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1958-03-04 第28回国会 参議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月四日(火曜日)    午後一時四十三分開会     —————————————  出席者は左の通り。   委員長      河野 謙三君   理事            木内 四郎君            西川甚五郎君            平林  剛君            天坊 裕彦君   委員            青木 一男君            岡崎 真一君            木暮武太夫君            左藤 義詮君            塩見 俊二君            土田國太郎君            宮澤 喜一君            山本 米治君            荒木正三郎君            栗山 良夫君            杉山 昌作君            前田 久吉君            野坂 参三君   政府委員    大蔵政務次官  白井  勇君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    国税庁長官   北島 武雄君 事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎説明員    大蔵省主計局法    規課長     小熊 孝次君    国税庁税部長 金子 一平君    国税庁調査査察    部長      中西 泰男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○交付税及び譲与税配付金特別会計法  の一部を改正する法律案内閣送  付、予備審査) ○道路整備特別会計法案内閣送付、  予備審査) ○糸価安定特別会計法の一部を改正す  る法律案内閣送付予備審査) ○たばこ専売法の一部を改正する法律  案(内閣送付予備審査) ○国庫縄納金等端数計算法の一部を改  正する法律案内閣提出) ○租税及び金融等に関する調査の件  (租税行政に関する件)     —————————————
  2. 河野謙三

    委員長河野謙三君) これより委員会を開きます。  まず、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案道路整備特別会計法案糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案たばこ専売法の一部を改正する法律案(以上いずれも予備審査)の四案を、便宜一括議題として、政府から提案理由説明を聴取いたします。
  3. 白井勇

    政府委員白井勇君) ただいま議題となりました交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案外三法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  最初に、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。  この法律案は、地方財政健全化を推進するため、別途、今国会提案することとしております地方交付税法の一部を改正する法律案において、地方交付税の額を、所得税法人税及び酒税の収入額のそれぞれ百分の二十六から百分の二十七・五に引き上げることに伴い、一般会計から、この会計に繰り入れる金額について、これに即応して所要の改正を行おうとするものであります。  次に、通路整備特別会計法案につきまして申し上げます。  政府は、今国会に、別途、道路整備緊急措置法案提案して御審議を願っているのでありますが、わが国の道路事情にかえりみ、同法案に規定するところによりまして、昭和三十三年度から新たに、道路整備五ヵ年計画を作成して、道路緊急整備をはかることといたしております。この計画の実施に要する国が支弁する経費財源といたしましては、揮発油税収入額を充当することといたしますとともに、財政の許す範囲内におきまして、必要な財源措置を講ずるものといたしておるのでありますが、本事業に関する政府経理につきましては、一般会計と区分して明確を期することが適当であると考えられますので、新たに道路整備特別会剤を設置することといたしまして、この法律案提案いたしました次第であります。  沢に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、この会計におきましては、国が直轄で行う道路整備軍業に関する経理及び国以外の者が行う道路整備事業に対する負担金等交付に関する経理を行うものとし、あわせて国が直轄で行う道路整備事業に密接に関連のある付帯工事及び受託工事に関する経理をも行なうこととしております。  第二に、この会計におきましては、一般会計からの繰入金、都道府県の食担金及びこれにかかる利息地方公共団体負担金納付の特例に関する法律の規定により納付された地方債証券償還金及び利子付帯工事等にかかる国以外の者の負担金建設大臣が徴収する受益者負担金受託工事にかかる納付金借入金並びに付属雑収入をもってその歳入とし、道路整備事業に要する費用付帯工事に要する費用受託工事に要する費用借入金償還金及び利子一般会計への繰入金並びに付属諸費をその歳出として経理するととといたしております。  第三に、道路整備事業に、要する費用で国が負担するもの並びに道路整備事業に要する費用財源に充てるための借入金のうち国が負担するものの財源に充てるための借入金償還金及び利子金額は、一般会計からこの会計に繰り入れることとし、道路整備事業または付帯工事にかかる国以外の者の負担金及び受託工事にかかる納付金のうも、これらの事業または工事について一般会計が支弁した経費相当する額は、この会計から一般会計に繰り入れることいたしております。  第四に、この会計においては、道路整備事業に要する費用財源に充てるため必要があるときは、予算をもって国会の議決を経た金額限度として、この会計負担において借入金をすることができることといたしておりますが、その限度額のうち、その年度内に借り入れをしなかった金額がありますときは、その額を限度として、かつ、歳出予算繰越額財源として必要な金額範囲内で、翌年度において借入金をすることができることといたしております。  以上申し述べましたほか、この会計予算外及び決算の作成及び提出予備費の使用、剰余金の処理、余裕金預託等この会計経理に関しまして必要な事項を規定いたしております。  なお、この会計の設置に伴う経過的措置といたしまして、昭和三十二年度以前の一般会計道路整備に関する費用にかかる予算により取得した機械その他の資産で、国が道路整備五箇年計画に基き引き続き道路整備に関する事業に使用する必要のあるものその他一般会計に属する資産及び負債は、この会計に帰属せることといたしております。  次に、糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案について提案理由を御説明申し上げます。  この会計におきましては、三十億円の資本及び三十億円を限度とする一時借入金等合計額六十億円を原資とし、これをもって、一生糸年度生糸生産量約三十万俵のおおむね一割に相当する三万俵を最低価格で買い上げることにより、当該数量を市場から引き上げ、最低価格を割るような糸価の暴落を防止し、また、最高価格をこえるような糸価の暴騰を防止するのに必要な生糸を保有することとしております。しかるに、昭和三十二年度におきましては、糸価の好転をみず、最低価格による買上数量が増大し、同年度末におきましては、相当保有量が見込まれる状況にあり、しかも、最近の生糸需給状況を勘案すれば、この保有量が早期に売り渡されることは期待しがたいので、その買入に要した原資は、当分の間固定し、今後の生糸買入原資として使用し得るには至らないものと考えられます。このため、昭和三十三年度以降において糸価の安定をはかるために必要な量の生糸買い入れ原資に不足を来たすおそれがありますので、今回、この会計の一時借入金等限度額を従来の三十億円から五十億円に引き上げ、生糸買い入れ原資の確保に資することとした次第であります。  最後たばこ専売法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  この法律案は、今国会に別途提出しております地方税法の一部を改正する法律案におきまして、市町村たばこ消費税税率が引き上げられることとされているのに伴い、日本専売公社が売り渡す製造たばこ小売定価中に含まれる市町村たばこ消費税税率を百分の九から百分の十一に引き上げようとするものであります。  これがこの四法律案提案理由及び内容であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願いを申し上げる次第であります。
  4. 河野謙三

    委員長河野謙三君) ただいま説明を聴収いたしました四案の内容説明及び質疑は後日に譲ります。     —————————————
  5. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 次に、国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 杉山昌作

    杉山昌作君 この改正の形式の問題ですが、この法律は、従来の国庫出納金等端数計算法ですか、これの内容が、従来は形式的な出納に関するものだったが、今度はそのもとになる債権債務整理に関するもので、内容がすっかり変ってきている。それから形式的にも、一条から六条まであるものが、全部これが変っているのですね。一ヵ所くらい変っているところもあるし、ほとんど全文書きかえのところもあるのです。それで、しかもおまけに、法律名前が、国犀川納金等端数計算法というのを、国等債権債務等金額端数計算に関する法律として、名前までも変えているのですね。この場合に、やはり前の法律の一部改正でやっているのだが、こういうときには、むしろ新しい法律を作って、前の法律を廃止するというのも一つやり方じゃないですか、これだけの変更ですと……。ですから、全部改正でやるやり方と、一部改正という格好でやるのと、何かそこにちゃんとしたものさしがあって、これは、この程度のことなら一部改正が適当だということでやっているのか。それともそういうことでなくて、何か便宜でやっているのですか。そこをちょっとききたい。
  7. 小熊孝次

    説明員小熊孝次君) お答えいたします。この点はむしろ内閣法制局の問題であるかと思うのでございますが、この内容から申しますと、ただいま先生のおっしゃいますように、まず題名が変っております。それから内容、実体といたしましても、従来の現金出納段階における端数整理から債権債務段階にまで至っておりますが、しかし考え方といたしましては、従来の現金支払い段階から、さらに前に広がったということでございまして、従来の現金支払い段階端数整理というものは従来通りあるわけでございます。むしろそれがもっと徹底した。従ってまたその題名も、出納金だけの端数計算では内容にそぐわないという問題が出て参りましたので、ただいまおっしゃいましたように、国等債権債務等金額端数計算、こういうふうになったわけでございますが、実は私も法制局に聞いてみましたところが、従来もこの種のものにつきましては、ある程度、例がございまして、たとえば公有林野等官行造林法というのが現在ございますが、これは従来の題名は、公有林野だけの官行造林法でございました。従来は公有林町だけを対象にいたしておりましたのを、それを民有の林地につきましても範囲を広げる、こういうような場合におきまして、ある程度、相当改正が行われておるわけでございますが、題名改正いたしましたし、内容も従来より広くいたしましたが、まあ一部改正で処理しておるというような例がございます。それから輸出入取引法でございますが、これは二十八年にできておりますが、その前は、従来の題名としては輸出取引法でございまして、輸出だけを規制しておりましたものを輸出入ともに規制する、こういうことにいたしまして、題名も、輸出入取引法に改めた、こういうような例もございます。それから御承知のように、日本輸出入銀行法は、従来日本輸出銀行法でございましたが、これは業務の内容も拡大いたしまして、その銀行名前も、日本輸出入銀行、それからその法律名前も、日本輸出入銀行法というような名前改正した例がございます。まあ技術的にどうでなければならぬかということは、私自体としても、あまりよくわからないのでございますが、従来の慣行でこういうような例がございますので、これで差しつかえないのじゃないかと思いますが、専門的なことになりますと、法制局の方に御意見を伺わなければなりませんが、私の調べた範囲ではこういう例がございます。
  8. 山本米治

    山本米治君 私は、この法律は技術的な法律で、見方によっては何でもない法律でありますが、この法律自体ということでなく、むしろこの法律の出たバック・グラウンドというか、その背後の問題について、若干理財局長に伺いたいのですが、この法律によりますと、従来一円未満四捨五入するということになっておったが、この法律が通過すれば、今後一円米満の場合は全額切り捨てと、こういうことになるわけですが、そうすると、一円未満というものはあまり価値がないということを国家が容認したということになるのじゃないかと思いますが、その点はいかがでしょうか、お伺いしたい。
  9. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) ただいまの御質問でございますが、これは従来御承知のように四捨五入というふうな整理手続をきめておったのでございますが、整理手続といたしまして、やや徹底を欠いたうらみがございます。そこで依然として、思想はどこまでも整理思想でございますが、その手続をより一そう合理的にする、こういう趣旨で提案をしておるものと考えております。従いまして、ただいま山本委員のおっしゃいましたように、価値があるとかないとかというふうな関係まで実質的に考えていったのではなく、むしろその点は従来と何ら変っていない、かように考えております。
  10. 山本米治

    山本米治君 でも、今までは四捨五入ですから、四十九銭までは切り捨てるが、それ以上は一円に切り上げるということになっておったが、今度は九十九銭まで切り捨てるということになるわけです。ともかく日本通貨単位から、円というものは非常に価値内容が低い、あまりにも低いということを私は思っておるわけですが、今日一円で買えるものを理財局長に伺いたいのですが、一つ何かあげてみてくれませんか。(笑声)
  11. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) ちょっと私もとっさに考えが浮ばないのでございますが、やはりこの一円という考え方は、従来法律上はっきりいたしておりますし、また、一般社会通念といたしましても、なお、私は、この法律が出ましたからといいまして、従来とその考え方に大きな違いを生じたとは考えられないのであります。従いまして、全何が買えるかということでございますと、具体的に思い当るものがないのでございまするが、先ほども申し上げましたように、整理手続がより合理化されるという意味でございまして、一円価値自体を、この整理手続に関する法律によってどうこうという思想が全然入ってないということだけは、はっきりいたしておると存じます。
  12. 山本米治

    山本米治君 一円があまり価値がないということを、国家が容認したというふうにも僕は思うのですが、そういうことではないと言われるのですが、そのことを離れて、一円というものが価値があるかないかということで今お伺いしたところが、一円で買えるものがあげられない。それぐらい、いかなるものを買っても一円ぐらいじゃあ問題にならぬということで、すなわち一円価値内容が少いということなんです。そこで、最近の朝日新聞に「声」欄という、つまり投書があるのですが、これは一月の二十五日ですが、ここに「落ちている一円玉を拾おう」という投書が載っているわけなんです。ごく短かいから読んでみますと、「通勤のため朝夕国電駅の改札口を通るが、最近このあたりに一円玉が落ちているのが目立つ。時間に余裕がある時はつとめて拾うが、ギリギリに駅へかけこむ方が多いのでなかなか拾えない。昔、川の中へ落したわずかの金を拾うために、たくさんの金と人夫を使ったという話が小学校の教科書にあったが、このごろはあまりにも一円玉を軽視してはいないか。ひどい人になると、財布から落ちたのがわかっていても拾おうともしないし、おつりの一円玉を受取らない人もよくみかける。「一銭を笑うものは一銭に泣く」とは昔のことわざであるが、この傾向は若い人に多く見られ、男の人に多いようだ。落ちている一円玉を拾うことが決して紳士の体面を傷つけるものではない。変な見栄をはるのが日本人の悪いくせだが、だれもが勇気を出して、落ちている一円玉を見つけたらこれを拾うように心がけるべきだ。先日も知りあいの外国人に「なぜ日本人はあのようにお金をムダにするのか」とたずねられた。私は落ちている一円玉を見つけたら、ためらわずに拾ったらよいと思う。」これが一月二十五日の「声」欄なんですが、そのあとまた二月六日に、これに関連した記事が出ておるわけです。今度は、朝日新聞最後の「提案箱」というのがあるのです。そこに、杉並区の主婦何がしが投書しておるのですが、「先日の声欄に「落ちている一円玉を拾おう」という提案がありましたが、一円玉を拾っても、交番へ届けるわけにもゆかず、自分のものにも出来ないので、つい手を出さないのが実情だと思います。それで、交番や駅などに一円玉箱」を備えてこれに入れることにしたら、拾いやすく、粗末にならずにすみましょう。たまった一円玉は、赤い羽根や助け合い運動に寄付したらいいでしょう。」こういう、最近だけで私は二つの民の声を見たわけなんですが、これなどは、これを通じて見られるところは、一円玉というものがまことに価値がないか、ことにあの安っぽいアルミニウムの、水に浮くような一円玉というものは、もうほとんど見向きもせず拾おうともしないのが今日の実情だろうと思う。そこで、理屈から言えば、通貨というものは価値が安定しているということが一番大事なんです。これはもう問題ない。従って、その通貨価値が安定してさえおれば、それが昔に比べてどうだとか、昔一円のものが今日百円だとか三百円になっているとか、これは理論の上では問題にならない。卵一個が二万円だろうと、じゃがたらいも一個が五十万円だってかまわないわけで、現に第一次大戦後のドイツでは、おそらく卵一個が何千マルクというものになりました。こういう歴史もあるわけですから、通貨価値が安定しさえすればいいわけですが、実際問題としては、非常にインフレとして通貨単位価値内容を持っていないということは、計算上も非常に不便で、記帳もめんどうくさい。ほとんど不必要な零をいつも帳簿のしまいにくっつけなければならない。従って誤まりが多い。こういう不都合が多いわけです。ですから、理論とすれば、それこそ卵一個が何千万円でもいいわけですけれども、こういう意味で、私は、あまり通貨単位というものが価値内容がないというととは、通貨政策上あまりおもしろくない。国民が、今言ったように、一円玉に見向きもしない、落ちていても拾おうとしないのです。つまり貨幣に対する尊敬を失い、ひいては今日、日本で一番何が必要かというと、資本蓄積が非常に必要なんですね。おそらく、最大とは言わないまでも非常に必要なことの一つです。こういうように日本の円というものは値打ちがない。これは戦時戦後を通じてインフレーションになって、戦前に比べたら物価は三百六十倍くらいになっていると思うが、そこで今から三、四年前、昭和二十九年の終りごろだったと思います。一万円札を出そうということが問題になった。これは銀行などで千円札で勘定してはとても能率が上らなくて困る。銀行事務合理化、あるいは能率化ということとからんで問題が起ったわけなんですが、当時では、まだどうも一万円札を出すにもインフレ心理を刺激していかぬ、どうもこの次に十万円札、百万円札を出すのじゃないかということで、インフレ心理を刺激するというので、実際には刷り始めたようですが、さたやみになったのであります。が、その後もたびたび一万円札が問題になったし、現に刷られてきておりますけれども、昨年の秋になって、少し出そうかということが問題になった。これは、いきなり一万円じゃ工合が悪かろうというので、五千円札が出ましたのは御承知通りです。一万円札は準備しているから間もなく時期を見て出るでございましょう。この前の二十六通常国会でも、百円銀貨を製造する法案が出たことは申すまでもありませんが、こういう一万円札を出そうとか、あるいは百円銀貨を出そうと、こういうことが問題になるということは、これは通貨価値が安定したということの証左ではないかと思うが、その点はどう考えられますか。
  13. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 昨年一万円札及び五千円札につきまして、いろいろ国会におきましても御議論があったことはよく承知いたしております。なお、百円硬貨の製造法につきましても、いろいろ御議論がございましたが、結局、立法を願いまして、昨年の暮から出たことはお話通りであります。これらの議論に際しまして、当局側からも申し上げましたし、また国会においてもそういう御議論もあったのでありますが、やはり新しい通貨を出すような場合に、今仰せのごとく、国民一般に対する心理的な効果というものはきわめて重要であることはお話通りでございます。たまたま、昨年は、御承知のような国際収支関係から、非常な引き締め政策がとられまして、一般相当強いデフレ的な傾向にありましたので、新しい五千円札を出すようなことの理由づけといたしましても、大体まあそういう条件のときの方が、同じ出すとすればまあ無難ではなかろうかというような御意向が多かったかと存ずるのであります。今日、なお一万円札を用意いたしておりますことは仰せ通りでございますが、これが発行につきましては、なお慎重にその時期を考慮いたしておるのでございますが、私はやはり、お話通り、今日万般の施策が、一応とにかく日本通貨の安定並びに将来の価値の安定につきましての見通しも、大体内外において確立してれるように心得ておるのでありまして、われわれがそういうふうな新しい通貨を出しましたり、また、今御提案申し上げておるような整理手続というふうなことをいたしましても、これによりまして、通貨価値が、先ほど御指摘のように円というものを非常に軽く見るのだということにはならないのでございまして、通貨価値というものは、厳然として、私は社会通念として確立されておると、かように心得ておる次第でございます。
  14. 山本米治

    山本米治君 一万円札を出したり、あるいは百円銀貨を出すというととは、現在のインフレートした通貨体系というものをそのまま落ち着けようというのがねらいだと思います。大体通貨価値が終戦後のこんとん時代を過ぎて安定したということを認めるからこそ、一万円札を出し、五千円札を出し、あるいは百円銀貨を出すということになったのだろうと思います。それで、私はかねて零を二つ取るというデノミネーションを主張しているが、通貨が安定したので二万円札を出してもよかろうじゃないかということは、すなわちデノミネーションをやってもいいという時期だと私は思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  15. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これはきわめて重要な問題でございまして、あるいは私、答弁者として適当かどうか疑問でございますが、たしか前々国会でありましたか、同じような御議論もございまして、日本銀行の総裁あるいは大蔵大臣から直接参議院の委員会におきまして意見を述べておるように承知いたしております。今お話のように、あるいは理論的につめて申しますと、通貨価値か安定し、また将来への見通しというようなことも大体危な気ないというふうなことになった以上は、むしろ一挙にデノミネーションをするというような考え方は考えられないか、こういう点でございましょうと任じますが、理論的にはそういう理論も成り立つかと思うのでありますが、ここが私、先ほど申し上げましたように、さような措置の心理的と申しますか、非常に普通の理屈だけで割り切れない、いろいろな影響ということも度外視できないかと思うのでございまして、さような意味から、一方では実行の面にはきわめて慎重でなければならぬという考え方もあろうかと存じます。私どもといたしましては、やはり現実の行政の問題といたしまして、これは先ほど申し上げましたように新しい紙幣、あるいは硬貨を発行する場合にも非常に慎重な態度をとっております。いわんや通貨法の根本に触れるところのデノミネーションをやるかやらないか、あるいはその時期をいずれにするかというふうな点につきましては、きわめてこれは重要な問題でございまするので、簡単にその当否あるいは時期等について申し上げることは差し控えたいと、かように考えております。
  16. 山本米治

    山本米治君 デノミネーションに対する一番大きな誤解は、これはずいぶんございますけれども、通貨だけを百分の一なら百分の一に切り下げても物価がその通りに行くかどうか、これは多少こういう方面に関係のある人でも疑問を抱くわけです。やり方によってはそういうやり方もあるので、終戦後世界各国ともインフレに悩んだ、その時分に、わらをもつかむ気持で、とにかく物の数量と通貨の数量との対立関係から物価というものはきまるのだ、こういうように通貨がどんどんふえて行っては困るから、十の通貨を五分の一に切り下げたり、十分の一に切り下げたりする。物との関係は放ったらかしておいて、通貨だけを十分の一に下げれば、一億のものは一千万円になることはたしかだ。こういう方法でやったりすると、これは債権債務その他あらゆる関係に非常に大きな混乱が起きる。私はそういう方法を全然言っていない。それは社会に大混乱が起る。通貨とかあるいは預金とかそういうものだけ切り下げて、ほかのことに手を触れないということにする。私のいうデノミネーションはそうではなくて、全くインフレートした貨幣の整備としてのデノミネーションであって、今のように百分の一に限ったことはないが、通貨制度ということは、数字というものは零を取ることが必要である。戦前の通りに返そうとすれば、物価が三百六十倍になっていれば三百六十分の一に切り下げれば、戦前の通りになる。何も戦前の通りにする必要はないのだが、整理して簡単にするというので百分の一にする。すなわち私の主張は零を二つ取ることだ。そこで今のような場合に零を二つ取ると百円のものが一円になる、百円のものが一円になるかならぬかという議論があるのですが、私も貨幣の歴史をいろいろ内外調べているのですが、実質上通貨単位を新しく設定するということであるから、円というのは非常になじんだ名前だから、名前は円でそのまま受けついでもいいが、新円とか両という名前をやってもいいけれども、私はむしろ円がいいと思うが、実質は新しい通貨単位を設定することであって、従って誤解を解くには、両方の通貨を三ヵ月なら三ヵ月、半年なら半年くらいでけっこうだと思うが、併用することを考えれば誤解は氷解すると思う。半年の間は、今までの百円札、千円札、五千円札も併用する。新しく五円、十円、百円という通貨も出す。二つの同じく円というけれども、これは全然新しい単位を出して、収入側にも支出側にも、全部これを半年なら半年の間は百対一の関係でもって完全に通用させるということにすれば、すぐわかるのです。ですから、たとえば月給を二万円もらう人がある、そうして月給日になって、お前は今までの金でほしいか、新しい金でほしいか、今までのでほしいといえば、二万円なら千円札を二十枚、そういう月給で払う。新しい金がほしいといえば、十円札を二十枚、つまり二百円ですね。半分々々がよろしいといえば、今までの千円札を十枚、これで一万円、新しい十円紙幣を十枚、これで百円になるわけです。つまり表面だけ見ると、一万円と百円になるわけですが、こういうふうに月給を渡す。今度支払いの側を見ると、三越に買いものに行く、あるものが千五百円であった。そうすると、そこの売り場の事務員が、あなたは新しい金ですか古い金ですか、古いものなら今まで通り千円札一枚と五百円札一枚もらいます。新しい金で払うなら、十円の紙幣と五円の紙幣でけっこうです。あるいは半々でもけっこうです。千円札と五円の紙幣、これでも受け取れます。こういえば貨幣は百分の一に切り下げたが物価が百分の一になるかどうか、五十分の一程度にしかならないのじゃないかというふうな誤解は氷解するわけです。つまり一つのものについて二つの値段、価格が成り立つわけです。つまり古い貨幣でいえば、あるものは千五百円の値段だ、新しいものでいえば十五円だ、その半年間の両方併用時代においては、千円札一枚と五百円札一枚払っても、十円札と五百円札一枚払ってもよろしい。こういうふうにすれば、百分の一に切り下げても、物価が果して百分の一になるか、ひょっとしたら五十分の一でとまりはせぬか、そうしたら貨幣を持つ者は損をするということは絶対ない。つまり円というけれども、実質は新しい単位であって、新円なんです。旧円で払えば千五百円、新円で払えば十五円でいいのだ。半年両方併用時代は、どちらをどういうふうに混ぜてもいいということにすれば、これはもう物価がその通り下るかどうかということは問題にならないはずですね。一つの千五百円というものも、旧紙幣であれば千五百円、新しいものなら十五円という二つのものなんです、私の主張するのは。先ほども、そういうことが非常に社会心理に重大な影響を及ぼす、そういうことも絶無だとは思わないのですが、私は通貨価値が安定したということは、今のインフレートしたやつで落ちつけるということも一つの方法、新しくデノミネーションをやることも一つの方法、理論的にいえばどちらでもいいのです。大蔵省が今やっておられるような一万円札を出し、五千円札を出し、百円銀貨を出し、インフレートしたやつを落ちつけてしまおう。私はデノミネーションをどこまでもやるということは言わないけれども、私はデノミネーションの効用といえば二つあると思うのです。一つは、百分の一に切り下げるとすれば、非常に記帳、計算が簡単になるということ、同時に間違いが少くなるということである。もう一つ、これはある意味じゃもっと重要なことなんですが、貨幣を大事にするということ、今は資本蓄積が非常に重要なときで、貨幣を大事にするということ。先ほども言ったように、一円アルミ貨ですか、一円貨が落ちていても拾わぬ。私はさっきも新聞の切り抜きを二つあげましたが、実際こういう思想が充満している。もう子供もこのごろは、ちょっとお菓子を買いにいくのでも、百円札を要求する。あめ玉一個でも一円じゃ絶対に買えない。そうすると非常に一円というものが価値がなくなったので、そこで理論はそれは今のままでもいいのですが、私は百分の一に切り下げる。そうすると、今通貨発行高が五千億円でも、これが五十億円になる。ことしの成立するであろう予算が一兆三千億だということになっておるが、これが百三十億ということになる。それから、たとえば月給を三万円とっている人は、三百円の月給取りということになる。そうすると、百円札をぽっぽっとチップに投げ出す、そんなことはとてもできない。三百円の月給とすると、そういうことになる。今の対米為替相場が、三百六十円が三円六十銭ということになる。こういうように例を二つとった方が、私は通貨に対する国民考え方が、気分が一新する、それから貨幣というものを大事にする。一円落ちていても拾いもしなければ、見向きもしない。現に私なども、これはまあ言っては叱られるかもしらぬが、新聞を買うと七円くらいですが、私は三円のおつりをとらないことがかなり多いのです。道路に捨てては悪いと思うから、受け取らないのですが、こういうように円というものは値打がない。事実、三円のあれをもらってきても払うところはない。だから、私はああいう一円の安っぽいアルミ貨を持っている国、通貨単位の低い剛は、これは経済が結局非常に脆弱だということであり、先進諸国は、大体その国の通貨単位というものが価値だけを持つ。アメリカは言うに及ばず、あるいはイギリスのポンドなどというのは、相当価値を持っている。フランスはまあ一木と似たようなものでありますが、かかるがゆえにこそ、これは唯一の原因じゃありませんが、フランスという国は御承知のように、非常に経済上はふらふらしておる。為替相場でも、いつでもフランスは問題になっており、すでにこの間も二割切り下げたことは御承知通りであります。通貨単位のしっかりしていない国は、経済がしっかりしていない。スイスとかなんとかいうような、なかなか大きな銀貨、重みのある銀貨を持っている国は、やはり貨幣がしっかりしておる、通貨制度を布いて、経済がしっかりしている。日本通貨単位の基本は円というものです。その円が捨てて顧みられないということがおもしろくないので、デノミネーションを主張するわけなんですけれども、私はせめて通貨単位でライスカレー一ぱいくらい食えなきゃいかぬ、あるいは、そば一個くらい食えなければならぬと思っておるのであります。それが、その国の通貨単位で、つまり円で買えるようにならなければ、貨幣を軽視する風潮がだんだんふえていきやせぬかということをおそれるわけです。つまり、そば一ぱい、ライスカレー一ぱいくらい、円というもので買える、円がその程度の購買力を持つというようにならなければいかぬと思うので、こういう質問をするわけなんです。一円以下を切り捨てるという今度の法律をお出しになっても、貨幣を軽べつするということは全然ないとおっしゃるのですが、私は客観的に円というものが価値が少いということを言っておる。予算委員会の方へ要求されているようでありますから、長々しい質問をしませんが、このことについて一つ所感を述べていただきたいと思います。
  17. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) いろいろごうんちくのお話を伺いまして、われわれとしましても、十分これは研究をいたさなければならぬと思うのでありますが、重ねて申し上げますが、今日、私どももお金を大切にしていただくということがきわめて大事なことは、申し上げるまでもないと存じております。三十三年度予算、あるいはいろいろな投資計画、これらを完遂していくためにも、やはりこの蓄積ということがきわめて大事でございまして、別途、減税貯蓄法案というものをお願いしておる次第でございます。そういう趣旨から申しまして、お金の値打がきわめて大切であり、この価値を安定させ、さらに増強していく、こういう考え方が非常に大切な時期にあると存ずるのであります。従いまして、私どもはいろいろな施策をそういう面に集中いたすように考えておるのでありまして、山本委員お話しのように、むしろそうするためにはデノミネーションがいいのだというようなお考えもあり得るかと思いますが、一応われわれとしましては、今日この金の値打が大切であるという思想から申しましても、今デノミネーションその他を云々すべき時期ではないという判断を持っておることを重ねて申し上げまして、御了承を願いたいと思います。
  18. 山本米治

    山本米治君 ちょっと最後の言葉は、だいぶ違うと思うのですが、貨幣を大事にすればこそ、今の方法でいくのがいいということは、少しどうも違うと思います。さっき、四捨五入を今度は九十九以下は全額切り捨てるということにした、それは貨幣価値というもの、一円というものが非常に内容が少くなったという質問に対して、そういうことはないとおっしゃる。私は客観的に少いというので、道路に落ちておる一円を拾わないという新聞記事を持ってきておるのですが、一円というものの価値内容、購買力というものが非常に少い、ほとんど軽微である、一円で何が費えますかと言ったら、あんた、答えられないのです。この客観事実はおおうべくもない。そういう一円じゃいかぬから、せめて百倍して値打のある一円にしようというのが、私の提案です。それをすぐ大蔵省がとるかとらないか、それは答えにくいと思います。ちょっと感じが違うと思います。
  19. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 私、先ほど一円で具体的に買えるものは、とっさに思いつかないということを正直に申し上げましたが、やはり学校の子供たちは一円を持っていきまして、紙を買ったり、あるいはあめ玉を買ったりしておると思います。私も実は打ちあけ話を申し上げますと、毎朝神様に参っておりますが、このときのおさい銭は一円をやっております。(笑声)これは正直に申し上げるのであります。それで、この重ねてのお話でございますが、端数計算法が改正されましても、きのうまでのあめ玉なり紙の値段と、明日からのとは変らない、その観念においては、私は何ら変りはないというふうな意味で申し上げたのであります。
  20. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 他に御質疑はございませんか。   〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 他に御質疑もないようでありますから、質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。  御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。   〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 別に御発言ございませんか。   〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 別に御発言もないようでありますから、討論は終局したものと認め、これより採決に入ります。  国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  24. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 全会一致であります。よって本案は、可決すべきものと決定いましました。  なお、諸般の手続は、先例により、委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 御異議ないと認めます。  それから多数意見者の御署名を願います。   多数意見者職名     木内 四郎  西川甚五郎     平林  剛  天坊 裕彦     青木 一男  岡崎 真一     左藤 義詮  木暮武太夫     宮澤 喜一  山本 米治     栗山 良夫  杉山 昌作     野坂参三     —————————————
  26. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 次に、租税及び金融等に関する調査議題として、租税行政に関する件について質疑を行います。御質疑のある方は、順次御発言願います。
  27. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私、この前の委員会に、ただいま問題になっておる日新製糖株式会社の隠匿所得の資料の提出をお願いしておきました。きょう、ここにいただいておるようでありますので、これに対する説明を聴取したいと思いますが、ただ、この前、私が、ただ単なる隠匿所得の絶対額をお願いしただけではないのであって、こういう隠匿所得がどうして国税庁の目に触れないで隠匿されたか、その方法・それからまた、こういうものがどうして数年後に発見せられたのか、その経過、それから今後の隠匿所得に対する国税庁の態度、そういうものをもう少しこまかく資料として提出を願う予定をしておったのでありますが、出ておりません。従って、これもつけ加えて説明を願いたいと思います。
  28. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) ただいまお手元に御提出申し上げました資料につきまして、まず簡単に御説明を申し上げたいと思います。その前に、ここに掲げました数字は、まだ最終的な処理を了しておりませんので、現状における調査段階におきまして取りまとめました数字でございます。従いまして、今後の計数整理の過程におきまして若干数の共同が出てくるかもしれませんがあらかじめ御了承をお願いをいたしたいと思います。  横長の表の方は、二十七年七月から同年十二月以降三十一年十月から三十二年三月期まで九事業年度にわたりまして、今回の調査の結果による所得金額と、申告または当初の更正額との比較を掲げた数字でございます。この最後の合計欄の右下にございまするが、所得金額におきまして約三億二千二百万円の増差所得になっております。この内訳がどういうものであるか、事を事項別に掲げましたのが二枚目の半切れの紙に掲げましたものでございまして、まず最初の工事費の水増し計上三千五十二万円、これはすでに御承知のことかと存じますが、会社の本社のビル並びに豊洲の工場の建設に際しまして、鹿島建設との請負い契約にかかるものでありますが、これにつきまして工事費を水増ししまして、これが社長並びに役員の賞与と申しますか、そういったものに結局なったものでございます。次が燃料費の架空計上でございます。これは取引先である笠間商店からの石炭の仕入れ代を架空に計上して浮かせたという性質のものでございます。修繕費の架空計上、これは会社の機械の修繕費を架空計上したものでございます。その次は古機械のスクラップを売却した収入を漏らして簿外にしておる、こういうものでございます。  次は簿外預金の利子収入でございます。次が株式の贈与でございまするが、この株式の贈与は、その会社の持っておりました自己株の四十万株を三十年の六月に前社長に贈与いたしたものでございます。これを時価によって評価いたしたものでありまして、個人に対する認定賞与と申しますか、そういったものとして別途課税の対象になるべき性格のものでございます。カッコ書きの二千万円と申しますのは、会社がすでに簿外にいたしました所得をもちまして、自己株式を購入いたしました原価でございます。従いましてすでに課税済みの所得による取得原価でございますから、これを控除いたしまして法人所得に計算する、こういうことになるわけでございます。  その次は自己株の処分益五千九百万円でございます。これも同じく会社の所有にかかる自己株を、三十年の十一月末でございましたか、株式を一般に公開いたしまして、持っておりました七十万一千株を処分いたした処分益でございます。  次の土地、家屋の贈与四千三百万円、これは簿外所得で持ちまして、すでに取得いたしておりました土地百八十万円の上に約二千八百万円の経費をかけまして家屋を建築いたしまして、これを前社長に贈与した、こういうものでございます。従いましてこれは利益処分として会社の課税対象になるという性質のものでございます。  次の未払い制度引当金・とれ以下は大体会社の表勘定において経理されている金額でありまするが、税務計算上否認いたしたという税務上の否認の金額でありまして、まず未払いの割戻引当金と申しますのは、取引先に対するリベート、これをまだ確定前に一応引当金としてこれだけを見合いに立てた。まだ債務は確定しておらないのに損金で引き当てに立てているものですから、これを否認いたしまして益金として加算したわけであります。  次の株式の低廉譲渡千九百万円、これは同じく自己株のうち十万株を現社長に一株五十円の額面価格で譲渡いたしました。時価百六十円でありますが、これを五十円で譲与したものでありますから、その時価との差額、これも低廉譲渡として、買い受けた者に対しましては認定賞与と見る、こういうことになるのであります。同じく自己株式十四万九千三百五十株というものを、日新製糖の子会社でありますが東新産業に対しまして時価二百三十二円のものを百二十円で処分している。この差額一千七十七万九千円、これが会社としましては低廉譲渡、つまり寄付金、こういうことになるわけでございます。  次の寄付金の否認額、これは一般の寄付金を税法に基きます限度計算をいたしまして、その超過額を否認いたしまして益金に加算いたしたものでございます。  固定資産の償却超過、これも税法上の否認でございます。  次の麻袋の低廉譲渡六百四十万、これは会社の麻袋でございますが、これを時価よりも安く先ほど申し上げました東新産業に売却している。この時価との差額を寄付金として処理いたした。  あと損金支出の役員賞与、これは役員賞与を会社の公表上では損金支出にいたしておりますが、税務上これは益金処分になる。  その他の是否認は、これは事業税の損金を認定いたしましたものとか、その他のいわゆるこまごまとした税務上の是否認の額を一括ここに計上いたしたわけでございます。  以上大体このお手元の資料について概略御説明申し上げたわけでありますが、栗山委員よりお話のありました、どうしてこれが税務調査の過程においてわからなかったのかという御意見につきましては、全く私どもといたしましても恐縮に存じておりますが、各期の事業年度調査に当りまして、これらの金額が簿外の仮名の預金になっておると、こういうような関係で、それぞれの事業年度調査の際には実は発見し得なかったものであります。ところが、昨年の四月でございますか、会社の方から修正申告をいたしまして、先ほど申し上げました七十万一千株の自己株の処分による処分利益といたしまして、約六千万円の修正申告が出されたわけであります。それを検討いたしました結果、しからばそれだけの自己株がいかにして会社のものになっているのか、こういう点に、まずわれわれとしては、当然のことでありますが、不審を抱いたわけでありまし三その取得経路を逐次たどりますために、預金調査等をいたしまして、その個々の取得経路をずっとたどって参りました。その結果、大体会社の方でも、この簿外にいたしました所得の経理につきましての出納整理簿と申しますか、そういったものの一部を提出いたしましたので、それを基底にいたしまして、さらに調査を徹底いたしまして、現在お話申し上げましたような現状におきまする調査の結果になっておるわけでありますし従いまして、これに基きまして、税務上当然この結果に基きまして更正をいたしまして不足税額を追徴する、こういう手続に今後移るわけでございます。
  29. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 税の査定並びに徴収上からいろいろ疑問になる点があるのでお伺いいたしたいのですが、きょうはおそらく全部は尽きないと思いますので、私の今受けた報告の中で、さらに疑問と思うもう少し資料を整えていただきたい点などについてお話を申し上げたいと思います。  まず第一に、今あげられた隠匿所得の内訳ですね。これは一括して項目別になっておりますが、これは全部年度別に分けることは可能でございますか、
  30. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) これは各年度ごとにこまかい是否認がついておりますので、それを一括しただけでございますから、振り分けは可能でございます。
  31. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それを一つ出して下さい。それからもう一つ大きな疑問がありますが、その前にちょっと伺います、この会社はいつの設立ですか。
  32. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) 二十五年六月の設立でございます。
  33. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうすると、二十五年六月から二十七年七月までの間においては、こういう隠匿所得はなかったと国税庁はお認めになっておるのですか。
  34. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) 二十六年並びに、十七年の上期、この三期間におきまして、大体三千八百万くらいがさらに漏れておるという見込みでございます。
  35. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今あげられたのは、二十七年の七月以前については隠匿所得に対する追徴税というものはもう時効になっておるわけですか。
  36. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) 御意見通り、五年の事項にかかっております。
  37. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は、時効であるかないかは別として、日新製糖の終戦後における隠匿所得の総額を示してもらいたいと申し上げたのです。それですから、もう法律的に棒引きになった分は国税庁の方で簿外にせられると思うので、私の要求はそうでないのです。日新製糖の終戦後における隠匿所得は全部あげてもらいたい、こういう要請をしたのでありますから、これは資料が不備です。その点を一つ修正を願いたいと思います。  それから第三番目に伺いたいことは、あなたは昨年の四月、会社より修正申告の申し出があったと、こういうことでございましたが、なぜそういう動きが会社の中に起きたかということについて説明を伺いたいと思います。今まで隠しておいて、昨年の四月になってにわかにこれだけの膨大な隠匿所得を明らかにするような処置をどうしてとったか。日新製糖の重役が前非を悔いて自発的にやったのか、あるいはどういう契機でこういうことになったのか。国税庁としては当然調査をせられたのでありますから、その辺の経過は御承知だと思いますから、伺いたいと思います。
  38. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) こまかい事情は、実は私自身確認しておらないのでございますが、前社長と現社長との間におきまして、先ほど申し上げました自己株の所得の帰属ついて争いがあったやに仄聞いたしておりまするが、真偽のほどは私、確認いたしておりません。
  39. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうすると、もう一度伺いますが、前社長がこれはずいぶん会社の金をせびったように私も報告を受けたのですが、一体前社長がこの隠匿所得から自分の個人の所得にした額というものはどれくらいになっておりますか。今伺っただけではちょっとそろばんが寄せられないので、これをちょっと内訳をおっしゃって下さい。
  40. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) お手元の資料の二枚目の半切紙に掲げました株式の贈与と、土地、家屋の贈与、この二つが前社長との関係になろうかと思います。
  41. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうしますと、それを合計いたしますと、一億三千七十六万円になりますが、そう理解してよろしゅうございますか。
  42. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) さようでございます。
  43. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それで、前社長というのはNHKの会長をやっておった永田清故人だと思いますけれども、間違いありませんか。
  44. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) さようでございます。
  45. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 しかも、私、新聞で見てよく事情を存じませんが、四十万株が問題になって、社内に内紛があったということを聞いておりますが、この四十万株というのは、この一億三千万円のワク内ですか、ワク外ですか。
  46. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) 四十万株は、ここに掲げました株式の金額でございます。四十万株の処分代金であります。
  47. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 あなたの御説明では、そういたしますと、八千七百六十万円という株式が前社長に贈与されたということにこれはなっておりますね。しかし、今贈与されないで問題を起しているのではありませんか、よこすか、よこさないかで……。
  48. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) お話通り、ただいま争いの点になっておるわけでありますが、それぞれの株式の取得経路、どこから出た資金でこの株が取得されておるかという取得経路をトレースいたしまして、一応税務調査の結果によりまして、これは会社の自己株だ、こういうふうに認定いたしたわけであります。
  49. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 わかりました。そういたしますと、あなたの株式の贈与というのは、これはあくまでも自己株式であって、おそらく委任状は会社が持っているでしょう、名義はそうなっているのですから。それだから紛争が起きていると思いますがね、ですから、前社長と日新製糖の間の関係は、これは株式を贈与する予定であったかないかもわからない。これは会社のものなんでしょう。ですから、永田社長は、八千七百六十万円は、これはまだ贈与されてないのじゃないですか。ただ、会社の隠匿所得で四十万株の株式を日新製糖が自己株として持っておった、こういうことはわかりますけれども、そういうことじゃないのですか。
  50. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) この株式の贈与の点につきましては、会社の重役へ会におきまして、四十万株に相当するものを前社長に贈るという決議をいたしております。そして同町にその株式の処分についても、委任状と申しますか、これは会社の方に出ておったわけであります。従いまして、ここに掲げました八千七百六十万円という額は、当該四十万株を処分いたしましたかわり金を前社長に贈った、こういうことになっておるわけであります。
  51. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうすると、四十万株に相当する分を現金化して前社長に贈って、そうしてそれは何か隠匿所得で取得して贈って、そうして実際の四十万株というものはまだ会社が持っているわけですか。そこがはっきりしないのです。
  52. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) 処分済みでございます。
  53. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうすると、前社長が一億三千七十六万円の隠匿所得の中からこれだけの贈与を現実に受けておるということには間違いないわけですね。
  54. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) 御意見通りであります。
  55. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それだけ受けておって、なおかつ四十万株よこせ、こういうわけですか。
  56. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) この今お話申し上げました四十万株自体が、会社の自己株であって、それを前社長が贈与を受けたという性格のものでなしに、もともと個人所有のものであったから、それを返してもらうのが筋だと、こういうところに争いの中心があるようであります。
  57. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 どうもよくわからないが、永田さんというのはずいぶん欲ばりのように今お話を伺うと思うのですが、そうですかね。これはまたいずれもう少し突っ込んで聞きますが、大体今警察の方で調べておるようですから、そちらの力でわかってくるでしょうが、問題は、こういう前社長に対して膨大な所得が贈与されておりますが、これについての課税はどういうことになっているのですか。
  58. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) この法人税の処理に引き続きまして、個人の認定賞与の問題として課税の手続を行うべきものであります。
  59. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これはあれでしょう、こういう贈与というのはないでしょうから、所得扱いになるわけでしょうね、前社長としては……。
  60. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) 認定賞与ということになります。
  61. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それに対して、なるべきものというのですが、どうですか。国税庁の長官に伺いたいのですが、取るのですか、取らないのですか。
  62. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) 当然課税処理を行なうべきものであります。
  63. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それはいつおやりになりますか。
  64. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) この最終的な決定に引き続きまして、すみやかに行う予定であります。
  65. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これは一つ、隠匿所得に対する国税庁の査察が完了し、追徴税額が決定した場合には、法人並びに今の関係個人の課税の分については、当委員会に報告していただきたいと思います。  それから、こういう私どもが思うというと実に不思議にたえないような隠匿をせられて、実際のやり方というものはどういうふうにやられておるのですか、完全な二面帳簿でやられておるのですか。
  66. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) 架空経費、あるいは工事費の水増し、こういった方法によりまして簿外にいたしました資金の出納のために別途帳で整理をいたしておったわけであります。
  67. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 こういう大がかりな所得の隠匿というものは、少くとも今の複式簿記を使っておる以上は、そう簡単に私はできない、どっかでこれはぼろが出ると思うのですね。それを見つけなかった国税庁国税庁だと思うけれども、さらに会社の方もなかなか功みだったと思いますけれども、会社はこれは社の方針としてこれをやっていたと思うのですけれども、これを指導した人は一体だれですか。
  68. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) だれがそもそもの計画者であったか、まだ確認いたしかねております。
  69. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 栗山君にちょっとおはかりいたします。日新製糖の事件については、新しく資料も要求されておりますから、残りの質疑は新しく資料を求められた上で後日に譲りまして、本件については本日はこの程度にして、これから効率表並びに所得標準率表について前回に引き続いて質疑を行いたいと、こう思いますが、いかがでしょう。
  70. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 けっこうですけれども、これから国税庁調査をしていただく上において、やはり私の考えておる点を述べておかないと、今のように計画的にやられたことについてその責任者もわからぬというのだから、国税庁としてそんな調査の仕方はないでしょう。調べるならそこまでお調べになって、これは一人や二人のやったことではないですよ。これはおそらく、秘密重役会議か何かでやっておるのか知らぬが、相当大がかりなものでしょう。これは標準税率表どころの騒ぎじゃないですよ。
  71. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 栗山さん、ですから、ここで質疑を打ち切っていただくのはけっこうですが、そういう順序で本日の委員会は運びたいと思いますから、そういうお含みの上で一つ……。
  72. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 もう一つ伺いたいのは、この日新製糖の原材料並びに製品をさばく東新産業というものがあることをあなたはおっしゃいましたですね。現に私はこれに非常に疑問を持っておったが、東新産業が株式を非常に安く受けたり、あるいはその他の隠匿利益行為をやっておりますね。この東新産業というものが、私は相当に、言葉は悪いですが、全然調査もしないし、事実もつかまないで、そう言うことは大へん失礼ですが、においとしては、印象としては、ここがやはり一つの伏魔殿ではないかと思うのですが、そこに対して調査の手が及んでいるか、いないかということを伺いたい。
  73. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) ただいまのところ、すでに日新製糖との関係におきましても、お示しの通り、いろいろ利害関係の取引がございます。こういった資料を私どももこまかく整理をいたしておりまして、いずれ引き続いてこの調査を行う予定でございます。
  74. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしますと、これはおそらく不離一体のものだと思いますから、東新産業というものは、あるいは不離一体というよりも、もう少し前衛的な役割をしているかもしれない、そういう意味で東新産業の所得について厳正なる調査をせられて、その結果を、やはりこの親会社と同じような方式で調査をして御報告をしていただきたい。それはいつごろ完了しますか。
  75. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) その仕事の段取りは、いろいろの計画をしておりますので、いつまでということはちょっと今ここでお約束申し上げかねるのでございまするが、性質上、当然すみやかにやる計画は立てているわけでございます。
  76. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それから、これを担当した国税局の現地税務署というのですか、税務局ですか、これはどこですか。
  77. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) 東京国税局の調査官が調査をいたしております。
  78. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これは直接ですね。
  79. 中西泰男

    説明員(中西泰男君) さようでございます。
  80. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そちらの方の関係は、この前はその効率表を出したというので、大阪で国税庁の公務員が逮捕されているのですが、こういう大きなミステークがあっても、そちらの方の責任追及は全然しないことになっているのですか。
  81. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 第一回の調査におきまして、ただいま出ておりますような結果がわからなかったのは大へん残念でございますが、しかしこれは人おのおのやはり能力がございまして、能力に応じてベストを尽しておれば、これに対しまして私の方の処分ということはちょっといたしかねるわけでございまして、要は、結局、国税庁調査官の調査能力を増進いたしまして、今後このようなことのないように私ども勉強するばかりでございます。
  82. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その最大の能力を発揮して調査して、こういうミスがあったということなら、まだこれは通るでしょう。しかし最大の能力を発揮したか、しないかということは、国税庁の長官たるものは、こういう事件が起きたときには、やはり調査する義務があるのじゃないか、それはおやりになったのですか。
  83. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 私どうして当初わからなかったか、気にはなって、実は部内で聞いたわけでありますが、どうも結局、一生懸命やったけれどもわかりかねるということだけでありまして、何らかわかっていて見のがしたかどうか、言葉はいやなことでありますが、そういうことにつきましては、全然東京国税局におきましても、あったということは考えておらないわけであります。結局能力が及ばなかったというように考えております。
  84. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それではいずれまた資料が出ましてから……。
  85. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 日新製糖に関する件は、資料が出ました上で後日に質疑を続けることにいたします。     —————————————
  86. 河野謙三

    委員長河野謙三君) これより前回に引き続き所得業種目別効率表並びに商工庶業所得標準率表についての質疑を行います。
  87. 平林剛

    ○平林剛君 この標準率表と効率表の提出については、私から要求をしたものでありますけれども、本日その大体のものが出されましたが、当局の方からは何か説明はないのですか。
  88. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 政府の方から本日提出されました資料につきましての御説明を求めます。
  89. 金子一平

    説明員(金子一平君) ただいまお手元に提出申し上げました商工庶業所得標準率表と効率表について簡単に御説明を申し上げたいと思います。  まず標準率表について申し上げたいと思います。大体説明便宜上、様式と、作成の要領、適用の場合の要領とに分けて記述してございます。  第一ページの表をごらん願います。大体各局ともこの表を——多少の相違はありますが、こういった格好の表で仕事を進めております。で、これは申すまでもなく、納税者の売り上げはわかっておるけれども、経費なり所得がはっきりつかめないという場合におきまして、この所得率をかけまして、所得を推計する、こういうためにできておるものでございます。で、表の格好は、一番左の端に種目、たとえば荒物なら荒物、日本料理なら日本料理というような格好で種目が並びます。それから業態、これは販売でございますとか、製造でございますとか、あるいはサービス業でございますとか、そういった種類が出ます。それから卸、小売の順序です。   〔委員長退席、理事西川甚五郎君着席〕  それから売り上げなり収入金額に対する割合と、それから経費の率とに大別されて、それぞれ差益率、所得率あるいは雑収入の率、減価償却の率、固定資産税の加算率が、まず売り上げなり収入金額に対する割合としてパーセントで出ております。あるいは百円当り幾らと申してもいいかと思うのであります。で、今回問題になりました所得標準率は、ここに出ております所得率が問題になっておるわけでございます。  それから経費の方は、ここには公租公課、荷造り、運賃、水道、光熱費とか、旅費、通信費でありますとか、広告宣伝費でありますとか、接待交際費、火災保険料、修繕費、消耗品費、福利厚生費、それから建物以外の減価償却費、雑費とかようなふうに分れております。で、ここに出ておりません経費、たとえて申しますと、雇人費でございますとか、建物の減価償却費でありますとか、地代、家賃でありますとか、そういったものは、売上げに所得率をかけまして出ました所得金額から別途控除する建前になっております。  そこでこの表の作り方でございますが、二ページにそれが記述してございます。これは先般も御質問がございましたけれども、各国税局単位で作成することになっております。この資料の集め方につきましては、資料が一地区に偏在することのないように、地域別あるいは特定の所得階層に集中することのないように、事業の規模別等の分布状況を十分考慮いたしまして、なるべくまんべんなく広範囲にデータが収集できるよう計画を立てて集めることになっております。  で、こうやって集めました資料の中から、特に異常な資料、たとえば経営状態が異常によいとか、あるいは異常に悪いとか、一年間を通じて営業をやっていない、年の中途で廃業したとか、あるいはほかの業種目と兼業しているというようなものは、はずしてしまうわけでございます。そうして残りの資料の中で、なお特に高いもの、特に低いものをはずしまして、中庸の標準率を求めますために、平均値を出したり、あるいは標準偏差を用いまして、上下の——特に上の方と下の方ではずすべき資料を求めます。その資料の求め方は、三ページ以下に記述してございますけれども、具体的なやり方として参考のために五ページに表を掲げてございます。これは、ごく簡単に申し上げますと、たとえばある業種目につきまして二十九のデータが集まったといたします。先ほど申し上げましたような、中途から廃業したとか、特に非常にいい悪いというようなものははずしたものでございますが、これを各十グループずつに分けまして、三組に直します。そうして件数項でこのグループの平均の値を求めます。それが平均十二円八十五銭という欄でございます。向って左の下の方に平均十二円八十五銭というのが出ております。それからさらに今度は、各グルーブごとに最大のデータと最小のデータを求めまして、その差額を出します。たとえて申しますと、一グループでは最大が十四円、五十六銭、最小が六円五十四銭になっておりまするが、その範囲は八円二銭ということでございます。かように、各グループごとに最大と最小との差額をそれぞれ求めまして、それを三つのグループで削りました答えが、平均の欄のまん中のところに(B)として七円四十三銭という数字が出て参ります。この七円四十三銭に一定の変動係数をぶっかけるわけでございます。この変動係数は、(C)の欄の〇・三二四九という、これは実は統計学上は平方根を求める方式になっておりまするけれども、行政上の実際のやり方といたしましては、簡単な速算の表を作っております。それが四ページに出ております表でございます。四ページのまん中くらいに、資料の件数に応じた変動係数が出ております。こういったものを使ってやるわけでございます。そうして出ました標準偏差を求めまして、それを一・五倍いたしまして三円六十二銭というものが出ます。この三円六十二銭を、一番最初に出しました平均の十二円八十五銭にプラスいたしましたものが、この集めた二十九の資料から切り取るべき上の方の限界でございます。それから、十二円八十五銭から今出ました三円六十二銭を引きました結論の九円二十三銭というのが、下の方のデータを不適当なものとして落すその限界でございます。この十六円四十七銭以上九円二十二銭以下を落しましたその結果が、この表の向って右の欄に資料検討後の資料として出ております二十一の件数になるわけでございます。これを平均いたしますと十三円、こういう標準率になって参ります、大体作り方は、ごく大づかみでございますけれども、以上申し上げましたように、なるべく片寄った数値が出ないように、中庸的なものを出す努力をいたしておるわけでございます。それから所得標準率の使い方でございまするが、これは六ページに出ております。先ほども申し上げましたように、経費の中で雇い人費でございますとか減価償却費でございますとか、地代、家賃あるいは借入金利子、貸し倒れ金というようなものは、売り上げに所得率をかけました答えから別途控除いたしまして実際の所得金額をはじき出す、かようなことになっておる次第でございます。それからあと、減価償却率とか固定資産の加算率とかいろいろございますが、たとえて申しますと、減価償却率は、実際の減価償却の額が判明いたしません場合、これは別途控除できませんので、売り上げ金額にこのパーセンテージを乗じて減価償却額を算出する、かようなやり方でやっておるわけであります。以下大体同様のやり方をいたしております。  次に、所得の業種目別の効率表について申し上げますが、これもやはり様式と作成のやり方、それから適用のやり方の三段に分けて記述しておきました。  一ページに業種目別の効率表の様式が出てございます。でこれは、二ページの方をおあけ願います。二ページの方から先に御説明申し上げた方がわかりやすいかと思うのでありまするが、効率表と申しますのは、御承知のように、売り上げ金額が実際にわからないという場合に、一定のその営業の外形標準をもちまして、売上金額を推算しよう、こういう目的で作られたものでありまして、その外形標準と申しますのは、たとえば従業員の人数でございますとか、料理店ならば部屋の数でございますとか、あるいは飲食店や喫茶店ならばテーブルの数でございますとか、あるいは通常の問屋さんだったら、たなおろしの商でございますとか、そういった売り上げと相関関係にある一定の外形標準を基礎にして売上金額を推計しよう、こういうことでできておるわけでございます。  この効率表の作成も、やはり所得標準率と同様各国税局において作っておりますが、作り方は、地域別とそれから事業の規模別の二本立で作っております。地域別と申しますのは、そこに出ておりますように、六大部市と市部、町部、この三つに大体大きく分けまして、それぞれ売り上げの状況がこういった地区ごとで違いますので、その点を実情に合わせるように分けて作ることになっております。それから事業規模別と申しますのは、たとえて申しますと、従業員の数でございますとか、たなおろしの高でございますとか、あるいはテーブル、あるいは部屋、そういったものの数だとか、かようなことで区分して作っております。そこで、この地域別と、それから事業の規模別の二つをかみ合せて、この効率表をこしらえるわけでありますが、さらに効率表は算術平均算式のものと、加重平均算式のものをそれそれの業種について作っておるわけでございます。算術平均算式と申しますのは、たとえば、従業員の数はわかるけれどもほかのものは全然わからぬ、あるいは部屋数はわかるけれどもほかの方がつかめないというような、効率項目の一つしかわからない場合におきまして、その一つのものをつかまえまして、大体この店の売り上げはこのくらいであろう、かようなことで計算をするやり方であります、しかし、申すまでもなく、こういった算術平均式なやり方は非常に危険でございますので、もし、二つ以上の効率項目がわかりました場合には、たなおろしもわかる、従業員の数もわかるというような場合には、その両方をかみ合せましてそれぞれの従業員なら従業員、あるいは部屋数なら部屋数というようなものにそれぞれウエートを置きまして、これは変動係数の小さいものほど大きなウエートを置くことになるわけでございますが、ウエートを置いて計算をして大体の売り上げを推算する。かようなことになっておるわけでございます。算術平均算式の作り方は、全く標準率を作る場合の作り方と同様と御了承いただいてけっこうかと思います。  この効率をどういうふうに使うかと申しますと、それは四ページに表が出ておりますが、ごく荒っぽい表でございますが、従事員しかわからないというときは、あま大体従事員一人当りの売り上げは年間五十万円ということならば、三人おれば百五十万円、あるいは在庫の方がわかればたなおろし資産に千円当り幾らをかけるというようなやり方で出しておるわけでございますが、きわめて単純なやり方でございますので、間違いもあろうということで、特にこれは所得標準率についても同様な問題があるわけでございますが、店の売り上げというようなもりは、これは所得の率は同じでございますが、地域の店の所在でございますとか、経営者の能力でございますとか、あるいはのれんというようなことによって相当違って参りますので、一定の限度において加算をする、あるいは出てきた答えから減算をするというようなやり方を認めておる次第でございます。加重平均算式の方は、そこに出ておりますように、従業員なら従業員に一人当りの係数をかけまして、五十万なら五十万という係数をかけまして、ウエートをつけまして、そうしてそれにたなおろしの方もやはり同じように係数をかけたものをプラスして出す、かようなやり方になっておるわけでございます。  以上の説明でもわかりますように、非常に中庸的なものを私どもはこれで出すように、全体の平均値を出すということに主眼をおいて作っておりますので、各種の業種、それぞれの業態によりましては、必ずしもこれ一本でいくわけにいかない、押しつけはとうていできる筋合いのものではございません。さような意味におきまして、ことしからお知らせ制度も廃止いたしたということでございます。要するにこれは税務官吏の調査の際の一つの資料、あるいは申告のぜひを検討する際のデータの一つである、かように私どもは考えておるのでございます。もしこれを公表すると、それでこれをやってよろしいというようなことになりますならば、先般来繰り返して申し上げておりますように、申告納税制度の建前に根本から反します。特に今日のような申告納税制度のもとにおきましては、それぞれ個々の納税者の実情に即したような納税なり、課税をやるというのが建前で、一時的な動き方をやるというようなことは必ずしも適当でない。特に今日青色申告の納税者が営業者の半分を占めておりますので、もしこれを公開してこれによってやってよろしいということになりますと、青色申告自体の問題がやはりくずれるというような問題がございますので、さよう御了承いただきたいと思います。
  90. 平林剛

    ○平林剛君 まず最初に申し上げておきますが、大体私がこの標準率表とか、効率表を要求してから、大まかなことを説明するまで幾日かかっていると思いますか、議員の要求に対してだね。われわれは先般来から主張していたように、審査する必要があるから提出をしなさいということに対して、   〔理事西川甚五郎君退席、委員長着〕   席今日までそのあらましについても説明をしない、こういうことではあなた方の徴税行政についていろいろな誤解も生むし、秘密行政という批判も受ける結果になる。国税庁長官も私どもの要求に対してもっとすなおに協力できるものは協力するという態度に出てもらわなければ困ります。きょうは大矢委員も、小笠原委員もおりませんから、二人の議員の要求に対して、本日の資料は満足するものでありません。二人がいれば、この点につきましてもさらに政府の態度を追及することになると思いますが、私は一応今説明をされた資料でこれから若干の質問を行いますが、今後は国税庁長官も議員の要求に対してはもっとすなおに資料の提出なり、あるいはわれわれにわかりやすい話をして、そうして審査に協力をしてもらいたい、このことについて、まず最初にお答えを願います。
  91. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 私ども決してかたくなにお答え申し上げておるわけではないのであります。私もまあ自分では至ってすなおな方の人間であろうと考えているのでありまして、議員の皆様の資料の御提出の要求につきましては、できるだけ私どもも協力すべきであり、それがつとめであると存じますので、特に提出できないものを除きまして、できるだけ御協力申し上げておるのでございます。たとえば日新製糖の問題につきましても、実はこれは現在まだ調査中でございますし、相手方に対してもまだはっきりしていないので、実はこういうことは工合悪いのでありますが、できるだけ御協力申し上げる、こういう趣旨で私どもの御提出申し上げることのできる資料は全部御提出申し上げておる次第でございます。何とぞ一つ御了承願いたいと思います。
  92. 平林剛

    ○平林剛君 そこで最初にお尋ねしますけれども、そのいわゆる標準率表とか効率表というのは、大体納税者の中でどういう人を対象にして適用をするのか、この点を最初に明かにしておきたいと思います。
  93. 金子一平

    説明員(金子一平君) この表の実際に適用いたしますのは、青色申告をやっている人はもう必要ないわけでございます。大体において記帳のない方に対して標準率表を使う。効率表につきましても売り上げの記帳のない、税務署で捕捉ができないというような場合にこの表を使うと、かようなことになるわけであります。
  94. 平林剛

    ○平林剛君 もっと具体的に一つ答えてもらわないと困る。青色申告を行なった者には使わないというお話がありましたけれども、先般の委員会説明では、青色申告をした者についてもこれをあとで修正申告を求めるとか、修正をするということもございます、そういうときにはこれを使いますという答弁をしている。今のお答えと矛盾をしているじゃありませんか。
  95. 金子一平

    説明員(金子一平君) ただいま御説明申し上げました所得率なりあるいは効率は、これは売り上げのない場合、売り上げに関する記帳のない場合、あるいは売り上げはわかっているけれども、経費なり所得についての記帳がどうしても記帳の上からつかめないというような場合の、大体白色申告者の場合が多かろうと思いますが、そういった場合に売り上げなり所得を推計するために使うのが第一でございます。この場合が一番広いわけでございます。が、今平林委員から御指摘のありました点はこういうことでございます、青色申告者の場合におきましても、この資料は大体データは青色申告をやっておる者を中心といたしまして、大体帳簿の備わった信用度のある者からデータを得ております。そういった関係で、青色申告が出て参りました場合に、果してその申告が妥当かどうかという場合にも使う場合もございます。しかし本来的に申しますと、前の場合が一番使い方が大きいと、こういうことを申し上げたわけでございます。
  96. 平林剛

    ○平林剛君 でありますから、あなたの最初の答弁は間違っているのです。青色申告のあった者についても、これを使うということを今お話になったから、これで次に進みますけれども、先の答弁は明らかに違っておる。  それから私の質問はどういう人を対象にするかというお尋ねをしたわけです。あなたはまあ白色申告で記帳のないものとか、売り上げや所得がよくわからないものということを説明をされましたけれども、そうすると大体私が常識的に見た場合には、こういうことを計算できないような人や、記帳できない人というのは、納税者の中ではまあ零細なあるいはかなり低い所得の人を対象にして使われるものと理解をされるわけでありますけれども、そう理解してよろしいか、もしあなたの答えに具体的数字を入れるならば、在庫の資産がどのくらいのものを対象にしてこれを使っているのかという点もはっきり、これは具体的に一つ答えてもらいたい。
  97. 金子一平

    説明員(金子一平君) お説のように大体中小の営業者、かようなことになろうかと思います。
  98. 平林剛

    ○平林剛君 まだ十分でないからもう一度お尋ねいたします。在庫を中心にして計算したらどのくらいの額以下の人であるかという数字があるはずですよ、その数字を言ってもらいたい。
  99. 金子一平

    説明員(金子一平君) 従来たとえば金額で切っておったような場合も局によってはあったかと思いますが、大体建前は記帳のないものについては一般的にも使えることになっております。ただ局によってまちまちでございますので、その点はご了承いただきたいと思います。それから相当所得の大きなものにつきましては、先ほど来御説明申し上げましたように必ずしも率そのものがぴったりと合わない場合も多かろうと思います。大体税務署におきましては実際に、実地につきまして調査をするようなやり方をとる場合が多かろう、必ずしもこの率だけでいけない場合が多いのじゃないか、かように考えております。
  100. 平林剛

    ○平林剛君 私の尋ねていることを答えないで、よけいなことばかり答えないで審議に協力してもらいたい。各国税地方局によって違うといいますけれども、その全般を眺めてみて、大体この表を使うのはどのくらいの在庫資産のものかと聞いておる、私の承知しているのでは大体七十五万程度と聞いているのですが、それで間違いないかどうか。
  101. 金子一平

    説明員(金子一平君) 各国税局であるいはお話のように金額で切っている場合もあろうかと思いますが、国税庁といたしましてはその点は私が先ほど来申し上げておりますように、金額幾ら以下に適用しろ、幾ら以上は適用できないというような指示をいたしておりません。
  102. 平林剛

    ○平林剛君 あなたはきょうはここに数字のない欄を出したからそんなことを言っているけれども、私の承知しているのでは、年間の在庫高七十万あるいは七十五万程度の人の数字しか最高が書いてないですから、そういう意味では納税者の中でも中小いわゆる低い層の人にこれが主として適用されている、しかもなお青色申告を行なった者に対しても見直しをするためにこれが使われる場合もあったということは、今の質問の答えで大体わかったわけであります。そこで少し本質的なことをお尋ねをするわけでありますが、今日までこの標準率表と効率表は存在することについて、申告納税制度に反するのではないかという主張と、皆さんは、政府側の方では公開することはかえって申告納税制度に反するといって全くこの存在に対して相反する見解を持ち、お互いに述べてきた、この点は私は将来にとっても重要なものだと思うのであります。私はしばしば主張しておりましたように、現行税法は申告納税制度をとっておるのだから、本来の所得の申告や納税は納税者の自主的な義務であり、それを中心にして徴税行政が行われるというのが申告制度の建前である。だからこういう標準率表や効率表がございまして、ものさしにしろ何にせよ実際の行政にかなり重要な役割を果していることは自主申告制度に反しはしないか、こう疑念を持っておったのでございます。ところがあなたの方は、これを公開すればかえって自主申告制度をこわすことになるということを述べておるのでありますけれども恐縮ですが、もう一回あなたの方の立場、見解というものを明らかにしておいてもらいたい。これは後にわれわれが議論する上においても、あなたの方のきょうの発言は一つ大事にとっておくから、しっかり答弁してもらいたい。
  103. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 今までるる申し上げたことでございますが、さらにしっかり答弁せよというお話しでございますので、もう一度繰り返して申し上げます。  問題は申告納税制度に反するやいなやという一点にしぼられておりますので、その点から御説明申し上げたいと思います。申告納税制度は御案内の通り納税者が自分で帳簿をつけまして、そうして税法に従った計算をして正しい税金を御自分で納める、こういう制度であります。昔はこれがいわゆる賦課課税制度でありまして、税務署か調査して納税者の申告ということはこれはほとんど関係なく、そのまま所所調査委員会等にかけて決定しておったわけでありますが、戦後申告納税制度の導入によりまして、ただいま申し上げたように納税者が進んで自分の所得を計算し、税法に従って進んで自分で納税する、これによっていわば自家賦課とでも申しますか、これによってすべて終了するという建前をとってきたのであります。実はこの制度は私自身考えますと、当初終戦直後の混乱時期においては、やはり非常に議論のあったところでありまして、果してそういう制度がいいのか、昔のような制度がいいのかということにつきましては、部内においてもいろいろ甲論乙駁あったわけでありますが、結局において新憲法下におきましては、できるだけ国民の納税者の方々が進んでやはり自分で所得を納めるという観念を助長しなければならぬというような考えから、との申告納税制度がとられたのであります。それとともにいわゆる青色申告制度を育成することにいたしまして、納税者が進んで所定の帳簿をつけ、それによって税法上多少疑義のある点ではございますが、青色申告者に恩典を付する、こういうような制度を設けられたのであります。当初青色申告制度ができまして、二年間は、たしか私の記憶では営業者の方につきまして一割くらいではなかったかと思います。私は国税庁に当初参りましたのは昭和二十四年六月、それから約二年間国税庁におりましたが、その間におきまして、営業上の所御者の約一割見当くらいしか青色をしなかった。ところが今度戻って参りまして検討いたしますと、営業所得者につきましては過半が青色申告になっております。私もよくこれまでに青色申告制度というものができたものだなあと、こういう感じがするのであります。この制度はやはり私はずっと私どもとして育成発展させなければならぬと思うのであります。昔に遂行して税務官庁が一方的にふっかけるということではなく、あくまでも納税者の方が御自分で進んで所得を計算して税金を納めるのだという建前は、私は堅持すべきであると考えるのであります。従来お知らせ制度というのを実はやっておりました。これは昨年まで営業者などの一部の方々に対しまして、あらかじめ書面で、税務署ではあなたの所得をこう見ておりますということをお知らせしておるのでありますが、これが実は過渡期における納税の混乱を相当おさめるに役立ったことは私ども認めるのであります。建前から申しますと、やはり申告納税制度の趣旨に反するのでありまして、昨年の衆議院の大蔵委員会におきましても、そういう点が問題になり、時の大蔵大臣及び国税庁長官が、結局においてこれは申告納税制度本来の趣旨に反するので、これを次の年からやめていきたいと、こういうふうに言明いたし、現に本年よりお知らせ制度を廃止することにいたしたのであります。私は所得標準率の公開はやはりお知らせ制度廃止という精神にもとると思います。何と申しましても、納税者の方がせっかくだんだん植え付けられておるよき習慣をますます発展させていくのが私どもの役務であります。これを逆行させるようなことは私どもとしてはすべきではないと考えるのであります。そういう趣旨におきまして平林先生の御賛同を得られないことははなはだ残念でありますが、私どもといたしましては、この所得標準率を公開するということにつきましては遺憾ながらできかねる次第であります。何とぞ御了承願いたいと思います。
  104. 平林剛

    ○平林剛君 私は自主申告制度からいって、公開とか、非公開とか言う前に、標準率表とか、効率表があるということがどうも制度の精神に反するのじゃないかという疑問を出しておるわけです。たとえばあなたが、これは主として適用するのは白色申告の記帳のない者や、あるいは売上げや所得のわからぬような、そういう人たちのものさしに使う、こういうお話がありましたけれども、むしろ青色申告制度を堅持し育成するというならば、それらの人に対してどういうふうにその申告をしたらいいのか、あるいはどういうふうに記帳したらいいのかというような技術なり、やり方などを教えるのがほんとうであって、標準率表や、あるいは効率表というものを使って、そうしてそれに落していく。落すというとおかしいですけれども、それに近づけていくようなやり方はどうも申告制度に反しはしないかと、こう思うのですけれども、そういう指導の方が自主申告制度から一番重要なことではないだろうか。私はそういう主張をしておるわけです。それはまあ別にして、しかし今度は角度をかえてこまかいことについて伺いますが、先ほど事こまかに説明された率というのはこれは正確なものですか、要するに言葉をかえて言いますと、確実なものでしょうか、不確実なものでしょうか。
  105. 金子一平

    説明員(金子一平君) 所得標準率なり、あるいは効率は現在の状況のもとで作成したものといたしましては、これはやはり一定の条件のもとにおいてはベストを尽して作られたものでございまして、中庸的なものとしてこれ以上のものを作るのは、時間と金をかければ別といたしまして、現在の与えられた時間の間で作り得ますものとしては最善のものとかように信じております。
  106. 平林剛

    ○平林剛君 そうすると、私は、衆議院大蔵委員会で一月十六日国税庁所得税課長の亀徳さんが委員会で答弁をしたことと、国税庁が今日までわれわれに説明していることと違ってくるわけです。亀徳さんはこのとき標準率そのものが絶対であれば公表すべき性格のものであろうと思うが、と言って、完全なものであればこれは公表すべきものだ。しかしどうも千変万化するいろいろの納税者の実態に応じて一律の率というものがないから公開しないと答弁されておる。あなたが今これは時間と費用範囲内においては完全だと言われるけれども、完全なものであれば公開するのがほんとうだと言って一方では説明している。これはどういうわけですか。
  107. 金子一平

    説明員(金子一平君) 万全という意味が私は平均値として現在の資料の集め方、計算のしかたとしては、まず体のいい方じゃなかろうか。しかしこれを個々の納税者に適用いたします場合に、果して令部の者に具体的な妥当性を持っているかどうかという点から申しますと、先ほどの申し上げましたような資料の作り方から申しましても、これは全部の納税者に必ずしもそのまま当てはまる筋合のものではないと、かようなふうに申しておるのでございます。
  108. 平林剛

    ○平林剛君 結局これであなた方の意見の食い違いを指摘してどうするこうするということではありませんけれども、今お話のようにこれは千変万化するいろいろの納税者の実態に応じて一律のものがないんだ。しかもあなたの方がまあ時間とそれから経費範囲内で調べたものは、その範囲内においては中庸的なものだと言われるけれども、納税者全般から見れば、あなたの方で調べた資料をそのまま押しつけるというわけにはいかぬでしょう。あなたもそれはいかぬことだと言われましたけれども、実際に使われるときには、これは重要な資料として使われていくことになりますから、結局国民としては、納税者としては実態に合わない。それは調査範囲内では中庸かもしれないけれども、現在の実際の営業状態に合わないものが重要な資料になっているということは、これは大へんな問題だと私は思うのであります。そうじゃないのですか。
  109. 金子一平

    説明員(金子一平君) 繰り返して申し上げますが、やはりこれは平均値としては一応の妥当性を持っているもので、それを個々の納税者に適用する場合に、そっくりそのまま使えるかというと、これはお説の通りでございまして、先ほども申し上げましたように、場合によりますと、ある程度プラスをし、あるいはマイナスをして使わなければならぬ。また現実にもさような使い力をいたしているのがこの率の使い方でございます。御了承願いたいと思います。
  110. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 平林君にお尋ねいたしますが、まだだいぶありますか。
  111. 平林剛

    ○平林剛君 もう少し。たとえばですね、具体的なことをお尋ねいたしますけれども、すし屋さんがありますね。すし屋さんが大体いろいろな材料を仕入れますね。その仕入れの総額というものはわかる。それからもう一つは売り上げの額というものもわかる。これはそれぞれ納税者のところへ税務署の職員が調べに行って、記帳がある、ないということは別ですよ。別ですが、結果的に見て売り上げとそれから仕入れの総額というものがわかる。この場合にその人の純益といいますかね、こういう率をきめるのは何できめているんですか。要するにこの表を使ってお前のところは何側だ、だからこう申告しなければ認められたいという実際の仕事をやっているのじゃないのですか。そうなると、これは公開するとしないとにかかわらず、税務署は税法にかわるべきものとしてこれが使われているということに相なると思いますが、実際はどうなんでしょう。
  112. 金子一平

    説明員(金子一平君) 今平林委員から御指摘のように、仕入れもわかる。売り上げもわかる。しかもその内訳まではっきりしておりましたならば、これは収支の計算をやりまして、それを税務計算に引き直しまして、御承知のように税務計算一般企業会計と違う場合がございます。そうして所得をはじき出すと、かようなことになるわけでございますが、今お話の場合にかりに売り上げしかわからないというような場合には、所得率をかけて一応こんなことじゃないかという推定ができるわけでございます。中庸なものといたしまして、ただその店の所在でございますとか、あるいはのれんと申しますか、営業方針と申しますか、そういった点ですし屋の所得というものに相当大きく響くわけでございます。そういった場合には、今その中庸の標準で出しました所得だけによらないで、そういった点も総合勘案して、あるいは同業者との権衡も見なければいかぬ。あるいは生計費の関係から逆算する場合もございましょう。そういった諸般の事情をにらみ合せて、最終的な結論を出す。かようなことになるわけでございます。
  113. 平林剛

    ○平林剛君 私はこの効率表、標準率表が存在することがどうも現在の制度に反するのではないかという疑問を出しているのでありますが、仮の立場をとって、これがもしなかったら税務署は困りますか、実際の仕事ができなくなるかどうか、なかった場合にはどうやって仕事をするか、そういうようなことは検討なさったことがありますか。なぜかというと、こういう主張はかなり長い間各団体から行われておるわけです。あなたの方も、私どもの主張が全然一顧だに値しない暴論だとは考えておられないと思うのですがね。農業所得に対する標準率表、効率表というのはすでに公開もされておるのでありますし、いろいろなことを考え、今日までの主張はあなたはさんざん耳にタコができるくらい聞いたと思いますけれども、一顧だに値しないような暴論と思われるかどうか。まあそんなことは答えなくてもいいけれども、もしなかったら実際上どんな不便があるかということをもちょっと聞いておきたいね。
  114. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 実は、先般衆議院の大蔵委員会で、ある先生のお話があったのですが、その委員の方は、標準率表を作ることそのものがいけないとは、自分は必ずしもそう思わぬ、納税者の課税の公平適正を期するためには必要だというふうにおっしゃったと思いますが、問題はそこであります。かりにさて、いわゆる白色申告者で帳簿などつけていないもの、そういう方々の納税者相互の間のつり合いをどうとるかということは、私どもの税務執行上重大な問題であります。納税君の方が申告なさったのを単にそのまま信用していいかどうかということは、残念ながらただいまのところ調査を省略していいという状態にはなっておりません。まあだんだんよくはなりつつありますが、遺憾ながら、納税者の方々のなまのままの申告を是認した場合におきましては、やはり納税者相互の間に非常な不つり合いが起ります。従いまして、どうしても課税の公平を期するためには、私ども実例に基きまして、実際に調査して、そうしてこのような方々の例では、平均的にこうなるということをつかまえておることは、課税の適正公平を期するゆえんであると思いますので、これを作ること自体がいかんという御議論に対しましては、はなはだ残念でありますが、何とも同調いたしかねるのであります。
  115. 青木一男

    ○青木一男君 関連して。今の点ですが、今の国税庁長官説明、その帳簿そのものを信用できるかどうかが非常にむずかしいということのほかに、もしこういうものがなくて、全国何百人あるいは何千人という多数の係の税務官吏が、ただ自分の主観的判断だけで、こういう客観的な世間の標準というものを知らずにやった場合には、非常に区々になる、こういうことは私はすぐ予想されますが、その点は一体こういう制度の存立とどういう関係になるか説明していただきたい。
  116. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 私が、もしこういう調査をしておかなかったらば、納税者の間の公平を欠くと申し上げましたのは、まさに青木先生のお話のような事態が予想せられるからであります。実際問題といたしまして、税務官吏といたしましては、納税者個々のつり合いをとるため、そうして実際具体的な資料から目安を一応得まして、これによって個々の納税者に当てはめまして、その目安よりも上にするか下にするかをきめるわけであります。もしこういう調査をしておかなくて、末端の税務職員の恣意的な調査にまかせておきましたならば、これはおそらく私は課税の公平適正ということは非常に失われると考えるのであります。
  117. 平林剛

    ○平林剛君 私は作ること自体をいけないとかいいとかいうことを言っているのではない。その作ったものを、あなたのほうが重要な資料にするのか、単なる目安にするのか、そういうことが問題だと、こう言っているのです。ところが、あなたの方は重要な資料として使われる。実際にはそれをやっておるから、公正な課税をするということより前に、それが苛斂誅求にわたってはいないかということをわれわれは議論しているのですよ。きょう栗山委員が質問したように、大きな資本家は幾らでも脱税できるようなものを一ぱい作ってあるのですね。そうしてまた、何年間もわからぬような実情でしょう。そういうことをもっとぴしぴしやったり、あるいは租税特別措置法のような法人に特段の恩恵を与えておるようなものを廃止するということが公正妥当な課税のし方だと、こう言うのです。私の言っているのは、年間七十万か六十万の人に対して、実際上単なる研究資料として作っているのではなくて、実際に重要な資料として使われているところが問題だと、こういうふうに主張しておるのですね。こういう押しどころを一つ間違えないようにしてもらいたいと思うのです。あなたの今の、作ること自体が反対だということには賛成できないと言うけれども、私は作ることがいいとか悪いとかいうことを言っているのではないのです。それを重要な資料にしているのか、単なる資料にしているのかということを言っているのです。重要な資料なんですか、単なる資料なんですか。
  118. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) どうも先ほどからのは、いけないというように承わったものですから、早合点して申し上げたのですが、これは作った以上は、やはり調査に当ってこれを一つの目安として使うのが筋かと思います。と申しますのは、これは主として青色申告者で誠実と税務署におきまして考えている方々につきまして、それをそのまま拝借いたしましたり、あるいは実際に他の納税者の方につきまして調査いたしました実例の集積でございますので、これは何といたしましても課税に当って無視はできないと思います。ただ、課税の方法といたしましては、場合によりまして生計費の状況から見ることもございます。それから財産の増減から見る場合もございます。あるいは在庫品のあり高から見る場合もあります。その場合におきまして、所得標準というものはやはりそういうものと並んでの一つの重要な資料でございます。
  119. 平林剛

    ○平林剛君 私は今ただ表によっていろいろ区分けをするということは適当ではないと思いますけれども、しかしもしこれを重要な資料として徴税行政に使われておるとすれば、実態はもう少し国民の声を聞いていかれてはいかがか。われわれは、この表の存在が、これを実際に重要な資料として使うことが、どうも零細な諸業の人に対して重税になっておる、またそこから非常に怨嗟の声が出ておると、こういうことをあなたは率直に聞かなければいかぬと思うのですよ。  それからもう一つ、単なる資料とするならば、単なる資料である、これは平均的なもので、中庸的なもので、持っておること自体はそう悪いことではないというなら、それは私は別にとがめはしないのですね。しかし、その場合は、これを漏らしたことが秘密漏洩だとか何だとかいうことで、今大阪の警察当局がやっておるととは、不当ではないか。単なる資料であれば、それは研究資料的なものである。だから、それをあなたの方の判を押しただけで、すぐ秘密で、それを漏らした者が刑事事件に問われるということは、どうも重要なる資料、単なる資料という言葉のあやではないけれども、矛盾しておるのではないかと、こういう見解を持っておる。  これはいずれ各派ともよく相談の上結論をつけたいと思いますから、次の問題についてちょっとお尋ねしておきます。さっきお知らせ制度を廃止したその趣旨はこれこれだという説明がありましたけれども、現存はあなたの方はお知らせ制度にかわるものとして納税相談というような制度を作っておられる。私これいろいろ実情を聞いてみたのでありますけれども、議会でお知らせ制度を廃止したときの気持と、今申告納税相談をおやりになっておる気持と、これはあまり変りはないのではないだろうか、議会ではいろいろ自主申告制度の建前からお知らせ制度は廃止したけれども、実際の行政は、それを裏から返したような申告納税相談というようなことで、前より陰でやっておるというような感じを持つのですけれども、あなた方そういう批判を聞いたことはございませんか。
  120. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これは実は、お知らせ制度の廃止ということは、非常に大きな問題でございまして、しかし根本的な考え方から申しまして、申告納税制度を進めていくには、やはりお知らせ制度をいつまでも続けていてはいかぬということは、私ども全く同感なのです。そういう意味から、衆議院の大蔵委員会におきまして、いろいろ各委員からお話がありました結果、私どもも、やはり申告納税制度の本来の趣旨を一そう推し進めるべくお知らせ制度を廃止することにいたしたのであります。しかしながら、実際の行政に当りましては、お知らせ廃止で困るという声が相当あるのであります。私も実は先般、これは私ごとになりまして恐縮でございますが、納税者の声を伺ってテレビで御回答申し上げることをやったのですが、やはりある方も、お知らせ廃止で困る、税務署がどういうふうに思っているかわからないから困るという意見もございました。私はおそらくこれが実際の第一線においては実情ではないかという気がするのであります。納税者の力は、税務署が一体どう見ているかということが非常に不安であります。そういう場合において、納税者の方々から、税務署はどう見ているかということを聞かれた場合におきまして、全然お答えしないというのは私どもはどうかと感ずるのであります。従いまして、この三月十五日までの確定申告期間中は、さらにまた所得の計算方法とか、税額の計算につきましても、わからない方も相当あるわけでありますから、そういう方々もあわせて納税相談をいたすということにいたしておるのでありまして、現在、納税者の方々は、やはり所得の計算はどうしたらいいか、税額はどういうふうに計算するか、またかりに、従来言ってくれたのだが、税務署は自分の所得をどう見ているかという積極的なお尋ねならば、申し上げた方がよかろうということであります。これは、あるいは過渡的な取扱い制度かもしれません。本来から言いますと、申告納税制度はそうあるべきではないのでありますけれども、具体的な進め方といたしまして、お知らせ廃止に伴い、もし積極的な御希望があれば、税務署ではこう考えております、調査いたしておりますということを申し上げておる、こういたしております。
  121. 平林剛

    ○平林剛君 僕は、これは、今の申告相談でも、あなたの力の管下の税務署長から末端の納税者のところへ行った相談ですけれども、実質的には、その納税者の御相談に応じたいから、あなたは何月何日の何時に一つお出で下さいという、こういうことで、いろいろ注意帯きがあって、「申告期限までに申告されなかったり申告された所得金額が正しくなかったときは、扶養控除が認められなかったり、加算税や利子税がかかったりして、余分の御負担をおかけすることになりますから御注意下さい」という注意書きまでして、結局、これは出てこざるを得ないことになって、強制的な相談になっている。つまり、あなたが今御説明になったように、困る人が税務署へ行って相談をするということではなくて、これこれだから出てこい、出てこなければ、あとでいろいろ因るぞというような趣旨になっているので、この意味では、どうも前のお知らせ制度を肩がわりしたようなものになっているじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょう。
  122. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これは、あくまでも、先ほど申し上げました通り、積極的に従来税務署がいたしております文書で、あなたの所得は税務署でこう見ておりますというようなことはいたしません。結局問題は、強制になるかどうかという問題でありまして、文書でもってあなたの所得はこう見ておりますということになりますと、非常に多くの問題が起きる場合もある。しかし、率直に申しますと、私は、大多数の納税者の方は、それでほっとする、安心されるのじゃないかと思います。しかし、中には非常にそれが重苦しく、また税務署が、場合によっては、一ぺん文書で出したがために、強制的な行き過ぎが、私、多くの事例でございますから、ないとは申せないと思いますが、今回は、そういうふうに、税務署側から積極的に強制的な意味合を持たせるような所得金額のお知らせはやめる、ただし、御相談に応じまして、もし、納税者の方が御不安ならばお聞きになるわけでありますから、そのときにおきまして、私どもは、いや申せませんということは、これはあとになって、更正決定などの問題も起きますので、かえって不備を見出すことになりますので、その場合にはお知らせするということでありまして、積極的に文書でやるということはやめにいたしたわけであります。
  123. 平林剛

    ○平林剛君 これは、国税庁長官が、現在のような複雑な税制のもとで、数の少い税務職員を中心にして徴税行政をやっておることは、ほんとうは、腹では御同情申し上げているのですよ。もっと数をふやさなければいかぬ、そうして、今の複雑な税制というのはもっと直して行って、もう少し簡単な方法で、万人が納得するような税制にして上げたい。それからまた、今のように、やたら税金を国民負担をさせて、生活費まで食い込んでいるような状態は直して、あなたの肩の荷も楽にしてやりたい、こういう気持ちは持っているのですけれども、これは、そういう意味では非常に御同情申し上げている。しかし、今お話しのようなことが解決できない現段階においては、実情として、どうも押しつけや、それから苛斂誅求的な傾向になっているということを指摘をしているわけです。今の納税相談にしてもですよ。これは、税務署へ出てくるときには、いろいろ必要な書類を持ってこい、確定申告用紙を持ってこい、家族の名前や生年月日のわかるもの、あるいは米穀通帳を持ってこい、生命保険証書と保険料の払込領収書を持ってこい、事業所得以外の所得のある者は、その所得の明細のわかるものを持ってこい、そうして判こを持ってこい、こう書いてある。判こを持ってこい、こう書いてある。そうすると、先般私が質疑をしたときに、誓約書のようなものはありませんと、こう言われたけれども、実際納税相談にことよせて、納税者に、いろいろな必要な書類を持ってこさせ、判こを持ってこいということになると、税務署の中で、お前のやつはこれだけだ、——相談して、まあこれは納得という言葉を使えばいいけれども、実態から言えば、国民の側から見れば、押しつけのような形になっていくんじゃないか、判こを持ってこいという意味は、どういうわけで判こを持ってこいというわけですか。
  124. 金子一平

    説明員(金子一平君) 今御指摘の点でございますが、現実の税額なり、あるいは所得の計算方法を指導しようということで設けたのが今度の相談関係でございます。それで、お話しのような、あるいは生命保険控除の関係、保険の関係、それから扶養家族控除の関係、生年月日が知りたいというようなことであろうと思います。判を持っていらっしゃいと申しておりますのは、おそらく簡単な計算で済むと、もうそのまま出してよろしいというような場合には、まあ遠方からいらっしゃるような方で、わざわざ税務署に出てくるのは大へんだというような方は、もうそれで出してもらう、そういうようなことでおそらくあるいは判を持っていらっしゃいというようなことを言っておるだろうと思います。しかし、計算が複雑で、もう一ぺんこれは考え直さなければいかぬというような場合には、おそらく今度の納税相談では強制するようなことは、そのままそこでお出しなさいというようなことは、決してないと、かように考えております。
  125. 平林剛

    ○平林剛君 まあそうでなければうそなんで、あなたはうまく説明されたけれども、実際の運営においては、ここで判こを押さして、税務署の方も少い人員でやっていることだから、納税者だけでなく、自分の関係事務のこともあって、なるべく早くやりたいという気持ちはわかりますが、そのために判こを持ってこさして、そこで捺印させるようなことを運営上すれば、それこそ私が指摘した誓約書みたいなものになっちまうじゃないか。こういう、特に大阪の一つの例を見ても、申告期間が二月十六日から三月十五日になっているにかかわらず、すでに一月二十日に申告をさしたというような例もある。これをつつかれたら、これは申告委託事務取扱いだといって末端の職員はうそ、ふいているわけでね。こういうように、あなたの方も数が足りないのだから、なかなか仕事が一ぱいになって、労働組合の方も労働強化といって怒っているし、あなたの方もやりにくいことはあると思いますけれども、実際にはこういう実態になっているということを私は指摘をしなければならぬと思う。今の御説明のように、いやしくも納税者を税務署によこさして、そこでまあ、お役所はこわいから判を押してしまうということになれば、前のお知らせ制度廃止なんということは形だけであって、実態はちっとも変っていない。だから、そういうことのないように、十分税務署の方でも注意をしてもらいたいと思う。そうでないと、納税者も恐慌を来たしているわけですから……。
  126. 金子一平

    説明員(金子一平君) 先般御指摘の誓約書の問題につきまして、さっそく大阪の国税局について調査をいたしましたところが、こういういきさつであることが判明いたしましたので、御報告申し上げます。  大阪のある署で、青色申告者の計算の指導を一月以降にやっているわけでございます、そこで青色申告の場合は、帳簿がすっかりガラス張りになっておりますので、計算を見まして、もうこれで申告が出せるという態勢にあるものが、だいぶあるわけでございます。そこで税務署に来ていただいてまた足を運ばす、あるいはこちらから行って、また申告期にもう一度おいで下さいと言うのは大へんだというので、平林委員から御指摘のように、申告を預かっておく、それで二月十六日の申告期が来たときに、先般お預かりした申告は、このまま正規の申告として受け取ってよろしいか、それとも計算上まだ問題があるようならば、もう一度これをお返しするから出し直して下さいという照会を出したんだそうです。事柄自体は、まあ署も善意でやったのだろうと思います。納税者も、あるいは便利な場合もあったのじゃないかと思いますが、しかし、平林委員から御指摘のような誤解を受けるようなことは、これはやっちゃいかぬと思います。必ずしも穏当じゃないというふうに感じましたので、本年限りでやめさせるように指示をいたしました。御了承を願います。
  127. 平林剛

    ○平林剛君 それは私も満足しますが、もう一つ穏当でないことがある。それは大阪の国税局の例ですけれども、こういう申告相談を出す人は、納税者の中でどのくらいあるか知らぬけれども、これは令部出していないはずだ、三割か三割しか出していない。もう一つ、一方においては、事後調査制度というものがあるらしくて、そうして、あなたのところは申告相談することはありません、あとでゆっくり事後調査をします、具体的な名前まで全部わかっておる、どこのだれ兵衛までわかっております。相当数の人には、これはお前のところは事後調査だ——納税者に対して公平な課税なり、公平な徴税行政をやらなければならぬのにかかわらず、片方は申告相談、片方は、お前のところは事後調査制度をやるからいいというようなやり方をとるということはどうなんでしょうか。これは穏当なんでしょうか。それとも万やむを得ない措置でやっているのか、この点を明らかにしていただきたい。
  128. 金子一平

    説明員(金子一平君) 今御指摘の事後調査でございますが、これは主として青色申告の問題でございます。御承知のように大体背任申告は、全営業者の半数以上を占めております。これを申告期限までに全部調査をする、一月から三月までに調査を片づける、あるいは納税相談をして、その間で話をきめてしまうということは、必ずしも適切ではありません。むしろ青色申告の場合は、一般の法人の場合と大体同様に考えて、できるものはもっとこの申告時期のあとに調査を繰り延べた方が、税務の執行といたしましても、綿密な調査ができるわけでございます。ただ業種あるいは業態によりまして、事前によく見ておかないと、あとで調査に行ったのでは、もう全然所得が捕捉できぬというような業種もございます。特に現金の取引の多いようなものは、さような業種に属するかと思うのであります。こういったものにつきましては、事前に調査に臨み、あるいは三月の申告期までに大体の調査を完了してしまうという建前をとっていかざるを得ないと思うのでありますが、まあ青色申告は、法人と白色とちょうど中間的な存在でございます。仕事の平準化という点から、調査の適正あるいは課税の公平という点から言いましても、申告期限までじっくり調査をした方が、これがやはり円満な適正な課税ができるゆえんだ、かようなことから、昨年以来だんだんこういった制度に現在切りかえつつあるわけでございます。決してお知らせ制度と逆の政策をとっているわけでも何でもないので、御了承いただきたいと思います。
  129. 平林剛

    ○平林剛君 ただ、私が指摘したような批判がかなり強くなっているということだけはよく承知をして、今後の行政をやらなければならぬ。私はこの問題を質疑を始めたのは、効率表と標準率表が存在することが、どうも自主申告制度に反するのではないかということと、一体その内容は秘密だとして、これを漏らした者が刑事事件に問われるほどの、そんな内容のものであるかということから、審査を要求して今日までやってきたのであります。今後の取扱いについては、今日までの質疑で大体委員長も各派の議員も御了承を願ったと思うので、この取扱いについては、今後御相談をして結論をつけるようにいたしたいと思います。  そこで最後にお尋ねしますが、国税局には官庁スパイ網があるというのですが、ほんとうですか。
  130. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) どうも御趣旨よくわかりかねるのでございますが、そういうものはございません。
  131. 平林剛

    ○平林剛君 そういうものがないということを聞いて大へん安心をしましたが……。
  132. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ただいまの先生の御趣旨ちょっとわかりかねておるのですが、実はこれは初め大阪府の警察本部で、口頭でもってそういうようなことを言ったようでありますが、しかしそれはあとで取り消されているようであります。
  133. 平林剛

    ○平林剛君 あなたが、まあそんなことはないと言って、また取り消ししたと言うから、あまり問題になりませんが、大阪の国税時報といって大阪の国税局が出している官庁の号外には、大阪の国税庁の中には、「かねてから官庁スパイ網があることを探知し」なんということで、これが存在するかのごときものを出しておる。警察が一応予防的に、表面に出さないでひそかにやるというならば、これはまた別ですよ。しかしあなたの方の国税局の予算で、金で、国税局の発行の——この竹腰洋一というのはだれだか知りませんが、この人が発行する号外の中で、官庁スパイ網があるかのごとき印象を与えるような号外を出されて、職員に配るというのは、まことにもって不穏当だと私は思うのです。今、ないと言うから、これで大阪国税局の職員も胸をなで下したろうと思いますけれども、これをあなたの方の号外に出すなんということは、これは不穏当きわまることですよ。この趣旨はおそらく、所得税の算定の標準税率表、効率表が漏れたので、こういうことがないよう注意を喚起するような意味かもしれませんけれども、これはえげつないやり方ですね。あなたの方は秘密保持をすることを職員に徹底するなら、徹底の仕方は別にあるはずです。これはまるで威嚇的だ、これは、お前たちもしこれをやれば、官庁スパイ網の一人にたるぞというような威嚇的号外になっている。私は国税の労働組合と国税当局の関係については承知をして、あなたにもしばしば注意を喚起しておるのですけれども、こういうやり方をとられるということは、やはり労働者に対して威嚇的な言辞で、そうしてこの徴税期に対して権力を振っていくというようなことになっていますよ。あなたがいかに、できるだけ紛争をなくするようにしたいと言っても、自分の職員に対して威嚇的号外——威嚇的な意味を持つような号外を発行されるというのは、どうも適当でない、こういう点は一つ厳重に注意をしてもらいたい、これだけを一つ言っておきます。
  134. 野坂參三

    ○野坂参三君 私関連質問で……。時間もあまりありませんし、ごく簡単に。平林委員との問答の中で、一つはっきりしていただきたい点があると思うのです。これは前回の委員会の議事録を見ましても、問題は出ておるけれども、はっきりしない点がある。で、問題は、平林委員が先ほどから申されましたような大阪の事件です。公務員の岡田という人が、公務員法第百条、秘密を守る義務に反したという疑いで検挙されている。こういう事実、これは私、非常に重大な事件だと思います。ただ偶然起った事件ではなくて、これは、先ほど平林君の方から言われましたような、一種の官庁スパイ網があって、たとえば大阪では、大阪の府警と税務署との協力のもとにいろんなことをやられたというふうな事実があるということを推定せざるを得ないと思うのですね。つまり、警察の力で苛斂誅求やる、こういう態度をとっておられるとしか見えないのです。たまたま大阪で、公務員の一人が、今問題になっているあの二つの表を他人に見せたということが問題になったと思いますが、まあいろいろ私この問題は、これは単に一つのああした刑事事件ではなくて、日本における税制の基本的な原則の問題とか徴税方法の問題とか、いろいろ複雑な深刻な問題が含まれていると思います。こういう問題について、私はきよう何も申し上げることはないと思いますけれども、一つだけお聞きしたいのは、この二つの表は秘密にしなければならない、つまり公表すべからざるものだという建前でおやりになっていると思うのです。先ほどの問答を伺いましても、なぜ一体これは秘密にしなければいけないかということは、私には納得いきません。この問題については、また将来の問題として……。ところが、実際上これが公表されていることは、皆さん御存じだと思います。過去に、たとえばこれは御存じだと思いますけれども、東洋経済とかその他の雑誌にもこれは発表されていると思います。これを質問すれば、おそらく皆さん方、これは過去の事実だから、過去のこととしてこれを発表することはかまわない、これはやむを得ないということをお答えになると思いますけれども、つい私最近得た材料によりますと、これは過去の問題ではなくて、三十二年度中に、ここに一つの小さい新聞がありますけれども、これはことしの二月二十三日発行の「みなみ新報」という、青森県黒石市内町にアドレスをもつ、地方の小さい新聞社らしいのです。これにこういうことを書いています。「農業所得課税標準案を示す」とこういう大見出しの下に、「黒石税務署関係者を招き説明会」を催した、で、「黒石税務署では二十一日、県信連二階会議室で三十二年度の農業所得税課税標準説明会を開き、南黒地方の標準案を示した。」とこういうことがちゃんと載っております。そうしますと、これはもう現に公表されておりますし、これは秘密でも何でもないし、新聞にもこうして暴露されていると思います。こうしてみると、あなた方が秘密だ秘密だと言いながら、実はこうして地方新聞にはっきり公表しておるわけですね。こういう点、一体どういうことになっているのですか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  135. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 私どもで秘密にいたしておりますのは、主として営業所得者、商工庶業所得標準率表で、田畑の標準率につきましては、実際の市町村農業団体の長あたりにお示しいたしまして御批判をいただきます。これは、実は本来の建前から申しますと、やはり農業所程といえどもそうあるべきではない。実際、やはり農業者の方がありのままの所得を記帳して、申告して、税金を納めていただくのが筋かと思います。しかし、農業所得につきましては、その地域により、地味により収穫はわかるわけであります。それから経費率も、大体同一の場所においては均等なのが普通でございます。しかも、農業者につきましては、記帳習慣がございません。農業者の方に全部帳簿を配付させるのは無理でございまして、所得率は比較的均等である、そういう業種目につきまして、私どもとしてはままそういうことをいたしております。農業者の所得標準につきましても、これは一々実際に調査いたしましたところに基きまして、そうして市町村等にお示しいたしまして御批判を仰いでおります。これは商工業とは別でございますので、その点、一つ御了承を願います。
  136. 野坂參三

    ○野坂参三君 そうしますれば、つまり標準率は秘密であるという原則は、この方面では破られているわけですね。
  137. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 商工庶業所得標準率を秘密にしております。
  138. 野坂參三

    ○野坂参三君 今あなたもおっしゃっておるように、つまり帳簿を農業者には交付する。そうすれば、たとえば商工業者に対しても、帳簿のない零細業者に対しても、適用してもいいようにわれわれはしろうと考えで考えるのですが、これはどうでしょうか。
  139. 河野謙三

    委員長河野謙三君) ちょっと、野坂委員に御注意申し上げますが、今野坂委員の御質問は、過去数回にわたって、その問題は平林委員その他から詳細にわたって御質疑がありまして、政府からも再々にわたって御答弁のありましたところでございますから、ごく簡単にお願いいたします。
  140. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これは、実はこの前からも申し上げたのですが、ほんとうを申しますと、商工業者の方は何らかの形において御自分の所得は私はわかっていると思います。これは税法上の計算でないかもしれません。しかし売り上げが幾らかということは、少くとも営業者の方は実際はおわかりになっているはずでございます。大多数の方は。と申しますのは、それがわからなければ商売はできないのでございまして、幾ら去年売り上げがあったか、幾ら仕入れたかということは、やはりどなたでも実際おわかりになっているはずだと私ども思っています。ただ実際の帳簿にはつけ落ちがございますけれども、御自分の胸の中におきましては、昨年は売り上げは幾らかわかるはずでございます。これは農業者の方々のように、帳簿を記帳する習慣がないという人とはやっぱり違うわけでございまして、その点は質的にやっぱり違いがあるということは御了承願います。
  141. 野坂參三

    ○野坂参三君 大阪のこの事件については、私は、非常に複雑な問題が含まれておりますし、それからこれに関連した方面の手紙も私信のようなものも受け取っておりますし、この問題は、私はきょうはこれ以上は質問しません。他の同僚諸君とも協議いたしまして、この問題を今後どうするかということはあとで……。これだけにしておきます。
  142. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 本問題につきましては、本国会開会以来、当委員会において、委員会開会の都度質疑を重ねて参りました。その間におきまして、十分の質疑をされたことと思いますし、政府の方からも、政府としての見解は再々にわたって表明されたことは皆さん御承知通りであります。従いまして、本問題につきまして、いかなる結末をつけるかということにつきまして、懇談に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 御異議ないと認めます。それでは懇談会に入ります。ちょっと速記をとめて下さい。    午後四時二十九分懇談会に移る      —————・—————    午後四時五十一分懇談会を終る
  144. 河野謙三

    委員長河野謙三君) 速記をつけて。  それでは懇談会を終ります。本件に対する残余の質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会