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1958-02-13 第28回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科員昭和三十三年二月十一日(火曜日)委 員長指名で次の通り選任された。    主査 山本 勝市君       小川 半次君    周東 英雄君       田中 久雄君    橋本 龍伍君       古井 喜實君    松浦周太郎君       山崎  巖君    井堀 繁雄君       島上善五郎君    多賀谷真稔君       辻原 弘市君    柳田 秀一君     ————————————— 会議 昭和三十三年二月十三日(木曜日)     午前十時二十七分開議  出席分科員    主査 山本 勝市君       小川 半次君    周東 英雄君       野澤 清人君    橋本 龍伍君       古井 喜實君    山崎  巖君       井堀 繁雄君    神近 市子君       島上善五郎君    辻原 弘市君       堂森 芳夫君    福田 昌子君       柳田 秀一君  出席国務大臣         厚生大臣臨時代         理国務大臣   郡  祐一君  出席政府委員         厚生政務次官  米田 吉盛君         厚生事務官         (大臣官房長) 太宰 博邦君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     山本 正淑君         厚 生 技官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (薬務局長)  森本  潔君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君  分科員外出席者         厚生事務官         (大臣官房企画         室長)     黒木 利克君         厚生事務官         (大臣官房国立         公園部長)   大山  正君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  尾村 偉久君         厚生事務官         (医務局次長) 堀岡 吉次君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月十二日  分科員田中久雄君は委員長指名で第一分科に  所属を変更された。  第一分科員野澤清人君は委員長指名で本分科  に所属を変更された。 同月十三日  分科員島上善五郎君、多賀谷真稔君及び辻原弘  市君辞任につき、その補欠として福田昌子君、  神近市子君及び堂森芳夫君が委員長指名で分  科員に選任された。 同日  分科員神近市子辞任につき、その補欠として  多賀谷真稔君が委員長指名分科員に選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算厚生省所管  昭和三十三年度特別会計予算厚生省所管      ————◇—————
  2. 山本勝市

    山本主査 ただいまより予算委員会第二分科会を開会いたします。  この際一言ごあいさついたします。今回私が当分科会主査指名されました。各位の御協力によりまして、分科会審議を円満に終了いたしたいと存じます。  本分科会昭和三十三年度一般会計予算及び昭和三十三年度特別会計予算中、文部省所管厚生省所管及び労働省所管の審査を行うことになっております。なお、予算委員会理事会の申し合せにより、分科会の議事は、来たる十七日に議了することになっておりますから、さよう御了承願います。  それでは、昭和三十三年度一般会計予算及び昭和三十三年度特別会計予算中、厚生省所管について説明を求めます。厚生大臣臨時代理郡国務大臣
  3. 郡祐一

    郡国務大臣 昭和三十三年度厚生省所管予定経費要求額概要について、御説明申し上げます。  昭和三十三年度厚生省所管一般会計予算要求額は、一千七十二億五千七百五十四万五千円でありまして、これを昭和三十二年度予算一千十四億三千九百五十五万三千円に比較いたしますと、五十八億一千七百九十九万二千円の増加と相なっております。  昭和三十三年度予算編成に当りましては、社会保障確立強化のため、特に国民保険推進医療機関整備結核対策の充実及び診療報酬合理化を総合的に検討して、これが実現をはかることを目途として参ったのであります。もちろん一定の財政規模の中で、すべてが十分なる伸展を見たとは言いがたいのでありますが、以下御説明申し上げます通り国民保険計画を始めとして、社会保障施策の前進をはかり得るものと、確信いたしております。  右予算のうち、特に重要な事項について、その概要を御説明申し上げます。まづ第一は国民保険推進と、その基礎的条件整備に必要な経費であります。昭和三十三年度におきましては、本年度から着手しました国民保険四カ年計画の第二年目として、国民健康保険及び日雇労働者健康保険等財政健全化をはかるとともに、社会保険診療報酬合理化並びに医療機関整備等計画推進上の基礎的諸条件をもあわせて総合的に検討し、それぞれの配慮をいたしております。以下その具体的な諸施策について申し述べますと、(一) 先づ国民健康保険におきましては、特に大都市を含む市部に普及重点を置き、被保険者数を、三十三年度中に、約四百万人の増加をはかることとし、三十三年度末の被保険者数を、三千八百三十万人と見込み年間平均三千六百万人として算定いたしております。  一方国民健康保険財政力強化するとともに、給付内容改善等をはかるため、従来の療養給付費に対する二割の国庫補助のほかに、新たに財政調整交付金を交付することとし、療養給付費の五分に相当する金額を算定いたして、三十三年度においては、その半年分、十三億八千二百万円を計上いたしました。  これに伴い、国民健康保険助成に要する経費は、百五十六億五千八百余万円となり、前年度に比較して、三十四億七千三百余万円の増加と相なっております。  なお、事務費の一人当り単価は、前年度の八十五円を九十円に引き上げることとして、積算いたしております。(二) 次に、日雇労働者健康保険につきましては、その医療給付面における財政収支の不均衡を是正するため、従来の国庫負担率一割五分を二割五分に引上げるとともに、多年の要望でありました傷病手当制度を創設し、三分の一の国庫負担を行うことといたしました。このため、一般会計から前年度より五億二千八百余万円増加した十一億八千四百余万円を繰り入れることとなっております。  また組合管掌健康保険につきましても、診療報酬改訂その他に伴い、収支の悪化の見込まれる財政的に脆弱な組合に対しまして、その健全化をはかるため、新たに二億円の給付費臨時補助金を計上いたしました。  さらに政府管掌健康保険に十億円、船員保険に一億円をそれぞれ給付費財源として、繰り入れることといたしております。(三) 次に国民保険基礎的条件整備の一翼を担います、医療機関整備拡充に必要な経費でありますが、まづ、国立病院施設整備改善のため、十二億一千二百余万円を国立病院特別会計繰り入れ国立東京第一病院ほか四カ所の国立病院整備するとともに、その他の老朽不良施設改善をはかることといたしております。  また公的医療機関については、前年度に引き続き僻遠の地で、経済的に民間診療所の開設を期待できない無医地区に対して、公的病院出張診療所、二十六カ所を開設せしめるとともに、都道府県単位に、医療サービスの基幹となるべき病院の、施設、機能の整備を行うこととし、これらに対する補助七千三百余万円を計上いたしております。(四) さらにまた、国民保険計画と密接な関連を持っております社会保険医療診療報酬合理化に必要な経費につきましては、診療報酬平均八・五%程度引き上げられるものとして、それぞれ社会保険生活保護費等所要財政処置を講じております。  第二は結核対策に必要な経費であります。  結核早期に発見し、早期治療を行うことが、その対策の要諦であることにかんがみまして、三十三年度におきましては、健康診断実施に当って、その内容改善充実するとともに、新規に百九十八班の検診班に対する補助を行うこととし、一般住民に対する健康診断実施を一段と強化徹底することといたしております。  また、医療費につきましても、新規外来治療におけるX線検査培養検査等を、公費負担対象として取り上げる等の措置を講じております。  右のほか、国立結核療養所百八十一カ所の経営のための経費を加えまして、結核対策費は、百五十八億二千三百余万円と相なり、前年度に比較しまして十億一千三百余万円の増加となっております。  また、別途結核実態調査費として七百余万円の経費新規に計上いたしておりますが、これは二十八年度実施して以来、部分的調査により、補足して参りました結核実態を、綜合的に調査検討し、今後の結核対策基礎的資料を作成せんとするものであります。  次に三は生活保護及び社会福祉の増進に必要な経費であります。今後なお金融引締等による調整過程の影響が引き続き予想されますので、昭和三十三年度生活保護費所要見込みは、生活扶助人員については、過去の実績人口増加に伴う自然増等を勘案いたしまして、三十二年度実績人員よりおおむね三・六%の増加予定して、月平均百五十万人余と推定し、扶助内容についても若干の改善をはかり、生活保護費総額では、前年度に比較して、十五億二千六百六十余万円増加した三百八十二億二千二百余万円を計上いたしております。  一方社会福祉関係費では身体障害者更生、再起のため、四億六百余万円を計上いたしておりますが、この中には、新たに社会福祉法人設置した更生援護施設に対する運営費補助並びに、盲人職業活動の便益をはかるための、盲人ホーム設置助成費等が含まれております。  次に婦人保護に関しましては、前年度予算において婦人相談所設置保護施設増設等一応緊急所要措置は講じましたが、三十三年度においては、さらに十二カ所の保護施設増設をはかるとともに、新規更生資金貸付、被服の支給等制度を設けて、転落婦人更生保護強化をはかることとし、二億三千三百余万円を計上いたしております。  また低所得階層に対しては、その自立更生を促進するため、前年度に引き続き、世帯更生資金貸付補助金として三億円、医療費貸付補助金として二億円をそれぞれ、計上いたしております。  次に第四は児童保護に必要な経費であります。  まづ、児童福祉施設に収容している児童生活を保障する児童措置費につきましては、施設増加に伴う児童数増加見込みますとともに、保育所における給食費増額養護施設等に収容している児童教育費増額及びこれらの施設に勤務する職員の待遇の改善等を行うこととし、七十億七百余万円を計上いたしております。  また、児童に健全な遊び場を与えるために、新たに全国主要都市に二百十カ所の児童遊園設置助成することといたしております。  さらに、母子保健対策といたしまして、新規に妊産婦、乳幼児の健康指導、助産、栄養、受胎調節に関する指導等を行うため、総合施設を設けます町村に対し、その設置補助を行うことといたしましたほか、未熟児養育のため、保健婦による家庭訪問指導及び経済的に困窮している家庭未熟児を、入院養育させるために必要な経費を、新規に計上し、母子保健対策強化向上をはかることといたしております。  以上、児童保護に要する経費総額は、七十六億三千五百余万円で、前年度に比較して五億八千六百余万円の増加と相なっております。  次に第五は戦傷病者戦没者遺族等援護法、未帰還者留守家族援護法改正に伴う経費であります。  恩給法改正と並行して、近く御審議を願うこととなっております戦傷病者戦没者遺族等援護法及び末帰還者留守家族援護法改正により、従前の積算による金額のほかに、新たに本改正による増額分を計上いたしております。  これは、遺族年金及び留守家族手当を現行三万五千二百四十五円から五万一千円に、障害年金を最低七千円から最高七万九千円増額するほか、多年の懸案でありました動員学徒等、準軍属及びその遺族に対しても、今回新たに、障害給与金遺族給与金制度を設けて、遺族年金障害年金の五割に相当する金額を支給することを内容とするものでありまして、その所要額を、平年度二十八億七千万円とし、三十三年度はその一部三億五千八百余万円を計上いたしております。  次に第六は国民年金制度創設の準備に必要な経費であります。  全国民対象とする国民年金制度を早急に創設するため、本年度に引き続き、五人の委員を置いて、その具体的方策調査企画に当らせるとともに、基礎的資料となる諸調査をさらに整備するために必要な経費として一千百余万円を計上いたしております。  このほか、環境衛生対策推進に要する経費として、簡易水道清掃施設及び下水道終末処理施設整備拡充等のため十七億五千三百余万円を、また、国立公園国定公園施設整備を要する経費一億四千五百万円を計上するのほか、医薬品の輸出振興対策として、八百余万円を通産省に計上いたしておるのであります。  以上昭和三十三年度厚生省所管一般会計予算について、その概要を御説明申し上げたのでありますが、次に昭和三十三年度厚生省所管特別会計予算の大要について、御説明申し上げます。  第一は厚生保険特別会計についてであります。  さきに申し述べましたように、一般会計より健康保険給付費財源繰り入れ十億円、日雇い健康保険給付費財源繰り入れ十一億八千四百余万円を見込みまして、健康勘定におきましては、歳入歳出とも七百六十八億八千八百四十四万九千円、日雇い健康勘定におきまして、歳入歳出とも五十億三千三十一万円、年金勘定におきましては、歳入六百一億七千百三十二万一千円、歳出百十五億七千九百八十九万三千円、業務勘定におきましては、歳入歳出とも四十億六千六百六十万八千円をそれぞれ計上いたしております。  第二は船員保険特別会計についてでありますが、疾病部門その他について、三億二千五百余万円の一般会計よりの繰り入れを行い、これに要する経費といたしまして、歳入六十六億八百二十九万五千円、歳出五十億六千七百五十六万九千円を計上いたしております。  第三は国立病院特別会計についてであります。先に述べましたように、国立病院施設改善のため、所要財源一般会計より繰り入れするのほか、三億円の国庫債務負担行為を計上いたしております。  また新たに、アレルギー、ヴィールス等治療センターをそれぞれ若干個所整備する予定であります。右に要する経費として、歳入歳出とも九十一億九百十一万七千円を計上いたしておるのであります。  最後にあへん特別会計についてであります。本年度のあへん買い入れ予定量は、輸入四十七トン、国内産三十トンでありまして、一方製薬原料としての売り渡しは四十五トンを予定いたしております。  右に要する経費として、歳入歳出とも二億八千二百九十一万五千円を計上いたしております。  以上昭和三十三年度厚生省所管一般会計及び各特別会計予算につきまして概略御説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算案の成立につきまして、格別の御協力をお願いいたします。
  4. 山本勝市

  5. 山本正淑

    山本政府委員 お手元に差し上げてございます事項別調というものにつきまして簡単に御説明させていただきます。  三枚目をあけていただきますと、ページ1というのがあります。差引増減のところでそれぞれの項目につきまして前年度より減が立っております事項の主要なものは、一般的に旅費、庁費施設設備費につきまして五%原則として節減がございまして、そういう意味で前年度より減になっている事項が多いのでございます。御了承願います。  まず2の保健所でございますが、これは前年度に比しまして三千五百万円増となっております。補助率従前通りでございまして、他に違ったところはございません。  それから二ページをあけていただきますと、3の結核対策百五十八億二千三百万円余で、前年度に比し十億一千三百万円余の増になっておりますが、この中でまず健康診断予防接種におきましては、間接撮影ツベルクリン反応と同時に行う、あるいは精密検査等を含む経費によりまして四千五百万円余の増と相なっております。医療費におきましては対象人員の増、それから検査の範囲を広範に加えた、あるいは化学療法の期間を延長したというような要素によりまして、前年度に比し三億八千四百万円余の増と相なっておりますが、なおこの中には医療費引き上げに伴う半年分を見込みました八千万円が含まれております。それから(6)の療養所運営費でございますが、これが前年度に比し六億三千万円余増と相なっておりますが、主たる項目患者食糧費の値上げ、従来九十六円十銭でございましたが、これを百二円に引き上げておりまして、その他の増でございます。  それから次の四ページを開いていただきまして、4のらい対策におきまして若干の増と相なっておりますが、これも患者食糧費を九十円十銭から百二円に増額したこと、その他患者慰安のための映画設備等におきまして増額いたしております。  五番の伝染病予防費につきましては、一般節減による減でございます。  六ページをあけていただきますと、六番の精神衛生対策費、若干増加いたしておりますが、これは対象人員の増によるものでございます。  七番の性病予防費、これは前年度に比し若干減少いたしておりますが、内容的には健康診断重点を置くというような考え方で組んでございます。  それから八番の原爆対策、九番の家族計画普及等につきましては前年度に比し一般的節減等がございます。  それから九ページを開いていただきまして、十番の環境衛生対策十七億五千三百万円のほかに、ワク内で七千三百万円がございますが、これは離島関係簡易水道の分でございまして、経済企画庁に計上し、実行上厚生省に振りかえるという予算でございます。環境衛生諸費につきましては補助率は前年通りでございます。  それから十一ページを開いていただきまして、医療機関整備費の中に、一般的に十二億八千五百万円のほか、カッコ内の三億円というのがございますが、これは国立病院におきます建築の債務負担行為の分でございます。前年度と同額を見込んでおります。  それから十三ページでございますが、小児麻痺ワクチン製造、これは新規でございまして、ワクチン製造施設をして試験的な製造製品を出すという予算でございます。  十七番の生活保護費におきまして、前年度に比し十五億二千六百万円余の増と相なっておりますが、そのうちで生活保護費の中では保護人員増加に伴うものが約五億四千二百万円増と相なっております。そうして医療費改訂に伴う八・五%の分を六カ月といたしまして、その分が七億六千三百万円含まれております。あと施設諸費の増、指導諸費、六才未満の小児諸費を倍にふやしまして、九千五百万円の増となっておるというような事項が主要な事項でございます。  それから十四ページを開いていただきまして、十八番の低所得階層対策のうちで三番の貸付事務費補助、これは新規事項でありまして、医療貸付事務費補助してやるというのであります。あとは主要な点はございません。  十六ページをあけていただきまして、婦人保護費が前年度に比し六千八百万円余減と相なっておりますが、これは一番の婦人相談所設置、前年度都道府県に設けるというので三十八カ所分が入っておりましたのが全部でき上りまして、それが七千七百万円減になっております。それから四番の事項保護施設費が前年度三十九カ所予定いたしまして、それが大幅に減となっているというような事項によるものでございます。  それから二十三番の社会福祉施設費の二番では、地方改善施設といたしまして二千四百万円、前年度に比し一千万円余増額をいたしております。  それから二十四番の児童諸費のうちで措置費補助、これは前年度に比し四億一千万円余の増と相なっておりますが、保育所関係期末手当〇・五カ月分並び保育所以外の施設期末手当、その両方によりまして一億二千五百万円、それから保育所給食費増加分が六千二百万円、そういった要素が入っております。  それから十九ページでございますが、二十五番の母子保健対策のうちで、二番の未熟児養育指導費、これは新規事項でございまして二千五百万円余計上してございます。それから母子健康センターが八千万円でございます。  母子福祉対策費の中で母子福祉資金貸付は前年度に比し五千万円減となっておりますが、これは資金量からいいまして、償還金が相当返ってくるというようなことから五千万円減でも差しつかえないという考えでございます。なおこの中身といたしまして生業資金貸付におきまして、従来限度五万円でありましたのを十万円まで引き上げるというので法律改正を提出いたしております。それから償還促進事務費補助といたしまして新たに十六万円計上してございます。  それから二十ページに参ります。社会保険でございますが、一般健康保険給付費財源繰入は前年度の三十億に対して二十億の減、日雇健康保険給付金財源繰入、これは十一億八千四百万円余で、前年度に比し五億二千八百万円の増と相なっておりますが、医療給付費の従来一割五分を二割五分にするものと、新たに傷病出産手当金、これは十月から実施予定でございまして、その分の国庫負担失業保険と同様三分の一といたしまして、その金額が七千五百万円余含まれております。  その次のページでございますが、国民健康保険助成におきましては百五十六億五千八百万円、前年度に比し三十四億七千三百万円余の増となっております。ここで保険者補助金のうちで被保険者三千六百万人、前年度三千五百万人と相なっております。予算の形の上では前年度予算に比し百万人の増という形に相なっておりますが、これは三十二年度におきまして被保険者の伸びが予算に計上しておりますような数字に達しないという情勢にございまして、その関係予算上では年間平均百万人の増、実質的には四百万人の増という見込みでございます。二十二ページにいきまして療養給付費補助金、これは従来と同じような二割の構想の分で百五億、三番の財政調整交付金十三億八千二百万円、これが計上されておる次第であります。  それから二十三ページにいきまして三十一番の留守家族援護費におきまして前年度に比し二億三千万円余減と相なっておりますが、これは未帰還者引き上げ、並びに死亡処理等事務が促進して参っておりまして、毎年相当大幅に減少いたしておるのであります。  それから三十二番の戦傷病者戦没者遺族等援護費、この中に恩給法改正に関連いたします分が三億三千二百万円計上されてございます。それから上の留守家族援護費の中にその分が二千六百万円余計上されてございます。  一般会計の方は大体以上でございます。  それから二十五ページ特別会計健康勘定がございますが、まことに恐縮でございますが、摘要欄の一番しまいに等価と書いてございますが、これはミス・プリントでございまして標準報酬の間違いでございます。  それから二十七ページに参りまして健康勘定歳出の方がございますが、保険給付費といたしまして六百五十九億一千九百万円余計上してございますが、その内訳は医療給付費と現金給付費に分れておりまして、このうちで医療給付費が五百四十六億二千三百万円ほどになっておりまして、その中には医療費引き上げによる保険経済の負担分十月以降五カ月分といたしまして十八億五千七百万円が含まれております。健康保険の方は以上でございます。  二十八ページをめくっていただきますと、日雇健康勘定でございますが、保険料収入が三十四億一千万円、前年度に比し二億九千三百万円余増と相なっておりますが、医療費に対する国庫負担の増並びに傷病手当金の新設等に伴いまして保険料の引き上げを考えておりまして、従来百六十円を境にして一級、二級と分れておりましたのを、一級から四級までに分け、四百円以上を一級とする、二百八十円以上を二級、百六十円以上三級、以下四級、かような分類をいたしまして、保険料の引き上げをいたしたいという構想が入っております。  それから特別会計以下年金勘定、船員勘定、船員保険特別会計等もございますが、特に申し上げることはございません。  国立病院特別会計並びにあへん特別会計についても同様でございます。  以上簡単でございますが、御説明といたします。
  6. 山本勝市

    山本主査 これより質疑を行います。質疑の通告がありますから、順次これを許します。橋本龍伍君。
  7. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 ただいま厚生大臣から来年度予算についての御説明を承わったのでありますが、それに対して若干の質問をいたしたいと思います。私はきわめて簡潔に質問をするつもりでありますから、どうか一つ御答弁の方もなるべく簡潔にお願いいたしたいと思います。  この三十三年度予算説明に、まず第一に国民保険推進というふうなことをあげられておるのであります。これはまさしくそうあるべきでありまして、本年度もそこに最重点を置いてやられることはまことにけっこうなことであります。伺いたいことがたくさんありますけれども、他に質問者もあられまするので、私は主として国民保険の問題、国民年金の問題、母子福祉対策診療報酬等の問題に重点を置いて伺いたいと思います。  まず第一に、ここにありますように、政府は国民保険四カ年計画の第二年目として三十三年度施策をやっておられて、約四百万人の増加をはかるというふうに言うておられるのであります。この国民保険をやる場合において、最終年次における姿として被用者保険で各種の健康保険だとかあるいは共済組合とかいうような被用者保険の方面で幾らめんどうを見るか、それから残りを国民健康保険でめんどうを見る分がどれだけあるかというはっきりした計画がなくてはならぬのであります。まず最終年次における国民健康保険の被保険者たらしむるもの、被用者保険の被保険者たらしむるものの予想の数字を承わりたいのであります。
  8. 高田正巳

    高田(正)政府委員 被用者保険におきましては、被保険者本人が千六百九十万人、家族が二千五百九十万人。それから国民健康保険の方におきましては、四千九百二十万人、大体こういう見当でございます。
  9. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 現在における国民健康保険の被保険者はどれくらいありますか。
  10. 高田正巳

    高田(正)政府委員 三十二年度末で、これは見込みでございますが、三千四百三十万人。
  11. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 そうしますと、これから先約千五百万人国民健康保険の被保険者増加をはかるということになるわけですか。
  12. 高田正巳

    高田(正)政府委員 さようでございます。
  13. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 その千五百万人の中で、第二年度の本年に四百万人増加をはかるということになりますると、あと大体最終年度までの年次計画はどういうことになりますか。
  14. 高田正巳

    高田(正)政府委員 三十三度に、先ほどの大臣の御説明では約四百万人ということでございましたが、数字をまるく申されておりますので、大体の計算では四百七万人程度というつもりでおります。三十四年度、三十五年度でそれぞれ五百四十万人程度ということに今のところ一応予定をいたしております。  ただこの計画は、御承知のように、東京都を初め、大都市がいつ始めるかということによりまして、たとえば東京都におきましては、これが始まりますと、三百万人一ぺんにふえます。そういうふうなことによりまして、数字に大きく響き得ると思います。今の予定ではそういうふうなつもで計画を進めております。
  15. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 国民健康保険昭和十三年に発足をいたしまして、実はそのときには、皆さんも御承知のように、これでつまり社会保障の一大支柱であるところの医療保障をやるというふうなことでなしに、実は社会政策として発足したわけであります。この政策がはからずも今日非常に大きな役割をになって出てくるわけであります。今日までの間に三千四百三十万人の被保険者になるまでにも非常な年月と苦労があったのであります。今後三カ年間に千五百万人をふやすということも相当困難があると思うのであります。大体厚生省としてどういうふうにしてこの三カ年のあと計画を達成しようというのか。
  16. 高田正巳

    高田(正)政府委員 仰せのごとく皆保険ことに国民健康保険を全面的に実施いたしますのはそう容易に参るとほ私どもも考えておりません。ことに従来までは比較的農山漁村に発達して参っておりましたが、今後の大きな普及重点は、どちらかといいますと大都市を含めました都市部であります。さような観点からいたしまして、都市部における国保の普及というふうなことを考えまする際にまず第一に問題になりまするのは、国保が赤字を出さないようにという財政的な問題でございます。それにつきましては従来二割の国庫補助金の範囲内で財政調整的なことを考えまして、都市の方には実際問題としては一割三、四分くらいしか補助金が参らないようなことになっております。ところが今回予算で御審議をいただいておりまするように、都市に対しましても、いかなる保険者に対しましても二割だけは必ずやる。財政調整は、負担力の弱いところには別に調整交付金という制度を設けまして、これを行なっていくというふうなことによりまして、国保の普及には非常なプラスになる、かように私どもは考えておるわけでございます。  なおその他いろいろと現在の国民健康保険法の中には皆保険推進していく上において手を加えなければならぬ要素がございまするが、さような今申し上げましたような財政的なてこ入れということを中心にいたしまして、法律の改正等も考慮して参らなければならぬ、かように考えておるわけであります。  なお財政に関連した問題といたしましては、事務費が、従来実際に市町村が使っておりまする事務費だけ国の方から補助金として参っておらないというふうな事情にもなっておりまして、これがまた一つ国保の普及ということの障害となっておったわけであります。これらにつきましても、十分ではございませんけれども、来年度におきましては一人当り九十円まで単価を増額する、こういうことで予算の要求をいたしておるわけであります。  さような点、いろいろ考え合せまして、今申し上げましたように大都市を中心にした都市部に指導の重点を置きまして、今後の国保の普及に努力をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  17. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 ただいま財政的な整備というお話があったのでありますが、法律的な問題としては、今度新たに芽を出しました財政調整交付金を法律制度化することはぜひやらなければいかぬと思っているわけです。ただ大体において国保の財政面の問題としては、医療費の二割国庫負担、それから調整交付金、それから事務費をきちんと払うということを主体として考えるのであって、大体これ以上別にさらに財政的にめんどうを見るという新規の考え方はない、こう考えてよろしいですか。これは大臣にもお伺いいたします。
  18. 郡祐一

    郡国務大臣 仰せの通りでありまして、国民健康保険というものを予定通り普及いたしまして、皆保険の実をあげるということが今日のきわめて大切なことでございます。従いまして、その意味合いで財政を健全にして参らなければならぬ。その場合は御指摘のように事務費が、これは国の補助の点もございまするし、その経理の問題もあろうと思うのです。これは人員の使い方であります。そういう点を完全にし、かつ従来の赤字が出ました分も、三十一年度末で四十一億、一般会計から繰り入れましたのが三十三億、残りの八億というようなものにつきましても努力をいたしまして、漸次解決をして参る。そういたしますと、あと保険税の徴収成績を上げて参ることであります。一部負担の問題等もございますけれども、それらの点が最近の努力またこれから努力して参りまするならば、財政面問題は漸次解決がつきまして、これが皆保険の目的を達成しますのに障害になることはまずないようになって参る、好ましい傾向をとっておると考えております。
  19. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 この点はきわめて大事な問題でありまして、私も多少意見を持っておりまするので、厚生当局においてもお考えをいただきたいと思います。社会保障の問題は、とかく近来の議論といたしまして、負担は何でも軽い方がいい、給付は何でもいい方がいい、そうして何でもかんでも国庫からよけい出せというのが進歩的だといったような空気で、問題の内容についての掘り下げを怠っておる点がありはせぬかと思うのであります。私は、国民保険の問題は非常に重要なだけに、これは与党も野党もまた一般の社会評論というような点でも、うまいことばかり考えないで、真剣にやるように考えてもらいたい。財政の問題につきましては、ただいま厚生大臣からお話のありましたように、ぐずぐずしていて問題がむずかしければそのうちまた金でも出してくれる、そうしてそれがまた唯一の国民保険推進の手だというような考え方でおりましたら、これは渋っておる市町村ほど楽をして得をするということになって、決して国民保険などはできないのであります。今日としては、やはりここで医療費の二割負担、保健婦の負担の問題、財政調整交付金の問題、事務費の問題というものを法制的に整備をいたしましたからには、厚生当局としては実は法制的に整備をされながら実際は運用がうまくいかなくて欠陥がたくさんあるのでありますが、少くとも法制的な制度としてはもうこれでやっていくのだということをはっきり決心なさらぬと、むしろ先へ行くほど何かうまい制度が出るのではないかというような感じで進まぬと思うのであります。私は非常に大事だと思うので、この点だけ端的にそういうつもりでやっておるかどうかという簡単な返事だけ承わりたい。
  20. 郡祐一

    郡国務大臣 市町村の実施いたす建前を法制的にも整備をする必要もあろうと思います。お話の通り今までの市町村につきましての問題点は早急に解決をいたし、何と申しましても困難の多い大都市についての普及ということに早く進んで参りたいと考えております。
  21. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 ただいままで三千四百三十万人の被保険者をかかえた組合を経営してきたということは、これは昭和十三年以来の先覚者がほんとうにわからずやに説きながらの骨身を削るような苦労の結果が今日まできておるわけです。もしただ理屈だけ言うなら三千四百三十万人が過去の制度でできたなら、今度だって熱さえあればできぬことはないということを言ってもいいくらいなのです。ただそれは時代の進歩とともに制度改善しなくてはいけません。私は今日まで整備された法律制度に基いて、それの中に財政調整交付金制度を法制化するというくらいで、あとは既存の制度を十二分に活用していくようにしていただきたい。その点で長々、一々質問して返事はいただきませんが、医療費の二割の支払いも、これははっきりした清算で払うことになっておりますので、市町村の財政面からいってもきわめて迅速に払うようにしてほしい。これは必ずしも理想的に早く払われていない実情があるので、調整交付金の配分の方法についても十分その点お考え願いたい。配分方法と同時に、出すものはきちんと早く出す。これは厚生省の責任だけでなしに、大蔵省かもしれませんけれども、ぜひやらなければならない。それから事務費についても同じことであります。ただ、事務費についてはむやみに甘いことだけ言う人があるのでありますが、私はやはり不賛成でありまして、事務費の全額国庫負担ということは、どんなにぐうたらな経理をしても全額国庫負担というのじゃ間に合うはずがないのであります。いろいろな資料を調べてみましても、市と町村などでいろいろ給与べース等があって違いますけれども、安いところは被保険者一人当り百円未満で、何十円でやっておるところもありますし、この間私のところに資料が参りましたが、大阪の周辺の市などでは、一番高いので被保険者一人当り三百何十円という計算を出しておるところがありました。そういう形で、事務費が全額出なくちゃ市町村はやらぬというようなことを言っておるようではいけないので、どうかこういう面での会計指導をやっていただきたい。しかしながら今の九十円というのは安過ぎると思います。これは所要金額をなるべく早い機会に今年度予算はここまでしかいかないで、私は遺憾だと思いますから、これはほかの予算の割り振り等もあると思いますが、改善して参りたい。ただ今日の制度を十分活用していけば必ず国民保険というものはできるのだという信念、熱情を持っていただきたい。今日以後の大都市の問題も骨は折れますけれども、昭和十三年以来わからずやの人たちを相手にしてここまで持ってきた保険者の苦労というものは相当なものだった、それを一つお考え願いたい。そして今後しぶっておれば、また国庫補助でもふえるだろうというような印象を与えないようにお願いしたいと思います。  次に質問でありますが、被保険者の一人当りの保険料、一世帯当りで言った方がいいと思いますが、これは資料によりますると、一世帯当りの全国平均で二十六年度が千六百三十二円、二十七年度が千八百五十円、二十八年度が二千十七円、二十九年度が二千三百八十六円、三十年度が二千六百三十六円、三十一年度が二千八百五十四円というふうに相なっていて、漸次増加をいたして参ってはおりますが、大体今日においても三千円未満、二千八百円ぐらいのところにあると思うのであります。今日でも国民健康保険の運営の面で保険税の徴収というのはなかなか困難なのでありますが、しかしこの点も、社会保障制度審議会の勧告にもありまするように、将来の国民保険のためには、まず保険の恩典に浴していない人たちを保険の恩典に浴せしめるようにすると同時に、被保険者のいろいろな均衡をはかっていくということが大切なのであります。保険内容改善もはからなければならないし、それからまた一般国民の所得水準が上るにつれて、医者の診療報酬引き上げも考えていかなければならぬのでありますが、国保の方の保険料はただいま申し上げましたように、三十一年度で一世帯当り二千八百五十四円ということに相なっておるのであります。別に私が健康保険の方で調べてみましたところでは、私今精密な数字を持っておりませんが、最近の政府管掌健康保険標準報酬平均というものが大体月額一万三千円であります。その一万三千円ぐらいの報酬月額で大体一世帯をささえていると考えてみますると、一万三千円に千分の六十五をかけましてこれを十二倍すると、大体一年間の保険料が約一万円を少しこえるぐらいであります。これは使用者側と被保険者の側とで折半して、半分ずつ持つのでありますが、半分持つといたしましても五千円をこえる金額ということに相なるわけであります。私はやはり国民健康保険の問題でも、保険料の引き上げというものは年々幾らか行われておりながら、非常に困難な問題ではありまするけれども、しかし一世帯当り年額二千八百五十四円という金額を若干引き上げるといったふうなことは、一般の所得水準の上り方から見てもあまり不当ではないじゃないか。  それから、ことに政府管掌健康保険標準報酬の上り方に保険料の率をかけてみたものに比べてみても、私は一度考えるべきことがあると思うのであります。今日国民健康保険政府管掌健康保険との間では、保険料も違いまするし、給付の内容も違うということであるのでありますが、厚生省として当面はとにかく、国民健康保険で全部カバーするということに重点を置いておられると思うけれども、その間にも当然やはり負担の均衡と給付内容の均衡というものは漸次考えて参らなければならぬのであります。そこでただいまの数字から申しまして、国民健康保険保険料、健康保険保険料というようなものを比較いたしてみましたとき、国民健康保険保険料を若干引き上げても給付内容改善をはかって、そうして国民保険の終末の年次に近づいたときに、単に人数がカバーされるというだけでなしに、やはり保険給付の内容が近づいていくというようなことも考えてしかるべきものじゃないかとも思うのですが、そういう点についてはどういう御見解ですか。
  22. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今橋本先生から御指摘の健康保険の方の数字は大体先生仰せになりましたようなことで、標準報酬が、三十一年度年間平均で申しますと、一万一千九百四十三円、一万二千円をちょっと切るわけであります。それで一人当りの保険料額は、収納率等も合わさって参りますので、九千円をちょっと出た程度でございます。それで今御指摘のように九千円——これは折半でございますので、被保険者の方は四千五百円程度ということになるわけであります。ただ被用者保険と国保とちょっと事情が違いますところは御存じのように被用者保険の方には傷病手当金等現金給付の面が相当ございます。大体全体の給付費の二割ちょっとくらいを占めておったと思います。保険料負担という観点からいたしますと、その点の配慮を若干いたさなければならぬかと思います。しかし先生御指摘のように二千八百五十四円という国保の保険料一世帯当りが、これでもう負担の限度にきておるというふうには私ども考えておりません。従って三十二年度もこれよりは少し上って参るものと考えておりまして、私どもその辺のところをよく考え合せながら、この国保の保険税のことは考えて参らなければならぬ、かように存じております。それにつきましても、実は保険税の、あるいは保険料のきめ方は、現在の国保では多くが金額できめておりまして、所得額がふえて参りましても、率できめてありますのと違いまして、自然にふえてこないというふうなきめ方をしているところが非常に多いのであります。その辺は被用者保険では、御存じのように所得がふえますれば保険料も上ってくるということになりますので、さようなことも配慮いたしまして、保険税並びに保険料の賦課並びに徴収のことにつきましては検討をいたしたい、かような考えで目下自治庁と一緒に検討をいたしております。
  23. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 国保についてもなお伺いたいことはたくさんありますが、これくらいにいたしまして、最後にこれだけ伺っておきたいのであります。三十三、三十四、三十五の、あとの三カ年度で、被保険者を約千五百万人ふやすわけでありますが、この関係で、現在の制度、すなわち医療費の二割、それから保険設置費の三分の一ですか、それから調整交付金として医療費の五分、事務費の全額、こうして三十二年度予算に対して最終年度でどれだけふやす必要があるかという計算が出ますか。つまり昭和三十五年度における国民健康保険に要すと国費です。
  24. 高田正巳

    高田(正)政府委員 計算をいたしている資料を私ここに持ち合せておりませんが、記憶によりますと、三十五年度療養給付費補助金が約二百億程度になると思います。三十三年度では予算でごらんをいただいておりますように、療養給付費補助金といたしましては百二十億程度でございます。今橋本先生御指摘の国民健康保険助成費全般では百五十六億であります。うち療養給付費が百二十億程度でございます。ただし調整交付金は半年分でありますので、これを平年度に直しますと百四十億程度になってくると思います。
  25. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 この点は一つあとで資料をいただきたいと思います。  そこで次に健康保険のことを伺いたいのでありますが、政府管掌の健康保険の経理について、私ここに数字をもらっております。一般会計からの繰り入れ、預金部からの借り入れというものを勘定に入れて、その残りで三十年度が四億二千六百万円の黒字、三十一年度が四十八億五千万円の黒字、それから三十二年度が大体五十九億一千三百万円の黒字の見込みという資料を私手元に持っておりますが、大体そういうことですか。
  26. 高田正巳

    高田(正)政府委員 その通りであります。
  27. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 そこで政府管掌の健康保険の黒字は今日はそのまま積み立ててあるわけですか。
  28. 高田正巳

    高田(正)政府委員 三十年度の四億五千万円、三十一年度の四十八億余りのもの、従いまして五十億余りのものが積立金として計上をいたしております。
  29. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 大体政府管掌の健康保険は二十九年、三十年にかけて非常に赤字が出るというので、三十年度には一般会計から十億の繰り入れがあり、預金部から六十億の借り入れをやった上でやっと四億幾らか残りが出たわけであります。その後は非常に急速度に会計が、黒字が多くなり好転いたしておりますが、この原因はどういうところにあるのですか。
  30. 高田正巳

    高田(正)政府委員 三十一年度で非常に好転いたしましたのは、一般的な情勢といたしましては、やはり経済界の動向であります。それで政府管掌に響いて参りましたのは、被保険者が非常にふえたからであります。前年度ではたしか数万のふえであったのが、三十一年度、三十二年度も同じような傾向を示しておりますが、五、六十万程度ふえております。保険料の方はそのふえただけ大体入っております。ところが医療給付費の方は二十八年、九年あたりは非常に上昇率が急角度でありますが、その上昇率が鈍ってきている、そういうふうな関係で、従って三十一年度を例にとりますと、医療給付費の方は、人間がふえたにもかかわらず、予算よりはちょっと総額支出が多くなっている。ところが収入の方は相当ふえている。こういうことが一つの原因であります。  それからこれは橋本先生御存じのように、保険料の千分の五の引き上げを三十年度年度の途中にやっております。この財政的な影響が、三十年度では二十五億、三十一年度では四十億、三十三年度の見込では四十八億、来年をついでに申し上げてみますと、五十三億程度の影響が、収入面であるわけであります。  それから二十六国会でいろいろ御審議をいただいて成立をいたしました法律に伴ういろいろな財政上の影響がございます。これが標準報酬の等級改訂によりまして、三十二年度のあれといたしましては、大体八億見当の増収になるわけであります。  それから一部負担を実施いたしましたので、これが三十二年度見込みによりますと、六億八千万円の支出減になります。それから継続給付受給資格要件の変更をいたしましたので、これが三十二年度におきましては、二億五千万円余りの支出減、これらの財政的な影響を考慮いたしますと、大体二十億見当のものになるわけです。それに先ほどの保険料の千分の五の引き上げというものが大きく影響いたしております。かように申し上げられると思います。
  31. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 私も実はこの間資料をとって検討したときに、大体そういうことであろうかと思ったのであります。今保険局長から話がありましたように、やはり何といっても一番大きいのは経済的な好影響で、就業者が増加し、標準報酬が上って、保険料収入がふえたということのようであります。私の手元にあります資料でありますと、被保険者について見ると、二十九年度と三十年度の間には九万三千しかふえていないが、三十年度と三十一年度との間に五十一万人、三十一年度と三十二年度との間に八十五万人、三十二年度と三十三年度の間に四十三万人ふえる。それから標準報酬について見ますと、二十九年度と三十年度の間に五百十四円、三十年度と三十一年度の間に四百八十九円、三十一年度と三十二年度の間に七百五十二円、三十二年度と三十三年度の間に四百二十五円というふうに上ってきている。そうしてその結果として、保険料収入が二十九年度と三十年度の間で五十七億、三十年度と三十一年度の間で八十三億、三十一年度と三十二年度の間に百四億、三十二年度と三十三年度の間に三十六億ふえておるのであります。これについて実は厚生省の確認を求めたいと思ったのですが、ひまがありませんでした。大体こういう数字ですか。
  32. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今先生の仰せになりました数字は、ぴたりと手元の資料と引き合せができませんが、大体そういう傾向であろうかと思います。
  33. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 そこでこうして今のところ黒字が出ておるわけでありますが、今後の結果を考えてみると、今保険局長の話のあったように、経済界の好影響の結果、とにかくまず人がふえ、標準報酬が上って、そうして保険料収入が上ったというのが最大の原因だ。その割には保険支出の方がふえていないということは、やはり新規に就業した人が健康保険の診療券を使いなれていない、なれた人のようには使わないというようなことがあるだろうと思います。こういうようなことを考慮してみると、今後の政府管掌健康保険財政が、やはり同じように大きな黒字を出してくるかどうかという見通しはどうですか。
  34. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これはなかなかむずかしい御質問でございますが、これは見通しでございますので、あるいははずれるかもしれませんが、私の感じでは、三十一年度、三十二年度のような好調を三十三年度以降にも期待することは少し無理かと思います。経済界の状況も先生御存じの通りでございます。それに三十三年度以降におきましては、今先生御指摘になりましたように、非常にふえた被保険者の受診率というものを調べてみますと、これは三十一年度の傾向でございますが、しばらくの間は従来の被保険者の程度に達しないのでございます。そういうふうなものがだんだん達して参るというふうなことになりますと、そこにも若干のマイナスの要因が出てくるのではないか。それからいま一つは、できましたならば、業態によりましては、零細事業場の被用者も任意包括の制度で試験的にある程度抱き込んで参りたい、そういうふうな政策的な意図を持っております。さようないろいろな要素を考え合せますと、これは数学的になかなか出て参りませんけれども、今までのような、ここ一、二年のような好調を続けることは、相当骨が折れるのではないか、さような考え方をいたしております。
  35. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 先般総括質問の間に、政府管掌健康保険の問題について質疑がありました際に、厚生大臣の御答弁は必ずしもはっきりしませんでした。折があったら保険料の引き下げを考えるというような御答弁であったかのように思うのでありますが、ただいま保険局長のお話のありましたように、この神武景気の好調が基礎になっておる。それから最初健保に入った人の受診率が統計的に低くて、それからだんだん上りそうだということ、それから現在問題になっておりますところの、五人以上の工場、事業場で、健康保険に入るべきであるのに入っていないところが相当ある。これを本気で入れていかなければならぬというようなことを考えて参りますと、そういうところは当然標準報酬も低いわけでありますが、今日ただいま黒字だからといって、直ちに保険料を引き下げるというふうなことを考えるのは過早ではないかと思うのでありますが、いかがでありますか。こうした恒久的な制度について、少し赤字になると保険料を上げる、少し黒字になると保険料を下げるというようなことは、社会的にも影響が非常に多いので、この辺の見通しをよほど考えていただきたいと思いますが、本委員会におきます厚生大臣の答弁は必ずしも明らかでありませんでしたので、先ほど申し上げましたような数字的な検討に基いた上での、厚生大臣の御所見を承わりたいと思います。
  36. 郡祐一

    郡国務大臣 仰せのように、財政状況をよく検討いたし、また見通しを十分つけなければ相ならぬことでありますけれども、十分な見通しをつけまして、常に意図して参りまするところは、料率は引き下げるように検討いたしたい、こういう考え方でよく見通しをつけて参りたいと思っております。
  37. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 そうすると、要するにわれわれと同じ考えなんですが、事情が許す限り、負担は軽くて給付内容はいい方がいいのであります。そういう一般原則を腹に十分置いておくけれども、財政状況は十分見きわめをつけ、今日ただいまどうこうということについてはまだ考えておられないというふうに考えてよろしゅうございますか。
  38. 郡祐一

    郡国務大臣 ただいまにわかにどのように決定するということでなく、十分考えて参りたい、こういう工合に御了解願います。
  39. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 それから先ほど私国民健康保険のところで申し上げたのでありますが、国民健康保険保険料が一世帯当り二千八百五十四円に対して、健康保険保険料が約一万円、これは負担区分だとか、医療の内容等は違いますけれども、そういう点を考えて、だんだん量的な国民保険だけでなしに、質的にも皆保険を達成する際には、各種の保険の負担と給付内容の均衡をはかる方向に常時考慮を払っていくということにつきましては、先ほど国保の場合に私申し上げたところでありますが、一つその点は今後とも御留意を願いたい。いい保険内容を実現するために妥当な負担であるならば、これは負担してもらうために骨を折る。それからまた均衡をとる面で下げるべきものがあれば下げる。今後の問題としては常に健保、国保それぞれの問題はありますけれども、やはり将来の総合の姿というものを考えながらやっていただきたい、それをお願いをいたす次第であります。  それからここで診療報酬の問題を伺っておきたいと思うのでございますが、今回の予算にも診療報酬引き上げに要する診療報酬合理化に必要な経費を計上するということが書いてあるのであります。これは国民保険計画と密接な関連を持っておるわけであります。医療担当者の協力を得るという点からいきましても、これは昭和二十六年の秋に現行の単価をきめて以来、点数はだいぶ変りましたけれども、据え置きになっておるので、この際よく考えなければならぬというように思います。ただ昨年中央医療協議会を開かれ、一応の答申は出ておりますが、その答申は一致した結論が出ておらないのであります。たまたま予算の制約で四月一日から実施をしたいと思ったのが、十月一日ということになりまして、従って今日では政府の側としても、党の側としても、診療報酬引き上げの方式だとか程度だとかいうものについても、最終的な決定をしないまま、予算の用意だけしてあるというような形になっておるわけであります。これは厚生大臣に伺いたいのでありますが、昨年医療協議会でああいうような答申が出てからあと、今後厚生省としてどういうふうに措置をされるつもりでありますか。
  40. 郡祐一

    郡国務大臣 医療協議会の御審議の経過を十分考えまして、今後実施までに若干の時間がございますので、関係各方面とよく議を練り、そして各方面の理解ある実施ができますように、合理的な線を出して参りたいと考えております。
  41. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 中央医療協議会の答申は、実は私自身も前回のときにまとまった答申が出ないで、閣議の意見だけで、あとはいろいろな関係の向きの意見等を参酌しながら、政府の責任で善処せざるを得なかったのでありますが、今回も中央医療協議会の答申を拝見いたしますと、いろいろに内容の御意見が違っている。医療担当者の側の意見といたしましても、日本医師会の側は十八円何がしというのに固執はしないけれども、単価を引き上げていこうという意見であります。それからまた同じ医療担当者でも病院側の方は、方式については多少意見が違っておりますが、内容自身についてはやはり八・五%じゃ困るので、二〇%くらい上げてくれというような要望が出ております。厚生省としても善処をされるのになかなか骨が折れると思いますが、重ねて医療協議会をお開きになりますか。あれはあの答申で善処していくわけでありますか。
  42. 郡祐一

    郡国務大臣 これ以上開くことは考えておりません。
  43. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 そこであの答申を参酌しながら意見をきめるについて、関係の向きの意見もなお尋ねてという話で、これは厚生省としてものをきめられるのに当然のことだと思うのであります。この間党の方でも。厚生省、医師会、歯科医師会等で人を出して相談したらどうだという意見を出し、厚生省の方もそういうことで検討しようとかいう意向であるやに聞くのでありますが、これはいかがでありますか。
  44. 郡祐一

    郡国務大臣 正式な何らかの形を整えたものというような機関による扱い方は今後する必要はなかろうかと存じておりますが、関係方面の意向を十分聞いて参るということは、せっかく努力をいたす考えでございます。
  45. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 そうすると、結局そこで引き上げの方式だとか程度だとかいうことも、今後なお相談をされるということでありますか。
  46. 郡祐一

    郡国務大臣 合理化をはかって参るという目的を十分達します上に、そのために必要ないろいろな協議と申しますか、相談と申しますか、そういうことはいたして参るつもりでおります。
  47. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 それからこれは私の考え方でありますが、この合理化という言葉——合理化はもう何でもけっこうな話なので、不合理を合理化するのは非常にけっこうな話でありますが、どうも合理化という言葉が一向に人に理解されないままに使われて物事が混乱しているように私思うのであります。この診療報酬の問題というのは、日本では点数単価方式をやって参りまして、それを合理化しながら今日まできたわけであります。やはり今後でもそう簡単にこの方式を捨てられないと思いますが、よその国の実例を見ましても、いろいろなやり方があるのでありまして、必ずしも点数単価方式が国民保険の最終の段階においてけっこうかどうかもわからないと思うのであります。当面点数単価方式をとる場合におきましても、やはり点数と単価とをかけ合せて医療費を出すということでありまするから、大事なのはやはり私は点数間のバランスが大事なわけだと思うのであります。厚生省の方は単価を十円に引き下げて、そして点数をずうっと直す案を出されたわけでありますが、かりにあれにいたしましても、今日のままの——今日だと甲地十二円五十銭、乙地十一円五十銭、そうして平均がたしか十一円八十三銭に相なっておると思いますが、今日の点数表をそのままにして——点数表そのままじゃありません。かりに単価を十円に引き下げまする場合においても、今日の点数表のバランスそのままに点数に一つずつ十分の一一・八三を掛ければ、これは何のことはない、単価は十円になったけれどもちっとも変らないということなわけであります。そういう点から考えてみても、大事なのは要するに単価を十円にするという問題じゃないので、やはり点数間のバランスが私は大事なんだと思うのであります。点数自身は十円にすると便利だという問題はありますけれども、大体この医者の診療報酬の問題というのは単なる物価の問題ではないので、国民の所得水準の問題であります。国民経済が進んで国民所得の水準がずうっと上っていくときには、これはかりに物価がそのままでも一種の所得問題、給与問題として診療報酬の問題は起るわけであります。現にイギリスでも去年医師会から診療報酬を二割五分引き上げろという要求が出て、即決で約一割を引き上げて、あとの一割五分分についてロイアル・コミッティで検討をしておるわけであります。そういう点から考えてみますると、かりに今日単価を十円にして、そして計算がしよくなってみても、あとまた四年なり五年なりたって、ごく普通な意味で診療報酬水準の引き上げというものが問題になって参りまする際にも、やっぱりこれは点数単価方式をとる限りは単価でもいじくらなければしょうがないんじゃないかと思うのであります。そういうふうな意味で、やっぱり合理化というのは点数の中でのいろいろな不合理な部分を直すというのが主体であって、単価を十円にするのが合理化だということは私は少くともないんだと思うのですが、その点承わっておきたい。
  48. 米田吉盛

    ○米田政府委員 御承知のように、今度のいろいろの合理化というのには、金銭的の合理化のほかに、事務の簡素化というようなことも相当大きいウエートをもって加味されております。できるだけそういう点は簡便にいたしたいということが骨子でございます。十円そのものを必ずしも固執するわけではございませんが、さしあたってわれわれとしましては、これが一番その趣旨に沿うものではないか、こういう考え方でございます。将来これらにつきましては大体八・五%を引き上げるといっておるが、実際それは上っていないではないかという向きもある面からは承わっております。こういうような疑問は十分解明をいたしまして、できるだけすっきりした姿で出発をいたしたい。幸い期限も余裕がありますから、そういうような方針を根本的には考えておるわけでございます。
  49. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 この問題についてはどうもいろいろな過去のいきさつや感情的なもつれ等もあるようでありますから、どうか一つ厚生当局においても、最後はやはり円満にみんなが了解してスダートするということをぜひ考えていただきたい。これはやはりみんなが一致をして納得ずくの上でありませんと、私は物事はうまくいかないと思う。御承知のように、とにかく点数表というのは、軽いやけどは三点だとか、何が五点だとか何が十点だとかいうのに、平均十一円八十三銭といったような低い金額をかけて、それが年額二千数百億の支払いになるわけでありまして、これは実際ちょっと点数表をいじくってみても、一体医療費がどれだけ上るのか下るのか、これは厚生省の中の国立病院の経済にとってもなかなかそう簡単には見通しのつかない問題だと思う。従って各種の業態のお医者さん、それは大きいお医者もあるし小さいお医者もありますし、各種の医者の内科とか眼科とか小児科とかいう区別からいいましても、それはもう単に欲でがあがあ言うということばかりで見るのも私は無理だと思う。実際問題としてなかなかむずかしい問題だと思う。どうか一つ、幸い時間もあることでありますから、十分検討していただきたい。そうしてやはり利害関係者の側で初めからもう片方は一文も上げない、片方はもううんと上げるというような政治的結論を出して討論をしても話になりませんから、どうか一つ学問的に、そうして一切の結末が納得のできるような方向にいくようにしていただきたいと思います。  次に国民年金の問題についてお話を伺いたいと思うのであります。国民年金の準備につきましては、ここに昭和三十二年度に約千万円あげ、そうして今回もまた同じくらいの金額を準備にあげておるわけであります。一千百余万円の計上をいたしておるのであります。国民年金制度は、これはぜひ実現をいたして参らなければならぬのでありますが、三十二年度に千万円の支出をいたしまして、厚生省においていろいろ準備をしておる、かたわら内閣の社会保障制度審議会には国民年金の問題についての諮問をいたしておるわけであります。ただ実は国民保険の準備委員についても、国民年金の準備委員についても、私みずから主張した一人でありますが、内閣の社会保障制度審議会から概括的な方針をもらっても、実施は非常に骨の折れるいろいろな作業が必要なわけであります。従いましてこれだけの金でどれほどの準備ができるかとも思うので、第一年度としてはこれで相当な勉強をしてこられたことと思うのでありますが、大体厚生省としての国民年金制度創設の準備状況というものを承わりたいと思います。
  50. 郡祐一

    郡国務大臣 橋本委員御承知のように、厚生省におきましてもかねがね国民年金制度実施のためのいろいろな調査もいたし、現に一応の仮定に塞ぐ保険数字の試算等もいたしておるのであります。さらに三十三年度におきまして醵出能力の調査等を周到にいたしたい、このように考えております。現在の段階におきまする状況につきましては、政府委員から御説明申し上げます。
  51. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 補足説明を申し上げます。予算書の横書きの一番最初の項にちょっと書いてございますが、三十二年度におきまして老齢者とか、母子世帯とか、身体障害者などの生活実態調査をいたしまして、これはただいま解析中でございます。なお三十三年度は、明年度予算におきましては、国民の醵出能力を調査いたしたい、こういうふうにいたしますと、調査がだいぶ進んで参る。それから研究につきましても、各国の年金制度概要につきましてすでに、二、三の国の分を了しまして、残りのアメリカ、西ドイツというふうなところについても、現在相当進んだ準備をいたしております。それでただいま大臣からお答え申し上げましたように、内閣に設けられました社会保障制度審議会の方に総理からの諮問のございました基本的構想につきましても、今年の五、六月ごろには御答申いただけることかと考えております。また厚生大臣の諮問機関として設けました国民年金委員、五人の学識経験者の方々にお願いいたしまして、内閣の社会保障制度審議会と並行いたしまして、いろいろな点から検討を開始しておりまするので、これも内閣の社会保障制度審議会の答申が出ますことと相前後いたしまして、何らかの結論がいただけるのじゃなかろうか、さようなわけで、私どもとしましては準備の相当に進んでおるということは、あるいは申し上げても差しつかえなかろうかと存ずるのであります。もちろんこの制度実施のためには、事柄が事柄でございますので、非常に慎重に準備して参らなければいかぬ点もございますし、他のいろいろな国家財政国民経済、そういうものとのにらみ合せも考えて参らねばならぬ点も多々ありますので、その点は非常に慎重に準備して参ることはもちろんでございまするが、答申が出ましたならば、なるべく早く成案を得るように努力して参りたい、かように考えております。
  52. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 国民年金の問題については私はこう考えておるのであります。いろいろな制度についてはもういろいろな研究ができておるわけであります。やった方がいいこともわかっている。ただ大事なのは、どういうやり方でどの程度やると、どれくらい金がかかるか。その金のかかり方も一般会計の支出が幾らあるとか、あるいはそういうものが非常に少くて済むとかいうような財源計算が、私は非常に大事だと思うのです。およそ内閣の社会保障制度審議会の審議の経過において出てきておりまする意見というのは、私自身もときどき伺って聞いておりまするし、厚生省自身としては、有力な意見として大体どういう方向が出ているかということは御承知のはずであります。そこで出るまでただ資料の勉強だけしていちゃならないのでありまして、およそ出てくる方向を考えながら、こういう方式で行くのならば、どういう経理をすればどれくらい金がかかるといったような財源計算は、これは私相当な費用もかかりますが、必要だと思います。それをやっていますかやっていませんか。
  53. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 御指摘の通り財源計算も相並行して進めて参らなければならぬと考えております。実は厚生省で委嘱しております国民年金委員の方の参考資料というもので、先般も一つの試算をいたしたことがございます。ただ今日こういう公けの席上でそのあれを申し上げることはいかがかと思いますが、さようなことも私ども十分心得えて試算の方も進めて参りたいと考えております。
  54. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 私は実はできれば、国民年金委員企画室で補佐しながら大体今日やっておりますいろいろな試算的作業の内容というのも、言ってくれるならば私言ってほしいと思うし、それからこれは私ある程度言った方がいいのではないかと思うし、いろいろ批判も仰ぎながらやっていった方がいいと思うのですが、これは政府側としてもいろいろなお考えもあろうと思うから、ただいまの官房長の話でここで言うのもどうかというお話でありますから、私の意見として若干申し上げておきたいと思います。  この国民年金の問題につきましては問題が非常にクローズ・アップされている割に、みんな勉強が足りないと思うのであります。何かしらむやみやたらに、国民年金というのは必要な金額を全部所得税なり酒税なりの一般財源から出して、そうしてそれが非常に大きな金額でどうのこうの、来年できるかどうだろうかといったようなふうに考えがちなのでありますが、そうでないと思うのであります。聞くところによると、厚生省でもそうでないように大体来年度からの実施を目途にしながら準備をしているそうであります。考え方の問題としては、私はやはり今日の日本では、国民年金の制度というものはないわけではない、被用者の年金保険というものは相当進んでいるわけでありますが、現在四千何百万かの就業者の中で、千何百万かは厚生年金保険だとか、恩給だとか、共済年金だとかいうのをもらっているわけであります。これは全部醵出制度で、つまり掛金を出して、そうして年金をもらうという形になっている。厚生年金などは、今日家族分を除いて本人分からいきますと、一年間に大体三万五千円ぐらいもらっているのでありますが、まだまだ給付段階になっている人が少いものでありますから、厚生年金保険特別会計としては約二千億円の積立金をかかえて、これは何というか、今の段階では、年金を大いに世の中に出すというよりは、むしろ貯蓄奨励をして政府資金を集める会計みたいな格好になっている。要するにやり方から言えば、そういうふうなこともあるだけに、これは何もかにも年金をやったら金が出るというわけではないわけであります。イギリスなんかも醵出制をとって一般的な国民年金を出しているが、私はやはりわが党でもきめましたように、醵出を原則としながら無醵出を併用する、少くとも今日老人になっている人、あるいは今日未亡人で子供をかかえている者、あるいは労働能力を喪失した廃疾者などは、これはもう醵出というようなことなしに、直ちに払っていくべきものだと思うのであります。ただその場合においても、大体のわれわれが考えるべきものとしては、二十から五十五くらいまでの間、だんだんに積金を重ねて、それを六十なり六十五なりになってから老齢年令を払っていく、途中で不具廃疾になって労働能力を喪失したら、年がいかないでもそれくらいの金額をもらえるようにする。あるいはまたその間に夫をなくしたら扶助料と同じように老齢年金の半分をもらうといったようなのが大体の仕組みとして考えられるべきものだと思うのであります。しからば今日一体二十くらいの人が掛金を出して六十、六十五くらいになるまでもらえないかというと、そうは言えない。制度を創設すれば直ちに支出をしていかなければなりません。ただその支出をしていく場合においては、一応今日老人なり廃疾なりあるいは未亡人なりの人については、無醵出で一般会計負担で出す勘定にはなります。勘定にはなるけれども、政府の会計の金繰りからいうならば、片方でちょうど今厚生年金の金が二千億もたまっているように、これは醵出制度で将来出す人のための醵出金を集めていけば、現金繰りとしてはこれは相当の金額が入って参るわけであります。この国民年金のやり方としても、いわゆる積立金式でいくのと、片方からとった掛金ですぐ片方に払っていく付加式の方法と二つありますが、付加式の方法でやるならばこれはもう一般会計の負担というものは形式的にもなくなりますし、積立金式の方法でいく場合においても、私はやはり金が入ってくるならば、一般会計がそれを借りて利息を払うとかいろいろな方法をとりながら、いろいろな意味で実行可能な方法というものはあると思う。国民年金を実施をするという場合において、直ちに所得税財源で五百億だの千億だのという金がなければできないというような問題じゃないのです。やはり年金というものを出すからには片方にやはり年金を出すに相当するだけの掛金というものは何人かが負担して出さなければならない、それはちょうど家庭の中で若いものが老人を養うというのと同じように、国全体の若い者が老人や気の毒な人を養うという形でありまして、片方の掛金で片方の支出をまかなわせていくことはできるのであります。現にこれは太宰君の今、こういう席で厚生省の方針として言うのはいかがかというようなことで内容をあまり言われなかったけれども、これは厚生大臣、官房企画課編というかんばんで出した厚生省の公文書みたいな厚生白書の中にははっきり国民年金制度の実現が可能なりやいなやは、保険料か税かいずれかの形にせよ、主として生産者集団、つまり二十から五十五くらいまでの働き手でありますが、これを中心とした国民がこれを負担するかいなかの決断にかかっているであろうと書いてある。要するに大事なのは国民年金を出すということがいい、ぜひやろうということはきまっておるのです。そのきまっておることを実現するためには、それに必要な金を若い働き手が出すという決心をして、それがうまく動くような仕組みを政府が考えればあすからでもできるというのがこの結論です。これは太宰君が言うのがいやだというのでなくしてちゃんと言ってある。言ってあるとするならば、そう御遠慮なさるには及ぶまいと思うが、やはり厚生省としてはそういうつもりで——結局この問題は仕組みの問題、そうして国民全体に理解してもらう、もらうときには出すのだ、年寄りは若い者が養うのだ、不具者や未亡人はまめな人、仕合せな人が背負っていくのだという決心をして、そうして無理のない運営のできるような仕組みを考えるということだけにかかっておるとするならば、国民経済が進んで、もっと国民所得が上ったらやるなんていうようなことではいけないので、できるかできないかということはやはり厚生省の仕事に大きくかかっておると思うのであります。  そこで私は最後に一つだけ伺っておきたいと思うのだが、そういう考えでやってみる場合に、いろいろな仕組みの考えで試算をして財源の計算であるとか仕組みだとかいうものを十分考えていかなければならない。そのために必要ならば保険数量を使う必要があるならば、保険会社を使っていくということも必要だと思う。今日ではもうやろうという決意、それからやる方向については内閣の審議会の答申を求めたいが、これは大内会長の言われるように、五月に必ず出すと言っておられる。そういう点からいうと、これはもうほんとうにこなしてやっていく重大な責任があると思う。漫然と去年と並べて千万円というふうにとった経費で、私はそれだけ本質的な仕事がいくのだろうかということをちょっと心配するのですが、これから先内閣の社会保障審議会の正式の答申を受けてそれを具体化する場合に、やはり今までの国民年金委員、それから企画室という態勢で千百万円使っていけば十分うまくいけるものかどうか、その辺どういうつもりでおるのか、それともどうせできないのだというつもりで三十二年度と同じ、いわゆる机上の調査だけをなさるりつもりなのか、それをちょっと伺いたい。
  55. 郡祐一

    郡国務大臣 仰せのように決断をもって実行いたさなければ相ならない問題であり、その時期等につきましても努めてすみやかにこれを実施することにいたしたいと存じまするし、お話も、その方式は統合方式をとられるようなお話し振りでございましたが、私どももやはり採用いたすとしますならば統合方式をとります。そうして熱意をもって急速に実施いたす、こういうことで各般の省内の用意を進めて参ります。
  56. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 大分時間がきておりますが、もう少し時間をちょうだいして、午後にわたらないで午前だけでやめたいと思います。  次は、母子福祉関係のことを伺いたいのであります。母子福祉の関係につきましては、これはここにも書いてあるように今年度は母子福祉、児童福祉関係の仕事は非常に新しい仕事等が割合いによく入ってきまして、これだけやると来年は児童局の種がなくなってしまうのではないかと思うような感じがするくらいですが、それだけに大事な二、三の点について承わって参りたいと思うのであります。一つは児童福祉費の問題であります。これも相当の増額になりまして、給食費をふやしたり養護施設をふやしたり、それから懸案であった保母さんの期末手当を出したりというようなことができるようになったわけであります。ただ今度の予算編成の最初から問題になりましたのは、保育料をとる問題であります。この点は私はやっぱり十分落ちついて議論をする必要があると思うのです。世間では、大蔵省がとにかくむやみやたらと第一次の査定でめちゃな査定をしたために、何でもかんでも保育所のようなものをいじめるというような印象を受けたのであります。ところが会計検査院の報告等もあったりしまして、大蔵省は保育料の問題について非常にいいかげんじゃないか、とるものもとらないで幼稚園みたいなものをやっているところがあるじゃないか。そういう面は確かにあると思う。あるだけに、結局大蔵省の方も最後まで、ある程度は厚生省の方でしっかりやってくれといって問題が残ったのでありますが、私はこれだけ保育所の問題については、あるいは保母の手当であるとか給食費であるとか、めんどうを見るものだけはめんどうを見て、そしてただ保育料の問題についてだけ問題を残しておる。それはむしろ正当な問題が残ったと思うのでありますが、それは相互の誤解のないように、地方にも十分徹底するようにしておかなければならぬ。私自身もかつて責任者であったこともあるので気をつけて参ったのでありますが、実際地方の町村などで、本来の意味における保育園でなしに幼稚園を作るつもり——幼稚園では文部省から補助金が出ないけれども、保育園ならば厚生省から補助金が出るというので建ったところがなきにしもあらずであります。私が視察をいたしましたところでも、午前九時ころにお母さんが子供をみんな連れてきて、午後三時ころになると迎えにくる。何のことはない、しかもそれが市会議事堂の隣かなんかにりっぱな建物ができていて、勤労家庭の子弟でも何でもないというような者が入っておるところがなきにしもあらずであります。それからまた保育料の問題につきましても、十分とってしかるべきものをとってなかったというところが私はなきにしもあらずだと思うのであります。現在までの保育料の徴収の仕方というのは、家庭を十五級まで分け、子供の数を分けて、そうして各家庭についてあれは何級だというような認定をしてとる、しかもそれが割合に高い。そうするとそんなめんどうな所得の認定というものはなかなかできないし、できてもそれが割高だというので、結局みんな一級で片づけてしまうというようなことに相なっておったと思うのであります。この点はせっかく保育所予算という面も充実をされたわけでありますから、厚生省としてもあくまでも保育所保育所らしい保育所を作るということにすることが必要であるのが第一点。従いましてそのために保育所らしくない保育所、今言ったように九時にお母さんが連れてきて三時にみんな連れて帰ってしまう、市会議事堂の隣にりっぱな建物が建っておるのをどうするんだというような問題、それから今言った保育料を当然とってしかるべきものが入ってないような状態の改善をどうするかということは、私ははっきりさせておかなければならぬと思うのですが、この点について簡単に結論を伺いたい。
  57. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 保育所につきましては非常な要望もございまして、最近において非常にその数がふえて参りました。児童福祉法が制定されました当時に比べますと、最近においてはその個所数においてすでに五、六倍になっておるというような状況であります。そういうふうに急激に膨張しました割合にはこれに対する行政上の指導監督が十分徹底しなかったうらみがあるということは、それは事実でございます。そういう意味からいたしまして、ただいまお話しのように保育所に入れるべき児童は、保護者が労働または疾病等のために保育に欠ける児童を入れることになっておるわけですが、その辺の措置の適切を欠くもの、ないし保護者から所定の保育料を徴収することになっておりますが、その点について徹底を欠くうらみがあった点も、これは一部においては事実として認めなければならない。そういう点があるいは会計検査院の報告となり、あるいはまた行政管理庁の報告となるということになったわけであります。これは三十一年前後からそういうようなことが顕著になりまして、私どもの方も十分その点を反省いたしまして現状というものを検討をし、その後措置の適正、それから保育料徴収の適正ということについて中央地方をおげて努力をして参ったのでございます。その結果それらについは漸次状況はよくなって参っておるものと私どもは確信をいたしております。しかしただいまお話がございましたように、根本的にそういった行政上の努力を続ける半面、ただいまお話しの徴収のやり方、これは結局役場の人たちが各家庭について収入の調査等をやり、いわゆるミーンズ・テストをやって、そして一定の表を当てはめて保育料をとるということになっておりますが、現実の問題としてその辺のことを徹底して行うには行政力が充実しない点がございますし、そういう意味から徴収のやり方について私どもはこの機会に徹底した検討を遂げまして、もっと簡明なすっきりした形においてこれが行われるようにいたして実効を上げていきたい、かように考えております。それから入れる子供の措置の問題につきましても、それに関連をして十分これが適正に行われるようにさらに一そう行政上の指導監督を強化して参りたい、かように考えております。  いずれにいたしましても三十三年度予算がきまりましたら、この予算金額としては約五千万円ふえておるわけでございますけれども、内容的に見ますと相当窮屈な予算でございますので、これが運営につきましてはそれら制度改善検討と相待って最善を尽したいと考えております。
  58. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 いろいろ伺いたい点もありますが、時間もだいぶたちましたので要望を申し上げておきたいと思います。児童遊園の問題についても結局同じ問題ができると思う。これはほうっておくとやはり各市町村でその町のセンターを飾るために児童遊園を誘致して、町役場の隣に遊園があるなんということになりかねないのです。これは趣旨からいって、どうしたってまともな遊び場のない、親もめんどうを見てくれない、ほうっておけば危ない街路で子供が遊んでいるというようなところに作るのが趣旨だろうと思いますから、これがもう二度と再び幼稚園まがいの保育所ができるといったような非難を受けないようにぜひお願いいたしたい。  それから母子保健対策の一つとして、母子健康センターの問題につきましても、これは厚生省で十分お考えだと思いますが、とにかく非常にけっこうな仕事であります。ここでやるからにはほんとうによく考えなければならないし、一つにはまた国営の産院みたいなものがあっちこっちできて、助産婦さんの仕事の妨害をするというようなことでもいけない。ですから、間違いのない衛生管理をするという意味においても、医者なり助産婦なりと十分な連絡をとっていくし、また商売のむやみなじゃまになるといったようなことではなしに、両方円満にいくといったような意味においても、十分そういう点を考慮してやっていただきたいと考えるのであります。  それで、あと二つばかり伺いたいのですが、一つは身体障害者の問題であります。私はこの身体障害者の問題について、将来国民年金で廢疾年金ができたら、今日でも身体障害者福祉法でいろいろめんどうを見ておりますが、やはり何といっても大事なのは、人の厄介になって暮すのではなしに、自分で働いて飯を食っていくということだと思うのです。ところがその職場がなかなかない。これは私自身も不具者としての体験から非常に残念に感ずるのでありますが、自分が人の三倍くらい働くつもりでも、どうも足なんぞ悪いと使いにくいから、間に合いはするだろうけれどもほかのを使おうというようなことになるわけであります。従いまして、身体障害者の問題については、これは労働省の所管なのかもしれませんが、労働省は好きこのんでやりっこないのだから、私は何か厚生省が骨を折って、やはり大企業においては百分の幾つかは身体障害者を必ず雇う。ただし悪いやつを雇うわけにいかぬから、テストだけはして、いやならいやではねる。どうしても採れなければ別でありますが、たとえばビール会社で検ビンなんかやるについても、これは耳なんぞ聞えず、足なんぞ動かず、じっとすわって見ている方が能率が上るのだから、そういう点を考えて、厚生省として——私は前に労働省へ働きかけたことがあるが、労働省は非常にきらうのです。厚生省の方で身体障害者の雇用に関しては、毎年雇用奨励週間なんというのをやってお茶を濁すのでなしに、この身体障害者の雇用に関する法律を真剣に考える気はありませんか。それを一つ厚生大臣に伺っておきたい。
  59. 郡祐一

    郡国務大臣 身体障害者につきまして、ただ既存の法律だけでなく、これに対してもっと積極的にいたして参る、これはぜひ必要なことであります。従いましてその法律をいかように考えたらよろしいかというようなことは、十分熱意を持って扱って参りたいと思います。
  60. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 最後の一問ですが、これは多少掘り下げて、いろいろなことから申し上げたいと思ったのですが、結論だけ申し上げます。社会局長に伺いたいのだが、日本は、今までいわゆる恩恵的社会政策として発足をした健康保険だとか、国民健康保険だとか、生活保護だとかいうふうな既存の制度がずっと発達をしてきて、そうして今日では当初の趣旨と変って、そういう既存の制度を利用しながら、国民のほんとうの最低生活の保障、社会保障という仕組みになってきつつある。そこで国民保険ははっきり四カ年計画で発足しているのだし、国民年金の問題も今や発足せんとしつつあるわけです。そうするといわゆる政府の恩恵でめんどうを見るという公的扶助の将来の姿、たとえば生活保護法の医療扶助の問題だとか、あるいは生活保護の問題とか、あるいはまた失業対策のいわゆるニコヨン問題などというのがあるのだが、つまり社会保障の完成という方向へ向いながら、公的扶助というものはどんな持っていき方をしたらいいのか、するつもりでおるのか、これは中間段階が抜きだから、ばく然とした結論みたいなものですが、これだけ伺っておきたい。
  61. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 公的扶助の将来の姿ということでございますけれども、だんだんと社会保障制度その他の制度が完備して参りますと、公的扶助の部分がだんだん圧縮されて小さくなるのが理想の姿だろうと思います。たとえて申しますと、医療扶助一つをとって参りましても、かりに全国を対象にいたしました医療保険が完成されて、しかもその給付の内容というものが充実しておりますならば医療扶助は要らなくなる、これも一例でありますけれども、そういった意味で他の方の所得保障の制度ができますならば、やはり生活扶助は変るべきだろう、こう思うのであります。ただしイギリスのような社会保障の完備した国でありましても、実は現在ナショナル・アシスタンスというものがやはり相当人数ありますので、過渡的にはどうしてもそういった形で残っていくのではないか、こういうふうに考えます。
  62. 橋本龍伍

    橋本(龍)分科員 これで私の質問を終りますが厚生省の仕事もますます重大でありまして、ことに各局の仕事でも相互の関連が私は非常に深いと思うのであります。ただ率直に言って、これは私の見違いだったらごかんべんを願いたいのだが、はたで見ておると省内でどの問題についても各局いろいろな関係があるのだから、もっと省をこぞっての研究とか、省をこぞっての立案だとかいうような、省をこぞっての対策というようなものがもう少しあっていいのではないかと思われるときが、始終ではありませんけれども、ときどきある。どうか一つそういう点を御配慮になって、この上とも各個の問題について掘り下げながら、相互の関連を考えながら、ことに経済的な問題、財政的な問題等も考えながら、省を一体として十分有機的、総会的な成果をあげるようにお願いをいたしたいと思います。これをもって私の質問を終ります。
  63. 山本勝市

    山本主査 午前の会議はこの程度にいたしまして、午前正一時三十分より再開することにいたします。暫時休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後一時四十六分開議
  64. 山本勝市

    山本主査 休憩前に引き続き会議を続行いたします。  通告順に質疑を行います。井堀繁雄君。
  65. 井堀繁雄

    井堀分科員 昭和三十三年度の総予算は、その規模において一兆三千百二十一億を上回るものでありますが、その中で厚生省予算説明を今日伺ったのでありますが、元来厚生行政に属する仕事というものは、この三十三年度予算の中でどういう位置が適当であるかということは、きわめて重要な事柄であると思うのであります。金額はもちろんそうであるが、内容においてもそのことを重視せざるを得ないのであります。ことに岸内閣は三悪追放をその目標にいたして、広く国民に呼びかけておるのでありますから、当然このわかりやすい、政治目標というものを予算の中でどう取り上げるかということは、国民のきわめて関心の強いところであろうといわなければならぬのであります。こういう観点から予算内容、ことに厚生予算について、私どもは強い関心を持って見守っておったのでありますが、厚生大臣の説明を伺いますと、はなはだ残念ながら国民の期待を裏切ることもはなはだしいと思うのであります。申すまでもなく、資本主義経済を建前としておる自民党の政策、またその政策を背景としての政党内閣である岸内閣の性格からいたしますならば、この国家予算の遂行に最小限度の条件を加味するという点からいきましても、私は厚生省予算の額においてはなはだしく僅少である。それからその内容においてはなはだ不完全であるという感じを強くいたすのであります。  まず、厚生省実施しなければならない事柄についての予算の一つ一つについては追ってお尋ねいたしたいと思うのでありますが、総括的に見まして、一兆三千百二十一億余の国の予算の中でわずかに厚生省予算増額したと説明をされておりますけれども、その増額した部分を検討してみますと、見るべきものがほとんどない。金額にいたしましても、昭和三十二年度の国の予算の膨張率から見ましても、一千七百四十六億六千六百何万という増加率に比べまして、厚生省の五十八億何がしという増加額というものは、私は予算全体の均衡からいって、なっていないという感じがいたすのであります。それは言うまでもなく資本主義の経済のもとにおいて、特に神武景気といって、経済の伸び、ことに国民消費生活の伸びを政府は大いに強調した時代から、急に国際収支のアンバランスを、極端な金融引き締めという政策でこれを切りかえようとしたのであります。その結果、どこにどういう形でその犠牲が現われておるかということは、多くの事例があるので、一々申し上げる必要はないと思うのでありまするが、これらの大半というものが、厚生行政の中で一々手当をしていかなければならぬ事柄のみであると言っても言い過ぎでないのであります。こういう点から見ますと、この予算増額面の一番額の高いものから見てみましても、国民保険を主張しておりました政府の建前もありましょうけれども、わずかに二十四億ばかり国民保険関係増額を見た。次は生活保護関係にわずかに十五億、結核対策に十億でありますから、これだけで今度の五十八億の増加で、あとははなはだしく減額したものもたくさんあるのであります。こういう点に私はこの内閣の政策というものと予算の編成というものが全くちぐはぐになっている事実を発見せざるを得ないのであります。この状態は私は一つには閣内におけるそれぞれ担任大臣の政治力にもあることと思うのでありまするが、もっと厚生行政に対する責任ある主張というものが予算の中に具現化されていかなければならぬと思うのであります。私ども、今の報告を聞いたところによりますと、まことに遺憾でありまするが、厚生大臣は臨時でありましょうけれども、こういう基本方針については、閣僚としてそれぞれ責任のある立場をとっておいでになりまするから、お答えができると思います。まずこの総予算予算規模に比較して、厚生省予算が実質的においては私は減額されておる、こう思うのでありますが、これに対する厚生大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  66. 郡祐一

    郡国務大臣 厚生行政に当ります者が今年度予算をもって万全なりと考えずに、もっと充実したものを希望することは当然でありまするけれども、御承知のように、本年度財政規模、実質歳出の面で増しましたものは一千億、そのうちに国のいろいろな施策の裏打ちを地方でして参りますために、三百数十億の交付税の増を見ております。こういうようなことを考えますると、その余の盛りつけます予算というものはかなりに窮屈にならざるを得ないのであります。しかしながら厚生省予算全般を通じて見まして、井堀委員の御指摘のように、国保の充実をはかりますために相当多くの予算を盛りつけましたこと、あるいは診療報酬改善に伴いまする経費が今年は半年分を見ておりまして、平年度においては相当ふえて参りますること、それらの点を考えますならば、現政府が社会保障その他厚生行政全般にわたって持っておりまする熱意というものはかなりに高いものであり、また予算の上でもとにかく一歩前進するがために必要なもの、それからまた、これから時期を見て実現をいたしたい国民保険でありまするとか、国民年金でありまするとか、結核対策でありまするとか、そういうこれからの目安に対しては十分な用意をいたしておる。従いましてこの予算の執行に当りましては、十分こまかい注意を払って参りまして、この盛られました予算で、国民の基本的な利益をはかって参りますために必ずしも不足したものじゃない。私はむしろ前年に比べて改善されておると、こういう工合に見てよろしいと思います。
  67. 井堀繁雄

    井堀分科員 なかなか自信に満ちた御答弁ですが、それでは具体的にお尋ねをいたしましょう。先ほども午前中質問がありましたが、国民保険という一例を取り上げてみましても、一体今日被保険者の中で、保険全体のうち医療保険関係だけを見ましても、まだ改善を要すべきものがかなりあるのであります。私は国民保険に全国民を包容していくということについてはぜひスピードがほしいと思うのでありますが、その点からいいますと、どだい計画というものが皆無であるといっていいくらいでありますが、その事前に一つ具体的なことをお尋ねいたしてみましょう。これは毎年繰返し政府に強い要望もし、また御協力も申し上げて、警告もしてきたのでありますが、今日医療保険の背骨をなすといわれておりまする健康保険を見ましても、今日労働基準法の適用を受ける日雇い労働者でありながら、まだ健康保険の恩典に浴することのできない五人未満の零細事業場に働く労働者が放任されておるのであります。これは前国会も前々国会も、またその前も、三国会続いて健康保険法の改正問題をめぐり、また厚生行政全体の中において、具体的にわれわれが指摘して、また政府もそのつどわれわれの主張に同意しておるのであります。まずこの矛盾に対する解決は即刻していなければいけない。ことにこの三十一年度、三十三年度予算審議に当りまして、いつも問題になりまするのは、金融引き締めという、政府のやむを得ざるとはいいながらも、その政策の施行の結果というものは、中小企業に、金融の逼迫という事態で極端な圧力になって、そのもとに雇用されておりまする労働者の賃金収入は著しく減額しておるのであります。また賃金未払いの状態までが起っておるのであります。賃金較差がはなはだしくなったというのもその一つの現われにすぎぬのであります。こういう状態は、二重三重に零細企業の労働者にいわれなき被害を与えるのである。法の前に平等でなければならぬ。しかもその法の中においても日雇い雇用労働者のために設けられた健康保険に、この零細企業の労働者が包括されないなどということでは、私は医療保険を語る資格はないと思う。こういうことを実行しないでおいて国民保険などといっても国民は信用できない。まず、この点について一つ、なぜこの予算の中に——政府は昨年調査をしたはずであります。今までは調査ができていなかったとかいって言いのがれておるのでありまするが、昨年は調査費もとってちゃんと調査もされたはずであります。なぜこの予算に入れなかったかについて一つお伺いしてみたい。
  68. 高田正巳

    高田(正)政府委員 零細事業場の被用者につきましては、大体事業場の数が七十万、これに使用をされておりまする被用者が百五十万人程度と押えております。このうちで三十五、六万人程度は、いや、このうちというわけではございませんが、すでに三十五、六万人程度は今日の医療保険の組織に零細事業場の従業員が入っております。健康保険の任意包括で大体七、八万人程度、それから国民健康保険の方に、これは特別国保も含んでございますが、二十八、九万人程度入っておる、かような実情でございます。それから百五十万人程度の被用者のうちで、いわゆる現在の健康保険対象の業種、これに働いておりまするものは大体百二十万人程度でございます。大体実態はさようなことでございまして、しからば国民保険を進めていく上におきまして、これらの零細事業場の被用者をいかに処置して参るかという問題でございますが、これにつきましては前国会以来いろいろ御議論のあったところでございまして、一部には有力な意見として、第二種健保のような特別な制度を設けたらどうかというふうなこともあるわけでございますが、私ども今日までいろいろ検討をいたしました結果といたしましては、さような特別な制度を設けるということはあまり適当ではない、むしろ現在ありまする健康保険制度、あるいは国民健康保険制度、それらにそれぞれの業態、あるいは雇用の実態等によりましてそれぞれの制度に包括をして参るということが適当であろう、かような見解に到達をいたしておるのでございます。その一つといたしまして、来年度におきましては政府管掌健康保険の中へこれら零細事業場の従業員も包括し得るような、入れ得るような実態のものにつきましては取り込んで参りたい、かような計画で来年の予算を組んでおるわけでございます。大体年平均といたしましては五万人程度でございますが、実数としましては十万人程度のものを一つ任意包括という方向で取り入れて参りたい、かような考え方をいたしております。その他国民健康保険におきましても、被用者保険に入りにくいような実態のものにつきましては、国民健康保険の被保険者としてこれを包括して参る、かような考え方で、皆保険の進みまするとともに、この零細事業場の従業員につきましても保険の綱の中に入れて参るという方向でこれを考えておるわけでございます。
  69. 井堀繁雄

    井堀分科員 今の説明で私は非常に不可解に思うのは、任意被保険者として取扱う場合の被保険者の負担は一体どうなります。それから当然労働立法その他の法規の解釈から参りまするならば、日雇い労働者、ことに労働条件の低い、いわば積極的に医療保護を与えなければならない度合いの高い労働者を任意被保険者として扱ってみたり、あるいは国民保険の中に入れなきゃならぬということ、それは健康保険の改悪じゃないか、この点の解釈はどうなんですか。
  70. 高田正巳

    高田(正)政府委員 任意包括の被保険者といえども健康保険の中に入って参りますれば、負担の関係は強制適用の被保険者と全然変りません。標準報酬保険料率をかけて、その保険料率は事業主と折半でございます。  なお日雇い健康保険の日雇い労働者のお話がございましたが、日雇い労働者につきましては、井堀先生よく御存じのように、日雇い労働者健康保険という特殊の制度がございまして、これによりましてその健康の保険をやっておるわけでございます。なお日雇い労働者の健康保険につきましては、その給付内容改善その他若干の施策を来年度はとりたいと思っておりまするので、いずれ近い機会に法律案の御審議をいただく予定でおる次第でございます。
  71. 井堀繁雄

    井堀分科員 局長はずるく逃げようとしておりますが、任意被保険者にしなくて強制被保険者にしなければ、零細企業の日雇い者を保険に収容することは困難じゃないか。なぜそんな任意被保険者にするのか。強制被保険者として扱っていくというのが建前でなければならぬ。要するに健康保険を育成していくためにはそうあるべきだということには議論の余地はないと思う。ただ問題は、今までの政府のわれわれに対する答弁は、零細企業の被保険者を多く包括していくことは——ことに健康保険の赤字に当面しているとき、健康保険それ自体が危機に瀕している、その赤字の原因は、要するに政府管掌と組合経営の場合と二つ並べて見た場合、政府管掌のものは零細企業の労働者を多く包括するところにある。言いかえれば、標準報酬のもとをなす報酬実額というものが低い。大企業と零細企業との賃金の較差が非常に大きいということなんです。反対給付においては、むしろ労働条件の悪い労働者ほど病気や災害の率が高いという反比例が出てくることもまたやむを得ぬと思う。ここに保険経営の困難があったことはあまりに明々であります。そんなものをごまかさないで、もっと良心的に私は医療保険を扱うべきだと思うのです。問題は、要するに国の財政負担が増大してくるので、それで今まで健康保険の赤字問題を中心にして論議してきたのじゃないですか。そういうときだから、雰細企業も、すなわち五人未満の事業場の被保険者を強制被保険者とするということになると、ますます赤字が増大するということをおそれたにほかならぬ。今度のように、国の予算内容を見まするとすぐわかりますように、この機会にこそいいんじゃないか。三十年から三十一年にかけて、まだ決算が出てきませんから明らかでありませんけれども、歳入の自然増というものは実におびただしいものである。今度政府はその一部を資金の保留の形において八百十億もたな上げするという、要するにけっこうな状態じゃないか。こういうときに、零細企業の労働者の、健康保険その他の社会保険から見放されている状態を正常な姿にするということは、社会保険行政を扱うものとしての私は重大な責任じゃないかと思う。これに対する厚生大臣の見解を伺っておきましょう。これは政策に関する問題でありまして、事務上の問題でありません。
  72. 郡祐一

    郡国務大臣 全部を強制いたしますということは、私は困難な問題でははなかろうかと考えます。
  73. 井堀繁雄

    井堀分科員 それじゃ保険局長に伺います。大臣は困難だと言っておられる。大臣に困難な理由を聞くことは少少酷だと思いますから、あなたに伺いますが、それじゃ困難な理由を、国民の納得するように一つあげて下さい。
  74. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これは井堀先生は非常によく御存じなんでありますが、今申し上げましたように事業場の数からいいましても、七十万からあるわけです。現在の政府管掌の事業場は二十五万程度でございます。保険料を徴収いたします場合には、事業場単位でこれはやるわけでございます。七十万からの事業場を一時にかかえ込めということは、実際の技術的な面におきましても、これは相当な大問題でございます。なおまたそういうことは、人手を増して大いに強勉してやればいいじゃないかということに相なるかと思いますが、御存じのように五人未満の零細事業場の被用者における雇用形態といいますか、たとえば賃金の支払い方、そういうふうなものが、必ずしも現在の政府管掌健康保険保険料を取り立てられるような格好になっていない賃金の支払い形態もあるわけでございます。雇用形態自体におきましてもいろいろな種類のものがあるわけでございます。従いまして一時に全部を強制の健康保険の適用としてやって参りますことには、財政上の問題のみならず、そういうふうな事実的な問題と申しますか、実態関係として無理があるわけでございます。これは先生もよく御存じのように、今日零細事業場の被用者の健康保険につきましては、何でもかんでも現在の政府管掌なり健保なりの制度に、全部を画一的に抱き込めという議論は——そういう議論をなさる方ももちろんございますけれども、実際問題としてはそういうことではなくして、むしろ特別な制度をとったらどうかとか、あるいは国保に吸収したらどうかというふうな議論の方が強いのであります。なぜかと申しますと、今申し上げましたような実態は、なかなか一ぺんにこれを全部抱き込むということには無理があるという実態からしての御議論であろうかと存じます。
  75. 井堀繁雄

    井堀分科員 むずかしいことを聞いているんじゃないのです。五人未満の零細事業場の労働者を健康保険に包容するということは、大臣は困難だと言っている。その理由を聞いているのです。今の御説明によりますと、賃金なり雇用の形態というものが、被保険者として把握するのに困難だ、こう言っておられる。これでよろしいか、そのほかにありますか。もう一ぺん伺っておきたい。
  76. 高田正巳

    高田(正)政府委員 もちろん財政問題もございますけれども、しかしそれを度外視いたしたといたしましても、そういう技術的な点が一番大きな問題になるかと思うのでございます。
  77. 井堀繁雄

    井堀分科員 技術上以外にございませんか。財政上の問題が解決して、今あなたの言っておられる技術上の問題が解決すれば、実施することができるかできないか。事務当局の意見をもう一ぺんはっきり伺っておきたい。
  78. 高田正巳

    高田(正)政府委員 大体そういうことが大きな理由であろうと存じております。
  79. 井堀繁雄

    井堀分科員 大臣に伺いますが、今保険局長も明らかにいたしました。財政上の理由を今までもっぱらたてにしてこれを拒んできたのでありますが、これを拒めなくなった。今たった一つの理由としては取扱い上の理由をあげてきておる。そこで私は政府に所信を伺っておきたい。同じ零細企業の労働者の社会保険なり労働保険の中で労働省は踏み切っている。現に労働基準法は、たとい一人でも雇用されておれば、その保護の対象にしております。さらにまた今日徴税の面から見ましても、零細企業の五人未満の事業場の労働者であるからということと、大企業の事業場の労働者であるからということで差別はしておりません。所得の額においても、厳重に徴税は事を欠かないようにやっております。また社会的負担や義務などについても差別どころではなくて、もし差別があるとするならば負担の加重であります。もし事務上の理由でありますならば、たとえば労働省においては失業保険を五人未満の事業場にも適用すための立法をいたしております。失業保険もそうだが、それよりはもっと切実で、歴史的に見ましてもあるいは医療行政といった立場からいいましても、医療保険といった性格の上からいっても、事務上困難だということでありますならば、それは事務経費がかかり過ぎるということかもしれません。そういうことであれば、何も五人ということに境を置く必要はない。六人まではあまりかからなくて五人だとどうしてかかるのか。程度の差です。そんな横着な答弁では私は国民は納得せぬと思う。だれにもわかるような答弁をしてもらいたいのです。なるほど今までは、あなたのおっしゃる通りに零細事業場は数も多い。それから雇用の形態、賃金の形態も、大企業に比較いたしますとはなはだしく劣悪であるということも認めます。それだけにこそ保護が必要であるという理由が出てくるわけであって、またその把握が困難だということは、行政をやる者の責任じゃないか、国の義務じゃないか。それを口実にするということは私は許されぬと思う。厚生大臣はそれを理由にして、今日零細事業場の健康保険の被保険者の範囲拡大をそういう意味でお考えだと、さっきの御答弁をとってよろしゅうございますか。私はあなたの答弁いかんによっては、いずれまた予算委員会においてこの方針をもっと聞こうと思う。はっきりして下さい。
  80. 郡祐一

    郡国務大臣 先ほど失業保険の話がございましたが、労働省は失業保険に任意包括で入れようと試験的にいたしておるという工合に私ども考えております。お話でございましたけれども、強制加入ということは、どの面でも私はなかなか実施が困難ではなかろうかと考えます。
  81. 山本勝市

    山本主査 ちょっと井堀君、あなたの質問を制限するのではないが、社会党からあと四人出ております。時間制限があるから、あまり討論的でなしに、質問の急所でやってもらわぬと、あと社会党の人はやれぬから一つ……。
  82. 井堀繁雄

    井堀分科員 私の今伺っているのは、労働省が何も失業保険を任意保険の形でとろうとか……。だからあなたが任意保険の行き方をとるのもそれは一つの行き方です。あなたは健康保険国民健康保険の中に吸収すると言っているが、まだ問題はたくさんあるのです。たとえば先ほど保険局長の答弁の中で、零細企業の事業場の調査などについてすでに報告書を出しておりますということを言われた。私承知しております。しかしこれももっと範囲がある。それを一ぺんでやれと言うのじゃないのです。あの調査ができるくらいの範囲のものに健康保険を拡大することができないなどという理由は成り立たぬと思う。たとえば同じ政府の統計の中でも総理府の統計資料を見ますと、常時雇用する労働者が二名から四名までのものが全産業では六百万からある。非農林業だけでも四百九十三万人からある。私はこれは将来健康保険の拡大の対象になり得る人口だと思うのです。それが厚生省の資科では七十五万そこそこだ。しかしそれでもいい。把握のできたものは、私は当然健康保険の被保険者として一般と同じような適用ができる可能性があると思う。これは何も議論をしようと言うのじゃないのです。今まで政府ではそれを入れると、保険料すなわち保険経済の収入が減じて、負担は一般と変らない、もしくはそれ以上上回るといっても、もっぱら財政上の理由をたてにとっておった。今度はこれです。私はこれ以上追及しようとは思いません。厚生行政の中でも一番端的な、一番古い歴史を持つものをうまくやれぬというようなことで国民保険制度と言えますか。なまいき千万だ。その基盤の上に立って当然やっていくべきだと思うのです。厚生年金保険も同様だと思う。そのうち年金制度のことは聞こうと思っておりますが、これなど厚生年金の被保険者にも同様のことが言えるわけであります。これは多少健康保険と異なりまして、反対給付がかなり遠い将来になります、負担が目に見えており、反対給付が健康保険ほどはっきりしませんから、そういうことは問題にもなりがたいところではありますが、しかしこういう問題を伏せてかかるという態度では私は政府を信用することができない。いい機会でありますから明確に言っていただこうと思ったのでありますが、こういうことでは厚生行政はどこにあるのかということを疑わなければならぬと思うのです。  時間の関係もありますからもう二、三実例をあげて伺ってみたいと思いますが、結核対策の問題について、ことしわずかばかりですけれども十億ばかりふやしましたね。これは非常にけっこうだと思いますが、その十億の内訳は先ほどの説明によりますと、いずれも切実なものであります。増額の分についてはわれわれは敬意を表するのでありますが、惜しむらくは竿頭一歩を進めてもらいたかった。今までは、健康保険の赤字問題を論じている時分は、健康保険の医療の対象からもし結核保護対策の方に切りかえることができるならば、健康保険の赤字は立ちどころに解消するという立場でこの問題は非常に重視されてきたのです。今日では多少情勢が変っておりますけれども、変らないのは——岸内閣に貧乏追放に対してみじんでも誠意があるならば次のことを認識すべきです。貧乏になる原因に疾病その他いろんなものがあるが、その中でも結核による貧乏ほどみじめなものはないと思う。これは統計の上にもよく現われている。所得の低い者ほど結核の罹病率も高い。結核の療養には長期間を要すし、最近医療のいろんな内容が充実してきたことはけっこうでありますけれども、医療費はずっと高くなってきている。ですから、他の病気に比較して結核は長期になるということと、医療費が比較的高くなるということで、こういう問題に新しい予算を盛り込むべきではなかろうか、この点に対するお考えを一つ承わっておきたい。
  83. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 御指摘の通り結核が貧困の原因になり、貧困がまた結核を生む、そういう因果関係があるわけでございます。従って、社会保障推進していきます場合に、まず、結核対策を先に立てていくということであり、またやっていかなければならぬことであるというふうに考えられるのでございまして、政府も従来結核対策にいろいろと手を打って参ったのでございます。ただ結核の様相もここ数年来だいぶ様子が変って参りましたので、厚生省としましては最初昭和三十三年度計画といたしましては相当抜本的に結核対策推進していきたいということでいろいろ案を立てたのでございましたけれども、全体の財政関係もございまして、所期の通り予算実現を見ることはできなかったわけでございます。先ほど説明申し上げましたように、三十二年度百四十七億数千万円であったものが百五十七億数千万円というふうに、十億あまりの増になったわけでございます。ただ、金額的に見まして大幅な増額は見られなかったわけでございますけれども、内容的に見ますと、予防方面につきまして相当従来より健康診断重点を置いて、それの実施率の向上なりあるいは内容の精密度の向上というようなことに前進することができるようになると存じます。また医療面におきましても、従来の公費負担対象の人員を増すとか、あるいは期間を延長するとか、対象の範囲を広げるとかいうことで、医療費の裏打ちがないために治療できなかった人たちに対して相当の前進を見られるのじゃないかと考えられるわけでございます。御指摘の通り結核問題についてはさらにもっと大きく今後進めていかなければならないと考えるわけでございます。けれども、三十三年度の御審議願っております予算案におきましては、大体ただいま申し上げましたようなことで進んで参りたいと考えております。
  84. 井堀繁雄

    井堀分科員 資料があったらあとで提供していただいてもいいと思います。私どももいろいろ手を回して調べておりますが、結核によって生活が非常に逼迫して、まあ片端からそうだといえばそれだけですけれども、生活保護法によってめんどうを見てもらう、あるいは保険関係では長期ですから保険が切れたというような事情で、一番みじめな状態で、せっかく医療保護の制度があり生活保護制度があっても、そのワクからこぼれていくような状態の者が残っておると思うのです。一体そういう者をどのくらいの数に見られておるか、そういう者を救済していくために、たとえば医療費あるいはまた一部生活費の負担をしてやらなければならぬ者に対して何か調査をされたことがありますか。また調査しておられるならば、金額なり見積りなりについてどのくらいのものをお持ちであるかお聞きしたい。
  85. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 結核医療費にたえ得ないために貧困に落ちていくという者がある程度あるわけでございますが、それが医療費にたえられなくなりまして、生活保護の該当者になれば、それは生活保護法で見ることになるわけでございます。現在生活保護法で見ておる結核患者の数は……。数字がこまかくなりますから資料にして差し上げます。
  86. 井堀繁雄

    井堀分科員 深刻なものはそう大きな数ではないと思います。段階がずっと違っておるが、まず私は深刻な、はた目も気の毒な、いろいろな制度生活保護法では中途はんぱだといったような、ワクをはみ出てくるような人たちに対する問題だけでも速急に解決したらどうか、それは私はそう大きな金額にならぬで済むんじゃないかと思います。しかしそれはあとでけっこうです。予算を要求したけれども、けられたような事情もあるだろうと思います。われわれ議員も任務がありますから大いにそういう予算はどんどん取ってもらわなければ困ると思うのであります。とにかくこういったような結核対策については、もっと私は——全体の問題についてはそれぞれ専門家のお考え方については敬意を表するほかはないのでありますが、実際は役所の仕事ですからやむを得ぬと思いますが、一つのワクを出てくると全くこれから捨てられているというものが、範囲は広いのでありますけれども、私は救済の道はそう困難ではないと思われるので、こういうものに対して一つあとで数字をいただきまして、また機会がありましたら伺っていきたいと思います。厚生大臣は臨時ですから、堀木さんがなおられたらそのことをお伺いしたいと思いますから、一応研究しておいて下さい。  次に、時間の関係もありますから飛ばしてお尋ねいたしますが、厚生省のお仕事の中で、一般からはだんだん忘れられつつある項目で、生活協同組合に対する貸付金の予算、これは私は第十九国会のときだったと思いますが、政府の所見をただしたのです。そのときの答弁とは全く逆にだんだん減額されて、今年はわずかでありますが、この次あたりから影を没するのではないかと思うのであります。私はこの金額の問題よりももっと重要に考えたいことは、一体今日防貧対策といいますか、岸さんに言わせれば大げさに貧乏追放ですが、自民党の政策がどう追放するか、私どもは疑問を持っております。それは別として真剣にやはり貧乏追放をやっていこうとするならば、厚生行政の中には幾つかのやり方があると思う。社会保障問題ももちろんそうであります。     〔主査退席、小川(半)主査代理着席〕 しかしてここで私は、一番大きく取り上げていかなければならぬのは、民主国家、民主主義の政治的な方法で福祉国家を作っていこうとするには、一つには、国の保護政策を高めていくということももちろん重要でありますけれども、もっとそれより大事なことは、国民自身の力を培養し、それをまた政治が障害になるものを取り除いていくという形において推進をしていくということ、これはいずれの民主主義国家においても盛んに採用しておるやり方で、また成功している事例がほとんどであります。日本の場合には、民主主義の制度の中で一番立ちおくれているのは、私は消費生活の面における国民の組織が皆無である、またその組織を通じての生活防衛の動きというものがはなはだしく乏しいということだ、それがわずかに生活協同組合法の保護と規制の中に呼吸をしている。それもだんだん減っていきつつある。こういう状態は、私は国民の自力に訴え、国民の組織的な力によってその生活を開拓していくというような運動が他にありまするならば別でありますが、こういうところに対して厚生省としては、助成金を減らしても何か別にいい方法があるというお考えか。これは厚生大臣でしょうが、ちょっとしろうとでわからぬでしょうから、局長から一つ。
  87. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 消費生活協同組合に対する考え方といたしましては、私ども全く同感でございまして、国民の消費生活合理化のために非常に必要な制度だと思っております。ただ残念なことでございますけれども、現在の消費生活協同組合の状況と申しますと、大体千百くらいの組合でございますが、必ずしもそれが全部うまくいっているとは限らないような状況でありますために、せっかく貸付金をとりましても——この貸付金の制度は、御承知のように、府県が共同施設に対して金を貸しますと、それと同額を国から補助するという規定でございますけれども、過去の実績はそういった基準に合わなかったり、それはおそらく償還能力等も考えられてでありましょうけれども、それで府県の財政がここ二、三年来多少窮迫しておったような状況もございまして、予算がとかく余りがちになってきたような状況でございましたので、だんだんとじり貧で少くなって参りまして、本年は前年度の一千万円に対して九百万円という予算になったのでございますが、貸付金だけで考えますと、一応これでまかなえる程度の数字になっておるわけであります。  そのほか消費生活協同組合をどういうふうに振興するかということにつきましては、これは非常にむずかしい問題でございますが、何と申しましても地域の消費生活協同組合の場合に、いろいろ日用品を販売いたしますが、日本の一つの特徴として、小売商が非常に多いということ、そこへ持っていって地域の生協の小さいのがたくさんできているというようなことで、どうもそういった小売商の家族労働を含めてのサービスに圧倒されるという傾きがあるわけであります。この点大へん遺憾でございますけれども、実情はそういうことでございまして、今後も十分気をつけて御期待に沿いたいと思います。
  88. 井堀繁雄

    井堀分科員 生活協同組合の問題については相当御検討いただかなければならぬと思うのでありますが、今の貸付金の問題ですけれども、貸付金については、これは半分府県が持つことになるんですか。そういうような関係で地方財政が窮迫しているというようなこともありますし、一つには貸し付けても回収が非常に成績が悪いというような理由もあるようでありますが、やはり問題は生活協同組合自身の日本における先刻御指摘になったように末端の生活必需物資の供給事業においては小売商人の競合が問題になる、しかも日本の小売商人というものは採算を度外視した極端なサービスを消費者に行なっておると言えば言えぬこともないと思います。この問題は厚生省全体にも関係のある政策だと思いますが、一つにはこれは今の小売商人というものは通産行政の中で見ているようでございますけれども、これも実際には行政の綱から漏れている。しかしまた見方によっては潜在失業産業予備軍のような形で、それによって経済べースに乗るような出発点には最初からない。退職金の居食いも坐して食らえば大山もむなしというようなことから、米代の少しも、たばこ銭でもということで、わずかの収入でいいというようなことで始める商売がかなりあると思う。この状態を一方で解決しなければ、日本の消費生活協同組合というものは成長しないという——一つの大きな理由には違いない、そういうふうに割り切ってしまっていいのかどうか、もしそうであれば、むしろその対策を一面に立てながら、やはりこの消費者の協同組織——組織的な人格の上に民主主義というものが積み上げられていかなければならぬという基本的なものからいいますならば、困難があるからこそなおさら行政の面においては積極的な施策を打ち出す、またそこに指導的な役割も要請されてくると思います。だんだん先細りになるからといって、一緒に役所もこの悲観的な現象についていくのであれば、私はそこには行政はなくなってくる、政治もそこからは育成されてこないと思います。むしろこれは悪い傾向に流されていくということになるのであります。これはやや政策的にわたりますから局長に聞くのはどうかと思いますが、非常に大事な問題だと思います。これが一方予算の上でこういうふうに姿を没しつつありますし、政治からも忘れ去られようとしております。私はこの状態でいきますことは、今あなたの御指摘になりました小売商人との関係だけで行きますならば、ジリ貧を早めていくと思います。私は国民の消費生活の面においては、もう現在非常に混乱に陥っていると思います。ここは私はいろいろな欠陥のある中において最も重要な欠陥ではないかと思います。ことしのように比較的国の財政が豊かになり、地方の自治に対しても開拓の道をはかろうという時期にこそ、こういうものは増額がされてきて、そこに抵抗もあるかもしれないが、減らしていくということでなくふやしていくという行き方で、そういうところから刺激を求めて行政は発展していくべきものじゃないかと思ってお尋ねしたわけですが、お答えは逆であって非常に残念に思うわけであります。もし大臣の方で何かこれに対してお答えがありますれば、承わっておきたいと思います。
  89. 郡祐一

    郡国務大臣 お話の中にもございましたが、地方が一口に行政水準の向上など申しますけれども、とかく網の目から漏れますものについて地方がその力を伸ばさなければいかぬ点がございますし、ただいま政府委員の申しましたように、地方の財政の都合というような点につきましては、これは十分改善するように指導して参りたいと思います。それからお話の点は、小売商との関係に非常に深刻な問題がありまするだけに、この協同組合についてはもっと厚生省としても力を入れて参ることにいたしたいと思います。
  90. 井堀繁雄

    井堀分科員 ちょっと伺っておきたいと思いますが、消費生活協同組合の場合に、日本の生活協同組合法でいいますと、いろいろな利用事業やその他の仕事がやれます。今住宅の問題で、私は別な分科会で聞くつもりでおりますが、住宅の問題についてやや行き詰まりを感じるのです。といいますのは、政府関係の住宅——公営住宅や住宅金融公庫もしくは公団方式など、いろいろ政府はやっておりますが、これはどんどん推進してもらっていいと思いますが、この場合でももうすでに方々で問題になっておりますけれども、家賃の負担の関係、それから分譲の場合においては建築費の関係などに、とても今の国民特に勤労者の所得からいえば耐えられないような高額なものになる、そうでなければもうバラック、壕にひとしいものになるというような事態があるし、それからよし国がある程度財政的な援助を与えて、その差額を補給して家賃を低額にする、あるいは分譲を簡易にするとかいうことも、これはやらなければいかぬと思いますが、それにしても問題が残ってくる。私は住宅のようなものは先ほど言うように、国民の組織的な自主的な形に置きかえて開拓していくという、この先進国の成功の事例を見習っていくべきじゃないか。もし生活協同組合が供給事業で行き詰まるものがあるとするならば、それはそれとして、そういう方面で新しい分野を開拓していくべきではないかと思うのでありますが、この点についてお考えになったことがありますか。
  91. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 生活協同組合が供給事業だけでなくて、いろいろ利用事業なんかにも手を出しておるわけでありますが、最近は御承知のように例の火災共済なんかにも相当発展しておるようなわけでございます。ただ、今の住宅建設を目的としたそういった組合を作ります場合には、これは相当資金が要るわけであります。一体この協同組合の仕事というものは、やはり何と申しましても、お互いが組合員でお互いが助け合って共同して仕事をしておるというような意識が強くならないと、その組合が発展しないのではないか。今の日本の状況でいいますと、自分の組合がものを売っておりましても、隣でもって何か八百屋で安いものがあればそちらで買うというような考え方でやっております。たとえば出資にいたしましても、一組合平均が九十五万円くらいの少額でありまして、一人当りにして二百四十二円というような額でありますので、そういった大きな仕事をするために、それだけの一緒になって仕事をしようというような気持が出てくるかどうか。これは何かよほど政府か何かから多くの安い資金を供給するとか、補助でもないと、そういった仕事ができないのではないだろうかというような程度のことを考えておるわけであります。
  92. 井堀繁雄

    井堀分科員 非常に悲観的な御答弁で残念ですが、私は考慮していただかなければならぬ事態が近いうちにくるのではないかと思われる。これは事務当局よりむしろ政党なり政府が考えなければならぬ政策面の大きな問題だと思います。今日は代理の大臣でありますから、あまりなにしてもどうかと思いますので御遠慮申し上げます。  次に先ほど午前中の質疑応答の中でもありましたが、身体障害者の問題についてお尋ねをいたしておきたいと思います。身体障害者の問題は、今政府でもかなり努力をされておることについては敬意を表しておるわけでありますが、竿頭一歩を進めないと、中途半端じゃないか、やはり親切が届かぬじゃないか。そしてこの問題は数の上から見ましても手に余るほどのものでもありませんし、熱意さえあれば、私は完全とまではいかなくても、ある程度の結果を期待することができるんじゃないかと思います。実情からいいましても、身体障害者の場合には正常な社会生活を期待することができない。やはりこういう問題については、民主主義においてもし政治があるとすれば、こういうところから問題をきちきちとけじめをつけていくべきじゃないか。これは革新とか保守とかいう立場を異にして論議をしなければならぬ政策ではなくて、共通の広場の持てる問題だと思うのであります。ただこれをやるためには、国の財政上の問題がすぐ出てきますけれども、幸いに本年は余裕財源があってたな上げするくらいのときでありますから、こういうときに取り上げていくには解決できる格好の問題だと思います。それでお尋ねをいたすのでありますが、身体障害者の中で技術的な指導をおやりになったり、あるいは更生援護のための医学的あるいは職業的なそれぞれの処置についての報告を伺っておりますが、もう一歩進めてやりたいと思いますのは、先ほどもちょっとお話がありましたが、せっかく職業的な指導をいたしましても、雇用先がはばまれる。先ほどのお話では、ビール会社のような例をあげましたが、今日の日本の営利会社にこれを強制するということはいろいろ問題もあると思いますが、よし問題を越えて強制ができたと仮定しても、決して雇用される人にとっては幸福ではないと思います。だからその道を安全にはかり得る場所は、非営利事業、公共事業、具体的にいいますならば国の経営する三公社、五現業といったところ、あるいは公務員の中にも私はある程度の席を設けられると思います。そういう点で見ますと、せっかく職業訓練をし、あるいは心理的にそれぞれの面で気を配って御指導なさいましても、その一番肝心な、正常な経済生活を営むというような最後のどたんばにきて突っぱねられるのです。仏作って魂入れずという状態が現在の福祉の状態ではないかと思う。これを竿頭一歩進めてということになれば、三公社、五現業だけでもこれだけの人を収容することは、今の厚生省調査の数字だけで見ますとできるのです。こういう点は政府がやろうと思えば即日でも可能なことだと思うのでありますが、これに対して厚生大臣としてはお考えをお持ちでありましょうか。これはそう莫大な経費がかかるわけでもないのですが、お考えはいかがでしょうか。
  93. 郡祐一

    郡国務大臣 この点は確かにやり方で、財政上の問題というようなことでなく、直ちに解決できる部分があろうと思います。徹底的にいたしますためには、あるいは法的な根拠等もあった方がよろしいのかもしれませんけれども、しかしそうでございませんでも、話し合いでできることだと思いますので、この点は政府部内において可及的そのことができますように努力をいたすことにいたします。
  94. 井堀繁雄

    井堀分科員 ぜひ一つ実行に移してもらいたいものだと思います。  それからついでに、同じ身体障害者の中でも、傷痍軍人、白衣の傷痍者ですけれども、今日まだ朝晩私ども汽車や国電でその姿を見受けます。街頭でも見受けられますが、まことに悲惨だと思います。こういう問題はどうして解消できないのでしょうか。これはどちらに原因があるか、その点調査ができていたらちょっと伺いたいと思います。
  95. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 昭和三十年でございましたか、調査をいたしたことがあるのでございますけれども、こういう白衣の募金について調べてみて、たくさん金をためておる人もあるし、それから一日のかせぎの相当高い人もありますし、いろいろ事情を調査しても、それをあかすことを拒否したような人もありまして、その拒否した人の中にはほんとうの傷痍軍人であるかどうかということもわれわれつかみがたいわけであります。ただ、今ああいう寄付金を募集いたしますのは、各都道府県の条例で禁止しておるところもございますけれども、そういった取締りの方法しかないわけであります。それから鉄道の中でやります場合には、鉄道の方の営業規則で取り締る程度のことでございます。私どももそういった白衣の募金に行く人、たとえば相模原の国立病院なんかには相当多数の人がおりまして、そういうところには集中的に相談の仕事を労働省あたりと一緒になってやったことがありますけれども、相当効果をあげましたが、やはり現在も残っておるような状況であります。これは恩給の方も相当増額になったわけでございまして、一級でございますと相当な額であります。そういうことを考えますと、生活にはやめても困らぬじゃないかというふうに私ども考えますけれども、ああいうような仕事の方が御本人にとってみればなかなかやめにくいような事情があるのではないかと思います。話し合いでだんだんなくしていく以外には、現在のところ方法がないわけでございます。
  96. 井堀繁雄

    井堀分科員 誤解があってはなりませんが、私はああいう姿を強制的な圧力を加えて消すというようなことは望ましくないと思うのです。やはりいいのは先ほども申し上げるように、よい就職口をお世話することによって解決のできる問題ではないか。もしそうでなく、あれの方が収入がいいということになりますと、その昔こじき三日やったらやめられぬというものがあるかもしれませんが、もしそうだとするなら、そういう状態にあの人たちを追い込んだ責任はわれわれ国民全体がやはり負わなければならぬと思うのであります。またそうでなく、あれ以外に収入の道をあれ程度に得られないということでありますなら、私は経済生活を営む機会というものを先に与えて——話し合いをやったところで、これは権力で押えつければ別でありますけれども、行く先正確な生活を立てる収入の道がなければ、何ぼ押えても出てくる。そういう現象ではないかと私は見ておるのでありますが、それはいずれにいたしましても至急に御調査の上で、先ほど厚生大臣も御答弁になりましたように、適当な道もあるわけでありますので、すみやかな解決を希望しておきたいと思います。  まだ少しありますが、簡単な問題でありまするからお答えを一、二いただいておきたい。たくさんの陳情も方々から出ておりまする中で、重要と思われる問題についてこの際お答えをいただいておきたいと思うのがございます。それは、先ほど日雇い健康保険の問題で、保険局長は何か誤解をしておるが、これは私の質問の仕方が間違ったかもしれない。私は日雇い労働者の健康保険について、ああいう別の建前を置くことは必ずしも好ましくないと思う。やはり健康保険一本がいいと思うのでありますけれども、もし困難があるとするならばむしろ、国家公務員の共済組合の形のようなものの方がいいのではないか、こう思うのであります。ということは、これも先ほど言うように、今日の日雇い労働者の問題は焦げついてしまった。これは労働省の所管でありますから、そこであらためてお尋ねをするつもりでありますが、今日緊急失対事業法の精神とは別な意味において、重要な社会的意義が出てきておると思うのです。だから、そういうものと対遮的に考えていくべきものではないかと思うのであります。この点も先ほどちょっと御答弁がありましたけれども御検討を願っておいて、その改善もやはり共済組合の範疇に入れるような方法で改善をしていく。この点に対してはあとで一つまとめて御答弁いただきたいと思います。  それからもう一つ、これはどなたにお尋ねしていいかわりませんが、精神薄弱児童の問題については、ここで予算も多少増額しておるようで敬意を表しておりましたけれども、この陳情にははるかに遠い予算のようでありますから、お尋ねをしておきたいと思います。先ほどの身体障害者の問題といい、精神薄弱児童の問題といい、これはまあ成人と子供の違いがあると思うのでありますが、先天的なこういった人々の対策というものに対しては日本の行政というものは、冷淡というよりは突っ込みが足りないのじゃないか。ちょっと上っつらを触れておるけれども、それに対する結果をあまり遠いところに置き過ぎておるのじゃないか。こういう点に対する考え方が私はちょっと変えられなければいけないのじゃないかと、しろうと考えとしては思われる。従ってこういう陳情がずっと出てくると思うのであります。  もう一つの問題、これはちょっと違う問題でありまして、専門が違いますからあとで専門家の方からお教えを願わなければいかぬのですけれども、医療類似行為の関係で、これは前々国会でも決議をいたしておることでありますが、昭和三十年の八月に公布されて以後、一向にその処置が講じられていないようです。この関係業者というものは、非常に不安にさらされておるので、一つはっきりしてもらえぬかという陳情の趣旨のようであります。代表が大勢見えられて、私はしろうとでありますからよくのみ込めないのでありますが、こういう既存の業で生計をようやく維持しております者が、それがだめになるというようなこととは、非常に私は耐えがたい苦痛だと思うのです。それがいけなければどういう工合にするとか、この決議の精神にもありますように「猶予期間中に充分な指導を行い、国民保健上弊害のない者については、その業務の継続ができるように適切な措置を速かに講ずること。」こういう国会の意思決定も行われておるわけでありますが、この点からいきますと、もうすでに何らかの結論が与えられていなければならぬと思いますが、この点に対する処置はどうなっているか。またこういう陳情の趣旨にこたえるような道があるか、お答え願っておきたい。  それから環境衛生の中で、これは多少ほかの関係にもなりますけれども、環境衛生のことが出てくる上水道関係について、これは私も多少その後資料は集めてみたのでありますが、なるほど上水道の問題は、今日加速度的に都市に人口が集中されてきたり、あるいは地方都市の形成あるいは農村も従来のようなあれではなくて、集団生活に切りかえられてきたりなどという事情から拍車をかけられて、飲料水の問題はやはり大きな公衆衛生の問題になってきておるようです。こういうふうな問題が、何か今まで地方行政におんぶされたような形で、環境衛生に関する中で扱ってはおるけれども、受けて立つような消極的な態度のようであります。こういうものに対する、何も助成金だけを出すのが積極的とは私は申しません。そういうものに対するもっと積極的な行政がほしいものだと考えておるやさきに、こういう陳情がございましたので、この点に対する一つお答えを願いたい。時間の関係もありますので、それぞれ関係者からお答えを願いたいと思います。
  97. 高田正巳

    高田(正)政府委員 日雇い労働者の就労状態は、確かに先生今御指摘のようなものも最近相当多数あるようでございます。そういう問題も含めまして、日雇い労働者の制度につきましていろいろ問題がたくさんございますので、将来の問題といたしまして十分検討を加えたい、かように考えております。
  98. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 お話のありました精神薄弱児の対策でございますが、対象児童が百万に近い数でございまして、もちろんこのうちの九〇%以上は、これは精神薄弱の程度が薄い、従って文部省の方のいわゆる特殊学級でまかなうということになっております。私の方で主として担当いたしておりますのは、知能指数大体五〇以下の者を対象といたしております。現在これが対策といたしましては、一番程度の重い白痴クラスにつきましては、三十二年度予算におきまして国立の精神薄弱児の収容施設を作ることになりました。それからその上の、それほどでもない者につきましては、従来ともありました精神薄弱児の収容施設、これは県あるいは法人が作っておるものであります。この収容力が大体現在約五千人でございます。それから、さらに、日日通える者につきましては、通園施設というものを、これは三十一年度予算から設けることにいたしまして実施をいたしておりますが、そういうように一応体系としては整って参りましたが、量的に申し上げれば不足であることは言うまでもございません。もともと児童行政そのものが非常に新しい上に、この精神薄弱児の対策は、そのうちでもなお新しい部類に属するものでございますので、そういうような客体と収容力の非常な開きを生じておるのが現実でございますから、逐次この収容力等の増強に向って努力をいたしておる次第でございます。
  99. 小澤龍

    ○小澤政府委員 医療類似行為についてお答え申し上げます。この業種の方方を救う最も適切な方法は、いわゆるあんま業に転業させることだと思います。都道府県を通じまして講習会を積極的に開かせるようにしてございます。この講習会は厚生大臣が承認した講習会でありまして、その受講者はあんまの試験を受けさせて、これに転業させるという方法で従来もただいままでやってきておるのであります。今年度は特にこの方面に力をいたしまして、一人でも多くの類似行為者をあんま業に転換せしめたい、かように考えた次第でございます。
  100. 尾村偉久

    ○尾村説明員 水道につきましては、確かに最近までは明治二十三年にできました水道条例という古い法律にたよっておりまして、主として地方の行政にまかしておるわけでありますが、近代的なものに合いませんので、二十六国会で御通過願いました新しい近代的な水道法が昨年の十二月から発効いたしまして施行中でございますので、これによりまして中央、地方を通じまして、発展と適正な管理監督、これは十分これからうまくいく、こういう自信を持ちまして施行に当るつもりでございます。
  101. 井堀繁雄

    井堀分科員 大へん長い時間ちょうだいいたしまして恐縮でございました。私どもがぜひ実現してほしいと思いますることは、厚生行政全般にわたる問題であるかもしれません。と申しまするのは、冒頭にも言いましたように、本年度予算規模といい、予算内容の中から判断いたしますると、経済の伸びをかなり政府も検討を遂げた上であろうとは思いますが、私どもはまたこれと別な見解を持つものでありますが、それにいたしましても、一応次に考えられますことは、国際収支関係というものによって、神武景気からいきなり奈落の底に落されるような激しい政策の転換をやらなければならぬようなこういう政治というものは、まことにお恥かしい次第だと思うのであります。それをまた立て直すための為政がもうすでに表に現われてきておりますけれども、これがかなり今後いろいろな形を変えて出てくると思うのであります、そういう点からいきますと、この予算をもっていたしましては、まことに心細いと思うのでありますけれども、これはいずれわれわれはわれわれの立場からこれに結論を与えて、態度を明らかにするつもりではあります。しかし与えられた皆さんの立場はありましょうけれども、一応この予算の中で、次に起ってくるであろう困難を克服されるという決意のほどが、私の質問にお答えいただいた結果だと思うのであります。従いまして私どもはその御答弁をぜひ誤まりなく実行されることを要望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  102. 小川半次

    小川(半)主査代理 堂森芳夫君。
  103. 堂森芳夫

    堂森分科員 私はまず厚生大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、このたびの三十三年度厚生省予算を見まして、また大臣の説明を聞いておりまして、私の考えでありますが、社会保障推進という立場から申しまして、岸総理大臣が、貧乏の追放、こういうことを絶えず言っておられますが、この厚生省予算を見まして、何か欠けているものがあるんじゃないか、こういうふうに大臣はお考えにならぬでしょうか、どうでしょうか。事務引き継ぎもあったと思いますが、一つお考えを御答弁願いたいのであります。
  104. 郡祐一

    郡国務大臣 これは先ほど井堀さんにもお答えをいたしたことでありますが、国の予算のワクの中で、もちろん厚生行政に盛り込みたいものはきわめて多いのでありまするけれども、しかしながらそれぞれの面、ことに国民保険計画を可能ならしめるように予算上の措置も講じまするなり、また生活保護の面でも実情に合いまするようによく気をつけて参りすとか、それぞれ社会保障の大きい柱について予算上の措置もいたしておりまするし、また行政の重点をそこに置いておりますので、政府の政策をこれらの予算措置によって果して参る、またそれによって国民の血税を最も効果的ならしめたいという決意を持っておる次第であります。
  105. 堂森芳夫

    堂森分科員 それでは私は大臣に具体的に日本の九千万人の総人口の中でいろんな多数の人たちがどんな状態におるかということを説明申し上げまして、大へん恐縮ですが、大臣の言っておられぬことを一つお教えしてあげたい、こう思うわけです。ということは、これは決して皮肉じゃないのですが、たとえば厚生省の白書を見ておりますと、人口九千万のうち約一割の九百七十万という人が、日本ではボーダー・ラインにいる、こういうことが書いてあるのです。これはあなたの所管の厚生省が発行しておる書物です。そこで一体どんな人がそんなひどい生活をしておるか、こういうことを少し分析してみますると、いろんな職業の人があるわけなんです。それはこまかい分析はやめましても、たとえば零細農がこの中に三割くらいある、あるいは職業にはついておるが非常に低額所得者であるとか、あるいはまた日雇い労務者として不安定な労働についている人とか、あるいはもちろん失業者もあるわけですが、しかしこの九百七十万という人たちの四割くらいは廃疾者、すなわち身体障害者であり、また未亡人家庭であり、また老齢者である、こういうことを白書が言っておるわけです。今度の予算を見ておりますると、こういう点について何か厚生大臣として、これはいかぬ、こういうふうにお考えにならぬでしょうか、いかがでしょうか。そういう人たちに対する施策というものがきわめて不十分である、こういうふうにはお考えにならぬでしょうか、いかがでしょうか。
  106. 郡祐一

    郡国務大臣 確かにボーダー・ラインにありまする人々、また低所得層に対する施策というものは大事なことでありまするし、近時いたして参りまする各種の貸付金にいたしましても、また失業保険、その他失業者に対する対策なり、さらに一つの世論と化し、また政府も極力推進いたして参ろうとする国民厚生年金にいたしまして、こうしたいろいろな施策をあわせて完全に実行するということが、今堂森委員御指摘の層を安定させることだと思いますし、厚生省といたしましても、そこに重点を置いてものを考えたい。ただその点についてさらに力を入れて参らなければならない点であるとか、いろいろな御注意を承わって改善して参らなければならない点はございましょう、しかしその点についてはすなおな気持であらゆる施策を反省しながら、いろいろな方法を組み合せて、どうか役に立つ、目的にかなった行政をして参りたいと考えております。その点についてはかなり厚生当局は気を配っている、こういう工合に私は考えるのであります。
  107. 堂森芳夫

    堂森分科員 大臣から気を配っているというお話でございますが、私は一向どうもそのように了解できないのであります。大臣はあまり問い詰めますとだいぶお困りになっているようでありますから、私は局長から御答弁願っていいと思うのですが、たとえば母子家庭に対する福祉の貸付金の法律が昭和二十七年の十二月にできたと思うのです。この問題を一つ取り上げまして高田局長の答弁を願いたいのですが、たしか昨年でございました、母子福祉の貸付金が、希望者が多いにもかかわらず、実際に貸し出しの額が、政府が当初予算を組んだ額がうんと余ってしまって、実際に府県ではこれを使い切っていない、こういう状態があって、これは府県当局の財政がきわめて逼迫しているので、国の補助率を三分の二にふやしてもらうと、この貸付金がうまく行き渡るんじゃないか、こういうわけで、昨年でございましたか、二十六国会でございましたか、二分の一を三分の二に政府の負担を引き上げるように改正法律案が国会を通過したわけですが、昭和三十二年になって現在までどれくらいの貸付金が実際に母子家庭に流れているか、数字がわかっておったら一つお答えを願いたいと思うのです。
  108. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 三十二年度の国の予算が五億九千万円、そのうち現在までに約四億の貸付をいたしております。
  109. 堂森芳夫

    堂森分科員 来年度予算を見ますと約五千万円ほど減額しておりますが、これはどういうわけでございますか。
  110. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 御承知のように、年を重ねるに従いまして貸付の量もふえて参りますし、反面償還の量もふえて参るわけでござございます。従って三十二年度よりも三十三年度におきましては償還の量がふえて参るわけであります。その辺のところを考慮いたしまして、貸付の財源の総額においては滅らないということを目安にいたしまして、三十三年度予算は約五千万円の減となったようなわけでございます。
  111. 堂森芳夫

    堂森分科員 私は局長の答弁は必ずしも妥当でないと思うのです。御承知のように、あなた方の省で作った白書では、昭和二十七年度でしたかの未亡人家庭調査では七十万世帯ということになっております。ところが三十一年度調査では未亡人世帯は百十五万世帯ですか、そういう数字が出ておるわけです。もっともこれは三、四年間に一ぺんにそんなにふえたというわけではなしに、十八歳未満の子弟をかかえたものを基準にとると七十万世帯、それから二十歳未満まで引き延ばすと百十五万世帯、こういうことのようでございますが、しかしこれらの家庭のいろんなものを——私も少し調べてみたんですが、大体この十八歳未満の未亡人世帯で生活保護を受けておる世帯が六万五千くらいあるといわれておるのです。それから十二歳未満の子弟をかかえた世帯が一万五千くらいある。そうすると合計八万ぐらいの世帯が生活保護を受けておる。そうしますると、局長がさっきいろいろ答弁しておられましたが、この百十五万世帯の中で生活保護を受けておる世帯というものはわずか八万世帯しかない。しかも厚生省のいろんな調査を私読んでみましたが、未亡人世帯の何ら保護を受けていない、あるいは年金も受けていない、こういう家庭の約五割はボーダー・ラインにあるということを言われておるわけですが、こういう人たちが県当局に金を借りたい、生業資金を借りたい、いろんなものを借りたいと申し出ても、おそらく県はこれを渋って貸さない、これがほんとの事情だろうかと思うのです。そこで今までの貸し出しの基準をもっと変えていく、こういうような何か考えを持つべきではなかろうかと思うのですが、局長はいかがお考えになるでしょうか、御答弁願いたいと思います。
  112. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 ただいまお話がございましたように、母子世帯百万をこしておるわけでございますが、そのうちの約半数近くは月収一万円以下程度の非常に、いわばボーダー・ラインといいますか、そういった一般に比べますと収入の少い階層が割合に多いわけなんであります。そういう意味においてこの母子福祉資金貸付等の一連の対策が講ぜられておるわけでございますが、もちろん貸付でございますから、かりに生業資金であれば、相手が事業をやろうという場合におきましては、事業が確実にいくかどうかという見通しについてある程度客観的な材料を得て、その資料に基いて貸し出しをするのが、これが金を貸す場合の当然の措置でございますけれども、しかしこの法律自体が御承知のような趣旨でできたわけでございますから、そういう趣旨に沿ってこれは貸し出されておるわけでございますし、今後もその方向で指導をいたしたいと考えておるわけでございます。ただやはりこれは金を貸すわけでございますから、償還の問題は当然考えなければならないわけでございます。償還の状況が以前に比べますとやはり相当悪くなっておることは事実でございます。これにはいろいろな原因があると思います。しかしこれに対する対策として、母子家庭相互に貯蓄組合等を作りまして、自主的に償還の対策を立ててやっておる面も多々あるのでございます。こういっつた、いわばこの制度に特有な貸す場合の考え方、返す場合の考え方、両々相待ってこの制度が今後ますますうまくいくように私たちも懸命の努力をいたしたいと思っております。
  113. 堂森芳夫

    堂森分科員 この白書を見ますると、昭和二十八年度には申し込みに対して五八%ですか、それから二十九年度が七九%、三十年度が八一%、こういうふうに貸していると思うのでありますが、三十二年度の現在まではどれくらいのパーセンテージで貸し出しが行われましたか。
  114. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 三十二年度は現在進行中でございまして、これは事後に集計をするようになっておりますので、わかりません。
  115. 堂森芳夫

    堂森分科員 そこで、さっき局長が答弁されました中に、貯蓄組合なんかを団体的に作らせて、そうして貸付をそういう組合にやっていく、こういうふうに私聞いたのですが、間違いないのですか。そういうことがいいんじゃないか、こういうふうに言われたんじゃないですか。
  116. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 私が申しましたのは貸付の場合ではございませんで、たとえば生業資金を借りる。そうすると償還をしなければならない。償還をするについて、そのときになって一人で背負ったのではなかなか償還がはかばかしくいかない。そのためには母子家庭相互に一つかねがねから金を積み立てておいて、いわば相互扶助的な立場で金を返す、償還を確実にしていくという考え方でいこうじゃないか、そういう考え方でございまして、貸し出しの場合というよりも、お互いの間で償還を円滑にそしてスムーズにやっていこうという工夫の表われでございます。
  117. 堂森芳夫

    堂森分科員 それでは話を戻しまして厚生大臣にお尋ねをしたいと思うのです。実は昨年の通常国会で、昭和三十二年度予算審議の際に、私実は厚生大臣——当時は神田君だったと思いますが、神田厚生大臣に対しまして、国民年金の問題についていろいろと質疑をいたしたのであります。そのときに、一千万円ほどの予算を組みまして、そうして五人の委員を委嘱し——大臣の顧問ですね、嘱託を委嘱して、今後の国民年金制度のあり方について研究調査をしていく、こういう答弁があったわけです。そしてそのときに私から、しかし国民年金制度というものはきわめて膨大な計画のものであるし、また直ちにこれが行われるというようなこともいろんな事情から困難性を認めざるを得ない。しかし何と申しましても現在日本の国全体を見まして、さっきも申しましたように、九百七十万という、全国民の一割がボーダー・ラインの生活にあるわけであります。しかもそのボーダー・ラインの生活をしておる人たちの四割は老齢者であり、あるいは母子家庭であり、あるいは不具廃疾者である。こういう事態から考えまして早急にこうした人たちに対する一つの制度、それは年金と申しても何でもけっこうですが、そういうものを考えてもらわなければいかぬ、こういうふうな質問をしたわけであります。そうすると神田厚生大臣は来年度は何とかしてそういう方向に持っていきたい、こういう答弁をしておられるわけであります。私速記録を持っておりますからこれははっきりしておるわけでありますが、残念なことに、今年の予算を見ましても、そういうものは何ら見当らぬわけであります。相変らず準備金として昨年よりほんのわずかふえて一千百五十万ですかの予算が組んでございます。  そこで一つ大臣にお尋ねしたいのですが、国民年金制度の準備を一年やってこられまして、現在のところ厚生省としてはどんなふうな国民年金制度を作っていくか、こういう何か考え方がだんだん固まってきているだろうと思うのです。まだそうした委員にまかしてやっておる、あるいは社会保障制度審議会に昨年の五月総理大臣が諮問を発して、今年の五月には中間報告があるとか、そんなことはわれわれも知っておるわけですが、厚生省としてはどんなふうな考え方を持ちつつあるか、それは決してコンクリートされたものでなくてけっこうでありますが、どんなふうな方向に行くべきかという考え方がだんだんできてきておるだろうと思うのですが、この点について一つ大臣から御答弁を願いたい、こう思うわけであります。
  118. 郡祐一

    郡国務大臣 これは先ほども橋本さんのお尋ねでちょっと触れたところでありまするが、厚生省としても確かに準備は進めており、また五人委員の方もいろいろ検討いたし、先ほども申しましたように醵出能力の調査というようなことを三十三年度でいたそうとしており、今までの考え方をまとめていって参りまして、醵出制を原則で無醵出制を併用するとかいう形、これがおちつくところであろうというようないろいろな角度からの考え方で、またそれに応じました試算等もいたしておる状態であります。厚生省としての作業は着々進んでおると承知をいたしております。その中身につきましては政府委員の方から申し上げます。
  119. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 けさほど橋本議員のお尋ねにお答えしたのでございますけれども、この年金制度国民の要望が最近とみに高まってきております。その点から申しますれば一日も早く実権したいというのが当然でございます。しかしまた同時にこの制度は事柄からいたしましてなかなか慎重に準備を重ねなければならない筋合いであることも御承知の通りでございます。その点から準備には拙速が許されない、その点は慎重にやらなければいかぬ、こういう二つの要素をかね合いながら進めて参っておるわけであります。大体調査いたすべき筋のものは、昨年は老齢者、母子世帯などにつきまして、それの扶養状況あるいは現在社会保障給付をどういうふうに受けているかというようなことを調査して、目下それを解析しておる段階でございます。それから三十三年度予算におきましては、ただいま大臣から申し上げましたように醵出の関係調査をいたしたい、かように考えております。それから外国の制度なども参考にいたすために検討しておりまして、ただいまのところはだいぶ進んでおるような状況でございます。なお厚生省では、先ほどの五人の年金委員の方々に、制度審議会と並行して、専門的に御審議を願っております。その過程において私どももいろんな面で試算などをいたしておりますけれども、まだただいまのところは、厚生省の原案とかいうようなもので皆様方にお示しするまでには至っておらないのでありますけれども、中身としては、いろいろな点について検討を進めておる、かように御了承いただきたいと思います。
  120. 堂森芳夫

    堂森分科員 まことに不満足な答弁でございますが、そんなばかなことはないと思うのです。もっと厚生省としては考えがまとまりつつある、こう思わざるを得ないのです。そこでたとえば身体障害者というもの、あるいはさっき申しました母子家庭、こういうものを一つ考えましても、太宰官房長よく御承知の通りであります。たとえば身体障害者の現状を見ましても、あなた方の役所で調べた調査によりますと、十八才以上の身体障害者が、内臓疾患の身体障害者を除いて約八十万、七十八万なにがしかおる、こういうことをいわれておるのです。しかもその中で重度の人は約三十七万五千人ですかある。そうしてその中で旧軍人軍属が、約七万数千人ある。そうしてその三十八万の中で全く収入のない人たちが非常にたくさんおられる。こういう状態でございます。いろんなこまかい数字を申し上げることは私省略いたしますけれども、少くとも身体障害者の重度の人たちの中で、二十七、八万人くらいの人は、やはり生活の保障が何かないと、生活が全く立っていかない、こういう人たちがあるわけでございます。こういう人たち、あるいはさっき幾らか私数字を申し上げましたが、母子家庭の人たち、そういう人たちをどういうふうにやっていくのか、醵出制にする場合に、こういう人たちをどうやっていくか、あるいは神田前厚生大臣が答弁しておりましたように、本格的な国民年金制度ができる前に、過渡的な形において、何かそういう人たちに対する生活保障といいますか、あるいは国家保障といいますか、何かそういうふうなものを考えざるを得ないし、そういうことに全力をあげて努力していきたい、こう申しておりましたが、今厚生省当局で考えておる国民年金制度では、こういうカテゴリーに入る人たちに対しては、どういう方法をとっていくべきであるか、何か考えを持っておられると思うが、その点もう少し詳しく御答弁を願いたい、こう思うわけであります。
  121. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 ただいまお話のございました廃疾の方々、あるいは母子世帯の方々、こういう方々に対しましても当然国民年金制度実施いたします場合には、その一環として、この方々も含めていかねばならぬことは申すまでもないところであると存じます。しかしながらこの年金制度実施するとなりますと、これは既存の各種年金制度との関連もございますしいたしますので、これはやはり基本的なレールというものがまず敷かれる、それでその中から逐次いろいろな情勢及び技術的な問題等をにらみ合せながら、できるだけ実施していく。その基本的なレールと申しますのは、ただいまのところでは、私どもは内閣総理大臣から制度審議会へ昨年諮問がございました。あれが本年の四、五月ごろ出ますことを期待しておるわけでございます。なおそれが出てから準備したのではもちろんおそいわけでございますので、厚生大臣が委嘱いたしました国民年金委員において並行的にこれをやっておるわけであります。その年金委員審議の過程におきまして、私どももまたいろいろな面についてああでもあろうか、こうでもあろうかといろいろ考えを持っておりますが、その持っておる中身は、ただいまの母子世帯なり、老齢者、廃疾者に対しましては、この制度実施となりました場合には、なるべく早い段階に、第一の段階と見ていいのじゃないかという早い段階において、もちろん見ていかなければならないという考えを持っておりますけれども、ここに政府側として御答弁申し上げますまでにはまだ至っておりません。やはり政府の、厚生省としての一つの基本的な考えというものを申し上げるのは、もうちょっとお待ちをいただきたい、こういうことを申し上げておるのであります。
  122. 堂森芳夫

    堂森分科員 それでは官房長にさらに進んで具体的にお尋ねいたしますが、あなたとしては、現在の老齢者、あるいはまた身体障害者、あるいは母子家庭というものには当然一日も早く本格的な国民年金制度の前にやるべきだ、こういう考え方を厚生省としては持たれるんだ、こういうふうに私が理解してけっこうでございますか。     〔小川(平)主査代理退席、主査着席〕
  123. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 ちょっと質問がなにでございますが、私の何と申しますか個人というものが、ここで御答弁申し上げていいのか存じませんけれども、われわれ仲間といたしましては、そういうような点につきましてもどういう範疇の方々には大体どういうふうにやることが一つ考えられるとか、実施はどういうふうにしたらいいかとかいろいろ考えております。その私の個人的な気持をちょっと申し上げたんで、あるいはこの場合としては不適当かと思いますが、その辺は御了承願いたいと思います。
  124. 堂森芳夫

    堂森分科員 それからこの五人委員会の、これは私寡分にして間違いかもしれませんが、メモした話によりますと、何か厚生当局では今後の国民年金制度というものは、現在ある年金制度をだんだんと広めていって、たとえば五人未満だとかいろいろな方面に広げていって、一応自営業者にまで広げていくとか、そういう方法をとって、そうしてこういうカテゴリーに入らぬ人だけに何か無醵出制による国民年金制度を作っていこうじゃないかというような考え方がある、こういうように聞いているのですが、それは間違いです
  125. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 大体そういうような意向のようでございます。
  126. 堂森芳夫

    堂森分科員 しかし五人委員はそれに対して非常な不満を持って、そんなものは国民年金じゃない、こういうことを言っているそうですが、それはあなた方は答弁できないでしょう。私はもう時間も参りましたし、次の質問者もおられますから、ただこの国民年金のことだけで質問を終ろうと思っておりますが、とにかく全国的におられるところの身体障害者あるいは母子家庭生活に困っている人、あるいは現に老齢者であって、しかも生活に非常に困窮している人たち——私の調べた数字ですが、六十五才以上の老齢者で年金受給がある人たちが百二十七万八千人ぐらいだ、こういうふうに聞いているのです。これは社会保障制度審議会の方で調べた数字ですが、それから生活保護を受けている人たちが約十六万五千人ぐらいある、こう言われております。それから年金もまた生活保護も何も受けていない人たちが約三百四十四万九千人ぐらいある。この三分の一ぐらいが大体ボーダー・ラインの生活の環境にある人たち、こう考えていいと思うのでありますが、こういうふうに六十五才以上のわれわれの同胞のうちで、三百数十万のうちの三分の一ですから百万人ぐらいの人が、全くひどい生活をしている、こういう状態になる。また百万をこえる未亡人家庭の約半分はボーダー・ラインの生活をしている。それから身体障害者につきましても、私がさっき申しましたような数字でひどい生活をしている人たちがある。こういう人たち、何らかの制度による年金あるいは扶助というものを受けていない人たちは、一日も早く国民年金制度ができることを渇望しているわけです。そうして貧乏追放、こう岸総理も言われますし、おそらくこれらの人たちは今度の予算にこそそうした予算が盛られ、来年度からはそういうことが実施されるだろう、こういう大きな期待を持っておったと思うのです。ところがやはり来年度においてもまだ実施の域に達しない、こういうことでありまして、厚生当局としては私はこのボーダー・ラインにある人たちのことというものが欠けていると思う。そこでさっき大臣に申し上げたわけです。国民保険あるいは結核対策等一応大臣の御説明がありましたが、私はそれでは足らぬところがあるのではないか、こういうことを大臣に、大へん失礼でございましたが、教えてあげますなどと言いまして、恐縮でございましたが、申しました。私こういう点がやはり今の厚生当局の大きな施策としての欠けている点だと思います。もちろんこういうような大きな施策でございすから、超党派的に大いに推進すべきであると私も考えているわけでありますが、厚生当局を一つ激励しまして、国民が待望している国民年金制度の実現のために今後大いに努力してもらい、われわれも大いに努力する、こういうことで私の質疑を終りたいとこう思うのであります。
  127. 山本勝市

  128. 福田昌子

    福田(昌)分科員 いろいろとお尋ね申し上げたいと思いますが、ごく客観的な問題といたしまして、郡大臣には厚生省の所管まで御担当になりまして、一そう御多忙になられたことと存じますが、厚生大臣の臨時とされまして、厚生行政では何をまずやるべきだということを直感されたか、この点をまず伺わしていただきたいと思います。
  129. 郡祐一

    郡国務大臣 全く直感でありますけれども、私自治庁を担当しておりまして、何か国保について地方財政がどうやらこうやらというのを前から聞きおりました。しかし私そのときから——地方財政の問題はあります。これも私、決してどうでもいいというのじゃございませんが、しかしもっと国民保険ということのほうが非常に大きい要求であり、従いましてそれをまずもって貫徹すること。幸いにして明年度予算において、もとよりそれで十分というのではなく、またその次の年度にはもっと事柄を改善して参る点はございますけれども、とにかく目標を達しますようにいたしますれば、今も堂森さんのお話にありました年金の問題もございまするし、そうした医療なり所得なりの面で、ほんとうに国民が安心できる保険制度ができて参りますということ、これがまずもって大事だし、どうしても達成しなければならぬ——これはほんとうに直観であります。しかし中に参りまして、わずかな日数でも籍を置きますと、そのほかにも大事なことがあるようでございますが、直観とおっしゃいましたので、直観だけ申し上げます。
  130. 福田昌子

    福田(昌)分科員 健康保険が非常に大切だという御意見でございましたが、全くおっしゃる通りでございます。その点につきましてはあとで御質問させていただきたいと思っておりますが、それとあわせて、岸内閣の閣僚とされまして、岸総理の言っておられる三悪追放の、その第一にある貧乏追放ということ、このことにつきまして、これは所管事項でもおありでございましょうし、これに対しての御感想というものもあろうかと思いますので、貧乏追放に対する御所見を伺いたいと思います。
  131. 郡祐一

    郡国務大臣 考えてみますと、厚生行政のほとんどすべてが、貧乏追放の基礎的な条件になるものが多いと思います。それで私も、いろいろな貸付金等ができておるが、一体これがほんとうによく動いておるであろうかどうであろうか。また生活保護というものがどうなっておるであろうか。こうした点を聞いてみておったのでありますが、大体において私は、一口に申せば社会局などで担当しております仕事、これを貧乏追放という意味でももっと活発にそれぞれをやっていったら効果が上るだろうという気は、これも直観でありますが、いたしました。これもどうも聞いてみますと、なかなか一生懸命にはやっておるのですな。一生懸命にはやっておりますが、事務に言わせると予算の足りないという面もございます。それからその制度的な仕組みと申しますか、国と地方とが分担してやるやり方、あるいはそれをいたします主体が必ずしも適当でないんじゃないかというような、制度の面と財政上の面と両方あるなという気はいたします。しかし一つとしてむだなことがあるのじゃなくて、どれ一つを推進するというよりも、全体を推進するということが大事なのだということを貧乏追放については考えています。
  132. 福田昌子

    福田(昌)分科員 直観的に、厚生行政は財政の面もあり、またアクティブに、行動的に推進することが必要だとお感じいただいたことを私どもはまことに多といたしますが、重ねて伺いたいのは、生活保護法についても研究されたと、こういうことを伺いましたが、生活保護法の内容について御検討をいただきましてお感じになったことを、一つお述べいただきたいと思います。
  133. 郡祐一

    郡国務大臣 その御検討と言われると、まだ中身はそう福田さんに特に申し上げるようなのはございません。ただしかし私こういう気はいたしました。一体来年あたり生活保護の該当者が非常にふえるような見込みでいなければならぬのであろうか、二十九年のデフレ様相とはもちろん違いますけれども、若干の変ってきた様相がどんなふうに移ってきているであろうか。そうしてみますと、来年の予算で見ておりますのが百五十万二千人、ところが十月には百四十万人、そういたしますと、やはりこれは、かつていろいろな対策がございませんでしたときには、いきなり生活保護に入ってきたのが、その前の——これはもちろん労働省の所管しております失業保険、失対等のこともございますが、厚生省に関する限りでも、かなりに別の政策ができてきた。従いまして、すぐに生活保護に入ってくる前に食いとめられている。これが数の上にも現われてきておるのであろうもちろんものを楽観するのではございませんが、かつての時代よりは政策というものが周密になってきた。生活保護で何を感じたかとおっしゃれば、そういう工合に感じたのであります。
  134. 福田昌子

    福田(昌)分科員 これからますます御勉強願いたいと存じますが、生活保護内容を御検討願えばこれで貧乏追放ができて積極的な生きる意欲というものが生れるものであるかどうかということも、大臣自身で御体験願えると思うのであります。従って少し詳しく一、二例を申し述べさせていただきます。今日生活保護法の生活保護基準になっておる生活費の最低基準について一、二申し上げますと、御承知のように生活保護法の生活保護基準は、これは地方的に四段階に分れていますが、東京都のような一級地でございましても、一人一日の生活費が大体七十六円です。生活保護法を受けている者には、ぴんぴんしているような男の元気な人は少いでしょうけれども、とにかく二十五才から五十才の成人層をとりましても、男子の食費が七十一円、女子の場合におきましては五十八円というような状態でございます。さらに二級地、三級地を飛びまして四級地ともなりますれば、男の人の一日の生活費が約五十円、女の人となれば驚くなかれ四十三円でございます。こういう支給をして、国は生活保護法で貧乏な人を救っておる、対象人員がどうだこうだという説明をいただきますが、こういう基準で果して貧乏が追放できるものかどうかということをまずお考え願いたいと思います。なお御参考までに申し上げますが、御承知のように狂犬病予防の上から、犬の食費も厚生予算の中に組まれておりますが、犬の食費でさえ一日分は五十円の経費をとってあります。生活保護法における女子の一日の生活基準四十三円というようなことを考えますと、まさに日本における女子というものは犬以下であるというものの考えしか厚生省は持っていただいていないということに相なるのでございます。こういう点、よく基準をお考えいただきますときに、大きくなれば予算の総ワクというようなことも考え、対象人員のワクをふやすというようなこともいろいろ御勘案になりまして、影響するところ多多で、まあ結果的にはこういう予算になったとおっしゃるかもしれませんけれども、私は人間の最低生活というものを厚生省がまじめにお考えになるならば、こういうばかげた基準で生活保護というものは考えられないであろうということを申し上げておきます。この点だけを考えましても、憲法にいう最低生活の保障とか人権尊重ということが、今の政府、今の厚生省においては守られていないということをまず御指摘申し上げます。  次に、この点につきましてのいろいろなお尋ねを申し上げますことはあとにさせていただきまして、こういう政府の貧乏追放に対しまする状態でありますから、今日の世情というものはまことにこんとんたるものがございます。従いまして、経済的な貧乏というものを中心にいたしまして、いろんな社会的な現象が起って参るわけでありますが、その一つに数えられますものに自殺行為がございます。御承知のように、日本は狭い国土に閉じ込められておりまして人口が多過ぎますが、この自殺に対しまして、大臣は少しでもお考えになったことがございましょうか。
  135. 郡祐一

    郡国務大臣 自殺について厚生行政と関連いたしまして考えたということは特別にございません。私はこういう委員会で別に申し上げるということではなくて、ただ自殺について考えたかという福田さんのお話であれば、私自身クリスチャンでありますせいか、自殺というものは社会にも責任があると思います。しかし私は自殺をする人あるいは、ことにいたいけな子供を死出の道連れにいたします場合、その個人につきましても、私は非常に同情をいたすと同時にその個人の考え方というものに、何か生きている人間としてそんなことでいいだろうかという感じをよく持つのであります。従いまして、新聞、ラジオの報道等で自殺ということがあると、かなりショックというと大げさかもしれませんが、ショックを受けるということで、私の自殺観をお許し願いたいと思います。
  136. 福田昌子

    福田(昌)分科員 お忙しいことでございますから、そういうことまで一々御心配いただけないかとも思いますが、御承知のように、日本の今日は自殺が増加の一路の状態にございます。試みに大体の統計を申し上げますと、昭和二十八年が人口十万対二十、昭和二十九年が十万対二十三、三十年が二十五、三十一年となりますとやはり二十五の線をたどっておりますが、こういう水準で、結局自殺者の数だけを世界的に比較いたしてみますと、日本はまさにその第一、二位に絶えずあるのでございます。こういう点をお考えいただきまして、自殺の原因が、一つには個人の側にその原因がありましょうけれども、もう一方の側におきましては、社会環境の問題あるいは貧困あるいは疾病、つまり厚生大臣の御所管事項がその原因の大部分にあるということをぜひこの際考え合せておいていただきたいと思います。なお特にお願い申し上げておきたいのは、自殺の中でも女子の自殺件数というものが非常に多いのでございます。女子の自殺件数は諸外国に比べますと、日本が第一位にあるのでございます。自殺いたします本人も、精神的あるいはまた環境の上からいろいろ個人の側においても考えなければならない点もあろうかと思います。しかし男子と女子を比べました場合、女子の自殺者がさらに多いということは、やはり日本の環境というものが男尊女卑の社会で、女というものは生きがたいという一つの現われであろうかと考えます。こういう点をお考え合せ下さいまして、この自殺という問題を中心にいたしまして、やはりこれは厚生省の大きな責任であるということをぜひこの際お含みおきいただきたいと思います。  次に、先ほど大臣は国民健康保険の問題につきまして、厚生大臣の事務を御所管になられましてから非常にお感じになったということを申されましたが、この点について少しお尋ねさせていただきたいと思います。先ほど橋本議員の質問に対する御答弁を聞いておりますと、国民健康保険推進状態こつきまして、高田保険局長の御答弁によりますと、新加入が非常にスムーズに進んでいるような御答弁をいただきまして、大へんけっこうかと思ったのでございますが、この三十二年度一年間に、人員におきまして何人国民健康保険新規加入になりましたか、この点を伺っておきたいと思います。
  137. 高田正巳

    高田(正)政府委員 三十二年度は主だ年度の進行中でございますが、約四百万程度の新規加入者があるものと見込んでおりますが、片方年間に減っていくものがございますので、これを差し引きますと大体三百七十万程度の被保険者の数の増というふうに考えております。
  138. 福田昌子

    福田(昌)分科員 先ほど橋本委員の御質問に対しましては、三十二年度末で三千四百八十万というような御答弁があったように伺ったのでございますが、今三千七百万と、また数がふえたようであります。この点いかがでありますか。
  139. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今申し上げましたのは年間にふえる被保険者の数でございまして、全体の被保険者の数は、三十二年度末では今申し上げました数字が加わりますので、三千四百三十一万程度になるものと考えております。三十三年度末はそれに約四百十万程度加わりまして三千八百三十八万程度になるもの、こういう計画でございます。
  140. 福田昌子

    福田(昌)分科員 御予定人員の通りには国保の加入成績が進んでいないように実際見ておったのでございますが、年が明けましてから非常な御努力でもなさったのか、こういうように成績を上げたことは非常に御同慶に存じます。この国民健康保険新規加入とあわせまして、健保も含めての医療問題というものが今日問題になっておりますのは御承知の通りのところであります。この医療費の改革、引き上げに対する予算措置というものは、健保と国保を合せまして、どういう内容になっているか、それぞれの保険項目について御説明をいただきたいと思います。
  141. 高田正巳

    高田(正)政府委員 医療費引き上げに伴いましていたすべき予算措置といたしましては、まず第一段といたしまして、それぞれの各官省の保険の支払い予算にその増額分を見込むことでございます。政府が直接その予算を組み、支払いを実施いたしておりますものといたしましては、政府管掌健康保険医療費の支出の面に十八億五千八百万円、十月一日からでございますので、五カ月分を見て計上をいたしております。日雇い労働者健康保険に一億四千三百万円、船員保険特別会計の疾病保険部門に七千一百万円程度を計上いたしております。そのほかは、国民健康保険におきましては、御存じの通り各市町村ならそれぞれの保険者において予算措置を講ずるのでございますし、組合管掌の健康保険におきましては、約一千ほどございます各健康保険組合でその歳出予算にさような措置を講ずるわけでございます。なお生活保護法その他諸般の制度につきましては、それぞれその事業を運営いたして参ります公共団体等において、予算措置を講ずるわけでございます。それでこれがまず引き上げによりまして、直接支払いに当る各制度の支払い予算の問題でございますが、さような直接支払いに当る各制度に対しまして、国の一般会計がどういうふうに援助をして参るかということがあるのでございます。それらに対しましてば、医療費引き上げに直接関連をいたしますもの、それから直接のつながりはございませんが、実質的な関連を持って参りますもの、そういうふうなものがあるわけでございますが、それを各管掌別に申し上げてみますと、国民健康保険におきまして十八億八千四百万円、それから組合管掌の健康保険におきましては、これは大部分は御存じのように財政状態が比較的楽でございますが、中に非常に足弱なものもございますので、それらに対しまして二億円、それから日雇い労働者健康保険、これは近年非常に財政状態が赤字を続けておりますが、これに対しまして二億二千八百万円、その他生活保護結核予防等におきまして、合計八億七千九百万円、大体そういうふうな国の一般会計の援助をいたしておくという格好で、それぞれの予算が計上してございます。
  142. 福田昌子

    福田(昌)分科員 医療費の負担分だけについての御答答の最初のところでありますが、政府管掌の健保に対しては十八億五千八百万円を出してあるということでございましたね。そうですか。
  143. 高田正巳

    高田(正)政府委員 さようではございません。政府管掌の健康保険の来年度医療費の支払い予算といたしましては、六百五十九億程度の予算が組んであるわけでございますが、その中に、十八億五千八百万円だけは、十月一日から医療費が八・五%ほど上るという予定でございますので、それ分をその六百五十九億の支払い予算の中に含めて計上をいたしておるということでございます。これに対して政府管掌の健康保険財政に対して幾ら援助をしたか、医療費支払い分として一般会計がどれだけの援助をしたかという御質問かと存じますが、ただいまの十八億五千八百万円は今のような性格の金でございまして、一般会計からこの援助は、政府管掌健康保険財政状態の好転によりまして、これに関連しての援助はしなくても、来年の収支がとっていける、こういう関係から特別な援助を考えておりません。
  144. 福田昌子

    福田(昌)分科員 大臣がおいでになりましてからお伺いたいと思いますけれどもおいでになるまでに伺いたい点は、政府管掌の健康保険は、御承知のように、赤字だ赤字だというようなことでこの保険法の改正が何回も行われましたが、結局のところ、伺いますと、三十一年度は四十八億、三十二年度は約六十億の黒字だ、こういうお話でございますが、この黒字になりました分は、どういう措置をとっておられるのですか。
  145. 高田正巳

    高田(正)政府委員 決算上の剰余金が出ました場合には、これは積立金として積み立っておるわけでございます。ただいま積立金を五十億余り持っております。
  146. 福田昌子

    福田(昌)分科員 その厚生保険特別会計の積立金五十億というのは、どういう訳で五十億になるのでございますか。
  147. 高田正巳

    高田(正)政府委員 内訳と申しますと、三十年度の決算じりが四億二千万円程度の黒であったと思います。それから三十一年度の決算じりが四十八億程度の黒でございます。これらはもちろん、三十年度におきましては十億の一般会計繰り入れ、三十一年度におきましては三十億の一般会計繰り入れ、こういうものをその下に敷いておるわけです。すなわち、それがありましたからでございますがさようなことで、その両方を積み立てて、ただいま五十億余りの積立金を持っておる、こういうことになるわけでございます。
  148. 福田昌子

    福田(昌)分科員 国庫余裕金から、六十億、健保財政が借りておりますね、その六十億の支払いは、どれからなさるのですか。
  149. 高田正巳

    高田(正)政府委員 六十億はそのまま借金をし続けるといいう考え方でいっております。
  150. 福田昌子

    福田(昌)分科員 といたしますと、結局、三十二年度の約五十九億から六十億の黒字というのは、累年借りて参っております六十億と、さらに政府が三十二年度一般会計から出した三十億、その上に立っての約六十億の黒字、こういうことになるのですか。
  151. 高田正巳

    高田(正)政府委員 その通りでございます。
  152. 福田昌子

    福田(昌)分科員 そういたしましたら、保険経済自体の回転から申しますならば、九十億借金して六十億残ったというような結果で、結局三十億は赤字ということになると考えられるのですが、そうじゃないのですか。
  153. 高田正巳

    高田(正)政府委員 三十二年度を例にとって申し上げますと、国庫補助の三十億につきましては、これは人からもらったものでございますから、今先生仰せのような関係になると思います。ところが、借金の六十億は、これは三十二年度の当該年度の問題ではござまいせんで、過去の三十年度までの赤といいますか、それを借金にしょって歩いておるわけでございます。従いまして、三十二年度当該年度だけを考えてみますと、かりに六十億の決算上の黒が出たということにいたしますと、三十億は人からもらっておるわけでございますから、自分の財政としましては三十億が黒だ、こういうことになるかと思います。
  154. 福田昌子

    福田(昌)分科員 そういう御計算を一応是認いすたといたしまして、こういう三十億が黒になったからことしは一般会計から繰り入れ予定の三十億も減らして十億になった、予算上そういうことであろうかと存じますが、そういう措置をされまして、今後医療費の三十三年度年度末にはどういうことになる御計画であるか、この点を伺わせていただきたい。
  155. 高田正巳

    高田(正)政府委員 三十三年度見込みにつきましては、特別会計健康勘定予算といたしまして御審議いただいておるわけでございますが、三十三年度の全般的な見通しといたしましては、歳入の方で保険料収入が六百九十七億余円でございます。一般会計よりの受け入れが十億円その他雑多な収入が一億四千万円余り歳入合計が七百六十八億八千八百万円、はしたは省略して申し上げますが、歳出の方におきましては、医療給付費につきましては、先ほど申し上げましたように、五百四十六億計上いたしておりますが、その中で十八億余円のものは十月一日からの引き上げ分に当るわけでございます。それから現金給付費を約百十三億ほど計上いたしております。その他いろいろな歳出が若干ございますが、予備金を四十一億円程度計上をいたしております。これらで歳入総額と同じ七百六十八億八千八百余万円の歳出に相なるわけでございます。
  156. 福田昌子

    福田(昌)分科員 この会計に積立金の五十億は関係ないわけですか。
  157. 高田正巳

    高田(正)政府委員 積立金は関係ございません。積立金を使おうと思いますれば、歳入にそれを計上いたしまして受け入れの予算を組むわけでございます。そうして歳出に充てるということでござまして、ここでは別に積立金をとりくずすという予定をいたしておりません。
  158. 福田昌子

    福田(昌)分科員 そういたしますと、この五十億は三十三年度末に黒字であれば使わないのでしょうが、赤字になりました場合は、この積立金を保険の支払いに充てることができるのでございますか。
  159. 高田正巳

    高田(正)政府委員 予算を構成いたしませんと使うことはできません。
  160. 福田昌子

    福田(昌)分科員 どういう形をとればこの五十億が使えることになりますか。
  161. 高田正巳

    高田(正)政府委員 使う必要がなければ使うことがないわけでございますが、かりに必要があったということを仮定いたしますると、歳入予算の方に積立金より受け入れという項目を立てまして受け入れをいたしまして、そうして歳出予算の方ではそれを使うべき費途に歳出項目を立てて予算を構成するということに相なるわけでございます。
  162. 福田昌子

    福田(昌)分科員 それは法律の修正をするということになるわけですか。
  163. 高田正巳

    高田(正)政府委員 法律の改正は要りません。予算の構成で足りるわけでございます。
  164. 福田昌子

    福田(昌)分科員 厚生保険特別会計法の十八条の七の規定によりまして、年々政府は一般会計の中から不足分の十億ずつを厚生保険特別会計に入れなければならないわけであります。今度はそれで三十億ずつ繰り入れるということがあるわけですが、それを政府はやっておられない。こういう場合においての法律的の措置は要らないんですか。
  165. 高田正巳

    高田(正)政府委員 三十二年度、三十一年度一般会計から三十億繰り入れを受けましたのは、今御指摘の厚生保険特別会計法の十八条の七の規定によるものではございませんで、二十六国会で御審議していただいて成立いたしました健康保険法の七十条の三による補助金でございます。  それで今御指摘の特別会計法の十八条の七によりますものは、これは先ほど御指摘になりました、平たく申せば、六十億の借金を返すために一般会計から十億円ずつ六カ年間にわたって繰り入れることができるという趣旨の規定でございます。実体的にはそういう関係になるわけでございます。この関係で三十三年度にも十億円繰り入れ措置を講ずべきでございまするが、先ほど御説明をいたしましたように、三十三年度の見通しもいいものでございますから、ちょうど三十一年度、三十二年度に行いましたと同じようにこの繰り入れの十億円は三十三年度は休むということで、さように予算が組まれておるわけでございます。従いまして三十一年度、三十二年度と同じような措置であるということでございます。
  166. 福田昌子

    福田(昌)分科員 きょうのいろいろな御説明とこの間滝井委員の質問に対する御説明がいろいろな点で食い違っておるわけであります。この点につきましてこの前の滝井委員の質問に対しましては、法律改正を考えておる、こういう御答弁がございました。ところがただいまのは、おっしゃった通り、お話が違う。  それともう一つ、厚生大臣の御説明でしたが、医療費引き上げに見合う分としての細目の御説明があったわけですが、それによりますと、この新聞ではよくわかりませんが、結局国民健保で六億二千万円、組合健保で約二億円、日雇い健保で約一億四千三百万円、生活保護者に対する医療費補助七億六千万円、結核対策費一億一千六百万円、こういうものを合せて十八億五千八百万円だという御説明があったわけですが、ただいまの局長の御答弁とは違うわけですが、どちらがほんとうなんですか。
  167. 高田正巳

    高田(正)政府委員 第一段の、法律改正をする予定であると大臣がお答えになって、私の答弁と食い違うではないかという御質問に対しましては、先ほど御指摘になりました十八条の七という特別会計法の規定につきましては、三十一年度と三十二度と同じように、一年これを繰り延べるという法律改正を主管省である大蔵当局で御検討をいただいておるわけでございます。
  168. 福田昌子

    福田(昌)分科員 あなたの御答弁が間違っておったわけですね。あなたの御答弁が手落ちだったわけですね。
  169. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私の答弁はそこまで言及をいたさなかったのであります。ただ繰り延べという実態関係だけをお答えを申し上げまして、それに伴うそういう手続の問題まで申し上げなかったので、言葉が足りなかったわけでございます。  それから第二点の御質問の、先般の予算委員会で郡大臣から医療費引き上げに直接関連をいたすものとして十八億五千万円——ただいま先生がおあげになりましたように、そのうちで国保につきましては六億二千八百万円という内訳になるわけでございますが、それは先ほど私が申し上げました、国保について十八億八千四百万円のうちで、六億二千八百万円分だけを申しておるのでございます。その数字はどういうことになりますかと申しますると、国保の医療費に対しまして十月一日から八・五%程度医療費引き上げが行われますると、十四億程度の給付費の膨張があるわけでございます。この膨張分の二割と、調整交付金相当額の五分、この金額が六億二千八百万円になるわけでございます。従いまして、それはごく直接的に、また形式的にも、医療費引き上げ分ということでぴったりくっついておる。数字をとりますると六億二千八百万円でございます。その他の差額十二億五千六百万円と申しまするものは、これは医療費引き上げがなかった場合におきましても、その調整交付金分がそれだけふえるわけでございますので、調整交付金の元金の方でございます。これも私、先ほど十八億のうちに含めて数字を申し上げましたのは、直接の関連ではないけれども、非常な関係を持った補助金でございまするので、さように数字を合せて申し上げたわけでございます。従いまして、大臣の御答弁と私の申し上げておることとは食い違っておりません。  念のために国保の六億二千八百万円に相当する金額その他の管掌分を申し上げてみますると、組合管掌の一億、日雇い労働者健康保険の一億四千三百万円、それから生活保護七億六千三百万円、結核予防その他で一億一千六百万円、計十八億五千万円でございます。
  170. 福田昌子

    福田(昌)分科員 そういうように、厚生大臣の御答弁とその趣旨が食い違ってないのだったら、食い違わないような御答弁をいただきたいと思います。最初のお話は明らかに食い違っておるのでありまして、政府管掌の分だけに、十八億五千八百万円医療費引き上げ分だけに充てる、こういう御説明があったわけです。そういう間違った御説明は今後なさらないように一つお願いいたします。  次にお伺い申し上げたい点は、これで大体医療費の十月からの分が八・五%引き上げになるのでございますか。
  171. 高田正巳

    高田(正)政府委員 十月一日から八・五%程度の医療費引き上げました際における必要と思われる予算措置を講じておるのでございます。  それからあわせて補足して御説明を申し上げますが、私が最初に申し上げました政府管掌に十八億五千八百万円計上しておるというのは、政府管掌の支払い予算としてそれだけ計上しておるということでございまして、これは間違いではございません。そういうものと、そういう各保険財政に対して一般会計からどういうふうに援助をしていくかということとは、これは別の問題でございます。一般会計の方の援助の方は政府管掌で申せばゼロでございます。さよう申し上げたつもりでございますが、言葉が足りませんで補足させていただきたいと存じます。
  172. 福田昌子

    福田(昌)分科員 確かに言葉が足りませんので、そういう誤解を招かないような御説明をいただきたいと思います。そこでただいま伺ったわけですが、これで八・五%の医療費増加になるようにするのだというお話なんですが、なるようにするというはっきりした御答弁がなかったわけです。私どもが目安で勘定いたしましてもこれで八・五%の増加にはならない、八・五%の増加になるということであればごまかしのない数字で御説明いただきたいと思います。
  173. 高田正巳

    高田(正)政府委員 八・五%程度医療費引き上げるということは、受取りの方から見ますと八・五%程度医療費はふえるということでございます。しかしそれを支払う側から申しますと、これは政府だけが支払うわけではございません。たとえば国民健康保険で申しますと、各保険者が給付率が五割の場合には、半分は保険者が払い、半分は患者が窓口で負担をいたすわけでございます。ただいま私が申し上げました数字は従って八・五%引き上げられることによって、各制度のうちで国がその支払い予算を計上すべきものをます第一番目に申し上げ、そしてその他のものにつきましては別個な公共団体なり各保険者なりで予算措置を講ずるのであって、それを全部通計いたしますと相当な数字になるわけでございます。第二段に申し上げましたのは、そういう各支払いに当る各制度財政に対して、一般会計がどういうふうに援助をいたしていくか、これはその各制度財政の強弱によって一般会計の援助の仕方は変ってきてよろしいわけでございます。その点を第二点に申し上げたわけでございます。
  174. 福田昌子

    福田(昌)分科員 高田局長の御説明は前と違いますから、私ども信頼をいたしておりませんからその点は何でございますが、重ねてお伺いいたしますが、今の医療費の膨脹率、伸びというのはどういう状態にあるか、平均何パーセントぐらい伸びがあるか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  175. 高田正巳

    高田(正)政府委員 医療費と仰せになっておりますのは、おそらく保険でございますとか、社会医療費をおさしになっておると思いますが、これは各管掌によって事情が違っております。たとえば国民健康保険におきましては、最近の状況は一人当りの医療費がやはり一割以上、大体一割見当逐年増加をいたしております。政府管掌の健康保険等におきましては、二十八年、二十九年、三十年くらいまでは相当な伸びを示しましたけれども、最近は比較的落ちついておりまして、その伸びの率が横ばい状態となっております。各保険によりまして、若干の違いがございますので、ごく大まかに申し上げてみますると、今のような状態でございます。
  176. 福田昌子

    福田(昌)分科員 その比率の上から申しますと、政府管掌の分は大体横ばいだ、こういう話でございましたね。それを基準にして考えてみましても、大体この医療費に支払った分の側から申しますと、政府管掌の分では、三十一年度が五百三億、三十二年度が五百八十二億、三十三年度予定が六百五十九億、こういうような御予定になるのでございまして、そうなりますと、被保険者増加人員もありましょうが、大体支払いのワクは八十億から七十億前後増加いたして参るということに相なると思うのであります。そういう累年同じような増加のワクでありながら、対象人員は年々ふえているという状態であるのに、どうして八・五%の受取勘定の増加になりますか。この点重ねてお尋ねします。
  177. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、一人当りの医療費という意味でございまして、被保険者の数がふえて参りますと、各保険の総支払い医療費というものは、先生今御指摘のようにだんだんふえて参るわけであります。これはほかの保険も同じでございますが、国保の場合におきましては、計画的に四百万人なり五百万人なり新しい被保険者がふえて参る、それに伴いますものと、一人当りの医療費がだんだん伸びてくるものとが二重にかけ合わされて医療費が伸びてくるわけでございます。それで今の御質問は、一体これで八・五%引上げがあった場合に支払いができるのかという御質問でございますが、政府管掌の健康保険を例にとって申し上げてみますると、過去のいろいろな実績から一人当りの医療給付費を来年は幾らというふうに見込むわけでございます。医療費引き上げがなかった場合は幾らになるか、それに対しまして被保険者予定人員をかけまして、先ほど申し上げましたように五百四十六億から十八億を引いた数字、五百二十八億程度になると思いますが、その来年の政府管掌健康保険医療費の見積りをいたしたわけでございます。その上に十月一日から八・五%上るといたしますれば、その上る分十八億四千二百万円、これは元金がきまっておりますので、元金に対して八・五%をかけまして、それを十二分の五しただけの数でございます。その数字を加えまして来年の医療給付費を五百四十六億、こういうふうに押えたわけでございます。国民健康保険その他におきましては、それぞれの保険者がそれぞれの予算においてさような措置を講ずるわけでございますが、私どもといたしましては、全体的に国保にどの程度のはね返りがあるか、それは国保の来年の医療費の見積りが幾らであるか、数字を申させていただきますと、国保の来年の医療給付費の見積額が大体三百億近いものでございますので、それで八・五%程度上るといたしますと、大体二十八億八百万円程度の医療費の値上げに伴う国保財政へのかぶりが年間にある。従ってその六カ月分として十四億のかぶりがある。こういうふうな全体を通じての一つの見込みを立ててものを考えておるわけでございます。
  178. 福田昌子

    福田(昌)分科員 今のお話はともかく、一人当りの医療費をたてにとった場合に大体それが横ばいである、こういうことを基準にしてお考えになった案でありますか。
  179. 高田正巳

    高田(正)政府委員 国保につきましては、先ほど申し上げましたように、一人当りの医療費も来年はやはり一割程度伸びるという見当で医療費の積算をいたしております。それから政府管掌の健康保険におきましては、これは毎年さような方法によってやるわけでございますが、受診率と一件当りの点数を分析いたしまして被保険者本人の受診率は入院においてどうなるか、入院外においてどうなるか、家族の受診率は入院においてどうなるか、入院外においてどうなるか、それから一般の医療、歯科医療というふうに分けて、こまかくさような見込みを立てるのでございます。来年度予算におきましては、大体三十一年度の伸びと三十二年度見込みの伸びとを平均して、大体二カ年の過去の実績に基いてそれらの基礎計数を扱いまして、来年の医療費の積算をいたしたのであります。その上に十月一日からそれらの医療費が八・五%ふくれたならばどうなるかという計算をいたしまして、それを加えたわけであります。
  180. 福田昌子

    福田(昌)分科員 私の聞き違いかもしれませんが、先ほどは政府管掌の分は大体このところ横ばいで伸びはないのだという説明をいただいたと思いますが、今の場合は伸びがあるということになっておりますが、どうもその点はっきりいたさないのです。従いまして、いろいろな御説明をつけ加えていただかなくて、たとえば健保の場合、組合管掌の分はどれくらいの伸び、政府管掌の分はどれくらいの伸び、国保の分についてはどのくらいということだけを簡単に御説明いただきたいと思います。
  181. 山本勝市

    山本主査 ちょっと福田君に申し上げますが、予定の時刻になりましたので、あともう一人か二人ありますから、そのおつもりで……。
  182. 高田正巳

    高田(正)政府委員 一人当りの医療費の政府管掌の状況を見てみますと、三十一年度は前年に対しまして〇・七%の医療費の伸びを示しております。三十二年度は一人当りは前年よりはむしろ減っております。九割八分二厘という数字を示しております。
  183. 福田昌子

    福田(昌)分科員 国保と組合管掌の分についての御説明を願いたいと思います。
  184. 高田正巳

    高田(正)政府委員 国保の被保険者一人当りの療養給付費の伸びは、逆から申し上げてみますると、三十一年度は村前年で一割三分一厘の伸びを示しております。三十年度は対前年で一割七厘の伸びを示しております。  組合の方は私ただいま手元に資料を持って参っておりませんが、大体大勢は政府管掌と同じような状況でございます。
  185. 福田昌子

    福田(昌)分科員 先ほど、組合管掌の分は一〇%ほど伸びているというような御説明があったと思うのですけれども、どうも話が違うのですが……。
  186. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私は組合の点で一〇%の伸びがあったと申した覚えはございません。国保の方では一人当りが大体一割見当伸びておりますということを申し上げたわけでございます。
  187. 福田昌子

    福田(昌)分科員 ではその点は私の聞き違いだったかと思いますから訂正いたします。一人当りの医療費の動静というものは大体わかりましたが、総医療費保険医療の総額というものはどういう状態にあるか、ここ二、三年の動静を一つ御説明願いたいと思います。
  188. 高田正巳

    高田(正)政府委員 社会医療費、これは保険以外のものも含んでおりますが、手元にありまする資料は三十年度まででありますが、二十七年度が千二十五億、二十八年度が千二百九十七億、二十九年度が千七百十五億、三十年度が千八百九十二億、こういう数字でございます。
  189. 福田昌子

    福田(昌)分科員 それは保険医療だけでございますね。
  190. 高田正巳

    高田(正)政府委員 保険だけでございませんで、いわゆる社会医療と俗に申しておりまする生活保護法やその他の医療も含めてでございます。簡単に申せば自由診療以外のものと言えるかと思います。
  191. 福田昌子

    福田(昌)分科員 自由診療まで入れますと大体どういう総額になりますか。
  192. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これは推定の数字でございますが、総医療費といたしましては二十七年度が千五百十六億、二十八年度が千九百五十億、二十九年度が二千四百三十六億、三十年度が二千七百十五億という……。
  193. 福田昌子

    福田(昌)分科員 三十一年度は。
  194. 高田正巳

    高田(正)政府委員 三十一年度は実はまだ統計調査部の方で出ておらないそうでございます。
  195. 福田昌子

    福田(昌)分科員 大臣にお伺い申し上げたいと思うのですが、大体こういう数字で御検討いただきますように、厚生当局は医療費のワクというものを、国民総所得を基準にいたしますと、三%程度の限界にとどめたいというのが従来からのお考えであったと思うのでありますが、この三%程度のワクにとどめるということが妥当であるかどうか、この点を厚生大臣の御感想として伺いたいと思います。
  196. 郡祐一

    郡国務大臣 三%という考え方は別に厚生省で持っておらないように存じまするが、その点政府委員の方から正確に答えてもらうことにいたします。
  197. 高田正巳

    高田(正)政府委員 別に三%に押えるとか何とかいう考え方をいたしておりません。先ほど申し上げました医療費国民所得に対する割合を申し上げてみましても、二十七年度は二・八六%という数字が出ております。二十八年度は三・三二%、二十九年度は三・九六%、三十年度は三・九九%で、すでに現実が四%近くになって数字が出て参っております。特に何%に押えるとか何とかいうふうな考え方は厚生当局はいたしておりません。
  198. 福田昌子

    福田(昌)分科員 その点は長い間の医療問題の検討におきまして、昭和二十七年度を基準にいたしました場合、今後の医療費の累積に対しましても、大体国民総所得の三%に押えたいという趣旨で厚生省はいろいろな報告書も書いておられまするし、そういう答弁をされたこともたびたびございました。それを今日は多少実際において膨張するから、その点をお認めになって、そのワクをくずされることは私大へんけっこうなことだと思うのですが、御承知のように、世界のよその国々の医療費を見ますると、普通健全な文化国家といわれる国は、国民総所得に対しまして大体少くとも五%から八%を国民医療費として考えておるのでございます。そのような点を考えてみます場合、日本のような貧困でしかも人口が多い、これは言いかえますならば病人が多くて医療費が膨張する結果になる国でありますが、そういう国が三%や四%で医療費をできるだけ押えよう、その狭い範囲で医療費全部をまかなおうという考えがそもそも間違っているということをこの際厚生大臣は一応お耳に入れておいていただきたいと思います。従って、この非常に無理なワクで医療費を考えておる上に、八・五%の医療費増加というものを出されました。その厚生省の八・五%の医療費増加が必要であるとお認めになったその点が私どもよくわからないのでございますが、現行医療報酬の中から八・五%だけは引き上げなければならぬということを認められたその必要性というものにつきまして御説明願いたいと思います。それとあわせまして八・五%の引き上げの妥当性について御説明願いたいと思います。
  199. 高田正巳

    高田(正)政府委員 八・五%という引き上げの幅を考えました根拠を言えというふうなお話でございます。私どもは全国の診療所の平均といたしまして、医師の所得がいかにあるべきであるか、あるいは医療経営に要する経費といいますか、従業員の人件費等も含めまして医療経営に要する経費が幾らなければならないかという点を、詳細ないろいろの計数を使いましてはじいたわけでございます。その結果個人立診療所院長すなわちいわゆる開業医さんの月所得は約七万円弱、それから所要経費といたしまして十万円余という経費をはじき出しまして、これらのものを足した収入が全国の診療所一カ所当りの平均としてあるべきであるということを考えたわけでございます。片一方におきまして、現在の全国の診療所の総収入はどれだけあるかという実情を支払った側から調査をいたしまして、その現在の収入と先ほど申し上げましたかくあるべきであるという収入との比較をいたしましたところが、八・五%だけの増収がなければいけない、こういう結論に到達いたしたわけでございます。大体御質問の御趣旨に合っておるかどうか知りませんが、私どもが計算をいたしました大筋をお話を申し上げますと、今のようなことでございます。ただしこれには非常に詳細な計算の過程がございまするけれども、大筋だけを申し上げますと今のようなことでございます。
  200. 福田昌子

    福田(昌)分科員 もうやめますけれども、大臣に御感想として伺いたいのですが、御承知のように今の医療報酬は点数と単価のかけ合せになっております。それによって医療報酬というものが出て参っております。その医療報酬のいろいろな点につきましては省かせていただきますが、たとえば初診料というものを例にとりますと、今日では初診料は四点、東京都は一点が十二円五十銭でございますから、その四点であるということであれば五十円でございます。医者の初診料、医者の全知全能を傾けて初めて見る患者にどこが悪いという診断、病名をつける、その能力が五十円で評価されておるわけでございます。従いましてこれが適正であるかどうかということは厚生大臣の御判断におまかせいたしたいと思いますが、これを適正化する意味において妥当な範囲であるから妥当と認めて、八・五%だけ引き上げようというのが厚生省の御案であるわけでございます。従いまして八・五%厚生省がお認めになりましたことを例にとりましても、初診料はその八・五%だけふえた、つまり五十円でいえば四円だけふえる計算になるわけでございます。五十四円が初診料、これが医療報酬として引き上げの運動もあってよい、厚生省としては妥当な評価だ、こういうお考えでございますが、これを適当な措置とお考えになりますかどうか、この点伺います。
  201. 郡祐一

    郡国務大臣 御指摘になりました初診料につきましては、私厚生省で承知をしておりますところでは、お示しの額よりはかなり高いように今度の案でなるふうに聞いております。しかしともかくもそれぞれの点についていろいろな問題があろうと思います。診療報酬引き上げの総体のワクとして、ただいま保険局長が申し述べましたような八・五%という数字を出しております。そのワクには乗らなければ参りませんけれども、それぞれのものについて可及的、合理的な是正をいたすように、またそのために各方面とせっかく話合いをいたし、またこれからも進めて参ることにいたしまして、何と申しますか、だれが見てもそうおかしくないものというものにいたしたいと思っております。
  202. 福田昌子

    福田(昌)分科員 保険問題はまたの機会にお伺いさせていただくことにいたしまして、次に人口問題に関してのお尋ねをさせていただきたいと思います。  日本が非常に人口が過剰だということは、これはだれがお考えになっても同じことだと思いますが、その人口過剰の中で増加いたしておりまする層、つまり優生学的な立場に立って、たとえば精神薄弱児の増加率あるいはまた先天的な身体障害者増加率、そういうようなものの統計をお伺いいたしたいと思います。先ほど精神薄弱児が大体百万近くいるというようなお話がございましたが、その最近における動勢、その他先天的な目が見えない人とか先天的なおしの人、そういった人たちの人口の動勢をお知らせいただきたいと思います。
  203. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 ただいま御質問の資料をちょっと手元に持ち合せでございませんので、次会に御答弁申し上げます。
  204. 山本勝市

    山本主査 福田さん、あとの質問が簡単ならけっこうですが、あとの問題が長ければ、だいぶ質問者も残っておりますし、十七日にもう一ぺんやりますから、そのときにやることにして、あとの方に譲っていただけますか。
  205. 福田昌子

    福田(昌)分科員 そういたしましょう。加
  206. 山本勝市

    山本主査 それでは神近市子君。
  207. 神近市子

    神近分科員 今年の四月から売春防止法が実施されるということは御承知の通りでございます。厚生省はみんなが心配した要務をお取り上げになって、その所管省になられたので、実は厚生省にいろいろ文句をつけるのは、私どもとしても非常に苦しいのでございます。でも少し文句を聞いていただかなければならないので、その点お許しを願いたいと思うのですけれども、今ちょうど福田さんが問題を出して下さいました、たとえば精薄児童の問題だとかあるいは先天的なろうあの人たちの問題だとか——ほんとうは売春防止の問題と性病の問題とは別個の建前でなければならないし、日本はあんまり長く売春制度を保存してきましたために、学者によりますと、日本人の血は濁ってしまって、非常に優秀な民族なのに、若死にをする人が非常に多い、あるいは高血圧だとか、今のような児童が生まれるというふうな状態なので、これはまあ大体性病による先天的な血のよごれじゃないかというふうなことも言われているくらいで、男の方々はその点では非常に不感症かもしれない。よけいなことを言うとおっしゃるかもしれないけれど、きょう少し驚いておおきになった方がいいと思うのです。お医者様の発表による死亡診断書なんかでは非常にうそが多いのでございます。大へんその方の名誉をたっとび、それからその方の御家族の感情をかばっていろいろ違った名前にしているそうでございますけれど、それは実態的には非常に多い。ですから、売春防止の問題と性病撲滅の問題とは別個のものでございますけれど、この際国民の考え方をここに集中して、この問題を解決しておいた方が、日本民族の将来のために大へんいいと私は考えます。  それできょうは御質問を申し上げるのですけれど、この性病予防費が今年という年は非常に飛躍的にたくさんを要するというやさきに、これが減額になっているのでございます。これは一体どういうようなことでこれから性病の予防をやっていこうという計画をお持ちになっているか、そしてこの少い費用でもってどういうふうにやっていこうとお考えになっているか、その点大まかなところを最初に伺わしていただきたいと思います。
  208. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 性病が、精薄とかあるいはその他のろうあ、そういうものの原因になるのではないか、あるいは死亡の原因として相当高率であるのではないか、ただしそれが疾病の性質上あまり表に現われてこないんじゃないかという御意見でございましたが、実際問題といたしまして、性病患者の数とかあるいは死者の数は、表に現われております数字はそう多くではございません。また年々統計上は減ってきております。事実上、一般の開業のお医者さんなんかに聞きましても、梅毒は最近非常に顕性梅毒が減ってきているということがいわれております。しかし潜在性のものはある程度あるというふうに考えられます。また先ほど盲ろうあのお話がございましたが、いろいろな集団的な血液検査をやってみますと、比較的盲ろうあ学校の生徒なんかに高い率を示しているということは、先ほど御指摘の点の一部を現わしているのではないかというふうに考えるわけでございます。  そこで、性病対策費が三十三年度は三十二年度に比べてやや減少している——実際的に申し上げますと、ほとんど変らないという程度のことでございますが、これは増額させなければならないのに増額しないのはどういう意味か、今後どういうふうにやっていくつもりかというお話でございました。私ども性病の対策としましては、やはり患者の把握と、それから徹底的な治療、一方におきましては思想普及ということをやっていかなければならぬと考えておるわけでございます。患者の把握につきましては、医師からの届出によって、それに基いて接触者調査をやっていくという方法、それから従来売春の常習の疑いのある人たちに対して、性病予防法を発動して健康診断をするというようなことで患者を把握することをやっておったわけでございました。ところが先ほど御指摘のように、売春防止法が全面的に実施になりますので、売春常習の疑いのある者の把握というものが、従来よりも比較的少くなるのではないかというふうに考えられるわけでございまして、従ってその面からの患者の把握ということが従来よりも数が少くなるだろうというように想定されるわけでございます。従ってそれにかわって、できるだけ自発的に健康診断を受けてもらうように教育していかなければならぬと思います。またそういう際に費用の持てないような人には、できるだけ費用をとらないで健康診断をやってやれるようにしなければならぬというふうに考えている次第でございます。そこで最初は全部無料検診というようなことも考えたのでございますが、いろんな点から考えて、従来よりも任意に自発的に健康診断にくる人の対象、これをできるだけ勧奨するということを教育的にやって参りまして、そしてそれが多く出てくるであろうから、それに対して無料で見る率を多くするというようなことで、健康診断の費用を従来よりも相当大幅に増すということでいきたいと思っているわけでございます。もう一つは、先ほど申し上げました接触者調査による患者の把握ということを、従来これはわが国ではなかなかむずかしい仕事ではございますが、それを積極化してやっていきたいという考えでございます。  そこで今度は発見されました患者に対して徹底的に治療をするというために、これは外国では全部無料治療をやっているという国もございますけれども、わが国では従来減免治療——金がとれない人にはただでやってやるということでやって参ったわけでございますが、全部無料治療でやったらどうだというような御意見もあったのでございましたけれども、いろいろな事情から考えまして、やはりこの際減免治療を続けるということをやっていったらいいのではないかということを考えるわけでございます。御審議を願っております予算案の上で、健康診断の費用は相当大幅にふやしておりますけれども、逆にその治療費に対します国庫補助が減額になっております。これは従来地方の府県の性病診療所あるいは性病病院でやっておりました治療費に対する実費の見積りが少し過大に過ぎておりまして、実際に地方でその予算を使わないというような実情がございましたので、その実情に合せるような格好で予算案を修正しているわけでございます。従いまして、従来と同様に減免治療をやっていけるという建前で、この予算を考えているわけでございます。委託治療費につきましては、若干増額をやっているわけでございます。全般的に性病の予算は前年並みであるということについて、いろいろ御不満の点があるかと思うのでございますが、私どもは今御審議を願っております予算で、先ほどから申し上げましたようにできるだけ患者を把握する、そしてその人たちに徹底的に治療してもらうために、経費の負担のできないような人には減免治療をやって参りたい、そういうふうに考えているわけでございまして、それでやはりどの病気でもそうでありますが、早期発見、早期治療ということに重点を置いてやって参りたい、かように存じております。
  209. 神近市子

    神近分科員 どうも最初の御要求が二億五千万か幾らかで、それに対してわずか六千万というような費用を考えますと、その範囲内でお仕事をなさるということは非常に御窮屈でお困りになるのではないかということが想像されるのです。今の治療の問題でございますけれども、それは裕福な人たちは大体恥じて公共の病院なんかにはいかないでしょう、その人たちは自分たちで問題は解決することができると思うのですけれど、そのほかの人たちはお金がない。どうせ放蕩者に違いない。そしてお金が自由になるときには消費してしまっている。そういうふうな状態で、今度治療ということはよけいなもののように考えて、なかなか治療をやらないのじゃないか。やはりこれは無料ということが建前でなければ、なかなか画期的な撲滅運動はできないのじゃないかと私どもは考えているわけなんです。それで今あなたは無料診断あるいは無料治療が望ましいというようなことをおっしゃったのですけれど、どう考えても私どももその方に近い線でなければやれないのではないかというように考えるのです。私どものごく乏しい知識でも、この問題に限っては国が全面的に乗り出して撲滅にかかっているのです。ほかのものと違いまして、この問題だけは民族の将来のためにこわいという考え方からやっている。それをどうして最初の意図を後退なさったか。その点もし堀木さんがおいでになれば伺いたいと思うのです。郡さんはキリスト教徒でおありになって、正常な生活をお送りになっているのですが、そういう方にこういうふうなことをお尋ねするのは大へんお気の毒なんですけれど、どうも若い者は全面的になおしてやらなければだめだと私は思うので、私は時間をあまりとりたくないのであまり申し上げませんけれど、今の日本の青年の状態は、新しい法律の実施されるもとにだいぶ変ってきつつあるように思われます。しかしこれは何百年となしに大っぴらに行われてきた。政治家も役人もこのことにはちっとも反発してこなかったというようなことから実施される法律でございます。それで何となしにこのために金を使うことは無用な、冗費のような感じを持って来た、自分のからだの内容がわからないものだから。大体これは何とか無料治療、無料診察、こういうふうに持っていきたいものだと思いますけれど、大臣はそれをどういうふうに実施できるとお考えになりますか。
  210. 郡祐一

    郡国務大臣 お話のように売春防止法の全面実施を機にいたしまして、性病を撲滅するということは、民族の将来のために一つの大切なことだと思います。明年度予算につきましてはただいま局長から申し述べたような次第でありますけれども、何とか一つ努力をいたしまして、御希望のような方法がとれるなら私は非常にいいことだと思いますが、これは主管の局長ともよく相談をいたしてみます。
  211. 神近市子

    神近分科員 ぜひお願いします。  それで今お尋ねしたいことは、病者発見に調査員をお使いになるはずでございますが、それはどういう資格の人たちをお使いになりますか。
  212. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 保健所の職員あるいは性病病院、診療所の職員を使って調査していきたいと考えております。もちろん患者の診断は医師がいたしますが、届けられた患者の表の中に感染源が記載してあるのがございます。それに従って尋ねていこうというわけでございます。もし必要があればその人に診察を受けてもらい、治療の必要があれば治療をしてもらうという方法を講じていきたいと思っております。
  213. 神近市子

    神近分科員 それで大体その性病のおそろしさということはずいぶん問題が起ってから認識されたようですけれど、大体年間の接触率を女一人というよりは、大体推定されている売春婦を、延べ人員男の人がどのくらい使っておるかという数字がおわかりでございますか。
  214. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 ただいまお尋ねの点は一人の売春婦に対する接触回数と申しますか、そういうもののお尋ねかと存じますが、その点は今ここにはっきりした数字は持参しておりませんが、二・何回というようなことでございます。ただ男子の性病の約七〇%は従来売春婦といわれる人たちから感染するという統計はございます。従って従来の売春婦が性病感染源として非常に大きな役割を占めておったということは、その点から首肯できるというふうに考えます。
  215. 神近市子

    神近分科員 私の承知している数字では、大体延べ人員一億五千万ぐらいの男の人たちが使用しておるということを何かで拝見したのですけれど、それは大体十三万五千の婦人としたか、十五万の婦人としたか、とにかく一億五千万ぐらいの接触があった。そのうちの大体二七%から二八%が感染源を持っておるということになっておりましたが、それをちょっと確かめていただきたいと思うのです。
  216. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 売春婦の性病罹患率、これは地区によっていろいろ違うわけでございます。ごく平均いたしますと、集団検診いたしましたのでは一二・三%ぐらいになっておりますが、高いところは先ほど御指摘のように二〇数%から三〇%以上に上るところもございます。
  217. 神近市子

    神近分科員 この婦人たちが今度解放されるにあたりましては緊急特別対策というような指示をなさったはずでございますね。それはどういうような指示でございますか。
  218. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 これは三十二年度更生する婦女子に対しましては、先ほど神近先生から御指摘になりました無料検診、無料治療ということでこの更生する人たちだけに限って実施したいということでございます。その際に地方と国との負担区分が従来半々でございましたのを、国が三分の二を持ち、地方が三分の一負担するということでやる、こういうことを十二月に指示したわけでございます。すでに十二月の中ごろから愛知県においてそれが実施されておりまして、二千数百名が更生いたしました際に全部検診いたしました。そのうちで梅毒が一四%、淋病が四%発見されましたので、それに対して直ちに治療を行なったということでございます。他の府県においても逐次その線に沿って——愛知県が一番早かったのでございますが、ほかの府県は大体一月の末から二月にかけて実施するというような報告が参っております。
  219. 神近市子

    神近分科員 私が内容の大体裏も表もわかっておって、この問題を特に今日ここで取り上げますのは、この問題が発生しましてからの審議の中でわれわれがいつでも反撃された問題は、この性病の問題だったということを御記憶願いたい。売春制度がなくなれば性病がはんらんしてここに囲われていたものがぱっと散って始末がつかなくなるぞということが一つ、それから女の人たちの保護対策の問題で、私どもはここ二、三年というものはいつでも一般からもそれからまた国会内の論議でも反撃されたのでございます。そしてここにきまして、ある人によりますと、もう赤線は四月からなくなるのだから赤線対策費なんか要らないじゃないかということを豪語する人さえあるということが私どもの耳に聞えてきております。その観点でやられては私どもほんとに困ると思うのです。私ども今まで二年というものこの措置期間を泣く泣く認めてきましたのは、その間に対策が十分行われて、実施のときにはあまり混乱なしに行われ得るというように説得されたのでございます。それでここにきまして性病予防費が非常に心もとない状態でないかということを申し上げるのは、これで果してこの大きな危機を乗り切ることができますか——三百年とか五百年とかいう伝統をここで断ち切ろうというときに、そういう微弱な対策で一体乗り切れるものかどうか。そしてもし憂えられているような性病の伝播が起ったときに、われわれ立法にあずかった者に責任を持ってこらされて、それ見ろというような反撃をさらに加えられるということを私どもは憂えなければならないと思うのです。これはやはり法律を成立させた政府また与党の方々が十分考えていただいて、そしてこれは長くはない、三年かせいぜい四年の対策費でいいのです。外国の状態を見ますと本体三年でほとんどお金は要らなくなっております。その間のことでございますから、一つ十分この対策費をお考えいただいて、そしてもしこの六千何百万のお金でどうしても足りなければ、どこからか省内からでも持ってくるお金はないのでしょうか。さっき五十億とか残りがあるということを聞きましたので、そういう金が使えないものだろうかということを考えたわけです。その点一体身動きのできない予算に縛られておられるのであるかどうか。陳情に参りましたときに、総理大臣からいや必ずしもそうではなかろうというような御意見を承わった。私はそれはここで持ち出したくないのですけれども、ほかのことと違って性病の問題だけは何とかここでふん切りをつけておかなければならないと思います。そういう意味で大臣はさっきいろいろ御尽力下さるというようなお話があったのですけれども、省内にほかにどこかに使える金があって、それが何らかの方法で議決がされれば使えるということがあったら、どうしてもそれを増額していただかなくちゃならないと思うのです。その点いかがですか。
  220. 郡祐一

    郡国務大臣 性病撲滅をはかりますことは、まことにおっしゃる通り大事なことであり、またきわめて短い期間にこれをはかることが一番適当だと思います。従いましてその目的に可及的省内において措置できますることは措置いたしますし、とにかく金のために事柄が運ばないということのないような措置をとる決心でおります。
  221. 神近市子

    神近分科員 なるべく文句は申しませんと申し上げましたけれども、もう一つ伺っておかなくちゃならないのは保護施設の問題でございます。予算の面をずっと拝見してみますと、割合に人件費というものは要求に近い金が出ているので、これはまあ考えればおかしいのですけれど、また施設に行ってみれば非常に人件費が足りないということをこぼされておる実情もありますので、それはそれといたしまして、ここではそのことは問題にいたしませんが、保護施設費がこれまた減額されているのでございます。設置費の補助七千六百三十六万円というものが減額されている。施設には一体どのくらいの人が入ってくるという予想でいらっしゃるのでしょうか。私これは非常にむずかしい問題だと思うのです。よその国でもそうだと思うのですけれど、特に日本ではこれは初めての試みなんですから、十三万五千とか十五万とかいう婦人たちの中から、何人が故郷に帰り、何人が結婚し、何人が転職し、何人が施設の中に入ってくるか。これはおそらく厚生省でも把握はおできにならないのではないか。私どももいろいろ調べてみても、はっきりこれがっかめない。大正三年の前例とかそこらでいろいろ考えてみるだけのことなんですけれど、この点施設費を減額してあることについて何か根拠をお持ちになっているかどうか、ちょっと伺わせていただきたいと思います。
  222. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 今度の売春防止法が全面的に施行されました際に、何人が保護施設に入るだろうかという見通しは、実は大へんむずかしいわけなんでございます。本来なれば三十三年度予算でなくて三十二年度予算でもうそれに必要な十分な施設ができていなければならぬということであると思います。三十二年度には御承知のように三十九カ所の施設を作る予算が入ったわけであります。それから今まであります施設が十六施設であります。売春防止法の施行が迫らない前に毎月々々ぼつぼつ出てくれば一番理想的な形であったものが、御承知のように十月ごろまでは少しでも転廃業が進まないというような状況でありまして、ようやく昨年の暮れごろから非常に転廃業が進んできたというような状況で、年度末にそういった転廃業が一時にどっと押し寄せてきはしないか、そして女の方もたくさん出てくるのではないかという心配を非常にいたしておったわけであります。三十三年度では、そういう関係もございまして十二カ所だけの費用が入っておるわけでありますが、これはどっちかというと、あるいは手おくれかもしれないと思います。ところが私ども予想しておりましたその予想に反しまして、先ほど山口局長からもお話がありましたが、愛知県等は約七百の業者が全部転廃業を十二月中にいたしたのであります。女が二千四百人ばかり足を洗ったわけなんでありますけれども、そのときの施設に入る希望者というものは、それほど多くないということがございます。それから最近でございますと、東京で吉原とか新宿とかをやめました者の行き先でございますが、やはりまだ収容施設にそれほど入る者が多くないというような状況もございます。しかし全国的に見ますとどのくらいになるかということはわからないのでありますが、かりに今赤線、青線合せますと、全国で女の数が約九万五千人、これはもっと減っておるのじゃないかと思います。それから赤線だけでございますと、約五万人くらいでございます。とりあえずすぐ対象になりますのは赤線でございますけれども、これの一割がかりに収容施設に収容しなければならぬということになりますならば、まあまあ現在の準備で一時的には間に合うのじゃないだろうかというふうな数字を今実は出しておるわけであります。非常にこの希望者が少いというのは、婦人相談員等の話によりますと、赤線の女が今は割に金を持っておりまして、それで自分が部屋を探してあるいはアパートを探しまして、そうしてカフェーとかバーとかあるいはその他の水商売に勤め口を探すというふうな状況が多いようであります。しかしこれがいつまで続きますか、あるいはそういった金がなくなったりあるいはもう少し困ってきた場合に、施設が実は要るのだということが、あと二、三カ月あとに起ってくるかもしれない。そういうことも考えながら私どもも準備しなければならない、こういうふうに思います。
  223. 神近市子

    神近分科員 この転廃業が昨年末までなかなか進まなかったということは、役人たちが地方に行っていろいろ見学させていただいたり何かしますのに、ほんとうに腰を入れていなかったということが、私は非常に大きな妨害になったんじゃないかということを考えます。今その赤線の女の人たちがお金を持っているから来ないだろう、それはちょっと何か矛盾のようでもあるし、また今までさんざんそのことのためにわれわれがいじめられたことを考えれば、何だという気もいたしますけれど、おそらく私の考えでも、あの人たちの生活が非常にはでな、そして怠惰なものであった。今のわれわれが持っております施設というもののあまりの乏しさ、貧しさ、そういうことから、私はちょうど水が低いところに集まるように、なかなか清潔であってそして非常に貧しいというところには来ないんじゃないかということを私もしきりに考えました。それと同時に、来なければどうなるだろうということも考えなければならない。来なければ一体どうなるか。そうするとこれは今ぼつぼつ新聞に出始めておりますところの暴力団、そういうものにつかまる。そうしてそのひもつきで商売をやらされる。いろいろそういうことが起ってくると思うのです。それで私はこの問題では、今日は厚生関係でございますから、また別の日に警察関係の方々に御意見を聞いてみようと思うのですけれど、ともかくそういう事態が参りまして、この施設その他にはあんまり金は要らないのではないか。そのかわりに今申し上げました性病方面、あるいは警察方面、そっちの方面にやはりお金が要るのじゃないかということをしきりに感じるのであります。大体法律の実施を前に控えまして、先ほど郡大臣が御尽力下さるとおっしゃった性病の対策というものが、そのおそろしさというものがほんとうに女の知っている割には男の方々が御存じないということ、ぜひこの点はもっと活発に厚生省が中心になって、春先の婦人の週間だとかその他に、これを一つ御協力いただいて、宣伝し、広報していただきたいと思うのです。  まだ十五分ばかり時間がございますので、さっき橋本さんがもうあらかた保育行政のことはお触れになっておりますから、私からあまり申し上げることはやめようと思います。私も貧乏で、もうほんとうに貧乏なために、私がそこの保育所の園長をしておるわけであります。金があれば私なんかに頼みにくるはずがないのですけれど、結局保育関係のことを、園長ということになって、ミカン箱から出発したような貧しいところの保育所を私たちは見聞しておるわけであります。今度百七十二個所とか増設していただくということは、大へんけっこうでございます。さっき橋本委員から休憩時間にいろいろお話を承わったのでございますけれど、一体新設の費用は幾らでございましたか。どなたかおわかりでいらっしゃいますか。
  224. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 国の補助金となっておりますのは、一億二千万円でございます。
  225. 神近市子

    神近分科員 それで今度新設をなさる……。まだ保育所に入れなければならないけれど、措置費がなくて放置されている子供たちは何万人くらいございますか。
  226. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 措置費がなくて、と申すよりも、たまたまその場所に保育所がないために保育所にはいれない児童はまだ相当あると思います。この調査は最近はいたしておりませんので、正確には把握いたしておりません。
  227. 神近市子

    神近分科員 保育の雑誌か何かで、推定か知れないと思うのですけれど、二十五万と出ておりましたね。それであなたのおっしゃるように、地域的に保育所が遠いとか、農寒村でできないとかいうことはわかります。だけれど、東京の周辺に行ってごらんなさい。私どもの保育所がどうしてできたかというと、公立の保育所は資格ばかりやかましくて、一つも保育所に入れてくれない、たとえば〇・六坪が一人当りの面積でございます。それで何坪なければ八十人は入れられません。それでこぼれた子供たちは——この点もちょっと皆さんに御研究願いたいと思うのですけれど、町で交通の盛んなところで悪遊びだのあるいは危険なところにさらされている、そういう子供が一ぱいいるのです。おそらくこの二十五万の中の十五万人やそこらは、東京だとか大阪だとか名古屋だとかというところにいると思うのです。今度は遊戯場もできましたし、いろいろいい施設がごくわずかながら新設なさるのでそれも救われる。私どもの地区にもほんとうに哀れな設備があるのですが、そういうところに補助がいただけるのかなと思って見ているわけなんですけれど、私は、一億二千万の増加費を施設にお出しになるのに、援護率は三六%に切り下げたままだ。これをどうしてもう少し高めておおきにならなかったかということ、その点が伺いたいのです。というのは、これで大体その増設保育所に何人収容する予定ですか。それを最初に伺います。
  228. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 第一に二十五万という数字のお話でございますけれども、これはかつてこういう数字が出たことはございますけれども、これは調査の方法等を検討いたしますと、果して正確な数字かどうか私どもも多少疑問を持っておるのでございまして、実際はもっと多いのじゃないか、かように考えております。  それから施設は一億二千万円、個所数にいたしまして百七十二カ所でございますが、一カ所当りの員数は、六十人収容として計算をいたしております。
  229. 神近市子

    神近分科員 そして幾らになりますか。
  230. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 一万三百二十人になると思います。  それから援護率の問題は、実はこの新設の問題とは直接は関係がない問題でございまして、御承知のように保育所に入って参ります児童について、保護者からその収入の状況に応じて保育料をとり、それでまかない得ない分を公費で負担をする。その割合が現在まで三六%である、そういうことでございまして、施設増加問題とは直接関係はございませんが、この率の問題は、結局徴収との見合いになるわけでございまして、一方においては現在の徴収が非常になまぬるいという御意見がございます。一方においては相当この徴収というものはきついという意見もございます。いずれにいたしましても、この援護率というのが、そもそも徴収の状況とかかり合いになっておるのでございまして、非常に不明確な要素でございまして、三十三年度といたしましては、この援護率というような要素を抜きにして制度改正をいたしたい、かような考え方のもとに予算を組んだ次第でございます。
  231. 神近市子

    神近分科員 これは決算に出ているのです。会計検査院の報告と行政管理庁の報告あるいは警告があなた方ひっかかりになっていらっしゃるようですね。これで問題になっているのは五百五十万円です。そのときに、この徴収が不当であったという金、あるいは使い込みをしていた金、まあ私どもからいえば、私ども決算を毎日やっていると、五百五十万円くらいの金は、いつでもとっていかれているのですよ。たとえば飛行場を広げますのに、コンクリートの厚さが薄くなって、そのくらいはいつでもごまかされている。道路を作って、下水を作ると、またそこでも砂利だの、コンクリートでごまかされて、二百万や三百万というものは、まるで私どもが十円か二十円使うように使われている。それなのに、あなた方の統計でおきめになって、この子供たちの貧乏なお母さんが、たかだか一万円の所得で二人家族でしたら千四、五百円おとりになるという規定なんでしょう。その人たちにこれを転嫁して、この援護率を高めるということを怠ったら、私はこれは非常に不当だと思うのです。これは徴収するのは自治体の責任者でしよう。だけれども、援護を受けるのは子供たちの母であり子供たちです。これは別途にお考えにならなければならないのであって、そういうことがありましたから、これは岸総理も言っていらっしゃいましたよ。いち早く何もほかのことは聞かなかったけれど、このことだけ聞いたとおっしゃっていましたよ。会計検査院の報告と行政管理庁の報告、警告によってそれを減らした。私はこれは厚生省のお役人たちの頭がずいぶんどうかしていると思うんです。その程度のことを、なぜとがめるべきところはとがめないで、何も知らない子供たちにそのしわを持っていくかということです。これはやはり児童福祉の考え方が、皆さん条文にとらわれたり法律にとらわれたり、あるいは収益するべき金額の規定にとらわれたりして、もうにっちもさっちもいかなくなって、本来の児童福祉の目的を忘れていらっしゃるのじゃないか、私はそういうふうに感じるわけなんです。これは郡さんなどがよくおわかりになるはずだと思う。厚生行政というものから離れておいでになって、そうしてそこにお入りになって、今福田さんの御質問によるいろいろの御感想なんかを伺いましても、第三者的立場にいるものの方が、かえってこういう問題の把握ははっきりすると私は考えるのです。ですから、たとえば新設しながら援護率を引き下げるというのは、一億二千万という金を使うならば、もう少しこの援護の方に使ったらどうだ、私たちはこういうふうに考えます。今度昼食代を上げて下さって、この間私の保育園に行きまして、一日に一円あったらば一体どのくらいのものが給与できるかと聞きましたら、あめ一つだそうですね。キャラメルは一箱十円ですか、十円して、あの中の紙に包んだ一つが一円だそうです。ですからドロップぐらいも包みがないだけに一円だろう。それだけにともしいわれわれの対児童福祉政策なんですよ。そういうことをお考えになれば、ともしい中からどうしたならば一番これを有効に、弱い婦人と子供のために使えるかということをもう少し考えていただいた方がいいというふうに私は考えるのです。これは私の保育所が経営が苦しいから、ここへ来ていろいろ文句をつけているんじゃないのです。全体として、あの雨の降るのにお母さんたちがかささして子供をおんぶして、あそこへ陳情に来た、ああいう姿を考えれば憤激しないものはないだろうと私は考えるんです。その点で今年の新しい児童対策は大へんけっこうだと思うんです。新しい母子福祉的ないろいろの新策が織り込んであってけっこうだと思うんですけれども、その点で保育所のことをもう少し考えていただいて、将来は百円なり二百円なりのごく軽減された保育費で、給食は全部国か、あるいは国の補助のもとに行われるというふうにやはり考えていただかなくちゃならないのじゃないかと考えます。もう時間でございますから、その点について大臣の御感想というか、きょうは非常に感想ばかりで(笑声)大臣をいたわるというか、何か非常にお困りだろうとこっちの思いやりだろうと思うんですけれども、その立場からこの問題についての御感想を——今度援護率を高めないで新設すれば、新しく入る一万何千人という子供はみな措置児童でないのです。みな自前で幼稚園のように自分で、払って入る。今年はいろいろ困る人が不況でもっとずっとふえる。そうしておかず代でも働かなくちゃならぬという女の人が私どものうちなんかへ、目の前にきているんです。そこのところが非常に矛盾じゃないかというのが私どもの考えでございます。
  232. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 大臣の前に事務的な問題でお答えいたします。誤解のないように申し上げたいと思いますけれども、百七十二個所の新設につきましては、これは当然人間がふえるわけでございますから、それに相応する措置というものは予算に組み込んであるわけでございまして、従ってこれだけふえるから、結果としてそれに相応して援護率が落ちるというふうにはなっていないわけでございます。この点誤解のないように申し上げておきます。
  233. 郡祐一

    郡国務大臣 大へんいいお話と申しますか、まことに啓発されるところが多いのであります。こうした総額ではそれほど大きくない予算でありまするけれども、必要とする面にとってはまことに重大な部分があることをつくづく感じた次第でございます。従いましてひとり厚生省といわず政府といたしまして、こうした予算につきまして、今年足らざるものはまた来たるべき年なり、中身におきましても充実いたしますように、私は政府の一員として努力いたさなければ相ならぬということを痛感したことを申し上げる次第でございます。
  234. 山本勝市

    山本主査 これにて厚生省所管に対する本日の質疑は終了いたします。なお残りは十七日続行いたします。  明日は午前十時より開会し、労働省所管の審査に入りたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時二分散会