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1958-02-13 第28回国会 参議院 地方行政・法務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十三日(木曜日) 午前十時三十八分開会  委員氏名   地方行政委員    委員長     小林 武治君    理事      大沢 雄一君    理事      小柳 牧衞君    理事      加瀬  完君    理事      久保  等君            伊能 芳雄君            西郷吉之助君            佐野  廣君            館  哲二君            成田 一郎君            本多 市郎君            松岡 平市君            占部 秀男君            鈴木  壽君            中田 吉雄君            成瀬 幡治君            松澤 兼人君            岸  良一君            森 八三一君            白木義一郎君   法務委員    委員長     青山 正一君    理事      大川 光三君    理事      一松 定吉君    理事      棚橋 小虎君    理事      宮城タマヨ君            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            井上 知治君            大谷 瑩潤君            小林 英三君            重宗 雄三君            最上 英子君            吉野 信次君            赤松 常子君            亀田 得治君            藤原 道子君            山口 重彦君            後藤 文夫君            辻  武壽君     —————————————  出席者は左の通り。   地方行政委員    理事            大沢 雄一君            小柳 牧衞君            加瀬  完君            久保  等君    委員            西郷吉之助君            佐野  廣君            館  哲二君            成田 一郎君            松岡 平市君            鈴木  壽君            森 八三一君            白木義一郎君    法務委員    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君    委員            最上 英子君            亀田 得治君            藤原 道子君            後藤 文夫君   政府委員    警察庁長官   石井 榮三君    警察庁刑事部長 中川 董治君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君    常任委員会専門    員       西村 高兄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○銃砲刀剣類等所持取締法案内閣提  出) ○遺失物法等の一部を改正する法律案  (内閣提出)     —————————————   〔地方行政委員会理事大沢雄一君   委員長席に着く〕
  2. 大沢雄一

    委員長代理大沢雄一君) これより地方行政法務委員会連合審査会を開きます。  本日は地方行政委員長が所用のため欠席されましたので、委託を受けました理事の私がこの会議を主宰さしていただきます。どうぞよろしく御協力をお願い申し上げます。  銃砲刀剣類等所持取締法案  遺失物法等の一部を改正する法律案  以上、二案を便宜一括して議題に供します。  両案につきましてこれより質疑に入るのでございますが、質疑は、なるべく法務委員の方々に優先して許可いたしたく存じまするので、この点あらかじめ御了承をお願い申し上げます。  それでは、質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
  3. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 この法案の第三条に「変装銃砲刀剣類」ということがある。この「変装」というのはどういう意味ですか。
  4. 中川董治

    政府委員中川董治君) 銃砲または刀剣類というもの銃砲刀剣類以外のもの、たとえば、つえ、その他のものと誤認させる方法変装されたもの変装銃砲刀剣類考えておるのであります。具体的に申しますと、刀剣つえという形において、外部から見ればつえと見えるような形において、刀剣の役に立つもの変装刀剣類である。ピストルというものを、外部から見ればピストル以外のものである、こういうふうな形のもの変装刀剣類であると、こう解釈いたしております。
  5. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 その変装ということの判定基準ですがね、ここに一つ説明のうちに例が出ておるようでございますけれども、その基準をお示しを願いたいと思います。
  6. 中川董治

    政府委員中川董治君) 判定基準は二つあろうと思うのですが、実体銃砲刀剣類であるということが一つ要件であります。実体銃砲刀剣類であるけれども銃砲刀剣類以外のものと見える、これが変装要件であろうと思います。それから変装銃砲刀剣概念に当てはまらないものは、銃砲そのもの実体変装しないで、銃砲刀剣を何かの箱などに入れて隠して持っているものは、銃砲刀剣類そのもの自体変装しておりませんので、他の法令等によるところの、隠して持っている、こういう概念に当てはまるのであって、変装刀剣類には当てはまらない、こう解釈しているのであります。
  7. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 それでは一つ例を申しまするが、ブックケースにあいくちなどを入れて、そうして、一見、書類か本のような格好にしておるというような場合は、これは変装ということになるのですか、どうですか。
  8. 中川董治

    政府委員中川董治君) その態様によって結論は異なろうと思うのでありますけれども、あいくち自体については何ら工作を加えていない、あいくち自体については何ら工作を加えていないで、そのあいくちをブックケースという入れものに入れている。入れものに入れている状態においてはブックケース考えられる。入れものとあいくちとの間にそれぞれ独立性がある。こういう場合におきましては、銃砲刀剣類を隠して持っているという、こういう概念に当てはまるのでありまして、変装銃砲刀剣類ではないと解釈しております。ところが、あいくちというものの、あいくち自体と一体をなすさやの形を、ちょうどブックケースに作る場合は、ほとんど不可能に近いと思うのですが、刀剣以外のものに見える形にする。たとえば、扇子に見える形にする、こういう場合は変装刀剣類考えられるのであります。繰り返して申しますと、そのもの自体に密着している場合には変装刀剣類である。中に入れてある1銃砲刀剣類独立している。中に入れているものであるけれども、これは、隠して持っているのは変装刀剣類ではないと解釈したいと思うのであります。
  9. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 現行銃砲刀剣類等所持取締令によると、第十三条で、変装銃砲刀剣類所持禁止されておるようでありますが、今度の法案では禁止明文がないようでありますが、これはどういうことになるのか、なぜ明文をはっきり置いておかないのか、その点を。
  10. 中川董治

    政府委員中川董治君) 棚橋委員指摘通りなんでありますが、現行法独立条文で、現行法の十三条にあるのでありますが、「銃砲又は刀剣類は、これを変装して所持することができない。」、こういう現行法規定しておるのでありまして、独立禁止規定を設けたのでありますが、これを独立禁止規定を設けるのも一つ方法なんですけれども変装という概念をよりはっきりさせるために、変装した形の銃砲刀剣類というふうにした方が、ただいま御指摘のような場合において、隠して持っている場合、変装したという概念がよりはっきりする、こういう考え方に立ちまして提案いたしました。法律案三条許可の例外、三条の場合は、本文では、左の各号の場合を除いては所持してはならない、左の各号に該当する場合は所持して差しつかえないと、差しつかえない場合に許可または登録を受ければ差しつかえないのであるというのが同条第一項第三号、四号の規定なんですが、それから変装した形のものを除くということによって、それを所持してはならない旨を明らかにする。言いかえれば、銃砲刀剣類変装してしまえば、すでにそいつは所持禁止される銃砲刀剣類であるという概念をよりはっきりさせたい、こういう趣旨で、現行規定におきましては、十三条という独立規定禁止条項を持っておりましたのを、今度は一般的な禁止規定の中に挿入することによって、その概念をよりはっきりさせたい、こういう意図のもとに挿入したのであります。ところが、実際問題としては、禁止の内容を、より概念をはっきりしたいという趣旨に出た以外にございませんので、変装刀剣類禁止されるという点につきましては、現行規定と同様でございます。
  11. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 現在、第四条または第六条によって、許可を一たん受けたあとでそれを変装して、変装銃砲刀剣類としたようなもの、そういうもの所持禁止されるのですか。
  12. 中川董治

    政府委員中川董治君) 一応変装でない形において許可を受けた、その後工作を施して変装すれば、その三号、四号は除かれますが、三条違反と相なります。従いまして所持禁止され、許可取り消しの原因になります。
  13. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 そうするというと、初め受けた許可というものは、変装すれば失効するということになるわけですか、その効力失効するということになるのですか、その点はどうなんですか。
  14. 中川董治

    政府委員中川董治君) 失効というのと実体的にはほとんど変らないのですけれども、これを正確に申しますと、変装したときにおきまして三条違反になる、この法律三条違反になる。従いまして法律案十一条の適用を受けるのであります。十一条の適用を受けまして、公安委員会は取り消す、こういう行政行為をいたすのであります。取り消されますと、取り消されたことに基いて失効規定が働いて参りまして、取り消されたことによって失効すると、こういうことに相なるのであります。
  15. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 そうすると、そういう場合には、一々変装した場合には取り消さなければならぬということになるのですが、それでは変装してそれを届けることもないでしょうし、どういうふうにして知るわけですか。
  16. 中川董治

    政府委員中川董治君) 変装して非合法に持っている、隠して持っているという場合には、見つけるというチャンスもない場合もあると思うのですが、許可を受けたものにつきましては、行政庁といたしましてときどき検査する規定もございますし、現行法にもございますし、改正法にもあるわけでございますが、そういうことによって行政機関発見に努めるというのが、一つ作用でございます。同時に、すべての法律がそうでありますように、関係国民の方におかれまして法律順法精神に基いて禁止された事柄を順法するという御協力によって、変装するという状態を防いで参りたい、こう思うのでございます。
  17. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 発見に努むると言いますけれども、それは全部にわたって発見するということは、おそらく不可能なことであろうと思いますし、そうなれば、自然に発見もできないで、残るものができてくる。それよりも、変装した場合には、前の許可は自然に失効するということにした方が、全般的に取り残しのないように取締りができることになるのじゃないですか、この点いかがですか。
  18. 中川董治

    政府委員中川董治君) 御意見一つの御意見だと思うのです。そういう、法律上当然効力がなくなると解しておりましても、そういう法律の形にしておりましても、変装したやつを持っていこうという考えを持っている人たちは、なるべく見つからぬようにやるという、こういう作用がどうしてもありますので、同様な結果を来たすのじゃないかと思います。それで、私どもといたしましては、許可証または登録証を持っておるということ、実態的にそういうことによって明らかにする方が、より明確になるという点もございますし、それから、何らの行政確認的な行為がなくて効力がなくなるということについては、ややあいまいな点もございますので、取り消すという行政行為をすることの方が、かえって明確になろうかと考えておることが一つと、それから、先ほども申しましたように、変装刀剣を隠し持ったという観念をより明らかにしたい。こういう趣旨に基いて、以上申しましたような規定の仕方をする方が、より正確になるのじゃなかろうか。言いかえますれば、当然失効するといたしておきましても、やはり見つからなければ持ってこないという点は、大体同様の作用をいたすのじゃなかろうか、こう思うのであります。
  19. 大川光三

    大川光三君 私は、まず、銃砲刀剣類取締り基本的観念についてお伺いをいたしたいのであります。本法の第一条によりますと、銃砲刀剣取締りのための目的が、危害防止にあることを明示されておりますが、かような警察取締りというものは、できるだけ基本的人権、自由の保障を尊重して立法をすべきものかと考えるのであります。申すまでもなく、国民は思想及び良心の自由を憲法に保障されております。また、われわれが、この意味からして、銃砲刀剣類を愛好するということは、いわゆる良心の自由であります。さらに、憲法においては、財産権は侵してはならないということが明示されておる。しかるに、本法の中で、たとえば第二十五条、二十六条等の条文を見てみますると、この国民憲法で保障されておる自由と権利をきびしく制約されておって、しかも、手続がきわめて煩瑣であるという感じがいたすのでありますが、この点について、いわゆる政府の基本的な態度ないし観点についてお伺いをいたしたいのであります。
  20. 中川董治

    政府委員中川董治君) 基本的態度といたしましては、御指摘のごとく、法律案第一条に規定いたしておりますように、危害予防上必要な規制を行うものである。ところが、危害予防上必要な規制につきましては、財産権保護その他国民自由権保護という立場を十分に尊重いたしまして、かかる権利を制限するについては、公共福祉のためにやむを得ざる危害予防上の最小限度にとどめる、こういう立場を貫いたのであります。現行規定におきましても、そういう立場で立案されたのでございますけれども、それをしさいに検討いたしますと、さらに財産権保護した方が、よりいいのではなかろうか、こういうふうに考えられる点もありますので、現行法中、たとえば現行法は、法令に違反すれば、公安委員会が没取できる旨の規定があったのでございますけれども、没取できる規定の「没取」という言葉を廃止いたしまして、そういう危害予防上の見地によって、違法に所持した銃砲刀剣類につきましては、提出を命ずる、こういう形にいたしまして、その場合におきまして、善意第三者、たとえばその所有者であって、持っておる者と所持者が違う場合であって所有者がそういうことについて全然知らなかったような場合におきましても、現行規定におきましては、完全に没取できる規定であったのでありますが、この立案に当りましては、善意所有者保護に関する規定を入れたのであります。それから、現行法に基きましては、かかる刀剣銃砲等につきましては、没取し切りであったのでありますが、そういう形のものを持っておるということ、そういう殺傷用に供するものを持っておるということは、危害予防上差しつかえがありますので、提出を命じますけれども、それを危害予防上差しつかえないものについて、売却その他をするならば、目的が達成できる、こういうふうに考えられますから、そういうふうに財産権保護善意第三者保護は、現行法よりも、さらにこの新法の方が、保護を徹底した、こういう考えをもちまして現在の構想を作ったのであります。でございますけれども財産権保護ないしは善意第三者保護については、常に細心の注意を払って、現行法以上に保護に努めて参ったのでございますが、また、ここに規定いたしておりますところの銃砲刀剣類は、その機能におきまして、人を殺傷するということの機能を持った器具でございますので、その意味合いにおきまして、危険でございますし、それから、その危険が、過般来行われております暴力団の暴力ざた等の場合におきまして、乱用されておる向きがございますので、こういう点については、危害予防上の趣旨を徹底いたしまして、言いかえれば、公共福祉被害者保護ということを念頭に置きまして、規制を整備した点も確かにあるのでございますが、規制を整備するという点は、危害予防上、最小限度にとどめる。ところが、危害予防上、最小限度にとどめまして、危害予防上の目的を達成できる限度において、なるべく、関係者財産、その他の権利保護については十分に注意深く規定する。結論的に申しますと、財産権、その他の自由権保護公共福祉ということを、各条項ごとに注意深く、調和をとりまして立案し、政府として提案されたという趣旨を御了察いただきたいのであります。
  21. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 ちょっと関連したいのですが、今の問題について、この法律によりますと、個人が護身上、銃砲刀剣類所持することはできないようになっておるのですが、ところが、現在のように暴力行為が横行しておる場合に、やはりいつ何どき、どういうことがあるかわからぬので、身分の護身のために何か持っておきたい、こういった必要があると思うのですが、いかがでしょうか。それは、そういうものに対しては、やはり全般的にこの法律によって所持禁止されることになるのですか、どうですか。
  22. 中川董治

    政府委員中川董治君) この提案されましたこの法律案以前の現行法立場におきましては、護身という観念は認めていないのであります、現行法は。と申しますのは、ある者がそういう凶器を持っておって、それに対応して、被害を受ける者が護身のために持つ、こういうことになりますと、また相互にけんかが行われる、こういう結果を来たしますので、護身という観念は、現行法では持っていないのであります。ところが、護身という観念を全然また放擲してしまうことも適当でございませんので、その器具本来の性格がそれぞれ、たとえば刀剣で申しますと、美術愛好、骨董的の趣旨が多くある。日本文化として保存に適する。こういうものであれば、所持はもちろん合法である。その合法に所持されたという目的は、それぞれ有益な目的を持って所持が認められるのであります。そういう有益な目的所持が認められたものを、刑法に定める正当防衛緊急避難の場合はもちろんのこと、そういった場合において護身のために使用するという点は、この法律も認めておるのでありまして、正当な理由がある場合においては携帯、運搬してもよろしい。こういう趣旨は、その正当な理由の中に美術愛好とか、観覧とか、そういった趣旨はもちろん入っておりますけれども加害者がまさにこっちへ来る、こういう場合において、それを護身にまくら元に置いておくということは、何ら法律禁止するところでない。その意味におきまして、棚橋委員の御指摘護身は、この法案で認めておると思います。根本的に、何か暴徒があるから、それを護身するために、ふだん護身のために持たせるという観念をとりますことは、かえって被害を多くするという見地におきまして、これは護身のためだから許可してくれという形は認めていないのでありまして、それぞれ、護身以外の目的によって許可または登録が認められて認められたもの護身のために用いるということを認める。そういう点におきまして、危害予防上の見地と、いういろいろ自分の財産権生命権保護するという見地を調和したつもりでございます。
  23. 大川光三

    大川光三君 次に、私は、先ほど棚橋委員から御質疑になりましたのに引き続きまして、条文に基いての疑問点伺いたいのであります。  まず、刀剣類製作者使用人所持という点について伺います。本法の第三条第一項第七号によりますると、「文化財保護委員会の承認を受けて刀剣類製作をする者が」その「製作目的に従って所持する場合」、こういう規定がございますが、この「製作目的に従って」という意味は、どういうことをさすのであるか。これと関連しまして、その他の第一項各号には、常に「業務のため」ということをずっと書かれておる。あるいは第一条第一項の第五号、第六号、第八号、第九号というのは、皆「業務のため」とあるのですが、第七号につきまして、「製作目的に従って」と、こうありますので、その両者の区別を御説明いただきたいと思います。
  24. 中川董治

    政府委員中川董治君) 御指摘のように、第七号は、「製作の百的に従って」という文字を用いておるのでございます。これを「製作目的に従って」と用いずして、そのもの業務のために所持する場合とした場合、その差異いかん、こういう御質問だと解するのであります。結果的に申しますと同様だと思うのであります。同様であるにもかかわらず、他は、「業務のため」と用い、ここだけ「製作」と用いた理由いかん、こういうことになろうと思うのですけれども、これは上の方で「製作をする者」という言葉を使いましたのですから、その製作目的に従った方が、より文章としても映りがいいということと、それから、「製作目的に従って」ということは、おおむね業務のためでありましょう。ところが、それを業務と言えると思うのですけれども、ほかに業務を持っている方、たとえば、ほかに、文筆業なら文筆業という業務を持っているけれども、その方が文筆業業務に従事しているけれども、たまたま、刀を作るということについて趣味を持っていらっしゃる。その趣味は大へんりっぱな趣味であって、その趣味に従って、たまたま一年に一ぺんとかやられる場合において、業務と言えるかどうか、業務と言えようと思うのでありますけれども、ちょっと言いにくい点もありますので、「製作目的」にした方がより具体的であろうと、こう考えたので、「製作目的」という文字を用いたのであります。そういう意味合いを兼ねて「製作」という文字を用いるのでありますが、大川委員指摘のごとく、業務と書くことと大差はございませんので、そういう感じを出すという意味で「製作」という文字を用いたにすぎないのであります。ところが、そういう製作をする者の使用人になりますと、これは「製作目的に従って」やらないで、使用人となりますと、やや間接になりますので、「業務」と言った方がより適切でありますので、使用人の場合は、七号の場合も「業務」という言葉を用いたのでございます。そのニュアンスをちょっと表わした程度でございまして、結論は一緒かと思うのであります。
  25. 大川光三

    大川光三君 今、御説明がありました「製作目的に従って」という意味は、それでわかりました。しかし、追加して説明されましたように、第三条の第二項のうちに、「前項第五号から第十号までに掲げる者の使用人がそれぞれ当該各号に掲げる者の」、今度は「業務のため所持する場合」と言って、ここでは一括して全部、製作者使用人の場合も「業務のため」と言っております。条文の関連から見ますと、言葉が一致せぬような気がするのですがどうでしょう。意味はわかりますよ。意味はわかりますが、条文だけ読んでみると、製作のためという場合と、使用人に限っては「業務のため」、これは不一致があるような感じがするのですが、いかがでしょう。
  26. 中川董治

    政府委員中川董治君) これは、御指摘の点、私どもは実は認めまして、その点も考えたつもりでございますが、ここで「業務」と言わないで、製作と言うのも、一つ方法かと思いますけれども、そういたしますと、「業務」と「製作目的」が違うということが、やや明白になり過ぎる。それでここに「業務」と言ってやった方が、全体のつり合い上からもいい。ところが「製作目的」が「業務」であるということをにおわす意味において七号はわざわざ「製作」を用いて、それを一括して「業務」と呼んでいる。従って、ここで言う「業務」は、他の法令の用いる「業務」よりもニュアンス的にも広いということをわずかでございますが、大体、結論は一緒かと思いますが、そういう気持を表わすために、最後でまとめて言うときには「業務」と言って具体的に言うときには、なるべく具体的に即応して書いて参った。そういうやや気持を表わしたという程度で、結果においては大川委員指摘通りであろうと思うのであります。
  27. 大川光三

    大川光三君 次に、競技用の拳銃の所持についてお伺いいたします。  第六条によりますと、国際競技に参加する外国人に対する許可の特例が設けられましたが、日本人の場合は、どの規定によってこれを使用するかという問題であります。外国人に対しては第六条で許可ができる。ところが、日本人でこの国際競技に参加するものに対しては、どの条項によっていこうかという問題なんであります。
  28. 中川董治

    政府委員中川董治君) お答えいたします。日本人の場合におきましては、三条第一項各号に掲げる場合におきましては、日本人はいずれも合法的に所持できるわけでございます。三条各号に掲げる場合によって該当し、合法的に所持できる者が競技に参加する、こういう建前をとったのでございます。そういう立場をとることが、国際競技のまた趣旨にも合致する。御案内のように、国際競技にはアマチュア規定というものがございまして、日常そういったような事柄をやっている人、それがいろいろ国際的な競技をする。こういう建前をとっておりまして、もっぱらそういうことを職業的にやって、その職業によって自分の生活をしているという者は、国際競技の通常欠格者になっているのでございます。従いまして日常日本の国内の法規に基いて所持できない者が、国際競技のためだけに持てるということになりますと、ややそのアマチュア規定の精神にも合致いたしませんので、日本におきましては、日本の国内法令に基いて合法的に所持できる者が国際競技に参加する。各国とも、おそらく同様だと思うのでありますが、外国におかれましても、外国の当該国、たとえばオーストラリアならオーストラリアにおいて合法的に所持できる者が、選手としておいでになるかと思うのですけれども、外国で合法であっても、わが国では合法ではない場合がございますので、それで今度お願いいたしまして、第六条の規定を置いたのであります。従って、いずれの国も、当該国において合法的に持ち得る者が国際競技の選手として出場する。それで日本の選手は、日本の国内法に基いて、すなわち、第三条第一項各号によって合法的に所持できる者のうちから選ばれて選手になる。これがまあ国際競技のアマチュア規定の精神にも合致いたしますし、それで、外国と日本国の国内法の違いに基く調和を六条でとったのでございます。
  29. 大川光三

    大川光三君 そこで、この第三条規定ですが、これは結局、次の各号というのは、これは例示的な規定になるのですか、あるいは限定的な規定かという問題なんです。と申しますのは、今御説明のように、なるほど、国際競技にのみ参加するために銃剣等所持許可は与えないのだということなんですけれども、第六条の場合には、特に国際競技に参加する外国人についてはこういう方法で許すのだと、こう書いてある。ところが、第三条のどれを見ましても、国際競技に参加とかということは出てないのですけれども、一般に、これはしろうとが見ますると、全然、国際競技参加のために拳銃は所持できないのだということが一応思われるというので、ここに例示されておる「法令に基き職務のため所持する場合」とか、あるいはまた警察官とかいう場合でしょうが、その他、試験用に供するためとか、ここに各号に例示されているもの、これを見てみると、ここから競技に参加者が出るのだというようにはどうしても受け取れないのですけれども、やはり第六条に対しては、何かそれにタイアップした、国内的な競技参加に対する許可規定というものを設けなきゃならぬのじゃないかという感じがするのですが、いかがでしょうか。
  30. 中川董治

    政府委員中川董治君) 大川委員指摘のようにお考えになるのは、一応ごもっともでございます。私どもそういうように理解して一応考えてみたのですが、ずっと広く考えて参りますと、やや、ちょっと話がでかくて恐縮でございますが、国際競技というものは、それぞれの国家間が、それぞれの国内法に基いて合法的に持てる、こういう人たちのうちから当該国の選手として選んでくる。ところが、合法的には、ある国では合法的で持てる。たとえば、アメリカ合衆国においては、州によって違いますけれども、アメリカ合衆国のカリフォルニア州では、合法的に持てる者から選手が来る。その場合に、アメリカ合衆国のカリフォルニア州では合法的に持てるけれども、日本では合法的に持てぬという場合がある。その場合の調和だけをはかるために六条を書いたのでございまして、すべて選手の属する国において合法的に持てる者が競技をやるということが、国際競技のアマチュア規定の精神にも沿うものですから、その国の法令の異なることにギャップを補うということが、国際競技の最もフェアプレイ的な意味を発揮するゆえんでもありますので、国際儀礼上にも合致しますので、この六条の規定を設けることによって調和をいたしたのでございます。
  31. 大川光三

    大川光三君 次に、許可基準について伺います。第五条に関する質問でございます。この第五条の欠格事由といたしまして、第三条第一項の規定に違反した者、「第三条第一項の規定に違反して罰金以上の刑に処せられた者」は、いわゆる許可が得られないという欠格条項がございますね。そうすると第三条第一項の規定以外の違反中、偽わりの方法によって第四条もしくは第六条の規定による許可を受けて、そうして罰せられた者というものは、欠格条項にならないという理由伺いたい。
  32. 中川董治

    政府委員中川董治君) この点は、先ほど大川委員指摘のごとく、この法案制定の根本精神と関連いたすわけでございますが、この法案は、御指摘のように危害予防上の規制をする、こういう立場でございます。ただし、危害予防上の規制はするけれども、それを最小限度にとどめよう、危害予防上という公共福祉に合致する限度において、国民自由権はできるだけ制限しない、こういう見地をとったことに伴う結果でございます。すべての他の法令もそういう立場を大体とっておるのでございますが、許可ということによって留保された場合において、その許可を受けないでやったもの、すなわち、この場合でいいますと、三条一項の規定に違反したもの、それは一ぺん許可をとるべきにかかわらず、とらないで取り消されたものが、またあくる口に持ってくる、こういうことになりますと、許可を留保した精神に合致いたしませんので、第五条のごとき欠格条項は、他の法令もほとんど例外なく設けておるのでございます。それ以外に何か例外を設けるということになりますと、今中したような危害予防上の原則に最小限度にしぼるべきであるという、こういう根本精神のもとに、次の六号ということによって危害予防しのことは考えられる。それ以外のことは他の刑罰法令で別綱に、刑法、その他の刑罰法令で論ずべきものである。たとえば、詐欺の方法によってとったもの等につきましては、もちろん、非常に不適音なことでございますけれども許可の精神としては、許可を受くべきにかかわらず受けなかったということと、許可基準との関連において考えるのに、若干相違がある。そういう根本精神に従って、そういう詐欺の方法によってとった場合においては、この法律でも罰則を設けているのであります。この法律並びに他の法令に基く刑罰法令の活用によってやっていくと、こういうふうにいたしたのであります。果してしからば、たとえば六号以外に、他の法令によって処罰を受けた者を欠格条項にするのも一つ方法ではないか、これも立法論としては一つ方法ではございますが、暴行の罪、傷害の罪、あるいは殺人の罪に処せられた者は、こういう銃砲刀剣は持てないというのも一つのこれは立法精神でもあります。これも危害予防見地から考えてみますと、ある一時にはまことによくないことでありますけれども、障害の罪をやった、ところが改悛の情が顕著であって、そういうことについては危害が全然ないということもある。レア・ケースとしてはあり得るわけであります。そういうことについても許可の欠格条項にするということは、危害予防上の目的は大いに達成できると思いますけれども国民自由権との関連においては、この詐可を、危害予防上の原則を最小限度にとどめたいという根本精神に基いてかくのごとき規定にいたしたのであります。
  33. 大川光三

    大川光三君 その立法の精神はわかりますけれども、今御説明の分を裏返して考えてみますと、すなわち、その罰則規定から考えますと、第三条違反の者も、いわゆる偽わりの方法によった、詐欺方法を講じて許可を得た者も、同じく三年以下の懲役または五万円以下の罰金が、罰則規定においては第三号違反も詐欺行為違反も同じ制裁が加えられております。ところが、欠格条項においては甲乙をつけている。そこに法律の体裁からいっても、いかにもこれは片手落ちの感があるのでありまして、その法の目的危害防止の点からいえば、私はこんなことを遠慮せずに、一つの欠格条項にともにすべきであって、罰則規定のある以上、欠格条項に別に取り扱っても何ら差しつかえない。むしろ取り扱わないことが、何か均衡を失しているという感じがいたすのであります。重ねてこの点お伺いいたします。
  34. 中川董治

    政府委員中川董治君) 御指摘の点、ごもっともな点もあるのでありますが、三条一項の違反と他の刑罰法令の違反との相違の点につきましては、私、先ほども申し上げましたが、他の法令中、偽わりの方法許可登録を受けた、こういう点になりますと、三条一項違反と密着する点は御指摘通りであります。密着はいたしますけれども——これはちょっと理論を整理したのでありますけれども、密着はいたしますけれども三条一項違反ではない。従って、許可を受くべきにかかわらず受けなかった行為とは違う。それで、あとは政策論になってくるのでありますが、偽わりの方法その他をやられるという行為は、公共福祉上不適当な行為でございますので、この法律に基いて罰則は同様に処罰をしておるわけでございますけれども行政行為という立場から考えて参りますと許可基準は全く行政行為という立場でございます。行政行為という立場からのみ考えて参りますと、偽わりの方法許可したという場合におきましても、やはり許可を受けた者も不適当でございますけれども許可した者も不適弱な点もある。そういう点を勘案し、三条違反そのものずばりと、直接関係はございますが、観念を整理いたしまして、三条一項に違反したものだけにこの欠格条件をしぼるという観念を徹底する。まあ違反方法を奨励するわけではございませんが、そのことにつきましては刑罰法令として規定して参り、行政行為と刑罰作川との関係をそこに正確に整理する方が、やはりこういった国民の利害に関係することでございますので、まあ正確に整理して参りたい。君らは神経巣弱のせいだという御批判もあろうと思いますが、そういうふうに正確に整理していくことが、国民権利保護するゆえんであると、こう考えたのでございます。
  35. 大川光三

    大川光三君 同じく欠格条項の点で伺いますが、本法によりますと、精神病者、麻薬または大麻の中毒者、心神耗弱者、これが欠格条項になっている。ところが、正式に許可または登録を受けた後に、その所持者が精神異常を来たした。あるいは他人に危害を及ぼすおそれがあるというような場合に、どういう処置を講じ得るかということを、条文の上で御説明いただきたいのであります。
  36. 中川董治

    政府委員中川董治君) お答えいたします。十一条の規定をごらんいただきたいと思うのでございますが、許可という行政行為を行うときにおきましては精神に異常がなかったのでありますけれども、その後、第五条第二号に該当する事実が発生するに至った場合におきまして、これは許可を取り消す、こういうことによって危害予防上の目的を達成いたしたい、こういうふうに考えております。
  37. 大川光三

    大川光三君 その点はよくわかりました。それから今度は新たに新設されます所持の態様の制限、すなわち第十条についてお伺いいたします。まず根本的に、許可または登録を受けた銃砲刀剣類について、その所持の態様について.、あるいは携帯とか運搬とかいうものに制限を設けたという根本の理由をまず先に伺いたい。
  38. 中川董治

    政府委員中川董治君) 根本の理由につきましては、まあ国務大臣から提案理由説明で申されたのでありますが、具体的に申し上げます。お配りいたしました資料のうちの八十七ページ以下に掲げてございますが、現行法令に基きましても、提案いたしました三条と同様の規定がございます。こういうことによって、たとえば暴力団がなぐり込みに行く前におきまして、これを、刀剣銃砲を持っておるという点につきましては、福岡舟等裁判所、東京高等裁判所におかれましては、それは現行銃砲取締令に触れるものである、こういうようなことは違反行為である、こういう判決がありましたことと思うのでありますので、われわれ取締り官憲といたしましては、そういう場合におきましては、これをこの判決の趣旨に従いまして取締りをして参っておったのであります。ところが昨年の十月四日、最高裁判所第二法廷で、それは法令の解釈を誤まったものである、右高等裁判所の判決は、法律の解釈を誤まったものである。こういう趣旨の判決がありまして、現行法令を、私ども最高裁判所の判決の趣旨に基きまして、そういうなぐり込みに行く、すなわち刑罰法令に触れる行為の一歩前段階のような行為をすることは、現行所持取締令では罪とならない、こういう解釈をなさったのであります。判決文の精神に基きまして、最高裁判所の判決に従うのは当然でございますので、最高裁判所の判決は、立法によって解決するなら別であるという趣旨言葉もございますので、国会の御審議を得て、立法によって、これはそういうような事項は、公共危害予防上大へんよろしくない行為であると、私ども考えましたので、通常社会生活上、先ほども出ましたように、業務その他の場合、ないしは美術愛玩の場合、さらに刑法の緊急避難正当防衛に触れる場合、言いかえれば護身用の場合、こういったことは、もちろん正当の理由であるけれども、そういう正当の理由をこえて所持するということは、危害予防上、適当でないという趣旨を明確にすることによって、この危害予防目的を達成しない取り締りその他の点についても完璧を期そう、こういうように危害予防上の立場から規制をいたすということが相当だろうと考えまして、御指摘の十条及び二十一条の規定を提案いたした次第であります。
  39. 大川光三

    大川光三君 引き続いて、それに関連して伺いますが、この携帯または運搬ということで、その他正当の理由があれば差しつかえないという、正当の理由ですね。御承知の通り正当の理由ということはいろいろな法律に出てきますけれども、本条における正当の理由の、一つ基準があれば基準を伺っておきたい。
  40. 中川董治

    政府委員中川董治君) 根本精神といたしましては、共同生活を営んでいるその社会におきまして、一般的な生活環境、常識から、相当にそういうことは許さるべき行為であると、こう理解されるものは、ことごとく正当な理由があると解すのであります。従いまして、この法律に掲げておりますところの用途に用いる場合は、もちろん正当の理由でございます。それ以外に、いろいろ社会生活に従いまして、いろいろなものを観覧する、あるいは骨董的に観覧する。居合術という社会生活上許された方法がございますが、それにいわゆる銃砲または刀剣類を用いる。その他、そういう所持している以上、修繕とか研磨とか、そういうことのために持って歩くことは、もちろん正当な理由である。たとえば、所持している者が、所有権移転のために売ったり貸したり、借りたりというために見せて歩くということも、もちろん正当な行為である。そういう社会社活を営むについて、健全な常識上許される行為は、ことごとく正当な理由であろう、こういうふうに解するのであります。従いまして、逆に申し上げますと、何が正当な理由がないのかということになりますと、刑罰法令に触れる場合は正当な理由がありません。そのほかに、刑罰法令に触れなくても、刑罰法令に一歩前段階の行為、高等裁判所の判決にございましたように、いまだ殺人に着手していない場合、殺人ということが行われそうな状態にある。すなわち、両方がいろいろ感情上対立したような状態が明らかにわかるような場合におきまして、武器等をやたらに持って歩く、こういうことは、正当な理由がないと解すのであります。
  41. 大川光三

    大川光三君 これに関連してもう一つ伺いたい。先ほど棚橋委員の御質問に関連してですが、許可を受けた刀剣護身用としてまくら元に置くということは、ここに言う正当の理由があると見てよろしいのですね。
  42. 中川董治

    政府委員中川董治君) 御意見通りでございます。
  43. 大川光三

    大川光三君 そこで、もう一つ問題を進めまして、たとえば、暴力団の甲が他の暴力団乙よりなぐり込みを受けたというような場合に、乙がこれを反撃するために、自分の許可を受けた拳銃をとっさに持ち出して、これに応戦したというような場合、これはあるいはいわゆる正当防衛の範囲に入らぬかもしれませんけれども、けんか、闘争行為として、少くも他から危害を受けるという場合に、とっさに、自分の許可を受けておる拳銃を持ち出す、これは、いわゆるここに言う携帯になるかならぬか。
  44. 中川董治

    政府委員中川董治君) 御質問の場合に、刑法の正当防衛緊急避難に当る場合は正当な理由であると考えられるのであります。当る場合に接着する場合は、正当な理由と解していい場合もあろうと思うのでありますが、多くの場合は、甲という暴力団がありまして、甲という暴力団がなぐり込みをかけようとしておる。それに対して、なぐり込みをかけられるであろうと推定される乙という暴力団が、徒党を集めて、お互いに拳銃、刀剣類を集めて、人をそそのかして対峙している、こういう対峙した形において持っているという形は、正当な理由がないという場合に多く該当しようと思います。
  45. 大川光三

    大川光三君 私のお尋ねするのは、とっさの場合という言葉を使ったように、あらかじめそれに備えて、あるいは対峙する意思をもって準備的に携帯するのは、それはいかぬ。とっさの場合に、何の用意もなしにおったところへ突然なぐり込みをかけられた、そこでとっさに自分が許可された刀剣を持ち出すという、その行為が、果して携帯ということになるかどうか。
  46. 中川董治

    政府委員中川董治君) 大川委員のお用いになりました、とっさの場合という言葉に対して、私は、正当防衛緊急避難に接着する場合ということでお答えしたつもりですが、接着すると認められる場合に限り正当な理由である。ところが、とっさの場合なりと称して、広くなりますと、危害予防上困りますが、正当防衛緊急避難に接着する場合は、正当な理由があると解して差しつかえないと思います。
  47. 大沢雄一

    委員長代理大沢雄一君) ほかに御質問はございませんか。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 第一条、これは旧法でも同じ規定になっているのですが、刃渡り十五センチメートル以上の刀あるいは五・五センチをこえる飛び出しナイフ、寸法をきちっときめてあるわけですが、これは、一センチでも、あるいは〇・五センチでも欠けておれば、これは自由という解釈になるわけですが、その点は、実情からいってそういうことでいいんでし上うか。
  49. 中川董治

    政府委員中川董治君) まず亀田委員に申し上げたいのですが、現行法もそうでありますし、改正法もそうでありますけれども、「刃渡十五センチメートル以上の」という形容詞のかかりますのは、「刀、剣、やり及びなぎなた」でございます。それから、あいくちにつきましては、このメートルの文字がかぷりません。「並びに」という文字の使い方から当然そうなります。それから、「こえる」という方は、飛び出しナイフのみにかかるのでございます。それで、御指摘のごとく、あいくちは別として、飛び出しナイフ並びに刀、剣、やり及びなぎなたは、長さを正確に規定いたしておるのであります。従いまして、御指摘のごとく、これに〇・一センチでも足りなければ該当しないということに結果としては相なるのでございます。そうすると、立法政策上不適当じゃないかという御指摘であると解するのでありますが、この二条の根本精神は、およそお互いの国民生活の間に存しますところのこの種のもののうちで、この概念の整理といたしましては、本来殺傷の用途に供せられる形態のものという概念の整理にいたしたのであります。これ以外に、本来殺傷の用途に用いない場合、たとえば、はさみとか、かみそりとかいう、本来は他の用途に用いるけれども、あわせて殺傷にも用い得るというものは、一応この法律から除外いたしたのであります。そうすると、本来、殺傷の用途に用いられるものであって、そういう形態をしておるものの日常について勘案いたしますと、このメートルの制限で十分なのであります。しこうして、このメートルの制限未満のものにつきましては、その危害予防上の程度——程度でありますけれども、程度が比較的少ない、ボーダーラインになりますれば、非常にニュアンスの差が出てくるのでありますが、そのボーダーラインは何かによって切らないと、解釈の恣意によって制限が左右されるということも、また他に弊害を伴いますので、ボーダーラインケースにつきましては、御指摘のようなこともあろうと思うのでありますが、一応このメートルを正確に規定いたしたのであります。しかし、あいくちについては、社会通念しあいくちと解されるものが一応固定しておりますので、これは制限をしなくてもそう差しつかえあるまいと、こう考えたのであります。ところが、こういうものに該当していなくても、所持そのものは、この二条の定むる概念に当てはまらなければ制限外でありますけれども、唯一の例外は、ただ一つの例外は、二十二条でございます。先ほど申し上げましたように、二条の概念に当てはまらなければ、この法律規定の対象にいたさないのでありますが、二十二条に限り、あいくちに類似すると思われる刃物であっても、これは、所持は合法でございますけれども、正当な理由ある場合以外は携帯してはならない、この趣旨とするところは、不良少年と目される者等が大きなナイフを持つて飛び歩いておる、その大きなナイフがあいくちに類しておる、こういう場合におきまして、これを運用いたしておるのであります。この二十二条を、亀田委員指摘の、今の制限を正確にしたことに伴う、これはあいくちの場合でございますけれども、唯一の例外でございます。あとは〇・一センチでも足りなければ刀と解することができないという結果となるのでございますが、われわれ運用して参りまして危害予防止の見地から考えまして、著しく困るという点がないものですから、現行法規定通り、この法律におきましても一条を規定したのであります。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 あまり極端な制限をすると行き過ぎの弊害もあるという立場を大いに強調されるわけですが、そういう考え方を持っておられることは、私は非常に尊敬するのです。しかし、それは、こういう問題だけでなく、あらゆる警察の運営について私ども希望するところです。しかし、今その議論をしようという段階じゃありません。ただ、刀とか剣とか、やりとか、こういうものは、別に生活上必要なものじゃないですね。生活上は明らかに。台所で使うほうちょうとか、はさみとか、こんなものは当然必要です。事柄自体から見て、生活上別に必要でないものですから、その制限というものはもっと強くあっても差しつかえないじゃないか。法律の対象にすること自体は、もっとはっきり対象にして、ただし許可を要する、許可をして行けばいいわけですからね。そういう点で、多少私は割り切れぬ感じがするのです。こんなものはなくたってちっとも私ども差しつかえないわけですからね。そして、いろいろな文化財の関係とか、資料の関係とか、特殊な立場で、ぜひ必要だというものは、これは許可していくわけですから。だから対象自体は、もう少し広げていいじゃないか。そうしませんと、十四センチのものでしたら自由だ、これでは第一条の目的に沿わぬのじゃないか。むしろ私はそういう心配をするのですがな。どうでしょうか。
  51. 中川董治

    政府委員中川董治君) 危害予防上の立場からの御意見でございますが、傾聴すべき言葉でございますが、実際われわれ運用して参りまして、刀剣、やり、なぎなたと考えられるものは、おおむね十五センチメートル以上なのでございます。十五センチメートル未満の刀剣、やり、なぎなたというものはあまりないのであります。そういう事実関係が一つと、それから、従前にいろいろ犯罪関係、その他によって見て参りますと、多く用いられるのが十五センチメートルをこえるものでございますので、将来、十四センチメートルの刀が一ぱい市場に出るときになって、危険害予防上因るこういうことになる、あるいは改正をお願いするということも将来なきにしもあらずと思いますけれども、今日、社会生活の実態に即して法律規定するのが相当と考えましたので、現在市場その他においてあるということの状況等も勘案いたしまして、十五センチメートル以上で切るということが、先ほど言った精神と亀田委員指摘危害予防上の精神にそうもとらなくて実行でき、そうして実益といたしまして、取締り官憲が非常に正確に把握できるという、こういう実益もあることでございますので、こういう長さの制限をいたしたのでございます。
  52. 一松定吉

    一松定吉君 ちょっと伺いますが、たとえば、私が刀剣を持っておる。それが美術品として価値ある刀剣類かどうかということは、私はわからない。そういう私の持っておるものは、一応第十四条の規定によって、文化財保護委員会にこれを鑑定をしてもらって、そうして、これが美術品として価値ある刀剣類だったら、それから登録手続をやると、こういうことですか。
  53. 中川董治

    政府委員中川董治君) 御質問の通りでございます。
  54. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、文化財保護委員会の規則というものはもうできたのですか。
  55. 中川董治

    政府委員中川董治君) 文化財保護委員会規則は、この十四条以下の第三竜に掲げる規定現行規定にもございますので、現行規定に基く規則はございます。ところが、今度法律が改正になりますので、その現行規則に基く規則が、この法律施行とともに、新法に塞ぐ規則にかわることになろうと思いますが、現在、文化財保護委員会規則は現行規定に基いて存在するわけであります。
  56. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、できていないのですか。新法に基くところの、第十四条の文化財保護委員会規則というものは。
  57. 中川董治

    政府委員中川董治君) 形式的にいえばおっしゃる通りでございます。
  58. 一松定吉

    一松定吉君 こういうものを一緒に出してくれぬと、これは運用の規定だから、規則が……。それはいつできるのですか。
  59. 中川董治

    政府委員中川董治君) 率直に申しまして、第三章に掲げる事項は、現行規定をほとんど改正を加えておりませんし、それから改正を加えるという必要が認められなかったものですから、改正を加えていないものですから、新法ができましても、この文化財保護委員会規則は、若干の文字整理をするということにとどまろうかと思いますので、その意味におきましては、新法に基く文化財保護委員会規則は、案ができておるということになろうかと思いますが、所管が文部省において行なっておりますので、文部省で、その点のお申し出がございますので、必要に応じましてお答えいたしたいと思います。
  60. 一松定吉

    一松定吉君 もし現行法文化財保護委員会の規則によるならば、この新法による文化財保護委員会規則の改正ができないものは旧法によるということを、どっかに書いておかなければいかぬのじゃないか。新法の銃砲刀剣類取締法は旧法と違うのだから、新法の中にそういう規定があるなら、新法によるいわゆる文化財保護委員会規則というものは定められたものだと思われるのに、旧法の文化財保護委員会規則を準用、適用するということであれば、そういう趣旨がどっかになければ、すぐに当てはめるわけにいかぬだろう。
  61. 中川董治

    政府委員中川董治君) この法律案の付則で、旧令時代にした行政処分は新法に基いてしたものとみなすという規定があるのでございますが、規則までこれによって読むのは多少無理でございますが、規則といたしましては制定する段取りにいたしたいと思いますが、施行につきましては、この法律案では四月一日から施行すると、こういうふうになっておりますので、絶対、施行に間に合うように規則を作る、こういう用意を持っておりますので、その点には間隙がないように絶対できる自信を持っておるのであります。
  62. 一松定吉

    一松定吉君 それは一つそれとして、なるたけ早くそういう手続をしてもらって、それを、新法の規則を制定するときに、委員会の参考資料として出してもらわぬと、この本法を審議するときに、運用に関する委員会規則はあとでこしらえてわれわれは知らぬというようなことは、それはよくたい。
  63. 中川董治

    政府委員中川董治君) 御意見通り提出いたします。
  64. 一松定吉

    一松定吉君 それは一つ早急にやらぬと……。それができないとすると、この次、法案の審議というものはできぬということになる。それは一つ十分に考えてもらわぬといかぬ。  それから、その次にちょっと尋ねるが、美術品であるかどうか——美術品として価値ある刀剣類であるかどうかということは、文化財保護委員会の鑑定によるのだが、その鑑定の標準は、どうしてきめるのかね。美術品として価値あるかどうかということは、委員会の委員考えで、これは美術品として価値がある、これは美術品として価値がないというようなことを委員会の職権にゆだねるわけかね。標準はあるのかね。
  65. 中川董治

    政府委員中川董治君) この法律案におきますと、文化財委員会の権限になっておるのでありますが、文化財保護委員会登録審査委員の……。
  66. 一松定吉

    一松定吉君 何条。
  67. 中川董治

    政府委員中川董治君) 申し上げます。十四条第三項でございます。
  68. 一松定吉

    一松定吉君 それはわかっている一が、そこで私のお尋ねしたいことは、審査委員会の鑑定に基いて美術品たる価値あるかどうかきまるとあるのだが、その文化財保護委員会の鑑定の基礎になるような具体的の事実はないのかね。規則できめないのかね。
  69. 中川董治

    政府委員中川董治君) 十四条各項にいろいろ規定しておるのでありますが、ことに五項に、同項の鑑定の基準等は文化財保護委員会規則で定めると、こういうふうに相なっておりまして、文化財保護委員会規則で定めるのであります。
  70. 一松定吉

    一松定吉君 それだから同文化財保護委員会の規則ということが早急にこの法案を審議するに必要なんだ。それを出さぬで、これだけ出しておいて、あとで運用のときに勝手な規則をこしらえちゃ、この運用のいかんによって、この法律の精神を没却するようなことにならぬとも限らぬのだから、それを一つ早急に出してもらいたい。委員長から特に一つそれを提案者の方に要求して下さい。それが出ないと、これだけ審議して、これが通過しても、文化財保護委員会の運用規則というのはわれわれ知らない。勝手に政府がこしらえておいて、これを運用していくということになってみると、このせっかくこしらえたものが、この委員会の規則によって、いかようにも左右されるということになるが、それはよくない。こういうような法案を出すときには、委員会のそういう規則の草案をやはり一緒に出して、そうして審議の目標にしなければいかぬと私は思うのですが、どうですか、政府は。
  71. 中川董治

    政府委員中川董治君) さっそく提出いたします。
  72. 一松定吉

    一松定吉君 まあその程度にしておきましょう。あまりいじめるようになっちゃいかぬからね。早急に出して、その上でまたもう一ぺん一つせんといかぬね。
  73. 大沢雄一

    委員長代理大沢雄一君) じゃ一つ政府に、必要の細目に関する委員会規則を至急に提出して下さるようにお願いいたします。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  74. 大沢雄一

    委員長代理大沢雄一君) 速記をつけて。  次に御質問ございませんか。遺失物法も議題にいたしております。
  75. 大川光三

    大川光三君 遺失物法等の一部改正法律案、これに関連して、まず遺失物拾得に関する民法の改正についてお伺いをいたしたいのであります。  御承知の通りに、民法第二百四十条は、「遺失物ハ特別法ノ定ムル所ニ従ヒ公告ヲ為シタル後一年内ニ其所有者ノ知レサルトキハ拾得者其所有権ヲ取得ス」というように規定されております。すなわち、公告後一年を経過することが、拾得者がその物件の所有権を取得する要件といたしておるのであります。この所有権の原始取得の要件である一年の期間というものは、他の原始取得の規定、たとえば埋蔵物発見の場合の期間六ヵ月などとも、均衡をはかって定められたものであると思量されるのでありますが、従いまして、主として警察と行政面の都合で、かような民法の規定を軽々に短縮したり改正するということは妥当を欠くというように思われるのでありますが、この点に関して政府の御見解を伺っておきたいのであります。
  76. 中川董治

    政府委員中川董治君) 大川委員指摘のごときことは、民法という国民生活の根本を規定した法律に関することでありますので、軽々にその改正のことを行うべきでないということは、全く同様に考えておるのであります。遺失物法が制定されましたのは明治三十二年でありまして、民法はもちろんそれより前でありますが、それで、そういう長い歴史を持った法律によって運用しておりますので、そういう事実も相当尊重しなければなりませんので、この法律の改正につきまして、今日までいろいろ検討を加えて参りましたのも、そういう大川委員指摘のごとき趣旨によって軽々に改正すべきでないという、こういう趣旨からおそくなった次第でございます。警察の便宜のために改正すべきでないことは当然でございます。ところが、実態を明らかにいたしまして、実態がどうなっておるか、その遺失物関係の実態がどうなっておるかというこの事実関係を基礎にして、改正するかどうかということを論ずべきものだと思うのであります。かりに、事実関係で、国民生活の角度からいって一年が正しいと思うならば、警察が幾ら迷惑しても、改正すべきではないと思います。  ところが、事実関係についていろいろ調べて参りますと、お配りいたしました資料でごらんいただきたいのですが、四十四ページでごらんいただきたいのですが、印刷物でお配りいたしました資料の四十四ページの第六表について申し上げたいのでありますが、現行遺失物法及び民法二百四十条の規定に基きまして、拾得者が、物件を拾得した者はまず第一に落し主、法律では所有権返還を請求することができる者と書いてあります、俗っぽく申し上げますと落し主でありますが、落し主に返す。落し主に返すことができなかったような物につきましては、警察署長に持ってくる。こういうのが現行法でありますが、署長は公告する。公告してから一年を経過した後に、落し主がわからぬ場合におきましては、拾得者に所有権が移る。これが現行法であります。これで運用して参りまして、公告後一カ月以内から十二カ月までの間に落し主に渡したケースを記載したわけでございますが、そうすると、落し主の永久にわからぬものは、一年をたってもわからぬものは別といたしますが、わかったものについては、おおむね公告後一カ月以内に九一%強というものが落し主がわかっちゃうのであります。それから三カ月もたてば、九九%わかっちゃう。これは足していけば九九%になるのですが、三カ月もたてば九九%というものが返っちゅう。六カ月もたてば一〇〇%弱というものが返ってしまう、こういうことに相なるのであります。従いまして、六カ月後はほとんど落し主に返るものはなくて、いたずらにだれも利用しないで倉庫に眠っている、こういう結果を招来いたしておるのであります。たとえば、こうもりがさという遺失物があった場合におきまして、こうもりがさという遺失物が落し主がわかるのが、大体一カ月程度でわかつちゃう。三カ月もたてば大部分、九九%わかっちゃう。六カ月もたてば、わかるべきものはわかっちゃう。あとは、そのこうもりがさはいたずらに倉庫に眠っているというのが現状でございます。それも、どうせ最後には拾得者に交付するのでありますので、そのこうもりがさを倉庫によけい半年眠らせないで、拾得者に所有権を移して、物件の活用をはかるということが、拾得者が権利を取得するということについては大へん実益がある。拾得者に対しては大へん実益があるのですが、遺失主がそのために権利を消滅するということになっても因るのでありますが、困る遺失主は現在はほとんど〇・何%しかない。〇・何%でも困るというのは、これは大へん所有権の保護上困るじゃないかという説でございますけれども、これが一年だということに伴うおそくなっている点もございましょうから、これを勘案いたしますと、残る六カ月間というのは、行き過ぎて申しますならば、ほとんど意味なく倉庫に眠っておるこうもりがさ、こういう実情ということを勘案いたしまして、民法改正の件につきまして法務当局と十分に打ち合せましたところが、法務当局でもいろんな角度から、何といいましても基礎法でございますので、慎重に御検討願ったのでありますが、慎重に御検討願った結果、そういうむだに近い倉庫での眠り方は、物件の保護見地からも、拾得者の権利保護見地からも、適当でない。それで、民法の全体の関係もございますが、埋蔵物が六カ月でございますので、六カ月よりも短かい数字というのは適当でございませんので、六カ月という数字にすると、こういうのが改正案の理由でございます。  他面、この資料で申しますと、外国の立法について若干調べたのでございますが、二十ページ以下におきまして、今のことにかかる外国関係の資料でございますが、ハワイ等、九十日すなわち三カ月、六カ月と、こういうケースがあるわけです。外国の立法例で、日本の一年に対応する数字が、三カ月であったり、六カ月であったりする。最後のドイツの方は一年であるけれども、落し主がドイツの場合は一年という点は、日本の法律と一緒なんですけれども、拾い主が、拾得者が初めから保管できると、こういうような規定等もございますので、いろいろ、あれやこれや外国の事情等、並びに日本の事情等も勘案し、ただし、外国の事情ばかりによっても適当でございませんので、日本の遺失物の処理の実態を基礎にいたしまして、今度民法の規定の「一年」とあるを「六月」にいたした次第であります。
  77. 大川光三

    大川光三君 遺失物の実態から取得時効を短縮したということは、大体了承いたしましたが、しかし、この民法の一部改正については、特に法制審議会等にも意見を徴せられたのでしょうか。それとあわせて、早晩民法全体についての再検討をしなければならぬと思いますが、その一環としてこれが改正されるなら問題はないと思うんですけれども、将来の民法の再検討にこの二百四十条の一部改正が支障を来たさない確信があるのか、ということをお伺いいたします。
  78. 中川董治

    政府委員中川董治君) ただいま大川委員指摘の点は、責任当局が法務省民事局でございまして、民事局に御研究いただいたんですが、私、民事局長といつも相談に行っておるので、その間のことを申しますと、民事局におかれましても、大川委員指摘趣旨によって十分検討されまして、法務省内部のことでございますが、あそこに法制審議会という重要な機関があるのでありますが、そこでいろいろ民法を根本的に御研究のように私ども伺っております。ところが、こういった問題につきましては、法制審議会の財産権委員会というのがあってやっておられまして、財産権委員会とも十分打ち合せなさってこの改正は相当であるという法務省の御結論をお出しになったということを、私、法務省といつも連絡に参っておりますので、承わっております。
  79. 大川光三

    大川光三君 時間の関係もございますので、要点を、条文について二、三簡単に伺います。  本法の第二条の今度は三が追加されました。その「第二条ノニ」によりますと、警察署長の廃棄処分ということが規定されておるのでありますが、このいわゆる廃棄処分にするということと、第十五条の受取人がない物件の所有権は当該警察署の所属する地方公共団体に帰属するというこの規定とは、抵触しないんだろうか。いわば受取人のない物件については、地方公共団体にその所有権が移転する、帰属しますね。だから、その公共団体が自由に廃棄処分にするとかいうことは、自由だと思う。ところが、そこに至らない前に、警察署長がいまだ所有権の帰属が明瞭でないものについて廃棄処分ができるのは、どういう法律根拠から出てくるかということです。
  80. 中川董治

    政府委員中川董治君) 御指摘通り、この法律十五条におきまして、遺失主が見つからぬ場合及び遺失主が権利を放棄した場合であって、しかも拾得者が権利を放棄した場合におきましては、受取人がないということに相なりますので、十五条によって都道府県に財産権が、所有権が移ります。それは御指摘通りでございます。  ところが、「第二条ノニ」に規定いたしましたのは、そういうもの考えていないのでありまして具体的に申しますが、遺失物の中においては、腐り切ったくだものがあるわけであります。腐り切ったくだものも、今の理論を適用いたしますと、腐ったまま一年余り置いておく、こういう結論になるのでございます。それから、よく菜っぱのしおれたのがありますが、そういったのが、それを一年何カ月も保管する、そうして所有権が出てくる、こういうことに相なるのであります。それで、現行法はかかる規定がないものですから、おしかりを受けるかもしれませんけれども、くだものが腐り切って買い主がない、売ろうと思っても買い主のない物等につきましては、条理に基いて廃棄せざるを得ない状態になる。そういうことはあまり不適当になるわけでありますので、要件を明確にいたしまして、「売却スルコト能ハザリシ物件又ハ売却スルコト能ハズト認メラルル物件」、こういうものに限り廃棄を認めようという趣旨であります。だから、念頭に置きますのは、腐ったくだもの、それから菜っぱでも、だれも買い手がなさそうなもの、こういうものを念頭に置いておるのであります。
  81. 大川光三

    大川光三君 廃棄物について、実際問題を例示されましての御説明ですと、なるほどという感じがします。しかし、この条文自体を見てみますると、「売却ニ付スルモ売却スルコト能ハザリシ物件又ハ売却スルコト能ハズと認メラルル物件」という、その売却することあたわざりし、もしくは売却することあたわずと認めらるる物件というその認定権は、警察署長が持つわけですね。そうすると、この条文をたてにとってやれば、すべて売却することあたわざる物件として相当嵩価な物でも署長が自由に廃棄処分ができるというようにも考えられまして、警察官の廃棄処分の権限というものを、非常に強い権限をこの条文が与えておるように見える。そこで、お説のように、やはり腐った菜っぱであるとかいうことであれば、そういうことをカッコ入りで例示しておいてでもしなければ、ただ条文の上では、非常な権限が警察署長にあると、こう考えられるのですが、いかがですか。
  82. 中川董治

    政府委員中川董治君) すべて共通な問題でありますが、条文を乱用すればいかぬことは申すまでもございません。しかし、この点は厳正に実行いたさせたいと思っております。前段の「能ハザリシ物件」は、売却に付してもだれも買い手がなかった、こういう物件であります。後段の「能ハズト認メラルル物件」は、客観的にだれが見てもというので、主観によっての判断ではいけないから、だれが見てもこんな物は売れないと、こういうふうに認められる物件で、「認ムル物件」といたさなかったのであります。客観的に認められる物件は廃棄できる、こういうことでございますから、警察署長が乱用をいたしますと、この規定に違反するはもちろんでございますけれども、警察規律にも関係いたしますので、厳正に実行いたしたいと思っております。
  83. 大川光三

    大川光三君 そこで、警察の乱用は厳に戒めると。もちろんそういうことはないんだという前提に立ってのお考えであろうと思いますが、むしろ、いわゆる客観的に売却することあたわずというその認定について、あるいは公安委員会の同意を得るとか、という方法で、その廃棄処分権の乱用を規制するという必要はないでしょうか。
  84. 中川董治

    政府委員中川董治君) 警察署長の内部監督は厳正にやりたいと思っております。手続の方法等につきましては、内容がまさに腐りそうだという場合もありますので、厳正に監督組織は考えて参りますけれども、一々になると腐る関係等もありますので、そういう点を念頭に置きまして、監督組織の強化の点ということにつきましては、御指摘通りにいたしたいと思っております。
  85. 一松定吉

    一松定吉君 関連して。今の政府委員の答弁、よくわかるが、そういうことよりも、そういう心配のないように、一つ何か、真の権利者が自分の権利を主張しようと思うときに、警察署長の処置に対する何か異議の申し立て方法規定する必要はないか。そうすれば、今のような、大川委員と同じように僕も心配してるんだが、そういう乱用は防げるわけだから、それをわしは最も必要だと思うんだが、何か条文、つまり一行加えりゃいいわけだ、異議の申し立ての方法をね。そうすれば、今のような弊害は取り除くことができる。それがないとすると、あなたがいかに警察署長にそれを法令趣旨に従ってやれやれと言っても、必ずしもそうでない、勝手なことをやらぬとも限らぬから、そういうときにはそれに対してこれを是正する手続方法一つ、何か抗告の申し立てをするとか、異議の申し立てをする、さらに再審査の申し立てをするという一条を設けた方がいいと思うが、そういうことはどうですか。
  86. 中川董治

    政府委員中川董治君) この法律の権限に限らず、警察署長及び警察官の権限で乱用するという点につきましては、これは大へんわれわれ警察幹部として注意しているわけですが、そういう点については部内で厳正にこれを監督するということが一つでございます。ところが、いろいろ公安委員会組織その他もございますし、それから関係者等の申し出、そういった点もありますので、そういったことによってこれを解決していく、さらに徹底を期して参りたい、この点は同様でございますが、このことだけというよりも、これはほとんど乱用の状態考えられないことでございますので、全般的な問題として厳正に、そういったものについては、いろいろそういった異議の申し立てについては、これは快く受けつけると、こういうふうにかねがねもいたしておりますので、このことに限らず、そういう運用をいたしたいと思っております。
  87. 一松定吉

    一松定吉君 あなたのお話のようなことになると、警察官の不当、不法処分に対しては、何か是正する手続法が一般的に規定があればいいんだよ。一般的に規定があればあなたの言うようになるが、一般的に規定がないとすると、こういうようなものを警察署長がおれの権限でやったということになってくると、権限でやったことを、あれは、お前のやったことは間違いだから、どうせい、こうせいということは、法規の命ずるところによって警察署長のやったことを取り消すかする方法が、法令になきゃいかぬわね。そうすると、お前のやったことは悪いから、不都合なことをしたから、やめさせる。首切ることはできるよ、行政庁は。しかし、一たん決定して、それが署長の決定によって処分したときに、その真の所有者権利を争うときに、是正する手続法ということが必要だと思うが、あなた、必要だと思いませんか。
  88. 中川董治

    政府委員中川董治君) まず一般的な問題としては、警察運営全般に通ずることでありますが、国家公安委員会及び府県公安委員会という組織が、一松委員指摘機能を果す目的も重要な使命といたしておりますので、そういったところで常にそういう処置を講じておるのであります。その他国の法令としては、賠償の関係の法律もございますし、それからいろいろ会計監督の行政措置も整備しておりますので、御心配の点につきましては、そういった公安委員会制度ないしは不当に権利を侵害したものに対するいろんな措置によって、十分に目的を達していく。そういう法令によるもののほかにも、いろいろ関係者側の申し出があれば、十分耳を傾けて処置する。法令に基く処置並びに事実上の処置によって目的を達成いたしたいと思っております。
  89. 一松定吉

    一松定吉君 それは、あなたの言うことは、そういうことをするということは、口では言いもしようが、そういうことをするについては、何によってそれをするか。法令があることによってするので、そういうことをして、お前のやったことは不当処分であるということには、その不当処分を公安委員会が取り消すことができるという規定がなければ、公安委員会というのは監督権を行使するだけなんだから、その法文がなければ、監督権の行使によって、警察署長がこの法令の命ずるところに従って自分が処分したその処分は不法であるということであれば、これを是正することのできる法令が、根拠がなければいかぬ。それを私は言うんですよ。それが必要だと思うならば、今どうせいじゃない、考えてまた一つそういう補充の条項を一条加えりゃいいわけだから、そういうことを、ちょっともう一ぺん御意見を発表して下さい。
  90. 中川董治

    政府委員中川董治君) そういった点につきましては、一松委員と同様に、常に検討を加えて、現在の法令は相当目的を達成しておりますので、不当な点についてはいろいろ現行法令、たとえば国家賠償法の規定もそういった点でございますので、そういった点で厳正にやる。さらに、いろいろ不当処分が徹底しにくい事情でございますと、さらに研究を加えるにやぶさかではないのですが、常に検討を加えて、りっぱな警察行政を運営していきたいと、心から努力いたしております。
  91. 一松定吉

    一松定吉君 そうしますと、現行法で不当、不法処分をしたとき取り消すことができるという規定が、どの法文にあるのですか。そういう法の根拠がなければ、公安委員が勝手に、お前のやったことは不当だから取り消すということはできぬわけです。その法の根拠を示してくれたまえ。どういう法文で警察官の不当、不法処分を取り消すことができるという……。それは、これにそういう規定がなくても、一般的にそういう法があれば満足するのです。
  92. 中川董治

    政府委員中川董治君) これは一松先生に申し上げたいのですが、警察行政というのは、比較的事実関係の行為が多いものですから、御指摘になりました廃棄処分は事実関係の行為でございますから、廃棄してしまって取り消しても意味が乏しいので、行政監督として、廃棄処分をやることについて事前に内容等によってコントロールしていく、そういうことをやったことについてこういう過失があったから、賠償せしめる、こういうことによって解決いたしたい。他の行政機関と違って、法律行為というより事実行為が多いから、事実行為に基く不当については、事前のコントロール、事後によるところの懲戒ないしは事後によるところの賠償ということによって、解決していきたいと思います。
  93. 一松定吉

    一松定吉君 私の言うのは、賠償ではないです。現物を警察署長が不当、不法によって処分する、それがために、あるものは所有権を得た品物が現在残っておる。あなたがさつき例をあげた腐る食物は、腐ってしまうからないですが、そうでない、警察署長が不都合なことを、私利私欲を肥やしたとか、自分の懇意な者に不当利得を得さしめたが、現物がそこに残っておる。そういう場合、行政処分によってそれを取り消して、そして現に権利を主張する者に返すことができるという、いわゆる回収方法を何か法文で明らかにしておく必要はございませんかと、こう聞くのです。
  94. 中川董治

    政府委員中川董治君) 御指摘のような、おあげになりましたような場合はこういうことになるのですが、この条文はそういうことは全然予定してないので、腐ったものはなくなってしまうという規定でございますので、権利者があって署長が売ってしまうということは全然予定しておりませんので、そういうことは事実上できないのでございます。
  95. 一松定吉

    一松定吉君 どこに腐ったものという例をあけたのですか。警察署長が自分が認めて、これは廃棄すべきものだと自分の職権において認定したとき廃棄するから、腐ったものに限らぬ。廃棄処分したとき、これはもう無価値なものだ、ごく値段が安くなるといって、廃棄処分に、公売に付して、あるいは他の者にただでやるということをやったときに、現物がそこにあるではないか、そういうときには、これは回収する方法をこしらえておかなければならぬのではないか。それについては、警察署長のやったこと、不当、不法の処分にはこれを救済する何か一条を設ける必要はございませんか、こういうのです。
  96. 中川董治

    政府委員中川董治君) ちょっと松先生に申し上げたいのですが、買い手がないと認められる場合ですから、売るということは予定していないのでございます。
  97. 一松定吉

    一松定吉君 この程度にしておきましよう。
  98. 大川光三

    大川光三君 ちょっと。一松先生のお説と全く同感なんでありますが、腐った野菜とおっしゃいますと、そうだと思うのです。たとえば、一つのかわらのかけらでも、骨董的に大へんな価値がある。また、それと、個人が非常な愛好をしておるような精神的な価値がある場合があると思うのです。ところが、そのものは一般に売っては売れぬが、特別の人はこれに非常な趣味を持っておる、愛好しておる。こういうものは、ただ警察署長の認定だけで廃棄処分してしまうと。条文ではそうなりますから、そこで私は、公安委員会の同意を得るとか、廃棄処分になったものでも、真の所有者がこれを回復する権原をどっかに保留しておく必要がないか。その方がこの法律全体が完全なものになる、かように考えるのですが、いかがでしょうか。
  99. 中川董治

    政府委員中川董治君) 大川委員のように、非常に貴重なものを念頭に置かれると、御異論が出てくるのです。貴重なものは全然念頭に置かなかったものですから、ちょっと話が食い違ってくるのですが、売っても売れないというものを前提にしておっても、売れないものは個人的にだれも買い手がない。ところが、たとえば私の遺言なんていうのはだれも買手がないが、私には大へん価値がある。大体こういうものは認められないと予定しておりますので、そういう点につきましては話が食い違う。もとは大へん大事なものという御認識のもとでの御発言でございますから、話が食い違うのですが、そういうものは全然予定しておりませんので、一つ御了承を得たいと思うのです。
  100. 大川光三

    大川光三君 ちょっとくどいようですが、やはりこの条文からいえば、「売却二付スルモ売却スルコト能ハザリシ物件又ハ売却スルコト能ハズト認メラルル物件」と、こうなっておって、今の腐った野菜とかいうことは出てこないのです。それならば、先ほど申しますように、カッコ入りで例示する。たとえば腐った野菜とか酒とか、例示する必要はないかと尋ねたのでありまして、ただこの条文だけをひとり歩きさすと、大へん危険なことが私は予想されるのでございますが、いかがでございましょうか。
  101. 中川董治

    政府委員中川董治君) かなり注意深く考えたつもりが「認メラルル」ですから、認めるというのと違うのでございますから、客観的に認める物件でございます。
  102. 大川光三

    大川光三君 客観的に認められるという客観的ということが、この条文の中に出てこない。一応ちょっと見ると、警察署長の判断で、警察署長の主観で、やはり能わずと認めたという言いのがれも、これはできる条文なのです。そこで、あらためて、むしろ公安委員会などの同意を得るということで、警察署長の責任も軽くなるわけだし、また公平を期するという意味で、いわゆる社会通念上だれが見ても公平だと言わすがために、他の立会人を置く必要があるのだというように私は考えるのですが、一応私の意見として申し述べておきますから、御再考をわずらわしたいのであります。  そこで、時間の関係もございますので、ただ一点だけ伺っておきます。いわゆる管守者がある船車建築物等の構内での拾得者の管守者に対する物件交付期限が、拾得の日から二十四時間ということに限定されておる。その二十四時間というのは、どういう意味で二十四時間と限定されたか。現行法によりますと、特に時間的な制約はなかったように私は思うのでありますが、ただ、進歩的にいいますと、少くともこういう構内拾得者に対してもその所有権を得せしめるという本旨から見て、二十四時間という時間はあまり短かきに失しないかという点についての御意見伺いたいのであります。
  103. 中川董治

    政府委員中川董治君) 大川委員に申し上げますが、現行法ではかかる場合におきましては、現実の拾得者は拾得物に関する権利は全然持たなかったのでございます。拾得物に関する権利は、例をあげて申しますと、私が——私とは限りませんが、乗客が鉄道の単内等において物を拾ったような場合におきましては、私には拾得者の権利は全然認められなかったのでございます。そして鉄道が拾得者の権利を持っておったのであります。新法は、それは適当でないと考えまして、車掌等のごとく鉄道の職員が拾った場合におきましては国有鉄道が拾ったことにするという、これが一項の規定でございますが、乗客が拾った場合には拾った私に権利を与える、こういうようにいたしたのでございます。それで、今まで権利がなかったのが初めてできたと、こういうことになるわけでございます。  それならば、拾ったときにどれくらいの時間内に持っていくことが社会通念上いいかということでございますが、極端な例を申し上げますと、私個人のうちへだれかが来た場合において、私のうちの中で他人の物件を拾得した、こういう場合において、三日もたって持ってくるということは考えられない。そこに管守者がおるので、多くの場合直ちに渡すというのが社会常識に合うのであります。直ちにというのはあいまいでございますので、一日という区切りとして、二十四時間ということにいたしたのであります。
  104. 大川光三

    大川光三君 これも腐った野菜と一緒で、冷静に考えてみると、なるほど構内にはだれかがおるということを前提にすれば、二十四時間以内には返します。ところが、電車の中で物を拾って車掌に渡さないでおりてしまった場合に、そのおりてしまってから二十四時間以内に再び車掌に届けに行くということは、時間的に不可能の場合もある。百貨店の場合、店の締まる前に物を拾った。ところが、早く出なければ入口が閉鎖される。一たん持って出る。翌日わざわざ届けに行かなければ、二十四時間という時間は経過してしまう。また終電車に乗って駅の構内で物を拾ったという場合には、そのまま自分の家へ帰ってしまう。ところが、たまたま都会を前提にすればいいのですが、いなかで、三里も四里もあるいなかに帰ってしまった。翌日一十四時間以内にこれを届けなければ拾得者としての権利がなくなるというのは、いわゆる現行法では営造物の中で物を拾っても、ただ報酬が折半になるというだけでしたね。ところが、この法律が親心をもって、営造物の中で物を拾った拾得者に所有権を得さそうとするならば、もう少し時間的に余裕を持たす方がいいのじゃないか。そうでないと、二十四時間以内とあることが、たまたま二十四時間以内でなければ、持っていってももうおそいのだから、自分のポケットに入れておこうという、いわゆる横領罪を心ならずも構成するという結果にならぬだろうかという意味から、私は二十四時間以内というのは、どうも短かきに失するきらいがあると思うのですが、いかがでございましょうか。
  105. 中川董治

    政府委員中川董治君) 大川先生の考え方ですが、だれもいない所では、お説よくわかりますが、この法律は管守者のある営造物の中ではと書いてある。そうすると、お説の、電車をおりるまぎわに拾ったというときには、電車が行ってしまって車掌はいなくても、改札口もありますし、駅員もおる。そこへ通常渡すのが普通です。百貨店へ買いものに行って、物を拾った。五時閉店で、四時五十五分に幕が締まってしまいましょうけれども、そこには少くとも門を締める人間がおる。これが管守者であります。また門を締め切った場合におきましても、その出るときに建物の管守者に渡すのが健全な社会常識だと考えますので、現行法はそういう場合に拾得者に権利を与えなかったのですから、お説のごとく、心ならずも遺失物横領の罪を犯すということがあり得たと考えるのでございますが、これを今度、管守者のいない所ではお説はよくわかるのですが、幾らいなかの場合でも、管守者のある場合に限定しておりますから、いなかで管守者がだれもいないときは、こういうことでなくて、一条の拾得になります。一条の拾得になりますから、七日になります。管守者のある場合は、通常の社会常識ではそこにおる人に渡す、これが通例です。私のうちで申しますと、私の家内が管守者であります。家内に渡す。これが通常の社会常識でございますが、管守者のない場合は、お説のごとく、七日間でございます。
  106. 大川光三

    大川光三君 管守者のあるというそのお言葉ですが、あなたのお考えでは、現実に管守者がおるということを前提にしておられる。ところが、一般の法律の解釈は、管守者があるということは、たまたまそこに衛視がおらぬので、そこに管守者がおらない営造物と違います。たとえば、日曜日に院内に入って、現実には管守者はそこらにおらぬのですよ。けれども、やはりそれはいわゆるここに法でいう建造物等の構内に当るのではないか、現実に衛視がおらぬでも。そうでなければ、家宅侵入の場合でもそうですよ。留守の場合に入っても、家宅侵入です。いわゆるその観念からいいますと、管守者のあるというあなたの解釈は、現実に人がおるということです。おらなくても、日常はおる場合はすべてこの営造物に該当するのじゃないですか。ちょっと言葉にこだわるようですが。
  107. 中川董治

    政府委員中川董治君) 刑法の解釈はお説の通りですが、わざとその「管守者」の文字を刑法の場合と変えてあるのです。刑法は見る目の「看守」ですが、その場合の字を変えて、わざとあの字を「管字」に変えたのでございます。  変えたといえば、現行法もそうなんですが、現実にたとえば、例をあげて恐縮ですが、国会も同様に一つの管守者のあるものに該当いたします。ただいまも該当いたしますことはもちろんであります。日曜日みな、本会議、各委員会ともお休みの場合には、この辺にはどなたもいらっしゃらないかもしれませんが、この構内にはどなたかいらっしゃる。その場合には、管守者があるというものです。従って、そういう場合に入ってくれば、おおむね住居侵入罪を構成するであろうと考えますけれども、この法文から考えますと、その構内のどこかにだれかがおれば、管守者があるということになる。そうすると、その人に渡して帰るということが社会通念上正しいのではないか。刑法との関係は、私どもも十分大川委員と同様に考えましたのですけれども、おおむね同様でありますが、若干違いますので、少しこまかくなりますけれども文字をあとで変えたのです。現行法もその趣旨でありまして、刑法の看守者の文字とこの法律の管守者の文字とは、文字を変えてあるのであります。
  108. 大川光三

    大川光三君 そうしますと、われわれは、文字を変えてまで、管守者という文字を、この本文における文字を使われた。それならば、百尺竿頭一歩を進めて、もっと管守者が現実におるというような、だれにでもわかるような表現にしたらどうですか。管守者があるということだけでは、いわゆる法律を解釈する者は、あなたの言うようには解釈できない。おそらく、だれでもできぬと思う。もっと何人にもわかるような表現にする方がいいのではないか。そうでないと、こういう問題が起ると思うのです。管守者が、あなたの誓われるように、現実におっても、おらなんだとして家に持って帰れば、第一条の拾得物になりますね。そうすると、さっさと、おらなんだということにしてこれを持って帰ってしまって、第一条の拾得でいった方が、拾得者は得になりますね。おかしな話ですけれども、期限がそれだけ長いから。そうすると、何かそこに犯罪を醸成するような感じが起るのですが、いかがですか。
  109. 中川董治

    政府委員中川董治君) 実は、大川先生に申し上げますが、この法律は、明治二十二年の法律でございますから、言葉づかいも非常に古いのであります。古いから、全部ひらがなに書き直そうということも考えましたのですけれども、久しくこういうふうで運用しておりまして、いろいろ言葉にも集積した意味を持っておりますので、にわかに変えることによって誤解をまた受けやすいだろう、こういうこともありますので、管守者という言葉現行法にたくさんありますから、これを変えることによってまた混乱するということを念頭に入れまして、そういうことを念頭におきまして、管守者ある場合ということでいきたいと思うのでございます。  それから第二点の御質問でございますが、さっさとおらぬことにやっちゃいましても、事実は七日と一日の違いだけでございますすね。ほかは全部同じ。旧法では大へん違う。旧法では権利がオール・オア・ナッシングの違いなんです。しいていうと、届け出た拾得者のオール・オア・ナッシングの違いですけれども、新法でいうと七日と一日の違いです。七日と一日の違いは、だれかに渡していくという作業だけですから、そのために犯罪を醸成するというようなことはなかろう。むしろ、現行法のごとく一切権利を認めないということになると、遺失物横領罪を構成する行為が生ずるのではないか、こう考えられたのであります。
  110. 一松定吉

    一松定吉君 ちょっと、もう一点。遺失物法の第二条の第一項「命令ノ定ムル方法二従ヒ之ヲ売却スルコトヲ得」の、「命令」とはどんな命令ですか。
  111. 中川董治

    政府委員中川董治君) この命令は、現行法でございますから、前の御質問と違いまして、現にございます。
  112. 一松定吉

    一松定吉君 あるかね。
  113. 中川董治

    政府委員中川董治君) 現にございます。
  114. 一松定吉

    一松定吉君 その命令はどういうことなんですか。
  115. 中川董治

    政府委員中川董治君) 命令の方法としては、原則としては競争入札、例外として、競争入札をすると費用が多くかかるというような場合におきましては、随意契約、こういう一般会計規則と同じような規定でございます。
  116. 一松定吉

    一松定吉君 それは第二条の本文に書いてある「保管ニ不相当ノ費用若ハ手数ヲ要スルトキハ」売却することができる。売却するというのは、命令の定める方法によって売却するのだろう。たとえば何時間にどうしろ、こうしろということですね。命令に定める場合というのは。
  117. 中川董治

    政府委員中川董治君) 現行法は、御説のごとく、換価すなわち売却する場合のケースは、法律そのものに書いてある。法律そのものに該当する場合において換価する方は、どういう方法で換価するかということになると、一般会計物品会計管理とよう似たことになる。それは国の財産につきましては、おおむね換価の場合の規定があるわけでございます。その換価の規定とおおむね同様の規定が命令に書いてあるのでございます。
  118. 一松定吉

    一松定吉君 そこで、くどいようだが、今の改正案の二条の二の「売却スルコト能ハザリシ物件」、これはわかっている。それを売却することができるのに、「売却スルコト能ハザリシ物件」と、うそを言って廃棄処分にすれば、これは刑法上の犯罪を犯したことになって、無効だ。これはわかっている。問題はその次だね。「又ハ売却スルコト能ハズト認メラルル物件」、「認メラルル物件」というのは、警察署長の自己判断できめられるのだ。私はこれを売却することはできぬと認めましたというて、廃棄処分にする。そうすると、廃棄処分は、焼くとかこわすとかいうことに廃棄処分の方法がきまっておれば、今私の言うような心配はないわけですが、これは廃棄処分にするといって、廃棄したといって、そういう一つの意思表示を警察署長がしてしまえば、廃棄品になる。それをお前、一松にやろうと、ただでくれる。僕はそれをもらって非常に利益を受ける。しかして、その品物の真の権利者が出てきた時分に、警察署長が、これは売却することあたわずと見て、廃棄処分にすることを認めたというて、現在その署長がある人にこれをただでくれてやったという品物があるにかかわらず、所有者がそれを取り戻すところの手段方法がないということがいかぬという、これですよ、大川君も私の言うのも。そのときに、そういうような警察署長のやったことは不当だからといって、これを回復すべき何か抗告とか異議の申し立てとか何とかいう手続が一応あると、警察署長のそういう不当な行為を是正することができるが、それは必要ではございませんかと、こういうのだよ。
  119. 中川董治

    政府委員中川董治君) 一松委員の御説は、「又ハ売却スルコト能ハズト認メル物件」とありました場合におきまして、御説が出てくるのだと思いますが、この法律案はさにあらずして、「売却スルコト能ハズト認メラルル物件」と、警察署長が認める物件、これでございません。客観的に認められる物件で、すなわちそれをさらに掘り割って申しますと、物の性格上、その物の性格そのものが売却することあたわずと認められる物件である、こういう意味でございますので、従って、実際問題としては、だれかにやってしまうというようなことが予定されない物件でございます。
  120. 一松定吉

    一松定吉君 それは違うじゃないか。認められるということは、だれが見てもこれは売却することあたわずと認められる物件、署長が、これは売却することあたわずと認められる物件と、署長がそう認定する。そこに問題がある。署長がそういう不当なことをして、あなたの言う通り、神さんが見ても、だれが見ても売却することあたわずと認められる物件であって、署長には裁量権がないということならば、それはあなたの言う通りになるよ。「認メラルル物件」ということを、署長が認められる物件と自分がそういうふうに認定して、これを廃棄処分にした場合がある。そういうときの救済方法を設けておけば完全ではありませんかと、こういうのです。神様でもだれでも認められる物件であるならば、署長が絶対にそういうことはできぬのだというならば、それはいいけれども、署長は自分が不当に利益を得ようとか、不当なことをやろうとかいう場合に、認められぬ物件でありながら、署長がこれを「売却スルコト能ハズト認メラルル物件」と自分が認定をして、それを廃棄処分に付した、そういうときの救済方法について言うのです。
  121. 中川董治

    政府委員中川董治君) くどいようで恐縮でございますが、当該物件のその物自体の性格が、売却することあたわずと認められる物件でございます。そういう物件でございますので、それを警察署長が乱用して——乱用してやるということはありうると思いますが、物の性格上、そういう客観的に認められる物件でございますので、客観的に、乱用することなからしむるために厳正な措置をいたしたいと、こう思っておるのであります。
  122. 一松定吉

    一松定吉君 そうしますと、警察署長が「能ハズト認メラルル物件」を「能ハズ」と認めたということは不当だというので、その署長の廃棄処分は無効だというならば、いい。しかし、能わずと認められる物件だと警察署長が判定を下して廃棄処分に付した時分に、その回復方法は、これは、署長の言うことは間違いだから、その言うことは効力を発生せぬのだということにすれば、これはわれわれの疑問はなくなるのだ。けれども、署長が、能わずと認めらるる物件と署長が判定を下して、自分が廃棄処分に付して、今のような不当な処分をやった時分の救済方法はない。ただ、署長が免職されるか、譴責を受けるか、転署されるか、あるいは国家がそれの損害賠償をするかというのであって、品物そのものは返ってこないでしょう。そこを言うのですよ。
  123. 中川董治

    政府委員中川董治君) くどいようでございますけれども、物の性格上、「売却スルコト能ハズ」と客観的に認められる物件でないのに、署長の恣意に基いてそうなりと認定した場合におきましては、その行為は無効でございます、法律論といたしまして。
  124. 大川光三

    大川光三君 今のお言葉ですね、署長が「能ハズト認メラルル物件」だと認定した場合、実際は売却できるものを、能わずと認定した行為は無効だということになりますと、そのいわゆる無効なりということは、どこで、この条文のどこでそれが出てくるでしょうか。あるいは裁判を受けなければ無効が確定しないということになれば、国民保護というものに大へん欠けることがある。  そこでもう一つ念のために、くどいようですが、たとえば廃棄物、廃棄処分した場合に、いわゆる民法百九十三条の遺失物としての回収権が、二年間は民法である。廃棄処分してしまった分について、いわゆる民法の二年間の回収権というものはないことになりましょうか。そこなんです。もし民法の回収ができるならば、廃棄処分になった後でも、なお二年間は回収できることになりますけれども、廃棄処分してしまった以上は、もはや民法百九十三条の遺失物の権利がなくなってしまうということになりますと、やはりこの条文について何か救済規定がなければならぬと私は考えるのですが、いかがでしょうか。
  125. 中川董治

    政府委員中川董治君) これはくどいようですけれども、客観的に認められる物件であることに限定しておりますので、客観的に認められる物件でないのに、署長がそれをやれば、これが無効になる、こう申したわけですが、これは廃棄ということの法律行為的なことを考えておりませんものですから、いつも考えが食い違うのでございますが、そういう場合においては、廃棄という事実行為でございますが、物がなくなってしまう、物件がなくなってしまいますから、民法の権利その他は全部自然消滅になってしまう。それをやたらに廃棄したということになると、不法行為になります。不法行為になりますと、特別法なかりせば、民法の条文適用してくる。民法に基いて損害賠償の責任が生じてくる。この場合は警察署長は公務員でございますから、こういう過失があれば、国家賠償が出てくるということになるのであります。
  126. 大沢雄一

    委員長代理大沢雄一君) 他に御発言がないようでございますから、本連合会はこれで終了することといたしまして御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 大沢雄一

    委員長代理大沢雄一君) 御異議ないと認めて、さよう決定いたします。  これにて散会いたします。    午後零時四十五分散会