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1958-04-02 第28回国会 参議院 決算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月二日(水曜日)    午後二時二十一分開会   —————————————   委員の異動 四月一日委員森田豊壽君及び松岡平市 君辞任につき、その補欠として大谷贇 雄君及び稲浦鹿藏君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高野 一夫君    理事            仲原 善一君            平島 敏夫君            大矢  正君    委員            石井  桂君            稲浦 鹿藏君            大谷 贇雄君            勝俣  稔君            永野  護君            武藤 常介君            吉江 勝保君            東   隆君            島   清君            鈴木  一君            鈴木  壽君            相馬 助治君            岩間 正男君   国務大臣    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    運 輸 大 臣 中村三之丞君    郵 政 大 臣 田中 角榮君   政府委員    大蔵政務次官  白井  勇君    大蔵省主計局次    長       佐藤 一郎君    大蔵省主計局司    計課長     柳澤 英藏君    郵政省電気通信    監理官     松田 英一君    郵政省電気通信    監理官     岩田 敏男君    郵政省監察局長 荒巻伊勢雄君    郵政省経理局長 西村 尚治君         —————    会計検査院長  加藤  進君   事務局側    常任委員会専門    員       池田 修蔵君   説明員    日本専売公社副    総裁      石田 吉男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十一年度一般会計歳入歳出決  算(内閣提出) ○昭和三十一年度特別会計歳入歳出決  算(内閣提出) ○昭和三十一年度国税収納金整理資金  受払計算書内閣提出) ○昭和三十一年度政府関係機関決算書  (内閣提出)   —————————————
  2. 高野一夫

    委員長高野一夫君) ただいまから本日の決算委員会を開会いたします。  まず委員変更報告申し上げます。四月一日付をもって森田豊壽君、松岡平市君が辞任され、大谷贇雄君稲浦鹿藏君が補欠選任されました。   —————————————
  3. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 昭和三十一年度一般会計歳入歳出決算昭和三十一年度特別会計歳入歳出決算昭和三十一年度国税収納金整理資金受払計算書昭和三十一年度政府関係機関決算書を議題といたします。  本日は、概要説明を聴取いたしました後に、総括質疑を行います。まず大蔵大臣から御説明を願います。
  4. 白井勇

    政府委員白井勇君) 昭和三十一年度一般会計歳入歳出決算、同特別会計歳入歳出決算同国税収納金整理資金受払計算書及び同政府関係機関決算書会計検査院検査報告とともに、本国会に提出いたしましたので、その大要を御説明申し上げます。  昭和三十一年度予算執行につきましては、予算の効率的な使用経理の適正な運営に極力意を用いて参ったのでありますが、なお、会計検査院から不当事項につきましては八百六十五件、是正事項につきましては二百六十三件に上る御指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。これにつきましては、今後一そう経理の改善に努力を傾注いたしたい所存であります。  以下決算内容を数字をあげて御説明申し上げます。まず、一般会計におきましては、歳入決算額は一兆二千三百二十五億円余、歳出決算額は一兆六百九十二億円余でありまして、歳入歳出差し引きますと、千六百三十三億円余の剰余を生ずる計算であります。この剰余金から昭和三十二年度に繰り越しました歳出財源に充てなければならない金額四百四十億円余、及び前年度までの剰余金使用残額百九十一億円余を差し引きますと、千一億円余が昭和三十一年度新たに生じた純剰余金となるのであります。  なお、右の剰余金千六百三十三億円余は、財政法第四十一条の規定によりまして、翌年度すなわち昭和三十二年度歳入繰り入れ済みであります。しかしてそのうち昭和三十一年度新たに生じました純剰余金千一億円余から予算決算及び会計令規定によりまして、地方交付税の算定の基礎となる所得税等昭和三十一年度における収入額の一定の割合に相当する金額が、その予定をこえる額、揮発油税昭和三十一年度における収入額が、同年度道路整備費歳出決算額をこえる額及び地方公共団体負担金昭和三十年度事業にかかるものの額のうち昭和三十一年度内に収納された額の合計額百二十九億円余を控除いたしました残額八百七十二億円余の二分の一を下らない額に相当しまする金額につきましては、財政法第六条第一項の規定によりまして、公債または借入金償還財源に充てられるものであります。  以上の決算額予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額一兆八百九十六億円余に対しまして、千四百二十八億円余の増加となるのでありますが、このうちには昭和三十年度剰余金受け入れ予算額に比べまして五百六十九億円余を増加しておりますので、これを差し引きますと、純然たる昭和三十一年度歳入増加額は八百五十八億円余となるのであります。その内訳は租税及び印紙収入における増加額七百四億円余、専売納付金における増加額二十億円余、官業益金及官業収入における減少額二億円余、政府資産整理収入における増加額三十億円余、雑収入における増加額百五億円余となっております。一方歳出につきましては、予算額一兆八百九十六億円余に昭和三十年度一般会計からの繰越額三百七十八億円余を加えました予算現額一兆千二百七十四億余円から支出済み額一兆六百九十二億円余を差し引きますと、その差額は五百八十二億円余でありまして、そのうち翌年度に繰り越しました額は前述通り四百四十億円余、不用額は百四十二億円余となっております。  右の翌年度への繰越額のうち、財政法第十四条の三第一項の規定により、あらかじめ、国会の議決を経まして、これに基いて翌年度へ繰り越しました金額は三百九十一億円余でありまして、その内訳のおもなものは、防衛庁及び防衛庁施設費につきまして、調達計画の調整、試作研究及び規格の決定不測日数を要しましたため、器材調達及び製作が年度内に完了しなかったもの、艦船設計及び搭載武器の供与に不測日数を要したため艦船の建造が年度内に完了しなかったもの、及び施設用地選定施設に対しまする補償の処理及び返還施設接収解除不測日数を要したため工事年度内に完了しなかったもの、防衛支出金につきまして、接収解除及び補償額決定不測日数を要しましたこと、気象関係により工事施行不測日数を要したこと等のため工事年度内に完了しなかったもの、道路事業費及び住宅施設費につきまして、施設用地選定及び補償額決定不測日数を要したこと、資材調達遅延設計変更及び気象関係により工事施行不測日数を要したこと等のため工事年度内に完了しなかったものであります。  財政法第四十三条ただし書の規定により避けがたい事故のため翌年度へ繰り越しました金額は四十二億円余でありまして、その内訳のおもなものは、防衛庁施設費でありまして、補償額決定等不測日数を要したこと、資材調達遅延及び設計変更により工事施行不測日数を要したこと等のための工事年度内に完了しなかったものであります。  財政法第四十三条の二第一項の規定により継続費年割額を繰り越しました金額は五億円余でありまして、その内訳のおもなものは、雄物川総合開発事業費及び利根川外二河川総合開発事業費でありまして、設計遅延により工事の着工が遅れましたこと、気象関係により工事施行不測日数を要しましたこと等のため工事年度内に完了しなかったものであります。  次に不用額でありますが、その内訳のおもなものは、防衛庁器材費等につきまして、部隊編成及び教育訓練計画変更により燃料等を要することが少かったことにより不用となったもの五十三億円余、労働本省失業対策事業費補助につきまして、失業対策事業への吸収人員予定より少かったので、失業対策事業費補助金を要することが少かったことにより不用となったもの十三億円余であります。  次に予備費でありますが、昭和三十一年度一般会計における予備費予算額は八十億円でありますが、その使用総額は七十九億円余であります。そのうち昭和三十一年十二月までの使用額五十六億円余につきましては、第二十六回国会におきまして御承諾をいただいております。また、昭和三十二年一月から同年三月までの使用額二十三億円余につきましては、本国会に別途提出いたします予備費使用承諾案について御審議いただきますので、その費途及び金額につきましては、説明を省略させていただきます。  次に一般会計国庫債務負担行為について申し上げます。財政法第十五条第一項の規定に基く国庫債務負担行為権能額は二百三億円余でありますが、このうち実際に負担いたしました債務額は百二十四億円余でありますので、これに既往年度からの繰越債務額五十五億円余を加え、昭和三十一年度中に支出その他の事由によって債務が消滅いたしました額十七億円余を差し引きました金額百六十三億円余が翌年度以降に繰り越されたこととなるのであります。  財政法第十五条第二項の規定に基く国庫債務負担行為権能額は三十億円でありますが、このうち実際に負担いたしました債務額は九億四千万円余でありますので、これに既往年度からの繰越債務額四億三千万円余を加え、昭和三十一年度中に支出その他の事由によって債務が消滅いたしました額四億九千万円余を差し引きました金額八億八千万円余が翌年度以降に繰り越されたこととなります。  次に昭和三十一年度特別会計決算でありますが、これにつきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと思います。なお、同年度における特別会計の数は三十七でありまして、これら特別会計歳入決算総額は二兆二千三百十四億日余、歳出決算総額は二兆七十四億円余であります。  次に昭和三十一年度国税収納金整理資金決算でありますが、この資金への収納済額は九千六百十五億円余でありまして、この資金からの支払い命令済み額及び歳入への組み入れ額は九千六百一億円余でありますので、十三億円余が昭和三十一年度末の資金残額となるのであります。これは主として国税にかかわる還付金支払い決定済み支払命令未済のものであります。  なお、この資金からの支払い命令済額及び歳入への組み入れ額のおもなものは還付金等支払い命令済額百十五億円余、還付加算金等支払い命令済額十億日余、一般会計歳入への組み入れ額九千二百五十六億円余、交付税及び譲与税配付金特別会計歳入への組み入れ額二百十七億円余であります。  次に昭和三十一年度政府関係機関決算でありますが、日本専売公社日本国有鉄道及び日本電信電話公社決算内容につきましては、別途それぞれの主務大臣から御説明申し上げる予定であります。また、自余の政府関係機関決算内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  以上、昭和三十一年度一般会計特別会計国税収納金整理資金及び政府関係機関決算につきまして、その概略を御説明申し上げた次第であります。  次に昭和三十一年度日本専売公社決算につきまして申し上げます。  会計検査院検査を経た日本専売公社昭和三十一年度決算書を本国会に提出いたしましたので、その大要を御説明申し上げます。  まず、日本専売公社昭和三十一年度決算について御説明いたします。昭和三十一年度における収入済額は三千四百二十四億八千四百万円余、支出済額は千四百三十一億二千三百万円余でありまして、収入支出を超過すること九百九十三億六千百万円余であります。また、昭和三十一年度の総収益三千四百二十六億三千八百万円余から総損失千二百六十九億四千九百万円余を控除した事業益金千百五十六億八千九百万円余から、日本専売公社法第四十三条の十三第二項の規定により積み立てる固定資産及び無形資産増加額十四億七千七百万円余を控除して算出した専売納付金は千百四十二億一千百万円余でありますが、これは、その予算額千百二十四億六千百万円余と比べますと、十七億五千万円余の増加となっております。以下、これを収入支出の部に分けて御説明いたします。まず、収入の部におきましては、収入済額は二千四百二十四億八千四百万日余でありますが、これは、収入予算額二千四百二十四億五千万円余に対して、九億六千六百万円余の減少となっております。なお、この減少は、たばこ事業収入におきまして、製造たばこ及び葉タバコ売払代予定に達しなかった等のため、五億円余を減少し、塩事業におきまして、塩の売渡高予定に達しなかった等のため、二億八千四百万円余を減少したこと等によるものであります。  一方、支出の部におきましては、支出予算現額は、支出予算額千四百十億四千七百万円余に前年度繰越額五十三億一千万円余を加えた千四百六十三億五千七百万円余でありますが、支出済額は千四百三十一億二千三百万月余でありますので、差引三十二億三千四百万円余の差額を生じました。この差額のうち、翌年度へ繰り越しました額は二十九億六千四百万円余、不用となった額は二億七千万円余であります。  次に、昭和三十一年度において、日本専売公社法第四十三条の二の規定によりまして予備費使用した額は、葉タバコ購入費支払いのため十三億円であります。また、日本専売公社法第四十三条の二の規定により予算を流用した経費の額は、共葉巻臨時奨励金支払いのため、葉たばこ購入費から、共葉巻臨時奨励金へ流用した額九千八百万円余、日本専売公社法第四十三条の二十一第二項の規定により職員に対し特別の給与支給のため、材料品費から、業績賞与へ流用した額一億六千八百万円、合計二億六千六百万円余であります。  次に、昭和三十一年度における日本専売公社債務に関する計算について御説明いたします。日本専売公社法第三十五条第一項の規定に基く昭和三十一年度債務負担行為限度額は、塩事業費におきまして、五十三億円でありますが、実際に負担した債務額は、五十一億五千三百万円余であります。  次に、日本専売公社法第三十五条第二項の規定に基く昭和三十一年度債務負担行為限度額は一億円でありますが、実際に負担した債務額はありません。また、日本専売公社法第四十三条の十四の規定に基く昭和三十一年度短期借入金最高限度額は五百七十億円でありますが、実際に借り入れた額は四百億円であり、これは昭和三十一年度内に償還し、翌年度へ繰り越した債務額はありません。  なお、昭和三十一年度日本専売公社決算につきまして、会計検査院から、不当事項として指摘を受けたものはありません。  以上、昭和三十一年度における日本専売公社決算につきまして、その概略を御説明申し上げたのでありますが、詳細につきましては、さらに御質問のつど御説明申し上げたいと存じます。  何とぞ、御審議のほど、お願い申し上げる次第であります。
  5. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 次に運輸省から、昭和三十一年度日本国有鉄道決算について、概略の御説明を願います。
  6. 中村三之丞

    国務大臣中村三之丞君) 昭和三十一年度日本国有鉄道決算書会計検査院決算検査報告とともに本国会に提出いたしましたので、その大要を御説明申し上げます。  昭和三十一年度における日本国有鉄道収入は、前年度から引き続いての、わが国経済好況を反映して、輸送量が非常に増加したため、旅客、貨物収入とも予定を大巾に上回りました。一方、輸送量増加に伴う支出増加もありましたが、日本国有鉄道は、極力支出の節約に努め、経営合理化をはかりましたので、損益計算上は百五十三億円余の赤字を生じましたが、前年度に比べて三十億円余も赤字減少しております。以下決算内容勘定別に御説明申し上げます。  損益勘定における収入済額は二千八百八十億円余、支出済額は二千八百八億円余でありまして、収入支出を超過する額は約七十二億円であります。これに収入済額に含まれていない損益計算利益に属する固定資産への繰入れ等八億円余、及び支出済額に含まれているが、損益計算損失に属しない借入金等償還資金二十四億円余を加算するとともに、他方支出済額に含まれていない損益計算損失に嘱する減価償却費予算超過額二百六億円余、固定資産除却等五十一億円余を減ずると、本年度損失は、前述のように百五十三億円余となります。  以上の決算額予算と比較いたしますと、収入におきましては、予算額二千七百三十二億円余に対して約百四十八億円の増収となります。その内容は、運輸収入において約百五十七億円の増収雑収入において九億円余の減収となっております。他方支出におきましては、予算税額二千八百十二億円余から支出済額差し引きますと、その差額は約四億円で、そのほとんどが翌年度への繰越額となっております。  次に資本勘定における収入済額は六百十四億円余、支出済額は六百十三億円余でありまして、約一億円の収支差額を生じます。この差額収入予定より増加したためであります。  以上の決算額予算と比較いたしますと、収入におきましては、予算額六百十億円に対して約四億円の収入超過となります。これは、鉄道債券利用債による発行増約三億円及び資産充当による収入増加約一億円があったためであります。一方支出におきましては、予算税額六百十三億円余との差額は一千万円余に過ぎず、全額不用額となっております。  最後に、工事勘定における収入済額は五百八十六億円余、支出済額は五百八十六億円余でありまして、収支差額は三千万円余のみであります。以上の決算額予算と比較いたしますと、収入におきましては、資本勘定からの受け入れが多かったため、予算額五百八十三億円余に対しまして、約三億円の増加となります。また、支出におきましては、予算現額六百二十一億円余に対しまして約三十五億円の差額を生じます。この内容は翌年度への繰越額約三十四億円及び不用額約一億円であります。  なお、昭和三十一年度予算執行につきましては、会計検査院から不当事項十六件、不正行為一件に上る御指摘を受けましたことは、種々事情が存するとはいえ、まことに遺憾にたえないところでありまして、今後さらに綱紀粛正予算効率的運用一段努力をいたすよう指導監督する考えであります。  以上、昭和三十一年度日本国有鉄道決算につきまして、その概略を御説明申し上げたのでありますが、詳細につきましては、さらに御質問のつど御説明申し上げたいと存じます。何とぞ、御審議のほどお願いいたします。
  7. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 次に郵政省から昭和三十一年度日本電信電話公社決算について概略の御説明を願います。
  8. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昭和三十一年度日本電信電話公社決算書類会計検査院検査報告とともに、第二十八回国会に提出いたしましたが、その大要を御説明申し上げます。  昭和三十一年度における公社事業収入予定収入をかなり大幅に上回ったのでありますが、これは施設の拡充、サービス分野における企業努力と相待って、経済界好況に幸いされたためと考えられます。これに対しまして、事業支出の面におきましては、合理的、能率的な業務運営がはかられ、経費の節減をみた結果、良好な経営状態を示したのでありまして、損益計算上、二百三十五億円弱の利益金を生じたのであります。また、建設勘定支出額は、予算現額の九三%に当りまして、着々その成果を上げておりますが、かなりの未完成施設が持ち越されており、三十二年度におきまして、公社もその完成一段努力をしております。  決算内容について申し上げますと、損益勘定における事業収入決算額は一千四百十四億円余、事業支出決算額は一千百九十七億円弱でありまして、差し引き二百十八億円弱の収支差額を生ずる計算であります。このうち、百九億円弱が資本勘定へ繰り入れられまして、債務償還及び建設工事財源に充当されております。以上の決算額予算と比較いたしますと、収入におきましては、予算額一千二百九十三億円余に対して百二十一億円弱の増収となるのでありますが、その内訳電話収入において百十二億円余の増、電信収入において五億円余の増、雑収入等において三億円余の増となっております。  一方、支出におきましては、予算税額一千二百億円余から、支出済額一千百九十七億円弱を差し引きますと、その差額は四億円弱でありまして、そのほとんどが不用額となっております。  次に、建設勘定における収入決算額は六百六十九億円弱、支出決算額は六百六十四億円弱でありまして、差し引き五億円余の差額を生じたのでありますが、この差額建設工程の翌年度への繰り延べ等があったために生じたものであります。以上の決算額予算と比較いたしますと、収入におきましては、予算額五百五十五億円余に対して百十四億円弱の増加となるのでありますが、これは資本勘定よりの受け入れが多かったためで、その内訳は、減価償却引当金における増加額四十九億円弱、損益勘定収支差額受け入れにおける減少額二十四億円余、資産充当における増加額九十三億円余、設備負担金における増加額五億円弱、電話設備負担金における増加額十一億円余、電信電話債券における減少額二十億円余となっております。  支出の面におきましては、予算額五百五十五億余に前年度からの繰越額四十五億円余、予算総則第二十二条及び第二十六条に基く弾力条項の発動による使用額八十九億円余等を加えました予算現額七百十二億円弱から支出済額六百六十四億円弱を差し引きますと、その差額は四十八億円弱でありまして、このうち、建設工程の未竣工等によりまして、翌年度へ繰り越しました額は四十五億円弱、不用額は三億円余となっております。その他につきましては、公社決算書によって御了承願いたいと存じます。  なお、会計検査院から不当不正事項六件の御指摘を受けておりますが、これは件数におきましては、前年度に比し減少しておりますものの、まことに遺憾なことでございますので、公社を監督する立場にあります郵政大臣といたしましては、綱紀粛正経理事務適正化につきましても、一そう意を用いていく所存でございます。  以上、公社決算概略を申し上げたのでございますが、詳細につきましては、さらに御質問をいただきまして、お答え申し上げたいと存じます。
  9. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 次に、会計検査院から昭和三十一年度決算に関する報告概要説明を求めます。
  10. 加藤進

    会計検査院長加藤進君) 昭和三十一年度歳入歳出決算は、三十二年十月二十六日内閣から送付を受け、その検査を了して、昭和三十一年度決算検査報告とともに三十二年十二月七日内閣に同付いたしました。  昭和三十一年度一般会計決算額大蔵省説明された通りでありまして、各会計間の重複額及び前年度剰余金受け入れなどを控除して、歳入歳出の純計額を概算いたしますと、歳入二兆五千九十一億円、歳出三兆二千八百十七億円となり、前年度に比べますと、歳入において二千八百三十五億円、歳出において千百五十七億円の増加となっております。  なお、国税収納金整理資金受け払い額は、収納済額九千六百十五億余万円、支払い命令済額歳入組み入れ額の合計九千六百一億余万円であります。  政府関係機関昭和三十一年度決算額の総計は、収入九千七百七十八億余万円、支出八千三百六十六億余万円でありまして、前年度に比べますと、収入において九百九十九億余万円、支出において八百八十七億余万円の増加となっております。  ただいま申し上げました国の会計及び政府関係機関会計決算額のうち、会計検査院において、まだ検査が済んでいないものは総計百八十一億八千余万円でありまして、そのおもなものは、食料管理特別会計の食糧売り払い代で六十七億七千万円、総理府の防衛庁施設費で五十億三千余万円、同じく防衛庁で三十九億五千百余万円などであります。  会計検査の結果、経理上不当と認めた事項及び是正させた事項として、検査報告に掲記しました件数は、合計千百二十八件に上っております。三十一年度不当事項及び是正させた事項の件数が、三十年度の二千百八十五件に比べて減少いたしましたのは、租税について掲記の取扱いを変更したことによるものもありますが、主として補助金及び農業共済保険において減少したためであります。  いま、この千百二十八件について、不当経理の態様別の金額を概計いたしますと、不正行為による被害金額が七千百万円、法令または予算に違反して経理したものが三億二千八百万円、保険金の支払いが適切を欠いたもの、または保険料の徴収額が不足していたものが二億八千五百万円、補助金で交付額が適正を欠いているため、返納または減額を要するものなどが四億七千万円、災害復旧事業に対する早期検査の結果、主務省において補助金の減額を要するものが二億三千六百万円、租税収入などで徴収決定が漏れていたり、その決定額が正当額をこえていたものが三億九千三百万円、工事請負代金、物件購入代金などが高価に過ぎたり、または物件売り渡し代金などが低額に過ぎたと認めたものの差額分が二億九千九百万円、不適格品または不急不用の物件の購入など、経費が効率的に使用されなかったと認めたものが二億五千九百万円、その他が一億七千八百万円、総額二十五億二千四百万円に上っておりまして、三十年度の六十六億千三百万円に比べますと、四十億八千九百万円の減少となっております。これは、主として保険金の支払いが適切を欠いたもの、または保険料の徴収額が不足していたものにおいて三十億七千六百万円、不適格品または不急不用の物件の購入など、経費か効率的に使用されなかったと認めたものにおいて十三億円減少したためであります。しかしながら、このように不当な経理の多いことは、遺憾にたえないところでありまして、会計検査院といたしましては、不当経理の発生する根源をふさぐことに努力を傾けている次第であります。  検査の結果につきましては、租税、予算経理工事、物件、役務、保険、補助金、不正行為の各項目に分けて検査報告に記述してありますが、これらのうち、会計経理を適正に執行するについて、特に留意を要する事態として、予算の効率的使用について、また、保険及び補助金に関してその概要説明いたします。  まず、予算の効率的使用について説明いたします。経費予算が効率的に使用されないため不経済な結果となったと認められる事例は、毎年多数これを指摘して改善を求めてきたところでありますが、三十一年度におきましても、工事施行や物件の調達などにつきまして、防衛庁日本国有鉄道などにおいて依然として多数見受けられるのであります。すなわち、工事施行の実態や現地の実情、または物件の製作もしくは取引の実情や購入品の内容についての調査検討が不十分なため、過大な予定価格を推算して、工事費または購入価額の増加を来たしていると認められるものや、不経済となっているものなどが少なくありません。また、請負工事や納入物品に対する検収が不十分なため、設計や契約規格と異なる工事や物品に対して、そのまま代金を支払っている事例もなお見受けられるのであります。経費予算の効率的使用の面において、このような事態が跡を絶たないことは遺憾であります。  次に、保険について説明いたします。国が特別会計を設けて経常する各保険事業における保除金の支払いまたは保険料の徴収などにつきましては、三十年度において農林省、厚生省、労働省などの所管するものにつき、多数の遺徳な事例を指摘して、適正な処置をとるよう注意を促したところでありまして、その結果、三十一年度におきましては、改善の跡がうかがわれるものもありますが、なお、遺憾な事例は跡を絶たない状況であります。  すなわち、労働者災害補償保険、失業保険、健康保険などの保険事業におきまして、受納資格のない者に保険金を支払ったり、または、保険料算定の基礎となる資料の調査が十分でなかったため、保険料の徴収不足となっているものがあります。また、農業共済保険事業におきましては、批難の件数及び金額は前年度に比べて引当に減少しておりますが、これは、主として共済金支払いの対象となる災害が減少したことによるものでありまして、共済掛金の徴収、組合員に対する共済金の支払い、及び保険金の基礎となる被害の評価など、事業運営に関して適切を欠いているものがなお少なからず認められたことは遺憾であります。  最後に、補助金について説明いたします。補助金における批難の件数、金額減少は、災害が比較的少なかったこともその一因となっているものと認められますが、他方関係当局における補助金交付後の指導監督の強化、及び事業主体の自覚などにより、補助金の経理については漸次改善の跡が認められたのであります。補助金のうち、公共事業関係のものにつきましては、その経理が当を得ないものとして、会計検査院において毎年多数の事例を指摘してきたところでありますが、三十一年度検査の結果によりますと、事業主体において正当な自己負担をしていないため、ひいて工事施行が不十分と認められるもの、また、事業主体が補助の対象となる事業費を過大に積算して査定を受けたり、設計通り工事施行しなかったり、または災害復旧とは認められない改良工事施行しているものなどの事例が依然として少くないのは遺憾な次第であります。  また、災害復旧事業事業費査定の状況につきましては、三十二年も農林、建設、運輸各省所管の分について、工事完成前に早期検査を行いましたところ、前年に比べると、さらに改善されてきてはおりますが、なお、採択された工事のうちには、関係各省間などで二重に査定しているもの、災害に便乗して改良工事施行しようとしているもの、現地の確認が不十分なため所要量を過大に見込んでいるものなどがありましたので、これを指摘し、工事費を減額させることとなったのであります。  さらに、公共事業関係以外の補助金は、公衆衛生関係、社会福祉関係、新農山漁村建設事業関係、その他多種日にわたっているのでありますが、これらの補助金のうちには、過大な申請に基いて交付された補助金がそのままとなっていたり、市町村などが補助金を補助の目的に沿わない方法で配分したり、補助の目的以外に使用しているなど、補助の趣旨に沿った事業を実施していないものなどの不当な事例が多く見受けられるのであります。また、農業協同組合などが、農林漁業災害融資金などに対する利子補給金の交付を受ける金融機関から、低利に融資を受けながら、農林漁業者などに貸し付けないで融資の目的に反して使用していたり、災害に関係のない旧債権の回収に充てているなどの事例も少なくありません。  以上をもって概要説明を終りますが、会計検査院といたしましては、公会計における適正な経理事務執行につきまして、従来から、関係各省に対し機会あるごとに是正改善の努力を求めているのであります。その結果、漸次改善の跡が見受けられるようになって参りましたが、なお、このように不当な事例が多数見受けられますことは遺憾にたえないところでありまして、主務省及び関係者におきましては一そうの努力が望まれるところであります。
  11. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 以上をもって昭和三十一年度決算概要説明は終了いたしました。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  12. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をつけて。  それではこれから総括質疑を行います。ただいま御承知の通り一萬田大蔵大臣白井政務次官、加藤会計検査院長が御出席になっております。  順次御発言を願います。
  13. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 ただいま三十一年度決算につきまして説明をいただいたのでありますが、会計検査院検査報告指摘されておりまする不当事項を見ますと、法令違反をしたという、いわゆる違法の事項というものは比較的少い。その大部分は国費を支出するのに当って、関係者が当然しなければならぬ調査や、あるいは手続を怠っておる、粗雑な計算をした結果生じたいわゆる不経済事項というものが多いのであります。これは裏を返して言いますというと、各省等の役人が、法律や政令などは十分心得ておりながら、実際の仕事をする場合に、大切な国費を他人の金を使うような気持で十分な注意は払わぬ。こういう風潮が非常に濃厚である。こういうふうにうかがわれるのであります。非常に世論がやかましいのにもかかわらず、最近におきましても、いろいろこの大小の汚職事件が跡を継たない。こういう原因の一つは、こういう国費支出の面におけるところの取扱い方の非常な粗雑、あるいは不合理というものがあるために、こういう不正行為が行われても目立たぬというか、あるいはまた、直ちに発見されない。こういう現状がそれを助長しておるのではないか、かように考えられるのであります。そこで政府は、当委員会の警告などに対して、国庫の事務的な改善のほかに、こういうような傾向を阻止するために、どういうような方策をとっておるか、この点を一つまずもって伺いたいのであります。
  14. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 政府といたしましては、一般的にまず会計制度というようなものについても、十分の検討、改善を加え、そういうものの大きな整備もいたしてきておるわけでありますが、同時にやはり責任体制を確立していく。他面において綱紀粛正もやっていく。かようにいたしまして、この取扱者の心がまえと、同時に取扱い方法におきまして、できるだけかような間違いの生じないようなことに努めておるわけであります。具体的にどういうふうなことを政府としてやってきたか、これについては政府委員から答弁をいたさせます。
  15. 佐藤一郎

    政府委員(佐藤一郎君) 主計局といたしましては、まあ国庫大臣の立場から、予算の編成並びに執行を通じまして、常々各省の予算執行についていろいろと御注文を申し上げて、お話をいたしておるわけでございます。個々の事例といたしましては、時に検査院の指摘事項につきましては、私どもの方の決算を担当する専門の部課がございますので、各省と常に話し合いをし、その反省を怠らないようにいたしております。この会計経理の事項は、一ころから比べますると、だいぶ改善されてきておると私どもも考えておるのでありますが、しかし、これにはやはり基礎的な条件が必要でございます。やはり一番大事なことは、上の方から幾らやかましく言いましても、あるいは大蔵省が総括的な立場から、幾ら声をからして申しましても、結局その当該の事態を取り扱っておるその直接の担当者というものが、しっかりした考え方を持って事務を処理するということでなければ、なかなかその事故の跡を断たないということが一番痛感せられるのでございます。それには一つは、ただいまお話のございましたような、法令等に対して十分熟達するということが基本でございます。事故の中には法令を十分熟知しておらないために、あるいはまたさらにその下のこまかい取扱いの要領というか、方針というか、そういうようなものが十分徹底されて理解されておらないために犯す、いわゆる善意のあやまちというものも案外易いと思うのでございます。それからまた、いわゆる会計官吏としての自覚と申しますか、結局ただいま御指摘のございましたように、これは国民からちょうだいした税金であるという意識が個々の支出に当って十分反省されてない、つい大まかな考え方で事を処理するということ、これは案外個々の場合に当ってみますと、無意識のうちにいつの間にかびまんしておるということがやはり痛感されるのであります。これは個々の実行ばかりでなく、予算の編成に当っても私たち反省しなければならぬところでございますが、特に個々の事態についてそういう点が考えられるのであります。そういう点からいたしまして、結局その担当者々々々のいわゆる責任の自覚あるいは意識を向上させるということが基本でございますので、そういった面についてどういうようなことを考えるべきかということが基本になるわけであります。常々の反省というか、十分な注意ということのほかに、やはり経理の担当者の資質を改善するというような意味で研修制度といいますか、会計官吏の研修ということにできるだけ注意を注いでいきたいということを常々考えております。研修等教育ということは、短期間にすぐあしたあさってに効果はございませんが、それでも三年、四年と各省の中堅の会計官吏を私の方で研修に招いておりますが、そういったようなことが五年、六年とたちますと、案外大きな効果を生むのではないかという点が考えられます。もっとも予算執行に当りましては、いわゆる会計官吏というものは、実はもうその事柄の実体が行われてしまう、すなわち契約が行われてしまいまして、それの支出をするという結果的な行為をやることが多いのでございますから、ただ会計官吏だけではいけないのでございまして、いわゆる業務を担当しておられる方々が同時にまた会計法規をある程度よくわかっておる、あるいはその精神をよくわかっておるということが必要でございます。これはなかなか——いわば極端に申しますと、全官吏にわたる事柄でありまして、一朝一夕には望めないのでございますが、まあ私どもの考えは、各部局の中心的な人を少しでも研修することによりまして、そういう人々がまた役所に戻って、そうしてそういう人を中心にだんだんと会計経理を重視する思想を植えつけていくというようなことが大事だろうと、こう考えてやっております。また御承知のように、財政法会計法その他いわゆる責任を明らかにするべき法律体制というか、制度というか、そういうものはできるだけその確立改善に努めておるわけでございます。まあそういったようなことを中心にして個々の事態についてやる。それからまあ会計検査院を初め行政管理庁、あるいは大蔵省会計法に基きますところの監査、こういうようなこともまあ怠りなく外部からやってまりますが、なかんずくいわゆる内部監査と申しますか、特に事故の多いようなところでは、最近心がけて内部監査の充実をはかっておるようでございます。これらも検査院なり私たちもできるだけそういうアドヴァイスを申し上げております。そして事故が起る前の予防を、できるだけ万全を期するということを心がけておるような次第でございます。
  16. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 今承わっておると、それだけ十分な御注意をなさっておられれば、もう会計検査院から指摘されるようなことは、すっかり跡をなくしてしまうような感じが非常にするわけなんだが、そこで先ほどの三十一年度決算概要説明の中で、予算執行について予算の効率的な使用経理の適正な運営に極力意を用いて参った、こういうことが御報告にあるわけです。そこで、さらに具体的にこれは担当の決算の所管大臣であるところの大蔵大臣としての御処置はむろんでありまするけれども、内閣全体としての対策、また大臣として各省に対してどこまで指示しておられるか、また今内部監査の話もありましたけれども、各省部内におけるところのどういうふうな処置をしておいでになるか、その点を一つ具体的に御説明を願いたい。また今後一そう経理の改善に努力を傾注したい、こういうお話でありますが、これまたどういう改善に努力し、積極的なことをしておいでになるか、その点をこの際承わっておきたい。
  17. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいまの答弁のうちにもいろいろと出ておりますが、政府としましては、予算の最も効率的な使用、適正な経理運営につきましては、閣議でまず決定をする、そのことによりまして、各省庁に対しまして実施方を要望しておりまするが、同時にまた今も話がありましたように、会計職員の研修を強化をしまして、まず取扱い者の資質の向上をはかっていく、それから先ほども申しましたが、財政法とか会計法などを整備をいたしまして、予算執行職員がまず最も予算執行に適正を期するために、これらに関係いたしまする法令等について十分な知識と熟練というようなことに努めていく、こういうふうなことをやらしておるわけであります。またこれを受けまして、各省の内部におきましても、各省におきましてそれぞれ対策を講じております。特に問題の多い省庁におきましては、特にそうであるのであります。これらのたとえば防衛庁、農林省、運輸省などにおきまして、しからば、どういうふうに具体的にやっておるかということにつきましては、政府委員から事実に即しまして御答弁をいたさせます。
  18. 佐藤一郎

    政府委員(佐藤一郎君) ただいま大体の考え方を実は申し上げたわけでありますが、これにつきましては、昨年も特に閣議決定等をいたしまして、予算の実施については注意を喚起したわけであります。まあこれはその前年もやっておるので、できるだけ毎年閣議決定によって注意を喚起しておるようなわけでありますが、例示的に申し上げますと、たとえば特に問題の多かったようなところをとって申し上げますと、防衛庁につきまして、毎年度繰り越しが多額に上るじゃないかというようなお話がいつも出ております。それでまあこれは予算の編成の際にも考えなければならぬというので、たとえば国庫債務負担行為というものを十分にとって、同時に繰り越しというものはあまり不必要に起らないようにするという、予算の組み方を是正するような問題もございます。そういうようなことによってできるだけ処理できるものは処理したい。それから防衛庁の組織令を改正いたしまして、たとえば装備や調達につきましては、一そう重点的にスタッフの強化をはかり、毎回調達に関して問題が起りますので、そういうような機構の強化をはかると同時に、その内部における会計の監査機構を強化するというような点もやっております。  また責任者の処分につきましては、従来とかく緩に流れると申しますか、そののど元過ぎれば式な感じが多かったのでありますが、できるだけそういう責任者の処分についても十分に意を用いて、いわゆる信賞必罰という体制を明らかにするというような点は、防衛庁として昨年から特に意を用いていると思っています。  それからまた農林省を例にとりましても、これも非常に問題がございましたが、特に執務の刷新要領というようなものを作りまして、そうしてなかんずく農林省は補助金行政の中心でございますからして、その交付条件につきまして非常にやかましく、いやしくも予算を乱に流れて使うようなことのないように、交付条件の審査というものを十分にいたしまして、例年よりもそういう点に特に意を用いております。まあこれは別の見地でもございますが、たとえば食糧管理特別会計などにつきましても、いろいろ問題もございまして、今回そういう弊を断つということもありまして、特別会計法の改正をいたしまして、いわゆる勘定の区分というようなことを明確にするというようなことも、まあそうした一連の考え方につながるものである、こういうふうに考えております。  それから運輸省につきましては、特に問題がやはり補助行政にございましたので、被補助団体を特に全部呼びまして、そうして一人々々に注意を喚起するというようなことで、これはまあやり方はそういうような一種の指導ということにどうしてもなるわけであります。  結局最後の問題は、具体的に目の前に出されたところの個々のケースをどれだけ良心的に仕事をするかという日々のいわゆる会計経理というよりも、もっと広い役所の執務体制ということに結局関連してくると私は思っておりますが、そういうような意味で、しかし、特に問題が多いところはそれだけの原因があるわけでありますからして、いろいろな対策をそれぞれやはり立てて、そうして事故の発生を防止するというふうにやっております。また私どもも、ここでいろいろ御指摘になりますれば、特にそういう点は注意を喚起してやると、こういうふうに考えておるわけであります。
  19. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そこで、まあなるほど今予算編成につきましてお話が出たわけです。そこで、防衛庁あるいは農林省の点について、これはこの当決算委員会で従来警告をいたし、また要望をした趣旨を取り入れた点が大いにあるという点については非常な進歩である。このことは非常にけっこうなことだと思うのです。そこで今予算の編成のお話が出ましたが、一体この三十三年度予算編成におきましても、歳入歳出ともに厳密な、また合理的な基礎の上に立って見積りの積算をされたかどうか。あるいはまた予算が効率的に使用されるように十分な考慮を払って積算をなさったかどうか。あるいはまた今お話の補助費目の効率が非常に悪いというようなものについては、整理廃合をする、あるいはまた減額が行われたかどうかというような点について、この際明確に承わっておきたいと思います。
  20. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 予算を編成するに当りまして、財政当局といたしまして、歳入歳出に関しまして、できる限りの正確な見通しを立て、その見通しに基いて積算をいたして参りましたことは、これは申すまでもありません。ただこの三十一年の決算等におきまして、千億に及びまする余剰が生じまして、これが三十三年度に繰り越されてきたのでありますが、この三十一年の剰余金、これなどは何さまこの経済の拡大のテンポが急でありまして、これは内外の諸情勢に基くところでありますが、この点につきましては、確かに私は当時の歳入見積りのときに、やはり結果的には、見通しを誤まるというわけじゃありませんが、当時に見積った歳入よりもより大きなものが生じたと、これはまあ私の考えではごく特異な事態であろうと考えておるのであります。まあ歳出につきまして若干の不用額ができますことは、これはまあやむを得ない事情もあると思いますが、まあ歳出等につきましては、それほど大きな私は見込み違いは生じない。また生じてはおらないだろうと考えておるのであります。  補助金等につきましては、むろん予算編成におきまして、財政出局といたしましては、できるだけ、もはや補助金を出す必要がなくなったと認められる限りにおきましては、これの廃止、減廃を考えて常に実行しておるのでありまするが、ただこの補助金につきましては、例年会計検査院等のその不当使用等につきまして指摘があるのにかかわりませず、どうもこの削減についてとかく実施がむずかしい事情がありますことを遺憾といたしておりますが、しかし、そういうことは言うておってもいたし方ないのでございまして、大蔵当局としてはあらゆる機会に、あらゆる方法でこれをなるべく少くしたいものだと考えております。まあこういうことがとかく予算編成当時に行われることにおきまして、どうも抵抗が強いというような感じも私はいたしておりますので、今後は平常時、予算の編成時でないときに、補助金等に特に関係の深い省とよく懇談をいたしまして、そうして補助金を出すべきものは出す、廃止すべきものは廃止すると、明確にいたしまして、補助金の効率を高めていく、かようにまあ今考えて、今後そういう行き方で実施をしてみたい、かように考えておる次第でございます。大体の御答弁といたします。
  21. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 次に会計検査院にお尋ねいたします。  会計検査院検査というものは、まあいわゆるできてしまったあとの事後検査、従って、このあなたの方でなさいました批難事項というものも、結果から見た不当事態の指摘と、こういうことだけが対象にされておることは、これはもう一応わかるわけであります。しかし将来同じような不当事態が再び起らぬと、発生しないと、こういうことを最後の終局の目的とする、こういう見地からいたしまするならば、そういうよりな事態が起った根本的な原因となったものをはっきり指摘すべきである、かように考えられるのであります。あなた方の概要説明にも、「不当経理の発生する根源を防ぐことに努力を傾け」と書いてあるのだか、しかしこの検査報告内容にそれを現在よりもさらにはっきり盛り込む必要があるのじゃないか。その点についての御所見を一つ承わりたい。
  22. 加藤進

    会計検査院長加藤進君) この検査報告に掲げました不当事項をおおよそ分けて申しますと、会計職員個々の不正行為はもちろんございますが、不注意がありまするとか、おるいは勉強が足らないためにできておるものが相当ございます。これがどうなるかにつきましては、大体今の会計制度は職務を分割いたしまして、相承制するようにできておりますし、それから内部監査の制度もできております。これをうまく運用していけば、もっと効果が上ると存じますし、さらにその根本につきましては、先ほど大蔵大臣からお答えがありましたように、個々の会計職員の素質の向上、事務の習熟等の問題があるだろうと存じますが、これは一般的にはさような方向にやるよりほかに対策がないと存ずるのでございますが、そのほかにたとえば、先ほど申し上げました保険でございまするとか、補助金でございまするとか、いろいろ系統的な、たくさんの集団的に扱えない事項がございまして、これが最も心配なことなんでございますが、これにつきましては、三十一年度決算検査報告に対する政府の弁明書におきましても、われわれが事態の問題点を明らかにしたのに対しまして、それぞれの対策を示しておるように感じております。これは政府当局が最善と思う対策をお立てになったと存じますので、われわれといたしましては、多少の意見がありましょうとも、この対策がそのまま誠意をもって急速に実行されていきますならば、不当なる事態は非常に減ってくるのじゃないかと考えております。かような方面は根本の原因が非常に個々になると思います。制度がときには悪いこともございまするし、実行に適しないような場合もございまして、いろいろあると存じますが、大体三十一年度検査報告に対する政府の弁明がそのまま実行に移されましたならば、私はこれが根本的な対策になるのじゃないかと考えております。
  23. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そこで不当事項として指摘されておりまするものは、ほんとうに不当なもの、あるいは責任を問うべきじゃないかというようなもの、いろいろ含まれているわけです。従って、信賞必罰という精神をもって公平に責任の追及がなされなければならぬと思います。先ほど大蔵大臣も言われましたように、とにかく国民の血税をもってまかなわれておる国費でありますから、私は決算委員会の使命というものは非常に重要でありますし、予算委員会はえらいはなやかでありますが、決算委員会の方はまことに傍聴者も少い。使ってしまったあとの方はどうも気乗りが薄いというような考え方は、人間だれでもあることであるが、これは非常に私はいけないと思う。そのことがきちんといかないから、国全体の予算執行が乱れてくる。そういう意味におきまして、どうしても私は会計検査院において、直接検査に当ったあなたの方で、この事件の、この案件の責任者はだれだれだ。また、この者を責任者とみなす理由はどうだということを明確に指摘することがより望ましいと思う。また、これが唯一の正しい判断だと思うわけであります。この点につきましては、当委員会におきましても数次、二、三の委員の方からも再三要求があったわけです。従って、検査報告には責任者の名前を一々案件ごとに明記する、こういうことを求められたわけです。ところが。検査院は今日もなおその要望を実現をしておられぬわけです。現状におきましては、場合によっては検査院が責任者とみなすものと、当局が責任者とみなすものとが違っておる場合もあるようなありさまであって、こういうことでは責任の所在というものがきわめてあいまいなものになってしまう。従って、検査院はなぜ自分が批難をなさるものについて責任者の氏名を明記することを怠っておられるのか、また今日まで遷延しておられるのか、今後はそれをはっきりと明記なさるのか、その点をはっきりと御答弁願いたい。
  24. 加藤進

    会計検査院長加藤進君) 先ほど不正事件あるいは経理の紊乱等につきましては、これはもちろん個人的、担当者の責任でございますから、これは明らかになっております。今まで掲げませんでしたのは、何かこの検査報告の書き方の伝統というようなものだと思いまするが、これは十分考えなければならないと存じます。その他に、先ほど申し上げました保険金の問題等になりますると、これはほんとうに制度自体が実行に適しないといった問題もありまして、だれが果して責任者であるかというのが明確にならないというようなケースもございまするが、個々に考えて、この問題はよく研究いたしたいと存じております。
  25. 大矢正

    ○大矢正君 三十一年度決算の総括質問については、むしろ野党の私がすべき立場の質問を与党にやられてしまって、二番せんじの質問をしたくありませんから、別な角度から大蔵大臣の考え方をこの際承わりたいと思います。  まず第一点は、三十一年度検査院の報告内容によりますと、件数におきましても金額の点におきましても、不当不正行為が大幡に減少したということは、これはまことに喜ぶべきことだと存じますが、ただ私は、先般来の決算委員会において、各省の方々の御意見、御努力を聞いておりますと、内部の監査を強化することによって不当不正行為を大幅に減少することができたのだというような御発言が非常に多かった。そうしますと、今後ますます内部監査というものを各省ごとに強化をしていくという方針をこれからも持ち続けていかない限りにおいては、不正不当行為の減少を望むことは困難だとすれば、当然これは予算の面にはね返って参りまして、内部監査を必要とするための人員、あるいはその他人件費等が増額をされなければならない結果が出てくるのじゃないかという気がするわけでありますが、内部監査をさらにますます強化していくというお考えを大蔵大臣はお認めになるのか。もし、そうだといたしますれば、それを予算上から裏づける考えがあるのかどうか。この点についての大臣の見解を添わっておきたいと思います。
  26. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 内部監査に必要な経費等につきましては、実は三十三年度予算においても増加いたしております。この内部監査は、単に内部監査の機構を大きくすればできるというようなことだけでも私はないと思うのでありまするが、調査や監査等について必要な経費は、特に私は今後も考えていきたいと、かように考えております。
  27. 大矢正

    ○大矢正君 ただいまの大蔵大臣の答弁で、私は多少納得のいきかねる点がありますが、それは、国民から吸い上げた税金を使うために、また税金を使わなければならぬという結果が今の結果です。きめられた予算執行する場合に、不当不正行為があってはいけないということで、内部監査を強化するということは、国民の税金を吸い上げたその税金の使い方に、また税金をかけていかなければならぬということは、考えそれ自身として好ましいものではないのじゃないか。私はこの際、内部監査の強化じゃない方法によって、別な方法において、何か不当不正行為減少する道がないのかという点については、大いに議論のあるところだと思うのでありますが、こういう私の考え方が一体間違っておるのかどうか、大蔵大臣の御見解を承わっておきたい。
  28. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) むろん私は間違っていないと存じます。それにはいろいろなよってくる原因がありますし、その原因によってまた対策も違う。ただ先ほどは、そのうちで、やはり内部監査等を強化することの必要がおる、これは実際問題としてそういうことは何も必要がないということが望ましいのでありまするが、実際の現実は、やはり内部監査というものをある程度強化する必要がある、こういうように考えた場合に、それなら、それについて必要があるのに、予算の裏づけをするのか、せぬのかという御質問があるといたしますれば、私は、そういう必要な限度においては、これは予算の裏づけをしたらいい、かように申しているのでありまして、そのほかにいろいろと予算執行を適正ならしむる、また適正でないというなら、そのよって起る原因というものは多々あると思います。それをよく究明しまして、それに対して対策を講じていく、かように私は考えております。
  29. 大矢正

    ○大矢正君 あまり自由民主党の政権が長続きするために、役所のおえら方の内部には、気持のゆるみができて、そういう面からもおそらく不当行為が起るのではないかと思うのでありますが、これは私だけの考えかもわかりませんから、そのことをどうのこうのという気持はありませんが、いずれにしても、国民の税金を使うに当って、その使う方法に、さらにまた税金を使わなければならぬという内部監督強化の方向については、私としてはなかなか基本的な考えの上においては理解いたしかねます。  それから大蔵大臣のお考えそれ自身の基本として、やはり内部監査をすることによって不当不正行為が減るのだという考え方がありとすれば、この際直してもらって、もっと別な方途から、私はこの不当不正行為の少くなるような方向に努力をしていただきたいと存じます。  それから次に質問をいたしたい点は、特別会計の問題についてでありますが、前の大蔵大臣の池田さんは、特別会計につきましてはできる限りこれを減らしたいという趣旨の発言が当時なされておりまして、具体的には整理の方向の努力もされたかもしらぬけれども、実際的には減っておりませんが、三十一年度決算報告の中にもあります通りに、三十一年度としては、三十七の特別会計が作られております。そこで一萬田大蔵大臣の考えとして、特別会計というものは、一体どういう性格のものなのか、それから、この特別会計をこれからもふやすという方向で行かれようとしているのか、あるいは減らそうというお考えを持っておられるのか、この二点について大臣の御所見を承わりたいと思います。
  30. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は、この特別会計についてでありますが、これは真にやむを得ないと——一般会計から離して経理をし、会計としては離れて経理するのですが、従って仕事も別個にこれを取りはずしてやる、そういうことが真に必要であるものに限りたいと、かように考えておるのです。従いまして特別会計がふえるということは、これはよほど慎重な態度で望みたい、でき得べくんばやはり特別会計は少くともふやしたくない、こういう考えを持っております。
  31. 大矢正

    ○大矢正君 私は、国の財政法あるいは会計法の建前からいって、特別会計というものは極力少くすべきものであるという考え方を持っておりますが、たとえば三十三年度予算関係して今度政府が提案をされた内容などでは、道路整備の関係特別会計法案が出されまして、むしろ減少じゃなくて、道路整備特別会計を作って、特別会計増加をはかっているという結果が、現実的には三十三年度予算の中に出ておりますが、あの特別会計なんかが実際になければ道路の仕事ができないというお考えに立って、三十三年度にも特別会計を新たに一つ設けられたのか、私は、少くとも今日の一般会計の範囲内においても、特別会計を別段作らなくても、道路整備はできると確信をしておりましたが、政府はあれを出して、ついに通過せしめてしまいましたが、こういう点では、整理をしようという大蔵大臣の考え方とは辿った方向に行きつつあるような気がするのであります。一体これはどうなんですか。  それからいま一つは、特別会計を減らしたいというお考えがあるとすれば、どういう内容のものを将来において減らすというお考えがあるのか、こういう点についての御見解を承わりたい。
  32. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十三年度におきまして道路特別会計ができましたのでありますが、私どもも、道路行政というものは一般会計の仕事としてもきわめて大きなものでありますので、これを一般会計から離して特別会計にいたしますことについては、非常に慎重に考究を重ねたのでありまするが、とかく何さま日本の道路というものが、国際的にみても非常におくれておる、これは産業の開発、また国民生活の上からみても、できるだけ急速に道路の改善をいたさなくてはならぬ、こういう見地に立ちますと、いろいろの考慮が払われなくてはなりませぬ。資金面におきましても、あるいはある程度の借入金というようなものも、時に道につきましては、海外からの借款というようなものも考えていいのではなかろうか、こういう見解も持ちましたので、今回特別会計にいたしたわけであります。  この会計の数につきましては、三十三年度は、中小企業信用保険特別会計を廃止いたしましたので、数としては増減はないということになっております。別にこれが増減がないからどうと言うわけじゃありませんが、そういう工合になっております。
  33. 大矢正

    ○大矢正君 大臣感違いされておるのじゃないかと思うのですが、中小企業関係特別会計は減ったけれども、また新しく中小企業信用保険特別会計ができているのですから、これは一つ減らして一つふえたことになるのですから、その点は増減は何もないと思っておりますか。
  34. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 特別会計はやはりもとのままでありまして、中小企業信用保険公庫というのができました。
  35. 大矢正

    ○大矢正君 それでは次に、日本専売公社決算内容関係して大臣に質問をいたしますが、その前に事務当局に一つ質問いたしたいと思います。  それは専売事業会計の中の塩の事業につきまして、この報告書の中では、三億八千四百万円余りの赤字が出たということが書かれております。これは三十一年度に限ったことではなくて、三十二年度も、また三十三年度も、おそらく塩の会計範囲においては赤字が出るのじゃないかという話を実は私ども聞いておるのでありますが、この塩事業において生じた赤字は、専売事業の総体的な会計の中でこれを落してしまうのか、それとも塩事業塩事業として発生をしている赤字は、いつまでもこれが黒字に変るまで残るという格好になるのか、この点の事務的な内容について質問をいたします。
  36. 石田吉男

    説明員(石田吉男君) 専売公社決算は、年度ごとでございまして、納付金を計算しますときは、たばこと塩とショウノウの事業を全部一括いたします。従いまして塩事業赤字が出ましたような場合には、たばこ事業の益金でそれを相殺いたしまして、その最後のしりを国庫に納付する、こういう制度でございます。
  37. 大矢正

    ○大矢正君 最近塩のコストが高くなったのか、あるいはまた採塩の内容が向上をしたのか、あるいはまた塩の売れ行きが悪くなったのかわかりませんが、いずれにしても赤字が漸次出つつあるということで、専売公社としては、塩の内容については検討をして、もし許すならば塩の値段を引き上げなければならないのではないかという話があるやに実は最近承わっておるのでありますが、今あなたが言われたように、たばこ、ショウノウを含めて総体の中で毎年決算をするということになりますと、かりに塩の部分に赤字が出ても、たばこは赤字が出るわけはございませんから、当然、専売納付金は少くなっても、特段ここで塩の値段の引き上げを行う必要性がないじゃないかというふうに私考えるのですが、この点についてはどうですか。
  38. 石田吉男

    説明員(石田吉男君) 昨年度までは、予算では三十三年度でございますが、塩の収支は大体赤字の出ないような予算を組んでおりました。三十三年度からはそういう予算の組み方では無理があるということが明瞭になって参りましたので、三十三年度予算では塩関係事業で大体二十五億円くらい赤字が出るというふうに、予算赤字をみて組んでおります。  それから、塩の値段の問題でございますが、塩の政策につきましては、今転換期にきております。専売公社といたしましてもいろいろな関係を考えて、相当根本的な対策を立てなければならないということで、この三十三年度からその対策のためにいろいろ準備中でございまして、ただいまそういうことについてどう考えるかというふうなまとまった考えをお話しする段階になっておりませんので御了承いただきたいと思います。
  39. 大矢正

    ○大矢正君 赤字が出るという事実があるし、すでにもう出てきておるのでありますから、それを放任していくという考え方を今後も大蔵大臣はとっていかれる考えですか。専売会計総体の中で全部処理をして、赤字が出ても構わぬ——塩の関係においてはそういうふうにやっていかれるお考えですか。それともいずれ時期がきたら、塩の値段の引き上げその他を行なって、赤字の解消をする、こういうお考えですか、大臣の御見解は。
  40. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これはある程度技術的の面もあって、専門家の意見もあるでしょうが、私の考え方では、塩で赤字が幾らか出てもたばこ等で埋まればいい、全体として埋まればいいというふうに私は考えたくない、またそういうふうにも考えていない、やはり塩の会計において、塩は塩としてなるべく収支がとれるように、同時にしかし、その塩の価格は国民生活の関係においてどうであるかということは、これはいろいろ検討を加えなくてはならないと思いますが、しかし、やはりできるだけ塩の会計において赤字が出ないように処置をとる、かように考えております。それでもなおかつそういうことをすることが非常に塩の価格を高めるということでありますれば、これはそれをどう処置するか考えなければなりませんが、あるいはまた、たばこならたばこ、専売全体として一応計算をせられるということもやむを得ないかと思いまするが、これはしかし、そうするというのではなくて、万やむを得ない場合には、そうするというふうに考えてみたいと私は思っております。
  41. 大矢正

    ○大矢正君 もう一点、塩に関連をして大臣に承わりたいのでありますが、国内塩は、私が調べた範囲におきましては、たしか昨年は二万円を突破する価格において売られておりますが、他方外国から輸入するところの塩につきましては、これはもちろん工業塩でありますが、品質は国内塩に比べて相当落ちることも、これも必然でございますけれども、非常に安い値段で入ってくるのをそのまま法律的処置によって工業用として振り向けておるわけでありますが、もし、塩の会計において赤字がありとすれば、私はこの際、外国から輸入されるところの工業塩の引き上げによってこの二億八千万円三十一年度は出たというこの赤字が解消されるのではないか。たとえば、一万以上もの国内の消費者が使わせられている塩の値段を、さらに引き上げなくても、会計の面それ自身から見ても、外国塩を引き上げることによって、赤字が埋まっていくのではないかと思いますが、こういう考えが大臣にないかどうか。
  42. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは輸入の工業塩がどれくらい入って、その価格はどうだというような具体的な数字の計算になると思いますので、一つ事務当局から説明を願います。
  43. 石田吉男

    説明員(石田吉男君) ただいま輸入塩、工業塩というと主としてソーダ工業でございますが、それに回しております塩は、輸入した値段でそのまま公社が自分で取引をしておるのではございませんので、ただ、塩専売法の関係で、公社でなければ塩は輸入できないという規定がありますために、取引の実態は各ソーダ工業の会社とそれから輸入業者というふうに取引はやるのでございますが、勘定だけが専売公社の勘定ということでございますので、そこで利ざやを取るということは現存の状態ではむずかしいのではないかと思っております。
  44. 大矢正

    ○大矢正君 次に、大蔵大臣質問をいたしたいことは、前の委員会におきましても私指摘をしておきましたが、外務省関係の在外公館の予算、それからその執行、また、特に通産省に関係をいたしましては、貿易振興のための補助金等につきまして、会計検査院がこの内容を具体的に指摘をしたり、また検査をするということが実際問題としてはできない事情にありますが、これは予算上からも大幅な制約があるかと思うのでありますが、これら在外公館あるいは貿易関係の補助金が適正に使われていっておるかどうかということに対する検査が行われないということについては、これはいけないことでありまして、こういうのも予算上の措置を講じて検査会計検査院に譲るべきであると、かように思うのでありますが、大蔵大臣はこういった盲点に対しての対策を持っておられるかどうか。
  45. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは建前から言えば、やはり検査をするようになっておりますが、実際上は御承知のようにやっておりません。また、ちょっとやるのに非常に不便ということになっております。それだからといって、この予算執行が適正であるかいなかということは、これはやはり重大なことであります。また、その予算がそれで十分であるかどうかということもやはり同時に考えていかなけりゃならぬと思うのですが、まあ私どもとしては、そういうふうな事後における検査が十分行われ難い事情にありますので、予算編成当時におきまして、十分外務省と引き合せまして、必要にしてまた仕事を遂行する上に十分であると考えられるように、この予算の編成に努力をいたしておるわけであります。同時にまた、そういうふうな検査が行き届き得ない事情にあるということで、外務省におきましては、外務省としての内部検査を十分やる、こういうふうな建前にいたしております。
  46. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は大蔵大臣が出席されておりますので、二、三の点についてお伺いしたいのです。その中で、やはり一番われわれ決算委員として今振りかえってみなくちゃならない問題は、やはり三十一年度それから三十年度から続けておるものでありますか、いわゆる高原景気と言われたあの当時のあなたは大蔵大臣として責任者です。今まで決算委員会にわれわれ臨んでおりますが、決算委員会審議をするのは、いつも三年あるいは二年半のズレがあった。当時の責任者がいなくなる。ところがきょう幸いにいいことには、大蔵大臣は当時の責任者であります。その意味ではこの決算委員会の論議が直接責任者からお聞きできるというので、非常に仕合せだと考えておるわけであります。そういう点からお聞きするのでありますが、大体いわゆる高原景気時代といわれましたが、この三十年度から三十一年度に続いたあの時代におけるいわゆる一萬田財政、この三十一年度の財政金融政策というものは正しいものであったか。今、その後のいろいろな情勢が変りまして、経済政策を転換されておるのであります。これについてあなたは一体三十一年度時代の財政金融政策というものは正しかったと、こういうふうにお考えになっておるのか、あるいはどうお考えになってそうでないとお考えになっているのかどうか。ここでずっとここ数年間の跡をたどってみて、そうして決算委員会において、この問題をはっきりわれわれは足跡としてながめてみるということが、非常に実はこの政策論議の中では重要だと、こういう点からお尋ねをしておるのでありますが、あなたはどうお考えになるか、この点からまず伺いたいと思っております。
  47. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は何も自分のやった行為について責任を回避するものではありません。しかしながら、この私が前の大蔵大臣として在任のときですが、大体三十一年の初夏の候からあるいは春といってもいいですが、そのころから景気が上昇カーブをとりまして、そうして秋口に入っています。むろんこの三十一年の秋ころに日本の景気について相当の注意が払われてきておったのであります。私はその時分、その暮れにやめたのでありまするが、この辺がやはり日本の景気についてこれの抑制をするといいますか、そういう政策をとるかどうかという、そういうふうな検討が加えていい私は時であったろうと考えます。私の大体在任のところはそういうところで一応終ったわけであります。
  48. 岩間正男

    ○岩間正男君 まああなたは大体これは二十九年の十二月から三十一年の十月まで在職されて、ちょうどそのあとのところはこれは責任をお持ちにならないわけでありますが、しかしずっとやはり継続した中で、現在のようなこの財政転換をせざるを得ない、こういう原因は、これは非常にあなたの在職時代にもやはりあったのじゃないか。つまり三十一年の七月から九月ころを見ますというと、非常に当時銀行の貸し出しというのは、もう例年に比べると六倍、七倍というふうに非常にふえてきた。こういう態勢で投資ブームというようなものが非常に発生する、こういう格好になっておったと思のです。それに乗って三十二年度のこれは政策があとで行われたのでありますが、御承知のようにあのような形になりまして、昨年の予算が通ったその直後において、もう経済転換をせざるを得なくなった。そうして、それが今日の不況の大きな原因になっておる。全部あなたがそれを責任をお持ちになるというようなことではないにしましても、そこに一貫した政策がない。しかも自民党内閣としてわれわれはやはり問題にしたいのでありますが、同じ政党の内閣がこれは大蔵大臣をかえた、そういうことによって、ますますそういうような刺激がなされて、そうして一千億施策、一千億減税などという名で表現されるあのような政策が行われて、それが大きく国民生活に影響を与える。その後、財政政策を転換せざるを得ない。今年度の計画を見ますというと、今年度あたりは、大体まあこの五カ年計画によりましても例年の経経成長率はまあ六・五%ですか、ぐらいに見ておりながら、しかし三十三年度は三%こういうふうに見ざるを得ない、非常に今日規制が行われて、それが国民生活に影響を与える。そうして、一方では中小企業者や労働者に大きな影響を与えている。そういうことを考えますというと、やはりあなたの在任中の責任、特に三十一年度決算審議するに当って、この点について十分な反省が加えられなければならないのじゃないかと、こういうふうにわれわれとしては考えるわけであります。それで、あの時代の政策の中でどういう点がやはり足りなかった、どういう点がやはり見通しを間違っておったか。それが現在のこの不況の原因になっておるのか。こういう点で、これはあなたが今反省しておられる点をお述べをいただきたいと思うのです。
  49. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今、御指摘のこの三十一年の秋ごろ、これがやはり景気循環といたしまして日本のこの景気の見通しについて慎重なやはり検討を加えていかなくてはならぬまず何といいますか一番初めごろであると考えておる。従いまして当時いろいろと考えておったのは事実であります。たとえば、金利を上げるというようなことについても当時検討を加えておったのであります。ただいつそれを実行するのが適当か、これは問題がある。しかし当時においてなお少くとも三十一年度中においておそきに失しておるということは私はないと考えていたのですが、なぜそういうふうなことであるかといえば、やは日本の経済におきまして、この敗戦後の推移からいたしまして、日本経済自体が非常にアンバランスである、均衡を得ていない。言いかえれば、この経済の、この景気現象に対して、これを反応する経済の諸機関が有機的に働いていない。   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕 たとえば金利一つをとりましてもきわめてまちまち、中央銀行の公定歩合と市中銀行の金利というものはほとんど連絡はない、あるいはまた統計等にしても内外の経済の情勢を十分把握するだけの統計も整備されていない。こういうふうないろいろな私は事態がある。むろんそういうものだけにすべてをもっていくわけでありません。そういうふうな乏しいあるいは不完全な機構の中においても、責任者としてはむろん最も正しい方向をたどっていかなくちゃなりませんが、しかしそういう点があったことは事実であります。言いかえれば、自由経済における経済の自動調節作用というものがきわめて不完全であった。こういうふうに私は一応見ておるのでありまして、従いまして、その後におきまして、統計を十分整備し、かつ景気循環を十分把握するような制度を経済企画庁に設けるように、これは予算の裏づけも今回いたしたわけであります。かようにいたしまして、同時に日本の経済の内部のいろいろな条件といいますか、経済活動のこの要素について、これを均衡を得せしむる金利体系も整備していく、また資金量の、言いかえれば、通貨流通量の調節作用もいろいろな機構を通じて活発にやり得る。こういうふうな客観的な諸条件を整備する。こういうふうなことを今考えておるわけであります。さようにいたしますことによって、できるだけこの経済の推移を平準化いたしまして、急激な上り下りのないような、そういうふうな経済を招来いたしたいと念願をいたしております。
  50. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の反省から出たのだと思いますけれども、非常に経済的な調節がしにくい条件にある、バランスがよくとれていない、さらに、世界の経済情勢を把握する、そういう機構に欠けておる、こういう点をあげられたのでありまするが、私たち見ていまして、こういうような問題、そうしてさらに、財政指導をすることのできなかった一つの原因としては、当時、とにかくまあ高原景気という投資ブームに財界が酔っていたのではないか。やはりこれらの人たちの趨勢をはっきりここで抑制することができなかった、その弱さ、その政治的な力の弱さというものが、非常に大きく影響していたのではないかということが考えられるわけであります。当時、やはりこれに対して世界の情勢を見れば、これはずいぶん、すでにそのような、今日の日本の経済転換をおそきに失する、そういう格好で今日の大きなしわが寄せられた、こういうことをしなくても済むような調節を、もっと早く、早期にやることが実は考えられなくちゃならなかった。また、それは、相当そういうふうな情報もあったんじゃないかと思うのですね。これについては、いろいろまあ大蔵省にも実は情報が入ったのじゃないか。六月ごろに、日銀のロンドン支店長の関根報告——この報告によるというと、西ドイツやそれからイギリス、フランス、アメリカあたりでは、すでにもう公定歩合の引き上げがなされて、これに対する対応策がなされておる。それに対する報告がなされておったにもかかわらず、日本は、いわばまあ酔っぱらっていたというか、そういう態勢の中で、そういうことが十分にできなかった。そこで時期を失した。こういう点は、これははっきりあるのじゃないかと思いますけれども、こういうような要素についても、これは蔵相はどうお考えになりますか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  51. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほど申しましたように、九月から——私がちょうどそのころ、なにに、国際通貨基金に出席したのでありまするが、九月、それから十月の初期でございまするが、そのころやはりこの景気情勢に対してどういうふうに考えているか、中央銀行の公定歩合等を上げることについてのいろいろと論議があった。これはまあ中央銀行が独自の見識をもってやり得る事柄であります。政策委員会において決定してやることでありまするが、しかし、そういうことがやはり決して無視されておるわけではない、論議に上っておったのであります。従いまして、そういうふうな施策を、おくれてではありますが、後において日銀等も取り上げてやっておる、こういうふうな次第であります。
  52. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはどうですか。このおくれたため、これらの諸施策が半年ぐらいおくれたこと、ズレがあったそのことのために、今大きくしわが寄ってきているということは事実だと思いますが、この点はお認めになりますか。
  53. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十一年の私はまあ秋ぐらいから、そのことが日本において考えられつつあったと思っております。おそらく、暮れごろから春にかけて、こうしようかどうかというふうな事態であったように私は考えております。
  54. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは途中で——議員諸公ですが、きょうは三十一年度の総括質問ということになって、蔵相の出席をわざわざ求めておるのに、どうも出席が非常に悪いと思うのですね。今見るというと、りょうりょうたるものです。こういうことで、三十一年度決算に入ろうと、そうして最も基本的なやはり経済政策の問題について触れているわけであります。しかも、反省を今やっているわけであります。こういうことで、非常に悪いのですが、委員長、一つ督促をしてもらいたいですな。こういう態勢の中で決算委員会が行われるということは、われわれはあまり了承できないのですが、どうなんです。どうも、非常にこれは、こういう格好では、参議院の権威にかかわるですよ。これは一つ、態勢をとってもらいたいと思いますが、これについて、どうですか、委員長にそれはお願いします。  次に、お伺いしますが、こういうような態勢の中で、三十一年度のただいまの報告によりますと、これは一千八十二億という剰余金が出ておるわけです。従って、この剰余金というものを、非常に池田財政当時には、まるで鬼の首を取ったようにこれはもてはやした。石橋内閣が発足した当時でありましたけれども、これでもって積極政策をやるのだというので、御承知のように、三十二年度の自然増一千億と合せて二千億、それでもって一千億施策、一千億減税というようなことを打ち出して、勇ましくスタートしたわけであります。しかし、一千億の一体余剰金というものを、よく今日ここで分析してみる必要がある。決算委員会が三十一年度決算審議するに当って、十分にこの政策を吟味してみる必要があると私は考えるのですが、これはどういうような形で、この一千億の余剰金の生じた原困、これはどこにあると蔵相はお考えになっておりますか。この点についてお伺いしたい。
  55. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十一年の剰余金、今お話のように千百億円がありますが、これは歳入の自然増、それと歳出面における不用額、この合計であると考えております。歳入の自然増がおよそ八百五十億程度と思います。
  56. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、数字上のことをお伺いしているわけじゃありません。今の歳入の自然増の原因は、そんならその要因はどういうところにあったか、どのようにして、このような膨大なる一体見込増が発生したか、この原因について伺いたい。
  57. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) それは、日本の経済の成長が非常に高度でありまして、従いまして、また総生産にしても、また国民所得にしても未曾有の伸びをしておる。従いまして、自然税収入予定よりも多かった。こういうことであります。   〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕
  58. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは経済の正常な状態から出てきた健全な余剰金とお考えになりますか。
  59. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これはしばしば申し上げますように、当時における経済の異常な伸びからきておる。私は、これは常に期待し得べき自然増ではないと考えております。
  60. 岩間正男

    ○岩間正男君 ただいまの御答弁の通りだと思うのです。先ほど申しましたが、三十一年度の七月から九月までの銀行貸し出しというものは、普通の、例年のこれは六倍から七倍、膨大なこれは投資ブームであります。その結果、どんどん設備を増強する、従ってそれを消化するために原材料を輸入しなければならない。いわゆる膨大な輸入超過になり、結果においては国際収支を食ってしまった。手持ちの外貨をどんどんどんどん食ってしまった。こういう格好で、これは法人税を初めとするところの収入増があったわけであります。しかし、これがあとではっきり経済政策を転換せざるを得なくなったところの大きな原因になっておりますから、これはいわば刺激的な景気であり、一時的なブームであったということがはっきり言えると思うのですね。しかも、この一千億の一方で、収入増があった反面を私たち考えなくちゃならないのであります。神武景気だというので、大へんこれが謳歌された。しかしよく国民生活の実情を見るというと、一体顕微鏡で見てもどこに神武景気があるかわからない、国民の大多数というものは、もう九五%というものは、神武景気の恩恵にはあずからない。どこに一体そんなものがあるか。なるほど一方では膨大な利潤を上げて、笑いのとまらないというような大きな利潤を上げた大資本家がいることは事実でございます。しかしながら、一方では国民の生活は、それに伴って潤ったかというと、そういう格好ではなかった。非常にアンバランスがこれは強く出てきたというふうに考えられるのであります。つまり貧富の差はこの神武景気の態勢の中でむしろ大きく激化された。こういう実情がはっきりうかがわれるのでありますが、いわゆる国民生活の犠牲、さらにこれは財政経済政策からいいますと、投資ブームという形での外貨の犠牲によりまして、手持ち外貨を食うというやり方によってこういうような自然増が行われた、刺激的な一時的な——先ほども蔵相が述べられました一時的なこういう現象であります。こういう点をはっきりお認めになっていらっしゃると思うのでありますが、いかがでしょうか。
  61. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十一年の繰り越し剰余金ですが、この千億円以上、これは先ほど申しましたように、異常な経済の伸びに基く生産増あるいは国民所得の増からきておる税収入の増、従ってこれは経常的なものでない、そういうような見地に私は立ちますから、これは経常的な歳出である、あるいはまた減税というものにこれは充ててない。しかし一時的の歳出としては、三十三年度においては経済に対して財政面から刺激を与えることを避けなくてはならぬ。こういう見地から私は保留をして、実質的な歳出に立てていないことは御承知の通りであります。こういうところに私は余剰の性格を十分予算面において示しておる、かように考えておるわけであります。
  62. 岩間正男

    ○岩間正男君 神武景気の中で貧富の差、開きが非常に大きくなったという事実はお認めになりますか。
  63. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) いわゆる景気のいいときに、その景気が一般的にやはり潤うことは間違いありません。いずれも国民所得を増しますし、また雇用関係から見ても雇用もそういう場合はいいのでありますから、総体的に私はいいと思うのですが、しかし、それだからといって社会の各層の間にこの景気から受ける格差がないかというと、これは私はあると思います。特にそういうものは税の面から見れば、どういうふうな税から最もたくさんな税があがってきているかということを考えることによって、やや明らかになるかと考えます。
  64. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは格差があるということはこれは当り前ですね。現状から見て、私は格差が拡大されたとお考えになりますかどうかということをお聞きしたいのです。
  65. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ごく概念的にいえば、こういうふうな異常な景気の場合において、やはり貧富の差が拡大されたというのが当っておるかもしれません。しかし、これは内容的には非常に複雑な様相を呈するのであろうと思っております。
  66. 岩間正男

    ○岩間正男君 今ちょっとそこのところを聞きとれなかったのですが、格差が拡大されたとお考えになるのですか。そういう御答弁なんですか。今ちょっと聞こえませんでしたから……。
  67. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは詳しくいえば、私はそれを、内容が非常に複雑であるからと申しておるのですが、概念的にいえば、やはり景気が非常に異常であった。特に景気が輸出を中心として行われておったという意味におきまして、所得関係等において差違を生じた。しかしながら、何か一方に富む者が一つの階層に片寄って、他の社会層では非常に貧乏が増したかといえば、必ずしも私はそうではないように思う。その点は非常に複難ではないか。たとえば中小企業というようなものを大企業に対してすぐにとる。むろん大企業において所得を増しておることに間違いはありませんが、しからば中小企業において所得か増していないかといえば、必ずしもそうでない。中小企業においても、輸出に関係しておるというような中小企業においては相当所得を増しておる。そういう意味におきまして、これは内容が非常に複雑である、かように考えております。
  68. 岩間正男

    ○岩間正男君 そこのところ、どうも肯定されるようであり、肯定されないようでもあり、内容が複雑だという言葉でぼかされたのでありますが、私たちは数字を持っておるのです。たとえば昭和三十年度のあの好景気時代における完全失業者の数は、大体景気のバロメーターになるからあげますが、これは大体約七十万、労働省の調査です。ドッジ景気というものが二十四年から五年にあったと思いますが、あのドッジ・ラインによる不景気、あのときでさえも三十四、五万、そうすると、神武景気のあの謳歌された時代の中で失業者の数は約二倍になっておる。非常に苦しいといわれましたドッジ景気の時代の約二倍になっておる。こういう事実は、これはやはりほかならない労働省の資料でございますから、お認めにならなければならないのじゃないか、こういうふうに考えます。  それからわれわれあげますのは、勤労者のエンゲル系数なんです。これが八七%という、全くこれは食べるだけです。まあ四五%以上ならばこれは文化的な生活とは言えないわけです。ところが八七%の者が全体の五〇%以上である、こういう数字が出ておるわけであります。それから私たちあげたいのは生活保護法ですね。この生活保護法の被保護者の食費、たとえばこれをあげますと、一日の食費が五十四円、一食わずかに十八円。これは野犬狩りで犬をつかまえますと、一日の費用が食費だけで二十円から三十円、管理費が二十円から三十円、計四十円から六十円野犬にかけておるのでありますが、生活保護法の方ではそれ以下の五十四円という形が出ておる。そうして一千億減税ということを言いますけれども、この一千億の減税の恩恵に浴さない階層が非常に多かったということは、これは当時からしばしば論議された。昨年の予算等の審議の中で口をきわめて論議されたのがこの問題です。そういうものとにらみ合せて考えてみますときに、なるほど高原の方では、これは神武景気を非常に謳歌しておった者があったし、そうしてこれが国家財政の面では余剰金の大きな源になっていたかもしれません。しかし底の方へ、基底の方では今申し上げましたような国民生活の窮乏というものはやはりずっと出てきておる。しかもこれは顕在しあるいは潜在し出てきておる。そうしてこれが今日の不況をやはりはっきり出現させるところの導因になった。こういうような点はこれはどういうようにお考えになりますか。われわれは今三十一年度決算審議するに当って、最も基本的なラインとしてこの問題を追及してみるということは、非常に重要であり、今後の日本の政策を遂行する上において、やは十分に反省もしなければならない。こういう問題からお聞きしておるのでありますが、こういう点は蔵相はどうお考えになりますか。
  69. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいまの失業者の関係ですが、ここに数字がありますから、若干申し上げますと、労働力の就業者が二十五年を見ますと、三千五百八十万で、完全失業者が四十三万になっておりますが、それが三十一年の終り、三十二年、こういうときには就業者が四千百五十万以上になっておりまして、このときの完全失業者が五十六万、ただいまは、三十二年十二月なんかをとりますと、四千三百六十二万に就業者がふえておりますが、失業者は四十二万、こういうふうな次第でありまして、これはやはりおおむねそう大きな、完全失業者の統計の数字から見ますと、大きな変動がなく、就業者がふえた割合には失業者の数は少いと、まあこういうのが、やはり景気のよかったときに失業者が非常に多いというのは当らないんじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、いま一つ景気のいい時は、高原のところだけよくて、下はやはり悪いんだと、こういう考え方に私必ずしも賛同いたしかねるんで、たとえば、景気がいいので今申しましたように就業者はふえるが、いわゆる完全失業者というような数はふえないというような意味で、雇用の機会が非常に与えられてきておる。また、これは日本の場合においては輸出を中心の景気でありますので、輸出に関係する事業においては、それが大企業であろうと中小企業であろうと、一様に私はよかったように思うのでございます。そういう意味におきまして、輸出に関連の少いそういうふうな事業の景気に浴する割合は、比較的まあ少かったとも言い得る。こういうふうな形をとっておるんじゃないかと私は考えております。
  70. 岩間正男

    ○岩間正男君 むろん好景気の影響によって潤う面があると思う。しかし、それがほんとに健全な態勢で、そこまでずうっと浸透するような格好になってるかというと、そういう格好じゃなかったことは、先ほどの蔵相の説明の中にもあったと思う。一時的な刺激のブームであった。そういうことと逆現象にもっていった。今、資料をあげられたんですが、われわれは三十年の五月に労働省の資料として出しているもので、これであげたんですが、しかし、今あげられた資料でも、とにかく二十五年よりは三十年の方が、この資料でも三、四〇%失業者がふえているのは事実なんです。そういうことになってきます。そういう点で、やはりほんとうに国民生活の実態を見きわめる努力が非常に少かったんじゃないか。やはり上の方だけに、はなやかな方だけに目が向いて、そうして、国民生活の基底をなしているところの大衆の生活の実態というものはつかめなかったんじゃないか。従って、それに対する施策というものが十分になされなかったんじゃないか。いや、なされないというよりも、そういうような性格を持って行われたのがやはりあの時代の、また現在まで続いている財政施策の姿じゃないかと思いますが、こういうような一つのむら、こういうような一つの国民生活のアンバランスというものは、今後の施策の上で非常にこれはやはり改正する努力をしなきゃならぬと思うのでありますが、こういう点についての蔵相のお考えをお伺いしたいと思います。
  71. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 経済の行き過ぎ、これは投資の行き過ぎになります。従いまして、ただいま若干御示唆がありましたように、投資の行き過ぎとあれば、自然基幹産業やいわゆる大企業の設備の拡大という形において現われてきております。従いまして、政府の政策としては、これらの事業に対しまして、その投資の行き過ぎを押えていくのでありまするが、が、しかしながら、経済の事柄を考えます場合は、理論は別として、実際の動きは、やはり社会構成の各層におきまして、力の弱いところにどうしてもしわが寄りやすい。これは自由経済をとっておる以上やむを得ない方向であると考えます。従いまして、大企業等の設備の行き過ぎであるから、大企業だけについて始末をすれば、ほかの方は迷惑を比較的しなくても済むはずのものでありまするが、今言うたような力の関係から、いわゆる弱い者にしわが寄る、こういうふうな格好が現われる。それで、政府といたしましては、当初から社会の層において弱い、いわゆる中小企業についてはできるだけの財政並びに金融上の措置をとって参っておるのでありますか、なお、そういうしわが寄るであろうそれに対しましても、政府としては、中小企業等に対しまして、できるだけの措置を財政面並びに金融面において講じてきておるわけであります。  なお、こういう大企業の投資の行き過ぎを是正するというような施策をとるにつれて、雇用関係が悪くなることも、これは当然の帰結であります。従いまして、政府といたしましては、失業対策ということに意を用いまして、その点につきましては三十三年度におきましても、格別の配慮を加えたつもりでございます。
  72. 岩間正男

    ○岩間正男君 アンバランスを是正する、そういうことをやっておるんだというお話でありますが、それじゃ今年度の社会保障費の国家予算の総額、つまり財政規模に対する比率、これが一番大きな問題になる。絶対額は、予算の規模はふえたのでありますから、これは当然ふえるでしょう。それからいろいろの単価の引き上げがあるのでありますから、ふえるのは当りまえ、自然増なんです。こんなものは問題にならぬ。ところが、そうしたあなたの今のお言葉とは——三十三年度のしばしば予算審議の中でも論議されましたように減っておるわけです。これは私のうろ覚えだが、たしか一二%から一〇%近くにこれは下っている、社会保障費が。そうしますと、アンバランスはむしろこれはもっと何ですね、神武景気の続いていた時代よりもっとこれは拡大されていくということになりませんか。これは重大問題じゃありませんか。今のお話だと、一応話だけ聞いておれば、数字をあげてやっていけば、絶対額だけ見ていけば、社会保障費はふえている、そのほかいろいろの施策の上ではちょびちょびふえている、これは自然増にすぎない。しかし総ワク——国家予算の総ワクとの対比においてこれは減っておる。こういうことになりますと、あなたのお言葉の裏づけというものはないということになる。反対にもっとこれはアンバランスは拡大されるということにならざるを得ないのであります。これはどうなんでしょう、こういう点は。そうすると三十一年度決算審議して、そうして過去における業績の不始末があった、こういうことについて、ここで大きく反省して、これを新しいやはり財正金融政策の中にはっきりこれは適用して、そうしてそのようなこの正しくないものを是正するというところにこそ、やはり論議の焦点がなけりゃならぬとこう考えますが、どうもここのところが違ってきていると思いますが、ここのところはどうですか。
  73. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) いや、社会保障費も三十三年度は千二百五十七億に上りまして、昨年度の千百五十五億に比べると約百二億はふえておるわけであります。むろん、こういうふうなふえ方をもって満足をしておるというわけではございません。ございませんが、この三十三年度予算については、すでに基本構想でも明らかにいたしておりますように、歳出を千億のうちにとどめる、これは経済との関係において作業することが妥当であるという見地に基いて、千億というワクを作ったのでありまするが、それで見ると、この当然増というようなものを実際差し引いてみると、新規の政策費として使える金額は大きいものではないのであります。それを、国の政治を行う上において、比較的重点を考えつつ各方面にこれを配分するといたしますれば、なかなかそう思うようにもいかなかった点も御了承を願いたいと思います。それにもかかわらず約一割は社会保障関係の費用を増額しておるというとこりは御了承願いたいと私は考えております。
  74. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、その絶対額がふえていることは私先ほどから申し上げました通り認めておる。しかしこれは、予算総額との関連において、やはり性格としては大きな問題になってくると思う。必要があってそれだけのワクをふやしたのであるから、そのワクにおけるパーセンテージはどうだという問題が、非常に性格を決定する上において重要なものとなってくる。従って、先ほどからの高原景気、神武景気というようなことが言われてきました時代に行われた政策の不十分さ、そして、ことに金融引き締め政策の立ちおくれ、そういうことによって、そのしわが最近の三十三年度の政策までずっと持ち越され、それが現実的には多くの国民生活の破綻になっておる。一方ではとにかくこれは破産者も倒産者も出ておる。最近失業者が非常にふえておる。失業者は、政府の統計でさえも、これはふやさざるを得ない、それに対する対策をせざるを得ない、こういうふうな形になっておるのであります。これをもっと、やはりはっきり吸収できるような政策が望ましいのでありますが、それができていないという形、そこにやはり問題があるのではないかと思います。しかしこれは、論議になりますからこれでやめますけれども、とにかく決算委員会の論議というものは、そういう政策的な論議をやはりここで一つはっきりして、こういうようなものについて、政府の今後の施政に対してやはり反省を与えるということが、非常に実は重要な課題なんです。そういう政策論議をやらないと、そうして不当事項そのものだけを、表面だけなぜてもこれはしようがない。不当事項そのものをなぜると同時に、このような基本的な政策と関連して、初めて私は意味を持ってくるのだ、こういうような観点から、非常にこれは私はしろうとであるから不十分であったのでありますけれども、こういう点を今後やっていただきたいと思います。  どうも先ほど申し上げましたように、きょうは出席が悪くて、しかも総括質問の中で、こういうりょうりょうたる形で、大蔵大臣も忙しいところを出てもらって、そうしてこの論議が低調であるということは、非常にまずいと思うので、委員長におかれても、将来こういう点を努力してもらいたい。決算委員会運営の面においても、一つの方向をはっきり考えていただいて、今後運営されることをお願いして、私は終ります。
  75. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 別に御発言もなければ、以上をもって総括的質疑は終了したものとすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めて、さように決定いたします。  次回は明後日四日、午後二時から昭和三十年度決算の討論、採決を行います。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時四十三分散会