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1958-04-10 第28回国会 参議院 商工委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月十日(木曜日)    午前十時五十四分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     近藤 信一君    理事            青柳 秀夫君            高橋進太郎君            阿部 竹松君            相馬 助治君    委員            大谷 贇雄君            小澤久太郎君            小幡 治和君            小滝  彬君            小西 英雄君            高橋  衛君            椿  繁夫君            加藤 正人君            豊田 雅孝君            大竹平八郎君   国務大臣    通商産業大臣  前尾繁三郎君   政府委員    通商産業政務    次官      小笠 公韶君    通商産業省企業    局長      松尾 金藏君    通商産業省石炭    局長      村田  恒君    中小企業庁長官 川上 為治君    中小企業庁振興    部長      今井 善衞君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○中小企業信用保険公庫法案内閣提  出、衆議院送付) ○中小企業信用保険公庫法施行に伴  う関係法律整理等に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○工業用水道事業法案内閣提出、衆  議院送付) ○連合審査会に関する件 ○石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を  改正する法律案内閣提出衆議院  送付)     —————————————
  2. 近藤信一

    委員長近藤信一君) これより商工委員会を開会いたします。  昨日、委員会散会後、委員長及び理事打合会を開き、協議いたしました結果、本日は、午前中中小企業関係の三法案を審議し、午後工業用水道事業法案及び石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案を審議いたします。明十一日も、午後一時から委員会を開き、理化学研究所法案を審議いたしたいと存じますので、さよう御了承願います。
  3. 近藤信一

    委員長近藤信一君) それでは、これより中小企業信用保険公庫法案及び中小企業信用保険公庫法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案を議題といたします。衆議院修正点説明についてですが、衆議院からまだお見えになっておらないので、その方はあと回しにして、まず、政府当局に対する質疑を行いたいと存じます。この点御了承願います。  御質疑のある方は、順次御発言願います。
  4. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 それでは、中小企業信用保険公庫法案についてお伺いします。  まず第一点は、経済基盤強化資金の一環といたしまして、六十五億の資金信用保険公庫に投入しようと、しかしながら、これは、いわゆるたな上げ資金でありまして、直ちに運用部の預託にしようという建前のようで、この行き方につきまして、果してこれで、信用保険公庫を新設しただけの意義のある運用ができるものかどうか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  5. 川上為治

    政府委員川上為治君) 私どもといたしましては、この中小企業対策だけの関係から考えますというと、六十五億につきましては、運用部に預けるよりも、むしろ商工組合中央金庫とかその他の方面に預けまして、もっと運用益を大きくして、そうして保険料率なりをもっと下げるとか、あるいはまた、この保証協会方面に対しまして、もっと援助してやるというようなことがいいのじゃないかと思いますけれども、これは全体の政府の方針としまして、一応とりあえずの措置としましては、たな上げにして、そうして資金運用部の方へこれを預けるというようなことにいたしましたので、私どもとしましては、これはやむを得ないことではないかと考えておりますけれども、それでもなお、その資金運用部に預けまして、ある程度運用益は出ますので、それをもとにいたしまして、この保証協会に対しましては、相当貢献を実はいたすことにしているわけであります。具体的に申し上げますというと、資金運用部に預けましても、利子としまして大体年間に四億五千万円程度収入があるわけでございます。これは今申し上げました運用部に預けまして、利子をもらうものとか、あるいはその他この保証協会に対しまして、三十億の低利の貸付をしますので、この収入も入ってくるわけなんですが、それを合せまして、約四億五千万円程度収入が出るわけでございます。この四億五千万円というのは、どういう方面に使うかといいますと、結局事務費が大体一億ということになっております。差引三億五千万円程度につきましては、これは結局今度の保険関係保険料のあるいは引き下げだとか、そういうような関係から出てきます欠損に全部充てるわけでございまして、逆に申し上げますというと、それだけは結局保証協会に大きな貢献をするということになるわけでございます。先ほども申し上げましたように、六十五億というのを、そういうようなやり方でなくて、あるいはそのうちのある程度をさらに保証協会に貸し付けるとか、また、残りにつきましては、商工中金等に預けるというようなことにいたしますというと、もっと効率的な運用ができるのじゃないかというふうに考えますけれども、一応資金の統一的な運用建前から、資金運用部に預けるということになっておりますので、今申し上げましたようなことになるわけでございますけれども、それでも相当貢献ができるということにはなると考えております。
  6. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 ただいまの説明によりますと、四億五千万円の年間収益があって、そのうち三億五千万円を事務費以外のものに使用しようということでありますが、これは保険料引き下げに使うというのか、あるいはその他の赤字補てんにも使うというのか、この点をまず明らかにしてもらいたいと思うのであります。従来政府筋から言われるところによりますと、赤字補てんに使うのだという言い方と、それからもう一つは、保険料引き下げに使うのだという説明の仕方と、両方あるようであります。しかし、保険料引き下げの結果から来る赤字補てんだ、こういう意味かと思うのでありますが、その辺をはっきりとこの際しておいてもらいたい、それが、一点であります。  それからもう一点は、中小企業庁長官も、今回の経済基盤強化資金によるたな上げの方式については、中小企業対策からいうと遺憾だというふうな考えをほのかに出されたようでありますが、だいぶ遠慮せられて、そういうふうに表現せられておるのかと思いまして、苦衷のほどは大いに察するのでありますけれども、現政府は、中小企業対策重点政策ということに取り上げておるのであります。そういう点からいいますると、経済基盤強化資金、これをこの際やるということも、さることではありますが、中小企業対策重点政策にし、しかもその重点政策の敢行は、あえて行うという意味での重点政策としての中小企業対策は非常に緊急を要するのでありまして、一面最低賃金制をやろうとしておるようでありますが、中小企業対策、特に零細企業対策等をこの最低賃金制に先行せしめなければいかぬというのは、今日日本をあげての世論であります。そういう点からいいますると、たな上げ資金でよっちりよっちりやっていくというようなことでは、中小企業対策重点政策としている建前からいい、また、最低賃金制中小企業対策を先行せしめなければならぬというくらいの世論化しておりまする現況から見ますると、はなはだ不十分、不徹底、きわめて低調であると言われても、抗弁の余地はないのではないかと思うのでありますが、その点について中小企業庁長官は、あまりに御遠慮にならんで、ほかの役所の長官と違うのであります。いやしくも中小企業庁長官でありますから、中小企業重点政策建前から、率直に、端的に見解を披瀝してもらいたい。むしろ、政治的見解の方は、小笠政務次官から承わることにいたしたいと思うのであります。
  7. 川上為治

    政府委員川上為治君) 第一点の問題につきましては、これは過去の赤字補てんということには、全然考えておりません。これは現在保険特別会計におきまして、相当赤字が出ることになっておりますけれども、これは従来のこの基金の方から出すということに考えておりますが、この二億五千万円につきましては、先ほども申し上げました通り保険料引き下げによる赤字の補てん、あるべき保険料よりももっと引き下げておりますので、それだけ保証協会に対しまして貢献することになるわけなんですが、それから生ずる赤字を補てんするということになるわけでございます。  第二の問題につきましては、これはまあ率直に言えとおっしゃいましたので、率直に申し上げますが、実は私どもとしましては、最初二百億くらいの基金をもって、そのうち百億程度保証協会の方に回し、残りの百億を保険関係基金として運用したい、その際その保険基金につきましても、資金運用部に預けるよりも、むしろ商工中金とか、そうした方面に預けた方が、金利の点からいいましても、運用益の方からいいましても得であるし、同時に、商工中金を通して、それだけの金が中小企業関係に流れていくのですから、そういう点からいいましても、効率的ではないか、その方が中小企業対策という関係だけから見ますというと、はるかにこれはベターじゃないか、こういうふうに考えたのですが、基金全体としましては、結局八十五億程度、そのうち六十五億は一応たな上げにしておくということになりましたので、私としましては、はなはだ残念でありますけれども、まあ、これは全体の政策としてそういうことになりましたので、やむを得ないというふうに考えておりますが、しかしながら、この六十五億につきましては、なるべくすみやかな機会におきまして、あるいはこれをほぐして、そして中小企業関係保証協会の方へある程度は回すとか、あるいはまた、もっと、さっき申し上げましたような効率的な運用ができる方にやってもらえた方が、その方がいいのじゃないかという気持は、私どもとしましては持っているわけでございます。
  8. 小笠公韶

    政府委員小笠公韶君) 今度の信用保険公庫制度というものが、中小企業対策一つとして打ち出されているのに、比較的低調じゃないか、こういうようなお話しでありますが、経済基盤強化資金の方から六十五億出して、その利子をもって保険料引き下げ等に、あるいは事務費というものに充てているのでありますが、私はこの制度一つ特色というものは、従来の中小企業金融政策から見まして、一つの画期的な意義を持つものと思うのであります。それはどこにあるかと申しますと、従来の金融の体系は、政府の三機関中心といたしまして、資金量をふやしていくという方向一つ、いま一つは、信用保険特別会計を通じて、いわゆる信用力補完作用、こういう二つの流れで中小企業金融政策が行われてきております。この二つのうちで信用補完事業として中小企業信用保険制度運用いたしているのは、どちらかと申しますと、比較的金額のまとまったものが主として利用されているという傾向にあるのであります。そこにおいて、今度の保険公庫によりまして、広く少額の部分を中心として、いわゆる金融補完制度を強く打ち出していく、こういうところに私は大きな特色がある。いわゆる小規模企業中心とした金融に対して国家が大きくバックしていこう、いわゆる零細企業金融対策強化と言い得るかもしれぬのでありますが、これが一つ特色であります。  第二は、従来補完作用を行う機関として、信用保証協会法というものがあって、これに基いて五十二でありますか、三でありますか、保証協会があって、これは生みっぱなしになっている、あくまでも地方の自主的な態勢に置かれておる。これに対しまして政府がいわゆる昨年は十億、本年度は二十億というふうな貸し出しの道を開き、同時に再保険の実を強めていこう、こういうところに保証協会という制度に画期的ないわゆる支援を与えた、こういうところに今度の制度の私は特色がある。いわゆる中小企業金融政策一つの転換のきざしを、ここに明らかに出しておるところに、この法律一つ特色があると思うのであります。こういうような点から見まして、今お話がありました六十五億の資金資金運用部に預託し、そうしてその利子収入だけを使おうという形のものが低調だと言われますが、私は一応の建前として、今言ったような趣旨があり、将来今、長官からも御説明申し上げましたように、六十五億というものが必要に応じましてこれをなしくずして、必要があればなしくずすという方向に持っていくべきものであるから、政策として私は低調である、あるいは不徹底であると、こういうようなふうには考えておらぬのでありまして、ここに政策的意義として、非常に新しさを私は認めておる、こういうふうに考えておるのであります。
  9. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 経済基盤強化資金、これも六十五億とかいうような金額でなく、数百億にでも上る基金をここで用意して、そうしていくということでありますならば今の小笠政務次官の御答弁も、私は是認もできるかと思うのでありますけれども、大体原案は二百億から要望しておったにかかわらず、金額は六十五億、その六十五億もたな上げである、さしあたり運用せられるのは、それの利子である四億五千万というのでは、あまりにもみみっちい行き方でありまして、果してこれで公庫法案を提出する意義があるのかどうかというふうに、私は疑問を抱くのであります。しかし、ただいま中小企業庁長官からは、率直に現段階においては遺憾であるけれども、将来可及的にこれをなしくずしにするなり、しこうして十分にこれを効率的に使っていくようにするということであるのでありまするから、今後さらに六十五億を、少くとも当初考えておった二百億の線くらいまで持っていくということと同時に、至急に経済基盤強化資金のたな下ろしを早くやるように、この際強く要望をしておきたいと思うのであります。  次に、信用保険公庫の今後の運用の目標は、ただいま小笠政務次官も触れられておる通り、全く零細企業重点を置いていかなければいかぬと思うのであります。とかく信用補完制度も、どちらかといいますると、中小企業零細企業を含めた場合には、中小それもどちらかというと、上の方へ行きかげんになりがちなのでありますから、この際はいやしくも信用補完制度は、担保もない零細なる企業金融方面に極力向けていくということでなければならぬと思うのであります。そういう点から言いますと、今回廃止になっておりまする融資保険あるいは金融機関相手方とする保証保険、これらは実績から見まして、それほど件数も多くないとか、その他の事由で廃止するのだということでありますが、こういうものを置いておかないで廃止するということによりまして、今後この信用補完制度というものが、ただいま申しまする零細企業金融本位に向いていこうという点において欠くるところが出てきはしないか、要するに、信用保証等は、零細企業重点を置いていかんならぬのだが、それには別個に融資保険の道もあるとか、あるいは金融機関相手方とする保証保険もあるとかいうときに、初めて信用保証協会仕事というものは、零細なる方面に専心できるようになると思うのであります。そういう点で、従来せっかくあった制度融資保険や、金融機関相手方とする保証保険を抹殺することによって、今後零細企業金融に、信用保証保険を、重点を指向さしていこうということは言っておられますけれども、実際問題としては、今までよりも零細なるものと、しからざるものと合せてやっていく、そういうことになると、ついつい零細なるものに力が軽くなっていきやしないか、意図するところと実際的な動きとは、逆の結果になりやしないかということを懸念するのでありますが、この点について所見を伺っておきたいと思います。
  10. 川上為治

    政府委員川上為治君) 実は、今回の改正につきましては今、先生からお話がありましたように、私どもの方としましては、やはり零細企業金融というのに重点を置く、従来はややもすれば小さい企業よりも、むしろ中以上の方がこの保険については利用されていた傾きがございますので、やはりこの際包括保証制度というのを作って、そうして特にその五十万円以下の零細企業に対して重点を置こうというのが、私どもの考えておるところでございます。たとえば融資保険の現在の状況を見ましても、五十万円以上のものと、五十万円以下のものとを見ますというと、五十万円以下の融資保険というのは、実は金額的に非常に小さいわけでございまして、むしろ、五十万円以上のものがはるかに大きいというような状態になっておりますので、私どもといたしましては、そういうその意味からいいましても、包括保証保険の方へこれを切りかえていくということが、最もこれは零細企業に対しまして役に立つことではないかというふうに考えておるわけでございます。その他この包括保証保険につきましては、全体のワクにつきましても、一番大きな金額を、私どもの方としましては充てておるわけでございまして、融資保険の五十万円以上というようなものにつきましては、ワクもなるべく小さくするというようなやり方をとっておるのであります。あるいはまた、最高限度額につきましても、従来一千万円程度まで認めておりましたけれども、やはり零細企業関係というのに重点を置くというような意味からいいましても、これをもっと低くして、七百万円あるいは五百万円というようなところに、最高限度を実は置いたわけでございます。それから保険料率につきましても、従来の包括保険は一分四厘六毛ということになっておりましたが、私どもの方としましては、思い切って七厘というような線を出しておるわけでございます。七厘というのは、従来の半分程度でございまして、この小口の特に零細企業関係に、私どもとしましては、保険制度が十分活用されるようにということで、こういう措置をとっておるわけでございます。五十万円以上の比較的大きいものにつきましては、融資保険においても二分一厘九毛という制度をとっておるわけでございますが、これから見るというと、はるかに弱小に対する保険である、包括保険については、非常にその料率引き下げたということにしておるわけでございまして、今、先生のおっしゃいましたような趣旨に、われわれとしましては、極力沿うような措置をとったわけでございます。ただ、従来の融資保険の五十万円以下についてのこれをやめたことにつきましては、これは金融制度調査会におきまして、いろいろ昨年の暮れに検討いたしました結果、融資保険については、これは非常にその危険率が大きいし、かつまた、どうも金融機関不良債権肩がわりにさせるというようなきらいもあるし、特に参議院の決算委員会におきましても、どうも融資保険が最も批難の事項になっておりますので、やはりこれはだんだんこれをやめていって、そうしてこの保証保険の方へ切りかえていくべしというような意見になっておりますので、これを一ぺんにやめるということはいきませんので、私どもとしましては五十万円以下については、極力包括保証保険をやってもらって、五十万円以上のものにつきましては、しばらくの間これを認めるけれども、その全体のワクについては、もっと従来よりはるかに小さくし、同時にまた、てん補率もこれは従来八〇%というものを五〇%にするというような、実は措置をとっておるわけでございます。
  11. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 金融というものは、すべて中小と大を一緒にしているというようなことになりますと、だんだん大の方へ重点が向いていく。これは意図するといなとにかかわらずに、自然そういう結果が出てくるものなのであります。同様に保証保険にいたしましても、やはり中小の中でも零細のものとそれからそうでないものと合せてやっておるというようなことになりますと、つい保証しやすい零細でないものの方へ重点が向いていくというようなことになるのは、これは金融常道というか、常道と言っては、あるいは当らぬかもしれませんが、必然的に出てくる一つの欠陥がここにあるのでありますので、すべて金融制度ついては、小さいものは小さいものを専門にやらして、そうしてほかにうわ気できないように仕組んでいくことが、最も肝要だと私は思う。そういう点から考えまして、この信用補完制度につきましても、零細なるものは保証に持っていく。これに専心しなければならぬようにしていく。そうしてしからざるものは、どちらかというと保険の方に持っていくということにして、それぞれ専門を分けておきますと、保証協会事務というものは、いやおうなく零細なるものに向けていく。これをやらないと、せっかく意図せられるところは、先ほどお話のありまするごとく、私などの考えておるところと全く同様でありまして、ねらっておられるところは、いいのでありますけれども、しかし、実際問題として零細なものと、そうでないようなものとを一緒に扱わせるようなふうに制度を持っていくということは、実際的にはねらっておられるところと逆行するのじゃないかということを、非常に懸念をしておるのでございます。その点についてお見通しを伺うと同時に、これは将来よほど注意をしてもらわないと、せっかくのいいねらいが、焦点がぼやけてくるということになろうということを、最も懸念しておるのでありますが、その点について御意見を伺いたいと思います。
  12. 川上為治

    政府委員川上為治君) 今、先生のおっしゃいましたように、私どもの方としましても、この零細企業関係については、これは包括保証保険専門的に一つそちらの方へやってもらいたいというような気持を持っておるわけでございまして、そのためから言いましても、融資保険については五十万円以下はもうやめる、そうしてそれ以下のものは包括保証保険の方へ切りかえていってもらいたい。また、普通保証保険についても、五十万円以下はやめて、そうして包括保証保険の方へこれまた切りかえていく。そのかわり包括保証保険の方は利率を非常に下げた。先ほど申しましたように、現在一分四厘六毛というものを、半分以下の七厘というところまで下げたということにしておきまして、極力零細企業については、包括保証保険をやってもらいたいという考え方でいっておるわけでございます。現在におきましても、この保証協会はやはり零細企業重点的にやっておりまして、平均につきましても大体三十二万円ないし三十三万円というような状態になっておりますので、私どもとしましては、やはりその保証保険というのに、将来においては重点を置いて、しかも、その中で包括保証保険という零細企業関係に、特にその重点を置くということに実は考えているわけでございます。ですから、先生のおっしゃいましたような趣旨に、われわれとしましては極力沿うように、実は一応この制度を立てようとしているわけでございまして、将来におきましては、さらにこの資金がふえたりいたしますというと、この七厘というのももっと下げる。あるいはまた、第二種の保険につきましても一分三厘というのをもっと下げるとか、そういうような措置を講じて、この零細企業のための保証保険というものを拡充していきたいというふうに考えているわけでございます。
  13. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 質問と答弁とが少し食い違っているような感じがするのでありますが、私が質問しておりますのは、信用保証協会では包括保証保険普通保証保険の両方やるのでありまして、そうして一方融資保険というものが従来あったのでありますが、これが毎年だんだんなくなっていくということになりますと、融資保険普通保証保険あたりにまぎれ込んでいきはしないかという懸念なのであります。そういう場合に、信用保証協会仕事というものは、融資保険でやっておったようなことの方へ、だんだん気が取られていきはしないか、それだと、せっかくの制度というものが生きないようなことになりはしないだろうかという点なのであります。
  14. 川上為治

    政府委員川上為治君) その点につきましては、これは原則としまして、将来融資保険はこれをやめて、そうして保証保険の方へ回していく、それから普通の保証保険につきましても、これまた将来なるべく少くして、そうして包括保証保険の方へ回していくというような考え方で進みたいと思っているのでございますが、さしあたり五十万円以上について、普通保証保険あるいはその融資保険というような制度を、包括保証保険と併立させましたのは、これは急にこれをことしから全部包括保証保険に切りかえろといいましても、なかなかこれはむずかしい問題がございますので、私どもとしましては、漸次包括保証保険の方へ追いやっていくというようなふうにするために、やはり当分の間、こういうものも残しておかなければならぬのではないかというふうに考えているわけでございます。
  15. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 ただいまの答弁によりまして、むしろだんだん懸念が増すのでありますが、融資保険をやめてそうしてだんだんと包括保証保険の方へ追い込んでいくということでありますが、その際に、中供も赤子も一緒に追い込んでいくというと、中供本位になってきはしないかということを心配するのでありまして、そういう点から幸か不幸か今回融資保険というものは暫定的に残すということでありますが、私は融資保険については、今申しまするように中供は中供らしく別のワクにはめ込んでいく、そうして赤子本位に楽々と保証が受けられるようにしていった方がいいと思うのでありますから、そういう意味から融資保険を暫定的でなく残していく、そうしてこれについて欠陥があるならば、それは是正する、そうして監督が足らぬところがあれば、十分に監督もし、指導もしていくというふうにせられることが必要である。と同時に、融資保険につきまして中供本位に考えていきましたる場合に、中供として事業の見通しがついているのだが、担保がない、そういうものについては、金融機関融資保険によって金融ベースに乗せていこう。また、それよりほかに道がないという場合もあるのでありますから、これは指導監督を十分にするということで、この際暫定的だと、廃止の方向はもうきめるんだというふうに、一応お考えになるのは、時期尚早ではないか。もう少しこれは根本的に御検討になる必要があるのではないかというふうに思うのであります。その点御見解を承わりたいと思います。
  16. 川上為治

    政府委員川上為治君) 先ほどの言葉が少し強かったかと思うのでありますが、私どもの方としましては、やはり融資保険はなるべくこれは将来やめて、そうしてこの保証保険の方へ切りかえていきたいと思っておりますけれども、今おっしゃいましたように、融資保険制度そのものにおいても、非常な長所も実はあるわけでございます。非常な欠点もございますが、長所もあるわけでございますので、一応この制度につきましては、五十万以上のものは残しておきまして、そうしててん補率は下げましたので、これによってどの程度批難事項がなくなるかということを十分検討した上で、それからこれをやめるか、あるいはなおある程度残しておくかというようなことにつきましては、その際検討したいというふうに考えております。  それから、私どもとしましては、先ほど申し上げました包括保証保険、あるいは普通保証保険融資保険、こういうような制度については、先ほど申し上げましたような方針でいくことに一応しておりますけれども、これは何と申しましても、実際これをやってみました上で、なおいろいろな欠点が出てきたり、あるいはまた、この点はこういうように改良した方がよいというようなところが、おそらくだいぶ出てくると思いますので、その上でさらに慎重に検討して、今後の制度を、さらにりっぱなものにするように持っていきたいというように考えておるわけでございます。
  17. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 最後に一点お尋ねをしておきたいと思うのでありますが、かように補完制度がだんだんと整備せられる方向に向いておることはけっこうでありますが、しかし、今申すように、やりようによっては、かえってマイナスになるというような懸念もありますので、そういう点については、あらためて検討もせられるということでありますから、了承いたしますが、その線で十分研究を重ねられまして、いやしくも制度としてあったものは、なくしないように、欠陥だけは補正をして残していくと、そして新規に新しい制度をこれにプラス・アルファとしてつけ加えていく、そういう線で整備強化をはかられたいということを、あらためて強く要望しますが、その新規につけ加えていくという線において特にこの際質問したいと思いまするのは、大企業から振り出しましたる手形、要するに下請あるいは納入業者などに対しまして手形を大企業が振り出して、今までは優良手形だと思っておったら、一夜にしてこれが不渡りになってしまったというような場合には、たちまち中小企業者は非常な苦難に直面するのであります。あたかも、営々辛苦して農業に精励しておった者が、一夜にして風水害、台風を受けるというと、非常な苦難に直面するのと同様であります。こういう点から、少くとも大企業が下請、あるいは大商社が納入の業者などに振り出しました手形が不渡りになってくるような場合に対しまして、輸出保険制度、あるいは今申しますように農業共済保険制度などに準ずるような一つ保険制度、これを信用補完制度の一環として、真剣に御研究になるお考えはあってしかるべきじゃないかと思うのでありますが、この点についての御見解をお伺いいたします。
  18. 川上為治

    政府委員川上為治君) その問題につきましては、私どもの方といたしましても、一応いろいろ検討もしてみたのですが、今のところまだ自信を持っておりません。従いまして、その問題については、将来さらにもっと検討いたしまして、できればそういう制度がとれるように、何とか努力したいというふうに考えております。はななだ不勉強で、今まで十分な検討ができておりませんので、この問題につきましては、将来何とかもっと研究をしまして、実現ができるような方向に持っていきたいという気持を私どもは持っておるわけでございます。
  19. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 支払い遅延防止法などもできましたり、それからさらにまた、補完制度の整備について今回のような措置もとられ、漸次問題は、十分とは言えないかもしれませんが、解決をする一つの道具立てはそれぞれできてきておるのでありまして、そういうものと関連して考えますると、今の不渡り手形保険制度の問題だけが全然手がついておらぬと、もっとも参議院の法制局等では、すでに研究も始まっておるようではありますけれども政府筋としてはまだそこまで至っておらぬようでありますが、この問題を真剣に取り組んでもらいまするように、特にこの際強く要望いたしまして、質問を終ります。
  20. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  21. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記を始めて。
  22. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 この間、公述人の話を、ちょうど政務次官がおられなかったので、公述人といいますか、参考人のお話を聞きまして、だいぶ福島県の人の話を聞きますと、保証債務の回収率といいますか、貸し倒れになる部分が最近ふえているというのです。何か、二十八年が七〇何%になり、二十九年のやつが七五%ぐらい回収しているのに、最近の三十一年でしたか、あるいは三十年は六〇何%といったような工合に、非常に貸し倒れが大きく、それだけ保証協会としてよけい保証せざるを得ないような形といいますか、保証倒れになるというようなことを言っておりますが、それについての何か原因といいますか、あなたの方でごらんになって、そこいらにどういう事情があるか、おわかりにならぬでしょうか。
  23. 川上為治

    政府委員川上為治君) 回収率の問題につきましては、私どもの方としましては、この保険料率、あるいはてん補率を計算する基礎としましては、過去七年間の平均四三%というのを、実はとっておるわけであります。ところが、公述人の方からも話がありましたように、これは協会におきましても、全体の数字が十分できていないというような関係もありましたし、また、協会それぞれにおきましても非常に違うというような状況もありましたし、それに加えて、最近におきましては非常に上っておるものもありますけれども、やはり一応私どもとしましては、過去七年の平均というのをこの際とるということが最も確かな筋ではないだろうかということと、それから従来の制度相当変えまして、包括保証保険というのに重点を置きますから、そうしますと、その回収率も非常によくなるということにはかえってならぬじゃないかいとうような気持もございましたので、一応今回の措置としましては、過去の平均の四三%をとったわけであります。しかし、この問題につきましては、相当論議の問題にもなりましたので、私どもとしましては一応これでやってみまして、あるいは来年におきまして状況が相当われわれの見通しよりも変っていたということになりますれば、その際、またこれを改めまして、もっと保険料率を下げるとか、そういう措置をとりたいというように考えております。なお、そういう点も実は考えまして、今回の法律におきましては、回収金が非常に多かったものに対しましては、一定の割合でこれを返すということも、実はこの法律によってきめておるわけでございます。それからまた、保険料をたくさん払って、保険金が少かったというようなものにつきましては、またこの法律によりまして、一定の方式によりまして、それをまた返すというようなやり方をとっておりますので、私どもとしましては、そういうことを併用して運用していきますれば、この保証協会の言っておりますような問題も、十分解決できるのではないかというように実は考えておるわけでございます。
  24. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 私、長官にお聞きしたいのは、その問題よりも、この間の福島の人の話を聞きまして、今言う通り貸し倒れの方が漸次ふえている。悪く言えば、要するに保証制度というものを銀行や何かがのみ込んじゃって、早い話が、銀行で貸し倒れの多いような、焦げつきになるような債務を、全部保証協会の方へしわ寄せして、従って保証協会そのものが何といいますか、本来の使命よりも、銀行の尻ぬぐいなり、焦げつき債務が、この協会でふえているというようなきらいがあるという感じを受けるのです。その点だと、この信用保証制度そのものに相当の問題点もあるのではないかという感じがしたのです。従ってそこいらのところをどういうふうに考えていられるか。言いかえるならば、この保証協会というものの本来の使命から、むしろ逸脱して、銀行となれ合いになって、といいますか、人なんかも銀行から来ているというような関係で、今言う通り、銀行の焦げつき債務の、何か跡始末を、この保証協会がやるというような感じがないか、そこいらの事情をお聞きしたい。こういうことなんです。
  25. 小笠公韶

    政府委員小笠公韶君) 現在の保証協会の全部についてそういう傾向があるとは言いにくいのでありますが、ある保証協会によりましては、いわゆる事故率がだんだんふえてきているというようなものもございます。なぜ事故率がふえているか、こういうことでありますが、これは一つの問題は、悪意にこの制度を利用するという面も若干あるかもしれません。しかしそれよりも、逆に申しますと、一般景気の反映というものも考えなければならない。同時に、この制度がいわゆる選択制になっている。金融機関が貸す場合に、倒れそうなものばかり選んでこの保証を付しておる、こういう傾向が出てきている。こういうところから事故率が漸次増加するというような傾向が見られるのであります。そこで、今回の案は、すでに御承知のように、五十万円以下は強制保険をさせる、いわゆる包括保証制度をやりまして、安全なものも、事故率の予想をされるものも、全部そこにプールする、こういう制度をとりまして、今申し上げましたような弊害を一つ除いていきたい、こういう考え方でいるのであります。
  26. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  27. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記を始めて。  それでは、午前中はこの程度にし、午後は一時に再開することにいたしまして、休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      —————・—————    午後一時五十四分開会
  28. 近藤信一

    委員長近藤信一君) これより商工委員会を再開いたします。  まず、工業用水道事業法案を議題といたします。御質疑のある方は、順次御発言願います。
  29. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 この工業用水のあれですが、これは予算はことしだけじゃない、前から、前年度もあったんだろうと思うのですが、予算と法案との関係は、この法案ができますとどういうような関係になるのでしょうか。
  30. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) 実は、予算につきまして、従来いろいろ問題がありまして、というのは、こういう根本的な考え方でいくかどうかと、実は防潮堤の関係とか、いろいろなものが従来取り上げられておったのでございます。今後どういう方針でいくか、あるいはこういう補助金的な特別の別個の理由のあるものは別としまして、こういう工業用水道という、そうして低廉な工業用水を供給するという理由だけで、補助金を出すべきかどうかということについて、非常な疑問が今まであったわけです。本年はそれを踏み切って、どうしても国家的に必要だというものにつきましては、広げていくというので、従来三億五千万でありましたが、それを五億に増加したわけであります。そこで、こういうような法案も出して、将来そういうような考え方で補助金もつけ、また、それに対する規制もやっていくというような考え方が、やっとことしになって、大蔵省と話がついたわけであります。従って、これは恒久的にそういう方針で今後いくことを明らかにしていくのがこの法案でございます。
  31. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 そうするとあれでしょうか、工業用水道事業法によって、まあ予算のといいますか、あるいは補助金と申しまするか、そういったような国からの助成を受けるものと、それからこの法案だけで規制されて、補助金はもらわないというのと二通りあるのでしょうか。あるいはこの法律によって、一律に何割なら何割といったような工合に、あるいは一律でなくとも、何がしかの助成を受けると、こういうことになるんでしょうか、その辺の関係は。
  32. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) その点は、今後におきましても、補助金をつけるものとつけないものと、現在でも両方あるのであります。補助金をつけずに起債だけでいって十分安いものが供給できる、こういうことでありましたら、何も補助金は必要ないのであります。国家的なそういう地域を育て上げていかなければならぬし、しかも、普通の起債だけでは低廉な給水ができぬ、こういうものに限って補助金をつけますので、この法案の中では、必ず補助をつけなければならぬとか、あるいはある一定の補助金をつけなければならないというようなことには、全然触れておりません。
  33. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 そうしますとあれですね、補助金は補助金というので、別個の、その公共団体なり、あるいは工業用水道事業の実態を見て、これを別な観点から考えると、それから事業法は事業法で、工業用水道というものの事業を法的に規制すると、こういうので、これは別個に取り扱うわけに、結局今の大臣のお話しではなると思うのですが、そこでお伺いするのは、現在水道につきましては、まあ上水道は厚生省、下水道は建設省というような工合になっていると思うのですが、全体としてこれは総合する場合であると思うのですが、その他の上水道なり、下水道なりとの関係ができたというときには、各省間において、何が協議会か何かで、そこいらの調整をやるのでしょうか。そこいらはどういうことになるのでしょうか。
  34. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 工業用水道事業という観点から見ますと、原則としてはその水源を独立に求めて工業用水道事業を営むのが大部分でございますので、その他の、上水道その他と競合して云々という場合は、比較的まれだと思いますが、しかし、そのまれな例として、たとえば途中までは農業用水と一緒に引っぱってきたり、あるいは上水道と一緒に引っぱってきたりという場合がまれにあるわけであります。そのような場合には、事業主体が両方とも、たとえば上水道も工業用水道も事業主体が同じ公共団体である場合は、実際は問題がないのであります。まれに事業主体が違うという場合には、この法律建前から申しますと、この工業用水道として、つまり飲料に適するものと区別されるその部分からが、非常にこまかいところは別でありますが、原則としては工業用水道事業として確認されるというような形になりますし、実際問題として、事業の計画を立てる過程で、そういう問題が起りますときには、当然現地で話し合いがあるでありましょうし、現地での話し合いが、かりに問題が簡単に解決できないような場合には、上水道所管の厚生省が工業用水道所管の私どもの方といろいろ相談をして、その間の調整をとるということになろうかと思います。
  35. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 実は私がお聞きしたいと思いますのは、今度の立法で、非常に私が新しいと思いますのは、地方公共団体がこの事業をやる場合には、許可制度にしないで届出制度にしているというのは、これは非常に行政の簡素化の上でいい立法だと思うのです。ほかの上水道とか下水道は、みな許可制度にしておるのですが、その点では工業用水道の特に地方公共団体については、届出制度にして行政の簡素化をはかったと思うのですが、ただそのときに、一方は今の上水道なりあるいは下水道が許可制であって、こちらは届出制であるということになってくると、そこいらの調整がうまくいけるのかどうか。それからもう一点は、地方公共団体以外の者であっても、何かもう少し、たとえば電気会社であるとか、何か公共団体に準ずるような、相当公共性を持った営団なり、事業団なりというものがやる場合でも、届出でいいような気がするのですが、そういう場合は、一律に許可を受けなくてはならないという点、その点の調整がどうなるのか、そこいらを伺いたい。
  36. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 上水道の場合と工業用水道の場合はもちろん共通、相似た部面が大部分あるわけでありますけれども、しかし上水道の場合には、御承知のように、その浄水装置を通して、いわば一般公衆の衛生的な問題が非常にやかましい、工業用水の場合以上に非常にやかましいめんどうな問題がありますし、それから工業用水の場合は、やはり公益的な、公共的な事業ではございますが、その水を受ける方の側のいわば頭数の問題と上水道を利用する側の頭数の問題を比較してみますと、相当隔たりがあるというような見地から、同じく公共団体が事業運営をやる際にも、衛生的な見地、あるいは危険防止の点、その他を特に考えて、上水道の場合には許可制が敷かれておるようでございますが、工業用水の場合には、現在までの実情では、地方公共団体は工場誘致その他に非常に骨を折ってやっておる実情でございます。そのようなところに工業用水を供給することを、同じく地方公共団体がやりますれば、原則としてあまり大きなその辺の許可制度で厳重に縛らなくても、この法律にございますように、事前届出で、危険防止なりあるいは経済的な設計、工事計画等について行政指導をやり得れば、それで十分ではないかというような見地から、このような扱いをいたしたわけであります。  それと第二の事業団体云々の点でございますが、現状では大部分が地方公共団体でございますので、実際上の実益がどれだけあるかは別といたしまして、まれに現在でも、たとえば組合制度でやっておるようなものがございます。これも組合制度で組合員だけにしか水を供給しないというような場合には、特殊のものが集まって共同で経営して、組合員だけにしか供給しないということが確定いたしておるような場合でありますと、将来とも確定いたしておるという場合でありますと、利害共通の場合でありますから、さほど問題はないと思いますが、あるいは将来乏しい水源について、その水源を取って、公共団体以外の者が事業を営むというような場合には、やはり公共的な性格がございますので、これについては地方公共団体の場合と違った扱いをせざるを得ないというので、実際上はまれな例であるとは思いますが、そのような扱いにいたしたのでございます。
  37. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 それで、私は次の問題をお聞きしたいのですが、公共団体の問題に届出して、その他の場合には許可制ということになりますと、おそらく地方公共団体というものの公益性といいますか、公共性というものを認められて、これはあえて通産大臣の許可なくしてもやって差しつかえない、こういうことで届出としたと思うのです。そういうことならば、公共団体以外のものに対するこの通産大臣の許可権限も、これは府県知事なり何なりに、機関委任なりそういうことで行政の簡素化をやられるのでしょうか、その点はどうでしょうか。
  38. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 先ほど申しましたように、地方公共団体以外の者が工業用水道事業を営む例というのは、非常にまれな例であろうと思います。また、そのような場合に、大ていの場合は地元だけで調整がとれるかもしれませんが、やはり工業用水道の水源問題、それから供給区域の問題等を考えてみますと、そのような許可事務が非常にたくさんあるということが予想されますれば、そのような簡素な方法を考えなければならないと思いますが、そうたびたび起る例でもなく、しかも、事業が限られた水源を利用する独占的な事業であるということを考えますれば、特に簡素化という意味で地方長官に委任をするというような考えは現在は持っておりません。
  39. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 それからもう一つ、地方公共団体が工業用水道事業をやるときには届け出ですが、都市計画法との関係はどうなりますか。これはあらかじめ地方公共団体でこういうものを出してくるとき、あるいはその他の者が許可を求めるときに、大体都市計画法との関係においては、あらかじめそれは調整して持ってくるわけでしょうか。
  40. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 工業用水道の経営の内容が固まって参る過程におきましては、当然かりに地方公共団体が経営いたします際には、都市計画事業との調整を十分やって計画が立てられると思いますし、かりにそれ以外の事業者がやる場合には、地元で計画をやります際には、当然地元のそれぞれの地方公共団体の長とよく相談して、実際上のそごがないようにして参ると思いますが、もしかりに、そのような点に問題がありそうでございますれば、当然に審査の際にもそのようなことのないように気をつけて参ると思います。
  41. 小西英雄

    ○小西英雄君 大臣にお尋ねしたいのは、この工業用水道事業法の所管を、これは公益事業局の方が企業局より、いろいろな監督の面で、そういう局課に置いた方がいいのじゃないかという説もあるのですが、どうですか。どういうわけで企業局に置いたのですか。
  42. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) あるいは工業用水だけをとって考えますと、おっしゃるように、公益事業局の方が適当のような感じも持たれるのはもっともだと思います。ただ、われわれもう少し広い見地で産業立地条件というようなことをずっと調査いたしてみまして、その一環としてこの工業用水を考えていく。従って御承知のように、企業局では産業立地についての調査室もまた予算を取りまして設ける、そしていろいろあらゆる産業に関する各種の条件を調査する、その一つとしてこれは大きなやっぱりファクターをなすものでありますから、そういう意味から企業局にいたしておるのでありまして、ただいまのところ、やはりその企業局の方がむしろ実際に即して適切じゃないかと、こういうふうに考えます。
  43. 小西英雄

    ○小西英雄君 大臣のお説にも、われわれうなずく点があるのですが、この水道事業というものは、将来非常な問題をはらんでいると思うのです。先ほど高橋委員からも話がありましたように、この地方公共団体でこの事業をやる場合には、これは大した問題が起らぬと思うのだが、もしこの工業用水を二、三の会社等で政府の許可を得てやった場合に、次にその地域に工場を新設した場合に、もう工業用水というものは河川のうわ水か、あるいは地下の水かに限定されておるので、電気の場合のように、電気はどこの会社へも必ず引けるようになっているが、組合で共同水源地を作った場合にその地域へ行ってその工業用水を、工業用水というものは少量の水では成り立たぬので、一つの工場を興す場合には、相当水を使うので、その場合に共同でやっておる事業者に、その地に工場を持っていくのだから、今までやっておる水を一つ分けてくれと言った場合に、拒まれた場合にはどういうふうにして……、そのままでは工業用水を求める道がないというふうな問題が、今後起ってくると思うのですが、その場合にはどういうふうなあれをやっているのですか。
  44. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) 給水義務につきましては、第十六条に「正当な理由がなければ、何人に対しても、その給水区域における工業用水の供給を拒んではならない。」と、こういうような規定を設けておるわけです。お話しの全体の構想としまして、今後にあるいは個々の工業用水道そのものが非常に問題になってくるという可能性が多くなってくるようなことがありますと、あるいは別個の工業用水道課というものを、公益事業局に設けるという考え方になるのではないかと思いますが、ただいまのところは、むしろ産業立地の条件の一つの大きなファクターとして、全国的に工業用水をどういうふうに考えていくかというようなまだ段階でありません。むしろ、この際におきましては、今後の各産業立地の地点を調査する一環として、工業用水をどういうふうに考えていくかという最初の布石みたいな関係にあるわけでありまして、ただいまのところは、そういうふうなことは考えておりませんが、将来につきましてはお説のようなことが考えられる事態になってくるとも、私個人的には考えているわけであります。
  45. 小西英雄

    ○小西英雄君 今現実にはそういうふうな問題が起っていないと思う。これはこういうふうな条件において、この法案自身にはわれわれ賛成ですが、今後ともこの水道事業法ができて、一つの団体に許可を与えた場合に、その初めに出資した各会社が、現在二千トンしか使っていなくても将来五千トン、八千トンの必ず事業計画になってくる。そういうために現在ならそういうふうな規制がなかったり、あるいは水源が余っておっても、それらの水源の関係では将来ぜひ必要だとそれは理屈のつけようで、自分のところの化学工業は、後年こういう拡張の予定でこういうふうな水を使う予定だから、とても現状においてはそういうものをふやせないということは、必ず私たちは起ってくる問題だと思うので、許可の場合に、そういう点を相当な堅い……、法律にも一応の文章としては残っておるが、これは理屈がついて、容易にいい立地条件でありながら、工場をその地域に持って行けないというふうな事態が起ってくるのではないかという心配をするものであります。まあ、そういうふうな見地から、企業局よりむしろ私たちはそういう見地から先ほど申し上げましたように、こういうふうな所管は公益事業局の監督下に置く方が正しいのではないか、私はまあこう考えるのですが、これは永久に今のように企業局に置くか、まあ、一つの産業の状況は、やはり公益事業局より企業局の方が現段階としてはいいかと思うのですが、大臣どうですか、将来ともこの局の所管にしておくのですか。
  46. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) 将来におきまして、私お説の点は、ごもっともだと思っております。あるいは公益事業局に持っていく時が来るのではないかと思いますが、今の段階では、企業局が適当だと思っておりますが、将来は私はやはり公益事業局に持っていくべきだ、こういう気持を持っております。
  47. 小西英雄

    ○小西英雄君 この工業用水道事業法に対して、これは大きな会社、大会社中心に、われわれ一般の税金をこの水道事業に補助を四分の一出すというような点から、相当われわれいろいろな考えを持っておりますが、こういうふうな工業用水を大量に使うのは、まず大企業であるのは間違いないので、大量に使うから足りなくなる。また、そのゆえんから大企業を特にどうせいというのではありませんが、零細な、たとえば高知とか、静岡、あるいは愛媛等における小さな事業であるが製紙事業等、あるいは京都におけるいろいろな染色業等にも使われるので、そういうふうなところを均等に、特にそれに重点を置けというふうな、私は主張ではありませんが、国民的見地から見て、この補助金が公平に使われていくような一つ指導監督を、今後とも厳重にしていただきたいということを申し上げて、私の質問を終ります。
  48. 加藤正人

    ○加藤正人君 ただいま小西委員の御質問になっていることは、非常に重大な問題を含んでおると思うのであります。この提案理由にも書いてあります通り、非常に将来の工業発展を考えますと、第一に事業の性質によって、程度は違いますけれども、大体大きな水を要する事業が非常に多くなりつつあるわけであります。工業会社でもずいぶん大きな工場敷地を現に持っていても、それが水を特に要する事業を開始する場合には、その地所を使うことができないで、ほかに水の豊富なところに敷地を求めるというような工合で、だんだんとそういう条件に当てはまる地域が少くなりつつあることは、これは事実なんです。現にある工場、これは今小西委員の言われたことを逆に申せば、従来何らそこに競合するような工業はなかった。その地方の地方公共団体の勧誘によって、そこに地所を入手して、工場を作った。その当時は安心して拡張をしておる、しかも、大量の水を要求するために、自然、その都市の住民に対する水道の一部を、その会社でまかなってやるというようなこと、あるいは水源地を川に求めるために、自然、やはり堤防の修築、橋梁のかけかえというようなものに対しては、相当な、会社から援助の資金を出しておるというようにして、水を多量に使うためには、相当資金を出しておるのです。ところが、今後、この届出によって、地方公共団体が新しく工業用水道というものを設けられるような場合になったときには、自然、従来の経営者がその影響を受けるようなこともあり得ると思うのであります。しかし、既往に相当資金を費して、今、小西委員の言われるように、将来、相当な拡張を見込んで事業を起したのでありますが、途中でそういう制約を受けるということは、事業の妨げになる。そういう場合には、この法律を執行する上において、特別な配慮がなされるものであるかということについて、伺っておきたいと思います。
  49. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) ただいまお話しのございました点で、各地方で工場を誘致する際のいろいろの話しと、その後、実際に工場を建設し、あるいは拡張する際には、特に工業用水の問題等、いろいろの問題がある。これは工場誘致の際の各地方々々の公共団体の気持が、工場を誘致するのを急ぐのあまり、必ずしも立地条件、ことに工業用水を含めた立地条件の調査等が、従来、不十分な点があったと思うのでございます。こういうことは、今後、企業を誘致する方の側のあまり希望的な計画に頼ることには、若干の危険があると思いますので、そういう点を補正する意味からも、今後、全国的に工業立地に適したような調査をやって、資料を整え、そのようなもので、おもな工業立地のいい条件のときには、いわゆる産業立地、工業立地の資料を整備して、工業立地の指導的なアドバイスをするような仕組みを、本年度から通産省で計画しております。各通産局にも、今後そのような努力をしてもらう考えであります。なお、今お話しの、あとの方のお話しでございますが、これは工業用水道事業ということに限定して考えますと、工業用水道事業を計画するときに、やはりその給水予定地区の、予定されておる工場の、いわゆる工業用水の需要量の想定は、できるだけ確実な見込みでしなければならないはずであります。そのような点が、工業用水道事業の計画の中に十分考えられておるかどうかという点は、この法律による許可なり、あるいは届出の際にも、事前届出で内容の審査をいたします場合に、十分その辺は調査をした上で、行政指導なり、あるいは許可の際の審査に考慮を加えていかなければならないと思います。要は、そのような場合に、主として水利権の調整問題として、あとあとに問題が起るだろうと思います。水利権の調整問題は、非常にむずかしい問題でございますが、水利権の調整については、過去の水利権がどういう状態になっておったか、今後、利用し得る水利権がどういう状態であるかというような点も、工場立地条件の一環として、あらかじめ十分な調査をした上で、新たな工業用水道事業計画が、その点を考えてもなお適当であるというような点は、行政指導で十分運営上気をつけて参りたいと考えておるのでございます。
  50. 加藤正人

    ○加藤正人君 この法律施行になったあとのいろいろな心がまえというようなことは、今までやっていたことは一等必要だと思いますが、すでに既設の工場であり、相当な大資本も払っておる、いわば権利化しておるような工場の供給源を確保しておる場合に、今お話しのように、届出のあった場合に、これを許可する場合においては、種々なる条件を勘案して、間違いなきを期したいというお話しでありましたが、そういうことは何か地方公共団体に特別な指示をされることになっておるのですか。
  51. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 水道事業の工事設計等につきましては、この法律の中にも、事前届出の期間中、あるいはその後の変更のときには、必要な変更指示ができるようになっております。しかし、今お話しの点は、むしろ、ある工場がすでに自分の工場建設に見合った工業用水を計画をして、その水利権をすでに持っておる。その水利権が、その事後に出てくる工業用水道事業のために、既往の水利権が侵されるような心配はないかというような点が、むしろ御質問の中心であろうかと思いますが、この点は御承知のように、地方公共団体の長官が水利権の許可をいたします際にも、ある一定量以上の水利権の問題になりますれば、建設大臣の認可が要るようになっております。建設大臣の認可の際に、工業用水の問題と関連することもございまして、通産大臣に協議をして参るようになっております。その辺の各行政庁との間の相談の際に、既往の水利権が侵される、そのために、既往の計画が重大な支障を来たすというようなことにならないような調整問題は、当然配慮して運営されるはずでございます。
  52. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私、この間、ちょうど機会があったものですから、小田原の郊外の足柄というところに、富士フィルムの工場があるのですが、富士フィルムは御承知の通り、水を非常に使うところなんですが、一体、どのくらい使うかと聞いてみたところが、大体、一日に、人口四十万ぐらいの都市の量に匹敵するものを使うということを聞いて実は驚いたのです。そういうために、あれは富士山脈といいますか、富士水系と申しましょうか、非常にあのところは水がきれいで豊富である。写真工業は、ことに空気とか、それから水というものに非常に重点を置いてやられるわけで、そういう意味で、わざわざあそこに建てたのだと思うのでありますが、これは一つの例なんですが、一工場で四、五千人の従業員がいるかもしれませんが、そこで使う水道の量が、人口四十万に匹敵する、しかも、これは清水でなければならぬということを伺ったのですが、大体この工業用水の全体の上から見れば、これはどうなんですか、そういう清水のもののパーセンテージと、それから、いろいろなきたない水でも、多少浄化をして、そうして使い得るもの、そういう比較といいますか、比率といいますか、そういう点は一体どういうような統計が出ておるのですか。
  53. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 工業用水の用途は、よく言われますように、たとえば冷却用でございますとか、あるいは洗浄用でありますとか、あるいはボイラーの汽缶用というような、いろいろな用途があると思いますが、今御指摘のございました水質が非常に問題になるというような場合で申しますと、ボイラー用が当然水質が非常に問題になる。これは私どもの調査では、わずかに一%程度でございます。全体の工業用水の需要量の中で。さらに原料用水のような場合は、これは製品の中に入って参りますから、これも水質が非常に問題であると思いますが、これも私どもの調査では二・五%程度が原料用水に使われておる。あとたとえば染料に使うような場合も、場合によって相当水質が問題になると思いますが、これが私どもの調査では一〇・七%ということになっております。工業用水の非常に大きな部分を占めますのは、大体まあ冷却用その他であると思いますが、そういうものが大体工業用水の全体から見ますと、まあ、八割ぐらいまでは、あまり水質についてむずかしい条件のない用途であるというような調査になっております。
  54. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 このごろは、非常にすべて施設等が進歩しておりますから、以前のようなことはありませんが、今局長お話しの八〇%の問題ですが、この工業用水の流れたものについて、漁業問題とか、あるいは農作物の問題だとかいうことが、非常によく今まで問題になっていたのですが、その点は最近どうなんですか。
  55. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 今お話しの出ております工場汚水の問題は、前々から非常に問題の点でございまして、現在もその解決が十分問題なく解決しておるわけでは少しもございません。ただ、だんだんといわゆる工場汚水の処理の方法研究も進んで参りまして、また、工場汚水による被害を受ける方の側からいいましていろいろ問題がございますので、最近だんだんと各工場も、そのような汚水処理について非常に熱心になって参っております。まあ、そのような意味から言いまして、特にたとえばパルプ工場でありますとか、そういう化学工場の関係に比較的多いようでございますが、そのようなところでは、従来にましてそのような汚水処理の研究をいたしておりますが、まあ問題は、その汚水処理をいかに化学処理その他をいたしましても、若干はやはり影響のある部分が残るわけでございます。その残るものが、かりに河川その他に放流された場合に、それが一体どれくらいの影響があるかという点は、いろいろ最近そのような問題と関連して、水質調査ということで、私どももやっております。まあ、現在までで、まれな地点については、いろいろ問題になる点もございますけれども、全体から見て、今言いました汚水処理等について、今後さらに一そう努力をすれば、特定の非常にむずかしい地点は別でありますが、全国的には大体問題のない処理方法ができるというような状態にあると思います。
  56. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 この汚水処理についての、つまり被害者の補償要求という問題が、非常に今までたくさんあったのですが、これはまあそのケース、ケースによって解決の方策はあると思うのでありますが、大体どうなんですか。その工場だけがその対象になっておる場合と、それから、たとえばその町村の発展のために、水も豊富であるというので、わざわざ工場を誘致をしてきたと、最初はそうでもなかったけれども、ほんとうに工場が本格的にこの仕事が始まってみると、何でもないというものが何でもあるようなことになって、そうして相当まあ市町村等の間に紛争を起しているというような例もあるのでありますが、そういう場合、その市町村が、それじゃ工場を誘致した責任もあるから、自分の方で一つ補償の責めを負うとかいうような、そういう例はどうなんでありますか。今までそういうケースはあったのかどうか、そういうものがあれば一つ聞かしてもらいたい。それから、あるいはあくまでもそういうものは単独で会社が処理をしておるのか。
  57. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) お話しのような紛争がかりに起きました場合に、もちろん、地元で市町村長その他、いろいろその調停とか解決の努力はされると思いますが、従来も、もちろんそういうことで努力していただいておると思いますが、まあ、それ以上にどの程度の処理方法があるかということになりますと、大部分の場合は、やはりその責任の根源は、企業自身にあるわけでございますから、従来のところでは、やはり企業自身ができるだけ除害施設をやると、その除害施設については、まあいろいろ各研究所の試験その他がございますが、原則はやはり企業主体がやっておる。しかし、それについて、その除害施設とのかね合いで、非常に程度の高い水質を要求されると、あるいは今後そういう問題が拡大して参りますれば、除害施設も、企業自身の負担だけではしょい切れないような、非常に程度の高い除害施設を要求されるというようなことになれば、今御指摘がございましたように、何らかのこれに対する助成措置を考えなければならぬというような事態に相なるかもしれませんが、従来は原則として企業主体の負担でございます。ただ、まれな比較的少数の例として、中小企業等が非常にたくさんあるところがありまして、たとえば染色業等がありまして、こういうものは比較的中小企業が多いと思いますが、こういうところでは、各企業それぞれの負担ではなかなか処理しきれない。そういうような地点につきましては、従来もそういう汚水の共同排水施設について、若干国その他で、それに対する補助金等の措置をとった例がございます。今後やはり負担能力のないような部分については、現状でもある程度そういう助成措置をとっていかなければならないのではないかというように考えます。
  58. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから、私はまだこの法案を精読はしておりませんが、第二十条の国の援助ということでございますが、「国は、豊富低廉な工業用水の供給を図るため、工業用水道事業者の工業用水道の布設につき、必要な資金の確保その他の援助に努めるものとする。」、こういう個条があるのでありますが、これが本法案の山だと思うのでありますが、この援助ということ、あるいはまた資金の確保というような点について、たとえば、先ほど私が指摘した富士フィルムの四十万人の人口が使う水道を、一日に使用するというような莫大なもの、これは一つの例でありますが、そういうものは全国的にこれから相当たくさん出てくると思うのでありますが、そのいわゆる援助の方法ですね。どういうような目安とか、何か標準が役所としておありになるに違いないと思うのですが、差しつかえない限り、一つ答弁願いたいと思います。
  59. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 先ほど大臣からもお話がございましたが、工業用水道の計画その他をやります際には、やはりその地域の工業立地条件全体の計画といいますか、そういう調査の結果、その一環として工業用水道事業の計画が起るわけでございます。その際に、ほかの工業立地条件は非常によく整っておるけれども、残念ながら、その地域に水源を求めたところが、比較的遠いところにおるために、工業用水が非常に困難な状態にある。あるいは、地下水をむやみに汲み上げると、そのところの地盤その他の関係で、別なまた障害が起るというような場合には、そこに工業用水道さえ引っぱってくれば、立地条件その他が非常によくなる。あるいは、既存の工業地帯で、すでにある工場が、工業用水の取得に非常に苦しんでおる。現在以上に地下水を汲み上げることは、非常に困難である、あるいは地下水を汲み上げようにも、非常に地下水が乏しい地域であるというような、比較的工業用水で遠い水源まで求めなければ求められないような立地条件があるわけであります。そういうときには、そのような工業用水道の計画をやりますと、工業用水源の関係その他から、工事費用が非常にたくさんになって参ります。従って、それを負担する工業用水の価格も非常に高くなって、工場が負担しきれないというような状態になって参ると思います。そのような場合に、工場が負担しきれる程度の合理的な価格まで、工業用水の価格を安定させる必要があるわけであります。そういう今申しましたようないろんな条件が、ほかの条件が満たされておって、工業用水だけが非常に問題だ。その工業用水の取得が安い価格で取得できないような状態であるという場合が、主として今申しました補助金の対象として取り上げられる条件にあると思います。しかも、その場合も補助金でなくとも、比較的低利の起債をつけてやることで、同じようなあるいはそれに近いようなことが達成され得るという場合には、起債だけでいく場合もあります。まあ、そういうことで、要するに資金の確保が起債の形でなり、あるいは非常に条件の悪い場合に、補助金の形というようなことで、国その他がさような助成をしたいというよりな心がまえになっているわけであります。
  60. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 いま一点お聞きしたいのですが、これは実際問題とすると、私はまあ大へんな金額その他になると思うのでありますが、これは要するに法律施行後の、まあ私どもは一応解釈を新しいもの、つまり新設をするものという解釈をしておりますが、ただ既存のもので、修理改良等をやる場合について、そういう申し出があった場合はどうされますか。
  61. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 修理改良等の程度というもので、具体的な場合によって違うと思いますが、まあ、現在補助金を交付しておるような事例は、修理補修というような、改良というような程度の事業計画には、ちょっと現状では考えられませんが、そのような修理改良等が相当費用がかさんで、そのために工業用水が非常に高くなるおそれがあるという場合には、現状で考え得るのは、起債その他による援助というぐらいが、限度ではないかと思うのでございます。
  62. 小西英雄

    ○小西英雄君 今のに関連するのですが、この工業用水をこういうふうに一応許可制、一般については許可制ということになると、われわれ戦争前にも、こういうふうな水についての問題に統制をした、ここで許可するということは、裏を返すと、一つの統制ということになると思うのですが、こういうふうな例が世界の各国に、たとえばドイツとかイタリアあるいは英国に、こういう水道事業法というものが、局長できておるのですかどうですか。
  63. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 御承知のように、水の状況は、これはまあ地理的条件によって、非常に極端な差があると思います。日本の場合には、御承知のように、工業用水というようなことで期待し得る大きな水源、特に今後期待し得る点といいますと、海水は一応別といたしまして、やはり河川水によらざるを得ない。その河川水が、日本の場合には、日本の地理的条件から、非常な急流で、水が多いときにはいわば洪水に近いような状態になるけれども、工業用水という安定した水源で期待しようと思うと、なかなか期待しにくいような状態にあると思います。よく言われますように、日本は水が豊富であるにかかわらず非常に水で苦労しているような状態でありますので、日本の工業用水の場合には、水源の点から、工業用水の事業がかなり独占的な性格を帯びる結果が生じやすい。生じやすいというよりも、事実上はそういうような形になって参るわけであります。そういうような意味から、工業用水道は、日本の場合はやはり許可なり、あるいは地方公共団体は特殊な公益的な性格を持っておるから、許可にはしなくても、事前届出で、十分そういうようなことを調整しなければならぬという建前をとっておりますが、諸外国の立法例は、一々つまびらかな調査例を、私はここに持っておりませんけれども、やはり国によっては違うと思いますが、私どもが聞いておりますのでは、ある程度まあ援助的な基金を、何といいますか、与えてといいますか、与えて、全体の用水が安くなるようにしておるという例を聞いております。今の例は、ドイツではそういう制度をとっておるそうであります。各国の例を、一々ここで申し上げる資料はございません。
  64. 小西英雄

    ○小西英雄君 次でけっこうですから、資料で出して下さい。  今までかつて歴史始まって、工業用水をこういうふうな許可制をしくということは重大な意義が存するので、必ずこれは法案が通過した暁には、いろんな問題が起ってくるのであります。それが今いう補助の率が、日本は御承知のように北海道から鹿児島の端まで、相当な長い距離にこの国が存立しておる。こういう関係でこの法案を布いて補助する、補助する場合に、水の少いところでは、補助が非常に安いとか高いとか、あるいは製鉄の場合にはどうだとか、あるいは繊維事業、パルプ、いろいろな水の使用の量も違うが、原価に全然響かない事業もあるかわりに、この水をそういうふうに政府が補助をして一つ、の事業団体を作った場合に、必ずびっこな状態になっていく。これは私この法案を重要視しておるということは、電気の場合には、これは路線一つによって相当山間僻地にも持っていかれる。また、ガスの場合には、そういう人間がおったり、工場地帯ができておって、そこに引くのであるから、パイプで可能でありますが、この水だけは絶対にこれはどうしても河水で持っていく場合にも、路線を高いところから低いところへとかいろいろなことをしても、大ていの場合は採算がとれないから、これは絶対的に工業用水というものは工場の立地条件の死命を制する重大な問題になってくる。そういうふうな点について、通産省の方では簡単に考えられておられるかしらぬが、しかし、地方公共団体の場合でも現在の選挙制度下における市町村長というものがやっておる場合に、工業用水道法で、その反対側の者が新しく工場を新設する場合には、いろいろな意味で制圧されるというような可能性もあると同時に、政府の許可を得て、この工業用水道事業法に基いて許可になった会社が、これを一つ独占するという場合には、これは重大な今後に問題があるんじゃないかと思うので、今言うふうに、補助の率等についても見通しも何もなく、あるいはこの製鉄用水については、大体目安として一トン何ぼだとか、あるいは紙、繊維その他についてそういうふうな水一トン当り、大体この工業用水の淡水は、このくらいにはなるだろうというふうには、わかっておりますかどうですか。
  65. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 先ほど説明の中に申し上げたと思いますが、工業用水道事業計画そのものが、産業立地条件計画全体の中に織り込まれて計画が立てられなければならぬと思います。従いまして、そこに集まる工場は、水をよけい使うような工場が比較的多数集まっておるようなところに計画はされると思います。従いまして、工業用水の価格も、大体目安としまして一立米当り五円以下くらいの価格でないと、工業用水としては非常に使いにくい。特に用水型の工場では非常に使えないのであります。その辺のところを大体目安にしていきたいというふうに考えております。
  66. 小西英雄

    ○小西英雄君 そういうふうに、いろいろ計画もおありかと思いますが、もう一つこういう点はどうですか、今の淡水と塩水とあるが、これはこの法案の内容との関係はどうなるか。われわれ立地条件的に、淡水の方は、これは一つの制限というか、土地に降った水が山から流れてきてきまっておるが、海水の使用の場合に、事業種によっては海水でもけっこうなのに、淡水を使っておるというような例もあるのですが、今後そういう際に、淡水を使う事業はこれだというような制限法とか、あるいはそれに何か注釈を加えられる余地があるか、現在そういうことを考えられておるか。
  67. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 海水を使えとかいうような特別の規制措置は、現在ございませんけれども、実際問題として海水で事足りる場合には、これはもう工業用水だの何だのに比べて、はるかに安いコストになりますから、企業としても海水で間に合う限りはできるだけそういうふうにいたしたいと思います。御承知のように、海水であれば、かりに冷却用等にいたしましても、大部分の場合、機械が腐食する危険が非常に高い。その機機腐食の程度と工業用水として海水が安いという条件とのかね合いで、企業の側も採算その他の点を考えて、水の使い方を考えると思います。現状では、淡水と海水との工業用水の価格の差は非常に開いておりますから、特別のコントロールをする措置はとらないでも、一応支障はなかろうというふうに考えております。
  68. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 私不勉強で、ちょっと教えてもらいたいと思うのですがこの法律の名前とよく似た工業用水法というのがございます。第一、この工業用水道事業法というものと工業用水法というものと、これは勉強すればわかるでしょうが、どういう点がこの法案との差があるのか。それからまた、直接間接に、大体この種の事業に関する法律として水道法あり、河川法あるいは公益事業令とかいろいろございますが、ここに一つ法律を作って、これを拝見いたしますと、大体この工業用水道事業というものに対する補助の制度を確立したいということのようなんでありますが河川法とか工業用水法などと本法との関係についてお尋ねをいたします。
  69. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) お話しのございました工業用水法の関係でございますが、これは御承知の通り、工業用水法は主として工業用水を地下水に期待をしておるのであって、地下水を過度にくみ上げるために、あるいは地盤沈下を来たすとかあるいは塩水の混入があるとかいうことの障害を除くことで、そのような意味から、主として地下水のくみ上げの規制を第一の目的にいたしております。そういう意味から言いますと、この法律との関係は直接の関係はないと言えるわけであります。この法律は、前に御説明いたしておりますように、工業用水を供給する事業の法律でございますから、形の上では直接関係はございません。ただ、実際問題としては同じく工業水に関する法律でございます。たとえば、工業用水法において、先ほど申しました地盤沈下のおそれがあるというような地域について、工業用水を地下からくみ上げることを制限する場合があります。その制限をしようとする場合には、もちろん地域を指定して制限するわけでありますが、制限し放しでは、工業自身が困るわけでありますから、そのような制限をしようとする場合に、やはりそこにそれにかわる水源から工業用水が供給されるような状態にある、あるいはその見込みがついておる、具体的には工業用水道がすでに布設されておるか、あるいは近く布設されるという計画になっておって、地下水のくみ上げを規制しても、工業自体があまり困らないというような状態でないと、地下水くみ上げの規制はできないというふうに工業用水法の中にもうたっております。そういう意味の関連はつながっておる関係にあると思います。  それから、上水道の関係でありますが、これはもちろん用途その他も全く違うのであります。この法律の最初の方の定義のところでは、上水道は重複しないように完全に除かれております。その意味では関係がない、重複しないということになっておるわけであります。  それから、同じく水の関係の基本法といいますか、特に河川に工業用水を求める際の意味では、工業用水道事業は河川法とある意味のつながりがあるわけでございますが、これは工業用水道事業そのものは、すでに水源が確定をして、事業として計画され、それの見通しがはっきりしたものについて、その以後の規制なり助成が、この工業用水道事業の法律であります。河川法との関係で言いますれば、河川法によって水利権の調整等が行われ、そのような調整が行われたという前提で、初めて事業体の事業が成立するというような関係に立っておると思います。
  70. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 この法案が成立をして、補助を受けます団体が、地方公共団体であります場合は、大した問題ではないのですが、他の民間の事業体が補助を受けるような対象となりました際、地方公営企業法とか、地方公営企業労働団体法などとの関係は、一体どういうことになりますか、国の補助を受ける事業が、地方公共団体でなかったような場合。
  71. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 実は、この工業用水道事業を現在やっておりますものも、おそらく将来やります場合も、大部分の場合、地方公共団体で現在もありますし、将来もそうであろうと思います。もともと、御承知のように工業用水道事業をいとなむ前提としての水利権の問題については、府県知事がその永利権の調整役もやりますし、また、ある地域の工業用水道事業をまとめるのには、やはり地方公共団体でやるのが、原則的には適当な形であろうと思います。従って今お話しの地方公共団体以外の場合に、まれな場合として、かりに事業をいとなみますような場合でも、これは補助金を交付するということは、まずわれわれは考えられないと思います。また、補助金を交付しなければ成り立たないような工業用水道事業を、非常に公益的にやろうという場合には、その事業主体としては、地方公共団体以外の事業にやらすことは、まず私どもの今の考えでは不適当であろうというふうにも考えております。そのようなちょっと現在予想されないような場合について、ここであまり詳しく御説明することもないと思いますが、かりに地方公共団体がこの事業をやっていきます際には、地方公共団体のやっております公営事業に関する法律上の規定は、当然そのまま適用されていくということに相成ると思います。
  72. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 そうすると、ただいまの局長の御説明を伺いますと、本法の適用によって国の補助を受ける工業用水道事業というものは、原則として、将来地方公共団体を対象として考える、こういうお考えであるということでよろしいですか。
  73. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) その通りでございます。
  74. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 それから、地方公共団体がこの種の事業を行います場合の総事業費に対する補助額というものは、一体どういう程度にお考えになっておりますか。
  75. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 現在は四分の一という建前にいたしております。
  76. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 四分の一ということは、これはあなたの方の予算のワク内での補助をされる場合の行政上の基準といいますか、原則といいますか、そういうものであって、場合によっては、この四分の一を上回る場含もあろうし、下回る場合もあるということなんですか。
  77. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 行政上の措置でもありますし、予算編成のときに、予算上の措置の基準として、そういう考えで従来来ております。これを変更することは、私ども、実際事務の運営上非常にむずかしいだろうと思います。事業計画その他を検討いたします際にも、補助は大体四分の一が建前であるということで現在、また将来も、一応現状ではそのようなことでやらざるを得ないだろうというふうに考えております。
  78. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 先ほども大臣からお話しございました、兵庫県の尼崎市でありますとか、大阪の臨海地区の工業用水道の問題でありますが、年々九センチ近くも地盤の沈下が、あの地方にはございます。しかも、その沈下の理由が、最近発表されたところによりますと、工業用水として地下水をくみ上げることによって、地盤の沈下の度合いというものが非常に大きいと。そこで、沈下対策の見地からも、この工業用水道というものを布設しなければならぬ、本来の工業用水道を布設しなきゃならぬという要請が一つと、それから、地下水をくみ上げることを禁止しなければ、地盤の沈下を防止することができない。そういう対策の上からも、この工業用水道の布設が必要であるという、この二つの大きな理由を持っていると思うんです。そういうような際でも、この、今御説明のような補助額というものは、やはり予算編成の際に四分の一しか出さないということになって承認をされておるんだから、四分の一をこえることはないというようなことなんでしょうか。
  79. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) 大体、先ほども申しましたように、尼崎とか、ああいう特別の、地下水のくみ上げによって地盤沈下の問題がありまして、そこで初めて大蔵省としては補助金を出したわけなんです。しかし、それだけにとどまるべき問題ではありませんで、従って最近は、本年度におきましては、そういう意味ばかりでなしに、安い工業用水の供給という意味で、補助金を出してるのでありますが、御承知のように、簡易水道の補助金にいたしましても、まあ四分の一という補助率になっておりますので、他の場合におきまして、四分の一というのは、一応こういう公共事業に対する補助率の標準になっておるわけであります。で、将来は別としまして、これをまあ動かすということになりますと、なかなか行政上紛争が多くなりまして、そう簡単にはいかないというようなところから、四分の一という基準があるわけでございまするが、ちょっと今のところ、それを将来直すということは、われわれの方で申し上げるというわけにはいかぬのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。
  80. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 そういう特別な事情のあります際に、補助の額は今、大臣のお話しのことで大体わかりましたが、起債とか借り入れとかなどをいたします際に、何か普通のなにと変った援助方法をお考えになっておりますか。
  81. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) まあ、起債につきましては、もちろん、補助金以外の全額を起債でやるか、あるいはその起債の条件等につきましても、これは弾力性を持っておりますから、そういう面で協力のできることはできるだけ協力したい、こういうふうに考えております。
  82. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 それから、これは兵庫県の尼崎、大阪の臨海地区でのことに限って、ちょっとお尋ねするわけですが、あるいは新潟市などの場合も関連があるかと思いますが、地下水のくみ上げを防止しなければ沈下を防ぐことができない。それなのに、まだ工業用水道が布設されない。そこで、できるだけ地下水のくみ上げ量というものを減らしますために、地方公共団体から、何か特別な会社なり事業に補助金を出しておるような例が、私はあるように思うんですが、そういうものがあっても、政府としては、それは地方公共団体で適宜やるべきことだということで、知らぬ顔でお通しになるつもりでございますか。
  83. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 今お話しに出ましたような地方公共団体の補助の点は、私よくそういう事例があるかどうか承知いたしておりません。いずれにしましても、そのような地下水のくみ上げを制限しなければならぬような地域でありますれば、当然それを相補う意味で、工業用水の供給を早くやるということが必要であります。しかも、それがあまり高くては困るということも当然であります。そのような地域の工業用水道事業の計画の取り上げ方を、優先的に当然考えます。その場合の工業用水の価格等の状況、工事費の必要額等をよく見まして、必要であれば補助金、また長期債で間に合う程度の状況であれば、長期債というような、できるだけの国の援助は当然考えることに相なるわけであります。
  84. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 同じ工業用水でも、洗浄用でありますとか、冷却用などのために海水を使っておる工業が少くないと思うのです。で、それにもかかわらず、この本法を通覧いたしますと、適用から除外されておるんですが、そういう理由について、除外された理由について、一つ説明を願います。
  85. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 法律の定義のところにございますように、工業用水という意味のときには、水力発電用の水は、これは工業用水じゃないということで除外してございます。それとまあ上水は除外してございますが、工業用水そのものとして海水を除外しているわけではございませんで、海水も工業用水の概念に入る。現在はそういうものはございませんけれども、海水をかりに導管で引っぱってきて、圧力をかけて海水を供給するような工業用水道事業が、かりに将来成り立つとすれば、それはこの法律の適用の中に入ってくるわけであります。現状では、海水についてそのような事業を成立させるような経済条件ではないものですから、今すぐそういう適用にはならないということでございます。
  86. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 実は私は通産当局の担当の方から内容を若干お伺いいたしまして、本法については了承しておりますので、もし本院で可決になった場合どうなるかという点について二、三点お伺いいたします。  第一には、この四億九千六百万円ですか、約五億の補助金と、本年度の予算が三十億、これは起債によって貸し付けると、こういうことになってございます。それが今の椿委員の発言等の中でも、まあパーセンテージのお話がございましたが、おそらくあらゆる法案ができ上って、補助金を出すとか、起債がよろしいということになれば、地方の公共団体から相当、省当局なり、われわれ国会議員の果てまで陳情、請願に来るわけです。そのときの予算のワクが実に微々たるものですから、もし省で割り当てる場合ですね、トン一円とか二円とか価格によって、あまりべらぼうに高くなるところに、いかに重要なものであっても許可しないものかどうかということ。  それから大きい団体、同じ公共団体でも相当格差がございますので、そういう点も判断資料となるものかどうか、そういう点についてまずお尋ねします。
  87. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 先ほど申し上げたと思いますが、工業用水道事業の計画そのものは、やはり工場立地条件、全体の計画の中に溶け込んだ計画でなければならぬはずでございまして、工業用水道事業を補助金を目当てに、どんな高いものでも補助金で安くできるからいいではないかというようなことでは、もちろんいけないわけであります。従来大体工場立地条件の調査もいたしておりますし、それの調査が十分整いまた、そこには工業用水の問題が水道事業という形で片がつけば、その立地条件その他は大体片がつくというような場合に、かりにそのような計画で高い工業用水になるおそれがあっても、そこには補助金でそれを支えてやってでも、工業用水道事業をやらせなければならないというような局限された場合しか、補助金による工業用水道事業ということをやらせるべきではないという考え方でありますので、これは補助金の運用をいたします際に、あるいは、さらにさかのぼって、補助金の予算要求をいたします際に、その以前から十分精査をいたした上で、運用いたして参るわけでございます。その点は従来も十分気をつけておるつもりでございますが、今後運用には特に慎重を期して当りたいと存じております。
  88. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 たとえば、この種の事業を地方公共団体でやりまして、おそらくもうかるということには私はならぬと思います。従って、地域の住民がどれだけ利益を受けるかという判断が、成功、不成功のバロメーターになろうかと思うのですが、今局長の御答弁で大体了解いたしましたが、大体現在の日本全国の統計はあるかないかわかりませんけれども、その種の事業をやっているところのトン当りの価格はどのくらいですか。
  89. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 工業用水のコストを、現状で全国平均で見て参りますと、主として淡水が問題になると思います。淡水で申しますと、一円七十銭というのが、現状における全国平均の淡水の工業用水の値段であります。しかし、この中には御承知のように工場の敷地で地下水をくみ上げているような場合が比較的多いわけでありますから、そういう非常に安いものが入っておりますので、まあ一円七十銭というのが全国平均でありますが、工業用水道事業として営業をいたしております、事業をやっております現状で申しますと、全国平均は二円六十銭というのが、現在の全国平均価格でございます。しかし、将来工業用水道事業で工業用水をとろうといたしますと、水源その他の関係から相当遠くから水を引いてこなければならないというような施設をしなければならない場合が大部分であります。そのような場合には、やはり一立米当りがあるいは十円とか、あるいはそれ以上に高騰するようなおそれのある場合は、まあ、工業用水として工場が使い得る限度は、やはり目安としては五円以下のところまでにしないと、合理的な工業用水としての使用はできないというのが、一つの目安となっているわけであります。
  90. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私ども委員に配っていただいた参考資料の七ページですね、これを見ると淡水とあれとを別にして、まことに丁寧に出ておるのですが、電力費と比較して相当水の費用が、用水費が多いわけですね。これは特に極端に、われわれ議員用として、あるいは委員用といいますか、そういうことで、なるほど工業用水は必要であると、この法案はしゃにむに通さなければならないということで、極端に電力料の安い、水の高い両極端をとって記載したのではなかろうかと思うのですね、全体的にこういうことになりますか、実際に。
  91. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) これは私の方で昨年約二千九百の主要工場について調査いたしました際の分析でありますが、ここにあげておりますものは、いずれもいわゆる用水型の工業といいますか、比較的水をよけいに使うような産業部門を例示的にあげておきました。もちろん、こういう形が全産業いずれの部門にも出てくるというわけじゃございません。しかし、ここにあげておりますものについての計算は、調査としてもちろん作為の調査ではございません。十分客観的な調査であるはずであります。
  92. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 なおほかの法案を審議する予定になっておりますから、もう一つだけお聞きしてやめますが、これは将来のことでお答えにくいかもしれませんけれども、たとえばこの法案が通った場合、さしあたり大体どことどこですね、県でも市でも町でもけっこうですから、大体本年はここらあたりをやってみようという御計画があれば、お聞かせ願いたいと思います。以上です。
  93. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 今お話のございました資料の一番最後のところに表がございます。それが現在計画中の事業でありますが、施行年度はその右側の方に事業計画を施行する時期の目安を掲げております。この中で初めの方から申しまして、仙塩工業用水道、それから磐城、愛知県営の工業用水道、北伊勢第二期、徳山地区第二期、この五カ地点については、すでに三十三年度の事業として、ある程度補助金も予定して事業を推進する形をとっております。この中で一部のものは、三十三年度で済まないので、継続になると思います。それ以外のものについては、必要なものについてある程度起債その他の援助を与えるものもあると思います。あるいはそれも必要でなくて、事実上やっていけるものもあると思いますが、ここで掲げておりますもののうち、右側の施行年度におきまして三十三年度から始まる予定のものについては、それぞれ事業計画を十分審査をして、水源等の問題についても問題がない、事業計画も正確、確実であるというようなものは、逐次取り上げて促進方を進めて参りたいというふうに考えております。
  94. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 最後と申し上げて、なお御質問するのは失礼ですけれども、この順で今後いくということじゃないでしょうね。
  95. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) そういうわけではございません。
  96. 近藤信一

    委員長近藤信一君) まだ御質問もあろうかと思いますが、本日はこの程度にして、残余の御質疑は後日に譲ります。     —————————————
  97. 近藤信一

    委員長近藤信一君) この際中小企業信用保険公庫法案について大蔵委員との連合審査会の件についてお諮りしたいことがございます。  本日、大蔵委員会において本法案に関する連合審査会は、都合により先日の申し入れを撤回することを議決し、その旨をただいま申し入れて参りましたので、本委員会においても、本法案に関する連合審査会を取りやめたいと思いますが、この点御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  99. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 次に、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、本法案の内容について政府当局から、説明を願います。
  100. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 本法案の概要について御説明を申し上げます。大体の輪郭はせんだって当委員会におきまして通産大臣から提案理由の御説明を申し上げました際に述べられておるところでございますが、本日はお手元にお持ちの石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案要綱というガリ版の縦書きの資料がございますが、お手元にございますでしょうか、これを朗読しながら御説明さしていただきたいと存じます。  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案要綱。 (一) 改正の要旨   石炭鉱業の現状及び今後のわが国エネルギー需要の趨勢にかんがみ、現存炭鉱の近代化、機械化をさらに強力に推進するとともに積極的に未開発炭田の合理的開発を促進することにより、将来の石炭需要の増加に対応して石炭鉱業の生産規模の拡大をはかりつつ、その合理化を促進し、もって豊富低廉な石炭供給の確保をはかることを目的として、石炭鉱業合理化臨時措置法に所要の改正を加えるものとする。  これは、現在の合理化法は御承知の通り昭和三十年に制定されまして、当時の非常に石炭業界におきまする不況というものを背景として制定されたものであります。従いまして限時立法として昭和三十五年八月までがその有効期限となっております。それに対しまして、その後合理化も逐年促進しておるわけでございますが、かたがた本年度を初年度といたしまして新しい長期経済計画が樹立されまして、昭和五十年においては七千二百万トンの出炭を要請されるに至っております。そういうような新しい要素を背景にいたしまして、現在の合理化——合理化というのは広い意味におきまして、これはある場合においては生産制限のみでなくある程度の合理的な増産というものを含むわけでありますが、そういう合理化というものの理念にさらに増産という要素を加えまして、この新しい改正をお願いしたわけであります。 (二) 目的   本法の目的として未開発炭田の急速かつ計画的な開発を促進する旨を追加して規定する。  ただいま申し上げましたように、昭和五十年七千二百万トンの出炭の背景となりますものは、昭和五十年におきまする総エネルギーの需要が七千カロリーの石炭に換算いたしまして、二億七千六百万トンの石炭が必要であるとされております。二億七千六百万トンのエネルギー需要というものの中で、輸入エネルギーは、かりに七千二百万トン出炭をいたしましても、輸入エネルギーはその中の四八%を占める、四八%というものは概算いたしまして約十五億ドルの外貨を必要とすると考えられるわけであります。従いまして第一次的なエネルギーの輸入に十五億ドル程度の外貨を使うということは極力これを減少していく、節約していくということが必要だと感じられますので、最少限度の目標として七千二百万トンを出炭していきたい、こういう意味におきましてどうしてもここで画期的な増産をしなければならないわけであります。画期的な増産と申しましても、どの地域も同じような力の入れ方でいくということでは足りないのでありまして、特に今まであまり開発がされていない処女地帯でありまして、しかも石炭の品質その他から見まして特に合理的な開発に適すると思われるところに対して急速に重点的に開発をしたい、こういうことを考えて、この法律の改正を行なっておるわけであります。 (三) 法の有効期間   本法の有効期間を昭和四十二年度末まで延長する。ただし、石炭鉱業整備事業団の納付金の規定は、延長しないものとする。  これは、昭和四十二年度までといたしましたのは、昭和四十二年度まで新しい炭鉱というものの育成をこの法律の背景をもって強力に進めます場合には、おおむね七千二百万トンの出炭の目的を達し得るものと考えております。従いまして昭和四十二年度という限度を切ったわけであります。ただこの中に、現在の合理化法の中にございます整備事業団が非能率炭鉱を買い取るという規定がございますけれども、その中に必要なところの、その買い取りのために必要な納付金の規定というものは、これは現段階におきましては一応昭和三十五年八月すなわち現行法の有効期間の範囲内にとどめたわけでございます。その理由といたしましては、当初合理化法が三十年に制定されましたときに整備事業団の買収の目標として掲げました三百万トンの買い入れというものは、本年度末までに大体契約がこれを完了し得る、おおむね当初の目的を達成したというためにこの三十五年八月で一応打ち切る、こういう建前をとったわけでございます。  (四) 石炭鉱業合理化計画    石炭鉱業合理化基本計画の目標年次を昭和四十二年度に改め、計画の内容のうち、合理化工事に関する事項を削除し、未開発炭田の開発に関する事項を追加する。  これは、年次を延ばしましたために、現在もあります合理化の基本計画というものを年度を延ばした、さらに未開発炭田の開発を一項目入れて、こういうふうに改めたわけであります。  第五に坑口開発の制限でございます。 (五) 坑口の開設の制限  (1) 坑口開設工事許可制度の延長坑口開設工事許可制度を本法施行期間中延長する。  (2) 坑口開設工事許可制度運用の改善    坑口開設工事許可制度の従来の運用にかんがみ、次のように改正する。   (イ) 坑口開設工事許可の基準を通商産業省令で定めることとし、その省令の制定改廃に当っては石炭鉱業審議会に付議することとし、個別の処分を石炭鉱業審議会に付議することを廃止する。   (ロ) 鉱山保安法第二十五条命令に基く坑口開設工事については、許可を要しないこととする。  これは、坑口開設の問題は、特に合理化法が三十年に制定いたしましたときには、できるだけよけいな出炭をさせないという建前をとりましたので、坑口の開設を一々許可をとられるという制度をとっております。ところが、この規定だけはことしの、本来この法律の有効期限は三十五年八月まででございますが、この坑口開設許可の条項だけはことしの八月をもって切れてしまうわけでございます。これを果して切れたままでほうっておいていいかどうかということになりますと、最近特に鉱山におきます保安問題がいろいろと論議されております。また、かたがた合理化というものは、今後も増産と合して推進していかなければならない二つの理由から、坑口開設許可制度もやはりこれを延長すべきであるという結論に達しましたので、その延長をお願いしておるわけであります。そうして、ただしかしながら、従来坑口開設許可の一つ一つの、個別の書類を東京の中央の審議会——青山先生委員長といたします審議会にまで持ってきて一々やっておりますが、これはあまりにも煩瑣でありますので、これは全部地方の坑口開設の特別の委員会に全部これをおまかせしまして、それで東京の委員会としては基本となります基準だけをきめていただく、こういうふうに行政の簡素化をねらったわけでございます。なお、鉱山保安法第二十五条の命令に基く坑口開設工事というものは、これはこの法律が当初制定されました当時におきましては、鉱山保安法第二十五条に基きますたとえば通気口を開くというような保安命令というものが非常に広範に出されることはあまり考えておられなかったのでありますが、最近におきます保安のいろいろな重要性にかんがみまして、鉱山保安法第二十五条というものは、相当発動されてくるということを期待しておるわけでございます。その場合に一々保安上の必要によって命令されました坑口開設について、一々許可制度をとるということは矛盾がありますので、これをはずしておるわけでございます。  次は、未開発炭田の開発でございます。  (六) 未開発炭田の開発    未開発炭田の開発に関する規定を追加することとし、その内容は次の通りとする。  (1) 地域の指定及び指定地域の調査   (イ) 通商産業大臣は、石炭の鉱床の状態、地質の状態その他の自然条件及び立地条件に関する調査を行い、その調査の結果に基いて石炭資源の開発が十分に行われていない地域であって、石炭鉱業の合理化のためにはその開発を急速、かつ、計画的に行う必要があると認められる地域を指定することができる。この場合においてあらかじめ石炭鉱業審議会の意見を聞くものとする。   (ロ) 通商産業大臣は、前号の調査のため必要があるときは、その職員に他人の土地に立ち入らせることができる。   (ハ) 前号により他人の土地に立ち入る職員は、調査のためやむを得ない必要があるときは、障害となる植物を伐採することができる。   (ニ) 前二号の行為により損失を生じたときは、国は損失を受けた者に対し補償するものとする。  これは、あとの規定は土地収用法等の規定と同じでございますが、ここで新しい措置をとりましたのは、特に通商産業大臣がこれから積極的に、かつ、重点的に開発していこうとする地域に対しまして、まずその調査を行いまして、その調査の結果に基いてその地域を指定するという措置をとったわけでございます。その地域を指定しますことによって生じまする法律上の効果というものは、法律上の効果、言いかえますると、その地域内に鉱業権を持っておりまする者がどのような制約を法律上こうむるかということは、そのあとの開発計画の届け出というところに現われて参ります。その調査費といたしまして本年度四千万円の調査費をちょうだいいたしまして、本年度の最初の年の計画といたしましては北海道の釧路地域と九州の有明地域の開発調査、これをやっていきたいと考えております。今後さらにどういうところを指定地域として考えているかと申しますと、宇部の東洋鉱区、それから北海道石狩炭田及び天北炭田、これらの地域を今後引き続いてやっていきたい、こう考えております。  それから開発計画。  (2) 開発計画   (イ) 通商産業大臣は、前項により地域の指定をしたときは、遅滞なく、石炭鉱業審議会の意見をきいて、その指定をした地域(以下「指定地域」という。)の石炭資源の開発に関する計画(以下「開発計画」という)を定めるものとする。   (ロ) 開発計画に定める事項は、次の通りとする。    (a) 石炭資源の開発に関する目標    (b) 石炭資源の開発のため実施すべき工事に関する事項    (c) その他石炭資源の開発に関する重要事項  これは、まず役所側が、通商産業大臣が基本的な開発計画を(a)(b)(c)の三項目にわたって樹立するわけであります。この開発計画に基きまして、後に述べますような、各業者が開発計画に基いた具体的な工事の届出をする、事業計画の届出をするという建前をとっております。  第三に、いろいろ論議のありました鉱区の調整の問題を規定したわけでございます。  (3) 鉱区の調整   (イ) 通商産業大臣は、指定地域内の鉱区がさくそうする地域において、採掘権の譲渡または採掘鉱区相互の間の鉱区の増減を行うことによって、その地域の鉱床の急速かつ計画的な開発を行うことができると認めるときは、当該鉱区にかかわる採掘権者に対し、採掘権の譲渡または採掘鉱区相互の間の鉱区の増減の出願について協議すべきことを勧告することができる。   (ロ) 前号の規定による協議をすることができず、または協議がととのわないときは、当事者は通商産業大臣の決定を申請することができる。   (ハ) 通商産業大臣は、決定の申請があったときは、当事者及び利害関係者から意見書の提出を求めた後、石炭鉱区調整協議会の意見を聞いて、採掘権の譲渡または採掘鉱区相互の間の鉱区の増減の決定を行うものとする。   (ニ) 前号の決定があったときは、当事者の間に採掘権の譲渡または採掘鉱区相互の間の鉱区の増減について協議がととのったものとみなす。この場合、対価を支払うべき者が対価の全部の支払または、供託をしたときは、通商産業局長は、採掘権の移転    または変更の登録を行うものと    する。   (ホ) 前各号の外、処分の禁止、決定手続等所要規定を鉱業法の規定に準じて規定するものとする。  この鉱区の調整は、現行の鉱業法におきましてもある種の鉱区調整を行い得る規定があるわけでございますが、それはなかなか条件が相当厳格でございますし、さらに役所側の権限といたしましても、通商産業局長がこの鉱区調整について勧告することができるという規定にとどまっているわけであります。これを特にこれから積極的に開発していこうという地域につきましては、鉱区調整をやります条件を比較的ゆるやかにいたしまして、と同時に、通商産業大臣の権限としては決定まで持っていくことができる、こういうふうに強くしたわけでございます。これは旧鉱業法におきまして、未開発の鉱物は国の所有であるという規定がございまして、現在の鉱業法におきましても、あとに述べますように、事業着手の義務というようなものが存在している精神からいたしましても、合理的な開発を行うために、一定の地域につきましては特に鉱区調整までやって積極的な調整をやるということは妥当な措置であろうと考えているわけであります。  (4) 事業計画の届出及び事業着手義務   (イ) 開発計画が定められたときは、当該指定地域内の採掘権者は、三月以内に、開発計画に準拠して、当該鉱区における石炭資源の開発に関する事業計画を定めて通商産業大臣に届け出でなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。   (ロ) 前号の事業計画には、次の事項を定めなければならない。    (a) 石炭資源の開発のため実施すべき工事に関する事項    (b) 前号の工事が完了した場合における生産数量、生産能率及び生産費の見込    (c) その他通商産業省令で定める事項   (ハ) 通商産業大臣は、開発計画の円滑な実施をはかるため必要があると認めるときは採掘権者に対し、事業計画を変更すべきことを指示することができるものとする。   (ニ) 石炭については鉱業法第六十二条の事業着手義務が適用除外されているが、地域の指定があったときは、指定地域内の採掘鉱区にかかわる採掘者についてはその適用除外を廃止し、事業着手義務を復活させるものとする。  先ほど申し上げました通産大臣が基本的な開発計画を立てますというと、その開発計画に準拠して、その地域指定を受けました地域内に鉱区を持っております鉱業権者はそれに準拠した事業計画を届け出なければならないということを規定いたしております。その届出に対します役所の措置といたしましては、必要があると認める場合には採掘権者に対して通産大臣が事業計画の変更の掲示をすることができるということをうたっているわけでございます。さらに鉱業法第六十二条は鉱業権が設定されまして、六カ月以内に正当の理由がなくして事業に着手しなかった場合には鉱業権を取り消すことができうるという規定になっておりますが、この合理化法が昭和三十一年に制定されましたときは、むしろ石炭の生産を合理的に調整していこうという立場が非常に強い法律でございましたので、着手義務を置いておくことは非常に矛盾いたしますので、石炭鉱業につきましては着手義務を全面的にはずしております。言いかえますと、全国の石炭業者は鉱業法第六十二条の事業着手義務を持っていないわけでございます。ところが、今度はある地域に限りましては、積極的に開発さしていこうという意味におきまして、その地域に限って六十二条の事業着手義務を復活したわけでございます。  最後に、石炭鉱区調整協議会でございますが、  (5) 石炭鉱区調整協議会   (イ) 通商産業省に石炭鉱区調整協議会を設置する。   (ロ) 石炭鉱区調整協議会は、通商産業大臣諮問に応じ、指定地域内における鉱区の調整に関する重要事項を調査審議する。   (ハ) 石炭鉱区調整協議会は、五人以内の委員で組織する。  鉱区調整というのは、いろいろと利害関係を含みますので、これはあくまでも客観的な第三者的な学者の方にお願いしたい、こういうふうに考えております。  以上簡単でございますが、要綱について御説明申し上げたわけでございます。
  101. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 以上で本案の説明は終りました。  これより質疑を行います。御質疑のある方は順次御発言願います。
  102. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 初めに、内容でないのですが、大臣にお尋ねいたしますが、これを見ると、石炭鉱業合理化臨時措置法と書いてありますから、臨時立法のようですが、こう区切って小出しに出て来ると時限立法のようにもなりますが、一体これはどういうことなんですか。臨時立法ですか、時限立法ですか。
  103. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) この法律は、先ほど説明いたしましたように、昭和四十二年度までという期限が限られておりますのと、まあ鉱業法その他一般法から見ますと、特別の地域に限って適用するというような点等を考えまして、まあ臨時立法であるというふうに考えてこの表題は直さなかったのであります。
  104. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 大臣は経済人でございますから、法学者でないので、私追及しませんけれども、こう区切って出て来るのは臨時法ということには私はならぬと思う。  それと、その次にお伺いすることは、本法が三十年にできたときの精神と、改正とはいいながらも、大眼目ががらりと変るのですね、ですから単なる改正ということになるかどうか。一部分を変えても、しかし大問題のあったところを変えるのですから、この点についてはいかがでしょうか。   〔委員長退席、理事青柳秀夫君着席〕
  105. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) その点は、先ほど石炭局長も御説明いたしたのであります。なるほどこの合理化臨時措置法を定めました当時の情勢とただいまの情勢とは違っております。また、いわゆる合理化の内容につきましては、あるいはお話のようにがらりと変っておるかもわかりません。しかし、あくまでも合理化という範疇に入るものとわれわれは考えておるのであります。一面におきまして、非能率なものを整理していく、その反面に経営を合理化していく、いずれにいたしましても石炭鉱業としましては合理化をやっていくという精神には変りはありません。従って、こういうような一部の改正ということでお願いをいたしておる次第でございます。
  106. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 次にお伺いするのは、今まで三十年から約二年何カ月ですか、三年になりますが、その間にこの本法によって幾つの炭鉱が買い上げられて、幾つの事業所が閉鎖になって、その人員と、大体三百万トンくらいのトン数の山を買い上げたというように聞いておるわけですが、当局のお調べではどのくらいですか。
  107. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 本年の三月中旬の記録によりますと、買い上げの整備事業団に対します買い上げの申し込み炭鉱が百五十七炭鉱でございます。事業所の数は今ここでつまびらかにしておりませんが、百五十七炭鉱であります。その出炭の規模は三百六万五千トンでございます。このうち契約がすでに締結を終ってしまいましたものが九十七炭鉱、その出炭規模は百八十一万一千トンでございます。で、この企業に従事しておられた労働者の数は一万二千二百五十八人という記録になっております。
  108. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 この計画でいきますと、大体昭和四十二年までですが、昭和五十年まで大体石炭に換算してこれは原子力も入るかもしれませんし、重油から軽油からいろいろな石油から入れまして石炭に換算すると一億五千万トンに対応する分のカロリーが必要だという御計画があるやに承わっておるのですが、そのときの石炭の必要とする量は大体どのくらいのトン数になるわけですか、お伺いいたします。
  109. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 新長期経済計画によります数字によりますと、石炭といたしまして昭和五十年に所要いたしますのが一億二百四十八万トンという数字になっております。これは国内炭の生産及び輸入炭を加えての数でございます。このうち国内の石炭の生産を先ほど申し上げました七千二百万トン見まして、これに対応いたします輸入炭を二千二百四十八万トンと、こういうふうに推定いたしております。
  110. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 政府御当局も御承知の通り、この法案出発当初は石炭不況で、将来の見通しに立って法案を作られたかどうかわかりませんが、とにかく中小炭鉱の低品位炭の山、能率の上らぬ山、そういう山を一切整理して、そうして小口等を整理して、新鉱開発をやって石炭のコストを下げると、こういうまあいろいろな構想があったわけですけれども、しかし逆になってしまって、その当時買い上げた山も、今、局長の御答弁の中にありましたが、買い上げた山が百五十七あるけれども、半面に買い上げた山に匹敵するような中小企業の小の方がかえって逆にふえておるという現象もございます。あるいはコストを下げるのだ、標準炭価をきめるのだということを強くそのときも政府当局が言明しておるようでございましたが、一向下っておらぬ、かえって何割か高くなっておるという現状なんで、今まで法のねらってきたところがほんとうに生きておるかどうかということについて私は疑問を持っておるわけですが、しかしそういう点についてはどういうお考えを持っておられるか、お尋ねいたします。
  111. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) 先ほど申しております通り、当時と事情が非常に変っておるのであります。あとで局長から御説明いたすと思いますが、しかし出炭なり能率は上ってきておるのであります。また価格につきましてもこれは、一般の物価が上ってきておりますために、結果においては価格は上って参っておりますが、しかし合理化による効果は確かに価格の面にも現われておるわけで、もしこういうことをやらなかったとしましたら、もっともっと上っておったと、こういうことに相なると思います。ただ、それほど期待されただけの価格に下らななかったという面は確かにあるのじゃないかと思いますが、今後につきましてはそういう点も十分考えながら極力価格は安くし、また能率を上げて増産をするという意味におきまして、合理化ということは先ほど来申し上げておりますように、あくまで合理化をし、また時代の要請にこたえて増産をしていくというふうに考えておるわけであります。従来の経過につきましては、詳しい点は局長から御説明申し上げます。
  112. 村田恒

    政府委員(村田恒君) ただいまの御質問は、第一点はこの法律が昭和三十年施行されて以来の合理化の効果はどうかということが第一点、第二点はそれにもかかわらず、なお中小炭鉱が逆にふえておるという現象があるではないかという点が第二点、第三は、標準炭価を下げる下げると言っておりながらさっぱり下がらぬではないかということが第三点、こういうふうに了解いたしました。まず第一点の合理化の効果の問題でありますが、これはこの法律を制定いたしましたときには、昭和三十四年度におきます合理化の目標をまず定めたわけでございまして、そのときの目標は、生産数量は四千九百五十万トン、これはその後五千七百万トンに変えられた、生産能率は一八・四トン、それから生産費は三千二百三十円で、先ほど申し上げましたように買い取り炭鉱は三百万トンを目標にする、こういう目標を立てて昭和三十年からスタートしたわけであります。ところが、昭和三十年におきましては法律が制定されたばかりでありまして、十分な効果は上らなかったわけですが、その意味におきまして三十年におきます合理化の実施計画は生産において四千三百万トン、能率一三・五トン、合理化工事費は百三十七億円というふうに考えたわけでございます。これに対します実績を申し上げますと、生産は四千二百五十一万トン、それから能率は一二・九トン、それからなお合理化工事の百三十七億に対します実際の投下されました資金というものは約八〇%、非常にまだ合理化の効果は低かったわけであります。昭和三十一年に参りまして、合理化の実施計画の面を申し上げますと、生産が四千八百万トン、これに対しまして実績は四千八百二十八万トンの生産実績を上げております。また能率は一四・五トン程度でございまして、これに対しまして実績は一四・二トンでございますが、低いように思われるかもしれませんが、もしそのときのストライキというものを考慮に入れませんと、一四・四トンという能率を上げるわけであります。合理化の工事の資金といたしましては百六十一億四千六百万円というものを計画いたしましたのですが、実績といたしましてはこれを上回りまして二百二億九百万円という合理化の資金を投入しております。それから三十二年は、これは昨年の五月の告示によりまして計画を立てましたが、そのときの生産の計画は五千二百七十万トン、能率は一五・五トン、工事のための費用というものを二百七十六億六千六百万円、こういう計画を立てたんでございますが、実績はおそらく生産は五千二百三十万トンくらいになるのではないか、優に五千二百万トンを上回ると考えております。能率も一五・五トンに近いものになるだろうと考えております、これはまだ完全な結果は出ておりませんが、そう見ております。特に合理化のための設備投資の意欲というものは非常に活発でありまして、二百七十六億六千六百万円の計画に対しまして二〇%上回った投資が行われる、こういうふうに見ております。  それから次に、中小炭鉱が逆にふえておるじゃないかという点でございますが、これは確かに一時炭況の非常にいいときに石炭鉱業で一般の例に漏れず中小炭鉱が若干ずつふえて参っておるということも事実でございます。また大手から租鉱権をもらいまして、それによって事業をやっていくというものもふえております。そういう意味において若干ずつ中小炭鉱がふえておりますが、これは合理化法の鉱口開設の許可というものがこれに対して相当厳格に適用されておりますので、そう能率の低いものは許可されていくということにはならないと考えております。  最後に生産費の問題でございますが、これは年々下らないではないかというお話でございますが、これは特に昭和三十二年度のような場合には、その経済変動が上期と下期において激しかったそれに伴う一般物価の値上り、資材費等が高騰いたしまして、またごく一般的なそれ以外の諸要素のいろいろな高騰もございまして、なかなか思い通りには、御希望通りは下っておらないのでございますが、これは今後の標準炭価の費用等におきまして極力低いところで、しかも長期に安定した値段というものを定めていきたい、こういうふうに考えております。   〔理事青柳秀夫君退席、委員長着席〕
  113. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私のお尋ねしておるのは、今までやってきたことでなくして、効果が上ったかどうかということをお尋ねしておるんです。ですから通産大臣の御答弁の、これをやったから上りが同じ上ってもあまり上らんが、これをやらなかったからまた上ったというような意味の御答弁ですが、これは実に私は遺憾だと思う。百五十炭鉱買収したというけれども、新しく二百もふえておるんですよ。それからまた、とにかくコストが高くなっていく、一般物価が高くなったからこんなに高くなったとおっしゃるけれども、それは通産大臣と河野経済企画庁長官見解の相違がそこにも出ておるんですね。河野さんのお話だと、絶対に上りませんと、だから電灯料金を上げないということ、これが通産大臣のお話ですと、石炭が上ったのにそれに準じて上ったというお話ですが、しかしそういうことでなしに、とにかく買った炭鉱がふえておるんですから——日本中でこの法律を作ったときの炭鉱の数より今の方が多いんですよ。それから、当時六十八本縦坑をおろすといって出発したその当時の計画の縦坑から一トンも石炭が出ておりません。ですから、そういう答弁は私は理屈なしにむちゃくちゃだと思う。  その次に、それに関連してお伺いしたいんですが、これは大臣、長期経済計画に基いてやられるわけですね。長期経済計画に基いてやられると、そうするとさいぜんの局長の御説明の中で未開発炭田の急速にしてかつ迅速に開発をやって、そうして合理化する、こうおっしゃるのですが、本法案だけで大体局長の御説明あった、ねらっておる点を十分に裏づけするような仕事ができるかどうかということですね。政府はもうとにかく三年に一ぺんくらいずつ法律を変えるんですから——もちろんこれは経済立法ですから、それは一つ法律を作ったら十五年も動かさないというわけにはいかないでしょう。しかし、少くとも基幹産業である石炭産業の法律をネコの目玉のように毎年々々変えるという、あるいはことしは五千二百万トンだといっても少し景気がよくなったから六千万トン掘ってくれ、六千万トン掘ったら一千万トン余ったというような状態が今までの状態だったので、本法で局長が御説明あった、ねらっている点が果して可能であるかという点をお尋ねいたします。
  114. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) 先ほど中小炭鉱がむしろふえたじゃないか、こういうことでありますが、先ほど局長説明しましたように、非能率なものは整理するということでありまして、必ずしもその数を縮小するという考えではなかったようであります。また価格につきましては、私は今までの経過を言ったのでありまして、今後におきまして価格を押えていかなければならぬ、一般物価も押えていくというふうに考えておりますので、今後におきましてはあくまで安定した価格で、しかも低廉にやっていきたいというふうに考えておるわけであります。従来は、ただいまも御説明申し上げましたように、一般物価も上っておりますし、賃金も上るという関係で、その割に上ってはおりませんが、絶対額で言いますと上ってきたということであります。しかし、将来につきましては、一般物価も下げていかなければなりませぬ、また石炭につきましても下げていかなければならぬ、それにはあくまで合理化された今後の増産態勢を作っていかなければならぬ、それが新炭田の開発ということによりまして、一方におきまして合理的な鉱区の調整もやり、そうして合理的な掘り方をするとともに、また能率的な掘り方をやって、そうしてそれによって石炭の価格を下げていこう、その一面におきましてただいまお話のように、ややもすると、非常に短期におきましてはいろいろな変動があるわけであります。まあ、長期で考えていきますとそれほどでもありませんが、ある程度小波乱は免れないのであります。しかしそれに対しましても、やはりそういう波動の少いようにということを今後も考えていかなければなりませぬので、あるいは長期契約によるとか、あるいは貯炭場をふやしていくとか、そういうようなことによって調整を加えて、あくまで安定した価格で、しかも低廉な価格でいきたいというのが今回のねらいであります。
  115. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 次に、本法に基いて出発したのですが、石炭鉱業整備事業団というものがあるのですね、この事業団の仕事は、さいぜん局長説明の中では、三百六万トン買収したというお話でしたから一応所期の目的が達せて、必要がなくなったということになるのでなかろうかと考えておるのですがね。これは一体どういうことにするか、現在の構想があれば……、やめさせるとか、残しておくのだということについてお尋ねいたします。
  116. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) この法律におきましては、三十五年八月に最初の計画通りに一応終了するという建前をとっております。しかしその後におきまして、いろいろな状況いかんによりましては、今後考えていかなければならぬ場合も起るのじゃないかというふうには考えております。
  117. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 いや、そうすると、まだ三十五年の八月まで有効であるから事業団も残しておくということなのですか。一応所期の目的を達したからその以前であっても、整備事業団を整理するということになるか、その点をお尋ねしておるのです。
  118. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 整備事業団は今申し上げましたように、三百六万トン、で当初の目標の三百万トンの買い取りというものはおおむねその所期の目的は達したわけでございますが、なお仕事はたくさん残っております。たとえば債務処理の問題にいたしましても、買収いたしました鉱業権、あるいはいろいろな機械等の処分、その他の仕事が幾らも残っております。それで法律建前として三十五年八月でなくなるわけでございますが、これを三十五年八月にその仕事としては一応打ち切りましたとしましても、なお残務整理というものは相当残っていくわけでございます。それからこの法律の中で、特にこの整備事業団の規定を現行法通り三十五年八月で切りました理由は、今も申し上げましたように、一応三百万トンという目標は達成したということと、さらに御承知のように、これは開発銀行の約定金利が九分でございまして、その実際上貸付が六分五厘、その差額の二分五厘というものが納付金として出ております。そのほかに出炭トン当り二十円というものが、これも納付金として買い取りの財源として使われておるわけでございます。出炭トン当り二十円というものは、これはまたいろいろ業界との話し合いで片づくことがあろうかと思いますが、三十五年八月以降におきまして、開銀の金利六分五厘を据え置くか、あるいはそれ以上に上げるか、もっと下げるかということにつきましては、この改正案をお願いいたしますまでには結論は得られません。そのためにその分は一応はずしたわけでございます。しかしながら、今大臣が申し上げましたように、今後におきまして整備事業団を直ちに整理してしまうかどうかという問題は、これは大きな研究問題でございまして、今後もあるいは買い取らねばならない炭鉱が出ないということはだれも保証できないと思います。それでこういう制度はいい制度でございまして、鉱害の復旧にいたしましても、あるいは労務者の、たとえば未払い賃金の整理にいたしましても、そういういろいろな観点からいって、石炭業界が一つの共同的な行為としてこういうものを持って、自分たちが全体として自分たちのやった仕事に対する跡始末をするという考え方は非常にいい考え方でございますので、できるだけこういったものはさらに関係方面ともよく協議いたしまして今後の措置をどうするか慎重に決定したいと、こう考えております。
  119. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 ただいまの局長の御説明と関連して、もうすでに本年度も、今まで上昇ぎみだった炭界がいわゆる不況だとか、将来の見通しが必ずしも明るくないと、こう言われておるわけですね。従いまして、本年度は一体どういうことになるか、まあ今から聞いてもどうかわかりませんけれども、やはり省当局としては御計画があろうかと思います。それを若干やはりお尋ねしておかないと、この不況だということによって事業所が直ちに閉鎖あるいは鉱員の首切り、こういう問題が次から次へと起きて参りまして、省当局で石炭を掘れといって掘ったものを石炭が売れないために現場がなくなって首切りが出て、やりたくないストライキをやらなければならぬというような、つまらないことまで発生しますので、いかなる御計画で今年度いかれるのか、あるいは貯炭が過剰になった場合、政府が、河野経企庁長官お話ですと、これは新聞で見ただけですからこの通りおっしゃったかどうかわかりませんけれども、四百万トンか五百万トンの買上炭を行うというふうな記事も見たのでございますので、その点お尋ねいたします。
  120. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 基本的に申しまして、本年度の鉱工業生産は昨年に比較いたしまして、四・三%上昇するというふうに想定されておりますので、これに基いて私どもは石炭の数字をはじいているわけでございます。これによりますと国内製炭の需要量を五千六百五十万トン程度、こう見ております。一方これに対します生産は五千六百万トン程度にとどまる、そこで五十万トンの貯炭のはみ出しというものによって需給のおおむね均衡をとらせたい、こういうふうに考えております。ただ問題は、今後におきまする豊渇水の関係、特に一番大事な電力用炭、豊渇水期の関係とか、あるいはいろいろな経済変動もあるかと存じますので、そういうようなもし事態に備えまして、恒久的な対策としてあくまで七千二百万トン態勢をくずさないためには、先ほど大臣から申し上げましたように、たとえば共同貯炭場の設備を拡充して、現在電力会社が持っております全国の三百十万トンの貯炭能力はこれをさらに引き上げていきたい、いくような措置をとる、あるいは石炭業界の方でも貯炭対策というふうなものを考えておりますので、これらを総合して今後需給のバランスを失しないように措置をとっていきたい、こう考えております。御参考までに申し上げますと、われわれの計画の基礎になりました、先ほどの四・三%の伸びというものを基礎にして、各部門の石炭の配炭を考えました場合に、電力につきましては昨年度に対しまして一四〇%、ガスについては一〇九%、セメントにつきましては一〇八%、鉄鋼は一〇三%、その他一〇二%というふうな伸びと、石炭の消費の伸びというものを基礎としてに考えております。
  121. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 本法と関係ございませんけれども、今の衆議院を通過して私ども委員会に今度くることになっております北海道地下資源開発株式会社法案というのがございますね。この法案の内容をまだ政府当局に質問しておりませんのでよくわかりませんけれども、とにかく内容を読んでみますと、二億円の金を政府が出資して、一億円をそれぞれ業者から出してもらって、三億円で出発する、こういうことなんです。もちろんこれは石炭ばかりでなくてメタル山ですね、金、銀、銅、鉛、こういうところもやはりそうですが、しかし私どもの考えでいきますと、北海道の場合はほとんど炭鉱が多い、従って炭鉱が主であるという見解らしゅうございます。そうしますと、さいぜんこれも局長の御説明の中にございました白糠炭田が二千万円、九州の有明海に二千万円等で、それぞれ事業をなさるというその金に一億円ずつ、北海道一億、九州一億出してやられるのが最も合理的で、かつ本法案趣旨に沿うのではないか、私はこう考えておるわけです。もちろんこの衆議院の方には国土開発委員会というのがございまして、これは商工委員会でやっておらぬようで、たまたま私どもの方の委員会には国土開発委員会というのがございませんから商工委員会でやることになるらしゅうございますけれども、しかしどうもこういうことを考えてみますと、北海道の国土開発の方で大体三億円ぐらいのはした金では一体何ができるか、ボーリング三本ぐらいおろしてしまえば大体人件費や何かで終ってしまうのではないかということを私は考えているわけです。これに対して、石炭産業の元締めである石炭局長はどういう御見解を持っておるか、一つお尋ねいたします。
  122. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 北海道の地下資源開発は、今お話のように、これは石炭だけでなくして、そのほかのメタル山、あるいはガスその他の全部の開発をやるということの考えを含んでおります。これに対しまして私ども、しかもその事業のやり方としましては、これはあくまで一つの事業体としてボーリングを打って、たとえば石炭の場合につきますと、ボーリングを主体としてやっていく計画のように法案では拝見しております。言いかえますと、現在の日本の、たとえば一般に商業ベースで存在しております利根ボーリングといったようなもののボーリング能力がまだ国内的に不足しておるのであって、そのボーリング能力を充足していくということがあの法案によって達成されるのじゃないかと考えております。これに対しまして、今度お願いいたしました総合未開発炭田の総合的な開発という考え方はあくまで国が、府政が一つの基本的な計画に基いて立て、国がその必要な調査を実施するという建前でございまして、これはいわゆるコマーシャルベースに乗ってやるわけではありません。しかしながら場合によりまして、北海道地下資源開発会社が、この政府でもって実施いたします調査の地域にあります鉱業権者からさらに委託を受けてボーリングを請負と申しますか、契約ベースでもってボーリングを実施するということを全然妨げるものではありません。
  123. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 もちろん向うは一つの株式会社になって、地下資源の探鉱の請負会社ですからそれは違うということは明確です。ただ同じような、類似した、関連した仕事をそちらの省で管轄してやる、あるいは違った省で管轄してやるという、こういうことについて私は賛成できないわけであります。そこでなぜ、そういうことをやるのであれば通商産業省で肝いりしてやらなかったか、私はこう考えるわけです。特に北海道地下資源開発株式会社の今度の提案者は石井副総理ですから、河野さんと私どもの前尾通産大臣と合わないというなら話はわかりますが、石井さんと前尾さんと大体話が合って、それでは一緒にいこうじゃないかという話になるのが私は常識だと思ったのです。それを二つに切り離すということは、どうも金を小さく切って使うということは能率が上らぬように判断するわけですが、そういうことは全然ございませんか。
  124. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) その関係につきましては、いろいろ従来の経緯もあったと思います。しかし今度できますにつきましては、決して何ら争いもなしに、共管ということでいっておるのでありまして、御承知のように、あれは地下資源全体にわたっておりますのと、北海道という地域に限られたローカルの問題もありますので、共管であればこの法律とも別に抵触するものではないというふうに考えておりますので、全く両者協力してやっていこう、こういうことであります。その点御了承願いたいと思います。
  125. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 時間もおそくなりましたし、委員の方も少くなりましたので、大体私最後に一点だけお伺いいたしまして、あとの質問は後刻に譲りたいと思います。  実は、通産省で御承知かどうかわかりませんけれども、水洗炭の問題で法案衆議院の自民党と社会党の両党一致した議員提案としてこれが出ているわけです。これがまた、これも私ども委員会にかかるようなんですが、とにかくさいぜんも申し上げましたが、幾ら炭鉱は減らそうとしても、逆にふえるというのが現状でございまして、そこでまた、この水洗炭を今、現在でもやっておるわけですから、これをよくやらそうというのがこの法案のねらいのようですが、しかし逆に、考えようによっては、金も何もなくして厳重に取り締れといっても、通産当局がやろうとすれば、非常に困難なお仕事だと私は思うのであります。ですから、直接これは本法律関係ないようでございますけれども、こういう問題に対してはどうお考えになるか、これを最後にお伺いいたしておきます。
  126. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) この問題につきましては、従来通産省としては、取締りについての十分な責任が持てぬのじゃないかという危惧の念から率直に言いますと、乗り切れなかったわけであります。しかし、議員の方がその必要性を認められ、またもうすでに衆議院でも提案をしておりますので、われわれとしましても、御趣旨はまことにごもっともなことなので、極力協力もし、実施に当りましては努力をいたしたい。ただ、お願いしておきたいことは、府県当局がやはり相当責任を持ってやってもらうということでありませぬと、実効がなかなか上らぬのじゃないかということを心配はいたしておりますが、われわれとしましても、できるだけのことをやり、また、この法律に対して十分協力をしていこう、こういうふうに、ただいまではみんなそういう気持ちでおります。
  127. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 時間もありませんから一点お聞きしたいのですが、これは、本案に関連してなのでありますが、日本の石炭のうち、特に粘結炭は、これは年々相当輸入に期待をいたしておるわけなのでありますが、これは、インドとか何か遠い所だと、なかなか日本の技術援助とか資金援助ということもむずかしいのでありますが、しかし、一衣帯水にあるような隣接地区に対しては、政府相当考慮を払って私はいいんではないかと思う。その一つの例として、台湾の南昌炭の問題がございます。これはもうすでに八幡、富士の代表が調査をされております。それから技術的な関係から言いまして、北海道の羽幌炭鉱から技師が何人か一年か半年行っておるはずなのであります。それで、南昌炭鉱の経営者も相当な犠牲を払って、そうして何とかこれは日本に一つ開発してもらい、同時に、日本に買ってもらいたいということを非常に念願していたわけなのでありますが、その後一体どういうような状況になったのか、もしこれができれば、日本の足らない粘結炭の上にも非常にいい結果をもたらし、それと同時に、両国の親善と経済提携という点においても相当プラスになるのじゃないかと思うのだけれども、一向その後状況を聞いておらないのでありますが、実際はどうなっておりますか、これを一つお伺いしておきたいと思います。
  128. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 南昌炭の従来の開発が比較的進まなかった一つの理由といたしましては、鉄道の問題があると思います。ところが、最近蒋政権におきまして、相当鉄道も積極的に敷いてくれたようであります。今お話がございましたように、技術者も幾人か参りまして、今実態を確認いたしております。その品質は、これも今お話がありましたように、過去においても十分に調査済みで、相当良質のものでございます。問題は、今後向うから確定いたしました炭量がどの程度、これは単なる埋蔵炭量というだけでなくして、経済的な可採炭量がどのくらいになるかということをもう一回確認いたしたいということが第一点、第二点は、日本に持って参りましたところの価格、主として向うの労賃等が影響すると考えますけれども、ただいま向うの計画へ出ております労賃のベースが、果して今後その通り推移するかどうかということが大きな問題だと思います。その意味におきまして、C−F価格のいかんによって、これは需要者側であるところの製鉄三社等がどの程度これに対して熱意を示すかということが、これからもう少し精密に調査を必要とするわけであります。石炭局におきましても、これは熱心に業界と協力して調査を進めておる段階でございまして、結論的に申しますと、今非常に熱心に検討中である、資料等がもし必要でございましたら、後刻御説明に参ってもよろしいと考えております。
  129. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それで、諸条件が整えば、これは大臣にお伺いするのでありますが、政府として相当協力をなさる御決心であるか、その点、一点お伺いしたい。
  130. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) まだ、ただいま申し上げたような段階でありますが、われわれとしまして、良質のものであり、しかも低廉で入るということであれば、大いに協力いたしたいと思います。
  131. 近藤信一

    委員長近藤信一君) それでは、本日は、この程度にとどめ、次回は明日午後一時に開会することにして、本日は、散会します。    午後四時十四分散会      —————・—————