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1958-04-21 第28回国会 参議院 内閣委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月二十一日(月曜日)    午前十一時十三分開会   ―――――――――――――   委員異動 本日委員近藤鶴代君、中野文門君及び 苫米地義三君辞任につき、その補欠と して柴田栄君、大谷贇雄君及び西田信 一君を議長において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     藤田  進君    理事            大谷藤之助君            松岡 平市君            永岡 光治君    委員            上原 正吉君            大谷 贇雄君            剱木 亨弘君            後藤 義隆君            柴田  栄君            苫米地義三君            西田 信一君            増原 恵吉君            松村 秀逸君            伊藤 顕道君            田畑 金光君            千葉  信君            森中 守義君            矢嶋 三義君            島村 軍次君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    国 務 大 臣 正力松太郎君    国 務 大 臣 津島 壽一君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    総理府総務長官 今松 治郎君    内閣総理大臣官    房公務員制度調    査室長     増子 正宏君    総理府恩給局長 八巻淳之輔君    調達庁長官   上村健太郎君    防衛政務次官  小山 長規君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁教育局長    心得      小幡 久男君    防衛庁人事局長 山本 幸雄君    防衛庁経理局長 山下 武利君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    科学技術庁政務    次官      吉田 萬次君    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁企画    調整局長    鈴江 康平君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君    外務大臣官房長 田付 景一君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主計局給    与課長     岸本  晋君   事務局側    参     事    (事務次長)  宮坂 完孝君    参     事    (委員部第二課    勤務)     川上 路夫君    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○恩給法第十一条第一項等の金融機関  を定める法律案田畑金光君外四名  発議)(第二十七回国会継続) ○国家公務員に対する寒冷地手当、石  炭手当及び薪炭戸当の支給に関する  法律の一部を改正する法律案千葉  信君外八名発議) ○一般職職員給与に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○特別職職員給与に関する法律等  の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○防衛庁職員給与法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○防衛庁設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○自衛隊法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○科学技術庁設置法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○放射線障害防止技術的基準に関す  る法律案内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 藤田進

    委員長藤田進君) これより内閣委員会を開会いたします。  委員異動がございましたので、事務局から報告させます。
  3. 川上路夫

    ○参事(川上路夫君) 御報告いたします。  本日、中野文門君、近藤鶴代君が辞任され、その後任として大谷贇雄君柴田栄君がそれぞれ委員に選任されました。  以上でございます。   ―――――――――――――
  4. 藤田進

    委員長藤田進君) それでは、これより議事に入ります。  まず、恩給法第十一条第一項等の金融機関を定める法律案(第二十六回国会参第一〇号)(田畑金光君外四名発議)を議題といたします。  本案につきましては、さきに発議者から趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより本案質疑に入ります。質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  5. 島村軍次

    島村軍次君 提案者趣旨説明はあったのでありましょうが、特に前国会に御提案になり、かつまた今国会にこれが継続審議になって、恩給担保金融国民金融公庫以外に労働金庫を指定したいというのがこの趣意であると思いますが、その御提案者に、特に労働金庫を加えにゃならぬという率直な一つ考え方を、この際まず承わりたいと思います。
  6. 田畑金光

    田畑金光君 提案理由説明のときにも申し上げましたが、御承知のように、現在、恩給あるいは遺族年金等担保にして融資のできる金融機関は、唯一、国民金融公庫に限られておるわけであります。しかしながら、国民金融公庫におけるこれらの融資に充てる資金ワクというものは限られておりまして、これが需要に満足な貸し出しができない実情にあるわけであります。労働金庫の場合には、御承知のように、普通の金融機関事業資金生業資金を貸し出すに対しまして、あくまでも消費金融であり生活金融であるというところに特色があるわけでありますが、ことに、恩給担保金融遺族年金担保金融という金融の性格が、生活金融であり、労働金庫業務と全く軌を一にしておるわけであります。  ところが、最近の、ここ数年来の実情を見ますと、労働金庫の会員である労働組合あるいは生活協同組合のいわゆる構成員労働金庫の立場から申しますと、間接構成員と呼びますが、この間接構成員の家族のうちに、こういう恩給遺族年金担保金融を切に希望する人々がふえておるわけでありまして、そこで、現在この労働金庫といたしましては、全国に四十六の労働金庫がありますが、そのうち、京都とか兵庫広島宮崎、こういう金庫等におきましては、やむなく、これらの遺家族をして互助会というものを作らしまして、その互助会労働金庫に加入をする。で、互助会に対し労働金庫信用貸付をして、資金需要に充てて上げる、応ずる、こういう措置をとっておるわけです。  ところが、先ほど申し上げたように、担保に取れませんので、結局、労働金庫がこれらの遺族互助会に貸し出す場合には、どこまでも信用貸しという形になっておるわけです。信用貸しで貸しておるわけです。ただ、その恩給証書等については、遺族互助会が保護預かりをしておる。こういう形で現実需要に応じておるわけでありますが、そういう非常にむだな手続を要する現実の情勢に対しまして、この際、この法律が成立いたしまするならば、労働金庫がすなおにこれらの遺族方々融資ができるという道が講ぜられますので、まあそういう趣旨で、今回この法律を御提案申し上げたと、こういうことになっておるわけであります。
  7. 島村軍次

    島村軍次君 現在労働金庫で扱っておる、その金融機関として扱っておる四十六の金庫が、業務内容がどういう程度に進行しておるか、また現在の貸し出し実情等については、金額的にどういうふうになっておりますか、その点をあとで書面で一つ拝見いたしたいと思いますから、それを承わりたいのです。  それで、その御回答のある前に、大蔵大臣がおいでになっておりますから、端的に、今回、議員の発議による恩給法第十一条第一項等の金融機関を定める法律案については、大蔵大臣としてはどういうお考えをお持ちになっておるか、政府意見、並びに恩給法を扱っておる総務長官の御意見はどうか、端的に一つお答えを願いたいと思います。
  8. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) このお尋ねの点は、労働金庫自己資金恩給担保貸付を行うことがどうかという問題だろうと思うんですが、これにつきましては、今日、国民金融公庫でこの貸付をやっておりますが、大体九〇%――件数で九〇%以上、金額にしても八〇%というようなものが円滑に貸し出されているようであります。まあ、私としましては、この国民金融公庫資金量をふやすというのでやるのが一番適当であろうと考えておるのであります。  御承知のように、労働金庫では、自己資金もそれほど豊富でありませんし、また金利にいたしましても、国民金融公庫の扱う金利に比べれば、相当高いものになりますので、恩給担保貸付を拡充していく、広げていくという行き方としては、私、それほど効果的でもないように考えるので、まあ従来通りにして、その資金量をふやす、こういう方法でいきたいと私は考えております。
  9. 今松治郎

    政府委員今松治郎君) お答えをいたします。恩給担保につきましては、恩給というものの年金制度で年々支給されていくという性質から、これを禁止しておるのでございますが、しかし、一方、不時の需要のために何らかの措置が必要だというので、そういう場合もあり得ると考えて、国民金融公庫に統一してこのことを行わせておるのでございます。従いまして、この国民金融公庫資金量とか業務量の問題を、今、大蔵大臣の言われましたように、考慮を払って参ります場合には、解決がつくんじゃないかと考えておりますので、現在のところ、ほかの金融機関恩給担保金融をしてもらう考えは持っておりません。
  10. 島村軍次

    島村軍次君 そこで、問題は、貸し出しについて条件がむつかしいということが一つある。それから、資金量の問題がその第二であろうと思う。  そこで、大蔵大臣もおそらく経過は御存じであろうと思うんですが、戦争中には、別途に、たしか恩給金庫というものがあったと思うんです。それがGHQの占領政策とともに廃止になった。しかし、そのかわりに株式会社でたくさん出ておる。ことに、金融を扱っておった人が地方的に株式会社を作って、恩給担保にして多大の貸付をやっておる実例があるわけです。そこで、むしろ私はそういう問題をあらかじめ解決をした上で考えるというのも、一つ考え方である。政府の方では、恩給金庫に相当するようなものを将来やられるのかどうか、法律的に考えておられるかどうか。それから、今お話しになった国民金融公庫に対して、将来資金量をふやすというならば、どういう措置を講ぜられるかと、この二点についてまず伺いたいと思います。
  11. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は、今のところ、恩給担保貸し出し専門にする金庫――公庫ですか、こういうものを作る考えは今持っておりません。持っておりませんが、しかし、今お話しのように、恩給受給者恩給担保民間において非常に高利な金利で金を借りなくてはならぬという事態は、これは救済しなければならぬと思っております。  従いまして、今日、大体申し入れの九〇%程度国民金融公庫順便手当がついておりますから、もうあとは、申し入れについて約一割未満の程度であります。これは私は、国民金融公庫資金量をふやして、こういう方面の、場合によっては、ワクではありませんが、一割程度のもの、そういうものの資金恩給担保に充てるという指導を、あるいは措置をとらせてもよかろうかと、かように考えております。  が、しかし、今言いますのは一割程度といいますか、今民間の方はどういうふうにしておるか。しょせんなかなか借りるのに、そういうふうな安い金利国家機関に行ってもなかなか借りられないんじゃないか、そういうような考えで市中の高い金利に行くこともあるかもしれない。こういう点を一つ詳細に調べまして、そうしてその上で国民金融公庫申し入れについては十分に処理ができるように、もしもそれが不十分であるとすれば、これは私はやはり何らかの方法で、国でめんどうを見るような方法をとりたいと、かように考えておる次第であります。
  12. 田畑金光

    田畑金光君 ちょっと、私からも一つお答えしたいと思いますが、今大蔵大臣から、大体九割前後は消化できるという御答弁でありましたが、それは数字の上から申しましたら、違っておるんです。昭和二十八年度から国民金融公庫担保融資をやっておりますが、だんだん年を追うに従って、需要に対しまして貸し出しも強化されておることは事実でありますが、昭和二十八年度が申し込みに対しまして貸し出しが一六%、昭和二十九年度が五二・六%、三十年度が六九・三%、三十一年度が七〇・九%、昭和三十二年度は、これは本年一月末までの実績でありますが、七八・九%、こういうわけで、いずれの年も八割以下にとどまっておるわけで、しかも、申込額の絶対額を見ますと、たとえば三十一年度は、七十四億二千二百万に対しまして、貸し出し実績は五十二億六千万であるということです。でありますから、約二十億前後は、結局申し込みに対して貸し出しができないという実績を残しておるわけで、しかも、国民金融公庫に対する申し入れ手続というものが非常に繁雑でありまして、時間がかかる、費用がかかる。こういうわけで、この統計に出てこない、あるいは申し込みに出てこない件数というものも多々あることを、これはわれわれとして予測しなければならぬと、こう考えているわけで、御承知のように、各府県における国民金融公庫の出張所の配置を見ましても、大きな県で二、三に限られておる。こういうわけで、なかなかこの費用をかけて繁雑な手続申し込みをするということは少いわけです。このことを一つ御了承願っておきたいことと、  恩給支給実績額に対しまして、たとえば、昭和三十一年度の恩給支給額は九百二十四億に上っておりますし、三十年度は八百七十五億余に上っておりますが、それに対しまして、たとえば、三十一年度は九百二十四億の恩給支給額に対しまして、申し入れは七十四億程度であり、それに対する貸し出しは五十二億程度にとどまっておる。こういう点から見ましても、これに出てこないものが相当あることは、われわれは予期しなきゃならぬと思っております。  それから、労働金庫の場合を申し上げますと、先ほど申しあげたように、今、現在やっているのは京都とか、兵庫広島宮崎という、四、五の労働金庫にすぎないわけです。で、この金庫では、本年の一月末の貸出残が九千五百七十五万六千円、一億足らずの貸し出し残であるわけです。しかも、労働金庫で取り扱っておる資金の貸出しは、国民金融公庫資金ワク内で労働金庫がやるという形ではなくして、自己資金でもって、先ほど申し上げましたように、これらの遺族方々申し入れに応じておる。利息は、なるほど国民金融公庫は年六分というワクで、ここにまあ国民金融公庫を限定した理由があるわけでありますが、大体労働金庫といたしましては、零細な資金でありますから、どうしても貸出金利国民金融公庫並みに、あるいは数十年の歴史を持っている一般金融機関並みに引き下げることは困難で、大体九分から一割ないし一割二分程度になっておる、これが実情であります。ただ、労働金庫の場合は手軽に、簡単に、手続も非常に容易にサービスができるというところに特色があるわけで、そのあたりが国民金融公庫と差異があるということを、一つ御了承願っておきたいと思うわけです。
  13. 島村軍次

    島村軍次君 時間の関係もありますから、端的に承わりたいと思いますが、そうすると、大蔵省としては、国民金融公庫資金量をふやすことによって措置ができる、利子も安いのだからということ、それから恩給の主管である総理府においても、大体同一の意見であると了解してよろしゅうございますか。
  14. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) よろしゅうございます。
  15. 島村軍次

    島村軍次君 そこで、貸し出しを容易にする、こういうことがこの提案者のねらいであるようてありますが、しかし、本法律案によって恩給そのもの担保にとってやるというその道が開ける、こう端的に考えていいわけですか。
  16. 田畑金光

    田畑金光君 その通りであります。
  17. 島村軍次

    島村軍次君 一応この問題はこの程度にしておきます。
  18. 藤田進

    委員長藤田進君) それでは、本案につきましては、本日はこの程度にとどめます。   ―――――――――――――
  19. 藤田進

    委員長藤田進君) 次に、国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び薪炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案千葉信君外八名発議)を議題といたします。  これより本案質疑に入ります。質疑のある方は、順次、御発言を願います。
  20. 島村軍次

    島村軍次君 同僚千葉君の御提案ですから、大いに敬意を表して検討を加えたつもりでありますが、そこで、予算との関係がどういうふうになりますか。これは大蔵大臣一つ、まず承わりたい。
  21. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 本案実施する結果の所要経費は、国、地方、政府関係機関を通じまして、約二十九億円に上ります。本年度予算に計上しては、むろん、ありません。これは明年度以降の負担になるものであります。予算関係は大体こういうことです。なお、詳しいことは主計局長から……。
  22. 島村軍次

    島村軍次君 本提案は、二十四年の法律から、寒冷地手当石炭手当というものが、これはもう当時千葉氏の御提案によって成立したものであると承知いたしておりますが、そこで今回の引き上げによって二十九億を要する問題に関しては、財政的に大蔵省とのお打ち合わせはできておりますか、その点を一つ
  23. 千葉信

    千葉信君 打ち合せはできておりません。私どもこの法律案の成立を熱心に希望いたしまして、事務局を通じて大蔵省その他関係機関にいろいろ連絡をいたしましたが、私どもの方で判明しました点は、遺憾ながら、それらの回答の中で明白にならない分を除いてございましたので、この法律案提案に当って説明として掲げました金額を計上した次第でございます。この金額国家公務員に対する給与の総額でございます。
  24. 島村軍次

    島村軍次君 主計局長にこの問題に関するお尋ねを申し上げたいと思いますが、まず、従来の寒冷地手当石炭手当等実施の状況にかんがみまして、増額の必要はお認めになるのでございますかどうか。また、予算の執行あるいは予算編成に当って、千葉君の御提案に対して率直に御検討になりました経過を、一つ聞かしていただきたいと思います。
  25. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 制度の問題といたしましては、総理府側の方で全面的に検討しておられる次第でございまするが、大体従来から出ております方向といたしまして、給付制度の建前といたしましては、石炭手当薪炭手当寒冷地手当というようなものが非常に付随的に多くありまする制度は、この方向としては簡素化をはかるべきであると思うのであります。従来の石炭手当薪炭手当あるいは寒冷地手当につきまして、その量なり金額なりにつきましては、これは若干の程度差があるのでございます。あるいは人事院から金額の勧告ももらっておるということでございまして、そこら辺を勘案いたしまして予算を組んでおるわけでありますが、基本的に、公務員制度の調査は、そういうふうな担当の機関検討していただいておるわけでありますが、方向といたしましては、今申し上げましたような、むしろこういうような手当簡素化して一本になるのが、給与制度全体の方向じゃないかというふうに考える次第であります。
  26. 島村軍次

    島村軍次君 総理府関係当局の御意見、いかがですか。
  27. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) ただいま御質問の石炭手当寒冷地手当の取扱いの問題でございますが、従来から、ただいま大蔵省側から御説明ありましたように、この種の手当につきましては、その内容合理化といいますか、さらに具体的にいいますと、整備統合するという考え方に立ちまして、いろいろ従来から検討して参っておるわけでございまして、その際に、支給方法でありますとか支給区分等も、当然改善ということが考えられておるわけでございますが、現在のところ、最終的な結論を得ていない状態でございます。
  28. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言はございませんか。  それでは、本案予算を伴う法律案でございますので、国会法第五十七条の三及び本院規則第五十条の規定によりまして、本案を表決に付するまでに内閣に対して意見を述ぶる機会を与えなければならないことになっております。先ほど来若干政府を代表しての御発言がありましたが、この際、本案に対する内閣意見をあらためてお述べを願いたいと思います。
  29. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは一応意見内閣にかけまして、内閣として御返事申し上げたい、かように思います。
  30. 藤田進

    委員長藤田進君) それでは、本案につきましては、一応この程度にとどめます。   ―――――――――――――
  31. 藤田進

    委員長藤田進君) 次に、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案、以上、三案を一括して議題といたします。  これより三案の質疑に入ります。御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  32. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 時間の関係上、要約して若干伺いたいと思います。ずいぶん問題点がたくさんあるわけですが、要約して伺いますから、明快にお答え願います。  なお、事務局を通じて関係政府委員出席を要望いたしておりますので、早急に本委員会出席するよう、委員長から格別御配慮をお願い申し上げる次第であります。  まず、特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案、この付則第一項において――これは岸総理意向によってこの付則第一項がつけられたということを承わっております。すなわち「内閣総理大臣国務大臣内閣官房長官及び総理府総務長官に係る部分は、別に法律で定める日から施行する。」ということが付則一項にうたわれているわけですが、これは、選挙が終って特別国会で、「別に法律で定める日」をきめるような法律を出すわけじゃないでしょうね。これはどういう見通しになっておられるか、それをまず承わりたいと思います。
  33. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは、この条文の通りに、別に法律施行日を定める、かように解釈してよいと思います。
  34. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私が伺っておるのは、そういうことでなくて、内容を伺っておるわけです。総理大臣国務大臣内閣官房長官総理府総務長官ベースアップはやってはならぬという総理意向によって、法律としては内閣総理大臣が十五万円、国務大臣が十一万円、かくかく法改正をやったわけであるが、総理意向によって、別に法律で定める日から施行することにして、総理大臣国務大臣ベースアップはやらぬということを総理が言われて、それから付則一項がついたのです。だから、私が承わりたいことは、まさか総選挙がすんで特別国会にこれらの法律案を出すのじゃないだろうと思うのですが、岸さんが内閣に席を持っている間は、このベースアップを解除施行するような法律が出ないものと、かように私は了承してよろしいのかどうか、それを指摘をしたわけです。
  35. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私の考えでは、そういうこととは関係がないのじゃないかと思います。実施の時期は法律をもって定めるということになっておりまして、これは何も政局等とは関係がないので、こういうものを内閣総理大臣以下の国務大臣、ここで列挙されておる部分ベースアップをした方が適当であるという判断に立つ場合においては、法律でもってその実施時期を定める、かように考えております。
  36. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は、岸総理総理大臣である間は、この付則改正はないものと了承いたします。  次に承わりたいことは、別表第一に特別職をずらり並べて改定俸給月額を掲げているわけですが、現行法と比べますと、その引き上げ率に相当のアンバランスがあるわけです。わずかしか上っていない特別職もあれば、また非常に上っている特別職もあるし、これほどアンバランスのある改正をやったことは前例にないと思うのですが、これはどういう御見解に基いてやられたのか、お答え願いたいと思います。
  37. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは、いろいろの理由から、現在のところが非常にアンバランスになっております。従いまして、それを改正するから、改正自体も非常にでこぼこがある。改正をした後はバランスがとれる、かように御了承願います。
  38. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それは形式的にはそうなりますが、私はきょうは時間が制約されているから、一つ一つ拾い上げてそれを質疑する時間がないわけですが、どうも納得しかねる面があります。それはその程度に指摘しておきます。  次に、特別職のところで承わりたい点は、大使の俸給月額を第三条の二項で規定しておりますが、ここで、私は外務公務員の給与に対する考え方をちょっと聞いておきたいのです。在外公館に対しては、報償費は四億九千万円計上されている。昨年度に比べますと、七千万円の増額になっているわけですが、在外公館に勤務している外務公務員は、その体面を保つことと、それから能率の向上をはかるという立場から、在勤俸が与えられているわけですね。その在勤俸が、地域によって差がついている。ワシントンを一〇〇として、各国の率を算出しているわけですが、これを検討するときに、戦前、戦時中の欧米第一主義、このときの考え方が今の外務公務員の給与体系に依然として残っているということを、私は指摘したい。  子弟の教育、それ一つ考えましても、後進アジア地域の在外公館に勤めている外務公務員と、先進国、英国とかアメリカ、こういうところに勤務しているところの外務公務員の給与差というものは、私は再検討する必要があると思うのです。でなければ、具体的に一つ例をあげても、アメリカとか英国等に勤務した場合は文化生活も保たれます。病気になっても、十分治療できる。子供の教育にしましても、英語の学校も十分あります。また日本人学校もあって、できるわけです。ところが、わが国はアジア外交を強力に推進しなければならぬでしょうが、そういうアジア地域の外務公務員の状況を考えると、子女の教育一つ考えても、これは重大な当事者にとっては問題です。  従って、私は、今度ここに大使の俸給月額を十一万円とすることができるという規定をうたわれているのですが、そういう改正をするときに、そういう在勤俸というものを率を検討しなければならぬと思いますが、そういうものが検討されていない。これに対して、外務省側の政府委員の答弁と大蔵当局の答弁を伺っておきたいと思います。まず、外務省の方からお答え願います。
  39. 田付景一

    政府委員(田付景一君) お答えいたします。ただいま仰せになりましたように、在勤法の問題はわれわれの方もかねてから研究はいたしております。しかし、この在勤法と申しますのは、この法律にも書いてございますように、そこの経済生活水準とかあるいはそこでの外交の状況といったものを勘案して作っておるわけでございまして、これを全体的に変えるということはなかなか容易でございません。われわれといたしましては、今おっしゃいましたように、子女の教育ですとか、あるいは館員の保健の問題といったようなことは、確かに大切な問題でございますので、たとえばアジア地区におきましては、住宅を建てるべきである、あるいは医者を送るというようなことも考えております。しかし、一ぺんにそういうことはなかなかできませんので、ことしも、ラオスとかあるいはインドネシアといったようなところに、館員の住宅を建てる予算を取り入れましたので、大体その方向に向ってやっていきたい、こう考えております。  で、申し上げますように、在勤法は全体に関係いたしますので、十分研究して、今後大蔵省とも打ち合せた上で、改正するものは改正していきたい、こう考えております。
  40. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 在勤法につきましては、ただいま外務省からお答えがあったことで尽きておると思いますが、これは、最近新設をいたしまする公館につきましては、追加をいたしておりまするけれども、物価の関係その他の関係もございまするので、将来も外務省と相談をいたしまして、研究をしたいと思います。
  41. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ここで外務省に一つ苦言を呈しておきますがね。こういう世界情勢下になって参りますと、外交官はしっかりがんばってもらわなければならぬと思うのです。そういう立場で、私は適正なる待遇の改善をはからなければならぬと思いますが、しかし、在外公館に勤めている外務公務員の一部には、二年か三年すればどうせ東京に帰る、自動車の運転を覚えて、自動車を安く持って帰って云々というように、そういう打算的な考えで、在勤手当等、フルに活用することなく、もっぱら帰国した後に備えて、貯蓄奨励をやって、外務公務員として能率を上げていない向きも一部にはあるやに聞いておりますし、君もまあそれを認めます。こういう点については、給与の適正化をはかるとともに、十分、国を代表して他国に使いしているのですから、能率を上げるようにしていただかなければならぬと思う。この点を要望しておきます。  次に、この三案について承わりますが、自衛官ですね、これは日給になっているということは私はおかしいと思うのです。どういうわけで月給に直さないのですか。自衛隊は、憲法との関係もあって、今日までこれは憲法九条に抵触するものではない、軍隊ではないということを聞いておるのですが、にもかかわらず、私はこれについて、一、二度要望したことがあります、個人的に。いまだに日給制をしいておるということは、これはどういうことなんです。どういうわけで……。今の自衛隊の隊員の公務員としての性格づけからいって、当然これは月給制にしなければならない。日給制にしている理由。月給制に改めるべきである。それに対する大蔵省当局並びに防衛庁当局の答弁を求めます。
  42. 岸本晋

    政府委員(岸本晋君) これは技術的な問題でございますので、お答えさしていただきます。  防衛庁の給与を日給制にいたしておりまして、支払いの形では日給でございますが、実態は月給制でございます。つまり、俸給月額を基礎にいたしまして、支払いの便宜上これを日額に割って支給いたしておるわけであります。従いまして、たとえば、いかにも、日額であると、休んだらその日はもらえないだろう、こういう印象を与えがちでありますが、その運用については、あくまで俸給月額という前提で運営をいたしておりまして、単なる技術上の、支払い上の便宜上の問題でございます。
  43. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 だから、なおいけないのですよ。隊員を日給にしておいて、実際は月給と同じようにやっておるわけだ。それを日給にしておいて、一カ月に三日、四日引くというようなことをやっていない。実際の支給はフルに与えておる。私はちゃんと調査して持っておるのです。だから、日給にしておる単位から計算すれば、非常に待遇がよくなるのです。それを下げるというのじゃないのですよ。実際の運用はそういうようになっているのを、なぜ日給にしているのか。実際支払っている場合には、月給で支払っているじゃないですか。別に控除するようなことは、何にもそういうことはやっていない。当然これは月給にすべきです。防衛庁は来ておりますか、政府委員……。これは月給にすべきを、なぜ日給にしているのですか。
  44. 山本幸雄

    政府委員(山本幸雄君) 防衛庁の自衛官は比較的、転任と申しますか、異動が割合激しいのでございまして、その関係上、これに対する給与を支払うという場合に、日額表示――ただいま大蔵省の方から御説明ありましたように、日額表示をいたしておりますことは、給与支払いのいろいろの手続及び計算上、日額表示の方が大へん便利であるという、そういう事務的な理由が、もっぱらこの日額表示にいたしておる理由でございまして、この点につきましては、ただいま御指摘がありましたごとく、日額表示についての御意見が今までも出ております。この点につきましても、防衛庁といたしましては、ただいままでに研究をいたしておるわけでございまして、今後、ただいま御指摘のようなこういう点につきましては、十分に検討していきたい、かように考えております。
  45. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 検討するという点は了承しますが、異動する云々ということは理由にならないのです。それは自衛隊は訓練その他で移動しましても、身分は一緒に動いていくわけじゃないのですからね。そんなに給与を支払いするに当って、部隊の所属がしょっちゅう変るような、そんなことでは、とても部隊訓練なんかできっこないわけですから、そういうことは理由にならないと思うのです。私は、自衛隊の今のわが国の公務員としての性格づけ、規定づけからいって、当然これは他の公務員のように月給制に一日も早く改めるべきである、かように信じて疑いません。大蔵大臣、どうお考えになりますか。
  46. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは、今防衛庁のお話しのように、実際上の必要から来ておるものと思います。実際上の検討を加えまして、さようにする実際上の必要がないとすれば、これは月給制にしても差しつかえないと思いますが、なお検討をしたいと思います。
  47. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 防衛庁の給与関係が出ましたから、これに関してもう一、二点伺います。  私は、昨年来、海上保安庁並びに海上自衛隊の業務内容並びに給与についてつぶさに検討してみた。で、その中の一つを、代表的なものとして、海上保安大学と防衛大学をとって比較してみました。御承知のごとく、防衛大学の生徒一人については国費が三十六万一千円かかっております。そこで、この防衛大学の学生には月一人当り三千五百円の給与を与えております。それ以外に夏服二着、冬服二着、靴二足というふうに、物品供与がずっとあるわけです。こういう建前になっているわけですけれども、卒業後の、大学卒業後の一年後の比較をとりますと、海上保安大学卒業生が手取り一万四千七百十八円、それに対して防衛大学卒業後一年後には一万六千五十円と、約二千円の差があるのですね。しかも、この海上自衛官は、恩給基金とか共済料金とかいうものは納めていないはずです。だから、相当の給与差が出てくるのですね。だから、海上保安官の業務については私はここで一々申し上げることもございません。皆さん御承知通りです。  私は、今の公務員等の給与水準というものは、憲法に照らしても、まだ上げるべきだという私は見解を持っているわけで、別に防衛大学卒業生の大学卒一年後に一万六千五十円、これが高過ぎるというようなことを言っておるわけじゃないのですが、保安大学を出た保安官の給与を、これにやはりバランスがとれるように、私は是正すべきだと思うのです。また、手当等についても、御承知のごとく、海上保安官は航海手当だけですけれども、海上自衛官の方は航海手当にさらに乗組手当というものも出てくる。手当等についても違ってくるわけですが、こういうアンバランスは、若い者を対象とするだけに、私は早急に是正すべきである。そういうものは私はこの給与法の改正のときに出てくるであろうと期待しておったのですが、出てこないのですが、これについてはどういう見解を持っておりますか。
  48. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) あるいは、防衛庁側の点につきまして、防衛庁の人事局長等から御補足を願ってしかるべきかと思いますが、今の給与の建前と、何と申しまするか、職務の刻み工合という関係もございまして、防衛大学を出ますると三尉に任官をいたします。その任官をいたしまするときに、やや高い給与に相なるという点が、あるいは今矢嶋委員御指摘の主たる点かと思います。ただ、給与全体として見ますると、その後の進級の状況というような点を考えてみますると、むしろその後におきましては逆の傾向も出てくるかという感じがいたします。この点は、今手元に数字を持っておりませんので、御即答申し上げかねるのでございますが、そこら辺の、何と申しますか、職級の刻み方の関係が関連いたすかと思います。あるところをねらって見ますると、ある程度の差が出てくるというようなのが、今御指摘の点かと思います。これは制度全体として見なければならぬことでございますので、御指摘の点もございますが、私どもも、大学を出た後にどうか、あるいは今の初任給の点等につきまして検討いたしておりますけれども、とりあえずの感じを申し上げておきます。
  49. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは、またいつか機会があった場合に、責任大臣に私はただしたいと思うのですがね。相当問題があると思うのです。この防衛大学の生徒に対しては、私はこの前視察して参りましたが、ずいぶんと至れり尽せりの優遇がなされております。これは一つの政策的になされているわけで、それでけっこうですが、他の大学に対する文教予算等と比較するときに、これは非常にその感なきを得ないわけです。それだけに、防衛大学の学生はしっかり私は自覚して努力してもらわなければならぬと思うのですが、卒業後の仕事の内容等を考えるときに、海上保安大学を出た海上保安官と、防衛大学を出て海上自衛官になった人は、そう差はないと思う。これは戦争があったときは違いましょう。戦争があったときは若干違いましょうが、しかし、これから兵器が発達し、今後かりに戦争があった場合に予想される戦争の態様からいって、私はそんなに海上自衛官と海上保安官のあれは違ってくるとは思いません。大学中の取扱い、それから卒業後の取扱い等に、私はバランスを十分検討していただくように要望しておきます。  それから、次に、防衛庁関係給与で、航空自衛官、この待遇を若干今度改正されております。それから、航空事故が非常に多いので、本年度の予算でも航空事故対策として三十五億が計上されている。航空自衛隊というものが存在する以上は、こういう予算を組まれたことは私は適当であると思うのです。存在する以上はですね。しかし、今度は防衛自衛官の内部におけるバランスを私は考えた場合に、航空自衛官の待遇というものは、自衛官の内部のバランスからいったならば、まだバランスはとれていない。  もう少しこれは、この航空乗員に対しては優遇の措置を講ずべきであるということは、時間がないから申し上げませんが、航空自衛官の募集人員と応募状況からいって、事故が多い関係か、漸減傾向をたどっております。とてもこれはP2V、あれなんか五億円からするのですね。F―86Fでも三億するのですから、こういう飛行機に乗ってもらったら、ぽろりぽろりと落ちて、大へんですよ。これは二十倍ぐらいな志願者がなければ、十分発達した飛行機を乗りこなせるような乗員を私は確保できないと思う。それから、事故を見ましても、あなたの方から出された資料によると、三十一年は実に飛行機事故は、五十四件起っております。そうして二十五人が死亡しております。  さらに、民間と航空自衛隊の給与差を比較してみましたところが、航空自衛官は大挙を卒業して七年目に三万三千百五十円、ところが、民間では、大学を卒業して就職して七年目になった人は、大体ダクラスC4型の正操縦士ぐらいになれるのですが、これが月七十五時間の機上生活を過ごしたとして、大体八万円になっているのですね。これだけの民間との差がある。こうなってくれば、この国会にあなた方が審議を仰いでいるように、アメリカから飛行機の供与を受け、また日本の国民の多額の税金を使って飛行機をこしらえても、乗員が確保できないで、しょっちゅう事故ばかり起して、飛行機が落ちるという結果になってくると思う。  こういう点を検討すると、今度は自衛官の内部において、陸上と海上と航空各自衛官の給与差というものは、もう少し合理的に再検討される余地があるのではないか、かように私は数字的に見ているわけですが、防衛庁当局はどういう見解を持っておられるか、承わります。
  50. 山本幸雄

    政府委員(山本幸雄君) ただいま、パイロットについての給与上の問題について、大へん御同情のある御意見がありましたが、募集の問題について今数字をおあげになりましたが、実はパイロットの方は、防大卒業生以外に、操縦学生あるいは幹部候補生出身の者から採用しておりますが、操縦学生の方は大体十数倍に上る競争率を持っております。大体、今の航空自衛隊におきますパイロットは、練習期間中は若干曹の時代がございますけれども、おおむね幹部がパイロットになっておるのでございまして、一般の募集で入ってくる者は、整備とかその他、いろいろなほかの自衛隊とあまり変らないような任務が多いわけでございます。  それから、民間給与との比較の問題がございましたが、これは現在の公務員の給与体系においては、とても民間給与には追いつけないということは、ある程度やむを得ないことではなかろうかと思っております。ただ、特にジェットのパイロットにつきましては、これはただいまもお話がございましたように、いろいろな面で優遇措置を講じなければならないことはわれわれとしても考えておるのでございまして、ただいまおあげになりました大学卒業後七年目の三万三千百五十円というのも、ジェット機に乗る者につきましては、このほかに何がしかの航空手当支給できる、こういうわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、なお今後、特に飛行機の技術的な進歩が激しゅうございますから、それに対応して、パイロットの給与というものはそれぞれの仕事に応じてふやしていかなければならぬものと考えております。
  51. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは、具体的に伺いますが、本年度防衛大学の第二期生三百五十九人卒業しましたね。その三百五十九人卒業した中に、航空自衛官要員はわずか六十人ですね。ところが、アメリカから供与を受ける兵器の内容、それから本年度防衛庁の予算、それから約百九十億ばかり増額されたその増額の内容検討しますと、重点は航空自衛隊に移っています。時間がないから数字をあけませんが、断然航空自衛隊に重点が移っているわけです。しかるに、防衛大学卒業生三百五十九人中わずか六十人しか航空自衛官要員の卒業生がないということは、どういうことなんですか、これは。
  52. 山本幸雄

    政府委員(山本幸雄君) 防衛大学は陸海空それぞれの要員を養成しておるわけでございますが、これには陸海空それぞれに分けまして、募集した当座からほぼ志望がありまして、それによってそれぞれの教育をいたしておるわけでございます。この防衛大学校卒業者が、航空自衛隊に入りましてパイロットになる者もございますが、そのほか操縦学生と申しまして、これは高等学校卒業程度の人を採用するわけでございますが、そういう門戸からも入り、あるいは一般幹部候補生と申しまして一般大学の卒業生の方からも採用するというふうに、門戸は二、三種あるわけでございまして、そういう門戸から採用するものもあるわけでございます。具体的にパイロットの数がどういう勘定になるかということは、実は私主管でございませんので、くわしいことは別の機会にお答えすることができるかと思います。
  53. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなた、人事局長でしょう、それは知っておいてもらわなければ困ると思うわけです。防衛大学は、昔の陸軍士官学校や海軍兵学校と違って、非常に理化学を重点に教育をやっているでしょう。あれを卒業すると、他の大学を卒業した者と同じような認定がなされて、大学院の入学資格を持っているわけです。だから、優秀な飛行機の委員を養成するのなら、この防衛大学でやる以外にないのですよ。これは、他の高等学校とかほかの大学を卒業した人を、今の進歩した航空機の乗員に養成するというのは容易じゃないのです。飛行機を飛ばす以上は、その優秀なる的確なる乗員というものは、防衛大学に求める以外にないと思う。三百五十九人中わずか六十人でしょう。しかも、その六十人は――私は責任を追及したい、この六十人は、四年のうちの最後の一年間だけ教育したのを卒業さして、浜松の学校で十カ月程度教育して飛行機に乗れますか。乗れやせぬですよ。乗ったら、飛行機がぽろぽろ落ちるのですよ。それはみな国民の税金ですよ。そんなことで領空侵犯云々なんて、できっこないですよ。こういう事情は、あなた直接でなくても、人事局長ですから、知っていなくちゃならない。給与との関係があると思う。航空手当は一日二百七十五円でしょう。そういう航空手当を適当にふやすとか、こういう措置が私は講じられなくちゃならぬと思う。こういう点、時間がかかるから、あまり触れませんが、十分部内で勉強されて、そしてこの自衛官と一般の公務員との給与のバランスということもありますが、自衛官内部の給与合理化についても検討してもらいたい。  そして、自衛隊というものが存在し、国民の税金で何機かの飛行機を作って、飛行機を飛ばしている以上は、やはり事故が起らないように、人命を十分尊重されるように、私は防衛庁当局は努力しなければならぬと思う。いずれ、時間があったら、最高責任者の防衛庁長官にも伺いたいと思うのですが、あなたは、こういう質疑があったということを、部内の方々に適当な会議のときに披露して、検討していただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  54. 山本幸雄

    政府委員(山本幸雄君) ただいまいろいろ、パイロットの養成について、あるいは給与について、お話がありましたが、われわれの方といたしましては、給与の点については、ジェットのパイロットに特に重点を置いてやる、こういう考えであります。これは給与のみならず、事故対策についても十分努力していきたい、こういうように考えております。ただいまのお話のありました点については、教育関係は教育局でやりますし、それから乗員の編成その他については防衛局ですが、それぞれ関係当局と連絡をとりまして、それぞれ所管に伝えまして、適当の処置をとりたいと思っております。
  55. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 時間がありませんから、次に一般職職員給与に関する法律について一、二点伺います。  大蔵大臣予算委員会にあなた御出席になっておられたときに、すなわち三月二十七日の参議院の予算委員会質疑のときに、私が岸総理大臣に対して、管理職手当について質疑したときに、総理大臣は、いろいろなそれには理由もあると思いますが、しかし十分に検討して筋道の立つようにすべきものだと思います。十分に検討いたさせます、こういう答弁をされております。それは、管理職手当全般について非常に不合理なところがあると私は指摘したわけです。たとえば本庁、東京に役所がある。そこに勤めている人は、課長さんでもみんな給与の二五%の管理職手当をもらうわけです。ところが、地方庁に在勤している人はそうはいきません。よくて一八%ですか最下の一二%、それから国家公務員の教育公務員をとった場合、私が指摘しましたように、大学の学長は一二%しかもらわないのに、大学の事務局長は管理職手当を一八%もらう。多いわけです。それから、東大の医学部の事務長とか工学部の事務長は、管理職手当はゼロです。もらいません。文部省の課長さんは二五%もらえる。ところが、定員わずか百九人の小樽大学の事務局長は、管理職手当を一八%もらっておる。これは昔の高文万能の、事務当局が羽ぶりをきかしたその官界の一つの流れが、こういへところにまだ流れておる。不合理です。  今度、小中学校並びに高等学校の校長に管理職手当を出す。それは七%ときめたわけです。七%の根拠をただしたけれども、答弁ができない。一二%、一八%、二五%と区切ってある、それを教員だけ特に七%にした答弁ができない。人事院総裁が言明したように、管理職手当をもらう人は超勤をもらえない、超勤をもらう人は管理職手当をもらえない。どっちかもらうことになっておる、日本の状態では。ところが、このたび教員に対する管理職手当は、校長だけ異例にも七%という低額のものを与えて、教員には超過勤務手当を与えない。しかも、幼稚園の園長さんに対してはこれは与えない。それから国立の高等学校、中学校、小学校の校長にも管理職手当は従来からないわけです。ともかく政治的に出してきた管理職手当だから、ばらばらなんですね。人事院総裁以下答弁できなくなってしまったでしょう。  そこで、岸内閣総理大臣は、矢嶋委員のお話でだいぶ明かになりました、そしていろいろ問題があるから検討させますということを言ったのですが、その国会がまさに解散して終らんとしておるのに、お答えがないわけです。この点は大蔵省とも非常に密接な関係があるわけでありまして、総理意向に沿ってどういう検討がされたか、また今後いかように検討されようとしておるのか、大蔵大臣にお伺いいたしたいと思います。
  56. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 管理職手当は、御承知のように、人事院規則で人事院がきめておるのであります。そこで、大蔵省といたしましては、人事院が総理府と連絡をいたしまして検討をただいまいたしておると思いますが、なお今後検討を続けていきたい、かように考えておる次第であります。現実にどういうふうになっておるか、これはなお必要がありますれば、事務当局からお答えいたさせます。
  57. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点でもう一回伺っておきますが、学校長に管理職手当を出すとなると、今の日本の給与に対する法律並びに基準からいって、一二%出さなければ筋が通らないのですよ。そうして校長に一二%出したら、教員に超過勤務を出さなければ、これまた筋が通らない。そういう筋の通るように検討させるということを、岸総理は答弁したのです。これは直接責任官庁である文部大臣でも検討されているようでありますが、そういう責任官庁で検討されて、大蔵省に協議された場合は、総理の答弁ですから、十分それに応ずるべきであり、また応ずる用意が私は大蔵当局にあられると思うのですが、念のためにそれを伺っておきます。
  58. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは、大蔵省も一緒になって、十分連絡の上で検討を加えるつもりでいたしておりますから、その結果につきましては、むろん妥当なものと考えますので、それはその通りにいたしたいと思います。
  59. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それから、通勤手当で百円を控除するという活字がありますね。これを先般ちょっと説明を承わったわけなんですが、ちょっと納得しかねるところがあるのですが、よくわかるように、百円を控除した理由一つ説明して下さい。
  60. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 通勤手当を算出いたします場合に、実費相当額から百円を控除することにつきましては、先般一応御説明を申し上げたわけでございますが、なお、重複するかと思いますけれども申し上げますと、現在職員の俸給をきめます場合には、生計費をその算定の一部の基礎として利用いたしておるわけでございますが、そういう関係と、それから生計費の実態等を見ますと、通勤に要します経費というものは、ある程度はいわば平均的な形におきまして俸給の中に含まれているというふうに考えなければならないと思うわけでございます。従いまして、今回通勤手当は俸給のほかに別に支給するわけでございますが、その際、通勤に要します経費を全額基礎といたしまして、通勤手当支給することにいたしますと、いわゆる俸給に含まれておる部分と通勤手当とが重複支給という関係を生ずるわけでございます。その重複支給を調整するという意味合いにおきまして、実費相当額から一部を控除するということにいたしたわけでございます。  その一部控除額を百円といたしましたことにつきましては、理論的にはいろいろな論議が可能でございますけれども、この手当の性質等を勘案いたしまして、現に国家公務員で町村に在勤しております者等につきまして、かつて調査いたしました通勤費の平均額が大体百円程度でございますので、まあ一般的に共通して負担していい、いわゆる俸給の中で負担してもいい金額としては、この百円程度が一応目安になるというふうに考えましたことと、それから、この新しい手当は、もっぱら徒歩による通勤者には、通勤距離のいかんにかかわらず、手当支給しないということにいたしておりますので、それとの均衡を考慮いたしますと、百円程度の控除額で大体妥当なところになるのではないかというふうに考えまして、百円といたしたわけでございます。
  61. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたの説明されることそれ自体は、すなわち説明されんとしていることはわかりました。が、いかにも他人の要求を削減しょう、削減しようというような気持でいつも仕事をされる主計官の性格が、この法律にはよく出てきていると思うのだね。なぜ百円を控除したのか、百円というものは、どういう根拠からこの百という数字が出てきたのかという点については、納得しかねる面がありますが、まああなたの説明だけは、言わんとすることだけはわかりました。  最後に、一つだけお聞きしたいのは、片道二キロメートル未満は除くことになるわけですね。それで問題は、この国家公務員の大部分には問題ないと思うのですが、地方公務員の中でも教育公務員の場合に、かなり私は相当数の人が問題点が起ってくると思うのです。それは僻地に勤務している人ですね、これはどういうふうに解釈されているのか、それを明確に承わりたいと思いますが、公務員の中で僻地に勤めている人の一番多いのは、地方公務員の教育公務員だと思うのです。あなた方御存じないと思いますが、私もそうよくは知らないのですけれども、ともかく馬も牛も通れない所があるわけですからね。それから、自転車に乗るといっても、自転車に乗れない、一本橋をはうようにして渡るというような僻地は、各県に、まあ東京あたりないでしょうが、相当あるわけですね。だから、この僻地に勤めている人は、若干僻地手当というのはあるわけなのですが、医療費とか、文化費とか、あるいは子弟の教育費とか、そういうものを考えたときに、ずいぶん勤労条件というものは問題点があると思うのです。今度人事院の勧告で通勤手当制度が生まれた場合に、やはり汽車とか電車が通り、それぞれ道がある程度開けているようなところを基準にして考えているから、牛も馬も十分通れないというような僻地の教育機関に勤めておられる僻地の教育公務員ですね、こういう点については配慮が私は落ちているのではないかと思うのですがね。  従って、どういうふうにお考えになっておられるかということと、私の考えとしては、人事院規則で僻地校等の指定があるわけですから、だから、そういう僻地校と指定されたところには、二キロ未満でも最低何がしの通勤手当をくれる、支給するというような取扱い方をしなければ適当でないのじゃないか、かように私は考えるのですが、皆さん方どういうようにお考えになっておるか、承わりたいと思います。
  62. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) ただいま仰せになりました僻地に在勤する職員に対する手当でございますが、僻地に勤務しております職員につきましては、お説のような点はあろうかと存じますが、ただそういう事態に対しまして、給与の面で、あるいは手当の面で、どのような処遇をするかということは一つの問題であろうかと存じます。この場合に通勤手当考えましたのは、いわゆる住所なり居所から勤務しております官署までの通勤に要する経費、その通勤のためにいろいろと経費がかかっている、しかも直接に負担しておる経費というものに着目いたしまして、手当の創設ということを考えたわけでございますので、今御指摘になりましたような僻地に勤務しております職員は、私も詳しくいろいろな場合を承知しておりませんけれども、いわゆる小中学校等の分校というような場合になりますと、学校にきわめて近接した所に住んでおる、あるいは学校内に居住しておるというような例も多々あろうかと存じます。そういう場合に、通勤に要する経費としまして手当支給対象にするということは、これはいかがかと思うわけでございます。ただ、そういう勤務の職員に対しまして、いろいろな面からその処遇について考慮しなければならないという点は、お説の通りだろうと思います。
  63. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 大蔵大臣に三点だけお伺いいたします。第一点は、給与三法案のおのおのの予算額が幾らであるか、それから第二点は、特別職給与法のうちで、内閣総理大臣国務大臣内閣官房長官及び総理府総務長官にかかる分の法律の施行をお延ばしになった理由、それから第三点は、この施行の日の延ばされておるのは政務官のように拝見するのですが、そういたしますと、このうちからなぜ政務次官をお除きになったか、この三点をお伺いいたします。
  64. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 予算上どういうふうな金額になるということは、主計局長から答弁いたさせます。  それから、内閣総理大臣及び特定の者が、その実施を将来の法律にゆだねております。これは、今日の内外の情勢から見まして、今こういう官職にある者の給与を上げることが必ずしも適当でないという観点に立っておるものと、私は解釈いたしております。もう一つは………。
  65. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 もう一つは、内閣総理大臣以下ここに掲げられておる官職にある方は、政務官的な色彩を帯びた人を、内外の目下の情勢にかんがみて延ばすというのであれば、なぜ政務次官をこれにお加えにならなかったかと、こういう点であります。
  66. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは、ただいま申しましたように、相当理由が、理論的というよりも、政治的、社会的のいろいろな配慮に基いておりますので、なかなか線が引きにくいのですが、まあ政務次官は、事務次官等との関係も見まして、これははずしてよかろう、こういうふうな見地に立ったわけでございます。
  67. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 内閣総理大臣等は、内外の情勢にかんがみてというのは、相当指導的な地位にある人が、みずから法律給与を上げるということは遠慮した方がいいと、こういう意味でありますか。
  68. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私の解釈では、今日政府としては、物価も上らないように、また上げないように、その他給与関係にしても、できるだけごしんぼう願っておる。こういうふうな情勢下におきまして、国務大臣が、これは理屈をいえば、他との振り合い上こういうことでもいいのでありますが、しかし、今すぐそういうことをするのは不適当であると、こういうふうな見地に立ったわけであります。
  69. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 政務次官は事務次官等との振り合いというお話でありますが、政務官的色彩ということからいえば、ここに掲げられておる人、総理大臣国務大臣以下と同じ立場に立つべき人であると、かように考えますので、そこのところの説明がはなはだ不十分と思いますので、もう一度伺いたいと思います。
  70. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) まあその点になりますると、厳格に申しますると、これはなかなか解釈がはっきり筋が引きにくいと私は思います。まあ率直に申しまして。が、しかし、政務次官のところでは、まあそう高い給与でもありませんので、この辺なら実施してよかろうと、こういうふうなごくまあ常識的な見解に立ったわけであります。
  71. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 先ほど八木委員からお尋ねのございました予算額でございますが、通勤手当の方は、国におきまして二十六億五千九百万円、そのうち一般会計が十七億九千九百万円、大体十八億でございます。そのうち義務教育の半額負担分が五億六千万円、特別会計が八億六千万円、合計で国が二十六億五千九百万円という数字を申し上げたわけでございますが、地方が二十五億四千七百万円でございまして、合計五十二億六百万円、これが国、地方を通じまする通勤手当予算額でございます。  特別職の方は、政府関係が千七百万円、司法、検察関係が八百八十万円、合計いたしまして二千六百五十万円という数字になっております。
  72. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後に、事務次長に事務的なことを一つ伺いたいのですが、参議院は、法案を付託する場合は、省庁別でなくて、内容別にそれぞれの委員会に付託するという原則に立っているわけですね。この国会の付託の状況を見ますと、今給与のことをやっているのですが、裁判官の報酬云々の法案、それから検察官の給与に関する法案というのは、本委員会に付託になっておりませんね。従って、一般職公務員、特別職公務員の給与を全般的な立場からながめて審議する場合に、当該委員として不自由を感じたわけですが、どういうわけで裁判官並びに検察官の給与に関する法律案は当内閣委員会に付託しなかったのですか。こういう慣例になっているのか、慣例になっているとするとどういう理由に基くものか、承わっておきたいと思います。
  73. 宮坂完孝

    ○参事(宮坂完孝君) この議案の付託の件につきましては、たとえば内閣委員会におきましては、国家公務員に関する事項、国家公務員一般法律につきましては、これは内閣委員会でやることは申すまでもありません。しかし、特殊の形態の国家公務員の規定がもし出ますならば、これはそれぞれの所管の委員会におけるものと、かように存じております。これは事項別であろうが、所管別であろうが、変りはないと思っております。従来そういうふうに実施しておるわけでございます。  給与につきましては、内閣委員会には一般職職員給与に関する法律案がかかっておりまして、これと特殊な関係に立つ、たとえば国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律案、あるいは国会議員の秘書の給与等に関する法律案、これは御承知通り議院運営委員会にかかっております。それから、裁判官の報酬等に関する法律案、検察官の俸給等に関する法律案、この二法案は法務委員会にかかっております。また、在外公館に勤務する特殊な外務公務員の給与に関する法律案は、外務委員会にかかっているのが旧来の例でございます。
  74. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは要望しておきますが、実際、法案の内容検討するときに、ちょっと不自由するのですよ。これはいろいろ考え方があると思うのですが、議長の補佐機関である議院運営委員会等で一応検討していただいて、従来の通りでいいならばそれでいいですが、まあ連合審査等の形態をとって、給与関係を所管する委員会給与関係を一切付託して、そうして全般的に、総合的に検討する方がよろしいということになれば、当委員会に付託されると思うのですが、一応事務当局から議院運営委員会等に提示して、御協議していただきたいということを要望しておきます。
  75. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言もなければ、これにて給与関係三法案の質疑を終局することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより三案を一括して討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もなければ、これより直ちに採決に入ります。  まず、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案衆議院送付の原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  77. 藤田進

    委員長藤田進君) 多数と認めます。よって、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案は、多数をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案衆議院送付の原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  78. 藤田進

    委員長藤田進君) 多数と認めます。よって、特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案は、多数をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案衆議院送付の原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  79. 藤田進

    委員長藤田進君) 多数と認めます。よって、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案は、多数をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告の内容、議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例により、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  それから、報告書に付する多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名    〔一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案〕     八木 幸吉  劔木 亨弘     苫米地義三  上原 正吉     島村 軍次  松村 秀逸     柴田  栄  後藤 義隆     増原 恵吉  大谷 贇雄     松岡 平市  大谷藤之助    〔特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案外一件〕     島村 軍次  松岡 平市     大谷藤之助  増原 恵吉     大谷 贇雄  柴田  栄     後藤 義隆  松村 秀逸     苫米地義三  上原 正吉     劔木 亨弘
  81. 藤田進

    委員長藤田進君) なお、午後一時半から岸総理出席を求めて質疑を継続いたします。  従いまして、午後一時半まで暫時休憩をいたします。    午後零時四十三分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十三分開会
  82. 藤田進

    委員長藤田進君) 休憩前に引き続き、委員会を開きます。  委員異動がございましたので、事務局から報告させます。
  83. 川上路夫

    ○参事(川上路夫君) 御報告いたします。  先刻、苫米地義三君が辞任され、その後任として西田信一君が委員に選任されました。  以上でございます。   ―――――――――――――
  84. 藤田進

    委員長藤田進君) それでは、防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、岸総理に対する質疑を行います。御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  85. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先般、時間の都合で、私、質問を保留してありましたので、伺いたいと思います。  まず第一番に伺いたい点は、前々国会以来、国会の正常化に関連して、衆参両院に法案を付託する件について、適当に衆参に配合するがよかろうということが与野党間で話し合いがついておったわけですね。ところが、きょうの段階になって振り返ってみますと、本院へあなたの名のもとに提出された法律案が三十三件、そのうちに、本委員会が先議として付託されたのは二件だけ、あと三十一件は予備付託で出されまして、そして先週の金曜日に六件、土曜日に四件と、衆議院から送って参りましたが、本日午前零時現在、本委員会は、本審査十八件、予備審査九件、これだけの案件をかかえているわけですが、良心的に考えて、あなたは法律案の提出責任者ですが、衆参に適当に振り分けて提出していただかないと、三十三件も提出されたうちに、わずかに二件だけが先議で、三十一件が予備審査であり、それが会期末に一度に送付されてくるというのでは、審議ができないわけなんですが、どういうように総理はお考えになっておられるか、今後またいかように改善されるお考えがあるか、その点をまず伺いたい。
  86. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お話の通り、この法律案件の参衆両院における御審議をスムーズに行うというためには、できるだけ両院に提案する法律案を配分して御審議をはかることは、望ましいことと思います。従いまして、今回におきましても、参議院の先議をできるだけ多くするように努力いたしたのでありまするが、ただ、予算関係の法案は、慣例上、これを衆議院に先に出すことになっておりますので、自然そういうような不つり合いができたことであると思います。従来のように、この両院の関係における審議が一方に片寄るということは、なるべくなくしたいというのが、私どももまた両院の御意思でもあると、十分尊重したのでありまするが、今も言ったように、予算関係のものが衆議院に先議します関係上、そういうふうになっておる次第であります。
  87. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 予算を伴わない法律案というものは、あなた十分御承知のように、数少いものです。大部分予算関係あるわけですね。従って、今後これの改善に善処していただかなければ、当院としては十分の審議ができません。従って、この点については、内閣に重大なる私は注意を喚起しておきたいと思うのです。  そこで、質疑を続けますが、総理は先般、本委員会で、私の質疑に対しまして、中途半端で審議を打ち切り、強行するようなことはしないで、あくまでも慎重審議していただくということを言明されたわけですが、私ども、本日今の時点に立って、できるだけ法律を十分審議して、できるだけ成立させたいという気持でおります。しかし、先ほど申し上げましたような実情でありまして、なかなか意にまかせない点があるわけですが、自民党の総裁であり、かつ岸内閣総理であるあなたに伺いますが、これから予想される解散までに、中間報告等の非常手段をもって法律案国会で成立させるというようなお考えはないものと私は考えますが、念のために伺っておきます。
  88. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 従来におきましても、中間報告等の方法によって議案を成立せしめるというようなことは、ごく例外的な特殊の場合でございまして、私は国会運営上そういうことがあることは望ましくないと、こう考えておりまして、できるだけ審議も、そういう意味において尽して、そうして会期内に成立を見るようにいたしたい、こういうのが私の根本の考えであります。ただ、今回の国会におきましては、解散ということがまことに……。でありましたために、いろいろな、それに関連しての議事の進行の不円滑等があってはいかぬと思って、鈴木委員長ともお会いいたしまして、話し合いによる解散の時期をきめまして、できるだけ一つ、それまでに政府も勉強をいたしますし、野党としても審議の促進に御助力をいただくようにお願いをいたしてきておるのでございまして、根本的の考え方といたしましては、今矢嶋委員お話しのように、そういう非常手段をとることは望ましくないことであり、国会の運営上なるべくそういうことは避けていかなければならぬと思っております。私は、こういう考えで、できるだけ一つ、案件の御審議を促進していただきたい、かように思っております。
  89. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたの提唱によって、話し合い解散が予定され、与野党間で話し合いが進められていることは、あなた御承知通りでございます。で、私は、このあなたの提唱は、衆参の数日前の状況等を勘案するときに、おそきに失したのではないか、こういう私は感じを持っております。あなたはどういうようにお考えになっているか。さらに、このたび新たにこういう提案をあなたはされたわけですが、こういう話し合い解散というものを、先例として今後もやっていくお考えであるのか、その点、お伺いいたしたいと思います。
  90. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 野党の委員長とお話をするという時期がおそきに失したという矢嶋委員のお考えでありますが、これはいろいろな見方があろうと思います。私も決してこれが早過ぎたとは思っておらないのでありまして、十分考慮いたした上においてお話し合いをしたわけであります。あるいはおそ過ぎたというような御批判もあろうかと思いますが、いろんな事情から、私は、この程度がやむを得なかったのであると、かように思っております。  将来の問題につきましては、これは解散をいたします場合、いろいろな場合があると思います。私は、今回のような事情のもとに解散するときには、話し合いということを先例として考えていくことが望ましいんじゃないか。非常な突発事件等の何で、両党の意見を異にし、それについて直ちに国民の審判を仰がなきゃならない、国民もそれを非常に強く要望しているというような時期におきましては、あるいはお話し合いをする機会、そういう余裕がないような場合もあろうかと思いますが、今回のような場合におきましては、できるだけ早い機会に話し合いによってきめて、そうして審議その他を促進するようにいたしたい、かように思っております。
  91. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 本委員会における法律案の審議と関連がありますので、私は具体的にお伺いいたします。私は一週間ないし十日前から、選挙告示は五月二日、投票は五月二十三日と予想しておったわけですが、政府与党幹部の話し合いでは、メーデーの一日に告示して二十二日に投票するということをきめられたやに承わっているわけでありますが、メーデーの一日を告示日にしたということは、私は、メーデー行事と混乱するおそれがあるのではないか、また気を回せば、そのメーデーの行事に対して、選挙をたてに弾圧する腹心があるのではないか、かように懸念するものでありますが、それに対する考えを明快にしていただきたいことと、  それから、さらに重要なことは、わが党からは不信任上程が、話し合いの上で予定されているわけでありますが、その不信任案が衆議院に上程されたならば、あなたはこれを採決してから解散をするということが伝えられておるのですが、そうかどうかということと、  さらに、具体的にしぼって、解散は二十五日か二十六日か二十八日か、いずれの日を予定されているのか。私は、二十六日と予定されているのではないか。それならばそれで、私は今後の法律案を審議して参りたいと思うのでございますが、具体的に明確に一つお伺いいたします。
  92. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 告示の日をいつにし、選挙日をいつにするかということにつきましては、大体五月一日に告示して、そうして二十二日に投票する、それまでに選挙法の改正が成立するものということを前提として、そう考えておるのであります。言うまでもなく、今までの慣例から申して、二十日間の運動期間というのは、告示の日と投票の日を除いて二十日ということになっております。なるべく早く、一日でも――おそくなれば農繁期に近づくことでございますから、国民の大事なこの権利の執行をそういうことのために多少でも支障を来たすことのないように、全国民ができるようにということであれば、一日も早い方がいいと思いまして、さように考えたわけであります。五月一日はメーデーでありまして、この日に告示するということは、今矢嶋委員も御指摘のありましたように、あるいは両方が、選挙運動とメーデーの行事とが重なり合って混乱を生ずるおそれはないかという御懸念でありますが、私も多少そういうことを従来考えて、あるいは二日にすべきじゃないかと考えたのでありますけれども、告示の日は、これは告示すれば、届出をすれば選挙運動を始めてちっとも差しつかえないのでありますけれども、今申しますように、法定の二十日の運動期間というものを、告示の日と最後の投票日を除いて計算をしておる慣行から申しましても、実質的の選挙運動というものは二日から始まるということを考えることが常識的ではないか。その意味からいって、一日に告示しても差しつかえない、そのために混乱を生ずるようなことはないんじゃないかというような考えでございます。当日にしたことを、何かメーデーの行事を弾圧するような意図があるのではないかというような御懸心のようでありますが、決してそういうことではございません。今申しました通りでございます。  それから、二十五日と二十六日の関係におきましては、実は私は、鈴木委員長とお会いしたときに、大体こういう情勢だから、四月末に解散するということが適当であると私は決意いたしました。その日にちは、来週一ぱい審議に充てて、二十六日ではどうかということを私は考えている、ということを申したのであります。これに対して、自分の方では二十四日に提案して二十五日に何すると、上程してもらうというお話がありましたので、そこに一日の差があるわけでありますが、それは両党の幹事長と書記長において、両院における議案等の審議の模様、及び政府においてぜひそれまでに成立させたいというものの審議の状況と見合せて、両者の間においてさらに話し合って決めるということになっておりまして、今まだ二十五日にするか二十六日にするかということはきまっておりませんが、そういうことでございます。決して、二十五日に不信任案の議決をして、そして翌日に解散するというために、一日を置いておるという意味ではございません。  それから、なお、不信任案が出た場合、その審議及び取扱いをどうするかということにつきましては、野党の側の御主張は、両方で、提案理由説明し、反対討論をし、賛成討論をして、そこで決をとらずに解散をしたらいいというお考えでありました。また、これに対して、やはり議案としてそこに提案されておる決議案というものを、国会そのものが処理できないという状況ではないのだから、それは議案として処理、すなわち議決をとって、そこで解散するという考えも私はあると思います。これらのことにつきましては、両党で話し合って、どちらというのでなければならぬという両党も強く主張する何はないだろう。将来の先例にもなることであるから、十分に両党の幹事長、書記長の間で話し合いをして、その不信任案の取扱い方については話し合いをするようにということにいたしております。従いまして、私が、一部の新聞に出ているように、不信任決議案を必ず議決すると、採決するというところまでやらなければならぬということを、強く主張いたしておるわけではございません。両党の話し合いで、これの扱いというものをきめてもらうつもりでおります。
  93. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 時間がないから、法律内容に入りますが、不信任案を議案だからといってそこで採決をして、あとで解散をするということは、これはフェアでもないし、また法的にも非常に疑問点があると思います。この点は、慎重に検討、善処されることを要望しておきます。  法律案内容に入りますが、総理のお考えがわかればよろしいのですから、できるだけ簡単に明確にお答え願います。  三十五年まで年間約二百億円の防衛予算を増額するということは、二年前からアメリカとすでに政府の約束済みのものです。それに基いてこの法律案が出てきた。それから、陸上自衛隊一万人増員ということも、重光さんが一昨年アメリカに行ったときからのアメリカとの約束であります。この六月三十日の米会計年度の終るまでに一万人ふやすということに相なっているので、あなたの立場として一日も早く成立を希望することと思いますが、先ほどから話されていますように、国会は御承知通りの状況でございます。慎重審議をするためにこれを解散後の特別国会まで持ち込むということは、対アメリカ関係で工合が悪いのでございますか、いかがでございますか。
  94. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 今回私ども提案しておりまするこの自衛隊の増強は、昨年春国防会議においてきめました防衛の増強計画目標に対する今年度の年次計画に基づくものでありまして、決してアメリカとの話し合いによって、アメリカとの関係においてどうしなきゃならぬという性質のものでは、最初からないのであります。私どもといたしましては、昨年国防会議においてきめました、そうして今年度の年次計画として予算編成以来ずっと折衝を重ねてきておりますこの案でございますから、これはすでに相当の御審議を経ておりますし、ぜひ成立さしたい、こう希望しておるわけです。
  95. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理は、私の質問に対しましても、さらに衆参の各本会議、委員会においても、核兵器はみずから持たぬ、また他国からも持ち込ませない、アメリカは核兵器を日本の領空、領海、領土内に持ち込まないことを信頼している、こういうことを繰り返し述べられていますが、そこで私は具体的に伺います。  日本の非核武装に関する決議案が、曾称君を代表者として、参議院に提出されております。今、総理のところに回しました。この日本の非核武装に関する決議案に、岸総理は賛成か反対か。もし反対ならば、どの点が了承できないか、お答え願います。総裁、総理としてお答え願います。
  96. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) ただいまここで拝見いたしたのでありますが、私はこの決議の御趣旨について別段反対は持っておりません。
  97. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では、本院へ上程して可決することに、自民党総裁として御異議ございませんね。
  98. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) この決議案そのもののお取扱いにつきましては、これは参議院のそれぞれの機関におきまして、十分取扱い方法をきめていただきたい。私が申し上げているのは、決議案のその内容については私は異存を持たないということを申し上げているのです。
  99. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では、本院にこれを上程して決議することが望ましいとお考えになっておられるわけですね。
  100. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 今申し上げましたように、この趣旨そのものについて私は異存がないし、このことはけっこうなことであるということを申し上げておるわけであります。決議案を、この院の決議案として提案をされ、審議されることが適当であるかどうかということは、院のそれぞれの機関において御決定を願いたい、こう思います。
  101. 矢嶋三義

    矢嶋三義君  私が伺っていることは、趣旨とかそういうことではなくて、この決議案を本院に上程して決議することが、あなたの平素の主張に沿うものであると私は考える。だから、岸個人として望ましいかどうかということを、あるいは望ましくないとお考えになっておられるかどうかということを承わっておるのです。
  102. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お尋ねの点は、岸個人としてのことよりも、先ほどのように自由民主党の総裁としてこれをどう考えているかという御質問のように思うのです。従いまして、私はそう改まってのお尋ねであるというと、改まってのお答えをする以外に方法がないのであります。参議院の機関において御決定を願い、私自身がこの内容につきましては異存は持たないということを申し上げておるだけで、それから先の、案そのものを提案することが望ましくないか望ましいか、あるいはそれを出したらいいか悪いかということについては、これは参議院の機関の御意思に従うわけであります。
  103. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと、奥歯に物がはさまっている感じがします。時間がかかりますから繰り返しませんが、自民党の総裁として、参議院自民党に対しまして、この趣旨はけっこうであるということを意思表示し、参議院の自民党が誤まりなきよう総裁をしてお導きいただきたいことを要望しておきます。  次に伺うことは、ワシントンからのUP電によりますと、十八日、全米新聞編集者協会の年次会議においてアーウイン米国防次官補代理が、日本に核兵器基地を設置したい。それに対しては、米軍幹部の多くは日本に圧力をかけるべきだと考えておる。そうして非常に核兵器並びに核兵器の基地について神経質である日本政府の再考慮を促す必要がある。そのためには、ある程度の圧力をかけるべきである、ということを談話として発表したことを日本の各紙は報じておりますが、これは重大なことだと思う。従って、岸総理は、これに対して何らかの機関を通じて、岸総理並びに日本政府意向を明確にアメリカ側に私は通ずる必要がある。さらに、近く安保委員会が開かれましたならば、そういう席上において明確にこれを議題として取り上げて、こういう考え方に対して抗議するとともに、日本政府意向を明確に伝え、それを貫くべきであると考えるが、総理の所見はいかがでございます。
  104. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) アーウイン国務次官補補佐の言として新聞記者会談における言ったことにつきましては、私も事実は新聞の記事以上にまだ知っておりませんが、この問題に関しましては、従来私ははっきりと、日本政府が自衛隊を核武装をしないということ、核兵器の持ち込みはこれを拒絶するということを言って参っております。その方針には何らの変りはないのであります。新聞記事を見ましても、翌日の新聞では、米当局は否定しておるということが報ぜられておりますし、なお事実を十分確めて、今申し上げました政府の方針、考え方が誤解を受けないように、はっきりとする考えでございます。
  105. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 絶対に基地を設けることを許しませんね。
  106. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) かねてお答えをしておる通り、そういうことは私はこれを拒否します。
  107. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ここで憲法関係に触れたいのでありますが、これは都合によってあと回しにいたしまして、次にお伺いいたしたい点は、米軍に提供しておる施設、かれらが接収しておるのは、建物で二百四十五万坪、土地二億五百四十二万坪であり、東京都内においても建物三十五万坪、土地百九十万坪となっているのであります。しかも、国会周辺のリンカーン・センター、パレス・ハイツが住宅地としていまだに接収されておる。これらは、サンフランシスコ条約締結の当時を考えるときに、一日も早く撤去してもらうべきである、そのように考えるが、総理の見解はどうか。どれだけ努力するかということと、具体的にパレス・ハイツは国立劇場の敷地に予定されておるわけですが、総理もそう考えておるかどうか、その閣議決定を解散前にやるかどうか、それだけをお伺いいたします。
  108. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 米軍の東京都内の基地と申しますか、接収されておる土地等に、建物等につきましては、特に国会の周辺その他のものは、できるだけ早くこれを撤収せしめて他に移転その他の方法を講ずる考えで進んでおります。米軍の方でも、その意図を受けて、そういう方向に準備をいたしておることでございます。  さらに、そこのパレス・ハイツにつきましては、これまた米軍の方で、遠からざる機会に他に移転する準備をいたしておりまして、これがその上におきましては日本に返されることになるのでありまして、その場合にこれの場所をどう使うかということが問題になっております。国立劇場の方におきましては、それをぜひ国立劇場の敷地として強く希望を述べております。また、最高裁判所におきましても、あの土地がそういう場合になれば、最高裁判所の建築の場所として要望も出ております。これらの関係を今調査し、調整をいたしておるわけでありまして、私としては、国立劇場の敷地として、国立劇場の設立関係者の希望に沿いたいと思って、そういう方向で進めておりますが、解散までの閣議で決定できるかどうかは、なお十分検討をした上で決定したいと思います。
  109. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 接収解除並びに劇場の敷地決定は長い間の懸案でありますから、早急に善処していただきたいと要望いたしておきます。  次に質問を進めますが、自衛隊法八十三条に基く災害派遣、それから同じく百条に基く土木工事等の受託、これらは私は積極的にやるべきであるという考えでありますが、総理はどういうお考えを持っておられるか。  ちょっと、答弁のために資料を提供いたしますが、わが国は災害国でありまして、年平均二千五百億円相当の風水害を受けております。終戦後だけでも、すでに三兆円に達しております。それから、今度は火災の方を考えますと、三十年で火災が二万九千九百九十四件、公共建物だけでも百四十五件というものが火災で消失している。その損害実に、三十年度で三百二十億、三十一年で三百八十億という巨額に達しております。さらに、海難事故を見ますと、周囲を海でめぐらしている関係か、海難救助を要するところの事故発生は、台風関係で船を例にあげますと千三百六十三隻、しからざるもので、四千百三十二隻、合せて約六千隻というものが一年間に事故を起しているわけです。  そこで、自衛隊法八十三条に基いて、どの程度の災害派遣が行われているかということを調査いたしてみますと、三十二年で百十一件出動いたしておる程度であります。これは訓練も不十分である、また設備も十分持っておりませんが、今のわが国の自衛隊が存在する以上は、こういう風水害、火災、海難に対しまして直ちに出動できる、そして十分対策が講ぜられるよう訓練をするとともに、設備を充実する必要があると私は思う。  さらに、自衛隊法百条に基く土木工事等の受託につきましては、二十八年から三十二年までの五年間に、自衛隊は六百三十三件、費用にして十六億円の受託をされておりますが、これまた不十分であります。地方公共団体は財政不如意で、なかなか工事ができないでおるわけですが、民間の業者を圧迫しない程度で、特に民間の業者が請け負った場合赤字となるようなそういうところを、自衛隊は地方公共団体あるいは国からの受託をされて私はやるべきである。このたび十地区施設隊が新設されるわけでありますが、この施設設備、さらに訓練に重点を置くべきである。特にこの西日本のように災害が頻発するところでは、私はこういう施設隊を余分に置くべきであるということ、  それから、時間がないから詳しく申し上げませんが、昨年九州に大災害が起ったときには、大体九州の動脈である鹿児島本線が十日間にわたり不通になっております。長崎本線が十五日間にわたって不通となり、そうして延べ四万二千六百四十人を要し、車両約三千九百両というものを動かしている。ところが、復旧に自衛隊は一人も加勢していない。それで、それを追及してみますと、災害等で路線が洗われる、その災害復旧にまで自衛隊は使えない。びっくりしましたよ、私は。それから、土木工事の受託はできるというが、トンネルをあけることはできない、そういう技術と設備を持たない。これでは、防衛庁長官がおられますが、私た大へんなことだろうと思うのです。この自衛隊法百条の精神は生きていないと思うのですね。平素からしょっちゅう西九州は路線が洗われるから、すぐ自衛隊を出動させて、鉄道線路の堤防を築くくらいのことができるようにしておかなくちゃならぬと思う。それくらいの訓練と設備は私はやるべきだと思うのです。国鉄当局に聞きますというと、ずいぶん膨大な数字を出しておりますが、大村駅にちょっと五十人、半日出ただけで、鹿児島本線、大村線、長崎線一切出ておりません。不思議に思って聞けば、使えない。これは私は設備を整えるとともに、平素からそういう訓練をすることが、自衛隊法百条の精神に沿うものと思いますが、総理の確たるお考えを承わりたい。  それから、施設諸部隊の配置については……。
  110. 藤田進

    委員長藤田進君) 論点を多岐にしないでやられたらどうですか。
  111. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 施設部隊の配置につきましての考えは、ちょっと横におる防衛庁長官から簡単にお答えいただきたいと思うのです。
  112. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 日本は、御指摘のように、非常に災害が多いのでありまして、自衛隊の災害活動につきましても規定が設けられており、また土木工事等の場合に出動する場合の規定も設けられております。御趣旨のように、平素からそれについての訓練やあるいは施設等につきましても、できるだけこれを充実する必要があると思います。今回の増員につきましても、施設部隊の増加を防衛庁としては特に考えておりまして、できるだけそういう場合には出動する、またその効果を上げるように平素から訓練等も心がけていきたいと、かように思っております。
  113. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 私から総理の御答弁補足をして、またお尋ねの点についてお答えいたします。  第一点は、災害出動の関係でございます。これは御承知のように、わが国は非常に災害の多い所でございます。その意味において、昨年中も相当の多数の自衛隊員をこのために派遣いたしました。御指摘の南の鹿児島方面の何か鉄道の関係ですね、これは大体都道府県の知事の要請を待って行くということに相なっておるのでございまして、当時五万五千の自衛隊員を延べ発動したというわけで、相当その目的は達したように思いまするが、御指摘の点については、なお十分研究いたします。  なお、施設部隊の土木工事等に対する委託を受けての工事、これも非常に重点を置いております。従って、三十三年度の一万増勢の中にも、この施設部隊、地方部隊の実体の増員、また自然この混成団の中にも施設大隊を置こう、こういうわけでございまして、一割以上はこういったものに対して充当するわけでございます。なお、装備に関しては御指摘の点もありますことで、これは予算関係と見合って、今後十分に充実いたしたいと存ずる次第でございます。
  114. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に、憲法との関係について伺います。これはきわめて重要なところであります。総理は、法治国家の者は守られなければならぬということを言っておりますが、この点、私は確と承わりたいと思います。  御承知のごとく、憲法議会の当時、自衛権の発動としての戦争は認めない、こういうことが言われ、吉田内閣のときに、戦力に至らない範囲の自衛力は持てるということを述べております。忘れもいたしませ、二十七年三月六日に、吉田さんは、自衛のためなら戦力を持つことを禁ずるものではないという答弁をして、大へんなことになって、そうして三月十日に、自衛のためでも戦力を持つためには憲法改正を要すると断言いたしますと、こういうふうに速記に残しております。ところが、鳩山内閣以来、岸内閣も、自衛のためなら戦力は持てるということを言われておるわけなんですが、国家の基本法である憲法の解釈はかくも変ってよろしいものでありましょうか、どういうお考えですか。
  115. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 憲法だけじゃなしに、法律の解釈につきましても、いろいろな意見があることはこれ当然で、いろいろな学説もあります。今御指摘になりました自衛のためには戦力は持てるか持てないかということでありますが、私は、国が独立国である以上は自衛権はこれを持っておる。従って、その自衛権を裏づけるに必要最小限度の実力を持つということは、自衛権がある以上は当然許されることである。それは、その実力は、いわゆる普通に――憲法論でなしに、普通の観念からいうというと、戦力というものに当たる場合もあろうと思いますが、そういう自衛のために必要最小限度の実力というものは、憲法九条第二項によって禁止されておる戦力には入らないと、こういうのが私どもの解釈でございます。
  116. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは、メモして、具体的のお答えを願いたいと思います。  憲法に禁止している戦力とはどんなものか、旧日本の軍隊が持っておった力はいずれの戦力か、自衛のための戦力か、自衛でないための戦力か、現代世界のどこの国にこの自衛のためでない戦力があるか、あるいはないか、明確にお答え願います。
  117. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 今お答え申しましたことによって、その反面において、憲法で禁止しておるという戦力は、自衛権の範囲に属する実力以上の力を戦力として禁止しておるわけであります。すなわち、われわれは自衛権があり、その自衛権を裏づけるについて必要最小限度の力までしか持てないというところに、一つの制限があり、憲法九条の二項でいう戦力はそれを越えた、また上はどこまでも限りのない力、これが憲法において禁止されておる。戦争前における日本の軍隊の持っておった力は、これは私どもがいう自衛のための、自衛権の内容をなす必要最小限度の実力を越えておったと思います。今日、世界の大国はいずれも、私どものいうような自衛権の範囲に属する必要最小限度の力以上の戦力を、大国は、いろんな大国も持っておると、私は認定いたしております。
  118. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 憲法解釈は非常に詭弁です。しかし、具体的に伺わないと時間がかかりますから、具体的に伺いますが、あなたの解釈をもってすれば、戦術用小型核兵器を持てるのじゃないのですか。また、持つつもりではないのですか。いかがですか。
  119. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は、憲法の解釈としては、この核兵器というものの名がつけば持てないという規定にはなっておらないと思う。原水爆のごときものが持てないのは当然でありますが、今おあげになりました小型の戦術的核兵器とおっしゃるのがどういうものであるか、具体的に私はよく承知いたしませんけれども、ことごとく、核兵器と名のつくものはいかなるものをも禁止していることにはならないと思う。しかし、これを持つ意思があるかどうかということにつきましては、持つ意思はない。いかなる意味においても核兵器をもって自衛隊装備をする意思は持たないということを、従来明確に申し上げております。
  120. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 アメリカは、戦術用小型核兵器を日本に持たすべく、今一生懸命になっているわけです。おそらく防衛庁長官には連絡があったと思うのですが、あなたは拒否いたしますか。
  121. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) これは、私が従来、国会を通じて国民の前に、また国際的にも明らかにいたしておりますように、いかなる意味におきましても、核兵器をもって装備する意思は持っておりません。
  122. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう二、三点伺いますが、外国の飛行機が日本の領空に入る、これは侵略ですか、侵略でないのですか。
  123. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 領空に入っただけで、その客観的事実を侵略と見るかどうかということは、私、なかなかむずかしかろうと思います。たとえば、外国の軍艦が領海に入ってきたからというので、直ちに侵略と見るかどうかということはできない。領空の場合におきましても、やはりその意図を明らかにしなければ、誤まって入ってきた場合、あるいは単に通過するような意味においてやったとか、侵略の意思全然なくして入ってくるような場合もありましょうから、それはただ領空を侵したというだけでもって侵略であるということには、直ちにはいえないと思います。
  124. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこで問題が起ると思うのですね。たとえば、北海道の上空にどこかの飛行機が来る。そうすると、領空侵犯で退去、着陸を命ずる。応じないで相手が一発撃ったからといって、今度は刑法三十六条の急迫不正の侵害に対する自衛権の発動として、これに武力行使をやる、それは自衛隊法三条の目的に沿うているのだというのですが、自衛隊法の三条は、直接侵略並びに間接侵略に対して対処するということになっているわけです。従って、領空侵犯の場合に発砲するということは、これは武力行使で、私は今の憲法上許されないことだと思う。これは、金森さんが憲法国会で武力は持てないということを答弁しております。そういうことをやれば、どちらが先に撃ったかわからぬですよ。蘆溝橋事件でもそうだったのですから、どちらが先に撃ったかわからぬ。そこで、ここに紛争が起る。そういうことは憲法の根底の精神、これに私は反すると思うのです。だから、先般来答弁しています、――これは前に本委員会で尋ねたことなんですが、領空侵犯に対して発砲行為をやるということは、これは憲法の根本精神に私は反することで、そういうことはできないと思うのですが、総理の見解はいかがですか。
  125. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 侵略でなくて領空侵犯の場合に、領空侵犯の事実をなくするために、退去やあるいは着陸を命じてこの事実をなくするという措置のとれることは当然でありますが、その場合に、その領空を侵犯した飛行機から発砲をし、日本の方においてその領空侵犯の事実を排除しようと努めておるその行為に対して危害を加えるというような場合、この場合にはいわゆる刑法上における正当防衛というような事実に当るような事態が起ってきておるという場合におきましては、私は自衛隊の職務として、その領空侵犯の事実を排除するためにこちらも発砲して、そうしてその危害を加える事実をなくするということをやりましても、いわゆるそれが侵略に対する防衛出動というような意義のものではない、いわば一つの警察的な行為の現われである、かように解釈をいたしております。
  126. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もうちょっと伺いますが、安保条約の第一条並びに第三条にある「日本国内及びその附近に配備する」云々という、この「日本国内及びその附近」という「その附近」とはどこをさすのですか。沖繩が入りますか、入りませんか。
  127. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) これの観念として、「日本国内及びその附近」という何には沖繩を含むと、その規定からだけは一応解釈もできると思いますが、しかし、沖繩に米軍が配置されておるのは安保条約に基いているものではないのでありまして、安保条約による「附近」というのは、日本の領土ではないが、公海等の場合も予想して、「日本国内及びその附近」と、こういう言葉が使われている、こう思います。
  128. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうすると、沖繩は入るという考えですか、入らぬという考えですか、明確に伺います。
  129. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) この解釈としては、私は今の状態では入っておらない。すなわち、あそこに配備しておるものは安保条約に基くものではない、こう解釈しております。
  130. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 従って、行政協定の二十四条の「日本区域」は、もちろん沖繩は入らぬわけですね。
  131. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 現在においては入らないと思います。
  132. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは、沖繩に他国から攻撃があった場合は、日本区域に入っていなければ、日本並びに日本の自衛隊としては共同措置をとる必要はないわけですね。それを要請されるわけはないわけですね。
  133. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) いわゆる安保条約、行政協定上の要請を受けることはないと思います。ただ、私は、日本の自衛権というこの観念は、日本の領土、主権を持っておる全面に及ぶものであって、沖繩については潜在的主権を日本が持っておるという意味において、日本の一部であるという考え方は別の観点から持っております。
  134. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうしますと、沖繩にすでに核兵器があるわけです。で、沖繩は半永久的にアメリカは占領すると言っておる。ソビエトはそれに対して万一の場合は報復すると言っておるが、従って、わが潜在主権がある沖繩にアメリカの今のような政策が推し進められるとなると、万一沖繩に事件が起った場合には、共産圏からあるいは報復されるかもしれない。ずいぶん沖繩は危険な立場に置かれておるではないですか。従って、日本としては今まで以上に沖繩の施政権の返還を求めて、そうして沖繩はああいう軍事基地としないようにすることが、私は沖繩の安全のために必要であり、また日本国憲法の精神に沿っておると思う。沖繩をあのままにアメリカがすることを唯々諾々として許容しておる日本政府のあり方というものは、沖繩の安全のためにも、また憲法の精神からいっても、私は許すことのできないことだと思うのです。憲法をそのときどきで都合のいいように曲げて解釈する、そうしてわれわれの質疑に対しては詭弁を弄されておるということについては、私は非常に不満である。いかようにお考えになりますか。
  135. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 先ほど来私のお答えを申し上げておる憲法論が、あるいは矢嶋委員のお考えの憲法論と違っておるかもしれませんが、今お言葉には詭弁を弄しておると、こういうことでありますが、私どもは私どもの解釈が正しいという見地に立っておるのでありまして、詭弁を弄しておるつもりは毛頭ありません。沖繩の施政権を返還してもらうことが必要であり、これを強く要望しなければならないという矢嶋委員の御意見に対しましては、私も全然同感でありまして、できるだけこれに努力をいたしたいと思います。
  136. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 非常に残念ですが、時間が来ましたので、これで終ります。沖繩の問題にしましても、また北方の領空侵犯に対する日本政府のとるべき態度についても、私は憲法上ずいぶん問題があると思う。昭和二十八年十一月十三日に岡崎当時の外務大臣とロバート・D・マーフィー・アメリカ合衆国の全権大使との間に交換された、領空侵犯の排除に関する往復文書ですね、これはやっぱり、私は、日本国憲法の精神からアメリカに依頼するという形になっておると思うのです。根底にそれがあると思う。だから、日本で飛行機を持ち、武装して、そうして日本の領空侵犯に対処するというならば、どうしても私は憲法を改正して、そのもとに日本の戦力というものを持たなくちやならないと思う。憲法をそのままにしてこういうことをやられるということは、私は国家の基本法である憲法に対する冒涜である、かように考えざるを得ないわけで、この点については厳重に岸内閣に私は注意を喚起いたして質問を終ります。
  137. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 ただいまの沖繩の施政権の問題に関連して、一点だけお伺いしたいと思います。  岸総理はしばしば、沖繩の施政権返還については従来も努力してきたし、今後も努力すると言明せられておるわけです。一方、核兵器の国内持ち込みについても、極力これを排除する、そう言っておられるわけですが、このことは明確に矛盾しておるんではないかと思うのですが、この点をはっきり所見を伺いたいと思います。
  138. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) ちょっと御質問の趣旨が私にははっきりしませんが、私が施政権の返還を一方要望し、日本に対しては核兵器の持ち込みはさせないと言うているということが、矛盾しておるということですか。
  139. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 そうです。
  140. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は実は、矛盾しているとは考えません。
  141. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 もし、かりに沖繩の施政権が返還されたと考えるならば、沖繩には当然に核兵器は持ち込めないわけですね。返還されたならば、沖繩に核兵器は持ち込まれないことになるわけです。ところが、現実には沖繩は原子基地化されておる、そういう現実があるわけです。そこで、かりに施政権が返還されたとしても、現実に沖繩に原子基地があるということ、そのことをどういうふうに処理するかということ、これは、明らかにこの二つのことに矛盾があるのではないか、こういうように思うわけです。
  142. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は、沖繩の施政権が返還をされるならば、これは完全なる日本の領土として、いわゆる潜在主権が外に現われた完全なものになりますから、従来私が主張をいたしておりますように、日本の自衛隊というものは核装備をしない、だから、持ち込みをさせないというこの原則を、やはり沖繩にも実現するように十分努力しなければならない。すなわち、もしも、御意見のように、あそこが原水爆の基地になり、核兵器の装備もできておるとするならば、これは撤退してもらう、こう考えております。
  143. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 先般の委員会政府の憲法九条の解釈を伺ったのですが、念のために、その点をもう一度総理に確認しておきたいと思います。  第一点は、九条は、全体として国際紛争解決の手段としての戦争は放棄しているが、自衛戦争はこれを否定していない。それから第二点は、憲法第九条二項の「前項の目的を達するため、」とは、一項全般を受けておるものである。三は、一項、二項ともに自衛戦争は禁止していない。第四は、交戦権否認の規定は無条件であって、侵略戦争にも自衛戦争にも適用される。こういうふうに承わっておりますが、間違いはございませんか。
  144. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) その通り考えております。
  145. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで、なお念を押したいのでありますが、「前項の目的を達するため、」が一項全体を受けておるという意味は、どういう意味でありますか。
  146. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 一項におきましては、侵略戦争は一切やらないということと、いわゆる国際紛争を解決するための武力を行使しないということ、自衛権は、国家の基本権であるところの自衛権はこれを否認しておらない、これは持っておるということを含んでおると思います。
  147. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そういたしますと、「前項の目的を達するため、」というのは、国際紛争を解決する手段としての戦争以外、自衛戦争に備えるための戦力の保持は禁止しておらぬ、こういうことになると思うのですが、いかがですか。
  148. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 自衛権のこの意義は、他から急迫不正の侵害を受けた場合にこれを実力をもって排除するということであろうと思います。その範囲内のものは、先ほど来お答え申し上げましたように、必要最小限度の力は二項で禁止しておる戦力には入らない、こういう解釈をいたしております。
  149. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今の御答弁と前の御答弁とには、私は矛盾があると思います。と申しますのは、一項も二項も自衛戦争を禁止していない、こういうのであれば、この二項の戦力不保持の規定は自衛戦争には関係ない。もう一つ言えば、「前項の目的を達するため、」というのは、一項全般を受けているというが、その一項の意味は、国際紛争を解釈する手段としての戦争放棄と、こういうことを受けているのだと、こういえば、もはや二項からは自衛戦争を行うための戦力の関係は排除されておる、こう思うのでありますが、あとの御答弁では、自衛戦争を行うための戦力は第二項に禁止されておる戦力に達しない、つまり本質論と程度論とが混合された御答弁であると思います。その点はいかがですか。
  150. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 解釈として、自衛権を持っておるということは一項において明らかにされておりますが、自衛権があれば、それならその自衛権を行使するために必要な力であれば無制限に持てるかということになりますというと、私は持てないと思うのです。われわれが自衛権を九条の一項で認められている。それを裏づけるに必要な最小限度の……。他に脅威を与えるがごとき大きな力は、たとえ自衛権という名においても私は持てないのだというのが、私どもの解釈でございます。
  151. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そういたしますと、最初におっしゃった、一項、二項も、自衛戦争はこれを排除しておるのだということは間違いで、一項では自衛権に何ら関係ないし、自衛戦争にも関係ないが、二項では自衛戦争というものは戦力の程度に関しては関係があるのだと、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  152. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 今の八木委員のお言葉でありますが、自衛戦争とか、あるいは侵略戦争というと、多少私は誤解を生ずるおそれがありはしないか。ことに交戦権というものに関連して誤解を生ずるおそれがあると思うのでございますが、われわれができるのは、自衛のために必要な自衛行動という性質のものだろうと思うのです。いわゆる自衛戦争は、これまで自衛戦争と申しますというと、たとえば過般の大戦においても、各国は、日本におきましても、自衛戦争だというふうな解釈もある、考え方もあると思いますから、私はその誤解を避けるために、われわれのやり得る行動は自衛行動だと。自衛戦争とか侵略戦争とかいう言葉は実は使いたくないのでありますが、その自衛行動というものについては、先ほど来申し上げておるように、われわれは自衛権あり、その自衛権を裏づける必要最小限度の実力というものは持って、他から急迫不正な侵害を受けた場合には、これを排除するに必要なる行動をとると、これが自衛行動であり、また、われわれが自衛権を持っており、これを裏づけるところの自衛隊を作っておる趣旨が、そこに限界がありまして、自衛のためならいわゆる交戦権を持った広義の戦争ができるとか、あるいは自衛のためならどういう兵器を持っても、またどういう力を持ってもいいのだということは、私は憲法九条の精神ではないのだろうと、こういうふうに考えております。
  153. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 どうも同じことを繰り返しておられるようでありますが、つまり、第二項の戦力は、これはその程度いかんによっては禁止され、程度いかんによっては禁止をされておらない、自衛に基く準備のための最小必要限度の実力というものはこれは戦力に至らないのだと、こういう解釈だと思うのですが、そうではないのでございますか。
  154. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 第二項において禁止しておるこの戦力には、私は二つの何があると思います。一つは、それを装備する目的と申しますか、国際紛争を解決する手段としての装備なり実力を持つということも、これは禁止されておる戦力に入ると思います。しかし、目的がそういう目的でないとしても、この必要最小限度を越えたと思われるような膨大な実力を備えることは、やはり憲法九条第二項において禁止されておると、かように考えております。
  155. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 くどいようでありますが、目的論からいえば、その規模のいかんにかかわらず、第二項は禁止されておる。それよりも大きくても自衛戦争ならば禁止されておらぬということならば、非常にそこはこんがらがっておりまして、やはり私は、吉田内閣が言ったように、端的に申しますと、吉田内閣が近代戦争を遂行するに相当する実力、これを岸内閣としては、自衛戦争を行うに最小限度の実力と、こうただ言いかえられただけだと、こう御説明になれば、私はそれで筋が通ると思いますが、そうではないのですか。
  156. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私どもはやはり、自衛権の内容をなす実力というものにつきましては、量もありましょうが、むしろ量より質に重きを置いて、装備等を改善し、充実していかなきゃならぬということを申しております。今お話しの近代戦を遂行するのに必要な力とかいうようなことにも、きわめて私は言葉自体としては不明確であると思いますが、私はむしろ、今私が説明をいたしておりますように、自衛権を裏づけるに必要な最小限度の実力と。これは自衛権がある以上は――自衛権といっても、ただ空の権利じゃなしに、他から急迫不正の侵害を受けた場合にこれを排除するという実力を伴わなければ、自衛権といっても無意味でありますから、それだけのものは当然持てると。しかし、その内容は、いろいろな国際的の兵器の発達等におくれないように、量よりも質に重きを置いていろいろな研究開発をしていかなければならない。ただ、その場合におきましても、先ほど来私がずっと一貫して申し上げておるように、核兵器では装備しないという一つの限界を置き、かつ他に脅威を与えるような大きな量及び質におけるところの力を持つという意思は持たない。それはやはり憲法九条第二項の精神に反するものであると、かように解釈をいたしております。
  157. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 端的に伺いますが、芦田理論に賛成ですか、反対ですか。
  158. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) ちょっと、私、芦田君の理論、いわゆる芦田理論というものにはっきりしないところがあるもので、賛成とか反対とかちょっと私言い切らないのですが……。
  159. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 法制局長官、簡単にイエスかノーか。
  160. 林修三

    政府委員(林修三君) 実は私も、芦田先生の御議論をとことんまで伺ったことがないわけでありますから、はっきりしたことは申し上げかねますが、いわゆる自衛軍備はできるのだとおっしゃっております趣旨が、いわゆる自衛という目的を備えた軍隊であればいかなる限度のものでも持てるとおっしゃる御趣旨か、あるいは自衛のため必要の限度のものは持てるとおっしゃる御趣旨か、この点は私もはっきり伺ったことはありません。後者であるとすれば、大体今総理が言われたことと同じことに帰すると思います。
  161. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 どうも法制局長官としては私は不勉強だと思うのですが、そこで、私は、総理は、侵略戦争のためのものは程度のいかんにかかわらずこれを禁止するのだ、自衛戦争であれば最小必要限度と、こう言われるのですが、一体侵略戦争のための戦備と自衛戦争のための戦備と、これは観念上は分けられますが、実際上分けられるとお考えですか。
  162. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 両方の区別のむずかしいところもありますが、しかし、ごく明瞭なものもあると思う。たとえば原水爆というもの、これは何ら防衛的、自衛的の趣意ではなしに、他を攻撃し他を破壊するというもっぱら目的でありますから、そういうものは、これは自衛のための、いわゆる自衛権の内容をなす兵器の種類では私はないと思います。そういうふうに、兵器の上におきましても、侵略のため、あるいは国際紛争を解決するために、こっちから進んでいって、そうして他を爆撃し、その他のことをやらなければならないと思いますが、そういうような点におきまして、兵器の点等におきましては、おのずから自衛のための何には限度がありまして、両者の間には区別ができる、かように思います。
  163. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで、話を進めますが、交戦権を否認しておって、その法理論並びに実戦上にどういう不便があるか。ごく簡単に、防衛庁長官と法制局長官に伺います。
  164. 林修三

    政府委員(林修三君) 従来から、これは交戦権の内容を個々的に当ってみれば、たとえば交戦権というのは、大体総合的な観念と申せば、いわゆる戦争をとことんまでやって相手国を屈服させるまでに必要な権限であって、戦時において交戦国が持つ権利、こういうものを総合したものと考えます。従いまして、いわゆる相手国の領土を占領し、あるいはそこに占領地行政をやる、あるいは中立国の船舶を拿捕するとか、そういうような権限が含まれていると思います。そういうものは自衛隊にはないわけであります。そういう意味におきましても、しかし、自衛隊の本質は自国を防衛する、他国からの急迫不正な侵害に対して自国を防衛するという建前でございますから、今申し上げましたような権限はなくしても、私はそう不便だということはないと思います。
  165. 藤田進

    委員長藤田進君) 八木委員、恐縮でありますが、ご存じの通りでありますから、一つそのおつもりでお願いいたします。
  166. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 防衛庁長官への質問は、総理への質問が終った後に伺うことにして、総理に、ごく簡単に伺います。  戦力、自衛戦力を憲法が否定しておるということは、沿革的に、たとえばマッカーサー・ノートにいたしましても、その後の議会、国会における質疑応答から見ましても、きわめて明瞭であります。それから、第一、日本の憲法には軍の規定が全然ございません。世界で五十二国の憲法には、みな軍の規定がございますが、軍の規定がございません。それから、先ほど申しましたが、自衛戦争と侵略戦争を分けるということも実際むずかしい。こういう理由で、私は自衛隊は憲法違反であるということをはっきり実は思っておるのでありますが、  そこで、総理にもう一つ伺いたいのは、現在日本の自衛のための最小必要限度といえば、むろん米軍の実力を包含してのことであると思います。そういたしますと、米軍撤退後に、現在米軍の持っておりまする戦力も、その程度まで日本の戦力がいかなければ日本の自衛が全うされぬということであれば、自衛隊プラス米軍の戦力イコール日本の最小必要限度の自衛戦力、こういうことになると思うが、いかがでありますか、その点が伺いたい。  それから、まとめて伺っておきますが、安全保障体制の問題であります。つまり、外から核兵器の攻撃があった場合に、日本の実力でこれが阻止できないことになれば、アメリカ軍にたよるほかはない。その点について、鳩山総理にいたしましても、きわめてあいまいな答弁をしておられますし、小滝長官にいたしましても、やむを得ないときは核兵器も持たなければならない。鳩山総理は、原子兵器も使わなければならない、こういうふうに仰せられたのであります。津島さんに先般お伺いしたときにも、万一の場合には、これは用兵作戦の問題で、そのときはそのときであるといったようなお答えがございました。そこで、岸総理の答弁にいたしましても、先般の衆議院の内閣委員会での質疑応答で、ある委員に対しては、石橋委員だと私記憶いたしますが、どんなことがあっても、核兵器で応戦をするということは、私の信念としてこれはやらない、こういうはっきりした御答弁がありました。ところが、飛鳥田委員の質問に対する御答弁になりますと、それが少しく怪しくなってきて、場合によっては、アメリカ軍は核兵器を使ってもこれはやむを得ない措置であると思っておる。ここに速記録も持っておりますけれども、時間の関係で省きますが、そういったような、つまりこれも要するにあやふやな御答弁であったわけでございます。  そこで、私の伺いたい第二点は、外から核兵器の攻撃があった場合に、自衛隊法の第七十六条のただし書きにあるように、国会の開会中でもその承認を経ないで緊急防衛出動等ができるというくらいな、非常に差し迫ったことも予想しておるのでありますから、米国と日本が打ち合せの時間がないというようなことも、実質的には起る。核戦争が起り得る場合を、自衛隊自身がすでに予想しておる。また、沖繩から敵の攻撃を防御するためにアメリカの飛行機が核兵器を積んで、日本の領空外のところでその敵機を撃ち落すというような場合があると思うのでありますから、こういういろいろな点を総合いたしますと、やはり日本のごく近くで核戦争が起る、あり得るということは、想像できると思う。そういう場合には、一体日本をどうなさるつもりか。また、それに関連しての日本の周辺の極東軍事情勢というものはいかようにあるか、この点を伺ってみたいと思います。
  167. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私が、自衛権を裏づけるに必要な最小限度の実力と、こう申しておるのは、これは日本の自衛隊の持つ実力だけを意味しておるのでありまして、日本に駐在している米軍の持っている戦力にこの自衛隊が持っている実力を加えたものが、必要最小限度のものであるとは解釈をいたしておりません。アメリカがどういうものを持っておるかは、これは別であります。従って、われわれのこの目的とする必要最小限度の実力はどの程度だということにつきましては、国防会議においてきめて、一つの目標を定め、年次計画でこれを充実いたしておるものがそれでございます。アメリカ軍が駐とんしておって、その駐とんが引き揚げたならば、アメリカが持っておった実力と同じものを日本が持たなければならぬというふうには考えておりません。  それから、核兵器の問題につきましては、これは私明瞭に申し上げておるのでありますが、核兵器では自衛隊は装備しない、また核兵器の持ち込みはこれを私は認めないということをはっきり申しております。そうしますというと、この将来起ってくるところの日本に対する侵略がどういう形で起るかということは、もちろん、いろいろなことを想定もし、いろいろなこれに対する対応策も研究をしなければならぬことは言うを待ちませんが、しかし、かりに核兵器の攻撃があったといたした場合に、これに対してどうするのだという問題が起ります。私は、核兵器の攻撃に対しては、核兵器をもってする以外に防御の方法なしと断定することも、私はまだ早いと思います。しかし、いかなる場合がありましても、日本の自衛隊を核兵器をもって装備しないということ、また核兵器の持ち込み、核兵器で装備したところの外国軍隊の駐とんは許さないというこの原則は、従来私は明瞭に申し上げておりますがゆえに、そういう意味において、最近の国際的なこの軍事科学の発達から見るというと、日本が研究し、開発し、自衛兵器を持つといっても、核兵器は持たぬというところに一つの限界が置かれていると思うのです。しかし、それではとうてい、核兵器を装備しているような軍隊が外国にできれば、日本の自衛力というものは非常に危なっかしいものになるのではないかという御懸念もあろうと思います。  私は、一方において、核兵器で装備して核兵器の戦争をするということは人道に反しており、それは世界からなくさなければならないという強い信念のもとに、あらゆる意味において核兵器の製造禁止や使用禁止に対する努力をいたしております。これをなくすることがわれわれの目的であり、そういうことを強く今後においてもやっていきたいと思います。これは少し余談に入りますが、すでにばい菌の戦術であるとか、あるいは毒ガスを使用するということは、人道に反し、文明の何だから、やらぬという条約もできているような国際間において、核兵器だけはなお許される。今言ったばい菌戦よりも毒ガスよりも、何よりもひどい害悪を人類に与えるこれが、無制限に置かれるということは、これは今の一時の状況であって文化なり、世界が平和を望み、人類全体の力によってこれを禁止するように、今後においても努力したい、こう思っております。
  168. 藤田進

    委員長藤田進君) ちょつと、速記をとめて。    〔速記中止〕
  169. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記を始めて。
  170. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 先ほど、交戦権がなければ実戦の上において何らかの不利があるだろう、それに対する防衛庁当局としての長官の御意見を、答弁が保留になっておりますから、その点だけ伺っておきたいと思います。
  171. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 前回、法制局長官からもお答えいたしましたが、交戦権がない場合は、占領地行政等の権利がないというわけでございます。しかしながら、わが国の防衛自体には支障がないというわけであります。
  172. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今、長官は、占領地だけのことを仰せられましたが、交戦権は、国内においてもやはり問題があるわけです。たとえば、個人でいえば、正当防衛権というようなものですが、敵が日本の国内に上陸してきた場合に、これを迎え撃つということはできますけれども、向うを向いているものに追い打ちということは、自衛権の範囲内においてはできないと思うのです。ちょうど個人の正当防衛権が、向ってきた者を受けて立つことはできるが、そうでない者を、向うを向いた者を切れば罪になるのと同じことで、自衛権の範囲内におきましては、ただ受けて立つだけで、追うことはできない。これはもう少し範囲が広くなりますと、たとえば、自衛のために、長距離砲弾で敵の基地から日本を攻撃してくる、その敵地を先制攻撃をしなければ自衛の目的を達しないというときに、先制攻撃ができるか、できぬかということになりますと、交戦権のあるなしによって相当問題があろうと思います。  先般、これはだいぶ前の話でありますけれども、高辻法制局次長お答えになったのに、海外派兵の問題に関連して、侵略戦争ではむろん派兵ができないが、自衛戦争では派兵も問題になり得る。問題になり得るけれども、交戦権禁止の規定があるからこれはやはりできないというふうに、交戦権と自衛権との間には、やはり相当な実戦上において関係、影響があると思うのです。  占領地行政だけにこれは簡単に片づけ得る問題ではないと思いますので、もう少しこれは具体的なお返事をいただきたい、かように存じます。
  173. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) ただいまの御質問は、交戦権というよりも、防衛、自衛という範囲にはいかなる実力行使が可能であり、また、それが全体から見て、防衛自体であるということになるかと思うのです。で、今の先制攻撃というものが、防衛の範囲を逸脱すれば、これは許されないことだと思います。そういう意味において、これは具体的の場合におのおのそういったような目的に沿うべく実力行使をする、こう言う以外に、今のところで一々個々の場合についてお答えするということはなかなか困難であろうと、こう思います。
  174. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 もう一点だけ委員長のお許しを得て伺うのですが、この憲法の制定当時、金森国務大臣等の御答弁によりますと、九条第一項は問題ないが、九条第二項の戦力と交戦権とは表裏の関係がある。片一方は物的に戦争を不可能ならしめ、交戦の方は法律的に戦争を不可能ならしめておる。この第二項のために、全然自衛戦争の方も、侵略戦争はむろんでありますが、不可能になっておるのだという、非常に交戦権というものにウェートを置いて、終始一貫返事がなされております。吉田内閣においても、多少程度は薄くなっておりますけれども、やはり同じような答弁がなされております。ところが、交戦権の実体について考えてみますと、これは日本の国内の約束として、交戦権を主張しない、交戦者としての権利を日本は主張しないという話し合いを、ただ憲法できめておるというだけであって、国際法上には実は何らの効力がないわけなんです。でありますから、もしも防衛出動した場合に、勝たなければならぬという意味で、かりに交戦権の範囲内に入るようなことでも無視して自衛隊がやるということであれば、その行動に対して、日本国民から、憲法を自衛隊が犯したということの非難を受けますれども、外国からは何も非難を受ける筋合いのものではないと思うのです。  そこで、これほど重要な交戦権の問題でありますから、そういう場合ならば、国際法上の約束であっても外国がこれを日本に対して、その規定をたてにとって、その履行を押しつけるだけの権利もなければ、日本人としては義務もないというので、憲法違反の非難を冒して、日本はそれをやるだけの決意をお持ちになるか。やはりどこまでも憲法違反は困るというので、実戦上不利であっても、この規定の範囲内で戦いをおやりになるか。その辺を、だいぶ突っ込んだお尋ねでありますが、その辺のお考えを明らかにしていただきたいと思うのです。
  175. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) ただいまの御質問は、憲法において交戦権を認めないという規定があると。国際法上は必ずしもこの拘束は受けないでもいいだろう、しかし国内法的にはこの制約がある、そういう場合にどうであるか、こういう御質問だと思います。  自衛隊は、基本的に憲法はもとより、自衛隊法と、この自衛隊法は、各国の軍隊と非常に違った制約のもとに行動することになっている。従って、この法律品が改正されない以上は、私は、指揮権を持った者としても、この法律の規定に沿った行動をとるということでありまして、いわんや憲法については、まあ交戦権の解釈という問題は別でございますが、当然に国内法たる憲法並びに自衛隊法その他の法律のもとに行動すべきである、こう思っております。
  176. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そういたしますと、たとえば軍艦は、国際法上認められておりますから、中立国の船舶を拿捕することができる。ところが、自衛艦は中立国の船を拿捕することができない。戦略上、戦術上不利であっても、中立の船舶は拿捕しないという決心である、こういうふうに承わってよろしゅうございますか。
  177. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) これまた、憲法並びに自衛隊法の解釈上の問題として、絶対に、相手国の商船なりがわが方に敵対するとかいったような場合に、防衛上の必要からいって、これはある程度の国際慣行というものは従ってもいいでしょう。しかしながら、あくまでも自衛隊そのものは、これは艦船といえども、それもみな順守すべき一つの制約があるというのは、これはいたし方ないところであろうと思います。そこで、問題を解決するためには、やはり集団安全保障といったものによる防衛の実を全うするということが、ここに必要になる場合がある。こういうことで防衛の目的が十分達成せられるんじゃないか、こういう場合もあり得る、こう思います。
  178. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 集団安全保障の問題とは関係がないのでありまして、これは十九国会における外務省の条約局長の答弁でありますけれども、軍艦は、国際法上敵船あるいは中立船を臨検拿捕する国際法上の権利を有するが、自衛艦は、国が交戦権を認めていないので、中立船の拿捕はできない。つまり、中立船は自衛艦では拿捕されないというのでありますが、時と場合によってはするというお考えですか、その点はいかがですか。
  179. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 今の、先ほど申しましたが、交戦権を持たないということによって制約する事項が、占領地行政とか、あるいは第三国その他の艦船、船舶の拿捕とかいうことは、これは交戦権というものが認められていない以上においては実行できないかと思います。そういった場合に措置をどうするかということは、これは先ほど申しましたいろいろな共同行為措置、そういったものによって防衛の効果をあげると。そのためにとるべきものは、これは純然たる自衛行為としてやり得るものと思っております。
  180. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと、一回。総理は残念ながら帰りましたが、私も、八木委員と一緒に、十九国会で防衛法と自衛隊法、二法を審議した一人なんですが、当時その憲法論議をやったわけです。それを回顧するときに、最近のあなた方の答弁を聞くと、どうも虫がおさまらない。先ほどの総理の答弁に至っては、どうもおさまらないですね。それで、いずれ総理から聞きますが、防衛庁長官に、今、印象の新しいときに私は一、二聞いておきたいと思う。  最近のようなあなた方の憲法解釈をすれば、憲法九条を改正する必要はあなた方も認めないだろうと思うんです。防衛庁長官として、憲法九条の改正を必要と認めているか認めていないか。私は、あなた方のような解釈であったならば、必要と認めていないだろうと思うんですが、それがどうかということと、  それから、今の外国艦船の拿捕の問題にいたしましても、できぬと言っておったんです。それから、最近問題になっている領空侵犯につきましても、発砲してするところのささやかなる武力行使なんですが、そういうものはできないという解釈をされておったんです。だから、最近、相手次第では、着陸あるいは退去を命じて、聞かない場合には、相手の出方次第では、急迫不正の侵害に対する対抗手段としてこちらも武器を使い得る、ささやかであるかもしれないが、武力の行使ができるという解釈等は、これは憲法に明らかに背反していると思う。  で、総理は、核兵器は持ち込まぬ、持たないということを、非常に声を大きくして言われている。これは憲法の精神で、そうであったならば、岸内閣の手による防衛政策というものは変ってこなければならぬと思う。そこに私は非常な矛盾があると思う。国民が核爆発禁止、核兵器を持たぬという圧倒的な世論だもんだから、選挙も控えているし、票を心配するのでしょう。だから、核兵器を持たぬ、核兵器を持たぬと言う。それは憲法の精神。ところが、そうであったならば、防衛政策というものは私は当然変ってこなければならぬと思う。具体的にこれもあなたにお答え願うんですが、自衛のためなら最小限の戦力というんでしょう。そうしたら、あるいは中共とか、あるいはソビエトのウラジオストック、あの付近でIRBMを備えたとすれば、IRBMだと三千キロか四千キロは飛ぶ。ICBMだと八千キロから九千キロ飛ぶでしょう。そうしたならば、自衛のための最小限となったら、それを迎撃するところのアンチ・ミサイル・ミサイル、ミサイルを迎え撃つところのミサイルというものを持てるということになるでしょう。そういうものを持たなければならぬということになる。この岸さんの考えは、国を守るためにはというそのことと、核兵器を絶対入れませんということとは、非常に私は矛盾していると思う。憲法の解釈というものは一貫していないんですよ。さらに、アメリカ軍は核兵器を持っているでしょう。第七艦隊にしたって、あるいは朝鮮には原子砲がある、沖繩にも核兵器は来ている。オネストジョンも核弾頭をつければりっぱな核兵器。核弾頭をつけられる。事あれば、行政協定二十四条で共同措置を講ずるというんでしょう。そうなると、日本の自衛隊は、この共同措置のときに核兵器を持っているアメリカ軍と共同行動をとるでしょう。おそらくそのときの指揮官というものは向う側がなるわけでしょう。そのことと、その核兵器を持たないということと、それから沖繩に核兵器を置いてあるのを持って帰ってくれ、日本並びに日本の周辺にアメリカが核兵器を持っているものを置いてくれるな、非核武装地帯を作ってほしい、という主張をなされなければ、首尾一貫しないわけですよ。だから、十九国会当時を顧みて、また答弁を承わっておって、少しもあの頭のいい岸さんが首尾一貫していない。  だから、あなたもずいぶん頭のいい人で、東大を銀時計で出られたと承わっておるんですが、今私の伺った、憲法九条の改正を必要としているのか、していないのか。それから、IRBMとかあったら、日本は小型核兵器なりアンチ・ミサイル・ミサイルというものを持てるという解釈がなる。また、持つことが必要になってくるんじゃないか。吉田さんは、あの人は再軍備を推し進める考え方であったけれども、吉田さんは憲法九条では戦力を持てない、こういうことを主張しながら、アメリカの圧迫をはね返してきた。さすが私は吉田茂氏だと思うんです。(笑声)ところが、鳩山さんから岸さんに至っては、アメリカに対して全くノン・ズロースになってしまった。戦力を持てる。だから、持て持てと圧迫を加えているじゃございませんか。それで排除できるというんですか。そういうこととあわせて、私は、非常な矛盾だらけのことを言われておって、国民の不安はきわまりないと思う。いずれ岸さんのお考えを承わりますが、あなたのお考え一つ承わっておきたい。
  181. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) ただいまの御質問の点、核兵器の問題については、先ほど来総理から御答弁がありました。私はその通り考えておりますので、あらためて私からの答弁を避けます。  第二の憲法の改正という問題、これは今の憲法の今日までの論議に徴しましても、どうも解釈等についていろいろな意見が多いようでございます。私どもは自衛権を持っておるということ、自衛行動をなし得るということは、これは世界各国、また国際連合憲章にも認めて、はっきり書いてあることでございます。そういった意味において、今の憲法にそういった点においても解釈の相違があるということならば、これははっきりさした方が私はいいのじゃないかと、こういう考えを持っております。  それから、もう一つの領空侵犯に関連しての御質問があったようですが、これはいわゆる実力行使の、防衛出動による実力行使ということとは全然関係のない問題であります。防衛出動による実力行使、武力行使ということは自衛隊法においても認められ、また、そういったことをやる場合には、国会の承認が要るというような規定もあるわけでございます。しかし、この八十四条の「領空侵犯に対する措置」というのは、これは武力行使をするという建前のものではなくて、国際慣行上どうして領空に不当に、また不法に侵入してきたものを着陸させ、または領空内からこれを退去するかという、措置について適当な措置を講じよう、こういうわけでございます。一種のこれは警察行為でございます。
  182. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 発砲したら、どうです。
  183. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 発砲ということは、これはいつでも、すでにお答えしたように、領空侵犯をした飛行機においてわが方に対して発砲するというようなことがあった場合に、これを自己防衛というか、正当防衛に該当するような場合に、やむを得ずこれに対応する措置を講じようというわけで、これは国際上の慣行においても、各国とも認められた最小限度の防衛の措置でございます。一種の警察行為と同じだ。そういうような意味においては、これをわれわれは武力行使とも言わないし、防衛出動とも言わない。国際慣行に沿った措置をそういった場合に、やむを得ない場合においてとるべきであるという考え方でございまして、彼此混淆しないように、どうぞ一つこれははっきり御了解願いたい、こう思う次第でございます。
  184. 藤田進

    委員長藤田進君) それでは、両案については一応この程度にとどめます。   ―――――――――――――
  185. 藤田進

    委員長藤田進君) 次に、科学技術庁設置法の一部を改正する法律案及び放射線障害防止技術的基準に関する法律案を一括して議題といたします。  御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  186. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ほんの二、三点、簡単に承わりたいと思います。  まず、この電子技術者、まあまあ電子技術者と認定される人は、今、日本に何人ぐらいいるかということと、それから電子工業は、日本の研究所並びに大学、さらに高等学校の段階において、定員が何人ぐらい養成されつつあるか、それは世界先進国のそれと比較してどういう位置づけがなされるか、そういう点についてお答え願いたいと思います。
  187. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) お答え申し上げます。電子技術者と申しましてもいろいろ程度がございますのですが、いわば昔の専門学校あるいは大学を出たような方でございまして、現に電子技術関係の研究あるいは工場等において従事しておる方々は、相当あるのでございますが、私どもの方で、まず研究に従事しておる方につきまして一応各研究所の報告を徴しましたところ、これは官庁の研究所は全部でございますが、民間のところは非常にたくさんございますので、主要なる研究所で統計をとりましたところ、約三千名おるわけでございまして、なお現場の工場においてやります方につきましては、実は私どもの方で的確な資料を現在持っておりません。研究所につきましては、大体そういったようなことでございます。
  188. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それから、大学、高等学校の研究機関のね。
  189. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 大学の学生につきましては、ちょっと今資料を持ち合せておりませんので、今調べまして、すぐお答えいたします。ちょっとお待ち下さい。
  190. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 電子光学関係は、大学、高等学校においてはどの程度設けられ、学生はどのくらいいるのか。それから、日本の電子工学の水準、今の技術者養成計画、そういうものは世界先進国のそれに比すればどの程度のところに位置づけられるのか、それを承わりたいと言っているわけです。
  191. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 先ほどの、まず電子関係の学生の卒業生がどのくらいあるかということでございますが、大体、三十一年末の資料でございますが、やはりこの数も二千百七十名というふうになっておるわけでございます。  それから、どのくらいそれでは海外においてやっておるかというわけでございますが、アメリカの例を見ますると、約一万人でございます。従いまして、わが国はかなりまだ少いといえると思うのでございます。
  192. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 電子工学は、将来、私は世界を制すると思うのですよ。これの進歩した国は国際舞台で非常に優位にあらゆることに立てるようになると思うのです。従って、そういうことを伺ったわけですが、電子光学専門の大学院が、学生を収容している、採用している大学は幾らくらいあって、その定員はどのくらいになっていますか。こういうのは、科学技術庁としては一つの年次計画というものを持っているんじゃないですか。持っていなければ、私は今の世界の進運についていけないと思うのですがね。
  193. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 実は大学の教育の問題につきましては、一応当庁の所管にないものでございますので……。ただ、私どもの方といたしましては、電子技術を導入するしにおきまして、電子技術の学生をもっと増加してもらいたいという要望は、文部省にいたしております。従いまして、その結果、本年度から、北海道、東北、東京、京都大学におきまして電子光学科というものを、文部省の方から増設を計画しておるわけでございますが、当庁といたしましては、ただ、そういった要望を文部省に出すという段階でございます。
  194. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 従来は科学技術審議会でそういう意見をまとめて、意見の具申等をやられておったと思うのですが、今度電子技術審議会を設けられると、そこで私はあるいは諮問に答えたり、あるいはみずから進んで意見を具申すると、こういうことになるのだろうと思うのですが、従って、まあ、あなたの方で科学技術審議会を取り扱われておったのだろうから、知っておられるだろうと思って承わったわけですが、率直にいって、何ですか、日本のこの水準というものは、米、英、仏、ソに比してまだ劣っているのじゃないですか、どうですか。どういうふうに判断していますか。
  195. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) これは、全般的に申し上げますならば、おそらくまだ水準がそういう国に比べて低いということは申し上げることができると思いますのですが、ただ、わが国におきましても、たとえばパラメトロンというような一つの電子光学の発明がございますが、こういったようなものは日本で独創的に発明されたものでございますし、現在わが国においてもそれによる電子計算機等を盛んに今作るうといたしておりますが、こういったものは外国に比べて相当すぐれておるのじゃないかというようなことを考える次第でございます。それから、なお、外国から入れました技術につきましても、たとえばトランジスターというようなものはアメリカの技術を現在取り入れたものでございますが、しかし、工業的に見ますると、かなりそういった製品がむしろアメリカに出つつあるということで、外国の技術を取り入れましたところ、それに追いついたということも、そういう面においては言えるのではないか。なお、先ほど申し上げましたように、電子計算機については、これはアメリカ等に比べますれば、まだおくれているとは思いますけれども、いろいろタイプによりましては、わが国でも相当進んでいるものがありまして、外国においてもそれを賞賛しておるものがあるわけであります。一概に申しあげることは非常に困難でございますけれども、概括して申し上げますならば、まだそういう国に比べて低いのではないかと、そういうふうに考えておるわけであります。
  196. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後に一つ、おわかりになっていたら教えていただきたいと思いますが、電子計算機はわが国に今何台くらいあるか、具体的にわからなくてもいいですが、大まかなところでいいのですが、その中に国産はどの程度できているのか、概況でいいですから教えていただきたい。
  197. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 実は電子計算機にもいろいろタイプがありまして、アナグロ・コンピューターと申しますが、大体の数値を計算するようなものとか、あるいは、時間はかかりますけれども、最後の数字まできっちり出すディジタルの電子計算機とか、いろいろございます。現在の状況におきましては、アメリカのレミントンというところから日本が入れておるのが大部分でございます。しかしながら、現在におきましては、たとえば通産省の電気試験所におきましての電子計算機、あるいは富士電気の電子計算機というようなものが、これはまだ相当数は少いのでありますけれども、おそらく十数台あろうと思います。その程度でございます。しかし、数多くのものは、やはりアメリカ等から入っておるものでございます。
  198. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 簡単に、放射線障害防止技術的基準に関する法律案について、一、二伺います。  こういう法律が今出されたということは、非常に私はけっこうだと思うのですが、むしろおそきに失したと考えます。で、具体的に伺いますが、文部省所管にかかる最初予定された原子炉ですね、それがなかなか場所がきまらないで、阪大と京大で盛んに論争がなされ、あちこちぐるぐる回っておりましたが、最終的にあれは確定したのか、どうか何がゆえにあの程度の原子炉設置があれほどもめるのか。われわれそういう方面に知識が乏しいだけに、私個人的にはあきれているわけですが、その程度では、とてもわが国の原子力開発なんかはおぼつかないのじゃないかというふうに考えておるのですが、結末はどうなったのか、それからどういうところが原因なのか。この法案とも関連があるわけですが、お答え願いたいと思います。
  199. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 結論から申し上げますと、実はまだ最終決定になっておりません。あの問題は原子力委員会が最終的には扱う問題ではありまするけれども、ただいまの段階では、文部省が所管官庁でございますので、文部省がみずからこの問題に関する小委員会を持っておりまして、各界の人たちに御参集いただいて、関係各大学等の援助も得ながら、文部省がこの問題を扱っております。  今までの経緯から申しますと、あるいは文部省側からお答えした方が適当かと思いますが、かわって私から申し上げますと、私の承知いたしております範囲では、科学的な見地からいたしますと、ああいう炉そのもの、あるいはただいま立案しております防護措置を講じますれば、ほぼ絶対といってもいいほど安全なものではないかと考えるのでありますけれども、しかし、またなかなか、別の観点と申しますか、非常にこの問題を極度に危険なものという観点から論じます場合には、何と申しますか、ただいまの防護措置に対する対策等に対して、万全の措置を講ずるという主張に対して、あるいは講じないのではなかろうかという危惧の念を持つ方たちの反対と申しますか、批判がございまして、その問題が学界内部のあるいは問題のようにもみなされまして、ただいま学術会議の方に、その対策と申しますか、見解と申しますか、そういう点を大阪の方から持ち込んで、そうして学術会議自体でその問題を検討しているというふうな段階でございます。従いまして、まだ文部省側といたしましては、この措置で全部科学的にも、あるいは経済的にも、あるいは行政措置と申しますか、一般の国民の、地方の大衆、国民と申しますか、国民の感情的にも全部おさまったということで、原子力委員会で最終的にきめてもらいたいという段階にまで実はまだ至っておりません。
  200. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 われわれは新聞雑誌で読む程度で、素養はないからわからないのですが、もう英国でもソビエトでも、電気までおこるような時代になっておって、日本の理論学術の方は相当に私は高いところに来ているということを聞くのですけれども、学者の間でああいうふうに意見が食い違う。もちろん、日本は地震国の関係もありましょうが、あれほど学者の意見が食い違うというのは、しろうとながら考えて察しかねるのですが、学問的にかくかくの設備をすれば安全だとかどうかというようなことは、何ですか、はっきりと出せないほどそれほど、純学問的にむずかしいものだと関係者は言っているわけですか。
  201. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) ただいまの御質問はまことにごもっともな御質問でありまするが、ただ、日本は原子力の被害を受けたものだからして、それで一般国民の、それからまた学者の間にもそういうことはあるのですが、しかし、今度イギリスへ地震の研究に行った学者、あの行った人はもうちっとも心配をしていないのです。ただ、行っていない人は、こっちにおっていろいろ議論をしておるわけです。これは杞憂から来ていると私どもは思っています。とにかくイギリスへ行ってきた、これは当時の日本におけるエキスパートの人だけ選んでやったのです。その人は口を一致して、大丈夫であるということを言うておるわけでして、だから、原子力委員会としては安全なりとやはり信じているわけで、しかし学者によって見方もありますので、それは一部の学者がそういうこともあると、こう言うわけでありますから、どうぞ御了承願いたいと思います。
  202. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今日まで、わが国で放射線障害の被害者というものはどのくらいあって、その対策はどういうふうに講じられているのか、その概況と、それから長官に伺いますが、この放射線障害防止技術的基準に関する法律案、この法律が成立して適正な運用が行われることになれば、ああいう原子炉設置で何年間も紛争を起して物事が進まないというようなことは、あなたの責任において解消することができるとお考えになっておられますか。
  203. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 実は、今までこの放射線における被害者はやはり相当にあります。それが大体、学者でも、今まであまり大したことでないように思っていたわけです。そうして、知らず知らずのうちに多少受けているのです。ですから、今度はこの規定を設けてやれば、注意さえすれば除けるのです。皆、軽視している結果、受けているのです。ですから、この規定ができて、そうしてこの規定通りにやってくれれば、起らぬと信じておるわけであります。
  204. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) ただいま大臣から御答弁になった通りでありますが、もう少し事務的に申し上げますと、従来放射線の問題のありましたのは、いわゆる御承知のエックス線でありまして、これは直接原子力そのものと関連あるかどうか非常に疑わしいのでありますが、これはもうずいぶん古くから、あるいは広範囲に、日本におきましても大体三万件近い件数がございます。あるいは医療界でありますとか、あるいは鉱工業等で使われております。一方、原子力と申しますか、核変化に伴って発生する放射線を扱うというようになりましたのはごく最近でありまして、日本におきましてもまだ三軒数件しかございません。そこで、この前に御審議になって通していただきました去年の放射性同位元素、アイソトープ関係の法案を、その意味で、至急に新しいそういうものの障害を防止したいというので御審議いただいて通して、ただいまその実施に移しておりますが、それのみではいけない。そうじゃなくて、従来から、古くからあったエックス線そのものからの被害が非常に大きいので、これに対する障害防止も、もっと国として基準を一本にしてやってもらわぬと困るという議論が、大へん出て参りましたので、この放射線ではエックス線まで含めまして基準を作りたい、こういう趣旨でございます。  従いまして、ただいま長官から御説明ありました相当広範囲にありますというのは、従来エックス線関係の方が多うございまして、最近のアイソトーフ関係のいわゆる平和利用という面では、今のところはそれほど大したことはございません。ただ、放射性同位元素、アイソトーフ関係でありますれば、戦争中にありました長崎、広島の原爆関係、あるいはその後に生じましたソビエト、あるいは英米等の核兵器の実験に伴っての被害関係は、ビキニにおける灰等から、御承知のように若干ございます。
  205. 森中守義

    ○森中守義君 正力国務大臣に二、三点お尋ねいたします。  私の見落しであるかもわかりませんが、この設置法の改正の中の電子技術審議会に対する予算の裏づけが出ていないように思いますが、これはどういうことになりますか。
  206. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 予算の計上はしてございます。金額はわずかでございますが、正確に申しますと三十四万八千円でございます。
  207. 森中守義

    ○森中守義君 特別に項目が起されては、入っていないのですね。私もだいぶ技術庁の経費を見てみましたが、この関係という項目はないように見受けますが、どういうことですか。
  208. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 特別な項を起しておりませんで、科学技術庁のたしか行政費の中に入っておると思うのでございますが、私、ただいま予算書を持っていないのでございますが、特別の項は起しておりません。事務費の中にそれが入っていると思います。庁費の中に。
  209. 森中守義

    ○森中守義君 大ざっぱな額は。
  210. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 額は、先ほど申し上げましたように、三十四万八千円でございます。
  211. 森中守義

    ○森中守義君 もう一つ伺っておきますが、防衛庁の方にやはりこういう趣旨のもの、それから金属関係の研究所、航空技術研究所、こういうものが防衛庁にありますね。ですから、この科学技術庁でこういう航空技術であるとか、あるいは金属技術の研究成果というものが、防衛庁との関係はどういうことになるのか、その点を御説明願いたい。
  212. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 金属材料技術研究所、あるいは航空技術研究所というものでございますれば、それは防衛庁ではなくて科学技術庁の所管でございます。防衛庁にはそういう名称の研究所はございませんで、防衛庁には防衛技術研究所というのがあるのでございます。防衛庁の方の技術研究所におきましては、やはり金属材料、航空というようなものを若干研究はしておりますけれども、それは何といいますか、防衛庁の目的の部分だけをやる。つまり何といいますか、戦闘目的と申しますか、そういうような点はそちらでやられるのかもしれませんですが、当庁の航空技術研究所あるいは金属材料技術研究所は、基本的に航空の問題あるいは材料の問題すべてを研究いたしまして、そういった研究成果は、防衛庁のみならず、通産省なり運輸省なり、各関係省庁においてこれを利用するという建前になっているわけでございます。
  213. 森中守義

    ○森中守義君 そういたしますと、結果的に、科学技術庁の方で研究をやられた研究の成果というものは、防衛庁の方にも提供される、こういうことですか。
  214. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) さようでございます。防衛庁のみならず、官庁あるいは民間においても必要な方面にその成果は知らせたい、知らせるようになっております。
  215. 森中守義

    ○森中守義君 もう一つ、先刻も矢嶋委員の答弁に的確なお答えがなかったのですが、現在の時点に立つわが国の科学技術の水準というものが、海外のそれに比べてどの程度に位置づけられるか。また、私は、それと同時に、大よそ現在の科学技術庁の研究目標というものからして、何年くらいたったならば世界の水準に到達するという一定の目標を設定をされておるのかどうか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  216. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 科学技術の各分野におきまして、いろいろ分野ごとには違うものがございますので、的確にお答え申し上げることは非常に困難でございますが、少くともまあ研究者の数とか、あるいは研究費の点から申しまして、わが国はイギリスとか、あるいはアメリカ、ソ連、ドイツ等よりも、現在まだ劣っておるのではないだろうかと思うわけでございます。しかしながら、各分野の中におきましては、たとえば発酵関係の研究の問題とか、その他いろいろございますが、そういった点で、海外から見まして、むしろ日本の方が進んでいるというような点もあるのでございます。でございますので、私ども、技術の内容個々にわたりますものですから一がいに申し上げかねますけれども、今申し上げたような研究者、研究費の数から見ますれば、まだまだ日本はもっと努力しなければならぬというふうに考える次第でございます。
  217. 森中守義

    ○森中守義君 もう一つ伺いますが、先般政府の方で発表された経済五カ年計画、少くともこれは国内における平和産業を中心にした五カ年計画であろうと思うのです。従って、こういう科学技術庁が設置されたということは、あくまでも科学技術をして国内の平和産業に寄与しよう、こういう意味合いでなければならないと思うのでありますが、この五カ年計画の中に、科学技術庁の研究の成果がどの程度見積られておるか、そのことを大臣からお答えいただきたい。
  218. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 実は先ほどちょっと局長が答弁いたしましたが、日本は電子技術については非常におくれているのです。それは私自身の経験から見ましても、実は六、七年前はテレビジョンを始めたときに、私はやはり専門家に聞いたのです。どうしても、日本のこのテレビジョンをやるということには、電子技術の発達が必要なんだ。それだからして、それでは日本はどういう程度にいっておるかということを私は聞いた。そのとき、十年おくれておると言いました。それは日本の電子技術の大家です。十年ほどおくれておるのだというような状態であったのでありますから、その後もあまり、私に言わせれば、そうひどい進歩はしていないと思っておるのです。  ところで、今度科学技術庁というものができて、初めてこれを一つやかましく言うたのであります。従って、この経済企画庁の五カ年計画によっても、あまりこれを、正直な話が、科学技術から見たところ、取り入れていないのです。そこで、今度科学技術庁としては、一つ産業育成についての意見を徴してやるといって、この間ようやくこの意見を発表したのです。まことにおくれて申しわけありません。
  219. 森中守義

    ○森中守義君 まあ概念的にはただいまの答えでもいいと思うのです。要するに、経済五カ年計画のごく大きなものとして、産業の平和利用に科学技術が大いに採用されなければならない。その、要素はどのくらい入っておるかと、私はこう聞いておるのです。  それで、もう一つ、今大臣の答えがきわめて概念的でありましたが、ただいまのお答えからいくならば、政府の内部においても、科学技術が政治の面に、国の行政の面に非常に大きな比重を占めていない。もちろん、科学技術庁が設定されて非常に日が浅いわけですから、それは無理もないかと思いますが、やはり閣内におけるこの問題に対する観念というものは、非常に薄いものだというように理解していいのですか。
  220. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 実は、閣内に薄いことはないのです。今度の岸内閣でも、科学技術ということを重大にとっております。とっておりますが、実際問題で、まだ経済に及ぼすほど、関心は持っておるけれども、それほどここに出ておらぬというわけでございまして、まことに遺憾に思います。
  221. 森中守義

    ○森中守義君 その問題に関連して、大へんにまかいようですけれども、今科学技術庁の中にお入りになっている学者の人たちの一人当りの研究費用は、どのくらいになりますか。
  222. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 科学技術庁の内部の研究所でございますが、実は、科学技術庁が発足新しいものでございますので、ただいま研究所につきましても目下整備中でございます。たとえば航空技術研究所等におきましても、見かけにおきましては非常に多額の経費を要しております。と申しますのは、遷音速風洞というものを一つ作るにいたしましても、十五億円程度の金がかかりますので、目下建設中でございますので、金額は多額に上っております。残念ながら、そういった状態でございますので、実際に研究を開始するというところまで行っておりません。しかしながら、各省を通じまして、研究所の経費を見て参りますと、これは私の方としても、各省庁の研究所に対しまする予算についての意見大蔵省に出すわけでございますから、そういった点で各省のを見て参りますと、大体一人当り三十万円程度予算というふうに記憶しております。
  223. 森中守義

    ○森中守義君 半ばこれは意見みたいにもなりまして、大へん質問の項目ではどうかと思いますが、私ども国会の中でいろいろと、大蔵省と各省庁間の予算上の問題等を承わって参りますと、やはり大蔵省が、予算上、資金上という問題で、所定の事業計画あるいは年次計画というものに、かなり大幅に制約を加えておることは事実です。一般の行政官庁あるいは事業官庁等は、ある程度そういうことも、大蔵省の建前からすればやむを得ないということも、了承できない面もないではありません。しかし、いやしくも科学技術というものは、将来にわたるこれは何といっても国家の投資なのです。大蔵省予算上の制限を加えるべきでないことは、明らかだと思うのです。しかし、行政機関の二つとしての科学技術庁が、大蔵省予算を折衝されるような場合、こういったような問題が大きな障害になつたようなことはありませんか。
  224. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 実は御心配の点の通りなのでありまして、大蔵告とはずいぶん折衝しましたのです。ところが、実際なかなか科学技術庁のことは認めないのです、これは。だから、政府が科学技術を大事にとっておるにかかわらず、実際面にはそういう程度のものなのです。これは非常に予節を削られております。  私がこれについて特に感ずるのは、これは私の管轄じゃありませんが、文部省の管轄でありますけれども、あの大学の研究費なんというものは非常に気の毒なものです。戦争前まではまだ、各省の予算に比べまして、割合にありました。終戦後ずっとその割合が悪くなっております。従って、大学の研究費が少いのみならず、研究の設備でも非常に悪いです。どうしてもこれは大学の研究費をふやしてやらなければならない、そうして設備を改善しなければならぬ。とにかく割合からいうと、戦争前よりも、戦争中よりも、今の方が一番割合が悪いてす。私は、これじゃとても、科学技術が欧米と対抗するなんということは、とても遠い将来だという感じがして、非常に遺憾に思っております。
  225. 森中守義

    ○森中守義君 遺憾に思われるだけでは、問題は解決いたしません。私ども国会で、この科学技術の問題は、あくまでも党派をこえて大いに助長する必要がある。むしろ、将来の日本はこれに重点を置くべきだということを考えておる。それで、ただいまの御答弁からいけば、幾らこの科学技術庁の方でお考えになっていても、予算上、資金上ということで、先刻欧米の水準に極力早く近づきたい、こういう意欲のようでありますが、現状においては、やはり行政機関一つとして予算折衝も困難であり、いわんやその困難の範疇において仕事を進めておいでになるということは、なかなか容易なことでないと思うのですが、結局、結論としては、閣内における科学技術に対する認識が乏しい。まあ、これは一つのわが国の占い形の中における政治的な通念であるかもわかりませんが、国務大臣としてこの問題を、これから先困難な障害をどういうように破っていこうとされるのか、具体的な決意のほどを承わっておきたいと思う。
  226. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) ただいまのお尋ねに対して、私も遺憾に思うておるだけじゃないのです。何とかこれを一つ直したい、こう思いまして、実は科学技術会議というものを提唱したわけなのです。あれは全く、ああいうことで一つ、科学技術会議には文部大臣も入り、私も入り、そうしてそのほか大蔵大臣も入れ、企画庁長官も入れて、それに専門家も入れてやりたいと思うておるわけなのですから……。また、それでやるよりほかに方法はないと、私は科学技術庁長官として思うておるわけです。
  227. 森中守義

    ○森中守義君 もう私はこれで終りますが、今その基礎を固めつつある状態ですから、長官あるいは文部大臣や通産大臣、大蔵大臣、あるいは総理あたりが、その頂点に立って陣頭指揮をされることは大いにけっこうだと思う。しかし、将来の構想として、ややもすると、全くのしろうとである大臣が――おそらく正力国務大臣も科学技術に対してはしろうとだと思う。そういう人たちが頂点に立って、基礎は固って、なおかつ政治家である大臣たちがこの問題にあまり深入りしていくということは、ややもすると、先刻答弁になったように、航空技術の問題等は防衛庁にも提供する。ところが、科学技術庁の目的はあくまでも平和産業ということが基礎になっているわけです。そうすると、研究の成果というものが一種の戦力的な方向に提供されていけば、大へんな私はあやまちを犯すことになると思う。だから、将来の構想として、基礎が固まったならば、いわゆる中堅になっている科学者あるいはそういう学界にまかしてしまうというような御意思はありませんか。
  228. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 仰せの通り、私も大蔵大臣もみなしろうとでありますし、文部大臣もしろうとです。それで、私は、先ほど申し上げました通りに、今後の発展をするのには、専門の学識経験ある人を入れなくちゃならぬ。それでありますから、それから先の科学技術会議には学識経験者四名を入れるという考えで、そうしてその意見は十分尊重して――われわれはしろうとです、しろうとが幾ら考えても足らぬところがありますから、そういう専門家の意見を十分尊重して、そうして科学技術の振興をはかりたいと、こう考えておるわけです。
  229. 森中守義

    ○森中守義君 これで終ります。要するに、ただいまのお答えからいくならば、政治的に科学技術が利用されることはないと、こういう工合に言明できますね。
  230. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) むろん、政治的には利用してはいかぬと、私も確信しております。
  231. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 簡単に二、三点でありますが、この四月一日付で電子技術審議会令という案を示されたのですが、三条に、「会長は、委員のうちから科学技術庁長官が指名する者をもって当てる。」、こういうのを初めて見るのですが、大がい会長は委員の互選ということになっておるのですが、これはいかにも正力国務大臣らしいところが出ているのです。こういう審議会令というものはないと思う。これは当然委員の互選とすべきでありますが、改める用意がありますか。
  232. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 実は私どもの方に航空技術審議会というのが従来ございますが、これにつきましても、学識経験者を総理が任命する格好になっておりまして、同じ格好をとっておるわけでございます。現に航空技術審議会におきましては、やはり航空技術の方におきまする第一人者でありまするもとの東大の中西工学部長が就任されておるのでございまして、私ども、おそらく、こういう形になりましてもそういった最適任者をお選びしまして、そういった政治的な意図のないということは、先ほど大臣から申し上げましたわけでありますが、最も適当な方に御就任を願う予定でございます。
  233. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は国務大臣に伺います。事務当局の見解は要らぬですから。  一体、この審議会とか委員会という、あなたエキスパートで十分御承知通り、民主主義時代になって出てきたもので、この運用いかんというものは、民主主義の進展と非常に関連があるわけですよ。それで、委員をある規定によって選ぶのはよろしいですよ、建前は。委員に出したときに、あなたがうしろでどんなことをやろうと別です。法文としてうたう場合は、会長は委員の互選とするというのが、これは普通の姿ですよ。他にそんなのがあるからといって、委員を委任しておいて、そして会長は「長官が指名する者をもって当てる。」というのは、条文として面白くない。従って、これは互選と改められることを希望しますが、期待に沿うことができるでしょうか。
  234. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 先ほど局長が答弁しました通りに、今までの規定が、大体そういうときには、総理大臣が任命するとか、科学技術庁長官が任命するということになっておるものだから、その意味をとってこれはやったものでありますから、私は、政治的な利用を私自身考えておりません。むろん、そういうことは考えておりません。だから、その点の御心配はないように私は運び得るものと考えております。
  235. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 時間が長くなるから、あまり問答いたしませんが、こういうのは、調べてごらんなさい。国家行政組織法で調べてごらんなさい。大部分は互選になっています。それが民主主義国家における法令のあり方ですよ。任命するとか、そういうことをすべきじゃないのですよ。調べてみたらわかる。これは大部分そうなっておりますから、一つ検討を願いたいと思います。  それから、これは事務当局の答弁を伺いたいのですが、あらゆる審議会や委員会がありますが、それに必ず関係行政機関職員が何人か入るわけです。ところが、どの委員会に行ってみても、関係行政機関職員出席が一番悪い。大がい局長とか次官が任命されているわけですが、出てこない。次官なんかは、来られれば来られるはずだが、大がい課長あたりぐらい出てしおいて、各店の連絡調整をして物事を推進するために入っておるはずの関係行政機関職員が、極端なセクト的立場に立って、ブレーキをかけることばかりやっている傾向がある。だから、今度この審議会の委員を任命するに当っては、そういう点を一つ注意してほしい。そうでなければ、私は関係行政機関職員が入ることは賛成するわけにはいかない。この点一つ、閣議で、国務大臣発言して、そして善処してもらいたい。
  236. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) ただいまの御趣意については、私は全然同感です。で、先ほど申し上げました通り、今までの規定がみなこういうふうになっているものでありまして、これが例なんです。こういうことを思い切って改正すればいいのです。だから、今御注意もありましたし、今度の問題については考慮します。まじめに考慮します。また、それは私は非常に賛成です。
  237. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後に、私は今の内閣ではもちろんのこと、最近の内閣で、私は正力国務大臣ほどの方はないと思っております。そしてあなたは先が見える。あなた独得の千里眼を持っておる。その点に私は非常に御期待申し上げているのですがね。近年まれなる人物だと思っておる。(笑声)そこで、笑いごとじゃない。冗談でなくて、あなたに私、非常に期待しているわけなんですが、最後に二点だけ何っておきたい。  その一つは、日本の科学技術というものは、よその国もありますが、やや民主主義が、なまなかの浸透がし過ぎた結果、調子がとれておらぬわけですね。非常に出ているところと引っ込んでいるところがあるわけですね。これがひどいわけです。従って、総合的なものが出てこないわけだ。なかなかソビエトみたいに、独裁国家だから、国家予算なんかでもどんどん出るから、谷も埋まってレベルが上る結果、ICBMのようなものが出てくる。従って、今の日本では凹凸を審査する機関ですね、それからまたコントロールといったらいいでしょう、それをコントロールする機関は、どこなのか、またいかようにコントロールしておるのか。あなたの構想です。あなたはいつもいい構想を持っていらっしゃるけれども、私はそれを伺いたい。  もう一つは、これまたあなたの先の見える眼をもってお答え願いたいと思いますが、最近学術会議が、あの宗谷による、大型ヘリコプターを二機持って行って、南極への第三次越冬を、若干の反対はあったけれども、圧倒的多数でもって議決したわけですね。もちろん、これを南極統合本部を通じて閣議に要請して参るわけですが、私はあまり専門でもないのでありますが、宗谷を三たび出すのは、ちょっとしろうととして心配ないわけでもないが、しかし専門家が慎重に検討されて、大型ヘリコプター二機持って行って、十二名の引き続き越冬は成功の公算大なりという判定を専門家がされておる、茅さん以下。私はこれを信頼したいと思う。従って、ああいう結果が出れば、閣議に持ち込まれた場合、あなたの発言が一番ものを言うと思います。あなたのほか、大臣として先の見える人はいないようですから。(笑声)あなたはどういう判断をしておるか、冗談じゃなくて、あなたの判断は科学に関する限りはあまりはずれぬですね。だから、どういう別断をしておるか。私は個人として、あなた、閣議において第三次越冬やるべきだ、冗談じやなくて、やるべきだという、閣議においてイニシアをとっていただきたいような私の感じなんですが、あなたはどういう見通しをしておるか。私の発言に左右されることなく(笑声)あなたの信念を一つ御表明願います。
  238. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 今の問題は文部省が所管でありますから、あまり私が、ここで申し上げかねますが……。
  239. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 閣議決定……。
  240. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 御趣意には私は賛成でございます。
  241. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 コントロールの方は……。凹凸のコントロールですね。
  242. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) 私どもの方といたしましては、そういった、どういった点がおくれておる、それをいかに伸ばすべきかということは、当庁としてもいろいろ計画を考えておるのでありますが、科学技術会議が設置されましたならば、それを十分検討していただきたいと考えております。
  243. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あそこじゃできませんよ。
  244. 鈴江康平

    政府委員(鈴江康平君) ただ、現在問題になっておりますのは、やはり研究につきましてもいろいろな目的がございますから、そういった各省の研究につきましては、持ち寄りまして、そこで各省と話し合って、こういう点を大いにやろうじゃないか、こういう点が足りないということを話し合いまして、そこで各省とは、またその中に学者も入りまして、意見を交換して、それで足りないところは科学技術庁自身におきましても、補助金等を獲得いたしまして、それを出すということもやって参っておるわけであります。  一例を申し上げますならば、たとえばクロレラというものにつきましては、日本は大いにやるべきだという意見が出まして、それが足りないから、当庁から二千五百万の補助金を出しまして、新しい研究所を作ったというようなこともいたしておるわけでありまして、技術の分野はいろいろでございますものですから、いろいろな問題につきまして、大きくどれをということは、ちょっと申し上げかねますが、そういうこまかい点につきましては、事務的にやって参っておる次第であります。
  245. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言もなければ、これにて両案の質疑は終局したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  246. 藤田進

    委員長藤田進君) 御提議ないと認めます。  それでは、これより両案を一括して討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もなければ、これより採決に入ります。  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案及び放射線障害防止技術的基準に関する法律案、以上、二法案全部を問題に供します。両案を衆議院送付の原案通り可決することに賛成の諸君の挙手を求めます。    〔賛成者挙手〕
  247. 藤田進

    委員長藤田進君) 全会一致と認めます。よって、科学技術庁設置法の一部を改正する法律案及び放射線障害防止技術的基準に関する法律案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成、その他自後の手続きにつきましては、慣例により、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  248. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  それから、報告書に付する多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     島村 軍次  松岡 平市     大谷藤之助  増原 恵吉     大谷 贇雄  柴田  栄     後藤 義隆  松村 秀逸     苫米地義三  上原 正吉     劔木 亨弘  矢嶋 三義     永岡 光治  伊藤 顕道     田畑 金光  森中 守義
  249. 藤田進

    委員長藤田進君) なお、本日は定員法並びに恩給法等を引き続き審議する予定でありましたが、時間も経過いたしておりますから、これにて暫時休憩をいたしまして、会派間の相談をいたしたいと思います。  これにて暫時休憩いたします。    午後四時二十二分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕