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1958-01-30 第28回国会 参議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年一月三十日(木曜日)    午前十時三十四分開議     ━━━━━━━━━━━━━ ○議事日程 第四号   昭和三十三年一月三十日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ―――――・―――――
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  大蔵委員長豊田雅孝君、建設委員長森田義衞君から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたい旨の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  4. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。      ―――――・―――――
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) つきましては、この際、日程に追加して常任委員長選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
  7. 島村軍次

    島村軍次君 ただいまの選挙は、その手続を省略いたしまして議長において指名することの動議を提出いたします。
  8. 佐野廣

    佐野廣君 私は、ただいまの島村軍次君の動議賛成いたします。
  9. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 島村君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  10. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  よって議長は、大蔵委員長河野謙三君を指名いたします。    〔拍手〕  建設委員長竹下豐次君を指名いたします。    〔拍手〕      ―――――・―――――
  11. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、国務大臣演説に関する件(第二日)  昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。鶴見祐輔君。    〔鶴見祐輔登壇拍手
  12. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 私は、自由民主党を代表いたしまして、岸総理大臣に対して、数個の点について質疑をいたしたいと存じます。  戦争直後、一時は物心両面にわたって、はなはだしき混乱と窮乏に陥り、国民目標すら見失ったかに見えたわが国民は、その本来の強健なる精神を回復し、ことに経済の面におきましては、最近数年間、驚くべき回復力を示しております。国際間においては、大多数の国々との国交を回復し、国連一員となり、次第に世界的発言権を獲得しつつあるのであります。今日こそは、わが国民一大前進を開始すべき希望の年であります。このときに当り、この国政を担当せられる総理大臣としては、その責任はまことに重大であります。今、国民首相に聞かんとするところは、個々の政策や事務の末ではなくして、総理がいかなる政治信念ないしは政治哲学をもって、国民とともに、日本民族復興の道を歩まんとせらるるかであります。ゆえに私は、具体的なる諸点についてお尋ねをいたしますが、その解決の基盤をなす総理根本的政治理念について、お尋ねをいたすのであります。  まず、外交ないしは世界政策についてお尋ねをいたします。首相は常に、日本外交方針は平和である。そして、これを達成するのは、国連中心であり、また自由主義国家群との協力基礎を置くと言われております。そこで私は、まず平和達成方途についてお伺いをいたしたいのであります。今日、世界の平和が非常なる脅威にさらされておるということは、申すまでもありません。東西陣営緊張関係は、遺憾ながら、改善の見通しもなかなか立ちがたい状態であって、両陣営は、核兵器製造に専念し、力のバランスによって平和を維持しておる実情であります。しかるに、かくのごとき危険なる武器製造競争は際限がないのであって、人類破滅到着点とする一種のマラソン競走であります。この力による平和維持方式は、今やその限界に到着しておると首相はお考えにならないかどうか。  この力による平和維持考え方は、イデオロギーを異にする二つ社会は両立しがたいという思想から出ております。しかるに、これと異なるいま一つ考え方は、イデオロギーを異にする二つ社会といえども、たゆまざる相互理解努力と、これの裏打ちをなすところの実行的な積み軍ねがあるならば、次第に共存の方途を発見することができるということであります。それは、二大陣営究極の勝敗は、武力によって決すべきものではなくして、政治実績によって決定せられるものであるとなす考え方であります。すなわち、いずれの社会制度が、真にその国民の幸福をより多くもたらすかの実績が、最後の審判者であるとなす考え方であります。(拍手)この考え方からいたしますれば、機会あるごとに話し合いの場を作るべきだというのでありましてこのことは、平和を熱望する日本民族の圧倒的多数の要望であって、超党派的であると思うのであります。(拍手)従来、東洋民族であって、両陣営話し合いの提唱を早くからいたしておりまするのは、インド首相ネール氏であります。岸首相はしばしばネール首相と、直接間接に平和の話し合いをいたしておられるのでありますが、幸い日本は、一昨年末以来、国連一員となり、世界的発言権を獲得したのであります。米国に最も近い日本と、英連邦一員であるインドとが、協力して両陣営話し合いの端緒を開くのは、今日が絶好の機会であると思われるではないかということであります。(拍手岸総理大臣ネール首相とともに、これを提唱して緊張の緩和に貢献するお考え総理大臣にはないか。各国におきましては、どの政府でも、話し合いについては原則的に反対をいたしておりません。条件つきでことごとく賛成をしております。しかしながら、今日の事情の急迫よりいたせば、直ちに何らかの奥行に移るべき機会であって、今日は岸総理大臣が断固として決意をされるべきときであると私は思う。この点についてお尋ねをいたすのであります。第三にお尋ねいたしたい点は、日本防衛の性質とその限度についてであります。この点については、岸首相は昨年渡米の際、米国首脳部と会見してしばしば腹蔵なき意見の交換をいたしておられると思うのであります。核兵器持ち込み拒否については、総理はしばしばこれを声明をいたしておられます。海外派兵禁止の件が本院において決議せられましたことは、世界各国が承知いたしておることと思うのであります。従って、北大西洋条約機構のようなものを北太平洋において作ろうとするがごとき考えが起った場合には、日本はこれに参加することはできないと私は思うのでありますが、首相はこれについていかようにお考えになりますか。(拍手)  次に、私は目下進行中の日ソ漁業交渉についてお尋ねをいたしたい。この狭小なる陸地において、九千万に及ぶところの大いなる人口をささえる日本民族にとっては、海はわれわれの生活の重要なる拠点であります。公海自由の原則は、人類の福祉と平和にかかわる重大なる鉄則でありまして、これがため人類は幾多の血を流して戦い取った原則であります。しかるに世界各国は、自分の国の利益だけを根拠といたしまして、相次いで領海を一方的にかつ不当に拡大し、あるいは公海における漁撈並びに航海の自由をすら制限せんといたしておるのであります。これは三百五十年以前に流行いたしておったセルドン海洋閉鎖論、すなわち実力を持った英国が全世界の海を支配すべしというところの思想に逆戻りするものでありまして、世界平和の理想のためにも、また日本民族の生存のためにも、われわれは絶対にこの傾向を容認することはできないと思うのであります。現下当面の問題として、ソ連が、大陸沿岸は四十海里、千島近海は二十海里、それを領海として、それ以内においては日本漁民漁撈を禁止いたし、また北洋の公海におけるサケ、マスの漁獲高を片務的にロシアだけの利益ために制限し、さらには日本零細漁民の生業であるところの、はえなわ漁撈すら禁止せんとするがごときを主張いたすことは、上記の理由によってわれわれの認めがたしとするところであります。日ソ国交回復の当初の趣旨に背反するものと思うのであります。私は、ソ連があくまで大乗的見地に立って、この問題に善処せんことを切望せざるを得ないのであります。また、先年、日ソ国交回復の際に、今後の折衝に残されている国後、択捉、歯舞、色丹の帰属についても、すみやかに交渉を開始せられんことを、私は政府要望をいたすものであります。(拍手)  次に、首相の昨年来提唱しておられる東南アジア開発基金の問題についてお尋ねをいたします。これは単純なる一地域東南アジアという一地域経済的問題ではない。国際的には日本外交の  一つの方向を示すものであり、国内的には日本民族復興一つの要素であり、さらに精神的には東南アジアに台頭しつつある新しきナショナリズムの問題と結びついているのであります。この広い基盤の上に立って、私は総理大臣お尋ねをいたしたいと思います。  アジア、アフリカに起りつつあるナショナリズムは、しばしば二百数十年の欧米諸国の支配に対する反抗の形において現われて参っております。しかも、この諸国国連における数は、二十九という最大団体を形成いたしております。ゆえに、これらの諸国がその係争問題を国連内に持ち込みます場合には、その一員であり、しかも理事国一つである日本としては、明白に賛成反対かの決定をいたさなければならないのであって、常に棄権をいたすことはできないのであります。ただ金を貸し、技術を出すだけでは、これら新興国家の信頼を保つことはできない。(拍手欧米の大国とAAグループとの対立の起った場合には、日本はいかなる態度をもってこれに決断をしなければならぬかということを、その時期が来たことを私は考えるのでありますが、首相はこれについていかにお考えになっておるかを伺っておきたい。  次に、日本復興の問題であります。首相はしばしば青年奮起を促しておられます。しかしながら、青年をして奮起せしめるためには、奮起するに足る目標舞台を与えなければならない。(拍手)田園において耕すべき土地なく、都会において働くべき職業もない今日において、年若き人々の五体にうずく活動欲というものは、はけ口を提供することが、今日の政府の重大なる責任であると私は思う。その一つ東南アジアであり、いま一つ南米大陸であると私は思うのであります。(拍手日本最大の問題は人口問題であります。これは移民政策というような従来のやり口では、とうてい解決できないほど急迫をいたしております。設計家族方法だけでは当面の間に合わない。日本はこの際、国連を通じて、世界に向って、新原則を提案すべきであると私は思うのであります。それは世界人口の再分配という方式であります。従来はあまりに領土の再分配に拘泥をいたしまして、戦争はしばしば起っておる。もとの国際連盟の第十九条におきましては、学者の呼んでいう平和的変更原則があった。このねらいは、これを創案した当時の人々は、これによって将来、戦争によらない、平和の方式によって領土変更をしようという考えであったようでありますが、ついにこれは実行の機会なくして終りました。新しい国際連合には、このような思い切った原則は入っておらない。世界平和の樹立ためには、しかし思い切った対策を必要とする時期になっておると思うのであります。日本が平和に徹しておるという実情が全世界に周知せられるならば、世界の労働力不足に困っておる国々は、この勤勉にして誠実なる日本国民を喜んで迎え入れると思うのであります。結局は、人間と物資と資本と技術との自由なる国際移動原則樹立することであります。これが恒久平和樹立への道であると思うのであります。かつてはパリの平和会議におきまして、敢然として人種平等の原則を提唱した日本である。今日の日本も、このくらいの気魂がなければならないと私は思うのであります。(拍手)この原則の行われる最も可能なる舞台は、東南アジアであると私は思うのであります。それは、東南アジアを金もうけの場所とするためではない、これらの国々繁栄発展ために奉仕するためである。それは結局において双方に経済的利益をもたらすのであります。私は、自分たち青年時代を振り返って、今日の若き世代に対し御同情にたえない。日本人口問題は実に深刻であります。それは社会的動乱の素因をすら含まんとする危険を持っておる。思い切ってこれに対処することの必要が迫っておるのであります。これらの国々東南アジア国々に奉仕するという大きい精神を抱いて、この活動天地日本青年ために開くことができるならば、首相開発基金の構想は、初めて大きい実を結ぶであろうと思うのでありまして、この点、首相にお伺いをいたすのであります。  次に、私は内政の問題について数点、簡単にお尋ねをいたしておきたい。  第一は、民生安定の問題であります。窮迫したる今日の社会において、民生安定のため社会保障費の持つ役割は非常に大きいのであります。首相は、貧困追放目標を高く掲げておられますが、遺憾ながら、明年度社会保障費は、絶対数から言えば五十四億円程度の増加になっておりまするけれども、総予算に対する比率においては、本年度の一〇・一六%に比して九・五七%という、約〇・六%の減少になっております。(拍手大衆生活の安定をすることが国防の第一線であると考えておる私は、社会保障費防衛費とは、常に適当なるバランスを維持しなければならぬと考えておるものであります。明年度防衛費総額は千四百六十余億であって、総予算に対して一一・一五%の比率を示し、はるかに社会保障費総額を上回っております。さらに、社会保障費国民所得に対する割合を見ますと、わずかに七%であって、英国の九%、西独の一三%に対して格段の相違があるのであります。これがために、生活困窮者は三年前の九百万に対し、本年度は一千百十万と推定されております。英国ローントリー教授が、ヨーク市において多年実態調査をいたした発表によりますと、十五年間において、英国社会保障制度の実施によって、貧困者は十分の一に減っておるという事実に比べて格段の相違があります。また、失業対策については、アメリカにおいては、一九四六年に、トルーマンの時代において完全雇用法ともいうべきエンプロイメント・アグトがすでに制定をされておるのに対し、政府はこれに対して、いかなる用意を持っておられるか、総理大臣にお伺いいたしておきたいのであります。  第二に、今回の予算編成の過程についてお尋ねをいたします。今回の予算編成が非常に難航をいたしたために、議会開会のおくれたということは遺憾なことであります。これについて端的にお尋ねをいたしたい。予算編成中心は、一体どこにあるのか。政府にあるのか、政党にあるのか、官僚にあるのかということであります。政府は今回の実情にかんがみまして、総理とし’一ては、将来いかなる対策をお持ちになるかを伺っておきたい。  最後に私のお尋ねいたしたいことは、最近数年間、日本に台頭しつつある圧力団体についてであります。最近数年間、圧力団体日本に興って参りましたのでありますが、欧米各国においては、すでに長い歴史を持っております。五十年前に盛んであったところの欧米圧力団体の多くは、しかし知能的の指導団体であり、かつ、一つ政党に所属しておったのであります。たとえば英国フェビアン協会の労働党に対するがごとき、フランスのフリー・メーソンの急進政党に対するがごときはその例であります。ゆえに、これらに対しては非難がなかったのであります。しかるに、最近三、四十年間に興って参りました圧力団体は、その内容と形式が違ってきた。一つ政党に所属せざるところの人々が、実力をもって時の政府を動かすという形でありましたために、従来の圧力団体と変ってきておるのであります。アメリカの巨大なる労働組合であるCIOや、あるいは英国であばれ回った婦人参政権団体のごときがそれであります。これらの圧力団体は、その目的がいいものでありましても、問題となるのは、その手段の問題であります。現にわれわれは、三年前この議会において、この圧力団体が、院内に乱入して暴力のさたにまで及んだ事実をわれわれは経験するものであります。民主主義は、国民の投票によって選出せられたる議員が、立法府において、正常なる形において国政を運用するということであります。ゆえに、いかなる目的のものであっても、この手続を誤まるということは、民主主義に対して暗影を投ずるものであって、日本のごとき民主主義の芽ばえの浅い、その基礎の浅いところの国におきましては、かくのごとき暴力団体――ではありません――圧力団体が、力をもって、時に院内に乱入し、あらゆる方法をもってこの議員の背後に動くということは、これは民主主義の前途に対して大いなる暗影を投ずるものであって、民主主義ために挺進するという覚悟を持って政界に出てきた岸総理大臣としては、その点については思いを深くいたされて、英断をもってこれに対処せられんことを私は要望し、その御決心をお尋ねする次第であります。  これをもって私の質疑を終ります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 鶴見議員の御質問に対しまして、お答えをいたします。  まず、外交方針でございますが、力の均衡によって平和を保つということは、すでに限界に来ておるのであります。話し合いによって、さらに東西陣営において、恒久的な安定した平和を作り上げるため努力すべきじゃないかという御質問でありますが、私もその御趣旨におきましては、全然賛成でありまして、すでに私の施政方針におきましても、その点を明らかにしております。ただ問題は、話し合いをいかにして具体的に実現するかということであります。すでに御承知の通り、先年ジュネーヴの会談におきまして、かもし出されたいい空気が、それに続くところの外相会議における行き詰まりによって、むしろ逆効果の結果になった。こういう実例から見ましても、これに対する準備と十分な話し合いを成功せしめるところの環境を作り出さなきゃならぬと思います。この話し合いがなかなかむずかしいことは、言うまでもなく、両陣営の間に存しておるところの不信の念がその根拠であると思います。この不信を除くということは、ただ単に口先の宣伝ではなくして、行為によって事実によって不信を取り除くようなことが実現されない限り、この話し合いというものは、私は、その効果を作り上げることはむずかしいと思います。従いまして、そういう点に関してあらゆる点から、私はこの話し合いを有効に成立せしむるように、国連の内外を通じて積極的に努力をいたしたい、かように考えております。  北太平洋条約、いわゆる北大西洋条約みたような条約に加入する問題でございますが、そういう話は現在できておるわけではありませんが、将来そういう話ができましても、従来の日本方針である立場から見まして、私は、そういうものに参加する意思は持っておりません。  また次に、公海自由の原則についてのお話でありましたが、これは鶴見議員お話通り、われわれは世界平和のためにも、この公海自由の原則が、各国によって十分に守られるということが必要であると思います。  これに関連して、北西太平洋におけるソ連との間の漁業問題でございますが、領地から四十海里の間においては漁業をしないという、また、漁業問題についてのいろいろな制限を設けるという問題は、これは魚族保護に関して、両国の間の話し合いで、これをきめているわけでありまして、私は、ソ連が四十海里の領海主張する、これを根拠にし、もしくは日本がこれを認めるというような意味では全然ないと思うのであります。あくまでもこの北西太平洋における漁業問題につきましては、魚族を保護し、長く両国において公正な漁業上の利益を確保するように、あくまでも科学的基礎に基いて、この問題の話し合いを進めて行きたい、かように考えております。  領土問題につきましては、お話通り、これは日ソ間における平和条約の支障をなしておる点でありまして、従来の交渉を見ましても、わが方の主張と、ソ連側主張とは真正面に衝突をしております。われわれは、あくまでもわれわれの主張が正しいことであり、これを実現するという信念に立っているわけでありまして、そのためには、日ソの間における理解がなお深められ、ソ連が、日本の正当なる主張国民的要望として十分に理解を深めるということが必要である。このためには、従来やってきております両国間における通商の問題であるとか、あるいは漁業問題、その他の問題を積み重ねつつ、両国友好関係を深めて、われわれのこの究極目的を達するように、今後とも努力したいと思います。  東南アジア開発基金の問題に関しましては、お話しの通り、私は単に物や人や、技術の交流、また、これの援助ということではなくしてその基礎に十分にこの東南アジ了諸国におけるところの反植民地主義、また、民族主義というものに対して正当な理解同情を持って、われわれは、あくまでも謙虚な形においてこれに協力する、その一部の表われとして、これを考えているわけであります。従いまして、これが実現につきましては、私は、さらにこれら東南アジア諸国理解と、また、各国のこれに対する協力を一そう固めて行かなければならぬと思います。  青少年奮起の問題に関しましては、お説の通り、私も従来とも、この点を非常に強調して参っているのでありますが、そのためには、第一は、国内におけるところの環境、すべての点を青少年をして奮起せしめるような環境を作らなければならぬ。戦後におけるあの混乱した状態において、また、青少年がみじめな姿であるということ、これを十分に改善し、根本的にこれをよくして行くということが必要であることは言うを待ちません。同時に、青少年諸君国際的な視野に立って、その活動の場面は、決して四つの島に限られているだけではなくして十分りっぱな社会人としての修練を積み、技術その他の点を身につけて、しかも謙虚な形において、これら海外におけるところの国々経済的発展や、あるいは国力の繁栄ということに奉仕するという気持に徹して行くならば、世界の至るところにおいて、これらの人々は歓迎され、活動の範囲があるという希望を、十分に持たして行くことが必要であります。  内政の問題に関して、民生安定についてのお説は、全く同感でございます。社会保障費等の、さらにこれが充実を考えて行くことは、われわれの課せられている大きな使命であると思っております。失業対策につきましても、現下経済情勢にかんがみまして、対策費等を増額いたしておりますが、さらに十分な意を用いて行かなければならぬことは言うを待たないところであります。  また、予算編成の点についての御意見でありましたが、これは政党内閣における予算編成という問題につきましては、十分に、われわれ考えなければならぬと思います。もちろん予算編成は、政府の全責任においてこれを編成するものであることは、言うを待たないのであります。ただ政党内閣である以上は、政党の公約をし、政党重要政策として掲げているものを、政府として、一体となって予算の上に表わすということの必要であることは言うを待たないのでありますが、しかし、その主体が政府であるべきということは当然であると思います。  最後に、圧力団体の問題でございます。この点に関する、私は従来ともそういう気持を持って、いわゆる圧力団体に対しているのでありますが、いろいろ国民の間におきまして、利害を同じくし、主張を同じくする人々団体的組織を持って、その考えなり、自分たち要求を通そうとするということは、民主政治のもとにおきましては、当然あり得ることであります。私は、それを非難するものではない。ただ問題は、その手段であろうと思います。私は、従来その事味において、労働運動等におきまして、労働者がその正当な要求主張されるということに対しては十分に尊重いたしておりますが、日本における労働運動、総評の運動のごとき方法によってこれを通そうということは、正しい民主主義、明るい民主政治を作る上から言って、私は反対をして参っております。従って将来とも、圧力団体が同様な手段方法によって自分たち主張を通そうとすることには、民主主義の立場から、私はその手段に対しては断固反対する決意でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  14. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 羽生三七君。    〔羽生三七君登壇拍手
  15. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は日本社会党を代表して、岸内閣の施政方針に関し、岸総理並びに関係閣僚に質問を行います。  まず第一に、政局についてでありますが、現在の自由民主党は、いわゆる保守合同以来、一回も国民の審判を受けていないことは、あらためて指摘するまでもありません。従って、すみやかに国民の審判を受けるべきであるのに、岸総理は、今回もまたこれを避けようとしております。予算の問題も、もちろん重要ではありますが、暫定予算を組むことによって若干の不便はあっても、それより政治のルールを守り、政治のけじめを明確にすることの方が、今日、より重要であり、かつ喫緊であるとわれわれは確信いたします。また、国民がこれを審判する立場から言っても、三十三年度予算案の提出に当って、政府政策方針が明確になったのでありますから、これに対して、野党たるわれわれ社会党も、質問を通じて政府との相違点を明らかにし、これによって国民の審判を受けることが、理論的にも、かつ実際的にも正当であると考えるのであります。(拍手)その意味で、政府はこの際、すみやかに衆議院を解散して、信を国民に問うべきであると信じますが、これに対する総理の見解をただしたいと存じます。  次に、外交防衛問題について質問を行います。昨今、IRBMやICBMの出現と人工衛星の打ち上げは、世界情勢の上に多くの変化と影響をもたらしつつありますが、日本外交防衛問題も、この世界情勢の変化に対応して、全く新しい角度から再検討さるべき時期に立ち至ったことは、間違いありません。そしてまた、このことは単なる抽象的論議ではなく、われわれとしては、世界情勢に裏づけされた客観的事実であることを確信するものであります。しかし今日のこの世界情勢の中で、この客観的諸条件のもとで岸内閣がとっている外交政策とその防衛方式は、あまりにもイージーであり、また、あまりにも陳腐であると言わなければなりません。この場合、まず指摘しなければならぬことは、第一に、防衛力とは軍事力だけではないということ、第二に、今日のように核兵器が高度に発達した時代における安全保障とはどのようなものかということであります。従って、古い時代における戸締り論的立場で、いかように防衛問題を論じても、絶対に問題の解決にはならないし、かつ、今日の段階における兵器の問題を離れての防衛論議は全く無意味であるということであります。(拍手)新しい大量殺戮兵器の出現は、戦争の様相を一変したのでありますから、各国がそれに対応する新しい姿勢をとることに懸命になっているのは当然であります。この点、政府も施政演説で、東西首脳会談等の必要性を認めてはおりますが、さてしからば、実際にはどうしようというのか、その方針には何らの具体性も認められないのであります。ただ、国連における安保理事国たる立場を生かしてというのでありますが、もちろんわれわれもそれには賛成であります。しかし、問題は国連のワク内だけに限定すべきではありません。すなわち、今日の国連が、そういう機能を完全に果し得ない場合もあるところに、そもそも問題の所在があるのありますから、国連中心ということが、政府の隠れみのになってはいけないということであります。従って、国連の内外を問わず、あらゆる機会緊張緩和の糸口を見つけ、かっ、その実現のために積極的な努力を払うべきでありましょう。  さて、そういう立場で、国際緊張緩和という問題を日本の現実に照らしてみるとき、日米安全保障条約と日米行政協定を根幹とする日米同伴外交と、それに基く防衛方式こそが、そもそも問題の焦点であると言わなければなりません。われわれは、これについて根本的な検討を加えなければならぬと思いますが、このような立場から、最近の国際情勢を検討し、これとの関連で岸総理の見解を伺いたいのであります。  さきにも私が述べましたように、人類を破滅に導くような大量殺戮兵器の出現によって、従来の防衛観念や戦略体制に根本的な変化を迫られておる世界各国の動きは、最近とみに活発になって参りましたが、それは、昨年十二月NATO会議に示されました加盟各国の態度、また、時を同じゅうしてソ連が提案した東西首脳会談の呼びかけ、さらに、マクミラン・イギリス首相ソ連との不可侵条約提唱等によく現われております。さきのNATO首脳会議において、米国から提案されたNATO加盟国べのIRBMと核兵器持ち込みの問題は、会議の途上、多くの障害に当面したことは周知の通りでありますが、この会議において、ノルウエー、デンマーク両国は、その領土でのミサイル基地設置と米国管理下の核兵器貯蔵を拒否し、西独のアデナウアー首相まで、この三月までその決定を退けたのであります。また、ソ連も、昨年十二月以来、二回にわたり東西巨頭会談を提唱し、去る九日のブルガーニン首相の書簡では、米英等十九カ国に、NATO・ワルシャワ条約加盟国間の首脳会談をすみやかに開くように呼びかけ、東西話し合い機会を持とうとしておるのであります。このブルガーニン書簡で、中欧非核武装地帯設置提案のきっかけを作ったポーランドのラパッキー計画は、アメリカ有数のソ連通ジョージ・ケナンの米英ソ等外国軍隊の東西ドイツ及び東欧諸国からの撤退という構想と相待って、東欧諸国はもとより、西欧の多くの国々との間に、軍縮問題の解決の理性的な第一歩として、まじめに検討され始めているのであります。また、このほか、中東非核武装地帯案も最近の問題になっているし、さらに先日、チトー・ユーゴー、スカルノ・インドネシア両大統領は、冷戦を終らせ、国際問題解決の基礎を築くため、いずれのブロックにも属さぬ中立諸国会議を持つことの共同声明を発しているのであります。このように、世界の多くの国々政治家や指導者が、核兵器、大量殺戮兵器の時代における安全保障のあり方をまじめに探し求め、かつ、国際緊張緩和のため心胆を砕いていることは、世界平和の確立のため喜ぶべきことと存じます。  われわれとしては、問題をまず次のように考えるのであります。第一に、日本アメリカの対ソ戦略体制の制約から脱却しなければなりません。一方的な軍事協力関係の推進だけが、安全保障の唯一の方式考えるのは非常な誤まりであります。そうして当面、日本は、日本領土のミサイル基地化及び核兵器持ち込みを絶対に拒否する体制を確立すべきであると信じます。その意味で、われわれは次のことを提案いたします。岸総理は今日まで、核兵器の持ち込みは、アメリカから話があれば断わるつもりだと述べておりますが、先方から話があれば、それはそのときという態度ではなく、むしろ日本が積極的に、日本領土のミサイル基地化及び核兵器持ち込みを絶対に認めない旨の、いわば、核武装絶対否認の宣言を、この際、日本国の名において世界に発するということであります。しこうして、このことは日本民族の圧倒的多数の、しかも決定的な意思であることを、われわれは強く確信するものでございます。(拍手)なお、われわれとしては、日本のこの立場が、さらにソ連――この場合、具体的にはソ連の極東地帯をいうのでありますが――ソ連、中国を初め、アジアの他の諸国にも拡大されることを期待するものであり、その意味で、日本非核武装宣言が、アジアの緊張緩和と新しい安全保障体制べの端緒となり、ひいては世界平和推進のためのかけ橋となることを念願するものでございます。(拍手)岸総理は、昨日、社会党鈴木委員長の、私と同主旨の質問に答えて、それは実現の可能性がないと述べました。これは驚くべきことであります。問題は実現の可能性の前に、岸総理が、かかる緊張緩和の具体的問題について、どのような熱意と見解を持っているかということであります。これについて、総理のまじめな答弁を伺いたく存じます。  次の問題に移ります。それは、ソ連のブルガーニン首相から、昨年十二月十一日及びこの一月九日の二回にわたり、日本政府あての書簡が来ていると思います。なぜ、これを公表しないのでありますか。このような国際間の重要事項を伏せたままにしておくということは、どういうことでありますか。すでにマクミラン・イギリス首相も返書を送り、その中で、中欧非核武装地帯案の検討と対ソ不侵略を確約する等、内容ある回答を行なっており、またその他の諸国も、それぞれ回答を発しつつあります。日本政府あて書簡の内容は、どのようなものか。また政府は、これについてどのような見解を持っているのか、この機会に明らかにされたいのであります。世界各国の首脳が国際緊張緩和のために、きわめて高度な政治的動きを示しているときに、このような重要な国際的書簡を受け取った日本政府としては、ここでその見解を表明しても、決して早きに失することはないのでありましょう。(拍手)  また、ジャー駐日インド大使は、先日、東西首脳会談実現について、相ともに協力してほしいとのネール首相の意思を、岸総理に伝えたようでありますが、これについての総理の見解を承わりたく思います。  次は、中共問題に関してであります。日中間の国交回復がすみやかに達成されることが望ましいことは、今日ではもはや論議の余地はありません。政府がその方向に早急に踏み切ることをわれわれは強く要望するものでありますが、とりあえずこの際、第四次貿易協定を成立させ、両国通商代表部の交換を実現させることは、当面喫緊の課題と存じますが、これについて政府はどのように考えておられるか、この機会に明快にしていただきたいのであります。また、政府国際情勢待ちのようでありますが、国際情勢待ちという、あと追いの姿勢ではなく、積極的に新しい情勢を作り上げて行くという立場に立ってこそ、今日の世界情勢に適応する道であると思いますが、総理並びに外相の所見を伺いたいのであります。(拍手)  次は、沖縄問題であります。沖縄、小笠原等、領土日本復帰の問題は、北方領土の問題とともに、日本国民並びに当該島民の熾烈な要望であることは、政府自身も昨日述べた通りであります。特に沖縄については、同島の内政に対する米軍関与の問題が、アメリカ民主主義のあり方という立場からも、強く世界の批判を浴びておることは御承知の通りであります。さきに、米当局干渉の中で、当選した瀬長市長が、さらに改正市会という追い討ちで、そのいすから締め出されましたが、しかし同島民の強い意思は、再び同じ瀬長派の兼次氏を市長に当選させたのであります。この弾圧のもとにおいても、沖縄島民の民族独立の意思が、いかに強烈なものであるかは、これによっても明瞭でありましょう。(拍手政府は、この熾烈な島民の熱望に応えてまた日本国民の意思をも代表して、当面まず沖縄の施政権返還について、強くアメリカ当局と交渉すべきであると信じます。政府もこれについては、昨日、努力すると述べましたが、近く米当局と交渉の用意がありますか。これを明快にしていただきたい。単に抽象的な、努力するだけではいけません。現にアメリカ国内の世論の中にも、沖縄施政権返還がまじめに論議されている際でもありますので、早急にこの問題と取り組むよう、政府の具体的決意を承わりたいのであります。  次の問題に移ります。政府の昨日の施政演説の中で、日ソ平和条約の締結は、領土問題に関する日本要求が受け入れられない限り、いつまでも正常化されないと言っておりますが、その主張主張として、しからば具体的にこの問題にどうタッチしようとするのか、日ソ平和条約締結のための現実的プログラムを何か持ち合せているのか。すでに米ソ文化協定すら成立した今日、日ソ平和条約締結についての何らか具体的見解を、この際明らかにしていただきたいのであります。(拍手)  次は、AA諸国との協力問題でありますが、アジア・アフリカ諸国政治的独立の裏づけとなる経済安定べの政府の関心には大いに敬意を表します。しかし東南アジア開発基金構想も、AA諸国は決して無条件に受け入れるものでないことは、多くの人々によって論じられている通りであります。そこで、日本アメリカの工ージエントではないかという関係諸国の疑念を一掃するとともに、日本独自の、かつ、分に応じた方針を確立し、真の協力関係が実現することをわれわれは心より望むものであります。また、それとともに、これら諸国との協力関係の強化を通じて、東西緊張緩和のかけ橋となるよう政府は積極的な努力をなすべきことを要望いたしておきます。  次は、日米安保条約、行政協定に関する問題であります。この条約と協定は、当時と事情の全く異なった今日、根本的に再検討されなければならぬことは言うまでもございません。これについて昨年三月二十七日、本院予算委員会における私の質問に対して、岸総理は、安保条約を廃棄するというような時期ではないと思うが、しかしこれを全面的に再検討すべき時期に来ておると答えております。これは速記録にも載っております。岸総理は、その後、日米共同声明を発表されましたが、この声明は、先の岸総理の言明とは反対に、むしろ従来の立場を再確認した結果となりました。しかし、それでもこの会談において、日米安保条約、行政協定を検討するために、日米安保委員会が設けられることになったのでありますが、それを再検討するためのこの委員会か、国民の期待に反して、きさにサイドワインダー受け入れの委員会となったことは、単に納得がいかないばかりでなく、われわれの絶対に容認し得ないところであります。  そこで、われわれの質問したいことは、第一に、総理は日米安保条約を根本的に再検討すると述べたさきの答弁に変りはないかどうか。またさきの言明に変りなければ、具体的にどのようにこれを推進するのか。そのためには、あらためて日米会談を求める考えはないか。第二に、その意味で、当面の日米安保委員会をどのように活用せんとするのか。総理並びに外相の具体的見解をただしたいと思います。  以上、触れてきた諸問題を総合的に検討するとき、われわれは日本の平和と安全のために、一方的な対米依存外交を改変するとともに、さらに一歩を進めて、将来、日本アメリカソ連、中共等の諸国、さらに場合によってはその他の諸国をも考慮しつつ、これら諸国間に絶対不可侵の精神を基調として、東西を結ぶ確固たる集団安全保障体制を確立することこそ、アジアの緊張を緩和することであり、同時に、今日の世界情勢に適応する真の安全保障であることを確信するものでございます。(拍手)  以上で対交問題に関する質問を終り、次に、明年度予算案及び経済全般にわたって政府の見解をお尋ねいたします。  明年度予算案は、これを一言にして評すれば、第一に、近来まれに見る定見なき無性格な予算、第二に、貧乏追放どころか、貧乏増大予算、せいぜいひいき目に言っても、貧乏温存予算ということであります。さらに、これが最終決定を見るまでの過程における政府の統制力の欠除は、実に驚くにたえたものであり、その不手ぎわは事態収拾の能力を欠くものと断ぜざるを得ません。(拍手)以下順次、問題に触れつつ事実を検討することにいたします。  質問の第一点は、予算編成に関する基本的態度についてであります。政府は、十二月十七日の閣議決定に至るまで、二回にわたり明年度の財政膨張は避けるという緊縮方針を一貫して堅持して来たったのであります。その意味で、去る一月八日に発表となりました大蔵省原案は、内容はとにかく、形式的にはこの方針に沿ったものと言うことができましょう。ところがこの閣議決定の基本線を守った大蔵省原案に対して、岸首相みずから先頭に立ち、蔵相を除く各閣僚もまた歩調をそろえて、十二月十七日の閣議決定をみずからくつがえしたのでありますから、驚くのほかはないのであります。すなわち政府予算案の規模は一兆三千百二十一億円となり、本年度より千七百四十六億円の増額になっておりますが、このうち問題の財源たな上げの経済基盤強化基金二百二十一億円と、国債費増三百十億円を除く千二百十五億円は、三十二年度規模が三十一年度より一千二十五億円増であったのに比べれば、明らかに実質的な増額となっておるのであります。財政投融資計画につきましても、政府は再度にわたって、明年度規模は、本年度実行計画の規模三千五百二十三億円以内に抑制すると公約しながら、これよりも四百七十二億円も上回った計画案を作り上げたのであります。おそらく明年度の地方自治体の財政計画も、国の方針に歩調を合わせて、本年度以上の歳出規模にふくらむでありましょう。かくのごとく政府予算編成は、形式的にもまた実質的にも、みずから掲げた基本方針を踏みにじり、結果は全く逆のものとなったのであります。政府は昨年二月、施政演説の際、一千億減税、一千億積極政策主張したのでありますが、その後見通しの誤まりに気づいて、大幅な金融引き締め政策に転換し、国民に多大の迷惑と被害を与えたことは言うまでもありません。今われわれがこの点について政府責任を追及せんとしているときに、今まで一貫して緊縮方針をうたってきた政府が、今回また突如としてこれを放棄し、財政拡大へと転換したのでありますから、重ねて驚きを表明するほかはないのであります。このように絶え間のない基本政策の動揺、朝令暮改は、政治に対する国民の信頼を喪失させるものであり、かつ経済の健全な発展を阻害するものと言わなければなりません。この点について総理はどのように責任を感じられるのか、まずこの点を明確にしていただきたいのであります。  これと関連をする質問の第二点は、財政金融が膨張すれば、当然のことながら、経済に対する刺激も強くなり、従づてそれに相応する施策を取らなければなりませんが、この場合においても、政府はあくまで国内需要と輸入を抑制し、輸出振興一本やりという既定方針を堅持して進むのでありますか、この点についての政府の見解をただしたいのであります。  質問の第三点は、予算の内容に関する問題でありますが、岸総理は就任以来、国民に対して三悪追放を常に公約してきたのであります。しかし、このうちの貧乏追放は、今度の予算ではどうなりましたか。貧乏追放は、言うまでもなく国の施策の中に、具体的に予算的措置を伴ってこそ、その実現が可能となるのであります。ところが今回の予算案の歳入歳出のいずれを見ましても、貧乏はそのまま温存されているのであります。すなわち歳入面でこれを見ると、減税二百六十億円のうち、低額所得者に関係のあるものは二級酒の減税ぐらいで、減税の主たる対象は大法人と高額所得者に向けられ、租税特別措置法で税法上幾多の恩恵を受けている法人等が、今回さらに利益を亨受し、課税公平どころか、その原則は無視され、国民の租税負担の不均衡をさらに一そう拡大しようとしているのであります。(拍手)  次に歳出面ではどうでありましょうか。まず増額の重点は、経済基盤強化基金と、それぞれの仮称をつけられた五種類の基金に四百三十六億円、地方交付金三百七十二億円、国債費三百十億円、防衛費百九十億円、道路整備費に九十三億円等に置かれ、肝心の社会保障費の増額は全部で九十九億円であります。しかもこの九十九億円のうち、四十八億円は失業対策費でありまして、これは岸内閣の政策の失敗に由来するところの、失業者増加に対するいわば臨床的措置とも言うべきものであります。また、経済企画庁の経済白書、労働省の労働白書、厚生省の厚生白書等は、筆をそろえて、わが国の勤労大衆の貧困化現象が拡大していることを報告しているのであるし、かつ、それゆえにこそ岸総理も、貧乏追放を最大の公約とされたのでありましょうが、国民生活の構造的なゆがみを是正するために最も重要である社会保障費が、残りのわずか五十一億円増にすぎないとあっては、貧乏は逃げ出すどころか、大あぐらをかくことになるかと思うのであります。(拍手社会保障費がこのように取り扱われた結果、国民皆保険の実施は放棄され、結核退治、生活保護を受けていない極貧困者の救済、児童保護、老人、婦人福祉対策費等の増額は、いずれも人口増加率を下回るような少額に押えられることになったのであります。さらに、義務教育関係費、低家賃住宅関係費等は、この程度の予算で足りるとお考えでありましょうか。また、農林予算にしても、前年度に比べて若干の増額とはなっておりますが、にわか仕立てでありますから、その施策には、何らの一貫性も見受けることができない。さらにまた中小企業対策にしても、全く期待はずれと言わなければなりません。これで貧乏追放は可能でありましょうか。岸首相の確たる御答弁を求めたいのであります。  次に、質問の第四点は、明年度経済について、政府はいかなる見通しを持っておるかということであります。政府は依然として国際収支の改善を経済政策の重要な眼目とし、明年度輸出三十一億五千万ドル、国際収支の黒字一億五千万ドルを目標としているようでありますが、この実現のために、内需と輸入をできるだけ抑制して、経済成長率は三%の伸びにとどめ、鉱工業生産のそれは四・五%、消費水準のそれは五%とし、いずれも国内経済の伸びを本年度以下に抑制せんとしているのであります。このように国際均衡にのみ重点をおく政策は、結局のところ国内経済を縮小均衡に持ち込むことは必至となるでありましょう。これは必至であります。もちろん国際均衡も重要な問題でありますが、政府政策は、国際収支が数億ドルの赤字を記録した当時のものであります。しかし、今日の見通しでは、国際収支は相当に改善され、実質三十二年度赤字は一億三千万ドル程度と言われております。もちろん、その主要な原因が輸入の減少にあることは指摘するまでもありませんが、国際収支は、輸出は横ばいだが、輸入減少によって縮小均衡したのであります。輸入の減少であります。このようなときに、政府は輸出を前年度比三億五千万ドルふやして、国際収支を拡大改善して行くと宣伝しているのでありますが、海外の情勢を見ると、アメリカを初めとする資本主義諸国は、世界的に景気後退期にあり、輸出増加の可能性はきわめて乏しく、かつ中ソ等の貿易については、特に日中貿易に見られる通り、みずから門戸を閉ざして、三十二年度の貿易額は、前年を一九%下回るというような状況となっているのであります。しかも、政府は輸出振興については、何らの具体策も示しておりません。この機会に輸出振興の具体策を明らかにしていただきたいと存じます。  さてこのように輸出振興が単なるから宣伝にすぎないとすれば、国際収支も縮小均衡、国内経済も縮小再生産となり、かくして不況現象は、一そう本格的になって行くばかりであります。しかも一方には、膨大な輸入原材料の在庫をむなしくかかえて、これに対しては、さらに滞貨融資を続けざるを得なくなり、金融引き締めの手直しとか、緩和とかの方向は、結局大企業の在庫維持のための融資に焦点が合わされて行くだけの結果になるでありましょう。日本経済がかような情勢にあるときに、明年度の一般会計には、経済基盤強化基金が二百二十一億円、財政投融資計画では五百億円の余裕財源がストックされており、しかもこれは、結局大企業向け投融資のチャンスを待期するための財源たな上げと言えるのではありませんか。国民はこの点について深い疑惑を持っているのであります。  われわれの見解が誤まりでなければ、三十三年度経済の見通しは、このままの状態が続く限り、過剰生産によるデフレの深化と判断をいたします。しかるに、政府予算案と投融資計画は、かえって投資需要を刺激して、一そうの過剰生産となり、従って矛盾の深化となることは必至でございましょう。しかも、先ほど来申し述べているように、世界的な景気後退で、輸出の伸びを大幅に期待できぬとすれば、過剰生産の終着点は、工場閉鎖や操短となり、それはまた、結局労働階級にしわ寄せされ、失業者の増大となり、雇用問題が重大な社会問題となることは間違いございません。  このような情勢のもとにおける政府施策の重点が、内需の抑制であってよいでしょうか。問題は逆であって、内需抑制ではなく、むしろ内需の育成でなければならぬと思います。幸いに膨大な輸入原材料が蓄積されております。今こそこれを活用して、計画的に内需を拡大して行くチャンスではござ  いませんか。そしてそのためには、国民生活水準の向上が不可欠の条件となりますが、従って当面、減税の対象は、低額所得者の所得税、個人事業税の大幅軽減に置かるべきであり、かつ社会保障費、義務教育費、住宅関係費等の諸費目を増額しなければなりません。政府政策で行けば、病人のあるときに、病人に卵や牛乳を与えず、貯金に回すというのでありますから、これでは病気は一そう重くなるばかりであります。従って、生活水準の向上、内需の育成こそ、貧乏追放の具体的政策と断言し得るのであります。この場合、政府は、消費をふやせば輸入がふえて、国際収支の改善を阻害するというのでありましょうが、もちろんわれわれも常識を持っておりますから、それには一定の限界があることを承知いたしております。しかし、最近の統計によれば、――これは大事なところですから聞いて下さい――最近の統計によれば、家計の個人消費における輸入依存度は毎年低下の趨勢にあり、昭和二十六年の個人消費の輸入依存度を基礎として、二十七年度以降一二・〇四%、一〇・七八%、一〇・六二%、九・九二%、九・四四%と、着実に低下しているのであります。また、二十八年度以降のこの五年間に、輸入は二・四倍、鉱工業生産は二倍に伸びているのに、雇用と消費水準の伸びは、きわめてわずかであります。その意味で言うならば、前年度国際収支の赤字は、放漫、無計画的な設備投資、思惑的な在庫投資の増加に基因するものであって、個人消費のウエートはきわめて小さいと言い得るのであります。(拍手)また、輸出がかりに所期の目的を達成し、国際均衡を保ち得たといたしましても、日の当らぬ人々の数は一そう増加し、国内不均衡の増大は避け得られぬこととなるのではございませんか。国際均衡も大切ではあります。われわれも、もちろんこれを承知いたしております。しかし、三十三年度経済の基本政策は、国内均衡にその重点を置き、内需を育成するとともに、輸出の振興の具体策を強化し、中共貿易の拡大にその重点を置かなければなりません。(拍手)  この場合、いま一つつけ加えて申しておきたいことは、国民生活安定については、政府としては、経済活動を強化することによって間接的に国民生活にも寄与するという立場をとるものだと思います。もちろんこの考え方は、一定の条件のもとにおいては肯定されます。しかし、経済活動の波動が間接的にも及ばない階層にとっては、国の予算面における直接的援護措置が絶対に必要であることを、あらためて強調したいのであります。(拍手)そこで政府は、この際いさぎよく、昨年以来の経済の見通しの誤まりを率直に認め、これを修正するとともに、その基本方針を立て直し、予算も再編成して出直すべきであると思いますが、岸総理の見解はいかがでありますか。お尋ねいたします。(拍手)  結論をいたします。岸内閣は、その成立以来、内にあっては、復古的な文教政策労働者に対する積極的な攻勢、勤労大衆、農民、中小企業者に対する生活軽視と、遺憾なく大資本家擁護ぶりを発揮し、外に対しては、対米依存外交にその重点を置いてきたのでありますが、岸総理は、かかる立場に立って社会党との対決を強調されているのであります。わが党もまた、今質問を通して、その争点を明確にしております。しかして、その最終的審判者は国民大衆であることは論を待ちません。(拍手)しかし、議会の解散がなければ、国民はこれを審判することは不可能です。今こそ土俵を国会の外に移して、国民の審判を受くべき最も正当な契機であることをここに重ねて付言し、もって社会党代表としての私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  16. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 各種の問題に関する広範な御質問でありまして、私はできるだけその主要なものについて私の所信をお答えし、なお関係閣僚よりこれを補足することといたします。  第一は、解散問題でございます。この点に関しましては、すでにこの前の国会以来、ずいぶん衆議院及び参議院におきまして論議をされ、私もその所信を明らかにいたしたのでございます。私は、ただ単に内閣の首班がかわったならば、これを解散によって民意に問えという民主主義の公式論は、私は承認しないということを明確に私の信念を申し上げた。私はあくまでも、この民主政治の何から申しますというと、この原則は、四年の任期でもって選出されているのでありますから、この期間に国民が十分に、これに対する審判をなす機会を持つわけであります。そのほかにおいては、非常な何か事態が出てきてその問題に関して国民意見を聞くということは必要であるけれども、今のような政治情勢におきましては、私は急いで解散するよりも、この予算を成立せしめて、今、羽生議員の御質問にもありましたいろいろな点について、経済上の問題その他について、御心配の点等のないようにするということ、予算を早く成立せしめるということが、なお必要であると考えております。(拍手)  外交問題に関する国際情勢の判断等につきましては、私はすでに、施政方針でも明らかにいたしておりますように、ただ単に力の均衡によって平和を保つということは、今日の軍事科学の発達から申しますというと、むしろ世界の不安を増すゆえんである。われわれは、この意味において東西首脳部の間において話し合いをして、そうして恒久的に安定する平和を作り上げるようにしなきゃならぬということを申しております。この方法につきましては、どうしてやるかという問題につきましては、私も国連だけでやるということを申しているわけではありませんで、国連の内外を問わず積極的にやりたい、また、やらなければならぬと言われる羽生議員のお考えにも、私はその点においては、考えが一致しております。ただ、先ほども鶴見議員質問に対してお答えを申し上げましたように、この問題は、過去の経験から見ましても、今日存しておる東西陣営間の不信感というものから見ましても、なかなか、ただ単に理論的の、簡単にこれを主張すればいいとか、あるいは手紙を出せばどうだというような簡単な問題でないことは、羽生議員もよく御承知のことであります。十分にあらゆる面を検討して、これに対しては積極的に努力したいと思います。なお、中共の問題につきましては、これまた、われわれは今日の段階においては、これを承認するという段階ではないと思いますが、しかし、経済その他の問題においては、この両方の関係を密にするという従来の方針をやはりとっております。第四次通商協定の行き悩みにつきましても、われわれはこれを解決するために、その一つの支障になっておる外国人の登録法、すなわちいわゆる指紋問題に関する点におきましても、これを、従来の法制を改正するつもりでおりまして、この日中間の貿易につきましては、一そうこれを増進するようにしたいと思います。  沖縄問題につきましては、御意見のように、これが施政権の返還ということは、島民だけではなくして日本国民全体の要望でありますから、これが実現に向っては、私は従来も努めてきておりますが、なお一そう努力をする考えでおります。ただ、今日までの何から申しますというと、日本考えアメリカ考えとが、まだ大きな開きがあるということは、はなはだ遺憾であります。これに対しては、なお、われわれは積極的に努力をいたします。  日ソ領土問題に関しましては、これはかねて私が申しておるように、われわれの主張をどうしてもソ連をして承認せしめなければならない。それにはソ連が、日本人のこの要望を、やむにやまれぬ正当な要望を十分に同情をもって理解するということであります。その理解を進めるためには、従来長い間国交がなかったわけでありますから、国交の回復と同時に、いろいろなことを積み重ねて、この理解を深め、日本側の正当なる主張ソ連をして認めしめるという努力を続けて行きたいと思います。  東南アジア開発基金の問題につきましては、すでに鶴見議員質問に対して私がお答えした通りでありますが、東南アジア諸国におけるこの問題に関する理解も、過去二回の私の訪問を通じ、その後のいろいろな事情から、最初にありました誤解等も解けて、すでにこれを実現しようとする機運が盛り上っておりますから、これに応じて、予算措置におきましても、日本側におきましても、十分積極的に協力するという態勢を進めております。  また、日米安保条約の問題に関しましては、すでに私は、御引用のありました質疑応答の意見と今日も同じ考えを持っておりまして、これについては、すでに設けられた安保条約に関する委員会において、第一段は、この現在の条約の運営を正常化するという問題、さらに、この条約全体をこの日米両国国民感情に合わすように持って行くということは、じれに対する全面的のいろいろな事態を検討するということを意味しておるものであります。  さらに、核兵器の問題につきましては、すでに私がこの国会を通じて明確に申し上げておる通り日本核兵器をもって武装するという意思を持っておらない。またこれの持ち込みに対しては、断固これを拒否するという方針は一貫して私のとっておるところであります。  それからブルガーニンの書簡につきましては、十分その内容を検討し、これに対して返事を出すか出さないか、また返事の内容をいかにするかということを検討をいたしております。  予算編成の問題につきましては、いろいろな数字的の御質問でございましたが、私はすでに昨年定めました予算編成の基本方針である本年度の、この三十三年度予算の増額の規模を一千億円内にとどめる方針は、これを堅持いたしております。また剰余金の四百三十六億円は、これを特殊の意味において、将来の需要に充てるために資金及び基金にしておるということも御承知の通りであります。私は、決して基本方針がこの予算について朝令暮改であるというような事態ではないということを明確に申し上げておきます。  なお、予算全体を通じて、社会保障費の問題、すなわち貧乏追放の問題についての御質問でございます。この貧乏追放ということは、私の念願であるばかりではなくして、内政の主眼である。だれが政治をしても、貧乏をなくするということは、政治の要諦であると私は思います。しかも、そのことは決して容易なことではないのであります。私はこれについては二つの方向、柱でもって進んで行きたいということを申しております。一つは、経済の拡大によって経済繁栄ならしめることによるということが一つ。しかし、それにおいても日の当らない、また経済活動から漏れるところのものをどうするかというお話でございます。これは社会保障制度の拡充によるほかはないのであります。この二つの道によってぜひ実現して行きたい、かように考えております。  なお、経済の見通し等につきましては、企画庁長官等からお答えすることにいたします。(拍手)    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇拍手
  17. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 羽生議員の御質問に対しまして、総理がお答えになりましたが、その観点について若干補足をいたします。  平和外交の推進につきましては、私ども当然今日やるべきことでありまして、従いまして、あらゆる角度からこれを検討して、そうして進めて参らなければならぬわけであります。従いまして、羽生議員お話にありましたように、国連中心だけで、その場だけでもってこれを展開することは考えておりませんので、あらゆる機会をとらえ、そうして構想を練って行くという必要があろうかと思います。従いまして、巨頭会談等につきましても、私はできるだけ早い機会に巨頭会談ができることを望んでおるのでありますが、それらの問題について、各国とも、あるいは外務大臣の会議を開くというような、いろいろな問題がございます。私もこれらの点について十分努力して参りませんければなりませんので、先般もインドネシアに参りましたとき、スパンドリオ外相と、アジアにおける外務大臣が会合してみたらどうだというような点に触れて、話し合いをしてみたこともあるわけであります。   なお、不可侵条約等につきまして、マクミラン首相のその意向等を十分にシンガポールで打診して参り、われわれとしては、決して平和推進のため努力をすることにやぶさかでなし、また国連の場のみにおいて、これを取り扱うというような羽生議員のお考えでないことは、私、申し上げさせていただきたいと思うのであります。  十分にいろいろな事情を探査しながら、また、われわれの考えを国情に合ってきめながら、私どもとしては日本の提案が、もし提案をするような時期になりますれば、それが実際的に世界の世論にアッピールするものでなければならぬと考えておりますので、必ずしも急いでこれらの問題について、とかくの議論をしなくても適当であろうと、こう考えております。  安保委員会の運営につきましては、私どもは将来にわたって、これが日本アメリカとの安保条約の改善に役立つように、今後とも運営して参りたい。そうして両国国民の願望に沿ったように、将来、問題を取り上げることを期して運営をいたしておるわけであります。その間むろん、いろいろな点について話し合いを進めておるわけであります。  AA諸国との経済協力につきましては、日本独自の構想を持って臨めというお考え方であります。むろん、日本としては日本の持っております力の限度がありますから、その限度――限りにおいては、できるだけの努力をして参りたい。しかしながら、これは受入国であるAA諸国考え方もありまするし、従ってそれらと十分相談をしながら進めて参るわけであります。そういう意見を聞きながらも、着々その手段が進めて行けることと私は考えておるわけであります。  以上のような点について、私どもは努力をいたしておるのでありますが、なお、日ソ平和条約につきましても、先ほど総理が言われましたように、できるだけ友好的な雰囲気を作り、また、懸案の解決すべきものはできるだけ解決をしまして、そうしてそのもとに日本の正しい領土に関する主張ソ連に対して聞いてもらう、結果において日ソの間に平和条約が締結されることに努力をして参りたい、こう考えておるわけであります。  沖縄の施政権返還についての対米交渉も、議会においても、すでに四回の決議があることも私ども承知しております。日本人として当然やるべきことであり、主張すべきことであると思うのです。私どもとしては、この点についてはあらゆる機会をとらえて、公的な機会であろうと、私的な機会であろうとを通じて努力をして行く考え方なのであります。そういう意味において、私どもは最大努力を尽して、これらの問題の解決に邁進して参りたいと考えております。  要するに、日本としては平和な世界ができ上ることを最終の希望として、また、最終の目的として、そこに努力をするべきは当然であります。(拍手)    〔国務大臣一萬田尚登君登壇拍手
  18. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げます。  第一点は、この予算案と貧乏との関係でありますが、今回のこの予算は申すまでもなく、日本経済に安定を与えて、安定の基盤の上に経済の拡大をはかって行こう、こういうことであるのでありますから、これは貧乏との関係においては、新たに発生する貧乏を大いに予防しよう、こういうことになるのであります。それから現存いたしております貧乏につきましては、よくごらん下さればわかりますように、社会保障費というものを、できるだけの限りにおいてふやしているのであります。前年度の増加額六十億を本年度は百二億ふやしております。その他、遺族、戦傷病者等を中心といたします恩給関係費も、今回は七十四億ふえております。また、内容につきましても、国民皆保険を推進いたしております。診療報酬の合理化ということも考えております。それから母子対策、結核対策の充実もいたしております。失業対策生活保護費も増額をいたしておるのでありまして、こういう意味で社会保障の発達に一段とこれを促進する経費を計上しておるわけであります。  それからもう一つ、今回の減税は、大法人や高額所得者を中心とするものではないかという御意見でありますが、それは当っておりません。昨年度、所得税を大幅に減税をしたことは申すまでもないのでありまして、この減税の平年度化によりまして、ことしは二百億くらいの減税がさらに実際に具現することになります。それからこの法人税、これは何も大法人ばかりではありません。法人全体に一律に二%の引き下げになっておる、のみならず、この軽減税率の適用限度を引き上げております。従来、年所得が百万円であったのを、二百万円まではこの軽減率を適用ができる、かように今回の法人税につきましては、特に低額所得者というものを対象にいたしておるのであります。さらにまた相続税につきましては、これは中小階層の負担を軽減することを目的にいたしておるのであります。中小企業、特に農民、この農民の相続税が従来問題であったのでありますが、これも今回解決をいたしたわけであります。また、酒税につきましても、大体におきまして、大衆の生活必需と見られるそういう酒の減税をいたしておるわけであります。  さらに、地方税につきましては、これは予定になっておりますが、自転車、荷車等に対する地方税を廃止することにいたしております。  それから減税預金制度についても、今回は特に新しい所得を貯蓄する人に適用しよう、言いかえれば、主として俸給生活者というものを対象に考えておるわけであります。さように今回の減税につきましては、できるだけ大衆並びに低額所得者を対象に考えておるということを御承知願いたいのであります。  それから経済基盤の強化資金その他は、これもやはり大企業向けのたな上げではないか、こういう御質問でありますが、決してそうではありません。これにつきましても、中小企業の金融を円滑化するために六十五億を基金として出しております。さらにまた、補助の対象でない小団地の土地改良、この事業に対しまして農林漁業金融公庫から金を貸します。その金利を低くするために、これに六十五億を基金として出して補助をする、こういうふうになっておりますので、今回の基金のたな上げにつきましても、決して大企業向けのためにたな上げをしていないということを御了承を得たいのであります。  私の答弁はこれで終ります。(拍手)    〔国務大臣河野一郎君登壇拍手
  19. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 昨年の経済の見通しにつきましては、昨日も申し上げましたが、実は昨年一月ごろから、御承知の通り、とみに財政と民間の設備投資が増大して参りましたために、五月において政府は緊急処置をとったわけでございます。これは政府の処置と民間の処置との間に、多少食い違いがございまして、御承知の通り、この処置をとらざるを得ない状態国際情勢がなりましたので、政府はこの処置をとりました。ところが、この緊急処置をとりまして後は、おおむね政府の勘案いたしておりました見通しの通りに推移いたして参りまして、これも昨年末から今年初めの越年の状態は、大体順調であったと私は思うのであります。  今年度の見通しにつきましては、いろいろ御意見がございます。ただいま羽生さんのおっしゃったような見通しをなさる人もいらっしゃいますが、また、これとは全然逆に、非常に楽観論を唱えられる方も、評論家の中にはたくさんいらっしゃいます。これを政府といたしましては、これら各方面の御意見を十分に拝聴いたしまして、しかもまた十分、政府自身も検討いたしまして、日本経済の見通しにつきましては、慎重の上にも慎重に、細心の上にも細心な検討を加えまして、昨日申し上げましたような結論に達しておるのであります。この結論を中心といたしまして、予算の編成をいたしたのでございます。われわれといたしましては、この政府の見解をもって、今年度経済の見通しは、誤まりなきものであると確信いたしておる次第でございます。(拍手
  20. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 羽生三七君。
  21. 羽生三七

    ○羽生三七君 自席から発言をお許し願います。  先ほどのブルガ一ニン書簡に対する政府の見解を尋ねたのに対して、なぜ、これを公表しないのかということについて、何も政府からはお答えがありません。また、答えをするかどうかも考えると言いましたが、これは国際的に私は非常に非礼だと思います。ですから明確に、その内容はどういうものか、また、もちろん出すことでありましょうが、どういう性格のものか、この機会に、もう少し明確にしていただきたい。  それからもう一点は、今、河野企画庁長官から、経済の見通しについてのお話がございましたが、先ほどの私の質問の半分は、三十三年度経済の見通しに費されておる。内需を中心に行くのか、あるいは政府方針通り、輸入中心で内需を抑制するのか、これは基本的問題であります。そういう質問に対して、今のようなお答えでは、これはきわめて不適当だ、国会の運営上から行きましても、こんなことでは初めから論議する気持になれない。だから、十分な答弁をされることを望みます。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  22. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ブルガーニン書簡は、すでに発表されておりまする英米等に出されたものとは、内容が違っておりまして、この書簡に対して、全体の何から申しまして、返事を要求した形にはなっておりません。しかしながら、これに対して返事を出しておる国もありますし、日本以外に約十数カ国に対して、同様のものを出しておるのであります。まだこれに対して検討を加えておる国々が多いのでありまして、発表されておらない国の方が多いのでございます。特別の意図があって発表していないというわけではございませんので、十分にその内容を検討いたしておるというのが現段階でございます。(拍手)    〔国務大臣河野一郎君登壇
  23. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えをいたします。  先ほど申し上げました通り政府といたしましては、内需につきましても決してこれを抑制のみに考えておりません。むろん、明年度の内需の増加率は、昨年は八%程度になっておりましたのを、今年はその増加率を多少減しまして、五%程度に増加率がなるようにということを期待いたしております。しかし、これは必ずしも抑制ではないのでございまして、成長は成長でございます。経済全体の成長率も三%成長いたしておりまするから、そういうふうに見ております。しかし、われわれは、今、羽生さんのおっしゃったようなことで申しますれば、貿易に重点を置いて、あくまでも輸出に重点を置いて考えておりますことは、その通りでございます。(拍手)     ―――――――――――――
  24. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 石黒忠篤君    〔石黒忠篤君登壇拍手
  25. 石黒忠篤

    ○石黒忠篤君 私は緑風会を代表いたしまして質問をいたします。  まず第一は、わが国の外交について、もう少し自主性を持ってやっていただきたいということであります。(拍手総理大臣及び外務大臣が述べられましたわが国外交の三大原則は、多少あいまいなところがありますけれども、それはよいとして、その実行に当って、今までのように、あまりに現実に左右せられることなく、努めてわが国の自主性を堅持して、はっきりとやっていただきたいと存ずるのであります。それでないと、せっかく唱えられているところの、アジアの一員としての立場を堅持して、その信頼を得て行くこともできません。自由主義諸国と協調して行くのに、対等の立場を保って行くこともできません。(拍手)  昨日、総理大臣は、演説の冒頭において、自分機会あるごとに核実験の禁止を全世界に向って強調して参ったと申されました。これはいかにも申された通り、全人類最大の課題と申されたが、その通りと思います。国家の安危にかかわる政治の眼目であると申されたが、その通りと思います。それであればこそ、わが参議院は三回、衆議院は二回、決議を行なって、このことに関して、世界中で特殊の地位にあるわが国民の痛切なる要望を表明したのであります。しかるに、この国民の声を政府はいかに世界に伝達したのでありましょうか。私は遺憾ながら、総理の言葉はきわめてよろしいが、真剣さを欠いて、小細工に失した感に打たれざるを得ないのであります。(拍手政府は、現実的見地よりというようなことを言うて、国連において、さきには澤田代表をして核実験の続行を前提とする登録制の提案をいたさせました。しかし、それはちっとも顧みられることなくして、実現を見ずして終ってしまったのであります。そしてまた昨年は、藤山外相、松平代表は、これを軍縮の進捗にからませて、次の総会まで十二ヵ月の実験停止を主張されましたが、この案はあいまいな案だと評されました。そもそも国民を代表するわが国会の決議は、一つの独立の核実験禁止の要望であります。実験それ自体が、人類に及ぼす累積的危害があるということの警告でありまして、一般軍縮とからみ合せたものでありません。この点を軽視して、実は容易にまとまることのできないような軍縮にからませたことは、見方によるというと、実現を困難にする条件をつけたとさえ思われるのであります。(拍手)案の定、この提案もまた軍縮小委員会に送り込まれて、第一に否決されたのであります。一向に現実的措置ということにはなって参らないのであります。日本国連における地位は進みました。そこで、総理が最重要視するところの核実験禁止を今後いかにして主張せんとせられるか、お伺いいたしたいのであります。(拍手)  米英が核実験禁止を好まぬことはわかり切っております。その鼻息をうかがって控え目に主張をいたしたり、ソ連主張に乗ったように見えるからなどと気を回して、現実的方法などという小細工を弄することは、もうやめたらどうかと思うのであります。(拍手)私は自主的立場から、原爆被害の唯一の犠牲者であり、世界的な死の灰の谷に住む国民としての強い要望を、率直に、たゆまずに主張し続けることであると思いますが、政府考えはいかがでありましょうか。(拍手)  総理はさきに、松下立大学長を特使として、禁止問題を英国初め世界に訴えしめられました。そして松下学長は、純粋に、実験それ自体の人類に及ぼす危害を説いて、その禁止を熱心に主張され回ったのでありました。私はこのことを衷心より多といたし、この特使を発した岸総理大臣に感謝をいたしております。その松下学長は復命において今後は実験が人類に及ぼすおそるべき危害を持っておるということを、ますます科学的実証をもって説くことが必要であると述べておられるのであります。この問題に関しまして独得の立場にあるわが国は、幸いにして、この問題の科学的研究上、他国の有せざる最も適当な試験動物として蚕を持っておるのであります。しかのみならず、かつてその遺伝学的改良によりまして、わが国の貿易の大宗たらしめた優秀な研究者のすぐれた学識経験と、数万の卵の中から一粒、二粒の突然変異を見出すような鋭利熟練の観察力を備えておるのであります。この際これをこの方面に動員して核実験のフォール・アウトが人類の後の世代に及ぼすおそるべき遺伝学的影響を予知せしめ、人類の将来に貢献することこそ、わが国の努力すべきところであると考えるのであります。  さきに、総理大臣はこの私の主張をお聞き下さいまして同感さ、れたのでありますが、今回の予算に科学奨励に相当に支出をされるようになっておりますが、それは、はなばなしい方面にのみ注入されてはならぬと考えます。政府の施策は、かくのごときじみな、わが国独自なものに対して注がれなければならないと考えます。試験の一年は、人類数世代に当る結果を持ち来たすのであります。総理大臣は、これに対して同感はされ、所によっては私の受け売りをなさることもあったようでありますが、その実行に関しては、いかなる手段をとられんとするのでありますか、お伺いいたしたいのであります。(拍手)  旧臘の日韓交渉で、釜山に不法抑留されました人々が釈放せられ、また四代の内閣にわたって持ち越された日韓交渉が、ようやく三月一日から正式に再開されることになつたのは、まことに御同慶にたえま昼ん。しかしながら、これらの喜びはそれといたしまして私は従来の交渉の過程においてまた近々再開される第四回全面会談を前に控えまして、一抹の心配を感ぜざるを得ないのであります。それらの点について、外務大臣でもよろしい、もと兼摂外務大臣からでもよろしい、どちらからでもよろしいが、お伺いをいたしたいと思うのであります。それは、わが国側の在韓財産請求権の一方的放棄についてであります。日本側が韓国側に出しました口上書には、日本政府は、久保田貫一郎代表が行いました発言を撤回する。さらに、日本政府昭和三十二年十二月三十一日付の、「日韓請求権の解決に関する日本国との平和条約第四条の解釈についてのアメリカ合衆国の見解の表明」を基礎として、昭和二十七年三月六日に日本国と大韓民国との間の会談において、日本政府代表の行なった在韓財産に対する請求権主張をここに撤回するとしるされております。共同声明にも、同様なことが繰り返されておるのであります。私は久保田発言の撤回について言うべきことを多く持っておりますが、それはしばらくおきます。後段の在韓財産に関する請求権につきましては、日本側が一方的に放棄しているだけで、韓国側のことについては何ら触れておらないのは、いかような次第でありましょうか。そして昭和三十二年十二月三十一日、すなわち会談妥結のどん詰まりの日付の「アメリカ合衆国の見解の表明」というのは、どういうものでありますか、お伺いいたします。おそらくこれに関して両国1の見解が対立して、窮余の策であったろうと事情は了解するのでありますが、前会談において、あれほど主張されたところのものを、にわかに譲歩せざるを得なかったのはどういう次第であるか、伺いたいのであります。もしここまで譲らなければならぬことになったならば、何も、アメリカ意見に基いてなどと言わないで、わが政府責任で、日本の自主的放棄になぜしなかったのか、遺憾をもってこれをお尋ねするのであります。  次に、今年は総選挙必至の年であります。衆議院の解散がいつになるか、それは総理大臣自身ですら、まだわかっておらないことと存じます。しかるに、その選挙の事前運動は、すでに相当大胆に、かつ悪質に行われておると伝えられておるのであります。その上にまた、今秋より明春にかけて、都道府県、市町村等において公職選挙が合計四千九百八十二件行われるはずであります。選挙関係筋の推測によると、おそらくこれらの選挙においては、露骨な悪質な選挙運動が、半ば公然と、きわめて旺盛に行われることであろうと考えられておるように思われるのであります。なぜ、かように選挙違反の大発生が当然のように考えらるのでありましょうか。それは、ここ一両年のうちと予想される皇太子殿下の御成婚に伴う、必然行われるであろうところの恩赦によって違反炉許されるということが、激増を予想される理由であるということであります。そこで、皇太子御成婚恩赦から選挙違反を除外せよという世論が、すでに各方面に起っておることは、総理大臣も御承知のことと存じます。これに関しましては、近い先例があります。政府は、一昨三十一年十二月の国連加盟を国家の慶祝事として恩赦を行いましたが、その適用せられた範囲は、個別恩赦はわずかに三千人だったのに、公職選挙法違反等の政令によっての恩赦は七万三千人の多数に上ったのであります。このことに関する当時の衆議院法務委員会の速記録を見ますと、牧野法相の措置について自民党はもとより、社会党、共産党の諸君まで、一致して同調せられておるのであります。まことに珍しい光景でありますが、われわれには実に苦々しく感じられるのであります。更正なる民主政治発達のために、まことに遺憾に思われます。何のための公職選挙法であるか、何のため選挙取締りであるか、法治国として、まことに憤慨、憂慮にたえません。(拍手)これよりさき、かくのごとき恩赦の実現をするおそれが見えたので、わが緑風会は、その不当なるゆえんを力説して、善処を政府要望する事前の申し入れをなしましたが、五日あとの閣議は、これを無視して決定されたのであります。ついに阻止することができませんでした。われわれの無力を痛嘆ずるほかないのであります。そこで、かくのごときことを再びあらしめてはならないというので、われわれは、第十七控室並びに無所属クラブの諸君とはかって、行政府が恩赦を行う場合には、必ずこれを恩赦審議会に諮らなければならぬことといたしで、その厳正なる審査によって、法の悪用を防ぎ、公明選挙の実行に資せんとする同法の一部改正案を参議院の法務委員会に提出したのであります。この提案は、つとに、わが宮城委員等によりまして、法務委員会において主張されたのであったが、案件山積のために、審議の進捗思うにまかせず、継続審議となって今日に及んでおります。今後われわれは、一人でも多く同志の人々を得て、この案の審議を推進したく考えております。しかしながら、多数議員諸君の御協力を得るにあらずんば成立させることができません。そこで、自民党、社会党、共産党の諸君にお願いを申し上げます。今後は何とぞこの件に関して、一致したる御同調を下さらんことを願います。(拍手)なお、この機会に、首相並びに海相から御成婚恩赦には選挙違反は含ませないという力強い声明を、ここにいたして下さることができるならば、幾多の災いを未然に防ぎ得て、幸いこれに過ぐるものはないと存じます。かくのごとき何らかの阻止方法が確立せられるにあらずんば、国民に順法精神を求めることは不可能であります。法律の尊厳は地を払い、民主政治は根底から崩壊する憂いがきわめて深くあると思います。首相及び法相の御意見をお伺いいたします。(拍手)   〔国務大臣岸信介登壇拍手
  26. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 石黒議員の御質問にお答えをいたします。  第一の、外交は自主的立場を堅持しなければならないというお話は、これは全く私もさように考えておりまして、従来とも、その点を非常に高調し、また実現するのに努力をいたしておることは御承知の通りであります。ただ、原水爆実験禁止の問題につきまして私は理論として常に主張しておることは、今、石黒議員お話通りであります。また、議会の決議に表われている国民のこの意思というものを、各国にこれを伝達し、これが考慮を求めておることも事実であります。ただ、国連において実効的な、いかなる方法をとるかという問題に関しましては、私は、やはり各種の事情を考える必要があると思うのです。今、国連において、軍縮問題とある種の関連を持つということは不可能条件だということをお話になりましたが、遺憾ながら、今日の現状は、この軍縮問題に関連せしめることも、一方の陣営から見るというと絶対に反対であり、全然軍縮問題と離してこれを原水爆の問題だけを別に取り上げることも、これはまた一方の陣営反対するところであります。この間を縫ってどういうふうに、一歩でも、この実験禁止を一日も早く有効に成立せしむるかということは、現実の外交としては当然考えなければならぬと思います。理論的にわれわれの主張がどういうものであるかということについては、今、石黒議員お話通りに私は考えております。  なお、これの実験が、いかに人類や、また一般に影響を持つか、特に人類の遺伝等について、いかなる影響を持つかという科学的な研究について蚕のお話がございましたが、これは御引用になりました通り、私もかねて伺って、これが研究を推進することにつきましては、きわめて有意義なことでありますから、今度の科学技術の問題に、研究機関の整備、研究費の増額等につきまして十分それは考慮したいと思っております。  日韓問題について、いわゆる在韓財産の請求権の問題は、御承知の通り、サンフランシスコ条約の規定の解釈問題に関連があるのであ力ます。従来、日本としては、これが返還を今までの会談において強く主張して参っておりますし、韓国側も、これに対して非常に強力な反対をして、日韓会談が行き詰まっておったということも御承知の通りであります。日韓の間における正常なる関係を作るための正式会談におきまして、いろいろなむずかしい問題があります。財産の問題とか、あるいは李ラインの問題とか、国籍の問題とか、いろいろな問題があることは御承知の通りでありますが、その一つの財産の問題につきましてこれに対する最後の結論ということは、よほどむずかしい問題でありましたために、二年余も実は釜山に抑留されておる漁民を、われわれは釈放せしめることができなかったのであります。しかし、私は日韓の永遠の友好関係を築くためには、この日韓両国が抑留しておる人を一日も早く釈放し合う。人道的立場において、いろいろな問題、国民感情を刺激しておるこの問題をまず解決しなければ、私は、とうてい日韓の間の恒久的な友好関係はできない。また、その話し合いすらできない。これを何としても一日も早く釈放し合うということが、これからいろいろな問題をお話する上において、冷静にお互いが話し合いのできる基礎である、こう考えまして、これは一日も早く釈放せしめるという立場に立って、実は予備会談をいたしたのであります。この見地から、日韓財産権の問題については、平和条約の解釈として、日本の解釈とアメリカ側の解釈が従来違っておる。この解釈問題は、私はアメリカの解釈を採用する、韓国側もこれを採用するようにということを述べたのでありますが、それもなかなかむずかしかった。これは財産問題に関するアメリカ剛の平和条約の解釈は、日本はその権利を放棄したものだと解釈する。同時に韓国側もこれに対して日本側に対する従来の財産権をこれに見合って考慮すべきであるという趣旨の解釈でございます。従いまして、これに両国意見が一致するためには、なかなか歩み寄りがむずかしかったのでありますけれども、そういう趣旨において、韓国側も意見が一致しまして、釈放ということが成り立つたわけであります。  選挙の問題についていわゆる皇太子殿下の御成婚の場合における恩赦を目当てにして、いろいろな事前運動等が悪質なものが行われる、あるいは選挙違反が行われるおそれがあるという御心配につきましては、私もいろいろな事態から、このことにつきましては石黒議員と憂いを同じくするものであります。従来の例を見まするというと、過去における皇太子殿下の御成婚の場合においては、減刑は行われておりますけれども、恩赦は行われておりません。もちろん恩赦の問題については、国会の意見等も十分に考えなければなりませんけれども、私は公明選挙の立場を堅持する立場と、今申しまする過去の先例等も十分考えまして、これが選挙違反に利用されるがごとき事態のないように措置して参りたいと思います。(拍手)   [国務大臣藤山愛一郎君登壇
  27. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 総理大臣が、そつのない答弁をされておりますので、その答弁につけ加えることはないと思いますので……。    〔国務大臣唐澤俊樹君登壇
  28. 唐澤俊樹

    国務大臣(唐澤俊樹君) 御成婚恩赦と選挙違反との関係につきましてお尋ねがございましたが、すでに総理からのお答、えのあった通りでございまして恩赦が行われるだろう、罪が許されるだろうということで、その見込みのもとに選挙違反が行われるということは、まことに憂うべきことでございまして、法務当局といたしましても、これは厳重に戒めて行かなければならぬと考えております。  なおこの際、御参考までに先例を申し上げますと、今上陛下、皇太子当時、御成婚に際しまして恩赦が行われております。大正十三年一月の恩赦でございまして、その恩赦は、勅令による減刑でございます。大赦令は出ておりません。勅令減刑でございますから、その内容は、私が御説明申し上げるまでもなく、刑の確定した者ばかりを恩赦の対象といたしておりまして、大赦令が、広く刑の確定、未確定、あるいは捜査中の者、未発覚の者一切をあわせて恩赦の対象としてこれを許しておるというものと比較いたしますれば、その範囲の広狭において、非常に違いがあるのであります。なお、十三年の恩赦の際には、特別特赦が行われておりますけれども、それは前年の関東大震災の混乱に際して行われましたいろいろな犯罪に対する恩赦でございまして、特別のケースでございまして、先例にはならぬと考えております。いずれにいたしましても、恩赦があって罪が許されるだろうという見込みのもとに選挙違反を行うということは、これは法務省といたしましては、厳重に戒めて参りたいと思います。(拍手
  29. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  次会は、明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十八分散会      ―――――・――――― ○本日の会議に付した案件  一、常任委員長辞任の件  一、常任委員長選挙  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)