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1958-02-13 第28回国会 参議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十三日(木曜日)    午前十時四十八分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     寺本 広作君    理事            井上 清一君            鶴見 祐輔君            曾祢  益君            石黒 忠篤君    委員            笹森 順造君            杉原 荒太君            苫米地英俊君            永野  護君            野村吉三郎君            岡田 宗司君            羽生 三七君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    外務政務次官  松本 瀧藏君    外務大臣官房長 田付 景一君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省欧亜局長 金山 政英君    外務省経済局長 牛場 信彦君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省国際協力    局長      宮崎  章君    外務省情報文化    局長      近藤 晋一君    外務省移住局長 内田 藤雄君    運輸省海運局長 粟澤 一男君   事務局側    常任委員会専門    員       渡邊 信雄君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○在外公館名称及び位置を定める法  律等の一部を改正する法律案内閣  送付、予備審査) ○日本国パキスタンとの間の文化協  定の締結について承認を求めるの件  (内閣提出) ○日本国エティオピアとの間の友好  条約締結について承認を求めるの  件(内閣提出) ○政府間海事協議機関条約締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出) ○国際情勢等に関する調査の件  (北洋近海漁業安全操業日ソ平  和条約締結問題に関する件)   ―――――――――――――
  2. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) それではただいまから外務委員会を開会いたします。  本日は最初に、在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案予備審査)を議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。
  3. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) 在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  御承知通りエジプト及びシリア共和国大統領は、二月一日カイロにおいて、エジプトシリア両国合併して新たにアラブ連合共和国を結成する旨の共同宣言に調印いたしました。二月五日両国議会はこの統一承認するとともに、暫定憲法を採択し、二月二十一日統一承認及び新大統領選出のための国民投票が行われることとなりました。国民投票の結果直ちに、エジプト及びシリア両国は消滅し、アラブ連合共和国が正式に成立たす次第であります。  わが国は戦後エジプトシリア両国外交関係を樹立して以来、エジプトには大使館を、シリアには公使館を開設し、政治、経済及び文化諸般の分野にわたり終始友好関係を維持してきたほか、国際連合においてもこれら両国と緊密に協力してきた次第でありますが、今般両国アラブ民族の大同団結を目ざす共通の理想達成の先駆として完全に合併し、単一国家を形成することとなりますについては、今後も不断の友好関係を保持いたしますため、アラブ連合共和国正式成立の上は、直ちにこれを承認する方針であります。  しかるに、ただいま申し上げました通りわが国は現在エジプトカイロには大使館シリアダマスカスには公使館を置いておりますが、新国家が正式に成立し、わが国がこれを承認しました際は、直ちにこれを切りかえる措置を講ずる必要がある次第であります。すなわち、在エジプト日本国大使館及び在シリア日本国公使館は、新国家成立と同時にエジプトシリア両国が消滅いたします関係上、対外的にはその地位を失うこととなる次第でありまして、このような事態に対処いたしますため、アラブ連合共和国が成立し、わが国がこれを承認いたしましたときをもちまして、カイロに在アラブ連合共和国日本国大使館を置き、ダマスカスに在ダマスカス日本国総領事館を置く必要があるのであります。  このように、現在わが方の在外公館を置いてある国が消滅して新しい国が生まれ、在外公館を直ちに切りかえるという異例の必要がありますので、あらかじめ法制上の準備を整えておきますため、この法律案を提出する次第であります。  以上が、この在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案提案理由であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御採択あられんことをお願いいたします。
  4. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) これより本案の質疑に入ります。  質疑のおありの方は順次御発言をお願いいたします。
  5. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 ちょっとお尋ねいたしますが、この新しいアラブ連合共和国ができたということのこの改正法律案でありますが、これは今の新聞等によりますと、まだほかにもあるいはイエーメンが入るかもしれない、それからまた、将来ヨルダンイラク一緒になるかもしれない、あるいはサウジアラビヤが入るような話がありますから、一つ先例になると思いますのでお伺いしておきたいのでありますが、今これで法律改正だけはわかりましたが、従って予算措置はこれでどういうふうに変りますか、俸給のあれだけは出ておりますが、大体お話しいただきたい。
  6. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) 官房長説明いたさせます。
  7. 田付景一

    政府委員田付景一君) このシリアエジプト大使館公使館が今置かれておりますが、これがアラブ連合共和国になりますと、カイロ連合共和国に対する大使館ができまして、ダマスカス総領事館ができるわけでありますから、その結果、予算的には何らの措置を講じないでもよろしい。今までのように、エジプト大使館費用が今度はカイロにあります費用になるわけであります。シリアにあります公使館の方の費用が大体総領事館費用としていく、これは継承されていくというふうになっております。
  8. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 今までの大使館俸給と将来の総領事館費用は大体同じというお話でありますが、今後もこういうことが起ってくると、大体これが先例になりますか。
  9. 田付景一

    政府委員田付景一君) 先例になると思います。
  10. 岡田宗司

    岡田宗司君 この説明のうちで、「新国家が正式に成立し、わが国がこれを承認しました際は、直ちにこれを切りかえる措置を講ずる必要がある次第であります。」と言われたのでありますが、この新たなる連合国家ができまして、わが国がこれを承認するというのは、一体いつごろになるのか。また、そのことについて、向うから承認を求められてからするものなのか、あるいは進んでするものなのか、その手続等についてまず伺いたい。
  11. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) すでに承認を求めてきておるのでありまするが、二十一日の国民投票が終りまして、二十二日にはぜひ一つこれを受けてもらいたいという向うからの申入れでございます。従ってできましたならば、それまでにすべて準備を整えまして、二十二日には一つこういう形に持っていきたいというのがわれわれの考えでございます。
  12. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから今度新しい国家になりましてから、大使館エジプトに置き、ダマスカス総領事館を置くことになりますが、その規模ですね。エジプト大使館規模、並びにシリア総領事館規模は従来のものをそのままあてるのか、あるいは新しい国家になり、特にアラブ諸国のうちにおける今度の新しい国家重要性にかんがみて、近い将来においてエジプト大使館規模を大きくするかどうか、そういう点について。
  13. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) 多少カイロに置きまする大使館人員を補充しなければならないかとも思うのでありますが、これはダマスカスに置きまする総領事館と両方合せまして調整できまするならばそうしたいと思いますし、必要がありますならば、さらに人員の補充をしたいという考えでございます。
  14. 岡田宗司

    岡田宗司君 この両国合併によりまして、従来、シリア並びエジプトとの間の貿易関係その他において別であったので、それと違った関係が生じたと思いますが、一緒になりましてからあと一つの国になりますから、関税等一つになりましょうし、その他の諸経費関係においても、従来別々のときと違った面が出てくると思います。それらに対してどういうふうになってくるのか、また、それらに対してこちらとしてはどういうふうに対処していくのか。
  15. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) 合併によりましていろいろな前例ができるわけでありまするが、国によりましてその措置はいろいろ違っておるようでございます。ある国におきましては、自動的に二十二日にすぐ大使館に切りかえる・国会の承認とかそういうことなしで、行政権内でやっている国もございます。ただいま岡田委員の御質問の要旨は、たとえばこのシリア協定を結んでおりますが、それがどうなるかということだと思いますが、これは一応向う解釈は、シリアと結んだ協定は、新しい国家になりましても効力があるようにしてもらいたいということを向うから申し出ておるのであります。まだ不明の点も若干ございますが、たとえば、どういう国がこれに加わるかという問題もございますが、一応これをユナイテッド・アラブ・リパブリックと申しておりますが、中には、王国がまたこれに加わるという可能性もございますので、いろいろとまだ問題が残っておるようでございまするが、他の国の措置等もいろいろ参酌いたしまして歩調を合していきたい、こういう工合に考えております。
  16. 曾禰益

    曾祢益君 今岡田委員が触れられた問題なんですが、新国家ができるに当っては、当然旧国家、つまり新国家構成分子であるエジプトシリア日本とのいろいろな条約上の権利義務あるいは貿易その他から起ってくる債権国民としての債権の問題、債務の問題等の新国家による継承といいますか、そういういろいろな問題が起っていることと思うのです。そこで、今大体政務次官からのお話で、おそらく新国家としては、旧構成分子であったシリアエジプト日本との間の条約、その他の権利義務は、新国家が継承するということになっていると思うのです。新国家イエーメンが入るとか入らないということは別として、基本方針、それはやっぱりはっきりと、承認の前にあらかじめ外交機関を通じてはっきりとされておかなければならない、されておると思うのですが、たとえば、どういう条約がはっきりこれは継承される、これは別だというようなことがはっきりしているのかどうか、それらの外交交渉がどういうふうに行われているのか、くわしく御説明願いたい。
  17. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) ただいま曾祢委員質問の中にもありましたごとく、先方意向といたしましては、今日までの権利義務をそのまま継承したいという強い意向でございます。なお、こまかい点に関しましては、政府委員より御答弁させます。
  18. 田付景一

    政府委員田付景一君) 今われわれがこの両国との間にやっております協定は、シリア貿易協定がございます。エジプト文化協定がございます。この点につきましては、すでに継承するかどうかを確かめましたところが、シリアにおいてもエジプトにおいても、いずれも今までの協定をそのまま引き継ぐ、ことに貿易協定になりますと、シリアだけの地域において依然として貿易協定が有効になっておることになっております。なお、両者が合併いたしましてからどういう経済体制を作るかということは、まだ両国の間においても十分に検討されておりませんので、その後、十分検討されてからどういう措置をとるかということを向うがきめるだろうと思います。ただし、暫定憲法には、すでに両国家権利義務というものは、当然今度の新しい国に引き継がれるという規定があります。
  19. 曾禰益

    曾祢益君 そうすると、実際問題としては、シリアとの貿易協定、それからエジプトとの文化協定、これ以外に二国間の条約等がないのですか。
  20. 牛場信彦

    政府委員牛場信彦君) ただいま官房長が申し上げましたもののほかに、エジプトとの支払協定がございます。これはオープン・アカウントでございます。
  21. 曾禰益

    曾祢益君 そうすると、それもエジプト地域・に関しては一応残っている。しかし、新国家承認したら、そういうものを含めて、全統一国家地域にどういうふうにこれをやっていくかということについてはあらためて話をする。エジプトとの支払協定も存続している、こういう解釈をとっているのですか。
  22. 田付景一

    政府委員田付景一君) その通りであります。
  23. 曾禰益

    曾祢益君 これも鶴見委員が触れられた点に関連するのですが、このアラブ諸国のまあ統合ということが、一つアラブ民族的な悲願だと思うのです。そこで、今度のシリアエジプト合併というものが、一体全アラブ統一という問題にいかなる影響を与えるか、その一部の現われであることは問題ないのですが、しかし、何といってもイエーメンが加わる問題についても、王国共和国という問題も起っているし、いわんやアラブの中における国々外交路線違い等関係から、統一が、全面的統一に対してはかえってむずかしい条件ができるやにも思われる。逆に、伝えられているすでにヨルダンイラクとの合併とか、あるいは統合とか、さらにサウジ・アラビアの問題とか、いろいろな、かえって逆の現象と言っては語弊があるかもしれないけれども、複数的な統合の傾向をたどるかもしれないというふうに思われていますが、全アラブに対する外交政策というのは、別にむずかしい問題をはっきりここで伺おうというのじゃないのですが、一体外務省見通しとしては、この問題の発展、全アラブ統一に対する影響、他のアラブ諸国動向等をいかにキャッチしておられるか、一つ教えていただきたいと思う。
  24. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) ただいま曾祢委員質問通り、確かに見通し等につきましてはこんとんとしたものがございます。綿密に情報の収集並びに出先の公館に指令をいたしまして、いろいろな事柄を検討さして報告をさしておりまするが、大体アラブの連盟に加盟する資格と申しましょうか、アラブ・グループの国は九カ国というようにわれわれ考えておりますが、先ほどの御質問の中にありましたごとく、共和国王国、いろいろ複雑多岐であり、また、外交路線も仰せのごとく変った面がございますので、これがとう進展していくかということに対して、はっきりした見通しを今つけるまだ段階に至っていないということは事実でございます。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 ちょっと関連して。  今度のエジプトシリア連合ということは、これはイスラエルにとっては非常な脅威をなすものだと思うのです。従来のイスラエルエジプト関係イスラエルシリア関係から見まして、あるいは再び緊張が起らぬとも限らないような情勢だと思うのですが、日本イスラエルとも公使を交換し、経済関係もありますししておりますが、特にそのイスラエル日本との関係について、あるいはまた、そのことが今度の新しい国家ができたためにいろいろなむずかしい関係になるようなことはないのですか。その点について、たとえば、イスラエルの方では、今度の二つ合併はもちろん喜ばないのだろうが、これに対して何か日本と気まずいようなこと、いろいろなことが起りはしないかと思うこともあるのですが、そういう点、どうでしょうか。
  26. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) いろいろとアラブ諸国をめぐりまして経済的に、外交的に、軍事的に微妙な動きがあることは御承知通りであります。日本といたしましては、もちろんこれらの紛争等あたりに巻き込まれないように平和外交を堅持して進んでおります建前上、特にイスラエルエジプトシリア合併との関係において起りますところの問題について、ことさら日本に直接影響を及ぼすようなことは、目下のところございません。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえば、イスラエルから日本に兵器その他軍需品を注文してきておるというようなことはないのですか。
  28. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) イスラエルからは何ら今そういう事実を、あるという事実を私は聞いておりません。
  29. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 お尋ねいたしますが、今エジプトシリア一緒になったアラブ共和国ができ、日本がさっそくこれを承認する、これはけっこうなことだと思います。  そこで一つお伺いしたいのですが、よその国々がどういう態度をとるか、日本と同じように即刻承認するか、あるいは承認をしぶる国があるかどうか。また、将来この問題につきましては、いろいろ微妙な関係国際間に生ずると思いますので、外務省の御意見というのじゃなくて、情報でよろしゅうございますから、どういう関係になっておるか、また、将来起り得るほかの問題について大体列国がどういう立場にあると情報を得ておられますか、お伺いしたい。
  30. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) こまかい情報につきましては、政府委員に答弁させますが、ただいま鶴見先生のおっしゃったように、いろいろ動きは活発でございまするが、即刻自動的に承認したいという国もあれば、これを奨励しておる国もあり、中には成り行きを見守っている国もありますが、こまかい点につきましては政府委員から。
  31. 金山政英

    政府委員金山政英君) この各国の態度につきましては、その態度外務省として情報を集めております。アラブ諸国が率先してこれを承認する態度をとるということは、これは明らかであると思います。また、東南アジア諸国もこれに追従することは明らかであります。ヨーロッパの諸国アメリカ即時承認態度をとっておるものもありますけれども、しばらく成り行きを見守るという態度をとっている国、たとえばイギリスのごときがあります。
  32. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 これが、今の二つだけの国でありますれば割合に簡単だと思いますけれども、将来アフリカのほかの国々が、たとえばチュニジアがフランスから離れて独立しようという場合には、日本として非常に微妙な外交関係に立つようになると思いますので、今イギリスの問題だけをお話がございましたけれども、ソ連とかアメリカ意向というものがどうなっているかおわかりでしたらお伺いしたいと思います。
  33. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) チュニジアの問題は、国連にこの問題を提訴するというような問題もありまして、非常に微妙でございまするが、目下のところ、チュニジア並びにモロッコはこのブロックからちょっとはずれておりますので、当面これが合併の中には加わらないだろうと、こう考えております。
  34. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 ソ連イギリス関係おわかりでしたら。
  35. 金山政英

    政府委員金山政英君) アメリカ承認する方向に向っております。ソビエト態度は明らかでありません。
  36. 曾禰益

    曾祢益君 今の御質問にも触れられていた点ですが、結局これは、新国家外交路線がどうであるかということにかかわらず、一応承認すべきものであろうと、これがアジアアラブの大勢でもあるし、日本政府外交方針もまさにそうだろうと思います。これはいいのですが、ただこの問題に関連して、まあ伝えられておったようなシリアの実質的な共産化、あるいはソビエト連邦に対する衛星国化というふうに、これはどの程度か真相はわかりませんけれども、そういう問題はどうですね。今度の連邦合併との関係、従って、この連邦した国の外交路線をどういうふうに見ておられるか。いわゆる積極的共存というナセル大統領が言っておった方向ですね。これはどちらの陣営にもつかないで、そしていわゆるアラブ積極的共存というか、積極的中立というか、こういう方面に向けての意味の方が大きいと、こう見るのかどうか。これはやはり非常に重要な問題でありますので、それを伺いたいのです。そうしてそのことは、ちょっと岡田君が触れられた武器問題等についても、これはやはり日本外交方針としても、アラブ連邦あるいは統一はけっこうだけれども、アラブイスラエルとの問題は、やはりこれは平和的に、建設的な方向で処理してほしいと、あるいは全アラブ地帯というものが米ソパワーポリテックス道具に使われたり、大国から武器が入っていったりするようなことは望ましくない、そうでなくて、アラブアラブとしての立場を守りながら強くなって、そして一種中立ベルトという言葉がいいかどうか知りませんけれども、そういう方向に行く方が日本政府としても好ましい、それが世界平和にもプラスなんだ、こういうような考えがあると思うのですが、そういう点についての政府の大まかな方向をお知らせ願いたいと思います。
  37. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) 大体、このアラブ連合共和国外交路線といたしましては、共産国に偏せず、西欧陣営に偏せず、中立態度をとっていきたいという線が強く浮び上っております。たとえば、共産党の活動に関しましても、団体としてはこれを認めないというので、われわれのキャッチしております情報では、共産党のリーダーが今亡命したとかいうようなニュースも入っております。そういったところから総合いたしますると、やはりこの中立態度を堅持していきたいというのが彼らの外交政策ではないかと、こう思います。もちろん、われわれといたしましても、これが一種爆発基点になりまして、また、世界の混乱を招くようなことがないように、ぜひしてもらいたいという気持は、お互いに持っている次第でございます。
  38. 曾禰益

    曾祢益君 大体わかりましたけれども、もしお答えが願えるのならば、つまり、そういったような積極的共存といいますか、中立ベルトというか、そういうアラブの行き方、大国パワーポリテックスの材料になったり、軍事ブロック道具になるような武器の供給とか売り込みとかいうことがいいのじゃないかと、そういうようなことでなく、アラブが育っていくということを希望するという積極的な意図をお持ちであるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  39. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) 全く、曾祢委員の今の考えと同じような考えをわれわれ持っております。
  40. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止
  41. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記を起して。
  42. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 今のエジプトシリアの問題でありますが、友好条約とか、もう一つ通商貿易協定ですか、この二つ普通一般の取りきめでありますからよろしゅうございますが、今、日本がペルシャ湾の中で得た石油開発権の問題が含まれるような国の主権の移動が起ったような場合には、これは現実の日本利害と非常に密接に結びついております。それからまた、よその国の利害と衝突することもあり得ると思いますので、私はお伺いするのでありますが、将来こういう問題が突発的に起るようなこともあり得ると思うので、なおこういうような問題については、非常に慎重な態度をおとりいただいて、ことに日本の世論が納得するような、一般国民に知らせるような方法でお進めを願いたいと思います。
  43. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) ただいまの御意見を十分尊重してわれわれ対処いたしたいと思います。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 先ほど来お話のあったエジプトシリア両国統合前における日本両国との間に結ばれておった条約とか協定をそのまま引き継ぐという場合、それはそうあるべきだということなんですか、今まで何かそういうことで先方と話し合われてそうなるということからおっしゃっておるのですか、その辺はどうなんですか。
  45. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) 先方からもそういう強い意思表示がごさいましたのと、暫定憲法の中にもそういう取りきめがしてあるという根拠に基きまして、われわれそういう方向に進んでおる次第でございます。
  46. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止
  47. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記を起して下さい。  ただいま議題となっております在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案に対する質疑は、本日のところこれで終ります。   ―――――――――――――
  48. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 次に、日本国パキスタンとの間の文化協定締結について承認を求めるの件、日本国エティオピアとの間の友好条約締結について承認を求めるの件、政府間海事協議機関条約締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題といたします。この二件につきましては、先般提案理由説明を聴取いたしておりますので、これから直ちに質疑に入ります。質疑のおありの方は順次御発言をお願いいたします。
  49. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 このパキスタンとの文化協定についてお尋ねいたしますが、今文化協定につきましては、予算措置があるものもあり、ないものもあると思うのですが、その点、せっかく文化協定ができたのなら、それに対する予算を明確になさって、こういう仕事をするということが同時に出てくるのが望ましいことだと思いますが、まあパキスタンであれば、これは主としてフイフイ教の国でございましょうが、今まで仏教国との間には、つまり釈尊の誕生二千五百年を機としてその予算ができておるようでありますが、それはもし、仏教だけについてそういう予算ができておる、これから友好関係に入る回教徒国との間についてはそういう予算がないということでありますと、そのつり合いを得ないようなことにも考えられますが、その回教徒の国であるパキスタンとの文化協定を結ぶ場合に、何か特別に予算措置でもおとりになっていらっしゃいますか、いかがでありますか。
  50. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) 今年の予算折衝の過程におきまして、こういう文化協定に伴うところの予算の獲得というもの、獲得という言葉はよくないかもしれませんが、折衝というものは、非常に困難でありまして、しかしながら、ある程度の弾力性を持ってこの予算をわれわれ最後にまとめることができたのでありますが、当面の問題といたしまして、パキスタン文化協定締結が成立いたしましても、大きなこれという金額を必要といたしませんが、この協定に基きまして、将来いろいろなことが発展するだろうと思います。その場合に、予算措置が必要であり、また、立法措置が必要である場合には、早急にその手続をとりたい、こう考えております。  それから次の第二点でありますが、今度仏教文化会議というものが開かれる、これには予算措置がしてあるではないか、その他の宗教関係と申しますか、他の国のこういう問題に関するところの予算措置というものはないのではないかという御質問ではなかったかと思いまするが、もちろんこれは全部われわれの希望通りにはいかなかったのでございまするが、主として仏教国であるところの東南アジア諸国、かなりの数に上りまするが、この仏教国を中心といたしまして、とりあえず外交の重点政策の一つであるところの東南アジアの文化問題をいろいろと促進していきたいというところから、今提唱のこの仏教文化会議の補助金を取ったわけでございまするが、今後ともできる限り、一つ予算措置ができまするならば積極的に推進していきたい、こういう考えでおります。
  51. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 もう少し具体的に、何かこういうことをしてみたいというお考えはありますか。ことに回教徒の国との文化協定は、まあエジプト等もあるのですが……。
  52. 近藤晋一

    政府委員(近藤晋一君) ただいまの鶴見委員の御質問でございますが、政務次官が答弁されましたように、本年度の予算の折衝過程におきましては、文化協定をすでに作ってありますものに基いて、それぞれの国との間の文化交流を進めるために必要な、文化協定実施に要する経費というものを要求したりでありますが、これが遺憾ながら、われわれの努力も十分でなかったせいもございましょうが、実は通らなかったのであります。パキスタンとの文化協定、ただいま御審議になっておりますか、特にこのパキスタンとの文化協定を実施するための経費は予算上計上されておりません。その他のすでに実施せられております文化協定につきましても同じことでございますが、はなはだ軽少でございまして、今年度の国際人化交流に関する経費は約五千六百万円でございますが、その乏しい中からでも、できる限りの文化交流を実施して参りたいと思いますし、また、それで不十分な場合は、昨年度もそうでございましたが、一部報償費から流用いたしまして文化交流を進めて参りたいと、こう考えております。
  53. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 私がこれをお尋ねいたしますわけは、従来われわれは、キリスト教文化を持った国とか、仏教文化を持った国との間には、文化交流は非常にいろいろの形で行われておると思いますが、この東南アジアからアフリカにかけての最大の勢力である回教徒文化との交流は、具体的にはほとんど建設的なものは見るべきものができていない。これは東南アジアあるいはアフリカのナショナリズムと結びついて非常に重大な問題でありますから、この点をどうぞ、将来具体的な案を持って、思い切った予算措算をされて、名実ともに文化の交流ができるような方針を立てていただきたいと思うのでありますが、いかがでございますか。
  54. 近藤晋一

    政府委員(近藤晋一君) ただいまの鶴見委員の御説は、まさにその通りでございまして、われわれとしても、今後仰せのごとく方針を立て、また、着実な計画を立てて、それに伴う予算措置をいたしたいと思います。昨年末、今仰せのありました回教徒諸国との文化交流の重要性にかんがみまして、外務省参与の楠山氏を中近東に派遣いたしまして、これらの中近東諸国との具体的な文化交流の実施の可能性につきまして調査をしておりまして、最近帰国される予定になっておりまするので、その意見等も徴しまして、ただいまも仰せのありましたような具体的な案を作って、実施に移して参りたいと、こう考えております。
  55. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 それで、私のお願いしたいことは、文化交流の基本になる言葉の問題でありますが、われわれが今まで回教徒の国の言葉については、非常にこれを等閑に付していた感がありますので、文化交流という抽象的なことでなく、具体的な言葉の研究についても適切な措置をとっていただきたいと、かように思っております。
  56. 曾禰益

    曾祢益君 外務大臣が来られたので、きのうから問題になっておるソ連との沿海漁業の操業安全等の問題についていろいろ重要な発言もあったようですから、まあ質問をしたい委員もおありだろうと思いますが、まず外務大臣からでも御説明願ったらよいのではないかと思います。
  57. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止
  58. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記を起して下さい。  ただいま議題となっております承認を求めるの件三件についての質疑は、本日のところこれで打ち切ります。   ―――――――――――――
  59. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 藤山外務大臣が出席されております。問題になっております日ソ漁業交渉にからまる平和条約締結問題について質疑のあります方は、どうぞ質疑をお願いいたします。
  60. 岡田宗司

    岡田宗司君 質疑の前に、ソ連の方からそういう申し入れがあったことについて、そのいきさつ並びにソ連の方の提案の内容等について、外務大臣の方から一つこの委員会に御説明を願いたいと思います。それに基いて私どもは質問をやると、こういうわけです。
  61. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記をとめて。   〔速記中止
  62. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記を起して百下さい。
  63. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 御説明を申し上げたいのですが、ただ、いろいろどうも題目がごちゃごちゃになっているようなので、日ソ漁業交渉と、近海の操業の安全に関する問題と、二つに分れておるわけです。今回関連してきましたものは、近海の漁業の安全操業に関する交渉に関して出てきたもので、いろいろ日ソ漁業交渉に伴って出てきた問題ではないのであります。まあ全然関連しないとは申しませんが、そういうことを御承知いただきたいと思います。  昨年の六月三日に、門脇大使が、グロムイコ・ソ連外相を訪問した際、日本の零細漁民が、あの辺で操業をしますことは、非常に零細漁民の生活権の上からいきましても必要であるわけであります。そういう意味で、歯舞、色丹、国後、択捉、千島諸島の周辺の水域で、何らかの形でもって安全に操業できるような方法をお互いに協議をしたいということを申し入れたわけであります。その後、ソ連側の意向としては、大体そういう協議をやってもよろしいというような、数次にわたるいろいろな事務的な会談その他を通じての話し合いからきたものであります。そこで八月二十九日に、日本としては、日本の案を具して、ソ連側に手渡しました。こういう基礎のもとに話し合いを進めたいということで、ソ連側はこれを受け取りまして、十分検討した上で御返事をしようということであったわけであります。その後、引き続き督促をいたしておりますが、まだ検討中だという返事をいたしておったわけであります。ところが、十二月の中ごろになりまして、来たるべき日ソ漁業交渉の際に、この問題もあわせてやったらどうだというような意見も、こちらが早く近海安全操業についての交渉をやりたいということに対する返事のおくれております言いわけとわれわれは考えたわけであります。言いわけにあわせて、そういうような意見を申し述べておるわけであります。われわれの方は、冒頭に申しましたように、日ソの漁業会議と、これとは性格も違うものでもあり、従ってその際にあわせて論議することが、必ずしも適当であるとは思えない。これはこれで引き離してやってもらいたいということを申し入れて、わが方の意見として申しておりました。その催促をしておりましたところが、御承知のように、二月五日にイシコフ漁業相が、この問題は平和条約と関連があり、また、平和条約ができれば解決しやすい問題であるという意味を申し伝えてきまして、従って、この問題だけを今やるような意思のないことを表明したわけであります。これはイシコフ漁業相のことでありますので、門脇大使が、越えて二月七日に、外務次官の所に出まして、そしてソ連としてはそういう考え方なのか、イシコフ国務相の話を、ソ連の外相としての考え方としてとっておるということを確認に行ったわけであります。その通りであるという確認を得たわけであります。確認されたとわれわれは思っております。従って今後どういうふうに安全操業の問題を扱っていくかということが新しい期待として起ってきております。  大づかみの経過は以上のようなものであります。日にち等、その他こまかい点を必要としますれば、事務当局から御説明をいたさせます。
  64. 金山政英

    政府委員金山政英君) あるいはこの交渉を日本側が提起いたしました経緯をまずお話しすることが大事だと思います。この問題は、まずわが方の漁船、特に零細漁民の持っております小漁船が、千島近海及び樺太の南部において、しばしばソ連側によって拿捕されて抑留されるという事態が起っておりまして、それに対して政府はそのたびにこれに抗議をし、その漁夫並びに漁船の返還を要求していた次第であります。こういう事態が続くことははなはだ遺憾であるという建前から、実際上この問題を解決したい、領海の問題、ソ連側が十二海里を主張しており、わが方は三海里を主張しているというこの事態を、根本的な主張の問題は別にいたしまして、実際上この問題を解決したい、そういう意図から始めたものであるということをまず御了解願いたいと思います。当方がまずこの問題を取り上げましたのは、先ほど大臣が申し上げられましたように、六月の三日でございます。この問題について、なかなか先方から回答が参らなかった次第でありますが、数次にわたって六月二十一日以来ただびたび督促をいたしましたが、八月十八日に至りまして、ソビエト側からこういう返事が参っております。これはこの問題に対するソビエト側の最初の意思表示であります。日本政府の要請を考慮して、かつ日ソ間の善隣友好関係を発展させることの利益にかんがみて、日本側の覚書に掲げられている若干の地域ソ連領域における漁獲及び海産物の採取問題について、日本側と交液に入る用意がある、ということを口上書をもって先方は回答して参りました。こういう回答が参りましたので、わが方は、さっそくわが方の日本側としての近海安全操業に関する考え方を、書きものにして先方に通達した次第であります。この期日は八月二十九日であります。もう一つ申し上げておきたいのは、初めの日本側の提案は千島の近海ということでありました。それは先ほど申し上げたように、漁船の拿捕事件が千島近海において頻繁に起っていたためでございます。その後、南樺太の漁船の拿捕事件が亜庭湾の問題とか、いろいろな形において頻発するようになりましたので、さらに南樺太も含めて四十八度線以南の樺太を加えた地域、すなわち近海操業を目的としておりますので、北の方の千島はこれから除外いたしまして、日本政府は具体的な案を先方に提出したわけであります。その後、回答が来ることを待っていたのでありますが、全然回答が参りません。それで十数回にわたりまして東京及び、特にモスクワにおいて先方の回答を督促していた次第であります。この間、ソビエト側の回答はいつももう少し待ってくれ、現地へらの報告も待っているし、いろいろの関係でまだ結論が出ないから待ってくれ、最近に至りましては、もう数日、いうようなことも言っていた次第でもります。先般クルジュコフ極東部長が参りましたときも、もうすでにソビエト側としては、この日本の対案の研究を了してすでに具体的にソビエト側の案ができているはずだから、まだ回答がこないのはおかしいというようなことさえも言っていた次第であります。その後もたびたび督促を繰り返していたのでありますが、先般の漁業交渉の開始の直前に至りまして、先ほど大臣が御説明になりました通り、この漁業委員会の中においてこの問題を取り上げたらどうかというお話が出てきました。ところが、この北西太平洋の漁業に関する日ソの条約というものは、御承知のように、領海の問題を除くといて書あります。もちろんわが方としてはソビエト側が十二海里主張しているということを知っております。わが方としてはもちろんこれは公海というのを主張しているのでありまして、別に支障はないわけでありますが、従来のソビエトの主張からいってもこのソビエト側の言い分は少しおかしいじゃないか。また、この条約では、サケ、マス等の魚種を指定した条約でありまして、その条約委員会の内部においてこういう問題を取り上げるのは適当じゃ、ないじゃないかという趣旨を先方に伝えたわけであります。それに対しては何ら回答がないままに二月五日のソビエト側の意思表示まで、このわが方の見解の表示に対しては何らの回答がなかったわけであります。そして突如といたしまして二月五日に至りまして、先方がゴスフランの漁業部長であるイシコフ代表を通じてソビエト側の見解を表明してきた次第であります。この経緯につきましては、詳細、情報文化局長談の形において発表した通りであります。また、先方の一答の内容は逐一そのまま発表いたしてございますので、御承知であると思います。
  65. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうもソ連がこちら側から安全操業についての交渉を持ち出したに対していつまでも答えをせず、合同突如平和条約締結と関連のある問題であるというような態度でそれと一緒に議するということを言ってきましたことは、私ども少々不可解な点があると思うのであります。しかし、まあ向うはそういう態度で来ているわけでありまして、従って、この平和条約締結という問題がとにかく具体的に問題にされてきたわけなんであります。  まずお伺いしたいのは、この問題について、つまり安全操業の問題について、外務大臣は平和条約と関連さしてこの問題を議する、協議するという態度をおとりになるのか、この問題は平和条約と別個に、安全操業の問題は、従来の経緯にかんがみて別個に、まず当面の問題として両国間でもって話し合いをするということに御方針をおとりになるのか、いずれかということをまずお伺いしたいのであります。
  66. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 私といたしましては、安全操業の問題は、今日までただいま御報告申し上げましたようないきさつもありますし、また、日本の北洋零細漁民の生活の問題でもありますので、この問題はこの問題として、引き続き別個に話し合いを進めてもらいたいということを強く向う側に申し入れて参りたいと、こう考えておるわけであります。
  67. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし、まあ向うが二度にわたってはっきり平和条約締結と関連のある問題として、という態度をとって参りましたので、これはなかなかこちらから分離してこれだけ先にやれということはむずかしい問題だろうと思うのであります。そうすると、この問題と平和条約締結の問題とはあるいは切り離してやるにしても、並行してやらなければならぬという問題も起ってくるかと思うのでありますが、平和条約締結について、この問題と並行しておやりになるというつもりがあるかどうか。
  68. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 平和条約ソ連締結するということは、これはもう将来当然考えるべきことであり、また、時期さえくれば、今日でも締結をやろうということであります。ただ締結をするために、従来のわが方の主張を放棄するわけにいかぬので、わが方の従来の主張の上に立って締結の交渉を向うが受諾してくれればいつでもやりたい、従って、そういう意味で平和交渉とともにやるという、どうしても安全操業の問題だけを話し合わないということであれば、並行して向うがやりたいというのなら並行してやることもそれは考えて差しつかえないと思います。まだ今日では、私はまず安全操業の問題は従来のいきさつがあるわけでありまして、向う側も口上書をもってわれわれにこれが交渉に応じたい旨回答してきた次第もありますから、それらのことによっても安全操業の問題は別個にやりたいということを申すつもりでおります。
  69. 岡田宗司

    岡田宗司君 平和の締結の交渉について向うの極東部長なりあるいは外務次官が門脇大使に言明されたことは、平和条約締結の交渉を具体的に進めるための何か話がそのうちに含まれていたのかどうか、たとえば、どういう形で進めるとか、いつどこでやるというようなことについて話があったのかどうか。
  70. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) まだそういういつどこでやろうというような具体的な問題には触れておらぬのであります。
  71. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、ただ平和条約締結とこの安全操業の問題の解決とは関係がある、それを関係さして解決すべきものであるという向う意思表示だけにとどまるのですか。
  72. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) さようでございます。
  73. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし、とにかく平和条約締結という問題が出てきたわけなんで、ただいま藤山外務大臣のお話ですと、並行にやるということも考えておられるようでありますが、それに対しましてこちら側としては、平和条約締結を進める準備をされるかどうか。
  74. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 平和条約を作りますことは、共同宣言にもあることでありまして、われわれも常に考えておらなければならぬ問題だと思うわけであります。従って、平和条約に対するわれわれの考え方というものを準備しつつあるということも申し上げられると思いますが、ただ、今申し上げたように、向う側もまだ具体的に何月何日からどういう場所で平和条約の交渉を再開しようということを言ってきたわけでないし、今の岡田さんの御質問のように、平和条約と関連して、あるいは平和条約締結してこの問題をやる方がいいのじゃないかという意思表示ですから、われわれとしてはこの問題は、それよりも別個にぜひやってもらいたいし、また、別個にやる必要もあるのだということを重ねて力説してみたい、こう思っております。
  75. 岡田宗司

    岡田宗司君 平和条約締結につきましては、これが今までにできなかった最大の難関は領土の問題であると思うのであります。この領土の問題につきましては、もちろん私どもは千島の問題等について、あるいは歯舞、色丹の問題等につきまして、われわれとしては合理的な解決を欲しているわけなのでありますが、その点について完全に見解が対立をしているわけであります。これが平和条約締結ができなかったわけのなでありますが、この領土の問題につきまして、政府は従来の通り態度をもっていかれるおつもりであるかと思うのでありますが、その領土の問題について従来と同じことを繰り返しておっては、なかなかこれは、平和条約締結という問題はむずかしい問題であり、また、これとからんでいる安全操業の問題にいたしましても、他の漁業の問題にいたしましても、その他の問題にいたしましても、影響するところがあると思うのであります。この領土の問題について、政府はどういう態度をもって臨まれるのか、非常にかたい態度をもって臨まれるのか、あるいは相当柔軟な態度をもって臨まれるのか、それらの点につきましてお伺いしたい一思います。
  76. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 領土問題に関しましては、従来通り態度をもって終始する、国民世論の声もございます。歯舞、色丹、国後、択捉等に対する従来の主張を曲げないで貫徹していくということを考えております。
  77. 岡田宗司

    岡田宗司君 この従来の主張というものがそのままで主張されました場合に、相当むずかしい問題が将来生ずるだろう、そうしてまた、これがやはり平和条約締結をあるいは妨げる大きな原因になるかもしれないというようなことも、私どもには考えられるのでありますが、これは国民の要望という問題もあり、また、この領土の問題というものは、ただそれだけでなくて、他の領土との関係、たとえば沖繩や小笠原との関係もありますし、また、全般に国際関係とも関係がありまして、ただ国民の要望というだけでは、なかなかこれは貫徹しにくいところがあると思うのであります。そういう際において、政府は単にこの問題をソ連だけとの問題というふうでなく、これらの国際関係等々とにらみ合せまして、たとえば、沖繩や小笠原に対して手を打つということも考えられるのでありますが、そういう点についてはどうでありますか。
  78. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) ソ連に対するわが方の要求は、むろんソ連に対するわが方の要求として私どもは考えておるわけでありまして、それ以上お答えしかねます。
  79. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうなって参りますというと、平和条約締結ということは、相当見通しとしてはむずかしいと思うのでありますが、何かこの平和条約締結について、これが打開できるという、つまりその問題を主張しつつ打開ができるという確信をお持ちになっておるのか。
  80. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 従来の日本の主張についてソ連は十分知っておりますし、また、その国民的感情なり決心なりも知っておるわけなんです。従って、ソ連が何か平和条約締結を問題にしてくる限りにおいては、ソ連がそういう問題についても、ソ連側で考慮があるのかどうか、そういった点はわれわれなお確かめてみないとわからぬわけであります。日本側だけがソ連の言うなりにいろいろ条件を緩和するということは、私は考えられないことだと思います。
  81. 岡田宗司

    岡田宗司君 安全操業の問題について、そうするというと、なかなか解決できない――平和条約締結されるまで解決できないということになりますというと、これは依然として北海道の漁民はいろんな点で苦しまなければならぬわけでありますが、この安全操業の問題を平和条約締結の交渉と切り離してやることについて、政府は交渉されるわけでありますが、その切り離してやるということについて、何か成算をお持ちになって臨み得るのかどうか。
  82. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 先ほど事務的に経過を御報告申し上げた中にもあります通り、この問題についてソ連は、口上書をもって話し合いに応じてもいいということを言ってきておるわけなのでありますから、そういう事態のもとで今日の事態が起ってきたとすれば、重ねてそういう点について、ソ連側の反省を促してみることは、私は必要なことではないかと、こう考えておるのであります。
  83. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういうような交渉は、これは門脇大使をしてモスコーでもって、外務次官なり何なりと交渉をさせるのであるか、あるいはまた、東京で、ソ連の大使との間に交渉されるのか、あるいはこれらの問題について、政府から特別に、たとえば、漁業交渉についてさらに人を出すような場合に、その際に、何か政治的に、そういう点についても話をされるのか、これらの点どういうふうにされるのか。
  84. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 一応門脇大使を通じていろいろな折衝をいたすことが適当だと考えております。
  85. 岡田宗司

    岡田宗司君 この問題とは別な問題でありますが、漁業交渉の問題もかなり難航しております。で、あるいは今の代表だけの話ではなかなか打開できないというふうに考えられる問題もあるわけでありますが、政府としては、近くだれか向うに派遣するというようなつもりもあるやに聞いておるのでありますけれども、近くそういう政府の代表を出されるかどうか。
  86. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 漁業交渉につきましては、平塚、門脇両代表が熱心にやっておられまして、必ずしも両代表の今後の努力に期待できないというわけではないわけでありますから、現在のところ、特にだれかを派遣するというまでには至っておりません。
  87. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし、新聞等で伝えられるところによると、あるいは赤城農林大臣を派遣するというようなことも言われておる。火のないところに煙は立たないということわざもありますけれども、そういうようなことがございますかどうか。
  88. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 政府といたしまして、今だれを、門脇、平塚全権以外に全権として出すかということを考慮したことはございません。
  89. 岡田宗司

    岡田宗司君 一体漁業交渉は大体いつごろまとまり得る見込みであるか。
  90. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 御承知のように、漁業交渉は相当例年時間がかかる交渉でございます。これはむろん技術的な問題についての検討も相当学問的調査の上に立ってやられる、それの論議もあります。従って、まず少くも従来の例からいえば二ヵ月は最低かかるだろうというようなふうに考えられておりますが、あるいは二ヵ月以上かかるかもわかりません。
  91. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、かなりこれからも難航を続けるものと私ども見ておるのでありますが、あるいは今の平塚、門脇両代表以外に政府から特別に代表を派遣しなければならぬという事態も私は起るように予想されるのでありますが、もしそういうことがあるとすれば、その際にたとえば平和条約締結の問題、あるいは安全操業とそれをどういうふうに解決するかという問題について内容の交渉はまた別といたしまして、そういう点で政治的な交渉をする必要が生じてくるのではないかと思うのでありますが、その点についてはどう考えておりますか。
  92. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 漁業交渉ばかりでなく、安全操業の問題もあり、あるいはその機会にソ連側が平和条約の問題にも触れている。だれか、そういうようなことだから、最近の機会に行く必要がないのかという御質問でございますか。
  93. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういうわけです。
  94. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 現在は、今のような安全操業の問題、あるいはそれに関連して平和条約の問題というような問題を持ち出されてきておる現在において、今政府は、特にそういう人を出すという考え方をもっておりません。
  95. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 岡田委員に申し上げます。初めにお断わり申し上げました通り、この問題はきょうの議題にない問題でありますが、緊急の事態として外務大臣の出席を求めたわけであります。外務大臣としては十二時から予定の行事をもっておられるようでありますので、相なるべくば簡単に御質問をお願いいたします。
  96. 岡田宗司

    岡田宗司君 さきに、本会議の際に、羽生委員から質問のありましたブルガーニン書簡に対する回答の問題、御承知のように、東西の巨頭会談に次いで、ダレス長官も、外相会議をしいてやらなくてもいいというような態度にもなってきている。イギリスあたりも積極的になっておりまして、かなり進められるような事態も出てきておる。いつまでもブルガーニン書簡に対してほったらかしておくというわけには参らぬ。政府としても過日の言明では回答を出されるように言っておりました。その回答はこういう事態においては、日本としてもやはり積極的にすべきであると思うのですが、近くブルガーニン書簡に対する回答を出されるかどうか。もし出されるとすれば、もうすでに用意しておられることと思うのでありますが、その回答の内容について概略お聞かせ願えればいいと思います。いかがですか。
  97. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) ブルガーニン書簡に対する回答は準備がほぼできております。最近の機会に、先般お答えしましたように、発表し、向う側にも通達するという手続をいたしたいと思っております。
  98. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。先ほどの岡田委員の御質問の際に、外務大臣から、日ソ平条約締結の場合に考えておる日本の領土に関する主張についてはソ連側も承知しておるはずだ――実は承知しておるのでありますが、その承知しておる中で、今度の漁業交渉との関連性において、平和条約の問題を出してきた。ソ連として何らか前の段階と今日とで若干の変化が起って、そういう提案になってきたのか。ただ漁業交渉を有利に展開するためにこの問題を持ち出してきたのか、その辺政府はどのように判断をしておるのか、この一問だけ伺います。
  99. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 非常にむずかしい御質問だと思いますけれども、ソ連はそう簡単に日本考え方に考慮を払っての今度の話し合いではないのではないかというように考えております。
  100. 曾禰益

    曾祢益君 初めに外務大臣に申し上げたいのです。当委員会は、特に近海の操業安全の問題については、昨年夏に、笹森、当時の委員長を中心として同僚委員がわざわざ北海道方面にまで調査に行きましてきわめて具体的な操業安全についての案を作ってそうしてこれを推進するというくらい非常に熱心にやったのが参議院の外務委員会、従って、きのう以来のああいうソ連からの提案といいますか、回答があった場合に、きょう外務委員会に進んで外務大臣が御出席になってそうして所信を述べられ、あるいは質問なり、激励なり、注文なりを受けられるという態度が当然だと思う。それをおやりにならないで、けさ急にこちらからお呼びするということはきわめて遺憾であると思います。今後 特にこの問題については従来の経緯からいってそういうことがないように、はっきりとした参議院外務委員会尊重に関する御所見を承わりたい。
  101. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 参議院外務委員会の従来の御協力を感謝しておるわけであります。また、参議院外務委員会を特に軽視した行動をとったつもりはないのでありますけれども、もしそれにまぎらわしいようなお感じがあればまことに遺憾でありますから、今後、参議院外務委員会を尊重することは当然のことだと思います。
  102. 曾禰益

    曾祢益君 先ほど来、外務大臣は、今後の方針について述べられたのでありますが、それが政府統一解釈であるならばその点を明瞭にしていただきたいと思うのは、昨日の衆議院の予算委員会、外務委員会等の総理、外務大臣の御答弁あるいは官房長官の新聞等に対する発表は相当この重要問題について区々別々です。たとえば、総理は、この平和条約交渉、これはだれもソ連の言いなりほうだいに調印するということは国民は期待していないと思いますが、総理もそう言っていないのじゃないかと思いますが、平和条約交渉と一緒にやってもよい。つまりそういう並行方式といいますか、簡単にいえばこれをはっきり言っておる。外務大臣の方は、今のお答えによっても、ソ連の言ってきたことを一応か二応か知らないが、分離して人道問題でこれを推進したい。平和条約の交渉あるいは平和条約締結とは分離すべきだ、こういう考え、また、岡田委員の御質問で、たとえば官房長官に至っては、これは北西太平洋の漁業交渉との関係もあるかもしれませんけれども、大官をソ連に派遣して、一体領土問題についての交渉が起ったらどうだと言わんばかりの問題を起している。そういうまちまちの態度ということはあり得ないと思う。従って、今外務大臣が返答をされた方針、すなわち、日本政府としては、やはりこれは人道問題として、この問題はこの問題で切り離して、この問題としての交渉を進めたい、これが一つ。しかし、平和条約については、これは交渉を早くして、そうして、しかも領土問題について国民の要望を貫徹するのは当然なんだから、その平和条約はそういう積極的な方針で臨み、そうして領土問題については今言ったように、国民的要望を入れた方式でやる、こういうこと。それから第三には、平和条約の交渉については相当な準備態度をもってやる。そうして今直ちにはっきり議題もわからず、何もわからずに、いわゆる政治交渉に何でも移して、代表を派遣するということは考えておらないということになるのかどうか、もう一ぺんはっきりお答えをしていただきたい。
  103. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) それと私のあれが食い違っているとも思わないのでありますが、精神は要するに、共同宣言もあるのだから、日本ソ連との間の平和条約が早く締結するという基本的な考え方については、だれも同じだと思います。ただ、現在の安全操業の問題は今申し上げたようないきさつできている問題であり、従って、最後の七日の日に、ソ連側が平和条約と並行して、あるいはその解決を待ってと言っても、私どもとしては、それをすぐに受け入れないで安全操業の問題をまず話し合う。しかし、ソ連が従来の態度を変更して、これはもう絶対に会議も開かぬのだということを言ってくるかどうか今後わかりませんけれども、しかし、その問題としてまず折衝する必要がある。それからこういう問題があるからといって、今だれをすぐ出すといった考え方は政府としても持っておりませんことは、先ほど申し上げた通りであります。
  104. 曾禰益

    曾祢益君 それが政府統一態度として承わっておきます。  最後に、これは岡田委員の指摘されたことなんですが、きわめて重要でありますから、特に希望を申し上げたいのは、領土問題の合理的解決、これは歯舞、色丹、南千島は当然のことでありますが、こういったものを推進するためには、ただソ連関係アメリカ関係は別だというような考えではだめだと思うのです。だからやはり合理的な領土問題の主張は、北に対しても南に対しても、アメリカに対してもソ連に対しても、これを強く要求する、このことがソ連との領土問題を解決する基盤になると思う。そういう意味で、従来のアメリカ関係の沖繩、小笠原等に対する政府態度ではだめだ、これを強く主張していただきたい。この点を申し上げておきます。
  105. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 安全操業日ソ平条約締結問題についての藤山外務大臣に対する本日の質問は、これにて終局いたします。
  106. 岡田宗司

    岡田宗司君 議事進行について……。  なお、最近いろいろな国際問題で変化があり、重要な問題も起っておりますので、一つまた、外務委員会には、適当なときに藤山外務大臣の御出席をお願いしたいと思います。そのことは一つ委員長によく心得ておいていただきたいと思います。
  107. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 本日はこれにて散会いたします。    午後零時十五分散会    ――――・――――