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政府委員(大澤
一郎君) ただいま会計検査院から御報告がございました事実は、御
指摘の
通りでございまして、まことに大きな国損を生じまして申しわけなく、遺憾のきわみに存じておる次第でございます。
本件のかような犯行が長期にわたって容易に行われました原因は、その直接の監査に当ります供託
課長がきわめて事務に不なれな上、事務に対する監督が行き届きませんで、一切の事務をこの清水保夫にまかしたというような、きわめて遺憾な事態がございまして、その結果かような犯行を重ねられた次第でございます。なおまた、発覚の端緒といたしましては、この供託課は供託
課長のほか、この清水及び女の雇の三名の小さな課でございます。この女の職員が清水の挙動に不審を感じまして、
課長の不在中に出納官吏の印箱のそばに行って何かいじっておるというような変なそぶりを見まして、
局長に報告いたしまして、
局長が直ちに調査いたしました結果、この犯罪を犯人が自供いたしましたので、直ちに検察庁に自首させまして、以来検察庁に身柄を拘束の上捜査の結果、本件犯行が明らかになった次第でございます。直接の責任者である供託
課長が監督をいたさなかったという結果にほかならぬので、まことに遺憾に存ずる次第でございます。特に、本件の犯行が
昭和三十年の四月から三十一年の十二月まで、約一年半の長きにわたって発覚しなかったという点は、ただいま申しました供託
課長の監督不行き届きのほかに、この間におきまして、直接の上司であります山形
地方法務
局長が、部内の他の
課長に命じまして、事務監査を数回実施しまして、また上級の官庁であります仙台法務局からもその間監査に参っているのでございますが、清水が現金出納簿の残高と突合いたします日本銀行の預金証明書の
金額を改ざんいたしましたり、またはなはだしきは、その証明願いを偽造いたしまして、日銀の印を偽造して、にせの日銀の帳じり残高証明書を作成いたしまして、それを監査官に提示いたしましたために、遺憾ながら監査官の方でそれが偽造であるということを見破ることができませず、ついつい間違いないものというので監査を通しておったような次第で、かような偽造につきましても、検察庁の方で処分の対象になっているのでございます。かように本人がきわめて、巧妙な方法を用いましたことと、直接の監督者である供託
課長が事務監督、またおのれの事務を十分に行わなかったというような結果、かような不祥な結果を招来いたしまして、まことに遺憾に存ぜられるのでございます。
この国損につきましては、供託
関係については、法務省
予算並びに
大蔵省の方でそれぞれ補てんの
措置をとることにいたしまして、約三百六十万円の大きな国損の結果になっているのでございます。この国損の補てんにつきましては、目下出先の山形
地方法務局で支払い命令の請求をいたしまして、債権の確保をいたしますと同時に、その清水本人の父親並びに内妻がございますが、内妻の親で任意弁済を申し出ておりますが、何分年額三万というような少額の申し出でございますので、それでもっては、なお百年もかかるというようなことで、国損の補てんがなかなか早急にはできませんので、目下債権の債務名義の確定を求めるとともに、もう少し多額の
金額を払うように交渉中でございます。
なお、この件につきまして、本人は懲役三年六カ月の刑が確定いたしまして、懲戒免職、なお、面接の上司である供託
課長につきましては、この本人の不正に領得いたしましたうちから一万円借りて費消しておる事実がございまして、この点につきましても、検察庁におきまして、供託
課長の身柄を拘束いたしまして捜査をいたしたのでございますが、本人と共謀の事実、あるいは情を知ってその金を借りたという事実が出ませんで、不起訴処分になりましたので、本人につきましては、懲戒免職の処分をとったのでございます。
なお、山形
地方法務
局長は、本件発覚後退職の申し出がございました。山形
地方法務
局長につきましては、重大な過失あるいは故意ということが認められませんので、本人につきましては、その願いをいれまして退職させましたので、懲戒処分にはいたさなかったわけでございます。
なお、かような本件の
事故を契機といたしまして、今後再びかような
事故が起りませんように、われわれといたしまして、民事
局長と連名で、当該
地方法務局のみならず、全国の
地方法務局に対しまして、かような保管金の取扱いは当然供託
課長がみずからやらなければならぬことになっているのに、それが行われていなかったということからかようなことになったので、必ずみずから行い、小切手帳及び出納官吏の印の保管を厳重にするように、また監督者が保管金の残高の照会をする場合に、みずから必ず行うように、なおまた日銀から残高証明をとる場合は、必ず監査官みずからが日銀から受け取って、改ざんあるいは変造のおそれのないように、またやむを得ず使をしてとらしめた場合には、直ちに電話をもって日銀にその事実を確認するように、今後励行するよう通知いたしまして、その励行をはかっているわけでございます。
なおまた、本件の犯罪の態様からいいまして、書き損じ等の名義で——小切手は大体年々進行番号で進んでいるのでございます。その進行番号に入れますために、現在使っている小切手帳の番号を書き損じの欠番といたしまして、その欠番を利用いたしまして、この不正の小切手を出しておりますので、今後かような欠番を生じた場合には、直ちに日銀に連絡をして、かような不正な小切手が支払われないようにいたすことにいたしまして、
事故の絶滅を期している次第でございます。大体以上事件の概要を御
説明申し上げました。