入院料を取ることは無理だと、あくまでも反対いたしましたときに、あなたがた何て言った。患者もがまんしてくれ、政府の方も三十億づつを負担すると、こういうことを言われた。黒字になったのはどこに原因があるか。ほんとうに食えるか、食えないか、生活保護を受けている人たちとすれすれの点にある人たちが、ほんとうにつらい思いをして……。取り上げているのじゃありませんか、その人たちから。だからもしも保険経済が好転したならば、無理やりに上げた保険料率を引き下げるか、入院料を取るのをやめるか、初診料を下げるか、こうしてその後において政府財政的理由を云々されるのが正しいと思う。こういう無理な取り上げ方をしておきながら、黒字になったからほかの社会保険へ回すのだ、そういう考え方だから、社会保障に対する政府の信念を疑わざるを得ない。どうなんです。
  47. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この御意見は全くそれはその通りであります。(藤原道子君「その通りならそうして下さい」と述ぶ)むろん私どもにしても、なるべくこの保険料も下げ、診療費も下げる。そうしてこの貧しい人が社会的の恩恵に浴することを希望すること、それはむろん異存はありません。しかしながら同時に、また財政的な見地もやはり考えていかなくてはなりませんので、そこに大蔵当局としてはやはりまあ悩みもあるわけでありまして、三十億の、この国保に三十億入れますときの他の一般の保険者の、被保険者等の条件というものは、もう少し違った形であったのです。ところが、まあこういうことを今申すこともありませんが、これは国会でのずっといろいろな御意見もありまして、政府の方は三十億入れることにしましたが、他の条件は非常に緩和された事情もあるのでありまして、私は財政が許すにつれて——ただ国が自分の補助金を少くするとか、なるべく出さない、そういうことは考えておりません。今後国の財政が許すにつれて、私は被保険者、その他の人々の負担が軽くなるように持っていきたい、かように考えております。
  48. 藤原道子

    ○藤原道子君 岸総理に伺いたい。あなたの政府ではこういう考え方なんだ。社会保障を推進する、貧乏を追放する。まことにけっこうなんですけれども、一方において八千円以下の労働者が四六%も占めておる。この政府管掌の健康保険、この赤字の解消に当って、ずいぶんむごいことをしておるのです。われわれが絶対反対しているにもかかわらず、多数をもってこれを押し切っちゃっている。それで今日少し経済が黒字に転じたからと言って、一方労働者にかけた負担はそのままなんです。そのことによってどれだけ悲劇が起きているかということを一つ考えていただきたいのです。社会保障という建前から作る健康保険ならば、なぜ国家の保障は三十億すると言ったら、なぜその三十億をそのままに遂行することができないのでしょうか。くれだましのようなことをするから、民心が悪化する、悪化するとおっしゃっても、そこに原因があることをあなた方は考えていただきたい。総理はどういうふうにお考えですか。
  49. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 今日この健康保険の問題といたしまして、政府管掌の保険、国保、また組合管掌の保険等がございまして、その給付の内容、条件等につきましてもいろいろ不統一な点もございます。望ましいことは、これらの保険制度ができるだけ給付内容をよくし、また同時に零細な企業やあるいは恵まれない人々等がそれぞれこれに加入して健康保険が得られるということにいかなければならんと思います。しこうして建前から申しますというと、政府もできるだけの財政の許す限りこれが負担もいたしますと同時に、国民にもそれぞれの何に応じた負担をしてもらって、これらの保険制度を完備していくというのが根本の考え方であろうと思います。従いまして現在のところにおきまして十分なすべてのものの調整がとれており、十分に合理的にすべてがいっておるということは、これは申しかねると思います。しかしわれわれとしては、社会保障制度の大事なこの国民皆保険の制度を推進していく上におきましては、そういういろいろな矛盾や、あるいは不統一や、あるいは十分に負担の均衡の得られておらないようなことにつきましては、今後とも十分に検討してこれを是正していくことに努めなければならんことは言うを待たんと思います。しこうして本年度予算において三十億の従来一般会計からの政府管掌の保険に対しての支出を十億に減らしたということにつきましては、いろいろと御議論もあろうかと思いますけれども、とにかく一般財政とこの政府管掌の保険の経理の内容と実態というものをにらみ合わして、政府としては必要な措置を講じたわけであります。今後におけるいろいろな推移を見まして、できるだけこの患者の負担を軽くしていくということは望ましいと思います。保険経済というものが成り立つ限りにおいては。また一般財政からも許す限りにおいては一般会計からも負担するということにしていきたい、かように考えております。
  50. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は経済のバランスなんていうことで解決はつかないと思います。困る労働者から無理やりに引き上げたのだから、これをもとへ返してしかる後に政府が云々するなら了承しないこともないけれども、一方に犠牲を背負した労働者の負担はそのままにして政府がこういう食い逃げをするところに政治的良心を私は疑うものなんです。そこでお伺いいたしたいのは、国保の補助が二割五分でやっていけると思いますか、厚生大臣。これはそういうことをしてろくに魅力がないと坂本委員が言われましたように確かに魅力がないのです。その上に地方の負担が非常に多くなってくる、地方の赤字が累積しておる。幾ら政府がそういう予算を立てられても、計画を立てられても、地方においてこれがなされるかどうか、それは自治庁長官からも聞きたいと思うのです。  それから今一つは、これを何とかしたいと思って地方においてはむしろ診療所とかいろいろなものの整備を急いでおる、これは保険とは別個の問題になってやっておられまするが、これらに対しましては何とか個々の運営が正しくいくようにといって、地方ではそれぞれ苦労している、これらに対して政府はどのような見解を持っておいでになるか、はっきり補助するような意図がおありになるかどうか、この点について伺いたい。
  51. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 大体二割と五分の調整金をつければ現在のところ私どもは大体地方財政との調整はつくものと思っております。ただ一般会計から補助しているうちに、これは実際保険会計だけで持っていいものもあるわけであります。それらの問題については自治庁とよく相談をいたしておるようなわけでございますが、その赤字のおもなるものを調べてみますと、事務費が実費を償わないというところに従来、過去の赤字が相当多かったということを考えております。いずれにいたしましても、市町村の一般会計と国保会計との調整については十分相談して参りたいと、こう考えているわけであります。
  52. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 三十一年度の決算を見ますと、一般会計から三十三億、特別会計自身の赤が八億でありまして、合計四十一億といっております。しかし、この三十三億につきましては、それぞれ財源を付与いたしまして手当をいたしました。私はこの国保の特別会計にみまして、徴税についてのさらに努力、あるいは保険税と一般市町村税を同時にとる人員配置についても合理化するとか、いろいろな点に努力しなければならぬ点はあろうかと思います。あろうかと思いますけれども、私はこれからの厚生省等のいろいろな努力に呼応いたしまして、何とか赤がなしにやっていける会計にいたしたいと考えております。
  53. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 関連。私ちょっとお伺いしたいんですけれども、国の方からめんどうをみると、こうおっしゃいますけれども、しかし末端の町村にいきますというと、厚生省側はもちろん国保を振興拡張していけ、こういうことで、一般会計から国保特別会計へ繰り出しということを大いに奨励していらっしゃる。ところが自治庁の系統からいけば、年に一般会計から国保特別会計への繰り出しは減少しなければいけないという指示を出している。しかも一戸当りおそらくは二千八百円、三千円近いくらいの国保税というものを出している。その負担にたえられないばかりじゃなくて、現実の町村の会計から申しますというと、毎年どうしたって繰り出しをしなければならない。ところが自治庁は繰り出しをしちゃいけないということを指示していらっしゃる。これじゃ国保をどんなに拡大していこうといったって、地方団体としてはできないわけであります。この点はいかがでしょうか。
  54. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 厚生大臣も申しておりました財政調整の交付金、これらも地方財政の緩和をはかろうとする努力でありまするし、また私どもが特別会計の内容を見ますと、たとえば直営診療所だとか、保健婦とか、こうしたものについては一般会計でみるのがふさわしいと思います。従いまして、そうした区分のあるものについては、これは一般会計も考えなければ相なりません。しかしこの特別会計というもののやって参りますように、これは事務費の点でもあります一部負担の徴収の点もございますけれども、事務費の点でありますとか、この国保の財政調整交付金でありますとか、これは必ずしも私は十分な金であるとは思いません。思いませんけれども、将来、これをさらに増していきます努力もしなければ相ならぬと思います。現在は与えられました財源の中で、そうしてまた負担の区分上一般会計でみるべきものは、これはみるべきものだと思います。そうした振り分けをはっきりつけまして、関係当局の問で善処して参りたいと思います。
  55. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 もう一つ、郡長官はそういうふうにおっしゃるんですけれども、現実どうしてもやっていかなければならないと考えている町村は歯を食いしばってでもやっていこうと考えている。そのために一人々々の対象に対しては重税であるということを称しながら二千数百円あるいは三千円近いくらいの保険税を徴収している。それでもやっていけないから、一般会計から四、五百万円くいの繰り出しをしよう、そうすると、自治庁は一般会計から繰り出してはいけない、こういう指示を出している。こういう指導の方針であるのかどうか、その点はっきりお伺いいたしたい。
  56. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 一般会計の財源は、自主財源としては税であります。その場合に保険について見ますると、職域の保険に入っておりますもの、国保一本にいっておりますもの、これがなるほど国の租税ということになりますと、かなり広い範囲に及んでおりますので、地方の税はその自治体が直接関連いたしておるように相なっておるのであります。従いまして一般会計から繰り入れるという形をとらないで、そうして何とか特別会計でやっていけるようにする、そういう態勢にもっていくということは、これは自治庁も厚生省とも共通の何ら差異のない考え方でございます。繰り返して申しますならば、一般会計で当然見るべきものについてはこれははっきり見ていくというような形をとりながら、特別会計の健全化をはかることに関係省との間に意見を統一しております。
  57. 坂本昭

    ○坂本昭君 先ほど厚生大臣は事務費の補助について御説明されましたけれども、三十一年度の収支状況を見まするというと、事務費の補助金が二十億八千二百万円であります。それから先ほど厚生大臣も指摘せられた市町村でまかなっている事務諸費、これが三十五億五千九百万円、二十億八千二百万と三十五億五千九百万、非常な隔たりです。この隔たりについて厚生大臣としては非常な苦痛である。この事務費のことについて自治庁としてはどういう方針を持っているか、もう少し具体的な説明をしていただきたい。それからなお厚生大臣はそのことについてどういう努力をしておられるか、御説明願いたい。
  58. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 事務費につきましては、社会保障制度審議会の答申を見まして、これが不足をしておる、またこれが御指摘のように地方の負担を増してくる原因になっておるということは言えると思います。しかしながら今年の予算を見ましても若干の改善はできておる。私は一方では先ほどもちょっと触れましたが、人員配置の合理化ということもしたらよろしいと思います。そうして財源をさらに賦与する努力はいたしましても、今の与えられました事務費、十分ではないにいたしましても、これが改善された以上は何とか赤字を出さないようにやって参ることにいたしたいと思っております。
  59. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 御指摘の通り事務費が非常に過去の赤字をふやしておる、何とか適正な基準を保ちたいというので、実は大蔵、厚生両省で現地を実際視察いたしまして、現地の調査をいたしまして、いろいろの意見はその費用について議論があるわけでありますが、率直に言って、もう少し上げれば赤字は解消するんじゃないかという考え方もできたのであります。しかし何分にも全体の予算関係から調整いたしますときに、今回の値上げをもって一応がまんすべきである。それからもう一つ御指摘になっております自治庁と厚生省の方針とおっしゃいますが、これらにつきましては、実は自治庁と事務的に調整をはかっておる最中でございます。決して双方が違った方針で参ることはない。今郡長官も言われましたように、一般会計で負担すべきもの、それから保険会計で負担すべきものとのその間にせつ然たるものを作ろうじゃないかということでお互いに相談しておる最中でございます。
  60. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は政府答弁が、何とかこの場をつくろいさえすればいいというような逃げ口上が多いと思うのです。郡さんなんかは明らかに通達を出しているのですよ。これくらいのことはわれわれは知っている。もう少しまじめな御答弁をいただかなければ、私どもは賛成できない。審議する意欲を欠いてしまう。委員長、注意しておいて下さい。私は時間の関係上次に進まなければなりませんが、そういう意味でもっと真剣に保険経済のことを考えてもらいたい。  さらに、この健保財政の建て直しのためにも、現在社会保険が非常に困難を来たす原因の一つに結核患者が相当保険経済に食い込んでおると思うのです。従って政府のこの結核に対する根本的な態度を私はお伺いしたいと思います。ちょうど昭和二十八年度に結核実態調査を行なった結果、要治療者が二百九十二万人、そのうち入院を要する者が百三十七万人という結果が出ております。これに対して急務とされましたところの、昭和三十年の三月には、結核対策の施設改善に関する勧告、これが出て、三十一年の十一月には医療制度に関する勧告、これが社会保険審議会から出ておるのです。ところがその後一向にまちまちです。今日結核に対する治療費は、個人の負担では不可能だ、これがもう社会的常識なんです。専門家の結論なんです。これに対しまして政府は、結核対策にどういうふうな手を打とうとしておいでになるか、このことを岸総理からお伺いしたい。
  61. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 結核の問題が保険制度の非常な負担になっており、またこれが非常な日本の社会的に申しまして重大な問題でありますので、従来ともいろいろな方面の御意見も、また調査研究に基いて、政府としてもそれぞれの対策を講じ、この結核というものをなくするという方向にあらゆる努力をいたしております。御承知の通り現在におきまして、すでに文化の進んでおる国においては、かつて歴史的に結核の問題が非常に大きな社会悪としてあった国々におきましても、漸次これがなくなってしまっておるということでありまして、対策さえ具体的に有力に進めるならば、この問題は解決できると思います。いろいろな方策をとっておりますが、具体的にこの問題については厚生大臣からお答えすることにいたします。
  62. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 結核の療養費の二〇数%にも及んでおるというのは御指摘の通りでありまして、この問題が解決することが国民にどれだけの幸福と、そうして貧乏からいわゆる解放するかという問題になることは、御指摘の通りであります。ただ御承知の通りに私どもは、結核を何とか五カ年間で国民のうちから半減するだけの問題ができないだろうか。幸いに最近の医学の進歩、薬学の進歩等は、この問題が必ずしも不可能でないというふうな情勢で考えたのでありますが、残念ながらこの問題は今年度予算において実現するに至らなかったのであります。予算としては、まことに今年度予算の性格上なかなかこの問題は解決しなかった。それで私どもとしては、従来の方式によっても何とか一歩前進することができないだろうかというので、毎々申し上げますように、予防面では検診を強化いたしまして、従来は実は検診の自動車だけ買っておりましたが、今回は新たに約二百名近い検診班を充実することにいたしました。その検診の車にはお医者さんでありますとか、あるいはレントゲン技師でありますとか、保健婦というものを一組にいたしてやって参る、これでよほど健康診断の能力はふえたのであり、保健所の従来の仕事はやや緩和いたしますということが言えるのではなかろうかと思います。なおその際に健康診断にツベルクリン反応と、レントゲン検査を一緒にするというふうなことも、この点からは相当実施能力がふえてくるのではなかろうかというふうに考えている次第であります。そのほか化学療法を一ヵ月治療期間を延長いたしますとか、あるいは公費負担の対象人員をふやしますとかいうことをいたしまして、従来よりはよほど何と申しますか、所期の方向、われわれの意図している方向が実施できるのではなかろうか。ただ今おっしゃったような強制治療、強制入院等に対しまする問題は、これは何と申しますか、解決することがなかなかできない状態である、従来以上にはむずかしい問題である。率直に言って実は結核関係におきまして、治療面におきまして強制入院、強制退院というふうなことができて、しかもほんとうに患者の何と申しますか、治癒期間を短縮し、そして効果をあげるというふうなことがむずかしい、従来通りであるというふうな点で、私どもが所期いたしております点はむずかしかったということを申し上げる次第でございます。
  63. 坂本昭

    ○坂本昭君 関連して。かつて国鉄の特に東鉄に堀木局長ありと知られて、その結核に対する非常な熱心な方が厚生大臣になられて、非常な期待を持っておったところが、ただいまのような御返答ではどうもはなはだ不満であります。特に現実における現在の結核の問題のキー・ポイントを一つもつかんでおらない。なるほど予防検診に全力をあげて、そのために全額公費負担するということはいいんです。しかし今日問題は予防検診することよりも何よりも、見つかった患者さんを治療するということ、入院させる条件を与えてやるということです。今日これは大臣も御存じだと思いますけれども、集団検診は成績はいいんです。小学校中学校は九五%以上も集団検診を受けている。ところが事業主の責任のあるところになると三五%くらいに減って、さらに一般の住民になると一二%くらい。これはなぜでしょうか、みんな小学校中学校の生徒は行けと言って命令されたら行くんです。ところが事業主のところの人たちは、自分がもし病気だということが発見されたときには首になる。妻子が路頭に迷う、それから一般の住民だと見つけて、見つかったところであとどうするのだ、見つかったところでただ自分が不安になって悲観するだけではないか、結局みんな逃げ回っているんです。逃げ回っているというその現実をつかまないで、百九十七班の検診班を作ったといっても、ちっとも自慢にならない。それからさらに致命的なことには、百九十七班にはだれが協力するかということです。これは私は一番致命的だと思う。それは厚生行政というものは、今日理解と納得のもとに全部が協力しなければならぬ、ところが肝心の医療担当者が今みんなそっぽを向いてしまい、だからせっかく百九十七班の集団検診班を作っても、これに全部協力し、日本から結核をなくそうといって私はみんなが応援にくるとは思わない。単価は比較的いいんです。お医者さんは確か千円くらいつく。なるほど千円でつるという手があるかもしれませんけれども、これはよほど考えないと協力してくれないのではないか。そうすれば百九十七班もむだになるのではないか。そういう点で一番大事なものを私は……患者が見つかってどうして治療を受けるか、現在二十六万床あるベットのうち、その三分の一は生活保護の患者なんです。生活保護の患者です。結局みんな安らかに入院できるようにしてやれば結核がなくなるんです。これは総理大臣非常に簡単なことなんです。十年も要りません、五年も要りません。私は三年あったら日本の結核をなくすことができると思う。それが結局できないのは私は厚生大臣が悪いか、大蔵大臣が悪いか、総理大臣が悪いか、その責任だけはこの際参議院の予算委員会ではっきりしておきたいと思うんです。厚生大臣は比較的熱心のように私は見えるんです。だからだれが悪いかということと、今の厚生大臣の結核に対する現状認識が非常に私は不的確だと思う。その点は一つ改めていただきたい。
  64. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) さっき三十億、十億の問題で大蔵大臣が私の責任だと言われたのでありますが、内閣は連帯して国会に責任を負っておるので私もそうだと思っております。で、結核の問題は専門家の坂本さんがおっしゃるのでまことにその通りであり、せっかく自動車なりあるいはそれに伴う健康診断の人をそろえましても、実際これだけでもって所期の効果があがるとは絶対に思っておりません。で、私どもは各お医者さんの協力をぜひ得なければならぬ、決して千円程度でお医者さんがつられるとは私思っておりません。しかし最近の医学界の情勢は予防面に非常にお医者さんが力を入れようじゃないか、という趨勢は非常に何と申しますか、濃厚に出てきておる。私どもが実際この協力態勢を示せば非常に御協力を得られるんじゃなかろうか。それからせっかく予防面に力を入れても実際にこれが治癒面においてどうだ、治癒面でも濃厚感染源の強制入院、強制退院をするだけの態勢には参りませんが、ともかくも喀たん検査でありますとか、喀たんによる培養検査でありますとか、その他治療方面も従来よりは範囲を幾分拡大したということも、専門家の坂本さんにあえて申し上げる必要はないと思う。  それから仰せの通り生活保護関係の人が非常に多いのであります。生活保護の関係につきましてはむろん医療費は公費負担でもってやるのが当りまえですが、ただおっしゃるように、その給与及び生活の問題だと思うのであります。これは坂本さんに申し上げるまでもないことで、早期に発見すれば私どもが従来から考えておるように結核というものはむずかしくないというふうに考えますので、ともかくも本年度予算においては、早期発見、早期治療に重点を置いたということが言えるのではなかろうか、三十三年度予算におきましてはそういうふうにいたしましたわけであります。  なお率直に申しまして、確かに坂本さんが言われるように健康の管理体制さえよければ、もうすでにいいところは会社でも保険経済が非常に黒字になってくると申しますか、余裕が出て参る。要するにそういう問題と——要するに集団的な検診は確かに効果があがっておるわけであります。ただ私どもとしては各方面に結核に対する注意を喚起いたしますと同時に、厚生省自身が主管して一応対象にいたしております一般国民に対しての検診能力を充実して参りたい、こう考えておりますような次第でございます。
  65. 藤原道子

    ○藤原道子君 ただいま厚生大臣の坂本委員に対する答弁は、これはもう聞きたいところではない。私たちが聞きたいのは、だからどうするんだということなんです。検診をやって患者が発見されても入院ができていないのをどうするんだということです。生活保護で入院しておりましても、これに対しては強制退所基準というものができている。入院したくても入院できないボーダー・ライン層、入院していても一部負担が払えないで強制的に追い出されてくる、これらの病人に対する対策を一体どうします。検診の結果、濃厚感染源としてここに患者が発見される、従業禁止が命令される、けれども従業禁止はされても、入院したくても入院ができない今日の実情に対してどうなさる御用意があるのか、これを私は聞きたいんです。  それから大臣も今言われましたけれども、確かに低額所得層の結核患者がふえてきたということはゆゆしい問題だと思う。これを放置していていいんですか、岸総理大臣に、お伺いいたします。検診をやっても入院ができないんです。入院していても、主治医はまだ治療の必要があると言っても、それこそ重箱のすみをようじでせせるようなきびしい基準がございまして、一部負担がかけられる。入院していられないから退院せざるを得ない。そして回転数を早くしたと言うけれども、それによって、今までせっかくかけた金が死んでしまうんです。退院してからまた再発するとか、こういうふうな不幸が悪循環をしておる。こんな結核対策では、国費の乱費と言われてもあなたは答弁しようがないと思うんです。従って、今日社会病として非常な重大な問題になっておりまするこの結核対策、保険経済の立場からも、人命尊重の立場からも、これに対して総理はどういうふうな構想を持っておられるか。私どもとしては、少くとも結核治療費、後保護療法さらに予防費、一貫いたしまして全額国家が責任を持って行うべきである、これが日本社会党の主張でございます。こうして政府がほんとうに真剣にやられましたならば、結核問題はまあ五年たてば解決できる、私たちはこういう構想に立っておりますが、岸総理の所信をお伺いしたいと思います。おざなりでは困る。
  66. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 結核に対しまして早期発見、及び、濃厚感染源の強制入院、及び、退院後のアフター・ケアー、これは退院後のアフター・ケアーがよければ非常に再発が少いことも証明されております。ここらは一貫してやりたいというのが実は私どもの初めの考え方であって、長い間そういう問題とは過去において取り組んできたことは、坂本さんの御指摘の通りであります。しかし、何と申しますか、一挙にすべての問題を解決するのには、実際のところ無理だと思うのであります。私どもとしては、絶えず不断に努力して参る、この問題に対して今後とも努力を続けていくということよりない。今は、おっしゃるような理想的な問題を解決いたしますのには、相当膨大な国費を要する。ただ、日本の経済がそれをしょえばかえって将来はいいということも私どもも考えておるのでありますが、ともかくも今後の努力をいたすよりない。で、逐次、着実に一歩々々解決へ向いたい、こう考えておる次第でございます。
  67. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 結核対策の問題は、きわめて重大な問題であり、かつ、いろいろ藤原委員並びに他の委員から御指摘になっているように、今日の日本のとっておる結核対策がまだ非常に不十分な欠陥を持っておるということも、これはいなめないと思います。この問題は、国民の個人にとりましても、あるいは、国全体の力の上から申しましても、非常な大きな一つの損害であり、害悪であると思います。第一は、何といっても、これにかからないようにするということをまずやらなきゃならない。それには、いろんな、生活環境をよくするとか、一般の衛生施設をよくするとか、衛生思想を普及し国民のいわゆる予防の考えをなにするということである。第二は、なるべく早期に発見して、比較的治療の容易なときに発見して、それでこれに対するそれぞれの措置を講じていく。さらに、今日は、重症の者といえども、昔みたように結核というものは絶対になおらないというものじゃないと思います。ただ、重症で他に濃厚に伝染せしめるおそれのあるような者は、これは国として一つ思い切って病院に入院せしめて治療する、これの万全を期すると、こういうような方向にそれぞれ施策を進めていかなきゃならないことでありまして、いろいろさきほど来お話がありましたように、相当な欠陥があり、まだ不十分な点がございますので、これらに対しましては、今後政府としてもこの重大性にかんがみて、できるだけ一つ努力をいたして参りたいと考えております。
  68. 藤原道子

    ○藤原道子君 結核対策として一番重要な後保護療法に対しまして、これが社会局の所管になっている。これを一貫いたしまして、結核の治療の一貫した筋に改めて御用意があるかどうか。  それから今年度、厚生省といたしましては、結核の結核予防法における問題を八割国庫負担にして大蔵省へ要求したはずなんです。だから、私たちが言う全額国庫負担という線ともうほんとうに考え方においては、少くとも厚生大臣は一致してきていると思う、近づいてきていると思う。ところが、相変らず現状維持にとどまったその理由を聞きたい。  この二点について。
  69. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 保険経済から別にいたしまして結核を一つの部局をもちまして対策を講ずるという方法も一つの方法であると思うのであります。と同時に、管理者自身がその被保険者の健康管理に十分な注意を払っていくというやり方、やや現在に近いやり方も私は一つの方法であると思いますが、しかし、その治療費をどこで持つかという問題よりも、私としては、結核自身の管理というものは、率直に言って、今公衆衛生局でやっておりますが、全体を、ひとり厚生省の内部部局でございません。御承知の通り、内部部局だけでも、生活保護法の関係は社会局である。児童の結核関係もあるというふうな状況でありますが、結核管理の方はどうしても一本に結んで参りたい。そうしてさらに進んで、これを文部省の学校関係及び労働省その他通産省関係の各産業の関係にまで押し及ぼして参らなければ、結核対策としては十全を期し得られない。結核対策の管理の面は、どうしても一本にしぼってやって参る決心をいたしております。  もう一つ、補助費のほうは、これはもうよく御承知なんでございます。この経済の調整過程におきまして、私としては理想を達成することができなかった。非常な膨大な経費でございまして、さきほど申し上げましたような状態でございます。今後とも努力を重ねて参りたいと、こう考えております。
  70. 藤原道子

    ○藤原道子君 厚生大臣、非常に弱いと思うんです。ほんとうに大事なものならば、あなたは命を賭して職を賭しても、これをやられべきだと思うんです。結核問題の権威者であると言われて、私たちも堀木厚生大臣には非常な期待を持っていた。政府部内の大臣諸君がもし頭がかちかちならば、あなたがもっとうんとがんばりゃ、国民が全部しり押ししますよ。私は、この結核問題がこういうことで足踏みしているということは、国家的な恥辱だと思うんです。これに対してなぜもっと抜本的な対策がとれまいか。ことにその点について私は残念です。と同時に、この今の後保護施設に対しましては、生活保護者だけしか行けないのですね。こういうことでいったいいいと思っているかどうか。私は、この点、弱い立場にある厚生大臣を岸総理はもっと強力に支持してやらなきゃだめだと思う。どうですか岸さん。(笑声)笑いこっちゃない。
  71. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 御期待に沿い得なくて、まことに申しわけございません。 (藤原道子君「あなたが悪いのじゃない」と述ぶ)実は本年度、さきほどからも問題ありました医療費の問題、あるいは地方財政の調整の問題、その他多くの問題をかかえておりましたので、三十三年度予算としてはこの程度をもってまずやむを得ないのでなかろうかと、かたがた、これが平年度になりますと、相当の額になります。しかし、非常に御鞭撻をいただいておりますので、私はこういう国民のためにすることは勇気をもってどんどん進んで参るつもりでおります。何とか御期待に沿うように努力をいたしたい、こう考えております。
  72. 藤原道子

    ○藤原道子君 続いて、私はこの結核問題の点につきまして、厚生大臣にさらに一点伺いたいことがある。保健所の制度でございますが、一番大切な前線の役割を果しておる保健所が今日の状態で使命を果せるとお考えでございましょうか。どうも政府はむだ金を使っておると思う。なるほど保健所は人口十万単位に対して一カ所作るということで発足したと思います。ところが、今日一保健所が負担しておりまする対象人員はおそらく二十万にも三十万にもなっておると思う。ところが、保健所の実態を見ますと、医者の実態は六割そこそこだと思う。保健婦にいたしましても約六割五分か、七割になっていないと私は記憶します。こういうことで、十万を対象といたしましての定員すら二十万、三十万負担しておる今日、医者もあるいは保健婦もその他の職員も充足いたしておりません。こうした過重労働を押しつけておいて、それで幾ら検診班をふやしてみたって何になるのです。私は今日、保健所の充足状況と、さらにこれでやつていける自信があられるかどうか、やれないならば今後どういう対策をもってこれにお臨みになるか。重労働になって、しわ寄せは一番弱い保健婦さんの上にきている。
  73. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 結核対策の一環として保健所の充実、こういうことを御指摘になるのはごもっともだと思います。私も結核対策の一環として、保健所、実は保健所はまあ率直に申して、非常に結核関係だけでなしに、各種の最近の社会の何と申しますか、要求に応じていろいろの面を受け持って参りまして、仕事がますますふえて参ります。そういう点から、保健所の仕事を緩和しなければならないというふうに考えてはおりますが、この問題については、率直に言って解決しなかった。確かにただいま申し上げました結核対策としての保健所は、従来ずいぶん自動車だけもらって人間が来ないというふうな、むしろ欠点があったのを、まあ何とかその面だけでも保健所は緩和したいというので、定員をとったわけでございます。保健所の問題は最近の国民の非常な衛生思想の普及と相待ちまして、やるべき仕事が非常にふえて参りました。今後この点は充実いたしたい。大体厚生省の仕事でもって現場機関が全体として弱いということは痛感いたしておりますが、今後の解決に努力を傾注いたしたいこう考えております。(「関連」「進行」と呼ぶ者あり)
  74. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ちょっとお待ち下さい。委員長から申し上げます。関連質問につきましては、発言の自由を尊重しまして、なおまた審議の完璧を期する意味合いから、委員長はこれを許可して参りました。しかるに、本日は各派理事間の申し合せの事情もあり、なおまた厚生省の問題につきましては、さらに午後に矢嶋三義君、中田吉雄君からそれぞれ厚生大臣の要求がありました。従いまして、なるべくその機会にお譲りを願いたいと存じます。ただ、ただいませっかく御発言でありますので、坂本君、発言を許可いたします。
  75. 坂本昭

    ○坂本昭君 大事な点お尋ね申し上げます。今結核対策について、保健所は全国に七百八十三、悩みの種なんです。ところが、大臣が非常に大事な点で間違っている点があります。それは結核対策のこの予算の中で、一番どこに重点を置いておられるか。これは予算金額から言うと、医務局の国立療養所が百四十九億何がし、金額は多い。しかし私は、ほんとうに厚生省の中で結核のわかっている所管はどこかというと、おそらく社会局あたりじゃないでしょうか。保護課あたりじゃないでしょうか。あるいは保険局あたりの健康保険課あたりの方がよく知っているのじゃないでしょうか。そこに非常に大きな私は大臣の認識の間違いがあるのじゃないか。そういう点で、今の保健所の問題も数だけじゃないので、人だけじゃないので、もっと基本的なものであって、それが厚生省の予算金額だけじゃないということ、その点だけ一つはっきり頭に入れていただきたいと思います。
  76. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 保健所の問題は金額だけでないということもよくわかります。先ほど数字お答えしなかったのでありますが、実際お医者さんなり保健婦のたださえ少い保健所、しかも仕事がだんだんふえて参ります保健所、それに対して医師、保健婦等の充足率が非常に悪い、待遇の問題その他の問題が確かに研究の問題その他の問題があると思います。内容の充実ということが一番まず大切じゃないか。これらにつきましても今後解決する方向として私どもが努力しなければならぬ一つの大きな重点であるということは、十分了承いたしております。今後とも努力いたしたいと思います。
  77. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は……、文部大臣おいでですね。
  78. 泉山三六

    委員長泉山三六君) おられます。
  79. 藤原道子

    ○藤原道子君 文部大臣にお伺いしたいのです。  これは結核対策の一環でございますが、小児結核の問題につきまして、厚生大臣と文部大臣にお伺いいたしたいと思います。今日、小児結核で不幸な状態に置かれております児童が、これは文部省調べで四万七千三百と相なっております。その中で治療を受けておりますものは、わずかに一万三千人ぐらい、こういう資料ができております。ところが結核は早く治療すれば回復も早いわけでございますが、就学中の子供でございますので、これに対する教育が大事だと思うのです。ところが、入院しておりまする結核児童に対しまして、この教育問題が厚生省とどうも、聞くところによると、文部省との責任のなすり合いになっている。不幸をみるのは子供だと思う。そのいじらしい姿を見ている親の悩みを思いますときには、私はこの際政府の統一した御見解を伺いたい。と同時に、この療養中の子供に対する教師の問題、あるいは学用品その他の教材の問題これらについての政府のあたたかい思いやりある御答弁をきょうは聞かしてもらいたい、こう思っております。  まず、文部大臣に、どういう状況にあるかを伺わしていただきます。
  80. 松永東

    国務大臣(松永東君) 藤原委員の御指摘になりましたように、義務教育、ちょうど就学期に属しておりまする子供たちが結核のために長期に療養所に入っておるというような子供たちを何とかしなければならぬことは、もう非常に文部当局といたしましては心配をいたしております。そこで、まず第一に、療養所に養護学校を併置しまして、そうして、そこで十分教養をする、さらにまた特殊学級を作りまして、そうして、その特殊学級の方へ教師の派遣をする。そうして、いろいろな御指摘になりましたような便宜をはからなければならぬ。そうして、ほんとうにかわいそうな子供たちを、教育の機会均等から、やはり満足させるような教育をしなければならぬというふうに考えまして、一生懸命今やっております。ただ、厚生当局ともいろいろ打ち合せをしまして、そうして万遺漏なきを期したい。決して私が就任いたしましてから、責任のなすり合いやなんかは聞いておりません。一生懸命やるつもりでございます。どうぞ一つ御了承を願います。
  81. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 今、文部大臣の答弁された通りでございます。ことに入院しながら学校教育を受けるというふうな問題が不可決の問題でなかろうか。この問題については、幸いに学校保健法でございますか、最近文部省もそういう点で積極的にお乗り出しになっておるようであります。両者協力して実現をはかることにいたしたいと、こう考えております。
  82. 藤原道子

    ○藤原道子君 いろいろ伺いたいことは、不満な点が多々ございますが、時間の関係で、これは一般質問並びに分科会でもっと質疑をいたしたいと思います。  さらに厚生大臣にお伺いいたしますが、今日ばらばらになっておりまする医療制度、医療機関の統一といいましょうか、その責任の所在を明らかにすべき段階ではないかと思うのです。いろいろ問題が論議されましても、今のようにやれ労災病院だ、いや厚生年金病院だ、鉄道病院だ、いろいろこう乱立しているのですね。その系統がわからないのです。こういうことで、果して医療の責任はどこにあるのか、この点についてのお考えを伺いたいということが一点。  それからさらに無医村地区に対しまする責任ある対策、これを伺いたい。こまかく申し上げる時間がございませんので、大綱を今日お伺いしたいと思います。
  83. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 医療機関の体系的整備と申しますか、どうも医療機関自身があるがままの姿で発達しておる、地域的に見れば大都市へ偏在になっておる、また各企業別と申しますか、主体別にいろいろな考え方から発達しておるというふうな点で、どうしてもこの問題は全体として国家的な、何と申しますか、いわゆる医療機関の配置の整備、しかも医療機関ごとの任務というふうなものを作って参らなきゃならぬ、こういうふうに考えております。  特におあげになりました無医地区に対しましては、これは率直に言って、お医者さんがなかなか行きたがりませんから、結局基幹病院の役割といたしまして、そうしてそこから派出いたしまして無医地区を解消いたしたい。所要の予算も本三十三年度には計上しましたような次第でございます。
  84. 藤原道子

    ○藤原道子君 そこが一番聞きたいところなんです。医者はありながら、医者がふえておりながら、所要な所へ医者が行かない。この原因を解決しなくって、幾ら努力いたしますといっても、その努力の成果を望むことはできないと思うのです。今日公的医療機関に働いておられる医療従事者の待遇が非常に悪い。でございますから、都市には集まっても、地方へ参りますと非常にこれが集めにくい。と同時に、何といいますか、施設が荒廃いたしまして、研究その他にも不便である。こういう状態のもとでは私は医者の充足ということは困難だ。もっと待遇を改めて条件を好転するにあらずんば、とてもこの問題の解決は幾ら予算が上げてもだめだ。保健所関係幾ら医者の定員があってすらできないのでございます。これにかんがみて、この対策をこの際強力に改められる御用意があるかどうか。この点についてまず伺わなければならないと思います。
  85. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) お医者さんの意欲を満足させるのに私二つあると思うのであります。一つは給与、待遇の改善であります。一つは研究——日進月歩の医学に対する自分の研究がおくれないということだと思いますので、無医地区の解消につきましては、無医地区自身に診療所を派出し、あるいはそこへ行けといったってなかなか行かないわけでありますから、やはり基幹病院自身を整備いたしまして、そこから何と申しますか、期限をある程度限定いたしまして、出てまた基幹病院へ帰ってくるというやり方によって解消いたして参りたいと、こう考えております。
  86. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はこの際、努力をいたしますと言って、もうずっときておる、戦後は。努力々々と言っておる。しかもその医療の点で最も私が納得のいかないのは、国立病院が、国の基幹病院だといわれるその国立病院、国立療養所のその荒廃たるや言語に絶するものがある。ますで廊下を歩けば穴があっておっこちるような所、看護婦さんの宿舎に、雪が降れば雪が舞い込んでくる、患者のまくらもとに雪が舞い込んでくる、こういう状態のもとで国立病院といえるでしょうか。しかもそこに働いておる人たちがそれこそ定員のワクに縛られて、看護婦さんたちの、しかも定員すら満足にないところへもってきて、完全看護、完全給食、完全寝具ですか、できもせぬことだけを美文を並べてあるのです。その結果、完全看護ができておるかどうか。非常に看護婦さんは重労働、看護婦さんが重労働になる結果はいきおいそのはね返りは患者にくる。これで一体国家の医療対策はなっておると言えるでございましょうか。ことに妊娠しても休めない。現在の定員でもやり切れない重労働を持っている保健婦さんや看護婦さんが二人、三人休まなければ一人を充足できない状態である。医療に従事する看護婦たちはむしろ異常産が非常に多いというこの現実、医療に従事する者の待遇が十分守られてこそ、医療が完全に行われ、その恩恵を患者が受けることができるのです。こういうことは細部のようでございますが、これは絶対の医療の根本だと思います。これに対して厚生大臣はどのような構想をもって当ろうとしておいでになるか。
  87. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 藤原さんの御指摘の通りであって、今国立の病院及び国立の療養所というものは御承知の通り大部分が旧陸海軍から引き受けたものが多いわけでございます。その位置からみても適当であるかどうかという問題がありますと同時に、整備すべきものが整備されてないというふうな状況であります。先ほど御指摘になりましたように、医療体系の整備の一環としてこの国立病院自身の及び療養所のあり方を適正にいたしたいと思っております。  なお看護婦さんの何と申しますか、いわゆる妊娠中の休暇等の問題、これが、実際小さなように見えて重大な問題であるということは十分存じておりますので、これらに対しましても、妊娠前後になるべく休ませるためには、やはり定員を充足して、そうして事実上交代要員ができるという状態にもっていくことが必要だと思っております。今後とも努力いたしたいと思います。
  88. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はそれを必ず実行してもらいたいということを要望いたしまして、次に進みたいと思います。  結核とか医療問題をはばんでおるものの一つに生活保護の今日の適用状態にあると思うのです。結局生活保護法は、私が今さら申し上げますまでもなく、憲法第二十五条の精神によりまして、国民は、健康にして文化的な最低限度の生活を営む権利を有するということになって生まれたのが生活保護法だと思うのです。そうして同時にその生活保護法の三条におきましては、「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。」というのが、生活保護法のこれは法の精神であります。ところが今日その運用を見ますと、この法律とはうらはらなんです。まるで飢餓線上をさまよっておる、こういう状態におかれておると思うのです。ことに入院に対しましての医療扶助の適用は最近まことにきびしいものがございます。細君の実家が、あれが百姓家だから二千円くらいの負担はできるだろう、兄弟が働いておるから三千円くらいの負担はさせる、こういうことで、まるで実にこまかいところまで調べて、そうして一部負担がかけられております。これが払えないというこの事実は、こういうことが果して、結核対策に重点をおくというふうなことを言われる政府の同じ役人がやっておるというところに大きな問題があると思う。ことに生活保護の基準を見ますと、まるでひどいものでありまして、おふろ代は一ヵ月に三回です。子供の靴下が一年にたった一足です。一年にたった一足の靴下で子供が果して守られるのでしょうか。養老院、国民年金制度が云々されております今日、養老院に支給されております食費は、それこそ地方に参りましては四十三円だと記憶いたします。こういう状態です。親子五人家族で嗜好品が一日たった二十七円です。一体これはなんですか。厚生省に聞いてみると、これはお茶代ですという。こういう状態に置かれておる。貧乏なるがゆえに、しかもこの貧乏も個人の責任ではなくて、今日貧窮者の中には戦争によって外地から引き揚げてこられた国家の犠牲者もある。戦災で焼け出された戦前は相当な生活をしていらっしゃった人たちもその中にまじっている。ところが、こういう扱いのもとに、その状態に置かれておる子供たちの成績を過般調べてみました。母子寮におります子供たちは、身長も、体重も、坐高も、胸囲もずっと劣っております。さらに学校の成績は普通の子供の半分ぐらいの成績に下っておる子が絶対に多いのでございます。ところが、これら貧困者の家庭も、何ら自分の責任ではなくて、社会的疾患の一つだと私は思っておる。その中で育てられたこれらの子供が将来は社会をになう主人公になる。国家の主人公になる。その子供たち、その生きる権利を有する日本国民が、こういう劣悪な条件の中に、しかもこういう待遇を受けておりまするということに対して、これを是正し、さらに人の命を尊重する政治を真剣に総理はおやりになるという御意思があるのかどうか。もしありとすれば、一年に子供の靴下が一足というような最低基準の査定、親子五人で嗜好品といえばたった二十七円のお茶代、こういうことが、健康にして文化的な最低生活を営む権利を有するというこの日本国憲法のもとにおいて作られました生活保護法でやるべき筋であるかどうか。これは総理大臣にお伺いいたしたいと思います。
  89. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 生活保護法の趣旨は、今藤原委員の御指摘のあった通りでございまして、しこうして現在の生活保護法の実施の状況が十分でないという点をいろいろの点において御指摘になり、私、はなはだ、詳しい運用の実態は承知いたしておりませんが、しかし運用面において、その本来の立法の趣旨に十分沿わないというような点については、もちろんこれは改善していかなければならないということは言うを待ちません。また法そのものに何か欠陥があるということになれば、これはまた検討していかなければならない。言うまでもなく、憲法の精神、保護法のできました趣旨は国民に最低の生活を保障する。最低の生活とはやはり健康で文化的なという、まあこれにももちろん時代、もしくは国が進んでいきますにつれまして、その程度は当然高くなっていかなければならぬと思いますが、しかし、その時代、時代において少くとも人間としての生活の最小限度というものは、これを保障しなければならない。これが運営の面において今御指摘のような点がもしありとすれば、これは改善していかなければならない、かように思います。
  90. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、今御指摘のような点がありとすれば改善しなければならないという、この総理の御答弁は重大だと思う。私も政府の資料によって御質問をしている。ところが、それが今申し上げましたようなひどい基準がここに出ておる。しかも東京におきましてさえ、一ヵ月しょうゆは一人十円、みそも一人十円、こういう基準なんです。これで一体やれるかどうか。こういう基準をどこから出したかとこの間質問いたしましたが、これは生活科学何々研究会でやったとか。この四十三円の食費で養老院はやっていけるのかと言ったら、栄養士がおってこれを指導すればやれるという答弁だった。ところが栄養士が全部いるのでしょうか。ほとんどおりやしません。一日四十三円の食費で、旅路の末を安楽にと、この愛情こもるべき施設でないところにいるこの老人が、どういうみじめな、しかも卑屈な生活をしているかということを一度私は岸さんに実地を見ていただきたい。それで妥当であるかどうかということを、あなたに判断していただき、早速この最低基準の引き上げをお願いしたい。  さらにこの点につきまして、生活保護を受けている家庭で、子供が昼間働いて、夜夜学へ行っても、高等学校へ行けば生活費は打ち切られるのです。私たちが法律制定をいたしましたときには、そういう趣旨ではなかった。一日働いて、そうして夜学へ行く子供の生活保護を、国家はその保護全部を打ち切ってしまう、こういうむごいことをする。幾ら能力があっても、貧しきがゆえに……。子供には何の責任もない。この貧しき家庭に生れたがゆえに、その能力を持ちながら教育を受けることができない。こういうことだから、自暴自棄になったり、あるいは不良になったりする。問題の子というのは、こういうむごい政治が生んだ副産物であるということを私は指摘しなくちゃならない。私はその点については真剣な御考慮を願わなければならないと、こう思うのです。それから、さらにこの点につきまして会計検査院にお伺いしたいと思うのです。生活保護者の家庭に対しまして、あまりみじめに、子供が一年に一足の靴下というような状態でございますから、あまり気の毒だというので、まあいろんな機関から年末のもち代として寄付をすることがございます。ところがこれを会計検査院に指摘されまして、結局これを一、二、三の三ヵ月にわたって生活保護費から差っ引かれている。私は会計検査院の使命はそんなこまかい、貧乏人いじめのためにあるべきものではないと思う。一ヵ月に五人の生活で五千円、六千円でやっていかれますか。赤貧洗うがごとき状態だから、こういう家庭にせめてもちを食べさせたいという社会の愛情すら、今の生活保護法の運営においては許されない。一体これでいいのでしょうか。  さらに保育所にいたしましても、今日保育所の状態を見ますと、実にひどいのです。保育料にいたしましてもそうでございますよ。今度保育所の要求が三十五億ばかりなされて、二十五億に削られている。ところがこれに対して岸さんは、措置費を徴収すればこと足りる、こういうことを、私たちが陳情に行ったときに言われた。ところがその措置費を見ますと非常に高いのですね。六千円くらいな収入であっても、やはり月に何百円という金を取られております。最高を見ますと二千二百円くらいな保育料が取られている。私はこれはおかしいと思う。措置費の増額をしようとしたときに、やはり会計検査院において、まだ払う能力があっても払っていないのだから、もっと取ればできると、こういうことで主張されたやに私は聞いております。幼稚園の費用を見ますと、幼稚園におきましては大体千円です、すべての費用が……。しかもスクールバスで子供の送り迎えをしております。この費用が入って千円であります。保育所で、わずか七千円くらいの収入であっても、七、八百円取られ、一万円あれば千二百円くらい取られる、こういうやり方が妥当であるとお考えになって、会計検査院ではそれを払う能力ありというような点から指摘されてやられたのかどうか。  これらの二点について会計検査院にお伺いしたい。私は会計検査院の使命は、もっと大きいところにあると思う。大きな魚を逃しちゃって、小さな、こうした零細な、飢餓線上をさまよっているような人からむごい取り立てをすることを、違反として摘発されるのが使命ではないと考えますが、これは岸総理のお考えもあわせお伺いしたい。
  91. 加藤進

    会計検査院長加藤進君) お答えいたします。最初に具体的の問題についてお答えいたしますると、先ほど生活保護費について寄贈されました物品等についてのお尋ねがございましたが、検査院の最終的の結論といたしましては、さようなものは収入のうちには見ておりません。そういう意味で判定を下したことはないのでございますが、あるいは出先等で論議しております点に、そういう点が議論されたことがあるかも存じませんが、方針といたしましては、それは考えておりません。またそういう意味でそののちの是正措置を要求したこともございません。それから一般的に申し上げますが、私どもは法律並びにこれに基きました各種の準拠規定が守られますことを要求いたしておりますので、これを準則といたしまして検査いたしておりますから、生活保護といったようなものにつきましても、われわれは被保護者の側からみまして、協力の義務が果されているかどうかという点を検査いたしました結果、過去におきましてもこれを不当事項として摘出し、報告したことがございます。ただしことに社会保障の面などについて遭遇することでございますが、検査を進め不当として結論を下さざるを得ないものがある、そのよってきたるところを考えますると、さらにもう一段考えなければならない事態に遭遇するのでございます。生活保護費の医療費単給の問題などについてもことにそうでございますが、保護と決定されましたときには、その世帯の生活水準は最低まで引き下げなければならないというような意味を持つ、またさらに働いて収入を得ました場合、これが経常収入である限りは、また自己の負担を増していく、こういうような事態が少くとも認められるのであります。また現在の基準できめられておりまする収入の調査方法であるとか、あるいは標準、こういうものにつきましても非常に検討を要するものがあると認められますので、たとえば生活保護費の医療費単給の問題について申しますれば、これは検査を一時ほかの方面に移しまして、政府において実態を調査して、いろいろ改善の方法を立てられるべき場合ではないかと考えておりますので、これは三十一年度の検査報告にはこの点に触れなかった次第でございます。保育所の問題についても、ごく概括して申しますれば、今と同じような問題になりまするが、これも調査の方法でありますとか、何かいろいろ政府の方でお考えになって是正策をお立てになるべき場合と存じまするので、しばらくどういうふうに改善の方法が講ぜられるかを見守るといたしまして、しばらくこの方面には検査の精力をさかない考え方でございます。
  92. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 生活保護費は、三十三年度予算では三百六十数億を計上いたしております。それは実は統計をごらん願うとわかりますが、一月は非常にふえております。これは季節的な生活費の増でございます。その他につきまして特段に生活保護世帯が多くはなっておりません。過去の経験にかんがみますと、この経済の調整過程においては、どうしても生活保護世帯がふえるという考え方から二・六の増加を見込んでおります。そのほかに人口の増を一・〇見込んでおるわけでありますが、今おっしゃった生活基準の内容についてはずいぶんいろいろ考えさせられるところがございますが、これは御承知の通り年度から六・五%の基準を上げましたように増加数を見込んで基準の向上をいたさなかった次第でございます。なお季節的なもち代その他につきまして、あるいは平素の被保護世帯の勤労所得等に対しましては特別の控除をいたしたい、こう考えておりますが、基準内容については、私どもも国民生活の向上とにらみ合して生活基準の向上に努めるべきである、こう考えておる次第でございます。
  93. 藤原道子

    ○藤原道子君 答弁漏れがございます。それとあわせまして御答弁願いたいことは、生活保護世帯が減ったということは、査定がきびしくなってきたので、それで減ったのだ。今度保護費が値上げしているとおっしゃるのは、それは昨年度における米価の値上げだとか、あるいは診療報酬等にからんでそれだけふえたのであって、生活保護そのものの値上げはほんとにごくわずかだと私は計算したのでございますが、それはどうですか。それから高等学校に行く子供の、何と言いますか、生活保護費の打ち切りの問題は重要ですから、お答えいただきます。
  94. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 生活保護の関係は、診療報酬の値上げ、その他とは別個の問題として御答弁申し上げましたような次第でございます。それから進学制度の問題はきょうの朝日新聞の論文にも書いてありましたが、非常にむずかしい問題である。生活保護法が最低の生活を保障するような建前になっております。その最低生活の内容自身が、日本の経済においてはよその国と比較して、非常に内容が低いことはたしかであります。そういう基準については今後努力をいたさなければならぬと思っております。進学の問題は他の国民との関係というふうなものもあわせて考慮しなれけばならない。被保護世帯の子弟が、被保護世帯のままどんどん参りますことは、御承知の通り現在中学校から高等学校に参ります家庭というのは、全体の半分くらいであるというような点と彼此勘案いたしますと、非常に困難である。ただ今後文部省の進学制度、その他の問題もございますので、これらの問題については、将来考究すべき問題かと思いますが、生活保護法の建前から見ますと、非常に困難である。事実きょうの新聞にも出ておりますように、一つには法の運用と申しますか、そういうふうな面からの技術的の調整は行われているということは申し上げる得ると思います。
  95. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はその考え方に不満なのです。貧乏人だからどんな優秀な子供でも上にいけない、貧乏人だから仕方ない、そういう救貧的の考え方があなたの思想の根本に流れていると思う。それならば、ここにあげる「健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。」となっている。ここに問題がある。被保護世帯の子供が上の学校に行くというのはよくよくなのです。よほど成績のいい子供が行くわけです。非常に能力のある子供が貧なるがゆえに行けないということは、国家的に見ても大きな損失だと思う。ボーター・ラインの子供でもほんとうに能力のある子供なら、やはりこれも行けるようにしてやるのは当り前です。これはこうだからこれはだめだ、こうとう考え方は私には納得できません。  それから会計検査院では、そういうところまでやった覚えはないという御答弁でございましたが、最近どこの福祉事務所に参りましても、会計検査院の目が光ってやれない、こう言っております。これは一体どっちなのでしょう。厚生大臣と会計検査院のお答えを聞きたい。ことに今資料が見つかったのでございますが、保育所などどうです。日傭取りとして働いて一ヵ月四千円得ている人は、保育料を一ヵ月百五十円とられている。七千六百円の人は千七百五十円とられている保育料が一体妥当でございましょうか。幼稚園の方を見ますと結局一ヵ月千円。保育料が六百円、補助費が二百五十円、それで何といいますかスクール・バスで運ぶ費用を全部入れて千円。保育所と幼稚園の制度が違うことは承知いたしております。時間が長いとか何とか言われますけれども、それは保育所の精神から見てそういうことで抜け道にはならない、これが妥当かどうか、しかもこれが払える基準であるかどうか、その身になって御答弁願いたいと思います。
  96. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 進学制度の問題は非常にむずかしい。生活保護法が新しい憲法によって生活を保障して参るという建前になっておることは、先ほど総理大臣から御答弁申し上げた通りであります。ただ問題は国民経済がこれをささえておる、そして国民の生活水準とにらみ合わすというところに問題点があって、それだからこそ、私は経済の繁栄は基底的なものであるということを考えております。将来この基準はだんだん上っていくべきものである、それでなければ、いわゆる保護世帯に対する幸福と福祉ははかれないというふうに考えますような次第でございます。それから保育所の問題は、先ほどもおあげになりましたが、私の記憶では保育所で二千円とか、千円以上取っておるところはないと思います。実はその基準自身がこれも一つ基準でございますが、そういうふうな点でもって千円以上を保育所へ出すということはほとんど考えられない。現実にも取っていないというふうに考えるのであります。その措置費の基準につきましては、従来とも検査院からいろいろ問題が指摘されております。その点について家庭の収入調査、その他の問題が的確でないというふうな指摘を受けておりますので、もう少し簡易化した実情に適するものに改訂いたしたいという考え方でございます。それから最近生活保護に対して非常にきびしい実情に合わない方向に行政方針が行っているのではないかという御注意に対しましては、私も実は何と申しますか、ときどき耳にいたします。病院まで入ってきていろいろ調べるのはどういうわけだというふうないろいろ問題がございますが、適正を期するのはいいのでありまするが、ただいたずらに生活保護世帯を少くしていこうなんというやり方及び過酷にわたることは今後しないように厳重に注意をいたして参りたいと思っております。
  97. 加藤進

    会計検査院長加藤進君) 少し言葉が不足いたしたかも存じませんが、保育所の問題について申し上げますると、私先ほど申し上げましたのは現在の基準通りにやって参りますれば検査院が下しました判定は間違ってないと存じます。ただしこれが実情に合うのがどうかという点につきましてはいろいろ疑問を持ちましたので、問題点を明確にいたしましたあとは、政府が善処せられることと存じまするので、しばらくその善処後の結果を待つことにいたしまして、検査はしばらく差し控えると申し上げた次第でございます。  それから福祉事務所等の関係につきお尋ねがございましたが、私ども無理は申さないつもりでございますが、もし行きまして不合理なことを申したり、現在の基準にないようなやかましいことを申しておりました事実がございましたならば、これは私深く戒しめなければならないと存じまするが、どうも非常な無理を言い、法律に示してないようなこまかいところまで立ち入るということはないように存じまするが、具体的事実がございましたら調べましておわび申し上げたいと存じます。
  98. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はその点会計検査院の言われるのもわかりました。結局現在のような基準があるからやらざるを得ないというのです。だからあなたはそんなことはないというが、それならなぜこんな法律を出しておくのです。結局一万二千円というのは二千二百円まで取れることになっている。保育所へ二千二百円出す人はないと思うのです。これが間違ったものならば早急に改めてもらわなければ国民が迷惑するので、そういうサボタージュはやめてほしいと思う。  次に、お伺いいたしたいのは、この生活保護に関連して母子対策、母子住宅の問題、これに対してどういう状態に置かれているか。建設省と厚生省との共管になっておるということのために非常に迷惑している。母子世帯で子供が十八才になれば出て行かなければならない。ところが住宅がない、低額住宅を作ってほしいと言っても、そこには収入の規定がある、規定があるために入れないという隘路もある。いろいろ問題がありますが、時間の関係で詳しい内容が言えないのは残念でございますが、この母子住宅に対して別途厚生省でお扱いになる意思があるかどうか。現在の状態で行くとすれば、社会に復帰しようとする母子のためにどういう御用意があるか。これが一点。  それから今一つは母子健康センターというものが新しく出て参ったが、これについての構想をお伺いしたい。以上二点。
  99. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 住宅問題は建設省に一括してやってもらうつもりでありますが、しかし今おっしゃった母子家庭及び低所得者階層のために今回の予算でも第二種公営住宅をふやしてもらいたい、これらについてはすでに私建設大臣とも話し合いして、この問題はぜひ解決いたしたいと、かたがた衆議院の社労委におきましても母子福祉資金の関係のときに付帯の決議案がついたことでありますから、十分努力いたして参りたいと思っております。  それから今度の母子センターの問題ですが、これは何と申しましても結局母親を守らなくちゃならない。これにつきましては妊娠の前後から育児まで一貫したものを行政庁としてやっていかなければならない。保健所でその面を十分にいたすわけには参りませんので、さらに多くの母子健康センターによって妊娠から出産、育児指導、それらの相談というふうなものをいたして参りたい。こういうふうに考えて母子健康センターの予算を計上いたしたような次第であります。
  100. 藤原道子

    ○藤原道子君 母子センターは全国にどのくらいお作りになる予定ですか。
  101. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 初年度八千万円で、場所は五十六カ所でございます。要するに一つの保健所を中心にして細胞的に作って参りたい、こういうふうな考え方であります。
  102. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は何だか今回の母子健康センターは思いつきでできたように聞いておりますが、内容は大丈夫ですね。
  103. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 決して思いつきではございませんで、私ども児童福祉対策あるいは母子対策の一環として社会の要請に即応して、こういう施設を必要とすると考えて計上いたした次第であります。
  104. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はこの点について総理にお伺いしたい。それから文部大臣にも及ぶかもわかりません。最近母子対策が進んだ進んだと発表しておりますが、この母子センターはけっこうなことですから、これが正しく運営されることを期待してやまない。ところが最近青婦人対策というようなものが、非常に与党や政府におかれて、何といいますか、強く主張されている。ところがこれが社会教育の問題になりまして、地方へ行ってみますと、最近婦人団体なり青年団に対して非常に官僚が立ち入ってきておる、この点が問題になっておる。最近これは私たくさん事情を聞いておりましたが、つい昨日の新聞に、静岡県で青年団の意見発表会がありました。原稿を出したところが、これじゃ困るから内容を変えろ、本人はいやだと言ったけれども、無理やりこれを改めさしている事実が新聞に大きく報道されている。一体政府の意図する方向でなければこれを発表もさせないというと、青年団の意見発表がうそを発表しておるということになる。婦人団体に対しましては、役職員の選任にまで官僚が介入してきております。気に入らない者はこれを変えろと言う、それから最近自民党の方針といたしまして、全国の婦人団体の幹部に対して入党を勧める。それもいいけれども、旅費を持って、みやげを出して、さらに宿泊料を持って、それで婦人の勉強会と称して呼んで、そこで入党を勧めてこれを入党さしている、こういう事実がある。これが下部に流れて、婦人団体の役員の選任まで官僚がくちばしをいれる、これは政府の方針であるのか、地方の社会教育課において政府にこびてこういう状態をやっているのか、私どもには納得がいきません。この社会教育として、今度文部省では五千万円ですか、二千五百万円ですか、予算を要求しておりますね、婦人会議とかという名目で。これはどういうふうに使われるのですか、農林省がやり、労働省がやり、さらに今度は婦人会議を文部省までが乗り出してくる。そうすると婦人団体、青年団をもとの官僚組織に切りかえようとする重大なる意図ありと私どもは考えられますが、これに対しての御見解を伺います。
  105. 松永東

    国務大臣(松永東君) 藤原委員のただいま御指摘になりました点でございますが、それはなるほど、仰せになりました点を承わっておりますと、同じ婦人団体に対して私の方の文部省の関係もある、あるいは労働省の関係もある、あるいは厚生省の関係もあるというふうに、関係が重複しておることは事実です。しかしながら私の方で担当いたしておりますのは、やはりこれは社会教育の面でございます。ですから、同じ婦人の方でも、社会教育の面を担当しておりまする文部省関係もあります。あるいは婦人労働についてはやり労働省関係というふうに分れております。従ってこれは重複はいたしていないのです。その担当いたしておりまするその場面で、そうしたふうに分れて指導、援助をやっておるわけであります。  それから今仰せになりましたうちに、そうした社会教育団体、婦人団体等の役員あたりでやはり政党が介入しておるようなこともちょっと承わりましたが、それは御承知の通り、やはりそれぞれ地方々々で指導者の立場におられる人々は、やはり政党的の関心も持っておられる。従って社会党に属する人もございましょうし、自民党に属する人もございましょう。しかしながらその婦人団体としての活動部面に対しては一切中立的立場を守るように、みずから自制しておられるということを承わっております。また私らもそうあることを望ましいことだと心得ております。
  106. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 最近婦人のいわゆる政治的、社会的活動の範囲も非常に拡大され、婦人会の活動というものも非常に活発になってきていることは、これは言うまでもなく非常にけっこうなことだと思います。しかしそれはあくまでもやはり民主的に、また自発的な一つのそういう向として行わなければならぬと思います。もしも官僚がこれに何か非常な介入をして、そうしてその民主的、自発的な活動や発展を阻害するようなことがあれば、これは私は非常に間違いである。また政党との関係につきましては、これはやはりいろい婦人団体、また婦人の政治的地位の向上とともに、活動の範囲が広くなるとともに、それぞれの自分が特別の関心を持っている政党に入党するというようなことも、私は漸次そういう機運が高まってくるであろうと思うのです。これはむしろ婦人の政治活動を拡大する意味から言ったら私は望ましいことである。ただそれの勧誘なりそういうことにつきまして、間違った方法であるとか、好ましからざる方法がとられているとすると、これはわれわれとしてもちろん戒めなければならないし、そういうことは十分に戒慎をしなければならないことでありますけれども、政党に属せられ、また政党が婦人の問題に関して特別な関心を持ち、その方面における対策を考え、また婦人の協力を求めていくということは、政党自身の健全な発展の上からいえば私は望ましいことである、かように考えております。
  107. 藤原道子

    ○藤原道子君 婦人が自発的に政党に加入するということは、これは望ましいことなんです。けれどもこれを強制しておる面が多々ございます。もしも具体的な例が御必要でございましたら資料を差し上げてもよろしゅうございます。私は民主的な運営でなければならないのが、事実はそうでないから問題にしたので、役員の選任についても気に入らない者はこれを変えろという指導がなされている。こういうことを少しお調べになって、それがいけないことだというならば至急に対策をとっていただきたいと思うのでございます。  さらにお伺いいたしたいことは、中小企業——労働大臣、企業整備によってまず第一に優先的に首を切られるのは婦人でございます。これは非常に重大問題である。ことに最近は繊維の面が不況になったために、たくさん方々で操業短縮であるとか、さらにまた第二の操業短縮というようなことで多くの女性が放り出されております。さらに零細企業といたしまして製本屋——製本会社というのですか、こういう所にいたしましても、最近非常な劣悪な賃金で雇っている。賃金値上げを要求すれば、もう会社を閉じるといっておどかして、事実内職に出しておる。内職の面におきましていかに零細な賃金でやっておるかということは、下情に通じておいでになる大臣はよく御承知だろうと思う。従ってこれら中小企業から閉め出されておる婦人、さらにこれが落ちていく先であるところの家内工業、これらについて大臣は何か御構想を持っておいでになるか。さらに婦人が首を切られるということに対しまして、婦人優先で首切っておることに対しては、何らか御注意をいただくというような方針を持っておられるかどうか。
  108. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 繊維工業その他において操業短縮、あるいは一時工場を休むというようなことが漸次出て参りまして、その際に婦人の多数が帰休いたしておる事実は認めます。従って婦人であるがゆえに特別に不利な待遇を強制しているようなことがございましたら、これは望ましからぬことでございますが、帰休制度の実施については組合側と話し合ってやっておる所が大部分だと思っておりまするので、そういう点も、御指摘のような婦人ということのために不利な条件を受けるようなことがございましたら、これは適切な処置をとらなければならない、好ましからぬ事態であると思っておるわけでございます。それから中小企業におきまして、今、製本業のことを御指摘でありましたが、一般的に労働条件が非常に悪い、賃金が低い、これはまあ事実でありまして、これを矯正いたしますために、ただいま最低賃金法案を提出いたしておるようなわけであります。しかし法案の成立を待たないで、ただいま各基準局、監督署を通じまして、そういう劣悪な条件のところでは業者間の協定を勧めて、条件の改善に努めさせているわけでありまして、すでにでき上ったもの二十件、及び今進行中のもの四十件ほどございます、なお積極的にその条件の改善に努力をいたしておるつもりでございます。それからこれに関連を持ちます家内工業の問題でありますが、ただいま提出いたしました最低賃金法案に関連を持つものといたしましては、家内工業についても最低工賃を最低賃金審議会にはかって設けるようにいたしておりますしかしそれ以外のいわゆる家内工業はなかなか現在の状態で実態をつかむことが非常に困難でありますので、昭和三十三年度におきましては所要の経費を計上いたしましてその実態を調査いたしまして、でき得る限りすみやかに、一般の労賃の引き下げの原因となる家内工業における低工賃の解消に努めて参る所存でございます。
  109. 藤原道子

    ○藤原道子君 家内工業法をお出しになる用意がおありになるかどうか。
  110. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) できるだけ早い機会に家内工業法というものを制定する必要があると考えております。しかし先ほど申しました通り、現在の段階では、最低賃金法の実施に関連のあるものについて、最低賃金法の中に最低工賃を設ける規定を設けてありまするが、それ以外の全般的なものにつきましては、今家内工業の実態を調査いたしまして、すみやかに家内工業法を制定いたしたい、家内工業法の制定を伴わなければ、最低賃金制の効果もあげられない、こう考えておるのであります。
  111. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連質問許していただけますか。
  112. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ちょっとお待ち下さいませ。
  113. 藤原道子

    ○藤原道子君 次の問題に移りますから、関連を先にして下さい。
  114. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それでは高田さんに申し上げます。委員長から先ほど申し上げました通りでございますが、簡単に御発言を願います。
  115. 高田なほ子

    高田なほ子君 実は遠慮いたしまして関連を差し控えておったのですが、かなり重要な御発言だったので、労働大臣に一問だけお許し願いたいと思います。  婦人労働者が最近続々と首切りの対象になっておる事実に対して、まことにこのことは不当である。従ってこういう事実に対しては積極的にこのことを防ぐという御答弁があったわけであります。けれども、実際面においては婦人労働者に対する保護施設というものがきわめて最近脆弱になりつつあります。特に今年度予算では、こうした立場にある婦人労働者の保護施設に必要な経費として、前年度に比べて約二百万円の減額をしておる。今日大多数の婦人労働者を保護し、またその施設の強化をする、こういうことのために、国は何と二百七十九万円という、まるでスズメの涙の百分の一くらいの予算きり組んでいない。しかもこれを今年度は減らしている。こういうことでは、あなたの言葉が実際行政面の上に現われてこない。なぜこういう経費を減らしてしまったのか。今の御主張に比べてはなはだしく矛盾が感じられますので、一言御答弁を願いたい。
  116. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 二百万円の削減をしたというお話でありますが、私はこまかいことは覚えておりませんが、それは継続して物を作る予定であったものができ上りましたから、それでその分の経費は必要でなくなったわけでございます。そこで本年度は中小企業に働く婦人のために二百八十万円、スズメの涙だとおっしゃればその通りでございますが、本年度一番最初の試み、最初のことは大体まあ小さいところから順番に出発していくのが世の中のならわしでございまして、御不満でございましょうけれども、これを契機といたしましてだんだんそういう施設が成功をおさめまするならば、拡大して参るつもりでございます。二百万円削減をいたしました件につきましては婦人局長から答弁をいたします。
  117. 谷野せつ

    政府委員(谷野せつ君) 婦人少年局の予算につきましては、二百万円減額されたというお話でございますが、これにつきましては一般の事務費の削減のパーセンテージでございまして、特殊の施設が減らされたということはございません。
  118. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はこの問題についてはさらに突っ込みたいのですが、時間がございませんので他日に譲りますが、問題は、婦人を尊重している尊重していると言うけれども、労働省の婦人少年局長たった一人の谷野さんの名前くらいは委員長も覚えておいてもらいたい。(笑声)
  119. 泉山三六

    委員長泉山三六君) どうも失礼いたしました。
  120. 藤原道子

    ○藤原道子君 この際お伺いしたいのは、時間がございませんので大急ぎでお伺いいたしますが、岸総理に売春に対してのあなたの理念を伺いたい。問題は四月一日から法第五条が適用されますので、転廃業が進んでおりますけれども、これに対する予算があまりにも削減されましたために、結局業者間におきましては、これについて政府はやはり去年あなたの党内で一度決定されましたところの、施行を延期するという案こういう方向に流れるものと期待いたしまして、帰郷する女の子に対しましても、そのうち呼んでやるんだから一時帰っている、こういう指令をしておる事実、さらに廃業いたしました業者が転業していない。これが多いのです。ところがそういった動きの中に、あなたの党の国会議員が会長をしたり、あるいは顧問になったり、こういうことでこの適切なる業者の転廃業をはばんでおります。予算が少なかったために取締りもできない。更生施設も少い。これを何とかして推進しようとしておる一般の国民に対しまして、予算が少いのにかてて加えてそういう宣伝が流されて、廃業をしてばかを見たという業者が最近ふえておりますが、これはどうですか、画期的な革命的なと言われるくらいの売春防止法の出現に対しまして、あまりにも熱意のない与党の態度、政府の態度に、私どもは限りのない努りを持っております。これに対して御答弁を願います。
  121. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 売春防止法が四月一日から施行されます。これにつきましていろいろな揣摩憶測が行われ、もしくは根拠のない流説が行われておるということは、私、非常に遺憾に思っております。政府が幾たびか声明をいたしております通り、四月一日からこれを完全実施するということを中外に声明をいたしておりまして、その準備を進めてきておることは御承知の通りであります。今回といえどもこのことにつきましては少しもその考えに変化もございませんし、動揺もないということを御了承願いたいと思う。この問題は申し上げるまでもなく、ただ法の励行だけでは完全にその目的を達するものではなく、一方その営業に従事しておる業者は完全に転廃業させ、またこれに従業をしておる人に十分な更生の道をつけていくということが伴わなければならぬということは言うを待たない。これらに対しましても政府としてはあらゆる面から努力をいたしております。予算の点につきましてもあるいは不十分であるという御批判もあるかもしれません。私どもはこの売春防止を四月一日から施行し、これに必要な今申すような措置に対して必要な経費は、われわれは計上しておるつもりであります。もしもさらにその点が不十分であるということであれば、将来において増額すべきことも考えなければなりませんけれども、私どもは一応これでもってやっていくという何で予算を計上したわけでありまして、その決意につきまして、何か事実に根拠してないような風説が行われ、この大事業を実現するこの最初に、これをはばむような空気がもしも世間にありとするならば、これは政府もまたあらゆる方面とも協力してそういうことはない、政府は断固としてこれをやるんだということを重ねて明らかに申し上げておきます。  それから私の総裁をしております与党といたしましても、当然これは今申しました方針に何らの変りはございませんし、またその点においてもしも十分な点がありとするならば、十分に私としては決意の方向に向って協力をするように努力して参るつもりでおります。
  122. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は決意をもってやるというのならば、二十二億からの要求に対して最初の査定は三億であった。婦人団体の反抗にあって結局五億になった。これでやれるというあなたの考え方が私には納得いかない。さらに与党の議員がこれらの業者の転廃業をおくらせんとする、また元にかえろうとする団体の顧問をしたり、委員長をしたりしているような例に対しましては、総裁としてどういうようなお考えをお持ちになるか伺いたいのです。  今一つは私ども外国に参りまして一番遺憾に思いますのは、日本といえば富士山、芸者ガールこれがすぐ出るのです。ところが今日芸者の実態を思うときに非常に残念なんです。これあるがゆえに外国からきました高官が、結局日本へくると女を要求する。これを政府は甘んじて出しているという事実は一体どうなのですか。私はこれらに対しまして、あなた方が外国へ行ったときに向うの人に女を要求するようなことはまあないだろうと思う。また要求もできないと思うけれども、日本が売春の国であるということが世界的通念になっているから、こういうことを言われてもやむを得ず出している。こういうやり方をしているから、結果におきましては、今日あなたが幾らやるやると言っても、官僚諸君が地方へ行ったときに女を要求している事実がある。女を出さなければ不満で非常に当りが悪い。結局地方といたしましては、陳情を実現させるためには、女を抱かしている事実がたくさんございます。こういうことは、綱紀が弛緩をしているとはお考えになりませんか。ことに売春法のないときならばともかくも、売春禁止が今日出ているにもかかわらず、外国高官の要求に応じて女を出す。要求されること自体が私は屈辱だと思う、国辱だと思う、こういう点に対して総理大臣はどうお考えになるか。  さらに最後に、この問題について、時間がないそうでございますから残念でございますけれども、あなたが外国からおいでになった人をよく赤坂へ招待していらっしゃる。赤坂には私は内閣の分室があるとは聞いてない。政府にはそれぞれ高官を遇する場所はあるはずです。従いまして世間の疑惑を招くような、こういう総理みずからがおやりになるということは、厳に慎しんでほしいと思いますが、いかがでございますか。
  123. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 売春の今先ほど申しました私どもの決意、これは政府与党ともに同じ考えでもって進んで参るつもりでおります。従いまして、今御指摘がありましたように、何か業者が施行を延期をしようとか、あるいはそれを妨げようとかするような、一体業者の団体があること自体が許されないことであると思います。もしそういうものがあり、それに私の党の人が何らかの関係を持っているという事実がありとするならば、これは厳に禁止する考えでありますが、事情を明らかにして善処したいと思います。  芸者の問題に関しての御意見でございましたが、これは私は今何かおあげになりましたような、外国からの高官がきて、そういう要求があり、これを差し出しているというような事実を前提にしてお話がありましたけれども、そういうことは私は承知いたしておりません。そういう事実は全然私は承知いたしておりませんし、そういうことが私はあると実は想像もいたしておりません。ただ最後に、私の外国の人々を接待する場合において、芸者をはべらしての招待をやめろという御意見でございます。これもごもっともなことであると思います。ただ従来これは日本の生活、宴会とかあるいは人を招待する場合において、外国と非常に違っていることの一つは、外国では、多くは旅行その他の場合におきまして婦人が伴われており、婦人がそういう宴会をあっせんする、もしくはいろいろのサービスをするような形になっている宴会が私どもは外国に多いと思うのであります。ところが日本には従来そういう慣習がなかったことは、これは私はいいか悪いかということではないのですが、事実がそうであり、従って従来いろいろな宴席において客を招待する場合に、それをあっせんし、世話する意味において芸者というものがはべっておったということは、これは事実であります。これが私は非常にいい習慣であるというわけではもちろんございませんが、それが今までの日本の習慣として行われておったという事実がありまして、従って外国からきた人も今お話のように外国人が富士山、芸者というようなことに対して従来先入観を持っており、それらの人々の演芸も見たいというような希望があることは、これは事実であります。これらをもてなす意味において、そういうことをしておったということに対する御批判につきましては、私としても十分一つ考えて、将来のことについて十分考えるつもりであります。
  124. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は岸総理も非常に苦しい御答弁だろうと思うのです。私は国際的なことにもなりますので、名前を指摘して言うことは差し控えますけれども、そういう例はないというけれども例があるらしいのです。  さらに私は過日大阪に参りまして、大阪でも女を提供したホテルから、その他のこともよく調査をいたしてきております。従いましてこういうことをやらなければならないような弱味を取り去らなければならない。結局従来の慣習だと言われるけれども、売春は従来の日本の慣習だったと認められていたんですけれども、これを人権尊重の立場から、性道徳を守る立場から今回立法されたものだと思う。従って悪い慣習ならばそれを断ち切られて、いわゆる慣習々々で問題が解決できるか。総理みずからが率先して範を示されてこそ、風紀問題の解決もできると思いますので、この点は強く要望いたします。  さらに総理にお伺いいたしたいことは、私は先ほどの総理の御答弁で、もし費用が足らなかったら善処しなければならない——これは補正でも組むという御意思であると了解をいたします。  それから今度の売春問題につきまして、私は全国の婦人収容所、婦人寮というものを調査をいたしておりますが、そこに入っている者のほとんどといっていいくらい精薄なんです。精神薄弱者なんです。過日も参議院の法務委員会に女子少年院の寮長さんを呼びましたら、不良女子を入れるところの女子少年院は、結局二〇%は売春婦だ、十八才以下で。ところがその中で正常な知能を持っております者はたった一人だという参考人の供述でございました。また全国回ってみましても、八割くらいは精薄ではなかろうかと、こう思って参りました。さらに過日法務省に私どもがデータを要求いたしまして、受刑しておられる人たちの知能の程度をお伺いいたしましたところ、大体三〇%くらいが精薄なんです。正常である者は受刑者の中でたった五〇%だ。あとは準正常と規定せられておりますが、外国では知能指数八〇%くらいを精薄と扱っておりますから、結局これも精薄の部類に入る人が多いと思う。こういう点について、今売春問題は精薄が解決できれば八〇%は解決できるというのが、これが国際的な常識になっている。ところが、わが日本におきましては、精薄が九十七、八万と記憶いたしますが、今日それで施設に入っております者はわずか五千人なんです、十八才以下の者が……。あとは野放しなんです。これを一体どうする。さらに問題は成年期になって、十八才ですが二年の延長がございまして、二十才になるといやでもおうでも施設から出す。しかし知能は回復するものではございません。これが今日社会でいろいろな不安を与えていると同時に、またその肉親の者を、非常な何といいますか苦しい立場に追い込んでおります。これら精薄対策は、売春問題に通じ、さらに社会的犯罪に通ずる。これを考えますときに、できてから使う金を、なぜこの精薄対策に使うことができないのか。私は七、八年来このことを主張いたしておりますが、何ら政府ではお取り上げが願えないわけであります。私は非常に遺憾です。ことに精薄者の中には、教育さえすれば、りっぱに個人のことのできるまでに発達している子供がたくさんあるんです。山下清のごときは、申し上げるまでもなく、精薄で手におえなくて、施設に入って画才が見出されて今日の山下清ができ上ったんです。これを思いますときに、もっとあたたかい気持と、対人間的な関係、対社会的な問題、これらを勘案されまして、精薄対策をこの際確立する御用意があるかどうか。もしなかったら、私はぜひともこれはやってほしい。社会に不安を与える実害、ほとんど兇悪犯罪なんというのは、そういう人たちによって行われるのじゃないかと私は思うんです。それからこうした精薄の子供が社会におりますことは、その子自身の責任ではないのに、非常にかわいそうだと思います。こうした人間的立場からも、精薄対策が樹立されるべきものと思いますので、あなたのお考えをお伺いしたい。で、時間がございませんから、立ったついでにもう一つ、これは一つ、せっかくきょうは外相と通産相に来ていただいておりますので、これに対してちょっとだけ御質問を個条書きにお伺いしたいと思います。  私ども外地へ参りまして、移住振興を見ますときに、非常に外地の機関がばらばらでございまして、それに対しまして、ほとんどが総領事館にそっぽを向いております。これでは真実の移住振興は進まないと思う。内地においては、農林省、建設省、外務省が、これまたばらばらのように聞いております。一体、大切な移住振興をどう考えておいでになるか。さらにこの移住振興会社の人選の問題が、外地へ参りますと、これは岸人事だといわれております。情実人事だといわれております。そうして同時に、この移住振興のやり方が、どこへいっても評判が悪い。先ほども私は外地へいったときのメモを見てみますと、その日の私の記録に、どこへいっても移住振興の評判が悪い、つらいことだと書いてございます。ほんとうに悪いんです。移住振興会社の持っておる使命は、ほとんど果されておりません。従いましてこの際、何とかこれを軌道に乗せる意味におきましても、第一に移住審議会というようなものを設けて、これに代表者も入れて、そうして何とか移住問題と真剣に取っ組む御用意があるかどうか、それから渡航費を補助金制度に切りかえる御用意がないかしら。これが非常に移民の立ち上りを阻害いたしております。この点についての外務大臣のお考え、さらに内地の輸出検査が非常に悪いとみえまして、外国へいきましても、どこへいっても評判が悪い、もう日本品なんかを買っておりません。薬品等にいたしましても、弱くて役に立たない、ほとんどボイコットしております。それから、「かま」にしても、その他農機具にしても、ほとんど日本のものは、なまくらで、使用にたえないといって、外国製品を買っております。最近、移民が持ってくる品物はいいそうでございます。「かま」でも「すき」でも、大へんいいものを持っておる。こういうことになると、後進国だからこの程度のものでいいんだろうといって、二流、三流品を送っておいでになるのか、あるいはまた輸出検査が悪いのか、あるいはそこに情実がからんでいるのかというふうに考えざるを得ないんですが、もし悪徳業者がそういうことをしているんだとすれば、通産省におかれましては、どういうこの悪徳業者に対しての態度をとっておいでになるか。輸出検査の実態と、それからもし悪い業者に対する対策等がどのようになされておるかという点を伺いたいと思います。さらに国民年金制度を伺う予定でございましたら、時間がなくなった。
  125. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 精神薄弱児に対する施設、施策ということは、おあげになりましたように、非常に及ぶところが広いし、また大事な問題であり、人道的立場からも考えなければならぬ問題だと思います。ただ、この問題は藤原委員は、すでに長い間御主張になっておるということでございますが、実は政府において具体的に取り上げられたのは比較的新しいために、現在あります施設は、まだきわめて不十分であることは言うを待ちません。年を追うて各種の施設が強化されてきておるという事実も、藤原委員も御認識いただいておると思いますが、なお非常に不十分でありますので、今後も十分に検討して、これに対する施設を強化していくようにいたしていきたいと思います。
  126. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 移住政策につきましては、私はこの際、やはり全般に再検討をして、そうしてわが国の移住振興を進めて参らなければならぬのではないかと考えております。従って法律関係におきましても、二十九年にできた法律があるようなわけでありまして、これも検討して参りませんければならず、また移住会社の問題につきましても、組織運営等につきまして、この時代に適応するように、最初あれはずいぶん早急に設立されたように、その当時民間で記憶しておるのであります。従ってそういう問題についても、一ぺん再検覆をしてみなければならぬ。また、ただいまお話のように、現地におきます連絡が非常に悪い、何らかの形で審議機関等を作らなければ適当に運営ができないのではないか。また領事館等も、どうも現地のそういう人たちから離れがちであるといういろいろな御批評も、私は全部が全部否定できないところがあると思います。従いまして私といたしましては、パラグァイの造船問題その他を通じて、いろいろ移住問題を考えて参ります際に、結論としては、最近にこういう問題を総括して、一ぺん再検討して見る。法律から始まつて、運営、現地の情勢、それから、なお国内におきます各省との連絡、あるいは移民そのものの考え方が、昔は生めよふやせよでありまして、そうしてふえた人口を出せばいいんだというようなところにあったと思うのでありますが、現在必ずしも生めよふやせよではなく、産制等も発達してきた場合に、ある意味からいいますれば、移民というものは農村の二、三男対策、農村の合理化とか、あるいは東南アジアとの関係における日本の産業の再編成に伴って、日本の優秀な技術を持った人が出ていく、また現地の経済建設等に寄与する人を出すという、いろいろな意味で、過去の移民という言葉だけからきておるものも違った点があるのではないか、こういう時代に即応して、全体を考え直していかなければならぬ、こういうふうに考えておりますので、私といたしましては、十分にこれらのものを総合的に検討して、新しき方策を立てていきたい、こう考えておるわけであります。今後とも各方面のいろいろな知識経験等を拝聴しまして、そうしてやって参りたい、こう考えております。
  127. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 農機具の輸出につきましては、脱穀機とか除草機、噴霧機、そういうようなものにつきましては検査をいたしております。ただいまお話のような、「かま」とか、あるいは「くわ」については検査をいたしておりません。従ってただいまのお話もありましたので、今後検討して、そういうものにつきましても検査をやるということを考えてみましょう。大体において抜き検査をやっておりますが、今までそういうものについては、あまり非難がないようであります。それから医薬、農薬品につきましては、検査をいたしておりません。あるいは強力なものが必要であれば、そういうオファーがあればいいのでありますが、そうでない。結局は宣伝が行き届いておらぬのじゃないかというふうにも考えます。今後よく検討いたしまして、今まではそういうことは聞いておらないのであります。今後研究いたして善処いたしたいと、かように考えます。
  128. 泉山三六

    委員長泉山三六君) この際、申し上げます。  昨日各党理事諸君の申し合せによりまして、本日の昼食時間は特に四十分と協定いたしております。相当切り詰められた時間とは存じまするが、本日の審議に対する右申し合せの趣旨を了とせられまして、時間の励行については委員各位において、また政府においても特段の御協力をお願いいたします。  午後は二時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十一分休憩    —————・—————    午後二時四十三分開会
  129. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を再開いたします。  まず委員の変更について報告いたします。小山邦太郎君及び苫米地義三君が辞任せられ、その補欠として柴田栄君及び前田佳都君がそれぞれ選任せられました。   —————————————
  130. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これより質疑を続行いたします。
  131. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 予定時間をかなり制約されましたので、伺うのは簡単に伺いますが、大体通告してありますから、答弁は適切に一つお願いしたいと思います。  まず総理に伺いますが、日本国憲法の前文について、総理はどういうお考えを持っていらっしゃるか伺いたいと思います。
  132. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) ちょっと御質問の要点が私につかみかねるのですが、憲法の前文は、もちろん憲法の内容とともにこれを順守すべきものであると、こう思っております。
  133. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それだけ承わればよろしゅうございます。  次に私が伺いたい点は、これからお互いが生きていくに当って、政治をしていくに当って、戦争に対する反省、これが日本は戦敗の経験がないものですから、これらの点について不十分のまま戦後処理を始めた。そのためにいろいろ私は混乱が起ったと思うので。従ってそれぞれの立場で十分これらの問題について反省して、それをステップにしてやるということが最も私は肝要なことと思うのですが、総理の御見解を承わりたいと思います。
  134. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お説のように、戦争処理の——戦争後のいろいろの事態の処理の問題を解決し、処理していく上におきましては、戦争というものに対する深刻な、厳粛な反省の上に立って考えるべきであることは当然であると思います。
  135. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 参考に通告いたしておきました、第二次世界大戦において失われた領土、それから死者、戦争遺児、未亡人等の数字を、あらためて官房長官からお答え願いたいと思います。
  136. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 恐縮ですが、もう一度簡単に御発言願います。
  137. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 通告してありますから……。あらためて、第二次世界大戦において失われた国土、広さ、それから死傷者、戦争遺児、戦争未亡人の数と失われた富ですね、そういうものの数字を承わりたい。
  138. 田中龍夫

    政府委員田中龍夫君) お答えいたします。戦没者の数は、軍人が百八十万でございまして、うち病死が六十万でございます。軍属が十六万、うち病死が六万ございます。なお、国土の喪失は、戦前六十七万八千平方キロでありましたのが、朝鮮が二十二万一千平方キロ、台湾が三万六千、樺太が三万六千、この三地域が全体の国土の約四三%に相当するものが喪失しております。なお、国富の喪失でございますが、二十年八月の価額に換算いたしまして、戦前の国富が二千五百三十一億三千万円のうちで五百九十億九千九百万円を失い、約二三・三%を失っております。なお、戦争未亡人の数におきましては、シナ事変を含めまして約二十七万人でございまして、遺児の総数につきましてはなお厚生省の方からお答えいたします。
  139. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 遺児の総数につきましては、調べましてあとでお答え申し上げます。
  140. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これらの数字はお互い瞬時も忘れてならない数字と思いますので、あえて承わったわけです。  そこで私は、総理にお伺いいたしたい点は、お互い無反省に、軍人恩給の問題とか、あるいは、かつては主権在民のときに軍国主義に利用される傾きのあった紀元節の問題とが、あるいは再軍備の問題、あるいは戦後の教育というものは、戦前戦時中の教育に対する反省から生れた教育でございますが、そういう問題を論ずるのに当って不用意に、十分の反省なくしてやろうということは、私は十分注意しなければならぬことだと考えるわけですが、総理の御見解を承わりたいと思います。
  141. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) もちろん先ほど申し上げましたように、平和主義……、戦争ということを、われわれはあらゆる努力をして戦争をなくする、戦争に巻き込まれないということが憲法の精神でもありますし、日本のわれわれのとっていかなければならない政治上の根本であると思います。従いまして、あらゆる場合に、このことは常に念頭に置いて物事を処置していくことは当然である。ただ戦後におきまして、戦争中に受けた被害のうち、これはいろいろな社会情勢やその他一般の国民の気持というようなものを、十分に、世論の動向というようなものも頭に置いて、その戦争中に生じたいろいろな犠牲というものを戦後処理するということは、国がだんだん安定して来、また諸種の施設が進んでいくにつれて、私は当然考えるべきものは考えていかなければならぬ。しかしその根底において、今おあげになりましたようにいたずらに過去の軍国主義であるとか、過去のなにを復旧する、また戦争というようなことに巻き込まれるような考え方というものは、私は絶対にとるべきものでないと、かように考えております。
  142. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 具体的に伺いますが、戦争で働いて生き残った大将が普通恩給として年間に約二十八万円もらいます。ところが傷痍軍人となって、手足を失って働く力を一切喪失した、いわば不具者となった方々ですが、そういう方々が年間に二十三万円、こういうことについて総理大臣どうお考えになりますか。
  143. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 恩給の制度につきましては、たびたび本会議等でもその本質について議論がされておりまして、私も所信を申し述べておりますが、要するに国家が文官、軍人、かつてあった文官、軍人、すなわち国の公務に使用いたしておりますこれらの者が、老齢に達しもしくは病気、死亡等のために生活に困る事態のないように、使用主として特別の年金制度を作ったのが、恩給制度の本体であると思います。そしてこれが生きておる者に対しましては、一応やめたとき、あるいは病気その他の事故が発生したときにおけるところの国が与えておった待遇を基礎に、一定の率でもって年金額を算定するという方式をとっております。これは文官と軍人とを問わずそういうふうな建前になっておるわけであります。ただこの傷病者につきましてはそういうことを離れて戦争の犠牲者として、また医療の手当等の状況を考えまして、特別な考慮を払っていく、こういうのが今の建前になっております。そして数字的に申しますというと、それを算定したものが、あるいは、かつて大将であったところの者に対する恩給が今おあげになるように二十数万になり、また今申しましたような処置を講じての傷病者に対する処置が二十何万円、こういうことであります。それがあるいは均衡がとれておるかどうか、あるいはそれが適当であるかどうかということについては、いろいろ御議論もあろうかと思いますけれども、今までのこの恩給法の建前ということからそういうことに相なる、こういうふうに思います。
  144. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は恩給法そのものを否定しているのではないのです。問題は、あなたが言う内容、率などを問題にしている。そこに戦争に対する反省が不十分ではないかと考えます。さらに突込んで申し上げますが、私は長崎に原爆が落ちたときに、同地の中学校の教員として生徒を三菱の工場に連れて行ったものです。私は幸いに生き残りました。しかし私の教え子はずいぶんと原爆のために死にました。そこで、これを調べてみますと、私の教え子で両手を失ったものがある。その後、勉強も働くこともできないのですが、その青年は、今度の援護法で、援護法の二分の一が適用されるから八万五千五百円いただけます。ところが、それと同級生で軍籍に一日でも籍を置いて、原爆で傷ついて、同じように手を落した人は、二十三万円年間支給される。こういうアンバランスをどう考えますか。またあの工場で、原爆で死んだ民間人に対しては何にもないのです。一切ないのです。学生で当時死んだものは三万円手当があっただけ。さらにあの工場で働いて傷ついた、原爆が落ちたときに工場で傷ついた動員学徒は、たとえ片手が落ちていても何にもないのです。私はこういう不合理な、不均衡な取扱いはないと思う。私は恩給法そのものを否定しているのではない。そういう点についてあらためて総理大臣の御見解と、所管大臣である厚生大臣は、こういう動員学徒、準軍属に対してどう善処されるのか、その点を承わりたいと思います。
  145. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 恩給法の問題あるいは戦後処理、戦争中に受けた犠牲に対する国家補償の問題等におきまして、これはいろいろな事態が当時は発生いたしております。この間における均衡をどういうふうにとるべきか。またこれらに対してどういう処置をとるべきかということは、矢嶋委員も御想像できるようにきわめて複雑な関係になります。そこで、これらをわれわれは検討するために臨時恩給等調査会というものを設けて、各種のこういう戦争中の被害、犠牲、そしてその間の均衡をどういうようにとるべきかということも、いろいろと検討をしていただきまして、その成案を得て、大体の大綱を今度の軍人等の恩給法の改正によってある程度これを解決し、また援護法の規定の適用によって解決するという処置をとって参ったのであります。しかし、今申しますように、事がきわめて複雑であり、多種多岐にわたっておりますから部分々々においてはまだまだ不均衡な点もございましょうし、将来においても研究すべき問題はもちろん私は残っていると思うのです。しかし大筋においては今回においてこれらの問題を解決するというのが今度の恩給法の改正の趣旨でありまして、なお具体的の事例等につきましては、十分に一つ専門的な検討を加えて均衡がとれるようにしなければならぬ、こう思っております。
  146. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 動員学徒に対して非常に今まで顧みられておらなかったのであります。今回の処置によりまして、六項症以上の身体障害者に対しては障害年金の支給をする。なお更生医療の給付、補装具の支給、国立保養所への収容というようなことを行うことになったのであります。その遺族に対しましては御承知の通りに遺族給与金というものを支給いたしますし、障害年金は年度を限らずしてやっておるというふうな情勢になったのでありますが、むろん戦争の犠牲になられたこういう方たちの本人及び遺族等に関しましては、非常にお気の毒だということを感じておりましたのですが、今回初めてこれらの問題を解決することに至ったわけでありますので、御不満もあろうかと思いますが、全体の趨勢から考えれば、まずやむを得ざる処置ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  147. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はあなたの説明されたようなことを聞くのが目的ではないのです。一切承知しております。だから具体的に私は一例をあげてお聞きしたのですが、そういうアンバランスに対しては不思議に思われませんか。再検討されるお考えはございませんか。その点を伺います。
  148. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 御批判はいろいろあると思うのでありますが、今回初めてこれらに対しての処置が講ぜられることになった。そして一方におきましては、むろん兵役の関係、兵役法に服したという人たちとの均衡と、あるいは一般国民で戦争の被害者、直接間接の被害者というものが多数ありとすれば、今回の処置だけでも平年度約三百億というふうになりますると、これらの全体を考えますときに、やむを得ざる処置と考えざるを得ないということを御答弁申し上げる次第であります。
  149. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私の調査では、将官級で合計約五千二百の人が二十万から二十八万程度のものを受けている。そういう方々の半額にしても、私は学徒動員あたりの不均衡を是正するように努力すべきだと思うのですが、質問を次に進めます。  次に伺いたいのは、わが国の外交は全く行き詰まって、国民は非常にしおれているという実情だと思います。私は簡単に伺うのですが、沖繩、あるいは小笠原、択捉、国後等の領土の問題については論じ尽されているのですが総理は、野党の社会党さらには緑風会等の党首とも十分話し合って、全国民的な意思を結集して、そして北方の領土についても、南方の領土についても、同じ態度で、施政権の返還あるいは領土の返還を要求していくというような、そういう強い外交方針はとれないものですかどうもやること、それからお答えになることを承わっていますと、非常にアメリカに気がねされているといいますか、あるいはべたぼれで、見失っているというふうな感じを受けるわけですが、決意を承わりたいと思います。
  150. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 領土問題は、これは日本としてきわめて重大な問題であり、国民的のこれに対する要望も非常に強いものがございます。そうして沖繩、小笠原については、領土についてはいわゆる潜在主権というものが認められておりまして、しかし実際の施政権がアメリカにありますために、いろいろな問題も起しておるし、国民としてはその点において非常な不満を持っておることはよく承知いたしております。従って、これに対しては、施政権の返還の問題についてしばしば申し上げているように、いまだ目的を達しませんけれども、あらゆる機会において今後ともこれにわれわれは力を入れるべきものであると思います。入れていきたいと私も決意しております。  また北方の領土の問題につきましては、言うまでもなく、この歯舞、色丹は北海道の一部であって、これが当然日本に帰属すべきものであることは言うを待たないし、国後、択捉については固有領土として、われわれはソ連に対して強くその日本への帰属を主張いたしておるわけであります。しかしてこれに対しては、不幸にしてわれわれのこの国民的一致した要望がソ連側に聞き入れられておらないというのが今日の現状であります。こういうような場合において、今お話のごとく、国の世論を統一して、背後における国民世論の強い力でもってこれを要望するということが、特に日本のようなこの国柄、かつてあったような非常な武力を持っておってそれを背景として、ものを言うということではなしに、われわれが正しい主張をいたしますについて、それを相手方をして聞き入れしめるのには、一番強いものが私は国民世論の力であり、国民が一致してそういうことを何しておるという気魄が示されることが必要であると思います。そういう意味におきまして、今後外交を進めていく上において、いわゆる一部で言われておる超党派外交といいますか、党派を越えてもこういう重要な問題については話し合いをしてそうして一致した世論の背景の下に外交を、こういう国民的な強い要望を実現するように努力すべきことは、私は当然のことであり、またそういうふうに今後も十分に努めて参りたいと考えております。
  151. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 一つ具体的に承わりますが、先般アメリカの国内においても、沖繩の施政権は返すべきだという世論が起り、アメリカの有力日刊紙にも社説として取り上げられたほどなんです。そういうときに、日本政府はどれだけ積極的にこの世論を背景に働きかけたかという点、私は不十分だと思うのです。さらに、少くとも教育権だけでも返してもらいたいということを与野党通じて主張している。松永文部大臣はアメリカ大使にお会いして、教育権だけでも返してもらいたいということを昨年秋ごろ勢い込んでおられたのですが、ただ一回ちょっと会われただけで、あとは何のこともない。一体何回アメリカ大使に会われて交渉し、どういう御返事になっておるのか。この沖繩の施政権及びそのうちの教育権の返還について、総理並びに文部大臣の答弁を求めます。
  152. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 沖繩の施政権の問題、小笠原の問題につきましては、総理が渡米された機会にも強くこれを要望して必ずしも意見が合致しなかったことは御承知の通りだと思います。その後、私がアメリカに参りまして、ワシントンにおきましても、これまたわれわれの国民的希望というものを十分にアメリカ当局に説明もいたし、理解を得るように努めたわけであります。しかしながら必ずしも十分な理解を得ないようでありますが、しかし、これはわれわれとしては非常な国民的要望であり、重大でありますから、ひき続いてやらなければならぬ問題だと思います。その後、外交的の折衝におきまして、大使等と会います機会には私は常にこういう問題について話をしておるのでありまして、決してこの努力を怠っているとは思っておりません。しかしながら今お話のように、この問題は国民的世論を背景にして今後ともますます十分力を尽して、そうしてアメリカの理解を得、アメリカ政府がそういうことに耳を傾けるようにして参らなければならぬので、ただいま御指摘のありましたように、アメリカにおける国内の世論の中にも逐次そういう傾向もあるわけでありますから、その意味においてはわれわれもさらに一そう努めて参らなければならぬ、こう考えております。
  153. 松永東

    国務大臣(松永東君) 矢嶋委員の御質疑でございますが、昨年の秋、私はこの問題についてアメリカの大使とお目にかかって話したことはありますが、しかし、その後も外務大臣に何回もお願いし、さらにまたアメリカに行かれる議員諸賢にもお願いをいたしまして、何とかせめて教育権でも復活させるようにしてもらいたいということを頼んでおるのですが、しかしながら私が直接にアメリカの大使に会ったり何なりすることは、これはどうも職掌柄私は控えた方がいいのではないか、従って、外務大臣にお願いしてやってもらった方がいいと思いましてやっております。しかし、それの話とは別に、お目にかかる機会があれば必ず私はお願いしようと考えております。この間も実は宗谷問題で非常にアメリカでお骨折りをいただいたので、これに対してお礼の言葉を申し上げようと思って、その後お目にかかりたいというので何回も申し出ておるのですが、私の都合のいいときには向うの都合が悪くて、今もってお目にかかることができないでおりますのですが、日ならずお目にかかって、私のお願いが効果があるかないかしりませんが、私は談判してみたいというふうに考えております。
  154. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 通り一ぺんの外交折衝ではだめです。しっかりやってもらいたいと思います。  次に総理に伺いますが、またまたエニウェトクで四月からアメリカは核爆発の実験をやるというのですが、これは公海の自由を犯すものであり、岸総理の信頼に、あるいは期待に反するものと私は考えるのですが、いかがですか。
  155. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 原爆実験禁止の問題につきましては、私は英米ソどこに対しましても、われわれの国民的のこの強い念願を体して、その禁止をするように努力をして参っておりますが、不幸にしていまだその実をみない。ソ連においてはしばしば無警告で実験が行われておる。またイギリスは再度クリスマス島を中心として行い、また四月からアメリカがこれを太平洋のまん中でやるということにつきましては、われわれとしては強くアメリカの反省を求めておりますが、事実はまだ今の現状においては私どもの望みが達せられないこと、はなはだ遺憾であります。私は当該国に対してそういう措置をとり、反省を求めるとともに、世界の世論に訴えて大国間にこれを禁止する条約なり取りきめが一日も早くできるように、今後もあらゆる努力をいたして参りたい、かように考えております。
  156. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私の質問点を答えてない。公海の自由に反するのではないかということと、それから岸総理の期待と信頼に反するものではないかということを伺っておるのです。
  157. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 今申し上げましたように、私はあらゆる努力をしておるにかかわらず、アメリカ側が反省をしてこれを取りやめることをしないという事態は、私としては非常に遺憾であるということを申し上げました。またこういう公海においてやる場合においては、その間、公海の自由が妨げられるということは、これに必然的に伴うものでありますから、イギリス、アメリカが太平洋上でやる場合におきましては、そういうこともつけ加えてアメリカやイギリスの反省を求めておるわけであります。
  158. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ほんとうにあなたは容認できないと、遺憾なことであるとするならば、なぜへーグの国際司法裁判所に提訴するとか、あるいは国連憲章の九十六条の第一項に基いて、松平代表をして勧告的意見を求めるような手続をとらせないのですか、国連総会で三分の二以上の賛成議決があれば勧告的意見を求めることができるとなっている。これが成功しなくても、わが松平代表がそれに努力するということ自体でも、少くともとらすべきだと思うのですが、そういう手段をどうしてとられないのですか、お伺いします。
  159. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) これを司法裁判所に訴えるとかいう問題につきましても、法律的な点等につきましてもわれわれの方において検討をいたしております。また国連に対しましても、御承知の通り、要はこれをやめさすところにあるのですから、いろいろな手段——今までわれわれがいろいろなことを提案をしいろいろな世界の世論に訴えておる。それでも聞かない。また当該国に反省を求めても聞かない。さらにあらゆる方法をとってこれをやめさせなければなりませんから、あらゆる方法につきましてもわれわれは法律的いろいろな点から検討を加えておりますが、今ただちにそういうふうに裁判所に訴えるとかどうとかいう法律手段をとるというところまでの結論を得ておらないというのが現状でございます。
  160. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理の言われることと、することとは、どうも国民にぴったりこないのです。また核兵器を持ち込まないとあなたは言われる、衆参の各委員会を通じて、核兵器をアメリカが持ち込むことのできない法的な根拠はないと、抑制できないと……。ところがあなたも外務大臣も、信頼していると、入るはずはない、入った証拠があれば示せ、こういうふうに逆襲しているわけですが、しかしエニウエトクの実験あるいはクリスマス鳥の実験は、あなたの期待と信頼にそむいて現にやっておるじゃないですか。そしてあなたは遺憾なことだと言っているのですが、あなたがいかに言われても、第七艦隊が横須賀に行くとか、あるいは飛行機によって核兵器が日本の上空あるいは海上をパトロールしておるかもしれない。これの確率は相当大きいと思うのです。なぜなんですか、はっきりと、核兵器は日本に持ち込まないという協定アメリカと結べという要望に対して、あなたが言われていることがほんとうならば、それじゃ国会で与野党一致してそういう決議もし、それからアメリカにそういう協定をしてほしいというような強い対処の仕方をなされないのですか。どうもその点、国民は割り切れないもの、理解しかねるものがあると思うのですが、お答え願いたいと思います。
  161. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) その点については、私はしばしば明確に申し上げております。しこうしていろいろの論議がされておりますけれども、事実、日本にそれが持ち込まれているところの事実もございませんし、またアメリカ側に対してわれわれがこれを持ち込みを認めないという強い意思は十分に徹底をいたしておりますし、また安保条約から生ずる各種の問題を、両方の理解と信頼のもとに合同委員会を作りまして、重要な事項をここで話し合っていくというこの態勢から見ますと、日本政府の承認を受けずしてそういうことが行なわれるということは絶対にない。しこうして私が首班である限り、これに承諾を与える意思はない、ということを明確に申し上げておりますので、きわめて私は、はっきりいたしておると信じております。
  162. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いずれ分科会でまたやりたいと思います。  次は皇室関係について簡単に承わりたいと思うのです。それは第一番は、皇太子の御成婚は国事か私事かということと、この皇太子殿下の御結婚については、外部からとやかく言わずに、御本人の意思を尊重してこれを取り扱われるということがしかるべきではないか。  次は、三笠宮が学徒として紀元節問題について発言されたということについて、とかくのことを聞くのですが、いかに殿下としても、学徒として発言されたことについては、とやかく言うのは当らないと私は思うのですが、その点はどうかということ。  それからもう一つは、今度九州で緑化大会が行われるので、陛下がおいでになるわけですが、どうも未だに陛下を御利用しようというような不届きな一部国民があって、陛下にも御迷惑を私はかける場合が多々あると思うのですが、取締りについても、国民と陛下とがほんとうに親近感を生ずるように、取締りの行き過ぎがないよう、また受入れ態勢についても、過度な予算支出等ないようにすることが陛下のお心に沿うものだと思うのですが、これらの点について総理並びに宮内庁長官答弁を求めます。
  163. 宇佐美毅

    説明員(宇佐美毅君) 第一の点は、皇太子殿下の御成婚が私事か公事かというお尋ねでございますが、結婚ということは私法上の問題が原則でございますけれども、皇太子殿下の御結婚につきましては、公的機関であります皇室会議の議を経なければならないというような各種の点から、公けのものと、ただいま考えておる次第でございます。  それから三笠宮の、学者として、学徒としての発言についての御質問でございますが、もとより学者として御研究になりましたことを発表されることは、これはとやかく申すことではございませんが、しかしながら、本来皇族という公的な地位におられる方でございますから、その御発表が政治問題その他に関しますることにつきましては、十分な慎重な態度を願わなければならないと思うのであります。皇族は申し上げるまでもなく、皇位継承権者であられ、またそのために選挙権も被選挙権もお持ちにならないわけでございますから、そういう点については厳に公的なお立場ということを忘れられてはならないのではないかというふうに考えております。  それから九州への御旅行についての御質問でございますが、これは九州のみならず各地に御旅行の際に、われわれといたしましても、ただいま御指摘のありました通りに、そのために特別の経費をかけますとか、あるいはということにつきましては、極力第一番にそれを地方あるいは視察される個所に対して希望を述べておるところでございます。また警備につきましても、地方にお出ましになることは、地方の府県民と親しむという、そういうお立場でお出かけになるわけでございますから、警備につきましても非常に賢明な態度をとっていただくように、警察当局にもお願い申し上げ、警察当局も、その御方針でいろいろ努力をしておられるのでございます。以上でございます。
  164. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 今、宇佐美長官から各種の問題についてお答えがありました、私、一、二の点だけを申し上げておきますが、皇太子殿下の御結婚の問題につきましては、これをどういう形式でやるかということは、これは十分慎重に考えなければならぬと思います。将来、国の象徴たるべき方の御結婚でありますから、もちろん単純な私法上の関係たけだと見るわけには私は参らぬと思います。十分慎重に検討をして参りたいと思います。  それから次の問題は、この、陛下のいろいろな場合における地方へお出ましになる際の取締りや、あるいは諸種の施設等につきましては、ただいま宮内庁長官からもお話がありましたが、陛下のお心持ちも、できるだけこういう機会に国民と親しく接して、そうして民情を十分に御視察になろうというお心持であろうことには異論ないのでありまして、いろいろな取締りの行き過ぎや、あるいはこれをお迎えすることに対する行き過ぎ等があることは、これはよほど厳に慎しまなければならぬと、かように考えております。
  165. 鈴木強

    ○鈴木強君 関連して。今の点でございますが、私は、天皇は新憲法下において国の象徴でございますから、もっと、天皇陛下のほんとうの気持というのは、ざっくばらんに国民に接したいというお気持が、私はあるのじゃないかと思うわけであります。ところが、私どもたまたま、天皇の誕生日に宮中にお招きを受けて行きましても、何かしら昔と同じように、ちゃんと事前に、陛下が来ますから、その際には立って下さいと、予行演習みたいなことをやって、きわめて窮屈なことをやっておる、陛下が入ってこられて、やあ、今日はと言って、お気軽にわれわれとお話をしたいのじゃないかと思うのですが、どうも宮内庁あたりの役人が、矢嶋委員も触れておったように、何かしら、陛下とわれわれの間を故意に遮断するような考え方があるのじゃないかということを私はおそれるのであります。ほんとうの天皇陛下のお気持を、不幸にしてわれわれは知らないので、即断するのは大へん失礼だと思いますが、たとえば具体的に、国会へお出ましになるときでもそうですが、毎年方々やることですが、その前日には予行演習をやつて、ここまで何分かかるかとか、何十秒かかるとかいうようなことをやっておるのです。そういうことは、いかにも形式主義じゃないかと思いますが、これらの点について、これは宇佐美長官がおいでになっておりますから、陛下にいつもお接しになっておられるので、ほんとうの気持を御存じかと思いますので、もう少し国民と陛下の間に、ほんとうに親しみが、自然に湧くようなやり方が本来の行き方だと思いますが、そういった点、どうもわれわれ国民から見て、地方に行ったとき、離れるよう離れるよう仕向けて行くような気がしますので、この際、いい機会でありますから、お伺いしておきたいと思います。
  166. 宇佐美毅

    説明員(宇佐美毅君) お答えを申し上げます。陛下が皇居で儀式を行われますとか、あるいは何か御視察にお出ましになる、それぞれの場合がございまして、一定の時間のうちに大ぜいの方を処理いたします場合におきましては、多少ただいま申し上げましたようなこともございまするし、儀式的な行事と申しますものも、やはり一つの形式が伴うわけでございますので、ただいま行いますようなやり方をいたしているわけでございます。もとより、それぞれのお立場で、いろいろな御希望が各方面から出るのでございますが、お述べになりましたように、陛下のお気持ちで、国民と親しむというお気持につきましては、今後なお一そう工夫をこらしまして、努力をいたしたいと考える次第でございます。
  167. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大蔵大臣に伺いますが、財政法二十七条に基いて、予算案を十二月中に出すということはできませんか。
  168. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 予算案は前年度の十二月中に出すのを常例にいたしておるのでありますが、この常例によりがたい場合がありまして、実際もまた最近は一月に出るようになっておりますが、私どもとしても、なるべく早く提出できるようにいたしたい、かように考えております。
  169. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 予算案の編成段階並びに提出時期については、ずいぶん私は本質的な問題があると思いますが、今時間がございませんので、分科会においてこの点は徹底的にやるつもりです。  質問を続けますが、大蔵大臣の所管で、ずいぶんと多額の税金を国民から徴収し、また予算案を閣議を通して国会に出すわけですが、この一般会計予算ですね、それと財政投融資、この金額を、百円札にしてずっと東京から並べたらどこまで届くくらいの金だとお思いですか、大臣並びに総理に伺うのですが、これは重さにしたらどのくらいの重さのものであるか、百円札にして並べると。とにかく国民から金をいただくんですから、大事にしてもらわなければならない、取り方も使い方も。そういう立場から私は伺いたいんですが、といって、お答えをいただくのは失礼ですから、ここで申し上げておきますが、百円札にしてこれを並べれば地球から月の世界まで三往復半するんです。よろしゅうございますか。そうして岸総理の体重にしますと、ちょうどあなたの体重の人で三十二万六千七百六十人分あるんですよ、あなたが今度の国会に出しておる予算は。かりにこの国会議事堂の高さにすれば、千円札を積み重ねますと、あなたが国会に出しているところの税金は千円札で国会議事堂の二千四百四十九倍になるんです。千円札さえも持てない国民がたくさんいるんですから、十分この点は腹に入れておいて政治をやってもらわなければならぬと思うのです。そこで私は大蔵大臣に伺いますが、日本においては、防衛関係費と社会保障費関係は、どの程度のバランスが適当であるか、また限度はどういうものであるかということについて、どういうお考えを持っておるか承わります。
  170. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この防衛費と社会保障費の関係でありまするが、これはむろん、一口に言えば均衡をとらなければならぬ。均衡をとるという意味は、国として、そのときにおいて防衛というものがどういうふうに必要であるか、また、それがどういうふうな程度まで、すでにでき上っておるのか、一方、また社会保障におきましても、どういう程度に社会保障が充実されておるか、こういうふうな、そのときにおいての段階も考えて私は均衡をはからねばなりませんが、そうかといって、社会保障というものを考えない防衛というものも、私は今日の事態ではやはり考えられない。ですから基本的には防衛というのは、日本の場合においては、なるべく必要最小限度にとどめ、そうして経済力、財政力の許す範囲内において社会保障というものを充実した方がいいという考え方でありますが、しかし先ほども申し上げましたように、これはやはり国全体の上から見て、私は均衡を得た形で進んで行く、それが国民所得に対してどういうふうなバランスと言いますか、あるいはパーセンテージにあるべきかというようなことも、これも私はそのときのやはり情勢に応じて考えて行かなくてはならぬ、かように考えておるわけでございます。
  171. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ただいまの日本の国民の生活実態等から考える場合に、また憲法上から考えましても、社会保障費に九・六%で、防衛関係費が一一・一%と、こういう予算の私は組み方はないと思うのです。むしろこの二つは車の両輪のごとくなければならぬのですが、日本においては、はるかに社会保障費のパーセンテージが上になくちゃならぬと思う。ところが、あなた方は、この防衛関係費は国民所得に対して一・七%で、各国より低いと言っておりますが、しかしアメリカとか、あるいは英国あたりと日本と、国民所得が違うんですからね。例えば一万円の収入ある人と千円収入ある人が、保険金を同じようにそれぞれの一割をかけた場合を考えると両者にはその負担に差があるわけであります。だから国民所得に対して防衛費が一・七%であるから、各国よりは少いというようなことは、とんでもないことだと思うのですが、こういう点について、一体、大蔵大臣はどういうお考えでいらっしゃるんですか。
  172. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) むろん世界各国の総予算に対しまする防衛費のパーセントは高い、数割に及ぶものが少くないようであります。日本はその場合においてはパーセンテージは少いんです、一%とか、二%とかいうことになりましょう。そういうふうにしまして少いんですが、今御承知のように、富んでおる国の国民所得というものは、かりにその大きな部分が税等においてとられても、残りの部分がやはり大きい。従いまして、私は単に今お話のように、パーセントでこれを批判することはできないと思っております。そういう意味からも、日本はいろいろと要請がありましても、国民所得全体としてはそうであっても、パーセントの一人々々の所得というような関係から見ると小さくもある。従いまして、大きな防衛力の負担力ではないという建前で今日まで進んで参っておるわけでございます。
  173. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は政治というものは、愛情を持って、気の毒な人に愛の手を差し伸べるような政治、そういう性格の予算を組まなければならぬと思います。一つ例をとりますが、例の剰余金四百三十六億の処置については私は非常に不満です。これは大蔵大臣の当初の考え方と、私はずいぶんずれてきたと思うのです。これに関連して私は伺いますが、かような四百三十六億というようなものは、永久的に将来残るような、何か意義のあるものに、さらに気の毒な人を助けるような角度から、こういう予算を私は使うべきだと思う。その一つとして、わが国は国際社会に復帰したが、いまだ国立劇場がないんです、恥かしいことです。招待外交と言っておりますが、そういうことはできません。最近は藤山外務大臣は盛んに赤坂を使っておるということですが、大体、富士山、芸者ガールという感覚では、私は今後の招待外交はできないと思うのです。外務大臣がまっ先に国立劇場の必要性を痛感すべきだと思うのです。で、この国立劇場はパレスハイツに云々と言われておりますが、一体このパレスハイツが返るのか、それから何ヵ年計画で建設しようとしておるのか、構想があるはずでございますから、国立劇場の必要性について、岸総理並びに大蔵大臣外務大臣答弁を求めるとともに、そのパレスハイツの返る時期、それから、その建設構想について、文部大臣並びに調達庁長官答弁を求めます。
  174. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十三年度予算におきまして、過年度の剰余金の繰越分四百三十六億を保留をいたしました。実質的の歳出にはされなかったのでありますが、これを何に使うかということにつきましては、いろいろな御意見もあろうかと思うのでありますが、私は、今日のこの日本の経済の再建並びに日本の経済を強化して行くということが、当面最も必要であるという見地から、経済基盤の拡大強化に今後使って行こうという意味において保留をいたしておるのであります。なお、私の関係する範囲においての国立劇場の問題でありますが、これは調査費を組みまして準備をいたしております。
  175. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外国から日本に呼びます場合に、日本の固有の文化を見せますこと、また日本の現在の産業状態を見せますこと、これは最も必要なことでございます。その意味におきまして、固有の文化、演劇を見せますために国立劇場があることは必要だと、その点から考えております。私も民間におりましたときから国立劇場促進論者でありますので、なお努力しております。
  176. 松永東

    国務大臣(松永東君) 国立劇場のことにつきましては、就任以来、非常にその設置場所を選考いたしておったのですが、ややきまりそうになって、どうもいろいろな支障ができまして、まだきまっておらぬわけであります。実は仰せになりましたパレスハイツや、それから切り通しにあります旧三菱の地所ですか、今たしか最高裁判所の所有になっておるらしいのでありますが、そういうところも問題になりました。さらにまた青山御所あたりも問題になりました。何とかして決定してもらおうと思っております。もうすでにきますところまできておったのですけれども、いろいろな支障がありまして、まだはっきりいたしておりません。
  177. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 今後どうするのですか。
  178. 松永東

    国務大臣(松永東君) ですからして、もうそう長くないうちにきめてもらおうと思うのですが、私は一日も早くきめてもらって、そうして建設をしてもらうというふうにしたいと思って努力を続けておるところであります。
  179. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) パレスハイツにつきましては、現在、米軍が住宅に使用しておりまして、米軍の住宅事情が好転しておりませんので、かわりの住宅を現在郊外に、こちらで建てて、そこへ移転をしてもらうという計画をいたしております。必要な予算は新年度で要求いたしております。完成いたしますまでには最低一年を要すると思います。
  180. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 国立劇場の必要なことは、各方面から強く要望されておりまして、今回の案にも調査費が盛られておりますが、その場所等につきましても、いろいろな点から検討が加えられております。できるだけ早くそれを決定して、これが実現するように今後とも努力したいと思います。
  181. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 パレスハイツとか、あるいは青山御所だとか、あっちこっちと大臣は場所をよろめくのじゃないですよ。大体平和条約が発効したときに、米軍は東京都の中心部から撤去するという約束だった、国会にも述べられた、いつまでもあんなところに置いておくのですか、しっかりした強い外交をやるべきなんだ。関係者では三十七億円の予算を組んで年次計画を立てておるわけですが、一向にはかどらない。これは一つには文部大臣の責任です。または大蔵大臣の理解の足らぬせいもあります。第一、招待外交、招待外交と言っておるのですが、赤坂でやるつもりですか、外務大臣に私はしっかりやってもらいたいと思う。  次にもう一点伺いますが、いずれ分科会で掘り下げて伺いますが、気の毒な人の立場から、日本に多数あるところの離島ですね、この方面にも私はこういう金は割愛すべきだと思うのですが、今度出された法律によりますと、科学技術振興とか、漁港の整備、異常災害等に四百三十六億の剰余金の一部は使うように述べられておりますが、これは離島の漁港あるいは港湾の改修等に利用されることになっているのかどうか。並びに、ことに人命尊重という立場から、離島の方々は非常に気の毒です。私は、国立病院の分院あたりを設けて、長期間医者が行くのを好まなかったならば、六ヵ月あるいは一カ年交代に赴任するような方策を、国立病院の名において私はやるべきだと思うわけです。なお、たとえば八丈島を例にとりますと、本土の船が一ぱい行くわけですが、避難港一つないというような状況でございます。もちろん、本年度は担当河野大臣の政治力によって予算は数億ふえて、十九億程度になっておりますが、一体離島開発振興について所管大臣はどういう見解を持っているかということと、今具体的に私が伺った点について、所管大臣並びに厚生大臣の答弁を求めます。
  182. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 離島における各種の政治上の施策が本土とだいぶ懸隔がありまして、すみやかにこれを本土並みに引き上げる必要があるということは、御指摘の通りでございます。その意味におきまして、しかも前年両院の御要求がございましたので、本年は企画庁におきましてこの予算を一括いたしまして、これを、まあ不十分でございますけれども、前年度に比べて幾らかふやして、これを取りまとめまして、早急のうちにこれを、さらに各島の実情によりまして、道路、港湾その他基本的な施策につきましては、企画庁においてこれを決定して施策をして参りたい。その他衛生、教育その他につきましては、所管大臣においてそれぞれやっていただけるものと思っておりますが、その点はそれぞれの所管大臣からお答えをいただきたいと思っております。
  183. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 今おっしゃったことは、私どもも医療機関の——先ほど午前中に申し上げたように、医療機関の適正配置という面から見まして、やはり無医地区の解消ということを考えておりますので離島関係に対しても逐次やって参る意向でおります。すでに十二の診療所がございまして、結局、おっしゃる通り、こういう所には国立病院、都道府県病院等公的医療機関から短期間に派遣するよりしょうがない、こういうふうに考えております。
  184. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 他は分科会に譲ります。  もう一点、私は具体的な点を承わりますが、それは在日外国機関、外人の国内における諜報活動はどういう状況ですか、担当者から御答弁願います。
  185. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 御承知のように、年々外国からわが国へ来往する外国人も多くなっております。また、外国公館の数も漸次増設をされておるのであります。外国公館の使命は、それぞれの自国民の保護、その他本来の外交上の使命を持っているものと思うのでございますが、今お尋ねの、そうした外国公館が中心になって、いわゆるスパイ活動の拠点になっているかどうかというふうなお尋ねのことと拝聴したのでございますが、いずれの国におきましても、外交の使命を達成するために、いろいろ駐在しておるその国の国情について、あるいは政治、あるいは外交、あるいは経済、あるいは防衛問題、いろんな問題についてその駐在している国の状況を知ろうという任務を持っていることは、各国とも同じではないかと思うのでございます。そういう意味におきまして、駐日各国の在留外国公館がいろいろな立場において、わが国の国内事情と申しますか、先ほど申しましたような各般の事情を知るべく努力しているということは、確かにあり得ると思うのでございます。
  186. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大蔵大臣に伺いますが、そのことと、この予算目の7にある報償費とは関係があるのですか、ないのですか。あなたの方の歳出予算目の区分表の7に報償費があるんですが、そこだけは説明がされていないので、どういうものかわからないのです。ちょっと教えていただきたいと思います。
  187. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 報償費と申しますのは、これは情報の収集とか、または特定の問題を取り扱うに当りまして、特に高い、高度の機密を要する、こういう場合にそのものの処理に当って使われる経費と、かように考えております。いわゆる情報の収集とかその他において、この報償費に該当するものがあると思っております。
  188. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 たとえば少年院の二十八万円とか、少年鑑別所の十六万円、婦人補導員の八千円、こういう報償費と、内閣官房の一億九千万、公安調査庁の約四億円とは、私は性質が違うのじゃないかと思いますが、これを同じ目に出すということはよろしいのですか。
  189. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは性質は違っていなくて、みな報償費なのでありますが、まあ報償費と申しますのは、単一なものではなくて、今申しましたような関係において使用される費用であります。これはいろいろと、何といいますか、型がいろいろあると思う。それが一つにまとめられて報償費と、かようになっております。
  190. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この点については分科会でさらに徹底的に審議をいたしますが、しかし、私はこれを一通り調べてみますと、十五億六千万という報償費が組まれております。これは領収書がなくて使えるものだと思います。会計検査院の検査も不十分のままだと思う。これは非常に私は検討する余地があると思う。政治を暗くする面がある。この金を使って、労働者とか学生にスパイ行為を、公安調査官あるいは検察官等はやらせているわけですから、少くとも日本の憲法に徴らして論議される余地があると思う。しかも、この十五億六千万円というのは、二種公営住宅に直しますと、六千二百七十戸という家が建つのです。こういう金が領収書がなくて使われるという、その予算の編成については私は納得できません。これはさらに分科会でやります。  次に、総理に伺いますが、ICBM、人口衛星発射以来、これらは国際情勢に変化をもたらしたかどうか、どう国際情勢というものを把握されておるか、承わります。
  191. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 御承知のように、第二次世界大戦後の世界の情勢というものは、これは、戦争後何とかして世界に恒久の平和をもたらそうという各国の強い考え方はみな一致して、その目標に達しようと、あるいは国際連合というような仕組みができました。ところが、その一つの特徴として、最近の科学技術の発達がやはり軍備の方面に応用されまして、この優秀な、また優越した兵器を中心としての軍備拡張の傾向を生じている。この力のバランスによって一時的の平和を作り上げる、またそれに、強国の間におきましては力をもっぱらにしておるというのが、最近までの国際情勢であったと思います。  ところが、さらに原水爆の問題、ICBMの問題、人工衛星の打ち上げの問題等をめぐって、こういう形において、力の均衡によって平和を保とうということは、たとえそれが一時的に有効な方法であろうとも、結局においては、非常な戦争の危険をはらむものであるがゆえに、やはり話し合いによって、こういうものに対しては、より恒久的な、より安定した平和を願う人類の願望に従って、一つ何とか話し合いによってこれを実現しようという動きが国際間に見られてきておるのであります。私も、こういうことに対して、そういうことは非常に望ましいことであり、これを実現するように願っておるということをかねて申し上げておりますが、もはや力の均衡によって世界の平和を保とうということは限度に来ておって、さらに、われわれが恒久平和を望み、安定した平和を望む有効なる方法というものを一つ各国とも作り出そうというのが、最近の国際情勢の動きである、私はかように見ております。
  192. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 このことは、私はきわめて重大だと思うのです。特に、政治家は深く銘するものがなくちゃならぬと思うのです。もちろん、総理はごもっともなことを言われておりますが、どうも具体的に政策面にあなたの申されるそういうものが出てこない点を、遺憾に思っておるわけです。いかようにこの情勢をつかむかということは、国内の内政、外交全般に影響します。特に科学技術の振興とか、国の防衛はいかにあるべきかという点に至大なる影響性のある問題でございますから、十分私は注意しなくちゃならぬと思うのです。  原水爆の平和利用ができるということは、無限のエネルギーの可能性というものをもたらした。電子工学など人工衛星を生んだ科学は、産業を根本的に変えるであろうし、新しい科学は新しいものを生み出す。こういう意味において、この宇宙時代の門出に立っている今のわれわれとしては、十分対策を講じなくちゃならぬと思うのですが、あなたの政策の一枚看板として科学技術の振興ということがうたわれているわけですが、これに対する所見と、いかにして科学技術を振興させるかという具体的な点について、まず総理、それから科学技術庁の長官、文部大臣の答弁を求めます。
  193. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 今お話しの通り、最近世界の科学技術の発達は、非常な、今までにない、前代未聞の状況を呈しております。それが、不幸にして、人類の平和利用にもっぱらそれが応用されずして、殺戮兵器に用いられている現状というものは、これは高い見地から見て、私ははなはだ遺憾な問題であると思います。もしも、今おあげになりましたように、原子力というものがもっぱら人類の福祉とその繁栄に資するように、平和的利用が、さらにもしも原水爆のあの兵器の発達に数倍するそういう平和利用の点が研究され、実現されておったならば、世界の繁栄に非常な大きな貢献ができたであろうと思います。こういう意味におきまして、科学技術というものの発達が、われわれのように平和国家を目ざし、世界の平和を願っておる者から見ますると、この方面において、日本がほんとうに平和に徹した原子力の平和利用や、あるいはその他の科学技術の水準を高めて、世界の人類に貢献できるということは、われわれの最も尊い使命だと考えなければならぬ。  一方、日本の科学技術の水準を見ますると、そういう大きな理想、大きな使命を持っておりながら、まだ非常に発達がおくれておる。それは、主として、今申しますようなものが破壊兵器に使われておる、戦後用いられたというようなことが、日本のような真の平和の国家としては、そういうふうにおくれた理由も私はあろうかと思うのですが、いずれにしても、日本の将来の科学技術の振興のためには、あらゆる方法を用い、特に力を入れなければならぬ具体的な問題としては、学校の問題もありましょう。学校教育の問題もありましょう。あるいは民間におけるところのこういう研究を一そう強く推進するという問題もありましょう。また、国家みずからが、原子力等につきまして財政的その他の支援をして、これを推進するという道もありましょうが、各種の方策をとつて、科学技術の画期的な進歩をはかっていって、日本のおくれておるのを取り返し、さらに大きく世界の繁栄に資するように持っていきたい、こう思っております。
  194. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 科学技術につきましては、先ほど総理が申されたように、日本は非常に立ちおくれている。十年も戦後おくれたようなわけであります。これを振興する政策としまして、まず第一に、科学技術教育の普及ということが必要であります。いま一つは、科学技術研究費の増額、第三に考えるべきことは、科学技術者の養成と待遇改善この三つに力を入れたいと思っております。科学技術教育のことは、文部大臣が後ほど御答弁しましょう。それから待遇改善につきましても、文部大臣もおりますが、なお私どもの方でも待遇改善について今度六千万円ばかり、わずかでしたが、予算を作成いたしました。それから、科学技術者の養成につきまして、これまた文部省が非常に学生を今度ふやしました。それからまた研究費の点につきましても、今度相当の増加をいたしました。まず、これをもって大体の方針といたしております。
  195. 松永東

    国務大臣(松永東君) 矢嶋委員の御質問に対してお答えいたします。仰せの通り、科学技術教育の振興は、まことにこれは一日もゆるがせにすべからざる問題であることは御承知の通りであります。従いまして、大学における科学技術教育の面では、まず、質の上においても量の上においても大発展をしなければなりません。従って、量の上におきましては、本年度一千七百人の学生を増員するように計画を立てて予算を組んでおります。しこうして、質の上におけるいろいろな諸般の設備、さらに研究費の増加等も、決して満足すべき状態ではありませんけれども、三十三年度予算に計上いたしまして御協賛を願うことになっております。そうして、経済五ヵ年計画の一番最終年度の三十七年度では、大体中堅層の技術者が八千人ぐらい今までの計画より不足するというような算定、見通しがついておりますので、それを充足するような計画を立てて、逐次進んでいくというふうになっております。従いまして、三十三度度からは、相当科学技術振興の教育ができるであろうと存じますが、さらに、そればかりでなく、高等学校、中学あたりに至るまで、その基礎学、あるいは理科とか、あるいは数学とか、そういう方面の基礎学の教養も増強するように努めて参るように予算も組んでおります。御了承願います。
  196. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 宇宙時代に、一国の大臣が三人もそろってこんなお粗末な答弁では、納得できませんよ。全く小学校の生徒に何か教科書を読んで聞かせるようなことで、その程度にしか思っておりませんか。若干私伺いますが、総理は、破壊兵器にこれを使うことが、日本のおくれた一つの理由にもなってるんだろうなんと言われていますが、とんでもないことだと思うのです。大体態勢から違うのです。ソビエトでは、人工衛星、ICBMが飛んだけれども、このソビエトの科学アカデミーの組織、こういうものから、研究所の施設、それから待遇、それから技術者の質と量の面なんか、ソビエトとアメリカ日本とを比べると、お話にならないんです。とてもあなた方は、そういうふうなお考え程度で、科学技術の振興なんて言っておったら、世界に取り残されてしまう。この狭い四つの島に九千万の人間が生きていくことはできないと思うのです。将来の貿易振興などは私は期待できないと思うのです。何さまお粗末な答弁で、質問のしようがないのですが、若干具体的にもう数点聞かしてもらいたいと思う。  今度は科学技術会議が設置されたのですが、この目的はどうなんですか。さらにこれは、学術会議との関係、それから日本の大学の研究、学問の自由との関連はどうなるか。ということは、日本の大学は研究費が少い。ところが、防衛庁とか、そういう政治的な背景のあるところは研究費はたくさん取る。そうして大学に委託をするわけですが、大学は研究費がないので、一応委託を受けるのでひもつきの研究費になってしまう。そこに学問の自由、研究の自由というものが脅かされるのですが、そういう点はどうなっておるのか。所管の科学技術庁長官から承わりたい。
  197. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 科学技術会議といいますのは、これは総理の諮問機関であります。そうしてこれには、まず文部大臣、大蔵大臣、それに企画庁長官、科学技術庁の長官、この四人の閣僚と、それから学識経験者四名とをもって組織しております。そうしてそれは、文部大臣を、こういうのを作って入れました理由は、大体科学技術のことは科学技術庁長官が総合調整することになっておりますけれども、文部省の所管に関することは、一切除くとなっております。この意味において、特に文部大臣と私が加わっておるわけであります。
  198. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大学の関係は……、学術会議と、大学の研究、学問の自由との関係をもう少し明確に。
  199. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 先ほど答弁いたしましたごとく、科学技術庁長官では、大学のことには関係できないことになっております。これは文部大臣の所管になっております。従って、大学の関係のことと、ほかの一般関係のことと総合調整するために、文部大臣と私とが加わっておるわけであります。  それからなお、ついでに申しておきますが、科学技術の所管事項といたしましては、科学技術に関する基本的、総合的政策を樹立するということを第一にしております。それからまた第二は、科学技術に関する長期かつ総合的研究目標の設定となっております。なおまた、日本学術会議に諮問をしたり、また、学術会議の答申ということについて、ここで審議することになっております。
  200. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これはずいぶん問題点があると思うのですが、科学技術会議を考えるに至ったというのは、やはり一歩の前進だと思うのです。私は米、英、ソ、中国等の、これらのものを研究してみたのですが、この科学技術会議のようなものでは不十分だと思うのです。ソビエトの科学アカデミーあるいは技術的におくれているけれども、中国の科学院等の機構、それから運営等を見ますと、少くとも私は科学技術省ぐらいを設けて、根本的に立て直さなければ、こういう弥縫策では、世界の進運についていけないと思うのですが、その点、どうお考えになっておりますか。
  201. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) むろん今度の科学技術会議で満足しているのではございません。私どもの企図しておるところは、やはり科学技術の省を作りたいというのであります。
  202. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 中国、ソビエト等、ことにソビエトの人工衛星とかICBMは、ローマは一日になっていないと思うのです。これは調べれば調べるほど、わかります。しかも他国とも盛んに国際交流をやっておるのですが、時間がないから、私は深く突っ込んで伺うひまがないので、結論だけ伺いますが、私は、すみやかにソビエトとも文化協定を結ぶべく努力する必要があるというように私は考えますが、外務大臣並びに文部大臣の見解を承わりたい。
  203. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ソ連と文化協定を作りますことは、通商協定もできましたことでありますし、今後、将来の問題として考えて参りたいと思っております。日本としましては、現在文化協定を十ぐらい作っております原則的な協定になっておりますので、今回アメリカとソ連とが作りましたものは、やや実施細目的な協定が加わっております。将来これらを参考にしながら、ソ連とも話し合っていきたいと思います。
  204. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御質問になりました趣旨の通り、やはり文化協定を提携して、そうして足らざるところを補っていくという必要はあると思います。こういう点は、外務当局がいろいろお骨折り願っておりますから、多分相当な成果を上げられることと存じております。
  205. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それからさらに待遇の問題があるのですね、御承知のごとく、世界的に有名な数学の小平さんもとうとうアメリカに行ってしまいました。そのほかに十二人の学者が、まだ帰化していないけれども、外国に行かれておる。これは待遇がよくないことと、それから研究の施設がないから、ああいうりっぱな日本の学者が外国に行って——アメリカに行っておるわけです。日本では、地方庁、中央庁の課長、課長補佐が特別二等車で旅行しておるのに、大学の教授が三等車で、九州や北海道から東京に来るということで科学が振興しますか、そういう待遇で。自分の研究の本を売り払って研究する、こういう状況です。私は試みに明治三十年ごろの大学の総長、教授と、現在の総長、教授との給与を比較してみたのですが、実質は五分の一ですよ。大学の教授は苦しいはずです。本を売って研究費に向けなければならぬというような状態があるから、小平博士は帰ってこないはずです。実質的に五分の一の程度になっております。待遇も悪い、研究設備も不十分だというところに科学が興るはずはない。一億や二億ふやしたってだめなんです。先ほど私が申しましたように、世界の情勢はどうかということをはっきり把握して——このたび陸上自衛隊を一万人ふやすわけですが、防衛費千四百六十一億が果して国民の大事な税金の使い方なのかどうか。総額、地球から月まで百円札が三往復半するほどの予算規模です。これを真剣に考えなければならないと思ひます。試みにアメリカの学者、テーラー上院議員がソ連に行って帰って報告をした。何と言っておるかというと、ソ連社会の児童が科学者たらんとしておることは、あたかもわが国の少女がバリウッドのスダーを夢見ておるがごときものである、こういうふうにアメリカの上院のテーラー博士が述べておる。こういう夢を次代の若き青少年に与えなければ、科学の興るはずはないのです。日本の青年少女は何を考えておるか。立大の長島選手のようになって親孝行しょうというようなことでしょう。ファッション・モデルになろうということなんじないでしょうか。一体科学者になって、しかも世界に尽そうとか、国に尽そうという心がけの国民はごくわずかだと思う。こういう事態というものは文部大臣一人のなすべきことじゃなくて、私は科学技術の振興を唱える総理大臣が考えるべきことだと思う。そういう立場から考えるならば、科学技術振興の政策なんというものは、これは国民の目の先をごまかすようなものです。そういう場当り主義的なものではだめなんです。今後五ヵ年間に八千人の科学者と科学技術者を動員するといひますが、その内容を追及すれば、ずいぶん問題がありますが、時間がございませんから、これは分科会にもっていきますが、こういう私が今読み上げたようなことを聞いて、総理はどういう御所感になられますか、承わりたいと思うのです。
  206. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 優秀な若い人たちが科学者、あるいは科学技術の点において非常な大きな貢献をしようというふうな夢を持つようなところまで、科学技術の問題に対して、国民の関心を高めなければいかんじゃないかと言われる矢嶋委員のお考えは、私もそう思います。それについては、いろいろ学者、科学技術者等の待遇、あるいは社会的のこれに対する処遇等について改善を要すべきものが非常にたくさんあることは私も同感であります。しかし、私は最近の若い青少年の諸君が相当にこの科学技術に対しては、近年急速に関心を深めておるという事実は見のがせないと思います。これは、たとえば、湯川博士がノーベル賞金を受けられたということ自体が、若い世代の人々に与えた感銘というものも、これは決して少いものではないと思います。私自身が、自分の身辺における若い青少年の人たち気持を聞いてみましても、よほど高まってきておると思いますが、さらに優秀な人がそういうことに志し、そういう方面に将来りっぱな貢献のできるように、教育の面、あるいは社会の面から今後とも強く各種の施策を推進するようにしたい、かように思っております。
  207. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理並びに文部大臣に、詳細に、私は次の点の答弁を求めたいのでありますが、それはわが国の大学を見ますと、一年生に入る生徒は大体六割か七割は浪人した学生ですね。世界各国を見てごらんなさい。あの若い世代、一年間半数以上の者が浪人するという事態というものは異常である。これはどこに一体原因があるのですか。そういう点は真剣に考えるべきだと思う。それは大学制度の問題にも連なると思うのですが、その世代の七割から六割の子供が一年浪人して大学に行っているという事態を根本的に検討することなく、勤務評定なり何やらに熱をあげておったのでは、一国の文教政策はあり得ないと思うのです。さらに、千七百人ほど、今度大学の理工系を増したけれども、これはただ学生経費、それらを若干ふやすだけでしょう。施設、設備は増強しない。それから教官も増員しません。だから、大学の当局者が言っていることは、量をふやすことよりは質をよくする。質のいい人を社会に送り出すことが大事だと言っているのですが、そういう点について何ら対策が講じられていない。さらに、日本の大学院を見なさい。ソビエトの大学院の学生と比べて見なさい。日本の大学院の場合は数も少い。少い上に博士課程は大部分文科系統の生徒です。理科系統の生徒というものは少いのです。それはなぜかとういと、大学院は博士課程あるいは修士課程を出てもよくないから、優秀な卒業者は皆就職してしまう。だから、大学院は理工系は非常に少い。しかも、質が落ちておる。こういうようなことで一体科学技術の振興ができるのかどうか。これらの点について、どういう認識を持たれているか。さらに、大学院の育成、どういう認識を持たれておるか。具体的に私はお答え願いたいと思う。
  208. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました点は、先ほども申し上げた通り、量の上においても、質の上においても、相当予算は請求いたしております。協賛を仰ぐようになっております。ただしかし、満足するところまでいきませんが、先ほど申し上げた通り、本年度、学生を増員いたします千七百人の増員につきましては、やはりその予算も計上いたしておりますが、さらにそれは逐次八千人に至るまで相当の予算が年々ふえて参ります。初年度としては、今要求しておりますくらいな程度で十分だと心得まして予算請求をしているような次第でございます。  さらに大学院における博士課程の方でも、育英事業の一端といたしまして、五百人を増員いたすことにしまして、それに対する予算も請求することになっております。
  209. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 大学に入る場合に、今おあげになっているように、その大部分の人がいわゆる浪人生活を一年、二年もする。すなわち、これから見まするというと、大学の数と大学の収容力と高等学校の卒業の何との間のバランスがとれていないということであろうと思いますが、また同時に、日本に、全国にあります大学を通覧してみるというと、優秀といいますか、そういう数カ所の大学には入学志望者が殺到をし、案外定員にも満たないようなところもあり、非常にそこにアンバランスがあると思うのです。それからまた、同時に、今度は大学を卒業した人が就職しようとするというと、そこにまた、非常に就職が、その年卒業した人ができなくて、何年かそこにまた浪人が行われておる、こういう矛盾といいますか、アンバランスが現在日本の大学、また大学を卒業した人の就職の問題にあります。まあ押し詰めていくと、あるいは人口問題ということにもなることでありましょうが、同時に今度は、就職の場面を見るというと、理工科系の方はほとんど就職はむしろ引っぱりだこになっておって、十分満たされない。文科系統の何は非常に就職率が低い。数は全体多いですけれども、就職できない人の率も多い。こういうようなアンバランスに対しましては、これはただ科学技術ということだけじゃなしに、日本の大学制度なり、学校制度の全体として考慮しなければならぬ私は問題があると思います。しかし、とりあえずわれわれが考えていかなければならぬことは、今まで比較的数においてもまた、質においても劣っておった理工科系のこの教育を、内容的にもあるいは数量的にも、これをふやしていく方向に進んでいくべきものである、こういうふうに何して、一部を今度の予算に出しておるわけであります。大きな問題としては、はなはだ残念でありますけれども、今言ったような矛盾をどうするかということになれば、広く日本の学校制度全体を見、社会経済の問題との調整をどうとっていくかという大きな問題に関連をしておると思います。
  210. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大臣の大学についての認識は、やや私は不十分な点があることを遺憾といたします。このたび短期大学を専科大学にする法案を出していますが、そういう個別的に取り上げるべきものでは私はないと思うのです。もう少し全般的に、真剣に検討さるべきものだと思う。特に大学財政については、その独立について、もう少し掘り下げて検討すべきだと思う。  具体的に一つの案をあげて伺いますが、接収金属等が七百三十億円ばかりあるのですが、思いきってこれらあたりを基金にして、大学財政の独立、確立を期していくような点を考えてはどうかと思うのですが文部大臣並びに大蔵大臣答弁を伺います。
  211. 松永東

    国務大臣(松永東君) 矢嶋委員から御質問になりました貴金属の回収の金でございますが、これは私にわかりませんので、大蔵大臣から答弁していただきます。
  212. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大学財政の独立は。
  213. 松永東

    国務大臣(松永東君) 大学財政は、これはどうしても今独立をいたしておる、(矢嶋三義君「しておらぬ」と述ぶ)いや、やっぱりしておる、しておりますが、その大学の方にまとめて経費がいきますからして、それで各学部あるいは教室等にはそれが不十分だ、不十分だというのは、そのうちにはいろいろな費用が、電気代が含まっておるとかあるいはガス代が含まっておるとか、いろいろの図書費が入っておる、それをずっと引かれていきますから、教室にいったときにはちっぽけになってくる、こういうふうな実情になっております。ですから、今後しかし、そういう事例をなるべく少くして、そうして各教室に相当の金がいって研究に不十分にならないように努めたいというふうに考えております。
  214. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 接収金属の方はまだ法律になっておりませんが、御審議願っておる最中でありますが、これが通過いたしました後の資金の用途につきましては、これは慎重に考えていきたい。今私これを大学にすぐ入れるといったことは考えておりません。大学を今後どうもっていくかということは、金が先よりも、一体大学というものをどういうふうにもっていくか、そっちの方を先に考えないと、今のままでは金をつぎ込めばうまくいくというものではないと思う。これは慎重に一つ検討したいと思います。
  215. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いずれも答弁が非常に不満足ですが進みます。  総理に伺いますが、総理は南極観測船の宗谷について、どういう見解を持たれておりますか。
  216. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 南極に参りました宗谷が、今回の天候に妨げられてその目的を達せられなかったことは、これに関係しており、また、特にそれに乗り組んでおられた人々の非常な努力と非常な苦心にもかかわらず、そういう結果になったことは非常に遺憾でございます。これにつきましては、もちろん具体的の問題は、ことしの特殊の天候にはばまれたことにありますが、その天候をなお克服するといいますか、それ以上の宗谷がもしも力を持っておったらどうかというような問題も考えなければならないと思います。もっとも、宗谷の艤装等につきましては、当時専門の人々もこれに関係を持ちまして、十分な検討をして、実は艤装等が行われたと承知いたしておりますが、十分その原因をなお詳細に検討いたしまして、将来に備えたいと思います。
  217. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は宗谷が出る前に、改装された宗谷を見に行って、あのちっぽけなわずか二千七百トンの船がよくもまあ昨年南極まで行ったものだと感心いたしたわけですが、これを始めるのが早々で、船がないからこれで間に合わした、それでしかも計画がおくれたので、最も条件の悪いプリンスハラルド海岸が日本に割り当てられたという悪条件があったわけです。これもやはり計画が不十分だったせいで、しかもああいう条件下にあれだけのことをやった宗谷の観測隊員並びに乗組員に対しては、私は国民あげて感謝と敬意を表してよいと思うのです。私は宗谷はすでにもうケープタウンに帰ってきておりますが、ああいう方々に御苦労でしたという電報一本打って、そうしてあの胸を病んでおる人々をあたたかく迎えるということが、私は今後の日本の科学技術の振興に関連があると思う。電報を打たれたかどうかは、あとで答弁をいただきたいのですが、なお、永田隊長と山本航海長は飛行機で先に帰るわけですが、来年度またやられるかどうか。どういうお考えを持っておられるのか。承わると、オビ号程度のものを作るのには、二年半かかって五十億円予算があればできるそうですが、日本の少国民に対しても、一昨年はオビ号に助けられた、昨年はバートン・アイランド号に助けられた、そして犬を十五匹残して帰ったというような点で、非常に青少年に対する影響も大きいわけで、今後これらのことは計画的に、日本の科学者が十分活動できる態勢を整えて上げることが、私は政治家の責任だと思うのですが、今後いかようにされるつもりか、総理並びに文部大臣に答弁をいただきたいと思います。
  218. 松永東

    国務大臣(松永東君) 宗谷の問題につきましては、御指摘の通りまことに残念にたえない。しかしながら、永田隊長初め乗組員全部が、非常な努力——ほとんど命を的にかけての努力をしていただいた点については、感激いたしております。しかしながら、これが来年度も続行していくかどうかということについては、これはよほどの問題だと存じますので、この二十一日の日に、永田隊長初め越冬隊の人々が飛行機で帰ってくることになっております。従って、この人々の御意見も承わって、もしできることなら、何とかして継続していきたいというふうに私どもは考えておりまするけれども、しかしながら、これには、御指摘になりましたような悪条件がいろいろありますので、果してそれが実行性があるかどうかということについては、多大の疑問を持っておりますけれども、いずれそれは、皆さんともまた御協議の上で処決したいというふうに考えております。
  219. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 やりたいですか、やりたくないですか、答弁して下さい。
  220. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) これは、今文部大臣がお答えを申し上げましたように、われわれも、あの悪条件のもとにおいて、隊員一同のああいうふうな活動に対しましては国民をあげて慰労し、これをあたたかい気持をもってお慰めしなきゃならぬということにつきましては、全然同感であります。将来の問題につきましては、十分一つ、隊長以下が帰ってこられてその報告を検討した上で、慎重にこれは決定すべき問題であると思います。
  221. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 電報打たれましたか。
  222. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 電報はまだ打っておらないそうであります。(鈴木強君「ちょっと関連して」と述ぶ)
  223. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それでは鈴木君、簡潔にお願いいたします。
  224. 鈴木強

    ○鈴木強君 簡単にお尋ねいたしますが、今度の南極観測のうちで、口はきけませんけれど、この任務を達成する一翼として十五匹の樺太犬が行っておったのでありますが、不幸にして本観測ができませんで宗谷は帰ってくるのでありまするが、少くとも、あの基地に置き去りにされた樺太犬は、これはあまりにもかわいそうだと思うのです。私も犬が好きですから。それはもちろん、人間の命と犬の命とどっちが大事かということになると、おのずからこれは人間の命が大事でありますから、やむを得ずして置いてきたのでありましょう。しかし、おそらくひもじい思いをして、最後には食糧もなくなって、今ごろは死んでおると思うのです。そういう、南極観測の任務の一端をになった犬の、最後のこういう運命に対して、今の矢嶋さんのお話ではないですが、私は、もう少し政府でも、犬だからいいわということでなしに、犬は犬なりに、やはりみんなで冥福を祈るぐらいのことはしてやってもらいたいと思います。聞くところによりますと、愛犬家の諸君が、どこかで冥福を祈る会を開いたそうでありますが、少くとも、政府がそのくらいのことを積極的にやってしかるべきだと思うのです。にもかかわらず、そういうことぐらいもやられていない。今からでもおそくはないと思うのですが、そういうことをやられるお気持ありますか。
  225. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりましたような樺太犬の問題については、あなたと同様の意見を私どもは持っております。従って、まことにかわいそうで、救い出してくることができなかったけれども、仰せの通り人命とかえるわけには参りません。そこで、これは何とかしてこの犬の霊を慰めると申しますか、とにかく、何とか方法をとりたいというので、今私の役所でいろいろ計画を立てております。いずれは形の上に表わして、皆さんにも御報告することが日ならずしてできると思います。
  226. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理に伺いますが、総理は昨年、北海道から九州にわたるまで、義務教育国家保障制度というのを獅子吼されました。その内容はどういうものであるが、さらに、憲法二十六条の教育の機会均等と義務教育無償というものをいかように考えられ、現状はどういうように把握されておられるのか。また、あなたの考えておられる国家保障制度は、このたびの予算案の中にいかように具体的に現われてきたのか、その点お答えいただきたいと思います。
  227. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は、すぐれた才能を持っており、そうして向学の志を持っておるにかかわらず、経済的理由等によってその進学がはばまれておるような青少年諸君に対して、従来あります育英制度だけではなしに、さらに全額を国家が負担して、そうしてその進学の希望を達せしめ、その持っておる能力を十分に発揮せしめるということは、ただ単に当該個人、あるいはその家族の幸福とか福祉とかいうことだけにとどまらず、民族自体の持っておる能力、これを十分に発揮して、世界の文化の向上や人類の福祉に貢献できるということで、その基礎をなすものだと考えまして、そういう場合において、優秀な青少年に対して全額を国家が特別な方法でもって支出して、そうしてこれが大学——おのおの欲するところの、またその才能に適応したところの最高の学問が受けられるようにしたいというのが、この構想でありまして、今回の予算におきましても、その意味予算を計上いたしたのであります。
  228. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理は非常に頭のいい人で、そつがなく、すべてのことについてよく通じて答弁されるのを、私は傾聴しているのですが、文教政策に関する限りは、私はどうも物足りなさを感ずるのです。一体、一国の文教政策というものは、これは国家百年の計であり、将来を見通したものでなくちゃならぬのですねところが、最近の政府の文教政策というのは、文部大臣よくきいておって下さい。党略的なものとか、あるいは選挙対策的なにおいというものがするわけです。さらに、具体的に言えば、日教組対策というような立場から文教政策が打ち出されてくるという傾向が非常に大きいわけです。岸内閣の重要政策として文教というものを打ち立てられ、北海道から九州まで演説されたら、もう少し傾聴に値するような答弁がなければ、私は納得できないのですが、もう一回一つお答えをいただきたいと思うのです。
  229. 松永東

    国務大臣(松永東君) ただいま御指摘になりました義務教育の問題で、政策的に、政治的に、われわれは行動していることは寸毫もありません。さらに、また、それが日教組対策のためにいろいろな案を出したとか、あるいは政策を用いているというようなことは寸毫も考えておりません。日教組対策とはおのずから別問題でございます。その点御了承おき願いたいと思います。
  230. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 では、次に総理に伺いますが、あなたの内閣は、公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律案というのを国会に出されました。これは、現在の水準を向上させるのが目的である。決して今の水準にブレーキをかけて、低い水準に合わせるというようなお考えではないということかどうか、その点をお答え願います。
  231. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました定数基準法の問題ですが、これは現在各府県に行われておりまする標準的な定数基準に若干の改善を加えたものになっておる。この結果、約十府県については、現員が定数を上回るような結果になっております。それを上回る数につきましては、まずもってすし詰め学級の解消に充当する等の処置々講ずべきものと考えますが、定数が現員を上回るということは、当該府県の財政事情がこれを許しますならば、きわめて好ましいことだというふうに考えております。そこで、府県の小中学校の基準財政需要額が前年度に比べて著しく減少するといった場合には、特別交付金で措置するように自治庁と打ち合わせもやっておる次第でございます。これは矢嶋委員とうに御承知のことと存じますが、あらためて申し上げておきます。
  232. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この法律は、見方によりますと、改悪された面があると思う。それは、学校教育施行規則で一学級は五十人、それから教員の配当は、中学校の場合を例にとりますと、一教科について二人ということにきめられているのが、今度は許しを受ければ五十三人だってよろしいということを合法的に認めるようになっている。教員の配当は、一学級について三分の四、従来は二であったのが、三分の四となったから、合法的に水準が下がるのを認めるというような結果になるわけで、運用次第では、これは改悪になると思う。だから、総理は、この法律は、今のわが国の都道府県の教育水準を下げない、これを上げるという考えで組み立てられたものかどうかという根本を聞いているのです。十数府県は余っているところがあるのです。外国の水準に比べればはるかに低い。先進国は、一学級二十人か三十人が入れているのですから、だからしつけの教育にしろ、実験、実習にしろ、科学教育にしろ、徹底しているのです。日本のようにすし詰めをやって、科学振興なんかできない、こういうところに根本がある。そういうことを忘れて、勤務評定とか紀元節とかやっているからだめなんですよ。だからそれを答弁して下さい。
  233. 松永東

    国務大臣(松永東君) これは、さっきも申し上げた通り、勤務評定とか紀元節とかとは別問題です。これを、中学校を五十三人ということにいたしましたのは、一ぺんに五十人にすることができませんので、それで五十三人ということは本年度と来年度で改善していく。そうして小学校も、本年度が一番小学校の生徒が増員する山でございますから、これも御承知の通りでありますが、そこで、これも三十四年度からずっと減っていきますのと同時に、右申し上げましたように五十人程度にするということが実現できる。ただ一ぺんにしたいのですけれども、予算関係上一ぺんにどうしてもできない。かなりわしはがんばってみたのですが、できない。あなたは、よろめいているとおっしゃるけれどもよろめいておらぬ、やっておる。どうぞ一つ御了承下さい。
  234. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そういうことでよろめかれては大ごとです。で、具体的に伺いますが、大事ですから。一学級五十人以下に小中学校がなるのは、何年度になるのか。それから、よく新聞にあなたの談話として出ておりますが、全国の中学校は一学級五十三人以下に来年度なるのかどうか、これを明確にお答え願います。
  235. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました中学校は、来年度で五十人になります。それから小学校はやっぱり、逐次いきますので、五年かかります。それだけを御了承下さい。
  236. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 自治庁長官に伺いますが、定数基準による増加の分は、私は今度のあなたの方の財政計画の地方交付税法の配分基礎にはなっとらぬと思うのですが、これはどうなのかね。それから、この基準より上回ってる県が十県ばかりあるわけですが、それに対しては、あなたの方では抑制するようなことはないかどうか。ことに、再建計画を立てている再建団体に対してはどういう態度で臨まれるか、また、今、中学校は来年から五十人になるという文部大臣の答弁ですが、それに自治庁としては協力するのかしないのか。あなたの腕次第でこの法律はどうでもなると私は思うのです。それで一つ自治庁長官の御答弁をいただきたいと思います。
  237. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 教員の増加見込みに対応いたします約十六億円、このうちには、もちろん義務教育国庫負担が入っておりますね。財源としては十六億円を財政計画の中には計上いたしております。  それから再建団体については、これは文部省がいずれ政令をこしらえられる、これに応じまして、対応して参りたいと思っております。  それから、地方が努力をいたして参りまして、教育の水準を維持して参ると申しますか、向上して参ると申しますか、そういう努力は十分これを受け入れまして、抑制するというような考え方は持っておりません。
  238. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理と大蔵大臣に伺いますが、ここに中学校の生徒が十九人おるとします。一年生から三年生まで十九人。一体、何人の先生があったら教育ができると、常識によってお考えになりますか、両大臣から御答弁願います。
  239. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 御答弁になりますか……。
  240. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 常識としてお答え願うのです。それは答弁できるはずですよ。常識としてお答え願う。——申し上げますと、中学校の教科は、必修が国語、社会、数学理科、音楽、図工、保健体育、職業、家庭、選択が外国語と職業家庭です。今、一年生から三年生まで十九人子供がおりますと、教育は何人程度あったらできるだろうか。常識としてお答え願いたいと思います。
  241. 泉山三六

    委員長泉山三六君) とりあえず松永文部大臣。(笑声、「教えてもらっちゃだめですよ」と呼ぶ者あり)
  242. 松永東

    国務大臣(松永東君) どうも教えてもらわぬと、こまかな計算がよくわかりませんで……。しかし、今の矢嶋委員の仰せになりました、十九人という例が出ましたが、それは、やはり最低三人くらいの先生でずっと、あるいは二科目、三科目ずつを受け持っていきますから、やっていけるというふうに考えられます。
  243. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっともう一ぺん言って下さい。今雑音が入ったから。
  244. 松永東

    国務大臣(松永東君) あなたの例示せられた十九人、それを一体何人の先生で教えていけるかと、こういうことでしょう。その十九人を、つまり二学級、三学級受け持ちますというと、あるいは二人か三人でやっていけばいけるというふうに考えておる。大体、今の仰せになったあなたの御質問の要旨が、そういう要旨だと考えまして、常識的な御答弁を申し上げます。
  245. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは非常にとんでもない答弁なんです。よくお聞き願いたいと思うのですが。現在でも十九人、二十人程度の中学校は一人で教えてるんですよ、先生は一人でこれだけの教科を。今え度の改正でも、どういう政令をこしらそるかによって、内容はがらっと変ってきます。たから、この政令をこしらえるのは非常に重要ですから、分科会で聞きたいと思いますが、大体、今の法律で見ますとね、具体的に申し上げますと、小学校十九人まで一学級は先生一人です。中学校二十九人までの単級、一年から三年まで入れて、それで先生は一人なんです。分校だったら——学校になれば校長が一人おりますが、分校だったらいないのですから一人です。これは総理大臣、人力でできないことではないでしょうか。どう思いますか、お答え願います。
  246. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) なかなか中学の教科は、先ほどおあげになりましたような相当科目も多いのであります。学級が今お話しのようなふうにできて一人であるということは、私は非常に至難であると思っております。
  247. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大蔵大臣どうですか、念のために聞いておきます。
  248. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは、まあその国の教育の程度と、私も子供のとき小学校は分校でしたのですが、三十人くらいでやはり先生は一人でした。これはやはり、しかし小学校ですよ、やはり一人です。私のところは、それで……(矢嶋三義君「同じ学年でしょう、同じ年の人でしょう」と述ぶ)小学校、分校でして、みなよくやっておったのです。やはりそういうことではいかぬ、充実していかないかぬと思います。
  249. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 とても、時代が違うのです。教育内容が違うのです。中学一年から三年まで、生徒が少くて一人の先生が、しかも二十二、三才の先生が教えている実情を見たとき、義務教育の無償とか、教育の機会均等という憲法の条章を思い出すのですが、政令を作るとき、大蔵大臣、文部省から交渉があるから、覚えておいていただきたいのです。  総理に伺いますが、青年々々と言われるが、定時制教育の勤労青年の教育について、さらに、今ちょうど出ました僻地教育の振興ということについて、どういう愛情、対策をお考えになっておられますか、承わりたいと思います。
  250. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 政治として、教育の上において考えなければならぬ、特に恵まれない立場にあるのに、今御指摘のありました、一つは僻地の関係である。まだ、いろいろな僻地の特殊な所におきましては、相当に、われわれの願っておることからほど遠い状況もあろうかと思います。これは充実していかなければならぬことは言うを待ちません。また、もう一つは、勤労青年が、社会的の理由でもって十分に教育を受ける時間的に、もしくは周囲の環境から十分に受けられないという者に対する、社会教育といいますか、また、そういう面においても、従来においてもいろいろ国が直接やり、あるいは公共団体で行い、あるいは企業等においてもこれに対する施設がある程度はありますけれども、もちろん、これをもって十分とはいえないわけでありますから、これなんかに対しても、やはり充実を考えていかなければならぬと思います。
  251. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました僻地教育の問題でありますが、現在、僻地には大体、小学校、中学校が約八千校ございます。これは全国総数の約二〇%、約、人員にしまして七十五万人、この児童生徒が約三万七千人の教職員から教育を受けておる、こういうのでございます。これらの地域は非常に交通困難で、社会的、文化的諸条件にも恵まれておりません。教育の機会均等の見地から見ますと、きわめて不遇でございます。その振興が従って望まれておるのでございますが、このために、御承知の通り昭和二十九年には僻地教育振興法が制定せられまして、その積極的方策がとられるようになったのであります。文部省といたしましては、この振興法に基きまして、僻地学校の教育内容の充実、施設の整備、僻地学校教員の養成及び優遇策等につきまして、できる限りの努力をいたしておる次第でございます。すなわち、僻地教員の養成所の開設、僻地手当の増額、教員住宅の建設をはかるとともに、教育内容の充実のための、僻地教育指定校の設置、単、複式学校のための各種手引き書の作成、配付、さらに集会堂、自家発電施設、教材費等各種補助金の交付を行い、僻地教育の振興をはかっておる次第でございまして、今後ともさらに十分のこの種の努力を払っていきたいと考えておる次第でございます。
  252. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ソ連を調べてみますと、ソ連は、勤労青年、特に定時制、通信教育で年間に二百万人近くの技術者を養成しているのです。それに比べまして、日本の勤労青年の教育というものは惨たんたるものだ。この対策としてはいろいろありますけれども、一つ、たとえば給与費の国庫負担四割、これはずいぶん要望の強い点ですが、これらの点については、大蔵大臣はどういう見解を持っておられるのか。  さらに、これは定時制のみならず、小、中学校に通ずることですが、すし詰め教室解消に当っても建物が必要です。地方財政の実情から、危険校舎改築促進臨時措置法あるいは不正常授業解消に関する臨時措置法、これらを恒久立法として、そして幾つもある施設諸立法を一つにしたいという強い要望があるのですが、これらについて、大蔵大臣はどうお考えになっておりますか。また自治庁長官はどういうお考えであるか。さらには責任所管大臣である文部大臣は、どういう見解を持っておるのか、それぞれの方からお答えを願います。
  253. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今、御質問の点については、今後十分検討を加えてみたいと思っております。
  254. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 確かにすし詰め教室の解消は急速にいたさねば相ならぬと思います。従って、私は、よく財源措置のつきました立法等ができますことは望ましいことと思います。  このたびの地方財政計画におきましては、不足建物、老朽校舎、これらを合せまして五十四億円を計上いたしておる次第でございます。
  255. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました恒久法、これはぜひ出したいと思いまして、今いろいろ研究しまして、準備をやっておるところでございます。多分、そう長くないうちに、御協賛を得るように提案ができるというふうに考えております。
  256. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時間がなくなりますので、次に厚生大臣に伺いますが、観光政策については、一松議員から先般質問があったわけでございますから、私は繰り返さずに、一言だけ伺います。  それは、現在の自然公園法によりますと、国立公園と都道府県の公園とはダブってはならぬということが規定されておる。しかるに、国立公園を市町村立公園とはダブってはならぬという規定がない。従って、たとえば阿蘇にその例があるのですが、国立公園の中に市町村立公園を作って、そして市町村が条例をこしらえて、入場料を取るというようなことでずいぶんとトラブルを起しております。これは日本の観光国策としては見のがすことのできない問題だと思うのですが、こういう点はどういうようにお考えになっておられるのですか。  それからまた、観光地にいろいろ観光客が来て、たとえば牧草地にビールびんを投げていく、そのために家畜がいたむというようなことがあるのですが、そういう点の補償という点も私は考えなくちゃならぬと思うのですが、どういうような御見解であるか、どういう指導をされるつもりであるか、その点承わりたいと思います。
  257. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 国立公園の施設の利用という面は、私はまず第一に、国民自身がもっとこの国立公園設定の意義を認識して、そしてそれを適当するような利用方法を講ずべきであるそれがために地方産業にいろいろ迷惑をかけるような場合がありましたら、そういうことはむしろ禁止する方向に持っていくべきではなかろうかというふうに考えております。  それからもう一つ、阿蘇の問題に関連して今問題が起っておるわけでありますが、こういう問題自身は、ほんとうに国立公園設定の趣旨に反するのではなかろうか。厚生省としても地方庁を通じまして、厳に反省を求めておるような次第であります。しかし、今おっしゃったようなことは、全体としてはなはだしいときには、法律自身も制限的に励行できるような法律を設し定なければならぬのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第であります。
  258. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 行政管理庁長官に定員法のことを一言だけ伺いますが、これは松澤委員から質疑されたことですから、ダブっては申し上げません。私伺いたい点は、大学を出て——厚生大臣がみずから認めたわけですが、五年たっても、なお定員外の職員である常勤職員として、あるいは常勤的非常勤職員として取り扱われておるということは、これは私は法の違反だと思う。一年以上継続して働くようなものは、みな定員に入るわけだ。それを六万も九万も定員外にしておる。同じ職務の内容で、条件で働いておる人を、国に奉仕しておる人を、そういう差別扱いをすることは、私は憲法十四条に照らしても、あるいは労働基準法の三条に照らしても違反だと思う。特に許すことのできないことは、大蔵省の歳出予算目の区分表の常勤職員給与の説明の中には何と書いてあるかと申しますと、「常勤職員として取り扱うことのできるものは、一般職の職員の給与に関する法第四条の規定による勤務時間勤務することを要し」、これは定員内の公務員の通り、勤務せよということです。「かつ」、これからが重要でありますが、「同一人が実質的には十二ヵ月を越えて継続的に勤務することを例とする職務にある者に限る。」と書いてある。公文書に書いてある。こういうことであなたやるということは、これは言いかえれば、公務員法違反ですよ。なぜ全部定員に入れないのですか。一万九千人をピックアップしたのはどういう基準に基いたのか。その基準があったら一つ資料として出していただきたいと思う。これは重大なことだと思う。
  259. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) これは御承知のように、戦後にだんだんと積み重ねられた数が多くなりまして、約六万人の人が定員外の職員になっております。これが今いろいろお説のような点から見まして、はなはだおもしろくないではないか、何とかこれを解決しろというのが、国会において幾たびが論ぜられながら今日まで参っておる。私はこれらの仕事を担当しまして、この根本の解決策はどこにあるかといえば、公務員法を改正することにある。これは公務員制度調査会の答申は出ております。今、総務長官のもとで研究をいたしておりますが、今度の国会で、次の予算の問題を議するまでには、どうしてもこれは法案として提出できないということでありましたので、しからばこの気の毒な状態にある人たちを少しでも解決の方向に進むべきではなかろうかということで、私どもの方の行政管理庁で実態調査をいたしまして、簡単に申しますれば、主要な点は、仕事がどういうふうに重要であるか、またその人の仕事の責任の範囲がどうであるかという点から考えて、この人たちは公務員に当然なるべき人たちであるというようなところをよりまして、その総計が一万九千何百、大体三分の一になったのでありまして、これだけの人が公務員にこの際編人されることができれば、残りの人たちの問題は次の国会までにはぜひこの公務員法の改正というものをやってもらいたいということを私ども熱望し、その通り、何といいますか、そのときに全部の改正をはかりたいと、こういうふうに思います。
  260. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 基準はあるということですから、その基準を資料として出していただきたいということと、ここにある、「同一人が実質的には十二ヵ月を越えて」——「実質的には」ですよ、「実質的には十二ヵ月を越えて継続して勤務することを例とする職務にある者に限って」常勤職員給与の中に入れるということは、これは重大じゃないですか、法律違反でしょう。これはどうですか。
  261. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 政府委員をして答弁をさせます。
  262. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) お答え申し上げます。ただいまのお述べになりました職種の職員というものは、いわゆる常勤労務者、新年度からは常勤職員というものでありまして、臨時職員の一種でございますので、それらの臨時職員が十二ヵ月以上勤務するというような状態のものにつきましては、定員法の適用を受ける一般職員とできるだけ同じような待遇をしたい、こういう趣旨から、特に念を押して規定している次第と考えております。
  263. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 納得できません。内閣委員会なり分科会でそれはやることにして、最後に、残る時間がわずかでございますから、防衛のことを簡単に聞きたいと思います。  それは、三十年の六月に、ソビエトでICBMが成功し、特に昨年の八月ICBMがさらに完成して、それから秋に人工衛星ができた。これ以来、米ソのこの方面に関する限り相当の懸隔ができて、現在アメリカは非常にあせっている状況ではないかと、私はそう考えますが、総理はどうですか。
  264. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 両国が科学の粋を競って軍備の競争をしておるという状況でありまして、しかし、それが現実に兵器として利用されるのは、大量生産の形式で大量生産されなければならぬことは言うを待ちません。アメリカの方の大陸間の誘導弾及び人工衛星打ち上げ問題の技術は、現実が示すように、ソ連に一籌を輸した形であります。しかし、アメリカ自体の中を見まするというと、アメリカにおいては、相当に自信を持ち、また、一般経済的、一般技術力の程度について相当な自信を持っておるのが現状じゃないかと思います。しかし、あわてているとか、あせっているとかいうような想像も一方できますけれども、一方、いろいろなものに現われているアメリカの責任ある地位にある人もしくは有力な人には、私の申したような意味において、自信を示しているというのが現状じゃないかと思います。
  265. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その点私はかなり考えが違うのです。私は米ソ両方ともいろいろ読みましたが、少くともこれらの問題については、二、三年の懸隔があると私は推察します。それはSEAT Oにおける、あるいはバグダッド条約会議においてのあせりとして現われている。それが日本に影響してきているわけです。それでこの点は十分私は考えておかないと、日本の国土全部が基地にされる、基地国家となるおそれが多分に私はあると考えるわけです。こういう時勢にかかわらず、一万人の自衛隊の増員をやった。ところが、航空幕僚長がアメリカへ行ってみたところが、あまりアメリカは要請していないのがわかった。だからもう来年は一万人の増員はやめて、陸上自衛隊は十七万人にとどめるように計画変更をやるのだ。そうして、大体主として潜水艦を警戒するより飛行機を重点的にやっていくのだということが伝えられているのですが、私はそれは推察できます。今後第二次五ヵ年計画はどういうふうに変更されるのか。これは防衛庁長官からお答えを願いたいとともに、必ずやアメリカは、今サイドワインダーやっておりますが、これは核兵器に通じていることは明々白々たる事実です。最後はナイキとかあるいはオネスト・ジョンを日本自衛隊が希望するならば貸与するということを責任者が発言されています。これに向うから話があった場合に、応ずるのか応じないのか、非常にこの点は重大だと思いますので、この点については、総理からもお答え願いたいと思います。
  266. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) お答えいたします。ただいまの御質問の中にありました将来の防衛の計画がどうなるかという点に関連いたしまして、空幕長が彼の地に行って、この問題についていろいろな意見の交換があったというようなお話でありましたが、これはある新聞の紙上において、陸上自衛隊の数をどうするかといった問題その他についての記事があったように思います。それを多分御引用になっての御質問と思います。あの記事は、また他にもあると思いますが、防衛庁といたしましては、そういった意見を発表したことはなく、また、今日の段階で防衛整備目標というものが決定されまして、それに基いて各年度において適当なる具体的の計画を立てよう、こういう方針には変っておらないのでございます。もちろん、今後の世界の軍事情勢その他に勘案して、いろいろ再検討を要する部分がないとは申しません。しかしながら、御指摘のように、先ほど御引用になりましたような点についての意見の変更があるという事実はないのでございます。もちろん、大勢といたしましては、今後の問題といたしましては、防空の非常に防衛上緊要であるということは、従来までもそうでありまするが、今後においてはさらに一そうその必要性を増すものと思っております。なお、サイドワインダーにつきましては、これは前回の国会でもいろいろ御論議があったところでございます。これは防空上、今日のわが保有の航空機をもってしては、戦闘機をもってしては、十分にその防衛の目的を達せられない点があるのでございます。これを補強し、装備の改善をはかる、こういう趣旨をもって、この種の誘導兵器、飛翔体を利用しようということに相なったのでございます。来年度予算においては、約五千万円をこのために計上願っておりまするが、約十発程度のものを買い入れまして、有償供与でございます、これによって十分なる実験を経て、よければ今後それを装備に使いたい、こういう計画でございます。  なお、ほかの誘導兵器に関しまして、これは技術研究所において、各種の誘導兵器、近代兵器の研究をいたし、これは当然わが防衛の必要上、科学兵器の今日の発達状況に応じて当然のことと存じまして、予算においてもこの増額を計上いたし、御承認を仰ぐということに相なっているのでございます。  これに関連して、核兵器の問題にお触れになったようでございます。あるいはオネスト・ジョンとか何とかいうことは、その意味解釈したのでございます。これは総理または私からもたびたび申しておりまするが、米側の核兵器の持ち込みに対しては、われわれはこれを拒否するという態度、しかして、自衛隊の装備にいかに科学的の技術の進歩がありましても、これは装備いたさないという方針でございます。これらの科学兵器の研究ということはもちろん必要だろうと思います。しかしながら、先方でこういった供与をするということについては、こういったというのは、たとえば今のオネスト・ジョンというようなものです。これは向うから話がございません。
  267. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これからするというのですよ。
  268. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) いや、それは新聞等においてそういう報道があったということです。
  269. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あった場合はどうしますか。
  270. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) あった場合においては、これは単純な研究でございます。研究目的のためには、いろいろ誘導兵器もたくさんでございますから、研究のために、もしいろいろな条件が整うならば、これはそれを、あるいは供与を受けるということも絶対にないとは申し上げられません。すでに一昨年においてもそういった研究開発の目的をもってある種の誘導兵器、飛翔体をこちらから要請したという事実もあるわけでございます。これは決して核兵器に関係ある問題ではございませんから、さよう御承知願いたいと思います。
  271. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あせっているアメリカの世界戦略体制の一環に日本はぐんぐん引きずり込まれていっているのですよ。それを核兵器を研究するといっても、まず誘導兵器の供与というのは、これは核弾頭をつけたり、ミサイルになっていくのですよ。核兵器を研究するということは、使うようになっていくわけですよ。だから私はそれは重大だというのです。さらに今度の自衛隊法の改正で、外国軍に、おそらく韓国の軍隊だと思いますが、さらに台湾政権の軍人だと思いますが、これを日本の防衛大学で訓練するという法案が出ております。こういうことは今の世界情勢、アジアの情勢からいって、まずいじゃないかと思うのです。どういう考えでこの法案を出すのですか。日本の憲法に照らしても、アジアの諸国の軍人を日本の防衛大学に持ってきて訓練するという法案を出すのは、とんでもないことだと思うのですが、総理大臣、どう思っているのですか。防衛庁長官答弁を求めます。
  272. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) ただいまの私の答弁、核兵器は持ち込まない、しかしたとえばある種の誘導具器の中には、いわゆる核弾頭を装備し得、また同時にそういうことができない、しないというような種類のものがあるわけでございます。決して核兵器そのものを研究のために輸入すると、こういう趣旨じゃございません。核弾頭を付し得るものは中にはあるかもしれませんけれども、これは付さないのだ、そういったものについての研究じゃないのだ。その間に大へんな違いがありますから、ちょっと一言付言しておきます。  それから、ただいま御質問の、今回提案御審議を願っておりまする自衛隊法並びに防衛庁設置法の中の、防衛大学は外国の依頼によって外国の人を訓練し得るという、できるという規定でございますが、一項ございます。これは実際の適用の場合は、たとえば東南アジア諸国のうちでそういった便宜のないというか、十分でない所から、現実に政府なりから防衛大学に留学さしたいという希望が出て参っております。これを認めるかどうかということは、外交上なりその他の関係によって決定したいのでありますが、いわゆる防衛大学の学生に準じてそこで勉強するということは、これは諸外国においてもこういったような性質の機関は認めておるわけでございまして、その意味においてただ特殊の場合にそういうものを受け入れるかどうか……。これは自由でございます。しかし、そういったような法制にしておこう、そういう趣旨で一項を挿入したわけでございます。現実の例としては、東南アジアのある国から防衛大学で勉強さしてもらいたいというような要望も出ているわけでございます。
  273. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 今、防衛庁長官からお答えを申し上げました通り、もちろん、この問題は別に私は日本の憲法に関係がある問題だとは考えておりません。各国におきましてもそれぞれ、いろいろな研究をする意味において、外国の各種の大学その他に留学をするという希望もございますし、なるべく友好関係を深める意味からいって、そういう希望も達成せしめるということは適当でありますから、そういうことができ得るような改正を防衛大学の規定の上にするということが、別に日本の憲法に私は抵触や何かはないものと考えます。
  274. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 重ねて伺いますが、たとえば韓国の学生あるいは国民政府の学生が防衛大学に来た場合に、北鮮あるいは中国を刺激することになりませんか。
  275. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 具体的に、どこの希望を受け入れてそれを利用せしめるかという問題については、いろいろの国際関係を私は考慮しなければならぬと思います。今、防衛庁長官が言いましたように、法を改正したからといって、各種のこれを受け入れるかどうかということは、外交上あるいはいろいろな国際情勢を頭に置いてきめなければならぬのですけれども、学校そのものが、そういうものを受け入れて勉強のできるようにする趣意のものを作ろうというのですから、十分そういう具体的の事例ができました場合に、これを受け入れるかどうかということについては、各般の事情を十分に考えて処置したいと思います。
  276. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は意見を異にします。  防衛庁長官に伺いますが、あなたが何と言おうとも、誘導兵器の貸与あるいは研究ということは、これは核兵器の装備に通ずるのです。これは歴史が証明するでしょう、あなたはそう思いませんか。  さらに、計画を変更しないとすれば、また来年度は十八万名、一万人自衛隊をふやすのですか、どうですか。
  277. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) お答えいたします。第一点、誘導兵器の研究は即核兵器に通ずるものである、そういうことは私は考えておりません。  第二点の十八万に来年度するか、さらに三十四年度において一万人を増加するか、こういう問題であったかと思いますが、これは整備の目標においては、御承知のように、三十五年度までに十八万にしようという一応の目標が立てられておるわけでございます。その実行の問題になりますというと、個個の年次において民生の安定、また財政の事情その他の情勢を勘案して決定しよう、こういうことが防衛の整備目標の決定を見たる方針の中にうたわれているわけでございます。従って、ただいまの御質問に対して、三十四年度においてさらに一万人増加するかといえば、これは全然決定いたしておりません。
  278. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 防衛庁長官に伺いますが、厳粛にあなたは考えた場合に、ほんとうに良心をもって考えた場合に、今の日本のあなたが管理している再軍備計画の推進というものが、憲法に照らし、ことに九十九条に照らして、あなたは良心に心痛める点はないかどうか、伺います。
  279. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) お答え申し上げます。今日決定いたしておりまする整備目標は、御承知のように、陸においては十八万を目標とする、また海においては十二万四千トン、また飛行機においては千三百、こういうようなことになっておるのでございます。で、先ほど申しましたように、将来の情勢において、これが具体化する場合に、さらに検討するということは当然のことだと思います。大体のこれらの目標をきめましたときも、また今日もそうでありまするが、とにかくわが国力、国情に応じて最小限度必要なもの、防衛のために、いわゆる自衛権の行動としての最小限度の防衛体制を作り上げようという、その根本方針に基いたものでございます。憲法においても自衛権ということはこれは認められておるという一般解釈なり、また政府はその方針によっておるわけでございます。それを実行する上において、国力、国情に応じたこの程度の最小限度の防衛体制を確立していくということは、私は必要なことであろうと思うので、良心にそむかないかどうかということ以上に、私はむしろ必要なことだと思っている次第でございます。
  280. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時間が参りましたから、これを最後にいたします。  防衛庁長官に伺いますが、あなたが預かっている千四百六十一億という予算、これを千円札でずっと並べたらどのくらい行くと思いますか。胸の中で考えていただきたいと思う。その予算は、千円札でずっと並べるのですよ、そうすると、北海道の根室から鹿児島まで国鉄で三往復半します。それから国会の廊下という廊下を千円札でずっとつなぎますと、千円札約五千枚の厚みでつなぐことができるくらいであります。それくらいの金を預かっているのですから、十分注意してもらいたいと思う。実は私、時間が少ないから申せませんが、海上保安庁の保安官は、非常に条件の悪い中にずいぶん努力しています。一年間に二千七百五十七隻という船を助け、二十六万七千百六十一トンという貨物、それから二万五百十八人という人命、これらをざっと金額にして四百億円というものを、海上保安官は国家並びに国民のために尽している。しかも、私申しませんが、給与を見ますと、海上自衛官と海上保安官の給与は相当の差がある。特殊勤務手当はかなり差があるのです。しかも、私はどうしてもふに落ちないのは、海上保安官は月給であって、自衛隊は陸上も航空も海上も全部日給になっている。だから、計算すると非常に待遇がいい。こういう点は僕はおかしいと思う。自衛隊は別に給与がいいとは思っていない。しかし、海上保安官の待遇ははるかに悪い。これは上げるべきものだ、かように考えているのです。それだけの予算を預かっておられるのですから、国民の期待に沿うように十分私はやってもらわなくちゃならぬと思う。  それから、最後に総理に何しますが、いろいろとお耳障りな点も申し上げたかもしれません。しかし、これは国家を愛するがゆえに、私は、総理がわれわれの質問要旨というものを十分体して、万一と申しますか、この予算が成立した場合は、善処をしていただかなければならぬと思うのです。それで、国民のほんとうに信頼する、期待に沿うような内閣に、また総理大臣にぜひなっていただきたいということを強く要望します。その当面の具体的な一つの対処の仕方としては、国民世論を背景にして、予算が通ったら国会を解散するということは、私はその一つの現われであるとも思う。これはやっぱり岸ブームを湧き立たせる私は一つの捷径だと思います。あなたの御健闘を祈りまして、質問を終りたいと思います。
  281. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は、賠償協定、焦げつき債権、政治借款、減税並びに道路予算における中央、地方の負担問題、さらにイルカ漁業の転業対策費の問題、時間がありましたら軍人恩給の問題を御質問申し上げたいと思います。  まず、岸総理にお尋ねいたしたいことは、インドネシアの平和条約並びに賠償協定を締結されました直後、革命政権ができましたが、それにもかかわらず、伝えられるような既定方針のもとにこの批准をやられる意思であるかどうか、またああいうような革命政権が樹立されることが予想された中に、あの協定は締結されたものであるかどうかということについて、お伺いいたします。
  282. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) インドネシアの政情が不安定であり、不安であるということ、そうして国内にいろいろな擾乱を起しておるということは、私は独立完成の途上にあるインドネシアのために非常に遺憾に考えるものであります。何分インドネシアは長い植民地から解放されて独立を獲得したのでありますが、その完成の途上においてはいろいろな試練が横たわっておると思います。しかし、これに対してわれわれが十分に同情を持ち、インドネシア国民の要望である独立完成にできるだけ協力していくということは、単にインドネシアのためというばかりでなく、また日本にも利益があるというだけでなくして、アジアの平和、さらにひいて世界の平和にも、繁栄にも貢献するところが大きい、かように考えて、この賠償問題というものをできるだけ早く解決したいというのが私の念願であったのであります。  しこうして、今日ああいう事態が起っておりますが、私どもはその推移について十分のあらゆる点から情報を集めて、あらゆる情勢を分析いたしております。今日こうなるのだということを予見することは適当でもないかと思いますが、しかし、今日までの情勢を見ますると、いわゆる革命政権も今の政権ジュァンダ内閣のこの何に対しては、その引退を求めておるようでありますけれども、スカルノ政権そのものを否認するとか、そのものからまた分離しようというような情勢ではないように考えております。それがどういうふうに調整されるかという問題についてはいろいろの見方がありますが、要するに、バッタ、スカルノ両氏のこの提携ということが、これを解決する非常に有力な手がかりになるように私は判断をいたしております。  しこうして、このインドネシア賠償の問題は、インドネシアの政情は必ずしも安定をしておらない、不安な状況であるという状態において結ばれたのでありますが、もちろんこういうことを、今日の状況のようなことを予想したかどうかという問題については、そういうことを予想しておったわけではございませんけれども、しかし、今日においてもやはりスカルノ政権というものが中心になって事態を収拾するであろうということを予期いたしております。しかし、インドネシアの内部における各政党の平和条約及び賠償協定に対する態度につきましては、われわれの得ておる情報によりまするというと、各政権ともこれを一日も早く批准するように急いでおるように私どもは情報を得ております。従いまして、日本も十分に御審議を願いまして批准を進めるべきものである、こういう見解に私も立っております。
  283. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そこで岸総理にお伺いいたしますが、独立後政情がおさまらぬということですが、一体ああいう賠償協定を結んだとたんに革命政権が起って、内乱が続くかもしれないと、こういう結果になるわけですが、そういうことも予想して結ばれたのですか、情勢判断を誤まってそうなったのですか、その点をまずお伺いしたいという点と、さらに、藤山外相にお尋ねいたしますが、岸総理、藤山外相、あるいは小林中氏、たびたびインドネシアに出向いておられますが、またスマトラ並びにジャカルタには在外公館があるはずですが、どういう一体情報を送ってきておったか、その点、そうしてまたそういう在外公館は、一体どれくらいな経費を使っておるのであるか。私は、これは岸総理の判断を誤まらしめたその責任はきわめて重大と言わねばならぬと思うわけであります。野党がもっとたくさんの数でありましたならば……。経済協力を含めて八億にも及ぶ賠償協定を結んだとたんに革命政権が起きて、その将来が予測されないということでは、責任がきわめて重大だと思うわけですが、そういうアシストに対する責任の問題、そういう点でお伺いしたい。
  284. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 先ほど私お答え申し上げましたように、政情が不安であることは承知をいたしておりました。しかし、今お話しのように、こういう革命政府がすぐできるというふうな情勢であるかどうか、そういうものについての見通しが十分にあったのか、あるいは誤まったのかということでありますが、先ほど申し上げましたようにこれは非常に不安な状況であったことは私もよく承知いたしておりますが、しかし、その不安の中においてもスカルノ政権というもの自体に対してのこの国民的の何といいますか、支持は、私は大体動かないものであるという見通しのもとに、スカルノ大統領との話もし、また、その場合においても、これに、今のジュアンダ内閣に対しての反対を持っているのは、ハッダ氏その他いわゆるスマトラ、ジャワ以外のこの人々である。その人を代表するものとしては、やはりハッタ氏が一番大きな政治的存在であるという見地もわかっておりまするのでスカルノ大統領及びハツタ氏と、両方にも十分に会ってその意向を確かめ、将来に対する考えを確かめた上で、ああいう条約を調印するに至ったわけでありますから、    〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕 根本的に何か見誤まりがあったというようなことでは、これはない、かように御承知を願いたいと思います。
  285. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) インドネシアの政情今日のごときを予見しなかったかというお話でありますが、御承知のようにインドネシアの外領におきまして、中央政府に対して今日までいろいろの不平がありましたことは事実であります。その主たる原因は、中央政府がとかくジャワ中心主義に問題を考え過ぎる。また財政予算の支出その他についても、スマトラのごときは相当財政収入に貢献をしているのだが、しかしそれにもかかわらず、その中央政府の収入自体というものは主としてジャワに使われるというような意味からいいまして、外領に不平がありましたことも事実であります。そういうことがだんだん高じて参りまして、やはりスマトラあるいはセレベスの一部等には、軍の一部におきまして自分たちが内政に関していま少しく自主権を持ちたいというような意向も湧いてきたのが、今日までの状況であります。従って、ジャワをばらばらにインドネシア共和国をばらばらに崩壊して、それぞれの外領が独立しようというのではなくて、むしろ自治権を外領がある程度持って、もし望むならば連邦的な形でゆきたいというような気持が動いて、そして今日に至ってきておるわけであります。  そういう意味におきまして、たとえばインドネシアにおきますマシュミ党ごときは、その意味において相当な理解をスマトラ側の反乱軍にも持っていたと思います。また、ハッタ氏を反乱軍の一部の人らがかつごうというような話もあったと思います。が、しかしながら、インドネシア民衆から見ましても、スカルノ大統領とハッタ副大統領というものは、おのずから性格の違いによりまして政治の運営については意見が異なっております。が、しかしながら、インドネシア共和国がオランダから独立して、そうしてりっぱに一つの国家としてまとまった力を持っていきたいという念頭においては、長い間の革命の同志でありますから、気がそろっておるわけであります。従ってお互いに中央政府をたたき合って、そうしてたたきつぶして、そうしてインドネシア共和国を崩壊させることは、いたずらに西欧側の手に乗ることでありますから、そういう点は考えておらぬと思います。従いましてハッタ氏が副大統領の職を退きましてからも積極的に、スマトラ側の反乱軍に誘いがかかりましても、乗るというような状況にはないのであります。今日でもなおスカルノ、ハッタ会談というものが行われておりまして、何としてもまとめていこうという意味で努力をされおります。  そういう情勢でありますので、私どもの見方といたしますれば、ずいぶん西欧方面からいろいろな流説は入って参りますけれども、やはりインドネシア共和国というものは革命によって四分五裂するものではない。もしスマトラ側のような要求が通るならば、それは中央政府を中心にした内政問題に関する自治を要求し、ある程度連邦自治的なものになるのではないかという見方をいたしております。そういう基礎の上に立ちまして、インドネシア中央政権というものに対して賠償交渉をいたしますことは十分に可能だと思います。  なお、スラバヤにおきます在外公館等は、公使の格を持っております総領事が行っておるわけでありますが、十二名ほどのあれですが、予算そのものはあとで調べて申し上げますが、これらの活動というものは、御承知の通り、必ずしも外務省の出先公館の予算というものも十分でないのでありますから、十分な活動ができているとは思いません。しかしながら、われわれといたしましては、いろいろの角度からそういうような情報を収集して、ただいま申し上げましたような結論の上に立って考えておる次第であります。
  286. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 藤山外相は、自分の希望的な見解を述べておられるのです。私の聞いているのは、岸総理をして正しい情勢判断の上に立って平和条約と賠償協定を結ぶような外務大臣として、さらにその下部機構である出先機関がどういう態度をとったかということであります。いろいろ希望的な観測を述べておられますが、藤山さんは、大日本製糖と思いますが、たくさんの粗糖を買って、翌日どかんと大下りをして、株主、社長として重役を置きますか。そういうことを私は言っているのです。  さらにまた、岸総理はこのハッタ氏の問題を言われましたが、外電によりますというと、一昨八日にスカルノ、ハッタ会談が行われまして、その交渉が決裂して、ついにスカルノ大統領はスマトラに対して断固たる措置をとるという決定をいたしておるのです。そしてハッタ氏が、ジュアンダ並びに革命政権の責任者をやめさせる、逮捕されたりしているような者を釈放する、そうしてハッタ氏を総理あるいは副総理にするというような条件を出したものを、岸総理がただ一つの頼みにされている、情勢判断のもとであるハッタ氏がそういう要求をいたしましたところ、閣議を開いた結果、ついにハッタ氏の要求を拒絶いたしまして、スマトラに対して断固たる措置をとるという決定をいたしておるのです。外務大臣は一体、そういう情勢もつかまずに、数千万円の在外公館の費用を使って、マンデーでもやって、そういうようなことをやっているのですか。八億という莫大な賠償協定を結ぶという際に、その国際情勢の判断を誤まった責任はきわめて重大であると言わなくてはなりません。賠償だからまだいいようなもので、これも大へんですが、もし原水爆の戦争が起きるかもしれないような歴史的な決定的な瞬間の判断を誤まったら、一体九千万同胞はどうなりますか。全然私の質問に対して答えずに、希望的な観測を言っているではありませんか。アジア局ですかどこの担当ですか、直ちに連絡して、八日の閣議の決定その他からこれを練り直して、答弁さるべきだと思うのです。どうです。
  287. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ハッタ、スカルノ会談については、現地からも報告がむろん来ております。そういう状況をながめながら、私は、ただいま希望的観測というお言葉もありましたが、従来の状況から見ましてそういう観測をいたしておるわけであります。今日インドネシアの政情につきましては、非常に悲観的な、インドネシアが今にも崩壊するかのごとき流説が、西欧方面からもずいぶん出るのでありまして、われわれは、そういうものをやはり十分吟味して行きませんと、それだけを過信することもいけない。しかし、むろんわれわれはインドネシアに今日行われているハッタ・スカルノ会談等に対しても、正しい評価をして行かなければならぬと思うのでありますが、しかし、一方では、インドネシアの国会は、どちらかと言えば、スカルノ大統領に反対するようなマシュミ党も、なお賠償協定の審議を続行しているのでありまして、早い時期に上げ得るという見通しがあるのであります。(「それは相手方からすれば、早いほどいいですよ」と呼ぶ者あり)そういうことでありますけれども、今の情勢から見まして、中央政権が、仰せのように、革命政府によって崩壊する、あるいはスマトラが独立するという、むろんスマトラには石油資源等もありますから、西欧の手も伸びておる点も多分にあると思うのでありますが、私どもはそういう事態はすぐこない。しかし、この私の見方が間違いますれば、私は当然責任をとらなければならぬことは申すまでもございません。
  288. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この問題は八日に終りましたSEATO会議でも、事の重大性で議題になっているようでございまするし、私も、岸総理が言われましたように、スカルノ大統領に対しまするインドネシア住民の強い支持のあることも知っています。また民族独立後における困難な中に政局を担当していることも理解するにやぶさかでないのです。しかし、少くとも経済協力を含めて八億ドルの莫大な国民負担の犠牲による賠償なり、経済協力を実施しますためには、このことが戦争に対する償いになると同時に、インドネシアの復興に寄与し、そうしてわが国の経済交流、貿易の伸長と拡大と発展に寄与するということで、私たちはその意義を認めるのです。しかし、こういう情勢でやりますならば、それは何と言っても、スカルノ大統領が全インドネシアをつかんでいないということは事実なんです。そして、またそういう際には、自分の政権のてこ入れのためにも、賠償協定を早く締結しようとすることは当然です。そして、またこれがやはり、ああいう革命政権がある際においては、結果としては、意図はどうであろうと、内政の干渉に通じ、そうして、またこういう混乱の中で経済協力の協定もできない賠償の真の国民的な念願が実現されぬと、私はそういうふうに見て、この問題は慎重に検討して、行きがかりでやったのだからもう仕方がないということで、これをまっしぐらに批准にまで持って行くことがいいかどうかということは、慎重に考えていいじゃないか、こういうことをお尋ねしているのです。
  289. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) もちろん、こういう重大な問題でありますから、行きがかりでどうするとか、慎重を欠くということは、これは適当でないことは言うを待ちません。ただ、先ほども申し上げましたような、大体インドネシアの情勢の判断の上に立っておるし、また長いインドネシアとの賠償協定の経緯にかんがみまして、インドネシア内における各政党のこれに対する意見も十分徴して、意向もわれわれは判断の材料にいたしております。また、今の革命運動のこの実態が、いろいろなまだ私はいきさつがあって、もちろんこういうふうな事態になっておるわけでありまするから、たんたんたる大道を行くというようなわけにはいきますまい。いろいろな経緯もございますから、それらについても、今後なお十分に、われわれとしては慎重な態度で臨まなければならぬことは、言うを待ちませんけれども、現在までの状況から見まするというと、私は特に、日本がこの問題に関して批准を特におくらせるというような態度をとることは、決して本問題解決の上に適当な方法ではないと、こう考えておるわけであります。なお十分にいろいろな事態の推移を見て行く必要があるということは、全然それを度外視しようというような、もしくは行きがかりにとらわれて、何でもかんでも、いちずにやろうという考えを持っていないことは、はっきり申し上げておきます。
  290. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 藤山外務大臣は、先に申された情勢判断に誤まりがあったら責任をとる、それはまさに政治家としてはそうでありますが、私は、岸総理としては、そういう協定を結んで、条約を結んだとたんに革命政権が起きたということは、何としても在外公館、小林中氏やその他が大きな顔をしても、インドネシアに何をしに行ったのですか、たくさんの国費を使って。これはやはり在外公館が十分充実されていなかったかもしれませんが、そういう諸般の情報を送って、総理をして誤まりのない判断をさせるということが、外務大臣のとられるべき措置だと思うのです。賠償協定でも大へんですが、戦争か平和かというような決定的な瞬間をこんな判断でやられて、九千万の同胞の運命をまかせることはできぬじゃありませんか。私はそういう点で、この問題は、決してインドネシアとの平和の回復、賠償の責任をとるということを私は反対するでなしに、やはりこういう情勢の推移を見て、慎重な配慮をした方がいいのじゃないか、こういう見地で質問をしておるわけであります。総理が申されましたから、くれぐれも、行きがかりで、一たんやったのだから面子にとらわれてということはございませんように、くれぐれも言っておきます。  次に、私はオープン・アカウント協定を結んでいます地域の焦げつき債権がどうしてできたか、一体これはだれが責任をとるべきか、そうしてその対策はどうかということを少し質問いたしたいと思うわけであります。  まず、その前に、事務当局でもけっこうですが、二月末現在のわが国外貨の手持ち保有高、それとインドネシア関係、アルゼンチン、エジプト、台湾などの最も正確な焦げつきの額、保有金額に対するパーセントをお知らせいただきたいと思います。
  291. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 本年二月末の、これは推定になりますが、推定外貨保有高は九億九千二百三十万ドルですが、なお私どもとしては、焦げつき債権というのは、あまり使わないのであります。何も取れるものを、今後取れるものもありますので、そう初めから焦げつき債権というように、あきらめることもありません。しかし、一応そういう御質問の趣旨のオープン勘定の特別残高を申し上げます。インドネシアで御承知のように一億七千七百万ドル、アルゼンチンで五千万ドル、韓国で四千七百万ドル、エジプトで千百万ドル、台湾で二千百万ドル、計三億六百万ドル、こうなっております。むろん、これは焦げつき債権というような名称にはしていただきたくないのであります。こういう勘定が、オープン勘定で残高として残っておるということであります。
  292. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そう弁解されぬでも、その本質がどうかということは、逐次わかってくるわけであります。そこでお尋ねいたしますが、この外国貿易及び外国為替管理法において、この第一義的な責任は一体だれが持つべきものであるか、輸出等に対しては承認制があったりして、とにかく一体どの大臣が責任があるのであるか、機構上の問題です。さらにまたその焦げつき債権ができた期間における担当の通産大臣、大蔵大臣、通商局長、為替局長は一体だれとだれですか。御案内のように九億九千万ドルあって、約三分の一の一千億をこす莫大な焦げつき債権を発生しているのですが、この責任問題を中心に、これがとるべき策について逐次お尋ねしたいと思うのですが、一体どの通産大臣、どの大蔵大臣、どの通商局長、どの為替局長のときに発生しているか、その氏名を、逐次予告してあるわけですから、おあげいただきたいと思います。
  293. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまお話しの焦げつき債権と称するようなものにつきましては、たとえばエジプトとか、そういうような問題につきましては、われわれ焦げつきとは全然考えておりません。インドネシア、アルゼンチン等につきましては、あるいは一応焦げつきという言葉が当るかと思います。その当時の大臣は、これはさらにさかのぼりますと、水谷さん時分からずっとあるわけであります。
  294. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そんなばかなことがあるかね。
  295. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) あります。
  296. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 冗談言うなよ。
  297. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 最初の六千万ドルは、御承知のように昭和二十何年か、もう……。
  298. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 正確なことを言って下さい。
  299. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) その当時からあるわけです六千万ドルにつきましては、昭和二十二年から二十四、五年ごろまで。要するに、まだ総司令部が管理しておった時分であります。しかし最近の一億一千万ドルにつきましては、二十九年あるいは三十年当時でありまするから、まあ岡野清豪氏愛知揆一君、石橋湛山氏というような時分であります。アルゼンチンもほぼ同様であります。それ以外につきましては、われわれまた焦げついたとは考えておりません。
  300. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そのときの大蔵大臣、通商局長
  301. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 通商局長は牛場君とか、板垣君、多分そうだと思います。板垣君あたりだと思います。
  302. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) ただいまお尋ねのありました、だれがどういうふうな形で為替管理をしておるかという問題でございますが、これは多少変遷がございますが、外国為替管理委員会から日本政府に引き継がれましたあとにおきましては、外貨予算全般の取りまとめは大蔵省でやります。その場合に、関係各省からいろいろな資料をいただきまして、それをまとめまして閣僚審議会に付議いたしまして決定するわけであります。で、大蔵省の為替局がその庶務をいたしております。それから実際では、貿易為替管理の面でどういうふうにしておるかと申しますと、貿易に関するものにつきましては、通産局、それから貿易外のうちで、まあ大まかに申しまして貿易に伴う貿易外収支というものは、これもやはり通産省で実行いたされております。為替局におきましては、その実行の面では、貿易外のうちの貿易に伴わないもの、そういう面での許可事務をいたしております。
  303. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 前尾通産大臣にお尋ねいたしますが、昨年以来、一千百億という膨大な焦げつき債権を作った、政治家としては、やはり責任問題が重要である。その問題を解決することが、今後の、再びこういう過失を犯さない重要なきめ手だと思いますので、いろいろ調査をいたしました私の調査では、やはり先に言われたように、岡野清豪氏のころから、ラジオでえらそうに言われる愛知官房長官のとき、石橋湛山、水田、こういうような人のときに膨大な焦げつき債権ができているわけであります。この背後には、あとでも述べますが、なかなかうまみがあるわけであります。これは決して看過できない問題ですが、アルゼンチンの焦げつき債権はどうしてできたか、その問題を御説明願いたい。
  304. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 御承知のように、オープン・アカウントの契約は、やっておりますと、一年たたぬとわかりません。そのときに現金決済ができぬと、こういうことで初めてわかる。従いまして、アルゼンチン等につきましては、鉄鋼の輸出というような問題で、多量に向うが輸入したというような時代もあったと思います。しかし、いずれにしましても、ただいま申し上げましたように、一年たちませんと、その清算がつかぬ、こういうことでありますので、必らずしも相互の友好と相互の貿易を拡大するという意味合いにおきましては、信頼に基いて最終の決算をやるというところまでは、やむを得ないのじゃないか、かように考えております。
  305. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そういう説明では、それでは、アルゼンチンにただいま大蔵大臣が言われたような焦げつきがありますが、あれだけの焦げつきを作って、アルゼンチン貿易が進行していますか、韓国にあれだけの焦げつき債権を作って、その後、貿易が進行していますか、実情を述べてもらいたい。
  306. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 焦げつきになるかならぬかは、最初からわかるわけではないのであります。焦げつきと言いますか、決算ができぬ、こういうことになりますと、その後におきまして、いろいろ調整をいたしております。もちろんアルゼンチン等におきましても、分割払いで払って、第一回はたしか払っておると思いますが、それ以前におきまして、正常に貿易の拡大に寄与してきたという点は、これは見逃しがたいことであります。
  307. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 ふえていないのですよ。そんな無責任なことじゃ駄目じゃないですか。それだけの焦げつき債権をして、三分五厘という安い利子で十年賦にして、そういう恩典をやっておいて、伸びていますか、伸びていないでしょうが。
  308. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいま申し上げますように、そういう事態が起りましたあとにおきましては、伸びるというわけには参りません、お互いに調整して、煮げつきの起らぬようにして行かなければなりませんから。しかし、その後におきましても、正常に貿易はやっておるわけであります。
  309. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それでは、インドネシアでも一億七千七百万ドルの煮げつきをみましたが、その後、貿易は伸びていますか。これは機構上の問題と運営上の二つは問題があるのです。  特に申し上げたいのは、このアルゼンチンに莫大な焦げつきができたときには、アルゼンの政情はどうでしたか。ペロンは国民の信頼を失いまして、彼は辞任したのです。そうして彼を支持する総同盟のゼネストによってもう一ぺん復活したが、ついに国民の信頼を得ることができずに、彼はブエノスアイレスから飛行機に乗ってパラグァイに亡命する。そういう不安定な政情の中でやられているということはきわめて重大であります。こういう不安定な中でペロンが信頼を失って、それで辞職した。その後、労働総同盟の支持にもかかわらず、ついにブエノスアイレスからパラグァイに亡命しなくてはならぬというときに、そういう信用状を発行して、たくさんの鉄鋼を輸出しているわけであります。御案内のように、現金決済でないわけですから、鉄鋼業者はこれによって二割くらい高く鉄鋼を輸出して、そうして日本政府から代金をもらうのです。それが六千万ドル焦げついているわけであります。こういう状況なんであります。これでどうして……、そこでお尋ねいたしたいのですが、この主要な焦げつき債権の、アルゼンチン、インドネシアあるいは韓国等の主要な焦げついたときの商品、輸出の商社の名も示していただきたいと思うわけであります。これは事前に申し入れてあるわけですから一つはっきり……。
  310. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) お答えをいたします。  アルゼンチンに対しまして、昭和二十九年に輸出は五千百万ドルでありますが、そのうちの約四千万ドルが鉄鋼及びその製品であります。その他、工業用の化学薬品あるいは有機合成品等もかなりの額に達しております。それから昭和三十年度におきまして、アルゼンチン向け輸出額八千七百万ドルのうち鉄鋼関係が六千万ドル、その他、非鉄金属、鉄道車両、電気通信機械等一般の機械類がそれに次いでおります。それから三十一年度におきましては、輸出が四千五百万ドル、その中で鉄鋼関係が約三千八百万ドル程度、そのほかは一般の機械類になっております。また、鉄道車両及び部分品もかなりの額に上っております。  それから、その当時のこれらの輸出に従事しました貿易業者でありますが、若干商品別に申しませんとちょっとわかりにくいので申しますと、金属及びその製品の関係では三菱商事あるいは岩井産業、三井物産、日商、木下商店、伊藤忠、兼松等がおもなるもの、それから、機械類の輸出商社としまして、三菱商事、第一物産、伊藤忠、丸紅、東棉、兼松、日商であります。それから化学製品につきましては、第一物産、安宅産業、野崎産業、岩井産業がおもなる商社になっております。  それから次にインドネシアでございますが、まずインドネシア向けの綿糸市の輸出商社といたしましては、東洋棉花、丸紅飯田、伊藤忠、第一物産、大綿商事、江商、日綿実業、野村貿易、又一、三菱商事がおもなものであります。    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕  次に、やはりインドネシア向けの化繊関係の輸出の商社といたしましては、第一物産、伊藤忠、丸紅飯田、日綿実業、兼松、東洋棉花、三菱商事等がおもな商社になっております。それから亜鉛鉄板類の輸出商社といたしましては、華東聯合、それから泰豊、——これは華僑じゃなかろうかと思いますが、泰豊、それから、第一物産、野村貿易、鹿島貿易、関西貿易、日商、伊藤忠、三菱商事、東洋棉花、  大体、以上であります。
  311. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そこで、わかりましたことは、決してこの輸出商社が弱小な商社でない。三菱とか丸紅とか、日本の最も有力な、この貿易を握る代表的な商社がこれに関係しているということは、まず一つの重要な点であります。さらに、その当時アルゼンチンに出された鉄鋼価格の値段を調べてみますると、一万トンが銑鉄で七万九千円でも出されているのです。ところが、国内価格はその三分の一で、トン当りが二万四千程度であり、御案内のようにオープン・アカウントは現金決済でありませんから、非常に相手は高く買うのです。特に、アルゼンチンのような崩壊寸前の政権でありますならば、二割も三割も高く買って、そうしてそれは全部国がその責任を持つ、こういう結果になるわけであります。さらにまた、そういうオープン・アカウント地域から輸入しようとしますならば、それだけの焦げつきができているから、何とかして埋めようとして、輸入価格はまだ必然的に二割も三割も、どんなに少くても一割や二割は高まらざるを得ないという、オープン・アカウント制度の持つ基本的な性格であります。さらに、インドネシアはどうでありましょう。御案内のようにインドネシアの焦げつきが一億七千できましたときには、いろいろな経緯がありました。しかしながら、インドネシア政権がオープン・アカウント制度の廃止を通告してきた際に、日本の先にあげたような代表的なメーカーが、商社が、通産省に対して非常な陳情運動をし、さらにそれだけではなしに、インドネシア政府にまで働きかけて、ついに延期をさせるというようなことで、そこにすべり込みのたくさんの輸出がされた。そうして、どうせ賠償と相殺すればいいんだからというようなことで、ずるずると一億七千五百万ドルの赤字ができているのであります。現在の業者の圧力、通産官僚の動向等から見て、オープン・アカウント制度は必然的にこういうものを生む当然なこの機構的な欠点を持っているわけであります。  岸総理にお伺いいたしますが、とにかく、アルゼンチンにいたしましても、それはなるほど、平均いたしまして、十年間に三分五厘の利子をつけて払うということになっていますが、とにかく焦げつきに違いないことは明らかであります。こういう一体一千百億も国民の血の犠牲でこのオープン・アカウント制度を悪用して貿易をやって、そして業者だけは国民の犠牲でうまい汁を吸っている、そういう赤字を累積した政治家は一体どういう態度をとるべきでしょう、一千百億も、私の調べではいろいろ評判も引退ぎわによかったそのですが、石橋通産大臣のときには最も多くの焦げつき債権ができていることはきわめて重大であります。さらに水田氏のとき、こういう一体、愛知官房長官もおられますが、政治家が行なったことに対して責任を負わないということで、一体どうなるでありましょう、一千百億の膨大な赤字です。私は、昨年の十二月からこの問題と取り組んで、驚くべき事態をいろいろ知っているわけであります、ここでは申し上げませんが。そういう赤字を累積した者が岸内閣の、岸さんのもとにもおるということは一体どうでしょう。政治家はとった行為に対しては責任を負うべきです。一体どうでしょう。この外国貿易及び為替管理法によると、何といっても第一義的にはこれに対して通産大臣が責任を持ち、大蔵大臣としてもこういう帳じりになるときには為替管理からして決して責任は軽くとしない、一萬田大蔵大臣のときであります、一体こういう人が官房長官や大蔵大臣その他におるということが一体どういうことになるでしょう。国民に対して一千百億の、膨大な貿易振興という美名のもとに、私はこれは重大だと思うのですが、こういう責任をはっきりすることが再び赤字を作らない、焦げつきを作らない大切なことだと思うのですが、いかがでございましょうか。
  312. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほどからお話がありましたように、このオープン・アカウントは、終戦後におきまして、当時の国際的な貿易の状況、為替の事情から、いずれの国もまず貿易振興のためにとりました協定でありますが、しかし、これは結局スイング限度をきめて、そうしてそのスイング以上になれば必ず硬貨、主としてドルになりますが、ドルやポンドで支払う、こういう国との約束になるのでありますが、しかし何もそのときどきの輸出入というものが常にバーターみたいに一致するものではありません。相手の国が、その国の経済の情勢から、また生産国の状況から見て、こういうものを今たくさん輸入したいということになれば、やはり輸入をする、また輸入をした方の国が、相手国から輸入するのも他の国の経済情勢において相手から輸入する、同時にまた、こういう出合いが必ずしも合理的にいかないというようないろいろな理由もありまして、御承知のように、オープン・アカウントは段坂がいずれかにやはりできるという傾向を持つのであります。従いまして、これは私どもとしましては、なるべく早い機会にこのオープン勘定は廃止したいと思っております。日本も十六ほどこの協定があったのでありますが、今は六カ国に減らしております。最近さらに一国が減ることになっておりますから、五カ国になると思います。かようなわけでありまして、これは私は取引の一つの形態から生じます当時の事情としてはどうもやむを得ない。われわれ為替当局といたしましては、そういう段坂ができる傾向を持てば常にそれに対応しまして、日本からいえば日本のその国に対する輸出を調整するということを為替面からもいたしますし、また通産当局にもよく御相談申し上げてやっておるのでありますが、しかし、これは急に相手国がやることがあるものですから、たとえて言うてみますればアルゼンチンにいたしましても、あるいはまたインドネシアにしてもおそらく、一九五四年ごろと思いますが、そのころに一年間にぐっとやって、そうして年末に大きなしわ寄せをする、こういう傾向をとったわけであります。これは大へんだというので、その後においてきびしい態度をとることが、やはりもはやおそいといううらみ……これはどうも制度自体からくるのと、同時にまた国と国との間の信義の問題でもありまするが、なかなかむずかしい実は実際問題であります。それかといって、こういうふうなことを全然やらんで、それなら戦後における貿易が緒についたかといえば、これもなかなか……またこれが大体、このやり方で当初の二年三年というものはどれも大体うまくいっておる、大体輸出入がバランスをとり、また多くの場合日本からたくさん買った、むしろ当初日本が借勘定になったという情勢があるのでありまして、それは制度の上からくる非常に注意を要することでありまするが、まあ制度からくる欠陥になる。むろんそういうことによりまして、こういうふうな債権を持つことについては非常に私は残念に思っております。
  313. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 中田君の御質問の中に、私のことも再々言及されましたので、一応所見を申し上げたいと思います。ただいまの大蔵大臣の御説明で大体尽きておると思いますけれども、戦後の特殊の環境のもとにおいて、特にオープン・アアカウントの制度というものの功罪は私はいろいろあると思います。あると思いますが、その当時の状況におきましては、一方において国内の経済も伸ばさなければならない、あるいは輸出の増進は、特に昭和二十九年私の在任中におきましては一つの大きな問題でございます。ところが、オープン・アカウント勘定でやって参りますると、どうも債権の保全がなかなかむずかしいのではないかと思われるような事例も見受けられましたので、その際におきましては輸出について相当思い切った制約をいたしました。また債権の保全につきましては物資の輸入等に努力をする、あるいはまたその債権の保全については、そのほかにもいろいろ考え得る方策があったわけでございますが、私といたしましては、その当時の環境下においては最善の努力をいたしたつもりでございます。そのことだけを明確に申し上げておきたいと思いますが、御批判は御批判といたしまして、私の気持を率直に申し上げておきます。
  314. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 愛知官房長官のような廉潔な将来に富む方では機構上の欠点かもしれない、機構的に起きた何かもしれませんが、アルゼンチン、それから昭和三十年にできたインドネシアの焦げつき債権は、全く日本の代表的なメーカーと商社、通産省、政界とが一体となって計画的にできたわけであります。これだけは、昭和三十年の三月に、七月からオープン・アカウント制度を廃止するというインドネシア政府が通告をしてきた、その際に業者や輸出商社が大運動をやって、それが日本政府だけでなしに、インドネシア政府に対してまで働きかけて、ついにこれを延期させたりして、ここで数千万ドルの輸出をし、どうせこれは賠償と相殺すればいいのだからというようなことで、計画的に作られた悪意に満ちた、貿易振興に名をかる政府の国民の負担による赤字の累積であるということは疑う余地のないことであります。これは疑う余地のないことであります。これはもうはっきりいたしているわけであります。大蔵省から出しています為替管理の問題点を見ても、あるいはアナリシスを見ても、この予算を見てもはっきりいたしておるけわであります。そこでお伺いいたしますが、私はこの制度を今後存続いたしますなら、水田、石橋、岡野清豪氏等のときに起きたような問題が前尾通産大臣のときに起らないという保証はどこにもないと思う。特に御案内のように、オープン・アカウント制度は、大蔵大臣が言いましたように、スイング勘定として、ある一定限度こさねば現金決済しないということになって、現金を使わぬでも決済できるようになっていますから、輸出するのは二割から三割、四割も高いのです。さらにそれをまた輸出した代金の回収をしようとするから、輸入の方もあせって、輸入物資も当然高からざるを得ないという欠点を持って、これは大へんな問題なのです。台湾の問題等を見ても、台湾の砂糖にしても、米にしてもです、ずっと五年くらいここ調べてみますと、オープン・アカウント制度ですが、ビルマやアメリカその他から買う米よりかけたはずれに高い米を買って、それは、日本の輸出した代金のかわりに、それを輸入物資で埋めようとする必然的な結果であります。そうして政府は、農林大臣は、肥料に対し一俵七百五十五円ですか、きめましたが、台湾に対しては、一俵に対して百三十円も日本の百姓よりか安く売って、高く買ってやるというようなことで、台湾政府日本の経済がかかえているというような欠点になっているのです。なおそれでも、前尾通産大臣は、通産省、通商局等が、大蔵省のこれまでの実績からの心からなる心配にもかかわらず、これを存続すると言っていますが、そのような大きな問題を含んでもなおこれを存続して、特にエジプト、台湾等に対してオープン・アカウント制度を存続する気かどうかという点と、さらに藤山外務大臣お尋ねしたいが、大蔵省が、心配して外務省に台湾の焦げつき債権の解決方を要請した際に、外交上機微に触れるからと言って、この日本の債権確保の交渉を拒絶したということが伝えられていますが、這般の消息を聞かしていただきたい。
  315. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) オープン・アカウントにつきましては、ただいま言われるように焦げつきの問題、あるいは多少高く買わなければならぬと、こういうような欠点もあります。しかしまた、長所もあるのでありまして、ことに外貨を使わずにやる、これは率直にいえば、日本もだいぶ外貨がたまってきましたから、外貨の決済をやったらいいじゃないかと、こういう面もあると思います。従って、次第に整理をして行くということにつきましては、われわれも考えております。現在におきましても、こちらの出超の国もあります。エジプトにおきましては最近におきましてこちらが輸出超過になっておりますが、入超の時代もあり、またその他の国におきましても入超の国があるわけです。従ってこれは、その国々の実際の実情を見て、そうして考えて行きませんと、ただオープン勘定は絶対に悪いのだということだけでは、私は判定できないと思います。ただ、焦げつくようなおそれのある場合に、おきましては、これはもちろんやるべきではないのであります。結局その時、国々の事情をよく考えて、そうして誤まりのないように考えていくということが私は肝心と思います。もちろん趨勢として整理していくということにつきましては、何ら異存を持っておりません。
  316. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 台湾との関係におきましては、オープン・アカウント開始以来、過去においては日本側がむしろマイナスの勘定になっていたという事例が多いのでありまして、一昨年ですか、一千六百万ドルぐらいのむしろ日本側が払わなければならぬ債務がたまっていたというような状況に推移してきております。現在のところ二千七百万ドルぐらいな債権になっております。ただいま米と、それから砂糖の買付が進んでおりますので、三月末もしくは四月になりますと、スイング以外に入りますので、その情勢を見つつあるのであります。
  317. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 しかし、大蔵大臣の御発表のように二千百万ドルあるのです。これを何とか埋めようとするから、必然的にそこから買う米と砂糖は高からざるを得ないのです。そういう点で私は、それは戦後の一時期には通産大臣の言われたように歴史的な役割を果したでしょうが、もうすでに五カ国程度になっておるのです。前尾通産大臣にお伺いいたしますが、エジプトの焦げつき債権は確保できますか。
  318. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 御承知のように、エジプトにつきましては、われわれの方から輸入する物資をたくさん持っておるわけです。そうしてエジプト側としましても、日本からの輸入のライセンスをおろさぬというので、極力向うも縮小するというので、もうすでに二百万ドルぐらい減っておると思います。そうしてこれは、今のLCの状況から考えますと、三百万ドルぐらいに、そう長い期間じゃなしに減るのであります。これは、お互いの勘定はもちろんぴったりといくわけじゃございません。従って、多少の貸し越しになったり、借り越しになるのはやむを得ないのであります。その点に関しましては、エジプトについて現在懸念を持っておりません。
  319. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 しかし、われわれが聞くのでは、エジプトから綿花を六万俵、米を六万トン入れるということですが、割高な特殊なあの長い繊維の混紡に使うものを、一体綿業界がそれだけ消化できますか。私の聞くところでは、なかなかそういうようなことでないということも聞いているんですが、それから私は、まず何よりももうここまで焦げつきができたら仕方がないことですから、この焦げつき債権を可能な限り確保するということをまず第一にして、そうしてその後はオープン・アカウント制度を根本的に再検討するということが、私も直ちに廃止せいとは申しません、何と言っても焦げついておるわけですから、その債権を確保するということは必要ですが、もはや十六あったものがこの段階に来て、整理段階に来ている、私はそういうふうに考えるわけですが、いかがでしょうか。
  320. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 大体エジプトの貸し越しになりました原因は、スエズの問題で昨年綿を買わなかった、こちら側の輸入するものが少なかったのが大きな原因になっております。従って、ただいま予定して買い入れます分につきましては、十分消化ができると思う。先ほど来申し上げておりますように、エジプトにつきましては、そういうようにほんとうにそれ以前は、こちらが借り越しになっておったような時代が続いておるのであります。従って、先ほど来申し上げておるように、あまり懸念をする必要はない、かように考えておるわけでございます。
  321. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は、そういうこととは違うと思う。第一、貿易の振興になると言われましたが、焦げついたところがこれほどたくさんな、一千百億も焦げつかして貿易の振興になっていますか。アルゼンチン貿易の趨勢はどうです。インドネシアはどうです。韓国はどうです。そうしてまた、エジプトポンドの新しい通貨を設定していますが、この制度、エジプトポンドとオープン・アカウント制度との関係については、在外公館の連絡をたんねんに見ても、決して前尾大臣が、通産省が、どうしてもオープン・アカウントを存続するんだということを主張される根拠は、私は絶対ないと思います。何といっても、一千百億も焦げつき債権を作てたという、そういう前科から考えても、私は、前尾通産大臣はもしこのままやっていかれますならば、なるほど輸入できるかもしれぬが、その価格は、けたはずれに高いんです。それは、コスト全体の中で、生産コストの中で、原料代が非常に高くなってそれは結局、労務賃金にしわ寄せせられざるを得ないというようなことになって、私は、貿易振興には、どうもオープン・アカウント制度は終止符を打つような段階に来た、こういうふうに考えるんですが、前尾通産大臣、大蔵大臣の所見はどうですか。
  322. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) エジプトにつきましては、ただいまも申し上げましたようなことで、回収について別にそう不安はないと思います。しかし、今後におきましてオープン・アカウントを続けていくかというのは、これは私は、必ずしも続けていかなきゃならぬとは考えておりません。いろいろ事情を考え、まあ今年の九月でありましたか、満期になるのであります。それ以前につきましても、今後の事情をよく検討いたしまして、十分考えてみたいと思っております。
  323. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほどから申し上げますように、このオープン・アカウントは、戦後において国際貿易が非常に変則といいますか、各国とも決済外貨に欠乏しておった。そういうときに、お互いに貿易を振興させようじゃないかという、そういう意欲からこれは起っておるのであります。従いまして。国際経済の情勢が今日程度に正常化したのでありますから、私の考えといたしましては、なるべく早くオープン・アカウント制度は、私は廃止する方向に向うべきだという態度をとっておるのであります。通産大臣のお考えとも何も違うこうもありません。大体同じ考でありますが、実際の問題として、すぐにはなかなかいかない、相手方の国情を、また、経済状況をよく見て一つ検討を加えよう、こういうことにあるだろうと思います。私は、先ほどからの御意見の趣旨、まず、今の焦げつきのありますエジプトは、焦げつきとは私は言いたくない——決済をしていこうというのでありますから、焦げつきとは言いたくないのですが、この勘定の残高をまず返済していただくようにこれを確保して、そうしてオープン・アカウント自体については、今申し述べられたような御意見には同感であります。
  324. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 最後に、前尾通産大臣も、いつまでも続けていこうということではなしにということですから、了解しますが、この制度を続ければ、制度そのものの持つ機構的な、また運用上の諸問題からして、決して日本の貿易の振興にも、日本経済の発展のためにもならないし、また、役人の諸君がけがをするもとなんです。私は、やはり焦げつき債権の確保、回収といいますか、それをめどにして、今後はよほど慎重な配慮をもって、岸総理の内閣のもとにおいて検討していただくことを希望して、次に移りたいと思うわけであります。  岸総理にお伺いいたしますが、岸総理が外遊された際に、フィリピンから、五千万ドルの賠償を引き当てにしての借款の申し入れがあった。マリキナ・ダムの建設のため五千万ドルの借款をしてもらいたい。それは、今後年次計画で払うべき賠償を引き当てにしてと、こういうようなことで、いろいろ新聞にも出ていますが、この点で、まず外務大臣に、どういうふうになっているか、御説明を聞き、岸総理の所見をお伺いしたい。
  325. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) フィリピンの代表部、賠償部から日本に対して、マリキナのダム建設のために借款をしたいという話はございました。ただ、外務省といたしましては、賠償を対象にして、あるいは賠償と関連して借款をするという問題は、今日必ずしも適当であろうかとは思いませんので、ただいま研究をいたしておるわけであります。
  326. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私がフィリピンに参りました当時、大統領初めフィリピンにおきましては、マリキナ・ダムの建設ということを非常に強く要望をされておりました。これを何とか賠償のワクで建設するということの、向う側としては非常に強きそういう要望がありました。しかし、すでに年々賠償のワクというものは、次の年の何というものもいろいろ両国の間において検討して、そうしてきめておるというふうな関係もあり、果してワク内にそれが入るか入らないかというような問題についても、研究をしなければならぬし、また、向う側が言っておりますように、一応借款でこれを建設して、あとは年々の賠償の中からこれで払っていくという関係が、果して現在の賠償協定に合致するものであるかどうかということも研究をしなければならないというような点がありましたので、共同声明等におきましても、それらに触れないような意味において、向う側の希望をなるべくわれわれとしても達成せしめるように協力をしようということにいたしておいたわけであります。事の性質から申しますというと、私は、こういう事項、プロジェクトは賠償でやって、そうしてフィリピンの経済に基礎的な有力な貢献をし、同時に、日本がそれを賠償で役立てたということは、長きにわたってフィリピン人の中に印象が残っていくというような性質から申しますというと、賠償の仕事としては私は適当な一つのプロジェクトだと思います。ただ、それのやり方につきましては、今申しましたような、いろいろな研究の余地があるのでありますから、目下検討中であると、こういうことであります。
  327. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 岸総理が今申されたのとだいぶん事態が違っておるようですが、私は、東南アジアの貿易という問題が日本の大きな課題になっておりますが、東南アジアの貿易の推移を戦後見てみますると、最初はこげつき債権貿易であります。とにかく赤字を国の負担で貿易を振興するという、ずっとしさいに検討すると、そういう傾向を持っております。ところが最近、このオープン・アカウント制度も限界に来たということでかわっているのが政治借款の賠償の問題であります。新聞の伝えるところによりますと、各紙とも出ていますが、二月二十七日に川島幹事長並びに参議院の小沢久太郎氏は、やはり賠償を引き当てにして、このマリキナ・ダムの建設をやる、政治借款をするという岸総理の了解が得られていると、外電においても、もうすでに調査はだいぶ進行しているようですし、そういうふうに、たとえば、国際技術協力開発株式会社社長八田嘉明氏の調査団がすでに調査をしている。私は、こういうことが続々起るのじゃないかと思うのですが、岸総理は、フィリピン郊外にやられるところのこのマリキナ・ダムを賠償引き当てにする、繰り上げて払うような意味の借款の了解を与えておられないかどうかということをお伺いしたい。
  328. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 事実は先ほど私がお答えを申し上げました通りでありまして、私は、このプロゼクトは、賠償の対象としては適当なものであるという考えを持っておりますが、しかし、それをどういう形において賠償に入れ得るかということは、今申し上げましたように、検討を要する問題でありまして、関係省の事務当局において検討いたしておる段階でありまして、私が方法論的にそれの結論を与えた覚えはございませんし、そういう事態ではございません。
  329. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それでは、大蔵省に異論があるようだが、岸総理が東南アジアに行かれた際に、フィリピン政府と話がついておるので、これができぬと、重大な政治問題になるだろうということを外電は伝えているわけであります。まあそういうことでないということですから、すでに賠償協定を結んで、年次計画に従ってやっているのですから……。私はしかし、この八田氏の開発会社が調査に行ったというところには、なかなか含みがあると見ているわけであります。  それから、岸総理が、インドに対して百八十億の借款援助、あるいはカンボジアに対して十五億というように、次々に、自分のポケット・マネーから金を出すようにやられるものですから、最近セイロンとパキスタンからも、政治借款の申し入れがあったということでありますが、これは、外務大臣でもどちらでもけっこうですが、その真相はどうでございましょうか。
  330. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 何か私が、ポケット・マネーから出すような意味の御質疑でございますが、私は、この東南アジア開発の問題に関しましては、しばしば申し上げておるように、これらの国々の経済開発の基礎に対して、日本が国力及び日本の技術各方面の形において協力できることは、これに同情をして、これに協力するということが、東南アジアの繁栄のために、ひいてこれは、大きな意味において日本の利益にもなりますし、アジアの繁栄にも資するゆえんであるという考えから、各国との間の理解と友好関係を深めると同時に、われわれの力においてできること、また、それがきわめて望ましいことにつきましては、いろいろと検討いたして、やってきておるわけであります。  インドに対する百八千億の借款の問題は、昨年秋ネール首相がこちらに来たときに、ネール首相からの懇望もあり、われわれのインドに対するいろいろな調査研究から見ましても、インドの開発の上に借款を進めることがいいと考えまして、さらにこれを具体的に研究した上で考えたいと思います。  カンボジアとラオスに対する関係は、御承知の通り、賠償を放棄しておるという立場から、従来ともこれに対して、日本において何らか適当な、これらの国々の基礎となる問題、それができれば、非常にその国の繁栄に資し、同時に、将来の両国の友好関係、通商関係等においても望ましいというようなことについて、日本の賠償を放棄されたことに対する気持もこめて、何らかこれに供与、協力といいますか、日本のできる範囲内における一つの援助を与えようという方針のもとに、それぞれ研究はいたして、その案を得たものについてはきめておるというものでありまして、決して思いつきもしくはその場限りにおいて、気前よく出しているという問題ではないのであります。どうか誤解のないようにお願いいたします。
  331. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 岸総理だけでは大へんですから……。それから、パキスタンにも参られましたが、海外鉱物資源開発協力協会というものが三月十八日に地下資源の調査に参りますが、藤山外務大臣でもけっこうですが、何か言質でも与えられて、岸総理がパキスタンを訪問された際にそういうふうになったのかどうか、その点をお伺いいたします。
  332. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 総理が参られましたときに、いろいろな話し合いをされておりますけれども、具体的に結論を得て、こういうことをしよう、ああいうことをしようという話はされておりません。総理は、ただいま説明されましたように、東南アジアとの経済協力を緊密にしていくということについては、東南アジアの将来の発展のために非常に必要だからという立場からして、それぞれの国と十分経済協力をやる、従って、そのもとにおきましては、それぞれの国からいろいろなプロゼクトの話があったことは事実でありますけれども、それを最終的にコミットして帰ってきてはおられないのであります。しかし、それについて、日本ができるだけいろいろな国と協力していくことは必要でありますけれども、調査団を出しますとが、十分な、何も金銭的でなくても、そういう面からも協力していくことは必要だと思うのでありまして、そういう意味においてわれわれも、調査団を派遣する、その他のことについては、できるだけの便宜を与えておるわけであります。
  333. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は、インドに対して、特にわが社会党の外交政策の方向ときわめて親近感を持つものです。しかし、そういうことと借款とは、私は、わが国が十八億ドルも、長期、短期、政府並びに民間の借款を、二十億ドルにも及ぶ膨大なきびしい条件の金を外国から借りておる際に、きわめて寛大な借款をすることがいいかどうかということは、やはり非常に重要な問題で、私は、インドに対する友好は、もっと別な面からやれるのではないかというふうに考えるのですが、いかがでしょう。
  334. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) もちろん、インドとの友好関係というものは、この百八十億の借款だけの問題、これがその意味において最もいいということよりは、むしろインドの産業開発の何からいいまして、御承知のようなインドの状況から申しますというと、結局五ヵ年計画を立ててやっておりますけれども、これを進行し、完成するだけの外資がなく、従って、機械その他の建設資材等の輸入もおくれておる。そうすると、この建設ができないということになるわけでありまして、円借款ができますれば、これを引き当てにして、建設資材等について、日本からの輸入によって産業の計画を進めることができる。これによってインドの産業が開発されるということが、日印の上において非常に好ましいことであると同時に、それよりも、より大きくこれがインドの繁栄、ひいてアジアの繁栄に資することが大きいという点を見まして、日本の経済力も考えに置きまして、この程度の、ああいう条件のもとの借款をすることは、この際適当であるという考えを持っているのであります。
  335. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は、精神家のようなネール総理が、なかなか現実的な、百八十億の金を持って帰るという、この政治的な手腕には敬服するものであります。岸総理にも一ぺんあったでしょうか、そういうことが。  さらにお伺いいたしますが、藤山外務大臣にお伺いしますが、高碕さん等が、エジプトの借款について、政府に対して政治借款をすべきだという、そういういろいろ働きかけがあるようでありますが、この真相はいかがですか。
  336. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 昨年の秋に、エジプトからアスワン・ダム関係の建設に関して、日本の技術的ないろいろの実力、実績等を見に来る調査団が来られたことは、御承知の通りであります。それらの調査団が日本に来ました結果、日本のダム建設の工事その他が非常に優秀な技術である。自分たちは、かつてこれほど優秀な技術を持っているとは知らなかった。従って、日本の技術は十分に、将来エジプトのアスワン・ダム開発の関係において、西欧のドイツその他と並んで用い得られるのだという結論を持って帰られたことは、承知いたしております。従って、エジプト政府としましては、さらに日本の技術者を現地に派遣してもらって、そういう状況について一ぺん見てもらいたいという話がありました。それが、高碕さんを団長として、一月の初旬に、専門の技術団が連なってエジプトに行かれたことであります。しかし、お帰りになった話を聞きましても、また、エジプトの当局の意向も、要するに、アスワン・ダムの建設というものは、スーダンとの水利権の問題が解決しないので、今すぐに大きく着工する予定はない。ただし、将来これを部分的にでも、そういう水利権の問題その他が解決したならば、部分的にでも工事をある程度行える。その際、日本の調査団の見たところでは、日本の技術が十分にエジプトのために役に立つというような報告を承わっております。そういうような状況でありますので、今、借款の話とか、まだそういう突き進んだ話には何にも行っておらぬのでありまして、実情はそういうところでございます。
  337. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 藤山外務大臣お尋ねしますが、さきにも岸総理が言われましたように、ラオスに十億円、カンボジアに対して十五億円、賠償放棄でこれだけ気前よく出されているのですが、私も、世界年鑑を出して、ラオスを調べてみると、人口百万の、一握りの国に対して十億円の金をぽんと、戦争も大してなかったという所に出すというような、賠償に対する無原則といいますか、これは十分問わるべきではないかと思うのですが、もしそういうことになって、それとからんで、将来どうしてもやらなきゃならぬ中国との——中華人民共和国との国交がやがてなるときには、一体どうするのですか、六億もおります。郭沫若氏等の伝えるところでは、日本は、中国に対して、一千万の人を殺戮し、五百億ドル、十七兆円の物的な損害を与えておると言っておるのです。われわれも、何も好んで賠償を払いましょうというようなことを言うものではありませんが、そういうことは、日本が最も大きな戦争の被害を与えた中国その他全部を含んでの賠償の原則を立てておいて、個別の問題を解決しないと、とんでもないことになると思うのですが、一体藤山さんは、将来日中の国交を回復する際には、日本と中華民国とが平和条約を結んで、議定書の十四条で、賠償の放棄をするということで、これもベトナムのように、北も全部含んでしまうのだというあなたは見解をとっておるのですか、どうですか。そういう点……。
  338. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本といたしましては、国民政府と、唯一の合法政府としての平和条約を締結いたしております。その議定書の十四条によりまして賠償を放棄しておりますので、今日の段階では、その線に沿って考えておるわけであります。
  339. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それは、中国本土の適用……。
  340. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そうであります。
  341. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それは、七、八百万の台湾と六億のそういう問題を、そういうことで、平和条約の三百代言的な解釈ではいけないと思います。その点は触れません。ここで問題にしようとするのは、日本の東南アジアの貿易というものは、先に言いますように、一千百億の焦げつきでやる貿易だった。東南アジア貿易というものは、実は、よく調べてみると、国民の税金の一千百億の血税です。そういうふうにしてやる貿易の振興だったということがまずわかるのです。しかし、オープン・アカウントというものがもう限界にきており、そこで、私が注意深く検討すると、今度は、賠償と政治借款に東南アジアの貿易の形が変ってきておるところが重要であります。インドネシアに対して、国会の審議にかけられております経済協力を含めて八億ドルに、さらにセイロン、パキスタンからの借款の申し入れ、あるいはパラグワイに杉道助の行って来たこの政治借款、サウジアラビアの油田開発の借款、エジプトの借款、ベトナムの賠償、ラオス、カンボジア、それぞれ十億と十五億円、インドの百八千億と、これを見ますると、今度は、日本の海外貿易の形というものが、貿易振興に名をかる政治借款をやろうとする方に大きく変ってきておる。これはきわめて重要であります。このことは、メーカーや商社に対しては非常にいいと思いますが、私は、岸総理が私的顧問というようなものを作られて海外に行っておりますが、この政治借款の工作にみな連なっておる結果がきわめて重大と言わなくてはなりません。これも、国民の血の犠牲において貿易振興という、形の変った借款であります。ドイツは五十億ドルの外貨を持ち、アメリカのように、二百億ドル以上外貨を持つ国と、実際使える外貨は五億ドルしかないようなわが国が、そういう形に、性急な貿易振興の形を断じて求むべきでないと私は思うわけであります。もっと堅実な、手がたい貿易の仕方をやらないといけないと思うわけであります。私は疑いたくはありませんが、政治シーズン、総選挙シーズン等とからめば、この政治借款の問題は、大きな焦げつき債権にかわるところの、新たなる国民の負担によるところの、商社やメーカーの運動とからまって、きわめて危険な様相を持つものと思うのですが、岸総理の所見をお伺いしたい。
  342. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 賠償の問題は、中田委員も御承知のように、戦後処理の問題として、長い間の懸案になっております。しこうして、これが解決されませんと、正常なるこれらの国国との間の関係が樹立しない状況にあることは、御承知の通りであります。私は根本的に言えば、やはり戦争の処理として日本としてはこれを解決し、同時に、長い将来において、正常関係に基く貿易や、あるいは経済協力の関係において、相互繁栄の道を求めていくということは、当然やらなければならぬことであると思います。ただいま借款の問題について、いろいろ他からもあるというようなお話もございましたが、今現実に成立しておる問題は、御承知の通り、インドとの間の問題であります。これらの問題につきまして、私は、先ほど来申し上げているように、もちろん、これが日本の資材や、あるいは建設機械等をこちらから輸出することに資する点もありましょうが、要は、その国における経済開発にわれわれはできるだけ協力するという考えの現われの一端とお考えを願いたい。ただ、これらの問題と関連して、何か政治的な資金が動くとか、あるいはそういう意図をもってこれらが行われておるというような疑惑もあるというふうな御注意でございましたが、これは、絶対にそんなことがないのみならず、せっかく私どもは、先ほど来申し上げますような考えでもって、これらの国との間にこれを交渉し、成立をさしておって、これらの国々からも相当なアップリシエイトされておるという際に、そういうような、いやしくも疑いを受けるようなことがありましては、これは許すべからざることでありますから、私どもも十分に注意すべきことはもちろんでありますが、そういう懸念は絶対にないものと、御了承願いたいと思います。
  343. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私はやはり、さきに申しましたように、ドイツのような外貨が五十億ドル、アメリカのような二、三百億ドルもある国と、わが国のように、五億内外の実際動ける、使える外貨のある国とは、やはり限度を知った、賠償、借款等の問題をそういう形で取り組むべきだ。性急な市場開拓に名をかってのそういうことは、厳に慎しむべきだということを申し上げたいと思うわけであります。そして、私が岸総理に申し上げたい点は、岸さんがいろいろ私的顧問にされているような人が、小林中氏が何をしておりますか。彼は、開発銀行の総裁のときに、たくさんの融資先から株券をもらっているではありませんか。そしてまた、杉氏でも、パラグァイの借款がどうですか。あの国の外貨が幾らありますか。そういうこと並びに日本の代表的なメーカー、日本の経済を握る経団連の中枢の諸君が、アルゼンチン貿易、インドネシア貿易で、国民の犠牲と膏血によって、自分の会社の利益のためには国家財政もかまわないという、こういう形の人を顧問にされて、一体あやまりなきを期することができるでしょうか、一体、岸総理のこの東南アジアの報告書を見ますると、個人的な特使というようなことがあるのですが、全くあれは、岸さんのポケット・マネーで出ている特使ですか。そういう点もお伺いし、私は、いつかも申し上げましたように、イギリスのラスキが言っていますように、実業家に政治をまかしては、彼らが預かった資金に対する株主配当を最高限にするという長い間の習性が政治と混同じて、決してとるべき問題でない。実業家が政治家になって、成功したためしは一人もない。ボーナーローその他全部そういうことが、私は、この問題にからんできておるというふうに、私は大へん疑い深いようでありますが、私はこの政治借款が続々と総選挙シーズンの前にあるということに対しては、やはり相当警戒の目を国民とともに傾けねばならぬと思うわけですが、いかがですか。
  344. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 第一の点は、借款が総選挙を控えて続々あるというふうに前提されておりますが、その事実は、昨年の秋インドとの借款に、一番大きな問題は、インドからネールが来た当時でありますし、秋にこれが話をされて来たのでございます。私は、この当時、一部においては一月解散とか何とか言っておりましたけれども、私は、そういうことを前提としてインドの首相と話し合いをいたしたわけでは絶対にございません。先ほど申しました通りの所信から、これをやっておるわけであります。その他続々あるという、あるいは私まだ聞いておりませんが、パキスタン等からも申込みがあるかもしれませんが、私は、それは承知いたしておりませんし、それが具体的の交渉に入っているとは承知いたしておりません。従いましてそういうものが続々と、われわれが何が総選挙というものを前提としてやっておるというようなことは、事実に反しておりまして、そういうことはないのであります。のみならず、これらの問題につきましては、やはり日本の国力と東南アジア諸国の実情等を見、長い間の戦争において迷惑をかけたその戦争のこの跡始末、戦後処理というようなものを含めて、国交を回復し、正常な関係において共存共栄をし、繁栄に協力をしたいというのが本旨であり、それに尽きるわけであります。いやしくも、今申しますように、これに関して疑惑を生ずるがごときことは、厳に私自身としても慎んででいかなきゃならぬことは、言うを待ちませんが、事態そのものが何か初めから疑惑があるということを前提とされて論議されることは、はなはだ私としては心外であるということを、重ねてお答えを申し上げます。(「私設顧問の金はどこから出たか、答弁がないよ、私設顧問の経費はどこから出したか」と呼ぶ者あり)内閣に顧問を置いてありますが、別段これは、報酬も出しておりませんし、特に海外にこれを派するような場合におきまして、政府において使命を特別に与えておく場合におきましては、それに関する手当等を出すことは当然でありますけれども、そういうことのないものに対して、別段の政府の報酬等の手当等は出しておりません。
  345. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この外務省から出ました「わが外交の近況」特集四を見ますると、至るところに岸総理の個人的代表、個人的特使というようなことが——国から金が出て個人的特使とはどうもふに落ちぬ点もあるのですが、まあそのことは別にしまして、私は東南アジア貿易を考える際に、十分注意しなくてはならぬのは、東インド会社がインドにできてから三百年、その他、数百年の西欧列国の植民地であった。そういう所がようやく、ここ十年、独立したのですから、経済力は非常に限界がある。しかも、ゴムやコプラ、その他原材料生産地である。そういう所に、性急に、限度も考えずに、やはり輸出振興をやろうという政策をとりますならば、結局、今のようなことにならざるを得ないのです。そのことは、やはりアメリカから十億ドルも買わされ、五億ドルしか買ってもらえない。世界の面積の三分の一を占める共産圏とは貿易ができないということで、やってみた東南アジア貿易の、やはり性格と限界というものを、よく検討して——一挙にこれを三十一億五千万ドル、一億五千万ドルの黒字を作ろうというようなことを東南アジアに期待することは、三百年外国の植民地であって、経済が疲弊しているその現実を無視したもので、そういう意味でも、私たちは、やはり思想や考えは違っても、中国貿易というものも、新しい角度から共産圏貿易も考えられねばならぬという見地に立つものですが、時間がありませんので……。とにかく、私がしさいに検討しますると、焦げつき債権貿易であり、最近は賠償と、そして政治借款の貿易にかわって正常貿易がどんどんと侵されつつあるというのが状況でありますから、十分御検討いただきたいと思うわけであります。  時間がありませんので、一番やりたいと思っておった減税問題は一般に譲りまして(「まだ、まだ」と呼ぶ者あり)まず質問いたしたいのは、この補正予算にありますイルカ漁業の整理転換助成費五億というものが出ていますが、大蔵大臣は、よく精査されましたかどうかということを、まずお聞きしておきたい。
  346. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは御承知のように、岩手、宮城、福島、千葉、この四県のイルカ業——猟銃をもってとるイルカ業者でありますが、これが今度転業しなくちゃならぬ。船でいえば、百七十一そうの船について経費を出しております。そして、これは三つの段階になりまして、一つは廃業してしまう。それからもう一つは、船を改造して転業する。もう一つは、船を廃船をして、新しい代船を作って、さらに転業する、こういう三つの段階に分って精査した結果が、五億ということに相なっております。なお、これ以上詳しい説明が御必要でありますれば、主計局長答弁させます。
  347. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私も、これがアメリカ、カナダ、ソ連、日本と結びました屈辱的なオットセイ条約による被害を受けますところの漁民を救済するということに対しては、非常に同情を持つわけであります。しかし、そのことが六ヵ年間ですか、十五億円の金がくるということとからんで、この予算が不当な私は寛大に組まれたおそれはないか、そういう懸念が、気配が非常にあるわけであります。そこでお伺いしますが、オットセイとイルカの日本水域における、二つの魚の、動物ですか、その習性ですね、一体、今大蔵大臣の言われた地域が、その補助金対象になる地域か、ほんとうにそういう地域になるかどうか、その習性ですね、動物ですか、とにかくイルカ漁業ですから、魚でしよう。その習性はどうですか。果して今大蔵大臣の言われたところがそのイルカ、オットセイが回遊する区域になるのですか。その習性はどうですか。
  348. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私、詳しく存じませんが、一月から三月の間、三陸地方がイルカは回遊する、こういうことになっております。——一月から五月、三陸地方を回遊する、こういうことになっております。
  349. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私、この方面は不案内ですが、「北太平洋オットセイの分布並びに食性」という権威のある翻訳を見ると、今言われた地域に回遊していないのです。回遊していない所が補助対象になる、一体どういうことですか。
  350. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 三陸地方で捕獲しておることは事実であります。
  351. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 これは御案内のように、銃砲所持許可証を持った者が火薬類譲り受け許可証を持ち、鉄砲の数、それから買っている火薬というようなことから、いろいろはじき出しておるわけであります。この調査がむずかしいということは繰り越し明許にしてありますから、わかるのですが、私はこれ以上言いませんが、なかなかこの予算は問題の多い予算です。実際百七十一そうと言いますが、もう水産業界では、そんなとんでもないことではないのです。実際これは三億円もあったら、十分補償はできる。二億円をどうするか。せっかく組んだのだから、まあ一つ費目の流用ぐらいを大蔵省から認めてもらって、何とかしなければいかぬということが言われておるのです。私は将来、六ヵ年間にわたって十五億の、アメリカとソ連からオットセイをとらえないことによってくるという、そのこと自身が、この寛大な予算を組ました。私も、この屈辱的なオットセイ条約による犠牲を受けた漁民を救済することに対しては、岩手その他に対しては、いささかも反対しないのです。しかし、そういうことで、まあ船は九十ぱいぐらいだということを言っておる向きもあるのですが、一体、大蔵省のだれが査定官か知りませんが、特にこれは、この予算がかくも膨大になったのは、川島幹事長が、千葉県はイルカ、オットセイ漁業はないのに、漁業が盛んだということで、千葉県も含めるということで、そのことが五億円という膨大な予算を組ました最大の原因であるということは業界知らぬ者はないわけであります。ですから、最大の被害を受けておる岩手、福島その他では、これに対しては多くの異論があるのです。一体、こういうことでいいのですか。今日、漁民を救済することについては、異論がないのですが、なかなか勤労大衆その他の地方財政等に対しては、目を皿のようにきびしい査定をしながら、一体こういうことでどうなるのです。
  352. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今お話のようなことはありませんと、私は確信いたしております。なお、その積算のこまかい点を主計局長から申し上げます。
  353. 千田正

    ○千田正君 関連して。ただいまの中田委員質問関連してお尋ねいたしますが、オットセイに関するところの条約に基く五ヵ年間に十五億という金は、これはこの条約に基いて、日本の漁民はオットセイを捕獲してはならない、捕獲しないかわりに、その補償という意味で十五億という金を出すというふうに、私は記憶しておりまするが、この点についてはどういうふうに考えておられますか、大蔵大臣及び農林大臣にお伺いいたします。そして、もしその金が、国の会計の中に入ったとするならば、当然十五億という金は、国のいろいろなそういう調査その他の費用を除いては、漁民にこれを交付して、国際条約を守らすための金と私は承知しておりますが、その点をはっきりしていただきたい。
  354. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御承知の通りオットセイをとることが禁止されておったのでありますが、その後、オットセイは許可になっていますが、許可でないイルカをそういう漁業家が捕獲をやることになって、相当イルカをとってきたのでありますが、しかし、イルカをとっておる中において、オットセイの方が価格的に非常にいいものですから、まあ率直にいえば、密漁みたいなことがあって、国際条約にも違反するというようなことで、この点につきまして、差しとめるようにしたのであります。しかし、そのままでは済みませんので、そういうイルカ漁業者の転換をさしていこうと、こういうことで、その転換を指導してきたのであります。その転換の措置といたしまして、廃船に対する補助とかあるいは新船建造に対する補助とか、あるいは銃砲手に対する転換の補償、こういうようなことで、イルカ漁業に対しての補償をしよう、こういうことに相なっております。
  355. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 十五億の補償の問題ですが、これは今お話のように、このオットセイを保護する意味でイルカが漁ができなくなりました、その意味で補償されることになります。
  356. 千田正

    ○千田正君 この十五億という金は、日本の国民の税金でもなければ血税でもないのであります。日本の零細漁民が今まで生活を立てるためにとっておったラッコ、オットセイその他をとってはいけない。国内において、法律によって、かつてのマッカーサー司令部が駐留しておったときに、日本政府がその強力なる力に屈して作られたところの、いわゆる国内法に基くところのその助成としてよこされる金であって、国民の血税ではなくして、漁民の血税であるといわざるを得ないところの補償であります。にもかかわらず、それに対しての問題が起きるということは、私はこの法律を研究した場合において、非常に残念なことだと思います。そこで、ただいま中田委員のおっしゃるように、もし補償をやるならば、日本の国は国際条約を完全に守るという意味からすれば、ラッコ、オットセイを漁獲する漁民に対して、完全転業するような方法によってこの金を出すべきである。十五億の金というのは、何億かを引いて、ほとんどその漁民に充てるのが当然であると、私はそういう見解をとっておりますが、農林大臣及び——外務大臣がおりませんから、岸総理大臣から、日本のとるべき措置としての所信を明かにしていただきたいと思うのであります。
  357. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) オットセイをとっていたものが、大体イルカをとるようになっておりますので、イルカの方に転換の補償をするということによって、お話の目的は達すると、こういうように考えております。
  358. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 「北太平洋オットセイの分市並びに食性」という権威のある調査団の調査したものに対しては、これにおいては、どうも川島さんの選挙区の辺には回遊して来ないようになっているのです。私も千田氏が申されましたように、とにかく、去年ですか結びましたこの条約によって、岩手その他のイルカをとっている漁民がとれないようになることに対しては、十分政府が措置をされる、六年間に十五億くれば、十分それらの人が生業が立つようにされることは必要ですが、今この予算説明のようなことでやるとすれば、百七十ぱいの船はもうないということは業界周知の事実です。私はこれ以上言いませんが、大蔵大臣お尋ねいたしたいことは、そういうことで岩手その他に必要にして十分な転業措置をして、なお予算が余った際に、一体、費目への流用を認めるかどうか、このことを、予算がまだ通らぬうちから費目の流用が検討されるということは、業界紙、水産新聞等を見ても、もうすでに出ておるのです。(「けしからぬ」と呼ぶ者あり)母子対策その他所要の経費は多いのに、そういうことは切り詰めておいて、一幹事長のプレッシュアがかかれば、五億円も予算がぽんと組まれるというようなことで一体いいかどうか。私も、犠牲漁民に対して措置をされることに対しては異存ははさみませんが、とにかく十分やってみて、予算が余った際に、費目の流用を認めるかどうかということだけ聞いておきたい。
  359. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 十分精査いたしまして必要な金額を組んであるのでありますから、流用の問題は起らぬと思っております。
  360. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 起らぬということならけっこうですが、起った際に、費目の流用は認めるかどうかという点と、さらに、この問題は分科会一般質問等を通じて質問したいと思いますから、必要な資料を出していただきたいと思います。減税、交付税特に交付公債等の問題をやりたいと思いましたが、委員長の注意もございましたので、最後に、一萬田大蔵大臣お尋ねしますが、一萬田大蔵大臣は、七日の記者団会見で、参議院の予算審議半ばにおいて、世界経済の見通しについて、アメリカの経済の様相は想像以上にシビアであるという見地並びに、さらに昨年輸入しました在庫が、想像以上に手持在庫が多いというようなことからいたしまして、これまでの政府のとった措置を改めていくというようなことを、日銀の山際総裁とは変った立場をとって、そうして潜在的な投資景気はない。さらにまた、公定歩合を引き下げても、これが投資意欲に対して火をつけるようなことはないというようなことを申されて、公定歩合の引き下げも暗示されておられますが、一体これは総選挙の前だからそういう見通しをされているのかどうか。私は予算審議の半ばで、提案理由で説明されたようなことが、七日の記者団会見で全然変っているように出ているのですが、一体経済の見通しを、どういうふうにされているか。
  361. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私はこの経済の見通しを変えておることはありません。終始一貫同じ態度をとっております。私はどういう新聞記事か知りませんが、先般国会の控室でした場合は、これはこのごろの世界経済の動向についていろいろな見方がある。アメリカの大統領はこういうふうに見ておる、それをバックしておるのにこういう大学のグループがある。ソ連の学者はこういうふうな考え方をしておる、しかしその他の自由国家の大学教授はこういうふうな考え方をしておる。そうしてみると、共産圏の学者を除いた自由国家の政治家や、学者グループの考え方は、この世界の経済が今後において除々ではあるが、特にいつからよくなるかという点については、むろんばくたるものがあるが、しかしよくなるという点においては、みんな一致しておる。ただ、いつから、その時期をいつに見るかにおいて意見の相違がある、こういうことを話したことはあります。しかし、私自身はやはり従来通りの考えを持っている。ただ、政治をしておる者が政策的にこうしようということと、実際の経済の動きには、これはずれが生ずるということはあり得るのだ。それは考えなくてはならぬ。こういう話はしましたが、私は自分の見解を変えたように話をしたことはありません。それは当時、特にそのときに記者諸君にも、その点ははっきり、世界の経済の動向についてきょうはいろいろの学者の学説その他の政治家の意見がある、それをただ話すんだということは念を押してあります。特に私の見解を変えたことはありません。
  362. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 とにかく他の新聞も注意深く見たのですが、アメリカの経済は、この秋に簡単に立て直れるようには見えない。そうして日本のデフレは長引く。しかし深刻な局面には至るまい。民間の投資意欲は衰えているから、金融を引き締めたり、金融をゆるめても、公定歩合を引き下げても、一億五千万ドルの貿易の黒字を出すということに対しては支障があるまいというので、金融をゆるめることと公定歩合を引き下げるということは申されたので、そういうことは前から言って、変えてもおられぬと思うのですが、そういうことを言っておられるのですが、その点はどうですか。
  363. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) その点で特に明確にしておく必要であります。私は今、公定歩合を引き下げるということを言ったことは、一度もありません。それは私の国会の委員会における速記録をごらん下さればきわめて明瞭であろうと思うのです。私が今言うことは、日本の金融がゆるむとか、あるいは市場金利が下るとかいうことは、日本が輸出の度を加味していく、いわゆる出超ということに成功して、しかも、輸出超過が継続的に持続するというと、もうこれなら日本の貿易もいい。こういうときになれば、これは当然日本の金融はゆるむのであります。これは輸出超過でありますからゆるみます。そうすると市場金利がここで下ってくる。そこで、日本の金利体系というものがその辺に確立していく。その辺にまた金融を調整する、たとえば預金支払準備金制度、あるいはオープン・マーケット・オペレーションとかいろいろなそういうふうな金融調整の機能が導入されていい時期が来ると思う。その際に公定歩合というのも従来と違って、そういうときにくれば、私は上っても下ってもいい。今はまず輸出超過が何よりだ、そのためには、金利を下げるどころではないかもしれません。ある程度タイト・マネーでなければならぬ。それをずっとやって、輸出超過に持っていって、しかも、それが持続的になったときに、ここにいろいろな調整作用が起るから、そのときにそれを考えるべきだということを言っているのです。
  364. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そういう問題については一般質問なり、分科会でも少し御質問申し上げたいと思います。なお交付公債の問題はどうしても——なお道路予算にからんで中央、地方の負担区分については、どうしても私やらねばなりませんが、大へん時間がおそくなりましたから、恐縮ですのであとにいたします。
  365. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 議事進行。先刻私の質問時間中に第二次世界大戦中に生じた遺児の数を厚生大臣にただしたのに対して、厚生大臣はそう答弁を保留されているわけですが、この際答弁していただくよう委員長に要請をいたします。
  366. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これを許します。
  367. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 大へん御返事がおそくなりまして申しわけありません。大体五十五万人と推定されております。これは全国母子世帯の実態調査による統計でございます。
  368. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 議事進行。あの大へんおそくなって恐縮ですが、共済組合を改めて退職年金にする問題が出まして、五億数千万出ているのは余命率等云々で、先ほど回答がありまして、それからほんとうにそうかどうか、それを判断する資料いかんということであったのですが、まだ出ませんが、総括質問がまあ済むわけですが、至急に一つその問題を委員長の方から取り計らっていただきたいと思います。
  369. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 承知いたしました。  これにて昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算に関する総括質疑並びに昭和三十二年度予算補正(第2号)及び(特第4号)に対する質疑通告者の発言は全部終了いたしました。昭和三十二年度予算補正(第2号)及び(特第4号)の質疑は終局したものと認めます。  これより昭和三十二年度予算補正(第2号)及び(特第4号)の討論に入ります。
  370. 戸叶武

    戸叶武君 私は日本社会党を代表し、政府提出昭和三十二年度一般会計予算補正(第2号)並びに昭和三十二年度特別会計予算補正(特第4号)に対して反対の意向を明らかにし、政府に対し本案を撤回せられて、再編成の上再提出されることを要請するものであります。  今回の補正予算案の内容は、一般会計予算において歳入、歳出の規模は三百九十四億二千六百万円であります。歳入の財源は三十二年度の租税収入の増徴を見込んで法人税三百億円、相続税十四億二千六百万円、関税八十億円の自然増収をその財源に見込んでおります。歳出の面においては駐留軍労務者の離職特別給与金に八千八百九十六万円を見込んでおります。それにイルカ漁業に従事しながらオットセイの捕獲を行なっている漁業者に対する転換助成費五億円等が計上されております。また、特別会計補正については、交付税及び譲与税配付金が特別会計に一般会計から七十八億円の繰り入れとなっております。  歳出の駐留軍労務者に対する特別給付金では、わずかに八千八百九十六万円で、政府は三十二年度の整理二万七千人、三十三年度がその半分くらい、合計四万数千人と推定しておりますが、その恩恵に浴する者は二万七千人中一万六千人にすぎず、しかもその給付金は一万円、六千円、三千円の三段階に分けられ、一万円を受け取ることができる十年以上の勤続者は千八百七人にすぎません。同じ駐留軍労務者でありながら、一万人以上の人がこの恩恵にあずからないのであります。また、駐留軍の直接雇用者である家政婦あるいは連合軍に雇用された労務者にも、何らの措置が講ぜられておらないのであります。この駐留軍労務者の離職たるや、全く日米行政協定の運用上の犠牲として生じた失業であります。これは日米両国の首席代表たる岸・アイク会談において、アメリカ合衆国との間に安全保障条約の第三条に基くところの行政協定及び交換文書により両国の首脳者が取りきめた問題に基因する失業なのであります。この特殊な失業問題に対し、政府が涙金だけで片づけようとする冷淡な態度を、私たちは断じて黙視することができません。政府は長い間にわたって忍びがたきを耐えてきたこの労務者を、手厚くねぎらってしかるべきであり、わが党は一人当り五万円の醵出をすべきであるとの主張を持っております。  次に、食管特別会計の問題でありますが、これは今回の補正予算の歳出規模三百九十四億二千六百万円のうち、最大部分を占めております。食管特別会計への繰り入れ三百十億三千七百四万円のうち百五十億円は三十二年度の食管会計の赤字補てんに充てる目的で、決算までの間に経理運営のため運転資金の役割を果させる調整資金だと説明しております。昨年三十二年度予算案を審議した際に、当時の池田大蔵大臣は、食管会計の赤字処理は決算確定の後に勧めて行うべきであると強硬に主張いたしました、そして三十年度分の赤字三十四億円を三十一年度一般会計予算の第二次補正で埋めたが、三十一年度分と三十二年度分の赤字見込み額は処理しなかったのであります。第一次岸内閣と第二次岸内閣とは、その政治性格が異なっておらないのにもかかわらず、このようにわずか一年の間に、前とうしろと全く反対な方法で財政処理の提案が行われておりますが、この事実に対し政府財政処理、予算編成の基本的問題の変更に対して、何らの矛盾を感じないとは、まことに不思議な論理の展開であります。一萬田大蔵大臣は、これは財政法第二十九条第一項に基く追加予算であると述べながらも、今回の措置は建前としては決算で補てんし整理すべきであるが、そうすると、その間に運転資金が非常に枯渇するので、そこで、それを円滑にさせるため一般会計から資金を繰り入れたのだと説明しております。そして財政法上の根拠については、何ら明確なる論拠を示していないのであります。まさしく今回の政府提出予算案は、歳入において決算以前の未確定財源を先食いしているのでありまして、このような財源の先食いは、少くとも政府の経済見通しが正確なりとの認定が与えられた場合にのみ、特別の措置として許容さるべき性質のものであります。  しかるに、三十三年度予算編成に対する岸内閣の態度たるや、このような指置をとる資格を欠いておるのであります。政府は昨年九月十日に三十三年度予等編成の基本方針を定め、これに基いて昨年十二月二十日に予算編成方針を決定いたしました。それによると、三十三年度予算編成は投資及び消費を通じてきびしく内需を抑制し、輸出の伸長を期することを主眼とし、国の財政が景気に対する刺激の要因となることを極力回避する方針を定めたはずであります。しかるに、本年一月八日の閣議においては、予算編成の最高の責任者たる岸首相みずからが、この基本方針を踏みにじって予算ぶんどりの渦中に巻き込まれたのであります。この結果として政府予算編成上の不手ぎわから、予算案の国会提出が一月末にまでおくれ、国会の予算審議の期間を侵害するに至ったのであります。そうして政府が国会に提出した予算案の実体は、政府の当初公約した基本方針とは全く異なったものとして現われたのであります。この予算案の内容は、大企業並びに圧力団体に対しては膨脹、勤労国民に対しては緊縮の全く矛盾した二面的性格を持ち、岸内閣の政治性格をそのまま反映した無性格な両岸予算案であります。予算編成の基調ともなるべき政府の経済的見通しは、予算案を編成した後にこれに合致するような数字を組み合せた統計技術上のマジックであり、今では何人も信用しておらないのであります。河野経済企画庁長官が施政方針演説の回避を企てたのは、みずからがその無意味さを知っていたからでありまして、御承知のようにあの演説は何ら生彩がなかったのであります。  このような不安定な見通しの上に立てられた予算案であるだけに、食管会計に関する補正のごときは、やがて米価、麦価の決定に重大な悪影響を及ぼさないとも限らないのであります。特に私たちが警戒しなければならないのは、歳入の面で政府は三百九十四億二千六百万円の三十二年度租税収入の自然増加を見込んで先食いしようとしている点であります。これによって三十四年度に繰り越される剰余金の受入額は、それだけ減額されることになるので、国民は前途に不安を抱かされております。また、政府の経済成長率の誤算は、三十四年度の租税の自然増収を当てにした財源について必ずしも楽観を許しません。  本案は財政上幾多の疑義を含み、不合理と矛盾に満ちております。私たちは本案は予算編成の上から将来に悪例を残す補正案として反対し、政府に本案を撤回して、再編成して提出されんことを要望いたします。  以上をもって社会党の立場を明らかにし、私の反対討論を終る次第であります。(拍手)
  371. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 私は自由民主党を代表して、ただいま上程されております昭和三十二年度予算補正第二号及び特第四号に対し賛成の意を表するものであります。  前者は本年度予算成立後に生じた理由により当面緊要となっておりました経費を支出しようとするものでありまして、これが財源として本年度増収を予定される法人税その他に求めようとするものであります。後者は、前者の法人税増収計上に関連して、地方交付交付金増加額を一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れの措置をするものであります。いずれも適当な措置と認め、賛成いたします。(拍手)
  372. 森八三一

    ○森八三一君 私はただいま議題となっております昭和三十二年度一般会計予算補正(第2号)並びに同特別会計予算補正(特第4号)に対しまして、原案に賛成の討論を行うものであります。(拍手)  本補正予算は、昭和三十二年度租税の自然増収中、法人税三百億、相続税十四億二千六百万円、関税八十億円、合計三百九十四億二千六百万円を財源として一般会計の歳出に追加計上するとともに、そのうちから三百十億三千七百四万円を食糧管理特別会計に繰り入れんとするものであります。  食糧管理特別会計が、ただ単に米麦のような主要食糧の管理を行うに必要な会計のみでなく、農産物、飼料等の価格安定や需給の調節に所要の経理をも行なって参りますために、従来いわゆるどんぶり勘定としてとかくの論議があったのでありますが、今般これら多岐にわたる経理を各別に区分して、その収支の明確化をはかられましたことは、きわめて適切な措置でありまして、賛意を表するものであります。  一般会計から繰り入れられまする三百十余億円中、百六十億三千七百四万円は三十一年度の同会計の確定欠損額に充足せられるものでありまして、当然のことでありますが、残額百五十億円は調整資金として同会計の健全化に資するためのものであるというのであります。政府説明によりますれば、同会計三十二年度の欠損見込額九十六余億、三十三年度の欠損見込額四十余億と農産物関係の見込額十億円をその積算の基礎にいたしておるのでありまして、同会計に欠損が生じました場合には、その確定を待って本資金から落すというのであります。同会計の健全化のためにけっこうなことでありまするが、従来欠損確定を待たなければ赤字処理はいたさないとされてきました政府の方針とは、形式的にはともかく、実質的には矛盾があると思うのであります。この措置を悪いと申すのではありませんが、いたずらに前言にこだわってこじつけ説明をするような態度は、改むべきであると存じます。さらにまた、前述のごとき積算の基礎からいたしまして、昭和三十三米穀年度におきまする生産者並びに消費者の米価が、予算関係から抜き差しならぬすのになって、生産に悪影響を与えたり、消費生活に累を及ぼすことのないよう、米価審議会の意見、答申を十二分に尊重して対処せられますことを強く希望するものであります。  最後に、駐留軍離職労務者やイルカ漁業従事者に対し特別の措置が講ぜられましたことは、きわめて適切な措置でありまして、多とするところであります。由来、この種事案の処理は、見舞金や助成金の支給がその本来のものでないことは申すまでもありません。関係者に対し、いかにして安住の地を得せしむるか、その生業を付与するかにあるのであります。政府は従来ともこの点に意を用いられてきておるとは存じますが、特に細心の注意と、あたたかい情熱をもって関係者の希望に報い、国民の期待にこたえられまするよう切望いたしまして、私の討論を結ぶ次第であります。(拍手)
  373. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 以上をもって、討論通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  昭和三十二年度一般会計予算補正(第2号)及び昭和三十二年度特別会計予算補正(特第4号)を一括して問題に供します。右二案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  374. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 起立多数と認めます。よって、右二案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告の内容及び報告書の作成等につきましては、慣例により委員長に御一任願います。  本案に賛成された方は、順次、御署名を願います。    多数意見者署名     伊能 芳雄  小幡 治和     剱木 亨弘  迫水 久常     高橋進太郎  森 八三一     青柳 秀夫  石坂 豊一     大川 光三  木島 虎藏     塩見 俊二  苫米地英俊     古池 信三  柴田  栄     後藤 義隆  中野 文門     田中 茂穂  前田佳都男     一松 定吉  本多 市郎     三浦 義男  加賀山之雄     田村 文吉  大沢 雄一
  375. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ここに、委員長委員各位の御協力に対し、心から感謝の意を表し、本日はこれにて散会いたします。    午後七時五十五分散会