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政府委員(百田正弘君)
失業保険法の一部
改正法律案に関する大綱を、先般の
提案理由説明に補足して、御
説明を申し上げます。
現在、五人未満の事業所は、
提案理由説明にもございましたように、推定約十万、被
保険者数二百二十万というふうに推定されておりますが、失業保険は、現在五人以上の事業所に強制
適用にいたしております関係上、五人未満の事業所に対しては、現在任意加入の
制度がございますけれども、現在加入している数は微々たるものでございます。すなわち、現在加入している事業所数は三十八万で、九百八十万の被
保険者でございますが、そのうち任意加入しているものは四万の事業所、九百の被
保険者でございまして、まだ五人未満の事業所に対する
適用は非常に少いのでございます。できるだけこれを早い機会に
適用を拡大していくということを目的といたしまして、しかしながら、直ちにこれを強制
適用にするということは、今申し上げましたように、数においても膨大であるということ、あるいはまた、そうした零細事業所の実態にかんがみまして、直ちに持っていくことは非常に困難でございますので、
本案におきましては、できるだけこれらの零細事業所が失業保険に加入しやすいような方途を講ずることによりまして、この加入の促進をはからんとすることが第一点でございます。
すなわち、最もこれらの事業所で困難を感じております問題は、事務能力の不足という問題であろうかと存ぜられますので、そうした点に関する
手続を簡素化することによって、第一にこれが加入の促進をはからんとするものでございましてその方法といたしまして、第一には、保険料及び保険金算定の基礎となる賃金に関しまして特例を設けたことでございます。これは、失業保険の保険金ないし保険料の算定は毎月々々の賃金支払い総額によって計算いたします関係上、毎月の支払う貸金に変動がありますので、事業主としては非常に煩瑣にたえないという問題もあるわけです。従いまして、これらの手数を省きますために、被
保険者となるべき者の半数以上の同意があれば、過去六ヵ月間の賃金を基礎といたしまして、一年間の間特定賃金月額を——標準報酬的なものでございますが、特定賃金月額というものを創設していく、これによりまして、しかもこれを千円単位ということにいたしまして保険料の算定その他の
手続を簡素化するということにいたした次第でございます。もちろん、貸金には変動もございますので、これは毎年一回改訂することといたし、かつ、その
期間中においても、非常に賃金の変動がありました場合には、それに応じて改訂していくと、こういうことにいたした次第でございます。
手続簡素化の第二点は、保険料の納期の特例を設けたことでございます。保険料は、毎月支払った賃金に保険料率をかけて払うのでございますが、小規模事業主の払う保険料は、きわめて額としては小さなものでございますので、毎月払う煩瑣な
手続を避けまして、事業主が希望すれば、これを三カ月に一ぺん支払えるような方途を講じた点が第二点でございます。
かように、個々の事業主が失業保険に加入いたします場合に、
手続を簡素化いたしますと同時に、単にそれのみでは事務能力の不足ということが補えませんので、これを団体によって失業保険に関する事項を処理するような
制度を創設いたしたことでございます。すなわち、中小企業等協同組合法による事業主の団体がその組合員と事業主にかわりまして失業保険の事務を行うということにいたしたわけでございます。これを失業保険事務組合ということにいたしましたが、これらの事務組合が労働大臣の認可を受けて、組合員たる事業主にかわって保険料その他の
手続を行う。その場合に、この失業保険事務組合は、単なる代理人というばかりでなく、
一定の
責任を負うことにいたした次第でございます。
さらに、これらの失業保険事務組合が組合員のために保険料の納付等をやります場合に、その納付の成績が良好である場合には、これに対して報奨金を交付するということにして、この
制度の促進をはかろうといたしたことでございます。
以上のような
措置によりまして、できるだけ零細事業主の事務
手続を簡素化いたしまして、五人未満の事業所の失業保険加入を促進いたしたいと存ずるのでございますが、しかしながら、
実情といたしまして現在五人以上の当然
適用の事業主でありましても
適用漏れになっておるのが、推定十七万事業所
程度あるわけでございまして、五人未満にまで
適用を拡大する以上は、この五人以上のところで
適用漏れになっておるというところをできるだけなくしていくというのが必要であろうかと存じますが、その
一つの現在
障害になっておることは、五人以上の事業主でございまして、これが
適用漏れだということが発見されました場合には、少くとも二年前にさかのぼって、まとめて保険料を納付しなければならないということになっているのでございます。これに対しては、現在分割あるいは延納等の
措置を認めておりませんので、これらのものが積極的にそうした届出がしやすいように、第一に、これらの納期につきましては、さかのぼって保険料を徴収する場合には、これの保険料の分割あるいは延納の
制度を認めたのでございます。
第二といたしまして、できるだけすみやかなる機会に、こうした
適用漏れのものをなくしていきたいという趣旨のもとに、経過的に、この
法律の施行後約五カ年、すなわち
昭和三十八年三月三十一日までの間に届け出たものにつきましては、特にこの二年の
期間を一年に短縮する、一年分だけでよろしい。しかも、なおかつこれには延納分割を認めるというふうな特例を設けたのでございます。
以上のような
措置によりまして、五人未満の事業所の任意加入を促進しますと同時に、
適用漏れになっているところの事業所の届出を促進することにいたしたのでございますが、その場合におきまして、五人未満の事業所に雇用される労働者が任意加入を希望し、あるいはまた
適用漏れの事業所に雇用される労働者が失業保険の資格者であるということを届け出た場合にも、これを
理由にして事業主が不当、不利な取扱いをしてはならないということを
規定いたしまして、できるだけこうしたことの、脱法のないような
措置を講じた次第でございます。
以上が五人未満の事業所に対する
適用拡大並びに五人以上の
適用漏れに対する
適用の促進でございます。
さらに、第三点といたしましては、保険料等の徴収につきまして、従来失業保険のとっておる
制度は、たとえば、他の国税徴収法あるいは
健康保険法といったようなものと同様な
制度にいたしますために、所要の
改正を設けた次第でございます。
以上がこの
改正法律案の大要でございます。