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1958-03-12 第28回国会 参議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十二日(水曜日)    午後一時三十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     河野 謙三君    理事            木内 四郎君            西川甚五郎君           小笠原二三男君            平林  剛君            天坊 裕彦君    委員            青木 一男君            伊能繁次郎君            岡崎 真一君            木暮武太夫君            左藤 義詮君            土田國太郎君            山本 米治君            荒木正三郎君            栗山 良夫君            小林 孝平君            野溝  勝君            杉山 昌作君            前田 久吉君   国務大臣    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君   政府委員    大蔵政務次官  白井  勇君    大蔵大臣官房長 石野 信一君    日本専売公社監    理官      村上孝太郎君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    国税庁長官   北島 武雄君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   説明員    国税庁間税部酒    税課長     森口慶次郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○租税及び金融等に関する調査の件  (財政金融税制一般問題に関する  件)   —————————————
  2. 河野謙三

    委員長河野謙三君) これより委員会を開きます。  本日は財政金融税制等一般問題について大蔵大臣に対し質疑を行います。  なお、この際申し上げますが、大臣は一応三時半まで本委員会に出席することになっておりますので、お含みおきの上、御質問を願います。
  3. 栗山良夫

    栗山良夫君 大臣お尋ねをいたします前に、ちょうど適当な機会であると思いますので、昨日私が大蔵省に要請をいたしました本委員会に提案の大蔵関係法律案につきましてその重要度、政界の推移ともにらみ合わせての重要度についての資料を要請いたしましたが、それが出ております。従ってこれは大蔵大臣の最も責任をもっておいでになる問題でありますから、大臣おいでになるところで説明を伺いたいと思います。
  4. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 栗山委員に申し上げますが、この問題は資料もすでに手元に届いておりますし、実は大臣の時間も制限がありますので、大臣に対する一般質問が終ったあとでと思いましたが、あなたの御希望で大臣でなければならぬということであるならばやりますが、実はそういう心組みでおりましたが、どうしましょうか。
  5. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうおっしゃったので申し上げますが、これはほんとうは大臣からお聞きすべきことなんですけれども、特にきのうのことは繰り返して申し上げませんが、相当法案が山積しておって、しかも年度末が迫ってきておって、予算の裏打ちをする意味において軍費な法案をどういう工合に始末をするかということについては、これは大蔵大臣からやはりお聞きすべきことなんです。大体次官とか政府委員からお聞きするのが間違っております。
  6. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 実は大蔵大臣から聞くのが当然でありますけれども、私の方としてはきょう委員会の運び方をそういうふうに考えておりましたということを申し上げたのであって、それならばこれは大蔵大臣から直接ですか、官房長大蔵大臣にかわってもよろしゅうございますか。
  7. 栗山良夫

    栗山良夫君 けっこうです。
  8. 河野謙三

    委員長河野謙三君) じゃ官房長から。
  9. 石野信一

    政府委員石野信一君) お手元に「第二十八回国会内制提出法律案大蔵省所管)に関する調」という表がお配りしてございます。上に番号を打ちまして、件名を並べてございます。その次の欄が審議状況でございます。備考言葉が足りないものとか不十分なものがございますから一応御参考に備考にメモをつけてごさます。一番から十九番までが予算関連案件でございます。それから二十五番二十六番はまだ提出いたしておりませんが、三十四番までは提出済みでございます。それから注の一と二をごらんいただきまして、すでに参議院大蔵で御審議を終えていただきましたもの、一は昭和三十二年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律、これは公布済みでございます。それから国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律案、これは原案通り可決していただきまして衆議院送付済みであります。それから三の、別に参議院内閣委員会付託済み、これは予算審査でございますが、それのもの二件、これは特別職と、それから旧令共済組合年金改正、それから付託予定のものが二件、これは公務員の共済組合法関係、それから公共企業体共済組合法改正関係、計四件がございますが、これは当委員会のものでございません。継続審査の分が接取貴金属の関係が当委員会において御審議を願っておるのでございます。  表によりまして御説明いたしますと、十九番までの予算関連のものから順次御説明いたしますが、参議院大蔵で、「衆議院了」と最初のがしてございますが、これは衆議院の方の審議が終りまして、可決して参議院に回わってきた分でございます。最初のが二十八年度から三十二年度まで例の国債残高の万分の百十六……。
  10. 栗山良夫

    栗山良夫君 いや、内容のことはよろしゅうございます。
  11. 石野信一

    政府委員石野信一君) はあ。その関係の分でございますが、これは四月一日に国鉄、電電等から利払いがございまして、これを一般会計を通さずに特別会計に直接入れるという規定を適用する関係で、経理上、年度内成立をお願いいたしたい。それから漁船再保険関係、これも利子負担関係がございまするので、できるだけ早く年度内成立——予算関連のは一応年度内成立を希望いたすものでございます。食管関係、これは繰り入れでございまして、補正予算との関連がございますので、どうしても年度内にお願いいたしたいのであります。経済基盤強化資金、これも予算の重要なる方針に関連もございますし、また各法人の発足時期、これの基金利子を利用するというような関係で、年度中に成立を希望するものでございます。それから食管関係も、勘定区分年度当初から適用されることになりまして、予算法律との関係が一致するためにも、年度中にお願いしたい。それから道路整備特別会計でございますが、これは特別会計支出権を与えるわけでございますから、工事費が四月から支出されるためには、年度中にぜひ成立を希望するものでございます。それから補助金等臨時特例、もしこれが通りませんと、補助金を出すことになりまして、予算と食い違いを生ずるのでございます。8、9、10、11、12は税の関係でございます。減税を四月一日から実施したいという関係、それから特別措置法期限が三月三十一日に切れるものもございます。そういう関係で、ぜひ年度内にお願いをいたしたい。それから関税定率法の一部改正、これは期限が三月末で切れまするので、そのままで、年度内通りませんと、税かかかることになるのでございます。それから十四番は、地方税法との関連がございますが、市町村のたばこ消費税を引き上げる分に即応するものでございます。それから十五番の交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案、これは地方交付税法の一部改正との関連で、二六%から二七・五に上りますのと関連いたしまして、交付時期が四月でございますので、これも年度中に希望いたすものでございます。それから開発銀行法の一部を改正する法律案、これは開銀の事業計画との関係でございますが、借入れ限度の拡張の分でございますが、年度内成立をということを願っております。それから厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案、それから外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案、最後のは、例のインドネシアのオープンの債権の関係でございますが、これは条約批准関係がございますので、条約批准までには成立をしていなければいけない、こういうものでございます。それから二十番以下は、予算関連ではございませんが、製造たばこの定価の決定または改定の関係、これは例のホープ、みどりの試作品価格表に加える分でございます。これが衆議院が終りまして、参議院に回って参っております。それから次は、日本国アメリカ合衆国との間の云々、これは例の自動車等関係の法令の不備を補いますものでございまして、脱税捕捉適正化という見地で、できるだけ早くお願いいたしたい。それから外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案、これは簡素化等のためのものでございます。それから関税法の一部を改正する法律案たばこ専売法の一部を改正する法律案、これはいずれも今、当委員会で御審議を願っておる分でございます。以上でございます。
  12. 栗山良夫

    栗山良夫君 大体わかりましたが、この問題は、大蔵大臣もお聞き及びの通りでありますので、あとにいたしたいと思います。  すでに衆参両院の本会議、あるいは衆議院参議院予算委員会等において、大蔵大臣の所信が明らかにせられておりまするけれども、その後、情勢がだいぶん変ってきておるように見られますの、で二、三、大蔵大臣お尋ねをいたしたいと存じます。  その第一は、申すまでもなく、昨年の神式景気に対して、政府が、公定歩合引き上げ等を通じて、金融の相当思い切った引き締めを行われ、これが基盤になって、日本国内経済というものが、各方面に深刻な不況を現出いたしております。そうしてこの不況も、業界によって必ずしも一律ではありませんが、にわかに明るい見通しを持ち得るという段階にきていないように私は思います。要するに、政府経済政策金融財政政策というものが明らかにせられ、そうして、それが相当確信を待てるような状況にならないというと、出てこないのではないかと私は思うわけであります。そこで、元来、自然にこういう状態になったのならば、私は別にそう強く政府に申しませんが、昨年の春、何と申しましても、人為的に経済調節をやられて、こういう不況がきておるわけでありますから、これを、その不況をあえて強行せられました当心の説明としては、経済がある程度、政府の意図しておるように安定すれば、おのずからまた道は開ける、こういう説明のもとにおやりになったわけでありますので、国民としても、次に打たれる政府施策というものに、強い期待を持っておると思います。従って、そういう意味お尋ねをいたしたいと思うのであります。  まず第一に、世界経済の中で、日本としては、共産圏との貿易促進等もありますが、何と申しましても、米国経済展望ということが、一番重要なことではなかろうかと思います。それで、去る二月に、アイゼンハワー大統領特別声明を出しまして、そうしてアメリカに、襲いかけておる不景気失業者増大中心にした不景気につきまして、決して悲観をする必要はない、政府はこれこれの経済分析と、これこれの対策をもって臨むので、楽観してよろしい、こういう特別声明を出しましたが、しかし、それはあくまでも特別声明でありまして、アメリカ国内一般の論調としては、ことしの中間選挙に対するところのアイゼンハワー大統領の政治的なゼスチュアではないか、実際にはそう楽観を許さないということをつけ加えておるようであります。従って、大蔵大臣は、日本財政金融並びに経済動向を分析せられる前提として、米国のただいまの経済事情並びに将来の展望について、どういう見解をお待ちになっておるか、これをまず第二点として伺いたいと思います。
  13. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お尋ねの・アメリカ経済の現状と見通しでありますが、アメリカ経済が昨年来、世界経済動向とやはり軌を一にいたしまして、投資が盛大であった、それがだんだん落ちてきた、また、これを抑制するの政策に変ってきた、従って、景気頭打ちになってよくなくなった、これはもうだれも一致した見方であると思います。まあ、これをその後の流計的なものにとりましても、たとえば国民消費というものの増加率というものもあまり増加しておりません。それから国民の総生産にしても総生産の伸びもとどまっておる、こういう状況、他方におきまして海外投資増加しておる、あるいはまた国防喪増加しておる、こういう形を経済のいろいろな指標でとっております。このアメリカ景気頭打ちに対していろいろなそういうふうな指標を見ると、経済の自然の動きとしてはこれはやはり不況を深めていく傾向を持っておると申して私はいいと思います。たとえば百貨店の売れ方にしても、普通のときなら、たとえば月賦販売を容易にするような施策をとりますれば、一般消費が、国民消費がふえるというような状況にあったのでありますが、今はやはりそういうふうな方法をとっている百貨店の売り上げがあまりふえない、言いかえれば消費が非常に高いところにすでにきておる、こういうようないろいろな事情からアメリカ景気が自然の形で直っていくということは、やはり私は時間もとるし、相当困難もあると、こういうふうに思っておるのです。しかしながら、これに対してしかしアメリカ資力アメリカ政府施策というものを考えてみると、これらの状態に対応しまして、まず、金融政策として景気をよくする、言いかえれば国内消費をできるだけ刺激をする、あるいはまた投資刺激する、こういうふうないわゆる金融緩和政策をとっておることは、公定歩合引き下げあるいはまた預金率引き下げ、その他各般の政策できわめて明瞭であります。しかしこういうふうな政策だけでも必ずしも今日のところ十分とは思われぬようであります。たとえばその後における失業者というものを見ましても、大体アメリカ失業者は四百万というところが定量であるように思いますが、それが四百五十万にふえ、私最近正確な統計は存じませんが、新聞の報ずるところによると五百万と、こういう状況であります。なお、私はアメリカ景気がよくなりつつあるとも考えません。がしかしながら、さらに従来は金融政策だけでありましたが、今度はこれに対応しまして、財政面から今問題になっておるのが公共事業を起そう、あるいはまたアメリカアンダーソン財務長あたりも公けには言っておらぬようでありますが、減税ということを考えていいのじゃないか。ニクソン刑大統領などは、新聞の報ずるところによると、むしろ減税の力が公共事業よりもいいのじゃないかというような意見を発表しておるようであります。いずれにしても、今日さらに財政面からアメリカ景気をよくしようという政策をとっており、また今後とるであろうということは十分考えられるのであります。こういうふうな点を考えてみると、私はやはり今のところアメリカ大統領考え方については相当信頼を持っていいのじゃないか、特にアメリカ資力大統領の権限、こういうふうなものを考えてみる場合に、相当思い切って景気回復対策をとるであろう、それをアメリカ日本に来ておる要路の人、たとえば先般来たマックロイとか国際通貨基金のヤコブソン、こういうようないろいろの人の意見を徴してみると、やはり経済それ自身の動きから見ると、アメリカ景気回復というものも相当期間がかかる、これは相当慎重に対しなければならぬ。しかしながら大統領がああいう決意——大統領決意というのは、大統領の周囲に常に有力なブレーンがおって建策しておる、そういう建策に基いて大統領決意しておる、そうして政策を如実に具現しておるというところを見ると、これはやはり大統領言葉には相当な信頼を置いていいんじゃないか、こういうふうに思うというのが大体の考え方であります。従ってまあ大統領は非常に早い時期にアメリカ経済回復すると言うておりますが、まあアメリカ大統領の言うようには私どもは早く回復するとも思いませんが、これにはやはり政治的な意図もおそらくあると思いますが、しかしアメリカ経済一定の時期において回復に向うであろうということは、これは世界経済が同じ方向をとるであろうという一般見解とやはり私は同じ方向にある、かように考えておるのであります。ただ今日世界経済動向について、後にいずれまたヨーロッパのこともお聞きになるかと思いますが、この世界経済動向について、もうこれはなかなか直らない、これは第一次世界大戦の後に二十年にして世界のいわゆる大不景気、恐慌が来たのでありますが、今回はそれが十二、三年において来ておるのだと、これは自由主義経済における景気循環いわゆる大不況なりというのが、ソ連あたり共産圏の国の学者、ヴァルガを初めとして、そういうような見解にあるようであります。しかし自由国間の諸学者見解は、世界経済は、これはやはり一定期間のうちにおいて立ち直って無気がよくなる、ただその時期がいつかという点において、一番早いのは私の知っておる限りでは、アメリカ大統領、これは三月ごろからと、あるいはまた、いやそれは六、七月ごろから、秋から、あるいはまた、おそいので来年の春じゃなかろうか、こういうふうな見解回復の時期においての見解の相違はありますが、そうして一定不況を通して先は明るくなる、こういう見通しがあるようであります。私も大体そういうふうな見解にあるわけであります。
  14. 栗山良夫

    栗山良夫君 ヨーロッパの方はアメリカ経済状態と比較すれば、さらにドル不足傾向が強いわけでありまして、まあお尋ねしなくても大体のレベルというものは想像がつきます。で、問題は今御説明をいただいたアメリカ景気回復の問題というものは、私は二つに大体分析しておるんですが、大体私の考え大蔵大臣考えと似通っているかどうかということについてちょっとお尋ねをしておきたいと思います。その一つは、アメリカはやはりこの不景気を打開する一つの方便として財政金融並びに経済政策を通じて総合的にアイク大統領に集約されておるアメリカ経済プレーンが立てておる方策としては、やはり貿易振興だろうと思います。その一つの現われは輸出入銀行貸出増について非常に熱心に努力をしておるようであります。これは日本なんかにもその影響が現われていると思います。従ってアメリカといえども世界各国に対する輸出というものを輸出入銀行あるいは世界銀行も入るかもしれませんが、そういうものを中心にして大いにふやしてゆこうということが一つ。それからもう一つは、それだけでは消費増大しませんから減税公共事業増大とか、あるいはまた軍需発注増大するとかいうこと、あらゆる手を使って国内需要刺激増大ということにあらゆる努力をしようというふうに、私はアイクさんの考え方というものは二つ方向に大体分けることができるんじゃなかろうか、こう考えておりますが、その点はいかがでしょう。
  15. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大体そういうように考えていいと思いますが、貿易の点については私は若干違う考えを持っております。それはむろん貿易増大をいたしておるのでありますが、これはアメリカ貿易は去年の春あたりまでの様子を見ると、三十二年度にもおそらく四十億ドルくらいな受け取りになるような形勢を上期で持っております。それが下期でだんだん輸入増大をしてバランスをとるようにいたしておるのでありますが、ちょうど私が昨年九月にアメリカに行きまして、そうしてこういう当路の人たちと会ったその人たち見解、また私どもがIMFあるいは世界銀行の総会において主張したことに対応いたしまして、アメリカ代表者の答えるところによると、従来のような、アメリカ貿易受取勘定になるような形では、これは世界経済はよくならぬ、これは自分たちもよくわかる、それでアメリカとしてはできるだけ輸入をふやす貿易政策をとる、こういうふうに、これはまあ西ドイツも同じことを言うておるわけであります。そのためにはアメリカのまず金利を下げて、そうしてアメリカ国内景気刺激して、そうして国内において物資の需要をふやして海外からの輸入をふやす、そうしてそれがまた世界の他の国の経済をよくする、こういうふうな意味において貿易拡大をする、言いかえれば貿易面において他の自由国家その他を圧迫するというような意味における貿易政策でなくして、それらの国を助けていくという意味において、言いかえればアメリカ経済を若干インフレイトしていく、こういうような形において貿易拡大をはかる、そういう意味であります。広く言えば、従ってむしろ国内景気刺激していく政策ということに期するんじゃないかと思っております。
  16. 栗山良夫

    栗山良夫君 そこでまあ対米依存の非常に強い日本の場合に、さらに話を進めたいと思いますが、先ほども申し上げました通りに、昨年の神武景気から今日までは人為的な操作による転換ということが中心になっておりますが、政府もここまで各界を不況に追い込んで、おりまする状態を、いつまでもこういう工合に漫然として無政策で眺めておるということは、国民も好みませんし、政府もそういう工合には思っていらっしゃらぬと思います。そこで今日の段階において世界経済情勢をにらみ合わせながら、大蔵大臣としては日本景気回復ということをどういう方向においてやろうとしておられるか、その点をまず伺いまして、それからあと私の疑問になる点があれば、またお尋ねいたしたいと思います。
  17. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 日本経済景気回復するためには、何としても輸出増加させる、それ以外に私はないと思っております。昨年の、九月以来とりました政策も全くこの趣旨に来いておるのでありまして、その輸出を盛んにするという政策が、当初のやはり予定からいたしましても、まあ本年の三月くらいまではどうしてもこれは生産調整というところまでいかなくてはなりません。どうしても三月までこれが生産調整ということになると、業者から見れば一番つらいことであります。従って力のある限りは抵抗する、こういう経過をとるのでありまして、実際三月くらいでこの調整を終りたいという政策も実際から見ればどうしてもずれていく、言いかえれば、自分のやる仕事の規模を縮小していけというようないき方でありますから、これは抵抗することは間違いありません。従ってずれが生ずるでありましょう。そういうのが今の過程でありまして、これが私は一巡するのを待っておる。そこで生産調整が確立して、言いかえれば物の需給というものの見通しが将来にわたって立つとすれば、ここでいわゆるきめのこまかいといいますか、方策をとっていきたい、かように考えておるのでございます。たとえて言うてみれば、今日景気関係金融政策というものがまずどうしても先行もいたしますし、中心になるのでありますが、この金融政策は、従来はむろんこれは締める、締めるということは私は今後の輸出増大、物価の安定のためになお必要と思いまするが、しかし他面これは締めることによって従来財政的な賞金は引き揚げとなっておるのです。これは金融関係においても財政自体においても、一般会計等においても、そういうふうなやはり税収の増加という形で引き揚げになっておる、しかしこれは還元をしておらない、これは締めるときには締めるという形を明確にし、その効果を適切にするために、これは還元せずにためたままに従来なっておるのであります。そうして要る金はとにかく日本銀行から一応出しなさい、従って日本銀行としては、設備資金みたいたなものに日本銀行が出すことは通貨の価値の上から、これはとうていやれない。がしかし、そういうことにも今日は使われておるだろう、従ってできるだけやはり日本銀行は締める政策をとり、しかしそれにもかかわらず、要る金は要るというので、御承知のように五千億以上に及ぶ貸し出しが残高としてある、こういう状況である。こういう状況を放置しておることについては不適当だと思う。それで生産調整ができた暁におきましては、今度は財政資金を民間に還元しようという今方針をとって、それを実行する準備をいたしております。そうすると、政府の持っておる長期資金が民間に長期の金として今度流れていく、それが回り回ってまた日本銀行の短期資金で長期に回されておる部分が日本銀行に返って、日本銀行の貸し出しがずっと減ってくる。ここで、適正な通貨量には変動は与えないが、長期は長期、短期は短期という資金の形で流れてくる、そこで金融というものが円滑にいくと、こういうことに相なるわけです。同時にここまで生産調整ができれば、従来は資金が不足しておるのがわかっていても締めるという形において、言いかえれば生産調整を強行する意味から出さなかった。たとえば造船にしても、あるいは電力にしても、鉄鋼にしても、まあこれは私はやはり二百億程度のものは不足しておると思います。それがどうなっておるかといえば、やはり払わずに、ただ中小企業方面にしわが得っている、それを中小企業として金を出しておるのですが、果して適切なところに金融がいっておるか。言いかえればしわが寄せられたところに中小企業として出したところの金がいっておるか。わきの方の中小企業にいく、そういうことがありますので、今度不足分の資金は財政的な線で流してやる、こういう考え方をいたして、そういうところから金融も今後において——これは全体の量において緩和するとは必ずしも申しませんが、適正な流れをしていくと、そういう意味からだんだんと私は経済界もいわゆる正常化をしてくると思う。それが世界経済のだんだんとよくなるという時期に際会をして効果を発揮して、日本輸出増大をしていくだろう、そこで景気が出てくる、こういうふうに考えられます。
  18. 栗山良夫

    栗山良夫君 まあ金融政策については大体わかりましたが、私一つ大きな疑問を持ちますことは、あなたが、一応の生産調整の終った段階で、さような金融政策の転換をある程度やりたい、こうおっしゃったのでありますが、これに少し疑問を持っておるのですがあとからお尋ねをいたしますが、その前に、その生産調整がある一つ段階を画する時期というのは大体いつごろとお考えになりますか。
  19. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は当初の計画としては大体三月、いわゆる三十三年度の会計年度末を一応の政策的な目標にいたしておりました。ところが実際はやはり世人が言うように——私はそういうように今でも守っていくように努力しておるのでありますが、しかし実際は生産調整というものは抵抗力があるわけであります。何とかなるまではなかなか競争するので実現がむずかしいので延びておるのであります。それで私は、やはり三月に終るとは考えておりませんが——前から私は三月に一応終るが、しかし四、五、六までやはり調整という過程を引くだろうと思っております。まあそれで大体上期というようなことを頭に入れておるわけであります。
  20. 栗山良夫

    栗山良夫君 そこで、昨年の九月にあなたが中心になられて三十三年度予算編成の基本構想をお立てになって御発表になりました。そのときのやはりあの構想を樹立せられた基本をなしておるものは何かと申しますと、私どもの理解しておるところでは四億五千万ドルの赤字を克服することにある、こういうことが私は中心になっていたと思います。そこであの当時そういうお考えでおやりになって、あと実際に外貨の事情はどういう見通しになっておるのか。まあ毎月黒字になっておるというデータは私どもある程度承知はいたしておりますが、大蔵大臣としてはどういう考えでおるか。昨年の九月の基本構想をお立てになったときに、今日の見通しとでは全く一致しておる、あるいは狂いがある、この点をお尋ねいたします。
  21. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 当初の見込みは四億ドル前後の赤字ということは考えておりますが、実際は今一億三千万ドルぐらいで終りそうです。
  22. 栗山良夫

    栗山良夫君 今私も一億三千万ドルぐらいの赤字で、さらに今後の毎月の輸出としては黒字でいけるのだということは各界から言われております。きのうも第一物産の副社長が参議院予算委員会ではっきりそれをおっしゃっております。そういう関係で、神武景気を裏返しにして金融引き締め政策をとらざるを得なくなった最も重要なポイントは、四億五千万ドルの外貨の赤字を克服するのにある、そういうのでやられ、しかも三十三年度予算の樹立の双本方針というものは、それをもとにして作られたわけで、ありますが、幸いにして輸出が好調になって、そうして赤字というものは非常に明るい見通しのもとに克服することができる、こういう状態になっておるわけです。  そこで私は続いてお尋ねをしたいのは、昨年度からことしの一月ごろまでの政府がある点を頭に描きながら予算の編成をし、そうして今までの立て直しをやろうとしておられたその一番もとになるところが相当大きな変化をしているのです。従ってこの辺で新しい第二段の政策というものを打ち出していく、そういう必要があるのではないかということを私は痛感するのですが、そこで議論をすれば、必ず分れてくるのが輸出振興の問題であると思うのですが、私はあなたも今日本経済再建は輸出増加にある、こうおっしゃいましたが、果して三十一億五千万ドルの輸出計画がそれがさらに上回らすことができるかどうか、私は大へん困難だと思いますが、日本経済を立て面しをするために、その道を輸出振興に求める、それでその輸出振興に求める予定としては三十一億五千万ドルより私はさらにふえなきゃいかぬと思うのですが、そういうような大幅なものを期待されておるのか、三十一億五千万ドルまで達成できればあなたのおっしゃいました輸出増加の新しい目標に到達するのか、その辺のところを伺いたい。
  23. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今この機会に、若干御質問もありましたし、関連してちょうどいい機会だと思いますが、一つは大体四億あるいは四億五千万ドルの赤字を考えて、これを克服するために必要な政策をとる、実際は一億三千万ドルの赤字だ、そうすると少し政策がきつ過ぎはしないのかというのが一つ考えられるのじゃないか。そういうふうな御意向もあるのじゃないかと思いますが、これは必ずしもそうではないのでありまして、この赤字が幾らになるかということは、これはむしろ私は結果的なんで、ものの需要、その赤字ができた、よってくるところは何かといえば、国内的においてものの需要が非常に旺盛だ、あるいは設備投資であろうとあるいは国内消費であろうと、要するに需要が非常に、言いかえればこれを当初の行き過ぎという言葉で表現をしておるのでありますが、この当初の行き過ぎ自体にあったのであります。その結果が輸入という方法によった、こういうことでありますから、どういう程度に一体当初の行き過ぎを押えればいいか、その抑え方によって自然赤字の解消も私は違ってくる、かように考えておるのでありまして、それは後ほどまた御質問があれば、財政の規模等に関連いたしますことでありますから…。今それだけは申し上げておきます。  それから三十三年度において輸出が三十一億五千万ドル達成が可能である、こういう問題であります。同時に一億五千万ドルの黒字という問題がありますが、私の考えでは一億五千万ドルの黒字が出ることは、これはその割合に達成が容易であろう、容易とは言えませんが、非常に努力が要りますが、可能性が強い、むしろ。これは私はやはり輸入というものが、どうも従来日本は過大に輸入しておったきらいはなかったかという点にやはり問題を持っておると思います。従いまして輸入はそれほど予定しておるよりも大きくもなかった。われわれが今考えておるような日本経済規模というものは維持していけるのじゃないかという感じを一つはしております。輸入が減れば輸出はそれほど伸ばさぬでも黒字は出やすいのであります。まあそれが一つ。それから輸出自体の三十一億五千万ドルでありますが、これは私の考えでは従来の、何せ日本貿易というものはいわゆる成熟期にあるわけではありませんので、非常に不利な条件下において従来やっておった、輸出振興に対して手を打つべき手は多々あります。また改善の余地も非常に多いというのが一つ考え方であります。そこで国際水準に物価を安定させて、そうして輸出努力を払っていけばまだまだ伸びる余地がある。そうして実際にこれを数字的に見ると、大体輸出信用状の開設を見ると、まあ二億一千万ドル前後が大体安定しておるのです。これが将来どうなりますか、そうしてそういうふうな信用状の設定の場合の為替の事際の出入りは約二億六千万ドル、こういうところにあるのが従来の実績であります。そうしてみると、二億五千万ドル、そういうふうに考えると、あと一億五千万ドルでありますが、私はそのくらいのことは今後努力によってやっていけぬことはなかろうとこういうところに基礎をおいております。
  24. 栗山良夫

    栗山良夫君 大体三十一億五千万ドルのところまではいけるというお話でありますから、これで私は了承いたしますが、世界経済日本と違って伸びているときは問題ありませんけれども、やはり景気が後退しているときですから、よほどの努力を払わなければ、そこまでは到達し得ないと、こういう認識で私はいる、こう思いますが、その点は大蔵大臣とそう大して意見の違いはないようでありますからけっこうですが、そういう状態のもとにおいて今、日本国内経済を二通り見渡してみましたときに、私どもとして幾つかの取り上げなければならぬ問題点を一つ持っているわけであります。たとえばただいまあなたは当初か非常に行き過ぎて金融引き締めをやらざるを得なかった。輸入が非常にふえて、やらざるを得なかったという工合に言われますが、最近われわれが得ている資料なり、産業界の話等を聞きますというと、昨年洪水のように入ってきた輸入そのものを分析した場合に、なるほど当初は多かった、設備投資が多かったのですが、それと匹敵するほど多かったのは原材料のやはり輸入だったといわれております。原材料の輸入は直ちに生産にかわらないで今日もなおかつ相当の備蓄をされておるけれども、原材料そのものがそういう事態にあるということをわれわれは聞いておるわけですが、大蔵大臣はそのようにお考えになりませんか。
  25. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは結局、在庫調査に待たなくちゃなりません。しかしながら御承知のように、相当やはり私は原料の備蓄もあると考えております。
  26. 栗山良夫

    栗山良夫君 その一つの例として、言葉が過ぎるかもしれませんが、昨年春の非常な神武景気による各経済団体の利益が上ったということについて、これを隠匿するというと、非常に言葉は悪うございますけれども、その一つの方便として、輸入のかっ込み作業をやった。要するに利益をある程度合法的に隠すために原材料などを、膨大な量を輸入してしまったと、こういうことまであって、あれほどの輸入増加を来たした。原材料は従って非常に豊富だ、こういうことを言われておるので、この点も大体御認識にあるようでありまするから、私は了承いたしまするが、そこで、私の時間はあまりありませんから、最後のおしまいの方に参りたいと思いますが、一番最初にあなたにお聞きした、日本経済建て面しの方処として、輸出増加だけに期待をするということは、非常に効果を期待するのは薄くしかも遠いと思いますので、もう少し国内的にいろいろな総合施策というものをおやりになる必要がありはしないか。たとえばその一つとしては、最近の経済不況に陥し入れている原因は、輸出が大体予定通りに伸びているにかかわらず、こういう状態になっておりますることは、ある意味でいえば、生産過剰です。各製品の生産過剰であります。これを裏からいえば、国内における消費というものが生産にマッチしていないということであります。生産よりも消費がはるかに少い。こういうところに原因があるわけです。従ってアメリカでも、アイク大統領国内消費刺激する政策をだいぶんとられております。従って日本においても、ほんとうの意味経済の立て直しをやるというならば、外貨の赤字ということに相当な危惧の念を抱いて金融の引き締めを去年断行されましたが、それもある程度見通しとしてついて来た。設備投資もまあ去年あまりやり過ぎてだいぶおきゅうをもらいましたから、これからはあまりひどくはないだろう。原材料の備蓄も相当にあるということであれば、アメリカ式に、日本国内経済を再建するためには、そろそろ国内消費、内需を刺激する、そういう政策をとるべきではないかと、私は思いますが、この点はいかがでありますか。
  27. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) アメリカ国内需要増加させる政策でありますが、これはまあアメリカみたいのように、それ自体の貿易がどちらかといえば多額の受取超過になる傾向を持っているのでありまして、先ほど申しましたように、昨年度でも放っておけば一方で三十数億ドルの対外援助ということを言いながら、貿易面ではそれ以上のものがまたドルで帰ってくるというような経済の態勢にあるということ、もう一つは金高にしても二百億ぐらいなものを持っている。言いかえれば、国際収支において何らの不安がない。また国内資源にしても自給自足、必要なものを作ろうと思えば、いつでも原料からとれると、こういう国で、国内景気を大いに盛んにならしめて、ほんとうにこれはある意味アメリカは孤立政策をとり、世界経済から離れても、アメリカ自体としても私は経済が成り立つ国であるかもしらぬというくらいに思っている。従ってこれは、アメリカはそういう政策をいつでもとれる。そこにアメリカの強味があると思いますが、日本なんかはとてつもないようなことなんで、もう、ちょっと景気がよかった——ちょっというわけでもありませんが、いわゆる一、二年の間景気がよかったというので、景気さえよければ手持の外貨はすぐふっ飛んでしまう。大あわてをする。そうして日本のように人口の多い国は、そうして国内資源はとぼしいと言い得るでしょう。そういう国では国の経済的構造として輸入超過に、これは人口的な面から見ると、しかも文化国家というようなことを考えると、よほどうまくやらぬと、これは輸入超過になる傾向を持ってくると思う。こういう国に、まず国内需要ということで、日本経済を立て直していくということは、原則的に見てもこれは危険性を持っている。またしかし、今は非常に不景気じゃないか、一時的には生産過剰じゃないか、それでその生産過剰の分だけでも解消するときに、国内需要を喚起するのはいいじゃないかという考えは、一応成り立つようでありますが、それをやると、私はこれはいわゆる輸出増大というその熱意もそぎますし、自然ここで国内需要から物価というものを釣り上げる。そうしてそれは単に滞貨が今あるという限界にとどまりません。そのとき済んだら、またすぐ国内需要をやめてしまって、国内の不景気政策をとれるかというと、そうもいかない。そこでまた変動がある。そこでやはりとるべき政策ではないので、今は生産調整をして、物の需給のバランスをはかる。一時滞貨があれば、その滞貨についてしかるべき金融措置をとることも、ときによっては、私は先の消費見通しが立つ以上は、それは考えてもいいのじゃないか、そういうふうにして、ここはやはり輸出進興、輸出振興に追いかけていくというのがとるべき政策であると考えております。
  28. 栗山良夫

    栗山良夫君 私がお聞きしましたのは、原則論としては日本経済的な政術のやり方、そういうものに対する原則論としては、大蔵大臣のお説に私はそう多く異見を立てようとは思いません。ただ問題は、三十一億五千万ドルの輸出をやって、これと若干の調節をしながら輸入考えれば、大体外貨は黒字でいけるのだ、こういうお見通しをお立てになり、そうしてしかもこういう政策をやらざるを得なかったことは、あなたの大蔵大臣のときではなかったわけでありますが、少くとも鳩山内閣当時から引き続いて、与党になっておいでになりまする自民党が、お作りになった内閣、その内閣がおやりになって、しかもああいう驚くべきような神武景気を沸かせて、びっくりして、すぐ手をお打ちになったのであります。そこでその打った中心が、四億五千万ドルの外資赤字ということだけは中心になってきたのだから、そこである程度その後の情勢で、経済分析が可能になって参りました。そこで私は無理を申し上げませんが、こんなに経済が深刻な不景気状態に帰っておりますから、一ぺんに私は踏み切れとは申しませんけれども、やはり輸出増加努力をしながら、極端に今押えつけている国内需要に対して、若干の刺激を与えつつ、経済の発展をはかって、安定をはかっていく、こういうことが必要ではないかということをお尋ねしているわけであります。
  29. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) それは私もお気持よくわかりますし、むろんそういうことを全然無視するわけではありませんが、しかし貿易輸出超過という形で進行していく過程におきまして、国内のいわゆる需要も、やはり国民所得がふえるという形におきまして、徐々に喚起されていくと思う。そうして貿易が伸張する前の過程において、生産力は大きくなって、また商品の過剰もでてくる、ストックもある、これには私は生産基盤において、調整ができた以上は、しかるべき措置をとって、あまり苦しまないように、むちゃくちゃに投げ売りをするというようなことも制限するような措置は、とってよかろうということで、だんだんと景気を立て直していく、こういうのが私の考えであります。
  30. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 栗山君に申し上げますが、三時半までの大臣のお約束でありますが、他に質疑の通告者もありますから、できるだけ一つ結論に持っていっていただきたい。
  31. 栗山良夫

    栗山良夫君 これは相当重要なことなんで、ほんとうはもう少し時間をいただきたいわけなんですが、委員長の御要請もありますので…。そういう御議論になるので、私どもといたしましては、これはちょっと話は別の政治論になりますけれども、いかに天下を預っておる与党といえども、重要な政策の変更を行なったときには、やはり議会を解放して、国民の信を問うて、そして政策というものを・国民に密着させながら政治をやらなければいけないということを、私は申しておるのですか、去年の春までのやり方というものについては、この前予算委員会のときにあなたに直接申し上げましたから、御理解いただいておると思いますが、経済企画庁の去年の七月の報告書でも政府はいろいろいき足らない行政指導の欠陥があった、それでこういうことになったのだから、ということを白状をしておられますが、その後今日までその行政指導の悪かった点を現実に反省をし、そうして政策をたて得るところまできたわけであります。そこで私が今申し上げましたように、若干内需の刺激政策というものをとるべき時期にきているのじゃないかということを繰り返しお尋ねしたわけです。それで今あなたはそういうことについて、あまり飛躍できないようなお話でありましたが、実は過日、衆議院大蔵委員会において、公定歩合引き下げ論が出ましたときに、あなたは、引き下げ論に対して、肯定をした、しかも実施の時期についてもある程度見通しを述べられたわけであります。こういうことは、やはり金融を緩慢にし、ゆるやかにして、内需の刺激を若干しようとしいう、こういうわれわれの考え方に肯定せられたわけではございませんか。
  32. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 公定歩合引き下げ論は、これは非常な間違いを伝えられておるのであります。それは私すぐ……。実はその前の予算委員会において、公定歩合品についての御質問が社会党の方からありました場合に、いやそういうことは考えていないということを、きわめて明瞭に前にお答えしてある。それから大蔵委員会での御質問は、先ほどお話のように、景気は非常にいい、いいといいながら、今度またこれは行き過ぎたというので、あわてていろいろの政策をとるじゃないか。こういうようなことを繰り返すようなことがあっては、日本の国のために、はなはだ悪い。それを繰り返さないために、どういうことをお前考えておるかという質問であったのです、これは。それで私は、あの際においては、一種の景気現象と申しておりますが、自由経済では、投資の行き過ぎというものも、景気循環なんだから、それでああいうふうな状況になった場合は早い機会に金融的に総合施策をやらなければいかぬ。そういうところに手落ちが私はあったと思う。少くとも不十分な点があった。それで今度われわれまず第一に予算を組んで、内外の景気状況をよく把握するような機構を経済企画庁にお作り願って、そうして十分統計なんかを終えて、十分参考になるような政府の方針を示そう、そしてこれによって、みんながそういうふうに動くかということをよく承知してもらおう、そういうふうな経済状況に対応して、いろいろな経済に参画しておる機関が、機敏に、しかも機動的に施策をすぐ実行に移したらよかろう。たとえば一方で投資が行き過ぎとなれば、公定歩合考えてもいいじゃないか。あるいはまた輸出が非常に増加する。そうすると、国内金融はゆるむことは間違いないから、そういう時期に、やはり今度制定されておる預金支払準備金制度というものは、そういうときに導入をして、市場資金の何パーセントかを日本銀行に預けるような方法をとるのもいいだろ。公開市場政策というものも、やはりそういう場合はやればいい。そういうことを申している。しかし今のところは、まず輸出増大することによって、金融がゆるむから、そこで市場金利も下ってくるから、そこで今の金利の非常な無秩序な点を一つ改めて、中央銀行から市中銀行、あるいは長期、短期の資金に至るまで、金利体系というものをまず確立していく必要がある。そういうことにしておかなければ、金融的な措置というものは効果は発揮しないから、何ぼ公定歩合を上げてみても、それと市場資金とのつながりがないような状況下においては意味が少いから、まずそういう金利体系を確立していく必要がある。こういうような全体的な関係において、そういうふうなことが整ってくれば、公定歩合というものも、将来は下げるときには早く下げる。そのかわりに、上げるときには上げる、こういうふうなことを厳格にやればいいしいうことを申し上げておるに過ぎません。そのことについては、その後しばしばの機会において訂正を何回もいたして、参議院予算委員会でも訂正を何回もいたしたつもりなんです。そういうことなんですから、どうぞ一つよろしく…。
  33. 栗山良夫

    栗山良夫君 それはただ公定歩合を下げるとか下げないとかいうことが議論になるならば、大蔵大臣のおっしゃることはよくわかります。しかし少くとも去年の春からこちら歩いてきた経済動き方、それの分析、さらにそれに対するところの施策というようなことを考えてみた場合に、大きな日本経済再建の一こまとして公定歩合を取り上げたときには、今のような議論が出てくるわけです。そういうことだもんだから、ニュアンスとしてやはりお尋ねをしておかなければならない一こまなものですから私はお尋ねしたのであります。  そういたしますと、大蔵大臣としては、輸出増加一本やりで、一時的に内需を刺激するような政策を絶対にとってはならぬ、そういうことをとってはまかりならぬ、こういう工合にとってよろしいですか。
  34. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 原則としてはそういうことでいいでしょう。ただしかし国内的に正常化をはかっていく。ただ、今まで無理がきていますから、そういう無理なところは直していくということで、国内的によほどよくなっていく、かように考えております。
  35. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうしますと、正常化ということはどういう意味ですか。
  36. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) たとえば金融で申しますと、私は実は今回国際収支改善のための総合施策で、金融を締める場合、ほんとう言いますと、金融のテクニックとしては、政府に引き揚げの金が多い場合は、これは長期資金ですから、ある程度市場に還元をしてあげて、そうしてたとえば社債市場に出すとか、金融債を持つとか、そういうような格好にしまして、長期資金を出して、そうして日本銀行の貸し出しは短期の貸し出しに限る、こういう方向にいくのが金融の常道なんです。ところがそれは平常のときにはいいですけれども金融を締めるときには、財政でそういうことをやって、そういう二頭の馬立てでいくとなかなかうまくいかぬし、そうしてこれを締めていくということを一般国民によく知ってもらうために、今、金は日本銀行から出すようにしておこうという形で、日本銀行から出すようになっております。そうして日本銀行から五千億とか、多いときには七千億という金が出ておる、これはやはり無理がきております。ですから生産調整ができて、もう政府の方から金を出しても別に投資刺激する気づかいはないという段階にきましたら、今度は政府の金を出すつもりにしております。そうして無理があった日本銀行の金を返してもらう、こういうふうにしまして、安定した長い資金を供給して上げる。日本銀行は短期ですから、引き揚げよう、引き揚げようとしますから、それが長期に回っておると事業家というものは常に苦しくて、何とかして返さなければならぬ、しかし資金は設備に使っておる。そうなればそこに非常に大きな無理があります。そういうものを置きかえていく、こういう方向をもう一ぺんとろうと、こう考えております。
  37. 栗山良夫

    栗山良夫君 あなたのお話を伺っておりますと、日銀の総裁のときの、要するに大企業中心にしての政策をまだそのままにして、大蔵大臣になってもお考えになっておるような雰囲気を感ずるのですが、今われわれが問題にしておりますのは、やはり町で苦しんでおる中小商工業者あるいは零細業者なり、そういうももの不況をどうして打開していくかということ、これにわれわれは中心を置いておるわけです。そういう意味一つお聞き願いたい。  そこで先ほど調節政策を若干とるとおっしゃいましたが、私はさらにそれだけではなくて、もう一歩進んで租税の軽減ということについては、直接税、間接税を問わず、もう一度税が高いということはあなたはしばしば述べておられる。日本の税金は高過ぎるということを述べておられる。しかも中小商工業者や零細業者や勤労者に対しては高いということは言われておりますから、これはそのまま受け取りまして、その高いのを少しでも軽減をすることによって内需刺激の、直接ではない、間接的な調整政策、こういう工合にするべきではないかと私ども考えております。そういうような税金の軽減について大衆課税ですね、中小商工業者なり、零細業者なり、勤労者に対するところの減税政策というものを真剣に取り上げておやりになる御意思があられるかどうか。この点を、最後に伺っておきたい。
  38. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 適正な国家の歳出需要というものはこれはまかなっていかなければなりませんが、これをまかなってなおかつ税等からくる歳入にゆとりがありますれば、これは私は減税に振り向けるのだ。その際にやはり所得税に重きを置く。それからその他の税金の軽減、これは考えております。そういう場合にやはり低額所得者という方面の減税をまず考えることは、これは申すまでもないことであります。まあそういうことにつきましても、今後全般的に一応やはり税について見ようと考えております。
  39. 栗山良夫

    栗山良夫君 減税を、考えてみるとおっしゃいましたが、もう三十三年度予算では間に合いませんね。いつお考えになりますか。三十三年度の途中において、臨時国会かあるいはそういう場合に具体化されますか。どういうのですか。
  40. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今すぐ減税をこれ以上三十三年度にいたすという意味ではありません。ありませんが、三十三年度におきましては、特に間接税について全体を一つ税制調査会にかけまして検討を加えていただこうと、こういうふうに考えております。その間接税がどうあるかというそこの結論いかんによっては、これは私また税全般についてのどうするか、税全般について直接税についても軽減をするかどうかということも考えてみたいと思っております。
  41. 栗山良夫

    栗山良夫君 最後に、これで終ります。  大体減税の問題は私はわかりましたが、そのあなたのお考えを述べられた大前提になっておったのは、国をまかなっていかなければならない、従って国家歳入の見通しがつけば余分なものは減税に回してよろしいと、こうおっしゃいました。ところがそのお言葉をそのままわれわれ受け取れば、なぜ三十三年度予算編成のときにそれたおやりにならなかった。二千億に近い余剰金があるのになぜそれができなかったかと言って激しく追及をいたしたいところですが、これはもう問題がここまで進んでおりますから、そういうことを申しませんが、少くともそういう大前提でおやりになるならば、三十三年度にも相当な自然増収が見込まれておるのです。三十四年度もおそらくそうでしょう。従って大蔵省の税に対するところの若干の事務的なテクニックで自然増収が出るなんということを私ども考えたくありませんし、もしそんなことがあるとするなら、これは許しがたいことですから、正真正銘の政策としてお取り上げになる場合には、少くとも今の国家の歳入財源というものは非常に余裕があると国民は見ております。従って、それを一つ国民大衆の生活改善、景気回復、内需の刺激という方に一刻も早く回されるように強く要望して、私は質問を終ります。
  42. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 御答弁ありますか。
  43. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えしておきます。  三十三年度に相当な自然増収等があるのに、なぜ減税しなかったかという御質問であります。実はそんなにないのであります。自然増収として千五十億ばかり、これは歳出に充てたのであります。これはそれなくしては歳入歳出増はないわけです。この歳出においても当然増加する部分が大部分を占めております。新しい政軍費的なものはそれほどなかった。これは経済刺激せぬためにやむを得ない。それから三十一年度——過年度から繰り越してきているのが千一億ですか、これはしかし法定できまっております分を除き、残り四百三十六億の保留した分が、今問題になるわけなのです。これは私がしばしは御説明申し上げますように、まあ景気がよかった一時的な歳入増ですから、これを恒久的な財源的に見て減税に充てるというのは私はまあ適当でない。それで、同時にまた経済に対する刺激という点も考えて、三十三年は約二百六十億程度のところにとどめた、こういうことでありまして、減税ということについて全然考慮を加えてないわけではないわけであります。
  44. 平林剛

    ○平林剛君 私は税金の問題について若干お尋ねをしようと思っておりましたが、今栗山委員から大事な点については質問がございましたから、簡単に、時間もありませんから、大臣の所見をお聞きしたいと思います。  最初に、私は政治を行う場合に、やはり一般国民にわかりやすい政治が行われなきゃならぬ。そういう意味で、この大蔵委員会に籍をおきまして、今日までいろいろな仕事に携わって参りましたけれども、この委員会法律案が非常に多過ぎる。大へん他の常任委員会に比べましてどうも法律案が多過ぎるし、法律案の内容は比較的数字が多くて難解でございます。そういう意味で、私はこの委員会に入ってからでも、一般国民が一体大蔵委員会ではどんな仕事をやっているのかということを理解に苦しむ場合がかなり多いのではないかと思う。なぜそんなに大蔵委員会の議案が多いかということを考えてみますと、最近の傾向から特別会計制度が年々こう大きくなりまして、もう三十幾つも特別会計、これに関する法律案が議会のたびに出て参ります。それからもう一つは、毎年毎年同じような法律を、その期間を延ばすということだけの、暫定措置を引き続き暫定措置にするというような法律案が多かったり、きわめて事務的な、質疑も何もなくてもいいような法律案も出てきたりする。こういう工合に私どもほんとうに委員会の運営をやる上においても、また国民に政治を理解してもらうためにも問題が多過ぎる委員会だと思っているわけであります。  そこで、大蔵大臣に私は今の趣旨からお尋ねをするのでありますけれども、もう少し特別会計というものを少くさせるような気がまえで、今後の財政に当ってもらいたいものだと思う。今度の議会に提出をされた法律案の中でも、経済法盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律案や、道路整備特別会計法案、接収貴金属の法律案が通れば、またこれも特別会計という工合に、これはもう少くしてわかりやすくするというのが建前であるにもかかわらず、毎年ふえていくわけです。これを何か減らすような考えをもって今後善処してもらいたい。  それからもう一つは、先ほど申し上げた法律案の多い理由の一つで、事務的な法律が非常に多いのですね。私はこの税金の法律でも、その他の法律でも、もうある程度恒久的な性格を有しているようなものは、この際整理してなるべく毎回出してこなくてもいいようなふうに再検討する必要があるのじゃないか、こう思うのであります。  それから、大臣は大へん国家の重要な席に座っておられますから、各委員会から引っ張りだこで質問する時間も少い。そこでわれわれがいつもこの委員会審議をする相手になっておるのは政府委員であります。大蔵省の役人はここに並んでおられますが、どなたを見ても、みんな頭のいい人である。どうも、勉強をしていなかったり、専門外のことになりますというと、その答弁に、あと何を質問していいかわからなくなるくらい、なかなか練達の士ばかりであります。しかしこういう政府委員は、どっちかというと、今までの慣行といいますか、現在のことを説明することはうまい。そしてわれわれの質問に対して、いろいろ体をかわして逃げてしまうことはうまい。しかし実際に政治を動かすということは、この人たちのおやりになる権限ではありませんから、できがたい。各国の常任委員会の例を見ても、できるだけ大蔵大臣あるいは担当大臣が出てきて、そして国民の代表である議員と胸を開いて話し合い、実際に政治を動かす、こういうことになっております。私は、三つの点を述べましたけれども、それぞれの、点について、大蔵大臣が、今後国民にわかりやすい政治をするために、せめてこの大蔵委員会の運営について、どういうお考えを持っておられるか、聞かしてもらいたいのであります。抽象的に、適当に、私の質疑にお答えをするというだけでなく、このことについて真剣に検討して、そして何か研究して結論を出したいと思うというくらいのお約束を、きょうはしてもらいたい。まず最初に、その点をお尋ねいたします。
  45. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは全くあなたと同じ考えであります。何も答弁は要らぬくらい同じ考えであります。(笑声)
  46. 平林剛

    ○平林剛君 答弁が要らないというくらい、私の意見に全面的に賛成されたのはわかるけれども、私の言うのは、私と全く同じ見解ならば、これについて何か考えて、あなたは政治家として実際の政治を動かす人なのだから、動かすことについて研究をするお約束をきょうは一つしてもらいたい、こういうことです。
  47. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私も大いに勉強しまして、一つ問題を持ってきまして、皆さん方の御意見を拝聴いたすことにしたいと思っております。そしてそれを実行に移す、こういうことにしましょう。
  48. 平林剛

    ○平林剛君 私のあげた問題について、一つの問題を持ってきて——多分具体策のことだと思いますけれども、御相談するというお話がありましたが近く、解放があって、引き続き、あなたが大蔵大臣になられるかどうかそれはわかりませんけれども、幸いにして、大蔵大臣としてこの委員会でお会いする機会には、今のお約束通り具体的な変化があったかどうかということを私検討いたしますから、どうか真剣に考ええていただきたい。  そこで税金の制度について、若干、栗山委員お尋ねになったあと、補足する意味質問をいたしますが、予算の編成の際に、あるいはそのあとで、毎年々々議論されますのは、自然増収であります。今年の予算編成を岸内閣が幸いにできたのは、昨年からの相当多額の自然増収があったから、今年の経済政策その他の施策ができるような予算の編成ができたことは、大臣といえども否定をなさらぬと思います。三十三年度における自然増収も、約一千五十一億円。この自然増収は一体どこから出てきたのか。私どもは、これはいろいろの要素を考えることができますが、第一は、やはり税率が高いのじゃないか。それから税金の取り方に無理があるのじゃないか、大蔵大臣は、おそらく産業経済の異常な伸びがあって、それでこの自然増収が生れたというお答えを主としてなさっておりますけれども、第一、第二の点についてもやはりかなり私は、自然増収の分の中には含まれているものだと思うのです。原因についてはどういうふうに考えておられるか。  それから、国民のすなおな考え方からいきますと、自然増収は結局、税金の取り立ての分が多かったということになるわけですから、これは減税に回すべきだというのは、素朴な最もわかりやすい政治である、これについては、私どもとしてはぜひ減税に回すべきだという主張をいたしましたけれども、先ほどの栗山委員お尋ねで大体のことはわかりましたけれども、しかし大蔵大臣の御説明のように、自然増が継続的にあったり、あるいは、しかも財政の需要を満たしてなおかつ余裕があれば減税をするというのでは、これはとても減税なんかはできっこない、そういう意味で、あなたの今お約束になった来年度減税の構想については、私どもに、確信をもって、また国民にも期待を持たせて約束のできるものでありましょうか。この二について一つお尋ねをいたしたいのであります。
  49. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 自然増収がどれくらい出るか、これはまあ事実の問題でもありますし、そう論議の余地はないと思います。これは第一、経済が伸びていかなければならぬ、経済の成長率。それから、税率もあります。さらにまた、例の税率でも累進課税というのがありますから、これは経済の成長の伸び率以上に税が伸びる、こういうことは考えられるのでありますから、それらの総合によって自然増収はあるのであります。  それから来年度減税ということ、私は今、来年度において減税をするとかせぬとかということは、実は考えておりません。これは、来年度等におきましては、社会保障も考えなければなりません。それから、今回の軍人恩給の点もあります。さらに、今後において、国民年金というものをどういうふうにやるか、これは慎重に考慮しなければならぬ。要するに税率も高い、税負担も重いという、それで減税を要求しながら、一方においては、これは当然のことでありまするが、福祉国家というような見地から、ほかの歳出を増加させる需要が非常に多いのです。これらをどういうふうに按配していくかが、今後非常な私は問題点だと思う。(「大蔵大臣は圧力団体に負けたのだ」と呼ぶ者あり)従いまして今後なるべく減税もして、同時に歳出というものを十分厳格に考えていき、真に国のい福祉に役立つという方向に持っていくというふうに考えて——しかしやはり私は、日本の国は当分苦しい時代を通るだろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  50. 平林剛

    ○平林剛君 きょうは時間がありませんから、大蔵大臣にさらに突っ込んだお尋ねをするわけに参りませんけれども、今のお答えは原則論を言っておるだけで、そういう原則論や抽象論だけでは、実際国民にわかりやすい政治をやる政治家としては、どうも資格に欠けているのじゃないかと私は思う。今日までいろいろ、これだけの自然増収があるのだから、減税に回したらどうかという国民の声は、素朴にしてしかもかなり強いと私はみておるわけです。ですから今のように、いろいろな条件や、できなくなるような構外をおあげになって、口だけで減税をするということだけでは、国民信頼される政治というものは、いつまでたってもできっこないと私は思う。今日まで各委員会で、大蔵大臣に対して、減税の問題に対する質疑をやったときのあなたの答弁をいろいろ調べてみたのです。ところが、今回もわずかに法人税の軽減や荷車、自転車あるいは酒税、相続税等は、答申案に従って、総額において初年度二百六十一億円の減税を行なった、これは認めますけれども、まだまだ七百九十億円ばかりある、それをあなたの方は、本来減税に回せという素朴な国民の要望に答えず、いろいろ政策の必要から他に回されてしまった。この点はまことに私ども遺憾に思うので、いずれ当該の法律案が来ましたら、政府見解をただしていくつもりでありますけれども大臣が答弁をなさった中に、自然増があるのだから減税をやったらどうだということに対して、自然増というのは、これはつまり日本経済のこの異常な伸びによってできた。それであるから、正常な歳出や追加減税に回すことは不適当だというお答えを終始一貫して述べられておる。私はこれはまあある程度認めてもいい。先ほどの持論からいくというと五十歩ばかり下りますけれども、これは認めてもいい。しかし、自然増が継続的にある。しかも一千億やあるいはそれをこえるような、自然増が毎年あるというようなことは予想できない。そういうことになると、まあ結局減税はやらぬということにもなってしまう。だから今日の国民の税金のことを考えたら、減税をやらなければならぬということは、だれでも痛感をしているのだから、そこを何か知恵を出して、自然増が継続的にないときでも、この年に異常な自然増があったならば、それを減税に回すという工夫は私はできないことはないと思う。仁徳天皇は国民のかまどから出る煙が細いのを見て、すぐに三年間の租税免除をやったなんていうことは、これは歴史に残る善政です。今日の一般国民の、特に低額所得層の生活を考えたら、自然増というのは継続していないのだから、減税考えるべきじゃないというようなことだけでは済まされない。たとえばこういうことをやったっていいわけでしょう。今年だけの減税をやったって、たとえば私はいつも政治が国の生活と密接に結びつくことが一番大切なことだと考えておるわけでありますけれども国連加盟をやる、国民全般が大いに祝福すべきときである。そのときに、今年は余裕財源があるから、それは国民、国家全般として祝福すべきとぎだから、特別今年に限っての減税をやる。あるいはその今、アメリカとあるいはソ連と折衝中である、小笠原や沖繩あるいは干鳥の返還ができた、国民として非常に喜ぶべきときである。この際、今年一年でも自然増、税金の取り立てがあるから、これは減税に回すべきだ、これをやる、こういうような特別措置だってできないことはないのですね。たとえば貯蓄減税は二年間の期間を限ってやるということをやって特別の減税をおやりになっておる。資本家に有利なことはときどきそういういい知恵を出す。これだって今のように国民の再びとするときに、国民の喜ぶ減税をやるということになったら、何と生活に結びついた政治ということができるか。こうすれば自由民主党、もっともっと票がふえるわけです。私はそういう意味で生活に結びついた政策、政治ということを大いに考えるべきで、何も自然増が継続的でなければいかぬから減税できないというようなことはあり得ない。どうですか、こういうことを一つあなた検討してみる意思はございませんか。
  51. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は自然増がある場合に減税をしないという意味じゃない。ただ自然増が出る原因があると、この国の特別な時期に特別な異常な状態で出た場合には、それは減税に充てるのが適当ではない、こういうふうに考えた。しかも、それを全部減税に充てないとかいうのではない。今年でもやはり三百六十億程度は減税に回しておるのであります。それをまあ原則的にすべて減税に充てると、そう軽くは考えられない。しかし、そういうような異常状態でなくて、経済の正常状態においてそういうふうな歳入が、いわゆる自然増収がたくさん出ると、こういうふうなものが継続的にある場合には、これは私はやはり減税に回すべきだという考えを持っております。これは大蔵大臣として減税に充ててよろしいというふうに考えておるわけです。ただしかし、そういう場合に、そのときの国の歳出はどういう必要なものでも切って減税に充てるかというと、歳出の重要性と減税とを比較して、国家のためにどちらがいいかその判断はしますが、しかし、減税を、大蔵大臣として、その場合に歳出よりもまず減税ということを考えるのが常道であろうと考えます。
  52. 平林剛

    ○平林剛君 自然増があった場合は原則として減税考えるという趣旨は了承します。また私の提案はあまり自由民主党にやってもらわなくてもいいので、こういう生活に結びついた政治は、いずれまた他の政権ができたときに大いに実行するつもりでありますけれども、次にお伺いをいたしますが、今回おやりになる減税について、これはすでに政府からいろいろ説明を受けたのでありますけれども、初年度二百六十一億、平年度三百七十三億、中身は相続税改正に二十億、法人税に百二十五億、酒税に五十六億、科学振興に十億、貯蓄奨励に五十億、内容については一切承知をいたしておるのでありますが、ただ、私大蔵大臣の施政方針の演説と、この減税の内容にどうも理解しがたい点がある。あなたは施政方針の演説の中で、国民の税負担と経済の現状にかんがみ、産業の振興、資本の蓄積及び大衆の租税負担を軽減するを目的とする減税を行うことにしましたとこう述べておる。貯蓄奨励とか、科学振興がまあ産業の振興、資本の蓄積等に該当する減税のようにとれる。しかし大衆の租税負担の軽減を目的とする減税というのは、一体その何に当るのだろうか、こういう疑問を実は感じておるわけです。大蔵大臣はこれに対して、法人税の減税の率の適用範囲を百万から二百万に上げたことは、大衆の税軽減だという答弁をしたり、何車、自転車の減税あるいは低額所得者の嗜好品である酒税の軽減は、まさしく低額所得者の減税だというお話が各委員会でそれぞれ述べられておる。私はこの点までは承知しておるわけです。確かに荷車、自転車などの減税は、これは最近国民の生活に結びついた減税として、私は大へん喜んでおるのであります。こういうことをおやりになることが、ほんとうのまあ政治である、こういう意味では、これについては私は別にとやかく申し上げません。しかし、これを除いては、あなたが特に施政方針の演説の中で、大衆の租税負担の軽減を目的とする減税を行うというほど、自慢をするほど中身はないのじゃないか。これに対して同僚議員かしばしば追及をするのでありますが、あなたはいや、今申し上げたことが低額所得者に対する減税だと私は思うとこう言っている。そこで、きょうお尋ねしたいのは、大蔵大臣の頭の中には、低額所得者という観念をどこいら辺においておるかということを聞きたいのです。どうも大臣は、昔から日銀総裁で、われわれの縁の遠いところでお仕事をやっておられたし、一般国民層の全般の水準ということをよく理解をして、こういう演説をされたり、御説明をなさっておるのかどうか疑う。低額所得者というのは、一体どこいら辺に基礎をおかれてあなたはお答えになっておるのでございましょうか。
  53. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は大体所得税のかからぬ人は、これはむろん……。所得税のかかるところから上の若干の層をまあ考えておるのです。何も私は、今そんなになんですよ、たくさん所得のある人は、特別な人を除いてはありませんよ。それは何とか総裁とか何とかいますけれども、そんなものは子供の多い守衛さんなんかと比べて幾らも違いません。
  54. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 平林君にちょっと申し上げますが、あと山本君の質疑が残っておりますが、三時半という時間がございますので、そのつもりで一つお願いをいたします。
  55. 平林剛

    ○平林剛君 まあこれはいずれ税法の審議の際に、またあなたと掘り下げていろいろ議論いたしますけれども、あなた、低額所得者という固有名詞をお使いになるときに、何かまだもっと上の層を考えておられるような気がしますので、どうか一つその点は…。岸内閣といえども、ただ納税者の権衡ということだけを考えるのでなく、税金が生活の中に食い込んでいる、いわゆる低額所得者というものに対する減税を真剣にお取り上げになって、研究をなさる必要がある、こういうことだけを申し上げておきます。  最後に、先ほど栗山委員の御質問に対して、明年度は主として間接税を中心減税政策を検討するというお話しがございました。そこで、その間接税について、大体どういうところを中心に置かれるか。私は、税法全般を、見て、一般的な意見でありますけれども、税法の中で、今日の時代に適当でないという法律を、二つあると考えておるのであります。一つは入場税。入場税は戦前にはなかったもので、後に——戦時中に地方税として、当初は一五〇%の重税——高率をかけていた時代がございました。このときの思想は、戦争中、これら娯楽やあるいはそれらに類するものに入湯する者は…ぜいたく税という性格がどうも感ぜられる。今日は、これは平和国家として、また文化国家として生きていく上において、入湯税については相当検討しなきゃならぬ要素を含んでおると私は思うのであります。もう一つ、戦時中の遺物として考えられるのは物品税であります。私も、きょう六法全書を読んでみて、あらためて認識を深くしたのでありますけれども、この前文には「朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル物価税法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム」と、こういう文句が書いてございまして、その法律用語その他におきましても、もう昔流の表現でございますし、また、内容においても、マッチは千本について一円、ラムネは一石について千二百円という工合に、大衆生活に直接関係のあるものが、戦時中物資統制のあったときのなごりとして、今日なお残っておる法律であります。そういう意味では、間接税を考えるときには、当然、文化国家としては入場税、国民の生活に結びついたものとしては物価税について、特に検討していく必要があると思うのであります。先ほどの間接税の中身というのは、このことをおさしになるのかどうか、一つお伺いをしたいのであります。
  56. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 間接税をどうするか。これは、税制調査会の専門家にとくと検討を加えてもらいたいと思っています。ただ、私の一つ考えは、間接税が今でも、これはまあ直接税の方もそうですが、どうも非常に複雑じゃないかと思う。そうしてあらゆる種類のもの、課税対象が非常にまた数が多いんじゃないかというような知もいたしております。できればあまり複雑でなくして、すっきりした形でいけぬかというのが、これは私のただ感じでありますが、そういうふうな感じも一つ入れて、十分検討していただきたいと思います。なお、入場税、物価税、これは国民生活に面接関係もありますので、そういう意を頭に入れて、十分検討を加えていただきたい、かように考えております。
  57. 平林剛

    ○平林剛君 時間がございませんので、十分なお答えをいただくわけにいきません。またあらためて大臣おいで願って、今後、質疑を続けたいと思いますから、きょうはこの程度で私の質問を終ります。
  58. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 山本君に申し上げますが、あなたの質疑の時間が非常に少くなりましたけれども大臣と、かねて三時半という約束がございますので、その線に沿って御協力いただきたいと思います。
  59. 山本米治

    ○山本米治君 私は与党委員でございますので、めったに質問しないのでございますが、きょうは特に、あらかじめ申し込んでおきまして、最小限三十分ぐらいほしいと思っておったのでありますが、またまた、今委員長が申されますように、時間が非常に制約されてしまいました。まあできるだけ簡単に質問したいと思うのであります。  今から質問しようとする問題は、前回、正示理財局長にもお尋ねしたのでありますが、準備が十分でなかったようで、十分な答弁を得られなかったのであります。  今回の国会に、御承知のように国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律案が出ております。従来、一円未満のものは四拾五入となっていた、それが今後は一円未満は全額切り捨てと法律で改めるわけでありますが、これはすなわち、一円未満というものはあまり価値がない、一円未満という金はほとんど価値がないと国家が容認したものと思うが、どうでございましょう
  60. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 計算単位として一円未満は取り上げぬでよかろう、かように考えております。
  61. 山本米治

    ○山本米治君 計算単位として一円未満は取り上げぬでもよかろうということは、事ほどさように価値がないということなんです。もし一円以下の金でも、たとえば九十九銭とか一円で米が一俵買えるということであれば決して切り捨てはされないであろう、確かに日本通貨単位の円は非常に今日価値がない、購買力がないということは、これは客観的事実であります。新聞一部も買えない、あめ玉一個も買えない、私はこの前は、最近の新聞の切り抜きを示して申し上げたのでありますが、きょうはもうその繰り返しはいたしませんが、要するに駅頭などで一円玉がごろごろころがっておっても、だれも拾う者がない、これは非常に残念だ、非常に困るという投書であったわけでありますが、そこでこの前局長にも、一円で買えるものを列挙してくれと言ったけれども、さっぱり思いつかれない。最後にだいぶ時間が過ぎてから、うちで自分は信仰家でおさい銭を上げておる、毎月うちの神棚にさい銭を上げるそのときに一円を使う、(笑声)こういう話でありましたが、これはやはり結局一円以下、一円というものはもう金の価値がないということだと思うんですが、いかがですか。
  62. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今むろんこの貨幣単位、いわゆる購買力を考える場合に、どこを区切るかという問題は常にあるのでありまして、そのときの一番最低単位になるところはいつでもそれだけでは買いにくいというところだと思います。これは従って一円というものは、その一円だけではなかなか購売力として不十分であるが、しかし価値の単位としてはやはり一円というものはこれは必要である、かように考えております。
  63. 山本米治

    ○山本米治君 理論的にいえば、通貨というものの一番大切なことは、価値の安定ということであって、従ってある時期にインフレを経験して、非常に昔から見れば価値がなくなったということがあっても、現在通貨価値が安定すればいいわけであります。昔まあ一円の金というのは相当値打ちが、あった。牛肉も食えたし、お銚子さえ一本くらいつけて飲めた金なのでありますが、しかし非常に貨幣価値が下落すると計算が不便だ、たとえばあめ玉一個が百円、玉子一個が一万円とかいうことになれば、非常に間違いが多い。いらない零もつけなければならない。銀行の計算の能率も上らない。また間違いが多いということがあるわけであります。で、日本は御承知の通り三、四年前の昭和二十九年の終りと思いますが、一万円札が問題になった、ところが当時ではインフレがまだすっかりおさまっておりませんので、一万円札という大額券を出すとインフレを刺激しておもしろくないということで、印刷の準備はしたけれども発行をしなかったことは御承知の通り、その後、最近五千円札というものが去年から出ております。昨年の春には百円銀貨というものも出たわけでありますが、こういうような大額券の一万円札、五千円札を出していいということは、すなわち貨幣価値が安定したということを意味するものだと思うのですが、その点はいかがですか。
  64. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大体日本の貨幣の対内価値も対外価値も、大よそ安定をしておると思います。しかしながら、その安定の基礎が確立したかといえば、なお私は今後の勢力に待つところが多いと、かように考えます。
  65. 山本米治

    ○山本米治君 私は、かねて通貨単位というものは、経済一切の基準になっておる非常に重要なものだというふうに考えておるわけです。通貨単位のしっかりした国というものは、経済もしっかりしておる。これはアメリカのドルとかイギリスのボンドとか、そういうものが相当購買力がある、価値内容がある、そして安定しておるということをみてもおわかりになると思うのでありますが、日本では、捨て顧みられない、水に浮く一円のアル玉、こういう点で、こういう貨幣を使っておる、単位としておる日本経済はあまり伸びないと、やはりもっと円が値打があって、せめて一円という通貨の単位、一切の経済の基準たる通貨単位というものが、価値をもって、せめて一円でライスカレーが一ぱい食えるとか、あるいはライスカレーでなくても、そばとかうどんが一はい食えるという価値内容を持たないと、これは国民がもう貨幣に対する尊重の念というものを持たなくなる。これがひいては資本蓄積ということもできないということになるわけで、そういう意味からも、私はゼロを二つとった一円を百円というデノミネーションをやったらどうかと考えておるのでありますが、賛成者もいるけれども、この委員会でも、だいぶ賛成者も多いし、今の日銀の山際総裁も、個人的には賛成しておられます。で、これに賛成しない方といいますか、それは内容がわからない、あるいは内容を誤解されておる方が多いのであります。誤解のうちで一番多いのは、貨幣だけゼロを二つとって、百分の一に切り下げても、物価かその通りになるかどうか。貨幣は百分の一に切り下げたが、物価はその通りにならぬとすれば、経済が非常に混乱する、こういうことは百も承知である。私はそういうやり方には絶対反対であります。戦争のあとに、各国がインフレと戦ったそのときに、わらをつかむ気持で、通貨の数量が少なければ幾らかでもインフレがおさまるということがあり得ると、九分の一に切り下げる、十分の一に切り下げるということをやった国もあります。これは非常に貨幣混乱のもとであります。貨幣というものを持っておると損をすると、孫子の代までも貨幣は持つな、貯蓄はするなということになるわけでありますから、こういうやり方は私はいけないと思うのであります。私の主張は、新しい通貨単位の設定による単純なあるいは純粋な通貨の整理ということでありまして、債権者にも、債務者にも、何人にも、損もない、得もないという方法であります。で、新しい通貨単位を設定するとすれば、もちろん新しい名前をつけて、たとえば円を新円とかあるいは両というような名前をつけてもいいのでありますけれども、何もあえて名前を変える必要はない。歴史を見ましても、名前を変えないで新通貨単位を設定している例はある。たとえばロシアがそうであります。あれは一九一七年の十月革命以後、ロシアは二十四年までに三回新通貨単位を設定しておりますが、名前はずっとルーブルという名前を続けている。それで一九二二年型の紙幣では、一万分の一に、つまり新旧通貨の連続関係を一万分の一ときめた。二十三年型の紙幣では、またそれまでの紙幣の単位の百分の一にきめた。またその翌二十四年には、旧通貨との交換割合は五万分の一にした。これは三回合せますと五百億分の一に切り下げたことになるわけでありますが、このように名前はルーブルというものをそのまま使いながら、単位を、実質上設定しているというやり方があるわけであります。  もちろん新単位を設定すれば普通は新しい名前をつける。だから新円とかあるいは両とかいうのもいいでありましょう。しかし私はもし日本でやるとすれば、百分の一に切り下げる。そうして相変らず円という名前をそのまま使う、あえて新円としなくても、そのまま続くというやり方でいいと思うのでありますが、名前を変えた通貨整理のことをいうデノミネーション、私のいうデノミネーシコン、一体このデノミネーションという言葉が、非常にむずかしいわけであります。日本ではこのデノミネーションは、私が今まで説明したようなことに使っているようでありますが、日本語の訳があまりない。いろいろなのを見ても、たとえばある学者は貨幣の称呼単位あるいは呼称単位の切り下げということを言う人もありますが、どうもあまりきまった訳がない。で、デノミネーションという英語は、これはもちろん金額とか額面とかいう意味で、スモール・デノミネーションというと、小額紙幣のことでありますが、日本では大体このデノミネーションという言葉で、私がただいま申しましたように、通貨単位の整理通貨の数字の整理、こういうようなことを内容としているように思うのでありますが、第一次大戦後、ロシアから分離したバルト三国、こういうとこりではやはりみなただいま申したような通貨整理をやっているのでありまして、リトアニアでは今までのロシアから受け継いだルーブルの呼称価値を五十分の一に切り下げて、リタという単位にした。ラトヴイアではやはり五十分の一に切り下げて、ラトヒいう単位を設定した。エストニアでも、それまでのエストニアマルクという暫定通貨の紙価を百分の一に切り下げて、クローネという単位を設けてある.昔から、新興国家でなくても、あるいはドイツとかオーストリアというのでも、非常なインフレをやり、通貨整理をやったことは御承知の通りであります。ドイツでは一九二三年の十一月がインフレの最高潮で、それまでのマルクというものを、旧マルクの呼称価値を一兆分の一に下げて、レンテンマルクとし、そのレンテンマルクをさらに一対一でライヒスマルクに切りりかえたことも、御承知だと思うのであります。またオーストリアでも新しくクローネというインフレの通貨を改めて、一万クローネを一シリングと改めたわけでありますが、要するにこの名前を変えるにしろ変えないにしろ、実質は新しい通貨の単位を設定するということであります。  そこで先ほどのような疑問、貨幣は百分の一に切り下げた、物価が百分の一になるかどうかということは、疑問が起る余地がない。一つの商品について一つの労働の対価、物価について二つの価格が成立するわけであります。古い紙幣でいえば千円を、新しい紙幣でいえば十円だ、こういうような二つの価格関係が成り立つのでありますから、そういうことは全くの誤解であって、だれも何ら損も得もない方法なんであります。で、こういう方法をやりますというと、今の大きな数字、ことに国民経済に関するような数字というものは、やたらに大きくて、言葉では言いますけれども、頭の中で概念がこないのであります。で、百分の一にせめて切り下げますと、たとえば通貨発行高五十億だというのが、五十億になります。ことしの予算は一兆三千億というのが、百三十億ということになる。たとえば月給三万円の人はこれは二百円の月給ということになる。対米為替相場一ドル三百六十円が、三円六十銭というような関係になるわけであります。  で、こういうことをやる意義はどこにあるかといいますと、理論上は先ほど申し上げました通り、やってもやらなくてもいいのかもしれませんけれども、この利益というのは、まず非常にべらぼうな大きな数字というのが簡単になる。帳面をつけるのに、零が二つ節約できて、簡単になる。ひいては能率が上る。一万円札の問題でも、取る金額の割合に銀行券の金額がこまかいと銀行の能率が落ちるということが、一万円札を発行する有力な原因であったわけでありますが、こういうように百分の一に切り下げれば、簡単になりまして、能率も上り、間違いも少くなる。こういうこともありますけれども、無形なことでありますが、より以上重要なことは、私は通貨に対する信任ということだと思う。水に浮くようなアルミの一円というものを、貨幣単位にしておっちゃ、国民は貨幣を尊重しない。せめて一円というものを人が拾う——今では駅にばらばら落ちていてもだれも拾わない。これを拾う一円にしなくちゃならない。ライスカレー一ぱい食える一円にしなければならない。あめ玉一袋一ぱい買える一円にしなければならないというのが私の考え方だ。これで通貨に対する国民考えを一新する。通貨の信用を回復する、こういうことになるのです。ところが大蔵省は、ここ数年来大体貨幣価値が安定しそうだ、すなわち大額紙幣一万円札、五千円札を出そうという時期にこのインフレートした円で通貨体系を落ちつけようという考えであります。従って先ほど申しました五千円札、百円銭貨が出ておるわけであります。つまり既成の事実を作りつりあるのでありますが、私はこういうように一度インフレートした円で体系を作った上でも、このデノミネーションというものはできることだと思う。私はこれをやることがぜひ必要だと考えておるのでありますが、一つ御所見を伺いたい。
  66. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 御意見はよくわかりました。通貨の価値としての尺度が大きな表示になっておる、これを小さい、しかも確個たるものにするがいいじゃないかという御議論にはいろいろな人も賛成だといわれておりましたが、それは原則的にだれもが私は賛成し得るのじゃないかと思います。私自身においてもそれ自体について異論を持つわけじゃありません。がしかしながら、今申しましたように、そういう小さいものにして、しかも確個たるものに——言いかえれば確固として持続性をそれが持つにあらざれば意味はありません。従いまして私としてはそういうことにすることについて、いろいろな条件が要ると考えております。あるいはまた時期ということもきめなくてはならぬ。言いかえれば、財政の健全性においても、あるいはまた国民経済も十分な安定を持ち、物価についても将来見通しができる、あるいはまた国際収支も十分だ、こういう点について、まあそのほかいろいろあるかもしれませんが、それらの点について十分な見通しを持って、その上の私はことであると、かように考えておるのでありまして、ただいまそういう意味において考えていないわけであります。
  67. 山本米治

    ○山本米治君 そうしますと、まあ一万円札も出るというような時期は、ある程度貨幣価値が安定してきたことの証左というふうにさっきお伺いしたのだが、その通りといわれたのでありますが、まだ貨幣価値は安定していないということになるのですか。その安定しないということは、今のままの非常にインフレートした円でもデノミネーションをやっても同じことなんです。安定するかどうか、そのためにあらゆる施策を講じなければならぬということは同じことなんです、大蔵省は…・。まあ大蔵省といっていいかどうりか知らぬが、ともかく既成の、つまりインフレートした円で一応通貨体系を落ちつけよりという考えでおられるから、この前正示局長の答弁でも何でも否定的なあれですが、もう一ぺんフランクな立場で考え直してみようというお気持があるかどうか、一つ伺いたい。
  68. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 円の価値が内外にわたってほぼ安定しているということは、私が先ほど御答弁申し上げた通りであります。ただ安定の基礎を今後一そう確立する必要はなお残されておるということを申し上げたのであります。その一そう今後確立するというところが、今御意見のことについての私は基礎的な条件になるだろう、かように考えます。従いまして私どもとしてはそういう円の価値の確立が、持続的に確立ができるようにあらゆる努力を今日払う、国際収支の改善というのも、やはりそういうことの一つの柱に過ぎないので、これを今後やっていくわけであります。そういうものをやって完成ができたら、これを私は考えてもいいことである、かように思います。
  69. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 山本君に申し上げますが、時間がすでに経過しておりますので、非常に貴重な御意見と思いますけれども大臣最初からの約束でありますから、御協力を願います。
  70. 山本米治

    ○山本米治君 私はインフレの途中で、毎年毎月物価が上るというようなときに、これをやっちゃいけないと思う。しかし今大よそ大体において通貨価値は安定した、ことし来年大インフレになるということはないという時代になったから、むしろ今のお説と逆に、これをやることは、つまり今まで非常に数字の多い数で勘定したものが少くなる、非常に貨幣に値打ちが出るということこそ、国民がこれから貯蓄意欲、貨幣を尊重しようという貯蓄意欲が盛んになり、それが通貨を安定する方策一つだと考えておるのでありまして、いろいろな万事ほかの条件を整えてからやるというのでは、これは相関関係だと思う。インフレの途中でやるわけじゃもちろんいけませんが、大体落ちついたときにこういう措置を講ずることが、今度は逆に通貨の安定を増すことだと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  71. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今価値の関係におきましては、対外的には一ドル三百六十円、それから国内的には、これはまあ歴史的な意味を持ちますが、円という一つ国内的な価値を基礎としてすべてのものが価値生活の上に動いているわけです。それが先ほど申し上げましたように内外にわたってほぼ安定を見ておる。それを私は今何もそこをこわしてまた新しい動きをすることはないと思う。それも非常に大きなデノミネーションならば別ですけれども、まあ一ドル三百六十円というところである、ですからこの形において私は一応安定をして、そうしてしかもその安定の基礎を確立した上で今度新しい形に移行するのが適当である、かように考えておるのでありまして、その辺については若干意見の相違になろうかと思います。
  72. 河野謙三

    委員長河野謙三君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  73. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 速記を起して。
  74. 左藤義詮

    左藤義詮君 関連して。デノミネーションの問題は、前にも私説明員質問をしたのですが、今大臣としては非常に消極的な意見で私残念ですが、これはまた別途山本委員からお話もあると思いますし、大蔵省としても十分研究していただきたいと思いますが、小さいことですが、この前山本委員から、一円で何か買えるものがあるかという話で、理財局長いろいろ苦心惨たんしましたが出てこないので、かなわぬときの神頼みと申しますか、最後に、非常に信心深い私が毎朝一円ずつ神様に上げている。——つまらぬ言葉尻のようですが、私は現在の政府としても非常に宗教というものを尊重して、国家が干渉しちゃいけませんが、しかし宗教というものによって国民の道義を高めるということに非常な力を入れているわけですが、その大事な神様に、信心深いという理財局長が、人間では相手にならないものを神様にやっているんだというような印象の発言は、非常にこれは、私が小言を言わなくても、いずれ熊野権現の天罰、神罰が至るとは思いますけれども、一国の通貨政策を担任する局長としては、この際取り消しておかれた方がいい。また今後志を改めて、神様に対しては少くともまあ十円か百円は、その信心の程度によりますけれども、何にもあめ玉も買えないようなおさい銭を上げないように、これは私はつまらぬことのようですけれども、これは国会における発言としては、できれば取り消しておかれる方がよいと思いますので、御意見を伺います。
  75. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 私この前山本委員にお答えを申し上げまして、少し言葉が足らなかったと思うのでありますが、実は私もあとで申し上げましたように、決して一円で今日買えないものはないというふうには申し上げなかったのでありまして、たとえば新聞を買う場合も一円というものが必要であるということは御承知の通りであります。また私が神様へのさい銭に必ず一円を上げるという意味ではございません。その点私言葉が足らなかったということを率直に申し上げますが、私は毎朝実は氏神にお参りをいたしますが、そのときは、適宜持っております——五枚持っておれば五円を上げることもあります。あるいは三枚しかない場合は三円でお許しを願うこともあります。いずれにしましても、これは毎日のことでありますから、自分の持っているものを上げるということを申し上げたのであります。また先ほど申し上げましたように、決して一円というものが無価値ではございませんので、これは七枚持っておればちゃんと新聞も買えることは申し上げるまでもないのであります。そういう意味で、私の申し上げたことは毎日一円を上げておるというふにおとりいただきますと、ただいま左藤委員から御注意のございましたようにあるいは不穏当かもしれませんが、私はそういう意味ではなくて、毎日持っております分を差し上げます。そういう場合には一円のアルミ貨を持っておるときにはこれを使うこともあります、こういう意味で申し上げたのでございますから、私の言葉が足りなかったのでございまして、御親切に御注意をいただいたのでございますが、この際補足をして釈明をさせていただくわけでございます。
  76. 土田國太郎

    土田國太郎君 主税局長と国税庁長官、お見えのようですから、酒類行政につきまして一つ意見を伺わせていただきたいと思うのでございますが、ただいま衆議院におきましても、大蔵省御提案の減税問題、あるいは四月一日をもってまさに公布せられんといたしまする酒類の公定価格問題、あるいは公定価格よりはずすべき酒類の問題または最近勃発いたしました合成酒組合の議決権の石数による制限問題を中心とした大、中、小の組合が相乱れて今衆議院方面に運動、陳情あるいは政府に迫るというようなはなはだしい混乱状態を呈しておるので、私は非常に遺憾に思うのでございまするが、その点、大体この三点を主として、本日御当局にお伺いしたい。こういう考えであります。  それで、私はきょうは何も大蔵当局を追及申し上げるとかいう意味ではさらにありませんので、ほんとうにこれは国家財源のため、あるいは消費者のため、業界の安定のために御意見を拝聴したい。こういうことでありまするから、当局におかれましても腹を割って一つ意見のあるところをお聞かせ願いたいと思います。  まず第一にお聞きいたしまするのは、公定価格の改訂の問題でありまするが、かりに一つの品物を、たとえばいわゆる清酒ということに仮定いたししてお聞きいたしますると、この公定価格をきめまする、かりに清酒の場合が、この構成要素は私はよく存じませんが、まあ今までの経験からいたしまして、これをきめられる要素は、生産費であるとか、あるいは販売費であるとか、あるいは原料質材、これはまあ生産費に入っておりますからよろしゅうございますが、償却費であるとか、あるいは損金勘定に繰り入れらるべき公租公課とかというようなものだ思いますが、ほかに何かこのマル公の構成要素の中に入り得るものがあるでしょうか。その点ちょっと先に何っておきたいと思います。マル公構成の要素ですな。
  77. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) お答え申し上げます。もちろん公定価格の構成要素といいましては、直接原料、間接原料、付属原料並びに労賃等から構成されておりまするところの製造原価、それに酒税等が構成要素になっておるわけでございます。
  78. 土田國太郎

    土田國太郎君 そうしまするというと、このマル公には、利潤というものはどうなっておられるでしょうか。
  79. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ビールの場合は別でございまして、ビールは三社の原価計算によっておりますので、これは利潤を見ております。ただその他の酒類の公定価格につきましてはいわゆるバルク、ライン・システムを採用いたしております。七〇%のバルク・ライン、まあ七〇%の生産をまかなえる程度のところで抑えておるわけでございまして、従ってそのバルク・ライン以下のところはそれぞれ能率を上げることによって利潤が可能になるわけで、正式に利潤は見ておらない。
  80. 土田國太郎

    土田國太郎君 してみますというと、ビール以外のものはバルク・ライン・システム以外のものによって決定されていると見てよろしいのですな。  そこでこの調査の基準が今七割までというのが最下位で、それを平均したものと承わってよいのですか。最低のものを基準とするか、平均のものを基準とするか・・・。
  81. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 平均というものでございませんで、この製造原価であれば七〇%供給し得る業者までまかなえるというわけでございます。平均ということではございません。従いまして、あとは企業努力によりまして、もし七〇%オーバーするところは、あと足りないところは企業努力によってマル公で押えるようにしなければならぬわけでございます。それから七〇%以下のところに入る能率のよいところは自然に利潤も出てくる、こういうことになるわけでございます。
  82. 土田國太郎

    土田國太郎君 日本古来の清酒と今の蒸留酒は根本的に製造方式がかわっているわけですね。それで、日本の酒類はあなたのおっしゃるようにバルク・ライン計算をされてあとの利潤は努力でもってまかなえということであるが、蒸留酒のごとく機械化した製造方式であれば、あなたのおっしゃるような方向に向きやすいのでありますが、御承知のように日本酒というものは、清酒というものは、これは家庭工業であります。手先の工業でありまして、労働的な努力はできますが、機械的な能力の改善ということはほとんどできないのが今の日本の清酒の特徴であります。ちょうど英国のウイスキーのごとき全く伝統的製法とでも申しましょうか——まことに不幸な製造法をやらなければならないという環境にあるのでありまするが、この利潤を入れないというマル公に対しては努力によってやれということは、蒸留酒にはそれはオートメーション的にどんどん改善して行く今日でありますからよろしゅうございますが、清酒に限りましてはそういうことはできないことは長官も局長もよく御了承のはずだと思うのであります。私はこのバルク・ライン・システムというものは、これは蒸留油の酒類の場合には改善の余地が多分にありますからよろしゅうございますが、この家庭工業的な小さなもの、多くても二、三万石、小さいものは約三百石というものもあるのです。まず千石以下の製造工場なんか、どうしようもないようなものが現在一番多い。それを努力によって改善せよということは、これはしかし無理じゃないかと思う。灘に行ってごらんなさい、よくわかるのでございますが、あの戦争のために幾多の工場は全部といってよいほど戦災にあいまして、改築されてりっぱなビルディング式のものができたのですが、さて中に人って見ますというと、びん詰だけはオートメーション式にいっていますがあとの製造法は何一つとして何百年先の製造方法ですよ。一つも改善の道がないのです。そういうような仕事をしておるものに対してバルク・ライン・システムということは少々無理のように考えるのですが、それをお考え直すお気持はないでしょうか、一つ御検討願います。
  83. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) マル公をきめます場合に、これを扱っている業者の多い種目につきましては、昔からバルク・ライン・システムでやっておるわけであります。これは戦時中、戦後を通じましてバルク・ライン・システムをやっております。その場合に、業者の規模にあまり差異がないというような場合については、そのバルク・ライン・システムというのが適当でないというような御意向かと思うのでございますが、やはり製酒の業者につきましても、灘、伏見の大きなところと、それからまた地方の小さなメーカー、三百石程度のメーカー、いろいろあるわけでございまして、やはり他の公定価格と同じようにバルク・ライン・システムでやるのが私は適当でなかろうかと、こう思っておるのでございます。ただしビールのように三社しかない、新しくふえまして四社しかない、こういうものにつきましては、たとえば平均同じような状態でございましても、三社なり四社なりの平均をとってきめる、こういうやり方をいたしておりますが、対象の勢い、業者の多いものにつきましては、やはりバルク・ライン・システムでやるのが適当であろうかと、こういうふうに考えております。
  84. 土田國太郎

    土田國太郎君 それは押し問答ですから、何ぼ言うても、そうでない方がよろしいという長官の御答弁だから、やむを得ないが、それは実際実情に即しない製油に対する課税の仕方であるということを私は以前から言うておるのですから、どうか一つ今日それを改めよというわけでもないのですから、どうか一ぺん実情を徴せられて御検討を願う必要があると思いますから、その意お含みおきを願えればけっこうと存じます。  それから公定価格を作ります際にバルク・ラインでおやりなさるのですが、その資料というものは、これはやはり公表できるものですか、あるいはこれは秘密書類としてお取り扱いになっておるものですか、その調査資料ですね、われわれに見せていただくことができるのかどうか。
  85. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 大へん恐縮でございますが、いろいろ差しさわりがあるがございますので、従来から御要求がございました場合におきましても、御遠慮を願っておるというような従来の慣例でございます。
  86. 土田國太郎

    土田國太郎君 秘密書類と了承してよろしいのですか。
  87. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 昔は物価庁あるいは経済安定本部で物価統制を行なっておりましたときにも、マル公の詳細な内容につきましては、実は業者の方にも申し上げておらなかったと思うのであります。
  88. 土田國太郎

    土田國太郎君 では秘密書類であるということを確認してよろしゅうございますな。
  89. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 私どもといたしましてはあまり外部に出したくない書類でございます。
  90. 土田國太郎

    土田國太郎君 あなたの方の公定価格の決定が正確を得ていますれば、これは秘密のままでもこれはがまんもできる励行もありましようが、今回のごとくいろいろな問題につきましては浮説が飛んでおりまして、業界は非常に不安の念が濃厚になってきておるときに、これは秘密であるというて、あなた方の従来の通り、官僚独善でやられたらたまらんですよ。そういうようなことがあっては、これは民主政治にならぬのですから、マル公の決定を四月一日に御発表になるやに仄聞しておるのですが、それは事実ですか。
  91. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 目下御審議願っております酒税法の改正案は、一応四月一日実施を予定しておりますので、もし酒税の減税が行われますれば、これに伴いまして公定価格を改訂せざるを得ないわけでございます。
  92. 土田國太郎

    土田國太郎君 その際の公定価格発表が非常にわれわれの計算とは差異のあった場合に、その説明を求めたらいかがいたしますか、内容について。
  93. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ちょっと技術的な問題を含んでおりますので、酒税課長から御説明申し上げます。
  94. 森口慶次郎

    説明員森口慶次郎君) ただいまマル公の根拠になっております資料につきまして、これが秘密であるかどうかという点につきまして、土田先生から御質問がございましたが、従来われわれの方としましては、先ほど長官から御説明申し上げましたように、この資料は外部に発表いたしますと、とかくまあ何と申しますか、何々の業者にわたる機密に属するような事項もございまするし、また内容を構成いたしまする原価要素の各項目ごとにつきましては、千差万別の規模の業者の方がおられますので、その一つ一つについて必ずしも該当しない。しかし、全体としてみれば大体原価計算としてはこの辺が適当であるというようなところになっておろうかと思います。個々の内容の細部にまでこれを出すということについては、税務行政上はあまり適当でないという考慮で、これまで内密にしておった次第でございます。
  95. 土田國太郎

    土田國太郎君 それはまあ、今の御答弁は、一般的、概括的に見たならばうなずけるであろう、個々にはいろいろ千差万別であろうから例外もある、こうおっしゃるのだが、私は個々に聞くのではなく、この中の原料代は幾ら、人件費は幾ら、燃料費は幾らというように製造上の個々についての質問ではなく、生産費全般に対する内容を聴取したいという場合のことをお聞きするのです。その点はどうですか。製造上については私は聞くのではないのです。
  96. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 原価の構成内容を分析いたしますと非常にこまかいところまで参りますが、私どももただいまのところは、これは従来のいろいろ業者の方の思惑がございますわけで、ちょっと御発表いたしかねる次第でございますが、これが四月一日にきまりました場合には、おもな内訳につきましては私どもお知らせしてけっこうだと存じております。
  97. 土田國太郎

    土田國太郎君 それならばけっこうであります。私もそのマル公の発表がうなずき得るものならば、あえて聞くことはいたしません。われわれの計算と役所の計算が合致すれば、これは少少ぐらいの相違のところは問題にいたしませんが、雲泥の差がありますると、これはまた業界の利益のために、国民として当然聞くべき権利を持っておると思います。そういう意味においてお聞きしたわけでありますが、非常に胸襟をお開き下すった答弁で感謝いたします。
  98. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 僕は関連してちょっと伺いますが、今のコスト計算の書類は秘密書類で発表できない、こういうことでございますが、これを土田酒造店とか河野酒造店とかいう名前では出せないけれども、Aの酒造店、Bの酒造店というように会社名を仮称でそうして発表するというようなことは、少しも差しつかえないし、単に政府がマル公制度をとっておる物資について、そういうふうな発表の仕方でコスト計算の内容を発表するということはありますかね、それはどうなんです。
  99. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) マル公は結局個々の業者につきまして調べましたものを総会勘案して、そうして、たとえば主原料費、副原料費と出てくるわけでございますが、最後の格好におきましては、ただいまお答え申し上げたように御提示申し上げてけっこうでございます。ただ、個々の細部につきましては非常に膨大な書類にもなります。そこでどの程度までの御要望でございますれば、私どもとしましても、そのつど御要望によって考えたいと思います。たとえばある調査した業者について具体的な傾向等につきましては、もちろん御質問によりましてお答えしてけっこうでございます。
  100. 河野謙三

    委員長河野謙三君) そうすると重ねて伺いますが、だからそのかりの名曲でA、B、Cというようなことで、コスト計算の内容を発表することは差しつかえない、こういうことですね。それでないと、たとえばバルク・ライン以下の会社、以上の会社、それの会社名が出ますと、非常に非能率の会社、能率のいい会社とはっきり出ますね。そうすると、非常に信用問題に影響するだろう、だから私は発表できないのだろうと思います。それが仮称であるならば、どこの会社がどうということはわからぬから、発表しても一向差しつかえない。それで他の物質については、発表しておる会社がたくさんあるから……。こういうふうに私は了解しておるのですが、それでいいわけでありますね。
  101. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 私の方は一緒に仕事をしておりますので、補足して申し上げさしていただきますが、何が適正な価格かということは非常にむずかしい問題でございます。それでただいま土田委員からお話になっておりますお話に対して、それではというので発表するということは、公定価格の決定においてかなり問題な結果になりはせぬかと私は率直に思います。土田委員は業界に非常に詳しい方でありますし、公平な方ではありますけれども、やはりただいま公価の決定をめぐっていろいろ運動というものが行われております。私どもは運動の中にある御意見を伺うことは十分伺います。しかし率直に申して運動だと言ってこられる御意見の数字は、やはり何と申しますか、運動の数字であります。で、役所がそう申すと非常に何ですけれど、全部手のうちを見せました場合に、大へんきざな話で恐縮ですが、業界からかえってきます反応は、決して何と申しましょうか、総体としてお話願えればいいのですが、業界が都合のいいことは黙っていて、困ることだけを言ってくるわけです。そういうようなことよりしまして、あまりに何と申しますか、こういうものの決定については十分御意見は伺うけれども、最後はやっぱり行政庁としてこれが一番正しいと思うところでやらしていただくより仕方がない、それらをもって従来のマル公の決定に際して、中身をそう詳しく申し上げるというようなことを差し控えさしていただきたいというような面があるのではなかろうか、これはお聞きようによっては大へん行政府勝手というように聞えるかもしれませんけれども、そういう面がある。もちろん問題をお考えいただくについて、ただいま長官が言われましたように、何と申しますか、大きな達観的な見地からごらんいただくというような意味で、できる限りのものは出したいと思いますけれども、とことんまで出せということになりますと、実際問題としてなかなか事柄の落ちつきがむずかしいというような感じがいたしますので、その気持は私は率直に申し上げさしていただきたいと思います。
  102. 河野謙三

    委員長河野謙三君) そうすると主税局長は、私が申し上げたように、あんたの方の手のうちにある原価計算表を、かりの名前で、A、B、Cというようなことで順位をつけて発表すること自体もいけないと、こういうことなんですか。私はいずれこれは全国たくさんある、私は酒あまり縁がないのだけれども、たくさんある酒屋さんの中から、経営規模別にサンプリングして、そうしてずっと原価計算するのだと思うのですよ。その場合にさっき申し上げたように、河野のうちは原価計算で幾らになっておる、土田のうちは幾らになっておるということが出ては大へんだ、それは出せないけれども河野のうちでは——二百石程度の酒屋さんにおいては原価計算がこうなっておる、これをAとする、三百石の土田君のところにおいてはこうなっておるということをBとして発表することは、私弊害もないし、そのくらいの義務はあると思うが、それもいけないのですか。
  103. 長原純夫

    政府委員(長原純夫君) 調べましたところ、石数の反心によってどういう原価の割合になっておるか、原価の開きがどうなっているかというような点は、ただいま私が申しました総体御勘案いただく場合に必要な面だと思います。そういう場合にも私どもとしては勝手でございますが、なるべく個々の業者というのでなくて、たとえば三百石以下のところはサンプルで調べた数量はこうである。三百石から干石まではこうであるというようなことを申し上げれば、これは大体のところはおわかりいただけると、こういうことは申し上げてけっこうだし、必要なことだと存じます。
  104. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ちょっと関連。それで今その出す資料というのは、今ここにかかっておる法案が通過した四月一日以降から出せると、こういうお話ですが、こういう税の関係は、マル公に関係してわれわれも関心を持っていることですし、法案自身の審議の対象として必要だと考えるので、そういうことでなしに、法案審議関連して提出していただけますか。
  105. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 今度の酒税の減税に関しては、原価計算、目下やり直しております。作業中でございます。従いまして、まだ減税した暁において最後の姿がこうなるという数字は、実はまだ持っていないわけでございます。御了承願いたいと思います。
  106. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 しかしそれがなければ、この減税するのが妥当であるか、この程度が妥当であるとかないとか、消費者の立場、あるいは酒造家その他製造工場の立場に立って判断することはできない。何であなたたちは、私らに判断して、審議を促進せいというのですか。
  107. 原純夫

    政府委員(原純夫君) それは私はこう考えております。減税がありますと、製造者の販売価格は減税の分だけは、下るのが当然だと思う。そのほか何と申しますか、製造者はその分下る、卸小売になりますと、仕入価格がそれだけ下るから、それに応じて卸小売のマージンも調整が行われるということは当然であります。これはもう減税額そのままをお考えいただけばいいわけでございます。そこで一方にたとえば去年来いもが相当値上りしております。またアルコールの値段も上っているというようなことが、そういうような事由によって税以外の原価構成要素はどうなるかという問題がございます。ただいま土田委員のお話の出ておりますのは、あとの方を主として申されておるのだと思いいますが、そのあとの方のは各般のデータから、また業界方面からも十分意見を聞いてこれがよろしいという額を私ども考えてマル公に織り込みたい、つまり減税による価下りと、それから他のマル公構成要素の増減々、それに加減いたしたものが、最終マル公の改訂額になるということでありまして、減税の分は必ず下る、しかし一方で他の要素で動くから、その分は私が申し上げたいと思いますのはすぐにでも出せ、あるいは四月一日前に出せと言われますと、非常に私どもはやりにくい。それはいろいろ御意見を伺い、データに基いて行政庁としては責任を持っていたしたい。おまかせ願いたいという気持ちなんでございます。
  108. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 いや、あなたのように考える人だけが日本国民じゃないので、さまざまな角度からこの問題を考えておるので、たまたま減税ということですから、国民消費者価格、これが下るだろうということを素朴に考えておる。ところが他の新しい要素が原価計算上入って、それは下るのでもない、あるいはひょっとしたらしるかもしれない、どういう結論になるかもわからんで、こういう機会に私たちがこの法律審議をするということは不用意にすぎる。どうしても将来のめどはこれは国民大衆の立場に立てばどういうふうになっていく。また製造業者なり、あるいは中間マージン販売業者なりの立場はどうなっていくか。その三者がどういうふうな形になってこの減税に伴うマル公決定によって影響を受けるのか、こういう点をわれわれ委員として判断することがなくて、この法案審議することはできませんよ。主税局長はやはり役所流に非常にあなたに都合のいいことだけを並べられるけれども、われわれにとってはまことに不都合です。
  109. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 私の言葉が足りませんで、ただいままで申しましたところでは、小笠原委員の言われるようなことになると思います。そこまで私ども何も申さんという気持ではありません。ただ減税による減と、他の要素の増とを非常にはっきり言えということになりますと、ただいまのようなことになるので、お話の法案審議するについて大体の趨向がどうなるかというような一点での感じは申し上げられると思います。ただくれぐれもお願いしたいのは、ただいまこの問題が実は政府が公定価格をきめるということでありますし、それが商売の条件になるものですから非常に運動が多いわけで、運動が多くてもけっこうなんですけれども、この何と申しますか、あまりに申し上げることが運動との関係で、何と申しますか、始末がつかなくなるということになりませんように、私どもとしてはお話の一つの要素である消費者の利益というようなものも特に強く考えてやらなければならないというような気持も入れて、かつ製造者、それから卸、小売というようなものの実際のコストというようなものも考えて結論を出したい。概括して申しまして、今度はお願いしております改正案による減税額について、酒類によって若干の違いはありますが、まあ一番問題になりますのはやはり蒸留酒系統であります。蒸留酒系統はイモの値上りということが相当きつくあります。従いまして、そこでは減税額が、全部が小売価格の値下りにはならぬ、しかし私は何と申しますか、その相当部分、まあ過半が何になる、過半とか、大部分とかという言葉は非常にその辺でデリケートになりますので、そういうようなばく然としたことで恐縮でありますが、決してこれによって最終価格が下らない、また、上るというようなことはございません。お話の裏にあります消費者の利益と、それからもちろんメーカーその他の正当な利益というものを十分勘案してきめたいと思っておりますので、御了承いただきたいと思います。
  110. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 時間がかかる話なんで、私としては本日は審議の対象になるにふさわしい先ほど来お話している資料の提出を求めたいので、委員長においてよろしく扱いを願いたい。
  111. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 上田委員にちょっとお諮りいたしますが、あなたの質問もだいぶ残っているようでありますし、また今あなたの資料の要求等もございますから、本日は時間も経過しておりますから、この問題は次の委員会に譲りまして、あとで理事会を開きまして相談していきたいと思います。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  112. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 速記を始めて。  それでは本日はこれにて散会いたします。次回は明十三日午前十時より開会いたします。    午後四時十七分散会