○
説明員(
梶井剛君)
外資導入の問題は今回初めて
考えたことではありませんでして、四年前に
アメリカへ参りましたときに、将来のことを
考えて
外資導入の道を開いておいた方が、
電話の拡充に対して好都合ではないかという
考えで、実は
ナショナル・
シティ・
バンク、チェス・
ナショナル・
シティ・
バンク、それから
バンク・
オブ・
アメリカ、三行を訪問いたしました。そうして
向うの重役の人々に
日本の
電信電話事業の
状況を
説明しまして、かつ
外資導入の希望のあることを
向うに述べたのであります。ところがその当時いろいろと話をいたしました結果、
向うは
アメリカの
電信電話会社の成績を見て、
日本の
電話事業の有望であるということに対しては何ら異存がない、しかしもしこれらの
商業銀行が金を貸すとするならば、大体において
期限は五カ年くらいにしてもらいたい、そして
日本の
政府が
外資に対して保証してもらう、支払いに対して保証してもらいたいということであります。しかもその保証の形式が、当時
日本の
政府の
預金というものが
アメリカの
銀行に
相当ありましたので、
条件としましては、
ドルで貸すのであるからして
ドルで返してもらうべきであるから、
ドルを
預金している
日本政府が、もし
日本電信電話公社が
ドルで返せない場合においては、
政府の
預金をもって返すというようなことを覚書をくれれば、快く貸すということを申したのであります。従って
帰りましてすぐ当時の
大蔵大臣の小笠原さんにその事情を
お話いたしまして、
向うの
要望に沿うようにこちらが
政府預金をもってやむを得ない場合においては払う。ということを
向うに申し出ることができますか、ということを
相談いたしましたのですが、どうも
政府としてはそれはちょっと困るという
お話がありまして、その話はそれきりに済ましたのであります。従って今回参りますときに、あらかじめそういう問題がありますので、
大蔵事務当局と事前に
相談をして参りました。その際に、
大蔵事務当局としては、今
外資を
導入するということによって、下手をするとインフレーションの傾向になるおそれがあるのであるからして、時期を
導入するとするならばいま少し延ばしてもらえないか、その
趣旨に対しては反対ではないけれ
ども延ばしてもらえないか、ということを申しておられたので、今度は積極的に
向うと
折衝することをやめまして、
外資導入の
方法並びにその
可能性につきまして、
向うの人に
意見を聞こうという
考えで、再び
バンク・
オブ・
アメリカと
ナショナル・
シティ・
バンクとを訪問いたしました。その際に
向うの
バンク・
オブ・
アメリカのエキセキューチブ・マネージング・ディレクター、つまり
日本でいう
専務取締役に当る人が言うのには、
最初はむしろあなた方は、そういうふうに短期の金を借りられるよりも、
長期の金を使われた方がよくはないか、
アメリカ電信電話会社な
ども償還期限は二十五年くらいの
社債を発行しておるから、だからあなた方の方もそういう
長期の
社債を発行されたらどうだろうか、そういうことであるならば、むしろこれは
銀行直接の
業務ではなくして、
社債発行の
事務を取り扱います
会社があるから、その方に自分が紹介するから行って御
相談になったらどうでしょうかという話がありました。その際に
向うの人が言うのに、しからば
社債の
金利として君
たちは現在
日本ではどれくらい払っているかと申しまするから、大体
公募債に対しては七分を払っているけれ
ども、
アメリカにおいてもし
社債を募集するとするならば、それよりも有利な
条件でないとわれわれは困るということを申しまして、大体六分くらいな見当で
社債が発行できるかということを聞きましたら、六分ならけっこうだということを申しておりました。ところがその翌日になりまして、ふたたび
向うがぜひ会いたい、そのときに私は
会議の
関係でいくことができませんでして、代りの人に行ってもらったのでありますが、
向うの言うのには、昨日そういう
お話をしたけれ
ども、よくよく
考えてみた結果、やはり
銀行の
業務として金を貸すというほうがよくはないだろうか、ということをまた
向うが言ってきました。昨日御紹介をしたけれ
どもそれは将来の問題として、もし今やるとするならば
銀行は貸しましょう、その場合に、これは前に
ナショナル・
シティ・
バンクも言っておったのですが、そのときには
金利が約三分であります。そうして
ナショナル・
シティ・
バンクの言っておったのは、
政府が
向うの
銀行に
預金している
金利が一分であります。でありまするからして、その二分をわれわれが犠牲を払えば、そうすれば大体借りられるということを言っておりましたのです。つまり
社債を募集するよりも
金利が安いという
一つの有利な
条件があります。しかしこの問題につきましても、
アメリカが今
金融情勢がやや梗塞しているので、もしその問題を実際に行うとするならば、もう少し時期を後にした方が、君
たちの都合はよくはないかと思うということを言っておりました。そういうようなわけでありまして、私
どもは、今回はすぐそういうことを
交渉に入ろうという気ではありませんでしたから、
向うの
意見を聞く程度にとどめて帰ったんでありますが、そういう
意味におきまして、
社債を募集する場合におきましても、また
借入金をする場合におきましても、十分にその
可能性があるということを認めてきたわけであります。その上、ニューヨークに参りましたところが
アメリカの
電信電話会社がちょうど
社債を募集しておりまして、その
金額は二億五千万
ドルでありまして、
金利は五分ちょっと下です。四分八厘くらいのところでして、
償還期限が二十五年くらいだったと思います。そうしてそれを発行しまして即日売り切れしました、そういうわけで
電信電話事業に対しては
アメリカの
国民は非常によく知っておりまするから、
電信電話事業に対する
社債または
借入金をする場合においては、
相当に
向うは好意的に理解を持ってやってくれるという
見通しがあるわけであります。そうして本
年度三十三
年度の
予算におきましては、もうすでに決定しておりますので、もし将来においてやるとするならば三十四
年度あるいは三十五
年度におきまして、
外部資金を必要とするならばふたたび
交渉いたしましてそれを実現することができる、こういう
見通しであります。