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政府委員(
中川董治君)
大川委員御
指摘のごときことは、民法という
国民生活の根本を
規定した
法律に関することでありますので、軽々にその改正のことを行うべきでないということは、全く同様に
考えておるのであります。遺失物法が制定されましたのは明治三十二年でありまして、民法はもちろんそれより前でありますが、それで、そういう長い歴史を持った
法律によって運用しておりますので、そういう事実も相当尊重しなければなりませんので、この
法律の改正につきまして、今日までいろいろ検討を加えて参りましたのも、そういう
大川委員御
指摘のごとき
趣旨によって軽々に改正すべきでないという、こういう
趣旨からおそくなった次第でございます。警察の便宜のために改正すべきでないことは当然でございます。ところが、実態を明らかにいたしまして、実態がどうなっておるか、その遺失物関係の実態がどうなっておるかというこの事実関係を基礎にして、改正するかどうかということを論ずべき
ものだと思うのであります。かりに、事実関係で、
国民生活の角度からいって一年が正しいと思うならば、警察が幾ら迷惑しても、改正すべきではないと思います。
ところが、事実関係についていろいろ調べて参りますと、お配りいたしました資料でごらんいただきたいのですが、四十四ページでごらんいただきたいのですが、印刷物でお配りいたしました資料の四十四ページの第六表について申し上げたいのでありますが、
現行遺失物法及び民法二百四十条の
規定に基きまして、拾得者が、物件を拾得した者はまず第一に落し主、
法律では所有権返還を請求することができる者と書いてあります、俗っぽく申し上げますと落し主でありますが、落し主に返す。落し主に返すことができなかったような物につきましては、警察署長に持ってくる。こういうのが
現行法でありますが、署長は公告する。公告してから一年を経過した後に、落し主がわからぬ場合におきましては、拾得者に所有権が移る。これが
現行法であります。これで運用して参りまして、公告後一カ月以内から十二カ月までの間に落し主に渡した
ケースを記載したわけでございますが、そうすると、落し主の永久にわからぬ
ものは、一年をたってもわからぬ
ものは別といたしますが、わかった
ものについては、おおむね公告後一カ月以内に九一%強という
ものが落し主がわかっちゃうのであります。それから三カ月もたてば、九九%わかっちゃう。これは足していけば九九%になるのですが、三カ月もたてば九九%という
ものが返っちゅう。六カ月もたてば一〇〇%弱という
ものが返ってしまう、こういうことに相なるのであります。従いまして、六カ月後はほとんど落し主に返る
ものはなくて、いたずらにだれも利用しないで倉庫に眠っている、こういう結果を招来いたしておるのであります。たとえば、こうもりがさという遺失物があった場合におきまして、こうもりがさという遺失物が落し主がわかるのが、大体一カ月程度でわかつちゃう。三カ月もたてば大部分、九九%わかっちゃう。六カ月もたてば、わかるべき
ものはわかっちゃう。あとは、そのこうもりがさはいたずらに倉庫に眠っているというのが現状でございます。それも、どうせ最後には拾得者に交付するのでありますので、そのこうもりがさを倉庫によけい半年眠らせないで、拾得者に所有権を移して、物件の活用をはかるということが、拾得者が
権利を取得するということについては大へん実益がある。拾得者に対しては大へん実益があるのですが、遺失主がそのために
権利を消滅するということになっても因るのでありますが、困る遺失主は現在はほとんど〇・何%しかない。〇・何%でも困るというのは、これは大へん所有権の
保護上困るじゃないかという説でございますけれ
ども、これが一年だということに伴うおそくなっている点もございましょうから、これを勘案いたしますと、残る六カ月間というのは、行き過ぎて申しますならば、ほとんど
意味なく倉庫に眠っておるこうもりがさ、こういう実情ということを勘案いたしまして、民法改正の件につきまして法務当局と十分に打ち合せましたところが、法務当局でもいろんな角度から、何といいましても基礎法でございますので、慎重に御検討願ったのでありますが、慎重に御検討願った結果、そういうむだに近い倉庫での眠り方は、物件の
保護の
見地からも、拾得者の
権利保護の
見地からも、適当でない。それで、民法の全体の関係もございますが、埋蔵物が六カ月でございますので、六カ月よりも短かい数字というのは適当でございませんので、六カ月という数字にすると、こういうのが改正案の
理由でございます。
他面、この資料で申しますと、外国の立法について若干調べたのでございますが、二十ページ以下におきまして、今のことにかかる外国関係の資料でございますが、ハワイ等、九十日すなわち三カ月、六カ月と、こういう
ケースがあるわけです。外国の立法例で、日本の一年に対応する数字が、三カ月であったり、六カ月であったりする。最後のドイツの方は一年であるけれ
ども、落し主がドイツの場合は一年という点は、日本の
法律と一緒なんですけれ
ども、拾い主が、拾得者が初めから保管できると、こういうような
規定等もございますので、いろいろ、あれやこれや外国の事情等、並びに日本の事情等も勘案し、ただし、外国の事情ばかりによっても適当でございませんので、日本の遺失物の処理の実態を基礎にいたしまして、今度民法の
規定の「一年」とあるを「六月」にいたした次第であります。