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1958-04-03 第28回国会 参議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月三日(木曜日)    午前十時二十八分開会   —————————————   委員異動 三月二十九日委員大谷贇雄君辞任につ き、その補欠として大野木秀次郎君を 議長において指名した。 三月三十一日委員大野木秀次郎辞任 につき、その補欠として紅露みつ君を 議長において指名した。 四月一日委員紅露みつ辞任につき、 その補欠として大谷贇雄君議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     近藤 信一君    理事            青柳 秀夫君            古池 信三君            阿部 竹松君            相馬 助治君    委員            大谷 贇雄君            小澤久太郎君            小滝  彬君            小西 英雄君            西川平治君            高橋進太郎君            高橋  衛君            海野 三朗君            椿  繁夫君            豊田 雅孝君            大竹平八郎君   国務大臣    通商産業大臣  前尾繁三郎君    国 務 大 臣 正力松太郎君   政府委員    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁企画    調整局長    鈴江 康平君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君    通商産業省石炭    局長      村田  恒君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理化学研究所法案内閣提出、衆議  院送付) ○石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を  改正する法律案内閣送付予備審  査) ○日本貿易振興会法案内閣提出、衆  議院送付)   —————————————
  2. 近藤信一

    委員長近藤信一君) これより商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。三月二十九日大谷贇雄君辞任し、その後任として大野木秀次郎君が選任され、同月三十一日大野木秀次郎君が辞任し、その後任として紅露みつ君が選任され、また、四月一日紅露みつ君が辞任し、大谷贇雄君がその後任として選任されました。   —————————————
  3. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 次に、先月三十一日委員長及び理事打合会を開き協議いたしました結果、本日は午前中まで理化学研究所法案審議し、午後からは石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案提案理由説明聴取及び日本貿易振興法案審議をいたしたいと存じますので、さよう御了承願います。   —————————————
  4. 近藤信一

    委員長近藤信一君) それでは、これより理化学研究所法案を議題といたします。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  5. 海野三朗

    海野三朗君 私は正力国務大臣が、非常に科学技術振興ということについて、なみなみならぬ努力を払っていらっしゃることは、まことに敬服にたえない次第であります。しかしながら、国務大臣のお考えは、ぜひ必要であるという点については、私はさらに疑念を持たないのでありまするが、これを実際に行なっていく段になりますというと、いささか危惧にたえない点があるのでありますから、この点について私は二、三お伺いをいたしたいと存じます。  この前、原子力研究所法審議いたしました際に、正力国務大臣に対し、科学技術研究に関しては、学者研究の自由を尊重しなければいけないということと、基礎研究部門研究を重視しなければならないことを申したのでありますが、このたび、この理化学研究所法案審議するに際しましては、あらためて国務大臣正力さんの自然科学研究に対する基本的な御所信をお伺いいたしたいと思います。で、今度の改正によりまして、この理化学研究所株式会社から特殊法人に改組されることになっておるのでありまするが、これは私はちょうど今から指折り数えますというと、十一年の昔、私は国会でこのことを強調した。株式会社は間違っておるのだ、研究はそうすべきものでないということを述べたのでありましたが、当時進駐軍からの内示があるからと言うて、無理々々これを通してくれという話しでありましたので、私はいや、そういうことであるならば、それは問題が別であると言って仁科君に私は同調をしたのであります。このたび、こういうふうになりまして、いよいよこの特殊法人に改組されることになりましたのは、まことにけっこうなことでありまして、この点については、双手をあげて私は賛成の意を表するのでありますけれども、この政府業務命令を出せるようにしてある、ここが非常な問題であると私は思うのです。業務命令というのは、何が業務であるか。理研の場合にこう申しまするというと、科学技術研究であります。で、この研究に対しましては、業務命令では決していかないのであります。なぜかなれば、研究者にお前はこういうことをやれ、ああいうことをやれと言われても、研究は決してその方向へは進歩しない、進まない、やり得ないのである。研究というものは、何ものをも考えることなしに、まっしぐらに真理探求をしなければならない。この真理探求をしていきます間に、応用というものはあたかも樹木の枝葉のごとくに出てくるのでありますから、そのまっすぐしたもと、根本の態度をゆがめるようなことがあってはならないと、こう思いまするので、この業務命令が出せるようになっているというこの点を、私は非常な心配をするのであります。で、これを簡単に申しますならば、研究の自由、つまり研究を束縛してはならないのだということを私は思いまするが、国務大臣としては、いかようにこの点をお考えになっていますか。業務命令が出せることは、お前はこういうことをやれ、今度はスプートニクをやれとか、いやミサイルをお前これをやれというようなことを、かりに命令されても、とうてい研究効果というものは上らないのであります。この点を、私は業務命令というのはどういう件であるか、その点を私ははっきり一つお伺いしておきたいと思います。
  6. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) ただいまこの業務命令に関する非常に御心配の点はまことにごもっともと思います。申し上げるまでもなく、理化学研究所を今度特殊法人にしたということは、基礎研究を十分やらせる、学者に自主的に研究してもらうことに重き置いておるのであります。従って、ここにただ業務に関するいろいろな設備などについての命令は出しますけれども、研究に対しては、全く学者自主的研究を尊重することになっておりますから、御懸念の点はないように、なお注意いたします。
  7. 海野三朗

    海野三朗君 それから、次にお伺いいたしたいのは、この科学研究所には学位を持っておる学者たちが数十名おります。同様なこの財団法人というような組織でもってやっておる研究所がほかにも多々あります。たとえば東北大学の金属材料研究所、あそこの定年に達した教授たちは、あそこに財団法人研究所を作って、民間からの寄付を仰いだりなんかしてやっておる一つのグループがありますが、ああいうものも将来、将来とは言わぬ、あるいは次の国会にでも、あるいは来年あたりにでも吸収して、やはりその学者の頭を最善に利用しなければならないのではないかと私はこう考えておりまするが、他の研究所に対しましては、いかなる御構想をお持ちになっていらっしゃいますか。
  8. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 私から申し上げさせていただきますが、実はこの理化学研究所一つの姿としまして、理想的な形としまして一つドイツにございますマクスプランク・インスティチュートと申しますか、ああいったドイツ研究所中心機関というふうになりたいというのが一つの理想でございまして、ドイツマクスプランク・インスティチュートにおきましては、単に一個所でなく各方面に、各場所に研究所がありまして、それが組織的には一つ統合体になっているわけでございます。この理化学研究所の将来の姿を考えてみますと、ドイツのそういう形も理想的な形であると考えておるのでありますけれども、ただ、現在の財団法人、個々の各財団法人研究機関には、それぞれの伝統、歴史もございますし、また、その研究者のいろいろな意思もございますので、機械的にこれを統合するということは、かえって研究を阻害するのではなかろうか。それでございますので、まずこの理化学研究所中心になりまして、理化学研究所を、本郷にありますようなものを十分育成いたしまして、りっぱなものに育て上げること、そうして同時に、他の財団法人研究機関等において、あそこと一緒になってやり得るということを当時者も考え、また、客観的にもそういうふうに考える場合には、話し合いによってそういうふうにだんだん競合することも進めていきたい、これは強制的にしては、かえってまずいのではなかろうかと考えるわけであります。
  9. 海野三朗

    海野三朗君 ただいまの話をそのまま信じてよろしゅうございますか、国務大臣にお伺いしたい。よろしゅうございますか。
  10. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) ただいま鈴江局長の言うた話を私お信じになってよろしいと思います。
  11. 海野三朗

    海野三朗君 それから次に私のお伺いいたしたいのは、理研役員政党役員を云々と衆議院では修正しておりまするが、これはそういうものは非常に問題が多いと思うのですね。入れていけないということも言われないし、それなら入れていいと言っても、でありますし、その点については、正力先生いかようにお考えになっておりますか。
  12. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 実はあの規定を入れましたのは、大体今までの慣習というと変でありますけれども、従来そうなっておるのでありまして、しかし、私の考えとしては、政党役員を、今は政党政治の時代ですから、その政党役員を締め出すようにすることはよくないと、私は思っております。それで修正案が出たので、私は喜んで賛成したわけであります。
  13. 海野三朗

    海野三朗君 それからもう一つ、昨日科研を拝見したのでありますが、あれはどうも、廊下を歩いて行きますと、穴蔵に入って行くような感じがいたしました。まっ暗なところを、壁は落ちて、電灯は旧態依然、ここと同様です。(笑声) 研究をいたしますには、さっぱりとした気持にしてやらせるというと、非常に効果が上るものですよ。それでありますから、私はまず科研などを、壁を塗りかえるなり、螢光灯をとりかえるなり、ぱあっとして朗らかな気持にしてやりますと、研究者の頭にいい考えが浮びます。そのことについては、あのままにしておおきになるお考えか。私はきのう行って、実にひどいところだと思って拝見したのです。
  14. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 実はお話しでありましたが、私も実は科研に行きました。行って見て私も驚いた一人です。これはもう今までは、何しろ株式会社であって損をしちゃいかぬという考えであったから、修理をしなかったのでありまして、それがそういうことも、今度の特殊法人にした一つ理由でありますから、あれは至急何とかしたいと思います。お話し通り、あのきたない研究所で、研究も心理的に影響すると思います。実は私自身が同感なんです。さっそく修理か何か講じたいと思っております。
  15. 海野三朗

    海野三朗君 昨日、幾ら金がかかるかと聞きましたところ、約二億かかるという話しでございました。それで二億なんという金は、一ぺんに出されないでありましょうから、やはりわずかながらも、着々おやりになっていただいたらいいのではないかと、こういうふうに考えました。  それから、もう一つ私が大臣にお伺いしたいことは、学者意見を尊重するというお話しでありますが、あの仁科君があのサイクロトロンを作り始めるときに、こぞって反対されたのです。学者のためのもてあそびじゃないかと言われて。それがあにはからんや、それと一緒に作ったアメリカの方では、核反応研究までやっております。それが今日かくのごとき驚天動地の世の中になってきました。それでありますから、政治の方とは違って、研究の方だけは、学者考えは、世の中のちょっと考えでは利益にならないように思いましても、それからとんでもないものが飛び出してくるのでありまして、こういう点を思いますると、各研究員考えを十分生かして、政治的にこれはやるなとか、これはやれとかいうようなことの絶対にないように、一つあなたのはっきりした御答弁を伺っておきたいと思います。
  16. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) お話し通りに、仁科博士サイクロトロンを作ったことというものは、日本の学界の誇りの一つであります。それを進駐軍が占領になると、すぐ品川沖に沈めて、あの沈めたときに仁科博士が泣いたそうです。自分がこれほど心血を注いでやったことを、今品川の沖に沈めるとはと泣いたそうでありますが、私は学者の心理はみなそうであると思いますが、仁科博士のことを思うにつけ、学者研究はどこまでも尊重して、断じて政治的な介入は許しません。私はかたい信念であります。
  17. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 海野君、要点を簡潔にお願いします。
  18. 海野三朗

    海野三朗君 研究員発明については、いかようになさるおつもりでありますか。今まで聞くところによると、発明特許というものは、たとえば科研なら科研が取ってしまって、その人に与えないというふうな方式を、民間会社においてもやっておるようでありますし、官庁においてもやっておるようでありますが、この発明者つまり特許権というものは、その発明者に与えるべきものだと私は思うのです。そしてその会社なり、工場はこれを無制限に使うということにして、やはり特許権というものは、その人に与えるべきものではないかと私思うのですが、その点についてはいかようにお考えになっていらっしゃいますか。
  19. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 発明者研究いたしました結果の特許権については、御承知のように特許法の第十四条に任務発明という規定がございます。要するに研究者がその研究機関の費用によって、また、その研究機関の目的のために、また、その研究することが任務であるという立場において研究いたしました場合には、その雇用主であります研究機関、あるいは国、そういったものの研究機関特許権を譲渡することができるようになっておりますし、それから発明者に対しましては、必ず報償金を出すというような規定があるわけでございます。それで科研につきましても、研究いたします研究者が、科研のために研究をしておるというような場合には、国と同じように特許権はこれを研究所に帰属いたします。そのかわりに報償金を出すわけでございます。それでその報償金といたしましては、国の場合と違いまして、科研の方はかなり国よりはたくさんみておりまして、たとえば十万円以下のつまり研究所がそれによってその発明自分で実施し、また他人に実施させることによりまして利益を生じました場合には、その収益の三〇%までは報償金を与える。これは十万円以下の場合でございます。だんだん金額がはって参りますと、その率は下って参りますのですが、下の方は、十万円以下の場合には、国も科研も同じ率でございますが、たとえば五十万円以上になりますと、国の方は発明者には五%程度の報償金しか出ませんけれども、科研の方は五十万円二四%、百万円において二〇%というふうにまあ非常に研究者を優遇しておる措置をとっております。しからば、どのくらいの金額が実際に払われておるかということを申し上げますと、たとえば昭和二十七年から三十一年まで五カ年間の間に、国の国立研究機関全部でございますが、それについて発明報償金はどのぐらい出ておるかと申しますと、五百七十三万円出ております。これは全部の国立研究機関でございますので、研究者も非常に多いわけでございますが、それに対しまして科研の方の例を見ますと、最近の例としまして、三十二年度、つまり昨年度の科研報償金は全部において五百五十万円、つまり、国立研究機関が五カ年間で与えました報償金に匹敵しますものと、科研におきましては一カ年で出しております。従いまして、研究者の中には、実際理事者等よりも収入において多い方もあるわけでございます。そういったようなことで、特許権科研任務として、科研に与えられました任務としてやっておりますものにつきましては、科研のものになりますが、それ以外の発明をした場合には、もちろん個人の特許権になるわけでございます。これはちょうど国と同じような扱いになっております。
  20. 西川彌平治

    西川平治君 私は大臣にぜひ伺っておかなければならない一つのことがございます。その前に、委員長にお礼を申し上げておきますが、この理化学研究所法案審議に当りまして、委員長は特に科学研究所の内容について、視察をされる機会を与えていただきましたことは、私といたしましては、非常にありがたい仕合せでございまして、実は足を痛めておりまして、ほとんど実は歩行に困難でありましたけれども、委員長さんの特別のおはからいからいたしまして、私は昨日伺ったのであります。そうして伺いまして、科研所長と私は承知をいたしておりますが、村山さんであろうと思いまするが、科学研究所説明を拝聴いたしました。ところが、私は意外なるその御発言に対しまして、驚き入ったのでございます。その理由は、前の理化学研究所所長が非常に失敗をいたしまして、そうして今日科研がこの状態に相なっておるのであるということを申されておるのであります。すなわち、はっきりと申し上げまするが、大正十年に工学博士大河内正敏先生所長となられまして、それから二十一年にいわゆるあの大河内先生がパージになられて巣鴨に入られるまでたしか研究所所長をされておった。三十年になんなんとする間所長をされておったのでありますが、その間のやり方が非常に悪いということを、昨日の説明に指摘をいたしておる。私はこの発言は実にゆゆしい発言であると私は考えておる。なぜならば、私は実は大正の末期から理化学研究所の中に出入りをさしていただいておるものでございますが、当時の理化学研究所というものは、たとえば建物におきましても、あるいは設備におきましてもまことに今の建物状態から考えると、貧弱そのものであったのでありますが、大河内先生は、とにかく皇室の御内納金が百万円出ておるのである。それからまた、年々政府が十万くらいの補助金をくれておるのである、さらに、事業界有力者から百五十万円の出資をいただいておるのであって、この研究所は、いろいろと皆さんが御発明になり、そうしてそれが実際の工業の実施に至っておらない、いわゆる工業化にまでいっておらないものの、中開研究をやらなければならぬために、非常に金が要るけれども、まあ何とかやりくりをしてやっておるのであるということでありまして、着々と金を集めまして、そうして今日の建物状態、今日の設備状態を作り出したのでございます。私はここにおられます局長さんですかと、別室でお話しておりました。今日あすこにありまする建物の、一体今日の村山さんが御説明になられるような、何だか大河内さんが失敗をして、そうしてその跡を引き受けて、自分が何とかうまくやったと、そのうまくやったというような跡が、まず建物の上においても一つも私は見当らない。便所やあるいは玄関や、あるいは必要欠くべからざるところのものは改修はいたしたでありましょうが、大部分がもとのままでありまして、設備は十数年をたっておりますから、あるいは老朽化しておるかもしりませんけれども、あの当時の状態を私は振り返って見ますときにおきまして、十万円の国の補助金も、あるいは十カ年という年限がついておったように私は記憶しております。その十カ年を経過いたしまして、国の補助金もなくなり、いよいよもって理化学研究所経営が困難を来たしたときにおきまして、理化学研究所発明されたものを着々と工業化して、そうしてその工業化したもの、いわゆる利益によって理化学研究所経営をいたそうということに大河内先生が着眼いたしまして、そうしてたくさんの会社を作ったのでございます。たとえば今日理研ピストンリングピストンリングは、日本の製品の大部分を作っておるのが、理研ピストンリングであるといわれるような、あるいはビタミンといえば理研である、あるいは合成酒であれば理研酒であるというようなことを言われておる。ああいうようにやりまして、そうしてどうやらこうやら、あすこまで理化学研究所発展をさせ、しかも経営をいたしてきたその人に対しまして、経営がまずかったと、こういうような言葉をあの責任ある方がしかも、われわれ商工委員が並んでおる際に、ああいう言辞を吐くということは、実に私は心外の至りにたえないのであります。ああいうような人が私は今後の理化学研究所の、政府の資金を仰いで経営の衝に当るのであるかどうか。あの方は、私は全く存じ上げておりません。従ってりっぱな技術屋であるか、学者であるか、あるいは実業家であるか、あるいは官吏の古手であるか、私はその人を知りません。知りませんけれども、もうしょっちゅう私は、われわれの先輩でありまする海野先生から、技術屋を優遇せよ、技術屋を優遇せずして科学技術はあり得ない、こういう海野先生の御趣旨を拝聴しております。その海野先生の言われることと全く今日相反するような、理化学研究所を築き上げたところの大河内正敏博士のあれは、間違っておったやり方であるというようなことは、あれは半ば公開の席上と私は承知します、その席上でああいう言辞を弄するところの責任者が、将来の理化学研究所の何らかの役職に私はつくものであるとするならば、それこそゆゆしい問題であると思うのであります。今後の理化学研究所発展が、私は非常に危ぶまれると考えるのであります。と同時に、そんなに失敗をした、悪い跡を残した理化学研究所名前を、今日科学研究所としてあの方の言っておるようにりっぱにいっておるのであったならば、また再びその悪い理化学研究所なんという名前に切りかえること、それ自体も私はおかしいと思う。そういうことから考えて、第一に大臣に、一体どういうふうなお考えで、大臣はこの問題に取っ組んでおられるのでありますか、あるいはああいうことを言われる人を御信頼なすっておるのであるかどうか、そのことを第一に伺っておきたいのであります。
  21. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) ただいま村山所長の話を、実は初めて承わったわけで、私はいささか驚いておるのでありまして、どういうつもりでそういうことを言うたかわかりませんが、最初の大河内博士の功績は、これは世論とともに私も認めております。またよくおやりになりました。ところが、村山所長おそらくは今度経営困難なところを、自分はいろいろやりくっておるものだから、その苦労のあまりに、ついそういうことを言うたのだろうと思っておりますが、私どもとしては、どうしても今の学術の研究所においては、これは営利事業じゃないのですから、どうしても金が要ります。金が要りますから、それが今日特殊法人になったゆえんでありまして、要するにこれは営利会社じゃない、特殊法人にして基礎研究学者研究と、そうして科学技術振興をはかりたいという意味で、この法案を提出しておるわけであります。なお、この特殊法人になった以上は、人選などについてもごく公平に、ごく広く意見を聞いて、そうして世間から、だれが聞いてもこれならば非難がないということを目標に置きまして、ただいまのところでは、研究所所長を初めすべて白紙でありますので、そうして皆さんの御意見を聞いて、世論を聞いてきめたいと、こう思っておりまして、くれぐれも、今までは株式会社であったから、損をしたらいかぬということでもってやっておったのですが、今度は国家が金を出すことになりまして、そうして研究中心にしてやるのでありますから、必ずや御期待に沿えるものになると思っております。
  22. 西川彌平治

    西川平治君 その点につきましては、大臣の御説明を聞きまして、私は一応納得をいたしましたが、ここに私は昨日参りまして非常に心配になった事柄が一つございまするので、御参考に一つ申し上げると同時に、一つ私はどうしても善処をお願いしなければならぬと考えております。  ここに科学研究所の配置図がございますが、これは大河内氏がやられたときの、そのときの建物とほとんど、それは便所や突き出しは違っておるかもしれませんけれども、まずそっくりそのままであります。そうしてその中のその一部が科研化学株式会社という会社に変っており、この十八号館その他が科研化学工業株式会社という名前に変っておるのであります。この会社の内容については、私は深く追及は申し上げません。申し上げませんが、かってはこれが、ペニシリンが非常に不足を生じておりまするときに、民間の各社が競ってペニシリンを作られた当時に、おくればせながら、科研一つペニシリンを作ろうというようなお考えからして、これはほんとうに率直に申しまするが、おくればせながらであります。そうしてペニシリンを作ったものの私はその跡形であると考えております。そうして、これには利益があるかないかどうかは知りませんが、これは膨大な資金を要しております。そのために、この膨大なる資金を要するがために、今日科研になろうというところの土地、建物等が、これが担保にたしか入っておるはずであると私は記憶しております。そういうところのあやふやなことを残しまして、理化学研究所に新しく発足をするということに対しては、私は非常に疑義を持つものでございます。この点に対しましては、大臣におかれましては、あるいは関係者におかれましては、非常に一つ私は真剣に御検討下さいまして、そうして万遺憾なからしめるように一つ私はお願いを申し上げたいと思います。その点について一つ御答弁をいただき、そのほかに、いま一、二伺いたいことがございます。
  23. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 先ほど海野委員にお答え申し上げたように、実は今まで株式会社であったが、非常に金に困ったものでありますので、それで今度は特殊法人にして、その研究をできるようにしたわけでありますから、今までは金に困った株式会社だったものだから、つい村山所長も苦しいまぎれに、さっきのような話をしたのでありますが、今度は全く今までと違ったものであります。特殊法人にしたのであります。今度政府も相当の資金を出すわけであるから、今後は確かに面目は一新すると考えておりますから、どうか御安心願いたいと思います。
  24. 西川彌平治

    西川平治君 しかし、その土地や建物の担保は、依然として科研化学のものとして担保に入っておるはずです。そういうものをきれいにしないでうまくいくなんていう話は、私はちょっといかに大臣の御答弁でもどうかと考えるが、いかがでございますか。
  25. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) お話し通りに、ただいま科研といたしましては、科研化学の方から土地、建物を借用しておりまして、しかも、科研化学がそれを担保に入れておるわけであります。従いまして私どもとしては、できるだけこれを新しい理研のものにしたいという考えは持っておりますし、また、ただいまの株式会社法案通りますときにも、そういうような設立委員会の希望もございまして、私どももそういうことに持っていきたいと思っておりますが、何分にも研究施設、あるいは研究者の待遇というものを、さらにそれより急いでやらなければならないものがございますので、ついそれがおくれておりますが、私どもとしては、漸次それを新しい理研の方に持っていきたい。これは相当予算もかかるわけでございますので、一挙には参りませんが、そういうような措置を講じていきたい。なお、ただいまの科研におきましては、土地も狭隘でございますので、たとえば宇宙線のごときの研究につきましては、十条の方に約千五百坪程度の土地を国から借りまして、そちらの方に分室を作っておりますので、そういった地面につきましても、今田から借りておりますので、大蔵当局と話し合っておりますが、科研の方に出資してもらえるという見込みもございます。そういう点で、私どもといたしましては、ただいま折衝しておりまして、科研自体で土地、建物を持ち得るように、その日の早く参りますことを私ども期待いたしまして、また、努力をいたしておる次第でございます。何分にも予算が相当かかりますので、ほかの方の、さらに急ぐ方に追われましておくれておることは、はなはだ遺憾なことでございます。
  26. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は全然しろうとで、理研のことも承知していなかったので、わからなかったのですが、ただいまの西川君の質問は、私は実に重大であると思います。それは政府が今度出資をいたしまして、特殊法人にかえる、こういうことはまことに理由のあることで海野委員の申された通り、私どもの党側としても賛成です。もちろん、無条件で賛成でないのでありますがゆえに、いろいろ今後質問しなければなりませんし、疑義もたださなければならないのですが、基本的な問題としては、われわれは賛意を表しております。ところが、政府が大幅に出資をして特殊法人に変えるという、このやさきに、今、西川委員発言によって承知しましたところによれば、その構内に株式会社として別なものが存しておる。それは今までの経過上やむを得ずそういうものを分譲の形か何かで作ったのだと思いますが、今度特殊法人にするについては、まずそういうものを全部整理をして、この理研の中に当然入れなければならないものは入れる。追い出さなければならないものは追い出す、担保関係等において不明瞭なものは、この際償却する、償却が不可能であった場合には、再契約をして明瞭にする。そうして年次計画をもって何年間かには、これを統一するというこういう心組みがなければならないと思います。ただいま調整局長の御説明によりますればそういうようなことは一応考えているけれども、相当費用を要することであるから、逐次これはなされるのだという意味の御答弁に承わるのでありますが、非常にこの問題は私は重大だと思うのです。疑義の晴れざる限りにおいては、われわれは本法案の成立には協力するわけには参らないのであります。従いまして、西川君の御質問について、これは一つきょうは大臣は時間も迫っているようでございますから、私は文書をもって、資料をもって、本委員会に、どのような経過で、どういう株式会社理研の中から発生しておって、その会社は今後この理研か一本になっていく際において、敷地関係その他でもって統一しなければならないもの、あるいは排除しなければならないものがどういうふうにあるか。統一しなければならない会社についての資金関係、負債関係はどういうふうになっているか。これらを明瞭にする資料を、一つ委員長を通じて当委員会に配付されんことを、私は希望いたします。
  27. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 私はただいまの御質問には全く同感であります。また、そういうことにいたします。
  28. 西川彌平治

    西川平治君 私も実は最後にそれをとどめを刺したいと思いまして、実は質問をいたしておったのであります。どうか一つ、この村山氏がかつての大河内先生失敗だというような暴言を吐かれておると同じように、同じとは違いますかしりませんが、科研化学というものに対しまして、かなり世間が疑惑を持って見ているということに対して、一つ皆さんはお考えを願いたい。決して私は村山さんが昨日われわれに向って説明したように、みんな自分が何だか金を集めて、自分がこうやった、ああやったというような、自分の自慢をしておるような問題ではないと私は思う。私も資料は持っております。持っておりますが、まあ一つ資料を出していただいた上で、私はその点についてさらに御質問を申したいと思います。  それともう一つ、これはごく小さい問題でありますが、それは科研がよかったら、あらためて理化学研究所というような名前にする必要もない。科研でいいのではないかと思いますが、理化学研究所法案という法案がここに出た以上は、私は大賛成をいたしますが、ここに問題が一つあることは、かつて大河内先生の傘下におきまして、理研発明、特許を工業化するために数十の会社理研何々会社理研何々会社という数十の会社ができておるのであります。村山さんに言わせると、それは弱小の会社で問題にならなかったと言われますけれども、この戦争の盛んなときには、一つ会社でも二万数千人の従業員を擁しておって、決して村山さんが言われるごとく小工場ではございません。そうしてそれはよかったか悪かったか、時の判断でございまするけれども、あのときの国策には、全く私は大河内先生のいわゆる配下におりまする会社は、あげて国策の線に沿ったと私は考えておるのであります。総数二万数千という人間があった。小会社では決してない。そういうものが弱小会社というて非難をいたしておりまするが、今日弱小会社と言われても仕方がございませんが、その弱小会社がすなわち理研という名前を冠しまして、今日世間に売り出しているものが、かなりございます。そういうところの会社に対してこの理研という名前を今度はつけてならないということになっておりまするが、まあ、理化学研究所という名前ではないのであります。理研何々株式会社理研何々株式会社でありますが、これはどういうふうにお考えになっておりますか。これは決してかつての理研と関係のない会社ではありません。血が通っている会社でありまするが、そういうものに対するお考えとそれから今後に対するそういう会社を全然見離すのであるか、あるいは何とかつながりをもって進んでいくのであるか。このことを私は承わっておきたい。
  29. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 先ほどもお答えいたしましたごとく、今日の科研では全く会社だ、金に困って、そうしていろいろとやったのでしょう。そうして研究をやったことは、これは私はいいと思っております。それで先ほど村山さんが言ったのも、ずいぶん金の心配をしたものだから、ついそれが自慢話のようなことになったと思いますが、それで今度は、いよいよ国家が相当金を出して相当に、しかも研究ということを中心にして、従って名前科研ではなく、理化学研究所という名前をつけたのでありまして、しかし、要するに基礎研究ということが主眼で、営利ということはまず深く考えておりません。それだからやはり前の大河内さんのような意味のことも含んでおるわけでありますからして、御極意のようなことにしたいと思っております。
  30. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 内閣委員会の方から、大臣の出席をさっきから請求しておりまして、また、この次に大臣に出てきていただくことをお願いいたしまして……。
  31. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 特に、付帯決議の結果を、大臣の今後の所信を、場合によっては、書面でも出してもらいたいと思うのですが、まだあと少くとも一回は、相当時間の余裕をみて御出席になるように、委員長から一つお話を願いたいと思います。
  32. 相馬助治

    ○相馬助治君 関連して。正力大臣は非常に精励に本委員会にも御出席下さっておるのですから、また、この次も出て下さることを期待して、きょうは十一時までというのを若干延びましたが、お帰りになってけっこうだと思います。ただ私はここで一点、大臣がここにいられるうちに明瞭にいたしておきたいと思いますことは、先ほど西川委員発言によりますれば、ほかの者はだれも事情がわかりませんので、そかれらまた、正力大臣自身も御事情がわからないのでそれほどに明瞭にどういうふうに答えるかということは、非常にむずかしいことだと思うので、あの程度のことになったと思うのですが、西川委員のかなり露骨なまたはっきりした攻撃は、ここで正式に速記録に残ったわけです。そこで私は、この問題については、一つこの次の委員会等においても、正力大臣としても、西川さんと同じ党の方なんですから、よく話し合われることを私は特段に希望したい。私の聞き及ぶ限りでは、村山さんという方は、かなり著名な実業家で、信念に富んだかなりの人物だと私は聞き及んでおるのです。しかし、私は不幸にして、風引きのためにきのう参りませんでしたので、西川さんの先ほどの発言が、きのうの見学者総員の意見なのか、西川さん個人の意見なのかもいまだ明瞭でございませんので、この問題は、次期の正力大臣の御出席の折に、継続した質問として取り上げるということを前提として、きょうは正力さんにお帰り願うことがいいと思います。
  33. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) ただいま理化学研究所の名称使用の問題につきまして御質問がございましたが、この法律にございますように、理化学研究所という名称を使うことはできないのでございますが、理研という名称を使うことは差しつかえないのでございます。それで、しからば、なぜこういった理研に返ったか、理化学研究所という名前にしたかという点でございますが、やはり理化学研究所と申しますのは、何と申しましても、先ほど先生方からお話がございましたように、大河内先生あるいは仁科先生の伝統のもとに、一つの、日本としての特徴のある研究所をなしておりますので、そういった昔の研究所名前を使いたいという研究者の希望も、非常に強いわけであります。それからもう一つは、海外におきまして、理化学研究所という名前が非常に通っておりますので、海外とのいろいろの文献の交換等においても、非常に利益があるという点もございまして、昔の名称に返したわけでございます。  それからなお、理研と、昔の理化字研究所と関係のありますところの理研会社と、何か特別の関係を持つかというような御質問かと思うのでありますが、私どもはそういった理研の昔の関係の会社というふうに限定はいたしませんが、各産業会社からいろいろの研究の委託がございますれば、喜んでそういった研究の委託にも応ずるような態勢に持っていきたいというふうに考えておるわけです。
  34. 西川彌平治

    西川平治君 この資料を見ますと、大越諄博士、海老原敬吉博士などは、いずれも大河内博士の精密加工のドリル・ピストンリング研究で学位を取られて、そうして今日の理研工業株式会社に最も関連のある仕事をやっておられます。あるいはまた、海老原敬吉博士は、理研ピストンリングの工場に御関係があるようでありますが、これは特許の関係は、あるいは経過いたしておりますかもしれませんが、しかし、理研やり方そのものを常に使っておりますると同時に、理研のさらにさらに進んだ技術を、特許には関係がなくとも取り入れて、常に海老原さんあるいは大越さんの指導を仰いで今日やっておるように私は聞いております。また、その他の会社においても同様であります。そういうふうでありまするから、こういう会社を全然オミットしてしまって、そうしてすべてが新しく出発をするということは、私はあまりにも今までの理研の功績というものを疎外するのはなはだしいものであると考えておりますが、そういう点について、何らかの考慮をしていただかなければならない問題であると私は思います。率直に私は申し上げまするならば、特許は切れておりましても、特許実施をやっております会社は、直接に間接に指導を受けておるのでありますから、何らかの形において、理化学研究所に対しましてお手伝いをしなければならない義務があると私は考えておりますが、そういう点についてどうお考えになりますか。
  35. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) ただいまのお話しまことにごもっともでございます。ただいま先生がおっしゃいましたいろいろの理研関係の会社の資料と申しますのは、昔の理研研究成果を企業化されておるものが大部分であると思います。で、現在そういった研究を、昔やられました方々が、現在の海老原先生のように残っておられる方も相当ございますものですから、昔の特許が切れましても、その後の技術的な発展につきまして、それを企業化した方がいいというような場合には、もちろんそういう方々が御指導されることは、大へんけっこうだろうと思っております。それで、そういう会社と今度の理研とが、どういう関係になるかと申しますと、私どもとしては、やはり公的なつながりといいますか、おっしゃるような形においてつながっていただいた方がいいのではないか、その形といたしましては、先ほど申し上げましたように、理研に対しまして研究委託をするとか、あるいは研究指導をしてもらいたいというような申し出を受けまして、そうして研究所として技術指導に当る、この技術指導をいたしますことも、理研一つの使命と考えておりますので、当然そういうものもやるべきであろうと考えております。それからなお、理化学研究所は、政府から出資をいたしますけれども、同時にまた、民間の出資も受け得ることになっておりますので、そういう会社から出資をしていただくならば、喜んでしていただきたいと考えるわけでございます。
  36. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は、今後のこの委員会の運営のためにも、ここで議事進行上一つ発言させてもらいたいと思います。そうしてその前に、西川先生にやはり明瞭に尋ねておきたいと思うのですが、先ほどの西川先生の御発言で、村山所長に関する件、これはやはり私は重大だと思うのです。そういう発言村山さんがしたということももちろん重大ですが、出張して観察をされた場合に、そういう発言が出た際に、一体これは、まことに所長発言は不穏当だと思いますが、委員長、ないしは、不穏当だと思った西川委員は、その場で村山さんに注意をされましたか。それを一つ承わりたい。
  37. 西川彌平治

    西川平治君 私はこの問題を追及をしようといたしまして、実は質問を始めたんです。始めたところが、もう時間の都合で視察をしなければならないという話しで、皆さんがお立ちになり、私は足が痛いので皆さんと御一緒に視察をすることはでき得ませんので、別室におきまして村山さんが御案内の衝に当っておられまするので、別室において、今おられるその方と、二、三の方と私は、赤裸々に私はこういうことを村山さんに言うてもらいたいということを言い残しまして、私は足が痛いので皆さんと行を共にするわけにいきませんで途中で帰らせていただいたのであります。その点は確かにあなたのお説のように、その場で私はやるつもりだったのです。でありまするが、そういうような状態で、お三人の方と私と別室で会談を、かなり一時間もしたのであります。
  38. 相馬助治

    ○相馬助治君 そこで追及することが、時間上できなくてこういう意見を持っているということを、西川君の意見として所長に伝えてもらいたいということを申し残しておいでになったということでありますれば、私はけっこうだと思うのです。私がただ当初おそれましたことは、視察に行ったときは、にこにこと視察して回って、そして向うもよく見に来てくれたと言うて了解して帰った。ところが、翌日の委員会に速記に残して、もうぼんぽんと攻撃が加わったと、こういうことになりますると、今後国政視察ということで本院が他に出張視察に参っても、下手なことは言うな、もう知らぬ存ぜぬ、くさいものにはふた、そしてめんどいことには触れるなと、こういう調子であると、これはいわゆる国政調査というものが円滑にいかないと思うのです。で、視察に行ったような場合にはかなり裸になって、不満は不満として申し述べるような心理的な状況、そういう雰囲気を相手に与えるということが、また、われわれの一半の責任であろうとも思うのです。そういう意味で、私はそのことをおそれましたがゆえに、こういう発言をさせていただいたのでありまするが、西川委員がそういうことを申し残して来られたと、こういうことでありまするから、そのことは一応了解をしたいと思うのです。しかし、この問題は、やはり先ほどの担保の問題といい、今の村山所長のお話といい、非常に御発言は私どもの立場からいたしますると重大であると、かように考えております。従いましてこの点だけを委員長一つの胸にとどめておいてもらいたい。われわれはさような見解を持っておる。こういうことです。
  39. 近藤信一

    委員長近藤信一君) ただいま相馬君から委員長はどうだこういう御発言でしたが、私はそんなに弾劾されたというふうにはあまり聞かなかった。だからその場合質問もしなかったし、また、西川君から言いおいたと言われましたが、私は聞いておりません。どなたに言いおいていかれたか知りませんが、そういうことを質問してくれということを私は聞いておりません。
  40. 西川彌平治

    西川平治君 それはここに二人も証人がおりますから、お二人が、あなたも知っている通り、私は残って質問しますから、ということで私は残っておりますから、決してそんな八百長的なことはございません。
  41. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  42. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記起して。
  43. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 昨日私も現場を視察いたした一行の一人に加わっておりましたので、いろいろ先ほど来御意見も出ておりますように、私の聞きましたる、またその結果に基く私の感じを率直に、公平に申してみたいと思うのであります。その際に西川委員からは、今日科研が非常に困るというけれども、過去における理研には相当内部蓄積があったのではないかという質問をせられたと思うのであります。要するに、当時相当の蓄積があったのだから、むしろそれに余慶があってしかるべきではないかというような意味の質問をせられた。それに対して村山所長は当時理研はむしろ搾取をしたんだ、これは言葉が、搾取というときついですけれども、おそらく推察するに、研究の方に大いに支出をやったために、当時蓄積などができなかった。その後戦災等を受けて、今日の状態になったんだというような答弁があったと思うのであります。それで村山所長は、大河内さんを、わしは攻撃したというふうには思っておりません。多少言いにくいような面はあるかのように受けましたけれども、少くとも表面に現われているところで攻撃したというふうには……私はあの席で知っております。ただ、運営の方針が当時から内部に蓄積留保、これに努めてこなかったために、今日の状態が出てきた、戦災と相寄り相待って、かような経営困難が来たというふうな表現だったというふうに思うのであります。この点を明らにしておきます。
  44. 海野三朗

    海野三朗君 私はきのうはこういうふうに聞いたんです。大河内先生のおやりになったのは、大河内先生のスケールでおやりになった、ところが、そのスケールは、今日はだめなんだ。今日の村山氏のスケールから見れば、合わないのだと言うので、私はその程度に聞いたのです。それはそういうふうに考えることは、一向差しつかえない。しかしながら、大河内先生の今日までの業績に対しては、これは深甚の敬意を表さなければならない、この努力はあくまでも認めなければいけない。しかし、先生のおやりになったそのやり方を、今日そのままやるということはいけないのだと言うので、私はその意味に言われたと思って聞いて参りました。それだからといって、大河内先生の業績はつまらぬということは、毛頭言えないのである。今日まであそこにあれだけ大きく築き上げられたその業績というものは、私どもが片時も忘れてはならないものであるということと、大河内先生のおやりになったその方式を、今日やっていいかということとは、問題がまた違うというふうに、私はそういうふうに聞いてきましたのですが……。
  45. 西川彌平治

    西川平治君 私は、せめて戦災によってというような言葉が入っておりますれば、私はそう強くは言わないつもりでありました。そのことはあなたにも申し上げました。戦災によって時代の変遷によってということがあったとするならば、了とするということはあなたにも言ってあります。ところが、大河内先生をほめた言葉は、つめのあかほどもありませんでした。そのことを私は皆さん方にはっきり申し上げておきます。
  46. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私も、当時聞いておった一人として、何か言わざるを得なくなったのですが、しかし、正直に言って、海野先生のおっしゃるような、あの当時の大河内博士やり方では仕方がなかったとか、今日であったら大河内構想がどうだとかいうことは、全然含まれておりません。やはり、私は豊田委員のおっしゃったことが一番正しいと思うのです。相当これはおのおのの、豊田先生は特におれが第三者で一番公平だとおっしゃるけれども、発言している人は全部、公平に発言していると思っている。ただ、そこでやはりきつくとれば、相当私は問題になるような、紳士としてやはり前所長をこうまで言っていいのかなというふうに、常識的に何となく心を打つものがございました。しかし、大河内先生のことを村山所長が確かに搾取であり、それからルーズであるとも明確に言いましたです。明確に言ったのです。ただ、私は大河内所長の行為というものが、果して村山さんの言に会致するものか、それとも全然合致しないものか、これは内容を調査して見なければわかりませんから、私は黙って聞いておりました。ただ、私どもはこの委員会で別に村山会長がどう言った、こう言ったからといって、この法案を決して左右されるものではないのですから、ただ、そこでその村山さんの発言というものは、紳士として、あるいは会長として正しいか正しくないかということは、本法案が成立すれば、第十三条によって内閣総理大臣が任命するのですから、そのときに、われわれの意見はとうてい取り上げてくれないでしょうから、与党さん等は特に総理大臣に善悪を明確に言って、判断の材料にしてもらうということで、これはここでどう言った、こう言ったといって、村山発言を取り上げて、法案審議の内容に入れてもどうにもならない。しかし、私は、皆さん方いろいろな感覚で御発言になっているからかもしれないけれども、確かに豊田委員のおっしゃったように、そういう点は言いましたけれども、海野さんのような温情あふるるようなことには、私はとって参りませんでした。
  47. 西川彌平治

    西川平治君 搾取であるとかルーズであるということは、はっきり言っております。大河内さんをほめたことは一つもないのです。
  48. 海野三朗

    海野三朗君 私は、純然たる科学者の立場で、きのうは見たのであります。それでありますから、こういうことが言えるのです。日本が今日の状態になっているのは、だれの責任か、明治時代のやり方が悪かった、こういうふうにいわれるかもしれない。しかしながら、明治の時代にはあのスケールでやらなければいけないのであって、今日から見れば、はやらないのです。それをつまり私は虚心たんかいに見たわけです。昔はあれでおやりになったのだから、明治時代はそれでよかった。しかしながら、今日ではあのスケールをもって立つというようなことは、はやらないというふうに、ごく虚心たんかいに考え、それだから明治時代の人がどうこう、いいとか悪いとかいうことを批評してないので、おやりになった方法はいけなかったのだ、乱暴であったのだということは、私は今日でも言える。それは科学者の立場で、私は感情を一つも入れないで見たわけでありますので、大河内先がルーズであったなんといったって、大河内先生に対するわれわれの尊敬はごうも変らない、私はそう思うのです。
  49. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 搾取という言葉ですが、これは当時研究に没頭したために、利益を上げて内部に留保していくというような株式会社組織ではなかったのですから、当時は、御承知通り財団法人だったのですから、研究にのみ没頭して、内部に留保していくということがなかったことも、これはやむを得ない、当然の組織の結果からくるものだとも考えられるのです。従って、そういう意味で搾取と言ったけれどもこれは攻撃する意味じゃなく、蓄積ができなかったのだし、しなかったのだ、また、それは建前から来るのだというふうに私は善意に解釈します。そういう点から、あまりにこの村山所長の言をいろいろ批判するということは、先ほど阿部委員から指摘せられておるごとく、法案審議の上においてはいかがなものであるかというふうに考えるのであります。これは、おのずからまた別個に考えていけばいいのじゃないかというふうに思います。
  50. 小西英雄

    ○小西英雄君 村山所長の問題が、ここで相当問題になったようですが、それより政府の方に尋ねたいのですが、北海道開発とか、貿易振興その他いろいろな政府が出す法案が通過した暁においては、大ていの人選がすでにきまっておるようなんだが、その中に、村山所長が次の理事長とか副理事長とか、その予定なり、構想がはっきりしておるのですか。これはどうです。
  51. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 先ほど長官から申し上げましたごとく、現在の状態は全く白紙でございます。なお、法案が通過いたしますれば、設立委員会というようなものを作りまして、将来の設立のための準備をいたしますので、おそらくそういうところで話は出るかと思いますが、現在のところは、少くとも白紙であるということを、はっきり申し上げさしていただきたいと思います。
  52. 西川彌平治

    西川平治君 私はもう一言申し上げておきますが、私は別席においてお三人の方と懇談をした際に、私は村山さんがあの言葉に対する何らかの釈明があるならば、私は今日のこの委員会にこの問題を出す考えはなかったのです。だけれども、お話しになったと私は思いますが、何らのそれに対して釈明も何もないから、私は今日この席で発言をいたしたわけであります。その点は一体村山さんにお話し下さったんでしょうな。
  53. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 西川先生からいろいろお話を伺いまして、私も個人として御発言が多少何といいますか、きついような感じも受けまして、先生の御意思も十分私はきのう伝えました。それで、村山さんもその点反省されておるようでございまして、先生のところへ一度お伺いして、自分の事情をよく申し上げたいと言っておりましたのですが、きのうのことで、すぐけさの問題でございますので、その間、時間がなかったと思いますが、おそらく近く村山さんとしては、自分気持をお伝えに参ると思います。
  54. 海野三朗

    海野三朗君 議事進行。先ほどの質問を続行いたしたい。先ほどの特許のことですね。特許は、たとえば発明したそのときに、その人に特許権は与えるべきもので、理研がやらせていたのだから、理研が取るということは、大体筋道からいうと間違いであると私は思うのです。ただし、その特許を理研が利用するという場合には、これは無制限に理研がその特許を実施することができるのだけれども、特許権というものは、その発明者に与えなければならない。つまり、勤めておるところが主になるか従になるか。私はその発明した人が主にならなければならない、こういうふうに思うのですが、その点はどうなんですか。
  55. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 元来特許権発明者に帰属するのが当然だと考えます。でございますが、私は、特許権と申しますのは、一種の財産権でございますから、発明者と、それを利用しておる使用者との間の契約によってその帰属がきめられるわけでございまして、科研につきましても、研究者とそれから研究所との間におきまする契約があるわけでございます。これは一つ規定になっておるわけでございますが、その規定承知した上で、そういった契約を当事者同士が契約するわけでございますが、現在のところ、そういうことを了とする契約がございますので、従いまして、その反面報償の規定がございまして、受けました利益のある部分を、その研究者に与えるということになっておるわけでございます。でありますから、その規定をいやだということになりますれば、そういった報償規定もないわけでございます。研究者自身が自分研究成果で利益を受けるような措置も講じなければ、利益の配分にあずからぬ、これは研究者として実際の研究をやります上においていろいろな障害にもなりますものですから、この規定がありまして、理研自体がそれを産業界に実用化させるように努力をしていく、その利益研究者に与えた方がまあ適当ではないかと思っておるわけであります。
  56. 海野三朗

    海野三朗君 私はそれが間違っておるというのです、その考えが。研究をした人に、発明をした人に特許権を与えるべきものであって、その理研の方がこれを使うときには制限なしに使い得るので、発明した人に特許権は与えるべきものである。これをここにいろいろな規則を設けて、その発明した人に特許権は与えないということは、その規則の根本が間違っておると私は思うので、これはどうしたって改正すべきものであると私は思うのです。そこのところ、どういうふうにお考えになりますか。私はその経験がありまするから、これを重ねて質問するのですが、私は八幡製鉄におりまして、八幡製鉄では、どういうふうにしたかというと、発明考案した人には、その人に権利を与える、ただし会社に対しては一札入れる、この特許は八幡製鉄でお使いになる場合には、一切文句は言いませんという一札を入れる。そうしてその特許権というものは発明した人に与えるのである。これがほんとうですよ。それをお前がその研究をやったのは、八幡製鉄がやらしたのだ、いや理研がやらせたのだから、こっちに権利をよこせということは、研究者自体を従に見ておるのであって、その思想が、そもそも間違っておると私は思う。規則がこうあるという今あなたのお話しでありますけれども、これは改正しなければならぬと私は思うのですが、どうなんですか。
  57. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) これは、先生のおっしゃるのは理論として確かにそうだと思います。でございますが、たびたび申し上げましたように、特許権発明者のものにいたしますと、発明者としましても特許料を払わなければならぬ。これも相当の金額になるかと思いますが、これが研究所のものにいたしますれば、研究所がそれぞれ支弁いたすことになっております。それからもう一つは、発明者は先ほど申し上げましたように、自分自身でそれを施設をするということは、措置を講ずるということは、研究を一方にやっております関係上、そうなかなかうまくいかないし、そういう点から研究所が権利を持ちまして、獲得いたしまして、そういった行為を行う。その利益を配分するのでございますが、研究者の方がそれがいやだ、自分自身でやりたいということでございますれば、これは契約の問題でございますから、そういうことも成り立つわけでございます。先生のおっしゃったように、発明者自身が持つということも考えられるわけでございますけれども、しかし、そういたしました場合でも、科研はそれに対する自主権を持ち得るということになると思います。これは法律の上でそうなっておりますので、そういうことが行われるのであります。でございますから、今申し上げましたのは、研究成果を活用するという意味では、どっちがやりいいかという便宜の問題になるかと思いますが、ただいまのところは、研究所が権利を持って、利益研究者に与える方が、実際上の運営では都合がいいのじゃないかと思うわけでございます。それでそういう規定が現在のところあるわけでございますので、今後におきましては、なお設立委員会等において研究はいたしますけれども、従来の規定において非常に不都合であるということを、研究者側から意見が出ておるということは明らかでございませんので、いずれも現在の規定で満足してやっておられるというように私としても聞いております。そういう状態でございます。
  58. 海野三朗

    海野三朗君 これはただいまのお話を私はずっと聞いておりますというと、どうもぴんと来ない。たとえばこういうのがあるのですよ。ある八幡なら八幡におって研究しておった人が、特許を取った。ところが、その特許権を買いに来た、ある会社から……。そういう際に、数百万円でこれを買おうということを言ってきた際に、八幡がその利益を取って、そうして発明考案者に分けてやるというような考えではいけないのであって、私はそこを言うのです。そこでその発明者が、これはこういうふうにしてもらいたいとか、こうしてくれという意見があるなら、それはいいのですけれども、考案した人に全部の名誉、実際の実益を与えるべきものである。そうでないと、発明するにしても、いわゆる欲望、非常な研究に対する欲望、何か一つ発明をしてやろうという盛り上る力が薄くなる。発明しても横から取られてしまうのだ、そうしてわずかの口銭をもらうくらいだというようなことでは、私はこれは間違っておると思うから、そういう点に対しては、とくと考えていただかなければならないと思いますね。これは今まで私はたくさん見ているのですから……。そうして今度はほかの会社から買いにくるのですよ、そのことを……。その際には、八幡なら八幡におって研究をしたのであるから、八幡では無制限にこれを実施することができるという一札を取った上において、これをほかに特許権を売ってやるのです。それで考えた人にその特許権、つまり売買する権利でも何でも与えなければならない。横取りしてはいけないということを私は思うのですが、そういう点に対しては、つまり当局としては、どれだけの御決意を持っておられますか。私が今申し上げたのは、あなたはただ単に理論であると言われるけれども、理論は理想ですから、それに向って進まなければならないと私は思うのです。
  59. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 発明者がりっぱな発明をいたしました場合、二つの点から報いられなければならぬと思いますが、一つは、まあ名誉であると思います。一つは金銭的な問題だろうと思います。名誉の方に関しましては、やはり発明者はだれだれであるということは特許公報にも載りますし、その点は科研としても尽力いたしまして、この特許権はだれの発明であるということがすぐわかるようにいたしております。その名誉はその点でははっきりさしたいと思います。それから金銭的な問題につきましては、先ほど申し上げましたように、科研自体が利益を生むような行為をいたしまして、それを研究者がそういった事務からはのがれまして、研究に専心できるような体制にいたしたい。そうして報償金は差し上げるわけでございますが、それからもう一つ科研自体の立場から申しますと、そういった特許権が取り得るような研究をやっておる方ばかりではございませんで、いろいろ基礎研究につきましては、特許権にならない、つまり工業化できないような、しかも貴重な研究をやられている方もございますものですから、そういった協同体におきまして受けました利益は、そういった一部は、やはりそういうような方の研究にも回り得るような格好にしたい、全体として研究費が十分にいくようにということでなくちゃならぬと考えておりますし、また、一方報償金も、発明者にその中の多くの部分が与えられるというような、両方の措置を講ずる必要があるのではなかろうか。そういたしますと、現在の規定でもむしろ都合がいいのではないかという感じを私ども持っておるわけでございます。なお、研究者の、科研研究者の意向も今後十分聞いて参りまして、先生のまたお考えも十分考えて検討を加えていきたいと思うわけでございます。
  60. 近藤信一

    委員長近藤信一君) それでは、午前中はこの程度にとどめて、午後一時から再開することにいたしまして、休憩いたします。    午前十一時四十八分休憩    ————・————    午後一時四十六分開会
  61. 近藤信一

    委員長近藤信一君) これより委員会を開会いたします。  まず、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案について、提案理由説明を願います。
  62. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 今回提出致しました石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び法律案の要旨について御説明申し上げます。  石炭鉱業合理化臨時措置法は、昭和二十八年以降の石炭鉱業の深刻な不況を背景として昭和三十年八月に制定されましたが、同法が石炭鉱業合理化計画に基いて石炭鉱業の整備を行い、また坑口の開設を制限すること等の措置を講ずることにより石炭鉱業の合理化をはかり、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的としたものであることは御承知通りであります。  この法律施行以来、すでに二年有半を経過いたしましたが、この間においてわが国石炭鉱業の合理化は著しく進展し、その生産数量は昭和三十年度の四千二百五十万トンから昭和三十二年度は五千二百七十万トンと大幅に増加し、その生産能率は昭和三十年度の十二・九トンから昭和三十二年度は十五トンと上昇し、これらと並行して合理化工事のための投資も著しく増加して参りました。  昭和三十年以降、わが国経済は輸出の飛躍的増加に伴い、急速な拡大発展を示したことは皆様御存じのごとくでありますが、この結果、エネルギー需要も著しく増大いたしましたので、政府といたしましては将来のエネルギー需要の趨勢を把握し、長期のエネルギー施策を樹立することの必要性を痛感し、その検討を行なって参りました。昨年十二月昭和三十七年度までの新長期経済計画を策定するに当りましても、特にエネルギーについては昭和五十年度までの需給見通しを作成し、その対策を検討した次第でありまして、今回の改正法案はこの中の石炭に関する計画を具体化することを目的としたものであります。  次に本法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一は、先ほど申し上げましたごとく、将来の増大するエネルギー需要に対処し石炭資源の開発を急速かつ計画的に行うため、未開発炭田の開発に関する規定を設けたことであります。この未開発炭田の開発をはかるため、まず国で石炭の鉱床の状態、地質の状態その他の自然条件及び立地条件に関する調査を行い、その結果に基き、石炭資源の開発が十分に行われていない地域であって、その開発を急速かつ計画的に行う必要があると認められる地域を指定し、この指定地域について遅滞なく開発計画を立てることといたしました。次に、この開発計画の円滑な遂行を期するため、指定地域内の採掘権者から事業計画を徴し、必要があると認められる場合には、その事業計画の変更を指示することとし、また、指定地域について鉱業法の開発着手義務を適用し、その開発を促進するとともに指定地域内の鉱区の錯綜する地域について、合理的開発を行う上に必要がある場合には、鉱区の調整を行うことができるものとし、調整について当事者間に協議が整わない場合の決定に当り、新しく鉱区調整協議会を設けてこれに諮ることとした次第であります。  第二は、坑口開設許可制度について過去の運用の経験に徴し、その規定を若干変更し、あわせてその期間を延長したことであります。坑口開設許可制度は、本法制定当時の事情にかんがみ、きわめて厳重な運用を行うため、その許可基準をきわめて高いところに置き、許可に当っては、一件ごとに石炭鉱業審議会に諮ることとし、その期間を三年に限定した次第でありますが、今後、わが国石炭鉱業の円滑な合理化の推進をはかるためには、なお非能率炭鉱の発生を防止する必要がありますので、その期間を延長するとともに、エネルギー需要の増大にこたえるため坑口開設許可基準を改め、許可手続を簡素化するなどの措置を講じたものであります。  第三は、法律の有効期限を昭和四十二年度末までとしたことであります。石炭の生産の趨勢を見まするに、現有炭鉱の出炭は昭和四十年ころをピークとしてその後は自然条件等の制約のため、減産の方向をたどらざるを得ないと考えられます。この生産の減少をカバーし、あわせて炭鉱の合理化を促進し、昭和五十年度に七千二百万トンの出炭を確保するための態勢を整えるためには、新炭鉱の造成を極力推進する必要がありますので、この法律の有効期限を延長した次第でありまして、またこれと並行して合理化基本計画の目標年次も昭和四十二年度と改めることにいたしました。  第四は、納付金を徴収する期間を現行法の期間内に限定したことであります。この納付金は石炭鉱業整備事業団の業務に必要な費用に充てるため、採権者及び租鉱権者が事業団に納めているものでありますが、事業団の行う炭鉱の買収は、ほぼその目標を達成できることが明かになりましたので、納付すべき期間を当初の計画の通り昭和三十五年八月末までとしたものであります。  以上が、この法律案の要旨でございますが、わが国石炭鉱業の合理化促進のため、この法律の施行と並行して炭鉱の合理化及び未開発炭田の開発に必要な長期低利の財政資金の供給、未開発炭田地域の産業関連施設の整備、あるいは需給の安定のための輸入エネルギーによる調整等の措置を講ずることにより万全を期する考えであります。  以上申し上げましたごとく、政府といたしましては、わが国石炭鉱業の現状及びエネルギー需要の趨勢にかんがみ今回の改正案を提出いたしました。何とぞ御審議の上御賛同あらんことを切に希望してやまない次第であります。
  63. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 以上で提案の理由説明を終りましたが、本案の審議は、後日に譲り、これより日本貿易振興会法案を議題といたします。  御質疑のあるお方は順次御発言を願います。
  64. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 定数がそろっておりません。
  65. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 自民党さんの方、もう少し何とかならぬか。
  66. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 自民党さん、もう一人か二人どうですか、出席されたら。
  67. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  68. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記を起して。
  69. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 日本貿易振興会法案提案理由の中に、その事業の運営に際しては、中小企業のための貿易振興に特に重点を置く所存であるということがはっきり掲げられておるのでありますが、   〔委員長退席、理事阿部竹松君着席〕 中小企業のための貿易振興に特に重点を置くということは、従来でもいろいろな機会で言われておるのでありまするけれども、その行われるところの実際を見まするというと、重点を置くということには、ずいぶんかけ離れた結果が出ておるのであります。いわんや、特に重点を置く所存だというようなこととは、およそ逆のようなことになっておる場合が多いのであります。たとえば、具体的に申しますると、東南アジア方面に、いろいろ輸出振興措置を講ずるということでありますが、これを具体的に見まするというと、輸出プラントであるとか、あるいは化学原料であるとか、どちらかと申しますると、重化学工業品、大企業関係の輸出に重点を置いておる結果になっておるのでありまして、軽工業品、裏から言えば中小企業製品の輸出というものには、とかく力を注いでおらぬ。場合によりますると、むしろ逆の結果になっておる。要するに、プラントや化学原料が出さえすれば、中小企業製品の輸出というものは犠牲にしてもいいというぐらいの方向が出てきておるのであります。これをさらに具体的に言いまするというと、東南アジアの中小企業の振興について日本で協力をしよう、また、資金的にも金を出そうというようなことでありますが、あちらに中小企業が勃興し、軽工業品が出てくるということになりまするというと、日本からはそれのプラントなり化学原料は出るでありましょうけれども、中小企業製品については、輸入制限であるとか、あるいは関税の引き上げだとか、そういう保護貿易政策が東南アジアでとられてくるということになることは、必至の傾向であります。そういう点から見まするというと、これは単なる一例でありまするけれども、日本の輸出貿易政策というものは、重化学工業品、裏から言えば大企業製品というものに重点を置いて、そして中小企業製品の輸出振興ということについては、結果的には、犠牲に供しつつあるというふうに言われてもやむを得ない点があると思うのであります。こういうことでは、私は非常に将来問題を残してくるのではないか。外貨の獲得々々と言いますが、外貨の獲得率は、中小企業製品、軽工業製品、あるいは雑貨が、外貨獲得のパーセンテージは、原料あるいは全体に比べての比率は非常に高いのでありますから、そういう点から考えて、現在の日本の貿易政策というものが、大企業本位であって、中小企業に重点を置くということからは、非常にかけ離れておる。場合によっては、逆になっておるというふうに言わざるを得ないのであります。そういう点から、今回のこの日本貿易振興会法案を見ましても、貿易振興については中小企業のために特に重点を置くということが、麗々しく掲げられておるのでありますが、一体具体的にはどういうことをお考えになっておるのか、これを具体的に承わりたいと思うのであります。
  70. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 詳細はまた政府委員から申し上げますが、ただいまお話しのように、貿易政策全般としまして、重化学工業品に移行しつつあるという現実は、どうもこれは認めざるを得ないと思います。しかし、われわれとしまして、中小企業の輸出振興ということについて熱意を持ち、また、努力を払ってきておりますことも、事実でありまして、少くとも六割の商品が中小企業の製品であるという点におきましては、中小企業の製品を極力出したいという気持を持っておりますことは、これまた事実でありますので、その点は御了承願いたいと思います。  ところで、この振興会法は、別に大企業、中小企業というふうには区別いたしておりません。しかし、御承知のように、この前身であります市場調査協議会、あるいは見本市の協議会、あるいは貿易あっせん所協議会、こういうようなものは、大体において中小企業者の方々の関係が強く出て、それからそれが統合されて現在のジェトロになってきたのであります。また、今回国全体として考えていかなければならぬというふうに考えまして、今度の特別法規を作ったわけでありますが、それにいたしましても、貿易のあっせん、あるいは商品の紹介、宣伝、あるいは市場の調査という点におきましては、率直に申し上げますと、大きな企業は、それぞれ自分の支店を海外に持ち、こういう事業は自分で大体はやっておるのでありまして、それをまあ、ある程度補完的にこの仕事をいたすわけであります。ところが、中小企業者の方におきましては、こういうような事柄に一々人を出し、また自分でやっていくということは、とうてい不可能なことでありまして、私はこの振興会というものこそ、中小企業の輸出振興という面におきまして、その中核体になるものだというふうに考えておるのであります。また、これを強化いたしますことは、結局において、中小企業者の方々の仕事を総合的に国がやっていくというふうに考えておるのでありまして、ただいまのお話しの点は、われわれも今後この運動について十分考えて、中小企業の輸出振興という大きなこの振興会の使命を果していかなければならぬと、かように考えておるわけであります。
  71. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) ただいまの大臣の御答弁に対しまして、若干補足をいたしまして、現在のジェトロの事業のうち、中小企業に関係あるものを御説明申し上げたいと思います。まず、このジェトロの事業は、市場調査、貿易あっせん事業、あるいは国際見本市、海外に対するPR、あるいは意匠改善の事業等に分れておりまするが、まずこの市場調査について御説明を申しますと、第一に、この調査の結果は、月刊の「海外市場」、それから日刊の「通商広報」によって、業界に周知徹底をはかっておるのでありますが、この「海外市場」の発行部数が三千部のうち、中小企業関係のものが二千部ばかりとっておられることになっておるわけであります。また、「通商広報」は大体一万部出ておりますが、その七千五百部が中小企業関係に配付されておるのであります。  それから第二に、業界からの受託調査でありますが、年間数百件に上っておりますが、これは全部中小企業の受託調査であります。  第三に、業界専門家による海外特殊市場調査として、年間二十四班程度海外に出て行ってもらっておるわけでありますが、これは全部中少企業者の業界団体から行っていただいておるようなことになっております。  第四に、図書館の利用者が年々二千名でありますが、そのうち八〇%は中小企業関係者であります。  次に、貿易あっせん事業でありますが、その出品者の九〇%が、中小企業関係者になっております。それから、そのあっせんによりまする引き合い、あっせん件数一万五千件のほとんど全部が、中小企業関係になっております。  次に、国際見本市でありますが、最近に行われましたニューヨーク、フランクフルト、ブラッセル、シアトル等の先進国で行われました見本市の出品小間数のうち、七〇%が中小企業関係であります。ただ、シンガポール、ダマスカス、バンコック等の後進国で行われました見本市は、重機械類の出品が多かったのでありますが、出品小間の五〇%が中小企業関係になっております。  次に、海外のPRの事業でございますが、まず第一に、アメリカ市場を中心としまして、問題となっております金属洋食器、あるいは体温計、洋傘の骨、毛織物、合板、繊維二次製品等の輸入制限等に対しまして、一流新聞雑誌等の記者に働きかけまして、日本側の主張を書かせたのであります。また、玩具の鉛毒事件というのが先般起りましたが、その際にも、米国の公衆衛生当局と密接に折衝しましたほか、一流の新聞雑誌の記者に働きかけまして、米側の批判の当らないことを書かせたのであります。それから、マーケット・リサーチにつきましても、アメリカ、カナダ両国におきまする専門調査会社を利用しまして、日本品の販売経歴、米国内における批判等について調査を行なったのでありますが、現在までの調査対象品目は、全部が中小企業製品であります。すなわち、双眼鏡、繊維二次製品、玩具、測量機械、洋食器、毛織物、陶磁器、タイル、漁網、合板工具、建築金具であります。その調査結果は、印刷の上、国内の関係業界に配付して、啓蒙に努めておるのであります。  それから次に、農水産物、医薬品の海外共同施設についてでありますが、お茶につきまして、カサブランカ、真珠につきましてニューヨーク、農産物につきまして香港、医薬品につきまして香港、これらの海外の共同施設は、全部中小企業のために市場調査なりあるいは宣伝等の事業を行なっておるのであります。  それから次に、意匠の改善の事業でありますが、ます留学生として派遣をいたしておりますのは、地方庁の試験研究機関及び意匠センターの職員でありまして、帰国後指導講習を行う対象は、主として中小企業を対象としておるのであります。  それから、海外の優秀見本を収集しまして、各地方を巡回をして展示をいたしておりまするが、これまた、ほとんどが中小企業を対象としておるのであります。その他国内におけるPR及び国外における貿易相談にいたしましても、大部分が中小企業を対象として行なっておる次第であります。以上であります。
  72. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいま答弁のありましたところによりますると、調査のものの配付先などには、断然中小企業が多いということであります。それからまた、博覧会あるいは見本市などの出品者にしても、あるいはまた、出品小間数にしても、中小企業が多い、その他これに関連するような答弁があったわけでありますが、それは私は当然なことだと思うのであります。なぜかといいますると、調査ものを配付するような場合には、会費を取るとか、あるいはまた、それを実費で売るとかいうことなんでありますから、当然従来の振興会、ジェトロの行き方からいいましても、場合によれば営利的に考えても、中小企業相手になってくるのは当然なことであります。また、出品者、出品小間数が中小企業が多いという点も、中小企業が輸出をするについて、わらにもつかまりたいと、何とかして輸出をしなければ、自分の命が続かないというような状態なのでありますから、苦しい中からでも、非常な機軸を払ってしゃにむに出品をしてくる、あるいは高い小間料も払ってくるということになるのでありまして、こういう数字が出てくることは当然であります。むしろ、こういうことになるということは、日本の貿易政策自身が、中小企業には酷であり、中小企業には不利である、その結果こういうようなことが現われておるというふうにすら考えられるのでありまして、そういう点から考えますると、私の質問しておる要点というものは、そういうようなことではくて、日本のこの輸出貿易について、大きな見地から、中小企業の製品の輸出について、裏から言えば、先ほど来申す通り、軽工業品が中心でありまするが、こういうふうなものについてどういうふうにやっていくのだ、どの市場をねらい、どういう輸出奨励方針を取るのだ、あるいは輸出の税の減免などにつきましても、中小企業方面にどういう行き方をとるのだ、そういうようなことと相並んで、この貿易振興会についても、今度こそかような大きな線を、中小企業本位に打ち出していくのだということを、これは大きな政策問題でありますから、大臣に伺っておるのであります。また、この提案理由にも、中小企業のための貿易振興に特に重点を置くのだというようなことでありまするが、今までの印刷物の配っておる件数が中小企業が多いとか、出品者が中小企業者が多い、小間数が中小企業者が多い。そういうようなことでは、どうも納得がいかぬのですが、その点一つ国務大臣として通産大臣から、今後の輸出貿易振興について、この振興会を中心として、同時に全体の大きな抱負、御経綸を承わりたいと思う。
  73. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 輸出振興に当りまして、中小企業の製品を極力出していくということにつきましては、まあわれわれとしましても、従来から考えておるところでありますが、特に全般の政策として考えておりますことは、今後の中小企業の製品のどういうものが輸出に適当であるか、繊維品につきましては、これは現に三分の一を占めておるわけでありますが、それにつきましても、今後の繊維品は、結局まあ高級品に進んでいかなければならぬと思うのであります。それにつきましても、デザインとか、あるいは意匠というようなものを考えていかなければなりません。それから新規なものを探していくという努力を怠ってはなりません。それにつきましては、いわゆる特産品というようなもの、また意匠についても斬新なもの、こういうことで考えていかなければならんのであります。従って、ただいま特産品とか、あるいはデザインとかいうようなものにつきましては、御承知のように今度は振興部にデザイン課を設けまして、それによって極力推進していくというふうに考えております。反面におきまして、やはり中小企業の体質の改善といいますか、設備を近代化し、あるいは技術を向上し、また、どういう商品をどういう方面に送り出すべきかということについての、いわゆる企業診断をして指導していくというふうに考えていかなければならんと思うのであります。それにつきましては、この振興会におきましても、ただいま申し上げましたような趣旨で、従来から中小企業のための輸出振興の中核体であったのであります。   〔理事阿部竹松君退席、委員長着席〕 さらに一段とその点も強調し、強化し、また、その事業に、振興会に国が極力力を入れていくということは、とりもなおさず中小企業の貿易の振興ということではありますが、それにつきましても、さらにその面を強調するように考えて、この振興会の法案についての御審議を願うわけでございまして、これはただ単に中小企業というような抽象的なことをお題目のように唱えておるわけではありません。今後の運営につきましても、極力中小企業者の実態に触れた、そうしてほんとうに要望されるところに、ぴったりとくるような機動的な運営をやっていきたといいうのが、本法案を提出した考え方であるわけであります。
  74. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 中小企業の輸出振興のために、基本的な問題として特に考えられなければならん問題としては、税制関係につきまして、事業税、それから物品税でありますが、事業税は御承知のように商工業だけにかけられておる。従って輸出コストにこれが非常に響いていくのであります。それからまた、物品税は西独等にはない。そういう点から競争上、日本に物品税があるために、国内市場で十分に伸びきれない。関係商品は、海外へ出ていく場合に、戻し税こそありますけれども、国内においての物品税の圧迫からくる中小企業関係の輸出産業というのは、非賞に競争力を大きな点から阻害せられてきておるのであります。かような中小企業の輸出関係につきまして、特にそういう面にのみかけられてきておる事業税であるとか、あるいは物品税、こういうものについて輸出振興の見地から、どういう見解を持っておられるのでありましょうか。特に前尾通産大臣は前々から税制のエキスパートでもあられたわけなんでありますので、輸出振興を特に対象として考えてみた場合におけるこの事業税、物品税の過重負担、これについての御見解を伺いたいと思います。
  75. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 地方税としての事業税につきましては、私どもも実は前からいろいろと考えてきておるところであります。まあ、農業に対して事業税を課税いたしておりません現在において、少くとも現行の地方税は、外国との関係を考えない場合におきましても、農業と果して均衡がとれておるかどうかということについて、疑問を持っておるのであります。極力、これは廃止というわけには参らぬと思います。これはどうしても地方に対するある程度の税は、いかなる事業を営みましても、これはやむを得ないものであります。ただ、この税率の引き下げは、極力やっていかなければならんというので、本年につきましてもいろいろと考えたのでありますが、ただ御承知のように、地方財政という問題がありますので、さらに調査会あるいは審議会を設けて、そして総合的に考えていこうじゃないかということに相なりまして、一年見送らざるを得なかった、こういう実情にあるわけであります。物品税につきましては、ドイツには御承知のように売上税があるわけでありまして、それにかわるものとして、われわれも実は売上税をやったのを廃止して、物品税にまた逆戻りしたような格好になっております。しかし、これはあくまで国内の消費者に対する課税であるわけであります。従来から物品税につきましては、奢侈性の特にきついものに限定していこう、それから直接転嫁ができにくいようなものについては、大メーカーが製造しております物品はよろしいのでありますが、中小企業者で圧迫を受けて、みずから負担をしなければならんようなものにつきましては、極力廃止していこうというわけで、これは漸次今まではそういう方向で廃止をして参ったのでありますが、最近におきましては、ちょっともうこのままの姿でおきますと、頭打ちをしたような格好になっておるのであります。もっと総合的に他の税との関係も考えながら、ただいま申しあげましたような趣旨を貫いていくという方策を考えなければならんというような状況にあるわけであります。直ちに物品税を全廃するというわけには参りませんが、ただ、ただいま申し上げましたように、極力中小企業者の負担になるようなものにつきましては、特別のぜいたく品というようなもの以外は、廃止していくべきであろうと思います。また、それが輸出の面におきまして非常な圧迫を加えるということになりましては大へんでありますので、その点は十分今後とも考えながら、物品税の改廃について考えていきたいと、かように思っておるわけであります。
  76. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今後輸出コスト引き上げの見地から事業税、物品税につきまして、ひとり大蔵当局に大体まかせておるというようなことでなく、今後は輸出貿易の見地から、真剣にこの問題を取り上げて研究をせられたいということを、この際強く要望をいたしておきます。  次には、輸出代金の問題でありますが、信用状原則主義を廃止しようという動きがあるように聞くのでありますが、御承知通り、この信用状原則主義を廃止するということになりますると、さなきだに輸出金融のつきにくい中小輸出商社というものは、いよいよ金融難に直面するということは言うを待たぬのであります。そういう点から、今信用状原則主義を廃止していくということは、非常に中小の輸出を阻害することになると思うのであります。また同時に、一面において、大商社を擁護し、中小商社を圧迫するということになると思われるのでありまするが、これについての御見解はどうでありましょうか。
  77. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) われわれが銀行の認証制度を廃止したいということは、事実であります。ただ、そこで非常に誤まり伝えられておりますことは、いわゆる信用状主義といいますか、それをやめようと、こういう考えでは毛頭ないのでありまして、従来から手続の簡素化ということが非常にやかましく、まあ、大企業者ばかりでなしに、中小企業者の方々からも言われております。その根本を考えてみますと、やはり銀行の認証というあの制度を廃止して参りませんと、手続の簡素化というものは根本的にはできないと、こういう結論に立ったわけであります。しかし、このLCベースでいく、いわゆる信用状主義というものをやめましたのでは、これは過当競争なり何かの問題が起ります。で、それはそれとして、自主規制なり、あるいは、場合によりましては、承認品目というような制度を活用して、そうして、別に信用状主議をやめるのではないのでありまするが、過当競争を排除するという面につきましては、銀行で認証するという制度だけをやめて、それはそれとして、信用状主義は、協定の内容にするなり、あるいは政府の承認品目にした場合にも、それに準拠してやっていく。で、過当競争の面を改めるのは、他の方法、現在過当競争排除のためにやっておりまする、それを、またさらに強化しまして、そうしてそれによっていくべきであって、銀行で認証するという事柄自体はこれはやめませんと、手続の簡素化というものは先行きしないと、こういう結論に到達したわけであります。ただいま考えておりますことは、そういうことなんであります。ただ、非常にこれが誤まられて、信用状の原則といいますか、その主義までやめるのだというふうに誤まり伝えられておりまするので、いろんなことが言われておりますが、これにつきましては、十分業者に納得のいくまで説明をし、十分な納得を得られて初めて実施していこうと、こういうふうに非常に慎重に考えておるわけであります。
  78. 海野三朗

    海野三朗君 関連。そういう際に、つまり輸出業者が非常にたたかれておるということについては、ミシンでもライターでも、いかなる手を政府が今打たんとしておるか、その点をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  79. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ミシンとかライターとかいうようなものにつきましての、過当競争なり、あるいは買いたたかれるというような問題につきましては、最終的には、とにかく一手買い取り機関を設けてやっていくより仕方がないではないか、その方法でいくのが一番妥当ではないかというので、ただいまいろいろ協議もし、検討も進めておるわけであります。まあ、それにつきましては、あるいは法律の改正もお願いしたいと思っておるわけでありますが、現状におきましても、運営の仕方によりまして、極力まあ一手買い取り機関というようなものを設けてやっていくのが一番徹底するのではないかと、こういうふうに考えております。
  80. 海野三朗

    海野三朗君 バイヤーがこっちに来て、製造元まで行って値をたたく、それがアメリカにいくと二倍、あるいははなはだしきは三倍の値段で売っている。結局するところ、日本の製造業者のあぶらをしぼっているということになるのでありますが、これは今考慮される段階ではなくて、直ちにそれに向って、政府法案を出すなり、手を打たれなければ、日に日にこの貿易の状況は進行しつつあるのでありますから、それに対する法案はいつお出しになるお考えか、これはどうなんですか。政府の根本方針は、今これが解散にでもなるというと、またこれは二、三カ月延びる。そうすると、その間に、貿易を休むわけにはいかないから、どんどんどんどん進んでいく、やっぱり相も変らずたたかれてたたかれて、日本のこの製造業者がほんとうに苦しめられておるというこの現状を、政府は実際目撃して、いつ、どういう法律をお出しになるお考えでありますか、その根本のお考え一つ承わりたい。閣僚の一人としておられる通産大臣は、あなたが、のんきにお考えになっておられては、私はいけないのじゃないかと思います。法律をお出しになるなら、いつお出しになるお考えであるか。それを一つはっきり伺いたい。
  81. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 実はまあ運営の仕方によりましては、現行法でも一手買い取り機関の制度を設けられておるわけであります。また、自主規制の場合においても、同様なんでありまして、まあ、それに強力に政府が介入できるという体制にしたらどうかというので、法制局と盛んにやっておるのでありますが、あるいはなかなかその話がつかぬ、こういうことになるかもわかりません。その場合におきましても、私は現行法を強力に運営することによって、まあどうにかやっていけるのじゃないかというふうに考えておりますが、さらにそれを大きく法のバックを受けるというために、まあ盛んにやっておるわけでありますが、われわれの希望するようなことになりますと、やはり法制上非常に疑問の点ができますので、なかなか案が、きょうあすというわけには参らぬのであります。従って、現在におきましても、政府としましては、かなり強力に指導いたしておりまするが、業者の方々も、利害関係があるものですから、一部の人がなかなか承知されぬというような面もありますので、今後とも、われわれとしましても、もっと強く指導していくというふうにやっていきたいと思います。
  82. 海野三朗

    海野三朗君 もう一つ、ただいまの大臣お話しでは、どうもぴんと来ないのですよ。この間、輸出業者を呼んで聞いたのです。そうしましたところが、くぐってバイヤーが入り込むものですから、このライター一個についてもたった四十円くらいで売れていっているんですよ、アメリカに四十円くらいで、それが向うでは二ドル半か三ドルくらいで売っている。それがどうしてそうなるかというと、ここの窓口がもうむちゃくちゃなものですから、それで値をたたかれても、背に腹はかえられないから、契約を結んでしまう。そういうふうなものでありますから、何としても自分たちはこの貿易振興会、そういう方面の恩典に浴さないのだといってくどいておられます。それは非常に多いのです。日本ではミシンなんぞは実にひどいたたかれ方、これは決して捨てておかれないのじゃないか。最低賃金法ともこれは結びつく問題であって、一刻もこれはゆるがせにしておけない。これに対しては、行政措置をとってこれをどうするとおっしゃるのは、いかなる行政措置をおやりになるのでありますか。これを私はお伺いをいたします。
  83. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 結局は、これは業者の自主規制の問題だと思います。それにつきましては、まあ従来は官庁があまり中に介入して、そうしてその自主規制を強力に押し進めるということについて遠慮がちだったと思います。しかし、そういうことを言っておる場合ではありませんので、われわれとしましても、許される範囲内において、指導をもって自粛規制を強化していくということでありまして、今後、まあ今までの輸出規制というのは、官庁は全然関係もせず、干渉もせずしておったということに対して、もっと積極的に自主規制をやらせるというような指導を強くやるということだと思うのでございます。まあ、それについては、相当な決意をもってわれわれも当ろうと、かように考えておるわけであります。
  84. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 関連して。今の海野委員の質問は、外国人が来てたたくと、そうして、向うでまた高く売りつけるという話しですが、不良の外国人が不法に衣料であるとか、食糧であるとか、あるいは自動車というようなものが、不法にはんらんをしておるというような点については、一体自動車の数など、正規の手続によらざるものが一体どのくらいあるかということを一つお知らせ願いたいことと、そういう不良の商社、不良の者が日本へ不法に持ってきておるというような点については、どういう取締りをしておられるか、この点を伺いたい。
  85. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 向うから不法に輸入するというものは、相当厳格に取り締っておるわけでありまして、自動車につきましても、ただいま通産省でやっております取扱いでいきますと、外交官以外はほとんど持ってくるわけにいかぬというようなことになっておるわけであります。また、そのほかの商品につきまして、不法に持ってきておるというものを、ちょっと私具体的には心当りがないのでありますが、そういう取締りにつきましては、相当厳格にやっておりますので、詳細につきましては、政府委員からお答えいたさせたいと思います。
  86. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 輸出決済の問題等につきましては、あらためて十分に質疑もしたいと思っておりますが、時間の都合もあるようでありますし、また、他に質問も多いかと思われますので、本法案に関しまする点について質問したいと思う点を、四点まとめて質問をいたしますから、それに対して答弁をしてもらいたいと思います。  第一点は、この振興会運営につきまして、大阪方面、関西地区について重点を置いていかれたい、という要望が強いのでありますが、大阪方面については、どういう具体的な措置をとられるか、これが第一点であります。  それから第二点は、運営審議会が置かれるようでありますが、運営審議会の委員総数は何名であって、そのうち中小企業代表というものは何名入れようというふうに考えられておるか、この点が第二点であります。  それから第三点、四点は、いずれも衆議院における付帯決議に関連するものでありますが、おそらく付帯決議に対しましては、通産大臣等から、その趣旨に沿って努力をするというような御答弁があったんだろうと推測するのでありますが、付帯決議の第一の「本会の業務が官僚的運営に陥らざるよう充分留意すること。」ということがありますが、これについては、どういうふうに具体的にお考えになってるか、これを具体的に承わりたいと思うのであります。これが第三点であります。  それから、第四点といたしましては、付帯決議の四項に、「輸出意欲を一層旺盛ならしめるよう、国内におけるこれが指導斡旋活動に万全を期すること。」ということが入っておりますが、これに対しまして、具体的にどういう方策を、措置をとられようとしているんですか。この点をこれまた具体的に承わりたいと思うわけであります。以上四点について、一括御答弁を願います。
  87. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 第一点の、大阪に重点を置くという点につきましては、これは私も、御承知のように従来から大阪に本部があったわけであります。しかし今回は、私は本部はやはり東京に置くべきだと考えておりまして、と申しますのは、国内活動全般につきましても、外国との連絡につきましても、やはり本部は東京でいかなければならぬ。ともすれば、大阪にしますれば、やや地方に傾き過ぎると、こういうふうに考えておるのでありまして、まあ、本部につきましては、私は東京に置きますが、仕事の分量からいいますと、やはり先ほどお話しのありましたように、中小企業者本位ということになりますと、仕事の分量は大阪の方が多い。従って大阪につきましては、従来通り重点は置いて参りますが、ただ、本部としては東京に置くと、これは拡充していくわけではありませんので、東京の本部を拡充するということに多少は相なると思いますが、しかし、仕事の重点は依然として大阪にありますので、大阪の機構は支店という名前になりましても、実質には変らず、またそれ以上のものにしていきたいというふうに考えておるのであります。  それから、第二の運営委員会の委員でありますが、数は一二人であります。そこで、まだ審議会の委員は現在きめておりません。率直に言いますと、これはいわゆる商社のひもつきというようなことを言われましても困りますので、その点は大企業の方は、まあお入り願うかどうかというようなことについて、よほど中正の方といいますか、そういう方を選んでいかなければならぬと思います。従ってまた、中小企業の関係者にも、もちろん入っていただこうと考えております。その数は、まだ適任者も、具体的に当ってみませんとわかりません。人数はただいまのところきめておりませんが、中小企業関係の方々に、また中小企業の実情のわかった方々に、相当数、大部分といってもいいように入っていただきたい。と申しますのは、少くとも中小企業の実態について知っておられる方ということを、われわれは念願しておるわけであります。  それから第三に、この付帯決議に関連いたしまして、付帯決議の第一の、いわゆるまあ官僚的運営をやめていきたい、やめろ、こういう御趣旨であります。もちろん、われわれは民間の達識者に入っていただきたい。ただ、それにも先ほど申しましたように、ひもつきというか、従来いろいろある片寄った、ある会社の御関係の方ということになりますと弊害も出ますので、そういう観点からいたしますと、ある程度限られては参りますが、極力民間の達識者を登用して、お入り願って、そうしていわゆる官僚的運営に陥らないように留意するということでありまして、これまた当然のことで、われわれもそういうことで努めて参りたい、かように考えておるわけであります。  それから、第四の国内におきましても、中小企業者の輸出意欲を一そう旺盛ならしめるように指導しろ、こういうことでございまして、これはわれわれもとより先ほど来申し上げておりますように、今後の企業診断あるいは設備の近代化、あらゆる面につきまして、中小企業者が十分輸出競争力にたえていけるということをいたしますほか、ややもしますとこの貿易振興会が国内のPRを怠っておりまして、商工会議所あるいは商工会、あるいはまた地方のいろいろな団体との連絡というものが、十分に行われておらぬと私は考えております。それらとの連絡を密にして、そうして国内からの具体的な御要求によって、海外で貿易あっせんをいたしますにつきましても、あるいは市場の調査をいたしますにつきましても、いろいろ具体的な御要求を極力吸収していくという面に努力をいたしまして、海外の市場に、ともすれば中小企業者の方々がうとい、その面の啓蒙も極力努力していくというふうに考えておるのでありまして、第四の付帯決議の条項につきましても、十分その趣旨に沿って努力いたしたい、かように考えておる次第であります。
  88. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 先ほど関連質問をいたしました際に、大臣から不当な商品等は国内に、十分取り締っておるから入っておらぬというようなお話しでありますが、町にはんらんしておるあの外車の状況を見ても、あれらが一体正当に全部入っているというふうにお考えでありましょうか。私どもはそうは考えない。相当数不正にあれらが入っておるのではなかろうか、かように存じております。その他の食品につきましても、衣料品につきましても、あるいは宗教法人とかというような名前によって来て、そうしてそれらが売りさばかれておる。こういうような事実もあるというふうに聞いております。それらに対する御所見をこの際承わって、なお政府委員の方から詳細にお示しを願いたい。
  89. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) この自動車、食料品が不正に輸入をされておるのではないかというお尋ねでありままするが、率直に申しまして、非常にこの実態の把握がむずかしいのであります。税関でもいろいろ取締をいたしておるわけなんでありますが、およそ輸入というものは、許可がなければ原則としては入らないことになっております。従いまして密輸入品ということになりますれば、これは別でありまするが、その他のいわゆる正規に税関を通ったもので、いわゆる為替管理法上の許可を受けないものは、どういうものがあるかというふうなことを究明していかざるを得ぬかと思いますが、たとえば自動車でみますると、駐留軍軍人、軍属の車が、今の行政協定と申しますか、そういう規定によりますと、もちろん無制限ではないのでございまするが、特定の条件下におきまして入ることになっておるわけであります。何年間使用したものは、帰るときには売ってよろしいというようなことになっておるわけであります。これには為替管理法上の許可は要らないことになっておるのであります。われわれ通商局のこの輸入許可をしておる者から見ますと、実態の把握は非常にむずかしいのでありますが、向うと連絡をいたしまして、その実態の把握に努めてはおりますが、率直に申しましてかなりな量に上っております。その他食料品等につきましては、これは察しまするのに、これも断定的には申し上げかねますが、PXその他の軍人、軍属用の酒保と申しますか、そういうところから横流れがあるのではないかということでありますが、これの実態の把握は、事実上われわれとしては不可能であります。取締り当局、警察当局に依頼をするほか道がないということなんであります。上野のあめ屋横町には、いろいろあるじゃないかという、あれもありますが、率直に申しまして、これらはほんとうの密輸入品と申しますかと、それからPX等からの横流れ品ではないか。前ものにつきましては、税関当局におきまして、常時非常に厳重な取締りを励行しておるのであります。PX等につきましては、われわれとしては、できるだけそういうことのないように、向うに依頼をしているような状況なんで、率直に申しまして、われわれ通商局といたしまして、なかなか実態の捕捉ができにくいというのが実情なんで、はなはだ十分な答弁ができかねるのでありますが、そういう実情でございます。
  90. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そこで、率直にお答えになったわけです。それはしろうとのだれが見たって、町にはんらんしている外車が、正規の手続によって来ているとは思われません。また上野だって、どこだって、銀座の、西銀座あたりに行けば、幾らでもそういうものがあるわけです。従ってこれは通産当局としてはいろいろ御困難ではあろうけれども、やはり戦後の混乱に乗じて、特需関係者その他が日本の市場を荒しているという点については、これは一つ関係当局と密接な連絡をおとり願って、十分に一つそういうことのないように健全なあり方に一つ御努力が願いたいと思います。  そこで、お尋ねをしたいのですが、この日本貿易振興会は、第一条に貿易振興に関する事業を総合的、効率的に行う、そうして御説明の中で中枢機関にするのだという仰せでありますが、その総合的ということは、一体どういう意味であるか。たとえば今まで他の貿易振興事業等がいろいろある、そういう団体がたくさんあるわけです。そういうものとの関係、また、それを将来この貿易振興会に統合してしまうのだ、こういうような方向に持っていく、こういうようなお考えであるのかどうか。あるいはまた、外国にあります商社の出張所の仕事、その他在外公館のいたしておりますところの仕事の重複の調整を、どういうふうに具体的にやっておいでになるのか。これは付帯決議の中にも、「在外公館との有機的連繋及び在外商社との密接な連絡に遺憾なきを期すること。」ということがあるのだが、それをどういうふうにやっておいでになるのかという点を承わっておきたい。
  91. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) この「総合的」にと申しておりますのは、貿易振興の事業は、それぞれ有機的な関連が非常に多うございますので、できるだけ広範に一カ所で実施する方が、効果的また能率的に行われるのではないかと、こういうふうに思うわけであります。しかしながら、決して排他的または一元的にという考え方ではないわけであります。できるだけ広くやりたいという意思を表明をしておるのであります。そこで、ジェトロ以外にも、貿易振興事業をやっている機関がかなりございます。たとえば重機械類につきましては、プラント協会というようなものもありますし、あるいは生糸等につきましては、特別な蚕糸協会が、主としてそういう業務をやっておるのであります。そこで、法律の考え方としては、できるだけ広く一カ所でやりたいという気持なんでありますが、それぞれの団体にも、それぞれの理由があってやっておられることなんでありますので、それらのものを一挙に吸収ということは、非常にむずかしいのでありますが、われわれとしては新しく貿易振興事業をやる場合には、できるだけこの機関で一本でやって参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。  なお、在外公館との関係でありますが、在外公館は在外公館として外交を本務とし、経済の関係につきましても、調査にいたしましても、いろいろな事務をやっておられるのでありまして、これは貿易振興会の方は、あくまでも民間といいますか、特殊法人ではございますが、民間のいわゆる外交を目的とするものではございませんので、在外公館との重複というような点は、全然懸念をいたしておりません。しかしながら、実際問題としていろいろな市場調査等につきまして、同一地域に在外公館と日本貿易振興会の出先の職員がおる場合に、仕事の重複があってはならないということで、外務省ともおおよその事業分野というものをきめております。振興会の方は、主としてその当該市場に関する日々の市場調査といいますか、やや流動的な市場調査に重点を置く、在外公館の方は、やや固定的な基本的なものに重点を置くというふうな線を引いておるわけでございますが、実際問題といたしまして、なかなか線を引きにくい場合もあろうかということでございまして、中央におきましても、常時連絡会議を持つほか、現地におきましては、在外公館長の指導監督を受ける建前にしまして、日常の業務を絶えず報告をするということによりまして、できるだけ重複を避けて参るということになっております。その点については、外務当局とも十分な了解点に達しているような次第であります。
  92. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そこで、今のお話しだというと、在外公館は在外公館のあり力がある、商社は商社のあり方がある、振興会は振興会のあり方があるということでありますと、ここにあります付帯決議の、有機的連繋、あるいはまた連絡ということについて、遺憾なきを期せられたい、こういうことに関してわが道を行くのだというだけのことであってはならぬので、その点は十分に一つそれぞればらばらにならぬような運営を、ぜひお願いをしたいと思うのです。  それからこの振興会のよくいくか、いかんかという問題は、結局やはり人の問題である。先般東京、名古屋、関西等の貿易関係者との懇談会を私ども持ったわけでありますが、この付帯決議の第一にありますように、官僚的な運営になるということを非常に心配をし、杞憂をしておられるわけであります。従って、振興会のそういう役員の構成に対するところの構想、あるいは審議会の委員の人選の構想というようなものについて、あらかじめお考えがあろうと思う。それを一つお示し願いたいのであります。また、先ほどお話がありましたように、民間の十分な見識と経験を持っている人を選ぶということはむろんだけれども、こういう役員の人が十分に仕事ができるようにして、こまかいことまで、これも先般非常にそういうことを心配しておったのですが、行政庁が干渉をされるのじゃないか。そうなれば、その能力を十分に発揮できんというような声が実は相当あったのであります。むろん、官庁からの天下り人事というようなものは絶対にならんのでありまして、そういうような点について、あるいはまた、給与面等の具体的な問題についても、受け入れ態勢を整えている御準備があるかどうか。  それからこの際承っておきたいのですが、海外調査員の人々の給与が非常に低い。従って十分な調査を行うことができない。また、給与が低いから従って人材も従来得られなかった、こういうことも聞いておりますが、現在の給与の実態、また今後の見通しを、できますならば数字によって一つこの際承わっておきたい。
  93. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) できます振興会についての役員、あるいは運営審議会の委員の構想につきましては、率直に申し上げますと、いろいろ私どもも考えているのであります。しかしまた、いろいろ不安なり動揺なり、いろいろなことが心配されましてもいかがかと思いますので、ここに付帯決議にあります御趣旨は、十分私も承知いたしておりますので、また、そういうふうな考えでおりますので、これ以上ちょっと申し上げることは遠慮させていただきたいのであります。  それから第二の、いろいろ官僚が容喙するのじゃないか、ごもっともであります。しかし、私は振興会法を作ります際に考えましたことは、従来は補助金の関係で政府が介入しておりました。そうなりますと、補助金というものに対する非常にこまかい干渉をしているというような面が悪く出ておったと思いますが、特殊法人でしっかりしたものだということになりましたら、機動的に自主的に運営してもらうので、もう政府はそんなに介入することは、必要ないのであります。また、介入することは、結局振興会の本旨の動き方ができない、こういうことに相なりますので、その点は極力干渉しない。と申しまして、実際、いろいろな条文をごらんになりますと、承認を受けるとかいろいろな面がありますから、これでまた縛るのじゃないかという御心配があるかと思います。しかし、とにかくまた乱に流れてもいけませんので、従来あります程度の監督規定は設けておりますが、それがあることによっても、向うですでに自粛されてくるわけでありますから、それをとやかくやかましくするつもりはありませんし、また、極力包括的な承認を与えておきましてその中の問題につきましては、もう自主的にやってもらうというふうに、これはもう大蔵省ともすでに打合せをいたしておりまして、いろいろ準備をやっておるのでありますが、あまりこまかいことに介入しない方針でやっておるのであります。また、この給与の問題でありますが、従来あまり給与がよくないのだ、人が得られないという面もありました。ただ、こういう基礎が固いものになりますと、まあ、それだけでも安定しておるからというので、いい人が行くと思います。しかし、その点につきまして、いろいろ打合せをしたのでありますが、われわれの予期しておりましたほどの引き上げもできないのでありますが、まあ、海外の方につきましては数字は政府委員が申し上げますが、引き上げはやっておるわけであります。
  94. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) この国内職員及び海外職員の給与に関するお尋ねでありまするので、ちょっと数字的に御説明を申し上げますと、まず、国内職員は現在月二万三千七百円ということになっておりまして若干低いかとも思うのでございますが、今度の新法人下におきましてはその三%アップの月二万五千円という基準にしたいということで考えております。ほかにボーナスを三カ月分支給の予定になっておるのであります。これはもちろん職員でありまして、役員につきましては、一般の特殊法人役員の基準がありますから、それによることになろうと思うのであります。それから海外職員につきましては、派遣調査員と貿易あっせん所で若干の給与の差があるのでありますが、平均いたしまして現在のところ一人当り給与が六百五十ドルということになっておりまするが、新法人下におきましては若干改善をいたしまして七百十ドル、いわゆる六十ドルアップになるのであります。もちろん、われわれはこれをもって十分とはいたしておりません。また、次の年度におきまして、もっとよくなるように努力をいたしたいというふうに考えております。
  95. 小滝彬

    ○小滝彬君 ちょっと関連質問。今給与の話が出たのですが、在外の者はどうですか、商社なども最近は家族手当を出すところが出たのだが、その一群かしらになる人に妻加俸か何かあるのですか、それとも七百十ドルだけであって、妻はその範囲内で連れて行けば行かれるということになるのですか、その辺をついでに御説明願いたい。
  96. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 大体家族手当としまして三割を見ておりますが、今先ほど申しましたのは、家族手当を含んだ数字であります。従いまして、たとえば市場調査員について見ましても最高が八百三十ドル、最低が四百八十ドル、それから貿易あっせん所にいたしますと、所長が千八十ドル、最低の職員が六百六ドルということがあるわけであります。これはまあ年令、経歴その他によって違うかと思いますが、先ほど申しました七百十ドルというのは、全部の総平均をして家族手当を含んだ数でございます。
  97. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そこで、最後にお尋ねいたしますが、このジェトロは、海外の市場調査ということが大切な仕事でありまするが、合せて日本製品の宣伝ということも非常に大事である。そこで、このジェトロの海外における出張所の自動車等は、国産車を使っておるかどうか。と申しますることは、先般私はフィリピンのマニラで朝海大使が大使館に国産車を備えつけて、みずからも乗っておる。非常に感銘を深くした。また、先般去年の暮れに道路公団の総裁の招きで、アメリカから日本の道路の、名古屋、神戸の視察に来た。そうしましたら、あそこの道路公団の秘書課長が国産車に乗せておるという話を、偶然に私にそう言ったのです。それで一体、外国人が乗っておるのですから、こういうりっぱな自動車が日本にできるのかといって非常に感心をした。四十日間これを使ってもらうのだという話しで、道路公団の秘書課長が、商売に関係のない人が、そういう日本の商品を少しでも海外の人に紹介しようというそういうりっぱな尊い気持に私は打たれて、総裁にもまことに感心なことであると言った。朝海大使の話もまたその通りです。従って、私は当然この貿易振興会等の出張所の人は、そういう日本の自動車についても、あるいはそのほか電気機械にしても、等々の国産品をみずからもって範を示すということでなければ私はならぬと思う。そこで、むろん貿易振興会の人たちは当然のことである。また、外務省の出先機関におきましても、   〔委員長退席、理事阿部竹松君着席〕 そういうこまかい心くばりをくばるべきではないか、私は当然の輸出振興の大事な問題だと思うのだが、一体大使館なり何なりの一つそういう調査をお願いしたいし、それについての御見解を承わりたい。また、先ほど通産大臣は、国内に対してもPRをしなければならぬと申されました。これも私はその通りだと思う。ともしますると、われわれ欧米教育をずっと受けてきた風習、伝統から、外国の品物は非常にいいんだということで、国産のものをばかにするというような点が非常にある。従って、貿易を振興しようとすれば、日本の優良な商品というもの、日本人の知識、技能、技術というものによって、生産されたる品物のPRということは、非常に大事なんです。先般通産省に行って、私国産振興についてどういう考えを持っていらっしゃるかと言ったところが、所管する課もない。これはまた、黙っていてくれということで、口には出しませんが、ある通商局長があなたの管内で国産品で世界に紹介すべきものはないかと言ったら、今時分国産振興というのは、というようなことを言われた。私は非常に憤慨した。通産省みずからそんなとろくさいことを言っておっては、問題にならぬと思う。従って、それらについての一つ御所見をこの際承わっておきます。
  98. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ジェトロの出先が、国産車を使っておるかどうかにつきましてはあとで申し上げますが、お話しの御趣旨は、私もっともだと思っておりますし、極力そうでなければならぬと思います。かように考えておりますので、大いに日本の国産愛用ばかりでなしに、海外におきましては、これも日本商品のPRという点につきましても、一挙両得なんであります。ぜひともそういうようにいたしたい、かように考えております。
  99. 阿部竹松

    理事(阿部竹松君) ちょと速記とめて。   〔速記中止〕
  100. 阿部竹松

    理事(阿部竹松君) 速記を始めて。
  101. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は本案の審議に当りまして、重要な点をお尋ねをいたしたいのでありますが、これはおそらく調査室の方から、資料要求として要求せられたものと思うのでありますが、この資料要求の内容を拝見いたしまして、そのうちに輸入差益金の収入という資料があるのでありますが、これは収入が八億一千七百三十九万八百四十八円、これはバナナとパイナップルカン詰の両方であるのであります。これは二十九年度の下期とこうなっておるのでありますが、おそらく調査室としても、また私ども各委員考え方といたしましては、最近の全体についての私は要求であろうと、かように思うのであります。従いまして、特定物資輸入臨時措置法が法律として公布せられましたのが、三十一年の六月四日、すなわち法律第百二十七号によってこれが発効せられております。それからまた、通産省の政令として同月バナナ、パイナップル、腕時計、それからサケの卵、マスの卵、コンニャクイモこれが発令になっているのでありますが、それで私どもまず第一にお尋ねいたしたいのは、そのうちのバナナだけの差益金の状態を見ましても、二十九年の三月に二十万ドル、そのうちにバナナのかご数にいたしまして、二万六千六百六十六かご差益金が当時千六百円になっておるわけであります。従いましてジェトロに納めました金が四千二百六十六万円であります。それから三十年の二月に御承知通りリンク制というものが廃止になりまして、三十年の三月に三百五十万ドルのバナナの発表があったわけでありますが、このときのかご数を見ますると、四十六万六千六百六十六かごという膨大なものであります。差益金が当時といたしまして千七百円、これを合計いたしますると、七億九千三百三十三万二千二百円という数字になると思うのであります。それからさらに、三十一年の二月は御承知の、これは非常に政治性と申しましょうか、突如現われた全バ連という団体がございまして、ついに入札制という問題になったことは、これは御記憶に皆さんも新たなことと思うのであります。このときの金額は二百二十五万ドル、そういたしますると、かご数にいたしまして、三十万かご、それからこれは入札制でございましたので、一般の想像もできない入札も行われて、新聞をにぎわしたわけでありますが、そのときの価格が四千百八十五円という膨大なものなんです。そういたしますると、三十一年の二月ジェトロに入りました金が十二億五千五百五十万円というものであります。従ってこのバナナだけを見ましても、私どもの調査したところによりまするというと、二十億九千百四十九万二千二百円、こういう膨大な数字になっておるのでありますが、そういう資料がほとんど幾つか探したのでありますが、見えないのでありますが、この点につきまして、まずお尋ねをいたしたいのであります。
  102. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) いわゆる現在のジェトロがバナナ、パイカンにつきましての差益金にタッチをいたしましたこの数字について申し上げますと、二十九年の下期におきまして差益金の徴収総額は八億一千四百八十八万一千円であったわけでございます。で、このうちジェトロが基本財産としていただきましたのは、四億三千六百八十八万一千円でありまして、残りの資金は重機械技術相談室、あるいは日本貿易会の調査費、あるいはニューヨークのカメラサービス事業補助費、繊維品の輸出振興施設、それから日本輸出農林水産物振興会の基金、それから産業意匠改善施設対策費、輸出雑貨検査施設対策費、国際商事仲裁協会の基金、こういうふうな工合に配分をされたのであります。それから三十年の上期におきまするバナナ、パイカンの差益徴収金は、総額十三億三千六百六十一万四千円でありましたが、この資金は三十一年の三月、十二月、それから三十二年の七月、三回に分けまして一般会計あるいは特定物資特別会計へ全額寄付をしたのでございます。従いまして二十九年の下期におきまして四億三千六百万円を現在のジェトロの基本財産としていただいたような次第でございます。もちろん、その後は特定物資特別会計で差益金を徴収しております。
  103. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 先ほど私が申しましたこの三十一年の二月のいわゆる入札制のときにやられた十二億五千五百万円というのは、これはどうなんですか。
  104. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) それは特定物資特別会計において処理をせられたと思います。
  105. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 特定物資の法律ができたのは、三十一年六月ですよ。私の言っているのは三十一年の二月ですよ。この三十万かごの二百二十五万ドルの割当のあったのは。これは全然見当が違っていますよ。
  106. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) ちょっと先ほど申し上げました三十年上期の差益金の十三億のうち二億四千百万円を一般会計に入れまして、あとの約十一億円を特定物資特別会計へ寄付したのでありますが、従って今大竹先生御指摘の、三十一年二月といいまするのは、ジェトロが徴収をいたしまして、特定物資特別会計へ寄付した部分であろう、こう思うわけであります。   〔理事阿部竹松君退席、委員長着席〕
  107. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 どうもこれは、私の調査が粗漏てあるか、局長の答弁が間違っておるか知りませんが、とにかく私どもが要求をいたしておりますその資料の中に、あなたの説明にない、最初の、つまり二十九年度の下期だけの八億一千幾らというものだけを書いて、良識あるわれわれ委員にこういうものだけを配るというのは、これは意識的であるとすれば、これは私は大へんなことだろうと思う。それから、もしこれが粗漏であったというならば、われわれは本法案については、一そう慎重な審議を進めなければならぬと思うのでありますが、大臣の御見解いかがでありますか。
  108. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これは別に意識的のものでも何でもありませんので、よく調査いたしましたら、十分御納得できると思います。完全な資料を調査して、すぐ差し上げたいと思います。
  109. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 とにかくその特定物資特別会計に寄付せられたことはけっこうなんでありますが、それならそれのように、幾ら入ってどうされたという、少くとも何十億というような金額なんでありますから、そういうようなことは資料として、こんな中途半端な、二十九年度の下半期だけのものを出して、そういう膨大なものを、われわれが言わなければ黙っておろうということでもないだろうけれども、われわれは何かそういうようにも感じられるのでありますが、一つこれを政府に要求をいたしたいと思いますが、いま少しく詳細なる、私はバナナだけのことを言っておるのでありますが、パイナップルその他の特定物資に課せられたものの差益金というものについて、もう少し完全な資料を一つ出してもらいたい、これを要求いたしたいと思います。
  110. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) どういう資料が出てるか存じないのでありますが、実は正式の要求は全然ございませんのです。だから私の方からは出していないようです。だから別のあれでお調べになったのじゃないかと思うのですが、今御要求になりました資料は、完全なものを作りまして、さっそく提出さしていただきます。
  111. 相馬助治

    ○相馬助治君 それじゃ、委員長の責任を追及しなければならないと思うのですね。私は当委員会において、他の委員も御記憶になっていると思うのです。ジェトロに関する収支等を含めたかなり詳細な資料をお出し願いたいのです。すなわち、この日本貿易振興会法案そのものについては、われわれは反対しない、われわれというよりも、私は。しかし、今までのジェトロについては、これを教訓的に、反省的にながめなくちゃならないから、その業績その他について、かなり詳しい資料をほしいと、こういうことを私は委員長を通じて正式に発言していたはずなんです。これは、委員長、調査室長等はこれをどう取り扱ったのか。今の松尾局長お話しでは、何ら要求を受けていないと、これはとんでもないお話しでありますので、委員長どうなっておりますか。
  112. 近藤信一

    委員長近藤信一君) この前の資料の要求のときに、政府の方に要求して、提出しますと、こういう答弁です。
  113. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 今相馬先生からの御指摘の分の資料は、三十一年度、三十二年度、それから三十三年度の収支予想表というものを、支出及び収入、項目別に提出いたしておるのでありますが、特にそのバナナ及びパイカンの差益金というものについて御指摘がなかったのでありますので、提出をいたしておりませんが、今、大竹委員から要求がありましたので、さっそく提出をさしていただきます。  それから、相馬先生からなお御要求がありました現在の海外貿易振興会と、新しい日本貿易振興会とのいろいろ対照表を出せという御要求でございましたが、それらにつきましては、配付申し上げておるかと思います。
  114. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は、その資料がそろってから、一つ詳細な御質問申し上げたいと思うのでありますが、大臣もおいでのようでございますから、この問題に関連いたしまして、大臣一つお尋ねをいたしたいのでありますが、とにかく、これは政府の大きなお声かがりによってジェトロというものが生まれた、従ってジェトロに対して、通産当局が大幅ないろいろな意味において援助、後援をせられるということは、これはまあ当然と思うのでありますが、ただ、私どもといたしまして考えなければなりませんことは、何もジェトロができて初めて海外貿易の振興の団体ができたというわけではないのでありまして、これはもう日本が諸外国を相手に貿易という制度ができて以来、民間には、その地域、またその人を中心にしてたくさんの貿易団体というものがあるわけであります。そうして、今日まで非常な努力をせられ、経済的にも非常な苦労をせられてやってきておる団体というものがたくさんあるわけであります。私は一々あげませんけれども。そうして、私の記憶するところによると、ある貿易振興の団体のごときは、これはもうごく規模としては小さいのでありますが、歴史は相当長い。ちょうど終戦によって外務省が外交機能をほんとうに失してしまったそのときに、貿易振興の域をさらに逸脱するような、たとえば中国における法人の戦争前の調査というようなものを依頼せられて、当時新円の切りかえで金がないにもかかわらず、莫大な費用を支出いたして新聞広告等をやって、そうして政府に貢献をしたというような例もある。しかしながら、そういう団体は今日一銭一厘でも……、まあいわば、政府からほんとうは立てかえ金を取ってもいいので、援助じゃないので、立てかえ金を取ってもいいような団体もあるわけなんです。しかしながら、一銭でも政府は払いません。そういうようなこれはまあ一つの例でありますが、団体がかなりあるのです。それにもかかわらず、これは政府のお声がかりとはいったところで、一財団法人の、当時としては調査会にすぎない。これがそういった差益金を、ほかの団体には取り扱わせないで、特にこのジェトロ一つに取り扱わせたのか。しかも、その数字というものは、決して簡単な数字ではない、今申し上げたような莫大な数字なんです。私は、こういうところに、今回問題になったこのジェトロに対する一般の批判というもの、風当りというものが非常に強いのでありますが、これはむろん前尾通産大臣が当時大臣としておられたわけではありませんが、私どもは、何がゆえに一体この海外貿易振興会だけに、特定のそういう権限を与えたか、そういう根拠をわれわれはただしたい。それはまあ、今言っても仕方がないのでありますが、ただ、そういう工合に民間に長い閲歴史的にほんとうに貿易振興のために尽してくれた団体があるのだが、そういうものには一顧もせずに、終戦後急にできたこの団体のみに、そういう特権を与えてきたということが、われわれは非常に解せないのでありますが、そういう点につきまして、一つ大臣の御見解を承わりたいと思う。
  115. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) この貿易振興会ができます前に、こういうような貿易振興の団体がたくさんあったということは、われわれも承知をいたしております。また、自然発生的に、御承知のように、ジェトロの前は、三つの事業体がありまして、それが一本化されてきたというふうな関係にもなっておるのであります。これを、特にこういう特殊法人にいたしました根本的な理由は、何と申しましても、従来の自然発生的にできましたのは、かなり臨時的な色彩が強かったと思うのであります。貿易振興に対する認識が、この数年来におきましては、非常に貿易が伸びて、輸出が伸びて参りましたので、何だか政府自身が気合がかかっておらぬというような事態も、数年前にはあったと思います。そういうことであってはなりませんので、恒久的な制度でありますということと、輸出振興ということは、各地方の産業というものといろいろ結びつきがありますが、しかし、輸出というものは、これは全国的な問題であるというふうに考えましたことと、やはり政府も輸出振興には強力に力を入れているのだ、本腰を入れてやるのだということを明らかにしたいということが、この貿易振興会の構想でありまして、従って、そうではありますが、極力自主的に機動的にやっていただきたいというふうに考えておるのであります。今までのいろいろできております団体は、いろいろ特定な月内を持っておると思います。それを別に抑制するわけでも何でもないのでありますが、私としては、国の貿易振興の中核体というものを作って、そうしてそれが大きな規模でやりましたら、まあ、必要のありますものは、今後も提携していけると思います。また、これができて必要がなくなるというものでありましたら、あるいはそれだけ経費が節約されて、そういう団体がおやめになる、こういうような場合もあると思います。それはそれといたしまして、われわれとしては、全国的な、また国が本腰を入れて、出資をしておるのでありますが、それ以上に、これが強権をもって各種のほかの団体に臨むわけではありません。その点は、従来の各種の団体との関係の調整は、今後いろいろ考えて参りたい、かように思っておるわけであります。
  116. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 いま一点伺いまして、次の方に譲りたいと思うのでありますが、最近、渋沢敬三さんを中心にしまして、株式会社で貿易センターというものが設立されたわけでございますが、これは一般は何か政府のお声がかりでできたような感じがしておる向きが、だいぶ多いのであります。ということは、御承知通り、東京都がたしか現物出資という形で、二億五千万か何か、相当な数字でありますが、それと、あと民間の寄付金、大きい会社ですと二百万も三百万も寄付金を仰せつかって、そうして国際貿易センター、国際というのがあるかどうか知りませんが、貿易センターというものが株式会社として設立されたわけです。今度の法案を見ましても、また、従来のジェトロのやり方等と比較をしてみますと、かなり重複するような点が私どもは多いのじゃないかと思うのであります。それからまた、民間の方から言うならば、特殊法人日本貿易振興会は、これはもう政府のお声がかりだから批評を許さず、とにかく御下命金は納めなければならぬというつもりでもありましょうし、片方の方では、実用的にこれは相当利用できると思えば、これは商売の点からいって金も出さなければならないと思うのでありますが、そういうので、現にそこらの小さい団体でないので、これは膨大なものであります。組織としては。そういうものが、この法律が審議をされているときに、もうすでにできておるのですね。これについて、大臣はどういうお考えを持っておられますか。
  117. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 東京国際貿易センターの構想につきましては、私は以前から聞いておりまして、これは、御承知のように、国際見本市を国内で一年ごとに東京都は開催するわけでございます。その際に、相当な建物を建てて、そうしてそれがまたすぐこわされて、その間に非常に経費が浪費されるじゃないか。そこで一番いい場所、従来も行われておったのでありましょうが、あの場所に恒久的な国際見本市の場所を作って、そうして、ただ不動産会社といいますか、賃貸会社を作って、そこにまた便利ないろいろな貿易関係の事務所を一緒に集めたらいいじゃないか、こういう構想を持っておられまして、私も実はその相談にあずかったわけであります。それはそれでけっこうなんであります。これは全く建物の賃貸会社、こういう意味でありまして、あの会社自身が、貿易振興の事業そのものをやる会社ではないのであります。従って、貿易振興の事業をやろうという貿易振興会と、賃貸借を目的とする株式会社とは、決して重複するものでも何でもない、かように考えておるのであります。従来もこの株式会社の構想は、私は非常にけっこうだというふうに考えておるのであります。
  118. 海野三朗

    海野三朗君 先ほど私が大臣にお伺いしたその際に、行政指導をやっていくというお話しでありましたが、幾らこの貿易振興会で力を入れても、だんだん日本の実際の製造家が、日に日にやせていくようでは、貿易の方が実が上るように見えても、ますます貧に追い込まれるのであります。つまり、値をたたかれるのであります。たたいてたたいて、たたき切っていく。こちらでは出血輸出もするというのに対しては、直ちに政府が何らかの手を打たなければならないのじゃないか、こう思うのですが、先ほど大臣は、行政指導によってというぼんやりしたお答えでありまするが、いかなる具体的方策を持っていらっしゃるのか。私は、一例を言いますと、ミシンにしても、ライターにしても、あれはもう値を非常にたたいて、決して東京だけで話をまとめるということをしない。バイヤーは必ず大阪へ行って見る、あるいは名古屋へ行って見る、そうして一番安いものを、たたいてたたいて貿易をするというこの現状からすれば、幾ら輸出貿易振興会で骨を折ったって、日に日に労力のいわゆるスボイルと申しますか、一ドルにも満たない値で日本から持っていったやつが、二ドルにも三ドルにもアメリカでは売っているというような状態ではいかぬと思うのですが、これに対して具体的方策、つまり御構想はいかがでございますか。これは、大臣でも政府委員でも、何かのよき構想がおありになるならば、それを承わりたい。
  119. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 貿易振興振興事業として取り扱っておりまする面は、ただいま申し上げましたように、貿易のあっせんとか、市場の調査とか、あるいは見本市の参加とか、こういう海外における活動であります。国内におけるいわゆる過当競争の排除ということは、根本においては、これは業者の自主性に待たなければならぬと思います。その面について、政府は極力指導をしていくと、過当競争に陥らぬような自主規制に対しまして、業者の協定を結ぶとか、あるいは協定の内容をどういうふうにやっていったら実際の実情に合うとか、あるいはさらに、それでなおいけないという場合におきましては、御承知のように輸出入取引法に定められております一手買取機関を置くことを勧奨するとか、あるいはさらに、値段の値くずれをどうしてもやめさせようということになると、輸出承認品目で取締りをする。中小企業団体法につきましても御審議を願ったのでありまするが、ああいう組織によって、場合によりましてはアウトサイダーも加入さして、そうして安定をするように、値くずれしないようにその規制をやらせる。結局問題は、これは政府が貿易を直接やるわけではありませんので、まず第一には、業者の自主規制に待つ、そうしてそれに対して政府が指導をする。それがどうしてもいかぬという場合には、政府がいろいろな権限を発動する。こういうことでいかなければなりませんので、その最後の面につきましては、まあ、いろいろ従来からも、先ほど申し上げましたように、一手買い取り機関、あるいは貿易管理令によりまして承認品目にするとか、いろいろな手があるわけであります。それをさらに、できるだけやりやすくやるように、もし法令で困ります点がありましたら、これは直していかなければならぬ。しかし、大筋はこういうような方向でいく以外にはないのでありまして、詳細につきましては、政府委員から御説明申し上げます。
  120. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 今大臣から御答弁がありましたが、この貿易振興会の方は、いわば積極的な市場開拓、調査宣伝ということでまあ突進すると申しますか、そういう方向の貿易振興をやるわけであります。で、それから今先生の御指摘の問題は、過当競争をいかにして防止するかという、やや消極的な国内でのいろいろな対策になろうかとも思うのであります。もちろん、貿易振興会が海外にいろいろな触覚を持ちますためにいろいろな情報を送ってくる。その情報を参考にして国内で過当競争の防止をすべく手を打っていくという意味においては、貿易振興会も過当競争防止と関係がないとは言えない、非常に関係があるわけでありますが、今先生の御指摘の点は、国内における過当競争防止を今後いかにしてやるか、あるいは現在どういうふうにやっているかというお尋ねとも思うのでありますが、大臣が御説明になりましたが、今大体この輸出入取引法の運用によりまして過当競争を防止していく場合と、それから外国為替管理法の運用によってやっていく場合と、それから中小企業安定法の運用によってやっていく場合、それからもう一つは、輸出水産物の振興法の運用によってやっていく場合、大きく分ければ四つに分れるかと思うのであります。まず、輸出入取引法の運用による場合でありますが、現在商品別に輸出組合というものが結成されております。で、輸出組合におきまして必要がある商品につきましては、過当競争を防止しなくちゃいかぬという商品につきましては、組合の内部で、ある特定地域に向けましてその商品の年間の輸出数量は、この程度にしよう、あるいは価格はこの程度にしようという、組合内部のいわば協定というようなものをやっておるわけです。それに対しましては、もちろんアウトサイダーもございまするので、その組合の協定を援護するために、政府におきましても取引法の二十八条に基きまして、アウトサイダー規制命令というようなものを出しまして、アウトサイダーの取締りをやりまして、この輸出組合のいわゆるそういう過当競争防止の事業を援護しておるわけであります。それも現在のところ、かなりな数に上っております。約五十くらいな協定が、繊維以下あらゆる商品についてできております。そのほか輸出組合というワク内じゃなしに、同種の輸出業者が組合を一応離れまして、業者だけで、たとえばオーストラリア向けの綿布の輸出はこの程度にしよう、価格はこの程度にしよう、あるいはヨーロッパ向けはこうだというふうな、輸出業者協定と言っておりますが、そういう協定でもって、数量、価格の調整をして過当競争の防止をやっておりますのが約七十三件ばかりございます。そのほか、これは今申しましたのは、税関線と申しますか、輸出面だけのそういう措置でありますが、どうしても国内のメーカーとの関係の調整をいたさなければならぬということで、輸出品の国内取引に関する協定もできております。これは合計十八件ばかりの件数になっております。  それからその次の問題としては、いわゆる輸出品の一手買い取りのための指定機関、いわゆる俗称買い取り会社の問題であります。これも先般輸出入取引法の御改正を願いまして、法律はそういう改正ができたわけであります。ところが、残念ながら現在までのところ、その会社を認める条件が非常にまあむずかしい状況になっておりまするので、まだこの指定機関として認可したものは、一件もない状況なのであります。これはなぜそうむずかしいのかということになりますと、この輸出業者とメーカーの間の中間にある機関でありまして、いわゆる独占機関になります関係上、ここの審議におきましても、非常ないろいろ議論がありましたように、非常に指定機関の認可というものについては、慎重を期せなければいかぬというようなことで、生産者団体もそういう会社を希望するメーカーの団体も、輸出業者の団体も、それを希望するみなの双方の意思の一致したところでしか、そういう買い取り会社は認めちゃいかぬというふうな、まあ法律の建前になっております。従いまして、なかなか、その輸出業者だけがそういう機関をほしい、あるいはメーカーだけがそういう機関をほしいと言いましても、両者の意思合致が非常にむずかしいというようなことで、現在この候補者になる会社が、まあ十七ぐらいはできてはおるわけなのでありまするが、実際なかなか認可ができないというような状況になっておるのが実情であります。われわれとしては、この認可の条件は、次の機会に法律改正を願って、もう少し簡易にやれるようにしたいというふうに思っておるわけであります。まあ、そういうふうな点が輸出入取引法の運用による過当競争の防止の措置であります。  それから次は、外国為替管理法に基くもの、これは御存じのように政府がある品目を指定いたしまして、通産大臣の承認がなければ輸出ができないという承認の品目にしまして、承認のときに数量なり価格なりをチェックして過当競争が起らぬようにしていくもの、これも現在のところ、かなりな品目に上っておりまして、この品目の数え方にもよりますが、現在の輸出承認品目が三百六十二品目あるわけでありますが、そのうち、特に過当競争防止ということで実施をしているものが、約三十品目であります。  その次は、いわゆる中小企業安定法の運用によるものでありまするが、現在四十四業種につきまして、全国規模、または府県規模の調整組合が結成されておるのでありまするが、そのうち、輸出品を主たる目的にしているものが二十四業種あるわけであります。中小企業の安定法によりまして、この調整組合がやっておられますことも、過当競争防止については非常に役立っておるのではないか。それから、輸出の水産物につきましては、御存じの独立の振興法というものがありまして、たとえば輸出用のマグロ類とかカン詰類、まあいろいろ種類がありますが、そういうものにつきましては、いろいろ業者間の協定がやられるということになっておりまして、現在かなり進行しておるわけであります。  以上が現状でありまするが、それで、もちろんその不十分の点もあるからこそ、そういう問題が起ってくるのでありまするので、われわれといたしましては、できるだけこの組合の協定、あるいは業者の協定が迅速にできまするように、今、現行の取引法を一部改正する必要があるのではなかろうかという点が一つ、それから、先ほども大臣が言われましたのは、今の法律体制が、業者の方が自主的にやられる、それを政府が受けて立って、いいか悪いかの判断をして承認をすることでありますので、まず、そのイニシアチブは業界がとられる。だから、業界が動かれぬ場合には、政府として何もできぬというようなのが、現在の法律体制でありまするが、必要がある場合には、政府の方から、そういう協定をしなさいという積極的な勧告をするような体制に持っていったらどうだろうというふうなことも考えておるのであります。それからまた、現在のところ輸出品のメーカーがそういう過当競争防止のために、協定を締結することができるのでありますが、これはメーカー団体の協定でありまするので、非常に慎重を期さなければならぬということで、アウトサイダーの規制命令が認められておらぬのであります。そこで、これも輸出振興のためには、メーカー団体ではありまするが、過当競争防止のために、アウトサイダーの規制命令を必要とするのではないかという点が、今度の輸出入取引法の改正のときに考えております一点なんであります。その他、なお若干の点もありまするが、長くなりまするので、省略させていただきますが、まあそういうふうな事情でありまして、現行法の運用によりましても、かなりなことはできると思うのでありますが、ところが、何分これは、業界の利害、あるいはメーカー、サイドと輸出業者サイドとの利害の関係もありまして、まあ、ちょっとやそっとの行政指導では、なかなかできにくいというのが実情であります。海外で輸入制限運動が起った、もうぐずぐずしておったのじゃ、どうしても関税引き上げになってしまう、あるいは輸入制限になるというような事態になれば、これは大へんだということで、非常に業界の団結が早くいくのでありまするが、かりにそういう事態がない場合におきますと、非常に急速に輸出が伸びている、去年の数十倍、あるいは百倍に輸出が伸びている商品につきまして、いずれは問題が起きるだろうという場合に、なかなか役所がこれを少し何とかしなくちゃならぬじゃないかということを申し上げても、なかなか業界として決心がつきかねるというのが実情でありまして、大臣が率直に先ほど申された通りでありまして、われわれとしましては、問題が起ってしまってからやると、なかなか事態の収捨にも時間がかかりますし、損失を生じますので、できるだけ、いま少し業界の自覚といいますか、を早めまして、過当競争防止の問題について最善を期したいというふうに考えておるんであります。目下輸出入取引法の改正をしておるわけなんでありますが、なかなか法令的にもむずかしい点がありますし、若干時間的におくれておるわけであります。そういう事情でありますので御了承を願います。
  121. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 次回は、八日午前十時から開会することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五分散会    ————・————