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1958-04-03 第28回国会 参議院 社会労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月三日(木曜日)    午前十時四十五分開会   —————————————   委員異動 四月一日委員榊原亨君及び有馬英二君 辞任につき、その補欠として寺本広作 君及び斎藤昇君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            木島 虎藏君            山下 義信君    委員            斎藤  昇君            鈴木 万平君            高野 一夫君            西岡 ハル君            横山 フク君            片岡 文重君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            山本 經勝君            田村 文吉君            竹中 恒夫君   委員外議員            大矢  正君   衆議院議員            井堀 繁雄君            大坪 保雄君   政府委員    労働大臣官房長 澁谷 直藏君    労働者労政局長 亀井  光君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    労働省審議官  飼手 真吾君   参考人    国際労働機関理    事会使用者側副    理事      三城 晃雄君    国際労働機関理    事会労働者側副    理事      原口 幸隆君    日本ILO協会    副会長     川西 実三君    日本ILO協会    事務局長代理  工藤 幸男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査の件  (ILOの問題に関する件) ○けい肺及び外傷性せき髄障害に関す  る特別保護法の一部を改正する法律  案(大矢正君外六名発議) ○労働基準法等の一部を改正する法律  案(藤田藤太郎君外六名発議) ○職業訓練法案内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいまより社会労働委員会を開きます。  委員異動報告いたします。  四月一日付をもって榊原亨君及び有馬英二君が辞任され、その補欠として寺本広作君及び斎藤昇君が選任されました。   —————————————
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 労働情勢に関する調査を議題といたします。  ILOの問題について、本日は参考人の御出席を願い、御意見を拝聴することになっております。各参考人には、お忙しいところ出席を願いましてありがとうございました。これから御意見の御発表を願うのでありますが、時間の都合もございますので、一応あらかじめ御連絡いたしておきました事項について、御意見発表を願い、次に、各委員質疑お答えを願いたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。  次に、委員各位にお諮りいたします。議事都合上、先にただいま出席しておられる参考人全部の意見発表が済みましてから質疑を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  この際、報告いたします。参考人として出席を依頼しておきました方々のうち、桜井安右衛門君は、所属の国際労働事務局からの訓令によって出席いたしかねるとの申し出がありました。また、川西実三君は、午後二時ごろに出席いたしますとの連絡がありましたので、御報告いたしておきます。  それでは、まず最初に、国際労働機関理事会使用者側理事三城晃雄君にお願いいたします。
  5. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) ちょっと議事進行についてお尋ねいたします。  何か議員の方から、具体的の個々の問題についてお尋ねがあって、私どもお答えせよということで、別にここに出ております問題について、一般的な説明をいたすほどの実は用意もいたしておりませんし、ことに、一番、二番、三番の問題に関しては、これは、政府代表労働省方面で一般的の御説明があった方がしかるべきだと私は考えております。
  6. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それでは、この項目につきましてお考えのおありの方はけっこうでございますから、お述べ願いたいと思いますが、三城参考人はいかがでしょうか。質問だけですか。質問お答え下さる前に、国際労働機関理事会使用者側の副理事として、国際機関の問題につきまして、お考えをお述べ願って質問に入った方がいいというように考えておったのですが、御用意がないとすれば、次に移りたいと思います。
  7. 山下義信

    山下義信君 ただいま議事進行について、三城さんからお話が出たのですが、一々これらの項目について順次御発言を願わなくても、何か全般のこの問題につきましての御所感があり、あるいはことにこの項目の中で、三城さんが御承知あるいは御関係、また御意見のありますような点につきましては、特にまた一つお述べ願いましたらけっこうと存じます。
  8. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) こういう五つの問題について、各参考人が全部同じようなことを述べるということも無意味でありますから、時間の険約という立場からいたしましても、また、ILOの組織からいたしましても、一般的なことは政府中心になって動いておりますので、私といたしましては、原則的な実情については、政府代表から責任をもってお話しになって、われわれの民間側は、何かそれについて所見を異にする、あるいは事実が違っておるというようなことがありましたら、補足させていただくということにしたらいかがかと思います。
  9. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それでは、三城参考人の御意見もございますので、まず、労働省側飼手真吾君から状況報告を願いまして、委員質問に各参考人お答えを願いたいと思います。
  10. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) それでは、私から御説明申し上げなければなりませんが、最初に、私のここに参っております身分の問題で、少し釈明をさせていただきたいと思いますが、私は、ここには、肩書通り労働省審議官身分でございますので、ここで、社会労働委員会参考人として意見を申し述べるということについては、いささか手続的に妙なところがあると思いまして、先般事務局の方に申し出て、私どもの方に御案内いただいておりますのは、政府説明員として出席することを求められておりますので、私の立場は、政府説明員ということで、皆さんに御了解をいただきたいと思います。従いまして、一から五までの各項目につきましても、すでにしばしば政府がこの委員会において御説明申し上げております線とつけ加えるべきものがないのであります。ただ、私が直接ILO理事会理事をやっております関係から、二、三つけ加えるべきものがあるとは思いますが、そこで、多少時間を拝借いたしまして、今まで政府説明しておりますことと重複することがあろうかと存じますが、時間を拝借したいと思います。  第一点のILO活動につきましては、これは、しばしばここで詳細に御討議があったように伺っておりますが、簡単に申し上げますと、ILOが一九一九年にできまして以来第四十回目の総会を昨年終りまして、四十一回目の総会会議総会としてこの五月にジュネーヴで開かれるまで、大体総会中心にいたしまして、いわゆる国際的労働基準設定という仕事が大きなワクになるのであります。御案内の通りに、総会で、条約勧告という国際的な文書を通じまして、国際的な労働基準を設けていく、このことがILOのまあいわば表芸でございまして、すでに条約といたしましては百七、勧告といたしましては百四の多数のものを採択いたしておるのであります。これが世界労働基準憲章の前文に掲げておりますような目的を達成するために設定していくというILO中心的な仕事でございます。これに伴いまして、戦後特に新たに地域活動産業別活動とをつけ加えて参っております。地域活動と申しますのは、アジアアメリカヨーロッパ等世界の大きないわゆる地域にそれぞれ地域会議を設けまして、その地域に特有な問題を、地域における労働基準設定その他の問題を進めていく仕事でございまして、先般、昨年の十一月にインドのニューデリーで開きましたものが第四回目のアジア地域会議でございますが、それぞれアメリカヨーロッパ、近くは中近東あるいはアフリカにおいても会議を設けようという動きがございます。そのような地域会議活動。それからいま一つは、すべての産業に共通した労働の問題から離れて、個々産業に特有な労働の問題について話し合うために、産業別委員会というものを戦後設けておりまして、特に八つの部門、すなわち繊維、鉄鋼、金属、石炭、石油、土木、建築、化学、運輸、この八つ産業につきまして産業別委員会を設けております。そのほかに特別の委員会として、先般原口さんも組合から御出席になりました金属鉱山と木材の特別委員会を設けておるのであります。そのような会合は、大体二年ないし三年の間隔をもって、それぞれの産業ごとに、すでに戦後四回ないし五回、多いのは第六回目の委員会をこの四月十四日から、繊維については、ジュネーヴ会合を持つことになっております。このような廃業別委員会を持って、産業特有労働関係の話し合いをすることになっております。  そのようなILO表芸としての国際労働基準設定並びにそれに伴う地域活動並びに産業別活動の補助的な仕事といたしまして、特に戦後力を入れておりますのは、技術援助仕事であります、特にこれは、テクニカル・アシスタンスと呼ばれておりますが、これは、御存じのように、国連そのもので非常に大きく取り上げておるのでありますが、それの先鞭をつけたのがILOでありまして、ILO中心に、この問題を取り上げておるのであります。で、専門家を派遣する、あるいは、ゼミナールを開催する、あるいはフェローシップ提供するというようなことによって、特に後進国におけるおくれた労働関係を引き上げていくために、労使関係だけではなしに、技術習得、いわゆるヴォケイショナル・トレーニングを通じての技術習得というような方面に力が入れられております。第三点としては、フェローシップ提供でありまして、毎年日本からも、数名の人がILOの金でヨーロッパその他の国々に勉強に送られておりますが、そのような技術援助仕事あるいはフェローシップ提供というようなことが日常の仕事になっております。ILO自身は、年間約八百万ドルの予算で、本部及び世界にばらまかれておる職員を含めまして、約七百名の職員をかかえて、世界の、正確な数字は今覚えておりませんが、十数カ所にブランチオフィスを持っており、来年度から、モスクワとカイロにも新たにブランチオフィスを作ろうというように、世界に網を張っております。加盟各国にいわゆるコレスポンゲントというものを置いておりまして、世界的に網を張り、そこで情報を収集し、また逆に、ILOの持っておるいろいろな情報を流して、ILO精神世界普及することに努力をいたしております。ILO活動につきましては、何といいましても、条約勧告の採択並びにこれの趣旨の徹底が中心的な活動になると思います。第一点については、その程度でお許しをいただきます。  第二点の、ILO加盟国責任及び任務につきましては、これは、もう申すまでもなく、ILO憲章に定められてあるのでありまして、憲章に示された諸義務を受諾することによって加盟が認められるのであり、加盟した以上は、憲章の責務に従って事柄が処理されなければならないのは当然であります。憲章に示されておりまする義務は、御存じのように、十九条以下に示されておりまして、今さら皆様に御説明するまでもないほど明白なことでございます。すなわち、採択された条約一定期間のうちに権限ある機関に提出する問題、そのほか、ILOから求められた報告を提出する義務の問題、あるいは定期的に条約実施状況について諮問のあった場合に、これに対しての返答の問題、そのほか、総会代表者を派遣する義務、あるいは総会に付設せられた各種の委員会において、政府が必要に応じて答弁をし報告をする義務、その他があるのでございまして、このことについては、特にILOについて、その他の国際機関と比べまして、特別の責任及び任務があるとは考えておりません。一般的な任務と変りがございません。  それから、第二点の、ILO加盟諸国国際労働条約批准状況及び勧告決議実施状況につきましては、すでにしばしばこの委員会において御説明があったと存じております。すでに百七個の条約を採択し、そのうち最多数の批准国はフランスで、現在七十三と記憶いたしております。それから以下いろいろの国々代表がございまして、日本は二十四の条約批准しており、アメリカが七つであるというふうなことも、すでに御承知であると思います。数の多少は、必ずしもILOに対しての協力度合いを、全面的に現わしておるとも存じませんが、一般的に申すならば、数の多少もやはりILOに対する協力度合いを現わしておるものとも言えると思います。そのような考え方に立ちますならば、日本は大体中庸を得た数字になっておるのでありますが、果してそれが、日本ILOに対する協力をそのまま現わしておるかどうかにつきましては、それぞれ御意見の分れるところがあるかと思いますが、決して日本が非常に非協力態度であるというふうには、私ども政府としては考えておらないのであります。ILOに対する協力あるいはILO勧告決議実施状況がどのようであるかについては、事柄の実体に触れて考えなければならないのでありまして、日本は、いまだかつて一回も、分担金を滞納するとか、あるいはILO独自の立場からでの非協力についての非難を受けたということは一度もないのでありまして、特に戦後は、そのようなことはないのでありまして、模範的な協力国一つと私ども考えております。  その次の、結社の自由及び団結権擁護に関する八十七号条約及び二十六号条約批准についての問題は、これは、しばしば政府国会において言明いたしております通りでございまして、私から言葉をつけ加える必要はないと存じます。前者につきましては、目下労働問題懇談会並びにその小委員会において真剣に御討議をいただいておりますので、その御討議の成果を待って、政府態度を決定いたしたい、このような態度であり、二十六号の最低貸金条約については、目下御審議を願っております最低賃金法国会を通過いたしますならば、直ちに批准手続国会の御承認を得てとりたいというのが政府態度でありまして、このことは、ことしの総会で、最低賃金条約の問題は特に取り上げられることに相なっておりますので、政府としても、このことを痛切に希望しておる次第であります。  第五点の、ILO国内普及への考え方につきましては、ILOの問題に限らないことでございますが、日本は、特に日本語という特殊性がございますので、こういう国際機関精神国内普及の問題につきましては、特に特別の団体を設けて、特別の方策を講ずる必要があるやに私ども考えておるのであります。ILO加盟し、ILO精神国内普及していくことにつきましては、政府は積極的な関心を持っておるので、その意味におきまして、国内に現在ありまするILO協会に対して、物心両面援助を惜しまないのでありますが、特に先ほど申しました、言葉関係がございまして、ILOから発表されるあらゆる文献がすべて横文字でありますので、これを縦に直して、国内関係各位に御了解をいただくために、そのような手続が特に必要であるように私ども考えております。国内におけるその他の国際機関に関する協力団体が、エカフェにつきましても、あるいは国連そのものにつきましても、そのほかのあらゆる国際機関につきまして、国内において、日本において、普及のための特別の機関を持っておりますので、私ども政府といたしましても、ILOに関してやはりそのような機関を持ちたい、そのような機関を通じて普及仕事を進めていきたい、このように考えており、現在ILO協会物心とも政府としては正常に動いていくことを常住的に支援し、応援しておる次第であります。この会が円滑に、りっぱにその目的を達成することは、政府の期待するところであります。以上。
  11. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それでは、各参考人に対して質疑を願います。
  12. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 先ほど三城さんはああいう御意見だったと思いますけれども、一般的な一、二、三の問題で政府側からお述べになりましたから、質問に応じて御意見を伺うにしても、四、五の問題その他についてはどうですか。全部原口さんにやっていただくならやっていただくし、そういう工合にして、一応述べていただいてからの方がいいと思いますが、どうでしょう。
  13. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) どなたか参考人の方で、御意見のございます方はお述べ願います。
  14. 原口幸隆

    参考人原口幸隆君) 私は、労働側の副理事として、昨年の総会から初めて理事会構成員となりました。このことは、戦前以来初めてのことでありまして、日本ILOに復帰して以来、労働側理事会構成員になったのは初めてでありまして、ILOの場における日本立場というものは、客観的にも重要になってきているということをまず最初に御報告しておきたいと思います。  今、政府の方から説明がありました中で、若干私の立場から二、三述べさしていただきたい点は、たとえば、去年の四十回の総会で採択された条約ないし勧告については、一年以内に立法府に、日本でいえば国会ですが、審議手続を一応とらなければならないという憲章の定めがあるはずです。従って、たとえば、去年採択されました強制労働条約というものの例をとりますと、これが一年以内というのですから、六月までですが、果して今次国会審議手続がとられているかどうかというような点についても、私の知る限りにおいては、疑問とするところです。しかも、この強制労働条約の中には、日本国内法関連をして重要な点が含まれております。たとえば、人事院規則関連をして、人事院規則の中には、公務員の政治活動禁止規定がありますが、そういった禁止規定が、この強制労働条約〜の関係において、人事院規則が抵触する問題が私の解釈ではあるというふうに考えますが、こういった問題も、やはりILO憲章に従って、国内においても、今政府のおっしゃられたように、忠実なるILOの一構成員としての手続がとられるように希望するところです。  私は、特に、三、四、五の点について意見を述べさせていただきたいと思うのですが、今までにすでにきまった百七の条約の中で、日本は二十四の条約批准しております。これは大体平均だ、いいところだということが政府の方から説明されましたが、少くとも日本は十大理事国一員ILOの中でなっております。しかも、五大工業国一員に数えられている現況からいって、そういう立場からこの条約批准の問題については検討されなければならない。また、諸外国も、そういう目で日本を見ているということが言えると思います。そういう意味では、この二十四の条約批准というものはいまだ少なすぎる。しかも、今問題になっております八十七号の結社の自由の条約最低賃金条約というような基本的な条約がいまだ批准されていないという事実は、これから報告いたしますような事柄においても、私はきわめて遺憾なことだというふうに思うわけであります。特に日本は、年間約五千万円の金をこのILO分担金として納めているというふうに聞いておりますが、それだけ多くの国費を使っているILOに対して、いまだ国内においては十分なILOに対する認識が足りない。ここ二、三年の間において、相当関心が高まって参りましたが、それでも、まだILOとたとえば国際自由労連とか、そういう労働団体とを混同するような新聞記事も出ているくらいで、また、ILO国会において取り上げられたのも、私の知る範囲内においては、今次国会が初めてだ。言い方が極端かもしれませんが、そういう程度の理解でありまして、今後私は、日本国際的立場からいっても、ILOの問題が国内においてもっともっと関心を高められなければならないというふうに思うわけであります。さらに、立法府討議したことに関する状況報告というものがILO当局報告書として出されることになっておりますが、今次国会においてのILOに関する論議は、直ちに国際的にも報告され、多くの関心と興味を持たれていることだろうと考える次第です。  次に、結社の自由について、私の立場から若干述べさせてもらいたいと思いますが、昨年の総会において、日本労働側としては、結社の自由及び団結権擁護に関する条約と、最低賃金決定制度の創設に関する条約の二つを早急に日本批准すべきであるという決議案総会に提出いたしました。しかしながら、総会としては、単なる決議案としてこれを決定するよりは、もっと実効のある形で実を結んだ方がいいだろうという労働者グループ意見もありまして、条約勧告適用委員会において、日本政府代表は、この条約に対する日本政府態度を表明いたしました。その席上で、日本政府代表は、この両条約については、なるべく早く条約批准可能性について意見国内において求めたいという発言をされました。それが現在の労働問題懇談会という形で、問題は進行しているということになると思います。  なお、その総会において、きわめて注目すべき政府代表発言がありました。それは、強制労働条約委員会において、政府代表は次のような修正提案を行なっております。非合法の争議行為に従事するものについては、刑事罰を加えるという修正提案を行いましたが、このことは、委員会の全部の反対によって否決をされました。当時国鉄等争議の問題で、刑事罰のことがやかましく言われておりましたが、もし間違いであればいいのでありますが、国際的な場において、非合法の争議行為に対して刑事罰を加えるというような提案を行い、国際的な場において全部の反対にあって否決された事実を、私は、国際的な常識として、日本においてはよくその事実を見詰めなければならないというふうに考えるわけです。さらに、今年の百二十八回の理事会において、結社の自由に関する問題がILOとして重要な中心として取り上げられましたが、その際に、この八十七号の条約と、もう一つ団交権条約がありますが、この一つ条約をまだ批准していないあらゆる政府に対して、理事会としては、批准手続をとるように、特別かつ緊急な訴え、要請をしたいという提案がなされましたが、理事会構成員そのときの三十九名中、三十八名は賛成をし、反対はありませんでした。日本政府だけが棄権をいたしました。こういう事実についても、その当時の政府棄権の弁として、国内において、この三者構成委員会に負託をして、この問題を検討している。従って、政府がこの事前に方向を決定するような印象を与えるような態度をこの場できめるということはふさわしくない。三者構成委員会の結論に従って善処をしたい。手続が進んでいるから、棄権をするというような理由であったと私は考えておりますが、それにしても、日本以外のすべての構成員賛成をしておるのに、日本政府だけが棄権をしたという事実についても、はなはだ労働側としては遺憾に思った次第です。なおその際に、理事会構成員が、経営者グループにおいても全員これに賛成をしたという事実は、その経営者グループの中におられた、日本から出ておられる三城さんも、その経営者グループの中での一員として、賛意を表された事実についても、私たちは大きく評価をしていきたいというふうに考える次第です。この結社の自由及び団結権擁護に関する問題は、ILOの最も中心的な条約一つでありまして、その出発当時は、むしろ政治的にいうならば、ソビエト圏における結社の自由があるかないかというような問題から問題が出発したようにも聞いておりますが、むしろこれに対する批判は、ソビエト圏の方から出ているくらいでありまして、自由主義諸国については、この条約に関する態度というものは、原則として全部賛成をしているというような点から考えても、私はこの条約の問題がすみやかに国会において手続がとられることを心から希望する次第です。  さらに、最低賃金条約についても、外国の労働組合では、スト権のない労働者が作った製品、あるいは最低保障がなされていない労働者が作った製品というものは、国際的に信用できないというのが一つの常識になっていると私は判断しておりますが、そういう意味において、スト権を押え、基本権を押え、しかも、生活の最低保障をなされていないままに国際競争に出ていくということ自体が、私は、公正な国際競争の面からいっても、ILO精神である社会正義、あるいは国際的な公正というものを願うILO精神からいっても、不十分なことでありまして、この両条約の実質的な批准というものが日本の国際信義の上からいっても、きわめて重要な問題であるということをつけ加えさしていただきたいと思います。  また、最低賃金の問題については、今次国会において御審議を願っておるわけですが、諸外国の最低賛金制度の内容から比べて、金額的にもはるかに外国の最低賃金の内容からすれば問題にならないくらいの低額であり、かつ、最も大切なことは、ILO最低賃金条約にも明記しておりますように、労使の協議を経てきめられるべきものである。また、これを実施の過程においても、労使の議を経てきめるべきであるという精神からいって、今政府案によって出されている最低賃金法案の内容においては、賃金内容の決定方法が労働者の意思を全く否定されているような形できめられようとしている最低賃金の法案については、非常に疑問を持つわけでありまして、これが果してこのILO最低賃金条約批准できる実態を備えているものであるかどうかということについては、疑問を持つところであります。  最後に、ILO国内普及への考え方ですが、これは、先ほど申し上げたように、多くの日本の国費を使っておりますし、さらに、五大工業国一員としての重要な立場からも、もっともっとILOというものが国内において普及される必要があると考えます。そのために作られましたILOの協会というものが、不幸にして経営者団体の脱退によって、著干その機能が変貌を来たしておりますが、私は、経営者の個々がやはりILO協会の中で、すなおな意味で、今の国際的な常識あるいは水準というものを国内においても打ち立てるためにも、私はもっと率直に、フランクになって、この協会の中に入っていただくことが大へん必要であろうと考えております。そしてまた、この協会を通じまして、労使の話し合いもできることもあり、この協会というものが中心になって、ILO国内の発展ということが期待できるのではないかというふうに考えておるわけであります。  以上です。
  15. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 三城参考人、何かつけ加えられることはございませんか。
  16. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) 先ほど政府代表飼手審議官からお話がありましたので、大体において簡にして要を尽しておると思うのであります。大してそうつけ加えることもありませんが、第一番のILO活動状況につきましては、私からちょっとつけ加えさしていただきますならば、一九一九年にILOが創設されて以来、大体においてILOは、国際的立法と申しますか、あるいは国内立法の基礎となるところの条約を作るということが主体であったというふうに了解いたしております。第二次大戦後も、フィラデルフィア宣言以来、必ずしも規則あるいは基準をきめるということでなくて、この基準あるいは規則というものを実行し得るような世界の経済状態を向上させるということにILOがもう少し着目しなければならぬという方向に動いていると私は了解いたしております。御承知の、フィラデルフィア宣言をした中に、いろいろILOの基本的な問題を掲げてありますが、その後に、すべてこれらの基本的な問題というものは、あるいは基準と申しますか、これは、各国の経済状態に応じて、あるいは社会的発展の度合いに応じて、しかるべき順を追って実現されるべきものであるということをつけ加えてあります。そういう関係で、最近ILO活動というものは、ただいたずらに基準を設けるということでなくて、各国のいろいろの、経済あるいは技術、そういう方面の向上に力を貸す、先ほど政府代表からも述べられたように、技術援助という方面に努力を払うという方向に進んでおるように了解しております。それからまた、私ども関係しております理事会あるいは総会においての各国代表発言にいたしましても、いたずらに書類を積み上げることよりは、いかにしてこれを徹底するかという、基本的なことを考えなければならぬということが力説されております。  それからいま一つ、第二のILO加盟国責任及び任務関連しますが、ILOというものをあたかも何か国家機関であるかのごとく誤解をしている面がありますが、そういうものではなくて、これは、国家間の合意に基いた一つ国際機関であります。その構成員が自由にしてかつ独立した立場から意見を出し、そうして総合された方向に持っていくということであります。従いまして、ILOというものは、あたかも日本政府の主権を制約し、あるいは日本政府を支配するというようなお考えを持っておられる筋がありましたら、それは誤まりであると私は思うのであります。よく、何でも問題をILOに持っていけば、あたかも最高裁判所が判定するがごとく、それが非常に権威を持ってわが国に押しつけられるというような誤解があるかもわからないと思います。これは、あまりにILOに期待するところが大きいと思います。  それから、三番目のILO加盟諸国の国際労働条約批准の状況並びに勧告決議実施状況、こういう問題について、政府代表のお話は、そのまま全然同感でありますが、なお、私から少し補足的に申し上げることをお許し願いますならば、当時ILO条約の表決であるとか、総会における表決数であるとか、あるいは批准の数であるとか、そういうふうなものが数字的に現われているものと実際はだいぶ違うということを申し上げたいのであります。どういうことかと申しますと、たとえて申しますならば、今問題になっております八十七号の条約ども、南米のある国などは、すでにその当時、今から何年前になりますか、十年前にこれに対して賛成投票をいたしております。政府代表が。しかるに、実情はまだ批准しておらないのみならず、国内法関係で当分批准はできないというようなことを、この間の理事会でも言明いたしております。一国の代表賛成投票をして、しかもなお、十年間もそれが国内において批准ができないということになりますと、この賛成投票なるものの価値というものが非常に私は疑わしいと思う。そういう実例がかなりたくさんあります。総会においては非常に賛成が多くて、反対が少い。これは一つには、総会における政府代表国内における権限の問題に関連すると思いますが、これは、批准する機関が必ずしも総会代表につながっていないということが原因でありましょう。それもありますけれども、ああいう場所で何となく、反対するということは、自分の国の現存の実情からして反対してしかるべきと思うような国の代表も、ああいう場所に出るとなかなか反対しにくい。これは、人情のしからしむるところでありますし、また、一面からいえば、ILO条約などというものは、一つの国際的基準であって、その国個々に必ず適用されるものだという考え方に若干の誤まりがある。一つの国際的の理想という考え方を持っておる人もあると思う。その国を離れて、こういうことが人類社会として望ましい基準であるというような考え方からすれば、まず、本国に持って帰って直ちにこれがどうこうということはかりにできないでも、一応賛成してしかるべきだ、こういう考え方も働いておる。そこで、ILO条約が非常にたくさん賛成者が多いから、それは直ちに各国の国情に適応すべきものだというふうにもしいくならば、これはやや飛躍であると私は申し上げたい。  それから、批准をしながらその国の法律や制度を変えない国もあります。一番極端な例は、一九一九年の婦人の深夜業廃止の条約を一九二四年かに批准した国があります、南米に。その国が今日に至るまで、三十年間その国の法律は変っていない。なぜ批准したかということに対して、はなはだ疑問があるわけでありますが、なぜそれじゃ本国において法律を変えて実施しないかといえば、わが国の国情は、これのレベルにまだ達していないのだという説明であります。それならば批准する必要もたければ、また総会においても反対してもしかるべきであったと思われる。こういう例がまだかなりあると私は思っております。今一々それをあげる用意も私はありません。  それから、八十七号結社の自由に関する今の条約に対しましても、ソ連がさっそくこれを批准しております。ソ逃のような、自由がないことを特色としている国ですら、結社の自由の条約をいち早く批准して、大いにこれを自慢しております。従いまして、この現実と、あるいは賛成投票、あるいは批准といい、あるいは法律改正といい、なかなかこの現実に即していないのでありますから、われわれは、これを見る場合に、よほど客観的に、現実に即して判断しなくちゃならぬということを考えております。少し長くなりますので、この辺でこの問題は打ち切っておきます。  それから、第四番目の結社の自由及び団結権擁護に関する条約、これらに関する先日の理事会の模様を原口理事からお話しになりましたが、これについて私の名前も出ましたので、ちょっと申し上げておきますが、これは私、発言最初に申し上げるべきことであったかと思いますが、私がきょう出頭しておりますのは、日経連の代表という立場でなくて、ILO理事会の副理事という資格において参っております。私の発言は、直ちに日経連の意見あるいは日経連の訓令に基いて申し上げているというふうに御了解にならぬように願いたい。同様のことがILO理事会においても適用される。私は、ILO使用者側の副理事という立場に立っておりますが、これは、日経連の使用者代表という立場では全然ないのであります。御承知とは思いますけれどもILO理事会においては、各国の使用者代表が集まって、三年に一ぺん選挙をするのであります。それは互選であります。従いまして、私がILOの副理事という資格を持っておりますのは、ILOに出てきました各国の使用者代表から選出される。選挙の母体は使用者代表である。だから、日本の経営者あるいは日経連が私を選挙しているわけじゃない。全然それはつながりがない。極端に申しますならば、私は、ILO理事会においては、日経連とは何ら関係なく発言できることになっております。従いまして、私の発言なりボートなりは、日経連を束縛しないというふうに御理解願います。  それで、本論に帰りますと、例の結社の自由に関する条約批准に関するボートがありましたときに、私は賛成投票いたしましたが、これは、日本の使用者を代表して賛成したのではなくて、理事会における使用者グループというのがありまして、その使用者グループの総意で、満場一致、使用者代表団はこれに賛成しようというので、それに基いて私はこれに投票いたしました。それも、なお詳しく申し上げますならば、私は、副理事という資格で、本来はボートがないのであります。意見発表する資格はありますけれども、ボートする資格はない。ところが、正理事十名のうちたまたまボートで欠席した人があったときは、副理事が順位でずり上って、正理事の資格を獲得して投票する。私は、たまたま副理事の中で最右翼でありますが、そのとき正理事のだれかが欠席をしたので、私が順送りでボートをした。従いまして、このボートは、代理のボートと言った方がいいくらいであります。そういう立場から、私がグループの決定に従った事情はおわかりだと思います。なお、これはあまり形式論でありますが、実質論から申し上げますと、私が個人として考えましたのは、日本政府は、この条約に対して批准可能性を研究するという意見発表しております。前後いたしますが、ちょっと事態を明瞭にするために、なお説明いたしますが、政府代表というものは、理事会においてはその国の政府代表しておる。これが政府代表。グループを代表しないで日本代表日本政府代表しておる。従って、その発言日本政府の意向と思っていい。その点で、使用者側労働者側と、民間代表と、理事会において根本的に立場が違うということを申し上げておきます。その政府代表から、これは総会において、批准可能性について労使の意見も聞いて、しかるべく措置すると言明された。それに基いて、現在労働問題懇談会において審議されておる。これは、明らかに批准を可能ならしめるところの一つのステップをとっておられるというふうに私は解釈する。今度の理事会における決議は、批准を促進するということでなくして、批准に必要な措置をとれということであります。従って、日本政府の現在やっておることとそっくりでありまして、何らこの決議に基いて日本政府は束縛を受けないだろうと思います。政府代表の解釈は違うかもしれませんが、私はそう解釈いたします。従いまして、私が使用者代表団の中に入ってボートした、賛成したということは、何ら日本政府に新しい負担をかけるものではないというふうに実費的にはなっておるのであります。  それからもう一つ、その点について申し上げておきます。今度の決議は、今申し上げたように、必要なる措置をとるという、これは、先ほど政府代表からもお話がありましたように、ILO憲章において、条約に対してはしかるべく措置をとるということがちゃんと書いてある。今度の決議は、それをリピートしただけです。繰り返しただけであります。理事会は、憲章以上の権限を各国政府に対して義務を賦課する権利はない。あたかも日本では左側通行という規則があるのに、非常に混雑した場所に行ったら、左側通行という札がかけてある。何ら新しいことではない。ただ注意を喚起しただけであります。だから、この決議にあることは、憲章にあるものをちょっと抽出してやった、注意を喚起をした程度の、何らそれ以上のものでないと私は考えます。ただ、御参考までに、小し長くなりますかわかりませんが、こういうふうに、ILO条約が百七つかありまして、その中から、特にある特定の条約理事会が抽出して、これの批准を促進云々という問題を取り上げれば、これは、順々に百幾つの条約を取り上げなければならない羽目に陥るのじゃないか、これは理事会のとるべき処置ではないのじゃないかということを、私は使用者側の内輪の相談のとき言ったこともあります。私は、理事会として、個々条約を差別待遇して、特に取り上げるということについては、個人として若干の疑問を持っているということを御参考に申し添えておきたいと思います。  それから第五番目の問題でございますが、政府代表のお話のように、ILOの資料というものは外国語でできているから、国内においては不便だ、これはごもっともでありまして、これが普及しにくい非常な障害になっておりますが、この点につきましては、私どもとしましては、これは個人の意見でありますが、日本政府の方で、特に政府として御考慮になってしかるべき問題じゃないかと思っております。たまたま、これは完全に私の個人の意見でありますが、近く日本労働協会ですか、そういうものが法案に出ておるということも私は聞いておりますが、膨大なら予算も組むということでありまして、こういうところで誤まりのない翻訳というものを、責任を持ってお出しになるということがしかるべきだ。とかくいろいろのところで順々にやりましても、翻訳に誤まりが非常に多かったり、あるいはそれに便乗して、いささか宣伝が行われて、やや歪曲した宣伝が含まれるというようなことになりますと、かえってこれは弊害があります。この点においては、政府方面でおそらく御考慮になっていることだろうと思います。それからこれは、理事会使用者側グループで、国内ILO教育をいかにすべきかという問題が起りました。このときにILOにおいては、政府と労使、それぞれ独立の立場をとっておるから、その立場からくる意見の相違というものはあり得るのだ、従って、経営者に関する限り、経営者のILO教育というものは経営者団体がとるべきものである、他人に依存してはいかぬということに満場一致決定しました。従いまして、こういう教育機関というようなものを、各国においてあるいは二者構成あるいは三者構成というようなことでやるということは、各国使用者側理事グループも賛成できない。もしそういう動きがあれば、お互いにそういう動きは阻止しようじゃないかという申し合せが数年前にありました。それと日経連がILOを脱退したということは直接関係がありませんが、国際的な使用者のつながりという場面において、そういうふうな意見があったということを御参考に申し上げて、私の説明はこの程度にいたします。
  17. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 各委員質疑をお願いいたします。
  18. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、飼手さんにお尋ねをしたいと思うのです。政府の予算ですね。ILO分担金は、正確に幾らお出しになっておりますか。
  19. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) ここに正確な資料を持っておりませんのですが、大体五千二百万円程度だと思います。
  20. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこでいろいろのことが述べられまして、総じて言えることは、五千二百万円という非常に多額な分担金日本は受け持っている。ところが、国内普及においては、いかほどの予算も取っていない。私は、労働省の今度の予算審議のときにこの問題を取りしげたのですが、ILO普及についてはほんのわずかしか、たしか二百万円足らずだと私は記憶いたします。それくらいしか予算が取られていない。今日一番最終的にあなたがおっしゃった、国内普及は、おのおの協力団体がある、これの活動を期待するのだと、こうおっしゃいましたけれども、それじゃ今、ILO協会という、これを推進する協力団体がございます。東京支局に十人からの職員をかかえて、今も御意見が他の方からございましたけれども、正確に翻訳云々という問題も出て参りましたけれども、東京支局というのは、ILO協会の六百人からの職員の中の一部だと、そこが正確さがないということは私は言えない。これこそILOの執行機関でありますから、私は、そういうことは懸念は持っておりませんけれども、そういう意味において、そこから一つ活動を行なっておりまして、普及活動というのは、やはり何といってもILO協会だと思うのです。そのILO協会に対して、政府がどれだけの援助をそれじゃされているか、期待するというのは何をさしているか、これをまず聞きたい。
  21. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) 私、どうもまた説明員立場に戻るわけなんですが、なるほど五千二百万円の分担金に対して、現在労働省が、ILO協会のみならず、ILOの思想普及、宣伝全部を引っくるめて三百万円足らず、二百五、六十万じゃなかったかと思いますが、しかし予算を持っていないことは、御指摘の通りでありますが、しかし私は、本日ここでは、労働協会に肩がわりするということは、私が申し上げたのじゃなかったのですが、おそらく、しかし、労働協会ができますならば、このような活動も相当強力にやっていただけることは、関係者としては当然期待いたしておるのでありますが、ただ、申し上げたいことは、分担金と相当額を国内の宣伝に当てなければならぬというふうには私ども考えませんし、また、このようなILOの思想を普及し宣伝することが政府の直接任務になるのにも、別にILO規定なり憲章なりにはないのでありまして、私どもとしては、やはりILOの思想普及、宣伝は、直接的にはまずILO協会自身がやるべきだと、それは相当額の予算を持っており、現在東京にはブランチオフィスを置いておる、そのブランチオフィスには、そういう思想普及、宣伝のための経費も持っておるわけです。それに対して、私どもILO加盟しており、ILOの思想が日本労働界の指導的なものの考え方としてけっこうなことであると深く考えておりますので、このことが普及されることについては、政府もなお関心を持つのでありますが、これは、全般的な労働教育体制の中で問題が処理されるのが望ましいと思います。ただ、もちろん、ILOの問題について、思想を普及し宣伝していくためには、何よりもまず共通の言葉を発見しなければなりませんので、私どもは、ILO協会に最も期待しておるところは、そのような技術的な面において期待するのです。先ほども申したように、横のものを縦にしませんことには、労使を含めて政府も、関係者一同十分に理解が行き届きませんので、このことは、労使の利益が相反するとか、あるいは政府立場が違うとかいうことを乗り越えて、技術的にどうしても解決しなければならぬことです。労働者側も使用者側も、あるいは政府も、別々に翻訳いたしますようなことは全くむだでございますので、私どもILO協会について最も期待し、また政府援助もし協力もしておるのはその点であります。その点で、この金額は必ずしも大きな金額ではありませんけれども、相当の役割りをいたしておると私は考えております。
  22. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも私の質問を、飼手さんはどうも的確につかんでおられないように私は今聞いたのです。私は、今国際協力機関があると、それは、ILO協会をさしておられると思うのです。この活動を期待するとおっしゃいましたから、このILO協会に対して政府はどれだけの援助をしておりますかということを聞いたのです。
  23. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) ILO協会に直接補助金という形のものは、私ども予算として持っておらないのですが、主として図書出版物の買い上げという形で予算面では協力いたし、その金額の総額が大体二百五、六十万程度の金でありますが、それ以外に、実は物心両面ILO協会について私ども政府協力をいたしておりますことについては、関係者の各位も十分御存じのことでありまして、労働省の職員が無償で翻訳その他の協力をいたしており、実際上労働省の職員協力なしには、実はILO協会が動かないのが実情なのであります。必ずしも金額で表示さるべき性質のものではなくして、私ども物心両面からできるだけの協力をいたしておると考えております。
  24. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今話を聞いていると、どうも事務的に、総会のことから見ますと、政府代表が二名、労使一人ずつで総会があり、理事会があり、地域会議があり、産業別の委員会がある、こういう工合に御報告がございましたが、まことに私は、会議の機構上の問題はそうだと思います。しかし、問題は、ILOそのものがどういう工合にしてできたかというところが私は問題の主点だと思うのです。私は、事務的にその決議に参加したとかせんとかいうことじゃなしに、他にも御意見が出ておりましたように、何といっても、世界労働基準をどう上げていくかというところに私はこのILOの役割の根本があると思うのです。単に百七の中の二十四だからいいところだとおっしゃいますが、私は、そういうものじゃないと思うのです。その参加しておる国がむろん権限ある機関においてその各国が批准をするということが一つ手続になっておりますけれども、いかにしてこの基準を上げていくかというところに、私はこのILO活動世界的な意義があると思うのです。これがあわせて世界の経済的な繁栄にもつながり、人間生活の向上にもつながっていくというところに中心があるのである。形式の問題も重要でありましょう。これは一つのけじめであります。しかし、いかにして実現していくかというところに私は問題があると思うのです。飼手さんは、理事になられてから、ことしでちょうど四年だと思います。五十四年ですから、理事になられて、ことしは五十八年だから五年になる、私は、飼手さんが、この憲章や宣言、ここに書かれていることの実現をどうしてやろうかというところに日々全精力を集中していかれるというところに、私は飼手さんの義務があるのじゃないかと思うのです。かつて私は、政府との間に質疑を行いました。百七つのうち二十四だから、それで大体中ごろだという議論じゃなしに、今政府批准しておる問題は、たとえば九十八号のような団結権、交渉権の問題については批准いたしております。しかし、労働時間の問題にいたしましても、その他の問題にいたしましても、一九二〇年当時の問題が今批准の問題になる。たとえば、労働時間の問題を一つ見てみましても、一九二〇年のころの、二十何年かの労働時間の問題が、三十五年、三十六年に、今からいって二十年前ですね、その時分に条約として作っている問題については、労働時間の点を一つ見てみましても、そういう問題は日本批准をしていない。日々世界の人間生活というものが向上しているということであれば、真剣にそういうものに取り組まなければならぬという、飼手さんには大きな政府代表としての役割があったと、私はそう思う、政府にこの問題を追及いたしますと、今さしあたり検討しなければならぬのが五十幾つある。だから至急に——至急とは言いませんけれども、これを検討していきたい。今まで国会に対してとってきたことは誤まりであったと——誤まりとはおっしゃいません、十分でなかった、こういう表現をされております。私は飼手さんに、五年にもなって、十大産業国、原口さんの御意見を聞くと、五大工業国代表として日本が常任理事国であるという、この建前からいって、こういうことに対しては、理事として、どういう工合にこの五年の間政府との関係において努力をされたかということを、憲章と宣言との関係において努力をされたかということをお聞きしたいんです。
  25. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) 私は、実はILO理事代理をまる三年前に任命を受けました。その以後、昨年の三月から理事を拝命いたしましたので、理事として責任ある地についたのは、過去一年ほどに属するのですが、その年数のいかんにかかわらず、今御指摘のように、私の任務ILOの本質的に掲げておる世界労働者の労働基準の引き上げの問題に対して力を注がなければならないという御指摘は、まさにその通りでありますが、それと同時に、私は、実はILO理事と一概に言われますが、政府代表理事なのでございまして、日本政府代表して理事会の構成メンバーになっておるのであって、ILO理事そのものになっているわけではないのであります。その他の国際機関の中には、よくそのような構成の理事があるのでありますが、私は、日本政府代表いたしておりますので、日本政府の方針に忠実に事を処理していくことが私の任務でございます。従いまして、国内におきましての私の任務も、日本政府の持っております基本的な方針に沿って私の行動を規律して参るのでございます。で、御指摘のように、基準を引き上げ、批准の数もふやし、それを実効が上るように持ってゆくことはまさに望ましいことであり、政府がそのような方針において問題を処理しておることは御存じのことであります。ただ、無力で、私が必ずしも御指摘の通りに十分の成果を上げていないことは、私自身大いに努力を今後とも重ねていかなければならぬと存じますが、御指摘の時間の条約のごときは、一番古いものは一九一九年の第一号条約があるわけで、これなどは、特別の事情があって、今日まで批准ができていないのですが、私は、日本基準法制定のときにこまかい配慮があったならば、そのような今この期に及んでいろいろむずかしい論議をしなくてもよかったのではないかと、今さら死児のよわいを数えるようでありますが、きわめて技術的の問題、実益のないような問題、技術的な問題で条約批准できないものが少からずあるのであります。第一号条約の例をとってみましても、三週間を通じて四十八時か、四週間を通じて四十八時間かというような問題は、実は比較的技術的には軽い問題なんです。しかし、その問題も、基準法全体を動かすという建前から見ますと、非常に重い問題になってきまして、第一号条約批准ができない、こういうことになって参るのであります。従いまして条約の数、もし四週間を三週間に引き上げて批准をしてみても、実は実益はあまりないのです。今、藤田委員も御指摘のように、条約の数よりも実益をということであるならば、私は基準法は、今の第一号条約批准と同じ程度の実効をもって行われておるというふうに考える次第であります。いずれにいたしましても、御指摘のように、今後とも私の力の及ぶ限り、ILOの問題の解決については努力を続けて参りたいと思います。
  26. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それは、今飼手さんがおっしゃたように、政府代表理事である、そういうあなたが玄関口として、国際的な付き合いを政府がしているということです。これは当然のことでしょう。あわせて、ILO理事という人格が構成されているということなんですね。だから問題は、いかにしてILOの今の活動というものを生かしていくかという立場にもあるわけです。ある以上は、そのILO活動というものを、いかにして基準を上げていくかというものを、あなたが国内において、活動される分野というのは、あなたが一番玄関口じゃないかということを言っている。  もう一つの問題は、今、基準法との関係についておっしゃいましたけれども、一九三五年から三六年、七年ごろにきめられているのは、一週四十六時間労働制の問題です。だから、そういう問題は、実質上日本でやれるとおっしゃいましたけれども、今日そういう労働者に対する生活、健康保護の労働時間短縮の問題が、それじゃ考えられていますかということを反発したくなるわけです。だから私は、この議論はやめますけれども、しかし、そういういろいろの国際的な水準を行こうという中において、なおその一番先端におられる飼手さんの任務というものは、非常に重大でありませんか。そこで、日本は中ぐらいだという、二十四だからいいところだというような発言は、飼手さんに限っては私はないと思っておったのです。ところが、そういうまあ発言があったから、私は非常に残念だということで、ちょっと意見を申し上げている。それで質問している。そこで問題は、たとえば、この八十七号の問題を一つとってみましょう。八十七号の問題は、アメリカ批准いたしておりません。アメリカ批准いたしておりませんけれどもアメリカ団結権の自由というものがそれじゃ何らかの形で制約されているかどうかという問題が起る。私は、やっぱり批准するということが大前提でございます。大前提でございますから、批准をまずするということが大前提。しかし、その数がこれだけだから云々ということでなしに、団結権の自由なんというようなものは、国際的常識だと私は思うのです。こういうことが今日ILO活動の中で論議されるということすら、私はもうおそきに失している。そういう立場に置かれているのが日本の今の立場だ。そこで、このILO全体の論議の中の問題の一つとして、私たちは国会で論議をいたしております、で、先ほどの原口さんからの発言があって、三十八回の理事会決議された事項が、二つ決議されたと私は聞いておる。一つの問題は、要するに、未批准国に対して批准手続を早くとるような協力をしてやろうということ、もう一つの問題は、そういう国に対して実態の調査をするということがきめられたと私は聞いておるのです。これは的確であるかどうか、あとからお聞かせを願いたい。そういうことがきめられて、その中で、国の名前というものはあがっていないのだが、日本が第一の——第一と言うたらどうか知りませんけれども、まず日本調査団を派遣しようじゃないかということが、その中の論議の大きな意見であった。まあこれに政府賛成しておられるようでございますけれども、この関係から見て、あなたが理事であって、今の八十七号の問題、団結権の自由に対して、日本調査団のことが今度総会後に行われる問題だと思いますけれども、その関連において、飼手さんの考え方を少し聞いてみたい。
  27. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) 御指摘のように、八十七号の問題に関連しての今度の理事会決議一つございまして、一つは、批准に必要な手続をとるように関係政府に要請をするという問題、これは、原口参考人から御説明のありましたように、私一人が棄権して、全体が賛成をしたという、事実の通りであります。このことについては、実は私はたくさんのことを申し上げたいのですが、お尋ねがございませんので、申し上げませんが、第二の点につきましては、私は賛成をいたしました。御指摘の通り賛成をいたしました。その賛成も、私が会議の途中で発言を求めて説明いたしました中で、ICFTUとITFのジョイント・ミッションが日本に来たときに、私たちそれを歓迎して、政府はあらゆる便宜を提供して、調査の円滑にいくことについて協力した。私どもは、隠すべきものは何もない。恥かしいようなことは何もないので、大いに見ていただきたいと思うのです。なるほど、団結権の問題については、現在問題のあることは御指摘の通りでありますが、日本の雇用労働者数百万の中で、団結権が現在問題になっている労働者の数というのは、全体の割合からいうならば、非常に少いのです。そういうふうな実情をよく見てもらって、そうしてその障害を排除することによって八十七号の問題が円滑に解決できるならば、私ども最も歓迎するところでありますので、むしろ国際的な権威ある人々の意見を聞き、調査をむしろ歓迎したいというのが、われわれの、日本政府態度でありましたので、私もそのような意見を、そのような投票をいたしたのであります。従って、前段の棄権をしたということも、政府責任ある着の態度としては、当然とらなければならなかった態度であると同様に、後段の賛成の投票をいたしましたのも、民生的な政府態度として当然のことだと考えております。
  28. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そのあとの、第一議案の問題は、実態を見てもらいたいから賛成したのだ、その第一の決議は、批准し適用することを可能ならしめる必要な措置をとるよう、特別かつ緊急に要請をしたい、これに反対された理由というのは、どういうものなんですか。
  29. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) 私は、反対はいたさない、棄権をいたしました。日本政府は、みずからの見解を表明することを避けたのであります。もうそのことは、しばしば国会で問題になっておりましたように、私は、日本政府代表として、昨年の総会で、ILO総会でこの問題が議論になりましたときに、この問題は、日本へ持ち帰って、労使双方の団体と御協議をして、そして適当な結論が得られるように——アデクエート・コンタルージョンという言葉を使いましたが、適当な結論が得られるように配慮するということを約束して帰りました。帰って参りまして、日経連初め総評、その他の労働団体とも御相談いたしました結果、労働問題懇談会においてこの問題を論議することが最も望ましいという関係者の意見でございましたので、労働問題懇談会労働大臣の名において諮問いたしたのであります。それ以来数回の労働問題懇談会を開き、関係者の非常な御努力によって、最近は小委員会に移っているわけであります。一昨日も何回目かの小委員会があって、原口さんも御参加の上、熱心な御討議があって、現在進行中なのであります。私どもは、政府が御意見を向いたいと言ってお願いしておきながら、そのお願いした結論が出ない前に、われわれ政府意見を申し述べる、そのようなことは、委員会に対して失礼になると存ずるのであります。だから、事の本質上、そのようなことをなしてはならないと考えます。少くとも民主的な政府態度としては、そのような、あらかじめ予断を与えるような意見を申すべきでないと、このように確信をいたしているのであります。私は、そのようにまた理事会においても説明いたし、関係政府の諸君も、よく事柄を了承したようであります。この会議の終ったあとにも、いろいろな人から、お前の説明でよく事情がわかったとか、政府の困難な立場を同情するという御発言が非常に多くの政府の人から聞いているのであります。私は、その態度が唯一の態度であり、正しい態度であったと思います。ただ、もちろん法律論的に言えば、いろいろ理屈はあるでしょう。この決議を求めているのは、ILOという国際機関関係政府にそのような必要な措置をとることを要請しておることに賛成するかどうかを言っておるのであって、日本政府賛成するかどうかを聞いておったのではないのだ。従って、そのような国内問題、ドメスティック・マターで国際問題を議論するのは間違いだというような態度もあると思います。これは、まさに法律論としては正しいと思います。しかし、われわれがILO理事会で、高度な政治的な問題まで発展する可能性をはらんでおる問題を処理するときに、そのような単純な法律論だけでは議論ができないのでありまして、私がもしも反対をしておったならばどのようなことになるであろうか、もしも賛成しておったならばどのようなことになるであろうかということを、あらゆる配慮の結果、私は、棄権というのが最も民主的な正しい態度だったと確信いたしましたので、そのような投票をした次第であります。
  30. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 昨年の四十回総会のときに、八十七号の問題に関しては、労働者グループから提案しよう。そこで、日本政府意見を聞いて、それじゃ国内で実現するようにということで、総会の議題にならなかったということを原口さんから聞きました。そして政府は、早い機会にこの手続をとるとおっしゃった。それで、昨年の九月に、労働問題懇談会にこの問題が出た。今日四月になっておる。四月になっているのに、いまだ出ないわけです、残念ながら。政府はまかしておるとおっしゃいますけれど、これに関連して、政府は、この四十回の……昨年の六月ですから、そこでそういう、早く実施するように努力したいという発言があって、一応国際信義の上から、労働者グループ了解をしたのだと私は思うのです。了解をして期待をしておった。ところが今のように、手続はとられておるけれども、なかなか進んでいない、具体的な問題としては。まかしておるということで済む問題じゃないほど、ここでは論議になっておる問題です。そういう関係において、実際に理事会が、やはり全体の立場から、促進しようという建前でこういう決議をされた。保留した立場とおっしゃいましたけれども、私は、この関連からいっても、これは労働大臣ということになるかもわかりませんけれども、少し努力が足らぬじゃないかと私は思うからこそお尋ねをしておるわけです。  それで、それじゃ一つ原口さんにお聞きをしたいと思うのです。
  31. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと藤田君の質問に対しまして、三城参考人より何か御答弁があるそうですから……。
  32. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) 直接私に御質問があったわけではありませんけれども、前の御発言と今度の御発言について、多少皆さん方に何か誤解を与えやしないかと心配しておるものですから、私ちょっと御説明申し上げたいと思います。  第一は、調査団を派遣する問題について、日本調査団を派遣するということが論議されたというような今お話でありました。それに対して政府代表賛成された、こういうふうなお話がございましたが、そうでしたかしら。
  33. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうは言っておりません。明確にするために言っておきたい。私の申し上げたのは、日本調査団を派遣するというような決議をされたとは言っていないのです。調査をするというのは、どこかの国を調査するという目的があって、調査団を派遣するということがきめられるはずです。そういうリストに日本が対象に上っておったと聞いておるが、その点はどうかということを聞いたのです。
  34. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) その点について、ちょっと私申し上げます。  実は、これはだいぶ誤解されたのでありますけれども、昨年の理事会においてこの案が出ましたときに、財政委員会関連する予算に関しての報告書に、国の名があがっておったのであります。これは、各地域から一方国ずつ申しておったと記憶しております。アジアから日本、南米からアルゼンチン、北米から合衆国、ヨーロッパからはイギリスだったと思います。これは、議題の実体とは何ら関係のないことである。たとえば、こういう議案が通った場合に、予算措置としてどのくらいの金が要るかということを、参考に事務当局が計算の基礎として上げた。一番ジュネーヴから遠いところの国をあげておると私は解釈しております。そうして飛行機賃が幾らかかる、こういうことを計算して、金はまずこれくらいあれば適当なのだということを参考資料としてあげられて、議題関係のそれ自体の書類には、名前はあがっていなかったのであります。それから、今度の理事会におきましては、その予算関係の書類にすら国の名前はあがっていない。そうして事務局長の説明によりますと、案としては、各地域から抽出する、同時に、各経済度の発達の程度代表する国をまず選ぶ。つまり非常な先進国から一つ、非常な後進国から一つ、あるいは中ぐらいのところを一つ、あるいはアジアから、あるいはヨーロッパからというように、各方面をサンプル抽出式に予定しておる。だから、ある政治的の角度からある特定の国を選ぶという考えはないという説明がありました。従いまして、日本というものが、ILO理事会におきまして、この調査対象の一つとして論議されたことは絶対にないことをここに申し上げておきます。  それから第二は、この問題に関連しないで、先の問題になりますので、お差しつかえなければ、私の発言関係がありましたから……。つまりILOの支局には、十人ぐらいのスタッフがおって、いろいろの連中がやっておりますが、連中と言っては失礼でありますが、こちらの人たちがやっておられる。こういうお話がありました。世間には……きょうも実は参議院の事務局の方のお話では、ILO協会ILO支局とを自分はごっちゃにしておったというお話がありました。皆さんのうちにも、多数そういう方があるのじゃないかと思いますが、ILO支局というものは、lLOという国際機関の出店であります。これを別の形で申しますならば、たとえば、アメリカ政府の出店がアメリカ大使館としてあるわけでございます。ILOという国際機関の全権大使がここにあるわけでありまして、それが支局であります。ILO協会というのは、民間の有志が集まって、金を出し合って作った機関であります。完全な民間の機関であります。しかもこれは、先ほど飼手審議官から、非常に期待を持っておる、援助するというお話がありました。先のことは知りませんが、これは、作った当時私どもは若干関係しておりました。日本政府をそれによって監視し鞭撻する機関であるということがその主要な目的であります。それで、政府とは何ら関係のない機関であります。それで、このILO支局とILO協会というものとは、本質的に違っております。一つは、国内の民主的にできた機関であります。一つは、国際機関の公けの機関であります。そこの人たちがILO協会に顔を突っ込むということは、根本的に間違っております。これは、国際機関の人たちは、絶対に中立を守るべき性質のものであります。ILOの支局長がILO協会の役員をやるということは間違っておったわけです、初めから。その点は、私はILO理事会に行って、初めてはっきりしてきたわけですが、ILOの事務書では、それはよろしくないということで、そういう支局が国内のことに首を突っ込むということは遠慮してほしいという方針になっております。従いまして、実はきょうも桜井支局長もここにおいでになると承わっておりましたが、ILO本部から、それは遠慮してほしいというような指示があったということを聞いておりますが、まことにそれと終始一貫した態度だと私は思っております。誤解のないように一つ……。
  35. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 三城さんから、非常に教えられたような発言がありましたけれども、それは、私たちも、支局と協会と混同して考えていませんから、明確に協会というものと支局というものとの役割というものははっきりしてお尋ねしておるわけです。誤解のないようにしていただきたいと思います。
  36. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) もう一つ参考に……。翻訳の問題でありますが、先ほど政府代表から、これは、lLO支局の方で翻訳などには責任を持ってもらうべき筋だというような趣旨の御発言がありましたが、私の了解しておる範囲においては、ILOは、ちゃんときまった翻訳しかしないのであります。たとえば、英語をフランス語にするとか、スペイン語にするとか、きまっております。ILOの組織自体は、どこの国の言葉にでもこれは翻訳して提供する義務はないのであります。従いまして、ILO支局というものは、これは、桜井さんがきょう正式においでになったらお話があると思いますが、私は、理事会一員として申し上げまするならば、日本語に翻訳する義務は、ILO支局としてはないのであります。もしそれが必要であるということになれば、これは、日本国内の問題であって、日本政府がやるべき措置ではないかと私は考えております。
  37. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ILOの支局というのは、今三つの言葉を標準語として使われておることは、私もよく知っております。しかし、東京に十名の職員を置いて、支局を構成しておる以上、そこの情報を収集するにしても、その三つの言葉に翻訳しなければなりませんでしょう。または、ILOの今日の活動をやろうとしたら、その国に駐在する職員は、その国の自国語に翻訳をして、それをよく伝えるということがあっていいと思うのです。私は、ILOの規律の問題については、これは、飼手さんからその点は聞きたいと思うのですけれども、しかし当然、十人の職員を置くということは、その国に置かれておる職員は、その国の言葉に直して、ILO活動をより達成するという目的のために置かれておるということは、私らは認識しなければ、その国の言葉に翻訳する義務がないからして、そんなものは何だというようなことは、私はないと思います。これが第一点です。  それから、ILOの協会というものは、私も初めから関係してきたものですが、今日使用者がここから脱退されております。この歴史を申し上げると、これは議論になるかわかりませんけれども日本ILOにどうして復帰するか、この復帰するということは、国際社会の一員になるということである、政府も使用者も労働者も一体となってILO協会を作って、国内における問題の普及宣伝、また国際的には、こういうりっぱな日本には組織があり、これに協力する体制があるから、どうか再加盟を許してもらいたいということで、五十一年に再加盟が認められたわけです。そうでしょう。そういうことであって、それが今日まで続いてきて、使用者側が脱退されておるということです。私は、この問題をここで聞こうとは思いません。だから私は、出発の意義と、今日の活動の意義というものは、一つの大きな食い違いがあって、先ほど原口さんは、何とかこのILOの協会活動について、使用者が戻ってきて活動をしてもらうことが望ましいということの発言をされました。それは当然の発言だと思います。国民として。これ以上の議論はやめますけれども、そういう意味立場使用者側がなぜとっておられるかということを、私はこの際、聞いておきたいと思うのです。ILO協会から使用者側が脱退されたのは、どういう意味で脱退されたかということを、今御意見がありましたから、この際聞きたいと思うのです。
  38. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) それは私は、きょうは、先ほどから申しておりますように、ILO理事会の副理事という立場から来ておりますので、先ほどの協会と日経連との関係については、きょうは、私は、申し上げる立場にないのです。ただ、ILOの支局の権限とか義務とかの問題に触れられたので、ILOの支局は、日本政府から日本語に翻訳することまで期待されるかどうかという点については、私は、ILOの組織自体の立場から申し上げたわけなんです。それは、お話の通りに、支局においては、日本語に翻訳されることも必要でありましょう。しかしこれは、ILOの組織自体から来るところの当然の義務ではないので、支局が適時必要に応じてやられるということはけっこうでありますが、日本側が当然それをやって、それに便乗するという権利はないと思う、そういう意味で申し上げたわけです。
  39. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ILOが使っているのは三カ国語です。スペイン語とフランス語と英語です。それは私も知っています。しかし、少くとも今法理論的に、義務があるかないかという問題じゃない。憲章と宣言をどう実現するかというところにILO総会があり、世界各国も、これが集団して活動する分野があり、執行機関である理事会があり、その理事会総会できまったことをもう一つ具体的に執行する事務局があると私は思うのです。そうすれば、駐在しているその国の職員が、その国の言葉に直して普及する役割は、私はあると思う。これを国際的なILO憲章からいって、義務があるとか、義務がないとかという論議をするまでもなく、当然やらなければならぬ仕事じゃないか、私はそう思うのです。そういう意味です。それを言っているだけです。
  40. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) いや、それは一つ考え方であります。ただ私は、今、藤田さんが言われたような、かなりに日本国内における重大な立場にある責任というものは、これは支局でなくて、やはりILOを構成している日本政府責任であると私は考えている。これは見解の相違かもわかりません。
  41. 原口幸隆

    参考人原口幸隆君) 今、三城参考人から言われたことに連関して、私の立場からちょっと説明させてもらいたいのですが、日本だけじゃないと思いますが、やはり経営者のILOに対する態度が問題だと思うのです。これは、昔みたいに労働組合を、あるいは労働者を押えつけることだけで経営が成り立っていく、そういう経営方針ではもう時代おくれで、新しい時代の労使関係というものを世界的に作ろう、そういう中に経営者も飛び込んで、そういう歴史的な役割をみずから背負うというところに、私は、経営者の大きな時代の流れに沿う任務があるのだろうと思う。そういう意味で、今の政府も含めて、何か政府ないしは経営者というものが、ILOというものをできるだけ利用しない。あるいはILOというものはそういう機関ではないとか、あるいはILOの中でできるだけ労働組合の立場というものを有利に理解する、持っていくという態度ではなくて、逆に押えようというような態度が見受けられることが私は非常に残念だ。特に日本の場合において、やはりそういう背景というものがILOの協会にも出ている。たとえば、これは日経連として脱退されるのは、それこそ結社の自由ですから、やむを得ないと思うのです、ところが、たとえば、最近、神戸等にILOの支局ができて、そこの役員に、経営者団体の、会社のえらい人がなったわけです。そうすると、日経連としては、そういうことはけしからぬという通達を出しておるわけです。私は、これは結社の自由の侵害だと思うのです。個人の自由な意思によって、ある同体に入ることについて、入ってはならないということを指示することは、それこそ結社の自由の精神にもとる。だから、少くとも私は、経営者の人に望みたいことは、やはり個別には入りたい、入って、この中で一つ近代的な労使関係というものを話し合いたい、あるいは育てたいという進歩的な経営者もいるのですから、そういう人たちの加入というものを積極的に抑えるということは行き過ぎじゃなかろうか。こういう点については、私はもう少し御理解を得たいと思います。  それから、先ほども三城参考人から言われた、調査団の日本との関係ですが、これは、前の理事会において、アメリカ、イギリス、ソビエト、アルゼンチン、日本という国の名前が、事務同案として一応考えられたことは事実です。ただし、そういうことがきまらない以前に用意したということは不見識だという理由のもとに、事務局は撤回しました。そうして今度の理事会で、事実調査をするということがきまった中に、主要な国に対して調査をするという言葉がありますが、私の考えでは、従来の経過からいって、日本がその対象になる可能性はきわめて強い、しかも、昨年以来ILOの場で、結社の自由に関して、日本との連関についていろいろ問題が起っておるのですから、私は、当然労働組合としては事実調査を望むし、またILO自体としても、当然そういう可能性があるということは言えると思います。
  42. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 原口さんにお尋ねしますが、昨年のILOの四十回総会に、労働者グループの中で、八十七号と二十六号の日本政府批准という問題について論議をされた。ここで、条約批准について、先ほどのお話を聞くと、早期に云々ということのお話がありましたが、原口さんが、そこで政府代表世界の各労働代表に対して言われたことと、それから大かた一年たって、今の四十一回の総会が開かれようとしているのですけれども、この関係について、どういう工合に感ぜられますか。
  43. 原口幸隆

    参考人原口幸隆君) 昨年政府が、批准可能性についてすみやかに労使の団体に相談をすると言われて、一応委員会としてはそれで了承したというか、確認をしたことになっております。それで、諸外国の印象としては、日本政府が本腰を入れてこの問題に具体的に取りかかるという印象を私は与えたと思うし、また今回も、理事会において、政府代表が、国内において三者構成委員会をやっておるということを理由にされましたけれども、向うの受け取り方としては、政府が本腰を入れて具体的に、まあ総会以前においてぐらいに結論を出すような受け取り方をしたのではなかろうか。少くとも労働者グループの中で、この政府代表発言があったあとの仲間の話し合いでは、非常にいいことだと、もうすぐ日本批准できてけっこうだと、おめでとうということまで、そういう受け取り方をしているのが僕は客観的な受け取り方だと思う。ところが、実態はそうじゃないと思うのです。先ほどの飼手さんの話で、私は非常に疑問を感じたのは、民主的な手続によって委員会に相談をしているから政府は意思表示をしないということは、私はおかしいと思うのです。第一に、この批准手続責任というものは政府にある。政府が積極的に批准をしたいということを、問題点はここですということを、政府みずからするのが当然のことなんで、それを民間団体に民主的にお預けして、それの言うことを聞くということは、政府の方が権威がないと思う。その証拠には、最低賃金審議会の方では逆なんだ。つまり審議会の審議の過程の中では、全員一致していないのですよ。ところが政府の方は、その審議会の結論を尊重するどころか、それと違った、業者間仲裁というものを一方的に政府提案しているわけです。ここに非常に民主的じゃない、先ほど飼手さんが言ったような、そういう御都合主義がここに出ているというように思います。
  44. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと速記をやめて下さい。   〔速記中止〕
  45. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記をつけて下さい。  休憩いたします。再開は、午後一時半にいたします。    午後零時三十三分休憩    ————・————    午後一時四十九分開会
  46. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  午前に引き続き、ILOの問題について質疑を願います。
  47. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は、きわめて簡単なことで一点だけ、まあ伺うというよりは、御意見を聞かせていただきたいのでありますが、先ほどいろいろ御説明、御意見を伺っておったわけでありますけれども、このILOの国際的の機関日本側から代表が出て、それで、政府代表労働代表、使用者代表として出て、そうしてそれぞれの立場でいろいろ議論をなさる。それから、各国ともそうやって、労働界なら労働界、使用者界なら使用者界の階層、こういうことで、いろいろ横の連携を持ちながら話を進めていかれるということは、これはILOの性格だろうと思うのでありますが、ただそこで、先ほどのお話を伺っても、かりに百七の決議条約ができて、日本が二十四採択している。政府の、労働省の審議官に言わせると、日本としてはちょうど適当なところだ、こういうような意見が出る。一方労働者側の代表原口さんのお話では、日本理事国にまでなって、こういう、だらしないともおっしゃらなかったけれども、こういう熱意のないことではまことに遺憾にたえない。立法府たる国会においては、もっと積極的にいろいろな問題の検討、審議を進めてくれないか、こういう御意見があって、全く相反した意見が出てくる。三城さんがこの点について、二十四が多いとか少いとかいう御意見は、私がいないときに出たのかもしれませんが、その点は、三城さんの御意見は私は承知しておらない。そこで、私こう考えるのでありますが、国内において政府労働者側あるいは使用者側が対立した違った意見を持ち、それをそのまま国際会議に反映するということも一つの方法ではあるけれども、その国際会議理事会なり総会なりでいろいろな違った意見を出し合って、そうしてその総会なり理事会一つの相談がまとまり、そこでまとまった結果については、かりに三階属の代表がいるとすれば、一、二の階層は賛成であるが、また別の階層は賛成できがたい、こういうような決定がなされることがしばしばあるだろうと思う。それがそのまま国内に持ち込まれる。だから、二十四が多いか少いかという話は別といたしまして、従ってその問題を国内に持ってきた場合に、さらにその意見の調整をはかり、その審議を進めていくということについては、相当のやはり時間なり、調整の方法なり、そういう努力がなされる必要が当然出てくるだろうと思う。そこで、従来のそういう理事会なり総会ですか、詳しく知らぬけれども、お出になる場合のことを伺いたいのでありますが、せめてある程度だけでも、国内において、三者なら三者のそれぞれ違った立場代表が、ある程度日本としての意見の調整をはかった上でお臨みになるのであるか、それともそのはかることもやったが、できないということなのか、あるいははかる必要もない。それぞれの立場で出て、それぞれの立場意見を開陳すると、こういうようなことになるのか、その辺のことを一つ伺いたいのと、もう一つ、私の考えは、これはまあ三者それぞれ立場は違うのでありますけれども労働問題の解決をはかる。いずれにしてもはかるという以上は、それぞれそういう、少くともきょうおいでになった三者代表の方々、そういう階層の間において話が円満にまとまるのでなければ、適正なる解決策には私はなるまいと思うわけなんである。そこで、それが国際的な機関で論議され、その論議されたその前に、日本としての一階層の意見の一致といいますか、一致までいかなくても、ある程度の調整をはかっていって、そうして多少どうしても食い違う点はやむを得ないけれども、これを日本に持ち帰ったならば、できるだけ三者協力して、日本において採択して、解決ができるようなふうに努めようじゃないか。こういうような気持でお臨みになるのかどうか、またそういう努力が繰り返され、努力がなされるのかどうか。私は、そういう努力がなされることがいいのじゃないかと思うわけなのでありまして、従来のそういういき方を知りませんので、そこで、原口さん、三城さんあたりから、また労働省も見えましたから、労働省の審議官あたりから、その辺の従来のおやりになった事柄と、私は、今申し上げましたようなことができることかできないことか、いいことか悪いことか、そういう点について一つ意見を聞かせていただきたいと思います。どなたからでもけっこうです。
  48. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) 遅参いたしまして申しわけございませんが、御承知のように、ILOにおきましては、憲章の方でも、政府、労使がそれぞれ独立した立場で、みずからの見解を持ち得るように規定せられてありますし、そのことがまたILOの特色でもあり、このことによってILOが真にその目的を達成し得るんだ、こういうことが一九一九年創立以来の根本趣旨であります。従いまして、公けの立場で投票を——最終的な意見の決定に当って、労使それぞれが最終的な意見を自由に持ち得ることは当然でありますし、その最終的な自由を侵害するような形において、政府が労あるいは使に対して何らかの圧力と申しますか、干渉めいたことをいたすことは全然例がございません。ただ、一方憲章ではまた明瞭に、労使それぞれの代表政府責任において指名される——労使がそれぞれ選び出した者の中から、政府政府責任において指名する、こういうことは憲章規定にうたわれているのでありまして、その限りにおいて、それぞれ労及び使の発言その他の御活躍は、政府責任にもなるのでありますので、現実の問題として、十分に了解を遂げ、お話し合いを進めて、その上で意見をきめていただく。最終的に意見の一致しないことはやむを得ませんが、それ以前において、十分にお互いの意見を申し述べて、その中で、可能な範囲においては意見の調節を行う、このことは、どこの国でもやっていることでもありますし、日本においても、総会その他の場所においても話し合っている次第であります。現実にそれが一本に調整されていない点は、御案内の通りでありますが、そのことがまた同時に、ILO目的に合致するのでございますが、可及的な範囲において紳士的に——必ずしも友好的ではありませんが、紳士的に話し合っていることは事実であります。
  49. 高野一夫

    ○高野一夫君 私の言うのは、あなたの今おっしゃる通り、あなたが見えない前に申し上げたのであって、そこで、それぞれの、政府政府労働者は労働者界、あるいは使用者側使用者側の社会を代表して、階層を代表して、そのまま率直な意見を述べるということがILOの性格だろうけれども、実際問題として、そのきまったことを国内に持ち帰って、それを円滑に解決の道へ持っていくというには、やはり実際的の一つの方法を考えてもいいではないか。そこでしまいに、あなたが円満にその調整の策も紳士的にやるというお話であったが、最初言葉に、政府がそういう方面に、両者の方に圧力をかけるというようなことはやらない、考えない、こういうふうにおっしゃったが、圧力とか何とかいう言葉を使うこと自体が私はあまり愉快でないのでありまして、政府側が、私は与党だけれども労働者側に話す、資本家階級に話すのに、やはり官僚的立場から圧力をかけるんだという考え方、これはもう絶対に一つ避けてもらわなければならぬ。そこで、労働省なら労働省が仲に立って、労働者側あるいは資本家を集めて、それで、できるだけ意見の調整を円満にはかっていって、そうしてどうしても調整のできない点は、それは仕方がないから、そのまま理事会なり、ILO総会なりでおやりになる分には、これは一向差しつかえないでしょう。これは、先ほどから私も言っていることである。だから、政府代表が行かれるんだから、それは、あなたのお話のように、政府代表政府代表としての意見をそのまま述べることがILOの本筋であるんだ、こうなっていることは、これは、お互いがわかり切っていることですが、それにしても、先ほど言ったように、二十四という数は、日本として適当だとあなたは言った。ところが原口さんは、二十四ぐらいじゃ仕方がないじゃないか、こういう考えを持って、そして国内においての対策上、やはりここに基本的にスタートの切り方が違ってくる。それで、二十四がいいか、三十がいいか、五十までふやそうか、この問題はいいじゃないか、この問題は困るじゃないか、こういうような話し合いをつけていくためには、やはり政府中心になって、やはり円満裡に、行く前に一応の一つ話をして、大体議題はわかっているのだろうと思うから、行く前に一応の話し合いをして、そうして帰ってきてからも、政府中心になって各階層を集めて、いろいろな話し合い、懇談の機会を作る、こういうような努力は、当然私は、労働省としてすべきじゃないかと、こう思うわけなんです。それが、労働省が労働者階層あるいは資本家階層に対して、それぞれの方向に向っての圧力をかける、こういうことじゃない。そういう考え方は絶対これは排撃しなければならぬ。だから、仲へ立って調停役になっていろいろ政府立場から、調停役になって調停をして、そういう総会に臨む、そういうことがいいのではないかと実は私は思ったので、それについての御意見を伺う、もしもいいとするならば、今後は努めてそういう方法をとられるならば、そして原口さんの方も三城さんの方も相応じて、お互いにそういう気持になってもらわなければならぬ、そういうふうになるならば、この理事会決議なり総会決議国内に持って来られた場合にも、非常に日本の国情なり、あるいは日本国内法にそごするような問題とか、あるいはそうでない、これは一つ現在の日本の状態を改善して、こういうふうに持っていっていいじゃないか、こういうような問題とか、いろいろな分析ができて、一つのある程度、全く右、左に対立しないで、できるだけ調和した、調停した線が出されやすくなるのではないか、こういうふうにまあ私は思うのです。私はしろうとで、ILOのことも一向知りませんので、わかりませんが、そういうふうにしろうと流に思うので、そういう点のお考えを伺ったわけです。これについて、一つ原口さんと三城さんの方に、御意見を聞かしていただきたいと思います。
  50. 原口幸隆

    参考人原口幸隆君) ただいまのお話については、私は、態度としては賛成です、それで、できるだけ、重要な議題になりそうな問題について、事前に話し合い、そして一致点を求める努力をお互いがする、そういう場を持つということについては、非常にけっこうだと思います。今まで政府としても、積極的にそういうような場を正式にこしらえてやったということを私は知りません。ただ、一番問題になるのは、抽象的にはそれでいいんですが、実際問題として、たとえば今、日本労働組合の中で中心になっている結社の自由の問題がありますが、この問題について、われわれの方は批准をしてほしい、そして日本の二百万近い労働者が基本権を持っていない、あるいは外国から見るときわめて非常識な、組合を自由に作って、自由に役員を選べるというこの条約の骨子である精神国内法によって否定されているというようなことを何とか解決したいという労働者側の希望を事前に政府に持ちかけてみても、結局とんでもないというような話になって、実際に具体的な話し合いに入りますと、なかなかできないわけです。従って、私の希望としては、やはりこの結社の自由を例にとりますと、すでに外国では三十一カ国批准をしておるわけです。こういうような重要問題について、国会等が、特に政府国会に対してもっと積極的に、この条約批准についての少くとも審議だけでも私はしてもらいたい。そうしてそのことを国民全体に知らせる、そのことの中からいい結論が出てくるのじゃないか。今のところは、国民の目の前で審議されるというよりも、政府がこういった問題はとてもできないと、ある組合とは交渉できないというような、そういうような態度を強硬に持ち続けているところから、いろいろなそごが出てきているというふうに、組合の方からも思われるわけであります。
  51. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) それじゃ私からお答えいたしますが、ILOの組織運営自体から申しますと、あくまで三者独立ということになっております。これは、先ほどからたびたび申し上げているところです。それから政府代表は、各国代表かなり独立でありますが、使用者側に関しては、おそらく労働者側もそうらしいのでありますが、この使用者側全体としての自主的な意識の統一といいますか、そういうふうなことをやることになっております。これを何と申しますか、使用者グループの自治とILOでは称しております。従いまして、その点における考慮も若干必要なわけであります。しかしながら、皆さん方の御意見通りに、日本日本としてのまた共通の基盤もあるだろう、事前事後の調整ということも必要ではないかという御意見に対しては、私も賛成であります。  ただ問題は、実際の運営上の問題でありますが、ILOの議題関係の資料が御承知のように外国語で参りまして、それが非常に各会議の切迫したときに送って参ります。第一、これを各グループで——使用者は使用者団体労働者は労働団体政府政府というところで適当にそしゃくして、そのグループの意識を統一することすら現状においては困難であります。そういうわけで、三者が政府中心に集まっていろいろ協議するには、三者それぞれがまだ意見がまとまっていない、あるいはまた、代表を選ぶ場合に、理事会はきまっておりますけれども総会とかその他の委員会代表を選ぶ場合には、労使それぞれが自主的な推薦になっております関係上、なかなか期限までに推薦がうまくいかないこともあります。話がまとまりやすいグループもありましょうが、なかなかいろいろな事情で推薦しない。労働省は待っている、その代表が出発まぎわまできまらないこともありまして、労働省の方で話をまとめようにも、なかなか時間的余裕もありません。そういうふうないろいろな困難のために、従来は、必ずしも労働省の方でそれだけの措置をとっておられない。これは、原口さんの言われる通り、ただ簡単に辞令を渡す、顔を合すという程度のことであります。
  52. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 午前中報告申し上げておりました、日本ILO協会副会長の川西参考人がただいま御出席いただきましたので、御意見を求めたいと思います。あらかじめ御連絡申し上げておきました事項について、御意見発表をお願いしたいと思います。その後皆さんを含めて御質問を続行いたしたいと思います。かように思いますから、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
  53. 川西実三

    参考人川西実三君) 私自身の資格は、ILO協会の副会長、会長どうしても出られませんので、出ることになった次第でございます。  いただきました御書面には、いろいろな項目が掲げてございますが、私自身が意見がましく申し上げることは、これは、それらの問題に関連して、このILO協会というものがどういうふうな考え方あるいは感じ方を持っているかということ以外に出ることはできなかろうと思います。その点につきましては、すでにあるいは午前中に、いろいろとILO協会のことについて、この席において話し合いがあったそうでありまして、おくれて参りまして、私自身がかれこれ申すことは、あるいは不必要なことを繰り返すおそれがあると思いますから、それらの点は省かせていただきます。  ただ、私の感じあるいはILO協会自体の感じといたしましては、ただいまもちょっと聞きましたような、このILO協会自身が生まれた理由、また存立理由、今後の努力というようなことは、ILO思想の普及と、ILO機関においていろいろと決議され、採択されたような条約なり勧告が、各方面のそれぞれの円満な理解のもとに、円滑にこれが実施されるように、民間の自主的な団体として、各方面手をつないで協力をするというようなことが大きな目標になっておりますので、従って、午前中に問題となったような、日経連の脱退問題とか、あるいはその他種々の問題といったようなことがあったようでありますが、それらの点につきましては、なるべく四角ばらない形において、自主的な組織において、人間お互いに開き直った形においてはやっぱりぎりぎりの問題でありますが、平素の相互いに楽な気持で交わりあいするうちに理解がだんだんと広まっていく、こういうことに役立つようにしたいというところから申しますれば、日経連の脱退の問題というようなことは、先方様にもいろいな御事情があり、経過があったかもしれませんが、残念なことであって、なるべくそういうふうなことのないようにしたいものだというふうな感じを強く持っておりますようなわけでありまして、私自身、労働問題には数十年携わらされた経験がありまして、ジュネーヴにおける雰囲気あるいは日本における状態等をながめまして、そういうふうなことを協会としては達成していくようにしていきたい。ただいまは、日経連の方がおいでにならぬので、実にその点さびしくもあり、また残念でもある、こういう気持でおります。それ以上、あらたまったことを申す資格もなければ、用意もございません。
  54. 高野一夫

    ○高野一夫君 飼手労働省審議官に伺いますが、今、三城さんのお話も、原口さんのお話も、あなたのお話も、私が申し上げた意見の線に沿うことは、気持の上では皆賛成で、異存はない。ただし、原口さんの御意見みたいに、具体的の問題が出ると、なかなかそれは調整ができない。また、簡単に調整のできないような問題が多いから、こういうことになるわけでありますが、できるだけそういうような調整の方法をとって、そしてそういう機会を作って、しかる後に国際会議に臨むということが、労働代表も使用者代表も御異存はない。ところで労働省は、従来そういう方法でやってきたというお話だが、原口さんのお話では、積極的に労働省側はそういうふうなあっせんをして乗り出してきた覚えはない。こういうお話もあったが、まあそれはそれとして、あえて追及いたしませんが、今、三城さんのお話は、実際問題として大事なことだと思うのは、書類が真近に来る。お互いに、労働省は労働省、労組は労組、使用者側使用者側と、それぞれ翻訳に手間どる。理解するのに相当時間がかかる。しかも、使用者側において代表選定がそれの直前になることがある。こういうことだから、打ち合せもできない、こういうお話だが、この書類が真近に来るというのは、あらゆる会議において困ることですが、労働省あたりで率先してこれを翻訳して、労組の方あるいは使用者側の方にその翻訳文を回して、今度はこういうふうだから、早急に一つ研究しておいてくれ、こういうふうなことは、労働省としてできないものですか。翻訳料もずいぶん金がかかるものだが、そういう努力の方法をとることはできないものかどうか。それからまた、三城さんの方では、代表の選定は直前になるであろうけれども使用者側の階層の意見というものはきまっておるはずだ。従って代表は、かりに三城さんなら三城さんが代表としておいでになることは、あした出発の前日にきまるにいたしましても、とにかくその代表に委託して発表すべきその意見の内容は、その前にきまるわけであります。だから、その意見がきまれば、あしたのその前日に代表がきまっても、その代表にそれを理解せしめるということは、当然そういう方面専門家代表に選ばれるでしょうから、理解は当然できる。それで行かれるということになるので、代表が直前に選定されるということは、私は、これは別にそう大した支障にはなるまいと思う。そこで、思うのですが、従って、そういうような場合も往々団体の中にあることでございますから、そういう場合は、十分早く意見のまとめおきを願って、その直前にきまった代表が理解しておいでになるようにしていただく、こういうように私はお願いしたい。  そこで、最後に一点、労働省側だけに聞きたいのでありますが、その書類の処理、これは技術的な問題、しかも、会議に臨む者としては非常に一番大事なことです。この書類の翻訳、それから関係団体への配付、研究を急がせることについての努力なり、工夫なり、そういう方法が労働省としてとられないかどうか。どうしてもとれない、あるいはとれる、こういうことをちょっと一点伺っておきたい。
  55. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) 主として書類の問題でお答え申しますが、書類がおくれるという問題につきましては、ILO自体でも絶えず問題になりまして、総会の書類につきましては、憲章上の規定等がございまして、大体憲章並びに総会議事規則の規定がございまして、書類はおくれないで届いて参りますので、六月の書類はすでに参っております。ところが、午前中も話が出ましたように、たとえば、労働時間の問題がことしの総会の重要な議題の一つになり得るのですが、それが、約二百五十ページにわたる膨大なものが来るわけです。それが全部横文字で参りますので、これをすぐに翻訳をいたしましてと申しましても、専門用語も非常に多いし、専門家でないと、英語ができるというだけでは、正確な翻訳もできません。そういうようなことで、それをやり得る者の人数も非常に限定されますし、そのような仕事のためにも、実はILO協会が大いに活躍しなければならないのですが、今必ずしもその機構がうまく動いてないのですが、いずれにいたしましても、総会の書類につきましては、まずまず書類は早く参りますが、その他の、午前中お話しました産業別委員会であるとか、理事会の書類等は、どうしても加盟国関係書類がおくれる結果、主としてそれが理由でありますが、ILOからの送ってくる議題資料が絶えずおくれがちになるのです。そこで、実はこの十四日に開かれまする繊維委員会の書類が、つい数日前に政府に伝達になってきた。それがまた、数十ページの横文字のものだというふうなことがございまして、私ども、実はその書類の処理自身に非常に困難を感じているような次第であります。それにつきましては、実は労使、政府ともどもに、同じ書類を使わなければなりませんので、三カ所で別々に処理をせずに、能率的に処理をするようなことを今後工夫をいたしまして、可及的すみやかに翻訳その他趣旨の徹底をはかって参り、代表決定出発前に、十分の打ち合せ、あるいは意見の決定ができるように努力いたしたいと存じます。
  56. 高野一夫

    ○高野一夫君 参考人に伺いますが、二百五十ページの横文字々々々とおっしゃるが、国際会議では、労働関係に限らず、すべてが横文字です。あるいはフランス語、英語、ドイツ語、いろいろある。そこで、二百五十ページのその横文字が、フランス語か英語か知らぬけれども、それを労働省が訳すのに、どれくらい時間がかかるのですか。お役所の仕事の運び方の参考にも、伺っておきたい。私は、これは経験がある。
  57. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) 会議関係の書類は、非常に正確を必要といたしまして、まあ学生アルバイトにやらせるというようなわけには参りません。正確な翻訳を確実にやらなければなりませんのでおのずからこの翻訳が限定されて参ります。
  58. 高野一夫

    ○高野一夫君 そういうことはわかっているのです。幾日くらいかかりますかということだけ。
  59. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) 翻訳の日数でございますが、向うから出て参ります書類の分量によりまして……。
  60. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は、先ほどあなたが二百五十ページくらいの書類が来るとおっしゃるから、例をあげて、二百五十ベージの書類でどのくらいかかるかと、はっきり量を限って聞いておる。
  61. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) 二百数十ページにわたるものの時間の問題につきましては、おそらく二週間はどうしてもかかると思います。
  62. 高野一夫

    ○高野一夫君 実は、私は自分のことを申し上げるのはおかしいが、私も団体を持っておる。そうして国際団体の一メンバーで、非常に専門的な文書をしょっちゅうやらしているわけですが、大体五百ページくらいの専門的なものを訳するのに一週間あればたくさんです。それで専門家がそういうようなフランス語なり、あるいはドイツ語なり、英語なりに習熱するとは限らないので、そこでいろいろな、英語の、あるいはフランス語の専門家を使う。そうして、また、その方の内容の専門家をそれに参画させる。一週間あれば完全に間違いのない訳文ができる。われわれしょっちゅうそういうことを繰り返しています。従って、二週間ならおそくはないと思うけれども、そういうところにもやはりいろいろな仕事の運び方が円滑にいく、いかぬということがきわめて卑近なところに出てくると思いますので、どうか一つ十分そういう点も御注意を願って、そうして、できるだけ急いで労働省あたりが翻訳をして、そうして関係者に配ってあげる。その方が関係者も助かり、相談をし、意見をまとめていくのにも早道であろうと、こう思うので、一つこれは川西さんの方の協会のあるいはお仕事になることかもしれませんが、特に労働省側としてはその点に極力努力していただきたい。これは私は希望しておきます。
  63. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 三城さんでもどなたでもいいのですけれども一つ聞きたいのは、ILO加盟しておられる各国の経済事情、文化の程度労働組合の歴史、その他が非常に複雑だと思うのです。その国の事情がそれぞれあると思います。それに対しまして、ある問題を提起して、これをILOの全体の意見としておきめになる場合に、その各国のそれらの事情がどの程度に参酌されるのですか。この点まず第一に。
  64. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) 経営者側といたしまして、ILOの議題に関連して各国の労働事情というものはあまりに重要視いたしません。むしろ、われわれとしましては、ことに総会の場合は、日本の経済事情とその議題との関連ということはかなりに研究いたします。それぞれの国の代表がそれぞれの国の経済事情、社会状態というものを参酌して研究して、集まって、そこで初めて使用者側としての意識の統一ということをはかるわけです。従いまして、おそらく組合の方もそうかと思いますが、いろいろ意見が食い違う場合もありますけれども、しかしながら会議に臨む場合には、使用者側としては最大公約数といいますか、なるべくどこの国も救い得るような線が見つかりはしないかということに努力する。しかし、あまりに幅広くこれを考えますと、極端なつまり意見になってしまいますので、まあ非常に極端な国の人はこの辺で同調してほしいというような歩み寄りをやるわけです。私の経験から申しますと、日本は大体まん中よりも上くらいのところをいっておりますので、あまり使用者側全体の結論に対して困るというようなことはないと思っております。
  65. 原口幸隆

    参考人原口幸隆君) 労働側から申し上げますと、特にこの点は労働者グループの中では各国の事情の違いということについては相当神経質というか、重大に考えております。というのは、やはりある国の労働条件というものが非常に低い場合には、やはりそれだけ影響を他の国の労働者に与えますので、与えられている労働条件というものをできるだけ均衡化したいという気持は、特に労働者グループの中には多いわけです。それで、国の経済、文化あるいは組合運動の歴史というようなものの違いというものは、当然出て参りますけれども、結論的に言うと、やはり同じものを求めているという傾向が非常に強い。特に日本に対する場合には、この前、昨年、国際自由労連、国際運輸労連というような、国際労働組合の上部団体、今年になって全逓の上部団体の国際郵便組合の役員が来ておりますが、そういう連中が日本労働事情を視察した結論としては、そういう日本の経済とかいろいろな条件を参酌した上においても、やはり彼らの調査報告で明らかなように、ストライキ権の付与、あるいは組合の役員を自由に選べる権利、それから仲裁制度をもっと明確にしろ。あるいは今まで首を切った組合役員の復職が望ましいというような、一つの国際的な水準の結論が日本にもふさわしいということを言っているところから考えても、私は日本の場合においても当面の宿題は、国際水準にまでこれを高めるということが当面の目標でなければならぬのじゃないかというふうに考えております。
  66. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 先ほど私の聞いたのがちょっと誤まりだったら訂正していただけばいいんですが、三城さんのお話の中に、ILOのいろいろの決定事項は一つの理想であって、というようなお話がありましたが、そうですか。
  67. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) 理想であって、というようなわけじゃなくて、つまりILO会議においては、賛成投票が非常に多く、反対が非常にまれだ。にもかかわらず、批准の数は比較的少い。これは労使の場合は別でありますが、少くとも政府代表に関しては、賛成投票をする場合は割合に批准可能性があるという場合が私はほんとうじゃないかと思うわけですが、実際はそうじゃない。なかなか批准というものは少いわけです。批准がかりにあっても、また国内的に適用される可能性も割合に少い。それは、代表は、やはり自分の国に適用すべきものとして考えないで、これを一つの国際的の理想として考えているからではないかと私が解釈している。こういう意味です。
  68. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 それから、それに関連してですが、先ほどの中で、賛成をしておいて十年も批准しない国があるというお話がございましたが、そういう場合に、罰則といえばおかしいですが、制裁というか、何かそういうことがあるのですか。
  69. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) 私の知っている範囲内においては、ないと思います。それは政府代表の方で、もう少し正確にお答え願いたいと思います。
  70. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) 戦前の古いところは存じませんが、戦後につきましては、特に私が政府代表になって以後は、総会賛成したものは必ず批准し、総会批准可能性のないものについては、必ず反対または留保の態度を示しております。
  71. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 それから、これはちょっと私の聞き間違いかどうか、原口さんにお伺いするのですが、先ほどのお話の中に、スト権のない労働者の作った商品は、何か信用がないとか何とかということをおっしゃったのですが、それはだれに信用がないのですか。どういうお話なんでしょうか。ちょっとお伺いしたい。初めて聞いたので……。
  72. 原口幸隆

    参考人原口幸隆君) これは、むずかしい議論じゃなくて、特にヨーロッパにおいて言われている普通の言葉だという意味で御紹介をしたんですが、ストライキ権のない国の労働者ですね、あるいは最低保障がされていない労働者の作った商品を輸出する場合には、受け取る側の国として、それが正当な労働条件の上で作られていないという意味でソーシャル・ダンピングとか、テープ・レーバーとかという汚名によってその商品の権威を傷つけるというのが常識だという意味です。
  73. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 わかりました。
  74. 山本經勝

    ○山本經勝君 川西さんにちょっとお伺いしたいのですが、ILOの基本的な考え方は、いわゆる憲章の中で明らかにされているように、平和を確保するためには一部の貧困もなくさねばならぬ、一部の貧困が全体の繁栄を阻害することになるのだ、こういうふうに宣言の中に言われておるわけです。ですから、こう私は受け取るのですよ。つまり、今いろいろお話が出ておりますが、少くとも理想であるか現実であるかという問題、これはILOできめたいわゆる条約なりあるいは勧告がすべての国々に準用され、適用され、批准をするということになっていくならば、より引き上げられた状態でILOで言われておるいわゆる一部の貧困が全体の繁栄を阻害するというおそれを解消させる、こういう考え方だと考えているのですよ。ですから、そうしますと、つまり今の時、今の場所といういわゆる時点においてどうであるかということではなくて、少くともこうあるべきであるという規範の上に立つと思うのですよ。そこから今度はその規範の中にはめて、各国の労働条件を引き上げ、貧困をなくすという努力をILOは続けておる。こういうふうに、基本的な点、まず理解してよろしいかどうか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  75. 川西実三

    参考人川西実三君) 私自身がフィラデルフィア宣言なりあるいはその他の平和条約なんかについて正しい権威のある解釈というようなことをする能力も資格もございませんが、しかしILOのあの精神というのは、各国、ことに程度の低い所が相当努力をしていくべき要素を含んでおるだろうと思います。そういう意味における努力、社会を一歩々々改善進歩させるというような努力は、おのおのの国がすべきじゃないかと、こういうふうにただ思うだけでございまして、あの宣言自身の正しい解釈がどうであるということについては、ちょっとお答えをする力も資格もございません。
  76. 山本經勝

    ○山本經勝君 今、申し上げたような基本的な精神は、私は一応貫かれておると解釈しておりますけれども、今の川西さんのお話ですと、権威ある解釈と言われますが、そうかたくなにお考えにならなくてもよろしいのじゃないかと一般的に考えるのです。  そこで、もう一点お伺いしておきたいのは、国際関係労働条件あるいはその他社会保障制度といったようなものが中心になっておりますから、勢い国の実情によって、あるいはその国々が持っている法律制度等と抵触する場合もあり得るとわれわれは考えておる。ですから、その場合にどちらを直すのかということになると、一応各国が集まって専門的な知識を網羅して検討して得た結論に対して、関係加盟各国が努力をして、歩み寄る、寄せていくという努力が期待されておると解釈することについてはどうお考えになりますか。
  77. 川西実三

    参考人川西実三君) さっき申し上げましたように、権威あるというようなことを抜きにして、ということでしたら、私はそういうふうにしていきたいものだ、そうすべきじゃないか、こういうふうに考えております。
  78. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうしますと、こういうことが起り得ると思うのです。日本には昔から尺貫法度量衡と称するものがあった、昔は鯨尺という長いさしを使っておったのですが、メートル法に変った。そうすると、国際的に見ましてメートル法は全世界に通用している共通の尺度になっている。ところが、日本には旧来尺貫法度量衡があるが、そうすると、日本の鯨尺をもってメートルさしをはかっても始末が悪いのですね。ですから、そういう場合に、やはり国際水準に合わすという努力を日本が払われるならば、当然メートル法に直さなければならない。現在それが直りつつあるのです。そういう実際の状態。ですから、日本の尺度がまずい場合には、当然ILO等において専門的な見地で検討して出た結論を日本に生かすような努力を政府自身がし、また労使代表もそれぞれ協力しなければならぬ。そのことに私はILOの重大な使命があるように理解しているのですが、この点はどうですか。
  79. 川西実三

    参考人川西実三君) 私御意見のように感じております。
  80. 片岡文重

    ○片岡文重君 三城さんにお伺いしたいのですが、先ほど木島委員からもちょと確かめられていたようですけれどもILOにおける表決の場合に、賛成はしておらないけれども賛成の意思表示をする者が多い、これは一つの理想を目ざしておるものと思うからであろうというふうに三城さんはお考えになっておるというお話であったようですが、三城さんがいかにお考えになり、いかにごらんになるかは別問題として、そういう解釈をおとむになるかは別問題として、反対をしているにもかかわらず賛成の意思表示をする者が多いということになると、このILOにおいてなされた表決というものははなはだしく私は権威を失うものだと思う。特に各国から政府並びに労使それぞれがそれぞれの機関によって選出をされ、政府で任命をされて、少くともその国の三者を代表する権威ある代表として国際会議に送られながら、自己の意思に反する表決をしてきたということは、これはその代表の権威をはなはだしく失墜するばかりでなくて、ILOの議決そのものに重大なこれは疑点を残すものだと私は思う。これは、どのように三城さんがお考えになるかではなくして、このILOの権威にかけてこの問題はお伺いをしておかなければならない問題だと思う。いま一ぺんその問題について一つ慎重な態度で御意見を拝聴いたしたいと思います。
  81. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) 先ほど、今の御質問関連しますが、条約批准の数が幾つがよい、政府代表は幾つがよい、どの程度でよろしい、労働代表はどの程度はよろしくないという点、あまりはっきりしないがという御質問があったように思いますが、それについては午前中私がちょっと申し上げたと思いますが、今の御質問関連があります。この数自体をそのまま非常に価値があるようにとるということには若干の危険がある。またある国では幾つぐらい批准をしたらよろしいとかよろしくないとかということも私は危険があると思う。すべてこのILO条約勧告、ことに条約の場合を申しておりますが、その国に最も受け入れやすいかどうか、そういうふうな考慮も必要でありますので、結局において、終局においては、たとえば労働条件あるいは生活水準を引き上げるということを目ざしておりましても、ものによって順序、方法もいろいろあります。トータルにおいていい方をまず選ばなくちゃならないということもありますので、その国情、その国情によりまして条約批准の数とか順序等もきまるだろうと思います。一がいに私は数のことを論ずるということは危険があるということを申し上げておきたいと思います。  それから今のボートの権威に関しましては、私の申しましたのは、自分の、つまり意思に反して投票していいという意味ではないのであります。その代表は、あるいはこれに賛成と、個人としては思ったかもわかりません。あるいはまた、そこの国の政府としては、関係の行政官庁としては、賛成と思ったかもしれません。しかしながら、そこの批准をなすところの国会あいるはその他の機関が、取り上げてみて待ってくれと、こういうこともあり得るので、それが一貫していない場合がかなりにあるんじゃないかということを申したのであります。従いまして、その懸念が、政府代表として、そういう批准がすみやかにできないという懸念があっても、投票しておる人があるんではなかろうか。その証拠に、賛成投薬の多い割合に、批准が少いということを申したのであります。それからもう一つは、ソ連のごとく、自由を与えないことをもって特色としておる国柄の政府が、批准をあえて急いでやったということには、批准自体も、実質に考えてみますと、かなり疑問があるということを私は申し上げたのであります。
  82. 片岡文重

    ○片岡文重君 私は、参考人の御意見は、非常に重大なものを含んでおると思うのです。代表が、いやしくも、あるいは政府代表し、あるいは労働界を代表し、あるいは使用者を代表して、この会議出席をする以上は、ILO憲章なり、条約なりを知らずして出ておるものはおそらくないはずです。ことに条約の形をとるか、勧告の形をするかということは、その一つ一つの案件の処理に当って、理事会において相談をされて決定をされるはずです。従って、国内に帰って、これはどうしても批准をすることが困難である、そういう国が数多いであろうというような状態のときには、これは勧告の形をとるということになっておるのじゃないですか。少くとも条約という形をとられるからには、当然、当然という言葉を使っていいかどうかわかりませんけれども、少くとも勧告と違って、もっと、法律的にはどういうことになるかわかりませんが、少くとも、国際信義の上からいって、その条約の表決に賛成をした国々は、帰って、当然立法機関にはかり、批准手続を可及的すみやかにとるべき道義的責任が私はあると思う。それらのことは、十分、この代表の諸君は知っておるはずなんです。単にこれは個人としては賛成だから、これは個人としては理想だからということだけでは、この表決に軽々に意思表示はできないはずです。やはりこれは、自国に帰って、批准手続がとられ、もしくはこの内容とするところは望ましいけれども、これは、日本の国に持って帰ったら、とうてい批准はできぬだろうというふうに考えた場合も、これは、内容には賛成であっても表決の場合には賛成の意思表示はできないはずです。なのに、これを賛成してきておるのではなかろうかということになると、この代表の諸君の表決というものは、賛成をしたものにも、反対をしたものにも、一体どこに権威を求めていっていいのか、どこがほんとうなのかということに私はなってくると思う。このILO会議というものは、著しく信憑性の欠けるものに私はなってくると思う。少くとも三城さんは、そういうお考えで、この国際会議出席をされておるのかどうか、その点を重ねてお伺いをしておきたい。  それからこれはまあ、三城さんのそれこそ個人的見解でありましょうから、またあなたの個人的見解を私は拘束する何ものも持たないから、ソ連が自由を与えないことをもって特色とするという御意見は、どういうところから立証されての御意見なのか、ついでながら伺っておきたい。
  83. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) 今のボートの信憑性についての御質問は、私の説明について、あるいは若干の誤解があるのじゃないかと思うのです。私がそう考えているということではなくして、ILOの過去の批准なり、あるいは条約批准なりあるいは条約の実績を見た場合に、どうもつじつまが合わない歴史を持っている。それをどう解釈していいかというとき、私はそう解釈したと、御参考に申し上げた。私がそう思っているということじゃない。私がどう思っているかという御質問であれば、私は労使、政府それぞれ賛成するときは、実行し得るものを賛成するのがいいと、そういうふうに考えております。ただし、七十八カ国かの国が集まっておりますから、その国、その代表の性格、考え方、なかなかこれは一律には参りませんので、いろいろな考え方を持っている人もあり、いろいろな態度をとる人もありましょう、またそういう国もありましょう。従いましてILO条約というものは、直ちにその国を、各国を束縛するようになっていない。持って帰ってゆっくり研究して、その国に適応すれば批准する、適応しなければごめんこうむるということに、憲章がなっている。それだけの幅を持たしている。それがILOの性格だと私は思っている。それで大体よろしゅうございますか。  それからもう一つ、ソビエトの問題につきましては、これはILOの使用者グループで、ソ連には自由がない、従ってソ連の使用者代表なるものは、われわれの言う使用者代表とは認めがたいという満場一致の結論に達しております。それを御紹介しておきます。
  84. 片岡文重

    ○片岡文重君 私は不幸にしてこのILO会議出席をいたしておりませんので、出席をされた三城参考人にこういうことを申し上げるのは、あるいは釈迦に説法かと思いますが、少くとも私どもはこの翻訳をされた国際労働条約を拝見しますと、なるほどおっしゃるように、条約等の場合と勧告の場合では、先ほども私が申し上げた通り相当な違いがある。で、条約の形式をもってしては、相当表決に困難がある、持ち婦って多くの賛成が得られないという場合は、私は勧告の形をとるものと思うのです。言いかえれば、これはそういう二つの方法が認められておって、なおかつ条約の形式をとった場合には、少くとも勧告に比べて、条約の形をとったものについては、各国とも一日も早く批准手続をとるべき私は道義的な責任は少くともあるものだと思う。またそういう考えに立って、これを批准させる努力をしなければ、こういう会合は別に国際法上規制されるものでもない——たとえば海運条約であるとか、関税条約であるとか、郵便条約であるとか、そういうふうな相互に直接利害関係を持つ、従ってまた直接に双方かたく規制しているというような条約と違うのですから、一にかかってこれはその会議に参加している各国の道義的な誠意の問題にかかってくると思うのです。従って、これはあくまでもこの条約賛成を表した場合には、国内立法が直ちにこれの批准を許さないというのなら、その批准の可能になるように、立法措置を講ずるなり、現行法の改正をするなり、政府は率先してその努力をすべきであるし、国会はこれに協力をし、せっかく成立した条約案に対しては効力を生ずるように私はすべきだと思う。この点についての三城参考人の御意見一つ伺いたいのと、それからもう一つ、先ほどの表決の問題ですが、どうも先ほどの御意見でも、数の上にこだわっておるから、数や形の上ばかりでは、そういうことは言えぬのだということで、表決の内容に疑義があるということをおっしゃられたようですが、表決に参加する場合に、賛意を表するときは、やはりこれは内容としても望ましいものであり、国に持ち帰ってすみやかに批准手続をとるべきである、こうそれぞれの代表の諸君は考えられて私は賛成したものだと解釈しておる。ただ持ち帰った場合に、その国々の事情で、なかなか実現しなかった、こういうことであって、あくまでも、この表決に参加される代表の諸君は、真実にその案件は正しいものであり、好ましいものであり、われわれが代表として賛成をするのにやぶさかでない、進んで賛意を表するか、消極的に賛成を表するかは別問題として、少くとも真実にこれは正しいものだ、帰って批准をしなければならない、こういう考えに立って、私は表決に参加をし、賛成をしたものだと信じたいのです。けれども、たまたま持って帰ったその結果が、その国の事情によって批准できなかったということと、この表決の際に、そういうことを考えずに、道義的な責任考えないで、まあまあこの場合反対するも、数が少いし、格好が悪いから、賛成をしておこう、まあこんなものは持って帰ったってもしようがないけれども、理想だから手でもあげておこう、こういう不謹慎な態度であっていいのか。私は決してそんなものではないと思う。少くとも、使用者代表がもしもそういう、持って帰っても果して批准されるかどうかわからないのだというような懸念を持って今までの会議に参加されたとするなら、これは今までのこの条約に対して、はなはだしい権威の失墜でもあるし、言いかえれば、裏からいえば、だからこそ、今日までこれら重要な諸条約がさっぱり批准もできなかったのだ、少くとも日本の国においては、政府も使用者代表も、さっぱりこれに熱意を示されなかった過去の実績から見て、なるほどそういう御意見を伺ってみれば、もっともだとうなづけない節もないではないということにも私はなろうかと思う。しかし、これはひとり日本の使用者代表だけがそうであっても、この会議に参加される多くの代表者諸君は、私はそんな権威のないものではない、そんな不誠実なものではないと信じたいのです。私は三城参考人が、今もなお、そういう表決に当っての代表考え方というものがそんなに信念のないものなのかどうか、少くとも使用者側委員がそんなにも信念もなく、帰ってから批准の道義的な責任考えずに、今まで表決されてきたのかということについて、はっきりとした一つ意見を伺っておきたい。以上二点についてお伺いします。
  85. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) 先ほど私が申し上げましたように、私個人の考え方を申し上げたわけじゃなかったのです。過去のILOの歴史を私が見たときに、そういう解釈でもつくのか、そうでないと理解しにくい面があるということを申し上げたのです。私自体としては、ILOの使用者代表は最近に二度やりました。私に関する限り、持って帰って批准ができないと思って、しかしながら賛成するというような心境であったことはないのであります。それはあなたのおっしゃる通りに、私自身としては、政府代表も労使代表も、賛成する以上は、これは願わしいことだという考え方であるべきだということにおいては、同感でございます。
  86. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の三城さんの発言について、もう少し深く聞いてみたいと思います。  先ほど三城さんは、自分の立場を非常に申されました。私は、経営者のグループの代表であり、理事であり、副理事である、だから、まるで私らの受ける感じからいうと、全然日本の経営者の関係とは違ような立場で御発言があったわけです。私は、やはり何といっても三城さんが出てこられた、代表に選ばれる場合、理事に選ばれているという条件は、経営者の代表という、日本の経営者の代表という条件のもとに選ばれている立場だと思うのです。そこから離れて三城さんは副理事でもなければ代表でもないと私は思うのです。そういう立場からいうと、午前中の質疑が、非常にどうも私はお聞きしたいと思っておったのですが、午後になりましたが、非常にここへ出てこられた、副理事としておいでになったことは、これはそういう格好でございましょうけれども、あなたを出している基盤というものは、日本の経営者団体である、こういう工合に理解する以外に私はないと思うのです。だから、そういう立場で、今の、たとえば先日のILO理事会における第一項の決定、第二項の決定に賛成されたということは、何と言われても、ああいうものが必要だという立場賛成されたのだと私はそう思う。そういう工合に理解していいですね。
  87. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) その立場の問題につきましては、けさ申し上げましたときに、やや長くなりますので、省略いたしました。今御質問がありましたので、あらためて回答いたしますが、ILO理事会使用者側の副理事という立場と、ILO総会における使用者代表という立場は違うのでありまして、ILO総会における使用者代表は、これは日経連が政府に推薦して、そして政府に任命されて出て行く、政府の旅費において出て行くわけでありますから、あくまでもこれは日本代表部の使用者代表である。従って、日経連に基盤を持っております。総会において私の言動は、従って、日経連にまず直接つながっていると申してよろしい。しかしながら、総会におきましても、運用上は、藤田さんも御経験の通りに、使用者は使用者、労働者は労働者として、グループとしての自治に基いて意識統一その他やりますので、全部が全部日経連の意思とは申されない、これはやむを得ないのであります。しかしながら、理事会におきましては、これは日経連が推薦したわけではありませんし、日経連の代表という立場でもありません。使用者グループでだれがいいかということは、個人的な顔で選挙している。しかも、選挙したのは使用者グループというものが、グループというものがILOにおいてははっきりとした存在として認められている、公けに認められている。この公けに認められた使用者グループが互選してできたわけであります。従って、グループの代表といった方がいいのであります。会議に出ますのでも、日経連から辞令が出るわけでもありませんし、旅費が出るわけでもありません。全然私孤影しょう然として一人で行って一人で帰ってくる、こういうことであります。
  88. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうなりますと、飼手さんとの関係を私は伺いたい。飼手さんは理事会にしょっちゅう行かれるのは、原口さんもそうだと思うけれどもILOから旅費をもらって行っておられる。だから政府代表でもなければ労働者の代表でもない。そういう理屈と同じだと思うのです。しかし、いずれにいたしましても、ILOの使用者グループ、労働者グループで選ぶということの基礎は、日本の使用者代表であり、労働代表であり、政府代表であるという建前によって選ばれている、この原則がくずれてしまったら、私は話にならぬと思う。三者構成会議で、それでこそ選ばれている。私は、だから、その点はあなたはそうおっしゃるのですからこれは以上は言いませんけれども、そういう感じで、三者構成といううまみというものは私は生まれてこないと思うのです。日本の使用者を代表して、その代表者である三城さんを副理事とか理事とかに、世界の使用者グループが日本の使用者代表三城日本労働代表原口と、こういう工合にしてそのグループで選ぶのでありますから、そんな自分の基礎団体から浮いたような格好では私は代表ということにならないと思う。極端な発言をすれば、それじゃ使用者グループ、労働者グループでどんな職員でもそれでは代表にしておけばいいのですが、そうは私はいかないと思う。まあ、その問題はよろしゅうございます。  そこで私は三城さんにお聞きしたいのですが、ILOというのは、午前中少し申し上げましたから長くは言いませんけれども日本が再復帰するためにはこれを日本の国民に知らせ、認識をさせ、そして国際的な仲間入りをするということが私は基礎であって、ILO協会というものは、三城さんも相当運動された一人だと私は思うのです。それで、今日ILO国内普及するという機関から経営者が脱退をされ、経営者の中でもILOの問題に非常に熱心な人があって入ろうとする者は日経連が押える。きょうは日経連の代表者とおっしゃらないのだからこの問題は非常に私も話しにくいところなんですが、それじゃ日本の経営者団体としては所期の目的ということと、それから憲章や宣言の関係からいって、どういう工合にILOを見ておられるのかということが私は聞きたくなってきたわけです。なぜかというと、私はILOの、たとえばフィラデルフィア宣言の根本原則の(a)(b)(c)(d)と四つの問題が掲げられております。それから山本委員が、一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である。という、これは私は非常にいろいろなところに通じている問題だと思う。何といっても国際社会、貿易、日本の経済活動、それからそれが発展する各国との貿易活動という関係におきましてどうしても努力をしなければならぬし、この一員にならなければ日本の経済発展、繁栄もあり得ないじゃないかということは、根本的に……その当時の活動の中には日本の経営者もあったと思うのです。ところが、そこからきょうは脱退されるというのですから、日本国内普及する団体から脱退されるというのですから、そこのところが僕らにはどうしてもわからない。国際貿易について日本は昔チーブ・レーバー、ソーシャル・ダンピングということが非常に問題になりまして、最近におきましても日本の商品が私はこの問題だけだとは申し上げませんけれども、ボイコットを食っております。しかしその大きな、私自身が判断をした大きな壁というものは、これは苦汗労働の上において作られた品物であるというような形で、その国の労働団体が、労働組合が、そのボイコットに対する一役をかっているということも私は聞いている。そういう面からいっても国内的にはILOの最低基準を上げるということ、これが日本の経済回転に必要なものじゃないか、こう思っている。ところが、甘木の経営者団体はこのILO国内普及については熱心さがないと思う。だから、そこで私は日本の経営者団体ILOにとっておられる考え方と、ILO国内で国民に知らしめるというものに対する経営者の考え方を私は三城さんに聞きたいと思います。
  89. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) ちょっと、さっき藤田さんからの御質問があったのに対して、私の説明が不十分だったかもわかりませんが、ちょっと誤解があった点を、ほかの質問ですが……。私が、ILOの副理事における私の立場政府代表理事立場とは違うということを、政府代表に御迷惑をかけないという意味において説明しておいたのであります。労使はそれぞれ選挙であります。政府代表は必ずしも選挙ではなく、かりに選挙であってもその国を選ぶということであって、その個人を選ばない。使用者側の選挙は個人を選ぶということになっておりますけれども、その間に根本的な差異があるということを申し上げて、飼手参事官もそれじゃ政府代表しておられぬのかという質問でありますが、それは違いますと申しておるのであります。  それからあとの問題につきまして、ILO協会と日経連との関係については、けさも申し上げましたように、今席の私の立場、それからこの会合の趣旨その他から判断しまして、私はまた他の機会に藤田さんなんかとゆっくりお話してもいいと思いますが、きょうはその問題については申し上げません。ただ、先ほどからのどなたからかもありましたが、ILO自体に対する態度はどうか。私は、副理事という立場から考えまして、ILO自体については、できることは各国がこれに努むべきだということにおいては何ら異議はありません。それは、フィラデルフィア宣言にも書いてあります通りに、その国の経済社会状態の程度に応じてというようなことがうたわれております。そういう点も考えなきゃならぬ。それから、日本の貿易云々の話については、私は専門家でないからよくわかりませんけれども、私がごくわずか聞いております範囲内においては、今は最低賃金の問題であるとか、あるいは低賃金の問題において日貨排斥が行われているという情報は私はあまり見当りません。むしろ日本の物が安い。安いから、その国の産業を保護する上において問題になっている。その安い原因にはいろいろありましょう。原因はありましょう、けれども、特に日本の賃金基準が云々だからというようなことでやっているということはあまり私は見受けない。まあ私がはなはだ寡聞だから何とも申し上げられませんが、そういうような感じがしております。これは御参考に、回答にならないと思っておりますが。
  90. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、非常に経営者団体としての発言については控えられているようですからこれ以上私は追及はできませんけれども、しかし私は、それじゃむしろ三城さん自身にお尋ねしたい。今日の機械化の水準というものは、それは全部とは言いませんけれども、近代生産手段のオートメーションの段階においては、私は進んだもので、日本においては外国と大体同じ水準の機械で生産が行われているところが多いと思うのです。それでいて、たとえば賃金の形態を見ますと、五大工業国と言われて、十大産業国と言われている日本の国の賃金の状態は大体欧州の四分の一ですね。アメリカの十分の一くらいでしょう。賃金が安い、要するに生産が安いということはいろいろ、原因があるということで、あなたぼやかされましたけれども、根本的にそういう問題というものをつかんでものを言おうとなさらない。あなたもILO理事会にしょっちゅうお行きになって、国際的な労働保護基準という問題についてよく私は御存じだと思うのです。だからそういう点から言っても……私は三城さんの経営者団体としての発言をきょうはせないとおっしゃいますからこれ以上追及いたしません。  それじゃ、もう一つ私はお伺いしておきたいのですが、先ほど片岡委員から少し触れましたけれどもILOには要するに条約勧告決議という三つのものがあります。しかし、勧告というものは、少し水準を高くしてそういうものを実現するための勧告形式、条約という形式をとる場合には、その国の三分の二の決議が要るのですし、それからまたいろいろと配慮をして条約というものが作られているのがこの歴史だと思う。条約を作るときには、そこに参加する国は、特別な国は別といたしまして、大多数の国がそれが実行できるという条件のもとに条約というものが作られてきていると、私はそう感じます。そうなってくると、この政府、労使の代表の三者でそれくらい配慮をされてこの条約というものが作られている。この宣言の一番あとにも三城さん何回も繰り返されました「経済的発達の段階を充分に考慮して決定すべきであるとしても、」という条項がございます。ございますけれどもILO総会における手続、努力というものは、私は最善の努力をしてですね、だから……総会たんびに条約がきめられるわけではありません。私も行きましたときには条約はありませんでした。この議題は勧告でおいておこうということで、多くの勧告がきめられました。それくらい配慮してきめられる勧告を、われわれがむしろ十大国なら、その勧告を実施する、どうしてするかという立場にあるのが、日本世界に置かれている位置だと思う。ところが、それ以上もう一つ配慮してきめられているのが条約なんですね。だから私はその条約に対して、三城さん個人としても積極的にこの条約批准という問題には、もっともっと、むしろ執行部機関ですから積極的に国内において批准するについては努力される立場にあるのじゃないかという工合に私は思うのですが、どういうことでしょうか。
  91. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) はなはだ抽象的な御質問ですが、それはこの条約なるものに私ども賛成した場合には、国内においてこれが批准されるというようなことは願わしいことだと思う場合もありましょうし、必ずしもそう一がいに言えないこともありましょうが、この条約の取扱いについては、まあ主としてこれは政府が処理することになっておられる。われわれ個人としても個々の場合にいろいろ申し上げるということは相当慎重を要する。ただ一般論としては、自分の賛成した条約であれば、そういう条約国内において実施されるということはこれは異議のないことだと思います。
  92. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、三城さんは賛成した条約と、こうおっしゃいましたけれども、今日、今の民主主義のルールで、多数によってものをきめるというのが民主主義のルールだと思うが、そうかといって数の多数で何でもかんでも押していいかというと、それはそうもいかない問題でございます。だからそこで配慮されて、三分の二の議決を必要として手続が十分に踏まれるわけですね、ILO総会では。だから私は三城さんの立場、今のフリーという立場からいえば、ILOが三分の二以上の多数によってきめた条約というものは、私は王城さん個人のILOとの関係においても、よし自分が少数で破れたといえども努力されるという立場におられるのじゃないのですか。
  93. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) お答えいたします。必ずしもそうは思っておりません。理事会における使用者側理事というものは、自分たちが反対した条約、そういうものに対しては必ずしも本国に帰ってこれが多数できまったから直ちにこれらの批准促進なんかに積極的に個人として努力するとか何とかいうようなことはみな考えていないようです、私どもの同僚は。私も個人としては自分で反対した条約、そういうものが日本国内において直ちに、これに反対したけれども多数できまったから批准促進を政府に進言するとか、あるいは所属団体に進言するとかいうことをしようとは現在のところ思っておりません。
  94. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうなりますと……それはよくわかりました。積極性がなくとも道義的義務がありますね。ILOという民主的な機関で多数決できめたものに対しては、参加している代表、特に執行部機関のあなた自身は、そういう道義的、それを守っていこうという義務があると私は思うのですが、どうですか。
  95. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) その点においては、私はあまりはっきら申し上げられるほどの決心を持っておりません。
  96. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それじゃもう一つだけ三城さんに聞いておきたいと思うのです。  国内においてILOできまった条約勧告というものですね、まあそれはいろいろ今のような御意見があるのですけれども、しかしILO活動というものを普及されるにはどういう工合にして普及しようとお考えになっているのですか。
  97. 三城晃雄

    参考人三城晃雄君) その点は、けさほども私はたびたび申し上げたかと思うのですけれどもILOは御承知通り政府中心になっておりますので、政府中心になって国内において普及されるべきものだ。それから使用者側使用者側の角度から普及宣伝をする、それでしかるべきだと思っております。
  98. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ、意見が対立しますからそれはやめておきますが、原口さんに、今の私が質問したことについて原口さんどう考えますか、国内における普及の問題について。
  99. 原口幸隆

    参考人原口幸隆君) やはりこれは午前中にも申し上げたように、せっかく経営者も賛成をして協会というものを作ったのですから、やはりこの協会を中心にみんなで盛り立てていくということが必要だと思います。そうしてやはり結社の自由が今論ぜられておるわけですが、やはり協会に入りたいという——それが経営者の側であってもそれに入ってはいけないということは行き過ぎじゃなかろうか、少くとも。それこそやはり結社の自由を束縛するものではなかろうかというふうに思うのです。団体には団体の自由がありますから、それは都合によっては脱退されることもあるでしょうけれども、しかし個々においてはやはりこの原則を守っていただきたいというふうに思っております。
  100. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 飼手さんにお聞きしたいのですが、原口さんの発言の中に、非合法活動刑事罰にするという提案を、これは理事会でしたか、政府代表がされて、全部の理事反対にあったということを言われたのですが、その当時のいきさつを原口さんと飼手さんからお聞かせ願いたい。
  101. 飼手真吾

    説明員飼手真吾君) お答えいたします。  このことについては、原口さんとしばしばお話し合いをする機会があって、十分誤解を解いていただいておると思うのすが、いまだにそのお話が出て参りまして、非常に私は残念に思っておるのですが、わが日本政府が修正案を出しましたのは、詳しくお話しますと、強制労働条約の草案の中に、同盟罷業ストライキに参加したゆえをもって強制労働を課してはならないというような条文があるのですが、そのストライキという言葉がただ同盟罷業と書き放してあるのです。しからばストライキと名のつく非合法な争議行為にも強制労働、すなわち懲役、刑罰を課してはならないというのかという疑問があるわけです。現にわれわれ極端に言えば、軍隊に、あるいは警察に、あるいは公務員に争議権が禁止されてある、国内法律で適法に禁止せられてある争議行為をやったがゆえに刑罰をも課することができないということでは、国の秩序が保てませんので、その点を明確にさしたいということで、ただし書きを提案したのです。そのただし書きは、法律上適法に禁止された争議を行う場合においてはこの限りでないといったただし書きを提案したのであります。それに対しては、なるほど原口さんの言われる通りに、どこからも賛成がなかったのですが、賛成がなかったのは、そのことは自明の理だ、条文には書いてないけれども法律禁止されてある争議をやって、そのために刑罰を受けるのは自明のことではないか、従ってその提案は引っ込めた方がいいのじゃないかというのが参加者の意見であったので、政府はそのように措置をしただけのことなんであります。そのことを現在政府が何か刑事罰をもって争議を弾圧しようとしておるというようなお考えとは全然無関係である。政府はきわめて善意のもとに確かめた。われわれは賛成する以上はしっかり批准もしていきたいし、批准のできないものをなまはんかに賛成もしたくないので、その点をしっかり確かめたいという趣旨においてそのような提案をしたわけなんで、他意のない点を御了解いただきたい。
  102. 原口幸隆

    参考人原口幸隆君) 非合法の争議行為に従事した者に刑事罰を加えるという修正提案政府がしたときには、時あたかも国鉄の役員に対する刑事罰をするんだという政府の、何というか、おどかしというか、宣伝がなされていた最中なんですね。従ってわれわれとしてはどうしてもこの問題にいろいろの——もしかりにそれが通ると、これを利用されてさらに国内においてこの問題を拡大される危険性があるという意味で、重大関心を持たざるを得なかったわけです。それで今、政府の方で説明されましたように、あの委員会の中では、私の理解するところでは、そういう争議行為については現実に刑法がある、従ってその法律に照らして処罰すればいいではないか、特別に現状の刑法以外にそういう刑事罰の特別の法規を作る必要はないという理由のもとに、私は否決されたというふうに理解をするわけです。従ってこの問題については、国内においても当分言い出されませんでしたが、最近の新聞によれば、田中郵政大臣はまた刑事罰云々ということを新聞で拝見いたしましたが、やはりそういう考え方というものが、私は去年の総会のこの問題から糸を引いておるような気がするわけです。従ってこの問題は、私は場所をとらえてはこの危険性について報告をしなければならないという立場にあるわけです。
  103. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 川西さんにお尋ねしたいんですが、今のILO協会のお仕事ですね、お仕事は大体どれくらいのスケールで、どのくらいの活動をおやりになっているか、ちょっとお話を願いたい。
  104. 川西実三

    参考人川西実三君) 具体的の数につきましては私はなはだ申しわけないんですが、関係をいたしておりませんので急には……、幸いにその協会の事務を扱っております者がこの室内におりますから、その人にかわって説明をさせることをお許しをいただきたいと思います。
  105. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) どうぞ。
  106. 工藤幸男

    参考人(工藤幸男君) 私はILO協会職員であります工藤でございます。川西副会長にかわりまして御報告いたしたいと思います。  日本ILO協会の現在の事業の主要なものは、ILO並びに海外の労働風情を国内普及、啓蒙する、こういうことでございまして、その具体的な方法としまして刊行物を出版する。月刊雑誌としまして世界労働という雑誌、それから不定期刊で調査資料、あるいは年に一回国際労働経済統計年鑑、そのほかに単行本も出版するというような、出版物の発行を通じまして、ILOの諸活動、あるいは外国の労働事情等々、普及していく、こういう事業を、やっております。それからもう一つは講習会、講演会の開催によって、国際労働問題に閲する認識を関係者に与えていくという活動をやっておるわけであります。  それから、その規模でございますが、現在財政的には、年額約五百万円程度の財政規模をもって、全国の主要府県に支部を置きまして、そして展開しておるわけであります。以上。
  107. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は原口さんに一つお尋ねしたいのですが、労働問題懇談会でこの問題を検討されているということを聞いておるのですけれども原口さんもそれの委員じゃないかと思うのですけれども、間違っておるようでしたら何ですが、もしも委員であったら、どういう工合に今の八十七号と二十六号ですか、検討されておる段階か、ちょっとお聞きしたい。
  108. 原口幸隆

    参考人原口幸隆君) 私は労働問題懇談会委員であり、同時に今の小委員会委員です。しかしその委員会のまだ結論が出ておりません。従って報告の段階にきておらないのです。ほんとうは前田委員長ないし石井委員長代理が来られて申されるのが適当だと思いますので、私の立場報告するのはどうかと思われます。
  109. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでけっこうです。
  110. 原口幸隆

    参考人原口幸隆君) ただ抽象的に申し上げますと、一昨日ありました小委員会では、八十七号条約とは、一体どういう点に中心があるのかと、それをまず統一しようということで三つの点が、きまったのじゃなくて、作業の途中におけるきまり方をしておるわけです。一つは、あの条約がストライキ権を含むか含まないかという点については、すぐストライキ権とは結びつくものではない、しかしまた切り離せるものでもない。ただ形式的な批准の問題からいけば、必ずしもストライキ権に触れないでも、批准できるという見解に到達したと、それからもう一つは、団体結社を自由に作り、自由に役員を選べる点がこの条約の骨子であるという点を確認をいたしました。それに基いて次回において関係条文を整理するという段階でございます。
  111. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本日御出席参考人の各位に対する質疑はこの程度にいたしたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  参考人各位には、長時間にわたり御多忙のところ貴重なる御意見を聞かしていただいてましてまことにありがとうございました。厚くお礼申し上げます。
  113. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法の一部を改正する法律案、労働基準法等の一部を改正する法律案、以上二案を議題といたします。  提案理由の説明を願います。
  114. 大矢正

    委員外議員大矢正君) ただいま議題となりました、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由の御説明を申し上げます。  金属鉱山等遊離珪酸粉塵を発散する作業場において働く労働者に背負わされ、二度かかれば現在の医学では治療の方法がなく、最後には自己の用も弁じ得ず、ただ病床に伏して生涯を終らなければならない悲惨な宿命的な職業病がけい肺であります。  しかして、このけい肺については第二十二特別国会において、人道的見地からこの特別保護法が制定され、格別の保護が加えられておりますことは御存じ通りであります。  しかしながら本法施行後二年半を経過いたしました今日、けい肺保護の実情を見てみますと幾多の問題がございます。まず、その療養の点につきましては、昨年秋以来問題となっておりますように最近における医学の進歩に伴い、特に胸部疾患に対する新薬の発見等によって、けい肺に対する治療の方法が改善され、けい肺患者の余命年数が著しく延びて参りました。従って、現行法に規定する二カ年の療養給付期間では、けい肺患者についてその療養を全うし、これを保護せんとする趣旨を達することができないうらみがあります。  次に、療養中の生活の保障につきましては、不治を宣言されたけい肺患者の悲惨な実情等を見、また、けい肺の職業病としてのきわめて特殊なその性格を考えますと、その休業補償等が一般の労働災害の場合と同一に取り扱われることは実情に沿わず、何らかの特別措置によりまして、保護の改善を要するものと考えられます。  次に、病勢の進行を防止するための作業の転換の制度につきましては、現行法に規定する三十日分の転換給付を支給しても、転換後の賃金が通常著しく不利となること、及び企業内において適当なる他の作業につくことが困難であるため、転換を必要とする労働者が多数発見されているにかかわらず、転換の実施がきわめて困難な状況にありまして、何らかの措置により、これらの困難を排除し、その円滑な実施をはかる必要を痛感いたします。  さらに、最も根本的な問題といたしましては、けい肺から、それが不可避の職業病である、また、不治の病であるという烙印を一日も早く取り除くべく、現代の医学その他の知識を動員し、関係機関等が結集して最善の努力がなされなければならないのでありますが、その統一的総合的研究体制の確立という点については、現在はなはだ不備なものを感ぜざるを得ず、何らかの措置が必要と考えます。  以上の理由によりまして、ここに、本改正案を提出し、早急に所要の是正措置を講じようとするものであります。  次に、本法案によるおもなる改正点について申し上げます。  第一に、療養給付は従来二年間に限定してありましたが、これを療養を必要と認められる期間は引き続き行うことに改め、また休業補償等については、現在の平均賃金の六割を八割になるように加給を行うこととし、かつ休業給付の支給期間を、二年より五年に延長することにいたしました。  なお、外傷性せき髄障害につきましても、悲惨な境遇にある点においてけい肺と同様でありますので、あわせてけい肺と同様に措置することといたしました。  第二に、作業転換の勧告を受けて粉塵職場を離れる労働者に対しては、勧告時の平均賃金の三〇%を限度として、転換前後の賃金の差額に相当する金額を転換給付として毎月支給すること、及び政府の就労施設の設置義務を明確にしてその強化拡充をはかること等によって、作業転換の制度が労働者の賃金の減少と失職の犠牲を伴うことなく行われ得るようにいたしました。  第三に、けい肺審議会に、けい肺予防対策専門審議会を設け、けい肺予防を統一的かつ効果的に推進せしめることにいたしました。  以上が本法律案の提案理由及びその内容の概要でありますが、御存じのごとく現行法の療養給付期間がすでに切れてしまった悲惨な患者が多数発生しておりますので、一日も早く、実情に即し、できるだけ特別の保護を加えたく念願するものであります。  何とぞ御審議の上すみやかに可決せられんことをお願い申し上げます。  次に、労働基準法等の一部を改正する法律案につきまして提案理由を御説明申し上げます。  近代の産業におきましては、労働者の業務上の災害防止について万全の措置を講じましても、なお、災害の発生を避け得ない実情にあります。それゆえに労働基準法は労働者が業務上の災害を受けました場合において、使用者に対しその補償の義務を負わしめることにより、労働者に対する公正なる補償を規定しておるのであります。  この補償額の決定に当りまして、その基準となる平均賃金の算定には事故の発生した日を基準とするのでありますが、けい肺その他治療に長年月を要する傷病の場合におきましては、その間における経済情勢の推移等により、賃金が変動いたしますと、労働者に対する公正なる補償を行わんとする趣旨に沿わぬことになりますので、さきに昭和二十七年本法の一部を改正せられまして補償額の算定に関しスライド制を採用せられておるのであります。  しかしながら、このスライド制は現在、休業補償に関してのみ認められ、しかも賃金変動の幅を二〇%と規定いたしておりますが、労働者の災害補償の公正を期するためには、スライド制を単に休業補償に限るべきでなく、その他の補償についても、認められるべきであり、また、スライド制における賃金変動の幅も、現行の二〇%を一〇%に改訂する方が適当であると考えるのであります。  右の理由によりまして、労働基準法及び労働者災害補償保険法の一部を改正して、休業補償、障害補償、遺族補償、非祭料の支給、打切補償等を行うときにおいて、平均給与額が百分の十をこえ、または百分の九十を下るに至った場合には、その上昇しまたは低下した比率に応じて平均賃金をスライドせんとするものであります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  115. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 両案に対する質疑は、次回後にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議なしと認めます。   —————————————
  117. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、職業訓練法案を議題といたします。  本法律案は、政府から提案理由の説明はすでに聴取いたしておりますが、その後衆議院において修正送付されましたので、衆議院における修正点について衆議院の修正案発議者から御説明を願います。
  118. 井堀繁雄

    衆議院議員(井堀繁雄君) ただいま議題になっております職業訓練法案に対する自由民主党、日本社会党の共同提案になります修正案について御説明申し上げたいと思います。  修正の個所につきましては、事前に皆さんのお手元に配付しております修正案文で御了承願うこととして、改正の要点をかいつまんで御説明申し上げたいと思います。  重要な改正は、次の三点に集約することができると思います。一つは、政府原案第十一条の第二項中に身体障害者の職業訓練においてその訓練中に手当を支給することができるという原案に対しまして、身体障害者に限らず、一般の公共職業訓練に従事している者にも手当を支給することができるように改めたのであります。この条文は修正案文によって御了承願いたいと思います。  第二点は、原案によりますと、市町村や労働組合がこの事業を行うことができない点を改めたのであります。第十二条を新しく設けまして、市町村等の行う職業訓練ということで、市町村、民法第三十四条の規定によって設立しております法人、さらに法人である労働組合その他の営利を目的としない法人が職業訓練を行う場合を新しく規定いたしたのであります。この規定は公共の職業訓練と同一に扱うことを定めたものであります。条文については以下別紙で御了承を願いたいと思います。  第三の問題につきましては、政府原案第二十九条を新しく三十条に改められるのでございますが、ここでこの原案によりますと、中央職業訓練審議会の方でありますが、この審議会の構成なり、性格に対して修正を加えたものでありまして、原案によりますると、労働大臣が学識経験者と関係官庁の職員をもってその委員会を構成することになっておりましたものを、修正案では、委員関係労働者を代表する者と、関係事業主を代表する者及び学識経験のある者のうちから労働大臣が任命するというふうに改めたのであります。そうして、関係労働者を代表する委員及び関係事業主を代表する委員は、おのおの同数でなければならぬことを定めたものであります。さらに、これを補強する意味で、特別委員を置くことにいたしまして、特別委員は、関係行政機関職員のうちから、労働大臣が任命する。しかし、特別委員決議に加わることができないことを定めてあるのであります。  以上が、この法案の修正のおもなる点でありまして、他の点につきましては、修正案文で御了承を願いたいと思います。以上簡単でございますが、説明を終ります。
  119. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、政府委員から、本法案の細部説明を聴取することにいたします。御説明を願います。
  120. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) 職業訓練法案の細部につきまして、補足説明を申し上げます。  職業訓練法は、御案内のように、第一章から第七章になっておりまして、第一章が総則、第二章が公共職業訓練、第三章が事業内職業訓練、第四章が職業訓練指導員、第五章が技能検定、第六章が職業訓練審議会、第七章が雑則、こういう構成になっております。  それで、第一章から逐次御説明申し上げたいと思いますが、第一章の総則におきましては、この法案を通ずる、いわゆる総則的な一般的事項を規定いたしております。  第一条の目的でございますが、「この法律は、労働者に対して、必要な技能を習得させ、及び向上させるために、職業訓練及び技能検定を行うことにより、工業その他の産業に必要な技能労働者を養成し、もって、職業の安定と労働者の地位の向上を図るとともに、経済の発展に寄与することを目的とする。」こういうふうに規定してあるのでございまして、すなわちこの法律目的とするところは、労働者に対して技能を習得させ、または向上させるということが重点になっておりまして、そのために職業訓練と技能検定を行うことによって、工業その他の産業に必要な技能労働者を養成する。それを通じて労働者の職業の安定と労働者の地位の向上をはかるというところに目的を置いておるのでございます。  第二条の定義でございますが、この法律の体系といたしまして、一つの大きな柱は、公共職業訓練でございます。もう一つの大きな柱が、事業内職業訓練でございまして、大別いたしますると、この二つの体系に職業訓練を分けております。公共職業訓練とは、第二章以下に詳細に規定してございますが、いわゆる雇用関係にない求職者——失業者を含むところの求職者に対する職業訓練が公共職業訓練でございまして、この公共職業訓練は、国、都道府県、労働福祉事業団が責任をもって実施する、こういう立て方でございまして、その訓練の施設といたしましては、一般職業訓練所、総合職業訓練所、中央職業訓練所及び身体障害者職業訓練所、このような施設を通じて、求職者のための公共職業訓練を行う、これが一つの大きな柱でございます。もう一つの、事業内職業訓練は、現に事業に雇用されまして、雇用関係にある労働者に対して事業主が行う訓練が、事業内職業訓練でございまして、これは第三章に詳細に規定をいたしております。  それから第三条の職業訓練の原則でございますが、これは職業訓練に通ずる原則を明らかにいたしたものでございまして、その第一項におきましては、求職者に対する公共職業訓練と、事業内で実施する職業訓練とが、相互に密接な関連のもとに行われなければならないという原則を明らかにいたしました。第二項、第三項におきましては、これらの職業訓練と重要な関連を持つ学校教育との関係を明らかにいたしたものでございまして、すなわち、第二項におきましては、学校教育法による学校教育との重複を避けると同時に、これと積極的な、密接な関連のもとに行われなければならないということを明らかにいたしております。第三項におきましては、公共職業訓練と、青年学級振興法による教育とは、重複しないように行われなければならないという原則を明らかにいたしております。  第四条の職業訓練計画は、経済五カ年計画との関連もございまするが、要するに、労働大臣は、国の雇用及び失業の状態、工業その他の産業の発達に応じて、その状態に適合するところの技能労働者養成の計画を立てなければならないということを明らかにいたしたのでございますが、それを受けまして、各都道府県におきましても、その都道府県知事は、管内における技能者養成の訓練を定めなければならないということを第三項において、明らかにいたしたのでございます。  以上が、総則でございまして、次が、第三章の公共職業訓練でございますが、これは、先ほど御説明いたしましたように、雇用関係にない求職者に対して行う訓練でございます。  第五条は、一般職業訓練所、これは現行の職業安定法におきまして実施いたしておりまする、いわゆる職業補導所と言っているものでございますが、全国に二百五十八カ所設置されております。これをこの法律の施行によりまして、一般職業訓練所というふうに名称も変える。同時に、その内容におきましても、この際、一段の整備充実をはかる、こういう趣旨でございまして、この一般職業訓練所におきましては、第一項に明らかにいたしておりまするように、求職者に対して、基礎的な技能に関する職業訓練を行う。第二項以下が、従来の補導所におきましては見られない規定でございまして、ここに、先ほど説明申し上げました第三条の、職業訓練の原則において明らかにいたしておりまするように、公共職業訓練と、事業内職業訓練とは、相互に密接な関連をもって行うというこの原則を体しまして、第五条第二項第一号におきまして、雇用労働者に対して、基礎的な技能に関する職業訓練を行う。それから第二号におきまして、事業内職業訓練についての援助に関する業務も行う、こういうことを新たに規定いたしておるのでございます。  第六条の総合職業訓練所は、御承知労働福祉事業団が設置いたしておりまするところの、いわゆる総合職業補導所と言っている施設でございますが、全国で三十三カ所設置されております。これは、各府県の職業訓練のセンターとして、将来仕事を進めて参りたいと考えている施設でございまして、少くとも各府県に一カ所ずつは設置していきたい、こういう考えのもとに、現在その施設の整備を推進しているものでございます。  第七条は、中央職業訓練所でございますが、これは、職業訓練に関する基本的な調査及び研究を行う中央機関として、中央に一カ所設置するものでございます。それと同時に、職業訓練の一つのネックになっておりまする職業訓練指導員の訓練をここでやって参りたい、こういうものでございます。  それから第八条の身体障害者職業訓練所は、現在全国に八カ所設置されておりますが、これは、そのままこの法案で吸収いたしておるものでございます。  次に、第三章の事業内職業訓練でございますが、この事業内職業訓練は、現在までは労働基準法に基礎を置きまして、いわゆる技能者養成として実施されておった制度でございますが、これをこの際監督的な条項と切り離しまして職業訓練の一つの大きな柱としてこの訓練法に吸収いたした事項でございます。いわゆる、監督ではなしに、積極的に国なり都道府県が援助、助成をして事業内の職業訓練を振興して参りたい。こういう考え方のもとに第三章が設けられておるわけでございます。  十二条におきまして事業内職業訓練の基準労働省が定める。  第十四条は、その定められた基準に合致したものにつきましては、都道府県知事が職業訓練を認定いたしまして、その認定された職業訓練については、あとの条文で出て参りますが、各種の総合的な援助、助成の措置を講じて参りたい、こういう構成になっておるのでございます。特に、新しい規定といたしましてはこの十五条があるのでございますが、これは職業訓練の一つの大きな問題となっておりまする中小企業の行う職業訓練に対する掛買でございます。大企業は御承知のように、自分の力で必要に応じてどんどん職業訓練をやっておるわけでございますが、中小企業、特に零細な事業主におきましては単独の力では思うように職業訓練をやっていくことができない、これが中小企業の事業主にとっての一つの大きな悩みであるわけでございます。  そこで中小企業の総合的な助成振興対策の一環といたしまして、この職業訓練の分野において中小企業に対する積極的な助成措置を講じていきたい、これが第十五条でございます。そういう中小事業主が共同で職業訓練をやるという団体を組織した場合は、これをこの法律によりまして認定をいたしまして事業主とみなす、この法律の適用については事業主とみなす、そうしてこの共同職業訓練団体に対しましては、後ほどに出て参ります第三十二条の補助金の規定におきまして、これらの共同職業訓練団体には国と都道府県が経費の一部を補助するという規定が第三十三条の二項にあるわけでございますが、そういった助成措置も講じて参りたい、これが第十五条でございます。  それから第一九条が事業内職業訓練のもう一つの柱になるわけでございますが、これはいわゆる熱練工養成の課程を終了いたしました後におきまして、科学技術あるいは技能の進歩発展に即応する追加訓練、再訓練または職長訓練、こういうような短期の訓練を実施いたしまして、一そうの訓練の技能の向上をはかって参る、こういう趣旨の規定が第十九条でございます。  第四章は職業訓練指導員の章でございますが、これは、現在のわが国におきまして、職業訓練の一つの大きなネックが優秀な指導員が得られないという点にあるのでございまして、これを今後、積極的に職業訓練指導員の資質を向上させまして、十分な職業訓練を担当する能力を付与して参りたい、こういう考え方から第四章が設けられておるわけでございまして、免許制をとる、その免許につきましては実技試験と学科試験を実施いたしまして、それの合格者に指導員の資格を与えていく、こういうのが大きな一つ考え方でございます。  第五章が技能検定でございますが、これはわが国としては初めての試みになっておる条項でございます。欧米その他の主要産業国におきましては、つとにこの技能者養成との関連におきまして、技能検定制度が確立されまして、職業訓練の一つの大きな支えとなっておるのでございますが、遺憾ながらわが国におきましては、今までこの技能検定に関する制度もないという状態であったのでございまして、この際総合的な職業訓練制度を確立するためには、その一環として国家によるところの技能検定制度を確立したい、こういう考え方のもとに第五章を設けたのでございます。技能検定は、実技試験と学科試験によって行いまして、これに合格した者には合格証明書を交付すると同時に、合格者は技能士と称することができる、こういう規定を設けておる次第でございます。  第六章が職業訓練審議会でございますが、以上申し上げましたような、この法の施行に関する重要事項、たとえば職業訓練計画、職業訓練の基準その他技能検定等の重要事項を調査審議するために、中央に労働大臣の諮問機関として中央職業訓練審議会を設置する、これが先ほど井堀委員から御説明のございました衆議院におきまして修正をせられた条項でございます。原案は学識経験者から委員を任命するということになっておったのでございますが、修正によりまして三者構成、官庁の職員が入りまするから四者構成になったわけでございます。  それから第三十一条におきまして、中央に準じて、都道府県にも都道府県職業訓練審議会を設置する。  大体以上が訓練法の主たる内容でございまして、あとは従来の職業安定法、労働基準法等関係条文がこの職業訓練法に吸収されますので、その関係の条文の整理、それから新制度と旧制度との切りかえのための経過措置というのが雑則として付則以下に規定されておるのでございます。
  121. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 衆議院における修正点を含めて、本案の質疑は次回以後にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十八分散会    ————・————