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1958-04-25 第28回国会 参議院 社会労働委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月二十五日(金曜日)    午前十時三十五分開会     —————————————   委員異動 四月二十四日委員井上清一君、塩見俊 二君及び木下友敬辞任につき、その 補欠として横山フク君、西田信一君及 び坂本昭君を議長において指名した。 本日委員有馬英二辞任につき、その 補欠として西岡ハル君を議長において 指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            木島 虎藏君            山下 義信君            中山 福藏君    委員            斎藤  昇君            鈴木 万平君            谷口弥三郎君            西岡 ハル君            西田 信一君            横山 フク君            片岡 文重君            坂本  昭君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            山本 經勝君            田村 文吉君   国務大臣    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君    労 働 大 臣 石田 博英君   政府委員    厚生省引揚援護    局長      河野 鎭雄君    労働政務次官  二階堂 進君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○結核医療法案坂本昭君外七名発  議) ○社会福祉事業等施設に関する措置  法案(第二十二回国会本院提出) ○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一  部を改征する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○失業保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○国民年金制度実施に関する請願(第  五三〇号)(第一六〇七号)(第一  二五七号) ○清掃法第十八、第十九条改正に関す  る請願(第二一号) ○簡易水道事業費国庫補助増額等に関  する請願(第一三〇号) ○簡易水道事業費国庫補助増額等に関  する請願(第四三六号) ○保健所費国庫補助増額に関する請願  (第二〇四号)(第四三四号) ○環境衛生関係営業運営適正化に  関する法律施行に伴う経費国庫補助  等の請願(第四六三号) ○栄養指導車配置に関する請願(第四  六七号) ○結核対策に関する請願(第二六一  号)(第一二八九号)(第一三三〇  号)(第二三三号) ○結核予防予算増額等に関する請願  (第一三二六号)(第一三八七号) ○結核治療費全額国庫負担制度確立に  関する請願(第一三四三号) ○結核治療費国庫補助増額に関する請  願(第一三六号) ○結核治療費全額国庫負担に関する請  願(第一四三八号) ○結核治療費全額国庫負担等に関する  請願(第一四三九号)(節一四九〇  号) ○精神衛生対策促進に関する請願(第  三七九号) ○国立療養所給食費引上げに関する  請願(第二八八号)(第五一九号)  (第八九四号)(第八九五号)(第  四八八号)(第一三四一号) ○国立病院等給食費引上げ等に関す  る請願(第一三四〇号)(第一三八  四号)(第一四二七号)(第一四八  七号) ○国立岐阜療養所看護員増員に関す  る請願(第五二〇号) ○国立病院等における看護婦産休のた  めの定員確保請願(第一〇七〇  号) ○病院完全給食等内容明示に開け  る請願(第一四四一号) ○国立病院等完全給食制度内容向  上等に関する請願(第一四九七号) ○国立らい療養所医師充員等に関す  る請願(第一〇六八号) ○国立病院等医師不足解消等に関す  る請願(第一三三九号) ○療養所医師等増員に関する請願  (第一三八六号) ○国立療養所看護人員増員に関する  請願(第一四三二号)(第一四九四  号) ○国立療養所の統合に関する請願  (第一三二一号) ○国立病院等燃料費増額に関する請  願(第一三三八号) ○国立療養所施設関係予算増額に関す  る請願(第一三四二号) ○療養所等設備改善に関する請願  (第一三八五号) ○療養所に隣接する基地の爆音防止等  の請願(第一四〇〇号) ○結核療養所軽快作業ベッド増設等  に関する請願(第一四四二号) ○国立療養所建物修繕費増額に関す  る請願(第一四四四号) ○国立療養所入所費経費又は無料取  扱拡大に関する請願(第一四九五  号) ○国立病院等作業療法内容充実等  に関する請願(第一五〇〇号) ○保育所事務費限度中に予備保母費を  認定するの請願(第八号) ○保育事業予算増額に関する請願(第  二八七号)(第三六九号)(第三八  五号)(第三九五号)(第四四九  号)(第四六六号)(第五二二号)  (第五六六号)(第六四八号)(第  九九〇号) ○結核児童療育制度確立等に関する請  願(第一三六三号) ○私設保育所保母待遇改善等に関す  る請願(第一四八二号) ○子どもセンター法制化に関する請  願(第一七〇六号) ○売春防止法完全実施に関する請願  (第二二号) ○災害救助法の一部改正に関する請願  (第一一〇五号) ○生活保護法に基く支弁経費全額国  庫負担とするの請願(第一〇号) ○生活保護法保護基準等に関する請  願(第九六二号) ○生活保護法最低生活基準額引上げ  等に関する請願(第一〇六九号)  (第一三四六号)(第一三四七号)  (第一三九二号)(第一三九三号)  (第一四〇五号)(第一四三四号)  (第一四三五号)(第一四三六号)  (第一四六二号)(第一四九八号) ○生活保護法による最低生活基準額引  上げの請願(第一六二一号) ○生活保護法長期入院患者期末扶  助金支給請願(第一三三四号)  (第一三八八号)(第一三八九号) ○生活保護法による入院愚者生活扶  助金引上げ請願(第一三四四号)  (第一三四五号)(第一三九一号) ○後保護施設整備拡充に関する請願  (第一三二三号)(第一三九四号)  (第一四九一号)(第一五一七号) ○後保護施設予算増額等に関する請願  (第一三二二号) ○結核保護施策に関する恒久的制度  の確立に関する請願(第三七七号) ○結核回復者寮増設に関する請願(第  一三五二号) ○結核回復者男子寮増設に関する請願  (第一三五三号) ○国民健康保険事業に対する国庫補助  増額等請願(第一一号) ○国民健康保険事業に対する国庫補助  増額請願(第三七八号) ○国民健康保険事業費国庫補助増額等  に関する請願(第五二一号) ○国民健康保険費国庫補助増額に関す  る請願(第一三三五号) ○国民健康保険費国庫補助増額等に関  する請願(第一四三三号) ○国民健康保険直営診療所経費助成に  関する請願(第四五二号) ○社会保険給付内容改善等に関する  請願(第一三一九号) ○社会保険給付内容改善等に関する  請願(第一三四八号) ○社会保険医療診療制限撤廃に関す  る請願(第一四四〇号)(第一四九  九号) ○社会保険医療診療制限緩和に関す  る請願(第一三九七号) ○健康保険法の一部改正に関する請願  (第一三二四号)(第一三三二号) ○日雇労働者健康保険法による療養給  付期間延長等請願(第一三二〇  号) ○引揚者給付金等支給法事務取扱緩  和に関する請願(第二〇六号) ○未帰還者早期帰還等に関する請願  (第三三五号) ○未帰還者帰還促進等に関する請願  (第一二一〇号) ○未帰還同胞問題完全解決に関する請  願(第三九六号) (第四三五号) ○インドネシア共和国等所在遺骨収  集に関する請願(第四三三号) ○失業対策事業労務者賃金引上げ等  に関する請願(第三一九号) ○失業対策事業費全額国庫負担に関す  る請願(第五六五号) ○失業対策事業就労者に年末手当支給  等の請願(第一九五号) ○日雇労働者生活保障に関する請願  (第一五九六号) ○結核回復者就職確保等に関する請  願(第一三二七号)(第一三八〇  号)(第一四〇四号)(第一四八八  号)(第一三二八号)(第一五一六  号) ○結核回復者就職確保に関する請願  (第一三二九号)(第一三六四号)  (第一四二八号)(第一四二九号) ○国立らい療養所軽快退所者就職あ  つせん等に関する請願(第一二五三  号) ○最低賃金法等制憲に関する請願(第  一四一号)     —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 開会いたします。  委員異動報告をいたします。四月二十四日付をもって井上清一君、塩見俊一君、木下友敬君が辞任され、その補欠として横山フク君、西田信一君、坂本昭君が選任されました。四月二十五日付をもって有馬英二君が辞任され、その補欠として西岡ハル君が選任されました。     —————————————
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 結核医療法案議題といたします。
  4. 坂本昭

    坂本昭君 ただいま議題となりました結核医療法案提案理由を御説明申し上げます。  結核わが国国民病といわれるほどに蔓延し、その害は単に各個人にとどまらず、社会全般に及んでおり、ひいては国民経済にまで悪影響を与えておりますことは、すでに御承知の通りであります。今これを数字的に見ますならば、結核による死亡者は、昭和三十年には四万七千人、昭和三十一年には四万四千人、昭和三十二年には四万三千人であり、現在における推定結核患者数は、二百九十万人に上っており、結核国民生活に及ぼす直接間接の損失は、真にはかり知れないものがあると存ずる次第であります。  特に最近におきましては、膨大なる結核医療費負担のため、健康保険その他の社会保険は、その健全なる運営が困難となり、そのことがひいては、わが国における、医療社会保障制度確立障害となっているのであります。  このような結核予防及び医療のため、現在結核予防法があり、この法律を中核として結核対策が推進せられ、相当な成果を上げておりますことは、すでに顕著な虚実であります。  しかしながら、結核対策のうちでも最も重要な部分を占めます結核医療の観点から現在の結核対策を顧みますとき、それはなお不充分であるといわざるを得ないと考えるのであります。結核予防法におきましては、適正なる医療普及及び結核愚考医療費負担の軽減のため、都道府県は、一定範囲医療に要する費用の二分の一を負担することができることとしておりますが、これだけでは、現存の窮迫せる地方財政実情のもとでは、十分なる効果を期待し得ないと考えるのであります。  従いまして、現在わが国国民病といわれますほどに蔓延いたしております結核の問題をこの際抜本的に解決いたしますためには、国の全責任において結核の全医療を行います以外には、適切なる方途は存在し得ないと信ずるのであります。  本法律案は、このような状況にかんがみ、かつ、このような信念に基き、国の全責任において結核の全医療を行うことによって、結核患者に対する医療普及及び徹底をはかり、もって結核の急速かつ徹底的な減少を期そうとするものであります。  次に、本法律案内容概要を御説明申し上げます。  まず第一に、国は、国の全責任において、医療を要する結核患者に対し、必要なすべての医療給付を行うことを明確に規定いたしております。すなわち、貧富のいかんを問わず、全結核患者が必要な医療給付を国から受けることができるものとしております。このことは、現行結核予防法と比較して画期的意義を有するものと考えます。しかしてその医療給付は、指定医療機関に委託してこれを行うものとしております。  また、その行います医療範囲は、現在の結核予防法におけるがごとく、一定範囲に限定されることがなく、入院中の食事及び対症療法に至るまで、およそ結核医療すべてにわたっております。  また、結核医療給付を受ける手続といたしましては、受給者の便宜を考慮して、現行結核予防法におけるごとく、事前に都道府県知事の決定を受ける必要がなく、医療を必要とする場合において、直ちに指定医療機関においてその給付を受け得るものとしております。また、国の医療給付を適正ならしめるため、各保健所結核診査協議会を置き、医療を要する結核患者であるかどうかの認定を行わせることといたしております。  第二に、国がその責任において結核医療を行うことに伴いまして、健康保険法その他社会保険各法に規定する保険者または共済組合は、結核医療については、給付をなすことを要しないものといたしております。この掛買によりまして、健康保険その他の社会保険の健全なる通常が期待し得るものと考えます。また、結核医療については、生活保護法規定による医療扶助はこれを行わず、すべて本法の適用を受けるものといたしております。  なお、結核療養所設置及び拡張の勧告及び結核療養所設置拡張及び運営に要する費用補助につきましては、現行結核予防法通りこれを行うものといたしております。  以上が、本法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに可決せられんことをお願い申し上げます。
  5. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本案に対する質疑は、次回以後にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。
  7. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、社会福祉事業等施設に関する措置法案議題といたします。  本案は、第二十二回国会において提出され、継続審査の後、第二十六回国会において、本院の議決を経て衆議院に送付されたものであって、その内容等は、詳細に承知いたしておるものでありますので、提案理由説明はこれを省略して、審査いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  質疑を願います。
  9. 山下義信

    山下義信君 質疑を省略し、討論も御省略願って、直ちに採決せられんことの動議提出いたします。
  10. 木島虎藏

    木島虎藏君 賛成
  11. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいま山下君が御提出になりました、質疑を打ち切り、討論を省略して、採決されたいとの動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それでは、質疑を打ち切り、討論を省略して採決いたします。  社会福祉事業等施設に関する措置法案を原案通り可決することに賛成の方は、挙手を願います。   〔賛成者挙手
  13. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 全会一致でございます。よって本案は、原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における報告内容議長提出する報告書の作成、その他の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それから報告書には、多数意見者署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は、順次御署名を願います。 多数意見者署名   斎藤  昇  木島 虎蔵   勝俣  稔  谷口弥三郎   横山 フク  中山 福蔵   西岡 ハル  西田 信一   山下 義信  山本 經勝   片岡 文重  松澤 靖介   藤田藤太郎  坂本  昭   田村 文吉
  15. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案議題といたします。  これから質疑に入るのでありますが、まず、細部について政府委員説明を願います。
  16. 河野鎭雄

    政府委員河野鎭雄君) ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、二条からなっておりまして、第一条は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正でございます。  この主要な点を御説明申し上げたいと存じますが、まず第一に、障害年金増額いたした次第でございます。従来、軍属に対しまして、また一部恩給法適用から漏れた軍人に対しまして、障害年金援護法支給をいたして、おるわけでございますが、今回の恩給法改正に伴いまして、傷病恩給増額になりましたので、その額に見合うように増額をいたしたい、かように存じまして、条文を設けた次第でございます。それと同様の理由によりまして、障害一時金、これは軽度障害者に対する給付でございますが、障害一時金も同様に増額措置をとった次第でございます。なお、障害年金障害一時金の支給の時期でございますが、昭和三十三年十月、すなわちことしの十月から原則として施行することにいたしますが、軽度の二款症、三款症のものに対しまする増額実施は来年の七月から、これは恩給法増額の時期にそろえたのであります。それから、遺族に対しまする遺族年金も、今回の恩給法改正に即応いたしまして増額をいたすことにいたしております。その額は、従来の三万五千二百四十五円から五万一千円に増額いたすことといたしまして、その半分を本年の十月から、残りの半分を三十五年の七月から増額をいたすことにいたしたいと存じておる次第であります。  それから、今回新たな制度といたしまして、動員学徒等いわゆる準軍属及びその遺族に対しまして、一定給付をいたすことに改正をいたしたいと存ずる次第でございます。まず第一に、業務上の傷病によりまして重度障害を受けた者、具体的に申しますと、六項縦以上の不具廃疾になった者に対しまして、障害年金支給する道を開きたい、かように存じておるわけであります。その額は、軍属障害年金の半額といたしております。それからまた、業務上の傷病によって死亡いたしました準軍属遺族に対しまして、遺族給与金支給するようにいたしたいと存じておるのであります。その額は、軍属の額の半額すなわち二万五千五百円を五年間にわたって支給することにいたしておるわけであります。  なお、その対象となります遺族範囲につきましては、内地軍属の場合におけるような要件にいたしますると、支給範囲が非常に狭まるというような状況を勘案いたしまして、内地軍属におきます場合には、死亡した当時、扶養関係のあった者を対象としておるわけでございますが、そういうふうなことでなしに、現状を基礎としてその対象をきめるというふうな考慮を払った次第でございます。  以上がおもな点でふりますが、その他若干の調整規定を設けております。たとえば、従来、恩給法公務扶助料をもらっておりました者がありました場合に、援護法支給します遺族年金等の額を下げておる方々があるわけでございますが、そういう人たちに対しましても、公務扶助料をもらう人がいたくなった場合にも、依然として低い額の給付をするというふうな法律の建前になっておったのでございますが、実情に合いませんので、公務扶助料をもらうものがなくなった場合には、高い額の遺族年金等を差し上げるというふうな調整を設けた次第でございます。それからもう一つは、準軍属に対しまして、軍属の場合と同様に、更生医療給付あるいは補装具支給国立保養所への収容というふうな措置を講ずることにいたしたわけでございます。その他若干の法律調整規定を設けております。  以上が遺族等援護法の一部改正部分でございます。  第二条は、未帰還者留守家族等援護法の一部改正でございますが、この法律改正のおもな点が二点でございます。  第一点は、留守家族手当現行月額二千九百三十七円を四千二百五十円に増額をいたすことにいたした次第でございます。その時期も、昭和三十三年十月から半分を増額いたしまして、昭和三十五年七月から残りの額を増額する、公務扶助料増額の時期にそろえた次第でございます。もう一つ、未帰還者留守家族等援護法改正点といたしまして、本年の十二月で療養給付期間の切れる方がございます。数からいうと、むしろその方の方が多いのでございますが、そういう方々給付期間をさらに二年間延長するというふうな規定を設けたい、かように存じておる次第であります。  以上が、ただいま議題になりました法律案のおもな内容でございます。
  17. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御質疑を願います。
  18. 山下義信

    山下義信君 この援護法等改正案は、言うまでもなく、恩給法改正と関連さしまして、今時戦役の犠牲者に対する措置の問題としまして、重要な法案でありまして、私どもといたしましても、当局にお尋ねいたしたい点がたくさんあるのでありますが、しかし本日は、その中で最重要と思われる点のみにつきまして質疑をいたしたいと存ずるのであります。  さきに提案理由の御説明もあり今、政府委員から細部の御説明を承わりまして了承しておりますように、この援護法改正の中心は、従来問題となっておりました動員学徒徴用工国民義勇隊あるいは満州開拓青少年、その他軍属に準ずる立場にありまして、今日まで十分な援護措置が伸べられていない者たちに対しまして、多年の要望であり、懸案でありました問題がその一部解決を見ることに相なったわけであります。これらの問題につきまして、従来関係者努力はもとよりでありますが、厚生省において、ことに今回恩給法改正問題が登場いたしまして以来は、この援護法関係について多大な御努力をたまわりましたことにつきましては、厚生大臣の御協力等に対しましても深く感謝いたすものであります。  そこで、まず援護局長に伺いますが、従来名称が一定しておりませなんだこの援護法軍属に準ずるこれらの対象者を、準軍属ということに統一をされたのでありますが、この準軍属対象者、すなわち今回遺族給与金を受くべき資格のあります総数、この改正案によりまして、それに該当するというのでなくして、準軍属死亡者遺族総数、それから、いま一つは、その準軍属のうち、すなわち動員学徒等障害年金等措置をしていただいたのでありますが、その動員学徒である準軍属障害者の数のお見込み数はどのくらいでありますか。まずこれを承わっておきたい。
  19. 河野鎭雄

    政府委員河野鎭雄君) 準軍属範囲は、範囲と申しますか、種類は、従来弔慰金対象となっておりましたものの範囲とそろえてあるわけでございます。従来いわゆる準軍属として弔慰金支給いたしております対象見込人数は、約七万でございます。ただ、弔慰金支給します対象は、軍属におきましても、弔慰金をもらいますものと、遺族年金をもらいますものとの、遺族範囲が違っておりますので、弔慰金をもらっている人がすべて、遺族給与金をもらうというようなことにはならないわけでございますが、どの程度遺族給与金給付対象になるかということでございますが、大体従来仕事をやっておりまする上からの大よその見込みといたしまして、四割程度給与金対象になるのではないか。七万といたしますと、その四割、二万八千ぐらいを見込んでおる次第でございます。  れから次に、障害年金対象者でございますが、これも正確な資料がないわけでございますが大体の見込みとしまして、今回重度障害者対象といたしておりますので、六百人程度ではなかろうか。かように見込んでおる次第でございます。
  20. 山下義信

    山下義信君 そこで、まずわかりやすく申しまして動員学徒障害者、これは、従来援護法の中で全く措置されていなかったのでして、いわば援護法のミステークであったわけでございますが、今回それが障害年金が出ることになった。それがいわゆる軍人軍属と比較いたしまして、今援護局長が言われましたように、重度障害者のみだけをおとりになったというところの、第一款症、第二款症、第三款症等は、動員学徒負傷者には与えられないということにされたのは、どういうわけでありましょうか。
  21. 河野鎭雄

    政府委員河野鎭雄君) 準軍属に対してどういうふうに処遇をするかということにつきまして、いろいろの考え方があると思うのでございます。御承知の、昨年開かれました臨時恩給等調査会におきましても、この問題、非常に御熱心に御審議をいただいた次第でございますが、その審議の過程におきましても、従来、年金の支給対象として考えられておりますものは、国との雇用関係のあるものに一応限られておったわけでございます。それに対しまして従来から、国会におきましても、雇用関係なくても、何らかの国とのつながりにおいて戦争被害を受けたというふうな方々に対して、現状では不十分ではないかという強い御要望があったのでございます。そういうふうな意見が臨時恩給等調査会においても述べられたのでございますが、また一方、当時の状況を考えてみますと、多かれ少かれ全国民が戦争被害者であるというふうなことから考えてみますと、一方において、一般国民との均衡というものもあわせて考えなければならないのではないかというふうな、両面からの議論があったわけでございます。私ども、従来から伺っておりますところでも、少くとも重度障害者に対して何らかの措置をしなければならないのじゃないかというふうな御要望に伺っておったわけでございます。ただいま申し上げましたような臨時恩給等調査会の御意見、それからただいま申し上げましたような御要望、そういうふうな諸般の御意見等を考えあわせまして、一方においては国との雇用の関係のあった人たちとのつり合い、また、一方においては一般国民とのつり合い、そういうふうなところを考えあわせましてただいま御提案申し上げているようなことにするのがまあまあ均衡のとれた措置ではなかろうかというふうな考え方に基きまして、立案をいたした次第でございます。
  22. 山下義信

    山下義信君 私も、質疑を簡潔に申し上げますから、答弁もなるべく要点だけをお答え願いたいと思います。  準軍属障害の取扱い方を、軍人軍属に比較して、軽度障害は落してしまう。そうして障害年金も半額にとどめてある。金額の多い少いは別としまして、障害程度さえをも差等をつけるということは、これは妥当ではないと思う。その点はいかがでしょうか。
  23. 河野鎭雄

    政府委員河野鎭雄君) この点、先ほど来申し上げたような、国民全体との均衡というような角度から考えて、その辺に落ちつけるのが適当ではないかというふうな考え方に立って立案をいたした次第で、考え方といたしましては、同じようなことを繰り返すことになるわけでございますが、そういうふうな気持を持っておる次第でございます。
  24. 山下義信

    山下義信君 この原案で十分だと言われると、いつまでも質疑を繰り返上て、十分でない点を申し上げなければならぬ。当局としても、これでは十分でないということは、これは御承知の上のことなんです。それで、金額が、軍人軍属に比して差等をつけられるということも、これも議論はありますけれども、一応それはそれといたしまして、障害程度軍人の場合は、小さな傷までもとり、今度は軍属の場合は、相当の傷でなければとらぬ。準軍属の場合は、いよいよ重傷でなけらねばとらぬという、傷害の差等をつけることは、傷に対しての一つ一の補償をするという場合に、金額の差等をつけることは、それは一つの理屈もつきましょうけれども、その障害の差をつけるということは、軍人でありましても、軍属でありましても、準軍属でありましても、同じでなくちゃならない。ことに考慮に加えなければなりませんことは、この準軍属とは、すなわち、動員学徒ですから、主たるものは、その動員学徒の中の主たるものは当時の女子学生である。女学生である。そういう人たちの傷害は、またこれは、一般男子の一人軍属の場合と、どこに傷を受けたというような傷害の箇所等によりましても、たとえば顔面に受けたというような傷は、これは、男子の軍人軍属の場合の相当な傷以上に女子にとりましては終生の大きな障害なんです。でありまするから、むしろこの準軍属の場合は、それは、その対象者の主たるものがいわゆる動員学徒であり、また、その中の相当多数の部分は女子学生等であったようなことから考えますと、軽度の傷害こそ、これは見てやらなければならぬ理由もあるわけなんです。この軽度款症を、この軍人軍属の場合と違って、これをはずしたということは、これは十分でないと思うのです。妥当でないということが語弊があれば、不十分であるという感じがしますが、当局はどう考えられますか。
  25. 河野鎭雄

    政府委員河野鎭雄君) 私、申し上げ方が悪くて、もしも誤解がございますれば、改めたいと思っております。  私、十分であるという意味で申し上げたわけではございません。御承知のように、今、御質問のございましたように、準軍属として従来一番御熱心御要望等がございましたのは、動員学徒でございますが、動員学徒は、内地で主として仕事をしておられたわけであります。軍属の中でも、内地で仕事をしておられたいわゆる内地軍属につきましては、援護法対象外で、これは旧令共済組合によって処理をしておるわけであります。そちらの方の給付対象も、重度のものに限っておりますのでそういったようないろいろな方面の比較検討からいたしまして、今回の提案といたしましては、ただいま御説明申し上げましたような範囲にとどまらざるを得なかった。こういうふうな実情であるわけでございます。
  26. 山下義信

    山下義信君 次に参りますが、いま一つ重要な点は、言うまでもなく、死亡した準軍属遺族に、今回遺族給与金支給されることになったという点なんです。今、擁護局長の示された、この対象者が約七万ということですが、これは、従来、その大部分のものが援護法によりまして三万円の弔慰金を受けておる。その当時、一般の戦死者の遺族には、言うまでもなく五万円の弔慰金が出たのです。そのときに、準軍属に対しましては三万円で、二万円の差がつけられた。その当時、この修正は当参議院でいたしたのでありますが、この三万円という差がつけられましたのは、何も、準軍属であるから、あるいは国とのつながりが軍人と比較して薄かったからという理由ではなかったようであります。ただこれは、そのときの予算上の関係で、あまねく五万円弔慰金を出すのには予算が足りなかったために、参議院と大蔵省、すなわち政府と妥協いたしまして、予算の範囲内で弔慰金を出すということになれば、三万円しか出す余地がないというので、これは三万円ということになった。実は、その差をつけたのには、ただ財源の関係以外には理由はなかったのでありますが、今回二万五千円の弔慰金を出されることに相なりました。私は、この金額は申しませんけれども、これまた十分であると請い切れない。先般引揚者の交付金金を出されましたとき、二万五千円であったように思う、公債でありましたか、現金でありましたか、記憶は失しましたが、二万五千円であった。生存者に対して二万五千円が出たということになりますと、そのことも、実は今回これらの措置をされる重要な要因となったと思いますが、死亡者に対して同じように二万五千円ということでは、金額におきましてどらもバランスがとれないような感じがいたします。しかし私は、金額のことを今ここでは申さないと言いましたから、多少不満の意を漏らしておきますが、その金額というよりは、せっかく出していただくことになりました遺族給与金の二万五千円を、これを支給いたします対象者が、非常にこの改正案でしぼられてあるという点なんです。この点だけは、一つここで明確にしておかなければならぬ。せっかく二万五千円の遺族給与金を出していただくことになったのでありますが、この改正案の第二十五条の第三項によりますと、つまびらかに申しますと、第二十五条第三項の第二号で、これを私はここで指摘いたしますが、問題はこの点です。私の質疑はこの点だけを伺いたいと思うのです。これはどういうふうに支給されるかといいますと、これによりますと、この受くる者が父母の場合、年令が六十才以上であって、そうしてその者を扶養することができる直径血族がないこと、こういうことになっておるのですね。これは、従来に例を見ないしぼり方なんです、従来の援護法におきましても、軍人軍属遺族年金を受ける場合におきましては、恩給法においては言うまでもないことであります。私が質問中に申し上げるよりは。援護局長から答弁の場合にお示しを願いたい。恩給法では、遺族年金の父母の場合はどういうものが受けられるか。それから、この援護法軍人軍属遺族年金を受ける者は、父母はどういう者が受けられるか。そうして今回準軍属遺族給与金の二万五千円を受けられる父母すなわち両親は、どういう者が受けられるか。この三点を比較して御答弁を願いたい。
  27. 河野鎭雄

    政府委員河野鎭雄君) 恩給法におきましては年令制限はございませんが、ただ、援護法よりもシビヤーな制限を設けておる面もございます。具体的に申しますと、旧民法時代に、死亡した方につきましては、同一戸籍内でなければならないというふうな要件がございますが、年令制限等につきましては別段の規定はございません。  それから、遺族援護法軍属に対します父母の要件といたしましては、六十才以上の者につきましては、扶養することができる直系血族があるというふうな要件はつけてございません。その点が準軍属の場合と違っておるわけでございますが、なぜこういうふうな準軍属についてのしぼり方をしたかということについて、簡単に御説明を申し上げたいと思いますが、先ほども申し上げましたと思うのでありますが、軍人恩給等調査会におきましても、準軍属遺族範囲、旧令共済組合の場合と均衡をとる必要があるではないかというふうな御意見もあったわけでございまして、むしろ積極的に、旧令共済組合のようなしぼり方をしてみたらどらかというふうな積極的な御意見もあったわけでございます。私ども、事務的にいろいろ検討してみたのでございますが、この旧令共済組合内地軍属対象といたしております旧令共済組合におきましては、死亡の当時、死亡者によって生計を維持しておった、扶養されておった者を対象として考えておるわけであります。そういうふうな規定の仕方をいたしますると、むしろ動員学徒等は、逆に死亡の当時は親がかりであったというふうなことが実情であろうと思いますので、そういうふうにいたしますと、ほとんどこれは対象外にはずされてしまうというふうなことで、いろいろ検討いたしてみました結果、そういう死亡の当時ということでなしに、現在扶養することができる直系血族がない場合にすれば、相当の者が対象として考えられるのではないかというふうなことで、むしろ旧令組合のような例をとらないで、実情に合ったような工夫をいたしたつもりでございます。いろいろの種類の戦争犠牲者がございますので、いろんな方面からその間の均衡を顧慮しなければならないというふうなことで、ただいま御提案申し上げておるような規定の仕方をしたわけでございます。この運用に当りましては、十分実情に合った、あたたかい気持をもって、できるだけ法律の趣旨にかんがみましてあたたかい取扱いをしていきたい、かように考えておる次第であります。
  28. 山下義信

    山下義信君 両親が不具廃疾の場合は、年令制限はないのです。しかし不具廃疾の両親でも、その両親が生活に困難をきわめて、すなわち、生活資料を得ることができない、その上に、その両親を扶養することができる直系血族がないことと、こういう条件になっているのですね。不具廃疾でない両親でも、六十才以上の年令の制限があって同様。それから、不具廃疾の両親の場合は、年令制限を取るけれども、その者が生活資料も得ることができぬし、かつ、その者を扶養することができる直系血族がないことと、こうしぼるのですね、これは、全く生活保護法対象者と同じじゃありませんか。本人が生活ができない、また、その者の生活を扶養する直系血族がないということになりますと、これは、生活保護法対象者と私は少しも変らぬと思う。そういう者でないと支給せぬということならば、遺族援護法支給しなくても、生活保護法支給対象者になるわけで、そこまでしぼってあるというのは、少しひどいと思うのですが、どうでしょうか。従来は、援護法におきましても、父母は六十才以上であるか、あるいは不具廃疾の場合には年令制限ははずすか、あるいはまた、扶養する直系血族がないか、どれかに当っておれば、親はもらえることになる。このたび、遺族給与金としてこもいう措置をおとり下さったのは、まことにありがたいですけれども、どういう親がもらわれるかといえば、六十以上であるという年令の制限と、それから、扶養のできる直系血族のないこと等の制限と、ことに身体障害者のような両親でも、生活の資料を得ることができないことであって、また、その扶養する直系血族のないことというふうに、諸条件をきびしく要求をして、それらの条件を持っておる者でなければ支給しないということになりますれば、これはもう、ほとんど生活保護法対象者に近い者——近い者というより、全く同様の者になるということになる。そうしますと、今七万人とおっしゃった、せっかくの準軍属遺族等も、これ入らないのじゃないでしようかね。たとえば、その当時十五、六才、十七、八才の動員学徒——皆青少年であります。そうすると、おっかさんでも若い、また、三十七、八か四十そこそこのおっかさん、今日まあ平均して五十才から五十三、四才というおっかさんが比較的多いのだろうと思う。まず、年令の上ではずれてしまうのですよ、それで、もうその他の要件を皆当てはめていくと、ふるい落されてしまって、ほとんど対象者がないことになる。  いま一つ、ついでに、もう一ぺんに言うておきますよ。だらだら質問してもいけませんから。その上にほかの要件の、六十才以上という年令なる要件のある場合も、その年令が来たら支給されるのですよ。六十才以上にならなければやらぬと、こうありましても、しばらく待っていて、六十才以上に到達すると、それらの遺族年金を受給する資格が生じてくる。しかるに、今回の援護法でせっかくしていただきます二万五千人の遺族給与金は五カ年間ですよ。そうすると、今五十三才のおっかさんは、五カ年待っていても、五十八才ですから、六十才の年令に達しない。五カ年間にどうして六十才に達しさせることができましょうか。六十才にしてもらえますかな。そうすると、これは永久にやらぬというのと同じなんですね。他の方の資格要件の六十才は、遺族年金を何年間という制限がありませんから、今は五十五才でも、五年待ってて六十才以上に達しますと、受給資格が生じてくるので、恩恵にあずかることができますが、この場合は、五カ年を限って打ち切るとなっているんですから、今申しましたように、現在、五十一才から五十二才、五十三才、五十四才、そういう人たちの両親はとうとうもらえぬということになるわけですね。これじゃああまりしぼり方がきついのじゃないかと思うのです。いかがでございましょうか。
  29. 河野鎭雄

    政府委員河野鎭雄君) 扶養することができる直糸血族がどういう場合であるかという点について、運用の……
  30. 山下義信

    山下義信君 それは、この次に、尋ねようと思っていたんです。まだそこは尋ねておらぬです。今、六十才以上について尋ねているんです。
  31. 河野鎭雄

    政府委員河野鎭雄君) こういう条件をつけたのはけしからんじゃないかというお尋ねだったものですから、それで……、
  32. 山下義信

    山下義信君 おっしゃっていただきましてもよろしゅうありますから……。
  33. 河野鎭雄

    政府委員河野鎭雄君) と申しますのは、生活保護法と同じような扱い方をするのじゃないかということで、生活保護法と同じじゃないかというふうなお尋ねであったので、その点についてお答えを申し上げたいと思うのでありますが、生活保護法の基準と同じような運用をするつもりではございません。大体の気持といたしましては、国民の平均の生活を維持する程度の収入がある場合に、扶養することができる直系血族があるというふうに考えておりますので、生活保護法と同じではないかというふうなお尋ねでございましたが、それをシビヤーな運用をするつもりは毛頭ございません。  それからもう一つ、六十才にまだ達していない人は、六十才になってからどうなるのかというお尋ねでございましたが、現在六十才になってない方には差し上げないわけでございまするけれども、先になって六十才に達しましたときに、それから五年間支給する。そういうふうな仕組みになっているわけでございます。
  34. 山下義信

    山下義信君 わかりました。ようわかりました。やっぱり聞いてみんとわからぬ。聞かずにおりますと大へん誤解して、関係者はもう、六十以下の者は、これはもらえぬことになったと言っておりますからね。これは、きょうは大へんなよい答弁をいただき、(笑声)これは当りまえのことであったのですけれどもね。私がそこまでよう法律を読み切りませんでして、大へんけっこうな、ほんとうに六十才まで待っておれば支給される。そうすれば五年先でもいい、それから五ヵ年支給するということですね。よくわかりました。私は、何でもかんでも五年で打ち切ってしまうのかと思いましたが、そこはわかりました。  そこで、今あなたが先回りしてお答え下さいました、生活保農法のようなしぼり方をせぬのだという大体の御趣旨をいただきまして、当然そうだろうと思います。そこで、扶養能力のことでありますが、このむすこなどが親を扶養する能力がある場合には、これはもらえぬことになります。この扶養能力ということが、現行法でもその規定があるわけなんでありますが、今回、特に重大な関係がありますから、お尋ねしておかにゃあなりません。扶養能力というのは、どの程度を見ておいでになるのでありましょうかということを承わっておかにゃあならぬと思うのですね。どういうふうに見ておられますか。
  35. 河野鎭雄

    政府委員河野鎭雄君) 先ほどもちょっと申し上げたのでございますが、大体の気持といたしましては、その直系血族が、国民の平均の生活を維持するに足るだけの収入がある場合に、扶養することができる直系血族がある。こういうふうに考えているわけであります。
  36. 山下義信

    山下義信君 ちょっと速記をとめて下さい。
  37. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  38. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記つけて。
  39. 山下義信

    山下義信君 親を扶養する能力ということは、どの程度の収入があれば親を扶養することができるかという問題になってくる。あなたのお答えを聞いていると、国民の平均生活、国民生活の平均水準を維持するだけの収入があれば、親を扶養する能力があるものと認める、こういうんですね、それはどういうことですか。たとえば、国民の生活水準というものをかりに三万円と見ましょうか。その三万円の収入があれば親を扶養する能力があると、こういうのですか。どういうことでそういうそろばんがはじかれますか。私は三万円の収入がございますよ。私には家族がございますよ。子供が五人おりますよ、私は三万円の収入……、なるほど三万円という金は、国民の生活の水準の消費金額であるかもわからぬ。しかし、私のうちの家庭の費用には三万円で足りないんです。月々五千円の赤字で、方々、親類から借り集めなきゃ、私の家族は扶養することができない。三万円の収入がありましても、私は親を扶養する能力が収人の上ではございません。ですから、国民生活の平均水準の収入があれば親を扶養する能力があるとはいえないでしよう。親を扶養するだけの余裕があるということになれば話はわかります。六万円の収人があって、私の家族の生活費には約二万五千円ないし三万円かかるんだと、私の収入には三万円の余裕があるんだと、さすれば、その三万円の余裕で親が見れるではないかというならば話はわかる。私の収入が国民生活の平均水準を維持するに足るだけの収入があるからといって、直ちに収入の金額で親を扶養する能力があるとは言えないんです。親を扶養する余裕の能力があるということなればわかりますが、その者の収入状態を、すぐにそういうふうにしゃくし定木で押えていくということは、私は実情に沿わぬと思いますが、いかがでしょう。
  40. 河野鎭雄

    政府委員河野鎭雄君) 私の表現が悪くて、おわかりいただけないと思うんですが、ただいま御質問があったことは、気持としては同じでございます。生活のやり方は、それぞれの家庭によって違うと思うのでございますけれども、個々の生活がどうのこうのというふうな基準は設けにくいと思うのでございますが、少くとも、一つの世帯として親をかかえて生活していくということであれば、その全体として平均的な生活が保持する程度の能力があれば、扶養することができる直系血族があるというふうに考えていいんじゃないかと、かように考えておる次第であります。
  41. 山下義信

    山下義信君 大事のところでありますから、私は念を押しておくわけなんでありますが、くどくは申し上げません。もうあと一点だけ伺えばいいのでありますが、くどくは申し上げません。大事なところでありますから……。  そこで、国民生活の水準などと抽象的におっしゃって、一つのお答えにはなりますけれども、今日のいろいろな経済情勢、社会情勢等から申しまして、なかなか少々の金ではお互いの生活が立っていかないことは、もう必然のことであります。従いまして、今日のような社会情勢におきましては、よほどそういうところの標準などにつきましても御留意にならなきゃならぬと私は思います。十分御検討、御配慮の御意思があるかどうかということも承わっておかなければならぬ。
  42. 河野鎭雄

    政府委員河野鎭雄君) 実は、こういった要件は、現在の軍属の場合も、祖父母の場合には同じような要件が実はつけてあるわけです。ただいま申し上げましたような気持で実は運営いたしておりまして、大してまあ支障なく来ているつもりでございます。今後も、御注意がございましたように、非常にこれをシビヤーな線で運営していって、実現しないというようなことにならないように十分注意をして、運営して参りたいと考えております。
  43. 山下義信

    山下義信君 いま一点は、私は、この法律の条文をどういうふうに解釈するかという点を何っておかなければなりませんが、それは、「その者を扶養することができる直系血族」云々、こういうことですね。「その者を扶養することができる」という、「できる」ということの解釈ですが、私は、できるということには二つあると思う。それは、一つには、今前段の質疑応答で伺いましたように、収入能力——できるということは収入能力であります。金がなければ親を養うことができないのでありますから、それだけのむすこの方に収入があるということ、それが扶養のできるという一つの能力。いま一つは、収入がありましても、余裕がありましても、わしゃ親は知らぬのじゃ、親は見ぬのじゃ、親と仲が悪いんじゃということで、親子がとんとにらみ合っているような、親を養うというような意思も何もないような者は、扶養のできるむすこじゃありませんからね。ですから、収入に余裕があるまた親を養わにゃならぬ、また養うてあげるというむすこの方にそれだけの意思がなければならぬ。もとより民法には、今日家族制度が廃止されてあっても、現行民法においては、扶養の義務が課せられておるということは、お互いにわかっております。当然民法にも扶養の義務がうとうてある。しかしながら、いわゆる家族制度が廃止された今日におきましては、親を見ないむすこはたくさんありますよ。収入があって、むすこの方はりっぱに暮しておっても、つまり親孝行の観念が、昔で言えば道徳がくずれたといいますか、親を見ないむすこがたくさんある。でありまするから、この「扶養することができる」ということは、むすこの方にそれだけの収入があると同時に、親を見ようという意思がむすこになけりゃ、お前には相当にやっておるむすこがあるといいましても、金一文も送ってくれぬ、手紙一本よこさぬのですと言う親がある。しかも、そういう例は、最近の社会世相からいって非常に多いので、これは、むすこの方にやはり親を養うという気持がなければならぬと私は思う。この「できる」ということは、どういうふうに解釈されますか。
  44. 河野鎭雄

    政府委員河野鎭雄君) 現実に、とにかく新しい制度でございますので、従来どういうふうな生活をしておられたか、まあ子供があっても、その子供に厄介にならぬで、人様の御厄介になっているというふうなケースも、これはないことはないと思います。その辺は、実情に合うような運営をして参りたいと思っております。子供が、相当収入がある者がある場合は、絶対にいけないんだというふうな運用はしなくてもいいのじゃなかろうか、かように考えております。
  45. 山下義信

    山下義信君 私の大体伺いたいと思いましたことは、以上の質疑でございますので、運用等の方針につきましては、これは一つの施策の根本方針でありますから、厚生大臣に御所見を伺わなきゃなりませんが、私は、援護法の立法の趣旨は、言うまでもなく、恩給法でカバーのできないものを、まず最初に援護法でやりまして、それで、恩給法が復活しない前に、まず援護法がその役目を果しまして、恩給法が復活いたしますると、恩給法に漏れるものを援護法でカバーいたしまして、そうしてできるだけ国がこれらの戦争被害者に対しまする措置に万遺漏なきを期することが援護法の立法の精神であります。そこで今回、準軍属に対しまして、障害者並びに死亡者遺族に対する措置が行われるに当りまして、比較的その対象者が少数であります。そうしてこれらの対象者は、長い間解決を見ないでおったところの対象者でありますが、これらの措置が、今回政府の御努力関係者の涙ぐましい長い間の要望が、辛うじて実ることができまして、これらの措置をしていただきましたことが、その運用が非常に酷に過ぎるようなこと相なりました結果、受給者がまことに少数であったということになりますると、私は、せっかくの志が水泡に帰する、あだになるのではないかという気がするのでございます。従いまして、遺族給与金等の支給に当りましては、特にその扶養要件の認定等につきまして、当局におかれまして、十分に意をはらわれ、よく実情に即するよう、この運用の弾力をお持ち下さって、あまねくこの改正案の御趣旨の恩恵と言うと語弊がございまするけれども、率直に申しまして、この恩恵に浴し得るように、漏れるものがないように、極力御配慮をいただきたいと思いますが、厚生大臣の御所見を承わっておきたいと思います。
  46. 片岡文重

    片岡文重君 関連して、質問したいことも二、三あったのですけれども、また質疑打ち切りの動議が出ると困りますから、あまり質問の方は、ほかの問題はやめまして、今山下さんからお話がありました点について、私もぜひお願いをしておきたいと思うのは、障害年金等について、特に重度の症状にあって、生活に困窮しておるような人々が、生活に困窮しておるがゆえに、十分な、医療をするわけにいかない。特にこれは、本法によって新しく適用を受けることになった準軍属にももちろんあるでしょうが、すでに受給の資格を持っておる人々の中にも、たとえば当然一項症、二項症等に適用せらるべきものが、たまたま途中の医療を廃したり、あるいは十分な医療をしなかったりして、また届出の、何といいますか、過失等によって、三項症、四項症で打も切られておるものもある。そういう人たちは、生活にも困らないし、十分な医療ができるようならば、医療も継続してやっていかれるわけです。ところが、生活に困りますから、従って医療の方は二の次になってくる。そこで、医療は中断をされまして、今度はどうしても耐えられなくなって、またお医者さんにかかるわけです。その間が中絶してしまうわけです。これは、戦争中の原因による発病じゃないのだというようなことで、認めてもらえない場合がある、継続して。そういうような実例を私は二、三承知しております。しかしながら、これを厚生省に持ち込んでも、あるいは地方の福祉事務所等に持ち込んでも、なかなか法規をたてにとって、お前は中断をしているじゃないか。医療を続けておらないのであるからなおったのである。こういうようなことで、なかなか取り上げてもらえないようです。こういう問題は、もちろん、すべての法律がそうでありましょうけれども、特にこういう法律は、何といっても、この生活の実態をよく調査の上で、たとい恩恵が過ぎて、二、三不正直な者が不当な利益を受けるようなことがあったとしても、正常に当然受け得らるべき資格のある者が、たとい一人でも受けられないで、呻吟するというようなことがあらしめてはならないと私は思うので、そういう意味から、特にせき髄性障害とか結核等、長期にわたる障害者のためには、これは、ぜひできるだけの一つ拡大解釈なり温情のある措置をとっていただいて、救済の方法を講じていただきたい。すでに厚生大臣まで不服の申し立てをするなり、救済の制度は設けられておっても、一ぺん決定をされてしまうと、なかなか申し入れても、再審の申し立てをしても通らないで、金もないし、なかなかめんどうをみてくれるものもないというところから、あきらめてしまう。こういう例がしばしばありますので、そういうことのないように、一つこの点は、大臣からも特に御配慮をいただき、関係局におかれても、特段の御留意になって今後そういう救済を申し入れたものがある場合には、できるだけの御尽力を賜わりたいと思います。山下さんの御質問にあわせて、御所見を承わることができれば幸いです。
  47. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 山下委員から、この援護法、特に今回新しく創設いたしました準軍属というものに対する法の適用を、実際の実情に合って考慮すべきである。いたずらに法の末節にとらわれず、実情に即して考えるべきであるという点につきましては、私も全く同感でございまして、とかく公務員が法律にとらわれ過ぎて、しかも実情に合わないということについては、十分戒心して参るつもりでございます。  なお、片岡委員から、障害年金受給者のうちで、相当重度障害を受けながら、生活困窮のゆえに、医療を中断するようなことがある。さらに、その病気が真になおらないために、再発の状況になったとき等に対しまして、ことさらに注意すべきである。また、それらについてあやまちのなきように期せということにつきましては、私もその通りに、今後救済の措置については万遺憾なきを期したいと思います。
  48. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  49. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を始めて。  暫時休憩いたします。    午後零時四十九分休憩      —————・—————    午後一時三十一分開会
  50. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  休憩前に引き続き、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案質疑を行います。  質疑を願います。——他に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見等のある方は、討論中にお述べを願います。別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案を原案の通り可決することに賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手
  53. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告内容議長提出する報告書の作成その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それから、報告書には多数意見者署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は、順次御署名願います。   多数意見者署名     木島 虎藏  勝俣  稔     谷口弥三郎  横山 フク     鈴木 万平  中山 福蔵     西岡 ハル  西田 信一     山下 義信  山本 経勝     片岡 文重  松澤 靖介     藤田藤太郎  坂本  昭     田村 文吉
  55. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、失業保険法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入るのでありますが、まず、本案の大綱について、政府委員から御説明願います。
  56. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 失業保険法の一部改正法律案に関する大綱を、先般の提案理由説明に補足して、御説明を申し上げます。  現在、五人未満の事業所は、提案理由説明にもございましたように、推定約十万、被保険者数二百二十万というふうに推定されておりますが、失業保険は、現在五人以上の事業所に強制適用にいたしております関係上、五人未満の事業所に対しては、現在任意加入の制度がございますけれども、現在加入している数は微々たるものでございます。すなわち、現在加入している事業所数は三十八万で、九百八十万の被保険者でございますが、そのうち任意加入しているものは四万の事業所、九百の被保険者でございまして、まだ五人未満の事業所に対する適用は非常に少いのでございます。できるだけこれを早い機会に適用を拡大していくということを目的といたしまして、しかしながら、直ちにこれを強制適用にするということは、今申し上げましたように、数においても膨大であるということ、あるいはまた、そうした零細事業所の実態にかんがみまして、直ちに持っていくことは非常に困難でございますので、本案におきましては、できるだけこれらの零細事業所が失業保険に加入しやすいような方途を講ずることによりまして、この加入の促進をはからんとすることが第一点でございます。  すなわち、最もこれらの事業所で困難を感じております問題は、事務能力の不足という問題であろうかと存ぜられますので、そうした点に関する手続を簡素化することによって、第一にこれが加入の促進をはからんとするものでございましてその方法といたしまして、第一には、保険料及び保険金算定の基礎となる賃金に関しまして特例を設けたことでございます。これは、失業保険の保険金ないし保険料の算定は毎月々々の賃金支払い総額によって計算いたします関係上、毎月の支払う貸金に変動がありますので、事業主としては非常に煩瑣にたえないという問題もあるわけです。従いまして、これらの手数を省きますために、被保険者となるべき者の半数以上の同意があれば、過去六ヵ月間の賃金を基礎といたしまして、一年間の間特定賃金月額を——標準報酬的なものでございますが、特定賃金月額というものを創設していく、これによりまして、しかもこれを千円単位ということにいたしまして保険料の算定その他の手続を簡素化するということにいたした次第でございます。もちろん、貸金には変動もございますので、これは毎年一回改訂することといたし、かつ、その期間中においても、非常に賃金の変動がありました場合には、それに応じて改訂していくと、こういうことにいたした次第でございます。  手続簡素化の第二点は、保険料の納期の特例を設けたことでございます。保険料は、毎月支払った賃金に保険料率をかけて払うのでございますが、小規模事業主の払う保険料は、きわめて額としては小さなものでございますので、毎月払う煩瑣な手続を避けまして、事業主が希望すれば、これを三カ月に一ぺん支払えるような方途を講じた点が第二点でございます。  かように、個々の事業主が失業保険に加入いたします場合に、手続を簡素化いたしますと同時に、単にそれのみでは事務能力の不足ということが補えませんので、これを団体によって失業保険に関する事項を処理するような制度を創設いたしたことでございます。すなわち、中小企業等協同組合法による事業主の団体がその組合員と事業主にかわりまして失業保険の事務を行うということにいたしたわけでございます。これを失業保険事務組合ということにいたしましたが、これらの事務組合が労働大臣の認可を受けて、組合員たる事業主にかわって保険料その他の手続を行う。その場合に、この失業保険事務組合は、単なる代理人というばかりでなく、一定責任を負うことにいたした次第でございます。  さらに、これらの失業保険事務組合が組合員のために保険料の納付等をやります場合に、その納付の成績が良好である場合には、これに対して報奨金を交付するということにして、この制度の促進をはかろうといたしたことでございます。  以上のような措置によりまして、できるだけ零細事業主の事務手続を簡素化いたしまして、五人未満の事業所の失業保険加入を促進いたしたいと存ずるのでございますが、しかしながら、実情といたしまして現在五人以上の当然適用の事業主でありましても適用漏れになっておるのが、推定十七万事業所程度あるわけでございまして、五人未満にまで適用を拡大する以上は、この五人以上のところで適用漏れになっておるというところをできるだけなくしていくというのが必要であろうかと存じますが、その一つの現在障害になっておることは、五人以上の事業主でございまして、これが適用漏れだということが発見されました場合には、少くとも二年前にさかのぼって、まとめて保険料を納付しなければならないということになっているのでございます。これに対しては、現在分割あるいは延納等の措置を認めておりませんので、これらのものが積極的にそうした届出がしやすいように、第一に、これらの納期につきましては、さかのぼって保険料を徴収する場合には、これの保険料の分割あるいは延納の制度を認めたのでございます。  第二といたしまして、できるだけすみやかなる機会に、こうした適用漏れのものをなくしていきたいという趣旨のもとに、経過的に、この法律の施行後約五カ年、すなわち昭和三十八年三月三十一日までの間に届け出たものにつきましては、特にこの二年の期間を一年に短縮する、一年分だけでよろしい。しかも、なおかつこれには延納分割を認めるというふうな特例を設けたのでございます。  以上のような措置によりまして、五人未満の事業所の任意加入を促進しますと同時に、適用漏れになっているところの事業所の届出を促進することにいたしたのでございますが、その場合におきまして、五人未満の事業所に雇用される労働者が任意加入を希望し、あるいはまた適用漏れの事業所に雇用される労働者が失業保険の資格者であるということを届け出た場合にも、これを理由にして事業主が不当、不利な取扱いをしてはならないということを規定いたしまして、できるだけこうしたことの、脱法のないような措置を講じた次第でございます。  以上が五人未満の事業所に対する適用拡大並びに五人以上の適用漏れに対する適用の促進でございます。  さらに、第三点といたしましては、保険料等の徴収につきまして、従来失業保険のとっておる制度は、たとえば、他の国税徴収法あるいは健康保険法といったようなものと同様な制度にいたしますために、所要の改正を設けた次第でございます。  以上がこの改正法律案の大要でございます。
  57. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御質疑を願います。
  58. 山本經勝

    山本經勝君 二点ばかりお伺いをしておきたいのですが、今お話のあった提案理由説明によりますと、当然適用を受けるべき事業所、これは、正確な数字はわからぬと思いますけれども、大体推計どのくらいな事業所があって、従業員数はどれくらいあるか、わかっておりますか。
  59. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) ただいま申し上げましたように、現存適用いたしておりますのが二十八万事業所でございます。そのうち任意加入のものが、今申し上げましたように、二十四万程度が現在五人以上で加入している数字でございまするわれわれの推定におきましては、適用漏れがそのほかに十七万事業所程度ある。こういうふうに推定しております。
  60. 山本經勝

    山本經勝君 十七万事業所で、従業員の数は大体わかりますか。
  61. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 十七万事業所で、約百十五万人というように推定いたしております。
  62. 山本經勝

    山本經勝君 その点はわかりました。  それからもう一点は、保険事務の取扱いについて、中小企業協同組合法による団体と、一応これは限定をしたものなんですか。そうではなくて、その他、事業所でこの種の協同組合もしくは協同組合の連合会と、こういう団体をも含めておるのですか。
  63. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) これは、この事業協同組合に限定した趣旨ではございません。事業主の団体であればよろしいということでございます。
  64. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、たとえば、一応この失業保険事務組合なるものが中小企業協同組合法によるものあるいはその他これに類似の事業所の組合あるいは団体、これは何でもよろしい、ただ労働大臣の認可を受けてやる、こういうことなんですか。
  65. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) さようでございます。
  66. 山本經勝

    山本經勝君 わかりました。
  67. 松澤靖介

    松澤靖介君 良好な失業保険事務組合に対して報奨金を交付するという規定を設けておるようですが、この保険料の納入の状態というのはどういう工合になっておりますか。
  68. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 保険料の納付の状態でございますが、失業保険においては、年間九六%ないし七%という状況でございます。
  69. 松澤靖介

    松澤靖介君 やはりこういう報奨金制度というようなものを設けないと、保険料の徴収というものは悪いものなんですか、どうなんですか。これを設けたその趣旨といいますか、やはりそういう報奨金を設けた方が、よりよい保険料の徴収ができるというお見込みでこういうことをやっていると思いますが、ちょっと何だか私から見ますれば子供だましのようなことで、果して保険料というものが集まるのかどうか、私は、保険料の徴収の悪いということは、経済的要素が影響してくるのじゃないか、ただ単に精神的の問題ではなくて、困るからというようなために保険料が未納という、そういう現象が起きるのじゃないかと思いますが、その原因について……。
  70. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 今の御指摘の通り、失業保険の保険料等の納付成績が悪いというのも、おっしゃる通り経済状態が悪いという問題だろうと思いますが、現在の状況についてみますと、やはり大規模の事業主につきましては、百パーセント近くの納付成績でございますが、規模が小さくなるに従って納付率が、徴収率が悪いのでございます。特にこうした五人未満の事業所と申しますのは、先ほど申し上げましたように、非常に数が多うございます。従ってこれを完全徴収するとか、強制権をもって完全徴収するとかいうことになりましても、大へんな行政事務になるわけでございます。しかも、事業主の側から申し上げましても、個々に事務処理をするのが大へんだというようなことで、この事務組合の制度を設けたわけであります。従いまして、この事務組合が事業主にかわって自分の組合員の保険料を集めて納めてくれる、それによりまして一定の保険料の納付成績をあげてくれるということは、国としても非常にこれは望ましいことでございまして、そうして反射的利益を受けるのでございますからして、それに対しまして、国としては報奨的にこれに報奨金を交付する、こういうふうにいたした次第でございます。
  71. 松澤靖介

    松澤靖介君 報奨金の額といいますか、年にどれくらいになっておりますか。
  72. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) これは、今後政令をきめる段階におきまして協議いたすことになっておりますが、われわれは、大体保険料の五、六%程度、五%前後ということを考えております。
  73. 松澤靖介

    松澤靖介君 この失業保険法の今度の改正によりましても、事業主に強制適用ということを考えずに、任意加入というような制度をとっておるようですが、この点について、当局として指導なりあるいは鞭撻といいますか、そういう意味において、だんだん毎年多くなっている傾向がどのくらいの割にありますか。数学的に一つ示していただきたい。
  74. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) われわれがこの法律案を出しましたゆえんのものも、できるだけ五人未満の事業所に適用を拡大していきたい。そうして強制適用まで持っていきたいということを考えておるわけであります。従来の過去十年におきまして、十年前から、実は五人未満のものも任意加入の制度がございましたけれども、なかなか、実際問題としては、先ほど申し上げましたように、四万事業所九万人程度でございましたが、それの根本原因をいろいろ検討いたしました結果、第一の大きな問題としまして、事務能力の問題がございますので、まずそれから解決してかかろうというのが本案の趣旨でございます。
  75. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 他に御発言もございませんようですから……
  76. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 一つだけちょっと、特定賃金月額というものはどういうものかということを一つ教えていただきたい。
  77. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 特定賃金月額と申しますのは、趣旨につきましては先ほど申し上げましたが、この計算は、過去六カ月間の賃金、これは、健康保険等の場合と違いまして、臨時の給与、賞与付きなら賞与付きの分も全部入るわけでございます。失業保険がちようど過去六カ月分のものをもとといたしまして保険金を支給して参る関係上、これと歩調を合せまして、過去の六カ月間の実際の賃金としてもらったものの平均、これを一カ月分に持っていく、こういう考え方でございます。
  78. 山下義信

    山下義信君 私は、質疑ではありませんが、この際、政府に要望いたしておきます。今回の失業保険法改正案、五人未満の零細企業に対してこれをやっていただくということは、非常にわれわれとして賛意を表します。これは率直に言いまして、労働省が五人未満の対象に対して手をつけたということは、私は、一つの勇気をふるって決行したことと了解しております。御承知のごとく、いまだに健康保険その他、五人未満の零細企業の労働者に対する社会保障の諸制度適用については、その対象者の獲得の困難、また事務分量の非常な複雑性、またその量の大きさ等について、関係官庁においてはちゅうちょしておるところであった。これが今回、失業保険がこの零細企業に向って手を伸ばしていくということは、実は、先頭を切ったというか、非常に注目すべき施策であると思います。このことがうまく所期の効果を上げるかどうかということは、あらゆる関係制度について非常に大きな影響を及ぼすので、ぜひ私は成功してもらいたいと思います。従いまして、どの組合の運営、今、報奨金の問題等もありましたが、これは事務費の性質であろうと了承しておりますが、この組合の運営、またその責任性のあり方、それから、それに参加している事業主は言うまでもなく、被保険者対象者等の関係その他、できるだけ一つ成功を私は祈らざるを得ないのです。どうか一つ運用につきましては、十分注意を払われまして、熱意を傾けられまして、一つ成功せられるように御努力を願いたいということを要望いたしておきます。
  79. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 他に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見等おありの方は、討論中にお述べを願います。他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それではこれより、失業保険法の一部を改正する法律案について採決をいたします。本案を原案の通り可決することに賛成の方は、挙手を願います。   〔賛成者挙手
  82. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告内容議長提出する報告書の作成その他の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それから、報告書には、多数意見者署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は、順次御署名を願います。   多数意見者署名     木島 虎藏  勝俣  稔     谷口弥三郎  横山 フク     鈴木 万平  中山 福藏     西岡 ハル  西田 信一     山下 義信  山本 経勝     片岡 文重  松澤 靖介     藤田藤太郎  坂本  昭     田村 文吉
  84. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  85. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を始めて下さい。  休憩いたします。    午後一時五十五分休憩   午後三時十六分開会
  86. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  この際、請願の審査についてお諮りいたします。  本委員会へ付記されました請願の審査については、その数多数のため、あらかじめ調査室において内容の下審査を行わしめておったのでございますが、その結果、左記の請願は、いずれも採択して内閣へ送付を要すべきものと認め、残余の請願は、さらに審査を行うを要するものとなっております。その番号は、専門員をして報告いたさせます。
  87. 増本甲吉

    ○専門員(増本甲吉君) 五百三十号、千六百七号、千二百五十七号、十二号、百三十号、四百三十六号、二百四号、四百三十四号、四百六十三号、四百六十七号、千二百八十一号、千二百八十九号、千三百三十号、千三百三十号、千三百二十六号、千三百八十七号、千三百四十三号、千三百六十五号、千四百三十八号、千四百三十九号、千四百九十号、三百七十九号、二百八十八号、五百十九号、八百九十四号、八百九十五号、四百八十八号、千三百四十一号、千三百四十号、千三百八十四号、千四百二十七号、千四百八十七号、五百二十号、千七十号、千四百四十一号、千四百九十七号、千六十八号、千三百三十九号、千三百八十六号、千四百三十二号、千四百九十四号、千三百二十一号、千三百三十八号、千三百四十二号、千三百八十五号、千四百号、千四百四十二号、千四百四十四号、千四百九十五号、千五百号、八号、二百八十七号、三百六十九号、三百八十五号、三百九十五号、四百四十九号、四百六十六号、五百二十二号、五百六十六号、六百四十八号、九百九十号、千三百六十三号、千四百八十二号、千七百六号、二十二号、二百五号、十号、九百六十二号、千六十九号、千三百四十六号、千三百四十七号、千三百九十二号、千三百九十三号、千四百五号、千四百三十四号、千四百三十五号、千四百三十六号、千四百六十二号、千四百九十八号、千六百二十一号、千三百三十四号、千三百八十八号、千三百八十九号、千一百四十四号、千三百四十五号、千三百九十一号、千三百二十三号、千三百九十四号、千四百九十一号、千五百十七号、千三百二十二号、三百七十七号、千三百五十二号、千三百五十三号、十一号、三百七十八号、五百二十一号、千三百三十五号、千四百三十三号、四百五十二号、千三百十九号、千三百四十八号、千四百四十号、千四百九十九号、千三百九十七号、千三百二十四号、千三百三十二号、千三百二十号、二百六号、三百三十五号、千二百十号、三百九十六号、四百三十五号、四百三十三号、三百十九号、五百六十五号、百九十五号、千五百九十六号、千三百二十七号、千三百八号、千四百四号、千四百八十八号、千三百二十九号、千三百六十四号、千四百二十八号、千四百二十九号、千三百二十八号、千五百十六号、千二百五十三号、百四十一号、合計百三十件。
  88. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいま報告いたしました請願は、これを本院の会議に付するを要し、内閣に送付を要するものと本委員会において決定いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。本日は、これにて散会いたします。  午後三時二十三分散会      —————・—————