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国務大臣(
河野一郎君) お話しの
通り、対米
貿易、ことに
輸出は非常にめんどうにありますことは、いろいろな要素から御判断の
通りと考えますが、また、私が申し上げますことは、楽観論ばかり言ってしかられるかもしれませんけれども、実は昨年私アメリカへ参りました際に、商務長官といろいろと懇談をいたしました。その際に私が受けました印象、たとえば具体的に申しますと、カニ類の
輸入関税の問題につきまして、特にこれは戦前にアメリカが罰則的に上げた関税がそのままになっておる、こういうものはすみやかに下げてくれたらどうかという話をいたしたのでございます。この問題の取扱い等に対する商務長官の応答等は非常に好意的でございまして、私はわが方の十二分の
努力によりまして、困難の中にも解決点を見出すことはできないことはないという気持を、印象を受けて帰ったのでございます。ただ、最近の体温計の
輸入について向うが特別の関税をかけるとか、その他特殊のものについてかけるとかいうことはございますが、つい両三日前でございましたか、私はアメリカの合板
関係の業界の人が見えられまして、これに対して
わが国の合板の
輸出の問題について、いろいろアメリカ国内の
情勢等について懇談をしてみました、この人の話しによりますと、たとえば合板の一つをとってみましても、
わが国で非常に問題にいたしておりますように、アメリカの方ではそう心配していない。ただせっかく日本が合板の
輸出について規制をしておるその措置は、アメリカとしても非常に好ましい姿であるから、一つそれをアメリカで問題にしないから、直ちにこれを撤廃して、さらにより多量の合板を
輸出するという措置をなさらぬ方がいい、さらにこれ以上の
輸出をすることは、アメリカの業界としては要望していないということを申す向きも、実はあるわけでございます。ただ総じて申し上げますれば、アメリカの弱い業界に対して、
わが国の業界が非常に適切なものを廉価にして向うの業界に強力な圧迫を加えるというものがままあるわけでありまして、こういう点につきましては、十分なる
調査、もしくは談合をいたす必要があろうと思うのでございますが、総じて申しまして、私は今後
政府並びに
民間の格段の
努力は必要でございましょうけれども、さればといって、そう
長期にわたって今のように日米間において
貿易上トラブルがますます悪くなるというようには私は考えられないのじゃなかろうか、アメリカ全体の
景気につきましは、皆さんもう御承知の
通りでありまして、まあ先行き悪いということよりも、大してよくなるということは困難かもしれないが、まあまあ何とかアメリカでも措置をとってゆくだろうというふうな見方がいいんじゃないか。で
わが国において
経済界全般の
努力によりまして、アメリカに対してアメリカ国内市場の需要に応ずる生産の転換の
計画を立ててゆきますれば、今後さらにアメリカ市場に対する日本の
貿易、日本の
産業の
基盤を
強化してゆくということは、むしろ金のないところに売るよりも、アメリカのような金のあるところに向ってわれわれが健闘することの方が賢明じゃなかろうかという気がいたしますので、私は対米
貿易につきましては、一そうの
努力をする必要がある、またその効果は上るものと私は期待いたしておるのでございます。そこに日本の
産業の
発展、
貿易の将来は見込めるのであって、これは対応できるような態勢に日本の
産業を持っていくというのでなければ、なかなか東南アジアを
目標にしていくだけでは、むずかしいのじゃなかろうかと思うのでございます。