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1958-02-14 第28回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十四日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席分科員    主査長 田中 久雄君        永山 忠則君   野田 卯一君        船田  中君   宮澤 胤勇君       茜ケ久保重光君   岡田 春夫君        河野  密君   田中 稔男君        田原 春次君   滝井 義高君        門司  亮君   横路 節雄君    兼務  川崎 秀二君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         警  視  長         (警察庁長官官         房会計課長)  後藤田正晴君         警  視  監         (警察庁警務部         長)      荻野 隆司君         宮内庁次長   瓜生 順良君         総理府事務官         (皇室経済主         管)      高尾 亮一君         総理府事務官         (北海道開発庁         総務監理官)  中平 榮利君         総理府事務官         (北海道開発庁         主幹)     長谷 好平君         防衛政務次官  小山 長規君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (教育局長心         得)      小幡 久男君         防衛庁参事官         (人事局長)  山本 幸雄君         防衛庁参事官         (経理局長)  山下 武利君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         検     事         (法務大臣官房         経理部長)   大澤 一郎君         法務事務官         (矯正局長)  渡部 善信君         外務政務次官  松本 瀧藏君         外務事務官         (大臣官房長) 田付 景一君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (国際協力局         長)      宮崎  章君         外務事務官         (情報文化局         長)      近藤 晋一君         大蔵政務次官 坊  秀男君  分科員外出席者         外務参事官   白幡 友敬君         外務参事官   高橋  明君         大蔵事務官         (主計局主計         官)      鳩山威一郎君         大蔵事務官         (主計局主計         官)      船後 正道君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    塩崎  潤君         会計検査院事務         総長      池田  直君     ————————————— 二月十四日  分科員河野密君、田原春次君及び門司亮辞任  につき、その補欠として横路節雄君、田中稔男  君及び茜ケ久保重光君が委員長指名分科員  に選任された。 同日  分科員田中稔男辞任につき、その補欠として  滝井義高君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  第四分科員川崎秀二君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算皇室費国会、  裁判所会計検査院内閣総理府経済企画  庁を除く)、法務省外務省及び大蔵省所管昭  和三十三年度特別会計予算総理府及び大蔵省  所管昭和三十三年度政府関係機関予算大蔵省  所管      ————◇—————     午前十時三十三分開議
  2. 田中久雄

    田中主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和三十三年度一般会計予算皇室費国会裁判所会計検査院内閣経済企画庁を除く総理府法務省外務省及び大蔵省所管昭和三十三年度特別会計予算総理府及び大蔵省所管昭和三十三年度政府関係機関予算大蔵省所管を議題といたします。  質疑を続行いたします。岡田春夫君。
  3. 岡田春夫

    岡田分科員 藤山外務大臣に二、三お伺いをしたいのでありますが、きょうの新聞等を見ますと、ソビエトとの間における安全操業の問題について大体政府の方針がきまって、訓令を出すというようなことが伝えられておりますが、その点はいかがでございますか。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安全操業の問題については引き続きソ連側話し合いをしたい、その問題、安全操業の問題として話し合いをしたい、こういう意向を伝えるつもりでございます。
  5. 岡田春夫

    岡田分科員 安全操業の問題としてソビエト側話し合いをするというように訓令を出すというのでありますが、平和条約締結についての交渉とは切り離してやっていきたいというように政府考えていると伝えられておりますが、この点はいかがでございますか。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安全操業の問題については、情報局長談その他で発表し、また衆参両院外務委員会で申し上げましたように、昨年の六月以来の経緯がございます。ソ連邦におきましても、昨年八月口上書をもちまして、安全操業の問題を一つ話し合いをしてもよろしいという意向を伝えて参ってきておりますので、われわれはその問題としてそれを引き続き話し合ったらどうだという意向を伝えてやりたいと思います。最近、御承知のようにソ連側から、この問題は平和条約の問題と関連して解決ができるのではないかという意向も言ってきておりますけれども、今までの経緯から見まして、まずその点を重ねてこちらから申し入れることが必要ではないか、こう考えております。
  7. 岡田春夫

    岡田分科員 平和条約と切り離して交渉する安全操業の問題というのは、一体これはどういう意味なんでございますか。これはどうも私たちにははっきりつかめないのですが、平和条約と離して安全操業の問題だけを話をつけるということは、果して可能性がある問題なんですか、話として進められる問題なんですか。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように平和条約領土関係において両者行き詰まっておるわけなんです。その行き詰まったままにおいて、日本北辺零細漁民生活権の問題もありますので、領土問題は別として、何か漁民が安全に操業をする方法はないだろうかという話し合いを持ち出してきたわけであります。それがソ連側でもそういうような話を一つやってみようという意思表示をして参りましたもので、われわれもそれを進めて今日まできたわけであります。しかしソ連側が最近のようにもし変ってきますれば、あるいは今後継続できないかもしれません。その点はもう一ぺん確かめてみる必要がある、こう考えております。
  9. 岡田春夫

    岡田分科員 安全操業の問題という場合に、それじゃ日本政府としては具体的にどの地域のことを言っておられるのですか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 こまかい点につきましては欧亜局長から……。
  11. 金山政英

    金山政府委員 お答えいたします。最初わが方から提案いたしましたのは千島でありました。その後漁船拿捕事件が頻発いたしますので、具体的な提案をいたしましたときは、四十八度線以南樺太等も含め、また四十八度線以南千島を含めた地域を入れております。
  12. 岡田春夫

    岡田分科員 話をしぼってみますが、千島の問題についてもうちょっと伺いたいのですが、四十八度線以南千島というと、具体的に島の名で言うと、択捉国後あるいは歯舞、色丹、大体こういう点を地域として安全操業の問題が対象になっておる、こういう意味でございますか。
  13. 金山政英

    金山政府委員 いわゆる南千島よりも北になります。もっと北の地域も含んでおります。
  14. 岡田春夫

    岡田分科員 それじゃ南千島も当然入るわけでございますか。
  15. 金山政英

    金山政府委員 入ることになっております。
  16. 岡田春夫

    岡田分科員 安全操業の問題の対象になる地域として南千島も入る、それから北の方も入る、こういう意味でございますか。
  17. 金山政英

    金山政府委員 そうでございます。
  18. 岡田春夫

    岡田分科員 そこで外務大臣に伺いたいのですが、安全操業の問題と平和条約の問題は別だという論拠について私は非常に疑問がある。どういう点で疑問があるかというと、安全操業というのは、これは領海の問題なんですね。海の問題。これは三海里説とか十二海里説とかいろいろ意見はありましても、少くとも領海の内部をどのようにするかということ、それからもう一つは、領海をどうするかという問題を確定するためには、領土がきまらなければ領海はきまらないわけです。そうなると、領海領土の問題をほおかむりをして、安全操業の問題だけをきめるといったってきめようがないじゃありませんか。
  19. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 領土がきまりませんから、確定的な領海論というものは、三海里説と十二海里説を別にしましてもわからぬところもあるのです。しかし日本北辺漁民が何らかの意味において生活権のためにこの辺までは漁業をしてもいいじゃないか、また魚族保護の上からいっても影響がないんじゃないか、だからそういったこと話し合いでもっていけはしないか、こういうので話を始めたのであります。
  20. 岡田春夫

    岡田分科員 しかし、それは生活上の問題もありますよ。生活上の問題はあるけれども、その人たち生活がっている問題の起っている原因は、その安全操業がやれるかどうかという地域領海が問題になる。この点があるから生活の問題があるのであって、この問題をきめないでおいて具体的に安全操業の問題をきめようたって、きめようがないじゃありませんか。
  21. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 領土の問題が最終的に両者で決定されれば、その点だけははっきりしてくるわけです。それに伴った領海十二海里なり三海里なりの問題の中で話し合いをしていくということになるわけであります。領土主張が両方ともきまっておりませんから、この部分においてこういう善意なお互いの取り扱いをしていこうじゃないかというような話し合いができないものかと思って、われわれは漁民生活のためを考えて提議をしてみたわけであります。ソ連もそれは話し合いをしてみてもよろしいというふうな一時考えであったわけであります。
  22. 岡田春夫

    岡田分科員 それでは話し合いにならないですよ。向うの方は、話し合いをしてもいいけれども、安全操業の問題だけで問題が解決すると思っていないのです。この点はあとでいろいろお話ししますが、ともかく領海領土の問題が未確定の形で安全操業の問題をきめようたってきめようがない。金山さんにもう一度伺っておきたいのですが、先ほど四十八度線以南安全操業の問題というお話でありましたが、そういう場合に具体的に伺いますが、国後択捉、これはどちらの地域としての安全操業の問題とお考えになるのですか。というのは、現実に日本政府支配権が及ぶところというのは北海道だけだ。そうすると、北海道から三海里説あるいは十二海里説という問題もありましょうけれども、あるいはそういう点で引いた場合に、そこで領海の線ができて、それによって安全操業の問題が出てくる。ところがあなたの今のお話によると四十八度線以南、すなわち国後択捉よりもっと北の方地域における安全操業の問題という場合に、それらの地域国後とか択捉というものはどちらの地域として安全操業の問題を交渉されるのですか。
  23. 金山政英

    金山政府委員 お答えいたします。ただいま外務大臣がお答えされましたように、平和条約経緯からいって、領土問題は両者の間で解決しなかった問題であります。この交渉の発端となりましたのは、漁船拿捕事件であったことは御承知通りであります。四十八度線という線を当方から提案いたしましたのは、二十トン、二十五トンの小さな船が通常操業する範囲をきめたものでありまして、領土の問題、領水の問題は、この際触れないことにして、実際上不愉快な、両国関係に悪影響を及ぼすような事態をなくそうじゃないかという観点からこの提案をいたしたことは、当方の出した協定の案文の中にすでに含めてあったわけであります。
  24. 岡田春夫

    岡田分科員 それでは別な角度で伺いますが、事実拿捕されている船、こういう船は、ソビエト側が拿捕した場合には、ソビエト側領海を侵犯したという事実によって拿捕されている。そういうことが安全操業を乱すものであるということがおもなる理由になっておりまんか
  25. 金山政英

    金山政府委員 ただいまおっしゃる通りであります。しかしわが方の主張は三海里でありまして、ソビエト主張を容認することはできない。この両者法律上の対立を今ここで解決することは困難でありますので、実際上の立場から相互の了解によって、問題を実際的に解決していこうというのがわれわれの考え方であったわけであります。
  26. 岡田春夫

    岡田分科員 金山さんに伺いますが、領海は三海里でも十二海里でもいいのです。しかしあなたのおっしゃる意見からいえば、たとえば国後択捉あるいはもっと北の方の島、こういう島においての安全操業の問題というのはりソビエトの現在占有する、と一応そういう表現を使いましょうか、外務省考え通りにいえば、占有する地域から三海里であるか十二海里であるかという問題を交渉するというお話なんですか。それを侵犯するかどうかということを安全操業の問題としてきめようというお考えなんですか。
  27. 金山政英

    金山政府委員 御質問の趣旨があまりはっきりいたしませんが、ソビエト側は十二海里の中に入ってきた漁船は、密漁ないし領海侵犯という国内法によって拿捕し、また漁船を没収し、漁夫を抑留して処罰しているわけであります。しかしわが方は、わが方の主張といたしまして三海里を主張いたしておりますので、三海里までは公海であります。そういう点を法律上いかに論議いたしてみましても、また当方主張をたてにしてソ連側に抗議をいたしましても、らちのあかない次第でありますので、もし実際上の立場からこの問題が解決できれば、という意思表示をいたしましたところが、ソ連側日ソ関係の増進のためにけっこうなことであると思うから、その交渉に応じようということを八月になって申してきたわけであります。その善意に信頼して、われわれは具体的な提案をいたしたわけであります。
  28. 岡田春夫

    岡田分科員 じゃもう少し別な角度から伺いましょう。安全操業の問題は、外務省としては三海里説をとるか十二海里説をとるか、この領海距離といいますか、大きさといいますか、その問題だけであると、そのようにお考えになっておりますか。
  29. 金山政英

    金山政府委員 場所によりましては、魚種あるいは海産物関係でそれ以内にも入らなければならないような問題があります。それはわが方の提案の中にその点も含めて先方提案してあります。
  30. 岡田春夫

    岡田分科員 魚種によってはいろいろなものがあるでしょう。しかし要するに三海里であるか十二海里であるか、あるいは一海里であるか、そういうようないわゆる領海地域の問題、大きさの問題、そういう問題だけが安全操業の問題だとお考えになるのですかというのです。
  31. 金山政英

    金山政府委員 今回の交渉では、そういう問題は取り上げないという建前のもとに始めた交渉であります。
  32. 岡田春夫

    岡田分科員 そうすると何が対象になるのですが。結局その問題がきまらなければどこまでが安全であるか、どこまでが安全でないかということがわからない。この問題を取り上げないとするならば、安全操業の問題というのは何を交渉されるのですか。
  33. 金山政英

    金山政府委員 そういう問題を取り上げないで、この地域にはこの点まで入ってよろしいという了解を、ソビエト側から取りつけるのが目的でありました。
  34. 岡田春夫

    岡田分科員 それじゃ具体的に伺いますが、その地域という場合に、たとえば先ほど伺った国後なら国後というものに対して、魚種によって三海里あるいは一海里あるいは十二海里というような形をきめようということを交渉されるということですか。
  35. 金山政英

    金山政府委員 その通りであります。各地域によりまして、魚種により、また海産物の種類によりまして、また船の大きさも違いますので、そういうような観点から、詳細にどの点まで入るようにしてもらいたいということを先方に具体的に提案しました。
  36. 岡田春夫

    岡田分科員 しかしそれはおかしいと思うのです。もう少し話を進めてみますが、外務省はかねがね——これは当否善悪は別として、南千島国後択捉、これらの島々は、日本固有領土であるということを言っておられましたね。この点はその通りだと思いますが、固有領土であるとするならば、例をあげて言えば、そういう固有領土から三海里というものは、当然日本の権益である。固有領土であるならばそういう結論になるのだ。そういう中に対して安全操業の問題を主張するというならわかるけれども、今のあなたのお話を伺うと、四十八度線以南の、たとえば国後択捉ですね、これについてソビエト交渉をする。そうしてそこで漁種によって何海里の線を引くということとと矛盾していることになりませんか。
  37. 金山政英

    金山政府委員 この問題は日本だけがやった問題ではありませんので、北洋においてイギリスソビエトとの間に一九三二年に協定を結んでおりまして、ソビエトは十二海里説をとっていることは北洋でも同じことでありますが、イギリスはこの交渉によって三海里まで入れるように妥結しております。
  38. 岡田春夫

    岡田分科員 これはちょっと政治的な問題にも関係するから藤山外務大臣にも伺いたいのですが、自民党主張としても、千島全部が日本領土である、こういう考えになると、安全操業の問題は、自民党の問題としてはたとえば一番北の北千島幌筵周囲三海里の問題というのが安全操業の問題で、これは幌筵から三海里の距離を置いて日本の領域である、こういうことがあなた方自民党としての一貫した主張になるんだろうと思うのです。そうすれば、安全操業という問題をソビエト交渉するというのは、論理的におかしいことになってきませんかというのです。
  39. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 つまりその問題が解決しておりませんから、それで安全操業の問題としてだけ問題を考えるということであります。
  40. 岡田春夫

    岡田分科員 しかし、その問題をおっしゃるけれども、安全操業の問題というのは領海の問題でしょう。違いますか。領海関係なく安全操業の問題がやれますか。
  41. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 島嶼もしくは陸地から三海里、十二海里という領海の問題が一つあるわけなんです。それについてもソ連日本とは主張が違っております。それから不確定な、まだ決着のついてない領土の問題もございます。
  42. 岡田春夫

    岡田分科員 それではわからぬ。それじゃ具体的に伺いますが、領海の問題ということをもう一度別な例、国後の例をあげてお話してみましょう。国後というものが、日本主張からいって日本固有領土だということになれば、この島の周囲三海里というものは——日本の方は三海里だというのだから、これは日本領海の問題だという主張が基礎になるのですね。ところが、あなた方が今交渉しているのはソビエト国後との関係について、国後日本との関係について、北海道との関係についてどこまで入っていいかどうかという安全操業交渉をしているのでしょう。その場合、その二つの関係は一体どういう関係になるのですが。
  43. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本側はそういう主張をしている、ソ連側は逆な主張をしておるわけです。
  44. 岡田春夫

    岡田分科員 そこで伺いますが、安全操業の問題というのは、領海の問題と関係なしに交渉はできないでしょう。
  45. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 領海関係なしに安全操業の問題というのは、むろんできません。ただ、その領海が双方でまだ意見が食い違っているわけですね。妥結しておらぬ。
  46. 岡田春夫

    岡田分科員 領海が妥結してないとするならば、安全操業の問題は話にならないでしょう。
  47. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それですからたとえば北辺漁業者帆立貝をとりたいというのでそこに入ると、問題があるからソ連側は武力でそれをつかまえる、しかし北辺漁民帆立貝をとるということだけは、問題が最終的に解決するまででも許してもらっていいじゃないかということで、話し合いでそういうことはきめていけないものだろうかというのが、日本ソ連に相談した理由なのでございます。
  48. 岡田春夫

    岡田分科員 平和条約の問題については、この間予算委員会において岸総理大臣は、この問題は領土問題を含む平和条約交渉には応ずるつもりでいるが、これは急速に解決されることはむずかしい云々という話がありますが、こういう点から見て安全操業の問題と並行して、平和条約の問題の交渉に応ずる意思があるということを岸総理大臣答弁しているわけです。この点について藤山外務大臣外務委員会その他において、安全操業の問題がまず先決であるというように答弁をされているわけですが、この点については私は見解の相違があると考えますけれども、いかがお考えになりますか。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題が起りましたのは、昨年六月以来の安全操業に関するソ連との話し合いからきておるわけです。たまたま二月五日イシコフ漁業相がこういう問題を出してきておるわけであります。従って安全操業の問題はこれ以上話ができないのかできるのか、切り離してやれるのかやれないのかということを、さらにもう一ぺん十分確かめていくことが私は必要じゃないかと思うのであります。従ってまずそれをソ連側に問いただしてみるということは当然やってみなければならぬことではないか、ソ連日本との間に共同声明ができておることでありますから、領土問題が円満に解決しまして、そうして平和条約ができることは日本国民みなの念願しておることだと思います。ただ日本の今日までの要求を曲げるわけにはいかぬと思うのでありまして、従って平和条約締結ということは相当困難があるのではないか、しかしソ連が今回どういう考え方平和条約と関連してこれを片づけようとするか、その平和条約の作り方についてのソ連考え方はさらに聞いてみませんとわからぬわけであります。そのことは今後話し合いをしてみて、その結果によってやると考えておるわけであります。
  50. 岡田春夫

    岡田分科員 しかし岸総理大臣答弁は、平和条約交渉に応ずべきであるということをはっきり答弁されておるわけです。速記録もありますが、この点はどうなのでございますか。岸総理大臣交渉に応ずべきであるということについては、藤山外務大臣賛成なんですか、反対なんですか。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 平和交渉をやろうという積極的な提案ソ連はまだ出しているわけではない。ただそういう問題をあわせて解決するということですからあるいはソ連が引続き積極的な提案をしてくるのかあるいは提案をしないのか、そこらはもう少し確かめてみないといけないと思いますが、しかし平和条約締結するとソ連が言ったからといって、何でも締結するわけではない、日本主張を通し得るならば締結の道がある。平和条約締結するのは、日本主張さえいれてくれれば別に拒むという立場はないわけであります。総理と私の話し合いはちっとも食い違いはないのではないかと思うのでございます。
  52. 岡田春夫

    岡田分科員 そうすると岸総理大臣平和条約交渉に応ずべきであるということについては、藤山外務大臣賛成なんですか、反対なんですか。賛成なんでしょう。
  53. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 平和条約を作ろうじゃないかといってきました場合に、話し合いをしていこうということにはちっとも反対ではありません。ただその内容話し合いに応じられるかどうかという問題になるわけであります。
  54. 岡田春夫

    岡田分科員 内容の問題が問題になるのではないのですよ。それじゃ伺いますが、内容によれば話し合いに応じない場合もあるのですか。
  55. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本の従来の主張を曲げてまで応じられないと私は思います。
  56. 岡田春夫

    岡田分科員 それは話し合いの過程の問題なんでしょう。平和条約交渉をやりましょうという問題については、岸総理大臣はその交渉には応ずるつもりがあるとはっきり言っておるわけです。あなたの場合には、平和条約内容については応じられる問題と応じられない問題がある、こういうような答弁をしておられるが、それは平和条約話し合いしている中で起ってくる問題でしょう。問題は、平和条約の申し入れがあった場合には岸総理大臣の言っているようにこの交渉に応ずるというお考えなんでしょうねということを念を押して聞いているわけです。
  57. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 具体的に申し入れがあれば総理も申し入れに応じて交渉してみよう、そういうことなんで、その点は食い違っておりません。
  58. 岡田春夫

    岡田分科員 そこの点重要な点だと思いますが、ソビエト側から具体的に平和条約締結について話し合いをしましょうと言った場合に、外務省としてはその話し合いに応ずるということを今御答弁になったと思うのですが、この点は再確認願いたいと思います。
  59. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように共同宣言までできて友好関係を立てているわけでありますから、平和条約ができることについてだれも反対はないと思います。ただ問題は平和条約がどういう内容でできるかということが問題なんでありますから、平和条約交渉をしようということについて応じないという考え方は持っておりません。
  60. 岡田春夫

    岡田分科員 そこの点、ソビエト側からそういう呼びがけがあった場合には当然外務省としては応ずるということになりますね。それで先ほどの問題にまたちょっと戻りますが、先ほど領土領海の問題と安全操業の問題とは別だというお話なんです。そこで具体的なお話を伺って参りますが、そうすると先ほどは領海の問題と安全操業は関連があるというように御答弁になったと思いますが、その点いかがですか、もう一度伺っておきます。
  61. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安全操業の問題はそういう関連なしに、それをたな上げにしておいて、そういう漁業者のこういう漁業についてはこの辺までは許していいじゃないか、とらしてもらえないだろうか、こういう意味での話し合いができればけっこうだということであります。
  62. 岡田春夫

    岡田分科員 それじゃ外務大臣話し合いにならないと思うのですよ。何海里までが領海であるかという限度が出てこない限りは安全操業の問題は出てこないと思う。そうじゃありませんか。その領海の限度がはっきりしない限りにおいては、何海里まではどうのこうのという話を進めるわけにいかないじゃありませんか。それ以外に安全操業の問題を取り上げる道がないじゃありませんか。当然そこで何海里までは領海であるからそこまで入らなければ安全操業はできる、そこからいけば安全操業はできない、そういう領海の問題になるじゃありませんか。この点はいかがですか。
  63. 金山政英

    金山政府委員 ただいま申し上げましたようにイギリスとの間に領海の問題をたな上げにした協定ができております。そういう先例もありますので、日本側としては人道的な立場もあり、ソビエト側が特別な考慮をこれに払ってくれることを期し、そういった趣旨 の提案をいたした次第であります。
  64. 岡田春夫

    岡田分科員 しかし先ほど藤山外務大臣お話のように、平和条約については向うから申し入れがあれば交渉に応ずる、そういうことになって、交渉に応ずるということがはっきり出てきた。ところが安全操業の問題というのは、おそらくイギリスの白海の話を例にとられておるのだろうと思うのですが、ああいう例だけで話し合いをしようといったって、向うが安全操業の問題は領土領海関係なんだ、そういうように言ってきた場合には、いかにそういう話し合いをしようとしたってできないじゃありませんか。しかもソビエト側からもし平和条約交渉についてやりましょうと言った場合には、さっき外務大臣はその点については交渉に応ずるとはっきり答弁されたのです。そうしたら、安全操業の問題だけは別個だと言ったって、そんな話は通りませんよ。
  65. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本側がそういう話をしてみるがソ連側はどうだという話をしましたところが、八月十六日に話し合いをしてみようという口上書をくれたからこの話し合いが始まったわけでして、ソ連側も当時はその意向があったと私どもは見ておるのです。それですから引き続きここに交渉をやつてきたわけです。
  66. 岡田春夫

    岡田分科員 ですから、八月にソビエト側交渉に応じようといったって、領海問題、領土問題に関係なく交渉に応じようといったとは必ずしも考えられないんじゃないか。交渉の過程において不可分の問題として出てくるのですよ。安全操業というのは、外務大臣は魚の方にあまり関係ないかもしれないけれども、どこまで入ったら安全でなくなるかということが安全操業の問題なんですね。どこまでという線がきまらない限りは安全操業の問題にならないじゃありませんが。それが領海の問題じゃないかというのです。
  67. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それを具体的に話し合ってみないかという提案をしてみたわけです。そうしたところが口上書で向うでも話し合ってみようと言いますから話し合ってきた。しかしソ連が今後方針を変えて、話し合わぬ、八月十六日に出した口上書は取り消して話し合いせぬということになればあれですけれども、今までは口上書もきていたことですから、われわれはソ連にもその意思があると思って進めてきたわけです。
  68. 岡田春夫

    岡田分科員 それではこの点を伺います。先ほど藤山外務大臣は、平和条約締結について外務省話し合いに応ずる決意があると言われた。そうすると安全操業の問題について向うが言ってきた場合に、平和条約の問題すなわち領土領海の問題を含めて安全操業の問題を話し合おう、こういう話が出てきた場合に、日本側としてはそれに賛成されますかどうですか。
  69. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 平和条約の問題が円満に妥結するかしないかはまだ折衝してみなければわかりません。
  70. 岡田春夫

    岡田分科員 私の言うのはそうじゃない。あなたの御答弁は、話し合いの過程がどうなるかということはわからないということですが、私の伺っておるのは、安全操業の問題について平和条約と切り離さないで、言葉をかえていえば領土領海の問題を一緒に含めて安全操業の話をしようと言った場合に、日本外務省はそれに応じますかどうですかということを聞いている。その内容は別問題ですよ。
  71. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それですから、従来の経過からいいまして、平和条約の問題は別にしてソ連話し合いをしてもいいという口上書がきていますから、私どもは一応その建前で交渉してきた。従ってそれをもう一ぺん念を押してみる必要があるのではないかと私は思うのです。どうしてもそれは切り離してはやれないんだと言ってくるかどうかということをもう一ぺん聞くことが私の立場として当然じゃないか、こう思っております。
  72. 岡田春夫

    岡田分科員 それはお聞きになるのも自由ですが、しかしそれでだめだという場合に——すでに二月五日のときに、そういう形じゃなくて平和条約交渉を進める中で安全操業の問題をやらなければ話し合いにならないと言っているんだから、たといお話になってもそれはおそらく不可能だと思います。そういうように安全操業平和条約締結とを一緒に話をするということを——あなたは先ほど平和条約締結については向うから申し入れがあれば賛成するとお話しになった。そうすれば安全操業の問題と平和条約締結の問題を一緒にくるめて交渉しようと言った場合に当然賛成せざるを得ないでしょう。どうなんですか。それは反対だとおっしゃるのですか。
  73. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ですから、どうしてもひっくるめてやらなければならぬとソ連側が言ってきたとしますれば、それは交渉はしてみてもいいと思います。しかしそれが妥結するかしないかは別個の問題だと思います。
  74. 岡田春夫

    岡田分科員 それじゃ平和条約と切り離さないでくるめて交渉を申し入れてきた場合には、それは交渉に応じてもいいという御答弁ですね。
  75. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれはあらゆる角度から、いろいろな問題を、全力を尽して、いろいろな方面から妥結して解決をしていくことに努力するつもりでおりますから、その限りにおいて、いろいろな角度から努力をしていきたいと思います。
  76. 岡田春夫

    岡田分科員 あらゆる角度もいいのですが、私の質問に答えていただきたいのですよ。さっきあなたははっきり答弁されましたね。平和条約をからめて交渉する場合には、それはいいと思います。こう御答弁になりましたね。この点はいいですね。この点がはっきり御答弁を伺いたい点なんです。
  77. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それですから、あらゆる角度の中には、平和条約とくるめての問題もあるし、くるめない問題もありましょう。いろいろな角度から……。しかし努力はしてみなければ、北洋漁民のためにもならぬと思いますから、いろいろな立場をですよ。ですからまずわれわれは、第一は平和条約とからめないで一つ交渉してみるということをやったわけです。やはりからめなければどうしても交渉ができないというなら、からめて交渉してみても——妥結するかしないかは別ですよ。ですから今申し上げたのは、あらゆる角度から交渉してみる、そういうことを申し上げたのです。
  78. 岡田春夫

    岡田分科員 そこのところですね。外務大臣、さっきの答弁速記録に残っているのですからね。そこのところを、経済人の場合には、初め十円だったのを今度は五円だと言ってもいいかもしれないけど、そういうわけにいかないのですよ。だからあなたは今あれの点はからめて交渉に応じてもいいという答弁をはっきりされたんであるから、その点についてはっきり御答弁下さい、こう言っているので、あらゆる問題の中にそれが入るというなら、その問題は当然交渉に応ずるというように、私は解してもよろしゅうございますかと言っているのです。イエスかノーかだけ言って下さい。いろんな、五円だ十円だという話はよして……。
  79. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今のお説の通りです。
  80. 岡田春夫

    岡田分科員 そうですね。わかりました。そこで平和条約とからめて交渉に応ずる、こういう御答弁をいただいたものと私考えますので、それから次に進めますが、そういう問題については、平和条約の問題、あるいは今漁業交渉をやっていますね。サケ・マスのこういう問題について、やはり平和条約締結するという根本問題をきめない限りは、いろいろな問題に関連が起ってくるわけです。そこでやはり藤山外務大臣として考えていただかなければならないことは、その平和条約を含めた安全操業交渉問題については、藤山外務大臣一つ決意をして、出馬するという御決心がおありですか、どうですか。
  81. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 決意をして出馬するというのはどういう意味かよくわかりませんが、今のように私としてはあらゆる角度から日ソの関係について努力していくつもりですから、従って平和条約にいたしましても、今日まで通商条約もやってくる、いろいろな両国友好関係を打ち立てながら、将来の問題として考えてきているわけなんであります。従ってそういう意味で、出馬ということがどういう意味かよくわかりませんけれども、努力します。
  82. 岡田春夫

    岡田分科員 私の出馬と言った意味は、具体的に言いますと、たとえばソビエト側が、平和条約も含めて安全操業問題を話し合いましょう、その場合、藤山さんと向うのグロムイコ外務大臣、あるいはイシコフ漁業大臣、こういう人と、一つ交渉をやってみようじゃありませんかというような申し入れがあった場合に、私の出馬という意味は、こういう意味で使ってみたのですが、そういう場合に、藤山外務大臣一つ決意をきめて、モスクワに行くなり、あるいはその交渉に応ずるという決心がおありかどうかということを伺ったのです。
  83. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私としては、外務大臣でありますから、相手方が日本外務大臣に適応する人であれば話し合いはしても差しつかえはないのですが、だれとでも話し合いをするということは、日本外務大臣として避けなければならぬというところもあろうかと思います。ただ問題は、話し合いをするにしましても、もうしない前から当然してもだめだとわかっているものなら、できないわけでありますから、そこらは十分先方意向も事前に確かめてみなければなりませんし、予備的な会談なり何なりで意向も聞いてみなければならぬ。いきなりただ向うが会って話してみようといって、ぽっと話すというわけにもいかぬ場合もあろうかと思います。
  84. 岡田春夫

    岡田分科員 それはいろいろな点があるだろうと思いますが、この前の日ソ共同宣言の場合には、鳩山総理大臣も、当時の外務大臣重光さんも、決心をして行ったのです。外務大臣というものは、そういうことを積極的にやらなければ、外務大臣の任務にならないと思うのです。率直に申し上げて失礼だが、この国会が始まってから、藤山さんの株がだいぶ落ちたのですね。だいぶんよろめき外交という状態で、ひそかにお察し申し上げるのに、神奈川県の選挙もどうかなというふうに感ぜられます。こういうときだから、藤山さん、重光さんだってやったのだから、藤山さんも一つ意を決して——藤山さんの株が上らなければ選挙にもならぬかもしれぬから、一つモスクワと交渉するという決心を明らかにされるおつもりはないかどうか、この点をもう一度伺っておきます。
  85. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私の株が上るか上らないかわかりませんが、上るためには日本主張が通らなければ上らぬわけでありまして、通らぬような前提のもとに、私、交渉に入るわけにはいかぬ。お話のように株をあまり下げたくございません。
  86. 岡田春夫

    岡田分科員 それでは次に進みますが、藤山さんはチャーチル会とかいう絵の会にも入っておられて、なかなか文化関係に御堪能だというように伺っているのですが、外務省の文化政策というのはどういう方向で進められておりますか、予算面において一つ御説明をいだきたいと思います。
  87. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 予算のこまかい点については事務当局から御説明いたします。日本の外交を推進して参りますために、積極的な外交を強力にやって参りますことは当然であります。また経済外交をやって参りますことも、日本の現在の外交の当然進むべき道であり、また文化面の外交を進めて、両国国民がそれぞれ相互に理解し合っていくということは当然のことであると思います。従って外務省としても、従来文化協定その他につきまして、各国とそれぞれ締結してやって参っておりますが、ただはなはだ残念なことには、文化外交に対する経費がまことに貧弱でありまして、私としては、今回の予算につきましても、もっと文化外交面に使える予算をとりたいと思っておりましたが、必ずしも十分な予算を獲得できなかったことはまことに残念に思います。が将来は、岡田さんみたいな文化外交に御同情のある方の世論をバックにして、大いに文化外交の予算も充実していきたいと、こう考えております。
  88. 岡田春夫

    岡田分科員 率直なお話で、文化関係の予算が非常に少いというお話なんでありますが、具体的にお伺いをして参りますけれども、文化協定をたくさん結んでおりますね。この文化協定に予算が全然組まれておりませんけれども、これじゃ文化政策を進めるといったって、全然進まないじゃありませんか。文化協定について予算が組まれなかった、こういう現実に立って、藤山外務大臣、一体予算の折衝でどういう努力をされたのですか。この点をまず伺いたい。
  89. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 過去において作りました文化協定について予算の裏打ちがないということは、お説の通りでありまして、私は実は就任以来驚いておるようなわけなんであります。極力明年度予算につきましても既設の文化協定を円滑に運営していくための経費を要求もいたしまして、また国際文化振興会その他の文化関係の活動し得る団体に対する補助金等につきましても、努力をしたのでありますけれども、外務大臣の力が足りないわけですか、十分な成果を上げ得なかったことは残念でございます。なおこまかい点につきましては、情報文化局長から御説明申し上げます。
  90. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 お答え申し上げます。ただいま外務大臣が御答弁されましたように、現在国会で御審議を願っておりますパキスタンと日本国との文化協定を含めまして、戦後十の文化協定を結んでおります。それから本年度の予算につきまして、個々の協定の実施のために特別に予算が計上されなかったことは、ただいま外務大臣が言われた通りであります。文化事業関係の予算が本年度は約五千六百万円ございまして、これは主としていろいろな文化資料の送付であるとか、そういうような経費に使用さるべき経費として計上されております。元来文化交流というものは、岡田委員も御承知通り、主体は国民間の文化交流でございまして、従いまして政府としましては、国民間の文化交流が民間ではできない面についてはこれを援助し、また民間の文化交流豊のためのあらゆる便宜をはかろうという立場をとっております。今後文化協定のそれぞれの相手国との交流を盛んにするためには、やはり個々の文化協定のための経費が望ましいわけでありまして、その点につきましては今後とも努力して参りたい、こう考えております。
  91. 岡田春夫

    岡田分科員 この機会に伺っておきたいと思いますが、前年度に比べて文化関係の予算はどのようなことになっておりますか。あまりこまかい点はよろしいのですが、概略どういう傾向になっておるか、伺っておきたい。
  92. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 前年度の文化関係の予算は、数字はちょっとここに持っておりませんが、約五千万円。従いまして本年度ふえましたのは六百万円ばかりでございます。
  93. 岡田春夫

    岡田分科員 それは情報文化局全体の予算が六百万円ふえたという意味ですか。
  94. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 情報文化局全体の予算は約一億八千万円ございます。その中の五千六百万円が純粋の文化事業関係の費用でございます。その他一億八千万円の中の大きな項目は、約一億二千万円が日本の国情を海外に紹介するための啓発関係の経費でございます。
  95. 岡田春夫

    岡田分科員 さっき六百万円ふえたというのは、文化事業関係で六百万円ふえた、こういう意味ですか。
  96. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 さようでございます。
  97. 岡田春夫

    岡田分科員 六百万円ふえたおもなものはどういうものですか。
  98. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 主として海外に送ります日本の文化を紹介するための資料の作成費並びにその買上げの費用でございます。
  99. 岡田春夫

    岡田分科員 そうすると、今度仏教文化会議運営委員会補助金というのが三千万円計上されております。が、これは去年全然なかったのですが、こういうものがふえておって、そうして総体として六百万円ふえたというと、今申し上げた仏教文化会議運営委員会補助金以外の面では、差引減ったということになりますね。
  100. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 お答え申し上げます。その点、昨年度の予算の内容を少し御説明いたさなくてはいけないのでございますが、昨年度はいわゆる昨年度限りの文化関係の経費が計上されてあったわけでございます。そのおもなものは、メキシコに日墨文化会館を建設するための費用、それから松方コレクションの受け入れの費用、それから昨年度東京において開催されましたペンクラブの国際大会に対する補助金と申しますか、その援助のための経費、これらを合計いたしますと三千九百万円あったわけでございます。従いましてそれを差し引きますと、昨年度の純粋の文化事業に必要な経費は約二千万円であったわけでございます。そういう関係からことしは純粋の文化事業関係の費用が六百万円ふえたという計算になるわけであります。
  101. 岡田春夫

    岡田分科員 そこで伺いますが、仏教文化会議運営委員会補助金という費目がありますが、この運営委員会というものはどういう構成で行われておりますか。
  102. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 この仏教文化会議と申しますのは、伝統的に仏教と関係の深い文化を持っておる東南アジア諸国の国々の文化人でございますとか、学者とか、あるいは政府関係者を東京に集めまして、文化関係の国際会議を開くための経費として三千万円計上してあるわけでございます。今のところ、どの国々を招待するか、またいつやるかという具体的の案につきましては検討中でございます。そしてこの会議の運営をするための運営委員会を作る考えを持っておりまして、ただいまのところ、この運営委員会の主体となって働いていただく方々の具体的の人選等につきましては、検討中でございまして、まだ決定しておりません。
  103. 岡田春夫

    岡田分科員 この運営委員会というものは現在ないのですね。
  104. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 まだ存在しておりません。
  105. 岡田春夫

    岡田分科員 それじゃこの運営委員会はどういうものが中心になるのですか。
  106. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 この中心になる方々につきましては、目下外務省において検討中でございますが、日本の文化人、学界等の指導者から最も有能な方々にお願いしたい、こう考えております。
  107. 岡田春夫

    岡田分科員 これはしかし政府がやるのじゃないのでしょう。
  108. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 その運営委員会は政府のものではございません。民間のこの国際会議を開きたいと考えておられた方々が外務省と相談されて、そして具体的にきめていく、こういうことであります。
  109. 岡田春夫

    岡田分科員 そうすると、仏教文化会議運営委員会というのは仏教団体でしょう。その仏教団体が中心になってこういうものをやろうというのじゃありませんか。
  110. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 この運営委員会の主体となるものは、宗教団体ではございません。
  111. 岡田春夫

    岡田分科員 しかし仏教団体がこの話を言い始めたのではございませんか。
  112. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 私の承知している限りにおきましては、仏教団体がこの話を始めたわけではございません。
  113. 岡田春夫

    岡田分科員 しかし仏教団体が参加しない仏教文化会議というものはあるのですか。
  114. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 仏教団体自体はこれに団体としては参加しないと思います。
  115. 岡田春夫

    岡田分科員 しかし仏教文化会議という会議に仏教団体が参加しないのですか。
  116. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 これは仏教の会議ではございません。この名前は最後的の名前ではございませんで、仮称でございまして、ただいま最初に申し上げましたように、伝統的に仏教に深い関係のある文化を持つ国々の人々を集める国際文化会議として考えられておるのであります。
  117. 岡田春夫

    岡田分科員 それでは近藤さんに伺いますが、外務省の要求予算の大蔵省との折衝のときに、こういう費目は外務省から出されましたか。
  118. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 出しました。
  119. 岡田春夫

    岡田分科員 これは出しておられないでしょう。要求額の中に入っていないでしょう。入っているんですか。
  120. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 入っております。
  121. 岡田春夫

    岡田分科員 これは藤山外務大臣に伺いますが、仏教文化会議運営委員会について予算折衝のときに御存じでしたか。
  122. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま近藤局長が申し上げましたように、伝統的に仏教国である各国の文化人が寄って、そうして文化会議を開こうということは承知しておりました。
  123. 岡田春夫

    岡田分科員 これは資料として要求します。大蔵省に対して要求をしたときの要求書の中にこれが入っているというお話ですが、これはあとで資料として御提出を願いたいと思います。  藤山外務大臣に伺いますが、この仏教文化会議運営委員会というのは文部省に割り当てられるものというような形になっておったのじゃありませんか。
  124. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 これは外務省から要求しまして、外務省の予算として組まれるということになっておりました。
  125. 岡田春夫

    岡田分科員 これは情文局長に伺うよりも藤山外務大臣に伺いたいのです。というのは、これは自民党の問題であるからなのです。これは自民党から出た問題なのでしょう。自民党がこういう案を作れといって出したのじゃありませんか。
  126. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 自民党ということはないと思いますが、自民党関係した方もそういう企画を立てた中にはあると思いますが、自民党からということは承知しておりません。
  127. 岡田春夫

    岡田分科員 これは自民党から出て——私は名前もはっきり覚えておりますが、それはきょうは申し上げません。しかしこれは自民党から出て文部省に割り当てようとした予算が、文部省では困るというのでこれを外務省に割り当てた予算でしょう。そういう点はもし必要があれば明らかにしてもいいと思うのですが、この仏教団体が、先ほど近藤さんの御答弁の中に仏教団体はこの中に入るというお話なのですか、入らないというお話なのですか。
  128. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 先ほど岡田委員にお話いたしましたように仏教団体は入りません。
  129. 岡田春夫

    岡田分科員 入らない。なぜ入らないのです。仏教文化会議運営委員会なら当然向うの方から来る人たちは仏教の人も来るわけですよ。
  130. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 先ほども御説明いたしましたように、これは仏教に関係の深い国々の文化会議でございまして、むろん向らから来る人には仏教の関係者が招待されることもあると思います。しかしながらこの運営委員会には仏教団体は参加いたしません。
  131. 岡田春夫

    岡田分科員 おそらくこれは藤山さんも御検討願わなければならないのは、これは本来は自民党が文部省にとらせようとしたのです。そうして文部省を通り抜けにして事実上の仏教団体に補助をしようとした動きがあったのです。そのことが憲法の第二十条「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」、この「国から特権を受け、」というところに該当することをおそれて外務省に持ってきた予算なのです。これは必要があればもっと真相を明らかにしてもいいのだけれども、これは局長の、いわゆるお役所ではおそらく困っている問題ではないかと思うのです。藤山外務大臣はこういう点が文化政策だというお考えなのですか。
  132. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 先ほど来御説明しておりますように、これは仏教に関係の深い文化を持っている国々との文化交流を考えておるのでありまして、この会議によりまして特定の宗教でありますとか、特定の宗教団体の補助等を目的とするものではありません。
  133. 岡田春夫

    岡田分科員 この問題は外務大臣十分御注意を願いたいと思うのですが、宗教団体に特定の援助をするというような危険性が非常にあるので、われわれもこの点は十分監視をいたしますし、そのようなことがもしあるとするならばこれは憲法違反でありますから、これは十分御注意を願わなければならない。  それから続いてローマ・アカデミアについて敷地を買っているはずなのですが、この敷地の問題についてまだ予算が全然組まれておらない。しかもこれは五年間の約束で敷地を買うことになっている。ところがもうすでに二年たっているのです。今年度に入れば三年になるわけです。三年になるのに敷地が五年間留保されて予算が全然ついておらないとするならば、このローマ・アカデミアは建たないばかりでなくて、国際信義にも反することになると思うのだが、この点はどういう交渉の経過になっているが、予算の経過はどうなっていますか。
  134. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 このローマ・アカデミアの建設につきましては、イタリア政府が非常に好意的にその所要の敷地を無償でくれるという話し合いになっておりまして、今岡田委員が御指摘になっております通り、その提供を受けてから五年以内に建設するという約束になっております。それ以来外務省といたしましては、この会館の建設のための経費を要求をしたのでありますが、本年度の予算折衝におきまして、その要求がいれられなかったのでございます。従いまして、御指摘のごとく日にちがじんぜんたっていくことは非常に遺憾であります。明年度におきましては、ぜひその予算を計上して、イタリア政府に対する約束を果したいと考えてりおます。
  135. 岡田春夫

    岡田分科員 これで終りますけれども、外務大臣に伺いますが、明年度になって果してとれるかどうかわからないのです。去年も要求し、ことしも要求し、ついにとれないのです。これは国際信義にも関係しますので、明年度の予算で云々というよりも、何か別な方法で交渉するというようなお考え外務大臣にあるかどうか。そうでなければ、これはやはりイタリア政府との関係で非常に大きな問題になってくるし、特に三十数ヵ国はもう建てておるのです。日本だけが建てられないということになると、これは恥さらしの問題です。そういう点にどういう努力をされるか、この点は局長よりも外務大臣一つ熱心にやってもらわないと、局長ばかり苦労することになってしまうのですが、どうですか。
  136. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御説の通りでありまして、この問題は十分促進して参らなければいかぬと思います。むろん政府として本年度予算に要求しましたけれども、明年度予算においてぜひ要求して参らなければならぬと思います。しかしながら、なかなか政府の予算措置だけでむずかしいとすれば、民間資金を集めるという努力もある程度やらなければならぬと思います。後援会というようなものを作る必要もあるかと思います。それらの問題について、できるだけ日伊文化関係の促進について努力いたしたいと思います。
  137. 岡田春夫

    岡田委員 私、今局長にばかり苦労させないで、外務大臣にと言ったのは、こういう意味もあるのですよ。たとえばイタリアのビエンナーレの場合ですね。これは結局予算が思ったようにとれない。そこで石橋正二郎氏から出してもらってやったのですよ。藤山さんだって有名な財閥だから、外務省の予算がとれなかったら、おれが少し出す、五年間にとりあえず金は作るから、一つ情交局長もがんばれ、そういうのでなくちゃ、財閥の外務大臣としてさっぱり実力がないということになってしまうがら、一つそういう点考えたらどうですかということも含んでおるのです。やっぱり外務省大蔵省との予算折衝の中において、いよいよ肝心なときになったら、おれはインドネシアに行くんだといってたら予算はとれないのですよ。こういう点は何も私役所に聞いたのではない。新聞に出ておる。いよいよ肝心なときになったら、藤山さんは体をかわして逃げちゃった。逃げちゃったのは、逃げたで仕方ないのです。逃げたんなら逃げたでいいから、あなたは金をたくさん持っておるんだから出して、ローマ・アカデミアを作ったらどうですか。石橋正二郎さんみたいに努力されたら、さっきも言ったように藤山さんの株も上るし、選挙の方も安心だから一つ好意的に御勧告しますが、どうですか。
  138. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういう政府の予算ばかりでなく、民間の浄財も努力して集めるということは必要でありまして、ビエンナーレの石橋さんのことにつきましても、私民間におりましたときに、橋渡しした関係もあり、またユネスコが今度建物をパリに建てます。日本の庭園を築造することになりました。それらについても寄付金を募集したこともありますので、極力そういう面については努力いたしたいと思います。
  139. 岡田春夫

    岡田分科員 それではこれで終りますが、そういう民間の資金を集めるためには、まず範をたれよで、あなた金があるのですから、出してやって下さい。それを特に希望いたしまして私の質問を終ります。
  140. 田中久雄

  141. 田中稔男

    田中(稔)分科員 藤山外務大臣にお尋ねします。岡田委員の質問に答えて、岸首相と同様に、日ソの平和条約締結の申し入れがあれば、これに応ずる、こういう御答弁がありました。まことにけっこうだと思います。これは日ソ共同宣言が発表されました際に、すでに今後も平和条約締結交渉を継続するということが、日ソ双方において約束されておることでありますから、これは当然のことだと考えるのであります。ところが平和条約の問題になりますと、領土問題で双方の主張が従来非常にかけ離れておりまして、この妥結は容易でないことはもう十分にわかっておることであります。  そこで私がこの際外務大臣にお尋ねいたしたいと思いますのは、外務大臣は、従来日本政府外務大臣が北方の領土について主張して参りましたその主張を、今日においてもそのまま主張されるお考えであるかどうか、それを一つ伺いたい。
  142. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その通りであります。
  143. 田中稔男

    田中(稔)分科員 そこで従来の日本主張と申しますと、まず南千島日本固有領土である、これを日本に返還してもらいたい。それから北千島及び南樺太の処理については、関係諸国の国際会議によってこれを最終的に決定したい。大体こういう内容であったように思いますが、その点についての外務大臣の御見解を一つお尋ねいたします。
  144. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その通りであります。
  145. 田中稔男

    田中(稔)分科員 ところがソ連は、歯舞、色丹を含めて、全千島ソ連領土である、ただ平和条約締結された暁においては、歯舞、色丹だけは好意的に日本に譲渡しよう。こういうふうなことを言っておって、その他の地域につきましては、南樺太につきましても、南千島につきましても、これを日本に返還する意思は全然ないわけです。それで交渉に応じても、いよいよ領土問題について話し合いが始まりますならば、平和条約の妥結を見ることは今日のところほとんど絶望的であると思いますが、外務大臣の御見解をお尋ねしたい。
  146. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在の段階においては、そう考えられます。
  147. 田中稔男

    田中(稔)分科員 ソ連側において領土問題の主張において何か変化を見るような、そういう見込みはあるでしょうか、お尋ねいたします。
  148. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在、表で考えておりますところでは、ないように思いますが、ソ連がああいう行き方をする以上、何かあるのかもしれぬので、十分これは探ってみなければならぬと思います。
  149. 田中稔男

    田中(稔)分科員 ただ平和条約の妥結は困難だ、従来の領土問題に関する主張をただ一方的に主張し続けるということでは、これは外交ではないわけですね。そこで日本側日本主張を通すなら通すで、一体どういうふうな努力を今後払われる考えであるか、また従来払われておったか、そういうことにつきまして一つお話をいただければけっこうだと思います。
  150. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 共同宣言の趣旨を体しまして、最終的に平和条約締結しますためには、わが方の正当な要求もソ連了解してもらわなければならぬ、それには両国が友好親善関係を深めていくことが必要だと思います。そういう意味において、通商関係の問題なりその他の問題について、個々にできるだけ円滑に解決をして、そして日ソの友好関係が増進していくように今後やっていきたいと思います。
  151. 田中稔男

    田中(稔)分科員 ただ日ソの友好関係ということを外交辞令として言うことは容易であります。しかしそういうことを幾ら繰り返したって、ソ連との話し合いは進まない。まず外務大臣としては、日本の今日の政府の外交政策というものを反省してみる必要があるのではないかと私は考える。日本が今日、日米安全保障条約というものによって、事実上アメリカとの防衛同盟、軍事同盟を結んでいる。しかもその軍事同盟の仮想敵国がソ連であるということは政府はそうはおっしゃらないでしょうけれども、これは常識であります。しかもまた沖縄の現状は、御承知通り、これはもうはっきり日本領土でありながら、事実上アメリカに占領され、その領有のもとにある。しかも沖縄返還の国民的な熱望はたびたび繰り返されておりますけれども、アメリカによって一顧だにされていない。政府も沖縄問題に関する対米交渉ではきわめて弱腰であります。ソ連主張によれば、北方の領土の問題と南方の領土の問題とは何も必然的な関連はないという主張をしておりますけれども、しかしながら、私はやはり間接に関係がないことはないと思うのであります。要するに今日、日本が自由主義陣営の一員だ、そういうふうな美しい言葉のもとに完全にアメリカと軍事同盟を結び、ソ連を仮想敵国としておる、こういう外交の基本政策、これを改めない限りはソ連領土問題において譲歩するというようなことはとうてい期待できないと思いますが、外務大臣の御所見はどうでありますか。
  152. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本が今後の外交を展開して参りますのに、やはり日本も世界の国際社会におることで、国際社会の紛争がソ連との関係、アメリカとの関係であることも、これはだれでも承知するところであります。従いまして、ソ連とアメリカの関係が調整されるということは、世界の大きな平和に貢献することだと思うのであります。  そういう意味において、日本の外交もそういう点に努力をしていかなければならぬことは当然なことでありまして、われわれは、その方法論についてはいろいろお説と違うところがあるかと思いますが、終局の、世界の平和を達成していくために円満な世界情勢ができ上るように努力したいということに対しては、熱意を持っておるつもりであります。
  153. 田中稔男

    田中(稔)分科員 きわめて抽象的な御答弁でありますし、また今日政府の外交の基本政策について外務大臣がこれを変更するというようなことを卒然としてお話しになるということは、とても期待できない。ただ私としましては、先ほど申しましたようなことは、これは私だけの要望でない、またわが社会党だけの要望でない、これはほとんど今日国民的な要望であります。そういうふうにして日本の外交の路線を根本的に変えませんと、この日ソの間の領土問題の解決さえとうてい期待できない。従って平和条約締結はほとんど絶望的である。しかも日本の隣国に二億の人口を持つこの強大な国家があって、それとの間に友好的な関係ができていないということであれば、それはサケ・マスの北洋漁業にしましても、あるいは沿岸漁業安全操業の問題にしましても、すべての問題がうまくいかない。現状に見る通りであります。そこで私は、その外交の基本政策というようなことをしばらく離れまして、具体的な問題で政府一つ伺いたいと思いますが、たしかこの間アメリカはソ連と文化協定なんか結びまして、何か米ソの間に航空路を開設するというようなことについて話し合いができたように記憶しております。そういうことであれば、日本は隣のソ連と相互に航空機の乗り入れをするというようなことは、側面的にこの日ソの関係を好転させる契機にもなる。きょうの新聞によりますと、ソ連は現在イギリスとの間にロンドン—モスクワ間の航空路の開設について協定を結ぶ交渉をやっておって、近くこれは成立する見込みだということを報道しております。そしてその暁はロンドン—モスクワ—東京を結ぶ国際空路を開設したいというようなことをソ連政府考えているということも報道されております。これはそういう具体的な申し入れがあったわけではありませんけれども、おそらく私は近い将来にそういう申し入れがあると思う。その場合に政府はそういう空路の開設に同意されるかどうか。これは相互主義でけっこうでありますが、ソ連側はTU1〇4ジェット旅客機を使用して東京まで来たいといっている。日本は日航機を使えばいいのでありますが、そういうことはすでにアメリカさえやっていることでありますから、だれはばかることなくやっていいと思います。この具体的な問題について外務大臣がどうお考えになるか、これは一つのテストとしてお尋ねしたい。
  154. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お話のように現に文化的な交流も、ボリショイ劇場なんか来てやっております。将来文化協定を結び、また将来航空路協定を結ぶというようなことも、逐次考えていって差しつかえないだろう、こう思っております。
  155. 田中稔男

    田中(稔)分科員 次に沖縄問題について少し伺いますが、兼次佐一君というのが那覇の市長に当選したことは御存じの通りであります。アメリカ側が陰に支持しました平良候補が敗れた、そうしてアメリカの政策に対しまして厳重な批判をする民主主義擁護団体協議会の公認候補であります兼次君が当選したということは、これは日本国民に非常に大きな印象を与えたことは御承知通りであります。沖縄は日本の最前線ともいうべきでありまして、日本民族が今日日本の独立を完成する戦い、日本の平和を獲得する戦いにおいて、沖縄を最前線と見ておる。その最前線における戦い、それはきわめて苦しい戦いでありましたが、それが勝利した。ところがアメリカはこの兼次新市長当選前におきましては、非常にいろいろな圧迫を加えるという態度をほのめかしておりましたが、当選後は少し態度を緩和している。そうして兼次新市長とも話をしようというような態度であります。そのアメリカ側の態度はもちろんなかなか複雑なものでありまして、ただ簡単に、一面的には理解できません。このアメリカの新市長に対するいろいろな態度について、私はあまり詳しいことは知りませんが、外務省方面に情報がありましたら一つお聞かせ願いたい。
  156. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この沖縄の市長選後のアメリカの情勢というものは、これをめぐって政府においても何らか大きな影響があったように私どもは聞いております。またアメリカの民間の世論としても相当大きな影響があったと思うのであります。こういう問題について従来よりも若干ゆとりのある考え方を持ってきておるのではないかというように受け取れますが、しかしまだこういう事実があるというところまでは申し上げられません。
  157. 田中稔男

    田中(稔)分科員 このことについて事務当局の方で、もう少し具体的なお話をお願いできたらけっこうであります。
  158. 板垣修

    ○板垣政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げました以上の詳しい情報はございません。もとよりわれわれといたしまして、アメリカの民政府がいかなる方針を持っておるかということはうかがい知るすべもないのでありますが、市長選挙後の沖縄におきましては、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、情勢の変化は若干認められます。なおアメリカ本国における新聞、雑誌等の論評を見ますと、アメリカ側全体といたしまして相当反省すべきであるというふうな世論が一般であることは私どもも承知いたしております。
  159. 田中稔男

    田中(稔)分科員 アメリカ政府の極東政策というようなものはなかなかきびしいものがあると思います。しかしながらまたアメリカは一面から言いますと、何といっても世論の国である、良識を持った知識階級もおるわけであります。一時マッカーシーイズムの支配した当時閉息しておったそういう良識というものが、最近だいぶ復活しているようであります。そういうわけでありますから、沖縄問題がアメリカの国民にほんとうによく知らされておれば、私はアメリカの世論がもっと強く政府に圧力を加える、そうして沖縄の返還というようなことが実現する可能性は決してないことはないと私は思います。アメリカの学者が従来いろいろ発言をしておりますが、その二、三を読みましても、軍事基地を沖縄に保有することは、これはアメリカの極東政策として絶対に必要である。しかしながらアメリカの施政権は日本に返すのが当然であり、またアメリカのためにもそれが利益である。いつまでもアメリカが沖縄八十万同胞を占領下に置く、異民族の支配でありますから、どうしてもそこにいろいろな摩擦が起る、それはアメリカ自体の利益にも反するのだというような言説は相当あるのです。私ども社会党としましては、ただ沖縄が返還されただけではいかぬと思います。内地におけると同様に沖縄における軍事基地も、これは全部撤去さるべきであり、ことにまた戦略空軍の基地として、ミサイルの基地として沖縄が強化されつつあるということ、こういうことには絶対反対であります。しかしながらそれはそれといたしまして、沖縄の日本復帰ということもそれができれば、それはそれでけっこうだと思う。私はそういうことを考えますと、政府はもう少し強腰でアメリカの政府に当る。政府に当ると同時に、アメリカの世論に訴える努力をあわせて行いますならば、兼次新市長当選後のアメリカの態度の若干の変化から考えましても、私は沖縄の日本復帰は必ずしも絶望ではないと思う。ところがどうも政府の努力が足らない。こういうことについて今まで一体どういうふうな努力をされてきたか、今後どういう努力をなさろうとするのか、一つ外務大臣の率直な御見解を伺いたいと思います。
  160. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は日本が自由主義陣営の一人としてアメリカと緊密な連絡を持ち、親善関係を持つということについては、特に強力に考えておるつもりでございます。しかしながら親善関係を強めていくということと率直に日本のことをアメリカに言う、またお互いに率直に欠点は指摘して直し合っていくということは私は両立すると思っておるのです。従いましてアメリカと親善をするようにという趣旨のもとにでも、アメリカの間違った政策その他についても極力これを指摘して直してもらいたい、それがむしろ日米親善の基礎になる、こう思っておるのであります。従って日米間の諸般の問題につきましても、今後ともそういう考え方のもとに遠慮なく指摘すべきものは指摘する、こういうことをやって参りたいと考えております。それが一部の方のように、決して日米親善を害するものではないと私は確信を持っております。なお、お話のようにアメリカの世論等に訴えることも努力をして参らなければならぬのでありますが、そういう点につきまして、外務省情報文化局等の活動を通じて、日本の実情なり日本の国民の声を外国に出す、ラジオを通じあるいは出版物を通じ、その他を通じてやることも必要だと思います。若干でも今回予算の増額を要求して、ごくわずかですけれどもとってあるわけでありますから、そういう面からもアメリカに対してはできるだけの働きかけをいたしていきたいと思っております。
  161. 田中稔男

    田中(稔)分科員 外務大臣のそういうお気持は非常にけっこうだと思います。とにかくアメリカの国民は、沖縄では善政が行われておる、すべてがうまく行われておる、こう大体考えておると思うのです。ことにまたそれには多額の税金の負担もしておる、どうしてアメリカが沖縄できらわれるかということがよくわかっていないと思うのです。ところで今まで努力もされた、アメリカに苦いことも今まで言ったというようなお話だったのでありますが、一つ具体的な問題、たとえば瀬長前市長がああいう無謀な追放を受けました。あの際に政府は一体アメリカに対しましてどういうふうな抗議らしいことをされたか、どうも私は寡聞にして知らないのでありますが、当時のことについて一つ答弁を願いたい。
  162. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 個々のケースについて文書等で申したことはございませんけれども、アメリカの当地に駐在している大使を通じ、また朝海大使を通じて、ワシントン当局等には沖縄の現状に関して絶えず意見を申し述べております。
  163. 田中稔男

    田中(稔)分科員 そうすると、瀬長前市長のあの無謀な追放に関連してアメリカ政府に対して別に抗議をしたことはない、たとえば文書等によって抗議したことはない、こういうことでありますが、それは私は非常に遺憾だと思います。それは果してその通りでありましょうか、お尋ねいたします。
  164. 板垣修

    ○板垣政府委員 瀬長市長の追放に関連する問題につきましては、日本国民としていろいろと見解はありましょうけれども、この問題につきまして今日本政府として正式にアメリカに抗議するとかいうような立場にないのは御承知通りであります。これは理論的に申しますれば施政権の干渉というようなことになる、現在アメリカにありまする以上は施政権の干渉ということになりますので、そういう表立った抗議とか文書等ではやっておりません。しかしながら非公式の会談においては、日本側のそういうような見解が向う側に伝わるような方法はしばしばあの当時とった次第であります。
  165. 田中稔男

    田中(稔)分科員 今の御答弁によりますと、瀬長前市長に対するああいう無謀な追放が行われても、また同様の事件が今後起っても、日本政府として正式にアメリカに対して抗議する根拠がない、権限がない、こういうふうな御答弁であります。よく言われる外交保護権、この場合にはそれは的確に当てはまらぬかもしれませんが、とにかく一種の外交保護権、こういうふうなものに基いて八十万の沖縄の同胞のために抗議する正当な権利はあると私は思いますが、外務大臣の御答弁を願いたい。
  166. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 法律論になりますから、条約局長からお答え申し上げます。
  167. 高橋通敏

    高橋政府委員 お答え申し上げます。純法律的に申し上げますと、御承知のように平和条約第三条で施政権を向うが行使している状況でありますから、第一次的にはこの施政権に基く行動が向うにあるわけであります。
  168. 田中稔男

    田中(稔)分科員 施政権がアメリカにあることはもちろん承知しておりますが、そうすると事実上アメリカの領土みたいになっているわけでありますけれども、その場合ならその場合として、いわば外国に居住する同胞であります、日本国民であります。これに対する不法な取扱いに対して抗議をするという権利は私はあると思いますが、単に法律論でなく、これはむしろ外務大臣一つ政治的な見解をお尋ねいたします。
  169. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 法律論でなく政治的な面からいえば、当然われわれとしては不当な場合にはアメリカに対して、不当なことを指摘することはいたすつもりであります。
  170. 田中稔男

    田中(稔)分科員 今の外務大臣の御答弁ならば満足いたしますが、それであればなぜ瀬長前市長の無謀な追放に関連して、一片の文書による抗議もなさらなかったのか、私ははなはだ遺憾だと思います。今後こういう事件が起りました場合は、法律上の見解は別として、日本政府としてはアメリカに対して堂々と抗議するというようなことをお願いしたいと思いますが、外務大臣どうでしょう。
  171. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私としては、その方法論はどういう方法をとりますか知りませんけれども、われわれがもしアメリカのやっていることが適当でないと認めた場合には、それは適当でないことじゃないだろうかということの意思をアメリカに伝えたいと私としては思います。
  172. 田中稔男

    田中(稔)分科員 平和条約第三条によりますと、日本国は沖縄を合衆国を唯一の施政権者とする信託制度のもとに置くこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。こういうことが規定されており、この提案が行われ、かつ可決されるまでの暫定措置としてアメリカが沖縄の施政権を持っているんだと、こういうふうなことが書いてあるわけであります。ところでアメリカの政府におきましては、沖縄を信託統治として国連に提案するという意向は今日においては全然ない、とこういうふうに私は見ております。アメリカ政府の責任者もそういうことを言明しているのであります。そういうふうに、一体見てよろしいかどうか一つお尋ねいたします。
  173. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカ自身はどう考えておるかということは、今お説の通りだとも、お説よりもまだ信託統治に持っていくと思っているのか、そこのところははっきり申し上げかねると思います。
  174. 田中稔男

    田中(稔)分科員 私もだれがどう言ったというのを今持っておりませんけれども、しかしアメリカ政府の責任ある人がそういうふうな言明をしたこども確かに私は事実だと思って記憶しております。それからまたその一々の言明でなく、アメリカ政府が一般的に沖縄を信託統治領として提案することを考えていないということは、もう明白な事実だと思います。さらにまたたとい国連に信託統治領として提案いたしましても、これは事案の性質上当然国連の安保理事会にこれはかかる。そうしますと、ソ連はこれに対しまして、拒否権を発動することは当然に予想されることでありますから、提案しましても、その提案が成立する可能性は全然ないのであります、だから今日において、この第三条の前段のこの規定は、これはまさに死文同様であります。そういうふうに一つ認めてよろしいかどうか、外務大臣
  175. 高橋通敏

    高橋政府委員 この点は法律問題でございますから、法律的見地から、述べさせていただきますと、御承知のように、いろいろこれにつきましては、解決の仕方があるかと思っております。ただこの第三条は、御承知通り、信託統治制度のもとに置くこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。従いまして、信託統治にするかせぬかというこの書き方は、信託統治にするかしないかということは、一応アメリカの自由のような書き方になりまして、わが方としまして、もしアメリカが信託統治に置く場合には、そのいかなる提案にも同意するという当時の戦敗国としての義務の方を強調した書き方になっておるのは御承知通りでございます。従いまして、もし置く場合にはこれに同意する。そしてこのような提案が行われ、かつ可決されるまでは、アメリカ合衆国がその立法、司法、行政の権力の全部及び一部を行使する。従いましてこのような提案が行われることが第一にございます。また行われて、可決されることが第二であります。従いまして、一度行いましても、また字句的に解釈いたしますれば、まず行うまではアメリカが権力を持つということと、行なっても可決されるまでは、いつまでもアメリカが持っているというような書きぶりになっているようでございます。
  176. 田中稔男

    田中(稔)分科員 高橋条約局長の御説明ですが、それはまるでアメリカの外務省条約局長の御答弁のようで、アメリカ側に最大限に有利に解釈して、日本側に最大限に不利に解釈した解釈だと思います。いかにもまだ占領下に置かれておる敗戦日本外務省条約局長という、そういう態度だと思います。しかし私は一局長をここで非難しようとは思わない。そういうふうな解釈は、それはアメリカ側ではやるでしょう。しかしながら条文の解釈は、それが多様に解釈ができるならば、日本側に有利なように解釈すべきであります。日本側に有利に解釈するならば、現在アメリカが沖縄に施政権を持っておるのは一種の暫定措置であります。そしてこの前提になることがもう実行不可能であれば、その暫定措置ということがまた根拠を失うわけであります。私はこの際法律論から離れて外務大臣に政治論として伺いたい。とにかくアメリカは信託統治制度に沖縄を置こうとしても、置く意思がないし、また置こうとしてもソ連の反対があっては置き得ない。それですからこの問題は事実実現不可能だと思う。そういうことが予想されております。外務大臣はそうじゃないとおっしゃればまた別でありますが、一般国民はそういうことはないと思っている。しかもなお沖縄に無期限に施政権を行使するということは実におかしいことである。そしてすでに奄美大島、琉球列島の半分は——もう北部の半分は返したのであります。そしてアメリカの国内にも、学者のいろいろな言説としては軍事基地は仕方がない、これは保有しなければならぬけれども、沖縄の施政権は日本に返還すべきである、こういう主張が非常に強いのであります。だとすれば、この際沖縄の返還について最も強い主張をされなければならぬと思いますが、このことについて外務大臣の御所見を承わりたい。
  177. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 沖縄の問題につきましては、今後とも相当強力な主張をしていきたいと私は考えております。
  178. 田中稔男

    田中(稔)分科員 そこでその主張でありますが、単にアメリカにおいでになってダレス国務長官に会う、あるいは下のロバートソンなどにお会いになる、そして冷たいあしらいで帰されるというようなこと、あるいは出先のマッカーサー大使あたりに茶飲み話程度にお話しになるというような態度では困ると思う。やはり交渉の手段がなければならぬ。外交文書か何かで正式に申し入れをなさるというお考えはないか。兼次新市長当選以後アメリカの態度にだいぶん動揺が感ぜられる。そこでこの際画期的な外交活動を展開される御意向はないか。ただ、今まで通りにのんべんだらりと沖縄問題もプログラムの一部としてついでに話そうという程度ではだめだと思います。その決意をお伺いしたい。
  179. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私の気持から言えば、必ずしものんべんだらりというような気持でやっているとは思っておりません。しかし日米間の問題を解決しますのには、日米相互の間の友好関係を打ち立てながら、十分な理解と相互の立場了解しながらこの問題を強くやっていくことが必要だと思うのであります。きょう言ってきょう片づくという問題ではありませんから、相当忍耐強くこういう問題については努力をしていかなければならぬと考えておりはす。
  180. 田中稔男

    田中(稔)分科員 どうも藤山外務大臣は文化人だから、対米交渉も何かカクテル・パーテイ式になごやかな雰囲気におやりになるのじゃないかと思うが、そういうことでは幾くらたってもこの沖縄問題は解決しないですよ。エジプトのナセルとかチュニジアのブルギバとか、ああいう政治家のまねをあなたに希望しても第一育ちが違うし、経歴が違いますから、私は不可能だろうと思うのです。しかし少くともあのくらいな、もう少ししっかりした強い態度でないと、ただカクテル・パーティで談笑の間に話をしても沖縄問題は解決しない。そうして高橋条約局長の解釈のように、アメリカ側に有利に解釈すれば、いつまでも未来永劫にアメリカが離さないこともあり得るわけですね。そこで私は強い態度で交渉されることを希望しましたが、幸い日本は国際連合に加盟いたしました。それでアメリカにただ交渉するだけでなく、国連の舞台でこの問題を取り上げてもらって、そうしてとにかく沖縄の実情を調査する。信託制度に置く、置かぬというのは国連の問題でありますから、そういうふうなことを平和条約は規定しているのですから、国連としてもこれは関係ないことはないし、また国際間の問題はすべてどういう問題でも国連に持ち出していいのでありますから、日米間のカクテル・パーテイ式の話し合いにゆだねないで、国連に持ち出して世界の世論に訴え、世界の良識に訴えるというような外交活動をされてはどうかと思う。われわれはかねてこのことを主張しておりますが、これをちゅうちょする理由はないと思うがどうでしょうか。
  181. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日米間の問題でありますからできるだけ日米間で友好的に話し合いを進めて解決することが必要だと思います。しかし今のような有力なお考えは御意見としてわれわれも十分参考にいたしたいと思います。
  182. 田中稔男

    田中(稔)分科員 その次、少し飛びますが、インドネシアのことですが、インドネシアと平和条約が調印され、賠償協定が調印され、非常にけっこうだと思うのです。われわれも一つこれはせいぜい勉強しまして早く国会を通したいと思いますが、御承知のようにインドネシアの国内の政情が若干不安定であります。本年一月スマトラのスンカイタレーにおいて反政府的な分子が集まりまして何か会議を開きました。それが非常に誇大に伝えられ、いかにもインドネシアはひっくり返りそうだ、スカルノ政権はひっくり返りそうだ、こういう印象を日本国民にも与えたと思いますが、私は実はそうじゃない、これは過大評価で事実はそんな大きな動きはないと思う。ところが実は二月の七日、インドネシアの情報省におきまして、ラジオでこういう警告をしている。東京報道は不当な国内干渉である、そうしてそのインドネシアの政局関係を非常に誇大に報道した東京報道は、結局はインドネシアの西イリアン闘争を失敗させ、インドネシアの国際的な評価を落し日本とインドネシアの友好関係を破壊する目的を持っておる、こういうふうなことを言っておるわけです。さらにまたスバンドリオ外相が十一日のダレス発言、その内容はインドネシアの現政府はインドネシア国民の大部分の意見を反映していないと思う、こういうダレス発言に関連いたしまして、これはアメリカのインドネシアに対する重大な内政干渉である、こういうことを言って抗議をしております。また聞くところによりますと、日本におりましたアリソン大使がインドネシアに転任いたしましたが、アリソン大使がインドネシアを引き揚げました。そのことはアリソン大使がインドネシアにおいて何か内政干渉的な行動をやって、それが失敗したからだというような風説も伝えられておる。そうしてさっき申しましたスマトラの反政府分子の会合、そういう背後にはオランダがあり、アメリカがある、こういうふうなことが非常に広く伝えられておるうわさであります。こういう際でありますが、日本が今日アメリカと自由主義陣営の一員として非常に緊密な関係にあって、日本がそういうふうないろいろなアメリカやオランダの内政干渉か何かに、何かかかわりを持っておるのではないかとか、東京報道あたりに、何か日本の一部の策動が含まれておるのではないかというような誤解がインドネシア政府及び国民の間にずっと伝わりますと、せっかく平和条約が結ばれたけれども、今後の日本とインドネシアとの関係はうまくいかないと思うのです。インドネシアについては、特に藤山外相も御関心が深いようであります。みずから調印式にもおいでになったようなわけでありますが、そういうふうな日本とインドネシアの間に誤解が起らない先に、十分注意しなければならぬ。だから今申しましたいろいろなことにつきまして、外務大臣の御所見なり御感想を承わっておきたいと思います。これはインドネシア側においても私に対する御答弁は非常に注目して聞くと思います。少し詳細に所信を述べていただきたい。
  183. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 インドネシアの現状につきましては、東京等においても外国からの電報その他でいろいろの風説が飛んでおります。私現実にインドネシアに参りまして、現地を見、またインドネシア政府人たちとも話し合いをしてみた結果では、インドネシアの内政についてとかくのことを申し上げることは好ましいことではございませんけれども、政情が非常に不安であるというようなことは、東京で考えておりますよりも、よほどそうでないという印象なりあるいは事実を私は感得して帰ったつもりであります。むろんスマトラにおける革命軍その他もありますが、これとても必ずしも独立国を形成しようというような運動ではなくして、むしろ連邦的な考え方で問題の解決をはかろうというのではないかと私どもは想像しておるわけであります。その点につきましては、帰りましてから機会あるごとに私としては日本の幹部の方々に御説明しておるつもりであります。
  184. 田中稔男

    田中(稔)分科員 外務大臣がそういう見方をしておられるということはいいことだと思う。私も一昨年参りましたが、御説と同じような感想を抱きました。今日やっぱりインドネシアでは、スカルノ大統領のリーダーシップ、いわゆるガイデット・デモクラシーという構想は着々と実現を見ておる。なるほどマシュミ党であるとか、あるいはその他軍部の一部に反政府的な動きがあり、それがあれほどたくさんの島からできておる国でありますから、どうしても地方主義的な傾向がある。それと結びついていろいろ不安な政情もありますけれども、全体としてはやっぱりインドネシアの勤労大衆にささえられたスカルノのリーダーシップは動かないと思う。これでいよいよ平和条約ができ、賠償協定ができましたから、やはりこの政権を相手として、両国の友好関係を強化していくというふうに御努力を願いたいということを特に要望しておきます。  それから具体的な問題でありますが、この間日本の船を少し借りたいという話がありました。これがその後立ち消えになりました。それは用船料が高いとか、あるいは適格な船がなかったとかいうようなことらしいのですが、一方ソ連の方から貨客船を十隻、計三万五千トンの購入を政府は決定したというような情報も伝えられております。こういうことになりますと、日本としてはある意味では渡りに船というときであって、その絶好のチャンスを失った形です。この間政府は直接やったことではないと思いますけれども、また政府も全然無関係でもないので、この問題の経緯一つお話をいただきいたと思います。
  185. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 こまかいことはなお補足説明をさせますけれども、昨年の十二月下旬にインドネシアの用船代表のハズナム氏が日本に参りまして、日本の商船の用船の問題について交渉されました。船舶協会の山県氏が接触されまして、基本的なある程度の基本線の了解ができ、その話し合いがついて、その線に沿って個々の船舶会社が具体的な用船の問題などについて話し合いを進めたようであります。ところが今お話のように、用船料の問題で向うの希望に沿わぬような点があるということで、結果を見るに至っておりませんが、先般海運大臣であるナジール氏も参りまして、船舶協会の山県氏等とも懇談されて、その結果やはり将来インドネシアとしては船が非常に必要であることは申すまでもないのであります。従って今後もなおそういう問題が起ってくると思います。ことに賠償関係を通じてその問題の解決をする道もあり得るかと思うのでありまして、日本としては商業ベースの問題であろうと、できるだけ現在のインドネシアの立場考えて、採算にはずれない限りは、好意的立場で協力をしていくのが適当だと考えております。
  186. 田中稔男

    田中(稔)分科員 川崎委員が私のあとに控えておられますから、最後に二つ、三つの問題を一括してお尋ねをして、一括して御答弁を願います。  一つは例のチュニジアの問題です。サキエト・シジ・ユーセフという村をフランス軍が不法にも爆撃した。これを国連に提訴するといっておりますが、アメリカの調停もあるようですから、もしアメリカの調停が成功するようなら提訴を取り消すわけです。しかし、これについてはいずれにしても日本の国連代表の態度というものは重大である。これについて日本はアメリカとチュニジアと両方からいろいろ話を受けておるそうであるが、どういう態度をとるか。  それから西イリアンの問題、これは十日の日に西イリアン解放国民戦線といのうがいよいよジャカルタにできました。ほんとうに挙国的な西イリアンの奪還闘争がインドネシアに起っておるわけです。従来ともこれについて日本政府は割に好意的な態度でやっております。これに対する今後の態度。それからいよいよ今度はエジプトとシリアが合邦し、それからイエーメンなども参加するあのアラブ統一国家ができました。これに対する日本の態度。  それから高碕さんが最近アスワン・バイ・ダムに対する技術的な協力について話をしてきておられますが、こういうことは一体どうなっておるか。  以上四点を一括して簡単に御答弁を願いたいと思います。
  187. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 チュニジアの問題は、チュニジア自身が国連に訴えるかどうかをただいま検討中であります。日本の松平代表としては、現在の安全保障理事会の議長をソ連がやっておりますが、ソ連の議長とも話をし、それからチュニジアの代表も再三日本の松平代表のところに行っております。ごくおだやかな話し合いの上で安保理事会に提訴するような場合がありましたら、われわれも好意的にそれを迎えていきたい、こういう態度でいろいろ事情を接触さしております。  それから西イリアンの問題につきましては、従来の通りの態度を今後とも続けて、好意的に支持をしていきたい、こう考えております。  それからエジプトとシリアの合邦でございますが、これは二十一日に大統領の選挙が行われまして、事実上の成立宣言をすることになります。現在の状況では翌二十二日に新ユナイテッド・アラブ、アラブ連合国から各国に対してその通知がくることになろうかと思います。日本としては、できるだけすみやかな機会に新アラブ・ユニオンの成立に対し同情的立場を表明したい、こういうふうに考えて今準備をいたしております。  アスワン・ハイ・ダムにつきましては、先般向うから技術者も見えまして、日本のダムの施設工事についていろいろ御検討をされました。先般高碕さんが行かれまして現地も十分御視察になり、ナセル大統領とも二回ほど会って会談をされたようであります。水源の問題が片づけばアスワン・ハイ・ダムの建設に手をつけていきたいから、そういう場合に技術的な面から見ての日本の協力というものは非常に大きな成果を上げるであろうということで、日本の技術力というものをエジプトでは非常に認めておられるようであります。従って将来そういう方向に進むのではないかと考えております。
  188. 田中稔男

    田中(稔)分科員 これで終ります。
  189. 田中久雄

  190. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 本日は午前中に私の質問まで終る予定であったそうで、いろいろ皆さんも時間が忙しいときにこういうふうに切り詰められて、私も迷惑です。実は私も座談会を十二時からやるのをはずして、議会第一主義ですから出ているわけです。そこできょうは多くの問題があるのですけれども、ほとんど大部分をたな上げにして、重要な問題だけについて質問をいたしたいと思っておりますが、外務大臣はまだ分科会は初めてでありますから、あるいは予算委員会全体の総会的な立場と同じように思っておられるかもしれませんけれども、そんなに真正面から渡り合うということではないのですから、もしお答えになれない点があったり、また技術的な問題がありましたら、どうか政府委員から積極的に答弁していただきたい、かように思うのです。  そこで、きょうは先に問題点を申し上げておきます。第一にミサイルの問題について申し上げたい。それから第二は、サウジ・アラビアから武器の購入を申し込まれておるけれども、それに対するその後の措置はどうなっているか。第三は、日ソ文化協定に対する用意はあるか。第四は南極の国際管理に対して日本側はどういう発言をする用意があるか。それから第五は経済外交と人事の問題であります。この五点にしぼって申し上げてみたいと思います。  世界中、ミサイルの問題について昨年の十二月からことしの一月にかけてはほとんどその問題で国際的なやりとりがあり、また協定もあるという時代に入ったわけです。そこで私がまず申し上げたいのは、ミサイルの基地等についていろいろ国会でも問題になっておったのですが、もう一つ段階が進んでおるのではないかということをこの際指摘をしておきたいと思うのであります。すなわち最近アメリカ側から日米ミサイル協定を結締したい、こういう申し入れがあったように私としては承知をしておるのです。新聞紙上には現われておらぬが、そういう申し入れがありましたか。
  191. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういう申し入れはございません。
  192. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それでいいですか、関係の方……。
  193. 森治樹

    ○森(治)政府委員 その通りであります。
  194. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 われわれが聞くところによると、一月十五日か十六日かどちらかの日です。朝海大使を通じて日米ミサイル協定締結を希望する——これは日米ミサイル協定締結であると同時に、その中には日米合同委員会というものを開きたい。これは通産省も知っておる。防衛庁も知っておる。外務省を通じて入らないということはないと思うけれども、もう一度聞いておきますが、間違いないですか。
  195. 森治樹

    ○森(治)政府委員 そういう事実はございません。なお日米合同委員会というものは行政協定に基く施設の提供等に関して現在すでにございます。
  196. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 これは私の協定という文字がどういうことになるか、そこはわからぬ。わからぬけれども、日米ミサイルに関して合同的な協議を進めていこう、こういうことですから、将来は協定まで立ち至ろうという意思であることは、私は明白だと思うのです。そういうものを世間に発表しないで勉強しておることもいいでしょう。私は別に与党の立場でこれを発表せよとまで迫らない。迫るには当然党の機関もあるわけです。あるけれどもひとまず十五日、十六日にあったとすれば、これはきわめて重大な問題であって、それに対する態度というものは、ちょうどNATOの会議が行われておった前後ですから、従ってこういう問題が将来起り得るという可能性はあるわけです。それを三月か四月げろになって発表するということでは非常にまずいので、私は注意を喚起しておいたわけです。そういうものに類するようなものもなかったか、伺っておきたい。
  197. 森治樹

    ○森(治)政府委員 それに類するものもございません。
  198. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 防衛庁の関係と両方来ればいいのですけれども、それではただそういう疑義だけを発したことにとどめておきます。  それから第二にお伺いしたいのは、日本が今戦略物資を輸出をすることを禁止しておる地帯はどういう地帯ですか。
  199. 牛場信彦

    牛場政府委員 共産圏の諸国でございます。具体的に申しますと、ソビエト・ロシヤ、中共、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、アルバニア、チェッコ、北鮮、北ヴェトナムというところでございます。
  200. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 これは中近東のエジプトやシリアというものは入らないのですか。
  201. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは入っておりません。
  202. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そこで伺っておきたいのですが、私はこういう観点から質問をしたいのです。つまり共産圏というのは、これは日本の外交の基本方針からきた、一つの思想戦からきた考え方だと思うのですが、戦略物質の輸出というものは、なるべく紛争が起りそうなところへは日本が戦略物資を出すべきでないという考え方であるのであります。従ってエジプトであるとかイスラエルであるとか、あるいはシリアであるとかヨルダンであるとかいうように近来非常に紛争の発火を起し得る可能性のあるところには、外務大臣としては戦略物資を送ることに対してもう少し範囲を拡大する。一方中共なんかに対しては戦略物資のワクというものをだんだん縮めて、明らかに戦争物資でないと思われるようなものまで禁輸しておるのではいかぬけれども、私は地域によっては、紛争の発火地点と思われるようなところには、ひとり共産圏というようなことだけでなしに拡大していくことがいいことではないかというふうに、平和国家としての建前からそういう方針をとるべきであると考えておりますが、外務大臣のお考えを伺っておきたい。
  203. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本としては局地的にも紛争の起ることを好んでおりませんから、なるべくその趣旨が達成されるように私としては希望いたします。
  204. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そこでお伺いしたいのは、昨年の暮れにエジプトの土田大使から日本政府に対して、サウジ・アラビアが日本から兵器を買いたい。その種類はバズーカ砲、軽ジェット機、銃砲弾、ピストル、戦車、軍用車両、装備品、こういうような品目についてぜひ日本から買いたいという申し入れがあったというのですが、それに対して外務省はどういう態度を今日までとっておられますか。
  205. 牛場信彦

    牛場政府委員 ただいまその情報を通産省に回しまして通産省で検討いたしておるところであります。そこで輸出ということが問題になりましたときに、今、大臣から申しました通り、あの地方は非常に紛争が多いところでありますから、その状況に相当の影響を与えるおそれのあるようなものにつきましては輸出をしないようにしたいと思っております。ただ武器と申しましてもいろいろあるわけでありまして、ただいま御指摘の中にピストルのようなものもありますので、全面的に輸出はしないということは申し上げられないと思いますが、いやしくもあの方面の形勢について緊張の度を加えるようなおそれのあるものにつきましては、なるべく外務省としてはやめてもらうようにしたいと思っております。
  206. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そこで新聞その他で大体情報は知っておるわけですが、アラブ連邦諸国家というものが発足をして、これにイエーメンも参加しておる。サウジ・アラビアの動向もかなり注目を引いておるわけです。よく私は知りませんが、サウジ・アラビアの動向のいかんによってはイラクともう一つヨルダンが連邦を作ろう、そういう非常に大きな向背の岐路に立っておるのがサウジ・アラビアなので、かなり世界の注目を引いておるし、たまたまこういう武器輸入という問題が出ておるのですが、非常に慎重に取り扱ってもらわなければならないと思っておるのです。大臣、どういうふうにお考えでしょうか。
  207. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 外務省としてはお説のようにできるだけ慎重に取り扱いたいと思っております。
  208. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そこでこれをもう少し私の得た情報で見てみると、先般ここで私が問題にしたサウジ・アラビアの石油問題も裏で相当の関係があるように思われるのです。邪推ではない。私がこういうことを言い出すと、あるいは岡崎君がかっての私どもの論敵であったからこの問題を出しておるのだと勘ぐられては困るのだが、しかし実際はこのサウジ・アラビアの政策を見ておると、サウジ・アラビアの王様というのは端的に言えば非常にしたたか者である。国際間において、いい意味でも悪い意味でも相当に名のある人である。従ってこの工作に巻き込まれてくると、日本は中近東政策に一つのひびを入れることになりはしないかということを非常に憂慮しておるわけです。ですからサウジ・アラビアから出きておるこういうものを買うということに対しては、そのかわりどんな品物をよこすか、ここに二、三品書いてあるのですが、経済局長、知っておればその代替にどういうものを広げようとしておるのですか。
  209. 牛場信彦

    牛場政府委員 サウジ・アラビアの石油の話は、これは通産省の主管でやっておりまして、私ども話は聞いておりますが、ただいまのところ会社側及びサウジ・アラビア側から、石油の利権の代償と申しますか、その際にサウジ・アラビアに対して特定のものをよこせという要求があったということは、全然聞いておらない次第でございます。それから武器のかわりにどういう代替物があるかということにつきましても、これは私の方に実はそういう話はまだ参っておりませんので、話がありましたら、その際十分慎重に検討いたしたいと思います。
  210. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 外務省の御答弁の波長とも大体合ってきておりますから、私はこの問題はこれ以上追及いたしませんけれども、ぜひ慎重に取り扱っていただいて、日本はやはり平和国家としてスタートし、貿易をどんどんできる限り広げたいという気持もわかるのですけれども、それと同時に紛争を引き起すような可能性が少しでもあるところには、相当セーヴして方策を立てていただきたい。私の今まで聞いたところによると、外務省は大体オーケーだというようなことを、通産省であるとか経済企画庁とかいうような方向から聞いておる。このネタは、はっきり言っておきますけれども、外務省から出たものじゃない。しかし私は、外交方策にも非常な影響があると見たから質問をしておるわけです。分科会の質問にしては少しく政治的ではありますけれども、ぜひ一つ慎重なる御考慮をわずらわしたいということを申し上げて、御警告申し上げておきます。  それからその次に伺いたいと思いますのは、日ソ問題は二、三日以来、安全操業あるいは平和条約、この二つの大きな柱を中心にして問題になってきておるわけでありますが、与党の見解は非常に微妙な段階でありますので、私個人の見解などは断じて申し上げない。申し上げないけれども、姿勢はきまっておる。これは藤山外務大臣がさきごろ施政方針演説で言われた態度と同じであります。一昨日岸総理大臣の御発言も非常に意味深長なものがあったけれども、しかし党内ではいろいろな角度からまた議論も出ておるわけでありますから、一切省略いたしたいと思いますが、これと関連をして、むしろ日本側から、向うはああいうふうに無理難題を言っておるときですから、逆に一ついい問題も取り上げて、日ソ間の親善というものをはかっていったらどうかと思う。それは、アメリカとソビエトがあのように激しい対立をしておるさなかにも、米ソ文化協定というものが、当事者の間において非常に根強く、しんぼう強く交渉が行われた結果、約一週間ほど前に米ソ文化交流というものが決定をされた。これは非常に涙ぐましい当事者の努力があったものと思う。日本外務省も、日ソの文化交流というものに対しては、もっともっと腰を据えてできる限り早い機会に日ソ文化協定までやったらどうか、こう私は思う。これは一つ日本の方がイニシアチブをとって切り出してみたらどうかと思うのですが、あなたはどういうふうにお考えになっておりますか。
  211. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほども申し上げましたように、日本ソ連の間のいろいろな懸案の問題については、逐次平和裏に解決をしながら、友好の立場をとっていきたい、そういう一つとして、文化協定というものも当然考えられると思います。
  212. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 外務大臣答弁だけでもけっこうですが、だれか文化関係の方がおられましたら、そういうものについてどういう構想をめぐらしつつあるか、伺いたい。
  213. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 御指摘になりましたアメリカとソ連との文化協定、これは御承知のように一月の二十七日に調印されたわけであります。またお話のごとく、三カ月間にわたりまして、非常に細目にわたってしんぼう強く両者の間において交渉しまして、できたわけであります。このテキストを最近ワシントンの大使館から送って参りましたので、その全訳をいたしておりますからもし御必要がありますれば、資料として提出いたしたいと思います。  この米ソの文化協定は、現在まで日本が各国と十ばかりの文化協定を結んでおりますが、それらとは多少性質の違う協定内容であります。いわゆる日本で結んでおります文化協定と申しますのは、大体文化交流をこういう形でいろいろやっていこうという原則と申しますか、プリンシプルを規定しておるものでございます。米ソのこのたび結びましたものは、相当具体的に、二ヵ年間にわたる、むしろ文化交流事業の実施計画ともいうべき細目の協定でございます。そういうこまかいものでございますので、アメリカ政府としましても、民間の団体の協力、了解等を得るために相当時間がかかった。そこで私ども事務当局としては、こういうアメリカの結びましたような実施細目的な協定がいいのか、あるいは従来結んできたような一般的な協定がいいのか、予算その他の方面から検討して参らなければならぬと思います。アメリカとソビエトの結びましたものは、現在の予算ではなかなか困難ではないかと思っております。また最近セイロンがソ連と文化協定を結びましたが、この文化協定は、在来日本が結んできましたような一般的な文化協定で、非常に簡単なものです。こういうようなものを対象といたしまして、いかなる文化交流またはそれに関する協定が最も実際的であるがということを、事務当局としては検討して参りたい、こう考えております。
  214. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 日ソ文化協定締結する用意があり、また事務当局でも検討されておるということが明らかになりましたので、私はその問題はこれで終ります。  それから、昨日また一昨日あたりの情報によりますと、イギリス政府は、南極の国際管理及び非武装化について、試案をアメリカ政府に通告したということがいわれております。これは今まで南極の領土権を主張しておった英連邦の関係が、これを放棄したということを言い出したことで、私は非常に注目される問題だと思うのです。私は先般も予算委員会の席上で申し上げたように、次第に国連を強化して、国連警察軍の常駐というような問題にまで進め、さらにできれば、世界恒久平和のために、世界連邦国家の結成にまで進むべきが日本の新しい姿勢ではないかということさえ申し上げておるので、そういうことの一端が南極大陸においてでも実現するということになれば、世界の将来にとって非常に明るい見通しを持ち得るわけです。世間にはなかなかおもしろい人がいるもので、私は尾崎行雄先生の非常な信奉者ですが、むすこさんの尾崎行輝さんも——今日は参議院選挙で落選しているが、この間どこかの講演会で、南極大陸を世界連邦化せよということを言っておった。これはやはり血は血だなというふうに、そのときにも感じておったのですが、こういう問題がイギリスのような、きわめて現実的な行き方をする国から提案をされつつある。非常に興味あることだと思う。日本はこれに対して当然賛成であるわけであって、領土権も主張しておらぬのでありますが、しかしこの際、アメリカとかソビエトとか、あるいはアルゼンチンですか、南極観測に参加しておる国々をして、全部これを放棄せしめる方向に発言をすべきだと私は思う。これらについての外務省の統一した見解を伺っておきます。昨日来このことについては申し上げておりますから、確実な御答弁をいただけると思います。
  215. 宮崎章

    ○宮崎政府委員 南極を世界平和のために国際管理にするというアイデアに対しては、御説の通り賛成であります。ことにそれを国際連合のワク内でやっていくということについては、賛成であるわけであります。しかし日本がこの問題につきまして提案をする、発議をするという問題になりますと、いろいろ国際情勢その他列国の態度というものも検討していかなければなりませんので、ただいま直ちにそういう提案をするかしないかということを申し上げることは差し控えたい。またこの問題につきましては、平和条約第二条(e)項の問題もありまして、果して日本がそういう提案をするということが、これとひっかかりがありはしないかということも検討を要すると思います。
  216. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 外務大臣、今の答弁でいいですか。
  217. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本はサンフランシスコ条約で南極の領土権を放棄しております。従いまして、世界的な管理をするという問題については、日本としては適当な発言の立場にあると思います。ただ国連の内部でやるのか、あるいはどういう形でそういうものを実現していく方向にいくのか、またイギリス提案内容等につきましても、十分研究してみる必要があります。かって昔チリーが同じような考え方提案したこともあるのであります。そこらの点を今後よく研究した上で善処して参りたいと思います。
  218. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 一言だけ聞きますが、そういう考え方が出てくればそういう思想には賛成だ、どうですか。
  219. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 南極を個々に分轄して領土にするという考え方については私は賛成はいたしておりません。やはり世界的に管理することが適当だ、こう思っております。
  220. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それじゃ事務当局の答弁は要らなかったのだ。  それでは伺っておきます。私は政党政治家です。藤山さんはこれから政界へ入られて大いに雄飛をされようという心がまえに対しては敬意を表します。しかしここで伺っておきたいことは、外務省の人事の取り運び、それからまた今度の国会の論戦の表裏に現われた動きを見ておると、藤山さんの人柄に対しては非常に心服しておる外務省の官僚が多いと思う。また心服させなければいかぬ。しかしどうも人事の運び方だとか、あるいはあなたの基本的な考え方というものに対して、外務官僚の中でいろいろ考え方が違うのじゃないか。また私も政党人本来の立場からして、外務省の大公使にやたらに経済人を起用するという考え方に対して反対です。露骨に言えば、現在の総理大臣の岸さんの考え方、あるいはあなたの考え方、それはしろうと外交というものをどんどん重用して、経済外交に重点を置こうというのですが、そういうことは将来の日本の外交の総合的な運営に対して非常なひびを入れるやり方だ。移動大使を設けるのもよろしいし、経済外交を進めるのもよろしい。それは政策の面で進めるので、人事をそういうような体系に移すという考え方では、ほんとうに外交問題に一身をなげうって、本業を守ろうとしておる者に対して、非常なひびを入れるやり方ではないか。私はこういう考え方から質問をするのです。第一は駐英大使をいつまできめないのです。いつきめるのです。
  221. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 駐英大使はごく最近の機会にきめることにいたします。
  222. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 イギリス大使の選考がおくれたということは、日本の国内で考えておるよりは、世界的にはかなり大きな問題だと私は思うのです。日本は今自由主義陣営と提携をする。その中心の存在は言うまでもなくアメリカです。アメリカにむしろ片寄り過ぎていると思われるほどアメリカ、アメリカを通してのイギリス、直接のイギリスというものは、日本の外交の相手として、戦前昭和五、六年以前におけるところの比重などというものを今日持っておらぬ。しかしそれは世界の各国に与えておるところの影響から見れば、考え方としては非常に錯覚であって、今日イギリスは、衰えたりといえども、やはり世界におけるところの強力な発言権を持っておる国です。そしてわれわれは自由主義陣営と協力していかなければならぬ。その外交の原則を立てておきながら六ヵ月も駐英大使を放置しておった、これは外務大臣の措置として重大なる怠慢じゃないかというふうに考えるのであります。そうしてそのときに一番先に出してきたのが松本重治氏、それはあなたの角度から見ればいいわけでしょうけれども、この人選のために手間取って今日まで放置をしたということに対しては、あなたは相当に責任を感じなければいかぬ。そう思いませんか。
  223. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日日本が外交をやっていきます上において、対米外交が基本であることは御説の通りであります。同時にイギリスの持っております力も、私は今川崎委員の言われましたように、十分日本としては認めていかけなればならぬ。ことに東南アジアの方面、アジアの方面に対するイギリスの過去における経験なりからきた意見というものは、相当尊重すべきものがある、こう考えております。従ってイギリスと外交関係を緊密にし、また意見の交換を重視すべきことはお説の通りであります。その線に沿いまして私としてはできるだけ有能な人を大使に迎えたい、こういう考え方のもとに人選をいたしております。若干おくれた関係があるかもしれませんが、そう長く放置しておるわけでもありませんので、さよう御了承を願います。
  224. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 イギリス大使の問題も私ははっきり早晩きめてもらいたいと思う。それからこれは藤山さんに自信を持ってやってもらっていいと思うのは、この問題は党内派閥の反映だなどといわれておる。ところがこういうところがこういう問題に対しては河野派も岸派もないのです。本人個人がどういうものを選ぼうかということに対して、多少考え方はあるでしょう。あるけれどもやはり主管大臣はあなただから、勇をふるって自分がいいと思ったものをきめればいいんです。そんなにだれも何もついていないのです。そのことをこの予算委員会の席上であなたにはっきり教えてあげようと思った。このことのために党内が紛糾するなどということは断じてありません。そういうことの主張について河野君がそういうことを言っておっても二、三人しかついておらぬ、それから吉田派なら吉田派というものがあってそんなことを発言しておったとしても、そんなものは吉田さん個人あるいはそれにつながる二、三の者にすぎない。あなたが断固としてこれが最適の人物だと思えば、駐英大使をその線によってきめられることが私は一番いいことだというふうに思うので、このために人選をどんどんおくらすということはいけません。党内派閥などということなどに遠慮されることは何らないと私は思いますので、この点ははっきり申し上げておきたいと思うのであります。  それからもう一つは、先ほど以来議論の建前として、また今日外務省の官僚の考え方が、たとえば一部には霞ケ関の外交は今でも変っておらぬ、すなわち古いオーソドックスな、米英派の考え方だというようなことを言い、また外交官が外に出ても経済問題であるとかその国の重要な政治問題にほとんど熱中せずして、毎日ゴルフをやったりダンスをやったり、そういうことばかりやっているのだというような意味から、外交官をこの際刷新しなければならぬというようなことを言うて、しろうと外交の方がいいのだというようなことを言う者が中にはあるけれども、私はそれは正論じゃないと思うのです。やはり何といっても長い間外交の技術、条約であるとか法律であるとかいうことをたたき込まれて下から来た者は、最後には大公使になって腕をふるいたい、これは当然の外務官僚の願望だと思う。ときには大臣はあなたのような方がすわられたり、あるいは岸さんが外務大臣であったという方が、地下に眠る先輩に対しては失礼だけれども、重光さんがもたもたした答  弁ばかり国会でしておったというよりはよかったかもしれぬ。よかったかもしれぬが、それは大臣だけです。やはりできる限り外務官僚の本流を育てて  いくようにあなた方がしてあげなければならぬ。政策で違うならば、これは政党が指導するのですからだんだん変っていくのです。そういう意味で私はあなたにお尋ねをしたいのだけれども、たとえばブラジルの大使にしてもあるいはインドの大使にしてもみんなよそから入れた。そして移動大使に何人となく経済人を起用してやっておる。外務官僚の中に動揺が起るのは当りまえです。だから国会答弁に対しても十分協力しない。しないのは当りまえです。そういう方針をしょっちゅうこれから先も拡大してどんどんしろうとを入れるのですか。
  225. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は現在の外務省のキャリアを持っておられる方々の能力を別段過小には評価しておりません。相当の経験を持ち、相当の学識を持って十分日本の外交を担任していくだけの素質のある方が多いと思います。ただ民間からも適当な人があれば一、二起用することもまた必要ではないか。しかも今日日本としましては、御承知のように過去十年の間外交がなかった。また外交的な陣容も量からいいまして必ずしもそろっておりません。各国で大使館もふえて参っております。国連が八十二ヵ国の加盟国を持つように独立国もふえております。そういう際に一、二の民間人を起用していくということも、私はそういう適当な人さえあれば必ずしも不可だとは考えておりません。しかしながらそういう人で全部出先の大公使を埋めなければならぬということは毛頭考えておりません。将来ともに外務省の人々が十分知識を練り、経験を積んで、それぞれの分野で活躍されることを希望しておるわけであります。
  226. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 私はこれはもっと本質論を展開してみたいと思うのですけれども、時間もないからやめますが、財界からも経済人からも適当な人があると思えば、それは入れた方がよろしい。それはだれだって反対できない議論です。しかし適当な者をどんどん拡大していくということは、つまり外務省畑の者は不適当だという理論になるわけです。そこをよくお考えいただいて、適当だ適当だといってどんどん拡大していくのでは、外交本来の仕事に携わっておる者に非常な失望感を与えはしないか。やはり筋は筋として通さなければならない。政策の筋を通さなければならない。また国の方向を誤まってはならぬ。その意味で外務官僚にもずいぶん勉強してもらわなければならぬ点もありますけれども、今日の行き方というものは決して人事の正道を行っておらぬということを私は申し上げておきたかったわけであります。  最後に一つだけ、これはむしろ外務省に応援したいと思うんだが、外国に行って一番日本の大公使館がさびしいと思うのはいい自動車を持っていないということですね。あれでは今日の欧米各国の日進月歩というが日々進歩するところの自動車技術あるいは自動車道路というものに追いつけない。ことしの予算はどのくらい伸びていますか。会計の関係の方おられますか。
  227. 田付景一

    ○田付政府委員 ただいまの御質問は自動車がどのくらいふえるかということかと思いますが、ことしは二十台借りかえるということにきまりました。
  228. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そういうことでは困るですね。これは私予算編成のときにほかの方にもずいぶん見て回る機会が多かったものですから、どうなったかなと思って気がつかなかったのですが、予備費をとってでも、日本の大公使の自動車は新車にしなければ交通事故も起るし——こういう話を知っていますか。この間岸総理大臣がロスアンゼルスから日本に帰るときに、ロスアンゼルスで官民合同の在留日本人の非常な大きな歓迎会をやった。その歓迎会が少しおそくなったので、出発するまでに約四十分ぐらいしかなくなった。そこでアメリカの護衛の警官が百二十マイルかのえらいスピードで交通遮断をしてロスアンゼルスの通りをどんどん走っていって、総理大臣の車が早く来られるようにリードしたという。ところが五分か十分の間にだあっと三マイルも四マイル離れてしまって、うしろを向いたら総理大臣の車はおらなかった。総理大臣の車は何年型かと言ったら中村総領事が使っている一九五三年型だと言う。ロスアンゼルスのまん中で今から五年も前の車を使って、よくこれまで事故が起らなかったものだと私は思う。従って、とにかくこの問題についてはわれわれも大蔵省に与党の立場からうんと更改をするように言いますけれども、ぜひ腰骨を入れてこの問題は解決してもらいたい。そうじゃないと日本の外交のスピードや事務能力に非常に影響する。これは助太刀の意味で申し上げておきます。
  229. 田中久雄

    田中主査 午後二時より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午時一時十七分休憩      ————◇—————     午後二時十四分開議
  230. 田中久雄

    田中主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。茜ケ久保重光君。
  231. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 宮内庁長官は見えませんが、次長に宮内庁の皇室予算について一、二お尋ねしたいと思います。今まで国会であまり皇室予算には質問なかったようでありますが、私はやはり国民の負担によってなされる皇室関係のことについても、国会でいろいろと論議すべきだと思うのであります。ということは、決して皇室に対してどうというのでなくて、いわゆる神格化された戦前の皇室が国民の中に溶け込んで、今後国民とともに生々発展しなくちゃならぬという今日の立場から、やはり国民に皇室のいろいろな内部の事情等もある程度判明することの方が、国民と天皇家とがあたたかく、しかも血のつながりを持ってくるゆえんだと思います。従いまして皇室予算についてとやかく言うのでなくて、われわれとしてはある程度これに対する検討を加える必要があると思うのであります。そういった意味において今から少しくお尋ねをするのでありますから、一つ宮内庁当局においてもざっくばらんにお答えを願いたい、かように存ずるものであります。  第一点といたしまして、今回皇室予算を検討してみますると、きのうの説明にもありますように、東宮御所の新営ということが新たに出て参っておりますので、皇室関係の費用がふえるのはもちろんでありましょうけれども、統計をとって参りますと、急激にふえるという感じを受けるのであります。さらに内容を検討してみますと、来年度の皇室予算の膨脹の陰に何か無理があるのではないか。たとえば東宮御所の造営が必要であるならば、私は必要な理由をはっきり明示されて、無理をしないで、ということはほかの方を圧縮するようなことがなくて、当然東宮御所の造営という一つの大きな事業がなされていいのではないか、かように思うのですが、三十三年度予算を見まして、いわゆる東宮御所を造営するために他の部面にいろんな圧縮あるいは犠牲をしいるような点があるのではないかということを心配するのでありますが、これについて次長のお答えを願いたいと思います。
  232. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 東宮御所の造営費が八千三百万円載っておりますが、皇室費の純増はそれにつきまして四千万円余であります。差はありますけれども、これは昨年の予算には仮宮殿の改装という経費、それから宮殿前の広場、そこを舗装する経費、外賓がたくさんお見えになるのに皇室の自動車が古くていけないということから、そのために新しい自動車を、ロールスロイス一台、ベンツ四台買いました。そういうような経費を合せますと、六千万円余ですが、今年度はその分が要らないわけですから、東宮御所の分八千三百万円、六千万円を差引いたしますと二千何百万円、そのほかに御説明をいたしますが、内廷費の増、皇族費の増というものもありますし、ちょうど差引して四千四百万円というふうになっておるのでありまして、そのため特に必要なところまで無視し圧縮したということはないのであります。
  233. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 皇室の費用がいろいろな意味でふえることも当然でありましょうし、決して私どもは窮屈な生活を皇室に期待するものでもありません。私が昭和二十九年からの統計をずっととってみますと、国の予算は昭和二十九年に対して二十三年度が約三・四割を増しておるのであります。皇室の予算を見ますと、約六割の増加を来たしているということが出てくるのであります。今も申しますように、別に特に皇室の生活を窮屈にするという意思はございませんが、宮内庁当局としては、先ほどから申しますように国民とともに生きるという建前といいますか、皇室が戦前のように国民の生活と全然関係なく、しかも神格化されたようなことであってはならぬという立場からいきますと、国民の所得、国民の生活というものとあまりかけ離れたことが生まれますと、やはりまたそこから今度は逆に国民と皇室との非常に意識的な隔たりが生まれる、かように思うのであります。そういった意味で私ずっと検討して参りまして、昭和三十三年度の予算というものが、いわゆる国の予算の増加率に比較して、皇室費が倍近くの倍率を示しておるということについて、不審を持っておるわけではございませんけれども、こういった点に対してやはり宮内庁は相当留意をされる必要があると思うのでありますが、この点についていかようにお考えか承わりたい。
  234. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 皇室費の増額ということにつきましては、常に皇室の方のお気持も国民の生活の点に非常に気を使っておられますので、宮殿とかいろいろそういうような造営のようなことにつきましても、一般の関係考えられて非常に遠慮なさっている気持も私どもの方でも十分知っておりますし、われわれもそういうような気持でいたしておるのでありますが、三十二年度に比較いたしまして三十三年度が四千万円余ふえております。これは先ほども申し上げましたが、東宮御所の造営というのに八千二百万円という大口がここのところありましたからふえたのであります。一般の方の経費の点でいきますと、そんなにはふえておりません。ただ内廷費、皇族費の問題につきましては、来年度からふやすように願いたいということで提案いたしておりますが、これも昭和二十八年以来据え置きでございまして、一般の公務員の給与はそのころから見ますと五割上っているわけですが、しかしその間はずっと据え置きでごしんぼう願ったのです。しかしながら最近は外交関係なんかも多いし、ごしんぼう願ってそのために十分の体面を維持なさることができないようなことがあってもいけませんし、これはやはり遠慮しないで増額すべきだということで、他面特別職の給与の改訂もあるように聞きましたから、その機会に増額をしたらよかろう、こういうふうに考えまして増額を出しましたので、どちらかというと遠慮がちという態度で、いつも宮内庁は少し遠慮がち過ぎるという非難も受けますが、しかし私ども皇室のおせわをするものといたしましてはその方がよかろうと思って、遠慮がちにやっておるということでございます。
  235. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 東宮御所の造営が三十三年度から二ヵ年の予定でなされます。きのうも何か川崎秀二君から御質問があったようでありますが、今まで仮御所で、修理等をなされてやったようでありますが、三十三年度から二年計画で相当多額の費用を投じて造営をなされようとする意図は、やはり国民から考えると、何か皇太子の結婚というようなことと相関連するものというふうに理解するのであります。きのう川崎君の質問には宇佐美長官からまだきまっていない、できれば適当な候補者があれば本年中にという答弁であったようでありますが、これは私は何も皇太子の結婚に対して特別な関心を持つものではありませんけれども、やはり相当の費用をかけて東宮御所を新営されるということに対しては大きな関心を持たざるを得ませんし、従ってそのことは当然皇太子の結婚ということと関連してくると思うのでありますが、この予算の面から見ましてそういったことも感じるし、国民もおそらくそういった気持を持つだろうと思うのです。きのうの川崎君への宇佐美長官の答弁はかなり政治的な答弁であったように思うのであります。次長から結婚と東宮御所の造営との関連が当然あるものと私は思うのでありますが、当局はいかようにお考えの上、昭和三十三年度に東宮御所の新営を計画されましたのか、承わりたい。
  236. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 お尋ねの通りでございまして、東宮御所の造営を考えましたのも、まあ近く皇太子殿下の御結婚のこともありましょうし、しかしながら御結婚されましてももう常盤松の仮御所、あれは元東伏見さんのお屋敷であったのですが、しかもその一部はほかへ移してありまして、その当時の書斎よりも狭くなっております。建物もだいぶ古くなっております。この広さから申しましても妃殿下をお迎えになるにしては狭過ぎる。なおそのほかにだんだん外国のお客が多いものですから、皇太子としての御交際をなさるにしましても、今の常盤松ではどうも貧弱ですし、いろいろな部屋の関係がうまくできておりませんので、妃殿下をお迎えになるであろうということと、外国関係等もなかなか多いから、この際あの常盤松ではどうもいけないということで造営のことを考えたのであります。東宮殿下の御結婚の問題につきましては、昨日宇佐美長官からお話を申し上げたわけでありますけれども、その通りでありまして、すでに二十四才におなりになっておりますので、まあ御結婚の適齢期にもなっておられますということで、われわれもよき妃殿下をお迎えになるための事務的な面での調査をいたしております。専心そういう面に心がけておるわけであります。東宮御所を来年度の予算と三十四年度の予算両方でお願いして作るわけで、でき上りますのは三十五年の春になりますから、二年以上先であります。それくらい先にできるのでありますが、妃殿下をお迎えになるということもあるいはそれより早いかもしれませんが、それは今のところはっきりしません。しかしそのころまでには作っておくことが必要だろうというふうにわれわれも考えまして、来年度から工事にかかるわけであります。
  237. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 私どもはいっそういうことがありましょうとも、これは別にとやかく言うことはございませんが、次長も御承知のように、おそらく今年は春か秋か総選挙がある予想であります。盛んに最近新聞等の報道によると、皇太子の結婚と選挙違反の恩赦に関連して相当議論が沸騰しておりますし、政府でも責任者がそういったことに触れて談話等を発表しておる事実もあるのであります。国民は何と申しましてもやはり新しい姿の皇太子というものを——予想と申しますか、期待しているようであります。皇太子の御結婚がいつであろうとわれわれとはそう深い関係もありませんけれども、選挙違反に対するかつての大赦のように、恩赦等がもし考えられると、われわれ選挙をする議員としても非常に不愉快なものを持ちますし、また皇太子自身も、新しいスタートをされるときに当って、そういったことと関連して国民の中に不愉快な感じを持たれることは、私は非常に不幸だと思うのです。そういう点において、政府が今度行われる衆議院の総選挙に当って、皇太子の結婚とからみ合せて恩赦等のことをやはり考えているということは、私はきのうの宇佐美長官の答弁ではありますけれども——宇佐美長官の答弁の中の、適当な方があれば今年中にでもということの中には——もしそれがそのままの答弁ならば、宇佐美長官としては非常に不誠意きわまる答弁だと思う。私どもの結婚と違って——私はいつか次長に、内閣委員会で、皇太子の結婚については皇太子の意思を十二分にくんで、むしろ恋愛結婚でもされた方がいいだろうということを申し上げたのでありますが、そういうふうにほんとうに皇太子個人の意思を十二分にくんで、だれが見ても皇太子自身の意思と良識によって結婚されるという姿であれば、宇佐美長官の答弁はそのまま了承しますけれども、残念ながら現在の皇室の内容についてはそうではないと思う。いろいろな制肘や雑音が入ると思う。そうなるとこれは何と申しましても、あなた方宮内庁の責任者に大きなウエイトのかかることは当然であります。そうなりますと宇佐美長官の、適当な方があれば今年中にでもという答弁は、先ほど言うようにまことに不誠意きわまるし、宮内庁長官としては相当責任を感じなければならぬ答弁だと思う。先ほども申しますように、選挙を控えて政府当局者もやはり恩赦との関連を云々する今日でありますから、そういった意味で、あなた方は国民の前に責任ある態度を表明される必要があろうかと思う。やがて選挙をしようとする私ども自身も、今度の総選挙はやがて皇太子が結婚されるんだから、その恩赦を目当てにあらゆる選挙違反を公然とやるであろうなんということを思われることは、まことに不愉快千万である。先ほど申しますように、皇太子自身も、あなた方自身もまた非常に遺憾な点だと思う。こういった意味において、私は別に結婚の時期等について拘泥するものじゃありませんけれども、そういった点も、もしいまだ決定していないものならば、十二分に考慮してやっていただかなければならぬと思うのだが、いま一度ここで念を押してお尋ねするのは、あなた方の立場からいまだに何らそういった見通しもなければ、全然そういった話の進行もないということに了解していいのが、あるいはまた近くそういったことが——東宮御所の新営がたとい三十五年の春になりましょうとも、これは何もこの新営ができ上らなければならぬということではありませんので、こういう点に対してもう一ぺん念を押してお尋ねしますが、宮内庁当局の現在までの状態を、簡潔な言葉で御表明願ったらと思います。
  238. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 東宮妃の候補者はどういうような方がよかろうというので、われわれとしていろいろ調査を進めてきております。それから皇太子殿下の御意見も折に触れて承わっております。この殿下のお気持を十分尊重し、なお一般国民の方も御納得になるような方を殿下にというつもりで、鋭意努力をしておるわけでありますが、しかしこれは、それでは何月ぐらいがめどか、こういうふうにお尋ねになりましても、ちょっと申し上げかねるのは、やはり相手の方があるので、両方の方の合意が完全にあって、それから皇室会議を開いてきまるというようなことになるので、それぞれ相手の方のあることなのでありますから、何か工事をするように、きちんきちんと、何月にむね上げできるというふうに、はっきりと申し上げかねる点があるのを御了解願いたいと思います。
  239. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 一言希望を申し上げておきますが、御承知のように最近紀元節復活ということが非常に問題になってきております。純粋な気持もございましょうが、私どもから考えると、ややいろいろな内容を持っているという疑いを持たざるを得ない点もあります。そこでそういった紀元節を復活しようとする非常に強い力の陰に、私は戦前のいろいろな姿がほうふつされるものがあるのであります。現在の天皇は昔のいわゆる旧憲法下の天皇として成長した方でありますから、今の天皇にいろいろなことを要求するのは無理であります。しかし幸い新しく生まれ変った日本の皇太子として成長される皇太子は、私はやはり民主日本、平和日本の象徴としての皇太子でなくてはならぬと思う。いつか私はこの点にも触れましたが、私どもが皇太子の小学校、中学校ごろの姿を見ている場合には、国民ひとしく皇太子の将来に日本の新しい姿を見出したがのような気持を持っておったと思うわけであります。ところが最近私どもの目から見ると、これが非常に歪曲されておる。また戦前の姿に押し返されるような感じが非常に強い。そういった点で、私がやはり今度のこの結婚のことについて申し上げるのは、かつての皇室の姿を再現していくこと自身が、紀元節を復活するというような動きと結びついて、再び皇室の存在が国民を圧迫し、国民を非常に苦しい状態に追い込む姿を再現する危険を感ずるものであります。そうであってはならぬ。そこで一つぜひこの点については、国民だれもがいわゆる新しい日本の姿を感じながら、皇太子の今後の成長と、天皇への道に対して、暗い影あるいは不愉快な影、反民主主義的な、非平和的な姿を再現されないようにぜひ御留意願いたい。この点はやはり今度の結婚とも結びつけ、また東宮御所の新営についても、かつての赤坂離宮とかあるいはかつての帝王的な、城的なものでなくして、やはりそういうところにも私はそういった姿をぜひ現わしてもらいたいと、かように希望するのであります。この点ぜひそういったことの期待に沿うてもらいたいと思う。これは希望であります。  そこで予算に戻りましてお尋ねしますが、二十九年度から常勤職員の費用が年々増加して参っております。これは二十九年から三十年、三十一年、三十二年と、常勤職員の給与がふえているのにかかわらず、三十三年に至って急に減っておる。ちょっとこれは私どもは、一般公務員の状態から考えますと、非常に不審を持つのであります。二十九年度から毎年々々ふやしている常動職員の給与が、三十三年度になって急に減っているということは、ちょっとこの予算面だけでは、またきのうの御説明だけでは、ちょっと納得がいかぬのでありますが、この点いかような関係で常勤職員の給与が三十三年度に急に削減されたのか、お答えを願いたい。
  240. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 その点は三十三年度から、これは宮内庁だけでありませんので、他の官庁もそうでありますが、常勤職員のうちで、重要な仕事をしておって、これは普通の公務員に直した方がいいという人を、相当数公務員の方に直されることになりましたので、宮内庁の関係では、楽部関係の人の中の一部とか、皇居の参観の方の案内をしておる人とか、これは京都御所にもありますが、これは普通の公務員がやるべきことだというので、身分関係も公務員にした方がよろしいので、そういうふうに切りかえたために費用が減っておるということであります。
  241. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 常勤職員の今までの数と、今度常勤職員を一般公務員に編入されました数をちょっと承わりたいと思います。
  242. 高尾亮一

    ○高尾政府委員 お答え申し上げます。常勤労務者は現在百四十一人ございまして、来年度は七人が、今次長が御説明申しました公務員の方へ振りかえることになっております。
  243. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 二十九年から三十年に対しては、常勤労務者の費用が七十二万、三十年から三十一年に対しては二百九十万、さらに三十一年から三十二年に対しては百三十万という、非常に多い数字が出ておるのです。御承知のように、三十二年度に対して三十三年度は逆に二十万減っておる。いわゆる三十一年、三十二年に、これを見ますと、相当多数の常勤職員を雇用された形になっておるのでありますが、そのいきさつと申しまするか、急にふやされた理由、さらに百数十人のうち七人だけを一般公務員に編入するということは、とても納得がいかない。少くとも、今次長もおっしゃったように、当然一般公務員としての資格を持つべき者百何十人という人を、常勤職員としてお持ちになっている。あなた方は、もちろん一般官庁との関係もありましょうけれども、特に皇室関係の仕事をされるお立場で、私はむしろ他の一般官庁よりも多数の人たちを、公務員の方に繰り入れるべきものだと思うのでありますが、三十一年度、三十二年度に急激に常勤労務者がふえた理由と、さらに今回七人というほんのわずかな数を一般公務員に編入される基礎を、ここで御説明願いたいと思います。
  244. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 こまかい数は記憶いたしませんけれども、この三十一年度、三十二年度とふえて参りましたのは、まず一般の皇居参観とか、そういうような関係、京都の方の参観、そういう関係も、非常にたくさんの方が来られるのでありまして、そういう方の案内をされる方も必要なので、ふえております。それから皇室用財産のいろいろ掃除をしたりする者、これは勤労奉仕の方も見えておりますが、これは皇居の関係だけです。その他だんだん世の中が落ちついてきますと、やはりよくしておかなければならないということで、そういうような関係で常勤労務者がふえたというような点があるのであります。今度わずか七人しか一般公務員に切りかえなかったのはどうかという点、これはわれわれはもっと切りかえた方がいいと考えるわけでありますが、今度の切りかえにつきましては、人事院と大蔵省といろいろ検討の結果基準がきめられまして、この基準に該当する者は切りかえるということがきめられましたので、一般の基準によって宮内庁の関係も検討いたしましたところが、七人ということになったのでございます。
  245. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 その点はなるたけ早い機会に一般公務員の定員をふやす努力をしてもらいたいと思う。  次に京都御所の施設費でありますが、この中には桂離宮や修学院離宮の推持費等も入ってるんですか。
  246. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 皇室用財産の管理費という中に桂離宮、修学院離宮も全部入っております。京都御所といいますと、これは京都御所だけでありまして、修学院離宮とか桂離宮は、一般の皇室用財産管理費の経費、それの中に含まれておるのであります。
  247. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 先般私は桂離宮と修学院離宮を拝見したのでありますが、このいろんな建築上の価値や造園学上の価値は別としまして、私どもの祖先と申しますか、先輩の非常に大きな功績と申しますか、りっぱなものを残してくれたと思うのでありますが、これに対して私が現地でいろいろ調査しましたところによりますと、今申しました常勤労務者の件ももちろんでありますが、この維持に対して非常に苦しい面が多いようであります。修学院でも桂離宮でも、参観に対してある一定の制限をして、参観料を取らないことはけっこうでありますが、その半面にあれだけのものを維持するのに、現地では非常な苦労をしている。しかもわれわれがちょっと想像できないような苦心もあるようでありますが、そういう意味において、私の調査したところによると、桂離宮で約年間四百万円くらい、修学院離宮で約二百万円くらいの、これは修理その他を含めた費用でございますが、これだけをぜひ要望していることを知ったのであります。せっかく宮内庁の予算も内輪といいながら年々増額されておるのでありますが、こういった、皇室の財産と申しましても、これはやはり国民の一つの重要な文化財でございますので、できるだけ原形のまま長く保存して、日本民族のいい点を残すことは大事でありますが、こういった点に対して宮内庁では何か特別な関心を持って、そういった方向に努力される意思があるかどうか。今のままであれはいいんだというお考えか。できれど私はこういった皇室費増額を機会に、そういった面にも心を配っていただいて、そうしてやはり長く保存するということ、そうして一人でも多くの国民にああいった姿を見てもらうということは、まことに大事だと思うのでありますが、これに対する宮内庁当局の御見解を承りたい。
  248. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 桂離宮、修学院離宮の管理につきましては、宮内庁としては特に意を用いておるつもりでございます。その経費の点も毎年維持管理にどういう点が必要かという点を研究いたしまして、計算の中にそれを含めておるわけでありますが、現在のところは、現在いただいた予算で、まずその維持管理ができる、こういうふうに考えてやっておる次第でございますが、なお今のお話のように、この桂離宮、修学院離宮は重要文化財として、外国でも非常に関心を持っておるものでございますから、状況を見ながら、さらに必要な場合においては、その必要な経費をこの予算の表に載せて、できるだけのことはいたしたい、こう存じておる次第であります。
  249. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 ほかに予算と離れて二、三お尋ねしたいと思いますが、またあらためて内閣委員会でお尋ねすることにいたしまして、きょうはこれでけっこうでございます。  警察庁関係のことを二、三お尋ねいたします。新しい警察官といいますか、民衆警察といいますか、そういった意味で警察官が一般大衆と密接な関係を持ち、しかも大衆から親しまれ、しかもその親しまれる中で信頼を受けるという姿が望ましいのでありますけれども、果して現在の全国の警察官が、心から国民の信頼を受け、しかも民衆警察としての信頼を受けておるかということになると、私ども残念ながらまだまだその域ではないと思うのであります。その中でいろいろな理由はありましょうけれども、私の考えているところによりますと、もちろん警察官だけが一般公務員の給与よりも格別悪いというのではありませんでしょうが、特に地方の警察官等はその生活が非常に苦しい面が多いようであります。従いまして警察官自身も、苦しい生活の中から、しかも職制が非常に強くて、署長あるいは自分の上官等に対しては、旧軍隊的な要素もありまして、なかなか頭が上らない。そうすると、生活が苦しいし、職制による圧迫を非常に感ずる。そういったことが自然に、いわゆる弱いところに当ってくるというのが人情の必然でありましょうが、たまたま戦前のサーベルを下げたような警官が出るということになるのであります。現在の警察官の給与というものは、もちろんこれは規制されておるのでありますが、一般の公務員と比較して、どのような関係にあるか。もちろん大体の数字的なものでいいのでありますが、一つ会計課長からお答えを願います。
  250. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 お答えいたします。警察官の給与につきましては、国家公務員たる警察官につきましては、特別の職階の表を作っていただきまして、警視以下の給与につきましては、初任給から勤務の時間が違う、危険度が違うというような意味で、若干有利に俸給表を作っていただいております。従って国家公務員との比較におきましては、警視以下は俸給が若干警察官よりも有利に作られております。警視正以上の俸給につきましては、これは一般の官庁の国家公務員と同じでございます。地方の公務員につきましてはこれは昭和二十九年の警察制度の改正の際に、国家公務員たる警察官の給与を基礎にいたしまして俸給制度が作られました。ところがその当時すでに地方公務員の知事部局に勤務する方方については、国家公務員の給与よりは相当有利になっておったわけであります。従いまして、地方公務員たる警察官については、知事部局の一般職員よりは現実は若干まだ下回っておるのではなかろうか、こういうように考えております。そこで私どもも、できるだけこの俸給を、警察官の勤務というものの実態から見て、少くとも知事部局の職員と同じ、もしくは国の公務員の制度にとられておりますように、若干有利にしていただきたいということで、関係官庁ともしばしば折衝いたしておるのでございます。しかし何分にも地方の財政の状況から見て、そう私どもがやろうと思っても急速には参らないわけでありますが、逐次改善をしてもらおうということで、さしあたり本年は俸給の方は一応やむを得ないとしましても、諸手当の面で若干勤務の実態に合わせた手当にしてもらいたいということで、超過勤務手当等につきましては、知事部局の職員よりはおおむね三%の増というように現在お願いをしまして、自治庁当局とも折衝をいたしておる次第でございますが、大体今の見込みではお認め願えるのではなかろうか、こういうふうに考えております。なお俸給表を実は持ってきておりませんから、こまかい数字を申し上げかねますので御了承願いたいと思います。
  251. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 警務部長にお尋ねしますが、先ほども申しますように、現在の日本警察官が民衆警察の実をなかなかあげ得ないで、反面にいろいろな忌まわしい事件等も頻発しておるようであります。これに対して長官にお聞きしたかったのですが、長官がいないので警務部長にかわってお尋ねするのですけれども、ざっくばらんに申し上げて、あなた方は日本の治安を担当する警察庁の責任者として果して現在の警察官の姿がそれでいいかどうか。特にあなた方は指揮監督し、取り締る立場でなくて、私ども、警官は決して国民を取り締ったり、あるいはこれを犯罪の対象として考えるべきものではないと思うのでありますが、いまだ地方に参りますと、警察に対する国民の考え方が非常に封建的であります。ということは、結局逆に言うと、警察は一般国民の前にやはり旧憲法下の警官のような姿を持っておるということなのです。私が申し上げるのを、警務部長は責任者として、現在の警察官の姿をどのように考えておられるか。もし悪ければ、これはどういうふうなことから、これをいわゆる先ほど申しますように、愛される警察官としてやっていく方針であるか、この点をお尋ねしたい。
  252. 荻野隆司

    ○荻野政府委員 ざっくばらんに申しまして、ただいまの問題は、警察官に対しまする教養の問題というところに私は帰着するように思います。戦後の警察の教養方針の根本は、一つは人格教養とでも申しましょうか、あるいは人柄の教養とでも申しましょうか。御承知のように警察官は、ややもすると社会の暗い面を相手にしている関係もありまして、警察自身もその影響を受けまして暗い気分になる。先ほどお話がございましたように、それがはね返って国民に対する威圧感になるというようなことは許されることではないのでございますので、そういう意味でこの人格教養といいますか人柄の教養といいますか、そういう点に十分力をそそいでおるようなことでございます。  もう一点は、これも端的に申し上げまして、ただ人柄だけいいのであっては警察の職責は果さないことになりますので、ごくわかりやすい例を申し上げますならば、犯人を逮捕するときに、やはり自分の生命の危険を冒してもこれに当るという、そういう意味の職責に対する自覚というものも反面において十分喚起をしていかなければならぬということで、警察教養もなかなかむずかしい道であろうと考えております。また教養の本来の性格から考えまして、いかに私どもあるいは系統機関が教養に力を用いましても、なかなかその効果というものは一朝一夕に実があがらないというもどかしさを感じておるのでございます。従って民間の側から警察をごらんになってどういうふうに考えられたかということを知りたいために、ここ数年来内閣の審議室にお願いをいたしまして、世論調査等も実施いたしております。われわれ自身の手でお手盛りに調査をするのでなくて、公平な第三者の手でそういう調査もやりたいのでやっておるわけでございます。それによりますと、こまかい数字は持って参りませんでしたが、総合的に、警察に対する信頼はどうであるかという設問に対しまして、だんだんよくなったということの批評を受けておるのでございます。ただ私どもは、こういう教養の問題、それから民衆警察の問題で足れりとするというわけには参りませんので、なお一層力を入れてこの教養に当って参りたい、こういうふうに考えております。
  253. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 私は警察に検挙されたこともありますし、留置場にも何回も入ったのでありますが、そのときのものとはもちろん違いますけれども、留置場の中から、私どもを監視しているおまわりさんを見ておっても非常に気の毒なんですね。というのは、先ほども指摘したように、非常に経済的に苦しい生活をしておりますし、精神的には、上司が別に意識的に圧迫するわけではなかろうけれども、職制からくる圧迫を感じる。それが一般の国民にはね返ってくる。そこで、これは私は今すぐ可能とは申しませんけれども、常に警察官と接しながら感じますことは、そう数の多いことではありませんから、思い切った給与を一つやってみたい。例を言うならば、月平均全警察官が三万円くらいのベースの給与をもらったら、私は自然に立番している交番のおまわりさんも口笛が出ると思う。立番していても口笛が出る状態ならば私は自然に一般民衆に対する態度は違ってくると思う。私は冗談ではなくして、全警察官がそのような姿になれば、幾らかの経費がかさんでも九千万の国民は非常に仕合せと思う。そういった意味日本の治安を確保し、一般民衆から信頼され、しかも一般民衆が警官に対して従前のような圧迫感を持たないで、いわゆるお互い口笛を吹き合いながら、あるいは道で会ったら握手でもしたいような気持になる警官ができますならば、私は多少の経費がかさんでもいいと思う。私は三万円という仮定のものを出しましたが、少くとも全国の警察官諸君が、安心して家庭生活ができるような処遇をしてやることが大事だ。もちろんあなたがおっしゃった教養の問題も大事だし、いろいろなことも大事だが、幾ら教養を持たしても、現在の激しい経済生活の中で苦しい暮し方をさしておったら、なかなかそんな気分になれません。  そこで、これは私がここで申し上げてもすぐできることでありませんけれども、あなた方責任者は、そういうことを思い切って処置を講ずるくらいの腹がまえを持ってもらいたい。それで全部解決とは申しません。今の警察官が、一般の国民は民衆警察ともあるいはわれわれをほんとうに守ってくれておる警官とも思っていない。警察官はわれわれ国民を守る立場にある。われわれへの奉仕の立場だ。ところが逆に国民の前にどうかすると権力がおおいかぶさってくるものが多い。そこにいろいろな問題が起る。そのためにいわゆるいなかに行けば行くほど、何でもない諸君が警察の前に非常にいやな思いとくさい思いをさせられておる。従って私がここであなた方に知恵を貸してあげる。この辺で一つ思い切った処遇の改善を計画して、これはいろいろな難関はございましょうけれども、私は国会議員としてそういうことであれば協力できると思う。私は心にもないことを言っておるのではない。そう信じておるし、そうしてもらいたい。そして日本の警察官をもっと品格と人間味のある豊かな警官にしたいと思う。それが警官自身の仕合せとともに、全国民の仕合せであると思う。わずかの金を憎んで、多くの国民が暗い思いをしてはいかぬと思う。金は使いようなんです。一つ警務部長に対しては少し酷な言葉かもしれぬが、できれば国家公安委員長なり警察長官がおいでになるならいいと思うのだが、一つあなたはこういう点を含んでもらいたい。こんな気持を持っておるのはおそらく私だけじゃないと思う。そういった思い切った処遇について研究してもらいたいと思う。これに対する答弁ではあなたは容易じゃないと思うからよろしゅうございます。  そこでお尋ねしたいのは、処遇の関係とともに、今の警察官の服装はなっていないと思う。ああいう服装をさしておいてあなた方よく平気でおられると思う。ああいう服装をさしておくことにあなた方は矛盾を感じないか。あの変な皮のバンドを締めて、そして片方にはピストル、片方にはこん棒、ピストルも何だか大きな小銃みたいなものをぶら下げて、まるで人間が拳銃を下げておるのではなくて、拳銃に引きずられておる形、ああいうことをさしてあなた方よく平気でおられると思う。この予算を審議する過程において、いろいろなこともあるけれども、一つ思い切って三十三年度から服装の改善を要求したい。まず拳銃を警官からはずしなさい。皮のバンドをはずしなさい。こん棒も、あんなものは平時は持つ必要はない。町を歩いている警官の姿は、今言ったように、あれじゃ絶対に民衆は親しめません。今は自衛隊ですら、見てごらんなさい、スマートとは言えぬけれども、まだまだアメリカのまねですからみっともないけれども、昔みたいにゴボウ剣や何かを持ってないだけでも、まだあれは見よい。それに比較して、民衆を保護する立場にある警察官に、ああいう格好をさしてもらっておいたんじゃ、これは私はむだな費用だと思う。あの格好だって、革バンド、あんなものははずさして、もっとスマートなせびろを着せてやったならば、私は先ほどの給与面とともに、あれだけでも非常に違うと思うのだが、これを一つ思い切って改善する意思があるか、ここであなたに聞いても無理でしょうけれども、しかし今の服装は何とか改善しなくちゃならぬということを考えたことがあるか、あるいは考えなかったならばあなた方が見てどう感じるか、感じたならばそれをもっとスマートなものに変えていく努力をしなくちゃならぬと思うが、こういった今私が申し上げたことに対して一つざっくばらんな、警務部長としての見解でもよろしい、御表明願いたいと思います。
  254. 荻野隆司

    ○荻野政府委員 警察官の服装についての御意見でございますが、今お話がありましたように、国民から信頼をされ、親しまれる警察官という立場は、私ども戦後の方針としてとっておるわけでございまして、そういう意味からいうと、警察官の服装もただいまお話がございましたようにスマートでなければいかぬ、親しまれるものでなければいかぬということ、これも私は同感でございます。ただ問題は、御説明申し上げるまでもなく警察官は職務執行という一つの職責を持っておりますので、その職責の遂行にふさわしい限度内において、ただいまお話のありましたようなことを改善していくことになろうかと思うのであります。いかにスマートでありましても、それが職務執行に差しつかえがあったり、あるいはまた耐久力においてきわめてもろいという点がありますと、警察官としての服装にふさわしくないということになろうかと思っております。ただ全然考えたことはないのかというお話につきましては、正直に申しまして考えたことがあるのでございまして、実は従来夏服につきましては国防色の服を着ておりまして、そで口等もきわめて緊縛したということになっておって実用的にも暑苦しいというような実情もございまして、いわゆる夏服については現在改正が進行中でございます。従来真夏においては国防色を用い、冬、合の場合においては紺サージ、黒等を用いておったのでございますけれども、これを改めまして、今後は春、つまり四月から十月までの間におきましては、シルバーグレイとでも申しますか、灰色とでも申しますか、こんな色のものにしてスマートにしてもらいたいということでやっておるわけでございます。ただ多数の警察官のことでございますから、一挙に変えることができないので、現在逐次変えつつあるのでございまして、三十四年の九月になりますると、全国の警察官が合、夏についてはそういうグレイの服を着る。これは考え方によりますけれども、われわれとしてはずいぶん工夫したつもりでございまして、前よりは相当スマートになったのではないかというように考えております。  それから拳銃の問題でございますが、これも確かに今の拳銃は相当大きくて見たところ重苦しい感じを与えるということは否定いたしません。ただ、さらばといってにわかに拳銃をはずすということにつきましては、実は反面のいろんな実情もございます。と申しますのは、警察官が職務の執行に当って凶悪犯等から相当傷を負わされ、受傷している事故も実はございます。すでに御承知でもございましょうが、最近でも大体年間の凶悪犯は一万四千前後ということで、ふえてもおりませんけれども、また反面減ってはおらないという実情になっておりまして、それらから警察官が傷を受けるという場合もありますので、にわかに全部これを取りはずすということは、正直に申しましていまだ踏み切る状態にないと私は考えておるわけでございます。たださらばといって占領下にあったときのように常時携帯というので、出張のときにも寝るときにもということは実情に合わないという点がありまして、室内におるときはもちろんのことでありますが、職務執行上支障がないという場合においては所属長、つまり県で申せば本部長の判断で取りはずし得るという弾力的な規定の改正をいたしまして、目下そういうことをやっておるようでございます。お言葉を返すようでございますが、今の拳銃も確かに大きいので、あれはスミス・アンド・ウェッソンという種類で、四十八口径、三十八口径等もございまして、そのうち四十五口径等は相当大きいのでございますが、目方にしまして私が承知している範囲では大体二百七十匁ぐらいだと思いますので、そう警察官が拳銃に引きずられているというふうにも私は考えておらないのであります。しかし軽くて性能のいいのに越したことはないので、今ある拳銃がだんだん棄損し、消耗して参りまして、将来減耗補充という問題が、おそらく現実の問題になってくるときがありますが、仕事の性質によりましてはそういう際に逐次スマートな小型のものに切りかえる努力をいたして参りたい、こういうふうに考えております。
  255. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 お聞きしているとあなたの御答弁としてはそれ以上出ることもできないと思うのでありますが、服の色を変えてみても何してみても、あんなものを下げさせては何もならないのです。かえってみっともない。確かに合服の色はいいです。あれをあのままスマートに着たらりっぱなものです。それにもってきて黒いバンドに拳銃にこん棒でしょう。これはかえってナンセンスです。むしろそれならそれでもっとごついものを着た方がいい。あんな拳銃とバンドを締めさせて、いろいろ色を変えてみてもかえってナンセンスです。職務上とおっしゃるけれども拳銃を一年間に警官が何回使ったかわかりますか。拳銃を使って何回いわゆる犯人と立ち回ったか、どのような効果があったか。拳銃をとられたりあるいは自分で暴発させてみたり、この間は警官が自分で撃っている。そんな例が幾らあるか。私が考えると警官が拳銃を持って犯人逮捕に重大な功績をあげたことよりも、拳銃を持っておるがゆえに交番が襲われたり、警官が襲われたり、警官自身がよっぱらって撃ってみたり、こういう事故の方が多いと思う。あなた方はすぐに職務遂行とおっしゃるけれども、拳銃を持たなければならぬような事件は少いと思う。その場合には常時持ってもけっこうですよ。しかし交番に立っておったりいなかのおまわりさん、それこそ犯人どころか一年中何もないような部落のおまわりさんがやはり年中つけておる。そういうところを私は考え直してもらいたいと思うのだ。そういうところにあなた方のいわゆる昔の警察官意識があると思うのです。先ほど言ったように何人かの犯人を目標として数多くの良民を脅かすことは、私は警察官の本務ではないと思う。これもあなたにこれ以上言っても無理でしょうから言いませんが、あなたも警務部長なんだ、一応あなたは警察庁の警務部長、最高責任者なんだ。あなたがやはりそういったことを考えるところに警察官のいろいろな非難を受ける原因があると思う。あなた方はそれで済むから、いいが、私はこれを言うからには群馬県はもちろん出張先々であらゆる警官諸君と話し合って聞いたのです。あの常時皮の帯を締め、拳銃やこん棒を下げることに対しては、みんな不満を持っている。特殊な勤務中はやむを得ぬけれども、普通の場合にこれをはずしたらどんなに気持がせいせいするかわからぬということは異口同音なんです。これをあなた方はちゃんと知らなければいけませんよ。あなたたちはやむを得ぬからつけておる。しかしこれをはずしたら、それだけでいわゆる民主警察、民衆警察の大きな一端が実現され得ると思う。これは真剣に考えてもらいたい。まず最初には、全部取って悪ければ拳銃だけでも、あるいはどこかにいつでも急な場合には持てるように保管することもいいでしょうし、あんなこん棒——も私は外国に行ったことはありませんが、映画などを見ても、外国の警官諸君は実にこん棒をうまく操作して楽しくやっておる。あの変な輪に差し込んで歩く姿は、私はみっともないと思う。警官諸君もひけ目を感じている。あなた方はそういう心理状態をつかんでそれに対処しなければならぬと思う。職務執行上というきまり文句では解決できないのです。職務執行上というようなきまり文句をおっしゃるから、日本の警察が一向民主化されない。上官の前ではばかにかた苦しくまじめな顔をしているが、裏に行ったら何をするか、ここに問題がある。職階制も長所もありましょう。しかし上官の前ではばかに調子がよくて、一般の良民の前では何をするかということになる。私は、警察官の問題というものはそう軽々しくやれぬと思う。私がこう申し上げるのは、今でも地方に行くとあらゆる場合にいわゆるむちゃな警官、むちゃな警察力に泣いておる多くの国民のあることを知っておるがゆえです。私が先ほど冒頭に言ったようにするには、今言ったようなことも真剣に考えていかなければならぬ。そういう職務執行上という言葉に隠れて、改善しようとする意図のないところに日本の警察の封建性もあるし、非常に悪い面もあると思う。これは一つぜひまた機会があったならば、私は公安委員長や長官にも強く要望するし、また都合によっては私どもがそういったものを準備してもいいと思う。しかしあなた方が主体であるからぜひこの点は十二分に考えてもらいたいと思う。これは要望しておきましょう。  次に、きのうの大蔵省の予算の説明を承わりますと、歳入の部で免許手数料というのが五億幾らございます。これは大蔵省の歳入ですが、この中には自動車運転手の免許書の書きかえ手数料を相当多く含んでおると聞くのであります。これは先般地方行政委員会でも指摘したのでありますが、現在全国に百万に近い運転手がございまして、従前は免許証の書きかえが五年だったわけです。それが戦後一時二年になって、最近三年になっておる。いろいろな理由もあるようでありますが、このことも、お産婆さんとかあるいはあんまさんとかいろいろな免許を持っておる人がございますが、免許の期限があるのはおそらく運転手だけなんです。運転手という特殊な勤務で期限のあることもやむを得ぬでしょうけれども、これをもとの五年に延ばしていただきたい。私は、将来は当然もう期限を付さない、常時検査することはいいけれども、免許証の期限は無期限にすべきだという一人でありますが、それはそれとして、一応戦前の五年に延長することを要望し、警察庁でも考慮するということであったのでありますが、依然として変っていない。そこでここに免許証の手数料五億幾らというものが計上されておる、この中の大部分がいわゆる自動車運転免許の書きかえによる一手数料だと思います。となりますと、一回一免許証について二百円でありますから、私は四つ持っておりますが、一回書きかえると千円近くとられる。とにかく百万という運転手がございますから、それは莫大なものになる。これをぜひ警察庁は思い切ってその三年をさしあたり五年に延長する意思はないかどうか。私は、この五億幾らの免許証収入の中に、ほんとうにその日その日命がけで働いておる運転手諸君が、別に必要もないのに三年ごとに書きかえる血の出るような手数料が非常に含まれておると思うと、黙っておれぬ。しかも私が警察の交通の諸君と話し合いますと、これは非常に繁雑で警官自身も困っておるという実態でありますが、これを一つこの辺で五年に一応切りかえる準備をする意思はないかどうか、この点は警備部長の管轄だと思うのでありますけれども、一応警察庁の関係にお尋ねしたいと思います。
  256. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 御質問の五億何千万の手数料というのは、実はよくわからないのでありますが、運転免許の手数料は府県の歳入になることになっておりまして、国の歳入ではございません。従って五億数千万というのはちょっとわからないのでございますが、問題は、この運転免許の書きかえの期限を、三年を五年にしたらどうか、こういう御意見でございますが、実は御質問の通り戦争中までは五年に一回でございました。ところが占領下において二年になりまして、昭和二十九年でございましたが、運転手の諸君が何とかしてくれということを警察庁に言って参りまして、私どもも第一線の意見もよく聞いて三年に改めたような次第でございます。ただ、今直ちに五年にできるかということになりますと、これは運転手という特殊の業務からくる、一定期限がくればやはり適性検査をやらなければならぬというようなことがございますので、直ちに御意見通りにするということは困難ではなかろうかと思います。しかし御意見は貴重な御意見でございますので、十分研究をするように主管部に話をよく伝えておきたい、かように考えております。
  257. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 現在警視長以上の職責にある者の中に、巡査から上った者が幾人ありますか、ありましたら御明示を願いたい。
  258. 荻野隆司

    ○荻野政府委員 詳細な数字を持って参っておりませんので、詳しく何人ということは残念ながら今すぐにはお答えできませんけれども、おおむね一割五分くらいにはなりはせぬかというふうに考えております。
  259. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 都道府県警察の本部長の中で、同じくいわゆる巡査から上った人が幾人あるか……。
  260. 荻野隆司

    ○荻野政府委員 概数十名ちょっとであります。
  261. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 これはいろいろ指導的な立場に立つ者として問題もありましょうが、警視長以上の重要な警察官の中にいわゆる巡査から上った者が一割ちょっと、さらに地方の都道府県警察の本部長の四十数名の中で十名程度ということは、やはり内務省時代から伝わっている内務官僚と申しますか、そういった流れが警察においてもあるということで、これは否定できないと思う。もちろん、全部を巡査から積み上げた者にしろとは言いませんけれども、やはり現在の警察官の実態というものを眺めると、そういったところの不満がある。これは事実です。われわれはどうしても警視の長で終る、どこまでいっても行く先はきまっているということは、これはやはり人間として一つの弱点になるのであります。もちろん巡査から上った者には本部長をさしたり、あるいは警視長以上の重要な職につがせる能力がないとおっしゃるなら、これは何をか言わんやであります。しかし私どもの聞くところによってはそうは言えないと思う。私は警視長以上の諸君の中に、いわゆる巡査から十年、二十年と積み上げた諸君がある程度いることの方が、むしろいい面もあるだろうと思いますし、特に率直に申し上げて、府県警察本部長の中には、半数くらいはそういった諸君のあることが当然だと思う。私は何も終戦後追放された諸君を決して登用してはいけないとは言わない。もちろん不幸にして、終戦後追放になった諸君の中にも優秀な諸君があるでありましょうから、こういった諸君がどんどん復職することもけっこうでしょう。しかしその反面、かなり長い聞警察官として苦労し、しかも相当抜きん出た諸君があるならば、こういった諸君を本部長なりその他の要職に用いるべきだと思う。それを一向しょうとしない。これは私は実例を持っておる。こういうところから見ても、私は現在の警察の組織なり実態の中に、依然として内務官僚万能の姿があることは否定できないと思う。ここにも、先ほどから指摘するように、日本の警察官が一向民衆に溶け込めない本質があると思うのであります。こういった点で、これも要望に近くなりますけれども、警務部長はその方の全責任者なんです、あなたが人事の責任であります。おそらくあなたの周囲にいて、あなたとともに仕事をして、現在の日本の警察官を握っている人たちは、みんな旧内務官僚の系統の人だと思う。たとえば、あなたの直接の相談相手になる諸君の中に、一人でも二人でも巡査からずっとやってきた、甘いもすっぱいも、警官のいろいろな面を知った諸君があるならば。あなたの人事行政の上にまた違ったものが出ると思う。しかしおそらくそれは、特殊な人はあろうけれども、そういった枢要なところにはそうした人はないと思う。こういう姿にも私は非常に納得のいかぬ点があるのだが、一つ警務部長は、これはあなたの責任において答弁もできるし、将来のお約束もできるはずです。私はこの質問はおそらくいろいろな形で全国の警官諸君が聞くと思うので、やはりそういったところで、給与もさることながら、服装もさることながら、自分の一生の仕事として携わった警察の仕事の中で、自分の将来に明るい見通しができますならば、よし自分はそこまで上れぬにしても、おれもやれば上れるのだ、おれもやればどこまでも行けるのだということは、全警察官の一つの心の灯ともなり、またいわゆる職務に励む一つの機縁にもなると思う。残念ながら今お聞きすると、そういうことが私どもから考えると非常に不満足な状態にある。これを私は端的に申し上げて、数字で先ほど言ったように、地方本部長の半数くらいは、あるいはその他の警察庁の枢要な地位にも、人材によっては今後どんどん引き上げていくだけの一つの雅量と、そういう方向に努力される警務部長であってほしいと思うのだが、あなたの御見解を一つここではっきりとお示し願いたいと思う。
  262. 荻野隆司

    ○荻野政府委員 ただいま警視長という言葉でお話がございましたが、府県本部長は警視長の者もございますし、その一階級下の警視正という者もございますので、まあ警視正というところから警察全体を通じての幹部ということになろうかと思っております。今お話がありましたように、私は、巡査の出身であるからそういう最高の幹部まで上げることを拒否するというような画一的な考えは毛頭持っておりません。人次第、実力次第ではどんどんと上に上る、警視正にも警視長にもなれることを念願しておるのであります。お話がありましたから申し上げますけれども、警務部の私の下の課長クラスにも、現に巡査から上ったそういう幹部がおりまして、ときに応じてむろんその者の意見を聞いてやっておるという実情でございますので、そういう方向に努力いたしますという点については、御了承をお願いしたいと思っております。
  263. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 やはりあなたの御答弁は誠意がないと思うのだ、巡査から上った者はしないというようなことはないとおっしゃる、それはそうでしょう。しかし現実はそうじゃない。私は全国の警察官がそんなにも無能だとは思わない、県下の本部長くらいは勤まるはずだ。それがやはり現に四十数名の中で十名前後しかないということなんでしょう。しかも先ほど指摘したように、わざわざ、追放されて十年も空間のあった人たちをひっぱってきてこれをやらせておる実例があるのです。そういうりっぱな人なら、よそにも行けるはずだ。前に警察官をして相当な地位を占めておって十年の間追放のうき目にあったような人ならば、そんなりっぱな人はほかにも行けるはずだと思うが、巡査から上った諸君はほかに行けません、これは事実なんです。あなたは今そんな答弁をなさるけれども、それは通りません。実態はそうじゃない。全国警察官の不平はそこにあるのです。彼はだれが見たって優秀である、どこから見ても、技術からいっても識見からいってもあらゆる面から本部長より上であっても、巡査からの出であるということで、現在本部長にもなれぬという実例が方々にあるのです。あなたの答弁なら、そんな人は当然本部長になるし、もっと重要な位置にもつけるはずなのです。現についてない。さらに四十数名の本部長の中に十名足らずだ。そういう不誠意なことでは、全国の警察官はとても納得はいきませんよ。あなたは警務部長だから、指令を出せば聞きましょう。それは聞くだけなのだ。その反動はどこに行くか。さっき言った通りだ。これはこれ以上申し上げても、あなたには何ともはや御答弁もできないでしょうから、これはあなた方はしっかりそういう点を考えてやってもらいたいと思う。私はそうであるならば、先ほど言ったように、予算でも何でも思い切って授けもするし、またりっぱな警察官が生まれると思う。どうか一つそういう意味において、まあそう簡単にもいきますまいが、今までのそういった考え方を根本から一つたたき直していただいて、まず第一線の、いわゆる不格好な拳銃を下げた警察官よりも、警察庁にあぐらをかいていらっしゃる長官以下幹部諸君が頭を入れかえなければいけないと思う。でなかったら、絶対に日本の警官はよくなりません。私は時間もございませんから、きょうはあまり申しません。また後に地方行政委員会で申しますけれども、あなた方がほんとうに、よほどそういう点で頭を切りかえてもらわぬと、日本の民主警察は生まれません。また今言ったようなことが実現するならば、冒頭に申し上げたように、私はやはり国が相当多額の給与を差し上げても、あえてむだでないと思う。望ましいものが生まれると思う。きょうは残念ながら公安委員長と長官がいらっしゃらないので、以上で終りますが、どうか一つそういう点を十二分に含んでもらいたいと思う。  では委員長、私時間がありませんから、あとに譲ります。
  264. 田中久雄

  265. 横路節雄

    横路分科員 最初に防衛計画についてお尋ねをしたいと思います。先般経済企画庁の方から昭和三十三年度の経済の見通しについて発表になったわけでございまして、それはさきの総括質問の際にも、総理大臣から、三十三年度の経済の見通しは、五ヵ年計画全般を通して見なければならぬのだ、こういうお話がございましたので、従って防衛庁としても、今度出されましたこの三十三年度の予算は、そういう意味で国の経済の見通しと関連して出されていると思いますので、一つこの際防衛五ヵ年計画について、あるいは五ヵ年計画はできてないのだ、それは昭和三十六年までしかできてないのだというならば三十六年度まで、しかし経済の見通しについては国も五ヵ年間の見通しを立てているわけですから、おそらく防衛庁としても、防衛計画を少くとも五ヵ年先を見通して立てられておると思いますので、具体的に一つその防衛計画についてお答えをいただきたいと思うのであります。昭和三十三年度における陸上自衛隊の自衛官はどうなるのか、三十四年度はどうなるのか、三十五年度はどうなるのか、航空機はどうなるのか、さらにそれ以外の職員はどうなるのか、海上自衛隊においては、航空機並びに艦艇はどうなるのか、トン数はどうなるのかということについて、具体的に一つお話をしてお答えをいただきたいと思います。もしも政務次官の方で何でしたら、他に担当の方でけっこうですから、一つきょうは具体的にお答えをしていただきたい。
  266. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 お答えを申し上げます。ただいまきまっております防衛力整備計画は、昭和三十五年度末を目標としておるものでございます。ただしそのうち、一部艦船並びに航空機は、昭和三十七年度までかかることになっております。この目標は御承知かと思いまするが、陸上十八万、海上が十二万四千トン、それから約二百二十機の航空機、航空の方は千三百二十機ということを目標にしておるのでございます。ただこの年次別の内訳というものはまだできておりませんで、三十五年度末にそういうものを整備するということを目標にして、毎年大蔵省と協議をいたし、国防計画において御決定になって、その年度の予算をもらうということにいたしております。
  267. 横路節雄

    横路分科員 今のお答えの中で、陸上自衛隊については自衛官の人員ははっきりしましたが、航空自衛隊、海上自衛隊の人員、三十五年度末にどうなるかという点についても、一つ明らかにしてもらいたいことと、それから三十五年度末、昭和三十六年三月三十一日末の防衛計画の、今あなたにこれから人員についてお話ししていただくが、今の点について、大体防衛庁費はどれだけになるのが、今陸上自衛官については十八万、海軍については十二万四千トンの二百二十機、それから航空自衛隊については千三百二十機というお話があったのだが、当然そうなれば、昭和三十五年度における防衛庁費は幾らになるかということを一応計算しておるはずと思いますから、まず陸上自衛隊、海上自衛隊の人員、今は自衛官だけのお話ですが、相当防衛庁の職員は多いはずなんです。たとえば普通に十六万というが、防衛庁職員は大へんいるから、従って自衛官だけでなくて防衛庁職員についても、あわせて年次別にきちっと話をしていただきたい。
  268. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 防衛計画におきましては、陸上自衛隊につきましては自衛官十八万人ということと、予備自衛官を一万五千人ということになっておるのでございまして、一般の方の職員につきましてはきまっておらないのでございます。海上自衛隊につきましても人数についてはきまっておりません。総括的な目標といたしまして艦船及び航空機について、三十五年度末に到達すべき目標をきめておる。航空自衛隊につきましても同様でございまして、人数につきましてはきまったものはありません。予算の見積りでございますが、これも防衛力整備計画を立てられます際に、いろいろの試案はできましたけれども、防衛庁といたしましては大体年間国民所得の二%強くらいということを目標にして、いろいろな案を立てたのでございますけれども、おきめになりました防衛力整備計画というものは予算について確実にこれだけの予算があるのだということでおきめになったのではないように承知いたしております。
  269. 横路節雄

    横路分科員 今防衛局長お話で、職員については明らかでないというが、きのう説明になりました昭和三十三年度の防衛庁の予算説明では、職員について人数がきちっとしているわけですね。だからこれは自衛官がふえる割に応じて職員がふえるわけです。職員については全然見当がつかないのですという答弁はおかしいのです。それから航空自衛隊については千三百二十機というのが三十五年度末の目標であるのですから、そうすれば千三百二十機についての航空自衛官というものが何人であるかということが当然計算できる。それから職員についても同様なのです。それを何かことさらに答弁をしないでおこうということはうまくないと思う。きょうは分科会ですから私もあとでこまかな数字を一つ一つお尋ねしたいと思っておるのに、そう初めから質問に対して答えがぼやけてしまっては困る。もう一つは、やはりあなたの方で三十五年度末に防衛庁費がどれくらいになるが見当がつかないと言っておるが、自衛官の人数はあとで聞きますが、自衛官がふえる割に応じて一人幾らがということは出てくる。人数がきちんとしているのに、軍艦のトン数がきちんとしているのに—あとで聞きますが、軍艦の場合はトン当り幾らか計算ができているはずだ。航空の場合だって、航空機の内訳は、機種は全部きまっている。それで計算ができないわけはない。これもお答えしないということなら、私の方から一つずつお尋ねをしますが、そうでなしに一つきょうはここでお答えをいただきたいのです。そうでないと職員だってみな三十三年度きまっている、見通しがついているはずです。軍艦だって一トン当りの建造費は幾らとちゃんと踏んでやっている。そういうことは全然計算ができていないということはおかしいですよ。できていないならできていないでいい。しかしできておるはずです。答弁してもらわなければ困る。そういうふうに政治的に答弁をはずされては時間がかかるから、一つ率直にお願いいたします。
  270. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 お答え申し上げます。事実員数につきましてはきまっておらないわけでございます。ただ三十三年度の予算につきましては、提案してございます通り、陸上自衛隊につきましては、自衛官及び職員十八万千九百八十一名、海上自衛隊につきましても、航空自衛隊につきましても、自衛官及びその他の部隊職員の定数がきまっております。しかし総括目標を十二万四千トンとしまして、そのうちでどういうふうな艦種をどういうふうににきめるかという具体的な問題はまだきまっておりません。航空機につきましても、きまっておるようにおっしゃいますけれども、現在きまっておりますのはF86Fでございます。これを今生産しておるわけでございます。練習機につきましても、T33を生産しておるのでございますが、F86Fの次にどういう迎撃機を採用するかということは、ただいま御承知通り慎重に検討中でございます。採用いたします機種によりまして、一機当りの整備員、操縦員、航法要員が違ってくるのであります。実際きまっておらないということが実情であるということを御判断願いたいと思います。  それから今の横路委員のお尋ねによりますと、今きまっておりまする艦船とか航空機につきましても、一機当りの整備費、維持費というものは、これは出て参ります。ただこれがそのままで三十五年度末の数字にならないということは御了解いただけると思います。決して隠しておるわけではありません。
  271. 横路節雄

    横路分科員 お聞きしているとますますこれはおかしいと思うのです。たとえば十二万四千トンを三十六年三月三十一日までに建造するときめたが、それはどういう軍艦を作るかきめていない。十二万四千トンという総トン数を何ではじいたのです。千三百二十機というのは、実は千三百二十機だけはきめたが、どんな機種だかきめてない。それでは千三百二十機という飛行機の数だけきめて一体何になるのです。これで一体三ヵ年にわたる防衛計画を立てたということになりますか。おかしいじゃないですか。十二万四千トンというのは一体何ではじいたのです。この艦の種別ですよ、トン数、そういうものでなければ十二万四千トンというものが何でここに出たかわからぬでしょう。それから航空機千三百二十機の中身は何ですか。そうでなければ実は三十五年度末までの防衛計画は立っていないと答弁しなければならぬはずですよ。立っているのだと言っておいて、その内訳についてはわからぬという、そういうことはないはずですよ。防衛局長そうでしょう。答弁してごらんなさい。
  272. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 国防会議できめられましたものは、先ほど私が申し上げた通りの数字でございますが、その十二万四千トンなり千三百二十機の内訳になりますものは、航空機で申しますと、そのうちの九百機を実用機に考えておるということでございます。その九百機の内訳は、輸送機、偵察機、迎撃機を二十七台作るというふうに計算をしておるわけでございます。ただその迎撃機と申しましても、私が申し上げましたのは、今はF86Fを採用しておりますけれども、この次にどういう飛行機を採用するかということで、その人数までは考えておらぬということを申し上げておるわけであります。  それから海上の方は、十二万四千トン総括目標をきめておりますが、この内訳は、防衛艦艇と警備艦艇を約八万四千トン、掃海艦艇は一万六千トン、海上港湾防衛の艦艇を一万三千トン、その他を一万一千トン、こういうふうな基礎を一応立てまして、この中で、たとえば防衛艦艇と申しましても潜水艦に対するものとが空に対するものとかいろいろあります。どういう種類の船をきめていくかということは各年度において決定していくということでございます。
  273. 横路節雄

    横路分科員 それではあなたにお尋ねしますが、防衛艦艇のトン当りの価格は一体幾らですか、掃海艦艇のトン当りの価格は一体幾らですか、海上港湾防衛の艦艇、一万三千トンのトン当りの価格は幾らですか、またその他の一万一千トンのトン当りの価格は幾らですか。これは、それぞれみな艦艇によってトン当りの価格は出るはずです。これは幾らですか。
  274. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 おっしゃるトン数は、現在作っております艦種につきましてはむろん計算できるわけでありますが、今防衛局長からお答えいたしました艦種につきましてどういうふうな計算が出るかということはそのときにならないとまだ正確なことは出ないわけでございます。
  275. 横路節雄

    横路分科員 今度あなたの方でここへ提案しておりますところの、たとえば甲型警備艦二隻、三千四百トン、これはトン当り大体幾らですか、それから中型掃海艇というのはトン当り幾らですか、駆潜艇というのはトン当り幾らですか、高速救命艇というのはトン当り幾らですか。これは三十三年度に出されておる、これでお尋ねします。トン当り幾らですか。
  276. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 お答えいたします。本年度の予算で見積ってありますもの、これはたくさんの艦種に分れておりますから、逐次お答えいたしますが、そのうちの一つといたしまして継続費として計上いたしました三十二年度甲型警備型、これは大体千七百トンでございます。その二隻の分が四十一億九千三百万円でございます。
  277. 横路節雄

    横路分科員 私がお尋ねしておるのは、きのうあなたが昭和三十三年度の防衛庁予算の一般説明をなすった、そして海上自衛隊につきましては、昭和三十三年度に造船を計画しておる艦船として新たに建造に着手する甲型警備艦二隻、三千四百トン、中型掃海艇四隻、駆潜艇二隻及び高速救命艇一隻、合計五千七百五トンということになっておるから、私が今お尋ねしておるのは、それなら三十三年度は予算書に載っておるだろうから、従って甲型警備艦、中型掃海艇、駆潜艇、高速救命艇のそれぞれのトン当りの価格は幾らですかということを聞いておる。これは当然予算書にあるでしょう。トン当り幾らと計算して出てくるでしょう。道路だってなんだってそうでしよう。一メートル幾らといって、それから全体が出るのです。建築でも一坪幾らとして込みにしてやるのです。それがどうなっておるのかということを聞いている。
  278. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 お答えを申し上げます。ただいま申し上げましたのは甲型警備艦でございます。本年度に計画をいたしておりますところの大型駆潜艇、これが一億九千八百万円。
  279. 横路節雄

    横路分科員 二隻でですか、一隻でですか。     〔主査退席、宮澤主査代理着席〕
  280. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 失礼をいたしました。本年度計画をいたしておりますものを全部申し上げます。継続費といたしまして、三十一年度予算で認められました潜水艦は一隻であります。総額が二十七億一千八百万円でございます。それから同じく継続費で三十二年度に認められました甲型警備艦、これは本年度予算で増額をお願いいたしておりますが、それが認められますと、二隻でもって三十八億六千九百万円でございます。それからその他三十二年度の中型掃海艇三隻でございますが、この総額が十六億九千百万円、大型駆潜艇二隻、これの合計が十億九千八百万円、小型掃海艇二隻の合計一億八千八百万円、救命艇一隻七千五百万円、それが今まで計画いたしておる分でありますが、そのほか本年度初めて建造にかかります分といたしまして、三十三年度甲型警備艇二隻で四十一億九千三百万円、中型掃海艇四隻で二十二億四千七百万円、大型駆潜艇二隻で十億九千六百万円、救命艇一隻七千五百万円、以上でございます。
  281. 横路節雄

    横路分科員 千三百二十機の先ほどの機種の内容については、そのうち九百機は実用機、輸送機、偵察機、迎撃機である、こういうので、F86Fは今生産をやっている。練習機のT33についてもやっている、こういうわけですが、F86Fについては、一台幾らで一時間あたりのガソリン代は幾らになっておりますか。
  282. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 一台当りの単価は一億三千七百万円と計算いたしております。燃料は一時間当りどれくらい使うかということは、はっきりわかりませんが、私の記憶するところでは、約、六、七万円ではないかと思っております。
  283. 横路節雄

    横路分科員 先ほど御説明がございましたが、三十二年度でやる甲型警備艦二隻について、三十二年度では資材の値上りその他でできなかったので、三十三年度の予算で追加といいますか、その点を組んでもらってそれが通れば新たに注文するということですが、その三十二年度に組んであったが、実際には資材の値上りでできなかったというのは、今度三十三年度には、その値上り分として幾ら組んであるわけですか。
  284. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 三十二年度甲型警備艦の継続費で三十二年度予算でお認めを願いました総額は三十六億六千九百万円でございます。本年度予算で追加をお願いしました、いわゆる改訂分は一億九千九百万円、合計いたしまして三十八億六千八百万円でございます。この継続費と申しますのは、その事業全体を三カ年に完成するということを絶対としてお認めを願っておるというものでありまして、必ずしもその分を本年度に全部契約するという計画にはなっておりません。三十二年度予算をお認め願いましたときの計画といたしましては、甲型警備艦二隻のうちで船体につきましては一隻、エンジンにつきましては二隻というふうなものを三十二年度中に契約をして、残りは三十三年度中に契約をするということでございます。今申しました一億九千九百万円の増額分というのは、これは主として艦種を変更いたしましたことによるものであります。その分は初めから三十三年度に契約をするものと考えておった分の増額分でございます。
  285. 横路節雄

    横路分科員 今の説明で私もちょっと理解ができないことは、三十二年度の甲型警備艦二隻については三十六億六千九百万円組んであったが、そのうちの一隻はもともと三十三年度に注文するはずだった、こういうのですか。それは一体どういうことでしょうか。国の予算で一隻にしますと約十八億四千万近くのものが——私は大蔵省の主計官にぜひお尋ねしたいのは、今お聞きの通り、甲型警備艇二隻については三十六億六千九百万円、しかし初めから一隻は作らないのだ、初めから一隻は三十三年度でやるのだ、こういうことで三十二年度の予算を組んだのでしょうかね。これは私はぜひ一つ大蔵省の主計局長がいなければ主計官にお尋ねをしたいのです。そういうことが予算の技術上できるのかどうか。初めから、三十二年度には契約しないのだ三十三年度でやるのだというものを予算に組んだのか。私は大蔵省に、そういう予算を作ることを許したのがどうかと聞いている。
  286. 船後正道

    ○船後説明員 三十二年度艦につきましては、三十二年度予算計上の際に継続費といたしまして三十五億六千九百万円を計上したわけでございます。艦種といたしましてはいわゆるDDAと申しまして対空関係の武装を主とした艦種であったわけであります。     〔宮澤主査代理退席、主査着席〕 その後防衛庁におきましてそれの設計を変更いたしまして、一隻だけはその他の対潜関係の武装に若干重点を置いた艦型に変更いたしました。主としてその理由をもちまして約二億ばかりの不足を告げました。追加額といたしましてこれを三十三年度の予算に計上し、総額三十八億六千八百万円、かようになったわけであります。なお、継続費の制度は三カ年間にこれを完成する、かように相なっておりまして、三十二年度の予算としましては年割額七億三千百万円を計上いたしました。大部分は三十三年度以降の支出、かように考えておるのでございます。そこで、今回追加いたします二億円に相当する部分は主として武装関係でございます。その契約は当初から三十三年度以降に行う予定でございます。
  287. 横路節雄

    横路分科員 今のあなたの答弁で、一隻についてはあとで艦種について変更を見たのだ、そうすればこれは防衛庁長官から大蔵大臣の承認を得ているわけでしょう。そして一隻については三十三年度に繰り込ましたわけですね。まさか初めから予算を編成するときに、一隻は三十三年度でやりますというて組んだものではないでしょう。あとになって、艦種について変更があったから防衛庁長官は大蔵大臣に承認を求めて三十三年度に繰り越して、三十三年度でさらにあなたが言うように二億近くのものを組んでやることになったのでしゃう。どうなんです。その通りでしょう。
  288. 船後正道

    ○船後説明員 その点につきましては、三十二年度で年割額として計上いたしました七億三千万は主として船体等でありました。武装関係はいずれも当初から三十三年度以降に契約する、かようなわけになっておりました。従いまして契約の仕方につきましては今回のこの追加額の計上によりまして変更することはない、かように考えております。
  289. 横路節雄

    横路分科員 あなたの言う通り、年割で七億なんぼ組んであるというのだから、それは船体しかできないことは当然だが、その船体についても、一隻を繰り越したのでしょう。ですから、その船体についても艦種についてあとで変更したのだから、従って船体も注文しないで、なお資材の値上りもあったろうから持ち越したわけでしょう。初めから二隻の船体について一隻は三十三年度からやりますということをあなたの方で承認してやったのですか。
  290. 船後正道

    ○船後説明員 建造の計画につきましては当初から二隻とも三十二年度からスタートする、かようなことで予算を計上したわけであります。
  291. 横路節雄

    横路分科員 今の大蔵省の話の通りであります。私は防衛庁の答弁はどうかしておると思う。初めから一隻については三十三年度でやるつもりで予算を組んだなんということになったらそれは大へんなことですよ。これはあとで主計局の方から話があったように艦種の変更を見てあとで承認を得てやったことだろうと思う。  そこで私は防衛局長にお尋ねをしたいのですが、これは十二万四千トンの内訳につきましても大体わかりましたし、それから九百機の実用機の内容についても大体わかったわけでありますが、これで大体三十五年度の防衛庁費はどのくらいになるかということの予定は全然ないのですか。幾らになるかわからぬが、飛行機と軍艦と人間だけはそろえておく、こういうわけですか。しかし、今あなたが言ったように国民所得の二%強を組むのだ。こういうようにやっていると言う以上は、国でも経済五ヵ年計画で経済の毎年の膨張率というか成長率は一応見て国民所得を見ているのだから、これで大体三十五年度の防衛庁費は幾らになるのですか。それも見当つきませんか。
  292. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 お答えをいたします。三十三年度予算には当然に後年度に負担を生ずる分が入っておるわけでございます。従ってそういうものをプラスいたしまして、そうして本年度つまり三十三年度の増勢分というものを引いて計算をすれば、ある程度三十四年度の維持分というものは出て参るのであります。従ってそれを計算いたしますとどういうことになるかと申しますと、三十三年度予算におきましては千二百億のうちで、いわゆる維持分に相当いたしますものが千五十億、増勢分に相当いたしますものが百五十億というふうに大ざっぱにわかれるわけでございます。維持分と申しますのは、いろいろむずかしい内訳になっておりますが、大体の概念を申し上げますと、その年度の初めに持っておるところの人員、また船についてはDDA、空については飛行機、海については航空機と艦船といったような装備の一年間の維持費、すなわち前年度の増勢分の経費を平年度化いたしましたところの維持分、並びに年度の初めに前の年度からすでに約束済みであったところのいわゆる国庫債務負担行為で持ち越してきたところの分、そういうようなものの当年度に歳出化する分を合せて総称するわけでございます。それが三十三年度に計算いたしますと、今申し上げましたように大体千五十億、そういうことになります。  そこで本年度の国庫債務負担行為で来年度の負担になるもの、それから本年度の増勢となります人員その他で平年度化しますことによって当然に維持分になります、この二つが来年度ふえて参るわけでございますが、両方合せまして私の概算で大体百億と考えるわけでございます。従って今の維持分の千五十億に百億加えたくらいのところが当然三十四年度にふえてくる分というふうに考えております。これではもちろん三十四度の新規増勢分が入っておりませんから、それをどの程度に見るかということによりまして来年度のワクがきまる。同じようにして三十五年度も大体の推移がわかると思うわけでございます。しかしこれは一応の推定でございまして、その予算を組むときになりましてどういうふうな数字が出るかということは今から正確に申し上げるわけには参りませんが、一応そういうふうな見当で御了承を願いたいと存じます。
  293. 横路節雄

    横路分科員 今あなたの説明からすれば、三十五年度の防衛庁費は出ますよ。今あなたは本年度については千二百億だが、三十三年度の当初の維持費というものは千五十億だ、本年度は百五十億ふえるのだ、来年は当初において千百五十億が維持費だ、そうなってくれば来年ふえるのは幾らか。今年より約二百億ふえれば来年は千三百五十億になる。この千三百五十億のうち、昭和三十四年度の当初の維持費というものはどうかということになると、今のあなたの話から当初の維持費がかりに千二百五十億ならばそこでふえて何ぼかということは出てくるのではないですか。あなたはそういうふうに計算しておるでしょう。そういうふうに計算しておればこそ、来年度当初の維持費は大体千百五十億になるのだ。三十五年度の防衛庁費は一体幾らになるか、あなたの今の説明を次々に伺うと、そうなってくれば、再来年のことですよ、幾らになるのかということを聞いておる。一つ率直にお答えをいただきたい。何もきょうは総括質問ではないのですから、きょうは私は数字その他をしっかりお聞きしたいと思っておるものですから、御答弁をいただきたい。
  294. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 今申し上げましたのはほんの概数と申しますか、私の腹づもりを申し上げたわけであります。それで要するに今年度の維持分というものに来年度当然ふえてくるところの分を加えれば大体その辺であろう、それはほかのファクターが動いても動かなくとも大体その辺のところは比較的かたい数字ではなかろうかと思います。しからば来年度の増勢分を幾らに見るか、今年の百五十億の増勢に対して来年度幾らに見るかということは、これはなかなか計算がむずかしい。これは先ほど防衛局長から申し上げましたように、ある程度国防会議の決定の結果、防衛計画の総ワクというものがきまっておりましても、その中身をなしますところの装備の態様によって経費は非常に動いてくるわけでございます。従って三十四年度が幾らになるか、あるいは三十五年度が幾らになるかということの総ワクにつきましては、積算する方法がないわけであります。
  295. 横路節雄

    横路分科員 きのうあなたの説明のうち、海上自衛隊のところに「昭和三十三年度末の海上自衛隊の保有航空機は百九十七機となるわけであります。なお、このほか、昭和三十二年度におきましては、新たにP2V対潜哨戒機の国内生産を開始することにいたしております。」こういうのです。この点についてお尋ねをしたいのですが、これは新聞の報ずるところによりますと、「P2V大型対潜しょう戒機国産化に伴う日米間の経費分担の折衝がまとまり二十五日防衛庁でこの生産協定の調印が行われる。P2V機は川崎航空機会社が生産を担当し、三十七年度末までに四十二機を国産する計画で、この総経費は約三百七億円である。これを日本側約百五十一億円、米国側が約百五十六億円それぞれ分担することになった。」これは事実でしょうね。私はこの点について注意をしておりましたところが、きのうあなたは説明の中で、三十二年度から新たにP2V対潜哨戒機の国内生産を開始することになったと言われた。これはどういう計画でおやりになるのか。今私が読みました日米間のいわゆる経費分担の折衝でまとまった三百七億円について、そういうふうに負担区分が明らかになったのかどうかと注意をしておったら、きのうあなたが説明しましたから、この点について明確な御説明をいただきたい。
  296. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 お答えいたします。今お読みになりましたのは事実でございます。一月二十五日にすべてのネゴシエーションが終りまして、両方で取りきめを結びました。その内容は米側が技術援助、それからライセンスとか、エンジンだとか、そういう日本でできない材料その他を負担してもらって、日本は治工具の一部、日本でできます材料、それからレーバー・コスト、労賃そのほかの雑費を負担いたしまして、三十三年度から仕事を始めまして、十八カ月かかりますから、第一機が三十四年の十月にできる。以後月産一機ずつできて参りますので、三十四年度は六機、三十五年度十二機、三十六年度十二機、三十七年度十二機、総計四十二機というものを作っていこう、こういうことにしたわけであります。それでネゴシエーションではさっきお話がありましたように、総額三百七億、それを先方が百五十六億、当方が百五十一億、その内容はさっき申し上げましたような内容のものをそれぞれ負担するということになっております。
  297. 横路節雄

    横路分科員 米国側の負担の百五十六億というのは何になるのですか、贈与になるのですか。
  298. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 相互防衛援助協定というのを結んでおります。それに基く供与になります。
  299. 横路節雄

    横路分科員 防衛局長にお尋ねしますが、今のように三十七年度末までにこういう計画がきまっているのです。これはすでに日本側で百五十一億、これを見ると一応五ヵ年計画ですね。三十四、三十五、三十六、三十七。去年の国防会議によって、岸総理がアメリカヘおいでになって日米共同声明を発表する前に新聞にも出ておる防衛計画、それをあなたの方では、一体こういうように新聞に出されればやむを得ないで答弁するが、そうでなければどうも機種についても艦艇についてもはっきりしない。トン数だけはきめられるが、三十五年度の防衛計画に伴う防衛庁費は大体どのくらいになるのか、それも見当つかないというようなことでは、あまりに国会を無視することになりませんか。もう少し私は率直にあなたはお話をなさるべきだと思うのです。小山政務次官いかがですか。
  300. 小山長規

    小山(長)政府委員 お答えいたします。これは率直に申し上げて今防衛局長か申し上げた通りであります。横路委員はたぶんこういうお尋ねかと思うのでありますが、今きまっている、たとえばP2Vあるいは潜水艦あるいは警備艦、そういうすでに年度割がきまっているものは既定の経費として、そのほかに、たとえば海でいうならば十二万四千トンに達するものを今の割合、たとえば警備艇と掃海艇の割合とか、そういう割合でやった場合には幾らになるか、あるいは、たとえば今航空機はF86Fを使っているが、そのF86Fをそのまま使うとすれば幾らになるが、こういうお尋ねならばそれは出るのです。それは出ますが、しかしそれでは今の昭和三十五年度末に一体幾らになるかという答えにはならない。というのは先ほど防衛局長から申し上げたように、たとえば戦闘機についてもF86Fは終ってしまう。そこで新機種を慎重に検討しており、これはあと一、二カ月できまりましょうけれども、その単価は幾らになるか、日米の防衛分担の割合が幾らになるかきまっていない。海の方でいうならば、警備艦なら警備艦を何隻作るのか、あるいは駆潜艇を何隻作るのかというようなことは、これはきまっていない。大よそのワクはきまっておりますが、きまっていない。そうすると、しいて言えば今持っている割合でやるという仮定のもとになら出ます。しかし今持っている割合のままで行くかどうかについては、そういうものをきめているわけじゃないのです。だからこれは率直に申し上げて大よその見当、たとえば昭和三十五年度末にどのくらいになるかということを、わかっている部分から推すところの推定、それから現在のものを使うならばという前提のもとにおける推定、これならば出ますけれども、横路委員のおっしゃる意味の三十五年度末幾らということは出ないというのが率直なところであります。
  301. 横路節雄

    横路分科員 それじゃ防衛局長にお伺いします。今の機種、今の艦艇の本年度の計画がそのまま伸びたという場合には三十五年度の防衛庁費は幾らになるか。ただいま政務次官からお話があって、それならできるということですから、それならそれをお答えいただきたい。私はそれでもいい。
  302. 小山長規

    小山(長)政府委員 それは今直ちにここでその数字を出せと言われても、率直に申し上げてその準備をしておりませんので、ぜひとも出せというならば明日までに作ります。
  303. 横路節雄

    横路分科員 これは明日私の同僚諸君も質問をいたしますから、明日の分科会までにぜひ一つ出していただきたいと思います。  次に、やはり同じく昨日説明されました昭和三十三年度の防衛庁予算一般説明の中にこういう説明がございました。これは陸上自衛隊ですが、「自衛官一万人の増勢に伴う経費は二十六億千八百万円でありまして、その他の経費六億三百万円は、自衛官以外の職員百人の増勢、装備、施設等の増強に必要な経費であります。自衛官一万人の増勢に必要な経費は(項)防衛庁におきましては二十五億千百万円でありまして、施設整備といたしまして、(項)施設整備費一億六百万円、(項)施設整備等附帯事務費百万円を計上いたしております。こういうのであります。そこでお尋ねしたいのは、私どもが考えておりましたのと、今防衛庁から出された自衛官一万人の増勢に伴う経費は二十六億一千八百万、その内訳をたとえば俸給幾ら被服はどう、くつはどう、食糧はどう、何はどう、こういうように一つ全部お話をしていただきたい。一体自衛官一万人の増勢に伴ってどうなっているのか。これは一つぜひお答えをいただきたい。
  304. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 大ざっぱに申し上げまして、一万人増勢に伴う経費は二十六億一千八百万円。その中で初度費に要するところの経費は約十五億、残り維持費が約十一億円というふうに御了承願います。これはあるいは誤解される向きがあるかと思いますが、今度一万人とりますものは、二十として採用するわけであります。従って非常に俸給単価が安くできております。人件費はせいぜい八、九万程度のものであろうと思います。従いましてそれの維持費が非常に安くついておるということは、全体の、たとえば自衛官一人当りの維持費が約三十万円弱もかかるといったような計算とは合わないことになるわけでございます。
  305. 横路節雄

    横路分科員 私も不明な点があるのでお尋ねするのですが、今の人件費一人当り八、九万というのは俸給だけのことですが。
  306. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 俸給だけを計算してあります。
  307. 横路節雄

    横路分科員 私はあとで国税庁の方にお尋ねをしたいと思っているのですが、あなたの方でこの予算書に出してあるので糧食費というのがございますね。七十五億から組んである。これは何になるのですか。この糧食費七十五億というのはどこに入るのですか。
  308. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 これは当然維持費の中に入ってございます。
  309. 横路節雄

    横路分科員 そこでお尋ねしたいのですが、一人当り年間の糧食費は幾らに見ているわけですか。
  310. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 本年度の予算におきまして計上してあります糧食費を陸上自衛官一人当りに計算いたしますと三万四千二百八十五円になります。
  311. 横路節雄

    横路分科員 これは大へん恐縮ですが、一日幾らになるわけですか。計算しているならば一日幾らになって主食はどのくらいで副食がどれくらいになるのか。これは私ちょっとあとでほかの点について質問したいので、この点一つ詳しくお話をしていただきたい。
  312. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 基本糧食費といたしまして一人当り百円六十銭でございます。そのほかに職種によって若干の割増しがついてあります。
  313. 横路節雄

    横路分科員 これは大へん恐縮ですが、主食と副食の割合をお尋ねしたい。
  314. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 ただいま申し上げました百円六十銭の中で、主食費は四十五円四十九銭でございます。計上は、内地精米が三百二十グラム、外米が八十グラム、人造米八十グラム、精麦二百十グラム獣魚肉百八十グラム、生野菜六百グラム、以上であります。
  315. 横路節雄

    横路分科員 そうしますと初度費というものは何々を言っておるのですか。初度費十六億の内訳は……
  316. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 大きいものだけ申し上げますと、被服費三億三百万円、編成装備費に八億三千三百万円、施設整備費一億七百万円、これがおもなものです。
  317. 横路節雄

    横路分科員 今の食糧というのは何になるのですか、俸給の一部ですが。
  318. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 糧食費でございます。
  319. 横路節雄

    横路分科員 糧食費ですか。これは俸給の肩がわりしたものですが。それとも何になるのですか。
  320. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 俸給とは全然別のものでございます。
  321. 横路節雄

    横路分科員 性質は何ですか。大蔵省にお尋ねいたしますが、糧食費というものは何になるのですか。俸給に準ずべきものですか。
  322. 船後正道

    ○船後説明員 お答え申し上げます。条文は忘れましたが、自衛隊法で、自衛隊員には食糧を給することになっております。その規定によってやっております。
  323. 横路節雄

    横路分科員 これは食糧を給するわけだが、大蔵省の税制第一課長にお尋ねしたい。これは税の対象にはなっていないのですが、ならない根拠はどうなんですが。
  324. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 お答え申し上げます。税の性質から申し上げまして、名目のいかんにかかわらず、私どもは給与と認められるものは給与、こういう解釈をとっております。ただこういう給与の仕方の性質から見まして、現在強制的に支給されるものにつきましては、実際の扱いがありません。課税をしない取扱いがされておるものがございます。たとえば船員の食糧費、これに準ずるものといたしまして、防衛庁の食糧費につきましても同様な扱いをされておる、こういうことでございます。現物給与的なものの課税については非常にむずかしい点がございます。本来ならば私どもは所得であると存じております。ただその評価の困難さの問題、それからもう一つ申し上げますと、選択性のないというような問題、これらがございますので、その取扱いにつきまして非常にむずかしい問題がございます。終戦後現物所得が非常に多かったような状態におきまして、種種の取扱いがなされておりますけれども、防衛庁の今の糧食につきましては、今いったような強制的に支給される事情から見まして、本来のような取扱いが行われておるわけでございます。
  325. 横路節雄

    横路分科員 税制第一課長にお尋ねしますが、今のあなたのお話では、これはやはり現物支給に類するもので、従って課税の対象にはなるのだが、船員の食事その他等の例もあって取らないんだ、こういうわけですか。その点はっきりしてもらわないとあなたの話では……。
  326. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 さようでございます。
  327. 横路節雄

    横路分科員 そうすると今の大蔵省税制第一課長の話で、これは明らかに給与の一部なんです。ただ現物支給なんです。だから税は取れない、こういう話であります。私も給与の一部だと思います。本来から言えばこういうことをしないで、今お話のございました二万四千二百八十五円については、これは全部俸給として支給すべきなんです。そのことが正しいんです。選択の自由がないということになったら、会社や工場等に勤めている者でも寮に入っている者は選択の自由はないんです。月曜日の晩は何、火曜日の晩は何とちゃんときまっているんです。そこであなたにお聞きしたいのは、税の対象にならぬというなら——私は何も税を取れとは言わないのです。ここに警察庁の役人もおるからよく聞いてもらいたい。警察官が夜勤をしておる、それに実際には夜食を出しておる。鉄道の職員、郵便局の職員、電信電話でどうしても夜勤をしなければならぬ、それに夜食を出しておる。それをわれわれがいろいろ話をした結果、あなたの方では全額免除しないで、月七百円に限って税の対象にしないなんという実にけちくさいことをしておる。だからあなたの方でこの解釈をやって——警察庁の方よく聞いて下さいよ。防衛庁だけやってあなたの方はできないなんということはないんだから。そういうように一般民間においても夜勤等において実際に食糧を出している。それであなたの方は今後、今までのように七百円に限って免除するなんということをしないで、当然私はこれを及ぼして全額免除すべきだと思うのですがどうですが。
  328. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 私が申し上げましたのは給与の支給形態によらないで税制上そういうふうに見ることにいたしておりますので、予算の上におきましてどういう名目で出すか、これは私ども関知するところではない。ただ税法の示すところによってその所得を分析いたしましてそういうふうに考えた次第でございます。ただいま現物給与の問題が出ましたが、この現物給与は種々のいきさつがございまして、戦後しばらくの間、先ほども申し上げましたように、相当現物給与が多く行われておったその沿革が残っております。そこで私どもは少額の所得、特に現物給与につきましてはしいて追究しないというような工合でやっておりました。現在の扱い必ずしも私どもいいとは思っておりません。これはやはり根本的に考え直しまして、早く所得は所得だという線は貫いて参りたい。ただ先ほど申し上げましたように、現物支給には評価の困難性あるいは選択ができないといったような事情もありまして、そのあたりをどういうふうに考えて参りますか、所得を全部分析しますれば現物所得にも分解できます。そういうことになりますと課税すべき所得はないということにもなりますが、現物所得の性質を見てやって参りたい、かように考えておる次第でございます。
  329. 横路節雄

    横路分科員 税制第一課長の話はちょっと前に戻りましたね。あなたは今本来ならば、やはり所得は所得として税金を取るべきだ、こういうことを言っている。先ほどはそうではなしに、これは現物支給で船員の場合にも食事は取っていない、だからこれもそれを及ぼして取らない、そうなれば、私が言っているのは取れと言っているのではない。だから警察の方にも取るなと言っている。警察の職員だって同じでしょう、電信電話の諸君だって鉄道だって、その他民間だって同じなんです。現物で出している。それを月七百円を限度としてそれだけは控除するなんということは言わないで、現物支給のものは全部税金は取らないんだ、こうお答えになった方がいいでしょう。そうしないとなかなかきまりません。
  330. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 同じことを申し上げて恐縮でございますが、おそらく先生も大蔵委員会で十分御存じの通りでございます。七百円の経緯もすでに御存じの通り、また交通費につきましても何度も議論になったところで、こういうものをだんだんはずしてしまいますと、課税すべき所得というものはほとんどなくなりはしないかと思うくらいでございます。沿革について申し上げますと、戦後一時現物支給の非常に多かったときから引き継ぎました制度でございます。私どもはそれに見習って課税方式を考えるべきではないか、かように考えておりまして、これを広げまして、全部非課税にするということはできないと考えております。
  331. 横路節雄

    横路分科員 税制第一課長が、きようみんな税金を取りませんというとこれは大問題でしょうから、これはあすでも国税庁の長官に来てもらって話をしたいと思います。  そこで私は次に会計検査院の方にお尋ねしたいと思います。それは昭和三十一年度の決算の検査報告をあなたの方で出してきたのですが、私は防衛庁の質問をやっていますから、防衛庁に関してお尋ねします。これを見ますと、ほとんど随意契約なんです。一体ここにあるのは工事がみんな不当である。たとえば防衛庁の仙台建設部でやった昭和三十一年の八戸の飛行場の滑走路の工事で、三千四百万円が割高になっているのだ。ここにその内容について丁寧に防衛庁ではじいた予定価格が不当なんだ。それで会計検査院が適切と認められるものはこうなるのだということが出ています。私は先ほどずっとこれを調べてみましたら全部随意契約です。会計検査院の方は、防衛庁につきましては随意契約でやることを根本的にお認めになっているのかどうか。随意契約とは一体どういうときにやるのか、その点について会計検査院の方にお尋ねしたい。
  332. 池田直

    ○池田会計検査院説明員 お答えいたします。ただいま御指摘の三十一年度の検査報告に指摘されておりまする防衛庁の不当事項、御指摘の通り随意契約の分もございます。それから今御指摘の分の工事は指名競争入札を行なったが、落札に至らなかったから随意契約にいたしたという性質のものでございます。それは別といたしまして随意契約もかなりございます。これはそれぞれ会計法なりまた予決令によりまして、防衛庁は随意契約をいたしておるのでございまして、法令に違背しておることがございますれば、私どもといたしましては、これを不当といたして警告を発する次第でございまして、ただいま御指摘の分の指名競争後に随意契約を行なったのは、適法と考えておる次第でございます。
  333. 横路節雄

    横路分科員 それでは初めから随意契約をするものについては、何の条項を適用しているわけですか。たとえば会計検査院で指摘しているのですが、「防衛庁陸上幕寮監部で、昭和三十一年三月、随意契約により株式会社日本製鋼所から三回にわたり云々」とこうなっている。こういう随意契約は何によって随意契約を認めているのですか。
  334. 池田直

    ○池田会計検査院説明員 防衛庁の随意契約をいたしておりまする関係の事項の根拠法規でございまするが、これは予算決算及び会計令に「随意契約によることができる場合」といたしまして事例を掲げてございます第九十六条でございますが、この規定によりますると「一般の競争に付することを不利と認める場合の外、左に掲げる場合においては、随意契約によることができる。」ということで、二十四項目掲げております。そのうちの大部分のものは、「契約の性質又は目的が競争を許さないとき」大体こうした関係のものが多いと考えております。「契約の性質又は目的が競争を許さない」というような性質のものは、たとえば物を納めるような場合にその納入者が限定されており、ほかにそれを発注したりすることができる業者が少いという場合が多いのでございます。
  335. 横路節雄

    横路分科員 予算決算及び会計令の第九十六条については今あなたの指摘の通りですが、そうするとたとえばあなたの方でここに指摘されておる問題につきましては、日本製鋼所——ここには一つ日本製鋼所の問題が出ているのでありますが、それは何に該当するのですか。「契約の性質又は目的が競争を許さない」それは他の会社ではできない、そこだけしかできないという意味なんですか。あるいは第二番目には「急迫の際競争に付する暇がない」そういうことではないと思う。また「国の行為を秘密にする必要があるとき」これは別に軍機に関する秘密保護法が、MSA協定によるものはあるけれども、その他のものはないのです。会計検査院はそういう点は指摘しないのですか。ただ価格については不当とかなんとかいうことは言うが随意契約その他についての根本的な問題はどうなんです。  それから装備局長に伺いますが、主として艦船の発注はどうなっているのですか。指名入札になっているのか、随意契約になっているのか。競争入札はどうかわかりませんがその点はどうなっているのですか。何が主なんですか。
  336. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 艦船の発注は、従来は随意契約でやって参りました。条項は先ほど会計検査院の方からおっしゃいました九十六条一号でやっております。ただ艦船はその性質上設計その他の点で非常にむずかしくて、一ぺん作りました船は詳細設計ができますとどういうものを作るかということが細部にわたるまでわかるわけでありますが、初めての船あるいは少し内容が変った船のようなときには、こういう船を作れということを示せないわけでございます。詳細なところは業者が契約後先に設計を作りまして、その図面をこちらが承認しながらだんだん仕上げていくような関係もあります。また戦後長い間船を作らなかった関係もございまして、競争条件のもとになる要素が不確定だというようなことがありましたので、そういう随意契約をやってきたわけでございます。ただだんだん船を作って参りましてなれて参りましたので、今後はなるべくそういう船ができそうな会社が二社以上ある場合には見積書をとりまして、詳細な条件をこちらが満足すれば、値段の安い方をとっていくというやり方を逐次入れて参りたいと存じておる次第でございます。
  337. 横路節雄

    横路分科員 そうすると今までは随意契約で予定価格を示してやったんだ、こういうことですね、見積書等はどうなっていたのですか。
  338. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 これまでは随意契約でこちらが予定価格を持っておりまして、向うに念を押して予定価格まで引き下げるというやり方でございます。
  339. 横路節雄

    横路分科員 今のあなたのお話の随意契約は、予算決算及び会計令の第九十六条一号で、あなたの方では、「契約の性質又は目的が競争を許さない」んだ、だから随意契約でやったんだということです。ところが第九十九条の二には、「予定価格の決定」として、「予め第八十六条の二及び第八十六条の三の規定に準じて予定価格を定めなければならない。」そして第百条には「随意契約によろうとするときは、なるべく二人以上から見積書を徴さなければならない。」となっておる。ところがあなたの話を聞くと、今までやったことはない、これからはできるだけ二人以上から見積書をもらおうと言う。私はここに問題があるのではないかと思う。だからこの間の総括質問のときにもありましたように、三十三年度の船で、随意契約なんです。見積書を二つ以上とらぬのです。一つだけなんです。相手方が私の方ではいやですと言えば、そこにしか注文ができないから、三十三年度の予算にはまた増額予算を出して、それが通らんければならぬ。こういうやり方はどうなんでしょうか。なるほど戦後において、あなたの方では、造船所の機能その他が十分でないので、やむを得ずそれは一ヵ所しかできないのだということになるかもしれませんけれども、この予算決算及び会計令はそうなっておる。こういう点は会計検査院はどういうように調べて指摘しておるのですか。あなたの方ではそういうことは全然やっていないのですか。ただ出た結果だけを見てやるのですか。この予算決算及び会計令には明らかにそういう手続を示しておる。そういう点はやっていらっしゃるのですか。
  340. 池田直

    ○池田会計検査院説明員 ただいまの御質問の件でございますが、随意契約による場合も、もちろん今言われましたように、見積書を各省ともとるように私どもも検査の際に十二分に注意をいたしておりまして、今御指摘のような事項がございまして、かりに国に不利を及ぼすような事態が起った場合には、その都度注意いたしております。
  341. 横路節雄

    横路分科員 どうも会計検査院も、なるほど金額については見たかもしれませんが、やはり問題の点は随意契約にある。これは私は防衛庁とは特に言わないけれども、もしも道路工事その他であれば、随意契約をやるか指名入札をやるかということは——随意契約をやればいかほど利益があるかわからぬというのが業界一般の話です。だから随意契約をやることにみんな一生懸命になる。それをあなたの方では平気で——平気でとは言わぬけれども、随意契約についてもっとそこら辺のことを厳重に会計検査院はやってもらわなければ困りますが、あまりおそくなっても困るから、その点もっと指摘したい点がありますが、経理局長にお尋ねしたい。あなたの方の予算書に報償費四千五百万円というのがあるのですが、私はこれは交際費かなと思って調べましたら、交際費は五百十八万七千円というのがあるわけです。これは一体何なのでしょうか。私はこの点についてよくわかりませんので、報償費とはいかなるものか明らかにしてもらいたい。
  342. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 大きく分けまして見舞金でありますとかあるいは報奨金でありますとか、そういうふうなものになっておるわけでございます。たとえば災害出動をいたしまして非常に挺身して殉職した職員に対して長官から見舞金を出すといったような例、あるいはまた募集事務に非常に協力してくれました民間の人に対して御礼金を出すといったようなものが報償費であります。
  343. 横路節雄

    横路分科員 それはあなたの方には目として諸謝金というものが二千五百七十五万六千円ある。これは何ですか。募集事務に携わったからお礼をする、それなら諸謝金じゃないですか。これは何なんですか。
  344. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 諸謝金と申しますのは、普通の契約に伴いまして払うところのものでございます。
  345. 横路節雄

    横路分科員 そうすると、契約に伴ってというのは、防衛大学の講師とかなんとかいうものですか。あなたの方で報償費の中に機密費的な意味を含んだものはありませんか。たとえば海外の軍事情勢に関するものとかなんとかいうものを、いろいろ資料を届けてきた。そうすると、あなたの方で、そうか、お前は五万だ、お前は十万だ、こういう金は入っていませんか。
  346. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 ある程度情報を提供してくれた人に対する謝金も入っております。
  347. 横路節雄

    横路分科員 これは会計検査院にお尋ねしますが、防衛庁の方ではだいぶこういうふうに報償費がある。今お話のように、情報を提供した人に対してはお礼の金を出す。これは会計検査院で幾ら出ておるということが調査できますか。——私はできるかできないかと聞いておる。ちょっと言葉がきつかったんですが……。
  348. 池田直

    ○池田会計検査院説明員 報償費の検査はいたしております。
  349. 横路節雄

    横路分科員 それでは私は会計検査院にお尋ねしますがね。実は衆議院の決算委員長が、会計検査院に対して、昭和三十一年度の決算——これはきまったんです。あなたの方から報告になっている。それで、一つの例として、防衛庁の三十一年度の報償費は三千三百六十万、その内訳を示してもらいたい、こういうように決算委員長から要求したところが、あなたの方では示されない、こういうように答弁があった。今あなたは調査していると言う。決算委員長から会計検査院の報告を求めたら——三十一年度の決算確定の分ですよ。報償費については調査できません、こう言っておる。これはどちらがほんとうなんですか。
  350. 池田直

    ○池田会計検査院説明員 三十一年度の各省の報償費も調査はもちろんいたしております。ただ報告できないという状況にありますということなんでございますが、その点は、会計検査院は、御承知通り、各省の支出の内容の詳細につきまして証拠書類をとっております。しかし、いろいろな経費その他につきましては、会計検査院立場から、各省から詳細な証拠書類を毎月とる必要を認めません関係から、簡略に証明をさしておる事例がたくさんございます。そのうちの一部に報償費もございます。それを支出いたします場合の小切手の受取人につきましては、もちろんこれは調べて証拠書類が来ておりますが、そのこまかい使途でございます。それは、証拠書類は実地検査の際に支出官が整理いたしておりますので、それを見ておる次第でございます。ですから、今検査院に対して、支出の関係、種々雑多なものでございますが、それを詳細に報告しろということがございましても、それはこっちの方で今わかっておりません、こういうふうなことでございまして、実地検査いたしておりまして、これを検査完了いたしております。
  351. 横路節雄

    横路分科員 そうするとあなたの方では検査完了しているのだから、決算確定したものについては、国会へ出せと言えば出せるわけですね。これはどうなんですか。あなたの方では一つ一つ当って調べている。ただおれのところにその証票がないだけで向うにあるのだ、国会が要求したら出せますね。
  352. 池田直

    ○池田会計検査院説明員 ただいまの点は、各省から直接おとりになった方が、かえってよろしくはないか。はなはだ差し出がましい意見でございますが、さよう御了承願います。
  353. 横路節雄

    横路分科員 それは会計検査院事務総長のお言葉としては私はおかしいと思う。会計検査院は私たち国会に、昭和三十一年の決算検査報告としてこんなものを出している。ところがそっちの方になったら、いや私の方に聞くよりは各省に聞いてもらったらいいということはおかしいのじゃないですか。ほかのことを聞いているのではないのです。三十一年度の決算確定の分なんです。私はあとでまた聞きますが、事務総長、私はあなたの考えはどこか間違っていると思いますよ。  次に、防衛庁や会計検査院の方にお尋ねしますが、実は法務省の方にお尋ねしたいと思っておりますので、大へん恐縮ですが……。きのう私の方に配付になりました法務省所管昭和三十三年度予算予定経費要求説明要旨という中にこういうことがあるのです。「次に収容者食糧費でありますが、矯正関係施設の刑務所、少年院、少年鑑別所の薬代一円の増額による三千四百十万円の増額」一円、あなたの方で増額をした。私どもよく少年院から脱走するのを新聞記事で見ると、その少年は腹が減ってしょうがないから脱走したんだというのもある。そこで私は法務省の方にお尋ねしたいのだが、大へん私は食糧の話を聞くようで恐縮ですが、刑務所では一日幾らの食糧費、少年院では一日幾らの食糧費、少年鑑別所では一日幾らの食糧費になっているのか、その点をちょっとお知らせいただきたい。
  354. 大澤一郎

    ○大澤政府委員 お答えいたします。昭和三十三年度予算につきまして、刑務所の成人受刑者一日当りの米麦並びに薬代、六十円四十一銭、少年受刑者六十六円六十九銭、少年院が六十五円六十銭、少年鑑別所が六十四円九十一銭、米麦、薬代を含みます。そのほかに少年院等につきましては、結核休養中の患者に対しましては十円、勤労給与分として三円の増薬をいたします。
  355. 横路節雄

    横路分科員 大蔵省の主計局の方にお尋ねいたしますが、きょうはここに厚生省関係の方が来ておりませんから大蔵省の方にお尋ねするのですが、実はこの要注意の児童ですね。小学校、中学校の生徒で、要養護児童、要注意の児童ですね。これをそれぞれ社会施設に収容している。それが六十一円八十七銭なのが、今度六十二円八十七銭で組んでいるという。それから同じ社会施設で、身体障害者については一日六十円七十九銭で組んでいる。盲人については六十四円八十九銭で組んでいる。ろうあ者については六十四円八十九銭で組んでいるのですが、これは何を基礎にして出しているのですか。カロリーを基礎にして出したのか、大体これくらいあればいいといってきめたのか。自衛隊の方は、特別な作業といえば特別な作業だが、百円四十銭だという。それから今の刑務所の方では六十円四十一銭だという。これは何を基礎にしてやっているのですか。カロリーですか、それとも実際にかかっている経費なのか、何を算定してこういうのを出されているのかお聞かせいただきたい。
  356. 渡部善信

    ○渡部(善)政府委員 刑務所の方の薬代あるいは少年院の薬代につきまして御説明申し上げます。大体仰せのごとくカロリーを原則として考えております。刑務所の方は御承知のごとく薬代が非常に少いのですが、刑務作業に従事しなければなりませんので相当なカロリーを保有させなければならない。さようなわけからカロリーの摂取を主食に置いております。その関係から刑務所の方は作業の種類によりまして一等級から五等級までに主食の量を分けております。その主食の量によってこれから出て参りますからカロリーが違ってくるのでございます。現在成人の方の刑務所は一等から五等までありますうちの三等の主食を基準としています。これがカロリーにして主食が約二千四百カロリー、副食代がこれまで十九円五十銭でございましたがこれによって得ます副食のカロリーが五百カロリー、合せまして二千九百カロリーを基準として計算いたしておるのでございます。
  357. 横路節雄

    横路分科員 今刑務所で大体六十円四十一銭、その主食一日が二千四百カロリーだという話ですが、私はいささかふに落ちない。この値段で二千四百カロリーあるとは思われない。ですからほんとうに二千四百カロリーあるかどうか私も調べて明日さらにお尋ねしたいと思います。  大蔵省の主計官、児童の方の社会施設ですね、これはどこに行って私が聞いても最低七十円なければ絶対足りないと言っているのです。あなたの方で六十一円六十八銭を今度一円九銭値上げをした。これは刑務所の方に一円値上げしたから子供の方にも一円値上げしたわけですか。これは何の計算なんです。何を基礎にしておやりになったのですか。
  358. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 お尋ねの食糧費の単価でございますが、本年は、三十二年十月から米代の改訂がございましたので、それに伴う値上げの措置をいたしました。なお先ほどお尋ねの児童収容施設等は一体何によって計算してあるかということでございますが、所要のカロリーを積み上げて計算いたしたのであります。
  359. 横路節雄

    横路分科員 法務省の方はおかず代を一円上げた。あなたの方はおかず代を上げたのかと思ったら、そうではなしに主食の値上り分だからおかずはもと通りだ、おかしいじゃないですか。少年院、鑑別所の方はおかず代を一円上げた。一円でも大したものです。あなたの方ではこの児童施設その他については米の値上りだけ見ている。これはおかしいじゃないですか。
  360. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 児童の収容施設として現行基準は間食費等を含めまして六十七円八十七銭計上してございます。さらに学校給食費といたしまして換算いたしますと一日大体十円ばかりになると思います。これらを合計して一日当り七十七円八十七銭ということになっておりまして、収容施設等につきましては食糧費の値上げのみを見ておるわけであります。
  361. 横路節雄

    横路分科員 七十七円八十七銭で、私が七十円以上要るというのと大体同じですが、五円はおやつ代ですよ。五円のおやつ代というのは、あなたはみかんを買ったことがあるかもしれませんけれども、今五円のみかんは探すのがなかなか容易でない。あなたの方ではこのおやつ代五円もずいぶん論議されてやっと計上したんだが、防衛庁には相当行っている。こういうところにふやさなければ大蔵省意味がないと思うのです。  もう一つあなたにお尋ねしますが、保育所ですね。保育所は今まで七円十銭、五円はお昼のおかず代、二円十銭はおやつ代、それから二円九十銭は保育所諸費であったが、今度一円おやつ代をふやして三円十銭にしたわけです。そこで、この間も私ども注意しておりますと、全国の保育所の関係の諸君は五円のお昼のおかず代は容易でないと言う。大蔵省の主計局はそういう点を細部にわたって注意されているんでしょうか。五円のおかずというと一体どんなものがあるのでしょう。五円のおやつですら容易でないのですよ。あなたの方ではどんなものを考えたのですか。どういうものを考えて保育所に対して五円のお昼のおかず代なのか。きっとあなたにもお子さんがいらっしゃると思うのだが、どんなものをお考えになったでしょうか。
  362. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 お答えいたします。私どもも五円のおかず代が非常に少いということはよくわかっております。保育所の経費について厚生省といろいろ相談をいたしまして保育所で今一番何がいいかということを最後にいろいろ研究いたしたのでありますが、本年は保母さんの給与問題、期末手当の問題、その他いろいろございます。一方おやつ代もふやしたいということでこれは、特に乳児のミルク代につきましては、ミルクの量が絶対的に足りませんと、赤ん坊時代には育たないという緊急な問題がございまして、ミルク代の方は御要望のように上げることができたのでありますが、おやつ代まではほんのわずか、一円しか回らぬというのではなはだ残念に思いますけれども、そういう経緯で一円という数字が上りました、御了承願いたいと思います。
  363. 横路節雄

    横路分科員 防衛庁の経理局長にお尋ねいたしたいのですが、一日百円四十銭というのは、あれは主食何カロリー、副食何カロリーでおやりになったのですか。
  364. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 三千二百五十カロリーであります。
  365. 横路節雄

    横路分科員 内訳をお尋ねしたいのです。
  366. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 今手元に資料がございませんので、後ほどお答え申し上げます。
  367. 横路節雄

    横路分科員 私はちょっと不思議に思うのです。法務省では、刑務所で六十円四十一銭でこれをやった場合に、主食は二千四百カロリーおかず代十九円五十銭で五百カロリー、合せて二千九百カロリーだという。ところが今防衛庁の方に聞くと、百円四十銭、大体何割増しになるでしょうかね。百円四十銭ということになれば、大体六割増し以上になります。それが三千二百五十カロリーで、三百五十カロリーしかふえてない。これは法務省が間違っているか防衛庁が間違っているか、どちらかが間違っていますよ。大蔵省の方では、少年の六十二円八十七銭というのは何カロリーで計算しているのですか。
  368. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 ちょっと資料がございませんので、後ほどお答えいたします。
  369. 渡部善信

    ○渡部(善)政府委員 もう少し詳しく御説明申し上げます。ただい刑務所の方で、非常にカロリーが大きいことについて疑念をお持ちのようでございますが、実は主食の方のカロリーの量は、非常に割安にカロリーがとれるのであります。ちょっと申し上げますと、主食の値段が概略四十円であります。それから副食の方が十九円五十銭でございます。この関係で、副食の方からとれるカロリーは五百カロリーにすぎない、四十円の主食の方でとれるカロリーが二千四百カロリーで、副食の方でカロリーをとるということは非常にむずかしいのでございます。実はこの主食でとるということになりますと、他の栄養価の方で非常に不足を来たす、実は刑務所の方で副食の代を上げていただいたのは、かような主食の方からカロリーをとることによります栄食の不均衡、こういうふうなことを是正していただくために、副食の一円の値上げをお願いいたしたわけであります。これは特に動物蛋白が非常に不足いたすのでございます。その動物蛋白が不足いたしますために、健康上にあまりいい影響が出て参らない。刑務所の方では、脈がおそくなって参りますとか、そういういろいろな症状が出て参っております。そういうふうなところから、この動物蛋白を補給するために副食費の値上げをお願いいたしておる次第でございます。
  370. 横路節雄

    横路分科員 今法務省の方から、主食の四十円で二千四百カロリーがとれるんだ、こういう話なんです。そうしますと、私はどうしても防衛庁の百円四十銭の三千二百五十カロリーというのはおかしいと思う。  それから私は大蔵省の主計局にお尋ねしたいが、これは子供のことなんです。社会施設にいる要養護児童、要注意児童その他ですね。これが、ほかの方は一円にしろ上げているけれども、これだけ上げてない。こういう点等について、今鳩山さんは何が他の会合があって行かれたというから、明日もう一ぺんカロリー計算等について——なぜこれを聞いているかというと、実はわれわれ一般の俸給生活者というものの俸給の算定は、御承知のように、全部、その日一日に成人が食べる食糧に含まれているカロリーは幾らなのかということでやっているわけです。そういう意味で私はお尋ねをしたので、これは明日他の方の関連でお尋ねをしていきたいと思います。  次に北海道開発庁の方にだいぶ待っていただいておりますので、一つだけちょっとお聞きしておきたいと思うのでありますが、実は昭和三十一年度の決算検査報告で農林省のところですが、三五一「直轄工事の施行にあたり現地に適合しない機械を導入し不経済となっているもの」これは北海道の篠津原野の開発事業ですが、このクローラーダンプトラクター等十二台を農地開発機械公団に八千二百五十七万五百二十三円で輸入させて、これを開発局の札幌開発建設部が借りて、その料金として三十一年度に六百一万八千七百九十二円を支出したが、機械が現地に適当しなかったため使用できなかった、だだ六百何ぼという金だけは払った、そうして号の機械は全然使用されていない。この機械は賃借料を農地開発機械公団に支払い、また事業終了の際は同公団から開発建設部が買い取ることになっている。これは私は実におかしいと思うのです。なお本地域に使用するため三十一年四月に同公団において泥炭破砕用のロータベーター一台を、これも五十万二千二百四十三円で輸入させたが、前の機械が使えないものですから、これもだめになっている。こうなっているのですが、これは会計検査院の報告ですから私はその通りだと思うのですが、開発庁の方ではこういう場合には賃借料はどうなるのですか。
  371. 中平榮利

    ○中平政府委員 お答えいたします。ただいま御質問のありました機械が使用できない場合には買い取るという問題でございますけれども、これは開発局と農地開発機械公団との間の契約がございまして、開発機械公団が買い入れました機械は、開発局が篠津地域において使用する、それに対しては賃借料を払う、もう一つ開発局が解約をした場合または使用できなくなった場合は買い取る、こういう契約になっておりますから、それがそこに載っておる次第であります。
  372. 横路節雄

    横路分科員 これはどうなんですか、買い取るのですか。それとも賃借料を払ったのでしょう、使わなかったから返してもらうのですね。
  373. 中平榮利

    ○中平政府委員 ただいま問題になっておりますダンプトラクターは、実は開発局において使用いたしましたけれども、土地の事情に合いませんのでよく故障を起しまして、シャフトが折れたりいたしましてあまり使えなかったものでありますから、まあ修理はいたしましたけれども、そのままでは篠津の泥炭地域においてこういうものは適当でないと思われましたので、転用を考えまして、実は問題になっておりますクローラーダンプトラクター、これにはパワーショベル、シャトルダンパー、バケット・ローダーという関連した機械がございますが、そのうちたとえばパワーショベルの方は泥をひっかいて持ち上げる機械でありますが、これを大夕張の方に回す。それからただいま申し上げましたクローラー・ダンプトラクターは、例の客土用には使いませんで、農業用水路の盛り土を運搬するのに使う。シャトルダンパーの方は青山堰堤の盛土の運搬に使う。それからバケット・ローダーの方は砂利の積み込みに使うというように、それぞれ別の用途に使っておりますので、別に遊ばせておるわけではありません。
  374. 横路節雄

    横路分科員 会計検査院にお尋ねしますが、それではこの報告は何なのですか。わざわざ八千二百五十七万円のものを買ったが、役に立たなくて、開発建設部では、三十一年度には六百万何ぼ払って不経済だ。今の話を聞くとちゃんと他に転用さして、それで役に立っておるのだという。あなたの方では、八千二百万円、これは役に立たなくなっておる、六百万賃貸料を払ったが一つも使われない、何でこういう報告をなさるのですか。
  375. 池田直

    ○池田会計検査院説明員 会計検査院で報告いたしましたのは、開発公団に適しないような機械を農林省の方が公団の方にわざわざ輸入させて、そして検査報告に書いてありますように実地検査等でそうなっておりまして、これは農林省の方も公団の方も認めておるのでございまして、国としては不経済になっております関係で報告いたしておるのであります。
  376. 横路節雄

    横路分科員 そうすると今開発局の方ではそういうお話があるが、会計検査院としては、農林省でもまことに不用だ、こう言っておるから、ここにきちっとしたのだということになっている。これは最後には開発局ではこれを買うのですか、どうなんですか。八千二百万円は篠津原野のあれでしょう。他に転用した場合にはどうなるのですか。お答えをいただきたい。
  377. 中平榮利

    ○中平政府委員 おっしゃる通り仕事が終りました場合、または仕事をやめた場合は買い取ることになっております。
  378. 横路節雄

    横路分科員 会計検査院の方にお尋ねしますが、これは役に立たないとあなたの方では指摘した。今開発局の方の話を聞くと、仕事が終ったときは、これを買うのだというのです。あなたの方は役に立たないのだと言っている。ところが仕事が終ったら買い取る、これはどういうことになるのですか。八千二百万ですから、ちょっとした金ではないわけですから……。
  379. 池田直

    ○池田会計検査院説明員 今おっしゃいますように、ちょっとした金ではない、高価な機械でございますので、これをわざわざ購入する以上は、工事の現場に適する機械を購入することが最も必要でございます。ところが本件の場合は、現地に適しない機械を購入して遊ばせておるということでございまして、これは国のために非常に不経済だ。そうしてこれは結局国の方は買い上げるということになりますが、これは使用時間によりまして買い上げるような方式で借料がきまっておりまして、結局国の方でこれは買い上げる。そこで結局こうした非常に非効率、場合によっては将来も使えるかどうかほとんどわかぬような機械を購入したことは非常に不経済だ、こういうような趣旨でございます。
  380. 横路節雄

    横路分科員 会計検査院の事務総長の答弁では、これは使わないので不経済だ、しかしどうしても機械公団の建前からいって、国が買い取らなければならぬ。八千二百万円については、どうもこの点は機械公団との関係で、どこかにやはりあやまちがあったと思うのです。農林省が指示したというなら農林省——初め機械公団を設けるとき私たちが一番心配した点は、アメリカからこの機械をどんどん押しつけられる、そういうようにみな指摘したのです。しかし篠津原野の泥炭地の開発というものは大事だからいいが、しかし機械については必ずアメリカから、たとえば余剰農産物にしろ、世界銀行の借款にしろ、全部こういう機械で売りつけられて、役に立たいものがくるのだ、これは初め大蔵委員会でも余剰農産物のことがかかがかったときにわれわれは指摘をした。これはやはり買わなければならないですか。買わないで済むものならば、八千二百万円の国費ですから、できるだけ買わないですべきでないか。
  381. 中平榮利

    ○中平政府委員 お答えいたします。先ほど私のお答えに少し足りない点がありましたので、補足をいたしながらお答えをいたします。先ほどパワーショベルは他の地区に転用するものがあると申し上げましたが、一つは大夕張に転用する予定でございます。もう一つは八郎潟の方に転用することになるかもしれませんが、他地区に転用いたしましたものにつきましては、開発局においては買い入れはしないということに交渉中でございます。それ以外の機械は篠津開発用に買ったものでございますので、仕事が終りました場合は買い取らなければいけないかと思います。  ただいまお尋ねのアメリカの会社から押しつけられるのじゃないかということを御懸念されたというお話でございますが、今問題になっておりますダンパートラクターというのは、イギリスから買ったものでございまして、アメリカの会社から買ったわけではございません。
  382. 横路節雄

    横路分科員 これはどこの責任になるのですか。こういうものを買った責任は、直接は農林省ですか、開発局になるのですか、機械公団になるのですか。どこですか。
  383. 中平榮利

    ○中平政府委員 お答えします。開発局の予算の執行については、主務大臣のみが指揮監督するとなっておりまして、この場合の主務大臣は農林大臣でございます。
  384. 横路節雄

    横路分科員 こういうことを指示してくるのは、農林省のどこですか。
  385. 中平榮利

    ○中平政府委員 農地局でございます。
  386. 横路節雄

    横路分科員 これはいつ買ったのですか。いつイギリスから輸入したのですか。
  387. 中平榮利

    ○中平政府委員 昭和三十一年でございます。
  388. 横路節雄

    横路分科員 何月ですか。私がそれをお聞きしておるのは、イギリスから買ったというから、三十一年に入れたならば、いつごろ契約して入れたのか、ちょっとお尋ねしておきたい。——それでは次に、向うで調査をしておる間に、もう一つあなたにお聞きをしたいことがある。それは篠津原野で余剰農産物ですかね、あれの四億五千万円かで耕土改良をやってきた。ところが三年たったから、ことしから三年間で返還せい、そこで一億五千万円を返還して、利子一千万円ついて一億六千万円返すことになった。あれは余剰農産物の何の金でしたかね。
  389. 中平榮利

    ○中平政府委員 おっしゃる通り余剰農産物の返還資金でございます。
  390. 横路節雄

    横路分科員 わかりました。この予算書では、どこから返すのですか。
  391. 中平榮利

    ○中平政府委員 篠津地域開発事業費というのがございまして、その一番上の土地改良事業費であります。
  392. 横路節雄

    横路分科員 この土地改良事業費の項にあります六億一千万円の中から返すのですか。
  393. 中平榮利

    ○中平政府委員 さようでございます。
  394. 横路節雄

    横路分科員 大蔵省の主計官にお尋ねしますが、これはこういう予算の組み方になっておりますか。ここに篠津地域泥炭地開発事業費、土地改良事業費、土地改良事業費六億一千万となっている。ところがことし実際に使える金は一億六千万削った四億五千万しかない。一体こういう項目の立て方は正しいですか。返還するならば、当然この中から返還をしてこういう目を起さなければならぬものを、六億一千万組んでおいて、この中で一億六千万返すのだ、一体こういう予算の立て方がありますか。おかしいじゃないですか。こうやって見れば、土地改良事業は六億一千万、ことしの既定計画でやれるものと考えるのが正しいと思うのに、この中には返還すべき一億六千万が入っておるという、こういう一体予算の立て方は何だ。おかしいじゃないですか。主計官はおりませんか。公共事業関係はおりませんか。——ちょっと困ります。それじゃ委員長、私はこれは開発庁の方よりは大蔵省の方にあす答弁してもらいたいと思う。土地改良事業六億一千万と組んでいるのに返還すべき一億六千万がこの中に入っていて、従って本年度の土地改良事業が実際には四千五百万しかないのだ、こういう一体予算の立て方がありますか。なぜやるならばここに新たに目を起して入れないのですか。ごまかしじゃないですか、この予算は。委員長、これは主計官がおらぬというのですから、あすお願いします。  今の件は、三十一年のいつですか。
  395. 中平榮利

    ○中平政府委員 機械によっていろいろ違いますが、今問題のシャトルダンパーにつきましては、三十一年八月八日に納入となっております。
  396. 横路節雄

    横路分科員 どうしますか、あす資料を出してもらっていいですか。
  397. 田中久雄

    田中主査 それからにして下さい。
  398. 横路節雄

    横路分科員 大へんどうも——警察庁の方にもお尋ねしたい点がございましたのですが、五時半からいろいろ都合がある方もあるようですから、きょう私の方から資料を要求しました防衛庁関係の分、それから今の篠津原野の六億一千万円については、全くこの予算の立て方は私はおかしいと思います。その他につきましてはあすまた資料を出していただいて、大へん恐縮ですが、少し時間をいただきたい。
  399. 田中久雄

    田中主査 明日は午前十時より開会することとして、本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十二分散会