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1958-03-08 第28回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月八日(土曜日)    午前十時四十一分開会   ―――――――――――――   委員の異動 本日委員草葉隆圓君、佐藤清一郎君、 林田正治君、石坂豊一君、大川光三君 及び土田國太郎君辞任につき、その補 欠として古池信三君、中野文門君、大 沢雄一君、大谷贇雄君田中茂穂君及 び植竹春彦君を議長において指名し た。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     泉山 三六君    理事            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            高橋進太郎君            佐多 忠隆君            中田 吉雄君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            植竹 春彦君            大沢 雄一君            大谷 贇雄君            木島 虎藏君            古池 信三君            小山邦太郎君            塩見 俊二君            下條 康麿君            田中 茂穂君            館  哲二君            苫米地義三君            苫米地英俊君            中野 文門君            一松 定吉君            本多 市郎君            三浦 義男君            安部キミ子君           小笠原二三男君            亀田 得治君            坂本  昭君            鈴木  強君            曾祢  益君            高田なほ子君            戸叶  武君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            吉田 法晴君            豊田 雅孝君            千田  正君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松永  東君    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  前尾繁三郎君    運 輸 大 臣 中村三之丞君    労 働 大 臣 石田 博英君    国 務 大 臣 郡  祐一君    国 務 大 臣 津島 壽一君   政府委員    内閣官房長官  愛知 揆一君    内閣官房長官 田中 龍夫君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    内閣官房内閣審    議室長内閣総    理大臣官房審議    室長      吉田 信邦君    公正取引委員会    委員長     横田 正俊君    調達庁長官   上村健太郎君    経済企画庁長官    官房長     宮川新一郎君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    経済企画庁総合    計画局長    大來佐武郎君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    外務省経済局長 牛場 信彦君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省移住局長 内田 藤雄君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    国税庁長官   北島 武雄君    食糧庁長官   小倉 武一君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○昭和三十二年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十二年度特別会計予算補正  (特第4号)(内閣提出、衆議院送  付)   ―――――――――――――
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。  まず委員の変更について報告いたします。本日草葉隆円君、佐藤清一郎君、林田正治君、石坂豊一君、大川光三君、及び土田國太郎君が辞任せられ、その補欠として古池信三君、中野文門君、大沢雄一君、大谷贇雄君田中茂穂君及び植竹春彦君が選任せられました。   ―――――――――――――
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これより昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、並びに昭和三十二年度予算補正(第2号及び特第4号)を一括して議題といたします。  昨日に引き続いて質疑を続行いたします。吉田法晴君の質疑時間は約十分を残しますので、まず吉田法晴君から御質疑を願います。
  4. 吉田法晴

    吉田法晴君 昨日の質問の中で、特別職あるいは皇室費の増額によって差別をつくるものではない、こういうお話がございましたが、公務員の昇給についてはこれは量の差であるかもしれません。しかし岸総理気持の中にあります皇室に対する気持というものは、天皇に対する気持というものは、これははっきりまだ岸総理の心の中にも差別があるということを示していると思うのであります。どうしても私がわかりませんのは、東宮御所建設費用として、昭和三十三年度八千七百七十八万円計上され、残額分を含めて来年度にかけて二億三千万円をもって千百坪の東宮御所を作るというこれは予算であります。ところが聞いてみますというと、現在の大宮御所は三千二百二十八坪あるということでありますが、どうしても新築しなければならぬという理由が発見しがたいと思うのでありますが、総理の説明を願いたいと思います。
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 皇太子殿下のお住いにつきましては、現在あります仮御所がきわめて手狭まであるということは、従来からも痛感されておることであります。皇太子の御成婚も近づいておりますし、また将来国の象徴としての地位を得られる人でありますから、いろいろな御活動もだんだん御成人とともに広くなっていきますから、手狭まであるということが、この改築、増築の問題の基礎であると思います。具体的な坪数やあるいは事務的な算出の基礎につきましては、政府委員よりお答えいたさせます。
  6. 吉田法晴

    吉田法晴君 駐留軍労働者大量離職が来年度予想されるのであります。政府対策本部を設けながら、その就労対策は不十分と言わざるを得ません。この仕事をしたいということで補導されておりますけれども、その補導が、たとえば基地内で行われるものについては、それを何と申しますか、結果を公認し得るほど十分なものではないようであります。また仕事をしたいといって企業許可を願い出ました場合に、従来のものとの権衡と申しますか、なかなか許可をしない、あるいはこういう仕事をする際にも、ひもつきになっておりませんために、あるいは信用がうすいというようなことで、実際には仕事をすることができないという実態のようであります。これらについて、さらに十分な対策を強化する用意があるかどうか、伺いたい。
  7. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 駐留軍離職者に対する対策といたしましては、御承知通り内閣特需等対策協議会を設けておりまして、それによって各省間の連絡を強化しつつ万全を期していくのでありますが、ただいま御指摘のように、職業補導あるいは職業紹介にいたしましても、従来の方法よりさらに広域的な考え方でやっているわけでございます。三十二年度の補正といたしまして三千五、六百万円、三十三年度におきましては約四千万円、これらのために特に必要な予算を計上いたしておるわけでございますが、ただいまおっしゃいました離職者企業組合に対する諸般措置でございます。これについても、でき得る限りの便宜を払うように、内閣協議会の名をもって各方面に伝達はいたしておるのでありますが、この企業組合の中で一番多く、ほとんど大半希望しておりますのが、例のタクシー、あるいは貨物自動車運送業であります。これは御承知のような二つ理由で、なかなか簡単に運輸省としても許可ができないようであります。一つ理由は今都市部には実は自動車がはんらんいたしておりまして、従っていわゆる神風タクシーとかなんとかというのは、もちろんそれは労務管理の条件その他に原因はございますけれども、しかしやはり数が多いということも一つ原因であります。もう一つには、企業組合と申しましても、その企業組合基礎、背景、そういうようなものも十分検討をしなければならないのであります。この二つによって、なかなか思うように簡単にはおりておりません。それを埋め合せいたす方法といたしまして、今業界と連絡をとりまして、駐留軍離職者運転技術を持っておる者に対しては、原則として全面的にこれを受け入れるという建前のもとに話し合いを今進めているわけでございます。
  8. 吉田法晴

    吉田法晴君 基地内の補導の基準の引き上げ、それから融資について別ワク、あるいはひもつきにすべきではないかという点については答弁が落ちておる。
  9. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 基地内の補導の問題は、御指摘通り問題があると思いますので、これは今研究さしておる過程でございます。御希望に沿うように処置したいと存じております。  それから別ワク融資の問題でございますが、これは所要の資金量は確保できるようになっておるわけでありまして、これを特に別ワクにするというような考え方は今持っておりませんが、これは主として大蔵省所管でございますので、大蔵大臣からでも答弁いただきたいと思います。
  10. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この離職者に対しまして生業等資金については、むしろ優先的に配慮を加えておりまして、特に別ワクにしなくてもその目的を達成いたしておると考えております。今後一そうこれに留意いたしたいと思っております。
  11. 吉田法晴

    吉田法晴君 実際にはなかなか保証なりあるいは融資が困難だから、これについて何らかの施策を講ずべきだということを申し上げておるのでありますが、時間がございませんから要望にとどめておきます。  次の問題は各府県離職者対策本部が設けられておりますが、基地がなくなる、あるいは基地労務者がなくなりますと、調達庁予算としては、各都道府県離職者対策本部に回す費用の根拠がなくなるかに聞くのであります。実際にはなかなか従来のように仕事につくということはえらく困難だと思うのでありますが、その対策本部費の継続的な交付についてなお考究を要するものがあると思うのでありますが、審議会なりあるいは担当大臣から御答弁を願います。
  12. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 調達庁関係は、ただいま御指摘通りでございますが、その後におきましても、各府県対策本部が活動できるような実際上の処置はとって参りたい、各方面連絡をしてそうやっていきたいと考えておる次第でございます。
  13. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) お答えいたします。調達庁関係といたしましては、地方におけるこれらの労務関係において管理の委託という経費で、三十三年度にも手数百万を計上いたしております。将来基地が全部なくなるということは、これはなかなか先のことだと思いますので、こういったような経費というものが、今後も、金額は別といたしまして計上されて、この部面仕事を推進したい、こう思っております。
  14. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がございませんから、一括してお尋ねをしますが、私きのうもちょっと触れましたけれども基地労働者に対しては公務員と同様の特別退職金が支給せらるべきであるとして私ども要求をして参りましたが、いわば御苦労金と申しますか、見舞金程度のものしか出ておりません。石田労相は――問題は岸・アイク声明に伴う措置だから、金額についてもあるいは範囲についても考慮すべきだという意見もあるかに考えるのであります。これは政府の責任もございます。それから公務員退職をいたします場合には、規定の退職金と同額の特別退職金が出ておるわけであります。その額について、それから範囲を間接、直接の関係を問わず、支給すべきだと思うのでありますが、どういう工合に考えられるか承わりたいと思います。
  15. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 駐留軍労務者離職に当りましては、駐留軍調達庁との間に締結されました労務基本契約に基きまして、一定額退職資金を出すことになっております。その額は一般公務員に比較して決して低いものじゃございません。また時期も、この金額改正に当りまして昨年の七月から実行するといったような便宜方法をとりまして、この部面においては決して待遇が悪いということは考えておりません。その意味におきまして、ただいま御質問中にお触れになったと思いまするが、特に三十二年度補正予算、また三十三年度の予算に計上いたしました特別の給付金というのは、退職金と別にこれらの非常な御労苦をかけた労務者の方々をねぎらうというような趣旨で、特別交付金を特に予算に計上した次第でございまして、一般退職資金といったものとはこれは別のものでございます。
  16. 吉田法晴

    吉田法晴君 別であろうけれども公務員と比べたら少いということを申し上げておるのであります、が、なお現在仕事がありながらどんどん解雇が出ている。それから施設及び区域が返還せられますが、その施設を使用して集団的に働きたい、雇用されたいと願っておるのでありますけれども、これに対して閣議決定の精神が生かされない、こういうことに対して今後どういうようにこの集団的な使用を実現していかれるか。それから退職住民税の免除がなさるべきだと思うのでありますが、これについてどういうように考えられるか。
  17. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 御質問の第一点は、例の特需の切りかえの問題だろうと思いますので、これは津島防衛庁長官からお答えを申し上げたいと存じます。  それから返還されました諸施設の利用につきましては、これを積極的に利用するように内閣特需等対策委員会におきましても努力をしておりまして、昨年の暮以来数班に分ちまして、現地に参りまして、現地の実情を調査をいたしまして、その実現に対する隘路となるようなものの打解に努めておるようなわけでございます。これからあとも、昨年の墓参ることができなかった地方に対しましては、やはり同様の措置をとって参りたい。結局この隘路を発見をいたしまして、産業誘致なり、あるいは新企業を起すことなりに必要な措置を個々具体的に解決していくことが一番いい方法だと思います。そういうことに積極的に努力をしていただくようにいたしておるわけでございます。
  18. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) いわゆる特需の切りかえという問題について、担当大臣として私からお答えを申し上げます。特需の切りかえと申しますのは、駐留軍施設の返還、または撤退等に伴いまして、自然駐留軍労務者離職をみるということが普通の場合でございますが、最近そこに駐留し、またある一定仕事があるが、これが直接の経営であって、そのために駐留軍労務者を使用しておったものが民間の企業者にこれを切りかえていく、そのためにその就業がなくなるというような場合が起っておるのでございます。これはまことに私どもとしては遺憾なことでございまして、それはどういう事情によるか、またこれに伴う各個の場合において、これが何というか、中止できないかといったような意味において、自来駐留軍の当局とは折衝を重ねております。また公けの合同委員会等においてもこの問題を提起をして考慮を求めております。まだ最終的の決定をみませんが、私どもはこういったことからくる駐留軍労務者離職という問題が起らないようにせっかく努力中でございます。何とかうまく問題を処理したいと、こう思っておる次第でございます。
  19. 吉田法晴

    吉田法晴君 住民税の問題について……。
  20. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) お答え申し上げます。住民税の問題につきましては、一般的に住民税をまけるというようなことを別にきめているわけではございませんが、当該市等におきまして、自発的にそういう申し入れがあるということはあるのでございまして、まあ、ことに当該市町村等におきましても、この問題については非常に熱心に企業誘致等をはかりたいというような考え方も持っておりますので、そういう関係市町村等ともいろいろな点で十分話し合って進めていきたいと思っております。(「答弁にならぬ」「政府が行政指導するかどうかだ」と呼ぶ者あり)これは当該市町村と十分話し合って参りたいと考えております。
  21. 鈴木強

    鈴木強君 関連して。今の御答弁ですと、地方自治体にまかせて適切な措置をとらせるというようなことなのですが、われわれが言わんとするのは、国の国策に基いて仕事をされていくわけですから、積極的に政府がこれらの法律改正が必要であれはやってもらいたいし、そうでなくて、行政的に、今日でもたとえば家が焼けてしまったというような場合には減免措置ができることになっておりますから、そういった条項が適用されて、特に離職者に対する減免措置を積極的に政府は考えてもらいたい。そういう意思があるかということをわれわれは聞きたいのです。その点をはっきりしていただきたい。(「大蔵大臣答弁してくれ」と呼ぶ者あり)
  22. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) この点については自治庁長官から答弁を……。(「大蔵大臣所管でもないよ、自治庁長官だよ、地方税の問題だ」と呼ぶ者あり)
  23. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この地方税の問題は、自治庁長官から御答弁があると思いますが、実は私、先ほど社会党の方から申し入れを受けたのであります。研究はいたしております。自治庁長官から相談もありますが……。(「自治庁長官」と呼ぶ者あり)
  24. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 鈴木君に申し上げます。吉田君の御要求大臣のうちには自治庁長官はございませんので、ただいま出席をいたしておりません。従いまして、御質問趣旨は私から通じまして、後刻適当の機会に御答弁を申し上げます。
  25. 吉田法晴

    吉田法晴君 大蔵大臣に承わりたい。一緒にやりますが、設備投資過剰生産という傾向が昨年以来続いてきておるわけでありますが、むしろ給与の引き上げ、低所得者の減税、社会保障に思い切って金を出す、こういうまあいわばニュー・ディール的と申しますか、国内市場を拡大する方策こそ今後とらるべき財政政策ではないかと考えるのでありますが、大蔵大臣所見を承わりたい。
  26. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。今日この日本経済がかようにありますことは、結局この国際収支改善目的にいたしまして、政策を遂行しておる結果でありますが、これは結局におきまして、国内においての物資に対する需要を喚起することを、この際差し控えるというのが根本になっております。従いまして、今御趣旨のような点は、今後経済が均衡を得て、そうして国際収支改善され、輸出も増大する。こういうような段階になって初めて考慮さるべきものだと考えております。
  27. 吉田法晴

    吉田法晴君 貿易拡大の大きな障害になっておるのは、日本の低賃金問題でありますが、そういう意味では賃金抑制あるいは労働組合抑制ではなくて、賃金を国際的な水準にまで上げる、最低賃金制、あるいは民主的労働組合の発達をこそ策すべきだと思うのですが、政府最低賃金制度について再考慮をし、それから組合の弾圧でなくて、結社の自由及び団結権の擁護に関する条約批准すべきだと考えるのでありますが、政府所見を承わりたい。
  28. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 民主的な労働組合育成発展を願うことは全く同感でございます。従ってその趣旨に沿って努力をしておるつもりであります。私どもは民主的な労働運動ということは、議会民主主義制下におきまして、また法治国下におきましては、現行法規を守っていくことを基本とすべきものであり、またその労働組合が世論の理解と支持を得て発達して参りますためには、みずからの人権を主張すると同時に、他の国民多数の自由と人権をも尊重するという建前でいくことが私は必要であると考えておりまして、こういう考え方のもとに健全な労働組合運動発展を希求いたしておるわけでございます。  それから労働者諸君生活向上をはかり、あわせて国際信用を維持いたしまするために、低賃金労働者諸君生活あるいは待遇改善向上をはかって参ることの必要なことは言うまでもないのでございます。そのために政府は今回最低賃金法案を国会に提出いたしまして、御審議を願っておる次第でございます。で、この法律案につきましていろいろの御議論はございますけれどもわが国の現在持っておりまする産業構造、あるいはその他諸般事情の上から考えまして、摩擦をなるたけ少くし、かつ実質的にその目的を達成いたしまするための段階的な措置といたしまして、最も適当なものと信じておる次第でございます。  それからILO決議、特に団結の自由に関する決議批准につきましては、ただいま労働省に設けられておりまする労働問題懇談会の中に、そのために特に小委員会を設けて御検討を願っておるわけでありまして、これについていろいろの御希望や御議論があり、またいつまでも放置すべからざる問題であると考えておりますので、昨年私が労相に就任をいたしまするや、直ちにそれに対する労働問題懇談会の御検討を願っておる次第でございます。  また他のILO決議条約その他につきまして、批准をしていないもので、わが国関係があるものは五十件ばかり残っておるわけでございます。その五十件ばかりにつきましての措置につきましても、具体的な検討を行う機関を設けて進行せしめたいと思っておる次第でございます。
  29. 吉田法晴

    吉田法晴君 首相、外相が中座されまして、持ち越しました質問を若干続けたいと思います。  日本海外移住振興会社社長志摩氏は、昭和三十二年五月二日から二十七日まで東南アジア諸国クエート出張をいたしました。これに外務省参与という資格を与えたのはどういうわけでしょうか。
  30. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 東南アジア、中近東の地域日本移民、また企業移民、いろいろな海外の協力の対象の地域として重要な意味を持っておることは御承知通りであります。従いまして、海外移住会社社長志摩君がこの方面をそういう目的でもって視察するという際に、私はさらに外務省といたしましても、外務省本来の今申したような仕事及び経済外交の推進上、これにその際にいろいろな外務省のこれに触れていることを視察し、調査せしめる目的をもってあの待遇を与え、あの便宜をはかった、かように御了承願いたいと思います。
  31. 吉田法晴

    吉田法晴君 東洋拓殖や、南洋拓殖におって、戦前のいわゆる帝国主義政策の重要な役割を担当した人が、東南アジア諸国移民関係で行かれたことは、これは妥当なものではなかろうと思う。実際にはイラン及びクエートに十日ほど滞在をして、石油利権獲得に動かれたようであります。それが外務省参与という資格を与えた目的なのでしょうか。
  32. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は同君の出張が、イランクエートにおいて石油利権獲得のことに力を尽したことは承知いたしておりません。また、そういうことをさせるために参与にしたわけではないのであります。先ほど申したような理由でございます。
  33. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは昭和三十二年五月十七日、イランからの帰途インドネシアに立ち寄った大志摩孫四郎氏が、インドネシア公使館からこれは公信扱いとして三千字近い長文の報告を当時ラングーンに出張中の岸総理大臣あて打電報告をしております。その内容は、クエート石油資源問題、それからオイルタンカー二隻の建造に関するものであったというのですが、これはあなたのもらわれた報告に関連するのでありますが、そういうことはございませんか。
  34. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今のお話によりますというと、私ども東南アジアのどこかにおるときにそういう報告をしたという事実なんですか。私、全然そういう記憶を持っておりません。
  35. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではその次の、オイルタンカー二隻を作るということを持って帰って、そして岸総理と特別の関係のある佐世保船舶に製造せしめたというお話でありますが、それはいかがですか。
  36. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私と佐世保造船と特別の関係があるということをおっしゃいましたけれども、少しも特別の関係はございません。しこうして、クェートが日本オイルタンカーを注文するという話は私は承知いたしております。クエート政府からもそういう何を受けております。しかし、これは結局においては一隻の注文ができたように承知いたしておりますが、あとの一隻がまだ懸案になっているように承知いたしております。佐世保造船と私との間には何らの関係のないということを明確にいたしておきます。
  37. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは岸特使として南米に行った杉道助氏がもたらしたパラグァイの商船隊とドックの建設に、きのうちょっと触れましたが、これについて重光外務大臣当時、在アルゼンチン井上大使から、それから調査に参りました佐藤参事官から、それからアメリカ大使であった黄田大使から、パラグァイには外債の支払い能力が少い。そこで大志摩氏が行って話をしてきた鉄道建設あるいは商船隊の建造等については、これをやめたらよかろうという意味報告外務省にもたらされているということでありますが、外務省はどういうように承知しておられるのですか。
  38. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま御質問の杉道助氏は、昨年の十月にパラグァイに行かれたのでありまして、ただいま御指摘のように、黄田大使がアメリカにいたとか、黒田大使がパラグァイにいたとかいうのは、その時代にはなかったことだと思うのです。そういう点で私ども今の御質問がどの点に関係しておりますのか、了解しがたいのであります。
  39. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 吉田君、時間が経過しておりますから、なるべく簡潔にお願いします。
  40. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点は大志摩氏が前に行って、商船隊の問題を含みます調査といいますか、依頼を持ってきた、その商船隊その他についての意見であります。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この際パラグァイの関係を申し上げておきたいと思います。パラグァイ政府から日本に対しまして、鉄道の建設をしたいという話は過去にあったようでありますが、その後商船隊の建造に話が移ったわけであります。昨年の予算に五百万円の調査費が計上されておりますので、昨年杉道助氏を団長として、そしてその道のエキスパートを加えまして、パラグァイに派遣をいたしたわけであります。パラグァイ政府との話し合いは、御承知の方も多いと思いまするが、商船隊八隻を含めて、浮きドック等も加えての約千二百万ドルの費用でこれを建造したい。そうしてそれは今日まで隣国であるブラジルが独占しておった河川航行について、パラグァイ自体がそれを作るというようなことで、従ってパラグァイとしては外貨払いが節約されて、十分借款されたものの元利が返還される、そういうようなことがパラグァイの希望でありました。と同時に、そういうことを日本が協力してくれるならば、毎年五千人以上の人を入れて、十五万人程度の人は移民として将来受け入れてもよろしい。また五千町歩ほどの土地を解放してもよろしいというような話があったのであります。調査の結果は、商船隊の建造というものは、今申し上げたようにパラグァイ政府のあれで、大体採算に合うものではないか、こういうことでありますので、われわれにおきましても、ただいま十分それを検討して、もしそれが可能でありますならば何らかの形でそういう便宜を与えますことは、将来の移住政策の上もに重大な好影響をもたらしますし、またラテンアメリカ諸国との関係も円満に遂行できるのではないかというので検討いたしている、これが事実でございます。
  42. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がございませんから、今のパラグァイのあれについては、外銀あるいはアメリカ筋からポイント・フォアとの関係から賛成しかねるというような意思表示があったこと等を明らかにいたしまして、最後に海外移民関係のない船を作ることを大志摩氏が請け負っている、あるいは大志摩、杉氏でパラグァイから今のような海外移民関係のない海外投資の仕事を持ってくる。それを佐世保船舶その他に作らせる。その裏に相当のリベートが動いているとこれは言われている。海外移住振興会社の貸付がリベートなしに行われていないということは、インダストリーという雑誌に書いてございます。現地移民をしている諸君からもそういうことが言われている。賠償についても、最近賠償にいろいろ政商なり、あるいは利権屋が群がっているということでありますが、本日の新聞にはラオスから参られました首相に対して十億円の水道を贈与するということが伝えられている。インドネシアの焦げつき債権棒引きの際の話を、小林特使も入れないで、岸総理が一人できめられたことについても疑惑が向けられております。これはエコノミストにも書いてございますが、こういうことは政治が私されておるんじゃないか、あるいはこういう外交、あるいは海外投資、あるいは賠償その他が、これは岸総理の政治資金作りに使われておるんじゃないか、その裏に相当多額の資金が動いておるんじゃないかということを疑わしめるものでありますが、総理としてどのように説明をされますか、最後に承わりたいと思います。
  43. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 賠償問題、さらに昨日のラオス首相との会談におきまして、従来御承知通り、ラオス及びカンボジアは、日本に対する賠償請求権を放棄いたしております。カンボジアについては、すでにカンボジアの最も必要な農業の研究のセンター等を中心として約十五億円程度のものを供与して、カンボジアの経済発展に資するという話し合いができておりますし、またラオスに対しましても、従来ラオスが一番困っておる事柄に対して、日本が何らかの形において援助をしようということで、昨年の暮れに、あすこで一番首都で困っております上水の問題の調査団を派遣し、目下その報告を取りまとめ中であります。私どももこれらの具体的の方法を十分に検討をいたして、両国の将来の友好関係に資したい、かように思ってこの問題を取り上げております。  また、先ほど来お話のあります船舶の問題につきましては、それぞれの理由があってああいうふうな経過になっておるわけであります。またインドネシアの焦げつき債権の問題につきましても、これは私が向うに参りました際に、賠償問題を解決し、将来の両国の友好関係及び経済関係を増進するためにそういう措置をとったわけでございます。決してこの問題に関しましては、私が総理としての当然の職責以上に出て私しているということは絶対にないことを、明確に申し上げておきますとともに、もう一つ重大な問題は、何かこの問題に関連してリベートがあり、あるいは政治資金を作るという危惧、お疑いを持っての御質問でございましたが、そういうことをお調べ下さいましても、いかなる所へ出ましても、絶対にないということを私は明確に申し上げておきます。
  44. 鈴木強

    鈴木強君 関連して……。
  45. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 鈴木君、簡単にお願いいたします。
  46. 鈴木強

    鈴木強君 今の石油の問題に関連をいたしまして、これは外務大臣か総理にお尋ねしたいのでありますが、日本とサウジアラビアとの間に、石油の採掘権といいますか、そういう問題についていろいろ話があったようでありますが、具体的には日本石油輸出株式会社ですか、これは山下太郎氏が社長になっていると思いますが、これがサウジアラビアの海底の油田を開発するということで、いろいろと動いておるようでございますが、これに対して、聞くところによりますと、外務省も積極的な協力をしているというようなことがいわれているのでありますが、その積極的協力をするということはどういうことなのか、関連してこの際お聞きしておきたいと思います。
  47. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) サウジアラビアの石油問題につきましては、ただいまお話のように、山下太郎氏が民間的な交渉をしておられます。外務省としては、特段の協力もしくは援助というものをいたしておるわけではございません。ただ日本の方々が海外に出ましていろいろ仕事をされる上において、外務省がやり得る協力はいたしております。
  48. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 鈴木君、きわめて簡単に願います。
  49. 鈴木強

    鈴木強君 わかりました。わかりましたが、今まではできるだけの協力をしてきたということであります。今、吉田委員質問にも関連して、民間事業者に対して、何か今後政府が積極的、財政的な協力までやるということをお考えになっているのかどうなのか、この点を一つ明確にしておいていただきたいと思います。
  50. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは全く民間でやる仕事でありまして、財政資金でこれを援助するという考えは、今のところ持っておりません。
  51. 一松定吉

    ○一松定吉君 私は観光国策に関しまして、総理大臣並びに関係大臣の所見を伺いたいのであります。私がこの問題を取り上げて御質問申し上ぐるに至った動機を一応申し上げておくことは、私がこの質問をするについての必要であることを、十分に御認識ができようと思うと同時に、政府もこの点に対しては、必ずこれを実行しなければならないということを十分に御感得がいけることであろうと思いまするから、この質問をする動機について一言申し上げておきます。また私の質問は、与えられた時間が、わずかに四十分でございますが、できるだけ節約をするようにという委員長並びに各関係者の諸君からのお話がありましたので、なるたけ時間を節約いたしたいために、いわゆる一問一答の形をとらずして、私が質問申し上げたその中で、こういう点についての総理大臣、関係大臣のお考えはどうであろうかということを申し上げて、次々に質問の要綱を陳述した最後に、重ねてその質問の要綱を申し上げまするから、最後にまとめて御答弁していただくことが、時間の節約上、都合がよろしいと思いまするから、さようにお運びを願いたいのであります。  私は、実は先年、二回スイスに遊びましたが、スイスは御承知通りに、世界の観光国としては、最もすぐれたる土地であるということを聞いてスイスに参って、至る所その観光地を視察したのでありますが、私の驚いたことは、世界の一等観光国であるスイスが、わが日本に比ぶれば、必ずしも日本よりも観光の土地が優秀ではない。スイスは御承知通りに、山と湖の国であり、わが国は、山と湖と海と川と、それといろいろなその間に温泉だとか山岳だとか洞窟だとかいうようなものが、幾多の観光の勝地としてたくさんある。これが何ゆえにスイスが世界の一等観光国として外国の人々からほめられ、日本は何ゆえに今日のような状況にあるのであろうかということを十分調べました結果、これはスイスは国民全体がそういう考えをもって観光施設に力を尽しており、また予算も十分これに支出しておるがためにこういうようなことになっておるが、日本は、国民があまり関心を持たないのみならず、政府のこれに関する支出というものが、あまり多くないがためにこういうような状況にあるのであろうか、ぜひ一つ自分はある機会を見てはこれを大いに力を入れて、スイス以上の観光国にするということが、外人を誘致し、外貨を獲得するということにおいて、日本の国民の収入を豊かにし、その得たところの金によって十分生活安定のための政策の実施ができるから、これを行う必要がある、かように私は考えまして、そうしてこれをわが国に帰りまして、私が厚生大臣にありましたときに、陛下に対してこのことを申し上げましたところが、陛下も非常に御嘉納あそばされまして、ぜひ一つそれをやって、世界各国の人々を日本に誘致して、ほんとうに日本の風光を観賞してもらって、長く滞在して帰りには日本の優秀なるおみやげ品を買って帰って、日本にたくさん外貨が落ちるようにすることについて、大臣努力してもらいたい、こういうお話を承わりまして、私は非常に感激して、それを実現すべく、自分が大臣としてひまをみるたびごとに各地の観光地を視察いたしまして、このことの実現に努力をしております際に、私は建設省の方へ回りましたがために、そのことが十分できなかった。後任の厚生大臣に引き継ぎましたけれども、厚生大臣もあまり熱意がなぐ今日に至っておりますので、私はぜひ一つこれを実現してもらいたいという意味において、きょうは、何ゆえに観光政策というものに力を入れなければならぬかということを例をあげて、そうして総理大臣並びに関係閣僚にお伺い申し上げまして、なるほどそうだ、それならば一つ予算についても十分に支出して、その目的を達して、外貨の獲得に努力して、国民のふところを肥やすようにして、それによっていい政治をしようということにお考えを変えていただきたいという意味において、この質問をするのでありますから、どうかさような意味においてお聞きとりを願いたいのであります。決して政府を悪罵して、そうして政府に向っていろいろなようなことを申し上げるのではございませんから、できるだけ私も政府に御協力をして、政府のこれが実現に努力をせられんことをお願いする意味においての質問であることを御了承願いたいのであります。  一体この観光施設を拡大強化する目的は、外人を誘致し、外貨を獲得することが目的であります。それによりまして国民の利益を増大ならしめ、税負担を軽からしめて国民の生活の安定に資すること、観光地、なかんずく国立公園、国定公園の愛護、施設改善強化を実現せしむるためには、観光に関係ある諸制度や、諸施設を一元化するため観光省というものを設立する等、すべてこれらの点について総理大臣や関係大臣の御所見をお尋ねしてみたいのであります。  まず第一に、観光事業の振興について、申し上げてみたいのでありまするが、わが国は世界有数の観光国であると私は考えておるのであります。わが国はすぐれた自然の風景に恵まれております。また史跡、社寺、遺跡等、古い歴史に輝やいております。そうして数多くの文化財を持ち、さらに日本独得の民俗、習慣を有し、国全体が魅力に富むところの観光国となっておるのであります。よってまず自然の風致について見まするに、わが国は周囲が海に囲まれて、南北に細長い島国であり、しかも世界的に火山国であります。従って至るところにすばらしい海岸風致に恵まれておるばかりでなく、海岸以外の内陸部においては三千メートル級以上の高山岳地帯を始めといたしまして、山岳、高原、湖沼、渓谷、河川、瀑布等変化に富む自然の風景を有しております。さらに国土の位置が温帯すなわち温かい部類に属しておりますが、南北に細長く、かつ湿気が多いために、植物はその種類がきわめて多く、至るところに美しい植物を見ることができるのであります。すなわち、松、杉、桜、竹等特徴のあるものが多い。そればかりではありません。四季の差がはっきりいたしておりまするために、春は新緑に富み、桜花らんまんとして開き、夏は水泳、夕涼みに国民を楽しましめ、秋はいわゆる紅葉、冬は雪というように、四季ごとの変化はまことに顕著でありまして、実に美しい国土を一段と美しくしておることは御承知通りであります。また温泉は全国各地に豊富に湧出しておりまして、観光事業上重要な役柄を演じております。これらの自然は探勝、山登り、海水浴、釣、スキー、スケート等に適し、四季を通じて楽しい観光旅行が可能であるばかりでなく、わが国の観光事業上重要なのは、古い歴史に恵まれ、数々の社寺、史跡、遺跡等の古い文化財及び美術工芸品等は至るところに見ることができます。すなわち奈良、京都、日光等はその中心として、わが国固有の文化を示しております。さらに日本の独特の風光、風俗、習慣、祭事等は、外国人にとって、ほかでは見られないところの特異性を持っておることは御承知通りであります。  以上申し述べましたように、わが国はすぐれた自然と文化財とに富み、世界有数の観光国である素質は十分に持っているのでありまして、道路、宿舎を始め、各種の観光施設を完備し、客に接してこれを待遇する方法改善をはかるならば、国際観光は一段と促進することができ、これによって、国際親善を高めるとともに、外貨の獲得に資するところがきわめて大きいのでありますから、政府はこれを利用して、これらの目的を達することに努力すべきであると思うが、総理並びに関係各大臣のお考えはいかがでございましょうか。  次にわが国の国際観光の実績について私の意見を申し上げまするが、わが国における国際観光客の数は、昭和二十八年度におきましては、観光客は七万五千人であって、観光収入は百十九億円でありました。これを貿易輸出額に比較いたしますると、二・六%に当るのであります。その後年々観光客は増加いたしまして、昭和三十一年度におきましては、観光客の数は十一万四千人となり、この観光収入は五千五百万ドル、すなわちこれを邦貨に換算いたしますると、百九十八億円になっております。貿易輸出額にこれを比較いたしますると、これはちょうど二・二八%に当ります。外貨の獲得上重要な役割を示しておることは、これによっても明らかであります。しかしながらこれを他の世界の主要国であるスイス、イギリス、フランス、ドイツ等に比べまするならば、    〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕 きわめて貧弱であることに遺憾の意を表せざるを得ません。すなわちスイスは西暦一九五三年、すなわち昭和二十八年におきまして、観光客の数が三百二十二万人、観光収入が一億六千三百万ドル、邦貨に換算いたしまして五百八十七億円、貿易輸出額の一三・五%に当ります。またイギリスの観光客は、昭和二十八年には、三百二十一万八千人、観光収入が二億四千六百万ドル、邦貨に換算して八百八十六億円、これを貿易輸出額に比例いたしますると、三・四%に当ります。ドイツの観光客は、昭和二十八年に五百四十四万二千人、観光収入は一億二千百万ドル、邦貨に換算して二百三十二億円、貿易輸出額と比例いたしますると二・八%。イタリアは観光客が昭和二十八年に七百六十八万二千人、観光収入が一億九千三百万ドル、邦貨に換算いたしまして一千五十五億円、貿易輸出額の一九・四%に当ります。イタリアのごときは貿易輸出額中の観光事業は実に第三位を示しておるのであります。  こういうようなことをわが国と比べまするならば、わが国の国際観光による収入は、イタリアの九分の一に当ります。イギリスの八分の一、スイスの五分の一、ドイツの四分の一になっておるのでありまして、これらの点から見ると、天然自然に与えられたところのわが国の風光の利用ということが、他国に比べてあまりにも貧弱であると私は考えるのであります。政府はこれらの原因をよく探究いたしまして、これを是正して、もってより一そう外国人を誘致して外貨の獲得をはかるという必要のあるということを私は痛感いたすのでありまするが、総理並びに各大臣の御所見はいかがでありましようか。  次に国際観光がわが国において不振の理由は、一体どういうわけであるか、これらの点を十分に検討いたしまして、その不振の理由を是正して、そうして大いに世界一等国にまでこれを引き上げなければならぬと思うのでありまするが、こういうようにわが国が他国に比べて観光事業のおくれておるおもなる原因は何であるか。私は、わが国が太平洋の孤島であって、しかも位置的に非常に不利であるということのために、これらの観光施設がおくれているということがおもな原因であろうと思います。しかしながら道路や宿舎を初めとするところの観光施設の整備が全く行き届いていない、また外国人の客に対する待遇及び宣伝が不十分であるということを私は考えておるのであります。今や諸外国人のわが国への関心は、年々高まりつつあることは立証するに余りありまするが、観光客の数は年々増加の一途をたどりつつあるばかりでなく、国際会議開催等も年々増加の傾向にあり、さらに外国人のわが国への来訪の希望は実際の来訪者をはるかに越えているのであります。現状は、諸施設が十分でないため、受け入れをちゅうちょしておるというようなことが、このわが国の観光不振の原因であると私は思のであります。また毎年世界一周の観光船が来訪しておりますが、このように一時に多数の外客が来訪する場合には、常に宿舎が不備であるため、せっかくわが国に来ながらホテルに宿泊できずして、船を宿泊所とし、限られた地帯より見物ができないというような現状でありまして、実に私は遺憾に考えております。従ってまた外貨の獲得上きわめて不利なことになっております。  国際会議の開催の場合には、ホテルにおいては収容力が、不足するばかりでなく、すぐれた同じ標準の客室をこれらの人に提供することができない。さらにイヤホーンの施設や、多数の会議室を持っているところの会場がないために、これが開催が不可能の場合が多いのであります。最近オリンピック日本誘致の運動が行われておりますが、この場合でも、選手用のホテルは別といたしまして、見物のため来訪する観光客のためのホテルは全く不足であるという一大欠点を持っていることは、まことに遺憾であります。さらに観光上きわめて重要な道路に至っては全国的にきわめて不備であります。箱根、日光のごとき地域ですら満足な自動車旅行は不可能であります。伝え聞くところによりますと、東京より日光への自動車旅行を試みたある外人が、あまりの道路の悪いのにあきれ返って途中から旅行を断念して帰ったということを聞いております。ところが、今や観光旅行は、世界各国とも自動車旅行の時代でありまして、道路の整備は十分各国は行き届いております。元来道路というものは単に観光用のみでなく、産業経済上、当然改良舗装を行うべきであるにもかかわらず、わが国では今日まで何ら改良の実をあげていない状態でありますことは、実に遺憾千万であると思うのであります。そこで観光事業を推進するためには、まずもって道路の整備が最も重要な役割をなすものであると私は存ずるのであります。  わが国の主要観光地は、国立公園、国定公園あるいは文化財とそれぞれ指定されているものが多いのでありますが、国立公園は全国で十九、国定公園は全国で十四になっておりますが、これら国立公園、国定公園の管理及び施設整備も、予算があまりにも少いために十分な施設ができずして、何らの進展を見ていないことは実になげかわしいことであると私は思います。また文化財の保護にいたしましても、かけがえのない重要なものですら放置されておるのが現状であります。年々火災によって焼失する等その管理もまた十分でないのが現状であります。一方、産業の進展によりまして、国立公園、文化財、その他重要な観光資源が、水力電気もしくは鉱工業等の工事のために年年破壊されつつありますが、これらのことは国家百年の大計でありまするけれども、これらのかけがえのないところの観光資源の保護について一段と工夫をはかるべきであると思いまするが、総理並びに関係大臣の所見はいかがでありますか。  次に観光に関する宣伝について考えてみますに、観光事業にとっては宣伝がきわめて大切なことであります。遺憾ながらわが国海外宣伝は全く貧弱でありまして、これはとうてい各国に対抗することはできない実情であります。今、海外宣伝の実情を見まするに、現在わずかにアメリカに三カ所、カナダに一カ所の宣伝事務所があるばかりでありまして、しかも経費が少いために、宣伝用の映画、パンフレット、ガイドブック等はあまりにも少く、各国にある在外公館にすら十分に配分ができない状態であります。この一事を見ても、政府は観光事業に何ら熱意のないことがうかがわれると私は思えて、これが残念にたえません。  以上のようにわが国の観光事業については、幾多の欠陥を持っているから、改善策を講ぜねばならぬと思うのでありまするが、総理並びに関係大臣のお考えはいかがでありますか。  そこで昭和三十二年度における観光関係予算について伺いますが、政府昭和三十一年八月十日に、観光事業振興基本要綱を閣議で決定せられ、内外観光事業の促進をはかるため基本要綱をおきめになり、自民党観光事業特別委員会も、またこの線に沿うて観光事業の推進に努めております。一方、各省は閣議決定に基きまして、それぞれ観光事業の振興五ヵ年計画をお定めになり、これが実現に努力しつつあることは実にけっこうでありまするが、しかるにかかわらず昭和三十二年度におきましては、初年度分観光全体要求額の予算は二百四十五億円であったのに、道路予算を含めて百三十八億円に削られております。必要経費要求額のわずかに五割を計上したにとどまっているのでありますが、これでは十分の目的を達することができぬので、まことに私は遺憾に思っておるのであります。次に三十三年度予算についてこれを見まするに、観光要求額は三百十二億であったのにかかわらず、道路関係を入れて二百十億に削減せられております。また厚生省国立公園部の関係では、三十二年度が一億七千七百万円に対して、三十三年度は二億二千五百万円となり、若干の増額を見られましたことはけっこうでありまするが、これとても五ヵ年計画の二年度分の二〇%にしか当りません。また国立公園の中には、日光、富士、箱根伊豆、伊勢志摩、瀬戸内海、雲仙、阿蘇等の国立観光上きわめて重要な地帯があるばかりでなく、国民の利用も年間五十万人を越えているのでありまして、駐車場、展望台、便所、野外のリクリエーション施設等は急速に整備をはかる必要があると思うのでありますが、いかがでありますか。しかるにこの程度の予算ではとうてい及ばないのでありまして、多額の経費を投じて、一気にこれを整備する必要があると私は考えておりまするが、いかがでございましょうか。  世界各国の旅行の傾向といたしましては、青少年、勤労大衆等低額所得者のための旅行を推進する方向にあります。これが施設といたしましては、キャンプ場、山小屋、青年の家、低額宿舎(国民宿舎)等が整備されつつあります。わが国における旅行者の数は、延べ人員が一年間三億八千人であるということでありますが、国立公園利用者においては五千万人の利用者があげられております。しかもこれらの利用者は年々増加しつつあるにかかわらず、明年度の予算のうちで、国立公園の関係では、これらの一部を行うことと思いまするが、政府提出いたしました二億二千五百万円の予算では少額に失するように思いまするが、御所見はいかがでありますか。また新たに文部省及び運輸省では青年の家の予算といたしまして一億円を計上しておりまするが、この程度では全国に行き渡るのは長年月を要するので、より早急に、これらの青年の家、それらの施設を実現するように期待しなければなりますまい。また昭和三十四年度におきましてはこの点も十分考慮いたしまして、次代をになうところの青少年及び勤労者のために、野外の健全な休養、娯楽が容易に得られるように一段の努力を要すべきであると思いまするが、いかがでございましょうか。また文化財の保護関係予算について見まするに、三十二年度が一億八千七百万円、三十三年度が二億三千八百万円になっておりまするが、前年に比して幾分の増額を見られたことはけっこうでありまするが、外人の利用のための諸施設につきましては何ら見るべき経費が計上されておりません。  さらに運輸省関係におきましてきわめて重要なことは海外の宣伝費であります。三十二年度には一億四千五百万円があったのにかかわらず、三十二年度には一億三千百万円にして、前年よりも削減せられておる状態であって、遺憾にたまえせん。特に米国には宣伝所がわずかに三カ所よりほかにありません。カナダには一カ所だけであって、このほかには一つの宣伝所も設立していないのであります。欧洲、東南アジア等、ただ一つの宣伝所も設けてありません。こういうようなことはわが国のために非常に不利益でありまするからして、どうかすみやかに海外事務所を早急に設置いたしまして、新たなる観光市場を開拓すべであると思うがいかがでありますか。このほかに映画、パンフレット等もどんどんこれを製作、配布して広告も活発に行うべきであると私は考えております。  また建設省関係のうちで道路の整備につきましては重要施策として取り上げられつつありますが、観光道路としては一級国道のみに限られません。かえって二級国道や地方道が多く利用せられておることに考えを及ぼしまして、道路公団による有料道路もまた重要であるので、道路整備の実施に当っては観光事業の重要性を十分に認識せられまして、主要観光地帯の道路整備を優先的に取り上げるべきであると私は考えております。この点についての御所見はいかがですか。特に日光、冨士、箱根伊豆、伊勢志摩のごときは早急に関係道路を整備しなければならぬと思います。この点について御所見を伺いたいのであります。  また地方公共団体の行うところの観光事業推進のための起債について考えて見ますれば、昭和三十二年度には五億円、昭和三十三年度には五億円認められておりまするが、この程度の金では全く不十分でありまして、大幅に増額し、よい施設の充実を期さなければならぬと思います。またさきに述べましたホテル、会議場等に対しましては開発銀行の融資を一段と行うべきであり、国内観光のためには中小企業金融公庫による融資を一段とこれも行い、国立公園等の諸施設の整備をはかる必要があると思います。特にホテルの整備を急ぎ、客船に泊るというようなことのないようにし、収容力の増大とよい部屋を数多く設けて、そうしてこれらの観光客を満足せしむべきように努力しなければならぬと思うのであります。戦前には太平洋航路におきましては、わが国の客船は大いに活躍して外貨の獲得をやることについて非常な功績があったのでありまするが、今日においては、戦前の客船に比較してただ氷川丸が一艘残っておるだけであって、ほかのものはことごとく戦争のために沈沒せしめられたりなどしておるのでありまして、実にこういう点についても感慨無量であるのでございまするから、すみやかにこれらの点を復旧するように、建造物の補助、もしくは融資の道を開くことが必要であると思います。なかんずく大型客船は建造に年月を要するものでありますから、すみやかにこれが手を打つべきであると思いまするが、政府のお考えはいかがでございましょうか。  次に私はこの林野庁の所管について農林大臣に質問いたしますが、わが国の山の大部分は林野庁の所管であります。木の生えていない山の頂などは何も林野庁がこれを持っていなければならないことはないのでありまするから、これを厚生省に移管して、それで観現地施設をすることがいいと思うが、いかがでしょうか。また森林が繁茂しておる場所でも風致のよい場所は、これを林野庁が持つ必要はない。故にこれを治山治水の上からも、国土保安上の上からも厚生省に移転すべきものであると思うが、いかがですか。また所有権の不明な観光地については、もしくは所有権が個人のものであっても、観光地として国が所管すべきものと認むべきものは国の所有に早くこれを移す必要があると思います。たとえば阿蘇の頂上あるいは浅間山の鬼押出、こういうようなものは個人のものでありまするが、これは観光地として最も必要な所でありまするから、これは個人からこれを買い取って、厚生省の所管に移して観光施設にこれを寄与せしむることが必要であると思うのでありまするがいかがですか。しかるにこれらの両方とも見物人から入場料を――阿蘇の頂上やもしくは浅間山の鬼押出において入場料を取っておりますが、これらを早く国有として、そうしてそういうことのないように国家のためにこれを利用することがよろしいと思います。次に観光地として大切な所は厚生省の所管にする要があるのでありまして、こういうことについては予算を取って厚生省の所管の国有地にするようにこれをしなければなりますまい。また個人の所有の山林の中腹の森林は個人がどしどしこれを伐採しております。これを差しとめる必要がありますが、なかなか思うようにできません。吉野熊野の国立公園の大峯山は、その大部分は民有地である。それは伐採を禁じておるにかかわらず、かえってそれらの所有者はどしどしこれを切り取っておりまするが、これを差しとめるには国家で補償金が要りまするから、こういうような土地に対しては国がこれをむしろ買収してりっぱな国立公園にすることがよいと私は考えております。また山梨県の御下賜県有林のうち、国立公園の秩父の多摩のうちにあるところの御下賜県有林の材木を県が自由にこれを伐採しております。これを差しとめるには補償が必要であります。このような大事なところは国が買い取らなければ、これに関連いたしまして、国有林も十分に観光地としてこれを使用することはできない遺憾の点がありまするから、こういう点につきましてもやはりこれを国有林に移すという必要がある。それについてはこれを補償しなければならぬ、予算が要る、こういうように私は考えておりまするから、どうか大蔵大臣等におきましても、こういう点を十分お考えに相なりまする必要がありまするが、用地の買収について、私の考えでは十億円もあれば十分である。保存費が十五億円もあれば十分である。そうして施設費は年に五億円ぐらいあれば十分であると思いまするから、わずかのこれらの金で観光地が充実ができるかできないかに差があるということに思いを致されまして、御考慮相ならんことをお願いいたします。  以上のようなことでありまするから、私は道路を完備し、交通を便ならしめ、宿舎を改良し、ボーイ教育をしてサービスをよくし、旅客を喜ばしむるごとく施設を整備し、もって国際観光地を促進すること、その結果によりまして、外人を誘致し外貨を獲得して、国民の収入をふやし、国の財政を豊かにすることがきわめて大事であると思うのであります。  こういうことを私は考えておりまするが、歴代の厚生大臣の中で、こういう点にあまり力を用いなかったように思われるのはまことに遺憾に考えております。のみならず厚生大臣中で観光地を十分に視察して、そうしてこういうような施策をはかろうというようなことを実行せられた厚生大臣があまりないように思うのでありまするが、こういう点も一つ、特に堀木厚生大臣はこの点に御関心を持たれておるのでありまするから、一つ御自身から進んで出かけてこれを視察し、場合によれば、    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕 諸外国の国立公園施設を視察なさることも必要ではなかろうかと思うのであります。  そこで私は政府に対する質問を一括して申し上げますが、一、観光事業推進に対するところの所信はいかがでありますか。二、国立公園、文化財等、観光資源の保存に関する所信を伺いたい。三、道路整備はいわゆる主要観光地帯を重点的に行って、そうしてその目的を達するようにしなければならぬ、ただ一級道路だけに重きを置くということはいかがでありましょうか。また観光衛生の改善、国立公園等観光地帯における観光施設に対する経費の支出を一段とふやす必要があると思うのでありますが、総理大臣並びに大蔵大臣のお考えはいかがですか。  ホテル、外客船等について融資の増大をはかる必要があると思うが、こういう点についてのお考えはいかがですか。  海外宣伝について、あまりにもわが国の観光施設の宣伝は貧弱であるから、一段とこれを努力すべきが相当であると思うが、いかがですか。  観光行政機構の改善強化のために、観光省を設立して、観光事業の一元化をはかるのがよろしいと思うのでありまするが、いかがでありますか。  また、国立公園と国定公園との差別について、これを慎重の考慮を払うべきであると思う。ただいたずらに国定公園みたような地方人を喜ばせるようなことでなくて、これを全部国立公園に包含して、国家の補助を十分に与え、そして、この国立公園観光施設政策を十分に拡充強化することが必要である。現に、私の県の耶馬渓のごときは、天下の耶馬溪であるにかかわらず、これを国立公園にせずして国定公園にしてあるというようなことは、むしろこっけいであると私は思うのでありまするから、こういう点につきましても政府当局は十分に御考慮相なるべきものであると私は思うのであります。  このほか、李承晩ラインの外交問題や、ソ連のオホーツク海の問題等を質問したいと思っておりまするが、これはまた分科会等においてやることにいたしまして、本日はこの程度で質問を終りますが、今申し上げました概括的の点につきまして、腹臓なぎ総理並びに関係大臣の御意見を承わります。
  52. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 観光事業の必要なこと、これを推進しなきゃならんということに関する一松委員のお考えは私どもも全然同感であります。しかして、これが欠陥につきましては、いろいろおあげになりましたことも一々ごもっともと思いますが、私は、従来、この観光事業の問題につきましても、特に私自身としては関心を持っておりまして、いろいろ欠陥がありますが、特に私として二、三の点を考えておったのでありまして、今の御意見のうちにもありましたが、私の考えの一端をこの際申し述べておきたいと思います。  第一は、何といっても、観光資源と申しますか、観光の対象となるものを保存し、これを適当に開発していくということであろうと思うのです。天然の風景等につきまして、かけがえのないものはこれを保存する、同時に、いろいろこれを利用するにつきましてあるいはスキー場やその他の施設をするというふうになにするという問題、また、これを見るための道路等の施設をするというようなことが、これのおもなことになると思います。特に日本の観光の上において欠けておることは、だれもが指摘するのでありますが、今おあげになりましたホテル並びに道路の整備の点である。この点に関しましても、ひとつ格段の力を入れたい。道路につきましては、特に本年度はわが内閣の重要政策として取り上げておりますが、これは、ただ単に観光だけの意味でないことは、今御指摘になった通りであります。しかし、観光のうちにおきましても、特に日本の最も重要なものであり、外客を誘致する上において最も興味の深い箱根であるとか、あるいは富士山を中心としておる地域であるとか、あるいは伊勢の地域であるとかというようなものにつきましては、この道路整備につきましても、観光の意義が特に大きいから、これを重点的に考えなきゃならない。もちろん一級国道を中心にいたしておりますが、これに限っておるわけではございませんで、いろいろな地域における関連の道路につきましては、やはり重点的に整備をしたいと思います。また、ホテルの問題につきましては、必要な場合においては、また、でき得るならば、外資もこれに導入しようという計画をいろいろ話を進めております。外国の大きな国際会議の会議場につきましても、私どもは京都にそういうものを一つ作ろうという計画をもって、地元と協力の上に、今回の予算にもある程度のものを計上をいたしております。こういうような欠陥を除き、もう一つ大きな問題は、今おあげになりました宣伝啓蒙の点が非常に欠けておる。従来のアメリカ、カナダ等におけるなにがわずかであり、また、その活動も非常に制約せられておるということについては、私も遺憾に存じております。先年アメリカに参りましたときにも、その点についてアメリカ側とも私いろいろ話し合ったこともございます。特に最近、ホテル建設につきまして、航空会社、たとえば。パンアメリカンあたりが日本に外資を持ってきて日本人と共同して作ろうというような計画も、御承知通り、あります。私は、これは、今のホテルができるということと同時に、パン・アメリカンが持っておるいろいろな機能をもって日本の宣伝に当るという意味においても、これは非常に有益なものであって、ぜひそういうことを実現さしたいと思っておるのであります。外人の最近のいろいろな意見を聞いてみまするというと、日本のサービスは諸外国に比して非常にすぐれておる。特にチップ制度というものがないことは、日本を旅行した人が非常に気やすく心持のいいことだということを、ほとんど異口同音に申しております。こういう特徴もありますし、また、そういういいところはますます今後これを増進していくようにいたしたいと思います。  観光事業に関する行政機構を統一したらという御意見でございます。この点については、観光の性質が、今申しましたように、また、御意見にもありましたように、各省に分属し、各省の協力を必要とするものでありまして、これをできるだけ総合連絡をとるということにつきましては、われわれとしてもできるだけの努力をいたしておるわけであります。今直ちに観光省を作ることがどうだという問題につきましては、なお研究すべき問題があると思います。  観光関係予算がなお貧弱であり、これをさらに増額し、この仕事を一そう力強く推進せよという御意見につきましては、私も、御趣旨においてはごもっともでありまして、できるだけ全体の予算編成の上におきましても重点を置いて今後考えていくようにいたしたいと思います。
  53. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 厚生大臣になりまして約半歳たちましたのでありますが、国立公園地帯をあまり旅行いたしませんで、まことに申しわけないと思っております。今後はできるだけこれらの点について努力をいたしたいと、こう考えておるような次第でございます。  一々おあげになりましたことは、私ども、全く同感を禁じ得ないものがございます。あまりに日本人は、日本全体の景色がよくて、それでかえって不感症的な感覚だということを、私、痛感いたしております。諸外国を歩いてみまして、ほんとうにそうだと思うのであります。ことに、おあげになりました箱根、日光なんというものは、これはもう一国の首都から自動車で道路さえよければ一時間ないし一時間半で行けるあれだけのいい景観地を持っておるという所は、世界各国にないのじゃなかろうかというふうな感じをいたしておるのであります。  よその省のことはともかくといたしまして、私といたしましてできるだけ努力はいたしたつもりでございますが、何分にも全体の予算から見て相当の制約をこうむったということも事実でございます。国立公園の関係におきまして、管理面が弱い。率直に申して、大学を出まして四、五年たった者が今までまだ定員外であった。こういう待遇をして国立公園地帯の管理運営をよくしようとしてもだめであるというので、今年は実は定員内にこれを振りかえる予算を計上いたしております。それから国立公園の地帯の整備につきましては、金額としては少いのでございますが、三十二年度の一億四千百万円に対して一億九千万円、約五千万円近いものが施設整備費としてふやすことができた、今後さらに一段の努力をこの方面にいたしたいと思っておるような次第でございます。  なお地域の設定につきましては、審議会関係等もございますが、私、率直に申して、日本の国立公園地帯の指定の地域が狭過ぎると感じております。自動車が発達し、飛行機その他の交通機関がこれだけ発達いたしました場合、従来の地域の指定については相当範囲を考えるべきではなかろうか。なお国定公園その他につきましても、十分今後御説によって努力をいたしたいと思います。建設省関係につきましても、運輸省関係、あるいは文部省関係等とも積極的にお互いに努力をいたしまして、整備の努力をいたしたい。ことに私、そういうことを言ってはこういう席でどうかと思いますが、日本の国土を私は一番愛した人が下村宏先生じゃなかろうか、下村先生が亡くなられまして、私ども日本人自身が、これだけりっぱな国土を持ち、この国土を愛する、これくらい愛した人は少かろう、こう考えております。今後青少年のリクリエーションその他につきましても、この点について、せっかく先生の意思を継いで努力をいたしたい、こう考えておりますような次第でございます。
  54. 中村三之丞

    国務大臣中村三之丞君) 観光局を所管いたしております観光事業計画の立場からお答えを申し上げます。  大体観光局といたしましてやらしております目標は、海外宣伝を十分にやるということ。それから交通施設を整備せなければいけない。それから宿泊施設も十分にしていかなければならない。さらに外人客に対するサービスの改善。こういう四つの目標を持って関係省と努力をいたしております。海外宣伝につきましては、国際観光協会をしてやらしめております。これは法律によってやらしておるのでございますが、その補助費が昨年に比べまして千五百万円減っております。これは事実でございます。まことに遺憾と思うておりますが、これらの補充は民間資金によって得たいと思うのでございまして、将来は今、一松さんのおあげになった、アメリカ、カナダ等四ヵ所以外に、ヨーロッパにおきましても、あるいはまた東南アジア方面にもこういう事務所を設けて宣伝をするということに努力をいたしたいと考えておるのであります。いわゆる観光客を乗せる日本所有の旅客船につきましては、これは二万トン級二隻を要求したのでありますが、いまだその時期に達せず実現をいたしませんが、将来、氷川丸一隻で太平洋のお客を運んでおるようなことはなく、日本の豪華船を作って、観光客を日本に迎えるよう努力いたしたいと思います。  次に、外人客は仰せのごとく毎年増加がいたしておりまして、昭和三十二年は十三万人、その得ました収入は六千五百万ドルというふうになっております。将来観光五ヵ年計画の目標といたしますところは、昭和三十六年に約三十万人の外人観光客を迎えることができるという予想のもとに、一億二千万ドルの外貨を得て、わが国国際収支改善に資したいというふうに考えておるのであります。  次に、ホテルの設備が不完全である、――これは現在国際観光ホテル整備法によりまして登録旅館を努力をいたしております。ただホテルというものは非常に金を食いまして、しかも安く長期の資金を得なければならないのでありまして、目下のところは開発銀行に依頼をいたしております。あるいはホテルを建設せられる発起人が市中銀行の融資を得ておられるという状態でございまして、このホテルの整備は資金を安く獲得する、そうしませんと建設費が高くつきます。従って日本のホテルの宿泊料が、一松さんも外国においでになって、日本と比較なさって御承知と思いますが、非常に日本のホテルは高いという傾向がございまするから、今後は資金の供給というものを、長期にして安くいいものを獲得する、こういうことに私は今努力をいたしておるのでございます。  以上のような次第でございまするが、何と申しましても受け入れ態勢というものに欠陥のあることは事実です。これはホテルにおきましても、観光道路におきましても、その他においてもありましょうから、一松さんのおっしゃるいわゆる観光国策というものを遂行していかなければこれが実現ができない、こういうふうに私は考えております。  本年度の予算に、文部省に六千万円、運輸省に四千万円、いわゆる青年の家というのがございます。これは私どもの方は四千万円――まあ金額は少うございます。しかしながら外国の青年をお招きして、あるいは国内の青年も宿泊せしめる、こういうことの設備のために今府県からいろいろ計画がございまするが、わずか四千万円でございますから、重点的にこれをしまして、五十万や百万を各府県に分けるということは私はいたしません。重点的に二、三のところにこの貴重な四千万円を配分いたしまして、外国の青年が来られても、十分そこで泊ってもらえる、国辱にならないような、そういう青年の家を建てる。あるいはこれを来年度の予算においても逐次全国観光地その他に私は建設することができると思うのであります。  大体これが運輸省観光局として私どもがやらせておりまする考えの概要、また事業の内容でございまして、これは決して十分とは申しません。このことは逐次完備をいたしまして、観光国策、これによって日本国際収支改善をせられる、あるいは世界の人々に日本を十分理解してもらう、こういうふうにわれわれは努力いたしたいと思っておる次第であります。
  55. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 観光事業につきまして御熱意のある、また該博なるお話を承わりまして敬服する次第でございます。私の方の農林省関係の林野の問題につきましてお尋ねがあったのでありますが、御承知通り観光地帯における林野につきましては、自然公園法による国立公園、国定公園、あるいは県条例による県立公園、あるいは森林法による風致保安林、こういう法律がありまして、その法律に基いて、乱伐といいますか、みだりに木を切ることは制限されておるようなわけであります。そういうことでありますので、私どもといたしましても観光地帯における森林につきまして、これの伐採等につきましては非常に慎重を期しておるばかりでなく、国有林につきましては、観光関係の主務省でありまする厚生省と協議をいたしまして、経営計画とか、あるいは植林の計画を立てて遺漏なきを期しておるわけであります。林野行政はもう御承知通り一般的に申しますならば、日本の国土を保全するという意味もありまするし、あるいはまた木材資源の増加ということもあります。今お話のように、風致、こういうことも非常に大切でありまするし、そういう点から考えまして、林野全体として今行政を行なっておるわけでありますが、そこで今お話の観光地帯の林野は厚生省に移したらどうか、こういうお話がありましたけれども、今のところ国有林につきましては、先ほど申し上げましたように、厚生省と緊密な連絡のもとに伐採あるいは植林ということをいたしておりますので、直ちに厚生省に移すという考えはただいま持っておりません、しからば民有林につきまして非常に荒れている所があるじゃないか、こういうお話もありました。民有林につきましては、私どもはその地区の観光関係者と十分な協議をいたしまして伐採あるいは植林等について仕事を進めておるのであります。これを国有に買い上げて厚生省に移してはどうかというお話もありましたが、国有地に買い上げるというようなことにつきましては、これは検討してみたいと思うのであります。厚生省に直ちに移すというようなことにつきましては、今直ちにそういうことにはどうかと考えております。しかしながら、大へん貴重な御意見を拝聴いたしましたので、御意見のほどをよく心にとめまして、この点につきましては、なおよりよい方法を考えていきたい、こう考えております。
  56. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 観光事業は結局お金の問題になると思います。それでありますから、予算融資が少くはないか、こういう御質疑であります。もう観光事業の重大であり、また日本がそれに適しておることは申すまでもありません。従いまして、この面につきましては、予算におきましても、融資におきましても、実は格段の注意を払っておるのであります。ただ私がちょっとお断わり申し上げておきたいことは、戦前、日本は私は観光事業にはそれほど留意していなかったと思います。これはまあ主として海外発展ということに考えが指向されておったと思います。それが戦争によってまあ山河もないというような調子にやられまして、そうして戦後は財政が、あるいは国民生活も非常に窮乏になる、こういう時期でありましたから、戦後においては、私は観光事業というものは日本の重要産業の一つにならざるを得ない、これはもう意見を超越してそうならなくてはならぬという国情になったと思いますから、そうしなければならぬが、しかし今までのところ、なかなかそういう方向に金を使うだけの余力もなかったと見なくちゃならぬ、なぜかというと、観光事業は今までお話がありましたように、まず第一に、いやしくも国際観光という以上は、国際水準の道を作らなければならぬ、同時にまたそれにふさわしいホテルも作らなければならぬ、港湾も私は整備をやはりしなくてはならぬ、こういうふうなことだけを考えても、いずれを見ても巨額の資金が要ることは申すまでもありません。従いまして、従来非常に心がけておりながら、まあ、当面必要という程度に、私は一応過ごしてきた。これはやむを得ないが、しかし最近の情勢、特に三十三年度からは、御承知のようにまず道について画期的な九千億の余に上る五ヵ年計画、長期五ヵ年計画を立てまして、三十三年度からこれを行う。それから港湾についても今後考えていく、こういうふうにしておる。ホテルについても十分考えなくちゃならない、かように考えておりますので、また、こういう方面には、私は国際収支とも直接の関係もありますので、海外の借款を仰ぐこともよかろう。そうしてこれは金利も安いし、長期に運用もできる、こういうことをあわせて、御趣旨に沿うように今後努力いたしたいと考えております。
  57. 一松定吉

    ○一松定吉君 総理初め各大臣の御意見を承わりまして、私も非常に満足をいたしております。どうか口に言うだけでなく、ほんとうに実行してもらわなければ、岸内閣に対するこけんに関しまするから、今後も一つそういう意味において、こういうよい仕事一つ十分に力をきわめてこれを実施すべくおやりを願うということを特に申し上げておきます。  御承知通り、つまりこれは投資資金、これです。大蔵大臣予算関係でいろいろ御発言がありましたが、今お金を入れてすぐに利益を取り戻すということはできますまいけれども、年月を経るに従って、十億の金を入れれば百億の金が戻ってくるというようなりっぱな仕事ですから、一つよくその前後を御検討の上、多少利益が返ってくることがおくれても、恒久的の施設としては、もっともこれはいいことだということにお考えを及ぼしまして、一つなるたけ早くこれらのことを実現するように御尽力あらんことをお願い申し上げまして、私の質問を終ります。  ありがとうございました。
  58. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これにて約三十分間休憩し、午後一時に再開いたします。    午後零時二十六分休憩    ―――――・―――――    午後一時三十一分開会
  59. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を再開いたします。  質疑を続行いたします。
  60. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 まず、藤山外務大臣にお尋ねをいたします。  藤山外相は、東南アジア諸国経済協力の一環といたしまして、東南アジアの中小企業育成の構想をお持ちになっておるように承わるのでありますが、これを具体的に承わりたいと思うのであります。
  61. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 東南アジア諸国が政治的独立を達成しまして、経済的な繁栄を見て、その政治的独立を達成することが必要であるということは申すまでもないことであります。しこうして、東南アジアの現在の経済段階と申すものは、まあ植民地時代の長い政策もありましたし、また、その指導にもよりまして、主として農業を主体とする経済であるように申し上げて差しつかえないと思います。従って、東南アジアの各国がそれぞれ独立をいたしまして、自分だけの一つ経済を打ち立てていこうということになりますと、やはり工業方面の振興をやって参らなければならぬと思うのであります。そうして初めて農業、工業というものが並立していくということになって、健全な経済発展の段階に進んで参ると思うのです。ただ、そういう現状から見まして、東南アジアの各国が経済開発に関して相当、五ヵ年計画、三カ年計画と諸種の経済建設をしておりますが、とかく近代科学の粋を尽した大規模のものを作りたいというのが五ヵ年計画その他の、体裁のいいと申してはあれかもしれませんが、そういうような体裁のいいものになりがちでございます。むろん、発電所を作りあるいは鉱山を開発し、あるいは製鉄事業を興すというように、基本的な工業を興すことは当然必要でありますけれども、しかしながら、これらの各国が、日常消費物資を自分の手で生産でき、しかも原料が十分あるということも考えられるわけであります。また、技術的な経験の点から申し上げましても、いきなり高度の知識を要します、あるいは専門学校以上の程度の技術者が運営をしなければならぬような工場を作りますよりも、そういう意味におきましては家内工業的なものから逐次出発して、ちょうど日本が明治初年から今日に至った過程を振り返ってみますと、十分にその関係がわかると思うのでありますが、そういう意味において、中小規模の工業を振興していくということは、私は東南アジア各国の福利のために、また将来、大規模の近代的な生産に移行していく上の基礎的な考え方だと思います。従いまして、そういう点について日本は十分援助し得る立場にあるのであります。  御承知のように、日本の中小企業というものは相当の長い間の経験と技術とを持っております、従って、そういう経験、技術等をこれら各国の方々に、それをもって協力していくということが、一番東南アジアに対する経済の協力の現在の段階においては必要な点だと、こう考えております。ただ、それは言うことは非常にやすいのでありますけれども、なかなか日本の中小規模の工業をやっている方々が海外へ行って一緒にやるということもむずかしいし、あるいは技術者の交流をやるということも、よほど十分な指導と、また理解もしていただかなければならぬ。あるいは、そういう意味において、資金的な裏づけ等もして参らなければならぬと思うのであります。そういう意味において、そういう方針のもとに、私としては東南アジア経済協力の方面に一歩々々力を尽して参りたいと、こう考えております。
  62. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 具体的には、どういう工業について援助をしようというふうにお考えでありましょうか。
  63. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、日常生活消費物資の製造というような問題が、当面、東南アジア各国の必要つな工業だと思うのであります。そうしてまた、それらに対する原料もあろうかと思います。たとえば、紡績もその一つであると考えていいわけでありまして、紡績の発展段階から見ますれば、錘数がそんなに大きな錘数をそろえなくとも現地でできる。また、インド等においては原料を自給することができる。あるいは東南アジアの各国が、それぞれ油脂事業を持って、植物油脂事業を持っておりますから、そういうものによって石けんなり、あるいはそういう種類のものを作っていく、そうして自給していくということも考えられるわけでありまして、いろいろ調査をしいてみますれば、そういう意味において日常消費物資を作っていくということが相当広範囲に考えられるのではないかと考えます。また、それに対して日本の技術援助なり協力なりとうものはなし得られるのだと、こう考えております。
  64. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいまの御答弁によりますと、紡績あるいは石けん、そういうものを具体的におあげになったのでありますが、まだほかにおありになりましょうが、それを伺いますと同時に、それに対する資金計画はどういうふうにお考えになっておりますか。
  65. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題は非常にむずかしいのでありまして、私どもとしては、両国のそれぞれの経済人が了解し合って、そうしてお互いに協力をしていく。ある場合には合弁という形もありましょうし、ある場合には技術提携という、日本人が技術だけ出すという場合もありましょうし、ある場合には機械を出資すると、これは日本の中小企業者が漸次自分たちの遊休設備を持っていくなり、あるいは非常ないい機械を買い入れて、そうして設備の更新をするというような機会に、そういうものを提供して、そうして協力をする方法もあろうと思うのでありまして、ただ、今申し上げましたように、それらのことをやりますのは中小企業者でありまするから、よほどそういう点については十分お互いに知り合い、また、あっせんの労をとるというような方法がだんだんに考えられていかなければならぬかと、こう思っております。
  66. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 さしあたり本年度の資金計画はどんなふうになっておりましょうか、その程度だけでも伺えたらと思います。
  67. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外務省といたしましては、直接そういうものに貸し出すとか、そういうような資金の計画を持っているわけでないということは御承知通りであります。また、東南アジア開発等に関しまする諸般の計画につきまして、私どもからすれば、そういう関係から出て参ります――たとえば賠償によります民間経済協力、あるいは輸出入銀行等を通じてそれらのものをファイナンスしていただくように、外務当局の立場からは財政当局その他にお願いしたい、こういうふうに思うのであります。
  68. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 これについて大蔵大臣、通産大臣の御所見を伺いたい。
  69. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大体の御質問趣旨は、東南アジアと中小企業関係、こういうことに了承いたします。これは大体私の考えでは、東南アジア経済、産業でありますが、これはやはり中小企業的なものが非常に多いだろう。むろん地下資源等の開発に大規模のものも要りますが、しかし一般産業としては、やはり中小企業的なものが多い。まあこれと日本の中小企業、特にこの中小企業の技術面をできるだけ東南アジア経済の開発に活用していったら一番いいじゃないか。技術が行けば、当然これにつれて施設東南アジア経済に入っていく、かように相なろうかと考えておるのでありまして、これらにつきましては、今回、内閣東南アジア経済、技術に関する協力審議会ができるはずでありますから、こういうところでもう一つ、とくとそれらの点について基本的に一つ考えて、そうしてその考え方を今後の賠償支払い並びに各国との経済協力関係に実際に具現していくというようにしたら、私は大へんいいじゃないかと考えておる次第でございます。
  70. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 東南アジア開発につきまして、中小企業の育成というようなことの必要なことにつきましては、今の御答弁で十分であると思いますが、私の方といたしましては、まず技術を向うに知らせるというような意味で、西ベンガルに技術センターを作るということを考えております。また、マラヤその他におきましても、そういうような準備をいたしたい、かように考えておりますのと、国内体制としましては、向うから技術者が参りましたときに、その養成についての受け入れ態勢を、国立試験所あるいは府県の試験所その他を動員いたしましてやりますことと、また、中小企業者で向うに進出したいという人の、商工会議所等を通じまして調査をいたして、カードを作るというような計画をいたしております。そこで、われわれといたしましては、国内の中小企業者と衝突しやしないかという心配を一応はするわけであります。できるだけその摩擦のないようなものについてやりたい、こういう考えを持っておりますが、一面また、諸外国からいろいろ機械類等の導入ということもございますから、一がいにそうばかりは言っておれません。かなり積極的に考えていかなければなりません。そうして中小企業者の向うの育成をはかりますとともに、それに対するいろいろ機械類の輸出というようなことを考えて参りませんと、いわゆる低開発地域が開発されるにつきまして、日本の従来の輸出品ではいかぬ、重工業品なり化学工業品に今後転換していかなければならぬ、それに備えていく考えで今、全体総合的に考えていく、かようなつもりでやっておるわけであります。
  71. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 この東南アジアの中小企業育成の構想につきまして、ただいま伺ったところでは、まだ資金計画などもどうもはっきりしておらぬようでありますが、しかし、これはやり出すと相当徹底したことをやらなければ、羊頭狗肉になって、これはかえって日本の面子に関するというようなことになるだろうと思うのであります。と同時に、これを徹底してやるということになりますると、今、通産大臣が触れられました、日本のこの中小企業との相剋摩擦が出てくるということになるのでありまして、その点については、戦前、総理もよく御承知だと思うのでありますが、朝鮮に日本の中小企業の技術、これが移されまして、それがために、当時朝鮮に勃興してきた中小工業と日本本土の中小工業との間に非常に深刻な相剋摩擦が出て参って実に困った。いろいろな問題が出てきたのでありますが、今後やりようによりますると、これは東南アジアとの間において非常に問題が出てくる。しかも、その種は日本自身がまいたのだというようなことになると思うのであります。場合によっては、また東南アジア自身に日本の製品の、ことに完成品の輸入制限が誘発されてくるというようなことになろうと思うのでありますが、これにつきまして総理の御所見を伺いたい。
  72. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 東南アジアの現状を見まするというと、資源にいたしましても、あるいは産業、経済の面から見ましても、いわゆる未開発国であり後進国であるのであります。これらの国が、一面において独立を完成するという意欲に燃えて、民族的な努力が払われた。これに対しては、アジアの民族として、われわれも心から共鳴して、その願いを達成せしめるためにわれわれが協力するということは、非常な大きな立場から当然であろうと思います。  それからもう一つは、やはり、これらの市場が日本のこの市場として、相当な貿易ができるためには、何といっても購買力を上げていく、これらの地域の産業がある程度開発されないというと、現在の状況のもとにおいて、いつまでもわれわれが物を売っていくということも、これはなかなかむずかしいことだ。この意味において、そこにおける中小企業が工業を中心として、いろいろ日本の協力によってでき上るということは、全体の民生を高め、購買力を増す見地からも望ましいことである。もう一つは、やはりこれらの地域においてそういう希望が非常に強いところを見まするというと、もしも日本がやらない場合には、やはりヨーロッパの先進諸国がこれに対してそういう物を作っていくということになるだろうと思います。こういうふうな点を考えてみるというと、日本の中小企業との間にある程度の、そこに生活必需品というようなものが日本の力によって、協力によってでき上るということは、日本品の販路の上に摩擦を生ずるというおそれはもちろんありますけれども、大きなこの見地からは、やはりこれはやるべきことであり、また、やることが結局、日本経済からいっても望ましいことである。私はやはり、何といっても、だんだんそれで工業が、中小企業等がそこらの地域にでき上りまして、現在は輸入しておるというような物が、自分たちの力で生産され、その国内で生産されるということになりますというと、購買力がそれだけふえてきて、やはりより高い、より高度の製品なり商品を要求するということになってくるのでありまして、日本の中小企業は、やはりその点において先進国の立場をとって、だんだん品質を高くし、いい物を作っていくというふうにわれわれは進んでいくということが必要であろうと思います。従って、これをやる上から申しますと、現地の要望というものも考え、また日本の、これをやらなかった場合にどうなるかということも考えなければなりませんし、また、将来の問題として、日本の商品との分界はどういうふうに見通しを立て得るかというようなことをいろいろと考慮して、なるべく摩擦を将来に残さないような考慮は払わなければならぬと思いますが、基本的には、先ほど来申し上げましたような基本的の考えで、日本が先進国として、われわれの技術をもってこれらの地域の開発に協力するということが、大きな見地から望ましいことである、かように考えるわけであります。
  73. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 日本がやらなければ欧州先進国でやるようになるだろうということ、もちろん考えられるのでありますが、日本東南アジア、それから欧州先進国と東南アジアとの関係というものは、相互にいずれが近似しておるかといいますると、日本東南アジアの方が近似性が多いだけに、ここで技術の移植をやるというようなことの結果、深刻な影響を受けるのは、欧州の先進諸国に比べて日本が一番激しいのじゃないかというふうに非常に懸念をせられるのであります。それが一点と、それからもう一点は、いずれ日本東南アジアに技術を持っていきますならば、プラントの輸出もできるでありましょうし、あるいは化学原料の輸出もできるでありましょうが、幸か不幸か、プラントの輸出あるいは化学原料の輸出ということになりますと、これは大企業関係でありまして、大企業関係、要するに重化学工業の輸出というものは見込みがかえって立つということになるでありましょうが、それに反しまして、中小企業製品、要するに軽工業製品、しかも完成品、こういうものの輸出がふさがれてくるということになり、また御承知通り、雑貨等になりますれば、原材料は大体において国産のものであります。しかも高度の手を使っておりまするだけに、外貨の手取り率は、他の輸出商品に比べまして中小企業製品、完成品、雑貨、軽工業品というものの方が、重化学工業品に比べますというと外貨の手取り率が高いのであります。従って、非常にうまくいきそうであるが、やった末、国際収支から見ますというと、意外なマイナスがそこに出てくるというようなことが出やしないか。その点を最も憂えるものでありますが、この点につきまして、これは通産大臣にまずお尋ねした方がいいのかもしれませんが……。
  74. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) お話のような面は確かにあると思います。しかし、今後日本の輸出を考えます場合には、あくまで、開発された米国、その他欧州等につきましては高級化された雑貨品あるいは繊維品、こういう物を出し、低開発地域につきましては、やはり重工業品、化学工業品というようなものを出していかなければ、今後の日本の貿易全体として考えますと、発展の余地がないというふうに考えますので、そういう面も確かにありますが、積極的にやはり東南アジアの開発に協力しながら、同調して、さらに日本の商品もまた、機械なり、それに伴う原料品を買わせる、こういうふうな行き方をせざるを得ない、かように考えておるのであります。
  75. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今、質問をいたしました趣旨から見まして、比較的摩擦の少いものとして東南アジアに技術の輸出が可能であるというようなふうにお考えになっておるが、これはどういうものか、具体的に伺いたいのであります。
  76. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 実は逆に考えまして、陶磁器とか、そういうようなものは日本で作って、向うで作らせる必要はないぐらいだというふうに考えておりますが、具体的な商品につきましては、もう少し詳しいことをあとでまたお答え申し上げます。
  77. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それでは、総括的にはあとでまたお尋ねすることにしまして、アメリカの日本品輸入制限、さらに関税の引き上げ問題が非常に深刻な問題になっていることは言うまでもないのでありますが、これに対しまして、政府ではそれぞれ手も打たれておるでありましょうが、これの最近の成り行き、また今後の見通し、こういうものについて伺いたと思うのであります。
  78. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 対米輸出の関係は、御承知のように、はなはだ困った事情がいろいろ起ってきておるわけであります。特に、本年はアメリカの中間選挙でもありますし、また、互恵通商条約の改訂期にも当っております。そういうようなことからして、アメリカにおきます中小企業団体あるいは業者団体等が、それぞれ関税問題なり、あるいは関税引き上げの問題なり、輸入制限等の問題について議会等に運動をいたしております。そういう関係でありますので、本年は実は非常にそういう声が活発にアメリカ議会等にも反映をいたしてくるのではないかということを、われわれは一そう心配しておるわけなんであります。むろん、数年来いろいろな問題につきまして議会等にも陳情あるいは採択されたものもあるのでありまして、日本だけの品物につきましても約二十四・五件、議会にこの六、七年の間に提案されており、採択されたものは三件でありますが、幸いにして今日までは、大統領の拒否権によりまして、関税の問題につきましては成立いたしておらぬような事情にもなっております。しかし、今申し上げたような状況でありますので、外務省といたしましても、昨年秋以来、この問題につきまして、しばしばアメリカ当局と、ほとんど定例的に会見をいたして、努力をいたしております。一方、アメリカの議会におけるこれらの問題は、アメリカの議会の実情等もありまして、やはり若干、いわゆるロービィイストを使うというような必要もあるわけであります。弁護士等にお願いをしまして、そうして関税引き上げ制限等の委員会に公聴人として出席してもらい、そうして日本側の立場を弁護してもらうというような措置もとっております。また、日本品の品質なり、その他の問題についても、できるだけ十分に周知させられますように宣伝活動を続けているわけであります。また、民間各業者団体の方とも、あるいは商業団体の方々とも話し合いをしながら今日までやって参ってきております。今後ともそういうような活動の分野を広げて参って努力をして参りたい、こう考えております。
  79. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 現在、米国の輸入制限の問題の中で、最も典型的な問題としてやかましい問題になっておりますのは、御承知の金属洋食器の問題であります。これは御承知のように、現行関税は一二・五%あるいは一九%であるのでありますが、これを一挙に四〇ないし五〇%に引き上げようという勧告を行なったのであります。ところが、ごく最近、関税委員会の勧告に対しまして、米国の大統領の方針が決定せられたように聞くのでありますが、正式に決定せられたのであるかどうか、この点につきまして、外務大臣あるいは通産大臣から承わりたいと思います。
  80. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、金属洋食器の問題につきましては、一月十日にアメリカの関税委員会をパスいたしております。従って、アメリカの法令によりますと、六十日以内に大統領が拒否権を使わなければ、委員会決定が承認されることになっております。本日参りました電報によりますると、八日に大統領が拒否権を行使いたした、そしてこれを葬ったことになっております。それらの問題につきまして、今日まで外務省といたしましても努力をいたしますし、また、その内容、日本側の意図としても、通産御当局と十分な御連絡がとってありましたので、その点は通産大臣からお答えいたします。
  81. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) けさアメリカで発表いたしておるようであります。それにつきまして、われわれといたしましても、十月から一応規制はやったのでありますが、遺憾ながら、それでもなおかつ、関税委員が全員で引き上げを勧告をするという決定をいたしました。従って、事態が容易でないということを考えまして、むしろ、さらに自主規制を強化するということで、五百五十万ダースというところで押えようという、この一月一日から向う一年間、五百五十万ダースということを申し入れましたところが、われわれの考えを了としてくれまして、関税引き上げは行わぬというようなことに決定いたしたように発表されております。
  82. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 年間五百五十万ダースに制限するということになったという、ただいまの御答弁趣旨でありますが、この程度に抑制するということになりますと、洋食器業界に非常に不利をもたらすということになりはしないかと思うのでありますが、その点のお見通しはどうですか。
  83. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 五百五十万ダースといいますのは、過去三ヵ年平均であります。もちろん、業者としてはつらいと思います。しかし、関税が引き上げられましたら、これは全く壊滅に帰するのでありまするから、この際としましては、自主規制をやってもらって、別に将来におきましての何らの約束があるわけでもありませんので、今後善処をしていきたいと、かように考えております。
  84. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうしますと、来年度以降の輸出数量をどういうふうにきめようというような約束とか、その他一切の将来についての約束というものはないというふうに了承してよろしいでしょうか。
  85. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) もとより、われわれから自主規制をやるのでありますから、多きを望むわけに参りません。しかし、来年以降のことは何ら触れておらぬのであります。
  86. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それでは他の洋傘骨あるいは体温計などについて、どういうふうに進んでおりますか、この点を伺いたいと思います。
  87. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 関税委員会におきましても、全員一致で決定しましたのは洋食器だけであります。それ以外につきましては、洋傘骨等におきましては半々という、そういうようなことであります。一番きつい洋食器につきましてこういう内容を示したわけでありまするから、そのほかにおきましては、これ以上心配することはないんじゃないかと、かように考えております。
  88. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいま楽観的な御発言がありましたけれども、他のものについても容易ならぬ今後の情勢だろうと私どもは考えるのであります。それと同時に、ただいま明らかにせられました年間五百五十万ダースに押えるという、金属洋食器もかように数量の制限をせられるということが、非常に日本内地の業界としてはやりにくいことになるのでありまして、これについては数量規制ということは極力避けまして、そのかわり政府が事前に業界を指導する、またアメリカ側に対しましても、十分にPRをやるというような方法によりまして、事前の予防策を講ずる、かような行き方で、突如として商品ごとに輸出数量の制限を受けるというようなことは、極力避けなければならぬことじゃないかというふうに私どもは考えるのであります。この点につきましては、総理はどういうふうにお考えでありましょうか。総理と外務大臣に、今後の方策の基本方針を伺っておきたいと思うのであります。
  89. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は従来、日米の間の通商貿易関係におきまして、御承知通り、全体として見るというと、日本とアメリカとのバランスは二対一ぐらいの状況で、日本の方が不利になっております。従って、アメリカが、日米協力の線は言うを待たず、貿易の面から見ても、日本商品に対してこんな制限を加え、もしくは防止的な関税をかけるということは、これは非常に望ましくないことであります。そういうことの起る原因を確かめてみまするというと、これはPRの点においで欠けておる点もございます。また、事前にいろいろと了解を十分に果すということがせられずして、事が起ってから、これに対する対策を考えるというような点もあります。また、日本側の方において、いわゆるオーダリー・マーケットといいますか、秩序のある輸出というものでなくして、何か売れるというときになると、それがむやみにそれに集中し、そこで問題を起しておるような、一時それは非常な輸出ができるが、そのまた半面、非常な不況がくるというような、こういう点も考えてみまするというと、日本の中小企業の産業組織についても考えてみなきゃならぬ。また従来、こういうものの中小企業、工業の製品が、商品が扱われるような場合において、向うのバイヤーが非常に活躍して、そうして値段を下げていく、これに応ずるように、中小企業の方でも、内部的に競争して値段を下げておるというような事態もございます。従って、産業の特質、本質をも考えて対策を講じなきゃならぬという、国内政策の問題もあると思います。これらのものを通じて、十分に将来こういう遺憾な事態が発生しないように、また、日本のアメリカ市場における貿易が順調に伸びていって、そうして今申す国際収支関係においてもバランスに近くなっていくというような努力日本側もし、アメリカ側においてもさらに協力してもらって、これに対してアメリカの産業界、またはアメリカの大衆においても、十分理解を得るような宣伝なり啓蒙なりという方法、また、なるべく事前にそういう問題を取り上げて、両国において処理していくというようなことを考えて参りたいと思います。具体的に申しますというと、あるいはこういうことに関して日米共同の委員会を作って、常時、そういう問題を調査し取り上げて、これに対する対策を考えるというような問題もありましょう。また、ジェトロその他の日本の輸出機構における宣伝機能をさらに充実していくということも考えなければならない。同時に、先ほど申しました国内対策をとっていって、こういうことを未然に防ぐように今後とも特別に努力をしたい、かように考えております。
  90. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題は、問題が起りましたときに、あわててその問題だけを取り上げるばかりではいけないのでありまして、常時やはり日本製品のPR活動をやって参らなければならぬことは、ただいま豊田さんの御指摘になった通りであります。私どもも、できるだけそういう意味において努力をして参りたいと思っておるのでありまして、金額は非常に少いのでありますが、来年度三千七百万円ほどを、ロビィイストの活動その他弁護士等を雇って公聴会に出てもらう、そういうようなものを予算にも計上いたしております。その他、日本商品に対する宣伝活動というようなものについてもやって参ります。また、常時、日本の対米輸出が現在ではほとんど中小企業の立場にあるものが多いのでありますから、外交ルートを通じまして米国政府に対しましては絶えず、日本の中小企業の育成ということが、また安定ということができなければ、日本の国民生活に非常に脅威をもたらすのだということを申し述べておるわけであります。  なお、PR活動等につきましては、これは豊田さんも中小企業に御関係の方でありますから、むしろわれわれからもお願いいたしたいのでありますが、金属洋食器にしても、あるいは体温計にしましても、あるいは傘の骨等にしましてもそれぞれ小さい業種の方々が集まっておられるのでありますから、それぞれ個々の活動ということは非常にむずかしいと思うのでありまして、そういう対米輸出の関係の方々が集まって、常時御相談もでき、やっていただくような機関があれば、われわれとしても大へん都合がいいと考えておるわけであります。そういう意味において、そういう機関ができますれば、物質的に非常な御援助を申し上げられるかどうかわかりませんけれども、できるだけな御援助をし、またできるだけお世話をしまして、そしてそれらの方々のやるPR運動というものにも協力をして参りたいと思うのであります。何分にも、業種別等を見ますと、小さい方々が多いのですから、そのときだけに問題が起きて、そうして活動するということになると、お骨が折れるところが非常に多いと思う。従って、対米輸出をやっておられる方方が、きょうは他人の身だけれども、あすはまた自分たちの身に振りかかってきやしないかというようなことから、まとまっていただければ、外務省としてもそれに十分協力していくにやぶさかでないのであります。
  91. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 アメリカに対しまする日本品輸入の問題また関税引き上げの問題、これは今後もう容易ならぬ問題だと思うのでありますが、ただいまの、今後についてのいろいろの施策について十分に一つお考えを願いたいということを、ここで強く要望いたしますと同時に、今度は中共関係につきまして、第四次の協定調印もできたようでありますが、果してこれが中小企業製品の輸出にどの程度貢献するか、これは相当悲観的な見方をせざるを得ないかと思うのでありますが、しかし、これに対しまして政府ではどういう見通しを持っておられますか、まず通産大臣にお伺いしたいと思います。
  92. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 確かに、最近の中共の輸入いたします傾向としましては、機械類、あるいは鉄鋼類、あるいはそれに要する化学工業品、こういうことであります。しかも、また向うから輸入をいたしまするものは非常に限られておりますために、なかなか思うように輸出入のバランスがとれぬ、こういうような点であります。その点は確かに仰せのような事態だと思います。必ずしも明るい見通しがあるわけではありません。しかし、まあ何と申しましても、極力今後の政策をうまくやっていきますれば、規模は拡大するということはもうはっきりいたしております。中小企業の製品につきましても、できるだけ中共にも出すというふうに指導もし、施策も考えていきたいと、かように考えております。
  93. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいま通産大臣、率直にお答えになりましたように、中共貿易につきまして、中小企業製品輸出ということについてはそう楽観ができないということでありますが、アメリカの輸入制限の問題も先ほど来お答えのあった通りでございまして、今後楽観を許さぬということになるのであります。ところが、最初申し上げましたこの東南アジアに対する中小企業育成の構想問題でありますが、先ほど来お尋ねしますと、日本と摩擦の少い業種というものについて明確なるお答えもないし、またこれの裏づけになりまする資金計画についても、明確なお答えがないのでありますが、しかし、今後この方向で漸次進んでいくということになりますと、最初に申し上げましたるごとく、やりかけた以上は相当徹底したことをやらなければ、日本自体の国威に関するということにもなるのでありましょうし、その結果、あちらに中小工業の勃興してくることはけっこうでありましょうけれども、それに伴って反動作用といたしまして、日本の中小企業製品の輸出についての輸入制限措置も出てくる、かえって感情問題もそこにおいて国際的に出てくるというようなことまで潜在しておると言わざるを得ないと思うのであります。こういう点から考えますると、アメリカ市場についても、中共市場についても、東南市場についても、中小企業製品、特に外貨の手取率の高い製品の輸出というものが、八方ふさがりになってきておるということが最も憂慮せられるのでありまして、これで果していいのかどうか、この点を非常に憂慮いたすのでありますが、これにつきまして総理の御所見を伺いたいと思います。
  94. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来、日本の中小企業の製品というものの輸出の状況を見ますると、中小企業なるがゆえの非常にいい特徴、これは独得の、大企業が及ばないような特徴も私はあると思うのです。特に完成品について、機械力によらず完成するために、労力もしくは人間の技巧というものが特に商品の中へ具現されるようなものにつきまして、中小企業が持っておる特徴というものは非常にあると思う。同時に、従来まだ産業の発達が比較的おくれておったために、いわゆる近代化されておらないために、商品が非常にまちまちであるとか、あるいは粗雑なものがあったり、あるいは品質が劣っておるというような欠点もあると思います。これらの点を、これは主として日本内地における中小企業の持って行き方、これの近代化ということも言われておりますし、その設備の改善とかいろいろの、あるいは過当の競争を排除していくとか、あるいは最低賃金法等によってその労務の状況もよくしていくとかというような、いろいろな国内においての対策もあります。ところが、対外的に考えてみるというと、私はまだ、これは中小企業だけじゃなしに、日本の貿易政策として大いに考えなければならぬと思いますのは、たとえばアメリカのごとき市場におきましては購売力が非常に高いのでありまして、私、アメリカの人々と話した一、二の実例を申しますと、たとえばカメラのごときものはこれは世界一だ、こういうことで、日本のこれだけの工業力を持っておるのであるから、アメリカ市場を相手にする場合に、そう粗悪なものを、安かろう、悪かろうというような品物はよこさずに、世界の一流の国に伍して劣らないようなものを持って来てもらいたい。われわれの方は購売力があるんだから、いい品物を、少々高くてもいい品物を持って来てもらうということであれば、これに対する一般考え方は違うということも申しております。もちろん、アメリカにおいても大衆は安いものを買うというような点もありますから、そうも一がいには言えないと思いますが、ああいう市場に対してはできるだけ、中小企業のものにいたしましても、品物をよくして高級――値段は少々高くなっても高級なものも作っていく、そういうものを向けていくというふうな貿易政策をとる必要がある。購売力の比較的低い、また全体の国民生活の水準も低いような所におきましては、やはりその地に適しているようなものを持って行くということになるべきものであって、やはり中小企業の、ことに輸出産業に関係しておる中小企業国内における対策、貿易政策ということについては、そういう点にも意を用いて将来行くべき必要があろうと思います。  先ほども申し上げましたように、この東南アジア諸国に中小企業の技術が移植され、もしくは日本の中小企業企業移民その他の企業進出のような形で向うへ出かけていって、そうしてこれらの国における生活必需品を作るというようなことになれば、従来売れておったところのものが売れなぐなるという点が、確かに豊田委員の御心配の点があると思います。しかし、これはさっき申しましたように、そういう傾向は当然起ってくるのであって、それにせめて日本がやはり協力をして、日本に対して全体として国民感情としていい感情を持たしておくことが、一般日本商品なり、あるいはマーケットとしての基礎的の国民感情は、よくなると思う。しこうして日本が、そこらの地域における購買力が増してくれば、だんだん高級なものをそれらの地域へ売っていき、またわれわれもそういうふうに生産を指導していくというふうに進めていく以外には、方法がない。また、そうすることが結局、長い目において日本のとるべき方策であると、かように思います。
  95. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 先ほど来お話し申し上げておりますように、今後の中小企業の輸出という面は、あくまで私は、開発された地域につきましては新規のもの、それから高級化されたもの、これをねらっていかなければならぬと思います。また、中共その他につきましては、重化学工業品が行くという傾向は、これはいなめないところでありますが、しかし、それによって日本の産業は、御承知のように、機械類輸出にいたしましても、何にいたしましても、下請工業が中小企業でやられておりますので、これは何としましても、下請工業としては非常にけっこうなことだと思います。必ずしもそう悲観するに当らないのであります。総体として考えていきまして、結局中小企業ワクも広がっていく、こういうふうに考えておるのであります。先ほどちょっと、東南アジア等におきまして現在まで、中小企業の摩擦といいますか、そういうようなものでは、金属玩具とか、竹すだれ、陶磁器なんかの問題があったようであります。それらは、ただいまのところ、どういう商品が衝突し、摩擦を起すかということについて、ただいま申し上げます段階でもないのでありますが、それらにつきましては今後十分注意をいたしまして、あまり摩擦の起らぬようにという方向で善処いたして参りたいと思います。
  96. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 東南アジアに対しまする中小企業育成方針につきましては、るる今まで申し述べましたが、将来相剋摩擦を誘発して、かえって国際的に見ましたる場合に、恩があだになるというようなことにならないように、これは具体的に十分に将来を考え、御検討を願ってお進みにならなければいかぬだろうと。同時に、外貨の手取率は、雑貨を中心といたしましてこの中小企業製品というものは非常に多いのでありますから、この面を軽視せられないように、重々お考えになることを重ねて要望いたしまして、次の問題に移ります。  農業協同組合関係のことなんでありますが、これらの系統機関によりまする購買事業は、肥料、農機具、農薬、生活用品に至りまするまで、全面的利用を目途といたしまして、商業分野にどんどん過当に進出してきているのであります。肥料の例をとりますると、全購連の団体におきましては、全体の五五%をすでに占めているのであります。末端の単協で見まするというと、肥料は全体の八二%がすでにこの農協によって占められているのであります。これでは本来の商業者に対しまする影響がきわめて深刻であるということは、もう申すまでもないのでありまして、このままで参りまするというと、自由経済というものが破壊せられる段階になってくるというふうに考えられるのでありますが、これにつきまして農林、通産両大臣にまず具体的な御所見を伺い、全体の問題として総理の御見解を伺いたいと思うのであります。
  97. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農協の系統機関が、商行為といいますか、販売あるいは購買等に進出いたしておりますが、今お話しのように、肥料を例にとりましても、中央団体で取り扱っているのは六割以下であります。肥料等についても、私は、農協系統と商人系統と、まあ切磋琢磨といいますか、やはり両者がこれを配給するといいますか、携わることが適当であろう、こういうふうに思っているのであります。ただ農協は、御承知のように、これは中小商工業者と同じような立場にありますが、経済力の非常に弱い立場にある者の一つの団体組織でありますので、その人々の生活を守るという意味におきましては、どうしても農協系統を利用し、この団体に入って商行為等をするということは、私は必要であり望ましいことだと思っております。  しかしながら、独占的になるようなこと、こういうことは避くべきことでもあり、また、たとえば農協の中に専属利用契約がありますが、これは今任意的であります。これを強制的にするかという問題もあるのでありますけれども、今その点については検討いたしております。独占的に陥らないようにいたしているのであります。もとは反産運動とか、中小商工業者との間に相当な対立があった時代もありますけれども、私どもといたしましては、やはり地方等を見まして、農民のふところ工合がよくなるということがやはり中小商工業者に対する購買力がふえていくというような形でありますので、そういう点についてお互いに同じような立場でありますので、こういう人々の生活向上するということが望ましいと思っておりまするし、そういうふうに私どもの方といたしましては指導いたしておるようなわけであります。そういうことで、独占的に陥らないようなことにおきましては、農民の生活を守るということで、農協は農協系統として、農民の共同の利益のために動くということについては、私は一向差しつかえないと思いますが、そういう指導はいたしておるわけであります。
  98. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 確かに今農協の発達、さらにまた、購買組合、あるいは生活協同組合その他の発達によりまして、中小企業者に打撃を与えておりますことは、われわれも十分承知いたしております。しかし、これを法律で押えるという――員外利用は別でありますが、法律で画然と活動範囲をきめるというわけにもこれはなかなか法制上むずかしい問題でありまして、率直に申し上げまして不可能な問題じゃないかと思います。まあ員外利用につきましては、あくまでこれはすでに政府も特別措置というようなものを提出いたしております、これは早く成立をさせたい、かように考えておるのであります。いずれにしましても、さらに私は積極的に中小企業者の振興策ということを講じ、御承知のように、団体法その他によりまして、安定した経営のやれるように、また、金融につきましても円滑にいくように、また、いろいろ経営の面に対しましても、いわゆる企業診断その他合理化、設備の近代化ということによって積極的に振興をはかっていって、十分対抗のできるようにと、こういう方向でいかなければならぬ、かように考えまして、極力その方面で推進していきたい、かように考えております。
  99. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 農林大臣、通産大臣からお答えをいたしましたように、要は、この社会全体の何を政治としては見渡して、そこに不当の摩擦や不当の利害の衝突のないように持っていくことが政治の理想でなければならないと思います。かつてありました反産運動とか、いろいろな過去においての私どもの経験もありますが、要は、私は農業協同組合法律が定めておるこの目的をおのおの逸脱しないようにいくならば、これは大体の調整はとれていくものであり、また、そういうふうに法の整備をしていくべきものであると思います。ただときどき今も申しております員外利用のあまりに行き過ぎたところにおきましては、その点が非常に問題である、あるいはあまりにも農協の力が強くなってくるというと、中小業者との間の何が問題になる、あるいは逆に商人や何かがあまりに力が強いために、農業経営というような利益の少いまた規模の小さい、しかも国としては、国民に重大な意義を持っておるものに対しては共同の力によってその利益を増し、その産業を発達せしめるということを考えなければならないのでありますから、十分におのおのがその分を守ってのりを越えないように、われわれが見ていって調整をとるということが必要であろう、こういうふうに考えております。
  100. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 全漁連につきましてもやはり同様な問題があるのでありまして、いわゆるA重油の割当につきまして、最初は十万キロの割当を全漁連が受けたことによりまして、石油販売業者に対する影響は相当深刻であったのでありますが、さらに十万キロの割当がせられまして、今日すでに二十万キロの割当を受けて全漁連が直接A重油を扱いまするために、漁村相手の石油販売業者というものはまさに失業寸前の状態になってきておるのでありますが、これにつきまして、農林大臣及び通産大臣はどういうふうにお考えになり、また、御相談になっておるのでありましょうか、これについて具体的に御所見を伺いたいと思います。
  101. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように、日本の何といいますか、貧乏の層といいますか、非常に生活が低い層といたしましては、むしろ農民よりも漁民がひどいのが現状であろうと思うのであります。しかも漁区は狭くなり、あるいはまた、魚種が少くなり、特に沿岸漁業等においては苦しんでおるのであります。そういうことでありますので、全漁連等がいろいろ零細漁民のために力になるということに相なっておりますので、そういう点から重油の配給等につきましても、全漁連に今お話のような数量を配給して、漁民にいささかでも力をつけていこうということが必要であろう、こういうように考えましたので、そういう措置を現在とっておるわけであります。
  102. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これは長年の問題であることは御承知通りでありまして、結局最終的に半期十万キロということで決定いたしたんでありまして、最近別にふやしたわけではありません。今後も別にふやす考えは持っておらぬのでありまして、この点は従来のいきさつからいいますと、やむを得ないんじゃないかというふうに考えております。
  103. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それでは二十万キロ以上にはふやさぬというふうに了解してよろしいですか。
  104. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そのように私は考えております。
  105. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 農林大臣の御所見はいかがですか。
  106. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 現在その方針で進んでおります。
  107. 千田正

    ○千田正君 関連して。ただいま豊田委員質問に対しまして、二十万キロ程度で今後ふやさないという通産大臣並びに農林大臣のお答えでありますが、漁業用重油は、一体漁業用には年間どれだけ必要であるかという必要量を一つお答えを願いたいということと、二十万キロ割り当てたことによって、漁民が安い油を手に入れて生産コストにおいて十分にサービスできた、こういう実績もあわせまして、今後とも二十万以上はふやさない、こういうことであるというと、これは農林漁業政策の上に一応の影響を及ぼすものと思いますので、農林大臣及び通産大臣から、年間必要であるところの漁業用油がどれだけあるかということを明示していただきたいと思います。
  108. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ただいまその数字を詳しく私承知しておりません。必要がありますならば、後刻申し上げたいと思います。
  109. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 油はもちろん相当量あるわけでありますが、ただひもつきに安い油というのでやっておりますのは半期十万キロであります。この点は先ほど来お話のありますように、商業面にあまりまた影響を与えましてもいかぬ、両者の調和をとっていかなければならぬ、こういう点もありますので、ただいまそういうふうに考えておるわけであります。
  110. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 生産者はいろいろ共同施設等を必要とするということもよくわかるわけでありまするし、また、俸給生活者、賃金生活者もその共同施設を必要とすることもわかるのであります。また、商業者も何らかの共同施設を必要とするということもそれぞれ理由のあることではありまするけれども、あまりにこれが行き過ぎになるということは非常に問題になってくる。ことに、日本のような人口の過剰な国におきましてお互いに相侵し合う。しかもどっちかといいますると、中産階級、小産階級、この間においてお互いに共同施設を中心にして兄弟かきにせめぎ合うというようなことは、これは国全体として非常に考えなければならぬ問題だと思うのであります。原則はやはり生産者は生産本位の共同施設を原則とする、また、月給取りないし賃金生活者というものは、その収入によって生活の安定し得るようにもって行く。しこうして商業者というものは、また商業の分野において生活が安定し得るという行き方をいたしませねば、日本の人口問題というものは解決しないと思うのであります。また、かような線で行かなかったならば、税金の第一納め手がなくなるということにまでなってくるのでありまして、これにつきましては、国全体としてしっかりした対策をお立てになり、その線をはっきりと守って行くということが必要なのじゃないかというふうに考えるのでありますが、これにつきまして、総理の御見解を伺いたいと思います。
  111. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御意見のように、日本のこの国政の上において、特に小規模の配給に従事しておる小売商の問題とか、あるいは零細農業の問題とか、あるいは零細漁民の問題というような、また、低所得者の問題とかいうような問題は、結局すれば人口の問題に基因する非常に重大な、これの解決策、これに対する対策というものは、非常に困難な問題を含んでおると思います。従来ともそういう人々は、やはり一つの組織を作り、その組織、共同の組織によっていろいろの便益を享受しながら、その従事しておる事業や産業の発達に資するという組合組織その他の共同の組織が考えられるということは当然であります。また、そうしなければ、なかなか個々の人々が自分だけの力でどうしようとしても解決できない問題が幾多あろと思うのであります。さて、そういう共同の組織ができました場合に、国家が、国がそれを対象としていろいろな保護を加えて行き、また、いろいろな便益を与え、また、ある程度の権利等を付与して、そうしてこれらのものの成り立って行くように、また、それらのものの産業が改善され、生活向上するように考えることもこれは当然でありますが、要は、これらの間の調和をどういうふうにつけて行くか、一つのものに特に多大の保護なり、多大の便益なり、多大の権利を与えるということによって、ほかの者が非常に困ってくるというふうなことのないようにバランスをとって行くということが、現実の政治として問題であろうと思う。その場合において、バランスをとって行く場合においては、実際の現実が、特に生産者なら生産者に従来非常に不利であったとか、あるいは配給業者に特に不利であったという場合において、ある場合においてはそれに特別に、そのことだけを取り上げてみますと、特殊な保護政策をとらなければならぬ。これがとることによって、結局は全部のバランスをとって行くということになるために、そういうような変化によりましては考えなければならぬと思います。  先ほど来問題になっております全漁連との油の問題につきましては、実は私非常に古い記憶を持っておるのでありまして、私がまだ役人をしておる時代からの問題であって、なかなかその間の調整というものは非常にむずかしかったのでありまして、今の程度があるいは漁業者の方からいうと不満足であり、あるいはまた、配給業者からも不満足だと、どうしてもこれはある程度の不満足が、一方が全部よくて、一方だけが不満足というのじゃ、これは実際の調和がとれておらないので、まあ今のあたりのところでしばらくは推移を見るというのが適当ではないか、かように考えております。
  112. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 しばらく支払遅延問題を中心にいたしましてお尋ねをいたします。  昨月四月の国会のときに、公取委員長に私お尋ねしたことがあるのでありますが、手形サイトの一番長いというのは一体どのくらいに見ておられるかということを当時お尋ねしたのでございますが、その際には百八十日というぐらいに答えられたのでございます。ところが、世間には二百十日の台風手形だとか、あるいは十月のお産手形というものが横行しておるということが言われておるのであります。その際にそういうことを質問いたしましたら、調査をして報告するというふうに言われたのでありますが、最近手形サイトの最長のものは何日だというふうに公取としては考えておられますか、その点伺いたい。
  113. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) 下請代金支払遅延につきましては、毎年度一定の計画を立てまして、その状況の報告を求めまして、その中でおもしろくないものに対しましては、さらに詳細な調査をするという方式をとって参っております。ことしは七百四十社ほどの、業種にいたしまして四十七業種の会社を調べまして、その結果、長いものでやはり百九十日、あるいは今お話しがございました台風手形、二百十日の、しかも回し手形で支払っておるというような極端なものもございました。概して昨年から比べまして、五月の金融引き締め後の状況といたしましては、平均いたしまして十日から三十日ぐらい延びておるというのが実情でございます。しかしながら、割合に引き締めの状態のもとにおきましては、平均の支払率はかなり、存外いいということが言えると思いますが、中には今申しましたような非常に長いもの、あるいは同じ業者でございましても、自分の系列下の下請には非常によく払う、そうでないものには非常におくれて払っておるというような、かなりの差別的な待遇も見えております。大体サイトの関係はそんなふうでございます。
  114. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今回は二百十日の台風手形は認められたのでありますが、十月のお産手形は認めませんか。
  115. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) 私の申し方が悪かったのでございますが、それを認めたというわけではございませんので、実はどの程度のものを遅延と見ておりますか、その一応の考え方を申し上げますと、現金払いが、これがまあ正常の支払いでございましょうが、手形によりますものは正常の銀行その他の通常の金融機関で直ちに割り引けるものというふうな一応の基準で処理をいたしております。これはもちろんサイトの関係もございますが、振出人の信用、あるいは割り引のワクとか、いろいろな諸般事情から考えまして、直ちにそういうような金融機関で割り引けるものということになっておりますので、先ほど申しました二百十日あるいは百九十日というようなものはもちろんこれは割り引けないのでございまして、それは正規な支払いとは見ておりません。そういうものに対しましては、直ちにそのサイトをもっと短かくするようにいろいろ指導をいたしております。
  116. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 私のお尋ねしておりますのは、二百十日の台風手形、あるいは十月のお産手形というものが横行しておるということをお認めになるかどうかというのであります。で、今、百九十日あるいは二百十日の手形の動いておるということはお認めになったようでありますが、お認めなったというよりも、御承知になっておるようでありますが、十月のお産手形というようなものが、町にあるということを公取としては御承知になっておるのかどうか、公取として認めるというと語弊がありますが、そういうもののあるということを認識しておられるのかどうか、そういう点であります。
  117. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) 先ほど申しました調べました会社の数は少うございますが、そういうものが横行しておるかどうかまでははっきり申し上げられませんが、相当あるのではないかというふうに考えております。
  118. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それでは正当な支払い手段として認めておる手形、これのサイトは何日というふうにお考えになっておりますか。
  119. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) これはサイトだけでは、ちょっと先ほど申しましたように、きめられないのでございますが、たしか去年御質疑に対しましてお答えいたしました際は、まあ一般に九十日というようなことがいわれておりまして、しかしながら、やはりそれがだんだん、金融機関にもよりまするが、九十日以上のものも割り引けておる場合があるのでございますので、サイトだけで申しますと、その辺が非常にむずかしいことになります。大体割り引けるかどうかということに一応の基準を置いております。
  120. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいまの御答弁では、大体九十日のサイトのものは割引が可能であり、従って、これを正当な支払い手段として見るというような御答弁と承わったのでありますが、しからば、それをこえるサイトのものに対して、どういうふうにするかということであります。その九十日程度のもの以上をこえる手形ということになりますると、これを突きつけられる相手方というものは、要するに自己の経済上優越な地位を占めておる者から、その相手方に不利益を強いられているということになると思うのでありまして、そういう考え方からいたしますると、これはいわゆる不公正取引の特殊指定にせられるべきものだというふうに考えるのでありますが、要するに、この正当なる支払い手段と見られないような、たとえば九十日をこえるようなサイトの手形、これを相手方に渡すものは不公正取引になるというふうに特殊指定をせられるのが当然だというふうに考えるのでありますが、これについての御見解を伺いたいと思います。
  121. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) この下請の代金の支払い遅延問題その他親事業所の下請に対する不当な取扱いというものは、ただいまお示しの不公正な取引方法一つに該当するわけでありまして、従いまして、一昨年の下請代金支払遅延等防止法ができまするまでは、独占禁止法の規定によって処理をいたしておったわけでございますが、それをさらに有効に処理いたしますために、一昨年国会において、先ほど申しました法律の御制定をいただいたわけでございますが、結局、現在は法律通りの規定によって一応処理をいたしております。この法律のできまする際にもいろいろ御議論があったと思いますが、どの程度の支払い期限を法律できめるか、あるいはサイトはどのくらいにきめるかというようなことも、いろいろ御議論がございましたのでございますが、いろいろ考えました結果、法律の文句といたしましては、遅滞なく支払うというようなかなりばく然とした表現になっておりますが、実際の扱いといたしましては、今申しましたような一応の目安で処理いたしておる次第でございまして、これをあまり形式的な規定を設けることは、かえっていろいろな処理に弾力性がなくなるおそれもございますので、この点はもう少しこの法律を運用して参りまして、その上でもう一ぺん検討してみたいと考えておる次第でございます。
  122. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいまの御答弁趣旨を前提にいたしまして考えまして、九十日をこえるような手形の割引利子は、振出人の負担にするということが公正取引から考えますると当然というふうに考えるのでありますが、さような趣旨に支払遅延防止法を改正する御意思はございませんか。
  123. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) 長期の手形の割引料を振出人、すなわち親事業所の負担にすべきではないかという御質疑でございまして、まことにごもっともと存じます。手形で出しますことが、支払いますことが最初から判明しておりまする場合は、大体そういうものを考えに入れまして、代金をきめておりまするから、その場合は問題ないと思いますが、今まで現金で払っていたものを、突如として長い期日の手形に切りかえる、あるいは今まではかなり短期の手形であったものを非常な長期な手形に親事業所の方で勝手に切りかえて、それを押しつけるというような場合は、その割引料と申しますものは、結局下請人の思わぬ損失になるわけでございまして、そういう場合につきましては、実際の処理といたしましては、私どもの方といたしまして、下請代金の不当な値引きに実質的にはなることでございますので、そういう見解に基きまして、適当な処理をいたしてきておりますし、今後もその方針でやって参りたいと思っております。ただ、これも法律の規定ではっきり書くということになりますると、そこにまたいろいろこまかに検討してみなければならぬ問題もございますので、この点もあわせて今後検討を続けて参りたいと考えます。
  124. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 検討を続けるという場合には、どうもずるずるべったりになっていくのが普通であることはまことに遺憾と考えるのでありますが、今の検討するという意味は、要するに九十日をこえるような手形の利子については、振出人負担とするということについて、ほんとうに確信をもって今後御研究になり、支払遅延防止法の改正にまで持っていくというふうに了承していいのでありますか。
  125. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) この点につきましては、御承知のように、社会党の方からもこの割引料の点については、たしかまだ何もなかったと存じますが、サイトの問題等については、社会党の改正案も出ておることでございますので、私の方でも慎重に検討いたすつもりでございます。
  126. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいまの御答弁は、真剣に御検討になり、実現に持っていくというふうに了承します。その趣旨で御研究を願い、ぜひ早く実現せられるようにせられたいと思います。  次の問題は、支払遅延の事前防止の問題でありますが、ただいまのところでは、出てきた書類によりまして他動的に取り締るような行き方になっておると考えます。これを自動的に事前に支払い遅延をやろうという考えを抑制していくような方法というものをお考えになったことがあるかどうか。これを具体的に申しますると、支払い代金をまだ下請業者に支払っておらぬ、その数字につきまして、公認会計士の監査証明をつけたものといたしまして、これを親事業者が定期的に公正取引委員会報告をするという方向に持っていきまするならば、事前にこれは明らかになってくるために、親事業者の方は自動的に支払い遅延を自粛してくると思うのであります。こういういき方をするように、これまた支払い遅延防止法を改正してしかるべきじゃないかというふうに考えるのでありますが、この点についての御見解はどうでありますか。
  127. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) 取締りの方法についてでございますが、これは御承知のように、下請業者からの申告を待つことのできない性格の問題でございますので、勢い役所の方からいろいろ取調べを積極的にいたす必要が出てくるわけでございまして、現在やっております方法は、先ほども申しましたように、昭和二十八年から下請の問題を扱っておりまするが、最初のころは数十社くらいを対象にいたしておりましたものを、漸次広げて参りまして、一昨年百五十、昨年はたしか三百、本年は先ほど申しましたその倍以上の七百四十というものを選びまして調査をいたしたわけでございますが、さらに、これをできるだけ公正取引委員会の事務能力のあらん限りの数字にだんだん拡大して参りたいというふうに考えております。そこで、ただいまお話の、そういう公取から特にやらなくても、事業者の方から定期的になり報告を出してはどうかというお話でございます。さらに、それには正確を期するために、公認会計士の監査証明までつけさせるというお考えも、一応ごもっともでございますが、何分私どもとしましては、いろいろ仕事の上の能力にも限度がありますので、先ほどのような方法をとって参ってきているわけでございまするし、実際調べました結果といたしまして、大体総数の約一割程度のものが多少いろいろ問題がございますので、この際下請関係のあるすべての事業者にそういう報告を定期的に出させる必要があるかどうかという点につきましては、もう少し検討を要するのではないかと思います。ことに、公認会計士の監査証明までつけさせるということになりますれば、ある意味におきまして会社のそれだけ負担にもなるわけでございます。この点は、先ほどのいろいろに問題とあわせまして検討いたしたいと思います。
  128. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 会社の負担のことなどを懸念せられておるようなお答えでありますが、大てい会社には公認会計士は、それぞれ顧問なり何なりでおるわけでございます。それからまた、おそらく上場株になっております会社は、一定事項につきまして公認会計士の監査証明付で大蔵大臣報告をしなければならぬことになっておると思います。その中に、この支払い遅延の数字を掲記するようになっておらぬところにまあ問題があるわけなんでありまして、上場株等に対する会社内容の報告につきまして、公認会計士の監査証明付で報告しておる事項の中へ、今の支払い遅延の関係を追加するということならいいと思うのでありますが、その方の改正でもいいし、また、それが一般的に広がっていくので、下請関係についてはどういうものだろうかというような点も懸念せられるから、特に支払い遅廷防止法関係でいったらどうかということなんでありますが、そんなに経費のかかることでもないし、今言うようないき方によりまして、支払い遅延は非常に自粛的に、自動的に改まってくると私は確信するのであります。この点について、大蔵大臣一つ御見解を伺いたいと思います。
  129. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この問題はいろいろとやはり、中小企業、大企業というような関係は、先ほど来お話がありますように、社会的な力の関係もありますので、実際の取引の運行ということを考えなければなりませんので、今の御趣旨は、私何も反対ではありませんので、とくと研究いたしたいと思います。
  130. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 大蔵大臣はそういうお答えでありますが、私は、一そう公正取引委員会としては、大蔵大臣以上に積極的に今の問題について改正をするという熱意を示されて当然じゃないかと思うのであります。大蔵大臣は、この経済界のことはよく御承知ですから、公認会計士云々といっても、そんなに金のかかることじゃないと、もう現に行われていることだという見通しからお答えになっておると思うのでありますが、公取としても、別にこれは御懸念になるほどのことではないのでありまするので、その点についてあらためて御見解を伺いたいと思います。
  131. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) 証券取引法の監査証明と、ただいまお示しになりました御提案とでは、いろいろ趣旨も違いますし、対象の会社もいろいろ違って参りますので、それらの点はいろいろまた考えてみなければならぬと思いますが、御趣旨はよくわかっておりますので、よくその点は引き続き検討いたすつもりでございます。
  132. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 これは非常に効果があると私は思っておりますので、その点一つ真剣に御研究を願いたいと思います。場合によれば、大蔵大臣報告する事項の方でまかなっていいものでありますから、大蔵当局とも連繋をはかられまして、実現をすべく御研究を願いたいと思います。  これは総理並びに法務大臣、公取のそれぞれ御意見を伺いたいと思うのでありますが、不渡り手形は、東京手形交換所だけの調べによりましても、大体毎月六万枚以上くらいになっております。金額で申しますると、五、六十億円くらいに上っておるのであります。これは毎月であります。これが、経済的のみならず社会的にいかに大きな害毒を流しておるかということは、もうあらためて言うまでもないのでありますが、そういうことにどうしてなってきておるかということは、原因はまあいろいろありましょうけれども、これに対して何ら体刑すらない。また、銀行取引が停止せられましても、法人格を変えますればまた銀行取引ができるというようなことでありまして、全くその処置が緩慢きわまるのであります。これがために、この不渡り手形というものがだんだんだんだん横行してくる。それによって非常に、経済的のみならず、社会的にも害毒を流すということなのでありますが、これに対しまして、体刑か、あるいは少くともそれに近いような制裁というものを断固としてやらぬといかぬもう段階に来ているのではないかと考えるのでありますが、さような趣旨でこの手形法等を御検討になる必要があるのではないかと思うのでありますが、これにつきまして、まず総理の全体的なお考えを伺い、あと法務大臣、公取にもお答えを願いたいと思うのであります。
  133. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 不渡り手形の問題は、経済的不況の問題やいろいろなことから、相当多額に近年あるということは、非常に遺憾であります。そういう経済的の理由はもちろんふえたでありましょうが、同時に道義的な考え方の低下ということも、一つの私はなんであろうと思います。いやしくもこの産業界、経済界において活動する者が、その信用基礎である手形、自分の振り出した手形の不渡りを生ずるということにつきましての道義的――事実上の責任はもちろんでありますが、道義的の責任感が低下しているということも非常に大きな理由であります。いずれにいたしましても、これは健全な経済界の発展のために、非常に嘆かわしいことであり、取引の公正を期する上から申しましても、非常にこれを阻害するものでありますので、そういうことをなくするように注意しなければならぬということは、言うを待たないことであります。ただ、それを法制上どういうふうにしてその責任を明らかにし、取締りをし、そういうことを絶滅せしめるような手段を講ずるかということになりますというと、今、手形法その他の法律改正というようなことも問題になると思います。しかし、事はきわめて専門的な法制の問題にもなりますので、十分に一つそういうことにつきましては法制的意見も聞いて、検討する必要があると思います。
  134. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 大体総理からお答えのあった通りでございまして、不渡り手形の社会的、経済的の弊害は、もうお言葉の通りと存じます。この不渡り手形につきましても、たとえば最も悪質なものにつきましては、いわゆる詐偽手段によりまして発行した手形のようなもの、これは刑法犯が伴いますから、必ず刑法によって処断されますが、お尋ねの点は、それ以上に進んで、広く不渡り手形について、刑事制裁をもって臨むことの可否というお尋ねかと存ずるのでございますが、従来の考え方から申しますと、これは根本において、やはり自由経済における自由取引から生まれてきたものでございまして原則としてはやはり個人相互間の民事責任として、争いがあれば、民事訴訟の手続によって争うという根本観念に立ってやってきたのでございます。しかしながら、だんだん御説のありました通り、この弊害が非常に大きくなって参りましたから、これは研究しなければならぬ問題でございますけれども、根本の考え方は、やはり各自が注意して発行をし、受け取る、そして自由経済によって秩序を保っていく、商業道徳の発達と、それからまたあわせて経済関係の法規によって調整する、これに直ちに刑罰をもって臨むということはどうであろうか、こういう根本観念に立っておりますが、さらに、御承知のように約束手形、為替手形等につきまして、また小切手につきましても、統一条約がございまして、各国が同じような形で統一をして参るというような条約上の義務も負うておりますから、条約上の関係もございまして、非常にこれは複雑の問題のようでございますから、十分研究してみたいと考えております。
  135. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 これは大蔵大臣にお尋ねした方がいいかと思うのでありますが、銀行取引を、不渡り手形を発行いたした場合に停止をせられる、しかし、それだけのことでありまして、御承知のように法人格をかえれば、前の責任でありながら、またまた銀行取引ができる、また手形を出せるというようなことでありまして、全然経済的にも何らの制裁がない、こういう点が非常に問題だと思うのでありますが、今の体刑等によります問題、これはまた別個に研究してもらいたいと思いまするけれども経済的な制裁として、何かこれはというような考えをめぐらさなきゃならぬのじゃないかと思いますが、その点、大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  136. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは、不渡り手形を出した後の問題と思いますが、不渡り手形が出た場合においてそういうことが繰り返されるというようなことは、もちろんはなはだ経済界にとってもおもしろくないことでありますので、これはやはり銀行取引におきまして、そういう不渡り手形の出ました場合には、早くこれを不渡り処分に付することはもちろん、今後の取引において制裁を加える。見込みのないものについては、早く取引を停止する、こういうような方法をとるのがよかろうと思うのでありますが、しかし、それらについては実際の経済の動き、そのこと自体において、またいろいろと経済界に波紋を起すおそれもありますので、そういうところは、実際に即しましてやるという以外には、いたし方がなかろうかと、かように考えております。
  137. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) 不渡りを出しました者に対して、刑罰制裁をもって臨むべきではないかということでございますが、この点は、先ほど法務大臣からも申されましたように、そういう段階まで踏み切る必要があるかということは、よほど考える必要がございますし、なお、手形法の問題といたしましては、先ほどもお話がございましたように、条約関係もございますので、私もちょうど商法の改正にも関係しておりますので、手形の方もある時期には若干検討する必要が出てくるのではないかと考えておりますが、将来の問題といたしまして、私も勉強いたしたいと思います。
  138. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 この問題についても一つ慎重に、また真剣に御検討を願いたいということを、強く要望いたしておきます。  次に金融問題でありますが、中小企業の専門金融機関に対しまする昭和三十三年度の財政投融資の計画を見ますると、いずれも昨年の実績から減額をされておるのであります。国民金融公庫は三十五億円減っております。それから中小企業金融公庫は二十五億円減っており、商工中金は五十五億円減っております。合計いたしますと、百十五億円財政投融資は減額されておるのであります。これを考えますと、中小企業対策を重点政策にせられておるというのでありますけれども、これではちょっと言えないと言わざるを得ないのであります。また、先般最低賃金法案提案の際に、総理も、中小企業対策を先行させないまでも、並行させるという趣旨の御答弁があったのでありますが、これでは、先行はもちろんでありますが、並行もできないと言わざるを得ないというふうに思われるのであります。これについて、今後どういうふうにお考えになりましょうか、この点、総理大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  139. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 中小企業金融につきましては、これはもう歴代の政府において特に留意をいたしておるのでありますが、特に今の政府におきましては、ちょうど昨年の五月から、御承知の総合的な金融対策を実施いたしましたが、これがまた、先ほどからしばしば論議になりましたように、社会的な力の関係から、中小企業に特に不利益が、金融しかもされるおそれがあるという見地に立ちまして、中小企業金融につきましては特別な配慮をいたしたわけであります。そういうふうにしておるにかからず、三十三年度の予算において、なぜ財政投融資の入れ方が少いかということでありますが、これにつきましては、これはもう豊田さんが多年の御経験で御承知通りでありまして、今回この新しく入れました金額は少いのでありますが、しかし、この回収金が今回は非常に多い、各公庫とも多いのでありまして、その結果、三十三年度の実際のこの貸付規模は、三十二年度に比べてずっと大きくなっている、ここに私はちょっと数字を持っておりますから申し上げますが、三十二年度の当初では、国民金融公庫の貸付規模が六百八十五億であり、それが三十三年度で、八百四十五億、中小企業公庫で、当初四百十五億でありましたのが、三十三年度において五百七十億、商工中金におきまして、三十二年度の当初は二千二十五億でありましたのが、三十三年度で二千五百三十億となっており、三十二年度は、もっともこれに実際の実行は、若干増加をいたしておると思いますが、いずれにいたしましても、三十三年度の貸付規模は、三十二年度に比べて拡大をいたしておる次第でございます。
  140. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいまこの貸付計画の方はふえるというふうにお答えでありますが、財政投融資自身から見まするというと、要するに減額になっておるのであります。これは世間で見まする場合には、財政投融資、要するに政府出資がどうなっておるのか、政府資金の投入がどうなっておるのか、この点を一番見るのであります。そういう点から、これでは、どうもその中小企業対策を重点政策にしておるというふうに言われましても、なかなか世間では承知せぬというのが実情なんでありまして、これについて、今後も、どういうふうにお考えになっておるのでありましょうか、大蔵大臣、それから総理一つお願いをしたいと思います。
  141. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) その点につきましては、これはもう別に何も……。むろん政府といたしましては、機会あるごとに、これは一つもう少し世間に知れるように一つやります。(笑声)しかし、実際に金融機関を通じて各業者に、私は今の点を申して安心させる、安心というわけにもいきませんが、こういうことになっておるからということを知らせるということをいたしたいと、かように考えております。
  142. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 中小企業の問題は、豊田委員、よく御承知通り、また、従来から政府がやってきております方針等につきましても、また、今回の予算編成に当りましても、私ども常に重点を置いて考えて参っておる問題でありまして、あるいはお話しの通り、財政投融資の投入額が減っておるために、貸付額の範囲は拡大されておるにかかわらず、一般に与える気持は、そういう方に重点を置いておるような印象とは逆な印象を与えるのではないかという御懸念も、ごもっともな点もあると思います。十分に今申すように、中小企業の金融については、その貸付のワクも拡大をいたしておりますし、また、信用保証制度等の拡充にもよりまして、現実にこれらの中小企業の金融に非常な支障を来たすことがないように、あらゆる面から努力をいたしたいと考えます。
  143. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 簡単に。時間がないようでありますから、ほかに問題がまだ多数ありますけれども、一点だけお尋ねをいたします。これは、だんだん選挙シーズンに入るものでありますから、選挙関係のことなんでありますが、不在投票の秘密性の問題について簡単にお尋ねをしたいと思うのであります。これは憲法第十五条には、もちろん投票の秘密性の明記がありますが、公職選挙法施行令の第五十六条の第一項によりますると、「投票用紙に自ら当該選挙の候補者一人の氏名を記載し、これを投票用封筒に入れて封をし、投票用封筒の表面に署名して、直ちにこれをその不在者投票管理者に提出しなければならない。」ということになっておるのであります。要するに、この不在投票をした場合には、封筒の表面に投票者の署名をしなければならぬというふうになっておるのであります。開票当日になりますと、係員が投票者の署名をしております封筒を切って、そうして被選挙人の名前をしるしてある用紙を一枚々々ずつ取り出すのでありますが、そのときにだれがだれに入れたかということは、もうはっきりわかってくるようになっておるのであります。これは、知名の人が不在投票をやったら必ずわかるといってもいいのであります。岸さんなどが不在投票をされますと、封筒に岸信介と書いてあるから、これは、だれに入れたかということは当然投票日になるとわかってくるというふうに、規定自身がなっておる。これは非常に投票の秘密性を保持するという建前からいくというと、これは重大な問題だと思うのであります。これについて、自治庁長官の御意見を伺います。
  144. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 不在投票は、御承知のように、選挙の当日前に投票をいたす、ところが、選挙の投票というものは、その選挙当日において選挙権を持っていなければならない、ところが、不在者投票をいたします場合には、死亡という事態も起ります、有罪の確定という事態も起ります。従いまして、選挙の当日にその人間が選挙権を有するやいなやを判断いたさなければなりません。従いまして、封筒の表紙に署名をいたさせ、そうして投票いたすのであります。封筒を用いまするのは、今御指摘の不在者投票のほかに、仮投票もあります。その場合に投票用紙を折っておりますから、これをあけて見ました場合には、これは選挙人の投票を認知する方法を用いたるものと言うて、当然罰則に触れる、また、たまたま表にそのまま書いた場合には、目に触れる場合がありますが、故意に見ようとした場合には、罰則をもって規制いたしております。考え方によりますと、お尋ねのような場合に、封筒に入れたほかに、もう一つ中に白い封筒を入れる、名前の書いていない封筒を入れるということがありましょうが、それではあまりにわずらわしいので、現在は罰則によって不正を防止するという方法をとっております。
  145. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 罰則の関係であるとか、あるいは選挙当日に死亡者であってはならぬとかいうような、いろいろな理屈はあるかもしれませんが、しかし、現実にだれに入れたかということがはっきりわかってくるというような行き方というものは、これは非常に問題があると思います。時間がありませんから、これ以上申し上げませんが、この点は、別な見地から御研究になりませんと、閣僚諸公のような知名の人たちが不在投票をやりますと、だれに入れたかということがはっきりしてくる、ここに非常に問題があると思いますので、その点だけを申し上げまして、時間がありませんから……。
  146. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) ただいまの点、よく秘密保持の点は考えます。  それから委員長から御連絡がありましたので、先ほど関連質問鈴木委員からお尋ねのありましたこと……
  147. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 午前中……。
  148. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 住民税の問題をお答え申し上げます。  住民税の所得割は、前年度の所得額または所得税をとっております。これは、市町村の納税をできる限り簡易にいたすというような点もございます。そういたしますると、御指摘のように、駐留軍労務者のように、その当該年度においては収入がないというような場合も起ります。これに対しましては、法律で、特別の事情のある者は、市町村は減免することができるようになっております。これに対して、さらに通知を出しまして、前年度は収入があったが、現年度において収入が皆無だ、または著しく収入が減りました者は、減免をいたすような通知を出しております。三十三年度の税につきましては、さらにあらためて通知を出そうと思いますけれども、御指摘のような点は、さらに間違いのないように、市町村に示達をいたす考えであります。
  149. 戸叶武

    戸叶武君 私は、議院内閣制としての内閣と国会のあり方について、総理大臣に質問いたします。  議院内閣制のもとにおきましては、内閣の行動ないしその存立は、実際上国会の強いコントロールのもとに置かるべき性質のものであります。憲法の規定によると、政府は下院に対し解散権を持ち、下院は不信任案で政府を倒すことができるのでありますが、この内閣の持っている解散権の問題をめぐって、問題がきわめてあいまいに取り扱われておりますが、解散権は、総理大臣の絶対権でなく、総理大臣の伝家の宝刀のように思われているのが私は間違いではないかと思うのであります。異国の議会政治の長い歴史を経ての築き上げたルールによりますると、二大政党による議院内閣制によるところの政権の移動というものは、ルールが確立されておるのであります。それが成文化されたのが、ワイマール憲法によって最初になされたと言われておりまするが、いずれにしても、日本の憲法は、このワイマール憲法に近い一つの憲法精神を持っておるのでありまして、政権の移動を行うときにおきましては、政府は解散を行なって、総選挙を通じて国民の信任をかち得ることが必要なのであります。勝手に政党が離合集散して、その国会内に占めているところの勢力の結集によって、その首領が政権を担当すればよいというような考え方というものは、この議会政治の根本を破壊するものだと思うのであります。日本の過去におきましても、明治十四年におけるイギリス憲法と旧ドイツ的な憲法との論戦というものが日本の政治史の中における悲劇でありましたが、要するに、憲法の形式的な解釈よりは議会政治の運営の面におけるところの不明朗というものが、あの敗戦の悲劇までの日本の政治の悲劇であったのでありまして、帝国憲法時代の解釈でこの議会政治の運営に当るということは、非常に間違いだと私は思うのであります。そういう意味におきまして、総理大臣が、解散権をめぐって、解散権の行使の問題、解散の時期の問題、総選挙の問題、政権移動の民主的なルール確立の問題というのに対して、どういう御見解を持っているか、承わりたいと思います。
  150. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法のもとにおいて、議院内閣制度、内閣と国会との関係等は、言うまでもなく、その基本的なものは、現行の憲法に幾多の規定において明示されております。しかし、その前提として、この議院内閣制度の発達したヨーロッパのイギリスその他の国の発達の沿革、また、これを日本の憲法が受け入れる場合において、日本の国情というものを考慮してこれを取り入れた、この経緯にもかんがみまして、これの運営については、十分に注意をしなきゃならぬことは、言うを待ちません。そこで、解散の問題について、いわゆる憲法七条によって、「内閣の助言と承認」を得て、天皇が国事行為としておるところの解散ということについては、学者の間に多少の議論はありましょうが、通説は、これはほとんど余り有力な反対論なしに、これで解散できるということは認められていると思います。これは、もちろん閣議を経て、そういう助言を承認が行われることは当然であると思います。また、議会政治運営の上から申しまして、これは、憲法には規定ございませんけれども、政党政治として、二大政党によって、この間に政権の移動、民主主義的な移動が行われるということが、現実の問題として私は最も望ましいことであり、また、そうすることによって、国会政治が、国会を中心とする民主政治が円滑に行われるものだと考えております。  そこで、その政権の移動する場合において、言うまでもなく、これを民意に問うというような問題につきましても、原則はそこにあることは言うを待ちません。ただ、同じ政党の間において、たまたまいろんな事由から首班がかわる。首班の指定は言うまでもなく、国会においてなされることは、申すまでもないことでありますが、そういう場合において、いかなる場合においても解散して、そうして民意に問わなければならぬかどうかということにつきましては、私は、これはイギリス等の実例を見ましても、また、政治の現状、必要から申しましても、常にそれでなければということも言い得ないだろう。要は、しかしながら、あくまでも民主政治でありますから、主権が国民にあるという建前において、国会が最高機関であり、三権分立のこの精神においての内閣の責任というようなものを、第一段は言うまでもなく憲法の条章にあるが、また、その立法の沿革なり、運営の実際というものを、政治的の使命というものを公正に判断して、運営していくべきである、かように考えます。
  151. 戸叶武

    戸叶武君 岸さんの今の御答弁は、相当明快だと思います。それを具体的な日本の政治の動きの中において、どう判断するかを承わりたいのであります。  吉田内閣が倒れてから後、鳩山第一次内閣ができまして、解散を行なって第二次鳩山内閣が成立いたしました。そしてその間に、また与党のいろいろな変化もありましたが、特にこの第三次鳩山内閣が成立したときにおきましては、その与党の基盤というものが大きな変化をやりまして、自由民主党というものが結成されまして、その上に鳩山内閣は乗ったのであります。このときに、たしか岸総理大臣は、当時は総理大臣ではもちろんありませんでしたが、今と同じようなシャープな判断によりまして、やはりあの第三次鳩山内閣のときに、解散すべきであったという意見を発表しておりまするが、その見解は、今も変りませんか。
  152. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いつ解散するかということは、これは、先ほど来申し上げておりますように、その場合の政治情勢、いろんな点を考慮してきめなければならぬ。憲法の条章だけから申しますというと、何か、不信任決議であるとか、そういう解散決議というようなものが、通過した場合とはこの意味が違うわけであります。ただ、御指摘のように、自由党と民主党が合同して、その基盤の上に内閣ができた。第一次鳩山内閣は、言うまでもなく、民主党を基盤として、そして選挙によって第一党となり、政権を担当することになったわけであります。その後保守合同、社会党の統一問題等がありまして、日本の政党の間に集散が行われたわけでありますが、その際に第三次鳩山内閣ができた。私は、率直に申し上げまして、やはり各種の政治情勢が許すならば、その場合に解散して、総選挙することは適当であったろうという見解は、その後何らかの機会に発表したこともございますが、今日においても、そういう見解は、私やはりそういうふうに考えております。
  153. 戸叶武

    戸叶武君 今の御見解は、きわめて良識のある健全な御見解であります。そうするならば、そのときに当然解散すべきであったのであるが、各種の政治情勢を考慮して行わなかった。ここに、原則を無視したところの各種の政治情勢というのをだれが判断するか。そのとき政権を握っている総理大臣の判断でありまするが、この総理大臣の独善的な判断によって解散権というものが、その行使というものが左右されるということは、きわめて危険であります。政権を握っている者の権力の乱用ということは、そういうところから起きてくるのでございます。憲法解釈が、ややもすればドイツ流の、明治時代以来の解釈から脱し切れなくて、法文の形式的な解釈にとらわれて、その中に流れているところの民主的な精神というものをくみ取っていないことが今日の日本の危機でございます。わずかに、吉田内閣の最後のときに、造船疑獄によりまして、吉田さんが、内閣が危いというので、指揮権を発動し、さらに解散を断行しようとしたときに、副総理の緒方氏が、一つの良識をもって、身を挺して、比較的おとなしい緒方さんであったが、そのときだけは面目躍如たるものがありまするが、吉田さんと対決して、総辞職をがんばって、総辞職に持ち込んだのであります。この事例を見てもわかりますように、内閣において解散を決定するときに、形式的な法文解釈でなくて、閣内にあって、やはり原則を守って、そうして解散権の乱用というものを防がなければ、民主政治というものは確立しないのであります。民主政治のもとにおける総理大臣の権限というものは、そういう絶対権ではないのです。民主主義的なルールの上に立っての総理大臣の解散権の行使である。私たちは、保守党の中においても――なくなったからほめるわけではないが、緒方さんのような人は、りっぱだったと思います。前の岸さんの良識が、今もなお、政権を取ってなおかつ曇っておらないとするならば、そういう基礎の上に立って、国民世論の批判を受け、信任を得て組織した内閣でない、やみ内閣の上に立っているべきでなくて、一日も早く解散を断行しなければならぬ一つの至上命令を私は受けているのだと思うのであります。第一次岸内閣の成立後直ちに解散して、民意を問うべきであった。しかしながら、まだ態勢ができていない、もっと岸ブームが沸いてからという形で、アメリカに行かれ、第二次岸内閣を作った。今度は、神武景気から不景気のどん底へ来てしまったから、景気がよくならない以上は、岸ブームなどは沸きません。財界も予算成立後においてやってもらいたい、党内におけるところの古老の大野さんなり、あるいは練達の河野君なんという、政界の古つわものや、かけ引きの上手な人たちは、九月ごろになったら、景気が少しよくなるかもしれないから、そのときにやってくれ、これでは全く、議会政治というものが、総理大臣の持っている解散権というものが、民意に問う正しい態度というものが、一党の利害打算によって行使されるという危険性があるのでありまして、こういう不明朗なことが議会主義の上において一つの慣例となっていくということは、少くとも第三次鳩山内閣のときに総辞職すべきであったといって、野におったとき良識のひらめきがあった岸さんが、総理大臣になると、そのひらめきを失ったというのでは、私はすこぶる残念だと思いますが、その心境の変化についてお答えを願います。
  154. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 別段心境に変化を来たしているわけではございません。そのときにそういう解散をしなかったことについては、各種の事由があるということを申しております。私は、一番必要なことは、憲法の運用、民主政治でありますから、国民世論の動向、国民の意向というものを正確に把握して、これに従っていくことが大事だと思います。そうしますと、人あるいは評して、国民の世論なんというものは、なかなかわからないじゃないか。あるいは、勝手にそれを曲げて、世論というようなことを言うおそれがあるという御批判があろうと思います。しかし、私は、真の民主政治家、民主政治に徹するという者は、そこが大事なんであって、それを大体把握できない、それを正当に理解できない、また、それを曲げていろいろのことに考えるということは、もうその人は、民主政治家としての資格がない、本質がないのであると私は考えております。従って、この解散の問題につきましては、国会の不信任決議案や解散決議案等の何によって、はっきり憲法の条章によって、総辞職するか解散するかという規定のほかに、第七条によるところの場合におきましては、常に国民の世論の動向、国民の意思というものに、政治家として、首班としておる者は、何人も非常に責任を感じ、その点を常に十分に考えていかなければならぬ。それを誤まるということは、これは、非常な民主主義の何で、政治家として考えなければならぬ問題である。かように従来も実は考えてきておるのであります。  そこで、世論の動向がどうであるかということを、それではどういうふうにして知るかという問題につきましては、形式的に言えば、国会における議決というものが多数であれば、世論というものはきわめて明瞭でありましょうが、そういうこと以外に、やはり私は、各方面の国民の意向というものは、いろいろな形において表示されており、また、最近におきましては、いろいろ世論の動向についての権威のある調査等も行われるわけなんでありますから、そういうものを十分に見て決すべき問題であると、私は考えております。しこうして、原則は、言うまでもなく、解散という問題は、憲法上から申しましても、本来のノルマルの形から言えば、任期があるわけでありますから、任期一ぱいやって、そうして国民の審判を四年ごとに聞くというのが、これが正常なる姿であります。その間においていろいろな条件ができ上り、政治上の変化であるとか、あるいは国際上、国内上のいろいろな事態変化が起った場合において、解散して民意をあらためて問うという問題が起るのでありまして、私は、やはり二大政党には二大政党として国会を運営していく上から申しますと、たまたま国会が指名しました首班が病気であるとか、健康上の理由であるとかどうとかいうようなことで引退をし、そうしてこれにかわってその政党がやはり責任を負うていくということであれば、やはり原則の四年の任期をやるということも、これは当然考えていいのではないか。ただ、その間における、さっきも申し上げたように、民意の動向、世論の動向というものに対しては、常にそういう頭をもってこれに処していく、こう言うべきものである、かように考えております。
  155. 戸叶武

    戸叶武君 ノルマルの形であるならば、四年の任期はけっこうだと思います。それから、国民世論の動向に耳を傾けなければならないと言いますが、今の保守政権の政権たらい回しというものは、世論に耳をふさいで、国会内に占めている多数の上にあぐらをかいているのじゃないかと思います。第二次鳩山内閣以来、第三次鳩山内閣、石橋内閣、第一次岸内閣、第二次岸内閣、この間に日本の政界は非常な激変をやっております。左右の社会党は統一し、自由、民主の保守党は合同して、国会内におけるところの政治勢力の分野に激変が来ております。国際情勢も大変動が来ております。ノーマルな姿の上に立って四年間の任期をつっ張っているとは思えないのでありますが、そこで問題は、解散の問題がしつこくなるほど問題になっておりますから、結論を急ぎまするが、岸さんは、先般宇都宮の自民党の大会に行きましたときの車中談によって、解散は九月ごろのようなことをにおわしておりましたが、自民党総裁としての談話だと思いますが、今も、解散権は総理大臣にあるけれども、国会内における反対党の指導者が国会において質問をし、国会内の論議を通じて、いつなのかということは、はっきりその時期は何かということは、総理大臣にゆだねるべきであるが、解散はいかなる段階においてやらなければならないという限界は明確になっていると思います。その明確が失われ、総理大臣自身もチャンスを失った形において、ずるずるとこの大勢の中によろめいておるので、ついに解散というものがぼけているわけですが、国会は、審議権をたっとばなければなりません。今後衆議院において、与党の議員諸君が解散におののいて、議席にほんとうに腰を落ちつけているでしょうか。きょうあたりは、先ほどは自民党がありませんでしたが、今ごろになって、これはあぶないと思って、出てきたようであります。(笑声)午前中は、ほとんどおりませんでした。これは、半ドンの逆をいっているのだと思いますが、こういう形におきまして、やはり私は、堂々と国会内において解散の問題も論じ――自分に都合のいいような政党のかけ引きというのだと、今後私は、この予算案が通過した後における政治的混迷の事態というものが続いたならば、その責任は、あげてあのときにおける岸内閣の責任であるというような汚名をも着なければならないと思いますが、その辺におきまして、今日においては、解散は四月か九月という、もう答弁は簡単なところに出てきているようでありますが、岸さんの心境を率直に、国会で語ってもらいたいと思います。
  156. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 言うまでもなく、私は、来年の二月が任期満了でありますので、来年度の予算の編成等を考えますというと、どうしても本年中に解散し、総選挙が行われるということは、だれが考えてみても、それに反対する、どうしても来年の二月までやれという議論は、私は、実際の何として出ないと思います。そこで、この間において、いつの時期になるかということは、日一日とその日が近づいておることも、これまた私は否認できないと思います。従って、こういう問題に関して、いろいろな想像が行われ、いろいろな言論があり、思惑が行われるということも、私ども、はなはだ遺憾でありますけれども、これまた、自然の勢いであろうかと思います。ただ問題は、私が、一月にはっきり、一月解散ということが相当に言われまして、また、社会党から解散決議案が出ましたけれども、私は、来年度の予算を成立せしめ、また、本国会に提案しておるところの重要案件を成立せしむることが、国の内外の上から見て、この際解散をするよりも、これが必要であるという見地に立ちまして、そういう見解を明らかにいたしております。衆議院におきましても、予算審議がきわめて順調に行われ、また、参議院におきましても、皆様の御協力によって審議が行われておる状況でありますが、同時に、今回の国会には、当然この予算に伴うところの諸重要の案件もありますし、条約その他におきまして、きわめて重要なものもあります。その他の法律案等も出ていることでありますから、私は、とにかく今日の私の心境を率直に言えということであるならば、私は、世間でいろいろなことが言われておりますけれども、解散の時期ということについては、実は頭をあまり悩ましておらないのであります。これらをどうして成立せしめ、そうして日本の国運の進展に資せようかということが一ぱいでございまして、従いまして、世間ではいろいろなことが申されておりますけれども、私としては、ほんとうに今時期のことを考えておらないというのが一番正直なことでございます。
  157. 戸叶武

    戸叶武君 総理大臣の頭には、予算案を成立させるということに頭が全部になっているそうですから、その後において社会党が不信任案をたたきつけたときに、多数の力で否決して、それで足れりとせず、国民世論の動きというものを洞察して、解散に行かざるを得ないようなところに来ていると思いますが、その質問をしても、この段階では、岸さんは答えないと思いますから、私は、答弁は、これは求めないことにしておきますが、できるならば、その答弁がほしいと思います。
  158. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど申し上げましたのが私の正直な心境でございます。不信任案が社会党から出るということでありますが、出ました場合におきましては、その内容、論議等を通じて、私の決意すべきことがあれば、決意することにいたします。
  159. 戸叶武

    戸叶武君 次に、内閣の編成権と、国会の審議権について、簡単にお尋ねいたします。  財政法その他からするならば、予算案は、十二月中に作られ、一月の二十日までには、少くとも国会開会までには、開会に間に合うように国会に提出さるべき性質のもつのでありますが、今までの岸総理答弁だと、慣例によって、ずるずるになって、一月の末ごろになっているということを、いいとは言わないが、申しわけ的に言っておりますが、ここで考えてもらいたいのは、予算の編成権は内閣にあります。審議権は国会にあります。政府予算案をおくらせて国会に提出するということは、国会の審議権を侵犯することでございます。衆議院におきましても、このことは論議の対象になりましたが、最大の被害者は、二院制度のもとにおいては、参議院であります。参議院におきましては、衆議院で議決されたものが、一月たてば自然成立するのであります。三月の三日に送り込まれたものを、ちょうど一月間だけ、われわれは最小限度の審議権を持っておるにもかかわらず、与党が多数を占めておるということであって、三月中にこれをぜひともあげるのだなどという横暴なことをしでかしては、国会における審議権をじゅうりんすることになると思います。そういう意味において、憲法において、憲法の大眼目というものは、この二院制度のもとにおける審議権だと思います。日本におきましては、優先的地位が衆議院に置かれておりまするけれども、参議院をばかにしてもらって困る点は、参議院といえども、この審議権はがんとして侵すことができないのであります。従って、その期間中は、こうまつもわれわれの審議権を侵犯することのないように、政府側が与党の方にも注意して、この国会運営に当ってもらいたいと思います。  答弁を願います。
  160. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 言うまでもなく、両院制度の本質から申しまして、私は、参議院の審議権をいかなる意味においても、制限するというか、あるいはこれを妨げるということは、あってならぬことであります。予算の御審議に当りまして、参議院が三十日間の審議する権利を持っておられることは、これは当然のことであります。従いまして、私はどういう交渉が行われておるか知りませんが、与党から、その三十日を二十五日に制限するとか二十八日に制限するという意味のことじゃなくして、なるべく審議を円満に進捗をせしめて、参議院としての責務を十分に審議を通じて尽して、一日も早く、できれば年度内に成立せしめるように御協力を願っているのではないかと思います。また、そういう趣旨において初めて与党としてもいろいろ理事会等において御交渉を申し上げておることだと思います。
  161. 戸叶武

    戸叶武君 今日、岸内閣は石橋内閣のごとく五つの誓いをやって、完全雇用まで打ち出すほどの勇気は持たないとしても、この最悪の事態に対処しまして、日本の貿易を伸ばしていかなければならならいというところに施策の重点を置いているようでありますが、こまかい数字は略しまするけれども、衆議院、参議院を通じての今までの論議を通じて見ても、果して政府が意図するような貿易の伸びがあるかということに対しては、非常に疑念が持たれているのであります。この問題を、私は計数上の問題よりも、まず日本と貿易関係において比重の重いところのアメリカ及び隣りの中共との関係において、総理大臣にお尋ねしたいと思いますが、アメリカと日本との貿易関係は非常に比重が重くなっております。しかしながら、その貿易関係というものが、ノーマルな形でなく、ギブ・アンド・テークの原則によって貫かれていないことは、岸総理大臣が昨年ワシントンをたずねましたときのナショナル・プレス・クラブにおける演説を聞いても、はっきりするのでありまして、当時私はワシントンにありまして岸さんの演説を聞きましたが、その点はやっぱり岸さんあっぱれだと思ったのです。アメリカに対して日本は、輸出の倍の輸入を持っている。それにもかかわらず、アメリカは日本の製品に対して公正な市場を与えてくれないということを、あなたは切々として訴えたのであります。私はあなたと違って在野の政治家でありまするから、新聞関係のハワード氏や、あるいはバースト氏やなんかにも会いまして、アメリカの民間側の意見を聞いて参りましたが、それによると、ああいうふうに岸さんは言うけれども日本とアメリカの貿易関係においては、日本はそのほかに駐留軍特需及び船の運賃等の貿易外の収入というようなものを得ておるので、ややとんとんになっておるというような言い方もしておるのであります。    〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕 これはアメリカ側の一つの見方かとも思うのでありますが、必ずしもとんとんではないが、そういう考え方があるのだと思うのであります。このアメリカ側の考え方というものを私たちはどうしても是正していかなければ、日本の貿易の正常化というものは行えないと思います。  また、今日問題になっているのは、日本の輸出品に対するところのアメリカ側のボイコットの運動であります。きょうの新聞によりますると、アイゼンハワー大統領が日本製金属洋食器に対するところの関税委員会等の関税引き上げ勧告を拒否したと報じてありますが、これと前後して、あなたの経済顧問である鮎川さんも行って、日本の中小企業の窮状を訴え、それから新しい態勢を向う側に述べられて、アウトサイダーの規制、あるいは組合に対する強制加入というようなものをやってチープ・レーバーによるところのダンピングはやらないということを訴えておられるようでありますが、アメリカにおけるところの日本の繊維製品なり、あるいは玩具類なり、電気器具なり、合板なり、あるいはこの食器類なり、そういうものの日本の競争相手のものは、おおむね中小企業というよりはアメリカにあっては零細企業です。この人たちが日本との競争に耐えられないのは、大体賃金が違うことです。  日本は総評があげた最低賃金でも八千円、アメリカの二十二ドル。アメリカは最低賃金が一ドルである。アメリカの労働者は日本の十倍ないし十一倍の賃金を得ている。このチープ・レーバーのもとにおけるところのダンピングというものに、アメリカの小企業というものはおびえて、倒産していくものもある。選挙の年に政治家はそれに耳を傾けざるを得ない。デマゴギーはそれを扇動の材料にも使う。しかもまた、アメリカの労働者もこれに一部分は巻き込まれるけれどもILO条約に対して批准をも行っていない日本の状況というものは、今日最低賃金制問題も、業者間協定というようなことによって、最低賃金によって労働者の地位を保障するというよりも、低い賃金に労働者を追いやろうというような最低賃金をもくろんでおりますが、こういうような私はアメリカとの形において、貿易の正常化というものが果してできるかどうか、その点に関して岸総理の御答弁を願います。
  162. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほども豊田委員質問お答えをしましたが、アメリカと日本との貿易関係を見ましてこれを正常な関係において、戸叶委員の言われたギブ・アンド・テークといいますか、やはり向うから輸入し、こちらから輸出していく。なるほど特需についての一時的の何はありますけれども、これは正常なる両国間の通商貿易関係として見るべきものではないと思います。そこで、従来日本品が全体としては二対一の割合であり、なおアメリカが日本品に対して市場を提供すべきであるということは、私どもあらゆる観点からこれをアメリカに強く訴えておる。アメリカの識者の間にも相当な共鳴を得つつあると思いますが、これはなお努力していかなければならぬ。  そこで、問題のあります各種の商品を見ますというと、それが日本のたとえば優秀な点で、アメリカの産業よりもまさっておって、競争に打ち勝つという点もありますが、また、われわれの中におけるところのこの市場上の欠陥等についても、十分一つ考慮しなければならぬ。また、貿易をしていくのに、その国を大事な市場と、お得意とする以上は、その国の産業に激変を与えるような方法で、あとはどうなっても知らぬと、よその国のことだということでなくて、向うの事情も十分頭に置いて、いわゆるオーダリー・マーケッティングを考えていくことも私は必要だろう。  また、賃金の問題について、従来ソーシャル・ダンピングという疑いを受けております日本としましては、これは貿易的な、国際的な信用の上からいっても、これの賃金の状態を改善することは必要であります。私どもが今回出しておる最低賃金法はその趣旨で出しておることは、すでに提案理由でも説明をいたしております。業者間協定というやり方が、業者間において賃金を押えるためのものであるというような御意見でありますが、日本に最近行われておる業者間協定というものが、実績は、従来の賃金より一割も一割五分も、あるいはそれ以上も上げておるということの現実の事実は、戸叶委員においても十分御認識をいただきたいと思いますし、私どもがこれを設けましたことは、あくまでも日本の国情と日本の産業事情の実情に即して、しかも実効のある方法によって賃金のベースを引き上げていこうという考えを持っておるということを、ここに申し上げましてそういうソーシャル・ダンピング等の非難を受けないような、また秩序ある輸出を妨げないようにみずからも自粛をいたしまして、アメリカ市場に対する日本全体のマーケットの拡大については、日本のみならず、アメリカも十分各種の啓蒙をして協力をしてもらうということに、今後とも一そう努力をしなければならぬ、こう思っております。
  163. 戸叶武

    戸叶武君 次に、中共貿易の拡大の題問でありますが、世界の大勢は、昨年のイギリスを先頭にしてのチンコムからココムの線にまで拡大したあの動きを、さらに発展させまして、今日においては対中共禁輸だけでなく、共産圏に対するところの禁輸の拡大――ココムの線の拡大、そういうものが取り上げられてきております。日本はいつでも、あとの方からくっついていくことが無難だという習性がついておりますが、中国のことは、日本の隣国でありまして、日本はやはり隣の韓国なり台湾に対する親善だけでなく、ソ連なり中国との友好関係を深めていくということはきわめて大切なことであります。  そこで、今度の第四次日中貿易協定によりますると、年間片道三千五百ポンド、九千八百万ドル、これまでの年間片道八千四百万ドルから見ると非常に増大したことになっておりますし、また今まで非常に保守的だといわれた、慎重な態度を持っていた鉄鋼業さえ踏み切っております。こういう状態だと、大体日本の貿易というものは年間一億ドル程度までは伸びると思うのであります。このことはすでに岸さんも予見しておってかどうか、ニューヨークにおけるところの外人記者との会談において、日本と中共との貿易は、三十一年度において輸出が六千万ドル、輸入が八千万ドル、これをおのおの一億ドル程度にまで拡大していこうというので、ほかに他意がないのだということを訴えて、アメリカ側の識者にも大体それを理解してもらうことができたと思います。ほかの面における岸さんの言動においては私はあまり感心しませんけれども、この問題に対しては非常に私は大胆率直に打ち出してきて、しかもその線にまで今日来て、あなたの予見が的中したことでありますが、しかしながら、アメリカ側における中共に対する感情というものは、これは一朝一夕で消えないようなものもあります。しかしながら、日本がアメリカの感情に支配されるのでなくて、アメリカの感情を無視するというわけではないけれども日本と中国との貿易関係というものは、アメリカ貿易まで行くかどうかわかりませんが、とにかく一億ドル程度が二億、三億、五億と私は伸びていく性質のものだと思います。  ただ、アメリカ側で心配しているのは、中国の力というものが非常に飛躍的でありまして、第二次五ヵ年計画経済というものが、日本の技術と結びついて前進するならば、アメリカの防衛というものがさらに強化されなければならない、納税者の負担を過重ならしめなくちゃならないというような、古い考え方に支配されている向きもあるのです。そういう謬見を、日本はアジアにあって、日本はもうすでに共産国家としてのソ連とも融和関税を結んでいる、中国ともこうやっていくのだという事実を示して、アメリカ側の考え方を変えていかなければならないと思うのでありますが、中共貿易に対して変ないやがらせや、あるいはこそくな手段を用いるということは、かえって日本と競争相手であるところのイギリスや、西ドイツや、その他西欧諸国に出し抜かれることになると思うのでありますが、この題題に対する総理大臣の見解を承わりたい。
  164. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来とも、私は中共との間の貿易はこれを積極的に促進するように努力をいたしてきておるつもりであります。また、今後もこの点においては少しも変っておらないのであります。第四次のこの協定に際しましても、いろいろなことが一部には伝えられておりますが、私どもはその貿易を促進するということの根本の原則、これは社会党とは意見が違っておりますが、現在の段階においては、われわれは中央を承認し、対等の間に国交を正常化すという段階ではまだないということを申してきております。この意味において、この両者の調和をとるところに、私は現実の問題の解決の道があると思うのです。決していたずらにいやがらせをするとか、あるいは何かこれについて意地悪なことをするというような考え方は、毛頭持っておりません。  第四次交渉の調印されたことにつきましても、新聞等においてはいろいろなことが向うから報告されておりますが、まだ実情を明らかにいたしておりません。私は議員連盟の諸君が帰ってこられまして、わが党からも二人の同僚が行っておりますから、これらの意見、経過等も、十分に聞いて、そうして、われわれとしても、さっき申しましたこの線でもって、これが解決をはかっていくつもりでおります。
  165. 戸叶武

    戸叶武君 総理大臣は今、まだ中共を承認する段階になっていないという認定の上に立っておりまするが、日本は中国と長い文化的な、経済的な結びつきがあるのであります。人種的にも深い縁があるのであります。日本が率先して中共を承認するために、ソ連すらも国連に入っているのです、中共を国連に一日も早く加盟させて、アジアの問題を、国家の性格なりイデオロギーは違っても、お互いにオープンな形において話し合おうという、そういうあっせんの労を、インドなり日本がとらなければ、だれが世界でそういう労をとるのでありますか。(「そうだ」と陳ぶ者あり)ソ連がとることはいたずらに対立するのであって立場は違っても、隣人のよしみというものが大切でございます。私たちはそういう役割を果し得るだけの、日本の外交の自主性というものを私たちは求めなけりゃならないと思いますが、総理大臣はその問題に対してどういう御見解をお持ちですか。
  166. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お話通り、中国と日本とは、歴史的にも、また民族的にも、非常に深い関係にあります。不幸にして、日支事変のためにこれが相戦っておったということは、長い中国と日本との関係において、長い歴史の上から見まして、たとえ一時的であったとはしても、非常に遺憾なことだと。ただ、御承知通り、当時の、われわれが戦った当時の中国の主権と申しますか、政府は国民政府でございまして、そのときの主席が蒋介石であったことも事実であります。しかして、戦争が行われ、戦争が終末に来たときにおいて、またこれとの間に平和条約が締結され、これとの間に国交が正常化せられて、友好関係が作られておるということも事実であります。また、これはただ日本との関係だけではなくして、国際的にも、この第二次世界大戦を通じて、蒋介石が代表しておる中国の国民政府というものが、他の強国とともに、いろいろ戦争の遂行並びにそれの終結について力をいたしたことも事実であります。国連においてもこういう意味において、国民政府がそのメンバーであり、常任理事国の一員であるというような現状であります。  私としては、中国との間の何でありますが、中国というのには、もちろんこれは中国大陸におる人々も、台湾におる人々も、われわれの隣人として親交を結ばなければならない立場にあると思います。しかして、この両者の間がどういうふうに調整されるかということが、やはり国際情勢を決定する私は前提になると思う。この問題の基礎をほうっておいて、そうしてただ中共政府の国連加盟をあっせんするといいましても、なかなか現実の問題としてこれはできないことじゃないか。しかし、中国の問題は私は日本にとっては最も重要な問題であり、しこうして、日本とは最も長い歴史的な関係があり、民族的な深い理解のある民族の間のことでありますから、他のどの国が理解しておるよりも中国に対しての理解と、そうして、これに対する将来の方策というものは、日本一つ十分われわれの多年の経験と、長い友好、歴史的理解の上に立って、国際的に解決するように今後努力しなければならぬという戸叶委員のお考えのことは、基本には全く賛成でありますが、今日直ちにあっせんに乗り出していくということが適当であるかどうかは、なお考えてみなければならぬというのは、今申し上げましたような事情にあるからであります。
  167. 戸叶武

    戸叶武君 次に農政一般につきまして、特に農林大臣に承わりたい点は、農林白書で、日本の農業が農業所得の低い点、食糧供給力の低い点、国際競争力の弱いこと、兼業農家の増加した点、農業就業構造の劣弱化というのをあげておりまするが、問題はこの列挙されたような状態の下における日本農業の弱体性に対して、赤城農林大臣、また政府の長期計画の中にも、今までの米麦中心の菽穀農業をこのまま押し進めていくというのでなく、日本農業が転換しなければならない、畜産及び畑作農業を振興しなければならないというのを、特に赤城さんは説いておるようでありますが、その基本的な問題と、もう一つは、この日本の農家人口の問題でございます。三十年の統計調査によりますると、日本の農家の人口は三千六百四十六万八千七百七十五人で、総人口の四〇・八%だと言われております。とにかく、日本の総人口の四割を農民が占めておる。それから、農業従業者が一千六百万人あります。戦前よりも一割増加しております。こういうような構造形態を持っておるところの国は近代国家としては珍しいことだと思います。日本と比較的似ているところのドイツにおきまして、第一次欧州大戦に破れたときの弱体がこういう状態であって、フォン・ゼクトはこれを指摘しておりましたが、今日における西ドイツの農民というものは一七%程度になっております。そこで、日本の農業の中において現在専業農家が三五%、兼業農家が六五%、こういう状態になりまして、しかも、働き盛りの人は皆他に職を求めていく。老人と女の人たちと子供が農村に残る、こういう状態になっておる。この現状の下における日本農業が三割農業などと言われておるのは、結局富裕、富農を対象としてだけの、三割の農民にやつと恩恵がとどくような農業は切りかえられべきで、赤城農政というものも、それからまだ脱ていないところがあるのじゃないかと思いますが、この点に関する赤城さんの見解を承わりたい。
  168. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 今御指摘の、またお話の前段にいきましては、お話通りに私ども考えておるのであります。食生活も非常に変ってきておりまするし、また国内の食糧を総合的に自給度を進めていきたいと、こういう点から考えましても、米麦、ことに米等につきましては相当指導もし、また生産も進んだのでありますが、今までどちらかといえば、なおざりにされがちでありました畑作、それと畜産とを結びつけまして、その上におきまして総合自給力を高めるとともに、農家の生産性を高めて生活の安定に資したいということで、そういう方向へ力を入れて参っておるのであります。  第二の御指摘の、日本の農民の就業人口が非常に多いにかかわらず、世界的に見まして全生産に対する寄与が少い。西ドイツの例をとられましたが、西ドイツ等におきましては、農業の生産人口は非常に減ってきておるが、しかも生産は上っているのじゃないか、事実その通りと私も存じております。日本の農業は御承知通り人口が多くて土地が少い。零細性というのが非常に特徴であります。しかし日本の農業労働就業人口というのも減ってはきておる傾向にあります。理想的にいえば、就業人口が減って、しかも生産が上るというようなことが理想でありますけれども、またそういうふうに持っていきたいと思いますが、日本の農業の特徴といたしまして、そう口で言うほど簡単にこの解決はできないと思います。そこで、しからばこういうような状態におきまして、富農といいますか、上層農家に対する農業政策に重きを置き過ぎておるのじゃないか、こういうような御指摘でありますが、いろいろ農業政策をやっていきます上におきまして、どうしても上層の方面におきましては、受け入れ態勢がいいということが一つだろうと思うのであります。私どもは特に上層を目標としての農業対策をしておるのじゃありませんが、今申し上げましたような状況で、上層農家が受け入れる能力、態勢が多いので、御指摘のような傾向がないとは私も申し上げられません。しかし、政策といたしましては、やはり日本の農業の特殊性でありますが、零細農兼業化も進んでおりますが、これを捨てておくという考えは全然持っておりませんので、その方面に対します今年の予算で申し上げますならば、やはり土地が狭いということでありまするから、開拓、開墾というようなことも進めておりまするし、あるいは地元増反というようなことで増反を進めて耕作面積をふやしていく。あるいは小家畜の導入を進める。あるいはまた共同化の線において生活を擁護するというような、いろいろな政策を持っておるのでありますが、御承知のように農業政策は、この政策ならばこれでよくなるというふうに、すぐにそろばんの面に出ない面もあります。そういうふうな点で私どもも苦心はいたしておるのでありますが、御指摘の三割農政というようなことに陥らないように、特に弱い面につきましては、国が力をつけてやるということが必要だ、こういうふうに考えておるわけであります。
  169. 戸叶武

    戸叶武君 赤城さんも率直に認めておりますが、今のところ対策がないところに日本の農政の貧困があるのでありまして、零細農家、及び農村における潜在失業者、二、三男対策、こういうことにつきまして、赤城さん並びに労働大臣にも承わりたいと思うのでありますが、この耕地面積の五反以下が二百万、一町までが二百万、二町までが百六十万、二町以上が五十万というような形で、とにかく日本の零細農というものが多いのでございまして、しかも、労働省におけるところの統計によりますると、三十年九月の統計だと、不完全就業者九百六十万人のうち、たしか農村に六百六十万人いるというようなことであります。こういう潜在失業者が農村にしわ寄せされておるのでありまして、働くに職のない、希望のない二、三男というものが農村にうごめいていかなければならない。これに対して一体だれが手を差し伸べるのか、今、赤城さんは、富農は受け入れ態勢があるがと言っているが、手を差し伸べることのできない人に対して愛情の手を差し伸べることが、私は政治の行き方じゃないかと思う。今都会の失業問題が、また潜在失業の問題が都会だけを対象として、農村にしわ寄せされておりますが、この問題に対して、農村にどういう対策を持っておるか、一つ承わりたいと思います。
  170. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 主として農家の二、三男の問題、それから農業部門に多く見られる不完全就業の状態についての御質問でございますが、不完全就業者の状態はつかみ方が非常にむずかしいので、収入等の限度の置き方によって、ただいま戸叶さんが御指摘のような数字も出るかと思います。しかしまた一方、本人が転業を希望しておるか、あるいは追加就業を希望しておるかというような面で、三十一年の暮に調査いたしました総理府の統計によりますると、約二百八十万人という数字も出ております。その中で農業部門にどれだけおるかと申しますと、    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕 大体五十五、六万、二〇%ぐらいじゃないか、こういうような統計も出て参っております。いずれにいたしましても、わが国の就業構造の上におきまする不完全就業の問題というものは、きわめて重要な問題であります。これを近代的雇用に置きかえていくということが、雇用政策基本であろうと思っておるわけでございます。そこで長期計画におきましては、第一次産業である農業部門から漸次、第二次、第三次産業に転化せしめまして、その割合を近代的な雇用関係の方を多くしていくような計画が立てられておるのでありまして、この計画最終年次におきましては、約八十五万人が第二次、第三次産業の方に移っていくようなふうになっておるわけでございます。しかし、それでもまだ相当多くの過剰な農業人口をかかえておることは御指摘通りでございますが、一方私どもの方の役所で、年々新しく中学を出るもの、あるいは高等学校を出る人々の集団就職のあっせんをいたしております。この場合におきましては、特に中学を卒業した人たちは、主として農村から参ります。この場合におきましては、いつも人を求める側の方が多くて、なかなか充足するのに骨が折れておるというような状態であります。これをさらに推進いたしまして、新中学卒業生を新しい近代的な産業の方に切りかえるように努力をして参りたいと思っております。一方やはりその就業構造を変え、その安定度を高め、近代性を賦与して参りますためには、どうしても技能を与えなければなりません。そこで今度は前年比約三割五、六分程度の予算の増加を見込んで職業訓練を積極的に行うつもりでございます。そのために職業訓練法をすでに提出いたしておりますることは御承知通りであります。  それから失業対策事業等におきましても、御指摘のような事情を勘案いたしまして、今、事業主体数から申しますと――人数から言うと違いますけれども、事業主体数から申しまして約六〇%は町村が事業主体となって行なっておるのでありまして、都市偏重の弊を避けて御指摘の実情に合わせるように努力をしているつもりでございます。
  171. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農村で一番問題になりますのは、今の二、三男対策だろうと思うのであります。これはやはり日本の人口問題と、農村の耕地が少くて零細性だということに関連いたす問題でございますので、大きく言えば人口問題の解決になるかと思うのでございます。そこで今、労働大臣からも御答弁がありましたが、単に農村だけで解決できるとは私ども考えられないのであります。たとえば外交の面におきまして、東南アジアが開発され、東南アジア生活水準が上り、日本に対する購買力がふえ、日本の工業が進む、そこにおける人口の収容力がふえるというようなことになりまするならば、農村の人口もそこへ吸収されるということに相なろうと思うのでありますが、そこで経済五ヵ年計画等によりましても、今お話がありましたように、三十七年までには八十五万の農村人口を鉱工業等において吸収する目標を立てておるわけであります。それは、御承知の計画によりますれば、生産成長率が、鉱工業におきまして、全般においては六・五%、農業においては三・三%というような差を持っておりますが、そういうような成長率でいけるといたしまするならば、そういう目標は達成できるというように考えられるのであります。  それからまた、御調査になっておりまする一つの、移民の問題もあろうかと思うのであります。この移民の問題は、私は、従来の日本から、人が多いから押しつけるというような考え方でなくて、やはり移民の送り出された国において、移民がその国に寄与するという形でこれは進めていきませんというと、この移民の数はなかなかふえていかないのではないかというふうに私は考えておるのであります。ただこれをこちらから押し出すのだ、日本の都合だけでやるのだというような考え方ではまずいという考えを持っておりますが、これは今のとろでは、そう多くの人を入れるというわけにはいかないことは、御承知通りであります。農村自体として、どういうふうにして、二、三男対策を解決していくかという問題でありますが、これにつきましても、総合的な施策が必要であろうと思うのでありますが、私が今度の予算におきまして、特に今までもやってきたのでありますが、生産基盤の拡大強化ということを強く打ち出して、土地改良とか、開墾、干拓ということを政策の中にも立てております。一つは同じ団地でありましても、生産が上り、あるいはまた土地の面積がふえる、また、ふえなければ、同じ面積でも田にも使い、畑にも使い、また畑としてこれを何回にも使えるということになりまするならば、面積は同じでも、その土地による人口の収容力といいますか、農民を抱いていくだけの余力が上るというふうに考えて、土地改良とか、開墾、干拓、あるいは先ほど御答弁申し上げましたが、開墾等につきましても、地元増反ということで、地元の二、三男あるいは耕地の少い人々を地元増反にこれを吸収していくというようなことも考えなくちゃならぬということを考えております。特にまた、土地ばかりではありませんで、やはり流通とか加工対策によって、価格の支持というものを相当やっていきまするならば、生産物による収入が安定してくる、安定してきまするならば、一家の中で三人の包容力といいますか、収容力しかなかったものが、五人までの収容ができる、こういうようなことをも考えられますので、流通、加工あるいは価格支持という点につきましても、力を入れておるのもそういう意味であります。しかし、何にいたせ、非常にむずかしい問題で、また総合的に考えなければならないのでありますので、いろいろ御意見の点などをなお強く尊重いたしまして、この対策を進め、また強化していきたい、こう考えております。
  172. 戸叶武

    戸叶武君 土地改良に関連しまして、赤城農林大臣が打ち出した、赤城構想なる利根川総合開発計画の構想について承わりたいと思います。
  173. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御承知通り、関東地方は、割合、全国的に見まするならば、耕地は広いのであります。そして歴史的にも早くから開けておったのであります。しかし、全国的に見ますと、最近におきましての生産性はあまり高くない、こういうふうに感じておるのであります。こういう関東地方を相当開発いたしていきまするならば、今の食糧の総合自給力の点におきましても、あるいは農家の生活向上という点におきましても非常に国家的に寄与するところがあるのじゃないか。ところが、現状におきましては、利根川水系等を中心として、いろいろな土地改良等も行われております。行われておりますが、非常にこれはけっこうでありますが、総合性にまだ足らない点があるようであります。ことに鬼怒川水系等におきましては、伏流水が多くて、水を十二分に、有効に使っておらぬという点もあります。それからまた、千葉県等におきましては、最近工業地帯が非常にふえておりますので、工業用水というものが必要になってくる。あるいは東京都における水の必要性もある、こういうようなことでありますならば、やはり関東地方に対しまして、利根川の水系を中心として、さらに一段飛躍した総合開発の計画を調査してみる必要があるのじゃないか、こういう観点から、利根水系を中心とした関東の開発に対しての調査を進めてみたい、こういうようなことから、本年度の予算におきまして、調査費の御審議をお願いしているわけであります。
  174. 戸叶武

    戸叶武君 この調査費の要求でありますが、当初たしか二億三千万円かの要求があったのが、第一次、第二次、第三次査定において、ゼロに切り落されていったのと、それと並行して、これより前に、鬼怒川中部土地改良事業というものに、前に三千五百万円ほどの調査費を盛っており、新しい年度から事業に入るので、一億六千万円からの要求をやっておる。大蔵省としては、一つの省から、利根川総合開発というような形で、大きな構想でダムが鬼怒川に作られれば、そのそばにあるところの鬼怒川中部土地改良事業のような小さなダムは必要でないのじゃないかというので、両方とも削られてしまった。すったもんだして、その結果、鬼怒川の中部土地改良事業費は五千万円になり、それから、大臣の構想の利根川総合開発の調査費というものが、下流の方まで含んででしょうが、七百五十万円に切り落されて残っている。この辺にどうも私たちは納得のいかない点があるのですが、その間の消息を承わりたい。
  175. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 鬼怒川中部土地改良につきましては、調査が済んでおったのであります。そこで、事業費をつけてほしいということで、大蔵省と折衝しておったのであります。しかし、これは、全国的に国営の事業についてどういうふうに割り振っていくかという私の方の考えもありますし、大蔵省の考えもありましたが、結論におきまして、鬼怒川中部土地改良は事業費をつけたわけであります。また、利根水系の調査費は、もっと広範囲にわたった調査に手をつけていこうということでありますが、あまり多額の調査費で出発するというのもどうかと、こう考えましたので、財政当局と話し合いの上におきまして、お話のような額を調査費としてつける、こういうことになったのであります。
  176. 戸叶武

    戸叶武君 実は、赤城構想なるものが打ち出されたゆえんは、きわめて不自然でありまして、昨年の十一月、栃木県の鹿沼市の自民党の支部結成大会に、船田代議士、森山代議士を伴って行って、そこで打ち出したのろしです。私は、選挙運動のためにやったのろしだと思って、まあありそうなことだけれども、赤城さんともあろう者が何ということだと思って、歯牙にもかけないでいたが、今度自民党関東部会で打ち出して、新聞にでかでかと取り扱われ、さらに本省の方で赤城構想なるものが打ち出されたのでありますが、驚いたのは地元で、何の相談もないので、市町村長なり知事は面目まるつぶれ、地元民は憤慨して、むしろ旗を押し立てて騒ぐという状態です。あの平原地帯に大きなダムを作られたのでは、水浸しになってしまって、六百町歩はつぶれてしまう。五百七十戸はほかに移らなければならぬ。今市市の風見、山田地区では、反対期成同盟を作って騒いでいるのですが、これには、騒ぐ因縁があるのでありまして、占領軍が日本におりましたときに、ドン・ブラントという工兵大佐かと思いますが、この人が飛行機の上から見て、アメリカにおけるところのいろいろなダムの夢を見て、この辺にダムを作ったらけっこうじゃないかと、建設省にも勧め、それから、当時の栃木県知事にも勧め、それから、何か利根川開発会社というふうなものが持ち回って、えらい騒ぎで、膨大な案が広げられて、地元は非常に迷惑したのです。その亡霊がふたたび、どういう形でか、赤城さんに取りついて、そして盛り上ってきたというので、地元はびっくりしているのですが、こういう地元の不安を除くためには、こんな思いっきで、この大体の構想はいいのですが、まだ単なる調査段階であって、この風見、山田地区に大ダムを建設するという、新聞に掲げられたような事実があるのかないのか、この点を明確にしてもらいたいと思います。
  177. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) この利根川水系の開発ということは、今のお話のようなお疑いはないと思うのですが、選挙運動では全然ありません。国全体から考えて、これは必要な仕事だということで、調査費を計上いたしたのであります。  第二に、かつてアメリカ軍が占領当時計画したものが、今市にダムを作るということであったが、その亡霊に取りつかれているというようなお話でありますが、亡霊に決して取りつかれておりません。そういうようなところにまだいってない、実は調査費ですから、どこにダムを作るとか、そういうことは、これからの調査の結果でありますが、非常に大きな事業でありますから、すぐ今市にダムを作るとか何とかというようなことには相なっておりません。計画としては、いろいろかっての計画等も参考になりましょうから、そういう話があるいは出たかもしれませんが、私どもといたしましては、これから調査をいたしていくのでありまするから、今市方面にそういう動揺を起させたということは、まことに私としても残念でありますが、そういうところまで進んでおりませんので、実は、今市方面からも陳情に私のところへ来ましたけれども、まだ調査をいたしておる段階で、そこヘダムを作るというようなことなどがきまっているわけでもないし、また、設計ができているわけでもない。そういうところまではとうていまだ行っていないのだということを申し上げましたが、一つ、そういう動揺があるといたしまするならば、動揺をおさめていただきたいと思いますが、私の方では、まだそこまで進めておりません。まだ調査の段階で、予算が通ってから進めていく、こういう程度でございます。
  178. 戸叶武

    戸叶武君 次に、食管会計のことをお尋ねいたします。  食管会計のやはり一番大きな問題は、赤字処理の問題でありますが、この技術上の問題に対しては、時間がありませんから、また別な機会に質問いたしますが、食管会計の予備費は、従来三百億程度で組んであったのが、今度は五百五十一億という膨大な予備費にふくれ上っておりますが、どうしてこんなに必要なのか、その理由を農林大臣から承わりたいと思います。
  179. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように、食管会計につきましては、その健全化をはかるということが、昨年の消費者米価改訂の際にも、あるいは米価審議会等で始終出ておった問題であります。でありますので、一つは、百五十億円の運転資金を置いたということ、もう一つは、食糧管理会計を部門別勘定に改めて、従来とかくどんぶり勘定として、その辺の計算が、米においてどうか、麦においてどうか、外国食糧においてどうかというようなことがありましたので、部門別、六部門に食糧管理会計経理を分けたことも御承知通りであります。そういうふうに分けましたので、たとえば、去年の米の買い入れ数量は、初め二千七百万石に予定しておったのでありますが、結果においては三千百万石ぐらい買い入れております。こういうことがあります場合に、予備費が一つでありまするから、そういうことが割合に、融通性といいますか、あったのであります。ところが、今度は部門を分けましたので、そういうふうな場合に、各部門に予備費を置いてあります。予備費のない部門もありますが、そういうようなことから、そういうような場合も予想すると、従来よりも、予備費を各部門別に置きましたので、その合計におきましては予備費が多くなった。これは、経理の運営上そういう必要が生じたのでございます。
  180. 戸叶武

    戸叶武君 食管の中におけるこの管理費、特にこの保管料でありますが、これはつまり倉庫料であります。これが非常に莫大になっておりますが、この保管料がどういうふうに流れていくか、この実態を私たちはつかみたいので、その資料を求めたいと思いますが、アメリカにおきましても、この余剰農作物、それから、作付制限の問題から、アメリカの全土を歩いてみると、至るところに倉庫が建っておる。その倉庫業者というものは、政界のボスと結んでおって、こんな安全な経営はないのでありまして、とにかくこの保管料をもって金もうけをやっておる。日本におきましても、これは、私は今ここに調べておりますが、大体政界のボスと結んで、倉庫業者というものが安全なふくれ方をしておりますけれども政府において指定したところの倉庫にどういうような形で保管されておるか。そういう一覧表にされたようなものがあるならば、農林省なり何なりから適当な機会に示してもらいたいと思う。
  181. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 適当な機会に資料を提出いたします。
  182. 戸叶武

    戸叶武君 次に、食管会計に携わっているところの職員の待遇の問題で、今まで役場の職員とか、農協の職員が冷遇されておるので有名であったが、酷使されて、ひどい目にあっているのは、前線において食管のために働いているところのこの人たちだと思うのでありますが、しかも、今日問題になっておるのは、定員外職員の定員化の要求、それから、待遇改善の問題というのが問題になっておりますけれども、これは、実際上見まして、同じ役所の仕事をやっておる人にしても、あまりにも差別があり過ぎて、過労で、負担が重くて、ひど過ぎはしないかと思いますが、この点に対して、農林大臣はどういうふうに考えておりますか。
  183. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 第一線に働いている人たちの問題でありますが、特にこの出回り期においては、相当労務過重ということになるようでありますが、出回り期でないときはそうでないと思います。出回り期は、特にそのように感じております。そこで、いつでもこの出荷につきましては問題あるのでありまして、超勤手当なり、あるいはまた、割合に出荷期に入っていない方面から人を回して、これを手伝わせるということで調整いたしておりますけれども、ともかく第一線にいる人たちは、食糧関係ばかりではありませんが、非常に骨が折れて、待遇がそれに伴わないというような形があるのであります。そういうことでありますので、定員化の問題につきましても、私どもといたしましては、非常に力を入れて、行政管理庁なども話し合いをいたしたのでありますけれども、どの辺に線を引くかというような問題が一つありまして、定員化が十分に行かなかったということがあります。それから、公務員制度の改正を待って近くやろうというような点等とともにらみ合せて、ただいま提案しておるところに一応落ちついた、こういう状態であります。
  184. 戸叶武

    戸叶武君 食管制度が、今日は、日本の米作が豊作続きであるから、七千数百万石の収穫が続けられると崩壊しなければならないようなところへ来ている危険があるのではないかと思うのであります。この食管制度の運営は、食糧不足の場合は農家の利益を押え、消費者の安定に比重を傾けて、食糧事情が緩和して来ると、農家の所得補償的性格を持たなければならないことになっておるが、もうすでに今日の段階では、農作物価格支持制度の方へこの性格は変ってきたのではないかと思う。この際、食管のあり方というものに対して、根本的な考え直しをしなければならない段階に来ておるのではないかと思いますが、農林大臣は、いかなる見解を持っておりますか。
  185. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 食糧管理制度そのもの、時代の動きによりまして、重点的な方向が変ることは、今御指摘通りであります。食糧が不足の際には、食糧を充足していくということでありますが、最近におきましては、価格支持というような傾向が出ておりますから、そういう方向が強くなってきております。しかしながら、また消費者の面もありますので、食糧を配給するといいますか、充足をしていく面も非常に強く残っておるわけであります。しかし、お話のように、価格支持という役割を相当演じておるわけであります。今、農産物につきましては、約農産物の七割程度は――食管制度により、米麦、あるいはまた農産物の価格安定法によるものあるいは天災法によるもの等によって、七割程度は価格支持をしておるという形になっております。でありますので、その支持しておる方面におきましては、割合に価格は安定しておりますが、それ以外においては、不安定な格好になっております。そこで、食糧管理制度につきましても、重点的な方向がよほど変っておりますので、私ども研究をしておる最中といいますか、研究中であります。
  186. 戸叶武

    戸叶武君 農民の人たちが非常におそれておるのは、政府は、今回におけるところの食管のいろいろの措置というものは、次に来るべきところの米の値下げ、麦の値下げのための予備措置ではないかという心配でありますが、今の状態のもとに、生産米価の、買上げ米価の引き下げ、消費者米価のつり上げ、麦価の値下げ、そういうようなことをしないかどうか。
  187. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように、今年の生産者米価の予算米価は一万二百円であります。昨年の予算におきましては、予算米価は一万円であったのであります。実際に買入れておりますのは一万三百二十二円ということであります。これは、予算と、実際には米価審議会の諮問を経て決定する時期との間に、相当時間的な差がありますので、昨年より二百円上げの一万二百円という予算米価を決定して、予算審議を願っておるわけでありますが、これによって米価を引き下げるというような意味を持っておるものではありませんで、その時期において諸般事情を勘案し、あるいは米価審議会の答申を待って、これは決定されることになると思います。麦価におきましては、値下げをするというような意図を持っておりませんので、従来の算定方式によって麦価を決定して、予算審議を願っておるような次第であります。
  188. 戸叶武

    戸叶武君 今日お百姓さんが貧乏しておるのは、農政の貧困から来ておると思うのでありますが、いずれにいたしましても、今日の農家の所得というものは、日本の国民総所得の二〇%であります。国民の四〇%を占めながら所得は二〇%、都市と農村との所得の違いは三対一だというようなことが国連やILOの統計にも紹介せられて、日本におけるところの較差のはなはだしきに驚いておりまするが、日本の労働者の賃金の問題でもって、経団連が一月に出したものによると、たしか大企業が一〇に対して中小企業が六、小企業が四、大企業が二万円取っておれば、中企業は一万二千円、小企業は八千円、家内労働なり零細企業においては、六千円を割っておるものもあるというような、較差のはなはだしいのにも驚きまするけれども、農村における所得のみじめさというものは、農政の貧困から来ておるのでありまして、赤城さんは、非常に努力したように――また、ある意味においては、今の保守党内閣の中では努力したでありましょうが、とにかく農政関係予算というものが、三十二年が七・九%、三十三年度が七・七%というふうに、だんだん落ちて参りまして、二十八年の一六・五%の半分のパーセンテージになっているのでありますが、こういうところに私たちは、日本の農業というものが、食糧自給ということを、私は実際は放棄しているのじゃないかなと思って、いろいろ農林省関係からの文献を調べて見ましたならば、その農林省の文献の中に、やはり二十七年度に食糧自給五ヵ年計画というものを立てたが、また二十八年度にずらしてみたが、結局それが成り立たなかった。その理由とするところのものは、一つは、農林年鑑にあるのですが、国家の財政投資の目安がつかなかった。二の理由としては、特需方式による日本経済発展日本経済の根幹をなしていたので、食糧自給促進法案は遂に成立しなかったと報告しております。これは、農林白書が良心的に農林官僚が作った悲しい文字の抵抗であると同じく、私は、一つの文字の抵抗であると思うのでありますが、事実上において政府は、安い小麦なんかを外国から買って、日本の米や麦を作る、あるいは酪農にそれほど力を入れる必要はないというふうに考えている傾向があるようですが、赤城さんは、これに対してどういう見解を持たれますか。
  189. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農林予算が、すなわち国家の財政の農山漁村民、それに対する投資が漸減してきているじゃないかということでありますが、数字的に見まするならば、ここ数年来減ってきておりましたが、ことしは、御承知通り、一千八億というように上ってきたのであります。しかし私は、その数字の点につきましていろいろ議論をいたしておりますと長くなりますが、実体面におきまして、農林水産に対しまして、弱い層でありますから、国として相当の財政の出資もすべきである、またこれを育成強化していくべきものだというような観点に立って予算を編成して、御審議を願っているわけでありますが、幸いにことしは、一千八億というような、数字上の点におきましても上ってきておるのであります。しかし、必ずしもこれでいいというふうには考えておりません。一面財政投融資の面におきましても、昨年よりは相当拡大しておるわけであります。そこで、日本の農政に対する考え方を、安い物を外国から買っていった方が全体として、国全体のコスト計算からいえばいいじゃないか、だからして、国内にコスト高の財政を使っていくということはまずいじゃないかという意見もありますが、それに対する農林大臣の所見はどうかというふうなお尋ねのように拝聴いたしました。農林水産の仕事は、直ちに効果を、効率をもたらすというわけではないことは、御承知通りであります。昨年度の、三年続きの豊作というようなものも、多年にわたる農政あるいは農民の努力の結果だと思うのであります。そういう点におきまして、直ちに効率、効果が上らないといたしましても、やはり国内の総合的な食糧の自給度を高めていくと、そのためには、安い外国産の小麦や麦があるから、それを買ってもいいのだというような考え方では、私はいけないと思うのであります。そういうものにつきましては、もっと有効に外貨を使い、また、国内の安定という面からいいましたならば、やはり国内の食糧を総合的に自給するというようなことで政策を進めていくのが、農政としてはいくべき道だと、こういうふうに私は考えております。
  190. 戸叶武

    戸叶武君 農林大臣は、昨年私の農林委員会における答弁におきまして、二、三年来の傾向といたしましては、安い外国の小麦などを買った方が採算に合うのではないか、多くの費用をかけて、国内の食糧増産をはかるということは、そろばんに合わぬのじゃないかという考えが実際にあったと告白しております。農林大臣は、しかし外貨不足の壁にぶつかったので、農林省の根本的な考え方として、国内の食糧を総合的に自給化すること、生産性の向上や所得の確保が大切だということも述べておりますが、そこでまあ、赤城農政というものは、畜産と畑作に力を入れておるのですが、その畜産の面でお尋ねいたしますが、畜産の発展は、戦後はなばなしいものがございまして、特に乳牛は、二十四年に二十万頭が、三十一年に五十万頭、わずか七年間に二倍半、三十二年度は五十九万頭と、約三倍に増加しております。問題は、乳牛がこのような政府の奨励その他で増加しているが、今度はお乳が余ってしまった、乳製品が売れないというようなことで、お百姓さんは、私の栃木県あたりだと、去年は一升五十二円で、三円たたかれて、四十九円になり、さらに三円たたかれて、四十六円というところへ来ております。農民からは一合四円六十銭ぐらいでもって買い、そして都会の消費地においては、われわれには一合十三円で飲ませている。こういう流通過程に非常に矛盾があるのは、これは私は、この乳業資本の独占のもたらすところじゃないかと思うのです。しかも、今日この畜産の問題というものは非常に重大でございまして、所得の面から見ましても、三十一年の農家一戸あたりの現金収入というものが、米作の収入が四九%、第一位だけど半分になってしまった、畜産が一三%まで伸びて、第二位になっている。野菜はその次で、九%になっている、高冷作物が七彩、果樹は七%、今日問題になっておる養蚕は五%にまで落ち込んできておる。あの養蚕業というものがはなばなしかったことは、昔物語になってしまっているが、こういう点において、問題は、乳価安定ということをやるのは、非常に私は大切なことだと思いますが、この乳価安定で政府が打ち出したところの酪農振興基金法というものは、だんだん業者につつかれて、ゆがんでしまって、国会に出るころには本来の精神がなくなって、なま乳の適正取引を目的とすることに反対する大乳業の主張というものに押さえられてきているというような傾向になっているので、世間では、これは酪農の農民を救うのじゃなくて、乳業の商売人を救う策だとまで言っておりますが、これに対する農林大臣の見解を承わりたい。
  191. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 酪農を振興するということで進んできたのでありますが、今のお話のように、牛乳につきまして、生産者の方におきましては、生産をカバーするように高いといいますか、カバーできるような率で売るというようなことが必要でございます。一方におきまして、消費者におきましては、もっと安い牛乳をというようなことは、これは当然希望するところであります。そこで、この問題は、流通一般とも関係するのでありますが、私どもは、流通加工対策というようなことに、本年度の農林政策におきましても、そういう方向に方向づけていこうじゃないかということを言っておるのでありますが、これにつきましては、生産者と消費者と、それから、中間の配給業者といいますか、商人との利害が大へん複雑しております。そこで、酪農振興の基金五億円を政府から出資するこの法案も提出いたしたのでありますが、法案提出に至るまでにいろいろ、御承知のように、問題がありまして、そこで、今お話では、独占資本と大乳業者の利益のためにこういう法案が出されるようにゆがんできたのではないかというお話でありますが、実は、乳業者を押えるためにいろいろ骨を折ってきまして、むしろ私どもが非常に骨が折れたのは、乳業者の立場を押えよう、ところが、なかなか乳業者の方でそういうことを聞かなかったので、提出までに手間どったのでありますが、私ども考え方といたしましては、やはり生産者に――その他の方策もありますが、生産者に、乳業の対策といたしましては飼料の対策もありまするし、あるいはまた、消費を拡大して、消費面がふえればいいというので、学校給食をしておるのでありますが、集団飲用というようなことも進めようとしておるのでありますが、いろいろ対策もありますが、生産面に重きを置きながら、この法案提出までいろいろ話し合い、研究を進めてきましたので、非常におくれたのでありますけれども、決して乳業者を保護するということではなく、むしろ生産者に重きを置くという方向においてこの法案は提案しておる次第でございます。
  192. 戸叶武

    戸叶武君 この大企業の連中がバターだとか、チーズだとか、キャラメルだとかは宣伝するけれども、牛乳を飲むことを宣伝していない。フランスでは、シューマンととにも良識ある政治家といわれたマンデス・フランスが政権を取ったときに、フランス人はブドウ酒を飲み過ぎる。もっとミルクを飲めと言って、総理大臣が率先してミルクを飲み始めたが、岸さんあたりはこの際、まず「酒よりもミルクを」というスローガンで、閣僚からみんな牛乳を飲むくらいな奮発をやり、学校給食を強化し、職場給食も、まあうんと働いているからしょうちゅう一ぱいという考え方よりも、とにかく職場で飲めば、学校給食と同じように、国家が四円補助して、二円五十銭で飲める、あるいは一合五円だ、こうなれば、非常に大衆化してくると思う。こういうことを思い切ってやらなければ、日本の食糧革命と食生活の革命というものはできないと思うのだが、総理大臣率先して牛乳飲みを、学校給食、職場給食、閣僚給食と言っては悪いが、そういうことを始めるかどうか、承わりたい。
  193. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 酪農の奨励については、特に牛乳の乳価が従来大企業の力等のために、非常に低いということが言われておって、これが酪農の振興に支障をなしておるということでありまして、農林大臣としましても、いろいろその点において苦心をいたしておりますことは、従来申し述べた通りであります。  閣僚が率先して一つ牛乳を飲んだらどうかということ、十分一つ考えてもみますが、従来健康を誇っているわれわれとして、さらに牛乳を飲むことが適当であるかどうかも考えなければならぬというようなことでありますが、しかし私は冗談でなしに、牛乳ができるだけ消費されるということを適当な方法で奨励することにつきましては、十分考えたいと思います。
  194. 戸叶武

    戸叶武君 日本はだれでもが国土が狭くて人口が多いのだというので問題を、貧乏の原因をそこへ押しつけるようですが、スイスは日本より山国です。アルプスのある国です。万年雪をいただいております。しかしながら、その農地は日本の三倍の五二%です。日本は一七%です。それは山岳酪農をやっているからです。日本のようにクマザサやカシワの葉をはやして、むだに遊ばしていないのです。だけれども、それをやるのは、政府が思い切って自衛隊なんかをよしちゃって、国家の力で機械を入れ、農村の次三男対策をやって、高冷地から山岳酪農を始める、そういうふうな形にしていけば、どんどんまだ食糧問題の解決は拡大するのだと思いますが、そういう革命的なやり方をやると、外国から小麦や何かを買うのに都合が悪くなるかもしれないのですが、そういう点をどっちをとっていくのか。ほんとうに日本の米、麦だけに依存をしないで酪農を奨励するというのなら、徹底したスイスに学び、山岳酪農をやるというような転換をやらなければだめだと思うのですが、今の国有林あたりを遊ばして、林野庁の役人の食いものにして、林野庁の長官が立候補するならば、いつでも最高点で当選するというような、秋田、青森、北海道あたりの木材業者の献金と投票によって出てくる。こんな国有林では国家のためにならぬ。その点思い切ってやらなきゃいかぬと思いますが、農林大臣の所見を伺いたい。
  195. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 自衛隊をやめてという前提につきましては、私は賛成いたしかねますけれども、高原の酪農ということにつきましては、全く御趣旨に賛成いたします。その方向に進めていきたいと思う。ことしの予算においても土地調査などをやっております。なお、林野庁の方におきましても、非常に材種改善等ができまして、国有林におきましても成績を上げておりますので、いい面も一つお認め願いたいと思います。(「少いです」と呼ぶ者あり)
  196. 戸叶武

    戸叶武君 私は一昨年北海道の冷害地帯を、農林水産委員長としてずっと回って感慨無量なものがありましたが、釧路へ行っても濃霧が深いので、とてもやりきれないところなんだというが、世界中どこを歩いても、あのくらい北へ行けば濃霧におおわれている。ただ、日本の農林官僚のマンネリズムというものが、品種改良というところにだけばか力を入れて、旭川以北を見ると、ほとんどどんな品種でもだめになっている、冷害に。しかし、三年に一回くらい失敗するのは、計算に入れての米作だというし、農民自身は米を植えれば取れなくても、何とかなるのです。何とかなるのは、共済関係でもって六千円くらいは取れるから、ほかの物を作るよりは、取れなくても米を作った方がいいんだというような観念まで植えつけているところに、日本の米麦本位の行き方というものは、病膏肓に入っているのです。そこで、北方農業というものをどうしても確立するためには、酪農の振興、それからゲントコーン、ビート糖、ハッカ、そういうものを奨励していかなければいけない。特に砂糖会社がべらぼうにもうけて、悪いことばかりやって、このごろ警察や裁判所に迷惑をかけておりまするが、(笑声)あの台湾を日本が持っていた時代においては、ああいう形のサトウキビから砂糖を取らなきゃならなかったが、ヨーロッパの北方諸国を見ればわかるように、ビート糖を大量に作っている。やはりあの変な為替操作と、原糖を持ち込んで莫大な政治献金を積み上げるための操作がされているような砂糖よりも、日本の北方農業を確立して、日本でも相当砂糖でも自給体制ができるような私は方法も講じてもらいたいと思う。  それからこの問題は、酪農をやるのにも一番問題はえさです。えさが高いから、この濃厚飼料に困っておるのであって、乳牛から小さいところは鶏に至るまで零細農家でもって畜産をやっている。ところが、日本飼料なんかというものは、ふすまその他のトンネル会社みたいになって、これは河野さんに悪いかもしれないが、とにかくいろいろなところにこの政治的なひっかかりでもって飼料が非常に高く売りつけられている。乳価はたたかれてしまう、えさは高くされている。こういう形では、政府でいかに酪農を奨励してみても、この乳業関係の大企業を肥らせたり、飼料会社を肥らせることだし、また肥料問題でもそうです。われわれが農林委員会において硫安の問題を一年以上かかって、とにかく当時の通産省の柿手肥料部長を追及したが、ついに生産コストを明らかにしない。そうしてあぶら汗をたらしながら彼は死守した。なぜこんなに死守するのかと思ったら、しばらくしたら硫安工業協会の専務理事か何かになってやめてしまった。こういうような形において、ほんとうに日本の農民というものが日本の政治のあり方、役所のあり方というものに私は失望していると思うのです。硫安の問題でも今問題が起きておりますが、こういう飼料の問題肥料の問題、特に畑作を奨励するならば、農作物価格の問題ですが、ごらんなさい、白菜の累々と関東の原野にしなびておるのを。われわれが五十円で東京で買うのに、宇都宮だと三十円、農家の庭先だと十円を割って八円から五円くらいまでたたかれております。畑作農業を勧めるのはいいが、農作物の価格が安定しないところにほんろうされていったならば、農民というものは実にみじめだと思うのです。こういう問題に対して、どうも受け入れ態勢が、富農の方からはできておるが、小さな百姓にはできてないからということで、まま子扱いにされておることでは困る。もう日本の農業の行方というものは、もっと計画性を持ち、そうして農作物の価格安定というものの線を作り上げて、安んじて農業を営めるような方向に政治を持っていくことが一番重大であって、古い農政のマンネリズムにとらわれていてはいけないと思うのですが、赤城さん、今ほんとうに日本の農業革命というものと、われわれの食生活の革命、われわれの身近かな日常生活の革命から、日本の建て直しをやっていかなければならないと思うのですが、それに対する農林大臣の決意を承わります。
  197. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いろいろお話がありましたが、一々申し上げて時間をあまり取るのどうかと思いますが、北方農業等につきましても、品種改良ということだけではないのは、御承知の上の御質問のようでありますが、土地の土壌の改良もやっておりまするし、酪農もやっておりまするし、いろいろやっております。結論的に日本の農業におきまして生産を上げた、生産を上げたが、ふところ工合が悪いということではいけないじゃないか。まことに御指摘通りであります。先ほども申し上げましたように農産物の約七割は価格支持をして、いろいろな面で価格支持をしておるのであります。でありますが、その三割がまだ価格の支持関係ができておりません。これを価格安定制度を入れるかどうかということにつきましては、今入れるべきものとは私は思っておりませんけれども、流通対策につきましては、真剣に取っ組まなければならぬということで、この方策を今進めておるところであります。白菜の問題、牛乳の問題、繭は価格支持をしておりますが、白菜とか生鮮食料、魚介類等も入れましたものにつきましての流通対策、やはり共同出荷とか、共同販売とか、あるいは中央における市場を整理するとか、中間経費を少くしていくということにつきまして、非常にむずかしい問題でありますが、これをあえてこの問題と取っ組んで流通対策に力を入れていきたいということで進めておるような次第であります。  なお、話が出ましたが砂糖の問題でありますが、砂糖につきましても、国内の自給度を高めていこうということで、テンサイはもちろん、サツマの澱粉等の砂糖化ということにも力を入れているような状況であります。
  198. 戸叶武

    戸叶武君 最後に一点、総理大臣はこの国会が始まった当初の施政演説において、東西首脳会談を推進するという大構想を打ち出しましたが、アメリカもソ連も非常に歩み寄ってきた模様でありますが、どうも、岸さんがそれを推進した模様は、いまだに寡聞にして私たちは承知してないのでありますが、これは南極に行った宗谷が、両岸を見ながら砕氷能力がなくて接岸できなかったのと同じように、岸さんの外交政策が接岸に迷うているのかもしれませんが、どういう努力を、これからでもおそくないがやるか、そのことを明らかにしてもらわないと、劈頭の施政方針演説が煙になって消えてしまったのでは、これはお先まっ暗でありますから、これを承わります。  もう一つ、一萬田大蔵大臣に対しては、予算編成期におけるところの内閣と政党のあり方というものが、きわめて不健全でありまして、また、圧力団体にもよろめいておりまして、醜い姿でもって、力ずくでもって予算はどうにでもなるという印象を与えたのです。これは責任内閣制におけるところの一番汚点だと思うのです。そのときに世間は同情して、一萬田大蔵大臣があれほど袋だたきになっているので、岸さんはどちらかといえば、圧力団体の方へ味方してしまって、唯一の味方たるべき総理大臣がどうもささえてくれなかったのは、少し冷淡ではないかというような批評も出ておりますが、あのとき総理大臣がいかなる態度をもってバックアップしたか、その問題をやはり承わりたいと思います。  それから通産大臣に対しましては、日本のこの貿易というものが今のような形でゆくならば、ほんとうに自立態勢ができない、ギブ・アンド・テークの原則が貫ぬかれない。岸さんの先ほどの意見を聞くと、その方向へ行こうという覚悟はきめておるようでありますが、何しろ聰明な人で、ときどきよろめきますから、もっと閣僚が強く押し出しまして、私は自主的な貿易を進めていくことが必要だ。アメリカでも何でも、ほんとうの声を聞きたいのです。ほんとうはアジア・アフリカのほんとうの声を、アメリカにもソ連にもたたき込むだけの決意を持った政治家が日本にいないことが不幸です。迎合することではない、向うを変えるのだ、こちらが追従することではない。そういう形において、これはとにかく外務大臣も品質のよい点では、岸内閣の中でよい方でしょうから、どうぞ私は外交がこのごろは岸さんにまかせきりになっているようですが、一つ決意をおのおのから承わりたい。
  199. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 施政方針でもって、私は世界の国際情勢を分析して、もはや力と力の対立、バランスによって平和を保とうという考え方では行き詰っている。話し合いによってこれを推進すべきものであるという考えを、基本として申し述べたことは、御承知通りであります。しかして私は国際の情勢が今おあげになりましたように、両巨頭の間において話し合いが進められ、準備がとられてきていることは、いろいろな方面から報告されている。私はこの問題に関して、もちろんこの会談を過去のジュネーヴ会議の会談のような、あとからすぐせっかくかもし出されたいい空気が逆転することのないように、各国が慎重に準備をして進めていくことは望ましいと考えておったのでありますが、大体そういう方向に今国際情勢が動きつつあることは、非常に私はけっこうなことであると思います。もちろん、私が当事者として、この東西両巨頭会談をやるわけではございませんので、そういう空気を促進をし、そういう情勢が進められることについて、応分の力を添えたいというのが、私の考えでございます。そういう意味におきましても、今後においても十分国際情勢の推移を見ながら、この考えを推し進めていくように努力をいたしたいと思います。
  200. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 予算の編成権が内閣にあることは申すまでもありません。従いまして、内閣が責任をもって予算を編成いたすのでありますが、同時にまた、今日政党内閣でありますから、政党の政党としてのふだんの公約もあります。従いまして、政府といたしましては、政党と基本的な政策について十分な、かつ緊密な連絡をとりまして、そうして党と政府と一体になって、一つのここに基本政策を確立いたす。これに基きまして私は、政府として予算を編成していきたいと、かように考えて、今回大体そういう線に沿ってやったのでありまするが、これはまあ、従来に比べて私は政府と政党との関係をまずつけていこうという、そして基本的な政策を確立しようといたすために、この点は若干まだ不なれなことが双方にあると思います。そこで、これは少しすれば私はなれてきてよくなるだろうと考えているのでございます。  また、今さらに総理大臣のことも、総理大臣の任命されている大蔵大臣を、総理大臣が助けるなんか、そういうことはこれは考えられぬことで、そういうことは絶対にありません。
  201. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外交の責任をとることになりまして、私としては非常に重大な責任だとむろん感じております。ことに国際情勢の変転が、今日のように激しい時代はございませんし、また、世界がほとんど距離的にも近くなってきております時代において、世界のすみずみに起ります問題が、世界のすみずみまで広がって、いろいろな意味において影響を持ってくる時代でありますので、非常に大きな時代だと思います。従いまして、私としてはできるだけ努力をしてやること当然なことなのであります。しかしながら、外交の任に当りまして、私は私なりにやはり自分の過去の経験が生かせると思うのでありまして、外交にしろうととくろうとがあるかは存じません。私の過去の実業家としての生活というものは、やはり人と人との間の交渉であり、また、物事に対する折衝の面が多いのであります。そういう意味において、私の体験は、今やはりただいま戸叶氏がお話しになりましたように、卒直に物を言う、親切に話し合うということが、一番大事なことだと思うのであります。簡単に問題を考えます場合には、それはいろいろの手練手管も必要でありましょうし、あるいは策を弄して敵に当ることも必要でありましょう。しかしながら、長い間の外交交渉を担任する、長い間の人生の交渉を担任するという場合には、これは必ず親切な言でなければ人を動かせないと思います。従いまして私は、日本の今日の外交というものは、日本の国力に応じて、必ずしもきょう言ったことが明日できるとは思っておりません。また、われわれの主張がいつもいつも必ず受け入れられるとも思いません。しかしながら、われわれは信念をもって、率直にわれわれの立場を述べながら、お互いに話し合っていくことによって、日本の意図をはっきり世界に宜明していけるのではないかと思うのであります。これが私の長い間の経験から見て、私が外交を担任する上において、当然持っていかなければならない心がけだと、こう存じております。そういう意味におきまして、私は戸叶氏が今御指摘になりましたように、アメリカ人も存外率直な国民でありまして、私の過去の経験からいいましても、ずいぶん商売上議論をいたしましても、間違ったところは、存外間違ったと割合に他の国民よりもこだわらぬ点もあります。そういう意味におきまして、私はアメリカ人の性格を了解をいたしておるのでありますが、今後の日本の外交を展開していきますためには、単にアメリカといわず、各国に対してそういうような考え方でやって参らなければならぬと思います。私は私なりに一つの方針を持ち、今日までの私の過去の経験で積み上げられた集積で今後仕事をして参ろうと思っておりますが、ただ、私自身が政治生活になれておりませんし、いまだ議席も持っておりませんし、また、各方面の十分意見も聞いてやらなければならぬのでありますから、そういう意味において、慎重を期して、今後努力をして参りたいと、こう思うわけであります。
  202. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 戸叶さん、よろしゅうございますか。
  203. 戸叶武

    戸叶武君 首脳会談の推進というのを施政方針で具体的に今、政治は具体的な回答でなければいけないので、国会が開かれた……
  204. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 戸叶さん、恐縮ですが、もう一度御発言を願います。
  205. 戸叶武

    戸叶武君 国会が開かれたときの冒頭の施政方針のその第一に、東西首脳会談の促進というものを総理大臣は掲げておるのです。政治は常に具体的な回答をもって臨まなければならないので、具体的にどういう手を総理大臣なり外務大臣は打ったかということを、私は尋ねておるのです。(「口頭禅だよ」と呼ぶ者あり)
  206. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げたように、私は、この問題は結局、そういう世界的の世論が盛り上って、そうして両国がそういう方向にいくというのが、現在の国際情勢から見ますというと、そういう情勢であると思う。従いまして、特に最近行われておるような、われわれが主役を演ずべき立場ではないのでありまして、そういう世界の情勢を作り上げるというのが、私どもの現在置かれておる任務だと思うのであります。幸いに、両国がそういう方向に動いておりますから、特に具体的にわれわれが――私どもの意見は、国際的に日本がそういうことを希望している、日本がこれを促進する意図を持っているということを明らかにされているということが、これは私は、非常なこういう場合においては意義があると思うのです。具体的に、その後両国に書簡を送ったか、あるいはどうしたかということは今までしておりませんけれども、私は、そのことが、幸いに国際のそういう機運を醸成することにも何らかの寄与がされておるだろうし、また、そういうことで大勢が動いておりまするから、それがわれわれの意図と反した方向に動いているのなら、われわれはここに具体的に何らかの措置をとる必要がありますけれども、常に国際的な情勢を見ながら、そういう機運を盛り上げていくことに努力をいたしたいと、こういうふうに存じております。
  207. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 議事の都合により、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十四分散会