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1958-03-06 第28回国会 参議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月六日(木曜日)    午前十時三十六分開会     —————————————   委員の移動 三月五日委員秋山長造君辞任につき、 その補欠として松澤靖介君を議長にお いて指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            木島 虎藏君            山下 義信君            中山 福藏君    委員            有馬 英二君            草葉 降圓君            谷口弥三郎君            横山 フク君            片岡 文重君            木下 友敬君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            山本 經勝君   国務大臣    労 働 大 臣 石田 博英君   政府委員    外務省国際協力    局長      宮崎  彰君    農林省畜産局長 谷垣 專一君    通商産業省鉱山    保安局長    小岩井康朔君    労働政務次官  二階堂 進君    労働大臣官房長 澁谷 直藏君    労働省労政局長 亀井  光君    労働省労働基準    局長      堀  秀夫君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    労働大臣官房国    際労働課長   宮本 一朗君     —————————————   本日の会議に付した案件職業訓練法案内閣送付予備審  査) ○労働情勢に関する調査の件(一般労  働問題に関する件)     —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 委員会を開きます。  委員の異動を報告いたします。三月五日付をもって秋山長造君が辞任し、その補欠として松澤靖介君が選任されました。
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 職業訓練法案議題といたします。提案理由説明を願います。
  4. 石田博英

    国務大臣石田博英君) ただいま議題になりました職業訓練法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  最近、産業界におきましては、高度の技能を必要とする生産分野の拡大に伴って、技能労働者確保が強く要請されて参っているのでありますが、労働市場現状を見まするに、約五十万に及ぶ児全失業者と多くの不完全就業者をかかえている反面、技能労働者が著しく不足しており、このことが雇用生産の両面における隘路ともなっている実情であります。   また、労働者技能水準向上職業の安定、労働者地位向上とともに産業振興の基盤をなすものでありますが、このために必要な職業訓練の諸制度について見ますと、一部のものを除いては、必ずしも十分とは言いがたく、なかんずくわが国産業構造上、重要な地位を占める中小企業において著しく低調に終始している現状にあるのであります。この点、欧米諸国におきましては、職能組合等の発達と相待って、つとに職業訓練及び技能検定制度が確立されており、政府及び民間においても、技能労働者養成確保のために多大の努力が払われているのでありまして、これに比較いたしますとき、わが国現状は著しく立ちおくれていると言わざるを得ないのであります。最近、科学技術教育振興が叫ばれておりますが、産業進歩発展のためには、科学技術教育と並んで、労働者技能向上させるための職業訓練を系統的に行うことによって、生産現場における技能水準向上技能労働者確保をはかることが緊急の要務と考えるのであります。  労働省におきましては、従来職業安定法に基き、求職者に対する職業補導を行う一方、労働基準法によって、事業主が行う技能者養成指導援助を行なって参ったのでありますが、以上の実情にかんがみ、この際、これらの諸制度について再検討を加えて、職業訓練を正そう充実させるとともに、さらに技能検定制度を設けて労働者技能水準向上をはかる等により、総合的な職業訓練制度を確立する必要を痛感するに至ったのであります。このため、さきに閣議決定に基いて設置されました臨時職業訓練制度審議会の答申を十分尊重し、その意見に基いて、所要規定を整備することとし、この法律案を提出することといたしたのであります。  次に、その内容概要を御説明申し上げます。  まず第一に、職業訓練法の目的として以上申し上げました趣旨規定いたしますとともに、公共機関が行う職業訓練事業主の行う職業訓練とが、系統的に実施されること及び職業訓練学校教育等との密接な連係をはかることを明らかにすることといたしたのであります。  第二に、公共機関が行う職業訓練につきましては、現下の雇用及び失業情勢に対処し、無技能労働者に対して訓練を行うことによってその就職の促進をはかるとともに、事業主の行う職業訓練に対する援助を積極的に行う趣旨のもとに、都道府県設置する一般職業訓練所及び労働福祉事業団が設置する総合職業訓練所等において行う職業訓練に関する事項について必要な規定を設けることといたしたのであります。  次に、事業主がその雇用する労働者に対しで行う職業訓練につきましては、国及び都道府県が積極的に必要な援助を行うよう努める旨を規定するとともに、職業訓練に関する合理的かつ効果的な基準を設けて、職業訓練の効果を最大限に確保せしめることといたしたのであります。  特に中小企業に対しましては、その職業訓練が円滑に行われるように共同職業訓練の方式を認め、かつ積極的にこれを助成することといたしました。  第四に、職業訓練指導員につきましては、その資質のいかんは職業訓練の成果を左右する重要なな要素であることにかんがみまして、これに関る免許及び試験制度を定め、職業訓練指導員資質向上をはかることといたしたのであります。  第五に、諸外国における職業訓練制度の例にならって、職業訓練を修了した者を中心として労働者技能検定を行うことによって、その技能向上に資することといたしたのであります。技能検定は、二つの級に分けて、実技試験及び学科試験によって行うこととし、技能検定に合格した者は技能士と称することができることなど、技能検定について必要な規定を設けることといたしたのであります。  以上のほか、労働省及び都道府県設置する職業訓練審議会に関する事項について規定を設けるとともに、職業訓練及び技能検定に関する行政を一元的に行わせるため、労働省職業訓練部設置することとし、これに伴う労働省設置法の改正、その他この法律制定に伴う経過措置、並びに他の法律との調整等について、所要規定を設けることといたしたのであります。  以上、この法律制定理由並びに法律案概要を御説明申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本案の質疑は次回以後にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  7. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して。     —————————————
  8. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に労働情勢に関する調査の一環として一般労働問題に関する件を議題といたします。  まずILOの問題について質疑を願います。
  9. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ILO関係については、少しこの前にもお聞きしたのですけれども、きょうはILO日本との関係、それからILO機関の問題、政府との関係、こういう点についてお聞きをしてみたいと思うのです。  第一にお聞きしたいことは、今のILO日本との関係については、今年は四十一回の総会をやるというほど、非常に歴史的な意義もち貢献世界にしてきたと思うのです。そこでILO規律をつけるのは、何と言っても憲章と一九四四年のフィデルアィア宣言だと思います。その憲章宣言を読んでみると、加盟国には相当な義務と責任が課せられておるように思うのです。そういう立場から、このILO条約勧告決議という段階がありますけれども条約勧告にはおのずから規律がつけられているわけでありまして、また日本から考えてみまして、ILO協力態勢というものをまず第一に大筋に政府としてはどう考えておられるか、それを先にお聞きしたいと思います。
  10. 石田博英

    国務大臣石田博英君) ILO精神及びその憲章の尊重ということは、これは言うまでもなく政府労働政策の基本と考えておるわけであります。従ってあとう限りすみやかに批准なし得べきものは、批准をすべきものと思い、また直ちになし得ざるものについては、なし得るような努力をして行かなければならぬと思っております。正直に申しまして今まで完全に遺憾なくその検討をしてきたかと申しますと、やはり政府側として反省すべき余地が相当残っておると思いまするので、ただいまその条約の中で、日本関係があって、まだ批准を行なっていない案件が約五十くらいあると思いますが、それについて至急所要機関を設けて検討を加えて行きたい、こう考えておるわけであります。
  11. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はなぜそういうことをお聞きしたかというと、日本ILOとの関係は、一九一九年から三八年に日本脱退するまで、正規の代表を送ってこの協力関係が保たれておる。また戦後早急にこれへ加盟するために努力が払われて、五一年には正式に加盟が許された。五四年には主要産業理事国として日本常任理事国としての地位を、ILOに八十幾つ参加している国の中で、持つようになって参りました。そうなればなるほど、私は日本の国の責任というものは非常に重大である。だから八十幾つの中で少くとも常任理事国という地位にある国は、率先してあの条約勧告、または憲章宣言というものの意に沿うように一日も抜きんじて努力するということに、私はこの関係意義があると思います。ところが今労働大臣は非常に率直に申されましたけれども、今日までに見るべきことがされていない、こういう工合に私は非常に遺憾に思っていますので、その点を労働大臣にお聞きしたわけなんです。だから私は具体的に今労働大臣はどうやって検討して行くのだということをおっしゃいましたけれども、どういう形でそれじゃこの精神条約勧告批准促進、または批准に至らないまでの内容の問題について、国内行政上の整備をして行く、こういうことが起きてきょうと思いますけれども、その点についてはどういうふうに具体的におやりになりますか。
  12. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは私ども役所に直接関係ありますのが、五十件ばかりの中で約三十件ばかり直接関係があるのだと思います。あと二十件は他の官庁所管に属するものが多い。これを私どもの方の関係だけは、私どもの方の役所の中で機関を設けて検討をするとか、あるいはILO条約全部をひっくるめた検討の方法を講ずるか、この結論はまだ私どもは得ておりませんけれども、まあ私の今の構想としましては、幸いに労働省労働問題懇談会がございます。そこに今の団結の自由についての条約の小委員会は設けられておりますが、それだけではなくて、他のものも包含をして御検討を願うようなものを設けるのがどうか。今のところそう思っておりますけれども、他の官庁所管に属するものとの関係等について、今折衝をさしております段階でございます。
  13. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はその厚生省関係に、社会保障関係とまだほかにもありますけれども、問題にして摘出するのは四十八号の社会保障制度の問題と、百二号に社会保障一般条約があるわけです。この問題について厚生省のこの間大臣以下がおいでになったとき、私はお聞きしたんですけれども、ほとんど関心がないという以外にわれわれ解釈できないような態度に出られた。私はやはり今労働大臣が五十件のうち三十件は労働省の管轄だとおっしゃいましたけれどもILO関係という、行政上の主管省労働省だと私は思う。だから労働省が今のようなたとえば社会保障関係厚生省が直接多く関係ある問題でも、厚生省はほとんど無関心状態にある。だからむしろ労働省として自分関係云云じゃなしに、このILO関係というものは、やはり労働省責任をもって処理するという立場を推し進めない限り、これは具体化しないのじゃないか、私はそう感ずる。そういう点からの問題も少しお聞きしておきたい。
  14. 石田博英

    国務大臣石田博英君) そのつもりでおるわけです。そのつもりでおりますけれども、事実問題として他の官庁関係があるところがあるものですから、それと何の連絡もなしにやるわけにいかないので、イニシアはとるつもりでおりますし、推進力にもなるつもりでおります。
  15. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで戦後ILO活動というものが国際的にも国内的にも非常に意義を持つものである、だからそういう立場からILO普及しようとするILO協会という形のものができて、ILO普及宣伝国民理解していただくための活動というものが行われてきたことは、私が申し上げるまでもないと思う。そこで最近のILO普及宣伝国民に対する理解のこの問題を見てみますと、私は非常に労働省関係、また他の面の関係からいっても、普及宣伝という問題がだんだんとワクが縮められているような感じがする。だから労働省としてはILO協会活動についてどういう工合にお考えになっているか。
  16. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 冒頭にも申し上げました通り政府ILO憲章及びその精神を尊重していく建前でありますから、ILOの仕事を普及宣伝をしていただく協会活動には、大きな期待を持っておるわけであります。それから政府自体としては、ILOだけではございませんが、労働問題一般についての調査研究及び国民に対する理解を深めるための機関として、今次国会日本労働協会法案提案しておるというわけであります。
  17. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それじゃILO協会に、どのような支援と便宜をお与えになっておるわけですか。
  18. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 官房長から具体的な問題をお答えいたします。
  19. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) ただいまのお尋ねの件でございますが、ILO協会は純然たる民間団体でございまして、労働省として特に補助金を交付するというような援助措置はとっておりません。ただ実際上の問題といたしまして、ILO協会が発行しております雑誌がございます。これを労働省が若干の部数を買い上げておるという程度の援助にとどまっておる次第でございます。
  20. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで私はILO協会の問題を先にお尋ねしておきたいと思うのです。ILO協会というのは、政府指導と申しましょうか、私は指導といってもいいと思うのです。ILO国民普及するために、ILO協会民間団体といいましても単なる民間団体じゃない、むしろ労使政府一体となって国民の世論をまき起し、再加盟をするための運動をやってきた私は推進力の一番大きい母体であったと、そう理解をいたしております。でそういうものが単に民間団体だから云云ということではない、そこで最近のILO協会情勢を見てみますと、団体使用者がこれから一切脱退をしていくという現状にあるわけでございます。私の聞くところによりますれば、使用者脱退理由というのは、ILOの中で要するに条約勧告決議され、そういうものに自分反対をしているから、このILO普及活動に参加することは自分のマイナスなんだ。これは民主的に政府が二、労使が一、一での世界の国々が民主的なルールに従ってものをきめている。きめていったものの決議勧告を各国が尊重していってこそ、私はILOの役割や意義というものがあると思うのです。ところがそれにたまたま自分らが反対をしても、多数できめられるような場合があるから、ILOの根本的な問題の普及理解さす問題にすら、これには参加しないという工合反対理由が言われていると私は聞いている。この点は労働省はどう見ておられるか、こういうことでいいのかどうかということを聞きたい。
  21. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) ただいまの件でございますが、日経連はあなたも御指摘のように当初ILO協会に参画しておりまして、その後脱退をしたのでございますが、その脱退理由としては国際労働条約批准されるということがあるので、その障害となるので、ILO協会に参画しておることは反対であるという理由ではないのでございまして、日経連としましては、使用者としてその立場からILO普及宣伝にはもちろん協力する。現にILO協会で発行しております雑誌購入等につきましても、それぞれの日経連の地方の支局におきまして、購入その他で協力をいただいておる次第でございます。
  22. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 官房長はそうおっしゃいますけれどもILO協会の運営というものは、単に雑誌を出しているだけでは私はないと思う。これは労使政府一体となってこのILO普及宣伝国民理解させるために一体となって進んできた。今なって労働省のつかんでおられる理理由をおっしゃいましたけれども、出発してきて今日ILO日本加盟するとともに、単にその資料の一部を買うというだけで協力普及になるでありましょうか。私は非常に疑問に思うのです。予算の処置からいっても政府は六千何百万円ですか、ちょっと今数字を持っておりませんが、相当多額なILOに対する年年分担金を出している。私は、やはり憲章宣言ILO活動精神に基いて日本協力をしていくのが建前だと思うのです。ところが今の協会活動というのは、ほんとうに狭いところに限られているわけであります。それが単に資料の一部を買っているからそれで普及をやっているとは常識的に考えられない。なぜこの協会脱退したかという問題は、私は聞くところによれば、ということを申し上げましたけれども、そういうところにねらいがあるとしか一般的に考えられない。こういう状態に置いておいていいのかどうか、労働行政立場からいいのかどうかということを私はお尋ねをしている。
  23. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 日経連ILO協会から脱退しているということは、これはやはり労働者側使用者側がそれぞれ独自の立場で参加をされておることなので、そのこと自体政府はどう干渉するとか、どういう指導をするとかということではないと思います。しかしながらそういう状態は好ましくない。好ましい状態ではないということは認めます。よってそういう状態を改善するために実情調査し、主張の相違点なら相違点というようなものについての調整を行なって、望ましい状態にもってくるようにいたしたいと考えております。
  24. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 わかりました。それではそういう工合調整して、本来の姿に戻すように労働省としては努力をしようというお考えなんですね。
  25. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 現の状態が望ましくない以上は、望ましいようにするのが役所責任であると考えます。
  26. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その次は、今のILO協会が出しているのがまあ日本国民に対する玄関品支局文献もありますけれども玄関口だと思うのであります。そのILO東京支局ILO協会が出しているのしか、私はILOに関する文献宣伝活動というものは行われていないとしか考えられない。労働省は国として労働行政立場からこれに援助するか、協力するかの場合もありましょう。また労働者自身が独自でいろいろもっともっとやらなければならぬことが、たくさん私はILOに関してあると思うのでありますけれども、そういう点はおやりになっていない。この点は非常に残念だと思うのであります。今後どういう工合におやりになるつもりですか。それを聞いておきたい。
  27. 石田博英

    国務大臣石田博英君) それは先ほどもちょっと申し上げました、ILOの問題に限らず、それを包含した労働問題の調査研究及び国民に対する理解を深める手段といたしまして、労働協会設置考え、それによって政府がいたすというよりも、民間第三者の手によって労働問題一般の知識の普及ということに資したい、こう思っているわけでございます。
  28. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だからそういう一般的な労働行政の面からやりたいとおっしゃいますけれども、実際にILOというものを国民理解さすには、もっともっと現実のILOで行われている問題を国民に知悉するような宣伝が行われなければ、私はならないと思うのであります。戦前はなかなか、戦前のことは今の内閣には責任はないでしょうけれども一般の人にわからすような通勤というものはなかなか行われていなかった。だから本来、この戦後新しい出発をした、日本の今の憲法に基く、主権在民民主主義の上に、国を立てていこうという、この中においてこそ、私は国が相当な負担をして、そうしてまたその精神宣言を確認して、そうしてそこに入っている以上は、もっともっと私は国民理解されるような措置が講じられるべきだ、と私は思っているのであります。だから一般行政でおやりになるとおっしゃいましたけれども、摘出してもっとILO国民に知悉し理解さす運動をおやりになる気持はどうでございましょうか。
  29. 石田博英

    国務大臣石田博英君) さっきから申し上げております通り、私は単にILOの問題だけでなく、日本における労働問題についての使用者側、あるいは労働者側一般国民というものが著しくその後進的な要素が強いように思います。その中でやはりILO精神、やり方に対する世間の無理解ということもあげられると思いますので、先ほどから申し上げておりまするように、このたび政府では日本労働協会というものの設置提案をいたしまして、それの中で政府とし、はやっていただくことを期待したい、こう思っているわけでございます。
  30. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ政府のお考えがそういうことにあることで、私たちはまあ協会の問題は非常に重要な問題でございますから、これにまあ触れたくはございません。  そこで今のILO東京支局活動を行なっているんですけれども、これはまあ国連の一つILO機関ですけれども、この東京支局に対してどういう援助便宜をお与えになっておりますか、それをお聞きしたいと思います。
  31. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) これは御無知のようにILO東京支局でございますので、労働省としては何ら援助措置は講じてておりません。独立の機関でございます。
  32. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると何ですか、たとえば活動をするに対する利便をはかってやるとか、おせ話をするということは、一切独立した機関としてやっておるわけですか。
  33. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 私の説明が多少不十分であったかと思います。これは当然ILO東京支局でございまするし、わが日本ILO加盟しておりまして、ことに十六産業国一つとして、理事国として就任いたしておるのでございますから、当然この東京支局がいろいろな国内において活動をする便宜はこれはばかっておるわけでございます。
  34. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこでILO条約勧告というものが、具体的な問題に入りますけれども、行われた場合には、権限のある機関に一年以内に諮らなければならぬ、最終的でも十八カ月以内にはこの処置をしなければならぬという工合に明記をされておると思う。だから私は、戦前のやつはまずおきまして、五一年以降日本が正式に加盟してからのあとできめられた条約勧告について、国会とか、権限ある機関といったら国会だと思うんですけれども、どういう手続をおやりになっているか、これをお聞きしておきたい。
  35. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 国会に対して決議書類に飜訳を添えて提出をいたしております。しかしこれはそれだけの処置で私は十分だとは考えておりませんので、あれはいつごろでしたか、ちょっと日時は忘れましたけれども、これからはそれに対する政府の見解、その他必要な書類を添えて明確な手続をとるようにという方針を指示いたしております。
  36. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、今後は明確に、今労働大臣がおっしゃったような形でこの処理をするとおっしゃるわけですね。
  37. 石田博英

    国務大臣石田博英君) そうでございます。
  38. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで条約勧告については、一年間または最大十八カ月の間に、批准をしたら批准をしたという事務局長に対して報告をする義務がある。そうしてまた理事会や総会で、ILO自身で確認する手続があるわけです。その条約勧告の五一年以降批准をされてない問題については、かくかくの事情で国内法に照らしてまたは云々、という報告を出さなければならぬと思うのです。これはお出しになっているんだと思いますがそうですか。
  39. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) ただいまの件につきましても成規の手続きをとって、おります。報告を出しております。
  40. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、その五一年以後の今日までの手続をとられ、事務局長にお出しになった書類、この書類国会では今までわれわれは見ていない、この国会に全部お出しを願えますか。
  41. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 提出いたします。
  42. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは非常に古い話になって恐縮ですけれども戦前のいわゆる一九一九年から一九三八年までの日本ILO脱退するまでの関係について、どういう関係を持っていたか、または条約勧告批准手続はどういうふうにやってきたか、その他の日本国とILOとの関係について一つ説明を願いたい。
  43. 宮本一朗

    説明員(宮本一朗君) 十九条で要求されております義務は、その年の総会におきまして採択になりました条約及び勧告につきまして、権限ある機関に提出する、かようになっております。従いましてこの解釈といたしましては、国会にその状況を報告する一冊ともに、それを国会自身の権限の中におきましていろいろ措置されるために、権限ある機関に提出すると、かような解釈になっておりまして、批准するかしないかということとは全然無関係でございます。批准いたします場合は、政府批准の承認を国会に求める、かような手続に相なるわけでございます。それで、従いましてその年度に加盟いたしておりまして、しかもそのときの総会において採択になりました条約及び勧告を、一年ないし一年半以内に権限ある機関に提出する、かようになっておりまして、厳密な解釈から参りまするならば、脱退中のものにつきましては、そのときに出ておりませんので、従ってその年の総会において採択になりました分を、一年あるいは一年半以内に権限ある機関に提出すると、こういう義務はないかと考えられます。従いまして、脱退中のものにつきましては、その一年ないし一年半に権限ある機関に提出することができない、かようなことになろうかと思います。もっとも日本といたしましては、脱退中におきまして採択になりました条約におきましても、これを批准できるかできないかという点につきまして検討を加えまして、現に脱退中の条約につきましては六つでございますか、これを批准いたしております。従いまして批准の対象には考えますけれども国会提出への手続という義務のもとにおいては、多少意味が異なって参るかと考えております。
  44. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そのILO関係を持つ以上は一切の条約勧告について権限ある機関に諮るという手続をしてきたと、私の尋ねておるのは一九年から三八年までの間の、政府がどういう工合にして取り扱ってきたかということを聞いておるのです。
  45. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) その点につきまして戦前の処理状況を申し上げますると、当時の所管省は内務省社会局であったわけでございますが、ここで条約内容検討いたしまして、その採否の態度を決定して閣議にかけまして、閣議の決定を上奏して枢密院の批准を仰いだのでございます。これが戦前の処理状況でございます。
  46. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、労働大臣がおられなくなって非常に残念なんですけれども、たとえばこの憲章を見てみますと、その条約批准ができない問題についても、同じ責任をもってこの処理に当るということが新しい憲章の中で生れてきていると思うのです。そういう格好になれば、比々それにILOできめられた条約勧告に対してその適法になるように国内法を改めていかなければならぬという義務が、ILO加盟している国としては私は今日あると思います。そういうことになってくると、今日いろいろの問題を起している、たとえば最低賃金とか、または団結権に関する問題、こういう問題については相当長い期間があるけれども、今までの間そのままの状態に置かれているということは非常に残念なことで、どういう工合にして、この問題との関係において、国内法の問題を直すために努力をされたか、それを聞きたい。
  47. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) ILOで採択されました条約批准するにつきましては、加盟国として当然道義上の責任は持っておると思います。ただし、この憲章ではっきり書いてございますように、採択されました条約批准について、憲章上の義務は課しておらないのでございます。その当該の国の国内の事情等によりまして、完全なる自主性を持って、その批准をすべきであるかどうかということを決定するというのが、憲章上の建前でございます。ただしかし、ただいまも申し上げましたようにILO加盟国といたしましては、積極的に、この採択されました条約批准するように努力するのは当然でございまして、この点につきましては、先ほど労働大臣から明確に御答弁申し上げましたように、政府特に労働省におきましては、今後未批准条約が、労働省関係につきましては、三十一件あるわけでございますが、これを逐次検討いたしまして、できるだけ批准の方向に向かって努力して参りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  48. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その問題を一応おきまして、外務省の方がお見えになっておりませんか。
  49. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 国際協力局長が見えております。
  50. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それじゃ外務省の方にこの問題について一言お聞きしておきたい。ILO条約勧告というものが、憲章宣言によって日本加盟をして、加盟をしておるという立場に立って批准手続もある。むしろ、これは労働保護の、経済にも非常に関係のある重要な意義を持った勧告だ。ILO活動自身に対しても、そういうふうに思っておる。だから今の労働省の方の、批准に対する権限ある機関に諮る、こういうことがありましたが、外務省としては、こういう条約勧告については、どういう工合国内で処理するようにお考えになっておるか、この際、聞いておきたい。
  51. 宮崎章

    政府委員(宮崎彰君) 外務省といたしましては、ほかの国がどれだけILO関係条約批准しておるか、というようなことを始終見ておりまして、日本も主要産業国一つとして、ほかの産業国などに比較いたしまして、あまり成績が悪くないようにしたいということを念願しており、国内的には労働省の御検討に従いまして、そして種種連絡をしておるわけでございますけれども内容的の問題につきましては、外務省としては権限もございませんし、十分な知識を持っていないのが実情でありまするので、国内的の関係はあまり意見を持っていない。日本といたしましては、たしか百二十七ありまする関係条約のうち、日本は二十四批准をいたしております。それで全体の各国の平均が二十二でありまするから、まず平均よりは少し上っておるということで、日本がいわゆる中間国というようなことを言われるとなると、そういう数字の上からもまず一応名目は立つのじゃないかと思っております。もちろんこれはできるだけたくさん批准ができることを希望はいたしておるわけでございます。
  52. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、数の問題をおっしゃいましたけれども、主として外務省としては、世界の各国がやっておるのをじっと見ておって、まん中はどのところでやるということですか。
  53. 宮崎章

    政府委員(宮崎彰君) ただいま申し上げましたように、できるだけ批准成績を上げまして、決して中間にとどまらないで、ますます上の方にいこうという意欲だけは十分持っておる次第でございます。
  54. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 僕は忘れてもらいたくないのは、戦前国際連盟の機構であったILOから、三八年脱退して、私の質疑をお聞きになったと思いますけれども、国をあげてILO加盟しようとして、政府労使関係が、むろん外務省の方々も努力されたと思う。国をあげてILOに再加盟をしようとして努力をして、加盟が認められて、一九五四年には十大産業国として、常任理事国として日本がその地位を占めている。単に数とか成績云々という問題でなしに、ここでどういうことが行われ、どういうことが決議され、そうしてその精神や具体的なものが、そうして国民労働保護を主としておりますけれども国内行政に反映をさせ、どうして国民を守っていくかというこの精神を貫かなければ、私はILO加盟している意義はないと思うのです。六千万円以上毎年日本国は負担をしているのです。おつき合いで形式だけ整えたらいいというようなものの考え方で、そんなことは外務省はないと思いますけれども、私はそういう考え方はまず捨てていただきたいと思う。だから根本的にこのILOに入っている意義、そうして自分らが持っている役割というものを生かすために、外務省としては、私は活動をしてもらいたいと思う。具体的な内容検討厚生省関係したものもございましょう、農林省に関係したのもございましょう、労働省関係したのもございましょう、とにかくといたしまして、主として労働保護、生活保護、貧困をなくするという大原則の上に立って、世界中の各国がこれに加盟してその活動を行なっているわけです。今平均二十二とおっしゃいましたけれども、この第二次戦争後の独立した多くの国も入っている。その多くのほんとうに経済力の貧困な国ですら、何とかして努力をしようとして、このILO条約勧告批准して、国内の要するに勤労国民といいますか、国民の生活保護、労働保護に対しては努力をしている。日本は、私は欧米並みの大工業国だ、近代国家だと思っている。まだまだ足りない面はみんな寄って努力して、もっともっと進めなければならないことは、これは申し上げるまでもありませんけれども、そういう立場におる日本が率先して、この憲章意義ILO精神というものを生かしていくために、私は文部省としてはがんばってもらわなければならぬと思うのです。だからその点について、先のことはまだわかりませんから、どういう工合にそれではやっていこうという考え方があるかお答え願いたい。
  55. 宮崎章

    政府委員(宮崎彰君) 私は国際的に見て日本が中間であると申し上げたことが、あいるは気休めのようなふうに響きましたとすれば、大へん表現がまずかったと思うのでありまして、今おっしゃいましたような心がまえというものは、十分持っているつもりでございます。
  56. 片岡文重

    ○片岡文重君 この条約批准に当って、労働省の担当する事項、もしくは厚生省なりその他の官庁で担当する事項が、その内容になっておるから、従って外務省としては専門的な知識はあまり持っておらない。で、批准手続を進めるに当っては、その条約事項内容検討を、所管をする省で一切の進行をして、それを外務省に持ってくるのを待っておった、ただ単に条約上の、つまり外交上の国際的な手続をとるだけに過ぎないのか。それともこの条約全般を見て、積極的にその時期のおくれているものや、担当所管庁で積極的に推進しようとする誠意のない点等について、外務省が積極的にこれを推進しようとしているのか。この点について、待っているのか、推進をしているのか、推進をするということならば、どういうふうな手続をとって具体的に推進をしているのか、その辺を一つ明確に教えてほしい。
  57. 宮崎章

    政府委員(宮崎彰君) 外務省といた査しましては、この内容的にいろいろタッチいたしておりません。従いまして条約批准の推進につきましても、こういう内容だから、これで日本はのんで批准したらいいじゃないか、そういうような意見を申し出るということはございませんのが実情でございます。これは専門機関ILO以外にもございまして、たとえば衛生関係民間航空の関係、あいるはユネスコであるとか、十大専門機関の各部門につきまして、外務省といたしましては、いずれにつきましても、その内容に立ち入りましてこうしてくれ、ああしてくれということを、国内官庁に注文いたすということはございませんので、国際機関の本部のいろいろの連絡その他によりまして、促進をしてくれというようなことがありますれば、もちろんこれを外務省といたしましては取り次ぎまして、そうしていろいろ形式的に促進を願うということはございますけれども内容的にまでわたりまして、これはいいじゃないかとか、あれはいけないとか、そういうようなことまで立ち入ってやる立場にはございません。
  58. 片岡文重

    ○片岡文重君 内容に立ち至ってかれこれ積極的にやることはできない。それはそうかもしれませんが、私の言うのはそうでなくて、その事項内容に批判を加えたり、あいるはいいとか悪いとかいら助言をする、こういうことではなしに、少くとも、国際信義を日本の国は高めていく、国際間の信用を高めるような点において、外務省という役所がこれを任務とするならば、やはり条約批准等については、積極的に熱意を示すべきだと私は思う。そういう観点からするなら、それがたとえ労働省所管であろうとも、あいるは厚生省その他の所管であろうとも、その批准できるかできないかの決定を早くするなり、その内容についての検針をその担当の官庁が積極的にするように、内容の批判ではなくて、早期検討批准をし得る態勢を早く整えるように、外務省としては積極的に推進すべきじゃないかと私は思うのですが、それをただ、その内容の知識がないから、あるいは批判はすべきじゃないからということで、消極的な態度をとっておられたのでは、現に今藤田君から質問されているように、日本の国としては、日本の現在置かれている立場からみて、非常な不満足な状態にあると私ども考えられるのだが、それをただ、たしか日本は、条約批准しているのは二十四でしたね、それでとにかくその数からいえばということを言っておられる。しかしそれは数ではなくて、こういう場合には私は条約内容だろうと思うのです。こういう点等についてはやはり終始検討を加えて、外務省としては、国際信義の立場から、もっと積極的に批准推進を行うべきじゃないか、だからその案件の数じゃなくて、あくまでもその批准の推進をもっと積極的にはかるべきじゃないかと思うのだが、そういうことは今までもされておらないし、今後もそういうことは考えておられない、こういうことなんですか。
  59. 宮崎章

    政府委員(宮崎彰君) われわれは、希望といたしましては非常に強い希望を持っておりまして、今お話中にありましたように、できるだけ多数の条約批准されることを希望しておるわけでございます。これは対外関係、外国に対する手前等から申しまして当然のことでございます。しかしこの批准促進の熱意を具体的に示すと申しましても、強く関係省に希望を申し出るのが限度でありまして、これは別に文書とかそういうものではいたしておりませんけれども、機会あるごとに、外務省としてはそういう熱意を示しておるわけであります。
  60. 片岡文重

    ○片岡文重君 関連質問ですから、そう長くお尋ねするのもどうかと思うのですが、文書やなんかでやるわけじゃないとおっしゃるのだが、これは文書でなくてもいいでしょう。いいでしょうが、従来の事実、たとえば会議が終ってから批准されるまでの期間が何年もかかっておる。こういうような場合に、外務省としては、それらの条約案を一つ一つ検討しておって、あまり時間がかかり過ぎるじゃないか、こういうものはもっと早く済ませるべきじゃないか、こういう検討もされるのかどうか。それをされたとするなら、労働省なりその他の諸官庁に対して、文書でなくとも、今の御返事では何かしておられるようだったが、積極的にしておったとするなら、どういう方法でされておったか。それだけ一つ聞いておきましょう。
  61. 宮崎章

    政府委員(宮崎彰君) 条約検討につきましては、大体期限というものがございまするから、期限に近づきますれば、関係省に公文をもって督促をいたしておるということはたびたびございます。
  62. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 外務省の方にもう少し聞いておきたいのですけれども、私は、今の条約手続や、今、置かれている立場はわかりましたけれども、しかし皆さんよく御承知の通り、チープ・レーバー、ソシアル・ダンピングということで、日本の商品が外国市場でボイコットをされている。特にはなはだしかったのは繊維の関係だと、昔を思い出して考えるわけですけれども、今日でも日本の商品が外国市場で、チープ・レーバーという関係においてボイコットをされるような状況にある。私はそう考えてみると、いかに世界の各国が、労働保護や人権尊重の立場からものを考えているかということがにじみ出ていると思うのです。   〔委員長退席、理事山下義信君着席〕  私も一、二回国際会議に参りましたけれども、やはり国内労働者の保護、人権尊重というものが、国際貿易に影響、関係なしとはどうしても考えられない。私は外務省の方もそういう工合にお考えになっていると思うのです。そうなってくると、ますます国際基準による労働保護、人権尊重、生活保護というものが、他のあらゆる日本の経済活動においても重要な関係があるということが、私は申し上げることができると思う。で、そういう立場から、私はこのようなILO条約精神が生かされなければ、日本の経済活動に重大な影響がある、こういう工合考えておるのです。外務省としては、どういう工合にお考えですか、その点。
  63. 宮崎章

    政府委員(宮崎彰君) 昔は日本の商品は、チープ・レーバーの産物ということをいわれておりましたのでありますが、戦後におきましては、若干その状況が変って参りまして、昔ほどではありませんけれども、やはり今お話のように、生活水準の高い主要産業国から比べまするとまだ低いので、ときにそういうことを言われるわけであります。できれば日本も十分生活程度も上げ、賃金も高くなって、そうして正当な競争というもので、外国に立ち向っていって、なおかつその間に輸出貿易を伸展していくということが望ましいことだと考えております。しかしチープ・レーバーということにつきましては、いろいろ外国においても必ずしも正しくみていない場合もありまするので、そういう場合には、十分資料を提供して説明しておることも聞いておるわけであります。生活程度が、日本の輸出貿易、経済全般あるいは対外関係全般に影響があるというお説につきましては全く同感でございまして、われわれも、生活程度の向上ということを希望しておるわけであります。
  64. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もう一つだけお聞きしておきたい。たとえば外務省は国の外交を担当されるわけです。主として貿易の主体になるのは先進国であり、文化の高い国がやる。その国の経済力に応じて貿易の関係、外交の関係について、より深いと思うのです。そうなってくると、今日、私が先ほど申し上げましたような問題が各国に起きておる。最近アメリカでも相当根強い問題が起きておる。皆さん御経験なすったように、戦後十年間、日本ががんばって、ようやくガットに加入ができた。これも百パーセントでない、こういう現状なんです。そういう状態が、国と国との間にあって、そうして日本国内の問題をみて 一、二の例を取り上げてみましても、労働者を保護する休暇の問題、労働時間の問題や最低の生活保障の問題、こういう問題が、外務省の方々でも、各国と日本の対比においてはよく私はわかると思うのです。たとえば最低賃金の例を一つ取り上げてみても、先進国はむろんのことですけれども、アジアの国でも、フィリピンからビルマ、セイロン、隣りの中国でも最低賃金を実施しておる。どうして労働者の生活を守るかということで実施をしております。ニュージーランドやオーストラリアはもっと、五十年から歴史はたちますけれども、私は、そういう問題が、日本国内経済との関係なしとはみられない。これは、このILOの直接担当の行政部である労働省との関係において、このILO条約その他の関係は明らかになりますけれども、私は、やはり国の外交全体をあずかっておられる外務省としては、こういう問題は、総合的に、国民をして日本の経済活動が十分理解できるような立場からいっても、この問題には無関心であってもらいたくない。だから、積極的にこの問題は、私のチープ・レーバーの関係については御賛成いただきましたから、ぜひこの問題については促進をしていただきたい。こういうことだけを外務省にお願いをしておきまして、外務省の関係は、一応これで終ります。  そこで問題は、労働省関係なんですけれども国際労働条約検討委員会というのが一時作られたが、今それはどうなっておるのですか。
  65. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 御質問の特別委員会設置されたという点は、私ども承知いたしておりません。
  66. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 知らない、それはあまりにも認識不足じゃないかと私は思う。国際労働条約検討委員会というのが、りっぱな報告書を出しているじゃありませんか。
  67. 宮本一朗

    説明員(宮本一朗君) それはおそらく、ILO協会の中に設けられました、そういった名前のものと思います。役所といたしましては、そういう機構は作ったことはないように私は承知いたしております。
  68. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうですか。そうするとILO協会の中で、この条約検討委員会というのができた。それじゃこのILO協会の中にできた国際労働条約検討委員会というのは、これは二十九年ですから一九五四年ですか、そのときにこの百二号の結論について報告書を出している、社会保障一般について。だからこの中には労、使、公益という三者構成で活動が行われている。だからこれに、労働行政を担当する労働省は、無関心であるということは言えぬでしょう。
  69. 宮本一朗

    説明員(宮本一朗君) 当時の模様はつまびらかにいたしませんが、役所関係いたしておらぬと思います。ただ当時におきまして、そういったものが民間にできましても、役所がこれをどう扱ったかということは、ただいま私詳しく存じておりませんので、のちほど調べることにいたしますが、その当時役所がどう扱ったか、この点不明でございます。
  70. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 きょうこれも私が先ほど質問を申し上げましたように、ILO国内普及理解をするための一つ委員会として、労働省はこれに対して資料をやるとか、便宜をはかっておられたと私は思うのです。今知らぬようなことを言われたけれども、事実労働省、行政府としてはこれに便宜を与えたり、御支援をされておったと私は思うのです。これが二十九年ILO加盟するための一つの工作として行われたのかどうか、一般からみればそう思います。加盟してしまって、   〔理事山下義信君退席、委員長着席〕 十大産業国理事国になってしまったら、こんなものはどこへいったかわからぬという、こういう一つの例も今あるのですよ。だから私はそこのところをお尋ねしているのです。労働大臣におっていただいて、具体的な問題のときに私は聞きたかったのだけれども、おらぬようになりましたから、皆さん方にお尋ねをするのです。こういうものを作って、各条約ごとに検討するという、こういう具体的な活動が行われなければ、この報告書というものは全国に流れぬでしょう。そういう立場というものが、積極的に行えない限りは、いかにやるやると言うてみたところで、何にもやってないと言われても、私はしようがないと思うのですよ。それを聞いているのです。これは一つよく調べて、どういう活動をしているかということ、どういう工合になっているか、それから労働大臣がさっき言われた、一般行政の中の今後やってゆくというものとあわせて、結論を出していただきたいと思うのです。  で、私はそこで問題は、この条約の本論に少し入ってゆきたいと思うのです。今問題はたくさんありますことはたくさんありますけれども、今問題になっているのは、団結権の問題、それから最低賃金の問題、労働時間の問題、休暇の問題ですね、こういう形で、日本労働者にどういう影響をするかという問題の摘出が、私はまずできると思う。いずれ労働省は問題のあるやつは順次出してくれということですから、私たちは順次各条について皆さん方に出しまして、そうしてまた国会手続をするといたしまするが、労働省協力してくれるものだと私は期待いたしておりますけれども、さしあたってこの団結権の問題、賃金関係の問題、休暇の問題、労働時間の問題これはILO条約でどうなっているかという説明をしていただきたいと思います。
  71. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 今の御質問の中の、労政局所管の八十七号の結社の自由及び団結権の擁護に関する問題、この問題につきまして国内法との関係における問題点につきまして御説明申し上げます。  この条約につきましては、先ほど大臣からも御説明がございましたように、ただいま労働問題懇談会の小委員会におきまして、国内法との関係の問題点の調査を今進めておる次第でございます。従いまして、私としまして結論的なことを申し上げかねるのでございまするが、一応事務的に検討しました問題点を申し上げます。  一条はこれは問題がないのでございますが、二条が労働者使用者団体の自由設立と自由加入の原則につきまして規定をいたしております。この中で問題がございますのは、自由設立の方は、これは一応憲法の上から申しましても認められておるところでございまして、その範囲につきましては若干問題がございまするが、一応問題ないと思います。ただその中で、自由加入の問題につきましては、国家公務員法あるいは地方公務員法で、国家公務員並びに地方公務員につきまして若干の問題点がございます。あるいは公労法第四条の第三項で、三公社五現業の職員について問題点がございます。また、地方公企体労働関係法第五条三項におきましても、同じように地方公営企業の職員につきまして問題点があるのでございます。これが第二条のおもな問題点でございます。  それから第三条は、労働者団体及び使用者団体活動の自由を保障する規定でございまして、「代表者を選び、その管理及び活動を定め、並びにその計画を立案する権利を有する。」というような規定でございますが、この中で問題がございますのは、代表者を自由に選べる、完全な自由のもとに代表者を選ぶという点につきまして、先ほど申しました公労法の四条三項で、三公社五現業の職員につきましても問題点がございます。同じように地方公営企業関係の職員につきまして、同じような問題点があるわけでございます。  第四条は、これら労働者団体使用者団体の解散の禁止と、活動の停止の禁止を規定したものでございまして、これにつきましては、国家公務員につきまして登録制度が御承知の通りにございまして、登録を受けなければ当局をして交渉に応じさせる権限を持たない、発生しないというのでございまして、この登録の取り消しが規定をされておる。その登録の取り消しの規定に該当し、取り消されますると、その団体の法人設立の認可が取り消しがあったものとするという規定がございます。  この条項が若干四条についてひっかかるのではないか。同じように、地方公務員につきましても同じような趣旨で若干問題点があろうかと思います。  それから第五条は連合体の結成の自由でございますが、すなわち、労働者団体使用者団体は自由に連合あるいは同盟を設立させることができる権利を有するということでございまして、これにつきましても、先ほど申し上げました公労法の四条三項の問題の中で、特に三公社五現業につきましての連合体が、四条三項の規定によって認められていないのでございます。その企業だけの組合しか認められていないという問題と、それから職員に限定声れるという問題がございます。同じく地方公営企業労働関係法につきましてもございます。それから国家公務員法、地方公務員法におきましても、同じような制限が加えられておりますので、こういうところに問題点があろうと思います。  第六条は問題点はございません。  第七条におきましては、法人格の取得に対しまして、条約の二条、三条、四条の規定の適用を制限するような性質の条件をつけてはならないという規定でございますが、これにつきましても、国家公務員並びに地方公務員につきまして、先ほど申し上げました登録との関係におきまして、若干の問題点がございます。  第八条は問題はございません。  第九条におきまして、条約では、「この条約規定する保障を軍隊及び警察に適用する範囲は、国内の法令で定める。」というふうに、一応除外をいたしておりますが、日本国内法におきましては、自衛隊法の六十四条におきまして、自衛隊の団結権が禁止されている。あるいは国家公務員法の九十八条によりまして、警察職員、消防職員、特に監獄において勤務する職員の団結権が禁止されている。あるいは地方公務員法五十二条の第四項におきまして、警察、消防職員の団結権が禁止されているというようなことで、この中で警察並びに軍隊に該当するものは、条約の適用を受けませんから差しつかえないとしまして、消防あるいは海上保安庁の職員、あるいは監獄職員というようなものが、これに該当するかしないかという問題があろうと思います。  あと十条、十一条等につきましては、問題点はございません。  以上が大体国内法との関係において問題のある点でございます。
  72. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 審議便宜のためにただいま労働条約関係資料をお配りいたしたのでございますが、これにつきまして簡単に御説明を申し上げたいと思います。  第一ページでございますが、ここにILO条約わが国における批准の全体の状況をつまびらかにいたしてございます。条約総数が一番上から二番目の欄にございますように、総計が百七でございます。わが国批准したものがその次の欄でございまして、二十四。新条約によって改正されたもの、従って、新条約に吸収された形になったものが十四。現在まだ発効していないものが九。わが国関係のないものが八。以上のような状況でございまして、わが国として、いまだ批准してないものの総数が五十二でございます。それでこの五十二のうちには、この表にも出ておりますように、船員関係が七、社会保障関係が十三という工合に、労働省に直接関係のない条約も含まれております。従いまして、これらのものを除いて、労働省プロハーのものと、それから社会保障関係労働省にも関係のあるものを含めまして四十三条約をそれ以下にずっと列挙いたしている次第でございます。  二ページをごらんいただきますと、最初に条約名を掲げまして、その下の欄に採択の年月日、それから当該条約に対する批准国の数をその次の欄に書いてございます。それから一番下の欄に、わが国がその条約批准しておらないおもな理由を掲げてございますので、審議の御参考にしていただきたいと思います。
  73. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいま御質問のありました最低賃金、労働時間、それから休暇関係の問題点について御説明を申し上げます。  まず最低賃金でございますが、これは御承知のごとく、第二十六号条約によって、「最低賃金決定制度の創設に関する条約」が採択されております。それから第九十九号として、「農業における最低賃金決定制度に関する条約」が採択されております。これら二つの条約は、その第一条にもありますように、「団体協約その他の方法に依る賃金の有効なる規律の為の施設存せず且賃金が例外的に低廉なる若干の職業又は職業の部分に於て使用せらるる労働者の為、最低賃金率を決定し得る為の制度を創設し又は維持することを約す。」ものでございまして、この二つの条約につきましては、目下国会提案しておりまする最低賃金法案が成立の暁には、批准が可能であるわけでございます。  それから次に労働時間につきましては、第一号の「工業的企業に於ける労働時間を一日八時間且一週四十八時間に制限する条約」、同時に第三十号、商業及事務所に於ける労働時間の規律に関する条約、これを初めといたしまして、労働時間関係条約があるわけでございますが、その最初の基本となります一号と三十号の条約と、わが国労働基準法との関係を申し上げますと、この二つの条約は、対象は異っておりますが、その原則は、大体次のようなものでございます。すなわち、一日八時間かつ一週四十八時間制度をとるということと、権限ある機関が認めた場合あるいは労使が協定した場合におきましては、一週四十八時間のワク内で一日九時間まで労働することができるということと、それから時間外労働につきましては、業務繁忙等の事由を限定いたしまして、かつ最高限を設けた上で、その時間外労働を許容することを定めておるわけでございます。これに対しまして、わが国労働基準法は、一日八時間、一週四十八時間の原則では同じでございまするが、御承知のごとく労使協定がありました場合におきまして、その届出があれば、時間の制限なしに時間外労働を認めておるわけでございます。この点が抵触するわけでございます。ただその反対に、たとえば労働基準法におきましては、年少者につきましては相当時間外労働の制限規定を設けておりますると同時に、休憩の点につきまして、ある限度の労働時間に対しましては、最低限の休憩を与えなければならないという規定があるわけでございまして、この点におきましては、この二つの労働条約よりも上回っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、ただいまの労使協定によって届け出た場合には、事由を問わず、かつ最高限を規定することなしに時間延長が認められるという点で、この国際条約に抵触しておりまして、批准は困難であると考えます。それから、そのほかのいろいろなこのお手元に差し上げてあります労働時間に関する条約がございまするが、これらは、いずれも一日八時間、一週四十八時間よりもさらに低い労働時間を規定しておりまするので、この労働基準法との関連におきましては、批准が困難であると考えます。  それから次に休暇でございますが、これは第五一二号の年次有給休暇に関する条約でございます。それから第百一号の農業における有給休暇に関する条約があるわけでございますが、この二つの条約につきまして、その原則は、六労働日の年次有給休暇、それから十六歳未満には十二日の年次有給休暇を与えなければならないということを規定しております。それと同時に、分割支給は原則として認めない、こういう建前になっております。基準法におきましては、六労働日の点については一致するわけでございまするが、年少者につきましては、技能養成工につきましては二十才未満の者に対して十二労働日の有給休暇を与えるということを規定しておるわけでございます。すなわち技能養成工ということに限った点におきまして、この条約と抵触するわけでございます。またその反面、十六才以上でありましても、技能養成中の者に対しましては、特別の有利な取扱いが規定されておるわけでございます。この点は、やや上回っておるわけでございます。  それから次に、分割支給の点につきましては、基準法は分割支給を認めておりまするが、このILO条約におきましては、分割支給は原則として認めない、このようなことになっておりますので、この点におきまして抵触いたします。従いまして、現行法のままでは批准が困難である、かように考えておる次第でございます。
  74. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、まず第一に、団結権の問題から少しお聞きしてみたいと思うのです。今、局長から説明がありましたように、三条ですね、三条の代表者選定の自由、それから五条の連合体結成の自由は、公企労法の四条三項、公務員法、地方公務員法に抵触する、で、私は、これは非常にもう基本の問題だと思う。団結権の自由を認めない、公労法で制限をしているために、これはもう国内の問題ばかりじゃなしに、国際的な問題を来しておる。国内の問題には、国鉄機労にも具体的な問題として出てきております。国際的な観点から見まして、こういうことがいまだに日本にあるのかどうかということを、一ぺん調査にいこうくらいの状態だと私は思う。国際的なILOの中から見れば、そういうことが日本に残っているのは、これは不思議だという工合にしか考えられていない。それを日本は、具体的に四条三項の適用によって、団結権の自由の面から非常に組合に対して過酷な扱いをしているとしか考えられない。この点の八十七号というものの取り扱いはどうしようとされているのですか。
  75. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいまも御説明申し上げましたように、労働省といたしましても、この条約内容について、国内法との関連において検討を進める、また、全体の問題としましては、これが批准できるかどうかという問題につきまして、労働問題懇談会に諮問をいたしておる次第でございまして、目下のところ、労働問題懇談会としましては、小委員会設置いたしまして、国内法との関係を目下調査研究をいたしておる次第でございます。その結論によりまして、場合によりましては、解釈上、条約精神趣旨に合致するというふうなものも出てくるでございましょうし、中にはまた、国内法を改正しなければ、条約精神趣旨に合致しないというふうなものも出てくるだろうと思いまするが、そういうふうなものについて、逐一具体的な検討が今推進されている次第でございます。労働省としましては、その検討の結論を待ちまして、善処をいたすつもりであるわけであります。
  76. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 問題が起きたら、労働問題懇談会にゆだねたと、そこで検討をさしているのだと、これは、われわれに対する答弁は、それは非常にいいと思うのです。だけれども、もっともっと深刻な問題が、今日じゃなしに、相当長い間から——労働問題懇談会というのは、最近できた機関だと思うのです。どれだけの機能があって、どれだけいつの期間にその結論をお出しになるか、私らのはかり知るものではございませんけれども、しかし、問題として起きてきて、国際的には非常に恥しいことです。国内的には問題が起きている。こういう問題は、私はもっと大胆な行為で処理をしなければならぬ今時期じゃないか、こう思うのです。なぜそういうことを申し上げるかというと、たとえば機関車労組の問題一つ取り上げてみても一切陳情を受けつけぬ、一切話をしたらいかぬというようなことが、当局の一切の機構の中に指令がされている。労働者は働いて賃金をもらっているけれども、それに対する交渉とか話し合いとか陳情とかというものは、一切認められない。こういう格好の指示を出している。ところが働かすところだけはちゃんと労働基準法の三十六条で協定をして、働かすところだけは十分に働かす。それで人格的な問題については全部否定している。こういうことが、実際社会的に認めていい問題でしょうかね。まず、その考え方を聞きたい。
  77. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 機労の問題につきまして、機労と国鉄当局との間のそういう問題によりまして紛争がありますことは、御指摘の通りでございます。問題は、ただいま、昨年の十二月二十日に出されました通牒をめぐりまして、すなわち二・四協定を締結するかしないかの問題を含めまして、一つの問題は、不当労働行為事件としまして、すなわち通牒の問題は、不当労働行為事件としまして、今、公労委に係属をいたしております。あとの二・四協定の問題につきましては、その窓口論争並びにその内容の論争をめぐりまして、地方調停委員会の調停に付せられている段階でございます。従いまして、第三者機関におきまして、今これらの問題についての審査並びに調整が進められている段階でございますので、われわれといたしましては、これに対しまする具体的な見解を申し述べますということは、差し控えさせていただきたいと考えるのでございますが、ただ御指摘の通り、問題は、やはり現在の機関車労働組合を代表しております委員長、副委員長が、公労法十七条によって解雇された者によって占められている。具体的に申しますと、現在の機関車労働組合というものが、公労法の四条三項に違反する問題を持っているというところに、いろいろな問題点がありますることは、御指摘の通りだと思っております。
  78. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこでですね、私は、その第三者の機関に論争の中心をゆだねられている、それはそれでいいでしょう。しかし、労働行政立場から見て、五万何千という労働者が、一つの団結をし、憲法の建前からいけば、自由に団結できることは当りまえなんですが、それに制約を加えている。そこで、具体的行為として、たとえば基準法の三十六条の協定をやっているが、とにかく働かすことだけは働かすけれども、そのほかの問題は一切話してはいかぬという理屈が成り立ちますか。法律の論争の問題は、その必要な機関で論争するのはいいでしょう。それは法律によってそういう機関があるのだから。しかし、行政立場から見て、それがいつまでもそこの機関から結論が出るまではっておいていいという問題でしょうか、実際問題として。僕は、そこを聞いているのですよ。
  79. 亀井光

    政府委員(亀井光君) まさしく御指摘のところに問題点があるわけでございまして、法律的な解釈、あるいは調整というものは、それぞれの第三者機関でやられますが、その間ほっておいていいかという御質問だと思います。この点につきまして、国鉄当局は、二・四協定につきまして話し合いをするということについて、態度を変更したということであります。そういう趣旨のことを、われわれは了解しております。ただ、二・四協定を認めるか認めないか、この内容の問題につきましては、これは労使双方の主張がありますし、それが必ずしも意見の一致を見ないという場合もあり得ると思いますが、一応話し合いに応ずるという態度に変ったように承知いたしております。
  80. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だからですね、公労法の四条の二項を見ますと、組合員の範囲などを規定しておりますね。三項では今のような格好のものを規定している。具体的には、法律論争になっているのは、他の法律の慣例その他によって、そういう検討機関があるのですが、労働行政立場からいって、これは、ほっておくべき問題ではない。根本になっているのは八十七号の条約だと思うのです。相当な長い時間がたっているのに、いまだに国内ではもうあらゆるところに紛争が起きている。紛争が起きているのに、労働問題懇談会にゆだねられているという格好でいいというのは、私は非常に理解ができないのですよ、これは。何か話を聞くと、憲法に基く組合であるけれども公労法の組合ではない。そういう議論がされているということは、これこそあなた国際的にナンセンスだと思うのですよ、ほんとうに。私はそういう議論を聞いて、非常に日本労働行政に対して悲しみを感ずるのです。そんなものであるのかどうか。だから、その労働問題懇談会というところにゆだねて議論をされていることも一つの手でしょう。しかし何といっても、積極的に、国際的な今日の情勢から見て、団結権の自由というものですね、代表者を選ぶ自由ぐらいのことを、いまだに法律で規制しているということは、あなた国際会議に行って恥かしくないでしょうかね、日本が。そこのところどうですかね、国際的な関係において一つ聞かせて下さい。
  81. 亀井光

    政府委員(亀井光君) これはいろいろ主張のあるところでございまして、諸外国の実例を、ILO事務局の発表しておるところを見ましても、なおいろいろの制限を団結権に加えているところもある。ひどいのは、批准をしている国においてすらそういう実例があるようであります。しかし、それがそうであるからといって、日本がそうであってよろしいという意味ではございませんが、われわれといたしましても、やはりこういう問題は、各方面の意見をたくさん聞きまして、そうしてやはりその中から結論を見出していくという方法を選ぶべきでありまして、われわれだけでの知恵でございますと、いろいろ見当違いな結論が出てきたり、あるいは間違った方向に考えが及びましてもこれは困るわけでありますので、従って、労働問題懇談会において、これはもとより労、使、公益三者の方々の代表的な方々のお集まりを願って、それらの方々の御意見を十分検討していただいた結論をお聞きしまして、そうして政府として善処したいというふうに考えております。
  82. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、国際的にたくさんあるといいますけれども、国鉄というのは企業的には独立採算制の一個の独立した企業ですよ。独立した経営で、完全に独立した採算々をとっている企業をやっている業種が、国際的にそんな制限を受けているところがありますか。どこにありますか、公務員とか何とかいうならば別として。
  83. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 一般論的に……、国鉄という特殊なものをとらえての制限は、もちろん事情は違いますので、ございませんが、ただ、一般的に制約を加えられている、団結権というものに加えられている点はあるのでございます。そういう趣旨で申し上げたのでございます。国鉄一つの例をとって、国際的にどうだということを申し上げたのでないのであります。八十七号条約において認められていないようないろいろな制限というものが、ほかの国においてもある。しかし、これは私が先ほど申し上げましたように、外国にそういう例があるから日本もそれでいいのだということを、私は申し上げているわけではございません。一つの例を申し上げたわけでございます。
  84. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それは当然のことだと思うのです。今日、独立して行なっている生産企業で、団結権の自由や代表を選ぶ自由が否定されているというようなところは、私はないと思う。公務員関係においては、そういうところがあるところを見かけます。そういう制限を受けておるところもありますけれども、独立した企業形態をとっておるところの労働者に、そういうようなことが世界に多くあるということは、私は言えないと思う。そこで、問題は、この労働問題懇談会の小委員会の結論はいつ出るのですか。
  85. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 今、私の方にはその結論がいつ出るかということにつきまして、はっきりした見当はついていませんが、できるだけ早く結論を出していただくようにという要請はいたしております。
  86. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、労働行政立場から、国鉄が二・四協定について話し合いをするということを言っておるということを、あなたはおっしゃいましたけれども、私は、今の機労との関係について今の状態でおいでおいではいかぬ。これはあなたもそうお思いだと思うのです。片一方働かすだけの状態はいかぬ。だから、やはりそこに何らかの道を開く。第一には、この八十七号条約批准することだ。第二は、それと並行して、今日の状態をやはり何とか正常な形にする処置労働行政立場から講ずるということを、私は、やはりもっと積極的に労働省がやらなければならぬと思う。今日、憲法の組合であるけれども公労法の組合でないというような議論も、これは国際的にこんな話が出たら恥かしいですよ。そういうことにならないように一つしていただきたいと思うのです。私は、国鉄の当局との間に、この論議はもう少し機会を得て進めたいと思いますけれども労働省というものは、やはり何といっても、この八十七号の条約を何とか早く批准する、それによって国内法を直すということが、今急の問題じゃないですか。だんだんとこれは国際的に日本の実態をそろえていくわけですからね。これでは、ほんとうに十大産業国常任理事国なんといって大きい顔をして今度の六月の総会に私は行けないと思うのです。その点は、これ以上は、今日はこのくらいでとどめておきますけれども、積極的に一つこの問題は、促進と処理をしてもらいたいという希望を申し上げておきます。  次に、労働時間の問題について、私は、少しこの際、聞いておきたいと思うのです。労働省が今出されたこの資料は、非常に要綱だけしか書いてありませんけれども、労働時間の問題を見ますと、四十八時間のものは国内法にあったから批准をしたと、しかし、それは一九一九年の問題で、三六年の条約、三七年の条約、五十一号、六十一号というのは  一六年というと、今からちょうど三十二年ほど前ですね。そのときに行われた条約が、一週四十時間制というもので、公共事業における労働時間の短縮に関する条約、繊維工場における労働時間の短縮に関する条約という工合に、明確にここに出ているわけですね。こういうものは、まあ未発効で、批准はされていないし、批准手続はしてないわけですけれども、問題は、こういう条約があるということ、国際会議の総会の決議というのは、過半数できめるのではないということはよく御承知だと思う。労、使、政府もまぜて三分の二の多数で条約勧告一切のものをきめるということ、三分の二というのは、十のものなら六・六六というその比率の人が賛成して初めて条約勧告がきめられている。過半数じゃないのです。それだけ大事をとってきめるということは、それだけの多くの国がこれを実行しょうということなんですから……。その問題があるのに、たとえばこの労働時間の問題にいたしましても、ほっておかれている。今私が労働時間短縮という問題を、なぜ強く言いたいかというと、日本の今日の産業状態を見て下さいよ。私は労働大臣に対する雇用質疑の中でも申し上げました。今日オートメーションで労働者が五分の一になったり十分の一になったりしているじゃありませんか。オートメーションになる所は、どんどんどんどん首切りが行われて、そのしわ寄せが中小企業者にいっている。完全失業者や四十五万の潜在失業の論議をいたしましたけれども、もっと多くの潜在失業者が農村にも、またはその他の町にもたくさんある。完全失業者の登録している失業者が、ことしは六十五万と言われているけれども、この状態でいったら、四兆か五兆でも政府が投資計画をせぬ限り就労する機会というものはないのですよ。実際問題として、潜在失業者なんていうものは、行くところはないのですよ。それでいて、生産はどんどんどんどんウナギ登りに毎年上っていくのです。そういうときに、私は、遊んで生活保護法の金をもらって生活するなんという人は、幸福感なんかないと思う。やはり働いてそうして自分の生活を守っていくということが、生産の貢献にもなり、また、自分の生活を立てていくという意欲は、全部私は持っていると思うのです。そういうところからきたら、根本的に労働配置の問題は、時間短縮以外にないのじゃないですか。それが国際労働条約に二十年も二十二年も前にきめられているのです。この問題を放擲されておるということは、これは重大な問題だと思うのです。これは一つ労働省はどういう格好でこの条約をお取り扱いになるか、ちょっと労働時間の条約の取扱いの問題について聞いておきたいと思う。
  87. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいま御指摘の労働時間短縮の問題につきましては、私もこれは大局的に見まして、労働時間が漸次縮小されていくということは、まことに望ましいことであると考えております。しかしながら、この労働時間に関する条約につきましては、最初の二つは、これは先ほど説明した通りでございますが、その後採択されました条約は、いずれも一週間十二時間、あるいは一週四十時間というような、相当短時間を規定しておるわけでありまして、これも方向としてはまことに望ましいことではあると思うのでございます。しかしながら、各国の産業実情、企業の実情等にかんがみてみまするときに、これを制度として規定する——これよりも長くなれば罰則が加わるというような制度として規定する——ことにつきましては、まだいろいろな問題があるのではないかと思うのでございます。その意味におきまして、たとえば、この批准の国を見ましても、ここにございまするように、あるいは四カ国、あるいは七カ国、あるいは、ゼロ、あるいは一カ国、あるいは二カ国というように、批准している国も少い実情でございます。われわれといたしましては、これは将来の方向として、漸次このように制度も進んでいくということは望ましいと思いまするが、現段階においては、直ちにこれをもって批准するということは、法例上も困難でございまするし、基準法をこの線まで今直ちに短縮するということもむずかしい問題だと思うのでございます。しかし、これらの点につきましては、御指摘のように、労働時間を短縮するということは、人道的な見地から、また、これによって産業の近代化が進み、生産性も上っていくという方向と相待って運用されるならば、このようなことは、方向としてまことに望ましいことと考えておるわけでございます。
  88. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その方向としては望ましいと。労働省という一つ官庁では、なかなか国内整備の問題についてはむずかしい問題もあるということは、私もわかります。わかりますけれども労働省当身がそれを言い出さなければ、どこも言い出すところはないのです。私はそこを言っているのです。今のオートメイションの工場を見てきなさい。私も最近よく工場を見ますけれども、ほとんど労働者は必要ないじゃないですか。生産はものすごい勢いで上っておるじゃないですか。最大のセーブは、今おる人を何とか配置転換をして置いておくと、新採用はしないというのが、今最大のコントロールですよ。生産はウナギ上りに上ってきている。年々百万も百二十万も百三十万も労働人口がふえていっているじゃないですか。そこに投下資本も要るでしょうけれども、そこの利益の配分という問題になってくると、膨大な利益を得ているじゃないですか。そういうものについて、何ら制約もセーブも講じないでほっておいて、望ましいということだけでは、どうも私は聞きにくいので、だから、単に今の六十五万の失業率をどうするかという問題じゃなしに、労働者保護、人権尊重、人間の生活を守るには、労働力の配置をどうするか、それでは今の産業活動にどういうセーブを加え、どういうふうにやっていくかという問題は、率先して労働省がやらない限り、どこがやるのですか。ひいてはそれが貿易にも影響していることは、今日のアメリカの貿易のボイコットや制限の問題を見て下さいよ。そういう非常に重要な関連を持っているのが、私は労働行政だと思うのです。労働大臣が就任したときに、こうおっしゃった、日本産業経済政策全般については、労働者保護、労働問題を中心に産業の計画を自国党の政府としては立てるのだ、それなしには労働行政はやれないのだと言って、たんかを切ったのです。それでよろしいと、その方にやってくれと言ったら、ものの三カ月もせぬ間に一、二年それはできませんということで、あいまいな百二十万の就労の数字を出してきた。私はそういうことを、今重ねてあまり言いたくありませんけれども労働省自身が発議をして、労働省自身が、労働大臣が就任されたときにあいさつされたようなことを、内閣の中で推進していく発議者になり、努力者にならなければいけないぞということを、私は言っている。それに関連してくるのです。休暇の問題もこの次にやります。きょうは時間が長くなりますからやりませんけれども、休暇の問題もそうです。賃金の問題もそうです。団結権の問題もそうです。これはみんなそうなんです。今の肝心の日本の経済活動に支障を来たすようなものが、じわじわじわじわきている。私も国際会議に二、三回行って、アジヤの各国の連中の意見を聞いてみました。それから欧州の多くの国の意見も聞いてみましたけれども、やはり私は、ここにこそほんとうの日本の民主政治というもの、人権尊重というものをやらなきゃいかぬということを、ほんとうに腹のしんまで私は感じてきたのです。だからこういうことを私は特にきびしく言うわけです。きょうは労働大臣おられぬから、一つよくお伝えいただきたいと同時に、この次また時間をいただいて、私はこの質疑を続行さしていただきたいと思います。
  89. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する質疑は、この程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  休憩いたします。午後は、一時半に始めたいと思いますので、御協力願いたいと思います。    午後零時三十一分休憩      —————・—————    午後二時十分開会
  91. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  炭鉱の災害対策について質疑を願います。
  92. 山本經勝

    ○山本經勝君 初めに申し上げておきたいのは、炭鉱災害対策というよりも、今現に起っております炭鉱災害に伴う労働者の取扱いの問題なんです。まず基準局長にお伺いをしたいのですが、本年二月の二十一日午前四時ごろといわれておりまするが、福岡県の小倉市にある小倉炭鉱の出水問題がございます。この出水の問題に関係して、かいつまんで申しますと、この炭鉱には従業員が約一千一百人、そこでこの出水事故が起りまして、会社側としては、就労が困難である、あるいは危険であるということで、全員の就労を拒否している。一方、この炭鉱におります季節労務者、それから組夫と称する、請負関係で掘進をやっておる作業個所におりました約二十名、合計いたしまして約百名でありますが、季節労務者が八十名、そうして組夫と称する者が二十名、この百名を就労不能ということで解雇をした。それから今申し上げましたように、約一千百名の中で二百名程度が排水作業及びこれに関連する作業に従事をしている。ですから、従来こういう鉱員で約八百名が就労不能の状態に陥った。会社と組合間では、ほとんど一連日連夜団交を重ねておるようですが、会社の言い分としては、この出水事故は不可抗力であると称して、基準法によるところの賃金の補償をしない。こういう問題が起っております。これは日本炭鉱労働組合に加盟しております組合の関係もあり、連絡を受けましたので、その点について、大体経過、実情等をまず基準局長の方から御説明をいただきたい。
  93. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいまお話しの、古屋鉱業の小倉炭鉱の出水事故による休業の問題でございます。これにつきましては、ただいまお話しのように、この小倉炭鉱の労働者数は約千名でございまして、災害の発生したのは、二月二十一日の四時十分ごろであったわけでございまして、この出水によって就労が不能になったわけでございます。そこで、この際、復旧のために現に作業に従事しておるというような労働者については、これはもとより問題はないわけでございます。それに対する賃金の全額支払いの義務があることは当然でございますが、出水のため就労が不能になって休業をさせた労働者について、休業の期間中に休業手当の支払いの義務があるかと、こういう問題でございます。基準法の二十六条は、御承知のように「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と規定してあるわけでございます。そこで、この休業手当支給の事由に該当するかどうかという点になるわけでございますが、二十六条は、ただいま申し上げましたような規定でございまするので、純然たる不可抗力の場合には、これは基準法上では二十六条の手当の支給の義務はなくなるわけでございます。もとよりこれは最低基準でございますから、それ以上の問題については、労使間の話し合いによるべきことになることは当然でございますが、この最低——基準法法二十六条の使用者の責に帰すべき事由による休業に該当するかどうかということが問題になるわけでございます。従来の基準局の解釈、それから従来の判例等によりますると、この二十六条の使用者の責に帰す、べき事由というのは、使用者が不可抗力を主張し得ない場合はこれに入るということに解釈しておるわけでございます。そうして、使用者が不可抗力を主張し得る場合とはどういう場合であるかと申しますと、天災地変等使用者が最善の努力を尽してもなおかつ避け得なかった事由によるものであれば、これは不可抗力になるわけでございます。しかし、この小倉炭鉱の出水は、経営者がみずからの手で積極的に坑道を掘進しておりまして、それによって生じた災害でありますから、一般的な天災地変とはやや異なったニュアンスを持って考えなければならないと思うのであります。そこで、結局、事実認定の問題になるわけでございますが、その掘進に当りまして、経営者が、通常、社会通念上要求されるに足る歳暮の準備と対策を行なってやっておったかどうかという点が問題になるわけでございます。もし、そのような最善の努力を払っておって十分な準備と対策を行なって、なおかつ災害が起き、そのため必然的に休業が起ったということになれば、天災地変によるものと言わざるを得ないのでありますが、今のように積極的にこの坑道を掘進しておった場合に、果してこのような最善の努力を尽したかどうかという点が問題になります。また、出水後の措置に遺憾がなかったかどうかという点も、これは事実を認定しなければならないわけでございます。これらの点につきまして、目下事実につきまして不明な点も相当ございまするので、労働省としては、通産当局とも十分連絡をいたしまして、現地の鉱山保安監督の実情調査を目下求めておるところでございまして、これによって、今の点を確めました上で、最善の努力を果しておらなかったということになれば、二十六条の事由に該当する、このように判断をするわけでございまするが、目下なお調査中でございます。なお、この賃金につきましては、先月二十四日以前の賃金は二十五日に全額支払われております。今度支払われる支払日は今月の二十五日になるわけでございますが、その際にこの六割を最低基準として払わなければならないかどうかという点が問題になるわけでございますので、われわれの方といたしましては、現地の調査の結果を待ちまして、なるべくすみやかにこの点の判定をいたしたい考えでおります。以上がこの小倉炭鉱の経緯でございます。
  94. 山本經勝

    ○山本經勝君 季節労務者あいるは組夫というものに関する解雇の問題はどうお考えになっておるか。
  95. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 季節労務者、組夫等に対する解雇の点につきましては、これも基準法二十条の問題になるわけでございますが、基準法二十条は、御承知のように「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」という原則を規定しておりまするが、この際におきまして、天災地変、その他やむを得ない事由のために、事業の継続が不可能となった場合におきましては、監督署長の認定があれば、今の例外が認められる、こういうことになるわけでございます。経営者側におきましては、今回の解雇に当りましては、この二十条のただし書きに該当するのではないかという考えのもとに現地の監督署に認定の申請を出してこられたわけでございますが、今回の事件におきましては経営者側は臨時労働者のみをとりあえず解雇しようとするものでございまして、事業の継続が不可能になったための解雇という工合には一応認められないというふうにわれわれは考えるわけでございまして、これもいま少し実情を調べなければなりませんが、原則として本件の場合には認定を与えることはできないのではないかという判断のもとに、会社側の認定申請は受理しなかったわけでございます。以上がわれわれの見解でございますが、本件につきましてはただいま参りました報告によりますると、現地において会社側と労働者代表との話し合いの結果がつきまして、円満にその会社と労働者側との間において退職の話がついて郷里に帰郷することになったという報告を受けております。その詳細は不明でございまするが、われわれの方としては二十条の解雇予告の認定につきましては、以上のような原則的な考えを持ってこの事件に対処しつつあったところでございます。
  96. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうしますと、今の解雇についての認定を求めた、それに対しては認可をしなかった。ところが本来認定をしなかった場合に、組合、会社間の話し合いというのはこの二月の二十八日に行われた。私も連絡を受けて知ってるんですが、二十八日に行なったのは、小倉山炭鉱労働組合と、それからこの会社との間の話であります。ところがこの季節労務者と、それからこの組夫の従業員なる者は、この組合には入ってないと聞いてるんですが、その点は明らかになっていますか。
  97. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては今のところ入っておらないというふうに伺っております。
  98. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうしますと、当事者である解雇の対象になりました季節労務者並びに組夫、請負夫、請負師が抱えております従業員ですね、こういう者の意思の反映せぬ協議決定は有効になりますか。
  99. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきまして詳報は参りませんので判明いたしませんが、一応私の受けております報告によりますと、組合代表ということでなしに労働者の代表と話し合いがついたという工合に聞いております。従いましてその労働者代表なるものが、その臨時労働者の果して意思を代表しておったかどうか、そういう点につきましてはいま少し調べませんと私どもの方では今のところ判断がつかないわけでございます。
  100. 山本經勝

    ○山本經勝君 初めの基本問題に返りますが、その中で局長のお話になったように、私の方も一応理解しておるというのは、いわゆる天災地変等、つまり人力をもってしてはいかんともなしがたい実情あるいは防ぐ方法のないもの、こういう場合じゃなくて、施業案の認可を求めて、その施業案に基いて作業を計画的に推進しておる状態、これは第一の基礎的な問題になってくると思う。そこで基準局の見解を承わっておきたいのは、そうしますと、たとえばこの炭鉱が鉱山保安法上あるいは石炭鉱山保安規則等に基く所定の方法をとっておったかおらないかということも問題でありましょうが、しかしそれ以前にやはり問題がある、こういうことになってくると思います。で、一般的に炭鉱において当然なすべき作業計画、それに基く保安の対策、こういうものがしかるべく講じられておるなれば、かりに出水事故が発生しても、これは食いとめることができる、あるいはまた局長のお話しのような、事後の対策も非常に重要な意味を持っておる、そうすると現在水びたしになっているのは小倉炭鉱二坑の上、三尺卸何とかいう名称でしたが、そこから現在この炭鉱には二坑と三坑というのがある。それからまた三萩野地区にある層があってこれも作業中なんです。それが全面的に水びたしにはなっておらない、従って水びたしになっておらない所については作業も可能であると考えるのですが、その点についても就業をさせないという会社の対策が打ち出されておるのですから、八百人全部を休業させる必要がなくなったのではないかと考えるのですが、そういう点についてはおそらく今の基準局長のお話しのことは、現地の監督署が現地においてつぶさに調査をし、かつ会社、組合等において事情を聴取されたと思う、そうすると、そういう実情については基準局としてはどういうふうに対処なさるお考えですか。
  101. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいまの問題につきましては、やはり判断の根本は、経営者が工場経営者として期待される社会通念上最善の努力を払ったかどうかということでございます。その最善の努力と申しますのは、坑道の掘進の際に当って最善の努力を払ったかどうかという点がまず問題になりまするし、第二番目にはその出水が起ってからあと措置について最善の努力を払ったかどうかというのが問題になるわけでございます。それからさらにそれに基くところの休業というものについて、最善の努力を払っても、なお不可抗力的な休業というものが必然的に伴ったかどうかというのが第三の判断になるわけでございます。この点につきましては、現地の監督署におきまして目下実情調査しておるわけでございますが、この判断の基本になりまする点につきましては、何と申しましても、これは現地の鉱山保安監督部の御調査を願い、その資料を基本的な手がかりといたしまして判断をすることが適当であると考えますので、目下その調査の結果の資料につきまして、現地の当局間におきまして連絡をして調査を進めておるわけでございます。
  102. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで鉱山保安局長に一点お伺いしたいのですが、私聞いておる範囲では、この小倉炭鉱の問題になりました二坑ですね、掘進の際出水したという二坑、それから三萩野地区にあります採掘の状況、それがともに浸水をして全面的な就労不能の状態に陥ったかどうか、そこら辺を局長の方からお伺いしたい。
  103. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ただいまの御質問は、ちょっと図面がございませんのでお聞きとりにくいかとも思いますけれども、現在水没しておりますのは第二幹線坑道のわずか上まで水が出ておるのでありまして、ただいまお話しの地域は現在水没しておりません。従いまして採掘をすると考えるならばいつでも採掘を続けることができる地域になっております。
  104. 山本經勝

    ○山本經勝君 第二幹線坑道、ここに図面がありますが、通称三坑というところに属する区域を指すのですか、今お話の……。
  105. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 炭層はこう入っております。斜坑、斜坑で行きまして、これをずっと水平坑道で全炭層縫っておるわけでございます。これは上三尺の沿層で下って、現在ここの一番先で水を出しておるわけであります。これは幹線坑道、この全部炭層を縫っております。坑道のちょっと上まで水がきておりまして、これから上は水没しておりませんから、従って現在のところはここで水を押えきればここの採炭はいつでもできるわけであります。しかしここでもう排水ができなくなって、どんどんポンプを上げるということになれば、これは続いておりますから、ここから入って参りまして、ここも一部水没になります。現在はここで押えておりますので、ここは全然水没しておりません。いつでも採炭ができるという状態になっております。
  106. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうしますと、基準局長にお伺いしたいのですが、今お聞きのような状況なんです。浸水しておらない。坑道がつながっておる。二坑と三坑の間はつながっておることは私も知っておるのですが、つながっておりますが、一応現在は排水努力によって押えている。そうしますと、今直ちに三坑が全部水浸しになって全員休業しなければならんということではないような気がいたします。そうしますと、賃金を払えんというのですから、就労さすべきだと思う。就労さしておらないことについては現場の監督署はどういうふうな取扱いをしておりますか。
  107. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、ただいまお話しのようなことでありまして、事実がこの出水に関係なしに、出水がありましても、他の面におきましては、他の坑におきましては従来通り採掘できるという事情でありますならば、その際に今のような影響のない坑道におきまして就労させられるにもかかわらず、就労させなかったということになりますれば二十六条の事由に該当する、このように私は考えます。付け加えますが、その坑道に関係のない坑道において従来働いておりました労働者については、少くとも今のようなことが言えるだろうと考えます。
  108. 山本經勝

    ○山本經勝君 保安局長にお伺いしますが、三坑の方に就労し得る人員というのは、従来就労しておった人員というのは何名くらいあったのですか。三萩野地区と称するあれです。
  109. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) ちょっと御質問にそれるかもしれませんが、私の方に入っております報告では三萩野卸部内をやめましたのは、電力が全部で契約しておりますのは、千六百キロ小倉炭鉱が契約しておるわけでありますが、この契約の電力全部を排水に現在使っておるわけであります。これでもなおかつ足りないので、なお遊んでおります回線も目下交渉中で、これは話がつく、こう申しておりますが、現在使用しております契約電力をフルに使いましてこの排水に向けておる、かような関係で三萩野地区の採炭を一時やめておる、かように連絡を受けております。
  110. 山本經勝

    ○山本經勝君 これは基準局長にお伺いしたいのでありますが、今お聞きの通り、会社が当然なすべき事故に対する対策、先ほど局長のおっしゃった事後の対策に万全を尽しているかどうかという問題でありますが、今お話しのように、かりに就労は現場においてできても電力が千六百キロワットしかない。そこでその電力が排水並びに排水に関係のある作業に集中している、こういうことのために就労できないとすれば、これは基準局長としては、私はすみやかにこの問題の賃金支払いその他について、具体的な措置を現場の基準監督署になさるべきだと考えるのですが、その点は局長どう考えますか。
  111. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいまの点は、これは場合によって考えなければならないと思うのでございますが、この出水の排除のために電力をそこに集中して、そのため、それ以外のところに電力を供給することが物理的に不可能である場合と、それから、そうではないが、供給契約等の関係から電力代金がやや高くなるというような場合と、いろいろあると思うのでございますが、初めの物理的に不可能になった、とにかく出水を食いとめなければならない、それを食いとめるために電力をその場所に集中すれば、他の関係のない場所への電力供給は物理的にも不可能であるという場合には、やはりこれはそのもとになった事故が不可抗力かどうかは別といたしまして、やはりそれにつながる休業になるだろうと思うのであります。ただそうではありませんで、多少電力の単価の点に影響があるというような程度でありましたならば、やはりそれは災害に不可避的に必然的に伴う休業という工合には考えられないだろうと思います。
  112. 山本經勝

    ○山本經勝君 今のちょっとしまいのところ、あいまいだったのですが、不可避的に何とか言いましたが……。
  113. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 災害に伴って不可避的に必然的に起った休業とは認められませんから、そのような場合には二十六条の責に該当する色彩が強くなる、このように判断いたします。
  114. 山本經勝

    ○山本經勝君 この現場について、基準監督署がお調べになったのはいつでしょうか。
  115. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点は目下鋭意調査いたしております。この点につきまして、今の出水の原因、この場合におきます使用者努力措置につきまして、現地の鉱山保安監督部と連絡をとって目下鋭意調査いたしておりますが、まだ今のところその点につきましての調査が完結しないという状況でございます。
  116. 山本經勝

    ○山本經勝君 先ほど申し上げたように、組合は、二月の二十三日からほとんど連続して組合会社間の交渉を続けているようであります。むろん現地の基準監督署からおいでになっていただけば十分事情はおわかり願える。しかも私も知っておりますが、非常に近いところに基準監督署がありまして、汽車やバスに乗る必要はないほど近い。ですから朝に晩に行って見ていただけるような近距離にある。ですから、もう少し正確な、しかも敏速な事情の調査なりあるいは対策等に対する指示ができそうなものだと思うのですが、この点はどうなんですか。
  117. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、実は労使間の意見が対立しているわけでございます。そこで、従いましてこの場合の事実認定をいかにするかという、さらに客観的な調査が必要になるわけでございます。そのためにはやはり技術的に事実の認定を正確にいたしませんとこの判断がつかないわけでございます。そのために現在まで判断がおくれておるわけでございます。この点につきましては私どもも現地の基準監督署を督励いたしまして、なるべくすみやかに判断が可能になるように努力いたすつもりでございます。
  118. 山本經勝

    ○山本經勝君 その努力をされていないと私は申し上げておらぬのですが、ところが問題はすでに交渉はデッド・ロックに乗り上げて非常に困難をして、いる実情にある。それでそのために現地の炭労の九州地方本部の生産保安部長の光永君というのが参りまして、現場指導に当っている、さらに二、三日前にその光永君が上京をして連絡をしたのが先ほど来申し上げている状況なんですが、そうしますと、もう少し敏速な方法でやっていただかないというと、やはり問題が労使間の紛争になりかねない実情のもとにあるのです。しかも伝え聞くところによるというと、この炭鉱主古谷という業者はもう末があまり長くない、つまり層がそう有望でないということで、場合によったらやめるというようなことも漏らしておるわけなんです。ですから非常に事態が重大化すると思うのです。ですからこれは明日でも、また本日でも連絡はとれると思いますから、すみやかに一つ現地との連絡をとって、具体的な措置を決定していただかないと、たいへんなことになると思う。こういう感じがいたします。  それからもう一点は、先ほどお話しになりましたが、解雇された百名の人人は一応従業員代表という資格で協議に参画したといわれておりますが、二月一十八日の団交でそのことが一応組合会社間の話し合いで決定したという記録がある。そうしますと、この組合の記録は小倉炭鉱労働組合の代表者による記録なんです。どうも先ほどのお話しはふに落ちないのですが、この季節労務者は、あるいは組夫として別に組織を持っておるかもわかりませんが、非常に多い数でありませんから、これは組合を作っておらぬのではないかと私は想像してている。そういたしますと関係従業員の意思でなくて解雇が決定されたというような事実があった場合に、基準局長としてはどういうような措置をとられるお考えですか。
  119. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきまして、これはお話しの通り、その臨時労働者を適法に代表しておらない代表者がもしかりに会社側と交渉して、それでそれだけの取りきめによって解雇するというような決定をするというようなことは、これは適法ではないと考えられるわけでございますが、私どもの今一応速報的に聞きました情報によりますと、従業員の代表と話し合いがついて、そうしてその臨時労働者から退職願いを出したという報告がきております。そういたしますと、これは臨時労働者から一人々々退職願いが出るわけでございますから、その際のいろいろ一時金の支給というような条件もあわせて決定したということを聞いておりますので、その臨時労働者から適法な退職願いが出ておるのであれば、これはそれで差しつかえないのではないか、かように考えるわけでございます。
  120. 山本經勝

    ○山本經勝君 大体以上のような点ですが、まず、労働関係の問題については基準法二十六条の適用をめぐる問題としてさらに詳細に現地の実情基準局長の方では集めてもらい、また私の方も極力組合との連絡をとりまして明らかにしたいと思います。  それからさらに保安局長さんに伺っておきたいのは、いろいろ言われておりますが、この炭鉱はなんでも出水指定炭鉱になっておったというお話しは、かねて局長から私伺った問題なんです。それでそうなりますと、基準局長が申されたように、少くとも事前に災害のこうした事故を予防する適切な措置がきまっておりますし、また規則にはさらに細部にわたる規定がありますから、これらに準じてなされたこととは思います。もしなされておらなかったなれば、その事自体が問題であるので……。  ところがこの委員会としましてはあらためてこの小倉炭鉱の問題だけではなくて、東中鶴の水没問題、さらに籾井炭鉱の水没問題、いずれもこれは犠牲者を出しておりますが、小倉炭鉱の場合は犠牲者を出しておらない。しかし鉱山保安法でいういわゆる災害予防の問題の対象になるのは当然である。ですから、従業員の災害はこの小倉では起っておりませんが、東中鶴その他同じケースの出水事故については問題がある。ですから、商工委員会等においても、論議がある点だと思っております。それからもう一つは、直接労働者が被害をこうむる事故あるいは災害でありますから、いずれもそれに対する対策として機会をあらためて詳細に検討をするようにしたいと考えております。ですから一応以上のような点ですが、ただこの炭鉱が出水指定炭鉱といいますか、そういうまあ通称言われている形になっておったのかどうか、そこら辺だけ一つ局長さんに伺っておきたいと思います。
  121. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 小倉炭鉱は出水の指定になっております。しかしながら出水指定にはまあいろいろな目的がございまして、基盤から出る水の危険がある場合には基盤に対して出水指定をいたしますし、古洞の関係から危いと思われます場合には古洞に対する出水の指定をいたします。これは区域の個所をきめておりますので、小倉の炭鉱におきましては出水の指定には入っておりますが、現在水を出しました区域とは違います。古洞の方の危険区域を出水指定といたしておったわけでございます。
  122. 山本經勝

    ○山本經勝君 大体お話しの問題についてはそのボーリングを、つまり先進ボーリングを初めにやっておった、この二坑の左三片坑道ですか、それから三片寄り坑道、こういう区域はむろんこの今言われた指定区域に入っているんだ、ところが問題は今の二坑の伸び先ですね。つまり出水事故の起ったその坑道の掘進に当ってもボーリングをやっておったが、機械が故障をしてそれからやめた、こういうことが現地から連絡があっている。ですから当然やる必要があり、そういう危険があらかじめあったことがうかがえるのですが、こういう点については局長はどういうふうに理解をされているのですか。
  123. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) 出水をいたしました個所でボーリングをやりましたことは事実であります。これは左三片少し下方に断層ができておりまして、現在沿層で掘進をしておりました個所が断層のためにすっかり切れてしまっている。炭がなくなった関係で炭の探炭の目的と、それからもう一つ基盤がどの辺へきているかという、基盤と探炭と両方の目的で三本のボーリングをやっております。これはいずれも炭につかないで、基盤につかないで中止している、中止の状態になったということを連絡を受けております。
  124. 山本經勝

    ○山本經勝君 もう一点だけ伺っておきたいのですが、この出水した個所というのはどういう地層の条件であったか。そうしてまたもう一件。出水したその水は水質検査をなさったようでありますが、その水の性質ですね、そういうのはどういう状況にあったか。
  125. 小岩井康朔

    政府委員小岩井康朔君) まだ基盤にはついておりませんので、その個所の基盤の状態はわかりませんが、上の方でかつて基盤を切りましたときには古生層になっておりまして、アンデサイトも一部にはできているということを聞いております。大体、基盤層としましては古生層のように考えております。
  126. 山本經勝

    ○山本經勝君 それでは御要望を一点申し上げて私の質問を終ります。さらに経過なり原因の究明はなさることと存じますが、特に商工委員会等、直接関係のあります委員会でも十分おやりになることと存じますが、ただ問題はこの種事故の原因についての究明、起ってからの究明、あるいは努力というものはいろいろなされる。ところがこの小倉炭鉱も、すでに第一小倉炭鉱と称する古い炭鉱に接続した地帯にあることは局長御存じの通りなんです。ですから東中鶴炭鉱におきましても、あの累層の中で、しかも古洞が接近しておってこれに触れて水を出した、こういうことになっておりますので、この種の水の事故が最近連続して発生している。これは一つには現場についての監督、日常の指導といいますか、そういう点も非常に問題があるのでありまして、そこに規則の規定しておりますような保安の教育等については、ほとんどゆるがせにされた実情ではないか、こういうように考える。ですからこういう点は特に機会をあらためて、対策について十分質疑をし、検討を行いたいと考えておりますから、十分一つ御準備方を願っておきたい。それと現地の、問題の原因あるいはその事故の対策等についてこれが直接鉱員、つまり従業員の給与に関し、生活の問題に関係いたしますから、早く結論を出してもらわないと困る。これは拙速主義を申し上げているのではなくて、厳密に正確でなくてはなりませんが、しかしとかくおそい。ところが現に給与をもらわないでぼう然として、どうなることかという不安に追いつめられているのが鉱員の姿でありますから、この辺を十分御考慮願って、保安監督局としても出先の方を督励していただいて、十分現地の調査並びに対策の推進等についてすみやかにやってもらう。それから排水能力等についても非常に問題があるようです。きわめて不十分な実情にあるように私は承わった。ですからこのことは即一面では休業をやる場合には非常に長期の休業となって労働者の被害は甚大だ、こういうことになりますから、そこら辺配慮の上、すみやかに一つ現地の実情、原因経過対策等についての結論を出していただきたい。このことを御要望申し上げて質疑を終ります。
  127. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する質疑はこの程度にいたしまして、次に移りたいと思いますが御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  129. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に競馬場の馬丁等の労働問題について質疑を願います。
  130. 片岡文重

    ○片岡文重君 質疑に入る前に伺いますが、大臣はきょう御出席を私は要望しておいたはずですけれども、お見えにまだならぬようですが、これからお見えになりましょうか。
  131. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 大臣先ほどお諮りいたしておりましたように、宮中に正午参られまして、まだこちらにお見えでないようですから どっか途中でひっかかっておられると考えられますので、再三要望いたしておりますが、まだ連絡がついておらないようでございますから、連絡つき次第こちらに出席するようにいたしております。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  132. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して下さい。
  133. 片岡文重

    ○片岡文重君 大臣が見えませんので、はなはだ私としては残念ですが、お見えになる前に一つ政務次官もよく聞いておいていただきたいと思うのですが……、聞いておいていただくだけでは困るのです。というのは昨年一一月の二十七国会で、この委員会の席上で馬丁諸君の労働組合に関する問題で大臣にも要請をし、基準局長その他の関係の諸君にもくれぐれもお願いをしておいたはずです。ところがそのお願いをしましたときに、石田労働大臣は、もしそういう事実があるならば、もしそういう事実というのは私が言ったことで。これは二十七国会の私は速記録をここに持ってきておりますが、これにおいて大臣は私の言った言葉を受けて、もしそういう事実があるならば今後十分に関心を持ってそういう気の毒な状態のないように合理的な態勢を作るように努力をする。こういう約束をされたわけであります。基準局長もこれと同じようなことを言っておられる。そのときには非常な圧迫のもとに分裂工作の行われておる、きわめて困難な状態の中で、馬丁労働組合の諸君が解散をさせられるかどうかのせとぎわまで追いつめられながら、必死に歯を食いしばって団体交渉を続けてきたわけです。そうしてその困難な中で団体交渉を続ける一方、その組合の指導立場にあった諸君が不当な解雇処分を受けて収入の道を断たれており、しかも、お前らは首切られたのだから、もう団体交渉の相手方にはしない。ちょうど国鉄その他の三役を首切った政府団体交渉に応じないという態度とまことによく似ております。こういうやり方で、せっかく地労委の、公益、労使三者の委員諸君が、実に文字通りねばり強い忍耐をもって、しかも誠意をもってようやく協定成立までこぎつけたところが、その協定に調印をしないで、しかもそれぞれ仕方がなくて、労働組合もまずこの状態を切り抜けることが大切だ、そこがまず第一歩だということで、涙をのんで、あっせん案に対する受諾の調印を労使双方がその承諾書に判も押さないで、地労委に対する確約書という形式で、労使それぞれ別側の立場から地労委に出して、労使間においてはついに調印をすることができないで今日に至っておる。しかもこの調停も少しも守られておらない。昨年この当委員会において労働大臣基準局長その他の関係諸君に十分に善処をお願いしておったにもかかわらず一歩も前進しておらない。むしろ事態は一そう困難な状態に陥っております。しかも経理の内容等も、これは決算委員会等においても私は取り上げて真偽をただしたいと思っておりますが、経理の内容等においても多分に不審な点がある。これを追究しようとすれば、強圧的に馬丁会というものを解散さしておる。しかも解散をさして、証拠となる書類はその晩のうちに焼き捨てております。これを所管の警察署で手をつかねて見ておる。こういう事態にまで発展をしておる。一体これでどこにどういう努力を、基準局を初め労働省は払ったのか。昨年の十一月十一日に私からお願いを申し上げてから、今日まで労働省がこの馬丁諸君の労働条件に対していかなる努力を払われたのか。その点を一つ具体的に教えてもらいたい。これをまずこれからの質問に入る冒頭にお聞きしておきたい。これによっては今後の質問は打ち切ってもいいだろうと私は思うので、努力の跡をまず伺っておきたい。
  134. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 馬丁の方の労働条件改善につきましては、先日、この委員会において御質問がありましてから、われわれの方としても、労働基準法の的確な実施の面から相当の努力は払ったつもりでございます。そうして調教師の団体あいるは日本中央競馬会等に対しましても、労働基準法違反であるというような疑いの濃い面につきましては、この改善をはかられるように申し入れをいたしまして、その内容を、改正一のあり方を目下注視しておるところであります。  なお具体的に申し上げますと、労働条件について基準法違反の疑いがあるというふうに言われておりまするものは、第一に遊休休暇がない。あるいは労働災等に対する補償が十分に行われていない。さらに平均賃金の算出方法が正確でない。あるいは賃金を、これは進上金でありますが、進上金を分割して支払っておる。それから就業規則も作成していない。それから労災保険の加入を要求してもまだ入っておらない。このような点が指摘されておったと思うのであります。この点につきましては、われわれの方といたしましても、使用者側に対しましてはこの改善方について申し入れをいたしまして、その改善を見守っておるところでございますが、その間におきまして馬丁の諸君と、使用者側との方におきまして労働協約あるいは共済規定等の改正によってこれを相当改善するというような方法が漸次はかられておると考えております。  問題点について具体的に申し上げますと、第一番目に有給休暇につきましては、第一組合との労働協約の細部協定において法定通り有給休暇を付与することが認められたわけでございます。もっともこれにつきましては、ただいまお話しのように、調印はされておらないわけでございますが、双方とも確約書を提出しております。使用者も確約書を提出しておりますので、この点は従来よりも改善されたのではないかと思っております。  それから第二番目に、就業規則につきましては、目下調教師会においてモデル規則の案を作成いたしまして、その実施方をはかっておるわけでございますが、まだ締結されておりませんが、われわれといたしましては、この就業規則については、基準法に適合する適法な就業規則が一日も速く制定されるようにわれわれとしては期待しております。これが制定されないというようなことであれば、われわれとしてもさらに一段と使用者側に強い態度で臨みたいと思っております。  平均賃金につきましては、地労委員のあっせん案の確認事項に従いまして、日本中央競馬会共助会において目下研究中とのことでありますので、この平均賃金の算定の基礎がはっきりいたしますように、これも督促をしておるところでございます。  次に災害補償の問題でありますが、打ら切り補償、傷害補償につきましては法定の額が定められておりますが、休業補償につきまして問題がございますので、これも改訂するように、中央競馬会調教師側に対しまして指示しておるところでございます。  それから進上金につきましては、これは臨時の給与でございますので、通常の賃金と同時に支払う要はないと考えられます。基準法上はその要はないと考えられますが、進上金自体を分割して支払っているというようなことになりますと、法律違反となりますので、この点についても十分監督いたしたいと考えております。  それから労災保険につきましては、これは現在のところ労災保険の任意適用事業でございますので、加入しておりませんので、法律違反とはならないわけでございまするが、実際災害が起きた場合におきまする円滑なる措置をはかるためには、このようなことが望ましいことは当然であろうと思っております。  以上のようにわれわれといたしましては、使用者側に対しまして具体的な問題についても、この一、二カ月来勧告をしてその是正を期待しておるところでございますが、まだ完全に直っておらないわけでございまして、この点につきましてはさらに成り行きを注視しつつ、一段と強硬な措置で監督をいたしたいと思っておる次第でございます。
  135. 片岡文重

    ○片岡文重君 基準関係の項目ごとに御説明になったようですが、残念ながらこれは中央競馬会なり調教師会から一方的にあなたの方で報告を求められてまとめられたものと私は思う。現地にこれは調査をしておられません。なぜなら一つもこれは守っておられないのです。なるほど地労委に対して出された確約書には、この協定の内容は確かに履行いたしますと、そうしていろいろな文句は並べておりますけれども、たとえば有給休暇のごときは、これを請求したものが、そういうなまいきなことを言うならばおれの厩舎では使われんと、こう言って首になる。これは明らかに不当労働行為ですから、取り上げて提訴することになってきます。そうなると、これは歩がありませんから、あわててどうしても退職しなければならないようなところに配置転換をするのです。こういうことで、有給休暇も、この休暇の約束も一つも守られておらない。さらに労災も、これは局長が言われた通りに、文句にはなっておるけれども、これも一つも守られておらないのです。ただ協定が守られて、おらないだけならば、今後基準局その他の関係の方々から競馬会なりあるいは調教師会等に対して勧告をし、あるいは指導もしていただく。多少時日がかかってもそれを待つという方法もあろうかと思う。ところが、事態はそれよりももっと進んでおるのです。組合の役員となり、あるいは指導的な立場になるものには、受け持ち馬の擬装転売をして、つまりその持っておる馬を擬装転売をする。そうして、馬がないから、持ち馬がいなくなったからやめてもらわなければならぬ。こういう方法をとっておる。しかもそれに対して、しからば休業手当、休務手当が出ているのかというと、これは出ません。こういうことを例があるならばほしいとおっしゃるならばいつでもその実例をあげてお目にかけてもよろしいが、とにかくそういうひどい目にあっている幹部諸君が一人や二人ではない。中山にも府中にもそういう例が起っております。しかも、これを処分をしてしまう。首を、切ってしまうと、その馬丁がいなくなればその馬をまたもとに戻しておる。こういう例もある。これも今申し上げておるのは、ほんの一例にすぎません。こういう不当なことをやられては困るからということで団体交渉を要求しても  ここにも私は確約書の写しを持っております。この確約書のもとになっておるあっせん案もここに持っております。このあっせん案によれば一方から団体交渉の要求があった場合には正当な理由がない限りこれを拒否することができないと明らかにうたわれておる。けれども、こういう不当な労働行為の問題に対して団体交渉しようとすれば全然応じない。そうして、この委員長を拒否しておるといいますか、忌避しておるというか、こういうことをやっておって、しかもあっせん案の協定事項については、あっせん案の内容については少しも履行しておらないばかりでなしに、今盛んに第二組合を結成させております。この第二組合の結成についても、現に被使用者として馬丁業務に従事しておるものを、そして、すでに作られておるところの、いわば第一組合といいましょうか、従来の組合に加入しておるものを切りくずすだけでなしに、不当に処分をして、そのあとに入れる場合には本人が知らないのに第二組合員となって入ってきておる。しかも、これらの組合員は掛金を徴収されておらない。自分が第二組合員になっておることも、入るときに、お前は第一組合にいってはいけない。第二組合員になるということだぞということで、第二組合員になることが条件になって入ってきておるのですから、明らかにこれは労組法の違反をやっておるのです。こうして採用をされて、しかも組合費は徴収しておらないが、第二組合には相当な資金があると伝えられております。この資金は一体どこから出たのかということも考えられる。労組法二条ですか、少くとも組合運営の経費が使用者から出されておることは明白である。労組法の違反ではないかと私は思うのです。こういうことが限りなく行われて、しかも少しも改善の模様が見えないばかりでなしにさらに調教師ばかりでなしに、馬主、競馬会等からの圧迫も相当にあるのではないかということが言える。証拠を出せというのならばこれもお目にかけてもよろしい。こういう状態の中でこの問題を解決していくためには、中央競馬に所属する馬丁諸君は総数大体八百名程度でしょう。しかしこれに扶養されるところの家族を加えればやはり数千名にはなるはずです。少くとも二、三千名にはなるでしょう。一方、このはかに、地方競馬あるいは牧場等に使用されて、これに劣らないような劣悪な労働条件のものに、しかもきわめて封建的な、監獄部屋のような状態の中で、馬と一緒に起居しておる諸君を加えるならば、おそらく十万の数に近くなるのじゃなかろうかと考えられる。従って全国のこの地方競馬あるいは牧場等にある馬丁諸君、それか国営競馬の中の府中、 中山等におる諸君の以外のもの、これらの諸君は、この成り行きについて非常に深い関心を持っておることは事実であります。けれどもそういう深い関心と、特に労働省に符せるこれらの諸君の期待というものはきわめて大きいのです。労働省以外にこれを救ってくれるものはないとこの諸君は考えておる。期待をするところが果して適切であるかどうか、私には今のところ疑問なしとしないが、とにかくこれらの諸君は労働省の積極的な援助を望んでおる。しかし今私はここにあるこの競馬会の発行になる管理馬の名簿やら馬主諸君の名簿を見ると、はなはだ申し上げにくいことだが、与党の中に、あるいは内閣に列しておられる貴党のいわゆる有力な幹部諸公の名前が散見いたしております。財界の有力な諸君も名を連ねております。また表面には出ておらないが、実質的にはそれらの人の持ち馬がたくさん名前を連ねておる。従ってこれらの諸君の一顰一笑が調教師諸君にきわめて敏感に影響することはこれまた事実です。こういう情勢の中で調教師諸君が、馬丁諸君のいろいろな正当な理由に対して拒否をする場合に使われる言葉、馬主がお前をきらうのだから仕方がない、もしお前を雇っておくならこの馬主からおれの馬は取り上げられるのだ、こういうことを言うわけです。この言葉は必ずしもこの馬丁諸君を忌避する言葉だけではない。裏にそういう事実があるのではないかということが私たちには看取される。こういう条件の中で、一体基準局を初め関係の諸君は言を左右にして団体交渉にも応じない。地労委に対する確約書を出しておきながら、この協定の履行にも応じようとしない。特に馬丁会の経理の不当もしくは不正といいましょうか、とにかく不審な点のある証拠になるべき帳簿書類は、摘発されるや、その日のうちに焼却し去って、馬丁会を解散さしておる、こういう乱暴なことをしておる。しかも、これを目前に見ながら手を出し得ない警察側、こういう状態の中で一体今後の労働省は、この馬丁諸君の劣悪な労働条件を改善して調教師なり競馬会の不当な労働行為を改善さしていくだけの意欲と盲信があるのかどうか、一つ大臣がおられませんから、政務次官から確固たる決意を一つ伺っておきたいと思います。しかも、これは一片の言葉ではなしに、この二十七国会において大臣が述べられたような単なるその場のがれの言葉ではなしに、現実に約束をするという決意を持って私は述べていただきたいと思います。私は今ここで述べられて、ほんとうにその対象となる諸君がたとえわずかな諸君であっても、今日最も遅れた社会の人たちとして劣悪な労働条件に泣いておる諸君を一つ救い出そう、少くとも今日の時代の労働者並みにはしてやりたい、こういう気持が次官のお気持の中にあるならば、それが具体的に現われるように努力をする決意をもって一つ御答弁をいただきたい。ただし私はあと一カ月なり二カ月なりの間この次官の御答弁に対しては、はなはだ申し上げかねますけれども、その具体的な効果の現われることを深い関心を持って見守っています。ですから、そういうこともお心において、一体このがんじがらめに縛られておる封建的な社会の中において坤吟しておる馬丁諸君の労働条件を改善していく熱意があるのかどうか、次官の御答弁を承わりたい。政府委員(二階堂進君) いろいろ先生から馬丁組合の問題について御指摘がございましたが、二十七国会におきまして大臣もこの席から十分馬丁組合の方々の勤務条件の改善等については努力するということを申されたのでありますが、その後いろいろな複雑な関係調整あるいは解決につきましては、労働省当局といたしましても先ほど局長から御答弁申し上げました通りにいろいろ指導監督、あるいは調査等もいたしておるわけでありますが、ただいま承りますというと、依然としてそういうことが改善されていないという御指摘でございます。もしそういうような事実が依然としてあるということであれば、私も非常に遺憾なことだと考えますが、さらに私どもといたしましても指導、監督をさらに厳重にいたしまして、勤務条件の改善等にはさらに熱意をもって当る所存でございます。
  136. 片岡文重

    ○片岡文重君 今の御答弁は通り一ぺんの御答弁ではなしに、即刻基準局その他労政局の関係の局部課に対して、またでき得るならば一つこれは厚生省、農林省などにも関係のある問題が多多含まれておりますから、それらの関係に対してもぜひ積極的に一つ連絡をとっていただいてやっていただきたいと思うのです。その結果については先ほど申し上げました通り大へん失礼ですけれども、私は従来の経験に徴して深い関心を持って今後の推移を見守らざるを得ないということを一言付言しておきます。  それから先ほど労災保険の問題で、これは任意包括であるから違反とはならない、こういう御答弁のようでございましたけれども、まさに労災保険はそういうことでありましょう。しかし、これはその労災保険法の規定するところによって使用されておる労働者の過半数がその事業について労災保険の成立を希望しておるならば、その事業主は保険加入の申し込みをしなければならないはずだと私は記憶しておる。しかし、いかに希望しても、いかに交渉しても労災保険はもちろん健康保険についても、厚生年金保険法についても全然これは取り上げておりません。これは特に労災保険法の場合のごときは、事業主は過半数の労働者の希望があるならば、これは保険加入の申し込みをしなければならないことに私はなっていると思うのですが、そういう意味からいえば、この労働者の希望があるにもかかわらず保険加入の申し込みをしないということは、明らかに法律違反の事項ではないかと思うのですが、いかがですか。
  137. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 労災保険法に御指摘のような条文がございます。従いまして過半数が希望し、しかも申し込みをしないという場合には、労災保険法の違反となると考えますので、先ほども申し上げております残余の部分の監督と合わせて、この点についても監督する所存でございます。
  138. 片岡文重

    ○片岡文重君 どうもやるかやらないかは別問題として、やります、こういうことになると、それはうそだろうと言うわけにはいかぬ。ただ従来の経験から見て、はい、そうですかと引き下るには、はなはだ私も人悪くされたような気がするのです。ぜひこれはやりますということを現実に生かしてもらいたいと思いますから、その言葉を今一度信ずることにいたしたいと思うのですが、ここで問題になってくるのは、これは農林省とも多分に関係があると思うのですけれども、調教師諸君が果して馬丁諸君の使用者として十分な責任をとる資格があるのかどうか、ここが私はポイントだと思うのです。労災保険にも加盟をしない、失業保険、健康保険等にも入らない。そうしてしつっこく要求をし、法律を呈示して追っていけば、競馬場に法律は通用しないのだという、まことに信ずべからざる暴言を吐くような調教師もままあるという状態ですから、こういう時代感覚でこれらの無力な諸君の労働条件を改善していくということは、はなはだおぼつかないと私は思うのです。しかし、すでに労働省としては馬丁の使用者は調教師であるということを決定し示達されております。前国会においてこの問題にも触れて、果してこれが誤まりないのか、今後これをやっていけるのかどうかということをお尋ねしたときに、不備な点については十分改善をさしていくということであった。けれどもその後の改善は先ほど申し上げた通り少しも見受けられません。一体調教師諸君がこの使用者としての資格を持っており、また今後もこのままの状態で差しつかえない、こういうことを今なお考えておられるのかどうか。この点を一つお聞きいたしたいと思うのです。
  139. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいまの点につきましては、先ほどお話しのありましたように、労働基準局といたしましては、労働基準法の使用関係は調教師と馬丁との間にあるという判断をいたしたわけでございます。その理由といたしましては、事実上指揮監督を——作業の指揮監督をし、それから労働条件の決定等を考えてやりまするものは、これは調教師でございまするので、現在の事実がそのような事実であります以上、労働基準法の適用につきましては調教師を使用者考えて取り扱う、このような取扱いをしておるわけでございます。ただ、ただいまお話しにありましたが、われわれは別にこのような形態が理想的な形外であって、これはこのまま存続してもいいんだと、こういう判断をしておるわけではございません。現実に作業の指揮監督関係、労働条件の決定を直接行うものが現在は調教師であるから、従って労働基準法を現在適用するに当っては調教師を使用者として取扱う、こういう現在の取扱いの判断をしたわけでございます。従いましてこのような線に沿いまして、基準法の違反がありますれば是正をさしていく、このような方針で臨みたいと思います。  なお今までに全然改善されおらないじゃないかと、このようなお話しでございます。この点につきましては、調教師側に、基準法に合うようにいろいろな諸規定等を直せという勧告をいたしてからまだそう時日がたっておりません。そのためにこれを実際に移すために若干の準備期間が要ると、このような話でありますので、われわれはその実際の改善の一日もすみやかならんことを期待して、目下注目しておるところでございますが、お話しのようにまだ全然その兆がないということでありますれば、われわれとしてはさらに第二段の措置といたしましては、十分基準法に合いまするように勧告をしていく、このような考えでおるわけでございます。
  140. 片岡文重

    ○片岡文重君 基準法上調教師を認めてるんだというお話しでしたが、事実上の指揮監督と言われますが、もし調教師が今日馬丁諸君に対して行なっておる指揮監督をもって、これが基準法上の使用者の条件だとするならば、この前も申し上げたけれども、これは工場における工場長や職場長、こういうものが指揮監督を行なっておることと、実際に調教師が自分の意思だけでどうにも動かせないような状態に今日置かれておるのですから、ちょうど工場長や職場長というふうな人たちが、企業主の命によってそこに働く労働者を指揮監督しておるのと少しも変っておらない、こういう形態です。さらに労働条件等についても、あるいはこの採否を決定する場合にも、たとえば採用の際には調教師一存では馬丁を一人といえども採用するわけには参らぬはずです。調教師騎手会、つまり調騎会といってるようですが、ここでまず馬丁登録を行なって、採用する前ですよ。これは自分のところで雇用する前に調騎会の加入をまずさせられて、そうして服装その他の示達事項はすべてその調騎会から出ておる。そして中央競馬会の競馬施行規定による競馬場長の承認がなければ、まず採用はできない。この三点をあげてみても、これは調教師だけが使用者だということにはならないと思うんですよ。特に使用者とし当然支払うべきところの補償費であるとか、負担金であるとか、あるいは労災保険の諸給付に該当するような諸給付、休業手当、そういうようなものが調教師からは一銭も出ておらない。馬丁諸君も会費を納めておるところの、調教師、騎手、馬丁、これらの諸君の相互の共済関係団体であるところの共助会から出ておる。しかもこの共助会の最大の九〇%以上の資本になるでしょう資本というものは競馬会から出ておる。調教師が支払うところの賃金というものは、馬主から渡された賃金を、はなはだしいものになるとそのまま渡さない。これをピンはねしたりしてやっておる。一人に二頭も三頭も持たせて、そうしてもらうときには馬主から一頭分、一人一頭の賃金をもらってそれをピンはねをして馬丁に渡しておる。結局企業主から工場の会計を通して労働者に賃金が支払われる場合に、その会計が、あるいは経理の担当者が労働者使用者だということはできますか。そういうことは聞くまでもないと思う。そういう形が現在調教師と馬丁間のでは私は行われていると思う。もし調教師が基準法上使用者であるというならば、当然に今日この共助会から受けておるところの共済給付等についても責任を持たなければ私はならぬと思うのですが一つもこの責任を持っておらない。今日この労働組合が結成されてからは、この幹部諸公の中には、この不当解雇によって共助会の共済給付すら受けることのできない諸君が数々おるわけです。しかも給付のほとんどが出されるところの共助会の、しからば規則はだれが作るのかということになると、これは競馬会が作っておる。調教師が作っているんではない、こういうことをあげてくれば、どこに基準法上これが使用者だと認められるのか、根拠があるのか、あるならば私はお示しをしてもらいたいと思う。
  141. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいまお話しのように、この競馬におきまする調教師、馬丁の間の関係は、一般の工場労働者等において見られる関係と異なりまして、第三者の関与する面が相当ある、これはまことにお話しの通り事実でございます。またそのように複雑な特別な関係がありますために、この数年来全然だれが使用者であるがわからない、このような問題があったわけでございます。そこでわれわれの方といたしましては、このように非常に作業の形態が特別でありかつ複雑であって、一般の工場労働者と同じように簡単に判断はできませんけれども、しかしだれが責任者であるかということはやはりきめなければ基準法の円滑な実施ができない。このように考えまして、一応使用関係は現在ではこうと認められる、このような解釈をいたしたわけであります。すなわち作業の指揮にいたしましても、馬の運動とか飼料の与え方、あるいは馬の手入れ、寝わらの乾燥、草刈り、厩舎の清掃等の馬丁の作業は調教師が指揮監督をしておる。あるいは馬丁の遅刻、出欠につきましても調教師の監督を受ける。私用のため作業ができないときは調教師の承認を得ておる、持ち馬の異常を発見したときは常に調教師に連絡し、指示された措置をとらなければならない。あるいは勤務成績の不良、その他馬丁の責めに帰すべき行為があったときは懲戒される、このような点で直後の作業の指揮監督の関係はやはり調教師と馬丁の間にあると思う。雇い入れ解雇についても調教師が原則としてやっておるのであります。ただいまお話しのような馬丁登録制度というものはございますが、これは馬丁の資質向上のために調教師会が自主的に申し合せて実施しておる資格条件でございます。労働関係の発生消滅の効果を伴っておるものではありませんし、また馬丁が採用されるときの競馬場長の承認は、馬丁に対する競馬場施設の利用許可というような性質のものでありまして、これも労働関係の発生消滅には関係がないわけでありまして、現に承認のない馬丁でも使用されておるというような事実もあるわけでございます。また共助会の経費につきましても、これは中央競馬会から毎年支出されておる助成金でまかなっておりますものでありますが、これも競馬主催者たる立場において競馬関係者の援助助成策として支出しておるものと認められるものでございまして、やはり基準法上の使用関係は一応調教師と馬丁との間にある、現状ではそのように判断して法律を取り扱う、このような措置にいたしたいと思うわけでございます。ただお話しのように、その間の関係一般の工場労働のようなきわめて割り切れた関係ではございません。今お話しのように、競馬会とかあるいは調教師騎手会とか、そういう調教師以外の第三者が関与するというような面も相当あるわけでございまして、この基準法を守らせるというのにつきましては、もとより調教師だけにいって是正をはかるというだけではなかなかうまくいかないことも事実問題としてあろうかと思われますので、われわれの方が指導いたしまするときは、調教師のみならずに、これに関与する第三者にも十分話しまして、購準法上の合理的な合法的な措置が一刻もすみやかに講ぜられるように努力したいと考えておる次第であります。
  142. 片岡文重

    ○片岡文重君 草刈りとか馬の手入れとか馬の異常を発見せよとか、あるいはそれらの処置をせよとかいうことは、たとえば職場長がその所管の技工さんに対して、旋盤をやれとかボール盤をやれとか、あるいは場内の清掃をせよとかいうことと何にも変らぬことでしょう。それが使用者だというのなら、それは明らかに私のいうように、工場長なり職場長が使用者であって、企業主が使用者ということにはならぬでしょう。たとえば鉄道で、駅長さんが、その駅員に対して構内の除草を命ずる、あるいは構内の掃除をさせる、列車の取扱いを命ずる、だからといって、この駅長がこれらの駅員の使用者だということになりますか。こういうことには私はならぬと思うのですね。調教師と馬丁諸君との関係は、これとちっとも変らぬのではないですか。さっきもいう通り、基本となる賃金ですけれども、この賃金も調教師が馬丁を見て、お前の技量はこれだけである、よってこれは二万円の給与をやろうとか、お前は六千円しかやれないとかいうことで調教師が賃金を一決定して、そうして自分の意思によってこれを雇用あるいは解雇をする、自分の意思によって採否が決定できるというような状態だけではないでしょう。その馬丁に与えられるところの給料というものは、馬を預託する馬主から、馬丁の給料は一万五百円、そしてそのほかの調教師のとるべきものはこれこれということで内容が明示されて、そして調教師に馬が預託されている。いわば馬と馬丁とは一緒にその調教師に預託されるようなものなんです。それを受けて調教師はその中から、そのままその馬主からもらった給料を馬丁に渡す、もしくはピンはねをするということじゃないですか。従って、使用者としての責任といいますか、義務というものはどこにも出てこぬじゃないですか。もし、しいてこの場合言うならば、これは共助会でも調教師会でもないとおっしゃるなら、明らかに馬主こそがその使用者であるべきだと私は思う。草刈りを命じ、あるいは馬の手入れを命ずるというような日々の作業行為を命ずることが使用者の仕事だというのならば、むしろそれは調教師よりも古参の馬丁の方があるいは使用者になるかもしれない。調教師というものは、御承知でしょうけれども、その厩舎の中におってボス的な存在であるけれども、一々馬丁に対してそう詳細に指揮命令を発しているわけではない。むしろそこにいる古参の馬丁が新参者を使うでしょう。仲間を指揮するでしょう。その場合は、その指揮をする古参の馬丁の方があなたの筆法でいけば使用者ということになりはしませんか。私はこの場合に、この長い間の紛争を解決するために、しいて急いで使用者を見出さなければならない。その使用者を見つけるためにどこかにおっつけなければならぬということで、無理は万々承知だが仕方がないということで押しつけたというのならば、これは話は別です。けれどもそうでなくて、もっともらしい理屈で、これは調教師が使用者たることにおいて間違いない。また十分責任をとっているのだ、こう言い切れる自信を持って調教師とおっしゃられるなら、私はどうしても納得はできない。この点についてどちらをとっておられるのか、一つ伺っておきたい。
  143. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、御指摘のように非常に第三者の関与の程度が一般工場労働よりも強いというのは、まさに御指摘の通りでございます。そこで先ほど私の申し方が悪い、足らなかったのかもしれませんが、たとえば手入れとか乾燥とか草刈りというようなことをやっている、だから使用者だということではございませんので、そういうようなことは一つの例示でございまして、そのほかにも遅刻出欠の監督、あるいは懲戒の処分、あるいは馬丁の雇い入れ、解雇についての決定、それから労働時間、終業、始業の時刻というようなものの決定が調教師にゆだねられているということ等を考えまするときには、やはり基準法上の一応の使用従属関係は調教師と馬丁との間が一番現状では強い、このように認められる。このようなものを総合的に判断して、基準法を円滑に実施するための一つの手段としては、調教師にまず責任を負わせるのが妥当である。このように考えているわけでございます。あくまでもこれは監督の便宜のための方法でございます。また、将来の問題といたしましては、また実状の変化に伴いまして、いろいろその監督の方法等は考えなければなりませんが、現状ではそのように、他の要素もございまするけれども、いろいろな点を勘案いたしますれば、調教師と馬丁との間の使用従属関係現状では一番強い、従って、直接監督する場合には調教師に対して使用者としての義務を負わせて、基準法の円滑な実施をはかっていくことが適当である、このように判断して、現在のところはこのように措置したいと考えている次第でございます。
  144. 片岡文重

    ○片岡文重君 質問ですからあまり議論をするつもりもありませんけれども、今、局長の言われたことは、たとえば人事係とか庶務係の仕事なんです。たとえばその勤怠を見るとか、就業の規則を定めるとか、こういうことはこれは工場や何かの庶務係とか何かのやる仕事である。解雇、雇い入れ等の仕事は人事係がやる。その場合に、これは解雇、任免をやっているからといって、人事係長が使用者である、勤怠を監督しあるいは給料の仕出しをする、金を日給の計算をし給料袋に詰めてこれを渡す、会計や経理の仕事です。だからといって、これが使用者であるということは言えないでしょう。やはりそれのよっていづるところの本質を、最後の実権を持っているところが私は使用者でなければならぬと思う。そういう意味からいえば、調教師というものは、いわば出先の機関として、窓口としてはそういうことはするでありましょう。けれども、これはあくまで人事係の仕事であり、庶務係の仕事であって、使用者の仕事ではないし、使用者責任ではないと私は思う。だからそういう意味からいうならば、これもまた調教師が使用者だということにはならない。あくまでも早く何とかして団体交渉の相手方を見つけなければならないということであるならば、その団体交渉の相手として十分に責任のとれるものがなければならぬはずです。いわば調教師が馬主から下請けして馬丁諸君を雇っておる、こういうことともまた違うわけです。どうしても今の局長説明では、調教師が馬丁諸君の責任ある使用者である、その資格も持っておる、たとえ議論の余地はあっても、その資格はあるのだということには承服しかねるが、基準局として、しからば調教師以外には、この馬丁の労働条件に関して、使用者としての業務を、業務といいますか、権限といいますか、業務というよりむしろ権限でしょうね、持っておるものはおらないと、こういうふうに考えるのですか。
  145. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 調教師以外にも、先ほど御指摘のありましたように、中央競馬会が、調教師が馬主を置こうとするときには承認を与えるというような、いろいろな関与があるわけでございます。それで、この点は、私どもは一応今のところは、施設の管理権に基く規制である、このように考えておりますが、いろいろまた御意見もありますようで、われわれとしてもこの関係が実は非常に複雑でございまして、はっきりと割り切れないというところに根本問題があると考えて、われわれも非常に苦心をいたして、一応今のところは、このような方法で監督するのが通関である、このように取り扱っておる次第でございますから、今後におきましてまたさらに実情調査いたしまして、是正すべきところがありますならば、われわれの考え方ももとより是正するごとにやぶさかではございません。
  146. 片岡文重

    ○片岡文重君 さらに調査をして是正すべき点があるならば是正するにやぶさかではないという確かに御謙虚な御答弁を伺って、将来に私は期待をしたいと思うのですが、問題は、その場を解決してといいますか、この場を糊塗して問題を先に延ばすということであるなら、これは、たとえ完全に使用者としての責任を果すことができるかいなかにかかわらず、一応の形をとってあるいは理由づけられればやむを得かいということで、調教師を使用者にしたのだということでも済むかもしれません。けれども、それでは使用者たる調教師も私は困るだろうと思うのです。自分の肩に負い切れない責任を、使用者でない使用者として負わされる負担も困難でありましょうし、何よりも今日の雇用責任を持つべきその使用者が、そういう不完全なもので、しかも今度は、おれは使用者になったのだからと言って、都合のいいときには不当労働解雇は平気でやってのける、都合の悪いときには、これは馬主がお前をきらうのだから仕方がないということで、馬主という屏風に隠れる、こういうことで、なまじ調教師だということにきめられたばかりに、馬丁組合の諸君は、今非常な困難に陥っておると思うのです。この際私は、すみやかに、使用主は調教師であるという示達をされたことについて厳密に検討を加えられて、十分に責任をとれるような使用者一つ確認してほしいと思うのです。同時に、その場合に要望しておきたいことは、当然現在共助会で行なっておるような社会保険に類するような給付等については、せっかく国の法律があるのですから、この方の保護にまかされるように、調教師のその時その時の個人感情によって給付をしたりしなかったり、特に馬丁諸君は二十四時間勤務です、御承知のように。この二十四時間勤務の中で、馬の飼料を買い取りに行って、帰りに交通事故でけがをした。これらの諸君がそのけがをした現場から病院に運ばれる自動車賃まで、そのけがをした労働者が負担をさせられて、共助会から一銭の給付も出ておらない。基準監督署の担当官も、明らかにこれは労災の事故であるということを言っておる。ただし、この場合担当官は、公式の席上では自分立場考えて表明することはできない。こういう微妙な問題も起っている。共助会というこの共済団体の給付すら、調教師の個人感情によって行われたり行われなかったりしておる。都合のいいときには使用者になす、都合の悪いときには使用者にならなかったり、これでは、使われておる者は安心をしてその日その日の業務につくことはできない状態ですから、この点については、なお十分に一つ基準局としてもこの問題は即刻手をつけていただいて、要すれば、農林省等とも連絡をとられて、この馬丁諸君の責任の持てる使用者を確立していただきたいと思うのです。  で、この際続けて伺っておきたいのは、農林省からどなたかお見えになっておるのですか。
  147. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 谷垣畜産局長が見えております。
  148. 片岡文重

    ○片岡文重君 前回この委員会で、この馬丁の雇用関係について質疑をいたしました際に、農林省のたしか競馬官だったと思うのですが、御出席になって、今あなたがお聞きになっておられた調教師が馬丁の使用者であるという労働省の決定に対しては、農林省としては、労働省がそうおっしゃるから、私の方でもその通りだと思います。言葉が違いますけれども、大体こういう意味の御答弁だったと思う。そこで、そういうことでなしに、調教師のもとに馬丁を雇用関係で結びつけておくことが、果して適当であるかどうか、こういう観点に立って一つ検討をしてほしいと、こういう意味のことを、たしか私は申し上げたと思うのです。中央競馬会のいろいろな問題については別として、この際は、馬丁諸君の労働関係に焦点をしぼっていろいろお尋ねしてみたいし、御答弁いただきたいと思うのですが、この労使関係で、調教師が馬丁の使用者として、今日の中央競馬の運営の状態からあるいは馬丁の労働条件の維持の上から、これは最善である、こうお考えになっておられるでしょうか、それともほかに何かお考えになっておられますか。その点を一つ先に伺っておきたい。
  149. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 馬丁諸君の問題に対しまして、いろいろと問題が起きておりますことは、関係いたしておりますものとしまして、非常に残念でございます。今御質問の問題でありまする調教師と馬丁との間、どういうそれが適切な雇用関係にあるか、あるいは法的に雇用関係と認めるべきであるかという点でございますが、これは、私たちそれぞれ労働省の御見解等もいただきまして、この間に雇用契約、雇用関係がある、こういうふうに私たちも承知をいたしております。で、この調教師と馬丁との間の雇用関係が、現状でいいかどうかということと、それとこれを別個のものに変えた方がいいかどうかという問題は、少し性質が違う問題だと思います。この調教師と馬丁との間にいろいろと問題があり、そしてそれが、法律できめておりまするような問題に対して違法的な事実がある、これは当然基準局その他から御指摘のあることだと思いますが、私たちも、また競馬に関係をいたしておりまする監督官庁といたしまして、十分にそれが合法的な関係に改善されるように、十分な努力は払いたいと思っております。なお、この将来の問題といたしまして、これをどういうふうに変えるかという問題の御質問でございますが、その点に関しましては、私たちは、調教師と、馬丁との——現在の調教師がとにかく雇用主であるという——関係を、非常に変革をするという結論には達しておりません。達しておりませんけれども、御指摘のように、たとえば馬主が雇用主という関係になることが適切でございますとか、あるいは競馬会がそういうものに非常に関係が深いから、むしろ競馬会というものの方が雇用主という関係になった方がいいんじゃないかというような点でございますが、今の現状から申しますと、やはり馬主というものが自分の持馬を委託いたします際には、これはやはり調教師にそのすべてをまかせたという格好になっております。もちろん調教師のところにおりまする馬丁等に対しての好ききらい等、希望を表明すること、これはあり得るかと思いますが、今の形は、一応馬主というものは、調教師のその技量あるいは能力等を信頼いたしまして委託いたすという格好になっております。直接馬主と馬丁との雇用関係というものの形に飛躍するのは、少し無理があるのではないかというふうに、私の方としては今考えております。それからなお、競馬会が、非常にこれが関与をいたしております。共助会等の経費に対しても補助金を出しておりますし、あるいは競馬場長等がこれの雇用採否をいたしましたあとにおいて、それに対する承認といいますかという格好の形をいたしております。これは、共助会等の問題につきましても、従来の経緯もございますしいたしまして、経済的な援助というものを非常に要求されまして、またそれも一つの方法であるという考え方から、援助をいたしておるわけでありまして、直接にそのことをもって競馬会がどうということにはならないと思いますし、また、競馬場長の問題も、先ほど来御質疑応答がありました通り趣旨と、私たちは考えております。特に競馬会の任務といたしましては、競馬そのものが公正に行われる、また大ぜいの人が集まりまして、それによってレクリエーションをいたすということが主なる目的になっておりますので、快的な環境を維持する、あるいは競馬そのものを公正、能率化した形において施行する、こういうことを主眼にいたしておりまするから、その本来の性格から申しますると、競馬そのものに関係をいたしておりまするものが、開設者である競馬会との雇用関係に立つということは、私たち競馬をやっておりまする、競馬法の監督をいたしておりまするものの立場としては、むしろその間に峻別すべきものがあるという立場で、現在まできているわけでございます。ただ、それを峻別をするという場合に、経費その他そういう経済上の援助をそれじゃ与えないで、切ってしまったらいいじゃないかという問題があるいは起きるかもしれない。それは建前の論と、実際の問題といたしましての経済上の援助の問題とは、若干区別をいたして考え得る余地があるように、現在の状況から見ますと、私たちは判定をいたしておるわけであります。そういうような事情で、現在のところ、私たちは、基準局の判定というものが大体において正しいのではないか。ただ、何回も繰り返して申すことに相なるかもしれませんが、現在の調教師と馬丁との間の事実上のいろいろな状況が、まだ改善する余地が非常にあるという事実、これらにつきましては、それぞれ御指摘が基準局の方からもあることと思いますが、これは、私たち関係いたしておりますものといたしまして、十分に改善をいたすように、私たちの方といたしましても、努力をいたさなければなならぬ、かように考えておる次第であります。
  150. 片岡文重

    ○片岡文重君 農林省としてこの問題でやはり一番頭を悩めるのは、労働省と違うところは、結局、公正なレースをいかに手ぎわよく行なっていくか、いかに不正なレースを排除するか、こういうところに重点が置かれておるのではかかろうかと思う。そういう点から、労働省で言う労使関係の円満な慣行の樹立というところに重点を置いておるのとは、おのずから若干の相違があると思う。私は、そこで一つ農林省のしからば立場に立って 労働省がきめた労使の姿を、農林省が希望するような公正なレースに結びつけてみて、どうなるだろうかということを、虚心に考えてみました。同時に、所々の地方競馬についてその実態を調査してみました。ところが、これはまさにこの調査の結果からいって、私は逆だという結論に達せざるを得なかった。この実情については、畜産局長の御経歴を私は存じ上げておりませんからわかりませんが、少くとも現地に詳しい競馬官であられるならば、私は数々の問題を指摘することができるであろうし、おそらくや把握しておられるだろうと思う。もしこれが納得できないというのであるならば、これは競馬官としての任務を完全に遂行しておるかどうかは疑わしいと思う。で、まず公正なレースが行われるということは、馬丁は馬丁の立場において、調教師は調教師の立場において、騎手は騎手の立場において他の何ぴとからも制約を受けずに、言うなれば、これらの公正なレースを行うに直接関与する諸君が、他の手によって生殺与奪の権を奪われるようなことのない状態に置いておくということが、根本的に私は必要だと思います。ところが、調教師が馬丁の雇用者として直結をしておる以上は、しかも、この調教師の中には自分の馬を持っておるものも相当おる、これは法律上果していいかどうかは別問題ですが、とにかく調教師が直接馬丁の雇用、解雇を手中におさめておるということは、調教師の命ずるところに、馬丁は反抗し得ない立場に置かれておることは明らかであります。現にそのために、調教師の命令によってやむなく不正と知りながら興奮剤等を与えておる馬丁の例もあるでしょう。しかも、こういう場合には、その馬丁がちょうど、何というのですか、清水次郎長式だ、この親分子分の関係で、調教師のそういう命令を一身にかぶって、その馬丁が一人責めを負って職場を離れていくという事態が決して少い例ではないはずです。こういう事態はどうして起るかといえば、これは、調教師が馬丁の生殺与奪の権を握っておるからです。従って、もし公正なレースを望まれるというのであれば、むしろ中央競馬会が中心となって、調教師も騎手も馬丁も、お互いに制約し得るような立場に立っても、それによって自分の身分が保障されないような状態、言いかえれば、抗弁し得ないような状態に置かれることのないような姿にしなければならぬと思う。そのためには、むしろ調教師の使用人であるという馬丁の姿は好ましくないと私は思うのですが、この点、農林省としては、どういうふうにお考えですか。
  151. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 調教師が生殺与奪というとひどいですが、非常に影響力があるということは事実だろうと思います。しかし、やはりそのことによって競馬が、先ほど御指摘のような、興奮剤の施用がひんぱんにあるということは、興奮剤の施用の問題は、私たち競馬法をやっておりますものからいいますと、これは非常に違法な事実であって、実情を調べまして、調教師に関係があるなら調教師、馬丁に関係があるなら馬丁、それぞれの処罰をいたしております。その間に調教師と馬丁との間にどのような関係があったか、その事態の発生いたしました際に、できるだけの調査をいたしております。そのことと、調教師と馬丁との間の契約関係の問題とは、私は、直接関係が少いのではないか、かように考えております。  ただ、屡時申し上げますように、調教師と馬丁との雇用契約というものは、常識的に見まして、あいるは法律的に見まして、もう少し改善をする必要があるのではないか。こういう問題につきましては、私たち監督をいたしておるものの立場といたしまして、間接ではございますが、確かに、労働基準局の方の関係でございますが、間接ながらやはり競馬全体の公正なあり方といたします場合に、一つの因子といたしまして、十分なる関心を持ち、改善をいたしますように努力いたしたい、かように考えております。
  152. 片岡文重

    ○片岡文重君 あげ足をとるわけじゃないのですが、私は、ひんぱんになどとは決して申しません。しかし、そういう例は少くはないと私は思うのです。現に、それによって職場を追われた馬丁も私は現実に知っておるのですから、そういう場合にやはり弱い者の哀れさ、調教師に対してあくまでも、それではお前約束が違うではないか、こう言ってねばりつくようなことはできない、現実問題です。これは法律とか理屈ではない、現実の社会がそういう姿に置かれておる。従って、現にまた調教師の命に服さない、お前はそういうことを言うならば、おれは承知するわけにはいかないから、一つ競馬会に申し出ようじゃないか、こういうことで、その調教師に反抗して、他の調教師からまあまあとなだめられてその場は済んだが、結局そういう状態では、そこにおることはできませんから、長く勤続しておったにもかかわらず、その調教師のもとを離れていったという例も私は知っておるのです。こういうことはやはり、調教師が生殺与奪の権と言えば言い過ぎだろうとおっしゃったけれども、現実に使用者として、しかも基準局ではこれを公認するということになれば、ますますもってこの生殺与奪の権は、私は権威づけられてくると思う。その議論のあるかないかは別問題です。こういう状態の中で、気に入らなければ出て行けと言われる。しかもハーモニカ長屋でも、これは雨露をしのぐ所でありますから、これを追われれば、妻子をかかえて行くところもない人たちです。どうしても、不正と知りながら、興奮剤施用というようなこともあり得るわけです。こういうことは、やはり私は、対等の立場に立って、それを拒否しても調教師から、あいるは騎手から制約を受けないということでなければ、それはできないと思うのですよ。そのためには、この際競馬会によって、すべての騎手なり調教師なり、馬丁なりというものが雇用関係を結ぶ、そして競馬会が十分な監督をする、こういう姿にすることが私一番望ましい姿ではないかと思う。この点については、やはり今の御答弁と変りはありませんか。
  153. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 先ほど申し上げましたように、競馬会といたしましては、直接競馬レースに関係のある者と関係を持たない、これは、開設者といたしましては、性格はやはりそうなるのだろうと思います。今のところ私は、そういうやり方の方が正しい、かように考えております。ただ全体といたしまして、いろいろな問題がありました場合に、関係の深いものとして、それに経済援助を与えたり、あいるはまた、十分な勧告をいたす、こういうことはまた、別の立場からいたして、しかるべきものだと考えております。
  154. 片岡文重

    ○片岡文重君 基準局の立場から、私は、今のような使用者としての調教師は、公正なレースを行う上からいっても好ましくない、これは明らかに言えると思うのですが、ということは、言いかえれば、やはり不当な労働行為が容易に行われ得る立場に置かれておるのだ。こういうことが言えると思うのですが、基準局の立場としては、どういうふうにお考えになりますか。
  155. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) その点につきましては、農林当局と十分連絡して、今後遺憾のないように措置して参りたいと思います。われわれの方としては、公正なレースの問題より、やはり馬丁の労働条件の向上、この見地から問題を処理して参りたいと思っております。
  156. 片岡文重

    ○片岡文重君 公正なレースが行われる前提として、私はやはり、円満な労働慣行が樹立され、そうして正しい労働条件の中に安んじて働くことのできる状態に馬丁が置かれることが必要だと思うのです。そのためには、やはり今言ったように、調教師の不当な圧力が加わりやすいような状態に置くことは好ましくない。もちろん調教師諸君といえども、すべてがそういう人だということを言っておるわけではない。結局そういうことを行いやすい立場に置くよりも、行わんとしても行うことのできない立場に置くことの方がより賢明じゃないか。またそうすべきじゃないかと思うので、私はこれを、調教師が馬丁に対して雇用者、使用者ということでなしに、競馬会に一つ使用者という責任を持ってほしい。で、開設者として、レースに関係しないようにしたいと言われましたけれども、その理由は、どうも私には納得できません。これはしかし、時間もありませんし、レースに関係のあることですから、いずれ農林委員会か、適当な機会にさらにお聞きしたいと思いますが、この調教師が使用者として行うべき基準法上の義務、たとえば労災補償であるとか、その他の社会保険に加入を行わない、あるいは家族手当、勤続手当、休業手当というようなものも、調教師はやっておらない。そのかわり共助会に対し、競馬会から年額三千万円という金が出ておる。そうしてこの共助会には、競馬会から三千万円という金が、助成金が出てはおるけれども、そのほかに、馬丁もまた雇用された際に、加入金として百円ですか、納めておるはずです。そうして月々の会費はなかったと思いますけれども、とにかく競馬会の承認を得て、そうしてこの共助会に入会の手続をとる、こういうやり方をしておる。これはやはり、調教師が完全な使用者としての責任をとっておらない。こういうふうに考えるのですが、この点、農林省としてはどういうふうにお考えになりますか。
  157. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 経過的に申しますと、この共助会は、共済事業その他関係者の福利事業をやる目的となっておると思いますが、これを独立いたしまして、そして掛金制度をたしかとったことがあったと思います。おっしゃるような趣旨において掛金制度をとった。ところが、経済的に非常にそれは困ったというような事情がございまして、さような事情から、競馬会の方で経費を見てくれと、こういう話があったのです。そこで、そういう事情がございますしいたしまして、競馬会の方としては、その経済的援助を与えましょう、こういうことになったわけです。これは、むしろ経済的な実情から、そういうような格好にしたのでありまして、本来、それだからといって、元のように全部掛金制度にするのがいいかどうかということは、やはり実情を見ながら判定しないとまずいことじゃないかと考えております。御指摘のように、たしか入会金だけで済ましておると思います。入会金だけで、掛金は要らないで済ましておると思います。ただ、あくまでもこれは別個の法人でございまして、独立したものでございます。それぞれの会員の諸君が選ばれまして、執行機関にも当っておる、こういう建前をとっておるわけであります。ただ、経済的な援助の率が非常に高いものですから、従いまして、競馬会の発言が実質的に強いということは否定できません。否定できませんが、できるだけ早く経済的に独立した形でやってもらいたい。これは、私どももそういう形を望んでおりますが、実際問題としては、なかなかそうはいかないところに、そういう援助を続けておる実情があるわけでございます。
  158. 片岡文重

    ○片岡文重君 月々の会費を取れということを私は言っているのではない。こういった、社会保険に類するものとか、その他の当然使用主として支給しなければならない給付が、使用者たる調教師から支払われないで、競馬会から出ておって、それには、馬丁もとにかく入会金だけであっても、調教師と同じ権利を持った、つまりいわば使用主と同等の立場において、権利を主張し得べき立場にある。ところが調教師が使用者だということで、この馬丁に対する労災給付その他の給付をしたりしなかったり、やったりやらなかったりすることができるような立場に置かれておることは、これは問題じゃないですか。そういうことが共助会と調教師、馬丁の間には現在あるわけです。そういう姿も、調教師が馬丁の使用者としては不適当である。むしろ資格はないのじゃないかと、こういうことが言えると思う。
  159. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 私、少し勉強が足りませんので、労災関係その他よく存じ上げないので、あるいは不十分な御返答しか申し上げらないかもしれませんが、この共済共助会というものは、先ほど申しましたように、調教師も入っております。もちろん騎手も入っております。馬丁も入っております。みな入っておりまして、そうしてそういう共済的な仕事、あるいは売店の経営をやりますとか、その上りで……、あるいはまた、そこをよした方はなるべくそういう所に就職できるようにするというような形のものになっております。そのほかに、雇い主あるいは使用者としての立場から、ほかの保険に入るとかどうこうというような問題、これは私、不十分な研究でございますが、そのことと、こういう共助会の問題は少し違うのじゃないか、というような気がいたしております。共助会は、今申しましたような建前から、皆の集まりましたもので、経済的にそのかなりの部分のものを競馬会がやっているということじゃないかと思います。
  160. 片岡文重

    ○片岡文重君 基準局長に、一つ今の問題について、御答弁いただきたいと思います。
  161. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 業務上の傷病につきましては、これは、労災保険に加入しているといなとを問わず、者はそれに対する給付を受けられるわけでございます。労災保険に加入しておれば、労災保険から支出されまするし、労災保険に加入しておりません場合には、基準法によって、使用者は災害補償の義務があるわけでございます。労災補償に関しまする限りは、これは、全額使用者負担ということになっておりまするから、全額使用者負担において支弁されるべきものであると考えております。
  162. 片岡文重

    ○片岡文重君 今の局長の御答弁でいけば、これは、調教師は全額負担じゃないのです。入会金を出しているだけであって、三千万円というこの共助会のほとんど九十何パーセントという運営資金というものは、競馬会から出ているのです。そこで、そういう使用者として支払うべき金が、同じ権利を持つ調教師から支払われる。しかもこれに対して、本来ならば調教師と馬丁とは、その問題については、共助会から出る給付ですから、何も調教師の制約を受ける必要はないはずなんです。けれども、実際問題としては、これは、調教師の意向いかんによって給付がされたりされなかったりしている。これは、調教師が使用者だという立場だから、馬丁に対する給付をするとかしないとかいうことになるのですけれども、調教師が給付せんとするその共助会の金というものは、全額どころか、ほんの一部しか調教師のものは入っておらない。全然ないとは申しません。この点は、まるきり調教師は使用者としての資格を欠いていると私は思うのです。その点、どうお考えかということをお尋ねしている。
  163. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 私が申しました、全額使用者負担と申しまするのは、要するに、労働者がかぶらないという意味で申し上げたのでございます。従いまして、業務上の傷病を受けましたときにおきまして、それが何らかの形で、それに相当する基準法上あるいは労災保険法上の給付が受けられるという意味で申し上げたのでございまして、労災保険に加入しておりません場合に、共助会等の施設を利用いたしまして、ここからそれに相当する金が支給されるという場合は、基準法上の義務は達成されたものである、このように考えます。
  164. 片岡文重

    ○片岡文重君 共助会に出される資金ということを一つ念頭に置かれて、競馬会からその共助会のほとんど九十何パーセントという資金が出されているということをまず念頭に置いて、お考え願いたいと思うのだが、調教師がしからば使用者として、その馬丁に対する労災その他の諸給付を、使用者として行わなければならない給付を行うときに、馬丁の、つまり労働者の負担に全然ならないならば、どこから出てもいいのかということなんですね。これは、たとえば死傷の場合になるかもしらぬが、交通事故等において、被害者が要した金を要求する補償金、賠償金、これを一切他の者が負担をしたならば、その加害者は全然払わなくてもその責めを免かれるだろうか、これはおそらく免かれないだろうと思います。ほかからどんな見舞金が入ろうとも、どんな金が入ってきょうとも、やはり使用者使用者としての責任を果すべきである。ところが、共助会というものは、馬丁も調教師も同じじゃないか。何べんも同じことを繰り返して、はなはだ恐縮だけれども、調教師は使用者としてその給付を行なっているわけではないということ、それをどう思うかとお聞きするわけです。
  165. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 共助会の組織は、このような災害補償などの必要に迫られましたときに、これを事実上支給するというための一つの担保として利用されておるものであろうと思うのであります。そのような制度になっておりまして、それに基いて基準法の災害補償、に相当する給付が行われておれば、それで基準法上の責めは果されたものである、このように考えております。もとより、これにつきまして、労働者側の過半数の希望によって、労災保険に加入するということになりますれば、労災保険から支給されることになるわけでございます。
  166. 片岡文重

    ○片岡文重君 労働者の過半数がというよりも、むしろ大多数が労災保険加入を希望しておることは、先ほど申し上げた通りです。ですから、これはぜひそういう方向にいくように一つやっていただきたい。基準局としても、御尽力をわずらわしたいと思います。共助会の歴史は、先ほど畜産局長が言われましたけれども、私も一応調査はしております。これは、終戦後競馬が国労に移管されたときに、共助会がたしかできたはずです、それ以前はなかったはずです。そのできた経過、それから、中央競馬会に移管された、今日の、何といいますか、時点に立って顧みれば、こういう給付は、民営から国営に移管されたときに、民営のこういうレースについて、国が直接この給付を行うということはおもしろくないということで、この共助会はたしかできたはずです。従って、これが今度再び民営となって、この競馬会にすべてが移されたということであるならば、当然この共助会というものは、もう設置された意義を失ったわけですから、むしろ解消をされてしかるべきものなんです。それが今日解消をされないで、しかも中央競馬会というものは、全額国庫負担によって、その資金は国庫負担によってなされておるのですから、当然これは、やはり国の重大な監督を受くべきものである。この点については、なお十分御質疑を重ねていきたいと思いますけれども、そういうわけで、共助会というものの存在の意義というものは、今日は非常に私は少くとも疑問があると思う。そういう疑問のある機関に、競馬会から年額三千万円余の金が助成金として支弁をされて、その金によって調教師が使用者としての責めを果しておる。こういうやり方は、国の金をもって、言いかえれば、特定人に特別な給付をしておるということにもなろうと思うのです。こういう点について、畜産局長は、どういう  ふうにお考ええになっておられるのか。なお、この共助会というのは、今後もこういう調教師の、何とかいいますか、資金グループといいますか、資金  ブールといいますか、こういう問題に  ついて、なお今後も存置せしめていくお考えなのかどうか。
  167. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 御存じのように、現在の日本競馬会の法律で定めておりまする業務は、共済事業というものは入っておりません。法律的にはそれができないことになっております。その法律があるないの問題じゃなくて、現在の時点において考えました場合に、やはり現在の共助会という制度で行っていいのではないか。ただ、いろいろな内容の問題その他につきまして、いろいろ検討を要すべき点が、これはあるかもしれません。それはそれとして検討いたしたいと考えます。共助会自体の共済事業というものを競馬会に持っていくということまでは、私たちはまだ考えていない状態でございます。
  168. 片岡文重

    ○片岡文重君 どうもこの競馬会、共助会を中心として、私の尋ねておる内容が、よく御理解できないのか、あるいは共助会の内容、それからまた共助会が現に行なっておる諸給付、事業等について十分な把握をされておらないのかどうか、よくわかりませんが、この問題については、なお経理等についてもただしたい点があります。競馬法の内容等についても、十分お尋ねしたいことがありますが、これは労働問題から多少離れるかもしれません。しかし、根本的にはつながる問題だと思う。従って、別な機会に、さらにこの問題についてはお尋ねしたいと思います。どうも今の御答弁では、少し理解に苦しむ点が多いようであります。時間がありませんから、委員長、大体この問題についての今日の質疑は、以上で終りたいと思いますが、さらになるべく近い機会において、この問題について今一度質疑を許されるよう希望しておきます。
  169. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本件に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者なり〕
  170. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。それでは、一般労働問題に関する件の本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十七分散会      —————・—————