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政府委員(酒井俊彦君) それでは私から、
外国為替及び
外国貿易管理法の一部を改正する
法律案につきまして、簡単に御説明を申し上げます。
改正の要旨につきましては、先般提案理由で申し上げた
通りでありますが、若干の補足をさしていただきます。
まず第一に問題になりますのは、
外国為替相場の立て方の問題でございます。これは、現在の
外国為替管理法は国際通貨基金の規定に順拠いたしまして規制が行われております。もちろん国際通貨基金、いわゆるIMFは
日本の国会においても承認いたしておりますので、効力といたしましては法律と同じものと
考えておるわけでございます。この
二つの規定があわせて
為替管理法の規制とIMFの規制と両方があるわけでございます。そこで両者を比較いたしました場合に、IMFの協定のきめ方よりも現在の
為替管理法の規定の方が少し煩瑣な、厳重な規制をされておる面があるわけであります。そこでそれらを改訂することが適当であるというので、この
法律案を提案申し上げた次第であります。
お手元に、
外国為替及び
外国貿易管理法の現行法と改正法の対照表をおあげいたしました。説明の順序といたしまして、多少前後いたしますが、問題点をごく簡単にあらまし申し上げます。
第一は新旧対照表の第二ページの第五項の問題でございます。これが今回の主要なねらいでございまして、IMF協定におきましては、たとえば脱退とか割当の変更、あるいは当該国の提議による定款変更というようなものを除きまして、それ以外の規定は加盟国の五分の三以上の投票で、その投票総数の五分の四以上の賛成がありました場合には、これを変更することができるとなっております。また
理事会全員の一致があります場合には規定の一時停止といいますか、百二十日を限ってこれを停止することができる。なおその期間を越えましてさらに総務会の五分の四以上の多数決がございます場合には、さらに二百四十日までそういう規定の停止をすることができることになっております。従いまして、こういう規定によりまして、IMF協定はかなり弾力的に運用できることになっておるのでありまして、たとえばIMFに登録すべき平価について、これは一番重要な問題でありますが、一九五〇年にカナダは平価の登録を停止しております。それをIMFは容認いたしております。また加盟国でありながら平価をきめておりません国もフランス、イタリア、タイ、ビルマ、ギリシャ、インドネシア等数カ国によってそのことが行われております。そこで
為替相場の建て方につきましても、IMFが規定しているところをそのまま管理法で規定いたしますと、IMFの方が以上のようないろいろ非常に弾力的な運用ができますので、
日本はそれを受けておりますが、別に法律が出ておりますために、もしもそういうことでIMFの現在の規定が若干変更される場合に機動的にそれについていくことができないという
状況にございます。たとえば具体的に申しますと、IMFにおきましては、いわゆる直物相場——スポットにつきましては、平価の上下一%の範囲まで相場を動してよろしいということになっておるわけであります。
日本は欧米各国と違いまして中心地から相当離れておりますために、メール・デーといいますか、郵送日が十日ぐらいかかりますため、その間の金利相場が一覧払いとTTとでは〇・二五%
程度違って参ります。そういたしますと、厳格に一%の範囲内に現金一覧払いの
為替をはめようといたしますると、
日本としては上下おのおの〇・七五%、幅としてIMFは二%でございますが、
日本は一・五%しか残らないということになるのでございます。それからまたIMFにおきましては上下一%という、その上一%と申します場合には、平価による相場から上下一%となっておりますが、
日本の場合は基準相場あるいは裁定外国相場からの上下一%というふうに規定の仕方が違っておりますというような点も、やはり今後
為替を
考えていきます場合に、必ずしも適当でないというふうに
考えられるわけであります。今後の
状態を予想いたします場合に、IMFの規定に基きまして、IMF平価を相場の
基礎として直物
為替相場、これを上下一%に押えるというのは、
一つの金本位制度のもとにおける金を基準とする自由な
輸出入というようなものを理想といたしまして作られたものでありまして、それとそれから現実というところが妥協されまして、それでかなり弾力的な動かし方になっておるというふうなことではないかと思っております。ところが、最近に至りまして、御
承知のようにいわゆる
為替相場を自由にいたしまして、いわゆるフローディング・レートと申しますか、そうして
為替の自主性を見つけたいというような説も出て参りました。また先般の、去年の夏でございますが、フランス・フランが実質上切り下げをいたしました場合に、EPU、ヨーロッパ各国が多少通貨の動揺を来たしまして、これを三分の一くらいの幅にとどめたらどうかというような議論も起って参りました。もしこういう議論が出まして、それをIMFが認めますと、
日本としてはIMFの規定がありまして、もちろんそれに従うわけでありますが、
為替管理法から参りますと、上下一%しか動けない。そうなりますと、かような事態が出来いたしました場合に、緊急に機動的にこれに対応することができないということになりますので、一応この規定を削除いたしたいと
考えております。もっともこれを削除いたしましても、さっき申し上げましたように、国際通貨基金の規約につきましては、国会の御承認も得、法律と同等の
効果を持つのでありますから、
日本政府としてはIMFの規定に従うということは当然でございます。両方を網をかけてきつい方でやっているというところに問題があるのではないかということで、削除をお願いいたしたわけであります。
それから恐縮でございますが、一ページに戻っていただきまして、第七条の第三項でございます、これは現行は、「各外国通貨について正しい裁定
外国為替相場を決定し、維持しなければならない。」とございます。現実には
日本におきましては、
ドルと英ポンドの裁定相場をきめればそれで大体動くわけであります。そうしてまた「各外国通貨」といっておりますが、
日本としては各外国通貨は全部を扱っておるわけでございません。それを一々裁定相場を出すということはいかがかと思われますし、なお何が正しい相場であるかということにつきましては、裁定相場の性質上なかなか議論のあるところでございます。ましてこれを維持しなければならないという規定がございますが、「正しい」というところに問題があるほかに、これを維持するということはどういうことかということになりますと、外国側のいろいろな要因によってこれが動いて参ります場合に、これを維持するというようなことは、ちょっと規定としてはありましても、実際問題としてこういうことはできないということもございますので、従って改正案におきましては、外国通貨についての正しい裁定
外貨相場は
大蔵大臣が定めるときだけにいたしまして、「各外国通貨」とか「維持しなければならない。」とか、議論のある条項を落したわけでございます。
それからその次の第三項でございますが、これは
外国為替資金の運用による
為替相場は
大蔵大臣がこれを定めなければならないとございますが、これは実は歴史的な問題がありまして、この管理法ができました昭和二十四年当時は、
外国為替管理
委員会というものがございまして、これが
外国為替を扱っておりました。しかしながら
為替相場というものは一国の通貨価値に関することであるということでありますから、
外国為替管理
委員会にこれを扱わせることをいたしませんで、
大蔵大臣が通貨の面でこれを決定するのだという規定をいたしたわけでございます。しかし現在におきましては、
為替管理
委員会もなくなっておりますし、それからまた第四項におきまして、現行の「
大蔵大臣は、正当な
外国為替取引における
外国為替の売相場及び買相場並びに取扱手数料を定めることができる。」と書いてございますので、現在は売り相場、買い相場を外為
資金できめまして、それで事は足りるのではなかろうかということで、これも整理をいたしたわけでございます。
以上が
外国為替相場に関する改正でございますが、第二点といたしましては、新旧対照表の三ページの第六十八条の立ち入り
検査権でございます。この点につきましては、現在
為替管理法によりますところの
検査質問権というのは、
外国為替公認
銀行とか両がえ商に限られております。いわゆる商社
保有外貨あるいは交互計算も認められておる
貿易業者、保険
業者、海運
業者と、つまりこういう
銀行を通じないで外国との間に
為替関係ができるというものについては、立ち入り
検査の権限も
質問権もないわけであります。ところが、御
承知のように、
輸出振興の一環といたしまして、できるだけ
為替管理法の手続の簡素化をはかりたいという御要望がございまして、本年の初め以来、これに関する懇談会を開きまして、種々検討いたしました結果、かなり思い切った簡素化をすることになったわけでございます。これは後ほどちょっと簡単に触れますが、一番大きな問題といたしましては、今までは
輸出をいたします場合に、書類を作りまして、それを
銀行の窓口へ持っていって、これは
為替管理法に違反していないということを一度確認を得ましてから税関に持ち込んで、それから
輸出をするという格好になっておりましたが、今後は、一応そういう
貿易業者を信用をいたしまして、初めの
銀行の認証ということをやめまして、いきなり税関にいく、それだけ手数が省けるということにいたしたわけでございます。しかしながら、そのために脱法行為がありまして、この法律を破るというようなことがありました場合には、これは困りますので、一応事前に信用してかかるけれども、
あと調べて不正のことがあったか、あるいはうまくいってないかという場合には、これを注意をし、あるいは改善をさせるということが必要でございます。これは、将来
輸入その他について簡素化をいたします場合にも、やはり
検査、
調査のことがありませんと、なかなか思い切った簡素化はできない、そういう面もございますので、一応立ち入り
検査の点を新しく
銀行、両がえ商以外に拡充していただきたいというのが趣旨でございます。
なお、先ほど申し上げました
輸出のための手続の簡素化でございますが、これは懇談会を数回開きまして、通産省その他の
関係各省と御相談して、今準備中でございますが、大体おもなものを申し上げますと、さっき申し上げました
輸出の場合の手続について、
銀行の事前認証をやめる、事後の審査に切りかえる、それで相当助かると思います。
それから、
輸出承認品目の整理、これは自主的な
輸出統制、あるいはココムの
物資と、いろいろ制限を要するものがありますので、承認品目がかなりあると思っておりますが、これもできるだけ簡素化していきたい、整理をしていきたいというふうに
考えております。
なお、標準決済規則の改正でございますが、これは今までは信用状ベースでなければいかぬという固い規則になっておりましたが、これをやはり信用状ベースでなくても、まあハウス・ビルとかDP、DAとか、そういうものでも
銀行の方で大丈夫だというようなものは、必ずしも一々許可を受けるということをしなくてもいいのじゃないか。その他、バーター
貿易の手続の簡素化、そういったようなものを今
考えている次第でございます。それを実行いたしますために、六十八条の立ち入り
検査権の改正をお願いいたしたい次第でございます。