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1958-04-17 第28回国会 参議院 法務委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月十七日(木曜日)    午前十時三十三分開会   —————————————   委員異動 本日委員戸叶武君及び成瀬幡治辞任 につき、その補欠として清澤俊英君及 び山口重彦君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君            宮城タマヨ君    委員            雨森 常夫君            大谷 瑩潤君            小林 英三君            亀田 得治君            辻  武寿君   国務大臣    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君   政府委員    法務政務次官  横川 信夫君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    法務省矯正局長 渡部 善信君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    法務省刑事局参    事官      神谷 尚男君    法務省矯正局保    安課長     福井  徹君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告 ○刑法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○刑事訴訟法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○証人等被害についての給付に関す  る法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 青山正一

    委員長青山正一君) 委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  四月十七日付、戸叶武辞任俊英選任成瀬幡治辞任山口重葦選任、以上であります。
  3. 青山正一

    委員長青山正一君) 初めに、派遣委員報告を聴取いたしたいと存じます。  去る四月十二日、十三日の両日、少年院運営等に関する諸問題の実地調査といたしまして、赤城少年院における職員暴行事件調査いたしておりますので、まず報告を聴取いたします。  宮城委員から御報告申し上げます。
  4. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 委員派遣報告をいたします。  本委員会の決定によりまして、去る昭和三十二年十一月ごろ、赤城少年院発生いたしました教官による収容少年に対する暴行事件発生原因及び経過等の実情を調査するために、青山委員長と私は、天久調査員高橋主事を同伴いたしまして、昭和三十三年四月十二日、十三日と二日現地に派遣されました。右調査の結果を概略御報告いたします。  なお、本調査について、法務省矯正局保安課長福井徹及び東京矯正管区第一部長菊地省三の両氏が御協力、同伴されました。報告書の第一、調査方法。  まず前橋地方検察庁におきまして、検事正外三名の事件担当検事から、事件の全貌について説明を聞き、疑問の点を明らかにして、その翌日、赤城少年院関係者から事情を聴取いたしました。  二、調査事項担当検事による事件の概要。  赤城少年院教官十三名は、事故を起した少年及び非行少年がありました場合、これらの少年の自供を強要するため、または、事故非行に対する懲戒のために、ときには私情にかられ、院内の規律維持矯正教育などの美名に隠れまして、収容少年に対し暴行を行っていたことが明らかになりました。その暴行の内容は、全身の水びたし、または、愛のむちと称し、銅線二本にビニール様のものをかぶせたもので殴打等をしたのであります。  また、同少年院においては、数年来、ボス少年がばっこし、ボス少年の他の少年に対するリシチ事件がかなり公々然とし、かつ広範に行われ、しかも教官がこれを目撃いたしましても制止しないで、ときにはボス少年に命じて他の少年暴行させることもあり、また、教官収容少年に対する暴行行為も広範に行われていて、ボデイ、ハンチ、シャリ抜きなどはしばしば行われ、被害程度についても、教官院長に知られることをおそれて医師または看護婦の手当を受けさせないために確認できなかったようなこともたびたびありました。  なお、少年同士による鶏姦行為もあったようでありますが、これについては、教官関係していたかいなか明らかにすることができなかったので、捜査機関といたしましては、少年同士によるものと認定しておるのでございます。  以上が事件のごくあらましであります。  なお、右事件に対する捜査機関のとった措置は、事件関係人十三名のうち、三名については公訟を提起し、三名は免職されました。三省の公判はすでに第一回が済みまして、たぶん昨十六日に第二回の裁判があるはずだということでございました。その三人のほか、あとの者につきましては、行政処分がなされておったのでございます。  二、事件発生原因及び経過。  当少年院の諸施設不満のために、破壊逃走、寮内の生活の不規律及び創立以来少年保安助手に使用し、少年たちの中に、いわゆるボス少年発生いたしましたことが大きい原因であると思います。  このようにして、力による規律維持逃走防止等がなされました上に、さらに教官に性格的に傾いていると思われる者がありましたので、職員同士の和に欠けておるところがありますように見てとりました。そのおもな原品とされておるのもそのわけであります。  経過は、昭和三十二年十月一日、多摩少年院に移送されました田中敦少年が、訪問した母に語ったことから端を発し、赤城少年院においては、相当の教官による少年暴行事件があると思われて、昭和三十二年十月十九、二十日、東京矯正管区保安課長教育課長外一名が院をたずね、関係少年につき調査いたしましたところ、十数名の少年教官から暴行を受けた事実を供述いたしましたのが事件検察庁に通報いたし、取調べを受けることになった細めであります。  昭和三十二年十一月一日、前橋地方検察庁生田目検事が院に出張いたし、在院少年につき約一カ月問捜査がなまれ、昭和三十二年十一月十日、教官根岸敬一が逮捕されました。ほかは身柄不拘束のまま、特別公務員暴行陵虐被疑事件として取調べを受けました。教官十名、常動補佐員三名が捜査の対象となったのであります。  昭和三十二年十二月二十四日、荻原長太郎ら五名は懲戒処分になり、院長野村滝雄以下十名は減俸処分となったのであります。  事後の措置は、処遇困難な少年逃走者を作るおそれのあるボス少年と、逃走等反則首謀者と認められる少年ら、計四十二名を東京管内の各少年院に分散移送いたし、一時新入院を中止いたしまして収容人員の減少をはかり、退職職員の補充をかねて、職員全般気分刷新のため、教官七名の配置がえをなしたのでございますが、なお、幹部職員についての配置がえが実施されつつあります。  また、個別処遇に必要な考査室は現在六室しかありませんので、新入院者在院反則少年が隣接収容され、新入院者に非常に悪影響を与えることから、増設を計画しておることなどが報告されました。そのほか、単独寮舎の新設も考慮中であると報告されました。  教官経歴事件関係者並びに一般教官経歴は、元警察官看守経歴を持つ者と特殊な経歴を持つ者が多いように見受けられました。最近当局では、採用基準を高め、矯正教育にふさわしい人を得るために努力していることを認めるのでございますが、なお、一段の努力を要するものということをこのたびは切実に感じましたことであります。  最後に、以上申し述べました事実から、本件のような暴力行為発生原因はどこに伏在しているかと申しますと、第一に、教官に人を得ていないこと、第二に、ボス少年発生、第三に、諸施設不備、第四に、職員不和、第五に、少年院矯正局の所管にしていることなどが考えられますので、従って、矯正教育の場である少年院運営に当りましては、当局は以上の五点に特に留意いたして、その改善に必要な措置をすみやかに講ぜられるように要望いたしました次第でございます。  時間の関係上、簡単な報告を申したのでありますが、材料はみな持って帰っておりますから、そのこともあわせて報告いたします。
  5. 青山正一

    委員長青山正一君) 御質疑のおありの方は、御発言願います。なお、政府から法務省渡部矯正局長福井保安課長お二人の方がお見えになっております。
  6. 一松定吉

    一松定吉君 矯正局長にお尋ねしますが、今の報告を聞くと、第一に、少年院のそういう連中に対する指導誘掖の衝に当る指導者に人を得ないということだね。それがしかも巡査とか看守とかいう者の上りが多いというようなこと、そういうことになると思いますが。
  7. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 少年院職員の質の向上につきましては、いろいろ苦心をいたしておるのであります。今度事件を起した十一名の職員のうち、看守であった者が二名、警察官であった者が二名おります。
  8. 一松定吉

    一松定吉君 あとの七名は……。
  9. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 初めから少年院教官でずっときております。
  10. 一松定吉

    一松定吉君 そういう人はどういう学歴経歴の人ですか。
  11. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 現在おります。赤城少年院職員は全部で四十名でございますが、この中で大学を卒業いたしました者が六名でございまして、一五%、それから専門学校を卒業いたしました者が九名で、二二%でございます。それから新制高校を卒業いたしました者が十八名で、四五%でございます。それから高等小学校新制中学でございますが、これを卒業いたしました者が七名で、一七%。それから、小学校卒業はございません。従いまして、専門学校以上を卒業いたしました者が三七%でございます。それから新制高校卒業者を入れますと、これで八二%を占めておるわけでございます。それで、ついでに全国的な統計を申し上げますと、全国の少年院の現在の職員分布状況をちょっと申し上げますと、大学卒業者が十六・二%、それから専門学校卒業者が一八・七%、これを寄せますと、三四・九%、約三五%が専門学校以上の卒業者でございます。それから新制高校卒業者が四一・五%、それから新制校卒業以上が二一・七%、小学校卒業が一・九%、この分布状況は、刑務所職員分布状況から比べますと、非常に教育程度は高くなっております。
  12. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと私から、宮城さんの報告に補足的に報告いたしたいと思いますが、まず第一に、この職員同士不和というものがはっきり現われておる。私どもが出張しておってさえも、その状態が、どことなくぎごちのない状態がはっきり現われておる。この点を特に申し上げておきたいと思います。  それからもう一つは、先ほど宮城さんの報告の中に、施設不備という点がありましたのですが、私も、これを極端にまで考えたいと思うのです。たとえば、ガラス一枚もないところに寝させておる。あるいは戸などもほとんどこわれたままになっておって、使用にたえないというようなところに寝させておる。御存じの通り赤城少年院というのは、昔、国定忠治がおった赤城おろしというよう罪種寒いところである。そういう寒いところに、ガラス一枚ないところに寝させておるというふうな状態、この点も極端に考えられたわけなんです。  それからもう一つは、ボス少年が非常にはびこっておる。そうしてそのボス少年教官が結託して、そうしてかよわい少年をいじめておる結果、少年連中が脱走をはかる、こういう原因もあるのじゃなかろうか、こういうふうに私どもは考えておるわけなんです。その点、得に出張した結果、私の極端に目についた点はそういう点でした。以上、簡単に御報告申し上げておきます。
  13. 一松定吉

    一松定吉君 矯正局長に伺いますが、大学を出た者とか専門学校を出た者とかいうような、高等教育を受けたというような人が四〇何%というのは、非常にけっこうであるが、そういうような人を年に一回とか二回もしくは三回とか集めて、そういう不良少年指導誘掖するような何か教育とかいうような、講習会とかいうようなものでもやっておりますか、そういうことはないのですが、それはどうです。
  14. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 職員教養につきましては、東京中央矯正研修所というところがございます。これは幹部となるべき職員研修でございまして、毎年職員試験をいたしまして、その試験に通った者を教育いたします。これは、大体少年院職員は三ヵ月、それから刑務所職員は六カ月カン詰にいたしまして、教育をいたしております。なお、各管区ごと施方研修所というのがございます。ここでは初級の研修をいたしております。職員になりましたときは、大体最初に一カ月程度初等研修をいたしまして、職場につけることにいたしております。なお、そのほか初等幹部を二週間ないし三週間程度研修をいたしております。また、それぞれの職場によりまして、あるいは用度関係職員、あるいは教務関係職員、あるいは医務の関係職員というふうに、それぞれの職場々々に従いましての、やはり二週間ないし三週間程度の訓練をひっきりなしにいたしておるという状態であります。
  15. 一松定吉

    一松定吉君 今宮城さんの御報告のうちで五つの原因をあげておりましたし、また、委員長報告からもわかるのですが、いろいろな欠陥はあるにしても、私は一番のおもなものは、指導官の人物、教養経歴等というものがだいぶものをいって、それがよければ、施設が多少悪いとか、ボスがいるとかいうようなことは自然に矯正され、自然にそれが改められるような状況にあると私は確信しているのです。要は、指導官その人を得なければいかぬ、それについて、今あなたのお話しの三ヵ月、六ヵ月の講習をやるとか、あるいは地方によってはそれぞれ教養の度を高めるような方法を講じているというようなことはいいが、それを一つ徹底的におやりになって、ときどきあなた方がお回りになって、そうしてその実地ごらんになるということがあれば、そういう問題が幾分減少するのじゃないだろうかと思うのです。効果を上げはしないかと思うのです。そういう点について、十分に御注意相なると同時に、施設の不完全とかいうような点については、問題は予算ですからそれは、一つ法務省の方で十分取って、なるだけそういうように、刑務所ではないのですから、そういうような方針におやりになれば、こういうようなものの改過遷善の実をあげて、効果を十分に見ることができようと思いますが、そういうようなことに一つ御尽力あらんことを特にお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  16. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私の質問の前に、今一松先生局長にお尋ねになった点で、私の調査と少し違うようですが、申し上げてみます。職員学歴ですけれども高等小学だけを出た者が三名、兵隊上りが七名、それから警察官上りですか、警察からきた者が三省ある。ちょっと私ども調査から得た資料で申し上げます。  私が御当局に伺いたいのでございますが、この事件が発覚しました端緒というのは、この当の少年院からではなくて、少年院から東京多摩少年院へ送られた子供母親に泣いて話したという、その苦しかった話を母親が忍びないというので、問題にして、院長に話した。そこで、この多摩院長から問題は起っているのです。私はそこに非常に不満があるのです。もし、これは当の赤城少年院から問題があったというのなら、それは少年院の中にはいろいろなことはあります。あるけれども、ひた隠しに隠しておったというようなことは、これは一体どういうふうに考えればいいんでしょう。御当局はそれについてお調べになったでしょうか。私はこの事実だけで、いかにこの赤城少年院がくさいものにふたをしておったかということが想像できると思いますが、いかがですか。
  17. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) この事件端緒は、ただいま宮城委員仰せのごとく、多摩少年院に、この赤城におりました子供が送られまして、そこで面会に参りました母親に訴えたことが端緒となっておるのでございます。そこで、赤城でなぜこのことがわからなかったかということでございますが、まことにこれがわからなかっことは、結局、院長なり幹部なりの目が十二分に届いていなかったということに帰するわけでございまして、この点、監督の十分にいかなかったことについてはおわびを申し上げる次第でございますが、やはり少年からそういうふうなことが漏れて参りますのが、その当該の少年院では、もしもそのことが先生に知れるとまた先生からしかられるのじゃないかというふうなことから、その院では、どうも少年があまり口外をしないような傾向があるわけでございまして、この点、処遇があまりにきびし過ぎるのじゃないか、もう少しもっと何でも言えるような雰囲気でなければならないのじゃないかということを、実はわれわれとしてはいつも考えておるわけでございますけれども、その点が徹底しないうらみがあるわけでございます。
  18. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 先ほど、委員長からもお話があったのでございますけれども、私も今度参りまして強く感じましたことは、院長初め先生方がいかにもちぐはぐで、いかにも戦々きょうきょうとしていらっしゃるというように見えますけれども、しかし、調べてみますと、大部分の先生方院長初めかわって新しい者になっておりますけれども事件あとだから、ああいうふうかもしれませんが、それはそれとしておきまして、私は少年たちに会ったときに、何という不健全な顔をしているか、態度をしているか、実に戦々きょうきょうとして顔色が悪い。あの自然の美しい外を持って、運動場を持っているところで、これはまあ運動もしないで陰に入って、それこそこそこそとやっていることを裏づけている子供らの顔色子供らの態度、これは私は先生方がいかにあろうとも、それはかわったから仕方がないといえども子供たちはもっと明るい——悪いことをしてもいいのですよ、私はそんなに子供が逃げたからといって一体お仕置きをするということには反対で、よく委員会で申しますけれども、そうつないでおかれないで、けれども、私は逃げる原因もあるし、悪いことをする原因も他の少年院より私は一そう深いと思いますことは、いろいろ今度見てきた中にあります。第一に、あの考査室は何かということであります。局長ごらんになりましたか、あそこの考査室を……。考査室というのは一番初めに入れられる部屋なのです。その考査室は全く刑務所以上です。第一板の間です。そうしてこんな小さな窓から食事を差し入れて、そこに二週間はいなければならない。その二週間いるということは、私ども考査させる意味でいいと思いますよ、いいけれどもあんな部屋に、寒いのに薄べり一枚ないところに入れておいて、全くこれは罪人として扱われているというような様子なのでございますね。裁判所では何と言って子供少年院に送るか。裁判官は、私はよく立ち会ってみますが、少年院というところは一種の学校だよと言っている、これからまた、新しい学校、少し普通の学校とは違うきびしい拘束を受けることもあるけれども、しっかりやってこいよ、学校だよ、こう言って、もう子供はいそいそと学校に入学するつもりで行ってみたら、一番初めにぽんとぶち込まれるところはあの考査室です。私ども見ていて、ことに赤城考査室を見たら涙が出て見られないのですよ、ほんとうにかわいそうで……。そうして全く罪人扱いにされている。これは福井さんはこの専門家で、福井さんの経営していらした少年院を私行って見て感服しているのです。りっぱな少年院を作っていらっしゃる。だけれども一般少年院に比べまして、赤城なんかもう刑務所以上のものです。あそこへ二週間も入れて、じっと板の間にすわらされて、一体何を考えるのでしょう。私は逃げることを考えるのは当りまえで、私でもそんなところへ入らないで逃げていきなさいと言いたいです、私が母親の立場を持つならば……。私はこれでは、あそこの少年院考査室は特別に設備が悪いし、かわいそうで、ことに赤城おろしの吹きおろす寒さを、冬の間であんなところへじっとすわっておれということは無理な要求ですからね、逃げなさいということを私は言うと同じことだと思うのですよ。そこで、私はこの非行少年について一番大事なことは、最初に入れられるあの部屋最初指導するその教官が私特に考えていただきたいと思う。私は考査室——一人にするということはいいことです。それはだれとも合わないで一人で考査するという、考えるということはいいことで、私も冬のさなかに、二月  一日に、私は多摩少年院考査室に一晩寝てみました。板の間の上に一人で寝てみたのですけれども、そのときの経験から申しましても、それはいいですよ。冷たい目にあうのもいいですけれども、もう少し愛情を持って少年院がやってもらわなくちゃ困る。私はほんとうを言えば、男の子には男の教官が、それは抱き寝をしながらほんとう相談相手になってやらなければ、少年院考査室というものは……。なぜあんなところへぴしゃっと錠を締めて、そうして粗末なものを食べさせるのですか。私は一ぺん当局にもあの中に入っていただきたいと思います。ほんとうに中に、少年院考査室に入っていただきたい。あそこを逃げないというのは不思議です。あれは特にひどいのですが、ことしの予算ではどうにもなりませんか、何とかなりませんでしょうか。
  19. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 赤城職員が非常に冷たい、また、少年たちがおどおどとした気持だったと、これは職員に愛がないのじゃないかということでございます。まことに申しわけがないと思いますが、はなはだ弁解がましいことになりまして申しわけありませんけれども、実はこのたび参議院から御調査に行くことにつきまして、少年院ほんとうに恐懼いたしまして、どうなることかと思ってほんとうに心配をいたしたらしいのでございます。その点で、いまだかつてさような調査を受けたことはないものでございますから、非常に職員がかたくなったことは、これは事実のようでございます。まあどきどきしまして、いろいろとお目ざわりの点があったのではないかと思いますが、その点は、初めて参議院からお越しをいただきましたことについて職員たちが非常に、間違いをしでかした際においでを願って御調査になるということで、非常に緊張いたしまして、戸惑いをいたしました点を一つおくみ取りを願いたいと思うのでございます。と申しますのは、その前日に、実は東京から慰問が参ったそうでございます。その際は、非常に職員子供たちも朗らかに受けたそうでございまして、その点一つ御了承を願いたいと思います。  なるほどこの少年処遇につきましては、何より先に愛が大事でございまして、この点われわれといたしましても十二分に指導はいたしておるのでございますが、御承知の、昨年の秋から、この事件がありましてから、とかく職員らの間に何かこう気をつけなきゃならないというような緊張感がいまだに続いているのじゃないかと思います。まあこの点は、十二分に今後も指導いたしまして、明るい処遇をやらしていきたいと思っております。  なお、この考査室不備の点でございますが、これは窓ガラスみんななかったそうでございまして、非常に寒々としたところになっておったこと、申しわけなく思います。向うでの、少年院での、これは弁解でございますが、考査室ガラスを入れましても、すぐこわされてしまう。そしてそれを補うのもなかなか予算関係でできなかったと申しておりますが、この点は、われわれの方も十二分に今後気をつけまして整備をさせたいと思っております。  なお、この考査室の改造の点でございますが、新年度の予算で、今全国的にこの問題は、実は設備不備は非常に多いのでございます。単独室を設けたいのでございますが、今はまだ整備されていないのが現状でございまして、この赤城のみにかかわらず、全国的にこの点を調査いたしまして、今この独居室整備を計画をいたしております。この赤城の方にもう五宝、単独室をとりあえず作るべく今設計をいたしておるのでございますが、とりあえずのところでございますので、今共同室になっております雑居室を改造いたしまして、これを独居室に改造いたしたいと思っております。できますれば、今の考査室懲戒室に振りかえまして、今度作るべきものを考査室のように考えたいと実は考えておるところでございます。  ただいま御指摘の点は十二分に考えまして、もう少しあたたかい気持の室を作ってやりたいと思っております。
  20. 青山正一

    委員長青山正一君) 今、宮城さんもいろいろ御質問あろうかと思いますが、私特に気のついたことは、これは法務大臣もおいでになりますし、それからまた、長く茨木の少年院長をやられた保安課長もおいでになるのですが、私、少年院をあちらこちら回っているのですが、ああいう少年院を見たことはないのです、実際のところ、これは施設の点から言うても。もう一つ、先ほども申し上げた通り、そのボスとそれから先生と結託しておるという点が非常に多いわけなんです。たとえば、あの事件があった当時に、女の先生の自宅へ、肥たごの肥を全部、玄関から庭先へ少年ボスに命令しちゃって、それをまき散らすというふうなことで、被害を受けた先生もおられる。どうもこれは私ら、まあ宮城さんも同様だろうと思いますが、あの少年院職員を一応全部ほかと移動させるというような手はないものかどうか。そうしない限りは、やはりあの事件があったその直後のことですからして、お互いに気持の上においても少年を十分に補導もできないし、それからまた、そういう点に特に新たなる角度で、新しい教官によってやっていくというふうな建前にしない限りは、これはもうなかなか、先ほどの宮城さんがおっしゃったように、どの少年を見ましても、青白い顔をしちゃって、一つもおもしろみのないような顔をしている。病気で倒れそうな顔をしている。そういうような点から考えて、その気分を転換させるように、施設も転換するのだ、それから教官も転換するのだというふうなことでやっていかない限りは、おそらく教官内のあつれきとか、不安な状態というのは、これはいつまでたっても解けないと、こういうふうに私どもは考えますが、その点特に御留意願いたい。こういうふうに申し上げておきたいと思います。
  21. 一松定吉

    一松定吉君 ちょっと局長にお尋ねするが、今の委員長のお話のように、指導官よろしきを得ないということが一番遺憾であるが、その指導官の採用方法はどういうように採用するのか。それから年令に制限があるかどうか、その点を伺っておきたい。
  22. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 少年院職員採用基準は、昭和二十五年に新しくきめたのでございますが、その基準は、学校教育法による高等学校または旧中学校令による中等学校を卒業した者で、青少年教育及び指導の実務もしくは担当すべき実科種目と同種の職業に三年以上の経験を有する者。高校卒業以上で、三年以上の経験を有する者。二番目は、短期大学を卒業した者、またはこれ以上の学歴があると認められる者、三番目は、人事院指令第四号に定める資格の一を有する者であって、教職員免許状を有する者、これは教員の免許状を持った者、この大体三つの基準から現在教官採用基準といたしているのでございます。なお、これは外部から新しく採用する場合の基準でございますが、部内の勤務者を教官に昇格させる場合には、新制高校卒業以上の学力があり、かつ一年以上の経験を有する者ということにいたしております。それから旧専門学校令による学校を卒業以上の学歴を持った者は六ヵ月の在職をもって足りるという基準で、教官の採用をいたしているのでございます。
  23. 一松定吉

    一松定吉君 年令の制限は。
  24. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 年令は二十才以上となっております。
  25. 一松定吉

    一松定吉君 二十才以上……上は。
  26. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 上は新採用の場合は四十五才。
  27. 一松定吉

    一松定吉君 新採用四十五才以下。
  28. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) はあ。
  29. 一松定吉

    一松定吉君 私は少年院法の精神から考えましても、これは刑務所ではない。刑を課するところではない。つまりこれは矯正教育を授ける施設である。そうして十分りっぱにこれを養成して、社会に送り出すというのが少年院法の目的であることは、同法の規定する通りなんです。そこで、教官というような者については、今小学校の教員がずいぶん年令やその他の事情でやめて、老後に因っているような人が非常に多いのです。だから、従って、それはまあ定年に達した者でありましょうが、定年に達しても、大がい五十五才というくらいでやめているようなのが多いのだが、そういうような人が相当の地位におって、相当の教育を子弟に施して、年限がきてやめたというよりな人だからして、こういう人を、年限に制限があれば別であるが、そんなら年令制限のところを改めて、そういう指導員に採用するということにすれば、今巡査とか、官吏とか兵隊上りというような人にやらせるよりも、よほど効果がいいと思うのだが、しかもそれは少年院法の精神にも適合すると思うのですが、こういう点につきまして、一つ少年院は、少年院法の第三条によって、法務大臣がこれを管理し、法務大臣がすべてのことを責任をもっておやりになるという地位でありますから、唐澤法務大臣は、特にこういう方面にお力を用いていらっしゃることでもあるのだから、一つそういうようなことに御考慮をわずらわして、今委員長宮城さんが非常に心配されたようなことを是正して、安心して少年少年院にまかせるようなことのできるように御考慮に相なるという考えはありませんか。それを一つ承わっておきたいと同時に、そういう施設の不完全なことは、要するに予算の問題です。予算一つ遠慮なくとって、こういうような各方面に金が要ることはもちろんでありますが、特にひどいような、こういった方面に使うところの予算を遠慮なく一つ請求なさって、お取りになるというようなお考えがおありになれば、そういうことについて一つわれわれも御協力を申し上げたいと思うのであるが、御意見を伺っておきたい。
  30. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) このたびの少年院の不祥事につきましては、これは何と申しわけをいたしましても取り返しのつかないことでございまして、恐縮千万に存じておるところでございます。この問題につきましては、それぞれの責任者にしかるべき処置をいたしており、また、刑事責任をとったものもあるわけでございますが、過去のことは、もはや今日回復する余地もございませんが、将来に向いましていろいろと改良の点についての御意見でございます。職員間の不和であるとか、あるいはボス少年による弊害、これはもう少し気をつければ矯正できることと思うのでございまして、そのためには職員の入れかえとか、収容者の入れかえというようなことも考えられます。また、設備の改善というようなことにつきましても、でき得る限り、将来にわたって大蔵省と折衝して、そうして財政の許す限りにおきましてこれを完備して、少年たちができ得る限り快きすみかとして、再び社会に更生して巣立ちをするというその準備のできるように、りっぱなものを作りたいと考えて鋭意努力をいたしておりまするし、将来にわたりまして、御趣旨に沿うようにいたしたいと考えております。
  31. 一松定吉

    一松定吉君 法務大臣の最もよいお話を承わりましたが、私どもの経験によりますると、その当時の大臣がそういういろいろないいお考えをもっておりましても、半年か一年、二年たつと大臣がやめて、やめるときにそういう点の引き継ぎをしないのです。だから、新規の大臣がやってくると、相変らず仕事が新規になってしまって、そういうことを考えない、こういうようなことが今までの私どもの経験からみると非常に多いのです。どうか一つこういうようなことは、唐澤大臣もまだあと二年や三年や四年はおやりになるかどうかわかりませんが、おやめになるようなときには、あなたのいい御精神を後任の法務大臣に十分にお引き継ぎになって、そういう点について万遺漏なきを期するように一つ御考慮相ならむことを特に一つこれはお願いいたします。私が大臣をやっていたときにも、いろいろのことを考えて、いろいろのことをやろうと思って、二、三のことはやりかけて、十分に引き継がなかったために、あとの大臣は、新規なことを考えて、前の大臣の考えておったようなことは何もわれ関せず焉というような態度で、思うように政治の運営がいかなかったという事例をたくさん持っておりますから、ぜひあなたも、そういう方面に一つ万遺漏なきよう、後任の法務大臣にお引き継ぎになって、こういう施設が完全に運営できますように御考慮あらむことを特にお願いしておきます。質問終り。
  32. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっと唐澤大臣にお伺いいたします。以前は少年院の所属は保護局だったのです。それが御存じのように、中途から矯正局に移りました。これは気のせいだけではございません。実際に全国の少年院を回ってみますと、だんだん刑務所式に変っていくのです。ことに処遇が変っていきます。ということは、これは知らず知らずのうちに刑務所少年院というものを一つの管轄内にしておりますと、自然に職員だけにしましても、刑務官が少年院教官にかわっておる。それからユニホームにしても、まるで刑務所職員と同じようなものが教官のユニホームになっておる。私どもの感ずるところでは、だんだん刑務所になっていくのじゃないかという私は感じが非常に強いのでございます。  そこで、私はこれはもう少しじっくり根本的の問題を考えてみなければならないと思いますが、さしあたってはこれは矯正局に置かないで、昔のように保護局に属するようになさったらどうかと思いますが、大臣の御所見を伺いたい。
  33. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) これは非常に重大な問題であり、省内においても、過去の経験等を徴していろいろと研究をいたしておるようでございます。お言葉の通り矯正局にあるために少年院運営刑務所式になる傾きがあるではないか、これもごもっともな御意見でございますが、また一方、刑務所も従来の行刑局がやっておった時分とは違いまして、刑務所そのものが保護更生の機関、矯正教育というようなふうに、そちらの方もまた保護の方に向って進みつつあるような傾向でございまして、両者は非常に近寄りつつあるようなわけでございます。  そういうようなことで、これを矯正局に置くがいいか、保護局に置くがいいかということは、事務取扱いの上におきまして、非常に研究を要する問題だと考えておりまして、御意見もありまするから、十分研究はいたします。  ただ、お言葉のうちで、矯正局にいるがために少年院が行刑のごとく、刑務所のごとく運営されるということ、これは全く御意見の通り好ましくないことでございますから、どちらの局にありましょうとも、それは御趣旨に沿うように運営していかなければならぬ、かように考えております。
  34. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 お言葉でございますけれども、今日の刑務所処遇は、教育をもってやれということになっておることは私どもよく承知もしておりますし、いいことだと思っておりますけれども刑務所は何といってもこれは刑を受ける場所なんです。刑を受ける場所で、少年院とは全然立場が違う。少年院はこれは少年院法によって保護教育矯正教育がもとなんですから、だからあれは刑を受けていないのですけれども、実際今刑務所と一緒に取り扱われて、そうして刑務所でやった刑務官が教官に来ておりますから、その取扱いは何といっても罪人扱いするのです。それはあとで私ただしたいと思う点ですけれども、あの赤城少年院考査室なんか見ましても、全くあれ、ぽんとぶち込まれましたら、刑務所と何ら変らない。そこに二週間以上置くなんということが、せっかく更正して、今度はやり直すぞと裁判所で誓った少年が、いそいそ行ってみたら、あの暗いきたない、そうして板の間の上に寝せられる、これはもう囚人を扱うと同じ処遇を受けて、そうしてほんとうに粗末なあたたかみのないものをあの窓から入れられて三度の食事をしている。そうしてその間、日の目も見ない。私はこれは何と大臣が口でおっしゃったって、これは刑です。刑を課していると言っても私は言い過ぎではないと思いますが、もう一度一つ大臣のお答えを願います。これは私、大事なことだと思います。
  35. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 刑務所がかりに教育ということを加味しても、結局刑罰を課する行刑の場所であるということはその通りでございます。その意味におきましては、少年院は全くその趣旨を異にしておるところでございますから、そこにおいて行刑的なことがあってはならぬということは当然でございます。しかしながら、それでは教育機関であるところの学校とちっとも違わないかというと、やはりこれは完全な学校というわけにはいかない。やはりある程度は自由の制限ということがあるわけでございますから、その点において、非常に境界線がはっきりしないわけでございます。しかしながら、根本の精神はどこまでも保護教育ということにあるのでございまするから、形の上では身体の自由を制限する場合がありましても、心持におきましてはこれは行刑ではないのである、本人のために保護教育を与えるのであるという精神でいかなければならぬと思うのでございます。ごらんになりまして、ただいま引用されました、今の考査室の問題でございますが、はなはだ申しわけありませんが、私はまだ実地を見ておりませんから、何ともお答身できませんけれども、お言葉のようでありますれば、これは十分よく相談をいたしまして、考えなきゃならぬと、かように存じております。
  36. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 赤城少年院は、特に考査室不備でございまして、不潔でございましてですね、あすこに入ったら、だれでもやってやれという気になるだろうと、あすこで勉強して、ほんとうにいい子供になろうということは、私はだれでもできぬと思う。ことに赤城少年院は、これは児童少年院で、子供でございます。まだほんとうに児童のものを、あんなところに入れることによって、さらにもう、非常に悪質のものをあすこで芽生えさせるもとになるのじゃないかということで、私おそれておるのでございますが、問題はそれだけにしまして、一つ矯正局の管轄から少年保護局に移せなんということは、これは機構の大きい問題でございますから、そう軽々にはできませんが、これは大きい問題でございますから、大臣特に考えていただきたい。  それから大臣に対する質問はそれだけにしまして、今度は局長にいたしますが、局長、まだあすこは見ないとおっしゃったのですね。
  37. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 見ました。今度ではございません。前に見ました。
  38. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうでございますか。全国の少年院を大体ごらんになりましたか。
  39. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 大体見ましたが、まだ見ないところもあるのでございます。全体からいたしますと、七割は見ておるのでございますが、まだ三割は見ておりません。
  40. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私は、全国くまなく見て歩いております。何回も見て歩いておりますが、赤城なんかは、そのうちのよからぬ方でございますが、私は、見るたびに、しみじみ考えることは、それは、施設も大事です。だけれども、その教官の頭の置きどころ、ねらいが何か、と言うわけは、私が見て歩きまして、この院長はこういう出じゃないかと言うと、大体当ります。教育者の出とそれから刑務官の出と違いますよ、同じ建物の中でも、その空気がすっかり違っております。それはお気ずきのことだろうと思っております。で、職員の任命ということについては、これから私は、教育家を持っていけと必ずしも言うのではありません。けれども、この間、赤城で、何か言えというので、職員に話をさせられましたときにも言いましたけれども、もちろん生活の資になる月給ということも大事なことだけれども、その上に、ほんとうにこれは、たった一人の少年でも、おれの力でよくしてみたいという、その熱のあることを私は願いたい。あんなものはどうでもいいからけっ飛ばせと、今度私がいろいろ調べてみましたら、これはひた隠しに隠すために、子供たちがけがしたり、それからいろいろな目にあっているが、医者にも見せてないという事実、これは人権じゅうりんもはなはだしい。そしてそれは、言うことはならぬというので、先生子供との間にボスがいまして、ひどいボス政治をやっておるのです。そのボスを使っておりますから、院長にはわからぬ。これはけがをさせたら、やはり医者もおるし、看護婦もいるのだから、手当をしなければならないのに、子供はみんな泣き寝入りをしておる。そして今度これだけの大きな事件を起すのだって、これは、たまたまほかの院に移送された子供から発覚しておる。これは、その発覚の端緒が、そういうことであったというようなことも、非常につらいことだと思うのです。そうしてことにその関係者に、私は責任を負ってもらいたいと思うのです。私が聞きましたその少年母親に話したという話は、表向きにはあまり明らかに出ておりませんけれども、それはもう悪いことをしてたたかれたり水びたしになって、水の中へ入れられたり、それから食事を食べさせられなかったり、それから食べ過ぎてもうおなか一ぱい食べても、飲め飲め食え食えと言って、大きいおなかになっているのをつついて、そうしてもどしたものを、犬が食べるように四つんばいになって食べろというようなことをやっているということ、これが教育の場でされることでしょうか。保護の場でされることでしょうか。これは私はゆゆしい問題だけれども、しかし、それを今から追及してどうかしようというのじゃなくて、どうかこの災いを福にかえて、この機会に一つ全部この少年院をよく調査していただきたい。私は五十歩百歩の事件は起っていると思います。そうしてことにこのボス政治、ボスを使ってやることが、これは教官としたら一番やりやすいことで、ボスにまかしておけばいいのですから、そのボスをはびこりしている。こういうことがだんだん私は全国の少年院にはびこっていっているというように私は見ておりますが、いかがですか、一つお答えを願いたい。そうしてその手当を一つおっしゃっていただきたい。
  41. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 赤城でこのたびのこういう事件が起りましたことは、まことに申しわけないわけでございまして、結局、職員の考え方が間違っておったということにならざるを得ないと思うわけでございまして、これで教官たちの考え方に根本的な是正をし、再教育をしていかなければならないということを、痛切に感じている次第でございます。そこで、この事件にかんがみまして、直ちにわれわれの方もこの原因調査いたしまして、一月の九日付で、全国の少年院並びに鑑別所に、厳重に通牒を発しまして、それぞれ注意を喚起いたしたのでございますが、当該の東京管区におきましても、この事件直後に、直接の責任者であります教務課長の参集を求めまして、そうして泊り込みで、この事件をもととして研究、討議をいたしまして、結論を出したのでございますが、これは教官暴行の絶滅ということと、ボス少年のリンチに関する問題をいかにしてこれを防遇するかという、この二つの問題を、各課長が協議をいたして、一応の結論を出したのであります。これも全国に配付いたしまして、各少年院で、この問題の再検討を命じているのでございます。  なお、この事件に関連いたしまして、この五月の七日から全国の教務課長の会議をいたすことにしております。これは中央研修所で、教務課長研修をいたしまして、この際、職員暴行問題を中心として、さらに全国的にこれを検討いたすつもりでございます。  なお、五月の二十九日と三十日、これは少年院長の会同をいたすのでございます。このときの議題も、少年院における暴行というものを取り上げまして、収容少年相互の間のリンチの問題、それから教官少年に対しまする暴行の問題、それから少年教官に対する暴行の問題、こういうふうに、’にかく少年院における暴力の問題を爼上に上せまして、十二分にこの点を検討を加えて、その絶滅を期したいというふうに考えている次第でございます。
  42. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 ちょっと質問が前後するようになりますが、一般的な問題になって参りましたからちょっと言わしてもらいますが、御報告を承わっておるというと、だいぶ赤城少年院というものが乱脈をきわめておったように思うのですが、それがその収容されておった子供母親か何かに言って、そしてこういうふうな事件が表面化するまで、一朝一夕の問題ではない、だいぶ長い間にこういうふうに悪化してきたんだろうと思うのですが、その間、矯正局長を初め中央の方では、その赤城少年院の内状というものがわかっておらなかったのですか、これが北海道の非常に交通不便なところのあまり人の行かないようなところにあったというならば、それは無理もないと思うのですが、東京から目と鼻のところにある群馬県にある少年院のことが、一向に中央の方では知らなかったということですが、そこのところはどうなんですか。
  43. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) この事件が起るまでは全然知らなかったのでございます。かような点がもしもあろうと思いますならば、われわれの方で直ちに調査をいたすのでありますが、全然この点に気づかずにおったわけでございます。なお、この少年院の業績につきましては、矯正局の方から定期的に、これは毎年というわけには参りませんけれども、二年に一回くらいの割合で、全国の各少年院を監査して歩いておるのでございますが、さような際にも、この赤城の問題につきましては、全然わからなかったわけでございます。
  44. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 一向今日まで矯正局の方では、赤城少年院の内部がこういうふうに乱脈になっていたということは御存じなかったということでありますが、しかも二年に一回くらいは監査するというお話しですけれども、中央とそれからこの少年院など、ことに近いところにあるものが、二年に一回の監査を待たなければ一向事情がわからぬと、それまでは全然考慮も何もしないということは、これはわれわれ了解ができないのですが、それで果して監督ができるわけなのか。
  45. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) ただいま申し上げましたのは、局としましては、全国に監督をいたす監査の点でございますけれども、なお、これにつきましては、全国は八つの管区に分れております。この管区の方では、管区内の施設につきましては、管区長が施設を見て回っておるのでございます。これを通じまして間接の監督ということになるわけでございますが、局の方の監督と管区の方の監督と両々相まって行うわけでございます。なお、この少年院院長なり、職員なんかが、管区の方にいろいろ用向きで東京に参りました際に、局に寄ってくることはございます。しかしながら、正式に監査していますのは、ただいま申し上げますように、全国にかような施設があるのでございますから、毎年というまでには参りかねておるような現状でございます。
  46. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 管区というものがあって、管区長というものがある、直接にはそれが監督をしておるので、中央の方では監査ということは二年に一回くらいやるが、これは間接にやるというお話しですね、それならば管区長を監督するのはだれなんですか。
  47. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 局の方でやっております。
  48. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 それならば、管区長の方ですぐ自分の足もとにある赤城少年院のことが何もわからんでこんな事態になるまでほってあった、それを監督するあなたの責任はどうなんです。あなたはそういうことに対して、管区長がこれは直接やることなんだから、自分の方には別に責任がなかったと思っておいでになるのですか。
  49. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) もちろん、私の監督の不行き届きである点を十分感じておる次第でございます。
  50. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 そうでございましょうね、そこでいろいろ内部の乱脈といいましても、教育とかいろいろなことがどうなっておるかということは別問題としましても、一見してガラスが破れておって冬寒いところでやっておるとか、あるいは刑務所みたいな部屋の作りにしてあるといったようなことは、これはあなたもごらんになっているのでしょう、建物は一ぺんもごらんになったことがないのですか。
  51. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 赤城少年院は、私一回見ております。
  52. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 ごらんになったときに、そういうこれは少年院という施設ではない、何か全く宮城委員もおっしゃるように、刑務所みたような感じがするということは、局長もお感じになったですか。
  53. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これはガラスが割れるとかあるいは器物等がこわれるというのは、少年院等ではしょっちゅうあることでございまして、前から割れておるのがそのままになっておるというわけじゃないわけでございます。割れたものは直すのでございますけれども、また、その端から割れるというようなことで、いたちごっこのようなことになっておるのが現状でございます。ちょうど参議院委員の方々が御視察の際に、さような状況であったわけでございまして、はなはだこの点、行き届かなかったことを申しわけないと思っておりますが、これも結局、予算等の点につきましてわれわれの努力の足らない結果だと存じております。
  54. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 非常に局長恐縮しておられますが、私の申すのは、ガラスが破れたとか、障子が破れたとかいうことではないので、ガラスや障子はきょうまで完全であっても、今夜破れるかもわかりません。そのことを言うのじゃないが、一体その施設少年院らしい施設じゃない、全く刑務所みたいな施設であったということは、お気づきにならなかったかどうかということをお聞きしておる。
  55. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これは結局、私は施設施設でありますが、職員のあたたかさというものが、その施設を生かすか生かさぬかにかかっておると思うのでございます。宮城委員が御視察になりまして、職員たちの空気がいかにも冷たい、これでは刑務所と同じではないかというお感じをお持ちになったわけでございまして、この点、さようなお気持をお持ちになるような空気であったことにつきまして、われわれといたしましては、十分今後監督していかなければならないと思っております。私が参りましたときには、さような空気は感じ取らなかったのでございますが、しかしながら、委員の方がおいでになってさようなお感じをお持ちになったということは、これは重大なことでございまして、今後ともわれわれといたしましては、さような空気のないことを願いまして、これを一掃するように今後努力をいたしたいと思っております。
  56. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっとここに保安課長がお見えになっているのですが、あなたは茨木の浪速少年院院長もやられたわけですが、この間、私どもと一緒に行ったわけですが、あなたの感じた目では、施設の面についてもあるいは教官不和状態、そういうようなものについてどうお感じになったか、ここに法務大臣もおいでになっておりますし、それから局長もおいでになっておりますが、ざっくばらんにお話し願ったらどうでしょうか、あなたの今までの経験から照らしてどう思うか、その点を一つはっきり申し上げておいたらいいのじゃないかと思います。一つそういうような意味合いで御発言願いたいと思います。
  57. 福井徹

    ○説明員(福井徹君) 全国の少年院の中でも浪速の少年院とか、多摩少年院、その他著名な少年院は大体当初から少年院のために設計されて作られた建物でございまして、私は幸いにそういう勤務場所を与えられました関係で、十分な施設の整ったところで勤務したのであります。しかしながら、御存じのように、終戦後、少年院収容人員が、今の少年法改正とともに膨大な数になるに伴って、施設の不足を補うために従来の軍施設であるとか、あるいは保護団体であるとか、そういうふうな施設を早急に買い取ったり、あるいはまた、譲り受けたりいたしまして、これを急改造して、そうして収容施設に間に合せたという施設もたくさんあるのでございます。赤城少年院も御存じのように、従来小さな保護団体でありましたものを買い取りまして、これを改造して、そしてあれは昭和二十二年ごろから五年ごろまでにかけまして急改造、造築して、現在の少年院になっておるような状態でございます。さような意味におきまして、赤城少年院は、浪速あるいは多摩というような、そういう従来の、本来の少年院と比較することは非常に酷ではないかと思うのでございますが、そういう関係でああいうふうな施設になっておったのではないか、さような観点を除きまして、ただ並列に並べてみました場合には、私たち専門の立場から見ましても、決して十分なものではない。特に先般来、委員長初め宮城先生からも御指摘ございました諸点については、私自身もまことに申しわけない感じがするのでございますが、全く同意見でございまして、今後この問題については、早急に応急の手当ないしは将来の問題の、改造等に着手すべきであるということで、事件後寄り寄り管区とも相談し、また、営繕関係の技官も派遣いたしまして、営繕計画の調査、設計を急いでいる次第でございます。近くその処置も講じ得ることと私は考えております。
  58. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと私が申し上げたいことは、浪速少年院にしても、多摩少年院あるいはその他の少年院も、私たびたび回っておりますが、そういった少年院教官は、たとえばガラスを割っちゃいけないとか、設備をこわしてはいけないというふうなことで、教官自身がいろいろ生徒に教え込んでおるのであるけれども、あの少年院に関する限り、あなたは営繕の方にいろいろお力を入れて、たとえガラスを張りかえても翌日これは割られるというふうなことになってきやしませんか。そうなると、今の教官で、あのままにおって、いろいろその生徒を補導しようというても、これはなかなか無理な話じゃないか。そういう点を聞きたいのです。そういう点について、あなたどうお感じになりますか、その点を私お聞きしたいと思うのです。おそらくどういうりっぱな建物を作りましても、教官自体が生徒を補導する力がないとすれば、どういうりっぱな営繕の関係に金を入れても、これはだめじゃないか、そういう点について、あなたどうお感じになりますか、その点をお聞きしたいと思います。
  59. 福井徹

    ○説明員(福井徹君) 現場の少年院刑務所に勤務いたしまして、施設の長あるいは監督官としております場合に、一番苦心しなければならない点は、ただいま御指摘になりましたように、教官の訓練あるいはその他の職員の訓練、これが最も第一に考えなければならないことだということは、私たち長年の施設経験を通じて肝に銘じておるところでございます。従って、私たちも各施設に参ります場合には、それらの所属している職員の資質をまず見きわめまして、そして足りないところを補うための教養訓練と申しますか、あるいは指導訓練といいますか、そういうようなものを積極的にやるのを通例といたしておるわけでございます。赤城少年院のあの現状を拝見いたしますと、あるいはそれらの点に欠けていた点があったのではないか。あるいはまた、先般来御指摘の素質、その当時問題になりました職員の方々の素質の点にも、いろいろ問題点があったのではないかということが想像されるわけであります。しかしながら、この赤城の場合におきましては、その後補充されました教官の顔ぶれを見ますと、なかなかりっぱな教官配置されてきたようでございます。また、視察の当日にも、院長その他の職員から御意見もございましたように、以前とは打って変った空気になりました。また、職員の空気もよくなると同時に、生徒の空気も、まあいわば雲泥の差とまで申したいくらいまでによくなって参りました。ここで一つの機運をつかんだように思いますので、今後の、そうした従来の欠点については十分自戒し合って、改善していきたいという院長初め幹部の御熱意のほどもうかがわれたように私拝見したわけであります。私たちは、それらの努力に期待し、今後局としてもまた、特に先般来、局長の御配慮によりまして、管区と共同でこの善後の対策、特に教官指導方法、あるいは少年処遇の根本の問題について深くメスを入れていきたい。なるたけ近い期間に、一つりっぱに立ち直った姿をもう一ぺん見ていただくべきではないかというふうな気持で、現在配慮しているつもりでございます。
  60. 一松定吉

    一松定吉君 さっきから問題になっておりますのは、考査室というのですか、考査室というものが少年院法で設けられるという規定がどこにあるのか。少年院法の第八条には、紀律に違反した少年在院者に対しては、二十日をこえない期間、衛生的な単独室で謹慎させることができるという規定がある。ところが、補導室とか、考査室というところに、少年院に入れるときに、そこに二十日間も十日間も入れて謹慎させるという規定がどこにあるのか。それは、少年院法の処遇規則か何かにあるのか、少年院法にはないが。
  61. 青山正一

    委員長青山正一君) 何か政令にでも出ておるのですか。
  62. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これは少年院所遇規則の十二条でございますが、これによりますと、「あらたに入院した者については、個性、心身の状況、境遇、経歴教育程度、技能その他身上に関する調査を行うため、なるべく他の在院者と接触させないようにしなければならない。但し、その期間は、おおむね十四日とする。」という規定が置かれておるのでございます。この規定によりまして、大体単独室を充てまして、ここで他の者との接触を避けて個性の調査をするということになっておりまして、この室を考査室と呼んでおるのでございます。
  63. 一松定吉

    一松定吉君 なるほど、今調べた結果によりますると、少年院処遇規則というものの第十二条にそういうことがあります。ありますがね。これは結局、法務府令であって、規則なんだね。この規則で法律の精神を変えることはできないわね。それはどうです。
  64. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これはさようでございますが、ただいま宮城委員も仰せのごとく、実際申しますと、この少年院に入ってきたときの処遇が一番大事なんでございます。それと、もう一つは、違反その他の不都合をいたしましたときの謹慎をさせますときの処遇、これがわれわれとしては一番大事なときだと存じておるわけでございまして、この最初に入りましたときに、本人たちの個性を十二分に調べまして、そうして今後の少年院における処遇の方針をそこできめる基本の調査をいたすのでございます。そういう意味からこの規定が置かれておるわけでございまして、決して懲戒とか、そういうふうな趣旨から置くものではないわけです。結局は、資質を十二分に知りまして、そうして今後の方針を立てる一つのこれは調査の段階として、他人との接触を避けて、本人だけの資質を十二分に検討したいというところから、この規定が置かれておるわけでございまして、さような趣旨からこの規定は見るべきものと考えております。
  65. 一松定吉

    一松定吉君 今局長のお話になった趣旨はわかりますよ。趣旨はわかりますが、しかし、その趣旨を貫徹するために、宮城委員報告したような、いわゆる懲罰に値するような、単独室というような、ごく陰うつな、狭陥な、光線のあまり入らないような、そういうところにぶつ通し十四日間も入れるということになったならば、普通の者はすっかり精神に異常を来たすような、それは処遇なんです。そういうことは、つまり少年院に入れるのは、矯正教育を授くる施設である。そうして、社会生活に適応させるため、規律ある生活をさせて、そうして将来職業の補導や、適当の訓練等を施すという、この趣旨に反するのだね。そういうところに入れて、陰うつな狭いところに入れて、光線の入らない、そうして非常な寂蓼を感ずるような場所に入れるということは、これは少年院法の精神に反するな。そういう反するようなことを、この法務府令の第六十号できめてあるということは、この規則そのものがいかぬと思うが、それはどうですか。
  66. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これは、その考査室に朝から晩まで閉じ込めて何もやらないということでございますと、まさに仰せのごとく、その趣旨に反すると私は思うのでございますが、これはさような趣旨ではないのでございまして、御視察になりましたときも、たしか演芸か何かがありまして、そちらの方にほかの院生と一緒に見に行っていたと思いますが、さようなわけで、決してそこの場所に一日中閉じ込めて何もさせないというわけじゃないのでございます。ただ、今までいました他の院生との接触をなるべく避けて、そうして本人のほんとうの赤裸々な状態を見たいという精神にほかならないわけです。従いまして、単独室には入れまするが、しょっちゅう教官が行きまして、その者を指導し、そうして運動もさせる。また、さような娯楽の参りましたときには、これも見せる。このレクリェーションを中に織り込みまして、本人たちの赤裸々なところを見るというのが、十二条の精神でございます。従いまして、さような閉じ込めておくようなことをいたしますならば、これはとんでもない処遇方法だということを言わざるを得ないのでございます。
  67. 一松定吉

    一松定吉君 宮城さんにちょっと伺いますが、その当時のあなたの刑務所みたいなところの狭い、しかもガラスは一尺四方くらいのもので、しかも割れておって、赤城山の山おろしが吹き込むというような、監獄よりひどいところというので、私は今の質問をしたのですが、今の局長報告とあなたのおっしゃったこととは違うように思いますが、どうですか。
  68. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私今局長に伺ってみたいと思いますのは、今局長のおっしゃることは、あれは法律内のことです、実際においては考査室から出していないですよ、どこでも。そして、することがないですからね。私ある女の一あそこは女じゃありませんけれども、行ったら、窓ぎわにずっと頭のシラミをもう何十というほどつぶして、「先生この通り」と言うのです。仕事がないから、頭のシラミをとって、ずっと並べているのです。まあ哀れな状態です。それは朝から晩まですることがないから、頭のシラミをとることくらいしかできないのです。だから私は、男の子でも、女の子でも、この子は一体仕事が何が適しているか、また、どういう趣味かということも、一般の生活をさせてみなければいけないから、男の子なら掃除もさしたらいい、外も掃かしたらいい、女の子なら炊事場に働かしたらいい。そうしなければ、その子が何に適するかということがわからないと思うのですが、どこに行っても、どこの少年院でも、それはめんどうなんです。監督がむずかしくて、もし逃げはしないかということが、そのうちの一番大きいことなんです。だから、私は一体少年院で、あまり逃がすな、逃がすな、それは院長の責任だと、局長の責任になると言うけれども、現にきのうか、おとといかも、あの東京医療から十三人も逃げておる。この間、二月にも逃げた。私そのときの委員会でも言ったと思いますけれども、あまり逃げた、逃げた、先生方も罰するぞというようなことをしたって、それはかえって子供らの教育にならぬから、大目に見て下さいということを、私は委員会で頼んだと思いますが、それがみな罰にあうものですから、減俸にでもなったら大へんなことです。それだから、逃がすまいとするには、錠をちゃらっとかけて、あの中に一日入れておいたらいいんです。そうして、職員指導するといっても、だれがあそこをのぞいたり、それから話をしたりしますか。私はほんとうのことを言ったら、あそこにいる間は、さっきも抱き寝をしてという言葉を使いましたけれども、それは例で、この小さい子供たちなんか入れたときに、私はほんとうに抱き寝するくらいの気持がほしいというのです。そうしなかったら、子供らは、また刑務所に入ったと思いますよ。「私こんなところに入れられるのなら刑務所に送ってほしいわ。」、そうすると、だらだらだらだらいつまでもこんなになぶられないでも、刑務所なら日がさまりますから、刑務所に入りたいというけしからぬことを言うほどの子供が出て参りますからね。だから、今あなたがおっしゃることは法律内のことで、実際はどこがそんなりっぱなことをやってますか。その通りにやられますならば、私はほんとうに喜びますけれども、あれは全く、来た子供の方から言いますと、−の場ですから、だからほんとうに警察よりひどいなあと言いますよ。
  69. 一松定吉

    一松定吉君 今宮城さんのお話を聞いていると、局長の言うこととだいぶ違うようだが、私はこの少年院法の解釈の建前からして、この法務省の規則の十二条というのは、いかぬ、不都合なものだと思う。その前の十一条をごらんなさい。十一条には、「院長は新たに入院した者に対し、少年院の使命、日課及び行事の概要その他参考となる事項を説示し、安心と信頼感をいだかせるように努めなければならない。」、これです。これならわかる、この十一条の規定なら。ところが、十二条の規定は、個性だとか、心身の状況、境遇、経歴教育程度、技能その他身上に関する調査を行う必要のあることは認めるが、行うために他の在院者と接触させないようにしなければならぬ。接触をさせないようにするためには、ごく狭苦しい、天井の高い、日光の入らない、空気の流通の悪いようなところに入れるといったようなことは、この十一条の、いわゆる少年院の使命を彼らに説示して、安心と信頼感を与えるようにしなければならないという、この趣旨に反しますよ、十二条は。しかし、あなたのおっしゃるように、ちょっと入れて調査したり、また、外に出して敢歩させたり、映画を見せたり、ほかの者とも話をさせたりするというなら別だけれども、今宮城さんのお話だと、そういうことがないように認められる。私はだから、この規則の十二条というものは、これは一つそういうような誤まって運用することができないようなふうにこれを改正する必要があると思うのですが、この点に対しまする法務大臣のお考えはいかがでしょうか。法務大臣、この少年院処遇規則をごらんになってお答え願いたい。
  70. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) ちょっと規定の御説明をもう少ししたいと思うのでございます。なるほど、仰せのごとく、十二条は「他の在院者と接触させないようにしなければならない。」という規定、これは、今までの入っておる少年と接触をさせますと、ほんとう少年たちの気持を、赤裸々な気持を知るわけにはいかないという精神から、接触をさせないようにしなければならないという規定になっているわけでございまして、この精神は、まさにこの十一条に書いてありまする安心感を持たせるための方法を講じなければなりませんが、本人たちのほんとうに赤裸裸な状態を知るために外部との接触を避けて、ほんとうにその者だけの状態を知りたいというのがこの十二条の精神でございます。従いまして、今宮城先生のおっしゃるような運営方法でやったなら、やり方が間違っておるわけでありまして、この点は十二分に是正していかなければなりません。かようなことの絶無を期するように、今後私どもとしては監督していかなければなりません。その点を、この規定だけじゃないわけでありまして、規定の運用を誤まっていると私は考えるわけであります。
  71. 一松定吉

    一松定吉君 その点につきまして、今私の申し上げたことは、一体こういう十二条みたようなものを設けて、在院者と接触させないということのために、刑務所と同じような、刑務所と間違われるような、刑務所より以上の部屋の構造の悪いようなところに入れるということそれ自体が、この十一条の精神に反するのだね。少年院に収容する精神に反するのだ。ですから、私は規則のこういうような悪い点は一つどしどし改めておく必要があると思うのですが、唐澤法務大臣の一つ御所見を承わりたい。十一条と十二条の規定によりますと、十一条の規定ならわれわれは納得できますが、十二条の「在院者と接触させないようにしなければならない。」ということ、全く単独にして外部との交通を断って話もできないというふうなことにしてしまうと、これはわれわれ健全な者でも、一日だれもいない部屋に閉じ込められてごらんなさい、精神上の苦痛を感じますよ。いわんや、二週間もやるというようなことはよくない。法務大臣の御意見を一つ承わりたい。
  72. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  73. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記を始めて。
  74. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいまお尋ねの点でございますが、十二条の規定のうちで、「あらたに入院した者に  ついては、個性、心身の状況、境遇、経歴教育程度、技能その他身上に関する調査を行うため、」という、調査を行う必要は、これはお認めになるだろうと思います。(一松定吉君「それは認める」と述ぶ)その調査をいたすことが、これが新しい感覚における少年院の経営でございますから、これは当然なことでございます。ただ、これを行いますために、どういう方法でやったらよろしいかという、これは手段の問題になると思うのでございまして、そのために、ただいまこの規定にも書いてあり、また、局長からもお答えいたしたようなふうに、従来からの在院者と接触させないようにして、そして調べなければならない。これがこの調査を完全に行うゆえんであり、これがやがてまた、その調査をされる人の将来のためにもなって、少年院法の精神もこれによって十分に効果的に達成せらるるという趣旨から出ておる規定でございまして、ただいま局長から申し上げました通り、この規定そのものではなくて、この規定の運用におきまして、今の宮城先生のお話のような非常に非人道的なことがございますれば、それはもう明らかに運用の面において少年院法の精神に反するのでございますから、これは将来も気をつけなければならぬと思うのでございますが、この規定の表だけで、他の在院者と接触をせずに調べる、こういうことは、方法としては私は適当な方法であろうと考えておるのでございます。
  75. 一松定吉

    一松定吉君 十二条に規定してある「個性、心身の状況、境遇、経歴教育程度、技能その他身上に関する調査を行う」ということは、これはもちろん必要であります。矯正教育をするのですからして、その矯正教育をするに最も適当なる方法を施すのには、十二条に列挙してあるようなことは、調査しなければならぬことは言うまでもありませんが、それを調査するために、十四日間も考査室に入れる、独房に入れるなんというようなことそれ自体が不適当だ、こう私は考えて、今大臣の御意見を承わっておるのです。少年院の紀律に違反して、そうして懲戒を行うような場合は、御承知のこの八条に規定してありますから、この八条に規定してあるところによっても、二十日間をこえない期間単独室にこれを謹慎させるということはあるが、これはいわゆる懲戒方法として、二十日間をこえない期間それをやらせるのである。ただし、その次の二項に、「本人の心身の状況に注意して、これを行わなければいけない。」と、ここで少年院法は意を用いて、同じ単独室に入れるのでも、心身の状況に注意して、これを苛酷にならないようにせよという注意規定がある。ところが、こちらの方の懲戒でも何でもない、ただ将来これを教育するのにはどういうことをすれば適当であろうかという、その経過を調べる必要上在院者と接触させないようにするということのために十四日間も独房に入れてやるというようなことは、これは私は精神の健全な者に対しても憂慮すべきことなんです。たとえば、われわれがここに二日間独房に入れられて外部との交通を断たれるということはずいぶん苦痛です。いわんやそれが一週間、十日、二週間ということになるとなお苦痛である。そういうことを、少年院法の立法の趣旨に反するようなことを法務大臣の規則としてこれをきめるということは、私は不適法だと思う。だから法務大臣の御意見を承わるのです。この在院者と接触させないようにするということの必要は私は認めますけれども、それを十四日間も長い間そういうことをするということはそれは不適当ではございませんかと、これをお尋ねしているのです。少年院法の第八条の精神からいたしましても、少年院に入れるという立法の趣旨からいたしましても、孤独な地位、境遇に置いてこういうようなものを調べるということで非常に精神を寂蓼ならしめて、さびしいと、ああこういうところに来たらいかぬというようなことで、刑務所に入れられたと同じような考えを持つような施設ということは、これはなすべきものじゃないじゃなかろうか。私はかように考えるから、法務大臣にお確かめしておるのです。法務大臣は在院者と接触させないことが必要だということ、これは私は認めます。ただ期間があまり長くはありませんかと、それに対してもっと意を用いて、こういうような処遇方法を実行するということに御考慮相なりたいがと、こういうことをお尋ねしているのです。
  76. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 私から……この期間でございますが、期間は十四日でございますが、このためには一この調査のためにいろいろ方法を講ずるわけでございまして、そのためにどうしてもそれだけの期間が必要だということになるのでございます。これはその次の条文の十二条の二項でございますが、「調査は、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識を活用して行わなければならない。」、「3調査にあたっては、家庭裁判所及び少年鑑別所の意見及び参考資料を参しゃくしなければならない。」ということになっておりますが、このいろいろなテストをいたすのでございます。そのテストをいたしますのに、どうしてもこれだけの期間が必要だということになっておるのでございます。なお、この期間の点についてもう一度申し上げますと、少年審判を行う前に、鑑別所——少年鑑別所というところに入れまして、同じく資質の鑑別をいたすのでございますが、この期間も——鑑別所の期間は十四日ということになっております。なお、この少年鑑別所に入れる場合には、さらに一回延長することができることになっておりまして、合計二十八日間鑑別所に収容いたしまして、資質の鑑別をいたすことにいたしております。さような関係から、専門的にいろいろとテストをいたしますのには、やはりこれだけの期間がなければどうしても十二分な調査ができないというところから、この十四日間という期間を設けた次第でございます。
  77. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっと関連して。  この調査の医学、心理学、教育学的なとおっしゃる、これ実際正味調査する時間は、私ずっと調べて歩きましたが、正味だったら二時間ないし四時間くらいで済むと言われておりますが、これは福井課長どうですか。あなたは実際家だから御存じでしょう。二時間あるいは四時間きっちり、その時間を合計してみるとこのくらいでやれると言っているのです。それは私の調べ方が悪いのでしょうか。
  78. 福井徹

    ○説明員(福井徹君) テストの問題のようでございますが、少年院または鑑別所なんかで行います資質鑑別のテストの種類はいろいろあるようでございます。知能を調べるテストであるとか、性格を調べるためのテストであるとか、その他特異な性格いわめる性格異常あるいは精神病に近いような性格を調べる方法であるとか、そういうもののためにたとえばIQテスト、あるいは向性テスト、あるいは適性テスト、その他専門的にわたりますが、ロールシャッハ・テストであるとか、TATテストであるとか、まあその種類はいろいろあるようであります。従ってその一つ一つのテストによっては二十分で済むものもありますし、あるいは長くても一時間くらいで済むというふうなものもあるようでございますが、それをぶつ続けに継続してやるというわけにも参りませんので、入って何日目にはまず知能テストをやる、その次にはしばらく期間をおいて、また、今度は向性テストをやる。またしばらくおいて、それらのものを総合した上で、不審があった場合にはそれを補充するためのテストを持つという、ふうに、間欺的にこれを行いますので、ぶつ続けで短縮してしまえば合計四時間とか六時間で済むということかもしれませんが、それらを有効的に行いますためにはどうしても間欺的に数時間おくとか、あるいは場合によっては一日、二日おくとか、その次にまた次のテストを行うということがどうしても必要になってくる。そのために十四日かかるということになるわけであります。
  79. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私が伺いました時間のことは、ぶつ続けでやって一日で済ますという意味でなくて、どのくらいかかりますかと言ったら、これは全体で二時間ないし四時間くらいだと、こう説明を聞いたのです。そうすると、それが二時間くらいおいてやらなきやならぬことかどうかということですが、それよりも私の伺いたいことは、これは、看板に偽わりありということをときどき言いますが、看板を掲げてあるけれども、内容のちっともない、これで何のテストができますかと言いたいような少年院がだいぶありますよ。どうですか。私の調査が間違っておりますか。
  80. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これはかように少年院規則には書いてありますが、十二分な調査を徹底させるにつきましては、いろいろ専門的な知識が要ります。従いまして、ほんとうに徹底的にやろうと思いますれば、各少年院に精神科の医者も入れなければなりませず、また、心理学者、社会学者、すべてのものを入れなければ徹底したものは私はできないと思います。しかしながら、われわれの思っておりますのは、さようなことの徹底したところとまではいかなくても、これによりましてそれぞれの職員がその立場から調査をしていくということによって、完全なものは得られなくても、それに近いものを得たいというところで満足せざるを得ないと思うのでございます。なお、この期間の点でございますが、たださようなテスト用紙によってテストするばかりでなくして、本人の行動をつぶさに観察することによりまして、行動観察によってその性格なり、性情なりをつかんでいくということが最も大事なことでございます。ただ中に、単独室に入れてぽんと置いておくというだけでなくして、その間に常に職員が見まして、本人の行動をつぶさに監督し、看取いたしまして、そうして本人の性情をつかんでいくというところにこの十四日間の私は期間の値打があると思うのであります。従いまして、宮城委員の仰せのごとく、中に入れたままシラミをつぶしているというようなことではこれはだめでございまして、やっぱり十二分によく教官が行動を見ていかなければこの目的は達せられない、かように思っております。
  81. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 まあ全国的のことでなしに、手取り早い赤城のことですが、赤城をこの間調べたところでは、あそこの群馬の大学の付属病院の先生が一人、これは専門ということになっているけれども、それが来られないような場合には、助手か何か知りませんけれども先生が来ると言いました。それは病気のための手当です。そのほかに何かあそこには今おっしゃるような医学的、心理学的、教育学的云々といったような設備がありますか。その担当教官がいますか。私のこの間調べたときにはそのことはなかった。私の調査不備だったでしょうか。あれは福井さん、どうでしょう。
  82. 福井徹

    ○説明員(福井徹君) 少年院には、御存じのように、四つの課がございまして、教務課、医務課、それから庶務課、そのほかにもう一つの課として分類課というのがございます。分類課長も御紹介したはずでございますが、その分類課長のもとにスタッフを、まあ施設の大きさによって違いますが、数人の教官を持っておりまして、そして、それらの人たちがこれらのテストをやったり、行動観察をやったり、その他、仮退院が適当であるかどうかという審査をしたり、それからまた進級等を審査したりする機能を営んでおります。これは分類課員と呼んでおりますが、分類課というのは、赤城少年院では事務の庁舎の方におったはずであります。
  83. 一松定吉

    一松定吉君 私は、もう一ぺん矯正局長にお尋ねするがね。あなたは、法務大臣のこさえられた規則の第十二条の十四日というのは、個性を調べるために必要だと仰せになったが、しからば、十四日かかっても個性の調べのできない場合があるね。一例をあげると、心神の状況とかいうようなことは、なかなか、精神病の鑑定なんかというものは、これを十四日間ここに入れて在院者と接触させなかったというて、できるものじゃありませんよ。私の質問の趣旨は、こういうような、寂蓼を感じて、精神に異常を来たすような方法で、この少年院に収容するということはよくないという、これが趣旨なんだ。だからして、十二条に規定してあるような条項を調査するためには、何も、たった一人独房に入れて、さびしい目を見せて、そして調べなくても、今、宮城さんのおっしゃるには、三時間とか四時間で済んだそうだが、それは極端として、少くとも四、五日間で調べれば、大体のことがわかる。それ以上わからないようなことは、この少年院に収容している間に、事に触れ、物に接してそういう調査はできるものだ。そういうようにすれば、今言うように、刑務所と同じような所に入れて——一尺四方ぐらいの窓で、光線の入らない、さびしい、空気の流通の悪いような所へ入れて、そうして規則第十一条の、少年院という所は決してそうじゃないぞ、安心と信頼感を与えるということの趣旨と矛盾しないような方法において、それが個性の調査ができるじゃありませんかと、それならば、十四日というような、そういうようなことにして独房に入れるというようなことは、御考慮相なってはいけませんかと、法務大臣は、これについて、将来これを改正するような御意思はありませんかと、こういうことを私は聞いてるんだよ。局長の言うように、十四日の期間が調査に必要だからこういうようにしたんだと言うて、必要であっても、十四日で調査できぬものもある、また、十四日かからぬで調査できるものもある。だから、こういうようなことをして、十四日間独房に入れるなんということをせぬで、そういう個性を調査する方法に最も適当な手段、方法でやれば、単独の房に入れて寂蓼な感を与えるということはせぬでもいいじゃないか、それならばこの規則を、これを改める必要はございませんかと、こう聞くんですよ。この規則を制定したときの、十四日でなぜきめたかと、こういうことを聞くんじゃない。
  84. 青山正一

    委員長青山正一君) それから、私は一松さんに関連してはっきり聞きたいと思うが、一松さんのおっしゃる意味のように、その独房に朝から晩まで置いておくのかどうか。たとえば、運動もさせないのかどうか、あるいは映画などあったときには、一緒に見せないのかどうか、あるいは運動会などあったときには、運動会に出さないのかどうなのか、そういう点をはっきり説明してほしいんです。それを説明しない限りは、この問題、いつまでたってもから回りですよ。そういう点をはっきり説明してほしい。
  85. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) その……。
  86. 一松定吉

    一松定吉君 法務大臣にお尋ねしているんだから……。これは現行法の運用じゃないよ。現行法がよくないから、改めるについて御意思がありませんかと聞くんで、法務大臣にお尋ねしているんだ。
  87. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 先ほど来、私からも、また、局長からもお答えいたした通りでございまして、ほんとうに、少年の将来の保護更生をはかりまするためには、その本人の個性、また、持って生まれた技能というようなものに対する的確なる判定を下して、それをもととしてこれを指導しなければならぬことは当然でございます。その意味におきましてこの規定があるのでございまして、その目的を達するために、ただいま問題になりました十四日間だけは他の者と接触させない、こういう方法でこれを調べていくということになっております。人によりましては、その調査が非常にはかどって、なるほど十四日以内で済むものもございましょう、あるいは幾ら調べてもなかなかわからない、十四日たってもわからないというものもございましょうが、そうあまり長く他の在院者との接触を断つということもどうかと思うて十四日と規定してあるんだと思うのでございまして、ただ、他の在院者との接触を断つというやり方、これは自然まあ隔離するようなことになりましょうから、結局独房ということになりましょうが、一応そこに入れて、他の在院者との接触を断ちましても、しかしこれは懲罰ではございません。要するに、本人のために、本人の個性を的確に認識するための試験のための期間でありまするから、その精神はどこまでも本人の保護更生ということに置かなければならぬものでございまして、独房に入れられたがために、あるいは精神状態に多少なりとも異常を来たすというようなことがあってはならないことは当然でございます。これは懲罰として二十日間、たとえば独房に入れるというようなことがありましても、かりに懲罰としてやる場合であっても、本人に非常な寂蓼感を与えて精神に異常を来たすような、そういう懲罰であってはこれはいけないのでございますから、いずれにいたしましても少年院というものは、本人の将来の保護更生、真人間になって、そうして社会に立ち帰るということを趣旨としてやっておるのでございますから、この規定の運用におきましても、どこまでもその趣旨を徹底しなければならないので、先ほどもだんだん申し上げました通り、あるいは慰問隊が来ればそれらのリクリエーションにも出席させるとか、しばしば職員がこれを訪れて、そうしてその寂蓼を慰めるとか、いろいろの方法を講じていかなければならぬと思うのでございまして、この規定そのものが悪いというのではなくて、この規定の運用を誤まってはいけない、こういうふうに解釈をいたしておる次第でございます。
  88. 一松定吉

    一松定吉君 法務大臣は、この十二条をまだよくごらんになっておらぬと思うんでんが、「但し、その期間は、おおむね十四日とする。」これです、私の言うのは。だからして、十四日でなくて、二日間で調査をして済めばそれで出してしまう、あるいは十四日たっても調査ができないという時分には目的を達しない。だから、この「但し、その期間は、おおむね十四日とする。」ということについて、考慮を払う余地はございませんかと伺うんです。あなたのおっしゃるように、これらの個性の調査をする必要があり、在院者と接触させない必要があるということは、私は全く同感なんです。ただし、十四日間も長い間そういう所に入れて、寂莫を感じて精神の異常を生ぜしめるようなことはよくない、あなたは懲罰でないとおっしゃるけれども、結果から見れば懲罰と同じじゃありませんか。一室に入れておいて、自由を拘束して他人との接触をさせないということであると、いわゆる行動の自由を制限すれば懲罰と同じです。ただ言葉が、法律の上において懲罰とか刑罰とか言わないだけで、結果から見れば懲罰と同じです、自由を拘束するという点から見れば。そういうことでなしに、この十四日の期間、おおむね十四日は、これを入れるんだというような十二条の規則は、これは考慮の余地はありませんか。考慮の余地があるならば、これはできるだけの一つの適宜是正をしていただきたい。これが私の立法者としての希望をあなたにお伺いしているわけです。その意味において御答弁を願いたい。
  89. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) なるほどこれは形式的に見ますれば懲罰というふうに、こういうふうにもとれるのでございます。少年院そのものがそれでは純粋な寄宿舎と同じかと言えば、やはり事を荒立てて申せば、ある意味において自由の制限をしますから、自由の制限から言えば懲罰だとこういうことも言えるのでありますが、その精神におきましては、どこまでも本人の保護更生ということに重点を置いておりまするから、その精神に基いてある程度は自由の制限を受けるかもしれぬが、本人に自由の制限を受けているような感じを持たせないように、上手にこれをはぐくんでいかなければいけない、こういう意味でございますから、この十四日間の他の在院者との隔離につきましては、やはり同じ精神でいかなければいけないと思うのでございます。この期間につきましては、やはりこの数字のことでございまするから、それでは十四日でなければいけない、十三日じゃいけないか、十日でいけないかというようなことになりますると、これはまあ専門家の方で御研究を願わなきゃならないことで、その意味におきまして、まあ条文そのものが「おおむね」ということに書いてあるわけでございまして、また、個人々々によって性格も違いましょうから、もう十日以内でわかったというようなこともありましょうし、それからもう少し長く隔絶して、そうして調べなければよくわからないというような場合もございましょう。結局おおむねこういうようなことを標準としてやっているのでございまして、この点につきましては、学者、専門家の意見を聞きまして、あるいはこれが長ければまた短縮するというようなことも、これは研究する必要があろう、かように考えております。
  90. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 ちょっと関連して一言だけ。また、赤城少年院に戻りますけれども、現在の職員で、教育者の出は何人ぐらいあるのですか。
  91. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 現在の職員の中で教職にありました経験者は五人でございます。なお、これは教職にあったわけじゃございませんが、青山学院の文学部教育学科を卒業した者もおります。
  92. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 教育者の出身は五人で、刑務官の出身は……。
  93. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 刑務官出身が四名でございます。
  94. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 それから警察官の出身は……。
  95. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 現在一名でございます。
  96. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 今の局長のお話によると、教育者が五人と、それから刑務官と警察官の出身が合せて五人と、五人五人ということになりますが、これだけ刑務官やそれから警察官の出身者が職員に多くなってくると、矯正院全体の空気が刑務所らしくなってくるのは私は無理はないと思うのです。前に私は、去年だったか、九州の方のあるところの少年院を見ましたが、建物も新築したばかりで新しくて、非常に明るいところであって環境がよかったのでありますが、そこには刑務官や刑務所出身の人は一人もおらなかった。全部が教育者であったと思うのです。非常に矯正院全部が明るくて、何か学校のような気分がしておったわけです。少年も非常に快活だった。で、私は、これは希望を申し上げるのですけれども、大体刑務官とか警察官というのは人を悪いものと見ている、そういう観念があるのです、初めから。そうするというと、そういう少年院のようなところでは、これは私は非常に不適当であると思う。学校先生というものは、やはり少年のいいところを見て、それを引き出して、そうしてそれを人格を完成させてやるというのが学校先生ですから、私はやはり矯正院の職員には教育者の出身を多くとるべきだと、こう私は信じておりますが、その点は、局長はどうお考えになりますか。
  97. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 刑務官の出身が四名もおっちゃ刑務所的になるのはもっともだと、こういうお説でございますが、この点刑務官を少年院職員に置くということにつきましては、なるほど少年院刑務所的になるということについての一番大きな原因になることと思うのでございまして、この配置がえにつきましては、われわれといたしましても十二分に調査をいたしまして、少年院に適する職員を実は選んで置いておるわけでございます。従いまして、決して刑務所的なものを置こう、入れたいというようなことは毛頭ないのでございまして、刑務職員の中でも決して私は悪い者ばかりおるわけじゃないわけでございまして、多くの、二万からおる職員の中には、中には悪い者もおりましょうが、いい者も、すぐれた者もおるわけでございまして、その職員の中から少年院に適した者を実は振り向けておるわけでございます。その少年院刑務所臭を持たすということにつきましては、十分今後も警戒いたしまして、かようなことのないように、今後とも留意いたしたいと存じております。
  98. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 矯正局の方々がこの少年院とかそういうものを刑務所らしくしようと思ってはいないということはよくわかりますが、そこに管理しておるところの職員警察官や刑務官出身の人が多いと、勢いその結果は自然にそこが刑務所のようなものになってくるのです。その点をお認めになりませんか。
  99. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 四十人の職員の中の四名でございます。全体から見ますとわずかな数でございますが、これも少年院職員に向く者をこれに振り向けておるのでございまして、決してこれがために刑務所的になるということはわれわれといたしましては考えたくないのでございます。
  100. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 四十人のうちに刑務官や警察官の出身は五人しかいないというけれども、四十人のうちに教育者の出身は五人しかないのです。そうすると、一体その少年院はどちらの方に空気がなっていくかということですがね。局長少年院というものをどういうものにしようと思っておいでになるのです。そこか根本的にお聞きしていかなければならぬ。
  101. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) この四十人の職員の中で、ほとんど大部分は少年院職員として本来養成し、育ててきた者が中心となっておるわけでございます。従いまして、この少年院の主流がこれによって動かされるとは考えていないのでございます。どうぞその点誤解のないように、御理解のほどを願いたいと思います。
  102. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 少年院職員といううちには、小使もあるし、それからしていろいろそういったようなものもあるでしょうが、そのうちの重要な職員ですね。主として監督に当り、管理に当っておるところの重要な職員のことでしょう、この教育者五人、それから刑務官、警察官出身の五人というものは。そうじゃないのですか。小使やそういうものを入れているのじゃないと思うのですが、これらの人はみんな重要な地位にある職員でしょう。
  103. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 教官でございます。小使や何とかではございません。
  104. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 そうすると、こういう重要な地位にある職員が、教育者の出身、それから刑務官、警察官出身が半半ということになりますと、これは一体そこの少年院の空気はどういうふうになるか、そういう点はおわかりになりませんか。御想像がつきませんか。
  105. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) ただいまも申し上げますように、刑務官から少年院に転換させる者も、少年院職員として適任者を実は選んでおるわけでございまして、これによって少年院刑務所的になるというふうなことは毛頭考えてないのでございます。どこまでも少年院少年院としての特色を生かしまして、法の精神を生かして運営したいという気持は変らないわけでございます。
  106. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 兵隊上り職員がその事件当時七人おりますね。それから高等小学だけきり出た者が三人で、それは元は小使で、小使が今は教官になっているというのがいたのです。実際調査したら。小使がだんだん出世して教官になっている。それから兵隊上りで、人をなぐることをちっとも何とも思わぬというのが七人おりました。調査の結果そうなっておりますよ。これはいかにあんな山の中の少年院だから職員が得がたいかなんか知りませんけれども、これは私は監督者の責任じゃないかと思います。
  107. 福井徹

    ○説明員(福井徹君) 現在教官をしております者のうちに、過去において傭人であったという人が数人おりますが、これは御存じと思いますが、従来の少年院制度の中には、教官、それから指導員、それから補導というふうな職責のものがおりまして、教官か三時の判任官、それから指道員あるいは補導と申しますのは、判任待遇というふうな資格をもって少年院の実務に従事しておったのであります。これらの制度が戦後教官一本になりましたときに、それらの待遇者の中から、成績のよかったものというふうなものを教官に定員が組み入れられました関係で、教官に吸収されたという結果、傭人が現在教官になっておるというのが実情でございます。  軍人の関係は、今兵隊とおっしゃいましたが、これは戦時中の召集にあった人でございまして、いわゆる軍隊専門の方ではなかったのでございます。経験年数を見ましても、二年だとか、一年数カ月とか、召集期間の、いわゆる兵役に従事した経験のある者ということであります。
  108. 一松定吉

    一松定吉君 そこで関連して伺うが、十二条のいわゆる個性を調査するためにおおむね十四日おくというならば、その調査は、医学、心理学、教育学、社会学その他専門的知識を活用しなければならぬ、こういうような知識を持っている人が何人おりますか。十四日間にこれを調査しなければならぬ。医学、心理学、教育学、社会学その他専門的知識を持っている職員が何人おりますか。職員はいないとするならば、こういう人が少年院に入るたびごとに、専門の知識を持っている学者、経験者を嘱託にでもしておいて十四日の間に調査させるのですか、どうです。それを一つ伺いたい。
  109. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 医学、心理学、教育学という観点からの審査でございますが、これは今ちょっと申し上げましたロールシャッハ・テストあるいはクレペリン・テストとか、いろいろの知能検査をするテスト用紙がございます。このテスト用紙は、すべてこういう心理学の見地からあるいは精神医学の見地から編み出した検査用紙があるわけでございます。その検査用紙に従いまして本人に記述させまして、これを判断していくわけでございます。従いまして、こういう線を描いたならばこれはどういう性格の者、これがこういうふうな線を描いた者はどういう傾向を持っている者ということを、このテスト用紙の線の現われ方を読み取ることで、心理学あるいは社会学あるいは精神医学の見地から割り出しているわけでございます。それを子供たちにやらせまして、そうしてそれを読み取っていくということになるわけでございます。必ずしもこれは精神医学の専門家でなくてはできないというわけのものでもないわけでございます。従いまして、さような知識をもってそのテストをいたし、それを読み取りますれば、心理学的あるいは教育学的な観点からの調査をすることはできることになるわけでございまして、本来から申しますれば、仰せのごとく、心理学者がおらなければならず、また、精神医学者がおらなければならぬということになりますが、なかなか各施設に全部さような専門家をそろえるということは困難でございまして、従いまして、さような観点からの調査をいたしている次第でございます。
  110. 一松定吉

    一松定吉君 それならば、今言うようなそういう表をこしらえて、表にあてはめて調べるなんていうならば、専門家もおらぬなら、そんなものはすぐできるじゃありませんか。専門家がおって心理学、教育学、社会学その他専門知識を有する人がおって調査するということであれば、おおむね十四日くらいかかると私も認めぬわけにはいかぬが、今あなたがおっしゃるように、こういう専門家はおらぬと思う。そうして図解みたいなものに向って線を引いて、これを判断する資料にするのだというようなことは、それはあまりにもずさんじゃありませんか。そういうことで調査ができますか。
  111. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これは技官といたしましては、群馬大学の医学部を卒業いたしました技官もいるわけでございます。また、大学教育学部を出た職員もいるわけでございまして、これらがさような知識をもちましてこれを見るわけでございます。従いまして、精神医学者がいるというわけじゃございませんが、さような観点から、医学部を出た職員でありますれば、精神医学の観点からの検査もできるわけでございます。読み取ることができるわけでございますし、また、文学部を卒業した者は心理学の観点からの検査、社会学の観点からの検査もできるわけでございます。さような観点からこの検査をいたすわけでございます。
  112. 一松定吉

    一松定吉君 ごく大がいなことで質問しまいと思うのですが、君のように追加的に、ああ言えばこう言い、こう言えばああ言うという牽強付会的な答弁をすれば追及しなければならぬ。それじゃ追及するが、医学を心得ている者が何人、心理学を心得ている者が何人、教育学を心得ている者が何人、社会学を心得ている者が何人、そういう専門知識を持っている者が何人職員の中におりますか、それを明らかにしてくれたまえ。自分の足りないところは足りないから、将来大いに注意しますからということでやれば、われわれは満足するのだよ、君みたいに何でもかんでも自分のやり方がいいみたいなことで牽強付会な答弁をすることになると、そこまでいかぬならぬことになるのだ、僕の尋ねたところを答えてくれたまえ、医学の心得がある者が何人おるか、心理学の心得がある者が何人おるか、教育学、社会学専門の知識を持っておる者が何人あるか、たとえば、おるためによってこれらの入院者を十四日の期間内においておおむね調査をすることができることになるのか。
  113. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) とりあえず申し上げますと、医学の経験者はここに一人おります。それから教育学を卒業した者は教員の中に一人おります。しかしながら、これはただいま申し上げましてはなはだおしかりを受けたわけでございますが、これは研修の際にもいろいろとかような社会学的な見地からテストする方法なり何なりは各教科にいろいろと、各研修の際に、研修で修得させることにいたしておるのでございます。かような観点から知能テストをいたすわけでございますから、別に牽強付会の説を申し上げたわけじゃございません。
  114. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 私は少年院職員教育とか、経歴とかいうものが、やはり自然に少年院の性格、気分を決定していくと思うのです。そういう点を局長はお考えになっておるかどうか。今問答をしておると時間がかかりますから、それは後日に譲りますが、そういうことをもう少し私はあなたと議論してみたい。その必要上資料を出してもらいたい。それは赤城少年院職員といいますか、職員といえばいろいろ言葉が広いが、どう言いますか、小使やそういう者を除いて、その人たちの教育、それからして今日までの経歴、そういうものをずっと明らかにした書類を出してもらいたい。それから全国の少年院職員のやはりそういう階級の職員ですが、そういう職員教育経歴をずっと書いたものを出してもらいたい。それを一つもとにしてもうちょっと少年院職員というものはどういうものを採用していかなければならぬか、どうするがいいかということについて、あなたと私は考えがどうも一致しないように思うから、もっとその点について、深くそれをもとにして議論をしてみたいと思う。一つそれを至急お出しを願います。
  115. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 一つ大臣に伺います。今問題になっております少年院の鑑別のことでございますけれども、これは実際は少年院に行く前、事件が起りましたときに、鑑別所で、これは相当専門家を集めて全国的にやっております鑑別所があり、それから家庭裁判所にもまた鑑別機関があるのです。それからまた、今度は家庭裁判所となるというと、ほんとうの鑑別所よりもずっと設備も悪いのです。だが少年院の鑑別機関に比べますると、まだ家庭裁判所の方がいいのです、どこでも、そこで、さっき私は看板に偽わりありと言ったのですけれども、もう大てい少年院には、看板はかかっておるけれども、突っ込んでいったら何にもない、全く看板に偽わりあり。そうしてそのことは私から考えると、これはうんと法務省なら法務省、裁判所なら裁判所で統一すれば、たった一つでいいと思う。あっちでもこっちでもまねごとみたいなことをしないだって、堂々と専門家を集めてほんとうに本式に私はやってほしいと、こういうふうに思っておる。ところが、そういうことを言い出すというと、これは一ぺんこの機構をみんな御破算にして、少年法もついでに御破算にして、そうしてほんとう子供のためになる一体法律を作るという唐澤大臣は御意図はございませんでしょうか。これは子供のことだから言い手がないのです。だからこうやってこの委員会でごうごうごうごう言わなくちゃならぬけれども、実際言ったら、かわいそうな問題ですよ。
  116. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) この問題は、従来から法務省でも、また、裁判所との間でいろいろ研究しておるようでございますが、なるほどお言葉の通り、ところどころで別々に鑑別なんかする必要ないじゃないか、一カ所に集中して、そうして理想的な鑑別をしたらばいいじゃないかというお考えはまことにその通りでございまして、ただ個々の機構がいろいろ違っておりますから、なかなか理想的にも参らないようでございまして、それを統合することになりますれば、機構全体についてもまた大いに考慮しなければならぬ、こういうことになるものですから、問題が少し大き過ぎるものですから、法務省としましては今のところ、慎重に研究をいたしておる、こういう段階でございます。
  117. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それで重ねて伺いますけれども少年法四十年のこの歴史において、とても畑争いがあるのです。こっちは法務省、こっちは裁判所、新しい憲法になってから少年裁判は裁判所でやることになった。そうしてどっちも争っているけれども、いざというときになったら、裁判所は子供少年院に送れば、委託すれば、それでもうあとは幾ら心を送っても、制度上では、法律上では還元することはできぬようになっている。だから私はここらで少年法に大メスを入れて、ほんとうに何を一体どこまでやるのが一番少年のためかということを、私ここらで研究して、少年法も御破算にして一ぺんやったらいいと思う。私は少年院なんていうものは、見れば、聞けば、あんなものを置いておいちゃ相ならぬと思う。あんな悪い者を一緒に集めるよりも、昔の保護団体みたように、小さいものに集める方が、そうして個々の性格に合ったもので、その場でかわいがって育ててもらう方が、私は少年のためになると思う。これをもっと掘り下げていきますと、私は、この全国の家庭のお母さんが、一人ずつ不良少年を家が預かるよと、五十万のお母さんが言ってくれたら、私はこんなことをここで言わぬでもいいと思う。それはその端緒として、極端ですけれども、一体少年院のあり方なんていうものに、私は今の大臣の大メスを入れてほしいと思ったんですけれども、もうそれもならぬようですから、また出ていらしたら一つ考えて下さい。
  118. 亀田得治

    ○亀田得治君 私、昨日の東京医療少年院の脱走事件について若干聞きたいと思ったのですが、ただ質疑を聞いている過程でいろいろ疑問を持った点が出ましたので、まずちょっとその点について先にお尋ねします。それは先ほどから問題になった規則十二条、ああいう方法で入ってきた少年を調べる方が適当であるというようなことは、法務省の役人の方が考えられたのか、あるいはそういう規則を作るときに、教育学者なり、心理学者なり、そういう点の検討を十分やられてできたものか、私もどちらがいいかどうかという、これちょっと見当つかない点があります。この規則できまっておる方法にはなかなか私は疑問を持っております。疑問は持ちますが、絶対にそれが悪いという結論もちょっと出しにくい。そこでこういう規則を作るときにどういうつもりでそういうことをおやりになったのか、その点をまず伺っておきたい。
  119. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 私も当時の事情をつまびらかにはいたしておりませんが、大体法務省でかような重大な問題、重大な制度をきめまするときには、御承知のように、法制審議会がございまして、そうして法制審議会の議に付して、学者専門家の意見を聞いてきめることになっております。それはこの規則をきめる際にもそのつもりでやって参ったことと存じております。
  120. 亀田得治

    ○亀田得治君 法制審議会では、私はこの問題は適当ではないと思うのです。法制審議会はまあ普通の立法でありますが、この問題は、そういう法律規則といったような法律上の問題じゃなしに、実際上そういう方法が世界的に認められておるとか、あるいは科学的に検討してもそれがいいのだとか、何かそういう問題なんでしてね。法制審議会のあのメンバーを見たって、私はそういう点の専門家はおらないと思うです。どうでしょう。
  121. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 私、当時の事情はつまびらかにいたしておりませんが、今事務当局に聞いてみますと、法制審議会の議に付したときにも、臨時委員としてやはりそれぞれの専門の学者も入っておるようでございます。これはこういう問題ばかりでなくて、問題々々によりまして臨時委員を委嘱しまして、いつも入っておりますから、その例でやったことと思います。このことも、やはりそのときにしかるべき専門委員が参加していると思います。そのほかにまた矯正審議会がございまして、それにも付して意見を徴しておるようでございます。
  122. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあそういう臨時委員を任命なさる場合でも、やはり法務省一つの考え方、こういうものによってやはり任命されると思うのですね。だからそれだけで果して適正なものかどうか、なかなかこういう問題は一役所とかそういうものをやはり越える非常に大きな問題を持っていると思うのです。そういうわけですから、この規則が作られたときに、そういう専門的な検討をされた経過ですね、こういうものを何か一つ文書で私ども知りたいと思うのです。今おそらく、古いことでしょうからおわかりにならぬでしょうから、出してもらいたい。  それからもう一つは、それが仮定として、それじゃ法務省の今考えておられるようなことが適当だと仮定いたしましても、やはり十二条のあのままの表現では乱用される危険が十分あると思うのです。法務大臣や局長は、先ほどから一松先生に対して、決してそんな乱用したり、間違って運用されるようなことは自分からとしては考えておらないという意味のことをおっしゃっているのですが、私はあのままの法文なら、少年院で実際にあれを使う場合に、ともかく十四日間を目標にしてほかの者と接触を断っておけと、こう書いてあるのですからね。私はやはりそのままの条文なら、多少必要がなくても、ともかく十四日間どっかへ入れてほったらかしておく、こういうことになるおそれは十分あると思うのです。だから、ほんとうに法務大臣が先ほど説明されているような気持であれば、少くともそこへただし書きでもつけて、ただしこれは決して——たとえば第八条の懲罰、それと事実上同じような結果にならないように注意すべきだとか、これはもっと親切な条文でなければ私はいかぬと思うのですよ、まあ期間の問題もありますが。そういう意味で、先ほど結論的には若干検討されるような意味のことを大臣おっしゃいましたけれども、これはぜひ検討してもらわなければ、あのままの形じゃ当然これは妙な結果になると私も思います。それは一つ御検討を願えるでしょうか。私のちょっと申し上げたのは、たとえば、ただし書きをつけるというような、それが一番いいかどうかわかりません、しかし、少くともそれくらいのものがなければ不十分だと思うのですよ。
  123. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) これはこの条文に限らず、すべての少年院に関する条文は、少年院法の精神を体してやらなければならないのでございまするから、たとえば、懲罰そのものに関する条文でも、この懲罰は刑務所における刑の執行とは違うのであるからこういう精神でやれとか、すべての条文について親切に書くのがこれは理想でございましょうけれども、御承知のように、私の申し上げる必要もないことでございますが、この法律を学んでやる規則だものですから、一応は簡潔に書く、そうしてそれの執行については、原則として少年院法の法律の精神でもう明瞭になっておる。すべてはこの精神に基いてやってもらいたい、こういう趣旨で書いてあると思うのでございます。しかし、乱用する危険がないかといえば、それはもう良識のない職員がこれを読み違えばどういうことになるかもしれませんから、その点は十分注意しなければならないと思うのでございます。ただ、たまたまきょうこの条文がこの問題になりましたから、十分に過去の実績等にもかんがみまして、そして法務省におきまして研究はいたして参りたいと考えております。
  124. 亀田得治

    ○亀田得治君 それからもう一つ、この少年院法の第三条の第二項をちょっとごらん願いたいのですが、私は、この条文はあらゆる法律の中でも非常に珍しい規定だと思っているのですが、つまり法務大臣は、少年院を適当に維持し、かつ、完全な監督を行う責任がある——普通よく監督関係の規定としては、どういう事項についてはだれそれが監督する、そういうふうに書いてあるだけです。特に完全なこの監査を行う責任がある、こういうふうなことを書いてあるのは、私はこれだけだと思うのですが、ほかに何かお気づきのものがあればお示し願いたい。私はこれだけだと思う。その点どうでしょうか、ほかの局長の方でもいいです。
  125. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ほかの条文には、そういう形式の書き方は私存じておりませんから、まあ特殊な書き方だと御指摘のように思います。これはまあ私の想像でございますが、こういう強制力を伴います施設の監督でございますので、特に人権尊重の意味からしてそういう趣旨の規定を設けたと思いますが、この法案のまあできます当時は占領下であったと思いますので、そのころにできました法律の中には、ちょっと日本の法律体系にないような用語がときどき挿入されておることを私どもは感づいてはおりますけれども、この条文がそういういきさつであったかどうかつまびらかにいたしませんが、その趣旨とするところは、今おっしゃるように、特別に監督を厳重にしなければいかぬという趣旨が盛られておるものと理解いたします。
  126. 亀田得治

    ○亀田得治君 私はそういたしますと、今度の赤城少年院の問題の跡始末の問題ですね。先ほど責任のとり方等の、とった結果の御報告を聞きましたが、どうもああいうことでは足らないように思うのです。相当長期間にわたってそういう不当なことが行われていてそれが気づかれなかった、これはもう相当問題ですね。で、私はなぜそういうことを言うかというと、よく不当逮捕の問題なり、もう明かにミスであったというようなことがときどきありましても、なかなか最近はその責任のとり方が不明確なんですね。まあ戦前などにはよく、不祥な事件が起きますと、全然関係のない人でも、しかし、職責上それにつながっているからということで、相当なやはり責任をとった。そういうことは必らずしも私は必要がないと思っている、そんなに他人のやったことに対して責任を何でもかんでも負うということは。しかし、あまりこう何かルーズになり過ぎておるような感じを私は一般的に持つわけですが、今度の赤城少年院の場合、これだけのともかく子供を水びたしにしたり、そんなようなことをやって、それが暴露されて、そうしてそこの処分というものは院長以下だけに終っておる、こういうことでは、ほんとうにこういう問題について今後も真剣に取っ組むのだというふうな感じとは受け取れないのですがね。しかも、この条文によりますと、今刑事局長もおっしゃったように、ほかの法律には全然ない完全な監査なんで、だからこの法律の条文からいっても、私は法務大臣自身がもっと責任というものについて痛感しなければならぬのではないか。あるいは、法務大臣の仕事を代行しておる関係にある局長なり、あるいは管区の長なり、私はやはり、それが筋だということであれば、必ずしも全部辞職するばかりが責任ではありません、適当な形で責任を明らかにしていく方が、下に対してももっと厳粛な気持にさせると思うのですね、自分たちのあやまちのためにこういうふうなことになったということになるので。どうも私は先ほどの処分は不満なんですがね、この条文から見ても。これは一つ大臣の率直な気持をお聞きします。
  127. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) この「完全な監査」という一句は、ただいま仰せをいただきまして、私も初めて承知したようなわけでございます。これがどういうことでできておるか、今刑事局長の一応の説明もございましたが、あるいはこの前身である矯正院法等にもこれがありましたかどうですか、いずれにいたしましても、法律でかように書いてありまする以は、ほんとうに普通の監査と違って、完全な監査をしなければいけないということを法律が明定しておる。その関係から、監査の責任にある者の責任は重いということになるわけでございます。これはもう御解釈の通りと思うのでございますが、このたびの少年院の不祥事件についての跡始末につきましては、まあいろいろと御批評をこうむりましたわけでございますが、法務省といたしましては、最も適当だと思うところへ一線を引いてやったわけでございます。しかし、御批評は御批評といたしまして、十分拝承をいたします。なお、将来につきましては、やはりこの事件に関しまして十分戒心を加えたいと思っております。
  128. 亀田得治

    ○亀田得治君 お答え、大へん私不満なのは、ともかく日本の全部の法律の中に一つしかないことですね、それを法務大臣が今初めて読んだ、これじゃあ私は法務大臣自身も少年問題についてどれだけ真剣に取っ組んでいるのか疑わざるを得ないし、それからそれを補佐しておる局長も、この問題だけは特にこういうふうになっているのですよというくらいのことは、大臣が就任されたら、当然これは注意しておくべきですよ。そういう点で、そういうところからやはりいろいろな間違ったことが下の方でも起きてくるのではないかと一つは思いますね。だから、まあ人を処分することをあまり好むわけではありませんが、これだけの問題が起きておるわけですから、もう少し責任のとり方というものを、今度のものに対してもう一度検討してみる余地というものは全然ないのでしょうか、その点が一つと、もう一つは、院長は減俸になってどっかほかへやられたようですが、私はこれだけの問題を起した方をほかへやっても、果して仕事ができるのかどうか。ちょうど処女が強姦されたようなものです。精神的に非常な一つの何か問題が明るみに出れば、大きなショックというものが受けられておるはずです。私はそういう状態で、正常なさらに同じ仕事を続けるということは、不適格だと思っているのですがね。突き詰めて考えてみると、さらにそういう仕事を続けておやりになろうという方自身の気持も、私少し解しかねる点がある。ただし、やめてもほかに仕事もないし、まあ仕方がないからこうやっているのだという事情で、そうしてそういう事情も一応了としてやったというなら、これも一つの考えです。しかし、事柄の自体から考えますと、私はたとえ同じ場所だけでなくても、これだけの問題を起して、そうして継続して同じ仕事をしゃあしゃあとしておやりになるということは、これは適当じゃないと思うのですがね。具体的にその点だけを検討してみて、全体について再検討の余地がないか、もう少し責任というものを上の方でも明らかにすべきじゃないかということが一つ、それから例として申し上げたのは、この院長の問題ですが、お考えを聞きたいと思います。
  129. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 私が自分の所管事項に関する法律の条文をわきまえていなかったことは、まことに申しわけなかったと思います。今後、十分法律を勉強したいと考えております。  それから、間違いを起した際の制裁の量定でございますが、これはまあ非常にむずかしい問題でございまして、私どももかつては官界におりまして、どの程度に線を引いたらよろしかろうかということにつきましては、ずいぶん苦心をしたものでございますが、やはり感情には、制裁についての不文律といいますか、一応の慣例みたいなものがございまして、起きた事件と全く同じような事件というものはないのでございますけれども、心持の上で、大体従来の例で、まずこのくらいな問題を引き起せばこの程度というようなものがあるものでございますから、そういうような従来の目に見えない基準というようなものに沿って処置していっておるようなわけでございますが、その結果から見て、今のたとえば院長に対する処置が軽きに失するのではないかと、こういうようなお感じも出ることかと考えるのでございますが、しかし、このような不祥事というものは二度と再び起してはならないことでございまするから、一応責任者の処置はいたしましたけれども、将来にわたりまして、そういうような場合の制裁をどうするかというようなこと等につきましても、十分考慮した参りたいと考えております。
  130. 亀田得治

    ○亀田得治君 昨日の東京医療少年院少年の脱走事件ですね、これは真相はどういうことであるのか、要点だけまず御報告願います。
  131. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) この東京の都内にあります東京医療少年院で、昨日の十六日でございますが、午後七時五十八分——ちょうど八時前でございますが、寮生にテレビを鑑賞させまして、それが終って寮に連れて帰る途中で、十三名の少年が出入り口の戸をけ破って脱走いたしたのでございます。で、こちらに伺いますまでに聞きましたところでは、そのうち七名を連れ戻したのでございますが、まだ残りの六名は連れ戻すに至っていないのでございます。まことに世間をお騒がせして申しわけないと存じております。この東京医療少年院は特殊な少年院でございまして、ここは精神薄弱の少年ばかり入れておるところでございます。従いまして、ここの少年院は、知能指数もIQ六〇に満たない少年たちばかりが入れられておるのでございます。昨晩逃走いたしました十三名の少年たちも、いずれもこの知能指数のさような少年たちでございまして、一番低い少年でIQ四二、一番高い少年でIQ六八ということに相なっております。その逃走いたしました原因が那辺にあるか、まだ十二分に調査をいたしておりませんので、よくわかりませんが、中の三名の少年が、何か自分の退院がなかなかできかねることにつきまして不満を持っておりまして、この三人がそそのかして、逃げてやろうということで、これに同調してかような挙動に出たようでございます。何分知能の低い少年たちでございまして、ちょっとしたことにもすぐそれに同調するような傾向が見受けられまして、この処遇には頭を悩ましておりまして、いずれ十二分に調査いたしまして、御報告申し上げたいと思っておる次第でございます。
  132. 亀田得治

    ○亀田得治君 新聞等でちょっと拝見しただけですが、あそこの谷院長の話でありますが、少年の中で家に帰りたいと、数日前からそういうことを言っておる者がいたということを、記事の中にもあるし、院長の談話にもあります。だからおそらく事実だろうと思うのですが、私は子供が家に帰りたいというこの気持ですね、これは私ある意呼では非常にいい気持だと思うのですよ。考え方だと思います。だから、そういう現象がある場合には、少年院としてはどういうような方針をとっておられるのか。ああいう多少知能指数が足らなければ、そういう気分にかられた場合には、特にいちずに考えるのですね。われわれの子供に会いたいというのと一緒です。だから、そういう現象が全国どこの少年院でもあるのだと思いますがね。そういう場合における扱い方というものに対して、何か一定の基本的な方針なり、考え方というものがあるのかどうかお聞きしたい。
  133. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 少年たちが家庭に帰りたいという気持、これは私、仰せのごとく、非常に尊い考え方でございまして、これを大いに伸ばしていきたいという考えでございます。この少年たちがいろいろ不良化いたします原因等を調査いたしましても、家庭に、何と申しますか、魅力を感じなくなって家出をしたというようなことが悪へ走る大きな原因でございまして、少年たちが家庭に対する非常な恋しさを持ってくるということは、さような意味から申しますと、非常に少年たちの気持がととのって参ったということも言えると思うのでございます。そこで、少年院では、家庭との間の環境の調整ということにつきましては特に意を用いておりまして、しょっちゅう家庭に連絡をいたしまして、保護者の来院を求めて面会をする。また、家庭は書面を出して、そうして文通をしげくさせるということで、この家庭との間の関係を一番注意をいたしておるのでございます。従いまして、さような気持の起きたときには、親を呼んで、少年と会わすとか、いろいろ方法を講じまして、これらの気持をさらに盛り育てていくように配慮いたしておるのでございます。この退院ということにつきましては、満期退院と仮退院とがございますが、この退院につきましては、更生保護委員会の方の面接を受け、審査を受けて仮退院を許すことにいたしておるのでございます。従いまして、仰せのような状況がありまする場合には、十二分にその点を考慮いたしまして、仮退院等の考慮についても大いに参考にするわけでございます。
  134. 亀田得治

    ○亀田得治君 だからその点の取扱いといいますか、手かげんが私多少間違っている点があったのじゃないかと、本件では、思うわけですが、十分その点に重点を置いてお調べ願って、真相を一つ明らかにしてもらいたいと思うのです。  それから先ほど宮城先生もちょっとおっしゃったのですか、こういう事件の場合ですね、逃げ出したのが何か犯罪だとか、そういうふうな印象を与えるような扱いをやる。少年にはやはり絶対に避けてもらいたいと思うのですね。そして本件のような場合だと、それが家に帰りたいということが本心であった場合であれば、少年としては、はなはだ矛盾を感ずると思うのですよ。おれは家に帰りたいと思ったから帰ったのだ。それはまあ承諾を得ないで帰ったのは悪いかもしれないが、犯罪視するとか、どこかあちこち探し回って引き戻すとか、そういったような印象を与えないような扱い方を十分私はやはり考えてもらいたいと思う。本来ならば、そういう点がよくいっておれば、逃げ出すということもあり得ないだろうし、帰りたければ帰りたいというし、それから逃げても、むしろ向うから帰ってくるかもしれないし、連絡をとってくるかもしれないし、そういう注意を一つ、これは前にも二、三回この院では脱走事件が起きておりますが、今回の場合にもその真相を、この点に重点を置いて一つ報告を願いたいと思います。それからもう一点お聞きしておきますが、これは少年院全体の、今後の指導方針等に関連することでしょうが、院長選任ですね。これは大へん大事だと思うのですよ。いろいろ選任についての内部の規則等があるようですが、あまりそういうことにとらわれないで、社会的にほんとうにりっぱな、りっぱというのは何も地位とか、そういう意味じゃなしに、ほんとうにこういう困った子供さんたちを何とか世話したいという方々がたくさんあります。民間でも自分らの知っている範囲でも相当あります。そういうところは、これはもう誠心誠意やっていなければこれはつぶれてしまうのですね。国のやっているやつは、まあ国から費用をもらってやっているわけですから、適宜にやっておったって、まあ何とかいくわけですね。だけれども、民間などで特種な気持で、それはまあほかの補助等があるでしょうが、おやりになっている、そういったような人なんかで、りっぱな人を引き上げるとか、あるいは長らく教育の仕事をやっていて、そして現在はもう隠居をしたいのだが、しかし、自分の経験を生かしてもう少し仕事をやってみたい、そういう中には前歴として、あるいは大学のりっぱな教授であった人があるだろうし、まあ教授が全部えらいというものじゃありません。こういう問題について全部適当であるかどうかわかりません。あるいは中には、大臣の前歴のあるような人でも、こういった仕事をやってもらっていいわけです。ほんとうにそういう適当な人を探し、こういう少年院なるものの問題については、形式的に何年たったら上へ上っていくということじゃなしに何かそういった方針を一つ検討されるようなことをやってもらいたいと思うのです。人の場合にしても、やはりそういういい人がちゃんと院長になれば、大体その人にあとの人事については、まかしていいわけですね。そうすると、院長を中心にして大体一つの風というものがやはりそういう院にはできてくると思うのですよ。それを役所式にあっちへやり、こっちへやったりしておれば、悪くいくと、やはり派閥的なものが中に起りがちです。一つの風がなければだから、赤城少年院のやはりそういう一つの間違った経験というものを生かして、何とかその辺の検討を基本的に一つやってもらいたい。先ほどから、他の委員の方からもその点の質問なり、御希望が出ておりましたがね、私は教官についてであっても同じ気持はありますが、院長が一番大事です。これの選任というものは、もう少し広い視野で一つ考えてもらえるようなことを御検討願いたいと思いますが、大臣のお考え、どうでしょうか。
  135. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 院長などの選考に当っては、広い視野で、民間に人材があったならば、これを抜擢したらばどうか、これは全く私も賛成でございます。一体選考なんかについて条件など作って置くから、それに支配されて形式的な人事になると思うのでございますから、最適任者を選ぶには、そういう条件などなしに、フリーに選考するのが一番いいと思うのでございます。ただ、私の古い官吏生活をした自分の経験を申しますと、また、これがそういうふうに条件なしで選考される場合に、必ずしもいい人ばかりを得るわけにはいかない、と申しますと、裏話になりますけれども、やはりいろいろの方面からの注文もございまして、そして役所としては、なかなか断わり切れないというような際に、一つの条件があれば、その条件にこもって、そうしてお断わりするというようなこともあることですから、間違いを起さないように、一つのかきねを作るということは、私ども古く官吏をやっておった時分は事実そういうことがあったのでございます。今さようなことがあるかどうか存じませんが、しかし、根本におきましては、広く人材を野に求めるということは私は賛成でございます。ただ、そうかといって、全く野放しにどこからとってきてもよろしいというようなことにしてもやはり弊害がある。こういうことで、この場合だけでなくて、広く日本の法制全体を見ましても、やはり選考採用については一つの条件というものが採用されておるようでございます。そういうようなわけで、一応の標準はやはり立てておかなければならない。しかし、心持においては、広く人材を野に探すということは、この考え方は私は賛成でございます。
  136. 亀田得治

    ○亀田得治君 最後にお聞きしておきますが、そういう気持でありますと、当然採用関係についてもいろいろな規定があるわけですが、これを具体的に御検討願わなければだめなわけですが、そこまで一つ御検討願いたいと思いますが、どうでしょうか。
  137. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) これは少年院長だけの問題でありませんで、こういう種類のインスティチュートの問題は、国の全体の行政にはたくさんあるのでございまして、国全体のこういうものに対する選考標準、採用標準というものを全体的に検討していかなければ、法務省だけ独走するというわけにはいかぬものですから、また、従来から積み重ねてきた官界における慣行というものもございます。これらをよく参照いたしまして、そうして各省との振り合いも考えてやっていかなければならないと思いますから、今すぐこれを改めるというようなことを申し上げましても、なかなかそれは実行できないかもしれませんが、ただ、私は心持といたしまして、今亀田委員のおっしゃったように、フリーに一つ選考していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  138. 亀田得治

    ○亀田得治君 もう一つ、近く選挙があって大臣がおかわりになりましても、先ほどのようなことは、これは一松先生もおっしゃったわけですが、次の大臣にも一つお伝え願ってやはり引き継いでいくように、こういう議論はほんとうになかなかしょっちゅう出るわけじゃありません。こういう不祥事件があって初めてお互いに真剣に考えて検討するわけですから、これは十分一つお伝えを願いたいと思います、もしおかわりになる場合には。引き続いておやりになることを希望しておきます。
  139. 青山正一

    委員長青山正一君) 派遣委員報告に関する質疑、少年院運営等に対する諸問題の調査は、本日はこの程度にとどめまして、昼食のため、午後二時三十分まで休憩いたします。    午後一時四十四分休憩    ————————    午後二時四十四分開会
  140. 青山正一

    委員長青山正一君) 休憩前に引き続き、これより委員会を再開いたします。  刑法の一部を改正する法律案刑事訴訟法の一部を改正する法律案証人等被害についての給付に関する法律案、以上三案を議題といたします。  あっせん収賄罪に関する部分について質疑を行います。御質疑の方は順次御発言下さい。
  141. 亀田得治

    ○亀田得治君 まずこれはあっせん収賄罪に非常に関係の深い問題でありますが、あるいは一般のわいろ罪に関係のあることですが、最近における官庁の懲戒処分状況を、役人が違法な、あるいは不当な行為をとって懲戒に処せられた、そういう点についての大まかな傾向についてお伺いしたいと思います。大臣でなければ局長でいいです。
  142. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 官庁全般につきましては、こまかい数字はもとより私も存じておりませんが、大体の傾向といたしましては、先般も会計検査院の不当事項の決算委員会における調査等に関連しまして、私もその席に連なっておりましたので承知いたしておる事項を申し上げますと、行政処分懲戒処分一般に軽く、かつおそいのではないかという御意見でありまして、その点を是正いたしますために、重くかつすみやかにという線が出ておるのでございますが、御承知のように、この国家公務員の身分の関係につきまして、裁判が有罪判決を見ますまでは、裁判の関係におきましては、無罪と推定されておる状況にありますので、裁判にかけられました不正行為者に対して直ちに行政処分をとって何がしかの処分をするということは、検察官庁でありませんほかの役所ではなかなか一挙にやりにくいので、その裁判の結果を待ってという状態で処理がおくれている面があるようでございます。もちろん裁判にかけられていない一般の不当行為につきましては、各庁の基準によりまして、すみやかに処分をいたしておるのでございますが、法務省に関しましては、大体三カ月以内には事実を調査いたしまして処分を明らかにいたしております。それから不正行為に関する部分につきましても、検察庁におきましては、判決前でございましても、事柄の性質上、検察庁調査の結果によりまして、可能なるものはすみやかに処断をいたす、すみやかにその処分を明らかにするという態度をとって、ここ数年来参っておるのでございます。検察庁職員はもとより、所管の各職員につきましても、大体そういう態度で臨んでおるのでございます。まあ特殊の事情で若干の例外がないとは言えませんが、考え方としては、重く、かつ、すみかにという線は相当実践に移されておるというふうに考えております。
  143. 亀田得治

    ○亀田得治君 こういう汚職という問題、根本的には官公吏の紀律全体ということから反省しなければならない問題だと思うのです。今そういう問題全般について検討する場所でもないと思いますから申し上げませんが、とにかくその中の相当数の者が、業者との関係とか、贈収賄の関係そういうものが相当あろうと思う。そしておそらくわいろ罪で起訴等になれば、これはもちろん懲戒免職になるでしょうが、そこまで行かなかったようなもの、こういうものはどういうふうな処分を実際されているのか、そういう点を知りたいわけです。
  144. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 正確にお答えできる資料を持っていないのでございますが、刑事処分を受けませんで、刑事処分としましては起訴猶予処分になりましたものにつきましても、減俸その他の行政処分をいたしていることは、これは間違いない事実であります。
  145. 亀田得治

    ○亀田得治君 起訴猶予処分ですと、一応まあ本人の将来等を考えてゆるくしておくということですが、しかし、それは起訴猶予処分の場合など、おそらく事実そのものはあったことは間違いないわけですね。そういう場合に、ただ減俸とかそんな程度で処理されているのが現実なんでしょうか。
  146. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは懲戒罰としましては、免職、停職、今の減俸、訓戒といったような罰の種類がきまっておりますが、形式的にはそういう罰にあてるほかないわけでありますけれども、実質におきましては左遷とか昇給をとめるとかいったような実際上の罰が加味されて、綱紀粛正に資しているわけであります。
  147. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は懲戒処分全体について今お聞きするつもりもありませんが、起訴されない者で、そういうふうな問題に関与した者の実際上の扱いがどういうふうになっているか。これは起訴されは事件じゃないからなかなか調査は困難だと思いますが、しかし、大体の傾向なり、全体の懲戒処分の数字などは行政管理庁等にあるでしょうが、その中で贈収賄らしいというようなものについて起訴されなかったものについての処理ですね、これは一つ至急御連絡でもとっていただいて大体の傾向がわかればいいですから一つ出してもらいたいと思います。法務省自体はどういうふうにやっておりますか。
  148. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは人事課の所管でございますので、人事課長から申し述べるのが相当だと思いますが、法務省としては、ほかの行政庁に比べまして、その意味では厳重にやり過ぎているのじゃないかということを決算委員会でも言われたことがあるくらい厳重にいたしております。それに対しまして、私の考え方を申したことがありますが、これは法務省という人の非違を糾弾することを主体とした役所でございますので、率先してみずからを明らかにしていかなければならないという考えから、ほかの庁が甘いからといってそれにならえというのではなくて、私の方は、伝統的にそういう考え方でやっているのだという説明をしております。
  149. 亀田得治

    ○亀田得治君 昨日、総理大臣にお聞きしたことですが、時間が限定されておりましたから、こまかい御質問は遠慮したわけですが、例の検察庁法の十四条の問題ですね、昨日の質疑で私の考え方を別に否定されるわけではないお気持であろうと思うのですが、ただ、法律の形態として贈収賄だけについてそういう指揮権を除くというふうなことをこれは書くわけにいかないでしょうし、そういう技術的な点もからんで満足な回答は私としては受けられなかったわけですが、これはどうなんですか、実際に法務大臣が直面されるわけですが、現在の状態ですと、やはり政党政治ですから、政党出身の法務大臣がおれば党としてはやはり法務大臣の方に問題を持ち込んでくる。法務大臣はできるだけ法律のそういう扱いについては公正にいきたいと思っても、そしてまあ検察方面はそういう立場で主張してくるでしょう、平素はそういうふうに法務大臣が思っていても、これはやはり総理大臣に任命された法務大臣だし、とにかくそういかぬように私は思うのですね。私はどういう人が政治をお作りになっても、やはり自分のことを自分で処理するということは私はやっぱり間違いだと思うのです。自分にかかった問題については、もうあっさり皆さんから御判断を願うというふうな気持が大事だし、制度上もそういうふうにやっぱりしておく方が世間の疑惑も受けないし、また、その地位につかれた法務大臣としても非常に私はやりやすいし、いいことじゃないか。じゃ、しからば、それをどういうふうに制度上法律化するかどうかという問題になれば、これは第二段の問題として検討の余地はありますがね。考え方としてはそういうことが正しいのではないか。検察全体についてもそういう意見が一部にはありますわね。法務大臣というものは、たとえ政党政治の時代であっても少し違った立場に置いたらどうだろうと、法務大臣自体をですね。私はまあそこまでは言いません。しかし、汚職という問題が出ておるわけですから、少くともその問題については法務大臣はそういう立場に立っておるべきじゃないかと思うのです。これは与野党にかかわらず、野党の汚職だってそうですよ。野党の汚職なら、じゃ法務大臣はもっと強くやれという指揮権になるおそれがある、政争が激化した場合には……逆の場合にはゆるめる。どうしてもそういうふうなことになりやすいわけなんです。そういうことにならぬように、何かやはり制度的にやる方法があれば私は一番いいと思う。そのこと自体はどういうふうに大臣はお考えでしょうか。
  150. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) これは司法制度についの根本問題でございまして、ただいまだんだんと意見のありました点、私はいかにももっともだと思います。検察権を最も公平に行使させるということのためには、あるいは政党と縁のない者がこの地位におるということが適当かもしれないという御意見はしごくごもっともだと私は思うのであります。しかしながら、一方におきまして、政府としては検察権のあり方ということについて、やはり最後の責任をとらなければならない立場におるのでございまして、もし法務大臣と検察当局との間のいわゆる検察庁法第十四条というものの橋渡しを断ってしまう、あるいは法務大臣そのものが内閣の指揮を受けない立場のものを置くというようなことになりまして、それが万一あやまってあるいは政党きらいの人がきて、政党であれば何でもびしびし取り締る。あるいはまた、労働運動ぎらいの人がきて、労働運動については過当の弾圧を加えるというような、いわゆる検察ファッショ、片寄った検察権を行使するというような場合がありましても、政府としては、何らこれを制肘する道はないというようことになりましては、これはまた一大事でございまするから、やはり政府として、検察権の行使について責任を持つ以上は、やはり法務大臣は総理大臣の命令に服し、総理大臣は、一応検察当局を指揮する権限を持っているという制度にしなければならないと、かように考えるわけでございまして、ただ、従来のように、法務大臣が一々の事件を、具体的な事件について、また、個々の検察官に指図をするというようなことでありますると、これはいろいろな弊害があろうかというので、私が御説明いたすまでもなく、今日の検察庁法第十四条ができて、個々の事件については、法務大臣はただ検事総長を指揮し得るのみ、検事総長を通じて下の検察官を指揮するという、まあほど合いの規定を作ってあると理解しているのでございます。いわゆる指揮権の発動というようなことが問題になるのでございますが、この指揮権の発動という、この問題につきましては、いわゆる世上でいう指揮権の発動——つまり検事総長をトップとするところの検察陣営、この陣営で研究をして、そうして検察権の発動について一つの方針を定める。それが法務大臣の気に入らないからといって、検事総長以下の検察当局の意見を、これを押える、これを曲げるというようなことがある場合に、世上いわゆる指揮権の発動とまあいうわけでございますが、私が法務省に参ってからの経験で見ますると、一応法務大臣は、検事総長を通じて検察当局を指揮するようになっておりまするけれども、検事総長以下検察当局には、検察事務についての練達堪能の人が一ぱいおります。そうしてその下には、各高検があり、地検があるということでございまして、事件は、地検からだんだん積み上げ方式で上の方の指揮を待ってくるわけでございまして、衆知を集めて、そうして問題によりましては、最後は検事総長のところで、検察当局としての意見をきめるわけでございます。で、私は就任以来、もう検察当局の良識と良心に信頼をいたしまして、全部おまかせをしているわけでございます。一々私に指図を求めては参りません。事項によりましては、決定をしたときに、それを執行する前に、こういうふうな決定をして、いつ幾日執行するというようなことを、事務当局を通じて私に報告をしてくれることもございますが、それもきわめて希有の場合でございまして、今の私の経験しているところでは、検察権の発動というものは、今の制度のもとにおきましても、私は厳正に、また、公平に動いていると、かようにまあ考えているわけでございます。  ただ、法務大臣といたしましては、党と言わず、党外のいろいろの人——党で言えば、私の友人は自分の党はもちろんのこと、社会党にもございます。それから政治家以外の人もございます。で、世上では、あるいは法務大臣に頼めば、法律問題でも、訴訟の問題でも何とか有利になるとか、自由になるとかというようなまあ誤解もありますから、いろいろと頼みに来る人もいささかございますけれども、そういうことで迷うような者は、これはもう法務大臣にしないがよろしいということで、人事の面で厳正公平にやるというような人間をそこに置くと、こういうようなことで、検察庁法第十四条というものは、依然法務大臣が検察当局を指揮し得る、ただし、それは個々の事件について個々の検察官を指揮してはいけない。常に検事総長を通じてのみ行う、こういう制度で、私はこのくらいの制度が政府との関連においてもきわめて適当な制度ではないか、まあかように考えておるわけでございます。  なお、あっせん収賄罪等についての検察権の発動について、いろいろ御心配があります。いかにもごもっともでありますけれども、しかし、法務大臣に任ずる以上、あっせん収賄罪については、どうも信用がならないということで、制度としてそれはお前の権限ではないぞというような制度を作るということも、これまた私はどうかと思うのでございまして、これから先は、制度の問題と言わんよりは、結局において人間の問題、その人間の問題はひいてはその内閣の責任、国民がこれをいかに批判するかという、最後は国民の審判によって決するというより仕方ないように思うのでございますが、ただいまだんだん御意見のありましたような、いろいろの心配は多々あるということだけは御意見の通りだと思うのでございます。
  151. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ一般的な検察の仕事については、今法務大臣がおっしゃったようなことでまあいいと私どもも考えます。ただ、問題を限定して、相当地位の高い人の汚職の問題、こういうことが出てきた場合のことを私はさしておる。で、実際にそういう事件が起きて参りますと、そのとき何かそういう指揮権の発動ができないような法律なり、あるいは内部の規則を作ろうと思ってもなかなかできない。だから、そういう問題のないときにこそ、冷静な立場で検討して、その問題だけはもう検事総長以下にまかすというふうなことを、内部規則として作ってもいいわけですね。  で、法務大臣にちょっとお聞きしますが、この前、例の吉田さんのときに造船疑獄があって、犬養法務大臣のもとで、検事総長に対する指揮権の発動があって、おじゃんになった事件がある。ああいう——その理論は別として、ああいう現象を大臣はどういうふうにお考えでしょうか。あれで適当だと思いますか。
  152. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 当時どういう事情で指揮権を発動したかということをつまびらかにいたしておりませんから、これに対する私の意見は申し述べることを差し控えたいと思うのでございまするけれども、その前の、制度として、ああいう場合には指揮権発動ができないというような制度を作ったらどうかという御意見と拝聴したのでございますけれども、これはもう非常に大きい問題でございまして、それも一つの案かもしれませんが、結局においてああいう問題は、社会の批判を受けます。結局先ほども申し上げましたように、そういうことをする一体政府というものは、国民がこれを支持していいかどうかという国民批判、国民の世論によっての審判を受けるより仕方ないのじゃないか。制度をどう変えましても、また、それをのがれる道もあるのでございますから、私はこの検察庁法十四条というものは、まずほど合いの規定ではないかと、かように感じておる次第でございます。  ちょっとお許しを願いまして……。
  153. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  154. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記をつけて。
  155. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 あっせん収賄罪の百九十七条の四という項に「公務員請託ヲ受ケ」というこの「請託」の内容ですが、今まで御説明を聞くというと、これは抽象的なことでもいけない。かといってそのあとにある「其職務上不正ノ行為ヲ為サシメ又ハ相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク斡旋ヲ為ス」ということも、これほどの必要もないのだという御説明であったと思うのでありますが、そうすれば、一体どの程度の条件を持っておったら要求されるだけの条件を満たすことになるか、こういう点ですが、具体的にできれば例をとって一つ御説明を願いたい。
  156. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これはたとえば、税金を負けてもらいたいというように、税金の内容が所得税のことをいっているのか、法人税のことをいっておるのかというところまで綿密な頼み方をしなくてもよろしいが、とにかく何を頼むかということが特定する程度のことを内容としておるのであります。その頼み方まで、そのあっせんの仕方まで、その仕方が不正な行為をさせるというようなことまでの内容を含むものではございません。従って、具体的にいえばそういうことでございますが、法律用語として私どもが解釈しておりますのは、特定な事項を依頼する、そしてそれを承諾することが「請託ヲ受ケ」という解釈になるのでございます。
  157. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 そうしますというと、その次にある「職務上不正ノ行為ヲ為サシメ又ハ相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク斡旋ヲ為スコトノ報酬トシテ」ということでありますが、そのあっせんをするということと、それからそのためのわいろというものになるわけでありますが、その二つの関連は、請託の内容によらないでもいいということになると、その請託者と、それから請託を受けた人との間の何かやはり話し合いでもなければ関連が出てこないと思うのですが、そこはどうなんですか。
  158. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) さようでございます。頼んだ人、多くの場合に贈賄者でございますが、贈賄者の方といたしましては、その報酬として提供した利益が不正な行為をさせるようなあっせんをしてくれた報酬であるということを認識していなければ、贈賄罪としては成り立たないのでございます。従って、例をあげて申しますと、税金のことを頼んで、ぽんと初めにこれはお礼でございますといって金をやったという場合で、その結果、税金は負けてもらったということになりますと、その税金を負けてもらったいきさつが、請託を受けた公務員が、権限のある税務官に対してどういうような働きかけをしたかということについて認識がなければいけない。その認識といいいましても、不正な行為をさせるというような働きかけをしたという認識がありませんと、その場合には犯罪にならぬものであります。従って、そういうぽんと先へ金をお礼としてやったような場合には、犯罪の成立を認めることが困難な場合が多かろうと思いますが、まず初めに、税金のことを頼みまして、その後、請託を受けた公務員がいろいろ手を尽した、こういうふうにもやってみた、ああいうふうにもやってみたといっていろいろ話を聞いて、先まで骨を折った結果、税金を負けるという結果になって、これは非常にお骨折りを願ったので、お礼としてお金をやったということになりますと、その話を聞いた中に、その話の中に、不正な行為をさせるようなあっせんをしてくれたのだなということが認められる、そういう認識を持つに至ったと認められるに至ったときは、その行為は贈賄者としても不正の行為をしてもらった報酬として金を提供したのだということの認識がある、そういうことになるのでございまして、贈賄罪も成立しますし、一方、請託を受けた人が税金の働きかけをしました場合には、税務官吏としては職務に違背するような行為をしてもらった結果、税金を負けてもらったということでありますと、その人も収賄罪になると、こういうことになるわけでございます。多くの場合、従って、報酬はあとからくる場合に犯罪の成立することが多くあるというような次第でございます。
  159. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 非常にそこはそうするとデリケートな問題になりますが、請託者の方では、別段不正の行為をしてくれというところまでは具体的に考えておらぬので、これは税金を一つ安くしてもらいたい、同じ安くしてもらうといいましても、不正な行為をせぬでも安くしてもらうということもあるわけでございますが、そういう考えでもって頼んでおる。ところが、公務員の方では、何もそれに答えないで、よろしいといって引き受けて金をもらった、こういう場合にはどうなるのですか。
  160. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 御設例の場合には贈賄も収賄も成立しないと思います。もう少し補充的に申し上げますと、請託者、頼む方が、普通は悪いことをしてやってもらいたいというような頼み方をしないのが普通だと思います。しかし、税金を負けてもらいたいという意思だけは通じておるわけです。その依頼を受けました公務員が、税務官吏と若干の話し合いをしてみたところが、これはもうとても依頼者の希望に沿うような方法はだめだ、だからして、利益を少くすることの認定をしてもらって、そうして税金を下げてもらおう、そういうような一つ手を入れてくれないかという頼み方をして、そうして、それはそういうふうにして上げようということから不正というものが行われたといたします。そのことを贈賄者のつまり請託者の方に、こういう方法で骨を折って上げましたということを言わないために、贈賄者が何もそういう事情を知らなかったという場合には、贈賄としては成立いたしませんし、収賄の方はそういうことをやったということでありますと、収賄者の方はある場合には、報酬という意味が、向うは認識がないためにはずれますけれども、こちらとしては、これだけのことをしてやったというそのことに対する事実に基いて、お礼をくれたということの認識を持つ場合には、収賄者の方は成立する場合がある、こういうことでございます。
  161. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 そうするというと、あっせんをなすことの報酬として収受するというのは、収賄者のというか、公務員の方には、自分の腹の中でそういうことの報酬として収受するということになれば収賄罪が成立するが、請託者の方では、これは言葉の上でははっきりとそういうことをしてくれということは言っておらぬが、とにかく税金を安くしてもらいたいということを頼む以上は、どの程度にどういうことをしてくれるかということは、これは公務員にまかしておるわけなのです。自分はそこまでは指図しないが、あるいはどういう不正なことを頼むかもしらぬというような場合であっても、これは贈賄罪は成立しないことになるのですか。
  162. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 事柄によるのでございますが、たとえば、この予定価格をちょっと調べて教えてもらえませんかというような頼み方をしますと、予定価格をあらかじめ知るというようなことは、事柄自体が違法なことなのですが、そういうことをもし贈賄者が頼んだといたしますれば、そのお礼として金をやったということになりますと、これはもう贈賄、不正な行為のあっせんをしてもらうと頼んだと同じことになるのでございまして、そういう場合には、はっきりと贈賄が成立するし、また、そういうことをやりました公務員は収賄罪が成立するわけでございます。しかし、事柄によりまして、たとえば税金を負けてくれ、税金を少くしてもらいたいという依頼のような場合には、ある場合には単なる自由裁量の行為である場合もありますし、あるときには、法律義務違反になる場合と、こう二つあるわけであります。従って、自由裁量行為のような場合でありまするならば、これは贈賄も成立しませんし、あっせん収賄も成立しないのでございますが、そうじゃなくて、義務違反になるような場合、つまり、税率というものはもう法律できまっているわけですから、その税率を何%かけるというやつを率を変えて適用してもらうというような頼み方をする場合、これはもう違反であることは間違いないのでございますが、その税率は変えないけれども、そのかけます基礎になる利益、その数字を動かしてもらうというようなことになって参りますると、これは自由裁量行為の場合と、どうしても利益を認めなければならぬものを利益と認めないというような取扱いとはいろいろあるわけであります。そこらの事実関係を見きわめませんと何とも言えないのでございますが、そこらの話し合いをして、お互いにその間に義務違反のことをさせるのだというようなことが、認識か両方に出て参りますれば、両方とも、贈収賄とも成立する。しかしながら、収賄をした方ははっきりそういう認識を持ったのでありますけれども、贈賄する方の側にその認識において錯誤があるような場合には、刑法の錯誤論が適用になりまして、事実の誤認であるということからして、犯意を持たないとみなされる場合には贈賄は成立しないという結果が出てくるのでございます。
  163. 小林英三

    ○小林英三君 今の棚橋さんの御質問に対してあなたの御答弁がありましたが、依頼者がある公務員に依頼して、たとえば、税金なら税金を安くしてもらいたいと、そうすると、その頼まれた公務員が税務署員に頼んで、まあ場合によったら自分では不正だと、こういうことを頼んだら不正だというようなこともして税金を負けてもらった。しかし、結果、まけてもらってももとの依頼した本人がそういう途中の経過については全然認識していない場合には、これは贈賄にならぬというお話ですね。そうすると、今度あれですか、依頼者の請託を受けた公務員として、場合によったらそういう一つのケースによっては収賄になるかもわからぬ、こういうのですね。そうすると、収賄になるとかならぬとかいう問題は、請託を受けた公務員の、中間の人は、これは決しておれは不正を頼んだんじゃないのだと、しかし、実際上から見れば不正だというような判断がなかなかむずかしいのじゃないですか。
  164. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) その判断が非常にむずかしいのでございますが、これは通常きわめて社会常識上、社会通念という言葉をよく法律家は使いますが、社会通念に照らしましてけしからぬという感じを持つような行為をしたというそれだけの認識がありますればいいわけなんで、錯誤はそういう場合にあり得るのでございます。非常にむずかしいのでございます。自分は正当だと思ったけれども、客観的に見れば違法だというような場合があるわけでございますが、その自分の感じと客観的な違法との食い違いでございますね、この食い違いはいわゆる刑法の錯誤論ということで、このあっせん収賄に限らず、犯罪一般に勘違いということがあるわけですね。その場合に、犯意を阻却するという場合には犯罪は不成立になる。で、犯意を阻却しないことがある。で、事実の錯誤、事実の間違い、勘違いというのはこれはもう犯意を阻却するというふうに一般に解されておりますが、法律の錯誤、そういう法律があるのは知らなんだというような場合には、今の通念で、自分はどうもちっとも法律は知らぬけれども、こういうことは社会通念上やってよくないことだという認識がありまする場合には、犯意があるというふうに見られるのであります。まあそういう理論でその条文は解決するほかないのであります。
  165. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 この刑罰ということになるには、つまり犯罪が成立するためには、行為の外形に現われたところが法律の条文に適合するかどうかというので判断をするのであって、その人の心の中の、意識の中のことをそんたくするというのはできないわけだと思いますが、今お話のように言うというと、請託者が口の上では、税金を一つ負けてもらいたいと、こう言ったが、その腹の中で不正の行為をしてくれということまで含んでいるのか、あるいは不正の行為などはしてもらいたくないのだ、ほかに適当な方法でやってもらいたいのだというつもりであったのか、それはわからぬ。それを請託があったか、なかったかという、つまりいえばこの不正の行為をなさしめ、または相当の行為をなさざらしむべく頼んだというふうに判断するか、それは一体口で言わなければ判断ができないわけじゃないですか。
  166. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これはまあ犯罪ということになるわけでございますが、この犯罪と申しますのは、ここにもありますように、構成要件と申しますか、請託を受けて不正の行為をするようにあっせんして、その報酬としてわいろをもらったのは、これは構成要件でございますが、この構成要件に該当する行為がなければ罰せられないことは、これはもう刑法の大原則でございますが、ただ、その構成要件に該当するような行為があったといたしましても、なお、犯罪は成立しないのでございまして、さらに犯罪が成立しますためには、犯意があるとか、罪を犯す意思がなければいけません。それとまた、その犯した人が責任能力者であるということが必要でございます。そこで犯罪とは有責——責任があり、かつ、違法な行為である、そうしてその構成要件に該当する行為が犯罪になるのだというふうに、まあ理解されるのでございまして、今の、自分がそういう認識があったかどうかということは、罪を犯す意思と申しますか、犯意があったかどうかという問題で議論をされる事柄でございます。で、犯意があったというためには、ある事実を認識しておる、法律のことはともかくも、ある行為が不正な行為である、不正な行為に該当する、つまり公務員の職務に違背するようなことのあっせんであるということの認識を持っておったかどうか、その判断はこの犯意の理論として普通一般の犯罪について言えることでございますが、そういう犯意論として議論をされる問題でございます。
  167. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 普通の人が請託を、まあ税金を安くしてくれというような請託をする場合に、そういうふうにはっきり、不正なことをしてもらいたいと頼んだという、犯意を持っておる場合もあるでしょうが、多くの場合には、何とか便法を、そこにいい方法があるだろうから、一つ御配慮を願いたいという、きわめてばく然として、そういうその認識のない場合が大部分じゃないかと思うのでございますが、そういう際はどうなるわけなんです。
  168. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 不正なことをしてもらいたいというふうなことを普通は考えないと思うのでございます。まあとにかく自分は税金を負けてもらいたい、これではやり切れないのだと、何とか先生のお力でというような頼み方をするのだと思います。で、そのことだけでは、かりに負けてもらうという結果が出ましても、そう思っていただけでは、今の不正行為をしてもらう、不正な行為をするようなあっせんをしてもらったのだという認識があったとは言えないと思います。しかしながら、その働きかけをしたいろいろな事実を聞いてみて、努力の跡を聞いてみるというと、なるほど、そういう事実を知っておれば公務員としてはすまじきことである、すべからざることであるということが、そういう認識を持つに至るであろう。つまり、社会通念上そういうふうに認められるような場合には、犯意があるということになるわけでございます。
  169. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 請託者の方では、そこまでやってもらうという気持もなく、ただ、ばく然と頼んだのであるが、しかし、公務員の方では、別にそのとき約束をしたわけでもないが、自分の意識のうちで、考えのうちでそれを発展さして、自分でこういうふうにしたらば請託を受けた目的を達することができるだろうということから不正のことを考え出して、第三者の公務員にその不正な働きかけをした、こういうような場合には、周囲の状況から見ると、いかにも請託にそういうことを頼んだように見えるが、しかし、決して請託者にはそういう意思がなかった。こんな場合には、何を標準に、請託者がそういう犯意を持ってやったかどうかということを判断するんですか。
  170. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) そういう場合には、請託者、つまり贈賄者の方でございますね、その方には、不正な行為についての認識がありませんから、贈賄罪にはならないわけでございます。ところが、頼んだときは不正なことなぞは何にも言っておらないのでございますけれども、頼まれた公務員が、いろいろやってみた結果、範囲をだんだん拡張して、今おっしゃる通り、不正な行為にまで及ぶような強い頼み方をしたという場合に、それらの事実をその後になって請託者にいろいろ話をして聞かせるという場合があるわけでございます。いやそんなにまでしていただいたんならこれは少しのお礼では相済まぬということになるかもしれないのでございます。そういう話を聞いた結果、なるほどそういうことをやってくれたのかというその考え方の中に、今判断しますのに、社会通念上、役人としてはしてはならぬことまでもしてもらうように頼んでくれたんだなあということがわかる事情がありますならば、その場合には認識がある、不正な行為についての認識が後になって出てきた、そしてその認識に基いて、そんなにして下さったんならということで、お礼を出したということになりますと、それはわいろという報酬として出したということになるわけでございます。
  171. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 私はお聞きしたいことは、今のことをほかの言葉で申すと、請託を受けた公務員の方では、全然、これはこういうふうにしたらいい——この第三公務員の方に、こういう不正なやり方をしてくれと言って頼めばいいということは考えても、それを、心理留保というか、何も口に出さない。こういうふうにやるんだということも話さない。自分一人で一人合点している。そうしておいて、この第三公務員にそういうことを頼んだという場合は、いかにも周囲の事情は初めからそういうことを考えて請託をして、そうして公務員はそれを承知してそのあっせんをなしたと、こういうふうにとれる事情であるけれども、事実は、請託者とそれから公務員との間にそういう意思の連絡もなければ、断ち切られておるわけでありますね。そういう場合に、これは一体犯意があったかなかったか、請託によってやったことかどうかということは、私は判断する法がないと思うんですが、どうなんですか。
  172. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) そういうような今お示しのような場合ですね。請託というのを、まあ不正な職務行為ということまでも内容に含んでいないという解釈をいたしておりますので、その請託を受けているときには、ただ、まあこういうことをしてもらいたいと、それが、心のうちには、あるいは不正なことでもしなけりゃとてもできぬことだとは腹の中に思っておるにいたしましても、口に出して言うときには、ただ、税金を負けてもらうように一つお願いしたいんだというだけのことを言っておる、という場合でございますね。ところが、その依頼を受けた第一の公務員が第二の職務権限のある公務員に対して、何某の税金を負けてやってもらいたいんだ、何とか少くなるように御配慮願いたいという頼み方をしただけでございますれば、これはもう全然本件のあっせん収賄にもあっせん贈賄にも当らないのでございますが、話をしてみたところが、とてもなまなかなことでは税金は負からぬということがわかりましたために、それじゃどういうふうな手段を講じて負けるようなふうにするかというようなことで、いろいろ強くも頼み、いろいろ手を変え品を変えて頼んだ結果、それじゃほんとうは百万円の利益があるのだけれども、利益が五十万円しかないということにうその査定をして、そうして五十万円にかける税率によって算出した税金を何某のために決定するというような措置をとってもらったということになりますと、その事実は知っているわけです。その苦労したということは、第一の公務員は知っておるわけです。そのいきさつを請託者に、こういうようないきさつで君は負けてもらうようになったんだということを知らせた場合に、請託者の方では、なるほどそれでは第一の公務員が第二の公務員に対して不正な行為をするようにあっせんをしてくれたのであるということの認識がそこへ生まれてきます。その認識に基いで、それほどまでにやっていただいたんならば相当多額なお礼をしなくちゃいくまいというのでお礼を出した、そうしてそれを第一の公務員が受け取ったということになりますと、あっせん贈収賄とも成立する、こういうふうになるのでございます。
  173. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 えらいくどいようですけれども、請託を受けた公務員は、その請託者に対してそういうことを何にも言わない。全然自分で一人合点、自分の腹の中で考えておる。腹の中でやり方を考案してそうしてこういうことをやったということは、どういうことになりますか。
  174. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) あとの工作の模様を請託者に話さなかったという場合には、二つある。そういう場合には、罪にならない場合となる場合とある。罪になりません場合は、事柄の性質上、自由裁量行為のようなものであります場合には、何も話してなければ、あっせん収賄罪も贈賄罪も私は成立しないと思うのでございますが、先ほども例に申しましたように、それが法律に違反するかどうかは知らぬけれども、とにかく競争入札の予定価格を知らしてもらいたいんだというようなことをもし頼んでおったとしますと、そのこと自体が職務違反をなすこと以外には実現する方法がないわけでございますから、そういう場合には、あっせんの実情を詳しく話さなくても、贈賄罪も成立すると思いますし、収賄の方も成立する、こういうふうに考えておるのでございます。
  175. 小林英三

    ○小林英三君 関連して。そうすると、今税金の問題等の話がありましたが、たとえば、ある地方の、地方団体の団体長でもだれでもいいですが、ここに道路を作ってくれ、あるいはここに橋梁を作ってくれ。ほかにも競願がたくさんあるかもしれない。そういう場合には、請託をする方の方は、たとえば、ここへ橋をかけることが一番正しいと考えている。しかし、上の方から公平に考えたら、こっちの方が正しいということになっているかもしれない。しかし、本人は、ここへかけることが一番正しいと思って、ある所にぜひかけるように通してくれ、こういう場合に、そこになった、たとえば、建設省なら建設省の方でなったというような場合には、請託した本人は、ここは正しいと思っていた場合には、たとえ大所高所から考えまして正しくなくても罪になりませんか。
  176. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 競願の場合、それが決定をいたします建設省の方で自由裁量によって橋をかける、選ぶことができるという場合には、しょせん橋梁は一つかけようという場合で、二カ所から競願がある場合には、それぞれが自己の正当性を主張するでございましょうから、一つに決定します場合には、許可が却下になった方からは不当呼ばわりあるいは適当でないというような意見がむろん出ると思いますけれども、橋梁を選ぶことについて、自由裁量として決定をし得る立場におる建設省の役人が、自由裁量権に基いて決定をしたという場合には、不正の行為をさせるようにあっせんしたことになりませんから、本件には該当しないと思います。
  177. 小林英三

    ○小林英三君 いや、そこが非常にむずかしいところだろう。自由裁量とおっしゃいますけれども、建設省ではどっちにするかわからない、こっちがいいという方がいいと、こういうふうに建設省は大体方針をとっておる。そこへもっていって、ある県からこういうふうに頼まれて、いやこっちがいいのだというのでこっちになった場合、頼んだ人はこっちにすることの方が正しいということを考えている。しかし、建設省では、最後に有力な公務員に頼まれたために、こっちにきめようと思ったやつがこっちになった、これは自由裁量じゃないですね、変更したんですから。そういうような場合においても、頼んだ、請託をした方の方が、こっちが正しいのだ、不正なことを頼んだのじゃない、こう考えた場合にはどうでしょう。
  178. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) そういう場合には、自由裁量行為でないという御説でございますけれども、なるほど建設省は甲のところへ橋をかけることを予定しておったといたしまして、その後、有力な人から頼まれたために乙の方に橋をかけるように変更したという場合、これが常に職務違背行為だとは私言えないと思います。有力な人が言ってきたから、今まで気がつかぬところに気がついたという場合もあり得るのでございまして、もう甲のところ以外にはかけることが法規上許されないとか、あるいはもうすでに競願者として許可になっておるとかいう特殊な事情がございますれば、もう乙にかけることは建設省の役人としては職務違反になる、こういう場合でございますれば、有力者から頼まれて乙の方に決定したということは、その点において不正な行為をしたということになると思いますが、そうでない場合には、自分らが甲と思ったのは浅慮のいたすところであって、人から言われてみると、なるほど乙の方がいいということになったので、乙の方に変更したと必ず建設省の役人は言うでありましょうし、また、そう見なければならぬ場合もあると思います。従って、客観的に甲がいいのだというふうには、これはなかなか断定しがたい。そういうところは法的根拠によって判断をするほかないと思います。
  179. 小林英三

    ○小林英三君 その場合には、報酬をもらっても罪にならぬということですね、結論として。
  180. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 本法案のもとにおきましては、罪にならぬというふうに解釈されます。
  181. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 それでは請託を受けて、そうして受けた方ではいいとも悪いとも、やるともやらぬとも、何も言わぬで、大きく合点してよろしいというようなことで金を取っちゃう、あと何もしない、その場合はどうなりますか。
  182. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは詐欺になる場合がありますが、しかし、積極的に相手を誤信さして金を受け取るという関係がなければ詐欺にもならぬのでございますが、そういう場合には、むろんあっせん行為がないわけでございますから、構成要件の一部が欠除しておるわけで、構成要件に該当しないと思います。外形的な行為としても構成要件に該当しない、従って、犯意や責任を論ずるまでもなく犯罪にならないのでございます。
  183. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連。そうならないのじゃないですか、あっせんをするということを言うておれば、実際あっせんしなくても詐欺的な行為にはなりますけれども、詐欺罪の要件はまた別個にあるから詐欺罪にならなくても、あっせんをするからと言うておれば、実際しなくてもやはりこのあっせん収賄罪にかかるのじゃないですか。
  184. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ちょっと私事実関係を聞き違えておりますので、神谷参事官から。
  185. 神谷尚男

    ○説明員(神谷尚男君) ただいまの御質問の点につきましては、結局、その頼まれた内容が不正なことをしなければ実現できいなようなことであるということであれば、金を取ってあとで何もしなかったとしましても、あっせん収賄罪は成立する、このように解釈しております。
  186. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 あっせん行為がなくても……。
  187. 神谷尚男

    ○説明員(神谷尚男君) あとで何もしなくても、その不正な行為をさせるようなあっせんをしなければその内容が実現できないような事柄を頼まれたとしますならば、そこで金を受け取った際に犯罪は成立する、こういうふうに解釈をいたしております。
  188. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 ちょっとお伺いしますが、そういう悪いことをしてくれというわけではない犯意のない善意の請託をして、そうして片っ方では何とも言わないで、よろしいというので金を取ってしまった、あと何もしない、それはどういうふうになるのですか。
  189. 神谷尚男

    ○説明員(神谷尚男君) そのような場合には犯罪は成立しないということであります。
  190. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 何にもならない、お金の取り得ということになる。
  191. 神谷尚男

    ○説明員(神谷尚男君) まあ詐欺罪になるかならぬかということは別問題であります。
  192. 小林英三

    ○小林英三君 そうすると、構成要件というものが三つそろっていなくちゃならない——まあ名前は申し上げるのははばかりますが、かつての昭電問題等は、これは別に悪いことをしてくれと頼んだわけじゃないと私は思う。そういうような場合には、報酬をもらってもあっせん収賄にひっかからないということですか。
  193. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 一審の判決ではまああっせん収賄の規定があればというようなことをその判決の中に書いてございましたが、これはその当時の戦刑法の中に、官公署の職員がということで規定してございました。あの規定をふんまえての判決だと思いますが、高裁の判決におきまして、あっせんということをこの判決は認めておりませんので、名刺を渡したというのはあっせんじゃなくて陳情の糸口を作ってやっただけなんだというわけで、あっせんの行為があったというふうに認めておりませんので、あっせん収賄、本件にももちろん当らないのでございますし、そういう認定をいたします限りにおいては、戦刑法のあっせん収賄罪の規定が存置しておったといたしましても、触れないということになります。
  194. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは私あとからぼつぼつ聞くつもりでいた問題ですが、ただいまの小林さんからのお尋ねに対して昭電事件の判決にお触れになったわけですが、昭電事件の第二審判決では、そういうあっせん収賄に関する問題は全然触れておりませんか。
  195. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 第二審判決におきましては全然その点については触れておりません。もっともただいま私どもの手に入れておりますのは判決要旨集ということになっておりまして、その要旨、これも相当膨大なものでございますが、その要旨だけでございますが、判決の原文はまだできておらぬようでありまして、それの方はどうなっておりますかわかりませんが、判決要旨には出ておりません。
  196. 亀田得治

    ○亀田得治君 昭電事件は、これはあっせん収賄罪が、こういうふうに世論が盛り上ってきたやはり一つの要素でもあったと思いますし、昭電事件の判決判決と言いますけれども、これは非常に膨大で、なかなかお互いに研究できないわけです。不十分な分析で無責任なこともこれは言えないわけですが、至急あなたの方で事務当局に整理をさせて、あっせん収賄に関する部分についての問題点を、昭電事件の判決との関連で問題になるような点を至急整理してもらえませんか、私どももやっておるわけですが、なかなか忙しくてそこまで手が届かないわけですよ。私一部専門員室からお願いをして、東京高裁にあるものを二、三日借りたわけですけれども、なかなかできないわけですが、あなたの方でそういう整理を今晩中、今晩じゃなかなかできませんですが、あすにでも命じて、簡単な要旨ができ上るようにしてもらえませんか、そうじゃないと、それを基礎にして議論をしないと……、で、私としては、せっかくこういう法律ができる以上は、世論の批判を受けた現行法では無罪になっても、そういうものについても一体どうなるのかということは立法過程ではっきりしておくべきだと思うのです。そういうものもひっかからぬほどのゆるい法律なら法律だという、しかし、世の中の人は、できるのだから、まあ相当程度ひっかかるのだろうと、こう思っている。中途半端なものならその中途半端のものでいいから、まあいいとは言わぬが、仕方がないから、そういうものだということをはっきりしておく必要がある、そういう意味で、あっせん収賄との関連における部分だけでいいんですから整理をしてもらいたい。
  197. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは整理をいたします労は決していとうものではございませんが、いかがでございましょうか、この部分に関するものは、私ども非常に関心を持って判決を読んでおりますが、今の高裁の判決につきましては、今お答えしましたように、あっせんという言葉は一カ所も出ておりませんので、今の名刺を渡したというようなことを若干認定しまして、それに対する判旨を見ますると、要するに、陳情の道を開いてやった、つまりあっせんの糸口を作ったにすぎないのであって、あっせんには当らないということを判旨としておるのであります。で、一審の方の判決は、これはあっせん行為と見ておるのでございますが、そのあっせんは、今申しましたように、戦刑法のあっせん行為があればそれに当るのであるが、それがない以上は該当する法条がないということを言っておるのでございまして、整理をいたしましても、あっせんに関する部分につきましてはその程度になろうかと思うのでございますが、なお必要でございましょうか。
  198. 亀田得治

    ○亀田得治君 だからそこで、判決では、あっせん収賄の規定がないから処罰できない、こう言うておるのでしょう、第一審判決で。だからそこで今度は、あっせん収賄罪の規定を作るわけだ、作るのだが、この規定でやればそれが当てはまるのかどうか、これは裁判所が言う必要はない、現行法ではまだできていないのですから、現在まだこの法律はできていないのですから、そこまで言う必要はない。しかし、立法を準備するわれわれとしては、これは大きな問題です。そこの点の、裁判をするわけじゃありませんから確定的なことは言えないかもしれませんがね、法務当局としての見解を出してもらったらいいんです。
  199. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) その点の見解につきましては、衆議院の法務委員会でも御質疑を受けたのでございますが、もちろんそういう法律があるということを前提にして捜査もなされておりませんし、従いまして、その真相のほどはもとよりわかりませんけれども、判決に表われているところから見ますると、私どもとしてはこの法案ができましても、それによって処罰することはできないのではないかという意見を実は申して参っておるのでございます。
  200. 亀田得治

    ○亀田得治君 私も大体そういう感じを判決を見て持っているんですがね。そうすると、これは私は世論の批判にこたえておらないと思うんですよ。これはどうですか。法務大臣の問題だ、これは。
  201. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) これは非常になまなましい、また、世間を騒がした問題でございますから、この問題をあまり論議することを私はまあ差し控えたいと思いますが、私はもとより判決の要旨も読んでおりません。ただ、承わったところによりますと、名刺を渡したということだけではあっせん行為はない、こういうことでございますれば、もうあっせん収賄という、その範疇に入らないのですからして、先ほどのお話しのありました通り、戦時刑法でも果して入りますかどうですか、しかも事実の認定におきまして、あっせんなしということであれば、もう非常に縁遠い意見になるのではないかというふうに感じておるわけでございます。
  202. 亀田得治

    ○亀田得治君 これはちょっとついでに関連して申し上げたことですから、一応この程度にしておきますが、先ほど棚橋さんから御質問になった点ですね。これも後ほどもう一度繰り返すのはめんどうくさいですから、ついでに私もう少しそこを明らかにしてほしいと思うのですが、請託ということの解釈を私は法務省は非常に無理をしておられると思うのですね。これは無理をして、この職務上不正の行為であるものもないものも請託に含めておる、こういう無理な解釈をするから、たとえば、先ほど設例のような場合に、贈賄者と収賄者が食い違ってくる。これは犯意の問題で御説明されておるわけですが、しかし、請託という解釈を、そういう広い解釈をしなければ一致する場合が多くなるわけです。ほとんどが一致します。だからそういう請託を広く解釈することが私はどうも間違いだと思う。せんだって團藤参考人にも聞いたけれども、何もそういう広く解釈するについて理論的な根拠もそうあるわけでもない。御説明を聞いておっても、確かめたけれども、大した理論的な根拠はない。まあそう思うのですと——しかし、そのうちまた学説を変えるかもしれませんですよ——そういうことをおっしゃっておるくらいなんでね、私はできるだけこういう法律はもう少し広く、いろいろな問題に適用できるように、もう少ししぼり方をゆるくしてほしいとは考えておりますよ。おりますけれども、この法律の条文からいうと、この請託というものはやはり狭く解釈せざるを得ない。ともかくこの百九十七条ノ四の主体というものは、職務上不正行為をなすようにあっせんすることです、そうでしょう。そうして金をもらうこと、これが主体なんですから、主体がそうなら、それじゃ上の方にちょっと置いてある請託というものをどう解釈するかといえば、その主体のことを頼むということにこれは当然はね返ってきますよ。下の方がこういう職務上不正の行為とか、こういうしぼりがなければ上の方だってばく然としておっていい、それは現在のわいろ罪についての判例ですね、現在のわいろ罪の判例は、現行法についてのこれは判例ですから、それだけでこの請託は全部含むのだ、これはちょっと論理一貫しないと思うのです。私は、だからそういうことをそう團藤さんも根拠には結局はされない、ただそう思うというだけで、結局は法制審議会ではそういう解釈でみんながきておるから、最後には自分も同意したから、それをいやしくも翻すわけにいかぬという私は気持だろうと思うのです。すなおに解釈するとどうしても私はそうとれるのです。私のように解釈すると、この法律は一そうこれは適用できない、ますます。できないからこんな請託なんというものはお取りになったらどうか、法律が私はできる以上は厳密に解釈しなければいかぬのです。だから、そこに問題があるので、どうしても法務省の方じゃできるだけざる法だとの非難を受けぬようにということで、請託を広く解釈しているのは、これは無理がありますね、ちょっと。それから一橋の先生でしたか、あの先生も、請託はやはり私どもと同じような解釈、私は、何も議論をしない人が、あの法制審議会等で議論をしてきておらない、そうして、どこにそう片寄った立場の人でもない、ぱっと見てそういうふうに受けとるという以上は、法務省の解釈は私は無理だと思うのです。これは私はある程度あちらこちらで聞いてみるのですが、なかなか意見が分れるのです。だからこれはまあそういう立法過程で起きている大きな疑義ですが、もう少し何か明らかにする方法、だれがこれを明らかにするというわけでもない、結局は最後には、裁判所が適用するときにどっちかに判断するわけでしょうが、そういうあやふやな状態でこんな大事な法律を通していくということは、ちょっとやはり普通じゃないと思うのです。
  203. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 亀田先生の御指摘の点は、先般の参考人の植松教授も述べられたわけです。團藤教授も、その根拠はわからぬけれども、まあ、そういうふうに将来なるかもしれない、今のところでは自分は、政府の解釈と同じ解釈を持つという御結論であったようであります。この点は、私どもは実は内心無理に解釈を広げ、ここでほんとうは狭いのだけれども、広く解釈しているというつもりはないのでございまして、この判例によったというのは、判例といってもこういう法律がないのだから、その判例をもって範とするに足らぬということになるのでございますが、私ども原案を作りますときから、その点につきましては、もう特定事項の依頼ということで部内には異論は少しもございませんでした。それからなお、法制審議会におきましても、その点について、植松教授がいち早く新聞にその意見を発表されたと思いますが、そんなことで弁護士関係委員の方からだったと思いますが、その点はどうかという御質疑もありまして、まあそこに團藤教授が、小野顧問とは学説その他の系統も違っております江家教授などもおりまして、江家教授などは、ジュリストにもその意見を発表しておられますが、「請託の特定事項は、必ずしも不正又は不当の職務行為であることを要しない。請託事項は適正又は適当の職務行為であっても、斡旋者が不正又は不当の職務行為をするように斡旋したときは、本罪が成立するのである。この点は、会社取締役等の収賄罪に関する規定(商法四九三条、有限会社法八一条等)で」もしそういうものを含む場合には、「不正の請託を受け」不正という字を上に冠しておるのと「解釈上のちがいがあるわけである。」というふうにこれはジュリストにも書いておられますが、江家教授は法制審議会の席上でも、その辺を論議された際に、同じような意見を述べられましたが、まあ、学者、実務家、そこにたまたま植松教授はおりませんでしたが、ほかの方ではこの点について異論を差しはさむ方はありませんでしたので、私どもとしては、これで不正の事項までも請託の中に含むのだという解釈にはならないというふうに今信じておるわけでございますが、これはまあ仰せの通り、最終の解釈は裁判所にあるわけでございますので、裁判権がどういう解釈を出すかわかりませんが、まずまず、この今の先ほど申したような範囲内で解決がつく事項でございますので、また、事柄からいいましても、あっせんのときに不正のことまでもあっせんに頼むというようなことは通常あり得ないことでございます。先ほど申しましたように、頼むときはある特定の事項であるのでございますが、その間に自然に発展して不正な事項にまで及ぶという場合がある、そういう場合に不正なことにまで及びまするために報酬も金額が大きくなってくる、そのようなあっせん行為は非常に悪質なものであるといったような考え方からこういうふうに解釈もし、規定もいたしたのでございます。  ここにいう請託というのは、そんな深い意味があるのではなくて、わいろ性を認定します場合に、わいろというのが、まあ、ある依頼した事項の対価たる関係に立ってこないと、その間の立証をしませんと、不法の報酬だということを裁判で判断してもらうわけにいかないわけでございまして、なるほど起訴状には、よって請託を受けというような加重条件で起訴することは、量刑の関係からそこまでやる必要がないというので、実務の方においては、そういうものを定めておりますけれども、現実に裁判において審理をされておりますのを見ますると、このあっせんが、いつどこでどういうふうな状態でなされ、それがどういうふうに発展していって報酬と結びつくかという因果関係は、これは綿密に捜査もしますし、裁判の過程においても審理されて初めてわいろ性というものが認定されておるという実情でございまするので、ことに単純収賄と違って、あっせんという通常伴う要素であるというような点からして、こういう字を入れたのでございますが、特にこれがために強いしぼりをかけるという、立案者としてはそういう感じを持っていなかった次第でございます。
  204. 亀田得治

    ○亀田得治君 ある特定事項を頼むという判例で認められた解釈ですね。これは私はいいと思うのです。それは事項が特定しておらなければならぬという意味で認められることなんです。そのことはもう今までも収賄罪の規定でもそうだし、このあっせん収賄罪の規定ができたって私は同じだと思うのです。だから、そういうことであって、その特定事項が不正のものであるかないかということの解釈は、これは条文によってやはり違う。それはそうですよ。今までの贈収賄の規定では、こういう今度のような不正の行為ということを要件にしておらぬから、その特定の事項ということの内容が広いのであって、今度は処罰する対象の本体がこういうふうに狭くなっておるわけですから、従って、その特定という考え方をまじめに考えれば、ここに特定していなければいかぬわけです。この不正の行為ということに特定していなければいかぬ。しかし、その場合に、さっきからあなたおっしゃるように、悪いことをしてくれと、こんな頼み方はしなくてもいいのです。そうじゃなしに、この条文でいわれておる対象になるような行動ですね、そのことをやはり頼まなきゃこれは特定じゃないんですよ、この場合の特定……。特定ということが判例上認められておるといえばいうほど、この条文の場合には不正な職務ということを内容としたものに、特定したそういう依頼者がなければ、今までのむしろ判例の精神とは矛盾しますよ。必ず弁護士が、それは従来の判例を援用して主張すれば、そういう主張に私はなってくると思うね。だから、私は何も従来の判例などを、それを否定する立場じゃない。その立場に立って考えても、今言ったような解釈にどうしてもなってくるんですよ。
  205. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいまお示しのような御意見が成り立ち得ると思うのでございますけれども、まあ私、繰り返すようでございますが、これは依頼の依頼事項を特定するというだけでありまして、まあ単純収賄の職務に関するわいろの場合には、何分よろしく頼むというのでいいわけなんで、ある事項というふうに、特に特定しなくても、職務の廉潔を破る行為であるという意味において処罰される。それが特定事項で、今度は公正を疑わしめる、職務の公正を疑わしめる、また、事実歪曲してしまうという行為につながる意味において、その特定事項が加わることによって加重されるということも、これまた、違法性の点から重く考えることがいえると思うのでございます。しかし、あっせん収賄の場合には、たびたび御質疑にもありましたが、どけどけといって頼みもしないのに介入してくる場合はどうだというようなことも、私はあまりないと思うのですが、政治家のあっせん行為の中には、そういう場合もあるらしいのでございますが、まあそういうふうな場合は、むろん除外して参ろうという趣旨でございまして、要するに、ある事項が特定されて、初めて不正な行為の頼み方というようなこともそこへ出てくる、こういうようなことが一つは言えるのと、それからもう一つは、贈賄者の処罰の違法性もまた、頼んで不正なことまでやってもらったという認識のもとに報酬を出すというところに処罰価値が出てくるのでございまして、法制審議会のメンバーの中には、最高裁判所の裁判官もおりましたし、地裁の有力な裁判官もおりましたし、裁判所系統の委員も数名おったわけでございますが、これらの方々の意見はむろんこれが狭くしぼられた解釈をなさる方は一人もおりませんでしたが、かえってそういう意味ではなくて、もし事項がしぼられてないと、贈賄者と収賄者との間にまた頼んだ事項でいろいろ食い違いが起ってきて、一そう証拠関係その他において、法廷において紛争を生ずるおそれがあるので、むしろ「請託ヲ受ケ」という規定を置いた方が裁判の面においてもやりいいのではないか、だからぜひ置いた方がいいということを地裁から来ておりました委員は強く述べられております。その間の事情も速記録の中に、お手元に配付しました資料の中に入っておるはずでございますが、そういう事情で、また、政府側が説明するように、そう大して意味のないものならば、意味のないという意味において削ったらどうかという御意見も実はあったのでございますが、今言った地裁の委員の方の御意見等もありまして、やはり原案通り存置するのが適当であるという結論になったいきさつでございます。
  206. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは地裁の人の一御意見かあっても、こんなものは抜いた方がいいですね、実際は。紛争の種ですわ。どうせあってもなくっても、何らかの連絡等があって贈収賄者というものが両方にできるわけですね。あれば、結局は検察官の方で立証していかなければならぬでしょう。大へんめんどうくさいことじゃないですか。その、私、地裁の裁判官の意味がよくわからないんですがね、何でそんなことをおっしゃるか。もっとほかの意味で言われるなら多少また別ですが、何か贈収賄関係の連絡がはっきりしておるかどうかというようなことを言われたというのですが、意味がちょっとわからぬのです。
  207. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 刑事法部会の二十回会議議事速記録の中に——その間を簡単に申しましたが、詳しく出ておりますから、一度ごらん願いたいと思います。結論としまして、どっちでもいいなら抜かしたらどうかという御意見でございますが、私どもは、どっちでもいいとは思っておらないので、そういう意見があるということを申し上げたのでございます。私どもは、こうすることによって筋道がはっきりしてくる。検察に当りましても、裁判に当りましても適正な処理、疑問のない処理ができるのではないかというふうに考えておるのでございます。  なお、ついでながら、検察側の委員としましては、この規定かあるからといって、特に公判審理あるいは捜査の面において支障を生ずることはあるまいという意見を述べておられます。
  208. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは検察側のだれですか、そんなことおっしゃるのは。私は、非常なこれは支障があると思うのですがね、場合によっては。
  209. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これも速記録の中に出ておるのでございますが、たしか検事総長もそういう御意見のようだったように記憶しております。
  210. 亀田得治

    ○亀田得治君 検事総長がそういうことをおっしゃるのですかね。私ももう少し詳しく読んで見ますが……。
  211. 小林英三

    ○小林英三君 今の亀田さんの質問に関連しまして……。今の請託という字を取るとか取らぬとかいう問題、私は専門家じゃないからよくわかりませんが、雪田さんのおっしゃることはごもっともだと思うのですが、かりに請託という字がない場合を考えましても、このあっせんがあるから、まああっせん収賄罪に関連して、これもわかるんですが、ない場合でも、やはり、何じゃないですか、請託した人が、不正な行為をさすべく最初からたくらんでものを頼むという場合あるいはそうでない場合ということを判定しなくちゃならないのですね。ですから、結局この請託という字は、あってもなくても同じ意味なんですが、どうですか、その点は。
  212. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) かりに請託がない場合といたしましても、贈賄者側は不正な行為のあっせんをしてくれたという認識を持ちまして、その報酬として金品を提供する場合でなければ贈賄罪が成立しないのでございます。この不正な行為をし、相当な行為をなさざらしむるというのは、あっせん行為に対する態様でございまして、そういうように私ども理解しておるのでございます。
  213. 小林英三

    ○小林英三君 私は今御質問申し上げたのは、こういうことも考えて申し上げたのですがね、つまり、最初から、請託という文字があってもなくても、最初から頼む人が、依頼する人が不正な行為ということを考えておるということを限定して、請託ということを考えると、これは非常に判断に苦しむのではないか。だから私は今の法務省のお考えになっておるように、請託というのは、特定のものを、特定の事項を依頼するんだということだけでいいと思う。どっちみちこれは判断しなくちゃならない。初めから頼んだ人が、悪いことをしてもらいたいといって頼んだと判定することは非常に苦しのいじゃないかと思うのですが、これは亀田さんの御意見とは違っておりますが、実はそう思って聞いたのですがね。
  214. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ、小林委員の方で、ちょっと私の意見を取り違えておるような点があったと思うのですが、それは別として、特定事項でなければ、これはもちろんならない。特定事項だというから、この際、不正の行為でなければ特定事項でないという解釈、そういう解釈の方が、贈賄者と収賄者の関係が大体一致してくる。そうして、どうせこういう問題を検察官が手をつければ、贈賄者との脈絡というものは、事件全体としては明確にして行かなければいけないというわけです、請託という文字があってもなくても。だから、そういう意味で、どなたか委員の方が言われたという意味が、どうしてもそれが納得できないわけですが、もう一つ、こういう点が問題になりますね。確かにこういう問題ですから、贈賄者と収賄者というのは連絡があって動いているわけです。ところが、この文字があることによって、いつ請託を受けたかということが裁判上問題になると思うのです。請託をいつどこそこで受けて、それから以下のような行為をとった、こうなってくるわけですよ。これはものによっては、どうせそういう問題であれば、私は何回もあっちで会うたり、こっちで会うたりしていると思う。しかし、そのどの会うたのを請託と見るかということになると、それははなはだ問題ですよ。私は請託以下の行為が出てくれば、大体請託を受けてやっているに違いないと思っても、いろいろやってみたが、その請託が結局はっきり立証できるのは、実際に金をもらったあとの方ですね、はっきり立証できるのは。私はそういうこともあり得ると思う。大体の依頼者の気持はわかっている。しかし、これは何も請託はしていない。ものの説明を聞いただけである。こっちが同情して積極的にいろいろやっておった。その後に、はっきりそこで頼まれて、同時に金をもらうということになるのですがね、そういうことになると。そういう時点というのが非常にやかましくなってきますよ。これは非常に立証上の問題が私は出てくると思うのでありますが、それをどういうふうに御解釈になりますか。
  215. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいま仰せの通り、請託の時期というものは大事なことでございます。そうして請託があってから事がすべて運んで行くという意味におきまして、私もこれは一つのしぼりになるというふうに考えるのでございます。しかしながら、請託が、金をもらってからあとに起ってくるとかいったような場合になりますと、その金がわいろ性を持ってくるかどうかということは、非常に幅の広い活動をしておられる方々にとりましては、あいまいになってくるのであります。そういう意味におきまして、この想定が乱用されるおそれのないようにということは、衆議院の決議にもありますが、私どもは決議を待つまでもなく、そういう趣旨でこの立案に注意したつもりでございますが、そういう点から言いまして、ちゃんと請託の時期がきまって、それから後に事柄が発展して行って、そうして報酬として金が入ってくるという方が、事柄が明確になるということが、この罪を断定いたしまする上において、運用、適用に誤りなきを期する一つ方法であろうというふうに考えたのでありまして、捜査上さして支障がないだけでなくて、裁判上もいいということでございますならば、この請託は若干のしぼりになりましても、これは検察官が当然立証しなければならないことでございまして、このようなしぼりは当然甘受して、事柄の適正を期するということに寄与するのが、立法政策としていいんじゃないかというふうに、私どもは今でも考えておるのでございます。
  216. 一松定吉

    一松定吉君 あのね、局長、「請託ヲ受ケ」ということを入れると、つまり今、亀田君の言うように、立証の問題が非常にむずかしくなってのがれることが多いのだがね。「請託ヲ受ケ」という文字を削ったら、公務員が、「他ノ公務員ヲシテ其職務上不正ノ行為ヲ為サシメ又ハ相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク斡旋」をするということは、あっせんをするときに、これはほんとうは請託を受けるのです。どうじゃ、お前のためにこういうことをしてやるがと、あっせんをする、はい、頼みますということだから請託があるのだね。ところがそうじゃなくて、公務員が職務上不正な行為を相手になさしめる。なさしめたところの報酬としてやるときは、請託がなくても、これはほんとうは罰しなくちゃいかぬ。私がある公務員に向って、権兵衛がこういうことを考えているから、あの権兵衛のために、こういうことをしてやろうと思って、公務員に向って、権兵衛のためにこういうことをしてくれ、ああいうことをしてくれと言って、そうして不正なことをやらした。そうして権兵衛に向って、お前のために、おれはこうこうして、公務員をして不正なことをなさしめた、その目的を達したから金をくれ、こういうのは悪質です、請託がなくても。しかし、こういうことを私どもほんとうは罰したいのです。請託がなくてもね。しかし今度はその請託がなくても、あっせんをするときには必ず請託がある。私がある人のために、公務員に向って、ああいうことをしよう、こういうことをしようと言ってあっせんする。あっせんするということは、君、お前のために私はやるぞということを、やはり依頼者に言わなければあっせんにならぬでしょう。黙ってやるときはあっせんにならぬでしょう。それはどうなんですか。黙ってやるときにあっせんにならなかったならば、黙ってやるだけの仕事をして、できたときに金をもらうということになると、これは請託が要らない。今度は請託を受けぬであっせんをして、あっせんを受けるときに、頼まれぬけれども、ああいうことをしよう、こういうことをしよう、そういうことをするのはお前のためにするんだぞと、それをするより前に請託を受けなければならぬ。したあとでは請託にならぬ。だから不正な行為をなさしむべくあっせんするという、あっせんするときには、ある人のためにあることをしてやれということを、意思表示をして、それでどうぞやって下さいというので、そのときに、請託を受けたことになる。しかしながら、ある行為をしたことのお礼としてもらうときには、あっせんも何も、請託も要らぬわけですね。しかし悪質です。かえってそういうふうにこれをのがれるということになる。この法文では。そこはどうなりますか。のがれるでしょう。請託を受けぬで仕事をして、不正なことをなさしめる。おれはお前のためにこういうことをしたのだから、報酬をくれと言ってもらう。それは罰せられぬ。何にも請託を受けていないんですがね、これは。
  217. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 最後にお話しになりましたように、請託を受けなくても、勝手に不正な行為のあっせんをして、(一松定吉君「そうしてお礼をもらう」と述ぶ)そのことを相手に伝えて報酬を出さしたという場合には、その請託を受けましたと、これが構成要件になっておる限りは、悪質でありましても、それは犯罪にならぬということになります。
  218. 一松定吉

    一松定吉君 ならぬでしょう。そうでしょう。
  219. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ええ、なりません。
  220. 一松定吉

    一松定吉君 そのあっせんのときに、請託を受けぬであっせんをした、こういうのはどういうことになるんですか。
  221. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは、あっせん行為というのには、必ずしも請託は伴わぬ場合もあると思います。普通の形としては、あっせんの動機になりますのは請託でございますから、普通は、私どもは通常のあっせんの要素として請託ということを考えているわけでございますけれども、それじゃ、それは不可欠な要素であるかというと、そうではなくて、請託のないあっせん行為というのもある。あっせんとは、人と人に対して、ある人のための働きかけをすることでございますから、その動機になります請託と、頼まれて動き出すということは、その頼まれてということは、通常頼まれて動き出すのでございますけれども、頼まれなくても動き出すことはあり得るわけであります。
  222. 一松定吉

    一松定吉君 頼まれぬであっせんするというのは、どういう場合でしょう。例をあげて、具体的に頼まれぬであっせんするということは……。
  223. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これはきわめて少い場合だと思いますが、いわゆるおせっかいで、頼まれもしないのに世話をやくという場合があるわけでございます。そういう場合しか考えられないと思います。
  224. 一松定吉

    一松定吉君 その時分には、あっせんという文字を使わぬでも、その行為をなさざらしめた、あるいは行為をなした、そう言うて報酬をもらえば、やはり犯罪は成立しない。あっせんということがあったときと、ないというときと、どこが違いますか。請託を受けたときは問題はない、請託を受けぬでやるときのあっせん行為、あっせんがなくてやったときと、あっせんのあってやったときと、どこが違うのですか。
  225. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) この場合は、処罰はあっせんという行為とそのお礼、これを罰しようというあっせん収賄でございますので、あっせん行為にならない場合、つまり先の例に出ましたような名刺をやるような行為はあっせん行為でありませんので、そういうことを名刺を書いて渡したというようなことでお礼をもらったような場合には入らない。要するに、あっせん行為をすることによってその報酬をもらうことを罰しようというのが、まああっせん収賄罪の趣旨でございます。
  226. 一松定吉

    一松定吉君 あっせんしても請託がないと考えられませんね。請託があってあっせんするのだから、請託がなくてあっせんしてやったときには、やはりこの百九十七条の四で罰せられませんね、そうでしょう、そこです。だから、これはこの問題は、まあとりあえず、これだけしておいて、このあと悪ければ、あらためてどんどん次から次へ是正をやると、法務大臣や総理大臣はおっしゃるけれども、初めからこれは穴だらけなんです。
  227. 亀田得治

    ○亀田得治君 あっせん、請託の問題、いろいろこれはちょっと割り切れぬ点もたくさんあるわけですが、一応この程度にいたしておきます。  そこで、先ほど法務大臣に、検察庁法十四条の点をお聞きしておる途中で御退席になったわけですが、私の聞きたいのは、つまり今までの贈収賄規定を、もっとこれによって強化して、そして汚職追放ということに対して政府態度を一歩前進させようということで、これはきているわけです。しかし実際の中身は、すでに御批判があるように、非常に大幅に前進したというものではない、この実体規定は。だから、そこで私の、やはり法務大臣としても重点を置いてもらいたいのは手続上の問題ですね。これに対して、もう一つ国民なり一般の、これは検察官でもありますよ、相当疑念を持っておる者がある。汚職追放と言っても、やはりずっと上の方まで行くと、吉田内閣のときの前例がちゃんとあって、結局はああいうふうになってしまう。これもやはり疑いというものは持っておるのですよ。だから、そんなことはないのだ、実体法まで、こういうふうに一歩前進させてやる以上は、そういう取扱い上の問題についても、今後はそういうことはないということをはっきり私は出して行けば、そうすれば、たとえこの程度のざる法であっても、政府は非常に真剣に取っ組むことになる、こういうことになると思うのです。そういう意味で、すべての事件について法務大臣が検事総長に対して指揮できないようにするとか、そんなことを私はこの際言っているわけではないので、そういう政治的な関係を持ってくるような大きな贈収賄事件、そういうものについては、与党の問題であろうが、野党の問題であろうが、法務大臣としてはタッチしない、それはもう検事総長以下に、まかすと、こういうことを、検察庁法十四条そのものを変えることができなければ、十四条の取扱規定というものは内部的にあるわけでしょう。そういう内部の規則ででも、きめられないかということをお聞きしておるわけです。ただし、それをやると、今度はそれでは検事総長なり、検察陣が勝手なことをやって、ファッショ的になったら困るという一つの意見は別個にあります。しかし、その問題は私は別個にお聞きしたいと思う。ともかく検察庁がそんな、だからといってファッショ的にやることを何もこっちは認めるわけではない。ただ、国民に対して汚職追放という気持にこたえるには、指揮権という問題について、そこまでやはりこの際すっきりしておくべきではないか。
  228. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) ちょっとお許しを得まして……。今すぐこいという大蔵委員会の方からの要請でございますから、これは重大な問題でございますから、後刻また帰って参りましてお答え申し上げたいと思います。
  229. 小林英三

    ○小林英三君 さっき一松さんのお述べになりました点で、先に不正な行為を公務員がやって、そして、あとになって、こういうことをしてやったがどうだと言って報酬をもらったときに、あっせん収賄罪に引っかからないということ、しかし実際問題として、そういうことは珍しいことで、ある特定の村なら村の、あるいは町なら町のいろろいなことを平素聞いておった。これはやってやったらいいというので、不正とは知りながら、それぞれの官庁に働きかけて、それをやってやって、そして、お前、いつか言っておったけれども、こういうことをしてやったぞと言ってお礼をもらったという場合には、やはりこれはあっせん収賄罪ではないですか。
  230. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいまお話のような御設例でございますが、私どもはそういう場合は絶無とは申しませんが、きわめて軽微な場合だと思います。そういうようなものは、あっせん収賄罪には該当しないわけでございますが、一体頼まれもしないのに不正な行為までしてやるという場合は、まあ通常そういう場合はないんじゃなかろうかという気もするのでございますが、しかし、もちろん、頼まれなくても、政治家のような方々は、進んで国民との間のあっせん行為をするということも政治活動の一つでございまするが、そういう場合には、通常そんな不正な行為をするというようなことはないんじゃないかと思うのでありまして、あるべきものを早く促進するとかといったような、むしろ是正的な行為に出る場合があって、不正な行為をするというような場合には、もう請託を受けて初めてそういうようなことが行われるというふうに、私どもは理解しておるのでございます。設例として、いろいろな場合を考えれば、理論的にそういう場合がないとは言えないようでございますが、もうそういう場合にはこの法案には触れない。
  231. 小林英三

    ○小林英三君 では、先ほど一松さんがお話になっておったことは、自分の知っておる県なら県、町なら町、あるいは市なら市で、かねて、平素そういうふうな希望を持っておったことを自分は知っておった。いずれは、これはおれに頼んでくる問題である。喜ぶだろうということでやった結果、最後に、君はこの間非常に希望しておったが、してやったぞと、こういう場合には、やはり時期の前後はあるけれども、請託を受けたことになりやしませんか、実際問題として。
  232. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 本法案のもとにおきましては、まあ「請託ヲ受ケ」というのが最初になければならぬ、少くともお礼をもらうときに、同時に請託がなければいけないというふうに解釈されるのでございますが、今御設例のように、そういうことも頼みにくるだろうというような客観的な事情がありまして話しをしている、一部分は、もう不正のあっせんもやったのだけれども、そのうちに、まあそういうふうに働いて下さっていることを聞いて、あらためて、まあ先生、さらに一そう御尽力を願いますというようなことで話しますと、さらに一そうというあたりが、まあ請託になる、それから以後行為は、あっせん収賄罪に該当するというふうに、事実認定の問題でございますが、そういう場合もあり得るのじゃないかと思います。
  233. 亀田得治

    ○亀田得治君 それはちょっと疑問じゃないですか。すでに行為にかかっていて、途中ではっきり頼まれた、私はその場合には、請託を受けていろいろのことをしたと、こうここに書いてあるのですから、そういう場合には入らぬと思うのですよ。入るのなら入るように疑問の起らぬように、書いてもらわぬと、だから大体請託は、時点としてはいろんな行動の前になければならぬと、これは法制審議会でもはっきりしている、そうすると、どうせこういう問題を世話する場合には何回でも会うわけですよ。実際には前に受け取っても、頼まれておっても、いや、あのときはちょっと説明を聞いただけだというようなことで、なかなかずらされちゃうわけです。おれは好意的にやったのだ、何も、これは証拠も何もないわけですから、ちょっとしたものの言い方ですから、結局は、そういうことで、まあ検察庁あたりで少し心臓の強い者がのがれていく、そういうことに実際問題としてなるのですよ。請託のないあっせん行為なんというものはまれだと、あなたの方はおっしゃる、私もその通りだと思います。その通りだと思うのだが、事件になりますと、こういうふうに書いてあれば、いや、請託は何も前になかったのだよ、両方ともそう言いますよ、それは。だから、こんなものは要らぬことだと言うてくるので……。ところがだ、今あなたのおっしゃるのを聞いておると、不正行為のあっせんにずっと着手して行ったその途中で請託を受けた場合には、そこから以後のやつはあっせん収賄罪に引っかかる、こうおっしゃったのですが、それはちょっとこの法文だけでは、そういうふうには私はならぬと思うのですが。それから法制審議会でも、そういうふうな説明はされておらないと思うのですが。
  234. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私の申しましたのは、あっせん行為を、頼まれもしないで介入してあっせん行為をし、そのあっせん行為が、不正な行為にわたるようなあっせん行為があったとします。そういう話を後になって聞いて、そして、そんなにまでやっていただいて、あらためてお願いするというふうに言うかどうかは別として、そこで明示または黙示の請託があったといたします。それから以後、あっせん行為がありません場合には、これは亀田先生のおっしゃる通り、犯罪は成立しないことは明らかでございますが、そういうふうに、あらためて頼まれた以上はもっとやるというので、今までもやっていましたが、さらにまた不正なる行為のあっせんをしたというふうに事実が認められます場合には成立する余地があるということを、私は申したのでございます。
  235. 亀田得治

    ○亀田得治君 あっせん行為というものは一連の行為なんです、ずっと続いた。それを途中からこう切って、それから以後だけを持って行って犯罪の対象にする、ちょっと無理があるように思うのですがね、この法文の書き方からいくと。だから、その点はどうも局長もそういうふうに思うという程度のことのようですが、疑問ですね、なかなか。
  236. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これはあっせん行為は、非常に長期にわたってせっついた結果、目的を達するという場合もあるのでございまして、一発で目的を果すというわけにもいかぬ場合、そういう連続してずっと、こうあっせん行為があるというような場合を考えてみますと、あるあっせん行為の中途において請託が行われ、それ以後においてのあっせん行為が不正の行為にわたる場合には、やはりそれ以後の分のあっせん行為についての報酬という関係に成り立つならば、その報酬として出された金品は、わいろというふうに見て差しつかえないと思うのでございます。
  237. 一松定吉

    一松定吉君 そこでね、局長とこれは御相談ですが、この「請託ヲ受ケ」という文字があるから、いろいろな問題が起るのだ、請託を受けなかったならば犯罪は成立せぬのだ。検挙をするときに問題になるのは、捜査官が事件を依頼した者に対して、お前は請託をしたか、しなかったかと尋ね、また、行動した公務員に対して、お前は請託を受けたか受けなかったかと取り調べた場合に、前者は請託したことはありません、後者は請託を受けたことはございませんと答えたときは、請託の有無に関し立証が困難であるため、犯罪の成立を認めることが困難でありますため検挙ができぬのであります。そういう抜け道をこしらえて、こういう公務員のしたことを助けるような結果になることはありませんか。ゆえに職権を乱用する公務員をして「不正ノ行為ヲ為サシメ又ハ相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク斡旋ヲ為スコト又ハ為シタルコトノ」お礼としてもらうことが、あっせん収賄としてよくないから罰するというのなら、「請託ヲ受ケ」という文字を削除したらどうなんです。そうした方が犯罪捜査に都合がよいと思いますが、いかがですか。万一請託と文字がある方がよい、それは削除してはいけないということであれば、その理由を、われわれの納得するだけの説明をして下さい。私はこんなあいまいな、疑問を起すような文字を入れて、人から、ざる法と批判されるばかりでなく、収賄した人が法をくぐることに便利なような行動を立法者が認めて、こういう穴のある立法をしたということでは、非難を受けることは明らかであります。だから私どもは、「公務員他ノ公務員ヲシテ其職務上不正ノ行為ヲ為サシメ又ハ相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク斡旋ヲ為スコト又ハ為シタルコトノ報酬トシテ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若クハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役に処ス」と訂正することにすれば、何も問題なんか起らぬ、そうした方がよいと思いますが、いかがですか。そうすれば、あっせんの問題でも疑問は起らぬし、今の請託を受けたのが、途中で請託を受けたとかいうように、それから以前は犯罪構成要件を欠いているが、以後は請託があったから、その後は犯罪は成立するのだなどと、こんな妙な窮屈な解釈をせぬでも済むわけなんだが、どうなんです。
  238. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) この「請託ヲ受ケ」という言葉があっせん収賄罪の骨格と言いますか、構成要件として欠くるところがあるかないかということになりますと、これはもうなくても決して恥かしい案でもなし、差しつかえないことだと思います。しかし、私がたってこれを置かなければならぬということには、そういう意味においてはならないわけでございますが、ただ、この規定の乱用と申しますか、乱用というよりも、私はこの規定が解釈運用において疑問のないものにして、検察の検挙の面においても間違った検挙ということにならぬように、また、判決の面におきましても、そういうことのないようにという配慮も一つありますのと、検事の方の検挙はやたらにするが、片方の方がどんどん無罪になる、弁解を入れる余地が多過ぎますために、立証ができなくて、無罪になるというような結果が出るような条文も、これまたとらざるところでございます。そういう意味において、それじゃ「請託ヲ受け」というのが、それほど立証に困難であろうかという点でございますが、改正刑法仮案は、御承知のように、要求して収受するという、この要求してというのと、「請託ヲ受ケ」というのは、私は非常に本質的に違うと思う。要求をして収受したという場合には、要求ということが立証できません限りは犯罪にならないわけでございますから、その要求ということさえ、ひた隠しに隠してしまって、どう言ったって要求などをしたことはありませんと言えば、これで事は済んでしまう。けれども、「請託ヲ受ケ」という方はそうじゃなくて、ある事項の報酬として、ある行為をしたことの報酬として賄賂が収受されるのでありまして、ある行為というものは、無から突如として有ができてくるのじゃなくて、そのある行為が何ゆえに起ってきたかという縁由を、ずっと捜査上探られて行くわけでございます。それを探って行く段階において、では、そのものはどうして出てきたかということになりますと、調べの順序として、当然この請託というところにぶつかってくるので、この請託は、現在においても非常に綿密に捜査の対象になっておりますし、また、裁判所においても審理の対象になっておるのでございまして、要求して収受しというような構成要件とは事柄の性質が違っておる。それで、しかも捜査において、さしたる支障がないといたしますならば、これがあることによって明確になってくるんじゃないか。明確になるということならば、それだけ意味があるわけでありますので、私どもとしては、これを存置した方がいいと思いますけれども、これはまあ御審議の結果によることで、私が、しいてどうこうと言うのじゃありません。
  239. 一松定吉

    一松定吉君 それで私どもは、衆議院でこれを通過してきて、今参議院でこれをやっているときに、もう会期余すところ幾日もないときです。これを今すぐ「請託ヲ受ケ」というのを修正して、また衆議院に回すなんかすれば、もうこれは結局不成立に終る。そういうようなことは、私は与党の立場からでもどうかと、気に入らぬわけですが、まあ社会党の諸君はどうか、それは知りませんよ。与党の立場からはいかぬわけであるが、しかしほんとうから言えば、これは検察官の立場でやってごらんなさい。こういうことがあった日には、お前は金をもらったか、もらいました、不当な行為をさしたか、させました、それじゃ請託は受けたか、請託は受けたことはありません。お前、請託したか、請託したこともありません。これでは犯罪の構成要件がないからして犯罪は成立しません。それでは検挙は非常に困難になって、そうして悪質な者をのがすことになるから、「請託ヲ受ケ」という文字さえ、とってのければ、もう議論がない。どんどん検事としては検挙ができるんだから、ほんとうはその方がいいと思うけれども、しかし抜け穴をこしらえておいて、公務員のある者を喜ばせるつもりなら、これはこれでもいい。しかし、そうでない限りは、ほんとうはこれはよくない。よくないけれども、今私がごく露骨に言うと、与党の立場で、今からこれを修正して不成立に終らすということは好まぬけれどもほんとうから言えば、「請託ヲ受ケ」という文字を削ってやった方が、この犯罪の検挙もしやすいし、悪質を検挙するにも非常によいのである、こう考えるんですが、それであなたが原案を支持するなら、あえて反対しません。もうこれ以上質問をしません。
  240. 亀田得治

    ○亀田得治君 どうしますか、先ほどの質問に対して、大臣が答えないで行ってしまったわけですが。
  241. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 大臣の側近におりまして補佐する私の立場から、先ほどお尋ねの点にお答え申し上げますが、私は検察は無責任であってはいけないと思うのでございまして、国民に対して責任を持たなければならないのでございます。その責任を現わす法制的な立場としましては、もしも法務大臣の指揮下に置かないということになりますならば、検察官は、公選によってその地位を獲得するとか何とかいう処置をとらなければならぬと思うのでございますが、日本の国情に照らしまして、検察官の公選というようなことは適当でないと、私は考えております。そうだといたしますると、管理機構の中に置くということになりますと、政府を通じて国会に責任をとるその政府の一員にしておかなければならないわけでございます。そういたしますると、責任をとるのは法務大臣でございますので、法務大臣が、いやしくも検察権の行使について責任を負う以上は、指揮監督の権限をまた同時に持つということでなければならぬ。これはまあ法制上の建前論だと思います。そういう意味におきまして、あの規定は、私は管理機構においては、最も独立性を認めた一つの規定であるというふうに考えております。まあ一般的事項については、もちろん指揮監督権を持ちますが、具体的事件が政治的影響力を与えるのでございますので、その点については直接指揮しないという考えでございますので、あの程度の規定は、これはもう最小限度、責任のある検察という面からしても、建前論として存置しなければならぬと思っております。そこで、それでは独立を尊重するならば、涜職罪については指揮をさせぬというその内規を作ってはどうかという御意見でございますが、これも内規ということになりますと、やはり建前論に帰らざるを得ないので、そういう指揮監督をしないという、一般通則としての内規を作るということは、建前論としていかがなものであろうか。問題は、やはりそのときどきになられます法務大臣の高い見識と、事柄を洞察した公正な態度というものに期待するほかはないのでございまして、私どもそばにおります者としましては、検察がそういうものによって歪曲されることのないように補佐の任を尽さなければならぬというふうに考えておる次第でございます。
  242. 亀田得治

    ○亀田得治君 しかし、どうですか。局長はそういうふうにおっしゃるんですが、その汚職事件によって内閣がつぶれるかもしれぬ、そういうふうな問題が出てきた場合、結局はその与党の法務大臣であれば、それに対して指揮権を発動して押える、そういう傾向に進むことが多いわけじゃないですか。私はもう一度そういうことが、まあ別に今問題を予想しておるわけではありませんが、どういう内閣のもとにおいても、もう一度そういうことがあると、これはもう検察陣も、汚職の大きな問題については、もう触れないようにする、そんなことをやって、最後にはつぶされて、そうしてにくまれて左遷でもされたらかなわぬ、それよりも、初めからそういうものは手をつけない、そういうことにやはりなってくる。もう一度そういうことがあったらどうするか、国民だって非常にそれは失望します。だからそういう意味で、法務大臣と検事総長の関係全体を統合するというのじゃなしに、今必要性があるから、信用を回復する意呼で、そういう内規をはっきりすべきである。もう公正に動くつもりの法務大臣であれば、そんなことは必要がないかもしれない。しかし本人は公正に動くつもりでいたって、世間はそういうふうに見ないんですから、どうせ公正に動くつもりなら、そういう内規を設けてくれても、くれぬでも一緒なんだけれども、公正に動かぬつもりの法務大臣なら、そういうものを設けられては困る。そういうことは考えられぬでしょう。唐澤法務大臣が公正に動くつもりなら、そういう内規を置いても痛くはない。そうして一般の検察官なり、国民に対して、政府の熱意について信頼が高まるということになれば、私は今の時点では、非常にいいことだと確信しているんですよ。これは、やはり大臣でないと満足な答弁を得られぬと思いますが、政務次官はどうですか。
  243. 横川信夫

    政府委員(横川信夫君) ただいまの亀田委員の御質疑の気持は、確かに妥当な御意見から出ておるものだと考えます。先ほど刑事局長からお答えいたしましたように、法制上きめられたものに対して内規で縛るというようなことになりますると、その効力の問題などがいろいろ問題になってくるかと思うのであります。ただ、そういうことがあるなしにかかわらず、先般、御承知のいわゆる売春汚職というようなものが出て参ったのでありますが、当時、容疑を受けた方々は多年にわたる法務大臣の同志でありまして、それらの人があのような取扱いを受けましても、私情においては相当忍びがたいものがあっただろうと思うのでありますが、法の威厳を維持するために、あのようなりっぱな態度で終始されたことを見ておりますと、少くとも唐澤法務大臣のもとにおいては、御心配になるようなことがなくて済むのではないかということを確信しておるのであります。直接のお答えにはならぬかと思うのでありまするが、現在の大臣の検察庁法第十四条に対する取扱いについては、御理解を願えるかと思うのであります。
  244. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ、あれがもっと上の方へ行くと問題になるわけです。吉田内閣のときでも、下の方の場合には、そういう乱暴なことは出てこなかった、最後の段階で指揮権の発動が出てきた、そこなんですよ。私は法務大臣は信頼はしますけれども、そういう時点に立たされた場合に、両者の板ばさみになる立場というものはなかなかむずかしいと思う。それは問題が起きてからではだめなので、起らない今の間に、どういう政府が出てきても、この問題はこういうことで行くという、そういうことでも作ってもらっておけば、そのこと自体が私は大きな功績だと思うのですよ。法務大臣おやめになるなら、そういうものでも作っておやめになったら、非常にこれはあとから見て、制度上ずいぶんいいことをされたということに評価される時期が必ずあるのですな。本人がおられぬところで幾ら言っても仕方ないですが、そこで聞きますが、次に、検察ファッショの問題ですね。これは昨日も総理にちょっとお聞きしたわけですが、これに関連して陪審制度の検討ですね。これを事務当局ではどの程度突っ込んでおやりになっておるのか、何かそういうことについての目標等を持っておられるのか、お聞きしたい。
  245. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 陪審あるいは参審、それから検察の方の民衆参加という意味で大陪審という制度があります。将来この検察裁判に民衆を参加させるという問題につきましては、私ども刑事訴訟法の全面的な検討を加えます場合に、最も大きな課題の一つでございまして、昭和三十一年来、この問題の基礎的調査に着手をいたしておるのでございます。若干の調査状況をかいつまんで申し上げまして、問題点を明らかにいたしておきたいと思いますが、一体この日本の憲法、その憲法のもとにできております刑事訴訟法、こういうものが陪審制度、あるいは参審制度、ないし大陪審といったようなものを予定しておるのであろうか、ないであろうかという点について、実は学者の間に議論がいまだにあるのでございます。そういうものは憲法違反だという説も実はあるのでございます。しかし日本の刑事訴訟法は、まあ戦後、英米法の精神を非常多く導入いたしておるのでございます。その母法である英米法におきましては、御承知のように、陪審制度、大陪審といったような制度を発達さしてきている国でございますので、民法、刑事訴訟法が本質的にこういうものを否定している趣旨ではないと、私ども考えているのでございます。しかし、まず憲法論として、こういうものを入れるかどうかということについて、異論が若干あるということを申し上げておきたいと思います。  それから、御承知のように、日本にもかつて大正十二年に陪審法が制定されまして、昭和三年からたしか十八年まで陪審裁判が行われたのでございますが、今それは停止状態になって、いまだに復活を見ないのでございます。この陪審法につきましては、幾多の法そのものに欠陥が、今日の訴訟法、憲法のもとにおいては、忍びがたい欠陥があるのでございますし、この運用の実績は、単に法の不備というだけからではなくて、日本の国民性に果してこういう制度が合うかどうかというような点にも、この陪審制度がしぼむように、停止の運命になったいきさつを考えてみますと、そういう点にも反省すべきものが、これまた少くないのでございます。  それから戦後、いろいろ落ちついてきたとは申しながら、もしも、この戦前の陪審法は死刑、無期の刑に当る事件だけに、たしか限定しておったと思いますが、これを短期一年以上の重大犯罪だけに限定をいたしますとしても、年間三万件からあろうかと思いますが、これを、もし緊急逮捕の条件になっております死刑、無期、長期三年以上の刑に当る罪に、これを範囲を広げて参りますと、年間二十万件からあるわけでございます。もし一件について十万円づつかかると概算をいたしましても、もし二十万件の事件を処理するということになりますと、簡単にこの事件処理の経費だけで二百億からの金になる。現在、法務省がいただいております全予算と匹敵するような予算を伴うのでございます。これに必要な設備、陪審法廷その他職員、そういうものを加算して参りますと、これはまた、われわれとしては目を見張るような予算を必要とするのでございまして、しかしながら、金が幾らかかりましても、真に検察裁判の民主化が実現し、能率的な信用のある検察裁判が行われるということになりますならば数百億の金といえども、決してちゅうちょするものではないのでございますが、昨年でございましたか、この問題の一つの国民の動向を知りますために、約五百名の有識者を対象としまして、アンケートをとって調べたことがあるのでございます。それによりますと、いろいろな問題がそれでわかったのでございますが、その人たちの意見によりますと、職業裁判官がいいという意見が、まだかなり強いのでございまして、陪審を是とするという意見は、たしか一六%か幾らかでございました。参審制度がいいという考えを持っている方が、これまた相当多うございました。四〇何%でございました。ただ、民衆を検察、裁判に参加させるという方向に考慮してほしいという意見は、これが半数以上あったわけです。大体の意のあるところはわかるのでございますが、さらに私どもがもう少し資料を整えまして、もう少し広い階層に向って意見を問う必要があるのではないかというふうにも考えておるのであります。現状におきましては、まあそのような問題点を中心といたしまして、諸外国の立法例はもちろん、運用の実情等も見きわめて参りたいと思っておるのでございます。特に大陪審につきましては、これはニューヨーク州などでは現に活用されておるのでございますが、むしろ検事が大陪審を使って強制捜査をしているというような機能を持っておるようでございますし、ある州においては、大陪審というものは、だんだんすたれているというような所もある。それから大陸の方におきましては、陪審制度はやはり古いものであって、今の複雑な裁判に、ひとしく選挙民と同じような意味で民衆が参加するということは適当でない、むしろ参審制度がいいというような意見も出て、参審制度に移行しつつある国もあるようでございます。そういう点等も厳密に調査いたしまして、この問題について、めどを立てて行きたいというふうに考えておるのが現状でございます。
  246. 亀田得治

    ○亀田得治君 その五百名のアンケートというのは、どういう人たちから取ったものですか一
  247. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ここに調査結果をまとめた資料がございますが、これは内閣官房審議室というところがございますが、そこにお願いをいたしまして、輿論科学協会という所で世論調査をしていただいたのでございます。対象になりました方は、大学、高等専門学校卒業者以上の学歴を有する方を対象に意見を求めたようでございます。かなりまあ法律的な問題も質問しておりますが、その中の二項目が民衆参加の制度の問題についての調査でございます。
  248. 亀田得治

    ○亀田得治君 その五百名というのは、こちらから特定人を指名して選んだものか、あるいは、よくやられるような、いわゆる抽出的な方法で機械的に抜き出してやったものですか、どっちなんです。
  249. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは抽出方法のように聞いておりますが、何か調査研究所の方では、そういう高専卒とか、高専以上卒というようなのにつきましては、またそういう名簿をこしらえて持っておるようでございまして、その中から抽出方法で選んだというふうに聞いております。
  250. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうしますと、現在の社会の人たちの考えている気持を相当反映していると思うんです。で、ともかく司法に対してもっと民衆が参加したい、その方向だけは、先ほどの御説明をちょっと聞きましたが、これはずいぶんはっきり出てきているんじゃないかという感じがするのです。で、具体的に、しからばどういう形にするのが一番適当か、これはなかなか大問題に私なろうかと思うのですが、少くとも現在の制度では、どうもいけないという点は非常にはっきりしていると思うんですね。現実に、たとえば告訴など検察庁へ持っていく、けられる、また検察庁に持っていく、けられる、まあ刑事訴訟法上認められたいろいろな手段を尽しても、なかなかこの大衆の気持がうまく乗らないようなケースが相当あるんですね。これは検察庁も忙しい、しかし、ける方法として、そんな忙しいとはだれも言いませんよ。まあ一応やって見たがだめだった。そういう点が相当あるわけなんです。現在特殊な、特にひどいものがときどき問題になるだけであって、だからそういう面から見て、もう現在の刑事訴訟法で規定されておるような、ある程度の刑事訴訟に対する民衆の権利、こんなものはとてもまかなえないというふうに私ども見ているんです。その点はどういうふうに刑事局長お考えですか。
  251. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私その点は全く亀田先生の御意見と同じでございますが、ちょっと先ほど私、宙で申しましたので、数字をちょっと違っておりましたが、訂正させていただきます。この日本の刑事裁判に民間人を参与させるということについての意見で、なるべく早く実現するのが望ましいという回答を寄せた者が一六%でございます。それから、十分な準備期間を置いて実現するのが望ましいというのが二七・五%、それから、よく研究して見るべきだという意見を述べておりますのが四二・九%、望ましくないという反対意見を述べておりますのが八・二%、わからないが五・四%、こうなっております。それからあとの、それでは職業裁判官がいいかどうかという点でございますが、この職業裁判官制度がいいという意見を述べておりますのが二九・六%、参審制度がいいというのが四二・三%、陪審制がいいというのが一六・二%、その他の意見が〇・九%、わからないのが一一%、こういう数字になっております。  先ほどあとの方を申しましたのは大体間違っておりませんでしたが、前の方の部分がちょっと私の勘違いがございましたので、訂正さしていただきます。
  252. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあただいま正確な数字を再度おっしゃってもらったわけですが、それを見ましても、最初の数字は一六%、二七・五%、ここまでは賛成説ですね。そして、それに対する否定説は八%しかない、一番多いのは四二%ですが、これはよく研究して見るべきだ、だから、これはまあ賛成とも反対ともわからない、従って、これは半分に割って両方につけて見るとしますと、約七〇%が、やはりまあ大体その方向で進んでもらいたいという、やっぱり気持が現われておると思うのです。それから、まああとの参審制度、陪審制度あるいは職業裁判官、こういう点の数字をちょっと見ましても、まん中のこの四二・三%と一六・二%、これが結局何らかの形におけるやはり民衆の参加を希望しておるのが同時にまたこういうふうな数字にも関係しておると思うのですね、全然同じではないですが。で、私も職業裁判官が二九・六%、この数字がまあ陪審なり、参審制度の反対だというふうに解釈をしてみますと、ちょうど数字が合うわけですね、上と大体。上の、研究して見るべきだというのを半分に分けますと、大体同じ数字になっちゃうパーセンテージとして。だから、大体これは筋の通った数字が出ているように思いますので、やっぱりこの方向で、積極的にいろんな案を一つ作って、そうして草案の形でいいから、われわれも研究して見たいと思うので、いろんな案を一つ作ってもらいたいと思います。  それから、これに関連してですが、先ほど刑事局長もちょっとおっしゃったが、検察官とか、裁判官の公選制ですね。これは外国でもやっているところがある。私は、これは日本でも別にやれぬことじゃないと思っているんですがね、全部の裁判官、検察官をそういう形でやれるかどうかは別として。で、これをやれば、もちろん立候補資格者は相当制限されてくると思いますよ。だれでもというわけにはいかぬでしゃう。ほんとうは、だれでもできるようになるのがほんとうかもしれませんが、そんなわけにいかない。やはり相当法律知識を持っているとか、そういう経験を経ておるとかということも必要かもしれない。だからこれも、ちょっとそんなことは頭からできないようなことを、さっきおっしゃったように私感じたんですが、大いに研究の余地があると思うんですが、どうでしょう。
  253. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 先ほどのアンケートの分析の点につきましては、私、亀田先生と全く頭の中で同じような分析をいたしましたものですから、宙で覚えておるということで申し上げたのが、まあ同じようなことを申し上げたような結果になったわけでございます。その点は全く同感でございます。ただ、第二の公選の問題でございますが、これは私は理論として、どういう形で責任を負うべきかという点につきまして、先ほど申したわけでございますが、検察官というものを全く政治力から外へ置くという意味だったならば、まあ公選ということで、その地位を認められるということでなければ、責任のある検察とは言えないと私は思います。しかし、それが日本の国情その他から不適当だと私は断言しておるわけではございませんが、この段階では、まだ適当ではないんじゃないかというふうに思っておるのでございます。そうだといたしますると、やはり官僚組織の中に置く、そして大臣がその責任を負うという形、とにかく責任を明らかにする道を開いておかなければ、これはいけない、建前論としていけないんではないかというふうに思っております。そういう意味で実は申し上げたのでございます。
  254. 亀田得治

    ○亀田得治君 それじゃ、そういう検察庁法十四条との関係を離れて、一般的に陪審制度とか、そういう司法制度の民主化という立場から、もっと本質的に考えた場合、どういうふうにお考えになるんですか。
  255. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これはなかなかむずかしい問題でございまして、先年、もう数年前でございますが、わずかな期間でございますけれども、アメリカの司法制度を視察に参ったことがありますが、御承知のように、フェデラル・システムにおいては全部任命になっております。それからステートの検察官は、公選と言いますか、ジェネラル・ディストリクト・アトニーだけは公選でございまして、その補助、アシスタント・ディストリクト・アトニーという次席以下の検事は、弁護士会の推薦を経て地方検事正が任命するというふうな形をとっておるところが多いようでございます。この選挙がいいか任命がいいかという点は、あちらの人も法律家の意見は必ずしも一致してないようでございまますし、まあだんだん官僚化していくというのかどうか知りませんが、専門的な知識経験といったようなものがやはり必要になって参りまして犯罪も複雑になって参ってきているものですから、これはまあ検察の面ばかりじゃない、行政面でも、そういう専門的なトップマネージャーみたいなものが、どんどんできてくるような傾向にあるようでございますが、そういう意味で、必ずしもすぐまねをするのがいいかどうかというようなことを、そのときに実は感じて帰ったことがあります。理論として、どういうふうな形で検察なり、裁判を民主化するかということにつきましては、私も真剣に考えておりますが、今、にわかに公選がいいとかいうふうな、まだ意見を実は持っておらないのでございます。アメリカの状況も、公選に踏み切るだけの実情の運用とは見て参らなかったのでございます。
  256. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ私は、外国の制度をすぐそのまままねるといったようなことは、なかなかできない面があろうと思います。それはわかっているんですが、たとえばイギリスにしてもアメリカの司法制度にしても、日本のよりは、はるかに民主化されておるんです。そういう一つの空気なり、伝統というものが積まれてきておるわけですね。で、そういう中では、社会の必要に応じて、むしろ裁判官なり、そういうものを専門化していく、専門の知識の必要性等に応じて、そのいうことがされても、そういう伝統がありますから、民主的な空気というものはくずれないと思うんです、全体として。ところが日本の場合に、司法の民主化民主化と言って、いろいろなことを多少はなされるわけですけれども、それがちっとも実際に生きないわけです。それはもう日本の場合には、戦前からの長い厳とした一つの司法の空気というものがある。それをどうしてほんとに民主化された制度のようなところに持って行くかという、大きな問題にぶつかっていると思うのです。しかし、あんまりそういうふうに民衆に開放してしまって、裁判の能率が上らぬようでも困るという意見が出るでしょうが、その意見にとらわれておったら、結局、私はいつまでたっても今のままに行くと思うのです。だから、そこのかね合いをどううするかということは、むずかしい問題ですが、これはもう日本の司法制度が、ずっとますます民衆の信頼を得て行くかどうかという、大きな分れ道に来ていると思うのですね。だから、たとえば、こういうあっせん収賄罪を設けて収賄の規定を強化していく、あるいは暴力関係の規定を設けよう。そうすると、あるいは政治家、あるいはいろいろな大衆団体、そういうところから、基本的人権の問題とか、そういう立場からやっぱり危惧というものが出てくる。これは、私は、一つはそこに問題があるのだと思うのです。司法制度全体に対する信頼というものが、民主的な基礎の上で確立されておれば、無用な疑いというものは出てこないわけなんですね。そういう意味で、いわゆる検察ファッショ、こういうことに私は同調する意味じゃなしに、もう少し基本的な立場で、こういう問題が問題になったときを契機に、もっと前進して考えてほしいと思うのです、そういう立場で。それで、私は現在のいろいろな検察の運営、あるいは裁判所の実際の進行状況、あるいは判決等を見ても、やっぱり法律的に間違いのないようにと、こういうことが非常に前に出てきております。これは法律を扱う人が法律を無視していいということになりませんけれども、何もそこに間違いがないようにという、こういうことが非常に強いのですよ。それは一面には尊いことですが、しかし社会的ないろいろな需要なり、傾向とどうマッチするか、そこの考慮がやっぱり足らぬですよ。たとえば裁判の進行にしても、だれかが損害賠償を請求しておる。自動車でひかれて殺された、まあ今そういう自動車の損害賠償法等もありますが、それでまかなえない大きな損害が起きているといった場合、なかなかそういうものを請求しても、裁判所はその需要に応ずるような状態になっていませんよ。ことに損害賠償といったら、とにかくいつまででもやっている。こんなものは裁判所の不信を招く一番大きな原因ですね。そこにそういう法律専門家だけでなしに、判決の、どうも法律の理由のつけ方がちょっとおかしいけれども、しかし現実にこういう損害が起きて、こちらの人は金の払える立場なのに、これをほうっておくのはけしからぬということで、早くそれじゃその金をもらえるよう処置をしてやるとか、こういうこれは一例ですけれども、とてもそういう点では私はもう司法は遊離していると思うのです。だから専門の職業裁判官よりもほかの方がいいというのが約七〇%もあるんです、さっきの数字から言うと。これは職業裁判官に対する不信ですよ、一種の。だから決して職業裁判官の法律知識をこれは軽蔑しているのじゃない、社会的な希望がここに出てきているのです。だからこういう暴力立法とか、贈収賄といったような、一つ規定を強化される以上は、心配のないように、全体的に一つそのような面をもっと推進するようにしてほしい、これを唐澤さんにお聞きしたいところですが、政務次官のお考えはどうでしょうか。
  257. 横川信夫

    政府委員(横川信夫君) 中座をいたしておりまして、今、亀田委員の御質問の要旨を伺っておりませんでした。はなはだ申しわけない次第でありますけれども、竹内局長に答弁いたさせます。
  258. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいまお述べになりました点で、私ども検察裁判の現実の姿の中に、御指摘のような幾多の欠陥と言いますか、弊害と言いますか、そういうものを発見するのにやぶさかでないのでございまして、目をおおうわけにはいかないと思います。また、いろいろ私ども刑事訴訟法の全面的な検討につきまして、大へんいい御示唆を賜わりまして、私どもも御趣旨のあるところを体しまして、せっかく積極的に研究を進めて参りたいというふうに考えております。
  259. 亀田得治

    ○亀田得治君 先ほどの世論調査のやつ、差しつかえなければ、これは非常にいい資料だと思いますので、私どもにも一つ御配付を願いたい、これはお願いしておきます。  それから次に、あっせん収賄罪の条文に入って、少しこまかいことについてだんだんお聞きしたいわけですが、どうでしょうか。
  260. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  261. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記を始めて。
  262. 亀田得治

    ○亀田得治君 では一つだけやっておきましょう。  これは参考人にもお聞きした点ですがね、例の「公務員」云々と、こう書かれていて、当然これは公務員としてやった行為だと、こういう御説明が皆さんの方からされているのですが、まあ團藤教授の御説明では、なぜそういうふうな説明になるのかと申しますと、「報酬トシテ賄賂」という字句が最後の方にあるから、これによって、これは公務員としての行動であるということがはっきりする、こういうふうな意味のことをおっしゃったのだが、これはどうも説明としては少し回りくどいと思うのです。「賄賂」というものの字句の解釈ですね、ここの条文では明らかに従来刑法で認められていたわいろの概念よりも、これは広めておるわけですね。だから概念を広めておいて、自分たちが考えておる線までこれを広めたんだ、そんな解釈は私はできないと思うのですよ。これが広がったのであれば、今までの概念は一応御破算になって、そうして非常に広くなったのだということなら、どうにでもあれは解釈できるわけです、今後。だから私の言うのは、たとえば公務員としてやった行為でなくても、いやしくも公務員という身分のある者が動いて、そうして官庁に働きかけて、そうしてこの不正な行為をやらして報酬を取った、これはその公務員個人としてやったとしても、対象がこれは官庁の仕事に関係しての報酬ですね。だからそういう意味において、これはちゃんとそういう公務上に関係のある金です。個人としてやっても。だからそういう意味にまで、このわいろというものを拡張してもいいわけですよ、従来の概念をさらに拡張したという理由で、團藤さんのような解釈をされるなら。そんなことはどの辞書を見たって何にも書いてあるわけじゃないんですからね、わいろの概念をどこまで拡張するか……。だから、あんなことは私は厳密に言ってそんな理由にならないと思う。そうなりますとね、あと、すなおに読んでみると、結局これはやっぱり公務員としてだけの行動を取り締まるのであれば、「公務員トシテ」というものが入ってこなきゃ、ちょうどあの「請託」の概念と同じように非常にあいまいだ、この点。入れたところで、これは私はしぼりにならないと思うんですがね、立案者自体が公務員としての行動だけだと、こうおっしゃるんですから。そうでしょう、その点どうなんですか。
  263. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) その点ちょっと私どもは違った考えを持っているのでございます。その意味におきまして、また、團藤教授がこの間御説明になりました点、その点を除きましては、まあ私ども全く賛成でございますが、今のわいろとしてというところからして、私人としてやった行為は、「賄賂」という字を使ってあるからして、私人の行為は入らないのであるという意味の御説明があったように思いますが、その点は少し私どもは解釈を異にしておるのであります。私どもの解釈は、やはりこの公務員がというふうに書いてある以上は、一つの身分犯である。公務員としてという意味じゃなくて、公務員がであります。従って、ただその公務員が弁護士とか、その他別途の業務を兼ねて、一人が二つの職務を持っておる場合に、その弁護士業務としてやったという場合には、刑法三十五条の規定によって免責される場合があるわけでございますが、私人としてやりましたというような場合には、これはもう身分犯でございますから、公務員という身分を持っておるものがやりました場合には積極で、この条に触れるという解釈をしておるのでございます。立案者も、公務員としてという意味で立案しているのではないのでございます。ただ通常の場合には公務員としてという言葉を使っても、公務員の地位を悪用して、あるいは乱用して、利用してという言葉を使ってもよろしいと思いますが、そういう気持の上に、気持の中に隠されてはおりますけれども、構成要件にはしておりませんが、そういう公務員という地位を考えて働きかけるという場合が心の中に隠されて、そういう気持でされるというふうになるのが普通の場合であろうかと思います。そういう意味において、小野顧問も、そういう趣旨の意見を衆議院の法務委員会で参考人として述べられております。その点については、私、内心にそういう意図を持って、そういう気持でこの行為に出る場合が多いという意味においては、私も賛成でございますが、團藤教授のような意見は、ちょっと私どもは立案者としては、そういうふうに考えておりませんのでございます。身分犯ということであります以上は、他に積極的な正当業務行為という弁疏の余地がある場合のほかは、やはり成立するというふうに考えるのでございます。
  264. 亀田得治

    ○亀田得治君 たとえば公務員の身分のある人が弁護士としてやったという場合には、刑法三十五条によって免責されるとおっしゃったのですが、そういう回りくどいことじゃないと弁護士は免責にならないのですか。今の御説明で行くと、一たんこの規定に引っかかるが、三十五条の規定によって免責されている、そういう説明がちょっと入ったわけですが、そういうことでしょうか。
  265. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それは一たんかかると、それが違法性を阻却するというふうな御意見のようでございましたが、私は正当業務行為は違法性を欠くというふうに見て、初めからそういうものは犯罪にならぬというふうに考えておるのでございます。
  266. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、刑法三十五条によって免責されるわけじゃないのですね。
  267. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それは三十五条によって正当業務でありますから、そういう場合に一たん犯罪は成立するのだが、違法性を阻却するというふうに、そうした解釈も法学上はあると思います。私どもは、そういう場合には違法性を欠く場合というふうに考えて、正当業務行為であるということによって、犯罪にならないというふうに申し上げておるのでございます。
  268. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすれば、むしろ政府の説明通りに行くならば、私の解釈としては、弁護士としてのそういう仕事などはもう初めから入っていない、これは大川委員もその意見。「公務員」、こう出ているのだから、そんなものは初めからもう除外されておる。一たんこれに引っかかるのだが、刑法三十五条によって免責される、そういうことなら、一たんかかるのですから、それじゃ私人の場合と言いますか、友人とか、そういう関係でやった場合には、これは免責の規定がないでしょう。そうすれば、これはもう引っかかったきりになるでしょう。そうなんですか。
  269. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) その通りでございます。私人の場合には免責事由がないわけでございますから、身分犯として引っかかる、こういうふうな考え。そこに全面的に引っかかっておいて、正当業務で犯罪が阻却されるというふうに、そういうふうな言い方をしていただいても同じでございますが、まあ私ども、そういう場合に一度犯罪が成立するのだが、正当業務であるから許されるのだというふうな言い方をしないで、もうそれは正当業務であるから違法性を欠く場合なんだ、それだけ、へっこんでいるのだというふうな言い方をしておるわけでございます。まあ、それはどういうふうにおっしゃっていただいても、その点は言い回しの関係で、要するに身分犯でございますから、公務員である場合は、ひとしくどんなことであろうとも、一応構成要件に該当する以上は、犯罪の形をとるけれども、正当業務行為だから、その分は犯罪にならない。その犯罪にならないというのを、初めからもうそういう場合には犯罪にならぬ、こういうふうに申し上げたのでございますけれども、私人としての関係で統一的に説明をするとすれば、一応、公務員である以上は該当するのであるけれども、私人は阻却事由がないが、弁護士は正当業務として阻却される、こういうふうに私は言い直しましても一向差しつかえないと思います。
  270. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう御説明ですと、私が皆さんのお考えをそんたくして伺うのと、若干違う感じを受けるのですが、そうなると、たとえば国会議員で会社の重役をやっている、こういう場合、こういう場合はとにかく公務員ですから、一応こういう行為があれば引っかかる。しかし、これは免責事由というのはどこから出てくるのですか。
  271. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) その点も前前回かの委員会で、先生の御質問にお答え申し上げたつもりでございますが、やはり個人として、個人としてと言いますか、会社の重役という立場でなくして、会社の業務についてやったのでない場合は、これはもう問題になりません。引っかかります。けれども会社の業務としてやった場合には、その場合も弁護士業務と同じように、正当業務ということで阻却される場合が、つまり違法性を欠く場合が大部分ではなかろうかという意味のお答えを申し上げましたが、そのように私は考えておるのでございます。
  272. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういうものまで阻却して行くことになれば、個人の場合に阻却させないというのと非常に不均衡が出てきますがね。友人として努力した、親戚として努力した、それは阻却されない。しかし、会社の重役であれば阻却される。しかし、会社の重役と言ったって、結局、むしろそれこそ個人ですよ、自分の会社ですもの。結果においては、はなはだしく不均衡が出てきますね。それはどうなんですか。
  273. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは、まあここで議論しておりますのは理論としてですね、申し上げておるのでございますが、会社の重役とは言いながら、全く個人も同様であるというふうな事実関係にある会社の重役でございますならば、また、これは事実認定の問題として別途理解しなければならぬと思いますが、理論として申しますと、会社の業務ということでその行為がなされたというふうなことになりますならば、それはやはり業務行為と見なければならぬのじゃないか、個人の行為とは違っておるというふうに考えておるのであります。
  274. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、会社でなく個人の営業主も同じことになりますか。公務員が自分で、個人で何か商売をやっておる。その商売の立場でいろいろ努力したというような場合も同じことですか、同じように免責されますか。
  275. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 理論としては、法人である会社でありましょうと、個人の営業でありましょうと、その営業という業務でやったということでありますならば、同様に解釈せざるを得ないと思います。ただ、なぜそういうふうな議論をしなければならぬかと申しますと、公務員の中には公選による公務員、特別職の公務員というのは、そういう兼業ができるわけでございますから、そういう点から言いまして、兼業をさせておるというこの特別職の公務員制度というものが、それによってさらに公共の大きな利益に奉仕するという考えから、そういう兼業を認められる場合があると思うのでございますが、そういうことになりますならば、その兼業である業務というものを業務行為と見ざるを得ないのではないかと思います。
  276. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう回りくどいんですかな。公務員としての行動だと、この一番上に書いてある公務員という意味を、そういう解釈だとおっしゃるんなら、これはもう初めからそんなものは除外されておるはずなんですがね。私の解釈は全部が一応含まれる。こういう解釈なんです、このままでは。全部が含まれて、そういう業務を持っている者は三十五条で免責されて行くことになる。こう思うのだが、しかし政府の今までの説明から行くと、初めからそういう者はもう除外されておる、会社の関係とか、弁護士とか、そういう者は。そういうふうに私は理解していたわけです。それならば、当然友人として、親戚として、そういう立場で努力した者も、これはもう当然除外されていく。こうならぬと不均衡ですわね。ところが、どうも今の説明はそうではない。
  277. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私の言い方が悪かったかもしれませんが、弁護士というようなものは、初めから除外されておるというのじゃなくて、処罰されないという、違法性を欠くという意味で申し上げたのでございまして、その点は先ほど、こういうふうに言い直しても一向支障ないと思いますというふうにお答え申し上げましたように、一応引っかぶってくる。そうして正当業務でその違法性が欠除される、違法性を欠除するというふうに解釈していいと思います。その点は、まあ亀田先生の考え、推理の仕方とそう違わないつもりでございます。
  278. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、大体私の方の解釈に近寄ってきておるわけですよ。この前聞いた場合とはちょっとニュアンスが違いますね。これは大川委員もその点御指摘されたはずだったですがね。
  279. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ちょっとニュアンスが違っておったかもしれませんが、私の考え方としましては、業務によって違法性を欠除するという意味が、正当業務だから違法性を阻却する、犯罪が一応成立して、そうして違法性が阻却されるから罪にならぬというふうな言い方をするか、その場合に、違法性を欠くということが、欠くということは、一たん成立した犯罪が不成立に終るというのじゃなくて、欠くということによって、そういうものは初めから犯罪にならない、そういう場合にはというふうに言うか、そのあとの方の言い方を、まあ説明にいたしておりましたので、結果において何かニュアンスができるような結果になりましたが、そこは学問上、どういうふうに言うかということは議論があるところでございますが、一応構成要件に該当するのであるけれども、正当業務ということで犯罪にならないというふうに訂正を申し上げまして、先生と同じ御説明の仕方にいたします。
  280. 大川光三

    ○大川光三君 ただいま亀田委員に対する御答弁を承わっておりますと、株式会社の取締役が、株主総会の決議に基いて本条に該当するようなあっせん行為をやったというときには、それは罪にならないのだ、かようにおっしゃった。そこで、そのときは請託ということに関して伺った質問であったんですが、その当時の御答弁は、何ですか、あれは請託がないから罪にならぬということですか、あるいは正当業務ということから違法性を阻却するということになるのですか、その点の御見解を伺いたい。
  281. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) あれは御指摘のように、請託が果してあるかどうかという点が御議論であったわけでございますが、請託の点は除きましても、正当業務行為という意味で違法性を欠く場合があるというふうに理解いたします。
  282. 大川光三

    ○大川光三君 今度は弁護士の場合、今の御答弁によりますと、まあ議員であるわれわれ弁護士は、こういう該当事業をやれば、常にその罪を犯しておる、こういうようなことになりますね。けれども、それは違法性がないから、これを罰しないということは、亀田委員が言われるように、罪は成立するんだけれども、三十五条でその違法性が阻却されるという解釈か、もともと正当業務をやっているんですから、初めから本罪は成立しないのだという解釈をとるべきかという点について、ちょっと疑問を持っておりますから、伺います。
  283. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) その点は理屈がいろいろあると思いますが、正当業務行為の違法性を欠くという場合として、よく刑法の本に書いてありますのは、お医者さんが手術する場合でございますね。あれで、執刀いたしますが、常に傷害罪が成立して、それが違法性が阻却されて罪にならぬのだというのではなくて、一応構成要件に該当するような、傷害という行為があるのだけれども、それは、まあ初めから犯罪にならぬのだという意味で説明されておるわけであります。そういう意味で、その部分だけ欠けておるんだというふうな言い方をいたしますか、一応構成要件に該当する行為ではあるんだが、正当業務行為で、違法性を欠くというふうに、そこのところはお医者さんの手術と同じようにお考えいただいていいんじゃないかと思います。
  284. 大川光三

    ○大川光三君 そういたしますと、まあ私の考えは、もし弁護士としてこういうようなことをやる場合は、もちろん請託もありますし、報酬もあらかじめ約束があって取る。そういう場合には、弁護士としての行動をやる場合には、公務員という資格が眠っていなければならぬ、表に出ていないと私は考えるのですが、どうでしょう。弁護士として業務をやる場合には、公務員という肩書があっても、その公務員という資格からは全然離れて行動しておるのであって、それをことごとに、弁護士の行動が公務員という資格と、また弁護士という資格と二つの資格があって常に活動しているというふうに見られますと、われわれはほんとうに弁護士として安んじて仕事ができないという感じがするのですが、いかがですか。
  285. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それはもう安んじて仕事をしていただいていいわけでございますが、ただ、まあ身分犯という考え方でございますので、眠っているというふうに御説明をしたならば御納得がいきますか、とにかく幾ら弁護士でありましても、同時に議員であります限りは、「議員」がないというふうには言えないわけでございます。けれども、絶えず傷害罪を犯して、あとで手術だからというので違法性が阻却されるというような、そんな不安なお気持で仕事をなさる必要はない、もう安心して仕事をしていただいていいわけであります。そこの理論づけについては法学上いろいろあると思いますが、私どもが兼業しております場合に、他の業務という形で行いました場合には、そういう意味で犯罪にならないのだということを申しあげておるのであります。
  286. 大川光三

    ○大川光三君 これは実際問題で、実は今、席におられませんけれども、大先輩の議員から、名刺を作るときに、参議院議員、弁護士何がし、こういうように作れと教えてもらったわけです。ところが、これをうかつに、この名刺を持って諸官庁へ頼みに行くと、あとで立証のときに、弁護士としての行動じゃないんじゃないか、参議院議員、弁護士一松定吉と書いてあったじゃないかという、実際問題としてそういうことが起ってくるのだと思いますが、そういうときの御見解はいかがでしょうか。
  287. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 検察庁では、きわめて常識的にそういうものは考えますから、まあ参議院議員というのと二つ並べてありましても、今そこへおいでになった趣旨が、弁護士としておいでになったか、国会議員としておいでになったかは、事柄の性質上わかることでございますので、そのために、ときに被害をこうむるというようなことは万々あるまいと考えております。
  288. 大川光三

    ○大川光三君 まあ君子は危うきに近よらずで、私は名刺をかえて、弁護士大川光三と、参議院議員大川光三と、まあ二通作る必要があると思っているのであります。
  289. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日の審査はこの程度にとどめます。  次回は、明十八日金曜日午前十時、裁判官の報酬、検察官の給与の改正案の残余の部分、討論採決及び刑法関係の三案を議題といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四分散会