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1958-02-14 第28回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十四日(金曜日)     午前十時二十八分開議  出席分科員    主査 八木 一郎君       植木庚子郎君    内田 常雄君       久野 忠治君    重政 誠之君       楢橋  渡君    加藤 清二君       川俣 清音君    小平  忠君       田中 武夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  前尾繁三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       小笠 公韶君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     阿部 久一君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (重工業局長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (軽工業局長) 森  誓夫君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         通商産業事務官         (鉱山局長)  福井 政男君         通商産業事務官         (石炭局長)  村田  恒君         通商産業技官         (鉱山保安局         長)      小岩井康朔君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      小出 榮一君         工業技術院長  黒川 眞武君         特許庁長官   井上 尚一君         中小企業庁長官 川上 為治君     ――――――――――――― 二月十四日  分科員大橋武夫君、有馬輝武君及び栗原俊夫君  辞任につき、その補欠として久野忠治君、加藤  清二君及び田中武夫君が委員長指名分科員  に選任された。 同日  分科員久野忠治辞任につき、その補欠として  大橋武夫君が委員長指名分科員に選任され  た。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算通商産業省所管  昭和三十三年度特別会計予算通商産業省所管      ――――◇―――――
  2. 八木一郎

    八木主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  本日は昭和三十三年度一般会計予算及び同特別会計予算中、通商産業省所管議題といたします。まず政府説明を求めます。前尾通商産業大臣
  3. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいま議題となっております通商産業省予算答案について御説明を申し上げます。  まず三十三年度通商産業省所管一般会計予定経費要求額は百八億三千七百三十七万九千円でありますが、このほかに大蔵省予算として計上されております中小企業信用保険公庫出資金二十億円、保険準備金出資金六十五億円計八十五億円及び日本貿易振興会出資金二十億円を加えますと、二百十三億三千七百三十七万九千円でありまして、これを三十二年度総額百億九千八百四十四万二千円に比較いたしますと、百十二億三千八百九十三万七千円の増額となるわけであります。  しこうして三十三年度予算のうち政策事項についてはこれを四項目に分類いたしております。すなわち第一が貿易振興及び経済協力対策費、第二が中小企業振興対策費、第三が鉱工業技術振興対策費、第四が産業基盤強化対策費であります。  次にこれら経費について御説明申し上げますと、第一に、貿易振興及び経済協力対策費といたしまして総計十七億三百三十七万七千円でありまして、これを前年度予算額十二億一百七十一万二千円に比較いたしますと五億一百六十六万五千円の増額でありますが、さきにも申し上げました大蔵省予算として計上されております日本貿易振興会出資金二十億円を加えますと実質的には二十五億一百六十六万五千円の増額となるわけであります。  施策重点は、今後における世界的な輸出競争の激化に対応し、国際収支長期的均衡を可能ならしめることが現下の急務である点にかんがみまして、海外市場開拓販路拡張をはかるため、前年度に引き続き貿易情報整備市場調査充実国際見本市等開催参加及び取引あっせん等のための在外機関整備拡充をはかりまするとともに、意匠改善輸出検査強化等輸出増進のための基礎的施策を推進することといたしております。  まず、貿易振興中核体といたしましては、従来財団法人海外貿易振興会がこれに当っておりましたが、安定した基礎に立脚した強固な機構により貿易振興のための諸事業を強力に推進するため二十億円の基金をもって新たに特別法に基く特殊法人日本貿易振興会を設立するとともに、同法人事業運営に必要な経費として前年度対比三億一千三百六十八万一千円増しの八億八千五百十万円を計上しておりまして、海外市場調査国際見本市等開催及び参加貿易あっせん所運営日本商品海外宣伝等総合的に輸出振興事業を推進しようとするものであります。  すなわち海外市場調査につきましては、海外市場開拓し、わが国商品販路拡張をはかることは輸出振興のための基本的事項でありますので、海外市場調査を一そう強化するため前年度より二千五百七万七千円増額した一億二千九百八十九万円を計上いたしまして、海外における諸情報の迅速なる収集をはかることにいたしております。  次に、国際見本市参加等補助につきましては、前年度より一億七百万円増額の二億三千八百五十万円を計上し、三十三年度開催予定されております国際見本市中、特に輸出振興上効果の期待されるニューヨークにおける世界見本市参加等九カ所程度に対し、大規模参加予定しておりますほか、日本国際見本市補助につきましては、前年度に引き続き同額一千万円を計上しておるのであります。  次に、わが国商品の展示、紹介及び貿易あっせんを行う貿易あっせん所につきましては、三十二年度に引き続き、既設のニューヨークサンフランシスコ、カイロおよびトロントの四カ所を運営いたしますとともに、三十三年度におきましてはさらに二カ所程度これを増設し、その活動を活発化するため前年度に比し七千万円増額した、二億二千二百五十八万六千円を計上しておるのであります。  またわが国商品及び産業経済の実態を海外へ紹介宣伝するための海外広報宣伝費を二億六百三十九万七千円計上いたしましたが、特に三十三年度におきましては新たに海外における輸入制限運動予防調査を行うことといたしておるのであります。  次に、農林水産物輸出振興事業費につきましては、前年度対比一千七百七十三万八千円増しの七千万円を計上し、農林水産物に関する海外市場調査及び宣伝強化拡充するとともに従来の海外共同施設事業を継続するほか、新たにサンフランシスコ合板関係共同施設を設置するごとといたしております。また医薬品の販路開拓宣伝紹介を実施するため医薬療品輸出振興事業費として、前年度対比三百万円増しの八百四十八万九千円を計上しておるのであります。  なお輸出品意匠向上事業費といたしまして、前年度とほぼ同額の九百二十三万八千円を計上し、意匠留学生海外派遣及び優秀デザイン商品収集をいたす所存であります。  以上日本貿易振興会事業に関して御説明申し上げましたが、その他の貿易振興事業について以下御説明申し上げたいと存じます。海外市場開拓のための経費でございますが、前年度対比三千五百十八万三千円を増額した四億九千二百二十三万円を計上いたしております。そのうちおもなるものにつき申し上げますと次の通りであります。  まづ、三十三年四月よりブラッセルにおいて開催される万国博覧会に参加するための経費一億二千四百九十四万八千円を計上しておりますほか、絹織物及び生糸の海外宣伝費補助として三千三百六十九万円、中南米に巡航見本船を派遣いたしますための補助金一億四千四百万円を計上いたしておるのであります。  次に、プラント輸出促進対策といたしましては、現地における機械設計技術相談等の便宜を供与する日本プラント協会活動を継続するために必要な補助金一億四千二百万円を計上しております。  なお海外における土建事業に協力し、あわせて建設機械輸出を促進するための海外建設協力会事業を引き続き補助することといたしております。  さらに、外国における輸入制限運動に対処し、関税委員会等において反対陳述を行うための経費につきましては、海外市場維持対策費補助として一千万円を計上いたしておるのであります。  次に、貿易振興国内態勢整備のために必要な経費といたしましては、前年度対比三百八十三万二千円増しの一億五千五百七万八千円を計上しておりますが、このうちおもなるものにつき以下御説明を申し上げます。  まづ、輸出品意匠改善費といたしましては、二千三百十二万二千円を計上し、わが国輸出商品意匠改善するため、意匠及び製造技術研究各種講習会開催輸出雑貨意匠盗用及び模倣の防止等措置を講ずることといたしております。  次に、輸出品品質改善に必要な経費といたしましては、三千二百九万八千円を計上し、わが国輸出商品の品質の向上販路維持開拓をはかるため、技術研究補助新規試作品奨励等を引き続き行うほか、海外商品専門家を招聘して輸出意匠改善をはかることといたしております。  さらに、輸出検査等整備費といたしましては、七千二百五十九万円を計上し、わが国商品対外的信用の高揚と輸出振興に資するため輸出検査法に基く機械、金属、繊維及び雑貨等について輸出検査を実施することといたしております。  次に、輸出市場の培養と輸入原材料安定的確保をはかるため東南アジア諸国等に対し、その開発計画を支援しつつ、海外投資技術協力奪いわゆる経済協力の促進をはかることが、ますます重要性を加えつつあることにかんがみまして経済協力対策費といたしまして、一億七千九十六万九千円を計上いたしております。  まず海外技術センター運営事業費として新たに一億一千一百九十六万九千円を計上し、インドの西ベンガル等海外における中小企業技術センターの設置及び準備調査等を行うことといたしております。  次に従来に引き続き海外投資等前提となる原料事情鉱物資源賦存状況等について実態調査を行うための経費といたしましては前年度対比二千万円増しの四千万円を計上いたしておるのであります。  なお以上のほかに経済協力対策費といたしまして、アジア経済事情調査費一千万円、技術者及び中小企業海外進出に要する経費国立研究機関海外技術者受け入れに要する経費を計上いたしておるのであります。  第二に、中小企業振興対策費といたしまして総計十一億四千五百五十七万四千円を計上いたしましたが、これは大蔵省予算として計上されております中小企業信用保険公庫出資金二十億円、及び保険準備基金出資金六十五億円、計八十五億円を加えますと九十六億四千五百五十七万四千円となり、これを前年度予算額十八億四千八百八十一万七千円と比較いたしますと実質的には七十七億九千六百七十五万七千円の増額となるのであります。  中小企業信用保険公庫につきましては、従来の中小企業信用保険特別会計を廃止し、先ほど申し上げましたように新たに八十五億円の政府出資を行い、合計一百七億円の出資金により本公庫を創設いたしまして、信用保険協会に対する低利資金の貸付と中小企業に対する信用保険業務を行わしめ、もって中小企業信用補完制度飛躍的発展に資する所存であります。  中小企業振興対策として、次に重点を置いた事項といたしましては、中小企業設備近代化及び協同組合共同施設助成技術指導及び企業診断強化繊維工業設備調整等でありまして、以下御説明申し上げたいと思います。  設備近代化につきましては、前年度対比二億円を増額して六億円を計上し、中小企業設備合理化を一層推進することといたしております。  次に、共同施設補助につきましては、前年同額の一億円を計上し、中小企業組織化を推進いたしますとともに、中小企業等協同組合商工組合等の健全な発達をはかり、中小企業組織化を推進するための総合指導機関であります中小企業団体中央会に対する補助を前年度対比一千五百万円増額して五千万円を計上いたしておるのであります。  さらに、中小企業輸出に占める地位の重要性にかんがみまして、三十三年度においては公設試験研究機関設備整備して中小企業技術指導を行わしめることとし、このために必要な経費六千万円を新たに計上いたしておるのであります。  また、中小企業診断指導費につきましては、従来よりの成果にかんがみ、前年度に比し二千七百三十万三千円を増額した一億四百八十七万一千円を計上して、地方公共団体の行う企業診断等経費補助する等施策充実をはかることといたしております。  なお中小繊維工業産業規模合理化し、過当競争を避けて輸出市場安定確保をはかるための補助金として三十二年度は綿スフ関係五千万円、絹人絹関係七千万円、計一億二千万円が計上されたのでありますが、綿織機関係設備調整補助は三十二年度をもって打ち切り、三十三年度におきましては絹人絹織機のみ対象として一億二千万円を計上いたしておるのであります。  第三に、鉱工業技術振興対策費でありますが、最近における欧米諸国の目ざましい技術の進歩に対処いたしまして、わが国がその立ちおくれを取り戻すためには画期的な産業技術振興が必要であることにがんがみまして、前年度対比三億一千八百五十七万八千円増加いたしました十六億六千九百九万二千円を計上いたしております。  本対策重点を置いた事項といたしましては、国立試験所特別研究費等に必要な経費を初めといたしまして、鉱工業技術試験研究助成費工業標準化実施費及び発明実施化助成費等であります。  まず、国立試験所特別研究費等に必要な経費といたしましては、前年度対比三億二千一百八十三万九千円増の十一億九千四百三十五万二千円を計上いたしております。このうちおもなるものについて申し上げますと特別研究費につきましては、当省所属試験研究機関において、それぞれの基礎的研究に必要な研究費のほか、特別のテーマにかかる特別研究を行なっておりますが、前年度対比二億五十七万六千円増しの七億四千二百九十五万三千円を計上いたしました。これにより三十二年度に引き続き電子技術生産加工技術工作機械オートメーション及び高度分析技術研究等わが国経済にとって喫緊の重要事項に関する研究を推進することといたしております。  次に、電子技術向上に寄与して電子工業振興をはかりますため、電子機器試験検定のための設備整備するための経費として五千万円を計上いたしております。  さらに三十三年度におきましては、技術振興のための基本的問題である技術者待遇改善のため、試験研究所研究員待遇改善費として新たに一千一百二十九万円を計上いたしました。  次に、鉱工業技術試験研究助成費につきましては、五億二千八百万円を計上し、国家的見地より見て重要と思われる応用研究工業化試験補助したい所存でありますが、そのうち特に欧米諸国に比べまして立ちおくれていると思われまする電子技術振興するため、一億六千五百万円を充て、また将来における中型輸送機需要を勘案して、その国産化を促進するため、その試作研究費として一億二千万円を充てるほか、重要工作機械等国産化補助するための経費二千万円を計上いたしております。  次に、日本工業規格制定及び表示制度確立のための審査、検査及び規格の普及を行い、また国際標準化機構及び国際電気標準会議の一員として諸外国国際標準規格制定規格表の交換及び各種情報の活用を行う等、工業標準化事業を推進するため工業標準化実施費といたしまして前年度とほぼ同額の四千四十四万円を計上いたしております。  さらに、優秀な発明であって、経済的理由により、外国特許を出願することが困難なものに対し奨励援助するために交付する補助金及び発明協会に対し交付する補助金といたしましては、発明実施化助成費として、六百三十万円を計上いたしております。  なおほかに原子力平和利用研究費といたしまして三億五千万円程度科学技術庁より当省所管試験研究機関に移しかえられる予定であります。  第四に、産業基盤強化対策費といたしましては、前年度対比三億四千十六万六千円増しの十一億三千五百十七万四千円を計上いたしております。その内容といたしましては生産性向上対策費工業用水道事業費産業立地条件合理化費資源開発費商工鉱業統計調査費防衛産業施設維持費補助鉱害復旧費及びメートル法専用実施費等であります。  まず、わが国語産業生産性向上を三十二年度に引き続きさらに強力に推進するため前年度対比二千万円増しの、一億三千万円を日本生産性本部に対する補助として計上いたしております。  工業用水道事業費といたしましては工業用水確保が今後における工業生産伸長のため重要不可決基盤である点にかんがみまして、横浜、大阪、北九州の継続事業のほかに、北伊勢、愛知、仙塩、徳山、磐城地区新規事業に対し補助を行うこととしまして前年度対比一億九千九百万円増しの五億円を計上いたしております。  次に、鉱工業の急速な発達に伴いまして産業立地合理化をはかることの必要不可決である点にかんがみまして、産業立地条件合理化費を前年度対比九百八十二万四千円増しの一千百五十万九千円を計上し、産業立地に関する総合的な調査指導態勢整備に着手することにいたしました。  さらに国内資源開発に関しましては、増大する石炭需要に応ずる石炭鉱業供給態勢を確立する必要があり、このため新炭田開発阻害要因を除去して開発を効果的に実施するために必要な経費といたしまして炭田総合開発費四千万円を新たに計上いたしましたほか、砂鉄、磁硫化鉄鉱等重要鉱物の新鉱床探鉱費補助及び天然ガス探鉱費補助はそれぞれ前年度同様五千万円及び二千万円となっております。また発電水力調査費としましては一千二百九十三万円を計上いたしておりますが、このほか科学技術庁より当省所管と移しかえを予定されているもので核原料物質探鉱奨励費三千万円があるのであります。  次に、商鉱業統計整備充実を図りますため、前年度に比し五千六百五十六万一千円を増額しました二億七百十一万四千円、防衛産業特定設備管理補償費八千九十八万二千円、鉱害復旧事業費七千三百四十五万五千円及び昭和三十四年一月よりメートル法が専用実施されますので、これに備えて事前に指導宣伝を行うための経費九百十八万四千円等を計上いたしております。  以上をもちまして当省所管一般会計に関する御説明を終ります。  なお従来から当省の所管いたしております特別会計は五つありますが、そのうち、アルコール専売事業特定物資納付金処理及び輸出保険の三特別会計につきましては引き続き継続いたしますが、中小企業信用保険特別会計につきましては中小企業信用保険公庫の発足に伴い七月以降廃止いたします。また特別鉱害復旧特別会計につきましてはすでに本来の業務を終了いたしまして残務整理の段階に至っておりますが、さらに明年度一年間これを継続して業務を完了せしめる予定であります。以下各会計につき、歳入歳出予算の大要を簡単に御説明申し上げます。  まずアルコール専売事業特別会計でございますが、三十三年度の歳入予定額は三十二億四千八百九十九万五千円、歳出予定額は二十九億八千二百万二千円でありまして、資産、売掛金の関係を加減しますと、三十三年度の益金予定額は二億五千三百三十七万二千円となります。  第二に、輸出保険特別会計について御説明申し上げます。三十三年度歳入歳出予定額は、ともに六十六億五千三百五十八万二千円でありまして、歳入のおもなるものは保険料収入十億三千百十六万四千円、資金運用収入二億五千八百万円、雑収入一億五千二百十七万二千円、前年度剰余金五十二億一千二百二十四万六千円等でありまして、歳出のおもなるものは支払い保険金六億七千八百五十一万円、予備費五十九億三千九百七十三万六千円等であります。  なお現行保険制度改善策といたしまして、普通輸出保険制度簡素化をはかるため現行の再保険制度を廃止し、政府の直接引き受け制度に改めるとともに普通輸出保険の担保危険を明確化することによりまして制度運用合理化をはかりますほか、この保険利用者保険料負担の軽減のため保険料引き下げを実施する所存でございます。第三に、中小企業信用保険特別会計でございますが、前に中小企業振興対策において申し上げましたように、中小企業信用保険公庫の新設に伴いまして本特別会計は廃止されることと相なりますが、新機構発足を七月一日と予定しておりまして、四月より六月までの期間の収支につき御説明申し上げます。三十三年度四月六月の歳入歳出予定額は、ともに二十三億六千四万二千円でありまして、歳入のおもなるものは保険料収入一億一千八百七十七万八千円、雑収入六千二百六十九万六千円、前年度剰余金二十一億七千八百五十六万八千円等であり、歳出のおもなるものは保険金三億四千七百七十万円、予備費十九億九千三百七十五万一千円等であります。  第四に、特別鉱害復旧特別会計について御説明申し上げます。本特別会計は、戦時中の石炭増産に伴う特別鉱害を復旧することを目的とする臨時立法に基くものでありまして、本法は三十三年三月をもって期限が終了するのでありますが、本特別会計のみは清算事務のためなお一年継続するものであります。  本会計の三十三年度の歳入歳出予定額は、ともに四千八百二十九万二千円でありますが、歳入のおもなるものは前年度剰余金受け入れが四千八百二十八万六千円であります。  第五に特定物資納付金処理特別会計について御説明申し上げます。本会計特定物資輸入臨時措置法に基くもので、三十三年度の歳入歳出予定額はおのおの二十億八千九百一万円で、歳入のおもなるものは納付金二十億八千八百万円であり、歳出のおもなるものは産業投資特別会計へ繰り入れ二十億円であります。  以上をもちまして一般会計及び特別会計予算の概要につき御説明いたしましたが、この際当省関係財政投融資計画について簡単に御説明いたしたいと存じます。  昭和三十三年度における当省関係財政投融資総額は一千七十二億円でありまして、これに自己資金等を加えた運用総額は二千四百七十六億円と相なります。これを昭和三十二年度と比較いたしますと運用総額につきましては、当初計画二千百九十三億円に対しまして二百八十三億円増となります。  なお、本計画前提といたしまして電力鉄鉱についての世界銀行借款三百九十億円が織り込まれており、さらに金融情勢の推移に応じまして資金運用部資金による金融債の引き受け、及び中小企業金融公庫借り入れ限度に関する弾力条項が発動されることとなっておりまして、これらを総合的に運用することによりまして重要産業及び中小企業資金確保につき遺憾なきを期す所存でございます。  まず開発銀行でございますが、開発銀行融資重点は、わが国経済安定的成長を目標といたしまして産業基盤強化産業構造高度化に直接的に貢献する産業に指向し、電力海運石炭鉄鉱特定機械合成ゴムなどを重点的に取り上げることとし、運用総額は三十二年度当初計画の六百億円に対し二十億円増しの六百二十億円を確保するものとし、このため、財政投融資といたしましては、三十二年度当初計画の二百五十億円に対し七十五億円増しの三百二十五億円を確保する計画であります。なお、六百二十億円の配分計画は、電力が二百五十億円、海運が百八十億円、一般産業が百九十億円となっているのであります。  次に、中小企業金融公庫でありますが、中小企業の育成、振興のため、その金融の円滑化は必要不可決の要件でありますが、中小企業設備合理化、近代化が大企業のそれに比較して著しく立ちおくれている現状にかんがみ、融資の重点設備合理化、近代化とその企業の経営の安定化に資するための融資を中心として運用いたすものとし、運用総額は三十二年度の補正後の計画五百十五億円に比しまして、五十五億円増しの五百七十億円を確保するため、運用部借り入れ二百七十五億円を行なうことといたした次第であります。  なお、三十三年度におきましては、前年度に引き続き直接貸しに重点を置くものとし、三十三年度の七十億円に対し二十億円増しの九十億円を確保する計画であります。  また商工組合中央金庫につきましては、三十三年度におきましては中小企業団体法の関係もあり、資金需要は相当に増加することが予想されますので、三十二年度の当初貸し出し計画二千二十五億円(補正後二千二百億円)に対しまして、三十三年度におきましては二千五百三十億円の貸し出しを行う計区画でありまして、このため資金運用部による商中債引き受け三十億円を行うことといたしております。  次に、輸出入銀行でありますが、三十三年度におきましては、輸出金融については船舶輸出減少の反面、一般プラント輸出の増加、ミナス製鉄所、インド円クレジット等の特殊輸出金融を織り込み、六百八億円の貸付が必要であり、また賠償経済協力関係金融につきましても、ビルマ、フイリピン、タイに対する賠償経済協力実施が円滑化し、前年度比倍額以上の六十四億円の貸付が必要と考えられますので、総額七百三十億円と前年度の当初計画に対し三十一億円増しの貸付を予定いたしております。一方これらの原資につきましては、回収金等の増加が見込まれますため、運用部から八十億円の借り入れを行うことといたしております。  次に、電源開発株式会社につきましては、三十三年度においては前年度に引き続き田子倉、奥只見、御母衣の大規模貯水池式発電所の建設に重点を置きまして、三十二年度の当初計画四百二十八億円に対しまして、七十億円増しの四百九十八億円の電源開発工事を遂行することとなっており、このために産投出資九十億円、運用部借り入れ二百五十四億円、計三百四十四億円の財政資金を投入するほか、世界銀行からの借款の成立を期待し、これにより百二十三億円をまかなう計画であります。  石油資源開発株式会社につきましては、改訂石油資源総合開発五カ年計画に定められました昭和三十六年度原油生産百万キロリットルの目標を達成するため、明三十三年度におきましては、大油田の発見が有望となった裏日本の海洋試掘をも加えまして、三十二年度二十三億円に対して五億円増しの二十八億円の工事費をもって試掘工事を推進することといたしております。このため、十八億円を産業投資特別会計より出資する計画であります。  以上をもちまして通商産業省所管一般会計及び特別会計予算の御説明を終りますが、何分よろしく御審議の上可決せられますことをお願い申し上げます。
  4. 八木一郎

    八木主査 これにて説明は終りました。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますから、順次これを許します。小平忠君。
  5. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 最初に私は電子工業振興問題につきましてお伺いをいたしたいと思うのであります。  御承知のように、原子力の平和利用につきましては、わが国も最近とみに力をいたしておるのでありますが、これと並行いたしまして電子力の振興は目ざましいものがあるのであります。特に政府もこの電子工業重要性にかんがみて通産省の重工業局の中に昨年の暮れに電子工業課を設置する等、その御配慮につきましては非常に了とするところでありますが、わが国電子工業の部面については、特にラジオにつきましても、その他電子関係についても非常な躍進の面が見られるのであります。このように、原子力の平和利用と並行いたしまして電子工業振興というものは非常に重大な意義を持っていると私は思うのでありますが、ただいま御説明願いました三十三年度の予算の中に現われておりまする数字をもって見ますると、きわめて微々たるものであります。一体、このような予算で、今日非常に期待せられているところの帽子力工業の振興について果して期待できるものかどうか、その点について私は通産大臣の率直な意見を承わりたいと思うのであります。
  6. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 電子工業振興ということにつきまして、その重要でありますことは御説の通りでありまして、われわれとしても非常に重点を置いているわけです。ただ、率直に申し上げますと、電子工業は、原子力のようにこの二、三年間に急に起ってきたような問題ではありません。以前から電気試験所というものが長い間電子工業についての研究を非常にしてきたわけであります。従って、これは、年度計画といいますか、そういうようなことで従来やってきておりますので、原子力のような予算のふえ方は本年度の予算はいたしておりません。しかし、電子機器の試作補助が、昨年一億三千万が、一億六千五百万になっております。また、電子機器の試験設備につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、本年度は五千万円取っている。また、電子技術特別研究費の中で、昨年は一億でありましたが、今年度は二億、倍額を取っているというようなことでありまして、総額四億一千五百万円になっているのであります。あるいは、はなばなしくは見えぬかもわかりませんが、実質的には非常に力を入れております。また、先ほど来申しておりますように、試験所は長年にだんだんいろんな施設もよくしてきておりますので、そういうような意味合いからいたしますと、本年の予算は従来から見ますと飛躍的に増加しておるわけであります。
  7. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 私は具体的に数字をお伺いいたしたいのでありますが、電子工業振興という点については、御説明にもありますように、電子機器試験検定のための設備にわずか五千万円しか計上されない。それから、いわゆる電子技術振興するために一億六千五百万円を充てて、また将来の中型輸送機需要を勘案して、国産化を推進する。一応の配慮はわかるのですけれども、一体このようなことで果して昨年のごとき―具体的に例を申し上げてみますれば、ゲルマニウムを原料とするトランジスターの実際の工業化、現に各メーカーが生産をしておりますその伸びを見ますと、本年度の上半期いわゆる八月、九月ごろまでの上昇率と、それから十月からわずか二ヵ月か三ヵ月の上昇率が匹敵するくらい急角度にこのトランジスターそのものの製造なり消費需要というものは伸びております。こういうことは電子工業の一つの革命といいますか新たなる一つの段階に来ていると私は思うのですが、そういうように一つの例を申し上げてみても躍進的なものがあるのでありますが、こういった方面に通産省はもっと本腰を入れておやりになる必要があるのではないか。かりに工業技術院の試験研究設備の状態としましても、最近いろいろな動きがあります。この電子工業研究所を作る、あるいはこれに相当な莫大な予算をかけるというようなことについてはけっこうであります。けっこうであるけれども、私は、こういった試験研究機関というものは国みずからがやるという態勢が基本的に必要ではなかろうかと思う。私も先般工業技術院の試験所に行って参りました。これで果して最近飛躍的に伸びておるところの実際の需要なり消費に適応できるかどうかということを実は憂えた一人であります。こういう点について、私は率直な通産大臣の御意見をさらに承わりたいのであります。
  8. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 先ほど来申しておりますように、トランジスターその他の電子工業の発展ということについては、もうわれわれとしましても非常に重要視いたしておるのであります。しかし、実質的に、これは予算が多ければ多いほどそれに越したことはないのでありますが、と申しましても、やはり消化し切れるものでなければなりません。大体この程度でありましたから、これは一ぺんに飛躍的にというわけにも参りませんが、十分まかなえるものではないかと思っておるのであります。  さらに政府委員から御説明申し上げます。
  9. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 予算面に関します補足的な御説明をしたいと思います。お話のありました電子機器の試験設備の増強の問題でありますが、これは御承知のように、現在防衛庁あるいは米軍関係の施設で利用しております電子機器は、ミルスペックというアメリカの陸軍あるいは軍事規格のものでないと、修理あるいは新しい取りつけ等ができないようになっております。生産いたしましたものがそういう規格に合うかどうかということを検査、検定する必要があるわけであります。そこで、昨年末電気試験所にそういうふうなものを検査、検定いたします設備を設けて、そのある種の機械、器具につきましてはアメリカ側から供与を受けて、そういう機構充実し、国内の製品を検査して需要に充てるようにというふうな企画をもって、三十二年度予算で一億、三十三年度予算で五千万円、大体これで建物と国産可能な器具は一応まかなえます。なお三十四年度に残りますが…。他方、アメリカ側から供与を受ける設備等につきましては、目下先方と交渉しておりまして、これがいわゆるFAP、ファシリテイズ・アシスタンス・プログラムと申しておりますが、そういうことで、そういう性能を検査いたします設備を作って、国内の生産の精度を上げて参ろう、こういうことになっております。  それから、ちょっと落しましたが、電子工業振興の方策については、国家予算のほかに電子工業振興法に基いて開発銀行の融資を一部行なっております。おおむね年額十億ないし十五億というふうなスケールで考えております。現に一部の部品メーカーについては開発銀行の融資も実施されております。そういうふうないろいろな政策をもって振興して参りたい。なお、通信関係等は電電公社が圧倒的な需要家であります。なお国鉄等も比較的大きい需要家でありますが、そういう方面でも、既存の有線、無線の諸施設を電子機器、つまりトランジスターあるいはパラメトロンといったような新しい能率のいい施設に置きかえよう。たとえば都市の交換局あたりも、今までのクロスバート並んで、あるいはそれにかわってトランジスターによる交換機あるいは中継装置等をそれぞれ目下具体的に試作、検討の段階であります。そういうふうないろいろな需要方面等の試作等と相待ちまして振興して参りたいと考えております。御指摘のように急激に伸びた工業であります。今後応用の範囲の多い技術でございますので、われわれとしても、国家予算あるいは金融の面、あるいは需要開拓の面、あらゆる方面からこの工業を振興して参りたいと考えております。
  10. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 さらにお伺いいたしますが、トランジスターの原料であるゲルマニウムですが、このゲルマニウムは九七・八%、ほとんどが輸入に仰がなければならない現状であるということを聞いておるのでありますが、ゲルマニウムそのものは、日本では今後の努力によっても不可能なのか、あるいは努力によっては可能であるか。現に若干はやっておるのですから、そういう点についての見通しはいかがですか。
  11. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 ゲルマニウムは日本では亜鉛精練の副産物で出ますカドミウムの分離のときに技術的には一部採取できると思います。あるいは一部の石炭山の灰と媒煙、この辺でできることもありますけれども、いろいろな国産のものを見てみますと、酸化ゲルマニウムの段階でも、値段が輸入品に比べまして数倍くらいしております。これは量的な問題もありましょうが、むしろ、原料といいますか、資源の関係ではないかというふうに見られております。そこで、今後トランジスター、ことにゲルマニウム・トランジスターの生産が非常にふえて参りますると、酸化ゲルマニウムの輸入がかなりふえることになるんじゃないかと思っております。その対策といたしましては、一つは、トランジスター生産過程で非常にくずが出るわけであります。この回収の問題も少し手をつけて参りたいと思っております。能率よく回収して、よそへ散らないようにしたいと思っております。御承知のように、非常に純度の高いものを要求いたしておりまして、テン・ナインくらいの品位でございますから、ある程度集中的に回収する必要があるかと思っております。それから、もう一つは、ゲルマニウムよりももっと性能のいいトランジスターの材料がシリコンでございますが、これは御承知のように大体カーバイドの製造と同じような理屈でできるわけでございます。これを精製して、これまたテン・ナインのオーダーまで純化しなければいかぬわけでございますが、これの生産促進にも相当な助成策を講じたいと思っております。ただ、現在のところでは非常に技術的にも困難が伴っておるようであります。現に電気試験所でも盛んに試験研究を行なっておりまするが、温度調節の関係その他相当困難な問題があります。しかし、これは何せ一〇〇%が国産でありまするし、このシリコンの性能がゲルマニウムよりもいいようにいわれておりまするので、この面にも力をいたしたい、こういうように考えております。
  12. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 シリコンのことは別にお伺いしようと思ったのです。ゲルマニウムそのものが今後国内において実際に需要に相当量活用することが可能かということを端的に私はお伺いしたいのです。
  13. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 国産のものも、技術あるいは品質向上のいかんによります。これは個人的な見通しになって恐縮でございまするが、相当困難じゃないかと思っております。国産だけでまかなうのは困難だろう、やはりある程度輸入しなければならないのじゃないか、こう思っております。
  14. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 そうしますると、やはり今後も輸入に仰がなければならない。現在は輸入先は大体アメリカとオランダですか、現在の輸入量と、これに対して外貨をどの程度割り当てておりますのか。それから、この輸入ルートについて、トランジスタ―を製造しておりますメーカーが直輸入しておるのか、あるいは俗にいうバイヤーが入っておるのか、そういった関係はどうなっておりますか。
  15. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 昨年の酸化ゲルマニウムの消費量は、ちょっとはっきりつかんでおりませんが、一昨年が大体一トン二、三百キロになっておりますので、三十二年は大体十四、五トンくらいになるのではないが。トランジスターの生産の見通しから見まして、大体そのくらいになるのではないかと思っております。外貨は、三十二年度といたしまして八十万ドル程度かと思っております。落しましたが、輸入の経路につきましては、特別に私はよく承知しておりませんが、通常はメーカーが直接外国のあれにオーダーしておりますよりも、輸入業者に依託している方が多いのではないかと思っております。この点は私どもあまり研究しておりません。
  16. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 これは私の推測ですけれども、三十年度の一トン二、三百に対して三十二年度は十四トン、十倍以上も伸びております。この比率は、おそらく三十三年度はもっと伸びるのではなかろうが。というのは、いろいろ仄聞するところによりますと、各メーカーがこのトランジスターの工場施設のために相当な力を注いでおります。あるいは十五、六億というような巨大な予算を投じて工場施設に努めているような実態から見ても、それだけのやはり需要の伸びがあるのだという見通しのもとにやっていると思います。そういうことから、今後は、単に通信機関係だけでなく、広くテレビにも、あるいは航空にも、あるいは航海にも、あらゆる面に利用される段階が来るだろう、こう思いますので、私はやはりこういった最近のいわゆる電子工業飛躍的発展というものは非常にけっこうだと思います。これに即応する態勢に通産省は十分な配慮と、これに対する助成なり振興なり研究の道を講じていただきたい。  さらに、私は、将来はシリコンだと思います。幸いにもシリコンについては日本にその原料があるのであります。ですから、このシリコンが一日も早く実用化されるということに、もっと国自身も力をいたしまして、少くとも、ゲルマニウムについては一歩おくれたけれども、シリコンについては諸外国に負けないという態勢まで、一つ大いに努力していただきたい。それで、専門家であられる方からお話を伺いたいのでありますが、一体シリコンについては、アメリカなり、あるいはソビエトなり、あるいはヨーロッパにおける国々はどの程度このシリコンそのものが実用化の段階に来ているのか、そういう事情について承わっておきたいと思います。
  17. 黒川眞武

    ○黒川政府委員 電子工学のトランジスターその他にゲルマニウムが使われておりますが、数年前からシリコンがこれにとってかわるというような報告がございまして、各国で研究しておりますが、一応ドイツ、ソビエト、アメリカ等におきましては、このシリコンが使われ始めておりますが、その報告はまだはっきりわかっておりませんけれども、一応ゲルマニウムとシリコンとを使った場合に、それぞれ特性が変っております。その特性の研究からかかっていかなければならないというような段階にございます。工業技術院の関係の電気試験所におきまして、そのシリコンの特性につきましてただいま研究中でございます。なお、シリコンそのものを純粋に取り出すという研究につきましても、電気化学的にこれを行いたいと思って、ただいま研究中でございます。
  18. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 もっと海外の事情について明快なる事情を知りたかったのです。ソ連が御承知のように人工衛星第一号を打ち上げた。アメリカも先般小型ながらもおくればせながら打ち上げに成功した。この人工衛星の中に備えつけてありまするいわゆる無電でありますが、これは、皆さん方の考えておられる、あるいは入手しておられるところでけっこうですが、一体およそゲルマニウムでは熱に耐えないのじゃないか。ですから、私が専門家の意見を聞いたところによりますと、シリコンを使っているのじゃないかというようなことを聞くのですが、人工衛星の実際使っておりますものは一体何でございますか。
  19. 黒川眞武

    ○黒川政府委員 人工衛星につきましては、私まだ寡聞で詳しいことはわからないのでございますが、ただいま先生のおっしゃった通り、上るとき、それから下るとき、あるいはまたその他におきまして相当耐熱性でなければならぬということは常識的にわかるのであります。従って、シリコンのような非常に溶融点の高いものがおそらく使われておるのじゃないかと私も考えておりますし、またその容器そのものにつきましても非常に耐熱性の高いものが使われておるように推察いたしておるわけでございます。
  20. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 電子工業の問題につきましてはこれで質問を終りますが、原子力の平和利用というものに呼応いたしまして、電子工業振興ということは、わが国の今後平和国家として科学技術振興という見地からも非常に大事な一つの面だと私は思うのであります。そういう見地から、通商産業省におきましては、電子工業振興のために、民間の育成、技術振興、そういった面についての十分な処置をしていただきたいことを希望申し上げまして、電子工業に関しまする質問を終ります。  次に、石油資源の開発につきましてお伺いいたしたいのでありますが、先般予算総会で自由民主党の川崎秀二氏が、御承知のようにサウジ・アラビアの石油資源開発について質問なされたのであります。私は、わが国が最近ガソリンの急激な需要に対処していかに石油資源が必要であるか、あるいは貴重であるかということは十分認識されるわけです。特に通産省が主管されておりまする石油資源開発につきまして、御承知のように、三十二年度から裏日本の日本海の海底の石油を探鉱して試掘するのだというようなことから、石油資源開発株式会社に対しましても、いわゆる産業投資特別会計からも三十二年度の十五億に対しまして今度はこれを十八億にするという試みはよく理解できるのであります。ただ、それがために必要だからといって、サウジ・アラビアの石油資源の開発につきましては非常に危険な面があるのでなかろうか。先般予算委員会で通産大臣はきわめてあいまいな御答弁をせられたのでありますが、あの当時通産大臣が、さらに研究をして、あるいは調査をしてとおっしゃっておられた点について承わりたいと思うのであります。サウジ・アラビアの石油開発について、いわゆる成規な手続ができているのかどうか。そういう点については通産大臣お調べになりましたか。
  21. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実は、あのときは手続ができておるかどうかというお話でありまして、そのとき私は実は詳細を知らなかったのです。聞いてみますと、まだ手続としては通産省には出ておらない、しかし話は従来からずっといろいろ伺っておるというような段階で、その詳細はまた政府委員から御答弁申し上げます。
  22. 福井政男

    ○福井(政)政府委員 サウジ・アラビアの石油資源の開発問題につきましては、ただいま大臣からお話のございましたように、サウジ・アラビアと日本石油輸出株式会社の山下さんとの協定はできておりますが、目下クワイト政府と会社側と交渉いたしております。法令によりまする手続関係としましては、サウジ・アラビアと会社側との協定ができておりますので、これにつきましては、数日前に通産省の方に為替管理令に基きまする手続が出されたのであります。クワイトの方は目下まだ交渉中でありますので、今後の問題になろうかと思います。
  23. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 これは経緯を私は詳しく知りたいんです。というのは、私は、与党の委員である川崎秀二氏は与党だからあの程度にとどめたと思うのですが、これは、あの予算委員会の質疑を通じての印象というものは、国民に大きな疑惑を与える。通産大臣は、今、この手続はまだ終ってないらしい、手続は成規のものが出ていないと言われるが、一体成規の手続、すなわち海外投資に対しまする手続申請をなされないで、一方外貨の割当をやる、単なる山下太郎氏の渡航申請に対しての手続だけで、国が、少くともサウジ・アラビアが要求いたしておりますところの円、十五万ドル、五億四千万円というものを地代として払わなければならぬ。これに対して先般大蔵大臣も答えておられるのですが、結局外貨については十六、七億くらいを実は要求してきておる。こういうように、外貨が伴いまする重要な問題を、成規な申請手続が出されないでこれをやるというようなことをしてもいいんですが。
  24. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 これは、先ほど御説明いたしましたように、クワイト側のあれがはっきりしませんと、鉱業権の取得等に関する申請は何ともこちらも裁断するわけにいかぬわけです。外貨の問題につきましても、外貨をもってやるという契約ができれば、外貨を何がしか送るという証明だけに限って、別に外貨の許可とかいうことではなしに、証明をしてやるというのでないと、向うの話が進行しない、こういうところにあるようであります。
  25. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 それは大臣おかしい。サウジ・アラビアの方についてはいいが、大体クワイト政府との話し合いはまだできていないのだ、だから、手続はまだいいのだということは筋が通らぬと私は思う。交渉は交渉です。しかし少くとも外貨を必要とする。これは一歩間違えば大きな一つのばくちなんです。そういう問題について、上の方の話し合いだけでこういうことが進められるということは、見のがすことのできない問題だ。かりに、話し合いは話し合い、交渉は交渉中だといえども、やはり事務的な手続は必要であります。その点どうですか。
  26. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 何も上の方だけできめるわけではありませんので、これはもう下がらずうっと全部、私どもよりも下の方の諸君がよく事情を聞き、連絡はあるのでございます。
  27. 福井政男

    ○福井(政)政府委員 手続といたしましては会社の方が外国で話し合いをいたすわけでございまして、これは政府の方との話し合いというわけではないわけでございまして、会社の方が外国でそういう話し合いができました場合に、為替管理令に基きまして政府の方に手続をする、こういう手続関係に法規上はなっております。従いまして、サウジ・アラビアと会社側と話し合いがつきました関係上、この分だけとりあえず数日前に会社側から通商局の方に成規の手続をとった、こういう事情になっております。
  28. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 私、そういう末梢的なものについての議論はやめます。ただ、この根本問題は、相当な外貨を伴いますだけに、見通しについて一歩誤まれば、これは、私ただいま申し上げましたように、一種のばくちなんです。少くともこのことについては現在岸内閣の閣僚の方あるいは相当な人たちが参加されている。そういうようなことから非常に重要な問題であって、このことについてもし調査をし試掘をやったけれども、実は思うような石油が出ないのだとなったならば、これは非常に重大問題であります。一体この点については通産大臣見通しはどうです。
  29. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実は通産省の技術官も行って参っております。その報告では、非常に有望であるというふうに私は聞いております。
  30. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 もちろんその有望であるということにおいて手をつけておられると思うのだが、これは、御承知のように海底を探鉱し、さらに海底から採掘をするということがら見て、この事業というものは非常にめんどうである。同時に、御承知のような、サウジ・アラビアを取り巻くところの国際情勢、こういったものも十分に勘案し、立地的条件やいろいろなことも勘案してみなければならない、こう思うのでありますが、単に技術的に有望であるとかそういうことだけで解決できない複雑性をはらんでおると思うのですが、その点はどうです。
  31. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 技術的にはただいま申し上げたような情勢でありますが、もちろんこれは慎重に国際間の関係も考えなければいかぬですが、われわれとしましては、すでに実は私の就任以前に、中近東における油の点に対する協力ということは閣議で方針がきまっておるのであります。ただ、これはよほど慎重を期さなければならないので、あらゆる面について私も慎重に検討し考えております。
  32. 八木一郎

    八木主査 小平君にちょっと申し上げますが、予定通告者が非常にふえて参りまして……。
  33. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 もう終ります。  私はこの点について通産大臣に最後に警告を発しておきたいと思いますが、政府部内でも、あるいは与党の部内でも、このサウジ・アラビアの石油資源の開発については非常に疑惑の念あるいは危惧の念を持って見る方が多いのであります。そういうことから、特に――あなたはいわゆる前任者の時代からとおっしゃったが、それはその通りなのでしょう。それだけに、この点は誤まりのないように一つ慎重に取り扱っていた、たきたい。それで、これは局長からでけっこうですが、この点に対しまする従来の経緯と、現在の具体的ないわゆる先方との条件、こういうものについて私は最後に承わりまして、この話を終りたいと思います。
  34. 福井政男

    ○福井(政)政府委員 従来の経過につきましては先ほどお話がございましたように、閣議了解で大いに援助をしようという態勢ができておりまして、それに基きまして、私どもいろいろ内容につきましては承わっており、会社側に対するできるだけの相談に応じておるわけでございますが、条件といたしましては、クワイトとの関係の方はどういうことになりますか、目下まだ話し合い中でございますので、今後の問題でございます。サウジ・アラビアとできましたものにつきましては、中立地帯の沖合言いの海洋をやるということになっておりまして、この中立地帯につきましては、サウジ・アラビアとクワイトが――アンデバイデッド・ハーフ・シェアという言葉を使っておりますが、両方がおのおの平等の権利を持っておるようでありまして、具体的にどういうことになるがということは、個々のケース・バイ・ケースで判断する以外にその法的性格というものはどうもあまりはっきりいたしていないようであります。その海洋地域につきましての法的性格といった点につきましては、必ずしもはっきりした解釈がないようであります。サウジ・アラビアとクワイトの両国が半分の権益を持っておるという関係にあるようでございまして、ただ、その半分の権益と申しはすのが、その地域の半分という意味ではございませんで、その全地域をカバーしております権益でありますけれども、両方の国が同じような権益を持っておる、こういう法的には非常にややこしい関係にあるようであります。この地域を対象といたしておりまして、面積としましては大体七十五万ヘクタールくらいでございまして、わかりやすく申しますと、四国の半分弱に当るくらいの面積でございます。期間としましては大体四十年間になっておりまして、探鉱、試掘、採油といったもののほかに、精製、加工、そういった全部門にわたりまして会社側に対して運営が許されておる、こういうことになります。それから、年次の使用料としましては探鉱期間にレンタルを支払うわけでありますが、これが百五十万ドルでございます。なお油がほんとうにどんどん出るような商業的な採算になって参りますと百万ドルのボーナスを出す、こういう話し合いになっております。なお、利益金の処分につきましては五六%と四四%という比率になっております。大体おもなところはそういうことでございます。
  35. 八木一郎

    八木主査 内田常雄君。
  36. 内田常雄

    ○内田分科員 私は、中小企業に関する予算あるいは財政投融資の問題につきまして、従来商工委員会等における質疑を通じて明らかにされなかった部分を、この三分科会においてお尋ねをしたいと思います。  先ほど通産大臣の御説明によりますと、今度通産省関係予算というものは昨年に比べますと非常にふえておるということで、資金まで入れますと約倍額になっておるわけでありまして、これは、農林関係予算が昨年度に比べまして相当額ふえましたと同じように、今の政府が、産業、経済というようなことにつきまして、財政の面を注意しながらも、かなり積極的な打ち出し方をしたということであると思いまして、敬意を表するのでありますが、しかし、通産関係予算にいたしましても、よく調べてみますと、中小企業関係予算というものは微々たるものでありまして、出資等の使えない金を入れましても、中小企業関係の三十三年度の予算はわずかに三十一億数千万円というようなことでありまして、とても農林関係予算などと比べものにならない。全国の中小企業者が非常に不満とするゆえんももっとものところもあると思います。ことに、私が心配いたしますのは、中小企業に関する金融の問題でありまして、政府はこの点につきましても国民金融公庫と合せて通産関係では中小企業金融公庫あるいは商工中金というようなものに対する融資をやっておるわけでありますけれども、御説明によりますと、中小企業金融公庫に対する政府の融資というものは、これは昨年の当初の資金計画に比べますとまさに七十五億円ふえております。もっとも、昨年は金融引き締めの影響が中小企業者に多くしわ寄せされましたために、御承知のように昨年の臨時国会で中小企業金融公庫に融資百億円を追加いたましたから、この分を合せますと昭和三十二年度の中小企業金融公庫に対する融資額は三百億円であったのを、三十三年度の今回の当初の融資計画によりますと、これが二百七十五億ということでありますから、昨年度に比べますとむしろ減っている。ただし、これは年度の中途において状況を見ておそらく昨年と同じようにふやす、こういうことも考えられるのでありますから、まあ不満ではありますけれども一応了承いたします。これは、国民金融公庫につきましても、通産省の所管ではありません。大蔵省の所管でありますけれども、中小企業金融公庫に対すると全く同じような形で、昨年度の当初融資計画に比べますと来年度は三十五億円ほどふえておりますが、これも前年における補正増加額を合せて考えますと昭和三十三年度においてはむしろ減っているという事情でありまして、中小企業金融公庫と同じであります。しかしながら、この両者とも昭和三十二年度の当初の計画に比べますとふえておりますから、私は年の中途における増加を期待しながら一応満足するのでありますが、ただ、不可解なことは、この商工中金に対する政府の資金供給というものが、これは昨年における年の途中からの補正増加を合せて合計しましたものよりも減っておりますことはもちろんとして、昨年の当初の資金供給計画よりも減っておることであります。昭和三十二年度におきましては、商工中金に対しましては御承知のように政府一般会計から出資で利息のかからない金を十五億円供給している。また商工債券引き受けという形で二十億円、合計三十五億円を供給いたしましたが、三十三年度の予算におきましては、出資はゼロで、その上商工債券引き受けだけで三十億ということでありまして、合計いたしまして五億円減っておる。昨年の補正を入れました合計の八十五億に比べますと実に五十億減っておるということでありまして、この点は非常に私は不審にたえません。ことに、商工中金というものは、商工組合中央金庫法という法律がありまして、これは中小企業等協同組合の系統金融機関として国が特に設けるものである、こういうことがうたわれておりますし、昨年政府中小企業団体法を特に政府提案としてこれの成立を強力にはかられまして、今後中小企業等協同組合は、商工組合等の新しい法律による強力な団体に移っていくものでありまして、従いまして、政府中小企業組織化というものを団体法によって、推し進める限り、商工中金の役割というものは今までにも増して重要になってくるわけであります。さような事態のもとにおいて、どうしてこの商工中金に対する政府の資金供給量を来年度において減らされるのか、その点が理解に苦しみます。ことに、大臣の先ほどの説明によりますと、商工組合中央金庫については、三十三年度においては、中小企業団体法の関係もあり、資金需要は相当増加することが予想されますので、商中債引き受け三十億円を行うことにいたしておりますと書いてある。これは、私が申したように、はなはだ大臣の御説明はしているのでありまして、もし御説明の通りであれば、昨年より当然資金量をふやしてやらなければならぬと思いますが、この点はどのように理解したらいいものでございましょうか。
  37. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 中小企業関係予算が農林予算などと比較して額が非常に少いというお話でありますが、これはやはり農業と商工業の非常な違いである。御存じのように自由競争原理に立っているわけでありますから、直接な補助金を業者に出すということは、自由競争という建前から考えますと矛盾するわけです。従って、結局、間接な補助金、府県の指導費とか、こういう面でめんどう見るということになっております。そうなりますと勢い金額が足りません。従って、金融を円滑にしていくということが中心になり、それ以外に、ことしはいわゆる中小企業の体質改善ということに初めて一歩踏み込んでいったのでありまして、技術指導補助金、これもやはり府県の研究機関の設備補助をやって指導を強力にやりたい。また、設備の近代化補助金はやはり金融で、金融ベースにのらぬものに対して低利なものでやっていこう。これは四億を六億にふやしたのでありますが、これはふやし足らぬというおしかりがあるかもしれません。しかし、何といっても府県と一緒になってやる仕事でして、わずか六億でありますが、府県分を入れ、また自己調達分を入れますと、――自己調達分もおそらくこれは中小企業金融公庫等を通じて出ると思います。それから、回収分を入れますと、本年度やはり四十五億以上の設備の近代化ができるのであります。そういうような意味合いから言いますと、私は、農林省の予算に比較して――これは比較するわけには参りませんが、決して少い額ではないので、相当な、従来とはとにかく飛躍的に力を入れていった、そういうことに相なると思います。そこで、問題は、ただいまお話しのような従来からやっております政府関係の金融機関を通じて預金部資金等の政府資金を流す、直接にその金融機関から中小企業者に金を貸すいわゆる中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金というようなもの、これは従来から力を入れてきたところでありますが、本年も決して力を抜いておるわけではないのであります。御承知のように、ただいまの御質問にありました点は回収分も入れて考えて、どれだけ新規に貸し出していけるかというふうに考えていくべきものだと思います。大蔵省の予算説明書によりますと、中小企業金融公庫が本年度の運用額から比べますと来年度は二十二億増、国民金融公庫が七十五億の増ということになっております。しかしこれは実を言いますと、回収増が毎年あるわけであります。回収の見込額というものは常に小さく見積って確実にやっていこう、こういうことから当然起ることだと思います。そういう配慮を考えて本年度の当初の回収額というものを考え、それから来年度の当初の回収見込額、そういうものを比較していきますと、中小企業金融公庫が五十五億くらいふえることになっております。それから国民金融公庫では九十億くらいの増加になっております。御承知のように本年度は百億なりあるいは七十億なりの繰り入れをやった。これは非常に異常な年であります。それだけ追加分を出しているのに加えて、それにさらにただいま申し上げましたように五十五億なり九十億ふえるという新規の貸し出しがやれるわけであります。その点で申しまするならば、従来よりもより貸付は多くなる、こういうことになるのであります。ただ、それで十分かと言われますと、必ずしもそれは十分でないと思います。しかしこれは御承知のように、あまり投資に対する意欲を刺激することは好ましくないという点の配慮もあります。そうして異常な事態が起りましたら、御承知のように弾力性を持たして、五割までは政府の資金の貸し出しをふやすことができるという弾力条項を運用していきましたら、十分いけると思います。それで、ただいまお話の商工中金の問題です。商工中金も回収額を考え、そして運用の総額で考えていったらどうなるかというのは、御承知のように三十二年度が二千二百億、それが三十三年度におきましては二千五百三十億と三百三十億の増加になっております。もしこれもまた先ほどと同様な昨年の回収見込額との比較でいきますと、三百五十億くらいになるだろうと思います。貸し出し運用総額はふえておるわけであります。そこで問題は、相当な資金需要が出てきたらどうかということであります。しかし御承知のように、商工中金の債券の引き受けは議会の承認も何もなしに、従来からその実情に応じて預金部引き受けは十分できるわけであります。実はこの話の過程におきましては、商工中金債の引き受けは別に載せなくてもいいじゃないかという議論さえあったのでありますが、しかしせっかくこういうワクといいますか形式が踏まれてきておるものを、今年に限ってこれをやめるというのではいかにもどうもまずいじゃないか、三十億がいいかあるいは五十億入れなければならぬか、もっと入れなければならぬがというような点もあるわけであります。しかしとりあえずとにかく従来通りのいき方で三十億を載せておいて、実情を見て債券の引き受けをやってもらおう、こういう考えのもとに、またもう一つには、できるだけ借り入れ意欲を刺激しないように、こういうような考えでおりますので、今後について十分われわれとしても実情に沿うようにやっていきたい、かように考えておるわけであります。
  38. 内田常雄

    ○内田分科員 最近日本銀行で、全国銀行の各企業に対する規模別の貸し出し実績というのを集計したのであります。これは通産省のお手元にまだ到着しておらないかもしれませんが、日本銀行に行けばすぐわかることであります。去年一年で全国銀行の貸し出しが幾らふえたかといいますと、これは今大臣が言うような回収しておいて、もう一ぺん貸すというような回転分でなくて、純貸し出し増が全国銀行で九千五百九十九億円、約九千六百億円ふえておるのでございますが、この九千六百億円の増加のうちで、中小企業に向けられたものはわずかに一千九十三億円が増加しただけであります。それはどういうことかといいますと、これは昨年一年間の集計でありますが、一昨年の中小企業に対する貸し方のふえ方からいたしますと、一昨年の二九%にとどまっておる、こういう数字が現われております。このうちでも特に都会にある銀行、すなわち都市銀行は金融引き締めの影響で、中小企業にしわを持ってきたために、この年間の増加額九千六百億円のうちで、都市銀行から中小企業に貸し出し増加されたものはわずかに百五十七億円ということでありまして、これは都市銀行が前々年に貸し出し増加をしたものの八%に落ちておる、こういう形であります。また中小企業が比較的多い地方銀行の貸し出し増加を見ましても、中小企業に対するものは八百七十四億円であって、前前年度の半分以下に減少しておる、こういうことでありまして、昨年ふえた銀行の貸し出し九千六百億円の大部分というものは大企業に向ってだけふえておる。昨年の傾向を通してみましても、中小企業に対する全国銀行の貸し出し増加というものは非常に圧迫されておるということが現われておるのであります。これは一つ通産省でもよくお調べを願いたいし、大蔵省、銀行当局でもよくお調べ願いたい。また知っておられると思いますが、そのために中小企業に対しましては金をつけてやるとすれば、どうしても政府資金によって指導しなければならぬということはこれは理の当然でありまして、この前の国会以来総理大臣を初め大蔵大臣、通産大臣とも、言葉としては中小企業金融機関、ことに国民金融公庫ああるいは中小企業金融公庫、また商工中金、この三つの政府関係機関に対しましては、政府資金を大巾に投入するということを口ぐせのように言っておられるのでありますが、さて昭和三十三年度の予算をあけてみますると、これがほとんどふえていない。前尾通産大臣のお話によりますと、回収増加があるからその分をもう一ぺん貸し出しに回すのだというお話でありますが、これは中小企業界から金を引き揚げておいて、そんなものをもう一ぺん貸してやるのでは、これを累計してふえましても、そんなものは中小企業の助けにはならないのでありまして、新しく資金を供給してやらなければ大企業との均衡はとれないのであります。ことに今商工中金に対するお話がありましたが、これは昨年よりも政府資金の供給が絶対額において減っておるということでありましては、商工中金の回収増加を計算に入れて通算してみると、ふえるというお話がありましても、今度は回収分を差し引いて実際の貸し出し増があるかないかというと、これはないにきまっておる。商工中金というものは預金が集まるものでもありませんし、ことに商工債券の市中消化というものは、一般の起債市場が非常に狭まっておる。商工中金債ばかりでなしに、長期銀行債あるいは興業銀行債等につきましても、同じような苦しい事態が出てきておるのでありまして、商工中金債の売れ行きが必ずしも今日よくない、むしろ悪いのであります。この資金計画の通りで行くならば、商工中金の金というものは絶対額においてはふえないということになるわけであります。ただ私が非常に力を得ましたのは、大臣の御説明で、商工中金債の引き受けというものは別に予算関係ないのである、ただ資金計画であるからいつでも随時状況によってこれをふやせるのだ、従って三十億に限らないのだということがありましたので、非常に安心をいたしました。これは一つ一のめどでありましょうから、今後資金運用部に原資の余裕がある限り、中小企業金融の状況ともにらみ合せて、ことに中小企業団体法がことしの四月から施行されまして、これらの団体は商工中金に依存する比重が非常に多くなりますので、この債券の引き受けはぜひ今後ふやされるように、必ず御言明の通り実行していただきたいということであります。  それに関してさらにお尋ねをしたいことは、商工中金に政府資金、すなわち資金運用部資金を供給する方法としては、現在のところでは債券を引き受ける方法しかないわけであります。商工中金の発行する債券を政府が買ってやるという方法があるだけでありまして、他のたとえば開発銀行でありますとかあるいは電源開発会社でありますとか、輸出入銀行でありますとかあるいは地下鉄等に対するように、資金運用部資金を直接貸すことをおやりになっておらない。債券を引き受けますと、債券の引き受けというものは市中引き受けと同じ条件でありますから、発行者の資金コストは非常に高くなります。ところが資金運用部の金を直接低利でお貸しになれば、それだけ商工中金の資金コストは下るわけであります。言うまでもなく、今日の商工中金の資金コストは非常に高い。ために政府関係の三金融機関のうちで、国民金融公庫から金を借りますよりも、また中小企業金融公庫から金を借りますよりも、中小企業者の組織団体である、政府が法律でぜひやらしたいという協同組合なりあるいは商工組合なりが、商工中金から金を借りれば、かえってほかの機関よりも高い金を借りなければならぬという矛盾した状況に置かれておることは、皆さんよく御承知の通りであります。そういうことが資金運用部の金を直接貸すことによって救われるわけであります。このことについては商工委員会等におきまして、与党も野党も全く一致しまして、直接貸しの道を開くべしという決議を再々いたしておるのでありますが、これをおやりにならないのはどういうわけでございましょうか、それをぜひお答え願いたいと思います。
  39. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 前段のお話の、銀行の中小企業者に対する貸出の割合が非常に減っておるということは、私も承知いたしております。また政府も非常に心配いたしておるのであります。もちろん一般の市中銀行ばかりでなしに、信用金庫その他の資金がふえておりますから、必ずしも銀行の貸出だけの減で最後の結論を下すわけには参りません。そこでわれわれの考えておりますのは、中小企業者に対して、どうしても市中銀行から金を借りられるようにしたい、これはやっぱり今後信用力の保証ということをやってやらなければ、市中金融機関から金が借りられない、そこに根本のメスを入れようというのが、今度の信用保険公庫の考え方です。残念ながら本年は三百五十億くらいの保証限度がふえるだけでありますが、来年度なり再来年度になりますと、これは当然相当に準備金を持っておりますから、また地方に対する貸付金もふやしていきますから、漸次よくなる。ここに根本的な方法をとらなければならぬというのがわれわれの主張で、今度の公庫ができた次第であります。  また先ほどの商工中金の問題に関しましては、先ほど来御説明しておりますように、必ずしもこれで十分だとわれわれ考えておるわけではない。今後よくしていきたいということを、弾力性を持って考えていかなければならぬというふうに思っておるのであります。ただ金利が非常に高くなるというような点――もっとも先ほど弾力性と申しましたが、これは一般の市中金融機関の金が楽になれば、一般の銀行引き受けの額が多く出てくるということにもなりますから、資金量としてはそういうふうに弾力性のある運用をやっていきたいというふうに考えておるわけであります。ただ金利の高い点につきましてはこれは従来からいろいろ議論があるところであります。極力発行条件その他についても今後考えていく、極力低利にはして行きたいと思います。  直接貸しをやっておりません点は、商工中金の性格から、預金部としては建前上やれないというようなことで、今もって話し合いがつかないということを聞いております。
  40. 内田常雄

    ○内田分科員 今の運用部の資金を商工中金に直接貸しすることについては、大蔵省との話し合いがつかないということですが、これでは中小企業者やあるいは国会議員に対する説明にならないのであります。これは話を大きくすれば、内閣不統一ではないかということにもなるわけでありますが、いいと思ったこと、必要なることはおやりになったらどうかと思います。地下鉄には直接貸しができる、あるいは大企業に金を供給する開発銀行には、低利の直接貸しができるけれども、一番困難で、かわいそうな中小企業者の金融機関であり、それも政府が法律まで作ってやらしておる商工中金に対してはなぜ直接貸しをおやりにならないのか。今までのところ私は国会議員となって以来全く了解がつがないのであります。これは石橋通産大臣のときにはぜひやらせたいという話でありました。石橋通産大臣はそのうち内閣総理大臣になられたから、今度はおやりになるだろうと思っておったら、病気になって引かれてしまった。そのあとが前尾通産大臣でありますが、この前も商工委員会でお尋ねしますと、やる方がいいような御意向のようであります。話がつかないということでありますが、つかないということが納得できないので、形式的には資金運用部資金法というものがありまして、直接貸しをするものは左に掲げるものとする、こう書いてあるのでありますから、その一番下に商工組合中央金庫というものをお入れになればいいし、政府で話がつかないというならば、与党の方から議員提案をいたしてもいいわけでありましょう。ただ根本的な支障があるなら別であります。今はもう中小企業に対する金融というものは、国の政策の問題としても一番大きな問題になってきておりまするし、団体法まで作っておるのでありますから、これは早くおやりになるべきだと思います。今のお答えでは答弁にならないのでありますけれども、大蔵省の方面から理論的になりあるいは実情から見て御説明が願えれば幸いです。御説明がなければ、これはまたほかの機会にいたして、政府を鞭撻する、あるいは指導をするということになると思いますが、いかがでありましようか。
  41. 八木一郎

    八木主査 加藤清二君。     〔「答弁」と呼ぶ者あり〕
  42. 八木一郎

    八木主査 答弁を特に要求しておりませんから……。
  43. 内田常雄

    ○内田分科員 要求している。――それではできないということで、分科会はこれくらいにして保留としましょう。  あと最低賃金制に関連する問題でありますとか、今大臣が逃げ込んだ中小企業信用保険公庫の問題等につきましても、ぜひもう少し御説明を承わりたい。中小企業信用保険公庫というものは、金としては八十五億くらいの金を積んでおりますが、これは使えない金でありまして、全く逃げ込みにすぎない。ああいう保証能力を充実いたしましても、中小企業者は金が借りかえられないということが現状でありまして、銀行は今中小企業者に金を貸します場合に、信用保証をつけますのは、貸し出しをきめましたものに信用保証を要求してきている。信用保証能力を強化していかなければ、銀行の貸し出しが、さっき私が申し上げましたような、中小企業に対してはほとんど向かないという状況が改善されることにはならない面があるのでありまして、その辺につきまして、委員長、ぜひ午後時間をいただきたいと思います。午前中はこれで留保します。
  44. 八木一郎

    八木主査 内田君に対する答弁は留保し、なお内田君の残余の質疑は午後に回すことにいたしまして、発言の順序もございますので、もう一名ごしんぼういただいて、午前中の質疑を続行いたしたいと思います。
  45. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 資料要求をしたいと思います。三十三年度の予算を審議するにぜひ必要なことは、通産省関係としては鉱工業生産の需給計画がぜひ必要だと思います。これは先般新聞社には発表になり、新聞には出ておりますから、午後の劈頭に一つこれを配付していただきたい。これをお願いします。
  46. 八木一郎

    八木主査 資料は提出いたさせます。田中武夫君。
  47. 田中武夫

    田中(武)分科員 私は先日の商工委員会で、大臣が中座せられたために、質問を中止した点、あるいは大臣が不在のために十分大臣の御意見を聞けなかったような点につきまして、独占禁止法あるいはこれに関連する中小企業対策、こういうことについてお伺いいたしたいと思います。  まずお伺いいたしたいことは、きょうのこの資料としていただきました昭和三十三年度の通商産業省の予算書の中におきましても、本年度の通産行政の重点施策のまず二番目に中小企業振興対策ということをあげておられます。だがしかし政府のやっておられることは、果してそれに掲げているような中小企業振興対策重点的に考えられておるのがどうか疑わざるを得ない点が多いのであります。一面政府は大臣のこの説明の中にも独占禁止法を改正するがごとく述べられております。そこで独占禁止法に対してこれをむしろ強化し、緩和してもらっては困るということが、中小企業全般の意見ではなかろうかと思うのですが、先日もお伺いいたしましたけれども、もう一度この際はっきりとお伺いいたしておきますが、今ここで中小企業振興対策を一方にあげながら、一面において独占禁止法を緩和するがごとき考え方を持っておられるその一番の理由はどういうところにあるのか、お伺いいたします。
  48. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 常に申し上げておりますように、独占禁止法を改正する問題は、決して中小企業者を困らせるとか、消費者を困らせるという意味では絶対にないのであります。現在の独占禁止法では輸出振興上非常に困る点がある。あるいはまた過剰投資が出、昨年のような問題を起すという面がありますので、そういうような話し合いの場を作るという意味であります。中小企業者を困らしたりなんかするというようなことは絶対に避けていかなければなりません。さらに答申によりますと、不況カルテルが緩和される御意見が出ております。不況カルテルにつきましては、御指摘のように現在の法律ではあまり厳格過ぎて、全然今まで不況カルテルはできなかったといっていいのであります。せっかく法は不況カルテルを認めながら、現実にはできないような条件になっている。そういうような点が緩和されていくべきだと思います。しかしその反面におきまして、不当取引の制限に対して厳格に運営のできるようにやっていこうというような答申が出ておりますので、それらの点は十分われわれ尊重していきたい、かように考えているわけであります。
  49. 田中武夫

    田中(武)分科員 今大臣は、独占禁止法を緩和しても、中小企業あるいは消費者を困らすものではない、こうおっしゃるのですが、独占禁止法の最大の目的は消費者の利益確保という点にあると思うのです。また今改正をしようという考えの基礎輸出振興のためだ、こういうことであろうと思うのです。そうするならば、こういった独占禁止法といったような法律の改正はできるだけ避け、むしろ最小限度にとどむべきだ、こう考えるのですが、独占禁止法審議会の答申によりますと、相当広範なものが出ておりまして、輸出振興のためだけでなく、そのほかのことにも触れているわけです。たとえば輸出振興のためなら、内需の関係には緩和の必要もないじゃないか、こういうふうに思うのですが、そういう点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  50. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ごらんの通り、答申としては独占禁止法に対していろいろな意見はあります。意見はありますが、答申は最小限度にとどめられておると思います。  それから、輸出振興の問題でありますが、輸出品だけの規制をいたしましても効果が上らぬ。たとえば、現在におきましても、人絹なら人絹を一つ考えましても、輸出品の人絹だけの規制でいきましても効果が上らずに、価格が非常に不安定になって輸出ができない、こういうような状況であります。独占禁止法の目的はあくまで貫いていかなければならぬ。しかし、ただ消費者にとって安ければ、業者はもう倒れていっても何してもいいんだ、これでは私はいかぬと思います。
  51. 田中武夫

    田中(武)分科員 安ければ倒れてもよいと、こう言うわけじゃないんです。輸出振興のために、昨年の国会だったと思いますが、輸出入取引法の一部を改正せられまして、これらの関係のカルテル緩和がなされた。その上になお本体である経済憲法ともいうべき独占禁法を変えて、改悪といいますが、改正していかねばならない理由はないんじゃないか、それによって内需関係までもカルテルを緩和するということは輸出入取引法を改正した今日屋上屋を重ねるような結果になりはしないかと思うのですが、そういう点はいかがでしょうか。
  52. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 答申を具体化しておりませんので、まだわれわれとしては検討中でありますが、しかし、答申は輸出入取引法の運用ではどうにもならないという場合に限っておるわけです。そういう場合が起り得るということは予想せられますので、そういう意味で答申があったと思います。われわれも、検討して、また事実そういう場合も予想されますので、決して輸出振興以外の目的で一般消費者を苦しめるようなことは絶対にないような規定にしていきたい、かように考えております。
  53. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 きょうは通産省所管分科会であります。われわれは野党の立場でありますが、きょうの日程を円滑に進行すべく協力をいたしておるのでありますが、これに対して与党の諸君はごらんのように一名もおりません。これは本分科会の進行上まことに遺憾なことであります。主査におかれては、よろしく与党の委員を督励せられて、出席せられるまで暫時休憩せられんことを望みます。
  54. 八木一郎

    八木主査 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は一時三十分より再開して、通商産業省所管に対する質疑を続行することにいたします。  暫時休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十分開議
  55. 八木一郎

    八木主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業省所管について質疑を継続いたします。田中武夫君。
  56. 田中武夫

    田中(武)分科員 それでは午前に引き続きまして、独禁法その他について質問を続けていきたいと思います。  どうも委員会の出席が悪くて、今後こういうことで質問を続けていくとどうも困ったことになると思うので、もっと与党議員の方にも出席方を委員長の方で考えていただきたい。このように思います。  そこで第一にお伺いいたしますが、独禁法審議会が答申をいたしました際に、その会長でありました中山さんが、これは多分記者会見か何かで言われたのだと思うのですが、次のようなことが新聞に載っておりました。この答申案によってむしろすっきりするのだ。今までいわゆるもぐりのカルテル、独禁法違反のカルテルが従来あった。ところが答申案を実施することによって、むしろそういうことがなくなってすっきりするのだ、こういったような談話といいますが、新聞記事が出ておりましたが、中山会長が言われたことが事実とするならば、今までそういう独禁法違反のもぐりカルテルがあったのか。またこれを通産省なり、きょうは公取は来ていないようですが、そういうところは知りながら見のがしておったのか。どういうもぐりカルテルがあったのが、あったとすればどういう性格のものであり、それがあったにかかわらずなぜそういうことを独禁法違反として考えていかなかったのが、そういう点についてお伺いいたします。
  57. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私は中山さんのお話を直接聞いたわけではありませんので、どういうふうにお話しになったかわかりませんが、独禁法は御承知のように抽象的な法文で、いわゆる疑義が非常に多いのだと思います。いろいろ判例なり何なりを積み重ねていきませんと、現在の法律だけではわかりかねる面がかなりあるのではないかというふうに、われわれもそういう気がいたしております。従って不公正な取引方法なんかにつきましても、もう少し明確にはっきりさせよう、そうして厳重に取り締っていけというような考えが、この答申に一貫して出ておりますが、そういう意味のお話があったとすれば、私は確かにそういうような感じはいたしておるわけです。
  58. 田中武夫

    田中(武)分科員 そういう意味のお話があったとするならば、私も確かにそういう感じはしている、こういう御答弁ですが、それでは大臣みずからが従来独禁法違反のもぐりカルテルがあったことをお認めになるのですか。
  59. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 もぐりのカルテルが行われておるとは私考えておりません。ただいま申し上げましたように、非常に限界が具体的にはむずかしいために、一般の人も果してこれは独禁法違反であるかどうか疑わしいということで悩んでおられたのだろうと思います。そういう点はむしろはっきりすべきだと私自身が考えておることを申し上げておるので、ただいま独禁法違反が行われておるというふうには考えておりません。
  60. 田中武夫

    田中(武)分科員 規定が抽象的であるから非常に疑義がある。だからそういう点をすっきりするということは望ましいと思いますが、しかし大臣はそういう違反はない、疑問はあったかしれないが、違反はない、こういうふうに言っておられる。中山さんは、これは新聞ですから公開です。ここで従来ももぐりカルテルがあったのだ、こう言っておられる。それならどちらかが間違っていると思う。かりに大臣の言われることが正しいとするならば、失礼ながら中山会長は独禁法の実際を御存じなかったのではないか。そういう実際の動きを御存じない人が、これは失礼ですが、会長になって審議いたしました審議会の答申そのものが、実情に即したものではないと考えられますが、そういうような点については大臣はどうお考えになりますが。
  61. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 中山さんがどういう表現を用いられたが、私先ほど来申し上げておるように、存じないのでありますが、しかし中山さんは独占禁止法に対する研究は十分しておられるだろうと思います。ただ現実に独禁法違反が盛んに行われておるというふうには私は考えませんが、これは何とも中山さんに対する批判は私としては避けたいと思います。
  62. 田中武夫

    田中(武)分科員 中山会長はもちろん経済学の第一人者であり、十分研究しておられると思う。その人が違反がある、もぐりカルテルがあった、こう言っておられるのだがら確かにあったのだろうと思うのです。それではそれを通産省なり公正取引委員会は見て見ぬふりをしておったのではないか、このようにも考えられます。そうするなら職務上に大きな疑義が生じてくると思うのです。何はともあれ先日も大臣に私申し上げたのですが、独禁法審議会の構成メンバ―、あるいは審議の内容、そういうことについて事が重要であるだけにわれわれは大きな関心と、なおかつその中に行われた審議の模様、そういうことも十分知りたい。委員の選出につきましても、これはこの前もおっしゃいましたが、中小企業代表がないじゃないかといえば、村瀬商工中金の理事長が代表であるとか、農民団体の代表がないといえば、楠見農林中金の理事長が農民の代表であるじゃないか、消費者の代表がいないといえば、私も消費者であるといったような、とぼけた答弁をしておられるわけです。この前商工委員会のときにもお伺いして、まだはっきりした御意見を伺っていないので、この際お伺いしたいのですが、この独禁法審議会の審議の内容、経過等を公開される御用意があるかどうか、こういうことをお伺いしましたところ、大臣は私だけの権限でない、こういうようなことだったのですが、その後内閣その他に御相談になったかどうか。それでそれはなお今日でも公開するという用意をお持ちにならないのかどうかお伺いいたします。
  63. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいま農民代表とか、あるいは商工代表――代表という言葉はこれは当らぬと思います。いわゆる利益代表を集めたというのでなしに、事柄の性質上そういう方面に理解の深い方、また独占禁止法についても十分おわかりになる方というので非常に限定されるものですから、正面から利益代表を集めたという意味でなしに、そういう事情を十分御承知の方についてお集まり願った、こういう意味でありますから、その点は御了承願いたいと思います。  それから公開の件につきましては、手続の問題でありますので、企業局長から御説明いたさせます。
  64. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 先般お話のありました審議会の議事の内容等についての点は、御承知のように、内閣に設けられた審議会でございますので、その関係の方にとりあえず連絡してあります。しかし御承知のように諮問機関であり、その会長その他の関係の方にも、内閣の方で御相談をしておると思います。その結論というか、最後のところに来ておりませんので、いずれまたあらためて……。
  65. 田中武夫

    田中(武)分科員 そうすると、今の御答弁によると、公開をするような方向で内閣の方にお話しになっている、こういうように理解してよろしいですか。
  66. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 こういう御希望がありましたということで内閣の方にお話しをしておるのでございますが、どういうふうになるか、私はどちらにしろというような指図をしたりする立場にございませんので、そういう御希望がありましたからということでお話ししてあります。
  67. 田中武夫

    田中(武)分科員 企業局長としては、そういう連絡といいますか、事務的に、商工委員会なりあるいは予算分科会においてそういう希望が出た、こういうことを内閣に伝えるということでいいと思うのです。私がお伺いしたいのは、所管大臣である通産大臣自身が、こういった重要な独占禁止法というような経済の基本をなす法律、これの改正のもとをなすといいますか、その審議会の内容であり、かつまた先日もお話がありましたが、いろいろの団体の代表なんかも参考人として来てもらって代表意見を聞き、その中にも相当独禁法はむしろ強化すべきである、緩和すべきでないという意見もあったように思っております。そういうことについて十分知らしめる必要があるとお考えになっておるかどうか、大臣自体の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  68. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 中で差しつかえないものについては、これはお知らせしていいわけでありますが、何しろ個人の名ざしをして、その人が一々どういうことを言ったかということになりますと、これは必ずしも公開すべきではない、かように考えております。
  69. 田中武夫

    田中(武)分科員 われわれが要求しているのも、だれがどう言ったということでなく、その審議会全体がどういった動きによって、どういった観点からこのような答申が出たか、そういうことを公開すべきでないが、こういうふうに申し上げているので、その上に立って、なおそういったことが公開できるような方向に大臣は努力していただきたいと思うのです。  次に進めていきたいのですが、先ほど私は、輸出振興のために独占禁止法を緩和する必要があるのだ、こういうことなら輸出取引法の改正もやったらいいじゃないか、こう申し上げましたら、大臣はそうじゃないというようなお答えがございました。たとえば不況カルテルにおきましても、現在よりか要件を緩和して、いわゆる不況のおそれのある場合にできるというように持っていく。今までの認可制を事前の届出制にする、こういうことも認めていこう、こういうような答申でございます。もしこのように変わるならば、カルテルを、何といいますか、いつでもおそれあるということから勝手に結んで、事後届け出れば事が済むということになって、全く独占禁止法の精神が失われていくんじゃないか、このように考えられますが、大臣の御所見はどうなんでしょうか。
  70. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 事前届出制も認め得ることとする、答申はこういうことになっております。その弊害のない場合にはという限定がされておりますので、弊害がなければそれも認め得る、これは当然のことのようにも思うのです。ただ事前届出制と認可制とどう違うかということになりますと、事前届出も、一カ月前とか、二カ月前とか、こういうような期限を付してやりました場合、それから認可も一カ月なり二カ月の間にどうしても認可しなければならぬ。こうやった場合に法律上多少感じが違いますが、実際問題としてどの程度に違うかということは、ただいま検討しておるのですが、あまり違わぬのじゃないか、こういうような意見も相当あります。ただ私の、答申を読みました感想では、弊害のない場合、それから輸出の場合にしましてもどうしても確保できない場合というように非常に限定されておるのでありまするから、そう御心配になるような点は私はないように思います。
  71. 田中武夫

    田中(武)分科員 今の御答弁によると、大臣は事前届出制を一応認められた、こういうようなお気持のように伺いますが、それもやり方いかんによると、こういうことなんですが、そのやり方も問題だろうと思うのです。いずれにしてもそういったような改正がなされるとするならば、中小企業あるいは消費者は大きな影響があると思う。その場合に独禁法本来の目的である消費者の利益の確保についてはどのような配慮を考えられておりますか。
  72. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 もちろん弊害のないとかそういうようなことは明らかでなければなりません。もし明らかでない場合にはもちろん多少なり認可にかかるという場合もありますが、そういうような場合でありましたら、これは何らかの中小企業になり、一般消費者なりに弊害のないような条件を極力つけていかなければならぬというふうに考えておるのでございます。何しろ非常に抽象的に書かれておりまするから、現実の法制としてどういうふうに持っていくかは、まだ検討中であります。
  73. 田中武夫

    田中(武)分科員 検討中、こういうことなんですが、どう検討せられようともカルテルを緩和し、独禁法を変える、こういうことになれば消費者に大きな影響はあると思いますので、そういうことは大臣としてはあまり考えられない方がいいのじゃないかと思うのです。またこの答申によると、合理化カルテルの範囲を拡大する。そうして生産分野の協定、あるいは原材料の購入の協定とか、あるいは運輸設備あるいは買い取り機関、こういったような協定も結んでいくような方向へ緩和するような答申案のように思いますが、こういうのを見ました場合、この合理化カルテルを見ました場合に従来特殊な産業に特殊な事情において起ったものを、それを一般の問題に持ち込んで来て、それを一般化しようとするようにも考えられるのですが、こういう合理化カルテルの拡大、こういうことについては大臣はどのように見ておられますか。
  74. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 これも答申に非常に抽象的に書かれております。しかしわれわれの気持は特定の場合に起り得る合理化カルテル、またそれが合理性をもって当然許していいものだというような意味合いのもの、その特定ということがどういう条件のもとに起っておるかということを深く考えて、そうしてただいまお話のように、ある特定の事柄を全般に及ぼして緩和する、こういうような考え方は持つべきでないというふうに思っております。
  75. 田中武夫

    田中(武)分科員 合理化カルテルについては、今大臣がおっしゃったように、特定な産業に特定な事情によって起った問題を一般化しようということに必ずしも賛成ではない、こういうことのように伺ったのです。しかしながら全般を通じて答申案の内容を是認しておられる御答弁のように拝聴いたしました。そうするなら大臣のお考えというか、政府のお考えはやはり独禁法を緩和していこう、そういうことに考えが固まっておることだけは確かであろうと思うのです。しかし一面中小企業あるいは消費者の利益は十分守られるかどうか、はなはだ疑問に思うわけございます。また現在の岸内閣あるいは従来の保守党内閣は全部そうございましたが、何かやろうとすると、審議会とが調査会を作る。そうしてそのメンバーは思う人を入れていく。そうして政府が考えておる答申案を出すようなメンバーをそろえてやらす。今回の場合もそうであろうとメンバーから見て考えるわけです。しかも独禁法を全面的に検討する、こういったような重要な使命を持つ審議会を、わずか四カ月足らずの日限で、三十三年二月に答申案を出さしめるように持っていったというようなことにも、大きな疑問を持っております。しかも出された答申案に対して、政府はいつも自分に都合のいいところだけは取り上げて、法改正に持っていく。そのときには、審議会の答申によりますと、こう言うのですが、都合の悪いといいますか、政府の考え方と違うような答申案については、全然そういうことに触れない。こういうのが従来の行き方であった。今度の場合も、一面において独禁法の精神を貫く、その運営強化するというようなことから、公正取引委員会の機構の拡大すなわち人員の増加あるいは運営について等の答申も出ております。しかしながらこの三十三年度の予算を見ましても、公正取引委員会の人員をふやすとかあるいは予算をふやすとか、そういう措置については十分考えられていないのじゃないかと考えますが、その答申案中の公正取引委員会の機構強化拡大、こういう面は予算でどのような措置を講じておられますか、お伺いいたします。
  76. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 審議会のメンバーをごらん願いましたら、私はそんなへんぱな、あるいは政府のお先棒をかつぐような方々でないことがはっきりすると思います。全く公正な方々の意見を聞いてやっておるのでありまして、私はただいまのような御心配は全然ないと思っております。  公正取引委員会の人員の拡充設備というようなことにつきましては、私の方の所管でありませんので、ただいまのところちょっとわかりませんが、調べまして……。
  77. 田中武夫

    田中(武)分科員 どこの所管ですが。
  78. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 総理府です。
  79. 田中武夫

    田中(武)分科員 先ほど答申案の一、二と伺ったのです。そういうものについては、大臣自体も大体是認せられたような御答弁です。しかしその答申案の中に、公取の人員の強化あるいは機構強化、軍営の合理化、そういうことが入っていると思う。そうするならば、政府自体として、これについての措置が必要だと思うのですが、そういうことについて、予算自体は総理府だということでしょうが、政府としてそういう受け入れ態勢はあるのですか。
  80. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実はこの答申が出ます前に予算が編成されておりますから、何とも私、調べませんとわかりませんが、あるいはそういう配慮が欠けておるかもわかりません。これは、将来にわたってこれを実現しますなら、それに対して、極力この答申に沿っていかなければならぬ、こうは思っております。
  81. 田中武夫

    田中(武)分科員 ともかく独禁法を緩和していく、あるいは経済特別立法をもって独禁法の除外例を作っていくということで、公正取引委員会をだんだんと削り取っておるといいますか、こそげておることは事実であります。だが一面独禁法を十分に実施していく、そしてそれを監視していくためには、公正取引委員会の機構はむしろ強化すべきじゃないか、このように考えまするが、この点については、予算とは関係ないということですが、やはり経済全般にわたって閣僚として担当しておられる通産大臣は十分考えてもらう必要があると思う。  そこで大臣の御意見によると、大体独禁法は改正の方向へ行くと大臣自体も考えておられるということなんだが、しかしこの原因といいますか、なぜかと、こういくと、やはり過当競争を緩和しなくちゃならないのだ、こういうところにくると思うのですが、現在中小企業がいわゆる過当競争のために、お互いが足を引っぱり合っており、押しのけ合いしておって、不利な条件に置かれておることは、万人が認めておるのです。従ってそういう同業者間の過当競争をなくすことを目的として、中小企業団体法も作られておる。いろいろ問題もあったが、ともかくできた。独禁法を緩和したり中小企業団体法を作った、そういうことだけでこの中小企業過当競争が根本的に直されると考えておられますか。中小企業過当競争の原因はもっともっと根の深いところにある。現在の政府の考えておられるような経済政策なら、どんな法律を作ったってなくならないと思う。過当競争をなくするということ、中小企業振興、こういうことがそんなことだけでできると考えておられますか。いかがでしょう。
  82. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 御承知のように中小企業団体組織法の成立を見まして、この円滑な軍用をはかって過当競争を極力なくしていこうという、これは一つの方法であります。もちろんそれだけで過当競争がなくなるとは思いません。また中小企業を根本的に、いわゆる体質の改善ということをやっていかなければ、中小企業の安定といいますか、地位の向上がはかれないことは当然のことであります。それらにつきましても、われわれも一歩踏み出して、従来とは飛躍的に進んでいこうというふうに考えておりますので、非常な改善はしていける、かように考えております。
  83. 田中武夫

    田中(武)分科員 中小企業団体組織法だとかあるいはカルテルを強化していく、こういうことだけでは救えない。むしろ政府自体の経済政策の根本的な考え方を直していかなければならないと思うのです。  そこで次にお尋ねいたしたいのですが、中小企業団体法は四月一日から実施せられますが、この法律は二十七臨時国会でいろいろと問題を残しました。しかしこの最大の問題は、やはり一面中小企業過当競争を排除する、こういうことは認めながらも、なおかつ一面消費者の利益をいかに確保していくか、こういうことにあったと思う。そこで政府としては、中小企業団体組織法の実施を前にして、消費者の利益確保のためにどのような措置、どのような方法を考えられておりますか。
  84. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 中小企業団体組織法を御審議願った当時にもいろいろお話をしたと思うのでありますが、要するに一般消費者の擁護ということにつきましては、あの法律にはっきり条件として書かれておるわけです。具体的に言いますなら、結局においてあの法律も、いわゆる不況要件で共倒れをしていかなければならぬのを救わなければならぬ。また価格にいたしましても、あまりにコストを割ったような価格で、これはむしろ消費者の面から言いましても、先ほど来言っておりますように、安いのに越したことはないが、みんな倒れてしまって、安く買ってもこれは国全体としては合理的ではない、こういうような意味合いであの法律ができておるのであります。具体的の問題としましては、いろいろな基準を設け、あるいはまた安定審議会の御意見も伺って、そうしてその基準をきめていくというふうにいたしておるのであります。
  85. 田中武夫

    田中(武)分科員 同業者の間のいわゆる過当競争を防止するために中小企業団体組織法ができたわけです。しかしそれだけでは中小企業は救えない。だからこそわれわれは前国会にわれわれ社会党案として、中小企業産業分野確保に関する法律というものを出しておるのでありますが、こういうように大企業と中小企業との組織の分野をはっきりしてやる、そうして大資本からなされるところの圧迫、資本の攻勢に対して中小企業を守ってやる、こういう措置がなければならないと思う。今日中小企業の不況の原因は、過当競争も一つであるが、それよりか大きいのは資本からの圧迫、資本の横暴から来ているわけです。しかも一面中小企業団体組織法を作って過当競争をなくしてやろういう一面に、政府は独占禁止法を緩和して、資本の側に加担している。そうするならば、資本の方からの中小企業に対する攻勢は強化せられる、このようにわれわれは考えるわけなんですが、中小企業団体組織法を作って中小企業のためにしてやったんだ、こう政府与党は大きく宣伝しておりますが、そのうしろでは、すでにそれ以上の圧迫を加えるようなことを考えておる、こういわざるを得ないと思うのですが、いかがでしょう。
  86. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 たびだび申し上げておりますように、独禁法の緩和ということは決して中小企業者をいじめようとか、そういうような目的でやっておるのではないのであります。要するに従来言われておりますように、自由競争を妨げるものは、すべて公共の利益に反するんだという考えではなしに、もう一つ高い見地で、国全体としてどうすればいいかということを考えていかなければならぬのであります。そういう目的から独占禁止法の緩和もある程度やむを得ないということになるのでありまして、中小企業が直ちにこれによって困るという法律なら、これは当然作るべきではありませんし、またそういう目的を持っているわけでもない。先ほど来申し上げておるように、中小企業の困らぬように万全の方法を講ずるつもりなのであります。また先ほどお話がありましたような、社会党から提出されております産業分野の問題、あるいは小売商業の調整法というような問題につきましては、これはいろいろ今後御審議を願わなければならぬと思います。われわれとしましては、法律上現在の法制では非常に困難でありますし、事実法律によって分野をはっきりきめていくというようなことも実際問題として困難でありますので、われわれとしましては、現在の法制の最大限であります小売商業特別措置法というものを出しまして、皆さんの御審議を願っておるような次第でございます。
  87. 田中武夫

    田中(武)分科員 中小企業を困らすために独禁法を緩和するんだと、そんなことはここで大臣は言えないと思う。今のように、決してそうではないんだと言わざるを得ないと思うんです。だがしかし、独禁法を緩和した結果は明らかに中小企業を圧迫することは必然的なんです。さればこそ、この独禁法審議会において参考人として出席いたしました中小企業団体の代表者あるいは農民団体――はいたかどうかしりませんが、農民団体、消費者団体、すべてが独禁法緩和に反対をしている。にかかわらず、あえて独禁法を変えようと――これは大臣がどう言われようとも、独禁法緩和の結果は中小企業の圧迫になることは明らかであります。政府中小企業振興対策、こう大きく看板を掲げておるのに、やっておることはそうではない。中小企業振興法にしても、腹から出されたというのではなしに、むしろ中政連その他の圧力に属して、てんやわんやの結果出してきたのが実態じゃないですが。前の水田通産大臣が去年の四月五日――これはおるすのときに次官にも聞いたことなんですが、水田通産大臣は本会議において、私が、それでは中小企業助成振興法、こういうものはいつ出されるのかと言えば、一週間もたたないうちに出されるような答弁をされた。だが一年たってもまだ出てきていない。中小企業振興に関する法律は一体どうなっているのか、お伺いいたします。
  88. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 独禁法の改正が即中小企業の圧迫だとは私は考えていないのであります。独禁法の改正についていろいろ意見の開陳があったでありましょうが、どの程度の改正をやるかということによって、また改正の内容によって意見が異なるわけであります。そういうような圧迫のないような改正を審議会においてもお考えになったと思います。またわれわれも今後法律を作りますについては、当然それは考えなければならぬことだと思います。中小企業振興法につきましては、法律をどういうふうに作るか、どこに重点を置いて作るかというようなことで、ずいぶん検討しておる最中であります。しかしその内容につきましては、今度の予算におきましてもいわゆる体質の改善というような意味におきまして御審議を願っておるわけでございます。われわれとしましては、法律を極力出したいと思っておりますが、出す出さぬにかかわらず、実質においては一歩進めてやっておるわけであります。
  89. 田中武夫

    田中(武)分科員 それでは水田前通産大臣と現在の大臣は、中小企業助成法については若干考え方が変ってきた、こういうふうに理解してよろしいでしょうが。
  90. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私になりましてからも、その内容につきましてどういうものを織り込んで行くかということについては、ずいぶん変っていっているのであります。と申しますのは、法文に書きますと、必要のない法文があってみたりいろいろするものですから、また法律の体裁としてどういうふうにするかというようなことで、まだ織り込む内容の関係で、最後的な結論を得ていないのであります。
  91. 田中武夫

    田中(武)分科員 まる一年考えられたのですから、おそらくいいものが出るだろうと期待いたしております。だが政府中小企業とかあるいは一般大衆が喜ぶような法案を出す出すと前からアドバルーンを揚げても、あまり出してこない、こういうのが通例じゃないかと思う。その一つの例といたしまして、これは法律は関係ございませんが、この前中小企業団体組織法が成立する際に、同時に中小企業等協同組合法を改正いたしまして、いわゆる零細企業――工業なら五名以下、商業、サービス業なら二名以下、こういう企業者は小組合を別に作ることができる。この小組合に対しましては、あれはたしか二十三条だったかと思いますが、政府は税制上、金融上特別の措置を講ずる、こういった義務的な規定があるわけです。これはせんだって大臣お留守のために次官にお伺いいたしましたが、二十三条の三に「政府は、事業協同小組合の組合員に対し、税制上、金融上特別の措置を講じなければならない。」こういうように明確に規定せられておるわけでありますが、今日の予算の編成過程等において、この二十三条の三の政府の義務的規定をいかに生かしていくかという努力がなされたか、あるいはまた具体的にどのようなことを考えられておったか、また考えられて措置せられておるか、お伺いいたします。
  92. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 あの法文につきましては、いわゆる宣言規定というのでその内容については明確でないのであります。しかしわれわれとしましては、大筋はあれに該当するような零細業者に対する税の軽減あるいは金融上の措置、あの組合員に限って特段の措置をしなければならぬという意味でないことは、当時私起草者なりあるいは説明されました提案者からも聞いたのです。私はその御趣旨に極力沿って考えて参りましたが、今度の自転車荷車税の廃止というようなものも、それの一つの考え方だったと思います。また金融上の措置としまして今度やりまする信用保証公庫というようなものも、これは零細業者の方に一番適用のある問題でありまして、ほんとうに信用保証に欠けておるという点でお困りの方が零細業者であり、それに対しましては最も適切にあの制度の運用によって救われる、かように考えておる次第でありまして、いろいろと今後もその努力を積み重ねていきたい、かように考えております。
  93. 田中武夫

    田中(武)分科員 所管大臣が頭から宣言規定なんて軽く考えられては困ると思うのです。しかもまた今の御答弁では、何もこれだけという意味ではない、こういうような御答弁だと思います。法文は先ほども読みましたように「政府は、事業協同小組合の組合員に対し、税制上、金融上特別の措置を講じなければならない。」、「事業協同小組合の組合員に対し、」と明確にうたっているわけです。中小企業と十ぱ一からげに申しても、いろいろあります。そのうちの特に小組合に入るような組合、いわゆる零細という言葉で言われる中のもう一つの零細企業、これに対しては特別な措置を講じなければならぬ、こういうことなのです。ところが、今の御答弁あるいはこの措置等を見ましても、こういうことについて特別な考え方を持たれていない。もちろんこの規定を入れるときに自民党側は税制上という言葉を入れることに大きな難色を示したことは事実であります。しかしとにもかくにも法律として明記せられたのに、所管大臣がそういうようなお考えでは困ると思うのですが、大臣、もう一ぺんゆっくりと一字々々この二十三条の三の文句を読み直していただきたいと思います。
  94. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実はその法文につきましては、参議院で私は問題を起しまして、もしあれを厳格に解釈するなら、なかなかああいう規定は運用できないというようなことを申し上げたのですが、当時の提案者もあの法文に厳格にこだわることはない、そういう考え方でできるだけ善処すべきだ、こういうことでありました。そういう意味からいたしますと、私の申し上げたのは、あの法文にかっちり、規定そのままではないにしましても、立法者の趣旨を沿って極力努力し、むしろ自転車荷車税税のごとき、ほんとうにああいう方々の特典が多いのであります。ただいま申し上げました信用保証公庫につきましても同様だ、かように考えておるわけであります。
  95. 田中武夫

    田中(武)分科員 大臣、ちょっと困ると思うのです。もちろん都合が悪いときには憲法の解釈でも変える現在の内閣ですから、こういう条文については勝手な解釈をするでしょうが、しかし今おっしゃるようだったら、一応はっきり法律にきまっておるのに、それをいいかげんに、勝手に解釈しているとしか思われません。その考え方は国会の意思を軽視せられるものである、こういうように理解せられるわけです。困るといって、できぬことはないと思う。たとえば中小企業と一律に言っても、その中には企業性の強いものと、あるいはもっと勤労性の強いものとあると思う。その勤労性の強いもの――よく言われるのですが、企業者のおやじみずからが四、五人の従業員とともに朝から晩まで菜っぱ服を着て働いておる、あるいは二、三人の従業員とともに前かけをかけて、自転車、オートバイでものを配達しているというような小売商人、こういうような人たちに特別な措置はできると思う。たとえば税制上の問題を考えましても、これらの人が得た、企業によって、商売によって得るところの所得は、勤労所得と一向変らないと思う。これらの非常に勤労性が強い、その主人みずからが勤労によって得た所得、これは勤労所得です。それに事業所得税をかけておる。こういうのは改めて、こういう人たちには勤労所得税だけをかけていくというような考え方もできると思うのです。そういうことはできない、困るというようなことはないと思うのですが、どうでしょう。
  96. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 また前国会の蒸し返しみたいなことになるのですが、実際問題としますと、組合に所属されておる方が組合を脱退せられたら、今度は恩典をはずすかどうか、あるいはいろいろそういうような場合を考えますと、あの法律そのままでは現在の税制上の建前から言いましてなかなか困難であります。従ってあれに一番該当するような人が一番恩典を受ける、こういうような方法をとっていくべきでありまするし、ただいま申し上げましたような点はわれわれも一番重点を置いて、そうしてあの規定に該当するような方が一番恩典を受けられるような方法は何かというので考えてみまして、ああいうような税制上の措置をやったり、あるいは金融上の措置も考えてきたわけであります。
  97. 田中武夫

    田中(武)分科員 税制上の措置も金融上の措置も考えてきたと言われますが、何も考えていないじゃありませんか。一ぺん具体的にこういうものとこういうものに、こういうことを考えたということをおっしゃって下さい。
  98. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいま申し上げましたように、またお話の中にもありましたように、自転車で走り回る、あるいは勤労によって商売をしておられるという方が、今度の自転車税、荷車税等につきましては一番恩典を受けられるわけです。また先ほど来申しておりますように、信用保証公庫の信用保証協会を通じて保証するというような面は、ただいまお話のような方に特典が一番多いのであります。そういう意味合いで、われわれもそういうところに重点を置いてやってきたわけであります。ただ最初に申し上げましたように、あの組合員の方だけが恩典を受けられるというような制度は、税法上はなかなかむずかしいのであります。いろいろ考えましたがうまい案もございません。大体においてそういう方々が恩恵を受けられるような制度を極力やっていくべきだというふうにしてやったわけであります。
  99. 田中武夫

    田中(武)分科員 やってきたと言われるが、やっていないから言うのですよ。たとえば中小企業信用公庫、仮称ですが、このことを強調せられているようですが、一体これによってどれだけ今言ったような零細企業が恩典を受けられるのか。これは中小企業と、こう一口に言っておる、しかも信用保証制度によって金融の道を開いていく、こういうことであります。これはあとでお伺いしようと思っておったんですが、現在すでに中小企業関係政府機関の金利は高い、そこへもってきまして、担保能力がないから、担保を保証してやるという信用保険制度、そうすると、信用保険料を支払う、こういうような二重の支払いになる――二重に支払っておるということになって、別に特別措置とも考えられないし、ことに初めから金融の資金ワクを分けるという方法はあると思う。たとえば何百億の中で何%ばこういった企業のためのワクである、こういうようなひもつきにすることも可能であろうし、金融機関によって分けることも可能であると思う。また組合に結成せられた人だけにそういう恩典をやるということはよくわかります。しかしながら一面の考え方によれば、中小企業団体組織法は、中小企業を団体に結集する、その組織を通じて中小企業を安定振興さしていこう、こういうことが目的であったと思う。税制の上において変った措置ということはむずかしいかもしれませんけれども、金融の上においてはでき得ることだと思うのです。作られるところの協同小組合を通じてこの組合に資金を与えていく。そうして共同仕入れとか共同作業場を設置する、設備を設置するとか、こういうことは可能でないかと思うのです。決してできないことはないのです。この中小企業信用保険公庫、こういうことについても特別に零細企業に対してどうだという考え方を発揮しておりません。これはむしろ中小企業の中でもより比較的大きなところに資金がとられていく、こういうことになると思うのですがいかがでしょうが。
  100. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 その点はわれわれの考えておりますのは、やはり今おっしゃるように担保能力がない、そういう人に保証協会が一番簡単であり、そうしてまた保証協会の性質からいいますと、そういう方が一番わかりやすいわけであります。上の大きな額を借りるような人については保険料率等も考えておりますが、特別に保護を要するものは別としまして、結局下に厚くという方針を貫いておるわけであります。またただいまお話の国民金融公庫のワクの問題もありますし、これはわれわれ今後もっと検討していかなければならぬ問題であります。と申すのは果してそれに応ずる特別のワクをどの程度に作るがどうかというようなこと、また資金需要が経済の情勢に応じて変ってくるのでありますが、逆に借入金二十万円とが、現在でもそういうようないろいろあれを持っておりますが、五十万円とか、百万円以上の人とか、そういうような段階に応じていろいろ特別な考え方を持っていくというやり方もあります。またそういうような面につきましては今後検討したいと思っております。
  101. 川上為治

    ○川上政府委員 先ほど大臣がお話されましたことは、結局協同小組合のメンバーだけに、たとえば商法上の特別な措置をとるということは非常にむずかしいのではないが。ただしそういうメンバーと同様な零細企業者に対しては、やはり一様に何らかの措置を今後は講じていきたい、こういうお話だったと思うのです。私どもの方で現在いろいろ考えておるのですが、今度の中小企業の信用保険公庫につきましても、私どもの方としては特に零細企業関係、具体的に言いますと小口の金融に対しまして特別にめんどうを見ていきたいというふうに考えておるわけでありまして、たとえば現在の小口の包括保証保険というようなものについては今後もっとその基金もふやし、また保証料率もあるいはその保険料率も引き下げていくというように考えて、実は構想をそういうふうに考えておるわけであります。これはまだ確定したものではありませんが、一応現在のたとえば包括保証保険の小口のものについては保険料率は一分四厘六毛ということになっておりますが、今度は公庫におきましては、私どもとしては少くとも九厘程度までこういうものを持っていきたいというふうにも考えていますし、この公庫運営について、たとえば現在保険関係で融資保険と保証保険というのがあるわけなのですが、融資保険というのはどっちがというと、中小企業の中でも中以上のものが多いと思うのですが、そういうものも今後は相当減らしていく、そうしてむしろさっき申し上げました小口の保証保険の方に金をうんとつき込んでいったらというふうにも実は考えておりまして、今度これは近く商工委員会なりその他の委員会において審議をわずらわすことになると思うのですが、そういう考え方で、この保険あるいはその保証の問題についても、なるべく零細企業者に対してめんどうを見ていくというふうに実は考えておるわけであります。それからなお協同小組合の実施につきましては、実は四月一日ということに私どもは考えておるのですが、この小組合に対しては、商法上の措置としては、この組合員だけを特別な措置をとるということが非常にむずかしいのじゃないかというふうに考えるのですが、金融的な措置としてはある程度やれるのじゃないかというふうに考えておりますので、たとえば商工中金から融資する場合におきましては、なるべくこういう小組合に対しましては優遇してやる、利子を負けるということはなかなかむずかしい問題でありますが、しかしなるべくそうした方面には金額をよけい出してやっていきたいというふうな、そういう行政指導も実はやりたいというように考えておるわけであります。あるいは事業税の問題につきましては、今回はそういう措置はとらなかったのですが、私どもの考えとしましてはこの事業税の問題は地方財政との関係がありますし、もう少しいろいろ研究をいたしまして、特に零細企業に対して特別な措置がとられるように、私どもとしましては、たとえば免税点を引き上げるとか、あるいはその率を零細企業に対しては特に下げるとか、そういう措置を今後はどうしてもとっていきたいというふうに考えておるわけでございまして、先ほど大臣がおっしゃいましたのは、その協同小組合のメンバーだけに特別に優遇するということは、特に税法上なかなかむずかしいのではないが、いわゆるメンバーだけでなくて、全国零細企業者に対して特別な措置を講ずるように努力したい、こういうようにおっしゃったと思いますので、私から特に付言しまして御説明申し上げます次第でございます。
  102. 田中武夫

    田中(武)委員 私ども税制上の問題として、税金の上において小組合のメンバーだけにということは、おっしゃるように若干むずかしいものがあるということは理解できるが、しかし金融の面においては私はやろうと思ったらできると思う。やっていく、こういうことになるのですが、私は最初から資金のワク等ではっきりと区別をつけるとかいうことも必要じゃないかと思うのです。利子の点なのですが、これは何回も言われることであるが、ともかく中小企業関係政府機関、たとえば商工中金でも中小企業金融公庫でも国民金融公庫でも利子が高い。そこにもって来て政府は何かというと中小企業の信用保険公庫、こういう問題を大きく言われる。これもやはり保証料がいる。そうするとやはり二重な利子負担という格好になるわけなのです。そこで大臣いかがなのでしょうかね。ことしの予算を見ましても、先ほどもちょっと内田君からですが、同じようなことが出ておったと思うのですが、いつも言われていることですけれども、今度のものを見ましても資金確保が十分できていない。しかもその上に政府出資というのが全然見当らない。そうして頭から六分五厘の利子のつく財政投融資資金もこれに回す、そうすれば六分五厘の利子がついているから、それ以下の利子では貸せないわけです。そういう点なぜ政府出資を、いわゆる頭から利子のつかない資金源を中小企業関係のこれらの機関に出すことが今回の予算でできなかったのか。なお六分五厘の利子のついた金を軍用することによって利子を下げることはできないと思いますが、これら中小企業関係政府機関の利子を下げる用意があるのかどうか、私はこの前も申し上げたのですが、私自体が困ったのですけれども、同じ国民でありながら同じ金を借りることに、農林中金から金を借りれば長期で金利も安い。ところが中小企業が借りれば短期で利子が高い、こういう矛盾をどう説明してくれるのか、こういうような不満の声も聞かされております。今後これら中小企業関係政府金融機関の利子引き下げの用意があるのかどうか、それから先ほど申しましたように、いわゆる利子のつかない金をこれらの機関に資金源として与えることが今度の予算でなぜできなかったのか、そういう点をお伺いいたします。
  103. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 金利の問題につきましては、農業と商工業とではがなり違うと思います。もちろん商工中金なり、あるいは一般の中小企業金融公庫も金利が高いというお話はごもっともで、政府もいろいろ努力して引き下げをやっておったのでありますが、御承知のような状況で多少コストが上り、また一般の金利が上るというような情勢でありまして、その点は、将来の問題として考えますなら極力下げていくという方向に向わなければならぬことは事実であります。ただ、農業の長期でしかも低利というもの、また短期でありますと、ある程度金利が高くなるというのもこれはやむを得ないことであります。今回、お話のように出資を回して金利を引き下げるという措置は遺憾ながらできなかったのであります。しかし、今後におきましてはもちろん引き下げる方向に持っていかなければなりませんし、また場合によってはいろいろな手を考えていかなければならぬかと思います。ただ、信用保証につきましては、先ほど来申しておりますように、保証料を引き下げるという努力を今回もやっておるわけであります。保証料が高いので利用ができないというようなことではなりませんので、極力今後はそういう方向へ努力いたしたい、かように考えておる次第であります。
  104. 田中武夫

    田中(武)分科員 今後努力をしていきたい、こういう御答弁だったのですが、やはり中小企業が金融上一番困っておるというか、中小企業関係政府機関から金を借りる場合に、いつも出る不平不満は金利が高いということ、もう一つは手続が複雑であるということ、たとえば中小企業金融公庫から金を借りる場合要求せられるところのものは、りっぱな税理士あるいは計理士、こういう人が専任におって作らなければならぬような書類である。今言っているような零細企業では、そういった専門家はいない。従って、借りたくとも手続きがうるさくて借りられない。あるいは手間をかける、こういうことがいつも問題になっております。そこで、もう一度はっきりお伺いいたしますが、中小企業関係政府金融機関からの借り入れの手続の緩和、利子の引き下げ、あるいは申し込んでから現実に現金を貸してもらうまでの調査期間等、その他手続期間の短縮、こういう三点について具体的にどう考えられておるかお伺いいたします。
  105. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 借り入れ手続の簡素化並びに迅速化と申しますが、早くやらなければならぬということについては当然であります。しばしば私もそういうことを注意したことがあるのであります。なお、具体的にあるいは向うから方式を出させて検討いたしたいとも思いますが、ただ簡単に借入証書だけで貸すというわけには参りません。おそらく経理内容の審査というような意味で、多少むずかしい書類が要求せられるのだと思います。しかし、一方において、やはり借り入れをされる方も――納税についても同様なことが言えるのでありますが、経理内容も昔の手帳式なものではなしに、できるだけ明確に記帳するというような風習もやはりつけていかなければならぬと思うのでありまして、これは両々相待って、ほんとうに簡素で、しかもわかりのよいものを作るように努力しなければならぬと思います。なおわれわれとしましても、その点について努力をいたします。
  106. 田中武夫

    田中(武)分科員 これは現実の話ですが、国民金融公庫だったと思いますが、ともかく零細企業から借り入れに行った。てんやわんやがあったが貸してくれなかった。そのとき係員が、国民金融公庫は慈善事業と違います、こう答えた。なるほど慈善事業でないことははっきりしている。だがしかし、高利貸しではないので、それなら運営の上において、あるいはそれらの人たちに接する面において親切味が必要だと思う。今手続の緩和とかあるいは手続の期間の短縮、こういうことをお伺いしているのですが、むしろ書類の書き方を教えてやるような親切味が必要であると思うのです。中小企業金融公庫その他の政府機関にはやはり失礼ながら官僚の上りが多い。従って仕事振りが官僚的になっている、こういうように考えられるわけです。そこで、窓口へ何か資料を持って行けば書き方まで教えてやる、こういうような親切味が必要だと思うのですが、そういったような指導といいますが、事務の扱い方について、これらの機関に行政上の措置をとられるような考えは持っておられないでしょうか。
  107. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 窓口が親切にやって上げるということは当然のことで、われわれもしばしば言っていることなんであります。もちろん金融機関も親切にやらなければなりません。またそれらについては、商工会とかあるいは商工会議所なんかにも十分指導してもらわなければならぬのでありまして、われわれとしまして、現在でも補助金を出し、さらにまた今度は中央会の補助金増してできるだけ指導をしてもらいたいということを言っておりますのも、そこでありまして、さらに努力をいたすことにいたしたいと思います。
  108. 田中武夫

    田中(武)分科員 そういう点について一つ十分監督御指導を願います。金利の問題についても、安いのが望ましい、こういう程度で、近くそういうことについて具体的に検討する、こういった明確な御答弁がいただけなかったのでありますが、たとえば中小企業信用保険公庫、こういうものを今度新たに作ってやるのだ、これはけっこうだと思います。だがしかし、何回も申し上げるように、こういう制度と、かつての信用保険協会ですか、これを利用すると保険保証料と金利が二重になる。こういう金利が二重になるような措置をとらずに、中小企業の金融緩和ということを真剣に考えられているならば、なぜもっと金利が安く借りられるような財政上の措置を考えられなかったのか。そういう点いかがでしょうか。どういったってこれは二重に払うことになる。そうすれば高いと言われている利子が実質においてなお高くなる、こういうことですが、どうでしょうか。
  109. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 これは財政資金がうんとあればいいのです。また借りたい人にはどんどん貸せるということならいいのでありますが、そうは参りません。また金融であります限りにおきましては、償還のことも考えていかなければならぬ。従って、それにつきましては保証料、現在銀行におきましても大会社が保証を受けて借りられる場合もある。それは保証料が要るのです。しかし、保証料が高過ぎるということは確かにあると思うのです。極力保証料を引き下げるということで努力をいたしておるのであります。先ほど申し上げましたように、まず九分程度に引き下げるということになりますと、かなり従来よりは安くなると思います。これは資金そのものが豊かになってくれば、いかなる場合におきましても金利は下ってくるのでありますが、何しろ現在の状況は非常に資金が不足いたしておるわけでありまして、ある程度のところでしんぼうしていただかなければならぬ。しかし、行く行くは引き下げていく、こういうような措置をやっておるのであります。
  110. 田中武夫

    田中(武)分科員 保証料が高い、こういうことはお認めになったと思います。そこでこれは一がいには言えないだろうし、直ちにとは無理かもしれませんが、せめて中小企業も農林中金並みな金が借りられるような配慮が将来望ましいと思うのです。利子の引き下げについても、望ましいという程度で、はっきりと具体的な線が伺えなかったのは残念ですが、この程度にしておきたいと思います。  あと二、三質問しておきたいと思うのですが、この問題で特にお願いしておきたいことは、この中小企業等協同組合法の改正による零細企業に対する特別な財政上の措置、これについては十分考えていただきたい、このように考えます。  この零細企業に関連してですが、この点商工委員会でも大臣にちょっとお伺いしたのですけれども、現在あり得べからざる事実として、いわゆる解放部落、こういうものに対して、現にまだ差別待遇が行われておる。もちろん形式的には差別待遇は行われていない。今日表面から差別を口にする者はないと思う。だがしかし、現実において行われておるということは事実であります。そこで社会党におきましても、昨年来党内に部落解放調査特別委員、こういうものを設けまして、具体的な政策検討に入っておることは御承知と思います。先日もこれらの人たちの陳情団と私通産省に参りました。だが大臣留守のために他の方に会ったわけですが、今日の実情からいえば、これらの部落の人たちは、従来部落産業として皮革関係、あるいは竹細工、このようなことをやっておった。ところが、それらの近代化によって、だんだんと自分たちの職業がなくなる。だが一面関西等におきましては、就職の上においても差別を設けられておる。従ってこれらの人たちは半永久的な日雇い労務者となっておる。日雇い労働がこれらの人たちの定職となりつつあるという実情であります。ことにこの部落産業である皮細工あるいは竹細工、げたの鼻緒、こういうようなものは零細企業であります。この零細企業であるという上に立って、金融の上においても大きな困難を受けておる。その上になお、部落なるがゆえにということで、考えられない差別を受けておるということを聞いております。従って、今後これらの部落の産業、零細企業に対して特別な措置が必要と思います。ことに予算の上などにおいても、これらのことを考えていくべき必要があろうと思うのですが、大臣はこの部落産業というようなことについて、どのような認識を現在持っておられますが、お伺いいたしたいと思います。
  111. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 部落の方を区別をして遇するというようなことは、全くこれは想像もできないくらい妙なことだと思います。そんなことはあり得べからざることであります。従って私は特別の措置を設けるというよりは、もし必要があれば通牒なり何なり出しまして、そういうようなことの絶対にないようにということで行くべきでありまして、金融上特別な措置をするというようなことは、かえって逆の効果を来たしはしないかというとかうにも考えます。なお調べまして、そういうようなことは絶対にないというふうに考えておるのでありますが、あればこれは何としてもやめさせなければなりません。厳重に取り締りたいと思います。
  112. 田中武夫

    田中(武)分科員 あれば取り締りたいというのじゃなしに、現実にあるということなんです。大臣が知らないだけなんです。特別な措置はかえってどうこうというのですが、私は必要だと思うのです。たとえば国民金融公庫に対していわゆる生活更生資金のワクを与えるとか、何かそういうようなことも必要だと思う。あるいは現在までのげた、鼻緒、このような産業を、サンダルですか、それの方に切りかえていって輸出に向けるというようなあっせん、指導も必要だと思う。またこれらの部落に対して協同組合か、あるいは共同販売組織、あるいは何とか互助会とか、何でもけっこうですが、そういうような組織を与えてやる、そしてその組織を育成し、その組織に対して特別な措置を講じていく、こういうことは必要であろうと思う。たとえばこれらの産業は従来身分的に差別等があった場合には、それだけに職業の上において一応の保護がなされておったというが、区別がなされておった。ところが今日一応形式的にそういうことはなくなった。と同時に仕事の上において、産業の上において一緒になった。こういうことがら、出発のときすでに大きなハンディキャップを受けておるにかかわらず、現実において金融その他において区別があるということなら特別な措置を講じなければならないと思うのです。一つ具体的な措置をお願いしたいと思うのですが、大臣いかがでしょう。
  113. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 おっしゃるようなあっせんとか指導とかいうことは非常にいいことだと思います。ただ私は特別のワクをそこに設けまして部落の人にやるのだというような行き方がいいとは思いませんで、指導なりあっせんをやって、そうしてそれに特別に貸し出しやすくしてやるというようなことは非常にけっこうなことだと思います。私もそういう方向で努力したいと思います。
  114. 田中武夫

    田中(武)分科員 従来部落解放の問題については、同和教育とか同和事業とか、こういうことによって一応くさいものにふたをしろ式にやってきた、こう思うのです。こういうことでは根本的な改革はできない。だから同和教育、同和事業というようなことでなく、私はむしろ積極的にそういう組織を作って、その組織を指導して、それに金融の道をつけていく、あるいは共同作業のしやすいような設備を設けてやる、こういうことは私は必要だと思うのです。大臣が今そういうことを特別にすることはかえってどうかということ自体は、やはり同和教育と同じようなくさいものにふたをする、こういう考え方に基いておる、こういうことなら根本的な改革はできない、こう思うのですが、どうでしょうか。そういうことは特別にやっていいのじゃないかと私は思います。
  115. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私特別の金融の問題に限定して考えておったのでありますが、金融に特別のワクを設け、あるいは特別の貸し出しをやるというふうに区別することがかえっておかしいのであります。これは何も部落の方だからというのでなしに、ほんとうに資金が必要であり、また非常にお困りであり、救済すべき人につきましては救済していくという考え方で行がなければならぬ。その点において部落の方にはそういう方が多い、こういうことでありますし、また部落の方について確かに指導も必要だし、いろいろあっせんもしてあげるということをしていかなければならぬと私は思います。私もいろいろお話は聞いておるのでありますが、今どきそんな区別して金融機関が考えること自体が、もう不思議でならぬくらいなんで、そんなばかなことはあり得ない。非常にお困りで、しかも資金が必要であり、しかもまじめに働いておられる、こういうのなら当然そういうところに貸し出すべきはずのものであります。それが原則なんであります。特別にワクを作るというようなことはかえって金融機関の方、働いている人も妙な感じがするんじゃないかというようなことで、逆のいろいろな問題が起りやしないかということを心配して申し上げておるわけです。
  116. 田中武夫

    田中(武)分科員 私もそういうふうに思っていたのです。そういうことはあり得べきことでないし、そういうことはおかしいと思った。しかし実態はその必要があるということです。大臣はその実態を十分御存じない。従って一つこの実態調査してほしいと思う。それから同じように扱うといっても、先ほど申し上げましたように最初の出発のときがら差別を受けておって、差別を受けたままこれをかりに同じように扱ったら、その差別がそのままになる。だから特別な援助というが指導が必要だと思うわけです。ともかくそういうことはすることがおかしいと考えておるのが常識だと思いますが、そういうことは実態を知らない。われわれも実はそう思っておったのですが、実際それらの会合に出、実際の状況に接した場合、今日考えられない、あり得べからざる事実が存在するということです。こういうことを十分知っていただいて特別な方法を考えていただくよう私はお願いをいたしておきます。まだありますが、あとまた商工委員会でやることにして、この程度でおきます。
  117. 八木一郎

  118. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私はこの際三十三年度予算関係いたしまして、二、三の点をお伺いしたいと存じますが、時と次第によっては総引き揚げということを行うかもしれませんからそのおつもりで一つ委員長、お手やわらかにお願いいたします。  さて内容は、第一は工業用水、第二は中共貿易、第三は外貨割当の基本、こういう問題について本省の所信をただし、同時に本省にまつわるところの国民的な疑惑をこの際一掃して、予算が健全に行われるよう、協力したいと思ってやりますから、どうぞそのおつもりで。  第一点、外貨割当、特に農産物に関係のある外貨割当の基本方針を承わりたいと存じます。なぜかならば、外貨の割当いかんによりまして、そこから生ずるところの物価に変動を来たすのみならず、農産物価に非常に大きな影響を及ぼしていることは、すでに大臣以下御存じの通りであります。とりわけ砂糖であるとかノリであるとかあるいはバナナであるとかいうものは、特に農民を苦しめているのでございます。漁民を困らせているのでございます。さなきだに農産物価が不安定であり、安くなり過ぎたので、もうとてもじゃないが市場なんかに持っていく労賃も出ない、ダットサンの油代も出ない。こういう矢先に行われる外貨割当というものは特に留意していただきたい。そこで第一に、先般農林委員会において、商工委員会においてこのことは行うことは望ましくないというて決議した問題がございます。すなわちノリの内地における最盛期にはこれは輸入をさせないのだ、こういう決議をしておるにもかかわりませず、ちらほら最近聞くところによりますと、どうもその通関が許されるがのごとき印象を受けるのでございますが、これは一体どうなっておりますか。
  119. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ノリにつきましては、御承知のように一億枚を上期に入れるということが話が始まっておりましたが、いろいろ需給調整協議会の方で話がきまりません。また値段が折り合わぬというようなことで延び延びになっておりました。ほんとうをいいますと、上期の外貨で割当てたのでありますから、十二月末までに話をきめたいというのが事務的にいいますとそうでありますが、ノリの生産者側からいいますと、そうも参らぬというようなことで、最近まで話がつかずにおりました。最近におきましてあまりこれも延び延びになりましたのではいろいろほかにも支障があるので、生産者に大きな打撃を与えぬという限りにおいて、通関だけはさせる、あるいは販売はどういうふうにして販売させるかということで、生産業者にあまり影響のないようにという配慮も加えて話をきめたい。そうしませんと、いつまでも処理せずにほっておくわけに参らぬ問題であります。そういうことでやりたいと思っております。
  120. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大臣の言たるやまことによろしい。しかしながら通関を許して、なお内地の生産業者に悪影響を及ぼさないような具体的ないい手があったらここにお示し願いたい。ぜひそれをお願いしたい。大臣は知っておられるかどうか知りませんけれども、すでにこの問題は先年体験済みでございます。さきの大臣の折にさような言質のもとに行われました。しかし、あの際とこの際は少しケースが違います。前は全くのやみ輸入でございました。それを通関を許すか許さないかという場合に、許さないということに委員会では話し合いができ、大臣も答弁をしておりましたところ、遂にいつの間にやらこの通関が許されました。とたんに内地のノリ生産業者はおかげで六億五千万円の欠損をいたしました。全国海苔漁連では、これはすでに統計として出ておるから、大臣はお聞き及びのことと存じます。何がゆえにそのようなことをやったかと尋ねましたら、時の担当官は言うた。あれはやみ輸入で、海の中を一ぺんくぐってきたので、ぬれていたから、あまりにも長いこと倉庫に入れておきますと腐りますので、貴重な資材を腐らしましてはまことにもったいないから、おてんとうさまに当てるために、外に出しましたら、とたんにどこやらに逃げて行きました、こういう答弁です。これは事実なのです。そういうことによって、やみ輸入されたノリが白昼堂々と出ていったところの過去の実績を持っておる。とかく外貨割当には妙なうわさが立つというけれども、こういう具体的事実があればこそ、この疑いの根が絶やされないのです。ましていわんや上期割当に行われたものが下期まで延び延びになっておるということは、すでに輸入貿易管理令その他の法律からいえば、これはもう法律違反である。もしも普通の場合に外貨割当を受けたその有効期間中に輸入しなかったということになれば、外貨を召し上げられるのみならず、保証料まで取り上げられるのが普通のあり方になっておるはずなのです。にもかかわらず、何がゆえにこのたびだけはさような穏便というよりも、特別恩恵的な措置をとらなければならないのか。承わるところによりますと、この奥には、ぜひ無理でもやれやれという某党の某議員さんが三、四人いらっしゃるという話です。(「はっきり言え」と呼ぶ者あり)どうしてもはっきりせよというならば、これははっきりしなければならぬことになりますが、すでにこの問題は商工委員会におきまして警告を発しておいたはずなんです。それがいつの間にやら、そのときにはやりませんと言うておきながら、今通関を許す。ノリの最盛期に通関を許すという空気になってきた原因を聞きたい。
  121. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 農産物の輸入の問題につきましては内地の生産業者との調整をはかる、これは絶対に必要であります。調整をはかるという建前から、国内の生産物の最盛期を避けるということが原則になっておりまして、そういう趣旨で扱って参っております。今加藤さんからお話の、最近問題になっておりますのは、この原則に対して、そういうふうなことをやってなぜ問題が起ってきたかと申しますと、御承知の通り本年は暖冬でありまして、ノリの作付は、当初予定いたしておりましたよりも相当減収ということに見込まれておるのであります。従いまして、国内のいわゆる消費者――これを加工する中小企業は、あるいは消費者と言ってもいいかもしれませんが――方面におきまするノリの供給は逼迫いたしております。これも中小企業であります。その中小企業者の事業の材料としての供給の要望の声が出ておるのであります。一方におきまして、この事実は当然にノリの値段の値上りを来たしておるのであります。こういう情勢が出まして、十月、十一月以降とだえております、しかも品物が税関まで来ておるものを入れたらどうか、こういう議論が起って、この問題が提起されたわけであります。従いまして、当初予定しておった通常の生産量というものが、もしあれば問題はないのでありますが、今申し上げましたような状況から、問題が提起されて参ったのであります。そこで私どもといたしましては、まずこの問題を解決するのに、皆さん御承知の通り需給調整協議会というものがございます。ノリの生産業者、ノリの輸入業者及び問屋業者をもって構成しておる需給調整協議会の意見を聞いて、毎年十月までに入れる数量を決定いたしておるのでありまして、本年もこの意見を聞いて、通常の作柄として一億枚を入れることに決定したのが伸び伸びになったのでありますが、この需給調整協議会の意見を今徴しておる、こういう状況にあるのであります。この需給調整協議会の正式の意見の開陳を待っておるというのが、ただいまの状態であるのであります。  なお、これは一方において韓国との関係におきましての外交事情も、だいぶん変って参っておることは御承知の通りでありまして、韓国代表部からの本件に対する輸入促進の要請も一部あることは、御承知の通りであります。これは別にいたしましても、今私どもは独断的に入れるということでなしに、今申し上げましたような事情から、関係業界の意見を徴しつつある、こういうような段階でありまして、農産物輸入の原則を破っていこうというような考え方ではないのであります。
  122. 加藤清二

    加藤(清)分科員 次官のだんだんの御答弁については、私はいなやは申しません。この道のエキスパートでいらっしゃる次官でございまするから、まさか日本のノリ生産業者をいじめ尽すようなことは、あなたも四国御出身で、よくノリ業者についてはおわかりのことでございまするから、さようなことはないと思いまするが、すでに農林委員会においても決議を見、商工委員会においても決議を見、またさきの臨時国会においても決議を見、保守党においてもこれについてだんだんの御審議があり、わが党におきましてはすでに党議をもって決議をしている問題でございます。それをもう一度、すでに決定している問題を何がゆえに再議しなければならないのか、何がゆえによろめかなければならないのか、ここに問題があると存するのでございます。それを今日ここで追及しようとは思いませんが、本件に関しては、すでにそのように権威ある委員会において満場一致をもって決議されている問題でございますので、その方向ともし相違反する協議会の答申が行われた場合においては、一体大臣としてはどのような具体的な態度をとられようとするのか、その点をお尋ねいたします。
  123. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 私はものの輸入、特に国内産業と競合するようなものにつきましては、タイムというような問題がやはり大事だと思うのであります。この国会の委員会で御決議になったときと今日の生産の見通しの状況とは、だいぶ変って参っておるのであります。そういう動く経済に対処して、ものの輸入というものは、時機をあやまたないように処置していくことが、私は大切だと思うのであります。そういうふうな考え方のもとに、関係業界においても御納得ができる、そういうふうな上において処置したい。これは行政の機動性を保つ上から見てもやむを得ない、こういうふうに考えております。
  124. 加藤清二

    加藤(清)分科員 御意見は御意見でございますが、すでに御答弁の中にございましたところのデータについても、私は納得することができないのでございます。今次官の答弁が、もしも本委員会の決議と相違反するような協議会の答申があった場合には、再び本委員会の意思を問うてからにきめる、こうおっしゃれば、これで私は引くつもりでおった。ところがただいまのような御答弁でありますれば、あえて私はお尋ねをしたいのでございますが、日本のノリの生産の状況が、暖冬異変によって減産しているというお話でございます。ごもっともでございます。しかしながらノリの生産数量は、技術振興技術改革と相待ちまして、年を追うて増産の一途をたどっておるのでございます。しかもなおノリの生産業者は、内地のノリは自給自足を目標に、いなむしろもっとよりよい良質のノリをアメリカヘも輸出したい、こういう精神のもとに日々営々と、その技術振興にも努力している次第でございます。しかも暖冬異変とはいうものの、その一部、なるほど種ノリの腐ったところもございますけれども、生産数量はここ三年前と比較いたしてみますれば、決して少いとはいえないのでございます。そこで、そうあなたがおっしゃるならば承わりたいが、一体ノリの生産数量はことしはどれだけの見通しでございますか。また、どれだけあれば輸入を抑制することができるとお考えでございますか。と同時に、もう一度お尋ねいたしますが、協議会の答申が決議と相違反した場合において、一体いかなる態度をおとりになろうとするのか、もう一度次官から承わりたい。
  125. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 ノリの生産量が、平年作であるかどうかという問題が第一点であります。ノリが平年作かどうであるかということは、私は基本的には主管省たる農林省の意見が基本になると考えているのであります。農林省にもその趣旨において、同様の照会を発して、その回答を待っているという状況でございます。正式に農林省の回答を得ておりませんので、先ほど申し上げましたように、そういう運び中と申し上げているのでありますから、その回答で、ことしは平年作あるということになれば話は別になる、実はこういうふうに考えます。  第二の問題は、今加藤委員からの、いわゆる需給調整協議会の意見が商工委員会における決議と相反した場合にどういう措置をとるかという御質問でございますが、私、先ほど申し上げましたように、需給調整協議会の意見と農林大臣の意見を正式に徴しておるのであります。両者の意見を待って、そのノリの国内事情、生産その他の状況を土台として措置していく、こういう考えでございます。
  126. 川俣清音

    ○川俣分科員 関連して。今ノリに対する外貨の割当について次官の御答弁中に、計画があろうとも、外貨の割当等については、そのタイムにおいて決定するのだ、こういうことでございましたが、そのように三十三年度は責任をもっておやりになる決意でありますがどうか、この点を承わっておきたいと思います。ノリだけについての態度ですが、全般の態度ですか、この点お伺いしておきたい。
  127. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 今申し上げましたように、ノリは御承知の通り、日本の生産期が十一月から三月まで、こういうことに相なっておるのであります。十一月から三月の間に外国、すなわち韓国のノリは入れないようにというのが従来の建前でありました。その建前に従って従来来ておるのでありますが、そこで先ほど申し上げましたような事情があるから、この際国内の需給を緩和する意味において輸入を促進してほしい、こういう要請が出てきたわけでございます。そこで私は、商工委員会の御決議もございますが、ノリの国内の消費の時期というものをやはり考えなければいかぬというような状況から、タイムという問題を考えなければいかぬ、こういうふうに申し上げたのでありまして、自余の農産物の輸入についてどうするかという問題につきましては、私は農産物のように出回り期のきまっておるものについては、やはり日本の出回り期をはずす、はずすが同時に、今ノリのような特殊の事情が出たときには、機動的に考えていいのではないか、こういうふうに申し上げております。
  128. 川俣清音

    ○川俣分科員 私は必ずしも言葉じりをとらえるわけではございませんが、他の農産物の場合においては出回り期というのは、表現が必ずしも当らないと思います。たとえば麦の出回り期に外麦を輸入しないかといえば、そういうわけにいきません。ですから、これは言葉じりをとらえる意思はございませんが、特に大麦等の輸入に当って常に、国内麦が相当平年作を上回るような場合におきまして、計画以上に輸入されている実績を示しております。また米につきましても同様でございます。昨年のような豊作時におきましても、やはり最初の計画通り輸入いたそうといたしております。これはおそらく貿易振興の上からやむなくとられた手段でありましょうけれども、今のノリに対する態度の説明によりますと、国内米麦の増産の場合においては輸入を相当押えるというふうに理解されるのであります。通産省がそういう立場をとられるならば、私はそれで了承するのです。ですからあなたの説明通り理解してよろしゅうございますかとお聞きしている。
  129. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 おあげになりました米あるいは大麦、あるいはまた小麦、あるいは大豆というような主食、もしくは主食に類するようなものにつきましては、御承知の通りの制度になっておりまして、その年間需給計画は、その所管省の農林大臣の決定するところでございます。農林大臣の決定するところに従いまして外貨予算にこれを計上する。しかも関係閣僚の協議を経て、輸入の下期、上期というふうに分けて決定いたしておりまして、私どもはその決定された計画に従って輸入の実務をとるといいますが、許可事務というか、事務をとるという形でありまして、そういう基本的な物資につきましては、あくまでも需給計画政府の策定した線に沿って進めておる、こういう状況でございます。
  130. 川俣清音

    ○川俣分科員 これもまた、あなた、間違いです。毎年予算で出ております外麦の輸入量よりも実績は上回ることがあるのです。しかも豊作だというのに上回っておったこれは農林省の要望として上回ったのではない。正直にあなたはこの際お示しになった方がよろしいと思うのでありますが、輸出振興のためにこれだけを入れなければならないという通産省の要望に基いて増額したというのが農林省の答弁になっている。この点答弁に食い違いがあります。
  131. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 外貨割当につきましては、これは農林省の計画、また通産省と協議してやるわけであります。また現実に物を入れます場合にも相談して入れておるのでありまして、外貨割当は相当量ありましても米なんかは、まだ現実にはあまり入れておりません。ただわれわれとしましては、とにかく輸出振興にも役立ってもらいたいというので、われわれの希望としましては、そう希望をし、そこでお互いの話し合いできめるのでありまして、その点はよく御承知でありますから、御了承願いたいと思います。
  132. 川俣清音

    ○川俣分科員 今のようにお互いの話し合いできめている、こうなればこれは了承します。実際その通りです。しかし通産省が農林省の要望に基いて実務を取り扱っているということになると、これは重大なことなんです。大臣が次官の答弁を訂正されたからこれ以上追及しませんが、答弁は軽率でないことを望んで、関連質問ですから、終っておきます。
  133. 久野忠治

    久野分科員 関連して。韓国のノリの輸入の問題については、零細な生産漁民の生活に影響の及ぶ問題でありまして、これはまことに私は重大であろうかと思うのであります。今さら申し上げるまでもなく、近年沿岸漁業は、資源の枯渇によって順次浅海漁業へと転業を余儀なくされているのであります。これを唯一の生活のかてにいたしておるのであります。しかもその総数は三十五万名に及ぶといわれておりますが、さような零細な沿岸漁民の生活のかてとなっておりますノリの生産業に重大な影響を及ぼすような韓国ノリの輸入に当っては、十分注意をすることが当然私は政治の要諦であろうと思うのであります。先ほど同僚であります加藤君の御質問に対しまして、私は答弁が要領を得ておらないと思いますので、再度お聞きいたしますが、需給調整協議会の答申が委員会の意思決定と違った場合に、どういう態庭をおとりになりますかという質問に対して、もう一度お答え願いたいと思います。
  134. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 御承知の通りに、ノリの問題がやかましくなりましたのは、ここ二、三年ばかりの間でございまして、それ以前におきまして、いろいろな問題がうわさされておるというようなことで、私の方といたしましては一応事を処理する場合に需給調整協議会の意見と農林省の御意見を正式に伺って、それを土台にして措置しておるのだ、こういうふうなことに従来やっておるわけであります。それで今度の場合におきましても、私どもはただいま正式に文書でそういう御意見を伺っておる、こういうのが今の段階で、まだ回答が来ておらぬのでありますが、伺っておる状況であります。
  135. 久野忠治

    久野分科員 需給調整協議会の意思決定を文書で求めておる、こうおっしゃいますが、その協議会の決定はまだきまっておりませんか。―しかし聞くところによると、昨日需給調整協議会においてはこの意思決定がなされたと伝えられておりますが、正式にあなたたちの手元までまだ答申されておりませんか。
  136. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 まだ参っておりません。
  137. 久野忠治

    久野分科員 現に、非公式であるか正式であるか私は存じませんけれども、とにかく通産省当局に向って正式に四月一日以降に通関すべしという意思決定をして、三者協議のもとにおいて通産省当局へ申し入れをしたと伝えられておりますが、そういう事実はないでしょうが。
  138. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 私がけさ十時ごろまで役所におる間においてはまだ参っておりません。
  139. 久野忠治

    久野分科員 さようにいたしますと、おそらくこの一両日の間にこの決定についての申し入れがあると思いますが、そうした申し入れがあったといたしますならば、通産当局はどういう態度でこれにお臨みになりましょうか。
  140. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 先ほども申し上げましたように、需給調整協議会の御意見と農林当局の御意見と両方徴するわけであります。従いまして、両者の御意見が一致すれば問題の運び方は楽になると思うのでありますが、一致しなければ十分検討しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  141. 久野忠治

    久野分科員 農林当局の意思を聞いておられるのはどういう点ですか。
  142. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 韓国ノリの輸入の問題について、農林当局の意思、いわゆる先ほど申し上げましたように季節はずれでありますから、季節はずれのこの際輸入をするということについての御意見を承わりたい、こういう趣旨であります。
  143. 久野忠治

    久野分科員 私は農林当高は漁民の生活保護の立場から輸入阻止の意思決定をなさるのは当然であろうと思うのであります。その際一番問題になるところは、暖冬異変で平年作を下回っておると伝えられて、その伝えられております風説を根拠にしてこの際消費者の立場に立って輸入すべし、こう言っておられる人があるのでありますが、一体ノリの平年作というものは通産省ではどの程度に押えておりますか、その枚数をお知らせいただきたいと思います。
  144. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 これは先ほども申し上げましたように、実を言いますと、この問題は新しく毎期一億枚を入れるという決定をするのではございません。一億枚を入れるという決定を昨年の九月でありましたか十月でありましたが決定いたしておるのであります。関係業者全部同一意見にまとまって一億枚を入れるという決定に相なっておるのであります。その後のいわゆる韓国との値段の問題で折り合わずに、輸入期限がだんだん延びてしまう、そうしていわゆる国内の出盛り期に入ってくる、こういう状況で問題が残されておったのであります。そこで国内の需給の調整上、幾らぐらいの出回りを平年作として予想しておるかということにつきましては、私の記憶しておるところでは年二十億枚見当というものがその需給の際に一応のベースになったように聞いておるのであります。
  145. 久野忠治

    久野分科員 しからば昨年はどれだけ生産されたのでしょうか。
  146. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 今回の昭和三十二年度におきます一億万枚の韓国からの輸入を決定したときのベースがそういうことになっておるのであります。それで昨年度幾らだったが、私は今のところちょっと記憶いたしておりません。
  147. 久野忠治

    久野分科員 昨年生産された枚数を私はお尋ねしておるのです。それが当然日本の消費に見合うべき数字で、それが不足しておるか不足しておらないかということの算定の基準になると私は思うのです。その数量も考えずに、知らずに、ただ生産が不足しておるから消費者に迷惑をかけておるという一本やりで、ただ加工業者に迷惑をかけておるということだけの理由で、これを輸入しようというのは、まことに私は不当なやり力だと思う。私が今さら申し上げるまでもなく、この韓国ノリの輸入の問題についてはとかくの風評が飛んでおるのであります。さればこそ私はこの国会において当然そうした風説をなくするという意味合いからいっても、これを問題にいたしまして、堂々と国民の前に明らかにすることが当然であろうと思うのであります。ただいま私が指摘をいたしましたように、需給調整協議会は昨日もうすでに結論を出しておるのであります。しかも昨年の十二月三日の閣議におきまして、いわゆる生産時期内には韓国ノリの輸入をしないということを決定いたしておるのであります。三月三十一日までは通関しないということを、十二月三日の閣議決定できめておるのであります。しかるにもうここ一カ月有半にして、その時期が来ようとしておるやさきに、突然この問題を持ち出しまして、急遽約一億枚になんなんとする韓国ノリを入れようというその態度自身が、私は国民の疑惑を招くもとになるのではなかろうかと思うのであります。さような意味合いから、日本の現在の消費数量と不足数量はどれだけか。また農林省からまだ連絡がないからわからぬとおっしゃっておりますが、本年度は当初はなるほど五分作とがあるいは七分作とが言われておりました。しかし最近は天候に益されまして、順次生産が上昇しておるのであります。そして昨年度並み程度まではとれようとまで現に言われておるのであります。そうであるとするならば、この際生産時期後に輸入しても私は何ら差しつがえないと思うのでありますが、そのような意味合いから、私は先ほど来数字の点を明らかにしてくれと再三申し上げておるのでありまして、どうしてもお答えができないというのであるならば、さっそく一つ御調査をいただきたいと思うのです。どうでございますか。
  148. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 閣議の話が出ましたから私がお答え申し上げますが、十二月三日でありましたが、日にちは忘れましたが、閣議では何も決定しておりません。そして三月末なりあるいは四月一日以後に出すというようなことはまだ決定しておりません。
  149. 久野忠治

    久野分科員 申し合せ事項です。
  150. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 申し合せておりません。当分の間もう少し待とうということでありまして、そんな決定は、全然申し合せも何もいたしておりません。これは間違いありません。その後あるいは――実は私の勘違いで、需給調整協議会で一応案がきまったというふうに聞きまして、閣議でその話をして、需給調整協議会でこういうふうな話で、そういうふうにきめたらどうかということを申したことがありましたが、それは帰って調べましたら、需給調整協議会の話ではなかったので、それは実は取り消したのであります。それで申し上げたいことは、とにかく生産者に影響を与えぬというので、四月以降に入れたら生産者には影響を与えぬだろうから、そういうふうな格好で通産省として指導していったらどうかという話が出まして、そうこうして来たのでありますが、なかなか話がつかなかった。あるいは昨日あたりの需給調整協議会でそういうことがきまったとしましたら、それに従って善処していきたい、かように考えております。
  151. 久野忠治

    久野分科員 先ほど政務次官のお話によりますと、年間の消費量が二十億枚だ、こうおっしゃる……。
  152. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 生産量です。間違えました。
  153. 久野忠治

    久野分科員 生産量ですか、これはまことに驚き入りました。二十億枚などというような生産量ができるわけがない。そういう誤まった数字を根拠にしてあなたたちはお考えになるから事が間違ってくるのです。はっきりもう一度答弁して下さい。
  154. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 先ほども申し上げましたように私は需給調整協議会で一億万枚を入れるときの根拠に二十億枚だったか、国内生産量があるというふうに記憶していると申し上げたのでありますが、今聞いてみますと十五億枚見当を生産するということであります。訂正いたしておきます。
  155. 久野忠治

    久野分科員 さよういたしますと十五億枚昨年は生産された。その際不足と見込まれた消費量というものはどれだけだったのですが。――答弁できませんか。――あまり長くなりますから私はこの程度で質問は同僚に譲りますが、しかしただいま大臣は需給調整協議会の答申を待って善処するという御答弁でございました。その善処するという意味は、あくまでも零細な生産漁民の立場に立って善処するという意味に私は解釈いたします。どうでございましょうか。
  156. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 いろいろな考慮、生産業者の考え方も需給調整協議会には反映されて、そうして決定されているものと思います。大体需給調整協議会の意見でいいんじゃないか。ことに……。
  157. 久野忠治

    久野分科員 ただいまの大臣の答弁はまことに満足すべきものであります。その通り実行されることを私は信じておりますが、万一これが間違うということでありますならば、私は国会における国民の不信を招くもとになろうかと思いますので、必ずただいまの御答弁通り実行されることを私は期待をいたしております。
  158. 加藤清二

    加藤(清)分科員 ただいまの御答弁で久野さんは御満足とおっしゃいましたが、私はまだ一つ足りない点がある。と申しますのは、少くとも通産大臣は本委員会の決議を閣議に臨んだときにどのように処理なさいましたか、この点をはっきり御答弁の上、次の問題に移りたいと思います。
  159. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私の聞いておるところでは需給調整協議会の意見に従ってきめるというような決議をされたことは聞いておりますが、それ以外に実は承知しないのであります。
  160. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それではもう一度あのときの記録を読み直して下さい。佐竹新市委員がこもごも詳細を述べました。これにはどうも不正のにおいがする。そこで私はもしもこのことが農林委員会の決議に反して行われるとするならば、私はその三人の名前をあげます、こう言った。そうしたらヤジが飛んであげろあげろということになって、そこで遂に私は名前をあげた。その結果あのときに、ごもっともであるから今は通関すべきでない、やはり農林委員会の決議は正しいものである、こういう了解のもとにあの決議が行われておる。大臣はきょうの答弁だけは質問者に対して御無理ごもっともというておいてからに、二月たつやたたずのうちに、もうそれを知らぬと言われては困るですよ。そこで大臣は一体閣議において本委員会の決議を尊重されるかされないか、これだけでいいです。商工委員会の決議、そんなあんた、よう勉強してこにやあかんわ。商工委員会でやったわいな。もう一ぺんあげようか、H議員とか……。
  161. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 あとで調べまして答弁いたしますから進行して下さい。
  162. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは角度をかえて聞きましょう。大臣は商工委員会における決議というものを、どのように思っていらっしゃいまするか。
  163. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 商工委員会の決議につきましては、これは尊重しなければならぬと思っています。ただその通りにすべきかどうか、あるいはまたその決議がわれわれの意見も徴せられてやられたものか、あるいはまたその後に事情が変りまして、その決議に対しまして変更しようというときには、やはり委員の方に了解を求めてやる……。
  164. 加藤清二

    加藤(清)分科員 その尊重するという言葉は、これは大事なところですから念を押しておきますが、あなたの尊重するという意味は形而上学的な尊重でございまするか、ないしは物理的、科学的に実行するという意味でございますか。
  165. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 これは内容によりまして事実尊重という意味は必ずその通りに実行するという意味ではなしに、その趣旨に従って善処するということでありまするから、決定の内容によりましてはその通りにやらなければならぬ問題もありましょう、またその趣旨に沿って極力努力するという場合もあります。
  166. 加藤清二

    加藤(清)分科員 その決議のあとにおいて大臣は、その御趣旨ごもっともでございまするから、御趣旨に沿うよういたしまするという大臣あいさつをなさっていらっしゃるはずでございます。 さてそこで次に話題を少し進めましてお尋ねいたしまするが、その決議の中に、ちょうど本予算関係のございまする特定物資輸入臨時措置法というものがございまして、そこに二十数億の金が計上されておりまするが、その特定物資納付金処理特別会計にこのノリも合せ入れて考慮することが、もやもやをなくする唯一の方法であるということで、やはり今日と同じように与野党一致した意見が行われているはずでございます。その後これに対してどのような御趣旨のほどを尊重した具体的態度をおとり遊ばされたかをお尋ねいたします。
  167. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実はその場には私はいなかったはずです。ただいまのお話のようなことは私は聞いておりません。(加藤(清)分科員「だから大臣がおらぬと仕事にならぬ、以後は大臣がおらなければ何にもやらぬ。」と呼ぶ)おそらく政務次官がおられたはずですから……。
  168. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 今の点について私の記憶では、委員会の決議のあとではなくて、十二月の本国会再開でありましたか、前の臨時国会の終りの商工委員会のときに、こういう輸入問題が起らぬ前でありますが、ノリをいわゆる差益徴収の対象にしたらどうか、こういう御意見が佐竹委員から発言がございまして、私は過去の経験から見まして、いろいろうわさをまくものであるからできれば入れたい、ただノリの規格が非常にむずかしい、上物とすそ物によって非常に違ってくる、そこで平均差益をどこでつかんで行くかということがむずかしいから、技術的に検討して、できればそういう方向に考えていきたい、こういうことを実は申し上げた記憶を持っております。
  169. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私が材料を提供いたしますると、とかく誤解を招きがちでございまするから、今度はあなたの方から材料を提供していただきます。  次にノリ以上に内地の農産物に影響を大きく持つ輸入農産物がございます。それは砂糖でございます。砂糖は一体どの程度輸入したならば需給のバランスがとれると本省ではお考えでございましょうが。もしそれをきめたにもかかわらず、なおかつプラス・アルファをいつの間にやらつけて、その結果内地の農産物、特にカンショの値段にものすごい悪影響を及ぼして、一貫目に二十円から二十二、三円という安値を呼び、その結果はもう畑作のイモ作なんというものはとんでもない話だ、とてもじゃないがやり切れたものじゃない、こういう感情を多くの農民に与えているのでございます。これはさなきだに食糧の不足しております日本にとっては、まことに悲しむべき悲劇といわざるを得ませんが、あなた方の机の上で行われまするそのペン先の動きが、やがて農民の涙となり、農民の悲劇を起すことに思いをいたされまして、今度は大臣慎重に一つお答えが願いたいのでございます。
  170. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 数字的な問題につきましては、あとで政府委員から答弁させますが、いずれにしましてもこれは需給関係というものはよほど考えていかなければなりません。また農産物の問題につきましても考えていかなければなりません。これはもう実に慎重に農林省の意見を聞いて、それによって決定をしておるわけです。本年は私が聞いておりますのは、酒屋さんなんか非常にイモが高くて、大体はあまり天候が悪かったせいか、イモの値段は非常に高いというようなことを……。
  171. 加藤清二

    加藤(清)分科員 二十八円。
  172. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 買上価格は二十八円でありますが、実際に買います価格は三十何円か、二、三円はしておったように聞いております。ただ先ほどお話がありましたように、一般消費者という面も考えていかなければなりません。これは農林政策としましてはイモの需給状態も考え、砂糖の両方をかみ合せていろいろ考慮の上、常に砂糖を入れますについてもその額はお互いに相談し、農林省の意見を十分尊重の上われわれも入れておるのであります。特にそのためにイモの生産者が困ったり、と申しまして一般消費者が困りましても困るのでありますが、そういうようなことのないように注意をいたしているわけであります。
  173. 加藤清二

    加藤(清)分科員 かように内地の農産物と常に競合いたしますところの物資に対する外貨割当の基本方針、次に割当の基準、次に割り当てられた実績、それを一つこの原糖の部門だけお漏らし願いたいのでございます。――わからなければこっちで説明します。
  174. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 ただいま大臣からお答えがありましたが、ちょっと補足してお答えをさしていただきます。元来砂糖といわず主要農産物につきましては、農林当局と十分に緊密な連絡をとりまして、外貨予算の編成に遺憾なきを期しているのでありまして、砂糖につきましても半年前に作成します外貨予算につきましては完全に農林省と一体になって数字をはじき需給推算をいたしましてやっているのであります。御存じのように砂糖の国産によります供給は大したことはないわけであります。テンサイ糖で約六万から七万トン程度、それから黒糖で二、三万トン程度であるわけであります。そこで先ほど申しましたように輸入量の策定に当りましては、国産に対する圧迫にならぬように十分配慮をしているわけでありまして、三十二年度の需給といたしまして百十万トン程度を推定しているわけであります。従って先ほど申しました国産の数字を差し引きますと、要輸入量といたしまして九十五万トン程度を外貨予算に計上して実施して参っているのであります。黒糖の需給につきましては、これは農林当局の御意見もそうでありまするが、なかなかはっきりした事情というものはつかみにくいのでありますが、大体三、四万トン程度ではなかろうか、こう言われているのであります。そういう需要から先ほど申しました国産量を引いたものを押入している、こういう状況でございます。詳細な割当の表等は今持ち合せておりませんが、あとでまた申します。繰り返して申しますが、国産との関係を十分配慮し、また需給、価格推移等も十分配慮しまして、この予算の数字を編成しているわけであります。
  175. 加藤清二

    加藤(清)分科員 松尾通商局長のおっしゃる通り今すぐ割当の実績をここで述べろと言ったってそれは聞く方が無理です。従ってこれは資料として後ほど審議のために提出をしていただきたい。これはいずれ商工委員会に戻りました折に詳細調査をしてみたいと思いまするから、ぜひ割り当てられた実績、どういう基準をもって割当を行われるか等のことを明らかにしていただきたいのでございます。私がこの社会党の政策審議会で調べましたところを、ちょいとこうながめてみまするというと、一方に数多くの農民が涙をしぼるかと思うほかに、一方そのおかげで非常にもうけふくらんでいて、どれだけためんもためても、なおしまっておく場所がないので、よそへよろめかして使って、なおかつそのよろき方がえら過ぎたので、きのうきょうの新聞に出ているという会社があるのでございます。そこで、その会社を調べてみまするというと、昭和二十五年六月に四百五十万円の資本金で発足しておられます。ところが現在一億五千万の資本金に相なっております。資産はと調べてみますると、三十五億でございます。去年度のもので発表しましょう。年度末の調査によりますと、売り上げがこの会社は四十五億六千万ということに相なっております。そうなりまするというと、資本金で比較いたしまして、現在の資本金が三十三倍に相なっておる。六年半でございます。次に、資産は七百七十七倍になっております。やはり六年間で七百七十七倍でございますから、一年間に百倍以上ずつ伸びておるという計算でございます。次に四十五億六千万の売り上げは、まさに驚くなかれ一千十三倍という売り上げでございます。これが事実でございます。なおかつ隠し金が一億あったという話でございます。この隠し金と二十五年発足当時の資本金と比較いたしてみますると、これがちょうど二十倍余に相なるわけでございます。まさに神武景気とは、この会社に与えられた言葉でございます。神武景気はにおいだけで、においだけかがされたというのがほとんどの国民の声であるにもかかわりませず、こういう会社がある。この会社があるということがけしからぬということではございません。まことにけっこうなことで、このようによけいにもうかる会社があるということは、悪いことじゃない。しかし、そのもうかった原因が問題でございます。何がゆえにこのようにもうかったか。すなわち外貨割当でございます。さればこそこの外貨をとりたいために――とればもうかるのです。一万トンで、最低に見積って一億でございます。もし私の計算が間違いとおっしゃるならば、一つ原糖の値段をここにお示し願いたい。キューバ糖一斤は幾らでございますか。台湾原糖は一斤幾らでございますか。船賃その他を入れて原価計算をして、一体幾らになる。二十円にも満たないようなものが、内地へちょいと持ってきて、ほんの少々の加工――何も新しい科学を必要としない、新しい設備を必要としない、そういう加工でもって、ほんのわずかの間に百円にもなる。こういうところに問題があるわけでございます。そこでお尋ねしたいのは、このようにもうかった会社の陰に、政府としてはどのような御援助をしてみえたか。御援助と言ったら答えができないかもしれませんから、どういう施策をとってみてたか。それをはっきり知るために、一つ製糖メーカー二十五祉の資本金、それから資産の移行の状況、もしそれが、通産委員会で見ました資産再評価の実績があれば、それをもあわせて御提出願いたいのでございます。わが党の調査によれば、二十五社の純益は、上半期におきまして約八十億余に相なっております。年間百三十億以上でございます。大手四社の利益率は、二十五年から二十九年にかけて十九割九分、三十年以降においては、十三割余と相なっておるのでございます。そこで政府にお願いしたいことは、この二十五社の膨張率、利益率等が一目瞭然とするところの資料を、できる限り早く御提出願いたいのでございまするが、これについて大臣の御所見がありましたらどうぞ。
  176. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私は、不幸にしてそういうような事情をよく存じませんのです。資料につきましては、できるだけ早く提出したいと思いますが、農林省の所管だそうでありまして、通産省ではわからぬのじゃないかと思います。
  177. 加藤清二

    加藤(清)分科員 さればこそ、私は経企、通産、農林総合の予算委員会で質問をし、先ほど、実は大蔵の外貨割当の担当局長にもぜひ御出席してもらいたいと申し出ているのでございます。にもかかわらず、その関係大臣がいらっしゃらないから、大臣に答弁を促しても失礼かと存じて、所見をお伺いしておるのでございます。
  178. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまおっしゃったような数字について、私は全然見当もつきませんので、それが事実だとすれば、そんなもうかるような制度は、何か考えなければいかぬというふうに考えますが、全く仮定の問題でありまして、果してそういうような数字になっておるかどうかについては、私何とも申し上げられません。
  179. 加藤清二

    加藤(清)分科員 仮定というのは、私の提出した資料を、何がインチキみたいにおっしゃられては片腹痛いのでございます。インチキであるかないかは、調査の結果、一つ委員会においてはっきり白黒をきめたいと思うのでございます。もしそれ私の資料がインチキであるとするならば、それは、当然この会社は新聞に発表しなければならぬ責任を持っている会社でございまするから、その新聞発表が誤まりであったということに相なるわけでございます。また私は、その会社に働く労組員から提出を願ったものでございまするから、その労組員は私にうそをこいた、こういうことになるわけでございます。私は、その人たちが決してうそをつくほど悪らつな人間ではないと思う。うそをつくほど政治的発言をしなければならぬ苦しい立場におる人たちではないと信頼をしておるのでございます。  さて委員長にお願いしますが、通産大臣ではちょっと答弁ができかねるということでございまするので、一つその担当の大臣である大蔵大臣なり、あるいは農林大臣なり、どなたでもよろしゅうございまするから、早急に資料の提出方を要求するものでございます。委員長の所見を伺います。
  180. 八木一郎

    八木主査 資料の提出については、適当に取り計らいます。
  181. 川俣清音

    ○川俣分科員 関連して。今大臣の答弁によりますと、製糖工業が農林省の所管だというふうに御答弁になりましたが、さよう理解してよろしゅうございますか。
  182. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 所管という意味が、監督しているという意味かどうか。いわゆる砂糖の精製とか、そういうような問題に関しましては農林省が所管しておる、こういうことを申し上げたのであります。事柄によりましては、通産省が所管する場合もあるわけであります。
  183. 川俣清音

    ○川俣分科員 どうも答弁があいまいなんです。あなたの方の仕分けを見ましても、農産物または食糧の中で砂糖を故意に入れてないのが通産省です。農林省は、できるだけこれを農林省の農産物の輸入の中に入れたいという考え方をしております。通産省は、この場合は原料品だ、こういう取扱いを従来までやってこられたのですが、いつから変られたのですか。この点お尋ねいたします。
  184. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 川俣さんのお話の、製糖会社は農林省所管であるが、いわゆる原料としての輸入貿易の所管は通産省であることは、御承知の通りであります。
  185. 川俣清音

    ○川俣分科員 砂糖については、世界的に貿易上は農産物として輸出入がはかられております。ただ日本だけが、農産物から除外して計算されておるのでございます。これは、特に通産省の強い要望であるというふうに聞いておりますが、この点いかがですが。これが一点。いわゆる世界貿易の種別的に、今後農産物として取り扱うことにいつから変更されたのですか。
  186. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 別段所管上の問題があってそういう仕訳を、農水産物の中に入れたり、あるいは工業原料の中に入れたりということは、私自身も全然意識をいたしておりません。しかし先生の御指摘のような仕訳をかりにやっているといたしますれば、これは単なる便宜の問題でありまして、いろいろ鉱工業原材料の在庫指数等を調べるような場合に、砂糖の場合は、あるいは製造工業として分類をしておるのじゃないかと思われるのであります。ただ農水産物の中から工業原料の中に入れることによって、特段の意味は私はないと思います。
  187. 川俣清音

    ○川俣分科員 あなたの方は意味はないにいたしましても、原材料として取り扱うのか、農産物として取り扱うのか、非常に問題なんです。たとえば農産物あるいは食糧として取り扱うということになれば、この取扱い方については別な角度から、これは食管法にも影響することでありまして、かつては農産物として、食管法の中で取り扱ったことがある。今も、これは法律上は取り扱ってよろしいものなんです。ただ加工原材料ということになりますると、食管からはずさなければならないということになる。これは、ほんとうはあくまで食糧なんです。世界的には全部食糧として取り扱っている。そうすると、このまま食管法でこれを取り扱っても差しつかえない品物になって参ります。そこでお尋ねしているのです。そこまで言わなければわからないというようなことは、ないはずなんです。意識してないというならば、意識してなければ、これは世界的な基準に基いて農産物、食糧として今後取り扱ってもよろしいと通産省はお認めになるかどうか、お聞きしているのです。
  188. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 食管法の建前上どうなっているか存じません。われわれは、ただ外貨予算を編成するに当りましては、それが食糧であろうと工業原料であろうと、先ほど申しましたように、農林省と緊密な連絡をとって、やっておるのでありまして、たとえば大豆のごときものも、工業原料として、あるいは仕訳をしているのかもしれませんが、それは、別段権限とかなんとかいう建前ではごうもやっておりません。ただ便宜の問題でやっておるわけであります。
  189. 川俣清音

    ○川俣分科員 私のお尋ねしておるのは、便宜とか便宜じゃないとかいう問題じゃない。通産省としては、これを農産物及び食糧と見て今後取扱いをしても御異議ありませんか、こうお尋ねしている。従って、これは大臣から答弁願いたい。
  190. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 研究してお答えします。
  191. 川俣清音

    ○川俣分科員 関連して、もう一つお尋ねします。今後の砂糖政策に非常に大きな影響を与えると思いますので、通産省の見解をこの際お聞きしたいと思うのですが、砂糖消費税として課税する方が――現在課税しておりますが、これが適切だと考えるか、あるいは関税をかけることの方が適切だとお考えになっておりますか。世に二説がありますが、通産省の見解を承わっておきたいと思います。
  192. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 はっきりとお答えする能力が実はございませんが、しかし一般の国際慣行から見まして、輸入税もあり消費税もありというのが、通例ではなかろうかと思います。
  193. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そのような調子ですと、私の聞きましたところの資料提出が宙に迷うわけでございます。そこでもう一度お尋ねしますが、私は外貨割当の基本、それから割当の基準、割り当てられた実績、こういうものの資料提出をお願いしているわけです。そこで今度ちょっと具体的に聞きますが、某々製糖会社が外貨割当を受けますね、それで砂糖を買う権利を得ます、輸入する権利を得ます。その折に、実際実務をどこの窓口がやるのですか、農林省が何々会社に幾ら幾らということをきめるのですか、それとも手続は通産銀座で行われるのですか、その点を一つお答え願います。
  194. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 原糖につきましては、現在のところは七割か八割か、ちょっと記憶がはっきりしておりませんが、七、八割を需要者に割当をする。需要者ということは、製糖会社そのものであります。あとの二、三割を商社に割当する。この割当の方法につきましては、輸入業者の場合は、輸入実績が基準であります。それからメーカーの割当につきましては、用糖実績というのが基準でありまして、割当事務は、通商局の方でいたしております。しかし、どの会社に具体的に何トンという数字の割当につきましては、農林省の力がら資料をいただきまして処理をしている、こういう状況であります。
  195. 加藤清二

    加藤(清)分科員 すると、実際の割当の実務という窓口は通産省でございますね。その際に、メーカー割当の割当基準は、設備に割り当てられるのでございますか、それとも何か顔にでも割り当てられるのですか。
  196. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 ただいま申し上げましたように、用糖実績に基いてやるわけであります。
  197. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは、ただいま新聞で騒がれておりまする日新製糖の不正経理事件、こういうことがございまするが、もしそれ新聞に出ておりまするように、割当を多くとればよけいにもうかる、一万トン割り当てられれば一億程度もうかる、そこで争いが起きた、競争が起きたということで、その競争に打ち勝つためにいろいろな問題が起きた、こうなりますると、それは農林省の方でございましょうか、それとも通産省の方でございましょうか。
  198. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 お尋ねの御趣旨が、率直に言いまして、私よく理解しかねるのでありますが、先ほども申し上げましたように、砂糖工業の監督は、農林省でやっておることであります。従いまして、われわれの方としましては、各製糖会社の生産実績その他をはっきり把握し得ませんので、農林省の方から、そういう工場の設備の状況、あるいは用糖実績その他の資料をいただきまして、いただくというよりは、もう大体、今期何ぼ割り当てられるという総量がきまっておりますので、それで農林省の方から、用糖実績に基いた各社別の資料をいただきまして、それに応じてやっておるわけであります。従って、その会社がもうけたか損をしたがということまでは、私の方でちょっと監督得ませんので、御了承願います。
  199. 加藤清二

    加藤(清)分科員 通産省の窓口は、あくまで割当の実務を行う、割当の基本は農林省で行なっている、こう解釈してよろしゅうございますか。
  200. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 割当の基本と言われる意味がどういうことかわからぬのでありますが、割当に関しては、通産省は責任を持っておるわけであります。これは、輸入の行政の一部であります。従いまして、どういう割当の仕方をするかということにつきましては、農林省と十分相談をいたしまして、決定は、建前としては今通産省でいたしております。各社別の数字につきましては、先ほど申しましたように、資料を向うからいただいてやっている、こういうことであります。
  201. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私は、なぜこういう問題をお尋ねするかといえば、すでにおわかりのことと存じまするが、とかく外貨割当というと、通産省に何かあったのじゃないかというふうに疑われる、全然関係のない議員までが妙に疑われる、こういうことはわれわれとしてはあまり快くない。そこで、この際責任の所在をはっきりしておきたい。おそらくこの日新製糖事件は、今後発展するだろうと思います。そこで、この際大臣から、これの責任の所在はいずれにあるかということを、はっきりしていただくことが、一そう賢明な策ではないかと思いましたので、お尋ねしたわけでございます。  さて、急げ急げとおっしゃいますが、これからだんだん話の調子が出てくるのに、私は関連々々とおっしゃるものですから、快く皆さんに譲っておった。私の本論はこれからなんです。そこで、その件については、ただいま主査に資料提出をお願いしましたが、早急にできますか。
  202. 八木一郎

    八木主査 先ほど申し上げたように、適当な取り計らいをいたします。
  203. 加藤清二

    加藤(清)分科員 次には、工業用水問題でお尋ねをいたしますが、予算書にもうたわれております通り、工業用水の必要上、今度は画期的な御努力によって、北伊勢、愛知その他を初めとして、工業用水が行われるということでありますが、そこで、この工業用水が行われたとしたならば、一体需要者は一立方メートルいかほどの料金を払うことになりますか。この計画及び実績についてお尋ねいたします。
  204. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 計数の問題でございますので、私から説明させていただきたいと思います。御承知のように、工業用水は、おのおのその利用する産業部門の重要なコストにも影響する問題でありますので、できるだけ安く供給できることを希望するのでありますが、現在まで私どもが工業用水開発といいますか、供給について希望をいたし、また予定をいたす一立方メートル当りの料金は、もちろん地点によって違いますけれども、大体の見当は五円以下であり、あるものは三円何十銭、あるいは四円何十銭というところあたりが大体の見当ということでございます。
  205. 加藤清二

    加藤(清)分科員 その点をもう少し明らかにしていただきたい。と申しますのは、先のことはわからないでございましょうけれども、すでに過去において、工業用水法なるものが行われているはずなんです。その場合、一体最低はどの程度であるか、最高はどの程度であるか、平均値はどの程度であるか、こういう点でございます。
  206. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 先ほど申しましたように、開発地点によって条件も違うのでありますが、今私どもの方で、工業用水道の開発について補助金を準備して、開発予定をいたしておりますものの予定料金は、大体三円五十銭から四円五十銭くらいまでの間にきまることを期待いたしております。
  207. 加藤清二

    加藤(清)分科員 もしこの工業用水北伊勢及び愛知地区において行われたといたしまするところの愛知用水から生ずるところの工業用水道の水道料金は、先般商工委員会及び農林委員会におきまして、私はあれは高過るということを懇々と力説したはずでございます。その折に、ちょどきょうのようにおそくなって、もう帰りたいとかいうことで、そんなばかなことがあるかというやじが飛んだのでございます。何を隠しましょう、愛知用水から生ずる工業用水は、当初計画は、一立方メーターについて十円でございました。目薬か化粧料に使うならばよろしいでございましょうけれども、これをもって工業用水に使うとするならば、一体何の工業が行われますか。安田農地局長その他と懇々と相談の結果、ようやく六円五十銭ということに相なったわけでございまするが、これになおかつ布設料をとられます。こうなって参りますと、どうしてもまた七、八円それにプラス・アルファがついて参ります。そこで、片や工業用水法によれば三円五十銭程度でいける、片や愛知用水でいけば、同じ地区でありながら六円五十銭からプラス・アルファをつけて七円余になる。こういう場合に、果して愛知用水の所期の目的が達成できるかできないか。すでにこの問題は、多目的ダムの立法が先年行われました折にも、私はその委員会に出まして、これとバランスをとってもらいたいということを要望したにもかかわりませず、今日なお愛知用水の受益者負担の高い点については怨嗟の声になっている。せめて工業用水に農閑期の水を利用して、この受益者負担を軽くしようと言うても、これだけ相違があれば、片や工業用水法は、あなたお調べになればわかりましょうが、北伊勢の方は一円台でございますよ。それと六、七円台の工業用水とが同じ地区で行われるということに相なりますると、ここに矛盾が起きはしないか。その矛盾の結果は、工場誘致、あるいは工場の設営等にあまたの支障を来たす憂いはありやなしや、この点、大臣にお尋ねいたします。
  208. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 大臣からお答えがございます前に、先に説明させていただきたいと思います。  ただいまお話のございました北伊勢地区の工業用水が一円台という数字は、私は承知しておりません。その一円台というのはおそらく北伊勢で地下水をくみ出す場合の工業用水のコストではなかろうかと思いますが、北伊勢でも、私どもが言っております東部から引いてきます工業用水のコストは、私ども承知しております限りでは、北伊勢について三円五十銭から四円くらいのところになるはずでございます。今の一円台というのは、地下水の問題だろうと思います。地下水でいたしますれば、名古屋地区といいますか、愛知の地区におきましても、そんな高い料金にはならないはずであります。愛知用水の場合は、先ほど申しましたように、工業用水として水道を建設いたしますので、大体四円ぐらいの見当になるはずでありますが、その四円くらいの見当と比較して、北伊勢地区の場合には、同じく工業用水道でやります際には、やはり三円五十銭あるいはもうちょっと高いところになるはずでありまして、一円と四円とか六円とか開くはずはないと思います。
  209. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私の比較しているのは、今行われんとするこの工業用水ですね、これが大体三円から四円程度だとあなたはおっしゃったでしょう。ところが愛知用水は、六円五十銭以上になるということを言うておる。そこに相違がある、調べてごらんなさいよ。十円だったんですよ、それがだんだん論議を二年間繰り返したおかげで、六円五十銭になったのですよ。
  210. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 私が質問の意味を十分のみ込んでいないのかもしれませんが、同じく工業用水同士としての比較でございますれば、愛知用水の場合の工業用水の当初の計画におきましては、トン当り六円五十銭という計算が出ておりましたけれども、その後国庫補助を出し、さらに資金運用部資金による起債の引き受けをやる等の措置をあわせまして、現在の予定の見込みでは、大体トン当り四円くらいのところまでできるということを申し上げているのであります。
  211. 加藤清二

    加藤(清)分科員 愛知用水のあれを、あなたはもうちょっと勉強して下さい。工業用水の方は、愛知県でやるのですよ。それで、プラス・アルファがついて六円五十銭以上になるのです。調べてごらんなさいよ。最後は、今度また予算が削られたでしょう。だから、私は時間があればそれも食いつきたいところなんですけれども、それで七円なんぼになりますよ。うそではない、だから、陳情の人がたくさん出てきている、去年は十円だったんです。そんなことをうそを言うものですか、ごまかしちゃいけません。そこで、もっと詳しく言えば、農民の反当の負担額は年間三千二百円です。それを十年間、あと半分ずつを五年間ちゃんときまっているのですよ。予算を見てごらんなさい。さて、そういうようにアンバランスがあった場合に、先ほど言ったような工場誘致なり、あるいは工場設営なりについて、いろいろな支障を来たすおそれが十分あると思うが、それについて大臣はどうお考えですか。この工業用水だけについては、商工委員会で聞きますが、本委員会は、農林その他関係の委員会だから、関係のことだけをしぼって聞いているだけでございます。
  212. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 工業用水につきまして、できるだけ安く、しかも均衡のとれたところへ持っていきたい、こういうのは当然のことでございます。ただ、そうすれば日本全国どこでも一率にいくかというと、そうはなかなかいきません。要するに重要地点をしぼって、そうしてそういうような工業用水の安い供給をするということで考えていがなければなりませんが、結局、これは立地条件の問題で、どこまでどういうふうに取り入れていくかということになるのでありまして、御承知のように、立地条件についてのいろいろな基礎調査もやっておりますが、重要地点であれば、やはり地下水を取り入れてふやしていくという方針をとっていかなければならぬことは当然でございます。
  213. 八木一郎

    八木主査 速記をとめて。     〔速記中止〕
  214. 八木一郎

    八木主査 速記を始めて。
  215. 加藤清二

    加藤(清)分科員 委員長の名議長ぶりに賛意を表しまして、残余の質疑は、なるべく協力的に、簡明直截にお尋ねいたしまするから、答弁者の方も、簡明直截にお答えのほどをお願いいたします。  最初に、予告しておきました通り、中共貿易の問題についてかいつまんでお尋ねしまするが、これは、来たるべき第四次協定の締結、あるいは本予算説明に盛られている共産圏貿易の伸展いかんにかかわる問題でございまするので、一つ心してお答を願いたい。  第一点、第四次協定が一時休会となってから、約三カ月間も経過したが、かかる長い間交渉が再開できなかった真の理由は、一体どこにあるのか。またその責任の所在は、一体どこであるか、大臣、簡明にお願いします。
  216. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 御承知のように、第四次協定については、ほとんどの問題が片づきまして、ただ民間代表部の設置あるいはその人数、指紋の問題がついに話がつかずに帰ってこられたわけであります。従って、私は責任と申しましてもこれはだれの責任とかいう問題ではないのでありまして、お互いに今後歩み寄って、話のできるような土台は十分やってきていただいたわけでございますから、むしろ一面から言いましたら、成功であったと思うのであります。最近また再開されることになると思いますが、それについての土台は、大体築いてもらっておるというふうに考えております。
  217. 加藤清二

    加藤(清)分科員 理由も責任の所在も明らかにできないままに、それでは次に進みまするが、第四次協定の交渉で、昨秋妥結しなかった唯一のネックは、一体何であるとお考えでございますか。私の考えるところでは、これは民間通商代表部の員数にある、この問題だと思う。そこで本件に関する協定の覚書によれば、双方の通商代表部の員数は、双方がそれぞれ職務遂行上の必要に基いて決定する通商代表部の所属人員、及びその家族の指紋をとらぬ、こういうことが中国側の覚書案に規定されておるのでございますが、中国側は、通商代表部の員数をあらかじめ制限することを極度にきらっております。これは一貫した意見でございます。そこで、日中双方で員数を協議してきめる、調印前に員数を示すとかいうことは絶対にしないと、再三にわたって明言しておるわけでございます。ただし中国側は、派遣する員数は決して多数ではない、こう言うております。すなわち、雷任民が日本新聞記者団を本月の二日に広州の見本市へ呼んで発表したところによっても明らかなところでございます。決して三十人とか四十人とかとは言うてない、あなたの方が五人と言うたから、こっちは三十人と言うたのであって、それは売り言葉に買い言葉である。従って、員数に比例してなどとは言わない、こう言うておる。員数に比例しないということは、日本が五人と言うたら、向うは六倍だから五六の三十人ということは言わない、こう言うておるのでございます。そこで、中国を信頼しないところの非友好的な態度をやめて、日本側の基本的態度は、絶対に相手方を信頼するという立場に立って調印しなければ、第四次協定の調印はできないと思うけれども、特に先般行かれました、大先輩植木さんもここにいらっしゃることでございますから、一体大臣はどう考えているか、この席で所信を一つはっきりしていただきたい。
  218. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 交渉のことでありまするから、私がどうこうというわけには参りません。ただ相互の信頼ということは、これはもちろん肝心なことでありますし、また信頼すべきものであります。また先般おいで下すった方々の御意見を伺っても、おそらく今度は、十分妥結できるであろうし、またお互いに信頼し合っての話し合いができるというふうに伺っております。それ以上は、交渉のことでありますから、私から申し上げるわけには参りません。
  219. 加藤清二

    加藤(清)分科員 協定調印直後に、双方で員数を通知し合うという結果になると思います。もし中国側の示した員数が日本側の想像している員数――あえてそう申し上げておきますが、政府が想像している員数より多い場合には、政府としていかなる態度をおとりになりますか。特に日中貿易促進して、この貿易の増大をはかると予算説明していらっしゃる大臣は、どういう態度をおとりになりますか。
  220. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 想像いたしている人数は、何人であるということを申し上げるわけにも参りませんし、またそれ以上だからどうこうということも、私ただいま申し上げるわけに参りません。
  221. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そうお答えになれば、私は引き続いてお尋ねしなければならぬが、もし中国側が員数を示さない場合、目下検討中の理由によって、すなわち三団体の代表が北京滞在中に中国側が員数を示さない場合にも、政府は協定を結ぶことを認められるか認められないか、この答えいかんによっては、池田団長以下行かれても、また空中分解をしなければならぬ結果が生ずると想定される。この想定は、まずまず過去の実績からいって誤まりなき想定だと思います。そこで、念のため、この点をはっきりしていただきたい。
  222. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 交渉の前にそういうことを私から申し上げるわけには参りませんので、その点は、御了承願いたいと思います。
  223. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それは外務大臣でも、ないしは通産大臣でも答えられない、こうおっしゃるのでございますか、あるいはまた、公開の席上では言えないのだ、こういう意味でございますか。
  224. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私としては、いかなる場合にもちょっと申し上げるわけにいかぬと思います。
  225. 加藤清二

    加藤(清)分科員 申し上げることができないということは、何かの秘密保持のために言えないとか、あるいは交渉を不利に導くからという意味なのか、それとも、腹にそういうことがないから言えないということでございますか、いずれでございますが。
  226. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 これは、交渉の問題でありまするし、また私自身も外務大臣と違いますから、いろいろうかがったことを私自身の責任において申し上げるわけにも参りません。
  227. 加藤清二

    加藤(清)分科員 腹にあるかないかということだけ聞いておきたい。それによって、今度は商工委員会におけるこちらの質問の仕方が変ってくるのです。腹にあるかないか――言えないということはわかりました。だから、言えとは言いません。
  228. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 いずれにしても言えないのですから、その点は御了承願いたいと思います。
  229. 加藤清二

    加藤(清)分科員 いや、腹にあるがないか。腹にあるかないかも言えないのでございますか。
  230. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私としましては、とにかく責任ある答弁は全然できないわけであります。
  231. 加藤清二

    加藤(清)分科員 結局答えられぬ。そうなると、あなたのこの中にうたわれている共産圏貿易とか、中国貿易の発展ということは、空文になってきやしませんか、ただ民間にたよるだけですか。大臣としての責任は果さずに、ただ民間の方々の、しかも無協定下における商事会社の努力だけに待とう、こういうわけですが。
  232. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 それは、率直に申し上げまして、私としましては極力進めていかなければなりません。できるだけ努力はしなければなりません。しかし、それは具体的にどうするかということについては、私として申し上げるわけにはいかぬのであります。
  233. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは、時間がなんですから次の項に進みます。  第四次協定の同じく覚書案の中に、これは中国案で、日本側も同意していると覚えておりまするが、「双方は相手側の通商代表部及びその構成員の安全保障に適切な措置をとる。もし法律上の紛争を引き起した場合は双方が連絡して双方の同意した方法で処理する。」とありまするが、この場合の法律上の紛争とは一体どういう場合を指すのですが、例をあげて御説明していただきたい。双方の同意した方法、この場合の双方とは民間同士の双方であるのか、民間団体同士で同意された方法で処理することを政府は認めるというのか。もう一度腹があるかないかということになるわけであります。
  234. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 実は、先生が今御指摘になりましたのは、日中貿易協定案の覚書の中の事項かと思うのでありまするが、これにつきましては、率直に申しまして、私の方の所管じゃございませんので、実は外務省の所管にも属しますので、はなはだ勉強不十分でありますが、あまりよく研究いたしておりません。あまりいいかげんなことを申し上げても失礼に当るので、かんべんさしていただきます。
  235. 加藤清二

    加藤(清)分科員 じゃ大臣、どうぞ。
  236. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまの通商局長と同様に、私の所管でありませんので、おかしい点は、外務省からお聞き願いたいと思います。
  237. 加藤清二

    加藤(清)分科員 外務省の関係も十分あることは存じておりまするが、協定の前文に、貿易に限ってということがある。だから、それをあまり知らぬと言われては、大臣、それを知らずして、中国との貿易はふやしますふやしますといっても、それじゃ最初からあまりにも見えすいたはったりになりはしませんか。
  238. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私の方としましては、それは外務大臣なりあるいは法務大臣にいろいろ督促し、できるだけ打開するようにというのであれですが、所管、権限は、やはり外務大臣なり法務大臣であるわけでありますから、私として自分の所管においてなり、またそういう督促をするという意味合いにおいて努力をしておるのでありまして、そのことも、そういう問題についての知識がないから、どうも努力しておらぬのだとおしかりをこうむっても、私は何とも申し上げようがないわけであります。
  239. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは、あなたの膨大な三十三年度通商産業予算説明というものが最初から空文だ、くずれていく、こういうことになりはしませんか。それじゃ、今度はあなたにもっと近い所管のことをお尋ねしますが、協定案の第五条によれば、「両国の国家銀行間にて支払い協定が締結されるまでは、両国の外国為替銀行が直接的な業務関係を取り結ぶ。」こうあるわけでございます。そこで、為替銀行間にてコルレス契約を結ぶことになると、政府において考えているところのコルレス契約の内容は、一体どんなものでございますか。これによっては、貿易額は伸びたり縮んだり、業務が容易に行われたり非常に難渋したりという結果に相なるわけでございます。
  240. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 この五条の第二項に、コルレスとは書いていないのでありますが、両国の外国為替銀行が直接的な業務関係を取り結ぶ、こういうことであります。これはもう御存じでありましょうが、現在はすべて為替をロンドンに送りまして、ロンドンで決済しておる。それを今度は、たとえば、東銀の東京の店と中国銀行との間で直接に決済をいたそうということでありまして、そのものにつきましては先般の交渉のときにも銀行からも人が参られて、いろいろ打ち合せをされ、実質的には同意をされておる、こういうふうに了解をいたしております。こまかいコルレスの内容については、私しさいには伺っておらぬのでありまするが、日常の取引につきましては、全部カバーをするというふうに聞いておるのであります。
  241. 加藤清二

    加藤(清)分科員 実は、詳細を説明しながら質問するとよくわかると存じますが、時間がないので、皆さんに協力するために要点だけ申しますので、おわかりにくいかと存じますが、大臣は、このくらいのことは知っていてもらわぬと困るのであります。なぜかならば、あなたのホーム・グラウンドのことを聞いておる。今は通産大臣ですけれども、かつては大蔵省のエキスパートですから、それがわからぬでは困るのです。すでに本件に関しては、東銀のかっての副頭取であった伊集院さんが中国へ技術交流の名目で行っておられます。この場合には、吉田前総理大臣とも打ち合せをして行っておられたはずでございます。しかも、向うの南漢宸、雷任民との間に話し合いが行われて、すでに大体おぜん立てはできておることです。それで私は聞いておる。あえてむずかしいことを聞いているんじゃない。大臣の所見を承わりたい。
  242. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私の理解しております点は、おっしゃるように、それによって非常に輸出が伸びたり伸びなかったり、こういうことじゃなしに、事情は前よりは非常によくなるという常識的な考えでおるわけです。
  243. 加藤清二

    加藤(清)分科員 外国人登録法改正案を目下国会において審議中でございます。本法が成立すれば、名古屋、福岡の中国見本市が開催できることになるわけですが、もしかして改正案の成立が延びたということを想定して、成立以前であっても、中国の見本市開催についての調査員の入国を認める用意があるかないか、こういうことでございます。
  244. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 常識的に申しまして、法律が通過していなければ、二カ月を一年にするという建前で認めるわけには参らぬと思います。ただ、来ておられる何日かのうちに法律が通れば、一年が適用されるというふうに考えております。
  245. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは急ぎまして、中国貿易をふやすと言っておられますから、どういう方法でふやそうとしていらっしゃるか、その要点を一つ聞きたいと思います。
  246. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 率直に申しまして、今まで伸びなかった一つの大きな障害は、やはり輸入です。日本に輸入する物資という点が障害になるわけでありますが、極力輸入をする方向へ切りかえもやり、また鉄鉱石などにおきましても、できるだけそこから買う。もちろんこれは値段の問題、その他いろいろあると思いますが、極力輸入するということによりまして、ただいまわれわれが考えている程度にはしていこう、こういうふうに思っております。
  247. 加藤清二

    加藤(清)分科員 とおしゃる意味は、過去の諸外国との貿易と比較して、中国にウエートを置く、もっと言葉をかえて言えば、市場転換をする、こういう心がまえがあると解釈してよろしゅうございますか。
  248. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 先ほど申しましたように、これは前提条件があるので、値段が幾ら高くても買うというわけには参りません。しかし、その条件が同じでありましたら、極力切りかえていく、こういうことです。
  249. 加藤清二

    加藤(清)分科員 中国の貿易に関しては、すでに英国であるとか、あるいは西ドイツ、イタリア等は非常に進んだ方法で行なっているようでございます。代表団にいたしましてもそうですが、英国は、御承知の通りオールドパー卿も北京に駐在しております。こういう点にかんがみて、あの市場を今にして日本が放置するならば、悔いを千載に残す憂いがある。これも数字的にずっと申し上げたいのですが、そういう意味において、イギリスでは、すでに通商産業大臣なるものを中国に派遣しておりますけれども、通産大臣は、市場転換をするという気持を実現するために、中国に行く気はございませんが。向うはどうかといったら、鳩山さんの折にも、ぜひ来てもらいたいということを一言っておったのでございます。あなたはそういう気持はありますか、ありませんか。
  250. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 必要あれば、私はいつでも参ります。しかし、今のところ、別に必要があるとは存じておりません。
  251. 加藤清二

    加藤(清)分科員 いつでも行くとおっしゃった言葉を、私は信頼しておきたいと存じます。  そこで、簡単に走りまして相済みませんけれども、次に中国との国交回復の問題でございます。平和条約は先としても、せめて岸内閣において、戦争終結宣言なりともする用意なり意思がありますか、ありませんか。これは大事なことなんです。
  252. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 これは、私の所管ではありませんし、かなりの問題でありますから、私からきょう答弁はかんべんしていただきます。
  253. 加藤清二

    加藤(清)分科員 ごもっともでございます。しかし、第四次協定が結ばれるなれば、やがて閣議においてこれが必ず問題になることと存じます。植木さん、ここにいらっしゃるですが、いずれ近き将来において向うへ行かれる。それで第四次協定が結ばれる。その直後に来るものは、戦争終結宣言をいつにするか、その次は、平和条約をどうするか、こういう段取りになると思いますが、もし、かりに岸内閣が延びて四月なり五月までやっておられて、これが問題になった折に、閣議であなたはどう発言しようとされますか。それによって、私はあなたの信頼度が変るわけでございます。
  254. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 あらゆる条件を考えながら善処したいと思います。
  255. 加藤清二

    加藤(清)分科員 もし中国の毛さんなり、あるいは周さんなりが日本へ行きたい、そうして新しい中国の実態をよく日本国民に知ってもらいたい、こういう意思があって、行きたいと言うたならば、あなたは拒否なさいますか。これも岸総理でなければ答えられないとおっしゃるかもしれませんが……
  256. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私の所管ではありませんから、それは答弁できません。
  257. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは、答弁でき得ることをお尋ねいたします。最後に、すでに日本の新聞記者は、北京を初めとして、中国各地におられます。特に広州等で開かれます見本市には、朝日、毎日、読売、共同通信、中日とたくさんの記者が行っておられるわけでございます。相手方は門戸開放をしております。ところが、日本側はどうかいうと、中国の記者を快く迎えていないのが過去の実態、将来は知らぬが。そこで将来が聞きたい。一体向うの新聞記者をぜひこちらにという要請があったならば、どう対処されるか。なぜこのようなことを承わるかといえば、やがて名古屋、福岡に見本市が開かれることでございますし、また向うに行っておられる記者諸君と現地で会いました折に、いつもそのことを言われる。われわれだけは取材を許してくれるが、なぜ中国の記者には日本内地の取材を許さないが、こう言われる。これには二の句が継げぬで困りますよ。何とかしてこの問題だけは解決していただきたい。これが、はるかにふるさとを離れてかの地に行っていらっしゃる記者諸君の切なる希望でございます。この切なる願いをも大臣はいれる雅量がないとは、まさか私は思いませんが、一体、この点はいかがでございましょう。
  258. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私個人は、中国の新聞記者にも会っておりますし、何もそういうことは拒否する気持は持っておりません。
  259. 加藤清二

    加藤(清)分科員 あなたはそうですが、もしこういう問題を閣議でお話し合いになりました折に、あなたはどうなさる。もし岸内閣で、こういうことまでもなお受け入れることができないのだ、こう言われますると、口に日中国交回復を言いながら、岸内閣ではやはりできない、こういうことになるわけなんです。私は、吉田さんがアメリカと国交回復をなさり、鳩山さんがソ連と国交回復をなされ、非常に敬意を表している。国民も喜んでいる。この次は、岸内閣の手によって、ぜひ中国との国交回復をしていただきたい、これが国民的な願いであり、その数字も私はたくさん持っている。その願いを、岸内閣はいれる用意があるかないか。その国交回復の前提は、双方よく知り合うことで、よく知り合うには、新聞記者を相互に交換するということなんです。すでにフランスにおいても、このことは行われていることなんです。それは、フランス、イタリア並みでけっこうなんです。それ以上に行きなさいとは言わぬ。ココム、チンコムも、イギリス流にはずしなさいと言っているのではない。せめてフランス流に、せめてイタリア流に、新聞記者の交換を快く許す腹がまえがあるかないか、もう一度念のためにお尋ねします。その心がもしもないとするならば、日中国交回復は、遺憾ながら社会党の手によらざるを得ない。従って、この次の選挙あたりには、日中国交回復は岸内閣でやるというスローガンだけは、一つお下げのほどを願いたいのであります。所見いかん。
  260. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 そういうような問題が出ましたら、事情を聞きまして、善処いたします。
  261. 八木一郎

    八木主査 本日の会議はこの程度にとどめ、残余の質疑は、十七日これを行うことといたします。  明日は午前十時より開会し、経済企画庁所管について審査に入ることにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十一分散会