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1958-03-05 第28回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月五日(水曜日)    午前十時二十九分開会   —————————————   委員の異動 本日委員内村清次君辞任につき、その 補欠として安部キミ子君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     泉山 三六君    理事            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            高橋進太郎君            岡田 宗司君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            大川 光三君            木島 虎藏君            草葉 隆圓君            小山邦太郎君            佐藤清一郎君            塩見 俊二君            下條 康麿君            館  哲二君            土田國太郎君            苫米地義三君            苫米地英俊君            林田 正治君            一松 定吉君            本多 市郎君            三浦 義男君            亀田 得治君            佐多 忠隆君            坂本  昭君            鈴木  強君            曾祢  益君            高田なほ子君            戸叶  武君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            吉田 法晴君            加賀山之雄君            田村 文吉君            豊田 雅孝君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松永  東君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  前尾繁三郎君    運 輸 大 臣 中村三之丞君    労 働 大 臣 石田 博英君    国 務 大 臣 石井光次郎君    国 務 大 臣 郡  祐一君    国 務 大 臣 正力松太郎君   政府委員    内閣官房長官  愛知 揆一君    内閣官房長官 田中 龍夫君    法制局長官   林  修三君    人事院総裁   淺井  清君    警察庁長官   石井 榮三君    行政管理庁行政    管理局長    岡部 史郎君    行政管理庁行政    監察局長    高柳  保君    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    食糧庁長官   小倉 武一君   —————————————    会計検査院長  加藤  進君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○昭和三十二年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十二年度特別会計予算補正  (特第4号)(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員の変更について報告いたします。  内村清次君が辞任せられ、その補欠として安部キミ子君が選任されました。   —————————————
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算並びに昭和三十二年度予算補正(第2号)及び(特第4号)を一括議題といたします。  昨日に引き続き、質疑を続行いたします。
  4. 森八三一

    ○森八三一君 私はまず最初総理に、おとりになっておる総理外交上の基本的まあ心がまえといいますか、態度といいますか、そういうものについてお伺いしたい。私がこういうことをお伺いいたしますゆえんのものは、昨年の春、石橋総理のあとを受けられまして、総理に御就任以来、アメリカあるいは東南アジアなどに前後数回にわたって旅行をせられまして、非常に親善に努力をされておる。一生懸命に日本の正常の立場というものを発展せしめる御努力を願っておるその御心労に対して、私は心からの敬意を表するのにやぶさかではございません。が、しかし、そういうように一生懸命に御尽力を願っておるのに、世の中ではこの実態を評しまして、よろめき外交だというような批判のありますことも、新聞紙上を通して首相ごらんになっておると思います。あるいはまた、浪人外交なんというような批評も飛び出しておりますことも御案内だと思うのです。一生懸命に御尽力を願っておるのに、こういうようないろいろの批判が加えられておりますことについては、深く考えてみなければならぬと思うのであります。これがただ単に、悪口を言うために言っておる連中言葉とか、あるいは反対せんがためにそういうような言辞を弄しておる人のごく一部の人の意見だけであるならば、これはまた意に介する必要もありませんし、何も気にとめる必要もないと思いますが、そういうような批判が必ずしもそういうような一部の人のものだけではなくて、むしろ岸外交というものに対して支持し、好意を寄せてきておったような階層に相当行われておるのではないかというように私は見るのでありまして、このことは非常に残念でもありますし、遺憾でもあるし、考えてみなければならぬと思うのであります。そういうような批判が行われますることが、今日本の当面しておる日ソの調整の問題にいたしましても、あるいは日韓関係にいたしましても、日中の問題の処理にいたしましても、まさに非常に重大な段階にあるわけでありまして、この問題を上手に適正に処理し得るかどうかということは、まさに日本及び日本民族の将来の発展につながるきわめて重大な、まさに浮沈を決するとも申し上げてよろしい重大な時局であると思うのであります。これを乗り切っていきますために、今申しまするような批判がございますることが、非常に問題をかもし出しておるのではないか。平たい言葉で申しますれば、そういうようなことが結局対外的には足元を見透かされると申しますか、そういうことにつながってきて、せっかく努力をされておるのに、その成果が十分に上ってこないというように私は見るのであります。こういうような事態に対処いたしまして、どういうような態度で今後こういう問題を処理されようとするのか。今おやりになっておる態度は、正義に基くりっぱなものだから、どんな批判があろうと、今までの態度を変えずにこのままやっていくのだ、これでいいんだ、大丈夫安心しろと、こうおっしゃるのか。国民には今申し上げますような批判を通して、どうも危なっかしい、こんなことでいいのが、こんなことで行ったんでは、日本民族はどうなるのかというような心配も私はあると思うのです。でありますから、そういうようなことに対して、今後どういう心がまえでやっていらっしゃるのか、お伺いしたい。  私は、きのうも草葉委員から、こういう問題の処理に対しましては国連に提訴したらどうだ、あるいはむしろそういうような法律的には義務を持っておるのじゃないかというようなお話もあり、十分考えてみようというお言葉でございました。これも一つ方法でございましょう。ございましょうけれども、私は何と申しましても、自分における日本現状から申しますと、国論が帰一し、国民の強力な支援のもとに進めていくということでなければ、国民総意のバツクを持って進めていくということでなければ、正しい正義を押し通すということがむずかしいように私は思うのでありますが、そういう点に関しまして、総理はどうお考えになりまするか、まず最初にお伺いいたしたい。
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 外交基本的な考え方は、言うまでもなく、私はわれわれ世界にいかにして恒久的の平和をもたらし、これを確立するかという、この命題をとらえて、これに対してわれわれが寄与し、同時にこれを実現することに努力するということにあると思う。しかして御承知の通り世界の大勢が今日いわゆる自由主義陣営共産主義陣営に対立いたしておる、あるいはその間において第三勢力と称せられるいわゆる中立政策というようなものをとっている国と、こういうふうに分れております。しかし、そのどの国も平和を望んでおることはこれは私問違いないと思う。ことに最近のごとき大量殺戮兵器が発達をし、その兵器によっては、われわれが住んでおる現代だけではなしに、その害悪が次の世代、その次の世代にも及ぶというような、この非常な危険きわまる兵器が発達しておるという状況のもとにおきまして、いかにしてこの平和を確立するかということは、各国が非常に苦慮もいたしており、われわれもこれを念願してやまないのであります。そういう際に、一体世界の平和と、こう言うが、平和というものはどういう本質を持っておるかということを考えてみまするというと、私は単に戦争がないということがわれわれの望んでおる平和というものではなくして、真に人間としてその文化の向上、福祉の向上人間としての真の生活のでき、また人間としての尊い使命の果せるような世の中が、しかも戦争なくして、戦争の脅威を受けずしてみんなが享有できるということが望ましいのである。その音意味においては、私はあくまでもこの個人の尊厳と人間の自由というものが確保される上においてわれわれが繁栄し、平和を享受するという時代を作り上げなければならぬ。一部の権力でもってただ押えつけて、そうして戦争がなければそれでいいじゃないか、非常な恐怖と何にさらされておる状況で、ただ戦争がないということだけでは、私は人類究極の安定した恒久の平和ではないと思う。  こういう意味において、われわれは自由主義民主主義というものの基本に徹して、これを実現しながら人類の幸福と平和をもたらすということが私どものとるべき立場である。これが根本考え方でありまして、それを現実外交政策の上にどう現わすかという点から考えますというと、世界のこういう国々が、それぞれの立場でもって対立しておるという場合において、これを融和し、この間における協力友好関係を進めていくということから申しますというと、私は従来、あるいはアメリカ一辺倒外交政策をとるとか、あるいは共産圏一辺倒考え方でもってこれをやっていけというような、この考え方は私はとらないのであります。すべての国々とできるだけ友好関係理解を深めていくという、それにはやはり現実というものとその国の立場、その国のいろいろの歴史的な置かれておるところの環境なり、いろいろなものというものをやはり尊重していくということでなければ、直ちに一つ考え方をもって、これが絶対に正しいのだから何でもかんでもこれを押しつけようという考え方では、私は真の平和はできないと思う。そういう意味において、あるいは今いろいろな御批判かありました、あるいは私の何に対する世論等の何もありますけれども、私は決してよろめいているわけでもない。しかしながら、世間のある一部の人が言っているように、何かの系統の方に一辺倒になれ、これが割り切ったきわめて明瞭な姿であるというふうな考え方をする人がありますが、私は今日の国際情勢現状考えるとき、日本のとるべき何はそういうものじゃない。しかし、根本はさっき言った私は基本政治、もしくは私の考えておる平和の姿というものを描いておりますから、あくまでも私は自由主義民主主義立場を堅持するものであります。その理想を同じくする人々とは手をつないで、そしてあらゆる国との間の平和と、そして協力理解を進めるところの外交方針を進めていくということに一貫しておるのでありまして、私はこれが日本として最も正しい何であり、またこれは誤まっておらないという確信に立っておるわけであります。
  6. 森八三一

    ○森八三一君 ただいまの総理の抱懐されておりまする外交上の基本的な理念につきましては、私も全く同感でありまして、さようでなければならぬと存じます。おそらくそのことは全国民の私は意思だろうと思うのであります。ごく限られた一部の間違った、ソ連を祖国と考えるような連中は別でありますけれども、そうでない限り、これは全部と申し上げてよろしい日本国民の念願であろうと思うのであります。そのことを具体化していくために、日本の当面しておる問題を処理するために、今このような態度であってよろしいのかどうかという問題なのであります。私は申し上げまするように、ごく特殊の限られたわずかな人は別でありますけれども、そうでない限り、今総理のお述べになりました外交上の基本的な理念というものを達成していこうという気持はみんな持っておる。その持っておる理想というもの、目的というものを具現するためにとるべき具体的な当面の対策についていろいろの差異を生じておる。それは結局私の感じられまするところは、国際情勢把握についての認識が違うとか、あるいは見通しについて変ったものを持っておるということから生じてくる現象だろうと思うのであります。見詰めておる目標なり、登ろうとする高ねは、これはもうお話しになった通りなんです。これはもう皆一致しておる。その究極目的を達成するため、そこに到達するためにとるべき具体的な当面の対策はとなりますると、申し上げまするように、国際情勢把握についての相違があるとか、あるいは前途の見通しに対する認識に違ったものを持っておるということで、いろいろの問題が私は派生してきておるように思うのであります。そういうことを調整せずにそのままにしてにおるところに、申し上げまするようないろいろの批判が生まれたり、非難が起きたり、そのことが結局対外的にも反映いたしまして、まあ見くびられると申しますか、組しやすしというようなことで押されがちになる。それがお話しになったような日本の大理想というものを達成するために非常な障害をなしておる、私はそう思うのであります。そこで先段にも申し上げましたように、そういうことについては目標一致しておるなれば、話し合ってみるならば、少くとも国内においては国際情勢把握が、いろいろな問題について胸襟を開いて話し合えば、目標一つなれば帰一するものがあるのではないか、それを話し合ってみることが私は当面非常に大切なんじゃないか。そこで緑風会におきましては、かねてそういうことを心配するのあまり、この際国論を統一するような意味において、超党派外交をやるべきではないかということを提唱し、政府にもその意思を伝達いたしましたことは、総理も御案内通りであります。ところが、政府も自民党も社会党もそのことを拒否はされません。同感の意を表していらっしゃるようには見受けるのでありますが、時期にあらずとか、あるいは相手がついてこないだろうとか、いろいろ他を顧みるような態度をもってこれが実践にお移りになっておらぬところに問題がありはしないか。むしろこの際、同じ日本人同士で、ねらっておる目標は今お話しになったような理念に立脚しておるのですから、これは話し合えば必ず私は一点通ずるものがあると確信する。そうでなければならぬと思うのです。でございますから、この際そういうような態度をとるべきではあるまいか、踏み切っていただきたいと思うのでありますが、そういうお気持にはなれぬのかどうか。もしそういうことでございませんと、当面しておる具体的な問題の処理にも非常な悪影響があり、多数の国民心配しておりますような一体どうなるのだという心配を払拭しかねる。これがまた疑惑疑惑を生み、心配心配を生んで、ますます日本立場というものを困難に陥れる。そうして今お話しになったような理念の達成、大理想を達成することが非常にむずかしい情勢に追い込まれていくという感じを非常に強くする。そういうようなことについての気持を私は伺いたい。
  7. 岸信介

    国務大臣岸信介君) こういう国の基本的な外交考え方、また進んでいくべき道につきまして、国民の十分なる理解を得、十分な一致した強い世論の支持というものが必要であることは、森委員お話通りであります。特に日本のわれわれの理想を達する、また日本の国情から申して、やはり日本外交基本というものが国民一致した圧倒的多数の意見でもって支持されておるということが、国際的に申しましても、各国をしてその理解を進める上におきましても、納得せしめる上においても、これは非常に必要なことである。その上から見まして、いわゆる超党派外交外交の問題については党派を超越していろいろと話し合い、一致した意見でもって進んでいくような超党派外交考えの事柄につきましては、私は理念としてはそうありたいと考えております。  それから具体的に先般緑風会の、今われわれが直面しております日ソの問題を中心とし、安全操業の問題を具体的な一つの実例として、ぜひ各党派党派を超越して、国民一致した要望を実現することに一つ協力をすべきじゃないかという御提案を、私どもも真剣に慎重にこれを承わり、これを検討いたしております。一つ考え方、形式的の考え方からいうと、議会政治というものが国会のあらゆる機会を通じて、こういうことについての各派考え方というものを十分に述べ合って、そこにお互いが反省し、お互い考えを十分に慎重に検討して、そうして一致点を見出し、一つ国会意思であるとか、あるいは国民的に呼びかける一つの形が生まれるということも、これは一つ議会政治のあり方であろうと思う。しかし、それはあまりにも形式的な考え方であり、もう少し各派において打ち解けた話し合いをし、ある一致点を見出すか、あるいは一致点ができないにしても、何かそこに協力方法を見出すような努力をすべきじゃないかというお考えが当然また出てくると思うのです。これにつきましても、今申したように、わが党としても政局責任を持って担当しており、外交のことの一切を国民にかわって責任を持ってこれを進めて、おる、政局を担当しておるわれわれとしても、十分に一つ慎重にこれは考究すべきことである。お考えにつきましては、私は、理論的に、また、筋道として、全く同意でありますがゆえに、ただ、そのやり方等につきましては、時期、いろいろな問題、方法等につきましても、私ども慎重に考究をいたしておるという段階でありまして、今日具体的に、それならいつやる、どういう方法でやるということを申し上げることはできませんけれども、御趣旨につきましては、十分にそういう意味において真剣に考慮いたしておる、こう御了承願いたいと思います。
  8. 森八三一

    ○森八三一君 大体ただいまの総理の御答弁で了承はいたしましたが、かりに世界的人類全体の要望である原水爆の実験禁止の問題にいたしましても、私は、新聞記事を通しての程度の知識ではございますが、一方の雄であるアメリカでも、これは何とか一つしなきゃならぬという考えは広くお持ちになっておるようでありまするし、ソ連の方でもそういう考えはお持ちになっておるように見受けますが、さて、そのことをわれわれが提唱いたしましても、なかなか具現しない。お前の方が先にやめりゃといったようなことで、他を顧みてものを言っておるようなふうに私は受け取れて、非常に残念なんであります。今、この超党派外交の問題につきましても、まさにそうだということで、理念的には同感の意を表されました。私は、前段にも申し上げましたように、内政上の問題等でどうしても政策上食い違っておるものをまとめようということは、これは無理だと思うのです。思いまするが、一番最初総理のお述べになったような日本外交上に持っておる基本的理念というものについては、これはもう日本人である限り、私は違わんと思うのです。目標一つなれば、それを具体化するためのとるべき対策についても、話し合ってみれば、これは一つにならなきゃうそだと私は思うのです。究極が違っておるやつは、これはどんなに話し合ってみたって一致しっこはありませんけれども、結論が一緒なれば、そこに行く道行きの問題についての具体的な対策については、話し合えば、これは日本人である限り、私、話は合うと思うのであります。  でございますので、どうぞ一つ——今、時期を明確にどうするとか、具体的にどうするということは明言しかねる、これは私もそのことはわかります。わかりますが、そういうことに言葉をかりて、いつまでもじんぜんと日を送っておるということでは、国民多数の心配しておる当面する問題の処理か私は困難になると、こう思いますので、一刻も早く政府の行う外交上の対策について、足を持って引っぱるような態度はなくなるということをはっきりやってもらいたい。このことなくしてこれは乗り切れないのじゃないかという心配を持ちますので、非常に御苦労願っておるその御苦労に対しては衷心感謝いたしますが、その御苦労が実を結ばんという危険を感じますがゆえに、あえて私は繰り返し申し上げまして、総理の善処を急速に期待するとお願いを申し上げるのであります。方向において一致だ、なるべく早くそういう時期を作ろうということでございますので、それを期待いたします。  その次に、私は、外交上の問題は全くしろうとでございますが、地方へ参りますると、素朴な農民の諸君や漁民の諸君やなんかから始終質問せられまして実は答弁にも困っちまう事態がある。それは、小さな問題のようではありまするが、また、これは大きな問題とも見るべきである竹島の問題なんです。私どもは、日本海の孤島竹島は、これはまごうことなく、われわれの先祖から引き継いだ日本の領土であると確信をいたしております。これは、サンフランシスコ条約にも何にも関係のない、放棄したものでも何でもない、全く日本国土であるというように確信をしております。その竹島に韓国の軍隊が警察か何か知らぬがやってきて、最近は何か施設までしておるという話なのであります。で、一体これはどうしたことだろう、こんなことで一体いいのか、まるきりなめられ切っているのではないかというようなことを素朴な人々は申すのであります。そこで、そういう人々が質問して申しまするのに、一体あれは外国人国法を犯して密入国しておるという姿でございますか、もし密入国という姿であれば、何も遠慮することはないので、日本国法に照らして逮捕、送還すべき筋合いではございませんか、なぜそれをおやりになりませんか、もしそれが不法密入国ではなくて、不正の侵略であるということであるなれば、これは日本の国もなけなしの国費を費して国土防衛のための自衛力を持っているのだから、その自衛力の発動をすべきではございませんか、という質問。で私は、戦後十年は経過したとは申しましても、まだ日本が対外的に侵したいろいろな問題について十分清算をされておらぬ、国によってはまだ非常な疑心暗鬼を持っておる、われわれがほんとうに平和に立ち上っているのだということについての十分理解がないために、今直ちにそういうような行動をとるということは、将来に向って日本発展を妨げる、あるいはまた、日本が孤立するという危険を感ずるがゆえに、十分考えなければならぬことだ、必ずしもそういう端的な感情に訴えたような行動というものは賛成がしかねると、こういうようなことを申しますると、それじゃ、日米安全保障条約というのは一体どうなんですか、日本国土が侵されたときには、それを一つ防衛してやろうというためにこそ存在しているのじゃございませんか、だから日本の国が直接手を下すということが非常にいかぬ、それは将来に非常な危険を残すということであるなれば、行政協定なり保障条約によっての措置をとるべきではありませんか。そいつをやってくれぬ、要請してもやらぬということであるなれば、一体条約は無価値なものになるのじゃないか。駐留軍の存在を許しているのはおかしいじゃないかといったような、これは素朴な農山村の人々の声でございますので、直ちにそれをどうこうというわけには参りませんかもしれませんけれども、多数の国民はそういう感じを私は持っているということをさまざま聞かされるのでございます。そういうことに対して一体総理はどうお考えであるのか。こういうことをそのままほうっておきますと、やはり日本外交なり、政府態度に対して国民というものは非常な不安を持ってくる。そうして、せっかく岸さんを支持している連中も、だんだんこれは頼りにならぬと、こういうことになっていく危険がありはせぬかと思いまするので、そういうことも含めて、一体こういう問題はどうお考えになるのか。竹島問題は、あれは密入国とみるべきであるのか。密入国なら、そういう措置をおとりにならぬのはどうだ。不法占拠だということになれば、これは当然自衛の手段に訴えるべきではないか。しかし直ちに日本の国が自衛行動を起すということは、国際情勢、過去のこと、将来を考えますると、とるべき当面の策ではないということはわかりますから、条約に基く措置をとるということが当然のことではなかろうかと思いまするが、どうお考えになるのか。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 竹島の問題は、われわれとして非常な遺憾な問題であり、また、これが歴史上あらゆる点から考えてみまして、日本の領土であるということは、私ども確信であると同時に、私どもは当然これは正当なわれわれの考えである、これを裏づけるべき証拠もあらゆる点においてもあると思います。従いまして、この竹島の問題を解決するために、日韓の間において従来交渉がされておりますことも御承知の通りであります。ところが、それが一向にはかどらない、また、これを国際司法裁判所に訴えて、その帰属を明確にし、日本の固有の領土として日本に返還を求めるという態度をわれわれはとって、韓国の方にそれを通告しておりますけれども、今の国際司法裁判所の制度は、御承知の通り両国がこれに承諾をしなければできない、一国だけではできないという関係になっておりまして、これも行き悩みというのが実情でございます。  一体しからば、これを一つの実力を行使して、どういう形であっても、実力を行使して、その正当なる帰属である日本にこれが復帰するような方法をとったらいいじゃないか、それは今いろいろ方法お話しになりましたが、そういういろいろな方法もありますが、私どもはやはり日韓の今日の関係をみまするというと、あるいは李承晩ラインと称せられる漁業問題を中心としての問題もあり、いろいろな懸案事項がございます。しこうして、ほんとうの友好関係が、正常なる関係が樹立されておらないという状況におきまして、この日韓の両国の百年のために何とかしてこの友好関係、正常関係を作り上げようという努力をいたしておるわけであります。そういう際に、そういう実力、どの方法であるとを問わず実力行使によってこれを解決しようということは、決して日韓の幾多の懸案事項を解決し、それとともに将来に長きにわたるところの友好関係を樹立しなければならないというこの方針からみて、そういう実力行使をすることは望ましくない。あくまでも平和的方法によってこれが解決をはかりたいということで努力をいたしておるわけであります。はなはだ、今お上げになりました、素朴だとお話しになりますけれども日本国民の私は偽わらざる心持であると思うのです。また、その背後には、当然日本のものであり、何ら韓国に属していないというのに、実力でもって韓国側がこれを占拠しておるという姿というものに対する国民が納得しないという気持をいろいろな方法によって述べられておることでありまして、私はこの国民気持は十分にこれを尊重し、しかし、今申しましたような大局的の見地から、できるだけこれを平和的に、現段階においては実力行使をせずして解決しようと努力しておる、またそれを努力をすべきである、かように現段階においては考えております。
  10. 森八三一

    ○森八三一君 ただいまの問題に関連しまして、総理の切々お話しになりました苦衷については、私も全くよくわかります。わかりまするが、李承晩ラインの問題とは少し竹島問題は性質を異にしている。これはまさしく国土が侵されておるということなんです。そこでわれわれが国民多数の諸君に接する場合に聞かれることは、国連を通して平和的な手段によって解決するということは、これは好ましいことであります。けれども、なかなからちがあかない。しかも、その不正な侵害がある場合を予測して、いつ起きるか、どこからくるか、そういうことはこれは不明でありまするけれども、そういうことがあるいは招来するかもしれぬという備えとして、日米間に条約なり協定というものが存在しておる。李承晩ラインではなくて、現実にその日本国土が侵されておるという場合に、この条約の命ずる措置というものはできぬのでございましょうかという質問なんです。そこで私は直ちに武力を発動すべしとは申しません。そんなことをやるべきことではございませんし、少くとも平和を求めておるわれわれ国民としては、あとう限りそういう機会は避くべきであるということについては当然であります。でありまするが、米国といたしましては、国土の侵されておるという現実を見ておるのですから、それに対して平和的にやはり自由国家群に属しておる李承晩政府のことでありまするので、日本との間に直接の平和的条件というものは存在をしておりませんでも、日本アメリカアメリカと李承晩政府というその関係は、三角関係を通じて私は考え得るのじゃないか、そういう手続をなぜやってくれぬのだということが国民の非常に念願しておることであり、そうでなければ条約がおかしいのじゃないかということを言い出してきておるのであります。こういう点は一体、私、外交の問題、条約の問題はしろうとでございましてよくわかりません、不勉強でございますが、どう考えたらいいのか、全く私はしろうとであるだけに、そういう質問には答えられないというのが私の偽わらない現況なんです。これはどう考えたらいいのか、またそういう問題についてどう処理していこうとお考えなのか、お伺いしたいのです。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 竹島の帰属の問題は、われわれは当然日本の領土であり、またこれを歴史的あらゆる史実でもって証明するところの何を持っておりますけれども、これに対して韓国側は、やはり韓国側の領土であるということを主張しておるわけであります。従って、領土問題について両国の間に意見を異にしておる。こういうはっきりですよ、たとえば日本の領土として領土を不法占拠するのだ、日本が何かしておるからおれの方でこれを占拠するのだ、あるいは日本人を追っ払っておれの方で何するのだというふうな、向うも日本の領土権を認めて、そうしてこれに上ってきておるという性質のものじゃなしに、両国の間に争いになっておると思います。それだから、それを判断するものは何かといえば、国際的にいえば国際司法裁判所の判決がなければならぬと思います。アメリカに訴えて、アメリカ自身がそうだとか、どっちに属しておるものだということを裁決するという性質のものじゃなかろうと思います。従いまして、今日すぐ安保条約上の義務としてアメリカにこれを要求するということは、私は適当でないと思います。もちろん、私はアメリカが極東の平和を望み、また韓国に対しても、日本に対しても、それぞれこの間の平和であるべきことを望んでおるということは当然でありますから、そういう意味において何らかの形においてあっせんをするとかいう性質のもの、両国から頼めばそういうことはできると思いますけれども、しかし、安保条約の規定でもってこれをなにするということは、かりに国際司法裁判所の判決があって、日本の領土だという判決が、帰属がはっきりした、しかるになお依然として占拠が行われておるということになれば、あるいは私はある程度の実力も用いなければならぬということになるかと思いますが、今日においては、とにかくわれわれは当然ちっとも、これは日本のものであるというそれはあらゆる点から疑いを持たないのですけれども、とにかく係争になっておるという、領土権の係争になっておるということの、国際的に見まするというと問題だろうと思う。そういうところで直ちに安保条約を発動するということは、私は適当でない、こう思っております。
  12. 森八三一

    ○森八三一君 竹島の帰属が、日本では当然日本のものだと確信をしておるし、向うさんの方でもおれのものだと言っておる、そこに問題があるということですが、あれは李承晩ラインというものの中へ入るから、そこから帰納的に韓国の領土である、こういうことになっておるように私は思うのですが、そういうことではなくて、李承晩ラインとは別に、あのもの自体が歴史その他がらいって、向うの方では韓国の領土であると主張しておるということでございますれば、今お話し通りだと思うのですが、私は、李ラインからきて、その中へ入ってしまうからおれのものだ、こういうような主張のように、私は間違っておるかもしれませんが、理解をしておる。ということでございますると、ただいまの御答弁では、李承晩ラインというものが問題に出てくるということになるので、それじゃおかしいのじゃないかという気がするのですが、その辺はどうなんでしょうか。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 詳しいことは外務省の事務当局から従来の沿革もありまして、お答えした方がいいが、私の承知しておる限りにおいては、李承晩ラインとは問題なく、竹島の問題を日本考えておるし、向うも考えておるように承知しております。なお、経過等につきましては事務当局から。
  14. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいまの韓国側の主張といたしましては、この竹島の問題は李承晩ラインとは全然関係のない問題であろうと考えております。しいて、これを何か関係づけますとしますると、一九四六年でございましたか、占領時代に行政権の分離のメモランダムが出たことがございまして、当時日本の本土とこれらの島が行政上分離されたことがございます。しいて、何かそういうつながりがありますとすれば、そういう点が関係してくるのではないか。しかしながら、この行政権分離の覚書にもはっきりうたってありますように、これは一時手続上と申しましょうか、行政だけを一時分離するものであって、日本国の領土の問題とは何ら関係ないということをはっきりあのメモランダムにはうたってあります。
  15. 森八三一

    ○森八三一君 竹島の問題につきましては、そういう国民の声があるということを十分心にとめていただきまして、急速に何らかの手を打って解決ができまするように希望をいたします。  それから、その次に総理にお伺いしたいのですが、総理非常に明晰な頭を持っていらっしゃいますし、官界におきましても、政界におきましても、多年の経験をお持ちでございますので、国会等における御答弁につきましても、きわめていんぎんであり、詳細をきわめてお答えになっております。まさにそつのないという新聞評通りでありまして、このことは非常にけっこうだと思うのですが、どうも私の聞き方が悪いのか、お答えになっておることで、質問者の質問に十分お答えになっておらぬという場合がしばしばあるんではないか。それは上手に詳細にお話しになるので、話術に魅惑せられてしまって納得してしまうということであるかもしれませんが、どうもそういうきらいがしばしばあるようであります。これはうそを言っていらっしゃるということではないが、非常に話上手でそういうことに巻き込まれてしまっておるということがあって、どうも言いっ放し、聞きっ放しということで、結論の出ていないことがしばしばあるように思うのであります。小さなことはけっこうでありまするが、大きな問題につきましては、これははっきりして置く必要があるんではないか。  そこで、まず第一にお伺いいたしたいことは、最近の例で申しますると、三十日の本会議で、総理の施政方針演説に対しまして、各会派の代表の諸君がそれぞれ御質問を申し上げました。それにお答えなすっておるその一つに、原水爆実験禁止の問題に関連して緑風会の石黒議員から御質問がありました。そうしてその結論として、どうしてもこのことは一つ早急に全世界がそういう気持になってやってもらうようにしなければならぬ、その一番被害を受けた体験者は日本なんだから、日本国民が強く主張するということが一番よろしいのだ、ところが立教の総長を英国に派遣せられまして、いろいろ懇談をした結果お帰りになっての報告では、どうしても科学的にこれが人類の将来に遺伝的に非常な悪影響を及ぼすものだ、こんなことをやっておったのでは人類の滅亡になるということを、そういう面から立証をして、これを訴えていくということが非常に大切なんだ、そこでそういうような科学的な、あるいはその他の実験をいたしまするのには、日本の国に蚕という一年に数回飼育ができて、そういう実験をするにはきわめてふさわしい存在があり、その飼育には多年の技術を持っておって世界に冠たるものがある、これを利用することが一番いいということで、総理もそういう話をしばしばあっちこっちで受け売りをされておるが、一向そのことが進まぬじゃないかというようなふうの質問がございまして、それに総理は科学技術の振興につきましては、現政府の五大政策一つに取り上げておりまして、その一環としてこのことを強くやっていく所存でございます、こういうようなふうの意味の御答弁であったと私は記憶しておる。ところが昭和三十三年度の予算をひもときまして、今われわれが審議しておる予算を通しまして、そういうものがどこにも出ておらぬと私は思うのであります。そこで私がそう感ずるたけではいけませんので、これは事務的な問題でございますございますから関係の方面に伺いますると、予算は要求しました、七百万円とか何とか要求したが、全部これは一萬田さんのところで切られてしまってございません、ただ科学技術の振興はたくさんの費用がございますから、そのうちで考えるのだ、ということは、すらすら考えられるでしょう。けれども具体的に事務当局が提案をしておる事項というものは全部ぼつになってしまっておる。こういうことではせっかく総理がそうお考えになっておりましても、その総理のおやりになろうとする意思というものが具体的な予算を通して具現されておらぬ、こういうことになってしまって、端的に申しますれば、調子のいいその場限りの答弁をされておるということになってしまう。これでは総理の志と食い違ってくるので非常に残念なんです。これは一体どうお考えになるのか、実際おやりになるのか、おやりにならぬのか、やるとすれば一体具体的にどうお考えになっておるのか。おそらくそういう御意思で進んでいらっしゃるとすれば、予算編成の過程におきましても、当局に対して御指示をなすったはずだと私は思いますが、どういうふうにこれは受け取ってよろしいのかとお伺いしたい。
  16. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お話通り、このことにつきましては、石黒委員から公けの席においてのお話もありましたが、その前にお話がありまして、従来あります蚕糸業の試験場の研究、それから原子力のそういう遺伝に対する研究というものを事実上連絡をとり、結び合わして、従来ある予算を使って、そうしてある程度の実績を上げるように実は処置を——従来予算のなかったときにそういうことをいたしております。今度の予算につきましては、私はやはりそういうものを明確に出したらいいだろうという考えを持っておりました。それで事務当局の方からそういう請求をしたのでしょうが、最後の決定においてその項目が落ちておるということでありますが、今回のいろいろな科学技術に関する研究費の増額等によりまして、従来やっておる方法で—一その項目はそれに特筆しておる、それだけを特記しておる予算というものは落ちておりますけれども、従来やっておる方法においてこれを強化してやるだけの一般的の費用がふえておる、これを使って各関係の試験場、研究所等においての研究を進めて参りたい。  実は科学技術の問題につきましては、私ども内閣一つの審議会を置く、強力ななにを置くつもりでおります。そうしてこの問題に限らず、従来別々にやっており、その連絡をとるならば、十分目的が果せるような問題、特に目的をはっきりさして、それに協力させるというような試験研究の題目等につきまして審議会できめて、そうして連絡をはかっていきたいという考えのもとに、そういうものを今度内閣に置くことにいたしております。これにおきまして、私は現在われわれが持っておりまするところの予算の現実の利用の上におきまして、十分にその目的を達するように運営をいたして参りたい、さように考えております。今お話しのように、それが特記されておるものが落ちたことにつきましては、いろいろな関係がありましょうが、非常に残念でありますけれども目的は十分に達するようにいたしたい、かように思っております。
  17. 森八三一

    ○森八三一君 この問題はほんとうに国民的な念願の問題でありまして、今お話しのように、予算は非常に活用の方法によってはどうでも私は説明ができると思うのでありますが、しかし一たん予算が編成されるときには、やはり積算の基礎がありまして組み立てられておるということでございまするので、それは財政法等の命ずるところによりまして、流用等できる範囲はございます。ございまするけれども、組まれている予算というものはきちんと基礎から組み立てられておるのでございます。ございまするので、今お話になったように、気持の上では、十分お考え願っておるとは思いまするけれども、積算の基礎からはずれておりますると、これはなかなか総理がそうお考えになっておりましても、下の方ではそうはなりかねるというのが予算運営の実態だと思うのであります。なかなか大蔵省の査定におっこちてしまったやつは、それをやろうということに参りかねるのが官僚機構の実情だろうと私は思うのであります。そこで、流用その他含まれておる予算の中でやるとおっしゃってもなかなかできない。しかもそれは国民全体の非常に大きな要望であるということでございますれば、これは今ここでどうしていただきたいということは申し上げません。これはあまりに事務的なことで総理には申し上げませんけれども、その気持というものはこれは厳重に一つ施策をしていただきまして、一刻も早く国民的念願である原水爆の実験禁止が、このことが科学的な実証をもって堂々と世界に訴え得る基礎を世界に確立していただきたいということを強く要望しておきます。  それと同じような意味におきまして、私はさらにお伺いいたしたいのですが、やはり石黒議員が非常に心配せられまして、これはまあ総理だけじゃない、全国民が選挙の公明を期するということを念願しておる。そうでなければ、民主政治の正常な発展はございませんので、これは当然なことでございます。そこで、何とはなしに来年の二月二十六日に衆議院議員の任期が満了する。それでいろいろな関係で都合が悪いので、年内に選挙があるだろう。総理も年内に選挙はあるということを非公開の席でおっしゃっているようであります。それが四月でございますのか、あるいは九月でございますのか、何月というのかわかりません。わかりませんが、どうやら四月ではあるまいかというような空気が、きょうの新聞にも昨日の閣議で予算は大体成立する見通しがついた、それに関連する重要法案を通すことが先決の問題なんで、これが当面する国民要望だ、そのことに一番専念をするということをおっしゃった。そういうような話し合いがついた。そこでまあ四月解散なんということはなくなったように思う。ところが、新聞記者の諸君が川島幹事長に、それでは四月選挙はありませんかと、こう聞くと、そいつはわからぬよ、こういうような表現をなされておると新聞は伝えております。そうなりますと、その選挙というものがやはり早急に行われるのではないかということを考えるのは人情の常だと思うのであります。そういうことからいろいろと選挙運動が行われておる。批判する人は、衆議院議員選挙はもうすでに中盤戦に入っておると言っている。しかもそのことが牧野法相のもとに行われましたあの政令特赦でありましたか、政令大赦でありましたか、そういうことはわかりませんが、そういうことによって選挙違反が葬り去られた。今度も御成婚ということのチャンスにそれが行われるのではないかということを期待をして、もうあけっぱなしでどんどん違法行為が積み重ねられておるというのが現状である。しかも新聞紙もそういうことをとり上げて批判もいたしております。そこで石黒議員がそういうことがあっちゃ大へんなことである、だから、今度の御成婚にはそういうことを含ませないのだということをはっきりすべきではないかと質問をされました。これに対する総理の御答弁は、速記録を見てみますると、ややそういうにおいが出ておるように承わりまするが、唐澤法相の御答弁は、過去にはそういうことがなかったという過去の説明をされただけで、今後積極的に起きてくる問題について取り組まれることの心がまえについてはお示しになっていない。ただそういうことがあっちゃならぬから、取締りを厳重にするということをおっしゃっております。おっしゃっておりまするが、御成婚に関連する特赦なり、大赦なりが選挙違反を含めませんということを一つもおっしゃっておらない。おっしゃっておらぬことは、結局今、申し上げましたように、選挙の問題につきましても、重要法案を通すことか大切なんだと、こう言ってらっしゃるけれども、幹事長に新聞社の諸君が、それじゃ四月にはないかというと、そいつはわからぬよと、こうおっしゃっているのと同じ意味に通ずると私は思うのです、気持の上では……。取締りを厳重にするという言明はありません。だから、帰納的にそういうことはなかろうということになるはずでありまするけれども、何ならば、はっきり含ませませんよと、こう言明なさらぬといかんと思う。言明なさらぬとすれば、これは少しはゆとりがあると思う。そのときに、含ませるということになればいいということになるので、大っぴらに忌まわしいことが行われているということは、実に残念なんで、ここではっきり、岸内閣が存続する限り行政上の措置として、皇太子様の御成婚がございましても、その際における措置としては、いかなる方法であろうとも、特赦であろうと、大赦であろうと、どういうことでございましょうとも、それを対象にしないということを明確になさいますることが、選挙の公明を期するゆえんであり、総理が始終念願として言われている民主政治の確立を期する根本問題だと思うのでございますが、その御言明をいただくことができませんか。できませんといたしますれば、やはり国民はその次にくることの期待を私は持つことになると思いまするので、その辺のお気持をはっきりと一つお伺いをいたしたい。
  18. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 将来の問題でございますので、おそらく今日明確に、どうするんだという方針を明確に言うということは、その地位にあるものといたしましては慎重ならざるを得ないと思います。しかし私が議場において申し述べました通り、こういう問題はきわめて慎重に扱うべきものであり、過去の実例というものも十分に考えなくちゃならないし、また今日そういうことを見越して選挙違反であるとか、あるいは次に行われるべき選挙において選挙違反というものが堂々と行われるというようなことがあるならば、これは断じて許されないことであることは言うをまちません。従いまして、私としてはそういうことを厳重に取締る、そういうことのないことを期さなくちゃならない。そのために今日森委員お話しのように、明確にそういうことを言うておくことがいいんじゃないか、こういうお考えにつきましても、私は十分に了承するのです。しかし、今申しますように、将来の問題であり、いつであるかということが今日われわれがこれを明確に言うこともできない現状におきましてその方針を今日においてはっきり言えと言われることは、私は責任の地位にあるところから申しますと、明確に申し上げられないということを申すのでありますが、しかし十分に私はその質問される趣旨、並びにお考えというものに対しては、私自身としては十分に理解もしておるし、そうして、そういうことが公明なる選挙を行う上において今日の実情から言って望ましいんじゃないかと言われることにつきましても、十分に一つ考えて、善処したいと考えております。
  19. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連して。先ほど森委員から、蚕を使って放射線の障害についてやりたいと、それに対しての予算の問題について御質問があったのです。それに対して予算請求の過程においては費目を明記して要求したが、結局は削られた。それでこの予算作成の過程を見れば、だれでも、政府はこれはそういう予算に対して反対なんだと、こういうふうにやはり一応とるわけです。ところがそれに対して総理大臣から、そうではない、科学技術研究という大きなワクの中から使うつもりだと、こういうふうに先ほどおっしゃっている。しかしこれは総理がそうおっしゃるだけでははなはだ心もとないわけです。ほんとに使うつもりであれば、何もこれは削る必要がないわけです。なるべく予算というものは明確にしておけばいいわけなんです。だから、その点、大蔵大臣はどういう理由で削ったのか、明確にしてほしいと思います。やはり、そういうことに対しては予算を使わないのだ、こういうつもりで削ったのかどうか、はっきりしてほしい。
  20. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えをします。この科学技術振興費に関する予算でありますが、これは御承知のように、昨年度におきまして原子力の予算を中心としまして大幅な増額をいたしております。原子力で六十数億の増加に昨年はなっております。この上に本年度の増加であります。本年度は科学振興に関連しまして三十五億の増加になっておると思いますが、これは今回は主として一般の研究費に充てる。科学振興と言いましても、これは、単に非常に高価な物を買い入れるということが必ずしも科学振興の基盤になるというものでもありません。この点につきましては科学技術担当の大臣、委員長ともよく相談をいたしまして、三十二年度の予算につきましては、そういうような費目を削ったということ、むしろそういう方の要請に応じまして、これについては、ほとんど私どもとの間に意見の相違もなくして、すらりと、むしろ原子力委員長あたりに感謝されておる状況でございます。今ここで、どういうふうに、それならその予算が具体的になっておるかは、必要がありますれば、主計局長から説明させてもよろしゅうございます。
  21. 亀田得治

    ○亀田得治君 大へん不明確ですが、質問者もその点を指摘しておるし、総理大臣も特記されていたものが削られておることを認めておるのです。今、大蔵大臣のお話を聞くと、どうもそういうことがなかったように、そういう関係のものが非常にどんどん認められて、そうして大いに感謝されておるようにおっしゃるのですが、一体、大蔵大臣は特記されて要求されたものの扱いというものが、どういうふうになったのか、十分御存じなければ、一つ事務当局からでも、その点をはっきりさせてほしいと思います。
  22. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この予算の折衝、編成につきましては、これは大蔵大臣が一番よく承知いたしております。むろん原案、あるいは行政長官としましては、それは希望としてはいろいろとあったと思います。しかし、これは三十三年度の予算の歳出総額がすでに一千億というワクがあるのであります。これがやはり全体の行政運用を考えなければならないので、希望通りにいかないことはある。しかし問題はそういう希望の中で、どういうふうに他との関係においても認められ、そうして三十三年度にこういうふうな施設をすれば、大体よかろうという責任者の考えで、大体これでよかろうということにきまっておるわけでありまして、これは総理大臣もいろいろとまた御希望はありましょうが、具体的の数字については、今私が申したのが間違いない。
  23. 亀田得治

    ○亀田得治君 外ワクの話ばかりを大蔵大臣されるので、はなはだ不明確ですが、一体、質問者から出されておる課題についての予算ですね、これは幾らの要求があって、そうしてその費目は結局削っておるが、そういうものは全体の科学技術関係の費用から出して行く方針だというふうに総理がおっしゃてっおるのだが、出すというのは一体どの程度出すのか、具体的にその点だけ聞きましょう。幾らの要求があって、そうして、たとえば一千万円とか要求があって、それに対して費目は削ったが、五百万円、あるいは要求通りに一千万を使う予定だとか、具体的にお話を伺いたい。あるいはそういうものは具体的にないのならないと……。
  24. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ですから、必要ならば、私も今一々は記憶はいたしておりませんから、主計局長から表をもってお答えをいたさせます。
  25. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) お答えを申し上げます。蚕糸試験場につきましては、三十三年度予算が三億三千五百万円という金か入っておるのであります。それ以外に、農林省には御承知のように農林水産技術会議というものがございまして、新規のいろいろのテーマにつきまして、各試験場関係からの申請と申しますか、申し出を全部優先順位で取捨選択いたしましてまた個々の項目について割当をいたすのであります。その金は三十三年度におきまして、技術研究で九千二百万円、事業用機械器具購入用として一億一千七百万円であります。この両者につきましては、農林水産の研究のテーマごとに非常に多くの要求があるのであります。そのうちから、査定の際におきまして御相談いたしまして、ある程度の大ざっぱな見当をつけまして、示されました具体的の線につきまして、さらにそのワク内におきまして、各試験研究機関並びに農林水産技術会議に相談しまして、きめられるわけでありますから、ただいまお尋ねの点につきましては、そういうような過程を経まして、適当な額が割り当てられるというふうに承知いたしております。
  26. 森八三一

    ○森八三一君 ただいまの問題は時間がありませんので、私も数字をあげて質問をしようと思っておりましたが、それはいずれ分科会なり、あるいは一般質疑の際に、さらに具体的に承わりたいと思いますので、十分一つ御準備を願っておきたいと思います。ただいまお答えのような融通無碍なんということは、私は予算の性格ではない、きちんと一々の理由を示して、これは認めよう、これは認めない、こうなっている。ただ、つかみもある程度あると思いますが、それでは問題にならぬ。総理意思を体しておらぬ、こう思いますので、いずれ他日の機会に追及したいと思います。  それからその次に、今お話になった御成婚のことですが、これは先のことだから今明確に言えぬ。これは建前としてはそうだと思います。しかし、そう総理は弱気をお出しにならぬでもいい、岸政府はまだ相当続くと思うのです。また、そういうふうに努力なすっているわけですから、もう御成婚が十年も十五年も先でないということは、これは良識でもわかる。自分が政権を担当せぬときのことまで言うのは、これはちょっと僣越でございますから、いかがかと思いますが、あなたがおやりになっているときに、そういうチャンスがありとすれば、そのときに自分はこうだ、これくらいのことはおっしゃっても、私は決して先のことを予言して、かれこれと言うことでなくして、それはできるのではないか、そのことが、やはり今同感とおっしゃる趣旨を達するゆえんと思いますが、いかがですか。
  27. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私としては、なるべく御趣旨に沿うようにしたいと思います。
  28. 森八三一

    ○森八三一君 今のことを押し問答してもいけませんので、私は総理の今の御答弁は、総理政局を担当せられている限り、私の希望いたしますような措置をするということであると私は了承いたしまして、この質問は一応この程度にいたします。  その次に、やはり同じような問題で、いつですか、田村議員が二院制度の問題で質問されました。これに対しまして、総理は、両院の構成が逆になるというと、確かにお話通りに、国政の運行が渋滞しては困ります。だから、そうならぬように、自由民主党が両院において多数を占めるように努力をして、そういう困難が巻き起らぬようにいたしたいと思います。その御希望は私よくわかります。党人として、総裁として、これは当然のことだと思うのです。しかし事態の変遷によって、そうならなかったときにどうするかということは、これはやっぱり政治家としては十分心しておかなければならぬ問題だと思うのであります。そのときに混乱ができたから仕方がないということでは、これは済まされぬことでございますので、考えなければならぬことが一つ。  それからもう一つの問題は、そういうような両院の構成が逆になったということではなくて、最初に示された憲法草案では一院制度であったものを二院制度にしたという、そのいきさつ等から考えまして、両院はそれぞれ異なった性格を持っておるということも、これは明確なところであろうと思うのであります。そういうような異質性というものをどう考えるか。そこで総理は、それに対して、議員というものが選挙で選ばれてくるという現行制度のもとにおいて、その構成が政党化して行くということは必然なことであってやむを得ない、ここまでは答弁されております。がしかし、そういうことの結果として起きてきたその構成の上に立つ二院制度の異質性というものを、どう考えて行ったらいいかという点については、速記録を見ますと、お触れになっておらぬ、田村委員は、おそらくそこをお聞きになっておると思うのでありますが、これは非常にむずかしい問題です。むずかしい問題でございますが、どうお考えになるのか、私は日本の憲法に二院制度を持っておるという建前から申しまして、もうこのあたりで、こういう問題についてはっきりしておきませんと、他日混乱が起った場合に非常に私はマイナスになるという危険を感ずるのでありますし、そういうときが何となしに刻々近づいてきておるというような心配を持つあまり、この点につきまして、もう一ぺんくどいようでありまするが、総理の所信をお伺いいたしたいと存ずるわけであります。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 両院制度が置かれておる、これは言うまでもなく一院制度の行き過ぎということを、さらに他の良識をもってこれを是正するという趣旨が、日本の二院制度の基本考え方であろうと思います。ところが、その選挙の方法によって両院がおのおの構成される、これは民主主義考え方から言うと当然の考え方でございますが、同時に、そのことが政党の発達とともに、私が申し上げたように当然選挙というものに出てくる。そして政党が発達して二大政党がおのおの成長して行くということになりますというと、これに属する人が選挙において選出されるという結果になることも、これは必然であろう、また、日本におきましても、この新憲法の後において十年の経過をいたしまして、そういうことがただ必然であるとか、あるいは抽象的に一つの懸念ではなくして、現実の問題として、だんだんその事実に現われつつあるということも御承知の通りであります。そこで、どういうふうにこれをして行くかということは、実は憲法調査会におきましても、いわゆる憲法改正を言っておる一部の人におきましても、この点に触れての議論がございます。また、現行の選挙制度の検討においてもこの両院の構成を、今言ったような同じような構成になってしまいますというと、これまた同じことを二度繰り返して同じようにやることが一体必要であるかどうかということになりましょうし、また、選挙でございますから、今、森委員お話のように、構成がもし逆になったという場合においては、国政が運営できないというような形になりましょうから、そこでどうしても二院制度の何から申しますというと、何かここに二大政党であっても中立的な考え方、どちらにも属さないような構成が作られんかというような問題が必然に、二院制度の将来を考えますと、起ってくるわけであります。しかし、それには今お聞きのように、選挙を用いずして、ある程度の構成を、院を作るということであれば、今言った選挙に必然的に現われる政党の勢力というもの以外の考えが入ってくる。しかし、それが今の憲法では、もちろんそういうことは考えられないわけであります。憲法改正の問題になります。また、現行の選挙法等を見ましても、そういうような構成を変えるという趣旨から、おそらく衆議院の方の選挙区ではない、大きな全国区というような制度が設けられて、これをもって、一つ全国的な国民的信望を得ておるような人、また、衆議院議員とは違った構成ができるであろうということが考えられることであると思います。しかし、実際に全国を全国区というふうな考え方現実にやってみますというと、ことに地理的に申しましても、また人口の構成の上から申しましても、選挙というものの本質から見ますというと、こういう大きな選挙区であるということが、一体選挙民の意思を反映する上において適当であるかどうかということで、いろいろ実際問題としては問題になるだろうと思います。そこで選挙区をどうするか、あるいは選挙法をどういうふうにするかというような、現憲法下において選挙法の問題としても考究すべき問題があると思います。いずれにしましても、私は二院制度というものの置かれた本質から見て、やはり将来のことを考えて、今、森委員お話のように、そういう点からこれを検討いたしてみたい。今結論的にどうしたらいいかということは実は重大な問題でございますので、私自身がまだ十分な結論を持っておりません。各方面の御意見を十分に聞いて、そして二院制度の円満な運営のできるような方法一つ考えたい、こう思っております。
  30. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連して。総理答弁を承わっておると、この問題に限らないで、何か評論家か解説者のお言葉のような点が非常に多いわけです。結論を持っておられなくても、少くとも一国の総理としては、あなたのお考えを、もう少し、こういう問題については打ち出していただきたい。そういう答弁要望いたしたい思う。その意味において、私はあなたが結論を持っておられないとすれば、あえて結論まで求めませんが、もう少しあなたのお考えをお答えいただきたい。そういう立場で伺いますが、それは三つ内容があるのですが、その一つは、選挙法改正で問題を考えようとしておるのか、あるいは憲法改正ということで問題を処理しようとされておるのか、それとも両面で行こうとされておるのか。こういう点と、それから、承わってみると、二院制度下における第二院には面党というものを否定する、ない方がいいのじゃないかというような底意があるかのような発言もあるわけです。その点についても私はお答えをいただきたい。それは、この民主政治は政党政治でありまして、私は健全なる二大政党が一国に成長して行くということは非常に必要なことだと思う。二大政党になっておれば、両党とも組織を大いに拡大して、すべての国民を、それぞれ自分の信ずる政党人となるように社会教育をやって行くということすら大事だと私は思う。こういう考えに立っているのであって、二院制度下に第二院に政党人がおっても、私はその政党は、二院制度下における第二院をいかような眼で見ておるか、また議員個人個人が、第二院に席を置くものとして、いかような心がけで現存するかということによってきめられることでありまして、二院制度下において、第二院に政党人がおってはいかん、政党というものを否定する方向にいくのがいいのだというような見解は、私は少しおかしいのではないかと思う。そういう点についての総理答弁が本会議においてもここにおいても、やや不明快で、聞き方によりますと、第二院には政党は否定される方がいいのではないか、それから引き続いては選挙法の改正とか、あるいは憲法改正による推薦制とか、いろいろの点をお考えになっておるのではないかというような点が推察されますので、その点明快でありませんので、結論を持っておられないとするならば、あなたの御見解をもうちょっと、せっかく質問者が質問されておるのですからお漏らし願いたいと思います。
  31. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今の第一の点は私は、憲法改正に関する、憲法全体を検討しておる調査会も現在行われております。ここにおいて参議院の構成や、参議院のあり方というものは、憲法上の問題として当然研究をされ、論議されて、結論が出てくるべきものであると思っております。また選挙法も、これは当然現在あります選挙法として、二院制度の参議院のあり方として、適当な選挙法であるかどうかということは、これは選挙法の問題として、私は当然検討すべきことであって、どっちをやるという性質のものではない、両方ともやるべきものであると、こう考えております。  それから私は決して参議院に政党が入るということはいかぬ問題であり、政党人はいかぬということを申したつもりはありませんし、そういう考えは毛頭持っておりません。ただ二院制度の本質からいって、全然衆議院と同じことであるというために、ただ同じことを繰り返してやるというだけが結論になるということは、私は二院制度の本来のあり方ではなかろうと思う。それで政党心というものが、選挙でもって出る以上は、政党が先ほど申し上げるように成長してくるというと、どうしてもこの衆議院の構成と参議院の構成というものがほとんど同一になってくる。もちろん各参議院議員としては、自分はたとえ自由民主党に属しておろうと、あるいは社会党に属しておろうと、自分は参議院議員としての職責上、たとえ党議であろうが何であろうが、自分は別個の考えを持ってやるという方が、それはあるかもしれませんし、またそういうことをお考えになるということは、私は大いに尊敬すべき見識であると思います。しかし同時に政党としてわれわれが一つの民主政治を運営していく政党の本質から申しますというと、やはり私は政党として責任を持ち、何するということからいって、同じ政党に属しておる人が衆議院においてはあることを主張し、参議院議員であるということで全然反対の立場をとって反対するということは、私は、事実問題としてはこれはなかなかできないことであります。政党の性質から見て、そういうことは決してまた望ましいことでもないと思うのであります。そういう点を考えてみますというと、私は決して参議院に政党が入ることはけしからぬとか、政党人はいかぬということではありませんけれども、二院制度にするという性質からいって、同じことを繰り返すとか、あるいはそれが一部で心配されておるような反対の構成になって運営ができなくなるというような形になることをなくするためには、何とか構成について憲法上あるいは選挙制度の上において、十分一つ検討しなければならぬじゃないかというのが私の考えでございます。
  32. 高田なほ子

    高田なほ子君 選挙制度の問題で御質問がありましたので、関連して伺いたいと思います。民主政治の原則を打ち立てるためには、選挙の方法が公正に行われなければならないということは、私当然のことであろうと思う。こういう意味森委員の御質問があったと思いますが、衆議院の解散前に、すでにいろいろの選挙運動らしいものが行われており、しかもこれは、御成婚に対する特赦というものが若干頭の中にあって、遺憾な姿があるのではないかという御質問、これに対して岸首相は、つとめてそういうことのないように努力いたしますという努力目標だけを御答弁になったように思いますが、今日こういう状態が批判されているときに、首相の御答弁は非常に大きな政治的な役割を果すのではないか、つとめて努力いたしますというのではなくて、公明選挙を期すためにかくなければならないという政治的な信念というものを、的確に御表明にならなければならないと思います。再度私は、努力いたしますということではなくて、断乎としてこの問題を排除する、決して私は罪人を作るということをおすすめ申し上げているのではありませんけれども、あまりにも目にあまる問題が多く、婦人団体の多くは、この問題で非常にひんしゅくしているのです。これにこたえるためには、再度首相の政治的な、的確なる信念を御表明いただきたいと思うのです。
  33. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど森委員にお答えをいたしましたことが、私の現在考えている全部でございます。それ以上のことを申上げることは、この際私にはできないということをお答えいたします。
  34. 森八三一

    ○森八三一君 二院制度のもとにおける参議院のあり方につきましては、総理気持はよく了解できます。憲法の命ずるところをどうするかというような根本的な問題もありますれば、あるいは選挙制度そのものについて、自主性の発揮できるような制度上の問題として考えていくということも、一つの方向であろうと思いますが、なかなかこれはむずかしいことでございます。そこで私は総理にお伺いするのじゃなしに、自民党の総裁という立場一つお開きしたいのですが、お話がありましたように、政党である限りは、一つの主張というものに党員が拘束されるという姿でなければ、政治の運営上非常に困る、これはわかります。わかりますが、二院制度の本質をみだるということの方が、これはより多く国家的にマイナスを招来するのではないか、こう思うのであります。そこで選挙ということを通して議員が出てくる、それが政党をバツクにしなければ、戦い上非常に不利であるという現実を無視するわけにいきません。でございますから、そういう姿で構成されている現実に即して、同じ政党でありましても、衆議院の場合と参議院の場合とは、運営上、党規ということについて、何らかのゆとりを持たせるということが、私は当面の救済策じゃないかと、こう思うのであります。将来の問題、根本的な問題としては、憲法の本質をどうするかということも、これは大いに研究してよろしいと思います。選挙制度の問題についても、十分研究したらいいと思いますが、私は選挙制度の解決だけは、問題の解決ということは非常にむずかしいのじゃないか、こう思いますので、憲法改正になりますと、そう簡単にはいかぬ、こう思う。ですから、そういう間における救済策としては、政党の運営の方に何らかの考慮を払うということが、せめてもの当面の運営とは思いますが、そういうふうに一つ考え願う。総理に対する質問じゃなくて、総裁の立場でどうお考えになるか。
  35. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お話通り、これはわが党においてもそうであるし、むろん社会党の方においても、従来いろいろ国会対策上の問題等において、私が折衝いたしました限りにおきましても、やはり参議院の本質上、ある程度という言葉は適当かどうかしりませんが、ある程度の独自性、特に議事の運営であるとか、あるいはおのおのやはり政策につきましても、大きな政党としての基本的の理念や、あるいは大きな政策は別といたしまして、具体的の問題につきましては、ある程度の独自性をもって研究し、意見を述べるというふうに、これは両政党とも、私は現在の運営がそうなっておると思います。またそれは、現在の構成のもとにおきましては当然考えていき、そういうふうにして両院制度の本質をできるだけ生かしていくということに努力をすべきものであると思います。
  36. 森八三一

    ○森八三一君 その次に、大蔵大臣に数点お伺いいたしたいのでありますが、もう時間がございませんので簡単に要点だけを申し上げてお伺いしておきます。一昨日の新聞でしたか不要不急物資の輸入をやるのだ、これは外務省の方から大蔵省に外貨の割当について特別のワクを、何か四千万ドルですか、何か設定をするというような記事があったのです。その記事の中に三十一億五千万ドルですかの三十三年度の輸出は、今の推移をもってすれば、これはまあむずかしい、だから不要不急物資を輸入すれば、その身がわりにバーター的に輸出が伸びると、そこで三十一億五千万ドルという輸出目標を達成することが可能になると思われるから、不要不急物資の輸入をやるというようなことが新聞にあったのです。これは新聞記事ですから、それを直ちに信用するというわけにも参りませんけれども、あの記事を通覧いたしますると、政府部内でそういうことが話題に上っておるということは、これはもう否定ができぬと思うのです。といたしますると、三十一億五千万ドルの輸出というものは出発前にすでに崩壊をしておるというような心配が持てるのですが、三十一億五千万ドルというものについて確信が持てるのか、そういう不要不急物資の輸入までやらなければいかんという情勢なのか、これはどういうことなんですか。非常に危惧の念にかられておりまするが……。
  37. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) いや決して……。これは通産大臣が詳しく御存じかもしれません。私新聞の記事をよく読んでおりませんが、これは不急不要というものを輸出の見かえりに輸入をする、そういうことはやっておりません。ただこれはものの書き方が悪いので、おそらくそういうときには消費物資だと思うのです。国内で、まあたとえばイギリスと貿易する場合、普通あそこでは、(「ウイスキーなんか要らんよ」と呼ぶ者あり)高級のウイスキーを輸入してほしいと、そうするとサケ、マスのカン詰は向うでもいただこうというような、こういう商談がある場合に、ウイスキーはどうも不急不要じゃないかというような意見があります。しかしこういうものもある程度、程度の問題でありまして、そうかといって国内でやはりウイスキーの消費が——このウイスキーが非常に暴騰するようなことも適当でない。一方サケ、マスをいたずらに、これがまた、腐っていくというようなことがあっても、これはまたその辺はなかなかほんとうに言うとかけ引きがむずかしいのでありますけれども、不急とはある意味でいえますが、不要という意味のものは、大体私はないと思っております。その点は今のお説の御心配の点は十分注意してやっております。
  38. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、三十一億五千万ドルの輸出計画というものを目標にせられたときには、不要のものもある程度買うという公算のもとに三十一億五千万ドルというものが可能であると、こういうことに計画されたと理解していいかどうか。
  39. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) そういうことはありません。
  40. 森八三一

    ○森八三一君 そこで一つ総理にお伺いいたしたいのですが、私は、不急のものはもちろんこれはだめですけれども、不要のものも三十一億五千万ドルの輸入を達成するために入れるということについては、厳重にこれは考えてもらわなければならぬと思うのです。と申し上げますることは、そういうものの入ることによって非常に巨利を博しておる一部の連中がおる、それが総理が始終御心配になっておる汚職の問題にも私はつながっていくという危険が多分にあると思うのです。そういうものを入れるということにいろいろな人が暗躍をして入れさせる。そこに非常な利益がある、そういうものであればあるほど利益が多いと、私はしろうとでございますが聞いておるのであります。でございますので、日本の困難な外貨を使って、たとい輸出が増進するといたしましても、そこでつじつまを合せるなんということは邪道であって、正常の姿ではないと思う。しかもその裏面にそういう問題があるとすれば、なおさらのことであります。そういうことで一つの例をあげますと、今問題になっている韓国との関係でございますが、韓国にはノリの生産がある。そのノリを輸入する。しかし輸入をいたしますると、国内における零細漁民が価格問題その他において非常に困るということで、かねがねこれが国会の問題になりまして、衆参両院のそれぞれの委員会におきましては政府当局とも十分懇談をいたしまして、たしか昭和二十九年であったと思いますが、一応の結論は出ているのです。それば全然隣国の朝鮮との関係を無視するわけにもいきませんので、そこで内地の生産時期である十一月から三月までの生産時期をはずして、四月から十月までの不生産時期にある程度の数量を輸入するということが確認されて、政府もその趣旨によってやる、こういうことをちゃんと御答弁になって、委員会では速記に残っておる。ところが昭和三十二年度では価格の問題でいざこざがあって、とうとう期間中に通関手続ができなかった。それで最近それを禁止期間中——法律の禁止機関ではありません。委員会における意見として決議ができて、その決議通り政府はやると、こういう言明をなすっておる。この政治的な禁止期間中に輸入しようとする手続が取り進められておるというのであります。そこでこれはおかしいじゃないかというので究明したところが、それは三月末日までに通関手続はするけれども、現物を放出するのは四月一日以降だから、何も禁止期間に実際のものを入れるのではないから問題はないのではないか、こういうことで処理をしようとなすっておるのであります。私は実にそこに不可解の念を抱くのです。四月一日に現物を放出するものであれば、四月一日に通関手続をすればよろしいので、何も国会に約束されていることを曲げる必要はないと思うのです。それをあえて曲げようとするところに問題がある。その口実として日韓関係の調整上云々という見出しを掲げられておるのであります。実に不可解なことであります。私は日韓関係の調整上これが無意味とは申しません。申しませんけれども、それは一種の口実であって、現状における国内の流通過程から申しますと、そういうことをいたしますることが、非常に経済的にプラスになる、もうかる、そのもうかることが——私はそういう浮説に耳をかそうとは思いませんけれども、選挙を控えているから選挙資金をかせぐのだというような浮説まで飛んでおる、そういうべらぼうな話は否定をいたします。信用はいたしません。信用はいたしませんけれども、そういうようなうわさが飛んでいることは非常に残念です。しかも私が申し上げますように、四月一日以降でなければ国内に放出しないものであれば、四月一日に通関手続をすればよろしいのです。それを三月三十一日までに通関するということがおかしい。だからこれは私は断固としてそういう疑念を払拭するという意味から申しましても、国会に対する政府の約束から申しましても、これは実行為として何も心配はないのですから、内部的な手続はどんどん進めたらいいのです。しかし法律上の通関手続というものは四月一日にやればよろしいので、現物の動く時にやればいいので、動かぬ時にそういう手続をすることはごうまつもない。そういうことをあえて押し切ろうとするところに問題があるのですが、こういう問題については断固として汚職の問題につながる危険がある。私はそれを信用はいたしませんけれども、そういうことがある問題については、現政府としては厳に私は注意をいただきたい。もしこんなことで岸政府にとやかくの議論が起きることは非常に残念でございますから、そういうことがないといいましても、うわさが立っていることでありますれば、実害のないことであるならば、うわさを消すような態度をおとりになることが正しいと、こう思いますが、いかがでしょう。
  41. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いわゆる不要品が入るというような問題につきましては、先ほど大蔵大臣が答弁をいたしましたが、これは御承知の通り各国との間に貿易を増進しようといたしますと、貿易協定であるとか、いろいろな取りきめをいたす、そうして向うのものをある程度輸入をしてやらなければやはり日本のものが出ない、これはお互いの相互的な問題でありますので、国によりましてはその国の特産である物をどうしても外国で売らなければならないという性質から、たとえば先ほど例がありましたウイスキーのごときものがある程度入ってくるということが、日本品を英国市場に大きく売るためには当然やらなきゃならぬというようなことから、外から見るというと、ウイスキーは日本でできているだけで十分じゃないか、日本のウイスキーの方がいいじゃないかというふうな議論がございます。またフランスからブドウ酒を買うとかあるいは香水を買うとかいう問題がありました。不要不急なものじゃないかというような議論がありますけれども、やはりそれは現在のこの通商協定や貿易促進の上から申しますと、ある程度これはやむを得ないことであると思う。ただこれの輸入に関して、今お話のように特殊の者が非常な大きな巨利を博し、従ってそれに関連していろいろなうわさが飛ぶというようなことは、政治上はなはだ遺憾なことじゃないかというお話につきましては、私も全然同感であります。これはむしろこの輸入に関する手続や、輸入に関するいろいろなこの規制が公正にいかないというふうな疑惑を持たれるところに私はあると思うのです。これはあくまでも公正な方法によって、そういう場合におきましても、一部のものが巨利を博し、その巨利をめぐっていろいろなことの起らないように、これは政治の正常化から考えまして当然私としてはやらなきゃならぬと思っております。なお、韓国のノリの問題につきましては、私詳しいいきさつを承知いたしませんけれども、今申しました趣旨によって、あくまでも処置いたすようにいたしたいと考えております。
  42. 森八三一

    ○森八三一君 気持はよく了承いたしました。私が具体的な例としてあげました当面する韓国ノリの問題につきましては、これは総理はよく御承知でないと思いますので、総理に具体的な問題としてお伺いするのははまらぬと思いますので、この程度にいたしますが、趣旨としては私の気持同感でございます。そこで実際問題として取引を阻害するというのではなくて、そういう疑惑を持たれないような方法において実行するということは申し上げまするように可能なんですから、そういうことに措置をするというように御高配をいただきたい。そうでございませんというと、問題が非常に複雑になって参りまして、岸さんの始終主張される問題にひびが入るという疑惑が生まれると非常に残念ですから、そのことを特に希望を申し上げます。  その次に、大蔵大臣にお伺いいたしますが、今度のその予算補正で、食管会計に、三百何億ですか、というものが繰り入れられた。そのうち百五十億というものが、資金になっているというのですが、この百五十億はつかみの百五十億なのか、積算の基礎がございますのか、査定をされた立場から御承知と思いますが、いかがでございましょうか。
  43. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これはこの百五十億がどうして生まれたか、この資金の性質ですが、これをちょっと申し上げないといけないと思いますので申し上げますが、これは昨年消費者米価を上げます場合に食管会計についていろいろな論議がありました。その一つはこの会計の勘定の間が区分が明確でない。いわゆるどんぶり勘定になる。一体どこで損益が出るのか、どうもはっきりしない。それでこの勘定区分を明らかにすること。もう一つはこの食管会計に赤字が出ました場合に、これを糧券、いわゆる食糧証券等で泳いで、この会計の健全性をどうも害する、この二点はすみやかに改正するかというのが論議の中心でありました。ところがこの会計のこの勘定間を明確に区分するということは、ちょうど年度の途中でもありますので、これは今手がつきかねるのでありますが、しかしこの食管に赤字が出た場合に糧券で泳いでいくということから生ずる、食管会計を不健全にするという点は、やはりなるべく早く是正した方がいいという見地に立ちまして、今回この食管会計のこの運転資金として百五十億というものを入れたのであります。それでは百五十億は一体どういう積算になるかというのがお問いの中心のようでありますが、そういう趣旨で入れましたので、特に積算の基礎になるものはありませんが、今のこの米価等の算式をもとにして考えていきますると、三十三年度末に食管の赤字がおおよそ百四十億くらいまあ出るだろうという見当であります。そういうふうなことも、しいて言えば一つの目算になっておりまして、今百五十億を今回入れたようなわけでございます。
  44. 森八三一

    ○森八三一君 何だか百五十億は積算の基礎がないような御答弁でございまするが、私のほのかに伺っておるところでは、衆議院の委員会等における質疑応答の速記等から伺いますると、そうではないように私は理解をしておる。それは三十二年度における推定欠損額というものが九十何億くらい見込まれる。それから三十三年度は今の予算米価その他から推算をいたしますると四十数億くらいになる。そうして今お話になった合計の百四十億くらいになるということが言われておるのでありますが、そうではございませんかどうか。そうだといたしますると、私はそこに一つお伺いいたしたい。昨年の予算委員会におきまして、池田大蔵大臣は三十一年度の欠損額というものは、まあ今ごろ大体推定できておるんだから、せっかく剰余金もあることであるので、三十一年度の補正予算で始末をしたらどうたということが、おそらくこれは国会を占むる大勢であったと思う。ところが決算が確定をしなければ、財政法上の問題ではございません、規則上の問題ではございませんが、適当ではないから、決算が確定してからやるのがベターだということで押し切られたんです。ところが今度は資金という冠ではございまするが、内容がそうだといたしますると、結局去年の御説明と本年の措置とは実態的に相反した措置が行われておる。私は法律違反とかそういうことを申し上げておるのではありません。気持の上では変ったものがここに行われておる。私はむしろ本年のやり方かいいと思うのです。ことしのやり方がいい。その方が食管会計の健全化を期する意味において本年の方がいいと思うのですが、方針上何か去年のやり方は間違っておったから、ことしは正しい方向に変えたんだと、こういう御意思と承わっていいかどうか。
  45. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私はさようには考えておりません。前の大蔵大臣はおそらくは私の考えでは、決算がはっきりしないとなかなか補正ができない。だから決算が確定してからする、こういう御意向であったと思います。今回のこの調整資金も一方において今申しましたように運転資金を目的として入れたのでありますが、むろんこれは勘定の損益をここに繰り入れますから、結果といたしまして経理の扱い上からやはりこの赤が入れば赤を勘定から落す。かように相なるわけでありますが、その落す場合もやはり決算が確定してからその処理はする、かように考えておるわけであります。なぜこういうふうなそんな資金を今回作ったかといいますれば、どうも御承知のように、食管の会計は第一、予算主義をとりましても、初めからちゃんと赤が出んように入れておればいいじゃないかという意見もありますが、これは米麦の価格の決定がおくれまして、それから輸入食糧の輸入数量あるいはまた価格の変動、ですからどうしても予算主義を入れるわけにも、なかなか未確定事情が多いからできない。それから決算ということになると、あとになるからその間に赤が出て、この会計を先ほど言ったように糧券で泳がなくちゃならなくなる。そこで今回はそこいらをいずれもうまくいくようにという趣旨で、まあ結果がなるのでありますが、目的はむろんこの資金をこの食管会計の赤字を補てんする目的で設置したでありましょう。これは運転資金のために入れたのでありますが、さようないい面もあります。
  46. 森八三一

    ○森八三一君 時間もございませんから最後に申し上げますが、大蔵大臣、そう言いわけなさらずに、すっきりなさった方が私はいいと思う。資金から赤字の穴埋めに直接持っていくのではない、決算してからやるのだというようなことをおっしゃらずに、これは余裕があったのですから、去年の説明と変りますれども、これはそういう措置だとすっきりおっしゃった方がいい。私は悪いと言っているのではないのです。その方が私は明確でいいと思う。資金としてあくまでも使わぬというならばはっきりしまするけれども、入れておいて決算が確定すれば、国会の承認なしに落せるようにちゃんと説明がついているのですから、実質上のこれは赤字補てんなんです、気持の上では。そういう赤字補てんというものを、決算が確定しなければやっていかぬ、やるべきではないという去年の方針と、ことしも決算確定後落すのではあるけれども、事前に繰り入れておくということとはこれは違うのだ、そんなことは別に追及しているのでも何でもないので、ことしの方がいいのですよ。ことしの大蔵大臣の措置の方がいいのですから、いいことを別に言いわけがましいことをおっしゃらぬでもいいのです。私は去年の説明を取り消して、大蔵大臣のかわったところですから、今後はこういうことでやる、こうおっしゃった方がいいと思う。私どもは、来年になるとまた変った説明が出てくると、一体予算を審議するときに政府の方針というものは一体どうなるのだということ、しょっちゅうぐらぐらしている、また、その場その場で変っていくというのでは、たよりになりませんので、ここで一つはっきりした方針として今後はこういう措置をするのだということを確認しておきたいと思います。  それからついでにもう一つお伺いしたいことは、今申し上げましたように、百五十億の内訳が想定されている、そんなことだろうとにおわせていらっしゃいますけれども、積算の基礎はまさにそうだと私は思うのであります。そうなりますると、農林大臣もいらっしゃいますから、両省の予算査定を通じまして、お前の方にはこれだけに繰り入れておくのだから、これで請け負わしたんだよ、これ以上食管会計の赤字を持ってきても、財政当局は面倒をみないよ——こんなことはここでは言えません。そんなことを言った覚えはないということは当然でしょうけれども、内密にそういうことがございますると、現在の米価は、生産者米価が一万二百円と積算されている。現行米価は一百三百二十二円五十銭でございます。百二十二円五十銭の低価が企図せられている。物価指数が上昇しているというような関係から申しまして、今後の推移はわかりませんが、もうあと二、三カ月にして昭和三十三年産米価はきめなければならぬ。そのときに一万二百円という米価はこれは私は追いつこうはずはないのです。そうすると、事前にちゃんと百五十億繰り入れて、前年度の決算の穴埋めもつくはずになっているし、昭和三十三年の四十何億の赤字というものがちゃんと見込んであるじゃないか。だからその中で始末せいということになりますると、じゃ、生産者米価を押えるという措置を講ずるか、しからずんば消費者米価を値上げするという措置をとらなければ、食管会計の赤字というものは合わないという問題にぶつかってくるのであります。そこでいざこざを起しちゃ大へんなことになります。私は公式答弁としてはそんなことは約束されておらぬとおっしゃいましょうが、そのおっしゃる通りに受け取っておいてはよろしいのかどうか。
  47. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 何も私あやふやで言うことでありませんので、先ほど言いましたように、やはりこれは、その運転資金の補強というところがやはり眼目にあるのであります。もちろん経理の取扱いとして赤を補てんするという働きもいたします。ですが赤の補てんだけを取り上げてそうだということもありません。それで今言ったように、米価の問題になってくる、ですから、そうじゃないので、これはごく正直に運転資金を補強するためにとおとり下されば、米価は適正にきまる、かようになっております。
  48. 森八三一

    ○森八三一君 正直に額面通り受け取ることがすなおかもしれませんが、しかしここでわれわれが予算を審議するということは、そういうような形式論議しておってはいけませんので、そこに含まれている内容というものをよく分解をいたしまして、将来に禍根を残しませんようなことをとりきめておき、お互いに了解をしておくということが大切であるから申し上げているのであります。でございますので、まあ去年の国会答弁と今年の措置とが会い違っていることをあっさり認めるということは立場上御困難と思いますが、大体顔つきを伺いまして、私の気持というものはよく御了解願ったと思いますし、私は一萬田さんの今回とられた措置をよろしいと、こう申し上げているのですから、何も遠慮する必要がないと思うのであります。  最後に、農林大臣に一点だけ伺いますが、それは臨時国会の際に、私はこういう問題をめぐっていろいろ米価の問題が論議される、そうしてそれが政治米価だ何だかんだとうるさい論議を生むことは感心しない。どうしてもここですっきりした米価の算定方式というものをきめなければならぬ。それには何としても生産費というものを補償するような建前において方程式を作るべきであると思うがどうかという質問に対して、同感だ、ついては政府部内にそういうようなことを研究する機関を作って善処いたしますとお約束がございました。承わりますると、年末に一回そういうようなことが研究せられた模様でありますが、自来そういう問題はお忙しいためかどうか存じませんが、停頓をしているということでございます。あと数ヵ月にして、昭和三十三年産の生産者米価を決定しなければならぬ時期が迫って参ってきておるのであります。これは非常にむずかしい問題でございますので、早急にその取り運びをいたしませんというと、生産費、所得補償方式による生産者米価の算定方程式というものをきめることは不可能であろう。そうすると、昭和三十三年産の米価をめぐって、米価審議会等がいろいろな論議をしなければならないし、そうして今申し上げたように、予算米価は一万二百円だ、何とはなしに請け負わしたような格好で四十数億の三十三年度の欠損額資金という建前において補償されているという非常に困った問題があると思うのです。起きないとおっしゃるでしょうけれども、実際問題として私は起きる、必ず農林省と米価審議会、さらにはさまつた農林省と大蔵省という関係において、非常な問題が起きて、これはお困りになると思うのでございますから、そういうようなことを払拭すると同時に、消費者、生産者に対してまで、理解のいくような米価、政治米価というような批判をこうむりません米価の決定方式をきめておく。それは臨時国会でお約束になりましたあの調査研究というものを急速にひんぱんに進めて、少くとも四月一ぱいくらいには結論を出すというくらいに御尽力をさるべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
  49. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 生産者米価の決定方式といたしましては、この前の臨時国会においてもお話がありました生産費及び所得補償形式といいますか、これは私はその考え方はこの前申し上げましたように、賛成をしているのであります。ただ森委員もよく御承知の通り、技術的にその線で価格が決定できるかどうかということになりますと、非常に問題があります。御承知でありましょうが、バルク・ラインを敷くにいたしましても、八〇%にするか、九〇%にするか、九五%にするかということによりまして、価格が非常に響いてきますし、自家労働力をどの辺に算定するか、都会の労働者の問屋もありましょうし、農村自体の労賃というものもあります。この辺をどうとるか。反収——反当り収穫をどういうふうにきめていくか、考え方におきましては私も全くその通りでいかなければならんと思うのでありますが、実際技術面におきまして非常に検討は続けてきておるのでありますけれども、なかなかこれならいいという結論が出ないのであります。そこで今お話がありましたが、消費者米価等につきましては前から話がありましたので、これは今年私は上げる考えを持っておりませんけれども、やはり政治米価だというようなことを言われないように、算定方式を委員会をおいて今検討させております。生産者米価につきましても、今のお話のように非常に私どもの方も忙しかったものですから、これは検討はしたのでありますが、まだ結論は出ないのであります。そういう事態でありますので、なお一そう検討は続けていきますけれども、非常に困難だということだけは私ども考えておるのであります。そういうことで、なお検討は一そう続けていきたいと、こう考えております。
  50. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これにて午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十一分休憩    —————・—————    午後二時十七分開会
  51. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を続行いたします。
  52. 千田正

    ○千田正君 私は、まず第一に、戦後における国際間の問題としまして、国際法の改正あるいは新たなる設定等をめぐって、領海並びに空の問題として領空という問題は、ただいま国際間に、法的な問題として問題の立案について各国とも研究しておられます。それで、特に私がお尋ねいたしたいのは、前内閣重光外相のときに、領空の限界はどこかという私の質問に対しまして、当時の外務大臣の代理としまして条約局長は、三思三考の後、領空というのは成層圏までとしておった概念を貫いて天壌無窮であるという答えをした。(笑声)私はまことにお粗末な答えではないかと思いましたけれども、時間がありませんでしたから、それ以上の追及をいたしませんでしたが、その後、約三年を経て、今日における領空の問題は、今や領海の問題と同時に国際間の重大なる国際法改正への観点となってきておるのでありまするが、現内閣におきましては、領空という定義に対する日本側の考え方は、どういう考えを持っておるか、当時と同じように、天壌無窮であるという荒唐無稽な説を相変らず岸内閣は持っておるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  53. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今日、領空という観念につきましては、国際法上といいますか、この民間航空条約に明らかにされておるように、やはりその領土、領水の上空、いわゆるエア・スペースという空間をさして領空というのが、一応、現在の具体的にきまっておる親念だろうと思います。しかし、最近の、この人工衛星の打ち上げ等から考えますというと、従来の考えのように、いわゆる空間というエア・スペースということではなく、さらにこれが拡大されて、空気のない領域にまで人間の力が及ぶということになってきますというと、従来の一応きまっておる観念が一つ考え直されなければならぬのじゃないかという機運が出てくるのは当然であろう、こういうふうに思っております。
  54. 千田正

    ○千田正君 ただいま首相は一九四四年のシカゴにおいてなされたところのいわゆる民間航空条約に基く例を引用してお話がありました。その条約は、ただいま首相のお答えがありましたように、エア・スペース、その空気のある限りにおいてという一つの原則を立てております。しかし、今日の状況はそうじゃないという点で、先般アメリカ側は人工衛星打ち上げを声明し、ソ連がさらに人工衛星を打ち上げた。これに対しまして、一つの領空の侵犯ではないかという問題が起きたときに、アメリカの学者ハーレーがこれは黙秘の承認である、いわゆる黙って示したところの承認であって、各国とも抗議がなかったからわれわれは今後ともこれを続行すると、こういう意味のことを発言しております。それで私は、これは総理じゃなくても外務大臣でも、あるいは法制局長官でもよろしゅうございますが、黙秘の承認という限界をどうとるのか、この点についての見解をただしておきたいと思います。
  55. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) お答え申し上げます。先ほど御指摘の通り、領空の問題は新しい分野が開拓された次第でございますので、たとえ一度も何も抗議が出なかったからといって、直ちにそれが黙秘的な承認になったのだというふうには私どもはとることはできないのじゃないかと考えております。今後、これを機会にこの問題が大いに問題となるということではないかと考えております。
  56. 千田正

    ○千田正君 アメリカソ連のように十分なる施設及び研究の高度な発達をしておらないところの国々、特に日本のように大国の谷間においてあえいでおる国としましては、この見えざる空からの脅威というものは、今後の大きなわれわれとしましては脅威になってくると思うのであります。それで、各国とも見えざる空からの損害、たとえば放射能であるとか、あるいは人工衛星が途中で落下してきた場合、あるいはICBMのような兵器が核弾頭をつけたままで不測の破裂をした場合、こういうような場合の損害賠償というものはいかなる見地から要求するがという問題は、ただいま国際法学者のうちで相当研究しておる。今日、日本立場において、われわれは何も持たない立場においてこういうような問題は必ず起り得る。現実においては、ビキニの実験の問題、空、この見えざる所から受ける地上の損害に対して、その国が、独立国がどういう損害の要求をするか、この観念はどういうふうに日本側としては考えておるか、これは政府の見解をただしておきたいと思います。
  57. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほど総理大臣からお答えがございました通りに、国際民間航空条約は、領土と領水の上空、エア・スペースというものを一応領空の観念としてとっておるわけであります。これは結局、あの条約ができました当時において、そういう領土権を主張し得る範囲というものは、やはり空に主張し得るものではなくて、ある程度管理可能性と申しますか、普通の自由権と同じような観念で、ある程度そこに支配力を及ぼし得る範囲という観念からそういうような考え方がとられたものと思います。最近になりまして、いわゆる人工衛星あるいはそういういろいろの問題ができまして、いわゆるエアースペースを越えて上の方にさらに人間がある程度支配力を及ぼし得るという状態が起って参りました場合に、それをどう扱うかということは、これは新しい国際法の問題だと思うわけでありまして、これは日本としてもその問題をどう扱うか、どういう条約を作ってもらうように働きかけるかということは、当然研究すべき問題だと思うわけであります。  それからただいま仰せられましたいろいろの空からある国の、まあ何と申しますか、故意あるいは過失によって空から損害を受けたというようなことは、これは一般の国際法の原則の損害賠償というような問題、故意、過失があったかないかという問題になりますが、そういう問題でこれは今でも解決し得る問題ではなかろうかと思うわけであります。
  58. 千田正

    ○千田正君 こういう問題をめぐりまして、国連におきましてはアメリカ側はいわゆる人工衛星の国際管理論を提案しております。また、今の問題を中心としましてエア・スペース以上の所は、すなわち海における公海と同じように、パシフィック・シーと同じように、パシフィック・エア——公けの空として、一つの公空自由の原則を持とうとする動きが見んできておる。こういう二つの点から考えまして、アメリカ側の国際管理説、こういう問題に対しては、日本側としましても、国連で常任理事国としての活躍をしておる今日として、日本外交の面からいいまして、こういう問題に対してはどういう取扱いをするか、この点については、外務大臣でもよろしいし、総理大臣でもよろしいから、お答えいただきたい。
  59. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 新しいただいまの事態が起りましたわけであります。従って、これは非常に重大な問題だと思いますので、国連等において、十分議を尽してそうして進めて参らなければならぬと思います。日本としましても、こういう問題に対して将来悔いないように十分な準備を整えて、そこで国連におけるそういう機会に発言をして参りたい、こう考えております。
  60. 千田正

    ○千田正君 ただいま国連主宰の国際法、ことに領海等に対する海洋法の法案提出の準備として各国の代表委員が審議をしておりまするが、その領海の原則について、日本側は三海里説を主張しておることは皆さん御承知の通りと思います。そこで、この三海里を主張する方が利益であるという根拠は何か。三海里説は、かつて明治八年、大砲のたまが届くいわゆる砲弾の弾着距離を三海里と見て、当時の一つの三海里説は主張されておる。私はさように承知しておりまするが、当時のままのその三海里説を今後も日本がこの会議において主張しておって、その方が日本にとって利益である、そういう根拠は何かという点について、外務大臣に一つ御説明を願いたいと思います。
  61. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま、お説の通りジュネーブで海洋法の会議が開かれております。日本としては、これに対しまして従来主張して参りました三海里説を主張しておるわけであります。今日までの関係におきましては、日本の水産等の問題を考えてみまして、三海里を主張しますことが適当であろうと考えております。なお、領海の問題につきましては、各国ともそれぞれ意見も違っております。しかも、最近の傾向としましては、非常に領海の長さを延ばそうというような傾向もありまして、十二海里という説もあり、さらにもっと広げようという説もあるわけであります。そういう意味において三海里を主張しますことは、領海を相当大きく幅を広げていこうという趨勢に対しても対抗できるのでありまして、リーズナブルな線まで広げるというようなことに対する必要な措置だとも思うわけであります。ただいまジュネーブで国際法学者その他が集まりまして十分検討しておりますので、各国の違ったいろいろの主張をそれぞれ勘案しまして、適当な結論が出るのではないかと思っておりますが、そういう時期においてはわれわれ、それらを参考にしてまた考えていくということを考えております。
  62. 千田正

    ○千田正君 今の問題で、三海里説は日本にとって有利であるという政府考え方でありますが、もう一つ、今度の法案の内容を見ますというと、沿岸国が非常に強く権利を主張してきておる。たとえば、日本のように特に漁業をやってるわけじゃないのにかかわらず、その水産資源の保護のために広く保護区域の拡張を要求してきておる。そうしてまた、それに基いて領海の原則も立てようとしておる。こういう観点において、ただいまの国際会議が、とかく日本の不利なような方向へ向いていくんじゃないかとさえも考えられるわけであります。そこで、特に私がお伺いしたいのは、こうした沿岸国のそうした主張を日本が認めるかどうかということであります。このいかんによっては、将来の日本というものは、たびたび当委員会においてもほかの委員からの御質問のあった通り、わずかの島に九千万の人口をかかえ、さらに、海こそが日本民族の活動するところの一つの分野であるという、戦後における大きな希望を持っておったのにもかかわらず、各国ともこうしたラインから締め出しを食わせようとしておる。この状況に立ち至った今日に至って、日本がどこまでその主張を通していくかということは、非常に私は杞憂を持つのでありますが、この沿岸国の主張をあくまで日本は拒否するかどうか、あるいは、どういう見解において今度のこの法案に対しては日本側としての主張を貫こうとするのか、この点において、外務省としても方針があると思いますし、その点についてお伺いしたいと思います。
  63. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在、ジュネーブの国際会議には三海里説を堅持して主張することにいたしております。従って、われわれとしては、今お話のような問題に対しては強く抵抗をし、日本の主張を通して参りたい、こう考えております。
  64. 千田正

    ○千田正君 資源保護の意味において、今度の国際会議で問題になってくるのは、海水汚濁という問題であります。それは、放射能によって海水が汚濁され、それによって生息しておるもののすべてに放射能が浸透した場合、これによって損害をいかに限定するかという問題が、一つの大きな問題になってきておる。これに対する日本側の見解はまだ表明されておらないようでありますが……。これと同時に、この保護地域における、保護領海におけるところの生物に対する所有権はどこにあるのかと、この問題であります。大陸だなというものを設定した場合において、大陸だなを主張するその国の主張の権利はどこまで一体延ばすのか、限界があるのか。たとえば、多くの場合、岩石に付着しておるところの貝類、それも取っちゃいけない、あるいは海草類も取っちゃいけない、あるいはそこに生息しておるところの魚類も取っちゃいけない、こういう問題が出てくるおそれがありますので、これによっては日本としては非常な制限を受けなければならない、この点については、どういうふうに考えておられますか。
  65. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 私からお答え申し上げます。会議に参りまして、どのような主張をどういうふうな方法で通していくかというふうな問題になりますと、これは、会議はまた始まったばかりでございますので、その詳細な点は差し控えさしていただきたいと思いますが、第一点の公海の汚濁の点でございますが、単に油とか、その他油送管による汚濁のみならず、放射性物質その他有害な作用を伴う実験による海水の汚濁というようなことが、これは禁止さるべきものであろうと考えまして、これに関する限り、そのような主張を、また条文を支持していきたいと、強く主張していきたいと考えております。  それから大陸だなの問題でございますが、わが国といたしましても、この大陸だなの主張と申しますのは、近年なされてきた主張でございまして、われわれとしまして、原則的にこの大陸だなの主張は、これは認めることはできないと考えております。あくまで公海の自由——でき得る限り広く公海の自由ということを主張していきたい、このように考えております。
  66. 千田正

    ○千田正君 日ソ漁業問題、あるいは日米カナダ漁業問題にも及ぼす問題でありますが、この水産資源保護という名前にかりて、そうして大洋の中に大きなラインを引くと、これはことに最近目立ってきております。ところが、日本側がこれに対してやむを得ず屈服しなければならない立場にいつでも追い込まれておる。たとえば日米カナダの条約にしましても、マッカーサー・ラインを撤去したそのあとを直ちにそれにかわるべきところのラインを引かれておる、あるいは李承晩ラインと称するもの、あるいはブルガーニン・ラインと称するもの、ことごとく水産資源の保護という美名のもとに隠れてそのラインを引かれている。今あなたのおっしゃるところの公海の自由の原則というものは、どういうふうにしからば打ち立てていくかという問題であります。私はこういう問題に対しては、日本の研究が足りないんじゃないか。日米カナダ条約におきましても、十年という約束であるが、満限がきたならば、すでにこれは撤去してもいい、あるいは改正されるべき問題であろう。ソ連側の最近の出方を見ましても、われわれにだけ線を撤去するということを主張して、君らは、アメリカやカナダに対しては、そういう主張をしていないじゃないか、こういうようないやがらせのようなことも向うは主張してきておるわけであります。そこで、海洋の自由の原則を守るためには、日本側としては、よほどきつい態度で出ていなかったならば、おそらく今後は、日本は海においても締め出されるであろうということを考えますときに、外務大臣としては、この問題についてはどういうふうに考えられておるか。将来、現在あるところの条約に対しては、もうすでに改正してもよいという限界に、われわれから見れば立っておる、たとえば日米カナダ条約というようなものは、ある程度もう改正をしていいじゃないか、ソ連側に締め出されたならば、あるいはこのカナダ、アメリカ等の方面に向っても、日本側は公海の自由の原則のもとに出漁してもいいんじゃないか、われわれはそう思うのでありますが、外相の所信のほどを伺っておきたいと思うのであります。
  67. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御指摘のような、公海上にある線を引きまして、そうして漁撈関係を制限していくということは、御指摘の通り日本が水産国として立っております限りにおいて、これは十分強力に国際間において日本の水産業を守る意味からいいましても、日本の生活を守る意味からいいましても、十分主張して参らなければならぬところであります。今日までそれぞれ引かれました理由につきましては、いろいろ季ラインにつきましても、あるいはシナ海におきましても、あるいは日加米関係におきましても、ただいまお話のようなソ連関係におきましても、いろいろ理由があると思いますが、それらに対して、それぞれの立場から今後とも強力に交渉して参らなければならぬと思うのであります。今御指摘のような日本、カナダ、アメリカ等の問題につきましても、例の百七十五度の線の問題があります。これらの問題についても、十分研究の上で、さらに日本の主張を通して参らなければならぬと思っておりますので、そういう点について、十分な今後とも努力をして参りたい、こう考えております。
  68. 千田正

    ○千田正君 ビキニ、エニウエトクのアメリカ側の核実験に対しまして、日本側が、何か独立国としての立場から、十分な禁止の申し入れをしておるというふうに、先般答えておられたのですが、実際どの程度の交渉をしておられますか、その点を伺っておきたいと思います。
  69. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 核実験につきましては、われわれそのつど抗議しておりますことは御承知の通りと思うのであります。昨年九月に、この計画が発表されましたときに、われわれとしては、直ちにアメリカ政府に対して抗議を提出いたしております。その後、また具体的に日取りを確定してきたときに、これらに対して中止の抗議を出しております。そういうようなことで、われわれとしては、常時この問題につきまして、アメリカ政府当局の反省を促しておるわけであります。大きな立場からいいまして、核実験の禁止を叫ぶと同時に、一面におきましては、こういう具体的な問題につきましては、それぞれの国に対して強力な抗議を提出いたしております。
  70. 千田正

    ○千田正君 総理大臣にお伺いいたしますが、今、外務大臣から、この原子核の実験等に対して、強くアメリカとか、あるいはほかの国々に対しても要請しておると、しかし、実際においては行われておる。こういう現況に対して、総理としては、どういうふうに考えられますか。たとえばイギリスも昨年行なって、日本側の損害に対しては、これを補償する、またアメリカも、今度はまたやると、またやるが、その損害に対しては十分補償してやると、こういうことを何回も繰り返しておったのでは、日本国民は、損害補償さえしてやれば、日本のどこへ行って原子爆弾を落そうが、実験しようがかまわないのだという、大国の自由勝手なふるまいに対して、日本側としては、このまま唯々諾々とするものではもちろんないのでありますけれども、(「その通り」と呼ぶ者あり)総理が、先般来特使を派遣したり、いろいろなことをやっておるけれども、実際効果がないじゃないかという国民の声が非常に強いのであります。この点について、総理は、さらにこの際、徹底的にアメリカあるいはソ連その他の核兵器を持っておる国に対して、日本側は絶対にもう受諾するわけにはいかぬと、はっきりした態度をとっていただきたいと思うのですが、総理としての確信のほどを承わっておきたいのであります。(「明確に」と呼ぶ者あり)
  71. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この問題は、私どもの主張が、いまだ実現されておらないことは、千田委員とともに、われわれも非常に遺憾至極のことと考えております。しかしこの問題は、言うまでもなく、今国際的に、一方われわれは国際連合の場や、また広く世界のこの世論を盛り上げて、そうして大国間において、これが禁止について、有効な国際条約のできるようなことを強く一方においては唱えております。私は、終局はこの問題は、一国だけでは決してやめないと思うのです。イギリスだけがやめるとか、ソ連だけがやめるとか、アメリカたけがやめるということは、これは実際上われわれの今日までの情勢から見まして、やめない。しかし、やめないからというて、現実にやっていることを、われわれは認めるというわけにはいかない。従って、それらの国々がそういうことを無警告でやったり、あるいは警告を発してやるという場合において、日本のわれわれの信念を強くそれらの国々に言って、通告して、そうしてその反省を求めるとともに、一方は国際的にその禍根を除く協定なりあるいは取りきめというものを実現して、そうしてこれを一日も早くなくするように、今後ともあらゆる面を通じて私は努力したいと考えております。
  72. 千田正

    ○千田正君 昨日もほかの議員から、日ソ漁業の問題についてお尋ねがありましたが、私は、また別な観点からお伺いしたいと思うのであります。昨日の新聞によるというと、ソ連側は許容量を八万トンにした、それを日本側に通告してきた、こういうことでありますが、八万トンということは、河野・イシコフ会談できめたところのいわゆる不漁年の許容量であります。日本側としては、われわれはこれを不漁年として認めるわけにはいかないのでありますが、この不漁年であるというそういう証拠が、どこにソ連にあるのか、そういうことに対して、日本側が相当のこれに反駁するところの資料を持っているのか、こういう点につきまして、農林大臣あるいは外務大臣から、どちらからでもいいですから、お伺いしたいのであります。
  73. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 一昨年あたりからの漁業の交渉におきましても、ソ連側は豊漁の年と不漁の年というふうに言っているのであります。しかしそれは御承知の通り、マスの方におきましては、統計上偶数年においては漁が少いというようなことは出ております。サケ等におきましては、紅とか白とか銀とか、いろいろありますが、これには豊漁の年とか不漁の年とかいうのが、はっきり出ておらないような状態であります。でありますので、ソ連側としては、豊漁の年、不漁の年というふうに分けて、ことしは不漁の年だから、総漁獲量も減らしていいだろうと、こういうふうに言ってきているのでありますけれども、私の方といたしましては、豊漁の年と不漁の年ということは、今申し上げましたように、マスの方には統計上表われておりますけれども、その他にはあまり表われてない、だから、そうこれをはっきり豊漁の牛、不漁の年というふうに区別すべきものではない。また、かりにそういうことがあるといたしましても、その差は非常に少い、こういうことは、科学的にも沖取りの漁業から結論が出ておりますので、私どもの主張といたしましては、豊漁、不漁の年があるとしても、その差は少い、漁獲量について少い、こういうことで、そういう含みにおいて交渉を続けているわけであります。こういうことでありますので、御承知の通り、私の方では、ことしは十四万五千トンが、私の方の根拠に従っては適当であるということで、総漁獲垣を提案しているような次第であります。
  74. 千田正

    ○千田正君 河野・イシコフ会談では、お互いに主張して譲らなかったが、最後には会談をもって、ことしはいずれにしてもこの線でとどめよう、来年はさらに科学調査をして、そうしてあらためて漁獲量をきめようじゃないかと、こういうので、昨年の話は終ったはずであります。ところが今日に至って、ソ連側の方の調査は、日本側が行くのに対して了承しなかった、一方的な調査によってことしは不漁年である、こういうふうな向う側の主張は、私は通らないのだろうと思います。ことしは不漁年ということは、われわれはどうしても納得がいかない。共同調査を、ソ連側が自分の方の何か河川、あるいは陸上施設等に対しても日本側の調査を十分受け入れて、そうして精密な材料を積み重ねた上での論拠であるならば、われわれもある点においてそこに見出すべきところの結論が出てくると思う。現今の場合の、そうであろうという仮説のもとに基くところの八万トンの許容量ということは、われわれはどうしても納得いかないのですが、日本政府といたしましては、これに対してどういうふうに考えておられるのか。
  75. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 今のお話通りであります。昨年、共同調査をいたすことに委員会においては協議が成り立っておったのでありますが、ソ連側において、ソ連の国内事情から、共同調査のわが方の申し入れに応じなかったのであります。でありまするから、科学的根拠といいましても、ソ連側では川に上ってくる魚に対する根拠はありましょうけれども、沖取りの根拠というものはあまりないのであります。でありまするから、科学的根拠、科学的根拠とは言っておりますが、両方の共通の科学的な根拠というものに、まだ十分でないところがあるようなわけであります。そういうことでありまするから、共同調査をしようといったところが、昨年共同調査を向うで応じなかったのでありますので、ことしも平塚・イシコフ会談等によりまして、それをなじっておるようであります。共同調査をなぜしなかったかということを平塚代表がなじっておりまして、イシコフの方でも、ことしは共同調査を進めようということを答えておるようであります。でありますので、そういう共通の科学的根拠がはっきり出た上でなければ、向うだけの根拠についての八万トンということは、私の方としては承知できないと私ども考えております。
  76. 千田正

    ○千田正君 この問題は、新聞、ラジオ等において、いろいろ政府国民もよくわかっておりますから、私は、この問題について二点だけただしておきたい。  その点は、今許容量をようやく向うは出してきたので、一応本年度のこれから始まるところの漁獲量に対しましては、日本側の要求との間に相当調整——接触点が出てくると思います。そうなることをわれわれは希望しますが、さらに、オホーツク海に昨年は二船団出しておりますが、これに対しては、向う側は、あくまでオホーツク海の漁業というものに対しては反対する意向が強いようであるということと、千島列島を中心とするところのいわゆる歯舞、色丹あるいは南千島、この周辺におけるところの安全操業に対する問題については、また別個の問題として、これは向うと折衝しなければならない。この二つの問題が、今後の日ソ交渉の山であると思いますが、これに対しては日本側は、先般、どうしても成り立たなかったならば、いわゆる大物といいますか、何といいますか、総理大臣級あるいは総理大臣にかわるべき人を派遣して、政治折衝をするというようなことが新聞その他に見えていますが、この最後的な二つの問題になってくるというと、なかなか話し合いがつかないというふうな観測も強いようでありますが、政府側の観測としては、どういうふうに考えておりますか。
  77. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) オホーツク海の漁業の規制は、漁業条約に基いての交渉でありますので、千島の歯舞、色丹、国後、択捉方面の安全操業とは分けて話し合うべきものだ、こう思っております。オホーツク海の規制等につきましても、御承知の漁業条約にはオホーツク海、アリューシャン、日本海等においての規制を行うということは書いてありますけれども、これを全然中止するということには、これは条約上なっておらぬと私は解しておるのであります。でありますので、これを全然締め出すということは、条約上当を得ていないと、こう考えております。そういういろいろな問題があります。そこで、政府からどういう人を派遣するかという問題は、まあ総理の方できめられる問題でありますけれども、ともかくも平塚代表に一時帰国してもらって、中間報告を求めるということになって、帰りますので、中間報告をよく聞いた上で、この問題は研究すべきものだと、こういうふうに考えております。
  78. 千田正

    ○千田正君 私は、総理大臣にお伺いいたしたいのでありますが、先般スカルノインドネシア大統領が見えられまして、総理との間に会談され、また、賠償問題等についても協定が成ったとたんに、インドネシアにおいては内乱が起きて、ただいまのところジュアンダ首相ですかを中心とするところの従来の政府と、スマトラを中心とするところの革命政府が、おのおの対立した姿のままに現況がなっております。これに対する日本側の賠償というものは、将来この問題が二つの国に分れた場合にはどうなるか、こういう疑点を私は生じてきたんでありますが、現在の状況は一体どういうふうになっておりますか。また、将来これが二つに分れた場合において、日本の賠償というものは、その効果において二分されるのじゃないか、あるいは減退するのじゃないか、あるいはインドネシアに対するところの焦げつき債権の回収という問題についても言及しなければならないと思いますが、この点において、総理としての観点を、一つ所信のほどを明らかにしていただきたいと思います。
  79. 岸信介

    国務大臣岸信介君) インドネシアの内乱の状況は、私ども、せっかく独立国となりその独立を完成しようとしておるインドネシアの将来にとって非常に不幸なことであり、これが適当に解決されることを望んでおるわけであります。ただ、今日までのこの経過をいろいろ各方面の情報を総合し、また、特に賠償並びに平和条約に対するインドネシア側の各方面の意見を、われわれは意見について情報を集めておりますが、私どもの見るところによるというと、とにかくスカルノを中心としておる、今のスカルノのもとのジュアンダ内閣、これに対する反対の立場をとるのはスマトラを中心としての勢力、これらの関係は、御承知の通りスマトラの勢力はバッタ氏が大きくその方の勢力を代表するような関係にあります。今日までの状況から見ましても、また賠償に関するこの話し合い、それが両国の間に調印された経過を見ましても、スカルノ大統領とバッタ氏との意見は完全に一致してこの調印が見られておる状況でございます。今後どういうふうにこの問題が進展するかということをあらかじめ予断することはむずかしい点もありますけれども、私どもは、やはりスカルノを中心としているこの内閣が——あるいはジュアンダ内閣というものはかわるかもしれませんが、要するに、スカルノを中心としておる政権というものが、やはりインドネシアの統一の中心となり、統一を実現するようになるだろうという見通しを、大体において持っております。そうして、この賠償問題及び平和条約の問題につきましては、今スカルノ及びハッタ氏の意見は、これが締結されるまでの経過から見ましても、これに大きな賛意を表しておるのみならず、これに反対するところの考え方は、インドネシアに今までわれわれは有力な反対説というものも聞いておりません。従いまして、これがインドネシアの方におきましても批准されるようになると思っておりますし、従って、わが方としてもこれが批准の手続を進めておるわけでありまして、私どもの見方からいえば、やはりこの条約が批准され、交換されて、そうして両国の間に正常な国交が開かれ、両国の友好関係がますます増進されていくということが望ましいことであり、今日の内乱の状況は、やはりスカルノを中心として、やがては統一されるであろうという見通しの上に立っておる、かように御了承願いたいと思います。
  80. 千田正

    ○千田正君 今の総理の御発言は非常に重大でありまして、われわれもせっかくインドネシアが独立して、新たなる国際間の友邦として手を結ばなければならないときに、そういうふうな内紛が起きたことは、非常に残念に思います。しかし私は、これと同時に、この二つの政府が出た場合において、将来日本がいずれと外交を結ぶかしれませんが、いずれとも結ばなければならない状況に立ち至った場合において、この賠償問題も金額においてはすでにスカルノ、ハッタ両氏とも日本側の意思を了承して調印しておりますから、変りがないと思いますけれども、支払いの相手が変ってくるというと、当然これは分割して払わなければならないというような問題も起きてくるのではないか。また、焦げつき債権にしましても、これもまたそういうふうな問題が起きてくる。このインドネシアそれ自体の問題を、われわれは非常に深く考えれば考えるほど、これが東洋におけるところの問題、ことに近接した日韓会談を前にしまして、朝鮮両方が南北朝鮮に分れた今日におけるところのわれわれは、対韓政策も、将来あるいは別な立場において、北朝鮮が日本側に対して条約を求めてき、あるいはそれに対して在外資産あるいは補償等の問題が起きてきた場合においての一つの大きな示唆を含んでおる、かように私の観点から考えますが、その点につきましては、首相はどういうふうにお考えになっておりますか。
  81. 岸信介

    国務大臣岸信介君) インドネシアの今日までの経過を見まするというと、何か対外的の大きな政策の面においての意見の相違であるとか、立場の相違というものよりも、むしろ国内におけるたとえていえばスマトラから非常にたくさんの税金も入っており、国際収支の上からもインドネシアの経済に非常に大きく貢献している。しかし、中央政府の予算を見てみるというと、ジヤワ中心主義であって、スマトラとかそういうふうな非常に経済的に大きな貢献をしている所に返されているところが非常に少い。これを是正しなければならないのではないか。あるいは、従来ジャワとかスマトラとの関係を調整するためには、やはりジャワ中心のスカルノ氏だけでなしにハッタ氏もこれに協力をすべきものであるというふうな考え方、また、スカルノ政府そのものを否認するという意味の反乱が起っているわけではないわけでありまして、従いまして、私は、先ほどのような見通しのもとに立っておる、また、それの正当政府との間に結んだところのものは、将来かりにいろいろなことで変化が起った場合におきましても、その間においては正当に国際的に結んでおるところの義務というものに対しては、私は、これを履行するような政府になるという確信に立っておるわけであります。ただ、最後にお聞きになりました日韓問題等との関連において、いろいろ焦げつき債権の棒引きの問題等がどういうような影響を持つか、いろいろの関連を生ずるというふうな御意見でございますが、私は、インドネシアと日本との関係については、インドネシアと日本との長い間の賠償に関する、また平和条約締結に関する交渉を通じて、インドネシアに対する特有のこの事情というものを考え、両国政府一致した意見によっていろいろな問題を処理して、いく。また、日韓の問題については、日韓関係において特殊の歴史と沿革また問題というものがあるわけであります。われわれは、日韓の長い歴史的な、特に密接な関係、こういうようなものを基礎に置き、将来の友好関係考えてこの日韓の間の諸問題を解決して行くというふうに、必ずしもこれが両方が相関連するとか、一方をこうしたからこうしなければならぬとかいうような性質のものではないと、こういうふうに考えております。
  82. 千田正

    ○千田正君 私の首相にお尋ねをいたしますもう一点は、小笠原島とそれから沖縄の問題でありますが、これは両方とも日本の主権が存在しているはずであります。ただ現実問題としまして、小笠原の諸君日本に全部返されてきておる。そうして帰れない。帰れないために自分らのかつての所有地を一括買収してもらいたいということを、アメリカ側に言っておる。これは、先般小笠原島民の代表者がアメリカに行きまして、一括とにかく買い上げてもらいたいという運動をしたはずであります。一方において、沖縄は一括買収はごめんだ、あるいは、われわれは父祖伝来の土地を守り、しかも日本を主権として、日本国民としてわれわれは生きて行きたいのだ——この二つの矛盾した姿が、われわれ国民の中に現在あるわけであります。小笠原の島民が現在生活に困ってわれわれの所有地をアメリカに買ってもらうのだ、買ってもらったその金でとにかく日本内地において生活をしなければならないのだ、こういうような考えを持つとするならば、これは日本にとっては大きなマイナスな問題であって、相当日本政府として考えなければならない問題ではないか。長い間、おそらく再び自分らはその郷土であるところの小笠原島に帰れないとするならば、これはまた重大な問題であり、かつまた日本の主権は、空なる島を持っておるという空文にすぎないという結論に達するというようなことがあったならば、われわれとしては、これは大きな問題として考えなければならない、かように思いますが、この問題の矛盾した二つの島の考え方、あるいはその島の人たちにとっては、まさに生命をかけての問題であると思いますが、総理大臣の解釈は、どういうふうにしてこの人たちの生活を守りながら、日本の主権を確保していくというはっきりした信念を持っておられるかという点について、お答えを願いたいと思います。
  83. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、小笠原の問題に関しては、私が昨年アメリカに参りました際にも、いろいろとこの点について日本側の要望アメリカに伝えて、とにかく全員でなくても、まず第一に帰島の問題を解決するところのことに関して、漸進的でもいいから、できたら帰していくというような措置は、アメリカでぜひとってくれということを強く要望をいたしたのであります。同時に、われわれから言うと、究極目的は、司政権を戻し、完全な日本領土としてわれわれはこれに統治権を行なっていくということが、これが小笠原もまた沖縄も同じ究極目的であることを強く述べてあるわけであります。  ただ、第二段の問題として、現在の状況において、ことごとく日本の人員が、沖縄の方はそのままに住民がおりますけれども、小笠原の方は内地に引揚げている。そうして戦後いわゆる欧米系統の小笠原にいたところの住民は、百何人でありましたか、帰された、しかし、純粋な日本民族の系統の者を帰さないということは、どうしてもわれわれは納得できないのみならずはなはだこれは不当である。従って、いろいろな関関係で全部帰すということは、あるいはできないかもしれないし、また、現在日本に引き揚げておる者も、日本内地においてそれぞれある程度の生活の安定したところの人たちは、再び向うに帰ろうという希望を持っておらない、われわれの承知しておるところでは、すでに帰島を強く要望しておったのは、引き揚げた人七千人くらいのうち二千人前後の人が帰りたいと言っておるのだ、それを全部一括して帰してもらうことはむずかしいとしても、一部でも帰してもらいたいと、事を分けて話をしたのでございます。しかし、これが解決が非常におそいというようなことであれば、私どもは、実際日本政府は、引き揚げてきたところの人々に対して生活を保障し、その安定をはかるために、ある金をわれわれは支出しておる、これを当然アメリカがかわってそういう損害を賠償すべきものである、従って、これらの人々に対する損害を賠償してもらいたい。一括してこれらの土地を買い上げてもらいたいというようなことは、あるいは引き揚げてきている人々の間にあるかもしれませんが、私は、そういうことは当時聞いてもおりませんでしたし、そういう話はしておりません。従って、今お話通り、私は、かりにもう帰らないつもりで一括して買ってもらえというような、もし住民の間に意見があったとしても、むしろそうじゃなしに、帰らないために生じておる生活上の損害なりあるいは向うにおける土地あるいは漁業権というようなものが失われておるというようなことに対する損害賠償の意味を持った補償を要求することは、適当であろうと思いますけれども、一括買い上げをわれわれが要求するということは、私は適当でない、そういう方法は適当でない、こう思っております。
  84. 千田正

    ○千田正君 もちろん、今の首相の言葉でよくわかりましたが、われわれもそういうふうに考えられまして、できるならば、日本の内地に生活しておるところのかつての島民諸君が、永遠に失われるかもしれないし、あるいはまた帰れるかもしれないが、とにもかくにも国内に住んでおるこの人たちに、温い手を伸べて、さらに、戦争の犠牲の痛手を何とかしてカバーしてやらなければならない、これは、首相と同じにわれわれも考えております。この点は、十分お考えおきを願いたいと思います。  最後に、最近非常に犯罪が多くなってきておる。特に総理大臣は三悪追放ということを岸内閣の大きな政策一つに掲げておられますが、最近この日本政治の面に現われてくるいろいろな施策の欠陥から出てくるのか、あるいは社会情勢のいろいろな弱体から出てくるのか、いろいろなそれは要素が含んであると思いますが、凶悪なる犯罪が続出してきておって、しかもそれを押えることに狂奔しておるわが警察当局が、十分なる効果をおさめておらない、これはまことに残念なことだと私は思うのであります。しかも、これは最も卑近な例で、昨日捕えられた矢野某などは、身を隠すに三日も四日も転々として歩いておるにかかわらず、それを捕え得なかった、こういうようなことでは、警察当局のいわゆる緊張したほんとうの捜査なりあるいはその他の犯罪防止という面において、十分なる末端の統一ができておらないのじゃないか、そのために、日本国民の不安がますますふえておる。たとえば暴力団にしましても、東京で厳重に取り締れば地方に流れて行って、地方でまた犯罪を犯す、このようなことでは、総理大臣の常におっしゃられておるところの三悪追放、しかも、その悪の中でも最も凶悪なる犯罪の十分なる取り締りができておらない、この点につきましては、総理大臣はどういうふうにお考えになっておりますか、また、将来どういうふうにこういう問題に対して対処する方針であられるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  85. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御指摘のような犯罪の、ことに凶悪なる犯罪の防止並びにそれの検挙というものについて、非常な遺憾な点があるのじゃないかという御意見でございますが、私、かねて三悪の追放ということを、私の政治家の信念として国民の前に誓っております。これは、やはり根本は、言うまでもなくこの問題に関する国民諸君全体の道義並びにこれに対する理解というものを深めて、社会的なそういう犯罪なり悪をなくしようということに御協力を願うということが、根本のことであることは言うを待ちません。しかし、それには社会制度の上において欠陥のあるところのものは、社会制度の是正をするということが先決である、また、取締法規等の不備なものについては、取締法規を整備する必要があります。また、事一たび起った場合において、それを検挙し、これに対して将来を戒しめるということを、できるだけ的確にかつ迅速にやるということは、最も必要であろうと思います。従いまして、今申したような意味において、あるいは政治の面において欠けているものはこれを補完していき、あるいは法制の不備はこれを完備する、さらにそれの運営の適切を期していくということは、われわれが当然やらなければならないと同時に、こういう問題に関して、国民の一そうの理解とそうして御協力を願うという態度をとって、ますます努力をいたして参りたい、かように思っております。
  86. 千田正

    ○千田正君 警察庁長官、見えておりますか。
  87. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ええ。
  88. 千田正

    ○千田正君 見えておりますならば、私からお尋ねいたします。  この四、五日というものは、ちょうどかってのシカゴの暗黒時代のように、殺人凶悪な犯人が横行してつかまらない、そうして公的機関がまさに麻痺したような状態になって、戦々きょうきょうとしてわれわれ都民が一夜を明かす、かようなことは、戦後においてまことに私は珍しい問題であると同時に、今後こういう問題が起るとするならば、ゆゆしき大事であると私は考えるのであります。一体こういう問題が起きてすぐ迅速に犯人を検挙することのできない理由は何か、法規が十分になっておらない点もあるという意味のことを、首相はおっしゃっておられましたが、政治上の問題、あるいは社会上の問題、あるいは法規の問題等があるでしょうが、むしろ、これは警察当局の精神の弛緩じゃないか、あるいはその当局の内部において、中のそういう末端の諸君が生命を賭してまでも国民の生命を守るという精神が欠けておるのじゃないか。新聞などで見るというと、犯人が隠れておるということを知りながら、逮捕に向うのに時間をとっておる、そのうちに犯人が逃げてしまう、しかも、凶器を持った犯人が次から次へと行方をくらましている、こういうような状況では、私は日本国民の生命財産を守る警察庁としましては、十分な方針を立てておらないじゃないか、いろいろな面において憶測されたデマか、あるいはほんとうのことか、飛んでおります。それは最近人事の異動があって、上位の人たちと下位の人たちの間にまだ十分な意思の疎通がないのだ、あるいは当局において、そのお互いの和が十分じゃない、こういうような面において今のような凶悪な犯罪者が出た場合において直ちに警察当局の機能を発揮することができないのだ、こういうような話も取りざたされております。そこで私は長官にお聞きしたいのは、一体何が原因でかような凶悪な犯罪が次から次へと起きても捕えられないのか。そしてその原因はどこにあるのか、それを追及して将来どういうふうに備えなければならないか、こういうことを明白にしていただきたいと同時に、過去一年間において殺人あるいは放火その他の凶悪犯人のうちで、検挙された数と未検挙の数とを一応御発表願って、そしてあなたの今後の対処する方針というものをはっきりここで所信のほどをお答え願いたいと思うのであります。
  89. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) お答えいたします。窃盗容疑者を逮捕に向いました代々木警察署の堀内刑事を拳銃によって射殺しました犯人の逮捕がおくれまして、都民の方々の非常な不安感を高めたということはまことに申しわけないところでございます。昨日ようやく逮捕をみましたけれども、その間数日を経過いたしましたことは、何と申しましても捜査陣の不手ぎわでありましたということは率直に認めざるを得ないと思うのでございます。現在警視総監の手もとにおきまして、なぜこういう事態に立ち至ったかということにつきまして、この経緯につきまして詳細検討いたし、反省をし、将来欠陥を是正し、再びそうした失態のないことを期すべく鋭意努力いたしておるところでございまして、まだ詳細なその報告に接しておりませんので、個々具体的に、どういうところにどういう欠陥があったか、不手ぎわがあったかということをはっきりと今ここでお答えすることができないのは遺憾に存じますが、今回のこの不祥事件に関しましては、先ほど申し上げました通り、警視総監を中心としまして関係者十分この事案の経緯を検討しまして、反省すべき点は十分反省し、将来の参考に資し、改めるべき点は改める、こういうふうにして参りたいと考えておる次第でございます。  ただいま最近犯罪が非常に増加した、特に凶悪犯が非常にふえた、それに対処する態度いかんというお尋ねでございますが、お説の通り最近遺憾ながら逐年犯罪の発生は増加をみております。特に凶悪粗暴な犯罪がふえておるということはまことに憂うべき傾向であると思うのでございます。と同時に、その犯罪の発生の傾向を見まするに、凶悪粗暴化すると同時に、交通機関の発達等とも関連があろうかと思いますが、いわゆる犯罪が広域化する、広い地域にまたがっての犯罪が多くなってきている、また再犯者の数がふえている、いわゆる常習犯がふえている、こういったような量的に犯罪の発生件数がふえておるのみならず、質的に悪化する傾向にあるということはまことに憂うべき現象であると思うのであります。これに対処しまして、われわれ捜査に当る者といたしましては、そうした事情が、原因が那辺にあるかということをつきとめるのも必要でありますが、何といいましても、これに対処して誤りのない方策を立てなければならぬ、かように考えておるのでございます。  最近の、過去の統計について示せということでございますが、今手もとに正確な数字は持ち合せておりませんが、私の記憶いたしますところでは、過去一、二年の犯罪統計によりますと、全刑法犯の検挙率はおおむね六四・五%でございます。凶悪犯の検挙率はおおむね九〇%でございます。凶悪犯の中に、特に殺人犯のみについてみますならば、おおむね九七%の検挙をみておるのでございます。凶悪犯の最も重要な悪質な殺人犯につきましては、幸いにしましてその程度成果をあげておるのでございますが、さらに一〇〇%の検挙を見るべく今後一層努力しなければならぬことは申すまでもないことでございます。そこで私ども常に第一線の警察官諸君要望いたしておりますことは、検挙の成績を上げるということはもとより必要でございますが、と同時に考えなければならぬことは、いわゆる捜査検挙に成功したいのあまり人権の尊重ということを忘れてはならぬ、あくまでも人権尊重という基礎の上に立って、合理的科学的な捜査、理詰めの捜査と申しますか、勘による旧来の捜査方式を改めて、科学的、合理的な捜査を続けて参って真実を発見する、こういう態度でなければならぬということを申しておるのでございますが、幸いにしまして、第一線の諸君はよくこの方針にのっとって捜査の適正化、合理化ということに着々成果をあげつつある、かように私は考えておるのでございますが、しかしなお末端におきましては、時おりいわゆる人権侵犯等、捜査の行きすぎによって人権を侵犯するというような事案がいまだにあとを絶たない状況でございますが、そうした点につきましてはさらに一層心いたしまして国民の皆さんの御期待に沿うように努力をいたして参りたい。かように考えております。
  90. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連。この問題はきわめて重要でありますので、私は若干実情を申し述べ、御答弁いただきたいと思うのです。  なお伺う前に委員長にお伺いしますが、国家公安委員長御出席でございますか。おいでになっておりませんか。
  91. 泉山三六

    委員長泉山三六君) きょうは要求がありませんので、出席をいたしておりません。
  92. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それでは、おいでになっていなければ、警視総監並びに警察庁の任免権は国家公安委員長が持っており、その国家公安委員長総理大臣の承認を得て任命することになっておりますので、そういう立場から岸総理並びに石井警察庁長官に伺います。  まず具体的なこの代々木警察の警部射殺事件の犯人矢野の検挙については、今遺憾の意が表明されたわけですが、これほど国民に警察への不信感を来した問題はないと思う。単に遺憾の意をここで表するだけで私は済まされないと思う。それは朝刊に、朝日を初め各日刊紙はもうすでに矢野は姉の自宅で包囲した、だから夜明けとともに踏み込んで逮捕するということは既定事実として朝刊に載っておった。ところが確かに包囲したが、非常口のあるのも知らないで、包囲網を張ることも忘れて、おまけに逃げ道を押えることも忘れて、そして三時頃犯人が逃げたのもしらないで、夜明け六時頃どやどやと入っていったが、もぬけのからだった。そして翌日犯人はふてぶてしく犯罪を犯したところからごく数メートル離れた愛人の家に行っているのに、さらにそこにも張り込みをしてなかった。さらに昨日のごときは堂々元の勤務先の友人に金銭の無心の電話をかけた。にもかかわらず捕えられない。捕えたと言いますけれども、きのう矢野は自首した。何も捕えられたのではなくて彼から捕えられるべく自首してきたのであって、しかも昨日私が家に帰ったところが、ちょうど子供が受験のために上京してきていたのですが、その子供が、おとうちゃん、NHKの臨時ニュースで矢野は京都まで自動車に乗って行って、つかまったというニュースがあったというので、はてなと言ったら、NHKの臨時ニュースだから、こういった。果せるかな、それが間違いだったわけですね。新聞報道といい、あるいは放送といい、これほど警察のだらしないということを、国民に不信感を来したものはないと思う。これは調査中というのですが、十分調査してその結果によっては私は任命権者である国家公安委員長は、警察庁長官、指揮監督権を持つところの警察庁長官ですね。それから直接の責任者である警視総監に対しては、何らかの私は警告を発すべきものであると思うのです。そういう点について、これらの人事について承認権を与えた総理大臣は国家公安委員長にいかなる申し入れをするか、注意を与えるか、そういう点について私は岸総理答弁を求める。  ところが先ほど、最近の捜査には人権を尊重するので云々ということを言われているが、私にはそれは聞こえません。問題はこの警察法の第二条の警察の責務、これを正確に、むしろ正しい意味の警察精神を現代の警察官諸君把握しているかどうか。この中には不偏不党とか、公平中正とか、憲法にそむいてはならぬということが書いてあるわけですが、ところが最近警察官は学生とか労働者に対してスパイ行為を強要している事実がたくさんあります。それから学校内の学生の大会に私服で来てスパイ行為をやっているのが枚挙にいとまがない。さらに私は直接の被害者でありますが、一昨日三日に私に陳情すべく全く個人的に九州から参ったのが国会に来ようとしたところが、当日官公労ですか、総評か何か知らないが、国会にかなりデモが来るらしいというので情報が警察に入ったというので、早々と数時間前から国会議事堂を中心にして約千五百メートルから二千メートルの範囲で交通遮断して、私に会いに九州から来た人物は、三宅坂のあの社会党本部の……、
  93. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 矢嶋君に申し上げますが、関連ですからなるべく簡潔に願います。
  94. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは委員長事重大ですから、簡単には申し上げますが……。  かように国会に組合の方が陳情に来ようという場合に、デモではありませんよ、それが自然な形で入ってくるものを半径二千メートル範囲で早くも数時間前から張る。しかもまた共立講堂のあの原爆禁止の大会でも、ちょっとしたところの群衆の何倍もする警察官を直ちに出動させている。こういう点はやや今の警察というのは思想警察、政治警察の色彩を帯びてきていると思う。そして警察法の二条でうたわれているところの正しい意味の警察精神に欠けているのではないか。皆さん郷里に帰ってそれとなしに聞いてごらんなさい。どろぼうが入ったということで警察に連絡する。そうすると、近ごろは大体逃げたころに警官が来るようです。これはうそかほんとうか知りませんが、しかし純情なる民がそれを言うのですから、これはやはり警察庁長官は耳を傾けなければならない。警官はちょうど逃げたころに来る。
  95. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 簡潔にお願いします。
  96. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ことしの予算を見ると、ずいぶんと予算なんかもふやしているのですから、そういう点について反省するところはないかどうか。警察庁長官は都道府県警察官を指揮監督する権限を持っているのですから、私は今度の矢野逮捕事件に関連して明確な答弁を願いたい。答弁次第によっては私は私の質問のときにさらに追及いたします。
  97. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 警察官の任命については、御承知の通り公安委員会がイニシアチブをとることになっており、総理の権限はこれはそれに対して承認を与えることであり、あくまでもこれに対する措置等につきましては公安委員会が指導的に私は出るべきものであると思います。しかし、今日は公安委員長が参っておりませんから、矢嶋委員の御発言につきましては、私から公安委員長にその旨を伝えておきます。
  98. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 矢嶋委員の御質問にお答えいたします。警察が警察法第二条に示された責務を厳格に守らなければならぬことは申すまでもないところでございます。警察官の職責の自覚ということにつきましては、日ごろ最も大事な重点といたしまして指導教養に努めておるのでございます。具体的には個々に、いろいろ全国各警察官の中にはときに行き過ぎの行為もあるようであります。これはまことに遺憾でございますが、それは私どもの指導教養のまだ徹底しないためであろうと思いますので、今後十分反省を加えまして、これが徹底を、期して参りたい、かように考えている次第でございます。  なお、先ほどお答えいたしましたように、今回の警視庁における事件につきまして、この種の事件につきましては、御承知のように、今日の警察制度の建前では、私が一々個々に指示をいたす権限はないのでございまして、警察法に示されております通り、私が都道府県を指揮監督しますことは警察法に示された限定された事項についてのみでございます。個々の事件についての指揮命令を一々する権限はないのでございますが、少くともしかしこういう非常に国民の不安を醸成するような事態を惹起いたしましたことにつきましては、私といたしましても責任を感じておりまして、日ごろの全国警察職員に対する指導教養の至らざる点のあることをみずから反省をいたしまして、今後十分これが改善に努めたいとかように考えておるのでございます。
  99. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 日中貿易協定が調印されまして、国旗掲揚の権利を認めておりますが、対国民政府関係で問題があると存じますので、総理に御見解を伺いたいと思います。
  100. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日中第四次の貿易協定に付属する覚書の中に、国旗掲揚する権利を持っているというふうな文言があるのでありますが、これは私の考えによれば、そういう文言をこれに入れることは適当でないという考えを持っております。
  101. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 このままではお認めになりませんか。
  102. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 調印されたかされないかもわかりませんし、また政府として、これが調印をされましても政府が同意をするということを条件にしておると思います。私はあのままの文句では私の内閣においてはこれを承認することについては非常に困難がある、かように思っております。
  103. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 同意されませんか。
  104. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げましたように、私は同意することは非常に困難であるということを申し上げておきます。
  105. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、総理に国費の濫費防止、綱紀粛正等について伺いますが、まず、汚職追放の信念をお伺いいたします。
  106. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問の御趣旨はいずこにあるか知りませんが、私は私が内閣の首班として政治の全責任を持っております限り、政治の清浄、政治をきれいなものにするということは何よりも必要である。そのために政党におきましても、また政治家におきましても、さらに公務に従事するところの公務員におきましても、汚職の事態を絶対になくするということに私の力を傾けたい、かように考えております。
  107. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 汚職の実態について、検査の実績を会計検査院長と行管長官に伺いたいのと、行管長官には内部機構のこともあわせてお伺いいたします。
  108. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 行管の機構は御承知のように、監察局と、管理局と、それから統計基準局の三つに分かれております。主といたしまして監察関係のものは監察局において、これをつかさどる。中央においては局でございますが、地方におきましては地方のまたその下部組織をもってこの任に当っているわけでございます。
  109. 加藤進

    会計検査院長(加藤進君) 検査報告に掲げて件数はございますが、ただいまそのうちの不正事件が幾らあったかということは、ここに数字を持ってきておりませんけれども
  110. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 検査の割合や批難件数、金額、国費節約額、是正実績等を伺いたいのであります。それから行管長官には、業務実績をもう少し数字をあげて御説明いただきたい。
  111. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 仕事のやった内容を少し申し上げます。御承知のように行政管理庁は昭和二十七年からできたわけでございますが、それから以降昭和三十二年の一月までに実施いたしました監察を項目別にいたしますと、百二十一件でございます。そしてこの結果相手方の行政機関に勧告をいたしました事項の数は千百八十六件になっております。それから勧告によりまして相手方機関が経費の節約または歳入の増加をはかり、そして現実に処置をいたしました金額は、昭和三十二年十二月までで総額約百九十億円になっております。
  112. 加藤進

    会計検査院長(加藤進君) 検査の実績について申し上げますと、三十一年度では検査個所——これは重要なものとその次くらいに分けて申し上げますると、重要と認めまして検査に力を入れたものは五千百二十六個所ございますが、このうちの約三五%に相当いたします千七百九十一カ所、それからその他の個所は、約三万九千カ所ございますが、このうち約二・八%に相当する八百十九カ所をやっておるのであります。三十二年におきましては、重要と認める個所五千二百五十五カ所のうち、約三六%に相当する千九百二十三カ所、それからその他におきまして二万九千三百十六カ所のうち約四%に相当する千百五十四カ所の検査を行いました。  それからその結果、不当あるいは是正事項として検査報告に掲載いたしましたものの数でございますが、三十年度においては、二千八百十五件で六十六億、三十一年度では千百二十八件で、二十五億二千万円ばかりになっております。  それからこれのうちで不正等と認めまして処分いたしましたものの件数でございますが、これは正規の懲戒処分と降職あるいは強制退職等の処分を含めまして、二十九年度では五十六件、三十年度では六十九件、これは政府の処分であります。そのほか政府で厳重注意、訓戒等の処分を行なっておりまするものは、三十九年度で千百二十七件、三十年度で千三百十件、三十一年度はまだ報告をとりまとめておりません。
  113. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 全体でどれくらい検査をしておられますか、二割くらいですか。
  114. 加藤進

    会計検査院長(加藤進君) 先ほどの、数字で申し上げましたが、ちょっと言い落しましたが、その他に補助工事補助その他で重要な工事のものを検査いたしておりまするが、これが三十年度で十万カ所のうちで約一〇%、それから三十一年度は九万五千件のうち約一二%を検査いたしておりまするから、総体を、全部をいたしますと、約お話のくらいの見当になるかと存じます。
  115. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、人事院総裁に懲戒処分の実状と、従来人事院は独自の立場にありながら、国家公務員法の八十四条二項の懲戒権を一回も発動しておらない。この消極的の態度を改めていただきたいのと、もし綱紀粛正に積極的になるための何か隘路があればその点を承わりたい。
  116. 淺井清

    政府委員(淺井清君) お答えを申し上げます。懲戒処分の件数についてお尋ねでございましたが、三十年度は懲戒処分を受けましたものが三千十人、三十一年度は二千七百五十七人、三十二年度は千八百十八人となっておりまして、これは僅かながらも減少の傾向にありますることは喜ばしいことだと思っております。そのうち汚職とも言うべきものは、三十年度におきましては六百六十四人、三十一年度は六百二十三人、三十二年度——これは二月十日までの統計でございますが、五百十一人、これも僅かながら漸次よい方に向っておるように、この数字の上からは見えるのでございます。  次に、人事院が公務員法に規定されておりまするところ懲戒権を一度も発揮しないのはどういうわけかというお尋ねでございまするが、懲戒権は公務員法八十四条第一項の定めまするように、まずもって任命権者にあるという建前になっておりまして、任命権者がこれを行いません場合に、同条第二項によって人事院がこれをやる、いわば第二次的なやむを得ざる場合の処置でございまするから、この建前は守っていきたいと思います。と申しますることは、決して人事院は懲戒処分を怠るわけではございませんが、まず第一に、任命権者が懲戒処分権を行うという建前は守っていきたいと存じておる次第でございます。  次に、何かこういうことを取り締るのに隘路があるかという仰せでございまするが、隘路というものはございません。ただ非違を摘発いたしますほかに、やはり公務員の倫理性と申しまするか、さようなものを高揚いたす積極的方面も必要であろうと存じまして、人事院といたしましては、公務員に対する研修の制度を漸次規模を拡げて行いつつある実情でございます。
  117. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は、任命権者の懲戒の状態がはなはだ弛緩しておる、人事院の積極的発動を希望するのでありますけれども、一回もおやりにならぬのは、私はこれは怠慢である、かように考えますが、時間の関係上次に移ります。  法務大臣に伺いたいのですが、公務員の横領、収わいの状態、被害金額、それから第二に補助金適正化法で、起訴された人数を伺いたい。
  118. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 公務員の横領並びに収わいに関する件数、過去三カ年について申し上げます。  まず収わいについて申し上げますと、昭和三十年が合計が七百四十四名でございまして、うち起訴二百五十五名、不起訴が四百八十九名、こうなります。昭和三十一年は計が七百二十六名でございまして、起訴三百三十一名不起訴三百九十五名、昭和三十二年は総計が七百四十五名でございまして、うち起訴三百二十一名、不起訴四百二十四名となります。  次に横領について申し上げますと、昭和三十年総計が七百四十六名でございまして、起訴二百三十六名、不起訴五百十名となります。昭和三十一年は計が七百六十三名でございまして、起訴が二百五名、不起訴五百五十八名、昭和三十二年、計が六百五名でございまして、起訴が百七十七名不起訴が四百二十八名となります。なお、横領の被害とか、あるいは収賄の金額とかいうようなことについては、法務省といたしまして、その区別で統計をとっておりませんから今手元にございません。  それからして補助金等の例の適正化の法律に関する犯罪関係でございますが、これはこの法律は昭和三十年の九月二十六日から実施されましたのですけれども、その年は何も事件はございませんで、三十一年と三十二年、この二カ年間を合計いたしまして、違反事件が二十一名でございます。それからして、一般の刑法犯としての背任罪でございますが、これは過去三カ年間における背任罪の状況を申し上げますと、二十九年が全部の人数が千百十六名、三十年が千八十七名、三十一年が九百十五名、かように相なっております。
  119. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで総理にお伺いいたしたいのですが、今の内閣としてあっせん収賄罪以外にこれらの是正のため具体策はどういうものを御用意になっておりますか。
  120. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 一つはこれは私は責任の所在を明確にするということが必要だと思うのです。これに関しましては、われわれは従来行政機構の問題に関しても、いろいろな調査研究をいたしておりますし、また各主務におきまして、それぞれ所管大臣からそういう考えで、責任を明確ならしめる、それから従来ある法規を正確に順守していくということも綱紀粛正の基礎である、そういうことがルーズになるということは、責任感をあいまいにしたり、あるいは全体の官吏の気風を弛緩せしめる何になりますから、もしもこの法規が時勢に合わない、あるいは適当でないというなら改正の手段をとるという方法を研究していくことは当然でありますけれども、とにかく法規に対してはこれを順守し、励行していくという気風を作らなければならないという考えのもとに、昨年の九月以来特にそういうことを各庁に伝達をいたしまして、その措置を講じております。さらにこれは大へん遺憾なことでありますけれども、そういう違反の事実があり、そういう汚職もしくは背任等の事件がありますならば、これは大へん遺憾のことでありますが、将来をいましめる意味において、やはりできるだけ検挙して、そうしてその事実を明らかにし、これに対しては法の制裁を加えて、将来をいましめていくという処置を講じていかなければならない、かように考えております。
  121. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今総理責任の明確化による機構の改革ということを言われましたが、御承知のアメリカのフーバー委員会では一人が完全に統御し得る人数は六人から十二人ぐらいが限度である、こう言っております。これはわが国の行政機構の課や班や係の人数の分配にも非常に参考になると思うのです。ところが行管の調査によりますと、現在課の数は七百九十一、係は未回答の農林省を除きまして五千八百八十六、これが適正に配分されておるかというと、非常に大きさに不同がある、一例をあげれば、一つの係で最大のところは百人おるが、最少は係員がゼロということになっております。そこで私は汚職防止の対策について、六つの問題を提起しまして、関係閣僚の御意見を伺って、後に総理の御所見を承わりたいと思います。第一は、各省の課、班、係を基準化する問題について行政管理庁ではどうしておるか。第二は、工事その他多数の認許可事項、砂糖、肥料、外貨割当等の業務を徹底的に整理する必要がある。第三は、資材、物品の購入、調達、営繕、工事等の国有財産の払い下げの契約の形式を会計法第二十九条に規定してあります、今総理の仰せられました競争入札の原則が一向守られておらぬ。そこで行管や会計検査院並びに大蔵省でこれらの問題をどういうふうに研究されたかということをまず承わっておきたい。
  122. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この公けの契約、これは公平でかつ明朗でなければなりませんから、競争契約によるということがやはり私は一番いいと思っております。ただ他面経済的な効果の面も考えなくてはなりませんので、そういう場合にこの随意契約による弊害を避けつつ今申しました経済的な目的を達するという意味において指名契約というのも私やむを得ない様式である、かように考えておるわけで、なおまた場合によっては随意契約も、これも予算の執行等の関連してやむを得ないときもあろうかと考えておる次第であります。
  123. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 一カ年を通じて、国が契約をしたり、あるいは買ったり、払い下げしたりする概算はどれくらいになっておるか、かつその三つの形式がどのくらいの割合になっておるか、大蔵大臣に伺いたい。
  124. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この契約が競争入札になっておるか、指名競争入札になっておるかということについての実は定例的の統計をとるところまで制度化しておりませんので、ここには最近参考のために事務的に取りまとめたのが一応ありますので、この調べによりまして申し上げたいと思います。まず、一般会計の歳入予算の実行におきまして一般の競争入札によりましたのはパーセントで言いますが、全体的にこれは三年度九月分までとなっておりますが、八・三%、二十九年度はこれが六・四%、それから指名競争入札によりますのが三十年度で七・一%、二十九年度に六・九%、随意契約によるのが三十年度でこれが八四・五%、二十九年度がこれが八六・六%、かようになっております。それから歳出予算の実行のための契約でありますが、これは一般競争入札によりましたのは、これはどちらも金額でありますが、一般競争入札による数が三十年度九月ですが、これが一・六%、一十九年度が一・一%、指名競争入札による数が三十年度で九月分までが三三%、二十九年度が四〇・六%、随意契約によるのが三十年度で六五・四%、二十九年が五八・九%、これによりましてやや随意契約がパーセントを減じまして指名競争入札によるのがふえている、こういう傾向になっております。
  125. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今のお答えの通り随意契約が八割も六割もある、しかも会計法ではこれが原則である、制度化もされておらない、これらの調べで総理は、この点をいかがお考えになりますか。
  126. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私詳しく法律の規定を承知いたしておりませんが、たしか私の記憶に誤まりがなければ、随意契約をなし得る場合は会計規則か何かにそれぞれあげられておりまして、それに該当するものは随意契約によるということになっておったように承知いたしておりますが、詳しいことは政府委員からお答えを申し上げます。これは建前として、今お話通り、競争入札という形が、だれが考えてみても公正な方法であると思われます。ただ実際上の仕事をやっていく上において、事は競争入札に付することを適当としないような事案も少くないと思います。それらについては、法律や規則、取扱い等において、その基準を明確にならしめておく必要があると思いますが、そういうふうに従来なっておるのじゃないかと私は承知いたしております。なお、詳しいことは政府委員からお答えいたさせます。
  127. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) お答えを申し上げます。先ほど大蔵大臣からもお話がございましたように、一般指名競争が原則でございますが、特定の場合におきまして、指名競争なり随意契約が認められているわけでございます。この場合、指名競争、随意契約が、先ほどお答えになりましたように、相当高い割合に相なりまするのは、やはり経済性と申しまするか、できるだけ確実に、しかも能率のいい買い方をする、あるいは売り方をするということが出るものでありまするから、従ってとかく今申し上げたような一般競争の割合が低下をいたすという結果に相なっておるかと思います。従いまして、私どもといたしましては、現在の一般競争でどうして、経済性と申しまするか、あるいは確実性ということがうまく参らぬのかいうことにつきましての検討をいたす必要があると思います。たとえて申しますれば、非常に責任の能力のないものが入札に加わりまして、そのためにかえって契約の実効が十分に確保せられないというような事例もしばしばございます。そういう点につきまして、従来から検討いたしまして、部分的に改めたりいたしたこともございますが、そういうような問題、あるいは検査、検収の方法をもっと合理的にうまくやっていくということに相なりますると、もう少し自由に一般競争の方をとりまして、しかも納品が確実に検査、検収せられるというような点もあるかと思います。そういうような点につきまして、具体的な各省の調弁の実情、それから会計法におきまする競争入札というものをどういうふうに調和させまするか、この辺を十分検討いたしたいというふうに考えております。
  128. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 いろいろ御説明がありましたけれども、要するに、原則が一割や一割五分ということではよろしくないので、ことにこれが汚職の根源でありますから、総理自身において強力にこれが改正を検討されるというお考えはお持ちになりませんか、少くとも原則が七、八割になるというように変えると。
  129. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はなはだ何でありますが、現状をよく把握いたしておりませんから、十分に一つ現状を調査いたしまして、研究の結果、これに対する考え方をきめたいと、こう思います。
  130. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、国鉄その他三公社には、天下り禁止の規定がございません。ところが、国鉄等の経理の紊乱の根源は、これが影響していると思いますので、至急に禁止規定を立案する必要があると思います。また、地方公務員も同様、この立案の必要を感ずるものであります。  次に官庁の汚職取締りの単独立法の規定の必要があると思います。先ほど法務大臣から御説明がありましたけれども、あれは一般の背任罪のことで、国家公務員の背任容疑の起訴は過去三年間にわずかに一件であります。また、なぜ私がこの官庁の汚職防止のために単独立法を必要とするかといいますと、この取締りの範囲を、公務員の横領や収賄や文書偽造のほかに、職務怠慢、重大過失により国費に損害を与えたものも広義の背任としてやはり取り締る必要があると、かように考えます。これらの点について、法務大臣並びに人事院総裁の御意見を伺いたいと思います。
  131. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) ただいまの問題の立法化につきましては、目下法務省におきましては刑法全般にわたりまして改正の準備の調査を進めておりまするから、その一部分として十分研究を進めたいと考えております。
  132. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 単独立法はいかがですか。
  133. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 単独立法として規定いたしますにいたしましても、また、刑法の中で規定いたすにいたしましても、根本は刑法全体の今改正を検討中でございますから、その結果といなしまして、もしその規定の必要があり、そうしてそれは単独立法として規定する方がよろしいということでございますれば、そういう結論になろうかと思いますが、これらは全体をあわせて研究いたしたいと考えております。
  134. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 刑法全体のことは非常に長くかかるので、総理の三悪追放の趣旨から言えば、まず単独立法が必要と、こう私は思うのですが、総理いかがですか。
  135. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 法制の問題は、八木委員も御承知の通り、ことに刑法に関する問題は、一面においてわれわれは、犯罪に対する刑罰としてこれを規定すると同時に、やはり一般の社会の秩序やあるいはまた、人権というようなものの擁護も頭に置いて考えなければならぬことは言うまでもないのであります。従いまして、どこにおきましても、原則としては刑法法典というものを完備し、これに一般的の刑罰というもの、犯罪というものを網羅するという考え方に出ております。しかし、特殊のものについて特殊の立法をし、特殊の政治的理由のあるものについて、特殊の緊急性その他を考えて特殊の立法をすることも、もちろんあり得るわけであります。私はやはり、今の問題に関しましては、一般刑法の改正の問題も相当に考究がされておりますし、また、現在そういうものにつきましても、一部必要なものについては取り急いで改正するという方法もありますので、刑法法典の改正の問題として一つ研究をしたいと、初めから単独立法にするという考え方で進むことは、私としては今考えておりません。
  136. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、補助金の額は年間三千三百億円内外でありますが、補助金適正化法ができましてから、それの違反がわずかに年間十人ということでは、これは熱意が足りないし、人間も不足しておるだろうと、かように考えますので、警察庁に優秀の学力のある訓練された特別捜査員を設ける、また、検事局にこの担当の専門検事を設ける、この件に関して、法務大臣と警察庁長官ばいかにお考えになりますか。
  137. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) ただいまのお尋ねでございますが、補助金の適正化に関する法律が施行せられました当時は、検察庁の中に特別刑事係の検事を指名して作ったのでありますが、これは一応そういうものは作りましたけれども、御承知のように、検事の数が少いものでございますから、いろいろと区分けいたしましても、結局そのときそのときの事件の出てくる様相によりまして、他の係の検事もそれに回します。それからまた、その適正化関係の法律に予定しておりましたような検事でありましても、たまたま事件がございませんければよそへ使わせるというようなことでございまして、彼此融通はいたしておりますけれども、一応特別刑事の検事を指名して作ってはおります。
  138. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 御指摘のような犯罪は、いわゆる私どもの方では知能犯係において担当いたしておるのでございますが、事柄の性質上、十分指導教養を加えまして、知能犯係の専従者の養成をいたしまして、こうした事案の取締りの徹底をはかるようにいたしたいと考えております。
  139. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 検事が少ければふやしたらいいのでありまして、行管が公共事業についてお調べになったところによると、最高六五%までは普遍性がある、こういう報告があるくらいでありますので、わずか一年に十人ぐらいを起訴するというようなことでは綱紀粛正がどこへいったかと、こう私は考えるのですが、法務大臣はいかがですか。
  140. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 検挙された件数が少い、人数が少いというお話でございますけれども、検察当局といたしましては、法の命ずるところによりまして、疑いがありますれば、どこまでも厳正な態度で捜査、検察をいたしておるわけでございまして、その結果、表われた数字があるいはお考えになるより少いかもしれませんけれども、今日までこの方面の検察を怠ったというわけでもございません。今後は、お言葉通り、やはりこの重天性にかんがみまして、さらに一そう厳重に、検察の仕事を進めて参りたいと考えております。
  141. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、総理に監察機構の整備の問題について伺いますが、各省の内部にはそれぞれの内部の監察機構があり、会計検査院は千百七十八名の定員で、五億三千三百万円の予算を持っております。行管は千四百八十二人の定員で、七億三千二百万円の予算があります。会計検査院の検査の対象は、先ほどもお話しになった通り、大体二割以下でありますので、独立機関としてははなはだ貧弱である。それで、この三つを十分に整理あんばいされるということが必要であると思うのですが、いかがですか。
  142. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この監察の機構につきまして、会計検査院は、御承知の通り、会計検査院法による特別の地位と特別の使命が課せられております。また各省は、それぞれの機関においてその事務を常に監査し、これを反省していく、そうして事の誤まりなきを期していくという考えでもってやることはこれは当然であります。それをさらに総合して、行管におきまして全体的の監査をし、そうして事の誤まりなきを期していくという仕組みになっておるわけでありまして、要は十分にこれらの監察機構がそれぞれの目的を達して、しかも公務員全体が十分に自粛反省をして誤まりのないという事態を作ることが必要であろうと思います。今直ちにこれらの機構をどういうふうに改善するかということは考えておりませんが、おのおのが持っておる使命を十分に果すように、この上ともそういうふうに努力をいたして参る考えでございます。
  143. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、総理に米の問題を伺いますが、やみ米ほど順法精神を害し、社会の道義を低下さしているものはないと思うのであります。そこで、今日の段階では、統制の問題は、需給の問題でなくて、総理の決心の問題であると思うのですが、国民道義、順法精神の考えから、これに踏み切る御決心があるか、どうか。御決意のほどを伺いたいのであります。この前は、食糧管理調査会でその問題もやるだろうといったような非常にばくたる御返事があったと思うのでありますが、私はもう少し突っ込んでこの問題を真剣に取り上げていただきたい、かように考えるのであります。
  144. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御指摘のように、このやみ米というものは順法精神を傷つける大きな問題であります。それを絶対になくしていくのには、私は今お話のように、これを統制を撤廃して自由販売にするという方法と、もう一つは、管理制度を完備して、そういうやみ米というものの余地のない、また、そういうものにたよる必要のない完全な管理制度ができるか、どちらかがこれは必要であろうと思います。それでいろいろ個々におきましても、この米の制度は御承知の通り、一面においては、日本農村の農村経済というものが、米というものが非常に大きなウエートを持っている、しかも農民は全体の四〇%も占めておるというような国情におきまして、農家経営の基礎である米価をやはり安定し、午前中も議論がありましたように、生産者の米価というものを十分に生産費を補って、そうして再生産の意欲をもり立てて食糧の増産をしてもらわなければならぬ関係もありまして、一方これが主食として消費者の立場から見るというと、これの米価というもののいかんということは、非常に大きな、量とともに非常に大きな影響のある問題であります。従いまして、この制度を撤廃するかどうかということを考えてみまするというと、一面においては量の問題、二面においては米価の問題、これは生産者に対する米価と消費者に対する米価、両方が重要な性格を持っております。従いまして、今日の状況において、私はずいぶんいろいろの方面からの議論もかつてあり、議論されたところでありますけれども、やはり今日の状況において米の管理制度をやめるということは、これは私は適当でない。そうしたらどうしてやみ米をなくすかということになれば、できるだけ管理制度を完備して、そうしてできるならば、すべての日本国民の消費される主要食糧というものが十分にこの配給によってまかなわれ、そうしてやみ米の必要のない状況まで配給制度が完備してくるという方向にむしろ努力をすべきものである。これが同時に、それは国民の食生活の改善というようなものとも総合的に考えて、管理制度の完備の方向に今日においては努力をするのが適当であろう、かように考えております。
  145. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 不安の問題は、最高、最低をきめて、間接統制にすればいいのでありますし、統制を続けたからといって、米が一石でもよけいに増産できるわけではないのです。不公平なところは、百万長者でも赤字補てんでやはり国家の恩恵を受けて、その税金は日雇い労働者の酒やたばこから捻出する、非常にそこに不公平があるわけであります。総理は管理制度を何とか言われますけれども、今千数百万石のやみ米があって、どんなに管理制度をよくしたところで、これはどうしたってなくならない。法律の建前でやはりこれは順法しなければ、どんなに仰せられても綱紀の粛正は望み得ない。現に昭和二十六年には、吉田内閣のときに今より需給の状態が悪いのに、自由販売がきめられたのです。私は専売になればいざ知らず、今の制度でやみ米が千万石以下になることはあっりょうがない。時間がありませんから私は数字をあげませんが、どうして法律を守らなくてもいいのかという点について、もう少し深刻にお考えになって御答弁をいただきたいと思います。
  146. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 米の問題につきましては、私は実は特にその方の専門でもございませんので、十分に御了解のいくだけの答弁ができないかと思いますが、しかし、私は先ほど来申し上げているように、従来この自由販売あるいは間接統制、過去におきましても、日本の米についての沿革は御承知の通り、完全自由であったという時代、また、間接統制を実施した時代、あるいはこういう直接統制をした時代というふうな沿革を経てきております。そうしてそのつどこれらがそういうふうな形をとってきたことについては、それぞれの理由があり、いずれにしても、先ほど申すように、日本の生産者と消費者との立場において、非常な重要な問題でございますのでで、いろいろと各方面の専門家なり、その他が論議をいたしておるわけであります。私は結論的に申せば、一面において、今御指摘のように違反が行われ、順法精神を傷つけ、国民道義の上から非常に望ましくない結果があるのじゃないかと言われている、それを憂えられる八木委員のお言葉もごもっともでありますが、同時にこの問題は、ただその方からだけ論ずることはできないので、今生産者及び消費者の立場全体を総合して考えなければならない問題であると思います。従いまして、非常にむずかしい問題でございますが、今の私の考えとしては、やはり管理制度を完備して、そういうものがなくなるような方向にいくことが望ましいものと、こういうふうな私の考えでございます。
  147. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 米価審議会に、米の管理制度はいかにあるべきかということを御諮問にならずに、統制撤廃をきめるがその方法いかんと、この御諮問になれば、おのずから答えは、私は変ってくると思います。しかし、時間がありませんので、この問題はこれくらいにしておきまして、最後に、綱紀粛正は何といっても根本は指導者の心がまえにあるのでありますから、この点について二、三お伺いしたいと思います。  第一に、今回特別職の給与の引き上げ法案が出ておりますが、大臣は昇給を辞退すると、こういうことを新聞で承知いたしましたが、これはほんとうでありますか。
  148. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 一般公務員とこの特別職の公務員との給与が非常に不均衡になっておる現状から、これを是正しようとする考えは、私は当然の問題である。ただ特別職のうちに、大臣その他政務官等が含まれておる、私は現在のこの経済情勢のもとにおいて、あらゆる物価もこれを上がることを押えていかなければならない、また、経済も緊縮をはかっていかなきゃならないという際でありますので、そういうこの特別職の公務員については、一般公務員との間に非常に不均衡でありますために、あるいは上に立っておる人が下の人よりも安いというような不均衡が出ております。これは私は直さなければならない、しかし、今申しましたような地位にあるものは、それの俸給令としては改正しても、それをいつから施行するかということについては、十分時期を考えて施行すべきものであって、現在の状態においては、これを直ちに施行することは適当でないと、こう考えております。
  149. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 施行しない法律ならそれはお延しになって、実行するときにお出しになったらいかがでございますか。
  150. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そのお考えも私は一つのお考えであると思います。ただ俸給令の問題は、この公務員全体の一つの制度の問題としての一応の均衡のとれておる一つの組織になっておるようであります。従いまして、俸給令としては、形式的には改正することが法律上は適当であるというこの形式論に従いまして、しかし、それの実施は今申しましたような種々の政治的事情を考えて実施すべきだ、今実施すべきではない、しかし、お話し通りのことも、私は一つ考えであると思います。
  151. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 実施をお延ばしになるのは、大臣だけですか。
  152. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) この点につきましては、すでに所要の法律案も御審議をお願いする手続をとっております。その政府の案によりますと、内閣総理大臣国務大臣、あるいは官房長官というようなものについてのこの規定を実施いたします時期は別に法律で定めるというような案にいたしまして、ただいま御審議を願っております。
  153. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 予算は組んでいますか。
  154. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 実施を別に法律でもって定める分につきましては、予算に組んでございません。
  155. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 ところで、議員歳費の値上げの法案はまだ出ておりませんが、その予算が一億百九十万円すでに予算に出ています。一体法律が出ているものが予算に組んでなくて、法律の出てないものを予算を組んでいる、私は非常におかしいと思います。一億一千万円あれば、今度の予算で、厚生省の日雇い、労働者の乳幼児の簡易預かり所も三千万円でありますが、断わっておられる、もう少し設備のいい保育所を作れば、一カ所二百五十万円でできるそうでございますが、この値上げ分の一億では、全国に四十カ所できます。一体法律もないのに一億円からの議員の歳費の値上げを予算に組んで、そうして日雇い労働者の乳飲み子を預かるところさえ予算を削る、私は実に不都合だと思いますが、いかがで十か。総理にお伺いいたしたい。
  156. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 前段を私からお答えいたします。国会議員の歳費の件については、所要の増額をなすべき予算は組んでございます。これは前例その他慣行等によりまして、両院の議院運営委員会等におかれまして、議員立法としてこの処置をどうするかということを御制定願いたいと、こういう運びに相なっておるわけでございます。
  157. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 前例か何か知りませんが、悪例かもしれぬが、政府が予算を組む以上は、なぜ法律をお出しにならないか、法律に出すものの予算がなくて、法律のないものの予算が一億も組んでおる、そうして一方弱い者の予算は削る、これが岸内閣の方針ですか。総理に私はお伺いいたしたいのです。
  158. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) まず、その手続について申し上げたいと思いますが、議員の歳費の増額については、ただいまお話しいたしましたように、議員立法でお願いをするということに考えておるわけでございます。これがまだ出ておりませんから、予算と法律とが不つり合いであるというお説は一応ごもっともでございますが、必ずしも予算案を出しました場合、その関係の法律案というものが同時に出ていない場合も多々あるわけでございますから、これは両院におかれましてそのやり方を御決定願い、かつ、議員立法として御処理を願いたい、こういうふうに考えております。
  159. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 総理、いかがですか。
  160. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 議員の俸給の問題は、今官房長官から申し述べましたような手続でこれがきめられるとになっております。私は今回の予算を編成するときに当りまして、この内応を御検討になりまして、いろいろ御批判はあろうかと思いますが、決して弱い者をいじめて、強い者その他についてはこれを何する、認めるというような心がまえで予算を編成した考えはございません。
  161. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 大臣の俸給を辞退されることと、第一党の総裁である総理が議員の歳費の値上げをお認めになることは条理一貫しないと思うのですが、いかがですか。
  162. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 議員の歳費の問題につきましては、これは国会においておきめになる従来の先例でございす。各党の商において、議運においてきめられる問題になっております。従って私としては、私が単独できめ得る今申しました大臣、政務次官の俸給につきましては、これを施行を延ばす。しかし、国会の議員の俸給等につきましては、従来の慣行に従って議院  で、国会でこれがきめられるという慣行に従っておるわけであります。
  163. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 一党の総裁として、もう少し指導力を発揮してもらいたいと思います。  次に移ります。法務大臣に、福岡のリコールの原因の概況を伺いたいと思います。
  164. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 福岡県知事のリコールの原因となりました事件は、御承知のように、山本前副知事それからして岩佐出納長、この二人がそれぞれ背任収賄、それから岩佐君は背任、こういう罪名で贈賄者側とともに、昨年の四月十七日かと思いますが、東京地方検察庁から東京地方裁判所に起訴されております。その事件の結果といたしまして、現在の行政の島高責任者である土屋知事は、知事として適任でないということからリコールが始まったようでございますが、その事件の概要を申し上げて。
  165. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 いや、けっこうです。私は福岡県知事は、副知事や出納長というものが背任収賄でつかまっておるのに、不行き届きの責任をもって、道義上当然辞職すべきであると思うのに、リコール問題でしのぎを削っているというのは私まことに嘆かわしいことである、かように考えるのでありますが、総理は辞職を勧告されるというお考えはありませんか。
  166. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はそういう考えは持っておりません。
  167. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最後にもう一点伺いますが、鳩山内閣発足当時に公邸廃止を声明されましたが、私は公邸廃止論者でありますけれども総理官邸もあることであるのに、お宅の隣に公邸を今度設けられる。これは世の誤解を招くものと考えますので、おやめになる方がいいと思うのですが、いかがでありますか。
  168. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御承知の通り、今日あります総理大臣公邸といいますか、これは日常の生活をするためにはきわめて不適当な建物になっております。むしろ事務所もしくはその他のいろいろな催し物に使うことに適しており、従来といえども、そういうふうにこれが用いられております。かつてはこれに付属した日本家屋がありまして、これに歴代の総理大臣が住まわれておったこともございます。ところが、私が今住まいをいたしておりまする住居はきわめて手狭であります。私自身及び家族の生活としては、私は適当なところであると思いますが、しかし同時に、われわれの、総理大臣といたしまして、いろいろな人々に会ったり、あるいは、ときに会合するというようなことには、私の自宅だけではとうていこれが手狭で、用を達することができないという実情でございます。そこで、これに近接している隣の舎屋を借り入れて、これを公邸として使っているというのが現状でございまして、実際上の必要からやむを得ないことであると、かように思っております。
  169. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は、私邸をいろいろな会合によって私生活を脅かされる、ディスターブされるということは、非常にお気の毒なことであって、そういう習慣を改めて、事務はすべて官邸でおやりになる、こういうことにして、私邸は私生活だけということにされる方がいいと思いますが、この点は時間も参りましたし、この程度にいたしておきまして……。    〔矢嶋三義君「ちょっと関連して、ただいまのに関連して簡単に伺いますが……」と述ぶ〕
  170. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ちょっとお待ち下さい。発言中ですから。
  171. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最後に、きょうの御答弁で、汚職追放を、岸内閣として三大追放の一つとして非常に力を入れておられるようでありますけれども、私は遺憾ながら研究も足らないし、熱意も非常に薄い、こう実は考えるのであります。たとえば、単独立法にいたしまても、刑法の改正を待つというようなことでは、これは百年河清を待つと私は言いたい。今の国民感情から申しますならば、現在の官公吏の汚職は目に余るものがある。これでは税金を払うのはいやだという感じが起るのは私は無理からぬことであると存じておるのであります。でありますから、総理がこれに非常な熱意をお持ちでありますならば、きょうは時間もありませんので、十分意を尽すことはできませんでしたけれども、どうかすみやかに、制度なり、運営なり、あるいは立法なり、ほんとうにまじめにこれに取り細む御決心がありますならば、方法は網らもあるのでありますから、どうか十分な熱意を示して、国民要望にお答えを願いたい。この際、御決意のほどをもう一ぺん伺いまして、私の質問を終ります。
  172. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 汚職追放の問題は、私自身が国民の前に強く誓ったことでありますし、また、政治を行なっていく責任者といたしまして、政治行政を通じて一生懸命に汚職をなくし、これに対して国民の信頼を正常な姿にするということは、何よりも私は必要なことである。私は決して熱意において欠けているとは、自分では考えませんが、しかし、これに対する方法はいろいろ今おあげになりましたし、また、御意見も承わりましたが、いろいろな方法考えなければなりませんし、また、従来政治家で、だれもが、汚職はいいのだとか、あるいは公務員のそういうふうな背任や汚職というような、涜職というような問題に対して、意を用いなかった政治家は、私は歴代なかろうと思うのです。責任者としては当然なんですが、しかし、きわめて私は根深い、また、根気強くあらゆる努力をしていかないというと、これが根絶するということは相当に困難があると思うのです。従いまして、この上とも私はあるいは運営におきまして、また、立法の点におきまして、足らない点につきましても十分一つ考究しまして、また、運営の点において十分な一つ努力をいたす覚悟でありますし、また、これに関するいろいろな御意見等につきましても、議場を離れましても、また一つお教えを願いたいと思います。
  173. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 矢嶋さん、よろしゅうございますか。(「議事進行」と呼ぶ者あり)  次の質疑者は社会党の松澤兼人君でありますが、議事の都合上、理事会の議を経まして、自民党苫米地義三君に交代いたします。
  174. 苫米地義三

    苫米地義三君 最初に、総理大臣に御質問申し上げます。    〔委員長退席、理事劔木享弘君着席〕  私は、現代の世界は歴史的に一大転換期にあると思うのでございます。その動因となったものは、申すまでもなく、原子エネルギーの発見であり、科学技術の飛躍的進歩でありまして、これを中軸として社会的な、あるいは産業的な変革が急速度に行われておる、こういうことを見のがすわけには参りません。もし、この進歩が邪道の方向に走りますならば、激しい闘争の用具となり、文明の破壊と人類の滅亡を招来することは必至であります。これに反して、これを正道を走ることに用いまするならば、そこに自由な英知の競争が行われ、そして建設的な文化が実りまして、平和な繁栄がもたらされることは、これは当然である。そのどちらを選ぶということになるかは、現代の人に課せられた重大な問題だと思うのでございます。また一面、人工衛星がすでに出現をいたしました。これは、宇宙世界への将来をあながち夢想だというふうに片づけるわけには参らぬと思います。すなわち、これらの点を考え政治をやるということが、今後のほんとうの政治のあり方でないかと思うのでございますが、これに対する岸総理の、現代に対する世界観というものがおありになるに相違ございませんが、その点をまず拝聴いたしたいと思います。
  175. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御意見のごとく、この原子力という新しいエネルギーの発見、これの問題に関連して、世界があらゆる面において非常に大きな変革をもたらそうとしておるということは、お説の通りであると思います。しこうして、私の信念から、私の願いから申しましても、この新しい原子力が人類の福祉のために平和的利用がされるならば、おそらく、従来われわれが考えておったこの人類の生産力にいたしましても、これを基礎としての経済力、産業の姿、また人間生活のあり方等につきましても、非常に大きな福祉、繁栄をもたらすものであるが、これが破壊兵器として用いられるならば、あるいは人類そのものの滅亡を意味するかもしれないという重大なる意義をもたらしておる。現に日本としては、そのおそるべき破壊力というものを体験する悲劇に会っております。従って、現在の国際情勢から見れば、こういう新しく発見されたエネルギー、そういう非常な人類の幸福を約束し得る力を持っているこのエネルギーが、破壊力の方面に大いに研究が進められており、その破壊力に対する武器の強弱をお互いに競うというような状況にあることは、言うまでもなく、非常に嘆かわしい次第であると言わなければならぬと思います。  ただ、今までのこの国際の現実が、常に力の均衡によってわずかに平和が保たれていくというこの現実であり、それがさらに、このおそるべき力の発見に伴って原子兵器の優越をもって、そうして自分たちの平和を守っていこうということを互いに競っておるという現状でありますが、おそらくは、その限界が世界的に来ておるということを、だれもが人類の将来のために心配をするという時期になってきておると思います。従って、ここにそういうやり方でなしに、話し合いによって恒久の平和の道を見出していき、また、この力を平和的に利用して、そうして人類の福祉を増進する方向に持っていこうという、この常識が世界の各地からだんだん盛り上ってきており、最近におきましては、米ソ両陣営の巨頭である米ソ両国の間においても、話し合いの機会を持ってこれに対処しようという機運が漸次盛り上っておることは、はなはだけつこうなことであり、また、そういう方法をもって、さっき申しましたように、あくまでも人類の福祉のためにこれが用いられるように、今後とも努力していくことが必要であると思います。
  176. 苫米地義三

    苫米地義三君 御意見を拝聴いたしましたが、要するに、科学技術の進歩をいかに現代人がコントロールしてそうして人類の繁栄と平和のために用いるかということだと思う。  ところで、問題になりますことは、政府が、さきに国連を通じまして、核実験停止ということを提唱されております。岸総理も、あらゆる機会にこのことを取り上げて世界人々に訴えておることは、わが国民の声を代表する意味において、その御努力を多とするものでございます。重光外務大臣のときに何を提唱したかといいますと、核実験事前登録案ということでございました。これから見ますと、確かに一歩前進をしたと思われるのであります。しかし、それにしても、こういう核実験停止というような、なまぬるいような感じを持たれることは、われわれが残虐なあの洗礼を受けた国民として、何といっても物足りない感じを持っておるのですが、その提案をしておるという真意を、一応一つ拝聴したいと思います。
  177. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは、先ほど私が基本観念を申し述べたことから、当然、この核兵器実験禁止、核爆発の実験禁止、さらに進んで、核兵器の製造、使用等を禁止する方向に進んでいかなければならぬことは言うを待ちません。しこうして、すでにわが国会におきましても、そのことが強く満場一致で議決されております。国民全体の声である。従いまして、これを強く主張することは当然でございます。  ただ、従来、御承知の通り、これを持っております英米とソ連とは、相対立して、互いにこれが実験をやっておる。そうして常に言を相手方に託して、向うがやめない限りは自分としてはやめない、自衛上これがやめられないということを主張して、やめることについて理論的に反対しておるというのじゃなしに、現実として、やめてよろしいが、相手方がやめない限りはやめない。しこうして、今やこれをやめろという声は世界的の声でありますから、表面的には、両陣営の巨頭ともやめるということを提案をいたしております。それにはいろいろな条件がつけられる、こういう方法でやめるという、いろいろな条件がついております。両方の主張というものは、表面的にはやめるということでは一致しておるようであるけれども、その手段、方法がくっついておるために、両方の意見一致しないというのが現状であります。  しこうして、昨年の状況でおれば、一方ソ連は無条件にこれだけを禁止する、軍縮の問題と切り離してこれだけを禁止すると言い、一方英米の側においては、一般軍縮とともにこれを論議してきめなければ、これだけをやめても、一般の普通兵器によるところの一般の軍備を制限せぬ限りは、ソ連の方がその点において一そう優越の立場になるから、それでは世界の平和にとって危険であるという見地から、これに反対しておる。そうして軍縮会議は行き詰まっておるというあの実情に基いて、私どもも、一日も早くあの事態をなくする、とにかく永久的になくすることが望みであるが、たとえ一時的にでもなくして、そうして話をする、やめてから話をする。話がついてからやめるというのでなくして、一応やめて話をしようじゃないかという考えに立って、そうして両陣営の主張というものを、私は、両方がある程度譲らなければ、自分の主張を一歩も譲らぬということでは、これは両方の意見というものはついに合致しないために、結果としては無制限に行われるということになりますので、そこをどういうふうにして調整するかということが、現実のわれわれの問題として考えなければならぬ問題である、こう考えまして、昨年、ああいう提案を国連にいたしたわけであります。  しかし、これが恒久的のわれわれの主張ではなく、われわれの主張の最後の目的は、言うまでもなく、これを禁止するということであります。さらに進んでは、製造も使用も禁止する、そうしてこれを平和的利用、福祉のために繁栄のためにこれを用いるということでありますから、それに至る方法として現実国際情勢を頭に置いてその現実問題に基いて各国協力を、この国際機関である国際連合を通じて求めたというのが、昨年の私どもの提案の趣旨でございます。
  178. 苫米地義三

    苫米地義三君 そういう御意思であるに相違ございませんが、現実の問題としては、核実験禁止または停止ということになっておるわけです。そのことはどういうことを意味するかと申しますと、核兵器というものを認めておる立場から言われることだと思います。国際間に、核兵器というものは常識として今認められておるのでありますから、一挙にこれを禁止するということは、あるいは困難かもしれません。しかし、要求あるいは世界世論としては、これを絶対に禁止するということができなければならぬと思います。その意味は、現に今年、太平洋上にまた英米ともに核実験をやろうという公表をしておる。そうして日本がこれに対して抗議を申し込んでおりますが、一顧も顧みないというような状態であり、ソ連がまたしばしばその実験を繰り返しておる。もし、日本がこの核実験によっての放射能が人道上許すことができないという立場でありましても、核兵器そのものを認めておる立場からそれを考えますれば、これは実験だけを停止するということは無理だということを言われるのも、またやむを得ないことであろうと思います。そこで、わが国としては一歩前進して核兵器の禁止ということを強く訴えるべきであろうと思いますが、段階的にというお言葉がありましたが、そういう時間的な余裕のないような緊迫感を感じますが、その点に対する御見解はいかがでありますか。
  179. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げましたように、核実験の禁止であるとか停止であるとかいうことは、これは究極目的ではないのでありまして、今、苫米地委員の御指摘になるように、やはりこれを兵器に使う、大量殺戮兵器に使うということをやめるということ、それを禁止するということが私は究極目的でなければならぬ。しかし、今それを直ちに言ってそれが実現できる状況であるか、その禁止ができなければ実験はいつまでも続けるということを、禁止されるまでは仕方ないと、こう認めるわけにもいかない。実験そのものが人類に与える弊害、いわゆる核兵器が核兵器として戦争に使われて、そうして現実に殺戮するということでなしに、実験そのものがすでに大気や海洋を汚濁して、人類にいろいろな不幸をもたらしているということに顧みて、その本体はこれを禁止することでありますけれども、それに至る前でも、とにかく実験は禁止、あるいは禁止までいかなくても、一時的に停止でもして、その害悪を最小限にとどめて、そうして本体の禁止をせしめるということを私ども考えておるのであります。しかし、幸いに事態はいろいろとこの問題に関して、米ソともによほどわれわれの主張である、またそれが世界的な世論となっておりますことに耳を傾けるような傾向が出てきていることは、私、喜ばしいと思いますし、また、さらにそれを進めていくようにこの上とも努力をして、究極目的である禁止を一つめざして実現するようにしたいと思います。
  180. 苫米地義三

    苫米地義三君 核実験の被害というものは、放射能によってわれわれは現実に大きな被害を受けておるのでありまして、これは人道上許すことができない一つの実験行為と思うのであります。ところが、それならば、一九二五年の六月にジュネーブで毒ガス及び細菌兵器というものを戦争に使わないという協定がございます。これは、人道上こういう兵器を使ってはならないという基礎に立った議定書ですが、それが現在なお有効に存続しているわけです。ところが、同じ人道を唱えて、そうして核実験の禁止を唱える日本としては、この議定書に対して批准を与えておらぬ。調印はしたけれども、批准を与えておらぬ、こういうことになっておるのでありますが、それならば、核実験の禁止は叫ぶけれども、毒ガスや細菌兵器の使用に対してはかまわないかというようなロジックが生まれてくるわけです。これは主張の一貫性を欠いているものではないかと思う。これに対してはどういうふうにお考えになりますか。あるいは時がおくれても今日批准を与えて、そうして主張の矛盾のないような態度で主張すべきではないか、こういうふうにも考えるのですが、その当時の批准をしなかったという事情と、今日そういう考えを持ち得ないのかどうかということを、総理または外務大臣から伺いたい。
  181. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 一九二五年当時、どういう理由で、調印したけれども批准しなかったかということは、これは時代的に相当の時日がたっておりまして、明瞭でございません。ただ、それなら、今日批准をすべきではないか、あるいは批准しないことが首尾一貫しない、論理の一貫を欠きはしないかというお話でございます。あの議定書ができました当時と、世界情勢は非常に変つって参っておりまして、今日の一番注目の点は、いうまでもなく兵器について、この毒ガスや、あるいは細菌以上の害悪と、そして大きな破滅をもたらすところの原子力の問題に集中されておりまして、これに関して禁止をする国際条約ができることを、私ども念願をし、努力をしておるわけであります。もちろん、この議定書は有効に残っております。今日まで四十数カ国が加盟いたしておりますが、相当の時日がたっておりまして、最近にこれに加盟したという国は、加盟というか、批准した国はほとんどないのじゃないか。また日本と同じようにこれを強く唱えております諸国のうちにおきましても、この議定書を批准しておらない国もたくさんあるのでありましてむしろこれは、今日から見ると、すでに解決された問題として日本も、もちろんそういうものを使う意思もなければ、あるいはそういうことを、そういう議定書に入らなければならない積極的の理由は私はないと思います。しかし、そういうふうな事態から見ますると、特に今日これを批准しないと、日本態度が非常に不徹底であり、首尾一貫しないという非難を受けるようなことは、私はないと思うのであります。そういう意味におきまして、相当な時日がたっておりますので、当時の事情はわかりませんが、今日においては、むしろわれわれとしては、今申すような原子兵器の禁止の問題について国際条約を作ることに主力を置きたいと思います。
  182. 苫米地義三

    苫米地義三君 時が立っておるし、世界情勢も変っておるがら、今さら批准はできないというお話のように承わりましたが、今日のような、こういうせっぱ詰まった情勢にありまする以上は、時がたっておってもすべきものはする。そして主張は一貫して、理論的に立つという、こういう態度をとることが、私は日本のためになると思うのです。現にミサイルが今非常に発達しておりますが、そのミサイルの弾頭に毒ガスをつけてやる。あるいは細菌を装備してやる。こういうような場合になりますれば、核兵器の被害と、その被害の程度というものはあまり大した違いがないのかもしれない。そういう事態になってきておりますから、私はもっと真剣にこの問題を取り扱ってそうして、そういうものを一括して人道的に許すことのできない兵器は禁止すべきものだという声を強く訴える方がいいと思うのですが、どうですか。
  183. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今日わが国としては、自衛のために、他から侵略を受け、他から攻撃を受けた場合において、祖国の安全を確保するための自衛の手段として、自衛隊の組織がございます。ただあの条約そのものができた当時につき、また加盟しておる国々は、やはり戦争——相当に攻撃する攻撃力ということを、他を侵略するということじゃないでしょうけれども、他に対して攻撃を加えるという広い目的をもってあれに加盟しておりまして、条約の条文等につきましても、私は趣旨は、今、苫米地委員お話し通り、これに反対するとかということを申し上げておるわけではありませんが、日本のこの自衛隊というものは、本来、そういう攻撃的な武器を持つということは、憲法の範囲を逸脱しておるものだと思います。そういう事情もございますし、今、相当時間もたっておりますし、また事態も、原子力というものは世界の注目を浴び、われわれもそれに対して非常に真剣なことを考えておる際に、特にこれを取り上げて、批准するということをしなくても、私は別に日本態度について、日本態度が不一致であり、もしくは矛盾しており、日本の核兵器の禁止に対する熱意を世界的に疑われるようなことは私はないと思うということを申し上げておるわけでありまして、趣旨としては、これは批准すべきものにあらずということを強く申しておるわけではございません。
  184. 苫米地義三

    苫米地義三君 今さらという気持があるようですが、私は、この時代の変遷をよく翫味して、そうして、やはりやるべきものはやるというぐらいの決心を持たなければ、世界世論の展開というものは容易にこないと思うのです。幸いに、国連にも加盟し、理事国の一人にもなっておりますから、人ごとじゃないのです。日本がこれを持てといい、あるいは日本が使うということじゃなくて、世界中の問題として、これを日本が唱うべきじゃないか、こういうことを申したのでありますが、その点は一つ十分御考慮おきを願いたいと思うのです。  その次には、岸総理が、先般、両巨頭会談のことについて、世界の緊張緩和、または恒久平和の糸口を発見するというような点にこれが役立つかもしれぬから、この両巨頭会談には賛成だと、こういうお話がございました。私どもも、もちろん賛成でありますL、それから、現にそれに対してはそれぞれの準備が万端整わなければならぬと思うので、一挙にいかないかもしれませんけれども、こういう会談があって、幸いに恒久平和に対する具体案が論議されるということは非常にけっこうだと思うのです。けれども、それに対してやはり共通の目標がなければならぬと思うのですね。その目標が何であるかというようなことを具体的に建設的に準備をして、そうして会談をすることになっておると思うのです。要するに、人類の救済と平和の繁栄ということが共通の課題になると思うのです。ところが、その経過から申しまして、われわれ、先ほどから申し上げますように、国連に加入し、理事国の一人でありますから、両巨頭会談即連合国の問題だと思うのです。でありますから、これに無関心であってはならぬと思うのです。どうしても世界の恒久平和をはかろうという大目的があり、それが国連全体の共通の目標であるとすれば、理事国である日本が、しかも原子爆弾の洗礼を受けた日本としては、率先してもこの機会をとらえて、そこに活躍しなければならぬ、こういうふうに思うのでございます。すなわち、これが岸総理が言われる国連中心の外交の大きな一つの問題だと思うのでございまして、その点に対してどういうふうにお考えですか、伺いたい。
  185. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お説の通り、この東西両巨頭会談というものは、両国とも国連に加盟をいたしておりますし、国連の場もできるだけこれを使うこと、このことは言うを待ちません。ただ従来、国連の安保理市会におきましても、いわゆる拒否権というものが御承知の通りありまして、自分の方の意に満たないものに対しては、拒否権を発動しますれば、それが成立しないというような仕組みになっております。そこで問題は、やはりこの問題を円満裏に進めていくためには、この両巨頭が、精神は、国連のあの崇高な国連憲章の精神に基いて、その実際の実現の方法としては、この国連の場でなしに、これを会談を実現しようと、こう考えていくのもまた当然であろうと思うのであります。い、ずれにしても、こういう気運が国連、さらに世界各国の間に盛り上って参りまして、最近の私ども、新聞の報道によって承知しておるところによりますというと、その気運が両国の間にずっとかもし出されておりまして、その準備として、外相会議等の方法についても具体的な話し合いが行われるような段階にまできておることは、非常に私は喜ばしいことであり、ぜひともこの会談において恒久平和への道が開かれることを心から念願してやまないものであります。
  186. 苫米地義三

    苫米地義三君 これが時の問題なんですか、現在世界情勢を見ますというと、科学技術の進歩というものは、ほんとうに急速度に進歩しておることは御承知の通りなんであります。    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕 しかもその進歩が、兵器並びに軍備に対しての進歩というものは実に目ざましいものがあるのです。この進歩と生産の競争というものが行われておりまするために、どうしてもこれをできるだけ早く解決をしなければならないということになると思うのです。従来、力の均衡によって平和が保たれたといっておりますけれども、力の均衡というものは、暫定的には平和を維持することはできるかもしれませんが、恒久的には絶対できないのです。そこで、そのうちにおそらく現在以上に兵器が発達して、ほんとうの意味の最終兵器というものが出現することは、これは間違いないと思うのです。そのことは、一般の産業経済の進歩を考えてみますというと、ほとんど疑いのないことになると思うのでございます。だから、私はいかにも神経過敏にこれを心配しておるように思いますけれども、そうでなく、今のカーテンの中で研究されておるということは、決して軽視すべきものではない、そういうふうに考えます。私は昨年の九月に、イギリスの哲学者のバートランド・ラッセル博士に会ったときに、先生は、どうしてもこのままの情勢を推し進めていきますというと、五十年もたたないうちにこの地球の上に人間がいなくなるだろうというふうに心配しておったくらいなんです。今の兵器の進歩というものはなまやさしいものではないということを、まず念頭に置かなければならないと思うし、われわれの経験がこれを示しておるのでございます。それを最も端的にいわれたのは、終戦当時の陛下の詔書に、ひとり、「我カ民族ノ滅亡ヲ招来スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ」と喝破されておるのであります。このことは、あの残虐な兵器日本に投下されたということに対する大きな警告であるとともに、世界中の人類に対してこれを警告しておるものと私ども考える。その時がだんだん迫ってきておる、こういう現実だと私どもは思うのです。われわれは、敗戦という一つの十字架を背負って、万世のために太平を開くという決意をした。だからその体験をもって、国連内部の一員として、これはどうしても恒久平和を実現して、そして人類の救済に当らなければならぬということが、日本人にとってこそ最も強く感じなければならぬと思うのでございます。その点に対して、申し上げるまでもございませんが、一応、総理の御見解と御熱意を伺いたいと思います。
  187. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御意見のように、こういう、いわゆる力でもって武力を競い、そうすることによって平和を作り上げるということが、たとえ一時的にあっても、それは恒久平和に問題じゃない。ことに科学の発達というものは、これはいうまでもなく、一国に独占さるべき性質のものではないし、また事実上、一国に独占しようとしましてもできない問題でございます。そういうことを頭に置いて考えてみまするというと、ますますもって私は力の均衡により、力の優秀性を科学の進歩で裏づけて、そして世界の平和を保とうというような行き方というものは、もうすでに限度がきておるといわなければならぬと思います。従いまして、日本としては、ことに平和国家を目ざし、それは日本自身の、日本民族の平和であり、繁栄であり、福祉であるだけでなしに、世界人類全体の平和、福祉、繁栄ということを大きな理想として念願しておる日本といたしましては、今またその途上において、非常に悲しむべき体験を持っておる日本といたしましては、あくまでもこの原子力を中心としての科学の進歩、発達というものを、人類の福祉のために、繁栄のためにこれを貢献せしめるように、あらゆる努力をしていかなければならぬ、こう考えております。
  188. 苫米地義三

    苫米地義三君 現在の国際間の不安は何に現われるかといいますというと、やはり国際間の間に横たわる疑惑というものと、それからお互いの不信感が大きな原因であると思うのです。これを解決しなければ前進しないと思うのですが、そのためには、やはり具体的な問題を検討して、そして解決の道を開いていくということでなければならぬと思うのです。それに対して一部の人は、不可侵条約を結ぶことによって平和が保たれるというようなこともいわれておりますが、しかし、先ほど申し上げました疑惑と不信感がある限りは、さような文書や約束だけで根本的な解決が見られるとは思いませんです。ところが、ちょうどよいことには、明年度、国際連合では国際連合憲章を改訂する特別総会が開かれることになっております。これが私は、現在の国連の平和機構なんかの不備な点を十分に改訂して、そして恒久平和に対する具体案を練っていく絶好の機会だと思うのです。こういう点から、日本は明年度の特別総会に最も強い発言と、そしてこの国連憲章の改訂に対して今から検討をして、そしてその会議を有効にするようにしてもらいたい、こういうふうに思うのでございます。何といっても問題が建設的であり、具体的でなければならぬのでありますから、私は、この機会に私の考えております点を申し上げて、そういう総会の議題に提供したらどうかというふうに思っておりますが、第一は、核兵器、毒ガス、細菌等、非人道的兵器を一切禁止すること、第二は、査察制度を制定すること、第三は、国連内に独立の国際警察軍を創設して、強力なる軍備を保持せしめ、現在の集団安全保障制度にかえさせること、第四は、各国は国内治安を維持するに足るだけの警察軍を保有するにとどめること、第五は、国際間の紛争は平和的にあっせん、仲裁または紛争処理機関もしくは国際裁判所において処理すること、第六は、強国の保持する拒否権発動を禁止すること、というようなことを考えるのでございますが、これらの点はまだ完璧なものではないと思いますけれども、しかし、これだけでも日本国民は大部分賛成するに相違ないし、また、各国世論も必ず支持するに相違ない、こういうように思うのでございますし、こういう具体的な環境を作ることによって、先ほど心配しました国際間の疑惑と不安感が緩和されるのであり、不安と恐怖の種を刈り取ることもでき得るのではないか、こういうふうに思うのですが、岸総理はいかにお考えになりましょうか。
  189. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国際連合の憲章は、その精神は崇高な、だれもが、世界人類がひとしくこれを支持するところのものにできかかっております。そうしてその機構また運営の具体的なことになりますというと、たとえば大国による拒否権のごときもののために、実際の機能が十分に発揮されないようなこともございます。従いまして、これらに関するこの改正の時期におきまして十分に根本的に検討が加えられなければならないし、日本としても十分その際においては、具体的な、有効な意見提出して、そうしてこれに対して各国の同意を求めるように努力をしなきゃならぬと思います。ただいま苫米地委員の御意見として承わりましたことにつきましては、私はその趣旨、方向につきましては、いずれも賛成でございます。しかし、さらに具体的に日本としてどういうことを提案し、どういう具体的な点について意見を出すかというようなことにつきましては、十分に一つ検討をいたし、慎重なる態度でこれに臨みたい、こういうように思っております。
  190. 苫米地義三

    苫米地義三君 ただいまの岸総理の御意見は非常にけっこうだと思うのです。どうぞ、明年度のこの機会までに十分な検討と御準備をしていただくことを御期待申し上げたいと思います。で、この一つのきっかけとして、両巨頭会談が行われると思うのですが、もしこれらの問題が巨頭会談で取り上げられ、ほんとうに談笑の間に世界の恒久平和の話し合いができるということになりますれば非常にけっこうなことで、ちょうどわが日本の維新当時における勝海舟、西郷南洲のあの会談のような結果が生まれるかもしれない。それはしかし一つの希望にすぎないのですが、それにかかわらず、わが国としては、国際連合の内部におきまして各国に呼びかけて、そうして世界世論を喚起して、この大きな目的達成に働かなければならないと、こういうふうに思うので、どうぞ、このことは国連中心の外交、すなわち岸内閣のとっておる外交三原則のその劈頭を飾る大きな問題であると思いますし、わが国が万世のために太平を開くという外交にもなると思うのですから、十分御尽力をお願いしたいと思うのです。  私は、これで外交問題に対する質問は終りますが、最後に、世界の平和のほんとうの実現というものは、ただ政治的な妥協や外交技術で達成するわけにはいかぬと思うのです。で、政治の根底にはやはり道義問題があると、正義と博愛と融和という地固めがなくては、この平和というものは常に動揺し続けて、決して恒久的なものにはならないと思うのです。で、現在における世界の不安というものは、イデオロギーの対立もあるということになりますが、しかしそれよりかもむしろ、その言行に対しての責任感の自覚、こういうものの対立、相違がございますのと、目的のためには手段を選ばないというような、一つの不穏な思想がからんでおるためではないかと思うのです。そこで重要なことは、やはり平和生活の根源であるところのこの道義の問題、道義、道徳の普遍的な徹底化が最も大切であると思うのです。で、これがやはり国連のやるべき大きな事業でなければならないと思うのです。わが国は国連内の一員であって、この問題に深い関心と努力を払うへきものでありますが、それは国際間だけの問題ではなくて、実は国内の問題でもあり、個人間の道徳にも連なる問題でございます。また、それが社会、教育、宗教等の問題ともからみ合うわけでございますが、先ほども八木さんの質問にありましたように、岸首相は三悪追放を公約しております。しかし、現実の点になりますというと、汚職とか暴力というものはなかなかこれが絶えないのであります。非常に残念なことでありますが、これは絶えないのです。で、われわれは、しかしながら国連の中で、世界の恒久平和の最も根本をなすこの道義、道徳の高揚という大事業に対して協力するばかりでなしに、国内に対しまして、どうしても道義、道徳の高揚をはからなければならぬと思うのですが、この点に対しまして、総理並びに文部大臣はどういうお考えを持っており、どういうふうにしようというふうなお考えがありましたらお答えを願いたい。
  191. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御意見のごとく、世界の真の平和をもたらすためには、道義、道徳の高揚されなければならぬということは言うを待ちません。私は自由と民主主義を強調し、世界の福祉と繁栄による平和ということを申しており、文化の向上がその内容をなさなければならぬということを申しておりますことも、要するに、言葉をかえていえば、御意見のように道義、道徳の問題になると、しこうして、これは世界の平和、外交の問題だけではなくして、国内においてもやはりその考え方が徹底され、そうしていかなければならぬ。私の申しておる三悪追放という問題も、実は汚職あるいは暴力は、これをなす人が直接に悪を持っておるわけでありますが、しかし、そのこともさらにこれを掘り下げてみるというと、そのときの社会の欠陥や、あるいは政治の適当でないということにも関連を持つと思います。そういうことから申しましても、これもそうであり、いわんや、貧乏ということになりますと、その当人が悪を体現しておるというのではなしに、むしろ社会の欠陥から来ておる、あるいは政治が適当でないということから来ておるということも考えられなければならぬ。従いまして、私としては、そういう意味においてこの三悪をなくする理想を達するためにも、国民一般の、また社会全体の道義、道徳の高揚ということが根底になって、そうして、明るい、初めて平和な生活が確保される。従いまして、御意見の御趣旨には、私は全然同感でございます。
  192. 松永東

    国務大臣(松永東君) ただいま苫米地委員の御指摘になりました道義の高揚の問題については、国内においては、社会教育の面においても相当力を尽さなければならぬと存じておりますばかりでなく、学校教育においても、画期的の充実をはからなければならぬと存じております。それは戦争前から道義が、いろいろ見方もありましょうけれども、歪曲せられておったというふうに見るのがほんとうだと思います。さらに、戦後いろいろな環境から道義がすたれて参りました。これを何とか充実して、そうして世界のいずれの民族にもおくれをとらぬようなりっぱな民族にしなければならぬということで、特に道徳教育に力を注いで参るようにしたい。本年の四月から特別の時間を作りまして、小学校、中学校等の児童たちに、まずもって道義の強力な一つ指導をしていきたいというふうに心得まして、それぞれその内容等につきましては、専門家に今意見を求めておるのであります。多分、もう日ならずそうした成案が得られると思いますので、この三十三年の新学期から実行に移りたいというふうに考えております。
  193. 苫米地義三

    苫米地義三君 なお一点、きのうからの問題がございましたから、ちょっと触れたいのですが、ソ連との関係について問答がございましたが、そのうちで千島列島の領土の問題、これは平和条約が交渉されるときには重要な難点になると思う。サンフランシスコの平和条約の際に、私どもやはり全権の一人として参りまして、そうして全権会議の席でできた案を吉田首席全権があの調印の際に演説をしております。そのときに言っていることは、申し上げるまでもございませんが、歯舞、色丹というものは、日本の本土の一部であるということと、それから国後、択捉は、これは民族的なあるいは固有の領土であることには間違いないということを、強く具体的に歴史を繰り返して言ってあるわけであります。ただ、千島列島という言葉が非常に不明確で、その不明確な点をどういうふうに解釈しておるか知りませんが、日本としては、連合国四十八ヵ国との間に、千島列島という言葉で放棄したことになっておるのであります。だから、国後、択捉が日本固有の領土であるということを強く主張したことと、それから歯舞、色丹は本土の一部だということを強く訴えたわけでございまして、その点に対しましては、日本国民全部がゆるぎのない信念を持っておると思うのでございます。ただ日ソ平和条約を結ぶという際に、領土問題を日ソ間だけでこれを取りきめていいものかどうか。これが四十八ヵ国との間に放棄はしたのだけれども、相手方のソ連はその調印に加わっていないわけなんです。だから、調印外の国と、放棄したとはいえ、その所属の決定権は四十八ヵ国の承認なしにはできないことだと思う。そういう点はどういうふうにお考えになっておりますか。これからの交渉のときに必ず突き当る問題と思うのでございますから、この機会にちょっとこれに対する見解を伺っておきたい。
  194. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 北方の領土問題につきましては、歯舞、色丹は、これは北海道の一部であって、千島に属しない。当然日本のものである。また国後、択捉は、日本の固有の領土であって、いかなる意味においても、歴史始まって以来他国に属しておったことのない固有の領土としてわれわれ日本に属すべきものである。それから放棄いたしました千島列島及び南樺太の帰属の問題は、サンフランシスコ条約に加盟しておる国々によってその帰属がきめらるべきものであるというのが、私どもの見解でございます。
  195. 苫米地義三

    苫米地義三君 そういうことがはっきりしておりますれば、私はけっこうだと思うのです。二国だけであの所属を決定するということは、そうするとできないということが、そのことでよくわかりました。  それで外交問題に対しての私の質問は終りますが、次に、産業経済の問題について御質問をしたいと思います。  科学技術の革命的進歩は、産業構造も、それから生産内容もほとんど更新をいたしております。そうしてその事実が日々革新を続けておるわけでございますが、そういう結果から生まれてきた最近の近代的傾向というものはどういうことかと申しますというと、いわゆる技術的な優勝劣敗によって、第二次の植民地獲得競争が行われておるというふうに見られないことはないと思うのです。すなわち、昔は領土を植民地化したのでありますが、今日では技術的な点で優勝劣敗が起り、そうしてその科学技術の進歩的な研究は発明、特許となって現われてくるわけです。そうしてその発明、特許は国際的な独占権を保護されておるのです。その特許権の存続する限りは、国と国との間に従属関係が起らざるを得ないのです。それでその結果としては、経済的にそこに落差ができて、この落差という差が国際競争の立場におきましては、決定的な条件になるわけであります。そこで、この新しい傾向というものは日に月に、急カーブを描いて進んでおる。現に、一昨年のわが国の外国特許技術導入というものは、これが外国へ支払った金額は百二十億以上に達しております。そうして前年度に比較して、七割以上も進んでおる。前々年度に比較しては、二倍以上に達しておる。このカーブはこれからますます盛んに開いていくものだと思うのでございますが、こういうことが企業の形態に影響いたしまして、そこに旧式産業にかわって新しい組織の経営が生まれてくるわけです。そして新しい商品がそこに生産されるわけです。こういう世界市場が新しい商品によって拡大されてきますというと、わが国の輸出貿易に対しては非常な影響があると思うのでございます。その例は、最近繊維工業界にその一端を現わしかけてきているという、この事実を見のがすわけにはいかぬと思う。それでありますから、わが国はどうしても科学技術の創造を早めて、そうして逆に日本の特許を海外へ輸出し、日本の技術を海外へ進出させるというような、おくれを取り返すことが必要だと思うのですが、これに対する政府の見解は一体どういうふうに考えられますか、ちょっと通産大臣からでも伺いたい。
  196. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまお話通り、現在におきましては、産業技術は非常に各国とも進んでおります。わが国がここで戦時中のおくれを取り戻す、そして外国以上の技術を獲得するということでなければ、今後の輸出産業は伸びないということはお話通りであります。従いまして、われわれといたしましても、ことに工業技術院等を督励いたしまして、また民間の研究に対しましても補助金を出し、また、いろいろ指導いたしまして、極力推進して参りたいというので、本年度におきましても、ことに技術研究の特別研究費というので、オートメーションの技術、あるいは原子技術というものに対しまして、特段の研究を進める、こういうような考えでやっておるような次第であります。
  197. 苫米地義三

    苫米地義三君 これは時がたつに従ってその差がひどくなりますから、その速度を国内で一つ早めなければならないということを特に御注意申し上げておきたいと思うのですが、今お話にありましたオートメーション、これがまた変った形で生産の拡大をし、商品のコストを下げるということについて非常な進歩をいたしております。そうしてこの電子工学なんかを使って、そして少数のコントロールする人がおりさえすれば、大量の生産がどんどんでる。化学工業でもおのおのそういう監督機関ができまして、容易にこれが達成せられます。従って、生産がふえる、生産がふえるに反比例して人が要らなくなる、こういう事態が起ってくる傾向があるのです。日本は人口が非常に多いのでございますが、そういう近代的な傾向に対して、これは非常な、今後の失業対策であるとか、あるいは就業政策であるとかいうものに対しては、見のがすことのできない傾向であり、それがしかも急速度に迫ってきておると思うのですが、そういうことに対するお考えはどうでありましょうか。また、そういう失業なり、就業の変化に対して、労働大臣なんかはどういうふうにお考えになっておるか伺いたい。
  198. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) オートメーションの技術が進歩いしたますと、労働者が比較的要らなくなる、これは事実であります。事実でありますが、これを消極的に考えておりますと、国際競争に負けて、従って、われわれは何としましても、オートメーション化し、生産量はふえますが、これを輸出に持っていくということで労働者の吸収を漸次拡大して吸収していく以外にはないのでありまして、あくまで積極的に解決していくという考え方で進まなければならぬと思います。
  199. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 苫米地君に申し上げますが、労働大臣の御要求がございませんでしたので、きょうは見えておりませんので、次の機会にお願いいたします。
  200. 苫米地義三

    苫米地義三君 今お話通りでありますが、なかなか、この傾向は急速に進むと思うのです。だから、それに対する人口問題とあわせ考え、そうしてこの失業なり就業なりの問題をもっと深く検討して用意しなければならぬ、こういうふうに思いますので、私はその点を警告いたしておきたい。  さらに、この科学技術の進歩発展というものは、何といっても推進力になる人材が必要でございます。従って、これに対しては文部省関係の教育制度を改めるとか、あるいは教育に対する理工科系の人材をもっと積極的に推進するとか、それから学校教育ばかりでなしに、進歩が急速でありますから、今まで就職をしておった人らの再教育ということがどうしても必要なんです。この再教育の施設が、企業は企業内部でやりますけれども、やはり国家としてもこれを軽視しないで再教育の施設をしていかなければならぬ、諸外国でもすでにそれをやっております。そういう点に対しては、これはどういうふうにお考えになりますか知りませんが、そのほかにな、一般の科学技術に対する常識を向上させる、あるいは普及するというような意味において、科学博物館のようなものを重要な都市にもっと拡大して設置し、そうして一般の国民の科学技術に対する認識と常識を高めることが必要だと思うのですが、その点に対するお考えを伺いたい。
  201. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました問題については、重々ごもっともだと思います。申すまでもなく、科学技術が非常に日に月に進歩して参りまして、すでに今日ではもう原子力時代、オートメーション時代は過ぎて宇宙時代と一般にいわれております。従って、わが国におきましても、諸外国におくれをとらぬようにいろいろな設備はもちろんのこと、その学問においても、児童の教育、青年の教育等に力を尽さなけりゃなりません。従って、この三十三年度の予算におきましても、学生の量におきましても、さらに研究の質におきましても、いろいろ予算を計上いたしまして御協賛を仰ぐようにいたしておるのであります。さらにまた、今御指摘になりましたこうした日進月歩の科学技術の進展のために、かつてりっぱな技術家として実業についておる人々あたりも、時代おくれになるような傾向がありますので、これに対する再教育をしなければならぬというので、これまた大学院並びに大学研究所等に、実業界に現実に従事しておられる人々をさらにそこに入ってもらう、そして再教育をして、そうして研究を続けてもらうというふうになっております。これに対する予算も協賛を仰ぐために提出いたしております。  さらにまた、御指摘になりました社会一般のそうした科学技術に対する関心を深めるために、今の博物館を設けましてやっておるのでございますが、そのうちに特に理工科も設けまして、そして一般大衆、特にそうした技術方面に対する関心を持っておる人々の研究に資したいというので、一生懸命今努めておるのでございます。しかしながら、何と申しましても、まだこれで満足するわけには参りませんが、しかしながら、こうした問題について時代に即応するようにやっていきたいというので、文部当局といたしましては力を尽しておる次第であります。御了承を願います。
  202. 苫米地義三

    苫米地義三君 私は、この機会に通産大臣に特に伺いたいと思います。この日本の産業というものは、進歩した産業というものは、大体明治以来、海外の模倣産業、向うからただ輸入した輸入産業の範囲を出ないで、それがただ向うの進歩に準じてやっておるわけです。ところが、それは一口に言いますと、日本の国は資源が乏しい、こういうことで片づけられておるのですが、日本の内部には資源が相当にございます。あるという例をここに申し上げますならば、たとえば鉄鉱石の問題、日本の製鉄所というものは、明治初年以来国の非常な施策によってあれだけ成長してきました。しかし、今日まで鉄鉱石の大部分、それから粘結炭の大部分、これを海外にのみ仰いでそしてやってきておるのでございます。それならば、国内では鉄資源がないと、こういえば、そうじゃないわけです。その一つの問題は、全国的にございます砂鉄というもの、昔の日本刀を鍛えたあの砂金というものがある。この全国的な砂鉄というものは幾らあるかわかりませんが、昨年までニヵ年ほどかかって調べたところによりますというと、東北だけで、二億数千万トンあることは実証されました。それから硫化鉱つまり硫黄と鉄と結びついておる鉱石に至りましては、幾らあるかわからない。少くとも数十億トンはある予想がついております。これらに従来の移植産業で褐鉄鉱を持ってきて、それにコークスを入れて溶かしていくというだけのものでありますけれども、そういう形の変ったものは、日本独特の製法でなければならぬ。たとえば硫化鉱ならば、硫黄を化学工業に使わして、そして硫黄を利用した上で残った鉄が五五%から六〇%の率になりますから、それを製鉄所に供給するというようなことも一つ方法、それから砂鉄のごときは、品質が非常によろしいので、だから、私も昨年スエーデンの製鉄所も見て参りましたが、非常によいあのスエーデンの鉄とあまり違わない品質が砂鉄に求められるのであります。現在、日本の機械工業は材質の点について大いに悩みがある、こういう常識になっておりますが、もしこの砂鉄工業というものをもっと日本の技術で、そして日本の創造力で研究をしてやっていけば、優秀なものができることには間違いないのであります。いわんや、あの鉱石にはチタニュームという将来の金属があります。この将来の金属をものにしてやるということは、さっきの硫化鉱と同じように一挙両得なんです。そういうことにわれわれの力が入っておらぬ。そのことは決して鉄鉱の例ばかりではないのです。ほかにも幾らでもあります。たとえば海水工業のごときは、日本に恵まれた大きなあれは一つの将来の産業です。それから日本には温泉地帯がたくさんあって、地下熱の利用というものは非常に有望なんです。そういう独得の産業に対して、日本政府の力の入れ方がまだ足りないと思うのです。そういう点については、また画期的な考えで、そして新しい技術を取り入れて、そして研究するなら研究するというのがほんとうだと思うのですが、その点に対して御意見を伺いたい。
  203. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) お話通りに、従来の産業の行き方が、外国の技術を導入するという、日本人はどうもまねをしたがると、こういう傾向は確かにあると思います。従って、またお話のように、砂鉄にいたしましても、硫化鉱にしましても、日本独得の技術で処理をしていく研究が足らないことはお話通りだと思います。われわれも極力国内に資源を求めて、外国からの輸入を防ぐということは当然のことでございますので、お話もありましたので、今後十分その方面に力を入れたいと、かように考えます。
  204. 苫米地義三

    苫米地義三君 私が特にそれを強く言いますことは、やはり日本の人口問題からいいましても、日本の国産のもので、そして中小企業をもっと広範に活用するということと一環的な考え方ができると思うのです。そういう点に対して一つぜひ十分な御検討を願いたいと思うのです。  それからその次に、農業問題について申し上げたいのですが、わが国の食糧自給という問題と、農村の振興という問題は、これは明治以来の不動の国策でございますことは、今さら申し上げるまでもないのであります。それにしてもなお多額の食糧を輸入しておる、こういうことはこれは不可能として見のがしてはならぬと思う。やはりあらゆる面において、あるいは耕地の改良であるとか、あるいは耕地の拡充であるとかいうこともむろん必要でありましょうが、やはりこれも近代的な科学技術の応用がまだ徹底しておらぬ。そういう科学技術を農村へ浸透させる、あるいはもう少し改良工夫をこらすということによって解決が可能だと私は見るわけです。早い話が、食糧ならば、今生産しておる米麦の一割増産すればそれでいいわけです。そのことは肥料の問題でも、あるいは農薬の問題でも、あるいは水田ならば水の温度の問題であるとかいうようなことが、いろいろなほかの科学的な新しい方法と、新しいものによってこれが緩和できることは確かです。現に、それが部分的には成果をおさめておりますが、総合的にこれを考えてそうして普遍的にこれを浸透させることがまだ欠けておると思うのです。だから、農林行政の方でもその点に対して十分努力すべきであると思いますが、農林大臣の御意見を伺いたいと思います。
  205. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お話通りでありますので、農林省といたしましても、農業技術会議というものを設けまして、技術の点において総合的に検討し、それを普及していかなくちゃならぬ、こういうふうにやっておるわけであります。何しろ仕事そのものがじみでありますので、それほど世間にわかっておりませんけれども、御指摘の土地改良等につきましても、農業水利の試験もやっておりますし、また品種の改良等につきましては、御専門の方のアイソトープによる作物に対する肥料の吸収状況とか、あるいはまた品種の改良、こういうところまで試験研究を進めておるわけでございます。本年度予算におきましても、畑作、畜産等に力を入れるということで北海道、北関東、九州などに畑作試験地も設置いたしましたり、各県の試験研究を助成するような方法をとっております。しかし、これが普遍的になりませんと、また総合的になりませんと、実効が上りませんので、お話のことにつきましては、なお一そう注意いたしまして、その方向に向けていきたいとこう考えております。
  206. 苫米地義三

    苫米地義三君 ぜひそういうことにしてそうして農民の力をも養い、そうして国内食糧の自給にもなり、いろいろ多方面にやるべきことがあると思いますが、これは予算の関係もあるかもしれませんが、大蔵大臣はこの農村の問題に対しては特にお考えの上で御協力をお願いしたいと私も思うわけでありますが、大蔵大臣からちょっと。
  207. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 仰せのように、農業というものに対する対策は非常に重要であります。とりわけ、今後やはり経済政策の中心としては、私はやはり日本としては、農業と中小企業と、そういうところにあるだろうと思います。そうしてこれはきょう、苫米地さんからも非常に広範な、かつ根本南に触れたお話を拝聴いたしたのでありますが、これはやはりお話のように、単にそのときどきの現象に対していろいろと施策をするということよりも、ほんとうにものの根本に触れて考えていくということが必要であろうと思います。まあそういうふうな意味ももちまして、今後農業というものに対してもできるだけの配慮を加えていきたい、さように考えております。
  208. 苫米地義三

    苫米地義三君 そこで、この増産の最も重要な要素である肥料問題についてちょっと伺いたい。この日本の肥料というものは、明治以来、供給が不足で需要が多いと、需要をまかなうことができないということで、肥料の増産計画をやっておったわけなんです。それが幸いにも政府の合理化促進政策によって、今日では生産が非常に多くなりました。で、今では窒素肥料のごときは、はるかに生産が多い。で、この生産の過剰時代になってきて、むしろこの事業は一つの輸出産業になってきております。それは、最も適当したと思われることは、原料のほとんど全部が日本の国内の資源であります。そうして、そのさばき口は国内ばかりではなしに、アジアの周辺の後進国に広範にこれが広がる可能性もある。輸出産業としては最も適当したものでございます。その状態から考えまして、日本の肥料政策というものは、ここで一つの転換期に来ていると思うのです。というのは、従来の肥料の不足対策から、今日では過剰対策に移らなきゃならない、こういうことになっておりますので、おそらくこれに対しては政府でもそれぞれお考えになっておると思いますが、従来は、ほとんど全部の政策は肥料の供給不足という立場からあるいは量の確保、あるいは価格の安定というふうなことに努力してきておったわけです。その最後の法律としては、肥料二法——臨時肥料需給安定法、それから硫安輸出株式会社というこの二つの法律ができたものでありますが、これが明年の七月に満期になります。その不足時代に考えた法律と、今日現実に非常な過剰になってきて、そうして輸出産業に向うというこの時代の肥料工業に対しては、おのずから政策も変るべきものであると思います。しかも、その法律が来年の七月には満期になります。満期になればこれが自然に放任されることになるのですが、この二法律に対して政府はどういうふうに考えて、これを継続するお考えがあるのか、あるいはこのまま放任して、自由経済のままにしておくのか。それとこの農業の、たとえばさっきお話もありましたが、米の統制の問題なんかもございますが、その方との関連もございましょうが、とにかく、肥料としては豊凶の差もございません。確かに肥料は過剰になっておりますから、それに対する政策の転換がどういうふうに考えられるか。一応農林大臣に伺います。通信大臣でもどちらでもいいですが。
  209. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 確かに臨時肥料需給安定法ですか、及び輸出に関する法律等は、今お話のように、国内の肥料が足らないので内需を増していかなければならぬということと、国内に肥料が足らないのに輸出をして、それが出血輸出という形で輸出をするというようなことではいけないということからできた法律であることはお話通りであります。ところが、幸いに量産といいますか、量の点においては、非常に肥料が増産されまして、輸出面におきましても、今のお話のように、日本の近く、あるいは東南アジア等に輸出がされておるような状況でございます。でありますので、従来肥料を、ことに、アンモニア系の肥料を量でだけ増産する、こういうことで量の生産に力を入れてきたのでありますが、合理化もやはり価格の点で安くできるような合理化の方面に転換しなければならないのじゃないかと思います。輸出等の点におきましても、今までは御承知のように、トン当り五十ドルという目標でやっておったのでありますが、それ以下の入札が朝鮮等においてありましたし、それ以下にしなければならぬ、こういうことでありますので、どうしても量の増産と同時に、質的に合理化をはかって価格を低くして、国際競争力を増していくということが必要だと思うのであります。そういうことでありますので、今の二法律が来年の七月に期限が切れますけれども、そのままにしておくということでなくて、目的が相当変ってきましたので改正をするということにいたしたいと思っておるのであります。この間、二月中に肥料審議会の協議会もありましたが、そのときにもそういう意向が強く打ち出されております。私ども今御指摘のような方向に従って改正を検討して参りたい、こう考えます。
  210. 苫米地義三

    苫米地義三君 その点わかりました。ちょうど東亜圏に対する経済援助というような要請もございますので、肥料という問題は非常に適当な輸出品である。私の調査によりますというと、中共が現在でも必要な量は肥料が一千万トンと言っている、これはもちろん硫安ばかりではない。ほかの肥料もこめて化学肥料全体で一千万トンの需要がある、こういうことを言っておる点から申しましても、その他、各地一方にあります後進国の農業が、ほんとうに生産を上げていくことになれば、そんなものじゃないと思う。従って、肥料の供給は日本でも今後だんだんふえると思う。ということは、原料がいろいろな方面から出てくる。石油の精製の場合からも来るし、天然ガスからも来るし、あるいはその他の副産物からも来ますから、だんだんふえてきますが、そういうようにふえても輸出の販路さえほんとうに安定すればいいと思う。ところが、その傾向は日本ばかりではない。どこの国でもそういう傾向がある。どこの国でも自分の国に必要な以外の生産がある。だから、この肥料の輸出というものは国際競争から免かれることができない。できないのですが、買う方はどうかといいますと、これは管理貿易をとっておる国が多いのですから、非常にそこに売り込みの方は競争が激しいが、買う方は一本でいくというようなことがございますから、その点に対しては輸出の取扱いの公正なる規制をしていかなければならぬ、こういうふうに考えるのでありますが、その輸出産業としての肥料というものはどういうふうにお考えになりますか。
  211. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) お話通りに、最近におきましては非常な量産ができるようになりまして、もちろん販路を国外に求めなければならないような状態になってきております。それにつきましては、輸出品として出しますためには、一つには、何としましても先ほどお話のありましたような、価格を安くしなければならぬ、それにつきましては、いわゆる合理化を促進いたしまして、原料、ガス源の転換とか、あるいはまた硫安から尿素に変っていくとか、そういうような問題、また多角経営を考えまして、極力コストを下げていきまして、従来五十ドル目標でありましたが、四十ドル目標で合理化をやらなければならぬ、こういうふうに考えております。また海外の輸出市場の開拓、維持ということを考えていかなければなりません。それにつきましては、ごく最近にバンコックに肥料サービス・センターというようなものを設けまして、東南アジアのいろいろな市場の調査をやり、またいろいろなサービスをやる。さらに大体におきまして今まで非常な欠陥は、外国の事情に通じていなかったという点がありますので、これは、海外にこれもごく最近に大体メンバーもきまったようでありますが、外国——西欧諸国あるいはアメリカの肥料工業に対する事情の調査ということに取りかかっておるのであります。また、お話通りに肥料につきましては、原料が国内でできる上に、また地域的に申しまして、東南アジア方面は、スレイトの関係からいいますと、外国競争に、西欧なりアメリカなりよりも有利なのでありますから、そういう点も考えまして極力輸出に向ける、そうして量産によります恩恵を国内の農家にもたらす、こういうようなことに極力努力をしていかなければならぬ、かように考えております。
  212. 苫米地義三

    苫米地義三君 この機会に念を入れて伺っておきたい点がございます。それは、肥料の配給の機構の問題、これは戦時統制がありまして一本になったのですが、その前はやはり組合系統と商人系統との二大系統に分れて両々切瑳琢磨してやっておったわけなんです。戦時統制がはずれまして、やはり元へ返りました。そうして河野農林大臣のときに、この配給は農民組合系統と商人組合系統との二本建にするということを声明されておりましたから、まだ現にそれが実行されておりますから、何も伺う必要がないのですけれども、やはりこの自由主義の観点から、あるいは組合主義の観点から、どっちも偏重の考えを持っておる人がある。私が昨年ヨーロッパの各国を回ってみますというと、西ドイツでもフランスでもみんな二本建で、そうして大体半々くらいずつ配給をさしておる実情でございます。これは今さら変える必要もないと思うのです。それから統制独善の弊害というものは、もう経験済みですから、この機会に質問をする価値のないものですけれども、一部にはそういうふらふらした考え方のあることを聞きますから、この関係は農林大臣が主管していると思いますから、農林大臣からそれをもう一ぺん明確にしておいていただきたい。
  213. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 肥料の配給系統につきましては、結局農民のためになるということを私ども考えております。そういう点から考えまするならば、今の二つの系統——やはり商人の系統と農協関係と、両方から末端農民へ肥料が渡るという制度は、両系統とも切瑳琢磨といいますか、競争といいますか、そういうことによって、末端農民のためになるというふうに考えておりますので、その系統を変えるという気持は全然持っておりません。
  214. 苫米地義三

    苫米地義三君 そこで、大蔵大臣にちょっと伺いたいのですが、この配給の立場にある、たとえば組合の方は農林中央金庫、非常に豊富な資金がございます。ところが、商人系統の方は、中小企業の方に関係する問題でございますが、商工中央金庫の方の資金網というものは割合に少いのですね。これをやはり農林中金と同じような、同じでなくてもちろんいいのですが、もう少しあの方面にも資金を回して、両々相待って仕事ができるというふうに考えていただければけっこうだと思うのですが、そういう何か事情が起っておりませんか、またそういう考えをお持ち下さることはできるのですか、伺いたいと思うのです。
  215. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 特に、ただいまのところ、肥料に対する一般の金融につきまして不平も聞いておりませんが、しかし、しょせん今日の情勢では、各方面とも金融について相当苦労しております。私どもといたしましても、商工中央金庫とか、あるいはまたその他の一般の金融界において、肥料等に対する金融が円滑にいくように十分配慮をいたすつもりでございます。
  216. 苫米地義三

    苫米地義三君 あと一点だけ伺って私の質問を終りますが、ちょうどこの肥料の配給二本建というのと同じようなことで、先刻八木君からの質問のうちにもございましたが、米の取扱いについては、やはりこの思想と同じように、組合系統と商人系統にも相当の集荷の道を認めてやって、そうして農民の自由意思を尊重してやるというようなお考えがございませんですか、その点を伺います。
  217. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 集荷の面におきましては、御承知の通り農協の方へ登録いたす者と、商人の方へ登録いたす者がありまして、それによって二本の道で集荷をしていくのが現在であります。ですから、これも今やっておる通りにやっていきたい、こう考えておるわけであります。
  218. 苫米地義三

    苫米地義三君 それでは私の質問はこれで終ります。
  219. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 本日は、これにて散会いたします。明日は午前十時に開会いたします。    午後六時二十五分散会