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1958-02-17 第28回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十七日(月曜日)     午前十時三十六分開議  出席分科員    主査 八木 一郎君       今井  耕君    植木庚子郎君       内田 常雄君    大橋 武夫君       重政 誠之君   山口喜久一郎君       川俣 清音君    小平  忠君    兼務 川崎 秀二君    井手 以誠君       多賀谷真稔君    柳田 秀一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  前尾繁三郎君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   宮川新一郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  伊東 正義君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君         農林事務官         (大臣官房予算         課長)     昌谷  孝君         農林事務官         (農業経済局         長)      渡部 伍郎君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君         農林事務官         (振興局長)  永野 正二君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君         農林事務官         (農林水産技術         会議事務局長) 大坪 藤市君         食糧庁長官   小倉 武一君         林野庁長官   石谷 憲男君         水産庁長官   奧原日出男君         通商産業政務次         官       小笠 公韶君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         通商産業事務官         (重工業局長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (軽工業局長) 森  誓夫君         通商産業事務官         (鉱山局長)  福井 政男君         通商産業事務官         (石炭局長)  村田  恒君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      小岩井康朔君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      小出 榮一君         特許庁長官   井上 尚一君         中小企業庁長官 川上 為治君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   高木 文男君         通商産業事務官         (企業局次長) 樋詰 誠明君     ――――――――――――― 二月十七日  分科員北山愛郎君、田中武夫君及び成田知巳君  辞任につき、その補欠として西村榮一君、島上  善五郎君及び戸叶里子君が委員長の指名で分科  員に選任された。 同日  第二分科員賀谷真稔君及び柳田秀一君が本分  科兼務となった。 同日  第四分科員川崎秀二君及び井手以誠君が本分科  兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算経済企画庁、農  林省及び通商産業省所管  昭和三十三年度特別会計予算農林省及び通商  産業省所管      ――――◇―――――
  2. 八木一郎

    八木主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  本日はまず農林省所管を議題とし、質疑を行います。小平忠君。
  3. 小平忠

    小平(忠)分科員 まず最初農林大臣にお伺いをいたしたいと思います が、三十三年度予算編成に当りまして、大蔵省から最初内示は、御承知のように前年すなわち三十二年度を大幅に上回るものであります。これは私はきわめて重要なる意義を持っていると思う。政府が昨年の暮れに閣議において予算編成方針を明らかにしまして、その方針に基いて大蔵省がいろいろ予算事務を進めるのでありますが、その第一回の内示をするときに、これは少くとも大蔵大臣も加わってこの内示をしているのです。あの内示というものは少くとも大蔵省の省議で決定されたものです。閣僚の一人である大蔵大臣が加わっておる第一回の内示の金額というものは、御承知のように予算編成方針重点施策の中で農業対策を取り上げておるのであります。重点施策として取り上げている限りにおいては、その大蔵省の第一次の内示において前年度よりも大幅に削減されるというようなことについては問題であります。私はその場合に農林大臣にお伺いしたいことは、一体事前に大蔵大臣と、国の根本的施策の中の農林予算というものについて十分に話し合いがあったかどうか、十分なる折衝をされておったかどうか。大蔵省の第一次内示が出て、自民党の農林関係委員が、こんなことで選挙はできない、当時非常に総選挙気がまえでありましたから、そういうわけで、わっさわっさ押しかけて復活した、これじゃ意味がないのです。今後も繰り返すことでありますから、この点についてその当時のいきさつを私はこの際大臣から承わりたい。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 第一回の大蔵省予算査定が出る前に、こまかいことで打ち合せをしたかどうかということでありますが、率直に申し上げて大へんこまかく打ち合せをしておりません。予算査定のときに、御承知のように内閣へは重要項目予算案というものが出たわけであります。そのときに私といたしまして見たところでは、重要政策の中で、農林関係で、そこにはっきり載っておりますのは公共事業、それから食糧増産費、それから農業保険共済組合費用、この三つだけであります。そこでこれらを見てみますと、食糧増産費で昨年より一億減っております。公共事業費建設省関係ども含まれておりますので、その実態はよくわからなかったわけであります。それから共済組合保険の方で十数億か減っておる。これだけの減り方でありますので、これだけしか農林予算としては内容はよくわかりませんで、あとは雑件の方に入っているようなわけであります。これだけ見ても、実は今御指摘のように昨年度予算編成方針として農業重点施策一つとしておくということを非常に相離れているようだ、追って内容については省関係でよく調べてみるけれどもということで、閣議の席でも念を押しておいたのであります。特にそのときに出された問題といたしましては、法律改正をしなければ補助その他の削減ができないにかかわらず、法律改正前提として削減しておるというようなことにもなっておりましたので、こういうことは話し合いの上できめるべきことで、たとえば法律を改正したいのだということを閣議なら閣議できめた上で、また了承した上でそういう査定方針をするならいいけれども、こういう了承を経ないで、大蔵省独自で法律改正前提としていろいろ補助を減らすというようなことは本末転倒じゃないかというようなことを話しておいたのであります。全部の農林関係予算内容につきましては、両省間でどの程度になっているかということを調査の上、自分の方としてもこれに対して主張すべきところは主張するということを留保しておいたわけであります。でありますので、第一次の査定閣議で全予算重要項目別予算の提示があった後に、実は私どもも調べて知ったわけであります。ところが今のお話のように非常にこれが減っておったということであります。しかしその復活等につきまして、今お話のように選挙がやれないからという意味でやったということではなくて、やっぱり私どもとして農林政策要項も出しておりましたし、それから政策として筋を通すという考え方を持っておりましたので、その筋に非常に遠ざかっておるといいますか、離れた大蔵省考え方だということでその反省を求めた、こういうことに相なっておるわけであります。
  5. 小平忠

    小平(忠)分科員 ただいまの大臣答弁大蔵省の第一次の内示があってから、実は具体的に承知されたというようなことでありますが、私は農林大臣農林省の各長官局長の方々が、復活について非常に連日連夜苦労されたこともよく知っております。私は明日三十二年度予算補正総括質問で、大蔵大臣岸総理にもこの農林予算農政の基本的なあり方について根本的につきたいと思う。毎年々々国は口を開けば食糧増産であるとか、農政重点を置くとかいうことを言いますが、では現実にそれを裏づけするところの農林予算はどうか、私はこれははったりや何かでなくて、現実に現われている数字を紹介すればわかる。昭和二十八年の予算総額は一兆二百七十二億であります。これに対して農林関係予算は千七百十九億、全体予算に対する農林予算の比率は一六・五%であります。それが二十九年は一一%になり、三十年は九・五%になり、三十一年は八・四%、三十二年は七・九%、今年度復活をいたしまして一千八億にいたしましてもなおかつ七・七%と前年度よりも後退しているという姿であります。特にこの七・七%の中には、先般川俣委員も指摘いたしましたように、御承知予算編成過程経済基盤強化資金の四百三十六億の棚上げ財源についてどうする。その際御承知のように農林漁業金融公庫、小団地等土地改良基金に六十五億振り向けられております。この六十五億はすぐ使える金でないのです。この六十五億は資金運用部にこれを一たん預託いたしまして、その金利三億九千万円余り、これだけしか使えない。ですから、厳密に申し上げますと、六十五億から三億九千万差し引きました六十一億一千万円、六十一億一千万円というものはこれは架空の数字、棚上げされている使えない金なんです。ですから、一千八億から六十一億を差し引いたのが実際に使える金だと解釈しても過言でないのであります。そうなって参りますと、実際に本年度のパーセンテージというものは、もっともっと下って参ります。現実に七・七%でありますけれども、その六十一億の小団地土地改良基金というものを引きますと、前年対比、本年度は全体予算の七・二%になりますから、さらに前年度よりも約〇・七%の後退であると申し上げても過言ではないのであります。このことが農業政策全体に及ぼす影響が大でありますし、ネズミの食いかじりのようにあっちにもこっちにも手を広げるけれども一つ事業は遂行されないという一つの大きな原因を作っておると思うのであります。昔から農林大臣というものは、これは相当大物の方がなられて、さあ、予算編成期になりますと、これは断じて承知しない、相当の政治力を従来発揮しまして、農林予算というものは、獲得してきておるのでありますが、特に現農相は一貫した農政の通でもありまして、われわれは信頼しておる。ですから、そのいきさつについてお伺いしたかったのでありますが、何も予算案国会に上程されたからといって、これをあきらめる必要はないと思います。あらゆる角度からこの予算案がいけなければ、修正してでも私はやらなければならぬというようにも実は考えておるのであります。  そこで具体的な問題について私はお伺いいたしたいと思いますが、最初農業生産基盤強化のための予算すなわち土地改良開拓の問題でありますが、この予算は相当復活いたされまして、当初の大蔵省の第一次内示から見ると相当大幅に伸びております。その結果が三十二年度の二百七十八億に二十四億八千万ふえて三百三億という数字に一応なっております。増額されたおもなものは特定土地改良工事特別会計の繰り入れに二十二億九千万ふえておるわけです。それで五十四億となっておりますし、さらに大きな費目は、愛知用水が十一億ふえて十五億となっております。こういったところが特に目に見えた、ふえた点でございますが、その中で愛知用水公団につきましては、このほかに資金運用部から五十億の融資がなされておるわけでありますが、もともと愛知用水につきましては、御承知のように、アメリカからの例の余剰農産物受け入れの分で実は開始されました。ところがこの余剰農産物受け入れ打ち切りに伴いまして、現在では資金運用部資金を値りておるというようなわけであります。ところが資金運用部の方の年利は六分五厘、余剰農産物の方は四分でございますから、相当な開きがあるわけであります。従ってここに相当な金利負担というものが増加する。この金利負担がとりもなおさず地元負担になりはしないかということを憂えるのであります。一体愛知用水の問題だけで、この金利負担地元受益者にどのような影響を与えるか、完成までにこれがどういう結果になるか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  6. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 なお詳しくは事務当局から申し上げたいと思うのであります。  今のお話のように、愛知用水につきましては国会決議等もあり、これに必要なる経費はぜひ確保したいということで進めてきたのであります。その結果、全般的な予算関係から、国費といたしましては十五億ということに相なりまして、国費予算上投ずる費用は、われわれの予定よりも少かったのであります。しかしながら今もお話にありましたように、総額においては、融資等を入れまして九十一億の事業予定しております。そのうち事業費といたしましては、補償もいたしますので、七十九億円の予算をもって、三十三年度仕事を進めることになっております。  そこで、仕事の全工程から申しますと、御承知のように昨年ようやく補償もきまりまして、着工の運びになりましたので、五年以内にこれを完了するということにつきまして、三十三年度は、事業量としては今の程度手一ぱいといいますか、ちょうどよろしい。そこで次の年度等におきまして計画に沿うたような予算の確保ができますならば、三十五年度に完了することは可能である、こう考えております。  そこで、予算あるいは財政投融資の面から考えまして、予算一般会計からの費用予定よりも減っておるから、その分だけ地元負担がふえてくるじゃないか、こういうお尋ねのようであります。実は昨年度におきましても予算変更をいたしまして、地元負担等についてもいろいろ折衝して一応きめたわけでございます。ところがことしまたこういうような一般会計予算からの補助が減るというと、地先負担が増しやしないかという御心配はごもっともだと思います。借入金の方の割合がふえておりますので、建設利息が増してくると農民負担の増加があるのではないかということでありますが、三十三年度に限って申し上げまするならば、確かにそのような心配がないとは申しませんが、その額は国庫補助金財政資金等公団資金効率的運用とか、事業費及び経費の節減、こういうことに力を入れることによって地元負担を増さないという方針で進めておりますので、地元負担を増加するということはさしたくないし、またしないという見通しのもとに進めております。なお数字的にこまかいお尋ねもあろうと思いますので、事務当局からその点補足して御説明を申し上げます。
  7. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 愛知用水小平先生承知通り、三十年国会審議を経まして法律も整えて、公団が出発をいたしました際は、政府の必要な補助金のもとに、主として借入金世界銀行及び余剰農産物見返りの円の投入によりまして、それを使用いたします場合は、国内資金運用部資金並みないしは工事におきまして、国営県営団体営あるいは開拓、さらには電気、上水道等がございますが、国内一般政府資金をもってそれらの各部門に供給する金利として使うことを考えまして、原資とその各部門別国内資金の使わるべき資金との差をもって、公団費用をまかなうように組み立てられておったのであります。今回第四次余剰農産物打ち切りということでございませんで、その前の第三次余剰農産物受け入れが昨年中止になりました。時あたかも愛知用水公団事業調査計画及び着工の準備が整いつつありましたので、関係法規に従いまして具体的な同公団事業事業計画を、関係施工地域施工地及び受益農民同意を得るように計画を立て直して告示をいたしまして、所要の告示期間を経まして同意を得てあるのであります。その間におきましては常任農林委員会の御了解も、御質問にあわせてお答えいたしますと同時に、私どもから御了解を得たのでございます。それによりますと農民負担関係農地において、すなわち果樹園でも、陸稲、蔬菜等を植える地帯でも、これによって差をつけるべきでありますが、平均して言いますと、三十年が二戸当り、平均最初の十年間は一反歩について二千四百何十円、二千五百円弱であります。第三次余剰農産物打ち切りに伴いまして、余剰農産物は当時四十九億円投入することにいたしておりますが、自後は全部国内資金でまかなおうという建前にいたしまして、告示をし同意を得、また了承を得ましたものは、一戸当り一反歩最初の十年で三千百八十円でございます。ただしその場合具体的な一事業工事計画の若干の変更に伴いまして、総事業費は三十年の三百二十億か三百三十一億の範囲内において行う、また資金が性質が変りまして、金利の高いものが出て参りました関係もありまして、純工事の方は国営級県営級団体営級、あるいは開拓というように、負担率を法令を変更いたしまして、事業費が増加すれば負担もふえる。また公団事務費は約二十億前後でございますが、今では二十三億全期間を通じて使うという予定でございます。借り入れ金利差をもってまかなうことでございましたが、大蔵省とも話し合いまして、公団事務は各工事事業に応じて事務費が使われるという建前を一応とりました。工事種類別国庫負担率が違いますが、総平均しますと、農業等についていいますと五〇%弱が国庫負担になるわけでございます。従いまして、二十三億のうちの約四割九分強、五割弱を国庫負担にすることに計画変更して同告示同意を得、常任委員会了承を得たのでございます。農民負担は、もちろん十一年目以降、十五年についてもございますが、これを先ほどと同様に平均しまして一反歩一年分について見ますと、自後一年間は当初の十年間よりかなり減ります。なぜかと申しますと、国営クラス事業費償還工事完了後十年間になる。国営以外のクラス事業費償還は十五年間ということになっておりますので、相当減りまして、最初十年間各年約三千二百万円弱と申し上げましたのが、その後は約二千五百円になるわけであります。さらにあわせまして大蔵省等とも相談いたしまして、総事業費を節減いたしますとともに、今後余剰農産物見返り円等低利資金が入ってくる場合には、優先的に愛知用水事業にこれを入れまして、総事業費及び農民負担の軽減をはかるという約束にいたしておるのであります。その時期が、三十三年度予算編成に当りましては、第四次余剰農産物資金受け入れの停止とともにございませんでしたので、三十三年度におきましては国費十五億の投入、これは主として事業費の方の負担分でございますが、それに合せまして世界銀行資金余剰農産物見返り円の残、資金運用部資金、こういうふうにいたしまして総経費を九十一億と踏んでおるわけでございます。従いまして、三十三年度予算においては直接に解決することにもなっておりませんし、解決する時期でもございませんので、問題は三十三年度に所定の工事ができまして、目標通り昭和三十五年度末に事業ができるかどうかを主としてねらいまして、ダムから幹線水路支線水路等、おおむね三割を越える程度から二割五分前後程度まで完成いたしまして、三十四年と五年に努力して、農林大蔵の覚書のようにやれば、目標工事を完了することができるという見通しで、予算資金の御提案を申し上げておるわけであります。その間において、公団事務費は清算いたしませんとはっきりわかりませんので、これは三十四年度以降に国庫補助をいたしまして、先ほど申しましたように、昨年六月以降十一月までに、地元農民同意を得て決定しましたように持っていくようにいたしておるわけであります。
  8. 小平忠

    小平(忠)分科員 大臣農地局長から、きわめて詳細な御答弁があったのであります。この愛知用水だけの問題でも、詳しく質問していると一時間もかかってしまいますから、なるべく時間を有効に使いたいと思いますので省きますが、要は今年度農業生産基盤強化のための予算、いわゆる土地改良開拓に、結論的には二十四億もふえた、こういう宣伝をつけられますけれども、やはりそのうちの大きなウエートを占めるのは、愛相用水であり八郎潟であります。ですからこの面で予算が大幅にとられてしまって、そうなってきますと、その他の土地改良開拓、いわゆる総合あるいは直轄その他の補助というような関係におきましては、一つも伸びないという結果を招来しているのであります。ですから国といたしましても、またわれわれ国会において従来予算審議をする際に、愛知用水等については、国家的にその必要性を認め、協力して参ったわけであります。ですからその運営に誤まりのないように、主管省たる農林省はしっかりやっていただきたいと思います。  それから、北海道の例なんか取り上げて非常に恐縮でありますけれども、きわめて具体的な卑近な例でありますから、この際明確に御答弁願いたいと思うのでありますが、北海道総合開発の中で、最初に取り上げた石狩川水系総合開発の中心であるのは、幾春別のダムであります。これは国も昭和二十九年から三カ年の継続費を計上されまして、昨年春完成を見まして、昨年の春の雪解け水から実は湛水いたしたのであります。ところがこの、ダムは、六十五億の国費を投じて完成を見ましたけれども、せっかくためた水が、現在は無効放流のやむなきに至っております。昨年前予算委員長三浦氏とともに私はこのダムを見たときに、前三浦予算委員長は、これは国としても放置できない、なぜ無効放流するような計画になっているかということを、熱心に調査しました。というのは、ダムそのもの建設省所管建設した。ところがそのダム建設によって、下流の石狩平野の、あの流域に一万二千町歩補水と約六千町歩新規造田という大きな任務を持っているのでありますが、その下流水利事業に対する予算化農林省所管としてなされていない。それで、これは多目的ダムとして総合的に、当初から、一方ではダム建設をすると同時に、地区内工事も並行していくということをやらなかったから、こういう結果になったということを指摘した。このことは関係者においても同感である。そこで、そういう総合開発のでこぼこを修正するために、御承知のように経済企画庁には例の調整費五億円が従来から計上されている。本年度は五千万円ふえて五億五千万円になっております。前三浦予算委員長は、こういうものにこそ例の国土総合開発事業調整費五億円の中からやりくりしてやるべきであるということを力説されている。私もそう考えるのであります。実は本年の予算折衝過程におきましても、遺憾ながらことしもまた、せっかくダムを築いてためた水を、ただ石狩川あるいは日本海に投げなければならない。これを、現在の予算では農業水利に使えない。何としても北海幹線にぶち込んで、その水を有効に使うことはできそうもない。これをその調整費等を流用する方法がないかどうか。北海道特定地域外になっておるから、それはめんどうだとおっしゃるについては、その根拠はどこにあるのか。その具体的な話の前に、私はこれは一つの例にすぎないのです、大規模なダム建設によってそういう一、二の例を申し上げたのですが、そのほかに直轄灌漑にしましても、あるいは直轄帳入れにいたしましても、手をつけて四年も五年も放置してあるのがたくさんあるのです。結局食糧増産を強力に推進して、国内のいわゆる食糧自給態勢を整えるのだ、輸入食糧を漸次減らしていくのだ、こういうことを言ったって、伴っていないのです。私は一つの例を申し上げたのですが、こういう点について大臣は今後どうこれを処理されていこうというお考えか、お伺いしたいと思います。
  9. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今小平さんから御指摘のような実情があることは、私も承知しております。でありますので、先ほどもお尋ねがありましたが、愛知用水とか八郎潟のために、ほかの一般土地改良事業の方にしわ寄せがあってはいけないということで、そういうことがないように措置を予算上もしておりますと同時に、今のように国営事業や何かで残事業が非常に残っておって、何年たっても見通しが立たぬというようなことにつきましては、残事業を繰り上げるといいますか、そういう事態を是正していくということに予算の措置もしておるわけであります。それからこれも御承知通り国営の方は進んできたが県営の方はそれよりおくれている、なお団体営の方はもっとおくれているということで、事業のずれが非常にあるわけであります。でありますので、末端において負担金を出しておるけれども、いつになったらこの負担金が生きてくるのか、自分の方に工事が進められてくるのかということで、負担の問題もからまり、あるいはまた事業の進捗の度合い等につきまして非常にずれておって、不均衡になっておる面が相当あります。その点につきましては非常に私も考えまして、ことしの予算におきましては、先ほど申し上げましたように残事業の繰り上げをして、早期に仕事を解決していくということ、それから国営県営団体営等においての事業のテンポといいますか、ずれを直していく、こういうことにつきまして、予算の運用上について相当な注意を払って、そういうことを除去していきたい、こういうふうに措置しているわけであります。なお北海道の幾春別のダムにつきましては、私も去年あそこを見て今のお話のようなことに気がついておったのであります。あの下の方の篠津の泥炭地の方につきましては、予算上も相当進捗するような措置をとっております。調整費等の問題のこまかい点につきましては、事務当局から申し上げます。
  10. 小平忠

    小平(忠)分科員 それは大臣は、残事業量を十分に調整をする、繰り上げて何とかということを申されるけれども現実はなかなか伴っていないのです。どうすればこれらの食いかじりを早く完成の方向に持っていくかという方法は、ただ一つしかない。それは農林予算全体が重点的に増加されることです。昭和二十八年は御承知のように国全体の予算規模が一兆円、そのときに農林関係全体の予算が千七百億円、全体予算の十六・八%を占めていた。それが今半分以下に下っているところに問題がある。これは国のまなこの向け方が一体どこにあるかということなんです。私は例をとって幾春別のことを話しましたけれども、これはわずか四キロか五キロのところを、いわゆる幾春別川から北海幹線に幹線溝路を作るんだから、暫定断面でも水を通すという方法なきにしもあらず、そんなに何十億もかかる金じゃない。一億か二億の金で水が通るのです。六十五億もかけて作ったダムですから、それが今、大蔵省の高木主計官も見えておりますが、主計官予算を作るのに、その財源をどうして捻出したらいいか、頭をひねっている。もとの財源がないのですよ。ですから私は冒頭に大臣に、一体大蔵省内示のある前に、閣議で決定したその重点施策方針を総理大臣大蔵大臣と十分話されましたかということを私は聞いた。このときにすでに私は、本年度はそういう点で重点的に考えなければならないということを実は指摘したのです。この段に及んではやむを得ないから、それでは調整費を使用する方法はないかということを聞いている。それよりも根本的な問題は、私はやはり農業政策の上に農業生産基盤を強化する根本的な考え方を、あらためて主管大臣として決意を新たにして、今後対処していただきたいと思います。
  11. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどもお話がありましたが、予算査定の前に私は大蔵大臣にも総理大臣にも、農林政策というか、こういう面については、今年は相当重点施策として入れてある関係もあり、また農山漁村の実態から見ても、転機といいますか、そういう時期に際会しているので、当然相当な額を計上すべきである。ことに今の愛知用水とか八郎潟というような予算がふえたこと、そのことはけっこうであるけれども、それがふえたがためにほかの方の土地改良工事費等に支障があるようになってはいかぬということは、十二分に話もし、考え方を徹底さしておったわけであります。そこで今お話のように、いろいろ残事業の繰り上げというようなことにつきましても、予算の裏づけがありませんと、実際問題として、国だけで言ってもこれはできないことだということは、お話通りであります。そこで私は、言葉を返すわけでもございませんが、二十八年度におきましては、総予算の一六%というような農林予算の確保ができておったのであります。この点につきましては、小平さんも御承知のはずですが、その当時は戦後の跡始末ということで、食糧問題が窮迫しておりましたので、食糧に関する価格差の補給金とか、あるいは災害等が非常に多かった年でありますので、そういう費用も相当あったということは、御承知の上でのお話だったかと思うのでありますが、そこでその後、実は何も一千億を目標とするというわけではありませんが、非常に予算もどんどん減ってきておりましたのは、今御指摘の通りでありますので、私どもといたしましても、内容を充実する意味におきまして、農林予算の相当の額というものが確保されませんというと、考えている政策も実行に移せないということで、財政当局とも数次の折衝の上に総額において一千八億円ということで、ことしの予算を提出しておるわけであります。これにつきましても、今の御指摘のように、パーセンテージからいいまするならば、昨年のパーセンテージと比較すると〇・一%減っておるということは、内容については御承知の上ですから一々申し上げませんが、去年からは災害復旧費も二十億その他当然減も五億ありますので、二十五億円というものは当然減というようなことにもなっておりまして、総額について去年と比較する場合に、大ざっぱにいいますると、その分は一千八億円に加えてもいいんじゃないか、一千三十三億というような額にもなるのであります。しかし一面においては、今の御指摘のように六十五億の小団地等の改良基金というものが入っておるじゃないか、こういう御指摘もあろうかと思います。これにつきましても、なお詳しく御説明する機会があると思うのでありますが、ほかの方から六十億の小団地等に対する融資事業費がありますので、そのうちの三十五億について今の五分のものを四分以下に利率を引き下げるということになりますると、事業量としても、小団地の方の事業量が相当ふえるわけであります。そういう方面にふえるので、特定土地の方への補助金へ持っていけるというような形もありますので、実質的には相当事業が行えるのじゃないか、ここで土地改良等の費用につきましては、事務当局に調べさしたのでありますが、総予算の額はいずれといたしましても、土地改良関係費用というものは、名目的には戦後一番多いことにもなっております。でありますので、今の御指摘やら御注意のように、今後とも農林水産の基盤を確立強化するということにつきましては、十二分に私も力を尽したい、こう考えておりますが、今の予算におきましても相当な力をいたしたということにはなっておるのであります。決して満足というふうにも思いませんし、また御指摘のような御注意もごもっともだと私も考えておりますが、そういうことで、現在といたしましては相当の努力を払いまして、ここまで持ってきたということにつきましては一つ了承を願っておきたいと思います。
  12. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先ほど御質問がありました調整費の問題でございますが、事務的なことを申し上げますと、御承知のようにこの調整費に三十一年度から始まっております。三十一年度と、本年度と、来年も予算に要求いたしておりますが、事の起りは、国土総合開発法に特定地域、それから調査地域というものがあるのでございますが、これが昭和二十六年に指定になりまして、二十八年から計画が決定になりまして、事業をやって参ったのでございますが、特定地域の事業の進捗があまり進んでおらぬという非難のほかに、各省で相当仕事の間にアンバランスがあるということがございまして、どうも地方の方から特定地域の事業のアンバランスを直してほしいという要求がありまして、この制度が生まれてきたわけでございます。三十一年度は特定地域と調査地域だけ、それから三十二年度、今年度は東北開発促進法の関係がございましたので、東北につきまして特定地域と調査地域だけでは不十分だということで、東北地方という言葉を入れまして、さらに三十三年度は、先般の国会で御決議もございましたので、九州につきましても、若干地域を広げるというようなことをいたしております。それで北海道についてでございますが、これは今お話のありました石狩川等については国土総合開発法ができます前に、建設省で当時いろいろ計画があったのでございます。国土総合開発法と北海道開発法が二十五年、同じ年にでき上りまして、北海道については特定地域とか、そういうものは設けないで、北海道開発法でやっていく、あの法律で促進していくのだということになりまして、御承知のように北海道には特定地域は全然ございません。それでわれわれといたしましては、今お話のありました北海道の調整の問題は、これは予算の要求書にもございますが、北海道開発庁が北海道の開発計画を作りまして、その計画に基いた実施事業をやる際の総合調整をやっていくのだというようなことも予算に説明してございます通りで、北海道の分につきましては、企画庁に計上してあります調整費は使わないという建前で、北海道で問題がありますれば、北海道開発庁の方でいろいろ処置をしていただくというふうに考えまして、来年の五億五千万円も一応内地だけというふうに考えております。
  13. 小平忠

    小平(忠)分科員 ちょっとその理屈は通らいのです。北海道開発庁といいますけれども北海道開発費は総理府所管に計上されまして、予算が通過しますと、これを実施官庁たる農林建設、運輸等各省に予算を移しかえましてこれを各省が実施する、こうなっているのです。ですから現実問題として、北海道建設予算農林予算が一体流用できるかというとできないのです。現にまだ北道道の中でそういう予算を調整する調整費を組んでいないのです。それは北海道のことだから別じゃないかということですが、国全体の方針としてこれは重要なことであります。従来は国土開発法によるところの特定地域と調査地域にやっておった。三十二年からは東北開発促進法によって東北地方も入れたのです。ですから東北の場合には従来の特定地域のほかに東北でも特定地域になっていないところも、この東北開発促進法のいわゆる法の適用をすることによって、特定地域外でも、この調整費を使うことができるという書き方をされた。今度北海道開発法もこの中に入れて、北海道というのは特定地域でないと言うけれども北海道を入れるということは、これは取扱いでできる。別にそういう法律はないでしよう。何か法律がありますか。それは取扱いの一つ方針にすぎないと思うのですが、それはどうなんですか。
  14. 高木文男

    ○高木説明員 ただいまの点多少補足して説明さしていただきますが、国会へ提出せられた三十三年度一般会計予算の一番冒頭に予算総則がございますが、予算総則の中におきまして、現在の北海道の開発費の予算については特別な取扱いをしておるのでございます。書き方が必ずしも明瞭でないので、あるいはおわかりにくいかと思いますが、予算総則の第三十二条の(1)のところにあるのでございますが、北海道につきましては、いわゆる北海道開発費、住宅、河川、砂防、その他林道、土地改良、一切の公共事業費系統の経費につきまして、各項の間におきまして彼此移用することができるという規定を置いてございます。この趣旨は北海道の開発費の予算は、一応北海道開発庁の予算に計上いたしまして、それを農林省なり、建設省なりに移しかえて使用するわけでございますけれども北海道につきましては、北海道開発庁という特殊な役所があり、そして総合開発の観点に立って、一応予算に計上され、これが議決をされましても、その一方の段階においてもっと有効な使い方があるというのであれば、彼此融通できるということにしたらいいのではないかという観念から、かなり以前からこの規定が入っておるわけであります。これに対しまして、内地につきましては、従来所管と所管との間で移用するということは、所管別予算建前からきわめて困離でございますので、それができないわけでございます。ところが現実の問題としては、内地につきましてもやはりダムと河川あるいはその他の間に実施の段階でアンバランスが起り得るというところから、三十一年度予算から調整費が計上されたわけでございます。従いまして、問題は北海道開発庁についてもただいま御指摘のように、これらの事業と別途また調整費を計上したらどうかという点は、確かに御質問のような問題はあるとは思いますけれども、内地関係調整費があるから当然に北海道調整費を要するということにはならないではないか、というのは移用ができるから、その移用で処理できるし、できる余地が非常に多い。もっとも現実問題といたしましては、一度予算が計上されましたものをほかの移用に回すことは、これまたなかなか困難でございますので、従来の例を見ますると、災害その他の場合に若干調整費について移用した例がございますが、御指摘のようなダムとその末端の農業事業との間の移しかえはやったことはございませんけれども、とにかく規定の上ではできることになっております。そのことを念のため申し上げておきます。
  15. 小平忠

    小平(忠)分科員 そうすると高木さん、今までの御説明だと、この一般会計予算総則の第三十二条の(1)の規定によって、北海道の分は総理府所管に計上されておりまして、実際予算実施の際は各省に移しかえて使うということになっておりますから、従来の建前からいうと、経済企画庁に計上されておるところの調整費を、北海道に移用するわけにいかない。北海道開発庁予算の中に調整費を組んで、農林予算建設省に持っていくとか、建設省所管のものを農林省に持っていくとか、そういうことはできるという意味ですか。
  16. 高木文男

    ○高木説明員 三十二条の一項によって、たとえば建設省関係事業予算農林省関係事業に移用いたします。たとえば河川の事業土地改良事業に移用いたします。移用してから農林省に移しかえることができることになっておりますので、もし河川と農業との間にアンバランスがあれば、開発庁が各省に移しかえをする前に移用すればいいんじゃないかという理屈になるものですから、そこで調整費北海道に特に計上する必要が、内地の場合に比べれば稀薄じゃないかという理由で、現在は調整費を計上してございませんけれども考え方からすれば、どうしても調整費のようなものがないと実行困難であるというのであれば、北海道北海道調整費を計上するという方が実際的であろう。御承知のように経済企画庁に計上している予算北海道にも移しかえのできるようにすることは、ちょっとこの三十二条の(1)の制度からいって必要性が乏しいのではないかということを申し上げたわけであります。
  17. 小平忠

    小平(忠)分科員 そうしますと、経済企画庁の御答弁と結論は同じになるわけですね。それは予算総則の三十二条の(1)の規定を適用すればそういうことになると私は思います。ただ問題は、高木さんが今おっしゃったようにそれでは北海道も各省に予算を移しかえをする前に流用すればいいじゃないか、必要によって調整し、それから移しかえをすればいいじゃないか、この意見はそれじゃ内地の場合も調整費なんか組まないで、でこぼこがあれば実際にその前に調整をして、これを各省に内示すればいいじゃないか、こういう意見が出てくるので、これはやはり調整費経済企画庁が持っておると同じように、実際に予算大蔵省から内示されて閣議で決定しますると、これはやはりみんなひもつきです。もう移しかえをすることが前提ですから各省にひもつきです。ですからなかなかそういうことは困難だということから、現在経済企画庁に計上されておる五億という調整費が、北海道はどうしてもそういうわけで現在の取扱いの範囲内でできないというのであれば、北海道開発庁所管の中にもそういう調整費の制度を作るこことが――先刻申し上げたいわゆる総合開発ダム建設するとか、その過程において総合的でなかった、一方だけが進んで、一方は全然手をつけられないとか、そのために貴重な水が無謀放流されるというような結果になるから、そういう必要があると考えますが、その点はいかがですか。
  18. 高木文男

    ○高木説明員 制度論を別にいたしまして、具体的におっしゃるように片方でダムができておりますのに、その水を十分使えないということがあるのは非常に困ったことで、何とかしなければならぬということは全く御意見の通りでございます。この種のものは御指摘の地区以外にも残念ながら実は数カ所あるのでございまして、これを是正して参ることについては、数年来特に努力をしてきたつもりでございますけれども、残念ながら戦後の十年は物価価値の変動が大きかったために事業費の変動がまことに大きいのでございます。これはもちろん実質的なものでなくて、ノミナルなものでございますけれども、各工事地区ともほとんど全部事業費が年々変動をいたしておるわけでございます。最近は非常に改善されて参りましたけれども、そのようにして事業費が変動いたしますために、予算全体の計画性、公共事業費予算全体の計画性という点について、確かに欠けるところがあったということは、私どもも日ごろ感じておるところでございます。幸いにいたしまして、最近になりまして全部各地区の工事費の洗い直しが各庁において行われておりますし、貨幣価値もほとんど安定的になって参りましたので、今後はそういうことが起りませんように漸次直して参る、かなりアンバランスがありますので一ぺんには参りませんが、漸次直して参るという方向で努力を続けて参りたいというふうに考えております。なお北海道開発庁に調整費を計上することがどうかという点につきましては、ただいま御指摘のように、制度としては彼此融通ができることになっておりましても、現実にはそれができないというところから、若干のものを考えたらどうかというお話は、今後の問題としては十分開発庁その他の意見を聞いてみたいというふうに考えております。
  19. 小平忠

    小平(忠)分科員 そういうことで特別な配慮を大蔵省経済企画庁もお考えおき願いたいと思います。農地局関係の問題につきましては、さらに特定土地改良事業特別会計の問題やら、あるいは土地改良開拓者の問題について、いろいろ関連することでたくさんあるのでありますが、非常に懇切丁寧な答弁で、もう時間を一時間も食ってしまいまして、あとの方の質問時間に差しつかえます。残った問題は予算委員会一般質問のときに譲りまして、次に進みたいと思います。  食管会計の問題は実はあす予算補正について総括質問をやることになっておりますから、それに関連してここでこまかいことを伺っておきたいと思いますが、その前に、今の経済基盤を確立する、生産基盤を確立する点に関連いたしまして、畑作農業の振興それから畜産振興という点について私は二、三伺っておきたいと思います。  大臣は就任早々から特に畑作振興について最も力を注がれまして、これをあなたの一枚看板とされてきましたことは事実であります。私は日本農業の将来を考えるときに、やはり問題はここにありはしないかと思うのであります。結論を申し上げますならば、今日日本農業のいわゆる零細化、農地の細分化、これをいかに防止し、これをいかにするかというところに問題がある。ヨーロッパの先進地の国々を見て参りましても、一体二反歩、三反歩、四反歩なんという過小農経営で、とうてい農業経営が成り立たないような極端な小規模農業経営をやっている国はない。そういうものを無政策、無方針に、そういう考え方から放置しておるから、今日ではこれは一朝にして救いがたいところまできている。日本農政の根本的な考え方は、やはり何といっても、まず適正経営規模農家を設定し、新たなる営農類型に基いて抜本的な農業政策を行うべきである。これには一体土地があるか。現に北海道では積算六千度という冷涼地帯でも土地改良あるいは技術改良によって生産をあげておるのです。本州、四国、九州においても耕作可耕地がある。その点についてお伺いしたいと思いますが、これは膨大なものがあります。耕作可耕地が四百万町歩とか、あるいは五百万町歩、六百万町歩といわれておりますけれども、中には現在日本の耕地に匹敵するものが遊んでいるということが言われておる。こういう点について、大臣は口に一枚看板で言うだけでなく、一体日本の今後の畑作農業をいかにやっていくかということについて承わりたいと思います。
  20. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今お話のように、日本に耕作可能の土地も相当まだあることを承知しております。そういう関係で、今の御質問とは離れますけれども、本年度予算におきましても、土地調査ということを進めていきたい。そういうことで、耕地として適当なもの、あるいは山林として適当なもの、あるいは草地として適当なもの、こういう利用区分等についてなお一そう調査を進めていきたいと考えております。そこで、寒冷地帯あるいは山林地帯の高いところにおきましても耕地になるところが相当あると思います。お話のように、北海道等におきましても、土の改良とか、あるいは寒冷地帯に適応するところの営農形態の研究によりましては相当生産もあがり、従って収入もあげ得る、こういうことに考えられておりますので、従来水田の研究とか水田に対する施策というものは相当進んでおりましたが、このたびは畑作の振興、それに当然結びつく畜産、こういうところに力を入れていきたいということで、政策の方向といたしましてもそれを打ち出しておるわけであります。お話のように、私どもも畑作の振興ということは当然いろいろな面からやらなければならぬと考えております。しかし御承知通り、畑作振興につきましては非常に複雑な面もあります。同時にまた、この研究の方にも手抜かりといいますか、非常におくれている面もあるのでございます。でありますので、この振興の線に沿うて私どもといたしましても、畑作振興の技術指導というような点から考えまして、技術の方面におきましても、国立の試験場の北海道とか、北関東とか、あるいは九州に畑作の研究を入れて強くこれを推し進めたい、あるいは県の農事試験場等におきましても、その方面に畑作の研究を進めたいというふうに考えております。あるいは土地基盤、生産基盤の問題につきましても、土地改良の方におきまして、畑地灌漑の方面の費用は相当増額してつけておるわけであります。ことに北海道等におきましては、水田農業の限度もありますので、畑作の方には力を入れていくわけでありますが、同時に、畑作の土地をよくするという点におきましても、あるいはまた収入等の関係から申し上げましても、畜産、酪農というものはどうしても振興するし、また今までより以上に進めていかなければならぬというふうに考えておるのであります。畑作の振興につきましては、先ほど申し上げましたように、各方面にわたっております。でありますので、予算面においても各方面に計上いたしておるのであります。たとえば米麦のみではいかぬというようなことで、果樹園芸、畜産という方面にも手を伸ばさなくちゃならぬということで、普及員等においても特技普及員といいますか、そういう普及員の増員もいたしているようなわけであります。その他各方面にわたって一つの畑作振興の体系的なものを作り上げ、またそれに基く政策を打ち出していきたいと思うのでありますが、ことしは初年度と申しますか、そういう方面につきまして、今までの整備をいたしましたり、新しい出発点の基礎といいますか、基点となる方面に力を用いておるのでありまして、十分満足というわけにはいきませんが、そういう方向へ持っていきたい、こう考えておるわけであります。
  21. 小平忠

    小平(忠)分科員 時間がありませんから、問題点はたくさんあるのでありますが、次回の機会に譲りたいと思います。  畑作振興と重大な関連を持つ畜産振興になるのでありますが、政府はことしの予算でその施策の一つとして新たに酪農基金制度を考えておられるわけであります。それで、これに対して政府は一応五億の出資をする。ところが最近この制度をめぐりまして、生産者といわゆる乳業資本家との間に非常な対立ができまして、場合によっては民間の出資を拒否するというような動きがあるのでありますが、この点について農林大臣いかがでございますか。
  22. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今お話のように拒否するというところまでは行っておりませんが、乳業者と生産者団体とにおきましては常に利害の対立がありますので、酪農振興基金をめぐりましても出資の面、協力の面等につきまして幾分意見の相違があります。しかし現在この考え方を調整しながらこれを進めているわけであります。そしてこれはまた基金を予算に計上いたしますとともに法律も提出して御審議をわずらわすことに相なるわけであります。従って今この面の調整をいたしておるのでありますが、決定的な対立ということにはなっておりません。ある程度意見の相違はあるのでありますが、目下調整中だ、こういうふうに御了承願っておきます。
  23. 小平忠

    小平(忠)分科員 それは大臣非常に情勢判断が甘いですよ。日経の二月八日に「総スカンで立往生、酪農振興基金法案、乳業者生産者出資を断わる。」こういう記事、私はこういう動きがあることは前から知っておりましたが、この記事が出てから生産者の団体である全中央に行って事情を聞きました。それから各乳業者の関係の様子も聞きましたが、これは全然生産者といわゆる乳業資本は立場が違うのです。主張していることは完全に対立することなんです。これは大臣大へんでございますよ。あなたはそう楽観されておられるけれども、もっともっとこれはあなたが強力に予算を獲得しなければならぬということでもって、あなたの部下の方々が大蔵省折衝する際に――ちょうどここに来ておられる高木主計官なんかはそんな甘いものじゃないよ、大蔵省はむしろ反対する、そういういきさつは若干聞いておる。だからそれ見たことかと言われては大へんなんですが、私もそれについては大へん問題があると思う。この考え方は悪くありませんよ。悪くないけれども、あくまでも酪農民、生産者の立場を考えないでやると、酪農振興ではなくて、結局酪農機構、酪農問題を大混乱に陥れる格好になります。ですから、これは一つ大臣慎重に事態を収拾されて、予算が通るまでに解決するように御尽力を願います。  その次に、時間がありませんから端折りますが、食管会計の問題についてお伺いをいたしますが、三十一年度の赤字百六十億、三十二年度の赤字予定九十六億、さらに三十三年度の食管会計で一応六勘定を設けて操作をするのでありますが、しかしその結論としては一応四十二億の赤字が出るのを考慮して、三十二年度予算補正で三十二年度の食管会計の経理のいわゆる調整を行う形で百五十億繰り入れる、こういうことであります。これはこの三十二年度の赤字にいたしましても、さらに三十三年度予算米価なりあるいは今後の買い上げ予定数量やあるいはパリティの上昇その他米価問題をめぐりまして、これは大臣大へんでございますよ。そんな簡単なものじゃありません。先般予算総括質問の際、ここにおる川俣委員なりあるいは成田委員等の質問に対して安易に答弁されておりますけれども、そんな問題じゃないのです。これはよほど腹を据えてかからぬとえらいことになる。私は昨年来からいろいろ予算委員会でも、あるいは農林委員会でも分科会でも議論しておりますが、問題の焦点は、結局あの膨大な八千億を突破する金をいじっている食管会計の中で、生産者の立場も消費者の立場も守りながらいかにして赤字をなくしていくか、これであろうと思う。その中で問題はやはり中間経費ということなんです。この中間経費について昨年はあれだけ強く指摘せられたのであるから、今年は少しく改めてこられたかなと思って、いろいろ予算書を洗ってみるのですが、どう見てもこの中間経費について根本的に改善されたという跡は見えない。それは事務費もしかり、金利もしかり、加工料もしかり、中間経費の中で根本的に考えなければならぬ問題が多々あるのであります。その点について一つ詳細に承わりたいと思う。
  24. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 食管会計の赤字という問題は、当然制度上から予想されるものもありますが、今御指摘のように中間経費の増高によって赤字が増すということは避くべきだということは私も同感であります。そこで昨年の予算編成のときにも十四億だけ予算を提出する前に中間経費を節約いたしました。その後消費者米価の改訂に当りましても八億程度を節約したのであります。この点につきましては今御指摘の通りでありまして、本年度予算編成につきましても今の御質問ですと手を加えていないじゃないかということでありますが、実は中間経費の問題につきましては手を加えました。その額は今ちょっと記憶にありませんから、食糧庁長官から御説明申し上げますが、中間経費に対してメスを入れるといいますか、節約を相当いたして予算を提出してあるわけであります。
  25. 小倉武一

    ○小倉政府委員 一つ具体的に御質問をいただきましてお答えをいたしたいと思います。
  26. 小平忠

    小平(忠)分科員 具体的に申し上げたのですが、結局中間経費の中で、問題はやはり金利、保管料、あるいは加工料、事務費等であります。この点について三十二年度は幾らであって、三十三年度はどういうふうに組むか、それを聞きたいのです。
  27. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私の承知しているところだけを申上しげますが、三十三年度予算編成に当りまして、中間経費としては運賃等を抜きまして五千万円の節減を予算に織り込んでおります。その他こまかいのもありますが、先ほど申し上げました昨年度予算におきまして、予算上織り込んであった節約額は運賃一億、金利で六億、協力費、奨励金一億五千万円、合計八億五千万円でありました。その上に消費者米価改訂の際に運賃で二億、保管料で三億、金利、これは国庫余裕金を使うことになりましたので、これで九億、合計十四億というふうに節約をはかってきておりますので、この点につきましては相当節約をはかってきていると私は承知しているのであります。
  28. 小平忠

    小平(忠)分科員 大臣答弁メモをごらんになっていられるようだけれども、もちろん結論的にそうなったということかもしれません。私は、これは事務的なものですから、長官でもあるいは担当者でもいいのです。何も大臣答弁を求めているわけではありません。それで具体的にかりに金利についてはこうだ、それから保管料についてはこうだ、あるいは加工賃については石当りどうだ、事務費については昨年も一般会計負担の職員と食管特別会計負担の職員との問題についても議論がありましたが、これについてもどうあるか、三十二年のトータルの数字はこうで、三十三年の予算はこうだということを聞いておるのです。
  29. 小倉武一

    ○小倉政府委員 事務人件費から申し上げますが、ちょっと端数があるかもしれませんが、概略申し上げますと、前年度百億です。三十三年度は百八億五千万円、約八億五千万円近く増額になっておりますが、これは純粋の事務人件費の増額が主たる理由でございます。それから運賃につきましては、これは予算上の比較でございますが、三十二年度が九十三億七千万円、三十三年度が九十億足らず、八十九億六千五百万円ということになっております。それから集荷手数料は三十二年度が三十八億八千万円、それが四十一億一千万円、これは予算の上で数量の増を見ておりますからふえておりますが、手数料の単価自体は米麦とも上げておるわけではありません。たとえば米で申しますと、前年度は二千七百万石、それを二千九百万石というふうに見ております。麦についての数字関係は、これは特に考え方を変えておるわけではありません。それから集荷関係の問題といたしましては集荷奨励金あるいは集荷協力費というふうに従来言われておったのがございますが、それは前年は九億五千万円に対しまして三十三年は八億五千万円、約一億減というふうにいたしております。それから金利関係でございますが、本年は百十四億でございます。前年は予算上百二十二億です。多少減ったような格好になっておりますけれども、それは何も金利予算上節約になったという意味ではありません。そういう意味で申し上げておるのではないのですけれども、国庫余裕金の保有率は昨年と本年は予算上大体同様と見ております。約七割五分が糧券で、残りが国庫余裕金という見方は、三十二年度、三十三年度ほぼ同様に見ております。要するに金額が、糧券の絶対発行高が減るという見込みがありますし、それから先ほどお話に出ておりましたような、三十二年度において百六十億の損の繰り入れでありますとか運転資金の百五十億の資金を設けるといったようなこと、こういうことが、そういう差異になって現われておるわけでございます。保管料につきましては前年度は百十一億、本年度は百二億、中間経費と言われておるおもなるものは以上のようなものであります。
  30. 小平忠

    小平(忠)分科員 長官の今の説明で、非常に問題の点がたくさんあります。それは食管会計の八千億からの数字を操作する中身でありますから、これは従来もいろいろ議論になっておったことはわれわれも承知しておるのですが、事務費については三十二年度の百億に対して三十三年度の百八億五千万になるというのはベース・アップを考えてですか、それともどういう点で八億ふえるというのですか。
  31. 小倉武一

    ○小倉政府委員 これは例の常勤職員の定員化等がおもなる要素です。
  32. 小平忠

    小平(忠)分科員 そうするとベース・アップは考えていませんね。
  33. 高木文男

    ○高木説明員 予算の内訳でございますので、私から御説明いたします。ただいまの事務費でございますが、事務費のうちで一番大きくふえておりますのは検査員その他職員の人件費でございます。これは必ずしも食管会計だけではなしに、全予算について大体四%から五%くらい増加することになります。と申しますのは、国の職員の構成が平均的になっております際には、古い人がやめられて新しい人が入っていけば大体毎年そう動くはずはないのでございますが、戦後の特殊な現象といたしまして、現在は比較的年令の若い人が多い。食管会計に限らず、全体としてそういう傾向になっておりますので、給与法に定められました昇給なり昇格なりが行われますと若干ふえます。それが先ほど食糧庁長官答弁されました八億の増のうちの大部分、約五億二千万が俸給の増でございます。この中には先ほど申しました四%の増のほかに、長官が申されました常勤職員からの切りかえの俸給も入っております。そのほかに職員特別手当が二億三千万円出ております。これは何かと申しますと、例の年末の手当が〇・一五月分だけ予算上ふえております。ほかに別途国会に御審議予定しております通勤手当、昨年の人事院勧告に基きます交通手当の問題、それらがございますので、その額が二億三千万円になります。あと若干手当の類で増額がございます。旅費とか庁費とかいうものにつきましては、政府予算編成の前に定めましたところの三十三年度予算編成方針においても、大体四・五%を見当として何とか切り詰めを行おうじゃないかということが方針になっておりましたので、一般予算においてはそれに応じた始末を計上したわけでございますが、この種の会計につきましては、全く日々業務を営んでおるのでありまして、旅費庁費等の節減はかなり困難であります。困難ではありますが、計上の基準といたしましてはそういった一般会計における節減の方針を頭に置きまして計上したつもりであります。大体八億の増加はそのようにいたしまして職員の俸給なり手当なりの増額が大部分でございまして、旅費とか庁費とかいうたぐいはふやしておりません。
  34. 小平忠

    小平(忠)分科員 その説明でよくわかりました。そこでさらにお伺いしたいのは、この人件費の中で一般会計負担職員が何名、特別会計負担の職員が何名、これを三十二年と三十三年に分けて御説明願いたいのですが。
  35. 小倉武一

    ○小倉政府委員 今申し上げました人件費は特別会計だけでございます。一般会計負担のものはここに入っておりません。一般会計負担の方は人数にいたしまして食糧庁全体の百八十人くらいでありまして、その他は全部特別会計の負担であります。三十三年度の新定員で申し述べますと、二万六千六百七十人が特別会計でございます。それから一般会計が百八十三人という人数の内訳でございます。
  36. 小平忠

    小平(忠)分科員 金額は……。
  37. 小倉武一

    ○小倉政府委員 一般会計だけの金額は七千三百八十四万円……。
  38. 小平忠

    小平(忠)分科員 特別会計は百八億円というのですが違っていませんか……。
  39. 小倉武一

    ○小倉政府委員 特別会計は先ほど申しました百八億五千百万円、これが特別会計全体の事務費であります。
  40. 小平忠

    小平(忠)分科員 事務費はさっきおっしゃったので人件費を聞いておるのです。
  41. 小倉武一

    ○小倉政府委員 先ほど申しましたのは人件費が主体でその他の事務費も入りますが、その中の人件費だけをお尋ねでありますれば、俸給だけから申しますと五十二億三千六百万円です。
  42. 小平忠

    小平(忠)分科員 一般会計負担の職員が百八十三名、特別会計が二万六千六百七十名でございますと、三十二年の特別会計の職員は二万五千二百五十人でございました。それから一般会計負担職員百八十三名は前年同様、こういうことになるわけです。それで昨年の二万五千二百五十人に対しての二万六千六百七十人については、ただいま主計官から説明の内容了解できます。ただそこで問題は、昨年も予算分科会でも予算委員会でも問題になりましたことは、一体一般会計が百八十三名しか持たないで、あと二万五千、二万六千という膨大な職員の負担を全部特別会計に持っていくということは不合理ではないか、これは与野党一致して指摘されておるのです。この点については食糧庁も大蔵省も十分に検討しましょう、あるいは昨年春の審議におきまして、その後に持たれる臨時食糧調査会においても検討することになっておるというような答弁だったのです。この点検討された結果どうなりましたか。
  43. 小倉武一

    ○小倉政府委員 事務人件費等につきまして特別会計と一般会計負担区分の問題につきまして、お話のように昨年の春早くからいろいろ論議がございまして、特に調査会におきましてもいろいろ審議があったわけですが、結論は調査会としても出なかったわけであります。それから私ども食糧庁内部といたしましても、調査会を通じ若干の検討をいたし、またその後も検討いたしたわけでありますが、その点の結論は得ておりません。従いまして三十三年度予算編成につきましては、この問題については従来通りの要求をいたしておる、こういう実情であります。
  44. 小平忠

    小平(忠)分科員 長官、その点は問題なのです。これは昨年もずいぶん議論になりまして、これはいけない、全部ほとんど特別会計に持たせていると言っても過言でないという結論が一応出ておるのです。一般会計にどの程度これを持っていくかということについて、早急に、この予算案を出すまでには結論を出そうというこになっておる。だから結局事務費においては前年度から八億も増額を見るというようなこと、これは率直にいって非常に怠慢です。金利のことについて伺いましたが、金利のことについてはあなたの説明では私は理解できない。それは今度一般会計からの補てんあるいは調整勘定設置によって資金が早く出る、こういうようなこと、特に調整勘定の百五十億についても、先般の川俣委員質問に対しての答弁は、決算の確定、七月、それまで補てんしないということになっておる、これは大きな誤まりなんです。予算が、補正されたならば一日も早くこれをいわゆる補てんして――結局食糧証券であってみればこれは金利を食うのです。それを決算が確定しなければ、七月にならなければ補てんできないと考える、これは誤まりです。そういうことがあるから、利子は減ったというけれども、やはり決算までそのまま持っていくじゃありませんか。結論は同じです。それからもう一ぺん金利の利率の点はどういうふうに変ったか。さっきちょっと聞き取れなかったのですが、どうですか。
  45. 小倉武一

    ○小倉政府委員 人件費の問題につきましては、もちろんこれは特別会計の負担と申しますか、ではなくて一般会計負担すべしという御意見もございます。しかし私どもとしましては、そういう結論をまだ得ていないわけでございます。それから金利の点についてのお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたのは、特別会計の所要資金のうちで食糧証券でまかなう部分と国庫余裕金でまかなう部分と、大きく申しますれば二通りございますが、そのうち国庫余裕金はこれは無利息でございまするから、この利用率がどうなるかということ、食管の借入金全体としての金利負担いかんということにも非常に関係があるわけでございますが、この点について国庫余裕金の利用率につきましては昨三十二、三十三年度はどういうように見ているかを申し上げたわけでございます。約二五%程度国庫余裕金の利用ができるだろう、こういうわけであります。  それから百五十億の資金の設定についてこの金利との関係でございますが、三十二年度の損失担保の具体的な処理、これは決算の確定を待ってやるということを方針といたしておりますけれども一般会計から特別会計への繰り入れが決算の確定を待って、すなわち七月なり八月以降でなければしない、こういう意味ではありませんで、補正予算がきまれば百五十億は特別会計に入ってきて資金として活用できますので、一応帳簿の上でそれが損を消すということになろうとそうでなかろうと、その点金利負担関係がない、百五十億が一日も早く入って参りますればそれだけ金利負担が軽減される、こういうことに相なるわけであります。
  46. 小平忠

    小平(忠)分科員 それは明確に百五十億については三十二年の赤字九十六億を予定いたしておりますが、これが確定しないのです。確定する時期はいつかというと七月でなくてはしない。それはいわゆる現在の政府のとっております修正売価主義、こういった観点から見ますと三月三十一日の決算が終ればすぐできるのです。ただ最後の見積り等について若干の期間を置きますが、長官が今言うこれは補正すれば特別会計に入ってくれば金利とは無関係だ、これはとんでもない話ですよ。全体に操作するというもののやはりその現実の赤字は一体何から出ているか、それは総合的にプール計算をしておりませんけれども、問題はやはり金利の食うものを一番先に払うことなんです。努めて国庫の余裕金を運用するという方法をとらないから、金利に年間百億なんという膨大な負担をしなければならぬことになるのです。結局簡単にいえば、食管会計なんというものは国鉄よりも――国鉄は三十万、四十万の職員を使っておっても年間の総事業分量というのは三千億ないし四千億です。食管会計は約一万六千人の職員を使って八千億でしょう。これはどっちかというと膨大な独占企業です。ところが資本金持たずの独占企業というようなこともよくいわれるのです。そういう見地に立ってこの食管の運用をよほど慎重にやらないと、御承知のように毎年毎年赤字が累積して批判の対象になるということになるのでありますから、具体的にいやそのつどそのつどというけれども、百億という金利はそう小さな金額じゃないのです。その点どうなんですか。一般会計に繰り入れたからそれで操作ができるのだ、金利のかかるものを返済していく方針はとらないで、それは七月の決算を待ってからやるのだ、これでいいのですか。
  47. 小倉武一

    ○小倉政府委員 どうも御質問の趣旨がよくわからないのでありますが、百五十億の資金を繰り入れるということになりますれば、繰り入れない場合と比べればそれだけ金利負担が軽減されるということは当然でありまして、それでもってその損の処理が決算を待って確定することとは、金利負担の軽減の関係においては変りはないのではないか、私はそういうふうに思うわけですが……(「百五十億をいつ繰り入れるかということを言うておるのだよ」と呼ぶ者あり)いつ繰り入れるかということは、これは補正予算できまりますれば三十二年度内に当然一般会計から特別会計に入ってくる、こういう意味金利の軽減がされる、こう申しておるわけであります。
  48. 小平忠

    小平(忠)分科員 これは私はまたあらためて具体的にお伺いをいたすことにいたします。次の方の質問の時間もだいぶ食っておりまするし、午後の通産省所管の問題もありますので、一般質問なり基本的な問題については明日の予算補正総括質問に譲りたいと思います。そこで農林大臣ないし食糧庁長官にお願いしたいのでありますが、食管会計の大きな問題は、それは操作関係もありましょうけれども、この際は中間経費についてなるべく合理化をはかって圧縮するということをもう一ぺん掘り下げてやる必要はありはしないか。そうしなければ現在のままで参りますと、三十三年度の食管会計において現在予定しております四十二億の赤字で済むかどうかという問題です。そうするとこの穴埋めについて一般会計から補填はしたくないというならば、消費者米価を値上げするよりほかに方法がない。これはまた断じて上げてはならぬという世論が起る分科会だから私はかみしもをぬいで率直に私の気持を申し上げますならば、やはり中間経費について徹底的なメスを加えてこれの合理的な圧縮をはかることが第一番だと思います。そういう意味でまことに恐縮でありますが、夕刻までに事務当局を激励していただきまして、私の手元に、この中間経費について三十二年と三十三年に予定されておりますものについてその内容を知りたいので、その資料をお届け願いたいのであります。それを確約いただければ私の質問はあとに譲りまして打ち切りたいと思います。
  49. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 小平さんのことですから、詳しく申し上げる必要はもうないと思いますが、三十三年度に四十三億の赤字が出る場合には消費者米価を上げなければならぬことに追い込まれはせぬかという御心配はごもっともであります。しかし私どもは消費者米価は上げないという方針をとっております。というのは、三十一年度の補正予算の基金として百五十億出ております。これによりまして三十二年度の九十六億の予定されておるものが確定されますならば落していきます。その前に百五十億は一般会計からも特別会計に入っておるわけであります。なおこの基金は三十三年度に引き継がれることになります。これによって処置していけますし、またそれだけでもしできない場合にはまた別に考えておることもあります。消費者米価は上げないという方針で進めております。またお話のように中間経費を節約するということは、食糧管理特別会計におきましても、これは非常に根本的なまた実際にやらなければならぬ問題だと思いますので、昨年度におきましても、予算編成の際、消費者米価改訂の際にも相当程度節約いたしたのであります。本年度におきましても、予算編成に当りまして節約をはかっております。なお今後もはかるつもりであります。そこで昨年度関係と今年度関係についてどういう点で節約し、どういう点でふえておるかというような調査の資料をということでありますが、夕方までにお届けいたします。
  50. 小平忠

    小平(忠)分科員 私はこれで打ち切りますが、ぜひその資料は夕方までにお願いいたします。確約願いましたからこれで打ち切りますが、大臣は今特に赤字の問題について、消費者米価は値上げしない見通しである、こうおっしゃったが、率直に申し上げまして、買い上げ予定数量は二千九百万石でありますが、農林省の発表されております需給計画では三千百万石なんです。これもすでに二百万石買い入れを多く見なければならぬ。この赤字をどう処理するか。それから農林大臣は米価審議会の意思というものについて――根本的に農業団体なり米価審議会が一致して強調しておりますところのいわゆる生産費所得方式、こういう再生産を保障する価格、こういう基本的な態度についての了解はされないにしても、少くとも現行米価をきめております一万二百二十二円五十銭のこの算定基準の条件より悪くするということは、農林大臣おっしゃらないでしょう。おそらくそうだろうと思うのです。現行米価を決定しておるその算定基準よりも今年は悪くするのだなんて発表したら、農林大臣大へんですよ。そうすると、予算米価を決定した一石一万二百円の基準の中には、すでにパリティを昨年よりも多く見ている。現に上昇しております。この分を見ていっても当然現行の一万三百二十二円五十銭をきめたその基準の中には、結局歩どまり加算も予約加算も――予約加算を百円と見れば二千九百万石で二十九億ですよ。それから歩どまり加算は十七円五十銭ですから五億にはなりましょう。そうすればすでに三十四億です。それに買い上げ予定数量が二千九百万石ですから、三千百万石になったらどうするのです。私は一つの例を言っているのです。これは一つ農林大臣食糧庁長官も十分きょうは研究されまして、私はあすこのことを根本的にお伺いいたします。問題はこういった従来の農林大臣の公約、政府の公約からいっても、必然的に出てくる赤字をどうするか、消費者米価を上げない、一般会計からも繰り入れることはできない、どこでこの赤字を操作するのか、そういう意味で実は私は掘り下げてもっと聞きたいのでありますが時間が参りましたし、あとの方も迷惑しますからこれで私の質問は打ち切ることにいたしますがこの問題については大臣一つ腹を据えて検討願い、善処していただきたいと思います。
  51. 八木一郎

    八木主査 川俣清音君
  52. 川俣清音

    川俣分科員 順序をまず先に申し上げます。  肥料、農機具というようなものは農業用生産資材としてかなり重要になって参りましたので、この点をお聞きして、それからこれに付帯する改良普及事業と申しますか、農業改良助長法の改正の問題に触れて参り、特に肥料の問題に触れ、それから試験場の充実の問題に触れ、農業政策に入って食管の問題についてお尋ねしようと思います。食管の問題は大臣ではちょっと無理だと思いますので、大蔵省司計課長と長官がおられればよいと思いますから……。この問題はかなり内容に入ってお尋ねしたいと思いますので、大臣を必要といたしません。その前の分で必要な部分だけは大臣お尋ねして、あとは事務当局でけっこうだと思うのです。  農機具及び農薬が非常な勢いで生産もされ、また農村においてこれが消費されておるのであります。昨年は、気候から見ますと、ここ三十六年間の平均気温、日照、そういうものと比較いたしまして条件が必ずしもよくなかったのを克服できましたのは、こうした技術と農機具、農薬等の援助によって、とにかくまがりなりにも平年作を得たのでありますが、これらに重点が加わってきたにかかわらず、それらに対する施策は必ずしも十分ではないのではないかと思うのであります。特に農林予算の中で純技術的なものはだんだん減ってくるような傾向があります。どうも政治家は場当りで、目先のよいものを使いまして宣伝をいたしますけれども農業の本体に触れたような技術の面は等閑視するような傾きがあるようであります。農業機械がものすごい勢いで発達をいたしておりますが、これを健全に助長していくことが最も適切だと思うのであります。生産技術の向上が生産の成長を促しておるのでありまして、これからくる結果も非常によろしいのでありますが、農薬及び農機具、特に農機具が生産技術の向上に非常に役立つ反面におきまして、生産コストを高めて、生産費を上回るようなことになって参りますと、そこから農業経済が破綻を来すのではないかと思うのであります。こういうところから、農機具などについては特に一定の方針がなければならないと思います。これが最近外国へも相当輸出されまして、国内の需要が国外への輸出促進の基礎にもなっております。国内でこれだけ消費されなければ国外へ進出することも不可能である。ところが非常にばらばらなものでありまして、中小企業メーカーがやっておりましたために、ごく一部を改良いたしましてまた新しくこれを売り出して、農機具の費用は、生産費よりも宣伝費と申しますか、広告費に食われておるというような状態であります。こうなって参りますと、農機具の質的な発展を遂げさせることはもちろんでありますけれども、この指導育成が必要ではないかと思う。これは、あやまちますと農産物がコスト高になってしまうおそれがある。また非常に農産物の生産を助長しておるものでありますから、これを助長するよい方向とコスト高になる方向との二面を調和していくのが農林行政だと思う。これに対する施策が一体大臣におありになりますかどうか、この点お伺いします。
  53. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今お話のように、農機具の使用率も非常にふえておりまするし、またこの価格の点等におきましても、農業生産を阻害するということではありませんけれども、相当上っております。そこで農機具に対する農林政策をどうするかということでありますが、私どもといたしましては、お話のように、非常に種類も多いし、また少しばかり手を加えて宣伝費にかけておるというような状態でもありますので、こういう点につきましては、優秀なるものを指導推進するといいますか、そういうような方法により、また価格の点におきましても、中小企業が担当しておりまするので、とかくコスト高でもあろうかと思いますけれども、そういう点にもコストを合理化するといいますか、節減するということで指導していきたいと思います。ただもうおわかりでございましょうが、農機具の製造は大体通産省の方に行っておりますので、私どもの方といたしましても非常にやりづらい面があるのでありますが、向うの方とよく協調をいたしまして御趣旨あるいは御意図に沿うようにいたしたいと思っておるわけであります。
  54. 川俣清音

    川俣分科員 製造の所管は通産省でありましょう。しかしながら、今日まで農機具メーカーというものは農村に依存をいたして発展を遂げたのでありますから、指導性はむしろ農林省になければならない、農林省が指導性を持たなければ意味をなさぬのじゃないか、そういう意味で今度の大臣は大勇猛心をふるったというほどほめるわけにはいかぬけれども、特技普及員というようなものを五百三十名にふやして、そうして指導していこう、こういうわけでしょう。このねらいは必ずしも悪くはない。それじゃどれだけ指導性を持てるかというと、これが薄給でありますとむしろメーカー側の宣伝員に使われまして、大して必要でもないものをも使用させるようになりますと、農産物の価格構成の中にこれらの農機具の費用がかさんで参りまして、農産物がコスト高になる、これが消費者に非常に影響してくるということになると思うのです。せっかく設けられたからにはこれらの特技普及員に対しては、これは大蔵省も聞いておいてほしいのですが、あまりけちなことをやりまして、普及員が普及員にならないで農機具メーカーの宣伝員になってしまったのではいけないのではないか。これは大蔵省はちょっと考えてほしいのです。わずかな経費を惜しむことによって――これは大した大きな経費ではないのですから、十分考えてやらないと、メーカーに振り回されて、国費が効率的に働かないという結果になるのじゃないか。しかもこれらの費用が府県の費用になるのでありますから、府県の負担の部分が大きいのでありますから、府県の地方財政が非常に困窮いたしておりますと、とかく活用が鈍って参りまして、こうしたことが悪い結果になることをおそれるのであります。大蔵省も五百三十名の特技員を認めたということは進歩ではあると思う。進歩だけれども、けちけちいたしまして十分な活動ができない結果になりましたならば、むしろ置かない方がいいということになりかねないと思うので、この点を特に注意を喚起しておきたいと思うのであります。  そこで、これに伴いまして農業改良助長法の改正が必要になってくるのではないかと思うのです。農業改良助長法というのは非常に法律がよくできておりまして、これは大蔵省は何と答弁になるかわかりませんが、改良助長法によりますと、試験場の試験については継続的に出すというようなことが出ております。これは継続費を当然予想した法律になっておる。また、かつて新しい憲法下において、継続費というものを認むべきか認むべきではないかという議論があったのを、あえて大蔵省は財政法に継続費を認めるに至りました経過において、その例として農林省の試験場のような試験科目は継続費にすべきものであるということで、財政法改正の場合にその必要を強調された中に、農業試験場の試験というようなことを入れております。従って農業試験場の継続費についても、特にこれは配慮しなければならぬと思うのでありますが、この点は大蔵省から、前の農業改良助長法の改正については農林省から、御答弁を願いたいと思うのであります。
  55. 永野正二

    ○永野政府委員 ただいま川俣先生の御指摘のように、農業改良助長法は農業技術の試験研究並びに普及に関します基本的な制度を定めたものでございます。この趣旨に基きまして、現在の試験研究並びに改良普及事業が行われているわけでありますが、現在これが問題となっております点は、普及員といたしましては、最近ことに農業技術の指導が、畜産とか、園芸とか、あるいは農機具、農薬等、いろいろな特殊な技術部門についても相当徹底した末端の技術指導を必要とする段階だということでございます。こういう点から考えまするならば、従来の一人々々の普及員が担当農家を持っているという制度とあわせまして、全国千五百八十六と考えておりますが、大体二、三カ町村を一地区といたしまして、普及地区制の一つの指導機構を設けまして、そこにおきまして、従来の個々の普及員が担当しております一般的な改良普及事業と、専門技術の普及をもあわせて普及地区単位で行う、またそれらのおのおの特技を総合的に農家に使用するという機構が必要であろうと私どもは考えておるのでございます。来年度予算におきましては、その関係予算は一応はっきりと認められておるのでございますが、これを設置するということにつきまして、目下政府部内におきましていろいろ協議をいたしておる段階でございます。
  56. 高木文男

    ○高木説明員 農業改良助長法に二年以上継続して資金を交付することを承認した農業試験研究費の規定があることは承知いたしておりますが、現在の段階では、特に試験研究予算はどちらかというと毎年増額の傾向にございまして、今までは必ずしも試験研究費を継続しないとうまくいかないという具体的なお話がございませんでしたから、特に継続費制度を研究費予算に持ち込むということは農林省関係では現在のところいたしておりません。ただ、継続ではございませんが、二年以上にまたがって事業をやる場合には、債務負担行為でやるということが非常に便利でございますので、この種の非常に大きな事業、たとえば原子力関係事業等につきましては、現在の予算でも債務負担行為の制度を活用してやっております。今後、農業関係の試験研究費につきましては、もし単年度ではどうにも工合が悪いという事例がありますならば、そのような方途を講ずる可能性は十分にあるということを御記憶願いたいと思います。
  57. 川俣清音

    川俣分科員 これは先ほど質問いたしたように、大蔵省継続費の必要な項目として農林省の試験研究費ということを一番先にあげて改正案の趣旨弁明をいたしておるのです。自分で趣旨弁明をして継続費の必要を説いておきながら、国会の承認を求めておりながら、自分でつけていないというのは不当ではないかということが一つ。特に品種の改良等におきましては、一年で固定するものではないことは明瞭です。稲の品種については相当研究が進んでおりますが、麦の品種については劣っておるのであります。今後大麦の輸入を阻止するような態勢を国内で作るといたしまするならば、むしろ特に麦の品種あるいは大豆の品種等の改善に力を入れていかなければならぬが、これは長年月を要するものでありますから、ときどき予算が削減されますと、これが非常に大きな影響を来たす。あるいは増額したと申しましても、研究の範囲が大きくなったために増額されるようなことがありましても、基本的な品種の改良等は削減されるようなおそれもあるのでありますから、こうした問題については特に継続費的な支出を必要とすると思うのであります。  それからもう一つ、これは大臣にぜひともお願いしたいのですが、農林省の試験場におっただけでは学位がとれない。通産省とかほかの省に行くと学位がとれるけれども農林省におると技術屋をまことに虐待するという世評があるのであります。どうもこの世評が当らずといえども遠からずということであります。これでは、農林省があれだけ膨大な試験場を持ちながら、これらの研究者に対して報いる点がすこぶる少いのじゃないかと思うのです。ところが農林省は、本来であれば技術屋をもっと優遇しなければならぬのに、また文官をやや優遇し始めているような傾向なしとしない。この点について大臣のしっかりした答弁をお願いします。
  58. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農業の科学技術等につきましても、内閣としての科学技術の振興に力を入れていると同時に、農林関係の科学技術にも力を入れ、予算等におきましても試験研究等に相当の予算措置をしたのであります。そこでそういう技術方面に対する待遇といいますか、冷たいような要素があるじゃないかということであります。私ども別にそういう差別的に考えてはおりませんけれども、今のような御批評もまたあるように聞いております。非常に大事な技術の方面でありまするし、今後におきましても技術方面の人人に対しましては、十分いろいろな面で誇りを持ってといいますか、農林行政に協力できるようにやっていきたいと思います。  今の学位その他個々の点につきましては、またいろいろ研究してみたいと思いますが、いろいろな面で技術者を尊重していきたい、こういう強い気持を持っておりますから御了承願いたいと思います。
  59. 川俣清音

    川俣分科員 熱意のほどは認めますけれども、それはやはり具体化されて予算を修正する、補正を組んでまで報いるということにならないというと、学者でありまするから、幾分そういう芽が出てくるというと、いろんな刺激になると思うのです。そういう政府の報いる面の刺激が足りな過ぎるのじゃないか。今日においては、修正をするということは与党としては困難であろうけれども、野党側からもしもこういう点についての修正案が出ますれば、大臣は大体了解しそうな御返事だと、私は特にそう了解して話を進めます。  さらに肥料の問題ですが、二十九年ですが千五百六十四億という資産を肥料メーカーが持っておって、それから二千四百四十六億という五六%の成長を肥料メーカーは示しております。これらの資本の獲得ができたということは、購買力を持つところの農民の投資によると見てよろしいと思うのでありまして、今日の肥料メーカーの発展はあげて農民の援助によったものと私どもは見ておるのでございます。ところが最近いわゆる二十九年、三十年からいたしまして設備投資が非常に行われまして工場等が拡張いたしたのでありますが、最近収益率が下ってきておるようであります。こうなって参りますると、肥料の価格を下げることについて非常に困難な面が出てきております。いわゆる収益率が上らない、むしろ下ってきた。ときには無配も行なった会社があるということになりますと、肥料の販売価格を下げて農村の生産資材を安く提供するということが非常に困難になってきたと思うのであります。しかしながら一面からいうと、三十二年か、三十三年を調査しますと、百五十万トンあるいは二百万トンに将来及ぶような輸出の状態が見えてきております。そうなって参りますると、国内消費と輸出と見合いのような工合に輸出が振興されて参りますると、今ダンピングいたしておりまする四十七ドルくらいの価格で売っておりますることは、国内に対して百三十円ぐらいの差がつくことになります。そういたしますると、少量の輸出のために犠牲を払わせられる、あるいは日本の商権伸張のために犠牲を払わされることなどは幾分耐え得られましても、国内消費と同様な輸出になりますると、この輸出負担を農民が負担しなければならないということになりますると大へんなことになるのじゃないかと思う。国内が百五十万トンとか二百万トン消費し、輸出が一割くらいでありますると、そのはね返りの損害も少いのでありますが、百五十万、二百万というような輸出の工合になりますると、ほとんど輸出のダンピングの被害を国内が受けなければならない。このために収益率が下ってきた、こうなると思うのでありまして、こうなりますると、肥料政策というものを根本的に考え直さなければならぬ段階に来たと思うのでありますが、これに対する大臣の見解はどうですか。
  60. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 肥料も、肥料会社においては配当ができないような肥料会社があるようであります。肥料全体といたしましては合理化が進みましたので、非常な増産になっているわけでございます。そういうことでありまするので、実勢といたしましては、また肥料審議会等に諮問いたしまして決定しておる価格といたしましては、暫時低廉な価格ということにアンモニア系統はなっておるわけでございます。しかしながら一面輸出の面におきましても、諸外国との競争その他におきまして大分安く輸出せざるを得ないような状態でありますが、四十七ドルというような価格はこれは韓国の場合だけでありまして、ほかでは最近そう安くないようなことで入札をいたしております。しかしそれにいたしましても非常に輸出の量がふえるということになれば、内地との間に価格差ができるわけであります。その価格差が出血輸出だというようなことで、御承知のように二、三年前でしたか非常に問題になりましたので、この会計を別途にして、内需方面に転嫁させないようにという制度にはなっております。一応そういうふうになっておりますが、しかし輸出による赤字というものは赤字のままでいつまでも残っていくわけでありますから、赤字が出れば何らか処置せざるを得ないようなことになるわけであります。そういう面によりまして肥料が非常に足らなかった時代と違いまして、合理化が進んで非常に肥料がふえて輸出もふえてくる、こういうようなことでありまするから、内地の需要、輸出の関係等を勘案いたしまして、肥料の問題につきましても、ほかの肥料も加えて根本的に再検討をする時期にきておると私ども考えております。でありますので、各方面の意見などもしんしゃくいたしまして再検討をしていきたい、こう考えております。
  61. 川俣清音

    川俣分科員 一かます七百六十円内外でありますると、今の設備、今の資本の回転率から見て、配当ができないわけはない。いわゆる赤字たな上げの輸出会社にこれが負担さしておるけれども、これが相当の重圧になって資本の回転率が悪くなってきておるのである、従ってこれは輸出振興の費用だということで、硫安輸出会社の赤字を解消していくのかしないのかという問題が重要になってくることが一つです。  もう一つは、農産物の場合は国際競争に耐え得なければならない、最も貧弱な、武装しておらない、裸のままの農民の場合は国際競争に対応する態勢がなければならないと、こう農林省が言っておりながら、肥料のことになりますると、赤字たな上げの輸出会社を作って一応武装をさせて輸出させるという態勢をとっておる。これでは対策が十分じゃないのじゃないですか。農民の場合は国際競争に耐え得るような価格構成にしなければならない、しかも個々の農民というものは、被服からいっても生活からいってもそんな対応できるような武装はしておらない。むしろ肥料メーカーこそが国際競争に耐え得るような態勢を作り得るのである。作り得る方には作らせないで、作り得ない方に強要してくるというところに、大きな農政の欺瞞があるとまで酷評を受ける原因があると思うのです。従ってこの点について十分な検討がなされなければならない。  もう一つは、中共あたりで盛んにア系肥料、窒素肥料を求めております。こういう安い肥料が国外に輸出されまして、それでできる品物と、高い肥料を使った国内の農産物が競争しなければならないということも、これは大きな矛盾だと思う。将来これらの矛盾が出て参ります。十万トンとか十五万トンの輸出でありますれば大した問題でありませんけれども、百五十万トン、二百万トンという輸出が出て参りますと、これが農産物のコストを引き下げる――国外では引き下げ得るし、国内では引き下げ得ないということになって参りますと、これはゆゆしき農政問題だと思うので、これは早急に根本的な対策を講じなければならぬと思うのです。これはほんとうは大臣答弁するのが当りまえですが、所管の局長はどんな見解でおられるでしょうか。
  62. 渡部伍郎

    ○渡部(伍)政府委員 ただいま大臣がお答えになったことに尽きると思いますが、今までやってきましたのは、量産による合理化とそれからたとえば天然ガス等を使う原料の転換、重油ガス化法という技術上の転換、そういう両方の方面で量が非常にふえてきているわけです。御承知のように、われわれの方の国内価格をきめますのは、生産されたものの中からコストの安いものの順に拾って、国内需要を満たす限度までの量を満たせる会社のコスト計算でやっておるわけでありますから、先ほど御指摘になりましたように、赤字になりまして配当もできない、こういうのが出てきておるわけであります。従いまして、今後の問題は従来の量産による量の増加によってコストが下ったというだけでは、国際競争に耐えることができない場面に逢着いたしておるのであります。それからさらにまた本肥料年度の海外の相場を見ますると、昨年秋に韓国入札あるいは台湾入札をしたときには、西独その他から非常に安いものを出しております。その後は国際相場も非常に上ってきているわけです。最近の状況では、日本から エジプトに出したものなどは非常に高いのであります。五十五、六ドルというものが出てきておるわけであります。従いまして貿易面における売り方の問題も考えなければいけないと思います。それからまたさらに御指摘の硫安会社によって国内価格と海外相場との差額を負担する、負担した場合に、せんだって申しましたように、国際価格が上ってくれば赤字解消できますけれども、これは大体技術の進歩で下るのが筋じゃないかと思いますから、さらにそれをカバーするだけの合理化をはかっていかなければならない。場合によりますと、合理化だけではなくて、老朽設備をある程度処理しなければいかぬ、こういう問題まで発展するのであります。これらにつきましては、通産省と目下具体的な案を考えまして、せんだっての肥料審議会でも、硫安二法を改正する場合には、ただ単なる改正ではなくて、そういう点を織り込んだ対策を考えるべきだ、こういう付帯条件もいただいております。早急に対策を樹立したい、こう考えております。
  63. 川俣清音

    川俣分科員 私どもが肥料審議会におったときに、生産コストの安い分からこれをとるというのは、合理化を促進するためにとった方法なんでありまして、それを通産省並びに農林省が甘く考えて、せっかく妙案を持ってしながらこの方向を決定づけるように指導しなかったことが非常な誤まりだったと思うのです。量産によって当然コストも安くなるのだというような甘い見方をしたことが誤まりだと思うのでありまして、日本の肥料メーカーが偉大でありますだけに、どうも経済局は少しよろめくおそれがないとはいえないのでありまして、今ごろになってから質的転換が必要だなんということはおそいですよ。初めからわれわれは質的転換を求める意味において、生産コストの安いところから順次これをとっていく、あるいは途中においてもその数量に満たなくてもある程度切ってしまって、将来のコストの目安とするというような方向をとらなかったところに、大きな失敗があると思う。今からでもおそくないのではない、もうおそいくらいです。十分心得てやらなければならぬ問題だと思うのであります。従ってこれらに対する施策について十分でないことを指摘いたしまして次の問題に移ります。  酪農の問題については、小平君がちょっと触れましたので、私はこれは省略しまして、林業の問題を取り上げて、あと午後食糧の問題に入りたいと思います。  国有林野事業が植林面積、山林面積においては必ずしも民有林に対抗できるだけのものを持っておりませんけれども、その蓄材におきましては、優に民有林にまさるだけの蓄材を持っておりますことは、長年日本の治山治水あるいは国土保全という高所から伐採を制限したために持っておるところの貯材であります。これを最近合理化して伐採するということでありますが、今までかなり植伐の均衡が破れがちなときに、国有林が合理化と称して代採能率を上げていくということは、需要の面からいたしますればかくあるべきだと思いまするけれども、将来の造林計画を十分心得ないで、この需要に応じますると、国土保全の上から、治山治水の保護の上から、また水源地の培養の上からいってゆゆしい事態が起るのじゃないかと思うのであります。特に最近、単に建築材としての利用でなくして、最も需要の旺盛なのはパルプでありまして、紙パルプにいたしましても繊維パルプにいたしましても、需要が相当伸びていっておりまするし、現在パルプ会社の工場は設備競争をいたしまして、かなり過剰施設を持っておるわけでありまして、この過剰施設をフルに動かすということになりますと、日本の山林に非常な影響を与えるのじゃないかと思うのでありますが、これらに対する見解を林野庁長官から承わりたい。
  64. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 国有林野事業におきまして、近年経営の合理化ということを合言葉にいたして努力いたしておりますことは御指摘の通りであります。お話のように、えてしてそういう目標が踏み違えられて増伐になってはゆゆしい事態を結果するじゃないかという御指摘がございますことも、私ども十分関心を要する問題であろうと思うのでございますが、しかし国有林は御承知のように全森林面積の三割に相当する地域を占めております。その所有しております立木蓄積は、これまた全体の五割以上ということでございまして、少くとも近来この木材の需給関係というものが本来的な姿において非常に逼迫しておる現状から見まするならば、できるだけこれらの面積、立木蓄積を活用いたしまして、これらの要請にこたえなければならぬということも当然の要求であろうかと思います。  大体七百五十万町歩の国有林の約八割はいわゆる天然性の山でございまして、従来人間の手の加わっておらない、あるいは比較的加わることの少かった森林でございます。従いましてこの中には、切りましたあとに成長の早い植林等を行うことによりまして生産力を引き上げて参ることのできるような林地というものが相当あるわけでございます。従いまして私どもといたしましては、従来、国土保全のことを考えながら、とかく当面の林業経営の目的を達していくのだということで非常にあいまいになりがちでありましたものを、この機会におきまして、いま少しく主体的に明確な経営目標を置く必要があるのじゃないかということからいたしまして、重要な水源の上流等にあります国有林野につきましては、これをいわゆる国土保全のための森林ということに具体的に地域区分をいたしまして、これに対しましては十分なる保全効果の上るような仕事をやって参りたい、さらに地元の山村経済等と密接不離の関係にあります地帯につきましては、これはいわゆる地元のための対策林ということで、これも地域画定をいたしまして、それに向くような仕事をやって参りたい、そういった特殊な関係が比較的薄いものに対しましては、いわゆる生産力の増強対策をやって参りたい、こういうことで仕事を進める段取りにいたしておるわけであります。従いまして御指摘の点は十分に注意して参る必要がございまするが、合理化に基きまする新しい仕事といたしましては、従来国土保全の目的を達成いたして参りましたものが今後非常に弱くなるというようなことはないと私どもは確信をいたしておるわけでございます。  それから御指摘のように、年近パルプ材等の原材料として消費せられまする木材の数量が著しく増大をいたしておる。僅々十カ年間の数字を見ましても、約五倍の量にふくれ上っておるということでございまして、これらが比較的若い森林の伐採を促進する機能を持っておることは御指摘の通りでございます。しかしながら御承知のごとく森林法におきましても、ある一定の年令以下のものにつきましてはかなりやかましい伐採制限の措置をとっておるわけでございまして、それ以上の年令のものにつきましても届出制度を採用しておるといような状況で、いたずらにそのことが伐採の進行のしっぱなしにならないような規制行為は加えるということになっておりますので、現状よりさらに悪化するようなことはそうないではないか、かように考えております。
  65. 川俣清音

    川俣分科員 国有林野事業は今長官から御説明のありましたように、林野面積において七百五十万町歩、森林蓄積において三十二億石、また年間六千数百石の生産をいたしておるのでありまして、これが合理化をしていくことは当然なことと思うのでありますが、そのために国土保全の上に影響を来たさないようにやっていこうという趣旨は私ども了承いたします。それにいたしまして、全国にこれらの事業を受け持っておりまする担当区が二千二百をこえるでありましょうし、また事業所も約三千をこえるのではないかと思います。それから営林署は三百三十八だと思いますが、特に末端の担当区あるいは植伐事業所、これらを充実させていかなければ所期の目的が達成できないと思う。ところが最近はどうも行政事務量がふえて参りまして、本来の事業に専念することができないような状態になりつつある。もちろんこういう木材の需要が複雑になって参りまするならば、行政事務もふえて参りましょうし、民間林業の指導育成にも当らなければなりませんでしょうから、営林署としての行政事務は非常に多くなっていくであろうことは、当然指導的な面からしてやむを得ない点もあるだろうし、またこれは積極的にやっていかなければならぬだろうが、その割合に担当区あるいは植伐事業所を、投げやりとまではいたさないにいたしましても、合理化の最前線でありますこの担当区や事業所を軽視する傾きがあるのではないか。私どもが山奥に入ってみまして、担当区並びに事業所がいかに苦労して事業をやっておるかということを見て頭が下る思いがするのでありますが、どうもこれもまた事業本位で――経営の合理化といえば事業本位がかなり重点に置かれなければならぬのに、ややこの点について劣るのではないかという感じがいたすのでありますが、この点についての見解を一つ承わっておきたい。
  66. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 お話のように戦後特に森林管理の面あるいは労務対策の問題あるいは経理事務といったような一般行政事務的なものが、非常に国有林野事業の現業の部門におきましても増加いたしておることは御承知通りであります。しかしながらこれはあくまでも現業でございますから、現場第一線を中心にいたしますことで運用しなければならぬことは当然でございます。今まで私どもといたしましては決して現場を軽視して参ったわけではございませんけれども仕事がさらに飛躍的に発展をいたすということになりますと、現場重点の再編成をいたさなければならぬことは当然だろうと思うのであります。単に合理化と申しておりますが、要するに現在実施いたしております直営生産のごときにおきましては、できるだけ作業対象を集約いたしまして、分散しないような作業の行われるような組織に直営生産を再編成したい。要するに事業地の統廃合が行われなければならないということに相なるわけであります。さらに従来一応天然更新と称しまして、切って切りっぱなしというところに対しましては、植栽を行う、造林地域が相当拡大する、こういうことに相なってくるわけでございますので、そういう新しい事業の体系に、かれこれ人の問題とあわせまして、さらに重点的にやって参りたい。そういう場合に当然担当区あるいは事業所の増設というような形で、これらの動きに対応していくということに相なろうかと考えております。
  67. 川俣清音

    川俣分科員 私は単に増設ばかりでなくして、やはり内容の充実が必要であろうという点をさらに追加して申し上げておきます。  次に大臣お尋ねいたしますが、最近政府におきまして、独禁法の緩和の問題を取り上げて、独禁法の改正の意図があるようでございますが、これが林野庁で取り上げております拡大造林等に非常な悪影響を与えるのではないかということで、全森連から強い要望が出ておるようでございます。また宮崎県におきましても県費をもちまして拡大造林をやろうとして、個々の零細所有者に働きかけておったところが、パルプ会社がこれらの私有地を買い上げて大きなそごを来たしておることも新聞等に見えておるのであります。全森連が憂慮するのも私はむべなるかなと思うのでありますが、この点について拡大造林と独禁法の緩和で、かなりの制約が行われるのではないか、パルプ会社の素材の買いたたき、不況協定によりまして、せっかく伸びようとするところの造林意欲に冷水をかけるような結果が起ってくるのではないかということが憂えられますし、また山林の兼併等が行われまして、従来の国土計画の上に非常な欠陥を生ずるのではないかというおそれと、二つ出てきておりますが、これに対する大臣の見解を一つ承わりたいと思います。
  68. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 独禁法の改正につきましてはいろいろ問題が多いのであります。この間そういうことで閣議でも話が出たのでありますが、御承知通り農林水産業態は零細な農林水産民の問題でありますので、カルテルあるいはトラスト組織というような形で独禁法を改正して、大きな資本に圧迫を受けるというようなことは、これは私どもとしては反対であります。ことに関係しております牛乳とか、繭とか、いろいろ問題があります。今お話しの木材の価格等につきましても、パルプ会社等がカルテルというような形で価格を圧迫するというようなことになりますと、拡大造林等にも支障を来たすわけであります。でありますので、こういうことは私はさせたくないと思っております。そこで独禁法の成案を得るまでには、私の方ではいろいろこれに反対の問題も多いので、事務当局でそういうことを検討して成案を得てからということにいたしております。でありますので、今のお話は私も同感であります。法案を出すということになりますならば、その出す前に今のお話のようなことで、拡大造林に支障があったり、小さい農山漁村民に対しての圧迫が来ないように十分に措置をとっていきたいと思います。御趣旨の点には賛成であります。
  69. 川俣清音

    川俣分科員 大臣答弁、大体了承いたしました。日本のパルプ工業が東南アジア及び中共を含めて将来性のある事業であることを認めますし、また日本の産業として発展さすべき産業であることについては異存がないのでありますけれども、いたずらに設備を拡張いたしまして、その犠牲をしいるというような緩和策をとることは、両方のために好ましくないということを十分考慮されておるようでございますから、大臣の声明に期待をいたしまして、私はこれ以上の追及はいたしません。  これで大体午前中の分は終りまして、午後食管会計の詳しい問題について食糧庁にお尋ねし、修正の要点を明らかにいたしたいと思いますから、午前中はこれで終ります。
  70. 八木一郎

    八木主査 もう一名、時間が経過しておりますが、簡潔なところでお願いしたいと思います。井手君。
  71. 井手以誠

    井手分科員 確かに時間がだいぶ経過しておりますので、ごく簡単にお尋ねをいたします。開拓資金の問題でお尋ねいたします。私は先日開拓者が借金の重圧に非常に困っていることを申し上げましたが、来年度の貸付資金総額は幾らでございますか。既入植者の貸付予定総額です。
  72. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 開拓者特別会計によるものが十六億であります。
  73. 井手以誠

    井手分科員 その中に回収金は財源としてどのくらい見込んでありましょうか。
  74. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 約十億であります。
  75. 井手以誠

    井手分科員 十六億の予定計画の中に回収による財源を十億見込んであるそうですが、従来の回収成績はどのようでございましたか、私は地方に参りますと、今の開拓の営農状態からいけば三割そこそこしか払えない、五〇%がせい一ぱいだといわれておるのでありまして、従来の実績によりましても回収による財源が計画をずっと下回ったために、貸付金額がずっと少いようで、予定に達していないようでありますが……
  76. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 そう償還は悪くございません。
  77. 井手以誠

    井手分科員 償還は九五%も見込んであるようでありますが、それが予定通りに入らないために計画がくずれて、たとえば十二億貸付計画がある場合に、実績は十億に達しないということをよく承わりますが、貸付の声が大きくしてなかなか実際は貸付が行われないという問題でございます。
  78. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 そう悪くないと申しますのは、見方にもよりますが、私はそう思っておるのであります。計数で申し上げますと、予算面では償還予定は要償還額の七割、昨年度もそう見込みまして、本年度もそう見込んであります。もっと見込んだらどうかという説が予算編成過程にありましたが、そういたしませんでした。
  79. 井手以誠

    井手分科員 それではお尋ねいたしますが、三十一年度、三十二年度、三十三年度、来年度までの償還計画と今までの貸付資金償還の金額とか融資の金額をお示し願いたいと思います。
  80. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 過去の分は一応あとでお答えすることにいたしまして、今後の数年間は三十三年度でお許しを願いたいと思います。しかし現在、その後三十三年度を過ぎても借りて償還すべき額は約四十億でございます。過去におきまする――いつから申し上げましょうか、昭和二十四年度から三十一年度までの償還額と償還した率とを持っておりますが、申し上げますと、二十四年度以降三十一年まで、逐年八七%、八三%、八七%、九〇%、八六%、八一%、三十年度が六八%、三十一年度が五七%であります。
  81. 井手以誠

    井手分科員 償還の割合がずっと下っておるようでありますが、従来――これは大臣も簡単ですからちょっとお聞き願いたいと思いますが、開拓者が償還すべき金額は、大体年間十億円を少し上回っております。それから新たに融資された金額が十億円、来年度からは融資の金額がずっと上回っておるようでありますけれでも、三十二年度までは償還の金額の方がずっと多いんです。私はここで長々と開拓者の苦しい事情は申し上げませんけれども、現在の苦しい開拓者の営農から申しまして、十億円以上の金を返さなくてはならぬ。そして十数億円新たに借りる。償還するために金を借りなくてはならぬというのが今の開拓者の実情なんです。それで大臣に、こまごましたことはお尋ねしませんけれども、非常に困っておる。先般申し上げましたが、あなたはいらっしゃらなかったからお聞きにならなかったと思いますけれども、今の開拓者は営農がうまいのがいい開拓者じゃなくて、やみをしようが何しようが、金をうまく返す人がいい開拓者だといわれております。そういうことを考えますと、今までの旧債をやはりたな上げにする必要があると私は思う。五年間、ほんとうは十年間と申し上げたいのですが、今の財政事情もありますので、少くとも五年間くらいはたな上げにして、新しく営農資金を貸し出されるまでは、ほんとうに営農に役立つような計画をなさることが、今の開拓政策として一番大事だと思う。開拓者の今の一番の苦悩なり願いというものは、旧債のたな上げ、これについてあなたはどういう御所見を持っているか、その点をお伺いしたいと思います。
  82. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 確かに御説の通り既入植者につきましては、入植した人のああいう緊急状態といいますか、事態にもよりまするので、非常に困っておることも承知しておりまするし、また今のお話のように、何の仕事をしても、営農の仕事でなくてほかの商売のようなことをして、そういうことで旧債を償還していく、こういうのが非常に腕がいいといいますか、優秀だというような形になっておることは私も承知しております。でありますので、私どもといたしましても、今年度予算においては旧債の借りかえとか、利子の補給とか、あるいはまた営農資金の増額とかいうことを考えて、開拓営農振興法に基いていろいろ措置しておるのでありますけれども、今のお話のような御意見も非常にいい御意見だと考えております。これにつきましては、なお検討の機会を与えていただきたいと思っております。
  83. 井手以誠

    井手分科員 来年度の貸付計画は十六億円です。それで償還金額は幾らかと申しますと、十三億九千六百万円だと私は聞いておるのであります。なるほど貸付金額は相当ふえては参りましたけれども予定通り貸しても十六億、ところがなかなか簡単に返せないものですから、あとの金が借りられないわけで、従来の実績を見てみますと、三十二年度は二三%も貸付が不執行になる見込みであります。お前の方は返してくれないからもう貸すことができないというきびしい条件があります。そうなると十六億の中に十三億ぐらいしか貸さないのです。そうなると払う金は十三億何千万円払わなければならない。結局金を払うために金を新たに借りる。借りかえということは若干あるかもしれませんけれども、それくらいな手段では、今困っておる十数万の開拓者をしてほんとうに営農に精進させることはできないと思うのです。これはやはり根本的にお考えを願わなくてはならぬと思う。少し融資額をふやしたら何とかなるだろうという甘い考えではいけないと思います。もっと熱意のあるところをお示しを願いたいと思います。
  84. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私どもも熱意をもってやったのでありますが、なお足りないところも確かにあると思います。御意見につきましてはなおよく検討さしていただきたいと思います。
  85. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 先ほどちょっとこの席をはずしまして御質問最初を逸しまして恐縮でございますが、補足さしていただきたいと思います。  先ほど申し上げましたのは要償還額と当該年度償還を必要とする年についての償還額を申し上げましたが、従っておくらして償還をした事情はまさにありますけれども、それを年度をかえまして後年度でも、とにかく昭和二十四年から三十年までに償還すべき額を償還していただきましたのは、開拓者諸君の非常な熱意と関係職員の御努力もありましょうが、二十四年度以降三十年までは前二年が一〇〇%、三年目が九九%、四年目も九九%、次も九九%、二十九年度も九九%、三十年度は九〇%でありまして、それが井出先生の御質問の方へ逆に聞えたのじゃないかとも思いますが、一年ないし二年のずれをもちまして、年々償還すべき額が今日まで償還されておりませんものは、開拓資金に関しましては九割を下ったことはないわけでございます。
  86. 井手以誠

    井手分科員 私は数字を聞こうとばかりは考えておりません。とにかく開拓者が借入金の返済に困っておるこの事態、あなたの方の督促なり指導によってずいぶん無理をして金を作って払っておる。先刻来申し上げますように十数億円払わなければならぬのに新たに十数億円借りる。金が循環しておるばかりですよ。そうして利子だけ損をしておることになるのですから、この点については格段の御努力を願いたいという意味で私は申し上げているわけです。  そこで、これは簡単ですから、大臣もお忙しいでしょうが、ちょっとばかりお許しをいただきたいと思います。金をなかなか払い切れない人には延納の道もある、こういうようなことを先般おっしゃったようですが、その条件が非常にきびしいようであります。生活保護を受けねばならぬ人であるとか、あるいは主人が病気になったとか、あるいは粗収入が生計費の半分以下であるとか、こういうことで延納を認められる開拓者というものはごくまれです。百姓が生活保護を受けられるものでないことは御承知通りでありまして、私は借入金償還には、もっとあたたかい措置が必要だと考えます。私はあとで予算委員会でさらにお尋ねはいたしますけれども、私どもの税金による日本開発銀行の貸付というものはでたらめです。百億という金が回収される前に次々に金を貸されておるのです。これは後日、本委員会でも申し上げますけれども、片一方で私どもの金がそういうふうに回収をされないのに貸されておる。ところが入植者には金を払わなくては新たに金を貸してくれないのですよ。しょうがないからせっかく自分が丹精こめて作っておるものを、あるいは豚でも牛でもそれを売って金を返しておるのです。そうしてまた金を借りて小さな豚を買ったり牛を買ったりしているのが実情です。それを何とか方法はないものかということを私は先刻来申し上げておるわけです。片一方では日本開発銀行ではそういうふうに回収をしなくともどんどん延納を認めて貸しておる。一社に十億円も二十億円もどんどん貸しておるが、零細な開拓者に対してはびしびし回収をする、これについて何か特段の方法はないものですか。
  87. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 開拓資金融通法には、特別会計から融資しました基本資金及び家畜等のいわゆる中期資金といっておりましたものが出ておるわけで、その資金に関する法律が書いてあるのであります。これを昨年度国会で御可決願いました営農振興法に基きまして、昨年度から計画を立て、本格的には本年度からなお四カ年続けて逐次開拓農家の振興をさせようと思っておるわけでございます。まず第一の開拓資金特別会計による融資金は、支払いのむずかしいときには償還延期ができる規定もございますので、その基準に問題があるかもしれませんが、実情に応じまして、一応まず昨年度の災害法は、中央から償還の困難な方には一応延納を認めようというので出しましたので、その年の作柄あるいは開拓地の事情、開拓者の経営、経済の状況等いろいろ差がありましょうが、営農振興計画ないしは営農改善計画等を立てていただくのと照応しまして、新年度にはよく考えてみようと思っておるわけであります。なお昨年も問題になりましたが、天災法に基く災害の営農資金、経営資金、言いかえれば短期の災害用資金でございますが、この資金を、新たに災害が起きて借りて、前の借りておった災害資金を返すというような循環がむしろ多いのでございます。そこで、一方基本的な開拓資金の中に、単に中期資金という家畜資金を置くばかりでなしに、本年度融資原資を、先ほどのお話にございますが、中期資金と言わないで、要振興地区の開拓者に十六億の振興対策としての、より幅の広い用途の家畜、農機具その他の積極的営農を進める資金を認めようと思っておるのでありまして、これは前年度は約八億五千万であったわけであります。そうしますと残りの天災法に基くいわゆる短期の災害用の経営資金でありますが、これは前年度四千万円の利子補給をそのときの延滞金についてとりましたが、三十三年度は一億二千二百万円の利子補給金を計上いたしまして、単にその延滞分のみならず、もとの災害資金をより大幅に負担を軽くする、また災害資金をより長期の営農資金化する、そういうふうに持っていく二面で考えておるわけであります。
  88. 井手以誠

    井手分科員 時間がありませんからお答えも簡単でけっこうです。要は、どの資金であろうと開拓者のきんちゃくと財布というものは一つです。苦しい会計の中でこれはどうだ、これは災害の分だ、これは何の分だというわけのものではございません。問題は十数万の、十八万ですか、二十万前後ですか、そういう開拓者の苦しいものを営農状況――返す金額と借り受ける金額があまり変らない、そこの問題でございます。そこで端的に私はお尋ねいたしますが、資金の返済について延納を認める条件をもっと緩和なさる御意思があるかどうか。生活保護を受けておるとか、主人が病気をしたとか、あるいは粗収入が生活費の半分にも満たないときだけやるというような、こんな実行できないような条件でなくて、もっと緩和できる方法はないのですか。
  89. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 天災法の災害経営資金と申しましたが、それの借りかえに当りましては、利率は元の三分五厘または五分でございますが、借りているのは三年または五年で返すものを十年に延ばそうとしているわけであります。また私どもの調べによりますと、生活保護法の適用を受けている開拓農家は十四万、十五万が少し切れますが、昨年度におきましては三千五百戸、それらは漁業とか林業等に従うような実情もありますが、一部の転業は、天候気象等の関係は別としまして、農業をより進めてもらう、高度化してもらうという方向でやりたいと思っております。井出先生の開拓資金の御希望は、開拓者そのものが計画を持って御要求になれば個々に審査をして考えてみたいと思います。
  90. 井手以誠

    井手分科員 新しい営農振興計画というものの条件が非常にきびしいから申し上げているわけでありますが、それはあらためて農林委員会その他の機会に御質問いたしたいと考えております。  大臣にもう一点お伺いしたいのは、近いうちに災害復旧に関する国庫補助法律を改正なさる模様でありますが、その場合に、かねて漁村から要望されておった漁業共同施設、養殖漁場その他のものであって免許が漁業組合にありますために、農地についてはかなりの補助が出ておりますけれども、漁場については全然補助の対象になっていない、その養殖漁場の災害復旧について、漁業共同施設として災害復旧の対象になすようなお考えはないものかどうか、この点をお伺いしたい。
  91. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今はっきり結論は申し上げられませんけれども、御趣旨に沿うてよく研究してみたいと思います。
  92. 井手以誠

    井手分科員 これは水産庁の方ではよくおわかりだと思うのですが、一昨年、昨年あたり有明海などで非常に漁場が荒されまして、養殖場が全滅状態になりましたけれども、ほとんど国庫補助の対象にはなっていないのです。それは漁業協同組合が免許権を持っているためにされない。共同施設として免許を持っており、経営は個人がやっているということのために、共同施設には認められていないのでありまして、これは非常に不公平であります。農地関係に比べては非常に不公平であります。それは、補助率は六割五分とかあるいは六割とは申しませんけれども、少くとも三割程度国庫補助は必要であると思いますので、この点は、近く御提出になる国庫補助法の改正案にぜひ盛ってもらうように御要望を申し上げます。  それから災害が非常にひどい場合には概算金の延納を認め、あるいは利子を免除しておるのであります。ところが三十二年度からはこういう問題が起ったためにかなり改善されましたけれども、なおその郡が二割以上の減収でなければ概算金の延納は認められない、利子の免除は認められない、こういうふうになっておって困っておるわけです。ところが一町村は全減状態になったけれども、ほかの町村は非常に豊作だったというような場合にその恩典を受けられないという実情がかなり多かった。だから少くともそういう制限は撤廃して、天災融資程度にこれを緩和する必要があると私は考えております。専門的なことになりますので、大臣から御答弁できない場合は一つ御考慮願ってその点は改めていただきたいと思います。
  93. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 概算払いの延納につきましては、制度上は延納はできないという形になっているのであります。しかしながら集荷業者あるいは集荷団がこれを立てかえて払うということになっていますので、それに対してはそういう災害があった場合には、私の方でそれに相当するような金を貸し出しといいますか、そちらへ出しまして、そうして実情は、個々の農家は概算金が延納になったという形をとっているわけであります。その点につきまして不均衡といいますか、もっと拡大する考えがないかということでありますが、これもしかるべく検討の上申し上げたいと思います。
  94. 井手以誠

    井手分科員 私の質問に対して大臣何か少し違っているような気がいたしますが、ともかく売買条件にそういうことが書いてあるわけです。町村にあっては三割以上、その郡にあっては二割以上の減収でなくては恩典がないのであります。そこでその郡の制限を撤廃してもらうようにという意味であります。十分御研究の上ぜひそういう無理な制限は撤廃なさるように希望いたしておきます。時間がありませんので、この程度で私の質問は終りといたします。
  95. 八木一郎

    八木主査 午後は二時半より再開することとし暫時休憩いたします。     午後一時五十四分休憩      ――――◇―――――     午後二時四十九分開議
  96. 八木一郎

    八木主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業省所管を議題とし、質疑を続行いたします。川崎秀二君。
  97. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 通産大臣に、私は通産行政というものはしろうとなんですけれども、外貨の面で、あるいは外国との技術提携の問題などで、どうしても伺っておかなければならぬ問題がありまするから、教えていただく意味もあるし、質問答弁の発展の仕方によってはいろいろ聞いてみたい問題がありますのでお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、まず第一に、海外支店の外貨の保有というものについては、ある種のワクがあって、その中で当然使用しておると私は考えておるわけであります。これは今日どういうようなやり方できめておるか、まず第一にその点から伺っておきたい。――それではそれはあとにして、私が特に伺いたいのは、三十二年度の上半期においてあれだけいろいろ外貨の引き締めということが、国内でも論ぜられるとともに海外支店の取引きというものに対しても、十分なる輸出の振興と同時に引き締め政策が行われておったわけです。しかるにニューヨークの第一物産の支店というのは、調べてみると九万三千ドルの赤字を出しておる。営業成績が非常に不振だ。九万三千ドルということは三千三百万円ですから、非常に重大な問題であります。これは日本で最大の海外支店であり、三井にしてもあるいは丸紅にしても飯野にしても、大体ニューヨークはアメリカにおけるところの取引が一番多いところであって、私は海外に出ておりますからそのことについてもよく知っておるわけでございますけれども、その中でどうして第一物産のニューヨーク支店が九万三千ドルの赤字なのか。その他は大体の営業の状態が非常によろしいというようにわれわれは聞いておるわけでありますけれども、こういう場合において通産省は大蔵省と協議しなければきめられないことであろうが、そういう場合どういう措置をとるのですか。また、そういうことを知っておりますか。
  98. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 はなはだ恐縮でありますが、所管の局長がおりませんで、詳細は私聞いておりませんので、あとで調べましてすぐお答えいたします。
  99. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それでは柳田さんに先にやってもらいましょう。
  100. 八木一郎

  101. 柳田秀一

    柳田分科員 政府は今回の予算編成においてもまた施政方針においても、重点施策として科学技術の振興ということを取り上げられた。大へんけっこうなことであります。また文教行政を預かっておる文部省の予算を見ましても、特に科学研究を重点施策として予算を計上しておる。そこでお尋ねしますが、公務員あるいはそれに準ずる者等が発明その他をなしまして特許をとった場合、特許によって得るところの権利はどこに帰属しますか、それをお尋ねします。
  102. 井上尚一

    ○井上政府委員 特許法には、いわゆる勤務発明に関する規定というのは、明文は第十四条でございます。この特許法の規定では、公務員、あるいは会社の社員等でも同様でございますけれども、御質問が公務員の問題についてでございますので、公務員に限定して申してみますと、公務員の属する機関、東京工業試験所とかあるいは蚕糸試験場とか、そういう当該機関の業務の範囲であって、かつその当該公務員の任務の範囲に属する、そういう場合の公務員の研究の結果としましての発明につきましては、当該発明の結果生じました特許権を当該機関、いいかえれば国でございますが、国の特許権としてこれを国が承継することができる。同時に逆に、当該機関の業務の範囲外であって、かつ当該公務員の任務の範囲外である、そういう場合の研究の結果としましての発明につきましては、これは当然国がその特許権を承継することはできないという規定が設けられてございます。
  103. 柳田秀一

    柳田分科員 特許法第十四条によりまして公務員、あるいはまた法人の被用者というようなものがあがっておるわけでありますが、ここで考えなければならぬのは、たとえば国立研究所の主任、大学の教授等が、一つ発明して特許をとる。そうしてせっかく特許をとっても、それは国の帰属になるのだということでは、特許をとるとか、あるいは科学技術に精込んで、一つ新しい人類の福祉のために、科学の振興のために、国家の興隆のために非常によいアイデアを出してそうしてこれを研究発明をなされても、そこからくるところの利益は、全部国に召し上げられるのでは、研究意欲は衰えると思うのです。またそういうようなことでありますと、勢いそういうふうな発明意欲というものが衰えてくると思う。事実そうなると思うのです。そこでせっかく科学技術の振興を声を大にして叫ばれておる政府ならば、これに対しては多少何らかの便法が設けられる必要があるんじゃないか。大学の教授なら教授の例をとってみますと、その職務を利用したがためにそういう特許がとれた。職務あるいは機関、あるいはもろもろの国のそういうものを利用して、そういうような発明特許がとれたということは成り立ちますが、そういえば大学の教授なんか何もできない。そこで大学の方ではどうしているか、そういう公務員とか、そういう人はどうしているかというと、それは他の名義にして、しかるべくおやりにならざるを得ぬということになる。ところが法人、会社の場合はどうかといいますと、会社の場合は特許法にはそうありますけれども、これは十四条の第三項で相当の補償金を出すことができる、こうなっておる。補償金というのは公務員の場合にも少し出ておるようですが、これは予算関係で、各省の予算でそれぞれ公務員が発明し特許をして、その特許料の権利に対する補償金というものは予算にほとんど組んでありません。だから名目的の補償金なんです。特許に価するほどの補償金じゃない。ところが法人の方は、そこは法人ですから適当に優遇ができるわけです。そうなってくると公務員あるいは国立試験所等の職員、それに準ずるようなところでは、研究に従事せられる方がせっかく営々苦心されて発明されても、非常に報いられる道が少いということになってくると思うのです。このところを何らか便法を講じていただかなければ、口に科学技術の振興を叫んでも、そういうところにざるの抜け穴があったのでは、私は科学技術の振興は実際には行われないと思うのです。これは通産大臣に私はお尋ねしますが、現在の特許法はよく知っておりますが、それに対しては科学技術の振興とあわせて、何らかもう少し科学者に報いる道を講ずべきであると思うのですが大臣としての御所見を伺いたい。
  104. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 現行法におきましては、確かにそういう欠陥があると思います。ただ大学教授の場合にはかなり実際――実際といいますより、職務発明というような広い範囲で個人的に取り上げられておるようです。これは大学のいろいろな規程によっております。むしろただいまのお話は国の研究所員の場合がかなり窮屈で、これは報奨制度というものをある程度考えていかなければならぬ問題であると思います。ただいま御承知のように特許法の改正案というものを作りつつあります。それらにおきましてもいろいろ研究して、そういう点明確にできるものなら入れていきたいというふうに考えております。
  105. 柳田秀一

    柳田分科員 ソ連の最近の科学の進歩というのは、これはいろいろよって来たるところも多いと私は思うのですが、やはり科学者を優遇したということが根底だと思うのです。やはり科学者を優遇しなければ、単に科学技術の振興を叫んでもそれは出てこぬと思う。だから科学技術の振興を叫ばれる政府ならば、当然今までこういう特許法の面でもとうに考えてしかるべきです。今大臣も特許法の改正のときに考えようというお考えのようですが、これはやはり内閣としても科学技術の振興を非常に叫ばれておるのですから、この機会に、黙々として研究に従事しておられるところの学者、あるいはまた国立試験所等に勤務せられておるところの科学者諸君に報いる道だけは当然考えるべきだ。またこれくらいのことはしてやって当りまえで、これをしてもなお日本の科学者に対する待遇の道が厚いとはいわれぬ。やはりこういうところから一歩一歩やっていくことが政治の現実の姿だと思う。この点くどいようですが、今ここで御確答を願おうとは思いませんが、大臣においては今国会中にでも最善の努力をしたいどいう言明をいただけますか。
  106. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 結局職務発明の問題はただいまお話の個人の優遇の問題と、権利の所属がどういうふうになるか、乱に流れるとまた困る点もあります。その調和の問題だと思います。しかしお話のように科学技術者の優遇ということは、これは極力考えていかなければなりません。その点は十分いろいろな問題を通じて考えていきたいと思います。
  107. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 先ほどの質問を繰り返します。私は先ほど通産行政についてはしろうとだということを前提にしまして、ただ外貨との関係があるから、こういう問題についてはどう処理しておるかということを重ねて聞きたい。また主張すべきことも後にはあるのであります。というのは外国の商社、日本の外国にある商社ですが、外貨――ドルにしてもポンドにしても所有をしておる、それによって商売をしておるわけです。それの外貨保有高というものは、常に通産行政の立場から、また大蔵行政の立場から精査しておると私は思うのですが、その際に一社の外貨の保有の基準というものはどういうふうにしてきめるのか、またそういう状態についてはどういうことで、たとえば引き締めをするとか、あるいは外国の銀行に預けておるところのものを引き上げて日本へ送らせるようにするとか、そういう操作はどういうことを基準にしてやっておるのかということをまず第一にお伺いをしてみたいわけであります。
  108. 松尾泰一郎

    ○松尾(泰)政府委員 御存じのように現在のところは外貨を全面的に政府に集中をするということになっておるわけでありまして、商社に対しましては原則としては外貨の保有を認められていないのであります。従いまして輸出をした場合には、その外貨は為替銀行を通じまして大蔵省勘定に売り渡す。それから輸入に要する外貨につきましては、それぞれ輸入許可を得まして、為替銀行から買い入れるというのが今の原則になっておるわけであります。しかしながら商社の海外活動を、外国商社と競争してよりよく活動せしめるために、一部の商社につきまして外貨の保有を認めておりまして、現在のところ約二十社ほどの商社、大手商社でございますが、それについて外貨の保有が認められておるわけであります。現在までのところ二十社を通じまして、――あるいは正確な数字、私ちょっと記憶間違いがあるかもしれませんが、約二千五百万ドル程度のものが、二十社程度によって保有が認められておりまして、これはこちらの日本にあります本店が円をもちましてその外貨を買って、現地の支店なり、あるいは現地に独立法人になっている場合もありますが、そこに送る、こういう状況になっております。
  109. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 よくわかりました。私も大体そうだろうとは想像はしておったわけであります。そうすると輸入のために必要なるドルを二十社に対して二千五百万ドル程度今日出しておる、こういうことですね。
  110. 松尾泰一郎

    ○松尾(泰)政府委員 今保有をさせておると申しました外貨は輸入の代金に充てるというのが趣旨ではないわけでありまして、日本から輸出いたします場合に、そこで商品を買い持ちをして送らなくちゃならぬとか、あるいは第三国貿易をやるために必要な資金を持たせるとかいうのが主なるねらいになっておるわけでありまして、日本への輸入につきましては、それぞれ輸入の許可によって外貨の買い入れを認めておりますので、率直に申しますならば、保有外貨はあまり輸入に使わないでほしいというような運用の状況になっております。しかしながら実際問題として相場の変動等もありまして、現地の独立法人であるような場合におきましては特にそうでありますが、その保有外貨でもって輸入物資の買付をしておく、その資金に充てておるという場合がございますが、輸入につきましては原則としてこちらから金が送れますので、あまり輸入金融には使わないでほしい、どっちかというと、日本の輸入金融なり第三国貿易に必要なる資金に充てるように運用してもらう、こういう方針になっておるわけであります。
  111. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そこで問題は、いずれにしても二千五百万ドルという程度のものですから、これを二十社に分けていくと、保有のドルというものもかなり少いように思うのです。従って、一社が非常にドルを使い果してしまう、あるいは赤字を生むというようなことになると、それによって影響されてくるところは非常に大きなものがあると思うのですが、ここであなたに伺いたいのは、日本で今一番貿易の取引の多いのはニューヨークであるということはわれわれも知っております。しかし他の支店が非常に順調に行っておるにかかわらず、第一物産のニューヨーク支店は三十二年度の上半期で約九万三千ドルの赤字を出した。こういう事実を御存じですか。もしも事実を御承知ならば、そういうものに対してはどういう対策をしておるのかということを承わりたい。
  112. 松尾泰一郎

    ○松尾(泰)政府委員 先ほど申しました保有外貨の全体は二十社、二千五百万ドル程度でありますが、これは二十社に一定の輸出入実績基準でもって分けられておるのでありまして、一、二の商社が特に多く保有を認められておるということはないわけであります。ちょっと今ここでどういう比率で持っておるか資料は持ち合せておりませんが、何も一、二社に特に多くということにはなっておりません。それから第一物産が昨年上期において多額の赤を出したということは、率直に申しまして私は承知いたしておりません。が、御存じのように商社は若干の損をいたす場合もありますし、もうける場合ももちろんございますので、一々商社の収支までを実は捕捉はしていないわけであります。しかしながらその保有外貨については、原則としてもし国で必要なときには、政府が買い上げと申しますか、そういうふうな義務を実は負わされているような次第であります。しかしながら原則として言えますことは、海外の日本商社の活動を、もっと活発化するためにはこの保有外貨をもっと多くせしむべきであるという意見が強いわけでありまして、その意味から今の輸出代金の一部の保有制を認めてはどうかという議論は確かにあるわけでありますが、昨年の下期から外貨事情は非常に苦しくなりましたので、この保有外貨の総量をふやすことも上期で一応打ちとめまして、しばらくして外貨事情がよくなってから、その額はふやそうというようなことで今日まで来ているような次第であります。
  113. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 今私の質問せんとするところは、一社が赤字を出した、赤字を出したことは、それはいろいろな取引と、また貿易政策上時々の波はあることと私も考えるのです。全体として非常にいい成績を上げておれば、たとえば第一物産のごときは他の地域では相当な成績を上げておるところでありましようから、その経理内容あるいは取引内容についてまで精査をするということはなかなか官庁としてはできないということもごもっとものように聞えるのです。聞えるけれども、実際問題として九万三千ドルといえば三千三百万円であります。相当これは大きな額です。ニューヨークにどれだけのものをなにしておるかは私は知らないけれども、他の諸社がすべてニューヨークというところは、日本側としては非常にプロフィットの多いところなんです。それにもかかわらずそういう赤字が出てくるということになると、昨年日本の外貨が一番減ったのは八月の末であったか、そのときに日本の保有外貨というのは大体八億ドルである。もう十億ドルの線を割って八億ドルくらいになった。ところがこの八億ドルは各商社の海外にある手持ちあるいは銀行に預けておるようなものも全部入れてのことであるということで、非常に問題になったときもあるわけです。これはやはりその地域における各社の外貨保有とその一社とのプロポーションの関係に私はなると思うので、こういう大きな赤字を出したときには、やはり通産行政の上から見ても相当に警告を発し、そうして外貨保有というものに対して適正な姿に変えなければならぬというふうに私は感ずるのですが、そういう点についてあなたの言われたことは――私は質問前提がややあなたに聞いてみなければわからない点があったので、外貨保有を少くせよというのじゃないです。少くせよというのではなくして、そういう赤字が多く非常に成績不振の場合には通産行政の建前からはどういう措置を講じておるのか、これを聞きたいのです。
  114. 松尾泰一郎

    ○松尾(泰)政府委員 これまでのところは率直に申しまして外貨保有を認めましたのが、まだここ一、二年でございまして、その海外の店の成績を率直に洗うというところまで実は至っておりません。それともう一つ問題は、海外の店と申しましても、支店になっておる場合は、すべてこれは本店勘定に集中をせられてわかるわけでありまするが、独立法人、大体アメリカの場合は独立のアメリカ法人になっておる場合が多いのであります。これはもう明らかに資本関係は日本でありましても、これはアメリカの会社ということになるわけで、ちょっと経理関係もつかみ得ないということになるわけでありますが、われわれといたしましてはこれまでのところまだその在外支店の活動あるいはそれによっての赤字、黒字の関係は率直に申しましてはっきりと把握をいたしておりません。が、しかし今お説のように巨額の赤字を出した会社があるということでありますれば、われわれはもっと深く立ち入って調査もし、その赤字が何でもってできて参ったか、よく調べてみたいと思うのであります。ただ私たちといたしましては、今後この過当競争の防止というような観点からも在外支店についてある程度の規制をいたさなくちゃならぬ、こういうふうに思っておるような次第であります。現在の二十八億なりあるいは来年の三十一億程度の輸出にしましても、これを四十億なり五十億にふやす場合には、日本の海外商社の支店網というものは、なおまだ拡充しなくちゃいかぬというふうに思いまするが、今御指摘のような地域、あるいは東南アジアの一部の地域におきましては、支店が若干多すぎて、競争しているというふうな地域も見受けられますので、そういうふうな地域につきましては、ある程度店を開くということも規制しなくちゃいけませんし、またそういうふうな地域につきましては、非常に成績不良な会社があれば、日本に帰っていただくというふうな措置も講じなくちゃならぬかと今のところ考えておるのでありますが、率直に申しまして、まだ過去の実績についてそれほど深く調査もし、監督も加えていない、今後そういう点についてはできるだけ注意をしていきたい、こう思っております。
  115. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 今私がお聞きした点について、非常に明快に今後のことについて言われたので、私の質問は次の段階に入ってきたわけですが、そういう問題についても、もっとよく調べて返答してもらいたい。ということは、その他の国にも相当にあるわけですね。たとえば今東南アジアの一国ということを言われたのは、タイのバンコックにある支店などで、今出張所を出しておるのが十一社だそうです。それから駐在員を出して、支店じゃなしに事務所を開かせておるのが十社、すべてをひっくるめると二十一社あるということで、しかもこれが軒並みに赤字だという、一つの例外的なものでありましょうが、出ておる。あなたのお説の通り、今後日本は貿易を五十億ドルにし六十億ドルにする、将来の五カ年計画と並行して大きな発展をするというために、海外の支店網というものをもっと広げなくてはならぬということの建前はわかるのですけれども、現在、たとえばニューヨークであるとかバンコックであるとかいうようなところは、過当競争というものが非常に行われておって実際に黒字経営でやっておるところのものは、ニューヨークは別ですが、バンコックではほとんどない。ということになると、貿易政策上非常に重大な問題である。ですから、そういうようなことで過当競争のために外貨がむしろ減っていくというような状態が出ていくと、非常に危険な様相であるわけです。一社で三千三百万円といえば大したことがないように思うけれども、他の地域においても赤字を出しておるところが多くなれば、それだけ政策としても非常に失敗の方向に走るわけです。私は第一に申し上げたいのは、こういう過当競争があるところについては、どうしても新規の支店進出というものを当分認めない。これが一つ。それから第二は、成績の不振のところというものは閉鎖したらいいだろう。これは通産省の方も大へん不備で、今までに十分にそのことについて成績を調べるだけのデータがないということを明確に言われたのですから、それは認めざるを得ないと思うのですが、この点ぜひ取り上げてやっていただきたいということが第二。第三は、どうも海外出張というものを見ていると、こちらから派遣された者が、語学も不十分で、それからその土地にもなれておらぬというようなことで、ずいぶんむだに人件費を使って、現地の人々を通訳なりあるいは手先に使っている。そのために人件費というものが非常に不当にふくれ上っているところもあるようなわけでありますから、こういう点はぜひ日本の貿易の全体的な発展の見地からながめてそういう措置をとり、南アフリカであるとか中近東とかいうような、新しく相当進出のできる方面は、大いに海外支店を拡充していくという、適切な政策に出なければならぬ。それには将来外貨の保有についての基準というものも、大体一定の基準がきめられなくても、幅はきめなくてはいかぬというふうに私は考えるのですが、通産大臣がずっと聞いておられたとすれば通産大臣からも、こういう方策に対してはどうかということに対する明快なる答弁をいただきたいのと、通商局長からも補足的に御説明いただきたい、かように思う次第であります。
  116. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただいまお聞きしました第一点、第二点、第三点、いずれも非常にごもっともであります。私どももそういうような意味で、ことにだれしも言われる通りに、現在どうもある場所には支店が多過ぎる、そして将来開発すべきところにはだれも出たがらぬ。これが日本の貿易における全くの現状でありまして、これをどうして打開していくかということが根本問題だと思います。われわれとしましてもこの間、海外支店について多過ぎると思われるところは許可しない、また場合によりましては、本社の人に懇談してもらって、十分そういうような点を是正し、規制していきたいというようなことでやっておるのであります。今後においてももっと強力に指導していきたいというふうに考えているわけであります。
  117. 松尾泰一郎

    ○松尾(泰)政府委員 大臣答弁で尽きておるのでありますが、三十二年の下期からは、何とか一つ今先生の御指摘になったような点を加味しまして、支店の新しい開設あるいは駐在員の事務所を作るところを選択して参りたいというふうなことで、商社の海外支店の整備要綱というふうなものを作りまして、業界にもいろいろお諮りしたわけであります。率直に申しまして、業界からはかなり反発があったのでありますが、いろいろ御理解を願いまして、二月の一日からその要綱を実施して参っております。その趣旨とするところは、今大臣からもお答えがあり、先生からも御指摘のあったように、新しく伸ばす地域と、それからそういう過当競争の行われている地域あるいは商品につきましては、若干規制して参るというふうな考え方で進んでいるような次第であります。
  118. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それでは論題を変えまして、一つ技術提携の問題で伺ってみたいと思うのでありますが、現在電子計算機、IBMの技術提携というものが日本に対して進められている。伺うところによると、日本のIBMとアメリカのIBMのタイアップでそれが行われているようですが、これにはアメリカの方では、かつて日本におったマッカーサー将軍が社長であったレミントンという会社、これとスペリーランドという会社が最近合同して、巨大な資本を擁するに至って、そしてユニバックという新しい電子計算機の機械を輸出しようとしておって、これはちょうど防衛のF何機ですか、あれの理屈と同じように、アメリカの争いが日本に持ち込まれるような状態に立ち至っているということを自分は聞いておるわけですが、こういう技術提携の問題についてはいろいろ議論がありましょう。私はもう一つほかの問題も聞いておきたいものですから、これは一、二問にしたいと思うので、自分の意見を申し上げれば、将来厚生省が国民年金制度なんというものを打ち出して年金の計算をし出すと、よほど速い計算機がなければならないから、その意味ではアメリカのものを――私はニューヨークでも、あるいはバーリントンでも見たのですけれども、電子計算機というのは、アメリカのものはいいことはいいんです。しかし日本にもそういう会社も最近はできておるようにも聞いております。日本のを見ないでアメリカのを先に見て、議員としてはまことに不勉強きわまるわけでありますけれども、伺っておきたいことは、こういうことで巨額な外貨を使うということになると、相当その面からも問題になるし、また通産大臣としては、せっかく国産品奨励ということを打ち出されておって、どちらの社をとるにしても非常に大きな費用を使うことになりはしないかということを憂えておるのですが、これらの諸問題をひっくるめて御答弁を願いたいと思うのであります。
  119. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 電子計算機の技術提携の話は、お話のありましたIBMの方から現在正式にあります。レミントンランドの方は、そういう申請がくるようだという情報の段階で、具体的に内容等は承知しておりません。簡単に技術の現段階を申しますると、今のお話のありましたように、電子計算機の技術はコンピューターの中心をなしまする電子の技術、それに数字を打ち込みまするカードあるいはテープ等の技術、こう大きく分けられるわけでございます。それで今アメリカにおきまするユニバックのお話がありましたが、IBMの方では六〇四、最近では七〇二というような非常に高性能の、しかも大型な電子計算機がかなり発達してきて、すでにある程度アメリカ内部で用いられております。日本の段階を申しますると、電子計算機と申しまする範疇に入りまするもので、小型のものがやっとどうにか組み立てられて、目下試験中だというのが現段階かと思います。いろいろな方式あるいはメーカーがございまして、また新聞等をいろいろにぎわしておりまするが、現実に支障なく運転しておるのは現在まだないのであります。私が見ましたのは、これは電子計算機でありませんで、われわれがいいますと、リレー式、つまり真空管は一部使っておりますが、大体は継電器を使っております関係で、いわんやアメリカみたいなトランジスターを使ったものはありません。これはわれわれは電子計算機と呼んでおりませんで電気計算機と呼んでおります。これは現在営業しておりまして、非常に繁盛しておりますが、その程度は日本でも目下やっております。大型のものといえども、理論としましてはそうむずかしい、できないものではないのでありまするが、ただこの一部に特許等を包含しておるかと思われます。それからもう一つは、コンピューター以外の数字を打ち込みまするカード、あるいはテープの段階において相当特許あるいはノー・ハウがあるようであります。ことにお話がありましたIBMの方はこれはパンチ・システムで――カードをマニエルで穴をあけ、それを機械にかけて読みとって分類して計算するわけでございます。そういうところに大きくパテント等があるわけでございますパンチ・カード・システムを採用し、あるいはその機械を作ることになりますと、これはどうも技術提携が要るようであります。そこでIBMの問題になりますが、これはお話がありましたようにジャパン・IBMとアメリカ本国のインターナショル・IBMとの提携になりますが、提携して日本でそういうふうな電子計算機の一式を作って普及させようというふうなアイデアのようでりあます。御承知のようにIBMの方式は、日本では今までの計算機はレント――使用料でありまして売り切りではありません。今後国内で生産するようになりますれば売り切りのものになると思います。フランスあるいはドイツもそうでありますが、IBMが各地にそういうふうな自分の子会社を持っておりまして、ヨーロッパ方面ではすでにそういう技術提携を自分の子会社と行なって、生産して、自分の国内の需要にも応じ、なおかつ輸出をしておる。あるいは部品を相互に融通し合って組み立てて生産をしておるというふうな状況のようであります。日本の技術提携も大体そういうフランスあるいはドイツの例と同じようなものに持ってきております。われわれとしましては、日本にありますIBMの子会社と技術提携というのも少し話のよくわからぬところもございます。それからまたパンチ・カード・システムに技術提携が要るとしましても、何もエクスクルーシブに、そのジャパン・IBMに技術提携しなくても、ほかと技術提携をしてもいいのじゃないかという気もいたします。でき得ればわれわれとしても、日本の技術なり日本本来の資本の入った企業の技術向上という点を一つ考えたらどうかと思っておりますので、この点については目下いろいろな点を考えております。あるいはジャパン・IBMと日本のエレクトロニクスのメーカーと合弁会社を作ったらどうかという話もありまして、いろいろな問題が考えられるわけであります。先日向うから参りました極東部長に私も一時間半ばかり話をしたのでありますが、どうも今の申請のままではいろいろな点も考えられるから、もう少し日本の実情に合うように調整する余地はないのかということを申しました。先方も帰って少し考えてみようということで別れたのであります。日本の方はちょっと方式も違うようであります。それでは具体的にどうするのか、先方の内容がわかりませんので、私どもとしてもあまり検討を進めておりませんが要は高性能の大型の電子計算機が日本としては必要であります。これはひとり厚生年金ばかりではありません、いろいろの方面に要りますので、何とかして日本でものにしたいと思いますが、そのものにする仕方の問題だと思います。
  120. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 端的に聞きますからお答え願いたいのですが、いずれにしても、大体本年の輸入計画に入っているわけですね。
  121. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 機械そのものは輸入するのが若干あります。たとえば気象庁の台風の予報を計算する機械、あるいは中型の電子計算機でございます。これはたしかイギリスかと思いますが、あと一、二あるようであります。残念ながら今すぐできませんので、機械を輸入しなければなりません。
  122. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 私が特に申し上げたいのは今あなたはIBMの方は合弁組織でやる。日本の共同会社でも作ってやるというような方針一つの対象になっておる。片方のスペリーランドという方ですが、これは情報程度だ、こういう御答弁でしたが、これはやはり両方やるというようなことになると非常に過剰生産になりはしないかというふうにわれわれは一応想像するのです。そういう点はどうですか。
  123. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 スペリーランドの方の技術がちょっとIBMとは違っているというふうにわれわれ承知しております。それで同じ精度の同じ目的のものであれば、これはお話のように両方入れる必要はないかもしれません。ただわれわれいろいろ技術提携の仕事をやっておりますと、非常にこまかい特許とかノー・ハウの関係が入り組んでおりますので、片一方だけで、あるいは仕事ができないものがあるのではないかと思いますが、その点はもう少し具体的に検討してみないとわかりません。いずれにしても電子計算機というものは大型のもの中型のもの、そうたくさんございませんので、もう少しそういう点の精度、需要等を考え合せませんとなかなかうまくいかないのではないかと思います。
  124. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 もう一問でやめます。この問題については、戦闘機の機種の決定なんかでアメリカの出先が非常に入り乱れて日本で売りつけをやっておる。その裏にはかなりアメリカの政争が日本へ引っ越しをしてきているような感じを受けるのもありますから、その点については通産省は厳にこれらを警戒しつつ進まれるようにしていただきたいのと、こういうふうにおくれておるものならばそれは実際に仕方のないものにしても、国産品奨励という建前からも、どうしてもそういう産業も育てていただくようにお願いをしたいというのがわれわれの質問の趣旨でございます。  それからもう一つ、一昨日も大蔵大臣に伺っておいたのですが、これはやや大蔵大臣としては筋違いなので、通産大臣が常識としてお答え願いたいのは、日本の工業水準の発展ということを地域的に見ると、これはどうしても東京、横浜、京阪神、北九州という現存の産業地帯というものが中心にって、わが国も次第に発展をしていくと思うのですけれども、産業の非常な発展のためには新しい地域というものを考えなければならぬのじゃないか。幸いに最近名古屋地方の発展というものは社会的にも文化的にも大きく取り上げられているのですが、その根である経済的な発展も何といっても目ざましいものがあると私は思うのです。数字で調べてみると実にこの二、三年における名古屋の産業発展というものはすばらしいと思う。そして中部経済圏、名古屋の一番欠陥であったものは良港を持たないというところにあったと思うのですが、これが最近石油センターの決定とともに四日市港というパートナーを得て、ここに中部経済圏の確立というものが一つの構想として、日本産業の将来の発展の大きな原動力としてクローズ・アップされてきたと思うのですが、その際名古屋地方の産業を考えてみると、一番欠陥なのは鉄鋼産業というものがない。他の関連産業はすべてあるのに鉄鋼産業だけが歯が抜けてないということなんですが、こういうことに対して通産省としては、将来の日本経済の発展の上から考えて、中京産業圏というものをどういうふうに育てていくつもりなのか、また製鉄業の誘致というものについてどうお考えであるのか承わって、私の質問は終ります。
  125. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 前段の電子計算機の問題につきましては、ただいまお話通りにおくれてはならず、また先ほどのような外国の商社の競争というようなことについては、これはもう厳に戒めて、日本の立場において必要であるかどうかということも果敢にきめていかなければならないと思います。と申しましても、われわれはあくまで国内産業の育成と国産化をはかっていくということについては十分注意していくつもりであります。  それからただいまお話の日本の産業立地につきましては、われわれもいろいろ努力いたしております。ことに本年度もかなり基礎調査をするための調査費を、千五百万円ですかとりまして、今後の産業立地のあり方ということも考えておりますし、また御承知のように工業用水道、これは今後の一番中心の問題になると思います。名古屋なり、三重県を入れました愛知地区といいますか、あるいは中部経済圏といいますか、それらにつきましては本年度から本腰を入れた工業用水の仕事を始めます。そういうようなことでおそらく将来大阪に匹敵する――のではない、もうそろそろ大阪を越すような情勢になっております。しかも御承知のようにあそこは重工業が中心でやってきていますから、そういう意味合いにおきましてはただいまお話の製鉄所というような問題も早晩起ってくるというように考えております。それらにつきましては育成していくつもりでありますが、具体的な問題につきましては重工業局長から御説明申し上げます。
  126. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 中京地方にあれだけの機械工業がありますので、実は今まで製鉄業がなかったのが不思議なくらいだと思います。ちょうど場所といい、消費関係からいいましても格好のところだと思っております。ただ御承知のように製鉄業となりますと、やはり溶鉱炉を持ちました一貫産業であります。大体百万坪くらいの土地と、それから最近のように船が大きくなると、少くとも水深十四メートルくらいの航路、泊地がほしい、それから水を相当食います、おそらく名古屋地区の一日に使われる水よりもよけい使われるのではないかと思います。そういうふうな条件がそろいますれば非常にけっこうだと思っております。ただ現在進めております製鉄業の拡張計画資金関係でどのようになっておりますか、これが一段落しませんと、なかなか外へ出るわけに参らぬのであります。いずれにしましても今から将来の立地の準備をしておいてけっこうであろうかと思います。有力な候補地の一つであろうかと思っております。
  127. 八木一郎

    八木主査 川俣清音君。
  128. 川俣清音

    川俣分科員 一昨日質問した中で砂糖問題と電力問題について答弁を保留しておられたので、この際これを承わりたいと思います。
  129. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 たしか一昨日でしたかの御質問は要するに所管の関係だったと思います。所管は外貨の関係においては総ワクを通産省でやっております。それから個々の割当の内示書というのは農林省でやっております。そしてその内示書が出まして、その内示書によって事務的な外貨の具体的な授受といいますか、事務的な仕事は通産省でやっております。こういう関係になっております。
  130. 川俣清音

    川俣分科員 そういうことであれば何もおととい答弁できなかったわけじゃない。外貨の割当のワクの中の農産物並びに食糧というワクよりも砂糖は粗原料資材として輸入されておるのだが、これを食糧としてみなしてよろしいのかどうか、取り扱いをそうみなしてよろしいのかどうかということについて保留して研究して、いずれ答弁するということであったのです。なお今答弁が困難であればよろしゅうございます。  続いて電力の問題についてごく簡単にお尋ねをいたします。電源の貯水ダムにかかりまする建設費は、計画通りあるいは計画にそごを来たしましてダム効率が低下した場合の負担は消費者に負担させるのか、あるいは政府負担をするのか、これについてどのような見解を持っておるか。
  131. 小出榮一

    ○小出政府委員 電源開発に関連いたしまするダム工事を始めまする際には、建設に要しまする一定の費用というものを予定いたしましてかかるわけでございますが、途中風水害その他の災害等がございまして、いろいろ費用変更を来たすというようなことがございます。それから多目的ダム等の場合におきましては、御承知のように電源開発関係、電気事業関係だけでなく、公共事業関係でありますとか、あるいは農業の灌漑用水の関係とか、それぞれ共同費用の振り分けをいたしております。これは経済企画庁で調製いたしました一定の原則に基きまして費用の配分をいたして、それに基いて、やっておるわけでございます。
  132. 川俣清音

    川俣分科員 時間がないのであまり端的にお聞きしたので質問の要領を得られなかったと思います。発電用のためにのみ作られたダムが土砂堆積をいたしまして、ダム効率が下った結果コスト高になった場合に、これを消費者に負担させるのか、あるいはダム効率の下った分を政府負担するのか、その他の対策を考えておられるのか、この三つのうちどれをとられるつもりか。
  133. 小出榮一

    ○小出政府委員 ただいまの御質問の点は、ダム工事をいたしましたあと長年にわたる土砂の堆積等によりまして、いろいろその間にコストの変更を来たしたというような場合におきまする負担をどの面に、たとえば消費者と申しますか、需用者に負担させるか、あるいは政府がこれを負担するか、あるいは電気事業者が負担するかという問題だと思います。これは結局当該施設に関する電気事業者の内部における償却の問題に関係して参りまするので、その償却との見合いにおきましてそのつど具体的に決定する、こういうふうなやり方をいたしております。
  134. 川俣清音

    川俣分科員 どうも建設費をコスト計算の中に入れておられる。たとえば中部電力の濁川の発電の場合は一昨年か撤去いたしました。これをなお建設費の中に入れておられるはずであります。そうするとこれはコストになる。御承知通り濁川ダムなどは三十年かの効率をもって作られたのが、八年か九年でとうとう使用不可能になってしまっておるわけです。これらのものが今なお建設費の中に入っておる。ほとんど使用にたえないものが建設費に入っておる。これがコストに入っておる。そういうコストのとり方を今なおされるのかどうか、こう聞いておるのです。これは災害であったのか、あるいは計画の粗漏に基くのか、誤算に基くのかという問題については検討が足りないのではないか。時間がないからあまり深くは聞きませんが、将来非常に大きな問題だろうと思うのです。すでにこの前岩武局長時代に佐久間ダムの堆積が予定以上高まっておるというこことを指摘したのでありますが、そのことを知らない、こう言う。従いまして佐久間ダムにおきましても予定の効果を上げることができない。あるいは上げようとしまするならば土砂ばけをはきまして、下流に水害を起すような結果になるのではないか。そこで今後一体、治山治水の責任は政府が負っておりますが、こうした場合に会社が負うべきものなのか、政府負担をすべきものなのか、またはこれをコストとして消費者にかけることが従来やられておりますけれども、それでいいのか。相当検討を要するのじゃないかということだけを指摘しておきます。時間がないからこれ以上追及いたしません。毎年これは問題にするのですけれども、あなた方は一向研究しておられないのですよ。この次の国会までにということをちゃんと局長は約束されておるのですよ。御承知通り電力料金はコスト計算になっております。これをコストだと見るか見ないかは重大なことなのです。  次にお尋ねいたしますが、せっかく資料をいただいたのでありますが、前の資料は誤まりだったので新しい資料をいただいた。これもポイントの打ち方がずいぶん違っておって非常に見にくい点がまだあります。しかしそれは今了といたします。そこでこれはプリントが間違いないということにしてお尋ねいたしますが、百四ページの品目の十二、十三の硫化鉱及び硫黄ですが、三十一年あるいは三十二年は硫化鉱、硫黄ともに三十三年よりも多いのでございます。ところがこれから出て参りまする硫酸になりますと三十一年、三十二年よりも三十三年は多い。こういうのが出てきておりますが、これはどこから持ってくるのですか。原料の方が減っておって製品が多くなるというのはどこから出てくるのですか。通産省はこういう手品ができるのですか。これはミス・プリントだというならば別です。三十一年は硫黄は二十五万五千九百トンです。それが三十三年では二十四万三千八百トンになっておって、それから出てくる硫酸の方は三十一年が三百八十五万九千トンになっておる。それから三十三年が四百十三万トンになっておる。原料が減ってきておって硫酸の方がふえるというのは、どこから持ってくるか、こういうのです。――それではこの程度にしておきます。四百十三万トンの方はほんとうだと思うのです。
  135. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 これはちょっと私の方の軽工業局関係と鉱山局の関係にまたがっておりまして、あるいは十分な連絡ができていなかったかとも思われますが、しかし官房で一応調べたところによりますと、廃ガスの中のサルファを硫酸にするということが合理化を促進する上でだんだん進められておるわけです。その廃ガスによる硫酸の生産量は来年度は約五万トンぐらい増加いたします。その分が別の供給面としてあるわけです。こういうふうに一応考えられるのでございますが、なお一応調査をしておきます。
  136. 川俣清音

    川俣分科員 五、六万じゃない、三百八十五万トンが四百十三万トンになっておるのですから、五万トンぐらいの違いじゃないのです。いずれもやはり計画がずさんだということ、局が違うから違った結果が出たということは、これはずさんだということを明らかに示しておるのでありますが、それ以上追及する気はありません。別な問題に移ります。  肥料の問題についてお尋ねしたいのですが、日本の肥料メーカーは戦争のときに相当いためつけられたのでありますが、割合にほかの化学工業よりもすみやかに復興ができましたのは、購買力を持っておる農村の援助によって非常に復興が促進したものと思うのであります。今日におきまして相当の設備資金を持ち投資を行っておりますのも、膨大な消費力を背景にいたしまして今日のような隆盛を来たしておるものと思います。これは二十九年、千五百六十四億から、二千四百四十六億と資本金も約六四%ぐらい成長しておるのでありますが、この活発な設備投資の割合に最近収益率が非常に低下しておるようであります。収益率が高ければ肥料を安く農村に供給することが可能だこういうことになりますが、ところが最近のように収益率が悪いという場合に、これをどう解決していかなければならぬかという問題が起ってくると思うのです。特に輸出が国内需要の一割か二割であった場合には、海外へダンピングいたします場合の犠牲も国内である程度これをカバーしてやることも決して困難ではないと思うのであります。将来百五十万トンあるいは二百万トンというような輸出を考えますと、そのダンピングを国内でカバーするということは非常に困難であることはもう明らかであります。そういたしますると一体これをどう解決していくのかという問題だと思うのです。一方においてこれを輸出会社が赤字たな上げをするというのでありますけれども、こういうふうに三十億を今日において突破しておるような赤字をもってしては、この赤字がまた相当収益率の上に悪影響を与えておるのだと思うのです。一体これはどう解決していくつもりですか。どういう方法で指導されていくのですか。ことに先般韓国で十七万トンの買付を行った場合には四十七ドルまで国際価格が下っております。一体国際市場と競争しなければならないような優秀な肥料メーカーがあるときに、一方農産物などについてはすっ裸のままで国際競争に応じようというようなことを強要しておりながら、一方において肥料メーカーにつきましてはそれほどの決意を持っておられないと見受けられますので、何か対策が必要ではないかと思うのですが、大臣一つお答え願いたい。
  137. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 肥料の問題は最近転機になったと思います。と申しますのは、ただいまお話のように、輸出競争につきましても今までは赤字を出しておりません。最初出したが最近までは黒字だったわけです。ところが最近におきまして韓国の輸出に非常に赤字を出さざるを得ないということになって参りましたし、その後の中共につきましてもこれは赤字であります。ただいまお話のように、このまま放置しておけば二十億あるいはそれ以上の赤字が出るかもわからぬというような事態に遭遇したわけであります。と申しましても、実はそういう量産をやる方が国内価格も安くなるので、それを操短なりそういうようなことをやることになると、国内価格を上げなければならぬ羽目に陥るわけであります。今までは五十ドルを目標にしてきたのでありますが、今としては五十ドルではだめで、四十五ドルの目標で合理化をしていかなければならぬ。これが根本であります。それに対応しまして需要期が春に集中するので勢い年間の調整が困難である。これについてはある程度の運転資金も考えてやらなければならぬ。あるいは低利の金を考えてやるというようなことをしていかなければならぬのでありますが、いずれにいたしましても絶対に将来赤字を出すということでもありません。これは商売の関係で、実はことしなんか少し売り急いだために商売としては非常に下手な商売をやった。これは今後もう少し上手な商売をしなければなりません。もう少し熱心に外国の事情を知って対策を講ずるというようなこともしていかなければなりませんが、要するに肥料会社としてただいま申し上げましたように四十五ドルなりの合理化をも速急にやっていくということ以外には、根本的な対策はないと思います。またもうそういう転機にきているのだというふうに考えております。
  138. 川俣清音

    川俣分科員 大臣は最近転機だというお話ですが、私どもは四、五年前から、量産によってはコストを下げることはむずかしい、今にして質的転換をはからなければ、今日のような老朽施設をもって消費者が多数であるということだけをねらって量産をすれば、国際競争の上に必ず危機がくるということを指摘しておった。従いましてコストの一番安いところから順次これをとって、ある程度切り捨てて価格を決定するという行き方をしないと、安きにあぐらをかいておれば量産の結果コストが下らないという結果がくるのではないかと前もって指摘しておった。従って今転換期に来たのではない。すでに来ておったのに手を加えなかったところに今日の失態があるということを指摘しなければならないと思う。大臣は最近だからこれは別ですが、これに関係されております通産省当局としては、当然今までに手を打たなければならなかったのではないか。ここの点どうですか。
  139. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 肥料の合理化につきましては、昭和二十八年の秋に合理化五カ年計画を作ったわけであります。そのときには六十五ドル程度の生産費を示しておったのでありますが、これを目標達成年度には五十ドルまで下げるということで諸般の施策をきめたわけでございます。当時合理化の一番中心的なものとしては、量産ということもありますが、やはり質的な合理化ということも考えておったのでありまして、アンモニア原を固体原料から流体原料に切りかえていくとか、あるいは高圧一貫方式をやるとか、あるいは硫酸の製造装置を改善するとか、そのほか製品の多角化をやるとか、いろいろなことを項目として掲げて遂行して参ったのでありますが、その結果を今日振り返ってみますと、大体コストの低下の状態はマル公によってわかるのでありますが、最近のマル公を昭和二十八年ごろの生産費と比べてみますと、おおむね一トン当り八ドル程度のコストの低下を来たしております。これは量産による部分と質的合理化による部分と両面から形成されているわけでございますが、質的合理化による分も相当大きい部分を占めておるのであります。ただ、結果におきまして、十五ドル引き下げの見通しのものが今日八ドル程度まで進んでいて、目標達成にほど遠い段階にあるということはまことに遺憾なことでございますが、二十八年度と比べますと、その後労賃の値上り、あるいは原材料の値上り等がありまして――これはおよそ六ドルくらいに相当いたします。従いまして、値上りがもしなかったといたしますると、十四ドルートン当りコストの切り下げができたわけでございまして、一応の目標は達成に近い状態にあったのではないかというふうに考えられるのでございます。しかしながら、現実はとにかく八ドル程度しかコストの切り下げが行われておりません。しかも将来は相当激しい国際競争を予想しなければなりません。従って、ここに第一次五カ年計画の最終年度の近い現在としては、すみやかに第二次の合理化計画を立て、コストの切り下げの目標ももっと下げて、四十ドル台にして、そしてさらに合理化を進めていかなければならないというふうに考えるのであります。質的合理化の点で一番顕著な例は、アンモニア原の流体原料への切りかえの問題であります。昭和二十八年には流体原料を利用して、アンモニアを作る設備の能力は全体の五%を占めるにすぎませんでした。これが現在各社の持っております計画によりますと、昭和三十五年度には大体五〇%以上に達します。つまり、昭和二十八年には非常に微々たる存在であった一番合理的な製造設備が、近い将来全国の能力の半分以上を占めるような状態にまでなっておるのでございます。この流体原料への切りかえの一番代表的なものは、たとえば天然ガスとか重油等に燃料を転換することであります。そのようにして、最近に至るまで質的合理化につきまして、民間もあるいはわれわれの方も努力をしておったのでございますが、遺憾ながらまだ十分な目的を達成することができなかった。そこで、さらに今後続けて合理化計画を練り直して進んでいこうというので、ただいま業界でも委員会を組織してその計画を作成中でございます。われわれとしても案を検討中でございますが、両者ができましたならば、それを調整いたしまして強力に推進して参りたいというふうに考えております。
  140. 川俣清音

    川俣分科員 今弁解の中に、労賃、物価の値上り率を見るともっと合理化される、こういう話がありましたけれども、当時の速記録をごらんなさい。二十八年には、大体五年の間に一八%くらいの物価の値上りを見て六十五ドルから五十ドルに下げる、たしかこういう説明であった。一八%程度の物価の値上りを見ておったのでございますが、物価の点を見ると八ドル以上合理化されているという説明は当時の説明からすると成り立たないのであります。当時通産省は合理化の例をたくさん並べておったのであります。しかし、量産の点は見るべきものがありますけれども、質的に所期の目的が達成されているとは思われないのであります。もしもこのように遅々として進まない場合は、農業政策の上から安い肥料を入れなければならないという事態が起ると思う。なぜかというと、国外に安い肥料を供給して、その農産物と国内の農産物と競争すると競争できない。わずか試作品としての十トンとか五トンの輸出でありますならばこれは見逃してもよろしいのでありますが、百五十万トン、二百万トンというものが輸出されて、それが農産物となってはね返ってくる場合、その農産物と競争しなければならないということはたえられないのでありますから、日本の肥料メーカーにいかに気の毒であろうとも、もしも合理化できない場合には安価な肥料を入れて対抗していかなければならない事態が起ることを警告して、十分対策を立てられることを望んでおきます。時間がありませんのでこれ以上追及することはやめておきます。  次に、合成ゴムについてお伺いいたします。合成ゴム製造事業特別措置法が今度改正されるような趣きもあるようでございます。いずれにいたしましても、附則で一年以内に政府出資に切りかえるということになっておりますので、切りかえますとこれは特殊会社となるわけでございます。特殊会社となりますならば、やはり監督規定は当然強化されていかなければならないと思うのです。政府の出資会社に対しましては従来もとかく監督の不十分であることが指摘されておるときでございますし、しかも国民の税金を支出するからにはその行方についても国民として厳重な監督をしなければならぬ。当面の監督官庁はもちろんその責任を負わねばならぬと思うのでありますが、これらの点についてどのような強化策をお考えになっておりますか、大臣からお伺いいたします。
  141. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 実はこれはまだ事務的に検討しておる段階でございますから、私からお答え申し上げたいと思います。  現行法の審議をお願いいたしておったときからそういう御主張があったことはよく承知いたしております。財政資金の入った企業は国家的な監督をいたさなければならないということは当然でございます。ただ、しかし、その会社の性格に応じていろいろ段階があろうかと存ずるのでありますが、この点につきましては、現在大蔵省ともいろいろ話し合いをいたしておるところでございまして、まだここで申し上げるほどの意見のまとまりを見ていないのでございます。いずれ近いうちに話をきめまして御批判をいただきたいと考えております。
  142. 川俣清音

    川俣分科員 大臣、今の答弁でよろしいのですか。これは財政投融資で、政府出資でありますから、当然提出する前に十分監督のできるような、あるいは国民の監視の目が届くような法規を立てていただきたい。無責任に出資をしてくれということの承認はなかなか与えがたい。従って予算成立以前にこの点を明確にさせなければならないと思うのですが、大臣、いかがですか。
  143. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただいま申し上げておりますように、出資の程度に応じて監督の強弱をきめていかなければならぬ、これはもちろん予算関係ある法案でありますから、速急にきめまして御審査願います。
  144. 川俣清音

    川俣分科員 大体いつごろの見通しですか。
  145. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 率直に申し上げまして、そんなに日にちを要する問題ではありませんので、そう長くかるわけではありません。事柄は非常に簡単だと思いますので、結局話し合いを早くつける、こういうことだと思います。
  146. 川俣清音

    川俣分科員 私どもそうむずかしい問題じゃないと思うのです。そんなに協議しなければならぬほどの問題でもない。考えられる点は二点か三点であります。相違する点だってそう隔たりのあることはない。それをまだ協議中だと言うから問題なんです。大体の方向はこうだということをお示し下さるならそれでよろしいのですけれども、まだその協議内容も話ができぬということであれば、相当大きな食い違いじゃないかと思うのです。近く解決されるのなら、大体のことはここでお示しできるのじゃないかと思うのです。
  147. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 やはり両省それぞれ立場がございまして、意見が初めから一致するというわけではございません。そういうわけで、ここで政府考え方としてお示しするのはまだ時期尚早であろうと存じます。もうしばらくお待ち願いたいと存じます。
  148. 川俣清音

    川俣分科員 事務当局としては時期尚早だと言うが、私どもは、議決するにはなお時期尚早であるということが言えると思う。本来ならば、予算を提出する前にこれらのものがちゃんと準備されていなければならないはずだと思うのです。そういうようなことで、その裏づけなしに予算を提出されるということは本来はあり得ないことなんです。しかしながら、従来もあったからということで幾らか見のがしをしておるわけです。この見のがしに事寄せてまだ協議中ということになると、われわれも審議できないということになるのじゃないか。これは大臣、重要なことですから、二、三日うちで決定できるなら、その大綱をおきめになって下さい。それができないというのなら、できないように私どもも考えていかなければならぬ。
  149. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 そう長くかかりませんから、その点は……。何日という日にちを言うのは……。
  150. 川俣清音

    川俣分科員 大体の方向は言えるでしょう。
  151. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 大体のところはそう食い違っておると思いません。私もあまり詳細は聞いておりませんので、今申し上げるわけにいきませんけれども、そんなに御迷惑をかけません。
  152. 川俣清音

    川俣分科員 それでは時間がないからそう追及いたしませんけれども、これは去年から問題になっているので、大体問題点はどこかということはおおよそみな理解されておるはずなんです。ですから、なお解決しないところはこの点だという説明くらいはあってしかるべきじゃないか、予算審議を要求されておるからには、概要くらいは、そんなに詳しいことは求めないのですから、どこに大きな問題点があるのだというくらいは理解しておってほしいと思うのです。どちらをとるかという最後のところは大臣の裁断によるでありましょうけれども、今問題がどこにきているかということだけは、ほんとうはここで説明すべきだと思うのです。時間がないから追及はこの程度でゆるめておきましょう。私の質問はこれで終りますが、警告だけしておきます。一般質問が終るまでにそれらの点が具体化されないと、質疑が伸びるということだけは十分御承知おき願いたいという警告だけいたしまして、私の質問を終っておきます。
  153. 八木一郎

  154. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 本年度予算一般会計で一兆三千百二十億、特別会計で二兆九千九百四十億、政府機関で一兆一百億、ざっと五兆四千億くらいになります。もっとも特別会計はいろいろな関係で今から質問する点が的確でないかと思いますけれども、これらの五兆円に上るところの予算のうちで一体物品費というのはどのくらいあるか。これは中小企業庁でかねてから問題になっておりますから、お調べ願えたいと思いますので、お答え願いたいと思います。
  155. 川上為治

    ○川上政府委員 私、的確な数字を聞いてきておりませんので、はっきり申し上げられないのであります。
  156. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 必ずしも的確には出ないかと思うのですけれども、しかしざっとこの予算書で見ましても、物件費、施設費というものはかなり需品を含んでおる、大部分が需品かもしれません。そういう点で一体従来どれくらいの需品費というものが一般会計、特別会計並びに政府機関の予算にあるのか。これは私は日本の物資需給計画から見てもきわめて大きい問題であるし、先般来問題になっております官公需品の確保ということ、ことに中小企業の官公需品の確保という点から見ても、日本の一年間に国家並びに関係機関が使ううちで需品費がどれくらい要るかということはやはり必要ではないかと思うのです。これは一昨年も私は質問をしておるのです。また昨年は社会党からもそういう問題が提起されておる。これは何も社会党からだけではなくて、中小企業振興審議会においてもやはりその官公需品の確保ということが言われておるのですから、当然政府としては、予算も出たのですから、この予算では一体どの程度需品が動くのかということを、大体大まかなところでもつかんでおく必要があるのではないか、こう思うのです。
  157. 川上為治

    ○川上政府委員 官公需品の総額につきましては、私どもとしましては大体一兆七千億くらいではないかというふうに考えております。これは三十三年度においてはこれよりもっと大きいのじゃないかと思っているのです。三十年度におきましては一兆六千三百六十億ということになっておりますし、三十一年度におきましてはやはり一兆七千百億ということになっておりますから、三十三年度におきましても大体これ相当、あるいはこれよりももっと大きい数字じゃないかというふうに考えております。
  158. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 そういたしますと、これは地方公共団体は入っているわけですか。
  159. 川上為治

    ○川上政府委員 これは中央も地方公共団体も全部入っております。
  160. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 この一般会計、特別会計、政府機関の予算の中で物件費、施設費、これは必ずしも全部が物品費ではありませんで、施設費の中には若干労務費も入っておるとは思いますけれども、大体一兆一千七百億程度ですから、地方公共団体を入れると大体今長官お話しになったくらいの程度になると思います。そこで、一兆七千億の物資が政府並びに政府機関、さらに公共団体の購入によって動くわけでありますから、私は、これは非常に大きい問題であると思います。そこで、政府は日本の中小企業対策を今いろいろおやりになっているけれども、結局、中小企業の分野の拡大という面は残念ながらほとんど見るべきものがありません。ただ、縮小されたその中小企業の進出の市場の中でいかにして公正競争をやるか、過当競争の防止をやるかということに尽きているが、これはきわめて消極的な政策だと思うのです。そこで、中小企業に関する論文は日本ほど多く出ている国はないそうです。これは一橋大学の山中篤太郎先生の話ですが、それは結局特効薬がないとい、うことに尽きる。政策が多いということではなくて、どれを見てもこれを見ても特効薬がない、そういうことに尽きると思うのです。特効薬さえあれば何もあんなに多く論文も出ないでしょう。結局政策がない、あらゆる政策をやって中小企業振興をはからなければならぬということになると思います。そこで、少くとも政府がみずからできることは、中小企業の市場の確保から言っても、官公需品を中小企業の分野において確保するということがきわめて必要なことではないか。アメリカのような資本主義の典型的な国でもこういう点は非常によくやってある。本来アメリカという国は、自由主義経済の典型的な国のように言われますけれども政府が行う政策というものはかなり率先して社会政策をやっておる。たとえば公正労働基準法のできる前に、政府が購入する品物を生産しておる工場あるいは政府が品物を請け負わす事業については、今の基準法のようなのを施行して、賃金は幾らにしなければならぬ、労働時間は幾らでしなければならぬということを、公契約法という法律で契約しておる。あるいは慢性的な労働過剰地域においても、やはりそういうところの地点にはみずから特別に注文したりして、そうして景気回復の政策をとっておる。中小企業に対しましても、第二次大戦後のアメリカでは、政府調達に関する主要法規中、ほとんど必ずと言っていいくらい中小企業に関する規定というのを入れて、こういう品物は何パーセント程度中小企業から買えということを指示しておる。ですから、みずから政策を行っておる。こういうことがあるわけですが、一体政府は中小企業対策ということを盛んに言われておるけれども、みずからおやりになっていない。こういう官公需品の確保ということはみずからできることなんですから、盛んに問題になっておりながら政府ができることをどうして今までやられないのか、これを大臣から御答弁願いたい。
  161. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 中小企業の問題は、ただいまお話がありましたように、即効薬はないので、あらゆる面から考えていかなければならぬ。結局においては、私はやはり体質の改善で、大企業に負けない商品が中小企業によって作られるというところにいくべきではないかと思っております。しかしその間におきまして、官公需要等につきまして極力中小企業から買い上げるということは当然のことでありますが、実際問題として考えますと、官公需要は大体において中小企業の作っておるものが多いのじゃないかと思います。防衛庁等におきましてはそうは参りません。従って防衛庁におきましては、協同組合の購入につきましては、競争入札をやめるというような規定も設けてやっておるようなわけであります。ただそれが官公需要の何パーセントを中小企業に回すとか、こういう機械的なものでは、実際問題としては動かぬのじゃないか。結局今までにおいても、できるだけ中小企業者から買うようにというようなことで政府もいろいろ指導しておるわけであります。そういうことをさらに強化していく以外にはないのじゃないか。御承知のように会計法の関係もありますので、今後会計法のワク内において、事実上の問題として極力努力していきたい、かように考えております。
  162. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 大臣はきわめて抽象的なお話をおっしゃいましたが、単に実際問題として中小企業の製品が多いのじゃないだろうかということでは済まないと思う。やはりかなり努力しなければ、同じ製品が出ておる場合に中小企業から買うということは困難だと思う。会計法というお話がありましたが、私はやはりこれは立法規定だと思っている。やはり立法で、会計法なら会計法でそういうような仕組みにしなければ私は困難だと思う。たといそういう仕組みにしても、私は簡単ではないと思う。アメリカの実情を見ましても、容易にできておるという状態ではありません。必ずしもうまくいかないというような、かなり悲観的な報告もなされておる。これは相当努力しても、なかなかうまくいかないだろうと思うのです。ですから放任しておけば、いや中小企業のものを指導しておるから買うだろうとおっしゃいますが、そういうわけにはいかないと思う。やはり、かなり物事を積極的におやりにならないと実効は上らない。アメリカあたりでも、中小企業の製品はこの程度だというものを各品種別に全部やって、数百名の中小企業管理官を置いてそれをずっと調査させ、さらに指導していってもなおうまくいかない、こういう状態であります。それを放任しておけばうまくいくはずはありません。ことに最近機械なんかでも、日本の機械についてはあとからも質問いたしますけれども、とかく大企業は自分のネーム・バリューによって中小企業の分野をだんだん侵蝕しておる。そうしてその製品がよく売れるということになると、大きなメーカーがネームによって中小企業の分野を駆逐しておる、こういうのが実情であります。一体指導しておられるといわれますけれども、何か中小企業の方をよけい買え、あるいは確保するのだというような指導通謀でも出ておるのですか。
  163. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 その点は私以前のことを詳細は存じませんが、閣議決定等におきましてやっており、その実績について実際のことを申しますと、どうも調査ができておらぬようです。またこれは一々の契約を調べるということは非常に困難な問題だと思います。またただいまお話のように、アメリカにおいても、なかなかこれは法律をもって強制するようにしましてもそう簡単にはいかぬのじゃないかと思いますが、われわれも、御承知のように、やっと中小企業についての統計なり調査を最近になって始めたようなわけでありまして、本年度完成すると思うのでありますが、それと並行し、また近い機会にただいまお話のような点も調査をし、強力な指導をしてみたい、私個人はそういうふうに考えておるわけであります。
  164. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 大臣はそういう方に進めたいということでありますからけっこうな話なんですが、私はやはり早い機会に立法措置でもしていただきたいと思うのです。これは立法措置をいたしましても、強制をするわけにはいきません。ですから買わない場合には罰するとか、あるいは役人を罰するというわけにはいかないので、やはり一つの努力目標を掲げて、これこそ訓示規定になるかもしれませんが、やっていく以外にはないと思う。それでも私はなかなか困難ではないかと思う。ですから中小企業の分野、市場を確保してやるということが私は今の中小企業の置かれている非常な境遇から脱するゆえんのものだと思うので、一つこの点については最大の考慮を払っていただきたい、これをお願いしておきます。  次に、機械振興の問題でありますが、やはり中小企業に関連しての問題をお尋ねいたしたいと思います。長期経済計画を見ましても、あるいは三十三年度の経済大綱を見ましても、機械工業の振興ということを高らかに掲げてある。ことに機械工業というのは雇用量を最も吸収する産業である。エネルギーを最も使わない産業である。エネルギーの面からいいましても、雇用の面からいいましても、こういう産業はない。最も効果的な産業だということで、どちらを読みましても非常に機械工業の振興というのは重点を置いてやるのだということで、このことはけっこうです。しからば今度の予算その他でほんとうに機械工業の振興が盛られておるかといいますと、必ずしも現実はそういうことになっておりません。先般来機械工業振興臨時措置法あるいは電子工業振興臨時措置法という法案が国会を通過し、その実施を見ておるわけでありますが、アイデアとしては非常にけっこうでございますけれども、この実施も私は万全にはいっていないと思います。御存じのように、機械工業というのはアッセンブルの工業、組み立て工業でありますから、中小企業に依存する点が非常に多いわけであります。中小企業がしっかりしておらなければ、いかに大メーカーといいましても、小さな部分品まで作るわけにもいきませんから、やはり中小企業を十分育成強化するということが必要ではないか。これこそ体質の改善をやらなければならないと思うのであります。ところが中小企業の設備を見ますと、最近は少しよくなっておりますけれども、依然として老朽化しておる。あるいは陳腐の度合いが激しい、こういうような状態であるし、あるいは品物を購入する場合にも、新しい品物よりも古い品物の方がよけい購入されておる。要するに中古品の方をよけい購入しておる、こういうのが実態であります。工作機械等におきますと、残念ながら三十年度あたりにおきましては、国内生産よりも輸入機械の方が上回っておるという実績が出ておる。これは非常に残念なことであります。そこで今度近代化設備の補助金として六億円、昨年は四億円でありましたが、六億円、二億円増加になっておるのですが、これで一体十分な近代化ができるかどうか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  165. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 日本の輸出産業を考えますときには、御承知のように、将来の輸出ということは、一方アメリカ等の開発された地域に対しましては雑貨品でありますが、雑貨を高級化さす、こういうことになりましょう。しかし低開発地域につきましては、やはりプラント輸出なり機械類の輸出と、今後機械類の輸出に、従ってまた機械工業に力を入れなければならぬということはもう全く同感でありまして、また経済五カ年計画等におきましても強調しておるところであります。われわれといたしましてはこういうふうに考えておるわけでありますが、機械工業振興臨時措置法の関係につきましては、昨年度が十五億、本年度が二十億合せて三十五億であったわけであります。来年度におきましても二十億を一応予定しておりますが、実はもっとこれをふやしていきたいというふうに、開銀の融資についても考えております。それから設備の近代化補助金でありますが、実はもっとふやそうかとも思ったのでありますが、御承知のように、あれには府県の負担分があります。従って四億を六億にふやしますことは相当なものだと思います。と申しますのは、回収が一億八千万ぐらいあります。それらを入れまして、府県の負担分、自己調達分――と申しましても、結局は中小企業金融公庫等から出てくる金が多いと思いますが、それらを入れますと四十五、六億になるわけであります。ところが従来は御存じのように、繊維の機械等に主眼が置かれました。私はそうじゃなしに、ことに繊維機械等につきましてはだいぶん問題が解決されて、また過剰設備になっておるような状況でありますから、これを機械工業に重点を置いていこうというふうに考えておりますので、件数にしますと、そう一件当り多額を要しない事業が多いと思いますので、かなりの件数はこれによってやれるんじゃないか。三、四千件くらいを考えておりますが、おそらく重点の置き方によりましてはそれ以上にやれる。この中で相当部分がそっちに回すことができることになるのではないか。また御存じのように、中小企業金融公庫というのは、設備資金の解決のためにできた公庫であります。その重点はやはり機械工業に今後おいていかなければならぬというふうに考えておるのでありまして、いろいろなパイプで、金融ベースに乗るもの、あるいは金利の低いもの、多少金利が高くてもやっていけるもの、そういうような段階に応じまして、そうして中心を機械工業という方面に当然置いていくべきだというふうに考えております。またその半面におきまして、税制の、いわゆる技術の振興関係の問題とか、いろいろ特別償却制度を考えておりますが、これはおもにやはり機械工業方面に重点が置かれるということになります。税制、金融、ともどもに機械工業を中心に重点を置いて考えていきたい、かように考えておるわけであります。
  166. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 これは中小企業庁で調べられたと思うのですが、中央指定で設備の近代化を要する額を、一応三十一年度ですか、あるいは三十年度ですか、二百五十一億ということを算定なさっておる。それを近代化しなければならぬ。さらに年々陳腐化していくのが、やはり二十年の償却と見ても六億程度ある、こういうような観点からしますと、今の近代化設備を六億円くらいつぎ込んだのでは、やはり同じくらい陳腐化したものが残っていく。体質の改善は依然としてできない、停滞する。政府の住宅政策のようなもので、幾らかやっておるけれども、火事が起ったり、その他老朽化して、そうして依然として家が足らない。こういう状態、これと同じような状態になっておると思うのです。この数字上から見ればそうです。そういたしますと、たとえば今度の六億という数字が出ておりましても、少くとも今申しました近代化を要する設備だけでも大体八年くらいかかるので、その間に年々陳腐化する設備が出てきますから、結局依然としてトータルから見れば進んではおりますけれども、陳腐化の老朽施設が残っていく、解消されない、こういうことになると私は思う。なるほど補助率の問題があります。地方負担もございますけれども、それは地方負担が困難であればそれは国が持つという政策などをやって、とにかく機械工業の振興といえば一枚看板です。ことにエネルギーも少い、あるいは労働人口の多いという日本において、機械工業こそ重点政策としてやるべきです。それにしては重点がぼけておる。昨年よりかなるほど数字は多くなりましたが、重点政策としてはきわめて重点がぼけておるように考えるのですが、大臣はどういうようにお考えですか。
  167. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 これは大いにこしたことはございませんが、御承知のように、またあまり過剰になって昨年のような問題を起してもいけません。これは漸次やっていかなければならぬのですが、しかし私は中小企業金融公庫等におきまして、結局今までは重点がそこにおかれてなかったと思います。結局金融機関自身がそこに重点をおいていくようになれば、相当な金でありまして、ただいまいろいろ数字をおあげになりましたが、また近代化補助金にいたしましても、そこに重点をおいてきておりませんので、繊維設備というものが従来中心でありました。しかし将来の日本を考えますと、これは全く機械工業という方面に重点を移さなければならぬようになってきております。そしてただいま申し上げましたような繊維設備等につきましては、一応の格好はついてきておるわけであります。従来と比較していただきますと、額においてもふえておりますとともに、金融機関の考え方を変えていく、それを明瞭に打ち出していくということによって、従来よりは飛躍的に多くなる、かように考えておるわけであります。
  168. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 金融機関の考え方をだれが変えるのですか。
  169. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 それにつきましては、われわれが指導していかなければならないと思います。機械工業なり中小企業の考え方、それにつきましては、御存じのように、今回は技術指導の研究所の補助金をふやす、あるいは企業診断の補助金を相当ふやしております。企業診断等におきまして、今後のいくべき考え方を業者の方にもよく考えさせる、そうしませんと、結局設備の申請がなければ、勢い金融機関も別に探し出して貸すというわけではないのであります。また金融機関の考え方、これは政府資金を貸しておる政府関係の金融機関の考え方でありまするから、政府としましても十分指導監督してやっていきたい、かように考えております。
  170. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 私は、重点政策であるならば、もう少し重点的に取り扱うべきだ、いかに五カ年計画にりっぱに書いてありましても、それでは作文にしかすぎないと思う。それほど重点であるならば、もう少し腰を入れるべきだ。あるいはまた本年は景気を刺戟するという面があるかもしれない。それならそれでまた方法がある。しかし何か作文に書いたは書いたけれども、腹がきまっていないように考える。あれもこれもというような感じを受ける。ですから、機械工業というのは、エネルギーから見ても、雇用量から見ても、非常に重大であると考えるなら、もう少し徹底した政策をやってもらいたい。通産行政においても同じだと思います。これを一つお願いをしておきまして次の問題に移ります。  次に鉱山保安に関係して、まず石炭並びに鉱山の監督の問題でお尋ねいたしたいと思うのです。御存じのように、この前の国会において商工委員会でもいろいろ問題が出ましたように、最近盗掘それから侵掘、こういうようなことで災害が起きておる。現場の石炭事務所に行ってみますると、十人程度おるけれども、一年間に一人当りの旅費が千五百円程度だ、こういう状態である。ジープもなければ何もない、ただ十年前の自転車が一台ある、こういうようなことで一体監督ができるか、こう思うのです。人間ばかりぞろぞろいて何もできない。そこで一体君たちはどうして監督しないのかと言いますと、施業案の認可がやっとだ、こう言うのです。施業案に判を押すだけがやっとで、その施業案がどんなに実施をされておるか、監督するにも費用もないし、行くひまもない、こういう状態であります。そこで単に盗掘、侵掘で鉱業権者が困るだけならばよろしいのですが、それによって災害が起る、きわめて最近はそういった個所に災害が頻発しておる、あるいはそれが社会悪の巣になっておる、こういうような状態であります。そこで衆議院におきましても、先般商工委員会におきまして、予算の点についても十分考慮せよという決議をしたわけですが、その結果はどのぐらい盛られたものか、これをお聞かせ願いたい。
  171. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 今お話のありましたように、前回の国会でも御要望がございまして、われわれの方といたしましても、この問題は全く事務的な経費でございまして、標準予算に組まれておるような費目が多いわけでございます。こういうものについて大幅な増加ということはなかなか困難でありますが、特に石炭関係の鉱業の監督、お話がありました盗掘防止とか地上権益との関係とか、そういう関係の調整のためのあるいは調査のための旅費といたしまして、本年度は中央地方を通じまして百十六万七千円計上いたしました。昨年は七十万二千円くらいですから、五割以上ふやしてございます。もちろんこれで十分というわけではございませんが、こういう事務的な経費としては非常に増加計上したわけでございます。それから保安関係といたしましては、来年度予算が全部で二千九百六十四万九千円でございまして、本年度に比べまして百九十二万二千円増加いたしております。これもこういう標準予算経費としてはかなりふやしておりますが、主として旅費とそれから今自転車しかないというお話がありましたが、ジープを三台購入する予算をやっと計上いたしまして、これは全部北九州に配置することにいたしております。決してこれで十分だと申し上げているわけではございませんが、しかしかなり勉強しまして計上した次第であります。
  172. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 実はあまりこまかいことを聞きたくはないのですけれども、実際問題として今災害が起り、しかも鉱業権の侵掘がある。侵掘があっても危なくて一人でのこのこ監督に行くというわけにいかないのです。それほど身に危険を感ずるような状態です。でありますから、やはり五、六人あるいは二、三人行かなければならぬ、そうすると旅費もない。こういう状態で、加うるに九州の通産局、元の鉱山局は戦災で図面を焼いておる。坑内の実測図を焼いておる。ですからかつて坑内がどういうふうになっておったかわかりません。そこで最近の災害というものは、かなり古い炭鉱の採掘跡を掘ってそして水が出て、今度も十八名も死んでおる。これはあとから質問しますけれども、十一月二十五日になくなった十八名の死体が全然上っていないのです。いつ上るともわからない。四月ごろ上るかもわからないというけれども、果して現在の鉱業権者でその死体を上げるだけの能力があるかどうかということも疑問であります。こういう状態です。あるいはまた天草におきましては久恒の志岐炭鉱では一瞬にして三十数名がやはり古洞にぶち当ってなくなっておる。こういう事件も起っておる。最近の坑内出水というのはほとんど古洞で、しかも古洞がわからない、こういう状態です。それは図面がないということも原因であるし、また鉱業権者が売るときには掘った跡を隠して売るものですからわからないという点もある。いろいろあるのです。あるいは前の鉱業権者が掘っておったのを継承してないということもある。何としても坑内の実測図を十分調査しなければならない、こういう非常に緊急な問題があるわけです。私は経費のことは金額的にはわかりませんけれども、一体その図面はいつごろまでに完成をされる予定であるのか、これをお聞かせ願いたい。
  173. 村田恒

    ○村田(恒)政府委員 ただいま官房長から申し上げましたように、本年度は鉱業監督の旅費もだいぶふえましたので、お話のように坑内の実測図あるいは鉱区連絡図、こういうものを整備するようにいたします。やり方といたしましては、やはり現場に参りまして古老の意見を聞きましたり、あるいは炭坑が持っております鉱区原図というものを写し取って役所の方で整備する、そういうやり方をやっておりますが、何分にもこれは相当日にちのかかるものと思われます。それで北九州全体のものを整備するのに最低二年はかかる、こういう考えであります。
  174. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 七十万円くらいの増ですと、これは全国の話ですから、とても監督もやり、坑内実測図も完成するというわけにいきませんよ。七十万円くらいで坑内実測図が完成できるのなら問題はない。これはほとんど不可能です。若干でも旅費がふえたという程度です。私はこれは大臣にお聞きしたいのですが、きわめて重大な問題なんです。日本では年々、御存じのように、七百名から坑内で死んでおるのです。アメリカのような国でも三百名から四百名くらいしか死んでない。イギリスは日本の四倍以上出炭はありますけれども、そのイギリスでも三百名から四百名であります。日本は六百名台から七百名台を常に動いておるという状態です。しかも水の場合は一瞬にして十数名なくなる。それは結局坑内のかつての古洞がはっきりしないからということです。これは人命に関する問題ですから、一人なくなれば弔慰金だって七十万円以上ですよ。十人なくなれば七百万円以上、もちろん一千万円以上になるでしょう。ですから、国の大きな観点から見ましても、労災保険なんかという点から考えましても、わずか七十万円くらいでは、一人なくなったらその費用の弔慰金しか出ませんよ。この点は私はかなり前の委員会で強調しておいたつもりでありますけれども、しかも委員会の決議までいただいておるのですけれども、七十万円くらいでは私は非常に残念に考えるわけです。一体炭坑の監督とかあるいは災害についてどういうようにお考えですか。
  175. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 鉱山の保安の問題につきましては、われわれも非常に心配をいたしております。御承知のように旅費とかそういうものは一般の場合には節約を食うというような今度の予算の切り詰め方でありましたが、まあ七十万円を五割増しというのは百万円以上にしたわけであります。五割増しの程度に働くということも、現実問題としては倍にも三倍にもまた人数をどんどんふやすということができましたら、けっこうでありますが、そこまではいかなかったことは御期待に沿えなかったと思うのでありますが、事務的に考えますと、極力重点を置き、ただいまお話のような坑内図にしましても、これはおっしゃるようにそう安くはできない。私もいろいろ土地の調査などいたしておりましたので、よくわかるのでありますが、できるだけ経費を差し繰って御趣旨に沿ってやりたい、かように考える次第であります。
  176. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 実は昨年は年末になりまして非常に重大災害が頻発したわけです。そしてガス爆発とか、あるいは坑内出水とか起りまして、これは政府においても十分監督を厳重にしてもらうこと、あるいは保安技術の向上に努めてもらうこと、あるいはまた旧採掘の整備を早急に行うこと、侵盗掘、施業案違反の採掘については断固たる処置をとること、こういう決議をして、その一項目の中に旧採掘の整備ということをうたったわけであります。これならば、何も旧採掘の整備も全然できないじゃありませんか、あまり委員会の決議を無視しておると思うのですよ。もう少し考えていただきたい。簡単に委員会は決議したわけじゃないのです。現実に十一月二十五日に十八名坑内で古洞にぶち当って水が入って現在死体がまだ全然出ていないのです。こういう現状です。しかもこれは侵掘であります。よその鉱業権に侵掘をしたという個所であります。さらに全然鉱区を持たない男が盗掘をして、四名死んだ。やはり出水であります。こういう問題が陸続として地方に起ったわけであります。ですから、旧採掘の整備というのは私は早急にやるべきだ、かように考えておるわけですが、人命に関する問題が、全然今度の通産大臣予算委員会における説明においても、あるいはまた施政方針においても、全然見られなかったということは非常に遺憾だと思うのです。通産行政の中に私は鉱山保安の問題というのは非常に大きなウェートを占める問題であると考える。局まで設けて局長までおられるのですから、一体そういう問題について大臣はどういうふうに御認識になっておられるか、これをお聞かせ願いたい。
  177. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 決して重点を置いていないというふうにお考え願ったら、これは全く違いまして、私も十分皆さんの御意見も伺っております。従って庁内の旅費につきましては、むしろほかの方は、ごらんになってもわかりますように、ほとんどふえていないのです。旅費等につきまして事務的に考えますと、五割増しというのは、これはよほどの関係がなければふえないのでありまして、むしろ旅費は節約というので減らされておるような情勢であります。御決議の全部がやり得るような予算がとれなかったということについてはわれわれも遺憾に思っておりますが、しかしずいぶん努力したということだけはわれわれも十分自信を持っておるわけであります。もちろん、またいろいろと庁内のやりくりがつきましたら、できるだけその方面に重点を置いて今後の運営をやっていきたい。旅費は金の問題でありますが、ことに実際の仕事として優秀な人をできるだけ差し繰って、そういう方面に重点を置いてやらせるというようなことも十分考えていきましたら、事務能率も上り、またりっぱな業績も上るのじゃないか、かように考えておるわけであります。
  178. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 大臣はこの席ではなんとか適当な答弁をされておれば時間はたっていくのですから、終るでしょうけれども、私はこのことは事人命に関する問題ですから、もう少し考えていただきたいと思うのです。私は七十万円の旅費が高いとか安いとか言いたくはありませんけれども、旅費の問題じゃないと思うのです。政府のものの考え方政策の勘どころというものを疑わざるを得ない。事人命に関する問題をきわめて軽々になさっておる。ところがこれは政府の責任でありますと、私はこういう簡単な問題では済まないと思うのです。たとえば洞爺丸が沈んだ、こういう問題になりますと、政府の責任でありますから、これは大へんなことになって、次の予算はかなりいろいろな面に出てくるでしょう。あるいは海底トンネルを作ろうという話さえ出てくる。ところがこれは私企業のものですから、政府に直接責任はないものですから、政府としては非常におざなりになっている、かように考えるわけです。一つ鉱山保安の問題については十分考えていただきたい、こういうことを要望しておきます。  そこで鉱山保安局長に最後にお尋ねいたしますが、東中鶴炭鉱というのは、先ほどから申しておりますように、十一月の二十五日に水没してから、ずっと水も上らないという状態です。四月になっても五月になっても、果して死体が上るだらうかという、とにかく十八名の人間が一人も出ないのですから……。これは業者の方でもうやれないという状態になったら、一体政府はどうされるのですか。
  179. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 東中鶴の災害につきましては、ただいまのお話通り、十八名がまだ一名も上っておりません。私も過般現地に参りまして、坑内に下りましてつぶさに作業を見て参りました。現在の鉱業権者におきましては約百名の人間を使いまして、三交代でフルに仕事をしております。  資金が今後続くかどうかという点につきましては、私簡単に申し上げることはできないのでありますが、少くとも私どもの推定しておりますのでは、まだまだもうしばらくは続くのではないか。相当苦しいことは事実であります。昨年の十一月の末から全然出炭がないのでありますから、非常に苦しいことはよくわかりますけれども、現在まで排水作業につきましては万全の態勢をとってやっておるというふうに見られるわけであります。しかしながら現在の鉱業権者がもう非常に苦しい状態にあることは私どもも聞いておりますし、また事実そうだろうと思います。それにつきましては、もし今後排水作業ができなくなった場合にどうするかという問題でございますけれども、これはなかなか簡単に参りません区で、一番関係を持っておる市町村の関係、あるいは親権者である大正鉱業、これらに関係を結びつけて、適当な方法が講じられるかどうかという点を考えておりますが、目下のところは、親権者であります大正鉱業とは非常に密接な関連がございまして、もし親権者におきまして排水作業ができなくなるような状態があれば、あの鉱区の中にありますほかの層を掘りまして、そして資金的に一時解決をはかって排水作業の続行をするという方針をほぼ立てておるわけであります。私どもの見ましたところでも相当密接な関連がございまして、大正の社長にも幹部にも会いましてその点は確かめてございますが、大正側では、現在の鉱業権者が全責任を持ってやるべきだ――これはその通りでありまして、どうしてもできないという状態になれば、必ず打開の道は講ずるという状態にまでこぎつけております。  果してその時期がいつかという点については、はっきりは申し上げられませんが、私が現場を見ました当時の状況では、まあ雨季前、これは四月の末から五月の初めになりますが、雨季前には、あるいは排水が完了できるのではないかというふうに思われる状況は確かにございます。しかしこれはなかなかむずかしい問題で、災害のありました当時も、現地の監督部は四十五日という計算をしておったのでありますが、これは単なるポンポの能力から現在あります水量を簡単に計算した程度でありまして、これは狂うのが当然でありますけれども、現在に至りましてもなお半年くらいはかかるのではないかという現地の推定であります。しかし私現場を見まして、現在詰まっておりましたところではそうひどいどベでございません。崩落の状態が普通の比較的いい状態でございましたので、あるいは今後の取り上げ作業が順調にいって、そうひどくなければ、あるいは雨季前に排水が完了するのではないかということが予想される事態がございます。しかしこれははっきりは申し上げられません。どうしてもできない場合には、大正で他炭層を確保させて、あの山としては継続経営をやらせる、そうしてその間の収益によりまして排水作業を継続するという話し合いがほぼ了解を得ておりますので、作業が中断することはないというふうに考えております。
  180. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 一つ最終的には政府の責任で死体だけは上げてもらいたいと思う。これはあなたの方で直接しなくても、やらすなりあるいはどうしてもできない場合にはあなたの方でやるなり――これは政府の責任でないとおっしゃるかもしれませんけれども、与える影響はきわめて重大です。それに死体も半年たっても出ないということになりますと、中小企業の炭鉱に働く労働者の不安は大へんなものだと思う。それがけがをしてあるいはなくなる、これは今まで考えておったけれども、死体が現にその坑内にあるということがわかっておりながら出ない、その死体を拝むこともできない、こういうような状態になりますとこれは大へんなことです。ことに五月から六月に雨季に入りますと全く元のもくあみです。そうしてまた一年くらいかかるでしょう。そうしてまた雨季にくるでしょう。これではやっていけないという状態になりますので、これは一つ鉱山保安の責任のあるところで、最終的にはとにかく死体は上げてもらいたい、こういうように要望して質問を終ります。
  181. 八木一郎

    八木主査 これにて通商産業省所管に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  182. 八木一郎

    八木主査 次に農林省所管を議題とし、残余の質疑を継続いたします。川俣分科員
  183. 川俣清音

    川俣分科員 これから食糧及び公務員制度等の質問を継続するのでありますが、その前に一つホルモン剤といいますか、肥料とも農薬とも非常に区別のつきがたいホルモン剤の今後の取扱い方についてお尋ねいたしておきたいと思うのです。いわゆるホルモン剤と称するものは、農薬または肥料どちらに属するか不明なものでございまして、不明というよりも、ホルモン剤は最近ますます増加の傾向にあるわけでありまして、現在十一か十二種類あるかと思います。植物の成長を促進するような促進剤として使われるようなものは肥料と見られる、あるいは成長を抑制するようなものは農薬とも判断されるものに属するのではないかと思うのです。これが新聞、雑誌あるいはラジオの普及によりまして、今後ますます需要が増加していく傾向にありまして、これはいずれの肥料取締り法規で取り締ることも困難であろう、農薬取締りにもまたこれは該当しないようなものでありますが、今後非常な需要の増大に伴い、生産の拡大に伴いまして、何らかの措置をする必要があるのではないか。これに便乗いたしまして、相当いかさまのものもあるようでありますし、また国際的にも相当認められておるものもあるのでありまして、この取扱い方が今後重要な行政上の処置を要求いたしておると思いますので、この点についてお尋ねいたしておきます。
  184. 永野正二

    ○永野政府委員 ただいま川俣委員の御指摘のように、最近植物の生理作用を、あるいは促進し、あるいは抑制するといういわゆる植物ホルモン剤というものが、市販に供され、相当実用にもなっておるのでございます。おもな用途といたしましては、たとえばトマトその他の果菜類に対しまする着花、結実の促進、あるいは苗木等の活着をよくいたしますための発根の促進、あるいは種子の発芽をよくしますための発芽促進、以上はいずれも植物の一つの機能を促進するような方向において働く薬剤でございます。またこれと逆に、抑制いたしますための薬剤といたしましては、たとえばタバコのわきの方から出る腋芽を抑制するというような薬剤があるのでございます。ただこれらは現行の農薬取締法及び現行の肥料取締法におきましては、いずれもその対象とならないのでございます。  よく御承知通り、農薬の定義といたしましては、農作物または農林産物を害する菌、こん虫その他の動植物の防除に供する薬剤ということでございます。この意味におきましては、直接農薬取締法の第一条に該当する農薬とは認めがたいのでございます。また肥料取締法におきましても、第二条に書かれております定義におきましては、「植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土じょうに化学的変化をもたらすことを目的として、土地にほどこされる物をいう。」ということになっておりますので、これまたただいま申し上げましたような薬剤等は、これに該当しないのでございます。私ども、最近この関係の薬剤がどのくらい使われておるかということの調査を、随時いたしておるのでございますが、最近におきましては、総計で約二億三千万円くらいのものが使用されておると思うのであります。ただそのうちの圧倒的部分と申しますか、約二億円程度は、タバコの腋芽抑制に使用されますところのMH30でございます。これは専売公社等の、相当周到な栽培指導の下に使用されておる現状であると思うのであります。その他最近特に発達いたしました園芸農家等におきまして、これ以外のいろいろな成長促進剤、あるいは成長抑制剤が、進んだ農家に一部取り入れられておるという現状であるように思うのでございます。私どもといたしましては、これがもう少し一般の農家、あるいは一般の園芸農家に大きく取り入れられて参るというような情勢に相なりますならば、これは当然ほかの農薬あるいは肥料と同じく、その成分検査その他の取締りを実施しなければならない、こう思っておるのでございます。その意味におきまして、随時どのくらいの使用量があるかを調査いたしておるのでございますが、現段階におきましては、今すぐ普通の農薬なり肥料と同程度の取締りをしなければならぬかどうかという点について、まだそれほどの必要はなかろうかと実は判断をいたしておるのでございますが、今後業界の動きに伴いまして、そういう必要が生じました場合には、しかるべき法制の改正をいたしまして、これに対して適当な製品の検査をやり、その他の方法によりまして、これを使用します農民に不測の損害を及ぼさないようにいたしたい、こう考えておるわけでございます。
  185. 川俣清音

    川俣分科員 今後特技普及員ができまして指導いたす場合、特に園芸、タバコ等を指導いたします場合においては、これらのものを取り上げていかなければならぬだろうと思います。そのときに根拠がないと、先ほど申し上げたように、これらの製造メーカーにいたずらに動かされることになりますと、役所の行政を混乱せしめて、せっかくの特技普及員の機能を失う結果にもなるだろう。にわかに法制化するということは困難だという事情もないわけではありませんけれども、やはり一定の基準なり要綱がなければ、ますます混乱する傾向があるのではないか。そういう点から考えますと、やはり一定の基準を置いてもらいたい。いわゆる植物ホルモン剤と申しますと、実際肥料に類似する点も大きい。また抑制剤のごときは、確かに農薬に類するものが非常に大きいのであります。これは二つの取締り法規の中に存在するのでありますから、日本のように、肥料取締法が非常にやかましく、また農薬取締法が非常にやかましくなければ問題はありませんが、一歩それからはずれることによって放任されていることが、非常な危険をはらむことにもなるし、順調に発達すべきものを阻害する結果にもなる。両面を持つものでありますから、やはりすみやかなる方策が必要であろうと思う。今二億二、三千万円だと言われましても、必ずしも楽観を許さないであろうと思う。一方に厳重な規定があり、それからちょっとはずれることによって非常に緩慢だということになりますと、行政上も非常にやりにくい面が出てくると思うのでありまして、おのおのやはり一定基準が示されることが適切ではないかと思うので、その点もう一度……。
  186. 永野正二

    ○永野政府委員 お説の通り、これを使用いたします農家の保護の見地から、また業界の公正な発達をはかるという意味におきまして、しかるべき規制をすることが必要だという段階には、当然それに必要な制度、基準というものをもって対処して参りたいと思うのでございます。とりあえずは、私どもも常時普通の行政といたしまして、業界の実情を調査し、どういうものがどういうふうな価格で売られているかというような点について随時目を注ぎながら、なるべく早くただいま御指摘のような本格的な制度に持っていくということについて、今後も努力いたしたい、こう思っております。
  187. 川俣清音

    川俣分科員 それではいよいよ食管特別会計の内容についてお尋ねいたします。第一に、今国会に食管特別会計の改正と補正予算を出されておりますが、先般予算委員会においてお尋ねいたしましたところ、補正予算の提出の根拠を主計局長に求めましたところ、二十九条の一項であると言うのですが、二十九条の一項のどの部分に基いて補正予算を出されたのでありますか、この点一つ大蔵省から伺いたい。
  188. 高木文男

    ○高木説明員 前の予算委員会におきましての御質問の要旨は、二十九条一項に基いた補正予算の提出であるか、あるいは二十九条二項に基いた補正予算の提出であるかという御質問であったと思いますが、それに対しまして大臣あるいは主計局長からお答え申し上げましたのは、二十九条の一項による補正である。つまり予算作成後に生じた事由に基き、必要避けることのできない経費につきまして、予算作成の手続に準じ、追加予算を作成して出すものである。つまり二項にあります修正予算ではないという意味で一項と申し上げたわけでございます。
  189. 川俣清音

    川俣分科員 そうすると、「予算作成後に生じた事由に基き必要避けることのできない経費」――必要避けることのできない経費ということになりますと、学説によりますと、おもに災害であるとか、外国との国交上国の義務負担事由に基く必要な経費というふうにいわれておりますが、これは三十二年度の赤字補てんでありますならば、予算成立後に生じた事由でありますから、これは確かに必要避けることのできない経費と見てよろしいと思うのであります。しかし資金を持つということは、予算作成後にできた必要な経費とは言いかねると思う。当然本予算で提出すべきものではないかと思う。
  190. 高木文男

    ○高木説明員 資金の設置につきましては、御存じの通り、前国会におきまして、食管会計の損失の補てんの方式をどうするかということが非常に問題になりました。それに関しまして、政府の一貫した答弁といたしましては、臨時食糧管理制度調査会の答申を待って――食管会計の全般にわたって検討した上で、その答申を待って処理をいたしますということが、政府の一貫した答弁であったわけでございます。その際にしからば臨時食糧管理制度調査会からの答申があればそれはいつ処理をするのか、三十二年度の補正をもって処理するのかという御質問が、予算委員会でございましたか、大蔵委員会でございましたかで、出ておりまして、それに対しましては、いつということは申し上げられませんが、なるべく早い機会に処理をいたしますということを、大蔵大臣答弁いたしております。そこで臨時食糧管理制度調査会の答申におきましては、勘定区分をすみやかに立てるということが答申として要請されたのでございますが、一方昨年の十月一日からの消費者米価の改訂に関連いたしまして、三十二年度に生ずる損失の処理の問題が問題になりました。そこで三十二年度の損失の処理の問題をその後いろいろ検討いたしました結果、ここに予算をもって御審議を求めましたように、従来とは全く違った考え方で特別会計に資金を設けた方がいいのではないかということになったわけでございます。そこでこれらにつきましては、今回御審議を願っておりますように、三十二年度の補正予算で処置をする方法もございますし、また三十三年度に処置をする方法と、二つの方法があるかと思いますが、できることはなるべく早くやった方がいいのではないかという考え方で、資金の設置は必ずしも来会計年度を待ちませんでもできますので、今国会に三十二年度補正をもってお願いするということにいたしたわけでございます。
  191. 川俣清音

    川俣分科員 全く考えを変えたということは、予算成立後に起きた必要避けることのできない事由にはならないと思います。三十二年度の赤字補てんをするという意味ならば、この条項に当てはまると思うのです。予算作成後に起きた必要避けることのできない、ですからね。考えを変えたということになると、必ずしも必要避けることのできないものかどうかということが疑問になる。従って三十二年度における赤字補てんのためだ。赤字補てんのために補正予算を組むのは、これは異議はございません。なるべく早くやることがしかるべきですから、これは問題ないのです。しかし方法を変えるということになりますならば、これは修正でもあると思う。補正したものを修正するという考え方にもなるのではないかと思います。追加しておいてそれで内容を変える、二つ持っているわけです。追加予算をとっておいて款項目を変えるというのですから、同じワクの中での修正とも見られることが起きてくる、その点で非常にあいまいな提出の仕方だと思うのです。内容はいわゆる赤字補てんのためであり、説明は資金であるという。どうも補正予算を組む立場というものが、赤字補てんのための補正であるがごとくで、内容はそうである、いや形式は資金である。ここに提出の基礎の矛盾があるのではないかと思うのですが、矛盾を感じられませんか。
  192. 高木文男

    ○高木説明員 資金を設置いたしますことが、予算作成後に生じた必要避けることのできない経費であるという考え方でございます。ほかにも幾らも例がございまして、たとえば補正予算におきまして特別会計を新しく作った事例も幾らもございます。資本金の繰り入れ等を補正でやったことも幾らもございます。要は資金を設置することが必要避けることのできないという判断をするかどうかということだと思いますが、従来の例に徴しましても、資金を設置いたしますことをもって、必要避けることができないという二十九条の解釈として可能であると考えております。
  193. 川俣清音

    川俣分科員 まず必要避けることのできない補てんをして、その上に資金を持つというならこれはわかりますよ。それはおそらく後段の法律ができたために必要というふうになるなら、これは別です。あなたの説明しているのは、前段の必要避けることのできない事由だけだとするならば、やはり三十二年度の赤字補てんだということにならなければならないのではないか。資金といいますけれども一般資金と違う、赤字解消のための資金なんです。この論争は主計官ではちょっと無理だと思うから、この程度にしておきますけれども、これは非常に根拠があいまいであって、財政法規をみだりに解釈するところのそしりを後世に残すものだと私は思います。  そこで次にお尋ねいたしますが、大体三十二年度の欠損額は九十六億二千八百万円というふうに、かなり詳細に見込んでおりますが、七月の決算期が来ましたならばこれに大幅な変更があると思いますが、ないのですか、これは食糧庁長官から一つ……。
  194. 小倉武一

    ○小倉政府委員 お話のように、決算がまだ先でございますから、今後どうなるか、今から的確に申し上げるわけには参りません、ある程度動くことはあり得ると考えます。
  195. 川俣清音

    川俣分科員 そういたしますと、この根拠がなければならぬ。九十六億二千八百万円というこまかい数字を出している。およそであれば、およそのような建前をとらなければならぬかもしれない。こんなに詳しく予定の計算書を出しているからには、何らかの根拠がなければならぬ。およそ九十六億だ、およそ五十三億だというなら別にしまして、九十六億二千八百何十万円でしょう。こんなにこまかく計算をされたからには、これがそう変るものじゃないというふうに考えるのが至当じゃないですか。そうするとこの計算は非常にでたらめなものだということになりますが、根拠がないものですか。
  196. 小倉武一

    ○小倉政府委員 もちろん根拠はなくはないのでございます。いくら根拠がございましても、なお今後の事態の進行によって変ってくるものもございます。見込みでございますから、ある程度の想定が入っているわけでございますから、そういう意味で変ることはあるべし、こう申し上げているわけでございます。積算の基礎に根拠がないわけではございません。
  197. 川俣清音

    川俣分科員 積算の根拠は大きく変動させるような要素が今後出て参りますか。おそらく三月三十一日を経過してみなければわからないということはいえるでしょうが、大体この積算は根拠がないのではないだろうか。従来の欠損は大よそ出しておられたのであります。特に昨年におきましては、修正売価主義の計算の中には、今後消費価格が上る場合のことを予想すると、三月三十一日の価格に変動がくる要素があるために、決算を待たなければならないのではなくて、修正売価主義によるのであるからして、決算までに価格構成に大きな変動があるということで、決算を待たなければならないという答弁だったはずであります。従いまして修正売価主義をとって計算されるのに大きな変動の要素がなお見込まれるのですか、この点どうですか。
  198. 小倉武一

    ○小倉政府委員 大きいと申しますか、あるいはわずかと申しますか、これは何に比べてそういうことになるかということになりますと、これまたなかなむかずかしい問題でございます。私どもとしては、ある程度の見込み違い、あるいは今後の事態の進行によって動くことはあると思います。お話のように、昨年の場合は消費者米価の改訂に関連いたしまして、当時修正売価主義というふうなことで在庫評価をいたしますれば、消費者価格の取扱いいかんによりまして、在庫に金額において相当の変化が参りました。その関係上、そういう変動をするということが、特に米価問題その他にあったわけであります。その点はお話通りでありますが、しかしその他評価以外の関係におきましても、たとえば輸入食糧の量なり、価格がどうなるかということにつきまして、年間の問題でございまするし、その辺の動き方が若干変ることによりまして、たとえば輸入食糧の買い入れの想定より減るということになりますと、利益が減るというようなことが起ってくるわけです。それからまた内地米につきましては、相当量の売れ行きの予想をいたしております。準内地米についてもそうでございますが、それが果して思うように売れるかどうかというような点によって、思うように売れなければ、先ほど中間経費の問題がございましたけれども、それだけ保管料その他がかさんでくる。予想より売れ行きがよくなれば、またそこで逆なことにも相なってくるというようなことで、項目といたしましては相当変化の要素はあり得るわけでございます。また修正売価主義につきましても、いつまでもこれでいいのかということになりますと、これはまた問題があろうかと思います。特に消費者米価を改訂いたしました後におきまして、なお改訂前に一応妥当と認められたものが、果して妥当かどうかということにつきましても、これは決算をいたします場合にはおそらく議論が出てくるところと思います。そういうことでなお変動の要素はあるわけでございます。
  199. 川俣清音

    川俣分科員 それは答弁にならないんです。それは火事が起きたり、地震があったり、変化があるようなこと、あるいは三月三十一日までに大きな変動のある要素というものは常識的にはそうない、こういうことが予算の組み方だと思います。あなた方が平年作を基準にしておるのと同じことであって、そういう特別な変化があるから大きく変動するのだということは、これは答弁にならぬのです。それじゃ予算米価にいたしましても、あるいは収量にいたしましても、外国から買う食糧にいたしましても、一定の計画で計算されておるのでありまして、それに変化のあるこことは当然なことで、実績と計画と必ずしも一致しないことは食糧行政の持つところの、普通に現われてくるところのものでありまして、そんなことを言っておるのじゃない。大きな変化の要素はないのであるから、やはり事前にこれは解決しておくべきものじゃないか。結果推定の基準もあって何十何円というところまで言われるから、大よそ解決しておくならば、他に及ぼすところの影響も少くて済むのではないかということもいえると思うのでありますが、この点はこの程度にしておきます。  次に、問題は根本に入りますが、それでは米十キロ当りの損失見込みは幾らなんですか、三麦――小麦、裸麦、大麦のおのおの十キロ当りの損失額いかん、あるいは農産物安定法に基くカンショ、バレイショ等の十キロ当りの損失――おそらく計算されておると思いますから、これを明らかにしてもらいたい。米の方はオカボも入れて……。
  200. 小倉武一

    ○小倉政府委員 必ずしも十キロ当りというふうな単位になっておりませんので、石単位になりかねないと思うのでありますが、簡単に、たとえば米で申しますと、現在の消費者価格、全国おしなべて八百五十円というようなことでございますが、これに対してコストは、小売段階において申しますと約八百八十円、米については十キロ当りになっておりますが、ほかの点につきましては一俵当り、あるいは外国食糧であればトンの方がいいと思いますが、今手元に資料がありませんので、あとで資料として出さしていただければ幸いと思います。
  201. 川俣清音

    川俣分科員 私がこれを論じまするのは、閣議決定に基きまして、何に一番損失が出るかということを明らかにすることが必要であろう。また一般の消費者にも、水稲から幾ら損失が出る、オカボから幾ら損失が出る、あるいは三麦から幾らの損失が出る、あるいは農産物価格安定法のカンショ、バレイショから幾ら出るんだということを明確にすることが必要であろうと思うのであります。たとえば麦は約八十五億の損失、米は百十二億ですか、の損失になる。米は六千億くらいなものに対して百十一億七千万円かの損失、麦は約六百億円かに対して八十五億という損失になるわけです。そうすると麦は一割以上の損失、米は四分か五分の損失、こういうこことになります。従ってこれをキロ当りで出すことが必要じゃないか。そういたしますと、オカボはもっと多く損失が出るわけです。この内容を検討することが食糧庁に課せられた――科目を立てる上からには、おのおのの損失を明確にすることが必要であるのではないか。大蔵省がやかましく言っておるのはこの点だと思うのですが、大蔵省は調べておりますか。これは大よそでいいです。
  202. 高木文男

    ○高木説明員 三十三度につきましてはまだ不十分ではございますが、ある程度予算書の上でも幾らかわかるようになってきたということでございます。その予算書に現われましたもの以外に、さらに詳しい数字につきましてはある程度の見当はつけておりますが、ただいまここに資料を持ち合せておりませんので、ちょっと答弁いたしかねます。
  203. 川俣清音

    川俣分科員 そうしますと、米は約六千石ばかり使って大体百十一億二千万円の損失、麦はたしか六百億ばかりだったと思うのですが、八十五億の損失、三十三年度は明確になっておるはずなんです。そういたしますと、総体金額に対しては絶対量としては米の方が多いけれども、総体的には麦の損失が非常に大きいということは明らかですね。そうすると、米の中でも陸稲と水稲では、陸稲の損失が非常に大きい。陸稲でも特にもち米の損失が非常に大きい、こういうことになる。そこで損失を解決するというこことになると、これは大蔵省的に見るとオカボの価格を下げなければならない、麦の価格も下げなければならないということが出てくるんじゃないかと思うんです。私どもは日本の農家経営の安定の上から下ぐべきではないという考えに立っておりまするけれども、これほど区分をしたならば、この点を何とか説明をしなければならないと思うんです。赤字の根拠、欠損の根拠を明らかにせよということでありますから、この根拠を明らかにしなければならないと思うのですが、この点を明らかにする必要が一つあると思う。その解決をどうするのか、その二点をお聞きしたい。
  204. 小倉武一

    ○小倉政府委員 ただいまのお話、なかなかむずかしい問題でありまして、(川俣委員「簡単だよ」と呼ぶ)いやなかなかむずかしい問題です。一つは水稲のうるちに比べて他の農産物が損かどうかという比較の問題、それと関連いたしまして、陸稲、国内麦の価格と今後の価格政策のあり方の問題ということに触れておられるわけでございまして、今回経理区分いたしまして、大よそ内地米、外麦その他農産物価格安定との関係につきましては部門別に損益、収支それぞれ別勘定にいたしておりますので、全体といたしましての収支は混淆せずに明確になっておるということで、大筋は御了承いただけると思いますが、同じ米の中で、さらに陸稲はどうかということになりますと、これは必ずしも陸稲だけの部門ということで独立をいたしておりませんから、原価計算的に十分明らかではございません。これもおおよその見当はつくわけでございます。その場合に、水稲のもちは特に損だから、陸稲のもちも特に下げるようなことを考えているんじゃないかというような御質問であったかと思いますが、これは陸稲のもちが特に損だというふうに簡単に言ってしまうわけにも参らないのであります。と申しますのは、陸稲のもちは人間が直接食うもちとしてはあまり高く売れませんけれども、原材料等に回せばこれはある程度高く売れまして、むしろ水稲のもちよりは有利だというふうなことは言えないことはないわけです。どのように処分されるかということと関連をいたすわけでございますから、そういうわけではないかと思いますが、しかしお話のように、一般の消費者が陸稲のもちと水稲のもちとを食べた場合に、消費者としては陸稲のもちの方に価値を少くしか見ないということは事実でございまして、そういうのを生産者価格にどう反映させるかということは別の問題として、これはあり得るわけであります。食管の収支だけから見る場合と、消費者の嗜好と農業生産をあげさせるということとは多少違う点もありますが、おおよそは一致するとは思いますけれども、必ずしもそこは一緒にはならないわけでございます。外麦は内地米に比べまして益でございますし、内地米の損に比べて絶対額は少いけれども、一俵当りにすればこれはおそらく倍以上損になるわけでございまして、そういう点から見て、内麦の買い入れ価格をどうかするということは、確かに食糧管理の面から見ると考えなければならぬ問題でございます。麦作農家あるいは農業生産あるいは広く国内の食糧自給という点から見てそういう点をどう判断するか、これは大局的にそういう判断も加えて処理すべき問題である、こういうふうに存じておるのであります。
  205. 川俣清音

    川俣分科員 長官、あなたは昔の通りどんぶり勘定が抜けないのですよ。水稲とオカボでは、大臣答弁によりますとオカボを徳用米に回した、こういうことでございます。準内地米と一緒に回した、こういうことです。従って安売りをしなければならない、またもち米についても弁解がありましたけれども、売れないのでこれだけは特別配給米として申込みに応じて余分に配給するというような処置をとってこれの荷さばきをしているわけです。なお売れなかった場合は相当の持ち越しをして、保管料を非常に多く払ってかなりの損失が出ていることは明瞭です。今私ここである程度数字はあげられますけれども、そういうことで争おうとは思っておりません。いずれにしても水稲と陸稲では生産者価格は同じであっても、実際売る場合においては下げざるを得ない状態である。これから起ってくるところの欠損は食管上は欠損だけれども、一体農業政策上この欠損をどうして埋め合せるかという問題は別の問題になります。欠損が出るのは当りまえなんです。計算上出てくる、あえてごまかしていることがどんぶりなんです。この点は閣議決定に基いて明確にしろ、こういうことなんです。私はやはり明確にすべきだと思う。この欠損は一体消費者の負担にすべきものなのか、あるいは一般会計負担すべきものかどうかということを明確にすべきじゃないかと思う。農業政策上水稲と陸稲を同一の取扱いをしなければならないということの長官の説明は、私はこれは反対するものではないのです。当分の間はやはり国内米が足りないときに、やはり増産を期せなければならないというところから同一取扱いをする。しかしながらここに欠損が出てくる、この欠損は消費者の負担ではなくして、農業政策上これを負担するのだという点が明確になってこなければならぬと思う。麦についても同様なんです。麦の一俵当りの損失というものは非常に大きい、ただ取扱い数量が米よりも少いがために総体金額が八十五億にとどまっておるけれども、米と同様な取扱いをするなら二百六十億くらいの損失が出てくるわけであります。ただこれは取扱い数量が少いから八十五億にとどまっている、こういうことになるから、出てくる麦の比率は非常に大きいのであります。従ってこれらはもはや農業政策上この価格で買い取ってるんだということになりますなら、たとい逆サヤであろうと買っておくというなら、それは農業政策上買っておくんだということによって、その負担をだれがするかということを明らかにしなければ農業政策ではないと思う。従ってあなたの頭の中には、この六項目に分けたけれども、頭の中ではやはりどんぶり勘定をいつも脱し切れないでおるのでないか。ではこの点はどうですか。黄変米の損失は一度一般会計から繰り入れて補てんしたことがございます。三十一年がたしか四十億、三十二年が十億の損失を来たしておるように思う。この損失はだれが負担するか。食管会計の中でまかなうことにしてあるが、これはおかしいじゃないですか。閣議決はそういうことじゃない。もう一度閣議決定事項を読み上げましょうか。閣議決定事項を尊重しないような長官は、これは譴責問題ですよ、おどかすわけじゃないけれども閣議決定では、一般経費で、負担すべきものと消費者が負担すべきものと明瞭に区分すべきである、その後に一応一般会計で処置すべきものは処置する、そのかわりに消費者が負担すべきものは消費者が負担するということで値上げをした。おれの方でも負担するから、お前の方でも負担せい、こういう建前をとって、一応閣議決定をして値上げをしたのでありますから、こういう黄変米等については当然一般会計負担をしてしまう。あとで負担するのも先に負担するのも同じじゃないかと言われるが、結果的には同じかもしれませんけれども、そういう費用区分を明確にするということが閣議決定でございまして、まず、黄変米等の損失は行政の状態から起ったものでありますから、この点行政上別個に処理すべきだと思うのです。かつて黄変米についてはたしか十億円一般会計から繰り入れたことがあるにかかわらず、これだけどうして繰り入れなかったか。繰り入れない根拠がまた別に生じたのですか。むしろ前はどんぶり勘定だったからあとで負担をするということはあるが、今度は費用区分を明確にするという決定をしたのでありますから、当然この中に区分を明確にしなければならなかったと思う。大蔵省と小倉長官の二人の答弁を願います。
  206. 小倉武一

    ○小倉政府委員 黄変米のことでございますが、三十一年まではやはり四十億で、三十二年度以降は十億、私ども大体そういう見当でございますが、これにつきましては、過去において特に黄変米の損を一般会計から繰り入れたことはございません。そういう例はございませんが、それでは、過去のことは別にして現在はどうか。お話のように、黄変米の損は一般会計負担すべしということは、趣旨として私も是認さるべき方針であり、主義だと思います。ただ黄変米の問題が問題になりまして、損が出て参りました場合には、同時に特別会計全体としましても実は相当の損になって参っておりまして、そういう損の中の一部として繰り入れが年々されてきておったということであります。いわばどんぶりになっておったわけでございまするので、国が一般会計から繰り入れたものは、内地米の損であるのか、内麦の損であるのか、あるいは黄変米の損であるのかということがわからぬように実はなっているようなことで、特別会計全体としての損として処理されておるわけであります。これが過去の特別会計全体の損の処理の仕方であります。過去はそうでありますが、三十三年度からは損益の区分をするのだから、区分に応じて当然一般会計負担すべきものは負担すべし、特に今お話閣議決定の次第もあり、一般会計負担すべきものは負担するということで予算を組むことも当然ごもっともの御意見と存じます。農産物の価格安定等については、これも従来はどんぶりで処理されておったわけでありますが、三十三年度は御趣旨のようなことがあって、十億損の繰り入れを予算上やっておるわけでございます。黄変米もそういうふうにいたすべきかもしれません。ただ、私どもといたしましては、三十三年度にはなお若干量的なものとしては残りますけれども、黄変米の損というものは三十三年度にはない、三十二年度末残りますのは、その在庫消化を十分考慮いたしまして、損は三十二年度で原則的に終るというふうに実は考えております。従いまして、三十三年度予算につきましても、特に黄変米の損というものを予期しておりませんので、一般会計からの負担ということも実は要求いたしておらない、こういう実情でございます。  それから陸稲の問題でございますが、陸稲だけじゃございませんで、そういうことに関連しての買入価格が水稲と同じ方式で、売渡価格は徳用米等によりまして差別がある、そこで水稲以上の損額が出て参っておるわけでございます。これは食糧管理というよりは、むしろ農業政策上の要請でやっておるんだろうからこれは一般会計負担すべし、これも同じ負担区分の問題の一環でございますが、これにつきましては、必ずしも先生と同意見ではございませんで、陸稲につきまして、むろん食糧全体の問題あるいは畑作の問題等から言いましてある程度の考慮をしなければならぬという、これも事実でございますけれども、同時にまた、食糧の管理なり消費という点から見ますと、現在の食糧事情のもとでは水稲と陸稲とを同一に取り扱うことははなはだ実情にそぐわない実態になっているわけであります。主としてこれは消費の面でございますが、そういう消費の面は、実情はやはり生産の面にも反映していくというのが正しいのではないか。もちろんこれをいきなり一ぺんにどうするというわけには参らないでしょうが、そこには農業政策上あるいは畑作振興等との調整ということが当然に起きてくるわけであります。そういう両面を加味してどうするかということが実は最近われわれに与えられておる問題でありますが、まだ決定的にどうするということはきめておりません。従いまして、三十三年度予算におきましても、陸稲の買入価格も水稲と特に区別して予算を計上しておるというわけではございませんで、全く同一のベースにいたしておるわけであります。
  207. 川俣清音

    川俣分科員 長官のあとの答弁はさきの答弁と非常に食い違っておるのです。さきのはそう区別する必要はないと言い、あとは実態は区別すべきだと言う、従って、そこを農業政策的にどう処置するかということは、食糧庁長官よりも大臣の見解を求めなければならぬ点です。政策でありますから、大臣答弁を求めます。  前段の部分ですが、長官自身が矛盾したことになっておる。これは農産物価格安定法で必ずしも十億というふうに数字が出るか出ないかわからぬ、ぴしっと出ないことは長官が御存じの通り、農産物価格安定法は大づかみで十億、麦の方は決算を待たなければ計算できないと言われるが、どっちですか。同じ会計のやり方で、片方は大づかみでできる、片方はもっと計算してみなければできないというのは、それ自体に大きな矛盾がある。農産物価格安定法はまず十億ぐらいの欠損であろう、ところが米やなんかについて九十六億二千六百万円というようなこまかい数字を出しておりながら、これは決算を待たなければわからぬ、こういうようになぜ二つにしなければならぬかということは、何人も了解しがたいところであろうと思う点が一つ、それからもう一つは、黄変米は明らかに小売りしたのではなくして、アルコールへ持っていったのでありますから、買入価格と売渡価格は明瞭にわかるわけです。保管料が一体どのくらいついておるかというようなことについては明らかでないでしょうけれども、買入原価と売渡価格における相違は明らかであります。その他の手数料等の欠損は不明だとしても、一応買い入れ原価と売り渡し価格の間においての一応の欠損は明らかでありますから、三十二年度において、予算編成後にできた事由でありますから、この点だけでも、明らかに三十二年度の補正で埋め合せておくことが必要になって、閣議決定事項はかくあるべきことを打ち出しているのではないかと思う。これは明瞭なんですよ。その他の付属手数料まで入れたり、金利まで入れたり、あるいは保管料まで入れると、一体何月何日に入れたか入れないか、いろいろ計算がむずかしくなるかもしれませんが、大体原価から売り渡し価格を見ても赤字が出る。その他の欠損はあとで埋め合せるといたしましても、現に出てきたところの表面上の欠損だけは、これは三十二年度の補正で当然入れるべきものだ。これを資金で持つなんということは、はなはだ不都合です。明瞭な赤字です。明瞭な欠損です。もう売ってしまって、これは決算を待たなければならないというようなものじゃない。すでに特別価格で売ってあるのですから、買い取り原価と売り渡し原価においては大きな開きがあって、ここに欠損が出てくることは明らかです。これを埋め合せられないというのはどこから出てくるのか、これは決算を待たないでも、すでに売り渡したものなんです。これは大蔵省、こんな明瞭なものまで決算を待たなければわからぬのですか。
  208. 高木文男

    ○高木説明員 黄変米の損だけを抜き出して繰り入れをするかしないかということは、私どもとしては相当問題があると思います。三十二年度のように、勘定区分が明らかになっておりません際には、農産物の方も繰り入れをしないで、損失補てんという形をとっておらないわけでありまして、その中から黄変米だけを抜き出して損失を確定しろとおっしゃっても、その計算は非常に困難ではないかと思います。ただただいまおっしゃった売価と買い取り価格との差で整理すればできるじゃないか、こういうお話でありますが、売価と買い取り価格を比較して、その差額が損だというわけには参りませんので、保管料もかかる、金利もかかる、人件費もかかりますから、それを合計したところで見ませんと、保管料と金利をはずした売価と買い取り価格の差でもって損失補てんをするということができれば、御指摘のように予算措置も可能かもしれませんが、これは事実問題として、ちょっとできないのじゃないかと私は思います。
  209. 川俣清音

    川俣分科員 それは、あなたしろうとに言うときには、それでごまかしはつきますよ。一般会計から繰り入れております学校給食などについても、手数料とか、その他のものについては見ていない部分がたくさんあります。しかし、それも受け入れて支払うだけのそのものずばりの欠損価格を一般会計から入れておる。黄変米も、どんなに清算をいたしましても、四月の清算期になりましても、黄変米だけに要した手数料であるとか、あるいは金利であるとかいうものの計算は出てこないのです。総体的に欠損として出てきますけれども、黄変米だけの欠損が出てくるなんということはないのですよ。そんな計算はやってませんよ。ここに主計課長がいるけれども、主計課長だってそんな計算はやったことはないでしょう。従って、従来であれば、欠損というものは買い入れ価格から売り渡し価格そのものでもって一応の欠損とし、その他の金利あるいは保管料等は区分できないから、一般の保管料または金利の欠損の中に入れるのであります。これはやむを得ないと思う。しかし表向き計算できないではなくて、できるのです。今までどんぶり勘定でけしからぬというので、大蔵省が指摘しておったのはそこにあるのです。明瞭にできるものをなぜやらないのです。このくらいはっきり出てくるものはないのです。これをどうして資金で持たなければならないか、三十二年度閣議決定では、消費者価格を上げるときに、やむなく消費者価格を上げるのであるから、政府負担すべきものは負担して、しかる後にやるべきものはやる、上げるものは上げるから承知してくれということだった。なお三十三年度からの予算編成方針については、また詳しくやるということだった。これが閣議決定です。まず政府みずから処理すべきものは処理をする。それで処理し切れないものについては消費者の負担を願うということで、消費者価格を十月一日から上げたじゃないですか。それが閣議決定でしょう。だから、当然黄変米等については、行政上起きてきたところの問題でありますから、これを一般会計でまず負担をしておく、残りのわからない点は、あとから一般会計から繰り入れる、または資金で持つという順序でなければならぬのではないか。今まで大蔵省は、そういう主張をしていながら、この際ものをあいまいにするのはどういうわけか。これは、もしあなたで答弁できなければ、大蔵大臣に来ていただいて答弁を願いたいと思います。これは基本方針ですよ。
  210. 小倉武一

    ○小倉政府委員 ただいまのお話の消費者米価改訂の際に、一般会計負担にすべきものと、それから消費者負担にすべきものと、要するに一般会計と特別会計の負担区分をするという問題と関連をしてのお尋ねでございますが、三十三年度につきまして、実はそういう目標でもってある程度研究をいたしたわけであります。閣議決定につきましても、三十三年度予算についてそういう趣旨がうたわれているわけであります。三十二年度につきましては、これはもう事態は進行しており、どんぶりでやっているわけでございますから、三十二年度の損は全体として一般会計で損の填補をする、こういうのが当時の考え方であったわけであります。その後一般会計からの負担その他を研究しまして、資金繰りをするということに相なりました関係上、三十二年度の損につきましても、全体といたしまして、これは理由のいかんにかかわらず、決算確定を待って資金を取りくずして処理をする、実はこういう方針にいたしたわけであります。従いまして、病変米の損もその中の一部として処理される、こういうことに相なるわけでございまして、損の負担を回避するという意味でやっているわけではございません。
  211. 川俣清音

    川俣分科員 弁解せずに、予算説明書を見てごらんなさい。閣議決定もあるし、調査会の決定もあるから、農産物価格の方は十億入れよう、こう言っている。いずれにしても、三十三年度の分も十億入れようという考え方でありますから、三十二年度において明らかになるべきものは明らかにして――消費者価格を三十三年から上げるならば別問題です。三十三年度に上げるときには、政府負担すべきものは負担するから、君らも負担に応じてくれというのが値上げの理由だったのでしょう。値上げを納得させるためにいろいろ使った口実を忘れているようなことでは、政治的責任は免れないのです。それであっては、一体何のために消費者価格を上げたのか、あれだけ反対があったのを押し切っていくからには、るる説明されたはずです。それを信用している。その信用に報いなければならはぬずではないか、あれだけの反対を押し切ったからには、やはり自分みずからやるべきものはやらなければならなかったはずではないか、そういう意味なんです。  それからいわゆる麦の損失は、取扱い数量、取扱い金額からいきますと、相当膨大なものになる、陸稲にいたしましても、価格構成からいうと不当なものになるのだが、これは、一つ農業政策として下げないなら下げない、あるいは長官の言うように、実勢に応じた価格で買い取るのか買い取らないのか、あるいは農業政策を加味するのかどうか、加味するならばどこで負担するかというようなことは、大臣が来たら伺いましょう。陸稲とか麦なんかを下げるということなら、選挙を前にして、大臣はなかなか大へんなことだろうと思うから、どうしてもこれは聞いておかなければならぬ。ぜひともこれは大臣から答弁を求めなければならぬ。そうすると、いずたらに米にだけ負担をかぶせておいて、麦とイモ、陸稲は農業政策を加味して、一体米の方は加味しないということもおかしなことになってきて、自己矛盾に陥るだろうと思うけれども、それは大臣が来てからの楽しみに残しておきます。  次にお尋ねをいたすのでございますが、先ほどの説明によりますと、金利負担が安くなっているのだということでしたが、これは、三十三年は高くなっておりましょう。これが一つ。  それからもう一つ、時間がないから急いで質問しますが、ほんとうは合理化という形からいきますと、予備費の少くなるのがあたりまえです。普通の予備費と違って、これは証券発行の見合い勘定になるのでありますから、一応は使われる性質のものです。貸借対照表の上では一応使われなければならぬ。証券発行の対象の見合いになるのでありますから、普通の予備費とは違う。単なる歳出権といいましても、これは必ずしも歳出するのじゃないけれども、見合いとしての証券発行をいたすのであります。必ず貸借対照表に載せてあるでしょう。予備費だけは使っておる形をとっておる。証券発行の見合い勘定になっておりますから、これは使っておるのです。従いまして、その点の合理化からいきますと、予備費などを少くするというならば、これは合理化でありますけれども、五百五十一億というような予備費を出すことは、合理化でないということが一つです。もう一つの点は、こういうふうに見合いをいたしますと、金利が上ることになります。  もう一つは、これだけの予備費を持つならば、三十二米穀年度は十四日ですか、今度三十三米穀年度は十一・七という配給日だ、こう区別するのはどういうわけか。あなたの方は、本来のコスト主義をとるならば、米穀年度の幾らで買ったものを幾らで売るというなら、コストは出るはずです。会計年度でコストが出ないのが本来です。しかも配給日数は違うというふうに区別しておりますから、ほんとうは米穀年度でコストを見なければならぬ。コストということは、まず私は反対でありますけれども、一歩譲歩してみましても、ほんとうは米穀年度金利、倉敷など見なければならないはずのものです。それをあなたの予算説明によりますと、たしか十四日と十一・七日だと思ったのですが、配給日数が違うのです。これだけの証券発行を持ち、予備費を持ったならば、十一・七日の配給なんということはどこから出てくるか。これだけの金を使うだけの権限を与えておりながら、配給日数が減るということは、どこから出てくるか。これだけ使えば十五日、十六日の配給ができなければならぬ結果になる。金の方はよけいよこしてくれ、配給は少いということになったら、保管料はかさみ、金利がかさむのはあたりまえのことです。どうして三十三年は十一・七日にしたのか。予算請求の方は多くて配給日数は少いということは合わないじゃないですか。証券発行高から見ましても、去年よりも多く証券を発行することを用意していながら、配給日数が減るというのはどこから来たか、この点一つ
  212. 小倉武一

    ○小倉政府委員 金利の点でございますが、小平さんの御質問で、中間経費のことでありましたが、金利総額といたしましては前年度と本年度と比べて、前年度百二十二億、本年度百十四億と、確かに総額予算上減っております。しかしこれは必ずしも実質上の金利負担が減るという意味ではないということをちょっと申し上げたわけでございます。実際は予算の見積り以上に国庫余裕金が多くなりまして、実際の金利負担は相当軽減される見込みです。大体実績に近くなると見ましたが、相当軽減される見込みでございます。それで川俣さんのお尋ねは、こういう前提において、米は単価といたしまして石当りの金利がなぜふえておるのだ、全体は減っておるのになぜふえるのだ、こういう御質問でございます。これにつきましては予算委員会で主計局長からちょっと答弁があったと思いましたが、今度の予算の上では部門別経理をいたしました関係上、従来の金利割掛と多少変った点がございます。それは米の概算金のための借入金利をどうするか、概算金のための借り入れも従来はいわばどんぶりで全部にかかっておったわけであります。今度はそれはまずかろう、せっかく米は独立するのだから、概算金の支払いのために必要な金利負担は当然内地米部門ですべきだというようなことで、内地米にふりかかる金利部分が多くなったのが一つでございます。なお補足いたしますと、米につきましては米屋さんに米を売る場合に延納を認めておったわけであります。今でも若干認めております。延納を認めますと、延納金利は糧券の金利よりも高くなりまして、食糧庁としては収益金になるわけです。ところが延納はだんだん圧縮するというのが公団廃止以来の原則でありまして、従って今回の予算も圧縮した上に立っておりますので、その雑収入といいますか、そこで入ってくる特別会計の収入としての金利が減って参ります。これも米の関係金利でございますので、収入が減れば金利負担は全体としてはふえる要素になるというような関係で、米にかかってくる金利は結果として多くなる、計算上の問題でございますがそういうことであります。  それから配給日数の点は、予備費をたくさん使う用意をしておるにかかわらず、配給日数を減らしたのは変ではないか、こういう御質問でございます。実際たとえば内地米について予備費が三百五十億も要る、こういう事態になりますれば、これは配給がふえます。十一・六日というふうなことで予算の説明に書いてあるかと思いますが、それがふえます。というのは、二千九百万石ということで集荷を目標にいたしておりますので、それを前提とすればそういう配給日数になろう。しかしこれもこういう想定でありまして、予備費を使えるという前提に立てばこれはふえるわけです。しかしそういう事態が予測できますならば、むしろ予備費は減らして、二千九百万石をふやそうということが予算建前になりましょうから、予備費で内地米の購入がふえるかもしれないというのが配給の面では実は立たないわけでございます。  それから予備費が非常にふえておりますのは、これはもう御承知だと思いますけれども、従来どんぶりでありましたから、輸入食糧の購入費でもって、それは減らして内地米を買うということもできたわけでありますが、今回はさようなことはできない、これが一つの理由であります。もう一つ金額をなぜその程度にしたかということにつきましては、従来の買い入れ量の変化、これが計算上年々三百十万石程度変動し得る、その過去の統計上一番予測される三百十万石をとりまして、これは石一万円とすれば三百十億でいいわけでございますが米価も一万円では必ずしもございませんし、米の買う量がふえますれば、お話のように多少他の中間経費等が増高するということも考えられまするので、三百五十億ということに実はいたしております。そういう三百五十億を使わなければならない事態になりますれば、もちろん配給日数もふえてくるというふうに、これは米価の問題もございますけれども、そういうふうに考えております。
  213. 川俣清音

    川俣分科員 あなたたちのは説明にならないですよ。予備費ばかりで言っているのではない。この証券発行を基礎にするとこれだけの利子をとらなければならないという計算ができることは当りまえなんです。それはそれとして利子を認めますよ。しかしそれだけの利子を認めるには認めてそれだけの食糧を買う――これは国内米ですよ、国内米の予算ですから。それだけの支出を要求されておるからには、十一・六日という配給日数は少いのじゃないか。金利負担だけが大きい。これだけ米を買うというのでしょう。証券発行の方は上っておって実際買う米の方は少い、こういう格好になっておる。だから利子だけが高くなって、払わされる利子は実際よりも高い利子になっているかもしれない、実際は払わぬかもしれない、こういう結果になる。もしも払えばこの通り金利高になることは明確です。この金利高を認めれば配給日数は当然ふえていかなければならないはずなんです。それが一つです。まあわからなければあとで調べてみられた方がいい。どうせあなたの記憶の方が間違いだということは明瞭だから。  それからもう一つは、十一・六日なんて言っているから持越米が非常に多くなっておる。会計年度でいくと、三十二年度の例をとりますと買い入れが二千七百万石、持ち越し二千百万石、売却数量二千九百万石ですから、持ち越しが非常に多過ぎる。これが保管料を高め、金利負担を高めておるのです。だからもう少し配給量を多くすればいいのです。配給量をずっと増せば消費者も非常に恩恵を受けるし、金利負担も少くなり、保管料も減ってくるわけです。しかしながら安全率をもってこれをもしどうしてもということになりますならば、その分は行政的に必要として持つのでありますから、直接消費者の利益よりも政府一つの行政施策として持つならば、あるいは外国為替の関係とかいろいろな面で行政的に持つとするならば、この金利負担というものは当然除かれなければならぬ、また保管料も当然除かれなければならぬと思う。大体通念で端境期に五、六百万石の持越量を持ち越してあれば十分です。非常な不作を予想した場合、秋が不作だという場合におきましては別でございますけれども年度持越量などについてはもっと減っても十分だと思う。供給量を四千八百万石も持ち売却二千九百万石でしょう。こんな経営の仕方はないですよ。最も消費者に喜ばれない方法じゃないですか。食わせないで見せびらかしておいて、金利はとる、保管料はとるなんてばかなやり方がありますか。食わせておいてお前負担しろというのならばいいけれども、食わせないで保管しておいて、虫に食わせておいて金利負担しろ、保管料を負担しろ、ロスを負担しろ、こんなばかな話がありますか。配給日数が少いということで主婦の会あたりやかましいときに、配給量をふやさないで虫に食わしておいて、その金利負担せいといってもこれは断じて承服できない。これはどうです。
  214. 小倉武一

    ○小倉政府委員 持越量の点につきましては、そう特におしかりを受けなければならないほど多くいたしておるわけではございません。お話のようにそうたくさん持ち越して金利、倉敷をかけておるというようなことにはなりませんし、またそういたすべき筋のものでもないわけでございます。どこの数字をごらんになって今のおしかりを受けておるのか私ちょっとわかりませんのですが、三十三米穀年度で申し上げますと、三十二年から三十三年にかけて、すなわち去年の十一月、そのときと比較いたしますと……。
  215. 川俣清音

    川俣委員 四月に持ち越すのは幾ら、三十三年度の買い入れ幾ら、こう見ればいいんですよ。
  216. 小倉武一

    ○小倉政府委員 四月の持ち越しの高を御論じになっておられるとしますと、去年の産米は三千百万石買う前提に立っておるわけであります。大体それに近くいくと思います。ところがその前の年におきましてはたしか二千九百万石切れておったと思いますが、買い入れ量がそれだけ現実に違って参ります。従いまして四月における持ち越しも前年度とは違ってくるわけです。それからまた前年におきましては二十日配給ということで、ちょうど今ごろに当るわけですが、これは二十日配給をやっていましたから、二十日配給をやっていけないということで、春になりまして配給日数を減らさざるを得ないということに相なっておりますので、今回、三十三米穀年度では初めから二十日配給ではございませんで来ておりますから、その点でも四月における持越量は違って参っておる。これはやむを得ないことと存じております。端境期である米穀年度の末で比較していただきますと、たとえば昨年の産米のことしの秋の持ち越しは約十六万トンに予想いたしておりまして、さほど多い数字というふうには考えておりません。
  217. 川俣清音

    川俣分科員 十四日配給を十五日半にすると端境期は相当困難であることは困難だと思います。しかしながら十五日半ともう一日半延ばすことによって、保管料は下り、金利負担が軽減されることは明瞭です。少くともここで七、八億から十億近い倉敷料と金利が削減されることになります。ただ端境期には幾らか危険だということになりますが、端境期の危険は、まず初めから平年作だという見込みならば、そう危険ではないということになる。非常に作柄を危険に見ますと端境期の五、六百億の持ち越しというものは危険にさらされる。みな貯蔵してしまって各小屋に買いだめをするということになると五、六百万石では非常に危険になりまするけれども、豊作だということになりますると買いだめをやらないことになります。また売り惜しみをしないということになりますると、十分十五日半でやれるのであります。そこで十億近い欠損を埋め合せることもできるということも計算上できないことではないのです。そういうことをやらないで、なるべく自分では安全率をとっていながら、その安全率をとるための消費者の負担、生産者へのはね返りというものを無視されることについて警告をして、修正の意のあることを明らかにしておくのですが、そこでこういうふうになって参りますと、三十三年の米の買い入れ価格は、予算米価は一万二百円でありますが、パリティの上昇等によりまして、三十二年のバック・ペイ、または三十三年の価格は上昇するような傾向にございますが、この点はお認めになりますかどうか。
  218. 小倉武一

    ○小倉政府委員 バック・ペイは、お話のように、期間をかけてみませんとわかりませんけれども、米価決定後は若干上っています。しかしまた最近は下ってきておるような状況でございますから、果してどうなりますかわかりませんけれども、多少の変動ということではバック・ペイをするというつもりはございません。  それから三十三年度米価につきましては、きまりますのはいつになりますか、今年の六月ごろになるかと思いますが、そのころ一体パリティがどうなるか、なかなか推測がむずかしゅうございます。大体パリティは卸物価等から比べますると、十ヵ月くらいおくれて動くようでございます。かりに十カ月くらいおくれて動き、卸物価の足取りをたどるということになりまするとむしろ予算米価で前提とした十一月のパリティよりはことしの五月、六月ごろはパリティは下るだろう、こういうことになるわけであります。しかし果してそうなるか、これもわかりません。パリティが上れば、もちろん上った。パリティで五月、六月ごろの諸情勢を勘案して米価はおきめ願う、こういうことになるだろうと思います。
  219. 川俣清音

    川俣分科員 今の答弁は誤解を招く点だと思うのですが、第一点の三十二年度はパリティ価格でやったのであるから、パリティ指数の上昇によって僅少であれば別だけれども、バック・ペイをしなければならないというふうに理解をされると思うのです。僅少といいまするから、一円とか二円とかいうことにはやらないけれども、少くとも十円とか、二十円というような開きがあればやるようにも聞えたと思うのであります。それから三十三年度は、御承知通り、長年の米価審議会の意向によりまして、パリティだけではいけないということを示しておりまするし、また所得均衡の方式を今度は加味しなければならない情勢の中に食糧庁は置かれておると思います。予算米価は、これはパリティで一応の目安として出すことはやむを得ないにいたしましても、やはり所得均衡方式が均衡上要求せられるであろうと思われるわけであります。というのは、先ほども申上げたように、麦の損失あるいは農産物の損失、そういうものを見合いに考えていきますると、米麦価格均衡の上からも麦価との均衡の上からも、かなりの要求が強く出てくることは明瞭であります。従いましてオカボとの均衡からも出てくるでありましょうし、そうしたかなり多難な要求が出て参るだろうと思いますが、三十三年度に予想せられる赤字というものは目安の赤字であって、それに重きを置いて米価を抑制するようなことはないと理解してよろしゅうございますか。この点一つ……。
  220. 小倉武一

    ○小倉政府委員 三十三年度の損の見込み、これはお話のように見込みでございまして、従ってこの損の額に左右されて諸般のことが大きな影響を受ける、こういうことは万々あるまい、私もない、こう思っております。
  221. 川俣清音

    川俣分科員 大蔵省それでよろしゅうございますか。
  222. 高木文男

    ○高木説明員 そうです。
  223. 川俣清音

    川俣分科員 それでは大臣が見えましたし時間もだいぶおそくなりましたので、一つ大臣お尋ねいたします。今大臣の留守中に麦価並びに陸稲の価格の問題が出たのでございます。それは実勢に応じた実体価格は別にいたしまして、何らかの農政上の意味を加えて水稲と陸稲とを同一の価格で買い取っておるんだ、売り渡すためには陸稲では幾らかの損はするけれども農業政策上同一価格で買い取っておるんだ、麦もまた米と比較いたしますと取扱い数量、金額が少い割合に一割以上の八十五億も損失を出す、米は六千億の金を使ってわずか百十二億の損失だ、麦は六百億ばかりで八十五億の損失である、こういうことが三十三年度に明らかになっておるわけであります。こういうふうにいわゆる損失を消費者に負担させるあるいは生産者に負担させるということになると、麦の価格を下げなければならない、あるいはオカボの買い入れ価格を下げなければならないという結果になるようなんですが、この点はどうお考えになっておりますか。やはり農業政策上今日の畑作振興の上から麦価は下げるべきじゃないし、また国内米が不足であって外麦と対抗していかなければならぬ状態の中においては、実勢はあるいは低いかもしれぬけれども農業政策上やはり水稲と陸稲とは同一取扱いをしなければならないというふうにお考えになっておりますか、この点を一つお尋ねをしておきたいのです。
  224. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 麦の価格等につきましては、私から説明する必要もないことでありますが、外麦は非常に安いのであります。そしてまた内地の麦類につきましては実は間接統制に移したわけでありますが、実際問題としては直接統制と同じようにほとんど全部にわたりまして政府が買い上げておる、こういう事情であります。でありますので外麦との比較ということから考えますならば、内麦は非常に高いことにはなっています。そうしてそれを安く売っておりますので、その点によりまして会計上におきましては損は生じておる、こういうことでございます。しかしながら今もお話がありましたように、畑作の振興ということで麦の生産費を低く見るということにつきましては、私どももいろいろ政策を打ち出していかなければならないと思いますけれども、しかしまだそのめどがついておらぬような状態であります。生産費をどれだけ引き下げ得られるかということが、決定的になっておらぬような状態であります。そういう状態でありますので、やはり畑作の振興という面から考えまして、ことしの麦価等につきましては、食糧管理法に定めておるところのパリティ方式によって価格を算定いたしますから、これを下げるということはあり得ないので、大体ことしと同じような状態に麦類の価格は決定される、また決定するという方針で進めておるわけでございます。また陸稲につきましては、今お話通り、消費者価格においては八百五十円が、陸稲においては七百七十円ですか、こういうふうに差がありますので、その面から考えますならば、陸稲の買い上げ価格ということにつきましても差が生ずるという結果に筋合いはなろうかと思います。しかしこの問題は畑作の問題あるいは転換の問題、いろいろありますので、今直ちにどういうふうにということは申し上げられませんで、諸般の事情を検討いたしておるところでございます。
  225. 川俣清音

    川俣分科員 いずれにしても大臣答弁を要約すると、消費実勢はいかにあろうとも、やはり農業政策上、畑作振興の上からも既存の法律建前からいってもこれ以上下げるということは困難であるし、また農業政策上下ぐべきじゃない、陸稲についても、あるいは下ってそこに欠損が出てくるかもしらぬけれども、やはり農業政策上にわかにこれを変更することはできない。そういたしますと、米麦からカンショ、バレイショに至るまで日本の農産物は保護政策をまだ捨てかねる状態である。いずれ生産資材の価格を下げて生産費を下げるようにして対抗するまで今の価格を維持していかなければならぬ、その間の損失は一般会計で見ていくよりほかないという結論であったと思いますから、私はそう了解して了承いたします。そういうふうに了解しないと、米と麦との価格の均衡あるいはバレイショ、カンショ等の価格の均衡ということの説明がつかなくなるから、総体的にさように了解をいたします。  そこで問題は、そういう意味からいいますと、三十三年度の米麦の買い入れ価格もやはり農業政策を加味した価格であって、いわゆる均衡価格などということが容易に口にはいわれますけれども農業政策上なかなかそこには到達し得ないのだということが大体明らかになったと思うのでございます。  大体私の質問は、時間が参りましたからこの程度にいたしますが、まだ内容にわたってかなり検討すべきものがございます。配給日数等につきましてももっともっと配給ができ得ると思うのでございます。  最後に一つお尋ねいたしますが、これは大臣長官一つお尋ねするのですが、通産省では砂糖の輸入、管理、割当等は農林省にまかせてある、こういうことでございます。通産省は、農産物及び食糧として取り扱わないで加工原料として取り扱っていいんじゃないかという質問に対しましては、これはやはり食糧であって農林省へまかせておるのであるという見解であります。そこで消費税がいいか関税がいいか、食糧庁にこれをまかした方がいいかということについては言明を避けたのでありまして、農林省考え方いかんであるというような答弁であったわけであります。そういたしますと、ここに現在とっておるような消費税をとることがよろしいのか、あるいは関税で収入とする方がよろしいのか、あるいは食管会計の中に入れて全体の食糧行政として砂糖を取り扱う方がよろしいのか。私から言うと、これはいずれにしても砂糖が入るということによりまして打撃を受けるところの農産物があるのであります。これはカンショにいたしましても、バレイショにいたしましても、砂糖の輸入によって打撃を受けるのでございます。従いまして食糧全体としてこれを外国食糧として取り扱うことが最も適当ではないかと思うのであります。その意味におきまして輸入食糧の勘定の中にこれを入れた方が適切ではないか、全体の農業政策の上において、この方が必要ではないかと思うのですが、大臣の見解をお聞かせ願いたい。
  226. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今のお話のような考え方も、非常に時宜に適した考え方とも考えられます。しかしなかなか複雑しておる面もありまして、今にわかにその通りに行うということにつきましては、まだ検討の余地が残っておりますので、検討の上でありませんと、すぐそういうふうにするというわけにも参りませんが、これは一つ検討の期間を与えていただきたいと思います。
  227. 川俣清音

    川俣分科員 一般会計から入れるということを毎年繰り返しておって卑怯な態度をとるということよりも、通産省がこれは農林省に属するんだということを言うのでありますから、これを輸入食糧の中に入れることがいいじゃないか。砂糖を取り扱うということになりますると、一般会計から繰り入れてくれと高木君のところへ行って頭を下げないでも、幾らか余裕金があって、資金があって、時には会計剰余金があって貸してやるくらいになりかねない。実際なるんです。そうすると一般会計の世話になる必要はない。それでだんだん基金を積んでいき、あるいは資金を積んでいきますと、この間も申し上げたんですが、あへん特別会計なんというあんな変な会計でも七千五百万円の資金を持っているんですよ。保健衛生の上からアヘンを管理するために一般会計から繰り入れて七千五百万円の資金を使っている。それで益を生み出している。これは食糧だって資金を持ち、基金を持ちますならば、赤字なんか出さないでいい。そうなりますと、五年とか六年の長期の食糧対策ができる。大体一年とか二年で買って損するとか得するとかいう食糧管理会計ではない。毎年赤字だ黒字だといって騒ぐ食糧管理会計ではありません。長期にわたって食糧を安定して価格の変動をなくしていくということが食糧管理会計の基本でなければならない。その年で上った、来年度は下ったというようなこと、不作が来ればすぐ高くなり、豊作なら下るというような変動を与えてはならないのが食糧管理会計の持つところの一つの特徴なんです。長期にわたって初めて黒字であるかあるいは欠損であるかということを見るべきものであります。従ってここに資本の充実をすることが必要であるというので、資本の充実を今要求してもなかなか得られないのでありますから――砂糖は食糧です、世界的標準として食糧の部類に入る。これを総括的な食糧の中に入れて操作をすることが正しい行き方だと思う。麦は入れられた、麦粉は入れられたということになりますと、当然砂糖も食糧会計の中に入れてしかるべきものなんです。だから卑屈になるんです。一般会計から繰り入れることができるかできないかというので青くなるような結果にならないで、りっぱに食糧全体の管理ができるようにならなければならぬ。しかも砂糖は最近輸入が非常にふえてきている。これほど輸入していいかどうかということは問題なんです。そういう意味でもほかの食糧との見合いにおいて砂糖を入れたならば小麦を少くする、あるいは小麦を多く入れて砂糖を少くする、あるいは米を入れて砂糖を少くするというような総ワクの食糧対策の上からも一貫性を持つべきだと思うのであります。まだ検討中というような問題でなく、もう検討が終っておるべきだと思う。この点もう一度大臣から答弁をしていただきたい。
  228. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 あへんの特別会計との比較におきまして、食糧管理の会計におきましても、相等額の一般会計からの繰り入れを行なってもいいんじゃないか、こういうお話でありましたが、食糧管理会計におきましては、これまで御承知通り、国の余裕金、相当無理した金を使っております。それからまた終戦直後よりも、価格の面についても相当安定的なところへ持ってきております。あるいはまた生産面においても、米の生産におきましてもその他におきましても、大体平年作というものは相当上ってきておる、こういうことでありますので、今御提案申し上げておりますように、三十二年度の補正における百五十億の資金というものによってこれを運用していきますならば操作の見通しが今のところできる、こういうふうに思っておるわけであります。そこでなお一そう食糧管理会計を強化する意味において、あるいは食糧全般との見合いにおいて、砂糖も食糧管理会計の中に入れて処理していった方がいいんじゃないかというふうな御意見であります。砂糖につきましては、私どもも輸入を極力少くしていきたい、そうして国内の自給度を高めていきたいということで、テンサイ糖による砂糖の増産あるいは結晶ブドウ糖等によって砂糖を作っていくというような形で、国内の砂糖の自給化を進めていきたいと考えておるわけでございます。そういうわけでありますので、この方面は御承知通り食糧管理会計においてまかなっておるわけでありますが、そういう今行なっておること等の進展との見合いにおきまして、御意見の点も考えていきたいと思いますが、今すぐにこれを食糧管理会計に砂糖をみんな入れて経理するということにつきましては、なお研究の余地もいろいろありますので、直ちにとは申し上げられませんが、御意見は貴重な御意見として承わっておきたいと思います。
  229. 川俣清音

    川俣分科員 時間がないから結論を急ぎます。食糧を加工いたしまして膨大な利益を上げるというようなことはできないのが、食糧及び農産物の持っておる一つの持ち味なんです。ところが砂糖だけにはこれを加工することによって、砂糖会社が膨大な利益を上げておって問題を起しておるような点なんです。従いましてそれらの食糧の利益などというものを一般消費者から奪うべきものではないのでありますが、割当等の不適正または外貨というような特異な割当の結果、そこに非常に大きな利潤を生んでおるのでありまして、これを是正しなければならないということも当然考えなければならない。他の食糧の場合には生産者に相当の犠牲を負わせなければならない反面を持っておるときでありますから、これに加工を加えるものもまたそう利益を取るべきものではなくて、利益を薄くするという建前をとるべきであると思うのであります。従ってその点では食糧の配給業者といえども決して多くの利益も得られないで青息吐息をしておるときに、砂糖の加工業者だけが特別に優位な地位にあるがごときは、これは許さるべきじゃないと思う。従ってそういう点からも食糧管理会計の中にこれを入れまして、いわゆる溶糖業者、砂糖業者の利益の生まれる余地をなくし、これを国民に広く均てんせしめるという意味におきまして、食糧全体に均てんさせるという意味におきまして、私が今提案をいたしたのでありまするから、これはとくと一つ研究をしてすみやかなる処置を望みたいのでございます。大体農林省の割当の基準がでたらめで、これは大したもんです。今これはほんとうはみんな洗い出そうかと思ったのですが、時間がないから洗い出すのはかんべんいたします。その点は一つ抜きます。  最後に一点だけ、これは食糧じゃございませんが、農林省に常勤職員が非常に多いのでございまして、これが閣議決定に基きました責任体制の上からも、大臣の人事権の統一の上からも、すみやかに常勤を定員化することが必要であろうと思いますので、この点についての大臣の見解、並びに同じ農林省の中でもしし営々として全く背景なしに事務を遂行しておりますものに統計調査部というのがございます。ほかでは大てい一般と接触が非常に多いために、間接に一般国民から非常に援助を仰いでおるのでありますが、統計調査事務だけは非常にこれは例外視されておる事務でございます。それだけに第三者的な立場をとっておるのでありまして、この統計の充実が将来の農業政策の上に非常に大きな寄与をいたすものであります。従って農林省の統計調査事務というものは、日本の農業統計がずさんであるという非難があるだけに、もう少し充実しなければならぬのじゃないかと思いますので、抽象的でありますけれども、この点と、常勤の定員化、この二点について大臣の所見を承わりまして、私の質問を終りたいと思います。
  230. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農林省におきましては、今お話のように、定員外職員が常勤職員で一万九千二百六十五名、常勤的非常勤職員が一万五千三百九十二名、こういうふうにありますので、私どもといたしましては、この定員外の常勤職員あるいは常勤的非常勤職員を定員化するということには賛成でありまするし、そうしたいということで、実は定員法の改正に当りましてもこの点を努力いたしております。しかしながら一方において公務員制度の根本的な改正が予定されておりますので、そういうことと見合いになりまして、定員化を全部するということは、今非常にむずかしいような状態になっておるわけであります。でありますけれども、私どもといたしましては基本的に定員化するということには努力をし、またそうしたいと考えまして、このたび定員法の改正につきましても、農林省といたしましては公務員制度調査会の答申にあって、なお検討を要するものとされている技能あるいは労務を除いた一般職員の中から一定の勤務年限をこえるものの定員化を行うべく要求いたしたのであります。その後行政管理庁とか大蔵省との作業の結果といたしまして、組織の規模とか職務の内容とか、定員の構成等を総合勘案して、必要最小限度に定員化を行うということになりまして、その結果はほかの省よりも力強い要請によりまして、定員化は非常に多くなっておるわけであります。ことに今御指摘の統計調査事務ということは、統計の正確も期さなければなりませんし、また一般にといいますか、非常勤あるいは常勤的のものでも定員化されないということでありますと、職員の熱意もどうしても薄れるということでありますので、その点も特に強調いたしまして、定員化に努めたわけであります。ことに御心配になっておりまする被害調査員等の末端の統計調査員等につきまして定員化に努めましたが、これを全部定員化するということにはまだなっておりませんような状態でありますが、一部分定員化することにいたしました。しかし定員化にならなかったものにつきましても、非常勤職員を常勤職員に格上げするというふうな措置をもって一応処置をしておるわけでありますが、今お話のように、私どもといたしましても定員化を急ぎ、また定員化をしたいという強い心がまえのもとに折衝いたしておるのでありますが、全部できませんし、まだ足らない分もあります。公務員法の改正が近くでき得るならば、そのときに相当また定員化したい、こう考えております。  現在の状況を申し上げて、またお力添えをお願い申し上げておきます。
  231. 八木一郎

    八木主査 他に御質疑がないようでありますから、これをもって昭和三十三年度一般会計予算経済企画庁農林省及び通商産業省所管並びに昭和三十三年度特別会計予算農林省及び通商産業省所管に関する質疑は全部終了いたしました。  この際お諮りいたします。本分科会所管の予算両案に関する討論、採決は、先例によりまして予算委員会に譲ることにいたしたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  232. 八木一郎

    八木主査 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  これにて本分科会の議事は全部終了いたしました。分科員各位の御協力によりまして円満に議事を進行することができましたことを、深く感謝いたし、御礼を申し上げます。  これをもって第三分科会を散会いたします。     午後七時十三分散会