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1958-02-17 第28回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十七日(月曜日)     午前十時三十三分開議  出席分科員    主査 山本 勝市君       小川 半次君    坂田 道太君       周東 英雄君    野澤 清人君       橋本 龍伍君    古井 喜實君       井堀 繁雄君    辻原 弘市君       柳田 秀一君   兼務  川崎 秀二君    島上善五郎君       田原 春次君    戸叶 里子君       野原  覺君  出席国務大臣         文部大臣臨時代         理国務大臣   唐澤 俊樹君  出席政府委員         文部政務次官  臼井 莊一君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤誉三郎君         文部事務官         (大学学術局         長)      緒方 信一君         文部事務官         (社会教育局         長)      福田  繁君         文部事務官         (調査局長)  北岡 健二君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君         文化財保護委員         会委員長    河井 彌八君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 岡田 孝平君         厚生政務次官  米田 吉盛君         厚生事務官         (大臣官房長) 太宰 博邦君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     山本 正淑君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君     ————————————— 二月十七日  分科員野澤清人辞任につき、その補欠として  坂田道太君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  分科員坂田道太辞任につき、その補欠として  野澤清人君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  第一分科員田原春次君、第三分科員島上善五郎  君、戸叶里子君、第四分科員川崎秀二君及び野  原覺君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算文部省厚生省  及び労働省所管  昭和三十三年度特別会計予算文部省厚生省  及び労働省所管      ————◇—————
  2. 山本勝市

    山本主査 これより会議を開きます。  昭和三十三年度一般会計予算文部省所管について質疑を継続いたします。質疑の通告がありますので順次これを許します。辻原弘市君。
  3. 辻原弘市

    辻原分科員 松永大臣が御病気の由できょうもお見えにならず、政府の方で唐澤大臣代理をして文部大臣を勤められるようでありますが、形式的なことは除きまして、やはり本来は担当した大臣予算編成経過あるいは今後の確固たる大臣としての所論、こういうものを実は伺いたかったのでありますが、そのことは御病気とあればやむを得ませんので、できる限り協力をいたしまして、一つ唐津臨時代理、それから政務次官事務当局の方々に順次一つ文教の当面している重要問題等を伺って参りたいと思います。  最初に私が伺いたいのは、これはもうここ数年来日本の、特に義務教育の問題では課題となっておるすし詰め学級をどうして解消するか、この問題についてであります。幸い文部省では内藤局長がこの問題に対する長年のベテランでもありますので、おそらく局長就任機会にこの問題を根本的に解決されるであろうと私は期待をいたしておるのでありますが、しかし結果的に本年度予算等を顧みてみますると、日暮れてなお道遠しの感が深いのであります。  まずこのすし詰め学級解消について、これは大臣一つ伺いをしておきたいのでありますが、私は単に教育行政、特に義務教育の場合に限定いたしましても、いろいろととるべき施策があると思いますが、少くとも義務教育の面において世界の各国比較をして遜色のない日本教育の中で特に取り上げてわれわれが問題にしなければならぬのは、このいわゆる学級定員の過剰という問題であろうと思います。これはおそらく日本と並び立つ各先進文化国家比較をいたしましても、非常に顕著な遜色をここに見るのであります。そういう点については、現在文教行政を担当される所管大臣としては、この解消全力をあげて邁進しなければならぬと思いますが、一体これを解消するについて、大臣としてはどういう御所見を今日お持ちになっておられるか、どういう方針のもとにこれを解消せられていくか、時間をあまり食ってもいけませんので、私は簡潔に大臣にお伺いしておきたいと思います。
  4. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 松永文部大臣病気でお引きこもりの間だけ臨時代理を命ぜられました。どうぞよろしくお願いをいたします。先ほど辻原委員からのごあいさつで、十分協力をしていただけるということでございまして、ありがたく感謝をいたします。  さて、ただいまお尋ねのありましたすし詰め教室の問題でございますが、このすし詰め教室の問題を解消して、学級規模適正化をはかるということは、わが国の教育水準を維持し、向上するためには最も大切なことと考えまして、今日文部省が当面しておりまする教育関係の問題では最大の問題の一つと考えておる次第でございます。御承知のように六・三・三制の急激なる制度変更から、また一面国家財政地方財政も思うにまかせないところもございましたので、今日まで十分にこの問題が解消されずに残っておりますることは、まことに遺憾千万のことでございまして、今後国の財政地方財政の力のあらん限りを尽して、そうしてたまたま生徒数人口関係ども減少の大勢にあるようでございますから、この機会に根本的に解消したいと、文部省といたしましては全力をあげてこの問題の解消に当りたいと考えております。
  5. 辻原弘市

    辻原分科員 全力をあげて解消に当る具体的方策は、時間がないのでお伺いをいたしませんが、すでに文部省においてもこの定員を確保するために法案を準備されているということを聞いております。私はこれらの法案がどういう形で出るかということで、非常にプラスになる面と、むしろそれによっていわゆる低い定員に格づけされる危険と両面持っているのが、従来の経緯から見てこの法案にまつわる一つの性格といいますか、運命といいますか、そういうものであろうと思います。しかし本来よくなるものであるならば、これは政党政派の問題ではなくして、少くとも国会においてもまたあらゆる協力を得て、文部省施策を推進しなければならぬと私は考えます。しかしそういう点についての深い構想というものを、ようやく今日にして文部省が大きく取り上げてきたということは、それ自体は私はきわめてよろしいと思うのでありますが、しかしいささかおそきに失したうらみがあるということを率直に申さなければならぬと思います。これは大臣にも一つ伺いますが、昨年の五月、行政管理庁文部省に対して勧告をいたしております。この行政管理庁勧告は、私どもの目から見ますと、当然しごくであると同時に、政府部内の行政管理庁文部省勧告をしたという意義は、まことに深いものがあろうと思います。その一つは、その中に言っていることは、学校教育法施行規則には、日本の場合にも、明らかに義務教育の場合五十人が定員であると規定しておりながら、しかしその法規が守られている府県というものは一体どれだけあるか。行政管理庁調査に基いて見ますと、二十五県の調査結果一県もないという結論が出ておる。かようなことでどうするかというのが行政管理庁勧告の趣旨であったと思います。もちろんその勧告は、定員のみならず、給与あるいは国庫負担金に含まれるいわゆる教材費、こういうもの等について触れておりますが、いずれも国が定めている法規あるいは国がとろうとしておる施策について、義務教育がマッチしておらないということをきわめて峻厳に指摘をいたしておるのであります。後刻触れますけれども教材費等にいたしましても、PTAの負担が年々減少せずに、今なお百六十億、二百億という膨大な数字に上っておる。これも早急の間に一つ解消をしなければならぬ、こういうような勧告もあわせいたしておるのでありますが、そのうちで冒頭にある定員については、少くとも今日の法規が定めておる五十人を厳守させるための措置をとるべきであるというのが、行政管理庁勧告であったと記憶します。その勧告にも見受けられますが、それらはあげてやはり担当しておった文部当局の怠慢に帰するのじゃないか、こういうことも言われておると思うのであります。義務教育の中核であるこの問題について、この種の勧告を受けるということは、私は文部省自体としては率直に申して恥としなければならぬと思うのでありますが、先ほど大臣は、文部省重要性を抽象的に述べられました。しかしこれを抽象的でなくして具体的に、これらの管理庁の勧告を受け取って以来の今日でありますから、もう少し積極的な意味合いにおける方針を明示されるべきであろうと考えるのでありますが、いかがでありますか。
  6. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 この問題はいかにもご指摘通りでございまして、学校教育法施行規則にもちゃんと五十人を標準とすることが明示されておるにもかかわらず、今日までそれが実現されておらないということは、まことに遺憾千万でございます。従来の歴代の文部大臣におかれても、また文部当局におかれても、この問題の解消重要性にかんがみて、十分努力をされたことと拝察をするのでございますが、御承知のように、この問題は一面におきましては教職員の定数の問題があり、一面におきましては学校設備、校舎の問題が伴いまして、従って多額の予算を要するというような関係から、つい思うにまかせなかったことであろうと考える次第でございます。まことにおそくなった点は遺憾千万でございますけれども、先ほど申し上げましたように、全力をあげてこの問題の解消に当りたいと考えております。その意味におきまして、三十三年度予算におきましては相当の手配をいたしたつもりでございまして、まただんだんお尋ねによりまして申し上げたいと思う次第でございます。
  7. 辻原弘市

    辻原分科員 三十三年度予算かなり手当をされたというお話でありますが、私の見るところでは、その数だけではなしに、総合的にすし詰め解消するという観点に立てば、まさに九牛の一毛であって、ようやくそのスタートラインについたのではないかという感じだけでありまして、これをもって相当などということを言えば、天下をあげて笑うのではないかと私は思います。まあその程度にしか実際はなっていないのです。結局中学校において五千人を増加させる、こういうことにいたしておるのでありますが、それらを全部増減の差引計算をいたしてみますと、正確には三千二百十六人ですか、その程度のいわば増員にしかなっておらない、こういうことだと思います。そこで、一体それでは実際この法規通りといいすまか、五十人という法規を着実に守って、そうして学級編成を適正なものにしていくとすれば、今後どれだけの教員が必要であるのか、またどれだけの学級増加させなければならぬのか、こういうことが具体的に算出されなければならぬと思います。その前提として、文部省が出している調査を見ましても、あるいは全国の中学校長会議、あるいは教育長協議会、こういうところが調査をし、またこの問題については日教組を初め各府県教組も真剣に調査をやっておりますが、それらを総合いたしましても、大体の数字大同小異であります。文部省の出している数字をとらまえてみましても、三十二年度においては、五十一人以上のいわゆる不適正学級が、小学校において約三四%、中学校において三三%である、こういたしております。詳細な統計もこれに出ておりますが、それらの数字の最近三、四年の傾向を見てみましても、非常に教えられる点があるのでありますが、とにかく現在の授業について考えてみましても、この中で少くとも三〇%あるいは四〇%に近いいわゆる不正常学級があるということ、この点を見ましても、これを適正なものにすればそこに増加学級が算出せられるのであります。これは事務当局でけっこうですが、今私が申し上げた、今後適正化するに必要な学級数並びに教員定数、これはいろいろな差引計算がありましょうが、今私が申し上げたような点で数字を出すとすればどの程度になるか、これをお答え願たいい。
  8. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 小、中合せまして五十人以上の学級が十四万学級でございます。そこで十四万学級を完全に五十人以下にするためには、いつの年次をとるかということが問題になりますけれども、ただいま現在の年次をとるとしますれば、大体三万学級程度が必要ではなかろうかと考えております。
  9. 辻原弘市

    辻原分科員 人員について……。
  10. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 人員にいたしまして、小学校は一学級一人の数をとっております。中学校は本年度は減少する場合には一学級一人と減を見ておりますから、かりに小中とも一人ずつ増員いたしますれば三万人でございます。それから中学校は、今度の新しい法案で考えておりますように、一学級について三分の四という方式をとりますれば三万五千くらいになると思います。
  11. 辻原弘市

    辻原分科員 今局長が述べられたように、教室にいたしまして三万、学級人員にいたしまして文部省の採用する計算方式をもってして二万五千程度の不足が起るのであります。それに見合うには、ことしの増加は表面上の数字として五千、実質差引計算にして約三千三百ですか、その程度が、いわゆるすし詰学級解消のための定員増としてあてがわれておるのであります。従ってそれらから展望してみますると、これは今後の日本人口の動態ともきわめて深い関連を持っておりますけれども、問題は今日にあるのであります。ですから、今日の教育を、少くても正常な形においてやろうとする場合には、悠長な考えに基いてこの定員解消の問題を考えるわけには参らないのであります。その立場からいたしまして、私はもう少し画期的なやり方を政府においてなぜ本年度採用しなかったかということに非常に疑問を感ずるのでございます。よく例としてイギリスの場合が引かれると思いますが、イギリスのみならずフランスにいたしましてもあるいはアメリカにしても、さらにまた東欧のソビエトにいたしましても、大体それらのとっている学級適正基準は、これは小学校中学校いろいろなとり方が数字として出ておりますが、大ざっぱに申しますと、大体小学校においては三十人から四十人、アメリカなどでは二十人から三十人であります。中学校においては大体四十人を、あるところにおいては三十人を採用しておりますが、それが小学校中学校が逆の場合があるように私見ておりまするけれども、大体小中学校とも四十人から三十人の間でもって確保しております。ひとり日本だけが法律上五十人である。また実際上は五十一人。しかもその傾向を見ますと、五十六ないし六十一、それ以上というような級が非常に多い。ここに私は教育効果の上において非常な悪影響を与えておる、こういうことを痛切に感ずるわけであります。現在の法規では五十人ということになっておるが、果して義務教育における学級定員というものは、どういうところに一つ基準を置いたらいいのか、どれが正しいか。これは学級管理上あるいは保健上また学習効果の上にこういうものを総合判断して、どの程度のものが最も理想的であるか。学者意見の中にも、教育効果その他の面から考えて、結局少い方がよりいいのだという議論もありますが、しかし全体として運営していく上にはそうもいきませんから、大体どの程度のものであるならばより効果が上げられるか、日本の国の財政運用そのものとにらみ合せてどの程度のものがいいか、この点について文部省はどうお考えなさっていらっしゃるか、これを伺いたい。
  12. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 大体今御指摘通り欧米各国におきます学級規模は三十人から四十人。これはお話のようにできるだけ少いということが理想でございまして、特に学習効果を上げる上から考えまして、少いほど学習効果は上るわけでございます。特に個別指導もできます。しかしながら一面において経済負担も伴うことでございますので、経済負担学習効果との調和をはからなければならぬと思うのであります。こういう点も、私どもは三十人ないし四十人ということが理想ではありますけれども、現在の日本の置かれておる情勢におきましては、今のところ五十人を目標にいたしたい。せめて五十人まで引き下げたいということが当面の課題であります。
  13. 辻原弘市

    辻原分科員 私は四十がいいか、五十がいいか、議論になりますと果てしがないと思います。最近学者の間でもいろいろ実験的な調査をやっておるようで、そういう結果もありますけれども、しかしこれはあくまで議論でありますから、その点私は深くお尋ねはいたしませんが、ただしかし、政治的に見ましても一つ努力点がもう少し高いところにあってほしいと思うのです。なぜかというと、日本学級定員一つ歴史を振り返って見ましても、明治十六年に初めて省令でもって学級定員というものが定められておりますが、そのときのあれを見ますと、当時の尋常科で八十、高等科で六十。明治三十三年に至って、これは県でありますが七十、昭和十六年の国民学校令になって、初めてここで五十という数字が出ておる。こういう歴史的変遷をながめて見ましても、日本の場合の義務教育における定員の問題も、時代とともに努力してきて、八十から五十までの一つ努力の結果があって、それを法規の上でも定めておる。ところが昭和十六年の国民学校令の発足当時と今日では、学級定員の五十というものはやはり動いていない。もちろん戦争という非常なあれがありましたけれども、少くとも戦後の教育効果をあげるという教育政策をとられてからも、なおかつ施行規則において五十というものを採用していたことは、進歩がなかったと思う。少くとも国民学校令において五十と定めておるならば、今日の法規においては四十と定めるのが至当であった。そうすれば今日のごとく六十あるいは七十という、いわゆる過大学級は生れなかったと思う。また最近地方財政貧困化から、特に不正常が進行しておるという傾向時代逆行です。これは単に思想的問題にとどまらない。今内藤さんは五十を今後の基準線としていくというが、これは予算その他の裏づけから見ますと、スタートラインでなくてこれは理想ラインです。スタートラインであればいいけれども理想ラインであるとするには、五十というものはいささか低きに失する。少くとも常識的な四十というものをなぜ採用しなかったか。こういうことについてもう少し率直な意見を私は伺ってみたい。
  14. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 お説の通り、私ども理想的には四十を基礎にしたいと思うのです。しかしながら現在の情勢で、ただいま御指摘のように、五十人以上の学級が十四万学級もありますので、五十人以上をまず解消することが当面の課題であると考えるのであります。  もう一つは、先ほど学級規模適正化明治以来非常に努力してきた、なぜ今後もう少ししっかりやらないかというお尋ねでございますが、実は義務教育六ヵ年が九ヵ年に延びましたので、この三ヵ年の義務教育を延長するに要する経費は実に膨大なものでございますので、まず五十にいたしまして、その後に今御指摘のような点について、将来四十にするということをあらためて検討したいと思います。教育理想の面から申しますれば四十の方がいいことは明らかでございます。
  15. 辻原弘市

    辻原分科員 文部省においてそういうことをおろそかにしているとは思いませんが、実際の効果という面において、文部省等でいろいろ調査をされた結果によると、大同小異データもあるようでありますが、最近広島大学等において行われた結果を見ますと、やはり三十から五十以上の、いわゆる少いのと多いのをとらまえて、ある程度同じ条件でもって教育をやってみた。その結果として一つの考査をやってみると、その差が判然と出たという例がある。やはり五十と三十の開きにおいてもそこにかなりのパーセントに教育効果の差が生まれたということは、私は教育上見のがせないと思うのです。巷間戦後の教育低下を来たしたのは先生が悪いんだろう、教育行政が悪いんだろう、いろいろ皆さんのところにも言ってくるだろうと思うのですが、教育効果に真剣に取り組むならば、こういうところに大きな問題があると思う。義務教育の低い段階においてそういうふうに教育効果の差が生まれつつある、その基礎でもってあるいは高等学校大学教育が積み上げられていくということはきわめて重大である。これはもちろん経費の問題もありますけども、しかし教育に多大の経費と資本を国家が投じておるという観点に立てば、それは教育効果を上げて一人一人りっぱな人間に育てるということにあるのですから、それが現実に減殺されておるという科学的データが出ておる今日、私はこの点についてもう少し適正な形に理想を置くということが文部省立場だろうと思うのです。五十については、私は現状論からすればまあまあだという気はしますけれども、これはそのことがよりいい学級基準日本が作ったということにはならぬ。少くとも諸外国との間にもそれだけの差があるということを考えれば、これはまことに不満であると申し上げざるを得ないのであります。  そこで定員の問題はいずれもっと時間をかりまして詳細に数字傾向等も調べてお答えを願いたいと思うのでありますが、もう一つこれに関連して重要な問題は施設の問題であります。これは私は松永文部大臣がお見えなすっておられるならば、この席上でかなりのことを言わしてもらいたいと思っておったのであります。かつての文教委員会で、これこそ文教行政の最たる問題だから、一つ就任機会全力をあげてやりたいと大見得を切られた。ところがことしの予算を見ますると、どうも文教行政の重点というものがどこにあるのか。代理でいらっしゃる唐澤大臣お尋ねいたしましても形式的答弁はできましょうが、経過を御存じないから無理であります。しかしどう好意的に見ましても、全般の教育予算のどこにいわゆる施策の柱があるか、施策の中心があるか、まことに不可解であります。しかも先ほどお尋ねいたしてみましても、また全国民の関心、これはいわゆる学級適正化、不正常解消かなり大きな世論となっておる、これについては法案は準備されておるようであるけれども、しかしかつてわれわれにも約束をし、また国会においても両院が決議までやっている。その施設についてはどうなんですか。ほぼ去年と同程度予算を組んで、しかもその施策の中身は多少の数字の動きはあるけれども、率直に申して何ら新味を持っているものは一つもない。ところが適正な学級を作っていこうとする限り、そこに伴わなければならぬ問題は教員であると同時にこれは施設設備なんです。それについて画期的なことをしないで、しかも最近の傾向を見ますると不正常は進行しているのです。三十一年度以降解消されてはいないのです。法律は作ったけれども不正常はむしろ進行しておるのです。そういうときになぜ適正化をするという心組みの二つの問題を取り上げられなかったか。定員の問題は法案を出す、なぜ施設の問題を車の両輪としてこれを考えなかったか、この点については一体どうなのか。施政の根本方針一つ承わっておきたいと思います。
  16. 臼井莊一

    臼井政府委員 それでは私お答えを申し上げます。この点につきましては辻原委員も御承知のように毎年努力をいたしておりまして、予算の面におきまして昨年と公立文教施設の面につきましてはほぼ同額でございますが、やはり昨年と同様に解消の方向に向って努力をしていくということは申し上げられるのであります。もとよりこれをさらにもっと増額して建築の方に回せればよろしいのでありますが、しかし本年の文教の柱がそのほか科学技術の振興という大きな柱も出て参りましたし、さらにこれは本年度予算においてはそれほどではございませんけれども、青少年の教育にもできるだけ努力したい、育英制度も一つ新しい柱としてさらに従来の柱に加えたい、こういうような点から昨年以上に画期的にさらにこの点をふやすということは予算上結果的にできなかったのでございます。  そこでただいま御質問の、昨年の国会で御決議をいただいております危険校舎とそれからすし詰め教室、不正常授業解消のための現在臨時一本になっております三分の一の補助を他の助成と同じように二分の一にしろ、こういう点につきましては私どもといたしましてもぜひこれを実行したい、こういう点につきまして大蔵当局とも十分折衝いたしましたが、ただいま申し上げたような理由で、予算の面において結果的に昨年以上の予算も獲得できません。この点は私どもの微力もございましょうが、しかし他のただいま申し上げたような柱のために、昨年とほぼ同様な結果になりました。そこでこれをもし二分の一補助ということになりますと事業分量において非常に減少を来たすような結果になってはいかぬ、こういう点にも考えをいたしまして、文教政策としては今お話しのように地方の御協力もいただいてできるだけ施設をふやしたい、事業分量をふやしたいというところに重点を置きましたために、この点につきましてただいま政府においてこれを二分の一に変える立法を出すという用意は本年度においていたしませんけれども、しかしこれは当然将来においてこれから考えなければならぬ問題でございます。院議の御決議の趣旨は十分承知いたしておりますので、今後において一つ努力をいたしたい、かように考えております。
  17. 辻原弘市

    辻原分科員 政務次官はなかなか御答弁が上手でいらっしゃいますが、どうも紙の上から羽毛で掃いておるような気がいたしまして、問題の突っ込みが足りない。今他の柱の例をあげられましたが、進学保障制度のごときに至っては総予算一億八千万、そのうちの八千五百万というものは還付金じゃありませんか。実際支出したのは一億に足りない。そのほか青年の家、ユース・ホステル、こういうものを拾い上げても微々たるもので、全部集めてみたって大したものじゃない。私はゆうべおそくテレビで聞いておりますと、自衛隊三軍の話をしておりましたけれども、その中でわずか一機でF86Fというやつが一億二千万円かかる。T33型の練習機でも七千万円かかる。F86Dが一億四千万円。私はそのとき興味深く聞いておったのでありますが、おそらくきょうの質問であなたがそういうことを言われるだろうと思って参考にゆうべ聞いたのです。P2Vというような哨戒機は七億かかるそうであります。甲型警備艦というのが二十五億かかるそうであります。これは文部省の責任ではないでありましょうけれども、しかし文部省が文教の柱を他に建てるためにこれらの重要施策がとれなかったということは、ただ単なる言葉のあやであります。そうでない、文教行政というものをほんとうに打ち込んでやろうとするならば、わずか一億、二億、三億の金によってその程度の目新しいものをやるために、いわゆる重要なこの義務教育という根本の問題が解決されなかったなどというのは、単なる逃げ答弁にすぎないのです。これは私は次官に別にかみつくわけではありませんけれども、やはり認識が足りないんじゃないか。これは文部省かなり努力をされたようでありますが、大蔵省はそれを押えた、その結果文教の予算としては八十億そこそこの金しかふえない、こういうことになったんじゃないか。それならば、これによって画期的にいわゆるすし詰め解消するのだ、これによってすし詰め解消したあとについてはかなりやれるのだ、こういうふうな現実に合わないような議論文部省は今後されてはいけませんぞということです。管理局長もそこで盛んにうなずいておられますので、少しなにをいたしたいと思いますが、実際そうだと思うのです。また私は次官の言葉じりをとらまえるのではありませんけれども、最近不正常が非常に解消しつつある、こう言われた。ところが文部省が出した数字では解消していないのですよ。二十八年からの傾向を見てみますと、こういう工合になっている。ここにあるのは二十八年から三十年で、三十一年以降のやつは私は別に持っておりますけれども、その数値を見ましても、いわゆる五十人をかりに適正といたします場合の数字でも、ごく一、二の例を申し上げましょう。かりに五十一人から五十五人の学級規模数が漸次どう動いているか。小学校で二十八年は二千二十四、二十九年は二千三百三十一、三十年は三千四百八十一、これは一例であります。中学校では、同じくその一つ規模をとらまえてみると、千二百四十六、千六百二十五、千九百三、三十年までであります。こういうように進行しているのです。そこで不正常解消促進の法律というものが非常に時代的に意味があったように思うのです。ですからわれわれは賛成したのですけれども、しかしそれによっても九牛の一毛しか解消されていない。それともう一つ法案の不備がある。それは〇・三五坪以下の学級に対するものしかこれが適用を受けていない。そういうようなあれから考えてみますと、今日この不正常の問題というものは、もちろん人口動態からの生徒児童の増減のいろいろなあれがありますから、これはそのことも大きく作用しましょう。しかし全体の努力によって解消せられる分というものは、きわめて微々であるということが私は言えると思うのです。ですから、なぜこの問題に手をつけなかったかということは、私は文部省の施政に対する大きな欠陥であろうと思います。片ちんばです。なおよく文部予算を検討してみると、一体どうなんですか。新しい中学校の建設、これはなお不正常という形において残っているわけなんです。もちろん中学校の一・〇八、小学校で〇・九という低い文部省基準に基いて、いわゆる中学建設というのは大体終ったという見方もできないことはありませんけれども、しかし今度は不正常という形から見ると、これは済んでいるんじゃありません。済んでいないにもかかわらず、ことしの予算ではどうですか。減額をしているじゃありませんか。中学校の分については減額をしている。こういうことで果して今後の状態とマッチするものかどうか。私ごときしろうとが考えても、ここに非常に疑問を感ずる。不正常がどんどんありながら中学校建設費を減額している。おそらく私がこの問題を言えば管理局長は、三十三年度あるいは三十四年度は激減をいたしまするから、これで大体見合うだろうと答えられるだろうと思う。ところがその後、三十五年以降はどうなんですか。こういうふうに総じて文部省すし詰め解消をするということについては、結局象のしっぽあたりをつかまえて振り回しておりますけれども、大どころをつかまえた筋金の通った政策がないということを私は申し上げざるを得ない、これは、大臣政務次官局長、両局長がおられますが、いやさようではございませんということを数字的にあげられまして一つお答えを願いたいと思います。
  18. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 ただいま御指摘のございましたように、学校教育施設の整備充実ということが文教行政の基本であることはお話通りだと思います。文部省といたしましても従来二部制の学校につきましては、年次的に計画を立てて、一定の計画のもとに順次整備をしてきたわけでございます。この不正常授業解消のための法律でいっておりますところの圧縮授業は、ただいま御指摘がございましたように普通の過大学級とは観念が違っておりまして、一人当りの面積が〇・三五というような基準を立てておりますので、その辺に多少の行き違いがございますけれども、しかし非常に極度の圧縮授業というものについては、年々補助金を出し、また起債の面でも解消をしてきているわけでございます。  なお新設の中学校の建設、これは義務年限の延長に伴うものとはやや性質を異にしておりまして、急激な人口増加等に伴うもの、たとえば工場その他ができるあるいは集団住宅ができるというようなもの、またそれ以外の社会増に伴うものでございまして、こういうものについても普通の年限延長と同様に、実質上は不正常でございますけれども、国から補助を出して整備をしておるわけでございます。なお明年度予算におきまして、中学校の整備費が、従来の十五億が約十億というように減っております。確かに四億以上減っておりますが、これは一つにはただいまお話のございましたように、生徒数の五十万減ということと同時に、実は明年度地方の建設計画を詳細に調べまして、この程度で十分まかなえる、これ以上のものはそれほど強い要求はないという調査をいたしました結果に基いて予算を要求しておるわけでございます。
  19. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 ただいま辻原委員から、何か私どもすし詰め学級解消がごまかしの案のようなお話がございましたけれども、私ども毛頭そういうことは考えておりません。近く国会に上程される予定になっております学級規模適正化法律は五十人を基準にいたしております。この基準になるべく早く引き下げるようにということで、本年度とりあえず五千人を計上いたしまして、これによって中学校学級を五十三人までに切り下げ得る、かように考えております。  なお来年度小学校が激減いたしますので、三十四年度以降において小学校すし詰め学級解消していく、こういうような根本的な措置を考えておりますので、なおこれに伴う法律案をごらんいただきますれば御了解いただけると思います。一つごまかしの案でないということを御了承いただきたいと思います。
  20. 辻原弘市

    辻原分科員 ごまかしということは言葉が多少足らぬかもわかりませんが、それに近いものであるかどうかということは漸次明らかになると思いますので、今は申し上げません。  そこで管理局長の言われました不正常は、かなりその効果が上っているということ、もちろん年間六万坪そこそこのものですから、その分については効果が上っていることは事実なんです。私は今総合的に申し上げておるので、そういう観点とはいささか立場が違う。そこで数字を少し明らかにしておく必要があると思うのですが、あなたは効果が上っておるというようなことだが、予算を配当せられればせいぜい年間五、六万坪については大体効果はある。それじゃ一体全体としてどのくらいのものが今日残っておるのかということだと思うのです。これもいろいろな数字があるようでありますが、大体文部省調査をした最近の数字をとってみても、小学校では約七十万坪、それから中学校では五十万坪、この程度のものが今日残っているように記憶している。それから正常促進法で行われる〇・三五坪以下の学級、これが三十二年度でどのくらいあったかといえば約三万二千学級、そのうちさらに〇・三坪以下の圧縮学級、これが七千八百、各学級平均二十坪といたしますと五十七人以上のすし詰め学級になるという計算であります。これは〇・三五の場合。それから〇・三〇坪以下、これを逆算してみれば、六十七人以上のすし詰め学級が従って七千八百学級もあるということ、こういうことなんです。中学校とて大体同じような数字傾向を持っております。そこでこのうち本年正常促進として局長解消される分が一体どれだけですか。
  21. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 この圧縮学級でございますが、去年の五月一日現在の調査によりますと、〇・三五坪以下と申しますと二十坪の教室を想定しての話でございますが、五十八人から六十六人程度の圧縮学級小学校で一万八千八百七十五という数字になっております。それから中学校では六千六百九十七、それから極度のと申しますか〇・三坪以下のものの数字をとってみますと、小学校では七千五十九、それから中学校では四千五百五十五という数字になります。三十三年度予算では小学校の校舎整備費七億三千万でありますので、大体六万一千坪といたしますと、一教室三十五坪といたしまして大体千七百教室ということになります。それから中学校の方は十億八百万でございまして、これが実施坪数六万坪でこれも大体千七百教室程度と見るわけでございます。実際は、ですから国の補助事業としてやる分につきましては、千七百程度教室がそれぞれ小学校中学校にできるという計算でございますが、御承知のようにこの校舎整備につきましては、小、中学校とも従来補助事業で実施する分とそれ以外に単独起債で実施する分とがございます。それぞれ大体同量程度ができておりますので、小学校で大体三千四、五百程度教室ができ、中学校でも大体同程度教室ができるものというふうに推定しているわけでございます。
  22. 山本勝市

    山本主査 坂田君より関連質疑の申し出がありますので、これを許します。坂田君。
  23. 坂田道太

    坂田分科員 ただいますし詰め学級解消の問題が出ておりますので、この点について関連して御質問申し上げたいと思います。  辻原君から御質問がありました通り、確かにこの問題は非常に大きな問題です。教育効果の上から漸次六十とがあるいは七十とかいうようなところを解消して、そうして五十とかあるいは四十の目標に向って進まなければならないことは、私は当然だと思うのであります。たしかイギリスにおきましても、バトラーが教育法を出しまして、一九四四年に私立学校及び公立学校について四十名以上は相まかりならぬという法律を一本作って、そうしてそれに応じたいわゆる施設、設備というものを、あわせそれに対する教員の確保ということをやりまして、今日相当な学校ができつつあるようでございまするが、やはりイギリスにおきましても約十年間の計画のもとに漸次これが解消しつつあるというふうにわれわれは理解しておるわけでございます。この点について、このたび政府学級定員の問題——これは辻原君から言えばスタートラインで、確かにスタートラインだと思いますけれども、そこに気づかれて、そしてその予算を今度の本予算において組まれたことは、私は敬意を表するのです。辻原君も御承知通り、昨年の五月に行政管理庁勧告があります前に、私ども与野党一致いたしました決議案を上程して、それはたしか四月二十三日だったと思いますが、教員養成機関の改善と充実並びに理数科教育及び自然科学研究の振興に関する決議案の中に、学級定員の問題を実は出しまして、そして早く教育効果の上る学級定員というものがどれくらいであるかという目標を立てて、年次計画を立ててやるべきであるという決議案を出し、これは与野党満場一致をもって決議をされたわけで、それに基いて政府がおそまきながらではございますけれども出発されたということは、私はかなりいい施策であるというふうに考えておるわけでございます。従いまして、御承知のように日本人口というものが、おそらく今後十年先になりますと相当に減ってくるのではないかと思うのです。これは福島県の例でございますけれども、たしか私の記憶によりますと、三十三年度か三十二年度あたりの小学校中学校生徒数が十八万ぐらいのものが、五、六年後の三十七、八年になりますと、十二万くらいに減る、六万くらいの驚くべき減少だと思います。そういう人口の趨勢というものを考えた場合、このままで、たとえば五十名だとか五十五名だとかいうようなことで参りましたならば、おそらくその時期が参りましたときには、教員の首切りというような問題も起きてくるのではないか、あるいはまた施設、設備もむしろ中学校あたりでは余ってくるという事態が起るのではないか、この辺のところを十分綿密なる計画を立てられて、そしてことしあたりからそれに見合うところの建築計画等を考えていかなければならぬのではないかというふうに私は思うのであります。この点について政府としては、院の決議もあることでありますし、また行政管理庁勧告もあることでございますし、また教育に携わるわれわれといたしましては当然やらなければならぬ問題で、教育効果を上げるについては、私は定員というものは非常に大切だと考えておりますもので、この点について唐澤文部大臣代理の所信を第一にお聞きいたしたいと思います。  その前に、先ほど来数字をあげて辻原君がお話になったのですが、私の調べましたところによりますと、小学校におきますと、五十名以下の学級というのが全体の六六%である、五十一名以上の定員を持っておるものは三四%、五十六名から以上の六十名、七十名というのは全体の一一・九%、約一二%にしかすぎない。そうしますると、約八割から九割というものは一応正常授業をやっているじゃないか。ただ不正常授業だとかあるいはすし詰め学級の問題は、非常に大切ではありますけれども、しかしそれは東京、川崎とかあるいは大阪とか、相当に都市周辺におけるところの人口増加によるすし詰めという問題が大きな問題として出てきておる。確かに辻原君がおっしゃるように、県といたしましては、あるいは二十五県に一つも五十名を確保しておる県はないというデータはあるかもしれませんけれども、しかしながらとり方といたしましては、そういう都市周辺のすし詰め学級解消するということが今われわれが当面している問題である。しかしこれは私が申しましたように、目標を立てて、年次計画を立てて、しかも十年後には相当人口が減るということをも考えながら、やはり相当思い切った四十名程度の目標を、辻原君あたりの言うような目標を立てまして、そうしてそれに追い込んでいくことによって、首切りも行われない、そうして定員も確保する、あるいは施設設備もむだな国費の濫費が行われないような計画を立てていかなければならぬ。その点についての文部大臣代理の御答弁をわずらわしたいのが第一点。  それからもう一つは、そのすし詰め学級の問題が教育効果に及ぼす影響というものは、これは非常に大切なものでありますけれども、しかしながら、これが定数が非常に少くなるからといって、どこまでも教育効果が上るかというと必ずしもそうじゃない。これは広島大学あたりの実際のデータによっても現われておる。三十名から四十名というところだと思うのですが、日本の現状を考えてみた場合において、非常に山村が多い、僻地が比較的多い、小規模の学校が多い。日本教育効果を上げるという一つ定数の問題は、逆に私はすし詰め学級解消ということも非常に大きな問題だけれども、小規模の学校のこの教育効果をどうやるかということが、文部省としては非常に大事な点である。四十名以下というものが三一%もございますし、それから学校を単位にずっと割っていったならば、相当多くの学校がそういうむしろ校長一人、先生二人、それで六年生まで授業をやって、単級複式学級をやっておる。こういうような点についての、これは内藤初中局長あたりから、今までの単なる交通が僻地であるということだけで、小規模の僻地学校であるとかなんとかというようなことでなくて、その教育をやる場合においてもう少し教育効果を上らしめるためには、やはりその小規模学校としてか、あるいは僻地学校としてか、その範囲というものを拡大しなければならぬと思う。これはすし詰め学級と同様に大切な問題であると思うのですが、これについての政府の考え方はどうかということが一つでございます。  それからもう一つは、この教育効果を上げるということについては、もちろん施設設備、それから定員の確保ということが大切ではありますが、同時に今度は先生の質という問題が一つの非常に大きな問題になってくると思う。たとえば私、理数科教育関係で調べました結果によりますと、中学校だけのデータしかございませんけれども、これによりますと、現在中学で、理科教育を自分自身が受けておる、専攻しておる人が公立において四八・一%で、専攻しておらない人が教壇に立っておるのが五一・九%あるというこの現実、これが私立においては、逆に専攻しておらない者がわずかに一七%であって、専攻しておる人が八三%もございます。もちろんこれは私立の学校でございますから、年とった方々で相当有能な方がおられるということにもなりましょうけれども、公立でも半分の人が理数科教育のいわば教養を持たない、そういう人が教壇に立っておるという現状です。これについての解消といいますか、再教育というものに対して、どういうような考えを持っておるか。この点になるならば、やはり私は教員養成機関というものをあらためて考えてみる必要があるのじゃないかというふうに思うのですが、これに対する政府のどういうあれを持っておられるかということを、大学局長あたりから御答弁願えれば幸いだと思うのであります。  以上でございます。
  24. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 すし詰め学級解消の問題は、先ほど来だんだんと御意見もあり、私もお答え申し上げました通り教育水準の維持向上のためには、一番大切な問題でございまして、おそらくは、今文部省が当面しておる問題としては最大の問題、あるいは最大の問題の一つであろうかと考えておるわけでございまして、これにつきましては、来年度予算におきましても相当の手配をいたしたつもりでございます。先ほどさように申し上げましたらば、辻原委員からおしかりをいただきまして、ただスタートラインについたにすぎないのではないかというお言葉でございましたが、私どもといたしましては、スタートラインよりは少し一歩深く踏み込んでおるように思うておる次第でございます。しかし何分にも給与の問題と校舎の整備の問題、双方に巨額の予算を要するところでございまするから、前年度承認を受けました予算額をこれに比較いたしますれば、なるほど辻原委員の御批評のように、スタートラインといわれても仕方がないかもしれませんが、とにかく歴代の文相、文部当局は、大蔵省に対してこの問題解消のために最善の努力をいたしており、将来もまたこの努力を継続する所存でございまするから、その点は御了承願いたいと思うのでございます。  教職員の定数基準の問題につきましても、先ほどお話のありました通り法律案を具して、この国会の御審議を願いたいと考えております。幸いにしてこの法律案が通過いたしますれば、さらに地方財政におきまして教職員の給与費、基準財政需要額の測定単位といたしましても、この法律で定められました定数をとっていくというようにいたしまして、そうして教職員の定数、教職員の定数に関する給与費を確保いたしまして、地方財政のしわ寄せが教育費にこないようにというように努めて参りたいと思うわけでございます。  なお先ほど御指摘のありました危険校舎の解消の問題とか、不正常授業の解消の問題等につきましても、決してこれをもって満足しておるわけではございません。これは教育の基本に関する問題でございますから、今後も鋭意努力いたしたいと考えております。  なお小規模学校の問題、それから職員の教育養成の問題等につきましては、政府委員からお答えをいたすことにいたします。
  25. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 ただいま御指摘の小規模の学校解消につきましては、お説の通り教育効果が非常に上りませんので、いろいろ私ども教育調査を行なってみましても、学力水準の落ちておりますのは、そういう小規模学校でございます。私どもは、小規模学校においていかにして学習効果を上げるかということを一面において考えております。特にこれは教科別の指導でございます。同時にできるだけ町村合併等々とも関連いたしまして、学校統合の線を強く推し進めて参りたい。ただいま僻地におきます無電灯地帯に対する配電装置等をやっておりますが、今後できるだけスクール・バスとかあるいはスクール・ボートについて十分研究して参りたいと思っております。  なお理科教育の問題が出ましたので、私どもは来年度予算に八百八十万円計上いたしまして、理科の先生の再教育をいたしたい。御指摘通り理科の教員の素質が不十分でございますので、小学校で大体一割程度中学校では理科教員の免許状を持っておる人の半数を目標に、五ヵ年計画で本年度から発足して、大幅に理科の教員の資質の向上をいたしたいと考えております。
  26. 緒方信一

    ○緒方政府委員 理科教育に当ります教員の資質の問題に関連いたしまして、教員養成についてお話がありましたが、現職の教員の再教育につきましては、ただいま初中局で計画されておりますが、これから大学が養成して参ります養成の方法につきまして申し上げます。教員養成制度につきましては、改善すべき点が多分にあると存じます。先ほどおあげになりましたが、この前の国会の衆議院の議決の中にも、教員養成制度の根本的検討ということがございまして、その線に沿いまして、文部省といたしましては、昨年来中央教育審議会に諮問いたしまして、制度全般にわたりまして、教員養成制度と教職員免許制度等にわたりまして検討をいたしております。中央教育審議会におきましては、特別委員会が作られまして、ただいま具体的な検討に入っておるような次第であります。そこで内容の問題といたしましては、理科教育につきましては、現在それぞれ所定科目あるいはその単位数がその免許をとりますための要件としてきめられておりますけれども、なお不十分な点が多分にございますので、十分検討いたしまして、小中学校におきまして理科教育を進めるための資質の十分な教員を養成したいという観点から、内容的にも検討をいたしております。
  27. 辻原弘市

    辻原分科員 いろいろこの問題については、数字的に議論の多い問題でありますので、それらはいずれ法案が出るということでありますから、その機会に譲りましてお尋ねいたしたいと思います。  最後に、この問題の最後でありますが、このすし詰め学級の問題について、取りまとめて大臣にお考えを承わりたいと思いますが、今までの私並びに坂田君の関連質問でも、問題の事態がはっきりいたしますように、たとえば不正常という場合にも、全体の傾向として、これは私は例年感ずるのでありますが、不正常の大部分は、まあ都市ですね。主として都市に起きる。僻地の場合にはむしろ坂田君が指摘をいたしましたように、小規模の学校における定員不足、こういう問題が大であります。ところが不正常の解消促進にいたしましても、大体は成り立ちは、これは六大都市、都市中心であったように思うのでありますけれども、しかしそれとても一般的な一つの考え方に立って実際はやっておるわけですから、そこに問題がある。だからもう少し画然と、ほんとうにペニシリンのように、何というか即効的な役割を果すような方式に改められないものか。といいますことは、不正常、いわゆる都市を中心にした不正常を解消するということについては、何か別途な措置がとられなければ、現在のやり方でも年の初めには解消しておるけれども、年の暮れにはもう不正常だという傾向が、おそらく東京、大阪を中心として生まれておると思う。そういうものを根本的に解消すべきである。また一般的に学級定員適正化するというものに見合う一つの不正常の設備施設、こういうものは、一般的なやり方でおやりになるというふうな考え方に、今後私はもう少し研究をしていただきたい、こういうふうに思うのです。  それから僻地に対する、いわゆる小規模学校に対する配慮、これも希望を申し上げておきたいと思うのですが、法案が出れば、内容が明らかになると思いますが、定員の問題でも、僻地の場合には、おそらく全国一律と申しますか、法案による定数を欠けた場合には、どうしても僻地に対する配慮が現実には、これは乏しくなると思うのです。そこでそういう場合に、僻地に対する特に僻地教育の振興という問題ともにらみ合して、これも何か別途措置されるという考え方を考慮されてはどうか、その場合の一つの試案としても考えられることは、たとえば養護教員あるいは事務職員、こういう点については、従来のやり方は、比較的多学級を中心にして配置される傾向があった。もし今後の法案においてもそういうことであるならば、私はこれは問題だと思うのです。何も養護教員だ事務職員だというものは、学級の多寡によって、その必要不必要がきまる性格のものじゃないと思うのです。そんな理論はおかしいと思う。これは明らかな金からきた逆算的考え方であって、そうではなしに、本来の性格から見て、ことに僻地の場合には、無医村も含んでおりましょう。そういう意味からいえば、養護職員は非常に重要である。事務職員これはけさの新聞でありましたか、朝日新聞に地方の報告が載せられておりましたが、それを私は読んでみたのでありますが、僻地の比較的少い教員の中で、あるいは研修、出張、こういうものをまかなっていくことにおいて非常に運営に困っておるという問題が詳しく載せられておりましたが、そういうことを考えてみても、そこに事務職員などというものはそういう距離的なことを考えなければいけませんから、学校の規模によってきめるという考え方をこの機会に私は廃してはどうか、そういうところに一つの重点を置く、こういう行き方をもしも採用されるならば、われわれとしてそれに協力することにやぶさかではありませんけれども、しかし従来の考え方をそのまま法案に移すというのでは、いささか法案に対する期待が私は非常に薄いと思うのであります。特にそういう点を配慮してもらいたい。  さらに最後に、大臣に今の問題をまとめて伺いたいのでありますが、すでにこの法案はいろいろ準備されて進んでおるようでありますが、いつごろ国会に提案されるか。  それからもう一つ私が指摘をいたしました施設関係について、これは与党の方でもかなり熱心におやりなすっておられるようでありますが、でき得べくんば私は二つ兼ね合せて私の先ほどから申し上げておる議論によっても、やはり関連が出て参りますから、片手落ちにならぬようにするために、一方に法案が出されるとすれば、一方における措置もこの機会にとるべき必要があると思うのでありますが、そういう点大臣はどういうふうにお考えになりますか伺っておきたいと思うのであります。
  28. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 不正常授業の解消に関連いたしまして、都市における特別の現象についての特別措置を考えてはどうかというお尋ねでございまして、まことにその通りでございます。御承知のように一般的に都市集中の傾向があります上に、最近あるいはいろいろな産業が興り、大きな工場ができますれば、その関係で非常に人口がふえるとか、あるいはまた集団住宅などが建ちますと、そこに思わざる人口増加が偏在的に起りまして、今御指指のような学校教育に関するいろいろの不正常の状態が起きてくるわけでございまして、これらはお説のようにその場合場合の処置を臨機にとらなければならぬと考えますし、さらにたとえば集団住宅等の問題でございますれば、各省とも連絡しておよその見通しをつけて、学校の設備あるいは職員の手当をしていかなければならぬと考えております。これは十分考えてみたいと考えるわけであります。またそれと反対の小規模学校、僻地学校の問題でございますが、これもお説の通りでございまして、市町村の統合に原因して、学校の統合というような問題も起きて参りますから、この問題も文部省といたしましては今検討を加えておる次第でございまして、先ほどお話にありましたスクール・バスとかスクール・ボートというような問題につきましても、十分検討を加えていきたいと考えております。それからかような学校の事務職員のことでありますが、この問題もやはり学校運営上きわめて大事な問題でございまして、法案の中で事務職員の確保ということにつきましても十分考慮をいたしたいと考えておりますが、いずれその際に御審議を願いたいと思っております。なおこの法案そのものでございますが、今鋭意準備をいたしておりまして、早ければ来週中にでも提案できるかと思っておりまするが、どんなにおくれましても今月中には提案ができると考えております。
  29. 辻原弘市

    辻原分科員 来週中に法案が提案されるということでありまするから、その法案をにらんで、われわれも十分な検討を進めたいと思いますが、ただこの問題について、最後に特に大臣に申し上げておきたいのであります。前国会において勤務評定の論議をいたしましたときに、松永大臣初め文部当局がるるこの問題についての見解を表明されて、しかもその必要を強調されたときに、最も大きな根拠とされたのは何であったかといえば、それはかつて地方公務員法が制定せられたときに、二十六条でありましたか、それに法的根拠として法律に明記されてあるからこれをやるのだ。八年もほっておいて、最近になって、法律にあるからこれをやるのだ。法律にあるから、法律にあるからということを文部省が言うものですから、最近どこへ行っても、心では反対なんですが、法律がある以上、法治国家としてはやらなければならぬということを聞くのです。地方教育長さん、あるいは教育委員でも言っている。これはあなた方のマス・コミによる宣伝が成功したわけです。その意味においては、私が先ほど申し上げたように、教員定員にしてもちゃんと法規にあるのです。あるけれどもやっていないのです。行政管理庁からしかられても、まだやらない。今度の予算を見てもまだやらない。都合のいいときには、法律があるからどんなに無理をしてもやらなければいかぬという議論をされ、現状あまりそれを持ち出しては無理なときは、そういうことはほとんど強調されない。こういうふうな便宜主義をとられている。私はそういう便宜主義はいけないと思う。片一方において法律を云々するなら、これとて法律の価値は同じなんですから、ちゃんと法律に五十人と規定されている限り、文部省はそれを順守しなければならぬ。地方財政状況がどうあれ、そのことについて、文部省は過怠なく実行していく、文部省自体の政策にそういう基本を打ち立てなければならぬ。内藤局長は都合のいいときには、法律にございますからと言い、都合の悪いときには、現実々々ということを強調される。こういうことであっては、文部行政に対する信頼は国民から薄れていく。すし詰め学級の問題につきましても、法規にあるんだから一つ対処してもらいたい。特に大臣は閣議等において、そのことを強調されてしかるべきだと思う。私はこの問題についてはこれくらいにしておきます。
  30. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 今の辻原委員の御質問でございますけれどもすし詰め学級の五十人の場合は、学校教育法施行規則に「五十人以下を標準とする。」ということがございまして、五十人でなければならぬということではございません。片方の勤務評定の場合とは法律的な意味合いが違うと思うのでございます。
  31. 臼井莊一

    臼井政府委員 なおつけ加えておきますが、御承知のように先生方の数の問題は、現在でも二分の一は国で必ず跡始末をするという建前になっておりますが、ただ地方財政上なかなか五十名以下にできないというのが、先生方の定数の問題でございます。そこで私ども規則を守っていただきたいという建前から、今度それを目標に立法いたしまして、財政的にも自治庁、大蔵省の御援助をいただいて、そうしてこれを確保していきたい、こういうことを今後やることになっておりますので、御了承いただきたいと思います。
  32. 山本勝市

    山本主査 柳田秀一君。
  33. 柳田秀一

    ○柳田分科員 われわれに配られました、三十三年度予算のうち重要な事項について申し述べたいと存じますといって、文部省の所管予算の大要を説明されましたが、その順序で簡単に私の質問をいたします。  第一は、義務教育機会均等ということをうたわれておりまして、さらに第四に、学校統合の問題を掲げておられます。学校統合に関しての補助金十億何がしというのを計上せられておりますが、現在政府において市町村の統合を進めておるわけですが、おおむねこれは緒につき、また成果を上げております。ことに法律的の根拠を設け、財政的の裏打ちもして、市町村の統合を進めております。従ってここに起ってくることは、当然義務教育諸学校、ことに小中学校の合併が進んできた、また文部省も重点的に取り上げておられるわけです。そこで機会均等の問題とからんで、これ考えてみたいのですが、機会均等の方の予算を見ましても、学校統合に関連して、父兄の負担増の問題について全然触れられておらない。こういうような点に関して文部省はどうお考えになっておるか。当然これは機会均等と学校統合と関連して考なければならぬ問題だと思いますが、文部大臣はどうお考えになっておるか。
  34. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 教育費が膨大な費用を要しまするために、国費または地方費で正式の予算として支出されておりまするものだけでは、ほんとうに教育の目的を達することができないということから、つい不正常なやり方ではございまするが、PTA等を通じて父兄の負担が非常に増しておりますことは、お説の通りであります。私が参りまして承わりますと、三十一年度かの決算を見ますと、百五十八億とかいうような数字を算しておるというふうに承わっておりまして、お説の通りでありまして、これはどうしても解消して参らなければならぬと考えます。そのおもなるものは教材費その他の施設でございまするから、教材費につきましては、来年度予算として約二億ばかりを計上いたしておりますが、将来ともこの方針にのっとりまして父兄の負担を軽減していかなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  35. 柳田秀一

    ○柳田分科員 私は特に父兄の負担増で、通学の足代の問題を取り上げてみたいと思います。私が調べたある町村ですが、そこで統合しました新制中学に通っておる生徒が三百七十六人、そのうちで五キロ以下がわずかに一四%、六キロ以上が八六%、しかもそのうちで九キロ、十キロ、十二キロこれは往復しますとその倍になります。それが三七%含まれておる。われわれとしても、青少年の訓練の意味からも、せめて通学するのに一里とか一里半くらいまでは当然歩かすべきだ、自転車も使わすべきじゃないというように考えている。しかし八キロ以上、二里になりますと、これを歩いて通えということはちょっと無理だと思います。これじゃ学校教育にならぬと思います。朝早く二里歩き、夕方二里歩いて帰るということは無理だと思います。ことに昔はいざ知らず、このように交通機関が発達したときには、ついバスを利用する。バスを利用することも無理からぬと思います。やはり機会均等というならば、こういうような父兄の負担増になることは当然考えなければならぬ。こういうものを自治体で持っているところもありますが、この点について文部省はどう考えているか。これは大臣でなくても、局長からでもけっこうです。
  36. 臼井莊一

    臼井政府委員 ただいま柳田委員の御質問はまことにごもっともでございまして、父兄の負担を軽減せしめるという一助としても、中学校の生徒に対しても、小学校の児童と同様に、国鉄の料金を割引してほしい、かように考えまして、従来も国鉄当局にもいろいろ折衝いたしたのでありますが、しかし国鉄は御承知のように、独立採算ということを建前にいたしておりまするので、その趣旨においては賛成でありましても、やはりそれを国鉄としてただ割り引くというわけにはいかない、それをやはりどこかで負担してもらわなければならぬという意見等もございまして、従って簡単に国鉄の負担においてこれを割り引かせるということは、現在までのところは非常にむずかしくなっております。しかしこれを文部省負担するということはとうていできないわけであります。しかしただいま御質問のような御趣旨には私どもといたしましても同感でございますので、今後とも一つ国鉄とも折衝いたしまして、義務教育という中学校の建前からも、何とかそういうような方向に努力いたしたい、かように考えております。
  37. 柳田秀一

    ○柳田分科員 そういう通り一ぺんのお言葉はここでは要らないのです。文部省としては当然これはお考えになったので、それでは本年度において、この一年間ほどにおいて、文部当局は今政務次官お答えのように、国鉄に対しては、少くとも運賃を通常の場合と通学の場合に限ってという二つの行き方もあると思いますが、国鉄に強硬に折衝された事実がありますか。何回されましたか。それに対して国鉄当局はどういうような返答をしましたか。それを明らかにしていだたきたい。
  38. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 御質疑の点……。
  39. 柳田秀一

    ○柳田分科員 結果だけです。やったか、やらないか。
  40. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 やりました。
  41. 柳田秀一

    ○柳田分科員 向うはどう言った。
  42. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 向うは今政務次官お話になったような趣旨で、今十二歳未満を割り引いております。しかしながら中学全部に上げますと十五歳になります。そこで基本原則として十五歳までを対象にするということは、子供運賃の建前から参りますと、他のふろ賃とかその他の運賃との関係もございますので、国鉄だけが十五歳というわけにはいかない、こういう理論的な根拠を持っておりまして、今お話の独立採算の問題とからみまして、国鉄としては今のところ私どもによろしいという返事はいたしておりません。
  43. 柳田秀一

    ○柳田分科員 それは要するに体のいい拒絶であったわけですね。要するに国鉄としてはノーという返事であると大体解釈してよろしいのですね。ほどのよいことはここでは要らない。
  44. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 今までの交渉ではノーでございます。
  45. 柳田秀一

    ○柳田分科員 昨年もこれは参議院の文教委員会で決議しておるのですね。小児並みに取り扱ってほしいという決議をしておる。そして文部、運輸両委員長に手渡しておる。文部大臣も趣旨を尊重して実現に努力する。これは通り一ぺんの言葉なんです。国鉄当局に通り一ぺんの交渉をして、通り一ぺんに断わられている。それ以上事実は進展しておらない、こういうことです。十二歳までは割引になっておる。先般十二歳という制限は何かと問うてみたところが、十二歳というのは義務教育終了年限だからだ。義務教育といっても、十二歳でも、一人すわったら大人くらいの幅をとる人間もおりますし、おそらく座席のスペースできめたのではないと思う。子供がすわったって絶対三人がけはできませんよ。十二歳というのは、おそらく義務教育だからということで、義務教育の子供くらいは半額にしよう、そこでおそらく線を引いたのだと思います。ところが義務教育は十五歳に延びたのだから、十五歳でいいと思う。文部大臣はそれに賛成してもらいたい。ただ国鉄当局に対する当り方が弱いだけである。独立採算制というけれども、国鉄は会計検査院の報告によってもわかるように、決算委員会で何回追及されたかわからない、実に乱脈な会計をやっておる。こんなものをこれくらいやったところで、独立採算制に響きやしない。これは通り一ぺんにやったら、幾ら局長が言ったってだめなんです。ほんとうに文部省が真剣にやるというならば、文部大臣が閣議でやる、閣議でやったら、おそらくほかの大臣も賛成すると思う。閣議できめたら国鉄はおしまいです。私鉄はそうはいきませんが、国鉄は閣議がきめたらおしまいです。だから私は全般的に無理ならば、往復の通学だけに限ってというような特ワクをつけてもいいと思う。これは義務教育なんだから、これくらいのことは文部省がやらなければだめだ。ただあなた方、国鉄にやっているだけなんです。ところが国鉄総裁の一昨昨日の言明は、これは鉄道営業法によって旅客運輸規程というものがあって、十条に書いてある、それを改定する意思がありますか、と言ったら、将来考えましょう、現在運賃審議会というものがありますから、そこで検討しましょう、そんなことで私は満足しない。それでは現在国鉄に運賃審議会という諮問機関があったならば、この審議会には各省とも、国鉄にしても当局の方から問題点を列記して審議会に諮問をかけるのです。その問題点の中に入っているかといえば、入っていない。文部省は完全にいかれている。文部省がもっと強硬であったならば、当然問題点に入っていなければならない、問題点には入っていない。あなた方の国鉄当局に対する交渉なんかへのようなものです。とうふの中にくぎを打っているようなものです。何もならない。それを僕が追及したら、ようやくただいまのところ問題点は貨物の方だけでございます、それじゃやるか、はい、やります、それは僕がとってきた。あなた方はそこまでやっておらない。そんなことは幾らやってもへのカッパだ。そんなことではだめだ。国会の決議なんかへのカッパみたいなものです。もっとど神経でやるかどうか。大臣は、どうせ臨時的でまたかわられるから、私はまたもう一ぺん国会で追及しますが、それまでに何回国鉄と交渉して、国鉄はどう言ったか、その一件書類を全部参考資料で要求しますが、それまでやりますかどうです。こういうものは事務当局が本気になってやらなければならぬ。
  46. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 お話の点、十分今後努力いたします。
  47. 山本勝市

    山本主査 ちょっと柳田君に申し上げますが、十二時半に一応午前の分は打ち切りますから、その予定で進めて下さい。
  48. 柳田秀一

    ○柳田分科員 私はこれを問うておいて、そしてまた暫定的には自治庁の基準財政需要額にでも入れて、交付金の中ででもめんどうをみるかということまで今度は念を押したい。ここを済ませて、また第一分科会に行って、自治庁の方に質問したい。これは大へんな問題です。教育機会均等といったところで、片道二里以上歩かせる親の負担の増というものは、教育機会均等からも大へんな問題です。単に文部省が学校統合をやらせる、自治庁は市町村の合併をやらせる、それでは片手落ちなんです。通り一ぺんのそんな簡単なことでは国鉄は絶対に動きませんよ。これはこのくらいにしておきましょう。また次の機会にやりますから、あなた方、絶対にサボってはいけませんよ。国鉄の方で、通学に関して、義務教育ぐらいは半額にしようということならば、これはバスも私鉄もみな右へならえになってくる。これに文部省はど神経でかからなければいけません。  次は、第五というところに科学研究の重要性にかんがみ、研究の促進をはかるとなっておるのですが、これは通産省にも関係することですが、今大学の各先生あるいは国立の研究所等の各先生が特許を取りますね。そういう公務員である大学の教授とか研究所の職員なんかが特許をとったときは文部大臣、どうなると思われますか。
  49. 緒方信一

    ○緒方政府委員 職務上の発明でございますから、個人に特許権が参りませんで、国に帰属することになります。
  50. 柳田秀一

    ○柳田分科員 問題はそこなんです。そのために科学研究が非常にチェックされているのです。いい研究をしても、たまたまその先生が公務員であるとか、研究所の職員であるから、特許権を全部国が召し上げてしまう。これじゃほんとうにいい研究をしようという意欲が少くなってくる。何も職務上の地位を利用して不当にもうけるのではない、人類の福祉のために、国家のためにりっぱな研究をやっていただいたならば、当然それぐらいの、多少の報酬がいくような制度にしなければ、やはり科学研究をやっていこうという意欲は失われてくるのです。文部大臣、おわかりでしょう。今のように国に帰属されるから、特許権は自分の知人であるとか、親戚とかの名義でとっている。結局事実はどうかといったら、正直なところ、みなしかるべく適当におやりになっている。これでは科学研究は伸びない。こういう場合には、もっと国立の教授であろうが、研究所の職員であろうが、りっぱな特許をとられたならば、それによって得るところの利得はその個人に帰せしめるくらいにしておけば、みんなそれぞれ気張って科学研究をやるのです。ここに隘路がある。そうすれば科学研究というのはそうむずかしいことじゃない。またなんぼ広大な理想を立てて予算を組まれても、そういうところに隘路がある。これはなかなかうまくいかないのです。文部大臣どうお考えになりますか。
  51. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 なるほど大学教授等が自分の研究の結果特許をとれるようになりましたならば、その人個人に帰属するようにということは、やはり研究の奨励の一助になるということはお説の通りであります。またそういたすことによりまして各般の弊害もまた想像できないわけでもございませんから、従来からさような制度になっておることと存じます。この問題は十分御意見などを承わりまして検討をしていく必要があると思いますけれども、今ここでその御説のようにいたしたいということは申し上げかねるわけでございます。
  52. 柳田秀一

    ○柳田分科員 今唐澤臨時代理の慎重な御答弁もありましたが、代理だからそれくらいの御答弁でしょうが、また見ようによっては私の言ったようなこともこれは一理があるのです。先ほどの国鉄の問題とからんで、次の閣議で、実は予算委員会に行ってみたところがこういう意見が出た、これにはこういうような難点もあるかもしらぬが、しかし一理はあるのだというようなことを、やはり閣議の場であなたは今の国鉄の運賃の問題とあわせて両方一つ出されて、これは運輸大臣どうだ、これは通産大臣どうだ、こういうように、そこまで熱意ある御検討ですか、単にこの委員会を通りのがれるだけの御検討ですか、どっちですか。
  53. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 十分考えてみたいと思います。
  54. 柳田秀一

    ○柳田分科員 はなはだ不十分な答弁です。  次は第十一に文化財保護事業に必要な経費を四億ほど組んでおられるのですが、昨年の十一月に能を重要文化財に指定されて、そこで人開が指定されましたが、この指定の問題に関して非常に不明朗な点がある。能は御承知の点のように京都が発祥地です。ここに同僚小川年次先生もおられますが、これは京都が発祥地なのです。河井先生もよく御存じなのですが、観世流というのは京都が発祥地なのだ。ところがこの人選は四十名中三十四名が東京の人間なのです。先般予算委員会で岸総理もすべてのものが皆中央集権だ、これはどうもならぬ、こう言っておられる。すべてのものは中央集権だ。東京なんというのは文化はないですよ。これはみな日本全国からの寄せ集めの文化なのです。東京に古来の文化で何があるか。東京には産物もなければ、名物もない、文化もない。日本全国からの寄せ集めなのです。京都は何といっても一千何百年の王城の地なのです。日本文化発祥の地です。ことに能というのは足利時代から発生したことは御承知通りなのです。京都はその能の発祥地です。それが四十名中三十四名東京から選んでいる。これでは地方の支部が怒るのは当りまえだ。能楽協会があって支部というのを作っていますが、京都、名古屋は全然オミットされている。宝生九郎氏が理事長をやっておりますが、この選定に当っては非常に不明朗なものがあって、京都は能楽協会から脱会する、理事長不信任というような動きをしておりますが、この間のいきさつを一つ御説明願いたい。
  55. 河井彌八

    ○河井政府委員 ただいま柳田先生から御指摘がございました能の重要文化財の指定につきましては、お話しの通り能の発祥の土地と申しますれば京都でございます。東京あたりはその末流であるといわなければならぬのであります。しかしこれは文化財の保護の立場から申しますると、正しい能を保存していこう、そうしてその方法といたしまして、結局現在において最もすぐれた人を指定しよう、それからまた技能が高度にすぐれておる、それから舞台の経験が十五年以上であるということ、それから現役の人であるというようなことを能楽協会が考えまして、それによって指定していこうということを文化財保護委員会に申し出たのであります。これにつきまして、実は全国で能を担当しておりまする人の数がどのくらいありますか、千名をこえておるということであります。それからその流派もずいぶんたくさんありまして、指定の問題は非常に複雑なことでありまして、文化財保護法の改正が昭和二十九年に行われて、この保護ということも加えられたのでありますが、この指定を急速に決定することができなかった理由は、さようにたくさんの人があり、またその流派等もいろいろあり、ずいぶんこんがらがった実情にありますので、結局能楽協会というものにその仕事の調査を頼んで、ただいま申し上げたような三点を主といたしまして、この指定に入ったわけであります。非常に簡単であるように考えまして……。
  56. 柳田秀一

    ○柳田分科員 河井先生、どうぞ簡単でけっこうです。
  57. 河井彌八

    ○河井政府委員 それがお話通り昨年の十一月にきまったわけなんであります。そういうような標準から大体選定が終りまして、候補者がきまりました。それでわれわれの文化財保護委員会といたしましては、専門一審議会というものがありまして、それに諮問いたしまして、慎重に討議し検討いたしました結果、さような状態が出て参った、これは先生の方がよく御承知だと思います。しかしこれはこのままでいつまでも押し通していくということはわれわれは考えません。すなわちこの能の正しい意味においての発達が十分に期せられまする第一歩としての委員決定でありますから、それではすぐに人数をふやせとかなんとかおっしゃられましても、これは私どもの方はすぐにさよういたしますということのお答えはできませんけれども、これを機会といたしまして、能楽全体が健全な発達に上っていきますようにいたしたいということを念願しております。  それから、ただいまお言葉のうちにありましたが、ちょっと私にはわかりませんが、能楽協会が選定等について何か不都合な、不明瞭なことがあるというようなことがお言葉のうちにあったかのごとく承わったのであります。しかしその点につきましては、私ははっきりわかりませんけれども、さようなことはないというように考えております。  それからさらにつけ加えて申しますと、京都、名古屋が非常に決定に不満でございましたが、最近は何か東京においてよく意思が疎通したという報告を得ております。これは報告だけであります。一応そういうような状態でありまして、われわれの文化財保護委員会といたしまして、こういう無形な文化財、特に日本特有の大切な技能を保持していく上におきましては、十分万全を期していきたい、こういう考えを持っておりますから、御了承をお願いいたします。
  58. 柳田秀一

    ○柳田分科員 監督の立場にあるところの文部省——文化課長来ておられますか。——局長来ておられますね。局長にこれはお尋ねしますが、この選定に当って、選考は公平に行われたと思いますか。
  59. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 選考は能楽協会の中から十名出しまして、それからさらに部外者の学識経験者から十名、計二十名でもって慎重審議をいたしまして、その選考に基きまして指定をいたしたわけであります。その選考につきましても、直接詳細には存じませんが、慎重審議した上にやったということを言っておりますので、おそらくそれは何ら他意はなかったものであろうと思います。
  60. 柳田秀一

    ○柳田分科員 全くその逆なんです。これはそのようなことではないのです。一々言うとおかしいですが、これは全く逆なんです。そんなようなことはないのです。能楽協会の封建性ということもよく知っております。それから各流各派があって、何というかお互いに非常に対立しておることも知っておりますが、佐藤文化課長が能楽協会へ行かれたときにも、選考は公平に行われたのかどうかということで能楽協会に詰め寄ったら、宝生理事長も手落ち、手抜かりがありました、支部との連絡も不十分でありましたと、宝生理事長みずから認めておる。宝生理事長もこの選考委員に入っておる。しかも選考委員が多いというので、これを縮めて二人か四人の小委員会にした。その中に宝生理事長も入っておる。そうして佐藤文化課長が、公平にやったのじゃないのかと聞いたら、いや手抜かりがございました、各支部との連絡が不十分でありました、こう言っている。局長の答弁はただここを過すだけの答弁で、そんなことでは私は答弁にならぬと思う。こういう問題は、だれが考えたって四十名中三十余名が東京の人間で——ただいま河井先生がおっしゃいましたいろいろの選衡基準はございましたが、そうすると、あとの東京を除いた全日本で六名しか入らぬ、これはだれが考えたって片手落ちである。これはひとり能楽協会だけでなく、日本の行政、政治全般がこの姿なんです。従って私はここでお聞きしたいと思うのは、これは毎年十一月に御決定になるらしいのですが、これだけもめたんですから、もう一ぺん御破算に戻して——御破算に戻さなくても、多少は辞退していただく人もできて、もう一ぺん選衡し直すかしなければおさまりませんよ。その人は一生でしょう。その人は幽明境を異にするまでは、次の人は四十名なら四十名のワクがあれば補充できないということなんです。そうなんでしょう。結局これは今後追加でもされますか、それとも幽明境を異にされるのを待ちますか。
  61. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 先ほどの御説明不十分でございました。選考そのものにつきましては非常に熱心に慎重審議いたしたのでありますが、ただその間に支部との連絡に確かに手落ちがあったと思います。お話通り支部との連絡が非常に不十分であったということで宝生理事長が遺憾の意を表されたことは事実であります。  それから今後のことでございますが、この四十人は決して不動のものではないと考えております。技能が非常にりっぱな人が出て参りますれば、それを指定に追加することもできますし、またこの四十人の中で技能が何かの理由で非常に落ちぶれたとか、引退されるということになれば、その方は指定を解除されるということもございますので、今後の運営は能楽協会の今後の実際の活動の推移に応じましてきめなければならぬ。決してこの四十人は不動のものということは考えておりません。今後その選考等につきましても十分考えていきたい、さように考えております。
  62. 柳田秀一

    ○柳田分科員 そこまで言われたら、済んだことでありますから、これ以上追及はいたしません。しかしながら私はこの選定を見ても、文部省予算も組んでおられるのに監督行政がいかに不十分であったかということがわかる思う。能楽協会にまかしている、それだけではいかぬ、国費を使ってこういう重要無形文化財を指定するからには、もう少し慎重な態度で臨まなければならぬと思う。ことに京都の観世から一人も入っていないということはナンセンスですよ。私は京都の出身だから京都の肩を持つというわけではないが、すべて行政は、政治は、東京中心だ、東京の人間はえらいのだという考え方、そうして皆さんは東京の人とは絶えず折衝があるから、まず東京を優先するという考え方は、こういうところからも改めていかなければならない。これは決して固定したものではないというお説もありましたし、今後この問題を契機として、もう少し公平に、全国的な視野でだれが見ても納得するような選考ということを、ひとり能の問題だけではなしに、全般の問題についてもお考え願いたい、これだけ要望して私の質問を終ります。
  63. 山本勝市

    山本主査 午前の会議はこの程度にいたし、午後一時三十分より開会し、文部省所管に対する質疑を続行いたします。  暫時休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————
  64. 山本勝市

    山本主査 これより会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。辻原弘市君。
  65. 辻原弘市

    辻原分科員 私は社会教育の問題について少し伺ってみたいと思います。本年度の社会教育予算を見ますると、ほとんど前年と同じであります。結局通算いたしまして、現在国が社会教育に投じている金というものは、文部省予算で見られる限り約一億強というふうにいって差しつかえないと思います。ところが申し上げるまでもなく、学校教育に対比して社会教育重要性というものも、これは年々一般国民の間でも強く叫ばれておるのであります。ところが文部省の社会教育に関する限りは、どうも例年例によって例のごとしで、目立った成果をおさめていないように見受けられます。そういう立場から私はいつもこのことを申し上げるのでありますが、社会教育についての構想を場当りしないで、やはり継続してやってもらいたい。特に社会教育の中で文部省が出しておられるこの社会教育調査報告書を見ましても、公民館による社会教育の成果というものはきわめて重要であります。そういった意味で従来からこの公民館法の制定についてやかましくいわれておりましたが、いまだにこれが日の目を見ない。他の図書館あるいは博物館は、いずれも法を制定しまして、それによってかなり成果を上げておるにかかわらず、重要な公民館運動についての基本となるべき法案の制定ができない。私は非常に不思議に思うのでありますが、これは一体そういう制定の意思がないのかどうか、大臣に伺っておきたいと思います。
  66. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいま公民館に関する法律を制定する意思があるかどうかというようなお尋ねでございますが、私どもといたしましても、公民館活動が各地域の教育、文化に非常に大きな影響を持っておりますので、できるだけこの振興をはかっていきたい、かように考えましていろいろ研究をして参ったのであります。ところで、今お話の点は、公民館単独法制定というような事柄ではないかと存じておりますが、私どもといたしましては公民館の重要性は十分認識いたしておりますが、要するに公民館に置かれております職員の問題あるいは公民館の経費の問題等につきまして、単独法を制定いたしませんでも、あるいは社会教育法の一部改正というようなことでもいけるのではないか、かように考えまして現在研究中でございます。
  67. 辻原弘市

    辻原分科員 単独法でなしに、法の改正でもってでもいけるというお話でございますが、効果は同じであっても、やはり法案を制定することによって、国民の中で公民館についての認識を深める議論も巻き起されるのでありましょうし、またその法案が逐次地方協力によって高められるという一つ効果も期待できる面からも、これはやはり社会教育でありますから、一般の国民がこれに関心を持って協力してもらえる態勢を施策の上でどう打っていくかということになりますれば、単に他の法律を取り扱うのと違ったような意味合い、効果もこれによって期待をして参りたいのです。そういう意味からチャンスはすでに訪れておるのでありますから、単独法を制定するという形に踏み切った方が、これは社会教育を前進さす上において一つのエポツクを画すとでもいいますか、そういうことになるんじゃないか、こういうふうに判断をしておるのであります。局長はそういう認識の上に立っておられないようでありますが、いま一度伺っておきたいと思います。
  68. 福田繁

    ○福田政府委員 お説のような事柄も十分検討いたしておりますが、やはり法案といたしましては内容によることでございますので、私どもは、現在の法体系の上から、一応社会教育法の中でこれを改善、充実していきたい、かように考えております。
  69. 辻原弘市

    辻原分科員 私はその考えを改めて進めてもらいたいと思うのです。それは何もそうしなければならぬ——できるからそれでいいんだという考え方も一つ議論でありますけれども、しかしさきに申しましたように、少くとも社会教育の中で図書館あるいは博物館はすでに規定をされておる。同時に公民館もそれより以上の効果を社会教育の上に期待できるのでありますから、何も社会教育の上で措置しようということで、できるから済ますんだというような考え方には立ってもらいたくない。もちろん中身のことでありますから、どちらであろうと同じだということも言えないこともありませんけれども、しかしこれを取り出すことによって、地方においての公民館の果す役割というものがより広範になるということを考えた場合に、社会教育法でもって事を済まそうというのは、文部省としては少し消極的過ぎるというふうに私は考えます。社会教育の中で、あるいは今具体的にやっているものを見ますと、青年学級にしても、あるいは婦人学級その他公民教育全般をとらまえてみても、実際地方において何を中心にやっているかというと、公民館なんです。これは統計の上に、あなた方が出されたこの中には、はっきりそのことが書かれている。そういたしますと、いろいろその議論はあります、ところが社会教育くらい、議論はあっても実際むずかしくまたつかまえにくいものはないわけです。そうすると、やっぱり何かそれを行う中心というものを社会教育の上で与えてやらなくてはいかぬ。それが図書館になるのか、あるいは博物館になるのか、そういう議論は私は成り立たぬと思う。どうしてもやはりこれは自主的な形で行われる公民館活動というものが中心になって、それが青年学級とも婦人学級とも成人講座とも結びついて、こういうような重要な役割を果すのですから、あなたの、また文部省が考えている考え方は、私は社会教育への消極さの一面を物語っていると思って、この点についてははなはだ不満であります。そういうことが影響いたしましたかどうかは知りませんが、ともかく予算を見た場合には全くがっかりさせられるのであります。少くとも文部省予算というものが、今日国費の中でもかなりのウエートを持ってきておるにもかかわらず、社会教育予算というものが、指摘するまでもなく、すべてのものを全部拾い上げてみて、社会教育の振興予算が十一億ですか。具体的に地方に補助金として回される、いわゆるほんとうの地方の行政の中で行われる、あるいは地方の住民がそれによって独自な社会教育を展開するというものは、そのうちの一億程度でありましょう。そういうような形では、いわゆる特に環境による教育、あるいは社会の浄化という役割をになう社会教育としては、きわめて不十分である。これは総括的に申さなければならぬと思います。  そこで一、二具体的に聞いて参りますが、今私が申し上げました公民館、それについて設置の補助を出しておりますが、ここの統計で見ますと、本館、分館があって、そして各市町村の別にどの程度のものが今日作られておるかということが数字で表わされておりますが、その概要をこう見てみましても、やはり常識的に考えると同じように、数字も、市では本館、分館ともかなりできておる、それから町に至ってその次に位する、その次が村だ、やっぱりこういう常識的な傾向を示しているわけです。ここで考えられることは、まあ、わずかな補助金であります、年額一千万が、ことしは千八百万ですか、その程度のあれですから、実際公民館について云々といったって、これは国よりもむしろ市町村の責任に帰している点が多いわけなんです。だからまあ、予算の全体を増額させるということ、これはもちろん必要でありますが、同時にどういうものを中心にして設置させるかということについて、やはり構想を立ててやらなければならぬと私は思うのです。もちろんそのことは文部省でも計画を立てられておるのでありますけれども一つあきたらぬ点がある。それは、非常によい規模のもの、たとえばそのわずかな補助金を配当するにしても、聞くところによれば、百坪程度のものを中心として、それ以上のものが大体中心になっているモデル的な公民館を設置させよう、こういう考え方、それは確かに私は一理あると思うのです。よりよいものをモデルとして作らせる。ところが実際に公民館活動として、また社会教育として期待されるものは、むしろそういう一般社会の中でそういう機会に恵まれない僻地山村あるいは農村、こういうところを中心にした社会教育あるいは公民館活動をわれわれとしてはより期待しなければならぬと思います。教育のいわゆるマス・コミに接しない、文化の波をあまり受けないような地域、こういうところにむしろ重点を入れてやるということが私は現実的ではなかろうかと思う。そうすると本館の設置もさることながら、分館でやってもよろしい。奥地に入りますと、隣の部落から隣の部落へ五里も六里も行かなければならないようなところがたくさんある。そういうところへ作る公民館というものを非常に地方の住民は希望しておるのです。集会所もありません近年ようやく、これは文部省のおかげですけれども、例の僻地教育振興ということで集会所が学校に作られた。これがどれほど僻地の学校教育のみならず、文化を高める上に役立っておるかということは、おそらく皆さんが想像する以上であります。このくらい実際地方にきいておる予算は私はないと思う。それと同じように、公民館、それすらこれは補助が少いためにまだまだ設置されません。しかも限定されておる。ですから、地方の文化活動などというものは奥に行けば行くほど部落単位が多いのです。そうすると、その部落単位にした公民館の設置というものが、結局、地方の文化の要求に見合う一つ施策ではないか。とするならば、百坪以上しかやらないとか、あるいはそういう小さい規模のものはあまり相手にしないということでは、これはますます都市と農村、山村の開きというものは大きくなるのです。だからむしろ予算の方が僅少になればなるほど、小さくともそういうところにどんどん目を注いでいって当てがっていく、こういう行き方をとるべきではなかろうか、私はそのことを痛切に感ずるのです。そして部落ごとの分館でもよろしい、建てればそこが集会所になり、青年学級あるいは婦人学級あるいは成人教育教育の場になるという、そういうものを当てがっていく、これがほんとうの機会均等だろうと思うし、社会教育一つの眼目だと思う。認識の方はおそらく持たれておると思うけれども予算が少いということでやっておりませんが、何か少い予算の中でもそういうことを研究して今後やる意思があるか。さらに、従来の予算千万、千八百万というものはそういうモデル的な大きなものを作って刺激する、それは地方負担があるのですが、そんな僻村ではそれだけの地方負担が持てない、勢いこれは都市が中心になるのです。あるいは町が中心になり、市が中心になるのです。だからそれはそれとして、新しくそういう奥地の一つの部落あるいは僻、地僻村といわれるようなところの小さな公民館をも、どんどん国が一つ目を注いでやっていくという構想を立てられないか。これは事務当局の話と同時に、文部行政として大臣の御意見もあってしかるべきだと私は思いますが、お考えを承わっておきたいと思います。
  70. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいまお説のようなことは私ども非常によくわかるのでございます。ただわずかの予算を非常に効果的に執行いたしますためには、ある程度補助金というものが必要なことは御理解いただけると思います。従って補助金を使用いたしましてこれを実行する場合におきましては、われわれのねらいは未設置町村を解消するということをねらいとしております。従って一応百坪以上というような基準を立てますけれども、これは例外的に百坪以下のものでありましても、対象とした例もあります。このことは辻原委員も御承知のことと存じます。従って必ずしも百坪ということにこだわることなく、実情に即して公民館未設置の町村をなくしていくということが主たるねらいであるわけでございますから、そういう意味で私ども努力いたしておるのでございます。また町村合併後におきましては、従来の分館と本館というような関係がまた事情が変って参りまして、今までの分館のようなものでありますと一応対象にしないということもございましたけれども、今後におきましては町村合併後の新しい実情を調査して、それに基いてできるだけ地方の実情に合うような配分をしていきたい、かように考えておるわけであります。
  71. 辻原弘市

    辻原分科員 大体私の考えに反対はないようでありますので、ぜひそうしていただきたい。分館に対するあれも、補助の上で国の援助としても考慮するということ、それからいま一つは、百坪以下でも考慮したことがある、これは確かに私も知っておりますが、その場合にはやはり百坪が中心になっております。私が今ねらっておるような、たとえば僻村あるいは僻村の中の部落単位、こういう部落にぜひやりたいといったような場合には、私どもが町でながめるような公民館などとおよそ似ても似つかぬ小さな規模になるのです。せいぜい五、六十坪が一番ピークでしょう。そうするとやはりこれは現実は入らぬということです。だから、その程度のものであってもやはりこれは考慮してもらいたい。考慮していくということでなければ、僻地に対する手が届かない。公民館の問題とそれから教育予算の上では僻地集会所、この二つでもってどっと攻めていきますと、私は社会教育のまず最もささやかな場が山間僻地に作れると思う。隗より始めようでありまして、そこからそれを一つの基盤にして、先ほど言ったような社会教育の芽を伸ばしていく、そうして文化の恵みをそういうところに与えていく、こういった一つのあたたかみのある社会教育のやり方、そういうことを今後推進してもらいたいということを、これは特に大臣にも希望を申し上げておきたいと思います。  それから同じく公民館の問題でありまして、一つやってもらいたくないことがあります。それはもちろん学校教育でも考えることでありまして、常にわれわれが言うごとく、たとい文部省の指導監督が法規上設けられたにしても、やはり地方教育についての教育の自主性というものだけは尊重しなければならぬ。これと同じように、社会教育の面では、特に一つの国の固まった考え方をパイプを通じて与えていくという社会教育のあり方では、いつかは壁にぶつかる。これはやっておらないと言うに違いないと思うのですが、いわゆる自主的な形で、公民館活動でもその他青年学級でも婦人学級でも成人教育でも、できるだけ地方の自主的な住民の協力によってやらせる、それを文部省が援助していく、そしてより高い観点からそれについての一つの参考となるべき指導指針を与えていくというやり方がもちろん望ましいし、そうなければならぬと思います。ところが最近私一部懸念をしているのは、公民館活動なんかでどうも文部省が少し深入りをしているんじゃないか。公民館についての広報とかいろいろありますね、そういうもので文部省が少し深入りをしているのじゃないかという感を深くします。私の懸念であればそれでよろしいけれども、そういう一つの外郭団体がやっておるような事業に文部省が深くタッチしたり、それから外郭団体が行おうとすることに文部省が中に入っていったりするようなことは、私は努めて避けなければならぬと思います。きょうは具体的に申し上げることはやめておきますが、一つ自主的に——これは社会教育ばかりじゃございません、その他文部省にはずいぶんと外郭団体があります。そういう中にはもちろん文部省から、横すべりか縦すべりか知らぬけれども、入って担当される半公共的な機関もございましょうし、純民間的な形で運営されて、そうして文部省のやる教育行政協力している民間団体もあるわけであります。公民館活動の外郭団体といえばこれはよく局長はわかっていると私は思う。そういうところの一つの運営については文部省はできるだけその中に入っていって誤解を生ずるようなことがないように、これは一つ自主的に運営させるように望んでおきたいと思います。
  72. 福田繁

    ○福田政府委員 私ども法律の建前からいたしましても、公民館活動について文部省がいろいろ監督するというようなことは現在の法制上許されないのでありまして、公民館の事業そのものは設置者たる市町村の方で事業を運営いたすものであります。ただ、その中でいろいろ営みますところの青年学級その他の国の補助によります事業につきましては、大体の事業のやり方について文部省としては責任を持っておりますので、そういう点についていろいろ指導、助言をするわけであります。そういう建前でありますので、何かの誤解と存じますが、おそらく今おっしゃいました外郭団体云々というのは、全国の公民館の連絡協議会のことであろうと存じますが、これにつきましても、私どもはそういった団体の運営については関与いたしません。これは求めがあれば、事業についていろいろ助言をするという建前はとっておるわけであります。誤解のないようにお願い申し上げたいと思います。
  73. 山本勝市

    山本主査 今の辻原委員が言われた公民館というか、社会教育の場としての、つまり部落のあれは、私どもとしても考慮する必要があるんじゃないかと思う。実際われわれがある村へ行って、つまり今の合併する以前の村、そこへ行って講演会をやったときに集まる人間と、それから小さな部落へ行ったときに集まる人間とどっちが多いかといったら、小さい部落の方が多いのです。ですから、ほんとうに社会教育を徹底さそうということになれば、村単位では大き過ぎて、来る人はそのうちの幾らかだけで、これは研究の余地があると思います。ああいう和歌山県のようないなかではとても今の村単位なんかでやったら、一つの部落から二人や三人より来られないのです。埼玉県のような非常に便利なところでも、部落で会をしたときに集まる数と、大きな村でやったときに集まる数とは、かえって部落の方が多いということを一つ念頭に置いて、徹底さすには、やはり部落というものに何か場を求めなければ徹底しないということは、これは傾聴すべき意見だと思うから、私からも希望しておきます。
  74. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいま申し上げましたように、私どもは必ずしも百坪という制限にとらわれないで、実情に応じて、そういった未設置のところを解消していくというのがねらいでございます。従って未設置のところにつきましては、これはできるだけ優先的に考慮する、こういうふうに申し上げたわけであります。
  75. 山本勝市

    山本主査 それはわかっておるけれども、未設置というのは部落という意味ではないのでしょう。
  76. 福田繁

    ○福田政府委員 町村単位でございます。
  77. 山本勝市

    山本主査 ところが社会教育をほんとうに徹底さそうとしたときには、村で作ることはもちろん必要ですけれども、しかし部落まで何らかの形で目を注いでいかぬと、部落で集まらない限りは実際集まらないし、従って徹底しないということだけは申し上げておきます。
  78. 辻原弘市

    辻原分科員 時間がありませんから、あまりこまかい点に触れませんが、その次に社会教育の問題で、ことし一つの新しい試みとして、ユース・ホステルの計画が予算上出ておりますが、これはドイツのあれをとられたのだと思いますけれども、社会教育の中で新しい試みが進むことはまことにけっこうであります。そのことについては私も大賛成で、これを盛られたことについては、あなた方の御努力を多とするわけですが、しかし先ほど申しましたように、総合的な社会教育を推進する上において何となくたよりないのです。極端にいえば、何となく場当りな感じがする。今申し上げましたように、りっぱな公民館などという形で推進する母体がありながら、それについては足の伸び方がきわめて遅々としておる。何か目新しいものが来るとああそうだ。これは内藤局長社会教育局長の時分に、映画の問題があれほどやかましかった。今日それが何か忘れられたように、その問題が取り上げられていない。当時私は一、二の提案もしておったのでありますけれども、代がかわればそういうことも立ち消えになってしまって、また別の人が来ればまたぱっと考えが変る。学校教育はやはり長い伝統を持って、かなり規模、広がりを持っておりまして、大きな流れとしてずっと進んでいくから、やはり国民にもわかりやすい。しかし社会教育については、やはりこれは一般国民も関心を持って必要だということは言いながら、空気をつかむようで、非常にたよりないところがあるのです。おまけに指導する文部省にたよりないことを言われたのでは、これは進展を見ないはずです。予算を見たって、片一方の方がぐっと減って、そしてユース・ホステルがぼっと頭を出してきておる。ユース・ホステルをやってくれることはけっこうなんです。同時にほかのものを減額する必要はないじゃないですか。これは文部省の責任じゃないでしょうが、何で青年学級を減らしたのですか。私はやり方がどうもわからないのです。ここらあたりになると、予算折衝もだいぶくたびれてきて、大蔵省も、こっちで削ったのだから、まあまあこれだけは認めてやろうというような事務的な形になるのじゃないかと私は心配する。おそらくそうじゃないか。ことしのこの予算を見て、そこに並んでおる天城さんに聞くまでもなく、全くそういう感じがします。ここに何か六千万、これは岸さんのお声がかりもあったけれども出た。そうすると、バランスがとれぬから、少し削ってやれというので、社会教育の特別助成費を削った。それから青年学級も削った。その他も少し削っておる。こういうことになっておる。私は社会教育はこういう姿であってはいかぬと思うのです。しかしこれはただ私の意見になり、ぐちになりますから、問題の焦点として伺いたいのは、その青年の家なるものでありますが、これはいろいろ解説を読んでみますと、運輸省と分けていますね。きょう運輸省に来てもらったらよかったのですが、文部省は自分のところで受け切れぬから運輸省にも渡した、こういうことですか。どういう意味ですか。もちろん観光ということで青年の家とのつながりがないことはない。観光ということであれば運輸省も関係がある。風吹けばおけ屋が喜ぶというふうな論法でいきますと、運輸省ということになるのですけれども、しかしその青年の家を作って何をするのか。重点はやはり岸さんが言われるように青年に期待する意味である。青年教育の場とする、同時にそれを幅を広げて社会教育の場とするということではありませんか。それを文部省はのめのめ運輸省とつかみ分けをしたというがごときは、これは私はあなた方に言うのじゃないけれども、何かしらどうも割り切れぬ点がある。これは一体局長はどう考えられますか。大臣はどう思いますか。
  79. 福田繁

    ○福田政府委員 私どもの方に六千万計上いたしております青年の家につきましては、これは辻原委員のただいまおっしゃいました通りに、青年の健全な野外活動を普及振興しまして、青年が規律、協同精神の涵養をはかるということと同時に、私どもの考えといたしましては、青年に必要な技術教育一つの拠点にしたい、こういうような考え方であくまで社会教育的な施設として考えてこれを運営する考えでございます。ところで運輸省の方につきましたものにつきましては、これは運輸省の所管でございますが、運輸省の所管として観光事業のためにそういった施設を作りたい、こういうようなことで向うにも予算がついたというように聞いております。
  80. 辻原弘市

    辻原分科員 私はそういうこと自体が国の行政としてはまことにおかしいと思うのです。ここらに各省の所管争いの醜い姿が出ていると思う。かりに観光行政のあれと結びつけるにいたしましても、目的が青年の教育であるならば、少くともそれができ上ったときには文部省が十分それについての指導監督——ただ入れものを作ったで済まされないわけです。作った限りそれらを中心とするいわゆる青年団活動あるいは渡り鳥活動というようなものをどうしていくかについては、あなた方の責任に帰するわけですから、それを両方に少しずつ配する。悪口を言うものは、これは結局引っぱり合いをしてちょうどいいところで分けたのじゃないか、こういうようなことをいわれるのです。総合的にやってもらいたい。総合的な行政ということを常に言うのですけれども、どうも総合ならざる小さい問題ではあるけれども、問題の一端がこういうところに現われておるのです。一体唐澤大臣、こういう点についてどういうふうにお考えになりますか。
  81. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 私は当時の予算折衝の状況をつまびらかにいたしておりませんから、何ともお答えいたすことができませんけれども、大体の考え方といたしましては、同じく国費を使うことでございますから、一つの目標をきめまして、そうしてそのために最も効果的に金を使うということが各省の心がけるべき事柄でございまして、その間に各省間の権限争議等のために、ぶんどりがあり、そうして効果が減殺されるということがありますれば、それはよろしくないと考えます。
  82. 臼井莊一

    臼井政府委員 なお私からもこの点について補足して申し上げておきますが、運輸省の方ではどういうお考えでやられるか、われわれの問題外でありますが、何でも聞くところによると、やはり海外からも観光に相当おいでになるし、そういう考慮も入れて、観光の施設としてやりたい、こういうようなふうにも伺っておるのでありますが、文部省といたしましては、従来も昭和三十年度以来からすでに二十六ヵ所、青年の家としてできたわけであります。これは考えようによっては、一つのテストであったのですが、そうして公民館とは別な意味で、自然的な環境に恵まれた、こう然の気を養うに適当な場所を選んで、そうしてよい環境のもとに青年の指導をし、そして団体的な共同生活、またお互いの交際、レクリエーション等を兼ねていたしたいということでございまして、運輸省の観光局の考えておられるユース・ホステルとは多少こちらの方では趣きを異にして、主として青年の指導と育成の観点からいたしておるのでございまして、別段これを取り合ったというわけでは決してございません。その点御了承を願いたいと思います。
  83. 辻原弘市

    辻原分科員 そういう説明にはなってないのですよ、運輸省の場合。これは運輸省に聞いてみないとわかりませんけれども予算の説明書には、青少年対策費として、いわゆる合計一億円が、六対四の比率において分けられておる。このやろうとする活動の目的は、青少年の健全な野外活動を助長するため、全国に青年の家を設置することといたしました。それは何をやるかといえば、団体宿泊訓練、青少年指導者の講習、こういうものをやるために両方にこれを置いたと説明しております。だから、私は本来観光のために、いわゆる外国から来る、何といいますか、国際少年団、あるいは青年団、こういう人々のためのものであるならば、それは別途の予算としてもらわなければならぬ。もしその通り運輸省が使うということになれば、多少私は文部省が従来から考えておるいわゆるその青年の家の構想なりあるいは青年の教育のためのものとは違った趣きになる。予算がそれだけ侵害されていることになる。そういう点が私は政府としてはもう少し的確に統一をしておかなければいかぬ、こういうことを考えます。まあ私も多少の事情を心得ておりまするから、それ以上のことを申し上げませんけれども、どうもこういう点について、社会教育全般の文部省予算なるものが少しく弱い感じがいたします。どうか一つ多くを申し上げませんが、公民館法がえらいなんということ、これでもできるということを福田局長も言わぬでも済むように、もっと現行の社会教育のために一つやる、そうして地について、ばらばらとわずかのお金を砂をまくようにまくのじゃなしに、効果のあるような、結局教育をやるのは一番末端ですから、それを常に忘れないでやっていただきたいということで、社会教育については御希望を申し上げ、次の問題に移りたいと思います。  時間もあまりありませんから、問題点だけ聞いて参りますが、これは先ほどわが党の柳田君が問題にしたのでありますが、町村合併に基く諸般の教育問題がたくさんございます。その中で具体的に一つ解決してもらいたいのは、例の同一町村内における各教員の地域暫定手当のアンバランスの問題でありますが、昭和三十四年に給与法の形で、暫定手当というものが解消せられることになっておりますけれども、しかし具体的にはまことに困ったことでありまして、町村合併が進行して同一町村になった。しかしながら隣の学校と隣の学校では手当が違うという問題は、私は根本的な地域給改正までに、便法として解決を見なければならぬ問題だと思うのでございますが、この解決策をお考えになっておられるか。考えておるとするならば、どういうふうにして解決をするのか、一つお答えを願いたいと思います。
  84. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 先般の給与法の改正に伴いまして、地域給は大体三段階にするということで、暫定的に地域給を認めております。これに伴う予算は、本年度九億五千万ほど計上しております。ただ今お尋ねの同一市町村におきまして、さらにいろいろな合併町村の間で差等がございますので、同一町村の中をそろえるということにつきましては私ども実は努力して参ったわけでございます。本年度予算で遺憾ながらこれは削られましたので、さらに人事院、大蔵省とも折衝いたしまして、できるだけ御趣旨に沿うように努力いたしたいと考えております。
  85. 辻原弘市

    辻原分科員 遺憾ながら削られたから今後努力するということですが、見通しがありますか。内藤さん、これはどうなんです。率直にいって見通しがありますか。
  86. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 私どもは見通しを持っておるつもりですけれども、ただ御指摘のように私どもは非常に現在の勤務地手当に不満を持っておるわけであります。そこで先般の給与法の改正でも、将来は三段階にするということで、暫定的に勤務地手当を認めておるわけであります。ですからその線を一つは押し進めるということがこれは根本的解決策であります。しかしながら教員につきましては御指摘通り同一市町村、特に合併市町村の中で何段階かの勤務地手当がついておるということは、教職員の人事交流上非常に支障を来たしております。何とかして全般の問題が解決できなければ、少くとも教育の、教員給与費の問題だけについては解決したい、こういう強い熱望を持っております。私どもはまだあきらめておりません。
  87. 辻原弘市

    辻原分科員 ぜひそのことは根本的解決までに解消してやっていただきたいと思います。人事の障害になっておることは申すまでもないことでありますから。それで私は現行町村内でも一つにそろえるということについて多少問題がある場合もあります。しかしこれは人事院がおいでになっておればよくわかりますけれども、私は前に町村合併が行われたそのときの時限においてもう一ぺん町村内の再検討をして、一々法律でなくて操作できるような立法をしておいたらどうなんだということを申し上げたことがあったのですが、私はこれは非常に合理的だと思うのです。それをやらなかったばかりに結局今いったようなものが常に法律規定であれされた、しかし便法ということで私は官署指定という方法もあるだろう、そういうことも人事院その他の関係各省との話し合いの了解がつけば、経費としては大したことはないと思う、一つ方法を考究されてぜひともこの問題を解決をしてやっていただきたいと思います。  それから次に特殊教育の問題で一つ、御承知のように教科書制度がいろいろやかましくいわれておりますが、教科書の中であまり取り上げられない問題に盲人の点字教科書がある、これは申し上げるまでもなく非常に値段が高い、入手しにくい、こういう不便さがあった。そうでなくても不便な方になお不便をかけておるというのが、この点字教科書なのです。そこで私はこういったお気の毒な人々のために、何かこれこそ国で措置すべきものと思う。例の就学奨励費等で教科書代を出しておりますが、問題はそれよりも手に入りにくいという現実があるのであります。またその程度のものであっては教科書が手に入らない。何かこういうものが安くできるような一つの仕組み、具体的の私の意見は述べませんが考えておられるか、そういうものはわずかの層なんだから、どうも手が届かぬとおっしゃるのか。一つこの点についても具体策をお述べ願いたいと思います。
  88. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 御指摘通り点字教科書は高いのでございますので、文部省といたしましては点字の印刷機を点字毎日に貸与しております。できるだけ安くする方向に向うことが一つでございます。いま一つは盲人の学校につきましては、御承知通り就学奨励費がございますので、全児童に国と地方で無償で教科書は支給しておりますので、教科書に関する限りは御心配はないと思います。
  89. 辻原弘市

    辻原分科員 漸次研究をされておるようでありますので、なお一つこの点については努力をしてやってもらいたい。貸与の方法もあると思うし、文部省自体が——編集はいけませんよ。編集はいけませんが、印刷その他給与についてのあれは、これは一つ考えてもいいんじゃないか。この点に関する限りは何とか一つ盲人の方々の期待に沿えるように骨を折っていただきたいと思います。  次に教科課程の問題でありますが、これは根本論はさて置きまして、最近図工、それから職業科の問題が、教科課程審議会で結論が出たようであります。それによると、美術科、それから技術科、こういうふうに名称を変えてやる構想であります。そこで一つ伺っておきたいのは、これは道徳教育と非常に関連があるのですが、どうも今度の結論を見ても、美術科はやはり減らして時間を余らせる。余った時間はどこへいくかということです。
  90. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 これは道徳教育とは全然関係ございませんので、この点だけは最初にお断りしておきます。  それから美術科と技術科という点でございますけれども、従来御承知通り中学校では職業家庭科という科目がございます。この教科は必修と選択とございまして、必修の方では農、工、商、一通り全部の教科を勉強するわけでございます。そのほかに選択教科として農、工、商、家庭等がございます。そこで今度の技術科のねらいは必修の分でございます。義務教育の段階において、すべての生徒に必ず、必修させるためには、農、工、商、家庭全部というわけには参りませんので、特に教員の養成の面から考えましても、すべての教科をマスターすることはこれはちょっと無理でございますので、どこに重点を置いていくか。生活技術という点に重点を置いていく。特に製図とかあるいは木工、工作等、工作関係に重点を置いて、そして職業教育基礎教育をしていきたい。もちろん農業でもモーター等相当機械を使っておりますので、農業、水産、家庭、あらゆる部面に機械的なものが入っておりますから、機械に対する知識、あるいは工作に対する技能、こういうような点について重点的に扱っていきたい。その点が従来のように農、工、商、家庭のようにぼけないで、どこかに焦点をしぼるという改正でございます。そこでこういう技術科の構想が出て参りましたので、従来図画、工作という科目の中で、もちろん図画の部門はこれはけっこうでございますけれども、工作の部門が、ともすると、教員の養成の面から考えまして不十分になっておった。この点図画の方における美術と関連しまして、デザインとかあるいは工芸等のようなものは美術科でいたしますけれども、工作的な要素のものは今申しました技術科の方に移す、こういう考え方でございますので、むしろ工作的の面はそちらの方で強化される、さような観点から美術科、図画、工作の時間を少し減らしてもいいんじゃなかろうか、こういうふうになったわけです。減らす理由は、もう少し根本的には、中学校の三年の辺では五〇%がそのまま社会へ出てしまう。四割が全日制に、一割が定時制に、残りの五割が職業にそのままつくというわけでございますので、若干ここで教育課程に弾力性を持たして、生徒の進路、特性によって教育をしていきたい、すなわち就職するものには基礎的な職業教育を陶冶するし、進学するものにつきましては、語学なりあるいは数学なり、そういう基礎的な学科の上に重点を置く、かような意味で、今申しましたように多少教育課程に弾力性を持たしたい、こういう趣旨でございます。
  91. 辻原弘市

    辻原分科員 もとの図工科と職業家庭との関連において時間数を減らした、結局その二つの中で弾力性を持たす、こういうような構想に承わって間違いありませんね。大体はそういうような形で従来の図工で持っておったもののうちの若干時間が、製図その他の実習という形において職業科の中に入る、こう理解してよろしゅうございますね。
  92. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  93. 辻原弘市

    辻原分科員 私はそれも考え方としては一つであろうかと思いますけれども、本来の図工あるいは美術教育、芸術教育というものの観点に立てば、ここにも一つ議論が起ると思います。この点はいわゆる実技的の面は職業という形に活用される方面が多いから、そっちへ持っていった。しかし私は中学校段階における美術教育というものは、もうちょっと考えてもらいたいと思うのです。やはり情操陶冶という面にかなりのウエートを持って考えてもらわないと、どうもあまり近視眼的になり過ぎて困るんじゃないかと思うのです。これは意見にわたりますから控えておきますけれども、おそらくそういう世論が起ってくるだろうと思います。  それから職業科を設定したことは、私は非常にけっこうだと思うのですが、ただその職業指導あるいは職業教育というもののやり方について、文部省にも注文しておきたいと思うのですが、この間私は労働省に聞いてみました。ということは、労働省で今度職業訓練法を制定する。在来の職業安定法の中の職業補導というものの中から一歩進んでやろうという計画なんです。そこで私は、一体労働省が主管をする職業指導、職業訓練というものはどこに重点を置くんだ、こう質問をしてみますと、労働大臣は、それは門戸を開放する意味において新規の卒業生も現在の失業者も全部やるんだ、こう言う。そこで私は、それは口ではりっぱに言えるけれども、実際は大したことはないという印象を受けると申し上げた。なぜかなれば、労働省がやる面は、失業対策——現在の失業人員の中で高次な技術を持たして再就職の口を与えることでなければならない。そのためには学校においてかなりの職業教育が行われなければならぬ。あるいは直接工場に行って就職するものは、その工場が自主的に企業に見合うような新たなる技術教育をやるということが大事であって、これが諸外国にとられている職業教育の実態なんです。ところが日本では、何でも何かよけいやっているように見えるけれども、中身をつかんでみると大したことはないという式のものが多い。そこで、ここで文部省にも考えてもらいたいのはそのことなんです。私は労働省はそういう方面を中心にしてやれ。文部省は、少くとも今あなたが言われたように、中学校段階で就職するものが五〇%あるのですから、少くともこの者たちが教育機会はこれで終りなんだ、その最終的なところにおいて少くとも社会の要請する最低の職業教育というものは、私はやっておくべきじゃなかろうか、こういう意味合いから、労働省もその部門を受け持つなんということを言われることは、新規の学校を出てももう一ぺん国が職業訓練を施さなければやれないということを前提にしているから、そういう議論になるのです。それで私は学校教育の中における職業教育は、現実に政府みずからやっていないということを言っていると思うのです。だからその意味で一つ十分労働省等とも職業補導については連絡を密にして、お互いの分野が重複して、重複するために化学反応を起して薄くならぬように、この点は十分な配慮をやってもらいたいということをこの問題について希望をしておきたいと思います。  次に端折りまして、教員養成の問題でありますが、これは国会でも決議をいたしまして、ともかく充実をしようということは、四年のスタンダードを中心にして引き上げろということです。具体的にその四年のスタンダードに引き上げてもいいところがたくさんあると思うのでありますが、本年調査費をつけた、いわゆる四年コースに引き上げたところは、一体いつの日にこれが実現するのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  94. 緒方信一

    ○緒方政府委員 教員養成の制度の根本的な検討をやっておりますことは先ほども申し上げましたが、教員養成の問題で、今お話のございました二年課程をどうするかという問題が一つの問題であります。終戦後教員を急速に必要としましたために、四年課程のほかに二年課程ができまして、その二年課程は主として分校で養成いたしておりますが、急速に充実するためにそういう課程を作ったのであります。内容から申しまして、四年課程で養成することがもとより望ましいことは申し上げるまでもございません。ただ地域的の事情によりまして、なお今日も二年課程を存置しておかなければならぬところもございます。たとえば北海道のごときはさようでございます。まだ四年課程で十分充足する段階に至っておりません。そのほかの大学におきまして、分校を持っておりますところにつきましては、漸次四年課程に進めるという一つの大きな方向は文部省としてもとっておりまするけれども、しかしこれはその土地の事情にもいろいろよりまするし、また分校の廃止とか設置とかいう問題になりますと、地元のいろいろな意見等につきましても十分聞かなければならぬ点がございますので、これらを一つ根本的に検討しなければならぬと今思っておるわけでございます。そのために調査費が計上されておりまするけれども、そういうような問題を含めまして今後十分検討していきたいと思っております。いつごろこれが全部四年課程になるかというお話でございますけれども、これは十分調査して、よく検討した上で申し上げたい、かように思います。
  95. 辻原弘市

    辻原分科員 ちょっと私が伺った質問の要点とは違うわけでありまして、問題は具体的に少くとも分校の中で四年制コースに引き上げてしかるべきものは、おおむね常識的にわかってきておるわけで、そういうものを対象にしておそらく私は調査費が活用されていくと思うのです。今からどうするでは、文部省の怠慢ということになるのです。三年、四年前から起っている問題に今から調査費を上げて、一体分校をどうするのか、四年課程をどうするのか、二年課程をどうするのかというような研究を今から始めるのでは、文部省教員養成の問題を今までどうしておったかということになるので、そうではなしに、もう大体の調査は済んでおる、ただ調整その他についていろいろ問題があるわけで、だから今大体四年コースに引き上げてしかるべきであると思われるようなものについて、その準備の状態はどうか、こう申し上げた。しかしこれは言いにくいようでありますから、それ以上はお尋ねをいたしません。  もう一つは、四年コースに引き上げると同時に、二年コースにして地域の何が十分マッチできるという状況も、日本は広いですから、その中にはあると私は思うので、そういう点についてそういう判断を下されたならば、それもいつまでも調査してということではなしに、やっぱり一応の線を引いた方がいいのではないか。いたずらに地方を混乱させますから。これは具体的に申し上げなくてもおわかりだと思います。たとえば島の三原のごときは、大体私ども調査をいたしまして、従来の関係、地理的条件、その他から見て、二年制で当分の間やっても教員養成の目的は果し得ると判断できる。しかし依然として学校全体の方針としては、やはり逐次これをなくしていこうというような傾向に動いておる。だから、募集人員もどんどん減らして、教官もどんどん減らしていくというな傾向がある。こういう点は、私はやはりしばらくの間存置するならば存置するという方針をきめて、無用な混乱を地方に与えないようにしてもらいたいと思います。いつまでも隠さなくてもいいと思うのです。だから、上げるものは順次上げるのだ、これとこれとこれ、それでいいのです。何年も研究してきたのですから、きのうやきょうの問題ではないから、二年としておくものはこうだというふうに、もうはっきり割り切って、いたずらに地方の陳情運動が何年も継続しなければならぬというようなことは、もう一つ文部省の方で腹をきめて、すっきりさせてやってもらいたいと私は希望する。
  96. 緒方信一

    ○緒方政府委員 御趣旨はよくわかるのでございまして、文部省といたしましてもなるべくすみやかに結論を出したいと考えて、そのために十分調査いたしたいと考える次第でございます。
  97. 辻原弘市

    辻原分科員 時間がありませんので、その問題はそれ以上触れません。  最後に、文部省教育行政のあり方についてはわれわれと近い機会に相当また論争をかわすことがあろうと思いますけれども、私はごく大ざっぱに文部省予算の概括的なものをきょうは拾ってみたのです。まずこれで非常に可なり、可なりだと常識的に言えるものが残念ながらないわけです。ところがそういうような貧弱な文部省予算の中においていろいろな奇異なものが予算の上に現われてきている。  一つの例をあげてみると、視学官の増員、視学委員の新設。それからいま一つはいわゆる校長管理職手当なるもの約四億四千万円のかなりの額。社会教育、先ほど言いましたように地方に対する助成金なるものがようやく一億強。別段そういう強い要望が現われたのではないのに、この四億四千万というものがポカッとここに管理職手当として現われてきている。もちろん今度法律を出すのだろうと思うのでありますけれども、だから法律上多少の理屈はつけ得ても、これは率直に言って、何となく一般の国民に割り切れないものを与えていることは事実です。従来給与というものは、私が申すまでもなく一つ教員給与なら教員給与というものの歴史があって、その上に成り立っている。しかもそれがある程度、パーセンテージは生活給の部面を多くし、そのうちの昇給分においては多少の考慮が払われている。今度三万何千人かの校長さんに管理職手当をつける。もらう方の校長さんの方では私だけもらってもいいものだろうかとびっくりしている。これは役所の、たとえば課長とか局長とかいう行政体系の中における管理職とは実態において違うわけですから、なぜそういうものにこれをやったか。私がなぜやったかというこの質問自体がやぼだと思うのです。率直にこのことを申し上げるならば、これは勤務評定その他において現われている文部省の意図が、このことによってかなり実現され、前進されるという底意が確実にあることは事実だと私は思います。いわゆる校長というものを組合から切り離して、校長の権限を強化する、そのことによって勤務評定のあれを容易にする、こういうことをねらっているものに違いないと思うのであります。しかし手としてはあまり上手な手ではないと思う。そういうような点についてきょうは議論はいたしませんけれども、はなはだ奇異に感ずる。また視学官、それから視学委員の増員、新設にいたしましても、ようやく文部省が指導、監督、助言のあれを強化したということにおいて、視学関係を大量にふやしていくという行き方は、極端な言葉を用いなくても、元来のいわゆる視学制度というものがまたまたかなりのウエートを持って復活したのではないか、こういうような印象を世に強めるものだ。地方教育が少くともある程度文部省の指導、監督を受けることは必要であっても、本来は自主的であるべきなんで、視学制度の強化というものはどうもふさわしくないように考えるのでありますが、一体これらの構想はどういう目的から出たものであるか、お伺いいたします。
  98. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 ただいま管理職手当の御質問がございましたが、実は文部省は従来学校につきましては校長、学部長、研究所長、病院長、高等学校校長以下につきましても大蔵省に予算要求を毎年しておったわけであります。昨年ようやく学部長まで参りました。しかしながら高等学校以下につきましては、昨年度予算に計上されなかった。そこで文部省は昨年度に引き続きまして高等学校以下の校長に管理職手当を支給するようにした。これは何もことしに始まったことではないので、前々から文部省は要求しておったことでありまして、それ以外に他意があったわけではございません。それから視学官の増員につきましては先般八名の増員を見まして——これは二年ほど前でございます。しかしなお文部省の指導力が弱いのでございまして、特に教育内容の全面的な改訂を控えておりますときに、視学官及び視学委員の増員をいたしまして、指導の徹底を期することが私ども適切であると考え、また文部省設置法の趣旨にも沿うゆえんである、文部省教育内容に対する指導、助言をすべき当然の機関でございます。その趣旨に沿って増員したわけでございます。
  99. 辻原弘市

    辻原分科員 管理職手当の問題は従来から要求をしておったということでございます。しかし私はものには軽重があると思うのです。もちろん他のものも充足されたときに管理職手当も出すことは、それはあながち不必要ではないという議論も起るかもわかりませんけれども、しかし現在は給与の面だけを考えましても、他にやらなければならぬことがたくさんあります。たとえば僻地の教員についてはその手当を増額しなければ僻地からだんだん町の方へ来たがって人事が困っておるというような問題、あるいは事務職員、養護教員の配置が少いために、学校の衛生管理あるいは事務というものが一般の教員の上に及んで教育低下を来たしておる。そこにも教員給の不足というものがある。だからそういったいろいろな要素の中で管理職手当も将来の問題として考えられるだけであって、現在それらをさておいて、いち早くこれだけやらなければならぬという理由は今日ないと思う。というのは、地方においてはすでに校長さんについては現行の給与の中において一号程度のものは見ていると思うのです、校長給として。それが足りなければ、さらにその点について検討する必要もあるでありましょうけれども、しかしそれを制度としてこれだけの金を、月間二千二百円に上るものを、そうでなくても少い教員給与の中から引き抜いて四億五千万円を投じたということについては、その理由は今あなたがお述べになったことではきわめて薄弱だということを言わざるを得ないのです。  それから視学制度にしてもそうなのです。これはいつでも国会へ重要な法案が持ち出されるときに、現在のこの時限においての説明はつくのです。指導、助言が必要だからこうやらなければならぬ、今の説明はつくのです。しかし将来それがだんだんどうなるかという心配のためにわれわれは議論をするのです。祝学制度というものを復活すれば勢い人事その他にも、今日においては視学は発言権はありませんけれども、しかし事実上そういう発言権を持ってくる、またその上向いた教育がここに行われる、こういう心配のために、いわゆるそういった監督権限を持っておるその機構というものをやたらめたらふやしていくものじゃない、できるだけそういうことを避けて、いわゆる指導内容というものは別途な形においてやってもらいたいというのが、私は戦前から戦後へかけての教育を経験してきたおそらく全国の教員の意思でもあろうと思う、また考え方でもあろう。だからこういう点については議論の分れ目でありますから、議論はいたしませんけれども、私は予算を審議する際に、将来をおもんぱかってこのことだけを一言申し上げておきたいと思います。  他にこまかい問題もいろいろありますけれども、またの機会にいたしまして私の質問は終ります。
  100. 山本勝市

    山本主査 小川半次君。
  101. 小川半次

    ○小川(半)分科員 社会教育関係について辻原君から詳細にわたって御質問がありましたので、私はこれに関連して二、三お尋ねしたいと思います。  青少年に非常に悪い影響を与える一つの機関として競輪というものがあるのです。この競輪というものは、人間が人間を対象としてばくちをやるのですが、どうも人間が人間にかけ事をするということは、私は教育上もあるいは道義的に見ても、非常に深く考えれば、これほど重大なものはないと思うのですが、まず大臣からこのことについてどういうお考えを持っておられるかお尋ねしておきたい。
  102. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 競輪の教育に及ぼす影響についてのお尋ねでございますが、これは全く同感でございまして、競輪が社会道義または教育の上に非常に影響があり、ことに青少年の教育等にはまことに憂うべき影響があるということを感じております。
  103. 小川半次

    ○小川(半)分科員 それでは、大臣は、この競輪の及ぼす悪影響は非常に大きい、いわんや青少年に及ぼすことが非常に大きいから、というだけでは私は話にならぬと思う。そこで、そういうお考えを持っておられる以上は、この競輪というものに対して将来これを廃止するというところの決意とかお考えを持っておられますか。
  104. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 競輪の教育に及ぼす影響については、憂うべきものがあるということは先ほど申し上げた通りでございます。これは私が申し上げますまでもなく、競輪のできましたその経過におきましても、御承知のようにあるいは地方財政観点、また自転車工業の奨励、推進というような産業助長というような問題もございまして、各方面に関連を持っておりまするから、今こういう教育上の観点だけからこれを廃止すべし、こういうわけにもいかぬのでございまして、総合的に考えなければならぬ問題である。同じくたとえば富くじ等につきましても同じような方向の議論ができるのではないかと思いますけれども、これらの問題は国策全体として総合して判断していかなければならぬ問題である、かように考えております。
  105. 小川半次

    ○小川(半)分科員 これは大臣、富くじなんかとは相当関係が違うのです。私はたびたび申し上げるように、人間が人間を対象としてかけ事をするということは、これほど教育上許すべからざる問題はないと思うのです。もちろん競輪が設置されました当時は、地方自治体の赤字を補う手段として、国において競輪を許可したのでございますが、幸いにいたしまして各自治体ともだんだん軌道に乗りまして、財政面においても赤字から黒字の方向をたどっておるような状態でございますから、こういうときにこそ競輪というものはやめなければならぬと思う。あなたは本職は法務大臣でございますから、競輪が及ぼすところの罪悪というものを数限りなく御存じだろうと思う。要するに競輪によって地方自治体に若干の金が入ってくるのが大切か、それによって多くの国民が犯罪を犯し、あるいは家庭を破壊し、幾多のこういうことが起ることとどちらが重大でしょうか、私はそれをお聞きしたいと思うのです。
  106. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 非常に突き詰めたお尋ねでありまして、はなはだ当惑する次第でございますけれども、競輪あるいは競馬もそういう面もあるいはあろうかと思います。それから今の富くじ、これは従来からとばく性のあるものを認めておるのかどうかという問題、さらに今小川委員の突っ込んだ御研究では、同じとばく性のものでも、人間の体にかけるものと、しからざるものとの区別があるというようなことで、さようなするどい観察まことにごもっともと思うのでありますが、これらがあるいは教育の面あるいは犯罪防止の面に及ぼす影響は甚大であると考えます。これらはすべて国家の精神的損失であります。これは軽視できないと思いますが、一面におきましてやはり富くじあるいは競馬等と同じように財政の面にも深い関係を持っております。これは物質の面でございまして、この精神上の損失と物質上の連関とをどういうふうに比較するかということは、非常にむずかしい問題でございまして、今しばらく研究をさせてもらいたいと思う次第でございます。
  107. 小川半次

    ○小川(半)分科員 大臣は今競馬のお話をされましたが、競馬には騎手がおりましてこれは人間に違いない。しかしこれは人間にかけるのじゃない、馬です。これには畜産奨励とか国際的な意義もありますし、人間を対象にかけているものじゃないのです。その点誤解のないようにしていただきたいと思う。  そこで大臣地方自治体の予算等のために、なかなか一朝にしてこれを廃止しにくいという御説のようです。それじゃそういう地方自治体などに関係したことは別といたしまして、直接文部省などに関係のあることになってきますが、日本の選手が国際競技に出場するときに、競輪関係の振興会など、とにかく競輪関係から多額の寄付金を仰いでいる。今度のアジア競技大会にもおそらく私は競輪関係の方面から多額の寄付があるのではないかと思いますが、要するにこういうばくちで得た金でアジア競技大会をはなばなしくやるとが、日本のスポーツ選手がばくちで得た金の分け前をもらって海外に派遣されるようなことを私は好みません。私は前回に日本の選手が競馬、競輪関係から多額の寄付をいただいて海外に出たときにも反対しました。もっときれいな金をもらってやったらどうか、ばくちで得た金で海外に行くというようなことはどうも好ましくないということを主張しておったのですが、私の意見は通らなかったわけです。今度のアジア競技大会についてはこの方面からの寄付はあるでしょうか、事務当局からお答え下さい。
  108. 福田繁

    ○福田政府委員 アジア競技大会の運営費につきましては、競輪から寄付金をもらうということはございません。ただお説のように従来海外派遣の場合に、選手等の補助につきまして競輪から若干の寄付をもらっておりました関係から、オリンピック後援会というのが組織されておりまして、その方には競輪の方から相当多額な寄付金があるようには聞いております。これがどういうふうに使われるかはまだ決定しておりません。
  109. 小川半次

    ○小川(半)分科員 どうかこういう点を御考慮下さって、これからは競輪のような賭博で得た金を、純然たるスポーツ団体が寄付を仰がないように一つやってもらいたいと思うのです。これを特に申し上げておきます。  それからやはり社会教育関係のある点でございますが、たとえば学生選手がプロになる場合、あるいはまだ在学中の子供がほとんどプロ同様に芸能界に出演しているような場合の契約金のことについて私はお尋ねしたい。特に大臣はかつて大映スターズの顧問をしておられたから、プロ野球のことをよく御存じでしょうが、先般も立教大学の長嶋君が二千万円というような、われわれが一生涯働いても得られないような大金の契約金でプロ入りされたわけでございます。いかに資本主義社会といえども、これはあまりにも人間を商品化していると思うのです。これは重大な問題だと思う。人間を商品化している。しかもこのことが全日本の青少年、特に学生に及ぼす影響というものは甚大なんです。自分たちが親子二代にわたっても二千万円という金は得られない、それを一学生の長嶋君が取った、何とうらやましいことだといって、羨望から一攫千金を夢みる。若い学生たちが一攫千金を夢みることは、これがいい方に向えばよろしいのですけれども、これが悪の道へ傾いたときは、この一攫千金の夢はよいことよりも悪い方に非常に影響を及ぼすのです。私はさらにこの問題についてもっと突っ込んでこれからもお尋ねしますが、あなたはかつての大映スターズの顧問でございましたし、プロ野球には最も御経験の深い方でございますので、この点をまず伺っておきたいと思うのです。
  110. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 具体例を引かれてのお話でございまして、私どももあの一学生の野球選手が何千万円かで買われていくということが新聞に出まして、それがまじめな青少年に与える影響がどうであろうかということにつきましては全く同感でございます。これは、勝手に自分で職業野球の方へ身を投ずる、その取引において値段というかまあ給料でございましょうが、きまって、それが新聞に出るということで、一応これのとめようはないわけでございます。一面におきましては、わが国における職業野球はまだ発達途上にありまして、そろばんを離れてただ勝てばいいということに邁進するような関係から、アメリカに見るようなほんとうの職業野球になっておらないという、道程における一つの変態がございます。でき得るならば職業野球の指導者にお話をしまして、そういうような法外の値段で給料を出して選手を集めるという方法を訂正してもらわなければならないと思います。私今御指摘のように職業野球に関係しておったことがございます、会長をいたしておりました。そして多少その方面のことは承わっておりましたけれども、決してその方のことに精通はいたしておりません。ただ選手を雇うために莫大なばかげた金を出すことはいけないという考えで参りましたために、大映スターズは常にビリでございました。そういうことで、どうしても職業野球はそろばんに乗せるようにやらなければいけない、そろばんに乗せるにはああいうべらぼうな金を出してはいけないというふうに考えておりまするから、どこまでもそういうふうに指導をしなければならないと考えております。結論といたしまして、今御指摘の実例はまことに青少年に及ぼす影響甚大なものがあると考えております。
  111. 小川半次

    ○小川(半)分科員 どうも大映スターズがビリであったのは、人事の問題で道徳を守ったから、そういうことだったろうと思ってこの点敬意を表します。そこで、二千万円も大金をもらって、あるいは十年選手とか五年選手とがその年月を契約するわけですが、これは前借金ですね。人身売買ですね。これはいかがですか。法的解釈からいけばこれは前借金であり、かつての公娼制度の時代の人身売買にひとしいような解釈が成り立つと思う。しかし私は、純真なるスポーツ選手ですから、ここで人身売買というような不潔な言葉を選手たちにこうむらせたくはございません。しかし法律的に解釈するとそういう法理論が成り立つのじゃないでしょうが、あなたは法務大臣でございますから、いかがでしょうか。
  112. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 これが人身売買であるかどうかというお尋ねでございますが、しからば人身売買とはどういうことであるが、これがなかなかむずかしかろうと思います。ただ人身売買といいますと、非常にからだの自由を制限して、いわゆるかごの鳥というような観念から出てきた言葉ではないかと思いますが、実は私知り得た状況を申し上げますと、今の職業野球の中では、選手というのは、どちらかといいますと非常にわがままでございまして、また人気の焦点でありますから、かりにこういうような人たちが契約にそむきまして、法律上は当然損害賠償をしなければならぬ場合がありましても、これが実際は実行できません。と申しますのは、球団とそれが契約をしておった選手との民法上の争い等がございますれば、おそらく多くの人は選手の方に、理屈があろうとなかろうと、見方をして参るのでございます。それがつまり今選手が人気役者であるゆえんであります。そういうふうに、契約をいたしますれば、なるほどその間はしばられますから、人身売買というような観念と共通の点もなきにしもあらずと思います。その点は、あるいは映画俳優等におきましても、専属というようなものを法律的に解釈したら、そういうようなにおいがないとも言えませんが、しかしこういうような場合は、いわゆるかごの鳥と違いまして、どちらかといえば非常にわがままで、実際の行動は自由でございまして、それに対して球団の方はなかなか制裁が事実上できません。それがアメリカにおける職業野球と非常に違っておることであろうかと思いますが、今の法律的の解釈につきましては、まだそこまで研究いたしておりません。
  113. 小川半次

    ○小川(半)分科員 どうか日本のスポーツ選手は、そういう金銭にとらわれない、金に屈服しないところのほんとうのりっぱなスポーツ選手を日本は生み出してもらいたい。それはアマチュアであろうとプロであろうと、ほんとうに私はりっぱなスポーツ選手を日本から生み出したいという念願で一ぱいでございます。おそらくあなた方もそうしたお考えを持っておられると思いますから、今後こういう学生選手がプロ入りする場合には、やはり社会に及ぼす影響の甚大なることをよく御考慮をされて、一つ善処していただきたいと思うのでございます。特に在学中の選手をひっこ抜くというようなことは、まあそれは個人の自由といえば自由ですけれども、しかしその自由がきないように、その親に勧誘し、本人に勧誘し、監督に勧誘し、先輩を勧誘し、がんじがらめにして結局プロ入りする。要するに、現役の学生選手が学半ばにプロ入りする場合にも、ほんとうに本人としては学校を卒業してから入りたいというのだけれども、周囲がそういうふうにがんじがらめに、結局プロ入りせざるを得ないように持っていくのです。こういうことは一つのやはり人権問題となりますので、こういう点をとくと今後御考慮願いたいと思うのです。  それからこれと同様のことですが、少年の芸能界に出演している、まあいわば子供ですが、これも一回出演すると何十万という契約でいくのです。これもまた子供たちが、あの子はあそこでステージに立って一回歌ったら二十万円だそうな、三万十円だそうなとか言って、私も歌手になりたいわと言って、あまり勉強せずに歌ばかり歌っているというように、そういう社会に及ぼす影響も大きいのです。これからテレビというものが普及されれば、やはりこういうテレビの会社の方においても、まあお互いに商魂たくましいところの人たちですから、そういう工合にちょっと芸能にひいでている少年、少女がおると、やはりこれもがんじがらめにいろいろ勧誘したりして契約して、そうした舞台あるいはステージに立たすようなことが今後非常に多いのではないかと思うのです。こういう点なども先ほどのプロ野球の選手とまあ性質は同様でございますから、この点も御考慮願いたいと思うのです。わずか十二歳や十三歳の子供が、一回ちょっと舞台に立って歌を歌えばすぐ三十万円とか、こういうことはやはり私は、それはその人の天才であり技術だといえばそれまでですけれども、ただそのことが全国の青少年に及ぼす影響が大きいから私は申し上げるのでございますから、こういう点などぜひ一つ御考慮願いたいと思います。  それから私はもう一つたけ、この方面の非常にエキスパートの辻原君が尋ねてくれると思ったのですけれども、御質問されなかったのですが、従来から問題になっております義務教育諸学校の施設費半額の国庫負担、これは昨年は三十三年度予算には少くとも計上されるだろうということだったのですが、どういうことになったのですか。来年でもやられるのですか。さきにどなたか質問されたそうですから、簡単でけっこうですからお答え下さい。
  114. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 この問題はすでに両院でも決議として決定いたしておりますので、本年度におきましても何とかこれを実現したい、こういうことでいろいろ努力もし、また大蔵省とも折衝いたしたのでありますが、何分にも本年は科学技術の振興というような問題に特に力を入れました。もとより義務教育の向上、こういう点につきましては努力もいたしまして、なお定数の確保というような点につきましても、新しく立法措置を講ずることになって、近く提案することになっております。また建物につきましても、すし詰め教室、不正常学級、また危険校舎というようなものもできるだけ解消したいということで、この点につきましても予算も相当額要求したのでありますが、今申し上げたような事情で公立文教施設につきましては昨年とほぼ同額の予算ということになりました。そこでこれを、二分の一を不正常学級と危険校舎に充てますと事業量がそれだけ減りはせぬか。もとより事業量は、すなわち補助を国でつけるその事業量は減りましても、地方の単独起債によって、地方に力があり意欲があれば事業量は相当にできます。しかし単独起債ということになりますと、これまた自治庁とか大蔵省とかの関係財政上の問題でいろいろそこにむずかしく、必ずしも地方の意欲というようなことではできない面がありますので、そこで補助をたとい三分の一でも、あるいはそれ以下でもつけますと、起債が非常に楽になる、こういう観点もありますので、従ってできるだけ校舎をつけ、起債も起しいい、こういうことになりますと、補助に伴う起債の方がたやすくなる。こういうようないろいろな観点から、残念ながら本年度におきましてはこれが実現できなかったことはまことに申しわけございません。しかしこれは御決議を実行する上におきましても、何とかできるだけすみやかにこれを実現いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  115. 小川半次

    ○小川(半)分科員 すみやかにということは、これほど幅の広い言葉はないのだが、それは大体来年やる方針ですか。
  116. 臼井莊一

    臼井政府委員 もとより本年できませんでも、来年はこれをできるだけ実現したい、かように考えまして、その方面にはもちろん努力いたします。
  117. 山本勝市

    山本主査 野原覺君。
  118. 野原覺

    ○野原分科員 文教問題につきましては、実は数限りない問題があるのでご、いますけれども、遺憾ながらほんとうの文部大臣がいらっしゃいませんので、これは文教委員会に割愛して、ただ私が予算審議の上で緊急に尋ねておきたいという点が、文化財保護委員会にあるわけであります。その点に限って御質問したいと思います。  これは保護委員長も御承知だろうと思いますが、今から四年前にオランダのハーグにおきまして、わが国は文化財の国際登録についての、いわゆるハーグ宣言というものに調印をいたしております。つまりその国で最も大事な文化財は、国際的にこれを登録して守ろうではないかというので、たしかユネスコ本部の主催で五十七ヵ国の政府代表が集まりまして、この宣言が採択されたと聞いておるわけでありますが、その経緯をまず御説明願いたい。これに日本としては調印をしておるということも私は仄聞いたしておるのでございますが、その間の説明をまずしていただきたいと思うのであります。
  119. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 お答えをいたします。昭和二十九年の五月にユネスコの主催におきまして、オランダのハーグにおいて、戦時における、正確に言いますると、武力紛争時における文化財の保護に関する条約というものの採択会議というものがございまして、それに世界各国五十数ヵ国集まりまして、その条約は採択になりました。その際、その条約に関しまして調印いたした国が日本を含めて五十ヵ国になっております。この条約の趣旨は、戦時におきまして文化財が戦闘行為を受けないようにこれを守ろう、いかなる武力紛争等に対しましてもこの重要な文化財を保護しよう、こういう趣旨でございまして、一般保護並びに特別保護の二つの種類がございます。特別保護の方は、ただいま仰せになりました、いわゆるきわめて貴重な文化財をユネスコの本部に登録いたす制度であります。その登録を受けましたものは武力紛争から国際的に保護される。一般保護の方は、それほど手厚い保護ではございませんで、各国におきまして貴重な文化財を定めまして、その定めたものに対しましては締約国はこれを戦時において保護しようという趣旨のものでございます。  この条約は、その後におきまして、昭和三十一年の八月七日に条約の効力を生じたのであります。これはエジプト、サンマリノ、ビルマ、ユーゴスラビア、メキシコ、この五つの国が昭和三十一までに批准書をユネスコの本部に寄託いたしました。それによりまして三十一年の八月にこの条約が効力を生じたということでございますが、わが国は、まだ当初は調印いたしましたけれども、まだ批准の手続をいたしていないというのが現状でございます。
  120. 野原覺

    ○野原分科員 これは保護委員長も御承知のように、わが国は歴史的にも非常に古い国家でもありますから、非常に文化財の豊富な国とされておるわけでございます。しかも歴代の日本政府は、文化財の保護ということについては、かなり努力を払って、制度的にも今日は文化財保護委員会というものが設けられておるわけであります。しかるにただいま岡田事務局長の御説明を聞いてもわかりまするように、昭和二十九年の五月にわが国の政府代表が国を代表してハーグにおいて調印をした。今からまる四年前になる。満四年に近い。その調印されたところのものが、文化財を保護しなければならぬというので、文化財保護委員会まで作っておるにもかかわらず、四年間も放置されておるという理由は一体どこにあるのか。国の代表がハーグまで行って調印をして、四年間もそのままにしてある。私四年間国会に出ておりますが、私の知る限りにおいては、実は批准しようという動きもなければ、政府から議会に対して批准についての何らの説明も聞いていない。国際登録については、内容の説明すらも正式には文教委員会においてなされていない。この点について文化財保護委員長は、どのようにお考えになっておるか、御答弁願いたい。
  121. 河井彌八

    ○河井政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。この文化財保護の趣旨と申しますのは、世界的の文化を守るという非常に高尚な考えから出ておるのでありまして、あの戦争の激烈なときに、広島なり、長崎なりに原子爆弾まで落されたようなことがあったにかかわらず、文化財の集まっておりますところの京都また奈良等は、爆撃をも免れまして完全にあったということは、この文化財のいかに大切であるかということが、世界的に尊重されたという結果である、かように考えます。従いましてこの武力紛争の際の文化財の保護のための条約というもののできましたのも、全くそういう趣意からできたものである、かように考えます。  文化財保護委員会といたしましては、お話通り、すみやかにこれが批准の手続ができますように、そしまたそれの実行におきまして、関係者官庁との十分な了解を得るために努めておるのでありますが、しかしながら事柄が非常に広範でありまして、各官庁等においてもいろいろな立場がありまして、まだそれの妥決を見ていないということは、野原委員のおっしゃるまでもなくまことに遺憾なことであります。しかし何といたしましてもこのりっぱな条約ができました以上は、これがほんとうに効力を発生いたしますような手続をすみやかにとりたいということは考えておるのでありますが、現状これまで各官庁等との交渉、いろいろな折衝を試みました上から申しますと、なかなか容易に進まなかったということなんであります。はなはだ遺憾に考えます。しかしこの機会に一層これを推進していきたい、こういうふうに考えております。
  122. 野原覺

    ○野原分科員 何とかして批准をしたいという御意思は、失礼ですけれども言葉の上ではあるようであります。しかし私の知る限りでは、それは委員会にあなた方が出られて答弁をする言葉だけのことじゃないかとさえ実は思う。四年間たっております。それでは四年間に具体的にどういう御努力をされたか、この答弁は具体的にできないはずです。今河井保護委員長が各官庁にお話をしてみたが、なかなか各官庁がうんと言わぬから今日までほうっておるんだ、これならば何も努力じゃないのです。文化財保護委員会というものを国が設けておるのは、各官庁がうんと言わなくても、国が代表としてハーグまで行って、調印をしてきたほどの国際登録という、文化財保護にとってはきわめて大事なことであると御認識になるならば、なおさらのこと。これは四年もたっておる。私はひとりひそかに今度の予算には、国内法規を作るため、あるいは何かそこの文化財国際登録の審議会を作るため、あるいは準備会か何かを作るための予算が当然要求されたであろうし、計上されたに違いないと私は期待しておった。学芸大学の問題も、衆議院だけでございましたか決議をあげまして、いろいろ問題がありましたけれども、これは調査するということで百万円の予算が計上されておる。私は文化財保護委員会がほんとうに熱意があるならば、国際登録のための準備会ぐらい作る予算は一応、計上されてもいいんじゃないか、これが計上されていない。一体要求はしたのかしないのか、どれだけ要求したのか、まずそれから承わりたい。
  123. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 いろいろおくれました事情を少し申し上げますが、この条約は非常にりっぱな条約でございまして、できるだけすみやかに批准したいことはもちろん申すまでもないことでございます。内容におきまして文化財保護という点で非常に理想的にできておるわけであります。この国際登録の条件なども非常に厳重をきわめておりまして、文化財の周辺に軍事目標になるような施設は設けてはならない、設けますならば、それは国際登録の条件にならない、こういうことでございます。その軍事目標といいますのは、単なる軍隊の宿舎というのではありませんで、たとえば停車場とか飛行場とか、あるいは放送局とか主要幹線道路であるとかいろいろございます。そういうものが周辺にある場合には保護はできないというきわめて厳格なる条件がございまして、この条約に直ちに参加いたしましてこれを具体的に実施するということは非常な困難をきわめる問題があるわけでございます。この条約だけをただ国会の承認を求めて批准をいたしますことは、あるいは簡単かもしれませんが、条約の批准を国会に出す場合には必ずその実施に必要な国内法を同時に出すように、かような外務省並びに関係省の話でございまして、その国内法というものを同時に準備しなければならぬという関係がございます。その国内法につきましては、いろいろ案を作りまして、各省とも話し合いをいたしましたけれども、今申しましたような文化財と他の施設との関係において非常にむずかしい問題があるので、折衝がなかなか簡単に行かないということが一つの理由でございます。もう一つは、当初三十一年の八月に五つの国が入りましてこの条約は効力を発生しましたけれども、この五つの国は比較的小国でありまして、たとえばアメリカとかイギリスとかフランスとか、そういう大国が入るころに入ってもいいんじゃなかろうかというような話がございまして、しばらく様子を見てもいいんじゃなかろうかという話もあったのであります。なお他の国が戦時における文化財の保護にどういう態勢をとっておるかということも少し調べて、それらを参考にいたしまして国内法を作ったらどうであろうかというような話もございまして、多少おくれておるというような点もございます。しかしながら現在におきましてはロシヤもこれに加入いたしましたし、フランスも入りましたので、大国が二国これに入ったということで、私どもといたしましてもこの情勢におきましてはできるだけ早く国内態勢を固めて、この条約の批准の手続に向って進みたい、かように考えております。  ただいまの御質問の予算の点でございますが、準備費といたしまして約五十万円ほどを大蔵省に要求いたしましたけれども、条約批准ということがまだきまらぬのであるからということで、今回のこの予算は認められなかったのでございます。条約批准ということで、各省の話がきまって批准するということになれば、必要なる予算は当然取らなければならぬのでありますが、今回私ども要求いたしました予算は認められなかった。しかしながら私どもはできるだけ早く各省とも話し合いを進めて、この批准に向って進みたい、かように考ておる次第でございます。
  124. 野原覺

    ○野原分科員 五十万円の予算を要求したけれども、これは大蔵省から査定において認められなったというが、私は今事務局長のしたようなそういう弱腰なら大蔵省は五十万円は認めないと思う。しかも今の事務局長の御答弁を聞いて私が奇異に感ずることは、わが国の代表が、これは大使であったのだろうと思うが、ハーグにおいて調印をしておいて、なおかつ他の国家の様子を見なければならぬとかなんとかいうことならば、初めから調印しなかったらいい。そういうようなまことにどうもだらしない態度をあなた方がとるから、予算なんてとれやしない。予算は各省から山ほど出てくる。だからほんとうに文化財の国際登録というものは、調印したことでもあるし、国際的にも責任があるわけである。日本の遺産だけでなしに人類の遺産なんです。だからハーグで取り上げたんです。そのために文化財保護委員会を私どもが作っておる。そのためにそういう機関を設けている。それが五十万円の予算すらもとることができなくて、いまだに国内法規も出てこないというようなことは、私どもはどうしても理解できないのであります。批准できないわけは国内法規が出されないから、予算が実は通っていないから、このように承わっていいのかどうか、これは河井委員長から御答弁願います。
  125. 河井彌八

    ○河井政府委員 先刻も申し上げました通り、かような重要な文化財が、条約によって保護せられるまで進もうとしておる機会でありまするから、すみやかに各省の意見を決定いたしまして、これが実現できるような方向に進みたいと考えます。遺憾ながら予算の要求は認められなかったのであります。しかしながら、とにかく実質的にその方法が結論を得まするならば、今度は予備費なり何なり適当な方法をとり得るのではないかと考えております。
  126. 野原覺

    ○野原分科員 簡単に終りたいと思いますが、予算の要求が認められていないから、準備会ができないのですね。それから国際登録にどこの候補を持っていくかという候補地の選定も私は正式には不可能だと思います。文化財保護委員会で下調べはやるでしょう。新聞によりますと、東日本では日光山輪王寺、それから岩手県の中尊寺、そういうところが文化財保護委員会の当局としては考えておるというようなことも出ておるわけなんです。出ておるけれども、何せ批准とか国内法規についての提案説明すらも行われておりません。これは実は国民がその内容すらも今日把握していないから表面化してきませんけれども、この内容を国民が知って参りますと、この政府当局の怠慢というものは弁解ができなくなるのではないかと考えるわけであります。  そこで一点お尋ねしたいことは、この国際登録の関係でございますが、たとえば京都市、奈良市、こういうような文化財の集中しておる地域、これは国際登録ができるものかどうか、あるいは本願寺とか中尊寺とかいうようなお寺に限られるものかどうか、あるいは中尊寺にしても、その中の金堂だけだ、あるいは法隆寺にしても五重塔だけだ、こういうようなことになるのかどうか、そこら辺の内容はどうなっておりますか。
  127. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 特別保護の方は、登録をいたしまするのはきわめて貴重な文化財でございます。これは少数に限るということになっております。これは主として不動産の文化財でございます。これはハーグの条約の規定によりますと、不動産文化財で、たとえば建造物のようなものでございます。それと不動産文化財のセンターと申しまして、文化財が非常にかたまっておる、たとえば法隆寺のようなものは、文化財センターと申して差しつかえないと思いますが、さような文化財の集中地区、もう一つは動産文化財の避難施設、シェルターでありますが、この三つが国際登録の対象になっております。私どもといたしましては、たとえば京都、奈良のようなものは、これは町全体が一つの文化財と見てもいいのではないかというような観点から推しまして、ことにこれは空襲から免れましたきわめて好運な都市でありまして、しかも町全体に文化財が非常に多いところであります。そういうところは全体として指定したらどうかというような案も実は国際会議に出したのでありますが、これは少数をもって否決されて、やはり条約の原案の通りになっております。従いまして京都、奈良のごとき文化財の非常にたくさんありますところは、センターを幾つかにいたしまして、たとえば奈良では法隆寺が一つのセンター、あるいは奈良市内の公園地区などは一つのセンター、こういうふうに幾つかのセンターにいたしまして、これを国際的に登録する。あるいは中尊寺のごときものは、これは一つのセンターになるのではなかろうか、あるいは日光のごときも一つのセンター、かような考えを持っておりますが、この点は国際登録いたします際に非常に厳重な審査をユネスコの方から受けるのでありまして、その審査員がユネスコの方から任命されまして、その審査員がまた実地にこれを調査する、そうしてそれに合格したものを国際登録する、かようにきわめてめんどうなものでありまして、まだはっきりどうなるかわかりませんが、さように考えております。
  128. 野原覺

    ○野原分科員 候補をきめるに当っては、これは文化財保護委員会でできないことは当然です。これは先ほどの答弁にもありますように、たとえば文化財の付近に軍需工場とか鉄道とかあるいは軍事的施設、そういうものがあっては困るというようなこともあるわけけですから、それらの関係官庁の代表も入れなければならぬと私は思うのです。だからこれはどうしても文化財委、文部省が中心になってこれらの官庁に呼びかけて、何らかの形でやはり文化財の国際保護審議会とでも申すようなものを早急に作る必要がある。作って、日本では国際登録を要する文化財は一体どれだけあるのか、また候補にはどこをあげなければならぬかということも、これは今日から準備をして決しておそくはないと思う。こういうことは早くやらなければだめなんです。焼けてしまってからやったってだめなんです、爆弾を落されてからやったってだめなんです。そのために実はいろいろな世界情勢を考えて、四年前にハーグで急いでこの調印をやったのです。これは戦争で京都、奈良を守られたごとく、ハーグにはこれが動機になって出されたということを聞いておるのです。今日あなた方にはそういうような用意もないでしょう。そこでないだろうときめつけてもどうかと思うから、もう一度お尋ねしたいことは、国内法規について研究しているのかいないのか、批准するについては、国内でやはりこの国際登録の法規を作っておかなければならぬと思う。だから一体その国内法規の準備はどの程度できておるのかということが一つ、もう一つは、それじゃ一体いつになれば文化財保護委員会が予算の通っていない今日の段階においてこれの批准をするつもりなのか、まずその点をお聞きしたい。
  129. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 国内法規の研究はいろいろいたしております。ただまだ関係省と話し合いがなかなかつきませんので、決定的な案はございませんが、案は一応できましていろいろ研究いたしておる段階でございます。それからいつこの条約の批准に入るかということでございますが、それはやはり関係省との話し合いが全部了解が済むならば、すみやかに批准に入りたいと思っております。いつということははっきり申し上げられませんが、できるだけすみやかにということでございます。
  130. 野原覺

    ○野原分科員 これで終りますが、まことにどうも私はこの点について、私の質問に関する限りでは答弁が納得できません。まことに怠慢のそしりはのがれ得ぬと思う。少くとも今日、金はとれなくても、文化財保護委員会は国内法規の三つくらいの案は用意しておかなければだめなんです。そういうようなものも持たぬから、五十万くらいの金だって大蔵省はうんと言いはしないでしょう。それから文化財保護に関してはやらなければならぬのだという、あなた方の中核になる文化財保護委員会の熱意というものが私は疑わしいのです。まことに私は不満です。だから自余のことは私はいずれまた文教委員会においてなおお尋ねをしたいと思いますが、すみやかにということでございますから、そのすみやかというのはいつであるかわかりませんけれども、すみやかという言葉を私は文字通りお聞きいたしまして、一応終ります。
  131. 山本勝市

  132. 田原春次

    田原分科員 私は四点ばかり文部省のお考えを聞いてみたいと思います。  大臣が臨時の大臣のようですから、大臣には別に答弁を求めませんが、事務次官なりそれから関係局長の間で御答弁願いたいと思います。  第一は、これはちょっと適当な言葉がありませんが、半年進級、半年卒業制の問題です。日本では学期制になっておるけれども、それは一年を通じてのただ休暇までのつなぎを学期というのであって、多くは科目はそれで終了しておらぬ、新たに入学もできない、四月、九月、一月なんですね。ところが日本の学校制度は欧米の制度を参考にしたものだろうと思いますが、御承知のように、ヨーロッパでもアメリカでも、小学校中学校大学を通じて年二回の学期制ですね。ところによっては九月が新学期であり、そして一月までに終って、二月にまた冬学期なり第二学期が始まって六月に終るというのが多い。これは日本ももう採用していいんじゃないと考えます。半年進級、半年卒業制の利点はいろいろありますが、これは時間の関係で——それはもうあなた方知っていると思いますが、半年進級制を今まで採用しなかった理由はどこにあるのか、教員の数にあるのか予算関係にあるのか、これをまずお知らせ願いたい。
  133. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 御指摘のように、従来わが国におきましては小中高等学校は三期制をとっております。これは一学期が夏休み前で終っております。ですから九月から十二月までが二学期、一月から三月までが三学期、これは休みの期間等の関係がございますので、小中高等学校につきましては、三学期制をやって参りました。それから大学につきましては大体二期制をとっております。これは十月ころまでをきめまして、ですから大学の場合にはその履修の単位につきましては、半期ごとに単位が出せることになっております。これは二期制の方がいいのかあるいは三期制の方がいいのかという点は、私どももう少し検討しなければならぬものと思います。欧州のように大体九月から始まっておるところと、日本のように会計年度が四月でありますので、四月からに合わしておるところと、事情も違いますので、二期制をとるか三期制をとるかにつきましては、もう少し慎重に検討を進めなければならぬと思います。
  134. 田原春次

    田原分科員 慎重に検討するというのは、予算関係ですか、あるいは勉学上の便、不便からくるのですか、あるいは教員の数の点からくるのですか。
  135. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 予算関係とかあるいは教員の数ではございませんで、むしろ修学の状況から考えて、どちらが最も効果的に能率を上げ得るか、こういうことでございます。この問題は先ほど申し上げましたように、欧米諸国のように九月から始めるか、わが国のように四月の会計年度と合せるかという問題とも関連があるわけであります。
  136. 田原春次

    田原分科員 わが国も大正の初期までは四月の会計年度にマッチせなくて、独自の学期制があったのですが、なぜそれを廃止したのですか。どういうわけで四月の会計年度制に即応させたのか、これはちょっと私はっきりしないのです。
  137. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 これは主として予算関係だと思います。と申しますのは、給与その他学校の運営につきましては、できるだけ暦年であった方がいいと思いますが、もちろん学校が特別会会計等で、別個の会計をとっておりますればこれは可能でございます。しかし国立学校につきましては従来は特別会計でありましたけれども、終戦後一般会計になっておりますので、その点もあると思います。
  138. 田原春次

    田原分科員 従来といっても先ほど申しましたように、大正の初期くらいまでは四月開校じゃなかったのですが、それを変えたのはなぜかということです。ただ予算年度に即応させたと言うけれども、たとえばアメリカでもドイツでもそのようでありますが、予算は七月からですね。ところが学校は小、中、ハイスクール、大学を通じてやはり九月の末に始まるのです。従って教育の便、不便からいうことと予算とは別個にできておるのです。日本ではむしろ逆行して、予算年度に即応してやらせておるところが不便だと思う。なぜかというと、先ほどあなたの言われたように、大学は二期になっていて、十月に開校する。七月、八月は休みです。学期というものは休みの前に終るものです。六月の末くらいに終って、七月、八月休んで十月から冬学期になるならわかるけれども、九月にもう一ぺん授業をやるのですから、あとで言うように、私が考えておるのは、半年学期制をやるなら予算年度即応制でなくて、一月から六月までを半学期として、七月が休みで八月から十二月までが後学期として暦年制でできると思うのです。夏休みを二ヵ月とらなければならないという根拠はちっともないと思います。何の根拠がありますか。逆に冬を二週間にしなければならないという根拠もちっともない。北海道のような寒いところでは、冬こそ長く休んでもらいたい。だから半年学期制を採用するということは、政府予算年度関係なくやれると思いますが、なぜこれをやらないか、逆行しておるのじゃないかということです。もう少しはっきりしてもらいたい。
  139. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 現在のように学校経費が非常に膨大な額を占めておりまして、特に地方財政の場合には三割ないし四割程度教育費が占めております。かような状況下におきまして、学校だけの予算を先に組むというわけには参らぬと私は思います。やはり社会保障、衛生その他の各経費と大体歩調を合せて予算が進行すべきものだと考えます。そこで予算との関連を考えますと、大体今の四月から開校という線が一つの線ではなかろうか。御指摘のように、完全な意味で二期制をとりますならば、これは九月から新学期にした方がよろしいと思います。アメリカなどでは七月から会計年度が始まるわけでありますけれども、九月から新学期が始まりますのは、この二ヵ月が夏休みでございますので、会計年度とは合っておるわけでございます。こういう点も考えなければならないと思いますので、そういう予算上の措置その他の学習上の点等も考えて、この点はもう少し慎重に検討しなければならないと考えております。
  140. 田原春次

    田原分科員 これは議論ですからその程度にしておきましょう。私は見解が違うけれども、今すぐどうというわけにいかないから、第二の質問に移ります。  第二は、東京に国立、公立大学、私立大学が何校あるかということを受験雑誌等で調べてみますと、国立大学が十三あります。それから私立大学が七十五ある。それから短期大学が百二十くらいの科目を持っておるのが多分五十くらいではないかと思います。各種学校、栄養学校とか英語学校あるいはパーマ学校だとかともかくこれは二百近く載っております。特殊学校というか防衛大学、司法研修所、逓信郵政研究所とかこういったものが、やはり東京に二十くらいあるのです。これはこのままでいいでしょうか。問題は、私ども地方におる者から見ますとみな東京の学校に行きたがる。国会議員は、大臣や次官もそうだと思うのですが、いろいろと東京の学校へ入れてくれと頼まれて、これをやらないとまずい。やるといったって、みんないい学校ですから裏口入学なんかできっこない。結局東京に官公私立大学が偏在しているということです。これは昔江戸時代の笈を負うて漢字を学ぶという考え方、一種の立身出世の考え方がまじっていると思う。世界の恥です。アメリカはユニバーシティ・カレッジというのが千四百くらいあるのです。そうしてジュニア・カレッジは、よくわかりませんけれどももっとあるようであります。人口八百万というニューヨークで、コロンビア大学、ニューヨーク大学、ニューヨーク市立大学、全部で三つか四つだと思うのです。ほとんど大半はカレッジ・タウンというものを作ってそこにある。これは小さい町ですが非常にいいところにある。日本は東京に官公私立大学、各種専門学校、職業学校が五百くらいある。そのために地方から東京へ来なければならぬ。おやじが一生懸命に働いてせがれに学資金を月平均一万円送るといたします。東京にかりにこういう各種学校から大学に至るまで地方から来た者が二十万おるとしますと、月二億からの金というものが地方の経済を搾取して東京にある学校のために送金するということになる。これはあまりに頭でっかちな教育の形だと思うのです。これに対して文部省は何の方針もとらずに、また今度予算なんか見ますと、電子科学ですか、それを東大にふやしておるようになっておりまするが、各種専門学校、大学、これは官公私立を通じて現状のままでいいということですか。これは事務当局というより政務次官一つ御答弁して下さい。あなたの考えはどうです。
  141. 臼井莊一

    臼井政府委員 ただいまの田原委員の御質問でございますが、まことにお説の通り、学校が非常に東京都に集中しているということ、この点は十分将来考えなくちゃならぬ問題かと思うのであります。ただ、東京はひとり教育ばかりじゃありませんで、すべての政治、産業また官庁方面の中心地でありまして、また人口も非常に多い、こういうことですべての点でいろいろな便宜があるというので一つは東京に集中しているということかと思うのですけれども、この点につきましてはお説の通り、あまり好ましいとは考えられません。従来も各大学におきまして、将来は郊外にというような点が、敷地が手狭になっていろいろ考えられて、たとえば商大が国立の方へ一つの学園都府を目ざして当初は移ったようでありますし、その他慶応等もやはり郊外というような考えはあったようでありますが、私どもといたしましても、各地方においてやはり各地方の特色を生かした大学というものが今日必要ではないか、かようにも考えるのであります。しかしすでに校舎もでき、長い間そこにおり、またよい教師を得るという点においては、確かに東京の方が先生方もたくさんおられる、そういう現状からしてなかなか他の環境のいいところへ移るということが実際上むずかしい問題ではなかろうかと思うのであります。しかしこの点については将来相当に考えていくべき問題だ、そのように考えております。
  142. 田原春次

    田原分科員 今の政務次官の御答弁で三点気がついたので、私の意見を申し上げますならば、なるほど東京都内に集中しておるようですが、私の言うのは東京都内に作ることを避ける道はないかということなのです。これは非常にむずかしい問題です。あなたの理由の第二点は、すでに校舎にあるからと言われる。これもその通り校舎はあるが、たとえば現在の校舎を全部高等学校にするとかあるいは病院にするとかアパートにするとか活用策はあるのでありまして、地方に回わすということになればおのずからそれは方法があると思うのです。それから第三点の、地方に持っていったんではいい教授が地方に行かないだろう。これは存外重要な問題だと思うのですけれども、これは待遇とそれから一種の条件によると思うのです。およそ国立大学の教授たらんとする者は、まず地方大学で五年以上助教授をした者でなければ採用せぬとか、そういうことになりますと、どうしても地方に行かざるを得なくなる。だから私は結論としては、やる気があれば、東京の国立大学は全部東京以外の地方に分散してもらいたい。分散の方法によっては、むしろ学閥心理の活用になると思う。皆が東大に入りたがるのは、学問をするために入りたいというのは一割くらいで、あとは就職に便利だから、先輩が多いからということです。従って東大を廃止して、直ちに九大とか福大とかいってもなかなか行きませんから、たとえば東大の法学部をかりに群馬大学なら群馬大学に移すとか、あるいは農学部を新潟大学に移すとか、一学部ずつ切り離して地方に分散すれば、地方大学の格が上ります。それから自宅から通学してもいい、先輩が多いから卒業後就職の心配がない。東京に何を苦しんで出てくるのか。国立大学が十一もあって、しかもおのおの学閥を持って、後輩先輩の関係を持っておる。たとえば、東大の工学部と東京工業大学とはせり合いなんです。東大の医学部と東京医科歯科大学の医学部とは就職戦線においてせり合いだ。東大の文学部と、元のお茶の水や教育大学の卒業後の地方高等学校の先生とは奪い合いということになるのです。同じく税金を納めながら、東京にたくさんの学校があり、それが同じような科目を東京で教えておって、卒業後それが猛烈なせり合いをやっておるということは、これは事情を知ったら笑います。せんだって私はある大使館員と話をした。東京に百二十の大学があると言ったら、不可能だ、そんなこと考えられぬ、あなたはユニヴァーシティということを間違えておるのではないか、ノーノー東京にこれだけあると言ったらびっくりしている。これは少し文部省がだらしなくて、何となしにだんだん許したのではないか。あるいは自分の権限ではない、国立大学の伝統があるからというのではないかと思うが、この辺で私は、国費をもって支弁する大学、研究機関等は東京都以外に移す、少くとも新設は認めないというようなことで整理しなければ、八百五十万の人口で東京は世界一だなどといばっている、これはナンセンスだ。同じつらをした日本人だけが八百五十万非経済的におるだけでございまして、ニューヨークに八百万おるといったって、あれは人種が違い経済が違っておるのです。これは要するに大学があるということは、あなた方も御経験だと思うけれども、いなかの高等学校から東京の大学に入りたい。おやじは一生懸命に働いて月謝を送ります。金持ちの子弟は花柳病になる、貧乏人のせがれは結核になっちゃう。要するに学校が東京にあるから、東京にみんな集まる。しかも卒業しても今度は東京におりたいのです。いなかに帰って昔のように若だんなで村長になるかというとそうじゃない。卒業後は東京の保険会社の外交だとか何だかだ、浅草や新宿、銀座等をこういう気持で漫然とおる。東京の人口のふえるのは文部省の責任じゃないといわれればそれまでだけれども、ふえるような方法を講じておる。同じ国立大学にいたしましても、東大の方が採用生徒数が多い。京都とか広島、仙台に比べると多い。同一科目でも……。これは要するに地方の者の集まり、集まった者がそのまま東京で生活する。これはとんでもない大問題だと思うのですよ。学校だけに限りませんけれども、少くとも国立大学地方分散を目標として進めようという政策はないか。この内閣はふらふら内閣で、予算のぶんどり合いや、実際あんまり当てにしませんが、いずれ五月ごろには辞職するだろうと思うのだけれども文部当局というのがおるのだから、やはり何か教育の、東京と地方との差を、スタンドを上げていくとか、何か研究らしいものをやっていくべきではないかと思うのだけれども、どうでしょう。これに対して局長の中からだれか答弁してもらいたいと思います。
  143. 緒方信一

    ○緒方政府委員 東京の国立大学につきまして申し上げますと、東京にはお示しのように十一の国立大学がございますが、これは御承知のように戦前におきます専門学校以上の学校が新制度によりまして、みんな大学に昇格いたしておる。そのために数から申しますと、今お話のように医科歯科とか工業大学というようなものにつきましては、重複するような傾向もございますが、しかし先ほど申しますように、戦前にはそれぞれ独立しました専門学校等としてやって参りましたものが、昇格しまして大学になっておる、かような実情でございます。そこで文部省といたしましては、今国立大学七十二ございますが、これは各地方に——御承知のように各県におきましても一大学は持っておるわけでございます。これなどを内容を引き上げる、地方大学も十分整備充実していきたい。そうして地方の子弟が地方大学に進学をいたしまして、そこで十分地方の特色のある勉強をしまして、そこで就職できるようにいたしたい、かように思いまして、地方の国立大学の充実につきまして力を入れておる次第でございます。先ほどちょっと話が出ましたが、三十三年度にも、これは主として理工系の教育の充実という観点からいたしまして、十五学科を新しく作りますけれども、これも何も東京に集中するわけではございませんので、むしろ地方のそれぞれ大学に分散して十五を作りたいと考えておるような次第でございます。なお学科を作るまでもなく、学生を増募するという形におきましても、地方大学の充実をはかっていきたい、かように考えております。  東京に現にあります大学地方大学に移していくということは、実際問題として、先ほど政務次官からもお話がありましたように、施設の上から申しましても、教員を得るという面から申しましても、なかなか困難な問題でございますので、文部省といたしましては、さしあたり今申しましたように、地方にあります国立大学を十分充実していって、それぞれ特色のあるものにしていきたい、かように考えております。
  144. 田原春次

    田原分科員 まことに微温的であまり満足いたしませんが、私の案に近くするためには、東京の国立大学の募集数をだんだん減していく、それから地方を少しふやしていくとか、新たに卒業後の就職について行政官なら行政官を採用するとき、一校から大勢とらぬで、数校からとるというようなことにして、地方で勉強しても、この人生で卑屈な感じにならぬで十分やれるというように、これは文部省ばかりでなく、内閣総がかりで考えなければならぬ。すぐにはできないでありましょうが、そういう希望を地方の父兄は非常に強烈に持っておる。そういう点はぜひ考えてもらいたい。  第二点は私立学校の問題なんです。これは私学振興会等で多少ともやっておるのですが、これも今のように無限にふやしていきますと、やはり地方としてもこれは大問題なんです。これが方法、何かありますか。僕がしろうと考えで考えますのは、なるべく事情の許す種類のものは合併か総合さしていくとか、あるいはそうでないものなら、募集数を減して整理させるとか、学生一人当りの運動場の坪数等を強化するとかなんとかして、この三百かある学校をばく然と置いておくということは、これはやはり父兄も心配であるし、設備もよくないと思うのですが、何か私学に対する、これは統制とかなんとかいう権力的なものではなく、全般的な、教育の全国的配置の関係から勧誘して指導していくような方法はないものすか、何も原案はありませんか。
  145. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 私立大学の認可につきましては、認可の基準がございまして、この基準に照らして私立大学審議会でいろいろ審査をしてもらっておるわけでございますが、従来扱ってきましたこの基準を昨年度から高めまして、ただいま仰せのございましたような、たとえば校舎の基準あるいは運動場の基準というものを、それ以前のものに比べまして大体二倍程度に引き上げるということをやりまして、新たに増設されるというものを極力抑制する、あまり貧弱なものができないようにするということにいたしたのでございます。従って、新たにできます場合には、従前にも増して、校舎なり運動場を充実しなければ認められないということになっておるわけでございます。ただこれは全国的な基準でございまして、都市だけについてそういうものを特別に明確に扱うということはいたしておりませんので、全国平均でそういった措置は講じておりますが、お話にございましたような、今までもあるものを、たとえば合併させるとかあるいは総合させるというようなことは、文部省としては、ちょっとむずかしいと思っております。
  146. 田原春次

    田原分科員 これはこの程度にしておきますが、きょうは法務大臣が臨時文部大臣になっておる。いつまで臨時文部大臣か知りませんけれども、せっかく来られておるから、スポーツのことに関して、一問聞いておきたいと思うのです。これならあなたも答弁できると思うから……。体育局ができるようになったことは、これはまことに時宜に適したことであると思います。事ここに至るまでには同僚の川崎君がいろいろ努力したことと思うのであります。ただその内容なるものを聞いてみますと、学校給食課とか、何かただ文部省内の課の整理くらいなようですが、私はせっかく体育行政を一貫するならば、アマチュア・スポーツだけでなく、プロ・スポーツに対しても、思い切って、やはり体育局の中に包括するように努力したらいいのじゃないか。それは学校教育じゃないといえば別だけれども文部省というのを文教省、教育文化省というふうに解釈をすればやれぬことはない。諸外国においてそういう例があります。そこで問題は競馬ですね。農林省の競馬、それから通産省のオート・レース、競輪、それから運輸省の競艇、それから所属は何か知りませんが、プロ野球あたりは法務大臣は相当詳しいのじゃないかと思います。ときどき見たりしておりますから……。それからプロ・レスリングとかプロ・ボクシングあるいは相撲、こういった問題の所管省というものを、この機会に体育局で統合するような気持はないだろうか。むろんこれは経過的に見ますというと、競馬は農林省が馬の奨励とか称して、それから競輪等は自転車の製造の奨励と称して、苦しい解釈をしております。今やっていることはほとんど大半がばくちであります。これはスポーツをばくちスポーツでなく、もとの本来のスポーツとしての競馬や競輪やオート・レースは、この体育局ができる機会に各省の行政を一元化したらどうか。これは前に川崎議員が厚生大臣のときに、文部省があまりやらぬならば、仕方がないから、厚生省でやってみたらということを勧めたこともありますが、これがかえって文部省を刺激して、これは大へんだということで、努力したのじゃないかと思います。黙っていたら永久にやっていなかったと思いますが、せっかくできるのですから、スポーツ行政の一元化、それから広いアマチュア・スポーツはもちろんそこに入りますが、清潔なプロ・スポーツ、もしくは今ばくち的に使われているものはプロ・スポーツまで引き上げていく意味において、これを持ってきたらどうか、そういうふうなばく然たる考えを持っておるのです。実現はなかなか困難でありましょう、各省ががんばりますから。しかしほんとうに各省ががんばれば、これは、どうにもなりませんが、そこはやりは初めてできる体育局でありますから、努力によってできると思います。もし臨時代行の文部大臣唐澤さんがほんとうに真剣にやるならば、本格的な文部大臣にしてやってもいいのじゃないかという気もするわけです。スポーツは多少わかる、体協とも多少関係しているようですが、ただ二、三日分科会にすわっていればいいということでなしに、せっかくあなたがおるのだから、この際閣議でも発言して、スポーツの行政の一元化というようなことで、各省大臣とわたり合うくらいの気魄なり情熱はないか、この点について、スポーツ行政に対する唐澤時代文部大臣意見を聞いてみたい。
  147. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 今度文部省で体育局ができるというこの際に、スポーツに関して、アマチュアばかりでなくプロ・スポーツも一切統合したらどうかという御意見でございまして、まことに傾聴に値いする御意見と私も思います。このスポーツにつきましては、ここにいらっしゃる川崎委員もよく御存じの通り、従来から非常な権限争議がございまして、従来の権限争議は文部省厚生省との間でございましたが、なかなかその関係するところが多いのでございます。今あげられました競馬、競輪、そういう種類のもの、または野球等、みな一方においてはプロもあり、一方においてはアマチュアがある。そうしてそのプロの部分につきましては、各省が深い関係を持っております。そういうような関係で、スポーツという観点だけから、これを文部省に統合する、これは一つのお考えと思いますけれども、これを実行するにつきましてはなかなか容易ならぬ難関があるであろうと予想されるわけでございます。しかしせっかく体育局ができたこの際でございますから、スポーツという観点に立ってそれがアマチュアであろうとプロであろうと、文部省においてこれを統合指導監督するという方向へ持っていくということは一つの考えと存じます。ことにアマチュアとプロと分けて考えてはおりますけれども、アマチュア・スポーツはプロ・スポーツからすべて非常な影響を受けておるわけでございますから、その間におきましてはプロ・スポーツといえども文部省としてはどこまでも甚大なる関心を持っておるわけでございます。さらに進んでプロ・スポーツ全部の統合というようなことにつきまして、十分考究を重ねて参りたいと考えております。
  148. 田原春次

    田原分科員 唐澤さんはスポーツのことがわかるからそういうお考えかもしれませんが、そうあってほしいと思うのだけれども、やはり内閣も、各省とも同じ歩調になるようにならなければならぬ。間もなくあなたは法務大臣にあと返りになるから閣内であっせん役、調停役になって、そういうような方向に持っていこうじゃないかという努力をしていただきたいと思います。これは文部省にサービスするという意味では毛頭ありませんが、スポーツ行政をプロ・スポーツとアマチュア・スポーツに分けて、プロ・スポーツは厚生省としてもいいのです、今日なっておりませんから……。それには名前がちょっと不適当じゃないか、体育局じゃなくて、スポーツ局とするか日本語にして競技局とすれば、将来ずっとはっきりしていいじゃないか。プロ・スポーツは体育でなくて、ばくちですから、ばくちを廃して入場料の制限とか開催時間を制限するとか、今まで相当かせいでおりますから、もうこのへんでやめさしたらいいと思います。私もばくちスポーツに反対なんです。反対なんだけれども、反対ばかり言ったって、あるのですから、ある以上は改善するにはいい機会ですから、体育局もしくはスポーツ局に統一するように、今一番いい機会ですからこれを希望して、これで私の質問を終ります。
  149. 山本勝市

    山本主査 川崎君。
  150. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 四時半で終るのですか。
  151. 山本勝市

    山本主査 きょうは四時半から厚生省ですから……。
  152. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 実は時間がないといやな質問をしなければならぬことになる。実は手放しでやっていい質問ですから、私の所説を聞いてもらってそれでいいかどうかということだけを聞けばいいのです。ところが時間がないわけですから、四時四十分で散会ということでやります。私のあとありますか、だれか。ないでしょう。
  153. 山本勝市

    山本主査 厚生省があるのだ、四時半から厚生省ということに一応なっております。
  154. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 わかりました。全部スポーツの話だけですから、御答弁が願えると思うのです。かつて大映の顧問をやっておられたのですから、事情も知っておられると思うのですが、私が見て今一番問題なのはプロ野球の選手の入社をするときの契約金の問題だと思うのです。これはかなり青少年に悪い影響を与えておる……。
  155. 山本勝市

    山本主査 ちょっと川崎委員に。その点さっき小川君からだいぶ詳しく聞いたのです。
  156. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 だいぶ詳しく——おれほどは知ってないよ。それではもうやめましょう。
  157. 山本勝市

    山本主査 あなたがおれば野原君の前にやってもらう予定だった。ところが……。
  158. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 どの程度までやったのかわからぬけれども……。
  159. 山本勝市

    山本主査 入社の問題で。それから寄付金を競輪でもらって、それで方々へ、そよへ行ったりする問題から、とにかく精神的に悪い影響を……。
  160. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それじゃ質問が出たのですね。それじゃ答弁済みだと思うから、具体的にぐさりと聞きます。  たとえばあれに対してスポーツ振興審議会に勧告する意思がありますか。——つまりスポーツ振興審議会というものができて内閣でやっております。あらゆるスポーツを取り上げて、いろいろあなた方に答申しているわけです。その中にプロ野球の選手奨約金の問題というものを入れたらどうかと思うのです。これは文部省の行政からいうと、さっき田原さんが指摘したように、少しブロードにしないと解釈ができないのですけれども、やはり社会教育上は非常に重大な問題だと思うから、プロ野球の内部でも自主統制をしろという議論が非常に高まってきておるときであるから——とにかく二千五百万円という数字はべらぼうですよ。非常に大きなものだ。そこでそれを何とかするために、スポーツ振興審議会にかけて、これは妥当なものであるかどうか、スポーツ振興審議会はそれに対して答申を行います。それが世間に影響を与えて、プロ野球の内部の自粛になるわけですけれども、そういうことをする意思があるか。
  161. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいまお説のようなプロ・スポーツの問題は非常に重要な問題でございまして、かつて内閣に置かれておりますスポーツ振興審議会におきましても、そういった問題を取り上げるべきかどうかというような点について研究されたことはございます。従って今後その審議会におきまして取り上げるかどうかは未定でありますけれども、確かにそういった問題も出たということは御了承いただきたいと思います。またスポーツ振興審議会でなくても、文部大臣の諮問機関でありますところの保健体育審査会におきましても、かつて相撲の問題を議したように、同様の問題が今後出る可能性もざごいます。従ってそういった機会に十分そういう重要な問題も研究いたしたいと考えております。
  162. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そのことに関連してもう一つ、これは奨約金の問題でなしに、二、三日前に起った事件で、早稲田の桜井という選手が、大昭和製紙という、これは普通の会社ですが、一ぺん入社を承諾しておきながら、今度は大洋という球団に急に一転した。これなども非常に世間に与えた印象というのはよくない。ことに将来スポーツ選手のかがみとして立たなければならぬというプロ野球の選手が、そういう背徳を犯すのだということを少年に与えるのは非常によくない。それはしかし、桜井君といっても、まだ今年大学 を出たばかりですから、そういう誤ちを犯し得る。これは大洋の球団のスカウトというものが問題になるわけです。そういう意味で、これは社会教育上の問題でもある。それからスポーツ振興審議会としての問題でもあるのだから、そういうような意味で、プロ野 球の内部で——プロ野球というのは法律とは関係ないから、国会に呼んで話を聞くのも、一つ間をおいて諮問しなければならぬことになる。去年の相撲のようにはいかぬわけです。呼んで聞くわけにいかない。結局はスポーツ振興審議会くらいに一つの拠点を設け て、そしてプロ野球に対しても反省をさせるというやり方をやる以外にないのですけれども、こういうふうな場合も一つの大きな問題になると私は思う。  それからもう一つの問題は、文部省大学生のあり方というものに対して一番指導的な立場にならなければならぬのだから、プロ野球の方が何をしようとかまわないということに対して、何らかの防護線を張らなければならぬじゃないか。たとえば大学の最終試験も終らないうちに、一年、二年のときからプロ野球選手に入れようとしての勧誘がしきりにあるわけです。もう長嶋などとるときには、五年計画でとったのですからね。そういうことを一体アマチュア野球の方では許しておけるものか、許しておけないものか。何かそういうものに対する防止手段というものがなければならぬじゃないか。関西の高校野球の芥田君というのは、そういう点で非常に早くこの点に手を打って、高校野球に関する限りはプロ野球の勧誘はこういうふうにしてもらいたいという手を打った。これは非常に大きな問題になったのですが、六大学野球でも同じです。この二つの問題について、官僚が干渉するということでなしに、スポーツ振興審議会というものを使って、もう少しうまい手を打つことはででないかということを私は社会教育局長にお聞きしたいと思う。
  163. 福田繁

    ○福田政府委員 非常に実行上むずかしい問題でございます。これは大学につきましては、事柄が大学教育自体の問題であり、また一面就職問題でもありますので、これはよほど慎重にいたさなければならぬと思いますが、われわれとしては、大学の問題については、少くとも大学自体でそういう申し合せなり、あるいはまた必要な措置を講じていただくことが望ましいと考えます。高等学校につきましては、これは保健体育審査会におきましてそういう意見も出たのであります。まだ卒業しないうちに、あるいはほかの選手として運動競技に出ているというような事実も過去においてなきにしもあらず、そういう点につきましては保健体育審査会等で取り上げまして、これを今後十分注意をしていく、こういうふうな措置は講じたこともございます。従って高等学校については大学よりも多少やりやすいという点はございますけれども、十分研究いたしたいと思います。
  164. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それからもう少し聞いてみたいと思うのですが、本年の五月にアジア大会が行われる。これと並行して、国際オリンピック委員会というものが東京で開催される。第十八回国際オリンピック大会を開くのに好都合な条件というものができてきたわけです。明日は国会でも衆議院でオリンピック招致決議案を可決する方向に向いているわけです。明日本会議で可決されるわけであります。これで国内態勢としては、一応の精神的態勢というか、そういうものはできたと思う。問題は、国際オリンピックを呼ぶのに足るところの東京都の競技場の準備、あるいはオリンピック村の準備、道路、ホテル、通訳その他の受け入れ態勢ができるかどうかということの問題にもなるわけですが、結局この五月のアジア大会に名実ともに成功するということが一つと、それから国際オリンピック委員にいい印象を持たして帰すということが、来年モナコで行われる国際オリンピック委員会の総会で決定をされる第十八回大会の最後決定に非常に有力な要因になると私は見ているわけです。そこで東京オリンピックがくれば政府はこのくらいの計画を持っているのだという、概念的にも構想があった方がいい。私は社会教育局長はどのくらいの構想を持っているか知らぬけれども、これにはやはり年次計画を立てて、つまり一九五八年、本年から六四年に至る東京都の支出、それから政府の支出というものとにらみ合せの計画というものがずっと進行していかないと、これだけの大会を誘致する気組みにはならぬと思う。そこであなた方も少しは相談しているでしょうから、お聞きしたいのは、文部省としては、どのくらいの予算がこの国際オリンピック大会のすべての施設、それから計画に入り用だと思っておられますか。
  165. 福田繁

    ○福田政府委員 大へんむずかしい御質問でございますが、文部省としては、まだそういった数字につきまして具体的に申し上げる段階に至っておりません。御承知のように、東京オリンピック招致準備委員会というのがようやく結成されまして、岸総理を会長にいたしまして、その中に実行委員会というのが設けられておりますので、そういった実行委員会におきまして各界の学識ある方々を委員にお願いして、そこである程度の具体的な構想を出してもらって、それによって、果して施設にはどういうものが必要であり、それにはどれたけの予算が要るか。また運営につきましては、将来運営費の調達方法はいかにすべきかというような、いろいろな各般の事項にわたりましてこれを研究した上で、その構想がまとまって、その上でしからば将来これを年次計画にしてやる場合に、どういう工合に持っていったらいいかというようなことをそこで研究していくためにできたのであります。従って私どもといたしましては、実行委員会なり、そういったところの研究を待って、できるだけ早く見当をつけたい、かように考えております。
  166. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 大体下からいっても三、四百億の費用は要るんじゃないかというふうにわれわれは考えているわけですが、それについては、やはり今言われたような線で準備をする以外にはないでしょう。ないでしょうけれども文部省としては体育局ができるならば、そういうことも一つ素案だけくらいは持って、そうして相談をしていくように今から忠告を申し上げておきたいと思うのです。  それから今度はもっと手近かな話です。国立競技場の法案というものが近く出るわけです。国立競技場の法案の中には、役員というものが七名かあげられておるわけですけれども、あの法案の要綱というものを見ると、暫定期間は官吏が兼務するということを書いておるように思うのですけれども、やはり国立競技場を運営するのには、むろん文部省の出身者も一、二名は入られてもいいけれども、やはりできる限りスポーツの出身人、あるいは広く財政知識のある者というものを求めて、国立競技場がやはり収支の償うような斬新な企画力を持つものを入れるべきだと考えるのです。それらについては、社会教育局長じゃなしに、文部次官、政務次官いかがでしょう。
  167. 臼井莊一

    臼井政府委員 近く国立競技場の経営に関しましての法案が出ますが、一応役員はお説のように兼務できる、こういうことでございますが、適任を得られればできるだけすみやかに専任にする方が運営の上からいってもよかろう、かように考えております。十分その点お説を一つ取り入れるようにいたしたいと考えております。ただ人の問題でございますから、急いでまた適当でないようでもいけませんので、そこで一つ十分りっぱな方をお入れするようにしたい、かように考えておりますので、あまり拙速はとらない、かように考えております。
  168. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 国立競技場の建設について、今日まで功労のあった国立競技場建設促進協議会というものが、一昨日とその前の日に会合を開いてこういうことを決議したのです。第一は、国立競技場の運営に関連する役員の人事というものは、官僚人事というものを排して、そうして斬新な構想と企画力を持つ者をその中に入れようということが、第一項、それから第二は、国立競技場をあまりプロ野球とか、あるいは商業主義に貸すな、やはりアマチュアリズムの殿堂として謙虚に品位を保持せよ、従って第三項には、やはりそうなると収支が償うといっても、十分に初めの年からうまくいくとは思わない、ことしは何がしかのことを国家で受け持つようになったのですけれども、やはり数年くらいは引き続き国庫が受け持つようにしなければ、あの国立競技場というのは運営ができないのじゃないかということを決議したので、その点は十分に文部当局におかれてもお考えをいただいて善処を願いたいと思います。  そこで次に伺いたいのは、閣議でも河野経済企画庁長官などが発言をしまして、国民体育大会が開かれておるときには、全国でも体育行事というものは盛んに開かれる、あれを一つ統一してスポーツ・デーというものを設けたらどうか、祝祭日にまでしろという議論もありますが、それを中心にしてスポーツ・デーというものを設けたらどうかというような意見があります。  それともう一つ、ついででありますから聞いておきますが、スポーツ振興審議会では大いにスポーツを振興するための裏づけの法律が要るのではないかというような考え方があるが、これらについては文部当局としては今日どうお考えになっておるか。  それから、これは院内で春日一幸君あたりが——このごろプロ選手のスポーツの傷害が非常に多い、傷害というのは、けがが多い、それから相撲とかラグビーというのは非常に多いので、個人で保険をかけておるものがあるけれども、これをもう少し保険形式を広くとって、スポーツ傷害法というものを出そうじゃないかという機運も社会党と自民党との間に出てきておる。そういう問題について、文部省としてはどういうふうにお考えになっておるか。  以上、まとめて三点お伺いして私の質問を終ります。
  169. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいまの国民体育デーの問題でございますが、この点につきましては、スポーツ振興審議会で国民体育デーを設けた方がよろしいという御答申もありましたので、その線に従ってわれわれとしては研究をいたしております。具体的な内容につきましては、事柄が学校体育あるいは社会体育両面にわたりますので、大臣の諮問機関でありますところの保健体育審査会の両分科審査会でその内容を検討いたしております。近くその結論が出ることと存じておりますが、その結論に従って私どもとしては措置したい、かように考えております。  それからスポーツ振興法といったような何か法律が要るのではないかというお話でございますが、この点につきましては、御承知のようにスポーツ振興審議会の方で現在その内容を検討中でございます。これにつきましてはまだ答申が出て参りませんので、その答申をいただいてから私どもは十分研究いたしたいと思います。  それからスポーツ傷害保険の問題でありますが、このスポーツの傷害保険につきましては、特にラグビーその他運動の種類によりましては非常に傷害の多い向きもありますので、現に御承知のようにラグビーにつきましては競技の際に傷害保険をつけております。従って他の全般のスポーツに及ぼすかどうかという問題も、趣旨としては非常にけっこうだと思いますが、そのやり方については十分研究の余地があると存じますので、私ども十分研究をしていきたいと考えております。
  170. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 けっこうです。
  171. 山本勝市

    山本主査 これにて文部省所管及び労働省所管に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  172. 山本勝市

    山本主査 次に厚生省所管に対する残余の質疑を行います。戸叶里子君。
  173. 戸叶里子

    戸叶分科員 すでに分科会で売春防止法の施行に伴ってのいろいろな問題について質問があったと思いますので、これにかち合わないで二点だけ伺いたいと思います。  それは婦人相談所に関することですが、婦人相談所に今回更生資金として三千百二十万円が組まれ、三分の二が国庫補助で、三分の一が地方負担ということで最高五万円まで売春婦の人たちの更生のために借りることがきめられたわけです。この予算は非常に少い予算ではございますけれども、これだけ設けられたことはある程度いいと思うのですけれども、問題はこれを借りるに当りまして保証人が必要だということで、実際に借りられる人がないということなんです。それで東京都の場合などは、東京都の都知事が保証人になって借りるようにしてやるということも聞いておりますけれども、これはまだ決定しないようにも承わっております。実際問題として、地方へ参りますと、借りたいけれどもだれも保証人になってもらえないから借りられない、婦人相談員にでもなってもらったらいいんじゃないかというようなことまで言っていて、どういうふうに運用していいかわからないというのが現状だと思うのですけれども、この点に対してどういうふうにお考えになるか、伺いたいと思います。
  174. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 婦人更生資金の貸付を明年度予算に組んだのでございまして、その使い方によっては、ずいぶん売春婦の更生に役立つものと考えております。ただこれをただでくれてやるのでなくて、貸付の制度になっておりますために、一般の世帯更生資金でありますとか、あるいは母子福祉の貸付資金と同じような手続がとられて、保証人が要ることになっております。しかし私ども、東京都の場合もお話がありましたけれども、この資金の性質からいいまして、対象が売春婦であるというようなことから考えますと、その辺はできるだけゆるやかに考えまして、あまり手続をやかましく言っているために本来の目的が達せられないというようなことがないように指導いたしておるわけであります。確かに保証人を設けることはめんどうなことでありますけれども、ものが貸付資金ということになっておりますために、そういうふうなことをいたしておるわけであります。運用上についても十分気をつけて参りたいと思います。
  175. 戸叶里子

    戸叶分科員 東京都の場合、都知事が保証人になるということはさまったのでしょうか、どうでしょうか。
  176. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 実は東京都の場合は年度内にも予算を組んでおりますから、私どもの方で千六百万円ばかりの予算を組んで各府県に配付いたします場合に、東京都ではそれは要らない、自分のところの費用だけでやるというくらいの意気込みでやっております。従って自然そういう点につきましてもよほど変った取扱いをするのではないかと実は考えております。詳しくは存じません。
  177. 戸叶里子

    戸叶分科員 今何とかゆるやかに考えるということなんですけれども、現実の問題として、やはり保証人の判がないと相談所長は出せないということなんです。相談所長としてみれば、そのお金は保証人の判があれば出すというような気がまえでいても、だれも保証人になってくれない、相談員の人になってほしいといいましても、それまで相談員の人にやらせるのは非常に無理だということで、非常に困っているのです。ですから、これは何とかお考えにならなければ、せっかくそういうふうなものを設けて、更生しようと思っても、実際更生資金を使えないでそのままたな上げされるのではないかということをとても心配しているのですけれども、何かいい考えをお出しになったらいかがでございましょうか。
  178. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 確かにお話のような点があるかと思いますが、貸付資金ということでありますと、普通の場合、やはり保証人をとらざるを得ないのでございまして、また保証人をどういうふうにするかということにつきましては、いろいろ各府県で工夫をいたしております。相談員がなる場合もございましょうし、あるいは民生委員とかに頼むこともございますし、あるいは友人等を探しまして、それを保証人にするというようなときもあるようでございますが、おなせっかくお話もあることでございますので、十分研究いたして参りたいと思います。
  179. 戸叶里子

    戸叶分科員 くどいようですけれども、普通の保証人という場合には割合にすぐに見つかると思うのです。たとえば友人を探してみても何を探しても、何とかできると思うのですけれども、何しろ売春婦をしていた人が、さあ保証人といいましても、どこへ手をつけていいかわからないというのが現状ではないかと思うのです。ですからやはりこの資金の運用を非常に有効にするためには、そこまで親心を持って考えてあげなくてはいけないのではないか。そうなりますと、相談所の所長に頼むとかなんとかいうことに、全国的に一つ統一するというようなことをお考えになってみたらいかがでございましょうか。
  180. 米田吉盛

    ○米田政府委員 お考えはごもっともだと思います。実は皆さんに納めていただいた税金を使うわけでございますから、その使い方を明らかにして、貸金であれば回収ということを原則として考えなければなりませんから、役人として今おっしゃるような考え方をしているわけなのでございます。なるほど相手方を考えますと、必ずしも有力な保証人がそう右、左に見つかる立場の人ではないかもしれないと思います。全国的の問題でもありますし、十分御意見のあるところに沿うように、せっかくこれからまだ日もあることでございますから、研究をして遺漏ないように努力いたしたいと思います。
  181. 戸叶里子

    戸叶分科員 政務次官から何とか考えるというお話でございましたから、これが実際に使われるときに、借りる人があっても借りられないというようなことでなく、何とか全国的に相談し合って、円滑にできるようにぜひお考え願いたいと思うのです。  もう一点は、婦人相談所に相談に来た売春婦の人が、自分の行きたいところを指定いたしまして、その売春婦の人をあたたかく次の場所へ送ってやるわけですけれども、その場合に、どうしても予算がないために、駅まで送っていって切符だけ渡して乗せてあげると、次の駅まで乗っていって払い戻しをして帰ってきてしまうというような例も今までずいぶんあるように聞いているわけです。そこでやはり目的地まで送ってあげれば、そこで落ちつくという気持になると思うのです。相談員の人が一人目的地まで送ってやられるような交通費といいますか、そういうようなものは、幾らか予備費なんかで足りない分を補うというようなことはお考えになれないでしょうか。
  182. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 私ども予算に組んでおりますのはいわゆる輸送費でございますが、これはきわめて少いのでございますけれども、本年度よりは若干多くいたしまして、多少その点は考えたわけでございます。そこで、これは売春婦の本人が郷里に帰るようなときの費用に充てるわけでございまして、私ども必ずしも十分とは思っておりませんから、もしそういう費用が、だんだんやっておりますうちに足りないということでございましたならば、予算の使用状況等もにらみ合せまして他の費目でもし流用できるものがありましたならば、そういう措置もいたしたい。それからなおまたそういった移送費を出すような女でありますと、当然生活保護法にも当るような者と考えられます。そういっためんどうな手続をとらないために相談所に旅費があるのでございますけれども、しかしどうしても足りないということでありますならば、そういった方法の手続をとりましてもそういう費用を出すようにいたしたいと思います。なお一々婦人相談員かあるいは相談所の職員がそれについて行くということまでするに越したことはないことはわかっておりますけれども、現在そこまで時間的にも手が回りかねるようなことでございまして、それについての予算を実は特別に組んでいないわけでございます。
  183. 戸叶里子

    戸叶分科員 一々送っていく必要も私はないと思うのですけれども、場合によってはバスで一時間なり二時間離れたところへ送るとか、あるいは東京から千葉まで送った方がいい場合もときによってはあると思うのです。そこでこの間婦人相談員の人たちと折々話していたことで、もしできるならば相談所に一つぐらい国鉄のパスなり何なり頼んでもらえれば非常にいいというような話も出ていたわけですけれども、そういうような御努力政務次官、なさる御意思はございませんでしょうか。
  184. 米田吉盛

    ○米田政府委員 どうも実はいろいろ個々の場合があろうと思います。よほど今おっしゃるような必要性でもありますときは、臨時に旅費を使いまして行くこともけっこうかと思いますが、原則としましては相当成人年令にも達している人でもありますし、大体パスその他を要請してもおそらく国鉄でも認めないだろうと思う。だから全般的に考えまして、どうしてもしようのない、そうしなければならないというようなときには、何らかの旅費をそちらに流用してでもやるというくらいな便法以上のことは、この際特別に用意をして考えておくというところにはいかぬと思います。やってみましても非常に困るようでしたら、今局長申しましたように、これはまた新たなるやり方をしなければならぬと思います。相当の年令の人でございますから、その辺は更生の第一歩においてそのくらいの決心で一つやってもらいたいということが私の希望でございます。
  185. 戸叶里子

    戸叶分科員 そのつどどうしても必要な場合には何とか考えていただけるというような御答弁でございましたので、そのように了承して、なるべくその点万そつのないようにお考えいただきたいと思うのです。  そこで、相談員の方というのは御承知のように非常勤で、九千円で、非常に苦労していらっしゃって、しかもときには日曜日まで使うというような立場の方が多うございますので、この方たちに対する待遇の問題なども、今度は急でだめにいたしましても、何とか将来考えていただきたいと思うのです。  いろいろの質問を持ってきましたが、すでにそれは出たようでございますから、私の質問はこれで終了いたしたいと思います。
  186. 山本勝市

  187. 島上善五郎

    ○島上分科員 おそらく同僚委員の諸君から質問し尽されたと思いますので、私はごく簡単な問題一つだけをお伺いします。それは例の樺太から引き揚げて参りました引揚者に対する援護の問題です。この引揚者に対する援護自体がきわめて不十分であると思いますが、そのうちで大部分は日本婦人と結婚して子供を持っている朝鮮人、つまり日本婦人の夫である朝鮮人が大部分です。おそらく比率にしたら九割あるいはそれ以上になるかと思いますが、この朝鮮人の人々に対しては帰国手当も旅費も支給していないはずです。私はこれではいけないと思う。というのは、これらの人々はかつて青年時代に朝鮮におって日本人であった。日本人として徴用された人々が大部分です。中には募集という形で行った者もありますが、しかしその募集は徴用にほとんど準じたもの、同じようなものです。募集に応じなければすぐこちらには徴用令書を用意して徴用するといったようなものであった。そうして募集については二年間の期間がついておりましたが、二年間の期間が経過した後はそのままずるずると徴用になる。前の方は募集であとの方は徴用である、こういうような関係の人々なのです。これが敗戦後の今日引き揚げてきて、今はもう日本人ではない、国籍が違う。日本婦人を妻として、子供を多い者は数人も持っておる。こういうような扱いをするということは、どう考えても日本政府の責任を果しているとは思えない。今わずかに、どうにもやっていけない者には生活保護を与える。それも持って帰ってきた金が多少でもあるうちは生活保護は適用しないというような冷酷な取扱いをしております。一体これでいいと思うかどうか。日本の国の責任をこれで果しているとお考えになりますかどうか。もしこれでは不十分であるとお考えでしたら、何らかの対策をお持ちであるかどうかをお伺いいたしたい。
  188. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 最近の樺太からの引き揚げが、日本婦人で朝鮮人を夫としておる家族が非常に多いということは、お話通りであります。大体三分の二程度がそうでないかというふうに考えておるわけでございます。この援護措置としてどういうようにやっておるか、あるいはどういうようにする考えかというお尋ねだと思うのでありますが、実は第三国人を引揚者というふうな観念で考えますことは非常に無理がございます。そこで実情もいろいろ考え合せまして——実はその間の子供を日本人と考えるかというふうな問題も、掘り下げていけはすでに問題になるところであります。ソ連の方の法律関係がその点必ずしもはっきり割り切っておらないような事情もありますし、また実情を考えまして、理屈のつけ得る限りにおいては援護を厚くしようというような考え方で、朝鮮人それ自身、夫それ自身はちょっと引揚者と考えられないので、ただいま御質問のございました引揚者手当を支給いたしておりませんが、世帯全体といたしましては、もちろんお母さんは日本人、子供もいろいろ考え方はあるにいたしましても、これは理屈のつけようで、日本人と同じに扱っていいじゃないかということで、子供も日本人と同じように扱っていく。大体四、五人くらい子供を連れておる人が多い。それで世帯全体としては家族が多い関係もございまして、ほかの引揚者と同じくらいの手当や何かがもらえるというような形になりますので、お説の点から言うと、それでは不十分であるということも、考えようによってはあるわけでございますけれども、今申しましたような事情もございますので、この辺でごしんぼう願えないかというようなところで運営いたしておるわけでございます。  なお朝鮮人の徴用の問題でございますが、朝鮮から徴用をして樺太に行っておるというようなお話でございますが、私ども承知いたしておるところでは、朝鮮におる人を徴用して樺太に持っていったという例はないはずだと思います。一応募集という形式をとっております。もちろん今お話のように、戦時中のことでございますので、募集といいましても心理的にはいろいろな制約があったということはお説の通りだと思います。形式的には徴用というような手続ではなかった、かように私承知をいたしております。
  189. 島上善五郎

    ○島上分科員 形式的には徴用でなかったという点は、私の聞き及んでいる範囲では徴用があった。それから徴用と募集ですね、最初のうちは募集、あとに徴用が続くという形、これはぜひちゃんと的確にお調べ願いたいのですが、かりに募集にしましても、その募集のあと徴用が続いているわけですから、約束の二年の期間で自由に帰れる状態ではなかったのです。それは抑留されたから帰れないのではなくて、抑留されない当時においても、募集が済んでからもう徴用というふうに変っておると私は聞き及んでおります。これはしかし、いずれにしてもしっかり事実を調査願いたいと思います。  そこで私は帰国手当、旅費の問題もさることながら、実を言えばこれは過ぎ去ってしまったことなんです。問題はむしろこれからにあると思うのです。これらの人々はいろいろの問題がある。第一に就職の問題がある。日本人で今失業者が町にあふれているようなときですから、なかなか就職は困難である。また就職を容易ならしめるような職を手に持っている人はきわめて少い。就職の前提として、職業補導といったような問題が起ってくる。お前たちは朝鮮人だから帰れ、好きなようにしろと放任しておくという意味であるならばこれはまたおのずから別ですけれども、現に日本婦人と結婚して数人の子供がおるという状態ですから、それらの人々は日本に今後居住したいという希望を持っている人が大部分、あるいは全部であるかもしれない。そういたしますと、今言ったように就職の問題が一つある。それから住宅の問題、これは今東京にかなりおりますが、妻の郷里をたよって、あるいは親戚をたよって地方に行った人もおります。ところが、地方に行った人は分散しているわけですが、みじめな状態でどうしても東京に来てみんなと一緒に集団的な生活をしたい。少くとも住居だけは集団的なところに住いたいという希望を表明しているようでございます。それというのは、長い間樺太におりまして、日本の生活というものに対してはもちろん経験もないし知識もない。それから肝心の子供たちが日本語をよく解していない。日本の文字ももちろん知らない。学校へ行くような年令に達してもそういう状況ですから、日本の学校に入れておりますが、普通の日本の児童に施していると同じような教育ではどうにもならぬわけです。そこで足立区のある学校では、先生たちがこの特別の事情に同情して、犠牲を払って普通の教育の時間以外に、これらの子弟のために特別の教育をやっておる、これは全く犠牲を払っているのです。こういうところがある。しかし国としてはそういうようなことでなしに、やはりこれらの子供たちの教育のことも考えてやらなければならぬ。そうしますと、どうしても帰国者たちの希望する住居は、少くとも集団的に心配してやるということも必要であろうと思う。それから中には自分の郷里である朝鮮に親戚があるとか、あるいは財産があるとか、特別の事情で家族を連れて帰りたいという者もあるかもしらぬ。そういう人々がありました場合には、これに対する便宜と与えるといったような配慮も必要ではないかと思うのです。どうにもこうにもやっていけなくなったら生活の保護で見てやるというだけでは、私は国の責任を十分果したといえない、こう思うのです。これはもちろん御承知だと思いますが、一昨年巣鴨から出て参りました台湾、韓国の戦犯の人々に対しては、これもまだ問題は最終的に解決しておりませんけれども、当座の措置としまして住宅の提供と生業資金を与える。これらの人々はもちろんこれで満足しないで国家に対する補償を要求しております。ですから問題はいわば未解決の状態にあります。戦犯と同一に扱うかどうかということに対してはこれはもちろん議論のあるところだと思いますが、しかし私は今言ったような問題をあげて考えますと、困ったら生活保護だというだけでは、あまりにも冷淡ではないか、こう思うわけです。そこで、もしまだ今後の対策が全然ないとするならば、あたたかい思いやりを持って十分対策を考えてやってほしいし、もし今ここで答えられるような対策がありましたらお答え願いたい。
  190. 米田吉盛

    ○米田政府委員 いろいろ承わりまして、当時の日本国民の一人であって、その国家目的がよいか悪いかということはしばらく別としまして、日本国家目的の大きな協力者の一人として専念しておった、こういう人が今回、今仰せになるような関係で帰ってきたという問題でありますが、これはただ単なる外国人だというような冷たい考え方ではおらぬのであります。帰りましても、御承知のように日本人は一万円の手当を出しますが、そういう引き揚げの朝鮮人の人には半額を支給している、子供は先ほど申しますように日本人と一応同じように取り扱う、こういうようにやっております。住居の問題につきましては、いずれ帰りました婦人が幸い日本人でありますから、この人には一応引揚者としての住宅を提供するわけでありますが、幸い夫婦でございますから、その家に一緒に生活していただくということがさしあたって私は便法だと考えております。根本的の問題につきましては相当予算も実はからむ問題で、まだ三、四百人樺太に残っております。これもそう長くないうちに帰って参りますので、御趣旨の点は私らも全く同感でございまして、できることでございますれば、現在の法制のもとで努力いたしたいとは考えております。何分にも実は日本人自身にも今御承知のように十分なことができておらぬやさきでございまして、どれもこれも、あまりにやらなければならぬ仕事が多いと思うのです。お気持をくみまして、できるだけのことはいたしたい、このように考えております。
  191. 島上善五郎

    ○島上分科員 御答弁のあれはわかりましたが、私は日本人以上にしてやれと言っているのではないのです。しかし考えようによっては、今日本人でなくなったのだから、過去の国の責任を痛感するならば、日本人以上にしなければならぬという理屈も成り立ちますけれども、しかし少くとも日本人と同様のあたたかい思いやりをもって、今後の今言った就職の問題、住宅の問題、子供の教育の問題、その他の問題に対して、今御答弁のありましたように、ぜひあたたかい思いやりを持って、予算措置の必要なものは予算措置をする。法律的な改正を必要とするものはそれを考慮してやるというふうに、ぜひ今後の対策を立てていただきたいということを希望して質問を終ります。
  192. 山本勝市

    山本主査 これにて各省に対する質疑は一応終りましたが、さらに御質疑があれば承わります。別に御質疑がなければ、これにて予算両案に対する文部省厚生省及び労働省所管質疑は全部終了いたしました。  この際お諮りいたします。昭和三十三年度一般会計、同特別会計予算文部省厚生省及び労働省所管についての討論採決は、これを予算委員会に譲るべきものと決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 山本勝市

    山本主査 御異議なしと認め、さよう決しました。  これにて本分科会の議事は全部終了いたしました。分科員各位の御協力に対し厚くお礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時十一分散会