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1958-03-13 第28回国会 参議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十三日(木曜日)    午前十時四十三分開会     ―――――――――――――   委員異動 本日委員大谷贇雄君辞任につき、その 補欠として紅露みつ君を議長において 指名した。     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            木島 虎藏君            山下 義信君    委員            草葉 隆圓君            鈴木 万平君            高野 一夫君            谷口弥三郎君            西岡 ハル君            片岡 文重君            木下 友敬君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            山本 經勝君   国務大臣    労 働 大 臣 石田 博英君   政府委員    農林省畜産局長 谷垣 專一君    労働政務次官  二階堂 進君    労働大臣官房長 澁谷 直藏君    労働省労政局長 亀井  光君    労働省基準局長 堀  秀夫君    労働省婦人少年    局長      谷野 せつ君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    農林省畜産局競    馬官      竹内 直一君    通商産業省通商    局次長     中山 賀博君    労働省労政局労    働法規課長   辻  英雄君    日本国有鉄道常    務理事     吾孫子 豐君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○日本労働協会法案内閣送付予備  審査) ○最低賃金法案内閣送付予備審  査) ○労働情勢に関する調査  (新卒業少年等集団就職に関す  る件)  (ILOの問題に関する件)  (競馬場馬丁等の労働問題に関す  る件)     ―――――――――――――
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいまから委員会を開きます。  委員異動を報告いたします。三月十三日付をもって大谷贇雄君が辞任され、その補欠として紅露みつ君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 日本労働協会法案議題といたします。提案理由説明を願います。
  4. 石田博英

    国務大臣石田博英君) ただいま議題となりました日本労働協会法案につきまして、その提案理由及び内容大綱を御説明申し上げます。  戦後わが国労働運動は、飛躍的な発展をいたし、労使関係も次第に改善されて参ったのでありますが、なお一部には労働組合運動を頭から否定してかかる使用者もあり、またその反面、労働組合側の行き過ぎた行為もなしとしないのであります。  さらに国民一般も、労働問題に対する理解の足りない面があると同時に、これに対する正しい批判の眼も十分養われていない状況にあります。このような状況下におきまして、近代的労使関係確立を促進いたしますためには、労使はもとより、国民一般の労働問題に対する理解良識とをつちかうことが不可欠の前提条件であると信ずるのであります。  従いまして、政府といたしましては、従来とも鋭意労使及び国民一般に対し、いわゆる労働教育に努めて参ったところであり、また今後ともこれを継続する所存であります。  しかし労働教育には、その性質上、また技術上、政府または地方公共団体が行うことを不得手とする分野も少くございません。また、わが国におきましては、労働問題に関して、確固たる基礎をもつ専門研究機関はほとんどないと言ってよい状態であります。そこで、これらの分野を中心として、公正かつ科準的な研究を行うとともに、これに基きまして、労使及び国民一般の労働問題に関する理解良識をつちかうことを目的とする専門団体を設置することがぜひとも必要と存ずるのであります。  以上が今回、日本労働協会を設置いたすこととし、その根拠法規として、この法案を提案いたした理由であります。  次に、法案内容について、概略御説明申し上げます。  この法案は、以上申し述べましたような目的をもつ日本労働協会を設置することを定めるとともに、その組織、業務財務会計等に関し、所要規定を設けることとしたものであります。  すなわち、第一に、日本労働協会は、これを法人といたしますとともに、これに十五億円の基金を設け、政府が全額出資することといたしております。この協会活動は、その性質上もとより営利を目的とするものではございませんので、収益による自立は到底望みがたいところでありまして、財政的援助を必要とすることは申すまでもありませんが、他面、この協会目的を達成いたします上においては、事業継続性を確保するために、政府基金を出資し、その利子によって事業運営することといたすこととしているのであります。  第二に、協会の役員としては、会長一人、理事五人以内及び監事二人以内を置くこととしていますが、会長理事及び監事は、労働問題について公正な判断を下すことのできる学識経験者の中から任命することといたしております。  さらに、会長及び理事をもって組織する理事会を設け、重要事項をすべて審議決定することとするほか、別に十五人以内の学識経験者をもって組織する評議員会を設け、広く労使関係者意見が反映されるようにし、協会運営の適正を期することといたしております。  第三に、協会業務といたしましては、労働問題に関する研究及び資料の整備を行うこと、労働問題に関し出版及び放送を行うこと、労働問題に関する講座を開設すること、労働組合使用者団体等の行う労働教育活動に対して援助を行うこと等といたしております。  第四に、協会財務会計簿につきましては、政府が多額の出資をいたすことにかんがみまして、予算、決算等会計上の重要事項について、労働大臣の認可または承認を受けることを要することとするとともに、労働大臣が必要な命令等をすることができることとし、協会の管理を適正ならしめることといたしております。しかしながら、この命令につきましては、協会業務性格にかんがみ、その運営自主性に不当に干渉することのないよう特に明文をもって規定いたしております。  このほか、協会に対する免税措置等所要規定を設けることといたしております。  以上、本法案提案理由内容大綱を御説明申し上げたのでありますが、何とぞ御審議の上すみやかに可決せられんことを御願いいたします。
  5. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本案質疑は、次回以後にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。     ―――――――――――――
  7. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、最低賃金法案議題といたします。  提案理由説明を願います。
  8. 石田博英

    国務大臣石田博英君) ただいま議題となりました最低賃金法案につきまして、その提案理由及び概要を御説明いたします。  終戦以来わが国における労働法制は、労働組合法労働関係調整法労働基準法など急速に整備されたのでありますが、これらの法制により近代的労使関係確立され、また産業合理化を促進し、わが国経済復興に寄与するところ少くなかったことは、否定し得ない事実であります。  労働基準法は、労働条件最低基準について詳細な規定を設けているのでありますが、同法に定める最低賃金に関する規定は、今日まで具体的に発動されなかったのであります。これが理由について考えてみますと、まず、終戦後の経済混乱最低賃金制実施基盤をつちかえなかったことが指摘されるのでありますが、さらに基本的には、中小企業零細企業の多数存在するわが国経済の複雑な構成のもとにあっては、労働基準法規定する最低賃金制のみによっては、その円滑な実施を期し得ないものが存したからにほかならないからであります。  昭和二十五年、労働基準法に基いて設置された中央賃金審議会は、絹人絹織物製造業等業種に対する最低賃金実施について、昭和二十九年に政府答申を行ったのでありますが、これが実現をみるに至らなかったゆえんも、当時の経済情勢とともに、わが国経済における中小企業特異性に存したといえるのであります。  しかしながら、賃金労働条件のうち最も基本的なものであり、特に、賃金の低廉な労働者について今日最低賃金制実施することは、きわめて有意義であると考えるのであります。  最低賃金制確立は、ただに低賃金労働者労働条件改善し、大企業中小企業との賃金格差の拡大を防止することに役立つのみでなく、さらに労働力質的向上をはかり、中小企業公正競争を確保し、輸出産業国際信用を維持向上させて、国民経済の健全な発展のために寄与するところが大きいのであります。  翻って世界各国に目を転じますと、十九世紀末以来、今日までに四十数カ国が最低賃金制実施し、また、国際労働機関においても、すでに三十年前に最低賃金に関する条約が採択され、これが批准国も三十五カ国に達していることは御承知の通りであります。  経済復興労働法制整備に伴い、わが国国際的地位は次第に高まり、昭和二十六年には国際労働機関へ復帰し、さらに、昭和三十一年には、念願の国際連合への加盟も実現されたのでありますが、また、それゆえに、世界各国は、わが国経済、特に労働事情関心を有するに至っているのであります。  なかんずく、諸外国において、特に大きな関心をもって注目しているのは、わが国賃金事情であります。過去においてわが国輸出産業が、ソーシャル・ダンピングの非難をこうむったのは、わが国労働者賃金が低位にあると喧伝されたからであります。かかる国際的条件考えましても、この際最低賃金制実施することは、きわめて意味があると考えるのであります。  しかしながら、諸外国における最低賃金制実施状況を見ても知り得るごとく、その方式、態様は決して一様のものでなく、それぞれの国の実情に即した方式が採用されているのであります。従いまして、わが国最低賃金制も、あくまでわが国実情に即し、産業企業特殊性を十分考慮したものでなければならないことは、言うまでもないところであります。  政府といたしましては、最低賃金制の大きな意義にかんがみ、最低賃金制あり方について、かねてから検討して参ったのでありますが、昨年七月、中央賃金審議会に、わが国最低賃金制はいかにあるべきかについて諮問したのであります。同審議会は、その後、真剣な審議を重ねられ、十二月に至り答申を提出されたのでありますが、その内容については、一部の労働者側委員が賛成できない旨の意見を述べたほかは、他の労、使、公益委員が賛成されたのでありまして、さらに答申の提出については、全員が一致されたのであります。同答申は、その基本的考え方として、「産業別規模別等経済力賃金に著しい格差があるわが国経済実情に即しては、業種職種地域別にそれぞれの実態に応じて最低賃金制実施し、これを漸次拡大して行くことが適当な方策である」と述べているのであります。  今日においても、最低賃金制実施は、中小企業実情にかんがみ、時期尚早であるとの論も一部にはあるのでありますが、現実に即した方法によってこれは実施するならば、中小企業摩擦混乱を生ずるようなことはなく、その実効を期し得られるものであり、むしろ中小企業経営近代化合理化等わが国経済の健全な発展に寄与するものと考えるのであります。  本法案は、以上の見地から中央賃金審議会答申を全面的に尊重して作成いたしたものでありますが、次にその主要点について御説明いたします。  その第一は、最低賃金決定は、業種職種または地域別にその実態に即して行うということであります。最低賃金制の基本的なあり方について、全産業一律方式をとるべきであるとの意見があります。しかしながら、わが国においては、産業別規模別等によって経済力が相当異なり、また、賃金にも著しい格差が存在しているのでありまして、かかる現状において、全産業全国一律の最低賃金制実施することは、ある産業、ある規模にとっては高きに失し、他の産業規模にとっては低きに失し、これがため一般経済混乱摩擦を生じ、本制度実効を期し得ないおそれがあると考えるのであります。ここに対象となる中小企業実態を最も適切に考慮して最低賃金決定し得るごとく、業種職種地域別最低賃金決定し、漸次これを拡大していくこととした理由が存するのであります。  第二は、最低賃金決定について、当事者の意思をでき得る限り尊重し、もって本制度の円滑なる実施をはかるため、次の四つ最低賃金決定方式を採用していることであります。  すなわち、その第一は、業者間協定に基き、当事者の申請により最低賃金決定する方式であり、第二は、業者間協定による最低賃金を、一定地域における同種労使全部に適用される最低貸金として決定する方式であり、第三は、最低賃金に関する労働協約がある場合に、その最低賃金一定地域における同種労使令部に適用されるものとして決定する方式であります。これら三つの方式のいずれの場合も、政府は、中央地方に設けられる労使公益各同数の最低賃金審議会意見を聞いて最低賃金決定することといたしております。第四は、以上一ないし三の方式によることが困難または不適当である場合に、行政官庁最低賃金審議会調査審議を求めて、その意見を尊重して最低賃金決定する方式であります。  以上のごとく四つ決定方式を採用し、それぞれの業種職種地域実情に即して最低賃金制実施することとし、もって本制度の円滑にして有効な実施を期した次第であります。  第三は、決定された最低賃金の有効な実施を確保するため必要な限度において、関連家内労働について最低工賃を定めることができることとしたことであります。  わが国中小企業零細規模のものが多く、その経営は下請的、家内労働的な性格を有するものが多いのであります。しかも、わが国においては、これら中小企業と併存する関連家内労働者が多数存在し、これら家内労働者労働条件には劣悪なものが少くないのであります。しかして、一般雇用労働者最低賃金が適用され、これと関連する家内労働を行う家内労働者工賃が何ら規制されない場合には、家内労働との関係において最低賃金の有効な実施を確保し得ない事態を免ずるおそれがあるのであります。もとより、家内労働については改善すべき幾多の問題がありますので、政府家内労働に関する総合的立法のため調査準備を行うとともに、さしあたり、本法案中に必要な限度において最低工賃に関する規定を設け、最低賃金制の有効な実施を確保すると同時に、家内労働者経済的地位の安定に資することとした次第であります。  以上が本法案主要点でありますが、本法の適用範囲は、原則として労働基準法及び船員法の適用あるもの全部とし、これが施行に関する主務大臣は、労働基準法適用関係については労働大臣とし、船員法適用関係については運輸大臣としております。その他最低賃金審議会設置運営に関する事項業者間協定締結等に対する援助、勧告及び違反の防止等に関する所要規定を設けるほか、関係法令に関する整備を行い、もって最低賃金制の円滑なる実施を期しているのであります。  政府といたしましては、最低賃金制法制化することは、わが国労働法制上まさに画期的なことであり、かつ、その意義もきわめて大きいと信ずるのであります。  しかしながら、何分にも最低賃金制は、わが国において初めての制度であります。いかにわが国実情に即した最低賃金制でありましても、これを円滑有効に実施するためには、中小企業経営基盤の育成をはかることが必要であることは申すまでもないところであります。  政府は、最低賃金制実施状況等を勘案しつつ、中小企業対策等について今後とも十分配慮を行なって参りたい所存であります。また、いかに大きな意義を有する最低賃金制実施されたとしましても、法制定の趣旨が十分認識されず、本制度が誤まって運用される場合には、労使関係の安定が阻害されるのみならず、社会経済混乱を招くことにもなるのであります。政府といたしましては、本制度に対する労使の深い理解と絶大なる協力を期待するとともに、広く国民一般の支援を求め、これが円滑なる運営をはかりたいと存じている次第であります。  以上が最低賃金法案の提案した理由及び概要でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  9. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本案質疑は、次回以後にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  11. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して。     ―――――――――――――
  12. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、労働情勢に関する調査の一環として、一般労働問題に関する件を議題といたします。  まず、新卒業少年等集団就職について質疑を願います。
  13. 山下義信

    山下義信君 私は、本年新たに中学校及び高等学校卒業いたしましたいわゆる新卒の少年等が、もとより少女も含めますが、今やあたたかい父母のひざ元を離れまして、けなげにも就職戦線につこうといたしておりまするこの際、これらの少年たち就職の問題、雇用関係等の諸問題につきまして、労働大臣の御所信を承わりたいと思うのであります。  本年の中学の新事業生は、全国的にはおよそ百八十九万人の卒業生があるといわれておりまして、そのうち上級進学の者を除きまして、約半数でございますか、それらが職業につくというように聞いております。しかもその中で、事業者あるいは農林関係を除きまして、一般のいわゆる中小企業方面に就労いたします者がどのくらいあるかということはつまびらかにいたしませんので、この辺は、また労働省当局から、そういう数字等を承わりたいと思いますが、聞くところによりますと、全体としては、昨年の就職状況と比較いたしまして、本年度は約一〇%ないし二〇%成績が落ちるのではないかといわれておりますが、その辺はどうでありますか。これも、またあと当局から、その状況を承わりたいと思いますが、高等学校等もあわせて、数字は承わりたいと思いますが、これらの多数の少年たちが、冒頭に申し上げましたように、今職業につかんとするまっ最中であります。ことに最近は、労働省職安関係諸君の御尽力もあってだろうと思いますが、われわれの目を著しく引きまするものは、この集団就職の風景でございます。新聞紙上等で見ますると、今月の七日に、東北からの、いわゆる福島県からの約三十名の少年少女が上野駅に着きまして、西郷銅像の前で、雇い主への引渡式がありまして、それぞれ各方面におもむいたということであります。なお、今月の十八日には、同じく福島県から第二陣が到着し、月末二十五日には、第三陣が集団的に参るということであります。  大へん前置きが長くなりまして、恐縮でございますが、また雇い入れまする方では、これもつまびらかにいたしませんので、あと当局から、その情勢も承わりたいと思いますが、雇い入れまする方も、連合でこの少年たちを雇い入れをいたしますようなふうで、一例をあげますと、世田谷の池尻の商店連合会は、三十四カ商店連合でありますが、五十三名の少年を集団的に雇い入れる。世田谷玉川商店連合会は五百四十名、これは、新潟県、福島県等から集団就職をいたすということであります。渋谷の道玄坂の商店街連合会は百五十三名、目黒区の商店街連合会は四百二十名、武蔵小山商店連合会は約二百名、同じく付近の荏原中延商店連合会は、百五十名集団雇い入れをするというような状況であると承わっております。これらの実例を見ましても、まあ何と申しますか、東京都では、比較的中央ではない地区でありますが、関連いたしまして私ども関心を引かざるを得ないのは、昨年の年末押し迫りまして、十二月二十一日には、沖繩から、十八才未満の少年たちが百二十二名大阪へ集団就職したということであります。これらのともかくも今就職戦線につこうとしておりまする少年たちの問題につきまして、次の諸点について労働大臣の御所見なり、労働省におきましてはどういう考えを持っておられるか、どういう対策を講じておられるかという点を伺いたいと思う。  第一は、これらの少年たち就職先は、申すまでもなく中小企業、なかんずく、比較的求人の困難なる職種職場であります。従ってその雇用形態は、まことに古い状況を呈しておりまして、一口に申しますと、住み込みといいますか、家族的なぞというような名前を使っておりますが、要するところ、徒弟的な、住み込み的な雇用形態を持っております。これらは、できるだけ改善をいたさなければならぬのではないかと思うのでありますが、こういう点につきまして、どういう指導をしておられるかという点であります。  第二点は、これらの少年たちの就労の、いわゆる労働条件改善向上について、どういう御心配をしていただいておるかという点を伺いたいと思うのであります。ことに求人の場合に、いろいろな条件を示して各地農村、各府県において募集をいたしまして、連れてきて、いよいよ就職して入るというと、その条件とは違ったり、あるいは、あらかじめ示した条件をなかなか実行しないというような例もあるやに聞くのでありまして、そういうような状態では、あたかも正規のルートで適正な求人をし、雇用をしたような形には見えておるが、いわゆる公認の、天下晴れた人身売買と何の異なるところあるかと言わざるを得ませんので、そういう点につきまして、どういう御配慮がいただかれてあるかという点を承わりたいと思うのであります。なお、これらの少年たちが就労いたしました以後におきまする生活上の種々な問題につきまして、労働省としては、どういうような方針対策を持っておられるかということも承わりたいのであります。ことに私は、先般の委員会でも、関係当局には言及いたしておきましたのでありますが、中小企業の零細な、しかも、いろいろ条件の劣悪なこういう職場に勤めることに年少労働者のためには、この生活状況、ことに住居の問題というものは、非常に重大に考えなきゃならぬと私は考えるのであります。こういう点も、労働省におきましては、いわゆる労務者住宅等につきましてもお考えをお持ちになり、御努力を願っておるとは思うのでありますが、先般中共へ行きまして、この労務者住宅の非常な大規模の建設を見まして、私どもとしても、深く感ずるところもあるのであります。これらの年少労働者のために、特に住宅問題等につきましては、どういう考えを持っておられるか。  最後には、石田労働大臣が深い関心を持たれて、御奨励に相なって、最近は私どもも深く感ずる点があるんでありますが、いわゆる商店週休制を非常に御奨励していただいている。これは、私どもも深く多とするところでありますが、年少労働者にとりまして、一般のこれらの従業員はもとよりでありまするが、ことに年少労働者にとりましてのこの週休制の問題は、非常に大きな関係もあることであります。将来にわたって週体制普及奨励につきまして、どういう考えを持っておられるか。また、せっかくの休日をどう活用させるかということが、もとより裏づけとして考えられなきやならぬと思いまするんで、こういう点につきましての御所信を承わりたいと思うのであります。  大へん質問の要旨を長く申し上げましたが、特にこの際、労働大臣としての御所見を承わりたいと思うのであります。
  14. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 年少労働者新規学校卒業者就職状況を見ておりますと、前までは、なかなか居つかない状態が非常に顕著に現われて参りました。これは、もとより働きに来ている人たちの一人々々の事情、条件等もありますけれども、やはり根本的には、今、山下さん御指摘のように、雇用条件というものが当初の予想にはなはだしく反しておる場合、あるいは、雇う方の人々の無理解、それから今までの因習、まあそういうようなものがそういう結果を招いたように思われるのであります。親元を離れて来ている子供たちのことを考えますると、特に親が、東京へ出して数カ月も出ないうちに職を転々と変るようなことでは、心配も絶えないでありましょうから、そういう実情改善いたし検するために、今の集団就職制というものを奨励をいたし、始めたのであります。それは、労働条件職業安定所が中に立って取りきめまして、そうして就職後におけるその労働条件実施も常に監視していく。まあ普通の大きな企業におきましては、労働組合がございますから、そういうものが中に立ってやれる仕事でありますけれども中小企業においては、そういうことが不可能でありますので、職業安定所が中に立ってやっていくわけになりたわけであります。これが実施されましてからは、集団就職を行われました所では、その相手方の理解も非常に高まって参りまして、その条件改善あるいは遵守も円滑に行われて、成績をおさめておるわけであります。私も先般ただいま山下さんがおあげになりました池尻の商店街に、去年就職いたしました男女両名の者と会いまして、いろいろ実情も伺ったのであります。また近く、今月月末には、本年度の集団就職者の実施状況等も視察をいたしたいと思っておるわけでございます。  それから、いわゆる住み込みの問題であります。これは非常にむずかしい問題でありまして、住み込みという状態にありますことは、労働時間が無制限になる、そうしてまた、休息をとるという点においても十分でないというような、いろいろの難点がございますが、他の二面におきましては、やはり親元としては、まだ年端もいかないうちに、全く一人でほうり出すことの不安もございましょう。それから、実際上の問題として、独立の住居を与えるということが経済上困難だという実情もございます。しかし、原則としては、近代的雇用関係というものは、住み込みという状態を好まないことは、これはもう、申すまでもないのであります。これを広範に広げて参りますことは、なかなか一朝一夕にはむずかしいのでありますが、労働省といたしましても、それに対して奨励ないし補助的な施策の実施を考究中でございます。一例は、さきほど山下さんおあげになりました東京の横山町、馬喰町等におきましては、今、共同で店舗の改修あるいは共同の店員の宿泊所、あるいは共同で店員の慰安施設というようなものを建設すべく計画して、すでに実行に移しておるのであります。これが具体化されますると、一定地域における商店街あり方といたしまして、非常にいい模範になるのではないか。その状態を見まして、さらにその普及に努めて参りたいと思っておるわけであります。  それから、最初に取りきめました労働条件が遵守されているかどうかという点につきましては、職業安定所の職員を定期的に巡視いたさせまして、その状況を監督いたさせておるわけであります。  それから、最後の、週休制実施の問題でございますが、これは、私就任をいたしまして約一カ月くらいたったころであったと思うのでありますが、労働基準局長に、商店街における週休制実施奨励するよう命じました。労働基準局では、東京、大阪、名古屋等それぞれ所管の基準局を通して管掌して参りました。そのうちで、一番最初に完全に実施されましたのが横山町、馬喰町でございます。もっともその前から、輪番制による週休制実施しておる地域もございました。しかし、一斉に週休制実施いたしましたのは、横山町、馬喰町でございます。やはり週休制を完全に実施いたさせますためには、輪番制でございますと、どうもその間に抜け道を考えたり、あるいはこれを守らなかったりする傾向が生まれる危険がございますから、やはり理想としては、一斉週休の実施ということが私は望ましいのじゃないか、こう考えておるわけであります。しかし、問屋その他では、それは可能でございますが、小売店等におきましては、消費者の便宜その他あるいは日本の国民の習慣から申しまして、なかなか一挙に実行することは困難でございますが、ただいま東京は、品川区管内において今その実施を進行中でございます。これは、ただいま申しましたような方向に向って間断なく奨励をいたしまして、すみやかにその実現をはかることによって、古い雇用関係にある勤労者諸君の労働条件改善をいたすことはもとよりでありますが、そういう企業形態の近代化にも資したい、こう考えております。私ども、いろいろ調査をいたしたところによりますと、一斉週休を実施いたしましても、売り上げ、事業成績等には何ら変りはなく、むしろだらだらとした支出が、あるいはいろいろな費用が省けますから、経費その他の面においては非常に合理的に、むしろ改善されているという報告を聞いておるわけでありますし、私も、先般現地へ参りまして、それぞれ当事者からそういう報告を承わったわけであります。  次に大切なことは、週休制実施いたしましても、その休みの日の休暇をどう使うかという問題であります。これも、関心をもって、部分的でございますが、私は、直接聞いたととろによりますと、やはり何と申しましても、盛り場へ行くのがまあ大部分のようであります。中には、スポーツその他あるいは共同の研究とか何とかいうことに使っておる人もありますけれども、これは、スポーツの場合におきましては、運動場の設備の不足等からいって、なかなか思うにまかせない。しかし、これも一緒になって、連合して研究しょう、解決しようという動きも見えているわけであります。成年に達した者については、干渉がましいことはなすべきではないと思いますけれども、未成年の人々に対しましては、親の心配を思いますときに、やはりわれわれとしても、よき指導を行なっていかなければならない、こう考えておるわけでございます。
  15. 山下義信

    山下義信君 具体的に理解ある御答弁をいただきまして、多といたしますが、なお、いま一点、追加して伺いたいと思いますのは、これらの年少労働者に対しまする退職金制度というものをよく雇い主が言うのでありますが、実は、これは非常に注意して検討いたしませんというと、たとえば、今大臣がおあげになりました、世田ケ谷の池尻の商店連合組合で言っておりますことは、たとえば、中学校の新卒の初任給を六千二百円にする、これは、半年ごとに二百円ずつ上げてやる、その中から食費を四千円引いて、それから、いろいろな社会保険費を百三十円引いて、そして小づかいを七百円やると、残りが千三百七十円になる。これを毎月雇い主が積み立てて、そして十年後には、六分の複利で計算するというと、四十七万円になる、これに店主が給料の三%に当るくらいの額を、言いかえますというと、三万円ほどを加えると五十万円、そこで、お前たちが十年しんぼうすれば退職金を五十万やるぞ、こういうことを言っておるようである。これでは、退職金をやるのじゃなくて、給料を強制に差っ引きして、雇い主が持っておって、そうしてこれをただ十年先に返してやるというのであって、退職金にも何もならぬのであって、こういう行き方は、名は退職金という美名であるが、実はその者をひもつき、いつまでも、途中で何か気になることがあれば、これを首切りすると、この預っておる金を返すとか返さぬとか、昔からよくやる手でありまして、私どもは、こういうやり方は、これはインチキである、一つのほんとうの退職金制度ではないと思うのでありますが、これらの制度につきまして、労働省としてはどういう御指導をなさるつもりでありますか。承わっておきたいと思います。
  16. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 実は私も、この間、先ほど申しました子供と会って、この実情を、初めは五十万円の退職金というので、それはけっこうな話だと思って、そのままに受け取っておりましたら、あとで聞いてみると、今山下さんのお話の通りであったのであります。これは、御指摘の通り、退職金ではございません。従って、まず退職金制度というものは別に考えなければならぬ。それから、これをもって退職金制度のごとく誇大に宣伝することは、これは誤まりでありますから、この誇大な宣伝をなさしめないような措置をいたしております。  それからもう一つは、これは貯蓄でありますから、所有権はあくまで貯蓄した者の方の側にあることは言うまでもないのでありまして、途中でやめるようなことがあれば、その貯蓄は、当然本人に返させるものである。もし返さない君がありますれば、これは、基準法違反に明らかになります。そういう旨も使用者側には通達をいたしておりまして、こういう状態改善にも努めて参るつもりでおります。  なお、予算委員会の方から出席要求がございますので、あとは政務次官か事務当局が一つお答えいたします。
  17. 山下義信

    山下義信君 先ほど伺いました新卒の年少者の就労状況につきまして、最近の状況局長から御説明願っておきたい。
  18. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) お尋ねのありました、新規学校卒業者の本年度の状況について御説明申し上げます。  先ほど先生からお話がございましたように、本年度の中学校の卒業予定者は約八十九万人、高等学校で七十六万人、昨年と比べまして、中学校約十万人減っておりまして、高等学校で五万人ふえた。そのうちに進学者もございまして、昨年の十月に就職、いわゆる雇用希望者でございますか、これを調べました結果によりますと、中学校で五十七万四千人、高等学校で四十三万一千人、合せて百万ちょっとになる。あと大学が十二万程度あるわけでございます。  本年の一月について状況を見ますと、一月末までに職業安定所に求職の申込みを登録いたしましたものが、中学校で五十一万六千人、高等学校で三十一が三千人、そのうち一月末まで約三割の人、中学校で十六万五千人、高等学校で約十一万というものが就職を内定しているわけでありまして、その後二月、三月ということで、安定機関としては一番最重点業務の一つでもございますので、全力をあげて現在その就職に努めているわけでございます。  昨年におきましては、求職者が中学で四十六万三千人、就職が四十四万二千、九九・七%の就職率である。高等学校におきましては、十八万八千人の求職者に対しまして十七万九千、九六%程度の就職であった。先ほど先生からも御指摘がありましたように、本年度におきましては、われわれの当初の予想といたしましても、去年よりも就職状況が困難であるということで、特に昨年の秋以来、全国の安定所を督励いたしまして、求人開拓に極力努めて参ったわけでございます。先ほど申し上げました一月末までの求人状況を申し上げますと、中学では五十二万、高等学校で二十四万八千ということになっております。数といたしましては、昨年よりも、昨年の求人が、中学におきまして最終的に四十六万六千でございました。中学校で約六万ばかりふえております。それから、高等学校では、昨年十八万一千でございましたので、多少ふえておりますが、しかしながら、高等学校の方が少しまた今年就職希望者がふえております。決して楽観は許さないと思っております。われわれとしては、少くとも去年程度までの就職率に持っていきたいということで、今、最後の馬力をかけておるところでございます。さらに、こうした新卒の人たち、大体中学校で十五才、高等学校で十八才であるわけですが、親元を離れて参るわけでございますが、それが大体規模別にどういうところに入っていくかと申しますと、百人未満の所に中学校、高等学校、それぞれ約六〇%の人が入っている。それから十五人未満の所に中学では約全体の三〇%、高等学校で二〇%というような程度になっておりますので、いわゆる中小企業における就職者数というものが非常に大きなウエートを占めておるわけであります。そういうことからいたしまして、先ほども御指摘のありましたように、そうした中小企業における労働条件というものは、大企業との間に相当の格差があるということは、周知の事実でございます。そういう関係からいたしまして、なかなか求職者の方も行きたがりませんし、求人の方はありましても、なかなか充足できないというような状況にあるわけでございます。しかも、毎年の状況を見ますと、特に東京、大阪、名古屋というような地区に他の府県から就職してくる人が、中学では約九万四、五千、高等学校で約三万人、相当大きな数字を示しております。そういうことからいたしまして、やはり事業主のためにも、あるいは新卒の新しく就職しようとする人のためにも、この労働条件を引き上げていくことによって就職口も得られる、また求人者の方もそれで充足できるというような状態に持っていくことが最も望ましいことでございます。ただ、これを個々の事業主に放任いたしておきますと、自分のところだけでやっても、なかなか実行は期し得られないというのが実際のところでございますので、安定所といたしましては、一方においては求人の充足の責任も持ちますが、求人を充足しさえすればいいというのじゃなくて、やはりその若い人たちが、入ってくる人たちの、年少者の保護ということを考えながら就職させる必要がございますので、安定所が中に立ちまして、労働条件を明確にし、これを向上させていくというようなことで、しかもそれを地域的に、集団的にやっていくことが最も望ましいのではないかということで、二年ほど前から、最初は東京の渋谷の公共職業安定所、それから新潟の高田の安定所との間に試験的に行なってみたわけでございますが、これは結局、安定所といたしましても、あと状況を特に注意いたしまして、その状況を監視して参ったわけでございます。結局は、そういたしますと、すでに入っていた人たちの労働条件にも好影響を及ぼすというようなことで、しかも、求人の充足率がよくなったというような状況でございまして、漸次これが指導によりまして拡大して参ったわけであります。しかしながら、先ほど先生の御指摘のような問題もありますので、なお一そうこれらのあとの問題につきましては、特に十分な指導と注意を払って参りたいと、こう考えております。
  19. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 きょうは、委員長、通産省の方は見えませんか。
  20. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記をとめて。   〔速記中止
  21. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を始めて。  本問題に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。     ―――――――――――――
  23. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。
  24. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、ILOの問題について質疑を願います。
  25. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労働省にお尋ねをしたいのですが、いろいろあとで、通産省、国鉄との関係についてお尋ねしたいことがありますけれども、今まだ見えませんので、この前の委員会で御説明になった国際労働条約八十七号、これは公労法の四条三号に関係して、今の国鉄機労の状態が生まれた。団結権の自由というものは、国際条約としてこれは常識なのですが、これは、いまだに八十七号は批准されていないので、問題をかもしているわけです。八十七号の問題は、政府は批准してないけれども、九十八号の方は批准しているのですね。この九十八号の生まれてきた、要するにILOの一九四九年の総会では、この八十七号を決定するという条件のもとに、この条約が結ばれた、こういう工合に書いてあるわけです。これは御承知だと思いますが、どうですか。
  26. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 御質問の趣旨が正確にわかりかねますが、条約のでき上りましたものといたしましては、八十七号と九十八号とは別な条約になっておりまして、実際問題といたしましても、九十八号の条約は批准しておって、八十七号が未批准の国も現実に幾つかございます。そういう意味で、関連がありますことは先生のおっしゃる通りかと思いますが、条約としては、建前上別個のものであると考えております。
  27. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この国際労働機関の総会において、この条約の前文に、こういう工合に書いてある。「この会期の議事日程の第四議題である団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する諸提案の採択を決定し、  それらの提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定したので、  千九百四十九年の団結権及び団体交渉権条約と称する次の条約を千九百四十九年七月一日に採択する。」だから、こういう前文のもとに一条から始まっている、この九十八号は。そうすると、この九十八号と八十七号とは、切っても切れない関係の条約と考えていいんじゃないかと僕は思うのだが、どうですか。
  28. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 非常に密接な関係にある条約であります点につきましては、先生のおっしゃる通りだと思います。
  29. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その密接なと言ったところで、二つの、九十八号と八十七号とが一体として、同会期中にこの九十八号をきめたという趣旨は、八十七号と九十八号が一体であるということを示しているのです。  九十八号の内容を見てみますと、――これは政府が批准しておられると思う。この政府の批准している第一条には、労働組合の自由の原則をうたっております。それから第二条には、「労働者団体及び使用者団体は、その設立、任務遂行又は管理に関して相互が直接に又は代理人若しくは構成員を通じて行う干渉に対して充分な保護を受ける。」ということを明確に書いてあるのだな。そうするとですね、この概念からいくと、労働組合を設立するということ、自由に設立するということ、これにはそのものが一方的な――今のたとえば三公社であれば、自由な、私は、独立採算性をとって、公務員でないと思う。公務員の除外規定は六条ですかにありますけれども、今の国鉄の形態から見れば、ここの「使用者」という、この概念に入ると私は思うのです。そうなってくると、この条約を批准しておいて、八十七号は批准しないという理由がどうもわからぬ。これは、どういう工合に説明をされるのですか。説明をして下さい。
  30. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 先生のお話にあります両条約の関連性につきましては、一九四八年に結社の自由及び団結権の擁護に関する八十七号条約が審議されました折に、あわせて団結権の擁護ということが審議をされたのでありますが、その最後の、八十七号条約の十一条に、その意味のことが出ているわけでありますが、その具体的な問題については、別個な角度から、あらためて翌年の一九四九年に、お話の出ました団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約として別に定められているわけであります。  お話にありました二つの条約の違いは、おとしてどういうところにあるかという点になりますと、大ざっぱに申しますれば、八十七号条約の方は、結社の自由そのものの保障ということに主眼点を瞬いているわけであります。労使が自由にみずから選択する団体を設立する、あるいはそれに自由に加入する、あるいは規約、代表者等を自由に選ぶということを国家が妨げないということの基本原則をいっているものと理解をいたしております。  九十八号の方の条約は、そういう労働者の団結権の保護のいうもの、この労使関係からくる反組合的な差別待遇というものに対する保護の問題を中心に規定されているものだというように考えております。
  31. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約ですよ、九十八号は。だから団結権の自由と……。失礼しました。さっきは同会期と言いましたけれども、一年おくれておりますけれども、この八十七号の趣旨に沿って、切っても切れない関係でどこに出てきているわけだと私は思う。そこで、団体交渉権の確立ということが、八十七号の精神がここで生かされてこなければ意味がない。そのあとの分だけ批准して、先の分だけ批准しないというのは、どう説明されるかということを聞いている。
  32. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 条約といたしましては、初めに申し上げましたように、一応別個の条約でありまして、書いてあります内容を詳しく申し上げますれば御了解いただけるかと思いますが、先ほど申しましたように、労働者及び使用者が自由に団体を設立し、自由に行動をするということの自由を保障することに八十七号条約の本旨があるわけであります。で、九十八号の方は、先ほども申し上げましたように、その一条に書いてございますが、雇用に関する反組合的な差別待遇に対する保護、具体的に申しますと、日本の労働組合法の七条にありますような、労働組合に加入したり、あるいは脱退することを雇用条件にするというようなこと、あるいはこの正当な労働組合活動をしたことをもって不利益な取扱いをする、こういうようなことを禁止するような措置を講ずることが九十八号の趣旨でございます。従いまして、現存の日本の労働法制におきまして、九十八号の趣旨が充足をされておりまするので、九十八号については、すでに国会において批准の手続を終えられております。八十七号につきましては、大臣からたびたび申し上げておりまするように、目下具体的な検討をいたしておるこういう段階でございます。  なお、両者の関連の深さは、先生のおっしゃる通りでありまするが、先ほど申しましたように、九十八号を批准しておきながら、八十七号を批准しておりませんのは、日本だけでもございません。ほかにも数カ国ございます。そういうことで、論理的に、こちらが批准してあるから、こちらも批准しなければならないということは言えないというように考えております。
  33. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 論理的に言えないということは、労働者の自由な団結であり、そしてその交渉という問題、代表者を選ぶという問題は、そういうものを制限をするというようなことが、国際的に五つ、六つ、よその国にあるとおっしゃいましても、そういうことが今日の国際常識ですか。私はそれを聞いているのです。
  34. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 労働者の結社の自由、団結権の自由というものを一般的に制限するというようなことは、私は近代社会においてはないことだと思います。その点は、結社の自由なり、団結権の擁護に関する基本的な考え方というものは、わが国における考え方も、国際社会における考え方も、異なるところはないかと思いまするけれども、具体的なこまかい問題になって参りますると、それぞれの国の事情もございますので、やや世界各国の例を見ましても、いろいろ規定があるようでありまするが、基本的な考え方として、わが国で、労働者の団結権というものは、憲法の二十八条にもうたわれておるところでございまして、決してわが国がそういう基本的な原則を、何といいますか、とらなくていいというような考え方に立っておるものでは毛頭ないというように考えております。
  35. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 通産省は見えましたか。
  36. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 通産省は、中山通商局次長がお見えになっております。国鉄の方からは、安孫子常務理事が見えておりますので、お含みの上御質問を願います。
  37. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労働省関係は一時おきまして、通産省の方に御質問したいのです。  通産省の方は、今お見えになったんだから、今審議している状況がよくおわかりにならないと思いますので、少し申し上げてみたいと思うのです。国際労働機関、ILOという機関があるのは、通産省もよく御承知の通りだと思う。このILOの機関が、労働者保護を目的にして、今年で四十一回の総会を重ね、今日では、国連の一つの機構として、世界のほとんどの国がこれに参加をして、労働の最低基準の問題、保護の問題、社会保障の問題、一切の問題をここできめて、国際条約や勧告を作って、そうしてその条約、勧告に基いて、各国が労働者の保護、社会的繁栄という問題、ひいては経済的繁栄に連なって国民生活を守るという、重要な世界の中において貢献をしている機構だと思うのです。通産省はよく御存じだと思うのですが、このILOの歴史的な中において、日本は一時脱退したことがありますけれども、今日、条約だけを見ましても、百七つも条約が結ばれて、日本は二十四の条約を批准しているという状態でございます。私の聞きたいのは……
  38. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと速記をやめて。   〔速記中止
  39. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を始めて。  休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十三分開会
  40. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  午前に引き続いて、ILOの問題について質疑を願います。
  41. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 通産省の方に御質問を申し上げたいのですが、今議題になっているのは、ILO条約勧告の批准の問題、また、日本とILOとの協力問題についての問題が今行われているわけでございます。  私は、特に通産省の方にお聞きしたいのは、このILOという国際労働機関は、労働者の保護、それから社会保障の問題、人間生活をいかにして守っていくかというところに、この国連の機構であるILOの役割があると思うのです。これは、ひいては社会的繁栄、世界の経済的繁栄、これに非常に密接な関係があると思うわけであります。そこで、日本の貿易を見てみますと、過去にはテープ・レーバー、ソーシャル・ダンピングという格好で、非常な汚名を日本自身が受けた。戦後におきましても、ガット加入に十年もかかったということであり、今日日本の商品の外国市場におけるボイコットの問題の中には、日本のテープ・レーバーという問題が非常に問題になっている。特に各国の労働者労働組合が、そういう関連の中から自分の生活を上げるということ、世界の労働者の地位を上げるということから、この貿易に関して非常な問題があるということを私は認識しているわけでございます。そこで、通産省としては、このILOの機関条約勧告をどう見ておられるかということが、まず第一に承わりたい点であります。
  42. 中山賀博

    説明員(中山賀博君) 日本のチープ・レーバー、ソーシャル・ダンピング、今、藤田先生からもおっしゃいましたように、非常に戦前にも問題が存在しましたし、戦後においても、不幸にしてそういう問題が提起せられておることは事実だと思います。ただ、戦前におきますのと戦後におきますのとは、問題の提起の仕方が若干異なっているんじゃないかと思うわけでございます。と申しますのは、今日米国あるいはその他の国々において、われわれが輸出を伸ばそうとしますときに、輸入制限の問題がございます。そうして日本の商品の競争力について、つまりあるいはそれが相手国の国内の産業を脅かすとか、あるいはオーダリ・マーケッティングをくずすということで、いろいろ危惧の念もあり、心配していることは事実でございます。ただそれが、昔は、戦前におきましてはソーシャル・ダンピング、日本が非常に不当なる労働条件、低賃金という条件のもとで、内需を圧迫して、そうして外貨獲得、それがまた、ひいては軍備の強化というようなことにもつながったと思いますが、内需における消費をきわめて節約し、同時にまた、レーバーの条件を非常に低くしておいて、そうして国際場裏において外貨獲得に狂奔した、これに対する非難でございましたが、最近における輸入制限の問題は、若干趣きを変えているように感ぜられるわけでございます。と申しますことは、たとえば、先年、一九五五年におきまして、日本がガット加入の際に、なぜ日本をガットに加入させないかということにつきましては、各国いろいろその国の事情によりまして理由を異にしております。そうして今、藤田先生御指摘のように、一部の国では、いわゆる日本のアンフェアなレーバー・コンディションズというものに対する危惧の念を表明する向きもございましたが、それよりほかに、たとえば、フランスあるいはイギリス等でもそうでございますが、特定国のうちの産業、たとえば繊維産業、こういうようなものに、非常に競争力のある日本の商品がはんらんして、これを打ち負かしてもらっては困る、その理由がソーシャル・ダンピングというようなことではなくて、たとえ占領後における労働関係法規の整備とともに、日本国内自身で見て、それが必ずしもアンフェア、アンジャストとはいえない状況であっても、とにかくたくさんのものが自分の市場に来てもらっては困る、自国産業の保護という見地から、これを制約しようというように、問題の出し方あるいは発表の仕方が私は変っているのじゃないかと思うのでございますが、そこで、たとえばアメリカにいたしましても、今日いろいろな、御案内の通り、互恵通商法のエスケープ・クローズに関連いたしまして、いろいろの日本の商品の輸入をとめようという企てもございますし、あるいはまた、種々の日本の輸出せんとする商品に関するそのものずばりの輸入制限法案というものが国会に法案として上程されて、数量で規制しようというような動きがありますが、その際、やはり先方の理由となっているのは、たとえば、過去三年間の国内の生産と見合って、その生産が、たとえば日本からの輸入がその生産量の五%を上回っているとか、あるいは一〇%を上回っているとかいうような理由、それから、もう一つ大きいのは、日本の商品がしばしば商標とかあるいは意匠とかあるいはいわゆるデザインの盗用、つまり不正競争、狭い意味の不正競争というようなことで、他国の商品を圧倒する。そういうようなことを理由にして、日本の商品の輸入を規制しようとする。従って、解決方法にいたしましても、これが一つのソーシャル・ダンピングの問題として根本的な解決をはかるというのではなくして、やはり輸出の数量をある程度まで日本が、政府ないしは日本のメーカーなりあるいは商社なりが自主的にコントロールしてくれる、そうすることによって、相手市場の価格なりその他のものを、相手の市場を不当に撹乱するということがなければ、それで話し合いをつけようというようになっておりまして、現に、最近アメリカにおけるたとえば金属洋食器の問題あるいはその他の問題が解決を見ているわけでございます。そういう意味におきまして、もちろん、日本の商品の競争力があるということの根本には、日本のいろいろ産業合理化も行われているという点もありましょうし、それから、労働賃金その他から見まして、アメリカその他と比較して低廉であるということもございますが、必ずしも日本が戦前のようにソーシャル・ダンピングであるからということと直接関連しては問題を取り上げていないのじゃないかと思いますし、その点が、これは戦前と戦後において異なる点じゃないかというような印象を受けております。
  43. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、そうおっしゃいましたけれども、最近のアメリカにおける商品のボイコットを受けている一ドル・ブラウスであるとか、それから食器の器具ですね、ああいうものであるとかいうものは、具体的には、今是正の問題が出ていますけれども、向うの産業の五割も、ひどいのは七割も操業停止をするという問題まで新聞に伝えられている。何が競争になるかというと、日本の商品が向うの何分の一かの値段ということですね。日本には、卸、問屋という格好で搾取、そういう仲介の利潤を取っている者があってもそういう状態だから、向うの企業がつぶれていく。それじゃその労働者が職を失って、たとえば、アメリカだけの問題を見ると、今日、二月には五百二十万という失業者が出ている。これは、日本の商品ばかりじゃないと思いますけれども、しかし、そういうものの結着していくところは何に落ちつくかということなんです。何に落ちつくかということになってきたら、日本はたくさん物が外国に売れて、ということはいいでしょう。いいでしょうけれども、それは一時的な現象であって、長い間には、そういう形の商品、たとえば、関税で障壁を作ってみたり、違った形で日本の商品が外国の市場からボイコットされている。基礎になっている。潜在的に盛り上ってくるものは、日本の商品というものは苦汗労働によって作られているのだということになってくれば、いかに先進国という宣伝を日本がしてみても、そういうものは、私は、正常な貿易関係という上から見て重大な問題があると、こう考えるのです。だからこそ、私が尋ねているのは、ILOの条約勧告を何としても守っていこうという、こういう国内的な政治、労働者保護、国民生活を守っていこうとする政治に対して、通産省は、そういう角度の整備に対して熱の入れようが足らぬと思う。そこを聞いている。だから、このILOの機関、その条約勧告について、どういうお考えを持っているかということを聞いているのです。多少戦前のソーシャル・ダンピングと今日の問題の現われ方については、多少のニュアンスの違いはあるでしょう。しかしそれは、一時的な、時間的な問題であり、潜在的に現われてくるものは、私が今申し上げたようなことにならさるを得ないと思うのです。だから、そういうことになればなるほど、通産省は、日本の経済活動を進めるに当って、貿易に当っても、国内の労働基準の引き上げであるとか、国民の生活を上げる、そういう形で近代国家並みのつき合いをしていこうという見通しがここに出されなければ、一時的な利益や、一時的な貿易の伸張があったとしても、将来長い期間の日本の経済的な提携を持っていくということには重要な問題が起きてきやせんか、そこを聞いているのです。
  44. 中山賀博

    説明員(中山賀博君) あるいは先生の御質問に対する適切な回答にならないことかもしれませんけれども、たとえば、アメリカで繊維の輸入制限をするとか、あるいは金属洋食器の制限をする。マグロのカン詰その他冷凍マグロ、こういうものの制限をしますときに、もちろん、日本の商品が格安であるということが一つの問題になってくることは事実でございます。これに対しまして、われわれは、こういうような説明をしているわけでございます。要するに、確かに日本の商品は安い、安いからこそ、またアメリカにこれだけ買ってもらえるのだと、しかし、日本の労働水準から見て、特にその産業がチープ・レーバーであるとか、ソーシャル・ダンピングであるということはないのであって、要するに、むしろある産業にとりましては、普通の労働水準を上回っている。しかし、全体として日本の、この国の経済が非常に貧弱であること、それからまた、それから来まして、賃金あるいは労働のいろんな条件が悪いということ、これはアメリカとして、悪いという事実は認めざるを得ない。それでこそわれわれは、この一般生活水準の向上というものを考えたい。それから、そのためにこそわれわれは、この輸出を盛んにして、そうしてアメリカ側の言うような、そういう統制をしてもらわないで、少しでもたくさん物を出すことによって、全体的な生活水準を向上してもらうことが必要である。ことに日本としては、何と申しましても鉄、石炭あるいは食糧の年間多量の輸入をしておりまして、原料に乏しい日本といたしましては、やはり輸出の促進、それに伴う輸入の促進ということで貿易のバランスをとって、発展を遂げていかなければならぬ。そういう意味からいくと、同時に、それがまあ全体の生活水準の向上という道につながっていくのである。同時にまた、もちろんアメリカあるいはその他の諸国と違いまして、原料において、あるいはその他の条件下において、原料の入手という条件において劣っておりますために、われわれがその面をある意味で低いコストでカバーするということは、単に労働賃金が安いという問題だけではなくして、他方におきましては、やはりこの産業合理化とか、企業整備ということ、あるいは過当競争の排除というような方向でまあ持っていかなければならない問題でございますが、しかし、何にしましても、根本的には全体的な生活水準を上げるということがやはり一番大切な点だと、こういうように考えております。
  45. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、輸出の問題の個々の問題を今言ったから、それだけだと認識されたので、そういう御答弁があったと思いますけれども、私はそう言っているのじゃない。日本の労働、近代国家として進んでいく日本の、日本がよりよい経済繁栄、貿易興隆というものを外国とやるには、いろいろの産業において、私は今のような問題が突っかかってくるのじゃないか。だから、通産省としては、産業振興ということを掲げて、国内産業を進めるというのならば、第一番に、今日の国際的な分野から見て、労働基準を引き上げる、ILOのこの条約勧告の整備、批准、全体の国内の労働生活水準を上げるというところの問題に、もっと熱心におなりにならなければ、私は壁に突き当るのじゃないかという感じがするわけです。先日も、厚生省または外務省から、この条約に関係して意見を聞きますと、非常に関心が薄い。あなたの今の御答弁を聞いていても、そういうところに心がいたしていない。私は非常に残念だと思うのです。今日外国公館を見ても、通産省の直接の担当官が全部外国公館に派遣されているじゃないですか。その外国公館に通産省の直接の人が派遣されておって、その国内の事情、後進国の問題は、これはまずおきましょう。一応先進国といわれておる中では、どういう労働状況にあり、生活環境にあるということは、よく御存じだと思うのです。そういう基礎の上に立って、貿易の問題は、潜在的にはやはりチープ・レーバーという問題がここへ出てきておるということは、私が申し上げるまでもなく、通産省がよく御存じのはずだと私は思うのです。それにしては直接担当は労働省でありましょう。労働省でありましょうけれども、通産省が一番私はこのILOの問題に関係が深い、私はそう考えておるのです。そうでなければ、日本の経済というものは伸びていかないのじゃないか。貿易の問題もそうじやないか。私はそう考えておるのです。だから、通産省としては、一体労働機関のILOの条約や勧告、それから、具体的にあの憲章や宣言から生まれてくる人間愛の精神、こういうものをどういう工合におつかみになっておるか。たとえば、そのILOのこの条約勧告を批准促進するようなことをおやりになったのかどうか、こういうことが聞きたい。
  46. 中山賀博

    説明員(中山賀博君) われわれといたしましても、高い理想といたしまして、こういうような労働条件改善ということは、もちろん望ましいことだと思いますし、また、それがこの生産の能率を上げていったり、あるいは結局はこの産業の振興になり、あるいは貿易の発展の基礎になるものだとは考えておる次第でございます。ただ、現実の問題といたしまして、われわれはそういう理想のもとで、また具体的には輸出の促進ということについては、いろいろ通産省の角度としましては、たとえば過当競争の排除であるとか、積極的な輸出の促進振興策、たとえば、いろいろの対外的な経済交渉、経済活動というようなものにも力を注いでいる次第でございます。
  47. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると何ですか、通産省は、そういう労働の問題には目もくれない。ちょっと極端な言い方かもしれぬけれども、そういうことには一切関係なしに、貿易とか経済の問題をお考えになっているということですか。
  48. 中山賀博

    説明員(中山賀博君) 全然考えないでそういう問題を扱っておるというわけではございません。やはり理想として、労働条件改善とか、あるいは生活水準の向上ということについては、もちろん指導的な一つの概念として行政を行なっていくつもりでございます。
  49. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いずれこの問題については、通産大臣に直接私はお聞きしたいと思うのですけれども、今の労働大臣は、閣内、岸内閣は一つだと思うのですが、まず、日本の経済計画を立てるには、労働者の保護というものが基礎にならなければ、経済計画を立てても無意味なんだ、その上で経済計画を立てるのだということをおっしゃいました。私は、まことにその意見には賛成でございます。ことしの予算のときになってきたら、いや、一、二年はそれが考えていることができないのだ。こうおつしゃる。だけども、通産省の今のお話を聞いていると、理想としてはいいということを言われますけれども、理想の問題じゃない、もう現実突き当っている多くの問題があるじゃないですか、日本と外国との関係において。そうお考えになりませんか。
  50. 中山賀博

    説明員(中山賀博君) われわれといたしましては、たとえば、来たるべき年の輸出目標として、たとえば三十一億五千万ドルという数字を掲げて、そうして努力するつもりでございます。貿易は、根本におきましては、やはり国際競争という問題が根本でございまして、よい品物を合理的な価格で売るということにしなければ、国際競争に勝てない。それで、国際競争に勝てなければ、またわれわれの一つの、至上命令であるところの輸出の拡大ということもできないわけでございます。他方におきまして、そういう、先生御指摘のような、労働条件改善ということもまた、われわれとして至上命令でございまして、その間の調和をどういうようにとっていくかという問題は、労働省その他政府部内において調和して、調整して進んでいくべき問題だというように了解しております。
  51. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、ちょうどイギリスへ行きましたときに、ランカシアの繊維産業が日本の繊維産業の圧迫を受けたという話を聞きまして、ちょうど五四年の年には、ILOの総会がゼネバで一カ月ほどあって、私はそとにいて、その当時日本の繊維産業の労賃が一番世界的に安いということを聞きました。私は非常に残念でございました。国内へ帰ってきて、そんなこと事実かと言ったらば、そんなことはないのだということでございましたけれども、いずれにいたしましても、国際的な認識はそういうところにあるということを私は聞いて、非常に残念だった。私の力では、それ以上つまびらかにそれをすることはできませんでした。そういう感じで、日本は工業国として、近代国家の機械化やオートメーションの中に進んでいくけれども労使関係というものはこういうものなんだ。こういう形がある中で、あなたがいかに貿易振興と言いましても、何と言っても、経済力経済力との私は関係だと思うのですよ、国際的には。だから、そういうことになってくると、貿易の大きなウエートというものは、やはり工業国、近代国というととろに大きなウエートがあると思う。その大きなウエートのあるととろの関係を見てみますと、日本の生活賃金の面から見ても、アメリカの十分の一ね、日本は。ヨーロッパの各国の大体四分の一です。とういう格好で貿易をすることが、いつまでも続くと思われますかね。あらゆる間隙をねらって日本が貿易を進めようとしても、業者の間は、金もうけの関係でそれは通過するでしょう。しかし、一般国民生活に入ってきたら、この品物がどういう形の中から生まれてきているのだという国民認識がきたら、国民の総反抗になるのじゃないですか。近代国家の関係において、そういうことをお考えになりませんかね。
  52. 中山賀博

    説明員(中山賀博君) ちょうど藤田先生がロンドンにおいでになりましたとき、ちょうど私も向うにおりまして、たとえば、レーバー・コンディションが、たとえば、給料についていいますれば、普通のタイピストでも、あるいは普通の運転手にいたしましても、日本の四倍取っておるということは、とにかくわれわれとしましても、非常に心を打たれますというか、あまりにも日本との懸隔の激しいのに驚いたわけでございます。同時に、従ってたとえば、日本の繊維産業の従業者、それから向うの繊維産業の従業者との間に、そういう一対四というような一般的な比率が、まあ若干の修飾は加えられたとしましても、伝えられておるということも、私は先生のおっしゃる通りだと思うのでございます。もちろんそれでございますから、われわれの給料あるいは賃金というものが、そういう高い水準に上っていくということは非常に好ましいことであるし、われわれ自身としても、これを強くそういう方向に持っていきたいと思いますけれども、現存のわれわれの置かれておる国際競争の、この経済の環境裏におきましては、一挙にそこまで、持っていくことが果して可能かどうかという点を私は考えてみますると、国際競争力というものと、それから賃金なりあるいは給与というものとの調和といいますか、総合的な調整ということが必要なのではないか、こういうふうに思うわけでございまして、それ自身の生活の向上ということについては、われわれとしても、もちろん努力もし、そしてまた、われわれは、今、輸出の促進とか貿易の拡大ということが日本国内においては雇用を吸収し、やがてはそういう生活のスタンダードの改善になると、こういうふうに考えておりますから、そのように努力しておるわけでございます。
  53. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、たとえば日本は、形式を追うことがなかなか恵まれておるといいますか、国連の理事国にもなりましたし、ILOの八十幾つの国が入っておる十大産業理事国にもなりました。そういう重要な役割だけは日本は持っておる。持っておるけれども、率先してその国際的信義を守っていこうというところに私は考え方が至らないと、単に国連やILOの形式じゃなしに、全体の経済との関連について、私は支障が出てくるということを申し上げておる。だから、私の言いたいのは、通産省はそういう気持になって、この一番重要な労働保護、国民生活保護のILOの機関をもっと重要視して、むしろ労働省に、早くこれを何とか国内法にできるものならば変えて、もっと基準を上げなければ、日本の貿易は行きづまりますよ、そういうところまでなぜお考えにならないのか。私は、そこまでお考えになる時代が今日来ておるのではないか、こう思っておる。単に、そういうものを度外視して、産業振興とか貿易を伸長するとか言ってみたところで、潜在的に大きな壁にどんどんぶっつかっていくのではないか。私は、一ぺんに欧州並みにせよとか、アメリカ並みにせよと言っているわけではない。通産省は、日本の経済の指導行政をやっておる所だからこそ、もっと熱心にこの問題をなぜ取り上げないかということを私は言っておるのです。先ほどからお話を聞いておると、何か、理想だというようなお話が出てきました。僕は、そんなものじゃない、もっと現実的に通産省はこのILOの憲章を守っていかなければ、近代国家の仲間入りができなくだんだんなっていくのだということを目に感じ、腹に感じておると私は思っておった。ところが、どうも私の考え方にピントが合ってこないので、非常に残念に思うのです。だから、問題は、このILOの精神や条約勧告について、今まではあまりタッチされていなかったようです。今お聞きするところによると。私は、それでいいかどうかということを言いたい。国民生活を上げていくという経済論については、ここでは私は論じませんけれども、しかし、国際的な関係におけるこの問題こそ一番重要な、今の近代国家とつき合いをしていく上に一番重要な問題でありますぞと、私は言っておるのです。どうですか。あなたはそうお考えになりませんか。非常にくどいようですけれども
  54. 中山賀博

    説明員(中山賀博君) 先生のおっしゃるように、できるだけILOの精神を実際の産業の指導にできるだけ大きく取り入れていきたいという気持については、全然御同感でございます。また、事情の許します限り、また、われわれが国際競争によってとにかくやっていくためには、いろいろな障害もございますけれども、しかし同時に、ILOの精神を取り入れて、できるだけ努力をいたしたい、こう思っております。
  55. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そてこで、申し上げておきたいのですが、今条約でも、百七つの条約が四十回の総会できめられております。日本は、三八年から五一年まで脱退しておりました。しかし、政府としても、国際信義の上から言って、この脱退していたときの問題も、同じような問題として考えていくということを政府は言明されておるのです。しかし、私は、やっぱり通産省や外務省や、わが国の内閣全体がこの問題に取り組まない限り、批准するとともできないし、具体的に批准だけではなしに、国内の基準を上げてやることもできないと思うのです。今、日本は、二十四の批准をいたしておりますが、それは、一九二〇年代のものを批准している。三〇年代から四〇年代の問題については、批准ができていないのですよ。これだけ、私は、国際生活の中においておくれているのが遺憾と思うのです。特に、アジアの中で、飛び離れた産業国です。あなた方もそうおっしゃるでしょう、私らもそう思っております。アジアの国をずっとめぐってみまして、一番日本が工業的には進んでいる国だと思っている。ところが、たとえば最低賃金の問題一つ取り上げてみても、アジアの国でフィリピンが行われている、ビルマが行われ、インド、セイロン、中国、オーストラリアやニュージランドは、もう一九〇〇年当時行われている。この一つの問題を取り上げても、こういう工合にして各国は努力している。戦後独立した国すらも、経済の低い国すらも、そういう問題について非常に努力している。私は、賃金の問題を申し上げましたけれども、その他労働時間の問題、休暇の問題、それから安全保障の問題、社会障保の問題という工合に、広範な区域にわたってたくさんの取りきめをしている。それ自身も単に過半数で、もうそのときの勢いできめるのじゃなしに、労使政府代表が出て、三分の二以上の多数でなければきめないという規律の中でものをきめてきている。私は、そういう重要な関係のある労働基準の問題を、通産省としてはもっと真剣に考えていただきたい。今、一生懸命やるとおっしゃいましたから、私は、一応あなたのお言葉を信頼して、期待をして待っておりますけれども、私は、そういう点が非常に残念だったのです。今まで国会で、こういうことが取り上げられたかどうか知りませんけれども、一段とこの問題について、皆さんに努力をしていただきたいと思っているのです。  まだまだたくさん申し上げたいことがありますけれども、このくらいであなたに対する質疑はやめますけれども、ほんとうに私は心配をするのは、今のような状態で行ったら、間隙を縫って貿易伸長ができても、潜在的な大きな壁の抵抗にぶち当たって、日本の経済というものがだんだん暗くなっていきますよということを申し上げたい。どうか一つその点は、通産省も十分にお考えを進めていただきたいと思います。
  56. 片岡文重

    ○片岡文重君 関連して……。  今、藤田君からのご質問を伺っておると、やはり指摘されたように、ILOの問題については、はなはだ私は、関心が薄かったのじゃないか。少くとも深く関心を持っておられたとは受け取れない。戦前の国際情勢と比べて、特に貿易面においては、ソーシャル・ダンピングあるいはチープ・レーバー等の非難ではなしに、自国産業の擁護に懸命の立場に立って、日本製品の海外への輸出が阻止されておる。問題は労働条件ではなくて、特殊産業のといいますか、産業の持つ特異性にあるのだ、こういうような御意見のようだったが、そしてまた、その自国産業の持つ特異性ということは、ひっきょうするところ製品と価格と、この面からの競争にほかならないと思うのです。どこの国民でも、やはりいい品が安く買えるならば、これはたとえ外国のものでも、それを買うことになっていくだろうと思う。いかに自国の製品を擁護しようとしても、それが高いものであり、品が悪かったら、これはなかなか擁護しがたいと思う。そういう観点からすれば、日本製品が低劣な労働条件の中で作られた、製品の内容はともかくとして、コストの安いということ、ここに魅力があって流れていく、それを阻止することに十年一日、ソーシャル・ダンピングだからいけない、チープ・レーバーだからいけないということでなしに、それの表現変えて、自国産業を脅威されるからだと、こういうことの表現に変っただけであって、現にあなたも、英国へ行って見てこられたとおっしゃった。藤田君も行って見てきたと言った。この両者の現実の目で現実の姿を見てこられて、しかも同じように、日本の労働者が低賃金で、苦汗労働に甘んじておるということを痛感してこられておるわけです。ということになれば、まずもってこの苦汗産業で泣いておる労働者労働条件改善して、正当に評価される価格で取引されるような、つまり公正な競争場裏に常々と立ち向って、なおかつ世界の貿易陣に勝利を占めるだけのやはり腹がまえは必要じゃないかと思うのですね。だから、英国やフランスで言うところの言い回しが戦前とは違ってきたように思うだけであって、本質的には何ら私は変っておらないと思う。特に最近の不況の深刻になっていく姿を見れば、これはまさに釈迦に説法になるかもしれませんが、アメリカの不況も、そう甘く見られた姿ではなかりそうだ。政府が言っているように、今あまりこだわっておらない、むしろ萬田さんあたりは直してきたようだけれども、四月や五月に景気が立ち直るなどとはとても考えられない。おそらく秋になっても、むしろ下向いていくのではなかろうかと思われる。こういう情勢の中で競争をしていくのには、しかも、だんだんとアメリカあたりが自国産業を擁護していく形をますます強固にしていく中では、一そうこれに打ち勝っていくためには、資本家として、価格の面だけで競争をしていこうという姿は、私は濃厚になってくると思う。おもむくところは、苦汗産業がますます加わってくる、こういうことになってくると思う。従って、いつまでも商業経済、国際経済の原始的な姿の中に貿易の勝利を占めようということでは、これからの貿易戦に打ち勝っていくわけには参りますまい。やはり国内における購買力の増大もはからなければならないし、同じ国民の、しかもきわめて多くを占める人々が人間生活を享受できるだけの姿にならなければならぬ。そういう意味からいえば、少くともやはりILOあたりで決せられた条約に忠実に従っていくくらいのことは、最低限として日本ではやらなければいかぬじゃなかろうか。特に貿易の面において重大な責任を持つ通産省あたりは、そういう点において、やはり近代感覚の上に立った国際戦を展開すべきではなかろうか、私はそう思うのです。こういう点について、どうも藤田君に答えられたあなたの御答弁では、その点が徹底しておられないように思うのです。そういう点について、もう少しはっきりした御見解なり御決意というものを私は伺っておきたいと思う。
  57. 中山賀博

    説明員(中山賀博君) 確かに、アメリカの景気あるいは世界の景気の見通しでございますが、この秋から急によくなるとか、冬に非常によくなるというような楽観的なことを言うのは、私は間違いだと思います。そうしてわれわれとしましては、貿易における国際的な競争というものは、非常に困難になってくるのじゃないかと、こういうふうに思っております。従いまして、たとえば、現在機械とかプラントの輸出の延べ払い条件の中には、船舶も含んでおりますけれども、そういうものにつきましても、値段を下げ、また、たとえば支払いの期限を延ばすというようなことで、甘い、やさしい条件を相手に出さなければ、だんだん買ってくれないという時代になっている次第でございます。そういうこともあります反面、また、日本の輸出商品をとってみますと、繊維その他の軽工業品については、国際的な競争力はかなりございますけれども、事一たび重工業品、たとえば機械であるとか船舶であるとか、そういうようなものになりますと、なかなか競争が困難でありまして、従来から非常にいい入札を、商売を逃がしている。われわれの商品価格の割高のために逃がしているという事実は、これまた認めざるを得ないところだと思います。そこでまた、日本の軽工業品につきましても、一がいに日本の軽工業品は、どこへいっても勝つのだというような考えもございますけれども、しかし、現実の問題として、価格を分析しておりますと、何といいましても、これを取り扱う商社の手取りの利益率も非常に薄い、口銭も薄いものでございますし、それからまた、コストすれすれにしばしば製品を出している。これは、いろいろな原因がございまして、やはりそこにはまた、過当競争という一つの日本経済の大きなガンがあることは、われわれとしても忘れることができないのでございますが、非常に低い、コストすれすれの線でしばしば、あるいは場合によっては、いわゆる白紙車操業というもので、出血輸出ということもしていることも認めざるを得ないかと思います。こういうようなわけで、日本の国際場裏における競争は、単に重工業品のみならず、軽工業品においても、そういう安易なものでないというようにわれわれも認識する次第でございます。そうして、もちろん商品のコストを割ってみますと、その中に原料の占める割合とか、あるいはレーバーの占める割合、商品によっていろいろ違います。そうしてわれわれといたしましては、もちろん輸入原料を割安に仕入れ、そうしてこれを最も効率的に有効に使用いたしまして、つまり機械の合理化とか、あるいは経営合理化等をはかりまして、安いコストで出していくというように努力いたしまして、輸出力の伸張に努めなければ、とうてい三十一億五千なんというような膨大な輸出はできるものではない、かように考えているわけでございます。こういうような非常に苦しい、ある意味においては、国際競争場裏でつばぜり合いをしていっております中におきましても、労働問題の重要性あるいはまたわれわれの生活水準の向上という問題は、同時に二つ相立てなければならない理想でございますし、また、原則でございまして、その点の調和ということについては、先ほど藤田先生からもお話もありましたし、われわれとしましても、できるだけそういうILOの精神を生かし、また、できるだけ取り入れ、そうして善処いたしたいと考えております。
  58. 片岡文重

    ○片岡文重君 コストの分析をなさったようですけれども、大体日本の商業形態というのは、中間搾取が多過ぎるのじゃないですか。特に貿易品なんかの場合には、生産者から実際に消費者の手に渡るまでには、非常な中間搾取が行われる。これが個々の商社の、あるいは製造業者の手取りを少くさせる。しかも、最終のコストというものが、外国製品に比べて低く押えなければならぬ。そこで、どこへしわ寄せされるかというと、それは結局、一番弱い労働者にしわ寄せされるということになる。こういう結果になる。これは、私よりもむしろあなたの方がよほど専門家ですから、おわかりになっておられると思うのです。そういう点にももっとやはり通産省としては方法をお考えになられて、不当な搾取というものはできるだけ排除していく、そして正当に受け取るべきものが正当に受け取られるような姿にして、しかも、流通過程を阻害するようなことがあっては、これはもちろん問題でしょうけれども、私は、今の中間業者の不当な搾取を排除したからといって、直ちに商品の流通過程が妨害される、あるいは阻害されるようなことはそう起るまいと思うのです。そういう点にむしろ力を入れていただいて、この国際信用の問題にもなっておる今日の労働条件については、やはり通産省あたりでは、もっと、むしろ積極的な立場から、労働省あたりに意見も述べられるなりしていただきたいと思うのです。ILOの条約のうちで、日本が二十四かしら、条約を批准しておられる。ところが、この基本的な労働条件として考えられるような労働時間、最低賃金あるいは年次有給休暇とか週休とか、婦人少年の問題とか、こういう根本的な問題は、一つも批准されておらない。これは、むしろ後進国だといっておる国々の方が、はるかにそういう点では近代的な思想によって運営をされておると私は思うのです。これは、ひとり労働省だけがその労働管理の立場から、あるいは労働行政の面からばかりやきもきするだけでは解決がつかない問題であって、むしろ国内消費の面あるいは国際貿易の面等において重要な役割をしておる通産省あたりに拍車をかけてもらう、こういうことでなければ私はいかぬのじゃなかろうか。先ほど藤田君に対しては、今後十分な関心をもって、積極的にやって下さるように御答弁があったように私は伺ったのですが、こういう問題は、やはり省としても相当重要な問題になってくると思いますので、当然これは、通産大臣の御出席を得て、確固たるお考えを承わりたいと思いますが、なお次長からも、これらの点については、十分に一つお話し合いをしておいていただいて、次の機会に当委員会に御出席をいただいた際には、それらの点に対して、やはりはっきりとした、具体的な御答弁が願えるようにお取り運びをしていただきたいと思います。それだけを要望しておきます。
  59. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 吾孫子務理事がお見えになっておりますから、質問を続けて下さい。
  60. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 通産省関係の問題は次の機会に譲りまして、国鉄当局に対して、一、二御質問をしたいと思います。国鉄は、具体的には、ILOの条約八十七号団結権の自由の問題との関係で、公労法の問題に関係をしてくるわけですけれども、国鉄が千二百四十九号ですか、これをお出しになって、その通牒を見ますと、その最後の方になると、内容のいかんを問わず、一切の陳情、話し合いに応じないということが書いてあります。これはよく御存じだと思うのです。それで、国鉄当局は、たとえば時間外協定ですか、基準法の三十六条ですね。ああいうことは、働かすことだけは労働者に働かしておって、その他の労働条件については一切、これは陳情すら話をしない。聞くところによると、当局が出された給与表であるとか、その他の問題を一人一人の従業員に渡される問題でも、機関事労組には見せもしないという極端な話まであるそうですが、どうなんですか、そこのところ。この陳情、それから今の話し合い、要するに、従業員にお出しになった、書類ですね。そういうようなものは、機関車労組には見せもしない、こういうことなんですか。
  61. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) ILO条約のことは、私ども承わっておりますが、私どもといたしましては、何と申しましても、まず直接規制を受けております国内法の規定を、これは労使ともに尊重すべきものだと考えておりますので、現在の公労法では、御指摘の通り、第四条第三項というもので、職員でない者が組合の役員あるいは組合員になれないというふうにきめておりますので、その条項と現在の機関車労働組合あり方とが違っておりますので、この点を、まず面内法を尊重するという意味で、機関車労働組合としても、ぜひこの法律の規定に合うような状態にしていただきたいということを、私どもの方としては強く組合に対して要望しておるわけでございます。それで、実は一日も早く、私どもとしても、組合が法律の規定にかなった状態になって下さって、正式に団体交渉その他も行なって、労使関係を正常な状態に持っていきたいということが、私どもの常に念願しておるわけなんでございますが、現在の実情というものは、これは、先生も御存じの通りでございまして、機関車労働組合としては、現在の解雇された職員が役員になっておる状態を改めるということについては、真正面から反対しておるわけでございまして、そのために、現在この問題は訴訟にも係属いたしておりまするし、また、公共企業体労働委員会の方にも、不当労働行為として申請もされているという状況にあるわけでございます。こういう状況にございますので、実は私どもとしましては、私どもの立場から見ますれば、明らかに法律の規定と違ったことを強引に組合の方が押し通そうとしておられるように思われますので、そういう状態に対しては、私どもとしても、ぜひ組合に反省をしていただきたい。その状態が解決しない限りは、現在の公労法の規定から考えれば、正当な団体交渉をやる能力を持っていない組合だと言わざるを得ない。従って、私どもとしては、公労法に定められておるような団体交渉に応ずるわけには参らないということをまず強く申しておるわけでございます。そのことに関連いたしまして、公式であると非公式であるとを問わず、陳情や話し合いにも応じないというのは、あまりにもひどいじゃないかという御批判もあろうかと思いますが、この点につきましては、私どもとしては、現在の機関車労働組合状態というものは、協定や協約を締結する能力を持っておらない状態だというふうに考えておりますので、正常の団体交渉とまぎらわしい印象を与えるような事実上の話し合いというようなことも、お断わりいたしておるわけでございます。実は、これもまあ率直に申し上げますが、この千二百四十九号という通達が出されます前までは、今先生からお話のありましたような事実の説明というようなことばやっておったわけでございます。ところが、この事実の説明をしてくれというお話がありまして、その説明を私どもはいたしたわけでございますが、それを組合側の方では写真にとられまして、機関車組合の機関新聞にその写真を掲載して、そうして当局は団交しないと言っておるけれども、この新聞で見る通り、事実上はちゃんとやっているのだというようなことの宣伝の具に使われたというようなこともございましたので、私どもといたしましては、機関車労働組合がほんとうに現在の法律の規定に合った姿に改めて下さるまでは、多少極端だという御批判もあるかとも思いますけれども、団体交渉並びにそれとまぎらわしいような話し合いというようなことは一切しないという考え方で、実は組合側の反省を強く期持するという気持から、あのような通達を出しておる次第でございます。
  62. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、基準法の三十六条の協定によって、働かすということだけは、時間延長その他をおやりになっているのですね。
  63. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 御指摘の通りでございますが、これは、各事業場単位に結ばれておりますので、各事業場単位に、それぞれの所属長とそこの職場の職員との間に話がまとまりました場合には、三十六条の協定を結んでおるわけでございます。
  64. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうするとなんですか、要するに、時間外とか、勤務時間の問題の三十六条の協定はやるけれども、その他の問題は一切、陳情もすら、資料を見せることもしないということとの食い違いはどうなるのですか。
  65. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 実は、基準法関係の協定につきましては、私どもといたしましては、これを公労法上の団交とは一応区別して考えておりますので、基準法上の協定は、これは、基準法に基いた例外措置を認めるための基準法上の単なる手続であると、こういう考え方に立ちまして、三十六条の協定については取り結んでおるのでございます。
  66. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうするとなんですね。法律は、公労法と基準法と違うから、基準法だと、こういう理屈になるわけですね。人間は一緒ですね。そうでしょう。当局対相手の従業員は同じ人ですね。同じ人で、働かす方だけは働かすけれども、その他一切の労働条件その他については、資料も見せないというのはどういうわけですか。相手が同じであって、大きくいえば、憲法に明確に保障されている問題である、そうでしょう。
  67. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 公労法上の団体交渉というのは、これは、あくまでも労働組合との間に行われる。公労法上の職員の組合との間に行われる交渉でございますので、その組合は、先ほども申し上げましたように、法律的にも瑕疵のある状態でございますからやらない、こう言っておるわけでございますが、労働基準法の方の協定は、必ずしも労働組合の存在というものを要件として、前提いたしておるものではないというふうに承わっておりますので、実は、私ども考え方といたしましては、交渉の相手にする組合というものはないのと同じ状態だと、従って、そういう組合がない場合には、その職場の過半数の職員を代表すると認められるものと協定を結べばいい、こういう解釈が許されるように承わっておりますので、私どもの気持としましては、それぞれの事業場の職員の過半数の代表と話をまとめるのだ、こういう気持で三十六条協定は結んでおるわけでございます。もっともこれは、三十六条協定につきまして、その従業員代表である――まあ事実はそれぞれの組合の代表者ではございますが、その職場の職員の代表者との間で意見の合致があったから三十六条の協定は結んでおる、こういうことでございまして、意見がもし合いません場合は、これはもう結べないのでございます。従いまして、三十六条協定を結んでおるところもございますが、結んでおらないところもたくさんあるわけでございまするし、昨今のように、また闘争状態というようなことになって参りますと、組合側の方も、これは自由に破棄なさるわけでありまして、組合側の方が破棄されることに対しては、私どもとしても、何とも防ぎようがない。まあ組合側の職員諸君との間で話がまとまったところは協定を結んでおる、こういうことでございます。
  68. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 三十六条の精神は、何も当局使用者が押しつけるものでないのであって、話し合ってきめるものでございますから、それは、まとまらなければきまらぬわけですからね。それはそうでしょう。で、私は労働省に聞きたいのですけれども、片一方では時間延長や三十六条協定をやる。この相手は、場合によってというか、組合の要するに地方の組織である。それでいて、いまのような千二百なんぼの通牒が、通牒というのか、何というのか知らぬけれども、これが出されて、陳情すら、従業員に与えている書類すら見せないという、こういう感情というものは……大きくは、憲法で団体交渉を保障されているのだが、組合の組織も団結権、交渉権、団体行動権という問題が、三権が保障されている。そうなると、国鉄の今の組合はどういう組合なんですか、機関車労働組合は。
  69. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 機関車労働組合は、労組法上の組合であると、われわれは考えております。
  70. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労組法上の組合……、労組法上の組合であって、公労法の……。
  71. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 言葉が悪うございましたが、労働組合であるという意味の言葉でございます。ただ、御承知の通り、四条の適用を受けまする関係上、労組法上の労働組合のほかに、公労法の四条の制限を受けることになる、性格上はそういうことになっております。
  72. 片岡文重

    ○片岡文重君 関連して。今のは、労働省を代表されての意見だろうと思うのですが、四条三項の規定は、これは公労法上の組合の、何といいますか、不可欠の喫緊要件であるということには私はならぬと思うのです。労働省も国鉄当局も、機関車労働組合はやはり公労法上の労働組合であるということは認めておったはずです。ただ、団体交渉その他において、組合を代表して交渉に当る、あるいは責任を持つものがたまたま欠格条件に該当しておる、こういうことであって、労働組合としては、あくまでも公労法上の労働組合である、こういう見解を今まではとってきておるし、組合側に対しても、そういうふうに述べておったと記憶しておるのだが、それは、いつ今のような御答弁に変ったのですか。
  73. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 同じことでございます。私の申し上げましたのは、ただこの現在の機労の状態、これは、四条三項は、言うまでもなく、先ほどお話のように、組合の資格の要件ではないのでございます。ただ、現在におきましては、機労は四条三項に違法の状態に今あるという形でございます。そこで、現在この四条三項の現実的に違法な状態にあるので、労働組合としての存在はわれわれは認めておるのだという趣旨を申し上げたわけであります。
  74. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、今の具体的な問題ですね。要するに、その公労法上の組合の資格要件をきめるのじゃないけれども、公労法上の組合であり、労働組合法上の組合である、こういうことですわ。
  75. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 労働組合法の適用を受けております。基本的には労働組合法の適用を受けるわけです。ただ、先ほど来申し上げますように、公労法の四条というものをそれにかぶせておる、こういう労働組合である。従って、労組法の適用を受けます労働組合であることは、これは確かでございます。
  76. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、今の三十六条の基準法の協定、相手が同じ組合ですね、組合の支部とか地方組織なりに、この相手が同じ条件で働かすところだけは協定をして、片一方では陳情とかまたは発行した書類すら見せないという条件というものに対して、労働省はどう考えますか。
  77. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 陳情とかあるいは書類を見せない、これは事実行為でございまして、法律問題でございませんので、その当不当ということは、われわれはここで今申し上げるわけにはいかない。当局の御判断によるわけですが、まあ一般論としては意見もございますが、この問題は、御承知の通り、今地方の公労委の調停委員会にかかっておりまする事件でございますので、われわれといたしましては、判断を差し控えさせていただきたいと思います。
  78. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、労働省にもう一つ聞いておきたいのですけれども、団結権の自由という問題は、今非常に問題になっている、八十七号の条約なんですね。で、八十七号の条約で、午前中には、九十八号の条約の関連について質問したけれども、時間がなかったのでやめましたのですが、この関連についてです。今日団結権の自由という問題は、私は国際的な常識だと思うのですね。だから、ILO全般の条約関係という問題は、残された問題としてまだたくさんありますけれども、この問題に触れると、この問題だけを一つ摘出して、私は今質問を申し上げておるわけです。それで、その団結権の自由という問題は、基本法である憲法で保障をしておりますし、そこでまた、これは国際的に常識的なこと、それが公労法の四条三項があるために問題をかもし出しているということなんです。国鉄当局は、公労法の関係において。こういうことでしょう。しかし私は、このような状態がいつまでも続いてはいけないという問題になってきておる、今日。そこで政府は、根本的にこの八十七号の問題をどういうふうに考えているのか。こういうことですね。それがまず第一点です。  それから第二点は、九十八号の条約というのは、むしろ八十七号と密接なる関連においてできた条約で、九十八号だけは批准した。団結権、交渉権というものを明確にした条約が九十八号、これだけは批准したけれども、八十七号などは批准しない。こうなってくると、ますますややこしくなってくるわけですが、その関係について、一つ局長から、この二つの点についてお答えを願いたい。
  79. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 午前中、法規課長からも御説明があったと思いますが、八十七号、九十八号、これは、おのおの労使関係に関します条約という意味におきましては、これは、大きなワクの中では一つのものだと考えますが、基本的にはやはり別々の条約でございます。そうして国内法におきまして、この八十七号なり九十八号というものの条約の内容が、そのままこれを批准して差しつかえないかどうかという検討は、九十八号を批准する際に当然検討されたようであります。当時の状況から申し上げますると、九十八号につきましては、日本の国内法から見まして、これを批准するも何ら差しつかえないという結論に到達をいたしまして、これは批准したわけでありますが、八十七号の方は、この前の当委員会におきましても御説明を申し上げましたように、公労法の四条三項、あるいは地公労法の五条三項、あるいは国家公務員法の九十八条、あるいは地方公務員法等のいろいろな国内法との関係におきまして、さらに検討を要する問題がたくさんあるわけであります。従いまして、当時九十八号は批准いたしましたけれども、そういう国内法との調整をいかにするかという関係におきまして、今日まで八十七号の批准がおくれているというのが今日までの経過だと思います。
  80. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それで八十七号はおくれているというだけでなしに、どういう工合にお取り扱いになるのか。
  81. 亀井光

    政府委員(亀井光君) この問題につきましても、先般の当委員会で、労働大臣から、また私からも御説明を申し上げましたように、労働問題懇談会に、昨年の秋この問題についての検討を諮問にいたしました。現段階におきましては、小委員会を作りまして、国内法との関係の検討を今いたしている段階でありまして、すでに二回の検討を終っております。で、その検討の結論を得まして、われわれといたしまして、この条約批准問題の最終結論を出したいというふうに考えております。
  82. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それは、時期はいつごろですか。
  83. 亀井光

    政府委員(亀井光君) できるだけ早くという要望は、小委員会にいたしておりますが、小委員会におきましても、慎重にいろいろな検討をしなければならない関係上、いつごろになりますか、今ここではっきりと申し上げることができないのであります。
  84. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私たちは、その八十七号の批准の問題をめぐって、この社労ばかりでなしに、全院の中でこの問題を論議して、今のような、非常に世間から聞いておかしいような、働かすところだけは働かす、そうしてその他の問題については形式云々で、四条三項というような格好でやられるような状態の解消を私たちはしたいと考えております。そこで、この問題については、問題があとへ残りますけれども、この前の質疑のときには、亀井局長は、この国鉄当局と機関車労組との関係について、これは、一般的に常識的に見ておかしい問題である。結局八十七号の問題が焦点に行ってひっかかってくるのだが、基準法の三十六条と今の当局の通牒との関係は非常に変則的な状態である。これを何とかやらなければならぬという、ここで質疑をやったと思うのです。その集約してきた質疑の中で、いろいろの問題があるので、国鉄当局は機関車労組に話し合いを今しているのだということが答弁にあったと思うのです。その点、国鉄当局は機関車労組にどういう話し合いをしておられるのか、聞きたい。
  85. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 話し合いをしているという答弁を申し上げたわけじゃございません。三十六条協定で、すでに話し合いをしてきた実績からしまして、二四協定につきましても、当局としては話し合いに応ずるという態度にあるように聞いておるというふうに私は申し上げたのであります。具体的な話し合いに入っているかどうかということについては、私、何ら答弁申し上げたことはございません。
  86. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 言葉のニュアンスはとにかくとして、ともかく話し合いを当局と機関車労組とやっていると、話し合いをやろうとしているのか、やっているのか。その点、当局はどうですか。
  87. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 先ほども申し上げましたように、基準法上の協定というものを、私どもは公労法上の団交事項とは分けて考えておるわけなのでございまして、意見が合えばいずれもできる協定だ。しかし、意見が合わなければ、これは結ばなければならぬ性格のものとも考えておりませんので、まあ三十六条協定については、意見の合ったところで結んでおる。しかし、それも一ぺん意見が合ってできた協定ではございますが、組合の方の闘争の都合によっては、組合の方から破棄されるというような状態に現在あるわけでございます。そこで、二十四条協定の方でございますが、相手方としてはまさに同じ相手方であるわけでありますが、二十四条協定については、実質的にも意見がひどく食い違っておりますので、まあとうてい話がまとまる見込みがないように思っておるわけでございます。ただ、このことにつきまして、組合の本部の方から国鉄の当局の方に申し入れがございまして、これをどう扱うかということについて、組合側から当局側に申し入れがあり、それを受けての話は本社で行われておるということはございます。
  88. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 本社で行われているというのは、機労と国鉄の当局との間に行われているということですか。
  89. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 機労の本部の方から国鉄の本社に申し入れがございまして、二十四条協定についても結びたいのだというお話が出ておることは事実でございます。そのお話を、私どもの方では、私どもの職員局長がお相手になりまして、話をしたということは事実でございます。
  90. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その経過はどうなんですか。したというだけですか。それは、二十四条協定なら、やろうと思えばいつでもやれる問題ですから、話をしたというだけですか。協定を結んだということじゃないですか。まだ進行中だということなんですか。
  91. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) とにかくその話が出て、一応話し合いがあったということでございまして、進行して、協定を結ぶとか、結ばぬとかというふうなところまではまだ話は進んでおりませんです。
  92. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、この問題は話し合いをされるわけですね、続けて。二十四条協定の問題は。
  93. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 二十四条協定を結ぶか結ばないかということについてのお話は、現に受けておりまするし、そのお話はするつもりでございます。藤田藤太郎君 亀井局長のお話のあったのは、二十四条協定ばかりじゃないと思うのだが、どうですか。ちょっと僕の聞き違いか、どういうことです。あなたのおっしゃったのは。
  94. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 二十四条協定の話し合いの問題だけに限定して、私この前御答弁申し上げたのです。
  95. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、今の三十六条の協定の問題と二十四条の協定の問題が、そういう工合にしてまあ話が進められる。一方では労働組合法の組合であり、資格条件は公労法の組合である。四条三項の制限を受けるというような、なかなかややこしいことになってくるわけだが、そこで、この陳情や、それから書類も見せないという問題まで入ってくると、これは、片っ方では地方で人格を認めておいて、それで中央では、形の上でこういう形をとられているわけなんだが、おかしい形だとは思われませんか、吾孫子さん。
  96. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) その点につきましての私ども考え方は、先ほどもちょっと申し上げましたように、とにかく交渉相手にはできない組合なんだと、従って、相手方とすべき組合はないのと同じだというふうに考えざるを得ない。そこで、まあ基準法上の協定についてだけは話を受けると、そういう考え方でおるわけでございます。
  97. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、二十四条の協定は、中央でやっておられるわけでしょう。
  98. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 現在三六協定も、二十四条協定も、中央一本ではやっておりませんので、各事業所単位にやらしております。
  99. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 二十四条も三十六条も地方地域でやっておると……。
  100. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) さようでございます。
  101. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、そういう工合にして、まあ地方にしたって、大きいところもあれば小さいところもある。いずれにしたって、労働組合の自主的に組織した組織なんですからね。これをやっぱり、人格的に否定するけれども、事実においては認めているのだ、形式は否定するけれども、事実においては認めているのだという理屈もあるかもしれませんけれども、しかし、いずれにしても、事実問題としてそういうことがやられておって――私の尋ねているのは、こういう、その地方の組織の集約した中央組織があるのですから、こういう形の状態というものは、いかに団体交渉権が公労法の四条三項の適用を受けて、制限を受けていないとおっしゃっても、事実行為として問題がありませんかということを言っているのだ。世間の常識的に、どういう工合にお考えになりますかということを聞いているのです。おかしいとお思いになりませんか。
  102. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) なかなかむずかしいところでございまして、まあ考えの中に、気持としてはないものと同じ状態だという考え方で、団体交渉についてはお断わりすると、団体交渉とまぎらわしい事柄についてもお断わりをする。このお断わりをしておりますのは、早く組合側に御反省を願って、公労法の条項に適合した状態になっていただきたいということのために、実はそういう強い態度に出ておるわけなのでございます。そうして基準法の協定の方は、いわゆる団交とは区別された取扱いに法律上もなっておるように承知いたしておりますので、基準法上の協定については、これは、必ずしも労働組合の存在ということが法律上も前提条件となっておりませんので、それぞれの事業場の職員の過半数の代表者だと認められる者が明らかに存在さえすれば、その者と協定を取りかわしていいことになっておりますので、そういう考え方で、基準法上の協定についてだけは話に応じておる、そういう考え方であるわけでございます。
  103. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも繰り返すことになるのですけれども、まあ賃金労働条件の問題は、そういう格好で、団体交渉というものを公労法上の制限によってやらないということをおっしゃるのならば、その他の業務上の問題がたくさんあるでしょう。たとえば、操業運転とかの中には、安全運転もあるだろうし、それから能率運転、能力を上げる運転もあるだろうし、場合によれば、国鉄のサービスからいって、服務の問題やその他のたくさんの問題がありますね。従業員と雇い主との関係の問題、こういう問題はどうおやりになっておるのか、やっておられないとしたら不便ではないか、そういう点について。
  104. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 業務の執行についていろいろ問題がございますことは、御指摘の通りでございます。それで、これに対して現在機関車労働組合は、いろいろな闘争指令を出しておられますが、非協力闘争というのをやっておられまして、業務の円滑な遂行ということの上において、非常に苦しめられておるということは、これは事実でございます。こういう状態を一日も早く打開できるような道を開きたい。開いていただきたい。それには、労使関係正常化というのは、やはり何と申しましても、双方当事者の正常な団体交渉ということが当然基調であると考えますので、それのできるような条件に適合した姿に早くなっていただきたいということを、これは始終お願いもいたしておりますし、また、それをお願いする一つの手段として、本意ならずも、団体交渉並びにそれにまぎらわしいことはお断わりするという態度に出ておるわけでございます。
  105. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、国鉄としては、日本の基本法でいえば、憲法で保障されている。それからもう一つ、国際的な常識としては、そんなものが制限されるというのは、公務員については、多少各国でそういうところがあるところがありますけれども、国鉄は、独立採算制としての事業をやっている形の中では、これは、一般通念に出てくる独立した事業使用者労働者関係以外にもう解釈のしょうがない。そういうことで、問題になるのは、今問題になって、論争になっているのは、結局団結権の八十七号の批准の問題、あわせて国内法の公労法、地公労法並びに公務員法ですかの制限を少しずつ受ける関係にある。よそのことは別としても、上要するに、公労法との関係、四条三項ですね。こういうものをあわせて国際的な水準に持っていこうとして政府に要求をする、ほんとうの組合関係に持っていこうということを政府に要求するお気持がありますか。そしてまた、自分自身として今も公労法の中におるのだから、おれはそれだけ守ったらいいのだということでなしに、一般常識として、こういうものに対するお考えはどうなのですか。
  106. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 大へんむずかしい御質問で、どういうふうにお答え申し上げたらよいのか、よくわかりませんのでございますが、私ども労使関係を正常化いたしますために、いろいろ問題が起りますつど、労働省にいろいろとお知恵を拝借し、あるいは指図を受けに出向いていくということは、しょっちゅうあるわけでございます。ただ、私どもの当面の問題といたしまして、労働省からも強くお示しを受けておることでございますが、ともかく現在の法的秩序というものを、規定があるからには、それをきちっと守るべきだということは、始終お話もございますので、私どももそれが当然であると考えておりますから、現在の違法の状態というものは、一刻も早く改めてほしいということを常に組合側に対してもお願いをいたしておる、こういうことでございます。
  107. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 公労法上の適用を受けているから、そういう立場から、そういう発言をされるということはわかりますけれども、あなたもよく世の中のことをお知りの通り、今日の日本の形、国際的な環境からいって、もはや、もうこれがあるから、これを橋頭堡で守るのだという今日の世界環境じゃなしに、こういう問題というものは早く、団結権の自由の問題は、もう国際的な常識慣習のレベルに日本が入っていいのじゃないかということが、あらゆるところで議論されている問題なんです。そこに根源がある問題なんです。私はやはりそういう面で、公労法があるから、これにしがみついているというか、やむを得ないのだというか、いずれの立場か知りませんけれども、こういう立場でなく、私はもっと考えてもらいたいと私は思います。非常に残念なことは、これは、根源が公労法にあるわけです。それを取り巻く国際的な問題としては、ILOのこの問題があるのですから、この問題については、もっとわれわれは国会全体の問題として論議をしたいと思いますけれども中央当局としても、その点にはもっと心をいたしていただきたい。これだけはお願いしておきます。
  108. 片岡文重

    ○片岡文重君 大体藤田君の御質問で、その意は尽されていると思うのですが、伺っていると、国鉄吾孫子務理事のお話は、現行の公労法の上に立っての御議論であります。これは当然だと思うのです。そこで今、藤田君からも言われたのですが、問題になっておる、世界の労働者諸君も強く日本の政府の出方を見守っている問題は、ILOの条約批准の問題です。こういう世界の諸情勢の中で、しかも、この公労法があるがために、たとえば八十七号条約にしても、批准できないということなんですから、この際国会も開会されておるところでもあるし、この公労法の四条の三項、これを一つ削除するお気持はないのかどうか。特にそれは、たしか三十一年の二月でしたか、あの臨時公労法審議会答申にもあったと思うのですが、この四条三項を削除することに反対されたのは使用者側だけである。あと公益側も労働者側も、全部賛成をしておったはずです。こういうものをいつまでも残しておいて、しかも、これによらなければならないということでは、はなはだ御不便ではなかろうか。やはり時代に沿うた改正は、勇敢にしていただいた方がいいと思うので、たまたま国会開会中でもあるから、一つ改正の手続をとられてはどうか、こう思うのだが、全然その御意思がないのかどうか。もしないとされるならば、どういうお考えで改正をする必要がないと認められるのか。これを一つ。
  109. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 公共企業体等の行いまする事業は、御承知の通り、国民の日常生活に非常に直接的な関係を持つ内容でございまするし、あるいは国民経済、あるいは国家財政というようなものにも直接関係のあります。非常に高度の公共性を持った事業内容を持っておるわけであります。従いまして、こういう事業に従事しまする職員は、三公社につきましては、公務に従事するものとみなされますし、五現業につきましては、公務員と同様な地位と身分を持っておるわけでございます。そこで、こういうふうに非常に高度な公共性を持っております事業でありまするだけに、この事業に従事する職員は、それだけの債務と使命を持っておりまして、従って、その職員によって構成されまする組合というものも、やはりそういう事業に直接責任と使命を持つ職員によって構成されるということが、この高度の公共性を保持する上におきまして、また、これらの高度の公共性を持ちます事業の正常な運営をはかりまする上におきましても必要ではないだろうかというので、われわれとしましては、現在のところ、これを改正する意思を持っていないのでございます。ただ問題は、先ほど来御説明のございまする条約批准との関係におきまして、いろいろ検討の材料にはなるだろうと存じますが、これあたりも、目下労働問題懇談会の小委員におきまして検討されておりますので、その推移に待ちまして、われわれもさらに検討をしたいと思っておる次第でございますが、現在のところ、改正する意思はございません。
  110. 片岡文重

    ○片岡文重君 小委員会において検討されておるからというお話ですけれども、これは、小委員会は小委員会としての検討を続けられ、それの結論をまとめて答申されるのです。あるいは上申されるのです。されることは、これは一向差しつかえない。しかも、そのすみやかな結論を待つということは必要でしょう。けれども、行政の面に当る労働省としては、現にこの条項があるがために、国際信用の問題にも大きくいえばなっているわけですから、こういう点に立てば、しかもこれは、労働者の基本的な権利であるし、基本的な労働条件に入っておるのですから、それを否定をし、国際信義にもとってまで批准ができないということになれば、これは、検討の材料ではなくて、むしろ唯一最高の障害となっておると考えていいのじゃないですか。公労法の適用を受ける労働者諸君が、正当な労働条件のもとに、保障された団結権を守ろうとすれば、何といっても、これは障害になることは事実だし、使用者側だけが反対をしたということは、使用者側だけに有利であって、公正な三者から見ても、これは不当なものだということがいえる条項なんだから、これを十年一日のごとくに、公労法制定以来、これは公労法の適用を受ける労働者の守らなければならない一線である、制約を受けるのはやむを得ないのだ、こういう進歩のない御意見ではなしに、やはり時代とともに進んでいく考え方に一つ改められてはどうか。労働省としての御見解をお持ちになることも、私は少しも差しつかえないことであり、労働省としてはこういうことが望ましいという御見解を私は伺いたいと思うのですが、いかがでしよう。
  111. 亀井光

    政府委員(亀井光君) わが国がILOの加盟国といたしまして、国際社会の一員でありまする以上、ILOの決議いたしました条約につきまして、これを批准して参り、その内容を国内法において具現して参りまする責任は、これは当然あるだろうと思います。ただ、たびたび御説明申し上げておりますように、ILOで決議されました国際条約であるからといって、それをもって直ちに加盟国を拘束するものではございません。加盟国のいろいろな社会的な、あるいは経済的な、政治的ないろいろな事情というものと、その条約の内容とがマッチする場合において、初めて批准という手続がとられていくのだろうと私は考えております。従いまして、非常に基本的な内容を持ちます条約ではございますが、まだ批准されているのは三十一カ国にすぎない状況を見ましても、おのおのの国内のいろいろな諸般の事情がそれを批准させない形において残されているというところに問題点があろうかと思います。わが国におきましても、すでにたびたび御説明申し上げておりますように、国内法の関係におきましては、公労法、国家公務員法、地方公務員法等に、なお調整を要すべき点もございます。  われわれとしまして、しからば労働省はどう考えるかという御質問でございまするが、われわれは、やはり労使公益という各方面意見を広く聞きまして、その中から正しい方向つけをわれわれとしてはしていきたいという考えでございまして、われわれだけが独断的にいろいろな結論を出しますことは、こういう非常に大事な、しかも基本的な問題でありまするだけに、慎重な手続を経て、この問題の処理に当りたいというふうに考えているわけでございまして、労働省としましても、事務的な検討等はいたしておりますが、最終的な結論あるいは最終的な意見というものは、労働問題懇談会の小委員会の結論を得まして出したいというふうに考えている次第でございます。
  112. 片岡文重

    ○片岡文重君 今も言った通り使用者側だけ、使用者委員だけがこれを守ることに懸命であって、公益委員も、これは直すべきである、直すのが、むしろこれは削除することが適当である、こういう明確な結論を出しているものを、直接それによって利益を受けるところの使用者だけがこれを守っている。しかも、これを守ることに、労働者のサービス・センターであるべき労働省が、その使用者側だけの意見に全面的に支持を与えているという姿は、私たちにはどうも納得いかないところなんです。しかもこれが、繰り返すようだが、条約批准のガンになっている、こういう点を考えれば、これはやはり、大きい意見に従うのが私は正しい行政庁の姿ではなかろうかと思う。こういう意味から言っても、ここでくどくど局長と議論を繰り返す意思はございませんけれども、どういう点から見ても、このままこれを存置するという行き力は得策ではない、こう思います。現に、この条項があればこそ、国鉄当局といえども、やはり組合の機関構成にまで少くとも容喙と言ったら言い過ぎるかもしれませんけれども、希望をしていることは事実です。業務運営その他において、団体交渉を欲することはもちろん欲しておられるでしょうが、この条項をたてにとって、団体交渉をされない。当局者に言わせれば、団体交渉したくてもできないのだと言うのだから、しかも聞けば、今機関車労働組合の非協力運動だとかによって、すでに石炭費の増加は三十億をこえるとかいう話じゃないですか。これは、ゆゆしい私は経営管理の問題だろうと思います。石炭費にすでにこの兆候が現われるとするならば、経営全般にわたって大きな経済上の問題が生まれてくるでしょうし、このことは、ひとり国鉄ばかりでなくて、日本の経済上の問題にもなってくるでしょう。しかも、今はダイヤ改正も行われているし、少し過ぎれば、五月か六月には天皇が九州においでになる。これもまた、国鉄としての一つの大きな仕事になってくるでしょうが、こういういわば機関車労働組合の、国鉄労働組合の諸君が場合によればからだをはって業務遂行に当らなければならない。そういう人たちの仕事の面については、形態が整っておらないということだけで、業務命令一本で押しつけていっておる。従業員の意思というものは全然そんたくしていかない。これでは、日本経済の根幹をなす国鉄の運営というものが私は円滑にいく道理がないと思う。むしろ労働者の基本的な権利を侵すようなことはしないで、労働者労働者としてのみずからの知性に基いた行動を、当局も行政庁もそのまま是認をして、そう常軌を逸したことをやるわけはないのですから、やはりみずからの考えに基いてとっておるところの行動は、そのまま是認をすることこそが、憲法に認められた私は労働者の基本的権利を保障する道だと思うのです。そういう意味からいっても、労働省は、この公労法の改正には積極的に手をつけるべきであり、国鉄当局としても、これの削除されることについては、私は賛成してよろしいのではないかと思うのです。特に吾孫子務理事は、経営管理の面からいって、今の状態を決して好ましいものとはお考えになっておらないと思うのだが、一体今後このままの状態が、もし機労と当局とが意地ずくで対立を続けるような姿になっていくとしたならば、心中意地ずくでなくても、形として意地ずくで続けていくような姿が今後長く続くとするならば、一体どういう措置を今後おとりになろうとするのか。やむを得ないから、このまま機労のくたびれるのを待つということか、張り合っていくというお考えを持っておいでになるのか、どうこれを打開していこうとお考えになっておるのか、それを一つ承わっておきたい。労働省からも重ねて、私が今申し上げた点について考慮される余地はないのかどうか、お尋ねをしておきたい。
  113. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 国鉄当局といたしましては、機関車労働組合が、今までにもし法律に合った状態にしよう、正常化しようという意思がありさえすれば、そういうふうになし得る機会が幾たびかあったにもかかわらず、あえてそれをされていないということが非常に残念に思われてならないのでございます。同じ国鉄の中の組合であります国鉄労働組合の方は、先年の公労委の藤林委員長のごあっせんがありました際に、その線に沿うてこれを受諾し、そして組合の状態というものを正常化すべきものであるということをこの後の大会において是認しておるわけですが、国労にそれだけの機会があったにもかかわらず、機関車労組はあえてそれに乗らないで、今日の状態を続けておる。そのほかにも、機会は幾たびかあったと思うのでありますが、それがいまだに行われないということを、心から残念に思っておるわけでございます。それで、私どもが今機労に対して臨んでおる態度というものは、あるいはまことに頑冥不霊というふうな印象をお受けになるかもしれませんけれども、私は、機労の諸君に反省していただくためには、やっぱりあくまでも筋道を立てて、けじめをはっきりするということが、一番早く状態を正常化するためのいい方法ではないか、国鉄当局としては、そういうふうにかたく考えておりますので、今後もこの状態を、まことに遺憾ではございますが、組合側が反省して下さいますまでは続けざるを得ないというふうに考えておる次第でございます。
  114. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 国鉄と機労との関係の問題につきましては、私も、今吾孫子常務が御説明しましたところと同じ考えを持っております。私としましても、できるだけ早い機会におきまして、機労が正常化されますることを強く期待をいたしておるわけでございまして、そのチャンスは必ずしも皆無ではないと、私ども考えておる次第でございます。問題は、機労の決意次第ではないかという気もいたしております。  それから、四条三項の問題につきましては、先ほど来申し上げましたように、現段階におきましては改正する意思はないのでございますが、御意見としましては、十分承わりたいと存じます。
  115. 片岡文重

    ○片岡文重君 これは、重大な私は認識の相違だと思うのですが、国鉄労働組合が過ぐる大会で副委員長を更迭して、要するに当局の希望するといいましょうか、期待する姿を整えたということは、公労法四条三項を是認をして、その上に立って、もっともであるという了解の上にといいましょうか、承服した上に立っての私は処置ではないと思うのです。少くともこれは、国鉄労働組合が現在置かれているところの組織上の問題であるとか、あるいは団体交渉を拒否されたままの姿における組合員の不利益な状態を黙視するに忍びなくなってとられた、いわば涙をのんだ男の姿だと私は思う。機労の諸君がやはり傘下組合員の不利益、不便を思うことについては、やはり変りはないでしょう。ただしかし、この労働者の権利として守り抜こうとする意地がどこまで続いていくか、そうやすやすとは屈服できぬという姿が今日出ておるのではなかろうか。国鉄労働組合も、決してこれを是認しているとは私は思わない。おそらくそれは、組合の諸君もそう言うのではないでしょうか。だから、どういう姿になったからといって、いわば当局がこの法律をたてにとった、大上段にかまえただんびらの下に、刃物を持たない組合員を救うためには、やはり一応頭を下げざるを得ないという姿でとった措置であると私は考えるのでございますから、了承したものではおそらくないでしょう。そういう見方が、私はやはり、乙の四条三項という労働者の基本的な権利をそう真剣に考えないで、問題を処理しようとする形で表われているのではなかろうと思う。もう少しやはりこういう問題については、国鉄当局ももちろんですけれども、やはり労働省としては、組合員の真実の考え方というもの、これを一つ見きわあていただきたいと私は思う。改正の意思はないというお考えのように重ねて言われたようですが、公務員と公労法の適用を受ける組合員とは、そこにやはり相違のあることは、労働省としても認めておられるでしょうし、しかも、これが独立採算制をとって、私企業と何ら変らないような形態のもとに置かれている労働者であり、たまたまその企業者といいましょうか、使用者が市井の一私人ではないというだけのことで、与える影響が、なるほど日本経済全体に大きな影響を与えるのですから、そう軽々に事を処理するわけにはいかぬでしょう。しかし、与えられた基本人権、労働者の権利というものはあくまでも、外部からの条件によってそうそう軽々に制約をされ、そのまま見逃がされておっていいというものではないと考えられます。従って、時間もないことですから、これ以上この問題で議論を繰り返そうとは思いませんが、ぜひこの問題については、特にILO条約との問題をあわせ考えれば、ガンになっておる問題なのですから、その点を一つ真剣に考えていただきたいと思うのです。
  116. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 さっき亀井局長は、その八十七号その他の条約を労働問題懇談会の小委員会にかけておる、こう言っていましたね。これは、批准の是非について相談されておるのだと、あらゆる条約の批准の是非についてどうお考えになりますかといって、諮問されているわけでしょう。
  117. 亀井光

    政府委員(亀井光君) そうではございません。八十七号条約だけにつきまして、国内法との関係を検討していただくために小委員会を作ったわけでございます。大臣がこの前申されました、日本でまだ未批准の関係のもの約五十、その中で労働省関係三十一件、これにつきまして特別の、別個の何か委員会を作って検討をするようにいたしたいという問題とは別問題でございまして、すでにこの問題は、昨年の秋労働問題懇談会に検討をお願いいたしまして、それで、結局技術的な問題でもあるしということで、労働問題懇談会の中で小委員会を作りまして、今検討しておるわけでございます。
  118. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 国内法との関係をどうこうということは、何も。審議会にかけなくても、労働省でけっこう見れるわけです。私でも、国内法との関係を見れば見れる。そうでしょう。だから、この条約というものが批准していいかどうかという意見を諮問しているのじゃないのですか。
  119. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 最終的には、総会におきましてそういう問題が取り上げられると思いますが、小委員会におきましては、そういう技術的な問題を今検討しておるということを申し上げたわけであります。
  120. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこが大事なのです。国内法と並べて見るならば、労働省でもできるし、われわれでもできる。しかし、民主的な機関として作っておられるその労働問題懇談会において、適正妥当であるかどうかということを小委員会から全体会議で、どういう結論が出ようと、一応研究して下さいと、こういうことでまかされているわけでしょう。そういうことじゃないですか。
  121. 亀井光

    政府委員(亀井光君) そういう言葉にもなるかもしれませんが、結局問題点は、国内法との関係で問題のあるのは、条約の中の解釈で批准可能であるか、解釈上批准可能であるか、あるいは国内法と抵触して、どうしても国内法を改正しなければ批准ができないのか、こういう批准の可能性の問題、この技術的な検討が今行われておるわけです。その報告を待ちまして、総会におきまして最終的な結論、批准可能であるかどうか、現段階において批准可能であるかどうか、批准するためには、こういう条件を整えなければならないかという問題が、結論として出されてくるのではないかというつもりでございます。
  122. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その通りでしょう。だから懇談会には、この問題が国内法とどう関係するか、どういうことをしたら批准できるか、そういう問題一切を研究して下さいと、こういうことでまかされているわけでしょう。それなら、そういうことであれば、さっき言われたように、政府は変える必要はないときめていますという言い方は、せっかく民主的な機関にそういう問題を託しておきながら、この条約は批准いたしませんという固定した意思をそこへ持ち込んでやらしているのですか。さっきの答弁、私はちょっと聞いてふに落ちない。
  123. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 先ほど申し上げましたのは、現段階においてという言葉がついております。現段階におきましては、われわれとしてはこれを改正する意思はない。ただしかし、労働問題懇談会におきまして条約批准の問題も検討されておるので、それとの関連において検討される時期はあるという意味で私は申し上げたのであります。
  124. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それならいいのです。いや、批准する意思はありません、懇談会をやっていますといったって、政府は何ぼそんなことを考えても、批准いたしませんぞというような感覚でかかるなら、かける必要はない。僕はそこをはっきりしたかったのであります。わかりました。きょうはこの問題はこれで……、この次にやりましょう。
  125. 片岡文重

    ○片岡文重君 別にILOの問題に直接関係をする問題ではないのですが、ひいてはやはり労働者の基本的な権利にも関係あると思いまするので、お伺いをしておきたいのですが、質問に入る前に、一つ御出席の吾孫子務理事から、三月の十日岡山地方本部で、地方本部傘下の組合員と、これは国鉄労働組合ですが、当局との間で交渉が持たれた際、警官の出勤を要請して、組合員が全治二カ月ほどを要する重傷を負ったということが当地の新聞に報道されております。これは容易ならぬ事態だと思うのですが、その詳細について、まず御報告を願いたいと思う。
  126. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 今私どもが、ただいまお尋ねのありましたことについて報告を受けております。概要をそれでは御説明申し上げたいと思います。  大体事件の概要を申し上げますと、国鉄労組の岡山の地方本部が、昇給問題について、岡山鉄道管理局との間に話がつかないという理由で、だいぶさかのぼるのでございますが、二月の十三日に広島の調査委員会に調停申請を行なったのでございます。しかし、調停委員会は、現存まだこれを受理してはおりません。両者のあっせんに努力をいたしておるのでございますが、三月の十日に、広島の調停委員会委員長が、事情聞き取りのために岡山鉄道管理局に来ることになっておったのでございます。それで、三月十日の八時十分ごろに、岡山地方本部の労組員約八十名が、庁舎の管理責任者の許諾を得ないで、岡山鉄道管理局庁舎の屋上に上りたわけでございます。さらに、同じ時刻ごろに、約百七十名の組合員が庁舎の南側玄関の前に集合をし、集会を開き、また、ジグザグ行進等をいたしまして、気勢を上げたそうであります。また、屋上に上った組合員は赤旗を掲げ、屋上から懸垂幕三枚をたれ下げ、地上の組合員と呼応して気勢を上げたわけであります。また、四階から屋上に通ずる出入口のとびらを閉ざして、その屋上側のとびらに接して座り込んで、とびらの開閉を妨げるというようなことをやった模様でございます。  それで、岡山の管理局長は、屋上の組合員に対して、再三放送によって、懸垂幕の撤去並びに屋上からの退去を要求したのでございますが、組合員はこれに応ずる気配がないので、十二時五分ごろに、岡山鉄道管理局の営業部長が所轄の警察署に連絡をいたしまして、出動要請をしたわけであります。  この要請に基いて、約六十名の警察官が岡山駅前の派出所に到着したのでありますが、十五時二十分ごろに約四十名の警察官が局の庁舎内に入って、三階の会議室に待機しておったようであります。一方管理局の方は、再三にわたって退去を要求いたしたのでありますけれども、さらに退去の気配がないので、やむを得ず、十五時四十分ごろ、実力でもって退去させることを決意して、公安職員十八名、警察官二十名屋上に配置をし、十六時二分ごろから十六分ごろの間に、組合員全員に屋上から降りてもらった。なお、公安職員も警察官もこの行動に当って、警棒等の装具を携帯せず、全然素手でもっておろしたわけでありますが、そのおろす際には格別の抵抗もなく、きわめて短時間におろしたというふうに報告されております。十六時三十五分ごろ警察官は全員引き揚げた。そして十六時三十七分ごろに組合員が解散して引き揚げた。警察官も公安職員もそういうようなわけで、大した抵抗もなかったので、別に公安職員等にはけが人はなかった。組合員が、今二カ月とかとおっしゃいましたが、そういうような大きなけがをした者があるという報告は聞いておりません。  大体事実は、今報告を受けておりますのは、ただいま私が申し上げた通りでございますが、時間的にも十分な余裕を見て、再三再四退去の要求をし、しかるのち警察官の出動を求めて、公安職員もともに実は排除を行なったわけでございますが、実力排除に当っても、きわめて穏和な手段によって行われて、格別の紛争はなかったというような報告を受けております。
  127. 片岡文重

    ○片岡文重君 まあ、温和な方法で行われたにしては、少しけが人が多いようだけれども、問題は、今伺っていると、すべて組合側に非があって、当局としては穏やかな、穏便な方法で、退去を求め、警官も出動し、警官もまた警棒も持たないで、穏やかに退去してもらったというような報告ですけれども当局の方では、そうすると、全然手落ちもなくて、やみくもに組合員が庁舎を占拠し、乱暴を働いておるようにうかがわれますけれども、少くとも組合側にそう意識的に有利に書くとも思われない地方の新聞が伝えるところによれば、遺憾ながら今、常務理事の御報告になっていることとはことごとく違っているように思われます。これも、そう小さな新聞ではないようで、この新聞によれば、局長と組合代表とがいわゆる穏やかな態度で話し合いをしておられて、そしてその話し合いがついて、組合代表がその座り込みをしている組合員のところに行ったときは、すでに警官が出動し、そういう混乱状態に陥っておったということがこの新聞に報ぜられているのです。で、当時の要求を、私どもとしては知るのにやぶさかではありません。調停委員会のあっせんも、二月の十七日に調停委員が受理して、十八日と二十六日と、二回に行われておって、三月十日には調停委員長が来て、最後的なあっせんをするはずであったのです。現にこの日は、組合代表と会う前に、局長とは二時間以上も会って話しをされているはずです。そういう姿の中で、組合代表も穏やかに局長と話はしておったはずです。にもかかわらず、営業部長が抜けがけに、自分勝手に出て行って、局長の指示を待たずに出て行って、警官の実力行使を要請して、故意に混乱を巻き起したとしか考えられない事態だと思うのです。特に、この二カ月のような重傷はないとおっしゃったけれども、当初診断をされた医師は、新聞記者に対してそう語っている。今度一日、二日していったところが、医者は言葉を変えているようです。こういうことは、やはり作意的に見れば見られないことはない。いずれにせよ、相当の負傷者が出たことは事実ですから、その負傷者が出たということは、穂やかに退去をされたということにはならぬと思う。特に、この新聞報道が誤まりでないことは、これは、国鉄当局としても、十分現地からの報告が私は入っていると思うのですが、もし今吾孫子務理事がお話になったような、穏やかな事態でこれが行われたとするならば、何の必要があって一体局長は、この組合員の前へ来て、警官を不当に出動させ、実力行使に訴えさせたことを、しかもこれが当局側の手落ちであったということで、陳謝をする必要があったのですか。十分なまだ詳しい報告が入っておられないというのなら、これはまた話は別ですけれども、今の御報告が権威ある報告として、それに基いての答弁であるとするならば、その真相は、やはりあくまでも私は究明しなければならぬと思うのですが、もしそういう穏やかな、常務理事がおっしゃるような穏やかな方法で退去を求めた、あるいは混乱もなかったというのならば、一体何の必要があって、局長は組合員の前へ行って、その営業部長のとった態度を陳謝しなければならなかったか。この点について、一つお伺いしたい。
  128. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 先ほど私が申し上げましたのは、事実の概要についての御報告でありまして、微に入り細をうがった細かい点まで、実は、私よく承知しているわけでもございませんが、大筋は大体今申し上げたようなこと。それから、けが人のことは、新聞でも、今次わりますと、あとで訂正になったということのようでございますが、それほど大きなけがをした人はなかったように報告を受けております。この点はしかし、もう少し取り調べてみたいと思いますが、まあ大ぜいの血気盛んな組合員が、狭い所でわっしょわっしょとやったのでありましょうかう、多少のけがは、何人かけが人くらいはあったかもしれませんが、全治三カ月とかいう、もしそういう大けがをした人でもあったなうば、そのことは、当然私の耳に入っておるはずでありますかう、それほどのことではなかったんではないかと思うのでございますけれども、この点は、よく取り調べてみたいと思います。それから、局長が陳謝した、これも新聞にそう書いてあるようでございますが、実はこの点は、直接私が確かめて聞いてあることでありますかう、別に陳謝したというようなことはない。ただ、組合の一部の人たちと局長とが折衝をしておる間に、警察官の実力行使と申しますか、実力排除が着手されたということについて、その間多少の行き違いがあったということについて、遺憾の意を表したということはあるようでございますが、別にあやまったということはないというふうに聞いております。
  129. 片岡文重

    ○片岡文重君 どうも、なかなか言葉というものは便利だと思うのですが、少くとも組合の代表と当局の代表である局長とが穏便な話し合いをしておる最中に、しかも、話が妥結をするというのに、局長の指示を待たずに、その部下である営業部長が、自分勝手に警官の実力行使を要請する、こういうことが一体管理上許されていいことかどうか。しかも、それによってそういう波乱が起き、けが人ができる、この手違いによる不測の事態を発生したことについて、遺憾の意を表するということは、明らかにそういう事態を認めたかいうこそ、局長としても遺憾の意を表したものだと思わざるを得ません。この遺憾の意を表するということは、私は陳謝だと思うのですけれども、それは、あやまったことにはならぬのですか。これは、認めたことにはならぬのですか。
  130. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 私の知っております範囲は、実はその程度以上詳しいことはわかりませんので、今お尋ねのありました点は、なおよくしっかりしたとこうを確かめたいと思います。
  131. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この問題について、ちょっと聞いておきたいのですけれども、この経過を聞いて見ますと、昇給の問題をめぐって、過去に、訓告者に対しては昇給の停止操作ということはなしに今までの慣例がなつておる。最近に至って、この問題が、当局が昇給停止ということをやられた。それが労働委員会に持ち込まれて、調停というものがあっせんということになって、自主的に交渉をしなさい。その交渉する前提として、何とか話をつけるという、前進するということを確認し合って下っていく。またきまらぬ、また持ってくる、また前進するという格好で、確認して持って帰る。最後には、三日間の期限をつけて、調停委員が岡山まで乗り込んできて、このあっせんをやろうというような事件だと私は聞いている。そういうことである限りにおいて、調停委員会の調停委員長、これは三者構成ですね。一番民間の権威ある、労働問題の紛争を処理する、一番の権威ある問題の処理者と言っていいと思います。時の氏神でしょう、場合によっては、この人に対して当局ははなもひっかけないという態度で臨んでおられるというところが私はどうもわからない。たとえば、ずっと経過を聞いてみると、これは、当局と組合との間で話ができて、すなおにおとなしく調停あっせんなら、三者に一つ頼もうという私は問題じゃないかと思う。ところが、このずっと長い、二月の初めから三月の十日までの間の経過を聞いてみますと、ほんとうに、調停委員長の浜井信三さんですか、この人の意見が聞かれるという場が一つもないのですね。三日に限定されて、最終的には十日になったんだが、そのときに、組合がもうしびれを切らして、この昇給の問題と臨時工の解雇の問題とあわせて、何とかこれは、どうも当局は、三者構成の調停の意見も聞かぬ。せっかく手続きをしても、調停も聞かぬということじゃ、これはもう耐えられないというとこから、結局集団陳情というものは行われたと、私らはそう判断する。ところが、先ほど片岡さんから言われたから、私は繰り返しませんけれども、その中において警官を要請したり、当局と組合わせとが話しておる間に、その当局の中の営業部長が勝手に警官を動員したというか、指示したというか知らぬけれども、四時二十分に話が終る、その十分前にそういう状態で要請して、最高二ヶ月からのけが人が出るというような行為をした。当局と組合というのは、やっぱりそこの交渉相手としては最高機関で、その規律に組合員が全部服している。そういうのに、たとえば、一方的に、警官を動員してくれとか、もう一つ根本的なことは、三者構成の調停委員会のあっせんでもいいでしょう。あっせんに対して真剣に取り組んでないということにこの問題の根本的原因が私はあると思うのですよ。だから吾孫子さん、これは、報告は十分に聞いていないとおっしゃるかもしれぬけれども、そういうことに間違いの根本があると思う。これはあなたの、国鉄の中で働いている方々というものは、やっぱり勤労の喜びを持ち、そうしてその中で生活をしている。私はその中で自分の給与、労働条件に対して、当局との間に、国鉄との間に交渉をして問題をきめていく。これは、法で認められた完全なルールである。こういう問題が、自分の一ヶ月余りからの長い間の手続的な欠陥というものに触れずに、ちょっと組合が集団陳情したら、すぐ警官を引っぱってくるという行為は、私はどうも、大国鉄の労務行政としては、これは納得できませんね。こういうことがあっては絶対にならないと私は思う。だから、根本原因が何とかいうことを追及してもらって、まず間違ったところを取りのけるというところから出発してもらって、最後のこういう問題が起きないということに今後努めなければならないと思うのです。これは、あとは片岡さんに譲りますけれども、私は、この実情を聞いて、ほんとうにいろいろ世間には、ピケを張ったとか何とかいう問題がありますけれども、大国鉄の管理局長以下の地方のそういう中において、こういう問題が起きるのでは、どうも労務行政を国鉄当局はどうやっておられるのかということを疑わざるを得ないのです。こういうことは、二度とあっていけないと私は思う。ですから、そういう面で、私は、吾孫子さんのけんかいを聞いておきたいとおもうのです。
  132. 吾孫子豐

    説明員吾孫子豐君) 国鉄の労使間の問題、そういう紛争が起りました際に、これに警察の方の御厄介になるということは、望ましいことではないと、私ども常々考えております。今回の事件の根本原因についてのいろいろ今御指摘がございましたが、それらの点のすべてについて、私が詳しく知っておるわけではございませんが、大体昇給の問題につきましては、国鉄の本社と、それから組合の本部との間では、根本原則についての話し合いはまとまりまして、資金のワクの中で勤務成績を判定して行うのだという、そういう原則だけはお互いに認め合ったわけでございます。その細部の実施をめぐって、いろいろ紛争があったことと思います。もしその間、お話のように、あっせんに立たれた調停委員長等に対して、当局側の方に失礼なことがあったりなんかしたということであれば、まことにけしからぬことでありますかう、そういう点は、十分注意いたしたいと思います。ただ、いろいろ組合側のおやりになるデモンストレーションのような事柄も、ある限度をこえて、当局側の方の穏やかな説得等によっては、どうしても話がつかないというような場合には、程度の問題でございますけれども状況によっては警察が出動されるということも、ないとは保しがたいのでございますけれども、私どもとしては、そういうことは、できるだけ避けたいというふうに考えておりますし、また、そういう気持で下部機関も指導いたすつもりでございます。
  133. 片岡文重

    ○片岡文重君 今の問題については、相当関心をゆるがせにできない問題ですから、なお御質疑したいのですけれども、詳細の点については、報告が出ておられないそうですし、時間もありませんから、この現地におられた人々を場合によっては参考人として招致し、あるいは国警等の関係者にも、場合により意見を聞きたいと思いまするので、残余の質疑は、次の機会に留保しておきたいと思います。そうして、きょうは打ち切りたいと思います。
  134. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。     ―――――――――――――
  136. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、競馬場馬丁等の労働問題に関する質疑を願います。
  137. 片岡文重

    ○片岡文重君 質疑に入る前に、今度農林大臣は、日ソ漁業協定の問題で、ソビエトにおいでになるそうですが、大へん御苦労さまだと思うのですが、この留守期間はどのくらいであるのか、局長おわかりでしたら。
  138. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 私まだ、その点につきまして、大臣からお伺いいたしておりません。
  139. 片岡文重

    ○片岡文重君 せんだってのこの委員会で、中央競馬の馬丁諸君の労働組合が非常な圧迫を受けておって、困難をしているというような問題について御質疑を申し上げ、畜産局としても、労働問題だからということで傍観をしておれない立場におありになるのではないか。特にこの問題の解決については、農林大臣も積極的な関心を示していただかなければならないであろうというようなところまで申し上げたつもりですが、畜産局長は、その後との問題について、農林大臣にも御相談をして下さったのかどうか。それから、局長として何らかこれについて対策なり方策なりをお考えいただいたのかどうか、この点お聞きしたい。
  140. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 御質問のございました要点その他は、それぞれ上司に報告してございます。それから、この問題に関しまして、それぞれ掛当いたしておりまする私の方の係のものに、御質疑の問題その他要点のところを申し伝えまして、実情その他を具体的に調べるよう申しております。なお、中央競馬会等の諸君に対しましても、同様のことを申し伝えております。こういう状況でありますが、調教師の諸君あるいは馬丁の組合の諸君から、私は直接実情その他をまだ聞いてはおりません。
  141. 片岡文重

    ○片岡文重君 畜産局長が馬丁組合の諸君に直接お会いになって、というようなところまで実は私は望んでおりませんが、やっていただけばまあけっこうですけれども、それ以前に、やはり中央競馬並びにこの競馬を施行する中央競馬会は、農林省の監督下に置かれておるでしょうし、これが当面の行政的な立場におられるのは畜産局であろうと思う。そういう観点から、この中央競馬が公正に、しかも国家の資金をもって行われておるこの競馬が、不正不当なことのないように、公正に行われる。このためには、やはり畜産局長としても、深い関心を持って見ていただかなければなりませんし、当面問題となっておる馬丁諸君の労働条件生活環境等についても、当然深い関心を寄せていただかなければならぬと思う。そういう意味から、畜産局として、この競馬会に対しどういう措置をとられたかということをお伺いしたわけですが、まだそういう点については、その後具体的には検討をされておらないのですか。
  142. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 具体的には検討いたしておりません。従来の経緯その他を聞いたと、こういうことであります。
  143. 片岡文重

    ○片岡文重君 その間わずか一週間ですから、実情調査にかかったということであるならば、これはやむを得ません。しかし、中央ではそういうことで、実情調査あるいは問い合せ、昭会だとかということで日を過している間に、現地では、馬丁諸君にとって容易ならない問題が次かう次へと起りつつある。たとえば、これは一昨日の新聞によるのですが、一月十七日に、労働協約の確認書を交換の形で地労委に、労使双方が提出しておきながら、これについて全然履行しないばかりでなしに、組合代表者以下八人の第一組合員が馘首されておるのです。このほかに、さらに府中の馘首者を加えれば、十名をこえるわけです。一方では団体交渉にも応じない。一方では首を切っている。しかも今度は、第一組合員の雇用を全面的に中止するという申し合せを調教師側で行なっている模様です。こうなってくると、今調教師は八百名に及ぶ数だと思いますが、この半数を占める第一組合員が近いうちに大打撃を受けることになる。そして封建的な、劣悪な労働条件下に、自分の知らない労働組合員としての待遇を受けることになる。こういうことは、いよいよレースの公正を阻害していくし、中央競馬会の繁栄にも重大な暗影を与えるものになってくると思うのです。こういう点について、当然これは、労働問題だから労働省だけがやるべきだというお考えでなしに、畜産局としても、これらの調教師側の行き過ぎた行動といいますか、この近代的な労働感覚をもたない点について、やはり積極的に指導をされる御意思はないかどうか、この点をお聞きしたい。
  144. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) だんだんお話を承わり、また実情調査しまして、こちらの方のそれに対しまする態度をきめなければならぬと思いますが、御存じのように、この雇用契約というものが、調教師、それから馬丁あるいは馬丁組合との間の問題になっております。また、私たちの方で直接監督をいたしております中央競馬会というものが、一応そういうものとは契約が別個の形になっております。そういうような関係がございますので、直接に、私たち畜産局といたしまして、調教師と馬丁との争議の問題に介入することは、少し今の段階においても行き過ぎでありましょう。将来の問題といたしましても、これは少し考えあとで態度をきめるべきであると、かように考えております。もちろん、方々からのお話、あるいは調べました結果によりまして、第一組合、第二組合等の問題がある。あるいは最近におきましてのいろいろの雇用の問題、解雇問題があるようなことを聞いております。ただ、それにつきまして、先ほど申しますように、直接私たちの方からいろいろのことを申すべき問題と少し性格が違っておるように思っております。そのことが引き続きまして、競馬の開催その他におきまして影響があるというようなことになりますれば、これは当然に、その分野におきましての指導をいたしてやって参りたい、かように考えておりますが、今のところ、直接これに指導を加えるというのには、もう少し様子を見なければならぬ、かような考え方でございます。
  145. 片岡文重

    ○片岡文重君 労使の紛争の中に畜産局が介入するというようなことは、おっしゃられるまでもなく、これは私としても要望いたしません。しかし、このままの事態で進めば、これはどうしても、労働組合の諸君は実力行使に訴えざるを得ないことになるだろうと思う。ということになれば、これは、競馬場において不測な事態が起らないとも限りません。そういう事態に追い込んでから、事態が混乱してから乗り出されたのでは、私はおそいであろうと思う。しかも、地労委の諸君もそう言っておるようですが、私どもが、この馬丁労組の諸君の言い分を聞いてみても、実情調査してみても、決して不当な要求をしているわけではないのですよ。生活を一ぺん見てごらんになればよくわかる。決して不当な要求をしているわけではない。そういう状態に、調教師諸君が今後なお長く、馬丁だからということで甘くみくびって、労働条件改善をする意思がない、改善をしないというようなことで今後も行くならば、容易ならぬ事態に陥っていかざるを得ないであろう。そういうことを避けたいから、畜産局長としても、調教師諸君に、使用者としての近代的な考えを持ってもらえるように御助力をいただきたい、こういうことを希望します。
  146. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 私たちが報告を聞いておりますところによりますと、今年の一月の末でありましたか、二月の初めでありましたか。地労委からのあっせん案が出まして、それによりまして、先般御質疑がありました共助会等の共済規定の改正等の内容を含めました、そういうあっせん案が出た。それに基きまして、最近におきまして、それをあっせん案の通りに改正をいたしまして、たしか今年の一月一日にさかのぼってそれを実施する、こういうような形に進んでいるという報告を受けております。そのほかに、第一組合のほかに第二組合ができたというようないろいろな事情も、そのつど報告を受けてはおりますけれども、先ほどのお話のように、現実の問題にどの程度タッチしていくか、先ほど一例として御指摘になりましたような、レースそのものがこのために混乱を来たす、これはやはり大へんなことだと思います。そういう事態が起きないように、予防的措置をどういうふうに指導すべきか、これは私たちも、当然必要なことだと考えております。また、調教師の心がまえについて、どういうふうに考えておるかという問題でありますが、これは、実際問題としてどういう形で、私たちがいかにタッチしていいのかという、その具体的な方法になりますと、いろいろむずかしい問題があろうと思います。すぐその中に直接介入するということを避けなければならぬ立場におそらくあると思います。それを避けた上で、今のような形においてどうするということも、なかなかやり方はむずかしかろうと思います。ただ、私たちとしましては、競馬が公正に、また、集まってこられる人たちが、それをレクリエーションとして、十分に愉快に過ごしていただく、こういう形におきまして、それの支障のないように、将来十分な努力をいたさねばならぬ、かように考えております。
  147. 片岡文重

    ○片岡文重君 共助会の規約を改正して、その改正に従って実施しておるという報告が局長のもとに届いておるそうですが、実施しているところもある。また、同じ事項でも、すでに給付を受けておるものもある、こういうことですが、全然いっていないとは言わない。ですから、第三組合なりあるいは第一組合員をして不当に馘首された者のうちの何人かが受けるという程度であって、全員に規定通りに適用されておるということではない。そういう実情等も、やはりつぶさに一つ御調査をいただきたいと思うのでありますが、この共助会に対して、競馬会からの助成金が出ておるそうですが、そのほかに騎手会、日本調教師騎手会あるいはトレーナー・クラブ、日本馬丁会、馬主協会、こういったような、そのほかにもあるかもしれませんが、これらに対して、中央競馬会から相当多額の補助金とか助成金とかというものが出ておるそうですが、これの金額と出ておる団体、これを一つお知らせいただきたい。
  148. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) そういう詳しいことになりますと、私今ここに記憶がありません。共助会に対しましては、約三千万程度のものが出ておるというふうに記憶いたしておりますが、その他のもの、今指摘になりましたすべてに出ておるかどうか、あるいはその金額がどの部門にどのようになっておるか、これは私、詳しく承知いたしておりませんので、担当いたしております競馬官の方から答えさしていただきたいと思います。
  149. 竹内直一

    説明員(竹内直一君) ただいまお尋ねの関係団体に対します助成金でありますが、これは三十二年度、昨年の一月から十二月までの会計年度でありますが、三十二年度の実績で申し上げますと、日本調教師騎手会に対しまして二百五十万円、それから、日本馬丁会に対しまして百万円であります。そのほか種々の団体がございますが、ただいまの問題に関係いたします団体としましては、共助会に対する三千万と、調教師騎手会、日本馬丁合、こういったところでございます。
  150. 片岡文重

    ○片岡文重君 このほかにも、トレーナー・クラブとか、騎手会、馬主協会等にもたしか出ておるはずですが、出ていませんか。
  151. 竹内直一

    説明員(竹内直一君) トレーナー・クラブ……、いろいろな名前がございますが、これは、日本調教師騎手会ということで統括されておりまして、その支部機関として、各地にいろいろな名前の団体がございます。
  152. 片岡文重

    ○片岡文重君 そうすると、総額、三十二年席では、一体日本中央競馬会から幾ら出ておるのですか。
  153. 竹内直一

    説明員(竹内直一君) 今申し上げました団体の助成金の総額でございますか。
  154. 片岡文重

    ○片岡文重君 助成金とか、補助金とかいう項目で、日本中央競馬会から、何といいますか、外郭団体ではないですね、傘下の団体というのですか、関係団体というのですか、そういうところに出ておるものです。
  155. 竹内直一

    説明員(竹内直一君) 総額が六千万余り出ております。
  156. 片岡文重

    ○片岡文重君 それは、三十二年度のですか。それでは、その三十二年度のそういう補助金の明確になっておる中央競馬会の収支決算書、これを一つこの次に、この委員会に提出していただきたい。  それで、なお念のために伺っておきますが、私は、今ここに、三十一年度の日本中央競馬会の決算書を持っております。これによると、この競馬会収支決算書の一体支出の部のどこに、この助成金なり補助金が計上されておるのか、これがわからない。こういう点がおわかりになるならば、教えてほしいのですが、そこに三十一年度の決算書はないですか。
  157. 竹内直一

    説明員(竹内直一君) 手元に決算書はございませんが、ただいまお尋ねの共助会、調教師騎手会、日本馬丁会等に対します助成金は、競馬奨金という項目がございますが、その中の一項目として入っておるわけであります。
  158. 片岡文重

    ○片岡文重君 この競馬会、共助会とか、トレーナー・クラブ、馬丁会、調教師騎手会等に出す補助金なり助成金というものは、競馬奨金というところに含められるという理由はどういうわけなんですか。この競馬奨金というのは、そうすると、これらの補助金、それから助成金、そのほかに一体どういうものを含んでいるのですか。
  159. 竹内直一

    説明員(竹内直一君) ただいま申し上げました競馬奨金といいますのは、広い意味での競馬奨金でありまして、これは、予算編成上の技術的な分数として、広い意味の競馬奨金の項目を作ってあるわけでありますが、その内訓といたしまして、本当の意味の奨金、それから、騎手に対します騎乗料、あるいは競走馬を運搬いたします場合の引きつけ料、それから、先ほど申し上げました、競馬の開催に関係のあります団体に対します助成金、こういったものが内容として含まれておるわけであります。
  160. 片岡文重

    ○片岡文重君 私は、今ここに持っておる収支決算書の項目から見ますと、今おっしゃられたような項目とだいぶんおかしいと思う点があります。内容ではないのです。項目がはっきりわかりません。そこで、三十二年度の分だけでもけっこうですから、今お尋ねをいたしましたこれらの助成金、補助金の項目別内容、それから決算書の項目を、目だけでなしに、節なり細節なり、たとえば、競馬奨金の八億一千八十二万というのが、三十一年度のこれは競馬奨金です。わかりますね。いいですか。三十一年度の競馬奨金は、八億をこえているわけです。こういうものの中に一括して、その助成金等を入れるということは、私ははなはだ不穏当だと思うのです。助成金とか補助金などというものは、最もこれは明確にしておくべき性質の金だと思う。それがこういう八億もの巨額の中に、最高三千万、百万、二百五十万というような金を込みにぶち込んでおく、こういうやり方にも、私どもには納得のいかない点がある。これは、経理の内容がいいとか、悪いとかいうのではありません。整理の方法として、これではずさん過ぎやしませんかということを言うのです。従って、この形式で年々出されておるところの決算書では、私ども内容がわかりませんから、内容がわかるように、この明細書を作って、当委員会に提出をしていただきたいと思います。委員長に、その点をお取り計らいいただきたいと思います。
  161. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) はい。
  162. 片岡文重

    ○片岡文重君 それから、その資料が出てからいずれまた……。特にこの問題は、大臣にもぜひ出席をしていただいて、根本的に一つ対策を立てていただいて、調教師諸君にのみこの使用者としてのすべての責任を負わせることが果して妥当であるかどうか。調教師の負担があまりにも過重になるのではないかというような点も考えられるし、その競馬会の内容等について、労務管理の面から、一つぜひ御意見を伺い、要すれば、この際この機会に、根本的な一つ改革をやっていただきたい。そうして公正なレースが何の懸念もなしに行われるような組織を作り上げていただきたいと思いますから、その点について、一つ今後も、畜産局長として、ぜひ深い関心を持って、御検討をしていただきたいことをお願い申し上げます。  委員長には、次の機会にとの問題を議題としていただくときに、農林大臣の御出席をわずらわすように、それから、今お願いした資料を出していただくように、お願いします。
  163. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 調教師と馬丁との関係をどういうふうに展開していくかということでございますが、この前の会議にも申し上げましたように、片岡先生からの御質問に私申し上げましたように、競馬会というものが直接それに、雇用者になるというような形における展開は、これは、競馬そのものの公正な施行という問題に支障がある。これは、競馬法その他を論議いたしましたときにも、そういうような点が実は明確にされておりますし、その後私どもも、その方針でやっております。馬丁そのものを競馬会の使用者にいたしますというような関係にいたしますと、馬の飼養管理という、これがやはり競馬会が責任を持つという前提になると思いますから、そのことと、競馬の開設者あるいは施行者というものの立場ということの間が、やはりなじまない性格を持っております。これは、御存じのように、国内におきます競輪でありますとか、その他競艇でありますとかいうようなもの、あるいは諸外国の競馬その他のものの例におきましても、やはり開設をいたしますもの、それから、そこに出まして競走いたしますものとの間の関係は、そういうふうにそれぞれ一応さいぜんと切れておる。これが大体のあれになっております。従いまして、いろいろ先般来のお話のときもあったと思いますけれども、これのやり方を変えるという方向につきまして、もしも競馬会というものを使用主とする形における組織の変更でございますと、これは、現在のものの考え方、立て方から申しまして無理がある、かようにこの前も申し上げました。現存におきましても、そういうように考えております。御了承願います。
  164. 片岡文重

    ○片岡文重君 御了承願いたいということになると、ちょっと御了承ということにはすぐには参らないのですが、たとえば、なるほどあなたのおっしゃることもわかります。レースを開催する方と、それに協力をするといいますか、側面の関係があるものと、これはわかりますけれども、現在は、厳密な意味からいえば、必ずしもその線は守られておらないでしょう。たとえば、調教師は馬をどこに置くかというと、これは、競馬会の厩舎に預けてあるでしょう。調教師から厩舎の使用料を取っているわけです。この使用料は、幾ら取っておるかわかりませんけれども、これは、たとえば今の場合、ちょっと思いつきになるかもしれませんが、馬丁というものは厩舎付きの職員だということにしたらば、これはいやおうなしに競馬会の職員になってしまうでしょう。こういうことは、ちょっと考えただけでも私らは考えられる。ただ、今の組織を金科玉条で改正しない。あくまでもこの上に立ってやっていこうとするから方法が出てこないのであって、今ですら、厩舎に対する使用料を取って、調教師にはその厩舎を貸しているのですから、馬丁がその厩舎に所属したところの職員であるということにすれば、これだけでもすでに問題は解決がつくはずでしょう。しかも、調教師からの直接の、何といいますか、権力といいますか、そういうものを受けない。不正なレースが調教師によって起された例というものは、そう遠いことではないのですけれども、もちろん競馬官もおられるし、畜産局長もおられるから、御存じでしょうけれども、私の手元にあるこの資料だけを見ても、調教師の使嗾といいますか、教唆といいますか、とにかく調教師のために不正なレースをなさんとして、これは幸いにして事前に発覚した。これは、三十一年度の中山競馬で起ったことですよ。こういう関係は、これは、調教師のもとに馬丁が置かれておるから起ることなんです。完全に調教師、馬丁、騎手というものがてい立した形において、お互いに制肘し合うような姿にしておけば、そういう問題は少くとも起らないで済むわけです。ですから、そういう点で何らかここで一つ考えてみる。しかし、私は、あくまでも競馬会でなければならぬとこういうことを言っているわけじゃないので、この点は、今の姿のままではいけないであろう。そうしで少くとも馬丁の身分がそうやすやすと首切られたり、協定で定められた共助会の規約が、いわゆる使用者といわれる調教師の個人的感情によって左右される、こういうようなことが平然と行われるような姿にしておいたのではいかんのではないか。それを改めるには、人の問題には違いないけれども、組織というもの、機構というものを変えていかなければ、今日の状態では、機構を変えたからといって、すぐそれが改まるものではないのですから、いわんや機構をそのままにしておいたのでは、いつまでたってもなおらない。見れば、確かにこの機構においては、われわれが見て疑問とする点が多分にある。局長の言われるように、レースの開催者と側面に位する者との関係を貫いていきたいという気持はわかります。わかるけれども、そのために、こういう不正なレースを行われ得る条件がたやすく発見されるようなことではいかんだろう。だから、もし馬丁が競馬会の使用人がいけないというならば、もっと馬丁というものの身分がはっきりと約束されるようなもの、一朝一夕に飛ばされるようなことでなしに、安心をして、公正なレースに従事することのできるような姿に持っていけるように、具体的に御検討いただきたい。こういうことなんです。御見解を承わりたい。
  165. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 今御指摘になりました、競馬会が厩舎を自分で施設している。その厩舎を調教師が借りている。それだから、馬丁の諸君も別個に競馬会の一つの施設としてそこに配属するようにしたらいい。これは一つの提案だと思います。これは、馬そのもののいろいろな訓練という問題、飼養管理の問題、これがございますし、従いまして、それが、馬の飼養、訓練というものが、調教師が馬主からゆだねられているのであります。従いまして、調教師といたしましては、その責任を遂行する上には、やはり飼養管理の面におきまして、自分の十分に信頼し得る、そういう人を要求するということになると思います。これは、競馬の飼養管理というもの、相手が動物でございますので、ことに飼養管理ということについては、そういうことがあると思います。通常考えてみまして、馬丁の諸君は、馬について歩いていることの方がかなり多い。もちろん全部じゃございませんが、そういうふうに、かなり家畜の動物、ことに非常に敏感な競走馬の場合におきまして、それを飼養管理いたします問題は、今先生が提案されましたように、競馬会に所属させた、いわばおきまりのそういう馬丁の人たちに一括してまかせるという形とは、少し性格が違う点がございます。そういう問題がございまして、これは一つの先生の御試案だと思いますけれども、厩舎というもの、そのような物的なものとは、少しそこのところがなじまない、そういうふうに私ども考えます。労働条件なり何なりというものを安定さした上におきまして、そういう意味ではっきりさしたことをやるということ自体、これは、私たちは反対をしておるわけでは決してございませんが、競馬の施行そのものが、自分の所属しておるものが出走する馬に関係をするということ、これは誤解を生じ、あるいは公正なものにならないのでございまして、これは厳に峻別をいたしております。こういうことでございます。先ほど御指摘の、調教師等の使嗾による馬丁諸君の不正行為云々の問題と、私の今申し上げていることとは、少し問題の立場が違った立場でございますが、そういうふうに先ほどの問題については考えております。
  166. 片岡文重

    ○片岡文重君 この問題は、もっと議論をしてみないといかぬと思いますが、時間もありませんから、これはむしろ、こういう公式な席じゃなしに、でき得ればプライベートなところで、十分に御意見を伺いたいと私は思うのですが、今のお話でも、畜産局長も競馬官も、やはりときには御出張をなさることがあるのですから、その厩舎に調教師が馬を預けるわけですね。その場合に、その馬を厩舎に預ければ、それがその馬を転籍するまでそこに預けておいてもいいことなんです。そしてその馬について、馬丁が一緒に出張して歩けばいいのであって、特に、馬丁諸君というものは、これは、局長や競馬官もよく御承知でしょうけれども、他の労働者職場を愛する以上に、あるいは名人といわれる職工が自分の道具を愛するよりもっと強く、生きたものを相手にしているのですから、ほんとうにやはり馬丁諸君は、馬小屋の中に一緒に寝ているのです。出張して、貨車の中に一緒に寝ている。中山の馬丁が京都に行けば、京都の競馬場に行って、その厩舎の中に馬と一緒にごろ寝しておる。その愛情というものが、そう簡単に断ち切れるものではない。これは十分に認めるけれども、これはあくまで勤務の状態であって、雇用関係とは別問題だから、雇用の形態を別個に考えて、そして勤務をどうするかということはまたおのずから別な問題です。馬と一緒に歩くというならば、馬と一緒に行けばいいのですから、そういうことで、やはり競馬会でやることはいかぬのだということであるなら、これはどうしても私は、御了解を願いますと言われても、せっかくの言葉だが、了解はできない。やはり今日の状況下においてこれでいいのか、今後の問題としてこれでいいのかということで、やはり虚心たんかいに検討をして、なおかつ結論として、競馬会が最高のものだという納得がいくならば、そこで初めて了解は得られるでしょう。けれども、さっきの御答弁では、私ははなはだ不満だったのだが、たとえ一週間しかなくても、ほんとうに誠意があるなら、もっと具体的な調査が私はできてしかるべきだと思うのです。そういう具体的な調査もできない、とにかく事情を聴取しておるということが、全然やっておらぬとはおっしゃらないけれども、事情を聴取している程度で、検討する余地もないのだという答弁ならば、私は了解できない。しかし、今後の問題としてとにかく検討してみる、そして何らかのやはり安心をした労使の姿が打ち出せるような方法に持っていきたい、あわせて公正なレースが行われるような組織にしたい。そういう見地に立って、具体的に検討するということなら、私は本日の質疑打ち切りにやぶさかではない。
  167. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 関連。私は、この間から片岡委員のお話を聞いておりますと、この競馬会には、何かしらん、封建的なものがあるように感じられる。こんがらがったことがあるように感じられる。そこで、いろいろ関係筋の答弁を聞いていると、それに対して何だか深い認識が足らぬような感じがする。ですから、ちょうどこの機会に、当局の方でもよくもう少し御検討になって、そしてそういう封建的姿が残らないように、今のレースが公正に行われるように、それから従業者も、何といいますか、快適な、わだかまりのないような、問題の起らないような雇用関係ができるように、当局の方で一つ御検討を願いたいと、こう考えるのですが。
  168. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 片岡先生からの御質問の通りに、私たち検討するのは決してやぶさかではございません。検討いたしたいと思います。ただ、先ほどの一つの御試案として申されました問題に対しまして、見解だけを申し上げたのでありまして、その他の問題点、たとえば、労働争議に近い形になっておる、こういう問題が起きてくるゆえんのものを何らか改善する方法がないか。こういう点につきましては、十分検討する必要はあると、私どもは感じております。
  169. 片岡文重

    ○片岡文重君 今の御答弁では、検討していただくことに御答弁があったようでありまして、それを期待いたしまして、一応きょうの質問は打ち切っておきます。
  170. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十六分散会