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1958-04-01 第28回国会 参議院 内閣委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月一日(火曜日)    午前十時四十八分開会   —————————————   委員異動 三月二十八日委員矢嶋三義辞任につ き、その補欠として秋山長造君を議長 において指名した。 三月三十一日委員秋山長造辞任につ き、その補欠として矢嶋三義君を議長 において指名した。 本日委員田中啓一辞任につき、その 補欠として松岡平市君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     藤田  進君    理事            上原 正吉君            大谷藤之助君            永岡 光治君            高瀬荘太郎君    委員            後藤 義隆君            近藤 鶴代君            迫水 久常君            田中 啓一君            苫米地義三君            増原 恵吉君            松村 秀逸君            伊藤 顕道君            田畑 金光君            千葉  信君            松本治一郎君            矢嶋 三義君            島村 軍次君            八木 幸吉君   国務大臣    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    通商産業大臣  前尾繁三郎君   政府委員    皇室経済主管  高尾 亮一君    大蔵省主計局給    与課長     岸本  晋君    通商産業大臣官房    長       齋藤 正年君   事務局側    参     事    (委員部第二課     勤務)    川上 路夫君    常任委員会専門    員      杉田正三郎君   説明員    宮内庁長官   宇佐美 毅君    通商産業省通商    局次長     伊藤 繁樹君    通商産業省軽工    業局アルコール    事業長     橋口  隆君    特許庁総務部長 鮫島 正蔵君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国家公務員共済組合法案(内閣送  付、予備審査) ○国家公務員等退職手当暫定措置法の  一部を改正する法律案(内閣送  付、予備審査) ○皇室経済法施行法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○通商産業省設置法の一部を改正する  法律案内閣提出)   —————————————
  2. 藤田進

    委員長藤田進君) これより内閣委員会を開会いたします。  委員異動がございましたので、事務 局から報告させます。
  3. 川上路夫

    ○参事(川上路夫君) 御報告いたします。   去る三月二十八日、矢嶋三義君が辞任されまして、後任秋山長造君が選任されましたが、こえて三月三十一日、秋山長造君が辞任されまして、矢嶋三義君が後任に選任されました。   以上でございます。   —————————————
  4. 藤田進

    委員長藤田進君) それでは、これより議事に入ります。  まず、予備審査のため付託されました国家公務員共済組合法案及び国家公務員等退職手当暫定措置法の一部を改正する法律案について、提案理由説明を聴取いたします。  説明を求めます。
  5. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいま議題となりました国家公務員共済組合法案及び国家公務員等退職手当暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由並びにその概要を御説明申し上げます。  まず、国家公務員共済組合法案について申し上げます。  現行国家公務員共済組合法昭和二十三年に制定され、以来約十年を経過いたし、この間諸般の事情変化もあり、共済組合制度全般にわたって再検討を加えなければならない時期に立ち至っていた次第であります。たまたま最近に至り、いわゆる五現業に勤務する恩給公務員に対しましても共済組合長期給付制度適用する必要が生じて参りましたので、これを機会といたしまして、国家公務員共済組合法の全部を改正して、長期給付短期給付福祉事業を通じまする制度全般にわたり所要整備改善を行うとともに、新たにいわゆる五現業恩給公務員に対しましても長期給付規定適用することとして、ここにこの法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案内容概要を御説明申し上げます。  第一に、長期給付制度につきましては、退職年金退職一時金、廃疾年金廃疾一時金、遺族年金及び遺族一時金等の既存の給付につきまして、他の公的年金制度との権衡を考慮して、その支給額改善を行うほか、新たに再就職による組合員期間通算措置を講ずること、退職年金支給開始年令現行の五十才から五十五才に引き上げること等、所要規定整備を行うとともに、五十五才以前において退職して年金支給を希望する者のため、新たに減額退職年金制度を設け、公務上の傷病または死亡による退職の場合にも、廃疾年金または遺族年金支給できることとし、また、退職年金廃疾年金及び遺族年金についてそれぞれ最低保障額を定め、将来、他の公的年金制度との期間通算を行い得る素地を準備することとしたほか、さらに、長期給付規定適用範囲に新たに印刷、造幣、国有林野アルコール専売、郵政の五事業特別会計に勤務する恩給法上の公務員をも加えることといたしております。  第二に、短期給付制度につきましては、従来の法定給付のほかに新たに付加給付制度を設けるとともに、被扶養者範囲組合員資格喪失後の継続給付受給資格期間等について所要改正を加えるほか、昨年の健康保険法改正に伴う所要規定整備を行うことといたしております。  第三に、その他のおもな改正事項としましては、長期給付責任準備金の一部を資金運用部に預託してその安全確実な運用をはかり、共済組合制度に関する重要事項を調査審議するため、新たに大蔵大臣諮問機関として国家公務員共済組合審議会を設置し、また、共済組合または同連合会事務職員も今回新たに組合員にすることができる等の措置を講じることとしております。  なお、長期給付制度内容改正とその適用範囲の拡大に伴う所要経過措置につきましては、別途、法律をもって定めることといたしております。  次に、国家公務員等退職手当暫定措置法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  現在、国家公務員に対する退職給与としましては、いわゆる恩給公務員に対する恩給法による恩給雇用人に対する国家公務員共済組合法による長期給付、並びに公務員全体に対する国家公務員等退職手当暫定措置法による退職手当の三つがあります。このうち、共済組合長期給付は国と公務員との費用折半負担を原則とする保険給付でありますが、恩給は国の給与の色合いが濃く。同じく国の給与である退職手当と性格上相重複しておりました関係上、恩給制度をそのままにしておいて、退職手当実情に即したものに改めることができない事情にあった次第であります。ところが、今回、別に御審議をお願いいたしております国家公務員共済組合法案では、いわゆる五現業恩給公務員に対しては、恩給支給せず、新たに共済組合長期給付支給することに改められますので、これを機会としまして、国家公務員のうち共済組合長期給付支給されるいわゆる五現業恩給公務員及び全雇用人に対する退職手当につきましては、これを実情に即したものに改訂することが必要と相なった次第であります。このため、国家公務員等退職手当暫定措置法につき、所要改正を加える必要があると考えまして、ここにこの法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案概要を御説明申し上げます。  まず、この法律案は、国家公務員共済組合法案成立施行となりました場合に、その長期給付に関する規定適用を受ける者に対し、普通退職の場合の退職手当その他一般退職手当に関する規定適用特例を設けようとするものであります。その特例内容といたしましては、現行退職手当は、退職事由分類に従いその退職手当支給割合を異にしているのでありますが、その退職事由別分類について再検討いたしまして、その分類及びそれに応ずる退職手当支給割合を改めた、ものを適用することとし、この特例による退職手当最高限度額退職時の俸給月額の六十ヵ月分とするとともに、死亡による退職の場合に、退職時の俸給月額の四ヵ月分を加算する規定は、これを適用しないことといたしております。  なお、この法律施行の際に在職する職員特例適用を受ける者の退職手当の額について特例適用のない場合の退職手当の額との調整をはかるため、所要経過措置に関する規定を設けることといたしております。  以上が、この法律案提案理由とその概要であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。   —————————————
  6. 藤田進

    委員長藤田進君) 次に、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  本案につきましては、さき提案理由説明を聴取いたしましたが、本日は、まず本案内容について説明を求めます。
  7. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) ただいま御審議を願います法案でございますが、内容は、内廷費定額を現在の三千八百万円から五千万円に、皇族費算出の基礎となる定額を、現在の百九十万円から三百万円に増額改訂することでありますが、その理由を御説明申し上げます。  昭和二十二年の皇室経済法及び同施行法施行当初は、内廷費定額は八百万円、皇族費定額は十五万円でございましたが、これはその後社会情勢経済情勢変化に即応するよう数次の定題改訂を行いました。さらに、昭和二十八年七月から、内廷費定額は現在の三千八百万円、皇族費定額は百九十万円となって参った次第でございます。しかるに、この内廷費皇族費の現在の定額は、昭和二十八年に改訂せられましてから以来、すでに五年近くを経過し、その間、社会情勢並びに経済情勢の推移は、現在の定額では必要な経費不足を来たす実情になりましたので、いろいろ検討を加えました結果、定額改訂の案を得ましたので、ここに御審議を願う次第でございます。  まず、内廷費について申し上げますと、極力御節約方針で来ております。その各項目を検討いたしまして、その結果、近年におきまして外国交際に関してその範囲やそれから内容が非常に広がってきているということ、それから成年に達せられました内廷の各親王殿下の御交際や御教養に関する経費が非常に増大してきていること、それから親王、内親王殿下の御結婚とか御独立とかの準備もいたしておかなければならない、そういう諸事情を考慮し、また一方、昭和二十九年と昭和三十二年の二回にわたります国家公務員給与引き上げ率並びに物価騰貴率等も勘案いたしまして、御内絡的経費、たとえば御交際とか、漕物とか、それからお身回り品とか、そういう御内幣的な経費につきましては三割五分、それから内廷に人を雇っておりますが、その給与費につきましては、国家公務員給与ベース改訂に伴う上癖率五割、その他食事費用とか旅行、用度、そういう諸経費につきましては、これまでの物価騰貴率及び今後の物価増高を考慮いたしまして、一割五分の増額を必要と認め、定額を積算いたしまして、五千万円といたしましたわけでございます。  次に、皇族費について申し上げますと、これも内廷費同様極力節約に努めておられますわけでございますが、現在の定額では、近年の皇族方の御活動範囲が広がってきました等の事由によりまして、現在通常経費をまかなうに不足を来たしている実情になって参りましたので、皇族としての品位を保持する必要な経費として、内廷費算出方法に準じました算定をいたしまして、その定額を三百万円と算定いたしましたわけでございます。  以上でございます。
  8. 藤田進

    委員長藤田進君) それでは、これより質疑に入ります。御質疑のおありの方は順次、御発言を願います。
  9. 松本治一郎

    松本治一郎君 私は、前回、瓜生次長資料要求をいたしました。その要求に関して出された資料があまり簡単であったから、もう少し詳しく出してもらいたいと要求をいたしましたので、ここに来ておるわけなんですが、その際瓜生次長は、高松家の所有である光輪閣内容として話された中に、固定資産税が六十万円、財産税は百三十万円、土地の大部分は国から借りておる、そうして合計百九十万円は光輪クラブがかわって支払っておる、こう言われておった。ところが、去る三月三十七日資料補足として出されたものを見ますると、固定資産税が約百五十八万円、そうして借地料は約六十一万円であり、その相当額光輪クラブが出しておる。そうしますると、合計して二百二十一万円、さき瓜生次長が話されたのは百九十万円、その差三十一万円あるわけになるのですが、その理由を一つ聞かしてもらいたい。
  10. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) このあと資料が正確でございますので、先ほどの百九十万円と申し上げましたとすれば、それは計数において誤まりがございましたので、訂正申し上げます。
  11. 松本治一郎

    松本治一郎君 どちらがほんとうですか。
  12. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) あと資料ほんとうでございます。
  13. 松本治一郎

    松本治一郎君 この補足資料によりますると、秩父宮家三百六万円、高松宮家が五百六十万円、三笠宮家四百七十四万円、これが総経費皇族費が、秩父呂家では百九十万円、高松宮家では二日八十五万円、三笠宮家では三百八十万円、差し引き、秩父宮家では百十六万円の不足高松宮家では二百七十五万円の不足三笠宮家では九十四万円の不足。そうすると、秩父の方では五十七万円、高松の方では百九万円、三笠家では六十万円がほかから回されておるということになるというのですか。こういう金は、どういう金でしょうか。
  14. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) それは主として、お持ちになっております有価証券等から生ずる配当収入を主としておりますのです。
  15. 松本治一郎

    松本治一郎君 そうすると、次に、高松家光輪閣の問題について聞きたいのですが、光輪閣は建坪が八百七十坪、敷地は三千五百四十九坪である、こう書いてある。これを貸して、さきの二百二十一万円の金を光輪クラブが払っておる。してみれば、その光輪クラブに貸している家については一つの収入もあってないと、こういうことがここに書いてありまするが、一体これは脱税のやり方じゃないのですか。
  16. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) この光輪閣を貸しておりますことから、高松家は何らの所得も得ておりませんです。差し上げました資料の中に、「借地料(約六十三万円)」という、第三項に書いてございますこの借地料というのは、高松宮家から国に払っております借地料でございます。これは国有財産になっておりまして、高松宮家国有地をお借りしておりますその借地料でございまして、収入はこれによっては何にも得ていないというふうに御了解を願・います。
  17. 松本治一郎

    松本治一郎君 光輪クラブ内容は、おおむね次のようであると書いてあるのですが、「これは、高松宮同妃殿下名誉会員とし、浅尾新甫、浜口雄彦石川一郎川北禎一渋沢敬三等一の諸氏を世話人とするクラブであって、会員は百人以内で、毎月会員から一定額会費を徴収し、そのほか、使用の都度経費を徴収して、運営しているものである。」ということがここに書いてありますが、この百名以内の者によってそこがどういうふうに使われておるかということを聞きたいのです。
  18. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) ここに、「百人以内」と書きましたのは、光輪クラブ規約というものがございますので、それを採用いたしましたのでございますが、その光輪クラブ規約によりますと、会員数は当分のうち官名以内とすると書いてありまして、これは法人が主としたものだと思いますけれども、百名になっております。そうして、その会費は、正会員月額一万円、それから地方会員月額五千円、それを醵出いたしまして、クラブの運営の費用に使っておりまして、この資料に書きました使用のつどの経費と申しますのは、そこでお食事をいたしますとか、その他、催しものをいたしますとか、そういう何と申しますか、会合がありますつどの必要経費を、その必要に応じて使用者から徴収しているというわけでございます。通常経費といたしましては、正会員が月一万円ずつ醵出して、それをもって経営しているものでございます。
  19. 松本治一郎

    松本治一郎君 高松宮家自分自身でそれが使えないものであるなら、国に返したらどうでしょうか。そうして、国のために何か役立たせる方法はないでしょうか。
  20. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 御承知の通り高松宮様は、光輪閣のわきに小さなお住居をお建てになりまして、お住みになっておりまして、その光輪閣の大きなものをこういった内外の目的に開放するという考えでなすっているということでございまして、今それを国に提供する、そういうことについては今まで伺ったことはございません。これを一般に公開して利用してもらうという方針を立てておられることと存じます。
  21. 松本治一郎

    松本治一郎君 一般のために使わせるという考え方を持っておられるというのですか。
  22. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) もちろん、光輪クラブ規約というものがございますから、その範囲のことと存じますが、そういった諸氏の国内に必要な会合等に開放して利用させる。当時戦後で、いろいろの施設が少なかったわけであります。そういう意味において世間のためにという考えだろうと考えます。
  23. 松本治一郎

    松本治一郎君 私の調査が足りないのか知らぬのですが、この光輪閣については相当の世評があるわけです。もう少し調べた上で、光輪閣については問題にしたいと考えておるわけです。しかし、今、そういう金を持った人たちの遊び場にするよりも、四畳半の間借りすらできないで、結婚することのできない多くの若い人たちのあることも御存じであろうと思う。あの場所は、そういうものに使うのに適当の場所だと私は考える。百長官はどう考えられますか。
  24. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) これは商松宮様のお考えによることでございます。現に里親等として、孤児等に対する御活動も、これを使ってなすっておりますし、今後殿下といたされましていろいろお考えになることと思いますが、私からはここでどうこうと申し上げるわけにいかないわけでございます。
  25. 松本治一郎

    松本治一郎君 私は、光輪閣近所に、八年ばかり終戦後住んでおったのです。光輪閣はどういうふうに使われておるかということは、おおよそわかっておるのであります。朝から晩まで、じゃんじゃん騒ぐ場所だと、こう私は考えておったのです。そういう場所にするよりも、高松宮ほんとう自分らが国民の金によってまかなわれておるということにお気づになるなら、何とかほかに考えられる方法もあろうかと私は思うのです。しかし、そのことについてあなたに問うたところで、問題にならないのでありますから、このことについては、私も相当今調査しております。その上でまた問題にしたいと考えておるのであります。  次に尋ねたいことは、先ほど申されましたが、内廷費が現在の三千八百万円から五千万円となる。その値上げ率三一・五%になる。皇族費については、現在の百九十万円に対して三百万円ということになると、五八%。しかるに、昨年の公務員給与引き上げ率は六・二%。この公務員労働者給与引き上げ要求に対しまして、政府は、この数年物価はおおむね横ばいだといってこれより上げなかった。今回の増額提案理由の中に「近年来の物価高」云々と書いてあるが、そんなに天皇一家は高い物ばかりを買って生活しておられるのか、非常にふに落ちないものがある。  これは話のついでに申しますが、私は終戦赤坂見附の所に住んでおったのであります。私の近所宮家に納品している魚屋は、二軒の宮家を持てば六人や七人の家族はけっこう食われると、こういうことを言っておったのです。そういう関係が、この増額をしなければならぬ理由になっているのではないかと思う。そういう関係において何かお気づきの点でもあれば、承わっておきたいと思います。
  26. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) ただいま御指摘になりましたごとく、内廷費上昇率と、それから皇族費上昇率は、違っていると思うのでありますが、これは、人件費が総額に対して占める割合皇族費の方が非常に多くて、内廷費の方が非常に少いということにもっぱら原因を持っているものでございます。  それで、その人件費のことでございますが、昭和二十八年から、先ほど申しましたように、この額は据え置かれておりますので、内廷でお使用になっております使用人、それから宮家で御使用になっております使用人人件費というものは、二十八年以来法制的には全然見ていられないということでございますので、それを国家公務員上昇率、つまり昇給を入れた上界率でございますが、それがちょうど五割になっておりますので、その部分を五割かけましてそうして人件費をまかなっていきたいというふうに考えまして、積算いたしたわけでございます。  それから、物価につきましては、物価指数をとりまして、その物価指数の率だけを、政府の公定しております物価指数の率だけを、昭和二十八年以降の現在に至るまでの率をかけまして、積算いたしましたわけでございます。
  27. 松本治一郎

    松本治一郎君 こういう予算は一体、だれが先に作られるのですか。
  28. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) 内廷費皇族費の編成は、皇室経済会議にかけて原案きめることになっております。皇室経済会議事務宮内庁でやっておりますので、宮内庁でいたしております。
  29. 松本治一郎

    松本治一郎君 こういうことは、天皇は直接御存じですか。
  30. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 皇室経済会議の議を経れば、申し上げてございます。
  31. 松本治一郎

    松本治一郎君 皇族の中にそういうことをいやがる人があることも、はっきりわかっているはずです。この皇族の中の三笠宮は、その著「帝王と墓と民衆」の中でこういうことを書いておる。「わが思い出の記」の中に、敗戦によって不自然きわまる皇室制度、「格子なき牢獄」からの解放によって、三十才になって初めて一人で町を歩く楽しみを知った。私は運命の不思議さをかみしめながら、だれにも気づかれずに、コツコツと町を歩いてみたものである。近ごろまた、地方に行くと、警戒が厳重になり出したので、ときどきあのころの方がよかったなと思う、と書かれている。今、外に出られると、相当警戒を厳重にされているのかどうか。
  32. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 御警衛の問題でございますが、これは警察庁が責任を持って御警衛に当っておりますが、実際問題におきましては、外に出られましたときは、多くの場合、交通整理というものを中心にいたしまして社会情勢に応じて適切にやっておられるものと考えます。
  33. 松本治一郎

    松本治一郎君 こういうことが、外では相当わかってきたのです。天皇一家を存続させるために生活していこうというような不心得な考えを持った人たちは、国民の敵だとすら言われておる。  三月三十日と申しますると、二日前ですね、文化放送日本の子供」の時間の中で、富山県から来た修学旅行の生徒が、「おらっちゃの見た東京」の話の中に、記者との間にこういう質問がかわされた。その生徒宮城観について、記者の、この宮城をどう思うかとの質問に対して生徒のAなる者は、幾ら天皇陛下といえども、一里四方もあると思われる広い所に囲まれているより、早くどこかへ移った方がよかろう、そうしてここを公園か何か、国民のために使わしたらどうかと思うと答えた。Bなる生徒は、うちの人たちから日本全体の父母が天皇や皇后様だと聞かされてきたが、ここに来て見れば、そんな感じは少しも出ない、陛下はこんな所にいてかわいそうだと言っております。Cなる生徒は、天皇陛下は国の代表だからいいと思うと言いますると、Dなる生徒は、国の代表国会議員だ、政府国会があればいい、天皇は要らぬと言っている。これは十二、三才の小学校の生徒なんです。Eなる生徒は、国民が納めている税金をここの人たちが使っているのと違うのか、こういうことも言っている。Fなる生徒は、緑化運動やその他のことに有効に使ったらいいと思う、こういうことをはっきり言っている。  もう時代は変っている。天皇一家の者だからといって働く者よりも何百倍かの金をかけて生活しなければならぬということは、よほど考えなければならぬ。五十才以上という人の中には、あの間違ったうその教育を受けた、それがまだ残っている。しかし、もうそういうことは日本ばかりじゃない。世界の多くの国が、人民の目ざめによって、王政から共和政に変っている。近き例を申しますと、エジプト、チュニジア、その他の国々は、王政は消えて共和政になっている。私は、とれるからとるというような予算を組んで、国民に負担させるということは考えなければならぬと思う。この幼い十二、三才の子供ですら、国は国会政府さへあればいいと言う時代になっているのであります。  私は昨年、オーストラリアとニュージーランドに旅行をした。そのときに、第三回平和大会に出て来ておりましたオーストラリアの上院議員の一女性が、私と一緒に講演して回った。その女性いわく、日本くらいおもしろうて不可解な国はない、鉄道の中に野菜が作られている、それかと思うと、天皇の住んでいる所はどえらい広い、こういう話をしておる。その次に、こういう話をした。世界に二つのおもしろい、珍妙な、大きな王家出現説がある。これは、先日退位しましたサウジアラビアのサウド王家で、サウド王家の始めは、土中から人間が出てきた、それが石油を持ってきた。そうしてのたまわくですね、これから先はわが子孫の王たるべき土地なり、みんな従え。これが一つ。それからいま一つは、天から人間が降ってきた、いわゆる天孫降臨。人間が天から降ってくる、地から石油を持ってわいてきたというのが、その国の歴史になっている。そういう世界は今になくなるだろうということを、上院議員のその一女性は言った。果せるかな、二、三日前サウド王は退位した。弟さんが継いでいるけれども、これはやがて王政をくずすであろうと私は考える。  そういう世界の動きの中に、復古調を強めて、そうして国民が食うことに困って、一家心中を毎日のようにやっているやさきに、三割も五割も増すような予算を出されるということは、今後の世界を知らなさ過ぎることだと考える。それよりももう少し、憲法八十八条がうたっておるように、皇室財産は、国に属する。皇室の費用国会の議を経てこれがきめられる。こういうことになっておるのですから、国会の議を経てきめられるということは、国民の負担金であるということなのです。もう相当考えなきゃならぬ時代が来たと。先ほど申し上げました三笠宮にしてみれば、格子のない牢獄の中はいやだ。そういう人がふえてくる。サウジアラビアのサウド王を倒したのは王族会議である。  人間が人間として生きていく上に、自分の生活を自分の汗とあぶらで立てていかないということくらい、不合理な、矛盾したものはないと思う。同じ日本人で、六千部落三百万の人々が因っておる。それはどういうわけかと申しますると、いわれなき尊敬を受けておる者があるから、いわれなき差別を受くることになる。そういう観点から考えますると、相当考えなきゃならぬと思うのでありまして、このいわれなき差別を受ける原因、すなわち差別の対象となるものが貧乏である。貧乏なるがゆえに教育が受けられない。普通の家に住むことができない。人並みの衣類を着ることができない。その差別の対象となる貧乏を少しでもなくしてくれといって、この間政府に迫って、一億五千万円の予算を組むという約束をしながら、出てきたものは二千五百万円の少額である。皇室予算は皇族としての品位を保つためだと言っている。われわれの要求しておる要求は、人間並みの、人間らしい生活ができるようにさしてくれということ。こういうところに大きな基本的な間違いがあると思うのです。  しかし、この問題についてまだこの内閣委員会が今後開かれるだろうと思いまするから、私の質問はこの程度で終らせてもらいますが、長官直接天皇に会われ、皇族に会われる機会があろうと思いますから、私のきょうの話を伝えてもらいたい。  これで私の質問は終ります。
  34. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私、この皇室費並びに宮内庁費につきましては、予算委員会の分科会で若干伺ったのでありますが、国の予算を審議する場合に一番わかりずらいのは、この皇室費と宮内庁費、その関係であったわけで、それで率直に申しまして、私ども皇室の行事その他を見た場合に、あの費用宮内庁費から出るのか、内廷費から出るのか、宮廷費から出るのか、判断識別に苦しむ場合が、ほかの人はどうか知らぬが、私は非常に多いわけなのです。その立場から予算委員会で伺ったのでありますが、なお不明確な点がありますので、いい機会であるから、伺って参りたいと思います。  その前に、ちょうど本日は長官も見えておられますから、要望して御意見を伺いたいのでありますが、この予算書の所は、皇室費の所だけ、予算定員、俸給額表というものがついていないわけです。で、内廷費は、経済法によって、これは公金でない。宮廷費はあなたの経理下に属するわけです。それで、その宮廷費は宮中の公的活動に要する費用規定されておるわけです。その公的活動に従事される人は、国家公務員である宮内庁職員が行うから、だから、総理府所管の宮内庁関係の所にその定員並びに俸給表が出ているので、まあまあそれでいいのだ。ただ、その宮内庁と皇室の両方に旅費があって、その両方から同じ人が旅費を取るような点に、ちょっと不明確な点がある。こういうことで、あたた方並びに大蔵省の方々が解明されたわけですけれども、具体的にいって、たと、えば皇室費の皇族費の所ですね、これははっきりと国会審議対象として皇室経済法できめているわけなんですから、この皇族費の所にですね、何の宮様、何の何々様、そうしてお子様が何人いらっしゃるということをお書きになったからといって、少しも私は失礼にならぬし、当然だと思うのですよ。でないと、きょう出た資料によっても、たとえば今度百九十万円から三百万円に単価がなりまして、予算書に出ている金額は四人半分ですね。そうなると、お子様の分が何人分か含まれて四人半分になっているわけです。そうする〜、どなたとどなただろうということを、必ずしも私は皆さんわからないと思うのです。だから、はっきりと皇室経済法審議対象になっているわけですから、もう本年度は、私はこれでいいと思うのですが、来年度からは、やっぱり各省庁の予算書の最後にあるように、簡単でも私はそういうものをつけるべきである。それが正当であるし、また審議するのにも好都合だと思うのですが、長官、どうお考えになられますか。
  35. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) ごもっともな御質問でございまして、大蔵当局ともよく相談いたしまして研究いたしたいと思います。
  36. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に伺いますが、この皇室経済法の第六条に、私は若干疑義を持っているんですがね。で、この際に長官の御見解を承わりたい。  この第六条ですね。この二号に、これは四年ほど前に改正した私は記憶があるのですが、「その夫を失って独立の生計を営む親王妃に対しては、定額相当額の金額とする。」、こうなっておりますね。これは秩父宮妃殿下を対象として改正された条項です。ところが、第三号に「独立の生計を嵩む内親王に対しては、定額の二分の一に相当する額の金額とする。」、これは私はおかしいと思うのですね、同じにしなければ。同じにしなければ私はおかしいと思う。  大体、この戦後ですね、まあ私は常に思うことは、主権在民というこの憲法の精神を、国民すべてがしつかり徹底して把握するということは大事だと思うのですが、私はそういう立場からすべて物事を考える。で、新憲法下においては男女も同権なんですからね。私は、親王妃と内親王と、そんなに区別することはないと思う。しかし、それはともかくとして、ここの三号で「夫を失って独立の生計を営む親王妃に対しては、定額相当額の金額とする。」、「独立の生計を営む内親王に対しては、定額の二分の一に相当する額の金額とする。」、これは何じゃないですか、夫を失った親王妃も内親王も、どちらも将来独立の生計を営む、これを差等をつけているこの条章というのは、私はおかしいと思う。そして第四号には「独立の生計を営まない親王、その妃及び内親王に対しては、定額の十分の一に相当する額の金額とする。」、ここじゃ男女同権になっている。みんな同じ扱いになっている。これは何か場当り主義の、便宜主義的な立場から改正をされるのでなくて、法の建前としては、今の新憲法、まあ皇族には選挙権はないとか、公民権はないとかいう制約を受けておるわけですが、そういう点からいって、筋が通らないと思っているんですが、あなたはこういうような状態に対しては、どういうふうな見解を持っておられますか。
  37. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) これは予算委員会でも御質問のあったところでございますが、これは特に男女によって区別したという考え方ではないのでございます。要するに、一つの宮家を維持していかれるという場合の計算の基礎に親王というものを置きまして、結婚されて妃殿下がおできになれば、その半額を加えたもので維持されるという考え方をとっておるのでありまして特に婦人であるから低くしたということを出した意味でございません。また、あとのその点は、たとえば、イギリスの王室の経費法におきましても、同様な考え方が取り入れられておりまして、特にこれによって、新しい時代の男女同権というものに対してこれを無視したということのつもりはないのでございます。  それから、御指摘になりました夫を失われた独立の親王妃、それから独立の生計を営む内親王と区別がありますが、初めの方は、とにかく宮家として立っておられましたのが、夫たる親王がなくなられましても、そう急激に宮家内容というものは変更できない事情があろうと考えられますし、もう一つの、独立の生計を営む内親王という三号の規定の方は、これは非常に特殊の場合を考えたわけでございまして御結婚をなさらずに、お一人でお住いになるという場合におきまして、初めの場合とは、その社会的な活動についても差等があろうということで、この規定を設けまして、これは非常に例外の場合を書いたつもりでございます。なお、将来におきましては、こういう点については、多少実情におきましては合わない場合も起り得るかとも思われますが、この立案の当初におきましては、そういうことで御説明を申し上げたのでございます。
  38. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 個人の私生活に入ってお伺いするのは大へん失礼と思うわけ  ですけれども、しかし、この皇族費のベアーの審議でございますので、ちょっと伺いたいんですが、出された資料を拝見しますと、秩父宮家高松宮家三笠宮家の総経費並びに差引不定額の数字を見ますと、ずいぶん差があるわけですね。私はこの表を見る前には、三笠宮家は、非常に御子様がたくさんいらっしゃるから、よほど差引不足額が多くてお困りになっていらっしゃるんじゃないかと、かように推察しておりました。ところが、この表を見ますと、御二方の方の高松宮家の差引不足額が非常に多いので、表を見て私非常に意外な感じがしたわけなんですが、これはあなた方の提案理由の一つにある皇族としての活動範囲の拡大云々という、皇族としての活動範囲と申しますか、それらの差等が、この三笠宮家高松宮家のこういう費用のアンバランスになって現われているのでございますか。これはどういうことなんですか、答弁される範囲内において、お答え願います。
  39. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 三宮家は、それぞれ特色があるんだろうと存ぜられますが、三笠宮家については、御子様が大ぜいおいででございますが、しかし、まだ非常にお小さい方が従前においては多かったわけであります。だんだん御成長になって、上の学校にお入りになりますれば、こういう経費については、相当今後窮屈な面もあろうかと思います。秩父宮家は、宮様がなくなりましてから妃殿下御一方でございますが、高松宮家はとにかく御二方で、それぞれ御活躍になり、一番各種団体との関係においても御関係が多いのでございまして、自然に経費が膨張するのではないかと存ぜられるのであります。そういったわけで、まあそれぞれの御活動の特色によって、多少のここに差等が出て参っておるものと考えております。
  40. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に、内廷費増額理由として先ほど皇室経済主管ですか、その方の御説明の中に、諸外国との御交際範囲の拡大ということを述べられましたが、諸外国との御交際というのは、これは象徴天皇としての私は公的な行事だと思います。従って、その諸外国との交際が拡大されたことによって費用の増大するのは、これは内廷費でなくて宮廷費の増額ではかるべきだと思うんですが、その点おかしいんじやないですか、その説明は。長官、いかに思いますか。
  41. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 公式に迎えられる表向きの経費は、なるほど宮廷費でございまして、しかし、それに伴いまして、御服装でございますとか、あるいはその後におけるいろいろな御交際がふえて参りました。そういうような関係で、どうしても経費がかかって参っておるのでございます。また、非常に非公式に、ほんとうに皇室のおつき合いのような意味におきまして、昨年あたりも、ある国のプリンセスが見える。これは非常に非公式な皇室としてのおつき合いというような問題も起って参っておりますので、経費が増大しておるのでございます。で、御指摘の通り、公式に行われます、国賓として迎える、あるいは公式の天皇としてなさいますことについては宮廷費でございますが、それに伴うものがふえつつあるのであります。
  42. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は、そういう点を明確に教わっておきたいと思うんですが、最近外国の元首等がよく来日されますね。で、こういう方々を天皇陛下が、小さいことですが、御晩餐等にお招きになる、あるいはおみやげを差し上げる。これらは、その晩餐にお招きになる費用は宮廷費で、それからそのおみやげを差し上げるのは、公金である宮廷費の中の私は報償費で出されて、内廷費からは出されないと思いますが、いかがですか。
  43. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 御指摘の通りでございまして、各国賓あるいは元首が参られたときに、晩餐会、あるいは午餐会、その他の公的な活動、及びそれに伴う公式の御進物については、宮廷費でございます。しかし、そのほかに先ほど申し上げましたようにときに御子様、あるいはお帰りになりましたあとの小さい問題がございます。そういうものがやはり起って参るのでございます。
  44. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 従って、この内廷費増額理由は、私、説明がわからないわけではないんです。しかし、その中に諸外国との交際範囲の拡大というのをあまり大きく述べ、大きな理由とすると、ちょっとおかしくなると思うんです。それは宮廷費の方でやるべきです。だから、その理由は、私は内廷費増額理由としては、主なる要素にしてはいけない、かような立場から伺ったわけです。  次に、もう少し伺って参りますが、陛下がおいでになる国民体育大会あるいは緑化大会ですね、これはこの前ちょっと私は伺ったのですが、瓜生次長の答弁、速記録を見ると、ある場合には公的なものでもございませんので云々と述べておりますし、またある場合には、これらの主催団体は民間団体であるがこれは公的な行事だと、こう述べておるのです。私は、私見としては後者をとります。従って、またこの旅費の問題が出てくるのですが、実際、皇室費と宮内庁費の組み立て方というのは、われわれ民間人じゃわかりずらいのですよ。それらの旅費は、宮内庁費でなくて皇室費の宮廷費から供奉者の旅費として出る、こういうふうに確認してよろしいのですか、御見解を承わりたい。
  45. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) ただいまお話のありました国民体育大会とか植樹祭とか、その供奉旅費は宮廷費から出ますわけでございます。ただ、行幸啓と申しましても、那須、葉山、全く私的——全くとも申せませんが、主として私的な色彩を帯びております旅費だけが内廷費、その他は宮廷費でございます。
  46. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もうちょっとその点を承わりたいのですが、国民体育大会あるいは緑化大会に陛下がおでましになるときに、特別列車を出されますね。あの費用は、何ですか、宮廷費の中から国鉄の方に支払われるのですか、どうなっておりますか。
  47. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) 宮廷列車そのものについては支払いをいたしておりません。それに関連します。貨物、それから自動車を送りましたりその他のいろいろな器具を送ります、そういうのは規定通り払っております。
  48. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 宮廷費から……。
  49. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) はい。
  50. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 供奉職員ですね、これは宮内庁国家公務員がおいでになると思うのですが、たとえば九州に緑化大会においでになるときに、先般大野総務課長が下見聞においでになられた。これらは宮廷費の旅費から出されるということなんですが、そうなりますと、旅費規定というものは宮内庁を除く一般公務員の旅費規定と同じような規定になっているのでございますか。
  51. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) 地方へ参ります、ただいまのお話のような下見聞と申しますか、事前の事務の打ち合せ、これは国家公務員の旅費規定によっております。しかし、葉山とか、それからその行幸啓そのものに供奉いたしております経費は、とうてい現在の旅費ではまかなえませんので、これは各官庁に事例がございますのですが、特定旅費と申しまして、普通の公務員の旅費法よりはるかに減じた旅一費、それをもって支弁いたしております。
  52. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ここは非常にむずかしいところで、なぜ私はこういうことを伺うかというと、こういう国民の税金の使い方が明確になるということが、象徴天皇、主権在民を明確にする私は大事なことだと思うから、伺っているわけなんです。特別列車で行かれる場合に、それに乗られるわけですからね。だから、旅費の支給というのはむずかしくなると思うのですよ。それからまた、私は、宮内庁の役人だからといって、特権を振り回すことはできないのです。従って今の憲法下では、大野総務課長が九州に下見聞に行かれた場合のその汽車の切符にしても、旅館の宿泊料にしても、おそらく旅費の中から自分でお払いになってお買いになったと思うのです。万一そういうことでないようなことがあれば・これは陛下の心に反することで、両陛下が行幸啓なさるのに下見聞に行かれて、もしそういうことがあったとすれば、これは陛下の心に反することで、相当私は公務員としては重大な問題だと思うんですが、ややもすると、憲法の変ったということを十分認識していないで、そういうあやまちを犯す場合が懸念されますので、その点にちょっと触れたわけです。  それから、次に伺いますが、私は、この陛下の生物学研究所を拝観させていただいたことがあるんです。三年ほど前にですね。ともかく大へん質素なんですね。鉛筆なんか、このくらい短かいのを使っておられる。そこで研究されている人ですね、まあ陛下のお手伝いをしている人でしょう、そのときまで宮廷費から予算が出ているものと私は思っておったわけです。従って、上っぱりなんか非常にお粗末なものを着ているんですね。それから、あなた方のサラリーはどのくらいですか、外ではベースアップ闘争があってあるんですが、どうですかと聞いたところ、口を織して語らない。それで、あと、ほどよく調べてみますと、ああいう生物学研究所にいらっしゃる学者、助手、ああいう人は、これは宮廷費でなくて、陛下の個人の御趣味としてやっていらっしゃるのだから、内廷費だ。本日の出された資料によりますと、二十四人いらっしゃるというわけですがね。これは天皇家一家の問題でありますがね、だから、私はここでお伺いしませんが、ああいう働いている人の退職金にしましても、あるいは病気になった場合の保険関係でも、外の皇室以外の社会と同じように、やはり扱わなければならぬのじゃないかと、私そういうふうに推察しているわけなんですが、ただ伺っておきたい点は、ああいう二十四人の人々に対しては、宮内庁に病院がありますね、あの病院等の利用等についてはどういうふうにされているのか、その点だけを伺っておきたい。
  53. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 内廷におります職員でございますが、これは私といたしましても、一般公務員となるべく給与を同じにいたしたいということで参っているのでございますが、とにかく全体の経費の上から申しますと、今まではなかなか追いつけない点がございました。しかし、今回この増額をお願いいたしました機会に、成立いたしますならば、われわれといたしましては、公務員と同等に上げてやりたい。それから、恩給という制度はございませんが、退職金につきましても、この退職準備のための基金というものを考えまして、普通の公務員退職する場合と近いものを支給するようにいたしたい。こういうことを、この増額の問題につきまして御決定いただきますれば、そういうふうにいたしたいということで、準備だけはいたしている次第でございます。
  54. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に、勤め人の問題が出ましたので、この際それに関連して承わっておきたいんですが、この宮廷費の常勤職員給与というのが、員数として百三十六人、予算として千八百九十六万三千円が組まれておりますね。この常勤職員給与については、予算書としては、職種が各省庁は書いてあるわけですね。常勤職員は運転手が何人、   〔委員長退席、理事永岡光治君着席〕 タイピストが何名と書いてあるわけですが、皇室費の方はそれを書いておりません。従って、百三十六人というのはどういうものかということが明確でないんです。  それと、さらに、この皇室費の明細書の所に雑役務費というのがありますね、四百二十九万四千円。これは非常勤職員手当というような項目で出すべきものじゃございませんか。非常勤職員手当として出すべきものじゃないか。それと、あわせて、全国からの奉仕の方で皇居内の清掃においでになりますね。御婦人の方々、ああいう方々はどういう処遇、扱い方をされているのか、承わっておきたいのです。
  55. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) ただいまお話しの第一点の常勤労務者でございますが、これは主として何と申しますか、肉体労働と申しますか、庭園の関係をいたしましたり、それから参観の案内をいたしましたり、そういう人をもって充てておりまして、特別に特殊な、よそにないような職種というものはあまり本質的にはございません。  それから役務費でございますが、これは常勤労務者とは全然別でございまして……。
  56. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 非常勤じゃないですか、違いますか。
  57. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) 非常勤とも別でございます、役務費の方は。これは役務費の方は、臨時に、たとえば例をあげますと、新年に一般国民の方が参観に来られます。そのときにあそこに付設をいたしましたり、そういうような臨時な人夫——人夫と申しますか、労務者を雇う費用でございまして、常勤の職員は半ば公務員の諸規定の準用を受けます常時勤めている職員でございます。
  58. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 長官に伺いますが、参観に参られた方の案内をなさっている方が、公務員として身分を保障されない常勤職員だということを今初めて私は知ったわけですが、宮内庁からして、勤労者をそういうふうに身分も保障しないで、常勤職員で百三十六人も使うということは、おだやかでないじゃないですか。あの参観人を案内している人というものは、宮廷費を経理している長官としては必要な人物だろうと私は思うのですが、どういうお考えでいらっしゃいますか。
  59. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) その前の御質問に、勤労奉仕の処遇のことのお尋ねがございましたが、この方々は終戦後に非常に熱心に希望して、宮場内を清掃するということで申し出があったのが始まりで、現在に及んでおるのでございますが、役所といたしましては、大体宮内庁の中に、皇居の中の施設に泊る人と、あるいは外に泊って参る人の区別がございますが、役所の中のにつきましては、大体三日くらい泊られるわけで、それに必要に宿舎、寝具等を準備をいたしておるわけでございます。特別にそのほかに支給というものはございません。  それから、参観人の案内でございますが、その後、皇居ばかりでなく、京都におきまする御所、あるいは桂離宮、修学院、正倉院、その他におきましても、非常に参観者がふえて参っております。これらにつきましても、定員の増ということは幾たびか各諸官庁とも話し合っておりましたが、いまだに進んでおりませず、常勤労務者でございますが、これらの人たちもただ案内が専門でございませず、ほかの仕事に当り、そのときに案内に当るというようなことでございまして、人員はなるべくまあふやさないでというような方針から、今日に至っているわけでございます。今後におきましても、よく研究いたしたいと存じております。
  60. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に伺いたい点は、天皇陛下のお誕生日並びに秋の園遊会に、外国使臣並びに国内の各階層の人をお招きになられるわけですが、その費用はこの会議費に入っているということです。そうすると、会議費というとその二つだけですか。それとも、他にまだ入っているのか。これは分科会でちょっと指摘したことなんですが、当時長官お見えになっておられなかったんです。従って、私は重ねて伺うわけですが、交際費として百八十三万円あるんですね。だから、秋の園遊会とか、天皇誕生のお祝いの費用、それは交際費と同じものではないかというような私は疑念を持つし、この交際費百八十三万円は、あなたの長官交際費という意味か、そこのところを明確にしてもらいたいと思います。
  61. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) まあ園遊会でございますとか、その他公式の接伴という問題につきましては、会議費に入っておるのでございますが、その交際費と申しますのは、そのうちごく小部分宮内庁としての交際費でございまして、それとその経費は主として式部関係事務的な交際の面でございます。そのほかに、宮家関係交際経費、その二つを合せたものでございます。その他の大きな公式の行事につきましては、みんな会議費ということになっておるわけでございます。
  62. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 明確にしたついでに、具体的にもう一つ承わりますが、この前予算審議のときに、皇后陛下のお誕生日に総理が招かれて、そして予算審議を中座して参られましたが、あの皇后陛下のお誕生の行事は、これは皇室の公約な行事ですかどうですか。そして、ささいなことですが、明確にするために……。その所要経費内廷費から出るんですか、宮廷費からですか。
  63. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 皇后陛下のお誕日につきましては、これは宮中だけの行事でございます。その経費でございますが、内廷費から出ます。
  64. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 従って、あなたの解釈では、四月二十九日、天皇陛下のお祝いの場合に、われわれもお招きいただいて参列するのは、これは象徴天皇としての公的な行事で、皇后陛下の御誕生日のお祝いはそれとは性格の違う、公的な行事でない、こういう解釈なんですか。答弁しておいて下さい。
  65. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 新年の行事、それから天皇誕生日、これは国家の祝日でもございましてそこで行われますものは純然たる公式のものとしていたしております。皇后陛下の御誕辰につきましては、これは宮廷の内部の、宮廷としましては公けでございますけれども、天皇誕生日あるいは新年とは違った性格のものと考えます。
  66. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それから、これも明確にしてもらいたいのですが、カモ狩に内外の人々をお招きになる。あれに要する費用内廷費から出るのですか、宮廷費から出るのですか。
  67. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) 宮廷費でございます。
  68. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それから、ともかく宮内庁関係と皇室関係の予算に一番わからないところがあるから、教えていただくつもりで、小さなことも伺っておくのですが、そのかわり、来年はもう何も聞きませんから−…。宮内庁の所に調理師八人、裁縫手三人、一般家政十八人、雑役十一人、その他ずっと出ていますね。これは宮内庁長官経理にかかる、われわれの審議対象の公費に所属するが、この調理師八人とか裁縫手三人、一般家政十八人、雑役十一人、これらの人々は天皇御一家の御生活と無関係ですか。
  69. 高尾亮一

    政府委員高尾亮一君) 一部は御私生活にも関連をいたすと思います。これは今御指摘の職種のみならず、長官初め一部は、私生活に関与するということはございませんけれども、私生活のお世話を申し上げるという意味で、宮内官が背負っている性格とでも申しましょうか、一部は私生活のお世話も申し上げるというふうに御了承を願いたいと存じます。
  70. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今御説明がありましたように、予算そのものを審議して、われわれではどちらの部類に入るかということがなかなかわかりかねて、ようやく最近わかりかけたのですが、けじめのつかないような場合には、長官がいずれから支出すべきかということを裁断されるのですか、それとも項目でちゃんときまっているのですか、そこはどうなっているのですか。
  71. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 御指摘の通りに、大蔵省所管の庁費に属するもの、宮廷費に属するもの、それから内廷経費に属するもの、こういうものが宮内庁にございまして、この関係につきましては、たとえば物品については厳重に帳簿を別にして経理をいたしておるわけでございますが、実際の支出につきましては、予算の大体のところは、予算編成の際に大蔵省当局とも相談して、区分けをいたしておるわけでございます。しかし、具体的の場面につきましては、なるほど外から見てなかなかむずかしい問題があろうかと思いますが、これは新しい皇室経済法になりましてから一つの慣例的なものができておって、その慣例に基いて判断をいたして進んでおるわけでございます。
  72. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう二問ばかりで終ります。雅楽の保存と申しますか、あの方面に必要な費用内廷費には全く無関係かと思うのですが、幾らか関係しておるかどうかということと、その予算並びにあの維持管理の状況はどうなっておるかということを、この際承わっておきたいと思います。
  73. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 雅楽につきましては、終戦までは大体五十名おりまして、洋楽と雅楽というものに分れておったわけでございますが、その後人数が半分になりまして、実際に現在おりますのは二十一名くらいであります。それで、その下に若い青年を将来のために養成をいたしておるのでございましてこれらの経費は大体宮廷費でございます。  その運営につきましては、とにかく貴重な文化財と申すべきものでございましてこれを十分に、そういった少年のときからその跡を継いで、これを長く維持していくということについて努力をいたしておるわけでございます。  その給与につきましても、一般公務員と同様でございまして、一時生活の問題からいろいろ問題がございましたけれども、最近は落ちついてその業に励んでおるわけでございます。  この主たる経費と申しますものは、その衣装でありますとか、楽器の維持の経費でございまして、これは総額、今ちょっと手元に資料がございませんで、たしか六、七十万円くらいで一年を維持しておるわけでございます。毎年計画的にそういう補修をいたしておるわけでございます。
  74. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それはそれで承わっておきまして、時間がないですから、次伺いますが、先般あなたは予算委員会の総括質問のときに、私の質問に答えて、皇位継承権に連なる皇族であられる三笠宮様が、学問的立場とは申しながら、やや政治的な関係のある、たとえば国の祝祭日等に関する問題について発言をされることは、皇族の身分を持たれる方としては御慎重にお願いしなければならない、こういう意味の答弁をされました。御記憶あると思いますが、それはそれとして、私は一応承わりますが、そこで、それと関連して承わりたい点は、先日国立競技場開きがあったわけです。皇族の方々がスポーツに非常に御興味を持たれて、そうしていろいろな団体に関係されていることは私承知いたしております。あの国立競技場開きに、秩父宮妃殿下がお見えになっていらっしたのですが、そうしてその国立競技場を開くテープを切るのですね。これは国立競技場開きの一番大事な行事なんですね、私の見解をもってすれば。これは行政府の行政権の発動の一つの行為で、当然そこにおいでになっておった文部大臣、これは所管大臣です。工事担当大臣として根本建設大臣も参っております。当然私は、文部大臣がみずからこれははさみを入れるべきものだ。これは国立競技場で、国民体育大会の開会式とは違うと思うのです。私は行政権の発動の一つだと思うのです。そこを妃殿下がお出ましになって、そうしてはさみを入れられた。大臣は脇役で出ておられる。これは私はおかしいのじゃないか。今の憲法下で、これはささいなことですけれども、このことは主権在民、主権在君の憲法の相違がはっきり私は明確になっていないのじゃないか。そういう点はお見のがしになっておって、三笠宮が学者として、紀元節について云々申されることは御慎重でなければならないということは、私はどうしてもつじつまが合わないと思うのですが、今具体的に申し上げたのですが、国立競技場の競技場開きを文部省の主催でやる場合に、一番大切なテープにはさみを入れるのは、文部大臣みずからはさみを入れるべきじゃないかと思うのですが、長官はどういうお考えですか。
  75. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 御質問の国立競技場のあれは、あとで私は新聞で知っただけでございまして、どういういきさつであったか存じませんけれどもまあそういった国の施設にしろ、そうでないものにいたしましても、一つのそういったセレモニーという場合、たとえば皇族の方、あるいは国王とか、そういう方がなさるのは各国の例ではないか。法律的の儀礼、そういう一つの儀式と申しますか、セレモニーと申しますか、こういうもの等は、多少やはり社会慣行によって行われて支障のない点があるんじゃないかというふうに考えます。
  76. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこで、私はちょっと考えが違うのです。私は、皇族方がスポーツに関心を持たれて何されていることは、私は非常にけっこうなことだと思うのですが、やはりその行政権の行政業務とその他とは、はっきり区別しなければいけないと思うのです。そこが私は、今の新憲法の主権在民というものがほんとうに徹底していない一つの現われではないかと私は見たのです。私の目からは、非常に不自然に感じました。国民体育大会等に両陛下がおいでになる。あるいはラクビー大会等によく見えられますよ。妃殿下がおいでになって激励の言葉を述べられる、そういうのは非常に自然でほほえましく私は感じているのですけれども、ああいう正式の行政権の行政業務を何されるのは、ちょっと私は慎重であっていいのではないか。ということは、この前予算委員会の総括質問のときに、三笠宮の紀元節に関する発言に対して、あなたがああいう発言をされただけに、私はどうもつじつまが合わぬように感じたのでお伺いしたのですが、あなたの見解としては承わっておきます。  最後に承わりたいことは、宮内庁職員の勤続年数と、その宮内庁と他の省庁との人事交流、そういうものはどういう状況になっておりますか。私は、この宮内庁職員と、それから一般省庁との人事交流も、ある程度行なった方がいいのではないかという感じを持っておりますので、それを承わっておきたいと思います。
  77. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 御指摘の通り宮内庁職員は、他の一般公務員に比較いたしますと、在職年数が相当長いのでございます。今御指摘の通りに、やはり他の官庁と交流をしていくという考え方につきましては、私どもも特に意を用いているところでございます。なかなか実際問題におきましては、その交流という問題が、具体的問題についてはなかなか意の通り進まない状況でございます。あまり内部で動きがなくておるということは、多少やはり考えていかなければならない。やはり外からの新しい空気をある程度入れるべきものだと私も考えております。そのつもりで努力をいたしておりますし、今後についてもいたしたいと存じております。
  78. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これで終ります。その点、私は強く要望しておきますが、私がここで申し上げるまでもなく、旧憲法時代は宮内省というのでやっておったわけですね。それが新憲法の精神をくんで、総理府所管の宮内庁ということになったわけですからね。そこに新憲法の精神が出ているわけで、宮内庁職員の方が、宮内省時代からの惰性で、まあそうあるまいと思うが、万一にも特権意識なんかに無意識の中に浸っているようなことでは私は相ならぬと思うのです。そういう意味からも、これは適材は他の省庁に幾らでもおりますよ、だから、人事交流をすることが必要でないかと思っておりますので、まあ長官も努力されるということですから、この点は特に御考慮をわずらわしたいと思います。以上であります。
  79. 田畑金光

    ○田畑金光君 関連で、ちょっと一言だけ。  ただいまの矢嶋委員からの質問に関連して、お尋ねしておきたいと思うのですが、矢嶋委員質問の中に、まあ私初めて承わったわけですが、予算委員会の審議の途上、三笠宮の紀元節に関する発言というものは政治的なにおいがあるので、こういうような発言については自重されることを希望する、こういう長官の御意向であったということを、まあ今初めて承わったわけでありますが、長官としては今でもさようにお考えになっておられるのか、これを承わりたいと思います。
  80. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) この間お答え申し上げました要旨を繰り返しますと、殿下が純粋に学問的に御研究になって、これを学問的に御発表になることについて、別段これを控えるべきものであるというような考えは持っておりません。しかし、その場合、やはり皇族として、皇位継承権があり政治に関与しないものという性格を持たれる。そういうような意味から、選挙権、被選挙権もお持ちになっていない。あらゆる点から考えまして、それが政治問題に触れるというような問題については、慎重な行動をおとりになるべきものである。それを、そういった一つの政治問題等に利用されるという問題は、いろいろの場合に起り得ることでございますので、そういう意味でお答えしたわけでございます。その考えは現在も変っておりません。
  81. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の前段の御答弁の中にありましたように、三笠宮のあの発言というものは、どこまでも学問上の発言であるとわれわれは考えているわけです。歴史学者としての良心に基いて自己の見解を述べられたものだと、こう考えるわけです。たまたま今日、紀元節復活の問題が、国民の祝祭日を定める法律改正問題に関連して、政治問題化しているから、長官の後段のような御心配が出てくるわけで、少くとも学問の自由ということが憲法上保障されているならば、これは当然、皇族であろうと、民間の学者であろうと、今日の憲法のもとにおいては自由であろうと、こう考えているわけで、もし、かりに長官の御答弁の中にありました、政治的な議論というものがなかったとするならば、これは問題は何もないはずです。やはりこれは学問の自由、思想、良心の自由という憲法の精神からいたしますならば、そういうような政治的な云々というようなことは憲法の精神に大きく反するものだと考えまするが、この点、長官はどうお考えになりましょうか。
  82. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) ただいま申し上げました通りに、学問を御研究になり、その成果を発表されるということについては、ただいま申し上げました通りであります。しかし、現に大きな政治問題として論議されておる場合に、単純に学問的のことでなくて、それ以上に触れてこれを推進する、あるいはそういった意味でなさることは、これは一部政治活動に入るおそれがあろうかと思います。それらの点については、十分に慎重に考えていただかなきゃならぬというふうに私どもは考えておるのであります。
  83. 田畑金光

    ○田畑金光君 長官の答弁をこう考えてみますと、憲法上の学問の自由とか、信仰の自由、良心の自由、この自由が皇族なるがゆえに、あるいは政治的な世上の問題に利用されるがゆえに、こういうわけで不当に侵害されるということになって参りますと、この憲法のもとにおいては、天皇皇族国民も同じく憲法のもとに置かれておる、こういう立場からいたしますと、われわれといたしましては、相当な矛盾を感ずるわけです。あるいは旧帝国憲法時代のもとにおける天皇とか、あるいは皇室であるならとにかくとしてこの新しい憲法のもとにおける天皇皇族は、おのずから解釈やあるいは態度等が違ってしかるべきものだと考えるわけであります。単に皇位継承権につながるがゆえに、それだけの理由でもって、一体この憲法上皇族にも天皇にも保障された学問の自由というものがさように制約され得るものかどうか、まことにこれはわれわれとしては納得いきませんが、もう一度承わりたいと思います。
  84. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 重ねてのお尋ねでございますが、まあ皇族という地位におられますがゆえに、たとえば、今申し上げましたように、選挙権、被選挙権もございませず、また皇族費という経費を国家から支給を受けておられるわけでありまして、そういうようなお立場においてやはりそういった、おそらく選挙権、被選挙権の問題も、政治的に中立と申しますか、そういう立場にあらるべきだという精神から出ておるのじゃないかと思いますが、そういうようなことは、やはりその他の学問の研究という面におきましても、その発表につきましては、そういった政治的な問題にからむおそれがあるということについては、当然皇族としてはお考え願ってしかるべきものだという私は考えであります。
  85. 田畑金光

    ○田畑金光君 真理を真理として探究する、これは皇族でも一般国民でも変りないと思うのです。真理を真理として探究し、それの上に立って正しいことを主張することは、皇族であろうと国民であろうと、何らそこには違いはないはずです。ことに学者として、歴史学者としてみずからの学者的な良心に従って発言をなさる、皇族なるがゆえにそれが制限される、こういうようなことは日本の憲法のもとにおいては許されぬことだと思う。たまたまあなたのお話は、紀元節問題が国会の論議になり世上の論議になった。ただ、それなるがゆえにそれを控えてもらいたい、差し控えるべきだ、これは人間の自由というものを抹殺するものだと考えるわけです。皇室なるがゆえに、あるいはかえって、三笠宮のようないわば自分の過去を振り返ってみるとき、自己の過去の歩いた道を振り返ったとき、もう一度そのようなあやまちを犯しちゃならぬ、こういう学者的な良心に基いて、一つの主張あるいは警醒の言葉を吐かれるということは、当然これは許されてしかるべきであり、これこそ新しい憲法が天皇にも皇族にも求めておる自由だと、こう思うので、あなたのように、ただときたま政治的な問題になっておるからということで、そういうようなことは、この憲法でも、あるいは皇室典範がかつての憲法と並ぶ大権を持っていたそういう皇室典範から、法律によって常に改正ができる、こういう皇室典範に変っておるというこの新しい憲法、皇室典範の動きを見ましても、あなたの考え方というものは、どうもわれわれは時代逆コースを進んでおる思想としか考えられぬようなわけで、そういうようなことでは、憲法のこの精神と大きく矛盾すると考えるわけであります。この点どうですか。
  86. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) やはり一般国民と同様な地位におられない、皇族という地位におられましてその皇族に関する諸規定その他を見まするならば、国民とは違った特権も有され、あるいは当然国民ならば持つべき義務も行われないということがある地位の方でございます。そういう方が、制限のございます趣旨によって行動されるということが、ただ憲法からたとえば出ておる問題でございますれば、当然それは制限を受けてくるということは、私は十分考えて行動されるべきであるという考え方でございます。
  87. 永岡光治

    ○理事(永岡光治君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  88. 永岡光治

    ○理事(永岡光治君) 速記を起して下さい。
  89. 田畑金光

    ○田畑金光君 もう少し関連してお尋ねしますが、あなたの御答弁の中には、要するに、皇族費というものは国の予算で国会の議決を得る、そういうふうな立場にあるというような一つ理由があげられておりますが、もしその理由でいきますならば、皇族の生活というものはすべて公的な生活だ、こう規定されようと思うのです。たとえ皇族費が国の予算によって支出されても、その生活には公生活もあれば私生活もあろうと思うのです。ただ、国会の議決を得る予算によって皇族費がきめられておるから、そこで公的な生活がすべてだ、こういうふうなことはこれは事実に反すると、こう思うのでありまして、これは理由にならぬと思うのです。  それからもう一つ、われわれの考えなきゃならないことは、現在もそうであるが、将来とも、皇族であろうが、一つの自分の学問的な良心からこうあるべきだという見解に立つならば、それは堂々とそれぞれの機会を通じ、あるいはその学問の世界においてはその学問の世界において述べられてしかるべきだと、こう思うのであります。ただ、お話のように、直接または意識的に政治の問題を論議するということは、あるいは天皇皇族の立場においてはそれは許されないかもしれぬ。あるいは遠慮すべきかもしれぬ。  ただ、しかし、長官の先ほどのような見解をもしとるといたしますならば、これはたとえばわれわれが今までの日本の歴史をふり返ってみた場合、かつての大日本帝国憲法のもとにおいては、天皇の大権というものはまことに偉大な権力を持っていたわけです。統治権の総攪者として、統帥大権も、皇室大権も、また行政権においても結局は天皇の官吏として行政権は天皇に帰一していたわけなんです。もし、かりにあの大東亜戦争のような場合に、天皇自分の良心と信念に基いて軍部の行き過ぎを抑える、こういう一つの勇気と、そしてまた天皇の権威に伴うところの断というものが下されていたならば、日本の歴史というものももう少し変ったものに動いたかもしれない。天皇の大権はあったけれども、また大臣の輔弼の責任というものはあったけれども、統帥権という独立の名のもとに、そして軍部は天皇の名においてどんどんああいうことをやってきたわけです。もし、天皇ほんとう自分の信ずる道はこうだということで断を下すならば、おのずから世の中も変ったものが出てきたかもしれない。敗戦のときの詔勅に断を下されたと、ああいうような一つの勇気というものがあったならば、やはり日本の歴史というものは相当変ってきたかもしれない。こういうことを考えてきたとき一に、少くとも今後の、あるいは天皇も、あるいは皇族も、自分の良心と自分の信ずるものはこうだという一つの認識に立つならば、それに基いてそれぞれ、あなたのお話の政治的な直接の意図はなくても、一つの意見を吐かれる、述べられるということは、当然これは今の憲法のもとにおいては許されてしかるべきであると考えるわけです。  ところが、あなたのような先ほどの見解をとられるといたしますると、憲法の精神にもとる、また昔の逆コースに戻る、そういう傾向を私は強く感ずるわけですが、もう一度、私のこの見解に対しあなたの見解を聞かせていただきたいと思います。
  90. 宇佐美毅

    説明員宇佐美毅君) 重ねてのことでございまして私のお答えも同じようなことになるわけでございます。皇族が政治問題について何か御意見をお持ちになる、しかも相当重大な問題についてお持ちになるという場合におきましても、この意見を述べられるということは、政治問題的、あるいは政治運動的な形に現われないでなさることもでき得るのじゃないか。そういった周囲の状況を見た慎重な態度が、やはり皇族さんの本来のお立場からいえば、必要であるというふうに私はただいま考えております。
  91. 田畑金光

    ○田畑金光君 それでは、この問題はまた他日適当な機会質問を継続することにいたします。
  92. 永岡光治

    ○理事(永岡光治君) 午前中はこの程度にとどめ、午後は一時四十分から再開することにいたしまして、これにて暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩    ————・————    午後一時五十八分開会
  93. 藤田進

    委員長藤田進君) 休憩前に引き続き、委員会を開きます。  通商産業省設置法の一部を改正する法律案議題として質疑を続行いたします。  御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  94. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に引き続いて、人絹、絹について、大臣に二、三お伺いしたいと思います。  御承知のように、絹とか人絹織物は、戦前、朝鮮、中共——今の中共ですね、そういう方面に相当多量出ておったわけです。こういう実情にかんがみて、この際経済開発促進強化をはかって、こういうような地域に何とか輸出貿易を強化して貿易を促進することが非常に大事ではなかろうか、そういうふうに考えておるわけですが、大臣はこの問題についてどのようにお考えになりますか。
  95. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 御承知のように、中共につきましても、繊維品は昨年、一昨年あたりかなり出ております。出ておりますが、なかなか戦前のところまでのようなわけには参りません。と申しますのは、もうすでに御承知のように、中共も極力まあ向うで糸を作り、また繊維を作ると、こういうような方向に向っております。従って、繊維機械あるいはそれに使う原料を輸入するというような方向にあると思うのであります。しかし、まだ、そういう方向ではありますが、ただいまそれが全部でき上っておるというわけではありません。もちろん、われわれもできるだけ繊維品を中共にも送りたいというふうに考えておるのであります。しかし、それにはどうしてもまたこちら側から輸入するものを考えていかなければならぬという状況にあるのであります。まあ極力中共から輸入する物質については、他の地域から振りかえられるもの、あるいはふやし得るものというふうにして、極力輸入物資を多くして、そうして繊維品についての輸出も努力をいたしたい、かように考えております。
  96. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 例の問題になっております日中貿易協定について、政府はいまだに同意を与えていないようでありますが、いつどのような形で同意を与えようとしておるのか、この際承わりたいと思います。
  97. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 先般の第四次協定につきましては、しばしば政府も、貿易拡大の精神に基きまして、支持と協力を与えるということを申しておるのであります。これはもうごく最近といいますか、私は、もうあるいはこの二、三日のうちにでも、三団体に対して正式な回答が与えられると、かように考えております。
  98. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 戦前は、申し上げるまでもなく、朝鮮とか、今の中共ですね、それから蒙古、チベット、イリヤーク、ツングース、オロチョン、こういうような民族までが、私すみずみまで回ったわけですが、その当時はほとんど日用品は日本商品を使っておったような実情なんですぬ。そういうような関係で、日本人としてもずいぶんこの大陸との貿易については恩恵を受けておったと思うのです。もちろん、申し上げるまでもなく、情勢は一変したわけでございますけれども、こういう事実もあったので、今後こういう方面にやはり通産省としては、昔の盛んな程度にまで戻らぬまでも、それに近づくよう不断の努力がぜひ必要だと思うのですが、こういう問題について大臣としてどのようにお考えになりますか。
  99. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 先ほど申し上げましたように、われわれ、開発されましたアメリカとか何とかということになると、繊維品はよほど高級品でなければなりません。繊維品がまだ戦前の水準近くは——世界の繊維品の輸出の割合から見ますと、かなり近くは行っておりますが、まだまだそういう方面にまで、開発地域といいますか、こういうような大陸方面に対する進出というものは、いろいろな関係で今まで行き届かなかった面もありまするが、今後極力その方面に対する努力をいたしたいと、かように考えております。
  100. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前にもお伺いしたと思うのですが、中小繊維工業者の倒産者が続出しておるわけなんですが、これを防ぐ一つの方法として、商社等の発行しておる不渡り手形ですね、これを一つたな上げ救済融資を、中小企業信用保険法を実施することによって何とか解決する方法はないかと、そういうふうに考えられるわけですが、この問題について大臣はどういうふうにお考えですか。
  101. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) この繊維不況に対する金融の関係につきましては、少くとも操短が強力に行われておるという面につきましては、極力金融の面も考えていかなければならぬというので、これはまあ日銀等ともいろいろ打ち合せをいたしておりますが、銀行のベースに乗るというものについては銀行を通じ、また政府関係の金融機関を動員できます分につきましては、北陸等におきましても、府県の保証というような関係を動員いたしまして、商工中金等から金融をさせるというような努力をいたしております。しかしまた、その他の地域につきましても、生産調整がしっかり行われておるというものにつきましては、極力さらに範囲を広げていきまして、そうして北陸と同様な措置をとりたいと、すでに私はそういうように金融機関とも話をしております。  もちろん、今度出発いたしております信用保険公庫が、将来は一般の市中金融機関に対して保証をするということになるわけですが、まあ現在においても保証協会はありますが、保証協会も最近、将来相当強化されることを考えて、活発化しておりますけれども、先般も保証の限度の引き上げをしていただいて、極力それらについて、実はこれは出発いたしますと非常に好都合なのでありまして、担保を取らず保証協会で保証をするという方法が出て参るので、大いにこれも動員していきたいと、まあとりあえずのところは保証協会に極力やってもらいたいと、かように考えておるわけであります。その前提として極力生産調整だけはしっかり実行してもらうと。ともしますと、実は今まで実効の上らなかった面もありますので、まあ三割操短といいましても二割というのが常識になっておるので、それではどうも思ったような効果が上らぬ。それで、あくまで強化していただくとともに、それについての金融という面も考えていきたいと思っておるわけであります。
  102. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、不渡り手形の増加とか、手形期日の超過、こういうことは中小企業に相当不当な圧迫となって現われておるわけです。そこで、手形法を改正して手形期日を何とか制限する方法があってもよろしかろうと思うのですが、そういう問題に対しては、大臣としてどういうふうにお考えになりますか。
  103. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 実は手形法の根本問題まで行くことになりますと、これはかなり大へんな問題で、まあわれわれのちょっと手に及ばぬことだろうと思います。しかし、まあ不渡りにつきましても、従来から連鎖反応だけは起さぬようにということで、この点は日銀におきましても、支店を通じて常に打ち合せながら、まあ倒産者そのものをすぐ救済するというわけには参りませんが、それから起る連鎖反応ということの起らぬように、結局は、まあ手形等の問題に関連することでありますけれども、またもちろん他に非常に波及するような倒産というようなことにつきましては、十分めんどうを見られるだけについて見ていくというふうに実はしておりまして、率直に申し上げますと、いわゆる連鎖反応で社会不安を起すというようなことのないようにして参りましたので、昨年来ずっとしのいできておるというわけでありまして、これは今後とも十分注意をいたしたいと、かように考えております。
  104. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 中小企業の中でも、特に繊維織物関係の設置については、相当老朽化しておる面が多いと思う。私の県の桐生とか、伊勢崎、隣の足利、こういうような所でときどき拝見しておるのですけれども、説明を待つまでもなく、相当古いものがあるわけです。そこで、政府としては設備の近代化ということを相当強調しておるわけなんですね。そこで何とか相当額の設備融資によって、こういう面を何とか特別に考慮してもらうことが非常に必要であろうと思うのです。この点についての御配慮は何とかならぬものですか。その点についてお尋ねしておきます。
  105. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 従来から設備の近代化ということにつきましては、御承知のように、設備の近代化補助金というのを、そういう制度を設けまして、政府から補助金として出資をいたしまして、それに見合う額を府県が出資をして、特別会計で無利子で金を貸すという制度を作っておりますとは、御承知の通りでございます。昨年は、四億の補助金を出したのでありますが、本年は六億ということにいたしております。で、府県分を入れますとそれの倍額になり、また回収金もありますので、本年度——もうすでにきょうは本年度でありますが、本年度におきましては、大体まあ自己負担率自己調整率、それらを入れますと四十五億以上の設備の近代化をやるわけであります。実際申しますというと、従来は設備の近代化補助金によって出しております約半分は繊維関係に出しております。従って、設備の近代化がはかられてきた繊維関係につきましては、かなりの設備の近代化が行われるというふうにわれわれ考えておるわけであります。  半面、今度は過剰織機が生じる。もちろん、これは一つを整理して片一方をふやしていくというわけではないのでありますが、過剰織機につきましては、御承知のように、過剰織機に対しましては補助金を出して、それを買い上げて償却するということをやって参っております。実は、ほかの綿スフ関係は本年度は計上いたしておりませんが、人絹関係につきまして、本年度も一億二千万の過剰織機処分に対する補助金を計上いたしております。これは従来と同額のようでありますが、対象が昨年は人絹につきましては五千万円であったわけであります。で、それがさらにこの人絹関係の非端な不況によりまして、予備金で三千万円、それからそのほかの使い残りが二千万円ありまして、一億だけの——一億といいますか、補助金が一億でありまして、そうしてまた補助金の補助率を引き上げまして三分の二の負担にして、五千台の償却をするということを昨年度において、これはまだ現在進行中でありますが、そういうことをいたしております。それから、ただいま申し上げましたように人絹だけでことしは一億二千万円を使っていく。こういうふうに考えておるのでございます。ただいまのところ、他の織物につきましては一心過剰織機の処理というのが一段落いたしております。もし、そういう事情が新たな関係で起りましたら、先ほど申し上げましたように、予備金の支出もやっておりますので、そういう面も開いておりますから、今後の推移に従って考えていきたいというふうに思っておるのであります。この不用あるいは老朽化しておりますものにつきましては、もちろんできるだけ近代的な設備にかえる。また過剰であれば過剰のものは処理していくという方針でもって臨んでおるわけであります。
  106. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この設備近代化のための資金ですが、自己資金が現在三分の二、そういうことで、ここにやはり問題がある。これがいわゆる設備近代化のための非常に支障になっておるので、何とか三分の一くらいに自己資金がならないかと、そういう業者の声が強いのですけれどもね。何とか三分の一くらいまでには奮発できないのですか。この点をお伺いしたいのです。
  107. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 実は半額まで政府で補助しようかという案で、ずい分やったのであります。ところが、まあ内輪な話をいたしますと、結局、この設備近代化補助金はまあ無利息で貸すわけでありますが、その残余は大ていはまあ普通の金融機関も補助金がつきますと貸す。あるいは中小企業金融公庫におきましても、そういうものについては残余の金はめんどうを見ておるわけであります、中小企業金融公庫で普通の。これも設備の近代化に資するわけでありますが、貸しておりますものから見ますと、まあ三分の一無利息で貸しましても非常にまあ有利な関係になるものでありまするから、そこまで行かなくても、結局においてあとの三分の二については中小企業金融公庫もめんどうを見なけりゃならぬ。もちろん、市中金融機関で調達のできますものは、これはもうけっこうでありますが、そういう関係もあるものでありまするから、今回は補助率を従来通りに据え置いたわけであります。今後のまたいろいろ推移を見まして私も善処いたしたい、かように考えております。
  108. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 重ねてお伺いしますが、自己資金の三分の二ですね、それを今すぐなら三分の一ということであれば、まあ業者には大へん都合がいいわけですけれども、いろいろ予算の関係もあるので、今大臣も言われましたように、とりあえず二分の一くらいにして、そうしてまた漸減という意味で、その後三分の一と、そういう手もあろうと思うのですね。そういうような意味合いから、何とか三分の一について今後最高度の努力をしていただきたいと、そういうふうに思うのですけれども、この点についてお考えのほどを、一つはっきりお伺いしたいのですが。
  109. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 実を申しますと、同額府県で負担しなくちゃならないという関係がありますので、まあ半額までは法律改正しなくてもできるようであります。今後のやり方につきましては私も十分検討いたしまして、極力考えて参りたいと思います。
  110. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今御意思の御発表があったわけですが、ぜひ一つ二分の一になるように、これはまあ強い業者からの要望もあると思いますので、一つぜひこの点は引き続き努力していただきたいと思います。  なお、この繊維工業の設備については臨時措置法があるわけですが、これを見ますと、過剰の織機については一台当り政府の補助金と業者の負担金が同額になっておるわけです。これについては、これも業者からも強い要望ですが、一台についてせめて七五%くらい、そのくらいの割合を一つ政府の方で補助金を出してもらいたい、こういうような強い、要望を聞いておるわけですね。この点はいかがでしょうか。
  111. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) たしか業者の方々の御要望で、実はあの先般の予備金を要求いたしましたときの補助率を変えまして、従来は一万一千円に業者の負担が一万一千円、こういうことになっておりました。それをたしか二万円と一万円ということに改めまして、業界の方も非常に満足していただいたのでありまして大体従来よりはずっと引き上げておるわけであります。
  112. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大体繊維企業については打ち切りまして次に貿易に関連して二、三お伺いしたいと思いますが、まず貿易政策については、通産省としては国内均衡か、あるいは国外均衡か、いずれに重点を置かれておるか、まずもってこの点をお伺いしたいと思います。
  113. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) まあ国内均衡、国際均衡といいますか、この貿易の関係、また国内の需給の関係、これはもう常にバランスをしていかなければならぬと思います。しかし、昨年におきましては、御承知のように、外貨が非常な危機に見舞われまして、これについてできるだけ早い機会に外貨の不安をなくしたい、かように考えまして強力にまあ輸入を押えるというような措置によって、十月以降黒字を出して参ったことは御承知の通りであります。まず、率直にいいますと、国際収支の面では安心をしてはいけませんが、そう心配はないというふうに考えておるわけであります。ところが、今度はその反面に世界景気が思ったよりどうも頭打ちになる、下降して参りまして、輸出は必ずしも悪くないのでありまして大体に予定の二十八億ドル以上に輸出は伸びて参ったのであります。  しかし、御承知のように、三十二年あたりにおきまして、設備が非常に増設をされてきたという関係からいたしまして、繊維製品におきましても、御承知のように、昨年は一昨年から見ますと、人絹以外はみなふえておるのです。ふえながらかつ滞貨がたまっている。これはもう明らかに設備過剰ということになりますので、これに対してはどうしても生産調整をやっていかなければならぬというので、昨年の九月以来、われわれも非常にやかましく言っておったのでありまするが、業者の方々も踏み切れなかったということもありましょうし、また徹底されなかった面もありましょう。今なお滞貨が多いというようなことでありまして、さらに生産調整を強化してそうして監視も厳重に励行されるというようなことによっていかなければならぬ事態に相なっております。過剰生産のために今度、反面、非常に不況だという面も出て参りまして、本年に入りまして、二、三月の危機が言われておりました。しかし、これは国際収支の関係から思ったほどの金融危機ではなかったのでありますが、全面的に不況な状況になってきた。その一つの原因は、何としましても、鉄鋼につきましても、他の非鉄金属につきましても、やはり過剰生産という問題があります。従って、これはやはり極力生産過剰の面を押えていかなければならない。  その反面に、経済全体が縮小される。明らかに最近におきましては、御承知のように、輸入意欲の減退と申しますか、輸入は減って参りましてもう輸入が、昨年のような輸入意欲があるというようなことは考えられないのでありまして、また経済が縮小し過ぎますると、これまた行き過ぎということに相なると思います。従って、一面におきましては、私は手直しというふうには考えておりませんが、民間資金の足らざるところを補って、いわゆる基幹産業を極力動かしてそこで経済の調整といいますか、そういう動いていく面を極力作っていくという意味合いで、御承知のように、三十二年度の財政投融資の一割五分の繰り延べはやりましたが、その見合うものを今度民間資金の調達ができませんで、八割五分の残余の仕事をやりますために、どうしてもまた民間資金の足りないという面もありますので、その方面にその金を回すというふうにも考え、大蔵省にやってもらったわけであります。今後におきまして、こういうときにこそ基幹産業ができるだけやって、長期計画に合わせていくという処置をとっていかなければならぬと、かように考えておりますので、それらの方法によって極力国内のバランスもとっていきたい、かように考えて、せっかく努力をいたしておるわけであります。
  114. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 昨年の国際収支の赤字の原因について、経済構造の拡大変化から来たと、そういう意見と、短期的ないわゆる思惑輸入から来たと、そういう意見が、政府部内にもあったと思うのですけれども、通産省としてはこの赤子の原因についてはどのように把握しておられるか、その点をお聞きしたい。
  115. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 何といたしましても、三十二年度以来設備の増設ということが集中的に行われてきたわけであります。そのために、鉄鋼が倍以上にもなりまして、トン十万円にもなる、こういうような面が出て現われて参りましたので、それから例のスエズ運河の問題その他によりまして、石油を緊急入れなきゃならぬというような点がありまして、あるいは鋼も緊急に輸入しなきゃならぬというような状態になりましたために、いわゆる石油なり鉄鋼の緊急輸入というのが追加的に行われたわけであります。これがしかも、率直に言いますと、予想以上に入ってきたということでありまして、そのために赤字が出てきた、これが一番の基因といいますか、最大の赤字の原因だと思います。これを思惑輸入ということも、私は否定いたしません。  見越し輸入といいますか、かなりの需要があるというふうに考えてきたわけでありますが、結果的に見ますと、それらがほんとうは、鉄鋼にしましても、あるいは石油にいたしましても、実際はそれだけの需要が、今になって結果的に見ますと、なかったわけであります。当時としましては、そういう需要があることを考え、また値を下げていかなければならぬ、こういうような関係にもありましたために、緊急輸入が行われた。しかし、それだけはむしろ過剰在庫のような格好で残り、それがかなり頭を押えるように荷もたれになりながら、世界景気の下降とともに不況に入っていった、こういうことじゃないかと思います。
  116. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大企業が、昨年度の例の神武景気の莫大な利益を隠すために、原材料を盛んに輸入して、現在でも五ヵ月分くらい抱えておる会社がある、そういうように聞いておるわけです。この点については、現状はどうなっておりますか、伺いたいのですが。
  117. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これは物により、会社により、あるいはそういうことがあったかとも思います。しかし、漸次それらの在庫は減って参っておるわけでありまして、まあ原料としましては、製品在庫は五割ないし倍額、繊維等におきましては残っておりますが、その他のものにつきましては、あるいは鉄鋼、銅、それらは相当な在庫があると思います。しかし、そのほかの在庫は漸次減って参っておりまして、三月末では、大体正常よりは少し在庫が多いというものが大部分の商品の状態じゃないかというふうに考えておりますが、繊維とか鉄という関係になりますと、これはただいま申し上げましたように、製品在庫の格好でかなりの量が残っておるということが言えるのじゃないかと思います。正確な点につきましては事務当局から……。
  118. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この思惑輸入が脱税手段としても使われたのではないか、そういうようなことをよく聞くのですが、そういう点はなかったのですか。一部にはあったかどうか……。
  119. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これは、輸入ですと、使った金はみんなわかるわけでありましてこれが脱税の手段に使われるとは私考えておりません。ただ、在庫の評価ということになりますと、評価はいろいろやるでしょうが、これは脱税といいますか、あるいは多少の調節は行われたかもわかりません。しかし、これも計算すればすぐわかることであります。そんなに輸入を脱税の手段に使うというのは、税務関係考えますと、あまり巧妙な手段とは私も考えられないわけであります。
  120. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次は、生産調整についてはコントロールだけではなしに、これは購買力にもいろいろと関係があろうと思うのです。そこで、国内均衡に重点を置いて国内の景気をある程度引き上げなければならぬのじゃないか、そういうことを聞くわけですけれども、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  121. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 繊維等におきましては、一般の購買力の関係もさることながら、問屋が買い控えをしてその取引が停頓する、これが一番大きな問題と思います。私は一般の購買力が非常に減っておるというふうにも考えておりませんが、要するに、製品在庫があり過ぎますために、問屋がかなり買い控える。それから金融の面で、どうせ投げ売りをするだろう、こういう予想が一番この取引の停頓を引き起しておるというのが、今の状態ではないかと思います。従いまして、生産調整を強力にやる、あるいは原綿、原毛の輸入を極力圧縮する、また生産調整が十分できたものにつきましては金融の面も考える。投げ売りをしなくてもよろしい、こういうことになりますと、問屋も買う。また外国の商社につきましても、これ以上下らない、これが底値だということになりますと、買い始めますので、そういう行き方をすれば、いわゆる一般の購買力を刺激するという必要はないのじゃないかと思っております。  結局、一般の購買力としましては、ただいま申しましたように、失業者とか何とかという者ができましたのでは困る。基幹産業なり、他の不要不急のものを極力仕事をやらせる、それについての金融を考えていくということでやって参りたい。購買力が非常に落ちておるというように考えて、急に極力一般の購買力をつけようというような措置をやりますと、むしろ逆効果の面もあります。そこらの点も十分に考えながら調整していきたい、かように考えます。
  122. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 東南アジア、中国、南米等、いわゆる海外の日本の商社の活動状況、これはもちろん非常に膨大になると思いますが、ごく概要でけっこうですが、承わりたい。
  123. 伊藤繁樹

    説明員伊藤繁樹君) 御質問は、商社の活動の現状と存じますが、今ここに資料を持っておりませんが、支店の数が現在大体六十箇所ぐらい、駐在員事務所が二百余りと記憶しておりますが、それが現在世界各国に配置されております。現在商社活動につきましては、御承知のように、どちらかといいますと、過当競争が問題となっておる現状でございますので、この点につきましては、現在、通産省の方におきまして市場別に、商品別に、できるだけ協調いたしまして、過当競争のないように指導いたしております。
  124. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今概要説明あったわけですが、そういうような日本の商社が自分の社のPRにのみ重点を置いてめくら貿易の打開とか市場の調査、開拓、こういう本来の使命を軽く見ておるのではないか。そういううらみがあるというふうに聞いておるのですが、この点についてどういうふうにお考えでありますか、大臣としてのお考えを。
  125. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 御承知のように、各商社につきましては、自分所だけということではもちろんいかぬのでありますが、まあ極力全般的な、総合的に、能率といいますか、輸出ができるようにということを考えていただかなければなりません。ただ、メーカーの支店になりますと、これはまあ自分の所の宣伝に終るのは、これはやむを得ないと思います。  そこで、御承知のように、従来はジェトロと称しておりまする中小企業者の、主といたしまして共同的な宣伝あるいは市場の調査、そういうような、いわゆる輸出振興事業を主眼としました財団法人を作っておったわけであります。しかし、これは自然発生的にいいますと、見本市協議会、あるいは市場調査の協議会、貿易斡旋協議会というようなものが一つになったのでありまするが、大体府県の寄付金が主体でできてきたものであります。しかし、私はどうも、輸出は何としましても国全体の事柄でありますので、政府がそれに対して本腰を入れたものでなければならぬというふうに考えておりますので、従来から財団法人に政府ももちろん補助金も出してきたわけでありますが、もっと安定し、信用のある組織を作るべきだと、かように考えまして今度の予算で二十億の出資をしていただきまして、貿易振興会というものを作ってそれを中核体にして各業種に片寄らずに、また極力中小企業者の宣伝なり、あるいは貿易のあっせんということを中心にしてやって参りたい、かように考えまして、今後はこれを強力に動かして輸出振興をはかっていきたい、かように考えておるわけであります。
  126. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 貿易の伸張の障害として、行政機構の不合理、特に港湾行政機構から来る障害が相当あるやに承知しておるわけですけれども、こういう面については、大臣、どのようなお考えですか。
  127. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 港湾行政というものにつきましては、御承知のように、あれは関係各省ずいぶん多いものでありまするから……。税関、あるいは建設省、農林省、各省が関係をいたしておりますわけであります。しかし、これは港湾行政という大きな問題として取り上げた場合はそうでありますが、輸出の関係におきまして特にこれが非常に大きな障害になっておるということは、あまり聞いておりません。しかし、長い目で見ますと、もちろんこれが障害になることだと思います。と申しますのは、たとえば輸入する港、輸出する港というものが、おのずから違うのであります。各原料を入れます港、あるいは製品を積み出す港、これらについては今後総合的に考えながら、各港湾の今後の修理とか、そういうものについて考えていかなければならぬと思っておるわけであります。また、そういう問題で内閣で、閣僚で協議会のようなものを設けて、今後も港湾関係の問題の処理、これは主として運輸省と建設省との関係になるわけであります。それにつきましては、通産省としては貿易の方の関係を織り込んで、いろいろ協議して摩擦の起らぬように、そしてまた効果が上るようにというわけで、審議会を発足いたしております。しかし、これは現在の貿易そのものにすぐ直接関係があるというわけのものではありません。ただいまのところは、直接の関係で各省にまたがっておるから困るというようなことは聞いておりません。  ただ、港湾の関係ではなしに、為替関係は大蔵省、物の関係は通産省というので、いろいろその間摩擦のある点はありますが、これはできるだけわれわれの方も協力をして、極力摩擦のないようにいたしておるわけであります。
  128. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もありますので、最後にバナナの輸入について一点お伺いして、私の質問を終りたいと思いますが、申し上げるまでもなく、このバナナについては、相当もうけが大きい物資だけに、いわゆる密輸入が跡を絶たない、不正な輸入が続けられておるというふうに聞いておるわけです。その現状はどうなっておりますか。それとまた、その対策については大臣としてどのようなお考えですか、この点をお伺いします。
  129. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ちょっと、やり方だけ次長の方から。
  130. 伊藤繁樹

    説明員伊藤繁樹君) 現在バナナは、主として台湾との通商協定に基きまして、年間四百万程度を輸入しておるのであります。これにつきまして日は、大体過去の輸入実績によります輸入業者の割当、加工業者に対する実績あるいは人口比率等を加味いたしまして割当をいたしておるわけでございます、御承知のように、相当の差益が出ますので、これは輸入業者から加工業者の手に渡ります幅相場を基準にいたしましてその差益を国庫に徴収する措置をとっておるのでございます。以上がやり方でございます。
  131. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) それに対して私お答えしたいのでありますが、差益につきましては実にむずかしいのでありまして、と申しますのは、差益は上り過ぎるようにしてはいけませんが、また今でも、実は先般も上げたんでありますが、上げると今度は、バナナが、子供が食うものに差益をとって上り過ぎるではないか、こういうようなおしかりもこうむっておるわけでありましてその間両方の考え方の調和をとりながらやっていくよりいたし方がないと思っております。  また、配給方法が非常にむずかしいのでありまして、加工業者の面ばかりにもいきませんので、先般昨年でありましたが、参議院の商工委員会の決議なども考えまして、趣旨も一部加味したような方法をとっておるのでありまして、いろいろ調和をとりながら、配給もずいぶん通産省としては、率直に言いますと、もうこれに忙殺されるので困っておるのでありますが、極力非難のないようにということで努力はいたしております。
  132. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御承知のように、バナナは栄養価は非常に高いんですね。そういう関係もあってぜひ輸入してもらいたいと思うのですけれども、ただ、値段もまた非常に高いので、なかなか庶民の手に入りにくいと思うのです。一本でも、上野あたりで買っても一本が三十円以上につくんですね。非常に高いもので、なかなか国民の手に入らないのですね。何とか、もとは相当安いと思うのですけれども、何とか安く国民にこれが渡るような方策を考えられないものでしょうか。こういう点をお伺いしたいと思うのですが、大臣としてのお考えを……。
  133. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいま申し上げましたように、その差益を取りますと、今度は高くなる。また、差益を参取らなければもうけ過ぎる、こういうようないろいろ御非難がありますので、極力安くしたいというふうには考えておりますが、結局、量をたくさん入れれば自然下ってくるわけでございます。その点につきましては、不要不急じゃないかと言われておりますが、輸出振興の関係からいいますと、かなり思い切って入れてもいいんじゃないかというぐらいにいろいろ考えております。中共のバナナも入れたり、いろいろしておるわけでございまして今後極力安くなるようには努力をいたしたいというふうに考えながら、行政をやっておる次第であります。
  134. 永岡光治

    ○永岡光治君 私は、ここで設置法の改正案について説明をされております提案理由の要旨に基きまして若干の疑点をただしておきたいのですが、その第一点は、振興部を設けること。その理由は、輸出振興に関する行政の体制を格段に強化したい、こういうねらいがあるようであります。従来のこの委員会でも若干触れられたのでありますが、格段の強化になるというのは、どういうように、振興部を設置されたために、具体的にそれが格段の強化になるのか、私はどうもはっきりわからないのですが、その点を一つ具体的に説明して下さい。
  135. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 実は、従来通商局につきましては、次長が二人おるわけであります。で、通商局長がおりますが、ほんとうは管理面といいますか、外交交渉などがずいぶんあるのであります。そういう方向にみな上の幹部はとられまして、従来振興関係の方については、まあ率直に言いますと、なかなか手が回らぬということであったわけであります。今度分離して、部長がこれを総括するということで、極力監督をし、また督励もするということで参りませんと、従来それでも、率直に言いますなら、この数年来は輸出がどんどんふえて参りまして、従って、輸出振興ということは必要であることはだれも知りながら、存外軽視されておったということが言えるのじゃないかと思います。責任者をはっきりして、そして事務の刷新をはかるというふうに考えておるわけであります。
  136. 永岡光治

    ○永岡光治君 私は、しかし、従来ともやっぱり責任者があってそれは課長であったか次長であったか知らぬけれども、責任者がおってそういうことをやられたに相違ないと思うのですが、とかく何か仕事がうまくいきませんと、機構が悪いのだということに逃げ込むくせが、どうも今の官僚の中にあると思うのですね。機構じゃないと思うのだ。もう少し運営の面で考えたらどうかという気が、私は前からしておるわけです。むしろ、いろいろ機構を変えることによってこの前も、これはずっとこの委員会にかかっております十幾つかの設置法を流れております精神も、ややともすれば、かえってビューロクラシーに陥るきらいがあるのじゃないかということを非常に心配しておるわけで、むしろそれは部であろうと課であろうと、要は有能な人を置くことによって、そういう運営によって所期の目的は達し得ると考えておるのですが、何か特別のセクションを作ったら、それで非常にうまくいくのだという考え方が一貫して流れておると思うのですが、今の御説明を聞いても、従来行なっておった人でなぜ悪いのか、その点がわからぬのです。こういう点が悪かったと、具体的に悪い点が指摘されなければ、なるほどそれでは不合理だという、そういう結論にならぬと思うのですが、どういう点が悪かったのですか。
  137. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 結局、部長を置くということだけの——もちろん中に意匠関係の課を置くわけであります。これは課もふえるわけでありますが、部長を置きますと、ただいま申し上げましたように、従来の次長、それから局長、これがまあ渉外関係に結局ほとんどとられておる。まあ向うからいろいろな人が参ります。通商協定とか何かにつきましては、どうしても部長なり次長でなければやれない。こういうようなものを見ますと、振興関係の仕事というようなものにつきましては、課長どまりですべて仕事をやっておるというようなことで、今後まあジェトロも改組して、そうしてこれを強力に動かしていかなければならぬ。それについても、いろいろ指導なりをやっていかなければならぬわけであります。いろいろな団体の指導につきましても、責任者で、また相当クラスの高い責任者が行って指導しませんと、まあ業者に対しても強力に出られないというような面もありますので、率直に言えば、今までどうにも手が回らぬということであったわけであります。
  138. 永岡光治

    ○永岡光治君 結論を要約すれば、課長ではこれは工合が悪い、部長ならばそれを達し得る、こういう結論のようですね、せんじ詰めるならば……。それはおかしいと思うのですがね。課長でも部長の仕事はできないことはない。今置こうというのは、おそらくはこの課長から皆さん、部長に持っていかれるだろうと思うのですね。それなら、有能な課長であれば十分用が足せられると思うのです。もし、その間に人員が少ければ、課の人員をふやせばいいでしょう。それを部にしなければならぬという、こういう考え方は、なるほどという私には納得できる理由にはならぬと思うのですが、これはしかし、幾ら問いただしてみても、あなたの方ではそう言うだろうと思う。課長よりも部長がいいだろうということになる。そういうことでは、全然これは私はほんとうの意味のあれにならぬと思うのですが……。  それで、さらに質問を続けたいと思うのですが、振興部を設置して、日本貿易振興会の運営を強化するというのですが、これはどうなんですか。やっぱり部を置いたら、運営が強化されるのですか。
  139. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これは結局におきまして先ほど言いましたように、十分責任を持って判断をやる、それによって指導をやられるというクラスの人が指導に当りますと、まあ局長が不在でも十分仕事がはかどるということなんでありまして、まあ痛切にわれわれ感じておりますのは、先般もガット等で局長が一ヵ月も不在をする。そういうような場合が非常にありますので、やはり部長で統括しながら、業者の指導にも当るということが肝心だと思うわけであります。  私も、決してこの機構いじりをしたいというふうには、まあ考えておりません。前からの関係からいいますと、通商局をむしろ二つに割って通商振興局というような案の方が有力でありましてまた前にはそういう機構でいったこともあるのです。その点からいいますと、私はやはり責任体制はずっとつながりを持ったものの方がいい。局長は一人でいい。しかし、さらに十分責任の持てる者を置いておくという考え方の方がいいのじゃないかというふうに考えるのでありまして、むしろ、従来とは後退した考えかもわかりませんが、部を設けるというふうにしたわけであります。
  140. 永岡光治

    ○永岡光治君 ところが、この前の説明では、やはり次長はそのまま置くように私は承わったわけです。そうすると、従来は課長、次長、局長といったのが、今度は課長はなくなって、部長、次長、局長というわけですかね。まあ課長もありましょうが、そうなると、よけいに複雑になるし、むしろ課長では取締りがなかなかむずかしいというのですから、部長に相当する人を課長に据えたらいいじゃないですか。
  141. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 先ほど言いますように、われわれの所は、渉外関係で次長なり部長、局長が飛び回るというようなことが多いのでありまして、従って機動的に広く広げるというならば、次長を置いておきませんと、実際問題として、向うから参りました外客に対しての応待、あるいは折衝という面に困りますので、ただいま申し上げましたように、次長は従来からほとんどそういう面を担当いたしておりまして省内の事務を見るというようなことができなかったといううらみがあったわけであります。
  142. 永岡光治

    ○永岡光治君 これは、部長の権限を課長の方に譲ればいいと思うのですね。今、構想されておる部長の権限を、今ある課長にそういう権限を持たせればいいと思うのです。そしてもしその課長が能力がないとするならば、置こうとする部長をその課長に持っていっていいと思うのです。十分事足りると思うのだが、お宅の方ではそれでは困るという理由が、なぜ部長でなければならぬかということがわからないのですが、そのものずばりで、これだからいけないのだという理由がないですか。
  143. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 最近業界の指導に参りましても、なかなか、以前と違いまして、課長より部長、あるいは局長、そういう人の要求が多いので、まあ民主主義というのはそういう点があるかと思うのですが、課長ではなかなか用が足りない。あるいはそれだけの責任を持って応待し切れない。やっぱり局全体の意向を代表して、責任を持ってやられるというわけにはいかぬので、さらに大きな権限を持って、十分局長にかわって応待のできる人が必要なわけであります。
  144. 永岡光治

    ○永岡光治君 それでは、課長をやめて全部部長にしたらどうですか。そうなれば強化される。どうもそういうふうにもとれるのですが、そうまでは踏み切れないのですか。一気に解決すると思います、今通産省にある課長を全部部長という名前にしてしまえば。民間が課長より部長の方がえらいという感じを受けるとするならば、それの方がよいのではないですか。そこまでは踏み切れないのですか。
  145. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そうなると、部長が課長になってしまうと、こういうことなんで、やはりそれは結局は相対的のものだと思いますので、同じ課長でも、力のある課長とない課長と、これはもっともわれわれも、実質的にはもちろん考えていかなければなりません。しかし、まあ一応それについても形式を整えていくというわけで、お願いをしているわけであります。
  146. 永岡光治

    ○永岡光治君 それは論点の分れるところですから、次に質問を進めましてさらに、意匠に関する奨励事務は特許庁で従来行なっていたのですが、これによると、輸出品の意匠の改善とか、外国品の意匠の盗用の防止、こういう重要な問題になってきたので、特許庁でなくて、これを本省の付属機関にするというように改正をされているわけですが、特許庁では所期の目的を達し得ないのですか、得ない理由はどういうところにあるのですか。その点を一つお尋ねいたします。
  147. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) これは従来もお答えいたしたかと思いますが、特許庁の意匠課と申しますのは、意匠の登録をいたす課でございまして、意匠の新規性というものについて審査をして、新規性のあるものについては登録をするというのが本来の仕事であるわけでございます。ただ、従来実は一般的に意匠問題を取り扱っている部局がございませんので、たまたま意匠課の課長以下のスタッフというものは意匠の専門家でございますから、単なる登録事務のほかに、奨励の事務もあわせてここでやっている。しかし、行政の建前としては非常に変則でございまして、この意匠に関する仕事は、この委員会でもたくさん御質問もございましたが、特に最近輸出について非常に問題がうるさくといっては語弊がございますが、非常に問題がふえて参りましたので、どうしてももっと強力な仕事をやらなければいかぬ。それには、省内の各局にそれぞれ、従来はたとえば中小企業庁は中小企業の立場から意匠の問題を扱う、工芸試験所ではデザインの研究のかたわら指導の行政も行なっておるというようなものも、ぜひとも総括的に統合して同じ限られた予算でも能率よく働かせるようにしたい。あわせて貿易に関するデザイン問題をもっと突っ込んでやりたいということで、意匠課というものを一つ作りたいということをきめました。そういうものができた場合には、むしろ本来の建前からいいまして、そういった行政を担当する部課でこの審議会の仕事を扱うのが筋ではないかということで、移管するということにしたわけでございます。
  148. 永岡光治

    ○永岡光治君 それでは、次に質問を進めますが、第三点、高岡支所を本所に昇格させるということなんですが、その理由は、非常に事務量がふえてきたから本所にする、こういうことのようであります。それで、お伺いをしたいわけです。本所と支所の設置基準はどういうふうになっているのですか。
  149. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) これは別に絶対的な基準というものはございませんで、大体仕事の量がある程度まとまったものは本所として扱うということでございます。本所と支所とはどこが違うかと申しますと、若干権限に差異がございまして、具体的な検査の場合に、本所の場合には、ある程度所長が独自の権限を持って決裁ができる、処理ができる。支所の場合には、ある程度疑わしいもの、従来の基準から見て判断に迷うというようなものは、一応全部本所の方へ回して承認を受けてからでないと処理ができない。その差でございます。仕事の量が比較的少なければ、そういうものはそのたびに持っていっても、そう迷惑はかけませんけれども、仕事の量がふえてそういったケースがふえますと、どうしてもやはり本所という形にして、その場所限りで処理ができるようにするということが必要であると考えたわけでございます。
  150. 永岡光治

    ○永岡光治君 これを見ますと、「この際本所に昇格させることにより、その機能の充実をはかるとともに、民間検査機関の指導監督にも万全を期することといたしました。」と、こういうわけですが、支所ならばそれがどういうところで充実ができないのか、それから指導監督ができないのか。本所ならばどういうふうに充実されるのか、どういうふうに指導監督を強化されるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  151. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) 機能の充実の点は、今私が申しましたように、本所においてはほとんど独立の権限で大ていの問題は片づけられる。支所の場合には、ある範囲以上のことについては一々本所に伺いを立てなければならぬので、非常に不便である。そういう意味で、支所が本所に昇格いたしますと、権限的にも充実する。これが機能の充実でございます。  それから、民間検査機関の指導につきましては、これは先ほど部長の問題について御質問がございまして、大臣からもお答えいたしましたようなことでございまして結局、支所長の場合と、本所の所長の場合とでは、所長になる人の格もそれは違いまして、また、外部の民間人のそれに対して受ける感じももちろん違いますので、そういう面で、所長が十分相手方に対して受け入られやすいというような、デリケートな心理的な問題でございますけれども、そういう点があると思います。
  152. 島村軍次

    ○島村軍次君 関連質問。通産省の設置法はもうだいぶ審議しておるのです。しかし、大臣がおいでにならぬというので、今日まで延ばした感じもあるのでありますが、どうもただいまの説明を聞きますと、どうも、ざっくばらんに申し上げますと、とにかく格を与えるために機構を作るという感じ以外には、何もないというような感じがする。だいぶ長くやって課長では行き詰まっているから、部長の資格を与えてやるという以外に、どうも何もないような感じがするのですが、そこで、今回の設置法については、各省とも、どこもそれぞれ部を置くとか、官房長を置くとかいうのが出ているわけです。それで、内閣全体としての、これは行政管理庁長官に聞いたわけですが、大臣として、各省にそういうものが出て、格を与えるための機構改正というものはあまり理由が薄弱ではないかと思うのですがね。もっとはっきりした、一つこの各省設置法に関連を持って——これがスタートなんですからね、通産省の。ちょっと、もう少しわれわれにはっきりして、わかりやすく国民に納得するような説明が与えられませんか、どうですか。
  153. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 各省の設置法については、私は詳しいことはあまり存じません。しかし、私の経験からいたしましても、通商局に十五課あるわけです。まあ次長が二人おりますが、十五課の管理をやるということは、私は次長だけではまあ至難に近いことだと。一々それに当って各課の仕事を見るということは、これはもう非常に至難なことだと思っております。従って、まあ通商局を二局に分けまして通商振興局ということにいたすのも一案かと思います。しかし、通商局の管理という問題と、通商振興局と二局にまた対立さしていくということは、必ずしも私いいとは考えておりま正せん。やはり一局で一体となってやるという関係考えますと、部長という責任者を置きまして、そうして統括されながら各課の仕事を十分見ていくということにいたしていくのが、この際の最もいい策ではないかというふうに考えているのであります。  他の、ただいま支所を本所に昇格するというようなことにつきましても、まあ私は、やはり独立官庁として機動的にそこですべての処理が、相当量の仕事に達しました限りにおいてはその処理ができる、一々本所に照会しなければ仕事が進まぬということでは、かえって業者の方々に迷惑をかけるじゃないか、かように考えているわけでありまして各省の内容についてはよく存じませんけれども、まあ私の見ております通産省の関係としては、ぜひこの程度はやっていただかなければ、事務上非常に障害があるというふうに考えている次第でこざます。
  154. 永岡光治

    ○永岡光治君 まあいろいろ御答弁がありましたけれども、どうもやはりこう観念的で、何か名前さへ、民間に事大主義的に、えらくなったような感じを受けさせるような名前にしておけば、事がスムーズに行くと感じられるのですが、具体的にどうかということはなかなか私たちにはつかめませんので、まあこの項に関する質問はこの程度にします。  次の特許庁に工業所有権研修所を設置するという、こういうのが第四にあげられているのですが、それによりますと、工業所有権の出願が非常にふえた。で、内容的に非常に高度化して参りました。従って三十一年度以降漸次審査、審判関係要員の増加を行なって参りましたと、こういう説明があるわけです。第一点、三十一年度以降年度別にどんな増員をされたのですか。概数でけっこうです。
  155. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) 二十九年の定員が七百三十五名でございます。それから三十年に三十人増員いたしまして七百六十五名、その次に六十七名ばかり増員いたしまして八百三十二名、これは三十一年度の定員です。三十二年度の定員を百名増員いたしまして大百三十二名、それから三十三年度は十名増員いたしましてそれに非常勤職員の定員化が一名ありましてたしか九百四十四名になっておるかと思います。
  156. 永岡光治

    ○永岡光治君 その新規採用された者、たとえば増員になりました方々、三十名、六十七名、百名、十一名——十一名はことしの問題ですが、従来採用するに当ってはやはりその有識者と申しますか、経験を持っておる、かなりりっぱな人を採用しているんですか、それとも、学校出たてのそのままの人を採用しているんですか。
  157. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) 従来の増員は、若干の事務職員のほかはほとんど審査官の増員でありまして、これは当然十分な技術的な能力を持っておる者でなければなりませんので、従来の採用の際にもできるだけ、すでに相当教育、経験を積んだ、学校の技術的な学科を卒業して、ある程度経験を積んだ者を採用しております。これは省内の行政技術官から転用した者もございますし、民間から採用した者もございます。しかし、それだけではとても充足できませんので、新規採用をいたしておりますが、新規採用をいたしました者につきましては、相当年数の教育と経験を積んで初めて審査官に採用するという形にいたしております。従って、増員はいたしましたけれども、まだ完全に審査官としては埋まっておらないのであります。
  158. 永岡光治

    ○永岡光治君 そうすると、この研修機関はどういう人々を対象にする機関なんですか。
  159. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) これは原則と申しますか、新しく入りました者は、先ほど申し上げました民間の既経験でも、省内の技術系統の行政職員の場合におきましても、新採用者と同様に基本的に訓練をやりましてから配属することにしております。そのほかに、最近、御存じのように、非常に新しい技術的な進歩が非常にふえて参りましたものですから、すでに審査官として資格を得て活動しております者につきましても、補充的に教育をやっていく。原則としては、新採用者に対する教育のためにやっておるのでありますが、補充的な教育のためにも活用したいというわけであります。
  160. 永岡光治

    ○永岡光治君 これは、今のお話によりますと、まず新規採用した者を主として教育をする、研修をする機関だ、こういうお話ですが、これを研修されますと、研修員は何ヵ月間か、何年間ですか、それを終えるとどういう待遇を与えられるんですか。
  161. 鮫島正蔵

    説明員(鮫島正蔵君) ただいま官房長がお答えになりましたところを補充して申し上げたいと思いますが、特許の審査につきましては、その出願の内容になっております技術につきまして、十分の知識を持っておりますことと、特許法という特別な法律分野、特殊な法律分野でございまして、この運用はまた一種違ったと申しますか、独特の一つの分野でございます。審査官となりますには、技術の内容について十分の知識を有することと、法律運用について十分の経験を有すること、この両方が必要でございます。  それで、研修所におきましても、まず新入所員に対しまして、特許法の第一歩から教育するということにおきまして、約半年くらいの期間をこれに充てる予定でございます。しかしながら、現在でも審査官となりますには、大学卒業で約六年間補助官をいたすことになっております。そして、現在では研修所というものがございませんために、審査官になりますときに審査官試験を、これは庁内限りでいたしております。今度この研修所ができますれば、その六年の間にA段階からC段階、D段階くらいまでに分けまして、研修をやります。それは今の法律の概括からこまかい運用の点まで入る。それからまた、技術につましても、その審査官の専門の分野につきまして詳細な研修をいたします。こうして審査官になります。今度はこのD段階まで済めば、試験なしで審査官にいたす予定でございます。また審査官になりました後も、今の最新の技術等につきましては、常に新しい技術、知識を注入いたさなければなりませんので、絶えず研修をやりたいと。そのほかに、法律の面につきましても、E段階、F段階という研修を考えております。この審査官がまた審判官になりますについては、さらに民事訴訟法等の、技術屋にとりましては非常にやりにくい勉強をいたさなければなりません。その辺のこともまたこの研修所において教育いたす予定でございます。
  162. 永岡光治

    ○永岡光治君 第二の項の、アルコール事業部を設置するということになっておりますが、これも前と同じようなことになるわけですけれども、その問題には触れることをまず差し控えまして、千四百名の職員を擁しておるということでありますが、この内訳はどうなっておりますか。全部正規の職員ですか。非常勤はこのほかにあるのか。
  163. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) 千三百九十人、本年度から十人増すことになっておりますから……。千三百八十人と思っておりますが、これは常勤職員だけでありまして、非常勤職員は含んでおりません。
  164. 永岡光治

    ○永岡光治君 そのほかに非常勤職員がありますか、あればどのくらいですか。
  165. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) 現在使用しておらないのでございます。
  166. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 関連して。この三十三年二月一日現在の行政機構では、特許庁の職員は九百三十二人になっていますがね。今千三百何人と言われたが、数字が違っておりませんか。
  167. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) 今申し上げましたのは、アルコールの部でございます。
  168. 永岡光治

    ○永岡光治君 とにかくいろいろ質問いたしましたけれども、やはり部にするとか、機構改革する特段の納得させるような理由は、どうも私たちにはっきりわからない。これはまあおそらく、次に出てくるだろう各種の設置法を審議いたしましても、そういうようなことになるのじゃないかと思っておりますが、これはまあ特に一つお考えいただきたいことは、何か名前を上になるような印象を受けるものをつければ、どうも行政事務がうまくいくのだというようなことであってはやはりならないと思うので、問題は、それは部の問題ではないのであって、人の問題とか権限の問題ですから、そういう問題を一つ十分考慮するということと、  それから往々にして私たちが疑点を持つことは、何か今の給与法があって、特にその点では、社会党は従来の給与法について大きな疑点を持ち、改正要求してきたわけですが、何か部長とか、課長とか、次長とか、局長とか、管理職にならなければ優遇措置ができないという、こういう現在の給与法の欠点もあるかと思いますが、そういうこととあわせて、実際において能力のある者をその枢要なポストにつけて、そうして要は人の上にあるのだということに重点を置いて一つ運用をしてもらいたいと思います。これは私の要望になるわけでありますが、一応私の本案についての質問はこの程度にとどめておきます。
  169. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 通産大臣にお尋ねをいたしたいのですが、先般の予算委員会で、第四次日中貿易に関連して、他の国の貿易に及ぼす影響についてお尋ねをいたしたのでありますが、時間がありませんので、総理から抽象的な御答弁をいただいただけであったわけであります。  それで、この機会にちょっとお尋ねしたいと思うのですが、第四次日中貿易協定をそのまま政府が御同意を与えられるか、あるいは国旗、裁判権その他の問題について一部分拒否の回答を与えられるか、まだ発表になっておりませんので、われわれとしては的確にその内密を知ることができないのでありますが、堀内大使が台湾政府と現在交渉中で、その結果によりましても、貿易に及ぼす影響が違うと思うのです。かりに台湾政府の了解を得て、大体今の第四次日中貿易協定が大部分その通り実行されると、こう仮定いたしまして、対アメリカの貿易、台湾その他東南アジア等に対する影響がどういうふうに出てくるかという大体の見通しを、大臣からこの際承わっておきたいと、かように考えます。
  170. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 今度の第四次協定に対しましては、御承知の通りに、総理も言っておられます通りに、貿易拡大ということについて支持と協力を与える。あくまで中共を承認するという考えではありません。国内法に基いて、極力貿易の拡大について支持と協力を与える。中共を承認するというような点については、またそれに近づくというふうにとられる意味合いのものではないというふうに考えておりますのです。  われわれはもちろん、中共に対する貿易に対して非常な熱意を持っております。しかし、従来のアメリカ貿易、あるいは台湾貿易、その他の国々に対する貿易を、逆にまあ取りかえっこにするという考えは毛頭ございません。従来の上に、さらに中共の貿易も拡大していきたい、こういう意味合いでありますので、他の国に対する支障はないようにしていきませんと、一方に得て一方に失うということでは、われわれの貿易の拡大ということは不可能になりますので、その点は十分注意しながら、さらに一段と中共の貿易も促進していくという方向で処理して参りたい、かように考えておるわけであります。
  171. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 たとえば、今度のように中共と貿易をやる、向うからどうしても大豆を買わなければならぬということになれば、従来アメリカから入っておった大豆の量を幾らか減らさなければならぬ、こういう事態も起ってくるのじゃないかと思いますが、その点はいかがですか。
  172. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そういう意味合いにおきましては、私どもも極力中共から買いたいと思っております。と申しますのも、まあ全体として考えますならば、アメリカからは輸入超過になっておるわけであります。と申しまして、経済的なコマーシャル・ベースを度外視して、そうして中共からどんどん買うというわけにはこれは参りません。従って、今度の外貨予算につきましては、いわゆるグローバルという方式によってやっておるわけでありまして、極力中共が同じような採算で売っていただけるなら中共から買いたいと、こういう意味合いでございます。
  173. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今のは台湾政府が了解をしたという仮定でお話を伺ったのですが、不幸にして国旗問題等で了解を得ることが困難である、こういうことになれば、東南アジア等の華僑、あるいは朝鮮、あるいはアメリカといったような一連の自由主義の諸国に、相当の影響を与えるのではないかというふうに考えるわけでありますが、その点についてのお見通しはいかようにお考えになっておりますか。
  174. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) われわれの考えておりますことを十分納得していただけるというふうに考えておりますので、また決して、ただいま台湾で、日本側の態度について心配をされておるようなことはないということは、十分納得させることができるとわれわれは確信いたしておりますので、それに従って今後の三団体に対する回答等も行われるかと思います。それで、その回答は、台湾その他の国々に対して十分おわかり願える回答だと、私ども確信いたしております。
  175. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私の伺うのは、もし不幸にして了解を得られなかった場合の影響はどうなのか、大して影響はないものとお考えになるか、相当影響があるものとお考えになるか、その点はいかようにお考えになるかということであります。
  176. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) もしこれは納得していただけぬと、大きな影響があると思います。しかし、それは十分納得していただけるというふうに考えておりますので、また納得される考え方のもとにわれわれやっておるのでありまするから、その点は十分、多少時間がかかりましても、納得されるという確信を持ってやっておるわけであります。
  177. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、アルコール専売の問題について伺いますが、現在のアルコール工場に従事しておる従業員は、先ほど千三百とかおっしゃいましたが、一番多かったときは何人くらいでありましたか。また、現在と一番多かったときの官営工場の数、生産高等はどういうふうになっておりますか。
  178. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) 人員で、最高のときが二千四百人ぐらい。それから工場は、五工場処分いたしましたので、現在八工場でございますから、最高十三工場。それから生産高は、現在官営工場で一万四千キロぐらい作っております。最高のときにも一万五千キロぐらいでございます。
  179. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 従業員の数ですが、ここにちょっと行政管理庁の調べがありますが、二十一年度で二千八百九十九。私はこれよりもっと多いのがあるかと思って実は伺ったのですけれども……。
  180. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) 今のお話は、終戦直後の数字でございますか。
  181. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 二十一年度と書いてあります。
  182. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) 御存じのように、戦争中は燃料増産のために大拡張いたしましたので、それの整理が済んでいないときはそういう数字があったかと思いますが、平常状態に返りましたときの最高が二千四百でございます。
  183. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 民営工場は幾らあるのですか。
  184. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) これはアルコール工場は非常にたくさんございますが、政府で委託製造を行なっております工場は十一工場です。
  185. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで、非常に素朴な質問をするようですが、すでに民間で政府の専売アルコールを製造しておる所が十一工場ある。政府の工場が今八つであるということであれば、この八つをいっそ全部民営に移してしまうことについて、何か大きな支障がございますか。
  186. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) これは、現在民間に委託しておりますものは、パルプ廃液からアルコールを製造する工場を除きまして、これは民間のお酒を作っておる工場でございますが、そこへ、結局現在委託しております工場に関する限りは、さらにあまり委託製造の数量をふやすことができないという点が一点。もう一つは、これは同一の原料、特にイモを使いました場合には、官営工場の方がコストが安く上るという点が一つ。それからさらに、農業関係の問題もございまして、やはり現在官営工場はすべてイモの集散地にできておりますが、これを一挙に廃止するということは、非常にカンショの需要というものに大きな影響があるので、そういう点を考えますと、一挙にこれを廃止することは困難かと考えます。
  187. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 官営工場と民営工場を比較いたしますと、労務費及び経費については、カンショの工場でも糖蜜工場でも、いずれも民営工場の方が安くなっております。全体としてのコストの比較をいたしますと、なまカンショの工場では、原料関係が約六千円ばかり民営工場が高くなっておる関係で、総経費の比較で約二千円民営工場が高くなります。先般、民営と官営とのコストの状態はどうか、こう私簡単に質問しましたときには、官営の方が幾らか安いようですという、こういう大臣の御答弁がございましたけれども、内容を見てみますと、結局これは官営工場と民営工場の位置の関係から、こういう結果が出ているのだろうと、こう私は思います。そうして今のお話のカンショの生産地の中心にある官営工場も、民営工場に移せば、たとえば労務費、経費等については安くつくのではないか、こう思うので、カンショの近くにある官営工場も全部民営に移すということについての何か支障がございますか。
  188. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) これは先ほどちょっと申し上げましたように、民営工場におきましては、工業用のアルコールと、それからお酒用のアルコールを一緒に作っております。両方引っくるめますと、操業度は非常に高いのです。ほとんどフル操業に近い操業をやっております。これはもちろん、政府の委託をしておるごく大きな工場だけでございます。それに対して官営工場の場合は、全体として操業率が五割ちょっとしかしておらないという程度でございまして、そこがまた一人あたりの平均給与では、官営工場と民間工場と比べますと、民間工場の方が高いのでありますけれども、そういったものの製品キロ当りのコストになると、今御指摘のようなことになっておるかと思います。  従って、官営工場を民間に払い下げてそれが能率よく運営されますためには、結局、現在の操業度以上に操業を上げなければならない。しかるに、現在アルコールの生産についてわれわれのとっております方針は、一番コストの安い。パルプ廃液からのアルコール生産分はフルに買いまして、残りを官営と民営の工場で作る、こういう建前でございますから、従って、操業度を上げますためには、結局現在の工業アルコールの需要がふえない限りは、お酒用のアルコールをどうしても作らなければならないということになります。そうしなければ操業度が上らない。ところが、御存じのように、酒用のアルコールと申しますと、これは清酒に転化いたします分と、それからしょうちゅうあるいはいわゆる雑酒と申しております強いお酒、蒸留酒の原料にする以外にないわけでございますが、しかも、主力はしょうちゅうでございますけれども、御存じのように、しょうちゅうは最近非常に供給過剰と申しますか、そういうような状況でございますので、新たにお酒の増石の免許はいたさないというような国税庁の方針でございます。その点が結局一番難点になっておるわけであります。
  189. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 もし政府方針として、今のカンショの生産地に近い官営工場を民意工場に移しても、出来高は同じことですね。そこで、政府の方でそれを払い下げるといえば、払い下げを喜んで受けますか。それとも、そろばんが合わないから、どうぞ国営でやってくれ、払い下げを受ける気持はない、こういう状態なんですか。そこのところはどうですか。
  190. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) 新たに酒用のアルコールの製造の不足分だけ免許する、こういうことでございますれば、これは相当払い下げの希望がたくさんあるのじゃないかと思われます。それからもう一つ、相当政府の委託製造の数量をふやすということになりますれば、これはもちろん希望があると思いますが、官営工場につきましては、全体として五〇数%しか操業度がございませんので、もしわれわれが払い下げるとすれば、払い下げ工場の分の製造数量を他の工場に移して全体として操業度を上げてコストを下げたい、こういう考えでございますから、払い下げの際には新規に委託製造は認めないという建前になっております。その上、さらに国税庁の方で酒用のアルコールを認めないということでございますと、これは払い下げが非常に困難でございまして、結局他の工場で作っております分を、まあ立地条件とか、あるいは工場の規模の大きい工場に集約するという場合以外には、払い下げの希望が出てこない、こういうことでございましてわれわれとしても十分、先ほど申し上げましたような条件がそろってなお払い下げを希望する所がございますれば、相当の信用できる業者でありますれば、払い下げをしていいと思っておりますけれども、どうも今申し上げましたような二つの条件がなかなか困難でありますので、今のところは払い下げということはしないのじゃないかと思っております。
  191. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は、官営工場というようなものは、一般的に申して、能率の悪いものであるから、できるだけ、条件がよければ民営工場にしてしまう、あるいは民間会社に払い下げてしまうというのが、筋としてはいいのではないかと思うのです。そこで、しょうちゅう用のアルコールを作ると。政府がイモを買わないということになると、イモを作っている所が困るでしょうから、イモしょうちゅうでも、たくさんふえても一向かまわぬと、こう私は思うので、大蔵省と話し合って、能率の悪い官営工場を全部払い下げるという気持で検討するということが望ましいのじゃないかと思うのですが、この点、大局論として、大臣、どうお考えになりますか。
  192. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 実は私は酒の関係もいたしておりましたし、またしょうちゅうの会社にも関係いたしておりましたので、そういう事情は大体承知いたしているつもりでありまするが、現状以上にしょうちゅうをふやすということになりましたら、そうでなくても、実はしょうちゅうが過剰で困っているという状況であります。また、小さなしょうちゅう工場なんかがずいぶんありますが、これはなかなか採算がとれないのです。従って、今以上にしょうちゅうをふやすということは、これはもう至難なことであります。今、官営工場になっております場所で、しょうちゅうを作らすということになりますと、あるいは場所がよろしいからそれは立っていくかもしれません。しかし、それ以外はみな共倒れになってしまうという現象が必ず起ると思います。現在でも自主規制をやり、強力に今抑えながらも、なかなか採算が立っていかぬ、こういう状況でありますので、今以上にとにかくしょうちゅうなり、酒用のアルコールをふやすということは、不可能だというくらいに考えております。
  193. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 工業用アルコールの国際価格と、日本のアルコールの価格とは、どのくらいの開きがあるのですか。
  194. 橋口隆

    説明員(橋口隆君) 現在、国際価格は、アメリカの例で見ますと、市価が四万五千円でございます。それにフレートが二十ドル、七千二百円つきます。それから関税が五〇%で、二万六千百円でございます。合せまして七万八千三百円でございます。
  195. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 関税をのけて、日本との割合は、値段の比較はどうなりますか。
  196. 橋口隆

    説明員(橋口隆君) 市価だけで、向うは四万五千円でございます。お手元に差し上げました資料が七万七千円でございますから、三万二千円くらいの開きがあると思います。
  197. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで、日本の国際価格からいえば、キロリットル当り三万円以上の高いアルコールを作っている、こういうことになりますね。ところが、このコストの百分比を拝見しますと、大体主原料費が、澱粉を使ったものは、六割ないし七割みなかかっていますね。ところが、パルプ廃液でやれば、これが四%か五%と、非常に大きな開きになっておるわけです。そこで私の申し上げたいのは、そんなにコストが、原料費だけで六割も違うというようなことであれば、これは国家的の大きな目で見れば、できるだけパルプ廃液を原料とした工業用アルコールを作るというふうに、国の方針としては当然行かなくちゃならぬ。国際比価から見ましてもそう思うのですが、そういうふうに極力方針を向ける上においての難点は、どこにありますか。
  198. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) その一番大きな難点は、やはりイモの関係である。イモ、これは日本の食糧問題として考えますと、ある場合にはイモを減産しても、またイモに変えなければならぬというような場合が起りましたときに困る。直ちに減らしていきましたのでは……。現在においても、イモの価格は支持できない。御承知のように、価格支持までやってイモを作らせておるわけなのであります。と申しましても、私どもは、これだけの開きがあるものを、いつまでもそういうような行き方はできないと思っております。従って、ただいまもお話がありましたように、パルプ廃液のものを優先的にやって、操業度を落しながら、将来どういう切りかえをやっていくか、こういうことなのであります。率直に言いまして、イモの食糧政策なり、あるいは農業政策の関係がなかったら、これは自由に変えていける問題でありまして、当然これは切りかえていかなければならぬことだと思っております。この点は将来いろいろな、またほかの原料を使って、自然に安いアルコールが出てくる時代があると思います。それにつきましては、われわれも十分考えながら、今後のアルコール行政を検討していきたい、かように考えております。
  199. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今のお話を伺っていますと、結局イモを作っておる人たちを救済するために、非常に高いアルコールを作りている、こういう結果に、端的にいえば私はなると思います。そこで、先ほどもちょっとお話がありましたが、イモの生産地の近い官営工場は、他のしょうちゅう工場などと違って、非常にコストが安くできるだろう。ほかではしょうちゅうが過剰生産になっておってもイモの生産地でしょうちゅうを作れば、相当合うのじゃないか。こういうお話ならば、結局高い生産費を使ってしょうちゅうを作っておる工場の方を適当に、整理と申しますか、調整をすれば、イモ生産地の官営工場を払い下げて、そうして一方アルコール本来の立場からいえば、パルプ廃液を使う方に全力をあげるということになれば、アルコールそのものも安くなるし、しょうちゅうのコストも安くなる。ただ問題は、高いコストで作っている今のしょうちゅうの業者を、いかに救済するかという問題になってくると思うのですが、その辺を総合的に、やはり通産省としては抜本的なことをお考えになる必要があると思うのですが、大臣、いかがですか。
  200. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 確かにそういうことに相なります。ただ、御承知のように、酒となりますと、非常にすみずみまで、配給といいますか、需要関係がありまして存外いなかでは、非常に高い原料でありますが、そのまま小売をやって、輸送費は何も要らぬというような関係で、また非常に小さくなりますと採算がとれる。実は中くらいのが今参っておる状況なのであります 従って、輸送費の関係とか、あるいはその配置の関係で、酒の行政として、一カ所に集まりますことは、あまり好ましいことではないのであります。と申しまして、原理はおっしゃるようなことなのであります。今後の酒の、またしょうちゅう屋さんの整備ということは、これはそう簡単には参りませんので、ただいまのところは、そういうことに着手はいたしておりませんが、将来の問題としては、よく考えていかなければならぬ問題だと存じます。
  201. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 それから、アルコール原料に黄変米をすでにお使いになりましたか、まだお使いになりませんか、また、今後どういうふうな方針でいらっしゃいますか。
  202. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) これは黄変米問題が起りました最初から、通産省  としては、これを使ってよろしいという考え方で、食糧庁と実は交渉いたしまして、今までも相当多量に使いました。新年度、三十三年度もなまイモを——従来なまイモあるいはほしカンショ、すなわちカンショ原料以外の分の製造分は、糖蜜を輸入いたしましてそれを原料にいたしておるのでございまするが、黄変米ならば外貨の節約もできるわけでございますから、輸入分に相当する分は全部黄変米を使うということにいたしております。  ただ、従来、私も担当いたして交渉してみまして感じたのでありまするが、食糧庁としては、御存じのように、食管会計の赤字がございますから、できるだけ高く買った方がいいというお話でございまして、アルコール原料の場合は、糖蜜とバランスをとった価格でないとわれわれは使い切れませんので、一番安い価格になるわけでございます。その点にまあ難点がございましたが、来年度は、ちょうど糖蜜が非常に高くなって参りましたので、それに見合った価格で買い取ることにいたしまして、全部輸入分は黄変米に切りかえるということにいたしております。
  203. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 ただいままで幾ら使いましたか。
  204. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) 三十二年度の分が四千五百トンでございます。それから三十三年度分として、三万トンくらいもらいたいと交渉しております。
  205. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 値段は二万円ぐらいですか。
  206. 橋口隆

    説明員(橋口隆君) 価段は、裸で二万四百円でございます。これに運賃、袋を込めまして、二万一千四十円で……。
  207. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は、この黄変米の検査方法が非常にずさんであって、せんべいだとかしょうゆ、みその原料に持っていかれるということは、国民の衛生の上からいって非常に心配を実はいたしております。で、どうせこれは損が出ることはもう仕方ないのですから、できるだけ一つ、この工業用のアルコール原料に買って、その上で消化してもらいたいという希望を持っておりまするので、このことを申し上げる。  最後に私伺いたいのは、この売掛金の延納分が六億六千二百九十万円、それから滞納分は五千三百万円、これだけあるわけなんですが、延納分は、延納三ヵ月を認められているという現状だそうですが、金利等の関係からいって、もっとこの期間を私短かくするのが妥当じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  208. 橋口隆

    説明員(橋口隆君) 仰せの通りにするのが、あるいはいいのかもしれんけれども、現在までのところでは、アルコール販売会社のいろいろな状況を考えまして、これくらいが一番妥当なところではないかと考えて、所要の処置をいたしておるわけでございます。
  209. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 ここに、行管の監察局の監察年報があるのですが、ここでもやはり、もっとこの期間を縮めることが妥当であると、こういうふうな報告がありますので、これを一つなお御研究をいただきたい。できれば、もっと短かくすることがいいのではないかと思いますことと、滞納が五千三百万円もあるということは、これはどういうことですか。
  210. 橋口隆

    説明員(橋口隆君) 仰せの点につきましては、もう少し延納の期間を短縮することにつきましては、今後研究して参りたいと思います。  それから、滞納分の五千三百万円でございまするが、これは、御承知のように、昭和二十五年ごろに事件が起りまして、当時アルコール販売会社が、二億七千万ぐらいの滞納をしたわけでございます。その滞納分を昭和三十六年の三月までに完納するように裁判ができておったのでございますが、それが予想よりもずっと早く済みまして、本年の三月二十五日でございますが、すでに三十二年分として五千三百万円残っておりましたのが、全部完納済みとなりまして、現在では、この分は、つい一週間くらい前までに全部決着がついたわけです。
  211. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、今回の案によりますると、アルコール専売に関する事務を所掌するために、管理課と業務課を置いて、百三人の定員にする、こういうことが出ておるわけなんですが、これは一体、今の軽工業局の二百四十三名の定員の中で、どこからどういうふうにおとりになって、どういうものをお作りになるのですか。
  212. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) これは現在、二百四十三人の中に百三人のアルコール特別会計の所管の定員があるわけでございます。それをそのまま引き継ぐわけでございます。
  213. 藤田進

    委員長藤田進君) その場合、支所も木所になる場合を含めてですが、現定員で操作をするということのようですが、今ずっと調べてみますと、他にも支所か本所、あるいはまた今度アルコール事業部になるといったような場合に、異動、転勤ということがあるのですか、今のまま格上げになるのですか、その予定はどういう予定ですか。
  214. 齋藤正年

    政府委員(齋藤正年君) これは、さしあたりは、もちろん現在のままで処理いたすつもりでございます。ただ、アルコール事業部の関係は、現在、御説明申し上げましたように、アルコール事業長、管理官という形でございますので、それをそのまま変えればよろしいわけでございますが、支所の場合には、支所等が本所に昇格いたしました場合には、いずれ適当な人物を転勤させなければならぬと思っております。
  215. 藤田進

    委員長藤田進君) それから、先ほど通産大臣の御答弁の中で、国旗掲揚等に関連して、台湾政府等から、まあ御質問の趣旨があったようなことがない、確信をもって言えるということでしたが、伝えられるところによると、私は数字はよくわかりませんが、相当のものがキャンセルしてきているように思えるわけです、台湾商社等から。そういう事実はないでしょうか。
  216. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 実は、停止という形で停頓しておるわけでございまして、これがまあ、そのうちに了解を得れば、そのまま行けるんだというふうに、ただいまのところでは、情報ではそう強硬な手段をとらないような方向で、台湾政府の部内でも心配しておるようでございます。ただいまのところは、停頓という格好になっております。
  217. 藤田進

    委員長藤田進君) それが、蒋介石政府が商社に下命して契約の取り消しなり、将来しないことというのではなくて、むしろそれぞれの商社が自主的にかかる事態に対して抵抗を試みているというふうに伝えられているわけで、今度、急遽大使が台湾に帰任して、蒋介石総統に会って了解をとったとしても、それが簡単に商社に影響をもたらすのかどうかということに、相当の疑問があるとも言われている。それにもかかわらず、日本の通産大臣は、非常に安易に考えておられるように思う。非常な確信をもってお答えになっているわけでありまするがその根拠を、今のような事態から明確にしていただきたいと思います。
  218. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) その根拠につきましては、ただいま申し上げるわけにも参りませんが、漸次この問題について了解が得られつつある。また、各地でいろいろ新聞などに出ておりますような電報情報と、外務省の情報とはちょっと違っておりまして次第にまあ落ちつく見込みでございますというふうに考えられておるのであります。まあ私も、決して楽観をし、安易に考えておるわけではないのでありまするが、いろいろ了解を求めておる結果は、漸次納得されるような方向にあるという情報は出ておると。そういう点が根拠と言えば言えるかもしれません。
  219. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言もなければ、本案につきましては本日はこの程度にとどめ、本百はこれにて散会いたします。    午後四時十一分散会