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1958-03-07 第28回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月七日(金曜日)    午後二時三十七分開会   —————————————   委員の異動 三月六日委員梶原茂嘉君辞任につき、 その補欠として岸良一君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     泉山 三六君    理事            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            高橋進太郎君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            大川 光三君            草葉 隆圓君            小山邦太郎君            佐藤清一郎君            塩見 俊二君            下條 康麿君            館  哲二君            土田國太郎君            苫米地義三君            苫米地英俊君            一松 定吉君            本多 市郎君            三浦 義男君            安部 キミ君           小笠原二三男君            岡田 宗司君            坂本  昭君            鈴木  強君            曾祢  益君            高田なほ子君            戸叶  武君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            吉田 法晴君            加賀山之雄君            岸  良一君            豊田 雅孝君            千田  正君            市川 房枝君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松永  東君    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  前尾繁三郎君    労 働 大 臣 石田 博英君    国 務 大 臣 石井光次郎君    国 務 大 臣 郡  祐一君   政府委員    内閣官房長官  愛知 揆一君    法制局長官   林  修三君    人事院総裁   淺井  清君    総理府総務長官 今松 治郎君    調達庁長官   上村健太郎君    調達庁労務部長 小里  玲君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省移住局長 内田 藤雄君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    厚生省社会局長 安田  巖君    労働省婦人少年    局長      谷野 せつ君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   —————————————    会計検査院長  加藤  進君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○昭和三十二年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和三十二年度特別会計予算補正  (特第4号)(内閣提出衆議院送  付)   —————————————
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員の変更について報告いたします。  三月六日、梶原茂嘉君が辞任せられ、その補欠として岸良一君が選任されました。   —————————————
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これより昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、並びに昭和三十二年度予算補正(第2号)及び(特第4号)を一括議題といたします。  昨日に引き続き、質疑を続行いたします。
  4. 市川房枝

    市川房枝君 岸総理に対しまして、まず、売春汚職の問題についてお伺いいたします。  売春汚職の捜査は、昨年の暮に大した発展もいたしませんで終ってしまいました。総理初め、ほっとなすった方がだいぶんあったろうと思いますが、国会としても体面上、あまりボロを出さないで、あの程度で済んでよかったと言えるかもしれません。しかし国民は、造船汚職、全購連汚職等と同じように、また途中で消えてしまったと、非常な不満を持ち、国会に対しての不信を深めております。どうして売春汚職が、いや、その他の政府国会関係のありまする汚職が途中で消えてしまうのか、少くとも国民にはそういう印象を与えておりまするが、どこに原因があるのか、新聞が誇大に書き過ぎたのでありましょうか、あるいは検察陣の努力が足らないのでありましょうか、あるいは法に欠陥があるのでありましょうか、一つ国民に納得のいきますように総理及び法相から伺いたいと思います。  なお、その汚職追放を目的としてあっせん贈収賄罪規定した刑法改正案国会提出されようとしておりますのはけっこうだと存じます。しかし内容は、最初の法務当局原案より非常に狭められまして、いわゆるざる法で大して役に立たない、むしろ逆に抜け道を教えているようなものだと言われております。総理並びに法相は、この内容十分効果を上げられるとお考えになっておりますかどうか、それもあわせてお伺いしたいと思います。
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 汚職の問題に関しましては、私は御承知のように三悪追放一つに掲げて、国民の前に汚職は徹底的にこれをなくするようにあらゆる面から努力するということを誓っております。従いまして、不幸にしてそういう事実があったとすれば、これを徹底的に糾明して、そうして将来を戒めるという私は方針でおりまして、このことは法務省及び検察当局にもそのことを徹底するようにいたしております。従いまして、過般のいわゆる売春汚職なるものについては、政治的な考慮でもってどうしたというようなことは絶対にないことをここに明らかに申し上げておきます。ただ、御承知通り汚職の問題を糾明する検察当局苦心は、今日の刑事訴訟法でもちろん証拠がはっきりしなければ、これを起訴し、訴追することができないことは、人権の擁護の立場から当然でございます。しこうして犯罪性質上、物的証拠というものが非常に少くて人的証拠にこれを待たなきゃならぬという面が、非常にこの犯罪性質上多いのでございます。そういうことに苦心をし、徹底的にやろうといたしましても、思うようにいかぬ点も私はある一つ原因であろうと思います。また政治家につきまして、特に私ども手心するとか、あるいは何らかその間に政治的の世間で疑惑を招くようなことをすることは、絶対に今申しました私の心がまえからございませんけれども、しかし議員活動は、御承知通り非常に広いものでありまして、国家公務員等の限定されておる職務範囲内と違いまして、その政治活動というものが広範囲であるために、いわゆる職務に関連しておるかどうかという場合の事実を明確ならしめてみまするというと、他の公務員の場合とは明確にいかないところがあるのも、これも事の成り行き上そういうことになる問題があると思います。そこでいわゆる国民感情の問題と、そうして現実の何との間に、結果的に見て相当な開きが出るために、いろいろな疑惑とか、あるいは国民が納得しないとかいうような、今市川委員お話のような点が出てくると思います。しかし私はあくまでもこの問題については厳正な立場検察当局その他にも臨むように特に要望いたしておりまして、そういう点におきましては、少しもその政治的の圧迫等が加わるようなことは絶対ないということをはっきり申し上げておきます。  あっせん収賄罪の問題につきましては、これまた私は政治浄化のためにこれを制定するということをかねて申し上げております。ただこの規定をどうするかということにつきましては、御承知通り各国立法もまちまちでございますし、また法曹家の間にも相当に法制上の議論のある問題であります。私どもはこれを刑法改正審議会にかけまして、日本のこの方面における権威者意見を聞いて、案を立案いたしておるのであります。何か法務省に前に原案があって、それよりもこれが弱められたというふうな御意見でございましたが、そういうことはないのでありまして、これがわれわれの考えておる案でございます。それ以外にはないのであります。いろいろな御批判はあろうと思いますけれども、私は政治浄化する上において、このあっせん収賄罪規定が提案され、成立するならば、一段とそういうことに対する効果がある、かように信じております。
  6. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 売春汚職その他いわゆる汚職というものが龍頭蛇尾に終っているのではないかというお疑いでのお尋ねと存じます。いろいろの汚職新聞紙その他で伝えられまする際に、それが予想のように発展したとかしないとかいうことは、これはいろいろ世上でうわさされまするけれども検察当局といたしましては、法律違反証拠がございますれば、どこまでもその証拠を追うて訴追手続をいたしておるのでございまして、もし何かたとえば売春汚職等につきましてこれを発展させないような工作でもしたかというお疑いでのお尋ねでございますれば、さようなことは絶対にございません。検察当局といたしましては、売春関係について汚職疑い……ある端緒を得まして、それからたぐり寄せまして、証拠のあらん限りは検察事務厳正中立に行なった次第でございます。検察当局といたしまして、それがある程度でとどまるか、あるいは非常に発展するか、そういうことはわかりません。ただ調べて参りまして、証拠のあらん限りこれを追及いたします。もちろんただ世上にうわさがあるとか、あるいは新聞紙に書かれたというようなことで人を取り調べますことは、これは人権じゅうりんになりますから、慎まなければなりません。人権じゅうりんにならない、法の命ずる範囲内におきまして、そうして法律違反がございますれば、どこまでもこれを追及して参るわけでございまして、もし何かの工作売春汚職その他について手控えをしたというようなお疑いでございますれば、さようなことは絶対にございませんということを、私が責任をもって明言をいたします。  それから次にあっせん収賄罪についてのお尋ねでございました。これはすでに総理からお答えのあったことにつきておるかと思いますが、事務を担当いたしておりまする私の立場から、やや事務的になりまするけれども御説明申し上げまして御了解を得たいと思いますが、これは御承知のように、あっせん収賄罪規定はまあ非常に内容のむずかしい規定でございまして、古来わが国学者専門家の間にも非常に論議のある問題でございます。それからまた各国立法例を見ましてもまちまちでございます。ある国もあればない国もございます。わが国刑法母法といわれておりますドイツ刑法ではまだこの規定がございません。あの理屈っぽいドイツ人でございますから、数十年にわたってこのあっせん収賄罪規定するの可否規定すればどの程度にこれを規定するかということについて論議をかわして参ったんですけれども、まだ成文化しておりません。それほどに非常に議論のある法律でございまして、この法律を必要とする意見の側から申しますれば、なるべく広く強く規定すべきであると、こういう考えが出て参りますが、また一方それと反対立場に立ちまして、このあっせん収賄的の行為は社会悪といい得るかもしれぬけれども、それを取り締るために法律を作ると、そうすると、公務員の善良なる活動がほとんど抑制されてしまって、その副作用の方が大きい。だからこういう法律は作るべきでないという反対意見もございます。かりに作りましても、まずきわめて限局している範囲、そうして法律の解釈上疑いのないような字句をもって規定すべきであるというような、まあ両方の極端な考えがあるのでございます。その間に立ちましてだんだんとこの社会情勢政治情勢をかんがみられて、岸総理とされましては、どうしても今日汚職追放という観点から、あっせん収賄的の規定をおく必要があるのじゃないかというお考えになられたのでございまして、私といたしましては、大体にそれを立法するという御趣旨に基きまして、案は私独自の考えで作っております。先ほど総理からのお答えのありましたように、私どものところで考えた案が他の場所で制約を受けたというようなことは絶対にございません。ようやく事務当局におきまして一案を得まして、私といたしましては、この案がまず今日のこの政治情勢社会情勢に対処されるときの最も中正、適正な案と私は確信をいたしております。この案を法制審議会にかけたのでございまして、法制審議会ではまああらゆる日本学者専門家が集っております。自由に討論をしていただきまして、その間にこれはざる法ではないかという意見のあったことも確かではございますが、これはその御意見を発表された方のお考えでは、このあっせん収賄罪はこれでよろしいけれども、それと表裏して第三者供賄をすると、第三者に金品を差し出すという場合が抜けておれば、自分は金を取らずに他の後援会あるいは親族というようなものに金を取らせるからそれですっかり抜けてしまうという御心配で、それでざるであるという御批評があったのでございますが、これは一つ考えでございます。しかしながら今日まで私どもの研究して参りましたところでは、一体わいろ罪規定はその歴史を見ましても漸を追うて進んでおるのでございます。あの刑法法典をお開きになればわかります通り、第何条の二とか第何条の三とかいう形に残っております。それは、わいろ罪は漸次規定を完備していったその順序を示すのでございまして、今日の直接収賄罪も後に至って第三者供賄というようなその規定をおいたのでございます。この刑法改正の全体についての仮案ができております。これは過去二十年にわたって学者専門家権威者が作った案でございますが、それにもあっせん収賄罪一案がございます。しかしそれにも今の第三者供賄規定はございません。それからしてかつて昭和十六年でございますか、国会に提案されました案にもございません。社会党の御提案になっている案にもこの第三者供賄罪規定はございません。私どももまずその規定は漸を追うて補充的につけ加うべきである、かような考えに立っております。ともかく今私が考えておりまして、そうして法制審議会で大体賛成をして、決議をして、答申になっておりまするこのあっせん収賄罪の案がまず最も適正な案である、そうしてこれを実施してみて、その成果によって漸を追うて改正していくべきものである、かように考えておりまして、初めのお尋ねのように、私の案——法務省で作った案が他の手によって修正をされたなんていうことは絶対にございません。
  7. 市川房枝

    市川房枝君 第二に総理にお伺いいたしたいと思いますのは、恩赦の問題でございます。  国民皇太子様の御慶事に際しての恩赦選挙違反が含まれては困ると心配しております。この問題については本会議石黒議員から、またこの予算委員会森委員から御発言がありましたが、総理お答えはどうもはっきりしない。どうしてはっきり含まないとおっしゃれないのであろうと、こう思うのですが、国会をいつ解散するのかというような御質問お答えになれないということは、これはわかります。しかし選挙違反恩赦に含まれないというのは、これは明確にお答えしていただきますと、それだけで現在行われております悪質の事前運動が減り、選挙公明になると思います。もっとも総理が言明されても、国民はあるいは信用しないかもしれません。いや、岸総理は信用しましても、他の総理の場合になりますとまた心配しなければならないかもしれません。この心配を幾らかでも少くするためには、恩赦法改正して、内閣恩赦審議会を設けて、政令により一斉恩赦をします場合には必ず諮問するということにしますれば、いわゆるお手盛り恩赦をある程度防ぐことができると思います。で、この改正案は現在衆議院法務委員会にかかっております。諮問機関として審議会を設けるということは政府のいろいろな機関にございますので、恩赦法にない方がむしろ不思議なくらいだと思います。審議会委員がもし不適当でありましたら、適当に修正していただきまして、ぜひ今国会中に成立させてほしいと思いますが、総理の御意見をお伺いしたいと思います。
  8. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 選挙公明を期し、悪質な選挙違反をなくするということは、これは民主政治完成を期する上から、また政治浄化の上から絶対に必要なことだと思います。従ってあらゆる面においてそういう悪質なものをないようにしていかなきゃならぬというお考えに対しましては私も同感でありますし、また特に将来の恩赦等を目当てにして選挙違反をやるというようなことは、厳にこれを取り締るようなことを考えなければならぬ。恩赦の、将来あるべき皇太子妃のきまりました場合の御成婚の場合の取扱いにつきましては、私しばしば申し上げておりますように、将来の問題でございますが、すでに過去におきましてもその一つの事例がございますし、その場合におきましても、及んだところは減刑の範囲にとどまっておるという先例がございますし、そういうこととはさらに離れて、今申しました根本の精神によって、そういうことに対しては、そういう悪質なものは厳に取り締るということを考えておるわけでございます。ただ、それならそういうものは含めないのだということを今はっきり言えというような御議論もございます。しかしこれはいろんな関係におきまして、将来の問題でございますので、私がそういうことを言うことは適当でないと私は考えております。しかしそういうものを前提として今のような違反が行われることは厳に取り締りたいということを明確に申し上げておきます。  それから恩赦の場合の審議会についてのお考えでありますが、私はこれは一つのわれわれ大いに考慮すべきお考えだと思います。しかしそれにつきましては、制度の上からいろいろ研究すべき問題が私はあると思います。そこで慎重に検討いたしたいと思いますが、なおその点に関しましては法務大臣から補足してお答えをします。
  9. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 大体総理大臣からお答えのあった通りでございまして、私の申し上げますることも、その範囲を出ることはできないわけでございます。  恩赦のあることを見越して、そして手放しで選挙事前運動をやっておる。これはまことに不届き千万なことでございまして、今日でも検察当局を督励いたしまして、法に触れるようなことは断固として処置するように命じております。ただ将来の問題につきましては、ただいま総理お答えのあった通りでございます。  なお、恩赦制度について審議会を付置することの可否につきましても、この前もお答えいたしたかとも存じまするが、これはなかなか重大な問題でございまして、慎重に検討をいたさなければならぬと思っております。まだ結論を得ておりません。
  10. 市川房枝

    市川房枝君 次は、常時政治啓発公明選挙運動についてお尋ねいたしたいと思います。  選挙人すなわち有権者に対しての常時政治教育を行うことは、民主主義政治におきましては非常に大事なことであります。この重大な任務は二十九年の公職選挙法改正選挙管理委員会に課せられておりまして、そのための費用として三十二年度は二億円、三十三年度は衆議院選挙があるというので二億五千万円計上されております。一体これでどの程度効果があったのか。二十九年以来むしろ選挙は金がよけいかかるようになったようでありますし、選挙違反がむしろ増加しておるのではないか。総理は一体これをどうお考えになっておりますか、伺いたい。  それからこの選挙管理委員会というものは、本来選挙事務を担当するものでありまして、この委員には政党関係の方々が相当なっておられます。今のままでは、私は常時政治啓発を担当するのには不適当ではないかと思うのでありますが、いかがでございましょうか。  それからなお、これは私の信念の一つでありますが、公平中正な政治教育政府政党の手ではできない。政治教育が徹底しますれば、選挙での、いわゆるカバン、看板、地盤がものを言わなくなります。それであまり効力のある政治教育をしますれば圧力がかかってくる。従っておざなりになりやすい。そこでほんとうの政治教育民主政治育成の熱意に燃えておりまする民間団体の手によらなければならないと思っております。常時政治啓発公明選挙運動民間団体といたしましては、公明選挙連盟という団体がございますが、この団体には昨年度から年五百万円の委託費が出ておるだけであります。いや、この団体はそもそも自発的な民間団体として生まれましたので、政府からのひもつきの金をもらうことをいさぎよしとしないのかもしれません。それで現在国会に提案されております日本労働協会法、この法の内容は別問題でありまするが、この法案で採用されておりまする政府出資の金を預全部に預託いたしまして、寄託いたしまして、その利子で時の政府に左右されない公正な中立的な常時政治教育団体というものを作るということも今考えられるのではないかと思うのでありまするが、総理はどんなふうにお考えになっておりましょうか、お伺いいたします。  それからついでに、現在の選挙管理委員中にどの程度婦人が参加しておりますかどうか。またぜひ婦人を一人ずつ委員会に入れていただきたいという考えを持っておりまするが、それには法律で、ちょうど職業安定審議会のように、これは安定法規定されておりまするが、一人以上婦人を加えなければならないと規定しております。そうするよりほかにないのでありますけれども、これらについて自治庁長官どんなお考えを持っておいでになりますか、お伺いいたします。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 民主政治完成のために公明選挙運動が徹底し、一般政治思想啓発のために大いに常時力を用うべきであるということは、私は当然でありまして、各政党もその意味でおのおのやるべきであり、また公正な立場からの民間から盛り上る運動、ないしはそういう識者の人々で国民のうちにそういうことを徹底するということは、きわめて有意義なことだと思います。ただお話のように時の政府が特定の、自分の方を支持するものを多くせしめるような意図でもって、名を政治啓蒙にかりてやるというようなことがあっては、これは望ましくないと思います。しかし各政党がおのおの国民の間に、自分たち政党を支持する層を拡大して行こうということで、自分たちの政策なりあるいは政治に対する考え方というものを徹底せしめるようなことは、これはこの政党としては当然やるべきことだと思っております。なお御質問になりました選挙管理委員会やその他の問題につきましては、関係大臣からお答えをすることにいたします。
  12. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) 常時啓発運動が、三十一年、三十二年漸を追うてやはりしみ込んで参りました。話し合い運動というのはやはり一番私はしみ込み方が強いだろうと思います。大体これが延べ人員にして一年間に六百万人に達しております。これについてさらに徹底をして、またやり方を考えなければ相ならんと思います。それから選挙管理委員会法律上もその中立性を確保するあらゆる工夫をこらしております。現在の公職選挙法選挙管理委員会に常時啓発の義務を負わせておりますごとく、これは筋が通っておると思います。同時に婦人団体、青年の団体、こうしたものとできる限り協力をいたしまして、そうしてやって参る必要があると思います。私は何と申しますか、選挙についての啓発運動というものは広く国民にしみ込むことでございまするから、御指摘のような公明選挙連盟というのも一つの形でございますし、私は何か一つのまたここに別のものをこしらえるという考え方よりも、どうか今の法律の建前で、そうしてあらゆる青年団体婦人団体等と、何と申しますか、手をつなぎまして、そうしてやって参りたいものだと思っております。  それから婦人選挙管理委員は、私の承知しておりまするところでは、府県では兵庫県その他八県、市では大阪市その他十市ばかりがございますが、そこで非常によく活動してくれていますし、大阪のように大きな市で婦人委員長になってやっておられます。これは職業安定審議会委員と、ちょっと選挙と建前が違いますから、ぜひこれに婦人を入れるという法律上の要求はいたしませんでも、婦人がこういう方面で活動して下さることは非常にけっこうなことだと思っております。
  13. 市川房枝

    市川房枝君 次は、新生活運動について伺いたいと思います。総理府の主管されております新生活運動協会というのは、御承知通り三十年の八月、当時の鳩山首相の提唱で組織されました。三十年には半年で五千万円、三十一年には一億円、三十二年には六千万円、来年度は八千万円の予算が計上されておるようであります。一年半会長が欠員でありまして、この間やっと新会長がきまりましたが、先般そのための理事会、評議員会がありまして、私も実は評議員の一人をしておりますので出席をいたしましたが、その評議員百四十七名、理事二十七名が定員でありますけれども、出席しましたのは十四名だけであります。出欠表を見ますというと、三名か四名のこともあるそうであります。で、新生活協会は役員が会合に出ますと一回について千二百円くれるのでありますが、こういう状態であります。で、協会自身、実はその御出席にならないそういう多数の役員、そういう方々の名前を並べて、そうしてそういうやり方をやっておるというやり方自身が私は旧生活であって、新生活運動である以上は、そういう点からむしろ出直す必要があるのじゃないか。現在の同会の模様でございますれば、私はほんとうは税金がもったいないくらいだという感じを持っております。新会長ができましたのでありますから、事務局も新たにして同会を再建させるお考えはおありにならないか、総理に伺います。  それから次にこの協会を作りました鳩山内閣は、組閣当初において公邸廃止だとか、あるいはマージャン廃止などを唱えて——もっとも待合政治をやめるということはおっしゃいませんでしたが、当時相当国民から歓迎されまして、その継続として協会ができたのでありますが、その協会の結成式の席上で、官界、政界がまず率先垂範すべしという決議が満場一致で可決されました。岸総理は組閣の際、新生活でなくて三悪追放を宣明されたのであります。そのせいかどうですか、総理はだいぶ赤坂方面にも親しいとうわさを聞きますが、(笑声)私は三悪追放のためには、どうしても個人的にも、社会的にも新生活を確立する必要がある、こう思うのでありますが、それには総理御自身及び官界、政界がまず率先垂範すべきだと思いますが、いかがでございましょうか、御意見を伺いたい。
  14. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 新生活運動の問題は、われわれの生活環境を見るというと、衣食住の問題にしましても、あるいは社会道徳の面からいっても、いろいろな従来からの慣習等で、これを合理化し、これを改むべきものが非常に多い。これを国民一つ運動として盛り上げて国民の間に広くこれを徹底し、そうして新生活の効果をあげていこうということから起った問題でありまして、もちろんこういうことにつきましては、期間的に申しましても、相当われわれの習俗というようなものも長年のことからきておる関係から見ましても、衣食住の問題にいたしましても、これを合理的に改めていくということにつきましては、根強く相当な時間をかける必要もあると思います。しかし私はこの運動が起されまして、各方面、ことに地方等に相当な程度に浸潤をし、いろいろな効果が上っておる、ただほかのもののようにこれが数字的にどうなったということを示すことが非常にむずかしい関係上、そういうことがあると思いますが、しかしそういう性質のものでありますから、これの運動に携わる中心となるべき人の御苦心も非常に大きいことであり、また御努力も非常に大きなものを期待しなければならぬと思います。最近新会長ができまして、私は久留島君とは長い友人であり、また同君のやってきておる事柄に関しましては、従来非常に私も尊敬をいたしておる友人でありまして、非常な実行力を持っており、また活動的な人であり、非常に明朗潤達な考えを持っておりまして、私は同会長に非常な大きな期待をいたしております。ついては人事等につきましても、久留島君に、一切を君の思うままに一つやってもらいたい、ずいぶん不必要な冗員もあるだろうし、またただいまおあげになりましたような以上にいろいろなことを兼ねておって、それだけの熱意をもって御協力をいただくことのむずかしいような方を、ただ名前だけあげておるということも実際は意味をなさないことでありますから、大いに新生活運動の本旨を一つ発揮してもらいたいということをお願いをし、同氏も非常に張り切ってこれをやろうという熱意に燃えておりますので、その将来には私は相当な期待をいたしておるわけであります。
  15. 市川房枝

    市川房枝君 内閣としてどうですか、新生活運動のもう一つの。
  16. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 内閣として、今度の予算も今おあげになりましたような変遷を経ておりますが、昨年よりもこれを増してやっております。それからまたこういう問題については、指導的立場にあるものが率先垂範すべきものであるというお考え、私は全くその通りだと思います。私ども至らぬところが多いので、いろいろな御批判はあると思いますが、そういう心組みで進みたいと思います。
  17. 市川房枝

    市川房枝君 では次は、婦人関係の問題について、少しこれをお伺いしたいと思います。  去る一月二十九日の本会議での総理の施政方針の演説の中で、婦人について「戦後婦人の地位は着々向上してきたのでありますが、その福祉増進のためには、なお、社会、経済等の各分野において施策を進めていきたいと考えておるのであります。」とおっしゃっております。婦人のことについておっしゃっていただいたのは今度が初めてでありますが、婦人の地位がどんなふうに向上してきたとお考えいただいておりますか、あるいはその福祉増進のために、社会、経済等の分野でどんな施策をお考えになっていただいておりますか、できるだけ具体的に伺わせていただきたいと思います。
  18. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは、私が申し上げるまでもなく、一番根本は、新憲法によって婦人の地位が旧憲法の時代と格段の変革が行われまして、政治的にも、あるいは社会的にも、あらゆる面においてほんとうに男女同権であり、また現実に政治的にあらゆる活動のできるような時代になりました。また、婦人がそれをよく理解されて、政治的、社会的の婦人活動というものが非常に拡大されたということは、これはだれも疑いを持たないところであり、非常にけっこうなことだと思います。しかし同時に、そういう状況でありますけれども、また一面において婦人立場考えてみまするというと、子供を生み、これを育てられるという立場がございます。そこで、夫を失った方のこの大きな責務を果していく上においては、これはやはり国、社会がこれに力を加えていかなければならぬ。いわゆる母子施設の問題、母子年金、その他の施設の問題について、特にわれわれとしては強化していく。今度の予算におきましても、そういう方法をとっております。また同時に、妊産婦の健康の問題は、また特殊の意義を持っており、これらを中心としての健康センターの問題を予算にも考えております。また、私はよく青少年諸君に呼びかけておりますが、この青少年ということは、言うまでもなく、男女両方を含んでおり、若い世代の、次をになわれる方にいろいろな施設をしていくという方向に考えております。
  19. 市川房枝

    市川房枝君 婦人のことも考えていただいておるようでありますけれども、しかし、その裏づけとなるものはやっぱり予算でありますが、今、総理は、三十三年度の予算で、母子関係で新しく新規のものを認めたとおっしゃっていただきました。母子関係ではなるほど認められていただいたのもありますけれども、一方、母子福祉資金貸付法なんかでは五千万円減らされております。従って、出し入れしますと、大してやっていただいていないことになるわけであります。で、そのほかの婦人関係の予算で、役所別で見ますと、労働省婦人少年局、文部省社会教育局なんかにもありますが、そういうのも少しずつはふえておるのでありますけれども、大して実はふえていないのです。  ことに予算関係でいいますと、売春防止の予算は、この四月から完全実施されるので、厚生、労働、法務、警察等の関係官庁から二十一億余円の要求をいたしましたところが、大蔵省の第一次査定では、これがたった三億円に削られちゃった。最後にやっと五億円ほどになりまして、本年度の関係予算四億三千万円より七千万円ほどふえるにはふえた。しかし、総理は臨時国会での私の質問に対して、三十三年度の売春予算は十分考えますとおっしゃって下すったのですが、一体これで十分お考え下すったかどうか。またこれで、社会革命とでもいわれるこの売春防止の実施、いわゆる赤線の廃止完全実施ということについて、一体この予算でできるとお考えになっておいでになるかどうか。私は、実施後必ずやいろいろな問題が起って参ります。この予算では足りない。その際に政府は予備費の支出ないしは補正予算で補って下さいますか、それをちょっと伺っておきたい。
  20. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 売春対策につきましての予算関係でありますが、今度予算を編成するに当りまして、特に意を用いましたのは、婦人の更生という点に主眼を置きまして、それでまずこの法務省に補導院を新設いたしました。それから、何といってもやはり正業につかねばいけません。生業の貸付資金をふやす、それから被服の給与費をふやす。かように、更生ということに主眼を置いたわけであります。もっとも、これは何も本年度だけでありませずに、昨年度から本年四月の実施を目標にして準備を進めております。従いまして、この婦人相談所は昨年度の予算で大かた各県に行き渡りまして、収容保護施設ですか、これも本年度十二カ所ふやします。昨年度まででこれも五十一カ所くらいになると思います。むろん、この収容保護所等は、あるいはもう少しふやすことが必要であろうかとも思うのでありますが、なお今後充実することにいたします。まあ今のところ、これで四月一日から売春法を完全実施されても支障はない、かように考えます。
  21. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連……。私どもは、ただいまの大蔵大臣の御答弁には絶対に承服できません。今の売春婦の数から申しまして、十カ所やあるいは五十カ所で、幾人収容するのです。これで間に合うなんてことを、ほんとうに思っていらっしゃるか。国民をごまかさないような御答弁がほしい。ことに、昨年私どものあなたえの要求に際して、法律が適用になるときに、少くとも十億くらいの金は出しましょうとおっしゃったのです。ところが、ぬけぬけと三億くらいでごまかそうとして、婦人団体の圧力によって、結局泣き泣き五億足らずの金が出た。これで一体できるのですか。性病予防法の予算だって削られております。もう少し人間性を大事にした予算を組んでほしいのです。ことに、最近出た実例でございますが、売春婦にはなるほど更生資金を貸すことになっております。だれが引受人になる。引受人の成り手がないから、そういう制度があっても借りることができない、こういう例が続続出ている。一体どういう人が引受人になったら借りられるのですか、そういう点も明確にしてもらいたい。  さらに、先ほど市川先生の御質問に対しまして、母子福祉資金の問題でございますが、あれなんて、私どもは納得できません。今年度五千万円減っているのです。内訳を見ると、従来は五万円貸すことになっているのを、今度十万円まで貸せる。十万円まで貸せることにして、それで五千万円減っている。その内容は、結局国が半分、地方が半分。従って、地方が財政困難でございますから、結局地方が財政措置をしない。だから、国が出さない。従いまして、借り手がないから予算が減るのだ、こういうことになって、毎年毎年減らされております。しかも、あれは全部国庫負担にすべきだというわれわれの委員会における要求をほごにして、地方も必ず出すでありましょうから、半額は地方に譲ります、こういうことであれは押し切られちゃった。夫を失った、子をかかえた未亡人が、夫にかわる支えとしての国家的な愛情ある法律だと私たちは理解しておる。ところが、最近これに利子をつけておりますけれども、この償還金が減って、取り立てのための予算が莫大に組まれている。一体これはどうなんです。これで婦人を保護していると言えるのですか。御答弁を願います。
  22. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大へんおしかりを受けましたが、実は決して売春婦の対策について怠っておるというわけではないのでありますが、(「怠っていますよ」と呼ぶ者あり)これは売春婦の扱い自体が、またこれ非常に私いろいろとむずかしい点があると考えるのでありまするが、私どもとしては、当然できるだけのことをいたしておるわけでありまして、この生業貸付金の点については、私、先ほど特に力を入れたと申しておるのでありまして、これでは減額されておるというお話でありまするが、そうではないのでありまして、これは回収金が相当あるのであります。本年度の貸付の力は相当ふえておる、かように私は考えております。
  23. 藤原道子

    ○藤原道子君 ちょっと、それでは納得できない。
  24. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 簡単にお願いいたします。
  25. 藤原道子

    ○藤原道子君 五万円の貸付金が十万円にふやして貸せるというのです。ところが、予算は五千万円減っているのです。これはどういうことになるか。未亡人は借りたくてばたばたしているけれども、査定がきびしくて借りられない。地方が負担回収措置をしないから、毎年金が残るのです。これの対策をどうお考えでございましょうか。
  26. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは、先ほど申しましたように、回収金がありますから、貸付額はふえると、かように申し上げておるのでありますが、これは数字ではっきり申した方がいいと思いますので、主計局長から答弁させます。
  27. 藤原道子

    ○藤原道子君 統計だけでなく、もっと生きた……。
  28. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) お答え申し上げます。現在までの母子福祉の貸付金の総額が、二十三億円ほどに相なっております。従いまして、これからの回収分がございまするので、今、藤原委員が御指摘のような新規の計上分は減りましても、これを上回る回収金がございまするので、貸付額におきましては増加に相なっておりますということを申し上げます。
  29. 市川房枝

    市川房枝君 先ほど婦人関係の予算のところでちょっと申し上げましたが、婦人関係の行政がいろいろな省にまたがっております。そして内容を見ますと、重複しているところもあります。たとえば農林省の生活改善課、それから婦人少年局では、年一回それぞれ婦人会議のようなものを開いておりますところへ、来年度は文部省がまた新たに七十万円の予算で婦人大会を開くことになっております。ところが、受ける方は大体同じような婦人ですし、このほかに各種婦人団体がそれぞれ大会を開いております。相当、総理もさっきおっしゃいましたように、婦人が伸びて参りましたので、官庁がこういう会合を、しかも競争的に主催するというのは、これは逆行だと思います。  なお、こうした各省間の婦人関係問題についての調整連絡は、設置法で労働省婦人少年婦人課がすることに規定がなっておりますが、実際にはほとんど行われておりません。行政機構は一般国民を対象として設けられておりますので、青少年と婦人関係問題は、いろいろな各省に分断される結果になっております。少年問題については、内閣に青少年問題審議会が設置されておりまして、今度、事務局の設置によって、さらに強化されることとなったのでありますが、労働大臣のもとに置かれております婦人問題審議会というようなものを内閣に移して、青少年問題と同様に、婦人関係行政の連絡調整をはかるお考えはないかどうか、これは総理に伺いたい。それからなお婦人少年局の行政を担当されております石田労働大臣にも、婦人行政についての御意見を伺いたいと思います。
  30. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 婦人に関するいろいろな問題が各省に属しておって、その間において重複があり、十分の効果を発揮するためには、十分に総合連絡をとって考える必要があるというお考え、私も全然そう思います。それについて、青少年に対するような、内閣にそういう機関を置いたらどうかというお話でありますが、私、今のところ考えておりませんでしたけれども、十分一つ検討してみたいと思います。
  31. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 婦人問題についての根本的な考え方という御質問でございますが、これは、基本的には憲法に規定されております男女平等の原則を貫き、それを一日も早く達成せしめるように、間断なく婦人の地位の向上に努めることであると考えております。それから婦人問題について、私どもの方で調整の任に当る建前になっております。従って、各省間の連絡調整の会合を常時催して連絡に努めておるわけでありますが、これは必ずしも婦人問題だけに限らず、どうも各省間のいわゆるなわ張り根性とでも申しますか、これが依然として跡を絶たないことは、非常に残念だと思っておりますが、積極的にこの問題についての連絡調整に努めまして、重複を避け、同時に、それだけ効果の上るように努めて参りたいと思っておるわけであります。  それから特に今年度は、今、市川先生は、きわめて少額だとおっしゃいましたけれども、各県にあります婦人少年室の定員は、前年より五割近く増加をいたしました。それから、それに所要の予算をも計上いたしておるわけでありまして、絶対額は、あるいは、御不満かもしれませんけれども、それについての重点の置き方及び速度は、かなりやったつもりでおります。
  32. 市川房枝

    市川房枝君 文部大臣にもありますけれども、時間が参りましたので、別の機会に……。
  33. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 岸総理に初めお尋ねいたしたいと思うのでありますが、日ソ漁業交渉の平塚団長は、昨日帰国せられて、政府に報告をされたようであります。政府は平塚団長を迎えて、朝来協議を続けられたようでありますが、どういう方針を決定をせられたか、まず承わりたいと思います。
  34. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、方針をきめたというところに行っておりません。平塚代表から会議の経過等を詳細に聴取いたしまして、政府としては今後の方針を検討中でございます。
  35. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 岸内閣の外交は八方ふさがりで、特にアジアにおいて、海を隔てて隣りしております、いわゆる対岸三国との間の関係をよくして、貿易を拡大するという方向については、全部行き詰まっております。日ソ漁業交渉問題について、イシコフ・河野文書があるかないかは別問題にいたしましても、日ソの交渉の今の行き詰まりの責任が岸内閣にあることは、これはモスクワに行っておりました代表団が帰国の必要を認めず、政府が団長を召還して、そして政治的解決をしなければならぬ云々といっておるところにはっきり出ております。政府は、日ソ漁業交渉において、昨年、一昨年同様の漁業を保障をし、保障をするとともに、日ソ関係の一そうの友好関係を深める自信があるのかどうか、はっきり岸総理に承わりたいと存じます。
  36. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 漁業条約に基くサケ、マスの捕獲量を中心とする委員会会議が一月の中旬以来行われておる。これにわが方もそれぞれ専門的委員を出し、平塚氏も初め委員とし、後に政府代表としてこれに参加し、あらゆる観点から日本の主張を向う側に納得せしめ、そうして公正な結論を得るように努力をいたしておるのであります。これは御承知通り、両国がサケ、マスについてその漁獲量を定めるについては、年々委員会を開いて、そうして科学的根拠を両国において示し合ってその結論を得ようというのが建前になっております。しかし、いまだこの共同調査ということが実現されておらないのであります。昨年もわれわれは、ほんとうにこの科学的の根拠において一致するためには、陸上及び海洋の上におけるところの漁獲量についての共同調査をする必要がある。そういう点については、ソ連側におきましてもその原則は承認しておるのであります。しかし、まだそれが実現に至っておりませんために、おのおのが出しますところの科学的根拠というものは、その国に関する限りのものになっておりますので、なかなかこの結論が見にくい状況にあります。昨年の交渉におきましても、やはり第一年度でありましたために、結局いろいろな専門家意見に加えて、両国の政治的折衝で結論を得たという状況でございます。今日までの委員会の結論を、審議の状況を見まするというと、今申しましたように、共同調査というものがまだできておらないために、両方が示すところの科学的根拠が一方的に偏しておるというために、なかなか結論が一致しないという状況でございます。従って、これを漁期に間に合うように、どういうふうに両国の意見を調整するかということについては、さらに私は考えていかなければならないというのが、今の段階でありますし、われわれとしては漁期に間に合うように、必ず日本の十分に漁業上の利益も確保され、同時に北洋におけるところの鮭鱒の資源保存に関しましても、十分に効果を上げるような結論を得たいと、かように考えております。
  37. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 共同調査ができておらぬということで、まあ逃げられましたが、今後の交渉について閣僚級の人物を派遣をするという点においては、これはきまっておるわけではありませんが、そういう意向に傾いておるということであります。平塚団長なりその他、この鮭鱒問題と、それから安全操業問題あるいは平和条約問題は切り離し得る、あるいは切り離すということでありますけれども、しかしボリショイ劇団の招聘、その他あらゆる問題に関連をして平和条約問題が出されてきておる。こういうことは、これは事実であります。そうすると、政治的な解決を目ざして閣僚級の人物が行かれまして、北方の鮭鱒漁業だけの数量について、こういうことで話が片づきますか。おそらく平和条約問題についても話が出て参るでありましょう。自分はそれについてはこれは全然話に乗らぬ、こういうことで話が済むとは考えられませんが、閣僚級人物の派遣と関連をいたしまして、政府としてどういう方針であるのか、承わりたいと思います。
  38. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほども申しましたように、今日において閣僚級の人物を派遣するというようなことの結論を決定いたしているわけではございません。先ほども申しましたように、漁業条約に基くところの、鮭鱒の捕獲量を中心としての漁業条約上の問題についての委員会の審議の状況を、私どもも平塚代表から十分に聴取したのでありますが、これと安全操業の問題あるいは平和条約の問題というものを、ソ連側でも関連させて考えているわけでは、私どもの報告を聞いた範囲内では、ないのでありまして、あくまでも漁業条約上の問題として両方の意見がいまだ一致しないというのが実情であるということを、平塚代表の言からも十分にわれわれは明らかにすることができたのであります。そこで、この問題はどう解決するか、どういう方法が一番いいかという問題につきましては、さらに政府として検討をしたいと思っております。  それから、安全操業の問題で、実は平和条約の問題について向う側から提案があったわけでもございません。御承知通り、むしろ私の方から安全操業の問題を昨年来提案をいたしており、向う側においてもある程度これについて話し合いをするところの用意があることを示されまして、その後の折衝の結果、どうもこの問題は平和条約と関連している問題であり、平和条約が締結されない前にそういうことは解決することはできないということの回答があったというのが現状であります。しこうして、それに関連して、領土の問題については、すでに解決されている問題であり、現在占有している所はこれは当然ソ連領であり、歯舞、色丹については共同宣言にあるから、平和条約を結べばこれを日本に返す、これはもうすでに解決済みだ、という意見が述べられておりまして、しこうして、それは領土問題に関するわれわれの従来の主張、また今後これを実現しなければならない国民的要望との間には以前と同じような懸隔があり、その間に何らの変更が見られない状況において、直ちに平和条約についての正式交渉を始めるということは、私どもはまだ時期にあらずと、かように考えているのでありまして、先ほど来、いろいろ私の外交について御批判がございましたが、日ソの間の友好関係を進めることにつきましては、御承知通りわれわれとしてもあらゆる努力をいたしており、すでに通商貿易に関する協定も昨年秋でき上っておりますし、今後において、あるいは文化の交流に関する問題や、その他の問題につきましても、私どもはあくまでも友好的な立場からお互いに理解を深め、協力を増すということを努力していきたい。安全操業の問題も実はそういう見地で、もちろん、この問題が領海の問題と関連を持っていることは、われわれ承知しているのでありますが、それを解決しなければこの問題を解決しないということであるならばですよ、なかなかこれは解決が今日むずかしい状況にある。しかし、それが解決されなくても、友好関係を増進する意味において、暫定的措置として、まずあの零細漁民の北洋近海における安全操業をするということは、ソ連のかねての主張である人道主義の立場なり、あるいはそういうような弱い者に対する特別に同情を持っている考え方なり、あるいは日ソの間の友好関係を真に真剣に増進しようとするような考え方から申しますならば、当然私は、暫定措置として、この問題がわれわれの望んでおるような線で解決されるようになることを、私は心から期待しておるものであります。
  39. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは、この日ソ当面の漁業問題について、条約に基き委員会で片づける問題というならば、その他の政治的な解決の方法はないはずです。数量について科学的な、政治的な解決が必要だということでありますけれども、しかし言われるように条約の範囲内で云々というならば、これは委員会範囲内で閣僚級の派遣を必要としないで解決がつくでしょう。ところが平塚団長を呼び返し、あるいは平塚団長のほかに、閣僚級の人物をなぜ送らなければならぬのか、政治的な折衝の問題があるからじゃありませんか。それは数量に関しましても、政治的な折衝を要する点があるからです。さらに漁業条約に基く鮭鱒の漁業問題だけを片づけるというのでありますが、漁業の問題について安全操業の問題をも片づけようというならば、これは閣僚級の人物が行って話しをしなければならぬでしょう。あるいは安全操業の問題については領土問題との関係が出て参りましょう。歯舞、色丹だけでは問題はありません。択捉、国後の周辺においても操業し、今後とることはあれしてもらいたいという問題も関連をして参ります。そうすると日ソ平和条約の問題についても、これは関連をしなければ話にならぬ実情にあることは、安全操業問題の本質からして私は当然言えると思うのでありますが、なお鮭鱒漁業問題だけを切り離して政治的に解決をする、あるいは解決し得るという御自信がおありなんでしょうか。
  40. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほども申し上げておるように、今日閣僚級の人を派遣するということをきめておるわけではございません。しかし、先ほど申したように、漁業条約に基いての本来の基本線は、科学的根拠においてその数量を委員会において決定し、両国政府にこれを勧告をするということになっておるのでありますが、いわゆる科学的根拠なるものが、いわゆるソ連側の科学者の研究なり、あるいは科学的の見解というものと、日本側の学者なり、あるいはその方面のエキスパートの科学的の根拠なり、意見というものが相当な開きがある。それは要するに、共同調査が行われて、両方の漁獲の状況を共同して調査しているならば、私はいろいろな数字やその他についてもきわめて科学的な結論が出ると思います。それをやっておらない状況においては、そういうふうな違いが出るということは、どうもこれはやむを得ないのであって、それを両方で、これはもう科学的の根拠でありますから、両方の科学者としては、専門家としては、それは十分な確信がある何であって、要するに妥協を許さない性質であると思います。科学の根拠でありますから。そういう状況で対立しておりましては、漁期に間に合うように一致点を見出すことができない。これは実際問題として困るわけでありますし、また、それは両国もそういうことはしないようにしようじゃないかという気持があると思います。そうしますというと、数量であるとか、あるいは漁期の何は、いつからいつまでにするかとか、あるいはオホーツク海における漁業の制限の問題、規制の問題というような問題に関しまして、科学的の根拠を一にしない現在におきましては、さらに全般的の見地から、そういうものを取りきめる話し合いの必要が、ある段階においては起ってくるだろうと思います。  これは昨年の漁業委員会における委員会の審議の経過、そうして最後の段階におきまして、私はデボシャン大使と数回会いまして、ソ連側の最高首脳部の考慮を求めて、十二万トンという数字に一致した経緯にかんがみてみましても、両方の共同の調査による共同の科学的根拠が出るまでは暫定的の何として、そういう意味における取りきめをする必要が私はあろうと思いますので、それを政治的折衝と申しますか、あるいは政治的な方法によって解決すると申しますか、いろいろ言葉の上においてはあるだろうと思いますが、そういうことを申し上げておるのであります。私は、この鮭鱒の漁獲量、その他の漁業上の問題をきめるについて、安全操業の問題や、あるいは平和条約の問題と関連せしめ、これらと同時に政治的に解決するという意味においてこの漁業交渉がなさるべきものではないと思います。また、そうする必要もないし、ソ連側もそれを要求するものでないということは、平塚代表の言からも明らかにすることを得るのであります。
  41. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 オホーツク海の漁業制限問題と申しますか、向うは禁止を申して参っておりますが、これはカムチャッカ半島の漁民の、何と申しますか、要求を考慮してということでありますが、けさの新聞によりますと、アメリカの上院においても、日米カ三国の条約での制限区域のサケ、マスの漁業規制をさらに強化するという決議がなされたやに聞くのであります。こうしてだんだん北の方からも、あるいは日本海においてもそうでございますが、外国からの制限の申し入れが出て参ります。これに対して首相としてはいかように考えておるか。こういう情勢の中で、日ソ漁業条約、あるいはアメリカに対してどういうように対処せられようとするか、承わりたい。
  42. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 本来、私は公海の自由、こういうものは、これは人類の福祉のために、世界の平和のために守られなければならぬ問題であると思うのです。しかるに海洋にいろいろな線を引いて、そうしてそれぞれの国々が自分の都合のいいような措置をし、公海自由の原則を制限していくような傾向が最近見られますけれども、これはただ単に、わが国の利益に反するとかいうことじゃなしに、もう少し大きな見地で、世界の平和を念願し、世界の人類の福祉を考える上からいうと、私は非常に遺憾な傾向だと思います。さらに日本自体にとって考えてみましても、海洋というものが、日本の歴史的に、地理的に、また民族的に非常な利害関係の深い点からいいまして、海洋資源のこの開発利用の上からいって、そういうことは非常に望ましくないことは言うを待たぬと思います。しかし同時に、この海洋におけるところの、特に漁族の資源を保存し、その利益を長く享受し、これが日本にとって日本の経済に寄与し、大きく言えば世界の人類の上に寄与するということも、これは考えなければならぬ。乱獲をして跡を絶つということは、これはいけないことでありますから、しこうして、この魚族保護の問題は、あくまでも私は科学的根拠によって——とにかく非常に科学も各国とも発達したのでありますから、十分に科学的根拠からこれを裏づけて、そうして合理的な、公正な方法がとられなければならぬと思います。しこうしてわれわれは、ことに北洋の漁業については、日本が最も長い経験と最も長い間の資料を持っておるのでありますから、これは私は一番大きな科学的資料になると思うのです。そういうものを根拠にして、その相手がそれに反するようなことであるならば、相手がどこであろうとも、われわれのこの正当な、また科学的根拠のある資料に基くところの主張をして、一面においては魚族の、海洋資源の保存を考えると同時に、日本の民族の海洋における活動というものを十分に、他から制約されないようにしていくことが必要である、かように考えております。
  43. 曾禰益

    ○曾祢益君 ちょっと関連して。今吉田議員が触れられた点ですが、平塚代表が帰ってこられましたので、先般来非常に問題になりましたイシコフ・平塚会談において、モスクワにおける最初の漁業交渉の際に、当時の河野全権とイシコフ代表との間にオホーツク海を禁漁区にする、この問題について文書が交換されたという平塚さんの日本に対する通信が事実であったのかないのか、また、どういう状況でそういうことが伝えられたのか、この点はもはやおわかりになったと思うのです。従ってこれに関する正確なる事態をここに明らかにしていただきたいと思います。
  44. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その点に関してイシコフ漁業相から、はっきりしたなにではなかったそうですが、これについては文書があるような意見の開陳があった。平塚君は、そういうことは自分たちも開いてないし、そういうことがあろうわけはないじゃないか、ということを強くなじってみたら、そのなにに対して強い主張はされなかったということが実情であるようであります。従って私どもは従来、この当の相手である河野君のこの議場において責任を持ってお答えをしておる、そういう文書に署名し、それを交換したことはないという言明を、私どもは裏づけることができると、かように思っております。
  45. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうすると、平塚代表からの報告によって、そのようなイシコフ河野覚書がなかった、こういうことをはっきり断言されたわけですが、それならば、それだけ重大な問題を平塚代表ともあろうものが、まだ前段の話ですね、そういうものがあったとイシコフ氏が主張したことを、ああいうふうに新聞等に情報で流すということは、これは外交上からいっても適当な措置ではないのであります。同じ会談の続きにおいて一応イシコフ氏はそう言った、しかし、平塚氏が反駁した結果、まあ結局その主張を撤回したような格好になったという全体のストーリーをそのまま伝えてきているなら、これはまた話が別です。そうでなくてイシコフ氏が平塚氏との会談において、河野イシコフ覚書といういわゆる第一報だけが全世界にばらまかれた。これは日ソ交渉を円満に進める上からいって、どうしてもわれわれはもしソ連の言っていることが事実ならそれを聞かなきゃならぬ、また、ソ連の言っていることが不当であるならば、反駁しなきゃならぬ、しかし話の途中のソ連の、まあだれが見ても言いがかりではなかろうかと思われる問題を切り離して情報を流すということは、これは日ソ交渉を円満に進める上からいって、はなはだ適当ならざる措置とはお考えにならないか。もしそうならば、平塚代表に対していかなる戒告なり適当な措置をとられたか、この点を明らかにされたいと思います。
  46. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これはいろんな報道関係においてああいうふうに伝えられたことは、曾祢委員お話しのように私どもも非常に遺憾とするところであります。ただ、今度の交渉のなにを見ますると、正式の委員会会議のほかに、イシコフ氏と平塚氏が懇談を数回持ったようでございます。これは委員会の正式の議事ではもちろんないわけでありまして、そういういろんなことがあったようであります。しこうしてイシコフ平塚両氏は、かねて知り合いの仲であり、また、平塚氏が多年この北洋の鮭鱒漁業に非常な長い五十年の経験を持っており、この方についての非常な権威があるということに対しては、イシコフ漁業相も相当に敬意を持ってこの懇談が行われたということであります。そういう席において、そういうような話が出て、平塚氏がそういうはずはないじゃないか、そんなばかな話はないじゃないか、というような議論をしたら、それはまあ最後は、あくまでこうあるのだ、この通りだというような調子ではなくして言葉をそらして、そしていろいろ、特にオホーツク海の話については、自分たちのとにかく沖取りをして海洋でとらえて、そうしていわばソ連のうちに帰ってきた、その間をもぐって帰ってきたものを、もう一ぺんオホーツク海でとるということは、どうもソ連のなんとしては、国民的な感情が許さないのだ、というような話も出たということであります。しかし、それはオホーツク海というものが非常に大きななんで、あの全体が自分のうちへ帰って来たマスというような考え方は間違っているじゃないか。しかも、四十海里というものの沖においてとるのだから、ソ連のこのなんについては十分な配慮がしてあるのだから、これを全部禁止し、それを中止するということは、適当でないという話をかわしたということを、私どもは伝え聞いておるのであります。ただ、今お話しの通り、報道関係その他についてのなんにつきましては、どこに手違いがあったのか知りませんけれども、結論としては、あなたがおっしゃる通り遺憾だと思いますが、特にそれについて戒告的な措置をとるという私は必要もなかろうかと考えております。
  47. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 核非武装地帯の設定について、衆議院でわが党の委員長等が質問をいたしました。これは世界的に核非武装地帯の設定が言われている。岸首相はまだその時期ではないという御態度のようでありますけれども、これは世界の世論、あるいは日本の世論にいたしましても、非常な期待を持ってその実現を見守っているように私は思うのであります。日本の新聞その他でも見かけられますけれども、昨年の暮、ケナン氏がBBC放送で話をしたという中にも、各国が迫っている原子戦争による人類の破滅からみずからを救う唯一の方法は、各国が原子兵器の武装をしないこと、それから原子兵器で武装をしている米英ソ三国軍隊の撤退とその隔絶、そうして核非武装地帯を設定することにあると言い、そうして直接侵略ということは考えられることではないので、いわゆる私どもの言っておる間接侵略というものに対しては、軍隊ではなく、むしろスイス式の郷軍の方が適当ではないか、こういうことを説いておるのでありますが、岸首相は、アジアからの外国軍隊の撤退と、日本を中心とする、これは韓国、台湾までを含みます核非武装地帯の設定、それから自衛隊の廃止に伴います民主警察の充実こそ、日本のとるべき態度ではないかと考えられますが、岸首相として、どういうふうにお考えになりますか。
  48. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 核武装の問題、原子兵器の問題に関しましては、私どもはこれが世界の人類に与えるところの破滅的な惨害を考えますというと、こういうものを兵器として使用するということを禁止しようという、また、そういうことを製造することを禁止しようとか、あるいはそれに関連しての実験を禁止しようということが、世界の世論であり、私どももそれを主張し、実現しようとしてきておることは、御承知通りであります。しこうして、これがなかなか実現しない現状において、その中間的の措置としていわゆる核非武装地帯を作ろうというような議論が一部にあることは事実であります。これは私は吉田君の御意見でございますが、それが、ほうはいたる世界の世論とは私は考えておりません。関係の間に、国の間においてはそういう意見が一部出ていることは、私もこれも見逃すものではありません。むしろ、世界の世論としては、今私が申しましたことを目ざして軍縮も、一般の軍縮も同時にこれが解決されて、そうして恒久平和の基礎ができなければいかぬ。力と力の対抗によって、特にこういう大量殺戮兵器の威力を誇るというような、威力の優越性をもって平和を一時的に保とうというようなことは、もはや行き詰まっておるから、話し合いによって、そういう方向に向って協力をし、話し合いを進めろということが、私は今や世界の世論であろうと思います。これは私どもがかねて主張してきておった方向に世論がそうなっておると思います。こうして、実際問題としてそれじゃ考えてみて、こういう核武装、非核武装地帯というものが、現実にできるかどうかという問題を取り上げて考えてみまするというと、私はそれができるならば、もはや今世界の世論となっており、各国の識者においても考えておる原子兵器というものの製造禁止、使用禁止というものを含めての、実験禁止までをすべてやめるという、かねての世界的世論の問題が実現し得るのではないか。きわめて、この私から言うというと、非核武装、核兵器の非武装地帯を作るということは、きわめて私は、ことにミサイルが、長距離の誘導弾が発達してくるというと、意味がだんだんなくなって、本国にだけは置いてよろしいのだといってみても、私は根本は解決されない。むしろ、われわれとしては本体に向って努力をするということの方が、より有効であり、より現実的であるというふうに私は考えております。
  49. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 原子兵器の禁止の方が、製造、使用実験禁止の方が先だと言われますけれども、昨年の九月一日ニューヨーク・タイムス等に掲載されております、これは世界の原爆基地の図面でありますが、その中に日本においても原爆基地があるように書いてある。そういう点から考えまして、原爆の実験禁止、あるいはそれから原爆の製造、使用、貯蔵の禁止ということが日本国民の切望であり、それが世界の世論になって参ったことは私も知っておるところでありますけれども、アジアのあるいは朝鮮に、あるいは沖繩に、そしてあるいは中国、台湾の周辺においては、核兵器が現に持たれ、そして哨戒機と申しますか、    〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕 飛行機が積んで、哨戒をしておるといったようなニュースを聞くにつけて、日本の中のみならず、周辺からも、原子兵器が保有せられないことが、持たれないことが、これが日本国民心配を除く切望でありますだけに、日本国民の切望でありますだけに、こうした点について、私どもは真剣に考えざるを得ないと思う。一応原爆禁止の要望は世界的な世論になりつつあるということだけれども、核兵器の所有について、あるいは保管については、まだそこまで来ないのではないかという、こういうお話しでありますけれども日本の周辺の現実、心配をいたしますその現実に対して、今の態度では回答にならぬのではないかと思いますから、重ねて御答弁をお願いいたします。
  50. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本自体の自衛隊が核兵器で武装しない、また、外国軍隊の核兵器で武装しているところのものを入れないということについては、きわめて明確に私は信念を明かにいたしております。しかして問題は、日本以外の、日本周辺と申しますか、あるいは台湾であるとか、朝鮮、その他についてのお話しでございます。この点は私どもはやはり今日の東亜の情勢から見まするというと、共産圏の方面の、ソ連や中共等を含めて、どういう武装がなされておるかということは、日本自体は直接にこれにタッチすることのできない状況にあることも御承知通りであります。しこうして、私はそういう問題はすべて米ソを両巨頭としている世界のこの二つの大きな対立した勢力が、根本において核装備によって平和を保っていこうという考え方を捨てない限りにおいては、そういう一時的なものでは私はでき得ないだろうというのが、先ほどから申していることでありまして、ただ、日本自体としてはきわめて明瞭に、これは日本政府国民の要望を責任をもって実現する、こういう立場でありますから、私は責任をもってはっきりと申し上げているわけであります。周辺の問題は、これは国際情勢、また、この対立している他の陣営の状況と結び合わしてじゃなければ、これは解決できない問題だろう。それが解決できるようなら、根本の今、世界の世論になっているものが取り上げられて、両巨頭の話し合いをして解決できるだろうというのが、私の考えであります。
  51. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 この点についてはもっと論議を続けたいのでありますが、時間がございませんから、次の問題に移ります。
  52. 曾禰益

    ○曾祢益君 関連……。
  53. 剱木亨弘

    ○理事(剱木亨弘君) 発言中ですから……、いいですか。
  54. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 いいです。
  55. 剱木亨弘

    ○理事(剱木亨弘君) 曾祢君。
  56. 曾禰益

    ○曾祢益君 原水爆の実験の禁止の問題について、総理は非常にはっきりと実験禁止の問題を取り上げられていると思うのでありますが、実はごく最近に、ジャパン・タイムスに、非常にわれわれ国民の驚くような記事が載っておる。これは二月の二十七日のジャパン・タイムスですが、岸首相は、アメリカの原爆の実験の必要を承認した。「キシ・アドミッツ・ネセシテイ・オブ・ユーエス・ニュークリア・テスト」、こういう題で、これはA・Pが打っている記事でございます。それによると、岸さんは、アメリカの原爆の、原子兵器の実験の重要性と必要性を承認した——アグリード、どういうときに会ったかということになると、これが二十七日の前の日らしいのでありますが、岸首席並びに藤山外相が総理官邸において、マーセル・ドュリオーというアメリカの編集者及び論説委員等の日本に来た人たちの一行に会われたときの、これは日本にいる駐在員、特派員はこの会合に入れなかったそうでありますが、その際にガネット・ニュースペーパーという新聞らしいのでありますが、そのワシントン駐在記者といいますか、ミセス・メー・クレーグという人が、岸さんは、アメリカの原子力が、これ以上の原子兵器の実験をしないで、しかも維持することができるとお思いになりますかという質問に対して、岸さんは、アメリカが原爆の実験を続けることが必要である、そうしてアメリカがこれらの兵器、すなわち原子兵器を持っていることが、戦争の阻止に最も大きな力を持っている、こういうことを答えたという記事なんであります。われわれは、まさかこういうことはないと思いますが、少くとも日本で売っている新聞にこういう記事が出ていることは、きわめて重大だと思う。そこで、いかなる状況においてどういう御発言をなされたのであるかということが一つ。アメリカの原爆の実験を続けることが必要だ、重要だ、これだけでも非常に大きなことになるのでありますが、さらに第二の点、アメリカが原子兵器を持つことが世界平和のために必要だ、重要だ、この点に至っては、先般といいますか、昨年の秋の東京における岸・ネール共同コミュニケに、あなたもネールさんもはっきりと、大量殺戮兵器を持っていることが、世界の平和にとって非常な危険である、これは、アメリカが持っているからいい、ソ連が持っているからいけないというのでなくて、両大国がこういう大量殺戮兵器を持って競争していることが、世界平和の最大の不安である、こういう声明をされた趣旨から言って、まさにこれはその逆をいくものであって、かかることはあり得べからざることだと思うのですが、この二点について、はっきりしたことをお知らせ願いたいと思います。
  57. 岸信介

    国務大臣岸信介君) それは、先日アメリカの各新聞社の方々が日本を二十数人たずねてきまして、私どもがこれと会見をした事実はございます。その際に、いろいろな問答があったのでありますが、その核兵器についての質問もありました。私は、その新聞に伝えられておる、また、今お読みになったような意味で申したわけでは毛頭ございません。力と力の対立によって世界の平和が一時的に保たれておるというこの現実の状況は、これは承認せざるを得ないであろうが、しかしながらわれわれは、それで恒久的な平和は来ない、むしろ、大きく見るというと、戦争の危険が蔵せられておる、また、兵器についても、科学が発達するというと、いろんな兵器が出るだろうけれども、われわれは、特に原子兵器については、従来文明国は、毒ガスやあるいは、ばい菌というようなものを兵器に使うことはいかん、やめよう、そういうことは違法であるというような国際条約もできておるような趣旨から見ると、それよりもより以上の惨害と、より以上の非人道的結果をもたらすところの原子力兵器というものがこういうふうに無制限に持たれるということは、これは文明の名においても許すべからざることであるというのが、われわれの信念であるということを申したわけであります。その前提として、今お話しのようなこと、要するに、現在アメリカがこの力のバランスによって平和を保っておる、また、保っていこうと考えられておるということについては、一応アメリカがそう考えているということは、私にもわかる、しかし、それでは決して真の平和ができるわけでもなければ、たとえ一時的のものがなされたとしても、それは人道的から見て、われわれとしては許すべからざるものだとして反対したのであるということを、私はその際申したのであります。今、何か御引用になったところを見ると、私の言わんとしておった本体は少しも書いてないので、私まだその記事は読んでおりませんけれども、ただ、アメリカがこう考えておるというアメリカの考え方は、一応それはアメリカの立場としてはわかる、しかし、そのことがそれじゃ恒久的平和に役立つかということを考えて見ると、そうじゃない、並びにそれは非人道的な性格を持っており、文明の名においてすでに毒ガス等が禁止されておるということから見ても、これは当然文明国の間に、これを廃止し、それを禁止するところの協定、条約ができるべきものである、ということを申し述べたわけであります。
  58. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはどうも、東京版には出ていなかった。鎌倉——私が買ったやつに出ておりましたので、ぜひごらんおき願いたいと思います。今、首相が言われたような内容でなければならないと思うのです。それから、私が今引用した点は、あとにあなたが言われた、しかし日本の気持はこうだとか、あるいは科学兵器その他の問題は、確かにその点は正確に引用されておる。しかし、これだけ重大ないわゆる引用の間違い、ミス・クォーテーションがあったとして、あって、しかも売られておる。この問題に対して、ただ議会で、きょう私の質問に対してお答え願うだけでなく、国際的にもこういうニュースが飛んでいることに対して、一体、外務省はいかなる措置をとられるか。当然取り消しの措置をとられたと思うのですが、この点はどうなっているか、これを外務大臣から伺いたい。  いま一つ、はなはだ残念なことには、とかく岸さんの原水爆禁止、あるいは原水爆問題に対する気魄というものが、われわれ国民が受ける気魄と、外人、特にアメリカ人に与える気魄とにおいてズレがある。これは非常に重大なことである。これ以上申し上げるのは、はなはだ失礼でありますけれども、これは、物の言い方と全般の雰囲気だろうと思う。どうかそういうことが絶対にないように、アメリカに昨年行かれたときにも、ニューヨークにおいてだかのある新聞会見において、やはり何となしに、アメリカの原水爆に対する非常にきつい考えに対して、はっきりと、国民意見として、反対なら反対ということを頭から言い切るという、何か勇気と気魄に欠けるようなところがあるのではないか。どうもそういう記事が出るということは、国民としてもはなはだ遺憾千万だと思うので、これらの点について、もっとほんとうに国民の気持ちに沿った気魄のある態度で御回答いただきたいと思う。外務大臣から措置についての御意見を伺います。
  59. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題につきましては、総理が話されましたときに、松本政務次官が通訳をしておられたので、十分総理の言われたことがそうでないことは了承されるわけであります。従って、先般の外務委員会の席上におきまして、松本政務次官からはっきりそういう意向のないことを伝え、皆さんの御了承を得ておると思っております。われわれといたしましても、今後こういう問題について、日本が何らかの誤解を受けるということがあってはならぬのであります。そういう点については、万全の措置をとって参りたい、こう考えております。
  60. 坂本昭

    ○坂本昭君 関連。ただいまの曾祢委員の発言並びに吉田委員の発言に関連しまして、二点お尋ねいたしたいと思います。  曾祢委員お話しによりますと、記者会見が二十六日であったということでありますが、それで一つ思い当ることがあるのです。ちょうどそれから二日しまして、三月の一日に、われわれとしてはまことに悲しい思い出であるビキニの四周年の記念の大会がありました。これは、アジア・アフリカの諸国民を通じてのアクション・デーとして行われた。そのときには、各政党の代表も来ておられたのですけれども、こういうことを申し上げては、はなはだ残念でございますが、自民党を代表して来ておられた方が、その会場に来られて、きょうは一体何の四周年目だ、というわけです。きょうは何のって、あなたはお知りにならないのですか。きょうは原水爆禁止協議会の四周年目か、結成四周年目かと言う。そうじゃない、ごらんなさい、うしろには久保山さんがおられますよ、ちょうどきょうはビキニの四周年目ですよというので、ごあいさつに立たれたのですけれども、これは私は、総理の気魄が薄いために、——それはなるほど両院の決議においては十分表明されておるかもしれませんが、今再三指摘されたところの、総理並びに皆様方の気魄が薄いために、結局、三月一日という日がどういう日であるかという認識さえも薄いじゃないか、私はその点非常に残念だと思いますとともに、しかし、総理は、先般来数々の委員に対しましても、この原水爆の実験禁止については、国際的な協力によって必ずやり遂げていきたい、そういうことをたびたび申しておられます。なるほど、国際的な協力といいますと、今日いろいろな協力があります。共産圏の人たちも非常に熱心です。また、アメリカの宗教家の人たちも非常に熱心であります。私はこの際、昨年も、一昨年も、また、その前も原水爆禁止の世界大会が日本で、広島、長崎、東京と行われましたが、どうか国際的な協力のもとに、われわれ日本民族が先頭に立って、この原水爆実験を禁止させる大きな世界的世論を作り上げるために、この大会に外国の人たちが来られる場合、彼はわれわれの気にいらない人だ、彼は気にいる人だ、そういうえり好みをしないで、皆さんをわが国に入れて、そうして世界の世論を作るためにぜひ御協力をいただきたい。その決意があられるかどうか、そのことが一点。  もう一つは、それに関連してきますが、四月以降には、エニウエトクでまた再び実験をしようとしておりますが、われわれ無警告なソビエトの実験に対しても、はなはだ不満であるけれども、エニウエトクの場合には、第一に人類に対して遺伝的な危険を起すばかりでなく、特に死の灰、フォール・アウトが一番日本の上に降りかかってくる。さらに日本のマグロをとっている遠洋漁業の人たちは、主としてこのビキニ、あるいはさらにサモアの方に行っているのでありまして、ここで実験をされることは、彼らの生活の漁場を失うことであります。でありますから、もちろん、再三抗議をせられたことは承わっております。しかしながら、もっと真実と熱意のこもった実験禁止に対する抗議と、さらにどうしてもやるならば賠償を強く要求する、その御決意があられるか、この二点を伺いたいと思います。
  61. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いろいろな御批判を受けるようでありますが、私が原水爆実験禁止、並びに進んで製造や使用の禁止までやらなきゃならぬという考えは、たびたび申しておるように、国民の胸裏に深く根ざしておりますところの国民感情であり、人道的の崇高な考え方に出ておるものである。従って私は政治家として国民の信頼を受けて政局に当る限り、私のあらゆる努力においてこれを実現するということを申しております。私はその決意で進んでいくつもりであります。私の不徳のいたすところ、あるいは熱意が足りないというような御批判もあるようですが、私は真剣にこれを考え、また、熱意をもって実現しようと努力をいたしております。従いましてこれについて国際的の世論を盛り上げるという考え方は、私は非常に必要なことであって、また、それをやらなければ実現がはなはだほど遠いと思いますから、そういう国際的の催し、もしくは国際的の運動等に対しましては、十分な理解と熱意をもって私はいきたい、これは思想とか、あるいは政治の形態とかという問題を離れておるのであります。私はまたこれに携わる人も、その考えに徹して、ほんとうに人道的な立場から、また国民の、ほんとうにわれわれこそあらゆる思想や考えを超越して世界人類のためにやるという決意に立って私はやらなきゃならぬと、かように思っておりますから、そういうことに対しましては、できるだけ努力をするつもりであります。また、四月一日以降行わるべきアメリカの実験に対しましては、私ども非常にこれを遺憾とするものでありまして、これに対してはアメリカに対して再三反省を求めております。しかし、アメリカは現在のところこれをやめる気配はございません、残念なことであります。しかし、私はそれに伴うところの損害につきましては、これはどうしてもやるというのならば、これはもちろん最小限のわれわれのこの考えとして、あくまでも日本の要望をアメリカをして容れしめるつもりでございますが、われわれとしては、何とかしてこれをやめさすということを、この上とも世界の各方面の人々とともに実現を一日も早くしたい、かように考えております。
  62. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 この長期経済計画が政府にございますが、長期財政計画というのがない。従って最近の予算を見ておりますというと、国防関係費については、これは方針がある。ところがその他の点については、いわゆる出たとこ勝負。そこで、あるいは圧力団体の前に予算編成方針がぐらつく、こういうことがあるのであります。日本国民生活の向上と、それから生活の不安をなからしめる意味において、長期の国民生活保障と、あるいは弱いものを救って参ります社会保障充実のための長期財政計画を確立する決意はないか。これは企画庁長官はおられぬようでありますから、首相と大蔵大臣に承わりたい。
  63. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この財政の役割が、一面この通貨価値の安定、経済基盤の育成強化、さらに民生の安定にありますことは、申すまでもありません。従いましてこの民生の安定という点におきまして、社会保障ということが非常に重大であることも当然でありまして、これらにつきましては、今後社会保障全体についてしっかりした基本的な点、あるいは総合的な点を明らかにいたしまして、長期にわたる見通しを立てていきたいと思うのであります。さしあたって三十三年度、毎年度でありますが、三十三年度におきましても、今申しましたような趣旨をもって子算を編成しております。が、しかし一面私はやはり民生の安定ということは、社会保障もむろん充実していかなければなりませんが、何としてもやはり経済を盛んにして、雇用をふやし、かつ所得水準を上げていくということが先決でありますから、そういうふうな、双方見合って計画を立てていきたいと、かように考えております。
  64. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 もちろん、国民生活の向上について、経済なり、あるいは所得の向上が必要であることは、私も認めます。ところが、実際には国防費、防衛の費用がだんだんふえてきて、シビリアン・コントロールなんということは、何年か前に言われたけれども、だんだん言われなくなってきた。今の政府の方針のように、    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕 私は、何と申しますか、あとで申し上げるように、貧富の差をだんだん拡大し、あるいは民主的な傾向を押えて、かつてのような弾圧体制というものを整えていくならば、自衛隊の増強と一緒にファッショ的な日本の支配が再び来る心配があると思うのであります。思い切って軍事的な費用を押えて、長い目で見て、日本の文化国家あるいは平和国家というものを築く大方針が、首相なりあるいは政府の方針としてなければ、いつの日にか私はかつての失敗を繰り返す日が来ると思うのであります。岸首相にも、この長い財政方針を政府として立てなければならぬという気持がおありなのかどうか、承わりたいと思います。
  65. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 言うまでもなく、政治の究極の目的が、国民の福祉、またその文化の向上にあり、国民が世界平和の上に貢献できるような平和的国家を作り上げるということにあることは言うを待ちません。ただこれを、年々の予算というものは、御承知通り数字でございますから、この理想を達成していく上において、どういうふうにあんばいして数字的に歳入歳出というものをまとめていくかということを考えて見ますというと、この大きな目的を達成するために、政府として、まず日本の産業経済をどういうふうにもっていくか、この生活の根拠である経済産業の何をどういうふうにもっていくかという、具体的の一つの計画をもって、それに対応してこれは作っていく必要がある。そこでわれわれは、長期の経済計画というものを立てて、三十七年度にあるべき国の姿というものを一応頭に置いて、さらにこれに基く年次計画を定めて、これと見合って予算を編成するという態度をとっておるのであります。すべての国家として、政府として、やらなければならない各種の政策がたくさんございますが、それは今言われる究極の目的に向って、そうしてわれわれが立てておる——これは百年の大計というわけにもなかなか数字的の基礎を置くわけにいきませんから、五カ年くらいの長期計画を立てて、そうして、年次計画に基いて予算を編成していく。こういうように考えております。
  66. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 口では平和国家、文化国家と言われますけれども、実際には確実にふえているのは軍事費である。これは事実であります。恩給がふえ、あるいは恩給亡国になるじゃないかという警告が数年前にこの委員会でありましたときに、時の厚生大臣であった川崎君は、国民の総合的な社会保障、国民年金制度についてわれわれは考えなければならぬと言われたのは、これは数年前であります。その後、国民年金制度について、選挙のときには賛成だと言われ、この前の、二年前ですか、参議院の選挙のときにも、時の厚生政務次官山下氏は、自分は厚生年金制度に賛成だと言われた。ところが、実際にはその後、何にもその着手の第一歩は踏み出さない。この間から総理は、衆議院予算委員会で、国民年金制度について自分は賛成だ。社会党と話し合ってその制度確立のために努力したい。こういうことを口先だけは言われました。ところが、実際にはその誠意というか、熱意が私はあるのかどうか疑うのであります。もしあるというならば、今年の予算の中からでも、無醵出年金制度について、二年前の参議院選挙の際に言われておった無醵出年金制度のごときは、ここで私は社会党の案をくどくど言う時間はありませんけれども、すぐに実行できます。あるいは先ほどの年金制度についての委員会の勧告を見ましても、無醵出年金制度というものは、どの案についても言われておる。私はこの国会でも、この予算の中でも、案を出そうと思えば出せると思う。年金制度実現のために、まず無醵出年金制度から始める決意がないかどうか承わりたい。
  67. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国民年金制度の問題につきましては、しばしば私もお答え申し上げておるように、全国民を対象としたこういうものを作っていくということは、われわれの社会保障制度の大きな柱であります。現に、われわれは昨年来、このために調査費を計上して慎重に調査検討を加えておることも御承知通りであります。しこうして、現に、社会保障制度審議会にこの問題を諮問いたしまして、いろいろな方面の権威者が研究をされ、その結論も近く答申されるように聞いております。この問題は、この趣旨として、これはぜひやらなければならない。私は単に、熱意と誠意云々をお話しになりましたけれども、熱意と誠意とだけではなかなかこれはできるものではないので、やはり具体的にその内容を検討し、これに対する具体的の各種の年金制度や、あるいは恩給制度等もございますので、これらを十分に調整して、真に国民の全体が一つの、老齢に達した場合における所得保障ができて、生活の安定並びにその福祉が確保されるという制度を立てようとするならば、私どもが慎重な態度でもって、あらゆる面からこれを検討するということは私は当然だと思う。むしろ熱意、誠意を持つがゆえに、そういうことは慎重な態度をとっておると申しても過言ではない。必ずその成案を得て、できるだけ早くこれを実現するようにこの上とも努力するつもりでおります。
  68. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 誠意があるがゆえに慎重になっておくれておると、こういうお話でありましたが、私どもは養老、母子、廃疾の無醵出年金制度をこの国会提出いたします政府なりあるいは自民党の態度を拝見をいたしたいと思います。  次に、首相は、先ほども市川さんから三悪追放のことが言われましたけれども、三悪追放を言いながら、実際には貧乏がさらに作られ、あるいは暴力、汚職が私はさらに深まる大きな予算が組まれておると思うのでありますが、昭和三十三年度予算で失業者はこれはふえる。こういう数字はこれはちゃんと出ておるのであります。完全雇用と長期経済計画あるいは三十二年度の経済見通しの中でも言いながら、それから貧乏の追放を口では言っておられますけれども、それではどういう工合に貧乏がなくなるか。失業者がなくなるか、具体的に一つ労働大臣等からでもかまいませんから、その数字をもってお示しを願いたい。
  69. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 完全雇用を目ざしていくということは、これはただ単に労働政策だけでなく、国の政治の理想であり、現内閣におきましても、長期計画はこの方向に向って進んでおるわけでありますが、御指摘の通り昭和三十三年は完全失業者の数が前年、すなわち三十二年度よりは増加をいたしておりまするし、しかし、三十二年度におきましては、三十一年よりは若干減少を一時来たし、その後増大をしつつあるわけでありますが、三十二年度末におきまする完全失業者の数字は、大体五十二万人程度と見越しております。それから三十三年度につきましては、これが六十五万人、十万人程度増加をするのではないかと見通しをいたしておるわけであります。しかし、これは御承知のように、一方におきましては、国際収支改善のための緊急施策の影響の現われ、一方におきましては、駐留軍の引き揚げ、その他に伴いまする離職者がふえたことによるわけでございますが、これはいわば三十三年度一年間に生ずるであろうと考えられる一時的な現象と考えておりまして、長期計画全体を通して雇用の増大の方向へ進んでいくということに、これは基本的には将来においては役立つもの、本年はそういう緊急施策その他による一時的なものと考えて、増大をしておるという方向はこれは認めます。しかし、わが国の雇用問題を考えてみまするときに、完全失業者の数が多いということが実は基本的な問題ではなく、これは西欧諸国の例を見てみましても、いわゆる完全雇用だといわれておりまする西ドイツ、あるいは最近は幾らか違っておりまするけれども、労働者の数が非常に不足を来たしておるような状態にあるアメリカにおきましても、やはり完全失業者というものは常時四%前後ございますが、日本の場合は二%に満ちていないのでありまして、これは、それ以下のところはイギリスくらいのものであります。しかし、そこに問題があるのではなくて、なかなか捕捉することは困難でございますが、相当膨大な数を数えまするいわゆる不完全就業者に基本的な問題があると思います。従って、雇用政策を推進して参ります場合に、もちろん完全失業者の数を年々減少せしめるように努力をしなければなりませんけれども、この不完全就業者の数を減らす、いわゆる就業構造を変えていくということが基本的なことでなければならないのではないかと思っているわけであります。そのためには、まず第一には、年々出て参りまする新規労働力の吸収におきまして、これをでき得る限り近代的な雇用の増大の方向へ向けて参りたい。第二には、現在ございます不完全就業者を、完全な雇用の状態の面へ振り向けていきたい。それから第三番目には、この不完全就業者は、これはもう当然所得が少いのでございますから、その所得の少い原因である生産——その働いておりまする企業の生産性の低さを克服する。あるいはその他の施策を講ずる。たとえば最低賃金制の実施、あるいは技能訓練を積極的に行います等によりまして、現在の就業状態の改善をはかっていく。こういう施策を並行せしめることによりまして、大体年々八十万人程度は新しく雇用の増加を見越していきたいと思っているわけであります。ところが、これも御指摘の通り、三十三年におきましては六十五万程度しか見込むことはできません。しかし、三十二年は百十五万人ほどの雇用の増大がございましたので、三十二、三年を合算いたしますと計百八十万人、合せて平均いたしますと九十万人でございますから、この長期計画を立てましたときからの平均した方向といたしましては、三十四年度からまたもとへ戻っていく見込みでございますから、方向といたしましては、所期の計画の通り進んでいくことができるものと思っている次第であります。
  70. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 失業者の問題に関連をして、基地労働者の問題をやりたいのでありまするが、総理その他の都合がございますから、それはあと回しにして、今労働大臣は、近代的雇用をふやしていく、不完全就業者を完全就業者に直すと、こういうお話でありますが、それも口ばっかり、不完全就業者あるいは低所得者、要するに通俗的言葉で言えば貧乏人、これは私は実際にはふえていると思う。少くとも、貧富の差を拡大しようとする政策しかとられていないと思うのであります。これは、石井副総理、官房長官が関係をしておられたというのでありまするが、これは総理がおられるから、総理が代理をせられるでしょう。そういう問題として、私は二つここに例としてあげます。一つは部落問題であります。この差別とそれから問題の本質が、貧困あるいは環境の不衛生、歴史的なものもございます。歴史的なものもございますが、その実体は、物質的な根拠は、貧困でありあるいは環境であり、あるいは生産手段だと思うのであります。この、全国に六千部落、三百万といわれます、不当に差別せられ、あるいは生産手段も十分持たず、就職の機会さえも十分与えられない人たちの解放のために、その団体であります部落解放同盟から、石井副総理、官房長官に会って、内閣に部落問題対策委員会を作ること、それから政府としてその解放のための施策を十分講ずるよう、予算措置を講ずる要望をいたしましたところ、石井副総理あるいは官房長官においてそれぞれ考慮をせられるといいますか、私は、内閣に部落問題対策委員会ができると答えられたと聞いておりましたけれども質問に当りまして、内閣官房に聞きますと、まだきまっておらぬということであります。計上せられておりまするのは、厚生省において二千四百五十万円、ほか総計いたしましても、これはわずかなものであります。一人当りにいたしますと、総計をいたしまして、建設省の住宅建設の中で、第二種公営と称しますか、小さい、家賃の安い分でございますけれども、その中から二百戸、あるいは四百戸になるかもしれませんが、それだけが見込んでございますが、これを多少移動的に申し上げましても、八千万円から一億四千万円程度、一世帯に直しますと、二百十円程度にすぎません。売春防止のために、いや、従来売春をやっておりました不幸な諸君、私はこれは本質的に言うと、不完全就業者と申しますか、あるいは潜在失業者と言ってよかろうかと思うのであります。その仕事を得るために出された費用にいたしましても不十分、口では貧乏をなくすると言われます、あるいは不完全就業者をなくすると言われますけれども、実際に行われておる政策が、あるいは予算の計上はきわめて微々たるものじゃありませんか。これは石井副総理、あるいは官房長官等がおられませんければ、大蔵大臣なりあるいは担当大臣から御答弁願います。
  71. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) いわゆる部落問題につきましては、かねて方々から非常な御要請があります、いろいろな御要請があります。で、私どもも新しい民主主義の社会として、こういう社会のひずみを何とかして、なくしていくという努力をするのが新しい政治の目標でなければならぬということを考えておるのであります。よく予算の数字をあげられますときに、私どもの方の隣保館と共同浴場等、いわゆる地方改善事業として計上されたもの、あるいは建設関係の第二種公営住宅というもの等をおとりになりますが、私は率直に申して、新しい社会を作るのであるから、道路、環境衛生等についても、教育につきましてもやはり総合的な観点からこれが推進に当りたい、こう考えておるような次第であります。しからば各省にまたがりますので、むしろ内閣の方で総合調整をして推進した方が適当ではなかろうかというお話もあるわけであります。で、私どもとしても、目下内閣にこの問題を、総合調整するのに最も有効な方法は何であるかということを寄り寄り相談しておる最中でございます。
  72. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 総理がそこに今すわっておられますが、新学期が近まって卒業をいたします、高等学校なり中学なり卒業をいたします学童までも、理由は告げられませんけれども、就職がより困難である、あるいは結婚をしようとしても、いわれなき理由で、はばまれるという事例もございます。そういういわれなき差別と、生産手段と申しますか、生活が非常に困難に置かれておる。この事態に対して、部落問題についてです、政府として対処をしたいと、こういう答えが石井副総理、あるいは官房長官等からあったように私は聞いておるのであります。今、厚生大臣は、私が厚生省あるいは建設省予算をあげただけで、それでは、そういうものをあげられるけれども、それじゃ足らぬ、政府でやるべきだと、こういうことを言われもするし、自分も感ずるのでございます。で、問題は、やはりこれは一厚生省ではございません、あるいは、一建設省だけではございません。教育のことを言われますけれども、教育だけでは片づく問題ではございません。政府としてこれは取り上げて、本格的にその生活、それから差別の原因を、根幹を取り除かなければ、その物質的な基礎を除かなければ、問題の解決はないと思うのであります。総理の見解をはっきり承わりたいと思います。
  73. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 歴史的に申しますというと、相当長い間そういう不平等の環境が生きてきておったことは、私は非常に遺憾なことである、日本の社会制度の上から見て遺憾なことである。しかし、今日新憲法のもと、また、一般民主主義の普及徹底のもとからいいますというと、この差別感であるとかいうような考え方は、これは大きく改められてきておりますし、また、多少でもしかし改まらぬところがあるならば、これを改めることはこれは当然であります。ただ、今いろいろお話が出ておりますように、これらの部落におけるいろいろな衛生施設なり、あるいは産業施設なり、あるいは文教の方面におきまして、十分な施設を欠いておると、あるいは住宅その他について十分なものがないというために、いろいろな不便があるというような事態も、これは十分に一つ検討して、これに対する対策をとらなきゃならぬことは言うを待ちません。私は根本的に申しまして、もはや、そういういやしくも差別的な考えを少しでもあってはならぬ問題であり、そういうことは非常に大きく社会的な変革を来たして、いい方向に来ていることを認めるのでありますけれども、同時に、社会施設や、各種の施設において足らざるもの、また、その生活の安定向上のために不十分な点につきましては、政府としましても十分な意を用いていかなければならぬと、かように考えております。
  74. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは、石井副総理なり、あるいは官房長官が受けて話をされたという、政府で取り上げて根本的な解決策を立てたいと、こう言われるのでありましょうか、それとも逃げられるのですか、そこのところをはっきり……。
  75. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私、副総理がどういう意味で、政府が取り上げて云云と申し上げたか、はっきり具体的な内容を明らかにいたしませんけれども、今申しますように、政治として、そういう差別感がいやしくも少しでも残っておるというようなことは、これは許されないことであり、また、そういうことが各種の施設の上から来ているような面については、十分に一つそれを是正するように努力をいたすということを申し上げた。そのために内閣審議会を置くとか、調査会を置くとか、総合連絡の機関を置くとかなんとかという問題につきましては、なお石井副総理その他とも相談をいたしまして、その趣旨において善処したいと思います。
  76. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 政府が三十三年度予算で、同和政策予算として計上しておりますものを合計をいたしますと、先ほどのような一億四千万円、一世帯当りにいたしますと二百十円、売春対策として予算上に計上いたしました金額は、これは十万とか十二万とか、数は違いますが、十数万といたしまして、一人当り三千六十三円、三千円そこそこであります、三千円足らず。昨年公務員のベース・アップと申しますか、ベース・アップではなくて給与の改訂、昇給を計算いたしましたら六・二%、八百円から九百円であります。ところが、ことしこの予算に入っており、別に法律も出ておりますが、特別職の給与の引き上げがなされようとしておる、この案によりますというと、総理が十五万円、それから閣僚諸君は十万円であります。ここにおります速記をしておられます参議院の職員の諸君は昨年八百円か九百円ばかり昇給をした、同じ率で昇給をする場合に、総理は月十五万円、閣僚級は十万円、同じ人間でこれだけの差を作っていいものでしょうか。(笑声)皇室費の増額が提案せられております。内廷費千二百万円、一カ月百万円であります。民主主義のもとにおいて、総理はこれで妥当だと考えられますか。
  77. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 特別職の給与の問題につきましては、吉田委員も御承知通り一般公務員のベース・アップ、あるいは昇給、いろいろなものが数次において行われたのでありますが、特別職の問題につきましては、それが行われずにきておったのであります。そこに不均衡があり、やはり今お話がありましたが、私は決してこれが民主主義のいろいろこの働きによりまして、その地位によりまして、待遇が違っておるということ自体が、人間の人格の平等や人格の尊厳を決して傷つけるものでなくして、これはそういう一つの組織の上からくることでありまして、それが果して均衡がとれておるかどうか、あるいは不当にある部分が不均衡であるかどうかということが、問題として十分に論議さるべき問題であろうと思います。また、内廷費の問題に関しましては、これは過去、終戦後ある程度の是正もされてきておりますが、現在の状況は、相当今日の物価の水準やいろいろな状況と違ったときに定められたものでありまして、私は今回の増額は、決して民主主義の本質とか、あるいはそれを無視するものでなくして、当然いろいろな各種の、今言った物価の基準等を考えてみるというと適当な改正であると、かように存じます。
  78. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 適当な改正というお話しであります。ですから、口では貧乏をなくするということだけれども、実際には貧乏を作り、あるいは差別を作る。差別はなくすると言われるけれども、実際には差別を作る政策が行われておるじゃありませんか。総理なり、あるいは国務大臣のこの給与改訂は、これは保留するんだというお話がございましょう。しかしそれは、法律は直すけれども実施の期日をしばらく延ばすというだけの話しでおそらく選挙が済んだらお上げになるんでしょう。同じ人間、法律の前には同じだ、憲法の前には同じだ、こう言われて、しかも先ほど来申し上げましたいわれなき差別、あるいは就職さえもはばまれる、あるいは結婚さえもはばまれるという部落のお人たちに対して、それをなくしたいといって出された金はたった二百十円、一家族、一カ年について二百十円。それから大臣級の諸君の十万とか十五万というのは一カ月でありますぞ。それで差別はないと言われますか、それが当然だというのですか。
  79. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 言うまでもなく、民主主義の原則の一つの大きな根拠は、個人の人格の尊厳であり、その平等が認められていることであると私は思います。しかし、そのことが直ちに社会活動が全然同一であり、また社会上、受けるところの待遇が、全然あらゆる面において同一であるということを、私は意味しておるものじゃないと思います。これはお互いが、社会的に活動し、いろいろな面において受けるところの待遇というものは、おのずからそこに基準が生まれてくるものがあって差しつかえない。ただ、今吉田委員の非常に御心配になっておりまする部落について、もしも人格の平等や、あるいは人格の尊厳ということに関して、多少でも差別感が、日本の中にどこにでも存しておるということは、これは、私は民主主義の見地からいって、厳にこれをなくしなければならない。また、それらの人たちの生活上の各種の事態が、恵まれておらないということがあるならば、これに対して、相当な施設をすべきことは、これは当然に政府として、政治として考えていかなきゃならぬと思っております。もちろん、これは、吉田委員も十分に御理解であると思いますが、ただ形式的に、部落ということからだけで、すべての何か、社会的に経済的に、非常に悪い人ばかりであるということは、私はできぬと思います。問題は、いわゆるそういう生活様式、社会環境というものが、衛生施設において、あいは産業施設において、その他において恵まれておらないとか、あるいは不当にそこに施設がないために欠陥があるという場合においては、これに対して施設をすべきものであって、これは、ただ部落だけではなくして、山間僻地であるとか、あるいは離島であるとかいうようなものにおいて、やはり生活上、十分に恵まれておらないということに対して、国家が全局的な立場から、いろいろな施設をしていくのと同じ考えでやるべきだ。ただ、根本において、社会的に、何らかそれに対して差別感がありとするならば、これは断固としてそういうことを許さないというのが私の考えでありまして、あるいはその施設として不十分なところがあるならば、将来十分検討してこれを拡充していくことは、当然やらなければならない、かように思います。
  80. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 岸総理は実態を御存じないから、部落の問題とあるいは離島で苦労しているものと同じに考えられるのであります。先ほど社会活動において違いがある、こういうお話しでございましたが、その辺にこれは、社会活動の違い、あるいは任務の違い、こういうこれは人格ではないけれども、人格とは離れた社会活動なりあるいは任務の違い、こういうお話しですけれども、それはその次には人間のやはり活動機能ということになりますけれども、それは人間の差別というものと、これはすぐつながって参る。たとえばこれは駐留軍労働者について、あとでお尋ねをするつもりでありますけれども、駐留軍労働者については特別退職金はやらぬ、見舞金だけをやる。理由はないけれども見舞金だけやる。苦労したから見舞金だけやる。ところが、調達庁の定員に入っている公務員については、これは特別退職金をやろう、こういう態度でおられる。それではその労働者とあるいは公務員との間に、仕事の上でどういう違いがあるのでしょうと、先ほど私は申し上げました。あなたはそこに大臣席に坐っておられる。しかし、速記者はここで速記をしてくれています。しかし人間の値打ち、人間の働きの上に、本質的な差がないというのが、民主主義じゃありませんか。それに片っ方は八百ないし九百円の違い、それから大臣級は十万円の違い、こういう違いがある。(「同じことだ」と呼ぶ者あり)人間の値打ちに違いがないというのに、それは差はとにかく、それでは職階制なら職階制の矛盾が、こういうときに出ているということをお考えになりませんか。(「さっき言ったばかりじゃないか」「黙って聞けよ」「理事がそんなこと言い始めちゃいけません」と呼ぶ者あり)
  81. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 私語を禁じます。
  82. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はこの民主主義の基本である人間の平等であり、人格の尊厳という問題は、その受ける給与がこれを示している問題ではないと思います。給与が違うから、給与の低い人は、これをそのために侮辱すべきものであるとか、それは人格的に低い人であると見ること自体が、私は民主主義に反している考え方だ、(「そうそう」「その通り」と呼ぶ者あり)その報酬とか待遇とかいうものは、私はおのずから社会的活動やその他の人々の責任とか、いろいろなことから差別が出ておりますが、それがために何ら人格の尊厳、人格の平等を傷つけるものではない、これが民主主義だ、かように考えております。
  83. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは特別職の給与改訂の中に具体的にお尋ねをいたしますが、従来人事官あるいは検査官、これは国務大臣と同じ待遇を受けている。それは私はそういう公務員法の制度があったと思います。それは人事院は公務員の人事の問題について、会計検査官は会計検査については、これは行政府政府なりあるいは政府と同じ権威を持っている。従来のような、昔の憲法のもとにおけるような、これは行政府の方が強くて、会計検査なりあるいは人事の問題について、意見を出す機関の方が下にあるというのじゃなくて、少くともその勧告について、機能について、十分権威あらしめるという意味において、私は同じ待遇であったろうと思う。それを公務員法を改正し、あるいは会計検査院法を改正してまで、差をつけようというのは、明らかにそこに国家公務員法の破壊があると思うのでありますが、かねてその人間の価値はこれは比較するわけにいかぬと言いますけれども、今までの制度の中で、民主的な公務員制度の中に、はっきり、そういう給与とそれから任務との間には、目的、意職的な関連があったじゃありませんか。この問題についてどういうふうにお考えになりますか。
  84. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 人事院の総裁及び会計検査院の院長につきましては、今度の改正におきましても、国務大臣と同様にしてあると、私、承知いたしております。しこうして人事院及び会計検査院の実際の運営を考えてみますというと、院長、総裁と、何といいますか普通の検査官、人事官との間におきましては、職務、職責、任務その他において、相当の差があると、私は考えます。そこに若干の差を設けてきたわけで、決してこれがために人事院やあるいは会計検査院というものを軽視するという考えは、毛頭ないことを申し上げておきます。
  85. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 せっかく人事院総裁、それから会計検査院長、御出席願っていると思いますが、従来大臣と人事官、検査官との間に差がなかった。それが法律改正まで伴って、差をつけようということについて、いかように考えられるか、所見を承わりたい。
  86. 淺井清

    政府委員(淺井清君) お尋ねではございますが、特別職の給与に関しましては、これは人事院の所管でないのでございますから、私からお答え申し上げる筋ではないと思います。
  87. 加藤進

    会計検査院長(加藤進君) お答えいたします。検査院法では検査官会議が組織されておりますが、これをさらに他の条文で見ますると、検査官は国務大臣に準ずる待遇を受けるというふうになっておりますので、検査官会議は、国務大臣と同等の待遇を受ける者三人から組織することが従来の建前でございますので、この建前を給与の面から改正することは、いろいろ疑問の点もあろうかと思いまして、内閣へは、その旨申し出てございますが、これはわれわれからの、検査院法の立場でございまして、給与の面、あるいは検査院に対する外部の考え方、かようなものから見ますると、また違った考え方もあるかと存じまするので、われわれとしては、これ以上申し上げず、法律の決定を待っておる次第でございます。
  88. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 検査院長は問題があるとおっしゃいました。人事院総裁は、給与の点は人事院の所管ではないと逃げられたのでありますが、しかし、国家公務員法を守ることについては、これは第一に人事院がやらなきゃならぬと思うのでありますが、国家公務員法の改正までやって、人事官が国務大臣と同様の、同じ待遇を受けるという点が改正をせられることについても、何の所見もございませんか。
  89. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 人事院といたしまして、国家公務員法を重視し、守り抜くということは、お説の通りでございますから、その点の努力を怠るつもりはございません。ただ問題は、特別職たる人事官の給与の問題でございまして、人事院は、一般職の給与をつかさどっておりまするので、私からお答えを申し上げる筋でないと言ったわけでございます。
  90. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 給与に差がついて、国家公務員法にいっておる人事官が、国務大臣と同じ取扱いを受けるということが、法律の修正をもって差がつけられるようになっても、それでも人事院としては差しつかえがない。従来、政府に対して国務大臣と同じような権威を持って勧告をし、あるいは公務員の利益を守るという使命を果さなければならぬという従来の建前から、そういう修正が行われても、ちっとも差しつかえがない……。会計検査院は、問題があろうとおっしゃいましたけれども、人事院としては、何の問題もございませんか。
  91. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 問題があるないということを申し上げたのではないのでございまして、特別職の給与につきましては、私から御答弁する筋ではないと申し上げただけでございます。
  92. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは、この特別職の給与について、所管ではありません、人事官としてのこの信念を承わりたい。
  93. 淺井清

    政府委員(淺井清君) たびたび繰り返しますようでございまするが、給与に関しましては、私からお答えを申し上げる筋ではないと申し上げておるのでございまして、公務員法全体の問題については、これはまた別でございます。
  94. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 その公務員法の改正について、あなたの所見を承わりたいと言うのです。
  95. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 公務員法の改正が、たまたま特別職の給与に関する部分に該当いたしておりますので、さようにお答え申し上げた次第でございます。
  96. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 これは、まあ淺井人事院総裁が、問題について態度の表明を避けておられるのでありますから、答弁はおそらく出てこぬでしょう。顧みて他を言う、そういう怯懦な態度では、これは人事官としての、私は、使命が十分果されていくかどうかということについて、疑問を持ちますよ。これ以上追及をいたしません。
  97. 鈴木強

    ○鈴木強君 関連質問。今、同僚の吉田委員の方から質問でありましたのは、淺井さん、こういうことなんです。あなたは人事官として主として公務員全般の問題についていろいろとお骨折りをいただいておるわけですが、今回あなたの給料が会計検査官と同じように、従来から見ると国務大臣に準じて待遇されておったのが、差別がつくことになる。それでもあなたは、それに対しては意見がないのかということを聞いているわけです。だから、科学的に政府にも聞きたいのだが、政府はどういう意味で科学的な事情をもってこれをつけてくるのか、この点は、一つ政府からもこの際答弁していただきたい。そういうことを言うのですから、逃げないで、あなたの所信がないならないでいいから、はっきりしてもらいたい。
  98. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど申し上げましたように、今回の改正で、人事院の総裁たる人事官及び会計検査院長たる検査官の待遇は国務大臣と同じであるが、その地位を持たない人のなには、幾らか若干下げておるという、ここに差別をつけておるのであります。と申しますのは、人事院総裁たる人事官は院務を掌理し、院を代表するというほかの人事官が持っておらない職務権限があるわけであります。また、会計検査院長にいたしましても、検査官会議の議長となり院を代表する、こういう院を代表しての立場があるわけであります。そういうふうに、他の検査官や人事官とは職務権限が違うわけでありまして、その間にある程度の、若干の差を設けることは、私は適当であろう、かように考えておるわけでございます。
  99. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 暴力の追放をうたいながら、これは岸総理だと思うのでありますが、武部六蔵氏に死後贈位の申請といいますか、取り計らわれた。それから矢次一夫氏を対韓外交に起用しようとせられたり、実際には、総理として、従来右翼的といわれた人、あるいは満州国において満州国建設その他をやられたという人について、昔の縁というものがなかなか消えないで、利用をしようとせられるというか、あるいは復古、復旧的な態度がある。あるいは総理の秘書についての脅迫についても、はっきりした態度をとられない、こういうことが、口では暴力の追放を言っておられるけれども、実際には暴力を、暴力団を奨励をする私は自民党の態度とつながっておるのではないかと考えるのでありますが、これらの点について、いかように考えられるか、承わりたい。
  100. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 暴力の追放につきましてはあるいは法の不備については改正考え、同時に、あらゆる警察機能も十分に発揮するような措置も講じて参りたいとともに、一般国民大衆が、暴力に対してこれを許さぬというふうな気風を作っていく必要があると思います。今おあげになりました具体的の事例に関連しまして、私は、これは暴力の追放と何ら関係のない問題であると思います。復古的であり、何かそれが直ちに暴力を謳歌するとか、あるいは暴力団であるとか、右翼の云々というふうなお言葉がございましたけれども、私のこれらの人々に関する限り、そういうことの考えは毛頭ないということを、明確に申し上げておきます。
  101. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 時間がございませんから、またの機会に譲りまして、総理、外務大臣が立たれる前に、関連のあることをお尋ねをいたして参りたい。  汚職追放を言いながら、汚職が、岸総理あるいは藤山外務大臣等によって、実際はに、推進されているのじゃないか、こういう事実であります。外務大臣がお立ちになります前に、この二点を明らかにしてもらいたいと思うのです。  昭和三十二年度予算の産業投資特別会計から海外移住会社に対して十億円出資せられております。その十億は、どういう工合に使用され、現在どれほど残っておるか承わりたい。  それからついでに、これは大蔵大臣にお答えを願った方がいいかとも思いますが、岸特使としてパラグヮイに行かれた調査団、杉氏が団長でありますが、造船とドックの、何と申しますか、話をしてこられた。ところが、それは予算には出ません。あるいは今までのところ、実行する計画があるのかどうか知りませんけれども、少くとも予算には出ておらぬ。その出なかった理由を承わりたい。
  102. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、海外移住会社は昭和三十年の九月に創立されまして、その後三十一年から営業が開始されております。その後の状況を見ますと、約九億、四億が投資、四億が貸付というような関係で進められております。今後この移住会社を十かにりっぱに育て上げまして、そしてわが国移住政策に貢献して参りたいと存じますが、詳しい数字等につきましては、政府委員より申し上げます。
  103. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 産投から移住会社に出しました出資、これは五億は実行しております。五億は三月中に出すと予定しております。
  104. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 総理、藤山外相が立とうとしておられますが、二人に関係のあることであります。  昭和三十一年の暮、岸さんが外務大臣として就任せられる当時、南方漁業という会社の重役をしておられた。時間がございませんからこちらから申し上げますが、三十一年の暮に、日本海外移住会社から南方漁業会社に対して出資をいたしております。三千五百万円を借りておる。その翌日ではございませんが、二、三日して年が明けて、南方漁業からこの海外移住会社の幹部に対して、現金あるいは物を持って行ってお礼をいたしておる。こまかいことはあとで申し上げます。お立ちになってから申し上げます。十万円、五十万円と現金を持って行っておるのです。その当時、昭和三十二年の初め、藤山さんは南方漁業の取締役会長、岸総理はその取締役をしておられたという事実があるかどうか。それだけはお立ちになる前に明らかにしておいていただきたい。
  105. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 南方漁業というのは、私が従来長い間友人でありました前根君が創立した会社であります。当時私は、これはずっと前でありますが、友人としてこれに関係したことはございますが、その後、実際は前根君が一人でこれを運営しておったのであります。私どもは、それには事実上の関係は持っておらなかったのであります。創立当時は、私が関係しておったことは事実であります。
  106. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ここでちょっと申し上げます。もうよろしゅうございますね、総理大臣は。
  107. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 もうちょっと。
  108. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 簡単にお願いいたします。
  109. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私の調べたところによると、岸信介氏が南方漁業の役員を辞任されたのは昭和三十二年五月十日、藤山愛一郎氏が取締役会長を辞任したのもやはり同じく昭和三十二年の五月三十一日。その大半を政府が出資をしております海外移住会社から、当時藤山愛一郎氏が取締役会長をしておられた南方漁業に投資をして、そうしてそのお礼に現金なりあるいは品物なり、テレビ等を持って行ったりいたしておりますが、それは三十一年の十二月から三十二年の一月三、四、五と三日にわたるのであります。その当時は、藤山愛一郎氏が取締役会長をしておられた、あるいは岸信介氏が南方漁業の取締役をしておられたということは、事実はっきりいたしておるのでありますが、それは事実と違いますか、どうか。
  110. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が今申し上げたのでありますが、その間における時日等の正確のことは、今記憶はございませんから、十分取調べた後に御返事をしたいと思いますが、何らこれに関連して金品等を受けた覚えも全然ございません。それは事実に反しておるということを、明確に申し上げておきます。
  111. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ちょっと委員長から、今般ラオスの総理大臣が来朝せられましたので、今夕五時半から、岸内閣総理大臣主催のレセプションがございます。委員長は理事会の議を経まして、総理大臣並びに外務大臣には五時半に退席せられることを認めました。各位の御了承を願います。
  112. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 南方漁業会社は、私の長年の友人であります前根君が南方関係の漁業をやるために創立した会社であります。長年の友人でありますから、会長をやっておりましたことは事実であります。しかし、前根君が大体水産漁業のエキスパートであります。それらを信頼して、私としては会長の役目をしておっただけであります。日常の業務にはほとんどタッチしておりません。ただいまお話しのありました問題は、おそらくイランの沿岸漁業に対して、イラン国政府との間の話し合いによりまして、エビをとります漁船を出すことになりました。これがイラン国の関係でありますから、単に漁撈をやりますばかりでなく、沿岸におきます冷凍設備その他諸般の問題をやって参るわけであります。そういう意味において、この建造資金を借りたということは、私も存じております。しかしながらその船はおそらく現在でも時価何千万円かあるものでありまして、三千五百万円の金額は不当ではなかったのではないかと考えております。その間に何らかの利益供与をいたしまして、そうしてそういう金をいただいたということは、全然ございませんのではっきり申し上げます。
  113. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私は藤山さんが金をもらわれたとは申しておらぬのです。取締役会長をしておられた藤山さんの会社から、政府がその大半を出資しております海外移住会社の重役に対して、金品を持っていったという、そういうことを御存じないかどうか。こういう点でありますが、もう少し具体的な時日を申し上げます。  あるいは藤山愛一郎氏、当時会長をやめておられたかどうかということにも関連をするわけでありますが、私の調べたところでは昭和三十二年五月三十一日辞任ということになっておって、これは国会図書館で調べたものでありますから、もし調べた時日が間違っておれば別問題で、行われた時日は昭和三十二年の一月三日、大志摩氏の自動車を利用して、移住会社社長秘書役依光重親という者の宅に行って金十万円を手渡した。あるいは同一月四日には赤坂の料亭川崎において前根氏から紙幣の包みを社長に渡した。その紙包みの中身は五十万円というのでありますが、もよりの郵便局に預金をしたというのでありますから、これは郵便局を調べればわかるわけであります。金額はとにかくでありますけれども、南方漁業から海外移住会社の重役に対して、融資の謝礼としてこの金品の供与があった。こういうことが言われておりますだけに、その問題のございましたときに、藤山さんがその南方漁業の重役でおられたかどうか、こういうことを聞いておるのであります。
  114. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 正確に辞任いたしました日は調査いたした上でなければ、間違うといけませんからあとで申し上げます。  南方漁業が当時移住会社から、南方漁業の目的としても移住会社の方針に合うから、今申し上げたような借款をする、という話は聞いております。しかしながらその関係におきまして、私は何らかの金銭が動いたということは信じておりませんし、私自身、この関連におきまして、大志摩社長と宴席において同席いたしたことは一ぺんもございません。
  115. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 藤山外務大臣、時間ですからどうぞ。
  116. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは外務大臣が退席されましたから、これは公けの外務省として伺いたいと思いますが、藤山個人ではなくて。  今藤山外務大臣はイランとの合弁事業で魚をとるという会社、これはペルシャ湾何とかという会社であります。これは、この移住会社なり外務省が関連をいたします移民と、関係があるのかどうか承わりたい。
  117. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) お答えを申し上げます。実は私も昨年の三月末に着任いたしましたので、ただいまお話のような事実は全く初耳でございます。そういう事実を全然聞いたこともございません。ただ今の移住との関連についてでございますが、この話はイランとの合弁事業によりまして漁業をする。日本側は船を提供いたしまして、魚をとって向うの地上に向う側で準備いたします施設と相待ちまして、イランの魚をとるという、こういう話でございまして、なるほどいわゆる南米あたりの移住とはちょっと違いますが、日本の船員が第一には向うの合弁の会社の雇用人になって行くということと、さらに地上のいろいろな施設に技術者等が参りますこととの関連において、広い意味の移住と関係があるということで、当時承認されたものであるというふうに聞いております。
  118. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 これは船に乗ってイランの国の土を踏むわけではなく、船に乗って行って何ヵ月かペルシャ湾で魚をとるわけです。それも移民ですか。
  119. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) いわゆる漁業移民と申しますものも、われわれは広い意味の移民に考えておりますが、それはただ船に乗るだけではございません。当然向うの会社の船に乗るわけでございますから、その乗っておる船員あるいは漁夫たちも当然その港に帰ったときには、向うで暮すことにもなりましょうし、それは年に一ぺんか二年に一ぺんか存じませんが、日本に帰ってくることがあるかもしれませんが、一応広い意味の移住と考えておるわけでございます。これはほかの国の場合のいわゆる漁業移民においても同様でございます。
  120. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 龍田丸というのはどこの船ですか。
  121. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 龍田丸というのは日本の船でございまして、それを南方漁業が向うの合弁会社に出資している船でございます。
  122. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 大蔵大臣に。移住会社については、昭和三十二年の五月の株主総会で、大蔵大臣の代理として出席したこれは天野という人が、外務省の現地調査報告によっても、あるいは世論によっても一年の決算を承認しかねるが、否決すると内外に重大な影響があるので、機構の刷新、会社経理の適正なる指導、業務の改善を条件として承認したいという発言をしたということがあり、あるいは従来の乱脈をきわめた経理にかんがみて、外人においては海外移住に対する融資を続ける意思がない。一般雑誌その他でも非難された移住会社、しかもそれは現大志摩社長のもとにおいて乱脈をきわめ、そうしてそのことが外人融資のストップの原因となっておるようでありますが、大志摩社長の更迭がなければ融資の継続は望むべくもないといったような事情等について、大蔵大臣御承知であったかどうか承わりたい。
  123. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私まだ承知いたしておりません。
  124. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 会計検査院は三十年と三十一年と二度にわたって、会社に注意と申しますか、指摘をせられておるようでありますが、会計検査院の従来知っておられますところを、所見を承わりたい。
  125. 加藤進

    会計検査院長(加藤進君) 海外移住会社に対しましては、こういうような書類上応答があったことを承知いたしております。これは海外移住が、農業労務者派米協議会とかいう団体でございますが、この方に渡航移民の海外渡航費の貸付と回収とを委託しておりますが、その回収状況は金額の方はともかくとして、内容が非常に不分明があるという意味でその整理を促したと、こういうことがあったことを承知いたしております。もう一回という話はその方は私記憶ございませんから、それは悪しからず。
  126. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 大蔵大臣は知らぬというお話でございますが、大蔵省は知らぬというわけには参らぬと思うのでありますが、責任者来ておられるがどうかわかりませんけれども、これは大蔵省からおいでになった方の発言等もございますから、重ねて御答弁を願いたい。
  127. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今調べたら、それはその当時出席した大蔵省の役人が希望として述べたようであります。
  128. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 これはここで答弁いただきにくいかもしれませんけれども、大蔵省で従来調べたところを調査の上重ねて別な機会にいたしましても返答を願えるでしょうか。それとも知らぬということで通されますか。
  129. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大蔵省といたしましては、政府出資をしておりまする会社等の経理については、常に厳重に扱われることを希望し、注意もいたしておるわけです。私、その当事出席いたしました大蔵省の役人から、直接この事態について実は報告を聞いておりません。従いまして、それほど重大な具体的な事柄に対する意見ではなくて、むしろ希望であろうと考えておるのであって、今事務当局もさよう申しております。
  130. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 議事の都合によりまして本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十七分散会