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1958-02-14 第28回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十四日(金曜日)     午前十時三十一分開議  出席分科員    主査 山本 勝市君       小川 半次君    周東 英雄君       野澤 清人君    橋本 龍伍君       古井 喜實君    松浦周太郎君       山崎  巖君    井堀 繁雄君       島上善五郎君    多賀谷真稔君       辻原 弘市君    柳田 秀一君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         検     事         (民事局長心         得)      平賀 健太君         労働政務次官  二階堂 進君         労働事務官         (大臣官房長) 澁谷 直藏君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     松永 正男君         労働事務官         (労政局長)  龜井  光君         労働事務官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    塩崎  潤君         大蔵事務官         (銀行局中小金         融課長)    青山  俊君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大島  靖君         労働事務官         (労政局労働教         育課長)    大野雄二郎君         労働事務官         (労働基準局監         督課長)    鈴木 健二君         労働事務官         (労働基準局労         災補償部長)  村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  三治 重信君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部企画課         長)      住  栄作君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月十四日  分科員堂森芳夫君及び福田昌子君辞任につき、  その補欠として辻原弘市君及び島上善五郎君が  委員長の指名で分科員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算労働省所管昭和  三十三年度特別会計予算労働省所管      ————◇—————
  2. 山本勝市

    山本主査 これより会議を開きます。  昭和三十三年度一般会計予算及び昭和三十三年度特別会計予算中、労働省所管について説明を求めます。二階堂政務次官
  3. 二階堂進

    二階堂政府委員 大臣が参議院に出席いたしておりますので、かわって昭和三十三年度の労働省所管予算の大綱について御説明を申し上げます。  今回提案されました、昭和三十三年度一般会計及び特別会計予算中、労働省所管分につきましてその概要を御説明いたします。  まづ第一に、一般会計におきましては、歳入において、総額七億八千八百二十一万四千円でありまして、前年度の四億五百二十三万円に比較いたしますと、三億八千二百九十八万四千円の増加となっております。  この歳入のおもなるものは、国家公務員等退職手当暫定措置法に基き、退職した政府職員並びに政府関係機関職員に対し、失業中の退職手当を支給するために必要な財源を、特別会計等から一般会計へ繰り入れまたは納付するための負担金であります。  一方、歳出におきましては、総額三百八十八億五千五百二十万五千円でありまして、前年度の三百三十五億四千九百七十八万七千円に比較いたしますと、五十三億五百四十一万八千円の増加となっております。  次に、この歳出内容について概略の御説明を申し上げたいと存じます。  その一は、失業対策に必要な経費であります。完全雇用の達成は、政府基本的政策とするところでありまして、これがため長期経済計画を樹立し、これに基く諸施策推進に努めておるところであります。しかしながら明年度におきましては、経済引き締めの影響、駐留軍撤退等の原因から相当数失業者の発生が予想されておりますので、当面の失業対策の強化に意を用い、失業対策事業における月平均失業者吸収人員を、前年度に比し二万五千人増の二十五万人に拡大いたしましたほか、失業保険におきましても受給者増加を見込む等、失業対策整備充実をはかるため、これに必要な経費として、失業対策事業費補助百七十五億四千八百万円、特別失業対策事業費補助三十五億円、失業保険費負担金百五億一千八百万円、政府職員等失業者退職手当六億二千六百万円、合計三百二十一億九千二百万円を計上いたしております。  なお、このほか建設省所管臨時就労対策事業費七十四億円を計上いたしておるのであります。  その二は、職業訓練に必要な経費であります。工業その他の産業に必要な技能労働者養成し、職業の安定と労働者地位向上をはかるとともに、経済発展に寄与するため、現行の技能者養成職業補導等制度に検討を加え、企業内外を通ずる総合的な職業訓練制度及び技能検定制度確立するため、これの実施に必要な経費として、五億八千三百五十八万二千円を計上いたしております。  なお、職業訓練法案につきましては、近く提出することにいたしております。  このほか、失業保険特別会計において、十二億五千六十一万三千円を計上いたしておりますので、これを加えますと総合的職業訓練制度運営に要する経費総額は、十八億三千四百十九万五千円となります。  その三は労使関係安定促進に必要な経費であります。労使相互の信頼と納得による円滑なる労使関係確立経済発展の基盤であることにかんがみまして、常時的確に労働運動並びに労使関係の動向を把握するとともに労働教育の積極的な推進をはかる等の施策を講ずることとし、これに必要な経費として、八千三百二十三万円を計上し、また労使関係の合理的、かつ、円滑なる調整をはかるため、中央労働委員会並びに公共企業体等労働委員会に必要な経費として、一億三千九十六万八千円を計上いたしております。  さらに、このほか、大蔵省所管日本労働協会出資金として、十五億円が計上されております。これは、近代的労使関係確立促進するため、労使はもとより全国民を対象として、労働問題に対する理解と良識をつちかう目的のもとに、民間の労働教育機関として日本労働協会を設立することといたし、その事業経費に充てる財源を生むための基金としての政府出資金でありまして、これに関する法律案を本国会に提出いたしております。  その四は労働保護行政に必要な経費であります。労働者保護福祉の万全を期するため、労働基準法並びにけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法の適正かつ円滑なる運営をはかるとともに、最低賃金制度につきましては、労働者労働条件の改善に資するのみならず、ひいては企業公正競争の確保、国際信用維持向上等国民経済の健全な発展促進する上にも必要でありますので、わが国経済並びに中小企業の実態に即した業種別職種別地域別最低賃金制度を実施することといたし、その他労働衛生研究所産業安全研究所整備充実等労働保護行政に要する経費といたしまして、十六億九千五百五十二万円を計上いたしております。  なお、最低賃金法案につきましては、近く提出することにいたしております。  その五は婦人及び年少労働者保護に必要な経費であります。現下の未亡人問題の重要性にかんがみ婦人職業対策推進するため、内職公共職業補導所家事サービス公共職業補導所拡充整備をはかるとともに、中小企業密集地に働く婦人労働者福祉向上を期するため働く婦人の家を設置するのほか、年少労働者保護福祉推進及び一般婦人社会的地位と生活の向上並びに売春問題対策等に関する施策を講ずることとし、これに必要な経費として一億九百九十二万六千円を計上いたしております。  その六は職業安定行政に必要な経費であります。現下雇用情勢にかんがみまして、就職の促進をより一層強力に実施する必要がありますので、公共職業安定所職業斡旋機能を強化して、これが効率的運営を期するとともに、駐留軍離職者並びに身体障害者等雇用促進に関する施策を講ずるため、これに必要な経費として三十三億八千七百七十五万六千円を計上いたしております。  その七は労働統計調査に必要な経費であります。労働関係における賃金給与問題の重要性にかんがみ、賃金基本調査を実施して合理的賃金体系確立に資するとともに、毎月勤労統計調査整備するのほか、前年度に引き続き労働生産性統計調査及びその他労働事情に関する統計調査を実施して、労働行政施策基礎資料とすることといたし、これに必要な経費として二億三千九百六十七万八千円を計上いたしております。  その八は国際協力に必要な経費であります。国際労働憲章に規定されている義務を履行し、積極的にこれに協力するために必要な分担金及びI・L・O関係の諸会議への出席旅費等経費として、七千五百六十七万四千円を計上いたしております。  その九は、その他一般行政に必要な経費であります。大臣官房等における行政事務費として三億五千六百八十七万一千円を計上いたしております。  なお、以上のほか、建設省所管官庁営繕費に一億二千三百六十万二千円を労働省関係分として計上いたしておるのであります。  第二に、労働者災害補償保険特別会計につきまして申し上げます。  この会計歳入歳出はいづれも三百十六億四千四百六十九万六千円でありまして、前年度の二百六十二億五千八百六十九万九千円に比較いたしますと、五十三億八千五百九十九万七千円の増加となっております。  歳入のおもなるものは、保険料収入の二百八十一億八千三百九十一万二千円と、支払備金受け入れの二十一億一千八百七十三万六千円であります。また歳出のおもなるものは、労働者災害補償保険給付費の二百三十四億五千四百七十五万二千円でありますが、このほか、業務上の災害疾病をこうむった労働者療養目的とする労災病院等施設設置運営せしむるため、労働福祉事業団に対して行う出資並びに交付に必要な経費として十四億九千九百六万円を、また、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法に基き、けい肺患者及び外傷性せき髄障害患者に対する療養、休業の給付並びに配置転換労働者のための就労施設設置する等のため、三億五千十六万一千円を計上いたしております。  第三に失業保険特別会計につきまして申し上げます。  この会計歳入歳出はいずれも四百九十五億九千二百六十一万四千円でありまして、前年度の三百九十六億百十九万七千円に比較いたしますと九十九億九千百四十一万七千円の増加となっております。  歳入のおもなるものは、保険料収入の三百四十七億九千五百十二万七千円と一般会計より受け入れの百五億一千八百万円であります。また歳出のおもなるものは失業保険給付費の三百十二億五千四百万円でありますが、このほか、本会計積立金より生ずる利子収入の二分の一額を充当することにより、労働者福祉増進をはかることといたし、総合職業訓練所簡易宿泊施設簡易総合福利施設並びに日雇労働者住宅等設置運営せしめるため、労働福祉事業団に対して行う出資並びに交付に必要な経費として十二億九千五百四十六万八千円と、その他の保険施設費として一億四百五十三万二千円、合計十四億円を計上いたしておるのであります。  なお、失業保険制度を五人未満の事業所に拡大適用することといたし、失業保険法の一部を改正する法律案を近く提出することにいたしております。  以上、昭和三十三年度の労働省所管  一般会計及び特別会計予算につきまして、概略説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算案の成立につきましては、格段のお力添えをお願い申し上げる次第であります。
  4. 山本勝市

    山本主査 次に補足説明を求めます。松永会計課長
  5. 松永正男

    松永政府委員 それではお手元に差し上げてございます横書きの資料につきまして、三十三年度の予算概要につきまして御説明を申し上げます。  まず一般会計でございますが、一般会計内容は一ページに概括的な数字を掲げてございます。第一は失業対策に必要な経費でございます。これはただいまも御説明がありましたように、昭和三十三年度におきましては三百二十一億九千二百万円を計上してございます。三十二年度に比較いたしますと四十八億円の増加でございます。  第二は職業訓練に必要な経費でございますが、これは五億八千三百五十八万二千円を計上しております。前年に比較いたしまして七千三百四十四万八千円の増でございます。なお職業訓練につきましては、この五億八千万円のほかに、失業保険特別会計におきまして十二億五千万円の計上をいたしております。合計いたしますと、後ほど御説明申し上げますが、約十八億三千万円になるわけでございます。  第三は労使関係安定促進に必要な経費でございます。二億一千四百十九万八千円を計上してございます。前年度より五百七十七万五千円が増加と相なっております。  第四が労働保護行政に必要な経費でございます。十六億九千五百五十二万円でございまして、前年度に比較いたしまして一億三千百九十三万七千円の増加と相なっております。  第五が婦人及び年少労働者保護に必要な経費でございまして、一億九百九十二万六千円でございます。前年度に比較して一千百七十万六千円の増と相なっております。  第六が職業安定行政に必要な経費三十三億八千七百七十五万六千円を計上いたしておりまして、前年度に比較して二億四千六百十二万七千円の増となっております。  第七が労働統計調査に必要な経費二億三千九百六十七万八千円でございまして、前年度に比較して二千三百二十三万九千円の増と相なっております。  第八が国際協力に必要な経費七千五百六十七万四千円でありまして、前年度に比較して二百八十三万五千円の増となっております。  第九がその他一般行政に必要な経費三億五千六百八十七万一千円でありまして、前年度に比較いたしまして一千三十六万一千円の増となっております。  合計いたしまして、労働省所管一般会計は三百八十八億五千五百二十万五千円でございまして、前年度に比較いたしますと五十三億五百四十一万八千円の増となっております。  そのほかに次の二ページにございます日本労働協会の設立に必要な経費といたしまして十五億円を計上してございます。これは大蔵省所管でございます。  次に労働本省の庁舎及び労働省地方官署庁舎整備に必要な経費といたしまして一億二千三百六十万二千円、これは建設省所管でございます。前年度に比較いたしまして五千九百九十三万五千円の増となっております。合計いたしまして労働省関係一般会計予算といたしまして総計四百四億七千八百八十万七千円でございまして、前年度に比較して六十八億六千五百三十五万三千円の増となっております。特別会計はまた別に御説明いたします。  以下逐次各項目につきましての詳細を掲げてございます。第一が三ページの失業対策に必要な経費でございます。これは失業対策事業費失業保険費国庫負担金政府職員等失業者退職手当、この三つになってございます。  その第一の失業対策事業でございますが、予算額といたしましては二百十億四千八百万円労働省所管計上いたしておりまして、そのほかに臨時就労対策事業分七十四億円を建設省所管計上いたしてございます。この内容はまん中の「要求概要」というところに掲げてございますように、吸収人員におきまして前年度二十二万五千人に対しまして二十五万人の吸収予定でありまして、吸収人員において二万五千人の増と相なっております。この増は一般失業対策事業費において二万五千人の吸収増を見込んでおるわけでございまして、特別失業対策事業及び臨時就労対策事業吸収人員は前年と同数でございます。この一般失業対策事業特別対策事業及び臨時就労対策事業につきまして、それぞれ予算の積算の内容要求概要のところに掲げてございますが、これの説明は省略をさせていただきます。  それから四ページの失業保険費負担金でございますが、百五億一千八百万円を計上いたしております。この右の方の欄に説明が書いてございますが、来年度の雇用情勢に対処をいたしまして初回受給者を六万八千人見込んでおります。前年度は五万六千人の見込でございました。受給人員を三十七万三千人見込んでおりまして、前年度の三十万五千人に比較いたしまして大幅に増加を見込んでおるわけでございます。従って保険金総額におきまして、四ページの下に掲げてございますように、三百一億五千六百万円と相なるわけでございます。そのうち国庫負担法律の規定に基きまして三分の一でございますので、その相当額百億五千二百万円ということになるわけでございます。このほかに次の五ページに掲げてございます日雇い健康保険国庫負担額、それから移転費給付金国庫負担額を合せますと百四億一千八百万円ということになるわけでございます。これが保険費負担でございまして、そのほかに失業保険業務運営のための事業費負担が一億ございます。これを合せますと今申し上げました数字になるわけでございます。  それから三番目は政府職員等失業者退職手当でございますが、これは政府職員等失業者に対する退職手当でございまして、前年度四億三千万円に対しまして六億二千六百万円を計上いたしております。これは過去の実績に基きまして三十三年度の推計をいたしました結果、六億二千六百万円必要であるということになるわけでございます。合計いたしまして失業対策に必要な経費といたしまして三百二十一億九千二百万円、先ほど一番最初に申し上げました額になるわけでございます。このほかに建設省所管分といたしまして七十四億円を計上いたしておるわけでございます。従いまして合計といたしまして三百九十五億九千二百万円が失業対策に必要な経費ということになるわけでございます。  次に第二に、職業訓練に必要な経費でございます。これは六ページ以下に掲げてございます。先ほども御説明申し上げましたように、職業訓練につきましては従来労働省所管におきまして、職業安定局及び労働基準局の二つの系統によりまして、それぞれ違った根拠法規のもとに職業補導並びに技能者養成が実施されておったのでございますが、企業の中及び企業外職業訓練を総合的に実施するということがこの行政を伸ばすことに必要でございますので、新しく職業訓練法案を提案をいたしまして、これに基きまして総合的な職業訓練制度を実施したいというのが、この経費内容でございます。中身といたしましては、職業訓練所に関する経費企業内職業訓練事業主に対する補助金と、職業訓練行政を遂行いたすための事務費人件費等に相なります。職業訓練所経費といたしましては、構想といたしまして、中央センターといたしまして中央職業訓練所設置いたします。各都道府県総合職業訓練所設置いたします。それから各都道府県内数カ所一般職業訓練所設置いたします。そのほかに、そのときの必要に応じまして、たとえば来年度は駐留軍離職者に対する職業訓練所、それからまた特殊の事情による身体障害者職業訓練所等特別職業訓練所を設けることになっております。これらに関する経費職業訓練所に関する経費でございます。六ページ以下にその内容を詳細に掲げてございます。一般職業訓練所に関する経費といたしましては、一般会計から三億九千九百六万二千円でございます。そのほかに失業保険特別会計から一億円の経費を支出いたします。合計四億九千九百六万二千円、六ページの一番上に掲げてある額でございます。この内容はここにございますように、一般職業訓練経費とこれに併設する夜間職業訓練費とに相なっておるわけでございます。  次は七ページに、先ほど申し上げました特別職業訓練所経費が掲げてございます。これが一億二千九百十四万六千円でございまして、前年度に比べまして大幅の増加になっております。このうち駐留軍離職者職業訓練は二千九百三十一万三千円でございます。これは新規の計上でございます。なお駐留軍離職者職業訓練につきましては、あとの方の特別会計から支出いたします総合職業訓練所経費の中に、一千十八万六千円が計上いたしてございます。これは失業保険特別会計から総合職業訓練所における駐留軍離職者職業訓練として支出いたす経費でございまして、これを合せますと、駐留軍離職者対策といたしまして、職業訓練経費が三千九百四十九万九千円ということに相なります。この七ページに掲げてありますのは一般会計負担分だけでございます。身体障害者職業訓練費は前年とほぼ同額でございます。それから企業内職業訓練費は三千万円を計上してございます。  これは前年度九百万円でございます。職業訓練法に基きまして、従来技能養成といたしまして、技能養成工養成  いたします事業主に対しまして直接補助をいたしておりましたのを、三十三年度におきましては都道府県を通じて補助をいたすということにいたしまして、そのうちの四分の一として三千万円、結局各府県におきましてこれと同額の三千万円、合せて六千万円が補助金として事業主体にいくわけであります。残りの二分の一額は事業主体がみずから負担をするということになるわけでありまして、この三千万円によりまして、構想といたしましては、一億二千万円の事業をいたすということになるわけでございます。  次に八ページにあります中央職業訓練指導所でありますが、これは先ほど申し上げましたような構想で、職業訓練所中央センターとしての機能をいたす訓練所であります。初年度でございますので、建設費の一部五千三万七千円を掲げております。  それから次に総合職業訓練所経費でございますが、これは失業保険特別会計より支出をいたしまして、労働福祉事業団をして設置、経営せしめる訓練所でございます。なお、その上の中央職業訓練指導所労働福祉事業団をして設置、経営せしめる訓練所でございます。総合職業訓練所経費といたしましては、運営費建設費機械購入費との三本立になっておりますが、運営費昭和三十二年度中に建設をいたします三十三カ所分の運営費を見ております。二億二千八百九十一万五千円でございます。そのほかに昭和三十四年度におきましては、建設費のところに書いてございますように、四カ所分の新営費として三千百九十五万円を掲げてございます。それから既設の訓練所整備拡充費といたしまして五億三千六百五十二万二千円を掲げてございます。結局建設費として五億七千八百七十万五千円となるわけであります。機械購入費は二億九千二百九十五万六千円ということになっております。合計いたしまして十一億五十七万六千円、これを総合職業訓練所経費として計上をいたしておるわけでございます。その他の事務事業費といたしまして二千五百三十七万四千円、結局合計いたしまして総合的職業訓練経費といたしましては、九ページの一番下に掲げてございますように、カッコ内の特別会計分が十二億五千六十一万三千円、それから一般会計分が五億八千三百五十八万二千円、これを両方合せますと十八億三千四百十九万五千円となります。前年度に比較いたしますと、前年度は特別会計及び一般会計を合せまして、この右の三十二年度予算額の欄にありますように、合計十三億八千四百八十九万六千円となるわけであります。これに比較いたしますと、四億四千九百二十九万九千円、約四億五千万円の大幅の増額となっております。  第三が労使関係安定促進に必要な経費でございます。労使関係対策費は五千八十二万七千円、内容といたしましては労働情報収集費、労働教育費、中小企業労使関係対策費等でございます。そのほかに労政局関係一般行政費といたしまして、十一ページにございますように三千二百四十万三千円、労働委員会の経費といたしまして、中央労働委員会及び公共企業体等労働委員会の両方を合せまして一億三千九十六万八千円を計上いたしてございます。合計におきまして前年度に比べて五百七十七万五千円の増加ということに相なっております。  次に十二ページの労働保護行政に必要な経費でございます。これは労働基準局系統の経費でございまして、その中の主たるものは、特に三十三年度におきまして新規の事業といたしまして、最低賃金制度の実施一千十四万円を掲げてございます。最低賃金法に基きます各種の審議会の経費及び業者間協定の推進のための経費、各業種の実態調査のための経費、家内労働の実態調査のための経費等を合せまして、合計一千十四万円を掲げてございます。前年度の三百十三万三千円は業者間協定の推進のための経費としてあげられておるものでございます。  それから基準局系統の第二の経費けい肺等特別保護費でございますが、一億七千四百四万六千円を計上いたしてございます。この内容は、けい肺等の給付費、それから給付事務費でございまして、この必要額の二分の一を国庫負担をいたすことになっておりまして、二分の一相当額が一億七千三百四十万二千円ということに相なるわけでございます。なお、この点につきまして、健康診断は過去三年間にわたりまして実施をいたしまして、全部国で行います分は完了いたしましたので、三十三年度からは事業主がみずからの手において行うということに法律の規定上なりますから、健康診断費は落してございます。  それからその他の労働基準局系統の労働保護行政費といたしまして十四億七千八十一万三千円、さらに基準局関係の研究所といたしまして、産業安全研究所及び労働衛生研究所がございまして、それぞれ千九百十一万二千円、二千百四十万九千円でございまして、前年度よりそれぞれ増額されておるわけでございます。合計いたしまして、十四ページにございますように、基準局系統の経費として十六億九千五百五十二万円、前年に比較いたしまして一億三千百九十三万七千円の増ということになっております。  次は婦人及び年少労働者保護に必要な経費でございまして、これは婦人少年局系統の経費でございます。十五ページでございますが、第一は婦人労働者福祉施設二百八十万円、これは働く婦人の家を設置するための経費でございまして、婦人労働者が特に多数働いておるところの中小企業の地帯に対しまして、働く婦人労働者福祉施設として設置する経費でございます。これは三分の一補助でございます。  それから婦人職業対策費は千八百五十三万二千円でございます。この内容は、内職公共職業補導所経費及び家事サービス公共職業補導所経費でございますが、特に内職公共職業補導所につきましては前年の約倍額を計上いたしまして、増強をいたす予定にいたしております。これは千六百十三万四千円を計上してございます。それから家事サービス公共職業補導所、これは前年度と同様二カ所についての運営費でございます。いずれも三分の一の補助額でございます。  次は売春問題対策費でございますが、これは一千七百二十七万五千円を計上いたしてございます。このうちで特に増額になりましたものは、地方の婦人少年室の職員増加四十六人と、地方婦人少年室の活動費四百六十万円でございます。その他はほぼ前年度と同額でございます。これは前年に比べまして大幅の増額をいたしております。  それから次は婦人少年局関係の一般事務事業費七千百三十一万九千円でございます。これは三十二年度におきまして労働青少年ホーム一カ所の建設費計上いたしてございましたが、三十三年度におきましてはその運営を行うということで新設をいたしませんので、その関係経費一千万円が落ちておりまして、その他の経費が増額になりましたので、結局ここに掲げておりますような数字になっておるわけでございます。合計いたしまして、婦人少年局関係の経費といたしましては一億九百九十二万六千円となっております。なお職業訓練経費の中に婦人職業補導経費といたしまして二百四十万円が含まれております。これはカッコ書きでここに掲げてございます。前年度と同額でございます。  次は十八ページ、職業安定行政に必要な経費でございます。これは公共職業安定所及び本省並びに都道府県職業安定行政に要する一般事務費事業費でございます。  一の職業紹介事業費三十億二千六百八十四万七千円、これは安定所に関する経費でございます。前年に比べまして二億三千万円の増と相なっております。その他の職業安定行政費は本省及び都道府県職業安定主務課の経費でございまして、三億六千九十万九千円でございます。合計職業安定関係の一般事務費といたしまして三十三億八千七百七十五万六千円と相なっておりまして、前年は三十一億四千百六十二万九千円、これに比較いたしまして増額されておるわけでございます。  次は労働統計調査に必要な経費でございますが、まず第一の賃金基本調査経費でございます。これは前年八百五十一万二千円でございますが、三十三年度におきましては、二千三百四十五万五千円と、大幅の増加をいたしております。これは賃金につきまして、ここにございますように、職種別、職能別及び年令、学歴、経験年数別、地域別、産業別、規模別というような関係を、賃金の構造の面を詳細に調査をいたしたいというための経費でございまして、前年に比較いたしまして大幅な増額と相なっております。それから次の毎月勤労統計調査経費三千七十三万四千円でございますが、これは甲調査につきましては三十人以上の事業所の調査は例年やっております調査でございます。それから、次のページに掲げてございますが、乙調査は、三十人未満五十人以上の規模の事業所の調査でございまして、これは三十二年度から新たに始めましたものでございます。三十二年度は年度途中から始めましたので、三十三年度の経費は、一年間の経資といたしまして増額されておるわけでございます。そのほか特別調査といたしまして、このまん中のところに掲げてございますように、一人から四人までの規模の事業所の調査は年一回いたします。今までの調査は毎月でございますが、一—四人の分は年一回いたします。この分といたしまして四百四万七千円、これは特別調査でございまして、特別会計計上してございます。その他の労働統計調査経費といたしまして、一億八千五百四十八万九千円でございます。合計いたしまして、統計調査関係が二億三千九百六十七万八千円、前年に比べて約二千三百万円の増ということになっております。  第八は国際協力に必要な経費でございます。これはI・L・O関係会議費及びI・L・Oの日本国の分担金その他の事務費でございまして、合計七千五百六十七万四千円と相なっております。  その他一般行政に必要な経費三億五千六百八十七万一千円、これは説明を省略させていただきます。  第十は日本労働協会の設立に必要な経費十五億円、これも説明を省略させていただきます。  第十一は庁舎の整備に関する経費一億二千三百六十万二千円でございます。これも説明を省略させていただきます。  以上が一般会計関係の経費でございます。  特別会計につきましては、先ほど政務次官からも御説明申し上げましたように、この別刷りの資料がございますが、労災保険特別会計及び失業保険特別会計の両会計でありまして、労災におきましては、三十三年度におきまして歳入歳出とも三百十六億四千四百六十九万六千円、失業保険におきましては歳入歳出とも四百九十五億九千二百六十一万四千円ということに相なっております。なお経費の具体的内容につきましては二ページ以下にそれぞれ掲げてございますが、事務的な経費につきましては説明を省略さしていただきまして、特別会計の刷りものの六ページの保険施設費につきまして申し上げます。保険施設費は三億六千二百四万六千円でございますが、これは労働福祉事業団に対します交付金とその他の福祉施設経費とに分れております。労働福祉事業団に対します交付金は労災病院、傷疾者訓練所、看護婦養成所等の経営に要する経費でございます。これが一億七千七百二十二万八千円でございます。この交付金を交付いたします対象病院八病院、その他傷疾者訓練所、看護婦養成所でございます。そのほかの福祉施設といたしまして、ここにございますように外科後処置等診療委託費、義肢等支給費、災害防止対策費、職業病防止対策費、巡回診療費等でございます。  それから労働福祉事業団に対します出資金は十三億二千百八十三万二千円でございます。これは労災病院等施設整備拡充のための経費でございまして、建築費及び機械器具の購入費になっております。七ページにその内容が掲げてございます。整備拡充に要する経費が十一億九千四百四十六万五千円、機械器具費が一億二千七百三十六万七千円ということに相なっております。  次に失業保険特別会計につきまして、歳出の十ページをごらんを願います。ここに保険施設費が掲げてございます。これも労災保険と同様に労働福祉事業団に対します交付金とその他の福祉施設費になっております。保険施設費の三億四千九百七十万九千円の内訳は、事業団に対します交付金二億四千五百十七万七千円でございます。これは総合職業訓練所の管理費簡易総合福利施設の経営費、駐留軍労務者臨時住宅の運営費、その他の経費ということになっております。総合職業訓練所につきましては先ほど職業訓練制度のところで申し上げましたように、三十三年度において大幅の増加をいたすわけでございます。訓練人員におきましては、前年四千八百人を七千五百人に拡大いたすという予定でございます。それから簡易総合福利施設は、これは日雇い労働者のための託児所、食堂等の経営をいたす施設でございまして、百八十九万円、駐留軍離職者の臨時住宅は、特に三十三年度の駐留軍労務者の離職状況にかんがみまして、就職を容易にいたしますために、特に住宅の困難な者に対しまして、臨時にこれをここに入居せしめるというための経費二百三十万二千円でございます。  それから職業訓練施設補助費、これは十一ページにありますが、これは先ほど申し上げました一般訓練所の機械器具を整備するための補助金でございます一億円、その他の福祉施設費が四百五十三万二千円、それから労働福祉事業団に対する出資金は、これは百五億二十九万一千円と相なっておりますが、その内容総合職業訓練所建設費及び機械器具の購入費、これが八億七千百六十六万一千円でございます。  中央職業訓練所経費は先ほど申し上げました通りであります。  そのほかに失業保険福祉施設といたしまして簡易宿泊所の施設、これは三十三年度で新たに、前年度四カ所加えまして、さらに四カ所を設置する経費でございます。簡易総合福利施設は三カ所を設置する経費であります。  最後に日雇い労働者の被保険者住宅の建設費といたしまして、全国で二カ所分、七十二世帯収容の予定で、五千五百万円を計上いたしてございます。  以上、きわめて簡単でございますが、一般会計及び特別会計の三十三年度予算概要につきまして御説明を申し上げました。
  6. 小川半次

    ○小川(半)主査代理 これより質疑を行います。質疑の通告がありますから、順次これを許します。井堀繁雄君。
  7. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 予算の全体についてお尋ねをいたしたいと思いますが、いずれ労働大臣の出席を待って、この点はお尋ねすることといたしまして、保留をしておきます。  やや事務的なことから先にお尋ねをいたすのでありますが、今説明になりました労働省の予算のいずれをとりましても、きわめて時節柄重要な関係費目になると思うのであります。とりわけ今回政府がこの国会に提案をなされようとしておりまする職業別訓練制度に関する点でありますが、法案がまだ正式に提案されておりませんので、本来でありますならば、この法案の審議と並行してこの予算は論議いたしたいとわれわれは希望しておったのでありますが、残念ながら予算を先行審議することになっておりますので、私の承知している範囲内で質問をいたしてみたいと思うのであります。  職業訓練の問題は、言うまでもなく、日本経済復興の基本的な要素だと思うのであります。政府がしきりに貿易振興による国際収支の調整をはかろうという主張で一貫しておることについては、われわれも同感であります。ただそのやり方について、われわれとははなはだしく相違するものがありまするが、いずれにいたしましても、輸出貿易を振興して、国際収支の均衡をはからなければならぬことは、資本主義の経済政策を遂行する保守党といたしましても、また計画的な経済の上に立ってこれを実行しようとする革新政党の立場からいたしましても、共通する部分が非常に多いと思うのです。われわれはその立場を越えて、共通の面において論議を進めてみたいと思うのであります。  すなわち、自民党の政策の範疇内において当然なさなければならぬことで、なぜしないかという感じを持つ点を取り上げてみたいと思うのであります。今日日本の置かれておりまする客観的な諸条件を分析するまでもなく、輸出貿易を振興しようとする場合においては、私は少い資材で最も高い技術と高い品質の物の生産に集中するという以外にないと思うのであります。すなわち国際市場に公正な競争をしていいものを売ろうとすれば、私はこの道を選ぶ以外にないと思うのでありますが、この点からいたしますならば、今日許されているもので、一番効率的に効果を上げ得るものとしては、労働の生産性を取り上げる以外にないと思うのであります。それが労働の収奪になったり、あるいは労働強化になる危険のあることは、資本主義の弱点でありますが、その点はきびしく警戒し、対策を並行して持たなければならぬのでありますけれども、それはいずれにしましても、今日日本の雇用の実態を見て参りますとわかるのでありますが、この点については、私は労働大臣にあとでお尋ねをいたしてから入れば、答弁もしやすいと思うのでありますが、一番われわれの目の前にぶら下っておりますものは、日本の雇用の実態が非常に他の国々に比較して低劣である。一般的には中小企業、零細企業の労働問題として取り上げておるようでありますが、本質的に見ますと、日本の雇用の実態というものは、ごく限られた大企業あるいは基幹産業のごく一部に近代的な雇用関係、労使関係、あるいは生産構造というものの中に労働の実態が見られるだけであって、輸出の一番重要な部分を占めておりまするものは、その輸出の——一々ここに資料もありますが、列挙するまでもありません。中小企業、零細企業といわれておる分野において生産されておりますものが輸出の第一線に働いて、国際収支の赤字を消しておるのであります。この状態を解決するということが一番重要であると思うのでありまするが、その点から参りましても、一つには日本のこの低い労働条件を改善するという対策が、徹底的にかつ迅速に取り上げられなければならぬと思うのであります。他の一つは、ここに政府が提案されんとしておるところの労働者の技術的な水準を引き上げようとする、この行き方であると思うのであります。しかしこれは私は不可分の関係にあると思う。いかに、高い技術だけをたたき込もうという考え方でいろいろな制度や手段を講じてみても、労働者の自発的な創意、工夫の形において、それにマッチする形が出てこなければ、強制するか、しからざればから回りをするかになるのであります。その点ではこの法案はねらいはいいのでありますけれども、これは当然並行して取り上げられなければならない労働条件の維持改善の具体策というものがついて出なければ、結果においては私は職業訓練を強制していく。その強制の仕方はもちろん産業報国会のように、あるいは戦時中の労働動員のように権力で職場に引きつける、あるいは国の意欲で労働者職業訓練するというようなことには、もちろんならぬと思うのであります。しかし形は変りましても、労働者の自発的意思の伴わない職業訓練をもしやるとするならば、民主主義の冒涜です。でありますから、この法案を考えるときに、やはりこれと並行した対策というものが同時に出てこなければならない。ところが予算のどこにも出ていない。一方的に先走って出てきてる。この点はまず指摘しておかなければいけないと思うのであります。政策の面については大臣にお尋ねするといたしまして、この点この予算の中で事務当局もいろいろ立案その他に関係があったと思うのでありますが、本来でありますならば、この法案を同時審議するか、あるいは先行して審議して、その結果予算が出てくるというなら論議しても価値があるのであります。予算を通してしまってから、この法案がつぶれれば、この予算は削られるだけであります。非常にこの点は私はそういう意味で不都合を感じますので、じれったさを感じながらお尋ねしていくわけでありますから、御答弁もそのおつもりで、一つわかりよくお答え願いたいと思う。そこで今までの技能養成にいたしましても、職業補導の形にいたしましても、長い歴史と経験があるのでありますから、私は長所短所についていろいろ申し上げたいこともありますし、お尋ねしたいこともありますが、時間の都合上多く述べられませんから、具体的に一、二お尋ねをして判断の資料にいたしたいと思います。  それはこの法案なり予算なりを提出するということは、一つの前進でありますけれども、これからすぐ求められる結果についてあらかじめ国民は知りたいと思っている。特に今のところは先ほども言ったように、権力で直接的な強制はしないけれども、消極的ではあるが、労働者にとっては、私はたえがたい圧力になって加わってくるものがあると思う。それは今日のように労働市場が不安定で、労働者にとっては非常に不利益な状態に置かれておりますから、平べったく言いますならば、今の新制中学、新制高校を出ましても、就職については親の頭は一ぱいである。当人にとってはなおさらだ。大学を出ましても、専門学校を出ましても、就職の機会がなかなか困難でありますから、職業補導については非常な魅力を感じて、ここには殺到して希望者が窓口を争っておりますけれども、その収容は現在ですらなかなか行われておらない。だから、ここをねらってこの制度が行きますから、私は非常な勢いで発展し、部分的には歓迎されると思う。しかし全体的な労働政策の上から言いますと、この弱いところをとらえてここに引きずっていくのであります。しかしそこを出たら必ず就職が保証されるという——今の予算の関係でいいますと、この予算職業安定所の予算というものがつながっていなければならない。そういう弱点を利用してここへ集めて訓練をして送り出しますと、今の場合は需要供給の関係で、そうして技術の高い者の方が同じ条件なら採用される率が高いことは統計の上にも示されております。将来の見通しもかたくないのでありますけれども、そういう関係というものが、ここを出たらすぐそれがそのまま職業安定所を通じて就職させていっているというところに、この強みも一つあったのであります。こういう関係がありますからここで聞くのでありますが、一体この法案とこの予算が通ると、熟練労働の第一段階を踏むわけでありますが、熟練労働になってすぐ効果的に現われてくるものと、相当の年月を経て、たとえば新制中学、新制高校を出て、一定の期間訓練を受けて、そうして見習いとしても、学校を出ていきなり見習いに入るよりはこの訓練を受けて入った者の方が賃金やその他の条件がいい。もちろん就職競争においては有利につくということが言えるわけであります。でありますから、ずっと長い期間を見ていかなければならぬと思うのでありますから、これを出ればどれだけの人間がどれだけの就職ができるということを資料として私はつけて出すべきだと思う。われわれが論議するにはそういうものがなければ、今の日本の国の予算の中でどれだけよけい増すかどうかということの判断の対象が明確じゃありませんので、こういう点で計画が大体あろうと思いますから、ごく荒筋でけっこうでありますが、今あります中で、中央訓練所と地方の総合職業訓練所の二つに分れておるようでありますが、この制度が施行されてからどれだけの人を収容し、どれだけの人を市場に送り出し、その期間はどれくらいに大体どういうカーブで出ていくかという大もとの数字を聞きたいのであります。地方の総合訓練所では前年度四千八百三十五名を七千五百七十五名にというだけなんです。これは悪くしますと、希望者は非常に多いのでありますから、これができるとすぐ大勢の人がここに入って、すぐ就職できるといったような、そういう希望だけを与えてしまって、行ってみたところが、去年と一年間を通じてわずか四千人か五千人しか収容できないということになって、期待だけ与えて期待倒れさせる。この反動もまた大きいと思う。そのことは先ほど言ったように、労働行政にとって一番大事なところに位すると思いますから、そういう資料をつけてわれわれに審議さすべきだと思うのであります。こういう用意があるかどうか、事務当局にお聞きしたいと思います。
  8. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 政策の問題につきましては、後ほど大臣が出席されて答弁をすることになると思いますが、事務的な面につきましてお答え申し上げます。  確かに御指摘がございましたように、この職業訓練関係の予算の御審議を願う上におきまして、法案の提出がおくれておるという点につきましては、まことに申しわけなく存じております。来週の火曜日閣議決定をいたしまして、すぐ来週早々の国会に提出する予定で現在手続を進めておりますので、その点は一つ御了承願いたいと思います。  なお、その際にただいまいろいろと御指摘のございました国内の雇用情勢なり、あるいは安定所の窓口から見ました技能労働者に対する求人の状況などにつきましても、できるだけ詳細な資料を添えまして、御審議の便宜に供したいと考えております。  なお、もう一点御質問がございました職業訓練法案労働者に対して強制的な考え方を持ってはならないという御指摘があったのでございますが、その点は私どもも全く同様に考えておるのでございまして、職業訓練につきましては、あくまでも労働者がこれを習得したいという自発的な意思を基調といたしまして、それを積極的に助長していくという基本的な考え方に立ちまして訓練法案の立案に当ったのでございます。従いまして、企業外職業訓練につきましても、企業内の職業訓練につきましても、いやしくも国が権力をもって強制するというような条項は一切ない、そういう考え方で立案をいたしておるのでございます。  それからこの訓練所についての具体的な訓練人員の問題でございますが、井堀先生御承知のように、総合職業訓練所につきましては、昨年労働福祉事業団が発足いたしました早々でございまして、現在三十三カ所を全国に設置いたしておりますが、そのうち設置を完了して現実に動いておるのが二十三カ所でございます。それで本年度におきましてさらに十カ所を追加して現在鋭意その整備をいたしておる段階でございます。この三十三カ所が全部フルに動いておるという状況には至っていないのでございます。従いまして、これで訓練いたします人員につきましても、この八ページの資料に書いてございますように、三十二年度におきましては訓練対象人員が四千八百三十五人、それが三十三年度におきまして七千五百七十五人に拡大される、こういう見通しでございます。それから一般職業訓練所、現在職業安定法に基いて実施いたしております補導所の系統でございますが、これにつきましては数をふやすということももとより必要であるのでございますが、現在の一般の補導所の中身を見ますと、機械設備その他が非常に老朽化しまして、十分な訓練を行うにはきわめて不満足な点が多いのでございます。それで来年度におきましては、この中身の機械設備を一つ改善したい、こういう考え方に立ちまして、一億の補助金計上いたしておるのでございます。  なお駐留軍につきましては、先ほど会計課長から御説明申し上げましたように、最近の駐留軍の撤退に伴う離職者の状況に対処いたしますために二千九百三十一万三千円を新規に計上いたしまして、臨時施設十カ所、併設七カ所を経営いたしまして、これにより年間四千三百八十名の訓練を実施いたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  9. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 一応わかりやすく国民にかわってお尋ねするのです。私はのみ込んでおるつもりでありますが、国民がいろいろ期待をかけておりますので、しろうと気味な質問をすることになりますが、一体この訓練所ができますと、中央と地方で、一年を通してどのくらいの収容能力があって、それから現在こういうものに対して希望を寄せております予定推測人員というものをどういうふうに労働省はお考えになっておるか、この点を端的にお答え願いたい。
  10. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 一般職業訓練所におきましては、資料の六ページに書いてございますが、これは先ほど御説明申し上げましたように、施設の個所数は増加しておりませんので、三十二年度と同様の、年間を通じまして三万六百九十五人、それに夜間職業訓練所におきまして五千百七十五人、合計いたしまして約三万五千人の労働者に対して技能訓練を行う、こういう計画になっております。
  11. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 希望はどのくらいあると労働省の方は押えておいでになるのか。なおもっとわかりやすく言いますと、現在こういう窓口にかなり殺到しておる。私二、三直接当ったのでありますが、窓口で必ずしも事務的に整理されていないようでありますが、大まかなものはつかんでおいでになるのか、かなり希望者が殺到しております。あるところでは富くじでも引かすつもりで選択をやっておりますが、哀れな姿がここにも出てきておるわけであります。これは精神的には非常に圧力になっております。こういうものを出しますと、選挙前でもありますし、あなた方はそんなことはないと思いますが、選挙を争う政党といたしましては、これができたらすぐにでも大ぜいの人に就職のよい機会を与えてやるようなことを宣伝しかねまいと思います。そういうことを戒める意味で、現実は非常に冷やかなものであることをはっきりしておきたい。このあげられた数字は一年間でわずかです。従って今の国の要請しておる客観的な諸条件から言えば、労働者の希望から言いますと、非常に大きなものがある。この際その数字を明らかにしておく必要があると思う。数字の大まかなものでもお答え願いたい。
  12. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 一般職業訓練所におきましては、毎年四月に募集選考をいたしておるわけでございますが、全国平均で申し上げますと、大体定員に対して二・五倍の希望者があるわけでございます。
  13. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 そういう数字じゃなくて、もっと……。今のこれは雇用関係全体に出てくると思いますから、統計に基いて議論することになると思いますが、統計資料が非常に不安定でありますので、統計部長がきておりますから、この質問を進める前提にして伺っておきたいと思います。これは予算委員会でも、雇用の問題については政府はだぼらばかり吹いておる。言いたいことを言っておるのであります。労働省と企画庁との間で、まるっ切りでたらめな数字を出して一向恥じようとしていない。こういう統計を持っていては笑われてしまう。そこで雇用の関係の実態を簡単にお答えをいただきたい。これは総括質問の中でわが党の多賀谷君が言及したのでありますが、うそっぱちの答弁をしている。あんなことを恥しくなくよう言えると思う。労働大臣が来ればこの点をはっきりしたいと思いますが、これは結局重要な基礎的なものであります。こういうところからも日本の経済を誤まり、予算がでたらめだということになるのでありますが、これは昭和三十三年の経済計画の大綱をきめる基本的なものです。これがでたらめなんです。労働人口全体については正確な統計が出ておるわけであります。その中から就業総数を出して、さらに雇用者の総数というものを出してきておる。この雇用者の総数が問題なんです。これがくせ者であります。それから完全失業者が出てくるわけです。完全失業と就業者の数と雇用者の数だけをこの統計から並べていきますと、日本の失業の状態というものは、雇用労働者、就業者、労働人口全体のバランスからいきますと、非常に低い率の失業ということになる。それを世界の失業統計の中に持ってきて使っている。するとアメリカの三%に対して日本は二%弱になっている。この点では非常に失業というものが少くて、完全雇用の状態にある程度近づきつつあるという数字になってしまう。日本の失業統計の誤まりはそこにあるわけです。何ぼやかましく言いましても今まで統計を作らなかった。ところが昨年ようやく総理府の統計局で作った。これは労働省でやっていただくべきものだと思いますが、この予算ではやれそうもありません、注文する方が無理だと思う。この中で不完全就業という統計上の言葉を使っておりますが、一般にいわれている潜在失業というものがどれだけあるか、日本の雇用の実態はどういう状態にあるかということを見なければいかぬのです。少くとも今日常識として、雇用されている労働者ということになれば、その雇用された条件は労働を再生産するという、すなわち最低の生活を営むに足る収入が保障されなければ、そんなものは雇用じゃないのです。こういう者がどれだけおるかということが問題なのですが、この問題をほっかぶりしている。この点について、きょうはいい機会ですから、労働統計の資料の中から明らかにできるものはしてもらおうと思う。最低の生活の水準を幾らにするか、いろいろ議論があると思いますけれども、今の法律でいうならば、厚生省が生活保護法施行のための基準を求めている、その生活費を一応の基準にして考えまして、ここに三十一年の雇用労働者の実績が出ておりますから、この実績でいきましょう。三十一年の実績は千七百八十六万の雇用労働者とここに報告されている、この中で一体最低生活以下の者が何人おるか、それ以上の者がどれくらいあるかということを労働省はどうつかんでいるか。ラフな資料しかないと思いますが、答えていただきたい。
  14. 大島靖

    ○大島説明員 ただいま井堀先生お尋ねの完全失業者の数、ないしは不完全就業者の数、あるいは低所得階層の数、この点の数字につきまして概略申し上げたいと思います。完全失業者の数につきましては、労働力調査によりまして、労働力人口、非労働力人口とあって、労働力人口の中で就業者の数と不完全就業者の数に分けて毎月発表いたしておるのでありますが、大体完全失業者の数は昨年の夏あたりから逐次ふえて参りまして四十六万、四十八万、四十九万、十月には五十万という数字になっております。十一月になりまして四十三万と落ちて参りまして、十二月はごく最近発表になったのでありますが、これまた四十三万と少くなっている。この点はどういうふうに判断いたしますか、なかなかむずかしいところでありますが、ちょうど年末になりまして十一月の末、十二月一ぱい、この辺は年末繁忙期に当っておりますので、この辺の関係で就業いたします者がかなりふえて参った、そういうふうな関係が現われておるのであろうと思います。大体四十数万から五十万、この辺の数字で昨年は推移して参ったのであります。これが国際的に見まして失業率その他の関係とどうなるか。この辺につきましては、失業の定義あるいは完全失業の定義が非常にむずかしいのでありますが、大体国際的に統計的に申しますと、こういうふうな取り方が一番正確に出る、一応こういうふうな定説になっておりまして、労働力調査におきましてはこういう方法をとって参っておるのであります。ただし井堀先生御指摘のように、ことに日本におきましては潜在失業と申しますか、あるいは不完全雇用、不完全就業者と申しますか、この辺がかなり多量におる。この辺が非常に経済上、雇用上の大きな問題でございます。ただ潜在失業ないし不完全就業者、この辺の定義をどうするか、これは理論的にも実際的にも非常に困難でありますが、先般実施いたしました就業構造基本調査あたりで、現在就業しております者の中から、現在の職業の収入が不十分であるとかその他の理由から転職いたしたい、こういうふうに考えております者、それから現在就業はしておるのだが、就業時間数が非常に少い、従って所得も少い、従ってもっと働きたいという追加就業希望者、それから現在全然就業していない者で、新しく職を得たいと希望いたしております就業希望者、この数をとりまして、しかもそれは副業としてやるのではなしに、本業としてそういう追加就業、転職ないしは就職の希望をいたしておる、こういう数字をとりまして、その中で思っておるだけではなしに、現実に求職活動——安定所に参りますとかあるいは新聞広告をいたしますとか、そういう求職活動をいたしております者の数を調べたことがございますが、これによりますと、大体二百数十万という数字が出ております。いわゆる不完全就業者ということに該当いたしますかどうか、ただ現在就業いたしておる者の中、あるいは就業してない者の中でも、特に就業をせしめていくことが緊急度の高い者、こういう意味におきまして、この二百数十万の数字は私どもとして留意すべきものと考えておるわけであります。  なお低所得層と申しますか、低消費水準層と申しますか、この辺の調査につきましては、先般厚生省から厚生白書が出まして、その中にも若干触れておるのでありますが、私どもの立場といたしまして、雇用者の中での賃金所得の階層別の労働者の分布状況についての統計が出ておるのであります。一体どの辺の賃金所得以下が低所得であるか、この辺はどう区切るか非常にむずかしいところでありますが、たとえばかりに六千円未満の賃金所得の雇用労働者数をとってみますと、約三百数十万でありまして、雇用総数千七百万、これは仕事を主としておる者でありますが、その総数の約二〇%程度、こういうふうな賃金所得階層別の労働者の分布状況、この辺の数字が就業構造基本調査によって出ておる数字でございます。以上であります。
  15. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 今のは大臣に聞いていただきたかったのですが、今見えたようであります。もっと統計の問題をお尋ねいたしたいと思いますが、時間もございませんので先を急ぎまして、要領だけお尋ねしたいと思います。  今雇用の実態について統計上のことをお尋ねしておったわけであります。この問題を明確にしませんと、せっかく労働省がここに計画されておりまする最低賃金法にいたしましても、あるいは職業訓練法にいたしましても、その審議を進める上にまるで架空の議論をすることになったり、また国民も何をやっておるかわからぬので、そういう点の基礎だけをはっきりしておきたい。それは日本の雇用の実態というものを明確にして、その上で論議をしていかなければならぬ。一番大事な問題は、わかりやすいスローガンを掲げて私はけっこうだと思います。三悪追放の問題で貧乏という問題が非常にセンセーショナルな問題になってきています。一体貧乏の線はどこに引くか、これはいろいろあると思いますが、わかりやすいのは所得でいくのが一番いいということになると、さっきもちょっとお尋ねして、また尋ねかけたところでありますが、一応今法律の上でそういうものを判断するものとしては、厚生省の所管になっております生活保護法の中で大都市、地方都市あるいは農村というものを区分けをして、法律でいろいろけじめをつけてきておるわけであります。それも実に幅のあるものできちっと出しにくいものでありますが、それを総合的に見ていきますと、大都市、中都市、農村をひっくるめて平均の線ということになると、標準家族を持ってきますと七千円は下らぬことになる。そうしますと、一人の収入ではいけません。日本の場合は他の国と異なった一つの家族制度の中でコントロールされておりますから、この点は私ども見ていかなければならぬ。そういう点で私の方から議論を進める上で私の調査が間違っておれば訂正を願いたい。総理府の統計と労働省の統計を大体私はこういう関係資料だけは集まるだけ集めておるつもりでおります。その中で総理府の統計資料を集約したものでありますが、昨年から所得階層別に、あるいは雇用者数別のものがだんだん詳しく出てくるようになりましたが、特に三十一年の三月と十月に労働力調査臨時調査報告というもので出されたものが割合にこういうものを物語るにいいので、この資料でお尋ねをいたします。それによりますと、雇用労働者のうち一体最低の生活を維持していくという七千円の線、すなわち八千円以下の者が世帯数でどれだけおるかということを統計はこう説明しております。八千円未満の者が世帯数で百五万一千何がしを出しております。これは平均世帯の場合でありますけれども、この数を一応足がかりにしていきますと、百五万人の人というものは、俗にボーダー・ライン、とにかく働いた報酬では食っていけないという人、こういう者を完全雇用という言葉を使う場合に雇用労働者の中に入れて一体政治をやっていいかどうかということにつきましては、統計上の議論はともかくとして、政治としては大づかみにつかんで——働いて食えるだけの収入がない、家族を養っていけないような状態では長続きできませんよ。またそういうところから生産されてくるものは、正常なものが生れてくるというようなことは、奇跡的なことをねらう以外にない。ことに労働行政を行う者としては、この線をはずしてはいかぬと思う。それでこそ最低賃金の問題が急がれてくると思う。最低賃金法というものが出てくるということは、そのこと自体よりも、第一統計を急がなければなりません。そういうような関係で、少くとも百五万人おる。それからさっき統計部長から報告を受けておりましたが、臨時調査の報告によりますと、なかなかつかみにくい数字の扱い方でありますけれども、常識的には判断の資料には十分なる。これによりますと、農林と非農林に分けて、非農林がここでは問題になるのですが、その中で雇用関係のあるものとしからざるものとの分け方に区別が明確でありません。そこで、議論がここで分れるわけでありますが、しかし一応仕事をしていないものとして、あるいは仕事をしておるけれども、その収入がさっき言ったような状態で、転職を希望するという、いろいろなこまかい条件をあげて調べてきておりますが、それによりますと、先ほど統計部長もほぼそれに近い数字の御答弁がございましたが、約二百万、これでいきますと十一月—三月で三百三万人、こういう結論を統計の中から出してきておりますから、これはどっちからいっても大体二百万というところは動かない。この二百万の人たちが、政府が今度職業訓練法制度をやりますと、そこへどっと押しかけてきます。そこをくぐると、今よりか上の給料になれるということだけで一応これをねらうと思う。そこで二通りの競争がある。一つは新しく学校を卒業した、すなわち新鮮な労働者、それから労働能力の再訓練を受けて雇用される者たちが非常な数に上ると思う。こういう状態の中で、政府のとるべき政策としては——私は職業訓練法のねらいはいいと思うが、そういう点をどのように配慮されてこういう法律、また予算をお組みになったかということが私の論議の中心にならなければならぬと思いますので、まず土俵を明らかにする意味で、せんだっての多賀谷君とあなたの議論を聞いていて、失礼な言い方だけれども、噴飯ものだと思う。雇用の実態というものはこういうところを見ていかなければならない、労働するということは、何も趣味にやるものではありません。生活のためにやっているのですから、生活ができなければ、そんなものは雇用じゃないのです。それをもしそういうものを土台にして予算を組んだり政治を行なったら、労働意欲は起らぬと思う。こういう意味で、あなたの答弁は非常に重大だと思って期待しておりましたが、ああいうことになってしまった。それでここでおさらいをするわけでありますが、この点に対して、あなたの基本的な考え方、それに対する対策としての方向だけ明確に一つ……。
  16. 石田博英

    ○石田国務大臣 この間の予算委員会における多賀谷君との問答は、今のあなたの御質問とはちょっと趣旨が違うように私は理解したのです。それは、多賀谷君の議論の要点は、経済成長率と、それから雇用の伸びとのバランスについての議論でございまして、それについて私は、経済成長率より雇用の伸びの方が上回るということは、必ずしも不合理でないということを申し上げたのであります。ただ、今の問題でございますが、わが国の雇用及び失業の関係を西欧諸国の場合と考えてみますときに、雇用されているというだけ——ただいま井堀さんのお話しのように、雇用されているということだけでは不十分で、もちろん食うに足りるものでなければなりませんが、一応雇用されている人数に占める完全失業者の割合は、いわゆる完全雇用だといわれております西欧諸国に比べて、そう驚くべき数字ではなく、むしろ低い。ところが、それにもかかわらず、わが国の雇用問題が重要なところはどこかというと、御指摘の通り、その中に非常に多くの低所得者を含んでいるというところに問題の重点がある。いわゆる潜在失業者といいますか不完全就業者といいますか、そういう人たちの取扱いをどうするかということが、雇用及び失業の問題を解決する重点であるということは全く同感でございます。そこでそれを解決する一つの方法として最低賃金法案を提出いたしたつもりでございます。  それからもう一つ職業訓練法を提出いたしましたのは、やはり二つの対象を考えております。一つは新規労働力に技術を付与するという問題、いま一つはこの不完全就業者の中で新しい仕事を求めている人たちに対して技術を付与する機会を与えるという問題、この両方を含んでおります。事実現在職業安定所の窓口に出ておりますことだけ取り上げましても、技術職求人の数が十数万を越えているのでありますから、やはり技術を付与するということはその面からも必要である。もう一つは産業技術の進歩に伴いまして、特に技術を持った人を要求する。それから第三点は、特に中小企業と大企業との間に技術差が非常に激しい、それを調整する。こういう三つの目的を持って職業訓練法を提出いたして所要の予算をとったのでございますが、そういう膨大な層、すなわちただいま御指摘の通り世帯数にして八千円以下の賃金の者が百万、もしこれを雇用されておる人数だけについて見ますと、もっと大きな数になるだろうと思います。そういうものを相手にし、それからふえつつある新規労働力を相手にするのに、それでは非常に不十分な点が多いのであります。ただ現在職業訓練を実施いたして参りますに当りまして、予算の面と同様、あるいはそれ以上に大きな制約をなしておりますのは指導員の不足でございます。設備ももちろんでありますが、設備は金で何とかなるけれども、指導員の問題は金では何とかならない問題でありまして、その指導員の養成ということが非常に重要でございます。だからその指導員の数と見合ってこれは漸進的に進んでいく必要がありますので、今次予算は前年度に比べまして職業訓練費は三割程度の増になっておりますけれども、その背景をなす対象に比べるとこれはまだ非常に不十分であることは認めます。しかしその指導員その他の制約されております諸条件を勘案いたしまして、まず本年度はこの程度のものから始め、中央職業訓練所を設けまして指導員の養成に当って、逐次その範囲を広げて参りたい、こう考えておるのでございます。
  17. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 そこで土俵がきまったようであります。一応完全失業者を対象ではなしに、まあ潜在失業という言葉は統計の上に明確に出てきておりませんから、不完全就業とかあるいは最低生活以下の悪い労職条件で雇用されている者というふうに解釈すべきだと思うのであります。そこでその数が非常に大きいということもやはり統計の上で明らかにされ、統計部長の方からも、総理府の調査した臨時統計の結果からも、大体二百万という数字が出てきておりますが、そういたしますと、その上に立って行われるところの最低賃金法にいたしましても、職業訓練法にいたしましても、法案として出されてきてからそこで十分討議すればいいと思いますけれども、本来ならば、先ほども申し上げたように、予算の伴う法律については、こういう法案と予算というものを同時審議ができれば一番いいし、できるならば先に法案を通して、それからそれに見合うような予算をつけていくというのが常識的にはよろしかろうと思います。まあ技術的に困難があるようでありますが、そういう意味でここに出された予算については、われわれは審議するに当りましてもいろいろな問題を解決していかなければ質問すらも進められぬという感じが非常にいたすのであります。しかしそれはそれといたしまして、一応現状の中において職業訓練制度がどういう法案になって出てくるかという構想は、新聞でも明らかになっておるし、今も官房長から御説明がありまして大体のところはつかんでおりますが、そこでそれだけの知識の中でお尋ねをし、ぜひここで明確にしておきたいと思いますのは、この制度に対しては非常に期待が大きいと思う。新制中学から新制高校、さらに専門学校、大学、いずれの学校を出ましても就職の機会をどうしてつかむかということは、御当人はもちろんのこと、親や親類縁者の頭痛の種なんです。そこへこの法案がぽっと出ますと、どうしてもすぐ飛びつきたくなるのです。今のあなたの御説明でもある程度明らかになりましたが、その準備行為なんです。そのことだけを私どもは明らかにしておきたい。よいものですから育てたいという考えでありますが、それを大げさに宣伝して、さなきだに労働者を迷わせる。でありますから、そういうことのないようにするために質問で明らかにしておきますが、一体これでどれだけの人々を収容できるか。それから雇用の希望者の大まかなことはきまりましたが、そういう者がどういう格好で殺到してくるか。またそれをどういうように誘導してこれを適材にしてやっていくかということは、法案なり予算構想としてはっきりしておく必要があると私は思います。この点に対する大臣のお考えを承わりたい。
  18. 石田博英

    ○石田国務大臣 法案と予算との関係は、確かに手続及びセオリーとしては井堀さんのおっしゃる通りでございますが、これも長年現実的に困難な問題で、私だけのせいではございませんのでごかんべんを願いたいと思います。  それからもう一つは、私はできるだけそういう建前で進みたいと思いまして、本日、最低賃金法案については閣議の決定を見て提出いたしました。職業訓練法につきましては、次回の閣議で決定を見ますから、十八日に国会に提出する予定でありますから、最大限急いだつもりでございますので御了承願います。  それから、今回出しました職業訓練法は、一つにはもちろん準備行為であります。つまり指導員の養成ということを伴わなければなりませんから、一つには準備行為の面もございます。しかし本年度におきましても相当数の就業者の増加を見込んでおります。具体的な数字につきましては事務当局から説明をいたさせます。
  19. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 この点につきましては、先ほども御説明申し上げたのでございますが、一般職業訓練所におきましては施設の増を見込んでおりませんので、訓練対象人員は前年通り三万六百九十五名、夜間職業訓練所におきましても同様でございまして、五千百七十五名、ただこれは先ほどの繰り返しになりますが、一般職業訓練所におきましては、中身の機械設備等が非常に老朽化してきわめて不十分な状態でございますので、その中身を充実させることに重点を置いて、これは新たに一億円の国庫補助を出すことにいたしておる次第でございます。それから駐留軍につきましては、これは新規で年間四千三百八十名の訓練をいたす予定になっております。身体障害者職業訓練につきましては前年度と同様でございまして、年間千百五十名、それから今度の法案の大きな柱でございます企業職業訓練費におきましては、前年度は九百万円、訓練人員五千人であったのでございますが、これは予算上は三千万、しかも都道府県を通じての間接補助になりますので、総事業費におきまして一億二千万円、これは九百万円に比べますると非常な増加になっているわけでございまして、対象人員も従いまして三十三年度は一万五千人に伸びる、こういう計画になっておるのでございます。総合職業訓練所におきましては、三十二年度四千八百三十五名に対しまして、七千五百七十五名、これも相当の伸びを見込んでおる次第でございます。
  20. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 一般にもっとわかりやすくしてもらうためにお尋ねしておきたいと思いますが、学卒を四つに分けて、中卒、高卒、専門学校、大学、こういう関係の人で本年度においてどのくらいの収容能力があるか、またそれがどれだけ入ってくるという見込みを立てておるか、それからそれが年々どういうカーブを切っていくかという大よその傾向、それから一般の関係がどのくらいでその再訓練がどういうふうになるか、それから身体障害者駐留軍関係のことにつきましては、特殊のケースでありますし、駐留軍関係について前回お尋ねしておいたことにきょうは労働大臣からお答えをいただかなければならぬこともありますから、これはあとにして、さっきの学卒と一般の関係でこの際どのくらいの数を見込んでおるか別々に一つわかっておるだけお伺いしたい。
  21. 石田博英

    ○石田国務大臣 訓練所におきましては、専門学校、大学卒業者は対象といたしません。それから中学校及び高等学校でありますが、この訓練所の対象者は新規の学校卒業者であるか、あるいはそうでなく、つまりよそから転業して新たに技術を受けようとされる者であるか、そういう区別をいたして募集はいたさないのであります。なお詳細は政府委員の方から申し上げます。
  22. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、新規学卒とか、あるいは失業者であるとかいう区別はいたしておりませんが、本年度の実績を申し上げますと、新規学卒が約六割強でありまして、その他が失業者という状況になっております。
  23. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 数字の問題は用意がないようでありますが、こういう大事な問題はやはりあらかじめそういう計画を立ててわれわれに審議の便宜をはかっていただきたいと思います。これはあとで資料として要求して、残念ですが、この問題は一応この程度にしておきます。  次に、大臣にこの際答弁していただきたいと思いますが、臨時国会のときに、特需関係の労働者駐留軍関係の離職の問題は、いろいろの意味において一般の失業者とは別に配慮すべきであるということで意見が一致したと思います。ただ、その具体的の対策についてはこの予算の中にわれわれは期待したわけです。やはりこういう措置については、今の制度からすれば立法措置を講じて行うことが一番実現に近づく道ではないか。あなたは行政措置でやれる——やれなくなれば立法措置もするとは言っておりましたが、行政措置でやれるというようなお考えで御答弁があったわけであります。この予算を見てみますと、労働省の予算とそれから他に二、三あるようでありますが、これに対してどういう工合にしたかということを一つこの機会に御答弁いただきたい。
  24. 石田博英

    ○石田国務大臣 駐留軍及び特需関係の労働者がやはり国家の政策によって職を失うという点において特殊の取扱いを考えろという御議論でありまして、そういう方向について、その特殊という意味は別といたしまして、特別な考え方を持って扱わなければならないということは同感である旨をお答えしておいたわけであります。従って調達庁予算におきましてもそういう種類の取扱いはしておるはずでありまして、たとえば職業訓練法におきましても諸般の具体的措置をとっております。その具体的措置の内容につきましては職業安定局長から説明いたさせます。
  25. 百田正弘

    ○百田政府委員 予算措置の概要について申し上げますと、労働省関係といたしましては、関係府県における離職者対策本部の設置費を、さらに安定所におきます離職者の就職あっせんに要する雇用促進費を計上いたしております。さらに職業補導がきわめて有効な措置であるということにかんがみまして、先ほども官房長から御説明申し上げましたように、この関係におきまして二千九百万円の計上をいたしております。同時にまた先ほども御説明のありました一般の補導所ないしは夜間の補導所というようなものにも計画的に技能者を多数入れて参りたいと考えております。そのほかに臨時居住施設、いわゆる広域職業紹介の施設といたしまして東京、大阪の二カ所に臨時居住施設を計画いたしております。以上のほか調達庁関係におきまして基地内の職業補導等予算計上してあります。
  26. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 この問題はもっと詳しくお尋ねしたいと思いますが、時間がなくなってきましたから、いずれ他の予算との関係があるようですから、もう一回よい機会を見てお尋ねをいたしたいと思います。  もう一つこの機会に……。この問題についてはできるならば役所が直接職業の再訓練をやりますとか、あるいは離職者対策にはいろいろなものがあると思いますが、そういうことはやってもらわなければならぬ。もう一つ、離職者当事者がそれぞれ自分でやりたいという考え方の向きがたくさんあると思うのです。たとえば企業組合を組織して、その組織の力で新しい職業を見出そう、あるいは簡単な事例ですが、私のところにも陳情書がきておりますが、自動車の運転技術を修得することが就職の機会が容易になるというので、そのためには今の自動車学校に入るには費用がかかる、ところがボロ自動車二台か三台都合してくれば、仲間の技術者が訓練してくれると短期に免許が取れるといったような、そういう方法があるんだが、そういうものを地方の府県であっせんしてくれぬかということで、直接私府県知事とも話をしてみたのでありますが、府県庁だけでは不十分な点があるようであります。こういったような自主的な努力によってそういう道を開拓しようという者に対しては、やはり私は一応労働省がお世話をするような立場をとるべきではないかと思うのですが、この点について何か適切な窓口なりを設ける考えはありませんか。
  27. 石田博英

    ○石田国務大臣 離職者が自発的に更生の道を考える場合に、一つは企業組合等を作って新しい仕事をやろうとする、それに対しての金融等の便宜を特別にやるという措置はまだ考えておりませんけれども、積極的な便宜をはからいたいと思っております。ただその場合に言えることは、やはりその周囲の経済条件その他等勘案した現実性のある考えは持ってもらうようにいたさなければならない、こう思うわけであります。  それから一番普遍的なのは、自動車タクシー業、あるいは貨物自動車業をやりたいということでございますが、これはその土地、土地の条件によって非常にむずかしいところと比較的できやすいところとがございます。一般に駐留軍労働者の諸君で、離職した人の中で非常に大きいパーセントを占めておるのは、自動車の運転技術をすでに身につけた人で、大体二万人をこえるのじゃないかと思います。これに対しましてば、一面において企業組合の認可を促進いたしまするとともに、他面におきましては、すでに、既存の業者に対して雇用の促進を呼びかけておりまして、これはかなり具体的に進んでおります。企業組合その他に対して駐留軍労務者について特に認可をいたしました件数を申し上げてみますると、一般の乗用旅客自動車の運送事業の免許申請は三十八件ありまして、そのうちで四件免許いたしました。これは運輸省の所管でございますが、なっております。それから貨物自動車の運送業は六件のうち一件免許をいたしまして、二件却下し、三件審議継続中でございます。それから自動車整備事業の認証は、申請件数が十件ありまして、認証件数が八件、継続中の件数が二件でございます。それからこういうふうに二万人以上も自動車関係者が離職しておるのに、今度は逆に地域によっては自動車関係者が非常に少いところがございます。特に一番顕著なのは福岡県なんかそういう例でございまして、その福岡県におきましては、特にこの自動車の運転技術を付与することを職業補導所でやっております。他の地方につきましても、その土地の技術の需要状況というものとにらみ合せまして、今度は訓練種目を非常に増加をいたしておりますが、にらみ合せて善処をいたさせておるわけでございます。
  28. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 一つ駐留軍あるいは特需関係の労働者については格段の御努力を希望いたしておきます。私どもも労働省を窓口として具体的な一般の要請や陳情などをお取り次ぎをいたしますから、誠意をもって処理されるようにお願いしておきます。  次に労働大臣にぜひお考えいただきたいことが一つございましてお尋ねをするのでありますが、それは労働者福祉事業のうち、労働者の自主的なしかも組織的な仕事としてやや成功の域に達しておるものの中に、労働金庫があります。労働金庫の三十二年十二月一日現在を見ますると、全国いずれの府県にも労働金庫のない府県はなくなるほどその設立が普遍的なものになって、その出資の金額にいたしましても実に莫大な数字になっておる。特に預金の吸収に至りましては、二百十八億、約二百二十億という預金を集めておる。もちろん市中銀行や信用金庫等に比較いたしますれば、額においては格別なものとは言えませんけれども、しかしその預金の性質からいきますと、私は国策遂行の上に重大な役割を果しておると思うのであります。こういう労働者の生計費の中で、剰余金の預金といったようなものではなしに、いわば給料をもらい、あるいは次の給料日までの間、がま口なりたんすの中にしまっておきますものが、こういう機関を通じて社会的な役割を果している点は、私はきわめて大きいと見ていいと思うのです。そういう金融操作の中における社会的意義においても、私は一般の金融機関と同列に考うるべきものでないと思う。それであるからこそ労働省と大蔵省の共管にしてきたものであることは今さら言うまでもないと思う。こういう大きな社会的な役割を果すと同時に、他面労働者の組織であります労働組合の建設的な仕事を推進するための、現時代においてもそうでありますが、将来においても非常に大きな土台になると私は思うのです。せっかく労働者の自主的な意思が盛り上ってこういう成功の域にきているこの制度を一段と引き上げていく、こういうところに労働政策というものは力を注ぐべきではないかというふうに考えるのでありますが、これに対する労働大臣の所見を一つお聞きしたい。
  29. 石田博英

    ○石田国務大臣 御趣旨は全く同感でございます。事実政府といたしましても、貸出金の内容のうちで、あるいは住宅建設その他に向けるものに対しては利子の補給を行なっておるところもございますし、それから最近の経済政策の転換に伴いまして賃金の遅払いその他による貸し出しの激増を示したようなところに対しましては、五億円ばかりの財政資金を年末に金融をいたしまして調整をはかっておるような状態でございまして、労働金庫の育成についてはできるだけのことはやって参ったつもりでございますが、なおこの上とも努力をして参りたいと存じております。
  30. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 私どもと全く同一の立場においてお考えになるということでありますから、次に具体的な点を一、二お尋ねをいたして所見を明確に伺っておきたいと思います。  一つは、先ほどお答えがありましたが、住宅の事情については私は別な機会にお尋ねするつもりでおりますが、衣食住のうち、住宅の問題は、私は労働政策としてなおざりにできない段階にあると思う。これはいずれの力もすべて動員していかなければならない事情にあるわけでありますが、その中でも労働金庫の持つ役割は大きいので、最近住宅資金の貸し出しが非常にふえておる。しかし残念なことには、労働金庫の預金の性格からいいますと、長期貸付あるいは金利が高くなるきらいがあるわけであります。こういう点の弱点は自主的には補えないので、それである一部の府県では利子を、金額にしてはごくわずかですけれども見ておる。そういうやり方は私は非常に当を得ておると思う。ああいうものをもっと労働行政の中で見ていくべきじゃないか、今度の予算の中にはないようでありますけれども、何かそういうことについてお考えはないか。  もう一つは、年末融資をやりますけれども、これはある意味において労働者の金を労働者に回す一番安全な、そうして適正なルートであるということからいきまして、長年われわれが主張てしおりまする厚生年金の積立金が、もう二千億近くある。ほんとういえばあれは労働者のために使う金でありまして、労働者自身あるいは雇い主がそのために積み立てた金でありますから、こういうものが今日大蔵省の運用資金の中へぶち込まれて、財政投融資などに使われるべき性質のものではないということは、社会保障制度審議会、社会保険審議会等が答申の中において意思を明らかにしているところであります。でありますから、政府も還元融資を大幅に行うということを言っておる。こういうものをこういうところへ導入して、しかも一般の財政投融資なんかを見ますと——利子の問題は私はまた別の機会にお尋ねするつもりでおりますが、そんなところで二重、三重の労働者に手かせをしておる。何も政府がわざわざ金を出さなくてもいい。労働者の金を労働者が合理的に、安全に運営できるという道さえ立てば、その保護の保障さえ立てば、私はそういう道を開いていくということが正しいと思う。そういうことが一番いいことだと思う。でありますから、そういう資金を労働金庫に、もちろんその厳重な監督が今できるようになっておりますから、やるべきではないかと思うのでありますが、この二つの点についてまずお答えをお聞きしたいと思います。
  31. 石田博英

    ○石田国務大臣 厚生年金の中に相当いわゆる労働者の貯金が入っておる、これは事実その通りであろうと思います。それを労働金庫の方に回して使わせるようにしたらどうか、これは直接私の所管ではございませんが、原則として労働金庫の資金量をふやしていく、また金利を安くしていくということについて、これからの努力はしてみたいと存じておる次第でございます。ただ今住宅の金融に対して利子補給その他の助長措置を今度の予算に盛ってないことについての御意見がございましたが、これは国家でやるということはどうもなかなかめんどうな問題もございます。そこで結局自治体でやっていただくことに現在なっておるわけなんでありますが、これはなお研究をいたしまして、国として労働政策の一環としてやり得ることができるような努力をしてみたいと思っております。特に労働者の場合におきまする住宅の問題は、その賃金水準が低くければ低いほど、つまり企業規模が小さければ小さいほど困難な問題がございますし、特に日雇い労働者などに至りますると、もうエンゲル係数どころの騒ぎではない、住宅費が大部分を占めるというようなこともございますので、これについても何とかしたいと思っておるのでありまして、もちろん九牛の一毛ではございますが、本年度は日雇い労働者に対しまして、東京、大阪に一軒ずつアパートのようなものを作って、その成績を見て、これを大きく広げて参りたい、こう考えておるわけでございます。
  32. 山本勝市

    山本主査 大蔵省の説明は要りませんか。
  33. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 これは政策だから、労働省と大蔵省共管ですから、あなたがおやりになるという方針が明らかになれば、おのずからきまってくると思います。  そこで次にお尋ねをいたしておきたいことは、これは両方からお聞きしなければなりませんが、以上の御答弁の中で政府の労金に対する考え方が明確になったのでありますが、どうもその考え方と実際との間に食い違いが出てきている。これは何かの間違いではないかと思うくらいに露骨な傾向が現われております。労働金庫の性格についてはもう時間もありませんから、私が述べることはどうかと思いますし、労働大臣も心得ていると思いますが、そういったような労働金庫に一般の金融機関、市中銀行と同様の行政的な取締りを加えている。その一例は最近労働金庫の店舗の設置の認可を大蔵省と労働省との両方でしているわけで、労働省の方は存外関心が薄いようで、どんどん作っていくようでありますが、これがみんな大蔵省へ行ってひっかかっている。その顕著な例は、全国至るところですが、北海道、茨城、千葉、東京、神奈川、新潟、長野、和歌山、徳島、香川、長崎、熊本、鹿児島といったようなところからそれぞれ申請がされて、それはいずれも本店の改増築あるいは支店の設置、出張所の設置等でありまして、ひどいのになりますと、三十一年の七月ごろに申請したものが、うんだのかつぶれたのかわからぬで、握りつぶしている。ここにも私は官僚の最近の行き方の悪いところが出ていると思います。こういう労働者の組織体にその経営なり運営なりというものを縛りつけている金庫法の性格からいいましても、いけないものならいけないと答えたらいいし、いいものはいいものとしてすぱっと認可したらいいものだと思う。そして私がここで言い加えておきたいのは、一般の銀行ならばそれはわかると思う。それから大蔵省の全体の資金政策の中からいろいろしわ寄せされてくるものはわかるけれども、労働金庫の場合はそんなものと無関係である。ことに労働金庫の場合は一県一行方式をとっている。そうするとその府県の労働金庫あるいは生活協同組合の組織分布によっては、へんぴなところでも支店や出張所を設けなければこの機能というものを果すことができない。それを五千万以上の預金がなければ支店を設けることができぬという。五千万というような金が最初から集まってくるというような、そんなばかなことはないはずです。こういうところに大蔵省の金融一般の、市中銀行の取締りの感覚以上を一歩も出ていないところがある。そのために労働省の共管が法律の中にうたわれていると思うのです。どうも労働省の意思というものが無視されているのか、あるいは大蔵省が上位に位しているのか、この点が僕らにはちょっと理解できないのですが、この点を明らかにしていただきたい。権利の上にあぐらをかいている。公務員としてこれはけしからぬと思う。こういう具体的な事実を大臣は知らないだろう。
  34. 石田博英

    ○石田国務大臣 具体的な事実はおっしゃる通り存じません。ですがそういう具体的な事実がございましたならば、これは共管になっておりますので、私どもの方はできるだけ現実に沿って効果の上るような活動をしてもらうことを希望するのでありますが、実際どういうふうに取り扱っているのか、これは今関係局長からお答え申し上げます。
  35. 龜井光

    龜井政府委員 ただいま大臣からお話のございましたように、われわれとしましてはできるだけ、労働金庫が一般市中銀行と違いますただいまお話の性格というものを十分頭に描きながら、この問題の処理に当りたいというつもりでおります。ただそれにいたしましても、やはり金融機関である性格というものがございますので、支店あるいは出張所等を設けました際に、健全な運営ができるかどうかということをやはり頭に描きながら、これを認めるか認めないかということを一応は考えなければならぬと思うのでありまして、そういうものについて大蔵省あたりで一定の基準が設けられているようですが、われわれとしてはそういう基準を離れましても、やはり労働金庫の特質が発揮されるような支店あるいは出張所の設置ということについて折衝を続けて参るつもりでおります。今も参っておりますし、また今後もその努力を続けて参りたいと思っております。
  36. 青山俊

    ○青山説明員 ただいま御指摘いただきました分についてお答え申し上げます。労働金庫の性格というものにつきましては、ただいま井堀委員からお話のございましたように独特の性格を持っているわけでございまして、このために労働金庫法というものが制定されたわけでございます。労働省と私の方とは常時労働金庫の運営につきましては密接な連絡をとりまして、労働金庫の育成という面に立ちまして仕事をいたしておるわけでございますが、ただいま店舗の設置につきまして、労働金庫ができましてから数年たっておりますが、当初スタートの場合におきましては、今後の運営内容というものについては相当いろいろ、なお検討すべき点がございましたが、さっき井堀先生からお話のように、非常に順調な発達を遂げております。こういう面と同時に間接構成員の規模もだんだん大きくなって参りますので、この支店あるいは出張所の設置につきましては、十分実情に即すようにやってきたつもりでございますが、ただいま労働省の方からお話があり、先ほどから先生のお話のように、非常に貴重なお金というものを扱っております関係上、それに万一のことがあっては困る。こういう面で、特にそういう貴重な預金を扱う金融機関であります以上、私どもといたしましても非常に慎重に考えているわけでございます。しかし個々のケースにつきましては、一応の基準というものはございまするけれども、具体的にはケース、ケースによって判断いたして参りたいという考え方で参っております。  先ほど先生から、実際の認可までに非常に時間がかかるという御指摘がございました。私どももこの点につきましては、いろいろ実情を調査いたしております。確かに長いのもございまして、この点はまことに事務能率が悪いので申しわけないと思っておりますが、いろいろ個々のケースをとりますと、長く時間のかかっておりますものについては、やはりそれぞれの理由がございますけれども、この点は極力時間を短縮いたしまして、結論を早く出すという方向に参りたいと思っております。従いまして現在の書類の経由の方法等についても、現在いろいろ実情を調べておりまして、極力これを簡素化するように持って参りたい。目下労働省の方と打ち合せ中でございます。そういう方法によりまして極力手続の簡素化という点を今後考えて参りたいと思っております。
  37. 井堀繁雄

    ○井堀委員 大臣お聞きになったと思いますが、ここに労働金庫と市中銀行と大蔵省は一緒にして御答弁が出てきた、もちろん預金の性格からいって、一般市中銀行より保護を完全にしていこうという御好意にわれわれは万々敬意を表したい。しかし市中銀行は営利会社なんです。定款を見ればわかる。これこそ目を光らせてやったらいい。労金の場合は労働組合個人じゃありませんよ。その組織の母体が労働組合の組織なんです。あるいは生活協同組合という団体なんです。員外の取扱いを禁じているのです。この性格をのみ込んでおれば、今のような失敬千万のようなことは言えるわけはない。一番労働者の利益を忠実に守り得る組織は官僚組織じゃないのです。もし失敗すれば労働組合の自殺行為になる。命取りになるのです。こういうところに大蔵官僚のあやまちがあるのではないかと思う。もちろんそれは限界がございます。この点の本質的な問題について私は実は伺いたかったので労働大臣をわずらわしたのです。いいことを今御答弁いただきました。あなたを責めるわけではありませんが、大体今の役人の考え方、役所のものの扱い方というものが、銀行に対しては私はそうであってほしい。もっと取締りをやった方がいい。悪いことばかりやっているから。しかしそういうことの本質的な違いについての見通しがつかぬようでは、いつまでたってもらちがあきませんよ。これに関係してまだ問題がある。労働金庫の本質的な問題としては、金融機関としての伸びを期待するものではないのです。金融事業というものは付帯的なものであって、金庫法にも明示してありまように、労働者の福利共済活動がその本務であって、その目的を遂行するため金融事業が類似行為として行われておるだけの話で、大蔵省はさしみのつま、本体は労働省にあるのに、それが大蔵省に移っちゃっておる。大臣の政治力にもあったかもしれません。あるいは役所の運営等にもあったかもしれませんが、法律ではそういうことは許されていないはず、ここに問題があったので労働大臣をわずらわした。この一点を聞けば、一を言って十を知る労働大臣だから多くを述べる必要はない。特に時間の関係がありますから、ここであとの関係で以下右へ習えですから、あなたのお答えはこれだけで労金関係はいいとして、ついでに、あなたお立ちのようですから、もう一つほかの問題を聞いておきたい。実は法務大臣とあなたに同時にお尋ねをしたかった。法務大臣御都合が悪いそうでありますが、まだ一般質問の機会があるのでそのときにお尋ねいたします。  時間を節約する意味でちょっと聞いておきたい。賃金の不払い事件があとを絶ちません。毎回私はやっておる。しかも内容を見ますと身の毛のよだつという言葉がありますが、こんなことでいいかと思われるのです。私は統計を毎月もらっておりますけれども、件数が依然として四万七千件あるいは五万件と四万台を下らない。金額にいたしましても、また被害を受けておる労働者の数にいたしましても、依然として未解決の状態が次々に送られてきておる、らちがあかない。このことは私もある程度調べて原因もわかっておりますが、労働基準法が全くここでは眠っておる。働いて賃金がもらえない。しかもそれが高額な賃金であり、預金になる分だとか、あるいは文化費に回るとかいった、多少でも余力のあるものならばともかくでありますが、この内容を見ますと、零細企業ほど比率が高くなってきておる。所得の低いものの賃金がよけい危険にさらされておる。基準法に基いて保護を求めていく窓口のあるものだけしか届け出ておらない。泣き寝入りしておるものがどのくらいあるか。この点に関する限りは無政府状態です。この前、牧野さんが法務大臣のときでありましたが、一例を私はとった。大きな事業場であります。この賃金債権を民事上の問題で争うとすると、銀行の債権が優先される。銀行は営利会社です。しかも内容を見ますと、水ぶくれしたものを工場財団だからといって、適当な保護を加えて、そういうところには自由に取らせるようにしておる。合法的に労働者の賃金はもらえない。公租公課に優先するということは多少議論はあるにしても、営利を目的にしておる金融機関の金が、抵当権を設定しておるというようなことだけで賃金が取れないというようなばかなことが今日あるか。多額の費用をかけて、長い時間をかけて裁判所で負けておる。そういう意味では基準法は何をしておるかと言いたい。そういう事態の起らないようにこそ保護監督行政、基準監督上について、強い権限を与えておるので、この問題は一つあなたの労働大臣在任中に解決いたしましょう。もし立法措置を講ずる必要があるならば立法措置をやって下さい。行政力でやれるならば、来月の月末にはこういう結末をつけたというようにお示しを願いたい。それは無理だと思いますから、やはり立法措置が必要じゃないかというので鋭意検討いたしております。しかしこういうことは議員立法に待つべきものではなく、現在の法がそういう点で眠って実害が顕著なものがある。こういう点に対してきょうの労働大臣のお答えいかんによっては、次の一般質問の際に両方並んでいただいてやりたいと思っております。いかがです。
  38. 石田博英

    ○石田国務大臣 前段の労働金庫の特殊性というものは強く行政官庁には認識して扱ってもらわなければならぬものと思います。しかし労働組合あるいは生活協同組合という団体が責任を持つんだから、失敗をすれば団体がその責任を問われるものだから、行政官庁はよけいなくちばしを入れるなというけれども、これはやはり行き過ぎでありまして、団体が責任を負おうと何かしようと、やはり行政官庁としてはその預金者の利益を守っていくための考慮は必要であろうと存じます。だが質問の御趣旨の、特殊性を生かしてそれを発展せしめるように行政上格段の努力をいたさせるようにいたします。  それから第二段の問題でございますが、私どもの立場から申しますならば、やはり未払い賃金というものが他のあらゆる債権に優先すべきものであるという主張でございます。その主張を続けて参っておるわけでございますが、他の債権の安全性を確保するという問題とからみまして、まだなかなか解決がつかない問題でございます。しかしこれはより零細な、より貧しい人々の生活を守るという建前から申しましても、私はやはりこの点は何とか解決をしなければならぬ問題だ。現行法でできるかどうか、あるいは新しい立法措置を必要とするかどうか、これはまだ研究を要する問題だと存じます。ただこの際それに関連をします他の債権の安全性が確保されなかった結果、その債権を有しておる企業の土台にひびを入らして、そちらの方にまた問題を起す、そちらの方の企業の賃金不払いというものを起すという結果にもなるのでありますから、その間債権の安全性の確保と労働保者護というものとの関連を、私どもの方は労働者保護という基底の上に立って解決をしたい、こう考えておる次第でおります。
  39. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 前段の問題については、私の質問の趣旨を御理解になっておると思いますけれども、私は何も団体が責任を持つから行政的な監督を必要としないなどという主張は毛頭考えておりません。私はぜひ協力してもらいたい。もらいたいんだけれども、建前としては民主主義の原則というものはやはり組織を尊重しなければいけません。国の組織もまた同様で、そこは労働組合に対する私はやはり根本的な考え方になると思うのです。でありますから、市中銀行のような、あるいは営利企業のようなものと労働組合とを同列に考えるなということを言っている。営利会社ですから、利害関係で損がいかないならば、片一方の債権を捨てても他の方で利潤が上ってくれば快く捨てます。労働金庫のようなものはそういうことはできません。そこの営利社団と労働団体のような団体の持つ本質的な違いを認識しないから、こういうことが起るのだということを言っておる。この点を一つ労働大臣は十分お考えいただいて、法律を生かして使っていただきたい。公式論で、あやしげなところに公式を持ってきて本質を誤まるようなことをしてはならぬじゃないかということを私はお尋ねしたのであります。その点お間違いなく……。  賃金債権の問題についてこれまた同様であります。私ども他の債権を侵してまで主張するというような考え方ではないので、本質的にこれは問題がある。どちらが一体優先されるべきものであるかということは、これは今さら言うまでもありません。明治憲法のもとにおいては所有権は絶対だった。労働権なんというのは認められていなかった。財産権の前には非常に労働権は弱かったわけであります。しかしこの労働権の中でも賃金の問題は生活権じゃありませんか、生命の問題であります。古い憲法だって人命の前には財産はやはり制約を受けた。現に食えぬ者は生活保護法でまた見なければならぬ。他の国民に迷惑をかける、今あなたがおっしゃるように、要するに賃金債権を認めたために他の産業に動揺を与えるなんという考こ方は、これは枝葉末節を論議する議論だと私は思う。これからもらう賃金を払えというのじゃありませんよ。なされた労働です。資本主義のもとにあって労力がただで奉任されるようなところがどこにありますか。生産の基礎条件は賃金と資本じゃありませんか。その資本を分析していけば問題がありましょうけれども、労働がなされたということは経済行為としては一つの段階が終っておるんです。資本主義的な概念の上からいたしましても、賃金債権が営利社団の債権と比較してそれに優先を与えられるというような実態は問題だということで、私は労働大臣だからおわかりだろうと思って申し上げたのであります。それは法務大臣がそういうことを言うならば——だからあなたと法務大臣とを並べて言おうと思ったんですが、あなたが法務大臣のまねをするようなことを言われては困る、確かに法務大臣も法の盲点だということで割り切っているんです。
  40. 石田博英

    ○石田国務大臣 結局井堀さんと私は同じことを言っておるのだろうと思う。先ほどの労働金庫の場合におきまして、組合がやっているからといって、安全性に絶対信頼を置けと言っておるのではないとおっしゃったが、結局その両者のかね合いにおいて労働金庫の特殊性を生かしていきたい、これは同じことを申し上げておるのであります。  それから第二段の問題につきましても、私どもの主張としては、すでになされた労働に対する賃金は優先すべきであるという主張を曲げません。曲げないでやっていきますけれども、債権の安全の確保との関連をどう解決するか、目下研究中であるということを申し上げたのであって、結局同じでございます。
  41. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 議論をいたそうとは思いません。その考え方が一致しておればよろしいのでありまして、その上に立って、問題は実現だけであります。あなたが大臣の間に解決して下さい。これができなければ、労働行政はゼロですよ。
  42. 平賀健太

    ○平賀政府委員 井堀委員の賃金債権の問題につきましては、牧野法務大臣のときに御質問になりまして、検討いたしてみろということでございましたので、検討いたしまして、私どもの検討の結果を牧野大臣まで申し出たのでございます。要するに賃金債権の問題は非常に切実な問題であるから、現行法に認めておりますところの先取特権の効力以上に効力を認めるということになりますと、結局企業が金融の道をふさがれることになるのではないか。たとえば抵当権を優先するということになりますと、企業としては、使用者の方としては、抵当権を設定して資金の融通を受けるあるいは社債を発行するというようなことで、資金を取得しておるわけでありますが、それができなくなるということであります。そういうわけで法務省所管の法律の改正とかあるいは新しい立法をして賃金債権の確保をはかることはむずかしいといこうとを牧野大臣に御報告いたしたのでございます。その点は牧野大臣からも予算委員会でありましたか、社会労働委員会でありましたか、御答弁になったように私どもは承知いたしております。
  43. 井堀繁雄

    ○井堀分科員 牧野大臣は立法措置の必要を痛感されて、速記録でも明確になっておりますし、その後野に下ったけれども、鋭意努力するということを会うたびに言っておるくらいでありますから、誠意のほどは疑う余地はないと思う。私の想像するのに、あなたが今言う議論で反対されておるということで想像しておった。今のあなたのお言葉によりますと、その賃金債権を優先せしめると、要するに他の金融その他に障害が起ってきて、企業活動に何かの支障が起るのではないかというお言葉なんです。そこに基本的な問題がある。いずれを優先させるかという基本的な問題は、さっきから言っているように営利行為が許されるのは労働があってからじゃないですか。今日の企業活動の目的は、公益法人もありましょう、しかしおおむね営利を目的とする企業じゃありませんか。要するに営利の元を断つようなことをして、元を混乱させるようなことをやって枝葉末節だけかばうなんというばかなことがありますか。私はその点はあまり古い法律概念にとらわれていると思う。その考え方をあなた方が主張する限りにおいては、政治的にいかに押し進めようとしても官僚陣で食いとめるということになるわけであります。この問題についてここであなたと見解を述べ合うことはどうかと思う。しかし私はこの問題についてはいずれ黒白をはっきりいたしたいと思っております。しかしさっきの労働大臣の答弁は私の考え方と一致していることを述べている。だからあなたの考え方と政府の考え方が異なっておるのだ。労働大臣ではありますけれども国務大臣でありますから、そんな政治を曲げるような行政の力というものは問題だと思う。これはいずれ後の問題にいたしたいと思います。
  44. 山本勝市

    山本主査 ちょっと主査から申しますが、予定の時間が来たのと、それからこの問題は非常に重大な問題だと主査も考えるのです、それは労働の立場からあなたのような議論も立つ。しかし金融機関というものは単なる営利事業というものではない。その波及するところはとうてい普通の会社で障害を起った場合の影響と、金融機関に破綻が起ったときの影響とは雲泥の差であって、従って非常に大きな公共的性格を持っておるから、これはいいかげんなことでなしに、政府としても責任ある答弁をして、単なる労働権の立場あるいは財産権の立場というものからのみ決定できない問題ではないかと思うので、これはもう少し継続してやることにしたいと思いますが、とにかく時間も相当経過しましたので、午前の会議はこの程度といたしまして、午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時四分休憩      ————◇—————     午後二時十七分開議
  45. 山本勝市

    山本主査 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。小川半次君。
  46. 小川半次

    ○小川(半)分科員 私はまず労働省の新しい試みとして発足せしめることになった日本労働協会のことについてお尋ねしたいと思います。これは経済基礎強化資金等に充てられるものの中から十五億円を預託して、その利子約一億円をもって運営しようとするものであります。予算そのものには別段異議を差しはさむものではないのでありますが、この日本労働協会そのものの性格について掘り下げてお聞きしたいのであります。  まず第一番に、この日本労働協会が人事の掃き場、すなわち古手役人の姥捨山的存在になるのではないかと思われることであります。大体近年これと類似する官庁の外郭団体が数多く設置され、それらはいずれもみな役人の古手を養う場となっており、多額の費用をかけておる割合に効果がなく、それがため国民の間には官庁の外郭団体のごとき種類のものは廃止することこそ希望するが、今後この種のものを設置することを好まないという強い声が出ておるのであって、おそらく労働省関係の諸氏におかれても、そうした国民の声が耳に入っていないはずはないと思うのであります。それでもなおかつこのような官庁の外郭団体のごときものを設置されようとする強い理由はどこにあるのか、その点をまず明らかにしていただくと同時に、ここに勤務することになるところの幹部は役人出身者を起用するのかどうか、この点をまずお聞きしたいと思います。
  47. 大野雄二郎

    ○大野説明員 まず第一に労働官僚の姥捨山でないかという御質問に対してお答えいたします。私ども姥捨山にするような意図は毛頭持っておりません。公団、公社のたぐいがえてしてさような傾向を持っておりますことは御指摘の通りだと思います。しかしながら後に御説明申し上げますように、この種の団体におきましてはさような役人の古手を送り込みますことは何ら意味がないものと考えておりまして、われわれは姥捨山でないというこの原則を徹頭徹尾押し通したいと存じております。  次に、何ゆえにかような団体を作るに至りましたかを簡単に御説明申し上げます。御承知のようにわが国の労使関係は逐年改善されてきておりますが、一部には労働組合側の行き過ぎた行為もなしとしませんし、またそれと同様使用者側の方にも頭から労働組合運動を否定してかかり、これを理解しようとしない方もおります。また国民一般におきましても、労働運動に対する理解の足りない点があると同時に、また正しい批判の目が十分養われているとも申せません。しかしながら労使関係の改善を求めるに急なる余り、法律万能思想に陥るということは慎しむべきでございまして、やはりよい労使関係というものは、国民の正しい声を背景といたしまして、労使の理解と納得の上において初めて確立される性質のものであると考えております。従いまして労使はもとより広く国民一般の労働問題に対する理解と良識とをつちかうことが労使関係を改善するところの根本的な問題であるとわれわれは考えているのでございます。従いまして政府といたしましては、今日までいわゆる労働教育に努めて参りましたし、今後ともこれに努めたいと存じておるところでございますが、遺憾ながら政府なり地方公共団体の行いますところの労働教育活動にはおのずから限界がございます。役人の仕事には限界があるのでございます。やはり政府以外の専門的な機関が自主的に研究を行いつつ、その研究の基盤に立って行う労働教育であってこそ、初めて前に申し上げましたような成果を期待できる部面が少くないと考えているのでございます。しかしながらわが国におきましては、遺憾ながら現在のところこのような任務を果し得るところの民間の研究機関あるいは教育機関というものがございません。そこでこの際政府が全額を出資いたしましてかような専門機関を設置せんとするに至ったのでございます。これが日本労働協会を設立するゆえんでございます。
  48. 小川半次

    ○小川(半)分科員 他の省の外郭団体と違った性格で、この労働協会は役人の古手を使わないということが明らかになりましたので、一応了承することにいたしますが、この日本労働協会の性格のいかんによっては、日本の労働問題あるいは日本の労働組合に与える影響がきわめて大きいと思うのです。ですから、特に人事の問題が微妙であると思うのです。要するに今申し上げたような、すでに社会の第一線から退いたような老齢者とかあるいは役人の古手とか、そういう無能者をここに充てては、せっかくのこの機構が有名無実の存在になってしまうおそれもあるし、非常に人事が微妙でございますから、その点特に重要な問題として一つ検討していただきたいと思います。  それから趣旨は、民主的かつ中立的な労働教育とかあるいは労働組合の育成発展を目途としてこの日本労働協会を設立するのだという御意向でございますが、それにはやはり目標というものがなければならぬ。たとえば労働組合の場合でも、現在の日本の労働組合の中でこの団体はちょっと左に行き過ぎているとか、こういう種類はどうも御用組合くさいとか、最も民主的な労働組合らしいものはこれである、そういう目標を一つ伸ばして、そしてそれを一つの手本というか教育目標にしなければ、ただ机上で、いやこれが民主的な労働組合のあり方であるとか、労働問題のあり方はこうでなければならぬとか、そういう全然形のないことを幾ら叫んでおっても、これは効果が上らないのであります。要するに、こういう労働組合こそ民主的な非常に手本とすべき組合だというものがやはり今までの日本にもあるだろうと思うのです。どういう組合をあなたは最も民主的と見ておられるか、一つその点をお示し願いたいと思います。
  49. 山本勝市

    山本主査 労働大臣官房長、君かわって答えてもらいたい。
  50. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 これは所管がちょっと違いますので……。
  51. 龜井光

    龜井政府委員 お答えを申し上げます。この協会を作りまするいきさつなどにつきましては、先ほど大野課長から説明があったかと思いまするが、私がお答えをいたしたいと思いまするのは、この団体が行いまする事業の性格その他でないかというように思っております。この団体の事業は、この法律にも規定がございまするように、労働問題につきまして公正な判断のできる学識経験者の中から選ばれまする理事が理事会を構成いたしまして、合議制で重要事項を決定していくわけでございます。さらにその決定をいたしまするにつきましては、学識経験者十五人以内で構成されまする評議員会の議を経まして決定をして参るのでございますが、この決定をしまする大きな仕事の内容は、その年におきまする事業計画、予算というふうなものが主体になろうと思います。従いまして、この事業がどういうふうな方向に方向づけられるかということは、事業計画並びに予算の中で決定されていくわけでございます。従いまして、手続から申しますると、評議員会の議を経て、理事会がそういう重要事項を決定していくという形になるのでございます。役員につきましては、先ほど申しましたように、労働問題について公正な判断をすることができる役員によって行われる決定でございまするから、われわれとしましても、その事業の方向づけは必ず公正な方向に決定づけられるものというふうに考えているわけでございます。これに対しまして、労働大臣業務の方向づけにつきまして特別の指導をしたり、あるいは指示をするというふうなことは、この法律の期待をいたしていないところでございまして、その点は法律の監督の条項の中におきましても、明文をもって規定をいたしておるのでございまして、三十五条の二項で、前項の規定による命令は、協会の業務運営の自主性に不当に干渉するものであってはならないというふうなことでございまして、協会の自主的な決定、判断というものにその方向づけはまかせられるというふうに一応は考えられております。しかしそれは先ほど申しまするように、あくまでも公正な理事会におきまして決定されるものでございまするから、われわれといたしましては公正な方向にこの協会の事業内容が決定されるものというふうに期待をいたしております。
  52. 小川半次

    ○小川(半)分科員 先ほどの御意見では、これの趣旨は民主的でかつ公正な労働教育の指導に当ったり、あるいはそうした趣旨に基くところの労働組合の育成強化に当るんだ、こういうことであります。それでは公正にしてかつ民主的な労働組合の育成といっていたところで、単なる言葉とか文章では——もちろんそれで判断できる人もありまするが、それよりももっと手っ取り早いのは、現実の一つの手本というか、見本を示すとか——これは古い言葉ですが、昔から勤倹貯蓄というが、その文字のことよりも、二宮尊徳のようにということで、だれか模範的人物を見せれば、一番手っ取り早くわかる。そこで現在までの日本の労働組合の中に、公正にしてかつ民主的な労働組合というものがなかったのか、これを聞きたいのです。ないから教育していこうというのか、あるいはあったのか、あればどういう労働組合が公正にして民主的な労働組合であるか、この点を一つお聞きしたいのです。
  53. 龜井光

    龜井政府委員 公正にして民主的な労働組合という言葉自体は別にいたしましても、そういういわゆる労働組合の範となると申しましょうか、一応そういうものは別としましても、諸外国のいろいろな実例、あるいは日本におきましてもそういうもののありますことは承知をいたしております。そこでそういうものを主体としまして、そういうものがどういう理由でそういう民主的にして健全な組合に発達されてきたかという原因にさかのぼりまして、そういう原因をさらにわれわれ分析をしまして、それをほかの一般の組合——これはどの組合が悪いからその組合を目当てにやるという意味ではございません。広くそういういい組合の実例等を示しまして、それにならってもらうといいますか、それに従ってみずから自分の組合のあり方なり、あるいは経営者としましては経営者のあり方なりを判断をして、正しい方向に向っていただくということをわれわれとしては考えている次第であります。
  54. 小川半次

    ○小川(半)分科員 お役人の常として、そういう工合にお答えしなければならぬだろうと思いますが、要するに総評よりも全労の方が公正にして民主的な労働組合である、ああいうふうに持っていきたいという、おそらく腹の中はあるだろうと思うのですが、しかしそれはしいて私は追及いたしません。  そこで、この理事とは別に、私の聞くところによりますと、ここに四十五、六名の職員が勤務することになるようでございますが、この職員たちは当然労働組合を組織するだろうと私は思うのです。おそらく労働組合の育成指導に当るべき機関の者が、君ら労働組合を作ってはならぬということは絶対言えないはずです。私は当然労働組合というものができると思うのです。その点いかがですか。
  55. 龜井光

    龜井政府委員 日本の労組法あるいは労調法の上から申しましても、労働組合の結成について保護助長しております現在の法規のもとにおきましては、組合ができますることはわれわれとして望ましいことだと思っております。
  56. 小川半次

    ○小川(半)分科員 そこでここに組織される労働組合がどこに所属するかによって日本の全労働組合に及ぼす影響が大きいですぞ。そこで私の見るところによりますと、これは仮定の判断のようでありますが、大体ここに組織される労働組合は、私はおそらく総評に所属するようになるのではないかと思う。これはあくまでも仮定です。それは大体今全国の労働組合の組合員の心理を探究してみますと、これは人間の弱い気持の常として、だれでもあることですが、結局大きな組織につかなければ損だという、何か大きな、しかも引力のあるものに吸収されがちなんです。こういうところが多分にあることと、それから大体官庁の外郭団体のこれと類似したような組織のものは、今も総評に入っている。これは官庁と一つのつながりのあるものです。これのみが総評に入らずして中立を守るということは、どうも私はあり得ないような気がするのです。この点について、あなたはそういう仮定のことについてはお答えができないという立場をとられるでしょうから、私はしいて答弁を求めませんが、結局そういうことになって、私の今仮定として申し上げたように総評に入るということになると、おそらくこれを作った趣旨とは違ってくるのではないかと思う。これはそういう総評に入ってもどこへ入ってもよいという趣旨で作られたものですかどうですか、その点も私はちょっと伺っておきたい。
  57. 龜井光

    龜井政府委員 一つの労働組合がいかなる上部団体に加入するかあるいはしないかということは、組合みずからが自主的な判断に基いて決定するものでございます。従いまして私が、今お話のように、この組合が総評に入るか入らないかということをここで申し上げることもできませんし、またそれのよしあしにつきましての判断を申し上げるわけにもいかないのでございます。要は組合員個々が自主的に、自分の責任において判断し得る能力を持つか持たないかというところにかかってくるのでございます。そこでこういう公正な仕事をする団体の職員でございますから、職員みずからの自覚、自省というものの中から、そういうみずから判断し得る能力がつちかわれるべきであるし、またそういう能力を持つ職員を会長なり理事会というものは採用すべきであるというふうに私らは考えるのでございます。従いまして会長なりあるいは理事なりが職員を選衡する際におきまして、十分なそういう資格、要件といいますか、その人の能力といいますか、そういうものの判断の上に立って採用し、さらにそれらの人が自分自身でみずからの責任において自主的にそういう事柄を判断し得るような能力を持つように、これはまた当然考えられるような——使用者でございますから、不当に介入することはできませんけれども、そこにおのずから相通ずるものが見出されていくような運営の仕方というものを考えなければならぬのじゃないかというふうに考えております。
  58. 小川半次

    ○小川(半)分科員 私は別に総評を血祭にあげるためにそういう質問をしているのじゃないが、国民の公平なる判断は、近年の総評のあり方についてにがにがしく感じているわけです。どうも民主的な労働組合のあり方ではない、行き過ぎがある、あるいは政治闘争をしたり、経済闘争を事としている。ああいうことでは正常なる日本の労働問題の発達はあり得ない、それはかえって妨害になる。そういう国民の強い声が起っているのは事実であって、そうした声に基いて、おそらく労働省当局においても国民のそうした声をすなおに受け入れて、そうしておっしゃるような公正にして民主的な労働教育を行う、またそういう趣旨の労働組合を育成したいというので、私はこれが発足したのではないかと思うのです。そうすると、その母体であるところの指導機関のそこに勤務する職員みずからが、国民が心配しているその総評に参加するということになりますると、根本からその趣旨と相反することになると思いますので、私はこのような意見を申し上げるのでございます。そこであなたはそれは組合員の自主的判断に待つべきものであって、今自分はどうこう言うべき筋合いのものではないとおっしゃる、これは当然でございます。そこで私は今名前は申し上げませんが、某所にも外郭団体がございます。その某所の外郭団体、これは教育に関係のある種類の団体でありまするが、初め発足した当時は、政治的中立や思想的中立などといって、もったいぶった口実のもとに外郭団体が発足したのです。ところがそのうちに思想的中立なんということはこれはナンセンスである。人間おのおの思想が違うのであるから、あくまでもその中立を堅持しなければならぬということはナンセンスである。また政治的中立などということはから念仏だ、自己の信ずることや、あるいは自己の欲することに勇敢であらねばならないというような意見が、その職員の間に燃え上ってきて、中立を誓ったこの団体はいつの間にか左翼の指導機関となっていった。そうして指導のテキストであるところの出版物も、結局その左翼理論のみを重点的に書くようになったのです。それから講師の派遣でも、左翼的な人物をおもに起用するということになって、いつの間にかミイラ取りがミイラになったと現に言われているのであります。私はそうした現実の立場から申し上げているのであって、この労働協会は果してこれと同様の結果にならないとだれがほんとうに保証できるでしょうか。どうです。その点などについて自信がありましたらお答え願いたいのです。
  59. 龜井光

    龜井政府委員 この法律の第一条にもございまするように、あくまでもこの団体は公正な立場から労働問題に対しまする理解と良識をつちかっていくというこの法律目的が明確にございます。それからまた二十五条にはそれを受けましての業務内容があるわけでございます。従って会長なりを含みます理事会におきまして、業務を決定するにつきましては、この第一条なり第二十五条なりの拘束を受けるわけでございます。つまりそれに従って実施——もう少し詳しく申し上げますれば、それらによってできまする定款の内容もそれに影響してくるでしょう。こういうものに縛られる義務を私は法律上持っていると思います。従いましてもしそういう義務に違反する場合——具体的にはどういう場合に義務違反になるかということは、具体的な問題として処理しなければなりませんが、一応観念的に、抽象的に申し上げますれば、職務上の義務違反があるというふうに認められた場合におきましては、任命権者は解任できる措置がございます。そういうことも一つのこの団体を公正に運営させますための道でもあろうかと思いますし、それよりも私は最初から申し上げておりますように、最初に会長なり理事となるべき人を選ぶ際に十分にその人柄を選ぶわけであります。教育は人であるということが言わておりますだけに、そういう人を選ぶことにわれわれは大きな重点を置かなければならぬと思います。従ってそういう人が選任をいたします職員でございますから、われわれといたしましても、公正な見解、立場をとり得る職員が採用されるものというふうに期待をいたしております。最後の歯どめは、先ほど申しました役員の解任という問題が一つ出てくるのではないかと思います。
  60. 小川半次

    ○小川(半)分科員 従来からの労働理論の講師の派遣とか、出版物においてもそうですが、どうも公正ということは、これは最も正しいことだけれども、これほどまた魅力のないものはない。右か左かあいまいで、あの人は非常に公平な意見を吐く人だというような先生を派遣しても、労働組合の人たちはあまり歓迎しない。どうも日本の労働組合の人は、多少左翼的理論を述べる人でないと歓迎しないというような傾向があるものですから、これは近年の一つの社会の風潮であるかもしれませんが、結局公正な意見を吐く講師を派遣しても、あまり組合が歓迎しない。結局左翼理論の講師が行くと労働組合も歓迎する、あの講師は歓迎されたからまた派遣しよう。結局そういう左翼的な労働理論を吐く人が各地において労働組合から歓迎されて、最も公正な正しい理論を吐く人が歓迎されない、こういう傾向が今日まであるわけです。おそらくこれが設置されれば、そういう傾向があるだろうと思う。そこで結局、やはり人気をとりたいものでございますから、あの人気のある講師を派遣しよう、この人気を呼ぶところの出版物を多く印刷しようということになって、長い年月の間にだんだん出発のときとは思わざる方向に傾いていくのです。そういうことがありがちなんです。そこでどうしても忍耐が必要であり、ただいま局長が申されたようにやはり人の問題が大切ですから、この点一つくれぐれもしっかりとやってもらいたいのであります。  そこで、これは今あなたも非常に情熱をもってこれを作ろうとしておりますし、われわれもこれが正しく運営されることを期待しているわけですが、これはえてして、年月がたつに従って有名無実になるようなことはないかと思うのです、それはたとえば、初め中央労働委員会とか地方労働委員会が設置された当時は、この労働委員会というものはただ単に争議の調停のみを事とするものではなくて、よき労働慣行を指導するのだというような建前で生まれたのでございましたが、結局月日がたつに従って、争議の調停以外に、失礼ですが、積極的な活動はやっておりません。非常に不活発になってきております。結局これもこういうことになるのではないかというような杞憂もいたすのでございます。ですから、これはやはり絶えず、労働問題は生きものなんだから、ほかのものと違ってこれは人間が生きていく上に欠くべからざる問題をいだいておることでございますから、そういう点などを絶えず熱意をもって、労働委員会が最近何だか非常に縁の遠いものになったような、そうした存在ではなくして、もっと将来も続いて活発に運営していかなければならぬと思うのです。こういう点についての御意見を一度伺っておきたいと思います。
  61. 龜井光

    龜井政府委員 よく労働大臣が申されますように、労働問題は人と人との関係でございまして、この関係を改善をしていきまするには忍耐と友情が必要だということをかねがね大臣は申されておりまするが、私も全くそうだと思うのであります。特に問題が教育というような問題になりますと、なおかつ忍耐と長い期間の努力が必要でございまするし、またその努力の積み重ねの中から初めてその成果というものが期待されてくるのではないだろうかと思うのでございます。国民の税金十五億をもってこの基金を作りますような団体でございまして、われわれといたしましても国民に対する大きな責任を感ずるのであります。それだけにこの団体の今後の業務運営のあり方につきましては、ただいま小川先生の御心配のことのないようにわれわれとしては誠心誠意をもちまして努力をして参らなければならぬと思いまするし、またそうすることが国民に対しておこたえする道ではないかというふうに私は考えております。
  62. 小川半次

    ○小川(半)分科員 次にちょっと失業対策についてお伺いしたいのですが、失業対策には私は二つの政策がなければならぬと思うのです。それは一つは本質的な失業対策です。失業者をどこかに就業さすという、これは本質的な失業対策です。もう一つは失業防止策、これがなければならぬと思うのです。ところが従来からの日本の失業対策というのは、とにかく本質的な失業対策にのみ追われて、失業防止策というものの研究に、またそうした点について努力が足らなかったようです。本質的な失業対策というのは、しかもそれもたいてい土木事業に従事さすとか、非常に平凡な就労であったわけですが、この本質的な失業対策というものは、これは別に労働政策の達人でなくても予算さえとればだれでもできることなんだ。平凡な人物でもこれはできることであって、われわれ国民が期待しておるのは、もっと高度な失業対策を望んでおるように思うのです。それはやはり失業防止策なんです。いかにして失業者を出さないようにするか、そのことについてあるいは研究をしたり、またあなた方は労働省の内部において相当労働省の幹部が相集ってこういうことを検討したり研究したりしたことがございますか。
  63. 三治重信

    ○三治説明員 お答えしますが、御質問のように失業対策として、予防的な失業対策とそれから出た失業者をどういうふうにして救済するかという問題と二つあるわけでございます。最近におきましては世界の先進国では、予防的な失業対策完全雇用的に政策をやっていこうというのが第二次大戦後とられておりまして、今日まで大体においてそれが実現されておる。最近におきましてもアメリカに四百万近くの失業者が出てきたという統計によって、大統領が特別発表までやって、これ以上失業者をふやさないというふうにきのうの新聞にも出ておりますが、それがやはりほんとうの失業の予防対策になるだろうと思います。では労働省でそういうことを考えたことがあるかというふうな御質問でございますが、労働省独自で、われわれの方の失業対策部が一昨年できましてからもこの問題につきましては常に考えておりまして、それについて労働省の失業対策部だけでそれを論じても意味がないから、できるだけ政府として企画庁の中でもう一つ特別考慮を払うように部局を設置してほしい。そうして失業対策としてわれわれの方としても労働省の職業安定所を中心にしていろいろの意見を出す、総合調整をするのはやはり経済企画庁がいいのではないかという点も相当昨年も研究して出したわけですが、その結果まだそういう部局まで設けるのは早過ぎる、しかし、それについての研究、また政府に対する総合的な意見具申なり、そうして建議なりをする機関として雇用審議会設置法というものを設けて、雇用審議会というものが昨年できたわけでありまして、現在のところわれわれの方としては雇用審議会で政府としてのそういう雇用、失業対策として総合的な対策をとってもらう。これはわれわれの方も各省も幹事委員になって参っておりまして、それぞれ専門家も入って、それに対するわれわれの方の役所の意見も十分会議が開かれるたびに申し上げておる次第でありますが、具体的にどれだけの投融資をやり、またどういうふうな金融対策をやるべきかという問題につきましては、現在のところ企画庁が総合調整に当るという建前でおります、ということを御承知置き願いたいと思います。従って先生のおっしゃるように、現在の労働省というものは出た失業者に対して予算をとって対策をやっておるだけではないかということでございますが、実質的にはその通りになっておりますが、先ほども申しましたように、失業の発生を防止することについての意見なり構想、そういうものについては、われわれの方としても資料整備その他十分各省に反映し、また政府に反映するように調査研究し、それに対して反映させておるつもりであります。
  64. 小川半次

    ○小川(半)分科員 日本の失業対策は従来ずっと低姿勢の失業対策であった。これからは今あなたも言われたように、高度な失業対策でなくてはならないと思う。それはすでにドイツでもアメリカでも実施しておりますように、やはり失業防止策なんです。ここに重点を置かなければいけない。私はすでにそういう時代に入ってきたと思うのです。そこで役所というものはいつでも研究とかそういう資料収集をしているので、まだ結論に達していない、いつでもこういうことをおっしゃるのですが、ちょっと勘を働かせればいい。たとえば私は一つの例を申し上げますが、日本の都会といわず農村でも、外を走っている自動車の六四%は外国車なんです。外国から輸入した自動車なんだ。この自動車を国産車に切りかえる、そうしますと日本の自動車工業に三万七千人の労働人員が必要になってくるんだ。簡単なことなんだ。こんなことをあなた方考えなかったのか。いつでも質問すればただその場その場で逃げていくような答弁じゃ困るのです。すでに時代は違うんだ。私は一つの例として自動車の場合を申し上げたけれども、このようにしてとにかく六十幾パーセントも外国自動車を使用していて、どうして日本の失業者を就業さすことができるでしょうか。これを一〇〇%とは言わないけれども、使用されている自動車の九〇%を国産自動車に切りかえるというような大方針を打ち立てたならば、日本の自動車工業に、今申し上げたようにとにかく三万七千人の労働者が必要となってくるんです。これだけでも失業対策に非常な効果を上げることになる。私は自動車を今一つの例として申し上げたのですが、これと同様にあらゆる産業面において国産品をもっと生産するという方向に向ったならば、私は日本に失業者がなくなると思います。これは私ははっきり申し上げますが、日本の全産業の分野においてことごとく国産品を使うということになれば、日本は失業者がなくなるのですよ。それくらいのことをあなた方担当者がもっと力説して、各省の特に次官などは、次官会議などでこういう点にもっと努力しなければならぬと私は思うのです。今後どの程度熱意を入れるか、あなた方の熱意のほどを一ぺん伺っておきたいと思います。
  65. 百田正弘

    ○百田政府委員 ただいま御質問のときにおりませんでしたので、的確なお答えになるかどうか知りませんが、私どもといたしましても、現在労働省の予算の中におきまして、あるいは失業対策関係の予算といたしましては失業対策事業費あるいは失業保険というようなことですが、何か失業対策事業費につきましても、われわれ実はもっとこれを積極的なものと申しますか、失業対策というよりも雇用対策といったような積極的なものにして参りたいという気持は持っておるわけでございます。仰せの通りわれわれといたしましても頭を切りかえて、さらに先生が御指摘のような工合に失業対策として積極的に雇用の効果を生み出し得るような方策をやっていくように努力をしなければならぬと思っております。
  66. 小川半次

    ○小川(半)分科員 本年度の予算を見ますると、失業対策事業吸収人員が三十二年度に比べて二万五千人増加しているのですが、この二万五千人は大体どういう仕事につくのですか。
  67. 百田正弘

    ○百田政府委員 三十三年度予算におきましては本年度の二十二万五千から二万五千ふやしておりまして、二十五万ということにいたしております。これにつきましては一般臨時就労対策事業について二万、特別失対について一万八千、その残余が一般失対、こういうことになっております。
  68. 小川半次

    ○小川(半)分科員 大体日雇い労務者が対象として計上されているわけですが、それではこの日雇い労務者、もちろん県や市町村によって違うわけですが、はなはだしいところに行きますと一カ月に十六日か七日しか就労しない、いいところで十九日か二十日、この人たちはあなたもよく御存じのように、俗に言われておる貧乏追放の対象の中でA級です。こういう日雇い労務者が一カ月のうちわずか十八、九日しか就労できないというようなことでは、これは何としても気の毒でならぬので、これを一カ月に二十五日とか二十六日、日曜、祭日以外は就労させるような方法をとることができないのか。私は従来から非常に気の毒のように思うのですが、この点を一つ御説明して下さい。
  69. 百田正弘

    ○百田政府委員 日雇いの失対事業に従事する者の就労日数の問題につきましては、先生の御指摘の通り、われわれといたしましてもさにら増加いたしたいということでかねがね考えておるところでありまして、かつての十七、八日程度から順次二十日、二十一日というようになって参ったので、せめて一日程度は増加していきたいというような考え方をわれわれは持っておったのであります。しかし今回大幅に就労人員のワクもこういう情勢のもとにおいてふやさなければならぬというようなことで、これを見送らざるを得なかったことはまことに残念でございますが、先生御指摘の通り、われわれといたしましてもできるだけ就労日数の増加をはかりますために、失対事業だけにたよらず、公共事業あるいは民間事業への吸収をできるだけできるように、求人開拓にも努力いたして参りたいと思います。しかしながら地方によりましては民間求人がほとんどないというようなところもあるわけでございます。そういうところにつきましては、先生のお話のように十六日、十七日ということでなくて少くともこれだけで二十一日就労できるように措置して参りたい、この調整をはかって参りたい。その場合やはり一番問題になりますのは、おそらくその事業主体の財政負担の問題であろうかと思います。これらの点につきましても三十一年度から高率補助制度というものをこの中に設けまして、特に財政負担の大きな失業対策事業をたくさんやらなければならぬにかかわらず財政負担が大きいというようなところにつきましては、高率補助制度もやって参ったわけでございます。さらに自治庁とも打ち合せをいたしまして、来年度等におきましては特別交付税として失業者の多いところにはある程度の交付税がいくといったようなことも打ち合せをいたしておるような次第であります。
  70. 山本勝市

    山本主査 辻原弘市君。
  71. 辻原弘市

    辻原分科員 今問題になっております失対の問題で私も一、二具体的にお考えを承わりたいと思いますが、その前にこれは労働省の方に申し上げてもいたし方ないことでありますが、昨年度の経済計画の大綱にも具体的にこの年度内における完全失業者の推移というものが数字的に表わされておったように私は記憶しております。ところが本年提示されました企画庁の長期経済計画、それから三十三年度の経済計画の大綱を見ましても、完全失業者の数が付表にもその他にもあげられていないのであります。あるいは私の見間違いであればけっこうでありますけれども、私はこの点について非常に奇異に感ずる。少くとも失業問題、あるいは雇用の関係を考える場合、政府が国会にそれぞれ失業対策等の予算について審議を求める場合には、何がしか政府として一致した一つのこれらの雇用の推移に対する的確な資料が提出されていなければならないと私は思うのであります。こちらからお尋ねをいたしまして漸次明らかになってくるだけでありまして、これは過日の予算委員会でもわが党から問題にいたしまして、どうも数字に対する信憑性をわれわれははなはだ疑わざるを得ないのであります。  そこで本論に入りますが、けさ労働省からの説明によりますと、昨年十二月の完全失業者の数が四十三万、こういうふうに言われておるのであります。これは昨年の推移から見ると年末には若干低下をしてきている傾向にめる、こういう判断でありますが、これを三十三年度に引き延ばしますと、この完全失業者の数はどういうふうに推移するのか、政府として完全失業者についての数の認定に定まった考え方があるのか、この点を承わっておきたいと思います。もちろんこれは労働省が予算要求をいたします場合は、それらの数字について大蔵等とも意見の交換、あるいはそれについての見解の統一をはかるだろうと思いますので、これを一つ正確に伺っておきたいと思います。
  72. 百田正弘

    ○百田政府委員 先ほど統計調査部長から四十三万というような数字の御説明があったわけであります。本年度四月以降についてみますと、五月、六月が大体四十六万台であった。七月に四十七万と一たん上って参りました。その後相当増勢に転ずるのではないかと考えられたわけでありますが、十月に五十万ということで、十一、十二月が四十三万というようなことになったわけであります。従いまして、年度当初におきましてはこの三十二年度間の完全失業者の数を六十万と見込んであったわけでありますが、今後一、二、三—三月が季節的には非常にふえるが、これを入れましても年度間の実績見通しとしては、今日までの推移から考えますと大体平均五十五万程度になるのではないか、こういうふうな現在の見通しでございます。さらに来年度につきましては、先生から今お話がございましたが、経済計画大綱におきましてはなるほど失業者の欄が設けてございませんが、これは三十三年度見通し欄の労働力人口と就業者総数の差六十五万というのが、いろいろな対策を講じたあとの失業者の数になるわけでざいます。大体本年度よりも十万増しということになるわけであります。
  73. 辻原弘市

    辻原分科員 たしか私は一昨年の見込みも六十万であったと思います。去年もたしか六十万でなかったかと思います。そしてことしの年度当初の見込みも六十万。しかし昨年の実績から見て大体五十五万になるという今のお話でありますが、そういうことがある程度ここで発表できるならば、少くとも労働省あたりが積極的に——日本の今の雇用の実態を明らかにするための完全失業者の数を公けにしないで、私は雇用の問題は論じられないと思います。そういう意味から、少くとも政府として公けに出されるこういうものには、やはり完全失業者の数を明記すべきだと思います。これはあなたの方の所管ではないけれども、私は政府にこのことを申し上げておきたいと思います。政府次官どうですか、そういうことについて何か見解ありますか。
  74. 二階堂進

    二階堂政府委員 政府といたしまして経済計画を立てる場合におきましても、この雇用対策の面から完全失業者がどのくらい出るか、なおまた潜在失業者がどのくらい見込んであるかということを明らかにして、その対策を講ずるということは当然であるかと思います。
  75. 辻原弘市

    辻原分科員 そういうことを聞いておるのではないのです。そうしたはっきりした統計の上に立って施策を進めてもらいたいということです。だから結局一番そのしりになる数字がはっきりしないから、前提となる数字に信憑性が出て参らない。ここにおいて数字をいじくっても始まらないから申し上げませんが、とにかく雇用の概括的な状態を見まして、一応済済計画大綱に示されておるこの生産年令人口、それから労働力人口の伸び、それから雇用者総数との比率等を見ましても、正確であるかないかは別問題といたしまして、ともかくかなりの率をもって増加しつつあることは疑いのない事実であります。しかもまたこれらの数字だけでもある種の傾向をはらんでおる。それは人口との対比を考えてみましても、人口の伸びに対して、いわゆる生産年令人口あるいは労働力人口というものの増加は非常に著しいわけであります。そこに日本の場合の一つの人口構造が、今日からさらに将来に向って、いわゆる全人口に対する生産年令人口の比率というものが高まっておる、特に老齢者の比率が高まってきておるということが顕著である。そういう意味からいって、ここにやははり総合的な雇用というものが政策としてかなり綿密に取り上げられなければならない。その一翼をになっておるのが労働省の所管するいわゆる失業対策事業であると思います。しかし、これもやはりやり方いかんによっては先ほど小川さんの方からも御所論がありましたが、必ずしも単なる失業対策事業というものの取扱いに堕してしまわなくてもよいという点が相当考えられると思います。  私はどういうことを申すかと言いますと、まず一つの問題はこういうことなんです。実態は私から申し上げるまでもなくよくおわかりだと思いますが、先ほど答弁がありましたように、昨年二十二万五千、本年二十五万、これらの失対事業は、あげていわゆる公共事業を主体とした俗にいわれる日雇い労務関係がこれに吸収されてくる。ところか最近の傾向を見ますと、これはもう失業対策というよりも失業対策という名のつくある種の職業に化しつつある、こう言っても差しつかえないのじゃないか。いわゆる恒常化しておるのです。結局登録をすること自体に——これは私は予算等の関係もあってかなり現実的にはむずかしい問題であろうと思うけれども、しかし失業対策なら当然どんどんある程度の資格があれば登録人口に加えなければならぬのだけれども、実際にはかなり制限しておるような傾向にある。そういたしまして結局この失対事業に加わりたいということすら実現されない、いわゆる失業群が今日相当数はんらんしてきておるわけであります。そうして登録された者は他に求める職業もないし、またある面においては比較的にその事業に加わっておれば最低の生活だけは確保できるという日常の生活の追われから、恒常的な仕事としてそれに携わっておる。そういうことでありますから、失対事業自体が今日いえば狭き門という形に実情はなってきておる。毎年多少の増加はありますけれども、しかし二万や三万の増加でもっては完全失業者及び不完全就労者を含んだ非常に大勢の失業群を持っているわが国としては、緊急といおうか当面といおうか、そういうふうな失業対策にもなかなか現実にはなっていないような面が多いと思う。そこで現状のようなやり方をやはり相当実際を見て検討を加え改善をしていく必要がある。それには何も特別に新しい考え方をしないでも、先ほどあなたが言われたような、いわゆる雇用対策というふうな面をも加味して運用できる余地があるわけです。たとえばこういうことはできないか、私の一つの提案であります。あとで触れますが、今度職業訓練法を制定する。しかしそれとても、先ほど午前中の質問で井堀さんが言われたように、多数の失業群に技能を与えるという趣旨目的にははなはだ遠いものであるということは論を待たないわけでありますが、そのことはさておきましても、この新しく制定される訓練法、あるいは従来やられておった職安法による職業補導、こういう点とこの失業対策とが、私の見るところでは、あるいは誤まっている点があるかもわかりませんけれども、ほとんど無関係に置かれている。ということは、いわゆる日雇い労務、きわめて単純な労務に従事しているが、しかし単純な中にも長い間やるわけです。臨時的に日雇いにいって、すぐ半年や三カ月の間で次の職業が得られるという場合には失業対策は今日の姿でよろしい。しかしそうではなしに、一年も二年も三年も同じ仕事をやっているわけです。そうすると、そこにはやはり長い期間にわたっての技能の習熟が行われているはずだ。セメントをこねる技能あるいはれんがを積む技能、芝生を植える技能、公共事業の中でもいろいろな熟練を要する仕事があると思う。それが期間がたつにつれておのずから習熟してくる。技能が練磨されてくる。そういうところに着目すれば、さらにこれに計画的な技能を与えるということは比較的容易だ。それらの働きの中からよく識別をすれば、おのずから自然に技能を持ってきた者、あるいは将来に技能を修得できる可能性のある者は選別できると思う。どんどんそういう者に職業補導を行うべし。そうして従来の日雇いから今度はれんが積みなりあるいは芝生を植えるという一つの特技を持った者として一般の事業場に雇用されるような機会、条件を作るということを失業対策事業の中に加味できないか。できるはずだと思う。訓練所もけっこうです。あとでこれは言いますけれども、しかし訓練所に野放図に入りなさいといっても、入るにも二倍半からの要求があるのですからなかなか入れない。そうすると役所仕事で、悪く言えばどんどん押しかけてくるのだから、そうそう親切でなくてもいい。職案法によれば補導を受ける者は国からの給付金を受けることができるとなっておる。そういうこともまあまあいいだろう。しかし日雇いその他の関係で職業補導をやろうとするならば、これは賃金を与えるかないしはそういうような国の給付金を与えて、働きながらその実技をやらせるという条件でなければ技能は持てない。そこに一つの問題点がある。それは職安法でも解決できるはずだと思う。今度の訓練法の中にどの程度そういうことが加味されているかはあとでお聞きしたいと思いますけれども、そういった面だけのことをとらまえてみましても、よく悪口を言う人はいわゆるニコヨンだ、ただ毎日漫然と時間を過ごせば三百何がしかの賃金になる、こういうことではいかぬじゃないかという議論がある。この種の議論ができる一つの原因は、むしろ政府なりわれわれにもあると思う。だから、それをいつものんべんだらりと同じような状態でほうっておくのではなしに引き上げる。引き上げていって、雇用の機会を与えるというような努力が政策の上で積極的に行われなければならない。安定局長どうでしょう。そういう点でこれは最も具体的な計画だと思う。ただ言葉の上で答える問題でなしに、具体的にやれる問題である。何か具体的な御考案がありますか。
  76. 百田正弘

    ○百田政府委員 ただいま辻原先生のお話の点は、きわめて具体的かつ適切な御提案でございます。現在の失対の登録者でございますが、大体この失対事業目的というものは、企業から離職した人たちが次の雇用の機会を見出し得るまで一時的に労働力を温存するという意味におきまして始められたものでございますけれども、施行後すでに十年になんなんとし、先生のおっしゃったように、これがもう一つの職業的なものになっておる。しかも適当な職場につけないために非常に長く、もう五年も六年も失対事業をやっておる。あるいはまた年令の関係からいきましても、五十以上の人たちが三割以上も占めておるというような状況である。また一方におきまして、ほかに働けない方たちが失対の草むしりくらいならということで、生活に困って登録を求めに来られる人があるといったような関係で、登録者の幅が非常に広くなっておる。これを一律に取り扱っていくことは、かえって失対事業というものを非能率化し、ますますこれを評判の悪いものにしていくもとでございます。今後はやはりそうした対象ごとに適切な対策を立てていかなければならぬ。  第一の、いわゆる企業から離職して失対に入った人たちあるいは若い人たち、こういう人たちはできるだけ早い機会に今先生のおっしゃったように民間の方に就労させていくような措置を講ずる必要があろうかと思います。そのためには今御提案のように職業訓練を施すことによって民間その他に持っていく、これはきわめて適切なる御提案であろうと思うのであります。この場合に一番問題になりますのは、その補導を受けます期間の生活と申しますか、賃金をどうするかという問題であります。この点につきましてはわれわれといたしましても従来から何らかのいい方法はないかということでいろいろ検討して参ったのでございますが、現在実施中のものといたしまして二つの方法をとっておるのでございます。その一つは失業者に対する特別指導訓練、これは昭和二十九年の八月閣議決定に基きまして、特に公共事業等に対する就労吸収措置を強化するということで発足したものでございますが、こうした建設関係の仕事について特別の現場を選定いたしまして、その現場で作業訓練を行うというような方法で、昭和二十九年以降五百万円程度の予算で大体五千人ないし五千五百人の人たちにつきまして従来やって参ったのでございます。その結果によりますと、昭和三十一年度におきましては五千六百人を訓練いたしまして、そのうちの八百人が民間事業に、千六百人が公共事業に就労することができたという成績になっております。現在、昭和三十二年におきましても五千五百人についてやっておりますが、これは今までの状況から見て相当の成績を上げておると思いますので、こういった点は先生の御提案の趣旨にも合うものだと考えますので、今後一そうこういうことを失敗させないように育てて参りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  もう一つの方法といたしまして、半日制補導、これは先ほどお話のように、補導をしておっても賃金がもらえないということでは困りますので、特別の現場をきめまして、そこに半日間だけ働いて、午後ないしは夕刻から補導をするといったような方法をとる。これは試験的に現在東京、それから長野県の岡谷でやっております。岡谷におきましては、鋳物の補導をやっておるわけでございますが、これなんかは土地の鋳物業者のところで人が足りないというようなこともございまして、鋳物業者の協力を得まして、現在試験的にやっておりますが、これなんかは比較的いい成績をおさめておるようでございます。東京も品川その他の補導所におきまして、ブロック建築でございますとか、熔接でございますとか、こういったものの半日制補導を実施いたしております。これらはまだきわめて小規模でございます。いろいろそのやっている中から問題点もございますので、そうした点を解決しつつ、先生の御提案の御趣旨のように、こうしたことを伸ばしていくことによりまして、いつまでも失対事業に定着しない、高い賃金の民間事業、あるいはその他の事業につけるように、われわれ一そう努力して参りたい、こういうふうに考えております。
  77. 辻原弘市

    辻原分科員 今詳細な御説明がありましたので、私の考えていることがすでにある面実行されていることを非常にうれしく思うのでありますが、もっと私は具体的に伺ってみたいと思うのですが……。
  78. 山本勝市

    山本主査 その問題で私から……。その補導所を出た者が、補導所がまた臨時みたいになってしまうおそれはないか。補導所を出たら今度は大体定職につけますか。あるいは補導所がやはり場所がかわって臨時みたいなことになるのじゃないか、その点を聞いておきたい。
  79. 百田正弘

    ○百田政府委員 補導所の場合には今東京と岡谷くらいがやっておるのでございまして、今先生の御心配のようなことのないように、気をつけてやっていかなければならないので、こうした試験的にやっているところの結果を見て、今後やっていきたいと思いますが、たとえば岡谷等の場合におきましては、業者ともちゃんと連絡をつけております。終了したら必ずとるということになっております。また東京でやっておりますブロック建築等につきましては、卒業すれば非常に売れ行きは一〇〇%というような状況でございます。そういう種目を選び、あるいは地方におきましては、その土地における不足している技能について、業界の協力を得てやるということになれば、ある程度の成績をおさめ得るものでございます。
  80. 山本勝市

    山本主査 今日雇いをやっておる者の中からピック・アップして補導所へ入れた者が何パーセントくらいあるか、そうじゃなくて、そういう日雇いでなかった者で、新しく補導所へ入った者が大部分なんですか。今の辻原委員の御質問は、日雇いでおる連中に先の希望を与えてやらなければならぬ、それがこれまですでにやっているという者の中に相当数入っておるのかどうかということでしょう。この希望を持たせるということは重大な問題です。
  81. 百田正弘

    ○百田政府委員 今申し上げましたように、一般の補導は補導所としてやっておるわけでございます。特にそうしたことを試験的に日雇いについてやってみたわけでございます。五千何百人という数字はこれは作業訓練でございます。従って今のセメントをこねてやるとか、あるいはブロック積みとか、そうした作業を通じて、そこで修得させるというようなやり方でございます。
  82. 辻原弘市

    辻原分科員 その点ちょっと確かめてみたいのですが、今特別指導訓練をやっている対象の五千人、これはいわゆる登録者の関係ですが、そうでなしに、一般の失業者をも対象にしてやっておるのですか、その点はどうですか。
  83. 百田正弘

    ○百田政府委員 現在のところでは失対事業適格者、登録者を対象にしてやっております。
  84. 辻原弘市

    辻原分科員 それならば、私は機械的に言えば、こういうことになると思うのです。現在五千人をやっておって、そのうちで三十一年の実績ですが、八百人が民間の方に技能者として新しく雇用の道が開けた、千六百人が公共事業の方に行けた、概数にいたしますと、四分の一はそこで本格的な新しい就職を持っていけたということになります。そういたしますと、ここで予算に大体二十万ないし二十五万の失対事業費が年々組まれている。そうするとこの二十万のうちで、これを総合して計画を実施した場合、機械的にはいかぬかもしれぬけれども、少くともこの一つの比率が恒常的なものだということになれば、約二十万の中の五万程度の者はいわゆる技能者として再出発ができる。そういたしますと、年々この二十万あるいは二十五万の失対事業費というものは、これは中身を見れば、今のようなやり方では、二十万は二十万、二十五万は二十五万で固定して、比較的同じような対象の層に固定してしまう。ところがそれを職業訓練職業指導というものとあわせて、そうして漸次高めていくという構想に立つならば、二十万を組めば、少くとも二十五万の効果を発揮するということなんです。そういうことですね。だからそのうちの半数は、いわゆる単純労務から新しい何がしか若干の技術を要するものに変ったとするならば、それに政府もあるいは民間も協力して雇用の機会を与えていくということならば、少くとも二十万の予算は有効に七割の効率を発揮する。ですから私の言いたいことは、在来のんべんだらり、とにかく完全失業者がこれこれだから、大体この程度失対事業費として組んでいけばよかろうというふうな、率直に申してそういう印象を与えるような失業対策事業であっては困ります。石田大臣も見えましたが、そういうことを言えば、そういうことでなしに、正確な数字をもって言われると思いますが、従来統計なり失対を何年かやってきたことをながめてみると、そこに新味がないと言わざるを得ない。そのことはすでに実施をされておりますから、大臣も今見えましたので、決意も聞いておきたいのでありますが、今失業対策事業というものと、いわゆる日雇い労務に関する職業補導をあわせて行なって俗にニコヨンと言われるような形のものから一歩技能を持った形に切りかえるような失対事業の形にしろ、こういう意見を申し上げておるわけですが、聞けば、若干試験的なことが行われておる。しかもこれが聞けば、成果が上っておるというならば、なぜ今年の予算なんかでももう少し規模を拡大して総合的におやりにならぬか、これは国の経済から見れば、また実際の失対事業から見ても、効果のあるものだと思う。これについて大臣のお考えも一つこの機会に承わっておきたいと思います。
  85. 石田博英

    ○石田国務大臣 例の世上ニコヨンと言われる登録労働者諸君の問題でありますが、これは二通りに分けて考えなければならぬと思うのであります。一つは、すでに老齢に達し、それから相当長い間固定化しておる人たち、特にその中には婦人も多いのであります。そういう人たちの取扱いと、それから比較的若い人たち、勤労意欲もあって、更生の希望を持っておる人の扱い方、その二通りを考えなければならぬと思います。それからもう一つは、地域によって非常に勤怠の差と申しますか、能率の差があるのです。きわめて顕著な一例を申しますと、名古屋と岡崎などを比べますと、岡崎などは引っぱりだこで、非常に民間関係の事業所が多い。そしてその中には民間の安定した雇用に転ずる人もあるのに反しまして、名古屋などでは非常にいろいろな批評もある。こういうような状態の中で、日雇い労働者の諸君に更生の道を与えるために、今までできるだけのことはやってきておるわけであります。と同時に、日雇い労働者としては特別指導訓練、あるいは半日訓練などをやっておりますが、一般の総合職業補導所等におきましても、門戸を開いておるわけでございます。もとより総額において不足だと言われればそれっきりでございますが、門戸は決して閉ざしているわけではございません。一方固定化されて、相当の年令に達し、家族もいる人たちに対しましては、やむを得ませんので、住居の提供というようなことを考えまして、ことしは第一回目の試みでございますが、東京、大阪にアパートを建てて収容するというような措置を考えているようなわけでございます。
  86. 辻原弘市

    辻原分科員 私の聞きたかったのは、今大臣も階層別に実態をそれぞれの特徴に分けてお話があったのですが、これは千差万別で、一律には申せませんけれども、しかし最近の傾向を見ると、かなりの層が固定化してきているという傾向があるのであります。従ってこれらを固定化したままでほっておいたのでは、失対事業自体門戸を閉ざしてしまって、新しい失業者に登録の機会を与えるということができなくなりますから、できるだけ固定化した者に技能を与えて、そうして就職の機会を与えるというような方向に対する施策を、もう少し積極的にやってもらいたい、こういうことであります。その方法として、今二つのことが述べられたわけですが、もう一つ伺っておきたいのは、職安法の二十八条にいう、補導を受けつつ給付を受けることができるということ、私はこれが完全に生かされるならば、今の二つのほかにもう一つくっついた方法だろうと思うのでありますが、それは第一に言われた特別指導訓練等もそれに包括されるのか。ないしは、事業者が半日を休ませるということで協力しなければなりませんが、半日を休ませるということについては、あるいは事業によってそういうわけに参らぬ事業もあります。そこで最も簡単にやろうとすれば、その期間についての生活の保障を法律によって国が見ていくなり、あるいは地方公共団体が主体になって見ていくなり、何らかの方法をとれば、適格者に職安法にいう職業補導の訓練を受けさせることができるわけなんです。そういうことも含まれているのかどうか。また今までそういうことをやったことがあるのかどうか。その点を一つお尋ねいたします。
  87. 百田正弘

    ○百田政府委員 職業安定法の二十八条に、「手当を支給することができる」。と書いてございます。これは現在身体障害者等については、こういうことをやっております。ただ現在の補導所におきまして、働きながら補導を受けられるように、夜間職業補導等設置いたしておるわけでございます。さらに今の現場の作業訓練といったようなものにつきましては、それがそのまま訓練しながら賃金になる、こういうふうな形になっておりますので、この点が一番考えなければならぬ問題でございますので、そういうふうな方法をとっておるわけでございます。なお、補導所に、一般の人たちに対しましては手当はございませんけれども、できるだけ失業者につきましては、失業保険受給期間中に補導所等を利用してもらうというような方法で、技術を身につけて再就職してもらうというふうにいたしております。
  88. 辻原弘市

    辻原分科員 登録失業者といいますか、そういう形のところにあまり偏してもいけないと思うのでありますけれども、現在の日雇い労務は一つの社会問題でもありますし、同時にこれに就職の機会を与えていくということになれば、かなり技能を持った人たちも出てくるということを考えれば、やはりこれを対象にして給付を与えていくような道も開いてはどうかと思うのです。そうして一般の職業補導を——それには適格者でなければ困ると思うのでありますが、大体国で定めた一日の賃金に見合う程度のものを保障すれば、補導は受けられるわけなんですから、それも一つ研究をされて、そうして現場において訓練をするということ、あるいは事業の性質から、半日を事業主体に協力をしてもらって、休ませて補導を受けるというやり方、さらに給付を直接やるということ、これも加えれば、私はいろいろなケースによって行うことかできるんじゃないか、このように考えますので、総合的に労働の質的内容を高めるということに、一つ今後とも御努力を願いたいと思います。  それからやはり失対の問題でありますが、これは大ざっぱに言いますと、私はこういう印象を持つんです。私はいつもその感じを深くするのでありますが、日本にはいわば不完全失業といいますか、あるいは不完全就労といいますか、ともかく膨大な半失業状態が野放しにされておる。ところが失業問題あるいは雇用問題を問題にされるときに、主として完全失業者を云々してるわけです。それで政府施策を見ても、結局完全失業については、不備ではあるけれども、ともかく失業対策というものが直接の対象として行なわれている。完全失業者というのは、分布状態を見れば一目瞭然でありますが、主として都市を中心にして分布してるわけです。農山村は、これは不完全就労、不完全失業、こういう形における失業問題が累次都市のものでなしに、むしろ農村ないし山村に行けば行くほど非常に深刻になっているということを私は考える。そういう場合に現在やっている、いわゆる一般失対あるいは特別失対あるいは臨時就労対策というものが、どれほどの効用を発揮してるかということに非常に疑問がある。今日の法律の建前でもってかなりの制約が加わっております。同時に今度は予算の上からの制約が、一つの実際の取扱い上における制限となって、事実完全失業と何ら変らないような失業状態がありながら、農山村においては失対事業によっての失業救済というものが行われないという現実。私は去年でありましたか、やはり予算委員会のときに、当時の倉石大臣にもその点を申し上げておきました。そういうことがありますかというふうな、むしろ反問的なお答えでありましたが、私は実際自分がそういう農山村に足を踏み込んでみて感ずることは、これは極端だが、全村の八割が失業、たとえば山奥に参りますと山林労働者、山林の経済条件というものが近年悪くなってきておる、漸次伐採をするものも減少しておる。結局そこに失業問題が発生しておる。しかしそれを統計上は山林労働者、いわゆる職業を持っておる、あるいはネコの額ばかりの山地を作っておるというのを、いわゆる不完全就労なり不完全失業という名でもって十ぱ一からげで政府の統計に出ておる。しかし実体は完全失業です。私はそういう失業問題も、現行の法律なり現行の予算をもってしても、あながちやれないことはないと思う。そういう方法論について何か研究をせられたことがありますかどうか、この点一つお答えを願いたい。機械的にお答えになりますと、それは村で負担すべき費用をもって、そうして指定を受ければよろしいんだとお答えになるかもしれませんが、現実にそういっておらない。そういった町村は、これは直接いわゆる公共団体が、その当該町村が事業主体になるだけの財政負担の能力がないです、地方財政の貧窮から。実際は交付金々々々と言いますが、交付金にはひもがついていない。貧乏な村になかなか回らないということで、現実としては、これはなかなかやらない。だからそこらに、何かやり方を変えればやれるように私は思うのであります。そういうことを研究されたり、そういう一つの問題があるということをお考えなすっていらっしゃるかどうか。さらに私は質問をその後続けたいと思います。
  89. 石田博英

    ○石田国務大臣 わが国の雇用及び失業問題を考えるに当りましては、午前中井堀委員の御質問にもお答えをしておいたのでありますが、全雇用労働者の中に占める完全失業者の割合は、実は西欧諸国に比べて決して多くはない、むしろ少い。それにもかかわらず日本の雇用、失業問題が大きく取り扱われるのは、お話の通り不完全就業者が非常に多いところに問題があるのでございます。従ってこれを考えますに当りましては、これを処理することができなければ日本の産業構造、労働条件向上ができないことは言うまでもないのでございますから、政府が今回最低賃金制を実施いたそうといたしまするのも、この下からの支えを作りまするとともに、低賃金労働層に対する労働秩序というものを確立いたしまして、この改善に資して参りたいと思っておるわけでございます。御承知の通りそういう層が農山漁村に非常に多いと思います。そういうところに対しましては、実はそういうところで意外にもこの失業対策事業の効果と申しますか、作業能率が非常に上っておるわけでありまして、都会地などではいろいろの批判がありますが、農山漁村においてはむしろ歓迎と申しますか、その公共事業としての効果が非常に上っておるわけでございまして、私どもの方としても積極的にそういう状態に対処する措置をとっておるわけでございます。その場合、地方行政、地方財政との関連でございますが、地方財政の非常に困難なところに対しましては、御承知のごとく高率補助等の方法をとっております。しかし何と申しましても、地方財政が困難なのだから全部国でやるべきだという建前をとられると、国の財政もやっぱり困難なのでありまして、結局地方財政がやはりある程度負担に応ずるという心がまえになってもらわなければ困るのであって、地方財政はもう困難なのだときめてしまって、地方財政はだめだときめてしまうのには、地方財政それ自身の中に私はやっぱり批判に値する要素が非常に多いと思います。そうきめてしまうのでなくて、やはり国としても積極的にそういう状態に対応する準備も用意もございますから、またよほどの場合においては高率補助等の適用もございますが、地方財政はもうすでに困難なのだから、これに出せというのは無理なんだという頭からのきめ方は、私はやはり間違いなんだと思う。これはどうも終戦以後とうとうとして下から上へたかる習性が流れてきて、日本は何かといえばアメリカの援助金にたかる、地方はすぐに国の援助にたかる、民間団体はすぐに地方自治体の援助にたかるという風潮が流れておるのでありますが、とにかく自分の町村に起った事態は、町村においてある程度の負担に応ずる心がまえは私は当然なので、それが困難だということで許されるならば、国家の財政もまた困難といわざるを得ないのであります。
  90. 辻原弘市

    辻原分科員 あなたの言われるようにいけばはなはだけっこうであるが、困難というか、不可能に近いような状態に陥っているいわゆる山間町村の数が多いことは、これは私が申し上げるまでもないと思います。本来村が大体標準的にやらなければならぬようなそういう行政については、これはかなりしてもおられますけれども、しかしながら積極的にそれをやろうとするには、やはりそれらの町村の指導者がよほどの腹をきめてやらない限り進展をしていない、また進展をしないわけなんです。あなたの言われるような考え方にみな立つならば、かなりの困難を押し切っても実施されようと思うけれども、そうでないところに問題がある。だからそれをさせるためには、あながち府県のこと、町村のことは府県町村でやる建前なのだから、国も地方も同じような困難な状態だからそうそう無理を言っては困る、こういうような一つの考え方でこういう深刻な失業問題を取り上げられておったのでは、これは問題の解決はないと私は思うのです。あなたの言われる一般論は、これは私も否定するものではない。しかしながら現実はそういうような一つの言葉でもって解決できる問題ではないだけに、何かそれに、いわば誘い水的な国の施策を、忠実にまた誠実に打っていくのが、今日のこれらの不完全就業者に対する国のあたたかい政策ではなかろうか、こう私は申すのであります。
  91. 石田博英

    ○石田国務大臣 私は決して原則論だけを述べているのではなくて、特殊な場合においては高率補助等の方法をすでに講じてあるということを申しておるのです。それから地方財政の場合などは、やはり困難であるということは十分認めます。一般論として困難であるとは思いますが、一例をあげれば、地方公務員と国家公務員との賃金ベースの差、さらに言えば、何かといえば、一人でくるところを五人も八人も人間を動員して東京へ現われてくる風潮、節約すべき余地は十分に私はあると思う。大体農山漁村でわれわれの方に失業対策事業の割当を要求してくる数というものはせいぜい五十人から百人くらいの間であります。それらのものは、町村のそういう無益な費用を節約すれば、応ずる余地が全然皆無だとは私は言えないと思う。やはりみずからの努力をそれだけして、それから国の協力を求めるのが自治体本来のあり方であると私は考えるので、これは一般論だけを言っているわけではありません。困難なところには高率補助等の方法をとるのであるけれども、地方財政がすでに全部困難なのだから国でやらなければだめなのだというような、これは一種のたかり根性で、そんなことをしておったのでは国の財政というものは保てない。それから本年のように相当数失業者の数を見なければならない場合におきましては、補助率の問題、稼働日数の問題等は、やはり全体のバランスから見てある程度犠牲に供するもやむを得ない。そうして数を確保するという建前でいかざるを得ないのでありまして、私は今回の失業対策事業というものは、十分の配慮と温情とをもってやったつもりであります。
  92. 辻原弘市

    辻原分科員 自画自賛はけっこうでありますが、一般がそう思っていないところにやはり問題があるので、それはあなたの話として聞いておきます。  そこであなたは特別の場合には特別の措置をしてあると大みえを切られたのでありますが、一つ特別な措置をしてあるところを、具体的に、その地域、それからそれに要した金額、吸収した人員それを承わっておきましょう。
  93. 石田博英

    ○石田国務大臣 それは職業安定局長から答弁いたさせます。
  94. 百田正弘

    ○百田政府委員 特別な措置は、三十一年度から非常に失業者の多い地域で財政が困難なところにつきましては、一定の率以上のものにつきましては、通常は三分の二の補助率でありますけれども、一定の率をこえる部分につきましては五分の四の補助率をそのこえた分についてやることになっております。そして総額といたしましては二億九千万円でございます。なおその地域につきましては、府県の数で八、それから市の数で、市町村合せて百三十くらいであります。
  95. 辻原弘市

    辻原分科員 具体的に府県で何ぼ、市で何ぼ、町村で何ぼ。
  96. 百田正弘

    ○百田政府委員 都道府県で八、市で九十四、町村で三十四、計百三十六でございます。
  97. 辻原弘市

    辻原分科員 今数字に表われておりますように、石田さん、私はむしろその町村の潜在失業者というものを重視しなければならぬということを言っている。私も若干知っております。どういう地域が行われておるかということも知っております。しかしその傾向は依然としてやはり比較的都市中心の傾向があるわけなんです。だから都会地における失業者というものは、もちろん就職の機会は困難でありますけれども、就職についての対象は変らない。ところがそれに比較しますと、いわゆる農山村における失業というものは、一面半失業状態だからといえばそれまででありますが、しかし食えない状態にあるわけですから、これは失業と同じです。いわゆる失業対策という本来の目的は、食えるようにすることですから、食えない状態にあるということを見れば、私はまず半失業も完全失業もそう大差はないと思う。そうすると農山村においては、これらは農耕をやるか山を相手にするか、その程度の仕事を考えるより他に就職の機会がない。そこに深刻さがあるということです。しかも大体同じようにその村なら村、町なら町のある一定数が同じような状態に置かれる。こういう深刻な場面を私は申し上げているわけです。で、この特別の、いわゆる若干の補助率を増して特別にやるということにおいて地方負担を軽減する、けっこうであります。これはやっていないということを私は申しません。しかしこういう考え方を石田労働大臣、これはもう少し広めてもらわぬと、ここであなたに大みえを切ってもらうわけにいきませんぞ。ですからそういうふうな地域にたとい、あなたは五十人、四十人と言われましたが、多少町村合併の最近の観念がわかっていない。町村合併はどんどん進行しております。町村の規模がふくれ上っております。もとの小さい村はあるいは五十人、四十人であったかもしれないが、最近の町村においては、これは貧乏村が寄ったものですから、経済的にあまり変ってないかもわからないが、しかしながら人間の数だけは間違いなくふえております。そういたしますると、かなりの規模で、百あるいは二百、多いところでは三百、私の知っているところでは三百くらいのものが、何とか一つ失対事業を起せないかという意見の申し出がわれわれの方にあった。そういうことから想定いたしますと、かなりこの集団的な人員についてもふえてきている。ですからこれらの農山村のいわゆる不完全就労に対する失業対策をもう少し幅を広げて、それにマッチするような一つの考え方、施策をやってもらいたい、こういう私の希望なんです。
  98. 石田博英

    ○石田国務大臣 町村合併のことはよく存じております。今市といったところで、最近の市というものは御承知のような状態でございまして、町村合併の結果、それこそ市の中にたんぼの方が多いところがずいぶんあります。従って市が多いから、町村の数が少いからということによって、農山漁村に考え方が薄いということは言えないと思う。特に事業主体都道府県の場合は、あなたの郷里の和歌山県などもちゃんと入っておりまして、十分考えておるわけでございます。それからこういう問題は抽象論でなくて、具体的な問題でございまして、こういうところの町村で失業対策事業を起したい、その財政状態がどうという具体的な事例をいただいて御相談いただきましたならば、それに沿って実体的な処置をとります。抽象論で幾らやられましてもこれは切りがない話で、和歌山県などはもう率先してやっておりますから、具体的な事例をどうぞお持ちいただきたいと思います。
  99. 辻原弘市

    辻原委員 今後一つその言葉を忘れぬように……。  そこでもう一つの問題を私は申し上げたいと思います。それは、先ほどの失対事業全般の中に、固定した層ができつつある。これは私は年限がたつにつれて固定してきたものと、それから地域の実情から固定したものと、この二通りがあると思う。この後者の場合、大臣具体的にとおっしゃるから郷里の具体的な例を一つあげましょう。その後者の場合は、特に一般に言われる特殊部落と称される地域にこの傾向が非常に多い。そういう集団的に生産の手段を持たない、耕地もなければ、他に特別な職業もないという層が固まっているところが散在をしている。多いのになれは、まず登録人員で希望を全部満たすとするならば、私の郷里などでも、ある市をとってみても、少くとも千五百か六百、ところが現実に国からその一つのワクといわれるあてがいをされているものは、千を若干こすようでありまして、こういう形で、しかもその失対への就職希望といいますか、そういうものが年々ふえつつある。ところが国では予算に限界がある。やはり一定の比率でもってこのワクを押えなければならぬというので、かなりその登録をされることにあぶれている人員がある。そこで私はかってそういう提案を労働省にも申し上げたことがありました。これは非公式ではありますけれども……。北九州の炭鉱地帯などでは特別な区域が設定されているようであります。それと同じように、こういうふうに地域的に見て、集団的に、しかも今後も日本の産業構造なり、そういった方面の適用をしなければその地方の産業構造が変らぬ、あるいは生活条件が変らぬというような地方については、これは私は特別に指定をして、それに見合うようなワクをあてがって、少くとも失対事業としてかなり間尺に合うような形にする必要があると思うのですか、そういうような一つの特別な地域というものは、去年——おととしでしたか、あの炭鉱の不況に備えて失対事業の特別ワクをあそこにきめた。これと同じような考え方をそういった特殊なケースの方面にも適用を及ぼしていくような考え方はないか。この点を伺っておきたいと思う。
  100. 石田博英

    ○石田国務大臣 今お話の中に出ました特殊部落の問題は、私は特殊部落の問題だからといって特別に取り上げることは、特殊部落の問題を解決するのにはどうかという考えを持っております。実際問題として特殊部落の問題、特に経済的に困難になってきました根底は、与えられておった特権を剥奪されたところに非常に大きな問題があるように思うし、古い徳川幕府時代からの専業的なものが専業的なものでなくなってしまったところにも困難な問題がありますし、非常に長い間の差別的な取扱いも問題の原因だろうと存じます。しかしそれは、それだからといってそういう観点からでなくて、失業の多発地帯という観点から、そういう地域に対しましては、九州でやったような特殊な取扱いをいたすべく今企画庁その他と研究中でございます。それから私どもの方で法律補助をやっておりますところをちょっと二、三具体的に述べますと、ことさらそういうものを特別の対象にはいたしておりませんが、現実にはそういう考慮を払っているということがおわかりいただけると思います。というのは事業主体都道府県で高率補助をやっておりますのは京都、兵庫、奈良、和歌山、広島、福岡、佐賀、福島、こういうふうになっております。福島を除いて全部西の地域に集約されている。それからたとえばあなたの選挙区付近のことを言うとすぐおわかりだろうと思うから——最もわかりやすいと思いますから申し上げますが、御坊などは高率補助をいたしております。私どもの方では十分考慮を払っておりますが、なお一そうそういうことにつきまして、北九州の炭鉱不況のときに行なったように、失業多発地帯に適切な措置を講ずるよう今準備中でございます。
  101. 辻原弘市

    辻原分科員 北九州と同じようにそういうワクを広げるということでありますから、その点は将来具体的に事務当局の方で解決をせられると思いますので期待をいたしております。  次に先ほどちょっと触れました職業補導、それから今度新しく提案をしようとする職業訓練法のようなものについて、若干聞いておきたい点がございます。それは今の失対とも関連があるわけでありますが、職業補導というものは二つの考え方があると私は思います。一つは新規に労働人口あるいは就労人口として加わる者に対して、より高位な技術を与えるという目的でもって行ういわゆる職業補導、それと、現在失業状態にあって、それに再就職の機会を与えるために新たなる技術を付与するというこの二つの考え方があると私は思う。現在の職業安定法によれつば、これはどちらが主であるかといえば、むしろその法律の名前通り、当面している失業問題に対する職業指導ということが主になっているように私は考えるのであります。そこで今度作るいわゆる職業訓練法というのは、どこを重点にとられてこれを運営されようとするのか、これは根本問題でありますから大臣からお答えを願いたいと思います。
  102. 石田博英

    ○石田国務大臣 私は新規労働力として参加する若い人たちと、すでに職業に従事しておって転業を希望する人、あるいは現在職のない人、そういう三通りの状態に対して区別をつけて対象にしようとは思っていないわけであります。門戸は均等に開きたい、こう考えております。それでは現実に今はどうであるか、現実に今までのことを申し上げますと、大体六割くらいは新規労働力でございました。四割がそうでない人である。今度は門戸を開いて参りますから、その結果どうなるかわかりませんが、特別にそれに区別をつけてやるということは、私は今の職業補導の状態——現在はこれは予算の面の制約というよりはむしろ指導員の不足、これが非常に大きな問題でありますので、指導員をふやしていくということに見合って、設備なり対象人員をふやしていくという方法をとっていく。現在の段階におきまして、どうも対象を区別して、いずれに重点を置くということは非常に困難でございます。門戸は平等に開いて、ちょうど何と申しますか門戸開放、対象に特別の区別をつけないという考えでいくつもりでございます。
  103. 辻原弘市

    辻原分科員 私がなぜこういうことを申し上げるかといえば、政府として、国全体としてはもちろん区別をつけるべきではなく、いずれも重要な問題としてやらなければならないのですが、労働省自体が所管をされる問題としては、もちろん全般をおやりなさることは非常にけっこうでありますが、限られた予算——大臣がたびたび言われるように財政は困難でございます。そういう建前からいくと、やはりおのずから裏づけられるものに限界があるとすれば、重点的な形でやらなければ効果が上らない。そうしてその調整はそれぞれ各省が協力してやればいい。たとえば職安法の中にも、職業補導を行う場合に、いわゆる通例学校で行うような教育それ自体は除外しております。学校教育法の関係については補導の面には加えない、こういう建前になっておる。ということの趣旨は、やはり学校教育の範疇で行われることは学校教育でやれということです。その考え方を進めて、私は国全体として総合ミックスされるものであるが、それぞれ所管があるならば、所管としては当然だと思う。そこで今学校教育の面でも職業教育あるいは科学教育、実業教育ということが高く叫ばれておる。文部省が怠慢で今日までそれをやらなかった。また今日も大して目に見えるような施策が行われていないところに欠陥があるが、本来ならばもっとやるべきなんです。各国の例に徴しましても、いわゆる学校における職業教育、実業教育の充実、また力の入れ工合は日本なんか比にならないと思います。外国の民間事業の経営者自体がやっておる職業教育、これなんかも、われわれが見ても日本の経営者の頭と違う。こういうところにも問題がある。そこで私は新規に雇用される者、新規に労働人口に加わる者は、少くとも学校教育の範疇においてかなり実業教育を充実すべきではないか。そういう意味から申すと、たとえば定時制高等学校においてもかなりの分野があると思う。この点をそうした方面に重点を置き、そうして労働省がこれから積極的にやっていただく分野は、これは当面しておる失業者にいわゆる再就職の機会を与えるという職業指導が、今日の情勢から見ると重点的に行わるべきではなかろうか。前者を軽視しろというのではありません。これは誤解のないように願いますが、そう門戸を広げてみたって従来の実績から見て大して期待が持てないから、今のうちからその点を警告しておるのです。何もかもやろうとして結局何もやれなかったというよりも、一つの問題を具体的にとらまえてそれを積極的にやる方が私はより適切だという、労働省の今後の行政上の心配からむしろ私はそう申し上げるので、その点誤解のないようにしていただきたい。ですから前者の新規就労については、これは労働、文部あるいは厚生当局との連絡を密にし、そうして積極的にかなりの部分を学校教育にそれを持たせる。こういう直接新規のものを教育するには日本だってやっておるし、またかってはやっておったのですから、事業主体も責任をもってその新規のものに自分の事業主体に合うように訓練する、そういうことを積極的にやらせる。残る問題はやはり労働省がやらなければならない。どこもやってくれないものは、現在の当面しておる失業者ですから、これにうんと力点を入れてもらいたい、こういう私の意見なんです。
  104. 石田博英

    ○石田国務大臣 他省の行政についていろいろ申し上げることもどうかと思いますが、文部省に対しましてはただいま御指摘の通り科学技術方面に対する教育を積極的にやっていただくように、間断なく希望を申し伝えているところであります。従って新規労働力はそういう方に期待すべきだという理論的な立場は私も賛成でございますが、現実はまだなかなかそこまでいっておりません。従ってお前は新規学校卒業者だから労働省の職業補導所に来るのには不適当だというわけには参らないのでありまして、そこで私は先ほどから門戸を開放するというふうに申し上げているわけでございます。ただ特殊な条件、たとえば駐留軍失業者、そういう人たちに対しましては特殊な職業補導をやっておることは、予算書をごらん下さればおわかりいただけることと思います。
  105. 辻原弘市

    辻原分科員 大臣が今言われた特殊な職業補導、これを私は今申し上げておるのではございませんで、もちろん身体障害者、あるいは駐留軍関係はこれは別途の形で特別に行われる。私は一般的な問題として、今申し上げたわけであります。その点は誤解のないように願います。  時間もだいぶたちましたし、もうないようでありますから、なおこれらの問題についてお尋ねいたしたいこまかい点がございますが、省きまして、次に簡単に災害補償保険の関係について伺っておきたいと思います。  これはこの間の予算委員会でわが党の滝井君からも一つの所論が述べられておったのでありますが、これはどうかというと、最近の傾向として実際上の災害補償保険の取扱いにいささかあたたかさがなくなっておるのではないか。やる方の側から言えば、法規通りやっているのだ、こういう説になるかもしれませんが、いわゆる一般通例の保険という観念の上に立って取り扱っていく傾向になっているんじゃないか。ということは、これは結局、保険を契約する者は事業の経営主であり、保険の給付を受ける者は労働者である。経営者の責任に帰する問題で、保険を受けるべき労働者が迷惑をするという事例が、おそらく頻発しているだろうと思う。だからこれを防止するには、一体どうするか。法律には保険金を納めなければ払ってやらぬと書いてある。その建前通り行けば、事故が起きても労働者は払ってもらえない。そういう問題。それからもう一つ最近の傾向として、これは労働省にも真剣に注意を払ってもらわなければならぬ問題は、中小企業の問題です。独立中小企業の倒産、破産が非常に進行しておる、こういうふうに言われておるのですが、まさにその通りでありまして、中小企業の経営状態、経営内容が悪くなればなるほど、私はこの種のケースが頻発してくると思う。経営者も、別に故意または作為、悪意でもってやるんじゃないが、心ならずも遅滞をする、税金も払えないんですから——というような状態。たまたまそのときに事故が発生した。しかし納めていないから給付の制限をやる。困ってくるのはやはり労働者です。法の建前は、その場合には経営者の責任に帰するんだから事業主が払えと命令を出す。ないものは払えませんと言う。それでいいかということなんです。私は法律の建前はそうじゃなくて、労働者の災害を補償するというのが建前だと思う。そのあたりに何か方法があるはずだと思います。もちろんその審査会があって、不服の審査その他はできますけれども、しかしそれとても現在の法律をもってすべてを律するのですから、それ以外のことは取り扱いません。これだけ申し上げれば何か感ずかれることもあると思います。
  106. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいまのお話の点につきましては、労災保険法の十八条によりまして、保険料の納付を怠った場合において、給付の全部または一部の制限をすることができる、この条文の運用についての問題であろうと考えるのであります。この点につきましては、やはり労災保険も保険事業でございますので、故意、過失等によりまして保険料の納付が怠られるというようなことが頻発いたしますときに、やはり保険経済の健全なる運営を期待することができないわけでありまして、この運用につきましては、実は最近におきましても、労、使、中立三者構成の労災保険審議会におきまして、このような場合には給付をこの程度制限する、このような場合には制限しないというような基準を、実は具体的に詳細御審議を願いまして、大体その基準によって行なっておるところでございます。ただこれを行います場合に、事実認定の問題といたしまして、この基準に果して合致するかどうかという点をわれわれが判断するのでございますが、その判断につきましては、これはほんとうにその中小企業の実情を十分考慮して、親切に決定しなければならないものであると思いますので、われわれは今後そのような考え方を持って、具体的な事案に対処いたす所存でございます。
  107. 辻原弘市

    辻原分科員 私は地方の労働基準局とかあるいは労働基準監督署というものは、もちろん基準法の監督機関ではあるけれども、しかしこれは労働省というサービス機関の中に包括される監督機関であるという建前をくずしてもらいたくない。親切に指導していかなければ、そういった問題についての紛争というものが、今後どんどん審議会に持ち込まれてくると思う。だからそれぞれ所轄している出先機関が親切に指導してやるということがあれば、私は納得をして解決をする問題もあると思う。それらについてのいたわり心が果して十分であるかどうかについては、いささか疑わしい点もあります。このことはあなた方の今後の行政についての指導をお願いするわけであります。  さらにもう一点、労災保険というものについての考え方として、ちょっと私が納得がいきがたい点がある。それは、たとえば事故が発生した。そのときにたまたま中小企業なら中小企業に故意ならざる遅滞があった、保険料の支払いの遅滞があった、こう仮定をいたします。事故が発生したので、ともかく保険料が納まっていなければ支払ってくれないのだから、そこで何とか都合算段をして、労働者に迷惑をかけないようにというので、保険料を払う。ところが給付の方は、もちろんこれは最終的に一部または全部とありますから、全部になるか一部になるかわかりませんけれども、しかしある経営主によれば、保険料は全部遡及して納めさせ、支払いの方は一銭も支払わない、こういうケースがある。これはどこの保険会社がやっても、保険料を徴収して払わぬ保険というものはないと思う。法律全般をずっと目を通して見れば、その思想というものはわかりますから、あながち間違いだとは言いませんよ。言いませんけれども、実際受ける労働者は、そうむずかしい法律の議論もわかりません。基準監督署長さんなり局長さんなりが、その保険の観念に基いてこうこうという議論を百万だらその人に言ったところで、理解はできません。保険料を払ったんだから金をくれそうなものだ、こう言う。そういう点に理解がない。またわれわれが考えても、保険料を払わせると、義務を負わすならば、今度は保険金額を払ってやるという前提に立たなければならぬと思います。だんだん聞いて参りますと、それはもちろん強制加入であるか任意加入であるかという違いも生じましようし、いろいろありますけれども、しかしある意味においては、懲罰的な意味があるということを言われる。しかし私は、懲罰というのはそういう形においてやるべきものじゃないと思う。それは保険の観念を混乱さすものだ。懲罰というものは、法律にはっきり罰則がついておる。事業主、あるいは実際保険金額を受け取る者と分けて、それぞれ罰則がくっついております。だから非常にふらちな者がある。故意に保険の事故を起して、そのときに納めてさあっともらっていくというふらちな経営者があるとすれば、それは法律に照らして処置すればいい。そうでない、故意でない、作意でない、知らずしてやったようなケースについては、私は十分その実態を調査して、少くとも労働者が保障されておる権利が十全に生かされるような法律の運用をやってもらわなければ困る、こういうことを実は痛感をいたしますので、これを申し上げておきたいと思います。
  108. 堀秀夫

    ○堀政府委員 十八条は、法文にもありますように、故意または重大な過失でございますので、重大な過失があったか、あるいは故意があったかという点につきまして、これは事実を十分調査いたしまして善処いたしたいと思います。
  109. 辻原弘市

    辻原分科員 最後に一問お尋ねをいたします。先ほどから職業補導失業対策——これは特に石田大臣本人が自画自賛をされておりますように、非常にボリウムもふくれるようであります。私は労働行政というものは、やればやるほど実に多岐にわたる仕事があると思う。特に現下経済状態から見て、失対事業あるいは職業補導職業紹介、こういった業務に関する仕事は、まず昔の職業紹介所当時の観念からいったならば、そのボリウム、重大性というものは格段の相違であります。そういう意味からいって、これに充てられる庁舎というものは、一般通例の役所の観念と変えてもらわなければ困る。役所はみなサービス機関でありますけれども、しかし実際上は多くはその中に働いておる公務員諸君の事務のためのものである。職業補導職業紹介、あるいは失業保険の問題、こういった事務を取り扱います庁舎、たとえば公共職業安定所というものは、その中に働いておる安定所の職員の方々よりは、むしろ紹介を受けにくる一般の大衆、保険をもらいにくる一般の大衆、あるいは補導を受けにくる人々、こういう人々の便益のために供されるものでなければならない、かように私は考える。そういう点からいって、これらの庁舎がそれらの人たちに便利なように仕組まれて運用されるということは今後特に必要であろうと思う。ところが全国的な状態を見ますと、税務署の建物はかなりりっぱになっております。きょうは大蔵省は見えておりませんのでその点は言いませんけれども、国で見ましても、防衛庁はなかなかりっぱなものです。農林省もりっぱなものです。しかし労働省は、去年壁を塗りかえてだいぶ新しくなりましたけれども、これはそういいとは言えない。私は大衆にもっと接近し、大衆にもっと奉仕してもらわなければならぬ建物が貧弱だということは本末転倒だと思う。特に職業安定所、補導所というものは最近できたのもだいぶありますから新しいことは新しい。いいか悪いかは別として新しいことは新しい。もっとも職業安定所というものは職業紹介所から引き継がれた建物が多いために、むしろ最近地方にできている県庁等の出張所は堂々たる大きなものがある。そのわきに小さながたがたのもので、しかも大ぜいの自由労働者あるいは失業保険をもらいにくる人々が群がっておる。こういうような状態で、私は末端の職業紹介業務あるいは指導行政確立されるのかということを言いたい。石田労働大臣もそういう点に着目されて改善やその他について力点を入れられておるかどうか、この機会に私は承わっておきたいと思います。
  110. 石田博英

    ○石田国務大臣 防衛庁の庁舎と私どもの方の庁舎と比べられるのははなはだ恐縮でございまして、私は今幸か不幸か兼任をさせられております。しかしやはり大衆を相手に——私は別にきたない方がいいというわけではありませんが、どうも防衛庁の庁舎へ参りましても落ちつかないのでありまして、用事が済んだらすぐ労働省へ帰りたがるとこを見ると、やはり狭いながらも楽しいわが家ということでございますが、大衆が出入りしやすいようにするためには一体どっちがいいか、これはなかなか考えものでございます。しかし労働省につきましては、本年度御承知のようなな非常にきびしい予算の中で、労働省だけは約五千万円の新設予算を獲得いたしましたから、ここ一、二年のうちには御期待に沿うような建物になると思います。しかしこれは、きれいなのがいいのか、なかなかきれいでりっぱですとわれわれ庶民は入りにくいものでございますから、どちらがいいかわかりませんが、きれいにするという努力はいたしております。  それから税務署と職業安定所の状態の比較は、実は私先般、予算前の閣議においても統計を持って参りまして大蔵大臣にこれを説明いたしたのであります。確かに税務署はだんだんきれいになるが、テンポからいいますと安定所はそういう工合にいかない。そこで本年も安定所の改良についてはできるだけの努力はいたしました。昨年は新設、改築が十二カ所くらいございましたが、本年はこれは十五カ所いたすことにいたしました。御不満でございましょうけれども、やはりだんだんやっていかなければならぬので、ふえたという点で一つ御了解を願いたいと思います。
  111. 辻原弘市

    辻原分科員 これで終ります。そういった建物を美しくすることもけっこうでありますが、入りにくい建物であっては困るのでありますけれども、そういうことでなしに、便利なような一つの行動形態——危険なようなものは危険でないようににするというような趣旨でございます。私が特に一つの例として職業安定所を申し上げたのは、それはあなたの選挙区へお帰りになって実例を見たらよくおわかりと思いますが、先ほどから私がるる申上しげました失業対策の関係等を見ても、非常に大ぜいの人がこの貧弱な庁舎に殺到するわけであります。失業保険の支払い日というようなときには、わずか十人か十五人の所員の方々は血眼になってやっておる。私はいかに末端行政負担が大きいかということをいつもつくづく感じておるわけであります。そういう点はその中に働く人も働きやすく、来る人もそれによって十分自分の目的が達成されるような形に事務の機構も庁舎のあり方もせめてできないものか。これは少し工夫をし、考える努力をすれば必ずできるわけであります。集会所もありません、待合室も整っておるところも少い。しかし職業紹介業務というものは、大ぜいの人が来るのでありますから、待合室も要りましょう、自転車置場も要りましょう。他の庁舎よりも特に必要とするような部面があるわけでありますから、そういうところを考究されて、それに合うような内容のものを作るように今後努力してもらいたいということを申し上げたのであります。  時間もだいぶ過ぎましたので、私のきょうの質問はこれで終ります。
  112. 山本勝市

    山本主査 これにて労働省所管に対する質疑は一応終了いたしました。  明日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十六分散会