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1958-03-06 第28回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月六日(木曜日)    午前十一時二十五分開会   ―――――――――――――   委員の異動 三月五日委員八木幸吉辞任につき、 その補欠として市川房枝君を議長にお いて指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     泉山 三六君    理事            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            高橋進太郎君            佐多 忠隆君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            大川 光三君            木島 虎藏君            草葉 隆圓君            小山邦太郎君            佐藤清一郎君            塩見 俊二君            下條 康麿君            館  哲二君            土田國太郎君            苫米地義三君            苫米地英俊君            一松 定吉君            本多 市郎君            三浦 義男君            安部キミ子君            岡田 宗司君            亀田 得治君            坂本  昭君            鈴木  強君            曾祢  益君            高田なほ子君            戸叶  武君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            吉田 法晴君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            田村 文吉君            豊田 雅孝君            千田  正君            市川 房枝君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  前尾繁三郎君    国 務 大 臣 石井光次郎君    国 務 大 臣 河野 一郎君    国 務 大 臣 郡  祐一君    国 務 大 臣 正力松太郎君   政府委員    内閣官房長官  愛知 揆一君    内閣官房長官 田中 龍夫君    法制局長官   林  修三君    行政管理政務次    官       榊原  亨君    行政管理庁行政    管理局長    岡部 史郎君    自治庁税務局長 奧野 誠亮君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    経済企画庁総合    計画局長    大來佐武郎君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省理財局長 正宗啓次郎君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件理事辞任及び補欠互選昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○昭和三十二年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和三十二年度特別会計予算補正  (特第4号)(内閣提出衆議院送  付)   ―――――――――――――
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。  まず委員の変更について報告いたします。  三月五日、八木幸吉君が辞任せられ、その補欠として市川房枝君が選任されました。   ―――――――――――――
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいま岡田宗司君から理事辞任いたしたい旨の申し出がございましたが、これを許可するに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 御異議ないと認めます。  つきましては、その補欠として、委員長は、前例に従い、成規の手続を省略し、理事佐多忠隆君を指名いたします。   ―――――――――――――
  5. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 議事に入るに先立ちまして、委員長から岸内閣総理大臣並びに愛知官房長官に対しまして、念のためお尋ねいたします。  本日は申すまでもなく地久節に当りまするので、まことにおめでたい限りではあります。総理がこれに対して参賀のお気持はよくわかるのでありますが、本日の委員会は、委員長より昨日宣明いたしました通り、十時の開会の招集に相なっております。官房長官からの委員長への申し入れは、地久節への参賀のため、本委員会の欠席は、要求大臣以外の方において適宜に交代し、これを行う。かようの申し入れであり、私はこれを了承いたしておりました。しかるところ本委員会は一時間半の開会が遅延いたしましたことは、委員長としてはなはだ遺憾にたえません。(「その通り」と呼ぶ者あり)  ついてはこの際岸総理大臣並びに愛知官房長官の一言、御弁明を願いたいのでありますが、ここで御参考のため、本委員会におきましての、今後の運営の見通しについて、委員長から苦衷を申し述べたいと存じます。幸いに本日つまでは、与党側はもちろん、野党諸君におかれましても、格段の御協力を得まして、円満に進行いたしますことは御同慶にたえません。しかるに、本委員会の軍営については、委員長から本委員会において御同意を得ました通り、その日程におきまして、これからの残された質疑時間は、実に六百三十五分を余すのであります。かりに政府側答弁が、これと同様といたしましても千二百七十分、あたかも二十一時間を必要といたすのでありまして、所定の明後八日中にこれを議了することは、非常に困難なるやの、実は委員長として憂慮をいたす次第であります。のみならず明日におきましては、本会議もございます。かようの点から一段の委員諸君の御協力をお願いしてやみませんが、ことに政府側におかれましては、この点に特に留意をせられまして、一そうの御勉励を願いたいと思う次第であります。  おそらくこれは官房長官側の連絡の不十分の結果かと思うのでありますが、まず官房長官から御説明を願います。
  6. 田中龍夫

    政府委員田中龍夫君) ただいま委員長からのお話しのございました点につきましては、内閣といたしましても、鋭意努力をいたしておる次第でございます。  なお、本日の皇后御誕辰の日に当りまして、各大臣の宮中の御参内もございまして、はなはだおくれましたことにつきましては、おわび申し上げます。今後の御審議に際しましても、政府側といたしましては、あらゆる努力をいたして参りたいと考えております。よろしくお願いいたします。
  7. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいま、愛知官房長官おりませんので、代理として田中長官弁明がありましたが、御了承願いたいと思います。  この際、(「委員長関連して」と呼ぶ者あり)ちょっとお待ち下さい。私の発言……(「今の弁明委員長から総理大臣に対して求めているのでしょう」と呼ぶ者あり)ただいま申し上げました趣旨による質問に対しましての答弁が大体同じくらいの時間、かように加算いたしましても二十一時間を要します。しかるに非常に政府側答弁が丁重と申しますか、時間がかかりまして、昨日のごときは、質疑時間十五分に対して一時間の答弁に相なりました。従いまして、政府側答弁はなるべく簡潔にこれをお願いいたします。(「委員長、それには異議があります。そうはいかぬ」と呼ぶ者あり、松澤兼人君「そういうわけにはいかないですよ。答弁の時間を制限するということはいけない。そういうことは了承しておりませんよ。一時間の質問に対しては一時間の答弁ということはさまっているのです」と述ぶ)だから簡潔にお願いするのです。(松澤兼人君「政府答弁を制限するということはいけないです。それは普通の常識的な答弁というものは時間がきまっていると思うのです。それを時間を制限するということはいけないです。もし制限されるならば、理事会でもってちゃんと取りきめてからやってもらいたい」と述ぶ)わかりました。今の松澤さんの御発言の御趣旨は十分体しまして、従いまして、簡潔にお願いいたしておるわけですから、これは要するに皆さんのなるべく御質疑の十分な御満足を差し上げたい。かようの委員長の微意にいずるものでありますから、さよう御了承願います。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 政府側答弁に関することは、これは後ほど理事会等論議委員長がするにも、そういうことを考えているとしたら委員長の大へんな間違いだと思います。理事会等でやってもらいたいと思いますが、その前に、委員長からはわざわざ総理大臣並びに官房長官の御意見を、本日おくれたことについて求められたはずです。それに対して副長官がのこのこと出てきて、それで済まされるようなことでは、これは委員長の権威にも関する。だからこういうところはもっとぴしっとやってもらわぬと困る。そういう態度でおるから、委員長政府側との約束等が無視されたりする一つのまた、原因にもなる。私はそういう意味で、委員長がそういう発言をされた以上、岸総理大臣からやはり本日のような事柄について所信をはっきり述べてもらいたい。私どものはなはだ遺憾に思うのは、委員長政府側がそういう本日の出席についての約束をしながら非常におくれたと、これが一つと、しかもその理由が納得できない。本日は何も国民祝い日でも何でもないわけなんです。私はそういう意味で、この国政というものの中心、これは一体どこにおいておられるのか。従来からもよくそういうことがあるわけですが、何かはかに行事がある。そうすると国会の方が留守になる。私はこれは本末転倒していると思うのです。たまたま地久節の問題で委員長からそういう発言があった際ですから、岸総理大臣は毎日の行動について、国会とその他の行事、これは重なる場合がずいぶん多いと思うのですが、それらについてどういうふうな基本的な考えを持って行動されておるのか。その点もあわせて一つ所信を述べてもらって、先ほどの委員長要求に対して答えてもらいたい。
  9. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 亀田委員に私からまず申し上げます。  ただいま田中官房長官からもお話があり、なおまた私も先ほど申し上げました通り官房長官側から委員長に対する申し入れが若干岸総理大臣の御意向と食い違っておる、この結果が重大な点であります。それで、私は必ずしもこの際官房長官答弁のあった限り、岸総理大臣の御答弁をわずらわすまでもない、かように判断をいたしたわけであります。何とぞ御了承願います。(「進行」と呼ぶ者あり)
  10. 亀田得治

    亀田得治君 委員長もう一度。  しかし官房長官とあなたの約束にいたしましてもですよ。これは結局国会側としては、政府国会との約束と、こういうふうにやはりこれは私どもとしてはとるわけなんです。そうして現実にはだれが見たって思わしくない状態がここに出ておるわけですね。だからそういう意味で、これは岸総理大臣が今後官房長官政府の職員に対してどういう気持で指揮されていくのか。そういう点、どうも私どもとしてはこれは無関心ではおれぬわけです。そういう意味で、問題がこういうふうに現出しているわけですから、一つ総理大臣考え方をここではっきり述べてもらいたい。総理大臣からお話があれば、私ども今後そういうことがないということを信用します、一応。しかしあった場合にはさらにそういうことは改めてもらいたい、こう言わなきゃなりませんので、そういう点からも一つ総理大臣考え方をここではっきりしてもらいたいと思います。これはあるいは委員長はそこまで要求しておらぬかもしれませんが、私どもとしてはこういうふうに迷惑を受けているわけですから、この際一つ総理大臣がもし考え方を述べられるということであれば、述べさすように委員長として取り計らってほしいと思います。
  11. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 私からお答え申し上げます。  亀田委員お話の御趣旨はよく了承いたしました。ただし、私がただいま申し述べましたようなこの間の行き違いの、これが原因であったといたしますれば、この際において亀田委員の御質問の御趣旨、これに総理大臣が御答弁になるということは、この際は必ずしも適当ではなかろうと、委員長発言趣旨のほかでございまして、どうぞその点は御了承願います。(「進行進行」と呼ぶ者あり)
  12. 戸叶武

    戸叶武君 先ほど委員長言葉の中に、政府側答弁は簡単にというような、委員長発言として許すべからざることであります。この議院内閣制のもとにおけるところの政府と議会との関係というものは、きわめて重要でありまして、われわれの審議権というものはどこまでも侵さるべきではないのであります。与党側のその政府側に対するところの質問というものが、今までおおむね答弁をそれほど必要としたいような形において時間を計っているようでありますが、これは与党の心がけとしてはわれわれが干渉すべきものじゃないと思いますが、岸内閣唯一の長所は、岸さんを初めとして比較的誠実に答弁をするというところに唯一の特長がある。それが消えてしまうと存在の意義がなくなるのであります。野党側質問に対して政府が親切、額切、丁寧に答弁するのを委員長みずからがそれを制約するというのは、はなはだ不届きでありますから、そういう点はよろしく反省してもらいたいと思います。
  13. 泉山三六

    委員長泉山三六君) お答えいたします。よくわかりました。   ―――――――――――――
  14. 泉山三六

    委員長泉山三六君) では、これから昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算並びに昭和三十二年度予算補正(第2号)及び(特第4号)を一括議題といたします。昨日に引き続き質疑を続行いたします。
  15. 松澤兼人

    松澤兼人君 冒頭に委員長にちょっと御注文申し上げたいと思います。  さっき私は動議でもなく、議事進行でもなく、まことに不規則な発言をいたしましたけれども、これは委員会としましては重大な問題でありまして、この問題については、後刻理事会等でも十分審議して、その方針がいいのか悪いのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。委員長御所貝を承わりたいと思います。
  16. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 松澤君にお答えをいたします。松澤君の御発言の御趣旨委員長におきまして十分了承いたしました。  なお、次の理事会におきまして、皆さんの御所見を承わりたいと存じます。
  17. 松澤兼人

    松澤兼人君 第一に、昨日八木委員質問につきまして、総理大臣は、日中貿易協定の問題に国旗掲揚等条項がそのまま入っているならば、これは容易に同意しがたい、非常に同意は困難であるということを言われたのでありますけれども、この点は代表団の報告も聞かずに、総理としてきわめてきびしい答弁をされたと私は考える。この点につきまして、昨日の答弁と少しも変りがないのか、その後種々なる情勢を聞いて、検討してみるというようなお気持になられたか、この点まず第一にお伺いしたいと思います。
  18. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 昨日の八木委員の御質問は、国旗掲揚の権利ありというこの条項についての政府の見解を問われました。私はそのままの字句では承認が困難だと思うということを申し上げました。もちろん今度の覚書全体について、どういうふうな意味議員連盟の方々が調印をいたしましたか、いろいろなこれには事情もあり、また話し合いもあり、いろいろなことがあると思います。従いまして、全体をどうするかという問題は、今、松澤委員お話通り議員連盟諸君が帰ってこられまして、十分事情を明らかにして、全体として政府の最後の意向はきめるべきものであることは言うをまちません。ただ、私はその条項だけを取り上げて、こういうことでいいのかという御質問に対して、私の所信を述べただけでございます。
  19. 松澤兼人

    松澤兼人君 それでは本論に入ります。  この問題につきましては、かつて私臨時国会におきましても、総理所見をただしたのでございますが、岸総理社会党対決をするということを言われた。その対決意味は、政策の争いというふうに答弁されたと考えているのでありますが、この国会を通じて岸総理社会党対決するような、いわゆる自民党的な、自民党政策と申しますか、あるいは政府政策と申しますか、いずれにいたしましても社会党対決しなければならない政策というものを打ち出しておられるかどうか、何をもって政策の上における社会党との対決の場であるとお考えになりますか、この点を承わりたいと思います。
  20. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本語の対決という言葉が何か両者が相いれない、非常な厳格な意義をもっておるように響きますが、私はこの民主政治、特に二大政党によって運営されるところの民主政治というものは、あらゆる面においておのおのの政党根本的主張考えておる政策、その立っておる基本的な考え方というものを、これは二つ政党があります以上は、当然これらについて相異っておる、これが全然同一であるならば、言うまでもなく政党がそういうふうに分れるわけはございませんから、そういう点をあらゆる面において明らかにしていく。特に国会における論議を通じてそれを国民の前にはっきり明らかにして、そうしてこれに対する国民批判審判を受けるということが民主政治あり方であり、二大政党の対立している民主政治運営あり方であると思うのであります。従いまして、何か対決というと、相いれない、また国民常識からいうと、何か非常に激した場面が出てくるようなあるいは感触があるとすれば、それは私は間違っておる。そうではなしに、両方の今いったような根本考え方で私どもはあらゆる論議を通じてやっていきたいと考えておるわけであります。  この意味から申しますると、まず一番大きな問題は、今御審議を願っておる来年度の予算の問題である。この中には自民党として従来公約しております、またその自民党基本としておる内閣がこれを責任をもって編成をいたしておるのでありまして、この考え方の上においては、各種の政策におきまして社会党のお考えと違っておる。これをこの委員会なり、あるいは本会議、その他のあらゆる機会において国民の前にその考え方の違うわれわれの考えておることを十分に論議し尽して国民批判国民審判を受ける、これが私の言わむとしておる対決意味でございます。
  21. 松澤兼人

    松澤兼人君 なるほど予算政府としてあるいは国会として、きわめて重要であります。そのために予算委員会を通じまして、十分に政策の違いを明らかにするという方法がとられておると思う。しかし国会を通じて十分に政府意見お話しになるということを言っておられるのでありますけれども、それでは政治運用の面から見まして、解散の問題についてはどうであるかということをお聞きすると、総理はこれについてはっきりしたことを言われない。この問題は繰り返して言いましても、結局岸総理は口を固くして容易にその時期については申されないと思うのでありますけれども、つい昨日の新聞におきましても、解散の時期について閣議においても何か話があったということが出ておりますが、それはどういう趣旨の内容であったか、もし国会を通じて発言なさるということが政治運用の面からいって適切であるならば、お答え願いたいと思います。
  22. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 解散の問題につきましては、私の、岸内閣ができました当初以来論議がされておる問題であります。最初社会党のお考えは、内閣が変れば国会解散して、そうして国民に信を問うべきであるという一つ民主主義の、民主政治公式論が述べられております。
  23. 松澤兼人

    松澤兼人君 公式論……。
  24. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は公式論だと思いますが、述べられておるのであります。私は当時そういう事態から見まして、そういう公式論も一応は成り立つであろうけれども、これは民主政治責任をもってこれを運用するという立場から、そういう考えではないということを当時申し述べて参った、これは臨時国会においても同じような議論が繰り返され、また今国会におきましても、衆議院において社会党解散決議案審議される場合におきましても、この考え方を明らかにいたしております。しかして、私はどうしても来年の二月が任期でございますので、今年中にこれが行われるであろうということは、だれが考えてみても常識であり、また国政運用を円滑ならしめる意味からいうと、任期一ぱいやりますことは、来年度の予算成立にも影響を持つことでありますから、本年度に行われるということは、これは常識であるけれども、しかしいつやるかということについては、これは私は政治実態からその最も適当なときに行わるべきものである、こういう考えを従来持ってきておるのであります。しかして、一月のこの再開に当りまして、社会党解散決議案が出ましたときに私の信念を、われわれの考えを明らかにしたのは、三十三年度の予算成立せしむることが日本の経済の上からいい、また国民生活の上からいい、あらゆる面からこれが絶対に必要であると思うということを私は明らかにいたしまして、この国会を通じて予算案その他政府が提案しておるところの重要案件条約、法律その他のものの成立を極力全力をあげて自分たちは通過するように、成立するように努力をすべきものであるという考えを述べて、今日に至っておるのであります。その考えは今日といえども少しも変っておらない、そういう心境で現在おるわけでございます。
  25. 松澤兼人

    松澤兼人君 解散の問題と関連いたしまして、国会構成の問題が、やはりこれは重大な政策の相違だろうと思うのであります。岸総理は世間も知っておりますように、小選挙論者であって、あの小選挙区法案を通過させるためには、ずいぶん無理をなすった。最近話題となっております、いわゆる参議院全国区廃止の問題が、これと関連して、今国会構成の面からいって二つの大きな題目になっているわけであります。で、ことし中にもしも解散があるとすれば、自然全国区の問題も、小選挙区の問題も何ら手を触れることなくして選挙に突入するということになると思うのでありますけれども、これらの国会構成の問題、選挙制度の問題につきましては、岸総理としてどういうふうにお考えでございますか。
  26. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は二大政党を健全に発達せしめ、民主政治運営を円滑ならしめるためには、選挙制度は非常に重要な意義を持っており、その意味から小選挙区制が私は適当であるという考えを従来から持っております。しこうして、この問題に関しましては、すでに政府内に設置されておりまする選挙制度調査会におきまして一応の答申案を得ておることは御承知の通りであります。昨年これを基本といたしまして、小選挙区法の成立を期して提案いたしたことも松澤委員お話通りでありますが、しかし問題はきわめて小選挙区制というその基本的な考えと、実際問題としてはこれに付属するところのいわゆる選挙区制の区割りの問題という問題が、現実の問題としては非常な重大な意義を持つことは、私がここに申し上げるまでもないことでありまして、この点も関連をいたしまして、昨年は成立をみることができませんでしたけれども、私はできるだけ早い機会において、この小選挙区制を提案をいたして、そうして御審議を願って、これが成立することを望んでおります。  また参議院全国区の問題につきましては、過日もお答えを申し上げましたが、選挙の実情から見まして、ずいぶん無理な私は選挙区というものが……全国にわたって非常な大きな何であるということは、選挙実態から見まして、きわめて無理なところがある。しかしこれにかわるどういう名案があるか、またそれは先日も申し上げましたように、二院制度の意味から申しまして、衆議院とただちに同様な趣旨においてこれが改正されることが適当であるかどうかも、これは非常に問題のあるところだと思います。目下選挙制度調査会におきましても、そういう問題に対して御審議を願っておるわけであります。こういう十分な準備と成案を得まして、考えていくべき問題でありまして、何といたしましては、私は衆議院については、小選挙区制をできるだけ早く実現したいという考えを持っており、参議院の何につきましては、両院制度の本質とそれから全国区制という現在までの実績にかんがみまして、これを検討するというのが今日の私の考えておるところでございます。
  27. 松澤兼人

    松澤兼人君 それに関連する問題でもありますけれども、地方制度の問題であります。現在町村合併が一応落着いたしまして、次は府県制度の問題が日程に上って参ったと思うのであります。先般いろいろ問題がありましたけれども、答申としましては、地方制というものを採用することが適当である、こういう答申があったようであります。そうなれば、政府としましては、当然調査会の意見を尊重して制度を改めなければならないと思うのであります。果して地方制というものが日本の国情に適合しているかどうか、これは相当問題があると思うのであります。この点につきましては、いかがでございますか。
  28. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 地方制度調査会におきまして一応の御答申はあったようでありますが、この府県制度の実際を検討してみまするというと、いろいろな交通、通信の発達、また経済、産業の実情、いろいろな意味から相当な変遷を来たしており、また財政的に見ましても、相当な懸隔が生じており、それが従って同時に地方行政の各般にわたって厚薄、軽重の差が生じて来ておるということも、これいなむことができないと思います。こういうことをいかに調整するかということは、われわれがこれから考究していかなければならぬ一つの課題であります。それに対して地方制度調査会の考え方は、私は一つ考え方の方向を示しておるとは考えます。しかしながら、この問題はきわめて重要な問題でありますし、民主政治の上から見ましても、地方制度という問題はきわめて重要な問題であり、また国民全般の日常の最も直接しておる事態にも非常に緊密な関係のある問題でありますから、私は今これらの答申を十分に政府としても検討を命じ、検討いたしておるところであります。必ず答申の考え方一つ考えの方向を示しておるのであって、具体的の問題に関しましては、十分な答申もまだ私できておらないと思います。従いまして、政府並びに地方制度調査会におきましても、なお十分にこれは一つ慎重に検討をいたしたい、こう考えるのであります。
  29. 松澤兼人

    松澤兼人君 大体予算審議の前提となる重要な政策並びにそれに対する総理の御意見拝聴いたしました。これから予算の問題について質問いたしたいと考えます。  この問題につきましては、先般同僚佐多委員から、経済の見通しやあるいは国際情勢あるいは予算規模の問題につきまして相当突っ込んだ質問がありまして、必ずしも満足はいたしませんけれども、一応政府考え方というものを聞くことができたわけであります。私はまず、予算規模と国民所得の問題から入って参りたいと思います。この問題につきまして佐多委員質問いたしましたときに、大蔵大臣は、必ずしも総予算国民所得との比率というものにこだわらないというような御見解をお漏らしになったように拝聴したのでありますけれども、この問題につきましては、累年その比が逓減して参ってきておるのに、本年になりましてからそれがまた急に上向きになってきた、これは簡単に片づけるべき問題じゃないと思うのであります。もしそういうことがどうでもいいということであるならば、累年その比率が下ってくることは、政府の人為的な政策の結果でなくして、偶然にそういうことになったというふうにも了解できないことはない。おそらくこれまでの政府は、国民所得に対する総予算の比率ができるだけ小さくなるということを期待して予算を作り、もしくは生産規模を拡大してきたものと思います。そうすればやはりその傾向というものは、政府がどのようにかわろうとも堅持して行くことが、日本の経済の立場からも、国の財政の立場からも私は適当であると思うのであります。この点につきましては、あらためて大蔵大臣の御所見を承わってみたいと思うのであります。
  30. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 予算の規模と国民所得の割合がどうであってもいいというのでは決してございません。むろん予算の規模と国民所得がある割合にあることは私はこれはなくてはならぬ。ただしかし、どういうパーセンテージになるのが一群適切であるかというところが問題であるのでありまして、このパーセンテージが低ければ低いほどいいとも、場合によっては言えないと思います。しかし、ある程度以上は上っては悪いのでありますけれども、従来の一二%というふうなところになっておりますが、これが最も適切なパーセンテージで、これから常に下って行かなければならないというのが、日本の客観的な諸情勢から見て適当とはいえないのではないか。むろんそれが年々大幅の動きがあることは、これは私はかりに率が適切でないにしてもやはりよくない。しかし、今回むろん若干去年の率に比べて上っておりますが、しかし、そう大きく動いておるというわけではない。これは私は結局において、昨年度において、むろんあの予算規模がやはり国民所得に対しまして、後になって自然増収なんかああいうふうに税においても現われるように、経済の拡大が大きくて国民所得が多かった、それに比べればこの予算の規模が小さいのではありませんが、率からいえばああいうふうになる、三十三年度は経済の規模は、経済の拡大はむろん三十二年度のようにはいかない、御承知のように、二・三あるいは実質三%、こういうふうなことになっておる。しかし、予算はその点から見れば、これは私が前に断わったように、予算の規模が当初からこれはある程度経済の拡大のその割合に比べれば大きいともいえる、しかし、増加する人口を養い、そうしてある程度の政策をやるためには、ある程度の予算の規模というものはどうしても必要だというところにあるのでありまして、そうしてそれが国民経済ないし国民生活との関係においては、これは単に予算規模という点だけじゃなくして、全体の関係において私は考えていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。言いかえれば、具体的にいえば、そういう場合に、たとえば民間の投資というようなものが、三十二年度に比べて三十三年度は一体どういうふうになっておるかというようなことも、これは経済との関係においては考える、私はそういう点になると、財政と経済その他の事情を総合的に考えていかなくてはならないと、かように今考えておるわけであります。
  31. 松澤兼人

    松澤兼人君 もちろんある年度のある政府の出した予算がいいか悪いか、あるいは正しいか正しくないかということを、規模ばかりで議論することは適当でないと思いますが、しかし、ほかの条件につきましてはここでは述べないことにして、その比率の問題を中心にして議論しているわけであります。ですから、予算全部がいいとか悪いとか、望ましいとか望ましくないとかいうこととは別に、今申しました国民所得と財政規模、この関係が一応議論されなければならぬ、そいう意味で私並びに過般佐多委員が申されたのであります。  そこで、もう一つその問題につきましてお尋ねいたしたいことは、累年対比が減ってきています。減少して逓減してきております。こういう傾向はわれわれとしましては望ましいものであるが、本年になりましてから一五・五%というふうに上ってきておる、それでは今後こういう傾向が将来もまた再び二十八年あるいは三十年、その年度くらいまで上っても差しつかえないというふうにお考えでありますか。しかし、これは望ましい状態としてはこの比率はやはり昨年程度くらいになることがいいというふうにお考えでありますか。
  32. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします前に、一言申しますが、三十三年は非常な異常な年でありまして、三十二年までは大体日本の経済がぐっとこういうカーブで上ってきております。予算の方は大体それほどは上らないのです。ですからこの比率がいいのだとか……、三十三年度は今度は経済の方が上り過ぎてぐっと押えるが、予算の方は大体国政を行う上において、従来の規模でやらなければならぬという特殊な事情がございますから、若干ああいう比率の変更があるわけでございまして、私もむろん理論的に申し上げますれば、あるいはまた、実際的にも予算規模が国民所得に対して、なるべく低くなるようにということが一応はいいと思うのです。しかしながら、私に言わせれば、そういうふうになれば、やはり社会保障というようなものを今後拡充し、どうしても日本は貿易に依存している経済でありますから、雇用という問題を考える場合に、今後やはり国家で雇用を与えるとか、あるいは社会的方面にうんと力を入れなければならぬ、私はそういう意味において予算の規模が常に低いのがいいとは必ずしも言えぬと、かように考える次第であります。
  33. 松澤兼人

    松澤兼人君 この問題は、もちろん現在の日本の経済というものが、非常に昨年、一昨年に比べれば後退しているということは私どもも十分認めております。そこでそれならば、果してこの財政というものが、予算というものが国の政策として何よりも大切である国際収支のバランスに、どういう形において貢献するであろうか、その国の財政というものが果して、一方の至上命令でありますところの一億五千万ドル黒字にするということが、どういう方法で、あるいは具体的に言いますならば、この財政をもってして、果して一億五千万ドルの目的を達成することができるかどうか、この点につきましていかがでございますか。
  34. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) その点につきましてはこの予算の編成のむしろ基本になっておるのでありまして、従いまして、今回は歳入自体はあるのでありますが、特にこの歳出を限定をいたしまして、国費として支出しなければならぬ最小限度にとどめまして、歳出一千億ということにいたしたわけであるのでありまして、これはなぜそうしたかといえば、結局この財政需要、物資に対する財政的な消費をなるべく抑制したい、かように考えます。これは結局どういうことを意味するかといえば、やはり物価を安定させようということにあるのであります。そうしてみますと、財政自体から見れば、私の見解では、やはりこれは需要がそれだけ、一千億の歳出をしたのでありますから、それはもう需要がふえる、こういうふうに思っております。従って、それならば、物価自体を安定させるにはどういうふうになるかといえば、これはもう客観的情勢自体も、御承知のように、経済がいわゆる調整、生産において調整をされつつありますから、従って、投資というものの、民間の投資というものがぐっと減ります。また、資本蓄積もできるだけの努力を払いますが、やはり私は減少してくる。こういう面において、われわれのこの経済計画の策定によれば、大よそやはり二千五百億から二千七百億程度のものは、これは私、金額にあるいは若干の違いがあれば訂正いたしますが、そういう程度の民間投資というものが減ってくる。それだけ物資に対する需要が減る。そういうところで相殺、いわゆる見合う、そうして経済自体をある安定した状態に持っていく、かように考えて、こういう安定した状態のもとにおいて、あらゆる輸出振興施策を推進いたしまして、所期の目的を達成いたしたい、かように考えております。
  35. 松澤兼人

    松澤兼人君 私の計算いたしましたところでは、政府の目標としております輸出の伸びというものは、前年に比べますというと、一一・三ふえているように考えるのであります。果して昨年比一一・三の輸出目標が達成できるでありましょうか。この点、私は非常に不安に思っているのでありますが、できますか。
  36. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは貿易の実態になりますから、私よりもむしろ通産大臣からお答え願った方が、思想統一ができると思います。
  37. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 来年におきまして三十一億五千万ドルの輸出は、一一%の、本年度から見ますと増であります。しかし、従来、御承知のように、毎年三億ドル、四億ドルはふえて参ったのであります。また、パーセンテージからいいますと、昨年と一昨年とを比較いたしますと、一六%くらい伸びておるのであります。その以前は二二%あるいは二八%、多いときには三三%くらいであったと思いますが、そういう伸びを示しておるのであります。従って、来年度におきまして、一一%ぐらいの伸びは、これはどうしてもやらなければなりませんし、また、いろいろ施策を練りまして、強力にやって参りましたら十分可能である、かように考えておる次第であります。
  38. 松澤兼人

    松澤兼人君 もちろん政府努力、あるいは努力目標としては、十分わかるのであります。しかし、大蔵大臣の財政演説の中にありますように、「世界景気の支柱でありましたアメリカ経済も、昨年秋以来、景気停滞の傾向が問題となっております。」という点があるのでありますが、それでは、アメリカにおける経済の動向というものをどういうふうに認識しておられますか。あるいは国際的に、欧州その他の諸国におきまして、ドル不足という現象が起っておるわけでありますが、こういう現象を十分に把握して、理解して、その上になお一億五千万ドルの黒字というものを最終的に達成ができますか。大体私は、アメリカの景況の分析なり、あるいは国際的な経済の動向というものを十分に論議してから、この目標達成という問題の可能性ということがわかるのじゃないかと、こう思うのであります。いかがですか。
  39. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) もちろん、われわれもアメリカの景気が昨年頭打ちをいたしまして、むしろ年末におきましては下降ぎみになってきたという事実や、また、その他の国々の状況も十分承知いたしておるわけであります。もっとも、その後いろいろ調整の過程がとられるというので、これ以上にだんだん悪くなるとは考えておりません。しかし、戦前の水準を考えましても、まだ世界の輸出における比重ははるかにそれより下回っておるのであります。われわれの努力いかんによりまして、また、アメリカにおきましても、いろいろ障害は、御承知のように、輸入制限等の問題であります。新規な商品なり、また、一割、二割程度の輸出の伸びでありましたら、各商品はそんなに業者を刺激しない、こういうような点も考えまして、三十一億五千万ドルの輸出目標を立てておるわけであります。
  40. 松澤兼人

    松澤兼人君 アメリカの景気の後退は、昨年八月ごろから十一月ごろにかけまして、いよいよ深刻になってきておるのであります。本年、工業操業率は八〇%ぐらい、あるいは特に鉄鋼においては六〇%を割っておるという状況であります。これは単なる、単純な在庫調整というようなものとお考えでありますか。しかし、もっと根本的な、何か本質的な経済動向とお考えでありますか。ただいま承わりますと、非常に簡単に考えておる、そのうちにはアメリカの景気もよくなってくるだろうというふうに言われておりました。この点についてお伺いしたいのと、それからもう一つは、西独を除くその他の国におきましては、非常にドル不足が目立って参りましたけれども、こういうものが果して日本の経済に無影響でありましようか。この点につきまして明らかにしていただきたいと思うのです。
  41. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) アメリカの景気の頭打ちというものは、かなりこれは相当根深いものであるとは考えておりますが、これはやはり調整をされ得るものだというふうに思いますので、すでに調整に乗り出し、金利も引き下げておる、こういうような状況から考えますと、これ以上にどんどん悪くなっていくという性質のものとも、われわれは思っておらぬのであります。また、その他の国々のドル不足、これも確かに大きな、これは世界全体の経済のかなり根深い趨勢であるというふうに考えております。従って、それらに対処いたしましは、できるだけわれわれも輸入をするというような面で考えていかなければならぬと思うのであります。しかし、それらの国々の賀易の影響というものは、それほど大きなウエートを持っておりません。さらに努力すれば克服もできまするし、また東南アジアその他中東、ソ連というような貿易の拡大を考えていきますと、十分補えるものだと、かように考えております。
  42. 松澤兼人

    松澤兼人君 通産大臣は非常に楽観的でありますけれども、しかし、アメリカの経済一つをとって見ましても、そういうふうに見る人もありますけれども、これは本質的に今の経済制度というものが行き詰まりの状況に来ておるのだ、これは下手をすると深刻な恐慌状態になるのだという見方をしておる人もある。政府の立場としてはきわめて楽観的に考えられるというのは当然かもしれません。しかし、もしも三十一億五千万ドルの輸出が達成できなかったときには、これは通産大臣のお見通しが十分でなかったという結果になるかもしれない、それも一つの理由になると思うのであります。私は、もっと深刻に国際情勢というものを考えていただきたいと思います。
  43. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私は決して楽観論ではありません。非常な努力をしなければ、三十一億五千万ドルの達成は困難だと思っております。困難でありますが、これを克服しなければならぬ。それにつきましては、あらゆる手を打って、貿易の振興策をはかっていくということでありまするし、また輸出が減れば、また輸入も減していかなければなりません。国際収支の一億五千万ドルの黒字は極力確保したいというので、これは輸出輸入全体にわたって考えていきたいと思っております。
  44. 松澤兼人

    松澤兼人君 それでは、また財政の問題に変りまして、本年の財政投融資は三千九百九十五億円であります。三十一年度に比べますというと、六百億ほど増加しているわけであります。ほとんど、積極政策を打ち出しました三十二年度の当初の財政投融資の規模と匹敵するものであります。現在果してこれだけの財政投融資というものが、一般の物価やあるいはまた国内需要を刺激しないであろうか。刺激しないということが政府の財政の立て方の一つの柱になっているのでありますが、この点はいかがですか。
  45. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この資金関係から経済に刺激を与えるやいなやは、私の見解は、やはり財政資金と民間資金とを一緒にして考えるというのが私の建前であります。これは前提でありますから、まず申し上げておきます。  今回この財政投融資につきまして、三千九百九十五億計上いたしました。これが前年度の三十二年度には、当初が四千億ちょっとこえておったのであります。その後国際収支の悪化に対応して、財政投融資の繰り延べを緊急施策の一環として行いました。その結果が、今私はっきり数字を覚えておりませんが、およそ三千六百億というふうに言っていいと思います。そうして見ますと、約四百億近い増になっている。ところが、これにつきましては、それなら、当時において財政投融資の繰り延べ率が一五%いたしたのでありますが、一五%にした残りの八五%の投資に十分な資金が民間にあったかということになりますると、そこが実は欠乏いたしておるわけであります。これがまたいろいろな面に、いわゆるしわ寄せの問題も自然起ったのであります。八五%の設備費をまかなうのに十分な資金が民間になかった。それではどこでまかなったかというと、結局において日本銀行の貸し出しという形。従いまして、日本銀行の貸し出しは今日五千億をちょっとこえておる。多いときは七千億に上ったわけです。ですから、これは財政資金投融資が少いからというと、これは日本銀行を通じてやはり資金が授与される、こういう形になるのであります。ところが、日本銀行の資金は御承知の通りに短期の資金、この資金が長期に寝るということになりますれば、これは通貨価値の安定の上からいってはなはだ不適当である、そういうふうな状況下にあった。しかし、それならといって、あの当時日本銀行から出すのをできるだけ押えたのでありますが、最小限度出て今申し上げたような金額になりました。それなら、財政資金を出してやろうといったら、投資を押えるという施策というものは、これは御破算になります。ですから、どんなにしても、あの当時の情勢としては、資金が足らなくても、足らぬところで押してゆく以外に実際の方法がない。それでやむを得ぬ程度に日本銀行から出した、これもやむを得ない。  ところが、今日の日本の経済は、御承知のように、生産調整の過程に入りました。それもよほど進んで、多くのものが、まだむろん勘定はいたしておりませんが、二割ないし五割の操短をしている。いわゆる設備投資に対する意欲は、むろんいろいろの意見も若干ありますが、今日新しく工場を建てようというふうな意欲は、私はもはや大体において終息した。言いかえれば、そういう投資意欲というものは一応ここで終止符を打たれた。そこで私の考えでは、財政資金を若干出すようにして、そうして日本銀行が資金が長期に回っているようでありますから、それを回収させる、そうして通貨全体の量としては増減がない、言いかえれば、資金からする経済の刺激はいわゆるプラス・マイナスで増減なしと、こういう格好になっておる。それで今回の財政におきましては、仕事量をふやしたわけではございません。たとえば船を作る場合に、従来の民間資金と財政資金との抱き合せの比率があります。その比率を財政資金でずっと上げまして、民間には設備資金、長期資金が少いから民間資金を少くする。それから鉄鋼についてもしかり。また鉄道関係におきましても、従来公募債でしておったのを財政資金で持つ。あるいは地方債についても、これはもう額も減らしましたが、大部分財政資金でやる。こういうふうに財政投融資はふくらんでおるわけであります。そういうふうな見地から御理解いただくよう、切に御希望いたします。
  46. 松澤兼人

    松澤兼人君 昨年の実行予算に比較いたしますというと、本年の財政投融資のワクは約五百億かあるいは四百何十億か大きくなっておると思うのであります。そこで、もちろん本年におきましては、おっしゃるように、日銀のオーバー・ローンを解消する意味から申しましても、財政投融資をふやすということは、これは当然と考えます。しかし、昨年度一五%の繰り延べをやりましたものが、おそらく三月中にこれが解かれて再び財政投融資として出るものだと思いますが、この点はいかがですか。
  47. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) さようなことは考えておりません。今のところは、残りの八五%の設備の続行、こういうことであります。
  48. 松澤兼人

    松澤兼人君 三十二年度中に三百数十億、これが三十二年度の追加支出が行われると私は考えているんですが、こういうことはありませんか。
  49. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今申しましたように、約六百億に上る繰り延べをいたしたわけであります。それが延びております。これはこれで私はよいと思いますが、その後の八五%をやるこの資金において、先ほど言ったように、非常に不足をいたしておるわけです。そして、それが日本銀行の借り入れによっていることは、先ほど申した通りであります。それをこの段階において、三十二年度の八五%の分でどうしても不足をする部分の最小限度を回収しよう、こういう考え方であります。
  50. 松澤兼人

    松澤兼人君 その金額は幾らですか。
  51. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 約二百億かと思いますが、事務当局から答弁させます。
  52. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 大体二百八十億ばかりでございます。
  53. 松澤兼人

    松澤兼人君 私は三百億をこえると計算したのですけれども、三百億を割る数字でございまするが、もう一度確かめてみて下さい。
  54. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 三百億を割る数字でございます。
  55. 松澤兼人

    松澤兼人君 そういたしますと、少くとも本年、三十二年度の実行計画に対しましては、四百数十億から五百億程度がふえている。それに、この三十二年度中に二百八十億ですか、この金額が財政投融資として市中に出る。こういたしますと、私は、三十二年度と申しましても、もうすぐそこに三十三年度が来ているわけです。相当大規模な散超になると思いますが、この点はいかがですか。
  56. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) むろんそれだけ散超になりますが、しかし、財政資金の散超は全体の財政、一般会計あるいは外為会計その他全体を考えませんと、いわゆるしりにおいて幾ら民間に散超になるか、これは別個です。それは散超になる一つの項目にすぎないのであります。さように御了承を願います。
  57. 松澤兼人

    松澤兼人君 対民間収支におきまして一千億をこえる金額が散超になる、こう私は考えるのですが、大体一千数百億と見てよろしゅうございますか。
  58. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十三年度の財政の対民間収支でありますが、散超は大よそ千二百億と思っております。これは特別大きいのが外為会計でありまして、これが一応一億五千万ドルの出超になります。その他差し引いて、これからおそらく七百四、五十億のものが、一般会計の方から三百五十億ぐらい私は散超になると思いますが、これは御承知のように、地方交付税交付金、それと国債の償還、これの対民間償還、こういうふうなのが主でありまして、特別会計から若干、やはりこれは食管もありますが、いろいろ会計間の出入りもありますが、まあ百億ぐらいじゃないかと思います。こういうことで一応合計千二百億近いもの――千二百億というふうに私は見ております。
  59. 松澤兼人

    松澤兼人君 われわれの心配いたしますのは、これだけの散超がありますというと、せっかく政府が計画を立てて、最終の国際収支一億五千万ドルという目標を立てておりましても、逆に国内需要を刺激いたしましたり、あるいは投資が行われたり、物価がつり上げられたりして、目的を達成できないのではないか。先ほどは国際経済の中における日本の国際収支というものが一億五千万ドルになるかどうかということを不安に思ってお尋ねしたわけでありますが、今回は財政投融資その他の関係で対民間収支が一億二千万ドルということになると、先ほど申しました新たな国内需要を刺激するという結果になって、一億五千万ドルの最終目標が達成できないのではないかということを心配するわけであります。いかがです。
  60. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。この財政からする散超の経済に対する刺激ですが、それはむしろ今のお話の逆に実はなるのではないか。先ほど申しましたように、財政額散超の一番大きいものは外為会計のまず輸出が出て、その輸出は政府が買い取る、その結果出るので、むしろ経済の方からいえば、先に経済が輸出超過を出現させている、こういうことになります。そうすると、外為の金はどうなるかといえば、大きなところは商社に入る。商社はまたメーカーに返す、そこから商品をもらっておりますから。メーカーは取引銀行に返す、その取引銀行は日本銀行に返すということに、これは当然なる、順序といたしまして。むろん、それが一銭一厘違わずにそうなるとは申しませんが、方向としてはさようになると思います。
  61. 松澤兼人

    松澤兼人君 大蔵大臣がおっしゃるように、そううまくいけばいいのですけれども、しかし、経済評論家の中では、やはりそういう散超のために国際収支がまた悪化するのじゃないかということを、心配している人もあるのであります。これは事実です。私の考え方が全く逆であるというふうに言われますけれども、これは私ばかりの考えではないと思うのですが……。
  62. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) もちろん今後国際収支改善のためにはあらゆる努力を払わなければなりませんことは、通産大臣から詳しく御答弁申し上げた通りであります。これは楽観ではない。私が何か甘いと言われるのですが、決して甘い考えを持っておりません。私、若干ここで補足をいたしておきますが、決して甘い考えを持っておるのではありません。ただ、国際経済について、今日世界の経済が下降していることは、これは言うまでもありません。この下降がいつ打開が第一にできるか、その次はいつ一体それでは上昇傾向をたどるか、この問題です。これについて非常に議論がある。御承知のように、ソ連の学者はみな否定している。ソ連の学者は口をそろえて、これは第一次大戦後に来たあの世界の大恐慌と同じだ。いわゆる自由国家にこれに対応して、そういう極端でない、これにむしろ対応しておるのにやや近いのがアメリカの大統領の、いや、そういうことはない、おれはこういう力でもって、こういう資力でもってこういう政策をとるのだと言っている点だと私は思います。  しかし、しさいに今日の国際経済の状況であるとか、国の総生産とか、国民消費であるとか、あるいは在庫状況とか、あるいはいろいろの点を見ますと、それはなかなかむずかしいと思います。特に投資がふえないと経済がよくならないが、この投資についてやはり今日注意しなければならないことは、私は人工衛星とか、あらゆる科学の進歩、アメリカがなぜ投資をこういうふうに急にとめたかというのは、やはりああいうところにある。これは科学の進歩は一体どういうふうになるのか、これはうかつに従来のままをやつておったならば、やはりむだになるおそれがある。ここを一つよく今後の科学の進歩というものを見きわめなければならないということが、一つのポイントだと思います。こういう点をやはり十分考慮して、ただ従来のままを積み上げていくというような行き方は賛成しかねるのですが、そういう点を考えると、私は楽観しておるのではありません。  楽観しておるのではありませんが、これは、三十一億五千万ドルのかりに輸出をして、日本が三%の経済が伸びるとしても――伸ばす計画であるのでありますが、それにしても、これは日本の経済としてはきわめてきびしいと私は考える。そんなに景気がいい状態ではない。やはりここには雇用問題、ましてこの三十一億五千万ドルが実現せぬとしての雇用問題を考えますと、これは財政負担になる。これはやはり重大だ。やはりこれはある意味で、粗製乱造とは言いませんが、いろんな事業を起すと、これは物価騰貴になる。単に失業救済的なものを出せば、これは非生産的というふうなことになる。それで、政府としてもあらゆる手を打って、今後輸出の振興に努めなければならぬ。今みたいに日本銀行の貸し出しを回避しなければならぬのですから、金融はタイトに持っていく、これがメカニックから見て、一番敏活に経済情勢に対応していくことができる。財政面から経済情勢に対応するには、これは、国会が第一開会中であるわけですから、それを通過させるにはなかなか時間がかかるとか、いろいろしまして、なかなか財政面から経済情勢に対応するのは非常に困難です。ですから、私は、金融的な措置でやるのが非常にいいという考え方でありまして、これは非常に慎重な態度で、決して安易な考えで施策を実行しておるものではありません。
  63. 松澤兼人

    松澤兼人君 こういう大蔵大臣の名演説がありますから、あまり政府関係答弁を短かくするということは私は疑問に思っておるわけです。よくお考え願いたいと思います。  それでは、やはり財政問題といたしまして、ことしの財政の一つの特色でありますたな上げ資金の問題についてお尋ねいたしたいのであります。来年度の予算は、一千億のワクの拡大、それから減税を二百六十億、それから四百三十六億の資金のたな上げ、こういう三つの大きな柱の上に乗っかっていると思うのであります。ところが、その四百三十六億というもののたな上げが、非常に自民党の中でも、あるいは政府の中でも、いろいろ異議がある。われわれは、これを減税の原資にしたらどうだ、こういうふうに申しました。ところが、減税は二百六十億だけでありまして、それ以上にはならなかったわけであります。一応将来の使途に見合ってこれをたな上げした、その四百三十六億の中の一部分を、経済基盤強化というふうに名目をつけまして、将来使い得るというような形をとっているのであります。このたな上げ資金という問題は非常にむずかしい問題でありまして、果してこういう形をとるのがいいか悪いか、一般会計の中にほうり込んでしまったらそれでもいいんじゃないかというふうに考えられる点があるのであります。ただ、予算規模を押えるために、これをたな上げしたのではないか、というような疑問を持つわけなんでありますが、これにつきましては、どういう基本的な考え方でこういう制度をおこしらえになったか、まずこの点からお聞きいたしたいと思います。
  64. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは、先ほどから申しますように、三十三年度におきましては、財政からする経済に対する刺激はできるだけ控え目にしなくてはいかぬというのが基本方針であります。従いまして、ただいまお説のように、これを一般会計の予備金というものに入れておくと、これはやはり経済に対して刺激を与えることになる。いわゆる支出を厳に抑制するという趣旨にかなわぬおそれが多分にある。いわゆる予備金の支出ということが起ってくるのであります。従いまして、一千億に歳出は押えるという趣旨からいきましても、それ以上の歳入については、減税をするとか、あるいはそういうふうなたな上げの措置をとる。たな上げという言葉がどうもあまり適当じゃないので、少し俗語過ぎるのでありますが、基金、資金の扱いをいたしたのであります。こういうふうにいたしまして、しかも、資金につきましては、厳格に、もう一度歳入歳出について国会の御審議を仰ぐ、こういうふうに厳重にいたしておるわけであります。  基金につきましては御質問がなかったのですが、説明するまでもなく、これは預金部に預けて、そして元金は使わない。これも経済に対する刺激というものを抑制する。こういうふうに、一に経済に対する刺激を与えない。それなら、なぜ減税せぬかという御質問も含んでおったと思うのですが、これは、今回の四百三十六億が三十一年度の過年度の剰余金千百億の中から法定の部分を差し引いた分でありますが、これは、日本の経済が御承知のように異常な成長を示した。その結果、異常な歳入増となった。こういう成長の伸びというものは今後あるものではない。こういうときに、歳入があったからといって、それを減税に振り当てて将来の財源をなくするということは、これはよほど考えないといけない。あるいは経常歳出に充てるのもいけない。こういう意味合いにおいて、こういうふうな措置をとったのでありますが、しかし、今後におきましては、歳入歳出の見積りというものは、私はやはり十分正確を期するようにいたしまして、むろん財政当局としては、財政の健全性をこいねがう上から、ある程度の歳入にリザーブを置くことは、これは私は国家のためにもいいと思う。しかし、それにもやはりほどほどということがある。ほどほどという限りのリザーブにおきましては、私は余剰があればこれは減税をやる、まず減税に充てる、こういうふうに考える。まあ私は、ほどほどのリザーブ、もしもその言葉が悪いならば、これは私やめますが、これは打ち明けた話であります。(笑声)ほんとうは、歳入歳出がきちっと合うと申した方がいいかもしれません。気持ちを申し上げたわけであります。
  65. 松澤兼人

    松澤兼人君 私もたな上げという俗語を使いまして、あまりいい言葉じゃないかもしれませんが、政府の公式の説明書を見ますと、保留金というふうになっているようであります。その保留金の内容が、先ほど申しました二百二十一億の経済基盤強化資金、そのほか資金、基金というようなものがずっと羅列されているのであります。資金が一つと基金が五つ。そうしてまことに妙なんですが、予算の説明書によりますと、ほかのものは何々基金と、こういうふうに言っておりますのに、貿易振興会の場合は、「の基金」と書いてある。日本労働協会の基金と、この二つは「の」の字が入った基金であります。ほかのは「の」の字が入らぬ。こういうことは一体、どういうことでそういう言葉の使い分けをしていらっしゃるのですか。
  66. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) それは法制局あたりの何ですが、私、実は「の」の字の入ったことについては不案内ですから、政府委員に説明させます。
  67. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 法制局の方からお答えを願った方が適当かと思いますが、字句の表現につきまして法制局の方と相談の結果、その方が適当であるということで、そういうふうにしたのであります。
  68. 松澤兼人

    松澤兼人君 どうして使い分けするか、どういう理由でこれは「の」の字が入ったか。この「の」の字が入ったというのは、どういう理由ですか。
  69. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) それは、法制局の審議の際、そういうような表現が非常に適当であろうということで、従来の前例等を見まして、そういうような書き方にいたしたわけであります。
  70. 林修三

    政府委員(林修三君) これは、実は大した理由もないわけでございますが、日本貿易振興会、日本労働協会に対してはいわゆる基金を出資するわけでございまして、これは日本労働協会における基金、あるいは日本貿易振会における基金、その基金には実は名前がついておらないのであります。そのほかの中小企業金融公庫、あるいは農林漁業金融公庫、それから日本輸出入銀行、これについては普通の出資金と違いました特殊の基金という形になっておりまして、その基金として、基金に名前がついておるのでございます。そこでその基金に名前がついておりますから、それは「の」が入っておらない。片一方の方の二つはいわゆる日本労働協会に作られる一つの基金、あるいは日本貿易振興会に作られる一つの基金ということで、その基金に名前がついていない。そうういう意味で「の」が入っておる。かように考えております。
  71. 松澤兼人

    松澤兼人君 なかなかむずかしい問題ですけれども、まあその問題にこだわっていないで、経済基盤強化資金の二百二十一億、これについてお伺いしたいと思います。  これは大蔵大臣が今言明されましたように、その使途に充てる場合には必らず国会にかける。つまり補正という形でもってこの使途内容、あるいは金額を決定するということだろうと思うのでありますけれどもそれに違いがないかどうか。  もう一つ、この中における異常災害の復旧ということが使途の内容の中に入っているわけでありますが、これは明らかに予備金と考えられる性質のものでありますが、予備金とそれから異常災害の復旧のための経済基盤強化資金の使途、それに使われる場合には予備金と同じような性格のものであろうと思います。ところが予備金の方は国会の承認も何も要らない。こちらの異常災害の方は国会の承認を必要とする。そこのところはちょっと変ではないかというふうに考えるのですが、どうですか。
  72. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 第一は、補正予算を組むのであります。これは御承知の通りであります。  それから異常災害が資金のうちの使途に入っておる点についての御質問でございますが、これは私はかように考えております。まず異常災害があれば予備金を使います。しかし、予備金を使ってもなおかつ資金が要るというような場合に、むろんそのときの情勢にもよりますが、まあ使い得る程度にしておいた方がよかろうという意味において、私は異常災害を入れることにいたしました。
  73. 松澤兼人

    松澤兼人君 そういたしますと、異常災害があった場合にはまず予備金を使う、それで足りない場合には国会の議決をとって、そうして経済基盤強化資金から出すことがある。こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  74. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ことがあるという意味において御了承いただきたいと思います。
  75. 松澤兼人

    松澤兼人君 そこで保留資金の問題でありますけれども、これはいろいろ党内なりあるいは政府内部の事情によって、こういう形をとられたということはよく了承するわけでありますけれども、今後もこういう形をおとりになることがありますか。
  76. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私のこれは率直な考えですが、こういうような異常な剰余金が出ることはそうしばしばは私はないと思います。もっとも三十四年の予算編成の場合には、三十二年の余剰の繰り越しが相当あると思うのでありますが、まあそういうふうな特殊の状況があれば、その場合においてその歳入が、いわゆる税収入の増がどういうふうな意義を持っておるかを十分考えた上でないと、今ここで何とも申せませんが、原則的に申しますと先ほど申しましたように、普通の場合において税収入が多い、国家の歳出需要をまかなってなおかつ多額のものが、税収入が余るとすれば、これはやはり私は減税に充てるべきだ、かような見解をとっております。
  77. 松澤兼人

    松澤兼人君 私はこういう形の予算計上というものは、いわゆる総計予算主義とか、あるいは予算単年度主義、あるいは区分会計主義と、いわゆる財政上の問題から見て非常に疑義があるのじゃないかと思います。いろいろ内部の事情からこういうふうになったということは了といたしますけれども財政法の原則から考えましても、あるいは健全な財政の建前からいたしましても、私はこういうことを繰り返してやるというようなことは絶対にいけない。われわれはこの保留金というもの――制度というものは、これは財政法上正しくないのじゃないかと、いろいろ事情はあるけれども、私は本来の姿から申しますというと、こういうことは変則であろうと思うのです。この点いかがですか。
  78. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいま御答弁申し上げましたように、私は原則としてはこれを認めておるわけでありますので、最近における日本経済の異常性に基いて、むろん私自身の意見では、この税収入が超過して多いときのそれを、こういうふうな資金にするということは別であります。これとは別に、この財政面からする経済に対して、何か財政面に、景気循環に対して何か調整するような力を持つような制度が必要ではないかという議論がありますことは、これは御承知の通りでありますが、こういう点はまあ今後の研究に待ちたいと思っております。
  79. 松澤兼人

    松澤兼人君 そういう形があるならば、あるいは特別会計というような形でできるのじゃないかと思うのです。で、財政法の十三条の中では、一般会計と特別会計というようにはっきり区分しているわけであります。これにたとえ四十四条によってこういう資金を置けということがありましても、これはやはり変則だと思います。で、現在こういう制度がわが国においてどういうところでとられておりますか。
  80. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 現在一般会計におきまする資金といたしましては、学校資金がございます。それからもう一つは特別調達資金、この特別調達資金の方は回転基金という形になっておりまして、いささか性格を異にいたすのでありまするが、学校資金の方はこの資金と同じような性格のものでございます。
  81. 松澤兼人

    松澤兼人君 それでは主計局の立場から、こういう制度はまあ政治的ないろいろ理由はあるでしょうが、しかしこういう制度が拡大されるということは、主計局の立場としては望ましくないとお考えですか。これはまあ当りまえだというふうにお考えですか。
  82. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほどからたびたび申し上げましたように、これは特殊な事情に属しておる。原則的には私もこれは特殊のものだということは申し上げるまでもないことであります。
  83. 松澤兼人

    松澤兼人君 それでは日本経済の基盤を確立すると、こういう意味から少し方面を変えて、エネルギーの問題についてお伺いしたいと思います。  石炭、石油、それから電力、あるいは原子力発電ということがだんだんと日程に上って参ったのであります。そこで河野長官にお伺いしたいのでありますけれども、長期経済計画はなかなか雄大な構想でできております。で、いろいろこの長期経済計画の立案に参画した方々の御意見も読んだのでございますけれども、これはなかなか重大な問題であると思いますが、われわれといたしましては、やはりどんな国の体制にありましても、一定の長期の経済上の見通しを持って、政治運用なり、あるいは経済の再建なりはかっていくということは当然のことだと思うのであります。これは単なる机上のプランとして、参考にとどめる程度にお考えでございますか。あるいはどうしてもこの長期経済計画というものを達成するという非常に強い意気込みでございますか、この点をまず承わりたい。
  84. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 昨日も総理からお答えいたしました通りに、この長期経済計画をぜひ達成するように努力していきたいという強い気持を持っております。
  85. 松澤兼人

    松澤兼人君 そこで、長期経済計画によりますと、それぞれエネルギーの内容につきまして、達成の計画ができております。しかし、これを拝見いたしましても、この通りにおやりになるということは、困難ではないかと思うのであります。三十三年度一つとってみましても、この長期経済計画の一環としての、三十三年度におきまして達成できる見通しというものは、私は非常にないのじゃないかと、こう思いますが、この点いかがでございますか。
  86. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お話し通り相当の努力は要しますが、今のところは、大体一切の準備を整えまして、長期経済計画と三十三年度の実行は、大体所期の目的通り達成できるということ、で努力いたしているわけであります。
  87. 松澤兼人

    松澤兼人君 一つの例をとって考えてみましても、たとえばここに電源開発会社というものがある、これに対する資金は十分に確保してある、こういうふうに説明によりますというと載っているのであります。しかし、この資金計画というものは、果してこれが達成できるかどうかということを私は非常に疑問に思うのであります。この点大丈夫ですか、大蔵大臣でもよろしゅうございます。
  88. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) こういう日本産業の基幹に関するものにつきましての資金は確保いたす、まずこれを優先的に確保する、こういう措置をとるつもりでございます。
  89. 松澤兼人

    松澤兼人君 電源開発会社の例をとって申すのですが、これは産投の関係から九十億、それから資金運用部からの借り入れが二百五十四億、合せて三百四十四億、このほかに繰越金が十五億、事業収入が十六億、計三十一億、これがみられております。しかしもう一つ大切なことは、世銀からの借款が百二十三億計上されております。これはもう話がついているのですか。
  90. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大体この話は順調に進んでいるのでありまして、これは予算面に計上してあるように借り入れができるというふうに考えております。
  91. 松澤兼人

    松澤兼人君 非常に見通しが明るいようにおっしゃっておられますけれども、必ずしも私はそういうふうに思えない、まだまだ話し合いを続けなければならないと思う。で、かりにこれができたといたしましても、果して三十三年度中にこの金が入るだろうかどうかということも疑問であります。三十三年度中にこれが入りますか。しかも、この金が三十三年度に入りましても、事業計画は、百二十三億分というものは、おそく来れば、それだけ来年度に繰り越されるわけであります。本年度の仕事をするときに、これだけの金額が調達できますか、できる自信がおありですか。
  92. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今のところ、特別の事情がないといたしますれば、所要のときに調達ができると考えております。が、しかし何分これは借りる方でありますから、どういうまた事情が起らぬとも限りません。その際には、仕事に支障がないように、われわれも必要な手続をとりまして、財政資金から電源開発にまた入れるように、私は今、自分の考えとしてはそういう考えを持って、エネルギーの開発に支障なきを期したいと思っております。
  93. 松澤兼人

    松澤兼人君 それではこの電源開発の事業が順調に進んで、他の資金と並行して、この百二十三億というものが必要になったときに、まだ世銀からその金が届かない、こういう場合には、他の方法で適当な時期に出す、そういうお考えなんですか。
  94. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) さように考えております。
  95. 松澤兼人

    松澤兼人君 それならば、必ずしも、世銀の話がうまくいかなくとも、三十三年度現在、電発が考えております仕事はできるかもしれません。しかしこの問題は、私はそう簡単ではないと思います。やはりエネルギー対策といたしましては、それぞれ計画がある、これは、私は何もこれを中心に議論をしているわけではありません。かりに、電源開発の問題一つとってみましても、そういうむずかしい問題があるということを申し上げているだけであります。電力の問題にいたしましても、いわゆる九電力の再々編成ということが今日議題となっております。理想的な形からいえば、これをある程度まで統合してやることがいいという意見もあります。しかしこれに反対する意見もある、しかし少くとも合理的に、電発以外に自己の発電所を持ってやるということが考えられなければ、やはりこれは電力需給の見通しにつきましては、一つの困難となってくるわけであります。この問題につきまして、いわゆる九電力の再々編成の問題につきましては、通産大臣としてはどういうふうにお考えになるか。
  96. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 電力の再再編成の問題につきましては、御承知の通りに、党内でもいろいろ論議を尽しまして、どういう方法によって今後の合理化をはかっていくか、御承知のように、各電力会社間の較差がひどくなり、また、需給のアンバランスというような問題もある。従って、今後これをどういうふうな、まあ広域運営というような方式、あるいはさらに合併の問題も含めまして検討する必要があるということで、通産省からも、党の結論をもちまして、一応電力会社に諮問をいたしておるのでありまして、自主的に一つ検討し、考えてもらいたいということで、ただいま検討中でありまして、一応の結論が最近に出ると思います。
  97. 松澤兼人

    松澤兼人君 通産大臣として、現在の心境はそうであろうと思います。再々編成は、電力会社の広域運営、そうして合併の問題も含んで考えてもらっておられるということ、よくわかるのであります。それで、自由民主党では、すでに電気事業の問題につきましては中間報告も出ているし、これが九電力会社に渡されて、その第一次答申と申しますか、回答が七人委員会というものに返ってきている。ところが、これが不満足であるというので、七人委員会から、また九電力会社、電発とよく話をして回答をしてもらいたい、こういう段階になっていると私は考えております。そういたしますと、そういう九電力会社の広域運営ということは、なかなか私むずかしいのじゃないかと、こう思うのです。もちろん、統合の問題はさらにむずかしいでしょうしかし、現在のような九電力に分割されて、それぞれ、場合によりましては、送電線だって、両方の電力会社がほとんど並行して持たなければならないというような事態もあるのでありまして、こういう問題は、長期経済計画というものを達成する上から言えば、当然何らかの形において解決しなければならない問題であろうと思うのです。それに対していかがでしょうか。
  98. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) お話し通りに、非常に困難ではありますが、何としてもやっていかなければならぬと、かように考えておりまするし、仄聞しますところでは、電力会社でもその点を十分考えて、広域運営に踏み切るという態度に出ておるのでありまして、私は、今後十分、われわれの長期計画によっての電力会社の広域運営というものが行われるということを確信いたしておるのであります。
  99. 松澤兼人

    松澤兼人君 経済企画庁長官は、この問題につきましては合併論者であるということを聞いたのですけれども、そうなんですか、実際。
  100. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私は、産業構造の編成をし直すとかいろいろな見地から考えまして、国家全体の経済の運営から考えて参りますると、現在の九電力の過去の経緯から見まして、これが今後このままで、この内容等が改編されまして、政府の所期の目的通りにいき得れば、一番けっこうでございますけれども、求めて私は再々編成を強要するものじゃございませんけれども、なかなか困難ではないかというような気持がいたしておりますので、私自身の気持といたしましては、なるべく国家目的に合致するように一つありたいものだということは考えております。しかし、現在の九電力の首脳部の諸君が、現状のままにおいて国家の目的に合致するように、また、広域経営というものがどの程度のものでありますか、また研究の段階でありますが、それらのものによって所期の目的が達しられるということであれば、必ずしも私は改編ということを主張するものではございません。
  101. 松澤兼人

    松澤兼人君 そういたしますと、われわれが外部におりまして聞いておりましたように、河野経済企画庁長官が合併促進派であるというようなことではなく、一応現在出ている広域運営の促進をして、その結果うまくいかないような場合には、あらためて考える、こういう程度と了解してよろしゅうございますか。
  102. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 結論はそういうことになりますが、何分電力の問題は、当面いたしておりますように、北陸、東北電力の値上げの問題がありますし、会社の内容自体についても非常に差等があります。これについても、外資の導入の問題もあるわけでございます。火力発電をどこの会社といたしましても、なるべくやっていかなければならぬ。これには外資の導入をせにゃならぬ。外資の導入の場合に、内容に差等があるということは、外資の導入を困難ならしめる。外資の導入を困難ならしめる会社、その地区には、電力料金に影響してくるということは、これは大観いたしますのに、なかなか、今後のあり方としてめんどうな問題が次から次と起ってくるというようなことを私は考えておりますけれども、しかし、これらを踏み越えて、今九電力の諸君考えておられ、また言うておられるようなことは、可能であるならば、何もあえてこれを変えなければならぬということはないだろう。しかし、これはもちろん、できるかできぬかということにかかっておる。そこで、今お話しになりました七人の委員諸君にも、これらの点について十分御検討願いたい。一般国民、需用者の側からいきましても、非常に利害関係の深い問題でございますから、一般国民全体も納得できるようなものにならしめたいものだと、こう思っているのでございます。従いまして、広域経営というものは、明確に国民全体の納得できるものであれば大へんけっこうである。まずこれを承わり、これを見てみてその上のことだと、こう考えております。
  103. 松澤兼人

    松澤兼人君 ちょうどただいまも、北陸電力の料金の値上げの問題が、経済企画庁長官からお話がありました。これに対しましては、長官は非常に反対であるという新聞の記事を拝見しているのでありますが、これはどういう根拠なんですか、われわれは、もちろん電気料金の安いことは望ましいのでありますけれども、何か非常に経済企画庁長官がこれに反対しているということを聞きますと、その御意見を伺いたいという気持になるのであります。
  104. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 北陸、東北両電力が四月一日から電力は値上げになることになっておりますことは、御承知の通りであります。しかし、私といたしましては、日本の物価全体から考えまして、昨年五月以来物価のありました地位から、物価の引き下げを意図しておりますし、ことに、ある程度の物価の引き下げをいたしたわけであります、下ったわけであります。そういう次第でありますので、これらの電力料金の問題につきましても、一般の消費者側から、ぜひこの際は、この四月一日から始まるところの、電力料金の上ることは押えるように、せっかく努力してほしいということを、各方面から非常に強い御要望があるわけであります。そこで、私といたしましては、これを政府の権力とか権限とかいうことでなしに、この事態を十分御認識願って、そうして一方におきましては、電力料金の調査委員会ができておるわけでありますから、その委員会の結論を待って、全国的に、妥当公正な料金が決定するまで、しばらくお待ちを願うことに御協力願えれば、大へん産業界のために仕合せだという考えで、今、これらの両電力の首脳部に対して一つ御懇談を申し上げてみたい、こう思っておるわけであります。
  105. 松澤兼人

    松澤兼人君 御趣旨はよくわかります。けれども、これはすでに昨年値上げの問題は許可されていて、あとは四月一日から自動的に料金が値上りになるという段階に来ていると思うんですが、この点いかがでございますか、通産大臣
  106. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) お説の通りであります。で、われわれとしましても、河野長官のおっしゃるような意味もよくわかりますので、ただいま検討いたしておりますが、非常にむずかしいという状況でございます。
  107. 松澤兼人

    松澤兼人君 これはまあ、決定の権限というものは、通産大臣が持っていらっしゃる。まあ、エネルギー対策という面では、あるいは長期経済計画の面では、経済企画庁長官が持っていらっしゃる。で、御両者がお互いにその意見を異にされましたら、これこそ長期経済計画というものはペーパー・プランになってしまう。現在お二人の話し合いの段階というものは、どういうことになっておりますか。
  108. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 通産大臣におかれましても、業界の方が協力願えれば、これを決して反対されるものじゃないことは、今お話し通りであります。ただ、一応昨年の値上げの経緯、認可いたしました経緯からいたしまして、なかなか困難であると、また、業界の方といたしましても、両社の内容がよくありませんから、なかなか簡単に、われわれの意図する通りに御了承を願いますことは困難でありますことは、私たち二人話し合って、その通りでございます。しかし、私といたしましては、何とか一つ御了承願えぬものだろうか、というのは、民間の方に御協力願えぬものだろうかということに努力はいたしてみたい。私は、努力することに対して通産大臣が反対ということじゃないのでありまして、二人の気持は、なるべくそれが実施を待ってもらう、値上げせずにいくことができれば、一番けっこうだということに変りはないのでありまして、ただ、私は、従来他の会社につきましても、たとえば新聞用紙の値上げを押えるにも用紙の値上げについて御協力願った。その他のものにつきましてもそういうことをやつて、努力いたして参っておりますから、この際は、特に両会社についても、できるだけ一つ協力願うように努力いたしたい。これはまあ、私は一段うしろにおりますから、直接まだその衝に当りませんから、多少強気でおる、実際その衝に当っておられる通産大臣は、たびたび折衝してみたがむずかしい、というところに違いはあるかもし回ませんが、二人の間に意見の違いはないのであります。
  109. 松澤兼人

    松澤兼人君 意見の違いはないかもしれませんけれども、(「大ありじゃないか」と呼ぶ者あり)順序としましては、やはり通産大臣の権限に属しているのであります。で、通産大臣としては、おそらく両電力会社に対しましては、陳情の趣旨はよくわかる、そこでまあ、昨年料金の値上げをしたんだと、で、あのときにも非常に困難だったけれども、一応料金が四月一日から自動的に上ることになっておる、三つの会社の資金計画もそれにのっとってできているものだと思う、だからやはりこれは、需用家のいろいろのあれもあるけれども、しかし自動的にこれはやらざるを得ないということになって、そういう態度でやっていらっしゃると思う。ところが、その間に企画庁長官が入って、――これは企画庁長官でないかもしれない、河野一郎個人かもわかりませんけれども、しかし、河野一郎個人にいたしましても、やはりその背後には経済企画庁長官という肩書があるわけですから、話をされれば、両電力会社の首脳部としましても、顔を立てなきゃならぬという気持になると思う。そうすると、正式な手続を経て、国会にももちろんかけられましたし、それで料金の値上げということが決定されていたことが、またくずされると申しますか、ほかのところでもって話し合いがなされてしまうということになると、これは行政上の問題としては、大へんな問題になってくると思うんです。先ほど申しましたように、われわれは電力料金の上らないことを望んでおりますけれども、これを純粋に行政の事務として考えてみますというと、これはこういうことを、いつでもいつでもやられましたら、それぞれの所管大臣というものはたまったものではない。この点いかがですか、通産大臣
  110. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) まあ、私の立場としましてはそういうことでありますが、お話し通りに上げずに済むものでありましたら、これは多少情勢も変っておりますから上げたくない、これはもうよくわかるのであります。従って私としましても再検討いたしておりますが、しかし、値上げになりましても、なおかつ大きな赤字になる、こういうような状況でありますので、非常に困難であることを申し上げておるわけであります。
  111. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ちょっと一つ。私は個人の河野一郎でこういう問題に発言しようとも思いませんし、いたしたこともありません。むろん、企画庁長官として発言いたしております。また、その場合には、所管大臣の合意を得て、相談をしていたさないことはないのでございまして、常に所管大臣を通じてしていただくことにいたしております。所管大臣のまた都合で、じかに話す場合もありますが、その際には、御了承を得ずに話すことはございませんですから、その点は一つ御了承願いたいと思います。
  112. 松澤兼人

    松澤兼人君 そういうふうに言われますというと、あなたの権限というものは、電力その他エネルギーの企画立案ということにあると思う。料金を許可することは通産大臣の権限にあると思うんです。だから安くて豊富な電力を供給したいというそのお気持はよくわかる。しかし、これは純粋に政治的な面を離れて行政の事務的の問題とすれば、通産大臣はその通りにいく方がいいと考えていらっしゃる。そうでなければ、昨年の国会であんな大きな問題としてこの問題を論議したそのときには、それこそ前尾さん――じゃなかったですか、前の水田君のときかもしれませんが、大汗をかいて、どうしてもこの段階においては料金を値上げしなければならないんだということを、繰り返し繰り返し言って、そうしてこういう段階になった。おそらくは通産当局としては、まずまずこれで問題が一つ片ついたという気持だろうと思うんです。権限の問題から言うならば、先ほど経済企画庁長官としてやっておるんだということをおっしゃった、そんならば、これはもちろん権限の問題から言えば、当然通産大臣の権限に属するものだと思うんです。それとも経済企画庁長官として、料金の問題を上げることに決定しているものを、認可しているものを、これを上げさせないという権限がございますか。
  113. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お話し通り認可をなさり、この行政上の処置をなさることは、通産大臣のなさることでございます、所管でございます。しかし、全体の企画をいたし、またはこれがどういうふうにあるべきかということについては、企画庁長官としても協議を受けるべき筋合いのものでございます。また同時に、昨年のことをお話しでございますが、これは先ほども申し上げましたように、昨年の経済政策を立案した当時の事情と今日は、その後御承知の通り物価を下げるという建前で参っておりまして、その後は少くともこの内閣になりましてからは、電車賃にいたしましても、その他テレビの料金の値上げの申請にいたしましても出ておりますが、これらのものは相当古くから値上げの意図のあったものにつきましても、この際はこれを押えている方向にいたしておるわけでございまして、従いまして、私は先ほど申しましたように、そういう希望を企画庁長官として申すことについては、私は差しつかえないんじゃないか、また、そういうことができるならば、そういうことに御協力願ってしていただいた方が、大へん産業全体のためにいいんじゃないかということの考えを持っているということでございます。従ってこの点を通産大臣にいろいろお願い申し上げて、そういう行政処置をとっていただくようにお願い申し上げておりますが、いろいろこれには経緯もございますから、御努力いただきましても、これはできぬものもございますし、できればやっていただきたいという考えを持っておるということでございます。
  114. 松澤兼人

    松澤兼人君 去年は値上げしてもいい年であったと、ことしは値上げしていけない年であるということは言えないと思います。私は去年もやはり値上げすべきじゃないということを考えた。ところが、どうしても値上げしなきゃならない、こう言うから値上げになった。本年はどんなことがあっても値上げさしちゃいけない。もちろん、経済全体からいえば、値上げすべきじゃない、また、われわれの立場からいえば、値上げすべきじゃないと思っておりますけれども、しかし、権限の問題になってきますというと、私はそこにちょっと、河野企画庁長官という立場からやや行き過ぎがあるのじゃないかと、こう思います。しかし、長官はそうじゃない、こうおっしゃる。それはまあそれでよろしい。  ちょうど正力国務大臣が見えられましたので、やはり原子力発電会社の問題につきまして、正力国務大臣は民間会社説である、それから河野経済企画庁長官は特殊会社、あるいは公社というようなことで、意見が非常に食い違って、これを収拾するのにほかの人たちが非常に困ったと、まあ結局は民間会社で発足することになったのでありますが、この点につきまして、正力国務大臣と経済企画庁長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  115. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 原子力発電の問題について、河野長官と私の意見がだいぶ相違あるように言われましたけれども、結局みんな調整はついたのであります。それは今度原子力発電会社がもともと起ったということは、経済ベースに合うから、民間でやりたいという希望で、発電会社というものができたのであります。ところが、原子力発電が経済ベースに合うということについては、多少の疑問もあると唱える人があるのであります。そこでまた、原子力発電が経済ベースに合わぬのであるからして、それは特殊法人でやりたいというのは、電源開発会社の意見であります。そこで電源開発側の意見とまた民間でやろうという、だいぶ意見が違いましたが、結局これは双方調整つきまして、もちろん、私と河野長官との意見も調整つきまして、そうしてああいう民間の会社ができたわけであります。
  116. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私は原子力の動力利用につきましては、御承知の通り、この原子力の将来の発展を考えますと、当面はともかくといたしまして、将来これの利用につきましては、全部の国民に平等の機会を与えるようにしておきたい。初めて日本でこの原子力の利用についての問題が取り上げられることでございますから、将来これが一般産業に利用されます場合におきましては、すべてが平等の立場にあってほしいものだ、そうするためには、この利用の、研究の過程におきましては、初期におきましては、これは各個人の者がこれを持つということはよろしくないのじゃなかろうかというような考えを第一に持ち、第二には、ただいま正力さんからもお話しのありました通り、これが数年間は当然赤字が出るだろう、相当の負担がかかるだろうというようなことからいたしますと、これを九電力の内容等を考えますると、九電力の出資によってこれをやることは、むしろその方に負担が加重されるだろうというようなことを考えたものでございますから、そこで、これは国家資金も、どうせ財政投融資等もたくさん使うことでございますから、公的な性格を持ったものにこの運営は扱わせる方が妥当ではなかろうかという意見を私は持ちました。ところが、その後だんだん正力さんの御説明、お話を承わりまして、私の考えるようなことは、当然これは将来そういうことなく、心配のないようにできるということの御説明を承わりましたので、正力さんのお話しになった通りに、私は賛成をいたしたのであります。
  117. 松澤兼人

    松澤兼人君 ただいまの河野長官お話を聞いていますと、結局真から、やはりこういう重大な事業に対しては、民間会社でない方がいいというお気持が十分くみ取れるわけであります。私はそれでけっこうだと思うのです。しかし、この最後の覚書というものの中に、政府は将来必要がある場合には、法律的措置を加えることがあるものとするという意味があります。これはどういうことを意味するのか、正力長官にお伺いしたいと思います。
  118. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 先ほど説明しましたごとく、これは民間会社でやる、また、現在それで考えております。将来万一必要のあった場合には、あるいは特殊法人にするかもしれないということでありまして、今のところは、全然そういうことは考えておりません。
  119. 松澤兼人

    松澤兼人君 そういたしますと、当分ということでありますけれども、じゃあ、原子炉が輸入されまして、実験するという段階におきましても、現在の通りの民間組織でやっていく、それから発電されるようになっても、そういう今のような形態でやっていく、それではこういう条文を覚書の中で入れておく必要はないように考えられるのですが、これはいかがですか。
  120. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 先ほど申し上げましたごとく、民間でやるという方針を立てておりますが、何しろ原子力発電の将来については、まだわからぬ点もありますので、もしもこれはなかなか民間でいかない、そうしてやはり公的のものでなくちゃいかぬということになれば、その法律措置をとる、こういうことになっておるのであります。現在においては、まだそういうことは考えていないのであります。
  121. 松澤兼人

    松澤兼人君 もう時間があまりございませんから、簡単に二、三の点につきましてお伺いいたします。  第一には、ただいま原子炉輸入のために調査団が行っておると思うのでありますが、その後買い入れの問題につきましては、どういうふうに話が進んでおりますか。  それからわれわれといたしましては、この天然ウランを使います場合に生じて参りますプルトニウムのことを非常に心配するのですが、この点はどういうふうに話が進行しておりますか。まずこの二点をお伺いしておきたいと思います。
  122. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 今度調査団をやりましたのは、昨年の暮れ日本原子力発電会社ができましたので、その会社で調査にやったんでありまして、それは一昨年行った調査団が、その結果が大体われわれの希望するように、経済ベースに合う、また、安全性も十分であるということで調査をしたのでありますが、なお、それを確かめるために、再び調査団をやったのであります。その調査団の調査した結果、今までの情報によりますれば、前のことを確認された、つまり安全性も大丈夫ある、それからまた、その他いろいろな調査の事項がありますが、大体間違いないという報告が来たのでありまして、いずれ調査団は十四、三日に帰ってきますから、その上で詳しく聞くつもりでおります。  なお、プルトニウムの問題につきましては、これは日本といたしましては、原子力法案にあります通りに、どうしても平和の目的に使うということになっております。従ってアメリカなりイギリスから、たとえ原子燃料を買っても、プルトニウムはむろん日本においては平和利用のほか使いませんし、また、それを返すという場合もあります。返しても、その相手国においても平和利用のほかに使わぬ、こういうことを承諾しております。どこまでも平和利用のみであります。
  123. 松澤兼人

    松澤兼人君 初めからコルダーホール改良型ということを決定して、そうしてこの具体的な調査に今度行ったんだと思います。なぜ、初めからこういうコルダーホール改良型というものを選んだのか。特に日本におきましては、イギリスと違いまして、地震の非常に多い国でありますが、ああいう形式の発電炉というもが、果して日本において危険がないか。新聞で承わるところによれば、日本の耐震性の心配に対しては、十分設計変更して、日本の要求をいれるということになっておると、新聞で読んでおります。果してそれで耐震性の問題は全然心配がないのかどうか。イギリスの技術者でも、現在ではそういうことに対する詳細なデーターはない、少くとも一九六〇年か六一年にならなければ、どうしても具体的な設計図というものはできないのだから、もうちょっと待ったらどうだというような話までする人もあるそうであります。ばかに急いでこれをやっていらっしゃるということは、果してそれで安全性の問題につきましても、先ほどのプルトニウムの問題にいたしましても、われわれが持っている不安というものが、ことごとく解消されたということになりましようか。
  124. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) まず最初に、イギリスを選んだ、コルダーホール型にしたことから、お答えいたします。実はわれわれ原子力発電等を考えました初めは、みなアメリカを主として考えておりました。そうして原子力発電ということは、非常な遠き将来のように考えておりました、日本の学者はみな。ところがたまたま、イギリスからヒントン卿これはコルダーホールを作った人であります。それを呼んで事情を聞きますと、原子力発電がイギリスでは経済ベースに合う。日本のことは知らぬが、とにかく合うということを彼が来て明言いたしました。そこで、そのときアメリカの方も確めました。アメリカでは、どうしても経済ペースに合う段階まで来ておらぬということを、アメリカでは言うております。そこで、それでは、一つ調査団をやろうということで、イギリスへ調査団をやりまして調査した結果、大体経済ベースに合うということ。なお、先ほど御質問がございました安全性も大丈夫だという報告が来ましたから、コルダーホール型を選ぶことにきめまして、しかし、いよいよこれを買うとすれば、なお念には念を入れよだから、調査をしなければならぬということで、特に日本は地震国であります。だからこの学者の間にもだいぶ議論がありますから、この耐震の問題については、日本においても十分研究しまして、さらにイギリスへその日本の学者も一緒に行ってもらいました。今度は先ほど申し上げましたごとく、行った一番大事なことは安全性、ことに地震の問題でありまして、それが調査した結果が間違いないということを報告したのでありまして、先ほど申しましたごとく調査団が帰って、なお詳しいことを聞くつもりであります。こういうことであります。
  125. 松澤兼人

    松澤兼人君 耐震性の問題が大丈夫だから、イギリス型を買ったというのじゃなくして、耐震性の問題はイギリスからコルダーホールを買おうという話しが出てから起ってきた問題だと思うのです。初めから耐震性は大丈夫だということでお選びになったのですか、話が違うと思うのですが、どうですか。
  126. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 今お話し通り、初めは経済べースということを考えました。しかしながら、これが安全性において欠けるところがあってはいかぬと思いまして、それであとからなおそれを調べようということで、それで調査団を出したわけであります。
  127. 松澤兼人

    松澤兼人君 時間がなくなりましたから、エネルギーの問題につきましては、また機会をあらためてお伺いしたいと思います。  そこで、地方財政の問題について、一、三御質問申し上げたいと思います。今回の地方財政計画を拝見いたしますと、やや改善された面があります。私ども多年交付税率の引き上げを主張して参りましたが、ようやく私たちが最初主張しておりました二八%というものに近くなって参りました。しかし、それでも私は根本的に地方財政が明るい見通しになったというふうに考えられないのです。まず第一に、地方財政今後の見通しということについてお伺いいたしたい。  それから第二は、今度は自転車荷車税が廃止になりました。それからたばこ消費税が二%上るということになっております。全体のバランスからいえば、それでバランスはとれるわけであります。しかし、個々の市町村になりますというと、非常に財源のふえるところと、それからもちろん減るところがある。まあ少いところでも五、六十万から、ちょっとした町におきまして百万、百二、三十万どうしてもこれは減ってくる。ですから全体としてはバランスがとれているのでありますけれども、個々の問題になりますというと、バランスはとれない、穴があいてきてしまう、こういうことがあります。これをうまくその穴を防ぐ方法ということをどういうことでお考えになりますか。
  128. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 地方財政の見通しにつきましては、今後さらに工夫しなければならないいろいろの問題があることは、お説の通りであります。御指摘の中にもありましたが、交付税の率を引き上げ、また自主財源はでき得る限り強化して、そうして公債を減らして参りました。歳入の面ではこうした行き方をさらに続けて参りますと同時に、地方税と財政全体の運営とを勘案いたしまして、一つ将来もっと自主財源の強化できるような方向に、これは地方だけでなく地方税と国税を通じて考えるべきことかと思います。そのようなことで将来いよいよ健全化をはかって参りたいと思います。  それから自転車荷車税の廃止と、これのかわり財源のたばこ消費税でありまするが、御指摘の点は、私どももかなり気を配りまして、たとえば鹿児島というようなところで、一体どうなるだろうかというようなことも考えてみました。ただ、私どもがサンプル調査をしてみますると、従来の自転車荷車税には、徴税費を二割かけております。かなり徴税費のかかる税でありまして、従いまして徴税費の点を考えますると、大体総額で自転車荷車税とたばこ消費税は見合って、そうして徴税費の点を考えて、個々の団体について著しい変化のあるというようなことは、まず考えないでいいのじゃなかろうか。しかしながら、これはこのたび廃止をいたした初めの年度でありまするから、よく個々の団体の財政について考え、また必要あるならばこれは特交等でも考えなければならぬ場合も起るかもしれませんが、それらの点は十分地方財政がやっていけるように措置したいと思います。
  129. 松澤兼人

    松澤兼人君 もう一点は、地方公務員の給与水準の問題であります。なるほど、大都市における公務員の給与はあるいはいいかもしれません。しかし、町村職員の給与というものは、これはもうほとんど話しにならないくらいの貧弱なものであります。これは、全体として町村職員の給与水準の引き上げということが、現在町村職員の中におきましては、非常に大きな問題となっております。国家公務員につきましては、人事院というものがありまして、勧告する権限を持っております。しかし、地方公務員につきましては、そういう強力なる勧告機関というものがない。もちろん、人事委員会、あるいは公平委員会というものがある。しかし、それは名ばかりでありまして、府県の段階におきましてはもちろんいい。しかし、町村段階におきましては、公平委員などというものが、自分のところの給与の水準が隣の市よりも低いなどというような結論を、報告を出すはずがありません。結局どこかが全体としての水準を引き上げるということに、強い力を持っていなければならないと思うのです。これらの問題について十分に実態を把握して善処されるお考えがありますか。
  130. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 地方財政の点から申しますと、百五十万の地方公務員を持っておる、この給与というものは、実に大きな問題でございます。御指摘のように、町村の公務員の給与というものが低い事実の多いことも、承知いたしております。これは町村合併等をいたして、町村の規模を一定の規模にいたしましたのも、私どもは仕事が相当ある充実した自治体をこしらえ、それに働く者の待遇というものも、また考えていかなければ相ならぬ。私は町村の公務員というものにつきまして、今後その給与というものをよく実態も調べ、あるいは全国を幾つかのクラスと申しますか、グループに分けて考える必要があるのではないかと思っておりますが、いろいろの方法によりまして、町村の公務員の給与というものを実情に合せて参りたいと思っております。
  131. 松澤兼人

    松澤兼人君 最後の質問をいたします。今回定員法の改正法律案が出て参りまして、一部の準職員なりあるいは、常勤的非常勤の人々が……。
  132. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 松澤君、要求大臣はどなたですか。
  133. 松澤兼人

    松澤兼人君 行政管理庁長官です。
  134. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 行政管理庁長官は、お話によりますと、当院の内閣委員会に行っておりますが……。
  135. 松澤兼人

    松澤兼人君 それでは暫時休憩いたしましょう、
  136. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それでは、三十分間休憩をいたします。    午後一時五十四分休憩    ―――――・―――――    午後二時四十一分開会
  137. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を再開いたします。  質疑を続行いたします。
  138. 松澤兼人

    松澤兼人君 時間がありませんので、ごく簡単に御質問いたします。  今度、定員法の改正が行われることになっておりまして、長い間の懸案でありました、いわゆる一般職公務員の以外の常勤労務者や、あるいは常勤的非常勤の諸君が定員の中に繰り入れられることになっております。大へんわれわれ喜ぶべきことであると思いますけれども、しかし一般の職員の中には、それらの常勤労務者の諸君やあるいは常勤的非常勤の諸君、こういう人が、全員定員化してもらいたいという強い要望があるわけであります。これはもうすでに御承知の通り、今度の繰り入れば、これらのいわゆる事務職員の人々のどのくらいのパーセンテージであり、そうしてその定員繰り入れについてはどういう基準をもって決定されたのか、そのいきさつを御説明願いたい。
  139. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 定員外の職員を今度定員に繰り入れる問題、これは三、四年間の問題になっておったものでございますが、ことしは、何とかしてこれを解決いたしたいと思うておりました。しかしこの解決は、公務員法の改正を待ってでなければ全面的の解決は不可能でございますので、定員法の改正を何とかしてこの国会提出できるようにと思って連絡をしてみたのでありまするが、どうしても定員法の改正が間に合いそうにないのでございまするので……。
  140. 松澤兼人

    松澤兼人君 公務員の方が……。
  141. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 公務員の改正が間に合いそうにありませんので、それで約六万名の定員に入っていない職員について、私の方の行政管理庁において、すべてにわたりまして詳細な調査をいたしまして、その基準をおよそきめまして、このくらいな程度まで認めれば何人、このくらいの程度であれば何人というふうに、いろいろやってみました。大体見渡したところ約三分の一、現在は約六万人の人が定員外になっておるのでありますが、そのうちの約二万名だけを定員の中に繰り入れるということにいたすことに案を立てました。そうしてその通りに今度実現することになったわけでございます。
  142. 松澤兼人

    松澤兼人君 公務員制度の改革と同時に行われるべきであると、こう考えておったのでありますが、何か基準がはっきりしないような感じもありますし、それからもう一つは、公務員制度の改革ということを先に延ばして、実質的に公務員制度の改革を定員法の改正という形でもってやったような感じもするのでありますけれども、そういうことはございませんか。
  143. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 公務員法の改正をやるべきであるが、それを延ばして定員法で何とかしたんじゃないかということでございますが、これは、公務員法を私は改正すべきものだという線を第一に取り上げまして、これを総務長官の手元においていろいろ研究をしておったのでございまするが、どうしても間に合わないということが昨年の暮れごろにわかりましたので、それではぜひ、約束もあり、この前の国会において総理大臣皆さん方に公約をした手前もありまするし、何とかしてこれを取り上げて解決の方に一歩でも進めたいと思いまして、いろいろ私の方で基準を設けて調べたのでございまして、公務員法が改正ができなかったやむを得ぬ措置としてやりましたが、公務員法の改正を待つという方針を通して、この次の国会まで待つようなことがあっては、今までの人たちに非常に失望を重ねさせるものであると思いまして、私はこの際取り上げて、解決の道をはかったわけでございます。
  144. 松澤兼人

    松澤兼人君 それでは時間がありませんから、三つお尋ねしたいと思います。  一つは、この議会に定員に入らないものは、今後永久に定員化される見込みがないのかどうか、将来、公務員法の改正がある場合にはもう一度考慮していただけるかどうか。  それからもう一つは、いわゆる今度定員化からはずれた人々及び技能労務職の人々は、将来国家労務職員となって、私的の契約で雇用されるという形になるのか、これが第二であります。  第三の問題は、何か予算書を見ておりますと、取扱いが非常にあいまいな点があります。それは公共事業関係において、今回の定員増の人件費は工事事務費という項目で新たに処理される。従来の行政部費の中にありました定員内の職員は職員人件費という形で出ている。なぜこれを二つに分けて、片方は今回定員化された職員、片方は従来からある定員の職員、予算上の取扱いが区別されている。これはどういう理由でこういうことになったのであるか、お聞きしたい。
  145. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 主計局長からお答え申し上げます。
  146. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 今、お尋ねのございましたように、今回定員化を命ぜられました公共事業系統の人たちの給与につきましては、工事事務費という新しい項を立てておるわけであります。その理由は、従来御承知のように、直轄事業につきましては、地方分担金の制度がございまして、工事費の中に入っておりましたこれらの経費を含めまして分担金計算をいたしたわけであります。従いまして、今回定員化をいたしまする際に、分担金計算をいたしまする基礎額を明らかにいたしまする関係上、これを別項にいたしまして請求いたしておるわけであります。
  147. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お尋ねの第一の問題でございますが、このたび公務員に入れなかったものも、この次に公務員法が改正されましたときに、あらためて検討されまして、公務員になるということは当然あり得ることと思います。  それから第二番目のお問いの、それに公務員にならなかったものは、どういうふうな関係になるかというのは、これは今度のこの公務員法を審議いたしましたものの答申にそういう面が出ておると思いますが、そういう人たちは私法上の雇用関係になって使われていくというふうに思っております。
  148. 松澤兼人

    松澤兼人君 これで質問を終ります。
  149. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は、今回の日中貿易協定、それに不可分の関係において協定されました覚書に関連して若干の疑問がありますので、この際、できる限り明確にしておきたいと思います。と申しますのは、今回のこの覚書は将来にわたって相当重要な問題を残すであろうと想像されるからであります。  第一にお伺いしたい点は、覚書の性格と申しますか、性質であります。今回の覚書は、もちろん民間の協定として取り進められたわけでありますが、従来の貿易協定のように、たとえば品目なり数量なり、あるいは代金決済方法を取りきめるというふうな内容と違いまして、相当各条項にわたって公的な性格を持っておるように思われるのであります。果してこれが民間の協定として、その対象とし得るものであるかどうか、私にはいささか疑問であります。民間の協定としてはおのずからその内容に一つの限界といいますか、限度というものがなければならぬように考えられるのであります。今回の覚書の各条項はそれぞれ公的な性格を持っておるように思われます。国旗掲揚の権利につきましてはいろいろ議論があったようでありますが、その他の条項、たとえば第一の問題にいたしましても、考え方によりますると、治外法権的な性格を持つのでありまして、通商代表部に関連いたしまして、わが国の公法、私法両面にわたりまする司法権の問題にも直接関連を持つように思われるのであります。総理は、この協定の性格というものをどういうふうに考えられておるのか、第一にそれを承わりたいと思います。
  150. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回の第四次貿易協定並びにこれに付属する覚書はあくまでも民間の協定、民間レベルの協定、かように私どもは解釈いたしております。
  151. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 形の上におきましては、現在までのところ疑いもなしに、総理の言われるように民間の協定になっておるわけでありますが、私のお尋ねいたしておりまする点は、その内容を見れば、これは民間の協定として処理するに、何と申しますか、適当じゃないものではなかろうかという趣旨であります。言いかえますると、内容は、それぞれ政府なり国自体の責任に直接、間接関係する問題がその内容であります。従って、そういう内容のものを、民間の協定という形において処理し得るのかどうか、こういうのが私の質問なんであります。
  152. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 覚書の内容は、お話し通り、民間だけで協定をいたしましても、その効果を上げるわけにいかない条項を含んでおります。従いまして、覚書の前提として、両国政府のそれぞれ承認を受ける、同意を受けるということを条件にいたしておるのは、その趣旨であろうと思います。
  153. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私もさように思うのであります。従いまして、この政府同意ということに非常なまあ意義と、意味があると思うのであります。この政府同意というものをどういうふうにわれわれ解釈をすべきか、もちろん、この政府同意というものがなければ、今回のこの覚書の効果というものは全然ないのであります。この同意というものは、当然に今回の協定の本質的な実体をなすものであろう、こう私は思うのであります。ただいまの総理の御答弁もその趣旨であろうと思います。そういたしますると、一体この同意というものは、どの行政庁といいますか、どの行政庁がだれに対して与えるのであるか、で、その与える同意というものは、一体どういう法的根拠に基いて行われるのか、その点を伺いたい。
  154. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) お答え申し上げます。この協定の覚書の点を検討いたしてみますと、おのおのその政府に対して、その同意を得て次の待遇を与えるということになっておりますので、民間の協定の、民間相互の、民間がおのおのその所属政府に対して同意要請をして、その所属政府から同意を取るということになるかと思っております。
  155. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 今回の覚書の文章を読みますれば、今御説明の通りに読めるのでありまして、疑義はないのであります。そういたしますると、これは外務省の所管になりましょうか、外務大臣が四団体に対して同意を与えると、こういう形になるのですか。
  156. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 法制上の関係につきましては、法制局長官から。
  157. 林修三

    政府委員(林修三君) これは結局、その覚書の文章から申しますと、政府がその調印者に対して同意をすることになるわけでございますが、その同意をし得る根拠は、結局政府の行政措置としてなし得る範囲にもちろん限られると思います。政府の行政措置としてなし得る範囲において、まああの中では、大体外務省が代表して行い得る権限に属することが多いと考えます。しかし、他の省の権限に属することであれば、当然そういう所管省と協議の上でおやりになるものだろうと、かように考えます。
  158. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 形はおそらくそういうことになるでありましょうけれども、私は今回の覚書の同意というものは、そういう形式的な問題でなしに、実質的な問題があると思う。これは外務大臣に伺いたいのでありますが、この同意というものは、どういうふうな法的な効力を持つのかということであります。なるほど、それぞれの所管省が調印者に対して同意を与える、それは一体行政処分になりますか。その同意というものはどういうふうな法的な効力を持つのかということであります。
  159. 林修三

    政府委員(林修三君) まあ法律的な効果と申しますと、直ちにそれが行政処分として相手方に一定の権利を与えるとかなんとかということには……。私はあの性質から申せば、あの覚書に対して同意を受けます調印者は、それによってすぐ直ちにあの内容を自分の名前で実現するというようなものでないわけでありますから、結局まあ反射的に、通商代表部があの覚書に書いてあるところの内容を反射的に受ける、こういうことになるのじゃなかろうか、かように考えるのであります。
  160. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 はっきりいたしかねるのでありまするけれども政府同意を与えれば、それによってあの覚書の各条項に掲げられてありまする事柄が、日本政府の、あるいは日本の国の、ある場合においては責任になり、ある場合においては義務になる、ある場合においては権利になる、言いかえれば、同意を与えることによって、それ自体が日本の政府責任を表わすといいますか、責任を負わすといいますか、そういう効果が当然にあるのではないか。そうでなければ、同意というものが意味をなさないのであります。また、先ほど総理お答えになりました意味合いも、そうでなければ理解ができないと私は思うのでありますが、総理なり、あるいは外務大臣はどういうふうな御見解でしょうか。言いかえますると、もう一度言いますると、同意を与えることによって、あの覚書の各条項にありまする政府責任といいますか、義務が相手方に対して生ずるのだ。四団体に対しては何ら、政府との関係において同意から法律的な効果が起ってくるわけではない、その形式を通じて同意を与えれば、それによって日本政府自体に法的な一つ責任が生ずるのだ、こういうふうに当然常識的に理解されるのでありますが、私の考え方が間違っておるのかどうか。
  161. 林修三

    政府委員(林修三君) おっしゃる通りに、あの覚書は四団体が実は施行し得る内容のものではないわけでございまして、結局そこで政府の了解を得ると、同意という意味は、結局私は政府の了解を得るという意味だろうと実は思うわけであります。そこで、政府が了解した場合において、そういう内容に従って行政措置でできる範囲のことは行政措置でやるということになると思いますが、しかし、これは覚書に対する同意は、あくまでも四団体に対するものでありまして、直接に中共政府、あるいは中共政府の代表部に対して与えられているものではございませんから、それは法的に、直ちに政府責任がそこに出てくるというものではなくて、やはり反射的な問題じゃないかと、かように考えるわけであります。
  162. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私はそういう、何と申しますか、国として、あるいは政府として非常に重大な責任が反射的に起ってくるということは、どうも理解が実はできない。たとえばさっきの問題に対しましても、あるいは治外法権とは言いませんけれども、それに準ずるような法律的な効果を現実的に起すものが反射的に起ってくる。反射的に日本政府の義務なり、責任が当然に発生してくるというふうには理解できないのでありまして、もう一度一つ……。
  163. 林修三

    政府委員(林修三君) 私の申しましたのは、結局あの覚書に対して、もし政府同意を与えるとすれば、その同意を与えた責任は、もちろん四団体、調印者に対して政府は負っているわけであります。そこで、政府のなし得ることは、あの覚書の内容を行政措置の範囲で行えることにしてのみ政府はなし得るという見解が立てば、まあ同意を与えるということになると思いますけれども、その行政措置でなし得る、なすということについては、政府はもちろんそういう意味の何と申しますか、ある程度のコミットメントを四団体をして行わせる、しかし、それはあくまで中共政府、あるいは中共政府の代表部に対して直接に責任を負っている、義務を負っているというものじゃない。行政措置として、政府はそういう措置をとりましょうということを四団体をして約束させた、そういうことじゃないかと思います。
  164. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 法制局長官の御答弁は、私には理解ができないのであります。行政措置として当然いろいろのことが、今後この同意を与えれば出てくるでしょうけれども、行政措置範囲外といいますか、私法なり、公法なり、直接関連してくる問題も当然に私はあると思うのであります。言いかえますれば、やはりこの各条項の効力といいますか、これは四団体じゃなくて、相手方に当然及び、言いかえれば、通商代表部の関連においても直接及ぶと、こう考えられなければ、おそらくこの覚書の趣旨というものは没却されるのではないかと思われるのでありますが、一つ法制局長官の御意見はわかりましたけれども、外務大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  165. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま法制局長官が言われました通り政府としては、四団体に承認を与えるということ、従って、その承認の結果、それをスムーズに、円滑にやっていくということのための処置を政府はとらなければならぬと思います。しかし、それは国内的な問題として、スムーズに、円滑にいくように、行政的に扱っていくということになろうかと思います。
  166. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 どうも御答弁が少し食い違っているので遺憾でありますが、あれを見ますると、それぞれその政府同意を得てこういう事柄の取りきめをすると、こういうのであります。もちろん形は、直接お互いの政府間に同意を交換するわけでもない、従って、同意を与える対象は、形としては四団体でありましょうけれども同意するということは、あの条項に盛られておりまする意味合いを同意するのであって、言いかえれば、それから発生する法的ないろいろの効果というものに対して政府同意をする、同意した以上、当然国としての責任が発生すると、こういうふうに私は理解するのが、何といいますか、普通の理解であると思うのであります。それ以上はけっこうであります。問題があとに残ると思います。はなはだ遺憾であります。私はこう申しますけれども、あの各条項がいかぬとかいいとかいう論議をしているわけではないのであります。法的な効果というものをはっきりしたいという意味合いで質問をしているのであります。私の考え方からしますると、結局今回の覚書、それに対して政府同意を与えるということは、結果的に見れば、一種のこれは日本と中共当局との間の条約に類するといいますか、形式的にはそうじゃないでしょうけれども、実質的には条約に相当するものだと、こういうふうに考えるのであります。これは見当違いの考え方でありますかどうか、外務大臣一つ伺いたいと思います。
  167. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、民間で協定して参りましたものを、政府がそれに同意を与える、そうしますとそれらに対して、円滑にそれらの約束が遂行されるように行政的に円滑に政府としてはやっていく、措置をとっていくわけであります。しかし、そのこと自体が国内的に円滑にいくことは、それは中国のためになることでありましょうけれども、中共自体と政府とが協定を結んだという関係にはならないと思います。
  168. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 中共自体と日本とは形式的に協定を結んだわけではないことは、これはお説の通りであります。私の繰り返して申し上げますことは、この覚書は同意を与えることによって効果を、効力を出せば、それは当然に日本政府としてあの条項にある責任なり、義務というものは当然に出る、しかも、それはいわゆる行政処分といいますか、行政措置的なものもあるけれども、それよりも広く公法に関係し、一般国民の私法にも関係する点においても効力を出すのだ、こういうふうに考えるのであります。従って、内容的に見れば、中共当局との間の一つの実質的な協定である、かように考えるのがすなおな考え方であると思うのであります。それでなければ、なぜ一体同意を与えるのか、同意を与えるということをなぜ当然本質的な前提にしているのか、私には理解しがたいのであります。私がこう申しますゆえんは、もし私の考え方が間違っていなければ――間違っておるとすれば別でありますが、間違っていなければ、なぜ政府自体が協定をされないのか、当然これは政府自体の責任になり、日本国自体の責任になる。そうだとすれば、なぜ一歩進んで、同意とかその効果を、そういう不明確なままに置かずに、実態をお考えになって、なぜ一歩進んで両国間の、中共当局との協定に正式にされないのか、その点が疑問なんであります。なぜそうされないのかという点であります。総理なり、あるいは外務大臣からお答え願いたい。
  169. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもは、この両者の間に貿易が促進されるということについては、これをできるだけ促進することに努めたい。しかし、現在の段階においては、中共政府を承認し、これとの間に正常な国交関係を開くべき段階ではないと思うという、この方針を堅持しておるわけであります。先ほど来の梶原委員の御議論でありますが、私はやはり法律的な関係は、これに調印した者の間にこれは権利義務が発生しておるのであって、これの中共側の代表者と日本側の代表者との間にこの覚書は調印をされて、それの間の権利義務だと思います。しかし、これを日本側は、もちろん向う側は政府の代表のような性質のものでありますが、われわれの方だけをとって申すと、日本の民間の代表者として自分たちがそういう義務を相手方に対して負うのについては、少くとも自分の属している日本政府同意を得て、日本政府がそれに協力してくれる、それを認めてくれるということでなければ、相手方にそういう義務を負えない。われわれが同意をしているのは、相手方は、あくまでも日本の署名した、調印している人々に対してわれわれは同意を与えるわけでありますから、われわれが同意を与えて調印した相手方の間には、政府と民間との関係におきましても、政府はある程度の責任を負うことは負うと思うのです。しかし、それは、直接に中国側の代表者に対して負うわけじゃありませんし、従って、中国側でも、もしもそれを行われないという場合においても、中国側が日本政府を相手どってどうするということはできない性質のものであるのでございまして、この点は法律的にはきわめて明瞭だと思うのでありますが、今まで梶原委員お話のように、実質的云々というお話でございますけれども、やはり法律的の効果については、私はその点は明確にすべきものである。しかして同じような効果を、もう少し強く発揮し得ることは、両国間の直接の協定にすることが最も明確であり、最も強い効果を直ちに向う側に、そういう間接的な方法じゃなしに、直接に日本国政府同意要求するという権利は、両国間の協定ならできるわけです。しかし、そうすることは、中共政府を承認するということの前提に立たない以上は、私は現在の段階ではできない。それはわれわれの外交方針としては、現在の考え方としてはとらない。
  170. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 総理の御答弁は、私にはとうてい理解ができません。非常に残念であります。民間の当事者の権利義務である、民間の当事者が本来自分の持っている権利であれば、それはそれでいいでしょう。また、本来自分の持っている義務の範囲であれば、それはそれでいいでしょう。しかし、ここにありまするたとえば通商代表部及びその所属人員の安全保障と任務遂行のために、それぞれ構成員の安全保障に適切な措置をとるとか、法律上の紛争を引き起した場合に、双方が連絡して、双方が同意をした方法で処理するということにいたしましても、あるいは国旗掲揚の権利の問題にいたしましても、こういう事柄は、それぞれ調印した人は努力するでしょう。あるいはお世話をされるでしょう。しかし、そういった人々自体が、この義務を履行する権能は持っておらない。結局これは国以外にはない。従って、当事者間の権利義務だと言われる御解釈は、私には理解がされないことを遺憾に思うのであります。  それから、こういう協定を結ぶということは、中共政権の承認になるというので、先ほどの御説明をされたと思います。私はそこで総理なり、外務大臣の御見解を伺いたいのであります。この同意を与えること、あるいは一歩進んだその事柄自体がいいとすれば、その事柄自体がいいとすればですよ、私は悪いと思わない。いいとすれば、その一歩進んだ両国間の協定にするそのこと自体が必然的に中共政権を承認したことになるのかどうかという点であります。中共政府との間にこの覚書を、正式に日本政府の協定とした場合に、それは必然的に中共というものを、国際法上といいますか、承認したことになるのがどうか、私はおのずからそれは別じゃないか、かように考えるのでありますけれども、その考え方が間違っているかどうか御指摘を願いたい。
  171. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そういう協定をしたら、直ちにその協定をしたことが国の承認になるということじゃ私はないと思います。しかし、そういう協定を国と国との間にやる場合において、前提としてその国を承認したという別の行為があってでなければ、国と国との間にこういう協定をすることは適当でないだろうということを申しておるわけです。それから、先ほどのこれは御議論であります。法律上の意見でありますので、あるいは意見の相違になるかもしれませんが、私はやはり覚書の内容というものは両当事者の間を拘束するというのがこれは第一段の意義である。しこうして、それを履行するのについて自分一個ではできないというものをする場合において、国というものの協力なくしては、それが実現できぬというような内容を持っておるが故に、その国の同意を得てこういうことをやりますということが覚書に表わされておるのであって、覚書の内容は一応どうしても、法律的には直ちに国と国との間の関係を拘束を私は定めるものではない、こう解釈しておるわけであります。
  172. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 議論を繰り返すつもりはありません。ただ、同意の性質から考えれば、総理の御見解には納得できないということを申し上げております。
  173. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 梶原君にちょっと申し上げます。総理は退席してよろしゅうございますか。
  174. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 さらに一点だけでいいです。今度の覚書は双務的な規定にもちろんなっております。近い将来わが方は向うに通商代表部を設けられる考え方があるのかないのか、その点を一つ伺っておきたい。
  175. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 通商代表部の問題は、この協定は双務的だと思いますので、当然向う側から民間の代表部が来れば、こちら側の民間の代表の方々が北京に行くということになろうかと思います。
  176. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 けっこうです。  ちょうど総理も外務大臣もお出かけになりましたので、一つ大蔵大臣引き受けて御答弁を願いたい。(笑声)  東南アジア経済開発の問題であります。かねがね岸総理は就任以来東南アジアの経済開発基金制度ですか、これを提唱されておった。東南アジア方面御旅行の際も、またアメリカへ行かれましても、この問題について検討されたと伝えられておるのであります。私は、これはきわめて重要な問題だと思うのでありまするが、不幸にしてこの東南アジア経済開発基金ですか、これの具体的の構想を承知いたしておらないのであります。一体、これはどういうふうな具体的な構想であるか、組織は大体、ごく概要でいいんですよ、組織はどういう組織で、規模はどういう規模で、機能というものはどういう機能か、ごく概要を一つ大蔵大臣からお示しを願いたいと思います。
  177. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは今できておりますのは、今度予算に盛ってある日本の基金だけでありまして、別に国際的に東南アジア開発基金があるわけじゃありません。従って内容を説明するといたしますれば、この今回の予算に盛ってあります東南アジア開発基金ということになります。この構想は、もうずっとこの起源は古いので、まあこの国際的な資金をもって東南アジアの特に開発がおくれておる所をスピード・アップして開発しよう、それを目的にしておると思うのであります。従いまして、今回予算に計上してありまする東南アジア開発基金は、こういうふうな国際的な開発基金ができました場合に、それに出資する、あるいはまた、そういう国際的な開発の基金ができるのに時間がかかればそれができるまでの間、そういう国際開発基金ができた場合に資金を運用するであろうような資金に運用していく、言いかえればですね、これを運用した場合にその貸し出しができます、その貸し出しは将来できるやつを、国際開発基金に肩がわりができるであろう、こういう性格を持つ。そういうふうな資金に使おうというのが性格になっております。
  178. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 これまでは、大蔵大臣の言われましたような、何といいますか、ややはっきりしない構想でも、けっこう……まあけっこうじゃありませんけれども、やむを得なかった。とろが、今回は大蔵大臣も言われましたように、ともかく三十三年度においては五十億の金が予算の数字として出て、それはこの東南アジア開発基金ですか、そういうものが構想されて、まだ具体化しないけれども、一応構想されて、それに出資をするという前提で現実予算が組まれておる。これは保留の形になっておるかどうか知りませんけれども、五十億という金が出ておるわけですね。そういたしますればですね、一応この際として出資をされる相手方のその仕組みですね、これの具体的な構想が私は少くともあるのじゃないか。こう思うのですが、それは急にはできないかもしれませんが、大体こういう考え方だ、しかし、すぐにはできないから、この際一応予算上保留をしておいて、いつかまあ払い込むということにまあ筋はなるんじゃないか。こう思うのでありますが、先の一つの基金の構想というものがはっきりせずにいてですね、そうして五十億を計上しておくということは、やや何と申しますか適当じゃない感じがするのでありますが、もう一度御説明願いたい。(「大蔵省反対しておったじゃないか」と呼ぶ者あり)
  179. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私の考え方を率直に申し上げます。本来申し上げますと、東南アジア開発基金に五十億というようなことは、私に言わせれば問題にならぬと思う。こんなちっぽけなもので東南アジアの開発ということはおかしいと思うのです。しかし私は、これをやれば国際的にやはり東南アジアの国々は入ってくる。そうして資力を持っておる国も入って、そうしてここに東南アジア開発基金を作るという構想です。ところが、それにはいろいろの事情からそういう機運は確かにあります。最近では、確かに第二の世界銀行をアジアのために作るというようなことを新聞でも報道しておりまして、機運は確かにあるのだが、そこまで成熟しない。ところが、日本はアジアにおいてやはり一番近い。そこで、やはり日本が率先して、こういう国際的なそういう基金のできるまず火種ですね、火種というようなものをここに置くということは私は日本の東南アジアに対する関係も非常に重要な意義を持つ、そうしてそういう基金ができない間は、これは今言ったように将来振替ができるような資金に、少い金ではあるが、日本の国自体がこれはやはり貧乏なんですからまあ貧者の一灯でそういう意味において一つ東南アジアに力をいたそう、そう考えておるのであります。ですから、そういう意味において、将来発展性を持つ意味においてどうぞ御理解をいただきたいと思います。
  180. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は五十億が多いとか少いとかということを申しておるわけではないので、それは大蔵大臣お話のように、東南アジアを対象にいたしまして考えれば、五十億はきわめて少いでありましょう。ただ、金額は少いにしても、ともかく予算に形を出していく以上は、一つの具体的な構想が伴って、初めて貧者の一灯であっても、一灯としての価値が十分出るんじゃないか、かように考え質問したわけであります。それから次に、あの五十億の分は、結局内閣の方針によって、一応輸出入銀行に出して、それをどう使うかというのは、内閣の方針によって大蔵大臣が指図をされることになるようでありますが、三十三年度の間で、何といいますか、将来できるであろう基金制度に振替ができるという前提のようでありますが、その前提をとりつつ、三十三年度で相当現実に出し得る見込みでありましょうか、あるいは灯だけともしておいて、ずっと持っていくというお考えでありましょうか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  181. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは今後におきまして、内閣に東南アジア経済技術協力審議会というものが設置されまして、そうしてこの東南アジアの経済協力をどういうふうにしていくかということがここで策定される、その方針に従って、この資金をどういうふうに使うかということが、さらに閣議において決定される、かように私は考えます。従って今のお問いの、使うか使わぬかという点でありますが、これはそういう意味においては、非常に厳重な制約のもとではありますが、言いかえれば、将来まず国際的な基金が出た場合に、受け入れられるであろうというような、そういうふうな貸付とか、こういうようないろいろ条件がありまするが、これは私は実際使うかどうかまだわかりませんが、使い得る可能性を持っておる、これはほかの基金と、ちょっと性格が中間的なものがあります。
  182. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 この基金を輸出入銀行に置かれたわけでありますが、輸出入銀行は、何と申しますか、やはり一つの銀行として、もちろんその国策の線に沿って運営されるわけですけれども、大体商業ベースと申しますか、コマーシヤル・ベースであろうと思う今回のこの五十億の分は、運営は普通の商業べースで運営されるのであるか、多分にまあ政治的と申しますか、必ずしも商業採算というか、商業ベースにのみこだわらないというふうな考え方で進められるのか、その点を私非常に関心を持つのでありますが、一つ御見解を伺いたいと思います。
  183. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ちょっと断わっておきますが、私、今まで申し上げた用語の中に、この資金を貸すようなことを言ったら、それは間違いで、投資でありますから、もしも貸すというような意味合いを申しましたら、訂正をいたしておきます。これは、日本輸出入銀行に置きましたのは、日本輸出入銀行でこれを別勘定にしておくのであります。御承知のように、この日本輸出入銀行は海外投資をやっておる、海外投資の保管といいますか、そういうふうな営みをいたしております。それでここに別勘定を置いて、これに扱わせることが、人間を使う上においても、事務の円滑なる取扱いの上からもよかろう、こういうふうな見地に立ってここに置いたのであります。これは御承知のように、全部政府出資でありますから、この機関にやらしてやろう、かようにいたしたのであります。
  184. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 便宜上の問題はよく理解ができます。ただ、この開発基金の運営の性格と申しますか、これが普通の商業べースで投資されていくのであるか、何らかそれと違った考え方において運営されるのかという点であります。
  185. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは実際には先ほど申しました内閣に置かれまする審議会においてやはりそういうことも審議されるだろうと考えておるのでありますが、先ほど申しましたように、これは将来国際的な開発基金が出た場合に、その基金の投資として振りかわっていくということを考えておりますから、その辺今後よほど研究を必要とするんじゃなかろうかと私は思います。
  186. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 従来の普通の輸出入銀に行きまする投資の場合と、岸総理が特別に構想を立てられて、東南アジアを対象にする経済開発のための一つの機構を国際的に作ろうといわれる場合の、その機構の機能ですね、これは私は普通のコマーシャル・ベースで運営されていく筋合いのものじゃあるまいと、かようにこれまで考えていたのであります。その点は審議会ですか、そういう所で審議されることになるというお話でありまするから、その結果を待つほか現在のところ仕方がないかもわかりません。そこで、私一つ伺いたいのは、賠償に関連いたしまする日本の経済援助といいますか、あれとの関係であります。御承知のように、フィリピンに対しては、年限は長いんですが、二億五千万ドル分の、賠償ではありませんけれども、日本が経済開発等の援助のために資金を融資をする用意を約束しておるのであります。それは、政府の説明によれば、あくまでコマーシャル・べースでやるんだというふうに承知をしておるわけであります。近くインドネシアとの賠償の取りきめができる。あれに関連いたしましても、相当大きな経済援助の施策があるわけであります。それらは、端的にいえば、この五十億と一体どういうふうな関連があるのか、あれはあれで、これはこれで、全然関係がないのか、その方に振りかわっていく面があるのか、そういう点について一つ考えを承わりたい。両方とも対象が同じになる場合があるわけですか。
  187. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは私としましては、なるべく区別をしたいと思っておるのであります。この国際開発基金の金は、やはり国際的などうしても性格を持った投資ということにして、たとえば二カ国と一緒になって投資をする場合に、それに参画する、あるいはまたそこまでいくと、またこの基金が動かない危険もありますから、場合によっては相手国とのやはり共同で、相手国の政府も金を出すというのと共同して、その対象が好ましいとなれば、私は考えてもいいんじゃないかという程度に考えておりますが、これらの点は今後どういうふうに審議会でまた論議されるか、待たなくてはなりません。ただ先ほどから申しますように、性格は違います。賠償の方は、賠償法に付随する経済協力は、これはたとえばフィリピンの一億五千万ドル、これは全くコマーシャル・ベースでいくわけであります。政府としては、そのコマーシャル・ベースでいくのをできるだけ、どういいますか、非常にむずかしい英語で書いてあるんでしょうが、(笑声)むずかしいんです。推進する、まあ推進するまで強いかどうかわかりませんが、政府の方もなるべくできるようにしよう、こういうことであります。それですから、よほどこれは違います。
  188. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 いろいろ考え方は若干違いましょうけれども現実の問題として考えますると、たとえばインドネシアなりフィリピン等を対象にして考えていけば、相当日本側から、毎年相当の額が出ていく。片方のこの今回の五十億関係の分は、なるほど国際的といわれますが、そういう行き方もいりましょうけれども、日本と、たとえばインドネシアとの間で考えられる場合もあるであろう、そういたしますと、片方の方は比較的コマーシャル・べースをはずれた行き方をとる、こうなってきますると、私は現実の問題としては、両方の間に必ずしもはっきりした線を引き得ない場合があるであろう、言いかえればそうはっきり線を引かないというのも一つ考え方じゃないか、こういう感じもしたものですから伺ったのであります。これは外務大臣のおかわりをお願いするわけですけれども、先般インドネシアとオランダとのフリクションのあと、御承知のように向うの船舶の問題が問題になって、日本との間に話し合いがあった。そのとき新聞の報ずるところによりますというと、外務大臣はそれはコマーシャル・ベースで一つ話をつけたらいいだろうということであったようであります。結果において採算が合わずに日本の方は引き受けなかった、これは新聞の報ずるところであります。ところが、ソビエトの方では、数万トンの船を出して、しかも非常に安い金利の融資を出すということが伝えられているわけであります。経済外交とか、あるいは今度のこういうファンド、これは非常にけっこうでありますけれども現実に東南アジアのほんとうの開発等を考えていく場合に、普通のそのコマーシャル・ベースでは私はなかなかいかんじゃないか、目と鼻の先のインドネシアにおいて、事実がどうか知りませんけれども、ソビエトの船舶があの沿岸航路といいますか、これに入る、わが方は世界一の造船国と称しながら、商業採算が合わないから手がつかん、そうした半面において五十億のあれを出して、その先がどういう具体的な見当になるかこれもわからんということでは、はなはだ私その東南アジア開発基金の構想とか、あるいは経済外交とか口でいろいろ言われるけれども現実とやや遊離していくというまあ感じがしきりにするのでありますが、一つよく御検討おきをお願いしたいと思うのであります。  それから、時間がありませんので恐縮ですが、法務大臣にちょっとお伺いしたい。これは食管法に関係する問題でありますが、これは毎年問題になりますけれども、食管制度の現状は御承知のような現状になって参っております。私の申し上げますことは、食管制度をどうこうしろということじゃありません。現在の食管制度というものは大きな役割をしておるのでありまして、これをできる限り維持していくということは私もその必要を痛感するものであります。ただ、問題はやみの問題であります。ここ数年来所によりましては非常にそれが激しくなりました。第一線の検察当局の人々の中には、まだ配給統制があるのですか、ということをまじめに言っておる人があります。おそらく法務大臣の配下の多くの検察行政の第一線において苦労しておる人は、割り切れない気持でこのやみの問題に当面しておるに違いないと思います。私は、法務大臣の検察行政の最高の責任者として現在の食管制度のあの取締り規定、罰則規定、この罰則規定の責任者は私は法務大臣だと思いますが、果して責任をお持ちになることができるのかどうか、一つ大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  189. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 食管法関係の、いわゆるやみ米の取締りの問題でございますが、これはもう梶原委員十分御承知のような状況でございまして、非常にむずかしい問題でございます。昨年の成績を申し上げますと、この法律違反で全国の検察庁が受理いたしました人数は約四万一千ばかりになっております。そのうち起訴された者が六千余りになっております。これは主として大口のブローカーの不正取引とか、ことに集団的の悪質の輸送違反、つまり集団的のやみ屋の取締りで起訴いたしたものでございます。従来検察庁におきましては、この食管法関係の違反の検察は、主としてかような大口の不正ブローカー、集団的のやみ屋というものに重点を置いて取り締って参ったことは御承知の通りでございますが、それ以外の一般の違反はいわゆる野放しの状態でございまして、これが一般の順法精神にも非常に悪い影響を来たしておりまするし、またこの取締りの任に当ります者も、ただいまお言葉がありました通り、非常に割り切れない心持でおります。でありますから、今日の段階に参りましたならば、この罰則を改廃するという問題に今当面しているわけでございますけれども、御承知のように、これは、この管理統制の制度をどうするか、またそれを持続するとして、罰則だけはずして果してそれが維持できるかどうか、こういうような非常に複雑な問題でございまして、法務省だけではきめかねる問題でありますために、主務省とも従来からいろいろと相談をし、知恵をしぼっているわけでございますけれども、まだどうしようというような確信を持った結論に達しておらないのでございます。
  190. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 大臣の御苦心はよく了解をいたすのであります。従来は、やみの取締りについて、悪質のものとか、あるいは多量にやるものに主眼を置いて取り締るのだということを言っておられるのであります。ただ、これが悪質である、これが良質であるというような区別は、私はなかなかむずかしいと思う。しかも、やみというものは必然起るだけの私は必然性があると思うのであります。ただ、おのずから限度があって、あるんですけれども、こうなりますとですよ、その限度をはるかにやみがこえて参った。それで、取締りがあるから現在の食管制度が維持されているというわけでは私はないと思う。事実現実の問題といたしましても、ことに生産地帯においてはほとんど取締りがあるかないかわからない。それはそれでいいだろうと思いますが、それによって食管制度がそういう地帯においては維持されているわけでは毛頭ない。従いまして、今大臣お話しのように、食管制度の根本をどうこう言いますと、これはなかなか容易な問題ではありません。しかし、その面においても工夫さるべき余地は多々あると思います。ただ罰則の観点で、もう少しく実態に合った改正といいますか、これを考えるべき私は段階じゃないかと、かように思うのでありまするから、一つ御検討をお願いしたいと思うんです。  終ります。
  191. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 議事の都合により、本日は、これにて散会いたします。  明日は午後二時委員会開会いたします。    午後三時四十九分散会