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1958-04-09 第28回国会 参議院 農林水産委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月九日(水曜日)    午前十時五十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重政 庸徳君    理事            藤野 繁雄君            堀  末治君            上林 忠次君    委員            秋山俊一郎君            関根 久藏君            田中 啓一君            田中 茂穂君            仲原 善一君            堀本 宜実君            東   隆君            大河原一次君            河合 義一君            北村  暢君            梶原 茂嘉君            千田  正君            北條 雋八君   委員外議員            小山邦太郎君   政府委員    農林政務次官  本名  武君    農林省農林経済    局長      渡部 伍良君    農林省畜産局長 谷垣 專一君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○養鶏振興法案小山邦太郎君外三十  五名発議) ○中央卸売市場法内閣提出) ○酪農振興基金法案内閣提出、衆議  院送付)   —————————————
  2. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ただいまから農林水産委員会を開きます。  養鶏振興法案参議院議員小山邦太郎君外三十五名発議参法第九号)を議題にいたします。  本法律案は、去る四月四日発議され、即日当委員会に付託されたものであります。  本日は、まず、提案理由説明を伺うことにいたします。
  3. 小山邦太郎

    委員外議員小山邦太郎君) 私は小山邦太郎でございまして、ただいま御審議をわずらわします養鶏振興法案に対しての提案者の一人としての責任から、日ごろ農政に対して格別な関心を寄せられ、また、深い研究を重ねられておられまする皆様の前に、私のごときが御説明を申し上げるというようなことは、はなはだおこがましく恐縮に存じますけれども、これも提案者責任と存じまして、きわめてかいつまんだところで、この法案のねらいとするところ、及びその目的を達成する上に取り上げました諸般の事項について御説明を申し上げたいと思います。何とぞ意のあるところを御了察をいただきまして、厚意のある御審議をちょうだいし、進んで本法案の成立いたしますようにお力添えされむことを、切にお願い申し上げます。  お手元に差し上げてありまするこの提案理由説明についてでございまするが、今日わが国農政重点が、食糧総合的増産農業経営安定向上に置かれており、その一環としての畜産振興をはかるようになったことは、農業経営合理化を促進する上に、また、畜産食糧供給を増加する観点から見まして、まことに有効適切なことと存じ上げます。  しかしながら、予算上から見ました畜産奨励の方向は、酪農方面重点が置かれております。もとより酪農対策といえども、なお不十分の感を免れませんので、その充実をはからなければなりませんが、これと並行して、小家畜に対する助長を行なって、酪農に親しみ得ない中農以下の農家対策を講ずる必要があります。とりわけ養鶏は、全国どの地域におきましても行うことができ、また、その規模の点で、どのような階層の農家にも容易にとり入れることができるという長所があるばかりでなく、国民の栄養上から見ましても、重要な鶏卵肉供給源でありますから、今後ますますその振興をはからなければならないと信じまして、まず、養鶏振興を取り上げた次第であります。  御承知通りわが国養鶏は、飼養戸数においては、全国農家戸数の約七割を占めるすなわち四百二十万戸に達し、飼養羽数におきましては四千五百万羽をこえます。さらに鶏卵生産量は年産七十億個に達しようとしておるのでありまして、鶏卵、鶏肉、鶏糞等養鶏生産物を金額に換算いたしますれば、実に一千億円にも達しておる。この額は、農業生産物中では米に次いでおりまして、畜産物中で第一位を占めておるものでございまして、養鶏事業がいかに大きな役割を果しているかということは、これをもっても説明できるものと存じ上げます。  このようにわが国養鶏は、全体的に見ますれば大きな産業でありますけれども、個々の養鶏農家の実態についてつぶさに検討いたしますると、これはすみやかに改善を要すべき問題が多多存しておりまして、このことが、養鶏四百万農家をして、あすへの養鶏に対して大きな不安に陥れておるのが実情であるといっても差しつかえないと思います。  従って、農家養鶏経営の安定をはかるためには、まず鶏の能力資質改善に努めることが第一であると存じます。このためには、民間の優良な孵化業者を育成強化いたしまして、これらの優良な孵化易から、能力資質のすぐれましたひなが生産されて、その生産されたものが農家に渡るような組織にすることがまず第一。それから年により、また、季節によりまして、価格変動の激しい鶏卵につきまして、需給調整をはかりまして、あわせて生産から消費に至る一貫した面において養鶏経営安定方策を講ずるということと、それから低廉な鶏卵肉国民供給することによりまして、国民の食生活の改善に寄与いたしたいとするものでございます。  以上が、本法律案提出理由でありまして、以下、簡単にその内容について御説明申し上げまするが、第一に、孵化業者が用うる種卵規制、それから孵化業者登録制度、これでございます。現在、全国には約千四百芦の孵化業者がありまするが、これらの孵化場から生産される初生びなは、直接全国養鶏農家の手に渡るのでありまするから、この初生びなが不良なものであってはなりません。そこで、孵化業者が用いる種卵につきましては、一定の種鶏検査に合格をした鶏の生産する卵に限るように規制をいたしまして、不良な種卵を用いないようにするものでございます。  もっとも、この種鶏検査に相当するものは、現在、各都道府県において実施されておりまするが、この方法及び内容がまちまちでありまするので、この機会に、種鶏検査を国の法律に基き都道府県知事の行うものとして、これにより全国的に統一した種鶏検査実施しようとするものでございます。  次に、優良な孵化業者事業場について、その申請により、都道府県知事登録を行うことにいたしまして、孵化業者種鶏改良事業に対する協力を期待するのでございますが、それとともに、養鶏農家が安心して能力及び資質のすぐれた初生びなを購入できるための制度を確立しようとするものでございます。  第二には、養鶏経営改善等のための助成でございまするが、御承知通り低廉な鶏卵肉生産するためには、住産から消費に至る養鶏経営全般にわたって、その合理化を強く推進する必要がありまするので、本法律案におきましては、養鶏経営または鶏卵肉の処理の改善養鶏に関する指導普及等に対して助成措置を講じようとするものでございます。第三には、鶏卵需給調整のための助成であります。鶏卵価格は、年により、また季節によりまして著しい変動がありますために、養鶏農家経営を常に不安定にしておるばかりでなく、鶏卵消費拡大をも阻害いたしておる現状でありまするから、そこで、鶏卵需給調整に必要なる助成措置を講じまして、鶏卵価格の安定をはかるとともに、その需要の拡大を促進し、もって養鶏経営合理化に寄与しようとするものでございます。以上が、本法律案提案理由及びその主要な内容でございます。もとよりこの法案をもって完璧な、完全無欠なものとは思われませんが、先刻申し上げました通りの趣旨を御了承いただきまして、十分御意見を加えられてこの法律案が成立いたしまするよう、御協力あらむことを、切にお願いを申し上げます。さらにつけ加えまするが、この法律案成文化能力が私に欠けておりまするので、これの要綱を大体認めて、参議院法制局をわずらわしまして成文化いたしたのでございます、そうしてまた、これがここに至るまでの間には、関係各省と、打ち合せというのではありませんが、その意向を尋ねましたが、農林省及び自治庁におかれましては、大体同意というか、了承されておりますが、残念ながら大蔵省は多少予算等関係もございまするので、予算法律との一致しないものについては、直ちに賛成もしかねるという様子でございまするが、皆様のお力によりまして、これによき御意見をお加えいただいて、ぜひ成立せしめ、そうして大蔵省をも同意せしむるに至るよう、お力添えあらむことを、切にお願いを申し上げます。以上、簡単でございますが、御説明を終ります。
  4. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 本法律案審議は、後日に譲ります。ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  5. 重政庸徳

  6. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 中央卸売市場法の一部を改正する法律案議題にいたします。他に御発言もないようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  8. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 私は中央卸売市場法の一部を改正する法律案に対し、自民党を代表して、各党の話のまとまった次の付帯決議を付して賛成したいと思うのであります。中央卸売市場法の一部を改正する法律案に対する付帯決議案わが国民経済現状において農畜水産物流通改善を図ることは喫緊の要務であって、青果物及び魚肉類等生鮮食料品については特に急を要するところである。ここにかんがみ政府は、次期国会法律案提案して調査会を設け、衆知に諮り、農畜水産物流通改善対策を確立し、現行中央卸売市場法を再検討し、実情に即し根本的改正を行い、且つ施設の整備等必要な措置に遺憾なからしめること。以上。
  9. 東隆

    東隆君 私はこの際、中央卸売市場法の一部を改正する法律案賛成をいたします。賛成に当って、希望事項を申し上げます。その第一は、この法律そのものが、先ほど藤野委員から付帯決議案として出された条項、これは当然のことでありまして、この法律が非常に古くできた法律で、今の時勢にそぐわない点が非常に多いことは、これは周知のことでありますので、調査会等を設けてそうして徹底的にやり、そうしてりっぱなものを作りあげることについては、大賛成をいたすものであります。その次に、私どもが現状卸売業務にかかる長きにわたる悪習慣を排除し、そうして取引方改善を行うことは、一日も早きを要するものであります。従って長い間の慣習、そういうようなものが容易に急変することのできないものでありますので、この際、政府改正に関連をいたしまして、混乱を起したりあるいは不測の事態を引き起すようなことが考えられますので、この点を十分に注意をされて、そうして改善をしていただきたい、そのために金融の疎通の面をこれは考える必要があると同時に、マージンの合理化、これを十分に考えなければ、政府が意図しておるような改正を、万全にすることはできない、こう考えますので、その方面に鋭意力を注いでいただきたい、こう考えます。その二は、卸売業務健全性を確保するための措置もまた急を要するのであります。しかし、純資産額の不足のために卸売業務を停止し、あるいはその許可の取り消しを行うに当っては、あらかじめその善後措置に万全を期することが必要である、これは今回の改正によって、実のところを申しますと、合理化の名にかられて弱いものが整理をされる、こういうような問題が起きて参りますので、この点について十分に前提になる措置を講じなければ、これは大へんな問題を起すのじゃないか、こういうことをおそれておるからであります。その次に、卸売人信用を確保する、市場信用を確保するために、私は、信用基金制度のようなものを確立することがこれはもう当然必要だろうと、こう考えておるわけであります。このことは、質疑その他の間において、賛成をしておる市場もあるわけでありますから、できるところは早急にやると同時に、できない方面においても勧奨をしてそうして進めていく、こういうようなことをやる必要があろうと考えるわけであります。これは政府行政的な措置でやり得る面を、この際、急速に進めていただきたい、こういうわけであります。それから生産者組織強化、これをやらなければ、現在における市場における出荷者の位置というものは、強化をされて参りません。従って、生産者組織強化して、そうして商品としてのものを市場に供出をする、こういう体制を作り上げる必要があろうと思うのであります。そのためには、やはり低利資金、そういうようなものを融通するとともに、市場とのつながりであるところの前渡金であるとか、奨励金、そういうようなものを廃止する意味においても、そういう前提的な措置が必要である、こういうことであります。この点を十分に考えていく必要があろうと思う。従って、生産者団体出荷団体におけるところの金融は、農業協同組合関係でいえば、生産物金融でまかなう、こういうような体制を確立する必要があろう、またそのために指導する必要がある、こういうふうに考えるわけであります。その次は、農畜水産物流通改善のために、政府は、行政機構について十分な措置を講ずる必要があろう。この点は、現実市場監督あるいはその他の点において、今の法律の中においては、責任を転嫁するようなおそれもあります。そういうような点も多少考えられますから、この際、はっきりした行政機構の確立をやると同時に、監督その他の点に万全の措置をやるべきである、こういう点であります。その次に、市場が、御承知のように自由取引の形ででき上っておりますので、やはりある程度の農畜産物価格の安定を期するためには、やはり出荷あるいはその他の方面において調整をする必要があろうと思いますが、その前提として生産方面、そういうような方面にも、ある程度の自主的な計画性を与える必要がある、そういうような点から、農林省がおやりになっているところの農業観測拡充、そういうような点、あるいは都道府県市場開設者農業協同組合等協力体制、そういうようなものを、ぜひこの際、指導の面において、行政の面において、強力に進めていただきたい、こう考えるわけです。以上、数項にわたった点は、これは質疑の間においてかわされた事項でありますので、この際、特に留意されて進めていただきたい、こう考えるわけであります。以上述べまして、法案に対して賛成をいたしますと同時に、先ほどの付帯事項について賛成をいたす次第であります。
  10. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私は、緑風会を代表いたしまして、本法案賛成をするものでありますが、この際、希望を申し上げておきたいと思います。この改正案は、申すまでもなく、中央卸売市場現実の運営に相当大きな影響を与えるように思われるものであります。実施措置いかんによりましては、相当の混乱も予想されないわけではないわけでございます。しかし、この実施に当りましては、十分慎重な配慮と万全の用意をもって当られるよう希望する次第であります。なお、藤野委員提案付帯決議案に賛意を表すものであります。
  11. 千田正

    千田正君 ただいま議題となっておりますところの中央卸売市場法の一部を改正する法律案については、私は賛成をいたしますが、この提案に当りまして、政府当局神田市場におけるところの、東破産事件を契機として出されたような感がありまして、たとえのいうどろぼうを見てからなわをなうというような、あわてて出された法律というような感を私は深くさせられるのであります。ただいまの東委員からいろいろ御希望を述べられましたが、実際その通り市場法そのものを、この際、抜本的に改正をしなければならない、こういう前提をもって、このたびの一部改正ということに対しては賛成をいたします。ただし、先ほど藤野委員かり提案されましたように、この付帯決議の中にあるように、市場法そのものの脆弱さを、何で根本的に改正するかといえば、やはり市場信用保持というものにかかってその重点があると思いますので、その信用保持の具体的問題は何か、先ほど東君からも指摘されたように、やはり信用の確保のためには、そこに経済的基盤を確立しなければならない、ことに金融制度、あるいは資金の積み立てであるとか、そういうような万般の用意をしてから、今後新しく抜本的改正法案を出していただきたい、これを強く要望いたしまして、本法案賛成するとともに、付帯決議案に対しましても賛成の意を表するものであります。
  12. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 他に御意見もないようですが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 御異議ないと認めます。それでは、これより採決に入ります。中央卸売市場法の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  14. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。次に討論中に述べられました藤野説明共同提案付帯決議案議題といたします。藤野提出共同付帯決議案を、本委員会決議とすることに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  15. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 全会一致と認めます。よって共同提案付帯決議案は、全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。なお、本会議における口頭報告内容、議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきさましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたします。なお、本案を可とされた方は、順次、御署名を願います。多数意見者署名堀末治 田中啓一関根久藏 堀本義実仲原善一 田中茂穂梶原茂嘉 千田正北條雋八 藤野繁雄東隆 河合義一北村暢 大河原一次
  17. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ただいまの付帯決議に対し、政府の見解を求めます。
  18. 本名武

    政府委員本名武君) ただいま中央卸売市場法の一部を改正する法律案を、全会一致をもって御可決いただきまして、ありがとうございました、お礼申し上げます。つきましては、この法案に対しまして、付帯の御決議をいただいたわけでございますが、その内容は、もとより今日まで御審議過程におけるいろいろな御意見であり、これを尊重すると同時に、この付帯決議に対し、われわれもぜひこの御意思を尊重して、実行できるように善処いたすつもりでございます。
  19. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) これをもって、しばらく休憩いたします。    午前十一時三十五分休憩    ——————————    午後一時四十二分開会
  20. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 委員会を再開いたします。酪農振興基金法案議題にいたします。まず、質疑に入ります。御質疑の向きは、御質疑を願います。
  21. 東隆

    東隆君 この酪農振興基金法案を出すに至った農林省の動機は、酪農審議会答申を待って、その中にこういうような基金制度を作ることがよろしいと、こういうような答申があったことを基礎にしてお作りになったと。それから学校給食、そういうたようなものも含めていった。こういうわけでありますが、私は、こういう点で計画をされたことに対して、反対をするものではございませんが、乳価の安定の問題を中心にして、例の大カン練乳砂糖免税中心にしてこの問題が起きてきた。こういうふうに考えて差しつかえないと思う。そこで、大カン練乳砂糖消費税免税に関しては、昨年の九月から換算して二年ほど前に、大蔵省側では消費税免税を廃止すると、こういうような強い要望があったようであります。これに対して農林省側では、暫定的に期限を延長して、その間にいろいろな乳の加工の施設をして、そうして免税がなくなっても差しつかえないような形にするのだと、こういうふうに私は進んできたと思う。ところが、事態は全くそういうような形でなくて、大カン練乳製造は依然として続いておる。そうしてしかも施設は進んでいかないと、こんなような形でもって期限が到達をいたしたと、こう考えておるわけであります。そこで暫定的に二ヵ月の期限を延ばした。こういうようなことによって、農林省は、その間に乳価の安定のための施策を講じたわけです。ところが、その間に業者はどういうことをやったかというと、この機会にというわけで、大力ン練乳製造を非常に急ピッチでもって進めったっと、こう思う。従ってその結果免税がなくなってから、現在はかえって大カン練乳製造したものが非常に多くて、いわゆる滞貨が非常に多いと、そういうような関係で、市場混乱を一そう高めたようなきらいがある。こういうふうに私は見ておるわけであります。しかもその混乱を来たしておるその滞貨に対して、融資の方法を講じようと、こういうふうにしておるわけであります。私は、これはどうもどろぼうに追い銭を加えるという言葉は、これははなはだ言葉が過ぎるようでありますけれども、しかし、いささか農林省滞貨金融というような方面にもし重点を置くとすれば、相当これは目的を誤まった基金制定のことになるのじゃないかと、こういうふうに考えるわけであります。そこで、当初の考え方であったところの設備資金、こういうふうなものを、これは当然大きく出していかんければならぬのが、これが本旨だと、こういう考え方を持つのですが、その点について、政府の方ではどういうふうにお考えになっておるか。また、設備資金について供給をするとすれば、どういうようなお考えをお持ちになるか、あわせてお伺いいたします。
  22. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 昨年の六月の末に、実は大カン練乳等の加糖いたしましたものの免税措置撤廃期限がきたわけであります。で、その二年間の猶予期間におきまして、その後におきまする大カン練乳等砂糖消費税撤廃に対する設備転換が行われたかどうかという問題でございまするが、これは、その間におきまして特に問題になりまする中小企業設備が、かなり市乳転換いたしておることは事業でございます。従いまして、この大メーカーの中で特に大カン物練乳を原料として使いまするような企業を持っておりまするもの、つまり菓子部門等を持っておりまするような企業体、で、これがその後の状況から見ますと、かなり大カン練乳設備拡充をいたしておりまして、中小企業のところでは割合に市乳等への転換という形で設備転換が行われておる、こういう事情になっております。しかし、やはり先ほど御指摘になっておりまするように、そういう設備が、果して免税措置が撤廃されましたときに、十分なる転換がそのときになされておったかということになりまするというと、やはり今振り返ってみますると、十分な転換はなされていなかったということを申し上げなければならない、かように存じまするが、二年以前におきまして、その後の猶予期間におきまする設備転換事情は、先ほど申しましたような事情で行われておったことも、これまた事実でございます。ただ、二年の猶予期間に、それでは十分設備転換ができたかと申しますると、必ずしもそうではなかった、これまた実情であります。それから免税の停止ということによりまして、大カン練乳そのもの増産が行われた、これはやはりこういう場合におきまする一つの思惑増産と申しますか、免税の恩典のあります間に、それだけの生産がふえたことは、これは事実かと思います。それから設備資金の問題でございまするが、基金の建前は、やはり運転資金というものが主体になった考え方で進んできておりますが、しかし、先ほど御指摘になりまするような大カン練乳等に対しまする免税措置が撤廃されるということ、また、それの設備転換が十分に行われていないという実情等の経緯がございまするので、設備資金に関しましても、この基金は債務保証をし得るような道を開いております。従いまして、この基金は、運転資金重点としながら、特に設備資金でも、この基金の発足いたしまする経緯にかんがみまして、設備資金を若干見ている、かようなことに相なっております。
  23. 東隆

    東隆君 中小の製乳業者関係のものが、実は非常に大きな問題であったわけであります。そのためにこそ砂糖消費税免税、こういうような形ができたので、大企業家の製乳業者の場合には、実のところを申しますと、砂糖消費税免税によってできたところの製品を、今度は菓子の部面であるとか、そっちの方に流すことによって、これは非常に大きな利益を上げることができる。しかし、そういうような利益を上げることはわかっているけれども、中小企業の製乳業者の場合においては、規模の小さいところの製乳部面においてはどうしても転換をしなければならぬから、措置を講じた、こういうのが私は本旨だろうと思う。大きな業者のために免税措置を講じたのではなくて、免税措置を講じたのは、中小の組織、あるいは農協なんかでもってやっているような小さな製乳業、この面において設備転換をして、そうして、たとえば澱粉乳を作るとか、そういうのをやるのが本旨だったろうと思うのです。従って、市乳の方に転換をするという面は、これはどちらかというと、都市の近郊で消費者のたくさんいる所、そういうような所でありますから、これは当然限定をされてくるわけでございまして、その面ではないと思うのです。従って私は、今からでもおそくないと思うのですが、重点をあくまで設備資金に置くべきじゃないか、そうして中小の組織のやっておる製乳業、これの転換をやらなければ、なまの乳をほったらかしておくわけには参らぬですから、従って、その面に対する設備資金をまず考えてやらなければならぬ、こう思うわけでありますが、あの程度のものでもって、どの程度満足されるとお考えになっておりますか。
  24. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) この基金の問題は、御存じのように二十九年、あるいは特に昨年の秋から起きましたような、主として乳製品の価格が暴落をする、で、その結果としまして、農民に支払いまするところのいわゆる納乳の値下げの問題が起きてくる、しかも乳製品というようなものは、保存がそれほど、長くきくわけではございませんし、しかも相場が先安の状況になっておりまするので、通常の場合以上に金融機関その他が、これに対する融資を渋って参る、そういうような、それが引っついた形で農民の方へしわ寄せされるという状況であったわけであります。で、実際問題としまして、昨年の秋からのそういう場合の製品のたな上げに対しても、政府の方で補助を与え、あるいは必要な資金繰りにつきましてもあっせんをいたしまして、若干のものが融資を見た、こういうことになっておるわけでありますが、とにかくそういうような事態におきまして、生産を制限するというわけには参りません性質を持っております。急速に生産制限はできませんしいたしますので、よけいに幅が広くなって、急落をする形になって参ります。そういうような場合には、この基金という形の債務保証によりまして、一般の金融が十分につくようにいたしたい、そのことが、ひいては農民に対しまする急激な乳代の値下げというような現象を防ぐことになるのじゃないか、こういう考え方でこれが出発いたしております。それがおもな目標の一つになっておりますので、やはり基金といたしましては、そういう場合の運転資金と申しまするか、経営資金と申しまするか、そういうものが主眼になると考えております。ただ、設備の問題に関しましては、この基金制度考えられました経緯にかんがみまして、設備に対しましてもその債務保証を見よう、こういう考え方でございます。で、現在中小企業の諸君が、一応資産的に当面必要だとしておりまする設備転換の経費は、約八億くらいのものになろうかと思っております。で、この基金が、設備資金に一応どのくらいのものを債務保証の対象として考えるかということでございますが、出発当初におきましては、約五億見当のものをこれの設備資金に対しまする債務保証のワクとして考えて進んでいったらいいのではないか、そういたしますれば、中小企業の諸君に対しまする設備資金の債務保証としては、まずまずこなしていけるのではないか、このような考え方で現在一応の予定をいたしておる、かような状況でございます。
  25. 東隆

    東隆君 中小企業設備方面に保証をやって、そうして約八億くらいの資金を融通される、こういうことをお聞きいたしたわけでありますが、それ以外に、その運転資金の問題でありますが、これは運転資金は——私は、乳を生産している者は農民で、そうして農業協同組合を組織しておると思うので、できるだけ一つ、生産物金融でもってまかないをして、そして工場との取引をする、こういう体制を作ることが、これが共同販売をやる基本になるんじゃないかと思うので、金融面ですね、これで工場に融資することによって、工場のつながりにおいて乳価の安定というような、そういう面じゃなくって、もう少し生産者団体を強固にすることによって、乳価を維持するという、そういう面を考える必要があるのじゃないですか。その業者の方に力を与えることじゃなくって、原料生産者であるところの農民の組織方面に力をつけるやり方ですね、そのやり方は、私は生産物金融として、協同組合が資金を使うことがいいことであって、業者そのものに運転資金として資金を融資してやると——これはもちろん、滞貨だの何だのの場合に、製品が販売できない、従って、金が入らないから原料生産者の方に支払いができない、こういうような場合の資金にはなりますけれども、しかし、基本的なものの考え方は、原料生産者であるところの組織に対して融資をすると、こういうことによって、製造業者は、その支払いし得ない間は金利を出すと、こんなような形でやっていかなければ、農民の収入の面においては、単に名目上、牛乳の値段が高くても、金利だけ損をする、こういうことになろうと思うので、そういう面は、どういうお考えなんですか。運転資金の面を相当強調されておるようですけれども、しかし、協同組合の原料乳生産の面における金融という面、そういう面について、この基金は、どういうような役割を果すのですか。
  26. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 御指摘の問題は、確かに一つの重要な問題点だと、私たちも、この案を考えるときに考えて参った点であります。で、通常は、乳業者の所に、農民が主としまして組合の形でミルクを持って参る。そこで乳代を受け取る、それが通常の形であろうかと思います。この基金といたしましては、乳業者の、そういう場合の乳代の支払いを可能にするように、経営資金に対する債務保証をやるということを、主としてうたっておるわけであります。しかしながら、御指摘のようにこのミルクの供給関係、これを受け入れる関係というものを、供給側から強く見るか、あるいは受け取る方を見るか、これは経済の現状、その他それぞれの組織現状考えていく必要があると思いますが、この基金におきましては、このミルクの共販等をいたしておりますような組合、生産者の団体に対しましても、なお債務保証の道を開いております。たとえば乳代の遅払いが起きましたような場合におきまして、当然に遅払い等の現象を起させないように、乳業者から払わせるということが第一でございましょうが、しかし、組合の力が非常に自主的に強い場合、あるいはまた相手のメーカーが十分なるそれだけの債務保証を受けられないような場合等の事情があると思いますが、そういう場合におきましては、生産者の団体の方に債務保証をさせまして、乳代の立てかえ払いを、その組合に対して実行できる、さようにいたしまして、組合員は、ある期間は再生産に支障のない資金を立てかえ払い代金として受け取ることができる、こういうような仕組みを、この基金においても規定をいたしております。どちらの形が実際に行われるかということは、そのときの経済の状況あるいは当事者の組織力の強さ弱さの問題であると思いますが、基金におきましては、生産者団体におきますそういう形における利用方法をできるようにいたしている考えであります。
  27. 東隆

    東隆君 中小企業者が、原料乳生産者でありますので、これは私は、やはり運転資金というよりも、設備資金に相当重点を置かなければならぬ、こういう考え方を、お話を伺いながら、ますます強めるわけでありますが、農林省は例の酪振法によって、各地に指定をして集酪を作ったわけでありますが、それらの地帯は、これから牛をふやしていってやる、こういうわけで、しかもそれらの地帯には、これはだいぶ大きなメーカーがやっているようでありますが、しかし、ときに百五十石以上かのものを集めて、それを製品にすると、こういう能力を備えることを前提にしているようであります。また、相当設備の備わったものを建設をしなければならない、しかも現実には牛の数はまだ少い、こういうような地帯に、相当広範に農林省は指定をされているわけです。従って、指定を受けたものは、基幹工場を作らなければなりませんし、そういうような義務を負わされているわけであります。これは将来に向っての計算をして、もちろん企業家は立つと思いますけれども、しかし当面の設備資金、そういうようなものが非常に高利のものを入れて、そうして使っていると、こういうようなことになりますれば、結局しわ寄せは原料乳を生産している方向にいかざるを得ない、こういう形になりまして、そこで、大きなメーカーとは限りませんけれども、建設資金、そういうようなものを、これは農林漁業金融公庫を通して出るもの、あるいはそれ以外の金融機関を通して出るもの、こういうふうに考えて差しつかえないと思いますが、その場合に、大部分どういうような形によってまかなわれるお考えですか。
  28. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 今御指摘の問題は、今日のように非常に急速にミルクの生産がふえて参っております時代におきましては、非常に重要な点であろうかと思います。生産されました牛乳が処理される工場設備設備資金、これをどういうふうにまかなうかという御質問でございまするが、現在、非常に高度な農協等の、農民資本の入っております会社形態等は、御承知のように農林漁業金融公庫の融資によりまして、それらの設備資金をまかなっている現状であります。中小企業の乳業者に対しましては、中小企業金融公庫等で、設備考えて参る仕組みになるのでございますが、その他のメーカー等の設備資金につきしまして、これはそれぞれ一般市中の銀行融資等によりまして、その設備をいたしている、かような現状でございます。政府の方といたしましては、必要なものはそれぞれあっせんの労をとっておりまするけれども、現在のところ、大企業におきまする問題には、通常の金融によって、自分の力によってまかなっていくということが多い現状であります。
  29. 東隆

    東隆君 具体的にお聞きしますが、五大乳業、こう申しますと、明治、森永あるいは協同乳業、それに雪印、クローバー、こういう五大乳業ですが、そのうちでクローバー、これが協同組合の出資のような形でもってできているのですから、相当農林漁業金融公庫を使えるものと思いますが、それ以外のものは、雪印の場合あるいは協同乳業の場合、これはそのクローバーの次に位して農民資本に関係があると思います。それから明治、森永になりますると、これはほとんど業者の、農業以外の資本を集めておる、こう申してもいいのではないか。こういうふうに考えておりますが、その場合における考え方ですが、公庫から資金を融通し得る程度は、どの辺のところにおくつもりですか。
  30. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 現在の公庫のあれから申しますと、今御指摘の五大メーカーのうちのクローバーは、これは農林漁業金融公庫の融資対象になり得ることになると思います。その他のものは、いわゆる農業資本的なものが参加しているものに対しましても、現在のところ、公庫の融資の対象にはなり得ない。かような実情でございます。ただ、農林中金あるいはまた一般市中銀行でもございますが、そういうものに対しまして、ほかの乳業会社は頼っておる、こういうようなことに相なります。五大メーカーに対しましては、そういうことに相なるわけであります。
  31. 東隆

    東隆君 クローバーを除いたあとのものが、全国的にどれくらい集中——酪農業中プランですか、指定になっておる所では基幹工場を経営しておることになりますか。
  32. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 現在大体七十五の集酪地域を指定しておるわけでありますが、そのうちで五大メーカーのものがどれくらいの数を占めておるかという御質問でございますが、今ちょっとその資料を持っておりません。後ほど御返答させていただきたいと思います。全体の乳量で申しますと、大体約半分程度のものが、五大メーカーのところに集まっている、そう見てよかろうかと思います。
  33. 東隆

    東隆君 あとでその資料を一つちょうだいいたしたいと思います。  それから、私はこの場合、これらの地帯で五大メーカー、かりに四大メーカーを考えてみましたときに、これらのものが相当高金利の資金を使えば使うほど問題はむずかしくなって参ると思います。そのしわ寄せば力があればあるほど、やはり原料乳の価格にこれがしわ寄せをしてくるのであります。こういう心配が非常にあるわけであります。そこで、できるだけこの設備資金というものについて、政府考える必要があろうと思いますが、中小企業者はもとよりのことでありますが、大企業に対しての設備資金も、政府が集酪地域に基幹工場を作らせる、こういうふうに指定をした以上は、相当考えなければならぬのがこれが常識だろうと思いますが、その点、どういうふうな方法でもって資金を流すつもりか。先ほどは銀行というようなお話でありましたが、銀行の資金は、これは目的を達するのには相当金利も高いし、政府金融制度等をこしらえた考え方からいっても、私は、相当的はずれの金融の受け方になろうと、こう考えるわけであります。そこで、何かいい考え方をお持ちであるかどうか、その点をお伺いします。
  34. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) この集酪地域の中心工場に対する融資を、特殊な長期低利の金融の対象にしていく、そういう考えはないかどうかというお問いのようであります。この問題は、私たちも十分に今後検討いたしたいと思っておりますが、現在は、ほかの産業におきまするような一般の金融からそれぞれまかなっていく、もちろんクローバーの場合は別でございますが、そういう考え方で進んでおるわけであります。この農民とのつなぎ合いあるいはこの企業がどういうふうに公共的色彩の強いものであるかというような観点から、この問題は議論さるべき余地が十分まだあると思います。現在のところ、私たちはこれらの資金に関しましては、できるだけのあっせんその他の努力をしてやって参りたいという考え方でございます。今後の問題につきましても、毎年こういうふうに非常に増産をされているという形におきましては、何らかの形でこの資金の問題も考えねばならぬ、そういう段階にきているとは考えております。
  35. 東隆

    東隆君 衆議院の農林水産委員会でもって、この法案を通過させる場合に、金融のうちで処理加工の施設に対して、農林漁業金融公庫からの融資の道を開くように検討することという付帯決議がついております。それで、私は先ほどこれは質問をしたことでおわかりだろうと思いますが、大企業施設をしたものは低利資金を使っておらないということから、そのしわ寄せが原料生産者である農家の方にしわ寄せになるおそれが非常に多い。こういうような点から考えて、ある程度金融公庫から借り受けをする場合の条件、そういうような条件を緩和する必要があるのではないか。農民資本というものを農業協同組合が出資しておるから、こういうことでなくて、事実農民が出資をしている、こういう形が明瞭になれば、私は、ある程度資金の融通ができるような形に伸ばしてもいいのではないかというような考えを持っておりますが、その点はどうですか。
  36. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 衆議院の付帯決議は今申されました文言のほかに「農林漁業金融公庫等」という「等」が入っておったかと思います。もちろん農林漁業金融公庫というものを主体として、そのお考えになっておるかとも思  いますが、そういう点につきまして、十分に今後検討を、付帯決議として要望されておるわけでありますし、私たちの方といたしましても、十分それは検討しなければならぬと考えております。その中の農協資本と申しますか、そういうものの比率をもっと引き下げて、この対象になりまする企業を広げていくということの可否の問題、これもその際に十分検討いたしたいと思います。現在のところ、その成案を得るに至っていないのでございます。
  37. 東隆

    東隆君 私はつけ加えておきますが、「農林漁業金融公庫等」と、こう書くことによって、私は、やはり中小企業者等の公庫ですね、そこからの融資等も考えておると思うのです。その場合には、これは業者組織の場合には、中小企業者の金融公庫から低利資金が出ると、大企業を除いてそこから出ると。こういうことになりまして、実のところ申しまして、私どもは生産する側を実は非常に重視しておるので、原料乳の価格等を考えますので、業者の製乳工場、加工工場よりも、私はやはり農民資本による組織が加工をする方を希望しておるわけですが、そういうふうな考え方からいって、業者の面には実は非常に道が開かれておる。それは中小企業がでありますけれども、その面は開かれておる。そこで、多数の農民が出資をした形になっておる。それは農業協同組合という組織ではないけれども、そういうふうなことが非常にはっきりしておるところのものについては、金融公庫からの融資の道を開くべきである。こういう考え方になるわけで、業者の面にはオープンになっておって、そして今度は農民の実質的なもの、成り立ち、そういうようなものを考えてきたときに明らかになってくるわけでありますが、そういうような過去の歴史的な過程をとって現在に至っておることが明瞭なものについて、何もそんなにしゃくし定木に道を狭める必要はないと思う。そういう過程から考えて参りますと、金融公庫から出る可能性のあるものは、たとえば協同乳業であるとかあるいは雪であるとか、そういうようなものが相当可能性ができてくると思う、私のような考え方に立てば。その点を一つ十分に考慮をしていただきたいと思います。今後考える場合。その点を申し加えておきます。  それから、私はもう一つお聞きをしておきたいことがあるのでありますが、それは原料乳の価格、これを決定をするときに、国が何らかのやはり決定に対するところの原則のようなものを決定するような機関が必要でないか、こういうふうに考えておるが、それは現在は原料乳を生産するものと、それから工場との関係、その間における関係は、買うものと売るものとの関係になっておる。この関係は原料生産者の方は協同組合でもっておそらくまとまって参りましょうし、それから会社は、これは相当工場の側は大きな会社と、こういうようなことになってその間における争いというのは、これは労使の争いとは違いますけれども、しかし、今後何らか適正な価格を決定するところの機関があって、そうしてそれが仲介し、あるいはいろいろなことをやらなければ、地域別に、地域的に解決するというような、そういうようなことは非常に困難になる。特に原料乳というようなものは、これは生鮮物でありますから、腐りやすいものでありますから、従って、生産者の方はこれは非常に常に弱い位置に置かれておる。工場で受け入れを拒否されるような事態なんか発生すると、これは非常に困難な問題が起きてきます。そういう点もありますし、さらに、そういう事態にならないとしても、いやがらせの申し渡しみたいなことも、もうすでに行われているような事態もあるようであります。そんなことを憂えますので、この基金制度と関連をして、私は、やはり乳価の安定というようなことについて、政府は特別な機構をこしらえる必要があろうと、こう考えるのですが、この点、お考えがありましたらお伺いしたい。
  38. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 乳価の問題に対しましては、現在乳価そのものを規定いたしまして、それを支持するというような制度組織というものは考えていないのであります。ただ、この基金にいたしましても、あるいは実施いたしておりまする学校給食というような形のものにいたしましても、やはり乳価の安定には十分役立ち得るものと考えております。どういうふうな価格でいくかということを政府がきめるとかあるいはまたそれをきめる機構を作るということでございまするが、これはやはり価格そのものをきめると申しましても、現在の状況では、何らかのそれに対する実際の受け取りをする、そういう機関が必要かと思います。それは、現在のところ考えられておりますのは、この学校給食等の給食用に買い上げる、そういう方法、それからそういう場合の必要な経営資金基金で債務保証をして参る、こういう制度を現在実際行なっており、またこれから行おうとしておるわけであります。価格そのものを支持するという体系になりますというと、この品物を実際何らかの形で政府が買い上げるなりあるいはほかの別個の機関がそれを買い上げるなり、何らか支持いたしました価格に対する責任を持たなければならないところの、そういう制度を要求されるのではないかと思っております。それに対しましては、まだ十分な成案を持っていない、現在そういうことを考えていないという状況であります。
  39. 東隆

    東隆君 私がお聞きしたのは、乳価をめぐって、私は原料乳価中心にして考えた方がいいと思いますが、原料乳価中心にして紛争が起きてくるのです。これはもう現に乳価の値下げを二回も通告したとか三回も通告したとかいう形でもって北海道なんかにも出ておる。そういうような形が農民資本でできた会社の場合でもそういう問題が起きてくるのですから、いわんや農民資本でないところの会社と、それから原料乳を生産する農家との間の、この間の争いというものは、これは相当考えていかなければいかぬ。その場合に、政府酪農は非常に今後力を入れていく、こういう形でどんどん生産をさして、生産をすればするほど不利な条件のもとに農民が置かれる。こんなことにかりになったとすれば、これはゆゆしい問題になる。従って、紛争の中心は、私は乳価だろうと思うのですが、その乳価を事前に、できるだけ処理をしていく、紛争が起きないように処理をする、こういうことは、これは当然国の義務でないかと、こう思うのですが、そうじゃないですか。そういうことを考えないで、生産ばっかりどんどん指導して、そうしてどんどん出る。そして市場との関係でもって、うまく製品がはけない、そこで原料乳価を下げるのだと、こういうわけで、一方的に通告なんかされて、どんどん下げられた日には、これはたまったものじゃありませんから、そこで、やはり組織が強くなれば強いほど、相当な争いをする。この争いをする場合に、原料乳を生産しているものは、これは生鮮食品でありますから、従ってそいつを出さないで自分のうちに置いておくわけには参りません。そういう種類のものですから、これはやはり奨励をするならば、その反面に、紛争だのそういうようなものを処理する機構を作っておく必要があると思う。しかし、それは紛争を処理するという単なる目的じゃなくて、その紛争の根本になるところの乳価の安定ということに関連をして、あるいは原則であるとか、そういうようなものをきめる、もし進んで紛争が起きた場合には、仲介であるとかいろいろな形をとるというような、そういうような機構まで作り上げるべきじゃないかと、こう考えるわけです。外国にはそういう例はないかもしれないけれども、日本においては特にそういう点が強調されていかなければならぬと思うのですが、その点はどうですか。
  40. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 御存じのように最近におきまする酪農の伸びは、非常に消費生産ともに躍進をいたしております。なるほど二十九年の状況あるいは昨年の秋の状況はございました。二十九年のように農民の乳価が一升について十円あるいは十円以上も下る、こういう事態があったわけでありますが、それが三十年の夏になりますと、今度は逆にミルクを集めるのにむしろ狂奔する、こういうような形になって、そしてむしろ供給が不足、こういう現象が出てくる。まあそういう事情が数年に一度はございますけれども、しかし大局的に見ますというと、やはり消費生産もともに現在どんどん伸びておる状態であろうかと思います。で、こういう両方に伸びておりまするようなときにおきましては、価格そのものをずばりと支持をするというような政策をとりまするよりも、その価格ができるだけ安定をした形で動き得るその周囲の条件をできるだけ整えていくということの方がむしろ妥当なのではないか、かような考え方でやっておるわけであります。基金制度にいたしましても、あるいは学校給食のためにその剰余と見られているものを吸収いたしますることも、みなそういう考え方でございますが、さらに乳価の問題も含めまして紛争が生じました場合には、現在の制度といたしましては、各県にありまするあっせん委員にそのあっせんを申請する、そういう仕組みができております。そういうような形でこの乳価を含めました紛争のあっせんをしていきたい、かように考えておる次第でございます。で、乳価そのものを算定するにいたしましても、まだそれの前提となりまする種々な機構あるいは資料等が不十分な状況でございます。たとえて申し上げますれば、農家におきまする生産費調査一つにいたしましても、昨年まではわずかに調べまする農家が百戸程度の農家によって生産費調査をやった。昨年からそれではいけないというので、約八百戸、千戸近い対象農家に広げる、こういうことで、生産費調査一つにいたしましても、やっておる現状でございまして、また、各県それぞれにこの生産費なり乳価というものは、非常にバラエティに富んでおります。そういうような事情もございますし、あるいは乳製品の問題にいたしましても、乳製品価格というものの一体市場価格は幾らであるかということは、これはわからぬ状況でございます。商品取引所その他ができますれば別といたしまして、現在のところは、ただ個々のいわゆる気配相場、取引当時の相場ということでございますが、これもすべてそれぞれのブランドによって価格が違う現状でございまして、そういうものの価格がなかなかまだつかまえにいく現状でございます。また、生産者の団体の方にいたしましても、共販という形における、まとまった形における組織は、まだまだ不十分なる現状でございます。価格一つ考えてみましても、果してそれが原料乳価格であるのか、あるいは市乳として売られるそういう価格であるのかということ自体が、まだ区別されていない、契約においてもそれがはっきりされていない、こういう現状でございます。そういうような現状でございますので、それらの点を逐次改善すべきものは改善していくことがまず大切なのじゃないか、かように考えておる現状でございます。
  41. 東隆

    東隆君 環境を整備して、そして価格の安定を待つというお話のようでありますが、私は北海道で昭和の初めに、現在とはだいぶ違いますけれども、しかし深刻の度合いは現在なんかよりもまだひどいものがあったわけであります。それは、会社とそれから結局協同組合関係でもって実は相当な問題を起した。ことに会社側の方では、乳を集めるために無利息の金を貸し付けるとか、あるいは牛を貸し付けるとか、いろいろな方法をやって、そして乳を集めておる。いざ不況ということになって、とうとう農家が乳を投げ出す始末になった。そして牛乳でもってふろを沸かしたり、腐らしたりいろいろな悲劇が起きた。そこで仕方がないので、原料乳だけの統制をやったわけであります、北海道で。そしてその当時の生酪販売組合連合会——産業組合法によってできた組合でありますが、それが結局バターのストックを当時四十五万斤でありますか、何かそのくらい持っておったはずであります。それで、それがどうしても消化をしない。こんな形で、国から補助金を出してもらって英国にダンピングをやったことがあるわけであります。そして辛うじて急場を救うとともに、その後、原料乳の統制を全面的に進めて、そして農業関係のものはバターの製造をやる、こういうように一元的にやってそして進んできた。それの後身が今の雪印あるいはクロバーなんかになるわけであります。そういう歴史をよく承知をいたしておりますから、それで現在のようなこの状態、ちょうど混乱が起きる前夜の形になっておるわけであります。その場合に、環境の条件の整備を待ってそして価格の安定をはかるのだというふうな考え方は、これはもう非常にゆうちょう過ぎる考え方で、今こそ、国が奨励をしたのだ、奨励にはこういう方法付帯しなきゃならぬのだ、乳価の安定ということをはかるそのいろいろな施策がめぐらされなければならぬときなんだ、私はそういうふうに考える。だから環境の整備なんだの、そういうようなことをもって今糊塗すべきときじゃないと思うんです。やはり乳価の安定ということに対しては、もうすでに二、三年前から私ども農村を回って見ますと、農産物の価格安定法でもって乳を賢い上げてくれ、こういうような意見がだいぶ出ておるわけであります、同僚の田中議員なんかと北海道を回ったときにだいぶ出て、そうして乳は賢い上げるわけにいかない、だから乳製品くらいなら何とかなるだろうというような話をしたことがあるんですが、だから農産物価格安定法の中に入れるとすれば、私は乳製品、こんなような形になるだろうと思います。しかしそれ以前に、私はやはり農林省が奨励をする以上は、やはり乳価の安定に対して条件待ちというような、そんな考え方でもって進められたら、これはもう大へんなことになるわけです。政府の方で、ほかの条件が整備して、初めて価格が安定してくるんだからというようなことをお考えになると、これは大間違いだろうと思う。ことに今バターにしても何にしても、値段がまちまちで、実際の取引価格がわからぬ、こういうのでありますが、しかし、それは今だからそういうふうになったので、買い集めをやって、そうして一生懸命にやっておったときには、バターの価格は厳然と、もちろん種類はありましたけれども——ブランドによって違いはありましたけれども、しっかりした価格が行われていた、北海道の雪印バターなんかは、北海道で買っても東京で買っても同じ値段でもって市場に濶歩しておった、だからそういうふうななにがあったんですよ。そいつがこわれてきておるんですから、だから私は今こそやるべきときだ、こういう考え方なんです。それで、もう少し本腰を入れて、乳価の安定ということについて関連をいたしてお考えを進めていただきたい、こう思うわけであります。
  42. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 昭和の初めに北海道のバターがロンドンその他に売られた、そういう意味の一種の滞貨措置の対策がとられた、こういうお話でございますが、現在におきましても、必要があれば十分そういう手はとる必要があろうと思っております。要するに、買い上げの制度をとりますにしても、何をとるにいたしましても、それが市場から切り離されたところに消費されるということが必要かと思います。従いまして、今現在やっておりまするような、学童給食という形においてなまミルク、あるいは乳製品を措置する方法、これは、私は海外への輸出問題等と同じような、市場から隔離の効果があるものと考えております。海外への輸出についてどういうふうにこれをさばくか。これも当然私たちは考えていかなければならない問題だと思いますが、少くとも学校給食ではすでに一月から三月までに、なま乳に換算いたしまして約十万石程度のものが、一般市場から切り離された形で消費されておる。さらに三十一年度におきましては、七億の経費で二十万石程度のものがそちらに流れていく、かような形になって参りますので、現在の制度におきましても、当時のように、海外への一種の輸出促進、価格差を補給しての輸出促進であったと思いますが、そういう形とは違ってはおりまするが、しかし、学校給食という形における乳価の安定策というものは、すでに実施をいたしておるわけであります。もちろん乳価の安定のために必要が生じますれば、さらにこういう制度を考究し、拡大していく、あるいは海外への輸出の道も今後考えていく、これは当然私たちとしても必要があればやっていかなければならない、かように考えておる次第であります。
  43. 東隆

    東隆君 以上のお聞きをした点をあわせて考えて、もう一点お伺いいたしたいのは、外国に出るものは、全粉乳の形のものが、これはまだ外国に出る可能性があるのじゃないかと、こういうように聞いておりますが、その点はどうですか。
  44. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) これはいろいろと意見がありますので、私も少し検討さしていただきたいと思いますが、乳製品の中で、やはり腐敗しにくいというものを考えますと、全粉乳でありまするよりは脱脂粉乳の方が腐敗しにくいものであろうかと思います。あるいはこれを練乳にいたしまして、つまり砂糖を入れた練乳という形にいたしてみるとか、あるいは小カンものの加糖粉乳という形にいたしまして、こういうものがやはり保存から申しますといいものになるのではないか。特に海外へ出します場合を考えた場合に、やはり東南アジア等の状況を考えますと、赤道を一回通らなければならぬ、暑い所へ行かなければならぬというような事情もございますので、やはりそういうような製品が輸出としては向くのではないか、かように考えます。
  45. 東隆

    東隆君 私は黒んぼに白いミルクを飲ませて、少しよだれでもたらしておる光景を想像すると、きわめて愉快な感じを抱くのですが、輸出の方面は、私は極力進めていってほしいと思いますが、それにしても、やはり原料乳の場合には設備施設、これがもう第一条件だろうと思います。そこで、それに関連して先ほどいろいろ金融の面、そういう面をお聞きいたしましたが、重ねて私は施設に対する資金、しかも低利資金で百長期のものを出さなければ、その影響するところは原料乳生産者にくる、こういう点をさらにつけ加えて申し上げて、そうして政府の方の施設に対する資金、そういうような点について一段のお考えを進めていただきたいと、こう思います。私の質問はこれで終ります。
  46. 北村暢

    北村暢君 私は、まず第一点にお伺いしたいのは、今度の基金法案による債務の保証ということによって乳価の安定をしよう、こういうことを考えておられる、これは提案理由説明の中にありますように、これだけでやろうとは考えておらぬ、学校給食なりいろいろな方法考えておると思うのでありますが、しかし根本は、やはり酪農振興法により、急送に酪農振興いたしまして、現在相当な過剰生産的な形になってきておるということが言えると思うのです。そこで、そういうような過剰生産になりつつある現状において、なおかつ政府の政策は、酪農振興しよう、こういうことでございます。従って、ここで言っておりますように、従来の三倍もの生産が出てきている、こういう実態において、さらに振興しようというのですから、これだけの措置では、私はやはり問題の解決にはならないのじゃないか、今全国各地で起っておるこの乳価の問題については、今、東委員からも相当突っ込んだ質問がなされておりますけれども、畜産局長の答弁では、乳価の安定ということについての農民の不安というものは、私は去らないのじゃないか、こういうふうに思うのです。従って、この基金法に付随して農業関係の各団体、農民団体から酪農振興法の抜本的な改正というものが要望せられておった、これは御存じの通りですが、一体政府は、この酪農振興法について、抜本的な改正の意思があるのかないのか、まずその点について第一点としてお伺いいたしたいと思います。
  47. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 酪振法の抜本的改正の問題、これはどこを訂正すべきか、どこを修正すべきかという問題であろうかと思いますが、実は、本国会にも間に合えば出したいと思いまして、酪振法の改正につきまして、部内におきまして検討を進めておったわけであります。ところが、それぞれ非常に重要な問題点が成案を得るに至らなかったために、なお検討を続けまして、近い機会にそういう改正お願いすると、こういうふうなことに進めて参りたいと思って、現在検討を続けておるわけでありますが、いろいろと酪振法の改正をいたします場合に、問題点があろうかと思います。酪農審議会答申の中にも、この紛争あっせん等の機構をもう少し整備しろ、現在のあっせん委員という制度ではなくて、たとえば酪農委員会というような名称による常置の機関を置いて、そしてそれによって、この紛争のあっせん調停をやらせたらどうか、こういう答申があったわけであります。で、私たちの方としましても、その問題、さらに農協法の問題にも関係いたしますが、農協法十九条二項等のいわゆる専属利用契約の問題点、あるいは乳質改善と申しまするか、ミルクの品質をどういうふうにやっていくか、さらに学校給食制度化の問題はどうであるかというような諸点に関しまして、実は検討を進めて参ったわけであります。しかし、もう少し根本的に問題を考えるべきだという意見も実はございますので、以上提起いたしました諸点に関しましても、なかなか現在まで成案ができない、こういう状況であります。上述のような諸点並びにさらに改正すべきところがありますれば、そのような問題につきましても検討を今後進めて参りたい、かように考えております。
  48. 北村暢

    北村暢君 今、酪振法の基本的な改正についても考えておったが、まだ今のところ間に合わない、こういうようなことのようですが、これは、私は非常に深刻な問題として起ってくるのじゃないか、大体国内における生乳並びに乳製品の消費というものが、列国に比較して非常に低い段階にあると思うのです。それで根本的な解決は、今、東委員から乳製品の輸出の問題も取り上げておられるようですけれども、生産コストの問題からすれば、これはオーストラリアの製品その他にてんで追いつかない状態にあるので、簡単に輸出で解決するとは考えられないと思うのです。従って、国内の消費拡大する、このことが非常に大きな問題じゃないか、しかもこれは食料品なんですから、趣味嗜好というものが非常に影響しますし、一がいにこれを変えるといっても、消費拡大するといっても、なかなか簡単にはいかない問題だと思う。そこで、政策として消費拡大するということになれば、学校給食も非常にいい方法ではあるけれども、ここで思い切った政策をとらないと、急速な消費拡大ということは望めないのじゃないか、しかも乳製品——生乳を含めての乳製品は、今後政府計画によると、非常な急速な増産になることになっておるわけです。従って、もうその問題が解決されないというと、応急的な処置としての基金制度というようなことでは、問題は解決しないのじゃないかというふうに考えられるのです。従って、酪振法の改正に当っても、現在の酪振法が、主として生産面の拡大、あるいは取引ということに重点が置かれておる法律でありますから、これによっては生産は確かに伸びるかもしれないけれども、消費拡大——消費というものを頭に入れたところの酪振法というものは、まず全然といっていいくらい法律の中にはない、こういうふうに見てもいいと思うのです。そういうような点からして、この問題の根本的な解決は、やはり消費の面の思い切った施策というものがなされなければならない、こういうふうに思う。しかもそれも、これは学校給食制度化なり、あるいはこの酪農基金制度というようなことで一時だぶっくものを基金の融資によってその場限りにしのいだとしても、解決する問題ではないと思うのです。しかも、これは急速にやらなければ、政府のとっておる政策と一致していかないのじゃないか、非常なアンバランスが出てくるのじゃないかということが心配せられる。従って、現状からいっても、せっかく酪農によって農家経済の安定をしようとし、それに取りかかった者すらが、乳牛を手放さなければならないといったような事態が、すでに起りつつあるというような状態でありますから、今、畜産局長が言っていられるような乳価の安定ということについても、簡単な問題ではないというふうに考えられる。従って、今説明がありましたように、酪振法の基本的な改正考えられておるようですけれども、しかし、これは時期的に言って、私は非常に急を要する問題であると思うので、一体、この考えられておる酪振法の基本的な改正というのは、いつごろ出すおつもりなのか、これをお伺いしておきたいと思います。
  49. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 御指摘のように、酪農というものが日本の農業というものにどうしても重要なもので、ある一定のものを入れなければならないという前提がありますれば、その前提をもとといたしまして、それだけの消費がどうしてもあるようにしなければならない。しかし、今のところ、消費は順調に伸びております。恒常的に過剰があるというふうには、私は考えていない。一時的な需給のバランスがくずれておるということはたしかでございますけれども、現在の状況が、過剰生産というものが恒常化しておると、こういうことには私たちはまだ考えておりません。むしろ、そういうふうに考えますれば、現在の乳牛の増産計画あるいは酪農の奨励という生産面の奨励は、もっと違った形のものにせねばならぬということに相なると思いますが、まだ私たちは、これが恒常的な過剰生産の状況を示しておるとは考えません。ただ、御指摘のように、消費の増大というものをどういう形で進めていくかということ、これは十分に私たちも心がけていかなければならぬと考えております。消費の問題でございますので、これを強制的に消費させるわけには参りません。やはり、いろんな啓蒙、宣伝あるいは広告というようなものを、適切な形においてなしていく、同時に、政府の一つの施策としての学校給食というような形におきましてこれをやっていく、あるいは職場における集団飲用の問題も必要かと思います。非常にミルクの状況は変化の激しいものでございまして、たとえば、アイスクリームの需要の問題にいたしましても、これは数年前から比べると、ほとんど格段の違いになっております。十円でアイスクリームが食べられる。子供たちはこれを駄菓子とした形で見ております。このようなことは、五年も前には想像もできなかった状況でございます。あるいは脱脂粉乳の問題にいたしましても、三、四年前に、今日のごとく脱脂粉乳の需要が増大されるとは考えていなかった、そういう状況でございまして、まだまだいろんな面において需要の拡大の余地は、単に政府の施策を待つまでもなく、かなりあると思います。政府といたしましても、この消費増大の問題に対しましては、政府の立場でやった方が妥当であると思われるものはどんどん強力に進めていく必要がある、かように考えております。それから農家の方におままする問題といたしましては、やはり基本的には、その生産費を安くする基本的な問題として自給飼料の問題を考えていく、これが基本的な問題かと思います。あとは、工場におきまする集乳の経費、あるいは工場における合理化という問題をやって参りますために、乳牛の飼養密度を高めていくということが非常に重要であろうと考えております。それらが、生産者の共販なり、生産者の団体のもう一段の強力な推進によりまして行われますれば、よけいにけっこうなことである、かような立場で問題を見ていきたい。もちろん、小売の問題等いろいろでございます。しかし、これらの問題も漸を追うて解決すべき問題だろうと思いますが、そういうような形で、全体としての価格を低廉にしていく、さらには、海外に輸出する十分な競争力が持てるようにもいたし、また消費の増大も、もっと広告あるいは宣伝等におきましても改善の余地は非常に多いものと、私たち考えております。政府のやる仕事あるいは民間の人たちが、生産者団体も加えまして、もっと消費増大の点に考慮していく面はまだまだ多いと思います。そういう点につきまして、今後急速に策を立てて参りたい、かように考えておる次第であります。
  50. 北村暢

    北村暢君 今のそういう施策をやっていきたいということは、なるほどわかる。私は、あとで質問しようと思ったのですが、生産費と消費価格の問題、これは私は、消費を伸ばすためには、やっぱり安くなるということが最大要件だと思います。そういう点からいけば、生産費が安くなり、中間経費というものが省かれて、消費価格が安くなっていく、下る、これは非常に大切なことですから、取引上の合理化ということは、当然考えるべきことだと思う。ところが、現在の価格変動の状態を見ていると、そのしわ寄せが圧倒的に生産者生産者価格にいってしまっておる。各地で起っておる紛争の原因は全部そこにある。従って、生乳取引の紛争のあっせんということを法律で規定しておるけれども、これがなかなかうまくいっていないからああいう紛争が起っておるだろうと思う。従って、そこら辺のところの行政措置なり、考え方なりというものは、私は確かにわかるわけなんですが、これは、やはりそういう問題が起っておる時期であるから、酪振法の改正ということ、私は、やはり法律改正すべきである、そういうふうに考える。今私の質問に対して、いつごろ改正するかということについて、局長に、その方法なりいろいろな考え方というものをお伺いしたのだけれども、肝心かなめの、いつごろ法律改正するかという質問に答えてはくれておらないようなんですがね。一体どういうふうに……。今考えておられることは非常にけっこうなんだから、そういうけっこうな考え方があったならば、早くこの法律改正した方がいいじゃないか、だれが考えてもそういうふうに思う。一体その時期はどういうふうに考えているのか、再度お伺いしたい。
  51. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 上述いたしましたような点は、酪振法の改正という、法律改正ということによって到達できるかどうかという問題とは、少し問題が私は違うのではないかと考えております。たとえば、消費増大というような問題にいたしましても、果して酪振法の中に入れるのが適当であるかどうか、学校給食という問題をとってみましても、酪振法の中でやるのがいいかどうかという問題があろうかと思います。またさらに、自給飼料その他の問題による農家生産費の低減、農家経営の確実化というような問題も、これも酪振法の中には一つの計画としては入っておりますが、それを強制するあるいは指導するというようなことを、法律事項にするのかどうかという問題は、これはなじみにくい諸点があろうかと思います。そこらの点につきましては、すべて酪振法の改正という形をとらなくとも、ほかの妥当な方法予算措置、その他行政措置も可能かと思うわけであります。酪振法の改正を私たちが今まで検討しておりました重点は、先ほど来申し上げておりますような紛争あっせんの機構をどういうふうに持っていくか、あるいはさらに、農民の団体、農民の組織、農協と農民との間の組織、組合内における規律性をどういうふうにするか、十九条二項との問題になると思いますが、そういうところの問題点、あるいは乳質改善、このことが牛乳の価格形成の上に非常に問題がありますので、そういうような諸点が、従来検討いたしておりました重要な諸点でございます。で、それらには、一つ一つやはり問題があるわけでありまして、まだ検討を進めておる現在でございますので、いつそれを国会に提案するかということを申し上げるまだ自信がないわけであります。特別国会にお願いするのか、あるいは通常国会にお願いをするのか、そこらのところのまだ時期をはっきり申し上げる段階には至っていない現状でございます。ただ、できるだけ早い時期にこれをやる必要があるのではないか、かように考えて検討を進めております。こういうわけであります。
  52. 北村暢

    北村暢君 それではあと簡単にやります。  酪振法の問題については一応了解いたしましたが、今おっしゃられる通り、酪振法だけで物事が解決するとは私も考えておりません。従って、消費拡大なり何なりという問題については、これは別途の方法も講じられるだろうというふうには思います。ただ、今までの政府のとって参りました酪農振興ということが、非常に物の生産面における振興重点が置かれて、流通消費という問題については考えられなかったために、その点が手薄であったために、非常な混乱が起っておったということも事実であるから、従ってそういう面における今後の施策というものについては、酪振法に限らず、総合的にやはり考えられていくべきである。こういうことを一つ申し上げておきたいと思います。  それから基金内容について若干お尋ねしたいのですが、基金内容が民間の出資五億、これがまあ五カ年間に五億ですから一億ずつということですか、この資金の見込みですね。聞いているところによると、なかなかこれも強制するわけにはいかない趣旨でありますから、割当制というわけにもいかない。従って、この資金がこなせるかどうかということの見通しについてお伺いしたい。  それからまたはこの法律にも出ておりますが、出資者のワクというものが大体出ておるわけですが、主としてこの出資に応ずる見込みのところは、内容は一体どんなところが主として出資に応ずるか。こういう点について一つお伺いしたい。
  53. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) この法律で規定いたしておりますのは政府が五億、民間が五億、大体こういう考え方でおります。そうして付則の第七条にうたっておりますように、基金の成立当初は政府が五億と、それから民間の出資分が一億、六億で出発して参る。あと、当初から考えまして五年の間に、民間出資を五億にふやしていこう、こういう構想でございます。この資金が、果して出資が集まるかどうかという問題でございますが、実は私の方といたしましては、この法案を作ります以前、昨年におきまして、こういうような考え方が出て、政府内で閣議決定等をいたしまする際におきまして、事前にそれぞれの関係の各位と話をいたしまして、そうしてそれの同意を得ておるわけであります。どのくらいの出資をするかということにつきましてのめどを、実は得ております。その後、この法案提案して御審議を願っておりまするそれまでの過程におきまして、当初のよろしいという引き受けに対しましてのいろいろな条件、あるいは表現といたしましては、前の誓約書を——念書と申しますか——約束を撤回するというような表現もある、そういうようなこともございました。しかし、それぞれの過程を経まして、現在のところ、私たちはこの基金が十分民間から出資が可能であるものというその立場に立っております。ただ五年間のことでございますので、五億を今だれとだれがどのくらい引き受けるというようなことになりますと、これはまだ私たちもはっきりいたしません。ただ、乳業者なら乳業者、その他の農協なら農協というようなそれぞれのグループグループで五億の問題に対するそれぞれの、このぐらいは引き受けられるだろうというような、そういう意味の一つの考え方は、お互いに了解ができておるわけであります。もちろんその間にいろいろと、当初の問題にいたしましても、差が生じて参ると思います。これを利用して参りまするその過程において、これはもっと一つ自分が入って出資してみよう、そうして利用度を高くしょうというような考え方の方々が出てくるでありましょう。あるいは現在予定いたしておりまするような出資者以外の方からも出資をしてみよう、こういう方も出て参ると思いますが、今のところ、大体この規定いたしておりまするようなものは可能である、かように存じます。
  54. 北村暢

    北村暢君 今説明がありましたが、第一年度の一億についての大まかな——お伺いしたいのは、五大メーカーが出資をするのかしないのか、まあ農業協同組合とか、大まかでいいんですけれども、出資についていろいろうわさがありましたので、その点を、まあきょうできたらしていただきたいと思います。そういう点をお伺いしておきます。
  55. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 最初に付則第七条の、成立当初におきまする資本金六億、この条文の解釈を申し上げておきたいと思いますが、この資本金六億といいますものは、御存じのように政府が五億出しますが、あと一億が民間出資でございます。この民間出資の一億と申しますのは、払い込み済みの出資金を言っておるわけではございません。これは分割の払い込みをいたしてもいいわけであります。分割で、払い込みはいたさなければならないのでありまするが、出資の引き受けをいたしますれば、それでよろしい。出資の引き受けをいたしましたものを、何回かに分けて分割払いをする。もちろん第一回の分割払いがありませんというと、その基金は成立いたしませんけれども、あとは分割払いでいいのだ、これはこういう解釈になっております。それで、そういう解釈になっておりますので、この第七条の六億のうちの民間出資、つまり一億を達成いたしますのは、私は、それほどむずかしいことではないと考えております。正式の文書でいただいておるものもありますし、あるいはそうでないものもございます。あるいは先ほど申しあげましたように、撤回をするという以前の文書で、撤回後の状況として、まだ文書をいただいていないというものもございますが、当初の計画から申しますと、現実に当初一億五百万くらいは確実に払い込み済みされるであろう、こういう約束で出発をして参っておるわけであります。それを払い込み済みでなくて分割の払いでよろしいということになりますと、ずっとものの考え方がやわらかくなって参るわけでございまして、これを利用いたします者は、乳業者でやっておる農協の諸君でありますとか、あるいは中小企業の諸君でありますとかというようなところが非常に利用度が商いものでございます。従いまして、そういう諸君の出資の申し入れというものは優先的に考えて参るのが妥当ではないか、かように考えておりますが、大メーカーその他を排撃する意味ではございません。
  56. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 二つお伺いしたいのでありますが、最初に、今の北村委員からの御質疑に関連するのでありますが、酪農製品、乳製品を含めて、これの需給の将来性、この数年来お話のように相当急ピッチで生産もふえ、需要もふえてきたわけでありますけれども、今後、果してこういう調子で需要が伸びるかどうか。局長の御答弁を伺ってみますと、相当楽観的な感じを受けたわけですが、国民所得の向上に関連して、もちろんふえることには間違いはないでしょうが、これまでのようなふえ方をするかどうか、その見通しを伺いたいと思います。  それに関連いたしまして、御承知のように、ほんとうの需要を増大する上において牛乳その他乳製品の価格のべースですね、価格のあり方が、重要な私は関連性があると思うのですけれども、価格の安定は非常にけっこうですけれども、現在の価格のあり方が、果して適正なあり方にあるのか。一般消費者から見ますと、どうも高いのじゃないかという声は、御承知のように相当強くこれまでもあるのであります。農林当局として、現在の消費価格のあり方というものが、大体適正なあり方というふうに見ておられるのかどうかという点であります。消費者の方は、どうも高過ぎるという声が相当強いのであります。その点を一つお伺いしたいと思います。ということは、この基金法の運営その他につきましても、価格の安定ということが大きな主眼でありますので、消費者の立場から言えば、何とかもう少し安くしてもらいたいという希望が、これは相当強いのでありますから、そういう意味でお伺いしたいわけであります。
  57. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 消費の見通しというものは、正直なところ、はっきりしたデータでこれはこうなりますという実ははっきりしたものがなかなか出にくいようであります。従来やっておりまするように、従来の国民の所得増加に伴いまして、牛乳、乳製品等の需要増加について、所得弾性値というようなもの、あるいは価格の問題も含めまして、そういう所得弾性値等を考えてみまして、どの程度にこれが伸びていくか、あるいは海外の他の諸国の状況等を比較して、この程度伸びていくであろうというような推定、そういうもので、この五カ年後におきまするようなものを実は打ち立ててみたわけであります。これは、私の今申しますことが、そのままなるわけではございませんが、たとえば牛乳の現在の消費量はアメリカに比較するわけにいきませんが、四・六%くらい、牛乳の一人当りの消費量はそのくらいしかなっておりません。現在、国民所得におきまして、五年後におきまする日本の国民所得が大体いくであろうと予想しておりますもの——これも変るかもしれませんが——それを考えてみますと、西独あるいはイタリアというようなものの現在の状況に大体似たもの、イタリアの現在の状況が、日本の五年後におきまする大体国民一人当りの所得になるであろうと推定いたしております。西独におきましては、それのまだ半分あるいは六割程度のものかと思うのでありますが、そこらのところを考えてみましても、現在、イタリアでは牛乳を一人当り三十五キログラム見当は飲んでいると思いますが、日本のそういう状況を国民所得にいたしました場合においては、大体今の計算では二十五キログラムぐらいのものが飲めれば需要はまかなえる、こういうような実は計算をいたしております。これはしかし御指摘のように、一つの計算でございますので、需要が果してそれでいけるかというふうにないますと、私たちの方も一つの見通し、こういう指標でいけばこのぐらい考えられるしするからという以上に、実は申し得ないのでありまするが、一応、この程度の需要は伸びていくのではないかというように考えております。  ただ問題は、市乳としての伸びをするか、乳製品としての伸びをするかというような具体的な問題になって参りますと、一つの問題点がございます。現在約一割が農家の方に返っていくミルクになり、あと半分が市乳と乳製品という形に進んでおります。大体諸外国におきましてもそういう形をとつておるのが多いような状況でございますので、将来もそういう形が望ましいのでありますが、市乳の伸びの状況から見ますと、この数年間非常に市乳の伸びの方が高い状況でございますが、最近、市乳の伸び率が若干減ってきておりますが、しかし、五年後になりますれば、やはり、私は、市乳の伸びが相当あってしかるべきものではないかと考えますので、今後の状況としましては、市乳の伸びをもっと増進する方法をとる必要があるのではないか、こういうところに私たちは消費増大のやはり一つの重点を置く必要があるのではないか、かように実は考えておるわけであります。  なお、ミルクの価格あるいは乳製品の価格が、消費者の立場から見て安いか高いかという問題でありまするが、戦前のミルクの価格消費者に対しまする、ルクの価格から見ますと、物価指数その他から考えますると、約半分程度に低下している。従いまして、これは一つの考え方の違いではありまするけれども、他のいろんな食品類に比べますというと、ミルクの価格というものは確実に下ってきておるということは確かに言えるかと思います。ただこれは、昔の栄養品としてのあるいは薬品としての需要が、漸次国民一般に消費されるという形にならなければならぬというわけでございますが、もっと安くする必要があるだろう、これは私たちもそのように考えております。それで問題は、現在の生産者あるいは流通過程その他の中におきまするものに比較いたしまして、もっと消費価格は下げられるのではないか、こういう問題であろうかと存じますが、これは現在の配達制度あるいは各個の家庭が冷蔵施設でありますとか冷蔵車、そういうものを用い得ない状況のもとにおきましての前提考えますというと、なかなかそれはむずかしいと思います。従いまして、今度集団飲用の形でありまするとかあるいはもっと多くすると申しますか、ミルク・スタンドであるとかいうような、ミルクそのものを配達しないでやっていく、こういう形のものを今後進めていく必要があるのではないか、そういう形におきまして、価格を下げていく方法は、まだ十分あるだろう、かように考えておる次第であります。
  58. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 金融における、基金の保証する対象は広範なんですけれども、固定設備の分を除いて、大体牛乳及び乳製品に対する金融資金量ですね、これはどれほどと見ていいのですか。月間、年間どれほどの資金がどういう回転で動いておるであろうか、もし今お手元に資料がなければ、後ほどでもけっこうです。大体の観念を伺えばけっこうです。
  59. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 今実はその資料がございませんので、後ほどお届けいたしたいと思いますが、この基金におきまして考えておりますのは、大体平常の在庫のものを一応除外いたしまして、従来の経験あるいは統計等から、異常在庫と見られるようなものをこれの債務保証の対象にいたしております。さように考えていきますと、この程度の資金量、これは基金の大体五倍程度のものを債務保証の金額ということに考えております。さようにいたしますと、大体一ヵ月程度のものを予定いたしておればいいのではないか、かような形でこれの事業計画を立てております。
  60. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 大体この金庫の保証する対象の額といいますか、それが五倍見当、一応のワクはわかるのでありますが、その計算の基礎が、今の御説明で、まあ特殊な場合における保管に要する資金、こういうことになるのですね。ところが、この金庫の目的なり事業を見ますというと、きわめて広範なんですね。生乳及び酪農製品関係すべてに及ぶ金融を対象にしておる。特にそこに固定設備に対する金融まで包含しておるのですね。非常に広いのです。そうしますると、当然そういう広い方面にも、法律にそういう規定があるのですから、金庫が保証していくということになるわけです。そうしますと、現在出ておる分の——現在幾ら出ているか私わかりませんけれども、日々金融資金が出ているわけです、その出ておる中にこれが入るのか、あるいはアルファになるのかという点が、私は、非常に重要だと思う。しかしこの制度を、この法案だけから見ますと、当然内ワクになるというふうに考えられるわけです。言いかえますると、そうすれば結局どういうことかといえば、金融機関に対するサービスをやるのだということに、結果的になるのですね。金融機関に担保を出すと同じだ、特にこれによって必要な資金量が増すわけでないから、従来の非常に不信用な面が、これによって補完されるというような結果になりはしないかという懸念を私は持つのであります。もしこの保証の対象がもう少しはっきりとしぼってありましたら、それはそれではっきり意味がある。これはむしろ議論をすれば、もっとはっきり対象をしぼるべきだという議論はできますけれども、しかし議論は別にして、一体これでいくと、現在、通常流れておる酪農関係資金金融というものは、内ワクに入ってしまう。プラス・アルファにならぬじゃないかという感じがするのですけれども、その点はどうでしょうか。
  61. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) その問題は、大体こういうことになろうかと思うのです。ミルクの場合は、夏分滞貨がはけまして、そして秋口から生産が伸びるが、消費は減るというふうに、約半年々々くらいの形で動いておる場合が通常であろうと思います。それが、数年に一度、若干の需給の不均衡がもう少し幅の大きい形において出て参ります。一年や半年はそういう状況を持っておるが、あとは数年に一度、もう少し大きな幅で需給の不均衡が生じてきている。こういう状況であろうかと思います。従いまして、運転資金に対する債務保証は、大体六ヵ月限度という考え方でありますが、この債務保証をいたしまする対象といたしましては、やはり通常の在庫量のものは、計算的には対象から除いて計算いたしております。その趣旨は、やはりこれが従来の平均に回っておりまするものにプラスされたものとしてこれが動いていくのだという考え方になっておるわけであります。つまり、平均してそれが動いておりまするもの、これは保証料が要るわけでありますので、従って、この資金を利用しないで、通常の金融ベースで今まで動いていたものが、こっちの方へ追い込まれるということは、これは乳業者といたしましても好まないところであろうかと思います。従いまして、これは通常の動いておりまするものにプラスされたものを対象として運営していくように考えております。
  62. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 局長の御趣旨はわかります。そうであろうと思います。それから乳業者の方も必ずしも好まないということもわかるのです。ところが金融機関の方は、場合によっては好むかもわからない、安定するのですから、保証されるのですから。そうしますと、今のお話であれば、やはり年間におけるところの一つの差というもの、これはわかりますね。それは現在カレントに夏場と冬場と一つの偏差をもって動いておる。そうすると、三年か四年かに一度起ってくるある異常な場合に、やはりこれが働く、こういうことになるのですね、今の御説明によりますと。ところが、これはちゃんとできて、理事長もできて、そうしてこれは年間どれほどの経費がかかるかしれませんが、あとおそらくノーマルにずっと仕事がいくだろうと思います。もし局長の言われるような趣旨であれば、そういう内容法律にしないというと、これでいけば、ほんとうに全部法律的には区別がないので、普通の今までの融資に対して、念を入れて保証をしていくという結果になるだろうと思います。それが悪いというのではありません。そういう懸念がするのです。今言われるような趣旨であれば、そういうような危険というか、あるいはそう出ていかないとまずいのじゃないかと、こう考えられるのですがね。  それからここに固定設備といいますか、それに対する保証も入っておるのですね。改良、合理化とありますけれども、これはちょっと普通考えますと、それは相当長期にわたるに違いない。そういう長期にわたる金融について保証料まで取るから、保証料はどれほどになるかしれませんけれども、普通の金利よりは相当高くなるでしょう。保証料分だけは高くなる。そういう長期にわたる固定設備金融まで保証するということは、先ほどお話の点からいっても、性質が違ってしまうのですね。こういうのも、これから出発するのですから、いかぬというわけではありませんけれども、保証の性質からいえば、そういうものはよくよく特別の場合とか何か限定しないと、金庫の運営に、出発のときの趣旨と別な形になってしまうというような懸念というか、感じが私にはするわけです。
  63. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 今の問題は、実はこういう現状になっておるわけであります。先ほど申し上げましたように、夏分に滞貨をはかしまして、それから秋口から滞貨が始まる、こういう状況でございます。そこで、その滞貨なり何なり——これは平常の年でもそういうことになるのですが、従いまして、その滞貨に持ちこたえられない中小企業の諸君は、その間にどうしても安く売っていくという格好になるわけであります。大企業その他に安く売っていくという格好になって参ります。春が過ぎまして、あるいは春先から更にかけて参りますと、必ず相場が高くなる、今までストックしておりました乳製品が高くなる。その間のやはりつなぎの必要は、中小企業の業態いかんによりますと、かなり出て参るわけでございます。そこまでつないで持っていれば、ある程度の価格にまでなり上るのだけれども、その間持ちこたえられないと、経営資金の点からいいまして、これを大企業に売ったり、あるいは菓子会社などに売ったりするという状況が生じる、あるいは市場に投げ売りするということが生じるわけであります。これは何も異常事態における投げ売りというような、そういう激しい形ではございませんが、そういう状況が生じてくるわけでございます。そういう点につきまして、この資金の働きをする可能性があるのではなかろうか、かように考えております。  それから後ほど御指摘になっております点は、確かに問題点がございますが、先ほどお答え申し上げておきましたように、出発当初六億の基金のうち、これは約五倍ぐらいの債務保証ということを考えておりますので、五億程度をこの設備資金の方の債務保証にまず見ていく、大体これで中小企業の諸君が要望されておるものはまかない得るのではないか、かように考えております。
  64. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 五倍ですと、出発当初は両方合わして六億で五六の三十億が大体の限度ですね。それから民間出資の方に対する限度といいますか、補助を受ける人ですね、その限度はどのくらいですか。
  65. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 出資額の十倍を一応限度といたしておりますが、出発当時におきましては十倍の限度以上に債務保証力を生ずる場合がございます。それは特別の債務保証という格好で運用をいたしておるわけでございます。かように考えておるわけであります。
  66. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 その点は、基金の通常上非常に重要だと思いますので、どの程度でしょうか、その民間出資者に対する個々の保証限度ですね、それはどのくらい……。
  67. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 各個の出資者に対しまして、出資額の約十倍を限度にして保証をして参りたいと考えております。
  68. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 出発当初大体その限度を考えておるのですか。
  69. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 最後まで十倍です。
  70. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 そうしますと、こういう計算になりますか。出発当初は一億ですね、民間出資者の方は。従って、出資者によっていろいろ十倍といっても差があるでしょうけれども、平均していきますと、現実基金として保証する額は一億の十倍の十億である、こういうふうに理解していいでしょうか。
  71. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) さようでございます。
  72. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 そうしますと、政府の五億というものは、その十億に対する保証になるわけですね。金融機関に対しては、十億の融資に対して、当面ですよ、六億の保証をするという計算になるのでしょうか。
  73. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) この出資いたしました者の、各出資者に対しましては十倍を限度にして債務保証を見る、債務保証総額の限度は、出資金と申しまするか、政府のものも入れました資本金の五倍を限度にしておるという格好になっております。従いまして、出発当初五倍ということは、金融機関が果してそれでいいかどうかですが、大体話し合いでは、五倍程度でいいだろうと言っておりますが、そういう考え方でいきますと、当初民間資金が一億といたしますと、その十倍まるまる見ますと十億でございますので、実際は政府資金の一億分と民間出資の一億分、両方で二億の資本金があれば、五倍の限度でまかなえる、こういうことになろうかと思います。従いまして、なお債務保証の余力が、政府出資が多いだけにあるわけであります。そういうものも、十倍以上になりましたものも、これは特別の限度外債務保証といいますか、というような形で、少し審査を厳重にした形で見ていっていいではないか、こういう考え方でございます。
  74. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私のだから先ほど聞きましたのは、その十倍の限度外というのですか、限度外の特別の保証というのはどうなるのか、これは金庫の運営からいいましても、それから一般の、何といいますか、各種の保証制度からいいましても、相当重要な問題であろうと思うのです。本来自分もある程度金を出して十倍まで保証を受ける、十倍までの保証を受けるということは、中小企業の保証制度からいいましても、その他のあれからいいましても、相当これは割りがいい制度だと思います。他に比較しますと。そのこと自体は私はけっこうだと思うのです。しかし、それ以上になってきますというと、これは相当問題があり得るわけなんです。本来であれば、大体常識でいけば十倍だったら十倍でそこで線を引く、そうすれば財政的の観点からいきますと、ことしは一億出して、そうすれば民間出資の一億、合して二億、五倍だから十億とぴったり計算がいくわけなんです。四億分は積んでおくということで、はなはだこれは、そこで金利ができまして強化される点においてはけっこうではありますけれども、ちょっともったいない感じもしないわけではないわけです。だから今の十倍以上の特別に保証するというのは、一体どの程度になるのか、これを一つお聞かせ願いたい。
  75. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 実はまだそこのところまではあまり突っ込んだ検討はいたしておりません。御指摘のように五億政府が当初出します。出しまして十倍まで見れば、四億は実は預金で遊んでおるということになるわけでありますが、遊ばしておく必要もなかろうから、限度外のものであっても、これはもちろん一つの基準を作らなければならぬと思いますしいたしますから、それを使ってもいいのじゃないか、こういう趣旨でございます。これはおそらく運転資金として出します場合は、六ヵ月くらいで限度にいたしますから、大体その程度で戻って参りますので、そういうようなことではどうかと、こういうような考え方であります。
  76. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 一応四億の金が遊ぶのですから、そういう考えも起りますけれども、そこは一つルーズに考えずに、四億は、私、ちゃんと別に管理をされて大事にされていった方がいいのであって、十倍以上の保証をすると、どういう基準を置かれるか知りませんけれども、そういうやり方を基金のスタートからおとりになるということは、この基金の将来を考えまして、非常に危険だと思うのです。本来であれば、私はその保証金額も、保証の限度といいますか、そういうのも法律なりあるいは施行令なりに書くべき性質であろうと思う。それはいいといたしまして、そういう普通の、おのずから一つの相場といいますか、基準があるのです。それをこえていくと、そうすると、あるものに対しては十五倍やりますとか、あるものに対しては二十倍やりますとかいうふうなことに相なってくるのであって、何といいますか、乳業者も決して経営が堅実化しないという感じがします。むしろ金融機関のサービスになってしまうというふうになりますから、できますれば、一つ四億は大事に残していただくことを……。これは希望でありますけれども。  それから民間出資の関係ですけれども、民間出資の性格は、どうも私にはよくわからない。これはどういうふうな性格と理解していいか、一つ御説明を願いたいと思います。
  77. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 少し語弊があるかもしれませんが、ちょっと簡単に申していけば、この基金は、一種の政策目的を持った財団的な法人であるという考え方で進んでおります。しかし、そうではありまするが、総会その他がないわけでございまするが、しかしこの出資は、あるいは持ち分と申しますか、出資いたしましたものに応じて債務保証をさせるというような形のところを考えますと、これは一種の社団的な感じを持ったもの、こういうことに相なるかと思います。この出資いたしましたものは、持ち分の譲渡は可能でございまするが、払い戻しはいたさないという格好になっております。で、その持ち分に応じました債務保証を受けるということに相なっております。
  78. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 普通、政府出資と民間出資とが一緒の場合は、何といいますか、政府の方が本来の性質からいって一歩下りまして、たとえば配当の場合でも民間出資の方をまず配当して、それから余裕があれば政府にいくと、いろいろ民間出資というものを政府よりは優遇しておるわけなんです。今回のこの基金は、民間出資というものが非常に虐待されております。先ほど北村さんも今後どうなるだろうかという見通しについて質問されたのですが、私は、初めの一年の投資の一億は、これは集まるでしょうけれども、それから先の四億というものが、果してこういう立て方で集まり得るかどうか、常識的にいいますと、なかなか困難じゃながろうか、ただ、先ほど言ったように、二十倍貸すとか三十倍保証するとか言や、これはどんどんどんる。今どこだって二十倍、三十倍なんて保証を、自分の積んだ金の三十倍も貸してくれるところはどこだってない。そんななまやさしい金融情勢じゃないんですね。将来もそうだと思う。ところが、ここへ金を出しゃ、積んだ二十倍も三十倍も金を貸してくれるということであれば、おそらく積むでしょう。そういうことが常識的に許されないとすれば、なかなか私は困難だと思う。なぜ民間出資に対して普通並みの待遇をしないのかという疑問なんです。
  79. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) これは、今までの信用保証のようなものの民間の出資いたしておりますのは、そこのところは、同じ気がいたします。ただ違っております点は、社団的なやり方をとっておりますものは、持ち分の払い戻しの問題がございます。これはそれがございません。その点が違っておるかと思います。その以外のところは、出資と申しますか、出資という表現がいいか悪いか問題になりますが、一種の寄付行為といった方がいいかもしれない。これに対しましては、もちろんほかのものに対しましても、配当があるわけではございません。そこらのところが同じではない。ただ、今御指摘のような問題点が若干ございまして、民間の出資をしておる人たちからは、一つにはこれを利用した人はいいけれども、利用しないで出資をした人は、何かそういう経済的な配当というと語弊があるけれども、何かないか、こういう意向は出ております。その表現方法として、一つは共同の需要増進のための宣伝経営費というようなものに余裕金の一部が使われるならば、これは一つの考え方であろう、それに関係して出資しておる者全体が、やはり一つ十分に使っていいか、どうかこういう考え方があります。そういうことの意味も含めまして、衆議院の方の修正があったのではないかと、これは想像でございますが、若干の修正が行われておるわけでございます。あとは、出資をいたしておる人たちの気持といたしましては、この基金自体が強くなるということ、つまりそれらのものがありました場合に、積み立てをして強くなっていって、民間の出すべき出資五億分の内容としてできていけば非常にけっこうだという御意見がございました。しかし、この法文では、そういうことが生かされないということになると思います。五億の政府出資に見合う五億というものは、付則八条で五カ年間で出してもらうことを期待いたしております。今のところ、その方にはそうならないと思いますけれども。それから出資分から生じました、たとえば利子でありますとか、保証料でありますとかいうものは、この条文におきましても、積み立てをしていく、そしてそれにそういうような債務保証の本来の業務に支障のない範囲内においては、消費増大のための宣伝をやっていくんだ、これは衆議院できまりました修正案でございます。そういう趣旨になっておるわけでございます。
  80. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 消費宣伝も一つの行き方でしょうけれども、本来のこの基金の性質からいえば、そういう金を消費宣伝とかそういうものに使って、基金がそういう活動をするということは、必ずしも正常な姿ではあるまい、こう感じます。ただ私が、出資をした人に配当をするとか、そういうことを言っておるわけではないのです。しかしこれは政府と全然……、政府が割りがいい。言いかえますと、相当剰余金ができて積み立てができていく、少くとも出発当初においては、五対一で行われるわけです。ところが一度出資をしてしまうと、解散するまでは出資者は持ち分があっても配当はないと同じだ、全部。ほかに譲れます、譲れますけれども、動きはつかない、解散したときどうなるかというと、残余財産があると、出資に応じて返すとあるけれども、出資額で頭を切っちゃう、初め出した金だけである、金利もつかない、普通の常識からいうと、余った金、余裕金があると、最小限度において普通金利くらいつけてお返しするのが常識だろうと思うのです。おそらく政府が召し上げちゃうということになるのです。そういうことらしいのです。どうも非常に私は普通の待遇を与えていない、こういう感じがするのです。少くとも剰余が出れば、やはり出資額に応じて持ち分を持たしていって、持ち分を持たしていく以上、途中でそれを譲る場合もそれでいい、解散すれば——解散ということはないでしょうけれども、建前として、解散すれば、解散するときはその持ち分を返しますというくらいが、きわめて私は常識的だろうという感じがしますけれども、なぜ酪農関係でこういうふうに出資者をぐっと抑えつけられるか、はなはだ疑問であると、感じであります。それからその欠損の場合保証するのですから、保証のファンドとして六億から積むわけです。これが取りくずされる場合、この法案を見ますと、赤字は赤字としてとめておけとこうなるのです。しかし実質的には出資額はそれだけ減るわけなのです。その減る場合の民間出資と政府出資とは、その額に応じて比例的に減るわけですかどうですか、その点伺いたい。
  81. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) それは比例に応じて、ということになると思います。  それから民間出資を非常に虐待しているというお話なのですが、これは信用保証といいますか、ほかの基金もたとえば農業共済の基金でありますとか、あるいは中小漁業の問題の借用保証でありますとか、あるいは開拓者資金の問題でありますとかいうようなものは、これはそれぞれ民間も出資をいたし、民間の出資が政府の出資よりも少いものもございます。しかし民間の出資が対になっておる、半々という形のものがあるわけでございます。それらもやはり同様な実はやり方になっております。もちろんこれは出資をいたしておられる方々が、それぞれ乳業全体の立場においても、また自分の経営の立場においても必要があるという形でやる。そういう経緯がございますので、これが特に他の基金以上に民間に不利であるというふうには、実は考えていないのでございます。
  82. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 他のあれと比べてみれば、お話のような点もあれば、私の言うような点もあるであろうと思います。少くとも五億集めるのですから、これは心配なしに集まるということであれば、私はそれも一つの方法であると思います。しかし初めの一億は比較的簡単でしょうけれども、あとの四億というものはそう簡単じゃあるまい、という一応前提をとりながら申し上げておるわけであります。少くとも、たとえば欠損が出る、そのときは十倍保証されているような人は、他の民間の出資によって、政府もありますけれども、補てんされるわけです。私は少くともそういう場合の保証は、政府出資の方がまず優先、と言うと悪いですが、政府出資の方の負担の方を多くしていく、というくらいの考慮は払われてしかるべきじゃなかろうかと思うのであります。そういうことをやっていかなければ、そうなかなか四億という金が簡単に集まろうとは思えない。これが心配なしに集まるというお話であればそれもけっこうであります。しかし将来国と民間とが五対五になるのですから、五対五なのです。ところがこれを全部を見れば非常に政府は強い。役員を初め政府の任命なのです、評議員と理事長と。諮問機関に出資者の一部が入るだけなのです。発言権はない。半分出資するということは、それだけの危険を負担することなんです。もちろん利用はできますけれども、そうしておいて発言権もなし、農林大臣の、何といいますか考え通りに動く、こういう建前になっておるわけなんで、はなはだ、出資者の立場をかばうわけでも何でもありませんけれども、不公正な感じがしないわけではないのであります。  それから出資者が保証を受けたとき、その出資者の出資というのはどうなりますか、補てんを受けたときですね。
  83. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) これに出資いたしまして保証を受けた者、受けない者、これは実は差はないわけであります。  なお先ほど御質問のございました、債務保証をして、そうしていろいろな赤字の欠損を生じた場合に、それをまず政府出資分で補ってどうこう、これは実は立案の過程におきましてはそういうような案も出していたこともございます。いろいろ各方面意見を聞きながらやってみたのでありますが、現在のような案の方がなおまだよろしい。出資を予定されておる方々もそういう意見があったわけであります。しかしそれはその案を練ります過程の問題であります。  なおこの解散時におきます問題は、これにうたっておりますように、剰余がございました場合におきましては、出資に応じて分配する。もちろんこの場合は政府のものも従って入っておるわけであります。出資の限度に応じてやる。そうしてなお残余のありますものは、これはその処分は解散と同時に法律によってきめよう、こういうことでございますので、そのときにこれは適切なるきめ方をいたしたい。私たちはこれを国庫に収納するということを前提に実は議論をしておりませんが、まだ酪農がうんと伸びていく過程でもございますので、いろいろと今後これだけのもし基金が必要でなくなりました場合でも、十分酪農全体のために使える考えはできると思いますので、国庫にそれを収納することを前提にしては実はこれは考えていないわけであります。
  84. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 おそらくその通りだろうと思います。だれも国庫に返上する者はないだろうと思います。少くともしかし、その剰余ができればそれぞれの出資に応じて持ち分にそれをふやしていく、ということの方が適当ではないかと思いますけれども。  今の保証で穴を埋めた場合に、その人の出資関係はどうなるかという点はどうでしょうか。
  85. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) それは何も関係はないと思います。と申しますのは、出費をいたしました者が利用できますのは、その出資分に応じました限度で債務保証を受ける、こういうことでございます。
  86. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 十倍の保証とすれば百万円出しまして一千万円金を借りまして、一千万円を払わずにこの基金が保証をしたのですね。ところが、百万円の出資はここに残っておるわけです。
  87. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) そういうふうに債務保証を受けまして、その債務保証額をそのまま金融機関に対して保証支払いした、こういう場合でございましょうか。その場合にはもちろん金融機関が持っておりまする債権というものが、こちらに肩がわりするわけで、その融資を受けた人、つまり債務保証を受けた者のために代位弁済といいますか、保証支払いをいたしましたことになるので、保証を受けた者に対してこの基金が債権を行使する、こういうことになると思います。
  88. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 当然そうなりますけれども、そうすると、依然出資は出資として解散するまで残っておる、こういう形になるのかどうか、こういうことです。
  89. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) その通りでございます。
  90. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私、それもきわめて制度としては常識的じゃないと思うのですね、それはもう破産といいますか、つぶれちゃうわけなんです。ところが、依然として出資はここに残っておって、別に債権は基金が持っていますけれども、依然出資として口をきいて存在している。そういうことがほかの出資者から見ますと、ほかの出資者の負担にもなっているのですが、甘んじて見ているかどうか。非常に疑問なんですね。やはりそういう場合においては、当然その人の出資というものをまず第一に差し出すべきだ。そのために、その出資というものをして金を積んでいるのだ、そういうわけじゃないでしょうかね。
  91. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) もちろん、そういう人に対する今後の債務保証をするかどうかという問題は、これは基金の立場から見まして、債務保証をしないということはあり得るわけでありますが、ただ、その持ち分と申しますか、その人が何かほかの者よりもそれ以外の形で問題とされるかということは、この法律の建前ではないわけでございます。
  92. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 その人が、引き続いてこの基金から保証を受けるということは考え得られない。その通りなんです。制度として、その人が引き続いて保証を受け得られるようになっていること自体が、より以上理解し得ないのですね。だから、そういう場合においては、当然その人の出資というものは基金自体が、何といいますか、処理し得る制度が適当じゃないか、実際じゃないか、こういうことを申し上げたいわけであります。  それから評議員会というのは、出資者とそのほかこの基金の運営に経験のある者から任命するとあるのですね。そうすると大体どういうことですか、金融関係の者から、というような意味でしょうか、学識経験者の方に制約があるのですね。緑風会のことを申し上げて恐縮ですけれども、非常に興味を持っているといいますか、関心を持っておる人が少くないので、やはりこういう評議員会には消費者代表といいますか、そういう者も入れるべきじゃないかという議論が先ほどもあったわけなんですけれども、私、この学識経験者というのは非常に制約されておりますけれども、どういう人が対象になるのでしょうか。一つ念のために伺っておきます。
  93. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) この基金の運営につきまして関係のある学識経験のある人と、こういう考え方でございますので、出資者はもちろんのことで、出資者は別に書いてあるわけでございますが、たとえば乳業の、生産者の立場において議論のできる人、あるいは、消費流通の過程において学識経験を持っておる方、それらの方々をこれに充てるつもりでおります。
  94. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 いわゆる消費者代表というのはだめですか。
  95. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 消費者代表というのは、今のところまだ考えていないのでございます。
  96. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 これは一つお考えおきを願います。  最後に、保証する場合に、この制度によりますと、相当大きな会社もあれば相当小さい会社もある、また協同組合もある。資産とか信用の状況はおそらくまちまちだろうと思います。どういう方法信用を評定して、君のところは十倍、君のところは八倍、おそらく信用によって違うのだろうと思います。それをどういうふうな一つの基準なり方法で、信用を評定されるのであろうか。これは非常に重要な問題の一つだと思うのですけれども、何かお考えがありますれば伺っておきたいと思います。
  97. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) これは今私の方で、具体的な尺度とかそこまでは考えておりません。ただ、この基金の性格から考えまして、たとえば、非常に滞貨が生じている、従って、製品が先安であるというような場合を考えてみますと、おそらくその際に一番早く品物を投げ出していくという形は、信用力の少い、そういうところの者であろうかと思います。ところが、そういう形におきまして、乳製品の価格が普通以上にくずれるということになりますと、これは乳業全体、あるいは酪農も含めました意味における乳業全体としての、いろいろ悪い事態が起ってくるわけであります。基金はそういう問題について、価格の維持等ができるように考えているわけでありますので、そういう事態においては、それを投げ出そうとしている企業自体の信用力の問題にプラスされまして、今申しましたような事態を十分頭に入れた融資をする必要があるのではなかろうか、かように考えるわけであります。その際における信用度をどういうふうにみるかというような問題につきましては、これは私たちまだ基準その他を考えていない、まだそこまで検討が至っておりませんが、これはそれぞれの、やはり業界なり関係のある人の意見を聞きまして、そういう必要があれば、一つの尺度を作っていく必要があろうかと思っております。ただ、基金目的が、単にその企業信用だけということ以上の問題を考慮しなければならぬ、ということがあろうかと思いますので、その趣旨は十分生かすようにしなければならないと、かように考えております。
  98. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 なおその点は十分御検討おきをお願いしたいと思います。  最後に、もちろんこの基金は保証をする場合に担保を取るとか、ことに滞貨金融のごとき場合においては、その製品を担保にするとかいうようなことはやるのかやらないのか、その点だけを伺っておきます。
  99. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) やり得ることにしております。
  100. 千田正

    千田正君 ただいま梶原委員のお尋ねに今局長からお話がありましたが、この基金は、御承知通り民間の資金も入っているわけです。業界は、われわれ承知しているところによりますと、相当競争が織烈である、いわゆる従来の資本家的な五大メーカー等がもちろんこの基金を出すだろうと思いますが、今あなたのお答えのように、中小の業者がこれによって救われる、そうして一応の生産者あるいは消費者の立場に立って、かつまた乳価の安定等を期するという意味の基金であるとするならば、従来行わはているような自由競争の姿のままでいくと、とかくすると大きな資本家にコントロールされるおそれがある、将来そうした五大メーカーが自分の傘下に中小企業者を集める、というような危険がないかどうか。この点は私は非常に心配するのですが、そういう人たちはもちろんこの基金の融通の対象にならないわけで、大きな資本家であるからそういう必要はないと思うので、むろんこの基金は、中小企業あるいは生産者その他に対して、十分に役立つような方向にいこうとするのがねらいだろうと思いますけれども、しかし、実際は自由競争は相争激しいし、またメーカーそのものが自分の勢力を増す意味からいって、相当苛烈な競争を今までやってきておりますから、将来、こういう基金制度ができたことはいいことでありますが、それに対してもなお彼らの勢力が独占的な方向に手を伸ばされると、この基金の設定した目的がある程度失われるおそれがあるのですが、そういう点についてはどういうふうに考えておられますか。
  101. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 御指摘のありますように、おそらくこれを利用いたしまする必要度の非常に高いのは、主として中小企業のように金融の要望が強いのにかかわらず信用力が割合に少いというようなものが対象になることが多いと思います。でただ先ほどの例にありまするように、そういう中小企業滞貨を投げ出しまして全体としての乳価を下げていく、乳製品価格を下げていくという結果になりますると、これは企業の大小を問いませず、やはり非常な影響があるわけであります。影響の度合は、非常に悪い影響を及ぼさせるものと、割合に悪い影響の少いものと、そういう差はあると思います。それはやっております業態の関係からみまして、そういうことはあると思いますが、しかしやはり全体として問題があろうと思います。それが果してこの基金自体で大企業の横暴になるようなことを防げるかどうかということは、若干基金能力からみますとらち外の問題に入っておるというふうにも感じます。ただ基金自体がそういうような大企業の思うままに動かされては困る。こういう話の点になりますると、これは先ほど若干異論のあったように思いまするけれども、農林大臣が理事を任命することになっておりますこと、それから理事長あるいは常勤いたします理事、これが常務理事になると思いますが、これらが営利事業との兼務を禁止いたしております、そういう形におきまして実際の実務をやっております者は、現実の仕事をやっております者と別個の形に相なると思います。そういうような形におきまして、御指摘のような心配のないような運営をやって参りたいどかように考えております。
  102. 千田正

    千田正君 なぜ私はこういう質問をするかといいますと、現在農業協同組合あるいは信用協同組合に、農林中金もしくは金融公庫から、今のあなたのお話の、今のような正しい意味におけるところの協同組合の育成強化のために、政府資金が一つのルートに乗って各末端までいくような組織にはなっておるけれども、ところが現実において末端にいくと、ボスがある程度はびこって、その信用いかんにかかわらず、自分の勢力普及のためにいろいろな面において、ボスの活躍が最近目についてきておるのですよ。そういうことがあると、せっかく中小企業なりそれ以下のものを育成するための、こういう機構が歪曲されるおそれがありますので、運営に当りまして、そういう人事等に対しては十分気をつけていただかないと、せっかくの基金が、先ほどあなたはらち外にあるとはいうものの、現実の自由競争のこの激しい業界においては、必ずしも私は万全を期せられないという杞憂を持つものですから、特にその点の御注意を願いたいと思います。要望をしておきます。
  103. 東隆

    東隆君 三八の問題は別にして、もう少しお聞きをしますが、第二十九条の一に「銀行その他の金融機関」とこう書いてありますが、これは中身はどういうふうになりますか。
  104. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 「銀行その他の金融機関」という文字がございますが、これは農林中金でありますとかあるいは相互銀行でありますとか、商工組合中央金庫でありますとか、あるいは各農協の信連でありますとかいうようなものを予定いたしております。そのほか農林大臣の指定いたしまする金融機関をこの中に掲げておる、かようなわけでございます。
  105. 東隆

    東隆君 私のところに陳情書が一つ見えておりましたが、それは信用金庫から出ておりました。信用金庫を入れることは、私は銀行を認めておる以上適当でないかと思いますが、その信用金庫に関してはどうですか。
  106. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 信用金庫に関しましても、これはこの「銀行その他の金融機関」というこの文字の中で読めると、かように考えております。
  107. 東隆

    東隆君 とびとびではなはだ相済みませんが、二十三条の理事長及び理事の兼職禁止の問題ですが、「理事長及び理事」は「営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない」と、こういう場合に協同組合関係の団体、協同組合の役員をどういうふうに見ますか。
  108. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) これはこの中には入らないと、かように考えております。
  109. 東隆

    東隆君 入らないというのは、「営利を目的とする団体の役員」でないと、こういう解釈ですね。
  110. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) そうです。
  111. 東隆

    東隆君 それから、この第八条の、「次の各号の一に該当する者は、基金に対する出資の引受をすることができる」こういうわけで、この一の「乳業者」というのは個人も法人も含むと、法人は何ですか、営利法人その他特別の法律による法人、それも両方とも含めるわけですね。たとえばこれは別になっておるのですか、中小企業組合のような、そういうようなものですね、その二号のところのとは意味が少し違うのじゃないかと思いますが、二号で「乳業者組織する中小企業等協同組合」こういうのが一つ出ておるのですね。別にしかしこれは、もし乳業者の中に法人とそれから個人を含むと、こうすると別にこういうものを規定する必要はないと思いますけれども。
  112. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 乳業者という定義は、酪振法にいっております乳業者と同じ定義でございます。二の「乳業者組織する中小企業等協同組合」、これは具体的には、中小企業組織しておりますところの日本製酪農協同組合ということになりますが、これは乳業を行なっておりません。
  113. 東隆

    東隆君 この二号に該当しておるものは一つしかない、こういうような御説明があったのですが、それはどういう組合なんですか。
  114. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 中小企業でありまする乳業者組織しておりまする組合でございます。従いまして組合自体が組合の名におきまして、バターを製造したりあるいはチーズを作ったりというようなことは、いたしていないわけであります。
  115. 東隆

    東隆君 この第八条の三号のところの、ここの規律の仕方、これは酪農協の全国連合会、こういうものとそれから総合単協の連合会、こういうものを全部ここで表わしておるわけですね。
  116. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 三号でうたっておりますのは、「乳業者たる」という、乳業者ということでしぼっておるわけでございます。乳業者といいますのは脱脂乳、クリーム、バター、チーズ、練乳、粉乳というようなもの、あるいは生乳の処理をして市乳としてやっておるという、そういう処理をやっております者、そういう者を乳業者と規定をいたしておりますが、そういう事業をやっておる農協でありまするから、これはいわゆる酪農協である場合もございましょうし、いわゆる総合農協がそういうことをやっておる場合もございましょうが、要するに乳業者という形におきましてやっている、それの連合会をいっておるわけでございます。
  117. 東隆

    東隆君 そうすると三と四で酪農関係、それから総合単協の連合会系統、これを表現しておるわけですね。
  118. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) さようでございます。
  119. 堀本宜実

    堀本宜実君 この生乳取引関係改善に役立てるために、この基金の設立が行われて、乳業者または生産者に対して所要の資金、あるいはその融通を円滑にするということの趣旨なのでありますが、そこでそれの根本になりまする、この生乳生産者の共同販売の組織というものの整備、これが私は問題になると思う。この生産者の共同販売組織の整備というものを、一体どう考えているのかということなんです。たとえば市乳の問題、あるいはこの輸送の問題、あるいはまた販売取引の問題等を含めた共販体制というものを、生産者の立場の組織強化して指導していくということがなければ、私は非常に波乱をするのじゃなかろうか、こういうふうに思うのであります。その点をお伺いしたい。
  120. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) それは御指摘通りでありまして、生産者団体が共販というような形をもっと強く打ち出して参るということを、私たちの方でも期待をいたし、またそういうような指導をいたしておるのでございます。これは行政指導だけでは不十分でございまして、あるいは運輸機関あるいは集乳所というようなもの、そういうようなものの設備が必要である場合も考えられるわけであります。そういうようなものが必要でありますれば、十分それに対する資金のあっせん等をいたさねばならぬと考えておりますが、単にこれは行政指導だけでは不十分なのでありまして、生産者団体自体の、こういう方面に対しまする、もっと強力な運動を期待いたしております。
  121. 堀本宜実

    堀本宜実君 これは乳製品工場というものは、大工揚が比較的集中的に生産された乳の加工をやっておるのが、わが国現状なのであります。そこでバターだとかチーズだとかいうような普通ありふれた乳製品を作りますことは、非常にその原料乳としての価格が安いと思う。これを高級な乳製品に製造いたします場合は、その乳製品原価というものは、非常にコストが高く買い得る立場にあると思うのであります。これはいろいろな統計で生産原価の計算によってよく証明されているのでありますが、普通生産者が持ちまする製造過程では、設備その他が不十分でありますので、バターだとかチーズだとかいう簡単な乳製品のみを作っている。従ってそのコストが非常に安くなってくる。そこで生産者もいろいろな組織を通じまして、高級な乳製品を作ろうといたしておりまするけれども、資金難その他の関係でこれがうまくいっておらないというのが、わが国生産者のやっておりまする、乳製品の製造現状のように思われるのでありまするが、そこでその資金をもって生産者が自分らの生産した乳を、高級な乳製品に加工し得る設備を整えさす、それを援助指導するという指導が、私は足りないと思うのでありますが、それはどうお考えになっておるかということが第一点。  また今までそういうふうな過程を踏んで参りましたものが成功しておらないのですね。生産者がやっておりまする工場等が非常な高邁な理想を持って出発はいたしましたが、比較的成功した例が少い。それは大きい資本業者に食われているというか、食われているという言い方は悪いかもしれませんが、とにかく、そういうものの圧迫を受けておることは間違いないのであります。そういう指導をどうするかということ、あるいは指導しても、もうだめなのか、あるいは今まで失敗した原因等は、一体どういうところに原因があったのか、一つ見解を承わりたいと思います。
  122. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 非常にむずかしい問題であろうかと思います。資金のあっせん、融資につきましてはこれは御存じのように、系統金融あるいは農林漁業金融公庫等の融資が可能なわけでございますので、それはそれぞれのところでお世話をいたしておるということで、また現実にもかなり多額のものが出まして、やっておるのでございます。ただ、この乳業が協同組合という組織で、伸び得ないものなのか伸び得るものか、これは非常に検討すべき点の多い問題だと思います。乳業とのみに限定して考える必要はないかもしれませんが、要するに、農協組織による工業あるいは加工業、これが一体、他の一般会社組織等による企業形態と競争して、成り立ち得るものであるかどうか。農民の生産いたしておりまするものの加工におきましても、伸び得るかどうかという一般の問題と、やはり非常によく似た形で議論をされるべき問題であろうと思います。もちろん、ミルクという特殊性におきまする問題はございまするが、やはり一般的なそういう問題として、これは議論してしかるべき問題だと思います。従来の経緯から申しますと、やはり適当な経営者、すぐれた経営者、そういう者を得ることがかなりむずかしい点と、それからこれはよしあし両方の問題がございまするが、農民の方からいいますと、生産いたしましたものをそこに預けていくわけでありまするが、その間に、お互いに企業といたしましての組織を守るという気持と、農民各自の収入を上げていく、その生産物の生産者としての形で上げていくという気持との間に、かなり矛盾と申しますか、いわば企業をやっている方からいえば、勝手な、言い分が強過ぎるというような形のものがあるように考えられます。従いまして、品物がだぶついておりますときには、すべてそこへ持っていく。品物がだぶつかない、むしろ品がすれのときには、ほかの所へ、値段が少しいいから持っていく、こういう問題があると思います。そこらの辺がこの問題を解決する重要な点ではないかと思います。  従いまして結論的に、果して農協という組織が乳業というものに不適当であるかどうかということは、私はまだ軽々に判断ができないと思います。たとえば市乳の販売をして、そして自分のところで輸送をするトラックを持って、生乳としてではあるけれども、非常に有利な形でさばいている農協というようなものは、かなり出てきているのです。これはやはり市乳の処理をするということが、一つの安全弁になっておるというふうに考えております。これがバターやチーズを作るということになりますと、果してどうなりますか、ここはなかなかむずかしい問題でありますが、現在農協でやっておりまして十分こなしておりますのは、片面に主として市乳の処理をやって、そして片方のミルクは、原料乳として大きな所へ持っていくための輸送機関を持っている、こういうような形のものはかなりふえてきております。これらは割合に堅実にやっているのではないか、かように考えております。果してこれが大企業としての加工業といいますか、バターその他を作るところまで伸びるかどうか、これはもう少し検討を要する点もあるように思われます。  なお、一つの問題といたしましては、もし、これが乳量の集まりの小さいところの組織におきましては、農民としては、やむを得ず農協組織等で処理をしていくわけでありますが、そのことがいいかどうか。現在までのところは、必ずしもそれがいいというふうには出てきておりません。そういうものは、いずれ整備されていくという形が出ておるようでございますが、これも農家におきまする乳製品の需要というものが、もっと普及して参りますれば、ある程度の可能な問題が起るのではないか。あるいは機械等にいたしましても、小規模のものでそれに適した機械ができてくれば、また新しい方向が示される、かように考えております。
  123. 堀本宜実

    堀本宜実君 大体わかるのですが、私は非常に飛躍した話で、笑い詰みたいな、笑われるような話になると思うのですが、どうもわが国の、今いう協同組合組織による、そこでやっております乳製品工場が、非常にいい遠大な理想をもってやっても、今いうような結果になっておる。そこで一面、これはやはり資本力の問題が一番大きく作用しておるのではなかろうか、こういうふうに思うのです。これは表現の仕方が悪いのですが、何か国がもっと公共的な立場でされたらと思う。しかもこの生産量の伸びについては、農業形態の中で最たるものだと思う、一つのよどみも、一つのカーブもなく、上昇カーブを描いて、すくすくと生産量が増加をいたして順調にきておるのは、私は乳だと思っております。これだけに飲んでおるのだが、それがつまり取引の問題、あるいは農村工業という立場から考えましても、そういう面に参りますと全く不安がつきまとっておるのであります。そういうことから、この基金制度というものが生み出されてきたと思うのでありますが、非常にこれは、こそくなといいますか、非常にスケールの小さいものであって、少くとも、表現が悪いと思いまするけれども、国営とまではいかないけれども、機械の貸与といいますか、高級乳製品の製造の基礎は、たとえばビートの製造にかかります資金の全額支出をした等のごとき、この乳製品に対する強い大きい支援というものを国がすることにおいて、この乳の生産というもの、酪農というものの振興の基礎になるのではなかろうか。もう非常に不安が出てきておりますることを心配をするのであります。で、これは飛躍いたしておりまして、お答えにもなりますまいと思いますけれども、私は、こういうことを将来取り上げて考えることが、この酪農振興の最も強い何といいますか、ほんとうの基礎になる考え方だというふうに思います。そこで、そういうことから考えますと、どうしてもバターとかチーズのようなものを作っていては引き合いにかからない、もっと高級なものを作る、しかも、生産者が共同で作り得るよう援助をしてほしい。これは要望でございますが、申し上げておきたいと思います。  これは小さいことなのでありますが、次に、乳の取引に当って、県営検査をしておる所と、しておらぬ所とあるようでありますが、これは自主的な立場から自然やっておるのでありましょう。また、県営検査だけでなしに、自家検査というものを相互にやっておるのでありますが、農林省としては、それの統一検査というものについてのお考えは、どこをどういうふうにお考えなんでございますか。
  124. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 従来県で行なっております検査は、どちらかと申しますと、脂肪分の検査を中心にしましたものでございます。従いましてほとんどが工場におきますところの一つの取引のための検査、こういう格好になっております。で、ほんとうを申しますと、それでは非常に不十分なのでございまして、もっとたとえば細菌数でありますとか、あるいは塵埃度でありますとか、というような問題も含めましたところにこの検査をやっていく必要があろうかと思います。現在の食品衛生法で要求いたしておりまする規格は、かなり高いものでございます。それをその通り実施いたしますと、非常に多くの不合格ができることが考えられますので、これはもう一歩進めまして、乳の品質検査のごときものをこの際指導的にやって、そして農家の飼養管理自体をさらに衛生的なものにさしていく、その基礎ができました上で、その取引の場合における検査制度を持ち込まなければ、今急速にその検査制度そのものをじかに持ち込んでくるということは、よほど検討を要するのではないかという考え方がございましたので、私たちの方としましては、三十三年度から指導的にやる乳質検査をいたしまして、そして農家の飼養管理に至りますまでの指導をいたす、こういう形でまず始めてみたい。これは全国至る所というわけにいきませんけれども、特に市乳においてそういう問題が多い関係がございますので、全国まず十数県におきましてそれをやって参る。まあそういうような順序を経まして、牛乳の管理その他を衛生的なものにしていくという形において、漸次各県で行われておりまするよう検査制度を、もう少し進めてやっていく必要があるのじゃなかろうか。現状のままに、今もしもあまり検査制度自体を正確なものにいたしますると、いろいろな弊害が生ずることが考えられます。こういうふうに考えております。
  125. 堀本宜実

    堀本宜実君 最後に一つお伺いしておきたいと思うのですが、この乳製品を外国から入れるという問題なんですが、先般食肉につきましては当委員会でいろいろ意見がございまして、さっそく通産省等と協議の結果、これは割当制にされましたことはまことにけっこうなことなのでございますが、これは割当制にした場合、将来農林省としては、農林省がタッチをして指導権を握ってこれの支配をするというのが望ましいのでありますが、この乳製品等の外国製品の輸入でございますが、これは今どういうふうになっておりますか、その点を。
  126. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) 現在乳製品はほとんどすべて割当にいたしておりまして、実際上はほとんど入っておりません。ただ学校給食に出しまするところの脱脂粉乳、これは御存じのように、あるいは贈与であるとかあるいは非常に安い特別価格で入ってくる、これは相当ございます。そのほかの乳製品はほとんど入っておりません。ごく一部分日本のチーズに使います、原料チーズが若干入っております。これはむしろ品質をよくするために入れております。その程度でございます。
  127. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 本日はこの程度にいたします。  これをもって散会いたします。    午後四時五十五分散会