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政府委員(
小林與三次君) 「
昭和三十三年度
地方財政収支見込(概算)」につきまして御
説明申し上げます。確定的な詳細なものは、おくれて申しわけありませんが、税の問題がきまり次第、来週あたり提出いたしたいと思います。
大体、
歳出歳入の全体の見通しでございますが、
歳出に入ります前に、まず
歳入の方から申し上げた方がよろしいかと存じますが、大体、
地方税におきましては、
譲与税を含みまして五百二十五億の増でございます。このうち二十五億が
譲与税の増でございます。税の内訳は、税制の
改正案が確定次第、
税務当局から詳細御
説明申し上げることにいたしたいと思います。
交付税の方におきましては、総額が二千二百四十億でございまして、二百八十六億の増、これはもうすでに皆さん御承知の
数字だと思います。それから、いわゆる
地方交付金が十億で、五億の増。
国庫支出金が三千八十二億で、前年度より百二十六億の増でございます。ただ、この
国庫支出金につきまして少し問題がございまして、このほかに、これは国の
予算書をそのまま
拾つたのでございますが、国の
予算の面におきましては、なお三十四、五億の
数字が出ておりますが、これは
都道府県を
通り抜けて
団体にいく
補助金でございますので、
地方財政制度の上から一応はずすことにしております。要するに
各種団体に対する
補助金が従来、直接国から出てお
つたものが、いろいろ
補助金の運用を合理化するために
地方団体を経由する、こういう
扱いをとりまして、一部
都道府県を経由してやることにいたしましたので、
通り抜け勘定でございますので、一応はずしてございます。
地方債は四百五十億で、前年度より七十億
一般会計において減らすことにいたしております。その他、雑収入二十九億の増は、これは
学校生徒増に基く
高等学校の
授業料の
増加であるとか、あるいは
水利使用料の
単価引き上げ等に伴う増でございます。大体こういう形で、
歳入におきましては、総体約九百億の増でございまして、前年度より財政規模全体といたしまして九百億ふえております。一兆二千三百七十二億でございます。
この総体の
地方財政の
歳出規模は、従来、御承知の
通り、国の財政規模と比較いたしますというと、最近におきましては地方の方が多く、去年は約百億多かったのでございます。それが今度は、この
数字では、国が一兆三千百二十一億でございますから、七百四、五十億ほど財政規模は国の規模よりも小さくなっております。しかし、そのうち国の財政規模につきまして、御承知の
通りたな上げ財政調整資金とか、あるいはまた公債費に対する繰入金等ございまして、実質的な財政規模を比較いたしますというと大体とんとん、こういうふうに考えておるのでございます。こういう
歳入を前提といたしまして、
歳出面におきましては、まず給与費でございますが、給与賀が四千七百三十五億でございまして、二百九十九億増になっております。この給与費は、大体前年度に対する給与の増でございまして、そのうち新しい項目を申し上げますというと、管理職手当がございます。管理職手当と通勤手当、これは御承知の
通り新しく小、中学校の校長に管理職手当を支給することになりましたので、その分が八億九千万、これに伴いまして、府県市町村立の
高等学校あるいは大学につきましても、学校長、学部長等に同様な
措置をする必要があるので、八千五百万、それから通勤手当は、国家公務員に準じまして地方にもやる必要がありますので、それに見合う金をここに計上いたしたのでございます。
それからもう一つの問題は、国の制度に伴うものといたしましては、例の臨時職員を
一般の正規の公務員に振りかえるという国の問題がございまして、地方におきましても、もちろんこれに準じて
措置するのが適当であろう、こういう考え方で、国が臨時職員の二割に相当するものをやりましたので、地方におきましてもそれに見合う経費の振りかえをいたしております。これは、国におきましても財政的な特別な
措置をいたしておりませんので、財政
計画の中身におきまして振りかえ
措置を講ずることにいたしました。
その他、特に申し上げることはございませんが、去年より多少ふやしましたおもな項目を申し上げますというと、産業教育が今度振興されるために特に国の補助が出まして、
高等学校の特殊な産業課程が新設されます。それに対応いたしまして、当然教職員が必要でございますから、その教職員の必要なものをある程度
増加したい。それから常備の消防職員、これも相当ふえておりますので、ふえた
実情を見まして、消防職員も
増加いたしたいと、こういう考えを持っております。それといま一つは、
警察官の超勤の問題でございまして、
警察官の勤務の
特殊事情から考えまして、従来の超勤では非常に無理がある、こういうことがございまして、この超勤を三%ふやしまして、現在六%になっておるのを九%にいたしておりますが、大体そういう経費が目立
つたものでございまして、その他も当然増、こういう前提で組んでおります。確定版によりまして、一つこまかい資料を提出いたしたい、こういうふうに考えております。
それから、次の恩給退隠料の増は、これは技術的に必要な増を見ただけでございます。
それから次の「その他の消費的経費」、全体で七十二億ふえておりますが、そのうちの(1)は、補助負担金を伴うものでございまして、これはまあ国の補助負担金に見合
つた地方の増をうた
つたのでございまして、六十九億ございます。そのうちで目新しいものは、御承知の義務教育の教材費につきまして、今度新しく国庫負担制度をとることにして、
関係の
法律を
関係省において
提案するはずでございます。これにつきましては、負担制度をとる以上、地方もそれに対応する経費は当然見る必要がある、こういうものがございます。あとは生活保護費とか、児童福祉費とか、その他、
一般の経費の増に伴うものでございます。
それから(2)の補助負担金を伴わないものが、全体で三億ふえております。これは普通の単独の消費的な経費でございまして、人口増に伴うものとか、
法令改正に伴うものとか、そういうものがございますが、この
内容につきましては、一つ申し上げておきたいことは、国は旅費、
物件費等につきまして三%、一五%等の節減を全官庁について行なっておるのでございます。それに対応しまして、地方におきましても、やはり節減すべきものは節減する必要がある、こういう考え方で旅費、
物件費等につきまして二%の二十二億余りを
計画上減らしております。しかしながら、それは減らしつぱなしにするわけにもいきませんので、実際は庁舎補修費等が非常に満たらぬ経費がありましたから、まあかわり財源というわけではございませんが、二十一億余り別にそういう経費を立てまして、総体的にはプラス・マイナスないことにいたしておりますが、経費の使用の、合理的な使い方のめどをここに立てることにいたしたのでございます。
それから、次の公債費は八百二十八億で、六十一億の増になっております。これは従来、自治庁の資料で、七十億とか八十億とかいう
数字がいろいろ出てお
つたのを御記憶かと思いますが、これにつきましては、われわれは明年度の財政
計画では、むしろある程度必要な起債を増額する必要がある。減らすものは減らすが、ふやすものはふやす必要がある。こういうことで、
一般会計におきましては相当額の公債の増額を前提にいたしておったのでありますが、それが逆に七十億減と、こういうことになりましたので、そういうものの利子等の
関係で確定的に六十一億の増、こういうことに相な
つた次第であります。それにいたしましても、総額八百二十八億でございまして、
地方債の借り入れが四百五十億でございますから、約倍近く、借りる倍近い償還をする必要がある、こういう
数字になっておるわけでございます。
次の維持補修費でございますが、これは四百十九億で、百六十一億ふやしております。これは相当ふやしておりまして、これはかねてその中心は道路、橋梁の維持補修費でございまして、われわれの考えでは、積極的な建設改良の経費は別途必要でございますが、それにしろ、ともかくも現在ある道路をある程度維持していくためには、当然に必要な経費が要るのでございまして、これはむしろ職員につきまして給与費が必要であるごとく、道路につきましては砂利をかえさせる必要がある、これくらいの考え方でおる、いわば義務的な経費と見ていいと思うのでございます。そういうものを、幸いにいたしましてある程度ゆとりができましたので、百六十一億見ることにいたしたのであります。中心は道路でございます。
それから六番目の投資的経費は、全体で三千三百二億、三百四億の増になっております。公共事業費千九百二十七億、これは国の事業に全く伴う、失業対策事業費も全くそれに伴うものでございます。それから(3)「国庫補助負担金を伴わない建設事業費、」これは、いわゆる地方の単独の建設事業で、千三十四億で二百三十億ふやしております。これがまあいわゆる行政水準の充実と申しますか、確保と申しますか、そういう面に当る経費でございまして、前年度の財政
計画よりも実質的に中身がよくなる経費だろうと考えております。この二百三十億の内訳は、その中心は道路の建設改良に置きたいと考えております。これは国におきましても新しく道路整備の五カ年
計画を作り直すわけでございまして、それに見合
つて地方の道路の整備も当然はかるべきものでございまして、それに対応する
計画をこちらとしては設けたい、それが中心の一つでございます。それとあとは都市的な施設としてかねて主張されております屎尿とか下水処理とかといったような都市的な環境施設の整備、それからなお、すし詰め教室解消の問題で、
一般的に六三制の整備費が不備なんでありますが、大ていのものは国の補助に見ることにして、ここは従来学校の敷地というものが補助の対象にもしておりませんし、
計画上もはっきりしていなかったのであります。これは補助の対象にはなりませんでしたが、われわれといたしましては、実際要ることは明瞭でございますので、起債を運用する場合には、やつぱり敷地も必要なものは見る必要があるのじゃないか、こういう前提で考えておりまして、財政
計画上も一部ここに計上いたしたいという考えでございます。この全体の
数字の内訳は、実はまだ道路の
関係で建設省と
数字の内訳が確定的にきま
つておらないのでございますが、これも不日きまりますれば、それによって具体的に
数字の内訳を申し上げたいと存じます。
大体、以上が大勢でございまして、大観いたしまするというと、要するに事務的な経費と、
政府の施策に伴う経典を除きまして、地方として従来満たらなかった経費をふやすことができたというのは、この維持補修費の百六十一と、それから単独の建設事業の二百三十、こういうことになろうと存ずるのであります。まあ維持補修の問題は、われわれといたしましては準義務的な経費と考えるべきものたと存じているのでございます。
なお、この備考についてちょっと申し上げたいことがあるのでございますが、この財政
計画を作る場合に、大蔵省といろいろ折衝の過程において時間がかかった問題点でございまして、その備考に従来なかった注釈がついております。2において「
歳入については、三十二年度
地方財政計画との対照上は、本表に掲げるもののほか、市町村民税所得割においてなお約四十億円か見込まれる。」、これは、要するに
地方税が多いとか少いとか、いろいろ世間で報道されました問題点の一つでございまして、この財政
計画につきましては、従来からわれわれといたしましては、
歳入はつまり標準的な収入を基礎として標準的な行政を考える、つまり、みな基準税率を中心にして
歳入を見積ることにいたしておるのでございます。その他、この標準率を超過する課税とか、法定外の課税とかというものは、それぞれの個々の
団体が特殊の
事情で採用する問題でありまして、それをわれわれの財政運営の中心になる
計画で追つかけていくのは筋が違う、こういう考え方で、基準財政を中心に考えてきておったのでございます。そこで、ただ住民税の問題につきましては、従来いわゆるオプシヨン・ワンとオプシヨン・ツーをどう見るかという議論がございましたので、いわば妥協的に五〇%ずつの
扱いで従来財政
計画上見て参っておったのでございます。しかしながら、住民税につきましては、御存じの
通り準率の制度を設けることにいたしまして、われわれといたしましては、準率を頭に置いて市町村が税をきめる、むしろなるべくひどいものはそれに近づける、近づけるために特別
交付税も配るというような
措置をと
つておりますので、やつぱり
計画上は準率を基礎にして計上すべきである、これが自治庁の考え方だったのでございます。しかし、事実上まあ準率に全部近づけずに、準率以上の課税があることも事実でございまして、そのうちこの四十億円余りは、前年度の
計画におきましては、先ほど申しました
通りオプシヨン・ツーが半分あるものとして見込んでおりましたので、その比較の上においては、なおそういうものがあるということを明らかにしておこう、こういうことでこの注釈がついたのでございます。こういうことで大蔵省と完全に話を一致させたわけでございます。
それからもう一つ「
歳出については、現下の経済情勢及び
地方財政の
状況等にかんがみ、極力経費の効率的使用、節減等をはかり、これによって生ずる財源及び上記の税収等をもって、赤字の解消、
地方債の繰上償還、減債基金の積立その他に充当し、財政の健全合理化を推進するものとする。」、これも従来こういうものにない善き方でございますが、これも相当大蔵省と議論のあった問題点でございます。要するに、国におきましては財政調整の資金というものを一部作
つてリザーブをし、それに対応することが、地方の財政
計画の上においても考えることができないかどうか、こういう問題でございまして、われわれの考えといたしましては、財政
計画の性質からいいましてもそうでない、それからまた、事実ごらんの
通り、
地方財政の実態から見まして、それをリザーブするだけの財政的な余裕がとうていあろうとは考えられない。もし、そういうものを、これも個々の
団体の問題でありまして、そういうものをもし
計画に書くくらいならば、現に赤字額とか債券の償還額とか、そういうものも書かなければおかしいのでありまして、そういうことは、財政
計画の性質上適当じゃないということで、
計画には載せないけれども、それぞれの
団体の財政の運営につきましては、当然それぞれの
団体の
実情に応じてこういう点は考慮してしかるべき問題でございますので、その点を明らかにし、自治庁といたしましては、こういう方向で強く行政指導をやろうという考え方でおるわけでございます。この
歳入と
歳出における二点が、従来
政府部内で相当議論があった問題でございますが、こういう形で問題を解決し、地方の指導に当りたいと、こういうふうに存じておる次第でございます。