運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-03-04 第28回国会 参議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月四日(火曜日)    午前十時三十九分開会     —————————————   委員異動 二月二十八日委員大矢正辞任につ き、その補欠として山下義信君を議長 において指名した。 本日委員松澤靖介辞任につき、その 補欠として秋山長造君を議長において 指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            木島 虎藏君            山下 義信君            中山 福藏君    委員            有馬 英二君            鈴木 万平君            高野 一夫君            谷口弥三郎君            横山 フク君            片岡 文重君            木下 友敬君            藤田藤太郎君            山本 經勝君            竹中 恒夫君    衆議院議員            中山 マサ君   国務大臣    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君   政府委員    厚生政務次官  米田 吉盛君    厚生大臣官房長 太宰 博邦君    厚生大臣官房会    計課長     山本 正淑君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省公衆衛生    局環境衛生部長 尾村 偉久君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選社会保障制度に関する調査の件  (国民年金に関する件)  (銀河丸遺骨収集団に対し本委員会  において行った感謝激励に対する返  電の報告に関する件) ○角膜移植に関する法律案衆議院提  出) ○予防接種法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○旅館業法の一部を改正する法律案  (内閣提出)     —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 委員会を開きます。  委員異動を報告いたします。二月二十八日付をもって大矢正君が辞任され、その補欠として山下義信君が選任されました。
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 理事補欠互選についてお諮りいたします。  委員外転出に伴い欠員中の前理事山下義信君の後任理事補欠互選を行いたいと存じます。その方法は、成規の手続を省略して、便宜その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。それでは、理事山下義信君を指名いたします。
  5. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 社会保障制度に関する調査の一環として、国民年金に関する件を議題といたします。質疑願います。
  6. 山下義信

    山下義信君 本日は、国民年金に関する問題を議題としていただきまして、厚生大臣の御所信を承わりたいと思うのであります。  第一点に、今回農林共済の問題に関連しまして、厚生大臣のおとりになりました態度につきまして、まことに私どもとして納得しがたいものがある。これは、これから御所信を承わってみなければわかりませんが、私どもの印象としましては、また、承知いたしておるところによりますと、この農林共済年金の問題につきましては、当初、厚生大臣は、これに対して了解を与えておられたのではないかと思う。また、農林関係者はそう言っております。また、その証拠には、言うまでもなく、この関係の費用が予算に一千万円計上されております。あなたとしては、同意しなかったとか、承知しなかったとかいうことは、事実としてこれは言えない。ですから、少くとも了承をしておられたと思わなければなりません。おそらく、この当初、あなたがこれを漫然と問題にしておいでにならなかったのは、農林共済組合法案ができても、これに包含するものは、まあ二十万か三十万足らずのもので、大した影響はない、これはやむを得ぬことだという程度に、軽く考えていられたんじゃないかと思う。それがだんだん関係者から問題にされ、指摘せられるに及んで、さらに続いては、いわゆる中政連から年金法案の提案の意図が現われた。この中政連中小企業者年金法をやるということになると、この対象者が千数百万に及んでくる。また、それらの加入者が、厚生年金に入る者が六百五十万ふえてくるということになるというと、厚生年金法が空中分解する。こういうことになってきて、これは大ごとだということになって、今さらのごとく共済年金法に対する反対態度を、いかにも厚生大臣断固として反対するかのごときゼスチュア示して、そうしてあなたの手近な機関を動員して、具体的に言えば、五人委員会という、非公式のあの連中をおだて上げて、そうして共済年金法案反対だということの大きなP・Rをやって、そうして堀木厚生大臣断固として、自分反対であるということの談を発表している。にわかに強硬な反対態度をお示しなさった、われわれも、全くそうだという、同感の意を表しておりますというと、そういうことをなさった。そういうゼスチュアをお示しなさったその翌日には、二月二十五日と承わっておるが、岸、赤城、堀木、この三相の会談によって、直ちにこれがけろっと解決をつけられた。このたびはやむを得ぬことであるから、これは前例にしないということにして了承をしたと、紙上に伝えられておるのであります。私は、この問題に対処せられた厚生大臣としての御態度は、まことに奇怪千万に考えるのです。これは、おそらく三者会談は、ほんの形式的にお開きになった。結局、あなたの方の自民党の選挙対策絶好のこれは題目なんだから、まあまあそうやかましく言うな、まあまあ選挙対策なら、それはしようがないさ、さらさらっと、例によって豹変をなさって、そうしてまた再びこれを了承ということになさったのではないかと見える。これは、この間に処せられた厚生大臣としての御態度というものは、非常に私は、何と申し上げてよろしいのでありますか、奇怪千万と思うんです。国民年金制度を愚弄なさる。この問題に対する厚生大臣としての御誠意は、全くないと言わざるを得ない。これは私の邪推でありますか、曲解でありますか、この際、この問題に対する厚生大臣としての御所信を明確にしていただきたいと思う。これが第一点。
  7. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 農業、山林、漁業関係等共済組合を作りたいというお話は承わっておりました。国民年金制度を担当しなければならない担当大臣としまして、個々の共済組合ができて参りますと、これは、国民年金制度性質上、はなはだ好ましくないことは事実であります。しかしながら、彼らが自分たち負担を多くしても、なお、よりよき年金制度を施行したいという現実の問題が起って参りました。一方におきまして、こちらにおいて年金制度を、かくあるべしという具体的な案を持っておりませんときに、これを阻止すべきかどうかというふうなことは、相当考えざるを得ないことだと思うのであります。現に私立学校の教職員の共済組合法及び地方公務員共済組合等ができた場合に、これらと密接に仕事をいたしております人々の、自分たち相当負担において年金制度を始めたいというふうなことも、私としては十分考慮しなければならない。理屈をいいますると、理論だけでなしに、いろいろ農林漁業共済組合法案そのものの内容について、いろいろ批判すればきりがございませんが、大きな、大局的な立場に立ってものを考えなければならぬ。これは、山下さんもよく御承知通りに、国民年金制度をしきます場合に、これらと調整をしなければならぬことは、ひとり農協関係その他の職員に限ったことではございません。そうすれば、私としては、これを阻止するという段階ではないというふうに考えたのであります。従いまして、経過について新聞紙上伝わっている事柄がいろいろ合せられて、私が何と申しますか、いろいろ考えをふらふらしたようにお考えになるようでありますが、実は初めから、そういう根本的立場に立って、農業関係共済組合のできますことに対しては、私としては、終始一貫そういう態度であったということを申し上げておきます。
  8. 山下義信

    山下義信君 よくわかりました、あなたのお考えは。あなたのお考えはもう終始一貫是認しておられる、今の御答弁では。反対じゃない。その理由とするところは二点ある。今あなたのおっしゃった御答弁の、終始是認をせられた理由二つ示しなさった。一つは、自分たち負担が重くなってもよりよき給付をするような年金法案を作るのならば、阻止する必要がないということが一つなんです。いま一つは、自分の方で案を持っていないのだから、これは阻止する理由がない。こういう二つなんですね。だから、紙上伝えられておる、厚生大臣談としては反対してというようなことは、それは真実ではないので。自分方針としては、現在の段階では、これはやむを得ないのだ、こういう方針だ、こう言う。これは、私は今議論しません、質疑でありますから。驚き入ったる御方針なんです。初めて承わる御方針なんです、実は。こういう御方針であるならば、今後この種の案が続出いたしましても、これを阻止することはできない。また、あなたとしても阻止しないというお考えなんです。私は、これは非常に、ただあぜんとして、驚くほかはない。あの五人委員会とかいうような諸君反対をしている。反対声明をしている。どうあれは引っ込むのでしょうかね。やはり依然としてこれは、五人委員会というような形で、厚生省の一隅にあれがとぐろを巻いているのでしょうかね。のうのうとして、おめおめとして。あの五人委員諸君の顔が見たいです、私は。ばかな道化役者の役目をして、あれが天下の学識経験者ですか。あれが年金問題の権威者ですか。もう失笑にたえませんよ。大きなこぶしを振り上げて、どこべそのこぶしをおろしたのでしょうか。厚生大臣反対ではない、是認をするという方針だ、こう言う。ですから、ここで明確になったことは、現在の段階では、厚生年金法以上の給付を望むものは、自分たち負担を進んでやるからというならば、どんどん作ってもいい、こういう厚生大臣の御方針だと、こういうことなんです。そういう考え方で、いろいろな形態の年金法が続出いたしまして、将来国民年金制度という至上命令の、最高の目標に進んでいく上に、障害にはさらにならない、こういうお考えでございますか。
  9. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 今申し上げたような事柄であればこそ、私どもが、実はこの際に、早く国民年金制度あり方というものを設定することが一番何よりも緊急である、こういうふうに考えまして、私どもとしては、一日も早く国民年金制度の将来の方向を立てて参りたい。と同時に、現在あります厚生年金保険制度につきましても、再検討をして参るということが、これがやはりわれわれのやるべき事柄である。と同時に、社会保障制度審議会の御答申も、また五人委員の御答申も、非常に精力的におやりになって、比較的早く出るんじゃなかろうか、こういうふうに考えますんで、これは、この問題だけに限局されると、いろいろ問題が起ると思いますが、いろいろな制度が、私自身としては、現在の社会保険制度自身もまた沿革的に発達して、そうしてこれについてのいろいろな問題を残しております。従いまして何よりも先に、われわれの基礎的な考え方及び年金あり方につきまして、具体的に方途を決定する。それによって内閣が動くというふうに持っていきたいものである。こういうふうに考えているわけであります。ひとりこの共済組合の問題のみならず、他の共済組合その他とこれについて調整をしなければならぬことは、これはもう、当然なんでありまして、国民年金性質上当然であることなんであります。私としては、その際には、これらと調整をする方途もあわせて講じて参りたい、こういうふうに考えている次第であります。
  10. 山下義信

    山下義信君 私は、きょうは少し興奮しまして、質問の仕方がしどろもどろで、意を尽しかねますが、腹が立ってしようがない。むかむかしてしょうがないんです。それで、もう幾らこれはですね。あなたにやかましく言うてみてもしようがない。そういうのでありますが、しかし、事態を明白にしなければなりませんから、御質問をして、事態を明確にしておくのと、農林共済の問題についての御態度は、もう今質疑いたしまして、あなたの御方針には、あぜんとして言うところを知らぬ。ですから、これ以上議論をする必要はない。ただ私は、もう驚き入っておる。こういう問題が起きた原因はですね。あなたも先ほどのお答えの中でおっしゃったが、実際はですね。あなたがおっしゃった通りなんです。正直におっしゃった通りなんです。国民年金制度に対する案を持っていない。持っていなかったために、阻止することができなかったんです。これは正直におっしゃったが、私はそれは情ないと思うんです。今日まで厚生省所管省は、国民年金制度に対する基本的考え方、御方針というものを持っていなかったということを、実際私は情ないと思うんです。社会保障制度審議会答申が出たら、五人委員会が何か言うてきたら、そういうものを見て、参考にして、それから考えるのだ、この考え方ですね。厚生省の中に流れておったこの考え方ですね。厚生大臣の持っておられたその態度ですね。一体これが、国民年金というものに取り組もうとする所管省所管大臣態度ですか。元来厚生省は、この国民年金に対する態度は、きわめて消極的であって、真剣に取り組もうとする誠意は、厚生省には見られなかった。一日一日、日にちを向うへずらして、世論がどのように要求しようと、われわれがどのように声をからそうと、何だかんだ、四の五の言うて、これをずっと向うへ押しやって、タブーにしてなるべく触れぬように触れぬようにして、何年今日まで日数を重ねてきた。社会保障制度審議会に諮問したのは去年の五月、彼らの怠慢は、私はこれは別に責めなければならぬが、この社会保障制度審議会諸君は、一体何をしているか。当初彼らは、この年金問題の審議を二年、三年を要すると、のんべんだらりとやっておった。国会で声が高ぐなるや、急遽周章ろうばいして、何か一夜づけのものを作ろうとして、何かばたばたやっている。五人委員会というものを作ったりして、のんべんだらりと、海外を見てくるだの、どうするだの、そして厚生省中枢幹部は、国民年金というものは容易にやれるものじゃない。慎重にやらなければならぬのだ。二年、三年腰を据えて検討しなきゃならぬ、その言いわけは、その理由はもっともらしい。もっともらしいが、結局、国民年金と取り組もうという熱意はきわめて稀薄であった。敬遠しておったのです。拙速をやれば失敗する。イギリスがどうのこうのと、くだらぬへ理屈を並べたてて、真剣にこれと取り組もうとする熱意は寸毫もなかった。だから、厚生省としては、国民年金制度に対するところの構想もなければ、何にもない。なかったのであります。驚き入るのほかはない。私どもは、おなじみのあなた方のお役所であり、大臣ですから、こういうことはとっくに知っておったんでありますけれども、黙して、じっと忍耐して、あなた方の作業の積極的にお進みになるのを待っておった。何ですか、今日までの態度は。そうしてですよ。一国の総理大臣厚生大臣も、この国民年金制度に対する何らかの構想も持っていないということは何事なんです。審議会答申が出たら、五人委員会が何とか口上を並べたてたら考えてみる。彼らは彼らでいいじゃありませんか。あなた方はあなた方で何らかの構想を、総理大臣としてはこういう構想を持っておるのだ。厚生大臣、君はどう思うか。厚生大臣としては、僕はこういう大体の構想なんだが、おれはこういう方針を持っているのだが、事務当局にも検討させておるが、審議会が何らかの参考案を出したら、これは参考にするけれども厚生大臣としてはこういう方針だということが、少くともあなた方としては、独自の御構想というか、お考えがなくちゃならぬ。何にも無方針で、無構想で、何にも考えがないのだということではないはずであります。私はそう思う。属僚に作業をお命じになるのでも、おれはこういう構想なんだ。この国民年金制度に対して、堀木厚相はこういう構想を持っている。これを骨子にして作業を進めろ。こういう御指示をなすべきだ。あるいはなさっておるのかもしれませんけれども、ですから、何ら案を持っていないということが、今日この国民年金制度が、世論がやかましくても、一歩も前進する見込みもないし、様子もないし、そうしてこの種のその進行を、何というか、撹乱するような各種の案が他の方面から出てくるこれが最大の原因なんです。しかし、こうなって参りますと、国民年金制度国会でも議論され、あなたもしばしば御答弁に相なり、御声明に相なって参りますると、お考えがあるのだろうと思う。私は、この際、厚生大臣としては、国民年金制度に対してどういうふうな基本的なお考えを持っておいでになるのかということのもしお考えがあるならば、この際、お聞かせを願いたいと思うのです。
  11. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 年金制度を創設することが非常に重大な問題であり、その基礎的な諸材料の合理的な検討というものが積み重ねられなければならぬことは、これは、誰よりも山下委員が私は御承知のはずだと思うのであります。従いまして、何と申しますか、私ども準備が御期待のように進まなかったという点については、これは、私も十分おしかりを受けることはよくわかります。わかりますが、しかしながら、この制度を創設するのに、ある程度の時間をかしていただかなければならぬことも、これは、山下委員がよく御承知通りであります。大体二年間の準備期間というものは、率直に言って、これだけの制度を創設しますのには、私は、最小限度期間じゃなかろうか、こういうふうにすら考えております。まあしかし、私自身、今申し上げましたように、こういうふうな状況になって参りましたときに、われわれ自身が具体的な構想を持たないでいるということがすべての根幹である。で、ああも考えられる、こうも考えられるということだけでは、とうていこれは、現実の問題に処して参るわけには参りません。従いまして、私としては、まあ率直に申せば、相当基礎的な資料というものができて参りました。しかし、まだ足りませんが、それよりも早く、具体的な構想の上に立っての資料を取り上げて、そうして準備を急ぐということも、私は、準備準備と言っていて、ただ、いろいろな学究的な基礎資料だけをとっておる、外国制度だけを比較して考えておるということだけでは許されない事態である。従いまして、いろいろな具体案を作って、そうしてむしろその具体案に基いて、いろいろ御批判を受ける方が、かえって事務を進捗するのでなかろうかというふうに考えまして、最近には、事務当局をそういうふうな観点から物事を指導して参っておるような次第でございます。しかし、それだからといって、お前はどういう考え方を持っているのだと言われるのは、今の段階では、私は実は差し控えたいと思うのであります。五人委員の方も、すでに相当構想がまとまって、そう遠くないときに、自分たち考えができるようであります。それから、社会保障制度審議会の方も、今、山下さんのおっしゃるように、相当答申を急いでおられるというふうな状況でございますので、私は、何も、自分がこう考える、ああ考えると言って、あとでまた、お前ふらふらしているじゃないかと怒られるぐらいのことは覚悟いたしますが、もうそういう段階になって参っておりますので、私自身考えているようなことをこの際に申し上げる段階ではない、こういうふうに考えますので、しばらく御猶予を願いたい。またお前そんなことを言って、答申と、五人委員会のかさに隠れるのじゃないかと言われるかもしれませんが、まあ私が厚生大臣であります限り、この問題は、精力的に取り組んで参りたいと、これは、御約束することができると思います。私自身がこの問題に取り組む限りにおいては、今回こそ、国民年金制度について、自分としての満想をはっきり立てて参りたい、こう考えておるような次第でございます。
  12. 山下義信

    山下義信君 堀木厚生大臣、練達堪能な、しかも、有数な政策マンとして名のあるあなたが、国民年金制度に対する一つ構想、お考えのないはずはない、私はそう思う。しかし、今はそれを言う段階でないということは、これはあなたのお考えですから、私は強要する必要はありませんが、しかし、今日をおいて、ある程度の、大体のあなたの所信を表明なさる機会はもう他にないのではないかと思う。絶好機会であると思うのです。世論が高まってきて、所管厚生大臣が一体どういう大体の方針を持っているのだろうということを聞こうとする、この要求は、私は今非常に高いものがあると思う。しかし、あなたが、審議会の何か答申がまだ出ない先に言うのは適当でないというような理由で、この機会をおとらえにならないことは、私は遺憾に思う。年金制度検討に時日を要しますことは、言うまでもない。しかし私は、イギリスに行きませんからわかりませんが、ただ文献に見るだけですが、イギリス年金制度検討に三年要した、どこでは四年を要した、数年を要した、日本だって二年を、要するだろう、その二年、三年は、いまの審議会とか五人何とかというようなものが小田原評定をやるような、ああいう審議で二年、三年日子を要したのではありませんよ。イギリス年金制度に三年を要した、その大半は、皆ことごとく一定の構想方針のもとに、アクチュアリーが詳細な保険数理の計算をするのに要した時間なんです。この審議に一年も二年も、のんべんだらりとお茶を飲みながら、ああでもない、こうでもないと、議論に堂々めぐりして、一年も二年もかかった国がどこにありますか、あったら、一つ出してごらんなさい。今日においては、日本国民年金制度は、大体の構想をお示しになって、A案でもB案でも、大体の方針をお示しになって、アクチュアリー作業する段階ですよ。のんべんだらりと議論に日を重ねておる段階では私はないと思う。諸外国が要した日数は、そういう審議に要したのではありません。あなた、今日大体この方針で行こう、被用者保険一般国民との二本立てで行こう、適用範囲はこうしよう、あるいは保険料はこういう方針で行こう、何の方針で行こう、こういう大体の方針示したら、あとアクチュアル仕事ですよ。そのアクチュアル仕事の結果をごらんになれば、それが決定の段階です。それに一年も二年も要するのです。そういう議論をしておってもしようがありませんが、しかし、お考えがないといっても、先般は、何か厚生省の試案というものをお示しになったということですが、また、さらにそれにつけ加えて、最近何か案を練っておられるということでありますが、それは、あなたの御方針ではないのですか。
  13. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 先ほどの私の御答弁に申し上げましたように、大体山下さんと同じ考え方だから、論議に日を暮すよりも、いろいろな具体案について、実際にアクチュアリーがそれに従って物事を研究していく、そして原則に立ち返ることも必要じゃないか、そういう一方的な調査のやり方ですと、とかく調査調査に日を送るという傾きが日本ではできてくるというので私が言ったと申し上げたのですが、これは山下さんのお考え方と私は方向は違わないと思うのです。  実は、決して厚生省事務当局も、全然考え方がないわけでもございません。と同時に、御承知通り、五人委員会は、やはりいろいろな統計を必要としますし、従って、私どもの方といろいろ根本的な話し合いもできて参る。また、社会保障制度審議会方向的な考え方というものも、ほぼ私どもとしては推測できるというふうになりますれば、ここに私ども考え方をまとめなければならぬ。この間新聞に出ましたのは、今まで事務当局考えておる各種の案を私が取り寄せて検討をし始めたところでございます。段階としては、そういうところでございますので、こういう席上で、私が責任のある、堀木構想はどういうものだということを申し上げるのは、やはり少し早いのじゃないか。もう少し時期をかして——まあせっかくの機会で、当然社労の常任委員会においてそういう考え方を述べさしていただくことは、私としても好むところでありますが、今の段階では、私はまだ差し控える段階ではなかろうか。決して私、何と申しますか、奥歯にもののはさまったような言い方をしておるわけではございません。真実今、そう考えておりますので、いま少し御猶予願いたいということを申し上げる次第であります。
  14. 山下義信

    山下義信君 社会党は、昭和三十四年度から国民年金制を実施するという案を持っております。これは、天下に公表しました。ことに同僚藤田藤太郎議員は、その中心になって努力してもらったのであります。社会党は、昭和三十四年からこれを実施するのであります。あなたの方の自民党政府は、三十四年には間に合いませんね。いつのことになるかもわかりませんね。御検討もない、案もないようでありますから、とても、今のお話では、三十五年にも三十六年にも、とうてい実施のできそうなお見込みはないようでありますね。その辺の何か御見当でもお持ちでございましょうか。
  15. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 社会党の案というものも、私拝見しまして、自分自身考えておるところであります。しかし、ともかくもこれについて、私どもがいろいろ御批判する必要もないことだと思うのであります。ただ、五人委員を置きまして、私どもの方としても、これに照応して、事務的な仕事を相対応して進めておりますので、私どもとしては、これは、割合に早く具体的な構想がまとまり得るのじゃなかろうか、こういうふうに考えておるのであります。むろんこれは、言うまでもないことでありますが、やはり何も、国民年金制度自身が、国民の所得、経済の繁栄というものと離れたものじゃございませんので、そういう問題もあわせて考えて参りますと、相当困難な問題はありますが、私が厚生大臣でいる限りは、できるだけこの問題と早く取っ組みたい、決してじんぜん日を送りたくない。これはもう、山下さんよく御承知だと思うのですが、少し急ぎ過ぎるくらい私としては物事をやった。厚生省の体制もそれに照応したもので、第三者からごらんになっても、なるほどあそこまでやっておるのかと言われるようにいたしたい。今、せっかく努力中でございます。
  16. 山下義信

    山下義信君 社会党の国民年金制案を御批判下さってようございますよ。御批判いただきますれば、またディスカッションいたしましてよろしゅうございますが、私は、この際、現在の厚生年金法について、改正の御意思があるかどうかということを承わってみたいと思うのです。これは、先ほどおっしゃいましたが、今の厚生年金法をこのままにしておいでになるということでは、たとえば、中政連の問題が出ましても、これは阻止することができません、これはまた、そのときには、政府案じゃないのだ、議員提案だから、われわれの関知するところじゃない。こうあるいは逃げ口上ができるかもしれません。これは、出てくることは必至であります。これは、厚生年金法の改正をお急ぎにならなければ、どんなことをおっしゃっても、理論的にはそれを阻止することはできません。それとも、厚生年金法はもう何も残らないのだから、これは分解してしまってもいいのだ、今のような各種の特長のある制度をずっとそのままにしておいて、そうしてその底流というか、基盤というか、共通的なものだけを一つ厚生年金法で、まあしりぬぐいするような制度に残しておくのだというお考えがあるならばともかくでありますが、厚生年金法が将来国民年金の少くとも中枢になっていこうという、しかも、被用者保険のこれが根本法にしていくのだというお考えならば、当然厚生年金法の改正に手をおつけにならなければならぬはずだ。しかも、言うまでもなく、五年目に改訂をしなければならぬという時期も来ておるわけでありますから、この厚生年金法の改正については、どういうふうな考えを持っておられますか。大体どういう点を改正しようと企図しておられますか。また、この国会に御提出になりますか。あるいはまた、この国会には間に会わないで、次の機会に御提案の御意思でありますか。大体のお見通しは、どういうふうに考えておられますか。これは非常に重大でありまして、厚生年金法に対しまする厚生大臣としての御所見は、影響するところ大であると思いますから、でき得れば詳細にお示しを願いたいと思う。
  17. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 現在あります厚生年金制度につきまして、率直に言って、私、最近に、改正をすべしという考え方で、事務当局に命じたところでございます。先ほどお話申し上げましたように、国民年金制度を創設するに当って、さらに現在の厚生年金保険制度を再検討しなくてはならぬというところから、再検討をすべしというふうな考え方で、事務当局に今検討を命じたところでございます。今のところ、時期的に本国会には私は間に合わぬと思います。しかし、これもどうしてもあわせて再検討しなければ、国民年金制度創設に対しての考え方と一貫したものでなければならぬのじゃないか。ことに千万人余に及びます現在の厚生年金保険制度というものをどうしても根幹に考えて参りますとすれば、当然のことでなかろうか、そう思って、命じておるような次第でございます。
  18. 山下義信

    山下義信君 何もお答えになりませんね。ことさらに御答弁はないようであります。大臣の忙しい時間についてお尋ねするのでありますから、こまかいことは、事務当局答弁は、私は求めないでいたのでありますが、厚生年金の改正の問題点について御答弁のできまする事務当局は、出席しておられますか。どういう点が問題点で、どういう点を検討しているということの御説明を願いたいと思う。この席には、太宰官房長が出席しておる。黒木企画室長が出席しておる。栃本年金課長も出席しておる。そのうちで、だれが主管しておるか。だれが国民年金制の問題と取っ組んでいるか。取っ組んでいる人の御説明をわずらわしたい。
  19. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) ただいまのところ、国民年金制度準備と申しますか、そういう事務は、官房長の企画室が大体中心になってやっておりますので、便宜官房長の私から御答弁申し上げます。  ただいまの厚生年金保険法の改正に当っての問題点というような御趣旨でございますが、先ほど御指摘になりましたように、これは、年金保険法の八十一条によりまして、五年目ごとに料率の再計算なり、財政関係の再計算をしなければならぬことになっております。その時期が大体明年になります。従いまして、私どもといたしましても、明年の国会には、法律改正というような御審議をわずらわさなければならないものと考えましてただいま事務当局の方、そのいろいろな点について検討をいたしておるわけでございます。まだ大臣まで申し上げますまでに至っておらないのでございますが、いろいろその際に、国民年金制度の方の構想も固まって参ることと存じまするので、それとの見合いの点も、当然検討しなければなりません。そういう点なども頭に入れながら、考えておる次第でございます。  厚生年金保険法の改正それ自体は、保険局の所管でございますので、私から詳細を申し上げることもあるいは不可能かと思いますけれども、やはり問題点として考えられますのは、その第一は、適用範囲を、ただいまの指定の分からこれを拡大するというようなことについて、どこまで拡大できるか。あるいはそういう方法はどうなるかというような点が第一の問題点であろうと思います。  それから第二には、給付額の問題でございます。御承知通り、ただいまは、定額分として二万四千円、それから報酬比例分というものがそれに付加されることになっておりますが、この両者の関係等につきましても、検討を要する点が出て参ろうかと存じます。  それから、第三の点につきましては、この標準報酬のきめ方の問題でございます、現制度では、最低限は三千円で、最高限が一万八千円であったかと思いますが、これは、御承知通り、健康保険などとの間には、バランスのとれないほどの大きな開きがあるので、これのきめ方を一つ検討しなければならないのじゃないか。  それから、その次の第四番目の段階におきまして、料率の問題でございます。現在は、まあ第一種の方が千分の三十ということは御承知でありますが、これは、このままではとうていいくまいと私ども思っておるのでありますが、それをどの程度にまでこの料率を引き上げることが可能であるかどうかというような点につきまして、問題点があろうかと存じます。  あるいは、ちょっと若干漏れた点があるかと思いますが、その辺が、年金保険法の改正に当りまして、私どもが具体的につかまえなければならない問題点であろうかと存じます。
  20. 山下義信

    山下義信君 きょうは、国民年金問題を議題にしていただきまして、当局の所見を伺うということの予定で、すでに十日以前から決定せられていようかと思いますが、当局の私どもの質疑に対しまする御答弁態度は、きわめて誠意のない御態度である。真剣に、われわれとともに、国民のために意見を交換しようというお考えが寸毫もない。厚生大臣も、厚生省当局も、全く御誠意のない、これは、私の質問の仕方が悪いから、そういうふうな御態度に出られたのかもしれませんが、御誠意のない態度であると思いますから、質問はやめます。いたしません。  しかしながら、一言言うておきます。愚弄しておるです。実にけしからぬ態度をおとりになる。私どもも、新国会以来ここに議席を続けております。終戦以来十数人の厚生大臣を送り迎えしたが、あなたのような誠意のない厚生大臣は初めて見た。戦後最悪の厚生大臣だ、失礼ながら。先般健康保険の三十億のときにも申し上げた。全くこの社会保障制度を踏みにじった。あなたの在任中、一点のプラスもわが国の社会保障制度にはしない。そうして今度のごとく、混乱に陥れて、実に最悪の厚生大臣をここに見る。私は、日本の厚生行政の上に実に不幸だと思います。質問をやめます。このあなたの応答の態度は何ですか。失礼千万だ。あなたも議員の一人でしょう。私どもは伺うのに、ただ単に、一片の道聴途説をもって質問をしておりません。私も、調べるだけは調べ、検討するだけは検討して、あなたの御答弁を深く傾聴して、実のある検討を進めたいと、私どもは、足らずながら、熱意をもって伺うのです。愚弄しておる。他日あなたの責任を追及します。そういう態度で、あと何カ月その任におとどまりになるか存じませんが、私は、あなたの責任を追及します。こういう厚生大臣を一日でもその地位に置くことは、国民の不幸だ。寸毫の誠意も認められない。何ですか、今までの御答弁は。あなたはそれでも、良識のある、良心のある、まじめな政治家ですか。何ですか。こういう厚生大臣を見たことがない、歴代の厚生大臣で。ふまじめに答弁をする。ごまかしばかりじゃないですか。健康保険に対する国庫負担もごまかし、医療費の予算措置もごまかしだ。うそだ。あなたが国会答弁していることはうそだ。出している資料もうそだ。事実を明らかにして対決しようか。医療費の八・五%の予算措置をしているということはうそだ。うその数字を出している。私は、席をあらためてお尋ねするときもあろうと思いますが、そのときに明らかにしますが、ごまかしばっかりやっている。今回の農業共済の問題でも、何ですか、あなたの態度は……。初めから了承しておるのじゃありませんか。いかにも反対するかのごとくに、いかにも国民に対して忠実であるかのごとくに、声を大にして反対しているかのごとく宣伝しているが、終始一貫したことは一つもありません。委員会に臨むや、答弁もでたらめな答弁をしている。なぜ、もっとまじめにこの委員会を尊重なさらぬのですか。一言忠告しておきます。
  21. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 大へんおしかりを受けましたが、私は、委員会を愚弄した覚えはございません。そういう個人的な御批判については……。
  22. 山下義信

    山下義信君 個人的じゃありません。厚生大臣としてのあなたの態度を責めています。
  23. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 私は、決して愚弄したことはございません。また、年金制度についても、真実を語っているだけであります。あなた自身もお認めになっているように、準備段階がそこまで行ってないことは、あなた自身もお認めの通りであります。そういうふうなお考え方につきましては、それは、御批判は自由でありますが、私自身は、うなずくことができないということをはっきり申し上げておきます。
  24. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、厚生大臣に聞きたいのですが、内閣の一員として厚生大臣はおられる。岸さんは、盛んに貧乏を追放すると言っている。厚生白書を見ると、千百十三万のボーダーラインがおる。一番肝心なものは、年金制度と医療制度の確立じゃないか。これをやらない限り、貧乏もなくならぬし、生活に苦しんでいる人は解消しないのじゃないか。宣伝だけで事を終って、具体的に厚生行政でこの問題を取り上げていくという構えがない。今は審議会にかけている、こういうことをおっしゃいますけれども、実際にもっと積極性がなければ、私はこういうことはできないと思うのです。私も、先日この委員会で、年金の問題の資料を要求いたしました。もらった資料は何ですか。年金資料なんて、何にもないじゃないですか。審議会におまかせしているとおっしゃれば、それまでかもしれませんけれども、厚生行政を担当して、千百十三万のボーダーラインを出していると厚生白書に書いておる。年金の問題の資料を私は要求いたしました。もらった資料は何ですか。年金らしい資料一つもないじゃありませんか。私は、厚生大臣以下厚生省の怠慢を非難したい。山下委員に続いて、私は非難したいと思うのです。
  25. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 私ども自身、従来よりのこの年金制度について、準備の問題でお責めになるのは、私もある程度受けます。しかし、私、厚生大臣になって半歳、医療費の問題一つをとっても、六年間かかった問題であります。少くとも私は、わずか半歳の間に、何とか一歩でも前進いたしたいというふうに、解決に努力いたしました。今国会におきましても、それの関係予算及び法案を準備いたすような状況になっております。国民年金制度についてのおしかりは万々だと思いますが、これだけの重大問題を、半歳やそこらで、私に具体的な答弁をお求めになること自身が非常に無理でなかろうか。私は、一つ一つ物事を片づけていかなければならぬと思います。私自身もそういう趣旨で、今後は、国民年金問題と、私の寿命がある限りは取っ組みたい。むろん非常に悪い厚生大臣かもしれませんが、任を厚生大臣に受けております以上は、全精力を上げて、この問題と今後取っ組みたいというふうな段階であります。従いまして、これはもう、うそも隠しもない、事実その段階なんですから。私にそう一ぺんにみんな解決しろといっても、事実これは、現実の問題として不可能でございます。また、財政的な問題自体も、責任者として考慮しなければならぬことも当然であります。それらの点はついて今後私としては、全力をあげて年金制度については検討を進めて参りたい、こういうことを申し上げるよりほかないと思います。
  26. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 大臣のそのおっしゃる気持は、私はわかると思う。一生懸命やりたいという気持はわかる。しかし、半歳になったと言われますけれども、それでは、われわれ議員が今の政府の政策とマッチして……厚生年金というのは、もう国際的にどれだけ進んでいるかということは、よく御存じだと思う。または、今の千百十三万のボーダー・ラインをどうしていくかということは、医療制度年金制度二つだと思う。これが確立しなければ、貧乏人なんてなくならないですよ。それに、出てきた資料は何ですか、これ。外国のちょっと一枚刷ってきた資料、これ一枚ですよ。このほかには、審議会の経過や何かありますけれども年金をやろうという資料、まとまった、出していただいた資料は、久保まち子さんの「全国民を対象とする老齢年金制度試案」というのが一つ、私の方の出しました社会党の案が一つです。厚生省資料というのは何もない。これで、半年間と、今、厚生大臣はおっしゃいましたけれども厚生年金、要するに、国民年金というものをやろうとする気持があったのかどうか、私は疑わざるを得ない。気持は一生懸命やるとおっしゃるのですから、それ以上追及はいたしませんけれども、実際に半年の間に何をされたのですか。私は、この点は非常に不満です。だから私は、一、ニここで、きょうは概念の問題について伺っておきたいと思います。  たとえば、国際労働機関のILOで、四十八号と百二号の年金に関する条約を作っております。こういう条約に関する内容と、これに対する政府の考え方を、私はまず第一に聞きたいと思います。事務当局でけっこうです。
  27. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) ちょっと資料が……。社会保障の最低基準に関する条約というのがございます。これは、三十五回の総会で採択になったものでございまして、これも、私ども内部でよりより検討いたしております。また、そこに書いてありまするものは、わが国が諸外国に見せましても恥かしくない年金制度を作ります際には、当然に、何と申しますか、参考にしながら考えていくよりどころであろうかと、かように考えておるわけであります。
  28. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それは何号ですか。
  29. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 百二号の方です。
  30. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 四十八号はどうですか。
  31. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 四十八号は、今ちょっとあれですが、これは、ゼネバかフィラデルフィアのあれですか、ちょっと資料を今持ち合せていないのですが……。
  32. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 一九五二年です。
  33. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) ちょっと資料を……。
  34. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、もう一つお尋ねしたい。国際的に、年金制度というものをどういう工合にやっているか、この資料については、私は資料を要求したのに、出てこないのです。どういう工合に今の国際的な、年金制度を、老後を保障するという具体的な行政の問題を、各国がどうやっているか このことをあらまし一つお答えを願いたい、事務当局から。
  35. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 諸外国年金制度状況などについて、わが国の国民年金制度準備いたします際に、当然検討せねばならない事項でございますので、私の方でも、内部的に検討させております。お手元に一枚刷りと申し上げましたのは、多分それの要約を差し上げたものかと思うのでございますが、年金制度を実施している国は、相当たくさんございます。しかしながら、私ども参考にいたしますようなものは、比較的そういう方面の制度が進んでいると申しますか、というようなところを参考にしておるわけでございますから、それは、英、米、仏あるいはニュージーランド、スェーデン、西ドイツ等であります。その詳細を今ここで申し上げるのはいかがかと思いますけれども、それは抜きにいたしまして、各国それぞれ必ずしも同じ方式をとっておるのではないようでございまして、これは、やはりその国々の置かれた立地条件あるいは物の考え方、国民感情、そういういろいろなものが集約されて、そういう制度の差となってきていると思います。従って、そういう各国の制度は、私どもは十分に参考にいたさねばならないことは、万事承知いたしておりますが、しかし、わが国はわが国の違った情勢がありますので、それは、国民経済とか、人口の趨勢とか、あるいはこういう年金制度に対する国民の基本的な物の考え方がどの程度熟しているかというようなこと等をにらみ合せて、これは考えて物を進めて参りませんことには、たとえ理論的に割り切れたものでも、実際にはそれは成功しない、こういうことにもなろうと思いますので、従って、そういう面においては、諸外国の先進国の例は十二分に参考にしますけれども、わが国はわが国の特殊事情がありますので、その実態というものとにらみ合せ、これまた十二分に考えながら、これを実施して参りたい。基本的には、そういう考えでこれを検討しておる次第であります。
  36. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いろいろのものを考えなければならないと言っている間に、何年でも過ぎている。それなら何も、貧乏をなくするということは、政府ではお言いにならない方がいい。貧乏人は、昨年からもっと百万もふえている。そういうことをおっしゃるけれども、何のかのと言って、準備は何もできていない。どれだけ審議会でおやりになっておるか知らないけれども審議会の内容は、われわれには全然わからない。きょうは年金があるのだから、審議会の方がおいでになって、審議会の内容をここで説明されれば、幾らかわかると私は思う。私が資料を要求しても、これだけしかない。それでは、この年金の問題を審議会でやっている、そのやっている資料をお出しになったらいい。ここは国会ですよ、そういうことは知らぬ顔をしておいて、いろいろのものを検討しますと、そういうことではいかないと私は思う。岸さんが総理大臣になられてから、もう一年になると思う。この関係においては、今のようなことについては、非常に残念だと私は思う。だから、これに関連して、今直ちに資料を要求しておきます。外国の一切の年金資料を出していただきたい。それから、審議会でおやりになっておる資料として作ったものを全部出していただきたい。この資料をまず要求しておきます。  それから、私はお尋ねしたいのだけれども国民年金というのは、どの角度から見ても、全国民を対象にするというのは、これはもう、だれが見ても同じだと思う。この点についてはどうですか。一つずつ聞いていきたいと思う。答えていただきたい。
  37. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 年金という以上は、統一的であり、ここに通算という問題がある以上は、年金制度の本質上統一的でなくちゃいけない、総合的でなくちゃいけないということは、もう当然だと思います。
  38. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、具体的な問題となってくるのですけれども、例えば、保険制度として年金制度をお作りになる気持なのか、年金税というような格好で、国の税金として取って年金をお作りになるつもりなのか、ここのところを聞いておきたい。
  39. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 保険料式にいくか、保険税式にいくかという具体的な問題については、今考慮中でございますが、率直に言って、今具体的にお聞きを願っても、私が先ほど、それじゃ厚生大臣はこういう考えを持っているんだという考え方では、そういう固定した考え方を持っておりません。いやしくも社会保障制度審議会なり、五人委員に委嘱いたしましてやっております以上は、当然私どもとしても、その御答申を尊重するのでありまして、具体的には今のところ、考え方はいろいろあるということは申し上げられるかもしれませんが、こういう委員会でもってこう考えておるというふうな、決定的なものを申し上げる段階ではない。これはもう、山下委員が幾ら不誠意とおっしゃっても、ほかの方々にも、私はそれよりほかない、こう考えております。
  40. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、その点は非常に不満です。今度資料を出すときまでには、厚生省の、大まかな、大臣としての考え方一つお聞かせ願いたい。それから、もう一つの問題、今の厚生年金は、来年度が五年目だから、どうせ改正案を出さなければならぬとおっしゃいましたけれども、今の厚生年金は月二千円ですが、調整金入れて平均三千円くらいになると私は思う。この額で、老後の保障というものができると考えるのでしょうか。これが一つ。それから、厚生年金利用者、六百万をこえている六十才以上の老人、相当金を持って、ゆたかな人もその中にはあるでしょうが、ほとんどの人が生活に困っている。この方々の生活をどういうくらいの制度を設ければ、その生活が守れるとお考えになっているか、そこを一つ聞いておきたい。
  41. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) つまり厚生年金制度に再検討を加えなくちゃいけないということは、厚生年金制度自身に私は魅力のあるものでなければならないというふうに考えております。そしてその一体幾らのものが自分の老後の生活を維持できるかというような問題について考えなきゃならない問題、結局しかし、その問題が一つの大きな魅力だと思う。しかし、観念的には、この問題について、幾らがいいかという場合に、単純に、多ければ多いほどいいということは言えないと思うのであります。それがやはり、先ほどから申し上げた日本国民経済の現状なり、あるいは人口構成の将来の趨勢なりというものによって決定されるのでありまするから、ただ多いからいいとだけも私どもとしては言い切れない。そこに非常にむずかしい問題があるわけでありましてわれわれとして、ただ私自身の今の考え方は、厚生年金制度自身がやはり、もう少し国民から見まして、魅力のあるものにいたしたい。できるだけいたしたい。可能なかぎりいたしたい。こういう考え方で、今再検討を命じておるような次第でございます。
  42. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 魅力があるというのは、私はものの言い方がどうも気に食わん。生活をどう守って、今のボーダーラインをどうなくし、貧乏人をなくするかという建前に立って年金制度というものを作ってもらわなければ、私は意味がないと思う。そういう建前に私は立ってもらいたいと思う。そこで、問題はですね、この今の大臣構想によって、六十才以上の方々の生活を守っていこうとする場合に、財源はどのくらい要ると判定されているか。
  43. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 財源がきまれば、もう大体きまってくるのでありまして、財源が今幾らに何しておるかとおっしゃること自体が、先ほど私が山下委員に答えている点からお考えになれば、無理な御注文であるということは、おわかり願えると思う。財源の計算さえ考えられなかったら、幾らでも……。魅力という言葉はおきらいだそうですが、生活を守るような金額をきめることが一番いいにきまっておる。しかしこれも、国民年金制度の各国からの一つの通例的な原則というものもありますから、全部かみ合せてものを考えるよりしようがない。一つ一つの問題でないと私は考えております。
  44. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それじゃ、まあそれに関連して、無理だとおっしゃるなら、その問題は聞きますまい。しかし、私は振り返ってみて、岸内閣になってから一年以上たつのに、年金の問題は、肝心のこの厚生行政を担当しているところがこういう状態で、いつの日や年金ができるであろうかという不安を持つのです。大臣は、早急にやりたい。私の在任中にはやりたいとおっしゃるけれども、私は、そのいつの日やということを言いたくなってしまう。私は、根本的に一つ大臣が積極的に今度の国会でも出すという心構えで私は作ってもらわなければならぬ。ところが、まあことしは出せん。一体審議会答申はいつ出るんですか。
  45. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) こういうところですから、気持だけ申し上げてもしようがない。私としては、むろん他の場合にも答えましたように、一日もすみやかならんことを期待して、せっかく急いでいるわけでありますが、実は、先ほども申し上げましたように、五人委員会答申も、それから、社会保障制度審議会の方も相当急いでおられます。われわれは、最初に、あの審議の模様から見て、相当日数がかかるものだと考えておったんでありますが、私自身も、五人委員なりあるいは社会保障制度審議会年金委員長をしておられる藤林さんにお目にかかって、最近、その審議の経過及び御答申方向、御答申の時期等というものが、私ども事務段階と照応してやりたいというので、御相談申し上げました。案外早く出てくるんじゃなかろうか。従来われわれが申し上げておりましたような、あるいは五月か六月という考え方よりは早いものだ。こういうふうに私は今考えております。
  46. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、予算措置の問題なんですが、一千八十万円ですか、これだけしかお取りになっていないんです。構想自身が、年金をやろうという構想が、三千万円の要求で千八十万円ですか、こういうことになっておるんです。私は、年金というものがいかに大事だかという問題、二本の柱だと思う。医療制度年金。ただ三千万円の要求で千百万円にとどまった。これでほんとうに年金制度というものが、りっぱに五人の委員にまかせておいて、フリーに活動ができて、りっぱな年金ができるという、これは、予算の問題になるのですけれども、これから見ても、私は非常に疑問に思ったんです。だから、この点でですね。いまだに厚生省には資料ができてないというんだが、これは、事務当局でけっこうですから、これは、どういう構想でこれだけの予算の使い方をおきめになるのですか。使われるのですか。そこのところを聞きたい。
  47. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 三十三年度の予算の計画といたしましては、国民が、こういう国民年金制度を実施いたしました場合に、どの程度の醵出能力があろうかというようなことが一つでございます。その辺に関連する調査をいたしております。それからなお、一度世論調査みたいなものをしてみたい。それから、国民が、こういう年金制度をアクトしたところで、みんなやってくれという機運が盛り上っていることは、私どもも感じますけれども、しかしそれは、たとえば全部自分たちは出さないで、国からいただけるんだというような程度の甘い考えでおるのか、あるいはこの醵出をこれくらいのものが、もしそういう醵出方式をとるとした場合には、それに相当の醵出をしなければならぬわけでございますが、そういうものと、それから受けます給付との関連、そういうふうな点を突きまして、国民がどの程度具体的な面の知識を持っておるかというようなものも一つやってみたい。そのほかに、数字計算なども、ちょっちょっとした点でせなければならぬ点もありますので、そういうような点も一応考えておる次第であります。
  48. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、官房長の言では、保険制度でいくのか、醵出制度でいくのか、いろいろの構想があるが、厚生省は、たとえば醵出なら醵出を重点にいくならいくと、税金で、国民税として一切取るのならば取る、その構想すら大臣はお答えにならない、きまっていないんじゃないか。それなら、何を基礎にしてこれだけぐらいの費用で大体そんなことができるんですか、実際問題として。
  49. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) これは、醵出制度を大体中心にすることは、従来の社会保障制度審議会の大体の方向としてきまっているんじゃないか、私どももそう考える。社会党の方の案も、醵出制度を中心にしておられるようで、その点は、そう食い違いがなくていくんじゃなかろうかという考え方であります。
  50. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 先ほどのときには、一切何もノー・コメントだったが、そういう問題についてはそういうことが考えられるんじゃないか、厚生省としての態度考え方というのは、そうするとまだきまっていないわけですね。
  51. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 私がまだ全体に、基本的にこまかく方針をきめてやるだけの段階には立っておりません。
  52. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そういう段階議論をここでせなければならぬとは、非常に私は情ないと思うんです。一つ構想と基本方針がきまって、計算に入る段階になってからでも、私は相当な日にちがかかると思う。まだどっちにするか、どっちに船が向くかわからぬ状態で、これから対岸の目的地へ船をつけようという重大な問題を、早急にやりたいとおっしゃっても、実際問題としてわれわれは納得できない。だから、私は、きょうは具体的に内容に入るのはやめますけれども、実際にこれは残念なことだと思います。今度、われわれ自身国会で十分に検討するだけの資料をこの次の委員会にもお出し願えるものだと思いますから、このときに、具体的な問題について私はお尋ねしたいと思います。十分に一つその点は、かまえて来ていただきたい。そうしてみんながよく知って、よりよい年金を作るために一生懸命になり、貧乏追放はわれわれ社会党も賛成でございますから、その立場に立って、一生懸命にこの年金を早く作りたいというのを念願にしておるのでありますから、そういう立場で、一つ厚生省も、今までのような態度一つ改めてもらって、国民年金を作るということに取り組んでもらいたいということを私は申し上げて、きょうはこれで質問をやめます。
  53. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 私も、三、四この機会大臣にお伺いしたいのであります。  この年金問題と医療保障の問題が、社会保障制度の二大支柱であるということは、今、藤田委員の言った通りで、私も同感でありますが、一体この国民年金が、今、世論調査するというようなことを官房長がおっしゃったが、それはまあ具体的な、いろいろなことの意味だろうと思うんですが、今さら国民の世論調査するというような段階では私はないと思う。新憲法ができまして、いわゆる基本的人権、人格というものが、一人々々はっきりと認められたということによって、親子の関係が従来の考えと違いまして、両親が老後に対して子供にもたれかかれない。また、子供が親を扶養するような義務がないというような新憲法の解釈のもとに、いろいろと将来国民的な不安が出てくるということが、国民年金世論の大きな原因だろうと思います。最近の大きな原因は、旧軍人恩給の増額問題でありまして、圧力のある組織を持っておる団体が、団体的利己的な立場において動けば目的を達し得るというような傾向があるのですが、その際、厚生省としては、そうした組織を持たない弱い国民を救うということに重点を置いていただくことによって、国民年金というもののあり方がすっきりするんじゃないかと思うんですが、まず第一に、そうした点においてどういうお考えなのか。やはり外部の政治的な圧力なり、団体組織に屈伏したというような形に、世論の上では、新聞論調では言っておりますが、そうしたときに、今申し上げた、ほんとうに組織のない、一人々々弱い、年金制度の一番必要な階層だけが、先ほど山下委員が言われたように、農林漁業共済組合とか、生活協同組合等も、この問題を取り上げておるようでありますが、さて、国民年金を実施したというときには、もう中は空っぽである。弱い者だけしか残らない。こういうことに対して、どういう考えを具体的に持っておられるか、一応お聞きしたい。
  54. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 竹中委員のおっしゃる通りだと思います。私は、最近非常にこの年金制度というものに対して、皆の関心が向いてきたということは、これはもう、地方でもって、何と申しますか、わずか年二千円くらいですが、敬老年金と申しますか、年金とはいえない程度にしても、そういう制度が各県にできてきた。それが歓迎されておるということを見ましても、これはもうおっしゃる通り、最近の社会情勢が戦前とよほど異なって参っております。そういう情勢にかんがみて、そういう事態が起ってくるのは、私は当然でなかろうかということが考えられますし、ことにこの国会を契機として、国民年金について、非常に強い御要望が各方面で起っておるということを考えましても、これはもう、必然起ってくる問題である。そうして国民年金制度と社会保険、国民皆保険の問題と、これはもう、岸総理も言っておりますように、この二つが一番今大切なことでなかろうか、こういうふうに考えられる点につきましては、全く同感でございます。
  55. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 そうあるべきだろうと思うんですが、そこで、先ほどその財源の問題が出たんですが、まあ責任のある立場大臣としては、なかなかお答えにくい問題であるわけなんですが、われわれがちょっと見ただけでも、国民年金をする場合に、かりに六十五才以上の人が五百万人、六百万人ある。これに月に千円、年一万二千円の金を出せば、計算の上だけでも六百五十億の金が要る。まして社会保障制度審議会構想のような、月三千五百円くらい出そうというようなことになりますと、膨大な金が要る。片や国民皆保険で、これまた五、六百億円の金は当然要るわけだ、してみますというと、三十四年度あたりからそういうものは平年化して、かなり大きな金になるわけです。そこで、軍人恩給がふえてくるというようなことで、三十四年における財政規模の拡大がかりに一千億円あるとしても、それを全部ほうり込むだけの内閣として決意があれば、私は国民年金というものを取り上げてもいいと思うのですが、そういう決意なくしてとうていこれは実現しにくい問題である。先ほどおっしゃったような、年に二千円、三千円程度のことになるということを私は憂えるわけです。  そこで、この予算の問題はさておきまして、別の機会に申し上げるとして、その次に私はお聞きしたいことは、社会保障制度審議会とか、あるいは五人委員会とか、いろいろ委員会がございます。この委員会答申に対する取扱いですね。今、大臣は、非常に委員会の意向を尊重し、あるいは先走ってはいかんということで、かなり御遠慮なさった答弁山下委員になさったのじゃないかと思うのです。これは、ここは国会でありますので、そういう遠慮はないと思うのですが、しかし、これは主観でありまするから、大臣がそうした方がいいということで、まさか白紙であられるわけでもないと思いますが、非常に御遠慮した発言をしておられます。ところが、翻って反対的に考えますというと、この委員会のすでになされた答申に対しては、相当遠慮どころでない。遠慮なく、無視したような結果が出てきているわけなんです。たとえば、五人委員会年金委員会の覚書によるところの農協の問題だとか、あるいは昨日も論議されておりますが、社会保障制度審議会におきましても、年金制度の問題については、農協の問題あるいは協同組合の問題、中小企業の問題とは、まっこうから反対しておられる空気というものは、はっきり大臣もわかっておると思うのです。ところが、実際においては、一方では遠慮した発言をしながら、さてこれを取り扱う団体に対してはまっこうから、お聞きになっただけであって、どうもそれは工合悪いということで、聞いたものは、諮問したものは全部採用するということではないが、人にものを聞くという限りは、ある程度の尊重した結果がそこに現われてこなければ、諮問された委員の方も今後の熱が入らんと思うのですが、この委員会に対しまする取扱いですね。これはどうお考えになっておりますか。
  56. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) お説の通りに、これを積立方式で参りますと、将来の問題は、ともかく無醵出の年金とあわせて年金考えなければならぬ。そうすると、老齢者でありますとか、母子でありますとか、身体障害者というものを考えて、そうして参りますと、相当多額の財政支出が要ることは、これは予想できるわけでございます。現に月三千円ないし四千円というものを計算しても、二千億足らずの金は要るのじゃないかということがいわれておるわけであります。しかし、ともかく無醵出ということも考えなければ、これは国民として納得できない問題であることも考えられます。そういう点から考えますときに、相当むずかしい問題であることは、これはもう当然だと思うのであります。しかし、年金制度を始めます以上、あまりにレベル・ダウンした、低いことは、生活保障的な本旨から見まして、おかしいことは当然である。やはり生活保障的な観点を考えなければならぬことは、本来の年金制度性質上当然である、こう考えるわけであります。そこら辺が一番、私としても、むずかしい問題が最終的に残って参るだろうということは考えておるわけであります。  委員会の問題は、これはもう私は、できるだけ尊重すべきだ、厚生大臣が依嘱いたしましてやっている以上、当然これは尊重すべきはずのものであります。しかし、政治家として、現実の政治の面から、どう対処するかという問題から見ますと、これは私は、少くとも私どもの判断において物事を決定していくものであろうというふうに考えておるわけであります。要するに、多くの場合、理想というものは高く持たれるが、現実の政治の面から、これを一挙に達成できなければ、できるだけの努力はいたしますが、段階的にものを進めて参るよりしようがないんじゃないかというふうに考えるのであります。それらの点につきまして、十分に五人委員会等と連絡をとりたいものである、こう考えているわけであります。
  57. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 将来到達すべき理想的な制度検討して、そうしてその理想的なあるべき姿の方向段階的に進むということは、現実の政治家としてそうあろうと思うんですが、そこに問題点が出てくるわけですね。今、いろいろと、年金制度が七つばかりございますね。恩給と、それから一般厚生年金、国家公務員だとか、私学共済とか、市町村職員とか、いわゆる公共企業体とか、七つばかりございますが、そのものと、将来到達すべき理想の制度に持っていく道程においての取り扱いに、私は、大きな問題があるのじゃないか、そこに議論が出てくると思うんですが、そこで、取扱い方なんですが、既存のそういう七つのものをばらばらに全部一たんしてしまってやるということは、一番理想的だと思うんですね。そうしないと、今の制度は非常に不公平であり、不平等であるわけです。大臣のおっしゃったように、成立の経過、歴史的な経過とか、伝統とか、あるいは現在持っている資産のあり方というようなことで、一挙にこれを分解するということは困難だろうと思うんです。あろうと思うんですが、到達すべき理想としては、法の前に国民が平等であると同様に、制度の前にも平等であるというように持っていくという一つ方針をまず確立してもらいたいと思う。  ところで、それをする第二の段階としては、現在あるものの中で、せめてこれを同じような条件下に置くということですね。これも当然取り上げなければならぬと思うんですが、その場合に、そこへ便乗して、今、年金制度が沸騰してきた、先ほど申し上げたように、拍車をかけられてきたというところに便乗して、新しいものは農協で打ち切りだということでなくして、農協そのものを、やはりこの理想的な姿に持っていくのには大きな障害になる。国民皆年金にした場合に、先ほど申し上げたように、中身がなくなったということを考えれば、この際かりに予算が千万円取れたからとか何とかいうことでなくして、これはやはり阻止すべきであるという態度で、私は、年金制度というものが画餅に帰する、空虚なものになるということを考えるわけでございます。これは、先ほど来議論が出ておりましたので、これ以上は私は申しませんが、そういった実は大きな懸念を持っております。そこで、その次にお伺いしたいことは、この今七つの年金制度及び、今後また出てくるかわかりませんが、そういう相互の連絡をどう一体お考えになっているか。たとえば、国家公務員であられる方が民間会社に入った場合、あるいは私営の仕事を始めた場合等における年金の受給権の期間のつながりというようなことについては、このままで、ばらばらであっては、国民が非常に不利益になる。この相互の連絡について、当局はどういうお考えを持っているか。
  58. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 結局、年金制度をやる以上は、これは、総理も言っておりますように、相互調整考えなければならぬ。それをやはり調整方途を講じなければ、国民年金の私は年金たる特質を失うものだと考えているのでありますが、そのうちの一番大きな一つの問題は、やはり期間の通算制の問題だと思います。期間の通算制が、つまり結局、従来の社会保障制度審議会の諮問の考え方は、そういう制度は、一応あるベースは国民年金にして、付加制度としてものを考えていくけどというふうな考え方のようであります。実際問題としては、それよりほかないかと思います。そうすれば、ある程度の通算制をそこに織り込んでいかなければならない問題である。結局一番問題は、その通算制に帰着してくるのじゃなかろうかと、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  59. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 最後にもう一点だけお聞きしますが、その通算制のこと、よくわかりましたが、これに関連すると思うのですが、現在あります七つの年金制度の中に包含されておる人が千二百四十五万人ばかりあるのです、全部で。これを分析してみますというと、いわゆる恩給をもらっておる人は百四十九万人、ざっと百五十万人、公共企業体が六十七万五千人であり、恩給のない国家公務員、市町村職員等が八十八万人ばかりあるのです。そうすると、合計まあ官公吏の方々が三百万人以上受給されておられるわけです。片や七つの年金が千二百四十五万人もあるのですから、一般の民間人がつまり千万人残るわけなんですが、この千万人の人は今掛金をかけておるだけで、現実に受給しておる者は千人程度なんですね。ここで私は、なるほど今七つの年金制があるといいながら、非常に官公吏が優先しておって、千二百五十万人のうちで千万人程度、一般国民厚生年金の受給者が千人前後だというようなことは、非常に不公平だと思う。これは、この前、健康保険のときにも申し上げましたが、すべての社会保障の考え方の中で、官公吏が非常に優先しておる。健康保険の保険料にいたしましても、受給条件にしましても、こういうことは、社会保障制度を完璧に持っていくという意味において大きな障害になる。これは、なかなか厚生大臣がお一人の力でできる問題ではありませんが、しかし、やはりわれわれからいたしますというと、全国民を対象とした金高に少しでも近づくような行き方をしないと、年金一つつかまえましても、三百万人は現実にきわめて有利な条件下にあり、千万人は指をくわえて見ておるということを念頭におかれまして、将来の指針にしていただきたいということを申し上げて、私は質問を終りたいと思います。
  60. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) ちょうど今、受給資格がふえてきたのは、御承知通り、炭鉱関係だけなもんですから、非常に少い人間しか受けてない、こういう状況であります。また、その間に、経済情勢なり年令構成なりがだんだん変ってきたという情勢でありますので、今おっしゃったように、われわれが年金制度を施行いたします以上は、今おっしゃったような方法で、できるだけのことを、物事考えて参りたい、こう考えておるのであります。
  61. 山下義信

    山下義信君 堀木厚生大臣には、御退席願いたいと思う。
  62. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと待って下さい。ただいままで審議の過程で御承知のように、きわめて重大な本問題に対しまして、大臣以下政府側の答弁に対しまして、非常に各委員が不満を漏らしておりますので、次回までには、この重大なる国民年金につきましては、相当御研究願って、基本構想等については明らかにしていただきたいと思いますし、藤田君から御要望のありました資料につきましては、全委員に配付方をお願い申し上げておきます。厚生大臣、どうぞ御退席下さい。
  63. 山下義信

    山下義信君 私は、米田政務次官に一点質問いたしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  64. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) はい。
  65. 山下義信

    山下義信君 年金問題についての検討をする機会は、今国会ではおそらく少ないのではないかと思いますが、この機会に伺いたいと思うのですが、実は、種々伺いたい点もありますが、一点だけ伺っておきたいと思います。  厚生年金特別会計で、業務勘定の振替で福利厚生施設関係の勘定への三十三年度の予算は幾らになっておりますか。  それでは、その数字の御答弁を願う前に、特に米田厚生政務次官に私が申し上げておきますことは、さいぜん、厚生大臣答弁が十分でない、誠意がない、こう申し上げましたゆえんのものは、私が国民年金制度に対する母体的な厚生大臣構想をここで示せというのではありません。それは、詳細検討して、一たびその声明を、言明をいたす、あるいは答弁をいたしました影響は甚大でありますから、具体的な細目にわたってまでもその構想を示せ、さようなことをだれが申しますか、常識で。さようなことは私は申しません。しかし、大体の構想はどういう構想であるかということを尋ねたのです。大綱ぐらいは答弁をすべきです。それは、あなたの方には、すでに厚生省の案として、五人委員会に出している案があるのです。また、五人委員会がそれに対して一、二の意見を述べて、さらに第二次案を出すということも、これは公けになっておる事実なんです。いつも逃げ口上には、あれは事務同案事務局案と言うけれども事務局案とは言っても、厚生省の案としてちゃんと出しておるのであります。従って、厚生省はこういう点を問題にして考えているのだという、大体のことは言えるはずなんです。また、厚生年金の改正の要点でも、これもすでに、あなた方の意向というものが大新聞の一部には出ておる。厚生省は常に、施策をするつどに、適当に報道機関を使って宣伝することは百パーセントやる。しかるに、こういう公式の席上で、新聞の宣伝には抜かりなくやるが、厚生年金法の改正はどういう点を検討しておるかと言えば、誠意を持って答弁しようとはしない。われわれは、資料をここに持ってきておるのです。これら新聞の一部に伝えられる記事というものが厚生省の当局から出ておることは、明確な事実です。それを公式に厚生記者団に発表するか、あるいは厚生省事務当局が語るかは別として、厚生省の官辺筋から出ておることは明確なんです。どういう点を厚生年金法で改正しようとしているかということは、具体的にわかっている。しかし、それは一応新聞記事であるから、公けのかような席であらためて承わらんければ、公式の当局の見解とするわけにはいかないので、われわれは質疑をするのです。しかるに、それすらも答えようとしない。実に狡猾である。それで、誠意がないと言うのです。あなた方は、ほんとうに何らの案も持っていない、何らの具体的な検討もしていないのならば、なお考究中であります、なお言明の段階ではございませんと言うてよろしいのであります。その答弁でりっぱであります。しかしながら、すでに一部には、あなた方の案と打ち出しておる。あるいは、改正の要点は、比較的詳細に、都合のいい宣伝はしておるのです。あらたまってお尋ねするというと、まことに不明瞭な、あいまいな答弁をするのです。こういうことは、私は誠意のある態度ではないと思うのであります。これは、政務次官としても、大臣の補佐役でありますが、私どもがどうしてその誠意がないかということを一応言うておきますから、御考慮を願って、善処していただきたいと思うのであります。  今、数字の御答弁……。
  66. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) 業務勘定に福利施設としての繰り入れは、三十三年度五億一千三百万円、前年度五億八千九百万円、かように相なっております。
  67. 山下義信

    山下義信君 その五億一千数百万円の勘定の中で、厚生年金病院あるいは厚生年金会館というものにどれだけ使うことになっていますか。
  68. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) 年金会館の分として三億一千七百万円、あと厚生年金病院の整備費、医療機械の購入等でございます。
  69. 山下義信

    山下義信君 厚生年金病院は、何か新設する計画がありますか。現在の厚生年金病院以外に、将来新設する計画がありますか。
  70. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) 現在のところは、厚生年金病院の新設計画はございません。ここ数年来新しいものは作っていないのでございまして、既存のものの整備がまだ完成しておりませんので、それを続けておるようなあんばいでございます。
  71. 山下義信

    山下義信君 将来は、厚生年金病院を新設していく計画がありますか。
  72. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) 今までのところは、大体東京、大阪、九州と、新たに厚生年金病院を作りましたので、今日の段階においては、そういう形のものは計画がないわけでございまして、情勢によりまして、どういう形で年金のこういうような施設を作っていくかということにつきましては、今日ではまだ案がございません。
  73. 山下義信

    山下義信君 厚生年金病院のあり方並びに将来の計画につきましては、私は問題があると思うのです。これは検討しなくちゃならぬと思います。が、これは別の機会にいたします。問題としてここに提供しておきます。現在だけの年金病院でよろしいか、さらに増設する必要があるかということは、私は問題であると思います。私見によりますれば、増設する必要があると、私ども考える一人でありますが、検討しなくちゃならぬ問題として提供しておきます。その厚生年金会館の予算は一昨年厚生保険特別会計に厚生年金勘定で計上し、今年度にも計上し、三十三年度にも計上されてある。総額で厚生年金会館の予算は幾らになっておりますか。
  74. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) これは、厚生年金会館の予算、実は三十二年度の予算がきまります際に、一応案があったわけでございますが、新たに三十三年度予算におきまして総経費を算定し直しまして、総工費八億七千四百万円、かように相なっておりまして、先ほど申しました三億一千七百万円も、これは三十三年度分でございます。
  75. 山下義信

    山下義信君 厚生年金病院を数億の金でもって建設し、八億数千万円の金で厚生年金会館を作るということは、どこで審議するのですか。だれがきめるのですか。だれがそういうことを承認するのですか。
  76. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) 厚生省といたしまして、厚生省方針をきめまして、予算折衝いたして、予算に計上した次第でございます。
  77. 山下義信

    山下義信君 米田政務次官、実際は、これらの諸計画は、すなわち、いうまでもなく、予算にこれが計上されてあるのでありますから、一般予算、特別会計予算で、予算審議で、国会審議を経過しておるわけなんです。しかしながら、これらの特別会計のいわゆる積立金の使用の内容というものが、自他周知のごとく、国会で詳細に論議をして、そして承認をしたという事実はきわめてまれなんです。ことに保険の特別会計のごときは、一潟千里で国会審議を終了するのでありまして、その詳細な内容を審議するということは、実は深く触れないことが事実なんです。そこで、これらの八億幾千万円の経費を投じて厚生年金会館を作るということも、いつの間にきまったのか、どういう構想で建てるのか、何の目的で建てるのか、どこへ建てるのかということもほとんど知らない。知らない間に作られている。厚生年金病院とてもまたしかりであります。これは、われわれも注意しなければならぬのでありますが、ことに御考慮を願わなきゃならぬと思うことは、厚生年金病院並びに厚生年金会館等のこれらのいわゆる福利厚生施設というものの運用はだれがやるのか。厚生省がやっておる。厚生省がやっておると、ばく然と言えばそうであるが、厚生省の中のだれがやるか。私が仄聞するところによると、これは、厚生省の中に厚生団というようなものがあって、それが経営をし、計画をし、運用するといいますか、やっておるのではないかと思うのですが、それはどうですか。
  78. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) 厚生年金病院は財団法人厚生団に委託経営をさせております。厚生年金会館につきましては、これは、特殊法人の形でいくかどうかということにつきましては、まだ方針がきまっておりません。
  79. 山下義信

    山下義信君 お聞きの通りです。予算がきまって、ものが建っておるのに、それを運営するものはだれがするかという、経営主体がきまっていないという状況なんです。実際言いますと……。しかも、今の厚生年金病院を経営しておるという、その財団法人厚生団というものは、聞いたこともない。これは、厚生省の中のいわゆる関係団体であって、厚生省の中で作った団体であって、名前はそうなっておるけれども、いわゆる厚生省の一部局と同じことなんでしょう。実際いったら、ほんとうの民間団体じゃなくして、厚生省の中に、ただそういう名前で持っておるということだけでしょう。健康保険病院の経営主体とてもまたしかりでしょう。同じでしょう。こういうようなものを明確にする必要をお考えになりませんか。これは厚生省の直営じゃないのですよ。財団法人厚生団という名称のもとに、それが経営主体になっておるのでありますが、だれもこれを知らない。だれもこれを監督しない。先般労働省は、労災病院の経営主体でありました労災協会その他を、これは、よい悪いは別として、労働福祉厚生団というものを作って、法律でちゃんと、その経営主体というものを立法化した。明るみに出した。外に出した。公衆の面前にさらすようにした。これは、政府の事務局の一部の中にあいまいもこたる、建前は財団法人ということになっておりましょうけれども、いわゆる事務当局でどうにでもなるような、自由自在になるような一つの団体を作って、そうしてそれに仕事をやる、いろいろやらせる、経営させるということは、私は立法を考える必要があるのじゃないかと思うのです。そういう厚生団体を作ることに、厚生年金の被保険者が参加しましたか、相談にあずかりましたか。どういうことになっておるのです。これは、厚生年金の積立金を使って、それを運用する団体なんです。よほどこれは考えなければならぬと思うのですね。この点を申し上げて、ここですぐに政務次官の御考慮を承わるということは無理かもしれませんが、お考えを願って、根本的に御調査に相なりまして、りっぱな団体にするならばするように、公明な、明確な、公的なような性格を強めるように御研究願いたいと思いますが、いかがですか。
  80. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) 正直のところ、うかつにこういうこまかい、こまかいと言っては語弊がありますが、こういう問題があることを十分承知いたしておらなかったのであります。今御質問によって、私初めて実は事柄がわかりました。正直のところ、そういうことであります。これは十分調査いたしまして、いやしくもこういうものが不明のままに、やみからやみに運営せられるというような体制は、根本的に改めていかなければならぬ。十分この点は、私責任をもちまして調査をし、大臣とともども、この点は十分責任ある処置をいたしたい、こういうように考えております。
  81. 山下義信

    山下義信君 今政務次官は、大臣ともどもとおっしゃいましたが、大臣とともどもならば、堀木大臣の退席を求めるのじゃない。私は堀木厚生大臣を相手にしない。蒋介石を相手にしないのと同様に、堀木厚生大臣を相手にしない。特に政務次官に御依頼願って、あなたにお願いする。選挙でお忙しいかもしれませんけれども一つこれは、研究事項として、省議にかけていただきたい。あなたの政務次官御在任中に御努力を願いたい。私は、このことには触れないつもりでおりましたが、しかし、厚生当局の不誠意によりまして、ここで問題を提起しておきます。この厚生年金会館の敷地の買収に関しまして、いろいろに世上取りざたをされております。新宿の番衆町でありますか。約幾らでありましたか、一千八百坪でありますか、この敷地を買収しておる。この買収にからみまして、世上種々な風説が流れておる。私は、昨年この調査をいたしまして、このいろいろなおもしろくない風評に対して信をおかないことにして、不問に付する考えであったのです。今日なおまた、これに対しまして、私としては風評を信じないつもりでおります。しかし、これは、公式の席上で、幾らで買った、どういうわけで高かったということを明確にしていただきたい。これは、あなたの方で、千八百余坪の土地を価格一億七千万円を出して買ったのですね。これは数千万円、周囲の地価並びにいろいろ比較いたしまして計算する、予想される地価よりは高いということ、これは、前厚生大臣、神田大臣の時代に買い入れた土地でありますが、いろいろに世評がありますから、この厚生年金会館の敷地の買い入れが、どういうわけで周辺の地価より高かったのかということを明確に、資料を添えて、当委員会に御報告を願いたい。私は、こういうことは人を傷つけることであって、厚生省の当局に迷惑をかけることであって、公式の席では言わないつもりでおりました。しかし、厚生大臣以下厚生省の当局が本委員会に対するところの態度きわめて不まじめであって、誠意のないこの状況にかんがみまして、かかる風説も取り上げて、明るみに出さなければならぬことを遺憾に思う。これは一つ、明確にしていただきたい。その当時の前厚生大臣が、この厚生年金会館の敷地の買収に当って行動もせられたということである。ともかくも、この敷地が時価より高いということの風評がありますから、高くないということの立証をして、そうして当委員会で明白にしていただきたい、かように考えます。政務次官の御答弁をいただいておきます。
  82. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) 承知いたしました。調査いたしまして、資料を提出いたします。
  83. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本件に対する本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  休憩いたします。    牛後零時四十五分休憩      —————・—————    午後二時十二分開会
  85. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  委員異動を報告いたします。三月四日付をもって松澤靖介君が辞任され、その補欠として秋山長造君が選任されました。     —————————————
  86. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 角膜移植に関する法律案議題といたします。提案理由の説明を願います。衆議院議員中山マサ君。
  87. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) ただいま議題となりました角膜移植に関する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。  現在、わが国には約十八万人に達する視力障害者がおりますが、このうち相当数のものは、角膜の移植を受けることにより視力をある程度回復する可能性を有しているのであります。しかるに、現行法制下においては、死体から角膜を摘出することは、死体損壊罪との関係から種々問題があり、ために角膜を移植することが困難な状況にあります。  このような実情からして、視力障害者の視力の回復をはかるため角膜移植術を行う必要があるときは、医師は、適法に死体から眼球を摘出することができることとして、視力障害者の視力の回復に寄与しようとするのがこの法律案を提案いたしました理由であります。  本法案のおもなる内容といたしましては、特に死体に対する国民感情を尊重する趣旨から、死体から眼球を摘出することができるのは、角膜移植術を行う必要のある患者が特定している場合に限り、かつ、その際死体に対する礼意保持について特に規定を設けており、また、変死体又は伝染性疾患により死亡した死体等からは眼球摘出を禁止しているほか、業として死体の眼球のあっせんをしようとするときは、厚生大臣の許可を受けなければならないことといたしておるのでございます。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  88. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本案に対する質疑は次回以後にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  90. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、予防接種法の一部を改正する法律案議題といたします。提案理由の説明を願います。
  91. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) ただいま議題となりました予防接種法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  ジフテリアの発生は、近年上昇の一途をたどり、特に三才以降の幼児において著しい傾向を示しており、また、昭和三十年度に行われましたジフテリア免疫調査によりますと、ジフテリアに対する免疫効果はこの年令層において著しく低下していること及び乳児が母体から受ける免疫効果は生後三月ごろから急速に減少していることが判明いたしております。  このような現状にかんがみ、今後のジフテリア予防対策の強化について、学界その他関係者の意見をも聴き、慎重に検討いたしました結果、これら二つの年令層に対し強力な免疫効果を付与するため、予防接種法に定めるジフテリアの予防接種の定期を改めることといたしました。すなわち、改正案の内容は、従来生後六月から十二月までの間に行うこととされていた第一期接種の定期を繰り上げて生後三月から六月までの間にこれを行うこととするとともに、新たに第一期接種後十二月から十八月までの間に第二期接種を行うこととするものであります。この改正によりまして、ジフテリアの第一期及第二期の定期予防接種は、それぞれ百日せきの第一期及び第二期の定期予防接種と同一時期に行われることともなりますので、百日せきジフテリア混合ワクチンの使用によって、これらの両種の予防接種を同時に行うことが可能となり、この結果被接種者は、従来に比しこれらの予防接種が受けやすくなり、予防接種が一段と徹底するものと考えるのであります。  なお、このほか若干字句等の整理を行うことといたしました。  以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ慎重審議のうえ、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  92. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本案に対する質疑は次回以後にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。
  94. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) 遺骨収集フィリピン派遣団長より先般の感謝決議に対しまして、お礼言上方の取り計らいを請うという電報が引揚援護局長あてに二日に参りました。これを読み上げます。  社労委員会決議(および厚生大臣)の  激励電に対し、派遣団員一同感激に堪  えず。御礼言上方お取計らいを乞う。以上でございます。     —————————————
  95. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、旅館業法の一部を改正する法律案議題といたします。質疑を願います。
  96. 山本經勝

    山本經勝君 昨年の通常国会旅館業法の一部改正が論議になりまして決定をみたわけでありますが、今回の旅館業法の改正は売春等防止に関する法律の実施に伴う関連での改正である、こういう意味では非常に問題点ははっきりしておると思いますので、そう大きな異議をさしはさむ余地もないと思います。ところが旅館業法の一部改正に関する法案が昨年の通常国会で論議になった当時、問題点としてあげられた中で共通に強調されたのはいわゆる快適な旅宿の提供といいますか、旅行者をして快適な感じを与えるということを主として、しかも環境衛生という視野から、あるいは風俗営業という視野から、いろいろな長い審議を通して、しかも参考人まで呼んでいろいろ意見も聴取しました。ところがその中で問題になっているのは、全国五万大千という多数の旅館がある、その旅館の中で働いている番頭さんやあるいは女中さん、こういった従業員の待遇はほんとうに厳正に、しかも円滑に行われている、こういう状態でなければ、直接客にサービスをし、あるいは快適な旅行を味わわせるということのためにはこの従業員の待遇が問題である。しかも当時言われたことは、たとえば旅客が旅館賃を払わずに行ったというような例もしばしば見られるわけでありますが、そういう場合に女中さんや番頭がその旅館賃を弁償しなければならぬというようなことがあったり、あるいは器具、食器等を持ち運び等の際に、取り扱いの際にあやまって取り落してこわす、そういったものに対する負担を女中さんや番頭さんにさせる、あるいは不心得にしてお客さんが旅館の何といいますか、備え付けの器具等を持ち去る、あるいは夜具や寝具等を持ち去る、こういうことになりますとこれは弁償させる、こういうことがさも当然のごとく行われている状態では、従業員が安心していわゆる旅行者に奉仕をするということにならぬではないか、こういうことが議論になったと思います。ところがその際に厚生省当局としては、こうした旅館従業員の労働条件やあるいはその他の問題は所管としては当然労働省の所管に属する問題であるけれども事務的にはそういうことを十分労働省と相談し合って改善をするようにしなければならぬ、そういうふうにいたします、十分事情はわかっておりますから。こういうようなお話であった、そうしますと今回の法改正の趣旨も、帰するところは快適な旅宿を提供する、あるいは旅行者をして満足を与えるということに焦点がやはりしぼられて参ると思うのです。ですからここで私は承わっておきたいのは、こういう今申し上げたような御答弁があって通過をみたのでありますが、その後こうした旅館従業員等の待遇に関してはさらに労働省にもお伺いをしたい点なんですが、ここで厚生省として労働省との話し合いやあるいはその他必要な措置をどのようにとられたか、その後の状態等についてあわせて御説明をいただきたいと思います。
  97. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 旅館業に従事しております従業員の待遇と改善の問題でございますが、まず第一に現在旅館業、でいわゆる雇われておる従業員が全国で約十二万人おるわけでございます。約六万の旅館に対しまして二・四人程度の一軒平均の従業員、これとほぼ同数程度が旅館の営業者並びにその家族によりましてサービスが提供されているわけでございますが、問題は主としてこの雇われておる従業者の問題でございますが、これにつきましてはやはり待遇改善となりますと、旅館の営業者の方がさような待遇を十分に考慮して与えるということが中心でございますので、これは厚生省といたしましても労働省と十分折衝を保っておりまして、どうしたらこれらの最低の賃金なりあるいは最低の待遇方法なりが規制できるかということで、今まで折衝して参ったのでございますが、非常に困難でございまして、なかなかさような一本である程度規制することが非常に骨だ、こういうことであったのでございますが、今度の最低賃金法によりましてある程度のめどがつくということ、それからもう一つはかたがた昨年発足いたしました環境営業の適正化法に基く旅館の同業組合というものが各県ごとに大同団結した一つの大きなものができまして、これが営業の方法なり、あるいはその理事者がそれぞれ組合員の営業に関する指導を強力にできるようになりましたので、一方ではこれを通じて今の最低の待遇を共通的に確立する、かような見通しもつきましたので、その方につきましては、現在旅館組合が各県にそれぞれ発足を見つつありまして、近く全国連合会もできまして、ここで適正化基準を作成して、それぞれ地方がやりますやり方を指導するわけでありますが、これにわれわれとしては十分働きかけて、できるだけ組合としてさような旅館の営業方法、ことに従業員を待遇することに関します営業方法を十分に改めさす、かようなふうに考えております。  それからもう一つの問題といたしましては旅館の従業員が病気になったときの健康保険的な社会保険による医療の道でございます。が、これがもう一つ待遇関係では非常に重要でございますので、これも厚生省内でもそれぞれ関係当局と相談をいたしまして、法人であるものはこれは健康保険の方の任意包括の方の対象になる。個人営業の方は国民健康保険の方でいくわけでございますから、これもできれば国民健康保険の中でも今度の環境営業法等で横の連絡が十分うまくいくならば、特別な国保というようなものもできれば指導いたしましてこれで保障していきたい、かような指導をしておるわけでございます。今まで具体的にこれだけ共通的にどの旅館も待遇を確定したということは遺憾ながら今までまだ実績は出ておりませんでまことに残念に思うわけでございますが、今後十分こういうような形で指導していきたいと考えております。
  98. 山本經勝

    山本經勝君 一応筋書ではそういうお話もわかるわけですが、ところが労働省の方に対してはどういうような御相談があったか。これは労働省の方にも直接組合——旅館の従業員が組合を作っておりますからその組合からいろいろな申入れもし、要望もし、協議もしておる。私も基準局長にも今お話のような労働条件に関する問題についてはそれぞれ基準局長会議の際にも口頭でもって示達をし、かつ合せて文書による通達も各基準監督署あてに出しております。この事実を見ております。ところが厚生省の方の今のようなお話は、厚生省から相談があったというお話をあまり聞いておらないのですが、どういうような厚生省と労働省の間ではお話がありましたか。その内容について伺っておきたい。
  99. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 労働省との相談と言いますと、結局労働基準法の旅館に対する発動の要請でございます。できるだけあの法の中で現在の旅館で適用できるものはそれぞれの監督署が立ち入って違反等があればやってもらう、そういうことによりましてあの線に乗せてもらう、こういう要請をしておるわけであります。それ以外にはちょっと厚生省といたしましては直接この待遇条件を旅館業法を持っている立場から、従業員のそういう経済的な問題に直接タッチすることが非常に困難なものでございますから、さような線で部内では依頼をしておるわけであります。
  100. 山本經勝

    山本經勝君 部長さんは直接基準局の方とお話し合いになっていますか。
  101. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 私自身は申しわけありませんがやっておりませんで、全部課長で、向うの直接担当しております課長の相手方と折衝してもらっているわけであります。
  102. 山本經勝

    山本經勝君 先ほど申し上げたような総括的な問題の中身が非常に最近こまかな数字で出ておる。これは世論調査といいますか、アンケートみたいな形でいろいろと従業員に対する質疑を組合が集めておるのですが、そういうので、たとえば団体の客などが泊った際には旅館は忙しい、その忙しい場合に臨時に女中さんを雇う場合がある、そういう場合の臨時に雇うた女中さんの給料をだれが払っているかというのに対して、主人が払っているというのが十三名、女中が払っているという——自分たちが当然やる仕事を臨時に雇うた女中によって肩がわりしたのだからということで女中に払わしたのが八、これは私はひどい例だと思います。こういうような実例がある。そのほかあげていけばこまかな問題がたくさんありますが、そういう実情であります。ところが問題はいろいろありますが、労働省は一応何といいますか、通達なり通牒の形で都道府県にある基準監督署に指示をいたしておるようであります。労働省の話を聞くと厚生省から別に話があっておらないということをこの間も話しております。そこで、これはむろん労働条件の問題で組合が労働省に問題を持ち込んだから労働省はそう動いたんだと言われるような部長のお話の様な形で、厚生省が実はこの法律の目的である適正な営業を営み、そうして旅客に提供するという法目的に沿うて、その内容をほんとうに正しいものにするために従業員の待遇を改善し、そうして従業員がほんとうに何といいますか、安心したあたたかい気持で、しかも正常ないわゆるサービスをするということができることが中心でありましょうから、そのために必要な方法としては、それらの人々が安心して生活のできる前提が必要であるということで先ほど申し上げたような言い方をしたわけなんですが、それに対する適正な措置が、厚生省として労働省と話し合われたというけれども、非常に抽象論であって、どういう内容をどういうふうに話されたかさっぱり要領を実は得ぬ、そこでもう少し丁寧に内容を一つお話願いたいと思います。
  103. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 今まで確かに連絡が十分でなかったので、この点は弁解の余地がありませんので、今後急速に十分これらの改善につきまして労働省にも話し合い、先ほど申し上げたようにこちらでできることもございますので、この点十分努力を傾注したいと思います。御了承をお願いしたいと思います。
  104. 山本經勝

    山本經勝君 それから今部長の御答弁の中でお話になった健康保険の適用という問題は、非常に重大なしかも大きな問題だと思います。で、これらの人々に対する旅館従業員といいますか、さらに範囲を広げればサービス業に関する従業員、労務者の健康保険、ところがこの場合に一番大きな障害になっているのはやはり賃金なんですね。固定した給与がない、従って保険料の徴収基準を定めることが困難である、こういうことであったと思うのです。そこでそうなりますと問題はやはりこの労働条件というものは健康保険という健康保持のために必要な被用者の待遇という視野から見ても、基本になるものはやはりその賃金になってくるということになるから、その点は特に私どもも労働省に対して強調している。ところが厚生省の方では保険の加入についてどういう配慮をなさっているのか、私は今まで予算等も一応は見せてもらっておりますが、遺憾ながらこれに対する具体的な処置の方法は用意されておらぬように見受ける、昨年の何月でありましたか、十一月か十二月の委員会であったかと思いますが、厚生大臣が、まず厚生省考えとしてはこうだというお話をなさった中には、問題のいわゆる任意包括制度の拡大等に伴う必要な措置が一応載っておった、ところが今度の予算を見ますとそれが遺憾ながら削られておる、こういう状況のように感じますが、そういう点は、せっかく健康保険の適用もしてというお考えがあっても、残念ながらそれが措置されておらないということは、今お話のように労働省と話し合いもし、しかも最善を尽したとは、言葉ではそう言われても、実際には行われておらぬということを裏書きすることになります。そこら辺はどういう事情なんですか。
  105. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 前の臨時国会ですか、臨時の委員会でございましたか、厚生省から関係局が出まして御審議にあずかったときにもその問題がございまして任意包括でできるものはできるだけやる。それから国保でいかざるを得ないものは国保の加入も適切に進めるということでございまして、その点で実際にこれは具体的に省内でございますのでいろいろ当りまして、やはり今お説の通りの、一つは賃金のベースが全然確定しておらぬと、もう一つは出入りが非常に激しい、一つ所に安定した従業をしておらない、これが非常にひんぱんなために一そうこの適用がつかみにくい、こういうのが一番難点ということがわかりました。やはりそのためには今の賃金ベースをできるだけ固定給にする方法に確定することと、それからそれが因果関係でございまして、今の落ちつかないのはやはりそういう待遇問題がはっきりしないからいわゆる浮き草式に動くようでございます。これに基いて安定さすと、これが前提になりませんと任意包括の方も、それから国保の方も進まぬような関係がはっきり出ております。これは組合の当事者、営業者の方の意見を聞きましてもそれがやはり大きな理由に聞こえます。それからこの前従業員の組合の方にも二度会いましていろいろ訴えを聞きましたところ、やはりその点が非常に難点でございまして、それを解決するのが一番大事であるということで、先ほど申し上げましたように、幸い旅館の組合の方を今極力指導しており、一方賃金法の方も進むようでございますので、これで強力にやっていけば、今後は健康保険関係の方もおのずからかような形になるであろう、こういう形で努力しておるわけでございます。
  106. 山本經勝

    山本經勝君 落ちつかないということは、つまり腰を据えて一つの事業所で続けて働かないということでしょうが、そういうことは今の待遇その他の問題と関連をするし、まして先ほど申し上げたように、これは一々申し上げれば非常にたくさんな問題があるのですが、いわゆる業者がサービス料のピンをはねるところにある。サービス料を全部取り上げてそのうちの何割かしかやらない、あるいは食べさしてやっておるではないかということで、実際に賃金を基準法の線に基いてはっきりして支払っておらないというようなこと、いろいろ問題がある。それから、ましてや先ほど申し上げたように、あやまって器物を破損してもそれを従業員の負担にする。お客さんの宿泊料不払いを弁償させるというようなことや、さらに忙しいときに臨時雇を入れれば、その人々の給与まで従業員に負担させる、こういう状態であるというと、これはどうしても落ちつかないと思うのですよ。やらないから生活ができませんわ。そしてしかも健康保険等の恩恵にも浴しないという実情であるから、勢い生活ができないから落ちつかぬ、こういうことだと思うのです。そのことは裏返しにすればいろいろな、悪い意味で今度の売春防止法等の取り締りの対象にもなるような事態も、発生し得る要素を持っておるから、ですからこそ快的な下宿経営するためにどうしても従業員の安定した生活保障を前提にして、サービスをよくさせる、こういうことになってこなければならぬ。落ちつかないと言われたのは、落ちつかないということの前提はそういう根本問題があると思う。それを解決をつけなければ、単に内容をいじくり回してみても、それではしょせんこの問題は解決つかないと思うのですが、この点の基本的な考え方を次官の方から伺っておきたいと思います。
  107. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) 基本的と申しますと、これは私主人とその従業員との間の約束、契約というものが基本になるだろうと思います。契約の内容が公共の福祉に触れる場合に初めて拘束できる、こういう考えと思いますので、今仰せになりましたような一々のケースについては私はいろいろ事情もときにはあるのじゃないか、たとえば相当の高価な器具を取り扱う場合に、疎漏に取り扱うためにどんどん破損するというようなことになると、経営者の方もそれをできるだけ最小限にとめる意味で若干の負担を要求するというような策に出る場合もあるのじゃないか。ですからこれは内容々々、ケース・バイ・ケースで詳細に調べまして、非常に公共の福祉に害があるというようなときに初めて私は規制の対象を考えるべきじゃないか、大体の基本はそこへ置くべきじゃないかと考えております。
  108. 山本經勝

    山本經勝君 次官のお話はどうも大へんおかしいと思うのですよ。つまり個々のケースでなるほど問題がありますね。具体的に私は申し上げればいろいろたくさん事例がありますが、一応総括的に申し上げますと、個々のケースについて問題があることはお説の通りです。ところがもともといわゆる雇われて働いている、これらの人々が、そうしてその職場で、たとえば工場や鉱山における労働の実情を見てもらうというとよくわかると思う、誤まりといっても誤まりであるかどうかということの前に、その器具はそもそも従業員が持っておって働くものではない、やはり、備付の器具を使用している、その作業のために、その業務のために器物がこわれた、これはたとえば食器を洗う場合を見ても。小さな話ですが、誤まって取り落すということもあり得るのです。そういうものを一々負担にするということになるというと、わずかな給料の中でそれだけの負担が大きいですから実質賃金が下るという結果になる。そのことがやはり生活ができないからしりがすわらない、転々と旅館から旅館へ流れていく、こういうことになってくると思うのですよ。ですから基本的には労使間の話し合いである、契約である。その当初の契約そのものが私は、これはまあ皆さんの方じゃなくて労働省所管の問題に属しましょうが、当初の契約が問題である。ですからそういう点の取締りや行政指導については私は労働省に注文するのですが、しかしながら基本的な考え方としてそういう実情にあるということを認識されるなれば、それを労働省と相談されて具体的な方法を講じてもらわなければ、いかに法律の条文をいじくってみても実際上のいわゆる快適な旅館の経営なり旅客のサービスということにはなってこないということを申し上げているのであって、ですから今次官のおっしゃる意味は、私は私の質問の表現の仕方が悪かったからかもわかりませんが、実は要領を得ないわけです。私はそういうようなことを言っているのじゃなくて、現にこういう事実がありますよ、この事実を是正しなければ法の条文をいじる技術的な問題じゃなくて、根本的な法の目的が達成できませんぞということを申し上げているわけです。そこでもう一度今のところをよく御説明を願っておきたいと思います。
  109. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) 私も旅館業の一々についてはいろいろあると思います。それから旅館業者としましては非常に競争が原則としてあるところが多いと思います。それで競争がある限りにおいてできるだけいいサービスを提供して商売繁盛ということを考えるのは常識だと存じます。そういう点で原則としては私は当事者同士の契約の自由にまかしていきたい。ただそれが今抑せになったような極端な場合に規制の対象にしなきゃならぬ、こう考えるのでありましてそういう極端な場合に対しましては労働省との話し合いを御趣旨に沿うような線で進めて参りたい、このように考えております。
  110. 山本經勝

    山本經勝君 上ノ山というところの、これは旅館の組合です。従業員も組合を作っております。上ノ山、これは観光地なんですが、ここで実際の調査をしているところによりますと、主人から月給をもらうかという質問に対して、もらいますという答えはたった三人しか出ていない。それから何ももらわないというのが四十二人、これはよく覚えておっていただきたい、こういう状況です。そうしますと四十五名の調査対象人員の中で四十二名は主人から給料をもらっていないというのですよ。で、もらっているのはわずか三名。それから今度は、主人からチップの一、二割を天引きされるかという質問に対しては三十二が天引きされないと言っておりますが、十四は天引きされると言っている。平均月収は何ぼぐらいかという御質問に対しては、五千円から八千円というのが十人、それから四千円から七千円というのが二十二人、こういう数字になっている。それから客のゆかた、敷布などを洗う石けんを主人が買うかという問いに対して主人が買いますという答えが十、女中が自分で買いますというのが三十一、こういうことになっている。台所女中の給料を主人が払うかというのに対して主人が払うというのが二十四、これは女中の場合ですが、女中が自分で働いてもらったチップの中で受け取る……。石けん代をこれは主人が払うというのが二十六、女中が払うというのが十九、半分ずつというのが一、こういうような数字になっている。先ほど申し上げたように、団体客などの忙しいときに臨時女中の給料を主人が払うかという問いに対しては、主人が払うというのが十三、女中が払うというのが八、頼んだ方が払うというのが三、こういうことになっている。それから不払い宿泊料の弁償を女中がするというのが四十名になっている。それから備品器物の紛失、破損を女中が弁償をするかという問いに対して六十五、こういうふうな数字が出ている。これを見ましても、これはずいぶんむちゃな状態であるということが言えると思のです。そういう状態ですから、今次官のお話のような考え方でおられたのでは、これはせっかく売春防止法ができて、そうして快適な旅館を営むという法目的に沿うためには縁遠いものに私はなりはせぬか、むしろそういうところに、さらに今度は売春防止法に伴って売春を行なっている人々が流れ込んでくるということが予想されるからこそこの改正が行われる。そうしますと、その中でも今まで働いている女中さんでさえもそういう状態の中に置かれていますから、別に収入を上げなければ生活ができないということになってくると思うのです。そうとしたら勢いそこから出を結論はこれは何をか言わんやということに相なりはしないか、こういうふうに思う。ですから、むしろ従業員の安心して生活のできる待遇を基礎にしてしかし健康保険法等の適用を受けさせて保護を与えて、あるいは恩恵を与えて、そうしてサービスにこれ努めるということになってくる以外にこの法目的は達成できないのではなかろうかと思う。ですから、そういう意味に立つというと、どうしても法の審査の過程でも論議になったのだから、厚生省はもっと積極的に出先機関を動員して、行政的な指導もなさると同時に労働省と協力してやるという積極的な面がなければならぬと思う。ところがそういう話は先ほど部長のお話のように、労働省には課長と課長の間で話し合っております、こういう話なんです。私の聞いた範囲では、厚生省から特に要請はなかったと言われている、そういうことになってきますというと、これはせっかくこの国会委員会審議をし分析検討をしたことも実は政府、厚生省当局としてはきわめて適当に見送っておられる、こういうふうにしか受け取れぬ実情になってくる。そこで次官に再度お伺いしたいのですが、今申し上げたような基本的な状況がある、その基本的な状況を少くとも排除しなければこれはほんとうに快適な旅館ということになってこないと思うのですが、そういう点ではどうお考えになっていますか。
  111. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) 簡単なようで、これはなかなかめんどうな問題だと思う血結局、快適な宿泊をするということになると、今仰せのように、相当の生活を保障するということになりますと、勢いこれは宿泊料に転嫁することになる。それだけ旅行者が宿泊料を引き上げられたものを負担しなければならぬという結果にも私はなると思う。こういうようないろいろ、からみました問題もありますし、今上ノ山温泉の実例を二、三お述べになりましたけれども、団体がきたときに、臨時の女中を雇い入れたその賃金を女中が負担する。こういうような実例もあるように、御説明になりましたが、おそらくそういうのは、その団体のチップ全体を女中さんがもらうのか、相当の額をもらって、さらに臨時の人の賃金を支払って余りある状態でなければ、そういうことは経済観念上あり得ないと思うのです。ですから、こういう形式をもって直ちに経済的にやっていけないほど迫害されているとは私は一がいには考えられないのじゃないか。ですから、いろいろの場合々々もございますので、われわれの方としましても、これはもっぱら、厚生省は御承知のように衛生の立場、厚生の立場から実は要求すべきものは要求する立場を持つだけでございます。労働条件そのものになりますと、どうしても労働省の問題になります。われわれの方の立場だけは、十分これからお説に従って貫いていきたい、こういう考えでございます。
  112. 山本經勝

    山本經勝君 簡単なようで簡単でないといわれて、しかも快適な旅宿にすることによって、宿泊料が上る。そうすると利用者に負担がかかるではないかという御意見だと思う。むろん現在の状態の中で、たとえばこれよりサービスを向上することによってサービス料が上るというふうな考え方を私は持てぬと思うのです、現在の状況では。そうしますと、そのことは、快適にするために必要な施設の改善等をする、あるいはサービスを改善する、向上する、こういうことが直接今度は利用者であるお客さんの負担の増大にもっていくということは、これは業者はいいでしょう。あるいはまた、なるべく業者として考えれば、従業員に対する賃金を値上げしたり、あるいは固定給にしたり、負担を増すようなことはしたくない。これは次官の言われる通りだと思う。業者の立場を次官は言っておるのです。しかし法目的は、旅行者に快適な気分を提供し、そうして宿泊をよりよくするためにこの法は作られている。あるいは今まで数次にわたる改正もその目的のためにやられていると思う。その中で論議のあったことは、なるほど施設の改善その他には費用もかかるが、これは業法等によって保護を受けるようになっておる。ですから当然そういうワクの中で改善もし、サービスも向上していくでしょうが、しかし従業員の状態というのは、当初、前の改正が行われた去年から今日まですでに一カ年たって、その間に幸いに従業員組合も全国にできつつある、だいぶできて参りましたが、そういう状態になってくると、それらの人々が、こういう状態でございますということで、厚生省にも健康保険の適用をお願いし、あるいは労働省に労働基準法の厳正な監督行政を強化していただきたい。こういう陳情にもきたということは、すでに次官も御承知だと思う。そうしますと、快適にすることが即宿泊料金の値上げにはね返ってくるということは、業者のいうことであって、これは厚生省当局のいう言葉であってならぬと思う。どうなんです。そういうことをむしろ次官が言われるならば、次官としては、それでは給料を引き上げ固定給にするということは旅館主が出費が多くなるということで、そいつは宿泊者に転嫁するということを示唆するに等しいと思うのです。いやしくも行政監督指導の立場にある次官や当局者が、そういうことを考えたり言われたりするということはおかしいと思う。そのことは、じゃ、従業員の待遇はよくしますが、そのかわり旅館の利用者に対しては料金を上げてもよろしいかという反問を許すと思う。そういうことは実際けしからん表現だと思う。現在のある給与の姿を見ましても、先ほどから申し上げておるように、非常に安い賃金で、しかも固定した給与ではない。サービス料も何も一ぺん全部業主が取り上げて、そうしてそれをみんなに分けて与える、こういうような形になってきて、月々きまっていない額だ、こういう状態です。これは基準局の問題ですから私どもも今厚生省に直接あなたの方から監督指導をしなさいと申しておるのではない。そこで必要なものは厚生省と労働省の間で法目的を達成するためにどうすべきか具体的に相談されて、出先機関等を指導し、あるいは督励して、十分にこの点を改善する必要があるのではなかろうかということを申し上げておるのです。それで私は今言われるような、宿泊料の値上げになりますというおどかしは私はけしからぬと思いますが、どうなんですか。
  113. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) これは私は実情はそうなる危険があるということを申し上げたので、私が言うたから旅館業者が上げるとか上げないとかいうほどの影響はないと思います。要は、待遇改善ということを山本委員はお述べになっておる。先ほどからいろいろの言葉をお使いになっておりますけれども、これでは不十分でやっていけないのだ、従業員の待遇改善、この点を論旨としておられると私はキャッチしたのです。そうなれば、待遇改善すれば旅館業者がそのままひっかぶってしまうというようなことではなかろう。勢いだれが負担するかといえば、世間通例のあり方である利用者が負担する結果になる。だからその点はそういうような経済的推移をたどるだろうということを私は言ったのでございまして、これは経済行為をやっている旅館の人たちに対して私が言ったからそれに気がついて要求するような愚かな人は私は旅館主人にはないと思います。これは議論になりますから、あまりこちらから言うことは差し控えます。問題は行き過ぎた点を私は直さなければならぬと思います。それは先ほど部長から申しましたように、最低賃金制というものをこの際しっかりやっていくということでカバーは私はある程度できるのじゃないか。もちろん先ほど来申し上げますように、厚生省立場としての範囲においては御趣旨に沿うように労働省とも折衝を進めたい、こういうことを申し上げておるのであります。
  114. 山本經勝

    山本經勝君 具体的な事例の中で問題になっておるようですが、たとえばこの前この委員会で昨年の一部改正を審議した際に問題になったのは、チップをいわゆる経営者が取り上げて、そうしていわゆる業主の収入にして、業者の会計から今度は払い出すという問題についても問題があるということは、これは厚生省当局からも言われたと思う。そうしますと、そういうことを公然と今やっておる。私はこういうことをもし必要であったら実際に参考人を呼んでもらって実情を聞いてもいいと思う。不払いの宿泊料を従業員に弁償させる、受け持ちの女中に負担させる、こういう事例はしばしば現実に私どもも経験しておる。ですから私はそういうことはどう次官はお考えになるか。
  115. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) 今のチップをプール制にして、主人が一ぺんプールに入れて、それからその力量に応じてといいますか、甲、乙、丙、丁に比較的公平に分配するというのはあると聞いております。これは私一がいにいかぬとは私は思っておりません。これはしかしある旅館内の態勢を整えて、あなたのおっしゃるようにサービスをよくしていくというような点では、妙に女中が抜けがけの功名式にやりますと、旅館の中の秩序というものは相当にスポイルされるというようなところで、若干のことは私はやむを得ない場合があるのじゃないかと思います。どうも私も旅館のこまかいことは実際わかりません。自分も利用者の範囲を出ませんからわかりませんが、私はそういうふうに思っておりますので、ただそれが主人公も頭をはねてとっていくというような段階になればこれはいけない。少くとも客の気持には反する。こう私は考えるわけでございます。  それからまた仰せになりました食い逃げと言いますか、払わないで旅客が出て行ったという場合に、女中にある程度の負担をさすというようなこと、これも女中の側から言えば相当の問題だと思います。これもやはり限界の問題だと私は思うのですけれども、主人公が一々各部屋のお客の動静まで調べるわけにはなかなかいかぬのだろうと思いますので、ある程度は部屋を受け持っておるところの女中がそういう点にまでもある程度の責任を持つ。だから全額を私は負担さすなんというのはずいぶんひどいと思います。けれども若干のあやまち料というか、なまけ料と言いますか、そういう意味で若干のことくらい、しっかりやれという意味になるような程度のことをやるということであれば、必ずしも主人公が不都合だと、すぐにこう一概に私は言えぬのではないか。要は先ほど申しました行き過ぎている、ある限界を行き過ぎて公共の福祉に反する程度にまで行き過ぎている契約の内容であるかいなか、そういう具体的の問題によってこれは法規制の対象になる。しからざるものまで、たとえば主人公がプールしてそうしてその旅館内の女中関係の秩序を維持するために適当にそれを分配する。こういうことであれば、場合によっては私はそれは望ましい姿になるんじゃないか。こうも私は考えております。
  116. 山本經勝

    山本經勝君 次官に続いてお伺いしたいのですが、不払い宿泊料を受け持ち女中に負担させることも限度においては、やむを得ぬという解釈なんですか。重ねて明らかにしておきたい。
  117. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) これは申し上げましたように、金額負担さすなんということはこれは行き過ぎであります。けれども、各部屋の責任は一応女中が持つのでありましょうから、従業員が、それがぼんやりしてむだ話をしておりますために悪いお客が逃げていったというような場合も考えますと、できるだけお前の責任範囲は気をつけろと、こういう気をつけなければならぬのを誤まって、なまけておったということに対する多少の責任を追及するという形が若干においてある。そういう場合であれば生活を非常に圧迫するような程度でなければ、これは私がもし旅館の主人公であったら、それくらいのことはやってもいいなと考えております。(笑声)
  118. 山本經勝

    山本經勝君 次官が旅館の業主みたいに聞えてならぬのですが、それはまあ大へんな旅館であって、そういう旅館主は立ちどころに営業を停止してもらわなければ困る。(笑声)問題は、少くとも給与が、一定の額が、ちゃんと固定給がきまっておる。そうしてそれが正規に支払われておる。こういう状態のときであるなればまだしも、そうでなくて、その月々サービス料を含めた水揚げの総額の中で適当に配分をしてやっておる、不確定な、不安定な給与の状態において。そこで、もしかりに次官が宿屋の亭主であられたなれば、なるほど仰せのようなやり方でやられるに違いない。これは基準法違反で摘発して立ちどころにその営業は停止をしてもらわなければ困るのです。ところが問題は今申し上げるような形が一般に行われているという事実はお認めになるのかならないのか、それを御存じないとすればこれは事実具体的な例をあげて、しかも参考人を呼んでもらわなければいかぬと思う。
  119. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) 今の点、私法律を知らないのでまことに申しわけないことを……これは全部取り消しますから一つ。(笑声)
  120. 山本經勝

    山本經勝君 取り消してもらうと、どうも話が話にならなくなるのですが(笑声)これは私はきわめて重大な問題だと思うのです。もし今のような話が旅館従業員に伝わったならば、おそらく次官はつるし上げに会うと思う。これはそれに十分価値があると思うのです。  まあ一応それはそれとしまして、私は伺っておきたいのですが、健康保険法の適用をしようと言われる。たとえば任意包括にしろその他の問題にしろ、まず基本は何にあるかということを、まず次官は御存じになっているかどうか疑わしくなってきた。健康保険法の適用をしようと、任意包括でもどっちでもよろしいではないかと言われる。私はそれもやむを得ぬ。健康保険法の適用をして強制適用にしてもらいたいけれども、そうはなかなか簡単にいかぬでしょうから、五人未満の従業員を適用するというお考え方は一応あるようですが、そういうふうにする場合に、今障害になっているのは、先ほどちょっと申し上げたのですけれども、次官としてはどういうふうに御認識になっているのですか。
  121. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) 私は基本的には国民皆保険に進めればこういう問題は一応解決すると、基本的には私はそのように考えております。で、それにいくまでに、個々のいろいろのケースはございますが、皆保険をやれば、どんな人でもかからぬ人は皆ないわけでございます。これが望ましい姿だ、こういうふうに考えております。それも政府といたしましてはここ二、三年の間に皆保険を達成しようと、こういう考え方でおりますので、私といたしましてはできればそういう姿で結局においていくのじゃないか。何となれば、今のように移動が激しいと、それから標準報酬というものがあいまいであると、そうこう言っておりますうちに、ここ二、三年というものは過ぎ去ってしまう。そうすれば皆保険の達成の年限がなくなってしまうというので、実際問題としては、私は国民皆保険というところへ拾うべきことに結論においてなるのじゃないか、こういうように私は考えております。
  122. 山本經勝

    山本經勝君 国民皆保険国民皆保険と厚生省はいつも言われるのですが、その国民皆保険への道は私はなかなか遠いと思うのです、実際問題として。ところが現に被用者ですね、この旅館の中には、たとえばこの近所でもプリンスホテルのごとく四百数十名という従業員のおるところもある。それからまた観光地等においては少くとも二十人、三十人という従業員を抱えております。五名以下じゃない。先ほどお話があったが、十何万かの——十二万だと言われたのですが、去年の旅館業法改正に関する論議の際に資料の提出を求めた。あるいは環境衛生関係の営業の適正化に関する法律を審議する際にもこれらサービス業に関する業主と従業員の数等の資料の提出を私は求めた。それに対して当時出されたのは、従業員数は二十四万と言われた。これは私今も持っておる。で、その二十四万あったのが、その半分の十二万に減ったというのはどういうわけなのか。それはあまりにも無責任な当局側の言い方だと思うのですが、そうしますと、二十四万という人員があってその一戸当りの雇用人員はたしか四点何ぼですかになっておったと思う。で、今のお話だと、二・四と言われた。そういうふうに私は減るわけがないと思う。業者がそう数的に減っておりますか。私はこれは問題だと思う。
  123. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 今の点は、先ほど御説明申し上げましたように、いわゆる被用者、従業員が約十二万、それから経営者、いわゆる会社とか個人なりのこれが、個人の旅館業主、これが約四万、それから法人でございますが、その代表役員が一万五千、それからこの業者の家族、実質的には家族、これが約四万というわけでございまして、それから臨時の、これは日雇い的な、出たり入ったりする、これが約五千というわけでございまして、その外に先ほど言いましたような専門の被傭従業員が十二万ということで、合計いたしますと約二十四万になります。これは前の資料がどういうふうに御説明いたしましたか、要するに旅館で一切働いておりますといいますか、お客以外の者で営業主まで入れまして、あるいはそれを経営しておる団体の代表役員までも入れましての総数が二十四万。先ほどから問題になっております従業員、被傭者の従業員が約その半数の十二万、こういうことでございまして、食い違っておらぬわけでございます。
  124. 山本經勝

    山本經勝君 かりにそれが食い違っていなくても実際は二十人、三十人、観光地なんかの旅館はたいていおります。これは、この近くでも湘南地区の熱海とか鬼怒川とか、こういったところの温泉旅館等においては最低が二十人、最高がやはり五十人、六十人とおるわけなのです。こういう多数がおって、しかも従業員——これは雇われの人々なのです。被傭者がそうおるわけなのです。これらの人々に今申し上げるような健康保険の適用をする場合に基本になるのは何なのかと言えば、やはり次官の言われたように給与の安定化といいますか、固定化といいますか、つまり標準報酬を算出する基礎があいまいでは困るということに帰すると思うのです。そうしますと、健康保険の恩恵に浴させようとするのには、まずその前提である保険料の徴収の基盤が確立することが必要である、そういう方法について次官としてはどういうふうにお考えになっておるか。
  125. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) どうも私いろいろ考えますときに、最低賃金法でもこの際きめて、そうして、それによるよりどうも実際上の実行の場合には方法がないのではないか、こういうふうに私は考えるわけであります。最低賃金がきまったら、それを一つの標準にしてゆく。
  126. 山本經勝

    山本經勝君 最低賃金、最低賃金と言われるが、私はおかしいのですよ。今政府の言っておられる最低賃金は、あの本会議でも質疑がありましたように、いわゆる業者間協定を中心にしている。ここでは当然、もし悪い表現で言えば、次官のごとき業者が多数集まって業者間協定をしたらどういう協定をするか、これは想像に余りある。これはただで使うということに協定をするかもわからなぬ。それではどうにもならないから千円なり五百円なりなんぼかやらなければ工合が悪いということで協定するでしょう。そういうものが協定の基礎になっているのでは、そもそもかりに三千円以下であったら健康保険には入れない、適用されません、三千円以上でなければならぬ。つまり、そういうような業者間の協定を前提にして、いわゆる政府案の最低賃金ができたとしても全くお話にならん、ならんというよりできませんよ。業者間協定というのは、業者が寄り集まって俺の所はなんぼにしよう、おれの所はなんぼにしよう、それでは全体の賃金としてはこれだけにしようというので、安い方がいいわけですから安い方にきめる、こういうことになってしまう。ですから業者聞協定による最低賃金を前提にしておられるならば、私はそのことは何にもならぬ言いわけだとしか思えない。そこで何っておきたいのですが、最低賃金とは社会党が言っておるような最低賃金の線をお考えになっておるのか、あるいは政府案の最低賃金を前提としてお考えになっておるのか、どちらなのですか。
  127. 米田吉盛

    政府委員(米田吉盛君) 私は政府案を考えております。
  128. 山本經勝

    山本經勝君 そうしましたら、業者間協定ですから、つまり業者が集まって自分の都合のいいような協定賃金を作って押しつけるということになる。そのことは今まであった旅館等における従業員の賃金の形態と変りはないと思うのです。そういう点については部長はどういうふうにお考えになりますか。
  129. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 結局、今宿泊者が実際に旅館に全体として払っておりますものは先ほどからお話のように相当な額になる。これは和洋を問わず旅館業に対してはチップ制度日本では茶代というのがございますが、実際には宿泊者がその旅館で相当な対価を払っておっても、実際に表面に出ます宿泊料が一泊幾らということで、それと同額ぐらいまで払う場合さえあるということでございますので、基本には、ですからこの宿泊料金の払い方の制度そのものを相当に適正化しなければいかぬ、これがまず前提になる。そうなりますと、ほんとうにほかの営業の場合には幾ら営業収入があるかという総ワクから原価計算等でこれを再配分——利潤の配分その他をするわけであります、それが非常にあいまいになっている。これは非常に長い習慣でございまして、これを改める。これは不可能かといいますと、実際には最近の洋風ホテル等では部屋料とそれから食事代というのを明記して、そのほかにサービス料は一割とか、高いところで二割ということがはっきりいたしております。これは請求書の中に出てくる。それを今度今のサービス料の部分は、ある程度従業員の方に重点的に経営主が支出する。その他はやはり原価計算的な考えで適正な人件費として支出される、こういうところは比較的うまくいっているわけでありまして、そういうところでございますと、固定給がはっきりしてボーナスさえ出し得るところが大きいホテルではあるわけであります。こうなりますと、健康保険としては、ことに法人でございますと強制加入になる。それからそれ以外でございますと、任意加入でございますが、かような形であれば、これは解決されるということでございますので、全体の国民の大衆が払っておる対価をむしろ経済的に合理化することによってある程度これは解決する。こういうような料金制度にいたしますためには、どうしても営業者側がそういうつもりにならぬと、長い因襲でございますから、なかなか無理があるということで、これをやる足がかりといたしましては、先ほどから言っておりますように、少くとも同業組合がかなりこれは法によりまして中央官庁も、それから地方では県が強力に指導して認可権さえ持っておるわけであります。さような形でこれを是正するのがまず一つの大きな目標になる、かように存じておるわけであります。ただ、これは非常にほかのサービス業もそうでございますが、チップ制度と茶代制度が一般的にはこういうふうにだんだん適正化されると思いますが、中にはやはりそういうことが非常に一つの愉快に泊るというようなお客側の若干の趣味もございまして、なかなかそれを是正するのには、旅館同士の競争の面からいきますと、一がいにはなかなか組合を通じてやる場合も困難性がありますが、しかし全体としては国民の側から見れば、出した対価がいろいろ妥当なことに使われて、結局においてサービスを向上することが長い目で見れば、これは当然であり、また必要なことでございますから、さようなふうに持っていく、これが一番正しいことであります。その中に立ちまして最低賃金法的な考え方、すなわちそのものじゃありませんが、必ず固定給をこの同業組合傘下の旅館では最低このくらいがいいだろう、あるいはその中で今の弁償金なんかも場合によれば、共済式のことをやっているところもございます。個人負担は大へんでございますから、旅館主も入り、それから組合員の相互扶助の形で大きな弁償は出し合うという形をとっているところもないわけではないのでございまして、さような形で、その中でだんだんこういう習慣を改めて従業員の方も解決する、健康保険も次第にそれによって促進される、こういう方法が一番いいのじゃないか、そういう意味では確かに労働基準法の適用も、われわれの方から今後密接にお願いしなければいけませんが、根本は実際の収入が全部合理化されるもとになるような扱いをしなければいけません。それから業者がその腹になる、われわれとしてできる線はそういうような方法で十分指導していきたい、かように存じております。
  130. 山本經勝

    山本經勝君 部長さんのお話、つまり茶代その他サービス料といいますか、それと一般に、言われる旅館の宿泊料、これは明細書を明確になっている分もあると私どもも知っているが、しかし一般にはこれははっきりと分けておらないと思うのですね。実際上サービス料があることが前提になっている。宿泊料として領収証を、これは受け取るのではないのであるが、あることが前提になっておるという状態は、これは現実に、部長さんにしても、あるいは次官にしても御承知だと思うのです。快適に宿泊をするということも、一つの何といいますか、報償といいますか、その気持で、やはり直接世話をしてくれる女中さんや、あるいは番頭さんに、そうしたチップを出すということになっておる。ですから、そのことが、当然にやはり旅館の営業の収益として計上をされようが、あるいはまた、直接個々のサービスに当った従業員のふところに入ろうが、結果としてはこれは変りはないと思うのです。いわゆる宿泊という一般不特定多数の国民の一般的な負担においては変りはないのですから、原価計算等を明確にして、そこら辺の線をはっきり出していくということが、賃金を決定する基本条件であると言われるならば、それもまたやむを得ぬでしょうが、しかし現にある状態は、そういうふうな努力を、旅館同業者の組合か、あるいは同業者間でやってはおらないのですね。これは、やっておるとお認めになるならば、これは、私は具体的な事例を御説明願いたい。そういうことはやっておらぬ、なるべく高い賃金で、環営法の規定に基いて、同業組合に料金のつり上げをやろうとしておる。現にやっておる、こういう状態ですから、そのことは、利潤を多くするための経営努力に尽きるといっても私は少しも過言ではないと思う。そういう半面でもって、一方では従業員に対する給与の決定をせずにほったらかしておるということじゃ、慣行だといったって見のがすわけには私は参らぬと思う。適正なやはり基準法に基く取締りなり、あるいはまた行政的な指導が行われていかなければ、表裏一体になって円滑な推進というものは困難である、こういうふうに考えます。ですから、そこら辺のやり方について、先ほどから言われておりますが、たとえば労働省と相談をすると言われますが、労働省はむしろ私は積極的にやっておるとみておる。というのは、直接組合から厚生省にお願いを申すよりも、もっと強く基準法の適正な適用をお願いするということで強く要望しましたし、また組合から直接労働省にしばしば参りまして、私どもも一緒に行ったことが数次ありますが、そういうような形で訴えた。その訴えた結果が、基準局長間における口頭の通達となりあるいは基準監督署に対する労働省の文書の形における通牒というような形になって現われている。しかもこの法案を論議するときには、いつも厚生省が努力をすると言われるが、さっぱりその具体的な内容はない。先ほど次官のお話のように、てんで問題になさっていないような印象を強く受ける。それでは、せっかくの法の目的は死んでしまいますぞということを申し上げておるのですが、私は、やはり今のような考え方で、原価計算等がはっきりできて、そうしていわゆる利潤を生み出す基礎が明らかになり、そしてこれに関与した従業員等を含む収益の配分を考えるというようなことでは、私はおそいと思うのです。いやしくも現に働いて、そうしてそれによって生活をする従業員をかかえる業者が、みずから企業を営む前に、人を雇えば賃金を払わなきゃならぬ。人の生活を保障せにゃならぬということが、その前提が企業前の問題としてある。それを無視してやっておるのが、実際の宿屋の亭主なんです。その宿屋の亭主なるものが、寄ってたかって、最低賃金を業者間協定できめたからといって、それで私は保障にはならぬと思う。そういうことではなく、法律の本来の趣旨に立ち返って、厚生省として、こうした従業員の待遇の改善なり安定をさすことによって、この種多数の旅客に、旅客のための施設なんですから、これらに、いわゆる快適な思いをさせるということのためにやるというならば、少くともその前提条件として、従業員に対する待遇の改善が必要であるということを、厚生省では認めておりながら、そのことがなされておらぬ。これが、私が今申し上げておるところの不満の中心なんです。ですから今後どうするかじゃなくて、これはまず問題は労働省の基準局を呼んでいただきたい。それで共にここで協議をしてきめなければ、この改正案について私は言いたいことが尽きない、こういう状態なんです。で、厚生省としてはどうお考えになるか、そこら辺を一つ承わっておきたい。
  131. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 先ほど言いましたように、今後の組合を通じてやる問題は、今後必要だろうと思いますが、現在そういう実況にあるものを改善するということでございますが、結局われわれの方としては、その必要性は十分もう、もとより認めております。具体的な方法といたしましてやはり一方では営業者が旅館の任務に目ざめて参ることは、むろんこれは絶えず指導しなければいかぬと思いますけれども現実的にはやはりそういうような待遇で放置しておく、すなわち自分の利潤のみに目がくれているというようなこと等、どうしてもある程度法的な介入を求めなければいかぬと思いますが、その意味で、たとえばわれわれの方でつかめます限り、各県の方で旅館業法に基いてこれは監視もやっておりますから、環境衛生関係の業務として監視もやっておりますから、さような意味で旅館のどことどこがどういう形であるということは、これは衛生当局でつかんでおりますから、これをまず労働基準法に十分当てはめる。それからその間でできるだけいろいろな、お話のような著しい例がありますれば、かような例を、リストをできるだけ話して、そういうようなものが一罰百戒といいますか、そういう例が基準局の発動になりますれば、その他にも非常にこれはすぐ伝わって自粛する、かようなことがわれわれの方としてはさしあたってできることであろうと思うのであります。もちろん全国的な情勢がつかめたものは、中央同士でこれは協力していただける、かように存じます。具体的な方法といいますと、さような点ではないかと存じております。
  132. 山本經勝

    山本經勝君 もう一点伺っておきたいのですが、これはいわゆる行き過ぎたあるいは不当な取り扱いの行われている実情が、具体的な事例としてあげれば、たとえば従業員に対して損害補償といいますか、危険負担を無理にさしている、こういうような事例あるいは臨時に雇われた従業員の給与をその他の従業員に負担をさせるというようなやり方、これは明らかに不都合であり違法であると私は思っている。で、これは誤まりであるかどうかということは、次回にこの委員会に基準局長の出席を願って十分掘り下げたいと思いますが、とにかく現在旅館の営業に関する認可は厚生省の出先である保健所ですか、保健所がやっている。ですから、厚生省は要するに認可権を持っているとともに、認可を取り消す権限も持っていると思う。行き過ぎた不都合な旅館の経営者に対しては、認可の取り消し等強硬にやる用意があるのかどうか。もし次官のようなお考えや表現から私が考えるというと、これはむしろ旅館業者は契約に基いてやっているのであるからいたし方ないと言われるかもしれませんが、私は部長に伺っておく。少くとも認可をし、認可を取り消す権限を持っている厚生省ですから、その行き過ぎた不都合があるということを認めるなれば、その旅館の営業認可は取り消すと言われるのか、そこまでやられなければ、おそらく今の情性ということは改善されないと思う。そこら辺の決意のほどを一つ明らかにしておいていただきたい。
  133. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 旅館業法の認可の問題につきまして今のような従業員の取り扱いの事例によって、旅館業の認可を取り消すかという点でございますが、これは現在までのところ、定められた衛生基準と規模、構造その他でございますが、この問題がそろってない場合というのが、昨年以前の認可条件並びに認可取り消しの条件だった。それに昨年から売春関係の風紀事犯というものが加わりまして、これに違反がありますと取り消しということになっておりまして、今のところこの従業員の待遇その他、実際には旅館業としては不適当なことでありましても、今の旅館業の認可の条件あるいは取り消し条件には、かようなものが入っておりませんで、これは別個に労働基準法違反としての事犯ということになっておりまして、実際にはやることは、今のところできぬようになっておりまして、実際問題といたしまして、そういうことをもしやるとすればこれらの営業に関して営業の許可取り消し等にこういうような事項も入れまして法の改正をしなければいかぬわけでございますので、今この旅館業法の認可に関しまして直ちにこういうことがあったらやるとかやらぬとかいうことになりますと、現在のところは不可能になっております。あくまで行政指導、こういうことでございまして、他の法の発動をお願いしてそちらのいろいろな事犯としての処罰等を求める、こういうことになっております。
  134. 山本經勝

    山本經勝君 もう一点続いてお願いしておきたいのですが、私は旅館業法の全部を今はっきり記憶しませんが、今言われる衛生環境並びに風俗営業取り締りの点から、いわゆる営業の禁止なりあるいは認可の取り消しなり、こういうことはあり得ると言われた。そうしますとその他の法律に違反してもそれはよろしいということじゃないのでしょうね。たとえば基準法違反という厳然たる事実があるということになって、そのことが基準局の決定になって送検をするという事態が発生をすれば、私はやはり当然認可の、営業の停止を命ずるということがあるのではなかろうか、あらなければならぬという気がしますが、そこら辺はどうですか。
  135. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) ただいまのこの旅館営業法でそういうふうになっておりません。明らかに取り消し得るのはこれこれの法に違反した場合ということがはっきりしておりまして、労働基準法の違反その他この旅館業法に明記してないものは営業取り消し、停止の原因にはできないのであります。
  136. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますとつまり基準法には違反してもよろしいということになりますか。
  137. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) これはまあよろしいという積極的な意味ではなくして、これはいろいろなものに、あるものは取り消しということになりますと、ほかには触れないということでいいわけではなくして、やはり国法でございますから違反は、同じ法律はどれでも違反しちゃいけません。それを直ちに旅館営業という、営業に結び付けておらぬ、こういうことでございます。
  138. 山本經勝

    山本經勝君 そうしたら今度のこの改正案の中にそういう条項を盛り込んでいくお考え方はないのですか。
  139. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) ただいまのお話、他の法で処罰はされるのでございますからその営業者等は、まあその結果営業にまで、どの程度、つぶれるかどうかというのは、これはまた具体的にいろいろなことが起りますが、あるいは評判を落すとか、ただ、今のところ今回の改正に直ちに労働基準法なりその他のいろいろな法令違反をこの旅館業につきまして積極的に停止あるいは一時停止等のことに改正をお願いするということは現在のところ実は考えておらぬわけでございます。
  140. 山本經勝

    山本經勝君 これは委員長にお願いをしておきたいのですが、私本日の質問はこの程度に打ち切りますが、次回に基準局を呼んでいただきたいことをお願いをして私の質問を終ります。
  141. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) はい、わかりました。
  142. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと関連して。今の山本委員の発言の延長になると思うのですけれども、この前の旅館業法、環境衛生法の関係のときに、環境衛生の立場の問題は論議されました。しかし従業員の生活の問題やまたは健康の問題については厚生省は実際に努力をする、そういう工合にするとおっしゃってから相当たつと思うのですが、今の意見の取りかわしを聞いておりますと、どうもどれだけ努力されたか。最低賃金法が出てきたり、具体的にそういう衛生に非常に密接な関係のある従業員の生活環境、健康環境ですね。そういうものを全部自費でやらなければならぬという格好なんですから、そういうものに対して法律に、条文にないから関係がない、 こうおっしゃるわけですけれども、そういうことがよくおわかりであれば、この前ここで高野委員も私も述べておりますように、またはむしろそういうところの法改正をやりたいという意向が前回のほとんどの人の気持であったと思うのです。ところが何か聞いていると積極的にその問題について厚生省がおやりになっていないように思うのです。だからどういうことをやったかということだけ聞かせてほしい。要するにその従業員の不安定なやつを安定化していく。生活それから健康の保持に対する健康保険ですか、または国民健康保険に地域的に入っているところがありますけれども、主としてやはり健康保険、今度は任意加入の五人以下というのがありますから、そういうこととの関係でどういう工合に努力されたか。それだけ関連して承わっておきたい。
  143. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 待遇の方につきましては先ほども申し上げましたが 今度の営業者の団体である同業組合、これは最初から設立準備委員会等ができまして、いろいろ今後の行き方について相談を受けております。これには今の従業員の待遇問題を組合のいろいろなきめ方として漸次向上さすようにもっていくということについては、これは十分指示を与えております。それから保険の方につきましてはこれは保険局の健康保険法とか、あるいは国民健康保険法との関連でありますが、これにつきましては極力われわれの方としてはこういうサービス業、これだけと限らないのでございますが、類似のサービス業がたくさんありますが、これらの従業員の保険制度による恩恵の獲得につきましては、できるだけ拡大と申しますか、より多くが入るような、これは保険当局とも十分話し合っておるのでございますが、何分先ほど言いましたような基礎条件が一番根本で、何とかならぬかということでございますので、われわれとしてはしばしばこの同業組合ができた場合に従業員をも網羅した特別国民健康保険、これの方を何とかもっていったらいいのじゃないかということを具体的に相談しまして、この方は非常に可能性が多いというような見解を得ておりますが、一般の地域の国民健康保険でございますと、これは今でも入れるわけでございますが、これは必ずしも旅館のある立地条件等からうまくいっておらぬところも相当ございます。うまくいっているところもございます。これは地域が非常に確実な国民健康保険組合が成立しているところもある。さようなことでございまして、具体的にこれだけを新たに制度を変えたとか、あるいはこういう基準を設定したとかいうようなことは、今までのところ実際にはまだないのでございます。今のような制度の中でできるだけ研究して拾い上げる、及ぼす、かような点に努力しておるわけでございます。
  144. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その第一段の問題ですね。今度の環境衛生法によって組合をお作りになって指導をして、それを要望したとおっしゃいますけれども、組合設立の条件になぜ、この委員会の要望というものを組合設立の条件になぜお加えにならなかったのですか。従業員の生活の問題、今の不安定なやつを安定化していこうということを、業者の組合設立に指導されたわけでしょう。それでなぜそれを条件にお加えにならなかったのですか。
  145. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 実際にあの条件といたしますと、定款に盛り込ますわけでございますが、この定款でわれわれの方で流しましたのは大体環営法に盛っております事項を実際のところは初めてでございますので、並べた。こういうことになっておりまして、これによりまして全員の設立総会を通過さす、早く設立さすということで、大体定款例を右へならえしてあの事項、九事項でありますが、それをやりました。この中に共済事業があります。それからもう一つの事項としては営業の改善についての指導、あるいは共同施設という点は、これはいずれも必らず設けさしておりますが、これの実際な具体的な今度は組合の活動になりますと、細則なり規程なりあるいは事業計画なりがきまってくるわけでございます。いずれもこの八つないしその他という九つの中でやることになっておりますので、これからこれが具体化してくる、こう存じております。当初は定款例、定款の大幅なことでこれを通過さしたわけでございますので、細部は盛ってないわけであります。
  146. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは、結局具体的には、あれだけ委員会全員と言っていいほどの希望意見というものが、具体的には厚生行政の中には生かされていないというふうに私は感じますがね、これは意見になるわけですから、これは山本委員委員長に要請されたそのときに私はまた問題としたいと思います。私はやはり厚生省が、午前中といわず午後といわず、どうもこういう積極性が最近行政にないような気がするので、非常に残念だと私は思います。きょうはこれでやめますけれども一つ改めていただきたいことを希望しておきます。
  147. 山下義信

    山下義信君 私は一、三の質疑があるのですが、時間も時間ですから、大体次回にさしていただくつもりですが、一つだけ承わっておきます。従来ありました勅令九号について処罰を受けました者は、営業の取り消しあるいは停止になっておりますが、処分を今回は売春防止法の罰則をここへお入れになったのですね。勅令九号の関係事項はこれは経過規定でやはり本法の処分適用を続いて受けるのですね。ひっかかっております者は受けるのですね。それで、勅令九号で、従来といいますかね、具体的にいいましたらばできるだけ最近のですが、できれば昭和三十二年、なければ昭和三十一年、昭和三十年ですね、最近の勅令九号の違反といいますか、検挙件数ですね、それがどのくらいあるかということを承わりたいのですね。それで九号の一条の違反件数が幾ら、二条の違反件数が幾らあったかという過去の実情ですね。しかもその違反件数の中で、起訴された者、処分された者という状況、ことに本法と関係のありますのは、その中に旅館業者あるいは従業員というものが九号に触れて処罰されたのですね。なおあるいは起訴中のものという、実際の現行法がどういうふうに適用されておるかということ、またそれに関連してその旅館業法の行政処分をしたことがあるかどうか、あればどういうふうな処分をしたことがあるかということ、それを一つわかっておりましたらば御説明願いたいし、またそういう資料がありましたらば御配付願いたいと思うのですが、大事なことですからね。
  148. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 全部のものにつきましては、これはわれわれの方で使いませんで、警察庁の方でくわしくこの事犯の報告を当然徴しておりまして、作成しておりますが、今われわれの方でこの旅館業関係で、これは今度法律改正さえお願いしておることでございますので、われわれも当然知っておらなければならぬという部分で、三十二年における勅令九号の一条、二条の違反で、いわゆる送検されたもの、検挙されまして送検されたものと、この数が現在判明しておりますが、これは御参考までに、一部になりますが、恐縮でございますが、わかっておるものがそれだけございますので申し上げますと、三十二年中すなわち一月から十二月までの間に勅令九号の第一条すなわち困惑売春の方ですが、これの違反がホテル、旅館、簡易宿所、下宿この四業、すなわち旅館業全体を通じまして違反案件が二十一件でございます。それから勅令九号の二条これら違反、すなわち契約売春の方でございますが、これの方が二百六十九件、かような件数になっております。このうち実際にこういうことが起りまして、今度警察庁からの通報によりまして、新しい昨年改正いたしました勅令九号に基く今度旅館業法の取り消し停止の問題でございますが、これが発動いたしましたのは五月に成立いたしまして六月からでございますが、政令その他省令、通牒が相当慎重にやりましたために二、三カ月おくれておりますので、実際にはそのときからできるわけでございますが、実際にこれが警察庁と通報関係等の打合せができたのがおくれておりますが、それにいたしましても四、五カ月はこの問題について起るわけであります。現在までにこういうことでキャッチいたしてすでに報告を徴しましてわかっておりますのが、群馬県でやはりこの勅令九号違反で三十日の営業停止をした。それから福井県で三十日。なおこれには途中で当人の公開聴問会を経ないと最後決定ができぬようになっておりますので、その聴問の準備中のものが茨城県で三件、それからこれは違反があって県の方からの通知でございますが、近くこれらの運びになる見込みであるというのが、これははっきり件数はわからぬのでありますが数件石川県である。こういうことがわれわれの方に報告を必らず出すようにと言っておるところで、すでに参った事例でございます。その他につきましても、これが進行いたしますと必ずこちらに情報を入れるようにという形になっております。  次に、なお先ほどの御要求の残りの部面につきましては、警察庁の方に依頼をいたしまして、こちらから間接にこちらの委員会に御配付申し上げる部面と、それから厚生省を通じないで警察庁で直接出すべきものと何か二種類あるような折衝をいたしたのでございますが、ございますので、いずれにいたしましても出し方は両方から出るかもわかりませんが、こちらに残りの部分はできるだけ出るようにいたしたいと思っております。
  149. 山下義信

    山下義信君 ただいまの資料一つプリントにして委員会に御配付願いたいと思います。  なお、営業停止処分をしましたような事例は、その事件の概要を数行に要約していただいて、そういうふうな資料として出してもらいたいと思います。
  150. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  151. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十九分散会      —————・—————