運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-02-20 第28回国会 参議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十日(木曜日)    午前十時四十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            木島 虎藏君            山下 義信君            中山 福藏君    委員            有馬 英二君            後藤 義隆君            紅露 みつ君            鈴木 万平君            谷口弥三郎君            横山 フク君            片岡 文重君            木下 友敬君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            山本 經勝君            竹中 恒夫君   国務大臣    労 働 大 臣 石田 博英君   政府委員    総理府総務副長    官       藤原 節夫君    調達庁長官   上村健太郎君    調達庁労務部長 小里  玲君    労働政務次官  二階堂 進君    労働大臣官房長 澁谷 直藏君    労働大臣官房会    計課長     松永 正男君    労働省労働基準    局長      堀  秀夫君    労働省婦人少年    局長      谷野 せつ君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査の件  (昭和三十三年度労働省関係予算に  関する件)  (駐留軍の撤退に伴う労務者の離職  対策に関する件)  (けい肺対策に関する件)   —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 開会いたします。  労働情勢に関する調査一環として、昭和三十三年度労働省関係予算に関する件を議題といたします。  まず、資料が出ているようでございますから、資料説明を願います。
  3. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) お手元に配りました資料につきましては、簡単に御説明申し上げます。  一枚刷りのこの大きな表でございますが、これは、「国際労働条約批准状況一覧表」でございます。一番左の上のかどをごらんいただきますと、一番上の横に、条約名が掲げてございまして、条約の総数が百七でございます。一番右の、四十回と書いてあります下にございますように、百七でございます。それから、その下の欄が条約番号でございまして、一から一〇七番まで、一貫番号でここに書いてございます。その下の欄が、批准国批准した数でございます。それから、その下が国名ということでございまして、この中に書いてあります、相撲の勝ち星みたいなしるしは、一番上に書いてございますように、黒の四角が批准登録、それから、中に白がちょっと入れてあるのでございますが、印刷の関係で、鮮明に出ておりませんので、その点はまことに申しわけございませんが、条件付批准登録でございます。それから、○じるしが批准を廃棄したしるしでございまして、これを一覧表にして、お手元に御提出いたした次第でございます。  それから、もう一つは、昨年出されました「雇用審議会の答申に対する措置の概要」を書いた資料をお手元に配ってございます。三枚ほどのタイブで打ったものでございます。  それから、「昭和三十三年度おける産業別離職見通し」、これは、先般も本委員会におきましていろいろ質疑がございました点につきましての資料をまとめまして、提出したものでございます。  それからもう一つが、「昭和三十三年度経済計画関係指標」、それから「不完全就業関係資料」、それから「昭和三十三年度予算事項別総表」、いずれも先般の委員会におきまして資料の提出を要求されました事項に捲いたものでございます。  簡単でございますが、これで……。
  4. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 何か資料について質問がございましたら、お願いいたします。
  5. 山下義信

    山下義信君 資料をただいま拝見いたしましたので、この資料に対する検討をさせていただきまして、私の要求いたしました失業問題の資料等につきましては、また別の機会にお尋ねすることにいたしたいと思います。
  6. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それでは、予算関係に関する件について御質疑を願います。
  7. 山下義信

    山下義信君 私は、婦人少年局関係予算について、一、二伺いたいと思います。  まず、予算説明資料の中につきまして、十五ページでありますが、婦人労働者福祉施設費二百八十万円と計上されてありますが、働く婦人の家を設置するための経費といたしまして、そこに概要の御説明がある。これは新設の御予定のようでありますが、これは、どこに御設置になる御予定でありますか。またその目的運営等はどういう気持でおやりになる計画であるかということを、事務的でありますが、一つ承わりたいと思います。
  8. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) ただいまお尋ねいただきました婦人労働者福祉施設でございますが、これは、中小企業の密集しております地帯婦人労働者のための福祉施設でございます。中小企業につきましては、特に年の若い娘さんがたくさん出かせぎに働いておる所が相当ございますし、また、中小企業は、特に家庭を持った婦人で、働かなければならない方が働いている中小企業の密集している地帯がございます。で、この施設は、若い娘さんあるいは家庭を持った働く婦人が働きやすくなるために必要ないろいろな福祉施設施設の中に備えて、そして経済的な地位を得ることができるように、私ども、援助していきたいという目的のもとに、ぜひ作っていただきたいと思った施設でございます。繊維産業でございますとか、あるいはカン詰企業でございますとか、そのほかの企業が密集している所の婦人労働者の若い方々には、特に教養施設も整えて差し上げたいし、それから、家庭を持った婦人につきましては、いろいろな、生活問題でございますとか、あるいは特に洗たくの施設でありますとか、子供の保護のための施設ども必要でございますので、私どもといたしましては、特に恵まれない、条件の悪い中小企業に働いていらっしゃる婦人労働者の密集している所に作りたいと思っているわけでございます。このような趣旨からいたしまして、この事業は、府県を通しまして、府県施設といたしまして私どもは、補助金を流したいと思うのでございますが、運営につきましては、できるだけそれが土地皆さまほんとうに役に立つように、運営委員会ども設けまして、皆さまと御相談をしながら、役に立つように運営のことを考えて参りたいと思っております。まだどこということは全然考えてございませんで、以上のような考え方のもとに、この施設運営させていただきたいと思っております。
  9. 山下義信

    山下義信君 お考えは、なかなかいいようでありますが、けっこうなことでありますが、中小企業密集地帯といいますと、ずいぶんあるわけでありまして、これが設置個所が一カ所というのはどういうわけでありますか。それから、まだ予定地がきまらないというのは、一体どういうことなんですか。それから、府県にまかせるということは、一体どういうことですか。元来こういう施設は、ほんとうを言いますというと、事業主が当然義務的にやらなければならぬことなんでありますが、相当力のある企業者ならば、みずからやるべき義務がある。中小企業者は、事業主がこういう施設をやる力がないから、政府がみずから費用を出してこういうことをやるのだということになると筋が立つので、これは、私は国立でやるのかと思っておりましたら、府県に一任するということは、なかなか思いつきはいいが、考えはいいが、その責任府県の方にまかしてしまおうということで、ちょっと考えだけでこういうことをやってみて、やり方は府県の方にまかせることで逃げているという形になっておる。国立でやるならば、そういう趣旨のものを中小企業密集地帯に、国みずからがやっていくとすれば筋が立つのですが、一体こういうことは、府県にまかしてやるという方針ですか。それから、設置予定個所が、せっかく予算を組んで、こういうことを新たにやってみようというのに、どこへやるということもきまっていないというのは、どういうことなんですか。それから、ここでは、予算は一カ所だけ出ておりますが、将来はどうするつもりですか。たとえば、府県でやるならば、相当希望が出てきたら、この希望に応ずるという考えがあるのかどうか。そういう点はどう考えておるのですか。
  10. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 中小企業の働く婦人の多い密集地といたしますと、たとえば、小さな織物工場が集まっております所でありますとか、あるいはカン詰工場でございますとか、日本には、伝統的に婦人が多く働いている土地がございますので、それらの土地にできるだけ全部設けて差し上げたいつもりでございます。予定個所といたしましては、現在事務的に土地状況あるいは必要度というようなものを調査を進めておりますし、この施設が最も土地の方に喜ばれるものであります関係上、土地の方が熱心に受け入れて下さるところに設置して差し上げたいと思っているわけでございます。そういうことによって運営効果が最も土地の方にふさわしいものであると思いますので、そのようにいたしたいと思っております。従いまして、現在予定個所と申しますのは、で、中小企業といたしますと、二十カ所近くの土地がございますのでございますが、さしあたり、最初の試みでございますので、まず一カ所を設けまして、その効率によりまして、将来におきましては、この中小企業地の全部に作っていただきたいと思っているのでございます。  なお、この施設をなぜ国の施設にせなかったかというお尋ねでございますが、この施設につきましては、国が直接経費をもっていたしますよりも、土地皆様の協力とあわせて施設運営していくということによりまして、最も効果が上る施設であると存じますので、国の施設ではなくて、地方自治機関皆様に参加していただいて、施設効率を上げる方がさらにふさわしいと存じますので、そのようにいたしたわけでございます。
  11. 山下義信

    山下義信君 国でやったら効果が上らない、地方にやらしたら効果が上るということは、理由にならぬと思う。なるべくならば、国がやるがいいのです。やる方が、しっかりしたものができる。この二百八十万円というのは、それでは、設置する府県への補助なんですね。設置する所は、これはどういう補助ですか。四分の一、三分の一ですか、幾らやろうということで二百八十万円ということになっているのですか。
  12. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 三分の一補助でございます。
  13. 山下義信

    山下義信君 その一カ所べ行くのが、まだ原則が立たぬ。二十カ所ほど適当と思われる所があって、その府県が競争してさましたら、その中で一つどこかへ許可するか、あるいはまた、それをあっせんするような運動をするようなものが熱心に出てきたら、それにやらせるというのですね。だから運動次第。そういう運動やらあっせんやらをやらさぬようにして、一カ所試みにやるといったらば、ぴしゃっとここへときめたらどうですか。その府県が首を振って、私の方じゃやりません。そういう費用が出ませんと言ったらば、次の候補地の何県の何がしというふうにきめておきますと、いわゆるいろいろ運動がましいことをあなたのところへ言うていかなくても済むことになりますから、その第一の候補地はどこですか、適当と思われる所は。そういう所があったらば、その県知事を呼び出して、お前の方に補助をやるからやれと言ったらばどうですか。第一の候補地はどこですか。
  14. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 候補地につきましては、土地婦人労働者の数でありますとか、さらに、その企業企業組合の設立の状況でありますとか、あるいはその土地婦人労働者性格でありますとか、あるいは土地の方が将来の運営について十分援助をして下さるという見込みを私どもが現在調査をいたしておりますので、その調査ができますと同時に、府県の知事さんにもお話しを進めたいと思っております。
  15. 山下義信

    山下義信君 そういうことが調査中であるとおっしゃるならば、それ以上は承わりませんが、もっとしっかりして、ちゃんときめておいた方がいいですよ。そうして、こういう席でちょうど質問が出ましたのをいい機会候補地はどこです。こう考えておりますとおっしゃったら、いろいろな運動がましいことが行われなくていいのです。そういうことが望ましいのです。  その次は、内職公共職業補導所というのがありますね。これは、従来の設置個所が八カ所、今回新たに七カ所が予定されている。その新設の七カ所というのはどこです。
  16. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 内職公共職業補導所につきましては、新設府県を次のように考えております。これも、内職者の多い府県あるいは産業府県あるいは山間府県その他の立地条件産業状態その他を考えまして、内職補導施設を最も必要とする府県にやっていただくことを考えております。
  17. 山下義信

    山下義信君 これも、七カ所の予定地というのはさまっていないのですか。
  18. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 一応は考えておりますが、まだ決定はいたしておりません。
  19. 山下義信

    山下義信君 一応考えておられる予定地をおっしゃってごらんなさい。
  20. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 北海道、宮城、茨城、新潟、福井、山口、愛媛、以上七カ所でございます。
  21. 山下義信

    山下義信君 多少後に変更がありましても、こういうふうに予定しておく方がいいのです。ちゃんと予定しておきますと、弊害がありません。  その次に伺いますのは、婦人少年室増員が今度行われましたね。承わるところによりますと、この増員をしてもらったということは、大そうあなたの局内の人が喜ばれて、各地から石田労働大臣に、いろいろお礼やら感謝やらの賛辞を送られたということでありますが、そういうおべっかはいらぬことです。増員されたことはけっこうであります。何のために増員されるのです。この予算説明書を見ますと、売春問題対策費というところに、四十六人の増員がここに掲げられたということですね。この増員をされた、主たるお仕事がふえますのは、売春対策のお仕事ですか。
  22. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 婦人少年室は、全国で百四名でございますが、一府県に普通の府県が二人駐在いたしておりますし、大府県で四人、その他の府県が三人という状態でございまして、非常に人数が少いのでございます。それに加えまして、室長職務を申し上げますと、本省の局内の主謀の仕事を受けておりますし、昨年からは、四課の仕事を直接受けておるわけでございますが、室長は、職務内容といたしまして、外部のいろいろな行政機関との連絡仕事をいたしておりますと同時に、売春問題の、売春防止のための相談業務も、婦人問題の相談業務一環としていたしておるわけでございます。売春仕事は、法律の施行に伴いまして、各機関との連絡も緊密にいたしまして、売春防止の遂行をはかりますと同時に、婦人相談所で、あるいは警察その他の関係におきまして、売春防止相談に応じておられるのでございますが、婦人少年室という、まことに広い仕事をいたしておりますところの方が相談に来やすい方が多いのでございます。従って、この婦人少年室の門をくぐって、さらに婦人相談所その他に行っていただく方が相当多いのでございますが、その相談性格からいたしますと、一つの件について各種の機関連絡をして、本人に納得いくようにお話し合いをしていくわけでございます。従いまして、普通の事務をいたしますと同時に、本人のために親身になってお世話する関係上、非常に手を取られるところが多いのでございまして、そのような関係から、四課の仕事を流して参りまするについてさえ困難を感ずるような状態でございまして、そのような関係から、手狭な、しかも、売春問題の進行について、十分私ども責任を果させていただくために、相談の充実ということも、私どもとしてぜひ何とかしていただきたいと思っていたところでございます。今回この増員につきましてお認めいただくことができますならば、私どもとしては、勇気百倍いたしまして、もっともっと皆様のお役に立つような仕事になって参りたいと思っておるところでございます。
  23. 山下義信

    山下義信君 婦人少年室強化は、従来からわれわれ社会党としても、強く要望しまして、婦人少年室強化のみではありません。婦人少年局存在そのものにつきましても、非常に御協力申し上げてきておりましたことは、周知の事実でありますので、今回強化されましたことはけっこうでありますが、当面は言うまでもなく、将来売春対策のお仕事が多い。従来労働者全体の売春問題について、労基法その他の関係法規を武器として御尽力なさったことに対しては、その御努力を高く評価するものであります。ですけれども婦人少年局仕事は、売春問題が主たる仕事ではない。言うまでもなく、婦人少年局設置いたしました主たる大目的は、年少労働者保護、あるいは労働者生活実態を御調査なすって、その労働者生活向上のために、ことに婦人少年労働者の立場、その家庭にまで及んで御努力願うことが非常に大きな目的であった。当面は大事なことでありますから、それは大いにやってもらわなければなりません。大いにやってもらわなければならぬということを言っておきませんというと、売春業者関係のあるようなことを言われますから、それは大いにやってもらわなければならぬ。しかし、これが婦人少年局のおもな仕事ではありません。やがてこれらの問題が下火——下火といいますか、あるいは他の方の者の仕事が緒についたら、これは、本来のお仕事に戻っていただかなければならぬ。それは、まだまだ、労基法関係その他から、労働省に御尽力を願わなければならぬ問題は相当にあるのでありますけれども、こればかりが主たるものではない。せっかく婦人少年局強化され、少年室増員がありましたならば、将来は何に主力を置いていくかということを考えて、少数の人員でも、いわゆる少数精鋭主義で御努力を願わなければならぬ。  それで、私が最後にそのことをお願いしたいと思って、申し上げたいことが一つある。青少年ホームというものが、昨年度の予算で一千万円通りましたね。それが三十三年度予算では、今度は新設もないし、さらにそのことが、何と申しますか、消極的に扱われてあるのですね。青少年ホームというものはどうなっておるのですか。
  24. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 昨年度の予算といたしまして、一千万円お認めいただきました青少年ホームにつきましては、現地名古屋に一カ所建築中でございます。これは、一千万円でございますが、青少年ホームと同時に、年少者宿泊施設を付設いたしまして、非常に大きなものを作っておりますわけで、この六月に完成を見る予定に進行いたしております。私どもといたしましては、特に中小企業に働く年少者の問題を考えます場合に、さらに、この青少年ホームにつきましては、年々必要なところに作っていただくことをお願いしたいのでございますが、何しろ私どもといたしまして、この青少年ホームにつきましては、まだ、ことしこれが完成を見ましたあと、この施設の十分な運営効果を見ました上で、さらにこの施設を充実させるためは、全国各所に設けていただくための方向に進めたいと思うのでございますが、何分にも、ことしはまだ効果が十分現われておりませんので、この効果の上に立って、さらにこの青少年ホームを充実させるようにして参りたいと思っております。
  25. 山下義信

    山下義信君 効果を見てもけっこうですがね。効果を見る前に、必要度が非常に高いのでありましてね。必要度の高い施設は、やってみれば効果があがるのに間違いないのであって、作ってみて、効果があるかないかわからぬ。その出入りによってというようなことではないはずであります。非常に必要度が高い。五カ所か六カ所の新設を当初要求されて、今年は一カ所も見ないので、私は遺憾に思うのですが、それで、谷野局長に私はお願いしておきますが、日本労働行政婦人少年局を持っておることも、また、谷野局長のごとき練達堪能な局長を持っていることは、世界的なホープであって、非常にわが国の異色とするところなんです。ですがね。気をつけておきませんというと、婦人少年局仕事が、婦人のことばっかりになってしまって、予算から仕事内容を見るというと、自然に婦人のことばっかしになってしまう。男の子のことが少い。これはいけない。それで、わが国婦人労働者の問題が、非常にまだまだ低いですから、主力を注がなければなりませんが、今日は、男子年少労働者の問題も非常に重大である。これはどこでやりますの。あなたのところでやらなければ、労働省のどの局でやります。おそらく、やはりあなたのところでこれは主力を注ぐべきだろうと私は思う。やがて当委員会で最賃法その他が審査されましょうが、そのいわゆる劣悪産業方面従業員である年少労働者、その年少労働者のために、大いに施策をやっていかなきゃならぬことが大きな課題ですね。これは、多分あなたの方の所管と思いますが、実際を、言いますと、私は、労働大臣考えてもらわなきやならぬと思うのは、婦人少年局任務というものが実はあいまいもうろうとしている。これは、一ぺん労働省としても検討せにゃならぬ。労働省設置法の中を見ても、婦人少年局所掌規定所掌任務というものは抽象的に書いてあるが、しからば、いかなる法規を持っているかというと、あなたの局には根拠法がない。それぞれ各局は、労働関係法律を持っておって、そうして権限もあって、それにのっとっての労働行政をそれぞれ担当している。あなたの局には、あなたの局独自の労働法規を何一つ持ってない。それで、労働基準局の一部を分けてもらい、職業安定局の一部を分けてもらい、いろいろにして、何ともつかない仕事をやるわけなんです。それで、主題は婦人少年労働者保護行政にありまするけれども、はっきりしない。これは一つ、せっかく増員をして、婦人少年局仕事強化するということと沿うて考えていかなければならぬ。  それで、今申したように、男子年少労働者に対する対策が見るべきものがない。これは非常に大きな問題なんですね。私も相当伺おうと思いまして、多少の調査をしております。約五百万の年少労働者の中に、いろいろ気をつけていかなければならぬものが、二百数十万の年少労働者があるのです。これは、学校へ行かない、生活難のために皆職場についている。そうして職場状態というものが、非常に劣悪な労働条件のもとに酷使されておる。あなたの方は十分御承知だ。ただ、当面それを福祉施設だとかいろいろなことで、というよりは、これらの少年労働者にいかなる大きな希望を与えていくかということと取っ組まなければならぬ。学校へ行く少年の方は奨学金制度がある。何でも今度は、進学保障制度というものを立て、いろいろやる。バランスをとらなければならぬ。学資があって、家が豊かで、学校へ行く者に対する育英資金奨学制度というものが富裕な家庭の子弟にも設けられる。仕事について働いている、いたいけなあの少年労働者には、何の奨励方法がある。どういう希望の道が与えられている。そういうことにうんと取っ組んでもらわなければいかぬと思いますね。そういう施策が少しもここに見えてない。これは他の局でなさるのか。あなたの局でなさるならば、これらの年少労働者のためにうんと考えていかなければなりませんね。改革する面もうんとある。施設をしてやらなければならぬ面もうんとある。府県にまかせるのじゃなく、事業主を呼んでいろいろやり、どんどん国の費用を投じて、先鞭をつけて改革していかなければならぬでしょう。  私は、先般中共を見まして、中共通り日本にやれとは言いませんけれども、驚くべき状態であることは、あなたもよく御承知通り。おくれちゃならぬ。負けてはならぬと思う。それで、この男の子に関する施策やその他がちっとも考えられておりませんから、これはよほど御注意をなさって、この婦人少年局というお仕事が、男子年少労働者に対しても十分一つやるのか、それは、他の男子の局、長の方の局でやってもらうのかということを一つ承わっておかなければならぬ。具体的なことはまた先で、関係法案が出たときに、私どもの所見も申し上げて、御意見を伺いますが、まず、その点についての谷野局長の御所見を承わりたいと思います。
  26. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 年々学校を卒業いたしまして、直ちに就職します少年、少女が百万余りございますような日本でございますし、先生方のおっしゃられましたように、日本年少労働者の占めます割合は非常に多いのでございまして、私どもといたしましては、この年少労働者保護につきましては、あらゆる観点から、この年少労働者が将来の産業労働者として、また市民として十分成長していくことができるように努力いたして参りたいと存じております。特に私どもは、働いております人たちの労働条件保護、さらにまた、労働の関係と生活との関係から起って参ります教育の問題、あるいはレクリエーションの問題でありますとか、いろいろな総合的な見地から、年少労働者が将来の労働者となり、りっぱな市民になるように成長していただくための施策を進めたいと思うのでございますが、特に私どもは、婦人少年局に付設されております婦人少年問題審議会に、年少労働部会というものがございまして、学識経験あるいは労働者あるいは使用者の皆様に御参加いただいているのでございますが、この委員会に、年少労働者の問題につきまして十分御相談をしながら、年少労働者が将来のりっぱな日本の市民となるための政策を十分考えながら、進めて参りたいと存じております。
  27. 山下義信

    山下義信君 それでけっこうですけれども、あなた自身の御抱負もなければいけません。審議会その他のお知恵拝借もいいですが、局長自身ことに、私は何も女子をうとんずるのじゃありませんが、男の子年少労働者に対する対策というものを局長自身も抱負をお立てになりまして、将来御努力願いたいのです。  もう一つ希望しておきますのは、あなたの方で労働者生活実態その他もいろいろ御調査になります。ことに婦人の面から、労働者家庭生活その他についてもいろいろと勉強してもらわなければならぬ。で、私は、婦人少年局一つ注文しておきます。調査してもらいたいことがある。それは、労働者の生活状態のいわゆる向上を考える上から、注目しておかなければならぬことは、最近月賦販売が非常にはやってきておる。そして労働者を対象とするいろいろ月賦制度のそれらの機関が、もう非常に各地に続出しておる。これが大へん便利のいいことで、アメリカにおける小売商の売り上げの三分の一は、御承知通りみな月賦販売、わが国においても、将来消費生活の大部分は月賦販売になるかもわからぬ。これがだんだんと盛んになってくるについて、二つのことがある。一つは、知らず知らずの間に物を買うようになるのですね。消費が高まってくるのですね。それで、非常にこれは注意しなければならぬ。それがやがてはやはり月給の中から差引するのでありますから、家計を圧迫してくる。これはよほど注意しなくちゃならぬ。それらと、事業所あるいはいろいろな労働者の家計に及ぼす影響等も考えなければならぬ。一つには、月賦関係者の中にはいんちきなのがいる。そうして粗悪な物を多額に売りつける。あるいは業者と結託する。種々な性質のよくない月賦業者が出てくる。これらは、労働者のために防止していかなければならぬ。そういう商人あるいは月賦販売機関の良否を弁別する余裕が働く者にはない。十分こういう点も注意をして、労働者家庭生活を、家計を間接的に側面から守っていかなければならぬ。婦人少年局において、将来労働者の生活と月賦制度関係等について、今から調査し研究しておいてもらいたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  28. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) ただいま先生のおっしゃられましたような月賦の問題も、もちろん大きいと存じますが、婦人少年局におきましては、労働者家族の問題を所管いたしております。その関係から、労働者家族の当面する福祉の政策をどのような点から進めて行ったらいいかという点について、事業所の実施しております福祉施策でありますとか、あるいはまた、労働組合が実施なさろうとする福祉考え方についての御意見を伺ったり、調査を進めているのでございますが、さらに、このような観点から、婦人少年局におきましては、毎年労働者家族の主婦の皆様と、そのときそのときのいろいろな問題を取り上げまして懇談をしながら、懇談の中に、生活を向上するための考え方をお話し合いして進めていくような仕事をいたしております。私どもは、労働者がさらに十分職場でよく働き、明るい家庭生活を通して、子供の成長と、さらに労働者としての地位を上げていくことができるものと存じますので、私どもは、そのような観点から啓蒙活動あるいは調査、懇談等の機会を通しまして、そのような問題も含めまして、将来仕事を進めるように努力させていただきたいと思います。
  29. 紅露みつ

    紅露みつ君 関連して。先ほどから、山下委員が大へん広範にわたって婦人少年局について、年少者、それから働く婦人のために、いろいろとこまかいお心づかいをしての御質問、また御希望、御意見等、私も大へんけっこうな御意見だと、同調しているものでございますが、ここで一つ局長によく申し上げて、心がまえをしっかりしていただきたいと思いますことは、もっともっと婦人少年局強化されなければならないので、人員等も、もっと増加されなければならないと、私どもはかねがね思っているのです。非常に仕事が多いはずだと思うのです。年少者がほとんどここの中に盛られていないというような今の御意見も、私も同感でございます。もっと年少者に大きな手を伸べることをしなければならないでしょうし、婦人の方もまだまだお仕事が多いと思うのですが、たまたま売春防止法のようなものが派生的といいますか、途中から出てきてそのためにというような、何ですか、御答弁がだいぶ強いのですが、これはあくまでも、山下委員が御指摘になるように、たまたま当面した問題として、ここに派生しているだけのことで、これが使命ではないので、もしこれにあまり重点をお置きになると、売春の問題が解決したから、それじゃ、ちょっぴり伸びたその人員さえも、今後減っていけば、そのままにしようじゃないかというようなことになったら、これは大へんだと思うのです。やはり、私どもが申すまでもなく、これは局長十分おつむに置いていらっしゃるだろうと思いますが、そんなところにほんとうの使命はないはずなんですから、これはあくまでも派生の問題として、そうして、これも御指摘になられたようですが、審議会その他の意向もありましょうけれども、やっぱり局長、これはしょって立っていらっしゃる代表ですから、しっかりこの際心がまえをしておいていただきたいと思いますので、そのお心がまえを念のために伺いたいし、それから、政務次官も御出席でございますので、これは、労働省の方針として、とかく婦人少年局強化されないのですよ。これはげしからないことだと思うのです。働く婦人の数も年々ふえているのですし、それから、ほんとう年少者のために何を教育面で見ているかと言われたら、ちょっと御答弁にお因りでしょう、これはどうしても、もっと方針を婦人少年局に重点を置いて考えていただかなければいけないと思います。今度わずかに増員していただいたというようなことで、それで鼻偶々にしていられては大へんだと思いますので、政務次官の御意見もあわせて伺いたいと思います。
  30. 二階堂進

    政府委員(二階堂進君) 先ほど来山下委員からも、非常に傾聴すべき御意見を述べていただきましたので、いたしておる次第でございます。この婦人少年局強化につきましては、大臣も、本年の予算折衝に当りましては、非常に熱心に交渉をされたわけであります。私どもも、局長とも、婦人少年局強化につきましては、いろいろと御相談を申し上げて参っておったわけでございますが、どうも本年は、施設の方におきましても、そう期待されたような多額の予算を獲得することができなかったわけでございまするが、何しろ、先ほどからお話がございまする通り地方婦人少年室には、大体平均一名、多いところで四名くらいのわずかな方々が働いておられまして、しかも、最近は、婦人少年室相談に来る非常に困った方々がふえて参っております。私も、政務次官に就任いたしましてから、数県にわたって婦人少年室を特に尋ねまして、実情等を伺って参りましたが、そのたびに、定員をふやしてくれ、人手が足らないという、非常に強い要望がございましたので、ぜひともことしはこの定員をふやしたいということで、極力大蔵省と折衝いたしたわけであります。このことし一名ふえました人員は、これは、ただ売春対策のみに必要だということでふやしたというわけではもちろんございません。これは、婦人少年室の持っておりまする仕事が、先ほど申し上げまするように、非常に広範にわたるし、また、多くなって参りましたので、こういう全般の仕事のめんどうを見るために、ぜひとも強化する必要があるということで、一つは人員の増加を極力お願いしたわけであります。もちろん最近は、この売春対策売春禁止法等に伴いまして、それらの方面の方々も、相当この婦人少年室仕事のこと等について、あるいは家庭の生活等のことについて、相談に飛び込んで来られる人が急に多くなって参っておりますので、そういう人方のためにほんとうにおやりになって、仕事をさがし、あるいは仕事の訓練のめんどうを見てやるというようなことも、当然これはやらなければならぬということも考えましたので、このことも予算折衝のときにはお願いをいたしたわけであります。ただ、一名ふえたというのは、売春対策のみに重点を置いていたしたということでは決してないわけであります。なおまた、総理も施政方針演説のときにたびたびお述べになっておりますように、青少年の問題は、きわめて重要な意義を持つ問題になってきておると、私ども痛感をいたしております。従いまして、今後婦人少年局強化、特に年少者の指導あるいは職業補導、あっせんということにつきましては、一段と努力すべきものと考えております。なお、年少者の問題につきましては、単に労働省婦人少年局の仕事をもってしては解決のできない問題が多々あるわけでございまして、これらを掘り下げた根本的な対策につきましては、文部省や、あるいは厚生省その他関係省とも密接なる関係を保持しつつ、この対策に万全を期して参りたいと、かように考えておるわけであります。なおまた、学校を出て仕事を求める人たちのために、今年は職業訓練制度をさらに強化いたしまして、技術を身につけて、そうして働く人の質を改善し、なお、就職が容易にできるようにということもあわせて考えて、職業訓練法という法律を本国会に提出いたすつもりでありまして、御審議を願うことになっておりますが、これもその婦人少年対策のやはり一環であろうかと考、えておるわけであります。先ほど来いろいろ御意見を承わりましたが、十分一つこれらの意見も尊重いたしまして、今後婦人少年行政の強化努力いたしたいと考えております。
  31. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 先ほど来いろいろお励ましのお言葉をいただきまして、まことに身に余る感謝を申し上げます。売春問題につきましては、婦人少年局がかねてからいろいろ努力をいたして参りましたが、法律が施行になりましたので、それぞれの法律に関する所管の部分については、それぞれの所管省に担当していただくことになりまして、従いまして、婦人少年局といたしましては、広く婦人問題の観点から、この法律が順調に運営され、施行されて参りますように、私どもは側面から御援助を申し上げる立場に立っております。その観点から、調査、啓蒙あるいは相談業務ども進めて参るつもりでございますが、私ども婦人少年局の使命といたしますところは、ただ売春問題の推進に対して円滑な援助をはかるという観点に立つばかりではございませんで、先ほどから先生がお話いただきましたように、婦人問題、婦人の地位の向上につきまして、あるいは働く婦人保護あるいはいろいろな問題につきまして、さらにまた、年少者が将来りっぱな人になるために、ことになかなか社会にも自分の意見を発表できないような年少者に、十分に力になってやるような政策をどんどん進めていくための検討などもし、さらに、その結果によりまして、十分皆様にお役に立つような仕事を進めて参ることを使命であると思っております。私どもは、そのような観点に立って、十分努力をいたして参るつもりでございますので、どうぞ今後とも御指導と御援助とをお願い申し上げます。
  32. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本件に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  34. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、駐留軍の撤退に伴う労務者の離職対策に関する件を議題といたします。御質疑願います。
  35. 山本經勝

    ○山本經勝君 これは、後に労働大臣がお見えになってから、労働大臣に御質問申し上げたい点なんですが、過ぐる本会議の席上で、特に三十三年度の予算の中で言われておることは、駐留軍その他の引き揚げに伴って雇用問題で若干の、あるいは相当の摩擦を生ずるかと思いますと、そこで、公共事業費あるいは財政投融資の増大をはかって、でき得る限りこの失業者を吸収するようにするというお話があったのであります。で、調達庁としましても、やはり当然直接雇用責任者という立場にありまして、対策考えられておると思うのですが、先だって事務当局から若干の御説明を伺って、特に駐留軍労務者側からは、国が雇用しておるのであるから、この際特別の給付金を支給せよという要求が出て、かねがねこの委員会でいろいろと論議を重ね、また質問を申し上げて参ったのであります。ところが、一応補正予算で何がしかの金が出ることにはなっております。ところが、これがスズメの涙ほどの金であって、要求した五万円、あるいは総額にして二十数億円に上るわけですが、これから見ますと、わずかに八千八百万円見当の些少な額になっている。で、この間の事情を一つ調達庁長官の方から御説明をいただきたい。
  36. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 昨年の岸アイク声明以来、非常に多数の離職者の方々が出まして、これに対する対策について、政府関係各省一致いたしまして協議をいたし、実施をいたすことに努力をいたしておるのでありますが、そのうち特に五万円の見舞金と申しますか、給付金を出せという要求が労働組合側から出されておったわけであります。私どもといたしましては、これは、一般労働政策の立場あるいは厚生省的な考え方の立場から見舞金を出しますことは、他の国策による犠牲者等にも影響いたしまして、むずかしい問題である、こういうふうに考えておったのであります。しかし、他方、政府が雇用主でございますので、雇用主の立場からいたしまして、一般民間の例にありまするように、離職される方々に対して金一封を差し上げるというような趣旨から、何とか一つ政府予算で支出してもらいたいというお願いを政府内においていたしておったのでございます。五万円と比べますると、額が非常に少額でございまして、離職される方々の御期待には沿わないと思うのでございますが、一応今年度におきまして八千九百万円程度、三十三年度におきまして約四千七百八十万円程度を予算に計上いたしまして、これまで非常に御苦労されました駐留軍労務者の方方の労にいささかでも報いたい、全く少額ではございますが、その意味で予算の計上をお願いした次第でございます。
  37. 山本經勝

    ○山本經勝君 根本的にも、考え方の上で、私はかなりな食い違いが依然として残っておると思うのです。この前この委員会で、長官の方から非常に熱意のある御意見が述べられておる。ところがその後、今の閣内においてお願いをなさったようですが、お願いというような筋合いのものではなくて、少くとも駐留軍労務者の問題については、国が責任を持つものであるということが強調されておる。また、労働大臣もそういうふうな御意見を述べられておる。そうしますと、もう少し積極的な対策というものが講じられにゃならぬと思うのですが、そこら辺は、今のようなお話では、のらりくらりと、ほんとうに申しわけのような形にしか受け取れぬ。先ほども申し上げたように、大臣自身、本会議における答弁でも、財政投融資の増大をはかるとかいうような、また具体的な、公共事業費の増額をはかる、こういう方法でこれを吸収しますと言っておる。ところが、これはもう労働省の失業対策一環として考えられておりますから、後ほど大臣にこれは御質問申し上げますが、この線に沿って調達庁は、この閣内において、特に特需等対策連絡会議等あるいはその他離職対策推進本部なるものを設けて、責任をもってやっておられるのですから、もっとその中で、一応は調達庁の長官としても、この離職者に対する特別な取扱いがあってしかるべきだと考える。どうも長官の今のお話のような筋合いでは、私は、誠意のほどを疑われる、こう思うのですが、その点、もう少しはっきりと、長官の方から御説明をいただきたいと思います。
  38. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 先ほど申し上げました通り、調達庁といたしましては、この労務者の方々の雇用主という立場をとっておりまするので、対策委員会等におきましても強く発言をいたし、また、担当大臣にもお願いを申し上げまして、閣内においても強力な対策を立てていくように、全力を上げたつもりでございます。ただ、給付金の問題につきましては、これは、前回の委員会でも申し上げましたが、結局財務当局との話し合いが事務的にはつきませんで、まことに結果においては、御期待に沿うような金額が出てこなかったのでございますが、私どもといたしましては、全力をあげて努力をいたしたつもりでございます。
  39. 山本經勝

    ○山本經勝君 せんだって事務当局から御説明を伺った際に話された、離職対策予算として、調達庁関係では合計三千二百九万四千円ということになっている。わずかこれだけの金では、おそらく今の本年度六月までに離職予定されている約六万ですか、総数六万、特需等の失業者を含めますと約六万、この六万の失業者の対策としては、まことにスズメの涙というのもおかしいほどの金なんです。こういう金で、今の努力をなさっているという弄うには私ども受け取れぬ。今のような御説明では、全くお話にならぬと思うのですが、これは労働省の方、特に次官もおいでですから、次官の方から、この失業者の対策としての離職者、こういう対策をどういうふうにお進めになるお考えか、この点を少し突っ込んで御説明をいただきたい。
  40. 二階堂進

    政府委員(二階堂進君) ただいま調達庁の当局から御説明になりました通りに、給付金の問題につきましては、これは非常に満足すべき金額ではなかったと思っておりますけれども、財政上のいろいろな都合等によりまして、極力交渉されましたが、あの程度の金額に落ちついたのでありまして、この金額については、私どもも満足すべきものではなかったと思っております。しかし、先ほど申し上げました通りに、予算の都合等もありまして、この程度に落ちついたわけでありますが、労働省といたしましても、具体的な、今までとって参りました施策並びに今後の方針等につきましては、局長から答弁させることにいたしますが、これは、当然国の責任において処理すべき性格のものであるということは、しばしば大臣も申された通りであります。この離職者の対策につきましては、総合的な施策をもって対処することが一つの方法であるかと考えております。公共事業関係あるいは財政投融資等の関係事業にも、積極的に優先的に吸収していくという考え方が一つでもありましょうし、また、特に離職者の方々に対しましては、職業補導の関係につきましても、本年度におきまして、特に特別の予算を計上して対処する方針でございます。
  41. 山本經勝

    ○山本經勝君 これは、長官でなくてもいいと思うのですが、調達庁の労務部長さんがお見えになっておりますから、労務部長さんの方から御説明いただきたいのですが、調達庁の予算を見ますと、労管事務地方公共団体委託費として千六百八十一万九千円、調達庁の庁費として百二十四万何がしという、先ほど申し上げた金額、それは、基地内職業訓練の委託費というのが千四百三十万三千円、こういうような一応数字があげられておりますが、こういうことで、ただ離職をする人々の職業補導費といった、こういうようなものだけしか出ていない。ですから、これで離職した人が、あるいは離職予定された人が一応職業訓練を受けて、あるいは技能を身につけて、さてそれから今度新しく職場に入って、今度は生活のかてを得ていくとこういうことになるのでしょうが、この場合に、どの程度吸収できていくのか、その見通しも私は全然ないのじゃないかと思いますが、調達庁の事務当局は、どうお考えになっておりますか。
  42. 小里玲

    政府委員(小里玲君) 調達庁といたしましては、ただいまお話のございましたように三十二年度は三千二百九万四千円、それから、三十三年度は三千五百四十万九千円という数字になっております。この内訳は、離職対策費ということで三十二年度は千六百万円、三十三年度が千五百万円、それから調達庁の庁費といたしまして三十一年度が百二十四万円、三十三年度が百十四万円、基地内訓練の委託といたしまして三十二年度が千四百万円、三十三年度が千八百八十万という数字でございます。このほかに、先ほど問題になりました特別給付金というのが今年度八千九百万円、来年度四千七百万円、こういう予算になっておりますが、駐留軍の労務者の失業対策は、私から申し上げるまでもなく、もちろん調達庁といたしまして、雇用主として、できるだけ政府として手厚い保護を加え、多くの就職者を出すようにということを望んでいるわけでございますが、離職をいたしました人たちの就職あるいは自家営業その他各般にわたる離職後の活動というのは、単に調達庁だけの問題ではなしに、各省政府が援助するという、各省全般にわたる問題でございますので、離職者に関しまして、内閣に特需等対策連絡会を設け、ここで関係各省の協力を得て、各般にわたる施策を講じておるわけでございます。従って、調達庁の予算といたしましては、お説のように、はなはだ微弱で、これをもって全部の労務者が離職後生活の安定を得られるというふうには、私ども考えておりません。ただ、調達庁の受け持っております権限の範囲内における予算を計上するということになるわけでございますが、それ以外のいろいろな面につきましては、各省それぞれの立場において、駐留軍離職者のために特別な援助をいただいておるわけでございまして、現在の経済情勢からいたしまして、離職いたしました労務者が全部職につき、全部商売を始めて、生活の安定を得られるというところまではなかなか困難だと思いますが、だんだん各省の援助を得て、就職率にいたしましてもあるいはその他金融面、各般にわたる成績が漸次上っておるというふうに考えております。
  43. 山本經勝

    ○山本經勝君 今の基本的な問題、一度事務当局から御説明願っておきたいのですが、大体駐留軍労務者で、三十二年度内に離職する、あるいはすでに離職をしたものを含めまして、総数は何人になっておるか。あるいはまた、アメリカの会計年度になっております六月までに解雇される予定数、こういうものがわかっておりましたら、お知らせ願いたい。
  44. 小里玲

    政府委員(小里玲君) 三十二年、去年の一月から十二月までに全部解雇になりました数字が二万六千四百三十名でございます。これは、一月二十日現在の調べでございますが、もう一度申し上げますと、去年の一月から十二月までに解雇になりました数字が二万六千四百三十名、それに、今年に入りまして解雇通知が出たり、あるいはすでに解雇になっておる者の数字が、一月二十日現在の調べで六千二十二名、そういたしまして、去年の一月から確定しておりまする全部の数字が三万二千四百五十二名、こういう数字になっております。今年に入りましてからすでに六千二十三名、これは、まだ途中でございまするので、この三月までにまだ解雇になる人も出ます。これがはっきりした数字はわかりませんが、私ども、軍から得た情報によりまして推定をいたしますと、この六千名が八千名ないし一万名の間ぐらいになるのではないかというふうに考えております。それで、これが一月から三月までに八千名ないし一万名、そういたしまして、四月から六月まで、すなわちアメリカの会計年度のくぎりであります四月から六月の三十日までの三カ月間にどのくらい解雇になるかということでありまするが、これも、なかなかはっきりした数字がわ・かりませんが、約六、七千名から七、八千名ぐらいの程度じゃないかというふうに推定をいたしております。
  45. 山本經勝

    ○山本經勝君 今のお話ですと、今年の一月二十日現在で三万二千四百五十二名、これはもうはっきりした数字が出ていると思うのですが、そうしますと、これに対する対策として、ここに先ほどから申し上げておるような三千二百九万何がしという、その予算をもって、一応調達庁としては当面を糊塗する、言葉は悪いですが、という形だ。そのほか、新しく企業組合等を結成して、これらの労務者が新しい生活基盤を作るというようなこと、そういうようなことも私は存じておりますが、ところが、そういうようなものも、実は非常に——かねて特別調達庁と特需等連絡会議あるいは閣議決定等を通じて出されました通達、通牒等に基いて、地方においてやられております現場について見ますると、非常に不徹底です。たとえば、企業協同組合が資金の融通を中小企業金融公庫その他の機関に申し出ましても、なかなかこれはうまくいっていない。なるほど大蔵省から形式的な通牒は出ておりますが、その通牒は実際効用を果していない。あるいは企業協同組合の企業認可、あるいはタクシー等の企業について、地方では認可に非常に時間がかかる。あるいは東京でも、現在東京都内に約十数カ所、十七ですか、企業協同組合ができて、そしてそれが企業の認可を申請しておりますが、これが一向に、遅々として運ばない。こういう状態では、今言われたように、もろもろの施策を講じて、総合的に対策を推進しますという、言葉は非常にりっぱですが、実際にはそのように進行しておらぬということを率直に申し上げ得ると思いますが、そういう実情について、労務部長さんはどういうふうに御認識になっておられますか。
  46. 小里玲

    政府委員(小里玲君) 自家常業をやりましたり、あるいは企業協同組合を作って仕事をやるというようなことに対して、なかなか思うように進んでいないという御指摘でございますが、なるほど離職をいたしました労務者がいろいろ計画を立て、生活の安定の道を立てていきたいという場合に、あるいは企業の認可あるいは金融のあっせんというようなことで申し出がございます。全国的に見ましても、相当な数だと思います。これが全部が全部、認可になり、あるいは企業の金融の道が通ずるというふうには参っておらないと思いまするが、先般特需等連絡会議で、全国に視察調査団を派遣いたしまして、その際にも、こういった、労務者が計画を立て、実施をする場合の政府として考えるいろいろな指導あるいは援助というようなことについても、現地といろいろ話し合ったのでございますが、申請の中には、何と申しますか、非常に漠然たると申しまするか、計画として、端的に言えば、ずさんなようなものも相当あるようでございます。そういうものに対しては、現地でこれを指導して、しっかりした計画のものに直させるというような方途も講じて、できるだけまじめな計画を立て、そして将来の採算というようなことも考えて、しっかりした、基盤の確実なものに対しては、できるだけ政府としても援助をし、金融その他の面においてもあらゆる手を講じようと、こういうことで参っておるのでございまして、なかなか全部が全部というところまでは参らないと思いまするけれども、しかし、従来に比しまして、相当な成績を上げて、漸次進んでおるというふうに考えております。
  47. 山本經勝

    ○山本經勝君 最近新しい問題が提起されておると思います。それは、従来米軍が直接管理をし、そして国が雇用をした、つまり駐留軍労務者なるものを使ってやっておった職場で、それを最近特需会社や、あるいはその他の民間企業に、一部米軍から直接に委託をする。つまり特需関係への切りかえというものが行われる。そうしてこのために、特需でも人員が余っているのですから、その余剰人員が、今まで軍が直営でやっている事業所に配置をする。そうなりますと、勢い新しい駐留軍労務者の離職が生まれてくると私は考える。せんだって調達庁に参りまして、次長さんにも会い、また、労務部長さんにもお目にかかってお話を伺った。ところが、その後、この状態は改善されておらぬ。そうしますと、一方でどんどん失業者を増大することが行われている。これをとめなければ、さらに、先ほどお話になった、たとえば三万二千四百五十二名のほかに、あるいは六月までには六千ないし八千のこれらの労務者が解雇になるであろうと予想されているしに、プラスこの新しい失業者が出てくる。こういうことになってくると思うのです。それでは、せっかくの失業対策離職対策なるものも効果を生じないと思うのですが、そういう点について、調達庁としてはどういう手を打たれているのか、明らかにしてもらいたい。
  48. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) お話の、特需に切りかえるという問題につきましては、私どもも非常に憂慮にたえたいところでありますので、米軍に対しましてしばしば折衝をいたしております。総司令部に直接私も出かけまして、交渉いたしたのでございますし、また、日米合同委員会にも持ち出しまして、先方の意向をただし、切りかえの方針について再考慮の余地がないかということを強く要請をいたしているのであります。米軍側の意向といたしましては、全般的な方針といたしまして、特需に切りかえるということを実行する意思はない。一般方針ではないけれども、しかし、各基地ごとに予算が減るということ、予算の削限を受けているということ、また、労務者のやっておりまする仕事の監督をする軍人が引き揚げによって不足を来たしたということ、また、これらの軍人に対する補給ということに携わる軍人も数が少くなっているというようなことを申しまして、結局今回の特需切りかえによりまして、基地ごとに行なっているのでございますが、全労務者の約二%程度は整理のやむなきに至るのではないかということを先方が申しております。私どもといたしましては、全般的な方針として採用してもらっては困るということを強く申し入れまして、これは、先方もそういう方針はないと言うておりまするので、個々のケースごとに問題を取りしげまして、米軍との折衝を行なって参っております。米軍の労務管理をやっておりますところと、特需の発注をいたしておりますセクションと違いますので、これを緊密な連絡をとってもらいまして、事前に、労務者の解雇になるような問題については、日本政府側に相談をしてもらいたいという申し入れをまず第一にいたしまして、さらに、個々のケースケースといたしましては、他の措置によって特需切りかえをやめてもらうことができないだろうか。特に監督者が不足であるというならば、それにかわるようなことを私どもの方でも考えるから、一つ特需切りかえをやめる方策を考えてもらいたいという要請もしております。ただ、ケースケースによりましては、どうしても特需に切りかえざるを得ないというような場合もないではないのでございますが、そういう場合におきましても、解雇の数を少くしてもらうあるいはさらに一歩進みましては、解雇をされる労務者の人たちの組合組織で入札に応ずる。あるいは組合がその仕事を幾らか安い金額で——他の業者よりあまり高くないような金額で引き受けることができないかというようなことも交渉をいたしております。一件ごとに取り上げて、強く折衝をいたしておりまするが、全部この特需切りかえをやめてしまえという一般的方針につきましては、先方は納得しておらないのでございます。
  49. 山本經勝

    ○山本經勝君 すでにこれは、御存じでありますが、広島県、青森県、東京、神奈川、こういった広範な区域で常に起っている。あるいは長崎、また、昨夜電報が来たのですが、福岡の板付でも、通勤するバスの運転を民間企業にやらせるという問題が提起されている。これは、今お話のように、お願いをするというような筋合いになるのですか。従来、いわゆる一般の民間の企業にこの種の業務を米軍が委託をするという場合の取扱いは、調達庁としてどういうふうにやるのですか。直接、米軍から各民間業者に話し合ってやるということになっているのですか。それとも調達庁を介してそれらの事務的な運びがなされるのか、その点を明らかにしておいてもらいたい。
  50. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 米軍の特需発注に関しましては、今日まで私どもを経由いたす建前になっておりませんので、通産省に通報が行っているのではないかと思っております。しかし、今回のことは、労務の解雇ということを伴いまするので、労務の解雇につきましては、私どもの方が当然関与をする責任を持っておりまするし、また、そういうような建前にもなっておりまするので、先方の特需発注をする担当部門と労務の部門とは違いまするけれども、事前に連絡をしてもらって、特需発注の入札になってから話をしてもらうというようなことのないようにという申し入れをいたしまして、先方もそれを承知をいたした次第であります。
  51. 山本經勝

    ○山本經勝君 これは、聞くところによりますというと、この種の民間企業がむしろいろいろ運動をして、そうしてこの切りかえを要請しているやに承わっておる。そういうことであって、今お話だと、通産省の所管に属する問題で……、特需等の発注に関する話し合いは、これはこの場合にもなされておりますか。
  52. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) これまで私どもは、労務の関係におきまして発言をいたし、接触をいたしただけでございますが、今日までは、特需の発注につきましては、調達庁を経由することになっておりませんので、通産省も私が先ほど関係しておるのじゃないかと申し上げましたが、関係しておらないで、直接発注をいたしておったようでございます。
  53. 山本經勝

    ○山本經勝君 問題は、失業者が出なければいいというだけのことではないと思うのです。これは、日米行政協定に基くこの種の業務の委託あるいは物品の供給等に対する問題で、日本政府が関与してはならないということにはなっていないと思うのですが、この点はどうなんですか。
  54. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 日本政府が関与してはいかぬということにはもちろんなっていないのでございます。ただし、日本政府が関与すべきだということにもなっておらぬようでございます。
  55. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで、長官に伺っておきたいのですが、米軍にお願いをするというような筋合いでは私はないと思う。いやしくも、日本国の政府を介して、そうしてこの駐留軍関係の業務が円滑に推進されることは言うまでもないと思う。それでなければ私はうまくいかないと思うのですが、そういう場合に、単に特需べの切りかえをしないよう、解雇を出しては困るというようにお願いするような弱い態度では、しょせんはこの切りかえも阻止はできないと思う。この間、調達庁におじゃまをして、いろいろ話を申し上げた際、あるいはまたお話があった際に、次長などの御意見では、少くとも閣議に持ち込んで、いわゆる政府当局として調達庁の一部局内の問題ではなく、一庁の問題ではなく、国の問題として強く内閣の意向を反映して、米軍との折衝をしようというお話であった。ところが、この折衝がなされたかどうか。
  56. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 特需会議におきまして問題を取り上げて、私どもだけの問題ではなく、政府全般の問題として検討をいたしておる次第でございます。
  57. 山本經勝

    ○山本經勝君 特需会議というものの構成は、どういう機構なんですか。特需会議の性格、機構。
  58. 藤原節夫

    政府委員(藤原節夫君) これは従前から内閣に設けられております特需等連絡協議会でございまして、特需並びに離職者等に対する各省間の連絡調製を行うために設けておるものでございます。
  59. 山本經勝

    ○山本經勝君 続いてお伺いしたいのですが、これを一応取り上げて、軍との交渉をなさった、その状況なり結果は、どうであったのですか。
  60. 藤原節夫

    政府委員(藤原節夫君) 先般、を行いまして、実態について調達庁においてよく調査をする、また、これは国内法関係で何か違法なことはないかというので、労働省も検討する。なお、米軍の措置について不当なものがあり、あるいは当方として希望すべきものがあるという点につきましては、日米合同委員会に申し入れを行いまして、その是正について要請を行なっておるわけでございます。
  61. 山本經勝

    ○山本經勝君 この日米合同委員会に出されることもけっこうでしょう、必要な一つ機関ですから。いつも、日米合同委員会が、この種の問題に関しては最終の逃げ場になっておる。内閣から強く米軍に対して交渉するという態度について、お願いするという筋合いでやっておったのでは、どんどん切りかえをやっていくと思うのです。先ほどお話しのように、たとえば米承の定員が減少するとか、予算の削減が起るとか、あるいは移動等によって経費が変るということになって参りますと、向うの都合のいいように切りかえられる。一方、民間の業者の間では、何か仕事がほしいから、通産省等に働きかける、そういうことが行われる。いわゆる米軍側にもまた、国内の事情からいっても、そういう関係が生れてくる。ここで特需等連絡協議会でお話しになって、それが閣議決定なり何なり、正式の機関決定をもって強く米軍と対抗しなければ、少くともこれは阻止できないと思うのですが、この点に関する閣議決定か何か権威のある決定がなされておりますかどうか。
  62. 藤原節夫

    政府委員(藤原節夫君) ただいま問題になっております労務の特需切りかえ、そのことについては、閣議決定はまだなされておりませんが、連絡協議会そのものが閣議決定によって運営されておりまして、細目については、会議において相談をしまして処置をしておるわけであります。
  63. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうしますと、特需等連絡協議会できめたことは、即閣議決定と考えてもよろしいということですか。
  64. 藤原節夫

    政府委員(藤原節夫君) 具体的にそのものが閣議決定というわけではございませんが、閣議決定の線に従って実施をしておる機関でございますから、趣旨においては、同じ趣旨になろうかと思います。
  65. 山本經勝

    ○山本經勝君 それで、米軍との交渉はなさったのですか。
  66. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 日米合同委員会に対しまして問題を持ち上げましたのが、一月の六日でございます。米軍側から、その後一応の全般的の方針としては、切りかえをやらないという回答をよこしましたのが、二月の十四日でございます。それによりますると、先ほど申し上げましたように、全労務者数の約二%ぐらいに現在のところなっておる。しかし、今後は特殊の例外を除いて、特需切りかえは行わないという書面をよこしております。
  67. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで、先ほど申し上げたその他の地区において、広島、青森、東京、神奈川等に起っておる状態、あるいは長崎の問題、それから先ほど申し上げたように福岡でも、これは昨日、こういう通達があったという電報なんですが、こういうものは逐次全国的に起っている。これは何かとるべき方法を具体的に考えなければ、少くとも先ほどから言われております、どんどんふえる失業者、離職者、この離職者がさらに倍加していくという形になってくると、全体のパーセンテージからいったら、非常に少数かもしれません。しかし、いやしくも事が離職に対する対策として、しかも、国の責任においてそれらの離職対策を講じなかったやさきに持ってきて、しかも、新しい失業者を出すやり方というものは納得できないと思うのです。ですからそれをとめる方法を、やはり考えなければならぬ。とめなければ、政府責任で何か転業でもさすような方法を考えなければいけませんが、その点はいわゆる特需等連絡協議会は、どういうふうにお考えになっておりますか。
  68. 藤原節夫

    政府委員(藤原節夫君) 合同委員会に申し入れました結果について、ただいま調達庁長官から申された通りでありますが、さらにこれが今後もどんどん広がっていく、また、大規模にこういうことが行われていくということは、まことに困ったことでありますから、さらにそういう事態が起るというようなことでありますならば、重ねて申し入れも行い、あるいは是正について、要請を行うということをいたさなければならぬと思っております。
  69. 山本經勝

    ○山本經勝君 起っているのですよ。現に問題はあとからあとから起るのです。ですからこれはなるべく早く、しかも、正式に内閣の名において米軍に対して申し入れをなさって、そうしてこれに適切な裏づけになる対策というものを、よく考えずにただやっても、なかなか阻止はできないと思うのですが、問題はやはり政府の態度だと思うのです。少くとも米軍に対してお願いをするというようなことじゃなくて、いやしくも、駐留軍の労務者の性格なり、あるいはまた、いわゆる国策の方向として、米軍に対する交渉の態度というものが私は問題だと思う。ただお願いをしても、阻止はできないと思う。しかも、全般的方針としてはやらないということは、特殊な事情があればやるのだぞということを裏づけている。そういう形で、へえそうですかということでは、話にならぬと思う。これに対する積極的な対策を早急に、これは要望になりますが、立てて、そうしてこれは阻止してもらわなければならぬ。この間、実はお願いをしておいたのですが、労務部長の方に、特需等に関する従業員の現在の状態、これは相当余剰人員があるやに承わっております。その実態は特需切りかえに伴って、駐留軍労務者が離職しなければならぬというはめに陥る状態、これは先ほども申し上げた福岡の例をあげますと、通勤バスを十九台、この通勤バスを西日本鉄道株式会社に頼んだということのようです。そのために起る離職者は四十六名ですが、ところが、この種のやつが至るところに起りますならば、これは容易な問題でないと思う。しかも離職対策をしようというのですから、その前に現に何らかの手を打てば、阻止できるであろう離職者を離職させないようにする予防の方法が、私は講じられなければならぬと思う。これは早急に何らかの対策を講ずる必要があると思うのですが、何らかの考え方があるのかないのか、あるいはまた、早急にそうした何らかの対策を講ずる機会があるのか、また、そういう計画があるかどうか、一つ説明願いたいと思います。
  70. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 特需切りかえ問題は、非常に大きな問題でございますので、先ほど申し上げる通り、引き続き継続して米軍に強く要請をいたしております。ただ、先ほども申し上げましたように、個々のケースごとに対策を立て、米軍側にやってもらわなければならない。やらせなければならないという実情でございますので、各基地ごとで現在起っております特需切りかえの内容全部、個々のケースによって事情が違うわけでございますので、予算の不足ということ、及び監督者がいないということを向うが理由といたしておりますので、それならば予算が足りる範囲でできるような方法、また、監督者がいないというなら、十分な監督ができて仕事がうまくいくような方法をとって、こういうふうにやったらどうか。また、先ほども申し上げましたように、企業組合で引き受けてもらう。さらに労務者の整理を極力少くしてもらう、二、三の基地におきましては、労務者の解雇を相当数具体的に減らしてもらったところもございます。特に大きいのは、東京、横浜付近でございますので、これは各都道府県の力も協力してもらいまして、何とか一つ労務者の解雇ということを来たさないように、また、どうしても予算の不足でやむを得ないというような場合には、その数を減らしてもらうように、あるいはできれば労務者の組合でやってもらうようにというような、これはお願いということではございませんで、交渉いたしておりますが、ただ、米軍側も行政協定によりまして、自由発注という権利を持っておるようでございまして、政府全体でとりまとめてもらいまして、米軍に対して強い要請をいたしておる次第であります。
  71. 山本經勝

    ○山本經勝君 今の長官のお話しですと、つまり自由発注で、こっちは阻止はできないということのようです。そうすれば、しいて駐留軍労務者を提供したり、あるいはその他の便宜を供与することは必要でないと思う。むしろ、そういう強い腰がまえで当らなければ、少くともこの問題の解決はつかないと思うのですが、この点はあなたの方はどういうお考えですか。
  72. 藤原節夫

    政府委員(藤原節夫君) 米軍特需の発注が、行政協定その他の問題等に違背しておる場合は、これは強く訂正方を求めるということをやらなければなりませんが、まあ、協定の範囲内で行なっておるということでありますならば、これは話し合いで一つやり方を改めてもらうということ以外になかろうかと思うのでありますが、そのような御趣旨は確かに十分考えなければなりませんから、政府全体としまして強く要望して、御趣旨は実現するようにやりたいと思います。
  73. 山本經勝

    ○山本經勝君 長官に伺っておきたいが、先ほど長官は、企業組合、つまり離職者によって作っている組合、たとえば運送業、こういったものもあるのですが、では、その企業組合にこれをやらせるという方法は、具体的にお考えになっておりますか。
  74. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) たとえば、先ほど例をおあげ下さいました板付あたりの通勤バスの問題、これはまだ現地から私どもの方に報告が来ておりませんが、バスの輸送ということになりますれば、結局運転手等操縦の労務者が解雇になるのであります。その人たちの作る組合にまかせてもらいたいというような申し入れが有力にできると思うのであります。ケースによって違いますが、ケースによりましては、そういうことができると思うのでございまして、これは現地の都道府県、あるいは現地の労働組合の方々とも相談をいたしまして、実現をしていきたいと思っております。
  75. 山本經勝

    ○山本經勝君 なお、先ほど申し上げました板付の場合の例に当てはめれば、バスは駐留軍自身持っているバスのようですから、そうすると運転だけであれば、その企業組合でもやれる。ところが、場合によりますと、その仕事の中でたとえばこの場合の例を引いてみましても、十九台のバスが使われておる、その必要とするものは十九台。ところが、バスを持たなければ、この仕事はやれないという場合があるのでありますが、その場合には、調達庁の長官としては、国が援助をして、そうしたバスを提供するという考え方もあるのですか。
  76. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 具体的な問題は承知しておりませんので、具体的にお答えができないかと存じますが、あらゆる方途を講じまして、たとえばバスを米軍のものを提供させるとか、あるいは組合がバスを借りてきてやらせるという方法もございましょうし、いろいろの手があると思うのであります。そういう方向に努力をいたしたいと思います。
  77. 山本經勝

    ○山本經勝君 企業組合があって、企業組合が設備なり、あるいは必要な器具、あるいは車両等を持っておれば、その場合には私はできると思うのですが、ところが、できないのは、今申し上げたように、あるいはバスを買ったり、あるいはバスを営業することが、そもそもそのこと自体が非常に困難な実情にあると思う。そういう場合の方法を調達庁としても、あるいは特需等対策連絡会議等においても話し合って、具体的な解決策を講じなければならぬと思いますが、その点はどうですか。
  78. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 企業組合の結成ということになりますれば、日にちがかかりますので、やはり労務者の一つの引き受け団体を作りまして、そうしてバスがなければ借りる手段を講ずる、あるいは米軍からバスを提供させるという手もございましょうし、そういうふうな方法も講じまして、できるだけ労務者の離職というものを防ぎたいと努力をいたすつもりでございます。
  79. 山本經勝

    ○山本經勝君 もう少し具体的にお答え願いたいのですが、今の例をおあげになりましたから、今の例をもってお話し申し上げます。で、今のところ米軍としては、板付の場合に、西日本鉄道もしくは国際興業のバスを使おうということのようです。しかも、契約額は年四千五百ドル、現にバスを持っており、そうした資本があってやるならば、これは私はできると思うが、しかし、実際上このバス一台といっても数百万円ですから、十九台のバスを調達する、あるいはこれを借りてかりに使えば、当然借料を払わなければならぬでしょう。そうしますと四千五百ドルという年間契約であったとすれば、これは私は採算が合わないのではないかと思うのですが、そういう場合に、国が何らかの補償をしてやるということにならなければ、企業組合にやらせるという話も、空理空論に終ると私は思うのです。ですからこれは少し具体的な話しですが、一つお答えを願っておきたい。
  80. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 今具体的の問題でございましたので、私が具体的にお答えを申し上げまして間違うと恐縮でございますが、たとえばバスを借りてやるというようなことについての程度でございましたら、あるいは融資その他でできる場合もあるかと思います。具体的の問題といたしまして研究をいたしまして、私ども趣旨といたしましては、この特需の切りかえによって労務者の離職ということが起らないように、どうしてもやむを得ない場合には、それを最小限度にとどめてもらうようにという努力を各基地ごとに、ケースごとにやって参りたいと思う次第でございます。
  81. 山本經勝

    ○山本經勝君 これは労働政務次官にお伺いをしておきたいのですが、これは後ほど大臣がお見えになったら、大臣にもお伺いせんならぬ点ですが、先ほど申し上げましたように、本会議の席上では、大臣が堂々と駐留軍離職者に対する対策一環として、必要であれば公共事業あるいは財政投融資の増大をはかりまして、でき得る限り失業者を吸収する、こういうふうにお話しになっておる。これは私はいいかげんな話ではないと思うのです。そこで、今の企業組合がかりに離職者によって構成をされて、その組合が資金があれば、この種の企業も営むことができる、もう一つは、認可の問題もありますが、ともあれ、企業の主体が資金があればできてくる。こういうところに、大臣の言われた意味はあるのではなかろうかと思うのです。そこで、財政投融資等の方法は、相当考えられておりますし、相当予算額の中にも、約四千億という膨大な金があるのですから、私はできぬことはないと思うのです。そういう意味なのか、それともその他の企業考えておいでになるのか、そこら辺は大臣でなければ答えにくいかもわかりませんが、次官はやはり大臣の片腕、女房役ですから、一つお答えを願いたいのですが、そこら辺どうなのですか。
  82. 二階堂進

    政府委員(二階堂進君) 今お述べになりました公共事業、あるいは財政投融費等の事業に、離職者を対象において吸収していきたい、というような御趣旨をお述べになったと思うのでありますが、それは今、山本さんが具体的にお述べになりましたようなことを、私は指しておるのではなかろうかと、一応考えるのでありますが、また、具体的にそういうような企業組合等ができまして、そうしてしっかりした計画等が出されますと、その金融の裏づけをどうするかというような相談がございますれば、そういうような特殊な契約につきましては、特別な配慮をいたしたい、こういうことを考えておられると思っております。
  83. 山本經勝

    ○山本經勝君 それで次官のお話をこういうふうに理解してよろしいのですか。今のような本会議における大臣の御答弁になった趣旨は、そういうようなケースにもはめ得る、当てはまるという解釈ですか。
  84. 二階堂進

    政府委員(二階堂進君) つまり広い意味では、やはりそういうことは考えられないこともないと思いますが、今お述べになりましたようなバスの問題でありますが、そういうような具体的なことにまで、財政投融資関係の考慮を払うということをお考えになって、お述べになったのではなかろうと思っております。
  85. 山本經勝

    ○山本經勝君 長官の方にお伺いしておきたいのですが、企業協同組合ができておる現在、たとえば東京都内で最近できております十七ですか、あるいは株式組織になっておる、法人になっておるのがあると思いますが、それらを集めると大体十七ある。その十七が一緒になって大きな主体を作ろうということを計画して、非常に真剣に私はやっておると思うのです。先ほどお話があったように、ふまじめな形ではないと思うのです。私は離職対策あるいは失業対策の中で、駐留軍労務者ほど真剣に事と取り組んでおる、問題と取り組んでおるという姿を見たことはない。最も私は真剣であり、また、これは調達庁にしても、労働省にしてもよく御存じだと思うのです。ですから、あれはいいかげんな、間に合せの思いつきという形でやられておるのではなくて、真剣にやられておる。福岡の例を申し上げますというと、福岡では、個々のいわゆる企業組合が合同をして一つの大きな主体を全県的に作ろう、これは県が予算を取って協力をしている、こういう姿であります。ですからその主体が強力であれば、こういうこともできぬことはないと思う。あるいは新しい国有財産の利用等によって工場に誘致するというような地方公共団体の協力態勢もできると思う。しかも、技術者の方が多数おるのですから、そういうことになると思う。ですからそういうような場合に、国の投融資等を振り向けるということは、これは当然私はなさるべきだと思う。次官のおっしゃったような意味において非常に一般的な話である。その特殊のケース、たとえばバスの問題についてどうこうということを言うのじゃない。そういう主体を作り上げれば、個々の小さい企業体じゃなくて、組合はみんな合同をして、一つの大きな協同組合連合会といったような形のものを作り上げる。そうすると、その主体に対する投融資という道が、私は考えられなければ、意味をなさぬと思う。大臣の説明から言いましても、あるいはその答弁の内容そのものは、私はそういうものを指したと思うのですが、次官の考え方では、そういうものは特殊のケースに当てはめて言ったのではなかろう、それはそうでしょう。だがしかし、そういうような主体を作って、それが企業協同組合であれ、株式会社であれ、企業の主体を作る。いわゆる駐留軍の労務者というものを主体にした一つの大きな組織ができて、その組織が計画的にやっていこう、あるいは離職した場合の職場を作るということになると、投融資でやらなかったら、その答弁は意味をなさぬと思う。これは田畑君の質問に対する石田労働大臣の答弁である。駐留軍労務者というものをその前提に立っておられる。ですから、少くともこの場合は、こう解釈しているのですが、その点は今の次官の御説明では、ちょっと納得がいきかねる。
  86. 二階堂進

    政府委員(二階堂進君) 今お述べになりましたような広い地域にわたって強固な組合なり、あるいは組織を作って、そうして具体的な計画をお立てになって、資金の裏づけを要求される場合には、これはやはり当然その裏づけは考えてやるべきであろうと考えております。ただ、先ほど申されましたように、十九台のバスの問題について投融資関係をどうするかというようなお尋ねでございましたので、そういうことについて大臣がお考えになって答弁をされたのではなかろう、こういうふうに私は考えて申し上げた次第であります。
  87. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで、調達庁長官にお伺いしておきたいのですか、先ほどお話しのようなつまり企業協同組合が小さい、たとえば五人、十人といったようなメンバーでもって組織されておる。今のところは小さいのです。たとえばタクシーの企業協同組合にしても、せいぜい多いもので五十台、東京都で今申請しようとしております。その個々の企業体では非常に弱いが、それが全部集まって一つの集団を作って、さらに大きな企業協同組合の連合会みたいな構成になって参りますと、その基盤も強化して参るということになってくると、その場合に今の次官のお話のように、国の投融資等の道を、あるいは資金供給の方法を具体的にお考えになる用意があるのかどうか。これは個々企業協同組合に対する零細な資金の供給について、すでに幾多の案件が出されて、しかも、それがうまくいっておらぬのが先ほど申し上げたように実情なんです。それでほんとうの、いわゆる離職対策なるものを推進しようとするならば、何といってもこの分野は大きな未開発の分野になると思うのです。これに対する資金の供給がなされなければ円滑にいかぬ、こういう現状ですから、これに対しては長官としては十分積極的にこの資金の供給をするというお考え方なのか、それは特需等連絡会議等であらためて諮った上で考えられる、こういうようなお考えなのか、その点をはっきりしておいていただきたいと思います。
  88. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 一応特需等連絡会議におきまして金融のあっせんという問題は、今まで考えておりましたのは、比較的小規模の企業組合に対してでありまして、これに対しましては一応国民金融公庫その他の信用機関から融資をする、この融資の額は大蔵省といたしましては、制限額とか、あるいはワクというものは設定しないけれども、融資する資金が不足であるからという理由だけでは融資しないということはない。本年度においては七億円くらいの程度までは当然可能であるというようなことになっておりまして、ただし、今のお話しのございましたような非常に大規模なものになってきて、これに対する融資をどうするかということになりますれば果してこのような七億程度の総額で間に合うかどうかという問題になって参ろうかと思います。今すぐにお答えを申し上げかねますが、そういうケースが出ますれば、また特需等対策連絡会議に諮りまして、各省と協議をいたし、対策を講じていかなければならぬと思います。
  89. 山本經勝

    ○山本經勝君 一点要望。午後は石田労働大臣出られますか、ぜひ出てもらわなければ、今の問題非常に重要な問題になって参りましたので、次官から一応伺ったけれども、さらに労働大臣の方から正確に話を聞いておきたいと思います。
  90. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 催促はいたしておりますが、午後はぜひとも来ていただきますように、委員長から特に要請方を申し上げたい。かように思っております。  それでは暫時休憩いたします。    午後零時五十三分休憩    午後二時十八分開会
  91. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  休憩前に引き続き、駐留軍の撤退に伴う労務者の離職対策に関する件の質疑を行います。質疑願います。
  92. 山本經勝

    ○山本經勝君 労働大臣にお伺い申し上げたい。  初めに、本件とは違うのですが、先日の衆議院本会議で大臣が御答弁になっておる中で、誤解や誤認に基く質問に対しては答える必要はない、という御見解の表明がなされております。それでこの委員会におきましても、やはり大臣としてはそういうお考え方であるのでしょうか。それは私ども、非常に頭が悪いし、あれしまして、誤解や誤認に基く質問もしないとは限らない。むしろ、そういう問題については懇切丁寧に、これはこうして間違いである、という御解明をなしていただかないというと、誤解や誤認がそのまま、なまのままで通ると、こういうことになりはせぬか。ですから大臣の方のお考え方として、もし誤認や誤解に基く質問に対しては答えないという方針でおいでになるのかどうかという点が、まず第一点なんです。その点について大臣からお話を伺っておきたい。
  93. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) どうも言い過ごした発言でありまして、決してそういうつもりではございませんです。誠心誠意お答えを申し上げるつもりでございます。
  94. 山本經勝

    ○山本經勝君 それでよくわかりましたので、一つ本論の方に入ります。  そこで、大臣が先日参議院の本会議で田畑君の質問に対してお答えになっておる点なんですが、これは午前中の委員会で次官の御見解等も伺ったのですが、こういう表現でお話しになった。駐留軍その他の引き揚げに伴いまして、雇用の問題で若干の、あるいは相当の摩擦が生ずるかと思いまするが、これは公共事業費あるいは財政投融資の増大をはかりましてできる限り失業者を吸収し、摩擦を少くするように努めて参る、こういう御見解を表明になっておる。ですから、これ私ども非常に大事な問題だと思いますが、これは駐留軍のみの問題ではもちろんないとこう受け取っております。しかしながら、ここでは駐留軍の撤退に伴うという前提でお話しになった。そうするとしばしば大臣にも質問申し上げ、あるいは御意見を承わって参ったのですが、きょういろいろ事務当局から伺ってみますというと、大体昭和三十二年の一月から十二月までの間に二万六千四百三十名の離職者を出している。それからさらに三十三年の一月二十日現在で六千二十二名離職者が増大している。合計しますと三万二千四百五十二名の離職者が出ている、こういうことになっています。しかも、今後の見通しとして、大体今年度内、三十二年度内に離職するという者がその他に約一万と推定できる、こういうお話しであります。それからさらに四月から六月まで、すなわち米国の会計年度を境にして六月で切りますというと、六月までにはさらに六千ないし八千名程度の離職者が出ると、大体こういう見通しのようです。そうしますと大体四万名という、四万名をこえる多数の駐留軍労務者の離職がある。さらにこれに加えて、御承知通り特需等の人員整理も不可避のように承わっておる。そうしますと約五万をこえる失業者となってくると思うのです。この財政投融資等によって、これらの離職者に対する、あるいは失業者に対する具体的な吸収方法を大臣はどういうふうにお考えになっておるか。まずこの点から伺って、それからその他関連をしまして御質問を申し上げたい、こういうふうに考えております。
  95. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 田畑さんの御質問に対するお答えは、これは今おっしゃった通り駐留軍だけのことを、駐留軍離職者だけのことを言っておるのではございませんで、一般的な失業の発生に対処する方法として申し上げたのであります。公共事業の増大及び財政投融資の増加等によって対処するというのは、一つはそれらによって、新たなる雇用の増加を期待しておるということであります。第二は、その財政投融資の一部をもって中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫その他での融資が行われるわけでございますから、それを通じて離職者の企業組合とか、あるいはそういうものについての援助もやって参りたい、こういう二点に分けて考えておる、そういう意味で申し上げたのでございます。
  96. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうしますと、これは午前中の委員会で大臣おいでになりませんでしたが、調達庁長官あるいはその他関係当局側から伺ったのですが、特に離職対策離職対策本部を設置して、そうし、て吸収に今努力をされていることを、私ども否認はいたしません。それはわかっておりますが、その効果というものはきわめて何といいますか、不十分であると、こう申し上げざるを得ぬと思う。そこで、今の財政投融資は金融機関を通して、これらの企業組合やあるいは離職者が行おうとする必要な資金の供給をはかる、こういうこともわかりますが、これは形としてはどういうことになりますか。たとえばひもつき融資ならひもつき融資として、駐留軍労務者の企業に対する援助あるいは融資と、こういう形で国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫、こういったような機関を通して貸し付ける、こういう意味なんですか。それとも、もう一つは、以前これは昨年の八月の当委員会でいろいろ失業対策について大臣の所見を承わったことがあります。その際にお話しになった基本問題は、経済規模の拡大に伴って雇用を増大する、こういう消極的な政策方法ではなくて、自分としては少くとも必要であれば、必要であればというよりも、当然新しい企業を起して吸収すると、こういう積極政策でいくのであるというお話を承わった。そのことと今のお話とを結び合せてみますというと、たとえば駐留軍労務者が離職をいたしまして、企業組合等を作っておることは御承知通り、東京都内におきましても、十七の現に法人等を含めてこれらの企業体が生れておる。そして現に国有地の利用を願い出ておると思います。これが十七の小さい企業体が集まって、東京地方離職企業協同組合なるものを作ろうとしておる。そういうふうにして企業体を作って参りますと、個々のわずか五人、十人あるいは十五人という少数企業組合ではなくして、全体としては相当大きな数百名に上る企業体になって参り、おのずから資金もそれに準じて大きくなっていく。そういう場合に、これらの企業体に融資する方法としては、政府から直接財政投融資の金を流すというんではないでしょうから、今お話しになった金融機関を通して流すというのであれば、やはり明らかにひもつきにしておかないと有効にいかないというのが、実態でなかろうかと私は判断する。そこで、大臣のこうした点における御配慮はどういうふうになっておるのか、その点をまず伺っておきたい。
  97. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) ひもつきということを特に考えておるわけではございません。しかし、大蔵省等とも打ち合せまして、駐留軍離職者の状況、特にそれは新しい仕事でありますから、過去の実績というものはない。それから信用等につきましても、新しい仕事でありますから、いわゆる普通の意味における信用が、あらかじめ付与されておるわけではございませんので、そういう点については、各金融機関に対しても、十分そういう実情をしんしゃくして、金融等の援助をしてもらうように、連絡はとっておるわけでございます。  それから企業組合の場合、企業組合ができたから自動的にどうこうというのではなくして、やはりその企業の実態、あるいは計画内容というようなものが非常に重要でございます。そういうことについても、適切な指導を積極的にしてもらうように、連絡をとっておるわけでございます。
  98. 山本經勝

    ○山本經勝君 これは昨年もこの委員会でしばしば論議をした点なんですが、企業組合が資金を必要として、先ほど言われた国民金融公庫もしくは中小企業金融公庫等、この種国の持っておる金融機関からの融資を願い出た例が非常に多いわけです。ところが、これはほとんど、ほとんどと言っていいほど融通を受けることができておりません。その理由となるのは、いろいろな理由があるでしょう。今大臣のお話しになりましたように、企業内容、主体が十分でない、あるいはその他の、経験がないのですから、新しい企業として発足するということですから、いろいろ問題はあると思う。この金融機関がこれらの貸付条件について、融資の条件について検討するというと、どうも適格性を欠くと、こういう意味で貸し出しが実はなされておらない。午前中も強調したんですが、私は少くとも失業対策の問題の中で、およそこの駐留軍労務者ぐらい、真剣に離職後の職場の問題を考えておる勤労者は私はないと思う。そして現に努力の姿というものは、ほんとうに涙ぐましいものだと私は感じて、そういう意味で、いかにまじめで、そして真剣にその問題を自分のものとして取り組み、かつ政府に要望をし、協力を求め、あるいは地方公共町体の援助を求めておっても、その主体というものは、初めて今度企業協同組合なり、あるいは法人なり、その形態はともあれ、企業をしようというのですから、信用はないというのは当然だと思うのです。あるいは事業の実績というものがない。こういうものがないから、従って融資を願い出ても、なかなか認可はせられないという現実だと思うのです。そういう現実がわかっておればおるほど、また大臣の思いやりあるお言葉の通り受け取れば、少くともここで、具体的な融資の方法について積極的なあっせんといいますか、あるいは、この前閣議決定を見て通牒が出ておりますが、大蔵省当局あたりから出ております金融機関に関する通達、これはまことに形式的な、それでこういうものでは、実際にこの企業協同組合等を作りましても、実際の融資を受けることは不可能だと思うのです。先ほどから私は強調して、特に大臣からしかるべき具体的な方法をお考え願いたいと訴え、かつ伺っておる。そこで、ひもつき融資は考えておらないといいますと、つまり一般に、だれにでも貸せる、借りられる金の中でありますから、やはり貸付条件等がやかましくなってくるということだと思うのです。今のような実情だと、特に離職に伴う対策一環として融資を考えるというのであれば、いやしくもこれは、国の金融機関に対する適当な措置は、やはりその条件じゃなくして、現実に離職した、国の雇用した労務者の離職対策として考えらるべきだと思うのです。この点、大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  99. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 先ほど申したような方針を大蔵省とも打ち合せいたしておりまするし、それから、政府、特に内閣に設けております特需等対策委員会を通じてやっておるのでありますが、なかなか実効が上っていないのは、今御指摘の通りでございます。これは、先ほども申しましたように、一つには、まだその趣旨の徹底が末端の機関に行きわたっていないということも一つでありますけれども、いま一つは、やはり企業組合の内部に、その計画内容等に不十分な点もございます。しかし、それは不十分だから拒絶するとかということではなくて、不十分な点は十分にするようにやっていかなければならないのでありまして、昨年の暮れも、数班に分れてそういう現実的な指導に当らせたのでありますが、これについては、不十分な点を十分痛感をいたしておりまするので、なお具体的な促進の方法を考えて参りたい、実行していきたいと、こう思っておる次第であります。
  100. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで、これをひもつき融資にしたらいかないということは、何か根拠があるのですか。
  101. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) これはやはり、各金融機関の貸し付けまする金は、結局大衆の預金でありますし、また、そうでないものは国民の税金であります。従って、その回収を確実にしていく責任がやはり金融機関にもございます。  それからもう一つは、ひもつきに一定のワクをきめるというようなことは、金融機関としては、金融機関の自主性というものを阻害をいたしますし、それから、現在金融政策として、そういうことを避けておるような状態でもございますので、ただ資金量が足りないという理由をもって融資が行われないということはないように、これはもう厳重にいたしておるようなわけでありますが、ひもつきにするというふうなことは、ちょっと今のところ考えておりません。
  102. 山本經勝

    ○山本經勝君 大臣の今のお話ですというと、結局金融機関の自主性あるいはその回収の責任、これは当然私はあると思うのですよ。これは当然なんですが、そこで、先ほど申し上げたように、駐留軍の労務者が、いわゆる行政協定に基き国の責任において雇用をした者が、それがやむにやまれぬ事情のもとに、離職をせざるを得ぬと、こういうことになってくるのであるから、これらの人々がみずから将来の生活を安定するために、あるいは保障するために、企業を営む、あるいは職場を求めていく、こういう姿ですから、その場合に、企業が営まれる、その企業は、今まで継続をして事業をやっておったのではありませんから、今まで労働によって賃金を得ておったという姿が、今度は新しい企業の形態に切りかえる。従って、信用もなければ歴史もない。こういうことだと思うのです。そういう場合に、融資が、特定の条件政府がバックをして貸付をするという道を開いてやらなければ、私は、この企業協同組合にしても、あるいは企業の形態は、よしそれが株式会社という法人であれ、あるいは個人であれ、私は困難だと思う。たとえば、先ほども申し上げた、この東京都内にあります、これら離職者の手でできておるタクシー会社、これがたしか十七であったと思います。これがそれぞれ自分の退職金や、あるいは離職に伴って受ける給与手当などを合わせて、そうして、企業協同組合を作って、その金ではすぐに、じゃ自動車の十台、あるいはタクシーの二十台といったような、この元になるものを仕入れるわけに参りません。だから、勢いそういう場合に、やはり資金の供給を受けなければならぬが、金融機関の自主性と、あるいは収責任というものをしょわされておるとか、そのやはり信用判定というものが問題になってくる。まじめにやろうというだけでは、それが直ちに物的な保証とはならぬでしょう。一つの要素ではあるが、そのことだけでは不十分である。こういうふうに金融機関は私はなると思う。そうしますと、せっかく政府の財政投融資等を金融機関に流してやっても、その金は、必ずしもこれらの企業意欲を充足するということになってこないのではないかという心配がある。だからこそ私は、これこれの額については、こういう条件で出せというくらいの親切さをもって大臣の方から指示をいただかなければ、末端の金融機関は私はやはり貸さないと思うのです。それでは、せっかくの財政投融資が金融機関に流れても、その金は、これらの関係者を潤すのではなくして、その他のところへ流れていく。こういう結果にしかならぬと思う。ですから、少くともこの財政投融資をこれらの金融機関に流すというのであれば、これは明らかに私はひもつきにすべきだと思う。この点はどうなんですか。もう一度、一つ再考を願っておきたい。
  103. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) これは、末端に対する指導というものは、金融機関と、それから企業組合と、両方に現実的にやっていかなければならないと私は思っておるわけであります。それは、昨年特需等対策委員会の方で、数班に分れて各地回ってもらいましたが、それに、さらにそういう具体的な指導調整をやることによって、推し進めていきたいと思っております。それで、ひもつきにすると、あるいは特別の条件だから、条件を特別に緩和するという方法をとれば、これは丁度戦争直後の復金融資、これは、ほとんど回収不能になってしまったのが相当あるわけでありますが、そういうルーズな取扱いになる欠点もございますし、金融政策として、そういうひもつき融資を現在行なっていないというのが実情であります。しかし、これを生かすためには、先ほどから申しましたように、現実的に、金融機関に対しては、その駐留軍離職者の状況が一般状況と違うゆえんを、あるいは、そしてまた、それに対して特別な配慮をすることの必要なゆえんを具体的に指示いたしますとともに、企業組合についても、十分その信用を保ち得るような状態になるように、それぞれケース・バイ・ケースで指導をしていくことが大切だと思っております。それから、今お話の、東京都のタクシー業その他の企業組合の場合は、金融が直接問題になっているのではなくて、東京都内におきまするタクシーその他、道路使用の状況から考えまして、タクシー業としての認可がなかなか運輸当局でおろせないというところに主な問題があるように思います。これにつきましては、ただいま職業安定局を通じまして、既存のタクシー業者に対し、雇用の増大方を呼びかけておる。これは、向う側も非常に熱意を持って話しに来ておりますので、積極的に、この自動車の運転免許証を持っている人たちに就職の機会を与えることは、これは、これからかなり進展を見るのではないか、こう思っておるわけであります。
  104. 山本經勝

    ○山本經勝君 大臣のお話のようですと、この企業組合内容について、指導育成をやる必要がある、これは仰せの通りだと思うのです。そこで、その具体的な方法は何がありますか。その指導育成のための具体的な方法は……。
  105. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) それは、特需等対策連絡会議で、それぞれ現地へ向けて数班の人を昨年の暮れに派遣をいたしましたが、そういうような方法で直接の……それぞれ違ったケースでございますし、違った計画を持っておるわけでありますから、そういうものについてケース・バイ・ケースで指導をするということであります。
  106. 山本經勝

    ○山本經勝君 私はこう思うのです。たとえば、今申し上げたタクシー業の認可の問題等もありますが。このタクシー業の認可を申請して、同業者が現在相当あふれておる実情なんです、中小零細企業として。その中に割り込むことであるから、同業者が反対をする。それから、地方では陸運局等において、あるいは東京でもそうだと思うのですが、運輸当局側がそれでは困るのだという規制が一つの大きな制約をしている。そうすると、そういう問題について、大臣としては直接、たとえば大臣の立場から、あるいは出先機関を通じて、それらの当局に対して、そういう積極的な協力態勢を求められることが一つと、それから、企業組合計画あるいは事業内容等についてのいわゆる具体的指導もありましょう。しかし、私は、主として問題はやはり資金の点にしぼられてくるという感じがしている。ですから、むしろここで、そういう具体的な指導をなさるために必要な第一の要件は、そういう手続的な問題や、あるいは考え方の上の指導というようなものではなくて、資金の問題に集約されてきはしないかと思うのです。そうしますと、言われるような趣旨ほんとうに生かされるのは、この資金の供給について、具体的な関係当局側の協力態勢が必要になってくる。ですから、そのためには、むしろはっきりと、これこれの金額は、これこれの機関を通して、これこれの条件でこれらに貸し付けるべきものであるという、ワクを定めていただくことが行われれば、これは、もっと資金の問題は円滑に通用ができ、有効適切に私は推進ができる、こういうふうに考えるので、どうも大臣の考え方とはやや違いますし、理解が得がたいのですが、そこらへんをもう一度。
  107. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 今、政府関係の金融機関へ融資をいたしておりまする状況を御報告申し上げますと、国民金融公庫におきましては、申し込み受付件数が百七十八件であります。それに対して、普通貸付が三十六件、厚生資金貸付五十一件、合計八十七件でございます。大体半分ぐらいは実行いたしております。それから、商工組合中央金庫におきましては、申し込み受付件数が二件で、決定いたしましたのは一件。それから、中小企業金融公庫は、ただいま申し込み受付が二件でありまして、これはまだ審査中であります。それから、企業組合の場合は、ほとんどタクシーの場合が、あるいは自動車に関係したものが非常に多いのでありますが、これは、同業者の反対ということだけではなくて、日本の現在の各都市の道路利用の状況というものによって非常に制約されている。同業者の反対もございます。それは事実でありますが、反対だけではない。それから、同業者の反対その他に対しましては、私の方から積極的に各陸運局、運輸省の方に連絡をとっておりますけれども、それだけではなくて、御承知のような、非常に道路に自動車が輻湊しておる状態でございますので、そういう点を考えなければなりません。そこで、それにかわる方法、すなわち、新しく車数を増加することでなくて、自動車運転の技術を持っておる人に就職の機会を与える方法は、既存の事業体の中に吸収していく、そこに就業の機会を求めていく。特にタクシー業の従業員労働条件というものは、いろいろ問題になる点も多いのでございますので、これは、自動車運送業者の方と連絡をとっておりまして、先方も相当好意を持って、積極的な態度をとっておりますので、それによって相当数吸収するように進めております。自動車関係の今まで取扱いました件数を申し上げますと、一般の乗用旅客自動車、タクシーでありますが、これは、申し込み申請件数が三十八件で、免許件数が四件であります。これはなかなかむずかしいのであります。それから、貨物自動車運送事業の免許は、申請件数が、三十一年度から継続分が一件、三十二年度以降の申請分が五件で、合せて六件でありますが、うち一件免許し、二件却下し、そうして三件継続中であります。自動車整備事業は、十件の申請に対して八件認可し、継続のものの件数が二つでございます。大体そういう状態であります。  それから職業のあっせんでありますが、職業のあっせんは、三十二年四月から三十二年の十一月までに、新規求職申し込み件数、駐留軍関係だけでありますが、三万八百七十一人に対して現在四千四百六十九人就職をいたしております。それから、ただいま職業訓練中の者でありますが、現在三千六百九十五人、百三十種目にわたって補導をいたしておりますし、このほか、基地内職業訓練を現在二千六十九名、今後新たにそれに加わる者が一千八十九名、訓練種目は、十九種目にわたって行なっておるというような状況でございます。
  108. 山本經勝

    ○山本經勝君 もう一つ問題があるのです。これは、大臣も御承知だと考えていますが、すでに、先ほど申し上げた駐留軍離職者というのは、増大の一途をたどっている。その中に、最近米軍が直営でやっておった業務を、いわゆる国営会社あるいは民間企業にやらせる、こういう切りかえが行われておるやに承わる。すでに広島あるいは長崎、青森、東京、神奈川といったような県で、数日前に福岡でもそういう問題が提起された。こういうことがあるのですが、これは、申し上げるように、すでにある離職者の処置が十分にいっていない。こういう状態で、これらの労務者から、いろいろな要求が労働大臣手元に出ていると思うのですが、あるいは調達庁にもむろん出ている。そういうような処置のできないときに、むしろ米軍がPDの切りかえをやるということによって、駐留軍労務者だけじゃなく、特需関係の労務者も、剰余人員については困っている。現に整理をしている。またさらにしようとしている。そうしますと、国営にしても、民間にしても、こういうところに進出をして参りますれば、当然駐留軍労務者の職場というものが奪われる結果になると思う。このことは、一方ではやはり職業安定法の問題とも関連をする重大な問題である。ですから、これらの防止をやはりすべきだと思うのです。これは、特需等対策連絡会議でも話が出たやに承わっておりますが、大臣としては、これに対する対処方をどうお考えになっているか、この点一つ……
  109. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 非常に問題が多いことでありまして、政府としては、日米合同委員会を通じて抗議、反省を求めております一方、私どもの役所といたしましては、ただいまお話のように、職業安定法との関連がございますので、そういう事態のないように、積極的な努力をするようにさしております。
  110. 山本經勝

    ○山本經勝君 先ほどこれは、調達庁の長官や、それから特需等連絡協議会の方のお話等を承わったのですが、この対米軍交渉については、衝に当るのは、日米合同委員会のメンバーなのですか。
  111. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) その通りであります。
  112. 山本經勝

    ○山本經勝君 先ほど、二月六日に米軍から回答があったと言われるのですが、その回答によりますと全般的な方針としてそれをやるということはないということだけなのであって、その他特殊な場合にはやむを得ぬというようなことも言われておる。ですから、これは保証にならないと思うのです。で、保証の方法を考えるなれば、これは内閣において、たとえば特需等連絡協議会という閣議決定による機関があるのであるから、その機関を通して、あるいは政府責任においてこの対米軍との交渉をして、しっかりしたことをきめていただかないと、こたはあとからあとから発生するおそれがある。そこで、単に日米合同委員会に出したからそれでいいということではないと思うのですが、そこら辺の大臣としての積極的ないわゆる離職予防の対策をどうお考えになっておるか。
  113. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) いや、日米合同委員会で、形式的な議論や文書のやりとりをしたらそれでいいというわけで申し上げておるわけでは決してございません。ただ、この種の問題について、日米間で処理する正式機関はやはり合同委員会でございますから、結局合同委員会で、繰り返しわが方の要求希望を向うに聞いてもらうより仕方がない。  それから一方、職業安定法との関係は今研究中であります。御必要とあれば、職業安定局長からお答えさせます。
  114. 山本經勝

    ○山本經勝君 大体そういうことでいい、というより、やむを得ぬのですが、それで大臣としては、さらに強力に米軍との交渉をなさる、こういう決意でおられると受け取ってよろしいですか。
  115. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) その通りであります。
  116. 山本經勝

    ○山本經勝君 それから、時間が大臣はないようですから、続いてお願いしたいのですが、これは、基準局長の方から内容については詳細にお伺いを申し上げたいが、その前に、大臣に伺っておきたいのは、労働省所管の問題の中でけい肺に関する問題で、これは、特別保護法が昭和三十年に成立し、そして施行になって参りました。ところが、あの通過の際に、衆議院で付帯決議をいたしております。この付帯決議について、労働省としてはどういう取扱いをなさってきたか。そうして、もしその付帯決議について何らかの具体的措置を講じられておるならばその内容、これは、詳細なことは局長の方からあとでお伺いするといたしまして、基本的には、この付帯決議なるものを労働省としてはどら取り扱ってこられたか、この点をお聞きしておきたいと思います。
  117. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 今、この付帯決議の実施につきましては、労使、公益三者で構成されておりまする審議会におきまして、御検討を願っておる途中でございます。なお、検討されておる状態その他は、基準局長からお答えいたさせます。
  118. 山下義信

    山下義信君 関連して。けい肺保護法のことが出ましたから、大臣に伺うのでありますが、けい肺法の一部を改正される御意思がありますか。また、けい肺関係以外の職業病をいろいろ御心配願うために、労災法の適用を五人以下の事業場にしなければ、十分目的が達せられないと思いますが、労災法の適用を五人以下の事業場にも適用されるという御意思がありますかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  119. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 今の御質問でありますが、けい肺法というのは、主として給付期間、そういう点についての御意見でありますか。これは先ほどの審議会で御検討を願っておりますし、昨年に生じました事態につきましては、実質的な措置をとらせたはずであります。法律との関係もございますけれども、突質的に気の毒なようなことにならないような措置をとらせたつもりであります。  それから、五人未満の事業場に対する労災保険の適用でありますが、これは、五人未満の事業場でも、危険なところに対しては、それを適用きしております。なお、それ以外のところについては、調査を進めたいと思っております。これは、何しろ三百万くらい事業場がありまして、なかなか実態をつかむことは非常に困難でありまして、これは、失業保険の拡張適用と同様の困難に逢着いたしますが、その小企業における労務の実態についての調査をすみやかにいたしたいと思っておるのであります。
  120. 山下義信

    山下義信君 御趣旨はよくわかりましたが、やはり結局は、労災法を五人以下の事業場にも適用するように基本的には改正しなければ、多くの職業病、ことに最近各種の化学工業が発達し、あるいは中小企業のいろいろ衛生設備等の不完全等に対しましても、この適用をやらなければ、職業病に対する保護政策が徹底しないと思いますが、労災法の適用について、根本的にお考えになる御方針でありましょうか、承わっておきたいと思います。
  121. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 方向としては、お話の通りであります。現実的かつ効果的にいかにしてそこへ到着せしめるかという点について、調査を行わしめておるわけであります。
  122. 山本經勝

    ○山本經勝君 これは、実は昨年の予算委員会で、同僚湯山議員が質問をした際に、こういうふうに言われた。けい肺法の問題について、これは当時百田さんがお答えになったのですが、付帯決議の問題は、審議会の方に検討をお願いしておると言われた。私も、この委員会で、やはり同様の質問を申し上げたのですが、その際には、大体こういうような要領の御答弁があった。それは、検診の結果、新しい統計数字が明瞭になったなれば、それを基礎にして検討をいたしたい。そこで、昨年ですから、ちょうど一年ですね。一年の間、これはどの程度審議会でやられておるのか知りませんけれども、とにかく形式的にも審議会があるのだから、審議会に一応かけて、そちして結論を待つというような形でやられておるよらな印象を受けて困るのです。そこで、大臣から伺っておきたいのですが、この四項目にわたる付帯決議というものは、法改正のやはり一つの問題点に私はなってくると思う。法改正、つまりけい肺法の改正をするお考えがあるのかないのか。それから、もしするとするならば、大よそいつごろになるのか。これは、すぐにといっても困難かもしれませんが、一応三十年から始まって、三十一年の検診が行われ、その実績が明らかになり、それから三十二年の検診が行われ、その実態は、まだ数字で正式に集約ができておりませんが、これは早晩できる。できるとするなれば、そこで、このけい肺患者の増大の傾向だけは否定できぬと思う。きょうは資料を求めておりましたが、資料が間に合わないから、ここで具体的な数字を後ほど局長の方から御説明願うこととして、増大しておることは明らかです。しかも死亡者はふえておる。こらいち状況です。これに対する法改正なり、あるいは適切なる対策が講じられなければならぬ。なかんずくこの付帯決議というものは、当時審議した内容においても、これは重大な点であるということで、これは、一致した意見で付帯決議がそのまま参議院でも通っていったわけですから、その付帯決議に対する対策が、昨年よりすでに一年も経過した今日、審議会でなお結論が出ぬ、審議会でやっていますということでは相済まぬと思う。そこら辺の問題も、一つ大臣から御解明願っておきたいと思います。
  123. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 実は、言いわけみたいになるかもしれませんが、昨年は、会長の勝木さんが外遊され、労働者側の委員が外遊されまして、昨年の秋過ぎまでは、実はそういうわけで、なかなか活発に活動ができませんでした。ただ、昨年の暮れから非常に熱心に、何回も会合を開いていただいておりますので、近く結論が出ることと存じております。付帯決議がけい肺法の非常に問題点であり、重要な点であるということは、よく承知しております。決して審議会に事をかまえて、問題を遷延しようとしているわけではございません。
  124. 山本經勝

    ○山本經勝君 大体大臣としてお見込みは、いつごろには審議会の結論が出るとお考えになっておりますか。
  125. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 問題点が非常にたくさんあって、今その問題点の議論をいたしておる最中だそらでありますので、いつごろまでというようなことをちょっと今から……特に審議会の性質にもかんがみまして、私の方からいつごろまでとは申し上げられませんが、非常に熱心に御審議をしていただいております。
  126. 山本經勝

    ○山本經勝君 熱心にやっておられるだろうと思います。相当時間がかかっておりますからね。それに、毎日やるわけではないし。この問題が参議院の予算委員会質疑があったのは、昨年の三月です。そのときの答弁は、目下審議会において審議中であるが、だいぶ問題点の歩み寄りができてきたという趣旨の答弁があった。歩み寄りができたのであれば、結論が出てもよさそうだ。しかし出ていない。一年もたった今日、まだ出ていないのですから、ずいぶん慎重に、ゆっくりやっておられる。こういうふうに受け取れるのですが、およそいつくらいまでにはという目安は立たぬものでしょうか。そうしなければ、いつまでたっても、審議会にかけておりますということだけでは、物干竿に物が干してあるだけで、風にひらひらなびいているだけでは、付帯決議の趣旨に沿わないと思うのですよ。
  127. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 先ほど申し上げましたように、昨年のまん中に、非常にいろいろな事情が生じました。しかし、審議会の審議を促進していただきますように、労働省といたしましても努力をいたします。
  128. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  129. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して下さい。
  130. 山本經勝

    ○山本經勝君 要望が一点あるのですが、急いでやるといいましても、私も大体知っておりますが、三者構成ですから、なかなか簡単ではないと思う。ところが、この付帯決議の問題点が、将来法改正の問題点と関連して重要な問題になりますし、現に患者は増大の方向にありますから、なるべく早くこれはやってもらわなければならない。そういう意味で、一つ推進方を大臣にお願いしておきたい。  それから、さらに大臣には非常に質問が多いわけなんで、雇用審議会の答申等に関する問題その他失業対策等一般を含めてこれを次の適当な機会に譲ることといたしまして、本日は、私の質問はこの程度で打ち切っておきたいと思います。
  131. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  132. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して下さい。
  133. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この前の委員会で・駐留軍関係の問題で、労働省の所管局長にお聞きしたのですが、きょうはちょうど見えておりますので、私もうちょっと聞いておきたい。いろいろたくさん問題がありますけれども、緊急の問題として、新労働契約ができてから二、三ヵ月しかたっていないのに、駐留軍自身が勝手に民間に払い下げて請負に出す。それから首切りが出る。そこで、労働省も、これは困る、それで、調達庁も困るという建前で、合同委員会でがんばっておられるという御返答があったのです。それで私は、今の話の根本になるものは、政府自身が責任を持って、調達庁長官が、困る、こういうことは日米関係でよろしくないということをはっきり、責任体制を明らかにして交渉に臨む、できなかったときの措置はどうするかということまで考えられておるか、そのときの状態一つお聞かせをいただきたいと思うのです。
  134. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 午前中にも申し上げましたが、私どもといたしましては、合同委員会に持ち出しまして、米国側に強い要請をいたしております。なお、特需対策会議等にもお願いをいたしまして、政府全体の問題として取り上げていただきまして、交渉いたしたいと存じます。また、私どもの方といたしましては、合同委員会にあげたからといって、それで折衝をやめておるわけではございませんので、引き続き、折り返し強い折衝は、私どもといたしましてもやっております。なお、政府全体としても折衝していただくように、お願いをするつもりでおります。
  135. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 午前中にその質疑があったならば私はもうこれ以上いたしません。ただ私は、懸念するといいますか、どうも心配になりますのは、この前の駐留軍のいろいろな問題の解決に対して、直接の責任者である調達庁長官が、何かこう、どこの省へお願いに行くとか、あっちの大臣にお願いに行くとかいうようなことで、非常に、労働者にとってみたら、頼りないような感じを答弁の中から受けたものですから、今度も、これは困るということで交渉されるけれどもほんとう政府自身がその裏を……要するにバックアップ体制をもって、調達庁長官責任をもってこの問題を処理するという体制、その責任政府がとってやる、こういう形で、政府の代表者として、私はそういう格好で交渉をしていただかなければ、このような問題はなかなか解決しない問題だから、そういう点がありましたから、一つお尋ねをしたのです。そういう体制にあるということですね。
  136. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本件に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。
  138. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) では、けい肺対策に関する件を質疑願います。
  139. 山本經勝

    ○山本經勝君 基準局長にお願いをしたいのですが、三十一年度の検診の結果、大体三十二年度では——三十二年度はまだ終っておりませんから、勢い全部はわからないと思うのですが、あるいは十月なら十月までといったような形で出ている実態はどうなっているかということ、これは簡単なプリントをいただいておりますけれども、このプリントは、検診の総数と対象人員と、そうして療養給付の額と休業給付の額が総額的に数字が並んでいる、こういう範囲でありますから、よくわからない。で、実態といいますと、なかなか簡単でないでしょうが、三十一年度から現在に至る可能な範囲で一応やむを得ないと思いますが、実態あるいは動態といいますか、検診の結果、一症度、二症度、三症度、四症度と、それぞれ判定もされたと思います。従って、これらの症度に応じた配置転換の勧告、療養の勧告、あるいは療養している者で死亡した者はどういうふうになっておるか。あるいは療養期間の切れた者、こういうような者の実態を一度総括的に御説明をいただきたい。
  140. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) けい肺健康診断の結果につきましては、昭和三十一年度におきましては二十一万六千二百二十二人の労働者を健康診断いたしたわけでありますが、そのうち正常であると認められた者は、十九万三千九百十二人、第一症度と診断されました者は一万七千六百九十五名、第二症度が二千八十八名、第三症度が千百二十三名、第四症度が七百六十名でございます。また、労働者の移動等により診査不能であった者が六百四十四名でございます。三十二年度の健康診断につきましては、約五万五千名の労働者を対象に、健康診断を実施したのでありまするが、その結果は、まだ各地から逐次報告がある程度でございまして、まだ集計しておりませんが、なるべくすみやかに集計いたしたいと存じております。  次に、その内容につきまして、これは、こまかい数字は、各業種別等に分けましたものは、後ほど資料として提出いたしたいと思います。現在、昭和三十二年の十月末日、これが最も新しい数字でございますが、療養中の者は、労災保険による者が千百四十九名、けい肺特別保護法による者が八百十七名、合計千九百六十六名になっております。また配置転換につきましては、労働省におきまして配置転換の勧告を行いました者が五十四名でございます。それから、死亡者の数は、昭和三十一年度において九十一名、昭和三十二年度、これは十月末現在でございますが、七十四名というような数字になっております。さらに、けい肺等保護法によりまする期間が切れました者は、これは、昨年の十月末までに給付期間が終了いたしました患者数は、けい肺が七十一名、せき髄障害が三十名、合計百一名、こういう数字になっております。
  141. 山本經勝

    ○山本經勝君 昨年十月末で療養期間の満了したといいますか、切れた、これが合計百一名ということのようですが、これらの人々で、いわゆる健康状態はどうなんですか。この百一名の人々、保護法の対象になります人々で、療養期間が終った。そこで何らかの職業につけるような状態になっているか。あるいはまた、もう一歩突っ込んで言えば、何らかの生活をする基盤を持っておるのか。あるいは、どういうような生活状態になっておるのか。それらの予後の問題については、労働省としては御調査になっておりますか。
  142. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 予後の問題につきましては、実はただいまいろいろな問題がございまするので、その実態等につきまして調査をいたすべく、目下やっておるとろでございます。従いまして、現在のところ、この後の問題につきましての資料はございませんが、これはまた、できましたらば、でき次第御報告申し上げたいと思います。
  143. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうしますと、百一名のうちで、七十一名がけい肺、三十名がせき髄障害、こういうことになって、それらの人々で、現在職場に帰っておる者というものは全然ありませんか。これはわからぬですか。
  144. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これにつきましても、調査を実施した上でないと、正確には申し上げられませんが、おそらくないであろうと考えております。
  145. 山本經勝

    ○山本經勝君 三十一年度のいわゆる療養中の人々で、けい肺関係で、この保護法の対象になっている人々が八百十七名と聞いたのですが、間違いありませんか。
  146. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) その通りでございます。
  147. 山本經勝

    ○山本經勝君 それから、死亡が三十一年で九十三名、そうすると、三十二年の十月現在で七十四名、これは、相当数まだこの十月以降の死亡者が出ると思うのですがね、今のこういう状態ですから。これは、何らかの現行の法の、何といいますか、特別保護法という性格から見ましても、何かもう少し行き届いた保護の方法を講じてやらなければ、これはほとんど不治の病と言われるけい肺にかかって、そうして療養をした。しかしながら、なおらぬで療養期間が切れた。これは、大部分が療養期間が切れるのではないかと思うのですよ。ほとんど全部といってもいいのではないかと思います。昨年も、実は鬼怒川の療養所を出た、いわゆる期間満了した人が自殺したという事例があって、これは局長も御存じだと思います。こういう状態で、特別保護法をせっかく作ったけれども、この保護内容が、この不治の病、しかもなおす方法のない病、むかし結核は不治の病ということを言われたのですが、これはなおる病になって来た。不治ではなくなったのですが、このけい肺だけは、およそ現在の医学界の意見をもってしては、なおす方法がない。そうしますと、なおす方法がないものが、いわば限定された期間でもって療養をするということは、ただ気休めに、ある一定の期間を療養しておるというにすぎぬのですが、こういういわゆる法の不備を是正して、ほんとうにあたたかい、特別保護法の性格からいっても、何か方法がありそうに思うのですが、この点について、先ほど大臣からもお話があったように、それであればこそ、たとえば配置転換の問題にしても、あるいはその場合の給与なり待遇の問題等を含む四項目にわたる付帯決議がある。これは、ほんとうに法の中にとり入れたかった点だけれども、当時国会審議に臨んで、非常に困難性が伴っておったので、やむを得ずああいう形で付帯決議という姿になった。しかも、それが審議会にかかっておるけれども、時日を費すばかりで、一向にはかどらず、しかも一方、こういうふうに検診の結果、現われて来る患者は日々増大をしておる。そうして死亡者も逐次増大をする傾向にある。こういう状態ですから、私は、どうしてもこの法の不備を考えざるを得ぬのです。しかも、特別保護の基本的な精神にのっとって、何らか改正をする必要があると私は思う。この点については、付帯決議の問題もあるのですが、局長としてはどうお考えになっておりますか。
  148. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 現行のけい肺保護法の問題につきましては、これは、この打ち切りになりましてからあと、現行の法律におきましては、打ち切り補償費、それから二年の特別保護というようなものを入れまして、それから前の、療養打ち切りまでの療養というものを入れますと、発病後八年間くらいは見るというようなことになっておるわけであります。しかし、お話のように、この病気は、不治に近い病でありまして、それに罹患されている方々は、まことにお気の毒に存ずる次第でございます。そこで、これにつきましては、もとより人道的な観点からも、この給付内容が少しでもさらに有利になることは、それは望ましいことと思うわけでございます。ただ、この問題につきましては、御承知のように、負担金等をどういう工合に措置するかというような財源の問題もございます。たとえば、本年度におきましては、現行程度の給付をやっておりましても、けい肺につきましては、三千万くらいの赤字が出るのではないかという工合に考えられておりまして、実は、この四日ばかり前に、けい肺審議会をやりましたときにも、この問題につきまして御審議をお願いしたわけでございます。今月中に二、三回小委員会をやられまして、この扱いをどうするかという点の御検討を願うということになっておるわけでございまして、このような負担金の問題等も考えなければなりませんし、それから、現在の労災保険の他の給付との均衡問題というようなことも考え合せなければならないわけでございます。しかしながら、これらの点につきましては、非常にお気の毒な事情にある方も多いと思うのでございまして、特に、先ほどお話のありました、療養期間が切れたために非常に困るというような方の処置につきましては、たとえば、他の社会保険との関係、国民健康保険等を受けられるような場合もあるわけでありまして、そういうような問題、あるいは生活保護からの補助も、必要ならばとる場合もございましょう。いろいろな点をからみ合せて、総合的に考えていかなければならないわけであります。この点につきましては、切れた場合におきましても、いろいろな道はあるわけでございまして、これらの点につきまして、親切にその患者の方、家族の方にもお教えして、そうして労災病院その他においての事務者が相談をして、いろいろな方法を受ける道があるならば、その方もやってみるというような、あらゆる手だてを尽していきたいと思うわけであります。また、そのようなことをやりましても、どうしても工合が悪い、ほんとうにお気の毒な事情にある方につきましては、これは、事実上現在の措置としては、保険施設、労災の保険施設の事実上の運用といたしまして、事実上療養を継続できるように配慮をいたしておる次第でございます。
  149. 山本經勝

    ○山本經勝君 先ほど局長おっしゃいました、三十一年度検診の結果、四症度は七百なんぼと言われましたか。
  150. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 七百六十名です。
  151. 山本經勝

    ○山本經勝君 これは、療養をすでにしておりますか。
  152. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) しております。
  153. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうすると、先ほどの療養中の千百四十九名と別に八百十七名という、この八百十七名の中には、この七百六十名は入っていますか。
  154. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 入っております。
  155. 山本經勝

    ○山本經勝君 入っている。そうすると、三十二年度については、まだはっきり出ておらぬわけですね。十月末で死亡した人の七十四名というのは、これは入院しておって死亡した人ですか、療養中で……。
  156. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 療養中死亡した方でございます。
  157. 山本經勝

    ○山本經勝君 この労働省予算の中で、ただいまお話しになりました、けい肺等特別保護費用で、一億七千四百四万六千円ですか、という一応金額が出ておりますね。
  158. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) はあ。
  159. 山本經勝

    ○山本經勝君 それで、いまの三千万円前後の赤字が出るというのは、この金額で三十三年度に出るということなのですか。
  160. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、これは、一応の予算の見込みでございますが、ただいま申し上げましたのは、三十二年の十三月末におきますところの一応の推定をいたしますと、収入が五千八百三十二万八千円、支出が五千七百五十六万八千円でございまして、今年度中に赤字がこの差引出てくるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  161. 山本經勝

    ○山本經勝君 ちょっとはっきりせぬですが、三十二年の十二月末日における今のお話しの差額は、つまり赤字の額というものは何ぼになるのですか。……十二月末現在におけるいわゆるけい肺保護費の赤字と言われるものは何ぼ出るのですか、金額で……。
  162. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 三十二年十二月におきます赤字が二千三百二十六万円になるのではないかと、かように推定しております。
  163. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうしますと、三十三年度予算の中で、今申し上げた一億七千なにがしというのを三十二年度の一億四千なにがしというものに比較してみましても、これはまた、この予算じゃ、三十三年度予算というものははるかに不足をすると思うのですね。それがわかっておって、どうしてこういうものになるのか。
  164. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいまの問題につきましては、三十三年度の予算を組むに当りましては、この支出の見込みに対処いたしまして、負担金の方も相当程度引き上げるという措置を講ずるものとして収入の方を考えておる次第でございます。
  165. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで、けい肺審議会には局長は出られるわけでしょう。一応、先ほど委員長のお話もありましたし、追って適当な機会に、審議会の方の関係者に直接あれして状況を伺いたいのですが、局長はお出になっておるから、一応わかると思う。ですから、局長の今のお手元でわかる範囲の審議会の問題点や、審議経過等について、お聞かせを願っておきたい。
  166. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) けい肺審議会につきましては、これは実は、さっき大臣から答弁もございましたが、昨年の実績を見てみますると、ほとんど開催がなかったわけでございます。それは、昨年の春以来、会長の勝木先生が外遊をされまして、また、労働者委員も、急に国際会議で出張されるというような事態が起りまして、秋までは、その活動状況はきわめて不活発であったと、率直に申しまして、そのような状況であったわけであります。そこで、昨年の暮れ以降におきまして、委員の方もみな帰ってこられまして、そろわれた状況でございますので、昨年の暮れ以来は、相当活発に会議を開いておられるのでございますが、昨年の暮れから今年の現在に至りますまでに、毎月会議を開催しておられます。それから、ついこの四、五日前にも会議を開いたわけでございまするが、問題になっております配置転換の給付の問題、それから就労施設の問題、そのような問題につきましては、小委員会を持つことといたしまして、その小委員会は、近く開催することになっております。この小委員会におきまして、これはもとより、労、使、中立三者構成でありますから、いろいろな問題点が出ますし、また、いろいろ意見の食い違うところもあろうと思いまするけれども、私といたしましては、このけい肺審議会の審議につきまして、われわれの方としても、この審議がなるべくすみやかに進みまするように、御協力して参りたいと考えておる次第でございます。
  167. 山本經勝

    ○山本經勝君 先ほどの話に戻って大へん申しわけございませんが、昨年は開催していないという、開催せぬなら、これは話にならぬと思うのですね。進むはずがない。しかし、昨年の当委員会並びに予算委員会等でも質疑を申し上げたのですが、その際に、委員会をやっているので、しかも問題点について歩み寄りが次第に進行しておるというふうに述べられて、そのことは全くいいかげんな報告であった。あるいは答弁であった、こういうことになってくるのですが、この外遊その他のいろいろな事情があったことは一応わかりますが、その期間を除いて、月に一回程度会議を持っておるというようなことでは、これはおそらく、またことし一ばいかかっても、結論が出ないだろうというような心配があるのですが、これは、たとえば、予算面を見ますと、けい肺対策審議会費として、六十四万四千円という予算が組んである。この程度の金では、会議は持てぬというのがほんとうだろうと思う。月に一回ずつやっても、年間十二回。そうしますと、一方けい肺患者はどんどん出てくる。しかも、死亡も逐次増加しつつある。こういう状態であります。ですから、これは、もう少し拍車をかけて審議会をやってもらわなければならぬ。大臣にも御要望を申し上げておるのですが、慎重にやるということはやむを得ぬといたしましても、しかし、開催の期日が月に一回の程度であっては、これは三者構成でありますし、事務的にも困難だろうと思う。もう少し回数を多くしてもらわなければいかぬのではないかと思います。が、そこら辺、局長はどういうふうに考えておられますか。
  168. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 開催の点につきましては、委員会あるいは委員会が終りましてあとの運営相談する会議におきましても、労、使、中立話し合っていただきまして、このような速度で進んでいこうというようなことに、一応審議会としてはなっておる次第でございます。もとより、これは総会でございまして、その間に事実上の連絡というようなことも多々あることでございまするから、私といたしましては、この審議会において審議がなるべくすみやかに進みますことを期待しておる次第でございます。
  169. 山本經勝

    ○山本經勝君 局長にもう一つお伺いしておきたいのですが、先ほどのお話ですと、つまり療養期間が切れて出た人に、社会保険の適用あるいは生活保護法の適用による援護の措置は講じ得るし、講じておると言われるのですが、そうしますと、先ほどお話の、いわゆる予後の措置は実態を目下調査中であると、たとえば、社会保険の立場から、あるいは生活保護法の適用によるというようなことは、具体的に私は出てくると思うのですが、それらのものの現在において対象になっておる人人は、何名くらいありますか。いわゆる療養期間が切れて、社会保険もしくは生活保護法の適用によって援護を受けておる人々ですね。
  170. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいまその点、資料を持って参りませんでしたので、後刻取りそろえまして、資料として差し上げたいと思います。
  171. 有馬英二

    ○有馬英二君 先ほど来、いろいろ山本委員から御質問があったので、私の聞きたいと思ったことはだいぶ明らかになりました。ただ、先ほど第一から第四までの症状に対する患者の数などをお話しになったのですが、これで見ると、患者数が非常に多いのですが、予算の上においては、ここに書いてあるのでは、給付の対象が九百五十四名しか書いてない。それからせき髄損傷患者が三百五十一人、配置転換給付が七十五人と、予算面に計上されたのは非常に少いように思うのですが、いかがでしょうか。
  172. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これは、療養を必要といたします第四症度の患者の来年度の見込みをとったのでございまして、昭和三十一年度におきましては、診断の結果第四症度になりましたのが七百六十名という数字でございます。これに対しまして、来年度の予算におきましては、けい肺患者九百五十四名というものを支給対象の人数として予定しておるわけでございます。
  173. 有馬英二

    ○有馬英二君 そこで、配置転換が七十五人と書いてあるのですが、私ども考えておるのは、第二症、第三症というような患者が、もうすでに配置転換を要するような症状を呈しておるのではないかと私は思うのですが、それに比較して、こっちの方で七十五人しか配置転換を見込んでないというのは、どういうのでしょうか。
  174. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これは、昭和三十二年度の十二月末現在におきまして、作業転換の勧告を行いました者の数が五十四名でございます。これらの数字を基礎といたしまして、一応明年度におきましては、七十五人程度の方に配置転換の勧告を行うという見込みを立てたわけでございます。
  175. 有馬英二

    ○有馬英二君 何か、けい肺の患者がこういう工合に年々ふえるというのは、それに対する原因とか、そういうことに対して、労働省はどういう工合にお考えになっているか。
  176. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これにつきましては、一つには、対象労働者数が最近の一般の雇用労働者数の増大に伴って増加しているという点があげられるかと思います。それから、第二点といたしましては、健康診断の励行に伴いまして、これによるけい肺の罹患者の発見が促進されておる。このような点も考えられると思っております。
  177. 有馬英二

    ○有馬英二君 大体患者がふえるということは、たとえば、結核の患者にしましても、ガンの患者にしても、やはり健康診断とか、診察を受ける患者が多くなる。あるいは診断の技術が進むというようなことから、多くなるのは当然のように私ども考えますが、一面、発塵作業に対する防塵の何か工夫が足りないのではないかというような気がいたしますが、その点はいかがでしょう。
  178. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点は、ごもっともな御意見でございますが、われわれといたしましては、やはりけい肺の問題につきましては、罹患してから後の事後措置、これもきわめて大事だと思うのでございますが、それより前に、この粉塵対策と申しまするか、このような予防措置がきわめて必要であるという工合に考えておるわけでございます。そこで、われわれの方といたしましては、けい肺患者の発生するおそれのある粉塵の作業につきまして、最近通達を出しまして、指導監督いたしておるわけでございますが、その内容といたしましては、粉塵作業について、けい肺患者の発生するおそれのあるものにつきましては、労働基準法上の有害業務という工合に解釈いたしまして、就業制限の措置、それから施設の改善に関しまする措置、それから、ただいまお話のありました、粉塵マスク等の保護具の活用に関する措置、それから保健施設の整備に関する措置と、それから基準法に基く健康診断の励行と、このようなことを実施させておるわけでございます。それから、一般の粉塵作業に対しましては、これは、粉塵を排出いたしまする局所排出装置につきまして、実は労働衛生関係の学者にも助成金を出しまして、基本的研究を願っておったのでありまするが、最近その研究の成果の一部が実ったわけでございまして、これらを採用いたしまして、指導措置といたしまして、その結果を各事業場にもお示しして、できる場合にはやってもらう。こういうようなことも考えておるわけでございます。以上のようないろいろな措置を併用いたしまして、このけい肺の発生に対します予防措置をさらに充実さしていきたいと考えておるわけでございます。
  179. 有馬英二

    ○有馬英二君 ここにお示しになった予算書には、けい肺対策審議会及び粉塵環境改善指導費と書いて、これで六十四万四千ですか、それだけしか計上されておりませんが、このうち環境改善費はどれくらいに当りますか、粉塵一環境改善ですね。
  180. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 環境改善費が四十五万、審議会が約二十万程度でございます。
  181. 有馬英二

    ○有馬英二君 これは、どれくらいな人数に対する、あるいはその環境に対する費用の見積りでありますか。あまりに少いように私は思うのですが、その点いかがでしょう。
  182. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、不十分だとは存じますが、われわれとしては、予算の範囲内で、できるだけの努力をして参りたいと思っております。
  183. 有馬英二

    ○有馬英二君 それから、労働省は直接ではありませんけれども、労災病院が各地に増設せられて、新しく次々と最新式の病院が建っておるのですが、そういう病院へ行ってみると、どうも真の労災患者——労務者特にそのけい肺あるいはせき髄損傷というような患者ばかりでなしに、一般市民の患者がどうもどんどんふえていくような傾向があるらしい。これは、一般市民も、だんだん進歩した治療法を受けるというようなことで、もう一つには、新しい施設なものですから、そこへ診察を受けにくいということであるらしいのでありますが、これは、あるいはその病院の経営方針が間違っておるのではないかと、私ども多少考える。というのは、一般市民病院あるいは診療所から、だいぶ苦情が出ておる。労災病院が一般の患者を取り扱っておる。山の患者ばかりでなく、町の患者が非常にたくさん入院しておるのではないかというような非難をちょいちょい私ども聞くのでありますが、これは、労災病院経営の方針に何か誤まりがあるのではないか。やたらに患者を吸収して、病院の成績を上げればいいというようなことから、そんなようなことになるのではないかというような感じがするのでありますが、そういう点については、労働省ではどういう工合に監督しておられますか。
  184. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 労災病院の業務につきましては、労働福祉事業団が最近は運営しておられるようでありますが、その大体の実績を見ておりますと、最近におきまして、患者の内容は、労災保険によるものが約六〇%、それから、健康保険その他の社会保険の患者が三五%程度、残りの五%程度が他の外来というような内訳になっております。この点につきましては、なかなかむずかしい問題もございまして、特にその地域におきまして、他に適当な社会保険の病院がない。労災保険の病院が、最もその施設が完備しておるような場合もございます。こういう面につきましては、厚生省とわれわれの方とよく連絡をとりまして、お互いに彼此相融通して、療養の円滑化をはかっていくという方針で進んで参りたいと思います。ただ、この点につきましては、あくまでも労災病院はもとより労災患者が主体でございますので、その本義が失われるようなことのないように、われわれとしては、福祉事業団等を監督いたしまして、十分配慮いたす考えであります。
  185. 山本經勝

    ○山本經勝君 今のけい肺に関する療養なんですが、現在では、鬼怒川一カ所にけい肺病院というのがあるということなんですね。これはもっと、いろいろな状況考えますというと、労災病院等で療養はしておりますが、やはり専門の医者あるいは医療施設といいますか、そういうものが必要なんで、やはり主要なけい肺患者が発生する地域、そういうところに建設をする必要があろうと思いますが、そういうことについては、局長はどう考えておりますか。
  186. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) その点につきましては、御趣旨には大体同感でございます。そこで、現在でも、鬼怒川けい肺病院のほかに、労災病院の中のブロックの大病院につきましては、大体五十ベッド程度のけい肺の収容施設を付置いたしておるわけでございますが、そのほかに、一般方針といたしましても、実は労災病院は、最近、この数年ぐらい前までは、各所に新設がきわめて多く、その内容の充実という点がややおろそかになるきらいがあったわけでありまして、この数年は、一般の新設はしないという大体の方針で来ておるわけでありますが、特にけい肺患者が多発いたしまする、たとえば名古屋の郊外におきまして、けい肺の分院を、中部労災病院の分院として設置する準備に着手するため、本年度から予算も認められたわけでございまして、けい肺の問題につきましては、特に一般とは違った見方を持ちまして、このけい肺病院の充実につきましても、われわれは努力しておるつもりでございます。
  187. 山本經勝

    ○山本經勝君 これは、委員長の方に要望ですが、先ほど局長の方からもお話しがありましたように、私も、昨日も実は直接事務当局にお目にかかって、資料の提出方をお願いした。ところが、その資料について、考え方の食い違いがあったようです。それは、本日の委員会に、提出すべき資料を作ってほしいということを申し上げたつもりであったのですが、遺憾ながらそうでなくて受けとった方は、きょう私が質問する要点について、あらかじめ局長が勉強をされるためにその準備をされた、こういうことのようです。ですから、これはやはり具体的な、数字のしっかりした資料に基いて、慎重に検討する必要があると思う。ですから、先ほどの委員長の御意見もありましたし、適当な機会にこの委員会を開催して、そうして本件を取り上げてもらい、そこで参考人等も呼んで、十分意見を徴した上で、資料に基いて検討するということにしたいと思います。その際に、なお質疑が幾多あると思いますので、本日は、この程度で私の質問は打ち切りたい。かように考えます。
  188. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいまの山本委員の御要望につきましては、理事会にお諮りいたしまして、そうして決定いたすことにいたします。
  189. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 今、労災病院はもうあまり作らない、内容を充実しようというお話、これは、前にも承わっております。一般の療養機関との間に紛糾を来たすようなことがあるから、お作りにならないということも前にお言いになったのですが、けい肺病院については、お作りになるわけですか、専門の。
  190. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいま申し上げましたのは、中部労災の分院を設置する予算になっておりますので、なぜこれだけ特例的に認めたかという点について、私は御説明申し上げたわけでございまして、けい肺病院は、これは一般の方針と違って、どんどん作る、こういうことではございません。この点につきましては、よく厚生省、その他ともお打ち合せをいたしまして、考えていきたいと思っております。
  191. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 特例としてそういうことをおやりになった、そういうように承知してよろしゅございますか。  ちょっと私伺うのですが、先ほど、三十一年度九十三名、三十二年度十月現在で七十四名、こういうけい肺の死亡者がある。これは、一月から勘定したのですか。年度で勘定しているのですか。どっちなんですか。
  192. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 年度でございます。ただし、三十二年度の七十四名は十月末まででございます。
  193. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 あまりふえるという見込みはないわけなんですか。
  194. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 三十二年度につきましては、三十二年の四月から十月末までのものでございますので、三十二年度終りまで推定いたしますると、やはり多少ふえるのではないかと考えております。
  195. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 この死亡年令は、どんな数字になっておりますか。
  196. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点は、後刻調べまして、資料を提出いたしたいと思います。
  197. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 患者の年令別はおわかりでございますか。
  198. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これは、目下集計しておりますので、それができました上で御報告いたします。
  199. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 健康診断をおやりになるのか。一昨年と昨年では、数がよほど減っておるようなんですが、これはどういうわけですか。
  200. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これにつきましては、三年間でこの対象の労働者約三十四万人と見込んでおりまするが、これを完了するということになっておりまして、それで、三十年度から始めまして三十一年度、三十二年度は、三十二年中に残りを完了した。従って、この二年度のうち、三十一年度におきまして最も主力が注がれたわけであります。三十二年度は残りの分になったわけでございます。
  201. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 この健康診断というものは、三十二万という人間を健康診断すれば、そのあとは健康診断をしないでいいのでございますか。
  202. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これにつきましては、けい肺保護法の定めるところによりまして、その後は、民間の事業者が義務を負うことになります。三年間に一回は精密直接検査を行う、こういうことになります。
  203. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 民間の健康診断というものは、私よく知りませんけれども相当政府がやっておられるように、精密であり、なおかつ、非常にたくさん行われるのですか、どうでございますか。
  204. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これにつきましては、基準を設けまして、国と同一方法、同一基準の健康診断をやっていただくことになっております。
  205. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 資料を実はお願いいたしたいと思いますが、従来の毎年の民間の健康診断の数と、それから、患者の発見率、要するに、早期診断、早期治療がこの病気の治療の根本であり、また予防の根本じゃなかろうかと思うのでありまして先ほど有馬先生の言われたように、健康診断を徹底的にやれば、もっと患者が出てくるのじゃなかろうか。もしいいかげんなことをやっておいたならば、患者はふえるばかりであるのじゃなかろうか。これは、結核と同じような筋合いのものじゃなかろうか。ことに、診断技術も発達して参りますれば、あるいは従来は非常に少なかった実態の患者をこのごろの医学の進歩によって発見すれば、相当多いのじゃなかろうか、こういうようなところから、やはり予防治療というものに対して、私はいま少しく徹底してもらわなくちゃいけないのじゃなかろうか、こういうように考えておるのでございます。  私はこれで……。
  206. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 最後に、私から一点だけ質問を申し上げたいと思います。  基本的な考え方につきまして、局長にお尋ねいたしたいと思うのですが、三十二年の十月末でこの特別立法の保護が切れた人が合計百一名、現在特別保護法で治療を受けておる人が八百十七名、そうすれば、これは、毎月毎月切れていく人は多いはずでございます。国会が開かれておらないときの応急の処置として、そういう人に対して社会保険なり生活保護を適用されるということはわかります。しかし、数がふえることがわかっておる今日、ふえることが現実である今日、職業病で、職業で倒れた人を生活保護で救うというような考え方が、これが正しいのであるかどうか。ほんとう責任を感じ、ほんとうにその病気にかかった人々のことを思う場合に、せき髄が折れて、一歩も歩くことができない。そういう人たちを生活保護で救うというようなことであったらば、基準局の対策はまるっきりなっておらない。私はそういう考え方を持っておる。とするならば、幸い今日国会が開かれておるならば、この特別保護法が切れて、現在百一名の人が放り出された。またこれは、年々歳々ふえるばかりである。どうするかという対策がなければならないと思う。それを国会のこの委員会の席上で、生活保護法で助ける、社会保障、社会保険制度で拾う、こういうことは、全く職業病に対する認識と熱意がないと私は思うのですが、その点、局長はどういうお考えで法案に対する考え方を出されなかったか、これを一点お伺いをしておきます。
  207. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいま委員長のお話しにありますように、けい肺罹患者で療養期間が切れておる。そのために、非常にお気の毒な事情にあるという方があるわけでございまして、これにつきましては、もとより私ども、十分なる誠意をもってこの対策に当らなければならないと思っておるわけでございます。ただ、現状におきましては、この点は、われわれはけい肺審議会等にも十分御審議をお願いをしたいと思っておるわけでございまするが、負担金の問題あるいはそのほかの問題がからみまして、その点もからみ合して、慎重に検討いたさなければならないわけでございます。とりあえず応急措置といたしましては、真にお気の毒な事情にある方につきましては、この労災保険の保険施設費に若干のゆとりも持っておりまするので、これ等の活用によりまして、実際療養期間が切れて、しかも療養を必要としてお気の毒な事情にあるという方につきましては、この保険施設の活用によってめんどうを見ていく。このようなことにいたしたい。法案改正の問題につきましては、けい肺審議会その他の御意見等を参酌いたしながら、私どもも十分に今後検討して参りたい、こう考える次第でございます。
  208. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいまの御説明で、もう一点疑念に思いますのは、この法案を作ったときは、無から有になしております。資金の問題云々と言われますが、その当時は、まるっきり無から有を生んでおる。ということは、まずこういう人を救うべきであるというのが先決であったはずだ。できてみたところが、審議会にすべてを転嫁されて、審議会に対しては、こういうところを改正したいのだということを提案されて、審議会が審議するならば、私はわかります。ところが、何ら改正する意思がなくて、審議会の意見をお待ちになっておるということは、これに対する熱意がないと私は断ぜざるを得ない。そこで、この問題につきましては、先ほど山本委員から意見も出ておりますように、審議会に対して、基準局がどういう態度で臨んでおられるのか。基準局そのものが、口では法改正を言っておられるけれども、その熱意があるならば、おそらくそういう態度をとっておられると思う。そうでないとするならば、基準局そのものがこれに対する熱意が全くないと、私はかように思いますので、参考人でもおいでになりましたときに、十分各委員の方から御質問、御審議を願うことにいたしまして、本日は、本問題に対する質疑は、この程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  209. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三分散会