運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-04-03 第28回国会 参議院 内閣・文教委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月三日(木曜日)    午前十時五十三分開会   ―――――――――――――  委員氏名   内閣委員    委員長     藤田  進君    理事      上原 正吉君    理事      大谷藤之助君    理事      永岡 光治君    理事      高瀬荘太郎君            木村篤太郎君            剱木 亨弘君            近藤 鶴代君            苫米地義三君            中野 文門君            増原 恵吉君            松岡 平市君            松村 秀逸君            伊藤 顕道君            田畑 金光君            千葉  信君            松本治一郎君            矢嶋 三義君            島村 軍次君            八木 幸吉君   文教委員    委員長     湯山  勇君    理事      野本 品吉君    理事      吉江 勝保君    理事      竹中 勝男君    理事      常岡 一郎君            有馬 英二君           大野木秀次郎君            川村 松助君            下條 康麿君            林田 正治君            林屋亀次郎君            松岡 平市君            三浦 義男君            吉田 萬次君            秋山 長造君            高田なほ子君            松永 忠二君            大和 与一君            吉田 法晴君            加賀山之雄君   ―――――――――――――  出席者は左の通り。   内閣委員    委員長     藤田  進君    理事            上原 正吉君            大谷藤之助君            永岡 光治君    委員            剱木 亨弘君            近藤 鶴代君            苫米地義三君            中野 文門君            増原 恵吉君            松村 秀逸君            伊藤 顕道君            田畑 金光君            千葉  信君            島村 軍次君            八木 幸吉君   文教委員    委員長     湯山  勇君    理事            野本 品吉君            吉江 勝保君            常岡 一郎君    委員            有馬 英二君            下條 康麿君            林田 正治君            林屋亀次郎君            松岡 平市君            三浦 義男君            秋山 長造君            高田なほ子君            松永 忠二君            大和 与一君            加賀山之雄君    衆議院議員   前田 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 松永  東君    運 輸 大 臣 中村三之丞君    国 務 大 臣 正力松太郎君   政府委員    内閣官房内閣審    議室長内閣総    理大臣官房審議    室長      吉田 信邦君    総理府総務副    長官      藤原 節夫君    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁企画    調整局長    鈴江 康平君    法務政務次官  横川 信夫君    法務省人権擁護    局長      鈴江 才藏君    文部省大学学術    局長      緒方 信一君    文部省社会教育    局百長     福田  繁君    厚生省社会局長 安田  巌君    厚生省児童局長 高田 浩運君    農林政務次官  本名  武君    農林省振興局長 永野 正二君    運輸省観光局長 細田 吉藏君    建設政務次官  堀内 一雄君    建設省計画局長 町田  稔君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    日本学術会議事    務局長     本田 弘人君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件科学技術会議設置法案内閣提出、  衆議院送付) ○青少年問題協議会設置法の一部を改 正する法律案内閣提出衆議院送 付)   ―――――――――――――    〔内閣委員長藤田進委員長席に着く〕
  2. 藤田進

    委員長藤田進君) これより内閣文教委員会連合審査会を開会いたします。  本連合審査会案件は、科学技術会議設置法案及び青少年問題協議会設置法の一部を改正する法律案でありますが、まず、科学技術会議設置法案議題として審査を行います。  まず、本案内容について説明を求めます。
  3. 原田久

    政府委員原田久君) それでは、お手元に差し上げてあると思いますが、科学技術会議設置法につきまして御説明を申し上げます。  ます、科学技術会談設置いたしたいという趣旨目的でございますが、御承知のように、世界における科学技術進歩は非常に急速のものがございます。わが国におきましても科学技術振興のための諸体制を整備する必要があることは言うまでもございませんが、わが国科学技術行政機構を見ますると、たとえば、農業関係につきましては農林省工業関係につきましては通産省、それから大学関係におきましては文部省というように、分掌されております。科学技術というものは元来、その進歩過程におきましてだんだん組分化され、進化していくという性格を持っておりますが、他面、その総合化ということがその進歩に非常に寄与するものでございますので、総合化をする必要があるというので、一昨年科学技術庁設置されまして、科学技術総合調整任務とする使命をもって発足したのでございますが、科学技術庁使命といたしましては、大学関係研究を除くということになっておりますし、また、総合任務といたしまして、原子力問題につきましては原子力委員会なども設置されておるわけでございます。国全体として見ますると、科学技術総合という点につきましては、総合調整機構が完備されていないような状態でございます。そこで、科学技術振興のための総合的な問題につきましての審議機関設置する必要があるというので、第一条にありますように、総理府付属機関として科学技術会議を置くということに相なった次第でございます。  次に、この科学技術会議諮問いたします事項につきまして御説明申し上げますが、第二条の第一号から第四号まで掲げてあります事項につきまして、関係行政機関の施策の総合調整を行う必要があると内閣総理大臣が認めました場合には、当該事項について会議諮問しなければならないということを義務づけておるのでございます。  この諮問事項内容につきまして簡単に御説明いたしますと、まず、その第一号であります。「科学技術一般に関する基本的かつ総合的な政策樹立に関すること。」と、なっております。この科学技術の中には、「人文科学のみに係るものを除く。」と書いてあります。その「科学技術一般に関する基本的かつ総合的な政策樹立に関すること。」となっておりまして、ここに科学技術一般と申しますのは、個々の科学技術をさすのではなくて、科学技術共通問題、たとえば給与の問題であるとか、研究施設の問題であるとか、そういったような共通事項につきまして、基本的かつ総合的な政策樹立に関することでございます。  第三号は、「科学技術に関する長期的かつ総合的な研究目標の設定に関すること。」となっております。これは、科学技術というものが、長期的な見通しのもとに、かつ総合的な調整を受けました目標というものを設定して、将来にわたる科学技術発展を期するためには、そういう目標を立てるということが必要であろうかと思います。そういった事項審議事項の第二になっております。  第三は、「前号の研究目標を達成するために必要な研究で特に重要なものの推進方策の基本の策定に関すること。」、これは、前号で定めました研究目標のうち、特に必要な重要なものにつきまして、推進をどういうふうにしていくかということの基本的な事項、こまかい細部にわたるものではございませんけれども、基本的な、たとえば組織であるとか、分担とかというものにつきまして、その方策を決定するということでございます。  第四番目は、「前三号に掲げる事項に係る日本学術会議への諮問及び日本学術会議答申又は勧告に関すること。」となっておりまして、前三号に掲げますような重要事項につきまして、日本学術会議諮問をいたしましたり、あるいは日本学術会議答申または勧告がされました場合に、そういった事項について審議するということになっております。  この事項につきましては、内閣総理大臣の義務といたしまして、会議諮問しなければならないということになっておるのが第二条でございます。  次に、第三条でございますが、「答申の尊重」、「内閣総理大臣は、前条の諮問に対する答申があったときは、これを尊重しなければならない。」と、諮問事項に対しましてその答申がありましたときに、総理大臣が尊重するということは当然のことではありますが、特に問題が重要でございますのでこの規定を置いた次第でございます。  次に、第四条、第五条、第六条は組織でございます。まず、この会議組織は、議長議員八人から組織される構成を示しておるものでございます。その議長といたしましては、第五条に「内閣総理大臣をもって充てる。」、「議長は、会務を総理する。」、「議長に事故があるときは、あらかじめその指名する議員が、その職務を代理する。」というように、議長について規定しております。  次に、第六条は議員でございますが、「議員は、次の各号に掲げる者をもって充てる。」となっておりまして、一号から四号までは、大蔵大臣文部大臣経済企画庁長官科学技術庁長官、四閣僚をまず掲げております。それぞれ四閣僚を掲げましたゆえんにつきましては、科学技術重要事項に関連いたしましては、財政的な観点から御審議をいただく必要があるというので、大蔵大臣をお願いいたし、それから大学関係研究関係いたしましては、文部大臣の御審議をお願いいたし、それから経済長期見通し、あるいは経済全般観点から見ました科学技術問題の御審議をお願いする観点から、経済企庁長官をお願いし、科学技術庁長官大学研究を除く関係各省庁の科学技術総合調整のの任務を持っております大臣でございますので、科学技術庁長をお願いするということになっております。五番目に、「科学技術に関してすぐれた識見を有する者四人」と掲げておりますのは、科学技術という問題が非常に専門化されておりますので、そういった識見を有する方の御参加をお願いしておる次第でございます。  第二項でございますが、「議長は、第四条及び前項規定にかかわらず、必要があると認めるときは、関係国務大臣を、議員として、臨時会議に参加させることができる。」、これは、それぞれ関係国務大臣といたしまして特に問題となるような議題につきまして、それぞれ議員として臨時会議に参加されて御審議に参加していただくことによって、会議審議の十全を期するために、こういう項目を掲げておる次第でございます。次に、第三項でございますが、第一項第五号の議員、すなわち「科学技術に関してすぐれた識見を有する者四人」となっておりますが、そのうち二人は非常勤とする。裏返して申しますと、二人は常勤であるということになっております。これは、特に科学技術の問題が非常に複雑多岐にわたり常に検討をされる必要があるという建前から、お願いしたのでございまして、こうした審議会議員として常勤の方をお願いしておる例といたしましては、原子力委員会とか、運輸審議会とか、地方財政審議会などもございますが、そういう例にもならった次第でございます。  第七条は、ただいま申しました「第一項五号の議員は、両議院同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」ということで、国会の御承認を得るということを規定しております。次に、第二項、第三項、第四項はそれぞれ例文的な規定でございますので、詳細な説明は省略させていただきます。  第八条は、議員任期でございますが、「三年とする。ただし、補欠の議員任期は、前任者残任任期とする。」、これも例文でございます。第二項も同じでございます。  第九条、これは第七条のの例文規定する例外、「第七条第四項各号の一に該当するに至った場合においては、その職を失うものとする。」、失格の条件を述べております。また、第二項も同様でございます。  次に、第十条、「議員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。」、この議員特別職職員でございまして、一般公務員法の規制を受けませんので審議過程におきまして科学技術上いろいろな秘密にも関与することがあろうかと思います。たとえば特許の問題なとにも関係があることと思いますので、そういった場合、一般公務員法除外例になっている特別職職員、こういう職員につきまして、「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。」という規定を特に置いている次第でございます。  次に、第二項でございますが、第二項、第三項はどういうことをうたっているかと申しますと、常勤議員の者及び非常勤議員の方がこういうことをしてはならないという制限規定がございますが、第二項第一号の「政党その他の政治的団体役員となり、又は積極的に政治運動をすること。」及び第三項の「第六条第一項第五号の議員非常勤のものは、在任中、前項第一号に該当する行為をしてはならない。」という二項につきましては、衆議院修正を受けまして、第十条第二項の第二号が実質的に残っております。その点につきましては、衆議院前田議員が御出席でございますので、後刻御説明があることと思いますので、説明を省略いたします。  第十一条は、議員給与規定でございまして、特別職職員給与に関する法律に従いまして給与を定めるということでございます。  次に、第十二条は、専門委員及び幹事概定でございまして、「会議に、専門事項調査させるため、専門委員を置くことができる。」となっております。これは、科学技術の問題が非常に複雑多岐でございまして、常勤議員の方がいろいろ御調査される上において、特に掘り下げて調査をする必要があるという事項もあるかと思いますので、そういった問題点調査するために専門委員を置く予定にしております。大体四十人くらいを置く予定にしておりますが、常時置くという考え方でなくて、問題点についてお願いをして、この問題の調査が終りましたら御解任を願う、こういう考え方専門委員を置く予定にしております。二項で「会議に、幹事を置く。」、幹事につきましては、政令その他でうたう予定にしておりますが、大体各省次官クラスの方々、お願いする予定にしております。  第十三条は、資料提出要求等に対しての事項でございます。  それから第十四条、「この法律に定めるもののほか、会議に関し必要な事項は、政令で定める。」としておりまして、政令案といたしましては、専門委員のこととか、幹事の任命、それから部会の設置議事手続、庶務などについて政令に定める予定にしております。  付則といたしまして、施行期日でございますが、「この法律は、公布の日から施行する。」として、公布と同時に施行いたしたい予定でございます。それから二項は、第六条第一項第五号の議員任期についてうたっているのでありまして、四人のうち二人については一年六カ月、他の二人については三年とする、半期交代という考え方を表わしております。  第三項、でありますが、総理府設置法の一部を改正いたしまして、科学技術会議を掲げることにしております。  それから第四項としまして、科学技術庁設置法の一部を改正する。科学技術庁設置法の「第二十条第一項の表中科学技術審議会の項を削る。」と書いてございます。従来科学技術庁付属機関といたしまして科学技術審議会がございますが、科学技術会議が発足いたします場合には、科学技術審議会審議しておりますことと相当重複した問題が科学技術会議審議されることになりますので、科学技術審議会はこれを廃止いたしたい考えでございます。ところで、科学技術審議会審議事項の中には本科学技術会議審議の対象とならないような事項もございますので、この件につきましては、科学技術庁内に関係各省連絡機関を置くことにいたしております。  以上が科学技術会議設置法の概略の御説明でございます。
  4. 藤田進

    委員長藤田進君) 次に、本案につきましては衆議院において修正がなされております。従って、衆議院内閣委員会代表者から修正趣旨について御説明を願います。衆議院内閣委員会理事前田正男君。
  5. 前田正男

    衆議院議員前田正男君) この際、私が修正案提案者でありましたので、御説明をさせていただきます。  本修正案自由民主社会両党の共同修正案でございまして、衆議院内閣委員会におきまして、また本会議におきましても、全会一致をもって可決されたものでございます。  その要点は、先ほどの政府側説明にもございましたが、第十条のところの第二項、第三項でございますけれども、要するに、そこにあります「政党その他の政治的団体役員となり、又は積極的に政治運動をすること。」、これを削りまして、第二項の二を生かしましたものでございまして、修正案文を申し上げますと、第十条第二項及び第三項を次のように改める。  2 第六条第一項第五号の議員常勤のものは、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする乗務を行ってはならない。  以上の、通りでございます。  この修正趣旨を申し上げたいと思うのでありますが、これは御承知通り科学技術というものは、わが国国力発展の問題、あるいは国民生活の問題、こういうふうに非常に将来にわたりまして重要なものでございまして、もちろん、これは政党政派を超越しまして、超党派内に真剣な努力をしなければならないものであると考えられるのであります。そういう点から、こういう政党役員とか、あるいはまた政治活動の禁止というようなことから離れまして、やらなければならぬとわれわれは考えているのであります。もう一点、同時に、この議員となられました方は、当然この会議におきましては、今申し上げましたような政党政派を離れて超党派内に真剣な努力をしていただかなければなりませんが、同時に、個人といたしましては、やはり基本的に政治活動をするところの権利というものは、私はあるのじゃないかと思うのであります。御承知通り、現在のような二大政党の発達して参りましたときにおきましては、当然この会議に列せられるような重要な人たちは、個人的には政治活動をされるというふうな基本的な権利というものは、私は当然認めなければならないと思うのでありまして、特に政党役員というようなことは、中央だけでなしに、地方役員も全部入るということを法制局の方で申しておりましたが、そういうふうな個人的な権利を制限するのはよろしくないのではないか、こういうふうに考えまして、この二つの理由から大体これを修正いたしたい、こういうふうに考えたような次第でございます。  また、役員は、この法律案に書いてあります通り、「両議院同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」とありますから、いろいろな初め政府が考えておりましたような心配等も私は全然ないのじゃないかと、こういうふうに考えまして、われわれは全会一致をもちまして、委員会及び本会議において修正をいたしたような次第でございます。
  6. 藤田進

    委員長藤田進君) それでは、これより質疑に入りますが、正力科学技術庁長官がただいまお見えになりました。それから科学技術庁からは篠原事務次官原田官房長、それから文部省関係松永文部大臣緒方学術局長本田学術会議事務局長、それからただいま説明のありました衆議院議員前田正男君。一萬田大蔵大臣につきましては、今なお予定が立っておりません。  それでは、これより質疑に入ります。  なお、質疑に当りましては、文教委員の御質疑を主とするよう取り運びたいと思いますので、さよう御了承をお順いいたします。前田議員の御都合もございますので、先に前田議員に対する御質疑をお願いしたらどうかと思います。この点含おみの上でお進みをいただきたいと思います。  それでは、御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  7. 秋山長造

    秋山長造君 私の方は前田さんに対する質問ではないのですがよろしゅうございますか。ほかに皆さん、前田さんに対する御質疑があれば、あとにいたします。
  8. 藤田進

    委員長藤田進君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  9. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記を起して下さい。
  10. 秋山長造

    秋山長造君 正力国務大臣に若干お尋ねしてみたいと思います。大体、この科学技術庁ができるときに、先ほど官房長から説明があったのですが、科学技術行政が、あるいは文部省、あるいは農林省、あるいは通産省というように、各官庁に分散しておるので、これを総合的に運営しなければならない、いわゆる総合調整をやらなきゃいかぬ。だから、その総合調整をやるために総理府科学技術庁という新しい役所を設けるのだ。だから、これができれば、今まで分散してばらばらになっておる科学技術行政というものは総合的に運営されるのだ、こういう趣旨科学技術庁というものができたのです。そうして正力さんがその長官でやっておられるわけですね。ところが、どうも、ついそれはこの間のことですが、今度はまた、それではどうも総合調整はできぬ。だから、今度はもう一度別なものを作る、こういうことになる。一体それはどこまで行ったら、ほんとうに総合調整ができるのか。  まあ私はこういうあなたが科学技術会議というような国防会議まがいのようなものを作るのは、これは科学技術庁というものが、これは本来の使命を果していない。また、科学技術庁設置された趣旨も、そのときの説明もきわめてもっともな説明だったが、去年、ことしやってみて、これはちっとも科学技術庁というものがその本来の使命を果していないということを、みずから告白することになるのじゃないかと思う。その点について、まずお伺いしたい。
  11. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 科学技術庁ができたいわれについては、私は詳しいことは知りません、科学技術庁ができてから私は就任したわけでありますから。まあその話は別といたしまして、科学技術庁科学技術一般に関する総合調整をやるということは、今お話しの通りであります。しかし、大学に対する分は除くと、こうなっております。大学研究を除いては、科学技術の私は調整は完全にいかぬと思うております。それが今日科学技術会議を作った、法案を出したゆえんなんでありまして、それで調整をやるためには、むろん文部省、私――科学技術庁長官とさらに文部大臣と、三人に話をしなければいけませんから、そういうことと、いま一つ、また事予算にも関しておりますので、それで大蔵大臣企画庁長官も入れて、そうして科学技術会議を作るのだ。ただし、それだけではいかぬので、やはり専門家科学技術に対する知識が要るというので、学識経験ある人を四人加えました。そうして総理大臣総理府の長として、それの諮問に応ずる、こういうことにしたわけであります。  御承知のごとく、私ども科学技術調整についても一番考えるのは、各省のセクショナリズムです。このセクショナリズムを破らなければ、科学技術の私は振興はできぬと思うております。それで、今こういう科学技術会議を作って、そのセクショナリズムを破りたいと思うておるのですが、なかなかこれはむずかしいことなんですよ。しかし、これならばある程度できやせぬかと、こう思うておるわけであります。  くれぐれも申しておきますが、科学技術庁長官としては、大学研究を除くとありますから、大学研究を除いてはやはりできませんので、それで文部大臣を入れたわけであります。
  12. 秋山長造

    秋山長造君 そういたしますと、この大学研究以外については、これは科学技術庁で十分なのだ、また十分事実それだけの実績を積んでおるのだ、ただ大学研究に対してコントロールをするためにのみ、この今度の科学技術会議は設けられたのだ、こういうように了解してよるしいのでございますか。
  13. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 大学研究もその一つでありますが、御承知通り科学技術を振興するについては、科学技術思想の普及、科学技術者の養成ということが必要であります。従って、科学技術者の養成については、やはり文部省がやります。私どもはそこまで関係できません。それだから、どうしても文部大臣と私の力と両方でなくちゃならぬ。それと、繰り返して申し上げるようですが、予算の調整も必要でありますから、それで大蔵大臣を入れたという、こういうわけであります。
  14. 秋山長造

    秋山長造君 だけれどもね、この科学技術思想の普及だとか、あるいはこの科学技術者の養成、こういうものについてはですね、これはすでに科学技術庁でも文部省と連絡をとって、いわゆる総合調整の妙味を発揮してやっておられるわけです。また、その線に沿って文部省でもやっておられる。しかも、それをもう一段この高次の段階で、高い段階で総合的に方針をきめておられるのは、これは閣議というものがあるわけです、閣議というものが。それからまた、科学思想の普及等について、特に専門的には、学術会議等が中心になってやることになっておる。これはちゃんと法律に書いてある。だから、そういうものは、それぞれ今まで担当しておった機関が十分に能力を売抑すれば、それはもう全く必要にしてかつ十分なものであって、そうしてここで新しく……。閣議というものもあって、これがもう最高のレベルにおいて国のあらゆるこの行政部門を総合的に調整しておるわけですが、そういうものともさらに別にですね、閣議の中にさらにもう一つ、内閣の中にもう一つ内閣を作るというような形で、科学技術会議というものが設けられるのですから、これはまあよくよくの理由がなければ……。  これは大体、鳩山内閣以来言ってこられた、このいろいろな審議会だとか調査会だとかというものは、徹底的に整理していくのだ。きのうも岸総理大臣は、内閣委員会でその点について発言があったようですが、けさの新聞を見ると、川島幹事長は大阪において、今度の選挙に訴える重要政策の一つとして、この行政機構の徹底的な簡素化、特にいろいろな付属機関の徹底的な整理ということを、やるということを、大きくアッピールしておられた。そういう口の下から、こういう同じような総合調整総合調整という名前を持ったものが、次から次へ幾つもできるのですが、これは全く総合調整のまた総合調整をせにやならぬことになってくる。総合調整総合調整の、またもう一つその上の総合調整をやらなきゃならぬ。どこまで行っても、これは切りはつかぬ。  一体、この科学技術会議ができたら、それでもってほんとうの総合調整ができるのかどうか。その科学技術会議のやる総合調整と、閣議がやるところの総合調整、あるいは原子力会議がやるところの総合調整、あるいは科学技術庁がやるところの総合調整、そういういろいろな総合調整と名のつくもののその総合調整は、一体どこでやるのですか。
  15. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 今まで、私ども科学技術庁長官といたしまして、そうして文部省とよく相談をしてやりました。その結果、どうもうまくいかない。なるほどお話の通りに、今までいろいろな専門部会があったじゃないか。科学技術庁においても、科学技術者の専門部会がありました。今度はこれらの専門部会を廃します。科学技術審議会というものは廃しまして、そうしてこの科学技術会議を作ったのでありますから、決して今まであったものの上に作るのじゃありません。科学技術審議会というものは廃止するのであります。そうしてこの特徴としますのは、閣議があるじゃないかといいますが、閣議はこれは閣僚だけであります。それで私は、閣僚のほか、つまり直接関係のある閣僚のほかに、学者、経験者を入れるということにしてあるのでありまして、これで総合調整をやってみたいと思っております。決して重複はいたしておりません。
  16. 秋山長造

    秋山長造君 まあ、大臣のほかにも四人ばかり、しかも二人は非常勤ですから、まあ事実上は大臣のほかに二人常時加わるということになっておるのですが、その程度の人を加えて、そうして最高のこの科学技術方針を打ち出すということなら、すでに岸首相の身辺には、茅誠司さんとか、兼重寛九郎さんとか、あるいは嵯峨根遼吉さんだとか、こういうような、まあある意味においてはトップ・レベルの碩学泰斗を私設顧問として置いておられるのですね。  だから、それと実質的にはちっとも違わぬのじゃないですか。何もこんなに次から次へと、科学技術総合調整するのだといって、科学技術庁を設け、そうして民主的にやるのだといって、それの諮問機関として科学技術審議会を設けておる。それからまた、そのうち、原子力関係は原子力会議というものを別に設ける。しかも、原子力会議の事務局というものは、科学技術庁の内局、中の一部局である原子力局がその事務を担当している。ここらでも、はや、だいぶ混同しているのですね。だいぶ複雑になって、からみ合っている。その上にさらにこの科学技術会議とか何とかいう、こけおどしみたようなものを設けて、そしてこれがまた総合調整をやるのだ。一体総合調整がどこまで行ったらとまるのか、見当がつかぬ。だから、岸さんなり、あるいは川島さんが大いに声を大にして、徹底的な機構の簡素化をやる、付属機関、外郭団体の徹底的な整理をやるというておっしゃっていることと、全くあべこべに、これはもう数からいっても、どんどん、どんどん、今度これでまたまたふえてくると思うのですがね。それはもう全く言ってこられたことと、それからまた、今後の方針として打ち出されていることと、それから法律案として出てきているものとは、私はもう全く逆行していると思うのですがね。一体科学技術庁というもので、これは科学技術会議が予想しておるような、期待しておるような総合調整の働きというものを、既設の科学技術庁というもので一体できないのかどうか。  それから、特に大学関係については、これは私はやはり科学技術庁が直後やられないで、文部省があくまでこの方面の責任者になるという今日までの建前の方が私は正しいと思うのです、大学の自治その他の問題から考えて。
  17. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 先ほど申し上げました通りに、科学技術会議を設けるに当っては、科学技術審議会というものを廃止しております。廃止してこれを作るのでありまして、そうして、しからば総理には顧問があるじゃないかとか……。これは私設顧問であります。総理が個人の資格においてやるものでありまして、それを私どもの方では公けに認めるということです。  それから、なお申し上げたいのは、私は、大体審議会というものを、これは実は一月に一回か二回開いたものではなかなかいかぬのであります、私の経験上。それで、今度常設の委員を二人加えたのでありまして、これは私ども、原子力委員会におって、もうやはりあり常設の委員を置いたということは非常に役に立ちました。ただ学者が一月に一ぺん行く審議会というものについては、私は多少の疑いを持っております。むろん、いいところもあります。いいところもありますけれども、一月に一回や二回の会合ではいけません。やはりその委員たるものは、常設の人を選ばなくちやならぬ。先ほど、なるほどお前、閣議があるじゃないか。この閣議というのは、行政庁の長官が集まっておるのでありまして、専用的知識には欠くるところがあります。それで専門的の学識経験のある者を四人ここに加える。それは閣議と違っております。
  18. 秋山長造

    秋山長造君 科学技術庁機構図を拝見しますと、正力長官には、顧問、参与、あるいは科学審議官、こういうようなものも科学技術審議会のほかにあるわけなんですね。これだけの人が集まって、あなたにいろいろ助言を行なっているのに、まだこれよりほかに、もう四人学者をどうしても入れなければあなたは動けないのか。そういうことよりも、問題は、いろんな学者の、専門家なんかの意見を率直に聞き入れて、これを実行に移すことでしょう。ちっとも実行せずに、聞き放しに聞き流すだけで、予算の裏づけも何もしないで、ただ、顧問だとか、参与だとか、審議官とか、審議会だとか、何とか会議というものばかりやたらに設けて、相談する機関ばかりやたらに設けて、それを実行に移すことはちっともやっていない。そういうことよりも、百の議論よりも一つの実行という言葉がございますが、これは全く今の政府のいろいろな行政に当てはまると思います。  それはもう十分に、いろいろな人の意見を聞くことはけっこうです。しかし、それは特に大学研究等については学術会議という、これはきわめて権威を持った、これこそ最高の専門家をそろえた機関がある。そういうところの意見はちっとも聞かずに、財界の有力者だとか何だとかというような、このしろうとか半くろうとかわからないようなものばかりを、顧問だとか何だとかにして、そうして専門家の意見を聞くのだ、聞くのだといいながら、実際に専門家の意見をちっとも聞き入れずに、そんなしろうとの、片手にはそろばんを持ったような、片手でそろばんをはじくようなしろうとの意見ばかり聞いて、そうしてやっていたのでは、科学技術の振興といっても……。これは茅総長が、三月の「科学」という雑誌に、今度の科学予算について非常に痛烈な、しかも非常に率直な意見を述べておる。これは正力さんにあとで読んでいただいてもいいと思います。  そういう点と、茅さんという人は、御承知通り、学者としては非常に政府に協力的な立場の考え方の学者ですよ。だから、俗な言葉でいえば、政府のお気に入りの学者だろうと思う。その茅さんにして、なお、きわめて痛烈な、この結論というのはまことに痛烈ですよ。「大学研究費は数億円しか増額されず、科学振興は今回も依然として懸け声だけに終り、遂に立ち上る機会は永久にこないのではないかとさえ考えられる。」、こういう結論なんです。こういう状態でほうっておきながら、ただやたらに総合調整総合調整といって、政府の方の行政簡素化の方針さえも踏みにじって、次から次へ屋上屋を架するようにこういうものを作っていかれるということは、私はどうしても納得ができません。
  19. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 先ほど、科学技術庁長官に、顧問とか参与だとかいろいろな忠言をするものがたくさんあるじゃないかというお話でありましたが、その通りそれはあります。ありますが、科学技術庁長官として実行に移すについては、どうしてもやはり、先ほど茅博士が言っておられるごとく、予算ということが必要であります。従って、これについては、文部大臣が必要だと申したと同じように、また大蔵大臣も必要であります。企面庁長官も必要だ。そうして、それといま一つは、先ほど申し上げましたごとく、顧問とか参与というようなものではなく、常設的に大所高所から見る専門家が必要だという意味において、専門知識のある人を四人、それに大蔵大臣というのが入り、そうしてまた文部大臣も入れ、それで初めて私は総合調整ができると思っているわけです。決して機構を重復にしておりません、
  20. 藤田進

    委員長藤田進君) ちょっと御注意申し上げますが、大体一貫してこの質疑がいろいろな面からされているのに対して、同じことを繰り返されているわけですが、要するに、質問者が論点としておられるところは、科学技術庁長官の能力ということは別として、これはいろいろな長官の権限において現状でできるのではないか。これは大学の方の科学技術に対して権限がないから、大学との関係も持ちたいという点。それから必要性としては、今再三お答えになるのは、大蔵大臣を入れて金を取ることだ。それならば、閣議でもって時の内閣の方針、政策としておやりになることで、科学技術会議のようなものを、屋上屋を設けて予算を取る手段にしなくてもいいのじゃないかということなのですから、もっと具体的に、やはり現状では総合調整ができないというような御説明がなければ、これは進展しないと思うのです。
  21. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) ただいま具体的にと話がありましたが、私の原子力委員会における経験からそう思うのであります。原子力委員会では、やはり専門家を置いてやっております。これはさっきから言っているように、予算の裏づけがなかなかうまくいかないのです。それだからして、やはりこれはそういう意味のものを作りたい、こういう考えであります。
  22. 秋山長造

    秋山長造君 予算々々とおっしゃる、それから大蔵大臣大蔵大臣とおっしゃいますけれども、それこそ岸内閣という一つのこれは共同責任を持った、一体になった政治、行政の最高責任の機関があるのですから、大蔵大臣が何と言おうと、予算の必要があればその必要があるで、これは内閣の方針としてやられることならば内閣でやられたらいいことであって、大体内閣法の第四条には、「内閣がその職権を行うのは、閣議による」、こうはっきり書いてあるのですよ。だから、科学技術庁が、ほんとうに、この提案理由に述べてあるごとく、政府科学技術行政というものを強力にやりたいということならば、これは閣議でやられたらいい。その閣議の方針にどうしても大蔵大臣が聞かぬというのなら、大蔵大臣を罷免されたらいい。そういうことにちゃんと法律できまっているのですからね。  しかも、第三条なんかでも、私はまず内閣制度としてはおかしいと思うのですね。いろいろな審議会なり調査会なんというようなものがあって、そうしてこれは何百とあるのですが、そういうものはみな、意見を聞いて、それを行政の上に反映させるために設けてあるのでしょう。だから、それらの答申なり意見の具申なんというものは、当然内閣としてこれは尊宿しなきゃならぬという前提のもとに設けられておる。それでなかったら、意味がない。ところが、特にこの科学技術会議に限って、答中があったときはこれを尊重しなきゃならぬ、こういうことが書いてあるのは、これはもう、今度のこの科学技術会議の構成等とにらみ合せますと、これは、内閣の中にまた別の内閣を作るんじゃないか。それで、ますます、内閣としての職権を行うのは閣議による、閣議第一だという根本の建前というものが、あっちこっちから足や手を引っぱられて、混乱してくるんじゃないか。で、今度は、科学技術会議とそして閣議との総合調整をはかる機関を、また別に作らなきゃ岸内閣としての統一した科学技術行政というものはできぬことになりはせぬかと思う。  私は、これは率直に申し上げますがね、正力大臣の先ほど来言っておられることから考えても、一つのねらいは、あなたの権限が大学のワクの中まで及ばぬから、この機会に一つ大学まで握ろうというのが、一つのねらい。それから第二のねらいは、総合調整をやるということで科学技術庁は設けたんだけれども、しかし、科学技術庁では、庁だから、各省に対してどうもにらみが事実上きかぬ。だから、今度は、科学技術会議というものを一つかさに着て、そしてあなたがにらみをきかして、科学技術庁の予算をよけいぶん取ろう。この二つのねらいとしか考えられぬ、二つのねらいとしか。特に、第一の、大学の方の権限を握ろうということは、後ほど私は質問しますが、きわめて重大な問題だと思う。この点について、正力大臣の御答弁とともに、文部大臣の御答弁をお願いしたい。
  23. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) ただいま大学の権限まで僕が握ろうというお話ですが、断じて自分はそういう考えは持っておりません。これは、文部大臣もこの説には喜んで賛成しております。そうして、よくここでやりたいということであります。それから、内閣との関係は、内閣は、決定機関であります。これは、諮問機関であります。
  24. 藤田進

    委員長藤田進君) ちょっと、その点ですが、総理大臣が出られて総理大臣諮問なさるということになると、国家行政機構上問題が出ないでしょうか。
  25. 原田久

    政府委員原田久君) この科学技術会議総理府に置かれる機関でございまして、総理府長官として、すなわち、総理府長官諮問機関でございますので、その範囲は、総理府任務、権限に属する範囲に限られておるかと思います。総理府長官任務といたしましては、「各行政機関の施策及び事務の総合調整」という任務でございます。その範囲で、諮問をする事項をしかも制限をつけまして、「関係行政機関の施策の総合調整を行う必要があると認めたときは、」と――「内閣総理大臣」と申しますのは、総理府の長としての内閣総理大臣が、四つの項、目に掲げました事項について、必要があると認めたときに限って、「諮問しなければならない。」となっておりまして、これは、総理府としての機能を果す限界の中に入っておるかと思います。それから、内閣、いわゆる内閣の首班たる総理大臣としての行政の総合調整ということではございません。その間はせつ然と分れるんじゃないかと思っております。
  26. 秋山長造

    秋山長造君 そういうことは、これはもう、ただその場のがれなこじつけ議論であって、それは、総理大臣がこの場合には総理府長官としての立場でやるんだということなら、総理府長官と書いたらいいじゃないですか。あるいは、その「内閣総理大臣」の下へ、カッコをつけて、総理府長官と入れたらどうです。それは、あなた、自分が議長をしとる諮問機関へ、自分が諮問をして、その答申を自分が尊重しなきゃならぬという、そんな、あなた、ばかばかしい規定というものがそもそも私はおかしいと思う。  かりに、岸さんが、総理大臣としての岸さんと、それから総理府長官としての岸さんというものを、せつ然と使い分けるような器用な人であるとしても、おかしいです。自分が議長をしている機関に自分で諮問して、そうして自分が答申するわけでしょう。自分が議長をして、そうして自分が自分に諮問して、自分が自分に答申して、そうして自分がそれを尊重しなきゃならぬ。これなら屋上屋を架するもの、あるいは、閣内にさらに内閣を作るものです。それこそ「内閣がその職権を行うのは、閣議による」というのだから、閣議でやられるべきじゃないか。  その点と、それから、正力さん、大学の自由を握るなんということはとんでもないとおっしゃったけれども、さっきはあなた、これを設ける理由として、大学研究だけはワク外になっておるから、これを握らなきゃいかぬ、これが第一の理由だということをおっしゃった。
  27. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 私は、大学を握るのが第一の目的だとは申したつもりじゃありません。あるいはお聞き迷いだと思います。私は、よく大学の方の研究も相談をしなくちやならぬ、今までは文部大臣にはただ閣議で国務大臣として話をしておったけれども、今度行政長官として、科学技術庁長官としてよく話をしたいということであります。そうして文部大臣もこの案については賛成しておるわけであります。  それで、私は、今度科学技術会議を提案した理由は、実は岸内閣として科学技術を第一政策として標榜しておりますので、本来ならば、これは社会党からも提案がありましたが、科学技術の振興を期するには、科学技術省を作って、そうして行政権まで待たなくちゃいけません。ところが、行政権のない科学技術庁長官で、総合調整だけじゃ、私は十分じゃないと思います。それで、とりあえずこういう科学技術会議というものを作って、そうしてその一階段として私は考えておるのであります。決してそういうほかの権限を握りたいなんという大それたことは考えておりません。
  28. 藤田進

    委員長藤田進君) 質問者にお伺いしますが、松永文部大臣の答弁がそのままになっておりますが、この際答弁を受けましょうか。
  29. 秋山長造

    秋山長造君 いいです。大学自治の問題は、後ほどまとめてお尋ねしますから、その点だけ除いて。  今の正力大臣の御答弁は、またまことにおかしいと思うんですね。科学技術庁というものは行政権はないのですか、一体。科学技術庁には行政権はないのですか。科学技術庁長官には行政権はないのですか。行政庁の長官でしょうが、あなた。科学技術庁というのは行政庁でしょう。科学技術庁では行政権がないから、今度は行政権を持たなくちやいかぬ……。今度のは諮問機関ですよ。行政権は持っているのですか、この科学技術会議というのは。
  30. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 科学技術庁というのは、総理府にあるのであります。省じゃありません。従って、総理府総合調整をやるのであります。だから、私は、総合調整長官……。
  31. 秋山長造

    秋山長造君 それはおかしいですよ、あなた。総理府であろうとどこであろうと、行政官庁である以上は、法律で決められただけの行政権というものはあるから、これが行政官庁なんですよ。総理府であるとかどこであるというようなことは、それは別な問題です。  それから、総合調整ということは、これは行政権あるいは行政機能を伴うから、総合調整というのでしょう。どうですか。
  32. 原田久

    政府委員原田久君) 科学技術庁総理府に置かれております行政機関であることは、間違いございません。その権限といたしましては、まず任務を申し上げますが、「科学技術庁は、科学技術の振興を図り、国民経済発展に寄与するため、科学技術人文科学のみに係るもの及び大学における研究に係るものを除く。以下同じ。)に関する行政を総合的に推進することをその主たる任務とする。」、こういうふうに書いてございます。権限にも、これに伴いましてそれぞれ必要な事項がございまして、一例を申し上げますれば、「関係行政機関科学技術に関する事務の総合調整を行うこと。」、こういうふうにあります。従いまして、そういう権限、任務に従いまして、行政機関といたしまして、それぞれ目的とする、任務とする行政はできるわけでございます。  ただいま大臣から総合調整を行うだけではできないというような御発言があったのでございますが、これは大臣のお気持といたしましては、総合調整の範囲を越しまして、具体的に何か一つの問題をとらえて実施するというところまではできないということを申されたのではないかと、補足説明さしていただきます、
  33. 秋山長造

    秋山長造君 何とかをとらえて具体的に実施するところまではできぬということは、うそですよ。現にやっておるでしょう。もうそれがやれぬのだったら、こんなものを廃止したらいい。何にもなりゃせぬ。議論するだけで、実際の行政やれぬというなら、廃止しなさい。諮問機関でもやれるというなら、諮問機関でやったらいい。でも、その点はもうそれでよろしい。そういうことまであなたにこまかく聞いていっても、切りがないですから。  しかし、長官はもう少しやはり自信を持たれたらいいと思うのですね。どうも科学技術庁という名前でコンプレックスを感じておられるんじゃないか。これは独立の省ではないにしても、この第三条に書いてあるあなたの権限というものは、まことに広範な権限が与えられておるのですよ。だから、今のような御認識だから、どうも科学技術庁ではいかぬ、もう一つ別な機関、諮問機関であるにしても別な機関を作らなくちゃいかぬというようなことを、お考えになるのじゃないかと思う。この科学技術庁設置法の条文を十分お読みになったら、これはもうこれ以上に、隴を得て蜀を望むというようなことを考えられる必要はちっともない。  それから、さらに、さっきの関連で、大学との関係についてお尋ねいたしますが、大体政府の方は日本学術会議というものをどの程度に考えられておるのか。それからまた、今日日本学術会議というものに対する政府の態度といいますか、これに対する扱い方というものは、学術会議ができた当初の考え方からいうと相当後退しておるんじゃないか。学術会議そのものも、学術会議設置法に書いてあるところからだいぶ影が薄くなっておるんじゃないかというような批判があるのですが、その点について、まずお尋ねしたい。
  34. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 学術会議の意見というものは、科学技術庁として、また政府として、十分尊重して、その通りにやっております。決して軽視しておりません。  それから、なお、先ほどの科学技術庁のことで申しますと、省でありませんから、たとえていうたなら、電波に関する研究にしても、今のところでは、郵政省にもあれば鉄道省にもあるというふうに、各省にまたがっております。それをみんな一つにまとめたいと、一つは思うておるのであります。これは実はセクショナリズムで、それがうまくいってない。だから、私の方の仕事は総合調整ということに実上終っておるのです。それが、私先ほどいった言葉が足らぬで、あるいは行政権が及ばぬというふうに申し上げたかもしれませんけれども、要するに、総合調整だけで、実際はそういうふうに行っていないのです。
  35. 秋山長造

    秋山長造君 学術会議の方……。
  36. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 学術会議の意見は十分尊重して、今までやっております。学術会議の意見に反したことはやっておらぬつもりであります。
  37. 秋山長造

    秋山長造君 さっき言われた電波の関係は、逓信省が持っておるとかあるいは……。そういう問題は、それは一つにまとめたいのならまとめるようにやられたらいいので、今度の諮問機関みたいなものを作ってみたからというて、まとまるはずはない。そうでしょう。これはあっちこっち分れておるものを具体的にまとめて、一つの省なり庁を作られたらいいので、これは別に諮問機関のようなへんてこなものを作ったからというて、それがまとまるものでもないでしょう。その点は内閣委員会の方でも御議論があると思いますから、私はもう言いません。  学術会議との問題ですが、学術会議は大いに尊重しておるとおっしゃるけれども、大体学術会議が二十三年に設置されて以来の経過をたどってみますと、まず最初には、科学技術行政協議会というものが政府にあった。科学技術行政協議会というものが法律によって設けられた。そうして、これは委員が二十六人で、そのうち半数の十三人というものは学術会議から代表者が出ておった。ところが、その後科学技術庁設置されまして、そうしてその付属機関として科学技術審議会というものができた。科学技術審議会のときには、もうすでに半数を学術会議から出すという線はくずれて、今度は二十七名の審議会委員のうちわずかに三分の一、学術会議の代表は九名出たにすぎない。だから、学術会議の代表を半分最初入れたのが、次の審議会のときにはもう今度は三分の一に減ったわけですね。そうして今度の科学技術会議を見ますと、学術会議は全然影をひそめてしまって、ただ抽象的に「科学技術に関してすぐれた識見を有する者四人」、こういうことにずっと、そういう面での学術会議の線というものは非常に薄れて、細くなってきておるわけですね。こういう経過から見ましても、学術会議政府との関係、あるいは連絡、調整、協力、いろいろな関係があるでしょう。そういう関係というものは、非常に影が薄れてきておるという断定を下さざるを得ないと思うのですが、長官はいかがお考えになりますか。
  38. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) なるほど審議会委員など幾らか減っておるかもしれませんけれども、必ず学術会議の意見を聞いてやっております。
  39. 秋山長造

    秋山長造君 必ず学術会議の意見を聞いてやっておるというその実績を、一つお示し願いたいと私は思う。それからまた、今度のこの科学技術会議のどこに、学術会議の意見を必ず尊重するということを書いてあるか。この二点、お伺いしたい。
  40. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) たとえていうと、原子力の問題でも、委員会がものを決定するについては、学術会議にまず意見を聞いております。そうして原子力の委員会はきめております。なお、尊重というのは、今度の科学技術会議においても特に二条の四号にちゃんと、「前三号に掲げる事項に係る日本学術会議への諮問及び日本学術会議答申又は勧告に関すること。」、こういうことを設けております。
  41. 松永忠二

    松永忠二君 関連して。今のお話ですが、そうすると、この科学技術会議設置するについては、学術会議の意向を聞いておるのですか。それから、もう二つは、「科学技術に関してすぐれた識見を有する者四人」の中に、そういうふうなお考えならば、どういうわけで学術会議代表者を加えるとか何とかいう規定をしないのですか、その二点を一つお答えを願いたい。
  42. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) この科学技術会議を作るにつきましては、学術会議の意見を聞いております。
  43. 松永忠二

    松永忠二君 もう一つ……。
  44. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) この規定には出ておりませんけれども、なるたけ学術会議関係者を入れるつもりでおります。
  45. 松永忠二

    松永忠二君 意見を聞いておられるというお話ですが、学術会議としての意見はどういうふうに出てきておるのか、それを具体的にお聞かせをいただきたい。
  46. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 学術会議としては、なるたけ形式にならぬように、実行ができるようにしてくれという意見のように聞いております。
  47. 松永忠二

    松永忠二君 もう少し具体的に開かして下さい。今お諮りになったということなんですが、どういうふうな具体的な内容をもって学術会議の意見を聞かれたのか、また学術会議としてはどういうふうな内容をもったものを答申をされておるのか。そうでないと、具体的に尊重されたというお話がわからないと思うのですよ、今のようなお話では。だから、どういうふうな形において、科学技術会議設置について学術会議の意見を聞くという方法をとられたのか、具体的にどういうような点を指摘し、あるいはどういう機関で決定をして、そういうことをおやりになったのか、なお学術会議の意見として、具体的にどういうようなものが出てきたのか。今のようなことでなしに、どういうふうな内容をもったもので、どういう形で答申をされたのか、そういうことを私は聞いておるわけです。
  48. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 初め茅さんを通じてやっております。それから副会長の兼重さんを通じて、こういう内容をずっと説明しまして、それで……。
  49. 松永忠二

    松永忠二君 どうも、そういうふうな形で、やはり学術会議を尊重するということは、決して個人的な、会長と副会長の個人の意思を聞かれるということでは……。やはりそういう形でなしに、正式に、やはり学術会議としてはこれを討議していただくような方法を請ぜられたのかどうか。
  50. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 茅会長を通じ、副会長を通じて、それで学術会議に諮ってもらっております。正式に答えを開いております。
  51. 秋山長造

    秋山長造君 学術会議の事務総長が見えておるはずですから、そちらへお尋ねしますが、ただいまの正力大臣のお話では、これは科学技術の問題は、もう常に学術会議に諮って、その意見を尊重してやっておるというお話なんですが、一体、学術会議に事実いろいろな問題が諮られて、そしてその意見が十分尊重されておるのかどうか。それから、特に、先ほど原子力の問題については、特に学術会議を尊重しておるということですが、そういうことが一体事実なのかどうか。われわれは従来承知しておるところでは、正力さんが原子力委員長になられて、大いに政治力を発揮して独走されて、そうして原子力協定の問題でも、あるいは動力炉の輸入の問題でも、すべてこれは学術会議は一切つんぼさじきに置かれて、そうしてもっぱら原子力委員長は、財界の有力者その他と一緒になって、どんどん進めてきておられるというように聞いておるのですが、学術会議の率直な意見をこの際お伺いしたい。
  52. 本田弘人

    説明員本田弘人君) お答えいたします。科学技術設置法案につきまして、先ほど正力国務大臣からお話がありましたように、茅会長、兼重副会長を通して口頭で御諮問がございまして、学術会議といたしましては、科学振興の基本方策を検討する第四十五臨時委員会に付議いたしまして、学術会議といたしましては、先ほど御指摘がありました通りに、学術会議設置されます当時に、行政府との密接な連絡のために科学技術行政協議会が学術会議法と並んで作られまして、そこで緊密な連絡をとっていたのであります。ところが、その運営上遺憾の点があるというので、科学技術審議会ができまして、これに協力してやっておりまして、さらに強力な科学技術会議ができるということであって、その点については原則的に賛成でありますが、学術会議といたしましては、法文の形の上において、学術会議の意見が反映できるような形になっていないことは遺憾でありますが、この点につきましては、特にいろいろ折衝いたしまして、実際の運用面において、この機能が十分に反映できるようにということを強く希望し、また、期待しておる状態であります。
  53. 秋山長造

    秋山長造君 原子力の問題……。
  54. 本田弘人

    説明員本田弘人君) 原子力委員会、まあ、これは御承知だと思いますが、原子力問題につきましては、すでに昭和二十八年――七年か八年、今ちょっとはっきり記憶いたしませんが、初めて学術会議におきまして、当時副会長であった茅会員から提案されまして、もう好むと好まざるとにかかわらず、原子力の時代が来ている、原子力の問題を日本として真剣に考えなくちゃならない、これについて一つ原子力の問題をどう取り扱うかということを政府勧告しようという話がありまして、その当時、学術会議の中に原子力委員会ができたのでありまして、そうして、そういうことで政府の方ともいろいろ連絡いたしておりまして、原子力委員会、行政委員会というものができます際におきましては、当時茅会長が会長として、いろいろこれに協力し、あっせんせられており、また、原子力委員会の運営につきましても、学術会議の方には特別に原子力特別委員会というものがございまして、原子力行政委員会としての原子力委員会の運用の面において、学会の、そういう関係の学会の特別委員会が、これに協力しておりまして、大体、その連絡は緊密に保たれておると考えております。
  55. 秋山長造

    秋山長造君 あなたはだいぶうそを言っておられる、率直に言って。私なんか、実際学術会議というものが、今日これはもう事実上影が薄くなってしまって、有名無実な存在になっていると思うのです。やはり科学技術を振興する、特に科学技術教育を振興していくという面においては、学術会議というもののあり方も、この際われわれは再検討して、そうして、もっと筋金を入れて考えねばいかぬと思うのです。  それと同時に、政府ももう少し学術会議というものを、口先だけではなしに、行動の方でも尊重してもらはなければいかぬと思っておるのですが、茅さんやあるいは兼重さんの意見を、常に連絡をして尊重しているとおっしゃるけれども、茅さん自身がさっき、読み上げました論文の中に、はっきり書いておるじゃないか。今度の予算編成のときに当っても、茅さん、兼重さん、嵯峨根さん、この三人の意見を十分述べる機会をも持ったのであったが、しかし、結果としては名目的な拡充強化はあっても、一番肝心な科学技術教育についてはほとんど予算の増額を見ていない状態である。つまり尊重されておらぬということである。これはもう正力大臣のおっしゃることも、それから事務総長のおっしゃることも、これはどっちも信用できぬ。でたらめですよ。
  56. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) さっき、茅さんの言われたことと、私の意見と、幾らか違うのですが、私も茅さんと同感なんです。なかなか予算関係でうまくいかないのです。それで、実はそういう点も考えて、また同じことを言うようだが、大蔵大臣も、これだけ入れてくれたわけなんです。
  57. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記をとめて。    〔速記中止
  58. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記を起して下さい。  それでは、暫時休憩いたします。    午後零時十二分休憩    ―――――・―――――    午後二時十二分開会
  59. 藤田進

    委員長藤田進君) 内閣文教委員会連合審査会を再開いたします。  休憩前に引き続き、科学技術会議設置法案議題として、質疑を続行いたします。  御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  60. 秋山長造

    秋山長造君 私は、午前中に引き続いて、もう少しお尋ねをしたいのですが、もう一度はっきり御答弁願いたいと思うことは、本法律案を作られるに当って、日本学術会議諮問をされたかどうか、お尋ねしたい。
  61. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) この提案するにつきましては、学術会議に、先ほど申し上げましたように、相談いたしました。
  62. 秋山長造

    秋山長造君 相談するということじゃなしに、これは科学技術に関するこの法案内容もきわめて重要ですが、科学技術会議を作ることそのことが、きわめてこれは重要な、画期的な重大な問題だと思うのです。だから、そのことについて学術会議諮問をされたかどうかということをお聞きしておるのですが、午前中私がほのかに聞いたところによると、何か個人的に茅さんだとか、兼重さん、特に兼重さんは正力大臣原子力委員会で席を並べておられるわけですから、茶飲み話ぐらいでちょっと御相談できたような話と承わったのですけれども、そういうことで片づける筋合いのものではなくて、やはりこれは正式に文書なり何なりをもって、日本学術会議へ御諮問になってしかるべきじゃないかというように考えるのですが、その点はいかがでしょうか。現にこの科学技術庁設置法の第二十条によって設けられている科学技術審議会、この科学技術審議会政府日本学術会議との連絡のいわば公式の窓口になっておると思うのですが、この法律できめられた公式の窓口を通しておやりになっておるのかどうか、その点もあわせてお尋ねしたい。
  63. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) これは、先ほども申し上げましたように、全く個人的の話じゃありません。非常に慎重にやりました。そうして、学術会議でも会議を開いてきめるという話でありました。私は決して個人的に話をしておりません。なるほど、文書では問いただしておりませんけれども、こういうわけだから一つよく……。で、会議が今度あそこで開けるから、そこで相談するということになった。なお、科学技術審議会でも、私はそういう話をしました。こういうことをして、そうして審議会を解散したいと思いますということは……。これは個人的なことでなく、ほんとうに各方面に手を打った。またそれほど重大と私も考えておるのであります。
  64. 秋山長造

    秋山長造君 本田事務総長にお尋ねしますが、ただいま大臣はああいうふうな御答弁ができたのですが、その通りの手続を学術会議においても経た上で答申されたのかどうか、お尋ねします。
  65. 本田弘人

    説明員本田弘人君) お答えいたします。文書での御諮問ではありませんでしたけれども、副会長から、正力国務大臣からのお話であるということで、それで学術会議の総会にかわる運営審議会でその報告がございました。そうして、それに基いて運営審議会では、この科学振興の一般的な方策を検討する臨時の第四十五委員会に付議されまして、そこの委員会で検討いたしまして、先ほど申しましたような学術会議としての意見を申し述べた次第でございます。
  66. 秋山長造

    秋山長造君 学術会議で運営委員会か何かが開かれたということですが、これも本来をいえば、学術会議の総会か何か、もっと法的な権威を持った機関を通じてやられてしかるべき問題だと思うのですけれども、とにかく、それにしても、今御答弁の通りであるならば、不十分ではあるが、一応は学術会議の意見は聞かれた、こういうことになるようです。その学術会議答申ですか、意見ですか、その内容をもう一度はっきり言うていただきたい。
  67. 本田弘人

    説明員本田弘人君) 先ほどの私の述べましたことで、一言補足さしていただきますが、運営審議会と申しますのは、会長、副会長、各部の部長、副部長、幹事、三十一名をもって構成する総会にかわる公式の機関でございまして、そこにかけたので、少数の非公式のものではない、法律に定められた運営審議会であるということを、補足的に申し述べます。  運営審議会から委員会にこれを移しまして、第四十五委員会で数回検討いたしたのでありますが、学術会議としてこの際申し述べることは、これは先どもちょつと申しましたように、法案を文字の上で文字通りに読みますと、この学術会議の意見が十分に反映することはできないような、できるかどうか、十分学術会議としてその意見の反映について期待したように、十分満たし得るとは考えられない。しかしながら、これは学術会議としましては、実質的にはその機能が、十分学術会議の意見が反映するように強い希望を申し述べまして、そうしてその実質運用面において調整をはかるように、ほぼ了解を得ております。
  68. 秋山長造

    秋山長造君 実質面について、運用の上でというお答えですが、運用ではなしに、やはり制度として、そういう学術会議との関係をどうするというようなことは、制度としてはやはりきちっと法文の上にきめておかなければいかぬのではないか。  大体、今までの政府と学術会議との連絡の窓口というものは、先ほど申しましたように、今度廃止されようとしている科学技術審議会が窓口になっている。ところが、これは今度廃止されるわけですね。そして、なるほど午前中に大臣がお答えになったように、この第二条の四号のところに、学術会議への諮問、またその答申勧告云々という文言を入れてある。入れてあるけれども、これは科学技術行政のうち、特に総合調整の必要があると総理大臣が認めた場合だけなんですね。ところが、政府と学術会議との関係というのは、ただ総合調整の必要があるという、この場合に限らぬわけでしょう。いろんな問題があるわけですね。幅広いわけです。そういう面の窓口というのは、一体今後はどこが勤めるのか。こういうことはどこにもなくなってしまうじゃないですか。そういうことについて、学術会議の方はもう少し具体的に、この答申なり意見の印し出ということはなさらなかったのかどうか。
  69. 本田弘人

    説明員本田弘人君) 先ほど申しましたように、その点につきましてははっきりと遺憾の意を表したのでありまして、そして、第二条の第一項第四号だけでは不十分であって、遺憾の意を述べたのでありまして、そして従来の科学技術審議会に何かかわるような、そういうような、あるいはその機能を満たし得るような運営の方法を考えてもらいたい、あるいは連絡の方法を考えてもらいたいということを、科学技術庁の方にも申し出まして、その点について大体の了解、相互の了解を得た次第であります。御指摘の通り、法文の中にはっきりそのことは出ていないことは、学術会議としても遺憾である、これははっきり述べております。
  70. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 今の件に関しまして補足さしていただきたいのでございますが、学術会議の問題につきましては、会議の方にうたわれております以外には、当庁といたしましては、設置法の第七条に規定されておるのでございますが、「日本学術会議への諮問及び日本学術会議答申又は勧告に関すること。」と、この点の事務に関しましては、科学技術庁任務といたしまして設置法に規定されておるわけでございますので、従いまして、科学技術会議の方で取り上げられないような問題でありまして、しかも学術会議からのいろいろの御要望がございますれば、科学技術庁が責任を持ちまして各省と協議をしまして、その実現に当りたい、というふうに考えておる次第でございます。従いまして、私どもとしましては、当庁は関係省庁と連絡調整任務もございますもんですから、そういった問題ごとに各省の人を集めまして、その実現方につきまして協議をいたしまして、各省とともにそれを実行するように努力したいと考えておる次第でございます。
  71. 秋山長造

    秋山長造君 第七条ですか、第七条の運用でやっていくのだということですね。そしてその運用については、各省庁の間で設けられる連絡協議会ですか、そこでやるのだということですが、しかし、その連絡協議会の設置要綱を拝見しますと、大学研究だとか、あるいは原子力関係というようなものは除くというようなことになっているのですね。そういたしますとね、この学術会議はその性質上、大学のこの研究だとか、あるいは原子力関係なんかというものが、むしろ自然科学部門では中心になるのじゃないかと思う。ところが、そういうものについては、権限を持たない各省庁の間で作られる連絡協議会というもので窓口をやっていくということに、どうも食い違いがありはしませんか。
  72. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) ただいまお話のありました科学技術関係の連絡調整協議会と申しますか、実は私どもそういったいわゆる審議会、協議会に類するようなものとは考えておりませんので、まあ連絡会議程度のものでございますので、各省庁と、これは各行政機関の関係職員をもって構成いたしまする打合会でございますが、そこにおきまして、先ほど申し上げたようなことをいたしたいと思っております。  ただ、この科学技術会議任務と申しますか、日本学術会議任務と申しますか、その設置法の第七条の規定にございますのは、科学技術庁の企画調整局の任務でございますので、確かにお話のように、原子力の問題、あるいは大学に関する問題につきましては、企画調整局自体としては権限がございませんものですから、そういった原子力の問題に関しましては直接原子力局において処理をいたしたい。それから大学に関する問題でございまして、ほかの省庁に関係のないものでございますれば、これは直接文部省の方にお申し出願って、そちらの力で処理していただくということになるかと思います。  でございますから、もう一度申し上げますと、いわば窓口が三つになるということになるのでございますが、つまり原子力の問題、それから大学研究に関する問題、それからその他の科学技術問題ということになるかと存じます、ただ、原子力局と企画調整局とは、同じ正力長官のもとにございますものですから、その間の連絡は十分はかっていきたい。なお、大学研究に関する問題にありましても、当然文部省関係職員もわれわれの方の打合会に来てもらいますものですから、その間にそごのないように十分打ち合せはいたしたいと思っております。
  73. 秋山長造

    秋山長造君 まあ、それにしても、今度の科学技術会議を設ける趣旨は、あちこちに分散しておるのを一本にまとめて強力にやらなければいかぬと、こういうような趣旨で作られたように大臣から拝聴したわけですが、ところが、今度は学術会議との関係になると、科学技術の問題についても窓口が幾つかに分れるというような状態でそのまま残ることと、それからもう一つは、学術会議諮問したり、あるいは答申が出たり意見が出たりした場合に、従来はなるほど事務はこれは企画調整局でやられたでしょう。やられたでしょうが、その問題の扱いについては、この科学技術審議会という一つの民主的な機関を通じてやられたわけですね。ところが、今度はその面に関する限りは、そういうものは一切通じないで、直ちにあなたの手元で、学術会議に何を諮問すべきか、答申をどう扱うべきか、学術会議から出てきた意見をどうすべきかということは、あなたのところで、科学技術庁の事務当局がどんどん勝手に処理をされるということになることは間違いないと思うのですがね。その点はどうですか。
  74. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) この科学技術会議で扱いまする問題につきましては、この第三条に規定がございますですが、ただ、この規定の読み方といたしましても、たとえば総合政策といいましても、かなり解釈によりまして狭くも感じ、あるいはかなり広い解釈もできるわけだと思いますが、私どもの方といたしましては、これは学術会議の方ともお話し合いしておるのでございますが、この会議でもって扱います問題というのは、学術会議の意見を十分尊重いたしまして、この会話においてはかっていきたい。ただ、法文上どうしてもこれはかけられないというものは、もちろんやむを得ないのでございますけれども、できるだけ学術会議の御希望を尊重いたしまして、この科学技術会議によって審議をしていただく。従いまして、残りました事務的な問題は科学技術庁企画調整局の任務と、あるいは原子力局の任務になるかと存じますが、こういう点に関しましては、事務的の問題でございますですから、比較的各省の連絡官との話し合いによって処理できるのではないかというふうに考えておるのでございます。
  75. 秋山長造

    秋山長造君 局長はそうおっしゃると、この第二条の四号は、これはもう少し何か文章の書き方があるのじゃないでしょうか。これだけ見ますと、一方に「総合調整を行う必要があると認めたときは、」云々と、これは非常に限定されているわけですね。何が総合調整が必要かということも問題ですが、非常に限定されているわけです。それからまた、この科学技術会議の人的構成等を見ましても、これはよほど大筋な問題で、何か重要な問題というようなものに限定されるんじゃないかと思うのですね。だから、今おっしゃるように、大体論として、日本学術会議諮問事項、あるいは答申なり意見なりの扱いというようなものは、今度のこの新設の科学技術会議でやってもらって、そして事務的なことだけあなたのところでやられるのだという建前なら、こういう書き方ではその建前にはぴったり合わないじゃないか。これは非常に狭いですよ。しかも、特に総理大臣が必要と認めた場合のみでしょう。だから、常識的には、この日本学術会議に当然かけて、大いに専門学者の間で大衆討議してもらわなければならぬような問題であっても、総理大臣の主観で、学者にそんなことを相談かければ、わいわい言って結論がなかなか出ないから、さっさとやってしまおうということならば、それなら諮問事項からはずしてしまえばいい。だから、そこらに非常に学術会議政府との関係というものが、何というか、今までほど民主的あるいは公開的でなくて、これはもうよくよくのことは学術会議にかけるが、大体のことはあなたの手元で、事務当局で適当に処理してしまう、都合の悪いことは握りつぶしてしまう、こういうことに私はなるおそれが多分にあると思うのですが、その点、いかがですか。
  76. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 私どもの運営といたしましては、今先生がおっしゃいましたとは逆に、できるだけこの会議にかけまして、御討議を願いたいつもりでおります。そうして学術会議から御告がございます件も、一省だけに関係のあるというものは、従来の経験からいいましても非常に少いのでございまして、たとえば一つの問題、一つの省に関係ありましても、これが予算の問題になりますと大蔵省との関連が出て参るということで、大部分の勧告の問題は第二条の総号調整の範囲に入るように考えております。私どもとしましては、そういうことで、ほとんど従来の勧告内容を見ましても、この第二条によりまして、この会議審議していただけるのではないかというふうに期待しているわけでございます。  なお、総理大臣が必要ありと認めるときはかけるのだ、必要を認めないときにはそうしないのだということが、法文上解釈できますけれども、私どもとしては、できるだけ総理大臣がこの会議を利用していただきますように、総理大臣を補佐したいと思っておるわけでございます。
  77. 秋山長造

    秋山長造君 あなた方の方でそれほど学術会議というものを尊重し、そしておよそ科学技術の問題についてのほとんどの問題を学術会議に、新しい制度になってもかけるのだ、こういう善点があるならば、これはただそれを運用の上で生かすということだけでなしに――運用の上に生かすということだけなら、局長のあなたがそう思っておられても、岸総理大臣はどう考えるかわからない。だから、あなたが一々総理大臣に、ああしなさい、こうしなさいと言えるわけのものじゃない。だから、当然制度の建前としても、学術会議に大体こういう問題は諮問しなければならぬという義務づけというものが、私はあってしかるべきだと思う。学術会誌法の第四条に、「政府は、左の事項について、日本学術会議諮問することができる。」と書いて、あと四項目ばかりその具体的な事項が書いてありますが、これなんかどうですか。学術会議諮問することができるというようなあいまいなことでなしに、諮問しなければならないとはっきり義務づけたらどうですか。そういうところまであなた方の方で徹底しておやりになるなら、それはもう、正力国務大臣が常に学術会議を尊重するとおっしゃっておるし、あなたの、これはもうほとんど学術会議に全部かけるということとも一到してくると思う。こっちの方にも、総理大臣が必要と認めた場合に限定されておる。その必要と認めるか認めぬかということは、総理大臣の主観にまかされておる。それからまた、一方、学術会議法の方にも「学術会議諮問することができる。」と書いてある。だから、政府は都合で必要な場合には諮問することができるというのです。しなきゃならぬという義務づけは何もないわけです。だから、それを義務づけしたらどうですか。そうしたら私の疑問も解けるのですが、その御意見ありませんか。
  78. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 学術会議法律に関しましては、私ども法律のできましたいきさつ存じませんけれども、法律上はできるということが書いてございますけれども気持としましては、重要な問題は学術会議にお諮りしまして……。要するに、学術会議と申しますのは、御承知のように、わが国における科学者の代表機関でございますので、科学技術行政を遂行する上におきましては、どうしても御意見を尊重しなければならぬという基本的な考え方は、私ども十分考えておる次第でございまして、法文上はできるというふうに書いてありますが、できるだけそれはやっていくという気持でございます。  それからまた、こちらの方の、先ほどの御質問にまたお答えするわけでございますが、総理大臣が必要と認める場合……。そうでない場合はやらないで済むのじゃないかというお話でございますが、私ども一局長でございますけれども、それを補佐されまする長官もそのお気持でございますから、おそらく運用の面においてはそういう御心配の点は十分排除できるというふうに考えておる次第でございます。
  79. 秋山長造

    秋山長造君 この点は、やはり気持は、法律にはできると書いてあるけれども、気持の上ではしなければならぬという気持だとおっしゃるのですが、気持がそうなら、法律もなぜそうできないのか。そういうところに、私は疑問が残る。気持と法律と逆なことをあえて作らぬでも、これは気持の通り法律にうたったらいいと思う。  それと、学術会議にしても、科学技術審議会にしても、今度の問題について一応政府から諮問があったという以上は、ただ運用の上でどうとかこうとかいうことでなしに、もう少し具体的に、どこをどういうふうにしてもらいたいということを、不満があり意見があるなら、もっと具体的に政府に申し出らるべきだと私は思う。こんな条文は、はなはだ不本意で遺憾に思うけれども、あとのことは運用で適当にお願いしますというような、そんないいかげんなことしかできぬような学術会議だったら、私は廃止したらいいと思う、極論ですけれども。やはり学術会議は学問の研究とか、そういうものを守ろうという神聖な使命を与えられておる機関ですからね、もう少しこういう具体的な問題については具体的に、きっぱりとしたものを表明してもらわなければ困る。
  80. 藤田進

    委員長藤田進君) 関連ですか。
  81. 松永忠二

    松永忠二君 関連して。
  82. 藤田進

    委員長藤田進君) じゃ答弁の前に質疑をお願いしましょう。
  83. 松永忠二

    松永忠二君 今、最後に秋山委員からお話がありましたので、御答弁があると思う。私もやはり、学術会議の方から具体的に、この法案もごらんになっておられるので、ここをこういうふうにしていきたい、こういうふうにすることが私たちの希望であるということを、具体的にやはりお話をしていただきたいわけです。また、そういう御討議をなさっておると思うのでありますが、率直な意見として、これは具体的に一つお話をいただきたいと思うのです。
  84. 本田弘人

    説明員本田弘人君) 学術会議に先ほど申しました諮問がありました当時、その科学技術会議政府提案の法案がまだ十分に固まる前でありまして、そうしてその具体的な内容、詳細なことについて、十分な内容は、いろいろ立案の過程において幾らかの変遷がございましたので、学術会議委員会といたしましても、その詳細な内容を把握することはできないので、一般的な希望意見を申し述べただけであります。それで、あとの運営の面につきましては、ただ漫然と運営についてよろしくお願いするということでなくして、かなり突っ込んで、これはまあ非公式ながら文書をもって今後申し入れして、たとえば科学技術会議の議事とすべきかいなかという問題についても、学術会議の意向を十分しんしゃくするとか、あるいはまた、従来の科学技術審議会審議事項の中で科学技術会議審議の対象とならない問題については、相互に連絡会議を開くとか、あるいはまた必要に応じて、専門の学者を必要とする場合には、学術会議の会員または学識経験者をそこに出席せしむるとか、あるいはまた常時必要である場合においては、そういう学術会議の会員等について不断に連絡するような仕組みを考えるというようなことの了解事項を、そういう了解を得ておるわけであります。
  85. 秋山長造

    秋山長造君 会議にこの臨時学術会議の代表を参加させるというような了解事項というものは、これはあるのですか。
  86. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 実は、今申し上げましたように、学術会議事項につきまして、会議の問題とならない事務的な問題がございました場合には、先ほど申し上げましたように、関係省の関係官を集めまして、科学技術庁が主催いたしまして、それで学術会議勧告政府部内でどうやって生かすかというとこを、実現するかということについて相談するわけであります。しかしながら、その場合に、学術会議としましては、事務局の職員をおいで願うことになっておりますけれども、それでは十分説明がつかない、もう少し会議のなまの意見を聞かしたいという学術会議の御希望がございますれば、その会議においで願って御意見を拝聴していただくというふうに考えておる次第でございます。
  87. 秋山長造

    秋山長造君 それは、政府が部内の方で、事務上の便宜から設けられる科学技術連絡協議会という名前のものに呼ぶということにすぎないのであって、今度設けられる科学技術会議に呼ぶわけじゃない。それに呼ぶのは、臨時に出られるというのは関係国務大臣だけでしょう。学術会議の代表をここへ呼ぶというようなことをどこへも書いてないし、そんな了解事項なんというものはないわけでしょう。どうですか。
  88. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 委員を、学識経験のある者を四人任命することについては、学術会議の意見を十分聞くことにしております。
  89. 秋山長造

    秋山長造君 それは、委員というのは「科学技術に関してすぐれた識見を有する者四人」の人選について、学術会議に諮られるという意味ですか。
  90. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 学術会議に、そのつもりでおります。意見を十分聞く、こういうことであります。
  91. 秋山長造

    秋山長造君 それでその場合には、学術会議から、四人ともうちから出してくれと言われたら、そのまま採用されるおつもりですか。
  92. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) それはよく考えることでありまして、必ずしも向うから言われた人ことごとくというわけじゃございません。それじゃ、学術会議の人間を任命することになってしまいますから、そういうことに事実上なってしまいますから……。ただ、学術会議の意見を聞いて善処したい、こういうことです。
  93. 秋山長造

    秋山長造君 この点は今後の問題ですけれども、これは実は数年前に原子力委員会を作るときも、原子力委員の人選について、やはり今私がお尋ねすると同じような問題が、ずいぶん各委員から出たことを今思い出すのですけれども、四人の専門家の人選について、学術会議の意見を十分聞くと同時に、しかし、まあ、いろいろな方面の意見を聞かれるわけでしょうから、だから、学術会議の中から何人出されるということに直ちにならぬと思いますが、大体の構想としては、あなたの頭の中にすでにあるのじゃないかと思うのです、その点、この機会にお漏らしいただきたいと思います。
  94. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 委員の任命については、まだ具体的に考えておりません。これは、この法律ができた上で、具体的に考えたい、こう思っております。
  95. 秋山長造

    秋山長造君 まあ、とにかく学術会議の意見は、各方面の意見を聞く中でも特に最優先的にお聞きになる、こういうように了解してよろしゅうございますか、
  96. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 最優先的と言われますと、ちょっとまたいろいろ……。大いに尊重いたします。
  97. 秋山長造

    秋山長造君 それから、続けまして……。正力国務大臣が原子力委員長を兼ねておられるから、なおさらこれはお尋ねするわけですが、今度の科学技術会議原子力委員会との関係は一体どういうことになるでしょうか。まあ、今われわれ常識的に考えた場合、こういう科学技術会議というようなものが設けられれば、これは原子力問題というのが、もうその中でも非常に大きな比重を占めると思う、常識的に。その場合に、原子力の問題については、これはもう法律に書いてある通り、その研究、開発、利用、すべての事項については、これは原子力委員会が最高のこれは決定機関ですね、そうして、その決定は、これは総理大臣が尊重しなければならぬという尊重の義務まで法律で負わせてあるわけですね。ところが、この科学技術会議の方でも、やはりその答申総理大臣は尊重しなければならぬ、こうなっておる。科学技術会議原子力委員会とがどういう関係に立つのか。それから、また、どっちも尊重しなければならぬという義務を、総理大臣は一人で背負っておるわけですが、一体、両方の決定が違った場合にどういうことになるのか。まあ、それらの点も含めて御答弁願いたい。
  98. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 原子力委員会は、とにかく原子力固有の問題については、原子力委員会の意見をむろん尊重します。ただ、ほかの省との総合調整のような場合、そういうときには科学技術会議に行く、こういうことであります。
  99. 秋山長造

    秋山長造君 総合調整とおっしゃるけれども、それは原子力委員会がそもそも、原子力問題については、これはもうこの委員会総合調整をやっていく、各省庁の間を総合調整して、原子力委員会がやっていく、そういうことのために原子力委員会というものは設けられた。それから、この涼子力そのものは、これは原子力委員会でやる。けれども、原子力をどうするかというような政策的な問題は、この科学技術会議でやるというような御答弁のように承わったのですが、これもこの原子力委員会設置法を読んでみますと、そういうことじゃないので、およそ日本の国における原子力問題はすべて原子力委員会総合的にやっていく、企画立案まですべてやっていく、こういうことになっておる、また、あの当時あなたからもそういう御説明があった、だから、今の何か原子力委員会というものは、文部省とか防衛庁とかいうようなものと肩を並べた、きわめて狭い権限しか持っていないような御説明ですけれども、そうじゃないでしょう。原子力委員会というものは総合調整、原子力問題についての総合調整という目的で設けられたものです。だから、その総合調整で設けられたもののほかに、また総合調整機関が別にできるということになると、原子力委員会との、どう言いますか、権限なり何なりの関係というものが、きわめてごっちゃになると思うのですが……。
  100. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 原子力委員会との問題に関しましては、大臣が申し上げた通りでございますが、原子力の固有の問題に関しては、原子力委員会の意見を尊重することは当然のことでございます。ただ、原子力の問題にいたしましても、他の各般の別の分野の科学技術、それとの関連か非常にあるものでございますから、その原子力と他の科学技術との間の振興についてのたとえば調整を要するというような問題が起きるわけでございますので、そういったような問題は原子力委員会自体の審議事項でございませんで、そういったような場合が起きましたようなときに、この科学技術会議調整を行う、こういうことになっております。
  101. 秋山長造

    秋山長造君 その点は、この原子力委員会設置法の第四条には、原子力委員会が「関係行政機関の長に勧告することができる。」という勧告権を持っておる。それからさらに、第五条には「関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。」、こういうような規定によって十分これは救われると思うのですがね。これでできぬことがありますか。これで、こういう条文があって、こういう権限が与えられておるのにかかわらず、なおかつ、それで手が届かない、だから、科学技術会議でやってもらわなければどうしても解決しない問題がありますか。あれば、具体的にあげてみて下さい。
  102. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 今後の問題でございますので、今具体例があるわけでございませんが、想像されますことを、まあ私どもが考えております一例を申し上げてみますと、たとえば原子力関係におきまして、原子力の今後の発展におきまして、たとえば大電力の研究というものが別に必要である。たとえば核融合のような問題になりますと、非常に大きな電力に関する研究がございます。それから、これは原子力委員会の方からいいましても、そういう技術を大いに発展させたいという御希望があると思いますが、原子力委員会としてはその大電力を発生するような研究の問題、これは原子力と直接の関係はございません。間接にはございますけれども、直接の関係のないような技術を、一方において大いに促進してもらいたいという御要望がありました場合に、そういった施策を原子力委員会が直接調整し、意見を出すというのは適当でないであろう、むしろそういったような問題は、原子力委員会の意見を十分しんしゃくいたしまして、その上に立ちまして、原子力委員会の要望も十分考え、さらにまた、電力関係研究の問題と取り組み、全体の関係調整をここでやっていかなければならないというようなことが起るのではなかろうかということを想像いたしておるのであります。
  103. 秋山長造

    秋山長造君 そういう問題こそ、経済企画庁なり、あるいは科学技術庁がやればいいことで、そういうことをやるために経済企画庁なり科学技術庁というものが設置されておるのですからね。だから、くどいようでありますけれども、次から次に必要だといっては設けて、設けておいては、同じその設けた理由をまた使って新しいものを設けて、その次にまた新しいものを設けていく。こんなことをやるようでは、機構の簡素化もくそもない。全くやっておることは逆です。  それから、その次は、結局、今までの大臣なり、局長なりの話を聞いて参りまして、まあ結論は私は大体二つぐらいになると思う。それで、その一つは、やはりこういうものを作って、要するに、それを隠れみのにして、そうして科学技術庁の予算をよけいに取ろうというのがねらいの一つ。それからもう一つは、今までの原子力委員会でも、科学技術庁でも、すべて大学研究ということには手が届かなかった。それを今度のこれを作ることによって、これまで握ってしまおう。こういう私は二つのねらいだとほぼ想像するのです。  第一の、予算を取るということですが、これは予算をお取りになるのは、幾らでもお取りになったらいいと思うのですが、しかし、ここに文部大臣もおられますけれども、政府の統一した方針として、科学技術の振興、特にその前提として科学技術教育の振興、こういう問題を昨年来大きく取り上げられてきたにもかかわらず、今度の閣議でも何回も確認されてきたこの方針が、今度の三十三年度の予算にはほとんど生かされていない。これは言い過ぎかもしれぬけれども、ほとんど生かされていない。文部大臣はだいぶ努力をされたということをずいぶんおっしゃっておるのですけれども、努力をされた点は私どもは多としますけれども、結論的には、正力国務大臣の方がうんとよけいに取っている、科学技術の予算は……。  たとえば、ここに具体的な資料がある。今度東京大学の理工学研究所を、科学技術教育振興の波に乗って、航空研究所に切りかえたわけです。ところが、東大の航空研究所の予算は、研究所の定員は二百十七人で、ところが、予算は一億五千二百万円。ところが、正力さんのやっておられる航空技術研究所の方の人数は、うんと少いのです。人数は、東大の航空研究所の二百十七人に較べまして、百十四人、約半分です。そうして予算は十一億二千五百六十二万円取っておられる。十倍取っておられるんですよ。それで人員は半分、予算は十倍取っておられるが、東大の航空研究所はあなたの方の十分の一です、予算が。そうして人員は倍いるんですよ。こんなことで、大学研究といったところで、かけ声ばかり幾らかけて、むちを当てても、これではもう実績の上るはずがないんです。  それからまた、大学研究費でもそうですよ。科学技術庁関係科学技術費というのは相当、何十億という予算が確保されておりますが、一番肝心な大学研究費なんかというのは、実験講座、つまり科学技術関係の実験講座について、一割六分四厘、わずかに研究費がふえておるわけなんです。それから文科系の非実験講座については、わずかに二分、二%ふえているだけなんですよ。二%というものは、今の物価の動きとにらみ合せて考えた場合に、ちっともふえたことになっておらぬ。  科学技術教育面の一番基礎的な研究の面で、こういうような、きわめてこれは冷淡なことをやっておって、そうして科学技術庁長官の立場においてだけ、まずその方に予算を一手に集中していこうというねらいは、私はあまりにも横暴だと思うんです。これでは、もう文部省なんかの立つ瀬はないですよ、実際。文部大臣と、正力国務大臣と、私はこのお三人の率直な感想を聞いてみたいと思う。
  104. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) ただいまのお話を聞きまして、私も実は大学研究費が足らぬと思っております。科学技術の振興をするについては、どうしても、少くとも大学研究費はふやさなくちゃならぬと思います。これについては、文部大臣はずいぶん骨を折っております。それこそ、私はこの科学技術会議においてやりたいと。だから、私は科学技術の振興というものは、単に科学技術庁の問題ではないから、文部省とほんとうに提携してやらなくちゃならぬ。そうしてまた、予算もうんとほしいと思います。決して私どもは自分の、科学技術庁の予算をとるために、そんなけちな考えは持っておりません。国家的に考えております。それはほんとうです。
  105. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) ただいま航空技術研究所のことに関しましてお話がございましたので、一言御説明申し上げたいのでございますが、航空技術研究につきましては、これは非常な多額の経費を要しまする施設を必要といたします。たとえば遷音速風洞というようなものをとりましても、一つの施設に約二十億程度のものがかかるわけであります。こういったような研究施設は、国としまして、そうたくさん持つ必要は現在のところございません。しかしながら、また大いに必要といたします。それは今、御指摘がありましたような大学関係研究としても必要でございますし、あるいは通産省、あるいは運輸省、あるいは防衛庁等におきまして、それぞれそういった研究施設を必要といたす次第でございます。従いまして、当庁といたしましても、そういった調整観点から、各省が別々に持つよりは、国家的に一つのものにしまして、りっぱな施設を作って、それを各省の共有にする、その方が国としては好ましい方針であるということで、この航空技術研究所を設置いたしておりますので、従いまして、当庁の航空技術研究所は、どういたしましても予算的に非常に大きいものでございますが、しかし、これは単に当庁の研究所が使うだけではありません。各省庁あるいは大学において御利用願うのが建前でございます。  それから、なお、人員が少いというお話でございますが、もちろんそうでありまして、ただいまは研究途上でございます。これは六カ年計画によるのでございまして、目下は施設に重点を置いておりますので、研究者はそういないという状況でございます。
  106. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました文部省の予算は、思い通りの予算をもらうごときがでないで、まことに残念に存じておりますけれども、しかし、三十三年度の予算として盛られたものは、これは経常費なんです。でありますから、設備や何かはすでに、古いとはいいながら、できておるやつを利用して、さらにまたこれを改善していく必要もあるのでありますけれども、それは三十三年度には思い通りの、要求するだけが間に合わなかった、こういうのが現実の姿であります。しかし、今科学技術庁からもお話しになりました通り、その設備を学徒が研究のために利用することができるということは、私もやはり一りの望みを持ってさしつかえないのじゃないかというふうに考えております。
  107. 秋山長造

    秋山長造君 もう私もやめますが、最後にお尋ねしたいことは、けさほど今度の科学技術会議を作られる理由を御説明になったときに、やはり今のままでは大学研究を握ることができぬから、今度の会議でそれを握るのだというお話があったのです。で、この問題は、これはもう予算問題よりも何よりも、一番重大な問題だと思うのですが、原子力委員会法でも、原子力行政の中で、ただ大学における教授、研究の面だけは除くのだということを、法律の条文の中にもただし書きがついておるわけなんです。ところが、そういう線からさらに飛躍をして、そうして今度はもう大学研究の自由もくそもないのだという形になってくると思うのです。これは今はならぬ、そうはせぬとおっしゃっても、する、せぬというのは、これは個人の心がまえの問題ですから、だから、しようということになれば、いつでもできるということになってくるのですが、この問題について一体文部大臣はどういうようにお考えになって賛成なさっておるのか、また当事者の正力国務大臣はどういうようにお考えになっておるのか、お尋ねします。
  108. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました大学の学術研究の制度とか内容とかは、これは御承知通り、教育基本法でもう独立しております。従って、これは自主性を持っておりまして、やはりそれが大学にまかせて研究してもらうよりほか手はございません。従って、大学研究を握るとか何とか、まあ握るという言葉は解釈にもよりましょうが、そういうことはこれはできるはずがないのです。ただ、研究は、学術的研究の見地に立っては、研究大学の自由な創意にまかせなければいけない。従って、これはもう申すまでもなく大学としては自由な立場においてその内容、その研究、それは大学が自立して自主的にやっていく、こういうことでございますから、これは今の科学技術会議あたりができましても、それは別段何も大学内容大学研究を左右する力は持たぬというふうに私は考えております。
  109. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 先ほども私は、決して大学研究を握るとか、そういう大それた考えは持っておりません。言うまでもなく、大学研究も自由です。これはもうさっき文部大臣が言う通り、ちゃんと法律にきまっておる。これを侵すものではありません。ただ、研究費であるとか、あるいはそういうことについて、文部大臣とよく相談をしたい、こう思うだけでありまして、自由の問題は全然触れておりません。
  110. 秋山長造

    秋山長造君 文部大臣正力国務大臣も、そういうつもりはないとおっしゃるけれども、私が言っておる点は、あなた方が個人的にどう思われるということじゃなしに、こういう制度の、この法律の条文のままでは保証はないのです。ちっとも侵さないという保証はないのです。それで、大学研究費等の問題について文部大臣とよく相談したいということなら、閣議で相談なさってもいいし、個人的に相談なさってもいいわけです。そういうことのために、わざわざこういう大がかりなものを設けられるという理由は、なかなか了解ができない。  それから、第一、正力さんがやっておられる原子力委員会にしても、なるほどあなたの原子力委員会では、大学研究にまでは絶対に立ち入らないということは法律にちゃんと書いてある。ところが、今度できるこの科学技術会議というのは、原子力委員会よりもっとレベルの高い機関ですから、だから、あなたの方では大学の方はこれはもう別だと、こういうことになっておっても、今後できるものは大学でも全部包括するのだということになれば、原子力の問題についても、これはもうこの原子力委員会法でいけない場合は、今度の科学技術会議法律でいけば幾らも手が伸ばせるじゃないか、こうなってくるので、こういう大学を除外した条文などというものは、有名無実になってきはしないですか。その点どうですか。
  111. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 決して有名無実にはなりません。その御心配は要りません。
  112. 秋山長造

    秋山長造君 その心配の要らないという保証を、制度の上に、法律の条文の上にはっきりさせて下されば、私はこんなことを聞く必要はない。何も保証はないじゃないですか。
  113. 松永東

    国務大臣松永東君) 秋山さん、何ですよ、今法律を開いて見たが、文部大臣もこれを指示したりなんかする権限はない。それは文部省設置法第五条の十八に「大学研究機関その他の教育、学術又は文化に関する機関に対し、その運営に関して指導と助言を与える」と、文部大臣は指導と助言を与えると。指示ではない。さらに、二十三条には、「大学及び研究機関の研究活動について連絡し、及び援助する」と。こういうふうに、文部大臣自体においても、大学に対しては指示権は持っておらない。大学は、自由な研究、その大学内容については、自主権を持っておる、こういうふうにお認めなさって誤まりないと思います。私はそういうふうに考えております。
  114. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) ただいま文部大臣のお話しの通りでありまして、この科学技術会議審議いたしますことは、関係行政機関の施策の総合調整であって、従って、大学研究が入るといたしましても、大学研究自体を問題にするのではなくて、大学研究のいわゆる行政機関の施策、つまり文部省の行政についての総合調整を行うということであります。つまり、ほかの省との関係において総合調整をやる場合がございますれば、この会議審議していただく。  今お話がありましたような、そういったようなことは、あえてこういった会議でなくてもいいのじゃないかという御意見がありますが、私どもは従来科学技術庁において、研究の振興のためには、やはり研究者の給与、待遇というものも非常に大きな問題であろうということで、実はこれに関して各省といろいろ相談して、どういう給与体制をとるべきかということを協議しておるわけでございます。しかしながら、そういった審議をいたします際に、やはり国の研究ということから考えると、大学研究者というのは非常に大きな分野であるので、そういった方々の給与のバランスも考えながらやっていく必要がある。そういうことになると、当然文部省の行なっておる大学関係給与の問題、それと一緒に調整を行いながら、施策を進めていくということが適当ではないだろうか。従って、この会議においては、おそらくそういう問題も一つの大きな問題として審議さるべきではないだろうかいというふうに考えておる次第であります。
  115. 秋山長造

    秋山長造君 給与、待遇というようなことが、大学関係については中心になってくるというお話ですが、こういう問題こそ、これは文部省文部省の責任においてやられることであって、そういうことのためにこの科学技術会議というようなものを設けるのも、これはまことにおかしなものだと思う。そんなことを言うならば、各行の関係職員給与なり待遇なりを再検討をし改善するために、みなそれぞれのものを、何とか会議、かんとか会議というものを設けなければいかぬということになってくる。もし科学技術の振興ということを前提として、研究者の給与、待遇というようなことにもっと力を入れなければいかぬ、またそれを入れようという熱意があるならば、これはもうすでにできておらなければならぬと思います。これはもう研究費は少い。海賊版なんかというものが今非常に問題になっておりますが、海賊版なんかが横行するのも、その点なんです。今日までのこの歴代の政府、特にこの文部省なんかの責任も、私は半分あると思う。  大学研究者の給与なり待遇なりというものは、昔に比べて非常に悪いのですね、これはもう。参考のために申し上げますが、明治三十年の当時の大学教授の俸給というものを、今の物価で換算いたしますと、最低七万円、月ですよ。それから、最高は十六万円になるのですね。ところが、現状は最低三万円から最高六万円ですね。だから、明治三十年当時と今と比べると、非常に研究者、大学教授なんかの待遇は悪いということは、はっきりしているのです。それから昭和六年当時を換算いたしますと、最低六万一千二百円、最高二十一万一千五百円になるのです。大学教授の俸給が、さっきも言いましたように、現在三万円から六万円の間を上下しておる。だから、こういう面からまずこれは改めてかからなければ、幾らこの何ですよ、上の方だけでこの会議を何人かで作って、そうして号令をかけるなんといったら、科学技術というものは全くさか立ちしてしまうと思う。そういう点についてもう少し誠意があるならば、何もこういう会議を作らにゃできぬという問題じゃない。文部大臣の方は、これはもう繰り返し繰り返しそういう点を強調されて、閣議の中でも奮闘されておるはずなんです。正力国務大臣は、そういう面について、これは今後会議を作ったらやるというのじゃないのですよ。過去においてすでに科学技術庁長官として、そういう面に対して強力な御協力ができたのかどうか。
  116. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 私は、この前科学技術庁長官になったときも、文部大臣によく話しました。それは、どうしても科学技術者は養成しなければならぬ。養成するについては待遇の改善だというお話を、私はこれは科学技術庁長官としてよりも、むしろ国務大臣としてしたのであります。今度科学技術会議を作るのも、そういうような点に重みをつけなければならぬ。文部大臣だけではいかぬので、この会議できめた方がそれを進める上においていい、こう考えております。
  117. 大和与一

    大和与一君 関連して。文部大臣にお尋ねしますが、先ほどお話しがあった指導助言ということですね、これはもちろん強制力がないわけです。それなのに、文部省が通達とか指針なんかを出す、そういう場合に、非常にうまくいく場合とうまくいかぬ場合がある。だから、指導助言というのはその名前の通りであって、相手方がそれを聞かなくても、実行しなくても、別に差しつかえないのだ、こういうふうに理解しておりますが、よろしゅうございますか。
  118. 松永東

    国務大臣松永東君) お説の通りであります。
  119. 秋山長造

    秋山長造君 先ほど、今の文部大臣のお答えで、大学の自治というものは文部省設置法でも保障されているのだという御説明があったのですが、正力国務大臣にお尋ねしますが、この提案説明の中にも「大学における学問研究をも含めた総合的な調整を行う」、こういう文言がある、この総合調整ということはあくまでも、予算がどうとか、給与がどうとかいうことで、文部大臣を通じてやることにとどまるのかどうかということ。それから、もう一つは、もしこの科学技術会議の行う総合調整なるものと、大学の自治なり、研究の自由、自主性というものが、抵触した場合には、これはこの科学技術会議総合調整の機能というものはそこでもうストップするのかどうか。その二点をはっきりお答え願います。
  120. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) いずれにいたしましても、大学研究の自由には干渉できません。またしもせず、できもしません。従って、科学技術会議ではそういうことはやりません。
  121. 藤田進

    委員長藤田進君) 私から補足いたしますが、実際に実施する場合には文部大臣を通じて行うのかどうか。
  122. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) むろん、文部大臣を通じます。
  123. 秋山長造

    秋山長造君 抵触した場合はどうですか。文部大臣を通じてやるのだということはわかりました。しかし、それにしても、この科学技術会議の行うこの総合調整の機能、大学の学問研究を含めての総合調整をやるということを書いてある、説明にあるのですが、だから、この総合調整をやる機能と、そうして大学の自治なり研究の自由というものとが、これは抵触しないとは限らない。抵触する面が出てくると思う。その場合には、あなたの方の調整作用というものは完全にストップをするのかどうか。
  124. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 私は当然そうあるべきものと思っております。
  125. 高田なほ子

    高田なほ子君 今の秋山さんの御質問の中で、正力国務大臣は、研究の自由は束縛しないということを言明しておられる。しかし、やはり文部省自体も今度の科学技術に対しては、特に生産技術面の指導者を養成することに大へん主力を置いておられる。生産技術面の指導者を養成することと、科学の研究ということとは、私は別個に考えていかなければならないものだと考えておるわけです。若干の関連はあるにしても、中級階級の生産技術面の指導者をどんどん育成していくということと、学問の研究ということと、若干本質的に似て非なるものがあると思う。今回のこの法案に基く科学技術会議の中では、今の御説明によりますと、研究費の面についていろいろ調整をされるということになっておるようでありますが、こうなって参りますと、時代の産業界の要請に基いて技術者を養成するということになって参りますと、この会議でもって調整される予算面というものは、おおむね産業外の要請に基く研究費の調整ということになってしまって、言うところの科学の純粋な研究どいう面には、予算の調整というものがどうも及ばないような気がするわけです。こうなって参りますと、学問の内容そのものには何ら影響がない、大学の自治は認めるというけれども、研究費の面で産業界の要請に基くところにだけ大幅に研究費は渡し、その他のものはストップしていくということになったら、当然これは大学研究の自由を束縛することに結果としてなってくる。でありますから、秋山委員がこの点を執拗に御質問になったのは、予算の面から大学研究の自由というものを束縛する危険が、この会議をこしらえたことによって起ってくるのではないか。こういうことになって参りますれば、あらためて予算の面で調整をするということは、即学問研究を予算の面から縛っていく危険性があるので、この点についてどういうふうに一体調整なさるのか。私は非常に重要な問題ではないかと思います。  国務大臣は東大の理工学科の教室などを御視察になったことがあるかどうかわかりませんが、今を時めく茅研究室のごときはまことにこれはひどいもので、私に言わせれば、これは鳥小屋みたいなものです。放射能を遮蔽するような鉛の板なんか買えないで、それでちょん切れた、そこらから拾ってきたような鉛板を使っておったり、明治何年かの正倉院の古物のような顕微鏡が使われておったり、また非常に冷たい、何ですか私は科学的なことはわかりませんけれども、非常に低温にした液化槽なども買うことができないので、魔法びんを持って東北大学にもらいにいくというような、そういうような研究が今この大学研究の実態なんです。なぜそういうところに予算の調整がされないのか、これでは学問の研究も、学問の自由というものも、私はあり得ないと思う。おそらく、国務大臣がお考えになっている研究費の調整ということは、真の科学の研究、学問の真の自由を目途としたものではなくて、産業界の要請に基く予算の調整というふうに、どうも私はとれてならない。この危険性がある。この法律の中で、私の言の危惧を押える条文というのはどこにあるのか、御説明を願いたい。
  126. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 文部大臣からお話があると思うのでございますが、産業界の要請によってその調整をするというようなことはいたしません。どうしても学問の自由です。  実は、今研究室の話が出ましたが、私もこの間見に行って驚きました。こういう研究室でずっといる。これは私ばかりでなく、文部大臣もよく感じていると思うのでございますから、あれをどうしても直さなければならぬ。こういうことを考えても、私は科学技術会議というものは必要だと思っております。
  127. 秋山長造

    秋山長造君 今の高田委員の御質問は、全く私らも同じ懸念を持つのですが、私は、高田委員さらに御質問があると思いますが、私さっきの結論をつけてもらいたいと思うのですが、もう一度重ねて御言明願いたいと思うのですが、今度のこの科学技術会議設置法においても、大学の自治、あるいは研究の自由というものに対しては、直接たると間接たるとを問わず、一切容喙しない、こういうことをはっきりと言明していただきたいと思う。直接たると間接たるとを問わず……。
  128. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) いずれ文部大臣からも話があると思いますが、それは今度の科学技術会議では、もちろん容喙いたしません。学問の自由、学問の研究の自由ということは、これは国家の大原則です。これは容喙はいたしません。
  129. 湯山勇

    湯山勇君 この法律によりますと、議長である総理大臣については、事故あるときの代理が規定してあります。この議員である文部、大蔵、経済企画庁及び科学技術庁長官については、代理の規定がありません。そこで、これは代理が認められるのか、られないのか、これが一点と、それからこの四人の大臣も果して会議のたびにそろうかそろわぬか。本日も、私は経済企画庁長官大蔵大臣も御出席願うように要求しておったのですけれども、ごらんの通り、御熱心な正力国務大臣松永文部大臣だけは御出席になりましたが、ほかの大臣は御出席ありません。そうすると、こういう大事なときにでも両大臣おいでにならないのだから、だとすれば、この四人の大臣そろって会議をするということは、まず閣議のときとか何とかでなければ不可能ではないか。代理々々で出てきたのでは、今大臣がおっしゃったような効果がちっとも出てこない、こういうことになりますので、その辺非常に心配なものですから、一つその点をお聞きしておきたいのと、  それから、今のような果して、こういう言い力は失礼ですけれども、正力国務大臣及び文部大臣科学技術については非常に御造詣が深いと思いますが、果してそういう問題を他の大臣が、どなたがなられるかわかりませんけれども、真剣に考えられるかどうかですね。結局、大蔵大臣もお出にならない、経済企画庁長も出てこない。こういうことであれば、この会議自身が何をしたかわからないということになると思いますので、その点だけ一つお伺いしておきたいと思います。
  130. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 大臣の代理は認めないことになっております。そうして、この会議においては科学技術庁長官文部大臣二人だろうとまで言われますが、私はそんなことはないと思います。出るものと思っております。
  131. 松永東

    国務大臣松永東君) 先ほど来私に残された御質問がありましたので、これに対してお答えいたします。  先ほど来、秋山委員並びに高田委員から、私の所管に属する、すなわち文部省所管に属するいろいろな学術研究についての御熱心な御主張、全く感謝にたえません、しかし、この学問の自由は、研究の自由は、これはもう憲法の上からも、その他の法律の上からもはっきりしております。これは他の方から、あるいは研究を干渉したり、自主性を阻害したりするようなことは、断じてあってはいけませんし、またさせません、しかし、いろいろ御心配下さる点は、先ほど御指摘になりました通り、大宇の教授その他の人々の研究室あたりはいかにも貧弱であり、仰せの通りであります。これにつきましては、今後自主的な研究を助長するように、一生懸命一つそうした面においても努力して参りたいと考えておる次第であります。
  132. 高田なほ子

    高田なほ子君 文部大臣のおっしゃることはわかるのですが、しかし、私たちは、かつて戦争で非常に苦い経験をなめてきて、戦争の遂行のためにプラスにならない部面の学問というものは、従来軽視されてきたと思う、そしてまた、それがだんだん過ぎて、学者等に対する弾圧が伸びてきたと思う。今回文部大臣は、科学技術の振興のために、こうした会議の中に文部大臣の大きな発言の場を求めておられるようであります。その気持はわかるとしても、国全体が、こうした中央の統制機関が拡大するような形にいくと、予算の面から非常な制肘を受けてくる場合があり得るのです。これは非常に私は危険な道ではないかというふうに考えられるのです。で、私はぜひ文部大臣にがんばってもらいたいことは、将来きっと研究の自由、こういうものが予算の面からぐんぐんと押されてくる場合がなきにしもあらずなんです、どうか一つ、あなたの御主張が、将来この法案がかりに通りました場合でも、学問の自由のために、研究の自由のために、文部大臣が先頭に立って一つがんばっていただかなければならないというふうに私は強く考えます、この法案の中には学問の研究研究の自由、学問の自由、これを保障するという一項は何にも入っていないのです。むしろ学問の自由、研究の自由に拘束を与えるような方向に行く法案でありますから、先ほどの、この条文の中のどこに学問の自由、研究の自由を保障するところがあるかということについて、正力国務大臣から御答弁がありませんでしたから、なおさらに、私は文部大臣の特段の御奮発を要望するわけであります。そういう危険はお感じになりませんか。
  133. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました通り、この科学技術会議設置法案の中には、学問の自由と研究の自由を確保するという規定はありません。ありませんけれども、これはもう規定がなくとも、自明の理でございます。それは憲法上、教育基本法、すべての法律を通じて、はっきりしておる。でありますから……。ただ、しかし、御懸念下さることはまことにありがたい。私は、今も仰せになりました学問の自由、研究の自由は、あくまでもこれは死守せんけりゃならぬというふうに考えております。
  134. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言もなければ、本案につきましては一応この程度にとどめます。   ―――――――――――――
  135. 藤田進

    委員長藤田進君) 次に、青少年問題協議会設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、本案内容について説明を求めます。
  136. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) それでは、青少年問題協議会設置法の一部を改正する法律案につきまして、概要を申し述べたいと存じます。  御承知のように、青少年問題につきましては、第五回の国会における衆議院の青少年犯罪防止に関する決議、及び参議院の青少年の不良化防止に関する決議を初めといたしまして、国会においてもいろいろと御論議いただいてきました結果、政府部内にこの青少年問題についての協議会を設置することとなりまして、以来総理府におきましてこの協議会を運営して参った次第でございます。  そうしてこの青少年問題協議会は、普通の審議会、若干異なります。普通の審議会におきましては、大体政府諮問に応じて調査審議し、必要に応じて建議をするというような内容になっておりますが、この協議会は、その名前の示すように、単に調査審議するばかりでなく、各省の仕事の連絡、調整をはかるという性質を与えられているのでございます。と申しますのは、結局、青少年問題は非常に範囲が広く、いやしくも青少年に関する教育上あるいは社会上のあらゆる問題を含んでおります。従いまして、それに関連いたします官庁も非常に多岐にわたっておりまして、まず文部省社会教育関係を初めといたしまして、学校教育、あるいはさらにスポーツとかというような面も関係して参りますし、また厚生省の児童福祉、さらに社会福祉事業という問題も関連して参ります。また、労働省の婦人少年局関係の年少労働者の労働条件、あるいは保護、職業補導という問題もございますれば、法務省における矯正関係の少年院その他の特殊な問題もございますし、さらに保護観察、さらに警察関係での少年の補導、犯罪の取締り、まあこのほか農業関係については、農林省で農村青少年の問題がございまして、農村建設青年隊というようなものを作っているような面もございます。建設関係におきましては、建設省で産業開発青年隊というようなものも設けている。まあ、そのほか各省にわたりまして問題が非常に多く、しかも、それらがそこに互いに関連しているというのが、この青少年問題の性質でございます。まあそういうわけで、この協議会は連絡、調整ということを含めて、これはむしろそういう意味では、単なる政府諮問機関という以上の働きをしてきたわけでございます。  そこで、この協議会の庶務を担当する部局といたしまして、現在総理大臣官房においてこれを行うということで、内閣審議室で行なって参った次第でございます。しかしながら、御承知のように、内閣審議室は総理府関係あるいは内閣関係のいろいろな審議会の庶務をいたしておりまして、そういう関係で、必ずしもこの問題にばかり集中することができないというような関係もございます。ことにこの青少年の問題は、現在の段階において特に力を入れ、そうして長い目で、広い、いろいろな問題を総合して、対案をいろいろ立てていかなきゃならないという切実な事情にございます。そして当初は青少年の非行防止という、もっぱら悪い者を是正するという消極的な面で働いて参ったのでございますが、そういった非行防止という面から、さらに積極的だ青少年の健全な育成、指導というような方面につきましても、この協議会がだんだん活用されてくるようになりました今日、従来のような機構の中で庶務を行うということは、どうも隔靴掻痒の感があります。  まあそういう点からして、今回この設置法を改正いたしまして、この庶務をつかさどるために、総理府の中に事務局を特別に設けるということにしたいと考えた次第でございます。  で、これと同様なものは、現在社会保障制度審議会の事務局として、やはり総理府審議室の中で独立した事務局を設けておりますが、今回もしこの法案が成立いたしますとすれば、それと同様に、社会保障制度の事務局と同様な形において、総理府内の一つの事務局として成立することに相なることかと考えておる次第でございます。  以上、本案を提案いたしました理由の概略を申し上げた次第でございます。
  137. 藤田進

    委員長藤田進君) それでは、これより質疑に入ります。  ただいま出席国務大臣政府委員は次の通りであります。文部省松永文部大臣、福田社会教育局長、法務省は横川法務政務次官、鈴本人権擁護局長農林省は本名政務次官、永野振興局長、運輸省は中村運輸大臣、細田観光局長、建設省は堀内政務次官、町田評川局長、厚生省は高田児童局長でございます。なお、厚生省は安田社会局長出席であります。  御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  138. 高田なほ子

    高田なほ子君 二十八年に青少年問題協議会が設置されてから、いろいろお配りいただきました資料を拝見いたしますと、非常にりっぱな意見書、または答申等が出されて、非常に頭の下る思いがしておるわけであります。しかし、つらつら考えてみますと、非常に広範多岐にわたる青少年の問題をめぐってのりっぱな計画や意見というものか、今日まで行政面において十分にやられてこなかった、こういうようなせっかくの意見や答申が、不発弾に終ったというその弊を取り除くために、今度事務局の組織を新たに作られるようなお話でありますが、私は、単にこの事務局を強化したという理由だけで、こういう広範多岐な問題の調整というもの、そしてまた成果を上げるということは、かなり困難な点があるのではないか。問題の本質は、今日までのせっかくのこういうよい意見、各機関の答申というものが実施されなかったということは、どこかに欠陥があったはずです、総理府としてはこの欠陥をどういうふうにつかんでいるのか、これをますお尋ねいたします。
  139. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) お説の通り、必ずしも十分その成果が上っていないという点があることを、私ども非常に申しわけなく感じておる次第でございます。しかし、これは問題の本質自体が、単に政府の行政施策というだけの問題ではなく、むしろ終戦後のいろいろな混乱した時代における国民の、まあ親を初めとする国民全体の気持、そういったものに由来している面も多いのでございまして、その意味から申し上げますれば、個々の一つ一つの施策だけではなくて、一種の国民全体としての気持を健全化していくという、あらゆる施策に関連をして参ると存じます。そういう点から申しまして、これはもちろん、青少年問題協議会の事務局を強化しただけで、これができるというようなことを考えておるものではなく、少くともそういうことによってもう一歩前進をいたしたいというような気持で、努力して参ってきた次第でございます。
  140. 高田なほ子

    高田なほ子君 ただいまの御答弁は、私に言わせれば、まことに奇怪なことであります。このような、これは関係資料ですが、この中を拝見しますと、どれも私はもう頭の下るような意見なんです。方針なんです。しかし、ほとんどこれはもう行政面でもって、その半分も実際に行われていない。なぜ行われていないかということの理由の最も大きな中に、国民にその責任を帰すような御答弁がある。戦争は、一億総ざんげといって、国民にその責任を帰したかつての政府考え方と軌を一にするものです。  私は、国民全体に青少年問題に対する関心を呼び起すということは、これは当然であり得ることだと思う。しかし、あなたが把握していられるほど、現在の全日本の母親たちは無関心ではありません。おそらく、青少年の問題で心を痛めない母親は一人もないはずです。あなたは、日本の母親に対する非常な冒涜な答えをしておられる。母は何のために生きていますか。子供の幸福をこそ願え、子供の仕合せをこそ願えば、毎日どんな苦労にだって耐え忍んできている。それほど国民の関心は、青少年に対しては大きい。命よりも大きい。それを何です、あなたは、国民全体に対して関心がない。冒涜です。私は、そうではなくて、こうした願いが行政施策の上になぜ実現されなかったかということは、今日までのいろいろな機構上の欠陥もあったのではないか。そうだとしたら、今度総理府がせっかく事務局を置かれるというのであれば、これを強化しようとなさるのであるから、今日までの施策上の欠陥というものは謙虚に反省して、御答弁が願いたかった。しかし、あなたの感覚と私の感覚がずれておったのかもしれません。もし、おっしゃりたかったら、もう一度御答弁願いたい。
  141. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) 私の申しましたことが、そういうふうに、ちょっと言い方が足りなかった点は申しわけなく存じております。国民の責めに帰するような気持は毛頭ございません。ただ、実際問題としまして非常にむずかしい問題であり、もちろん親は少年の、自分の子供たちのことを非常に心期して、あらゆる努力を惜しまないという気持で一生懸命やっておりますが、同時に、また社会のいろいろな環境というような点から申しますと、これら今までも努力して参つた問題でございますが、たとえば映画の広告の問題であるとか、あるいはその他いわゆる社会に出てくるいろいろな現象そのものが、そういった点からいって必ずしも満足いく状態になっていなかった。そうして、それに対して政府といたしまして、たとえば映画の検閲をやるとか何とかといったような、強制的な手段はもちろんできません。そういたしますと、結局、関係者の自発的な発意と申しますか、理解に基いてやっていただくということでいろいろ努力して参ったのですが、そういう点につきまして、必ずしも十分な成果を全面的に上げたとは言い切れない。もちろん、それによって相当の成果は上っておりますが、そういった点があるということを実は申し上げただけのことでございまして、決してこれは国民の罪であるとか何とかいう気持はございません。  それで、私といたしまして、政府としてももちろん、今までのやってきたことが完全であったかというと、まだまだ関心も百パーセントの点が取れるという意味じゃなく、今後もっともっと努力しなければならない。そうして努力し得るように、この審議会の事務局が働くようにしていただかなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  142. 高田なほ子

    高田なほ子君 事務局が一そうお働きになるということでありますが、この提案理由を拝見いたしますと、青少年問題協議会がこれらの連絡調整に断り、統一的方策樹立のため努力したいというふうに、協議会の主たる基本的な考え方がここに示されておるのです。ここにいうところの連絡調整というのは、具体的にどういうことなのですか。もう一つ、こういう統一方策樹立ということはどういうことなのか、この二点について。
  143. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) 統一的方策樹立と申しますのは、先ほどちょっと申し上げましたように、文部省関係で学校、学生の教育、社会教育、そういったものもやっておるわけです。厚生省の方の児童福祉関係、労働省のいろいろな働く青少年に対する指導、こういったものの間にいささかの食い違いもあってはならないと申しますか、それぞれ特殊な目的各省の仕事の上には持っておりますが、その中で、その意図するところにおいて、統一した気持でそれぞれの特色を発揮して行政を行なっていくというような意味におきまして、統一という言葉を使ったわけでございますが、そうしてこの統一的な方策樹立という点につきましては、この協議会におきまして、各方面からの御意見を統合して対策を立てるということになって参ると存じます。  また、連絡調整ということにつきましては、大体この協議会に関係省の事務次官等が委員になって出席されておるわけでございますので、その会議を通じて、各省にも統一的な方策が実施されるわけでございますが、それについてさらにこまかい点を事務局は連絡をし、そうしてその結果の報告を受けて、そうして今後さらに努力すべきことがあるかどうかというようなことをやるという意味の連絡調整をすることになると思います。
  144. 高田なほ子

    高田なほ子君 おそらく、御答弁の中にはありませんでしたが、連絡調整の主たる任務は、私は今日の青少年に対する予算の配分状態を見ると、あなたが先ほどおっしゃったように、各省にまたがっておる。さっき正力国務大臣は、各省のセクショナリズムを御答弁の中で指摘されております。予算に伴う行政措置、行政措置に予算が伴う場合、これは悪意とか好意でなくても、自分の所属する省の行政を円滑ならしめるためには、どうしても必然的に予算というものを伴ってくるわけであります。予算の争奪戦というものはなきにしもあらず、こういうような予算の面からくるところの調整ですか、こういうような問題については今日までどういうような事態を考慮して調整をしてこられたか、今後この調整をどういうような方針で行なっていくものか、今までのことと、今後のこの調整という問題について、具体的に一つ答弁していただきたい。    〔委員長退席、内閣委員会理事永岡光治君満席〕
  145. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) この青少年問題関係では、従来予算の争奪戦というものが、この協議会で直面したことは実はないのでございます。ただ、個個の施策をする場合に、たとえば急に起った問題で、さしあたり予備費が要るとか、あるいは予算を少し流用しなければならないというような問題は、それぞれの場合において起っておりますが、それにつきましては、大体この協議会においてこういう必要があるということであれば、大蔵次官を初め各関係事務次官も出ておられますので、それらの必要性というものを認識された範囲内において、その当該省の間でもって適切に措置がされてきておったような感じがいたします。従いまして、今後の問題につきましても、この問題に関しましては予算の奪い合いということは実は予定しておらないのでございます。というと、あまりにも理想的に、そんなことができるのかという御懸念もあるかと存じますが、まあ、事の性質上、異常に多額の、何と申しますか、事業費なんかを要する性質のものが別に特にあるわけではなし、また、予算を通じて何らかの統制をしていかなきゃならないとか、あるいは調整をしていかなきゃならぬというようなことも、今までのところはなかったので、まあそういうような点では、実はあまり懸念をしてこなかった次第でございます。
  146. 高田なほ子

    高田なほ子君 今日までは予算の調整する必要がなかった。たいへんけっこうなことです。まあ、しかし、ひっくり返していえば、予算を調整する必要がないはど熱がなかったとも言い得る。そこで、お伺いしたいことは――農林省からどなたかお見えになっておりますか。
  147. 永岡光治

    委員長代理(永岡光治君) 本名農林政務次官が来ております。
  148. 高田なほ子

    高田なほ子君 ああ、そうですか。じゃ、政務次官にお尋ねしますが、農林関係の中で、特に青少年の対策費というのではありませんが、いろいろな名目でもって予算が取られているようです。農村建設青年隊補助、農村建設青年隊中央隊、農村青年実践活動促進費の補助、農村青壮年海外派遣費補助、農業講習補助、こういうふうにたくさんの項目に分れて、それぞれの予算が別個に計上されております。これは、農林省の一括した関係の中でありますから、問題はないと思うわけでありますが、お尋ねしたいことは、わが国の食糧政策あるいは農業政策、そういうものと関連して、農村の二三男に健康な職場と教育を与えようというような意味合いから、それぞれのものが組まれているように拝見するのですが、問題はわが国の基本的な農業対策、そうした国策の中にこの青年をどういうふうに生かすかということについては、相当基本的な御方針というものが打ち立てられているのではないだろうか。そういうこととするならば、今後農林省としては、この農林関係の二、三男対策、そしてわが国の農業開発のためには、おそらく政府の方針としても拡大方針をとっているのではないかと思われる。この際、農林省関係のこうした青年関係のいろいろな費目についての大まかな御説明と、今後これをどういうふうな計画でもっていくつもりなのか、わが国の農業開発とどういうような関係に基いてこれが計画されているのか、これを御説明願いたい。
  149. 本名武

    政府委員(本名武君) お答えいたします。御指摘の通りわが国の農業生産の、特に食糧自給度の向上の上からも、農業政策が非常に大切であると同時に、農山漁村に占めるとこるの青年指導もまた大切なことであることは、御指摘の通りであります。そこで、ただいまお話しのように、農林省内におきまして、いろいろこれが対策費として数項目にわたって予算を計上いたして運労いたしておるわけでございますが、この運営につきましても、青少年問題協議会と密接な連絡をとりまして、今日実施をいたしておるわけでございます。  おもな項目について概略を申し上げますと、まず第一に、農山漁村建設青年実践活動班でございます。これは、全国の市町村に二百三十の班を設けまして、その班員が約一万一千五百名でございますが、これが今後わが国の農政の上に基幹となるべきいろいろな研修を積み重ねていきたい、このようにしてこの青年班が活躍をいたしているわけでございます。一体、日本の農業の一番大切な問題は、何と申しましても、生産の基盤がはっきりと確立することであります。今日まで、ややもすると、これがおろそかになりがちでございました。経済的な観念が先走りまして、基本的な問題を忘れがちであった。特に、青年諸君がこの点に関心を打ち、しかも実践に移していくことが、日本の農政の上に必要であるというので、この実践活動班を活用いたしまして、まず第一に、生産基盤の中心になりますところの土地の利用につきまして、十分な調査をいたすということをこの活動班にゆだねているわけでございます。その調査の研修を重ねると同時に、その生産基盤の上に立ちまして、今日までの経営形態に批判を加えると同時に、従来の経営形態を改める必要があるというその実際の当面の新しい問題に対処して、これをまた技術的な面からも、あるいは経営院の面からも、研修を重ねていくという仕事をやっているわけでございます。これに対する予算が六千三百万円ほど取ってございます。  それから、先ほど御指摘のように、全国の人口の約半数近い人口を占める農山漁村における青年、特に三三男に対して、一体将来の職業的な指導をどうするかということ、これは農村が背負う責任の一つの大きな問題だろうと思います。これらに対しましては、まず農村建設青年隊を編成いたしまして、そのうち、中央隊は約四百名の隊員をもって、四個隊に分れまして、幼半年間における訓練を続けております。それから、地方におきましては、府県隊二十七隊を編成いたしまして、これが約一カ年間にわたりまして、それぞれ青年隊の仕事をいたしているわけでございます。この人員は、約千三百五十名でございます。これらの青年隊は、建設省でやっておりますようた青年隊にも似ておりまして、農村におけるトラクターを初めといたします機械力を用いまして、それぞれ機械に対する技術の修得をさせると同時に、実際の営農その他に役立たせつつ、農村を離れた後におきましても、建設その他の事業に対して参画できるような技術を修得させるというようなことで、農村建設青年隊を編成いたしているわけでございます。  そのほか、海外における農業事情を修得し、また調査するために、海外に青年を派遣いたしております。アメリかには四十七名、デンマーク、西独、スイス、カナダには各三名、ブラジルには十名、これらの派遣のために約九百万円の予算を取ってございます。このようにいたしまして、海外における農業の実態を修得するとともに、さらにひいては、これを契機といたしまして、日本の海外移住の指導あるいは促進に役立たせると同心に、日本農業への一つの新しい方向というものに役立たせようというわけでございます。  そのほか、いわゆる青少年のクラブ活動がございますが、これは別に予算措置はございませんけれども、今日の農業の全体からいって、改良であるとか、あるいは農村における生活改善のための仕事に対して、青少年に大なる関心を打つと同時に、この目的のためにいろいろ研修をし、またみずから修養を事ねていくという仕事をいたしてれります。これは一定の改善目標を立てまして、共同の責任、共同の力において実践するグループでございます。  このようにいたしまして、農村における青少年に対する将来への期待、今後の青年育成の上に、実践の上に立っての行動を積極的にとりたいと考えております。先ほどもお話がございましたようですが、もっと急速にこの施設計画の実行を拡大いたしたいのでございますが、今日のところ財政その他の関係で、この程度ということではございますが、非常に熱心な研修あるいは実践をやりつつあるということを、心から喜んでいるものでございます。簡単でありますが……。
  150. 高田なほ子

    高田なほ子君 重ねてお伺いいたしますが、この計画は農村の二三男対策を主としてやはりお考えになっておるようてすが、大体今日までのこれだけの予算の中で、何年次くらいの計画でこれをおやりになるおつもりなのですか、今後の計画です。あらましでけっこうです。
  151. 本名武

    政府委員(本名武君) 先ほど申し上げましたように、とりあえず隊なり班というものの編成人員は少うございますけれども、それぞれの所定の期間内において、順繰りにこの制度を活用いたしまして、将来ほとんど、でき得るなら全農村の青年に行き渡るように計画いたしたいというふうに考えております。もちろん、御指摘のように、二三男対策もこの中の重要な使命でございますが、同時に、りっぱな跡取りを作って、日本の新しい農村の経営と安定のために役立つような青年の指導、あるいは研修を進めていきたい、このように考えております。
  152. 高田なほ子

    高田なほ子君 重ねて。そういう方針の中で、この青年隊の指標となるものは何ですか。農村の開発のために、今それぞれの御答弁があった活動です、その活動の指標になるものは何ですか、指針です。
  153. 本名武

    政府委員(本名武君) もちろん、農村の青年ではございますが、いわゆる国民としての青年の指導に対する指針は、これは都市といわず農村といわず、私は同一であっていいと思います。特に人格的な農村の青年の指針というものは、農村といえどもそう変るものではないと思います。  ただ、農林省の立場として、これらの機関を設け実行いたしていくにつきましては、先ほども申し上げましたような、生産性を高めるための問題とか、あるいは経営技術のための問題であるとか、あるいはまた、二三男が将来村を離れてからの、いわゆる他の職業への転出、これらに対して役立つような仕事を身につけさせるというのが、農林省の仕事として、特に他の関係と変った行き方をやっていると言い得るわけでございます。
  154. 高田なほ子

    高田なほ子君 広範な農村の青年の対策としての中核的な使命を果すことの説明があったのでありますが、どうもやはり将来の計画性というものについて、明快な御答弁をいただけなかったことは、非常に残念でございます。私がこの点をお開きしたがったのは、これからの建設省関係の方の青年活動と関連しまして、農林省には農林省のやはり計画というものがなければ、建設省の青年対策とは調整することができない。そこにやはり五年対策というものの脆弱さがあるのじゃないかという気がするのです。しかし、私の主張は、中央でもって、あっちの青年対第も、こっちの青年対策も、もう一緒にして、強い規制や予算の制肘を設けるということについては、若干私は意見を持っている一人なんです。しかし、その意見はあとで申し述べるとして、年次的な計画についてお話を承われなくて、非常に残念なんです  今日、大体九千三百人ぐらいの青年の活動にとどめているようですが、おそらく今後もっともっとこれは拡大されるのじゃないかと思うので、今日せっかくこういう青年対策が強化されるようでありますから、できれば、私どもにも年次計画のようなものをお示しいただければ、大へんけっこうなことだと思います。  続いて、建設省の力で産業開発青年隊に三千八百万円予算が組まれておりますが、    〔委員長代理永岡光治君退席、委員長着席〕  これは将来どういうふうに拡大されるものなのか。農業関係の青年の活動と、この建設省関係の青年の活動というものは、根本的にどういうちがいを持っているものなのか、これについて御説明願いたい。
  155. 本名武

    政府委員(本名武君) 先ほどお答え申し上げたことに対して、十分意を尽さなかったようでございますが、御指摘の農村における吉年活動につきましては、年次計画はございませんですが、ただ、やはり目標は、農村として考え、また実行すべきことは、新しい村作りが一つの大きな目標になっております。従いまして、これは青年指導とは別でございますが、新農村建設に青年隊をこしらえまして、これは別途に新しい村作りの活動もいたしておりますが、いずれにいたしましても、先ほど申し上げました青年活動は、一つの新しい村作りとして、青少年の将来の職業的な指導というものも兼ねて行なっているという実情でございます。
  156. 堀内一雄

    政府委員(堀内一雄君) 産業開発青年隊の設置趣旨におきましても、大本におきましては農業青年隊と同じ趣旨でございますが、私どものこの根本問題といたしましては、社会人といたしましてりっぱな人を作る、同時に、技術の教育をいたしまして、それによっていわゆる二男、三男対策、就業並びに海外発展等に資したいということでございます。  現在その状況を申し上げますると、昭和二十八年度以降実施して参りまして、建設省直轄の中央隊は、国庫補助による府県の隊と中央隊となっております。いずれも、一隊はおおむね二十五名ぐらいを基準にいたしまして、当初は二十隊設置されたのでありますが、逐次隊を増加いたしまして、特に昭和三十二年からは、政府の青少年対策の一環といたしましてこれを強化充実することになったのであります。昭和三十二年と三十三年とを比較いたしますると、府県隊はいずれも三十三隊で、隊数に変りはありませんが、中央隊は三十二年度の三隊が三十三年度には六隊に倍加いたしました。これがために、国の予算額は昭和三十二年度の二千二百万円が、昭和三十三年度には三千八百万円となり、約一千六百万円の増加となっております。産業開発青年隊の訓練の終了者は、官公庁及び民間の建設業界に就業しておりますが、そのまじめな就労態度と修練した土木技術によりまして、各方面から好評を得ておるのでございます。相少年の自立対策といたしまして、一応は成果をおさめておると存じておるのであります。  特に過去三回にわたりまして、合計四十三名の終了者をブラジルに集団移住いたしまして、現地の好評を受けておるのでございます。なお、新しいケースといたしましては、将来この方面に相当の期待ができるのではないかと考えておるのでございます。今後も国土開発並びに海外移住の進展に即応して、逐次内容を整えていぎたいと存じております。  ただ、この際申し上げますことは、この隊数を増加するというようなことになりまするというと、実は今国土開発総合計画の方の事業に主として従事さしておるのでございますが、教育が技術的な問題になりまするので、この方面もよく勘案いたしませんというと、数の決定というようなことには相当考慮を要する必要があるのでございます。
  157. 高田なほ子

    高田なほ子君 内容が、公益事業の参加になっておるようであります。私は、青年対策の中で注意しなければならないことは、こういう仕事を通して、まあ報酬はどうでも、とにかく国のためにやるのだという、いわゆる尽忠報国の精神が、こういう作業を通して青年の中に送り込まれることについては、私は非常に危険なことだと思うのです。従いまして、この公益事業に参加させる青年に対する待遇対策というものについては、相当考慮が払われなければならないのではないか。なかんずく、建設省関係の産業開発青年隊のこの報酬、待遇等については、若干批判があるように聞いております。そして、そういう批判のあることはあるとして、それを合理化するために、耐え忍んで克苦勉励することが現在の青年の使命だぞ、こういうやり口で教唆扇動することは、私はちょっとまずいのじゃないか。質問の要点は、公益事業に参加する青年に対する諸待遇についてどういうふうに考えているのか。これは雇用関係ともかなり関係を持つことです。
  158. 堀内一雄

    政府委員(堀内一雄君) ただいま御指摘の点につきましては、青年隊の指導上最も注意いたしておるところでございまして、いわゆる社会人としての円満なる人格を養成するということに趣旨が置いてありまして、従いまして、青年隊も、自主独立の見解から、自治的にものをやらしておるのでございまして、特にこの指導要領の中に、青年隊はいかなる目的のためにも活動――ただいま御指摘のような意味の問題に対しては、いかなる目的のためにもこれを活動さしたり、またはそれを利用してはならないというようなことを強くうたって、ただいま御指摘のような弊害に陥らないように努力いたしておる次第でございます。
  159. 大和与一

    大和与一君 関連。農林省関係、建設省関係のお話を今聞いておりまして、何か青少年に対する指導、教育というか、人間を作るというか、そういうえらい口幅つたいことを言っていると思うのです。ほんとうは、そんなことはないと思うのです。お話を聞いていると、そういうことをやったということはあるけれども、いわゆる文部省的な指導ということでは、力はないし、実際中身はないと思う。それをあっさり認めて、そうなると、その青年という言葉を使っているのは、ただ予算を取りやすいから言っているのだ、ここまで言い切れるかどうかわかりませんが、そんな程度で、人間を作るのだということであったら、どういうことをやっているかということをはっきり言わなければならない。ただ、こういうことをしたというだけであって、心がまえも計画も何にもないのです。そういうことがあれば、精神面、教育面、そういうことを具体的に、こういうことをしておると…。  農村の二三男対策は、そんな簡単なものじゃない。ただ山へ連れていって仕事を与えた、そんなことで解決する問題じゃない。もっと根本的な問題なんで、そういうことを実際にやっているというのだったら、具体的な内容を示していただかぬと、とても納得できぬのですね。何かえらい、人間を作るということについてずいぶんやっているというけれども、私は今までの御答弁の中にないと思います。その点、あったら、はっきりおっしゃっていただきたい。
  160. 本名武

    政府委員(本名武君) 青年の指導や教育につきましては、これは先ほども申し上げましたように、農村だ都市だという区別は私はなかなかつけられないし、また、つけるべきではないようにも考えられます。  ただ、農林省の責任においてやっておりますことは、先ほど申し上げましたように、今日の日本の農業の姿というものは、国際農業の実情や、あるいは食糧の、国際的な食糧の事情からいきましても、あるいは国内の食糧の自給度から申しましても、このままで、従来のままで、従来のままでいいかどうか。これはそう申してははなはだ失礼でございますが、長年同じ土地で同じ営農でやってこられた方よりも、若い青年諸君に目ざめていただいて、新しい行き方をやっていったらどうかということから、先ほど申し上げましたように、生産基盤のもとになるところの土地の調査であるとか、その調査に応じて改良をどうするか、その上に立って経営はどうするか、こういうことも実は実践活動班においてやっておる。  さらにまた、農業の機械化を初めといたしまして、近代化をはかるために、いろいろな機械やその他施設というものを、どんどん新しく設けていかなければならない。これらは、ひとり農村の機械であるとか、農村の施設ということではなく、社会的な、国家的な、全体的な考え方に立って、農村において、これらの指導育成も、あるいは研究も身につけることができるようにするために、建設青年隊を設けて、あわせて跡継ぎにもりっぱな跡継ぎと二三男対策に対処したい。  そのほか、これは直接予算の問題でありませんが、四Hクラブのような、いわゆる生活改善や、あるいは経営上の問題について、年令層を分けまして、それぞれの立場において、それぞれの青年の発育のそれぞれの段階において、見合った研究、研修、あるいは対策実行をやっていく。こういうようなふうに農村における与えられた環境においての青年の実践活動というものを強く推進していきたい。また、そういうふうな方向で進めておるわけでございます。
  161. 堀内一雄

    政府委員(堀内一雄君) 産業開発青年隊の指導につきましては、ただいま御指摘のありましたような一般的な教育といったような点については、むしろ私どもの方はあまりやっていないのでございます。実を申しますと、この産業開発青年隊の起りは、各府県等におきまして地域的に自発的にこうした団体ができまして、そうして国土開発事業等に協力するというような空気が非常に高まって参りました。そこで、こうしたような青年が集団して、自主的にいろいろのことをやるということは非常にけっこうなことと存じまして、さらにこれに技術的な指導援助をするというような趣旨からできているのでございますが、もとより、集団生活の間に、それぞれ青年の人たちが自発的に、自主的に、いろいろ修養等のこともやることがあることと存じますが、建設青年隊といたしましては、当省といたして努力いたしておりまするのは、主として技術的な指導に重点を置いてあるわけです。
  162. 大和与一

    大和与一君 やや中身はわかって参りましたが、ですから、仕事の面で行われておることはよくわかっておるわけです。しかし、それが人間的に、あるいは教育的にやっておるというようなことを言われると、どうも承服しがたい、こういう意味を私は言ったわけです。だから、文部大臣に一応念を押しておきますけれども、青少年の教育を含めた技術の仕事をする場合に、やはりできたら人間もりっぱにしたい、こういうような欲もあると思います。それについて、農林大臣なり建設大臣から文部大臣に何か教えてくれ、こういうお話が今までにあったのかどうか、その点念を押しておきましょう。
  163. 松永東

    国務大臣松永東君) 私の方じゃ、そうした青少年の特に勤労青年あたりの働いているものについての指導者の面に、協力をしてもらいたいというふうな相談を受けたことはあります。また、その相談によって指導者の面は相当協力して、お互いに一つ何とかりっぱな人間を作ろうというふうに協力いたしておる次第でございます。
  164. 高田なほ子

    高田なほ子君 総理府にお伺いいたしますが、今農林省並びに建設省からあらまし伺いました。建設省の方からは、計画等についてはあまり御答弁がなかったようです。今は国土開発の事業に携わっているということですが、この事業が中断したような場合には、これは縮小していかなければならないのじゃないか。また、規模を拡大した場合には、これを拡大していかなければならないというふうに、絶えず浮動性があるようなことではいけないのであって、さっき農林省にも要望したごとくに、明確な計画性というものが打ち立てられなければなりません。両省の、その計画の中で最も大切なことは、今大和委員からも御発言があったように、指導者対策というものについては、これは相当考慮しなければならないと思うのですが、総理府の方で統一的な対策を樹立するということであれば、両省にまたがる指導者の対策というものについてはどういうふうな考え方を持っておるのですか。それぞれ分野は違うようでありますけれども、お話し願いたい。
  165. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) そういう点につきまして、もちろん、この協議会におきまして、青少年の健全な発達という意味でいろいろ措置して参っておりますし、また今後も措置していくこになると思います。今の問題につきましては、郷土建設青年活動に関する件というので、この協議会の決定を待って、さらに昨年の四月二十三日に閣議決定をいたしまして、そうして次代をになう青年が郷土愛に燃え、国土愛に燃え、青年の組織的な実践を活用して、自主的に郷土建設のために、産業振興及び国土開発に関する諸活動を活発に展開することは、きわめて重要で、国としてもかかる活動を助成することは必要であるというようなことで、農山漁村建設青年実践活動促進要綱というようなものを設定いたしまして、これが連絡及び指導に努力をいたしておるわけであります。
  166. 高田なほ子

    高田なほ子君 青少年白書が中央青少年問題協議会から出ておりますね、三十二年度に。これを拝見すると、「青年隊活動は一種の技能教育であり、雇用問題であり」云々と内容が書いてありますが、第一線指導者の養成ということが非常に強く打ち出されておるわけなんです、今、基本方針のようなものをおあげになったのですが、どうもばく然として、誤答弁にならない。なぜ私が重ねて質問したかと申しますと、「青年隊は単なる職業補導機関でもなく、技能者の養成でもなく、青年運動のみでもなく、郷土愛精神運動でもなく、就職斡旋運動でもない。」、こう書いてある。「しかも、それら全ての要素を含んだ多角的な活動を必要とする。従って、これらのことを充分に理解した指導者の養成が急務である」、こういうふうに書いてある。今両省の御答弁から受けることは、技能者を養成することだ、郷土愛に燃えた者を養成するとかというような御答弁があるのですが、若干ですね、ここに協議会から出された結論と、両省の意見、結論というものとが、非常に根本的な食い迷いを持っている、食い違いがあるというふうに判断されませんですか。非常に総合的な、多角的なもの、だから、一つのワクにはめた指導者というよりは、これから建設をする一つの指導者の養成というものが大切な要件であるというような意味で書かれてあるわけです。従って、指導者の養成について、今後青少年問題協議会としては相当研究しなければなならない部面があるように思うのです。今後の研究というのは、どういう機関で進められていくのか、この点だけ答えて下さい。
  167. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) これらの点につきまして、従来不十分であった点も多々あると思います。今後におきましては、ただいま事務局においてそれぞれの、たとえば農村なら農林省、あるいは建設省というふうに、今、現にやっておられる青年隊の実情を十分に把握しながら、また文部省等とも相談しつつ、適切な指導者をどうして作り上げるかということについて、さらに具体的な検討を進めて参らなければならないと思っております。
  168. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうも具体的な御答弁がなくて、非常に残念であります。  次に、もう応問もおそくなりましたから、質問をはしょりますが、一体青少年というものの年令の規定を、今後どういうふうに考えられるのか。
  169. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) 従来、これは非常に広い範囲で取り上げられております。児童を含めたいわゆる一才から二十四才程度、まあその程度までの年令を含めたものを青少年という対象として把握しております。
  170. 高田なほ子

    高田なほ子君 青少年協議会の方では、二十四才くらいまでを青少年というふうに考えておられるわけですね、そうですね。
  171. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) さようでございます。
  172. 高田なほ子

    高田なほ子君 続いてお尋ねいたしますが、これは法務省関係ですが、どなたかおいでになっておりますね。
  173. 藤田進

    委員長藤田進君) 法務政務次官が見えております。
  174. 高田なほ子

    高田なほ子君 法務省では、少年非行の問題について、いろいろと御苦心なさっていらっしゃることは、先般の委員会での質問を通して十分にわかっていますが、今後、今、この青少年対策協議会では大体二十四才のような線を引いておりますが、非行少年の問題等についての審議の過程で、また御研究の過程で、現在の二十才という年令についていろいろの御研究があるように思うのですが、少年法と関連して、年令というものをどういうふうに今御研究になっていらっしゃるのか。
  175. 横川信夫

    政府委員(横川信夫君) 少年犯罪の傾何等から考えてみまして、むしろ現在二十才であるものを十八才まで引き下げたらどうかというような意見がむしろ強く出ておりまして、犯罪面から申しますると、十八才から二十才までの間は一般青年と同じような能力を持っている、そういうような意見が最近強く出ております。
  176. 高田なほ子

    高田なほ子君 次に、青少年の非行の原因の中で、いろいろよって来たる原因があげられているようでありますが、罪に走るような、原因を与えるもの、つまり社会とか、親とか、家庭ですね、非行をなすような原因を与えるものに対する罪、たとえば子供をほうりっぱなしにして、踏切りで子供がひかれちゃったというような場合、こういうものの罪を今後規定するような御研究はございますか。
  177. 横川信夫

    政府委員(横川信夫君) 少年犯罪の原因は、収容者によりましていろいろ研究してみますると、先ほど高田委員の御質問の中にもちょっと片鱗がうがわれたのでありますが、親の愛情というものが足りないことが一番大きな原因です。一番数が多いように考えられるのであります。もっとも、中には本質的に病的な原因で犯罪を犯す、繰り返えすというようなものがあるようではございますけれども、大多数というものが親の愛情の欠如、家庭の事情というのが大部分でございます。収容所に収容いたしまして、矯正いたしまして、善良な社会復帰をはかりますために、環境調整というようなことを苦心して実行しておるのであります。その結果が相当の成果を上げておるのでありますけれども、ただいま御質問の青少年を犯罪に走らせたというような、特に現在の法律で抵触するようなもの以上に、何か対策を講ずる必要があるのじゃないかという話はよりより出ておりますが、具体的な研究にまで進んでおりません。
  178. 高田なほ子

    高田なほ子君 この青少年問題協議会の中に人権擁護局が加えられるのが、私は妥当ではないかという考え方を持つのです。どうして人権擁護局が加えられないのですか。ただ取り締ったり、それから保護したりするという部面ではなくて、基本的な問題として、擁護局がこれに参加するというのが当然のように思うのですが、総理府の方ではこの点については御研究ございませんでしたか。
  179. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) この青少年問題協議会では、法務次官が出席されまして、人権擁護局のことも法務省の仕事の一つですから、一緒に相談に乗っております。
  180. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は、この人権擁護局の仕事というのは、わが国の民主化を促進する上に一番重要な役割を果す所だというふうに考えています。そうしてまた、今日まで果してきた仕事も、非常にりっぱな仕事をしてくれています。けれども、予算の面では、人権擁護局は逐年的に減らされてきている。もう少し人権擁護局の仕事の分野を拡大して、そうして政務次官を通して発言をするということでありますけれども、やはり外局にすべきであるというような意見もある中で、人権擁護局の権限が十分にこういう行政面に反映できるような方向にいくべきであると考えていきます。これについては、今御意見を求めても即答はできまいかと思いますので、もし御意見があれば聞かしていただきたいのです。
  181. 横川信夫

    政府委員(横川信夫君) わが国の民主化という点で、人権擁護局の果しまする役割は非常に大きく、また、将来これがさらに活発な活躍をしなければならぬということは考えておりますが、今御指摘の、予算が逐年減少しておるというお話でございましたけれども、必ずしもさようなことはございません。ただ、なお具体的にお話のございました、むしろ外局にして、さらに機構を拡大すべきじゃないかというような御意見がございましたけれども、また法務省内ではさようなことになっておりません。
  182. 高田なほ子

    高田なほ子君 この問題で論争するつもりではありませんが、最近人権じゅうりんという問題が非常に多く、またそれが不感症的になってきつつあるときに、相当やはり人権擁護という基本的の考え方を青少年教育の中に吹き込んでいかなければならない。従いまして、行政面の総合的な仕事をつかさどる青少年問題協議会の仕事の上で、これらのものが重視されなければならない、こういう意見を持つのです。  大へんとうも時間がおそくなって済まないのですが、たまたまけさの読売新聞にこういうのが出ておりました。「教護院の教官がリンチ」、これは「都立の教護院で十三才の少年を教官たち数名が、長時間にわたって裸のまま板の間に正座させ、竹や木の棒でリンチを加え、一週間絶対安静というひどい傷を負わせたうえ、手当もせずに夜十時まで責め続けた事件が東京都下におきた」、これが報道されております。この少年の家庭状況なども、ちらっと新聞に出ております。家に帰ってもお父さんがこわくて、お父さんは建設局のお役人をしていらっしゃるようですが、家に帰ることができなかったというようなことが書いてありますが、教護院の教官にしてしかり、こういうような問題は、これは日常茶飯事に起っているので、はないかと、私は危惧を持っている、  私は、青少年を保護するという面からも、どうしても根本的には、人権の擁護という精神があらゆる面で強調されなければ、ほんとうの意味の私は青少年対策にならないだろうと思う。この問題をここでもって中心に取り上げるつもりはありませんが、たまたま青少年の問題が出ているときに、こういう問題が起ったので、ひどく私も気にかかりますので、人権擁護局の御見解も伺い、また、青少年の保護の上に果すべき人権擁護局の使命等についても、特に人権擁護局からこの際御答弁を承わりたい。
  183. 鈴江才藏

    政府委員鈴江才藏君) 高田先生から、法務省の人権擁護局の仕事に対しまして、非常に御理解のある御発言を得まして、厚く感謝いたします。機構の改革、あるいは予算の獲得、そういう問題につきましては、私はただいま急に解決のできる問題ではないと思いますが、現在の機構並びに予算のもとにでき得る限り努力をいたしまして、わが国民の人権擁護の職務を果したいと存じております。また、非常に少い局員でございますが、今おっしやいましたような精神のもとに、一致協力いたしまして日夜努力をいたしております。何とぞ御安心を願いたいのであります。  今、高田先生から御指摘になりました東京都立の誠明学園の教官の問題でありますが、これは四月一日付で、その問題になりました児輩の兄さんの方から、東京法務局に人権侵害として申告がございましたので、至急に調査をいたすことになっております。青少年の対策審議会は従来もございまして、私もその幹事として出ております今後もやはり人権擁護局長幹事として出席することに相なると思いますので、できる限りこの審議会を通しまして青少年の人権、あるいは児童の権利につきまして、でき得る限り広い視野のもとに努力をしていきたいと思うのであります。
  184. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 高田委員から今お話のありました、東京都立の教護院の誠明学園の問題についてお話がありました件について、質問の本筋ではないようでございますけれども、簡単に申し上げたいと思います。この誠明学園は都下青梅市に所在いたしておりまして、現在二百五十六名の児童を預かっておりまして教護いたしているのでございます。御承知のように、教護院でございますので、不良の児輩を教護するということを役目といたしているわけでございます。そこで、さっそく園長から事情を聴取いたしたのでございますけれども、新聞記事に書いてありますこととかなり違ったような点も兄受けられますし、今後さらに調査を進めたいと思いますが、  この問題になりました児童は、今お話がありましたように、父親は肺結核で病気をしております。母親も病身でございます。兄弟は八人おりまして、六人の兄と、一人の弟、そういうような構成でございます。学校におりまして、あるいは暴力的に走り、あるいは金品を巻き上げるというようなことで、学校でも手をやきまして、三十三年の一月十七日、上平井中学校長から通告がありまして、児童相談所を経て、一月三十一日誠明学園に入所と決定したようなものでございます。知能指数は九〇から九三程度でございまして、特異な性格を持っておりまして、入所以来の行動その他についても、いろいろ身勝手な点もございますし、あるいは統制を乱す、そういったようなことも多かったようでございます。  それで、書かれてありますことの発端となりましたのは、三月の二十二日の午後の四時ごろに、職員の不在中に、寮舎の被服倉庫の鍵をくぎでこじあけまして、部屋からレインコート、学童服上下、靴下五足、白靴、帽子等を窃取して、うしろの窓をあけて逃走いたし、青梅駅から無賃乗車をいたしまして、新小岩駅で下車して、友人の家に一泊をして、二十三日に自宅に行きましたけれども、母親から注意をされて、学園に帰るために百五十円を渡されたが、それは映画を見て勝手に使いまして、学園に帰らず遊んだ。そういうようなことが発端でございますが、この名前のあがっております高際という教諭は、三年前から誠明学閥に勤務をいたしておる非常に熱心な、どちらかといえば、まあにこにこしたおとなしい、そういう性格の教諭と承知をいたしております。この本人に対しまして、そういうようなことがありまして、いろいろ訓戒を加えたり、あるいは反省の機会を与えながら、問いただしたりいたしました関係上、ここに書いてありますことは違いますが、午後一時半ごろから四時半ごろまで、約三時間の時間を費しまして、いろいろ尋ねたことも事実でございますし、しかし、外傷を負わせるような暴力をふるったというようなことは、今までのところ私ども承知をいたしていないのでございます。その後、いろいろ保護者あるいは兄の保夫等との間に経緯がございまして、人権擁護局に訴えたというようなことになったわけでございます。私どもはそういうようなことによって事態が明らかになれば非常にけっこうだと思うのでございます。  ただ、教護院の職員というのは、御承知のように、仕事が仕事だけに、非常に神経をすり減らし、苦労をして、不良児童の教穫に当っております。その苦労というものが、こういうようなことで世間の誤解を招くということになりますと、非常に残念でございますので、なおよく、教護の万全を期する上においては、今後私ども努力して参りたいと考えておる次第でございます。
  185. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは質問の本筋ではありませんが、非行少年の非行をわざわざここに大きくアッピールして、そして高際教諭のにこにこしたところを強くアッピールしておるのでありますが、事実がどうであるかということは、今後の調査に待たなければならないと思うのですけれども、二カ月も教護院におって、百五十円の金を見て、映画を見たくなったという少年の切なる心情というものは、私には理解できる。それがいいか悪いかは別問題です。だが、しかし、少くとも教護院の教官が他から批判を受けるようなきびしいせつかんのもとでは、少年はよくならないと私は思うのです。教護院の指導方針というものはどうかわかりませんが、もっとやはり愛情と理解とを、非行少年のよって来たる原因というものを突きとめながら、私は措置をしていかなければならないように考えております。今の御答弁の中からうかがえることは、あまりにも事務的な、愛情の欠けた御答弁であったために、私は非常に悲しく思う一人であります。今後こういうことが起らないように、十分に御注意を願いたいということを一つ申し上げておいて、結論を質問したいと思います。  私は、青少年の対策は、今度ばく然と、協議会の中で事務局は設けられるようでございますが、大まかな対策は、青少年に対する教育の分野、それからもう一つ保護の分野、それから青少年の非行などが起らないような予防措置という、大まかに分けるとこの三つの分野に分けられるのではないかと思います。そして農林省あるいは建設省あたりでは、今の御答弁によると、かなり大きく教育の分野が答弁されておるようでございますが、少くともやはり青少年教育問題については、教育基本法を中軸とした教育の方針がとらるべきであって、これは文部省あたりが中心になって、青少年の教育問題ということにはやはり音頭をとるのが至当ではないかというふうに考えられます。また、保護の面においては、これは厚生省関係があらゆる機関を動員されて、一つがんばっていただく。そしてまた、青少年の正しい健康な育成のためには、全閣僚をあげて、この予防措置というものが政治の面に打ち立てられなければならないというふうに考えますが、今後これを運営するのに、こうした柱を立てて、分野々々をもう少し明確にしておやりになってみてはどうかという意見を持つのですが、従いまして、今後の運営等については、こういう柱を立てる気か、立てない気か、私の質問は。この青少年の対策を、中央統制の機関にしてもらっては困るのです。あくまでも正しい、そしてまた平和なわが国を建設するためにとらなければならない対策であるということを念頭において、御答弁をいただきたいと思います。
  186. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) 従来も、大体考え方としては、今先生のお話の線に沿うて来ておるのであります。指導、育成、保護、矯正と、大体この四つの分野について考えてきたわけでございますが、率直に申しまして、従来この保護ないし矯正というような点にはかなり努力して参りましたけれども、指導ないし育成というような方面におきまして欠けるところが多かったのではないかと、反省しておる次第でございます。そういう意味におきましてただいまのお言葉の通り、指導教育というような面につきましては、もちろん文部省が一番中心になって参りまして、さらに育成という面につきましても、社会教育というような立場は文部省が中心になって参り、また保健は厚生省、矯正という点になりますと、法務省なり検察庁も、これらのそれぞれの中心になる分野があるかと思いますが、これらの中心になる分野それぞれの柱に従って、各省が協力してこの実をあげるように努力して参りたいと考えておる次第でございます。
  187. 高田なほ子

    高田なほ子君 特に、この際文部大臣にお尋ねしなければなりませんが、教育の分野で、どうも農村の開発青年隊とか、それから建設省の開発青年隊、こういうものはどうも愛国青年隊式なやり方をややともすればやりがちであるが、私は決して愛国心というものを持たないわけではない。最近の愛国心というのは、やはり時代の趨勢とともに変ってきている。自分の身を犠牲にして国に尽すというのではなくて、みんな一結に生きて、共存共栄の立場でお互いが愛し合い、理解し合いながら、この国を興していくという、そういう基本的な考え方に立つた愛国心でなければならない。また、そのことは教育基本法の私は精神に盛ってあると思う。従って、今後の青少年対策の中で示される文部大臣としての御見解というものは、将来大きな影響力を待つのです。この際、青少年のいろいろの団体もあるでしょう、民間の団体もあるでしよう。それらの訓練あるいは教育の分野、こういう中での基本的な考え方というものを、この際はっきりと一つお聞かせいただきたい、こういうふうに考えます。
  188. 松永東

    国務大臣松永東君) まず御指摘になりました愛国心の問題は、お説の通りです。戦前の愛国心、それをそのままわれわれは適用しようとも考えておりません。また、とんでもない違いであります。ですからして、それはお説の通り。すなわち、教育基本法にもあります通りの愛国心でなければいかぬというふうに考えております。  ただ、先ほど来問題になっておりまする青少年対策は、私の分野に属しておりますのは、要するに、これを二つに分けまして、学校教育と社会教育の二つに分けて考えていくべきである。  学校教育はもう、高田議員、しょっちゅうお聞きの通り、道徳教育をどう強化していくかというので、文教委員会のたびごとにいろいろ研究を重ねていただいてもらっております。しかし、何といたしましても、次の時代をになう青少年、またこれの育成は、われわれ民族にとっては重大なことでございますので、先ほども申しあげましたように、内閣をあげてこれは非常に協力をいたし、そうして何としてでもこれはやり遂げなければならない。すなわち、人格の陶冶をいたして、りっぱな人間を作るべく、いずれの民族にもおくれをとらないようなりっぱな民族にしなければならぬという熱意を持って、一生懸命研究もし、また実行に移そうといたしております。  ただ、この社会教育の面でございまするが、これもまた御承知通り、学校の方に学んでおる人々については、子供たちについては、さっき申し上げる通りでございます。学校を出ましてから、すなわち義務教育を終って、そうしていろいろ職業につくというような、いわゆる勤労青少年に対しましては、その勤労青少年のやはり興味と必要性ですか、それを基調とするところのやはり教え方をしていかんければならぬ。仰せになります通り、ひっぱたいたり、いじめたりしてやったって、決してりっぱな青年ができるものではございません。いろいろ研究の結果、御研究を願っておりますような青年学級教育の振興をはかって参り、さらに明朗にして非常に活力を持っておるところの青年を作っていかなければならぬというので、スポーツを奨励し、さらにはリクリエーションを奨励し、そうして体育指導委員会設置し、野外活動の助成のためには「青年の家」等の企てもいたしまして、御審議を願ったような次第でございます。さらにまた、青年の情操陶冶といいますか、こうした面のためにも、映画あるいは音楽、演芸、そういうものの影響を受けて、三十三年度の予算にも盛りあげておるような次第でありまして、できるだけ一つ何とかいたしまして、これはよって来たるところの原因が相当大きく、かつまた、深いのでありますから、急速にはいきませんけれども、何としても、今申し上げますような目的を達成するために努力していきたいと存ずる次第であります。
  189. 高田なほ子

    高田なほ子君 よくわかりました。総理府に最後に一問だけ質問をして終りますが、今日まで過去五年間、青少年問題協議会は、各種の意見あるいは答申を、いろいろの機関から受けております。これは青少年保護育成運動の助成、人身売買対策、精神薄弱児童対策、青少年覚醒剤問題対策、青少年に有害な出版物、映画等の対策、両親または片親を欠く者等の就職についての対策、定時制高校の育英費拡大、青少年の教育保護福祉対策、定時制高等学校に対する財政措置、成人の日の運営、青少年に有害な映画対策、勤労青年の対策要綱、青少年の地域活動に関する協力依頼通知、大まかにこういうことをあげただけで、ほとんど青少年問題のすべてを網羅している問題であります。しかし、この内容はほとんど行政面に実行されない。  たとえば、一例をあげれば、特殊学級の設置年次計画、これは三十年度から三十三年度の年次計を答申しているのです。行政面では実施されていない。かくのごとくあらゆる意見や答申というものが、行政面でほとんどうまくいっていないのです。  従いまして、今度事務局を設置するに当って、これらの過去五カ年間の貴重なる資料というものが、次々とその場限りのおざなり対策とかおざなり答申として、ごみ箱のようにうず高く積まれておくのではなくて、今後事務局が新しく発生したならば、二千二百万という予算は容易ならざる大きな予算であります。この予算を、今までの過去五年間のこうした答申や意見書を実施するために、どういうふうにして協力して活用するかということは、今後この法案を通すに当って、私は非常に重要なあなたの方の責任ではないかというふうに考えるわけです。従いまして、この資料は、多分膨大なお金を使った私は資料だ、尊い資料だと思うのでありますが、これを継続しておやりになるつもりなのか、また新たな対策を立てて、二一天作の五でやり直しをやるというのか、はなはだそこいらに疑問がある。これについて、どういう一体意見を持っていらっしゃるか。
  190. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) まさに御指摘の通りでありまして、事務的に申し上げましても、これだけの問題について一々あとをベースして、その成果を十分検討するというような点で、欠けるところが今まで多々あったように感じております。私どもも、その点で自責の念にたえない次第でございます。  同時に、今回この事務局を設置することを提案いたしました理由は、必ずされているかいないか、どの程度に実施されているか、またそこにどういう困難があってそういう不備な点が残っているのかというような点を、具体的に整備いたしまして、そうしてそれをどうやって補っていくかということを考えるとともに、さらに進んで、今まであげられた問題は、一番みんな気がつくような大きな問題ばかりでございますが、陰に隠れて、実際にはやはり大きな原因になっているというような問題も拾いあげて、そうして青少年問題全体についての正しい指導方針を打ち立て、かつ実効を確保するような措置を講じて参りたいというふうな決意でいる次第でございます。
  191. 高田なほ子

    高田なほ子君 大へん恐縮なんですが、法務政務次官は、非行少年の原因を愛情の欠如にあるとおっしゃいましたので、黙っていようと思ったのですが、どうしてもこれは指摘しなければならぬ。デンマークにも非行少年が、ああいう社会保障制度の行き届いた所でも非行少年がいるのです。非行少年がどうしてできるかということについては、かれらの国では、なかなか科学的な統計をとっております。愛情の欠如というデータはどこにも出てきていないのです。両親の不和、これが第一の原因。その不和の原因は、経済的な困窮が原因であると指摘しております。ですから、日本の場合も、やはり政務次官が愛情の欠除というふうに指摘なさるのではなくて、やはり政治の責任としてこれを取り上げていかなければならない。経済の安定こそが彼らを非行に導かない最大の政治家の責任であるということに認識賜りたいのですが、どうもよけいなことのようでおそれ入りますが……。
  192. 横川信夫

    政府委員(横川信夫君) 諸外国の例など見ましても、そういう点で、統計的には経済的な面が非常に大きく出ておるようでありますが、わが国における原因につきまして検討いたして、実務家に聞いておりますところによりますと、やはり特に母親の愛情の欠けた、母親がいなくて義母であったと、それも非常に冷たい人であったというようなことが、非常に多くあがっておるのであります。もとより、高田委員の御指摘のように、そういう家庭はおおむね貧しい家庭でございますが、必ずしも貧しい家庭の子弟だけが非行少年になるというわけではないのでありまして、非常に、裕福な家庭の子供でも、そういうような事例がないわけではないのであります。私は、経済的な面も御指摘の点の通りにあると思いまするが、何よりも、指導に当る者が限りない愛情で包んでやる、大きな愛情で包んでやるということが、一番大きな矯正になるのではないか、さような点を確信をいたしております。
  193. 松永忠二

    松永忠二君 まず、室長にお伺いしたいのですが、高山委員からも御指摘のあったように、いろいろと答申をされ意見を具申されておる。それについて、やはり再度討議をされて、この実現方を要請したというような事実があるのか、あるいはそういうことが協議の議題となって検討されたのか、そういう点を一つまずお聞きをしたいわけです、
  194. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) 一応、この協議会で答申のありました事項については、さらに次会議、閣議に報告する。またものによりましては、行政措置として確立を要するものは、閣議決定というような形で実施して参ったわけでございますが、ただいま御指摘にあずかりましたように、その成果と申しますか、結果につきまして、不十分な点があるかどうかということについての詳細な事後の検討というような点については、やや欠けるところがあったのではないかと思っております。
  195. 松永忠二

    松永忠二君 その点は、私は、やはり答申の中には、答申したことによって実現をはかっていた面も相当あると思うのです。そういう点、決して全然効果が云々ということを申し上げておるのじゃありませんけれども、具体的に計画を出されてやられておることがある。たえば一つの例でも、精神薄弱児対策基本要綱というのが出されている。あるいは定時制の教育の問題が財政措置について出されている。これは昭和三十一年とかあるいは昭和二十八年。ところが、現実にはこれはもう計画半ばにも至っていない。定時制教育のごときも、第一の項目である地方財政窮迫に伴う給与負担など、何らの実現を見ておらない。ほんとうにこの青少年協議会の運営をして、これでやっていこうということであるなら、もうこういう問題について再度強力な意見具申をし、そうしてまたこの法案に示されているところの、適切な関係行政機関の相互の連絡調整というものをはからなければ、できぬと思います。こういう点については、今御発言もあったので、さらに退及はいたしませんけれども、これでは一体何のために青少年協議会があって、地方の、府県の青少年協議会と連絡をしてやっていくという実態に非常にかけるところがあった、こういうことであるなら、むしろもう少ししっかりした協議会を作っていく方がいいじゃないかということすら考えられるのであります。この点については、ぜひ一つ新たに調査もなさつて、強力に展開をしていただきたいということを、まず御要望申し上げるわけであります。  そこで、その次に、一体この青少年問題協議会が問題をとらえるときには、どういうとらえ方、提起の仕方で問題を取り上げているのか、それを一つお伺いしたい。
  196. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) 御質疑のあった点につきましては、まさに私どもとして自責いたしておるところでございます。今後の努力によって補いたいと考えておる次第でございますが、これらの問題の提起に当りましては、一応各行からも次官が委員になって出ておられますし、また民間からもそういう方面の有識者が出ておられます。そういう方々から問題を楳起することを諮られ、そうしてこの協議会においてそれを取り上げ、そうしてこういった結論、答申というような形になって参りますので、いわば議事規則のように三人でなければ提起できないというような、そういうようなやかましい拘束はございませんで、委員のすべてが、そしてまた委員の属する官庁において重要だと考える問題を、随時提起し、論議さるべき形になっておる次第でございます。
  197. 松永忠二

    松永忠二君 文部省にお尋ねをしたいのですが、この答申の中で、文部省が具体的に問題を提起されて意見のまとまったものは、どれでありますか。
  198. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 特に文部省から全般的に提案したということはございませんが、一例をあげますと、勤労青少年の問題が一つございます。これにつきましては、勤労青少年の教育対策という問題につきまして御審議いただきまして、一応の結論を得ております。
  199. 松永忠二

    松永忠二君 そこで、その次の問題として、御承知のように、児童の、長期欠席の生徒の数が相当あることは、御承知通りだと思うわけです。文部省あたりが調査いたしましても、小学校十一万、中学校十三万、合せて二十四万の子供たちが、学校へ通えないで欠席をしておるという数字であるのであります。この長期欠席の子供、特に著しく一般に報道されたのは千葉を中心としたもので、今年も八千人の子供たちが事業できないでおるという現状があるのでありますが、この長期の欠席児童の対策について、今後この青少年問題協議会で問題を提起していく用意が一体文部省にあるのか、同時に、室長はこういうことについて調査を進められて、この点についてやはり問題を提起する必要があるというふうに考えておられるのか、その点を一つお聞かせをいただきたいと思うのです。
  200. 吉田信邦

    政府委員吉田信邦君) この問題は、文部省において、主として学校教育という立場の問題でございますので、文部省としてできるだけやっていただくということが主であると思いますが、さらに、各省でもそれぞれの立場において援助する必要があるかどうか。文部省自体の立場において、できるだけ学校を通じての、学校ないしPTAその他の文部省組織を通じておやりになることが大部分ではないかと思いますが、もし文部省の方からさらに他の諸官庁の協力を得てやりたいということであれば、もちろん、これを取り上げることはやぶさかでないと思っております。
  201. 松永東

    国務大臣松永東君) 松永委員の御指摘になりましたあの長期欠席児輩の問題、これはもう毎回この間から問題になっておるのでありますが、どうしてこれを一つ今後是正をしていくかということについては、まだ的確な案ができておりません。しかし、これは先ほど来お話がありましたように、文部省だけではとうていこれはやっていけない。要するに、厚生省の要保護関係の児童もおりますし、さらにまた、中学に進みました子供たちは、ああいうまだ小さい子供を職場に働かせるというようなこともありますので、そうした点も研究いたしまして、何とか急速にこれらの打開の方法を講じたいと思っております。
  202. 松永忠二

    松永忠二君 厚生省の方、急いでおられるようでありますので、お聞きいたしますが、この長期欠席の生徒の中で、この内容を調べていくと、この半ばが家庭の困難な者であるとか、保護者の生活の扶助が必要だという者が半ばであります。それからまた、教育の扶助を必要とする者がそれに続いているのでありまして、こういう問題を解決していくことによって、実は長期の欠席児童を救うことができるのであります。こういう点について、厚生省は具体的にそういう問題について、どの程度の一体考え方を持っておられるのか。現実に生活扶助をしておる、教育扶助をしておる者の割合とか、そういうものも御承知だと思う。生活保護をしてやっている子供たちの、生徒の数というもの、それに含んでいるものの教育扶助というものがダブっている点も御承知だと思うので、これについてどういう点を打開をしていければ、かりに教育扶助、生活扶助にその困難な問題点があるとすれば、どうして打開をしていけばいいというようなお考えをお持ちなのですか。
  203. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 生活保護の関係は、社会局長からお答え申し上げます。実は、今お話のありました点につきましては、さしむきこれは、文部省、厚生省、労働省が主たる関係省でございます。さきにこの長欠児童の問題を何とか解決したいということで、三省よく打ち合せまして、昭和三十年に三省の次行の連名の通牒を出しまして、それぞれの分野においてこの問題の解決をはかるようにまあ措置をしたのでございます。もちろん、その後時日もたっておりますので、先ほど文部大臣からもお話がありましたように、さらに十分この問題については、突っ込んで、新しい事態に即応した対策を立てなければならぬと思いますが、従来私どもの方で、その通牒を一つの契機として、特に意を用いておりましたのは、やはりこの長欠をするには長欠をする家庭の事情なり、あるいは本人の事情というものがございます。そして、これらにつきましては、御承知のように、全国に十二万五千の児童委員がおるわけでありまして、この児童委員人たちがこういった家庭の事情もよく承知をしておるはずでございますので、もちろん、学校の方の当局の方からは、十分、これは生徒でございますので、気をつけて、そういう者が出ないようにやっておられることは当然でございますが、学校と児童委員との連絡を緊密にいたしまして、そういう児童が出ませんように、かねがねから児童の調査を励行いたします。問題になります児童につきましては、十分個別的に指導をし、あるいは家庭事情に原因があるものにつきましては、特に経済事情等につきましては、これについての、いわゆる低所得者に対するいろいろ対策を講じて参っておるような次第でございます。そういうようなことで、一般的には児童委員を中心として、発見と具体的な指導ということをいたしております。  生活保護の点につきましては、社会局長からお答え申し上げます。
  204. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 生活保護を受けておりますのが、大体、三十二年の十二月が一番新しい数字でございますけれども、百四十万余りになるわけでございますが、このうちで教育扶助を受けております人員が、四十八万六千人ばかりでございます。もちろん、生活扶助を受けておりますところの世帯の子弟は、当然これは教育扶助を受けるわけでございますし、それから生活扶助は受けないけれども、教育扶助だけを受けるというような家庭もあるわけでございます。で、私どもといたしましては、生活ができない世帯につきましては、これはもう無差別平等に生活保護を適用して参ることになっておりますし、そういうふうに努めておりますので、多分今の長欠等の児童の中には、まあ世帯がいろいろ苦しいために、子供に少しでもかせがしたいとか、あるいはまたそういった環境のために、手が回らなくって、子供の教育についていろいろそういう問題が起るということがあるんじゃないかというふうに想像いたしております。今後教育扶助等につきましては、一そう気をつけて参りたいと思っております。
  205. 松永忠二

    松永忠二君 生活扶助をこのままにしておいてこの問題の解決はできると、お思いになっておられるのかどうか。また、教育扶助をこのままにしておいて、一体この問題は解決できるのかどうか。その点を一つ、お考えを聞かしていただきたいと思うわけです。教育扶助で現実にこういった問題について対策をとったとおっしゃるならば、どういう具体的な対策をおとりになっておるのか。その教育扶助の基準とかというものについても、大体私どもの承知しておるところでは、年額三千六百円程度の教育扶助である。こういう一体教育扶助の基準拡大ということについて、一体どれだけの配意をし、またそういう配意をどういうふうにしていくことによって、一体この問題の解決ができるとお考えになっておるか。生活扶助にいたしましても、生活扶助の基準というものがあるわけであります。で、これらの長欠の児童の中には、働いておるのでありますから、もちろん家庭必ずしも生活扶助を得るという条件が整っておるわけでありません。従って、何らかの別途の考え方をもってしなければ、この生活扶助とかあるいは教育扶助をもってしては、現状のものをもってしては、この問題の解決に当らないというのが現状だろうと思うわけです。従って、真剣にこの問題を青少年の問題として取り上げていくということになれば、厚生省としても具体的にこれを将来検討していくべきであるというお考えをまとめなければ、できないと思う。そういう点について再度一つ、教育扶助はどのくらい出ていてどうだということを御承知だと思うので、一体現実に学校の一年の子供たちの要る経費というものは、御承知のように、中学校は文部省の統計あたりでも一万円をこえている。少学校であって、八千円、九千円の額に上っておる。これは単に、このこれらの以外のものを除いて、そうなんだ。こういう中で、教育扶助の三千六百円というものをそのままにしておく。なおかつ扶助の基準というものもやはりあるわけなんでして、そういうものもそのままにしておいて、一体果してこれが解決できるかどうか。あるいは教育扶助を除いた、生活が困難であるということに大きな問題があるとすれば、生活扶助についてどういう一体基準の考え方を持っていかなければできないかという点について、やはりそのお考えを聞かしていただきたいと思うわけです。また、率直にまだ検討していないということであれば、今後の一つお見通し等についてもはっきりさしていただきたいと思うのです。
  206. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 今の御質問、大へんこれはむずかしい問題でございまして、生活扶助の基準の問題が一つあると思うのでございます。これは国民の最低生活を保障するという基準でございますから、まあその国の、一つの国民一般の生活基準なり国民の所得等とも関連をいたすわけであります。私どもの方では、今の基準というもので一応、私ども最低基準が保障されているというふうな考え方でいるわけでございます。  それから、この教育扶助につきましては、これは今御指摘もございましたけれども、中学三年から下の方は小学校一年まで、各学年ごとにここに基準がきめてございます。で、教科書は、これは実費で一応全部出しまして、あとは学用品費、通学用品費、それから実験、実習、見学費というものを、各学年ごとに定めてあるわけでありますが、そのほかに学校の給食費、これは全部出しているわけであります。必ずしも私どもは十分とは考えておりませんけれども、しかし、この生活保護を受けていない家庭の子供でありましても、そういった費用が全部、今お話しになったように、高いものであるかどうかという点にもいろいろ問題があると思います。そういう点から考えまして、一応私どもの方できめておりますのは、そういう最低生活を維持する基準ということで、生活扶助の基準、教育扶助の基準をきめているようなわけであります。
  207. 松永忠二

    松永忠二君 もっとはっきりおっしゃっていただきたいと思います。私も一応承知しているので、小学校、中学校に、いろいろなその通学用品であるとか、実験実習の費用であるとか、学用品があって、それに加算額制をきめている、いろいろなものから。そうしてしかも、トータルとして山てきたものが人員として五十四万あり、その金が、教育扶助についていえば一億八千八十五万円である。そういうようなものを割っていけば、一人当り大体の金額として三百三十三円というものが出ておるわけなんです。この教育扶助では、結局やっていけないわけなんです。それからまた、教育扶助を与えるについては、そう無条件に与えているわけではないと私は思うのです。こういうような点を是正をしていかなければ、現実には長欠の生徒が発見できても、これを解決していくことはできないわけなんです。生活保護を受けている家庭ということに限ったことでなくて、ほとんど、生活保護は相当な基準を持っているので、その生活保護の中には入れない、ほとんどそれにすれすれの家庭の子供たちがやはり長欠児童としてここに出てくることは、御承知通りだと思う。だから、やはりこれを文部省で、要するに、この点をどういう一体法的にその規制をし、変えていくとか、あるいは行政の措置をやっていくとかということでなければ、現実問題としては、いつまで考えてみたところが、長欠児童の対策が十分打たれていかぬと私は思う。十分ではないけれども、出してありますというようなお話ですけれども、これはやはり具体的に検討が必要だというふうな段階ではないかと私は思うのですが、その点はいかがですか。
  208. 安田巌

    政府委員(安田巌君) まあ、出してありますということばかりでなくて、一応これで最低の基準としては足りるというふうな見解なんでありますが、今の予算上の問題になりますというと、あるいは給食等についても、いろいろ費用が違うところもございますし、そういうものを平均いたしますというと、額が下るような点もありますので、あるいはまた、教育扶助だけの一部補助のような場合には、また全部の額を出さなくても、自分のところである程度負担できるような計算になる場合もございますので、御指摘のような数字が出てくるのではないかと思うのであります。  なお、一般的に申しまして、生活扶助の基準にいたしましても、また生活保護の基準の内容でございますが、教育扶助につきましても、基準の問題は絶えず検討いたしまして、少しでもだんだんと上っていくようにと思って努力いたしておる次第でございます。
  209. 松永忠二

    松永忠二君 この点については、文部省でも、こういう問題については、厚生省との連絡をはかっていかなければ私はできないと思うのですが、現実に現在長欠の児童が発見された場合に、一体どういうふうな具体的に対策が打たれているのか。これは一つ、長欠児童が発見されてきたらば、現実にはどういう方法をもって具体的に解決されているのか。これについて一つ、厚生省の方からまずお聞きをしたいと思います。
  210. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 今、生活保護の問題についていろいろお話がございましたが、生活保護に該当するような家庭であり、それが一つの原因と考えられるような場合におきましては、もちろんこれは生活保護を受けるについての手順を進める、これが一つの道だと思うのでございます。もちろん、その過程において、社会福祉事務所が中心の役所でございますが、地域社会の方も協力することは、これは当然であると考えております。それから、そのほか家庭の事情等によりまして長欠の状態になっているものにつきまして、もちろん、これは学校側からそれを承知される場合もありましょうし、また児童委員ないし地域社会の方から発見する場合もあろうと思いますけれども、これは家庭の事情等を中心にし、あるいは学校の先生方も連絡をおとりいただいて、その原因となっているものを除去するように、ケースについて指導をし、あるいはこれが是正の措置をとるということを私どもはとらなければならぬと思っております。(「簡単に。」と呼ぶ者あり)  それから、もちろん御承知のように、長欠の中には病気等の原因に基いてそういう状態になっている者も少くなかろうと思うのでございます。たとえば、結核等につきましては、これは先日も委員会で先生からお話がありましたように、保健所等と連絡をとりまして、療養所等に入れる必要のある者につきましては、これはそれらの措置をとるし、その他必要の措置をとる。その他いろいろ身体的な欠陥るいは知能的な欠陥のある者につきましては、それに応じた措置をとることが、これは当然あり得るわけでございます。それらのことについては、さらにお尋ねがあれば申し上げたいと思っております。  簡単ということでございますから、これだけにしておきます。
  211. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました問題は、これはそうした長欠児童の多いということは、教師が家庭か訪問いたしまして、そうしているいる事情を明らかに突きとめて、それを児童委員の方へ連絡をとるということになりまして、大体わかっております。しかしながら、何と申しましても、一番問題は、これを救済する予算がどうして取れるかという問題であります。私の方の担当いたしておりますのは、要するに、給食費をうんと取ることと、それから学校用品その他を補給してやる、こういう問題でありますが、一番根本の問題は、今御指摘になりましたように、厚生省との要保護関係、そういう面については、これは御指摘になりました今までの費用じゃ少いじゃないかということも、私はうなずけると思うのであります。ですから、こういう面について、厚生省と緊密な連絡をとって、みっちり相談してみたいと思うのであります。  実のことを申し上げますと、私はそれだけの長欠児童がおろうとは思わなかった。ところが、調べてみるというと、実に驚いた。これは何とかせんければならぬというので、実はいろいろ予算の面で働いてみたんですけれども、本年度は間に合わないということでありましたので、何とかこれをやらんければ、教育の機会均等の趣旨にも反するわけですから、一生懸命一つ努力していきたいと思います。
  212. 松永忠二

    松永忠二君 この長欠児童が発見されて、市町村長に報告をされ、児童委員なり民生委員を兼ねた者が、その福祉事務所の所長と相談をして、そうして生活扶助、教育扶助をしていくというのが私は順序だと思う。その場合、生活扶助なり教育扶助の基準のワクというものがゆるやかであって、適用の範囲が拡大されてくれば、問題は結局、相当解決をされていくわけです。しかも、それは市町村の負担が二割を占めているという現状では、やはり市町村の財政が相当にワクをはめていることも事実であるので、やはりこういうところを相互に御調整をいただいて、現在の法を改めるなり、行政的な措置をするなりして、解決をしていかなければ、私は、現実に社会保障といっても、まず子供たちのそういうところからの社会保障を完備していかなければならぬ。これは一番の緊急なことだと私は思う。これについては、たとえば室長は、こういうことがたくさんあって、解決しなければできない問題だということをすでに御承知になっている。調査をなさって、こういう事務的なことが済めば、すぐこれに着手しようというくらいな、やはり青少年問題に対する考え方を持っていただかないと、問題の解決はできない。また、そういう機能を発揮するようなところでありたいと私は思うんです。ぜひ一つこの問題については、今後関係方面と十分御審議をいただいて、何らかその具体的な対策を打たれ、青少年問題の一つの問題として解決に進みますように、一つ御努力をいただきたいと思うわけです。ぜひ一つ、その点を要望申し上げたいと思うんです。  で、最後にお聞きしたいのは、文部省はこういうところをそのまま放置ができないというところから、夜間授業とか通信授業をおやりになっていると思うんです。現実にこういうことをやっておられる中学校の数というものは、一体どの程度あるのか、そういう点を一つお聞かせいただいて、そうして私は質問を終りたいと思うんです。
  213. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりましたその点は、実は私は、これはうかつな話だけれども、知らなかった。そうすると、いつか知らぬが、これはよけいなことになりますが、テレビで私と対談したいという人がありまして、NHKに行ったところが、その話が出まして、そんなにたくさん数ある。そうしてまた、中学あたりでも、夜間のいわゆるもぐり中学が開かれておるのかということで、いろいろ実は舌を巻いたくらいであります。そこで、これは何とかせんければならぬというので研究しかかったんですが、結局、中学が六十校あるそうです。生徒数が三千人です。それから高等学校の通信教育です。
  214. 松永忠二

    松永忠二君 中学校の通信教育をやっている所がある。
  215. 松永東

    国務大臣松永東君) 私の承知しておる範囲内では、中学はないと聞いております。
  216. 松永忠二

    松永忠二君 最後に、先ごろ卒業式のことが週刊誌に出ておりました。中学校の生徒が、夜ほんとうにわびしい、人の集まる中で、卒業式をやっている状況が出ている。同時に、また大学あたりの、ホテルでやられている盛大なパーティの様子もあわせて出ておる。  私はやはり、ぜひ一つ関係の方面に、こういうふうな問題、きょうは質問はいたしませんけれども、結核の児童の対策、あるいは身体障害、肢体不自由の子供たちの対策等については、やはりもう少し真剣になって取り組んでいかないと、現実にはどんどん取り残されていくというのが現状だと私は思う。そういう点については、厚生省あたりも、この前は結核について、学校保健法の実施に伴って、これについて結核を発見した場合には、十分な措置をとるようにという行政的な通達を出すというお約束もいただいたんですけれども、やはり一歩前進して、何とか教育扶助なり生活扶助の基準の問題を解決をしていただかなければ、現実には一歩も前進はできない。こういう点については、一つぜひ今後御努力いただき、室長も一つ中心になって、せっかく御努力いただきたいことをお願い申し上げて、終りたいと思います。
  217. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言もなければ、本連合審査会は、一応今回をもって終了することにいたしまして、文教委員の方で、なお御質疑のある場合には、後日、内閣委員会において審議の際に、委員外発言をお許しすることとして御了解願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  218. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  それでは、連合審査会はこれにて散会いたします。    午後五時三十六分散会