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1958-04-16 第28回国会 参議院 法務委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月十六日(水曜日)    午前十時五十二分開会   —————————————   委員異動 本日委員山口重彦君及び藤原道子君辞 任につき、その補欠として成瀬幡治君 及び戸叶武君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君            宮城タマヨ君    委員            雨森 常夫君            大谷 瑩潤君            小林 英三君            安井  謙君            赤松 常子君            亀田 得治君            戸叶  武君            成瀬 幡治君            後藤 文夫君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局第二部長 野木 新一君    警察庁長官   石井 榮三君    警察庁警務局長 荻野 隆司君    警察庁刑事局長 中川 董治君    法務政務次官  横川 信夫君    法務省刑事局長 竹内 壽平君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   参考人    丸の内警察署次    長       中村 五郎君    前丸の内警察署    勤務巡査    古田 義明君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○連合審査会開会の件 ○参考人出席要求に関する件 ○検察及び裁判の運営等に関する調査  の件(丸の内警察署留置場における  暴行致死事件に関する件) ○刑法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○刑事訴訟法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○証人等の被害についての給付に関す  る法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日の委員会開会いたします。  初めに、委員異動について報告いたします。四月十六日付、藤原道子辞任戸叶武選任山口重彦辞任成瀬幡治選任、以上であります。   —————————————
  3. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、連合審査会開会についてお諮りいたします。刑法の一部を改正する法律案並びに刑事訴訟法の一部を改正する法律案の二軍につきまして、昨十五日、社会労働委員会から連合審査会開会の申し入れがございました。つきましては、両案について、社会労働委員会連合審査会開会することにいたしたいと存じますが、さよう決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。それでは、両案について、法務社会労働連合審査会は、来たる四月十九日、土曜日、午前十時から開会いたします。   —————————————
  5. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、丸の内警察署留置場における暴行致死事件を議題といたします。  本件につきましては、去る四月四日の当委員会調査に当りまして、警察庁当局から一応結論的な報告もなされたのでございますが、丸の内署における当夜の留置場保護室収容状況田中輝男等同房者状態、この間にあっての寺見淳一氏の引致から死亡に至るまでの経緯、看守巡査のとられた措置と、その後における丸の内署のとられた処置等につきましては、人権尊重建前からも、警察あり方民主化の観点からも、なお、しさいに検討いたさねばならないと考える次第でございます。参考人、前丸の内警察署長並木伊平君は、本朝発熱のため、診断書を添え、本日出席できない旨申し出がございました。  皆様にお諮りいたしますが、並木伊平君の代理として、丸の内警察署次長中村五郎、前丸の内警察署巡査古田義明、この両君を参考人として本日当委員会出席を求めることにいたしたいと存じますが、さよう決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。  御質疑の方は御発言下さい。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 事件概略等につきましては、前回警察庁当局からその後の調査報告がありました。最初はあいまいな説明であったのですが、一応、この前は具体的な説明があったわけです。それに関連いたしまして、現場を担当しておられる参考人の方に対して、一そう真相を明らかにしてもらいたいという立場で、若干お尋ねをしてみたいと思います。  最初に、中村さんにお尋ねいたしますが、ちょうど、十月四日の夜に寺見が丸の内署留置場に入って来たわけですが、その際、あなたはどこにおられましたか。
  8. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 自宅におりました。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 そして、この事件が起きまして、おそらくあなたの方へ連絡があったと思いますが、それは自宅へ御連絡を受けたわけでしょうか。
  10. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 自宅へ、電話連絡がございました。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 それは何時ごろだったでしょうか。
  12. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 午前零時ちょっと過ぎごろだと思います。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 それから、あなたはどういうふうにいたしましたか。
  14. 中村五郎

    参考人中村五郎君) そのときの報告が、器物毀棄現行犯留置した現行犯が、留置後、急に工合が悪くなって、日比谷病院に今収容した。こういうような報告がありました。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、零時ちょっと過ぎにそういう電話ですから、何時ごろ日比谷病院に入ったなどということはわかりませんね、そのときには。
  16. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 当時はわかりませんでした。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 あなたはどうしたのですか、それから。
  18. 中村五郎

    参考人中村五郎君) それに対して、よく事情を聞きまして、それで日比谷病院へ収容した、それでその後の状況をわかり次第、また追って知らせる。こういうような返事を受けました。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 その留置人が、急に変になって日比谷病院に入れたという報告のようですが、あなたは、それをどういうふうに受け取ったわけでしょうか。命が危ない状態だというふうな受け取り方をしていたのか、どうなのか、どっちなんでしょう。
  20. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 救急車で収容したという報告ですから、相当重態ではないか、こういうように考えました。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 何時ごろ、その寺見が丸の内署留置されたというふうに電話では聞いたわけですか、そのとき。
  22. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 八時半ごろというように記憶をしております。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、日比谷病院に行くまでに相当な時間があるわけですね。時間があって、そうして救急車で運ばれるというわけですから、私の聞きたいのは、たとえば、外で非常に泥酔でもしてきたと、そういう状態留置場へ入ってきて、急に悪くなった……。時間的にはそうじゃない、その間に相当な時間的な間があるわけですね。留置場へ入って三時間か四時間たっているわけです。だから、そういう状態ですから、私は、あなたの立場としては、救急車を使われると、いうのだから、重態であるということは感じたというんですから、もう少しあと報告を待つとかというようなことじゃなしに、すぐ署へ飛んでいくとか、そういうことが私、ほんとうじゃないかと思うんですが、ともかく、よかれあしかれ……。留置場の中でそういう——まあ、いつ死んだかということが、これが実際、若干問題にさらになっておるわけですが、おっしゃるごとく、病院へ運んでから死んだとしても、重態であることは間違いない。それが、留置人がそういう状態——そういうことであれば、もっとあなたの方から、その後の報告を待つというようなことじゃなしに、積極的にあなたが出かけるとか、そういうことをすべきなんじゃないですか。何か、署長あたりとその辺の打ち合せ等したわけですか。
  24. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 今申し上げた八時半というのは、本署へ引致した時間を申し上げたのでございまして、それから、普通、弁録をとるとか、いろいろ泥酔者あたり処置には手間取りまして、留置場へ入ったのは多分、今資料がありませんで、正確な時間はわかりませんが、九時四十分か五十分ごろだと思います。  そこで、私は、そのとき電話を受けた感じは、たまたま今度の事件は不幸な事件ではございましたが、ときどき夜中留置人が発熱したとか、あるいは傷害犯人の傷が痛み出したとかいうて、指示を受けてくる場合がありまして、そういうときも、やはり医者に見せろとか、あるいは往診の医者がない場合には、病院に連れていくと、いろいろ数、平素扱っておりますから、今度の事件についても、全然軽視したわけではございませんが、一応医者へ連れていったというから、どういう病状か、折り返し返事をくれと、こういうような指示をしたのであります。その、二回目の連絡に、なくなったと、こういうような連絡がございましたので、それでは、今までも留置場自殺とかその他いろいろな事故があれば、いずれの場合にしても経過を詳細に調べるというのは、われわれの普通のあり方でございますので、同房者看守その他に対して十分、中に間違いがあったかどうかというような点について即刻調べろと、こういうような命令を当時の宿直係長電話指示しました。  それで、私は小金井で、深夜自動車もございませんから、翌朝、電車の動き出すのを待って、早目に出勤いたしました。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、留置場に入ったのは九時であっても、八時と九時だから、まあ一時間の違いで、病院に行くまでに相当な時間があったことは間違いない。  それで、第二回目の電話がかかりましたのは何時ごろですか。
  26. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 零時四十分ちょっと過ぎごろじゃないかと記憶しております。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 先ほど、最初電話は零時ちょっと過ぎというわけですから、まあ三、四十分その間あったことになりますか、零時ちょっと過ぎというのはどの程度ですか。
  28. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 零時ちょっと過ぎというのは、事故があった直後の連絡だと思っております。それから第二回目の連絡があったのは、病院で死亡されたという医者報告を受けた電話が参ったのであります。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 丸の内署では、留置された人、病気などはあるでしょうが、結局死亡したといったような問題は、以前にあったことがあるんですか。
  30. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 留置場——私が丸の内署に行って一年になりますが、留置場に入った者が中で病み出して、後、死んだというのはございませんが、まあ派出所自殺未遂を扱っているうちに死んだとか、これに類似したような事件は二、三あったと記憶しております。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 類似と言いますと、……もう少し具体的におっしゃって下さい。
  32. 中村五郎

    参考人中村五郎君) たとえば、日比谷公園のベンチで苦しんでいる男があるから、それを派出所に同行して介抱しようとしている間に死んじまったとかいうような事件。これは一応警察官が保護のために派出所まで、自分の掌握下に入れたんですが、これは逮捕ではありませんが、たまたまそこで死んだというような自殺事件とか、そういったような事件を二、三回記憶しております。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 一年ほどの間に二、三回というと相当多いわけですが、丸の内署留置場に入った人でそういうような結末になった人はありますか。
  34. 中村五郎

    参考人中村五郎君) ございません。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、あなたは電車が通う時間になってから署に出たようですが、署に着いた時間と、その後のあなたの行動を一つお話し願いたい。
  36. 中村五郎

    参考人中村五郎君) すぐ署に出たのが六時半ごろだと思います。そこで宿直のそれぞれの責任者から事情を聞いて、そうこうしているうちに報道関係の、当署にはクラブがありますので、そのクラブ人たちの応接に相当の時間、説明をしておりました。そうこうしているうちに、本庁から第一方面本部係長等が来て調べるというので、その方の調べ看守その他の調べをまかせました。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 あなたが最初宿直巡査等調べたのですか、あるいは署長などが先に来ていて調べたのですか。その関係者最初監督者立場調べたのはあなたですか、どっちです。
  38. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 私も署長も同時刻ごろ来たと思いますが、それぞれの責任者から当夜の、最初の、午後八時半以降の経過説明を聞いて、そうこうしているうちに方面本部が参ったので、看守巡査は、直接方面本部係長調べに移ったと思います。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 方面本部の来たのは、時間何時ですか、五日の。
  40. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 八時ちょっと過ぎごろに記憶しております。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、あなたが着いてから約二時間ほどしてからですから、その間に相当お調べになっているはずですね。あなたと署長一緒でお調べになったようですが、今のお話ですと。二人で一緒にお調べになったんですか。
  42. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 一緒ではありません。それぞれ別々に報告があったように記憶しております。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 だれから報告があったんです、あなたには。名前を言って下さい。
  44. 中村五郎

  45. 亀田得治

    亀田得治君 名前は。
  46. 中村五郎

    参考人中村五郎君) ちょっと名前は忘れました。いま一名の宿直係長田中警部補
  47. 亀田得治

    亀田得治君 そのお二人から聞いて、それからさらにどうしましたか。直接にこの寺見なら寺見を取り扱った巡査事情を聞くとか、あるいは同房の人に事情を聞くとか、そこまではやったわけですか。
  48. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 同房の者の六名については、私の電話指示によって同夜午前二時ごろから、直後から全部調べがついている、調書もとっておるという報告を受けました。そこで巡査については、方面本部調べを始めた以上、われわれがそれに直接横から調べるというわけにはいきませんから、その調べの終るのを待って、私から事情を聞きました。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 方面本部調べは八時から、何時に終ったのですか。
  50. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 古いことで正確な記憶はありませんが、おおむねお昼ごろまでかかったように記憶しております。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、方面本部調べが終ってから聞いたということですが、それからあなたは、直接寺見を取り扱った古田巡査事情を聞きましたか。
  52. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 古田巡査大森巡査神群巡査全部聞きました。
  53. 亀田得治

    亀田得治君 そのあなたがお聞きになった内容はどういうことでしたか。
  54. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 説明すれば長くなりますが、大体、前回参考人が御報告申し上げたようなずっと経過報告を受けました。
  55. 亀田得治

    亀田得治君 前回参考人が言われたことをあなたは別に聞いているわけじゃないでしょうからね。何か、前回参考人の方とあなたは打ち合せてきているのですか。そんなことは要らぬことです。あなた自身が聞いた記憶を、最初に聞いた調べた結果の要点だけをかいつまんでおっしゃって下さい。
  56. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 当時留置場は、三人勤務でございまして、大森巡査古田巡査神群巡査勤務しておりました。そこへ寺見淳一という者が入って参りました。非常に留置場で大きな声を出したりあるいは留置場身体捜検等に応じないで骨を折った、こういうような話でありました。かろうじて身体捜検をして持ち物等も全部預かって、それで、さてどこへ留置しようかという問題になりました。そこで、当時留置場はほとんど全部満員の状況でございました。そこで、酔っぱらっているから独房に入れるのが建前でございますので、独房といいます。と、少年房に二名少年が入っておりました。そこで、その少年二名を他の房に全部移して、そこをからにして、そしてそこへ寺見淳一氏なる者を入れた。この入れるについては、村田係長も全部中へ入って、当時身体捜検には刑事留置場に入って大ぜいで、五、六人で扱ったわけです。係長指揮少年房に移した。少年房に入ってからも一人で羽目をたたいたり大きな声でいろんなことを言うて騒いでおる。約二十分ぐらい騒いでおった。ところが、たまたまそのときに中村正元なる、これは単なる泥酔者保護ですが、壁一つ隣保護室に入っておった。これが足で扉をけ破って、すぐわきにある家出等女の子が五、六人いる、そこへ入ろうとして、女の子がこわがって泣き出して収拾がつかなくなった。そしてこのままその中村なる泥酔者保護室へ入れて置くことが危険になってどうしてもしっかりした留置場に入れなければならない。さてそうしますと、少年房にはすでに先に一名泥酔者が入っておるので、酔っぱらい同十三人今入れることは当然できません。これもいろいろ相談の結果、係長指揮を受けて、最も見張りの場所から近いところにある第六房、ここにはおおむね三十歳以上の人が入っております。少年たちも入っていない。どこの房も四名ないし五名で、ほかにすいた所もないというので、それで大ぜいで相談の結果、看守三名で独房へ入れた。ところが、独房へ入れてからも、相変らず騒いだり、から手のまねをやったり騒いでおった。そこで、同房者の者も、あしたになれば帰れるから、静かにして寝ろと言ってズボンを脱がしたり、大ぜいして介抱してなだめた。ところが、あまり騒いだりするので、他の房からうるさい、早く寝かしてくれという声も出た。そのうちに便所々々と言うようになったので、こう言うときは看守もまだ三人おりまして、早く出さないとここへしちゃうぞとかということなので、看守が三人おれば便所に出してもいいことになっておりますので、多分二人で便所へ一回出しました。だんだん時間が経過して、最後に十一時ごろから、今度は他の看守も、休憩も全部つぶして十一時近くまでこれが処理に当っておったのですが、一応それぞれ部屋から出て、古田巡査が一人で十一時からの勤務になった。そこでまた、便所々々、そういうふうに言うので、そこで便器を入れてやろうと思って、便器を置く場所に行ったところ、便器はすでに他の房で使っておって、なかった。そこで、酔っぱらいのことであるし、あまり騒ぐので、やむを得ず古田巡査が連れて便所へ出した。そこで便所へ行って用便を済ましてまた再び房へ戻って……そのとき本人は、なぜおれを留置した、帰せとかなんとか言って……最初からそう言っておったわけですから、帰るつもりでおるらしい。房へ入ろうとしない。そこでうしろから押して無理に入れた。ところが、ほかの、中へ入っていた者も、寝ておる者もあれば中腰で起きておる者もあって、早く寝ろと言って、問題の田中輝男なる男が、左の腕か……古田巡査あとになってからのあれですから、はっきりした記憶はないのですが、首のあたりに手をやって、早く寝ろと言って抑えつけた。私はそのときかぎをかけようとしておった。突然の瞬間のことで、あまり大きな声で、何をしている、寝ろ、こういう声がしたので、はっと思った。無理に寝かせようとしたから、そんな無理をしなくてもいいと言って、こう言って制止した。そうしたらすなおに寝た。そうしたところが、寺見が、こんなうるさい房はいやだから……その前も同房者はもううるさくてしょうがないから口をきかぬようにしろとかいろいろ言っておったそうですが、こんなうるさい部屋はいやだから房を変えてくれと、そんなことを言っておったそうです。お前が静かになるなら変えてやろうというので、第四房へ——すぐ前の房ですが、そこに移した。ところが、前の房へ移ってからも、やはり大きな声で騒いだりいろいろなことを言うておる。それでたまたま十一時五十九分ごろ、その間、監督者は外勤の監督者その他を含めて五、六名で巡視が絶えず行われております。それで、田中係長が巡視したのが多分十一時五十何分か、八、九分ごろのことだと思っております。来たとき、異常なしの報告をして、そして後について各房を順次見て回って行くと、たまたま四房のところへ行くと、寺見なる男が中腰になって泣いている。で、どうした、どうしたと、こうやって田中警部補が声をかけたら、何も答えない。さらによく顔を見ると、非常に顔色が悪い。これは何かおかしいじゃないかと言うているうちに、ガタッと羽目に頭を打つような格好で倒れた。そこであわを食って中へ入って、それから休憩監視も起して、脳貧血か何かと間違えたのか、水を顔に引っかけたりあるいは平素人工呼吸を若干なり心得があるので、人工呼吸をやったらしいのですが、どうもおかしいというので、救急車の要請をして、病院に収容した、大体以上の程度報告が当時ございました。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 あなたは、寺見の親戚の方がその日の八時ごろ丸の内署へ来ておりますが、その方に会いましたか。
  58. 中村五郎

    参考人中村五郎君) この点は、私あとで考えて反省しておるのですが、当時警備その他が十時ごろからございますので、署長も、私もこれの打ち合せ、警戒のために忙殺されて、刑事課長に命じて、よく間違いのないように扱っておけ、事後の処置についてはやっておけというようなことを命じて、直接会いませんでした。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 家族の方には、今おっしゃったような説明がされておらないわけですが、あなたが、その当時そういうことを聞いておるということであれば、刑事課長もこれは知っているはずですね。
  60. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 刑事課長が朝早く出てきて、これはもう病院の死体の検視、その他に忙殺されておりまして、今私が申し上げたような詳細な一連の経過報告はおそらくその当時は受けておらぬと思います。
  61. 亀田得治

    亀田得治君 事情を知らない人が家族にでたらめな説明をしたということになるわけですか。家族の心配して来ておる方に対しては、そういう暴行のあったようなことは一つも話をしておらぬ。
  62. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 私がただいま詳細に報告いたしましたような報告はできなかったと思いますが、荒筋の報告は、刑事課長からやったと思っております。
  63. 赤松常子

    赤松常子君 ちょっと私お尋ねしたいのでございますが、あなたが翌日御出勤なさいまして、昨夜のいろいろな御報告をお聞きになったのは、当夜の責任者である巡査の方だけから事情をお聞きになっただけでございますか。
  64. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 巡査だけではございませんで、宿直の各監督者捜査係長警備係長、それから夜中にかけつけた監視巡査部長、これらからそれぞれ一応の報告を求めました。
  65. 赤松常子

    赤松常子君 その当時ほかの房に入っていられた同房者というのでしょうか、前に入っていられるそういう人々の意見はお聞きにならなかったのでしょうか。
  66. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 私は、同房者には直接当っておりません。
  67. 赤松常子

    赤松常子君 あなたが御報告夜中にお受けになったときに、これは少し変だとお思いにならなかったのでしょうか。いつもの例のあることと軽くお思いになったのでございましょうか。
  68. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 変だとは思いませんでしたが、一応留置場事故は、全部同房者調べることが建前でございますので、そういう意味で調査をやっております。
  69. 赤松常子

    赤松常子君 それでは、あなたは直接、監督者側からお聞きになっただけで、その当夜、そばで見ておられたあるいは第六房か第四房にいた人々にあなたは直接お会いにならなかったわけでございましょうか。そういう側からの証言は、これはあなたは聴取なさらなかったのでしょうか。
  70. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 当夜の宿直監督者係刑事指揮して詳細に調べて、その調べ報告受けておりました。間接的には報告を受けております。私自身、房にいた者は調べませんでした。
  71. 赤松常子

    赤松常子君 監督者側からの報告だけで、あなたはこれが正しい、間違いないと認定なすったわけですね。
  72. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 当時としては、日比谷病院医者心臓麻痺の疑いがあると言いますし、あるいはその後、検視あるいは強制解剖でも病死ということが言われておりましたので、かつ、監視あるいは留置場同房者も一応調べた結果、そういったことはないという報告でありましたので、病死とばかり、約半月の間、新聞が書いて問題が起きるまでは、そういうつもりでおりました。
  73. 赤松常子

    赤松常子君 今でも、去年の十一月三十日の産経に報道されておりますように、あなた様の談話が出ているのでございます。暴行の事実はない。警察側に手落ちはない。暴行があったようなそういう記事は全部事実無根だということを、はっきりあなた様は指摘していらっしゃいます。その記事が出ておりますが、今もなお、そういうふうに思っていらっしゃるのでしょうか。
  74. 中村五郎

    参考人中村五郎君) その新聞は、読んで記憶が若干ありますが、留置場の中に入れて相当時間、踏んだりけったりして伸びるようにやったというような記事になっておりますので、そういうようなことは絶対ないと、今でも信じております。
  75. 亀田得治

    亀田得治君 暴行のあったことは、これはもうあなたが今御説明になったようにはっきりしている。そういう暴行のあったこと自体を警察は初め隠しておったわけです、親族に対しても、外部に対しても。そこを聞いているわけです。なぜそれをありのままにもっと言わなかったのか。今までの皆さんの態度をずっと振り返ってごらんなさい。私たちとしては善意に解釈して、古田巡査だけが現場を見ているのですから、それだけが知っていて、古田巡査がそれを黙っていたために、署長も次長も皆そういう報告をしていたのかというふうにも思っていたのですが、先ほどの御説明を聞きますと、ともかく田中に留置場内で暴行された、そのこと自体はこれははっきりしている。そこの程度の問題等になれば、これはこんなところでなかなかお互いに議論しても水かけ論でしょうが、そのこと自体ははっきりしているわけです。親族の人もその点を聞きたがっている。何か間違いがあったのじゃないかということ、そうでなければ、平常からのむすこの行動から見たって、そんなことになるはずはないのだがということで、その点も警視庁にも何回も聞きに行っているわけです。それを再三今まで隠してこられた。私は、隠しているのは実際の当直で、そうしてその問題を扱った古田巡査だと思っていたのだが、古田巡査自身は、今のあなたのお話から開くと、その事件のあったその日に上司の皆さんに話をしているわけですね。そういう状態にあるのに、暴行などは絶対になかった。それを一方の方はあったのじゃないかと疑い、それに対してなかったと言うたのは、そういう強い程度のものはなかったのだということをおっしゃるけれども、そんな程度の問題じゃない。あったかなかったか。初め親族が聞きに行った場合には、全然そんなことは触れておらない。自然に死んだようなことをあなたの署の方が言われておる。あなたの下の何とか課長のようですが、なぜそういうことを警察としては、もっとはっきり早く明確にできないのか。ほかから事件がばれてきて、初めてそういう報告が公けになされる、こういうことははなはだおもしろくない。そういうものを隠すものですから、あるいはこれはあまり酒を飲んで来てわいわい言うものだから、それで担当の警察官が、まあここへ押し込んでやれば、あそこに強いのがおるから、あいつが何とかしてくれるだろうというぐらいに、半ばしめし合せてそんなことをやったのじゃないかというふうな疑いもやはり出てくるわけなんですね。あなたが御報告になったような程度のことなら、なんで警察がこれを隠す必要があるのです。この前私は、警察庁長官にお聞きしたところが、いや、そういう末端の巡査というものは、どうもそういうことが留置場内であると、自然にそうなったものでも、言っちゃ悪いと思って隠す場合もあるというふうなことを言っておりましたが、私はまあそれを聞いて、古田巡査自身がそういうことをやっていたのか、こう思っていたのですが、今の話だと、署長や次長がそういう隠す行動をとっているわけです。はなはだそれはふに落ちないのですね、そう思いませんか。
  76. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 私が先ほど説明しました、寺見なる者が第二回目に便所から帰って房に入れたときに、田中が寝かした、強く寝かした、腕を持って。これは古田巡査は瞬間的のことで、非常に表現等が、意をもって寝かしたとも言えるし、あるいはいろいろの表現の違いで、非常に受ける感じは強く寝かしたようにも受けましたし、ただ普通に寝かそうとしたのは、私は最初のころは暴行ではない、こういうような考えでずっと事件の、今でもそう思っておったのであります。
  77. 亀田得治

    亀田得治君 そんなことを言っているから、真相がいつまでたってもはっきりしないのですよ。この事件がこういうふうに明るみに出てきたのは、実際に寺見に対して留置場内で暴行をした田中が、たまたま刑務所から出るときに——丸の内から刑務所に行ったわけでしょう、その刑務所から出るときに、偶然にあるタクシーに乗った。迎えにテキ屋風の人が二人来ておった。三人でタクシーに乗ったわけですね、そのタクシーの中で、実はおれはほんとうからいったらこんな早く出れるのじゃないのだが、実は丸の内でおれは、こんなことをしてやったのだが、だけど、そいつは警察心臓麻痺ということにしてくれたからおれは助かっている。自慢顔にたまたまタクシーの中で、保釈で出ましたときにしゃべったわけですね、ちょうど前日に、これに関係した産経の記事をその運転手が見ておったものですから、ひょっとしたら、あの新聞の記事の人じゃなかろうかという疑いをもって、しかるべき方面に連絡してみたところが、やはりそうだったということで、これは問題が発展してきているのですよ。それで、私たちも初め、警察庁の当局に暴行があったのかなかったのかという点等を聞きましても、なかなかこれははっきりしなかった。はっきりしないというのは、おそらくあなたの方からそういう報告が警視総監なり警察庁の方に行っておらぬからなんでしょう。私は、どこでそういうことがとめられていたかと疑念を持っていたのですが、あなた自身がとめていた、あなたとか署長がとめていたのなら、これは古田巡査を、そう私は今としては、まあこれはあなたの報告が真相かどうかわかりませんが、真相かどうかわからぬが、しかし、少くとも暴行があったことは、これははっきりしているのだから、そこを隠しておく、これははなはだもう不快な印象を関係者に与えている。  こういうことはありませんか。その当時、同じ房にいた人たちに対して、この問題の真相などをしゃべってはならない、こういうことを留置されている人に、あなたの署の中でだれかが言うたことがありませんか。
  78. 中村五郎

    参考人中村五郎君) ございません。
  79. 亀田得治

    亀田得治君 ございませんとおっしゃるけれども、あるかもしれぬじゃないですか。あなたがないという意味ですか。
  80. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 当時の報告からそう申し上げたのでございます。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 当時の報告からそう申し上げたとは。
  82. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 同房者あるいは留置人調べる場合、通報その他の心配があるから全部別々に早く離して調べる、こういうようなことを私は命じておりました。また、朝出勤して報告を受けたらそのように実施しておりましたので、おそらく通報その他のことはできなかったと、こう信じております。
  83. 亀田得治

    亀田得治君 それはそんな簡単なわけにいかないですよ。あなたが署に行くまでに、電車の関係で、五、六時間かかっているのですよ。実際にこれが行き過ぎた暴行であったのであれば、その間だったら十分あなた打ち合せできますよ。少くともこれは親族などに話されたように、単なる心臓麻痺とか、そんなものじゃないということははっきりしているのですからね。  それからこの四房の留置人で、こういうことを言っている人があるのですが、もう房の中では冷たくなっていた、こういうことをおっしゃっている方がある。それに対して、丸の内署から人を派遣してそういうことを言うのをやめさした、これは事件が起きてから相当あとです。そういうことはありませんか。聞いておりませんか。
  84. 中村五郎

    参考人中村五郎君) そういうことは命じたこともありませんし、聞いたこともありません。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 実際に死亡したのは何時ですか。
  86. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 日比谷病院診断書は零時三十分死亡確認、こういうふうになっております。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 それから二月の二十日ごろですか、東京地検の藤井検事が親族に語っているのですが、この事件の真相は留置場で死亡しているのですよという意味のことを語っているのですよ。それは警察の認識とだいぶ違うと思う。それからとにかく親戚の方がなぜ一生懸命になるかといえば、自分のむすこの命日をいつにしていいかわからないというわけです。警察がああでもない、こうでもないといって、積極的に真相というものを明らかにしてくれないから、だからせめて命日でもはっきりしたい、こういう変死をしたのですから。検事さんに聞くと、検事さんは親戚の方にはそうおっしゃっているのですよ。それから日比谷の病院の受付の方も、病院に来たときには、もうだめだった、こういうことを言っている。だめだったという意味は、若干これはばく然としていますがね。もう死ぬまぎわだという意味もあるだろうし、いろいろでしょうが、しかし、担当の検事さんは、これはおそらく暴行を加えた田中を十分お調べになったはずだし、いろいろな点等を検討して、そういう意見を出されているのですよ。あなたの方とだいぶ違うじゃありませんか。あなたの方は、ともかく留置場内で死んだなんて言われるのはいやだから、なるべく時間をおくらすだろう。この問題を担当している検事さんが、そうおっしゃっている。どうですか、その点。
  88. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 当時、私は直接そのものに触れておりませんから、一応、日比谷病院診断書なり、それに基く係その他の報告によって、今までさよう心得ておりました。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 それはもっとはっきり協力をして、ともかく明確にできるだけはしなさい。あなたがおらぬのだから、原因等はなかなかわかりにくい点があるかもしれない。しかし、せめて最期の息を引きとった時間などは、明確にしてあげるべきですよ。日比谷病院診断書最初診断書ですよ、診断書では、初め心臓麻痺と書いて、それを赤線で消して、結局その死因は不明、こういうふうになっているのでしょう、最初診断書は。それは警視庁に、その診断書は警視庁か検察庁にいっているはずですがね。そんな、あとからのいろいろな、警察医者ですか、そんなところなんかあまり当てにならぬですよ、それは。こういうあなたの方自体が問題を隠そうとしたようなものについて当初ぱっと見た診断書というものは、そういうふうになっていることを私は聞いているのですが、そうじゃありませんか。その診断書が残っているということを聞いている。
  90. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 私の署に控えとしてあるのは、赤線で消してあるというようには思っておりません。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 だから、そういういろいろな診断書があるようでは、この診断書があるからこうだ、そんなことを言うたって、関係者は納得せぬわけです。一たん心臓麻痺と書いて、赤線で消して、結局、不明、こんなものが一枚でもある以上は、書きっぱなしのものならいいですよ、わざわざ消しておるのです。検察庁かどっかにあるのですよ。それを調べてごらんなさい。ともかく、あなたと、これは時間も、きょうは十二時までで、あまり時間もないから、議論はあまりする必要もないのですが、この同房の田中という人ですね、田中、これはどういう経歴の人ですか、御存じですか。暴行を加えた人です。
  92. 中村五郎

    参考人中村五郎君) すりで当初検挙された、すりの、窃盗被疑者と、こういうふうに聞いております。
  93. 亀田得治

    亀田得治君 これは前科があるのですか。あるとしたら、どれくらいあるのですか。
  94. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 前科は、たかないというような報告を受けたと記憶しております。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 この前、警察庁長官のお話でも、何かおとなしいような男のように言われていたのですが、どうもうじゃなしに、何か田中組とかいそういうものの親分だというふうなことのようなんですが、相当腕っぷしも強い、そうしてそこの丸の内署に、事件が起るまでにすでに二週間ほどいたはずです、これは。だから、二週間もいたのですから、警察の方でも、これはどんな男かというくらいのことは、よくわかっておると思うのです。そういう男だから、おそらくまあ、そういう房の名主みたような格好になっていたのかもしれぬと思うのですが、しかし、これは大事なことですから、あなた、お調べになったろうと思うのですが、二、三週間は、この事件が起るまでいたこと自体ぐらいは、これははっきりしておるはずですが、どうですか。
  96. 中村五郎

    参考人中村五郎君) たしか二十日ぐらい入っておると思います。そこで、その看守から、この人間はどうだというようなことをいろいろ聞きましたが、ほかにも、二十日、十五日ぐらい入っておる留置人は相当おりますが、今まで、いろいろな内規の命令に従って、別に看守に反抗したとか、そういうようなことはないので、普通の男だと、こういうふうに報告を受けております。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 私は、先ほどのあなたの報告は、あのまま信じたとしても、警察じゃ、これは大体どんな男か、三週間もいればわかっておるのじゃないかと思うのですがね。そういう方面じゃ、非常に勘が早いのですから、皆さん。わざわざ、そこへほうり込んで暴行さした。ともかく留置場内で、酒を飲んでわいわい騒いでおるのも悪いかもしれぬが、どうも先ほどの話を聞いても、騒ぐから、めんどうくさいから、一つぐらいなぐってもらってこい、どうも、そういうことがあったような感じもするのですが、田中がそういうおとなしい男だ、そういうことをおっしゃればおっしゃるほど、疑義を持つわけですよ。三週間もいれば、大てい、すりの、そういうことで来ておる人なら、わかっておりそうなものですが、わからなかったのですか。
  98. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 看守自体は、大体いろいろ出入りが多いのですから、性格の詳しい点まではわかりませんが、大体この人間は乱暴だとか、おとなしいかぐらいはつかんでおると思います。事実、また、われわれの留置場管理上、自殺の癖があるとか、暴行する癖があるとか、看守に反抗する癖があるとかいうようなのは、看守上注意を要する人間として赤まるをつけて、平素、別に取り扱うような内規になっております。看守は大体、性格はつかんでおると思います。今までの報告では、特に乱暴をするとか、そういうような男じゃない、こういうわけであります。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、あなたとしては、そういう報告ちょっと納得できないわけでしょう。部下の者から、そんな乱暴をする男じゃないという報告があったからということで、済まされぬわけでしょうが、現実に暴行があったのだから、それをそのままに信じておるところがおかしいのですよ。これは究明しなければならぬという立場であれば、当然そんなことは予測つかなかったのか、田中自身をもっと解明しておくべきだと思うが、どうもそれをそのまま信じておるようなところがある。はなはだ不満なんですが、きょうのお話は。もう少し真相を突きとめるには、実際に寺見を扱った古田さんに聞きたいわけですがね。最初に、先ほどあなたは関係者からの調書を取ったと言いましたな。その調書というのは、だれとだれの調書ですか。ちょっと具体的に、内容は要らぬですから、名前、そしてその調書が今どこにあるか。
  100. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 六房とそれから最後に寺見なる男が倒れた四房の三名、六名について調書が取ってあると思います。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 今それはどこにあるのですか。
  102. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 署に保管してあります。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 それから当直なり担当の看守の調書といいますか、報告書といいますか、何かそういうものは残っているのですか、その当時のものは。
  104. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 残っております。
  105. 亀田得治

    亀田得治君 それらには、先ほどあなたが最初に御報告になったようなことが書かれておるわけですね。
  106. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 同房者の一名からもあるいは古田巡査からも、寝よと言って寝かしたと、そういうような報告になっております。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 いや、そのこまかいところはよろしいです。田中が暴行したことは書いてあるのですか。
  108. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 田中がなぐったということは書いてありませんが、寝かそうとしたということは書いてあります。寺見は寝ようとしないで外へ出ようとするのを、無理に肩の辺に手を当てて押えるように寝かした、こういう報告は当時から出ております。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 それを暴行と見るかどうか問題点でしょうがね。田中自体が、まさかこんなことが漏れるとは思わないで、自慢顔にタクシーの中で言うておるわけですね。それと非常に違うわけなんですよ。そこが違うのはどうしようもないかもしれぬが、しかし、それだけのことでもあなたの方で、親族の方に対してなぜもっと言えなかったわけですか。五日の日には、なるほどあなたは応待できなかったかもしれぬが、その後、親族の方はとかく警視庁なりいろいろ訪問しているのですよ。そのことはあなたも聞いて知っていると思う。その調書をそのまま信用していいかどうかわかりませんけれども、書いてあることだけでも、もっと正直に早くおっしゃったらどうなんです。
  110. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 私の方から報告した報告あるいは方面本部調べた調書にも、今申し上げたように、寝よと言って本人が寝たがらないのを無理に寝かしたというような報告は、警視庁にも行っておりますから、おそらく遺族にもその報告書あるいは調書の内容については知らしてあると思います。事実私も遺族の家へおたずねしたときも詳細に説明しております。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 これは真相は結局田中と——これはまあ今検事が調べているわけですが、田中に聞けば一番いいのですが、もう少し、何ですね、その当時見ておるわけですからね、あなたの方は何でもないと言う、今度は逆に、検事の方がそれを問題にする、そのこと自体でもはなはだこれは警察としては黒星なんですよ、そういう点どういうふうに反省していますかね。
  112. 中村五郎

    参考人中村五郎君) まあ最初古田巡査が、その後において最近言われた程度のことを最初から言ってもらえば、これほど皆様にも御迷惑をかけないですっきりしたものが出たと思うのですが、この点については、まあ私たちも最初から古田巡査にも十分ありのままを言えと、こういうようなことを再々申し上げましたし、当時古田巡査——私の古田巡査に当った感じですが、一応病院なり、解剖の結果は、病死ということになっておるし、それほどまあ普通の変死の扱いという程度で真剣に考えておらなかったようです。で、まあわれわれの当った感じも晴々しいといいますか、それほど深刻に考えておらなかったようですが、その後いろいろと問題がこじれて、新聞紙上に発表されるようになって、どうも古田巡査が何かしら憂うつのような考え——あるいは再々われわれと警視庁から何回か調べるので、本人はもうノイローゼになって、夜も寝られないくらい神経衰弱ぎみになったくらいの状態で、なぜそれじゃお前は最初から、寝かそうというときに、田中が顔のあたり一つなぐったように思うということを言わなかったかと言ったのですが、こういう点についても、申しわけなかった、申しわけなかっただけしか言わないので、これ以上あまり本人を追及すると、もし間違いでもあったら困ると思って、その程度しか私も追及しませんでしたが、私の感じでは、当時それほど寝かそうとしてやったことがこんなに大きな問題にはならぬ、こういうように本人は考えて、まあ普通にわれわれに報告しておったのが、途中から言いそびれちゃって、今さらそれに若干のことをつけ加えることが非常に大きな問題になったように本人は深刻に考え過ぎちゃって、そうして長い間それを言わなくて、結局まあ皆さんに御迷惑をかける、こういうようなことになったと思いましたので、われわれとしても、将来まあ部下の指導監督上その点については、さらに反省して、十分にそういうことのないようにしたいと考えております。
  113. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  114. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記始めて。
  115. 大川光三

    ○大川光三君 中村さんに伺いますが、丸の内署には単独房というのはあるのですか、ないのですか。
  116. 中村五郎

    参考人中村五郎君) ちょっとおそれ入りますが、聞えなかったのですが……。
  117. 大川光三

    ○大川光三君 丸の内署には単独の房があるのかないのかということを伺いたい。
  118. 中村五郎

    参考人中村五郎君) ございません。
  119. 大川光三

    ○大川光三君 そこで、前回、石井警察庁長官の御説明ですと、最初からこの人は単独房に入ってもらうべき人だ、ところが、たまたま少年の房があって一時その少年の房へ入れたのだ。しかるに他にもう一人泥酔者があったために、他の泥酔者少年房に入れてこの寺見を四房に移した。こういう説明がありました。そこで、いわゆる少年房はときどき単独房としてお使いになっておるのでしょうか、どうでしょうか。
  120. 中村五郎

    参考人中村五郎君) ときどき使っておるということもございませんが、たまたま当時二名だけしかおりませんから、これをほかの方へ移すのも比較的簡単である、こういうようなことから少年房を単独房に一時したわけであります。
  121. 大川光三

    ○大川光三君 第四房または第六房に他の留置人がおるにもかかわらず、泥酔者をそこへ移すということについては、あるいは暴行されるということが予見されると私は思う。しかし、四房の方に入れることがあるいはそういう暴行を加えられるということが予見されたにしても、結論は私はやはり単独の房がなかったということが本件に大きな影響があったとこう思うのですが、警察の考えとしては、そういう単独房の必要を認めておられるかどうか伺いたい。
  122. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 十分ほしいと思います。
  123. 大川光三

    ○大川光三君 亀田さんからどうせいろいろお尋ねがあると思いますけれども、結果的には、検察庁の告訴事件暴行罪として処理されておるのである。その結果から見まして、警察署内に行われた事件というものはまあ傷害致死というところまでの大きな因果関係がなかったとわれわれは判断しなければならない。現に専門家の検察庁が、暴行罪で起訴したというのでありまするから、そこで繰り返して私どもの聞きたいことは、決して四房、六房に移したことを私は責めたくはないのですけれども、単独房が必要であるということならば、その面について、過去においても大いに単独房の設置を求めておらなければならないという点に、多少警察としての私は落度といいますか、足らなかったところがあると思いますので、今後こういう事案は、これは一つにとどまらぬのでありまするから、営繕方面におきましても、大いに警察の意のあるところは上の方へ上申して設備を完全にするということを留意されんことを望んでおきます。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 それでは古田さんに簡単にお聞きします。  この問題の田中の前歴なり、そういうものは当日わかっていたと思うのですが、どうでしょうか。
  125. 古田義明

    参考人古田義明君) 自分個人としましては、深いことはわかりませんでした。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、約二十日間ほどすでにその房にいたというわけですから、どういう男かということぐらいのことは見当がついていそうなものだと思うのですが、どうでしょうか。
  127. 古田義明

    参考人古田義明君) それはまあ窃盗、いわゆるすりです。すり犯人であって、ふだんは房におるときは、留置場なれをしておるような状態ですが、留置規則というものを非常にわきまえておって、規則違反というものは見受けられず、私語雑談というようなものは全然なかったものですから、本人の性質としては、非常にさほどに荒くれたものではないということを考えておりました。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 そういうおとなしい顔をして、留置規則なんかもちゃんと知っている者、そういう者の方がむしろ警戒を要するんじゃないですか。わんわん陽性に騒いでいる者はむしろ大したことはない。三週間もおれば大がい見当はついていると思うのですが。
  129. 古田義明

    参考人古田義明君) それはその人間の前科とか、自分としてはその人間に対して初めて会った、取り扱った留置人でありますから、前科その他が自分はわかりませんでしたから、そこにいた期間中は自分はそう考えただけです。留置場へ入ってくる者で、留置場へ一歩踏み入れると同時に、非常に気性の荒い者でわれわれに対して悪口雑言を述べる者、そうかといって、反面非常におとなしくそこで留置手続をするときでも、もう今回でほんとうにやめますというようなことを述べている者がおりますから、まあ田中が入ったときは自分はいませんでしたけれども、まあ田中がそういうような人間であったと、おったときは自分は考えただけです。
  130. 亀田得治

    亀田得治君 この田中が寺見をなぐったことがあるわけですね。で、まあそのなぐり工合とかそういうこまかいことはお聞きしませんが、なぜそのことをあなたは隠していたんですか。
  131. 古田義明

    参考人古田義明君) 自分としては、留置場監視者であり、留置場内で自分が勤務中たとえ同房者間でいざこざがあり、また、けんか、なぐり合いがあったにせよ、その責任はそのとき勤務していた自分の責任であると思って、その責任の重大さを痛感し、上司や同僚に非常に迷惑を及ぼすという考えから黙っておりました。
  132. 亀田得治

    亀田得治君 真相を語ったのはいつなんですか。あなたとして上司に語ったのは。
  133. 古田義明

    参考人古田義明君) ちょっと警察手帳に日にちが書いてありますが、見てもよろしいでしょうか。
  134. 亀田得治

    亀田得治君 いいです。およそでいいです。いつごろです。
  135. 青山正一

    委員長青山正一君) どうぞごらん下さい。
  136. 古田義明

    参考人古田義明君) ちょっと見当りませんが、二月の六日に、人権擁護局へ行って……。ちょっと取り消します。日にちを間違えました。
  137. 青山正一

    委員長青山正一君) 亀田さん質疑を続けて下さい。ちょっとわからないらしいですから。
  138. 亀田得治

    亀田得治君 およそのことでいいです。一月とか、二月とか。
  139. 古田義明

    参考人古田義明君) 三月に入ったときと思いますが、その点はっきりはわかりません。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 ずいぶん長く黙っていたものですが、先ほどあなたのおっしゃったようなお気持で一応隠していたという、そのまあ心境は、あなたの立場に立って見ればこれはまあ理解できないことはないですがね。そういう気持でおりますと、やはりほかの同房者ですね。同房の諸君にもこれは一つ穏便にしておいてくれ、おれの方も荒だった報告はせんからと、そういうことを言いたくなるわけですが、そういう意味のことを実際に同房しておる者に言ったことはないのですか。
  141. 古田義明

    参考人古田義明君) 自分としては、そういうことをしたことも言った覚えもありません。
  142. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、あなただけ隠しておったって、ほかを調べればすぐわかるじゃありませんか。やっぱりそういうお気持になったから、ほかの人にもそれは多少言うたのじゃないですか、そういう意味のことを。
  143. 古田義明

    参考人古田義明君) ほかの人は長くおられる人ばかりではありませんから、自分としても他の留置人にそういう話は全然いたしませんでした。
  144. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、それならこの事件が起きてから留置人調べられたりいろいろしているのですが、みんなが同じように初めの間は暴行がなかったように言っている節があるのですが、丸の内署にその調書が残っておるというからそれを見ればわかるのですが、その辺がそんな偶然に合うということはあまりないことでしょう、やっぱりちょっとこれは暴行のことだけは伏せておこうと、こんな公開の席上じゃなかなかあなたとしても言いにくいかもしれませんが、多少何かそういうことがあったのじゃないですか、絶対ないですか。
  145. 古田義明

    参考人古田義明君) 留置人にそういうことを伏せろという意見を言ったことはありません。
  146. 小林英三

    ○小林英三君 今の古田証人の答弁によると、事件があって六カ月ばかりして世の中が騒がしくなって真相を申し上げた、しかし、私は警察官として常識的に考えまして、死に至らしめたということがあったということを自分はたぶんあれが死因だろうということを考えておったにもかかわらず、単なる上司に迷惑をかけるとか申しわけがないというようなことのみをもって六カ月間もそのままひた隠しに隠しておったということは、私ども常識的に考えてちょっと不思議に思うのですが、これは何じゃないですか、もう大声をあげて乱暴をする、手にあまる、古田君が一人になって手をもてあますというようなことから、しゃくにさわって仕方がないと、われわれもそうですが、そういう場合においては、そばにいた人はしゃくにさわったであろうと思うのですね、そういうときにたまたまその田中という人がいて、そうしてしゃくにさわったから一つやっつけてやれと、まあ死に至らしめるようなことじゃなくて、しゃくにさわるからそういうふうなことを言われたことがあったのじゃないですか、私はただ単に警察官としてはそういう死に至らしめたということは重大な問題だが、それがためには、これは一時も早く上司に真相を言って、たぶんこれが原因じゃないかということを言って、こういう事実がありましたと、常識的に考えて私は言わなくちゃならないと思う、死んだのですから。それをただ上司にこういうことを申し上げることは非常に迷惑をかけるとか、自分が責任者として申しわけないということのほかに、まずもって私は特に真相を告げるということが、これは常識的に人間的な考え方じゃないかと思うのですが、それを半年間もそのまま隠されておったということについては、自分もそれを教唆したようなことがあったのじゃないかと思われやしないか、そういうことがあったのじゃないですか、それをはっきり言ってみて下さい。
  147. 古田義明

    参考人古田義明君) 自分としては、黙っていたことは今になって十分間違っていたと深い反省をしております。ただし、そういう暴行をやったということ、教唆をしたということは絶対ありません。
  148. 小林英三

    ○小林英三君 私は今の古田証人のお話を聞きまして、今の中村証人なんか、あるいは署長なんかに聞きたいんでありますが、とにかくそういうふうな半年たって、今のような理由によって隠しておられた、で中村証人がそれをいろいろ調べられた、署長調べられた、いろいろな状況判断して調べられた、考えられたろうと思うんだけれども、そのときに、そういうふうなことをお考えにならなかったですか、中村証人は。
  149. 中村五郎

    参考人中村五郎君) 非常にこまかい微妙な問題ですが、無理に寝かそうとしたときに、古田巡査のその後につけ加えたことは、顔のあたりをなぐったように思われる、平でなぐったか、こぶしでなぐったか、はっきりしていない、予期してないことが瞬間的にぱっと起きた問題でありますので、そういうような状態で、まあ答弁なんですが、われわれとしても傷害致死に結びつくような暴行があったとはとうてい考えてもおりませんし、医者のいろいろな結果にもそういうことが出ております、ただ寝かしたときにどの程度の強い寝かせ方をしたかということについては、それが単なる暴行程度に至るか、単に寝かそうとしたことが暴行になるか、そこらは見解の相違になると思いますが、そこら辺が田中を調べることができませんで、こちらだけの調べですから、九分九厘間違いはないと思っていたんですが、まあ田中を調べてみればはっきりするんじゃないかと、こう思っております。それが田中は小菅に行き、さらに地検の手に移っておりましたので、私どもはただ部下の巡査、当時の同房者調べた記録だけで判断したにすぎません。
  150. 小林英三

    ○小林英三君 今中村さんはそうおっしゃるが、部下の人の報告書のみで考えたということは、私はちょっとおかしいと思うんです、死んでいるんですからね、人が。そうすればあなたが部下に対して、直接にもう少し糾明すべきじゃなかったかと私どもは常識的に考えるんですがね、その点はどうですか。
  151. 中村五郎

    参考人中村五郎君) この点は、吉田巡査はここにおりますけれども、何回となくわれわれも古田巡査についてありのままを詳しく、もう自分で手で表現さして、そのときのことを説明せよということは再々申しておりました。
  152. 赤松常子

    赤松常子君 ちょっと古田さんにお尋ねしたいんでありますが、われわれが調べたことと、ちょっとあなたのおっしゃることが少し食い違っている点がございます。それはその寺見さんを寝かそうとするその動作が少しきつかったとか、それが死に至らしめたかどうかというようなところに疑念があるようにおっしゃっておりますけれども、それ以前にこういうことがあったんじゃないでしょうか、第四房に入れて、そこでも寺見さんが騒いだ、第六房にいた田中さんが、ああ、うるさいなあ、その人をこちらによこせというようなことを言われた、そうして四房から六房に連れていって、しばらく何かわめいていたということがあって、そうして急に静かになったというようなことが私どもの調査ではあるんでございますが、ただ田中さんが寝かせようとなさったということだけをおっしゃっておりますけれども、それ以前にこちらによこせ、静かにしてやると言って、房を変えて寺見さんをその房に入れた、こういう行動の動作がございますですね、で私どもの不思議なのは、どうして古田さんが寺見さんを静かにその房でできなかったかということ、なぜ田中さんの方にそれを移したかということ、これが私ども非常に疑問なのでございますが、その点少し食い違っておるのであります。その前後のことを、簡単でよろしゅうございますからおっしゃってみて下さい。
  153. 古田義明

    参考人古田義明君) それは、今問われた方の房とか、そういうのが少し実際の房のあれと違っておると思いますが、初めから申し上げますと、九時三十分ごろ有楽町で酒に酔っぱらって非常にあばれて……。
  154. 亀田得治

    亀田得治君 まあ中へ入ってからしなさい、時間がないから……。
  155. 古田義明

    参考人古田義明君) 九時半ごろ留置場に入ってきたわけです。そうしてこれは器物毀棄現行犯人ですから、一応そういう条件で身体捜検をやったのですが、住所氏名はわかりませんでした。そうして身体捜検をやったときには、看守三人でやりました。そうしてその捜検を三人でやっとやったような状態です。留置人の名簿を作るのもただ着衣と人相 それだけしか書けない状態です。それで一応そのときは他の留置人は就寝して、八時に寝たのですから、一応寝ておりましたが、九時半に入ってくると同時に、全員がみな起きて、非常に騒々しい留置場になったわけです。それでこの寺見さんが入ってきたときは立っておられないような状態でした。それで他の寝ておった留置人が起きたところへ入れても何だから、少しの間さめるまで、入口の少年房というのでありますが、これは留置場の中の少年だけ別個に入れるところですが、そこへ少年が二名おりましたが、その少年を一名ずつ他の房へ移しまして、そうしてそこへ入れたわけです。そうして大体入れて少ししましたら、もう一名は酔っぱらいなのですが、これは泥酔保護として、留置場の隣に保護室があるのですが、そこへ保護したわけです。保護室留置場と違って施設の面で非常に弱いものですから、その泥酔者が大あばれしまして、入口のとびらもぼろぼろにこわしたような状態なのです。それでこのまま放棄しておいては、他のガラス戸もこわされるし、また、本人自身もけがをするだろうというあれで、少し家族の人に連絡つくとか、それまでの間それじゃ留置場の方の入口の房にでも入れて、ということを係長さんに話しまして、それではそういう工合の措置をとれという指示によりまして、寺見は被疑者でありますから、他の房の留置人一緒に入れても差しつかえないと、保護室におる泥酔者は被疑者でなく泥酔者であるから、これは純然たる保護としての取り扱いというために少年房に入れておいて、寺見を他の房に移して、保護室におる泥酔者少年房に一時入れるという、こういう処置をとるために、それでは寺見をほかの留置人一緒のところへ入れる、それではどこへ入れるかということを三人の看守者で相談したわけです。そのときは、もうその時分は大体五十分くらい入ってからたっていましたが、他の留置人は全員目をさまして、全然寝ないわけです。われわれは極力制止したのですが——まずあそこは四十四名の定員ですが、三十七名入っていました、男が三十六名です、その当時は……。それで制止したが、全然聞きませんでした。それで三人でまあ……。
  156. 赤松常子

    赤松常子君 簡単でよろしゅうございます。
  157. 古田義明

    参考人古田義明君) そうして相談しまして、六房へ移したのです。六房へ移すときに、田中がここへ入れよ、わしのところへよこせ、そういうことは聞いていません。ただし、他の房からもみながおいこっちへ来いとか、そういうことは聞いていますが、だれがどう言うたか、今言うた声はだれだという、そういうことは三人とも全然気にもとめておりませんし、わかりませんでした。ただどこへ移すかというので、六房を選んだのは、三人で、まあ六房にその当時若い人もいないし、年令も三十過ぎていましたから、そうしてまあふだんの、留置規則を破らずにふだんおとなしいなあと三人で考えておったものですから、それではそこへ入れようと、そのために六房に入れたわけなのです。
  158. 亀田得治

    亀田得治君 最後にお聞きします、時間がもうないそうですから……。結局まあ田中の行動によって死亡したかどうか、そういう点はいろいろな鑑定の問題があるでしょうし、また、検事自体の捜査の結果に基く判断というものもこれは重視しなければならぬわけですが、しかし、検察官が暴行で起訴したからということだけでは、私はやっぱり済まぬ問題があると思うのですね。検察官としては、あくまでも証拠という立場に立てば、やはり確実なところで起訴する、こういうことは原則ですからね。とにかく現実に起きておることは、一人の人が暴行を受けて、それがどの程度の比重をなしておるかは別として、死亡している。だからこれはやはり重大な問題ですからね。しかも場所留置場の中で起きておる。私はそういう意味で、こういう問題はやはり一日も早く関係者に真相を明らかにする、こういう考え方で今後ともやはりいろいろ注意してもらいたいと思いますね、十分こういうことは……。  そこで、最後にあなたの感じとしてはどういうふうに考えておるか、一点だけ聞いておきますが、死亡の時日ですね。担当の検事は、家族の方には留置場内で死亡しているというのが真相だというふうに二月にお話しされているのです。その点が家族の方としても、まあどうせ幾ら騒いだって返る問題じゃないが、せめて死亡の時期ですね、それでもはっきりしたい、命日ははっきりしたい、こういうことを盛んにおっしゃっておるわけです。それで一番あなたが近いわけですからね、ちょっとお聞きするわけです。あなた自身はどういうふうに考えていますか、その点……。
  159. 古田義明

    参考人古田義明君) 四日の午前零時三、四分前と思うのですが、留置場にすわっていて急に倒れたわけなのですが、死亡したということは、五日の午前零時三十分に自分は初めて病院からの電話病院救急車でついていった者の電話によって知りましたから、その時間が死亡の時間だと確信をしております。
  160. 亀田得治

    亀田得治君 四日ではなく、五日の零時の三分ほど前に、こうがくっとなって……。
  161. 古田義明

    参考人古田義明君) はあ、五日ですね。それで病院から電話があったのが五日の零時三十分ごろ、ついていった看守から電話を受けて、その時間が死亡の時間と自分は考えております。
  162. 青山正一

    委員長青山正一君) 本件についての本日の調査は、この程度にとどめまして、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十九分休憩    ————————    午後一時三十七分開会
  163. 青山正一

    委員長青山正一君) 休憩前に引き続き、これより委員会を再開いたします。  刑法の一部を改正する法律案刑事訴訟法の一部を改正する法律案証人等の被害についての給付に関する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  刑事訴訟法の一部を改正する法律案につきましては、衆議院送付案は修正が加えられておりますので、まず、衆議院修正案について政府から説明を求めます。
  164. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 刑事訴訟法の一部を改正する法律案は、衆議院におきまして慎重御審議を得た結果、昨四月十五日、二点について修正の上可決されたのでございます。  その一は、政府原案におきまして、「第二百十条第一項中「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」を「死刑にあたる罪、無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪又は刑法第二百八条若しくは第二百二十二条の罪」に改める。」ことにしておりました部分を削除することとされた点でございまして、その理由といたしましては、基本的人権の保障を全うする見地からいたしますと、緊急逮捕し得る罪の範囲を安易に拡張することは適当でないと認められることと、並びに緊急逮捕の罪状の重い一定の犯罪についてのみ許されるといたしております最高裁判所の判決の趣旨等を考慮いたしまして、この際、緊急逮捕し得る罪に新たに暴行罪及び脅迫罪を加えますことは相当でないとされたためでございます。  その二は、政府原案の第二百八十一条の二及び第三百四条の二の各改正規定中、「その供述中」とありますのを、「検察官及び弁護人の意見を聴き、その証人の供述中」というふうにそれぞれ改めることとされた点でございまして、その理由といたしましては、政府原案は、裁判所は、「証人が被告人の面前においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めるときは、弁護人が出頭している場合に限り、その供述中被告人を退廷させることができる。」ものとしようとしておるのでありますが、被告人の保護その他現行刑事訴訟法の基本的精神にかんがみますとき、かような措置をとりますことは、きわめて重要な事柄に属するものと認められますので、運用上の慎重を期するため、この措置をとります場合には、裁判所はあらかじめ検察官及び弁護人の意見を聞くことが適当であるとされたためでございます。  以上が修正点と修正の趣旨でございますが、なお、衆議院におきましては、本法律案並びに刑法の一部を改正する法律案等を可決されるに際しまして、次の付帯決議を行われましたことをここに御報告申し上げます。    附帯決議   本改正案の実施にあたっては、政府は検察権警察権の濫用を厳に戒め、政治活動を阻害し、或いは、労働運動を抑圧することのないように留意し、なお、斡旋収賄罪については、将来所謂第三者供賄に関し、十分検討すべきである。   右決議する。となっております。  以上であります。
  165. 青山正一

    委員長青山正一君) それでは、これより刑法の一部を改正する法律案外二案について、岸内閣総理大臣に対し、総括質疑を行いたいと存じます。  総理大臣の出席のお約束の時間は約二時間でございますので、この点、御了承願いたいと存じます。  それでは御質疑の方は御発言を願いたいと存じます。
  166. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の本審議に入ります前に、総理大臣に一言質問をいたしたいと思うのであります。  三悪追放ということは、岸内閣が施政の根本方針としたところでありまして、いわば岸内閣の大看板であります。現在、国民は貧乏にさいなまれ、ちまたの暴力におびえ、次から次と政界、官界にきびすを接して起ってくるところの汚職にうんざりさせられておるときでありまして、岸内閣が国民の願望にこたえるかのごとく掲げたところの三悪追放の大看板は、国民をして真に蘇生の思いをさしたのでありまして、これが岸内閣の評価を高めましたことは争い得ないところであると考えるのであります。  私は、岸内閣の反対党でありますが、三悪追放のこのスローガンだけには心から共鳴を禁じ得なかったものであります。  ところが、この大看板に対して、岸内閣がその実行においてどれだけの熱意と実行力を示したか、岸内閣が何でもやりそうなゼスチュアだけをして、実際は何にもしないという例は枚挙にいとまないのでありますが、最もいい例は、この三悪追放であると思うのであります。国民の期待が大きかっただけに、その後の岸内閣の不誠意に対しましては、最も強く国民のふんまんと反発を買ったのがこの三悪追放だったと言えると思うのであります。岸首相は、ここに気づかれたのか、この三悪のうちの汚職、暴力の二悪を追放することに対して、幾分の熱意を有することを国民にわかってもらうために、このたびこの刑法の一部改正案を提出されたようでありますが、貧乏の追放はこれはなかなか一朝一夕にできることでもないし、金がなくてはできない相談だから、これはしばらくたな上げをして、特に金のかからない汚職と暴力を追放しようというのが総理の腹のようであると考えるのであります。しかし、その意図はともかくといたしまして、おくれたりといえどもなおなさざるにまさるのでありますが、大切なことは、ただ法律案提出したり、改正したりして、ゼスチュアを示すということだけではないのでありまして、どれだけ真剣に暴力の追放、汚職の追放ということと取り組むかということが私は問題であると思うのであります。しかし、この汚職追放の唯一の対策といたしまして、このあっせん収賄罪の新設が今度提案されたのでありますが、汚職の追放はこの法案では断じて期待できないのであります。これは穴だらけのざる法案だということは、まだ審議に入らぬ前から、与党も野党もあるいは呼ばれておるところの参考人まで、一様に認めておるところであります。総理は、汚職追放のためにただかような法案を提出しただけで、それで国民に対する汚職追放の責任は済んだんだ、こう思っておいでになりますか、この点について一つ首相のお考えを伺いたいのであります。  次に、暴力追放のために刑法刑事訴訟法に幾多の改正点を提案しておられるのでありますが、総理は、暴力追放に対してどれだけの熱意と誠意を持っておられるのであるか。私はかような法律の改正などはしなくても、断固暴力を追放しようとする強固な信念と正義の感情を持っておるならば、現行法だけでも暴力追放は決してできないことではないと考えるのであります。ただそれができないというのは、暴力を追放しようというかたい信念と燃えるような正義感が欠けておるということであると私は考える。自民党の前の法務大臣が、町の暴力の親分の葬儀でありましたか、法務大臣の名を冠した自分の花輪を贈って物議をかもしたということがありますが、これはわが国における暴力と有力筋との強い結びつきの氷山の一角が、ただ不用意のうちに国民の前に示された一例にすぎないのでありまして、かような有力筋と暴力との結びつきがあるから、警察もうっかり暴力取締りに手が出せないでおるのであります。こういう現状に手を触れずにそのままにしておいて、そうしてただ法律だけをいじって、国民に対するゼスチュアとしようとしても、それに私は国民はごまかされないということを銘記していただきたいと、こう考えるのであります。私が岸総理にお伺いしたいことは、総理は、暴力と汚職の追放に対してどの程度に真剣に考えておられるのであるか、どれだけの決意と勇気をもって汚職と暴力の追放に取り組んで、国民に対する公約を果そうとしておられるのであるか、その御決心を一つ、審議に入る前にお伺いしたいと思うのであります。
  167. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私が昨年いわゆる三悪の追放ということを国民に誓約をいたしましたのは、私が政治家として、内閣の首班として政局を担当する以上、私の全政治を通じてこの三つと取り組んで、これをなくしようという私の念願からでございます。  言うまでもなく、この三悪ということに対しまして、従来のどの内閣総理大臣もどの政治家も、これをなくしようという考えは持っておられたと思います。また、そのためにいろいろ努力をされたことも、私は歴代の首相がいずれもそういう考えを持っておられたと思います。しかし、なお、これが社会のうちにはびこっており、それが除かれないということは、これらのものが現在の社会のうちに根強く、いろんな意味におきまして巣くっておるという結果であろう。しかし、私どもが真に平和を愛し、民主主義を完成しようと念願する以上は、私はどれほど根深いものであろうとも、どれほどこの現代の社会の中に深く食い込んでおろうとも、この三つをなくすことが私は政治の目標でなければならぬ、また、政治家として、これを全力をあげて追放するということに努力をしなければならぬ、かように考えておるわけです。言うまでもなく、貧乏の問題につきましては、これは経済全体の問題であり、また、社会保障制度等、各般の施策を要する問題でございますから、これは相当な困難がありますけれども、しかし、私は、一方において経済の基盤を拡大するということと、社会保障制度を拡充するという方向で、この問題を解決しようという考えを持っております。また、暴力と汚職の問題につきましては、今、棚橋委員もお話しのように、決して、私は、今回提案をいたしました法律でもってこれがすべて解決されるというようなことを考えてもおりませんし、また、単に一つのゼスチュアとしてこれを国民の前に示すためにやっておるというような考えでは毛頭ないのであります。この二悪が起ってくるところの原因はいろいろありましょうが、要するに、私は、この汚職の問題につきましては、政治家及び公務員の道義の問題、その背後においては国民道義の問題があると思います。しかし、そういう抽象的なこと、包括的なことを申し上げて、ただ道義の高揚ということを申すだけでは、この問題は決して解決できる問題じゃありません。現在ありますところのこれら法律を十分に適用して、これの励行によってこれらのものと取り組んでいくべきことはもちろんでありますけれども、さらに、やはり現在の法律の欠けておる部分につきましては、これを補正していって、そうしてできるだけ万全を考えていくということ、並びに、さらに、この改正に当って、これらの関係者はもちろんのこと、国民一般に、私は、この問題に関する認識を強め、やはりこれらのものをなくしていく上におきましては、特に国民の協力を得なければならぬ問題であると思う。そういう意味におきまして、今回立案をいたしておるわけでありまして、決してこれを単なるゼスチュアと私は考えておるわけでもございませんし、いわんや、これだけでもってこれが解決されるということは、もちろん私は考えておりません。現行法の励行はもちろんのこと、さらに公務員のあるいは責任性を明らかにするとか、信賞必罰を励行するとか、綱紀の粛正につきましては、すでに、私が内閣の首班になりましてから、各省大臣を督励をいたしまして、いろいろとその方面のことにつきましても意を用いて努力をいたして参っております。また、私は、さらに、検察当局に対しましても、この汚職を追放し、暴力を追放するということについては、現在の法律を励行して、いやしくもそういう事実があり、また、将来に対して自分がそれを追放しようという一念から、そういうものの犠牲は途上においてやむを得ない、仮借することなく、そういうものに対して厳に法を励行するようにということを申し出ておるわけであります。従いまして、この問題に関しましては、私自身としては、まだまだ、これで十分である、あるいは、自分は国民に誓約をしていることをこの一年間に十分果したなんということを、決して申しておりません。しかし、私自身がそういう信念のもとに、そういう念願のもとに、この政治を今後におきましても担当して参りたい。むずかしい問題ではございますけれども、自分としては、あらゆる点から、この三悪に向っては、それぞれの方策を講じて参りたい。特に汚職及び暴力につきましては、世間の民主主義政治、あるいは公務員の公務執行について、また、われわれの町の平和な国民の生活の上における脅威ということを考えますというと、現在の法律の不備を補正するところの、これらの立法を必要とするということで提案をいたしておるわけでございます。
  168. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 法案の詳しい点については、主管大臣から後刻伺うことにいたしまして、私の質問はこれで打ち切ります。
  169. 亀田得治

    亀田得治君 私は、本会議で、総理にあっせん収賄罪に関して、大まかな点についての質問をいたしましたので、本日は、時間等の関係もあるので、まず、暴力関係の問題について先にお尋ねをしたいと思います。時間が、総理も急いでおられるようですから、私としてできるだけ簡単にお尋ねいたしますから、総理の方でも簡潔に一つお願いしたいと思います。  まず、第一点は、暴力団——まあぐれん隊、チンピラといったような存在が根強くある。まあ暴力関係の規定は、必ずしもそういう団体だけのものではこれはありませんが、しかし、この立法の経過なり説明等を見ても、それがやはり中心であります。それで、こまかいことかもしれませんが、一体、こういう法規を作る以上、その対象になるものはどのくらい日本にあるのか、そういう暴力団とか、あるいはそれに類する、まあ戦後などは相当形態が変っておると思いますが、そういう点、これは刑罰法規を作られる以上、当然検討されおると思いますので、まず、その点を総理としては、どのようにこれをつかんでおられるか、お聞きをしたいわけです。
  170. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) いわゆる暴力団と申しましても、なかなかやかましく定義するということになると困難でありますけれども、しかし、われわれ町の平和な生活を脅かすような暴力団であるとか、あるいはぐれん隊であるとかいうふうなものとして目されておるところのものが、全国的に見ますというと約三千くらいで、これに属しておる人間が約六万人おるというふうな調査になっております。
  171. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、私はそういうものの存在に対する対策ですね。これは二つあると思うのです。一つは刑罰の問題でありますが、一つはやはりそこに所属している人たちの生活ですね。正しい意味での生業、どうしてそういうものにつくようにするか、これはなかなかむずかしい点があろうと思うのです。売春禁止の問題でも同じように出た問題でありますが、なかなか困難な点はあろうと思いますが、しかし、その点を抜きにして、刑罰だけを強化していっても、これは所期の目的が達せられないと思うのです。今までは、これはあまり話題にはならなかったことかもしれません。そんなことはほっとけば自然に片づいていくだろうというふうに考えられていた面もあるかもしれませんが、やはりそうじゃない。私も若干そういう団の中を研究してみたことがありますが、非常に封建的な古くさい関係等があるわけですけれども、それはそれなりに、やはり生活ができておる、やはりそこに問題があると思うのですね。だからそういう意味で、こまかい法案の審議はいずれこれはやっていくわけですが、総理としては、そういう点についてどういうふうな基本的な考えを持っておるのか、そうしてまた、そういう考え方をどういうふうに具体化していけばいいとお考えになってるんですか。その点をまずお聞きしたい。
  172. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) お話しの通り、暴力団や、そういう暴力行為をなくしていくということについては、一番考えなきゃならぬことは、刑罰で罰するというのはそもそも最後の問題でありまして、一つは、やはり全般的にいいますというと、国民自体が暴力に対して、暴力というものは民主主義の敵であって、敢然としてこれを排除しなきゃいかぬという国民の意識を強めていかないといかぬと思います。たとえば、暴力にあった人が後難をおそれて、従来泣き寝入りになってるような点も、われわれしばしば耳にするのでありまして、そういうことに対しては、警察が取締りを厳にし、そういう後難を与えるようなことのもとを断つと同時に、国民もそういう事実をなくしようという熱意を持たれることが私は必要だと思いますが、しかし、今亀田委員のお話しのように、暴力団、ぐれん隊に属して、そこで一種の生活をしておる、これはもちろん正業ではないわけでありますから、それをどうして正業につけるかということを考えていくことは、もちろんこれは必要なことであり、それをやはり並行してやらなきゃならぬと思います。ただ、なかなかこの問題は言うことはやさしくありますが、いろいろな関係でつながれており、また、一たび暴力団に属するというと、それからいわゆる足を洗うということはなかなかいろんな困難があり、また、それに伴っていろいろな脅迫等も行われておるというような事実もあるわけでして、これに対しましても、やはり私は十分に社会補導の立場から、そういう正業に立ち返らしめるように、また、正業につくように、また、それについてのいろいろな困難をやはり取り除くことに警察その他と協力するというふうなことによりまして、正業につけるような方法をぜひ進めていかなきゃならぬ。しかし、今申しますように、相当困難があるということを頭に置いてやっていかなきゃならぬと、かように思っております。
  173. 亀田得治

    亀田得治君 これは一つ、重要な課題として十分御検討を今後ともお願いしたいと思います。  次に、法規の関係でありますが、まあ今回は刑事訴訟法刑法の一部改正ということで、こういう形で法律改正が出ておりますが、まあ私の考えでは、はっきり暴力団取締法、この名称が最適であるかどうかは研究の余地がありますが、やはりそういうものをはっきり作って、そうして暴力団あるいはその類似の団体というものはどういうものかということを法律上ある程度明確にして、そうしてそういう諸君のやる暴力行為というものは大体型がきまっておるわけですから、そういう今までの経験に基く型というものを、法律の上に明確にして、一体こういうものに対しては相当重く罰する、こういうふうにいけば、非常にこの法律改正の目的が私ははっきりすると思うのですね。ところがそうでなしに、一般刑法の改正の中にこう出てくるものですから、たとえば、労働組合その他一般人との関係がはっきりしない、あるいはまた、刑罰の重さにおいても刑法の条文とのつり合いがありますから、むやみに重くするわけにはいかない。そういうことで、こういう形で出されたために、十分暴力団取締りの目的は私は達せられないと思うのです。達せられないし、半面また、いろんな御承知のような疑惑が起きておるのです。私はぜひ——今からではできるかできないか、はなはだ問題があろうと思います。私が言ったようなこの立法の方法、これは技術的に相当むずかしい点もあると私も想像はつくのですが、しかし、こういう刑罰規定というものは何といってもねらいをはっきりする必要がある、ほかの人に、それからそれている者には不安を与えない、これは私大事なことと思うのです。そういう意味で申し上げておるわけですが、政府の方でこういうふうな形で出しておるものですから、それがいいとは簡単には申されないでしょうが、しかし、そういう考え方について、基本的な本体というものを、私ども昨日の参考人なりあるいはその他の専門家等に聞いても、受けておらないのです。技術的に相当時間のかかる問題だというふうなことについての批判はありましても、そういう立法の仕方、こういう点についての総理の基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
  174. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 今お話しの通り、何か暴力団取締り、これは一つの仮称でありますが、そういうような特別法に、刑法から特別の立法にしたらどうだ、そうすべきではないかというふうな御意見でありますが、これも一つのお考えだと思います。ただ、立法技術の上からいってもなかなか暴力団を、これはただ一つの俗称であり、われわれが一つの社会観念を持っているのですけれども、なかなか法律にはっきりそういうものを、本来が違法にできておるものでありますから、なかなか本体をはっきり、立法の技術として作る上においても私は困難があるのではないかと思います。いろいろ立法上の技術的な困難はあると思います。ただ、今亀田委員のお話のように、今回のこの暴力に関する諸規定が、立法の本体になっておるいわゆる暴力団であるとかあるいはぐれん隊というようなものの暴力行為というものを取り締るという意味であるが、しかし、それを逸脱して、他の労働組合の労働運動やその他のものにこれが適用され、もしくはそれに影響を持つというような懸念はないかという御心配は、これまたごもっともでありまして、今回の立法に当りましても、十分そういうことには注意をいたしまして、いわゆる今日非常に社会的の問題になっており、現行法においては十分取り締り得ないような暴力団等がやっております具体的のこの行為をあげまして、取締りの対象として規定するという方法をとっておるわけであります。御趣旨の点は、私も十分理解できることでありますが、立法上の技術上の困難と、それからもう一つは、今御懸念のような点につきましては、今回の改正において私どもは十分注意して、そういう御懸念なりあるいは危惧が生じないように、立法の方法をとっておるつもりであります。それはまたさらに御審議の上、具体的に主管大臣等からまたお答えをいたしますが、そういうつもりでおります。
  175. 亀田得治

    亀田得治君 これもこまかいいろいろ議論もしたいところがあるわけですが、次に進みます。  先ほど、棚橋委員からも若干お触れになったわけですが、警察と暴力団との関係ですね、もちろんそんなことに関係なし、また、そういうものがありましても、どんどん遠慮しないで、清廉潔白にやっておられる警察官もたくさんある。それは私も知っておる。しかし、多くの者の中には、ややもするとやはり何かそういう結びつきがあるのではないか、そういうふうな疑念を持たれるような者がある、ときどきいろいろな事件が起きて、結局その裏付けになるわけですが、たとえば、最近の新聞にもときどき載っておる事柄ですが、大阪府警の警察官が賭博業者から収賄をして、そうして事前の手入れなどについて連絡をとったといったようなことで、これはすでに大阪地検で現職警官が三名も逮捕されておる事件がある。中に一名は府警の監察官もあるのです。こういうことはやはり警察とそういう一連の暴力行為関係の団体との平素のつながり、国民はそういう事件一つで平素の心配というものをはっきりそこで今認識させられるわけです。こういう例をあげればたくさんほかにもございます。  質問の要旨には、ちょっと天田製作所事件というものを書いておきましたが、これは簡単に申し上げますと、埼玉県の天田製作所のストライキのときの問題です。三月十七日です。現職の警官がおる前で労働組合員が約五十名の暴力団によって相当なぐられ、重傷、軽傷——軽傷以外にもなぐられる人がほとんど、こういう事件を起していて、いまだにだれも逮捕されないで、調べておるのかもしれませんが、逮捕もされておらない。もし労働組合がそれに類したようなことをやれば、これはもう一網打尽にいかれるのです。実際になぐろうが、なぐるまいが集団的にやったということで。ところが、そういう事件が、暴力団側から現職警官の前でされても、いまだに実際にこの人をなぐったその人の個人がなかなか確定できないのだとか、いろいろなへ理屈をつけて、ゆるい状態で放置されておるのが現状なんです。  それでこの事件そのものについて私は今議論しようとは思いませんが、そういう事態は、これはあちらこちらにあるわけです。総理大臣として、この点を一つ断ち切る勇気といいますか、勇気と同時に具体的なその措置をやりませんと、結局こういう規定を作ったって、これはなあにただ体裁でやっているのだ、現場の出先の方がこういう状態じゃないか——それはもう国民がみんな見ておるのです。だからこういう法律を出される以上は、そういう問題についてどう断固たる態度をおとりになるのか、そこを信念だけではなく、一つ具体的な措置、方法というものをお聞かせ願いたいと思うのです。
  176. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 新憲法のもとにおける警察は、従来の警察と違いまして、その制度の上から申しましても、これの警察のいわゆる民主化ということが行われており、公安委員会の制度等がございまして、戦前の警察とは非常に私は趣きが変ってきておると思います。ただ、たくさんいる警官のうちにそういうふうな疑いを持たれ、もしくはそういうような事実が皆無であるかというと、今おあげになりましたような事件等がございまして、それらについては、目下それぞれ裁判中または捜査中に属しておると思いますが、いずれにいたしましても、民主主義のもとにおける警察あり方というものにつきましては、これは十分に一つすでにこういう制度ができましてから十数年になりますし、最初におきましては十分まだそれが徹底しない向きもあったかと思いますが、最近におきましては、警察が暴力団との間に特殊な関係がある、つながりがあるというような事実、私はそういう事実があるとは実は考えておりません。しかし、たくさんの警察官のうちにおいて、個人的にでもそういうような疑いを持たれ、そういうような事実があるということは、これはやはり国民の方から見ますと、今亀田委員の言われたような疑惑を持たれ、そこに一つの不信が生まれてくるわけでありますから、これを徹底的に今におきまして、民主化された警察あり方の本旨を各警察官の末端にまで徹底させるということは、これはぜひともやらなければならぬ問題でございます。十分に公安委員会の制度等の運営と相待ってそれを徹底せしめるように努力をするつもりでおります。
  177. 亀田得治

    亀田得治君 これはぜひ御努力を願いたいわけですが、ともかく警察がそういう暴力団との関係があったり、あるいは暴力団との関係がなくとも、ほんとうに民主化されておらない、こういうことが暴力団対策そのものをも軌道に乗せないし、同時に、そういう警察の実態だから、こういう法規を強化した場合に乱用されるのではないか、こういう心配を一般の人にもまた与える大きな原因になっておるのです。その点を私は特に憂えて、この暴力関係の規定全体を非常に心配している一人ですが、その中で特に私が心配しているのは毀棄罪の関係です。投棄罪を今度の改正ではいわゆる非親告罪にされたわけですが、これはおそらく労働組合の諸君から見ると、たとえば一例をあげますと、団体交渉をやっておる。たくさんの人が集まっておれば、ややもすると灰ざらなりあるいは茶わんなど落っこちて割れる場合がある。そういうことが偶然に起きても非親告罪になりますと、警察がそれを理由にして介入してくるのではないか、こういうことを心配しているわけです、端的に言って。それに類したようなことを今までときどきやればされているわけですね。あるいは新聞でも、総理も御存じでしょうが、これも裁判中の事件ですから、あまり私がここで取り上げるのはどうかと思いますが、菅生事件、あの大分県の菅生事件ですが、例の駐在所の爆破、これは第二審でいろいろ弁護人が努力した結果、警察自体が内部に爆発物をしかけて、そうしてみずから爆破したのではないか、この疑いが非常に強くなってきておる。これは東京大学の鑑定の結果もますますその疑いを濃くしてきているわけです。爆発物のようなものすらそういうものをしかけてでっち上げられる、そういうことであっては、毀棄罪の程度のものは幾らでもこれはでっち上げができます。  たとえば、社長と労働組合員が団体交渉をやって別れて帰った。そのあと警察ちょっと見回りに来て、何もない、じゃこの辺で茶わんでも一つ割っておけ、——これはだれがしたのかわからない、水かけ論になりますがね。しかし、割れておったんだから、たくさんきたその中のだれかだといったようなばく然としたことで、警察が介入されるおそれが十分あるのです。組合の諸君は、たとえばそういうことを盛んに言っておるのです。そういうふうにならないとは私はちょっと保証できないと思うのですね、菅生事件等の例を見ますと。それで、岸総理としても、もちろんこの投棄罪を非親告罪にするのは、これはまあぐれん隊とかそういう諸君がよく飲み屋などを荒して、ついでに何か割っていきよる、また、後難をおそれて告訴しない傾向もある、そういうところをねらっておられる気持はわかりますがね。反面今申し上げたような、非常に簡単にでっち上げというものが、悪意を持てばこれはできるわけです。だから、そういうのではまさしくもろ刃の剣といいますかね、そういう感じがするわけですね。この点を総理は、どういうふうにお考えになっておるでしょうか。
  178. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) この毀棄罪を親告罪から非親告罪にいたしました一番の理由は、また、その目的とするところは、今おあげになりましたように、暴力団やあるいはぐれん隊等が飲食店その他でもって乱暴して、器物を投棄する、警察に届けることは相ならぬぞ、届けると承知しないぞというふうなおどかしを必ず言って何するために、そういう暴力行為に対して善良な市民が結局泣き寝入りになっている、親告罪でありますから告訴しなければならぬ、しかし、後難をおそれてやらない、こういう事態をなくしようというのが、この器物毀棄罪を非親告罪にしようという主たる理由であり、また、私はそれが一切の理由であると思うのです。今おあげになりました労働争議等の機会に、多数の人がいろいろと団体交渉その他の何によって集まって、いろいろの交渉をするというような際に、あるいはあやまって器物を毀棄する、灰ざらやあるいは茶わん等がこわれるというようなものは、これは言うまでもなく、単純な過失でございますから、そういうものをわれわれとして、この法律で将来罰するというようなことは、私は対象にはならぬと思う。また、すでに御承知の通り、二人以上のものが共同して故意に器物投棄をやるという場合におきましては、現在の暴力行為取締りに関する法律によりまして、これは親告罪でなしに非親告罪になっております。こういうことから見ましても、私どもは決して労働争議そのものを対象としてやるという意思は毛頭ないし、また、そういうことに乱用されるおそれは私どもはないと考えて、この種立法をいたさんとするものでありまして今いろいろ従来の何からいって、警察の行き過ぎ等に対するいろいろな事態等についてのお話しもございましたが、これらについては、具体的な問題については裁判中でありますから、私から何も申し上げられませんが、しかし、十分に、一体この規定だけじゃございませんが、法律の適用に関して警察官が行き過ぎをするということになれば、これは労働運動だけじゃなしに、いろいろな平和な国民の人権にも関する問題でございますから、その乱用等のないようには検察及び警察の当局を十分に、その逸脱しないように指導もしなければなりませんし、監督もしなければならぬし、十分な警告も与えていかなければならぬ、かように考えておりますけれども、今亀田委員の御懸念のようなことは、実は私どもは考えておらないのであります。
  179. 亀田得治

    亀田得治君 これは専門の法律学者の間でも定説でありますが、ともかく投棄罪というものが親告罪にされておるのは、きわめて軽微なこれは犯罪だ、だからそういうものについて、当事者本人の意思を問わないで勝手に警官が介入していく、こんなことは社会生活全体から見て思わしくないのだ、そういうところにあるわけですね、それでこれが親告罪になっておる。私はその親告罪にされた理由、社会的な意義というものは、現在もやはり尊重しなければならぬものと思うのです。そうでなければ、たとえば極端なことをいえば、電柱等に政治家がずいぶんいろいろなビラを張ります。しゃくにさわるやつが張ったというので、また、ほかの人がその上に張ったりめくったりいろいろあります。極端なことをいえば、そういう毀棄罪というものは、もうしょっちゅうあっちこっちに実際はあるわけですね。犯罪があると見たら警察官は必ず動かなければならぬ、この規定通りに動いたら、これは大へんなことになりますよ、だから、そこに、私はああいう親告罪という制度のうまみがあるのだと思う、それ自身を私は今否定すべきそんな段階じゃないと思うのです。しからばチンピラの被害をどうするか、これは私は、先ほど岸総理も言われましたように、こういう暴力問題等については社会全体の協力ということが大事だと言われたが、まさしくそれなんで、従って、たとえばそういう特殊な問題については、告訴を遠慮するようなことをしないで、そうしてやはり考え方を強く持って告訴をしていく、こういうふうにむしろ積極的に働きかけていく、これが私は今の段階においてより必要なのではないか、その被害者みずからが努力をしないで、そうしてただ法律によっての処理を願う、こんなことは、私、本来人権をお互いに発達させようという立場からいって間違いだと思う、だからその間違いの方向に私はかえっていくように思うのですね。しかも先ほど申し上げたような、一方では大きな不安を与えながら、そういうことをする必要がない。でも、私はそういう意味で、われわれの言うのも多少危惧がかち過ぎておるかもしれません、客観的に見た場合。しかし、これは急いで投棄罪を非親告罪にしなければどうにもならない、そういう問題では私は断じてないと思うのですね、もう少し慎重にこれは検討の余地があるのではないか、チンピラに対する対策は十分あるわけですから。ほかの条文もいろいろ言いたいことはあるが、それはもう総理に対する質問ですから申し上げませんが、この一点だけは、私は、もうどうしても法案審議の過程で、総理自身にもっと大きな立場からの実は御判断、裁量をしてもらいたいと、ほんとうに思っている点なんです。もう一度どうも、私が今申し上げておるのは投棄罪自身の社会的な意義、これは薄れておらない、それと親告罪、告訴をもっと積極的にさせる、こういう社会的な風潮、努力をする、この方が正道ではないかと思っているのですが、いかがでしょう。
  180. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) お話しの通り、暴力をなくするためには、これはやはり国民の努力がなければいかぬ、それにはこういう問題にいたしましても、やはり泣き寝入りをするとかあるいは後難をおそれてうやむやにするというようなことのないように、暴力に対しては敢然として社会正義のために戦うというような考え方でもって、国民が協力してもらうことが私は望ましいと思う。ただ最近の現実の社会情勢を見ますというと、今お話の暴力団あるいはチンピラとかあるいはぐれん隊というようなもののこういう行為が実は目に余るものがあると思うのです。これは亀田委員もお認めになるだろうと思う。しかもそれをやっておる、商売しておる人が弱い立場におりますために、今お話の通り、私は正道から言えば、そういうことを要求するのが、私はこれにおそれずに警察にちゃんと親告する、そうして暴力をなくすることに協力してもらうということも望ましいことでありますが、それを私どもが現在の社会情勢のもとにおいて要求するのには、あまり被害者が弱い立場にある、しかもチンピラ等のこういう事態が黙視できないようにひんぴんと行われておるという事態を見まするというと、今回の改正も私はこの暴力をなくしようという考え方からいうと必要であろう、かように考えております。
  181. 亀田得治

    亀田得治君 これは相当考え方の違いがそこに出ておるわけですが、十分私どもさらに法案審議の過程で、どちらが一体正しいのかという点を十分これは検討してみたいと思います。その上で多少これは考える余地があるのではないかというような結論等が出てくれば、私はあまり原案にとらわれないで、これは大きな、一方では人権の問題にも関係するわけですから、御善処を願いたいと思うのですね。一たん非親告罪にしてどうもちょっと早過ぎたからまた親告罪にする、そんなばかな朝令暮改式なことは、これはできないわけですから、一つ十分御留意を願いたいと思います。  次に、あっせん収賄関係、できるだけ端折ってお聞きしたいと思いますが、ともかくここに出ておるあっせん収賄罪、それから第三者供賄のないこと、これはもう衆議院におきまして付帯決議がつけられておりまするし、また、ほとんどいろいろな専門家なり一般の世論から見ても批判されておる点です。ただ、参考人の意見等を聞きましても、結局は不満ではあるが、この程度のものでないと、自民党さんが国会を通してくれぬのではないか、だからまあ仕方ない、一つ型を作る意味でこれに賛成したのだと、はなはだ言いにくいことですが、はっきり言って、そういう感じなんですよ。私は、そうなれば自民党総裁である岸さんが、これはもう少し世論の要求する方向に直そうという気になれば、いつでも直るように思うのですが、で総理は、今の時点においては、これが一番適当であるというふうな意味にも本会議等で説明をされておるわけですが、その適当ということの意味は、これを批判されておる方は、そうじゃない、適当ではないのだが、通らないでは困るから、一応適当にしておこう、こういう意味なんですよ。ちょっとズレがあるわけなんですね。だから、私はあなたの方のお考えを若干変えてもらえば、案そのものはすぐ変るものだと、こういうように理解しておるわけです。しかし、すでにこの案が出てしまっておるわけですから、今はこれに対して大幅に修正といってもなかなか問題でしょう、そこで、次の国会あたりに、やはり引き続いてもっと進歩したもの、これは選挙後さらに岸さんが総理大臣になるとしての仮定ですが、まあなるかならぬか、これはそのときになってみなければわからぬでしょうが、一応なると仮定して、どういうふうな将来の措置というものをお考えになっておるのか、大きな大まかなその辺の考え方をお聞きしたい。
  182. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) ただいま亀田委員のお言葉によるというと、この案を出したことにつきまして、いわゆる私の総裁をいたしておりまする自民党内の意見を取りまとめるのに、この程度でなければまとまらぬというような意味が背後にあった、そうしてこの案をまとめて出したというふうにとれるようなお言葉でありましたが、実はそれは全然事実に反しておるのでありまして、私はこのあっせん収賄罪に対していろいろ御議論があることはよく承知いたしております。そうして私は、実は専門家ではございませんけれども、先ほど棚橋委員にお答えをいたしましたように、私自身この汚職追放について、私は私なりに熱意と一つの考えを持って臨んでおりますので、ぜひこれを実現したいと考えまして、あっせん収賄罪に対するいろいろな立法令や法律専門家の意見等もある程度研究をいたしてみたのでありますが、非常にむずかしい問題でございますし、また、立法の例、また、日本における立法の沿革等につきましては、いろいろな変遷をしてきておりまして、これに対してどういう案をもって最後の結論とするかということにつきましては、相当に私としては苦心をいたし、また、専門の法務省に命じまして、成案を得るまでは一切他と相談することはならぬ、ほんとうにあらゆる面から見て適当な結論を得るようにということを厳に申しつけて、この成案を得たのであります。決して事前に、党の意見を徴したわけでもございませんし、党内における意見を気にして作ったわけではないのでありまして、私は、もちろんこれに対していろいろな御批判があることは十分承知をいたしております。しかし、一方においてわれわれとしては、民主政治家の正当なる政治活動というものは、あくまでもこれを尊重していかなければならぬ、しかし、それがわれわれがこれを追放しようと考えておる汚職に触れるものは、これは明確にして、これをあくまでも罰していかなければならぬ、しかもこのあいまいな文句なり、あいまいな条件等のために、検察当局の、あるいは世間でいわれる検察フアッショになるおそれ、人権がためにじゅうりんされるようなおそれを生じないようなことにするためにはどうすればよいかというような点は、十分に考慮して 一応この案を得まして、法制審議会にかけて、いろいろ御議論がありましたその際にも、これが決して完全無欠であるということは私も申し上げるわけではございませんけれども、しかし、われわれがここに初めてこの問題を取り上げて、そうして罰しようとする場合におけるこの立法としては、これが適当であるという結論から実は出しておるわけであります。もちろん将来の問題につきまして、必ず次の国会にどうするかということは申し上げられませんけれども、特に第三者収賄の問題につきましては、法制審議会でも希望決議がついておりますし、衆議院でもそういうあれがありますから、できるだけ早く研究をいたしまして、適当なる措置に出なければならぬと思いますが、その点につきましては、私はこれでもって相当に、私どもの目的としておるあっせん収賄の事実をなくするという相当な効果があるものと思いますが、施行の結果を待ちまして、あるいは不十分である、こういう点をさらに拡張する必要があるというような事態がありますれば、もちろん十分にそれらのことを見て、将来に処していきたいと考えますが、今こういったようないきさつ、及び考えのもとに提案をいたしておるわけでありまして、決して私どもの何としての意見に動かされて、こういうものをこの程度にしたというような事実でないことだけを明確に申し上げておきます。
  183. 亀田得治

    亀田得治君 総理の一応主観的な気持は了解される点もありますが、ただ、法制審議会等の論議の経過等を拝見いたしましても、率直にそういうことがやはり述べられておるわけです。不満だがこの程度じゃないと、通らぬことには仕方がないのだから……。あの意味では、それは常識的に是認されることかもしれません。だから、総理のそういう考え方は別として、世間はやはり相当そういうふうに見ておるわけですから、十分その点をやはり考慮に入れて、将来の問題等検討してもらいたいと思う。私も個々の条文に入るときであれば、いろいろ実例等も示して、これでは世間が非難したまるまるの事件なんかは、結局はのがれてしまうじゃないか、そういう懸念のあるようなものは具体的にたくさんあるわけです。だからそういう、何も空に私は申し上げているのじゃなしに、世間として、あれはひどいと言っているようなものが、この法律では処理できないということになれば、やはり岸さんの公約にも、そういう意味から私は反すると思う。  もう一つ、この汚職の追放に関連して、いつも検察庁法の十四条の、法務大臣の指揮権の問題が顔を出すわけですね。で、まあ指揮権というものは絶えずいろいろな形で行われておるわけでしょうが、ほんとうに政界から汚職をなくしようというのであれば、検察庁法十四条を改正して、汚職事件についてはそういう法務大臣の行動ができないようにする、こういうことが抜本的な一つの手続上の問題ではないかと実は思っておる。法務大臣は、口を開けば平素法律は公平に扱っている、こうおっしゃっておる。私たちもそれを信じております。ところが、どうもいろいろなスキャンダルとかそういったような問題になると、こう、あっちこっち、まあ今の法務大臣という意味じゃありませんよ、歴代の法務大臣は、やはりあちこちする印象を与えておるわけです。私は印象を与えるだけでもおもしろくないと思うのですね。そういう動きをしておらぬなら、なおさら私ははっきり法律上明確にしたらいいと思う。で、吉田内閣のときに、例の造船疑獄でああいう無理な指揮権の発動があった。それ以後は、やはり大物は最後にはあれでいかれると、こういうふうに大体みんな感じておりますよ。国民も思っておるし、私は実際に仕事をしておる検察官も思っておるんじゃないかと思う。ですから、そういう中で、この汚職の追放ということをほんとうにやるという面から考えますと、一つ内閣の手で、検察庁法の十四条、これを今申し上げたような意味で改正する、具体的な改正案までは私用意しておりませんが、そういう考え方は必要じゃないかと思っているのですが、いかがでしょう。
  184. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) この検察庁法十四条というものは、申し上げるまでもなく、検察権の公正かつ独立な運営と、所管大臣たる法務大臣の責任とを調整するために設けられておるものであると思います。私は、この規定によって現実に指揮権を発動するということがきわめて重要な問題であり、重大な意義を持つものでありますがゆえに、これが慎重にかつ公正に行われなければならぬことは言うを待たぬと思う。それは単にこの汚職に関する問題だけでなしに、あらゆる面において、もしそういう調整上指揮権を発動しなければならぬとするならば、これは非常な重大な事態でありまして、常に慎重かつ公正に行わなければならぬ。しこうしてそれの政治責任というものは、十分内閣において負わなきゃならない問題であると思います。しかし、今申しましたように、根本的にその法務大臣の責任とそうして検察庁の職務運営との調整をはかる意味におけるこの規定というものが全体としておおいかぶさっているということは、この行政権全般の責任を持っておる内閣としては、当然私は必要なことであると思います。ただ、今申しましたように、その実際の適用なり、発動というものが公正厳正にして、世間が納得するようなものでなければならぬことは、これは言うを待ちませんけれども、そこに注意すべきものであって、これは何の規定は、何の罪については、これをのけるということ自体が、実は十四条の本来の立法趣旨からいうといかがかと思うのです。要はむしろ、それの実際上の運用の問題における公正な、また、それに対する政治責任というものを明確に考えてやるということによって、私は十分に目的は達成されるものであって、これを制限することは本来のこの規定の趣旨からいくというといかがかと、かように考えます。
  185. 亀田得治

    亀田得治君 わいろ罪についてだけ指揮権を発動しないといったような書き方を検察庁法にすることは、はなはだ私も体裁上も問題はあろうかと思う。しかし、そういう考え方が何らかの形でもう少し具体化されなければいけないんじゃないか、たとえば規制等でもよろしい、この検察庁と法務大臣との間の事務処理をきめておる規則等があろうと思いますが、そういう中にでも、ともかく汚職問題、特にそれが政府与党、これはいかなる政府でも同じことですよ、政府与党に関するものの場合には、結局法務大臣は与党なんですからね。公正といったって、その辺にどうしたってやはり問題がある。だからそこを普通の指揮権の発動よりも、やはり検察庁の意見がもっとざっくばらんに通るように、こういうふうな格好にしておくことがぜひ私は必要だと言っておる。必ずしもこの十四条を真正面からいじらなくてもいいかもしれませんが、そういう点で検討を願いたい。それから今度のこのあっせん収賄罪の論議の過程において、検察ファッショという問題がずいぶん使われておるわけです。私もまあその意味は十分理解しております。おりますが、ただ一つ心外なのは、検察ファッショというものは、何も汚職事件だけで言わるべき問題じゃない、そういう検察官のやり方というものは、国民の基本的人権の問題なり、これはもう全部について考慮されなければならぬ問題です。それをあっせん収賄罪が問題になってきてわんわんそのことを言うということは、政治家というものははなはだ勝手なやつだ、こういう印象を与えますよ。私はそういうことは間違いだと思うのです。ほんとうに検察ファッショを、検察が独走しちゃいかぬということは、何も政治家の意見を聞いてくれという意味じゃないわけです。社会全体の良識に反しないようにやってくれ、こういう私は意味でなければならぬと思うのです。そうすれば、いわゆる陪審制度ですね、こういったものをもっと検察面でも裁判の面でも、日本では一応やって失敗した経験もありますが、その当時とだいぶ現在は事態も違っておるわけですからね、国民の裁判制度に対する関心だって相当やはり進んでおるのです。で、私は、ほんとうに検察、裁判全般に通じて、日本に適した陪審制度、もっとそういうものを本格的に検討して、それによって検察ファッショなんというものは防いでいくべきなので、あっせん収賄罪だけでそれをあまり言われるのは私はどうも気にくわない、そういう意味で陪審制度のほんとうの検討ということを岸総理としても始められるお気持があるかどうかお聞きしたい。
  186. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) あっせん収賄罪について、この検察ファッショということが言われるというお話の通り、検察ファッショというものは、このあっせん収賄罪だけじゃなしに、国民一般の人権、基本的人権が尊重され、それが検察当局によって何が踏みにじられるということを意味するのは当然であります。ただあっせん収賄罪においては、御承知の通り、民主政治の政治家が、国民の要望なり意思というものをいろいろな方面にこれを十分に達せしめるようにあっせんするということ自体は、これは民主政治家がやらなければならないことでありまして、そこに不正な行為をさしたり、あるいは相当な行為をさせなかったり、あるいはそれに関連して金品を受けるというような事態そのものがいけないのでありまして、そこの範囲というものを逸脱するというと、民主政治家としての政治家の活動を十分にやる上から支障を来たすようなおそれがあるということで言われておるわけでありまして、根本的には、今亀田委員のお話の通り、国民の基本的人権に関して検察当局との問題だろうと思う。それについて陪審制度のお話が出ましたが、これにつきましては、御承知の通りのような、日本においてもその沿革がございました。一時施行いたしましたけれども、実際は十分にその目的を達せず、これが中止になっておるという実情でございますが、しかし、この裁判に何とかして国民の民意というものをどういうふうな形において取り入れていったらいいかというようなことにつきましては、十分研究しなければならぬ。法務省におきましても、この陪審制度についてのいろいろな資料なり、あるいは一部ではありますけれども、アンケート等もとりまして調査をいたしております。まだ結論は出ておりませんし、いかにも重大な問題でございますので、十分慎重に一つ検討いたして進めていきたい、こう考えております。現在、当局におきましては、決してこの問題を等閑に付しているわけではないので、研究はいたしておりますが、よほどやはり日本の国情に合った陪審制度にしませんと、せっかく制度を作りましても、実際は、われわれが過去においてのにがい経験から見ましても、その効果を発揮しないというような点もございますので、また、相当な予算も要することでございますから、十分政府としては、そういう点も考えて検討をいたして参りたいと考えております。
  187. 亀田得治

    亀田得治君 最後に、二点まとめて伺いますが、一つはいわゆる民間の官庁ブローカですね。御承知のように、相当ある。で、こういうものがあるので、知らず知らずそのために収賄罪を犯しておる方もある。ブローカー自身も何するが、先方にも渡すといったようなことで、ブローカーはなかなかそういうところは上手に押しつけますからね。将来性のある官吏が、そのために一生を棒に振るといったような事例もあるわけです。私は、ほんとうに汚職という問題を取り上げるのであれば、公務員がそういう不正なあっせんをやろうと、民間人がやろうと、一緒だと思うのです。実害もある。ですから、この問題をどういうふうにお考えになっておるか、多少、現在出ておる立法とは相当距離がありますから、先のことかもしれませんが、考えだけを聞いておきたい。  それと、最近衆議院の選挙が行われるわけですが、これはおそらく汚職追放という建前からいきましても、売春汚職その他そういう汚職事件に関係された者は、おそらく公認はしないと私ども考えておるんですが、これは一つ岸総裁に、この点を最後にお尋ねしておきます。
  188. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) いわゆる官庁ブローカーというもののうちには、ずいぶん悪質なものもございます。私が役人をいたしておりました経験から見ましても、今亀田委員のおあげになりましたように、実際将来あるところの者が、こういうものの実に巧妙なわなにかかって、ついに一生を棒に振ったというような事態も私知っておりました。そういうことから見ますと、この問題に関しても将来考えていかなければならない。ただ、その実態がなかなかまだ明白にならないところがあります。で、今回は、あっせん収賄罪におきましては、公務員の綱紀粛正という点に重きをおいて立法をいたしておりますが、この官庁ブローカーの問題につきましては、そういう実態を十分に一つ調べまして、将来善処したいと考えております。  それから汚職と公認の問題についてお尋ねがございました。実はわが党員のうちに、はなはだ遺憾でありますが、汚職の疑いをもって検挙せられ、起訴せられている者がございます。私どもはそれらの人は公認にしない考えでおります。もちろん起訴でございますから、裁判があれば無罪になるかもしれない、事実はないかもしれませんが、しかし、一応そういう疑惑を持たれ、そうして裁判中の者については、本人にはなはだ気の毒な点もございますけれども、私どもは公認しない。
  189. 大川光三

    ○大川光三君 私はまず汚職防止の根本策についてお伺いをいたしたい。  あっせん収賄を含む汚職事犯の発生を防止いたしまするためには、刑罰的処置のみでは十分ではない。その発生原因を究明いたしまして、これに基く広範な抜本的対策を講ずるということは、今さら申すまでもないところでございます。  この見地から、まず第一に伺いたいのは、政府は、昨年九月、国家公務員の綱紀粛正のため、責任体制の整備、服務規律の確保、人事管理の適正化、監査監察の強化の四点について処置を講ずるということを閣議決定されたやに官報を通じて伺っておりまするが、これらの四つの処置は十分進行いたしておるかどうか、また、その処置の成果いかんということを伺います。  第二に、あっせん収賄のようなものは、行政監察、懲戒処分を徹底すればあえて刑罰立法の必要を見ないであろうというような考え方をする学者もございまするし、ことに、今次提案されましたあっせん収賄罪の条文を読んでみまして、諸官庁の公務員が不正の行為をし、また、相当な行為をしなかったというしぼりをかけておる点から考えましても、私は、もし行政監察、懲戒処分というものが徹底いたしますならば、かような立法の必要もなかろうというようにも考えられるのでございまするが、この点について、あっせん収賄罪の新設と綱紀粛正処置との関係においていかに理解すべきであるかどうかということを伺いたい。  第三点といたしましては、現在汚職が一般化するに至った原因の一つといたしまして行政監察、懲戒処分の緩慢が云々されております。また、汚職に対しましては、御承知の通りに、行政、司法の二つの面において規制を加えられておる現行の態勢でございますが、むしろかような態勢によらずして、汚職専門の強力な監察機関を設置いたすべきではないかと考えるのでございますが、御所見いかが。  以上、まず三点について、お伺いをいたします。
  190. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 御意見のように、この汚職をなくするということにつきましては、ただ単に、あっせん収賄罪の規定を設けるから、それで汚職がなくなるというふうななまやさしいものでないことは言うを待ちません。従いまして私自身、先ほども棚橋委員にお答えを申し上げたのですが、就任以来、この一般公務員の綱紀粛正、汚職をなくし、清廉なる職務執行につきましてこれを確保していくという点から、今おあげになりました四点について閣議決定をいたしました。それぞれ主管の大臣において十分にその部内に徹底をせしめ、同時に、その成績につきましては、これを内閣報告をいたすようにいたしまして、これが徹底をいたしております。何といっても、私はやはり公務員自体の道義の、すなわち、公務員に関する服務規律の順守であるとか、あるいは責任を明確にするというふうな点において、従来欠けている点が十分ありますし、また、信賞必罰を励行することによって、これが徹底を期するという意味におきましては、監察制度をさらに強化し、徹底せしめる必要があるというような考えから、これらの閣議決定をいたし、各主管大臣において、これを十分に励行して参っておるわけでございます。  次に、この懲戒の方法によってやれば、十分目的が達せられるじゃないかという、監察、懲戒で十分であって、刑罰で臨むのはどうかというお話しでございました。もちろんこの一般公務員につきましては、そういう懲戒、監察の点によって、相当に綱紀の粛正、汚職をなくすることに役立つことは言うを待ちませんが、今回の立法におきましては御承知のように、国会及び地方のこの議会の議員もこれの対象といたしております。こういうものに対しては、従来のこの監察、懲戒のものではその目的を達せないことは言うを待たないのでありまして、また、一般公務員につきましても、一方において、そういうこの監察を強化して、懲戒の方法によってこの目的を達するという方法もありますが、さらにやはりその事態いかんによりましては、内容いかんによりましては、刑罰によってこれを罰し、将来のそういう事態の起らないように戒めていく必要もあろうと思います。従いまして、それは両者相並んでこれを行なっていかなければならぬと、かように考えておるわけであります。  最後の点は……。
  191. 大川光三

    ○大川光三君 汚職専門の強力な監察機関を置くという点であります。
  192. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 汚職につきまして、特に汚職専門の監察官を置いたらどうだというお話しでありますが、一つの御意見だとは私考えますけれども、しかし、監察の制度自体としては、どちらかと申しまするというと、この行政の運営と並んで公務員のこの廉潔性というものを保持していく、正当なる職務執行を確保していくという、このやはり行政事務の監査と両方をあわせて行うことが適当であるという考えから、これが今の監察の制度はできている。むしろ本人のこういうある汚職というようなものに対する個人の廉潔性を主としての監察ということになりますと、私はむしろ今のそういう場合こそ、検察当局あるいは裁判の制度によってやっていくということがいいので、行政官たる監察官であって、そういう個人の非違を専門に摘発していくというようなことになりますというと、また、一面に弊害の伴うこともあると思うので、むしろそれは特別の検察当局によってそれが明らかにされていくというふうな制度の方がいいだろうと、かように思います。
  193. 大川光三

    ○大川光三君 次に、暴力事犯の総合的対策につきまして、二つの点を伺います。  先般、岸総理は、本会議において、私の質問に対しまして、暴力の生ずるような社会的環境をなくすることが必要だ、かようにお答えをいただきましたが、政府は、この社会的環境改善について、一体いかなる具体的な構想を持っておられますか。それが一点であります。  また、岸総理は、同様私の質問に対しまして、言論の暴力、知脳的暴力については、その暴力の内容いかんにかかわらず、なくすることが民主政治の理想だと、かようにお答えをいただきました。申すまでもなく、言論による暴力は、ひとり人の名誉を損するだけでなくて、あるいは脅迫、恐喝の手段に供せられることも間々あるのでございまして、しかもこれらの被害者は後難をおそれ、また一つには、自分の秘密を保持するという関係から、言論の暴力に対して泣き寝入りをいたす場合が決して少くないのであります。そこで、一体政府は、憲法の保障いたしておりまする言論の自由と、言論の暴力取締りとの限界をいかにお考えになるか。今回の刑法の一部改正案によりますると、強姦、強制わいせつ罪、器物損壊罪、私文書毀棄罪等を非親告罪に改めんといたしておられますが、私はこれと同じ意味におきまして、言論等の暴力を追放いたしまするために、この際、名誉棄損罪につきましても、信用及び業務に関する罪と同じく、勇敢に非親告罪に改めてはどうかという私見を持つものでございますが、この点に関する総理の御所見を伺いたいと存じます。
  194. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 暴力をなくするという上から見まするというと、この暴力の発生する社会環境を改善していくということが必要であることは言うを待たないのであります。それじゃ、どういうことを具体的にやるかといいますというと、これもいろいろな私は策があると思います。第一は何といっても、経済生活を安定せしめるということが、何と言っても、根本の一つのことになると思う。もう一つは、教育制度であろうと思う。私は特に、戦後の一つの著しい傾向として、暴力行為が特に若い青少年において行われておるような事態を見まするというと、私はそういう事態を引き起しているという社会の欠陥を痛切に考えざるを得ないのであります。特に青少年に対する一般の教育の問題なり、あるいは青少年に明朗な娯楽を与え、また、そういう意味において、団体的訓練を持つというような機会を持つというようなことから、あるいはスポーツを奨励するとか、あるいは青年の家を十分に利用してもらって 一つ健全な何になってもらうとか、そういうような方法を講じて、暴力が起ってくる温床ともいうべき社会状態の改善ということに力を入れなきゃならぬ。先ほど亀田委員もお話しになりましたが、暴力団に属していると、一たびあやまってその方に入っていった人を正業につかせることについての、これはまあいろいろな困難はありますけれども、努力なり、適当な方法を、施設を考えるということも、これは非常に必要なことだろうと思います。そういうあらゆる面から暴力の根源をなくしていくように、これを健全な方向に向けていくように努力をいたしたい、こう考えております。  言論の暴力についてのお話がございました。これは言うまでもなく、今回の改正は、もっぱら肉体的の暴力を対象としておりまして、そういう言論の問題であるとか、あるいは知的なそういう事態につきましては、今回は取り上げておりません。ことに言論の暴力というものの、いわゆる言論の自由の行き過ぎであるとか、それが他人の名誉を棄損し、あるいは他人に非常な迷惑を与えたり、あるいは社会全体に非常な迷惑を与えるようなことが行われるということは、これもまた、明朗なる民主主義の完成の上から言うと、非常に悪いことであります。ある意味から言ったら、肉体の暴力よりもなお悪質なものがあり得ると思うのです。これらに関しても十分一つ考えていかなきゃならぬのでございますが、また、同時に、憲法上の保障されている言論の自由というものは、これは民主主義のほんとうの基本的な一つの大きな問題でございまして、これ自身を傷つけるというようなことになってはならぬことは、言うを待たないのであります。私はやはりこの問題に関しては、もう少し民主主義のあり方、あるいは言論の自由の本質というものに対して国民の理解を得るように、これは自由だからといって、他人に迷惑をかけ、社会に害毒を流すような言論は、これは決して言論の自由として憲法に保障せられているものじゃないと思います。そういうことに対する十分な国民の認識、また、言論に従事しておられる人々の十分な反省と、何といいますか、自省とを待って、これを考えるべき問題であって、これが刑法で取り締るとかいうような問題になりますというと、従来あります名誉棄損の問題やその他の恐喝、脅迫罪等の規定によってやるという現在のものを今特に改正するということにつきましては、これは十分に一つ各般の事情調査研究しなきゃならない。しかし、私は現在相当にこの言論の暴力というものが跡を断っておらないという事実は、はなはだ遺憾に考えておるものでございますが、これにつきましては、今申しましたような点から、なお十分に一つ研究をしてもらいたい。  なお、名誉棄損について、親告罪を非親告罪にしたらどうかという問題に関しましては、これはだいぶ法律的の何もありましょうから、専門の方から話を、法務大臣その他から一つお聞きを願います。
  195. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 名誉棄損に関する罪を非親告罪にすることがどうかということでございますが、これは一つのお考えかとも存じますけれども、しかし、現在のところでは、私がもう説明するまでもないのでありまして、法務省といたしましては、やはり現行法通り親告罪として置く方が適当である、かような考えを持っております。
  196. 大川光三

    ○大川光三君 最後に、今回改正されまする各種の法律の運用についてお伺いをいたします。衆議院では、過般この刑法の一部を改正する法律案を賛成議決するに当りまして、一つの付帯決議を付され、先ほど竹内刑事局長から御説明のあった通りでございますが、その付帯決議の中に、検察権、警察権の乱用を戒むべしということを強く主張されているのでございまして、私も全く感を同じくするものでございます。しかも従来の例によりますると、政府御当局としては、検察権、警察権は仰せの通り、厳にこれを戒めまするということを、言葉の上での御答弁は常にいただきまするけれども、私は、この警察権、検察権を乱用しないのだということの、この約束を担保する意味におきまして、現行刑事補償法について再検討を加えるべきではないかと、かように考えるのでございます。御承知の通りに、現行刑事補償法の第一条では、刑事訴訟法による通常手続または再審もしくは非常上告の手続において無罪の裁判を受けた者が同法、または少年法等によって未決の抑留または拘禁を受けた場合には、国に対して抑留または拘禁による補償を請求することができる。こういう規定でございまして、一口に申しますと、これは結局公判に付され、裁判の結果、無罪になった場合にのみ刑事補償は行われるのでありますが、今日の事態からいきますると、私はこれだけでは足らないのである。かように考えておるのでございまして、ことに今度新設されまするあっせん収賄罪にいたしましても、持凶器集合罪にいたしましても、それをかりそめにも乱用されます結果、他日裁判になって無罪の判決を受けますると、少くとも公職選挙法によって選ばれている公務員、また、正常なる労働運動、大衆運動をされる人々が、一たん検挙されるということだけで回復すべからざる精神的、物質的な損害をこうむる、かように存ずるのでございまして、これらのいわゆる損害というものは、ある部分については国家が補償しなければならぬのではなかろうか。もちろん捜査権、検察権の自由の範囲もございまするけれども、その範囲を逸脱した捜査、逸脱した検挙によって、ただいま申しますような精神的、物質的被害をこうむったものに対しましては、刑事補償法のいわゆる無罪の場合に限らず、不起訴の場合におきましても、それ相当なる国家補償をいたすべきだ、それが乱用いたさないというお言葉の担保に私はなると、かように考えるのでございまして、果して刑事補償法をこの際再検討される御意思があるかどうか、この点を伺いたいのであります。
  197. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいま無実で逮捕される、または勾留されました被疑者の救済のことについてお尋ねがございました。いかにもごもっともだと存じます。これが無罪の判決が受けた者との取扱いの間におきまして、非常に気の毒な点がございますので、法務省といたしましては、昨年の四月、法務大臣の訓令をもちまして被疑者補償規程というものを作っております。そうして何ら罪なくして逮捕勾留された、こういう者につきましては、無罪の判決があった場合とほぼ同様な補償をすることにいたしております。  それからまた、それは物質上のことでございますけれども、名誉の点におきましては、官報、その他の新聞紙に公示するというような方法もとられております。  なお、さらに進みまして、この者を逮捕したことにつきまして、捜査官に手落ちがあった、故意または過失があったという場合におきましては、これは当然国家賠償法の規定によりまして、国または地方公共団体から賠償をいたすことになっております。
  198. 大川光三

    ○大川光三君 ただいまの御答弁で私の蒙を開いていただきましたことは感謝いたします。ただ、最後のお言葉のうちに、国家賠償法についての引例がございましたが、御承知のように、あの国家賠償法は、公務員の故意過失を請求者が立証いたさねば判決は下らない。それがために、一例を申しますと、昭和二十八年行われました参議院議員の総選挙で、たまたま佐野市の投票が無効であったということで、中にはせっかく当選された方が、次回には立候補を断念した。また、再立候補のために多大の費用と、そうしてまた精神的な打撃をこうむられたという事例もございまするし、また、ごく最近のことでございますが、今回、最高裁は徳島の事件についての上告棄却、これは結局市会議員選挙において、保管中の投票用紙五十枚を盗み取られ、そうしてそれを悪用された。そしてその結果、選挙がやり直しになったというようなことで、これまた当選者が非常な損害をこうむるのであります。しかるに、国家賠償法によりますると、それをいたしますために、故意、過失の責任を請求者が立証するということは、非常な迷惑をこうむりますし、国家賠償法の精神は半ば失われたという感じがいたすのでございますが、たとえば、選挙に例をとりますと、当選者自身には全く故意もなければ過失もない、しかるに、公務員の故意、過失によって迷惑をこうむる、しかしながら、それを立証しなければならぬ。それがために三年、五年の歳月を要するということは、どうも不合理である。かように考えまするので、政府といたされましては、この国家賠償法について再検討をいたされて、営造物等が不備であったために起るいわゆる賠償、言いかえますと、無過失責任を認めるように、この法律を改められる御意思があるかどうか、この機会にお伺いをいたしたい。
  199. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 国家賠償法の問題でございますが、お言葉にありましたように、故意、過失の証明がなかなかむずかしいから、条文にはあるけれども、実効をおさめることが困難であるという御意見でございまして、これはいかにもその通りと存じます。従来の裁判例を見ますると、私どもの感じでは、この故意、過失の立証は裁判官において相当寛大に扱っておるのではないかと思われます。しかしながら、いずれにいたしましても、それを立証する必要がございますから、ここにただいま御意見のあったような結果が生ずるわけでございます。その他、国家賠償法の範囲等につきましても、だんだん御意見があったところでございまして、この点については、将来十分研究しなければならぬと考えておる次第でございます。
  200. 戸叶武

    戸叶武君 時間がありませんから、きわめて簡潔に質問したいと思いますが、衆議院の法務委員会で付帯決議を行いましたが、あの内容を見ると、この法の欠陥に対しての警告と要望とが盛り上げられております。この改正案の実施に当って、政府は、検察権、警察権の乱用を厳に戒め、政治活動を阻害し、あるいは労働運動を抑圧することのないように留意してもらいたいというようなことは、この法の運用いかんによっては、その危険性があるということを委員会全体の人が認めておるのでありまして、政府側におきましては、そのようなことのないようにという答弁をしておりますが、法律が一たび施行せられると、日本においては法律の形式的な解釈のみに終始して、法の運営に当っての認識、精神というものはおおむね没却されるのが通例になっておるので、法治国家の、権威の失墜というものは運用面から生まれるのでありまして、私は終戦前後における、特に国民政府崩壊の前後の上海の状況をもよく知っておりますが、蒋介石政権の腐敗というものはひどいものであって、要人という者はおおむね銀行あるいはその他の金融機関と組んで、あのインフレーションの中において国積をやって、そうして莫大な金もうけをやっておる。一面において国民政府の機関であるところの蒋経国一派の検察機関というものは、これに対して仮借なき弾圧をやる。この国家機構内におけるところの二つの機能の矛盾した動きというものが内部崩壊を導いたので、市民というものは結局血路を共産党に求めざるを得ないようなところにまでこの政治腐敗から追い込んできたのです。私はその極端な例をここでは引いたのでありますが、数日前に、ドイツのルール地区の炭鉱労働者の指導者であった、マックス・ブラデックがたずねてきましたときに、やはり今日のドイツとワイマール崩壊期におけるドイツとの比較論をやりましたときに、彼は、やはり率直にそういう点を的確に述べております。私はこのワイマールの憲法を形式的な解釈だけに終始して、責任を持つべきところの政党なり政府というものが、民衆の生活を擁護することなく、この民主主義の精神というものを政治の中に生かすことができなかった、この空転というものが崩壊の原因ではないかと言ったら、彼はそれもそうだ、もう一つは、各界において責任を持たなければならない。政界、産業界、労働界、そういうもののボスの腐敗というものがワイマールの崩壊を導いた最大の原因であると、被は言っておるのです。私は、蒋介石政権が本国から台湾に逃げのびなければならなかったあの悲劇ほど、今日の日本が深刻化されておるとは思わないけれども、ワイマール体制崩壊期におけるところの各界の指導者の無責任な言動というものが、法律はりっぱなものがあっても、法によっては何ら制御できないような事態というものが生まれてきたことによって崩壊したのですが、この矛盾面は、私は、法律を幾ら作ったってなかなか——ないよりはいいでしょうが、言いのがれにはなるが、本質的なメスを入れることにはならないのではなかろうか。これがざる法案と言われるのは、法律の形式だけを具備して、事実上において国民の期待するようなものがこの法案には盛り上げられてないのじゃないかということを世間一般も見ておるのでありますが、岸総理大臣は、この衆議院の法務委員会におけるところの付帯決議の精神というものを今後どういうふうに生かしていくか。その決意を承わりたい。
  201. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 御意見にありましたように、民主政治において最も大事なことは言うまでもなく、ただ単に法を作り、法を解釈するということだけではなくて、その運用が真に実質的にその法律立法の精神を体し、それを国民生活の中に生かしていくような運用をしなければならぬということにあることはお説の通りであると思います。  この立法をするに当りまして、衆議院においてつけられました付帯決議の趣旨は、あの衆議院における論議の途上におきましても、いろいろなこの法律に関連をいたしまして、疑問なり、あるいは疑惑なりの形において質問をされてきたのであります。それは言うまでもなく、一方、あっせん収賄罪の規定につきまして、先ほど来いろいろな御議論もありまして、私の考えも申し述べましたが、一面において、民主政治家としての正当なる政治活動というものをこれは伸ばしていかなければ、民主政治というものがほんとうに伸びていきません。しかも、それが一たび非難すべき汚職の問題に関連をしてくるならば、いわゆるあっせん収賄罪として処罰を受けなければならないのでありますが、その間におけるところの運用を誤まらないようにすること、また、暴力取締りに関するものは、法の立法の精神があくまでも正当なる労働組合の運動に関係ない問題でありますが、これがもしも乱用されて、労働運動というものが弾圧を受けるというようなことになることは、これまた、私は民主政治の完成の上にゆゆしいことである。これらの二点につきましては、今申し上げたように、衆議院の委員会におきましてもいろいろな形において質問もされ、これに対する政府の所信も明らかにし、十分に御審議を願ったわけでありますけれども、要は、実際の運用に当って、検察当局なり、警察当局がその精神を十分に体して、そうして、立法の精神を生かしていくか、あるいは、それを逸脱するかということによって非常な差違が生ずるわけであります。こういう付帯決議が衆議院でつけられたことにつきましては、政府として十分に意を用いて、その徹底を期していかなければならない。ことに新しい立法であり、また、今申しますように、いろいろな点において関連を持ち得る点があるわけでありますから、十分に一つ付帯決議の趣旨は徹底して、運用を誤まらないように十分気をつけるつもりでおります。
  202. 戸叶武

    戸叶武君 同僚の亀田得治委員が、毀棄罪を非親告罪にした点の憂慮すべき点を具体的に指摘しておりましたが、今までの日本の労働運動の歴史を見ると、日本の労働運動が正常に発達しないのは、一つは、労働運動が労働組合の機能からして経済闘争に終始していくべきなのが、そうであるのがそういかないのは、政府の労働対策というものが権力闘争の方向へ常に追いやっていくのです。日本の労働運動の現象面だけを見て、日本の労働運動の不健全云々を言う人がありまするが、公務員に対するところのストライキ権の制約、その他を見てもわかるように、それに対するところの保障というものを与えないで、そうして、争議なら争議が、どうしてもうっせきしたものが悪化していった場合においては、それを取り締るという名のもとに弾圧していく。弾圧に対する対抗というものが一個の権力闘争になるのです。大体ナチスと共産党のえじきになったワイマールの崩壊期におけるところの政府のやり方が、やはりそうだったんです。今の西ドイツにおけるところのストライキがないというようなのは、これはストライキをやらなくてもよいような形において労働者の地位というものが保証されているんです。確立されているんです。特に公共企業体における経営協議会の中においては、労働組合の代表者がそれに加わって、共同の責任を分ち合っているというような態勢も作り上げられておるのであります。私は、西ドイツの方式に全部学べというのではないが、日本の今日におけるところの政府の考え方、経営者の考え方、そういうものが、もっと頭の切りかえをやらないと、新しい日本の産業発達にも寄与することができないと思うので、特に法治国家の思想の、古ぼけた観念の、政治における適用というものが、今日ほど物事を偽善的にし、抜け道を考え、そうして表面だけをよくして、裏では何をやってもよいといったような形にまで道義を頽廃させた私は根幹をなすものだと思うのでありますが、そこで、大川氏も先ほど監察制度に対する問題に触れましたが、近代国家の運営の中において、十八世紀に発達したところの法治思想としての三権分立主義だけで足りないものがある。それは国会運営における監察制度の強化であるということは、すでに中国を近代国家に盛り上げようとした孫文の三民主義理論の中においても、その根底をなして提唱されておるのでありますが、今日の国家において、行政面における監察制度というものが完全に確立していない。弱い。そういうものがどっちかというならば、行政機関の最高機関にすぎないところの内閣、政府というものが、何か絶対主義国家におけるところの権力の主体であるような形を民主主義の衣装をもって現われてきている。そういうところに指揮権の発動が行われたり、それから自由民権の国でありながらも、主権者としての使命をないがしろにしたり、国会をばかにしたりするような今日の状態が現われているのでありまして、フランスの政治的危機を説いているソルボンヌの著名な学者が、フランスの建国においても、一七八九年において、自由民主主義の国家となりながら、百八十年の歴史の中に民主主義の名において政治形態を変えてきたけれども、いつの間にか国会というものが権力をいたずらに増大して、主権者としての人民というものから遊離してしまう。しかももっと悪いことは、政権の移動というものを国会だけでもって勝手に、主権者の人民に相談しないで、ひんぱんに行うということがフランスの政治を一番堕落させた原因だといって、自己ざんげをやっておりますが、日本の現状もまさにそうなんであります。私は、こういう法律がやたらに作り上げられるごとに非常に悲しく思うのは、やはり古代の政権の道を歩んだ人たちが、法三章で、法律は簡単で、そうして、よい政治を行わなければならないという教えに反した方向でぐんぐん時代が進んで、根本精神というものはないがしろにされている。こういうところに——ほんとうに人民の利益を擁護し、民主主義を擁護し、自由を擁護し、そういう形における監察をどこで行なっているか。政府だけじゃ信用がおけない。こういう問題に対して、私はこれだけ思いきった暴力、汚職、貧乏反対、根本的な問題に三つ取り組もうとしている総理大臣としての岸さんには、相当な私は決意があると思うのだが、この問題に対してはどういうふうな考え方を持っておられるか。
  203. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) いわゆる三権分立の形において、司法、行政及び立法のこの三つが分立しておるということが、近代民主主義の一つの型になっている。しかし、民主主義の本体は言うまでもなく、国民が主権者である。その主権者の意思が最も率直明確に実現されるという形においてこの三権分立ということが運営されていかなければならぬということは言うを待たないところであります。この関係において、行政面を預かっておる内閣というものの権力が他のものよりも優越した格好になり、その結果、主権者たる国民の意思が万一無視されるということになるということになっては大へんなことであります。ただ、行政権というものが日常実際の活動としてあらゆる国民生活の面に触れて、常時広範囲に行われておるという性格を持っておりますので、その行政権の行き過ぎなりあるいは国民の意思に反しての運営というものが起らないようにしていかなければならないという点を考えますと、私は大きな立場からいえば、やはり国会の機能というものが十分に行政権に対して常に監察的な機能を持って、そして行政権の行き過ぎということが行われないようにするということが一つ建前の根本であろうと思います。しかし、現実の行政監察の問題につきましては、国会がそういう監察の機能を持っておるというだけでは理論としてはそれで成り立ちますけれども、実際の問題からいえば、やはりこの行政監察の機能というものを強化していく必要があるし、これは今行政監察に関する機構もありますし、また、会計検査院という制度も作られておりまして、これらによって監察が行われていくわけでありますけれども、しかし、これが十分にその目的を達しておるかどうかという点につきましては、私はなお考究する点があると思います。特に異様な大きな予算が、これは言うまでもなく、国民の納めた租税の何でありますが、それが果して効率的に使われておるか、それが不正に使われておるか、あるいはそれに関連して公務員の清廉がそこなわれるような汚職が行われるというような事実が現にあるのですから、それを事前に防ぎ、将来ないようにしていくという意味における行政監察の組織としては、私は現在の組織においてはまだ不十分な点が多々あると思います。これはぜひとも将来において強化していかなければならぬことである。かように考えます。
  204. 戸叶武

    戸叶武君 時間がありませんから、最終的な質問をいたしますが、亀田君が言われた売春制度の問題でも、あるいは衆議院の委員会における証人の問題でも、一つの問題になる点は、日本人の一般的な精神状態というものが西欧的なそれと違って、非常にインディビジュアリズムが欠除していること、これは長い間の絶対主義国家における封建制の中に育ったので、長い物に巻かれろという考え方で、ほんとうに福沢諭吉先生が教えたような独立自尊の態度で物事をはっきりと言う習慣がついていないと思うのです。そういう日本の民主主義を今発達させなければならない過渡的な段階において、すべての人にそういう自由、独立した考え方を述べる精神、そういうものをつちかっていかなければならない大切な段階なんですが、今私たちがやはり衆議院の付帯決議においても見られるように、一番心配するのはやはり暴力団狩に名をかりて、実際日本の労働運動に対する弾圧に利用しようとするのが今までの日本の法律を作った、並びに運用した歴史においてはそればかりの歴史の積み上げなんです。私は社会的な秩序を保つという根本は、社会にいい慣行を作り上げるそういう積み上げ以外にないのだ、法律でもって、権力でもって何とでもできるというような思い上ったお考えというものは、いつの間にか私は民主主義を逆転させる方向へ導くものだと考えておるものでありますが、長い間の官僚主義的な政治にならされておる古いジェネレーションの人たちというものは自分の頭の中において感覚は民主主義であるけれども、現実におけるところの政治運用の面においては本物の民主主義は出てこない。そういう点において岸さんなんかずいぶん頭の切りかえをされておるが、頭は切りかえられておるが、やはり首から下は動いていないような傾向がだいぶある。このあっせん収賄罪の問題でもそうでありますが、この決議案の中に「第三者供賄に関し、十分検討すべきである。」といっておるのは、何か公務員という形だけに狭めていって、しかも大物は大体のがれられるような、小魚とメダカだけがすくわれてそうして大きな物は綱を破って逃げられるというような、ざる法案といいますが、ざるよりはもっと目の荒い、私のいなかでは木の葉を入れるかごがありますが、あんなような、ざる以上の、かご法案とでもいいますか、こういうところがあるので、私はこの法律で一番心配するのは、一応世間体を、岸さんがせっかく出したスローガンだから格好をつけなければ選挙にならないというので、そうしてこういう格好をつけた形跡が非常にあるのですけれども、そう言っちゃ悪いですが、まあこれはできてしまうかもしれませんが、できても完全でないということは、これは良識のある岸さんでも感ぜられるでしょう。亀田君も前に言いましたが、これは今後において、どうしても私は手を入れて直さなければならない。この付帯決議を付帯決議としてでなく、法律そのものにこの精神を持ち込んでいかなければ、この精神がほんとうに生きないと思いますが、これに対する総理大臣の御心境を披瀝していただきたい。
  205. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) このあっせん収賄罪並びに暴力取締りに関する規定につきましては、先ほども申し上げましたように、国会審議におきましてもいろいろな疑点もあり、また、御意見も従ってあることは私もよく承知をしております。しかし、われわれがこのあっせん収賄罪の規定を作るに当りまして、今、戸叶君も何かその場をごまかす一つのゼスチュアのような御批判もありましたが、私はこの問題については、実は先ほどもちょっと所見を述べましたが、私としては私なりに、真剣に、この問題を検討し、また、当局に命じまして、いろいろな点からこれを検討した結果、この案を得たわけであります。私は、決してこれが完全であるとは考えておりません。しかし、初めてこういう立法をするに当りまして、私どもは、あらゆるこれの乱用も一方から防がれ、また、最も明瞭なものについてこういう処罰の規定を設け、これに対して国民さらに特に公務員及び政治家等の反省なり十分の理解を求めるという意味において、当然最初に立法するとすれば、これが最も適当であるということから立法いたしたわけであります。しかし、現に第三者贈賄の規定が欠けておるということについては、法制審議会でも、また、衆議院の委員会においても御意見がございます。われわれも将来に向って十分に一つ検討して善処をしたいと思います。また、施行してみまして不完全であり、また、これではその目的が達せられないという場合におきましては、さらに検討を加えること、また、それに善処することは当然でありますけれども、決して単なるゼスチュアの意味でこれをやったわけではありませんで、真剣にこの問題に取り組んだ結果として、私は最初の規定としてはこれが適当であるという信念をもってこれを提案したわけであります。  暴力取締りにつきまして、いろいろと労働組合の正当な労働運動にこれが適用されて弾圧する結果になる、労働運動を妨げるというような結果になりはしないかという御疑問に対しましても、私どもは十分私どもの考えのあるところを明らかにいたしておるのでありますが、ここに掲げておりますこの具体的の規定から見ますというと、決して御心配のような点はないと思います。ただ、一番問題になるのは、言うまでもなく、先ほども亀田委員のお話がありましたが、器物損壊罪の親告罪を非親告罪にした点についていろいろの設例をおあげになりましたけれども、これまた私どもから言うというと、決して正当なる労働運動やあるいは労働運動の途上において、過失等によって器物が損壊するというようなものを対象としないことは、きわめて法文上は明確であると私は思います。ただ、これに関連して乱用があるかどうかという問題に対しては、これは法はそういう立法をしているけれども、警察当局や検察当局において乱用しはしない、こういう問題になりますれば、先ほど御指摘のありました衆議院の付帯決議の趣旨を十分に私どもは、徹底するように努力をしていくという考えでおります。
  206. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 何か総理大臣の予定の時間よりもこしておるようでありますから、簡単にお尋ねしたいと思います。汚職、暴力の追放に関して、法律だけではだめだ、だから一つ国民運動等に訴えて、こういう問題を根本的になくしていきたい、こういうお考えのように承わるとして、そういう点については、私も頭から反対するものではございません。ただ、その国民運動というようなものになれば、私は一つ監視するとかいろいろな点で国民の協力を得る点が一つと、それからもう一つは、新しい一つの道徳教育というか、道徳というものを新しく作り上げていかなければならない、こういう立場をさしておられると思うのです。そこで、戦時中に行われたような一つの精神運動というようなものが行われたらたまったものではない。しかし、すでにそれがここに出ておるのではないか。私は官制の道徳教育を今度小学校等でやりますが、それはすでに一つの精神運動的な流れではないかという点を心配をしているわけです。私はやり方というものは、主権在民、いわゆる民主主義になっているのではないか、だから一つみんなで新しい習慣を作ろう、一つ道徳というものはみんなでこれから作り上げていこうじゃないかというような呼びかけ方が正しいやり方ではないかというふうに考えているわけですが、こういう問題について、総理の率直な御見解が承わりたい。
  207. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) この汚職、暴力をなくするのには、政府としていろいろな、環境を改善するとか、あるいは公務員制度についていろいろ考えるべきものは考えていかなければならぬというような、政府が当然やらなければならぬことがございますし、さらに根本的なことは、国民道義の高揚であり、国家公務員の道義の高揚ということが大事である。そうするというと、どうしてそれをやるのだということにつきまして、今お話のように、私どもは官制の一つの考え方を国民に押しつけるということは、これは民主主義の本来の本質に反しているという成瀬委員のお話、これはごもっともでございます。実はすでに数年前から新生活運動というものをやっております。これに対しては政府は補助金を出しております。しかし、この実際のやっておる状況等をごらん下さいますというと、かつて戦時中のいわゆる精神総動員の運動であるとか、こういうこととは違った、ほんとうに国民の間から一つ盛り上る運動として、政府としてもこれを助長していく、あるいは地方公共団体においても助長するという面で、いわゆる戦時中のそういう精神総動員の運動等の、政府が一つの官制の考えを押しつけて国民を型にはめるという考えはとっておらないのであります。しかし、この新生活運動だけで私はいいと言うわけじゃもちろんございません。特にこの民主主義の環境の中から申しますと、国民の間にほんとうに民主主義に徹した新しい道徳、新しい民主主義の平和な国というものを作り上げる、それの一人のメンバーとしてわれわれが持っておらなければならない考え方というものが生まれてくることが必要である。私はまた、それについては、そう悲観しておりません。私は、だんだん戦後のあの混乱時代から今日顧みてみるというと、日本人がそういう意味においてやはり落ちついてきて、それぞれあるべき考え方をだんだん持ってきておる。これをわれわれとしては、むしろ助長していくという考えに進んでいきたいと、かように思っております。
  208. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そういう今時期的には非常にいいときにきておる、そういうときに、官制の一つの道徳教育というような言葉が出て、そうして官制の徳目が押しつけられるようなことは、好ましい姿じゃないと思う。今総理大臣がおっしゃったような立場でのお話は非常によくわかる。しかし、実際はそうじゃないかということを申し上げたわけですが、これも一つの議論ですかう、そういうことを申し上げつつ、それについても一つお答えをいただくともに、もう一つついでに申し上げたいのは、青少年の犯罪のことですが、なぜこういう問題が起きてくるかというと、私は一つの形式的に言えば、今入学試験というものが非常にやかましいわけです。そこで中学校でどうやるかというと、これを進学組と就職組とに分けようじゃないか、今文部省はそういう方向にあるわけです。そうしますと、就職組になった者は、人生に希望を失って、これがぐれん隊に行くわけです。あるいは教師は進学組の生徒をかわいがって、ぐれん隊の方にそっけなくする。これが暴力教室につながっていくわけです。だから、私は、あなたが青少年の問題を非常に心配しておっしゃっている。しかし、心配しておみえになるが、現実に行われることは逆の方向にある。文部省が今度進学組と就職組と分けたらどうか、こう言っておるわけです。こういうことは、一つ総理大臣としてどんぴしゃりとめてもらわなければならぬと思う。こういうことについてどういうふうにお考えですか。
  209. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 道徳教育の問題につきましては、まあずいぶん議論のある問題でございますが、だれも新しい道徳が必要であり、また、学校教育というものにおいて道徳教育というものがなされなければならぬということについては、私は異論がないと思う。ただ問題として、どういう徳目を教えるか、あるいは教え方をどうするとか、いろいろな教員の実際の訓練をどうするとか、いろいろ問題がこれに関連してあると思います。が、問題は、やはり私は、今度の徳目というものを一応きめなければ、道徳教育をやると言っても、ただ道徳々々と言っても何ですから、どういうことを身につけさすような教育をするかということについては、十分一つ民主的に各方面の意見を聞いて、これをともかく何していく。それからまた、その内容についても、できるだけわれわれが民主国家として、平和国家として将来のそれを組織するところの一員になる、成人したらそういうりっぱな平和国家あるいは民主主義の社会を完成していくのにふさわしい徳目を選んで何する。かつて忠君愛国であるとか、あるいは一たん緩急あったときに義勇公に奉ずるということを最高の道徳みたいに教えたいわゆる超国家的な考え方、私はそれではいけない。私は十分そういう考え方は今度の何には織り込まれておると思う。  それからもう一つの点につきましては、実は中学の進学組と就職組とを分けるというふうなことですが、これは私は実は、文部大臣を先般呼びまして、一体文部省はそれを分けるという考えなのか。自分は反対だ。それは中学というものが当然国民の基礎的の義務教育の何であって、それを分けるということは、組を分けてするということは、本来の何からいって自分は反対だ。そう言ったら、文部省としてはそういうことをするつもりはありません、ということを、私に明瞭に文部大臣は申しておりますから、私はそれを分けるという意見があるかもしれませんが、決して方針として文部省がそれを押しつけることはない、かように信じておりますが、なお、その点については、私は、分けてはならぬという強い考えを持っておりますから、十分文部省に徹底するようにします。
  210. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 進学組、就職組のことについては、まことに明瞭なお答えをいただきましてありがとうございます。  次に、青年のことについて、総理はしばしば青年に期待するということをおっしゃる。そして先ほど御答弁を聞いておりますと、青年の家、いろんなことについて予算等も確保しておると。今月号の主婦の友に、児童憲章ができてから十年、そしてちょっとそのさわりの言葉に、遊びは大人の一部であって、子供は全部である、そういう遊び場というようなものが非常になくて困っておるというようなことが言われておる。一つ総理として積極的に、この青少年犯罪のふえておるこういうときに、私は言葉で青少年に期待するとか、あるいはああだこうだと言ってもだめだ、やはり今手を打たなければ三つ子の魂百までであって、二、三十年先ほんとうに私は心配をしなくちゃ、ならぬと思う。一つ大英断をふるって、この少年の遊び場と申しますか、子供の生活全部の問題についてやはりめんどうを見てやる。これは私は、一つの暴力の追放の具体的な施策だと思う。総理大臣のおっしゃることについて、今度の予算がだめでも、総選挙も近い。臨時国会……まあ総理はそのまま居すわりだと仮定しておる。そこで、臨時国会等において積極的におやりになる御用意があるのかないのか。
  211. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私大へん予算の数字を覚えませんけれども、予算の最後の編成のときに、今お話しになりました子供の遊び場というものをある程度作ろうじゃないか。これはもちろん全国にすべて十分に作るとかいうことは初年度ですからできませんが、とにかくそれを作れということを申しまして私一部入っておると思いますが、ごくまだわずかでございますが、入っております。今お話しの通り、青年の家というような、これもごくわずかでございますけれども、何をすると同時に、すでに青年の程度に達しているものはもう少しスポーツの関係におきましても私は大いにこれを奨励していきたいという考えを持っておりますが、子供のいわゆるほんとうの遊び場、お話のようなものが、何か最近できました中小都市においては特に私は欠けているように思う。大都市には割に公園とか何とかいうものが、これも十分ではありませんけれども、地域的に離れている所もありますけれども、中小都市にはいわゆるそういう点が欠けて、しかも道路なんかは整備されていない。子供の交通事故というようなものも非常に多いというようなことを考えまして、一部とにかく頭を出しましたが、これはもっと思い切ってやれと言われる成瀬委員のお話には私は全然同感でありまして、特に青少年と言っておるが、少年の、小さい者を伸び伸びと明るく育て上げるということにつきましては、なお十分考えて参りたいと思います。
  212. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 最後に、私は悪の巣はいろいろなものがあるが、一つのギャンブル行為、いわゆる競輪だとか賭博とか、競艇とか、しかもこのテラ銭によって国の財政が若干助かっておる。地方財政も相当おんぶしておる。あるいは自転車産業界はこれによって潤っておる。戦後十三年、正しい姿ではないと思う。今度の選挙公約等に岸総裁の自民党は、こういうものはやめるというようなことを一つ思い切ってやっていただかなければ、私は悪の巣にメスが入らぬじゃないか。こういう法律は、暴力取締りができた、あるいはあっせん収賄罪ができる。いろいろなことがございますけれども、こういうものについて見のがしていっては、私は少しおかしいじゃないか。しかもこれが貧乏の道にも通ずるわけなんです。あすこでうんと損害する人が多くて、もうける人よりも使わされる人が多い。テラ銭のあがりが多いということは、そういうことなんです。ですから、そういうふうにギャンブル行為が一挙に三つできないとすれば、何か一つずつでもはずしていくということを私はやるのが、今度の選挙なんかのスローガンとして国民に公約するには絶好だと思う。ですから、そういう勇気はあるのかないのか、どうなのですか。
  213. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 実は私自身もこのギャンブル行為、ことに戦後に競輪その他競艇とか、いろいろなものができたことについては苦々しく考えておる一人でございます。とにかくとりあえず、一切の新設は認めないという方針をはっきり第一にしまして、これが整理につきましては、今実は地方財政とも、はなはだ現実がそうですから、いい悪いは別として、地方財政との関係も相当に考慮しなければならぬ実情もございます。一方競輪等につきましては取締り、その他いわゆる射倖的分子をできるだけ少くするような取締りをいたして、あまり繁盛をしないようなやり方も考えてきておりますけれども、どういうような方法でこれをなくしていくかということについては、私も十分一つ考えてみたいと思います。今お話しの通り、ただやめるということは、それはいかにも勇気だけじゃなしに、そういうふうにいろいろな関係を持っております。すでにできておるものでございますから、一つ考えてみたいと思います。私自身は全くお考えの……今申しますように、今いろいろな新設をねらって出願をしたところの者もあるようでありますから、それは一切許さぬということにして、これに対する、われわれが従来これに対して奨励をしたということはありますまいが、どちらかというと、一部政府の方もこれについて寛大な立場だという考え方に対しては、私はまず方針をきめておりますけれども、なお、それをどういうふうにして整理していくかというようなことについては、実は私も考えてみたいと思います。
  214. 青山正一

    委員長青山正一君) ほかに総理大臣に御質疑はございませんか。——時間も尽きたようでございますから、本日はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  215. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。  次会は、明十七日、午前十時、派遣委員報告及び刑法関係三案について質疑を行います。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時九分散会    ————————