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1958-02-24 第28回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十四日(月曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 江崎 真澄君    理事 今井  耕君 理事 川崎 秀二君    理事 川俣 清音君 理事 柳田 秀一君       植木庚子郎君    大橋 武夫君       太田 正孝君    上林山榮吉君       久野 忠治君    須磨彌吉郎君       中川 俊思君    中曽根康弘君       永山 忠則君    楢橋  渡君       野田 卯一君    福永 一臣君       船田  中君    古井 喜實君       南  好雄君    宮澤 胤勇君       八木 一郎君    山崎  巖君       山本 勝市君    田原 春次君       門司  亮君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官  愛知 揆一君         行政管理政務次         官       榊原  亨君         北海道開発政務         次官      福井 順一君         自治政務次官  中島 茂喜君         防衛政務次官  小山 長規君         科学技術政務次         官       吉田 萬次君         法務政務次官  横川 信夫君         大蔵政務次官  坊  秀男君         文部政務次官  臼井 荘一君         農林政務次官  瀬戸山三男君         通商産業政務次         官       白浜 仁吉君         労働政務次官  二階堂 進君         建設政務次官  堀内 一雄君  出席公述人         八幡製鉄株式会         社常務取締役  藤井 丙午君         立教大学教授  藤田 武夫君        早稲田大学教授 時子山常三郎君         東京銀行常務取         締役      伊原  隆君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和三十三年度予算について      ————◇—————
  2. 江崎真澄

    江崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十三年度予算につきまして公聴会に入ります。開会に当りまして、御出席公述人各位にごあいさつ申し上げます。  本日は御多忙のところ、貴重なるお時間をさいて御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。委員長といたしまして厚く御礼申し上げます。  申すまでもなく、本公聴会を開きまするのは、目下本委員会において審査中の昭和三十三年度予算につきまして、広く各界の学識経験者たる各位の御意見をお聞きいたしまして、本予算審査を一そう権威あらしめようとするものであります。各位の忌憚のない御意見を承わることができますれば、本委員会の今後の審査に多大の参考になるものと存ずる次第であります。  議事は、藤井さん、藤田さんの順序で、御一名ずつ順次御意見開陳及びその質疑を済ませていくことといたしまして、公述人各位の御意見を述べられる時間は、議事の都合上約三十分程度にお願いいたしたいと存じます。  なお念のため申し上げておきますると、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また発言内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならないということになっております。なお委員公述人に質疑することができまするが、公述人委員に対して質疑することができませんから、さよう御了承をいただきたいと存じます。  それでは先に八幡製鉄株式会社常務取締役藤井丙午君より御意見開陳をお願いいたします。
  3. 藤井丙午

    藤井公述人 ちょっとかぜを引いておりますので、お聞き苦しい点はお許しいただきたいと思います。  私は明年度予算編成並びに予算案の内容につきまして、二、三意見を申し上げたいと思うのでありますが、近ごろ自由民主党におかれましても、あるいは社会党におかれましても、政務調査機関が充実されまして、政務調査活動が非常に活発になって参りました点は、まことに好ましい傾向と存じ上げておるのでございます。明年度予算編成に当りましても、政府与党におかれましては、まずもって経済五カ年計画を策定されまして、それとの関連において、予算編成大綱をおきめになり、予算編成に着手された、こういったオーソドックスの行き方は、ぜひ今後も続けていただきたいと思うのでありますが、ただ予算の最終の仕上げの段階におきまして、かなりの紛糾を見たようでございますし、また軍人恩給等をめぐりまして、いわゆる圧力団体の動きによって、かなりの影響を受けたかのような国民的印象を受けたのは、まことに遺憾に存ずる次第であります。  しかしながら予算案規模一兆三千百二十一億というこの規模は、前年度より千七百四十六億ほどの増加でございますけれども、この中には御承知のように、国債費であるとか、あるいは問題の余裕金のたな上げ等ございまして、実質には一千億程度の増額のように存じておるのでございますが、また財政投融資も三千九百五十五億と大体本年度実効額とほぼ同じでございまして、これらの予算規模は、現下の経済情勢並びに国民経済の正常な発展から申しまして妥当ではなかろうかと存ずる次第でございます。特に御承知のように世界経済は今停滞気味でございまして、それとの関連におきましても、また日本自体におきましても、景気かなり悪化しておりまする現段階におきましては、むしろ財政投融資等は、あとから申し上げるような事情によって、もう少しこれを増額すべきではないかという感じを持っております。  好況時におきましては、財政規模はなるべく引き締め、不況時においてこれをゆるめ、拡大するというのが新しい財政の考え方でございまして、その意味から申しましても、大ワクとしましては、私ども明年度予算は大体妥当ではなかろうかと存ずるのでございます。  ただ明年度予算におきましても、約一千億程度自然増収歳入超過が見込まれておるわけでございますが、この点につきましては、私ども、三十一年度以降、毎年百億内外の自然増収を上げておりまして、均衡予算はこれは当然のことといたしましても、かように年々一千億内外の歳入超過を見るという超均衡予算を、どうして毎年続けなければならぬか。ドッジ・ラインの亡霊に取りつかれておるような印象を非常に強く持っておるのでございます。この財政余裕金が、こんなに巨額に年年出るということは、われわれ国民の側から見ますと、予算ぶんどりの紛糾の種にもなり、あるいはまた不急不要の歳出増加を結果する懸念なしともしないのでありまして、むしろ私はこの際思い切ってもう少し大幅な減税をするなり、ないしは財政投融資等の拡充によりまして、産業基盤強化輸出力増大等にこれを振り向ける、つまり民間資金を還流すべきではないか、かように考えておるのでございます。  そこで今減税の問題を申しましたが、明年度におきましては、ことしの所得税の見合いにおきまして、少くとも法人税事業税等に大幅な減税を期待し、企業租税負担を私どもは望んだわけでございますが、法人税におきましては二%の減税になったのでございますけれども、これは実際を申しますと、百二十五億の減税になることになるわけで、その点はけっこうでございますが、一面におきまして、昨年行われました租税特別措置改廃等によりまして、たとえば増資免税の廃止であるとか、貸し倒れ準備金ないしは価格変動準備金等の改正によりまして、こういった特別措置の改廃によりまして約百五十億の増税になるわけでございまして、法人税二%の減税を差し引きましても二十五億程度の増徴になるのみならず、その他の自然増収を考えますと、企業税負担はかれこれ二百十五億見当むしろふえるということになるわけで、実質的には減税でなくて増税になるということでございます。  さらにまた問題となっておりました事業税のごときも、これは途中からどこかに消えてなくなりまして、われわれのみならず、中小企業に非常に大きな失望を与えておる次第でございます。私どもはこの税負担の軽減をお願いするのは、産業利己的な立場で申し上げておるわけではございません。御承知のように、日本企業資本構成は、戦前は自己資本が大体六割、他人資本、つまり借り入れ資本が四割という比率でございました。世界水準から申しまてしも、大体そんな見当でございまして、アメリカのようなところは、自己資本が七割で、他人資本三割という非常に健全な企業資本構成になっております。ところが現在の日本企業資本構成は、それと逆でありまして、自己資本が約四割、他人資本が六割という形になっておりまして、この一、二年好景気のために若干その比率は好転したわけでございますけれども、さらに今年以降この景気でございますと、これは逆にまた悪化する傾向にあるのでございます。この企業体資本構成を健全ならしめるということは、つまり国際競争等に対応するための企業近代化、あるいは生産性の向上のために、どうしても資本の蓄積ということが非常に大切な問題でございまして、よく日本経済は底が浅いと申しますけれども、そのことは具体的に申しますと、日本経済の骨格をなしている法人企業資本構成が非常に不健全であり、弱体であるということでございまして、従いまして景気変動等に対する抵抗力、あるいは弾力性というものがないというところに、大きな原因があるのでございまして、この点はぜひとも今後の日本経済の正常な発展のためにもお考えをいただきたい。さらに御承知のように、今や技術革新の時代でございまして、各産業、各企業を通じて、設備の近代化合理化生産性の向上ないしは輸出力の増強が当面の最大の課題でございますので、この意味から申しましても、そういった資金は、いわゆる自己資金社内留保に非常に依存するところが大きいのでございまして、その面からも、どうしても法人税は少くとも五%程度を引き下げていただきたい。試みに昭和二十五年にはこれが三五%だったのが、二十七年には四二%、三十年には四〇%になって、今回三八%ということでございますが、企業の側から申しますと、法人税が四〇%のほかに事業税が一二%、その他住民税等法人税に対する一三・五%、合せまして五七・二五%、約六割というものが租税でございます。そのほかに固定資産税等ございまして、法人税負担は六割以上になっておるのでございまして、そういう意味からも今年はぜひ一つ法人税大幅引き下げについて、もう少し特段の御配慮をお願い申し上げたいと存ずる次第でございます。  それからその次は財政投融資経済五カ年計画関係でございます。先ほど申しましたように、政府は昨年末におきまして、いわゆる経済五カ年計画を策定されまして、年率六・五%の安定的な経済の成長をはからうということを企図されておるのでございます。しかしながら、この計画実施のための最も重要な手段であります財政投融資が、果してこれに照合しておるのかどうか。私どもの見るところではこの長期計画財政投融資との間に合理的な関連性がないのみならず、産業別資金配分等におきましては、非常なアンバランスがあるということを申し上げたいのであります。いやしくも政府長期計画を策定します以上、その裏づけとなる資金計画が一方において確立されておらなければならないのでありますが、今度の予算編成について、実は私ども、先に申しましたように、長期計画を立てて予算大綱を決定するというこの行き方に非常な関心と同時に期待を持ったのは、必ずやその長期計画に対する資金裏づけ投融資計画で盛られるということを期待したわけでありますが、それが今申しましたように、はなはだ不合理な結果になっておるのでございます。もとより昨年の外貨危機以来、非常な金融引き締めによりまして、その結果国際収支が好転したことはまことに御同慶にたえないのでありますが、同時にまた、今後といえども、この国際収支のパランスを堅持するということは、これは非常に大切な問題でありますけれども、一面におきまして、こういった当面的な、短期的な政策に熱中するあまりにおいて、長期的対策をネグレクトする傾向が非常に多いのでございます。とかく従来の行き方を見ますと、よきにつけ悪きにつけ、極端から極端に行き過ぎる傾向が非常に多いのでございまして、この点特に皆様方の御考慮を煩わしたいと存ずるのであります。わが国の長期にわたる安定的経済の成長、正常な経済発展をはかり、かつまた輸出力を増強しまして、国際収支のバランスを堅持するためには、どうしても産業基盤強化、具体的に申しますれば、電力石炭、石油といったエネルギー部門、あるいはまた鉄鉱、造船、機械等、あるいは合成化学等のいわゆる重化学工業近代化と同時に、これに関連しまして、交通、港湾等輸送力強化、こういった長期対策がぜひ講じられなければならない。  この点から明年度予算を検討いたしまするに、防衛費であるとか恩給関係費であるとか、あるいは社会保障費など、それぞれ増額を必要とする理由はございましょうけれども、これらはいずれもいわゆる消費的な支出でございまして、拡大再生産過程に入ってこないものであります。国民経済発展の面から申しますれば、プラスになる要素ははなはだ少いと申し上げてよろしいのではなかろうかと存ずるのであります。財政投融資が、私ども産業人にとっては最大の関心事でございますが、総ワクは、先ほど申しましたように、本年度と大体同じ程度で、ただわずかに道路関係ないしは石炭資源開発に若干の積極的施策が見られるのみでありまして、その他はおおむね後退をしておるという感じでございます。  これを二、三具体的に申しますと、たとえば電力関係におきましても、御承知のように五カ年計画におきましては、昭和三十七年度における電力の需要は、三十一年度に対して、六七%と、約七割の増加でございまして、このために、電源開発に要する資金は一兆五千億に達しておるのであります。政府は三十三年度におきましても、電力資金は、今申しました輸送力増強等とともに、最優先的には考慮されておるのでございますけれども、これは電源開発について言うことでありまして、民間の九電力会社におきましては、現に三百五十億の財政投融資の期待に対して、二百五十億しか割り当てられていない。この面だけでも百億資金をショートしております。これも、このほかに民間資金ないしは世界銀行等借款が成立するという前提のもとに、なお百億をショートしておるのであります。  石炭関係は、三十三年度におきまして、新坑開発あるいは縦坑の開発等の、増産に伴う資金百三十五億、あるいは一般合理化関係維持費が二百十五億、合せて二百五十億でございまして、この資金需要に対しまして、いわゆる長期エネルギー計画の初年度としまして、一応開銀融資が八十七億割り当てられた。これはどういう風の吹き回しか知りませんけれども石炭かなり優遇されたわけでございまして、まあまあと言ってよろしいのではないかと思うのでございます。  そのほか合成化学におきましても、御承知のように合成化学は、今後の日本産業を高度化していく、あるいは輸出等によりまして国際収支を改善する意味で非常に大きな役割を持っておるのでございまして、たとえば石油化学企業合理化によりまして、大体三十五年度において五千万ドルの外貨の節約、あるいはまた合成繊維等合成化学関係におきましても二億ドルの輸入防遏ないしは輸出によってのプラスを期待されておりますので、これもまたぜひ拡充しなければならない産業一つでございます。これらに要する金が明年度五百四十一億かかるわけでございまするが、このうち開銀に対して八十億を期待しておりまするけれども、これもわずか五十四億でございまして、その他の市中銀行等融資が満足にいきましてもなおかつ三十億程度資金不足を来たすわけでございます。  ここに最もはなはだしい例は鉄鋼業でございます。これは私ども関係がございますので、多少詳しく申し上げたい。のみならず、非常に大きな問題がここにあるのでございます。鉄鋼業は御承知のように、政府経済五カ年計画に即応いたしまして、今第二次合理化計画を五千二百億の予算をもってその建設に着手しておるのでございます。これができ上りますと、銑鉄におきまして三十二年度六百七十万トンの生産が千二百万トンになり、鋼塊におきまして二千万トンになり、鋼材におきまして千四百万トンになります。現在は世界の第六番目でございますが、この計画が完成しますとアメリカ、ソ連、ドイツ、イギリスに次いで日本が第五の製鉄国になるわけでございます。これはむろん基礎産業の一番の根幹をなすものであると同時に、輸出産業としての非常な大きな役割をもっておりまして、昨年並びに一昨年は、御承知のような国内ブームでもって、国内需要が旺盛なために輸出が百万トンに減りましたけれども、それ以前の二十九年、三十年は年間二百万トン以上の鉄鋼材輸出しまして、輸出産業の王座を占めておったのでございます。そのほか造船工業ないしは機械産業等を通じて加工せられた鉄鋼輸出を加えますと、非常に膨大な輸出になっております。戦前日本鉄鋼輸入国でございましたが、戦後は鉄鋼輸出国として世界的な最も有力な産業国になっておるわけでございます。そういうわけでございますので、私どもはこの五カ年計画に即応した合理化計画の達成をぜひしなければならぬ。なおかっこの私ども計画しております現在の計画を完成しましても、政府計画に対しまして三十七年度において銑鉄百三十万トン、鋼材六十万トンの不足ということになるわけでございまして、現在の私ども計画自体がもう最小限度計画であるというわけでございます。そこでこのために三十二年度におきましては千二百六十九億の資金を要したわけでございまするが、御承知のような金融引き締めによりまして、約二一%工事の繰り延べをいたしまして、これを千五億に圧縮いたしたのでございます。財政投融資はほとんどなきがごときものであり、長興銀等資金調達のみにまかせる。社債等は、電力等社債は優遇されておりますけれども鉄鋼は全然顧みられませんために、社債もほとんど借りかえだけで新規の起債はできないという関係で、工事は現在進みましたけれども、三十二年度におきまして実は七十七億の資金不足を来たしておるのであります。これを受けまして三十三年度は、ちょうどこの計画のピークになりまするので、千三百二十七億本年度設備資金はかかるわけでございまするが、これも金融事情から最小限、つまり工事を繰り延べ、できるだけ節減いたしまして一千百億にしておるのでございます。これは会社の増資であるとかあるいは社債であるとか、その他輸出入銀行世界銀行等外資導入あるいは長興銀債等あらゆる資金源を動員しまして、なおかつ八十億足らないので、ここで政府財政投融資、つまり開銀融資八十億をお願いしたわけでございますが、何と割り当てられたのが十二億でございます。まあ昨年は二十六億でございましたが、鉄鋼だけはどうしてこんなに虐待をなさるか、その意図は、私はわかりませんが、もともとおそらく政府岸総理を初め政府並びに与党の方々も、鉄鋼業は相当助成をしておるというふうに大へんな思い違いをなさっておるようでありますが、この二十七年以来鉄鋼に対する財政投資はごくわずかでありまして、八幡、富士、鋼管等主力メーカーが一銭も財政投資の対象になっておらない。昔八幡、富士は国策会社でありました関係上、いまだに相当政府的な助成をしておるように思い違いをなさっておる向きが多いようでございますが、この点は一つとくと申し上げておきたいと思います。  私の会社だけを申し上げましても、ことし三百億の金がかかるのですが、十二億の開銀投資では分けて配りようがない。象が片一方足を突っ込んだだけでも吹っ飛んでしまうというこんな財政投融資であります。そこで政府外資を導入するからいいじゃないかとおっしゃるのでございますが、実はこの世界銀行並びに輸出入銀行に対して、ことし二百七十三億の借款をお願いいたしておるのであります。ところが世界銀行等におきましては、一体日本の重要な産業である鉄鋼政府がどうして金を出さないのかと質問を受けて、われわれ実は答弁に困っておるのであります。ことし千三百億圧縮しても千百億かかるものに対して政府は一%の十二億しか財政投資をしないでアメリカに二百七十億、その三割近いものはアメリカに出してくれという要求でありまして、一家にたとえましても、おやじは全然金をみつがないで全部借金をしてこい、こういうような話は、これは日本のみならず世界に通れない話でございまして、ことにインパクトローンはほとんど世界銀行は不可能だと申しておりまして、かりに、私ども二千万ドルの借款を申し込んだのでありますが、インパクトローンは不可能であるということになりますと、一千万ドルしか借りられない。つまり半減してくるわけであります。なお財政投融資の場合に外資の導入は同じプールで考えているから、お前たちは見ないのだとおっしゃるかもしれませんが、これは外資を借りてもなおかつ足らぬということは、先ほども申し上げました通りであるのみならず、一体外国借款について、外資導入というものを非常に手柄顔に政府はお考えになっておりますけれども、これは借金でありまして、非常に国民として恥しいことでございます。特に世界銀行あるいは輸出入銀行等におきましても、借款をしますについては、あらゆる調査報告を出して、会社の機密のほとんど全部をこれに報告しなければならない。先方はそれぞれ権威のある機関でございますので、機密はむろん保持していただくことは間違いないと思いますけれども借金をするために会社の秘密の実態を全部裸にしてお金を借りるということは、企業経営者の良心から申しましても、あるいは国家的に申しましても、そんなに自慢になる話ではないと思うのであります。しかもそれに全部たよって財政資金をほとんど一文も出さぬと同じような取扱いをなぜなさるのであろうか。世界の各国をごらんになっても、ソ連、中共等社会主義国家はむろんのこと、アメリカは別といたしまして、どこの国も鉄鋼業をこんなに軽視し、冷遇しておる国がありましょうかと申し上げたいのです。しかも実は昨年、一昨年等の鉄鋼ブームにおきましても、市中相場が九万円もしております際に、私どもは四万六千円という建値を堅持しております。同時に配当におきましても一割二分という電力会社等公共事業と同じレベルの配当をいたしておるのでありまして、その面からは全く国策に沿った経営をしておるのでございます。にもかかわらず、政府は鉄が高いだの、鉄が少いだの、われわれの企業責任のようにおっしゃいますが、反面においては何らの援護措置と申しますか、助成措置をとっておらないということは、統制の権限のない政府にしても、少しやり方が間違っていやせぬか、かように思うのであります。  なお、そのように申しますと、鉄鋼のみではございません。電力鉄鋼石炭合成化学等を通じまして、融資六百二十五億の要請に対して、今四百三億しか割当がございません。その面から二百二十二億の資金がショートしております。のみならず、市中銀行資金調達の大宗であります長期信用銀行並びに日本興業銀行のいわゆる金融債の問題でございますが、われわれは財政投資が以上のごとくでございますので、少くとも興長銀関係等に相当大きな資金の融通をお願いしなければならない。そのために大体本年度今申しました重要産業だけで六百七十億を興長銀に期待し、その他一般産業を合せて興長銀が千二十億の資金を融通する計画になっておるのでありますが、その中でいわゆる市中銀行等から集まるのが目下の目算では六百二十億しかない。従ってあとの四百億というものは運用部資金による長興銀債の買い上げ以外に手はないのであります。三十二年度におきまして、七十七億を鉄鋼関係資金をショートしておるのでありますが、これも市中の資金を動員した結果なお足らないのでありまして、これとてもどうしても長興銀債を運用部資金で買い上げて融通してもらうほか道はないのであります。同様のことが来年度におきましても、少くとも四百億は運用部資金でもって長興銀債を買い上げて、資金民間に流していただかなければ計画はいずれも達成できないという状況にあるので、この点もぜひ御考慮をわずらわしたいのであります。一がいに皆様方はこんな景気になったからすぐ設備計画を変更すればいいじゃないか、内輪にすればいいじゃないかとおっしゃるのですけれども、事業計画というものはおしんこ細工のように、そんなに簡単に伸び縮みできるものではありません。現に私ども八幡地区の戸畑で製鉄所を作っておりますが、これは埋め立てから港湾の造成から一切がっさいの工事をやっておる、のみならず機械はもうほとんど発注してしまってあるのであります。もしこれを中止いたしますれば、発注先の機械はキャンセルするほかない。その機械もたぐっていけば下請々々と全部中小企業につながっておる。土建業その他も同様でありまして、こういったことを中止すれば、これは地方産業にとって重大な社会問題にもなるわけでございますのみならず、資金効用の面から申しまして、この工事を繰り述べたり中止したりすることは非常な資金コストのマイナスでございまして、結局非常な高い設備になり、従ってその面からだけでも国際競争力が非常に低下することは明らかなことでございます。そういうわけでございますので、どうかこの長期五カ年計画に即応する設備の近代化合理化計画に対して、少くとも最小限度必要な資金財政面から、あるいは運用部資金の還流等によりまして御配慮を願いたいと存ずる次第であります。  最後にもう一つお願い申し上げたいのは港湾の整備の問題でございます。御承知のように、昨年来この電力鉄鋼、あるいは輸送、これが日本経済の三大隘路となったのでございまして、この輸送の中で道路と鉄道は来年度予算におきまして、かなり積極的な財政支出を見るに至ったことはまことにけっこうでございますが、ここに重大な見落しが一つございます。それは港湾関係の整備ということでございます。一般港湾もさることでございますが、鉄鋼、石油、石炭等に関係のある港湾につきましては、ここ二、三年のうちに飛躍的な拡充をしていただかなければ大へんな問題が起るのでございます。と申しますのは、たとえば鉄鉱石におきましても、三十二年度は八百五十万トンの外国鉱石を輸入しておりますが、これが三十七年度におきましては、千六百万トンの鉱石の輸入になるわけでございます。これはフィリピン、マレー等は資源が貧困でございますので、どうしてもインドの鉄鉱石資源の開発、輸送ないしは南米のベネズエラ、ペルー等の遠いところまで鉄鋼資源を求めなければならない。そのために、今御承知のように、インドに鉄鉱資源の調査団を出し、近くその開発契約締結のための使節団を派遣することになっておりますが、この千六百万トンの鉄鉱石を運ぶということは容易ならぬことでございまして、そのために現在一万五千トン程度の船をだんだん港の整備と相呼応して三万トン、四万トン、五万トンといった大型の鉄鉱専用船にしなければ運航能率が上らない、また量も運べないという問題があります。同様に石炭におきましても、原料炭を三十七年度におきまして八百五十三万トン輸入するという計画であります。さらに石油におきましては、御承知のように、原油が三十七年度におきましては二千六百七十万キロリットルという膨大な輸入量に達するのであります。現在すでにマンモス・タンカーといわれるような六万トン、八万トンという大型の専用船でもって原油を運んでおるのであります。ところがこれらの船の入る港のほとんど全部が、産業関連港湾は水深が九メートル程度でございまして、せいぜい一万トン、無理して一万五千トンの船しか入らないのであります。この船の港湾の収容力と同時に、荷役能力が船舶の運用効率を高める最大といっていいくらいの問題でございまして、現状のままほうっておきましたならば、片一方に陸上の工業施設がいかに完備しておっても、原料を運び込む手段がなくなるのであります。従ってどうしてもこの港湾施設を、少くとも産業関連港はここ三、四年間に二倍に能力を増大しなければならぬ。そのためには防波堤の構築岸壁の工事あるいは泊池、航路等の浚渫あるいは陸上の荷揚げ設備等の能力の増強と、この港湾関係の整備を非常に急がなければならない。そのために運輸省におかれましても、今年度におきまして五百五十七億でもって特定産業関連港湾緊急整備事業特別会計というものを設定いたしまして、三、四年の間にこれを完成しようという計画でございましたが、幸い自民党の重要産業委員会におきましてもこれを取り上げて、多少案は圧縮されましたが、五百五十三億の総額に対して二十三年度百二十三億、こういう成案を見たのでございますが、これがほとんど全部削られてしまった。特別会計はむろん問題にされないのみならず、この計画自体もほとんど顧みられない状態でございます。  具体的な例を申しますと、八幡におきましては、今戸畑地区に二百万トン・プランの工場計画を持っておりまして、そのための港湾を今作っております。これは五万トンくらいの船が将来入れるように水深も十三メートル、やがては十五メートルくらいの港を作っております。これは政府にお願いしてもいつまでたってもできる見込がありませんので、自前で八十三億をかけて作っております。そこで私ども実はお願い申し上げたのは、せめて港から関門水道の外海に通ずる航路の浚渫だけでも、これは専用港の外の話ですから、それくらいはぜひやっていただきたいというお願いをしたのでありますけれども、それすら認めていただけない。われわれは年に、私の会社だけでも数十億の税金を納めておるのでございますが、一体何のためにわれわれは巨額の税金を納めているのか、実際その点は理解に苦しむ次第であります。こういう実は状況でございますので、もう少し、つまり財政投融資にしましても、港湾計画にしましても、深甚の御考慮をお願い申し上げたいと思う次第でございます。  さらにまた、輸出振興対策も若干は計上されましたけれども、非常に不徹底なものであり、また税制面等についていろいろ申し上げたい点がありますが、時間がございませんので、この程度で私の公述を終らしていただきたいと思います。
  4. 江崎真澄

    江崎委員長 ただいまの藤井公述人の御発言に対しまして、御質疑があれば、この際これを許します。
  5. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 本日の御公述の重点は、先ほどから拝聴いたしまして、財政投融資資金計画ということに重点があったように思います。私は、藤井さんがお願いするというお言葉のもとに、政府財政投融資計画を相当痛烈にやられたことに、むしろ将来予算編成の際における重点として取り上げるための大きなよすがになったのではないかというふうに拝聴して、特に鉄鋼産業に中心を置かれたことをかえって愉快に感じておったわけであります。  そこで伺いたい第一の点は、今日の国家予算といいますと大体消費的な傾向に多くの支出が向けられるように考えられる。もとより私どもは、元来社会保障に力をいたせということを主張しておるものではありまするが、しかし元のないところに十分なる社会保障政策を実行することは困難なのであって、その意味生産拡大ということが日本経済の将来行くべき第一の重点であると思うのであります。その意味から、先ほど以来の御公述にわれわれ与党としても非常な反省をしなければならぬ部面もありますので、まずお伺いしたい点はあなたの御議論をずっと要約をいたしていきますと、やはり財政投融資あるいは資金計画というものに対して、長期計画を持たなければいけない、その長期計画与党重要産業委員会というものが決定しても、それを実行する力がないのだから、もっと法的にも実力的にも予算編成に対して大きな影響力を持つ機関が必要ではないか、こういうふうに先ほど以来のお考え方に対して考えてきたのであります。そこで将来政府は内閣に、石炭鉄鋼電力、セメントあるいは二、三これに類似するところの重要な産業に対する経済五カ年計画と並行して、そのしんをなす重要産業に対しての力ある委員会というものを開設したらどうかというふうに私は思う。投融資計画委員会という構想が前にあって、今日は大蔵大臣の単なる諮問機関として若干の銀行の者が入っておるだけであって、それだけではどうしても力が弱いように思うので、そういう構想を具体的に推進をすることに賛成であるかどうかということに問題はなってくるのではないかというふうに私は考えるのですが、これらをめぐってさらに突っ込んだお答えをいただきたいというのが第一の点であります。  それから鉄鋼産業に対する保護政策は世界各国ともに講じておるようであります。ソ連、中国はもとより社会主義経済の国として、鉄鋼が伸びなければ他の工業の近代化ということはできないわけですから、それに中心を置くのは当然だと私は思うのですが、それにしても、民主主義諸国にしても、鉄鋼産業に対しては相当な保護政策を講じておるというふうに聞いておりますけれども、それだけ私も勉強したことはないので、この際伺いたいのは、西独であるとか、あるいはイギリスであるとかというような国々は、昨年度あるいは一昨年度においてどのような保護政策をとっておるか。たとへば財政投融資ないしは国家の一般会計からするところの補助というものがあるのかどうか。これらはおそらく専門のことでありましょうから十分御承知だと思いますので、その二点を承わっておきたいと思う。
  6. 藤井丙午

    藤井公述人 最初の重要産業に対する政策の審議機関を拡充したらどうかというお尋ねのように承わったのでありますが、実はこれに対しましては、現在経済審議会等もあり、また通産省は通産省のそれぞれ委員会があり、大蔵省は大蔵省におきまして資金委員会等がございまして、機関としては私は十分整備しておるように思うのであります。ただこれを実施するかどうか。これは現在では与党である自民党の党の方針として、また政府の方針として、これを強力に実施するかせぬかというだけの問題でありまして、実はかりに港湾整備計画につきましても、自民党の政調会はむろんのこと、いわゆる高碕さんの委員長をしておられます重要産業委員会でも、私はるる申し上げた。そのときに、私ども民間が声をからし、足をすりこぎにしてお願いして歩いても、党として方針をきめ、政府としてそれを実施するという、ポイントに対する御決意と言っちゃ失礼ですが、これがはっきりしなければ労多くして効なしということでございます。私は、こういう問題を取り上げて審議していただく機会が多ければ多いほど周知徹底してけっこうでございますけれども、要は党並びに政府の決意いかんというふうに思うのであります。  それから第二点は、米国、西独等における民間鉄鋼産業等に対する政府助成の問題でありますが、アメリカは御承知のように、非常な膨大な資源があり、恵まれた環境にありますので、必ずしも政府助成を得なくとも独自の民間の力によって拡充計画をどんどん進めていかれます。西独におきましても、戦後数年間計画的に財政資金の投入があったのでございまするが、その後現在におきましては、御承知のように非常な目ざましい復興をいたしまして、自力で拡充を行なっております。ただ社会主義国家のみならず、インドその他の後進諸国はむろんのこと、その他イタリア、フランス等におきましても、直接、間接にかなり助成政策がとらていることは事実であります。
  7. 江崎真澄

    江崎委員長 川崎さん、報道の要望もありますので、一つ発言席へ来て御発言願いたいと思います。
  8. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 今私が申し上げたことは、はね返って与党が責められているようなわけですが、これは実際そうだと思いますけれども、そこに一つの構想を新たにして、たとえば与党で社会保障政策委員会を作っても、これは最後のまとめをするだけの委員会であります。むしろ根本的な問題は社会保障制度審議会が法律的に非常に大きな根拠を持った委員会でありますので、従ってその発言力も全国的にわたって広いという意味で、私は新しい提案をしたつもりであったわけであります。むしろ今までのあらゆる審議会を廃して、そうして重要産業についての長期計画については、内閣に審議会を一本化したらどうか。そのことによって影響力は相当にあるので、いわば鉄鋼を中心とする重要産業発展というものは、国家の運命に大きな影響を与えるわけですから、そういう意味で私は一つの提案をしたもので、もう少しこれに対して、もし構想に賛成ならば賛成であるということを言っていただきたかったと思っておるわけでございます。  それから次にお聞きしたいのは、中共へ鉄鋼使節団が行かれました。これは今調査中のことでありますので、帰ってきていろいろな報告があると思いますけれども鉄鋼業界としては相当中共にある部面の活路を求めておる。これは大きな影響はないでありましょうけれども、とにかく今やることが非常に適切であるということでやられたのでありましょうが、そのことに対してどのくらいの期待を持たれておるかを詳細に承わりたい。  それからこれは同じ中京でありますが、日本の中京、すなわち名古屋方面の産業というものはかなり大きな期待が持てるような段階に来ておる。日本の今後伸びなければならぬ産業地域としては、ことに鉄鋼業と連結しての産業地域といえば、もはやあの地点しかないとまで言われておるわけでございます。第二次五カ年計画には入っておらぬけれども、次の計画には当然名古屋を中心とする、ことに今港湾の問題が非常に問題になったが、四日市方面との関連において非常に大きな進出が期待をされるわけですが、現実にそういうプランを進め、また着手されなければならぬ鉄鋼業界としては、どういう期待とプランを持っておられるのか、これは八幡よりはむしろ富士の方が担当地域のようにも聞いておりますけれども鉄鋼業界を代表されての御意見を承わりたい。
  9. 藤井丙午

    藤井公述人 第一の重要産業の重点政策を強化実施するために、内閣に強力な委員会を作ったらどうかという川崎さんの提案は全く私ども趣旨として同感でございまして、ぜひそうお願いしたいと思うのでありますが、ただ私先ほど申しましたように、今までの経緯から申しまして、大蔵省の予算の原案の作成が一番根幹をなしておるようでございまして、政調会の審議は、出された料理をうまいとかまずいとかいう程度であって、全然仕出しをしてこられないので話にもならぬという感じを持っておりますので、そういった点についても、こういった強力な審議機関ができて、政府がこれを実施することを重ねてお願い申し上げたいと思います。  それから中共の問題でございますが、実は今中共へ鉄鋼使節団を派遣しております。これは当面の問題と長期的な問題と問題が二つございまして、一つは、御承知のように世界的な鉄鋼の不況の環境にありますので、東南アジア諸国におきましても御承知のようなドル不足等の関係から、鉄鋼輸出は、一昨年あるいはその前年の二百万トンの輸出をするには相当な努力を要する。そこで中共がその一つの新しいマーケットとしての脚光を浴びてきたわけでございまして、これはココム、チンコム等の関係がございまして、従来鉄鋼類等の輸出が非常に困難でございましたけれども、それが大幅に緩和されたという事情もございまして、われわれとしては新しい鉄鋼のマーケットとしての中共に注目して、少くとも三十三年度におきまして、要すれば二十万トンないし三十万トンの鋼材輸出を達成したい、かように考えております。これには御承知のように中共も外貨がございませんので、鉄鉱石あるいは原料用炭あるいは大豆といったような同じ甲類のワクの中における一種のバーター的な貿易になるのでございまして、そのためには日本から鉄鉱石ないし原料炭を幾ら買うかという問題と見合いになっておるわけでございますので、そういった問題をあわせて交渉するために参っておることが一つと、もう一つは御承知のように、戦前日本の鉄鉱原料は中共地区が大宗をなしておりまして、大冶の鉄鉱石、あるいは開らん炭、中興炭あるいは満州は——満州には昭和製鋼所を日本の手で作ったわけでございますが、そのほか南方における海南島の鉄鋼石、こういったものが非常に大きな原料供給のソースでございまして、多いときは開らん炭は四百万トンも輸入しており、鉄鉱石も百数十万トン、二百万トン近い鉄鉱石を輸入した時代もございました。そういうわけで経済地理的に申しまして、中共における鉄鉱資源の利用ということは、日本にとっては製鉄業における一つの有利な条件と申してもよいわけでございます。ただ開らん炭等戦後幾らか入っております。本年度も約三十万トン、来年度は四十万トンないし五十万トンの輸入を見込んでおりますが、今までのところは開らん炭は灰分が非常に多く、その割合からいって割高であった。アメリカの原料炭よりも、メリット計算からいうとむしろ割高であるというようなこともございましたので、われわれその合理的な価格引き下げを要求しておるというような問題もございますが、先方といたしましても開らん炭等は、日本が今後引き続き百万トンないし二百万トンといった安定的な需要があるときまれば、向うもその開発並びに選炭等に相当な資金を投入するということを考えておりますし、また同時に海南島の鉱石におきましても、これは石碌と田独の二つございまして、田独地区は戦時中日本でほとんど掘り尽しておりますが、石碌についてはなお千五百万トンないし二千万トンの埋蔵量がある、しかも品位は非常によろしい。鉄分が六〇%内外。そこでこれも日本としましてのどから手が出るといってよいほど欲しいのであります。そこで中共におきましても、今度の第二次五カ年計画に、日本の製鉄業界が将来恒久的に開らん炭ないし海南島の鉱石を引き取るというめどがはっきりつけば、自分の方も思い切ってこれの開発に着手する、そういった問題について話し合いをしたいという意図を持っておられるようでございまして、今度調査団の話し合いの結果がどうなりますか、取りあえずそういった当面的な問題と同時に、長期的な問題に対する一種の瀬踏みと申しますか、会談が行われるのではなかろうか。ただ日本としましては、雑貨と違って鉄鉱石とか、原料炭とかいうものは、長期にわたって安定して供給していただけるというめどがはっきりしないと、途中で中絶するようなことになりますと、簡単にほかへ振りかえができない問題でございますので、こういった点はよほど慎重に双方話し合いをしなければ、軽々には結論が出る問題でないのではなかろうか、かように考えております。  それから第三の、名古屋地区の鉄鋼業の問題でございますが、日本産業構造から考えまして、中京地区にすでに現在自動車工業、造船工業、その他機械を含めて相当な重工業が発展しております。また産業の地理的分布から申しましても、産業構造の面から申しましても、ある程度鉄鋼業、製鉄業がそこに建設されることは理論的にも十分成り立つ話でございますが、現在御承知のように第二次合理化計画において各社それぞれ拡充計画を持っておりますので、今直ちに中京地区に着手するということは時期的には少し困難であろうかと思うのでございます。もう一つは、ただこれはちょっと御注意願いたいのは、製鉄所ができればどんなものでも名古屋地区に起る鉄の需要に対して応ぜられるというふうに考えられると問題でありまして、たとえば造船につきまして、造船鋼材を作る設備というものは相当膨大な設備が要るわけであります。八幡で昨年八十億をかけて最新の厚板工場を建設しましたが、こういったものが日本造船工業の大口需要を一手に大量生産してこそ、初めて安く経済生産ができるわけであります。あるいはまた自動車工業に必要な薄板、珪素鋼板等も、これもストリップの生産設備があって、量的であり、かつ低廉な製品が供給できるので、名古屋地区に中途半端な万能工場みたいなものを作ったら、かえってマイナスになるかもしれませんから、その点はよほど建設計画については需要の見通し等につきまして、あるいは既存の日本の製鉄設備との関連におきまして、周到な検討を要する問題じゃなかろうか、かように考えておるわけであります。
  10. 江崎真澄

    江崎委員長 久野君、済みませんが、時間がだいぶ経過しておりますので簡潔に願います。
  11. 久野忠治

    ○久野委員 時間の制約もあろうかと思いますので、要点だけお伺いしますから簡単にお答えを願いたいと思います。  ただいま港湾整備の問題について、強く政府あるいは与党を鞭撻するがごときお言葉がございましたが、まことに適切な御意見でございまして、深く傾聴いたした次第でございます。私たちも党内において強くこの問題を取り上げて主張いたしたのでございますが、残念ながら本年度予算にこれを盛ることができなかったわけでございます。そこで二、三お尋ねをいたしたいのでございますが、鉄鋼生産の拡充計画に従って、いわゆるマンモス・タンカーを作ることによって、この生産コストの切り下げを行いたい、かようにおっしゃっておられるわけでございますが、そういうようなタンカーの建造計画が現在進んでおるのでありましょうか。進んでおるとするならば、どれくらいの大型の船舶がいつごろまでにでき上るという計算でございましょうか。その点をお尋ねいたしたい。
  12. 藤井丙午

    藤井公述人 鉄鋼専用船によって輸送高率を上げ、また数量を確保しようということは、先ほど申し上げた通りでございますが、現在は民間の船舶会社におきまして、大体四、五隻の二万トン・クラスの鉄鋼専用船が建造されつつあるのでございます。これは今作りましても、先ほど申しましたように、フィリピン、マレー等の港は港湾ないし荷役設備の能力の関係で、それ以上の船はむずかしい。むしろフィリピン等は一万五千トン・クラスしか入らない。そこでそういった船は、北米のカナダ地区から年々かなりの鉱石が入りますので、そういった方面に回送せざるを得ない、こういうわけでありますが、先ほど申しましたように、これからインド地区等の資源開発をいた、しますると、当然新しい輸送条件に適するような港湾並びに荷役設備計画しておるのでありまして、その計画が進みますにつれて、三万トンないし四万トンというような大型専用船の建造にかかる、こういう段取りになっておりまして、まだ一方のインドの問題がこれからの交渉の段階でございますので、その話し合いの成立と同時に、開発の進捗に照応して、大型専用船の建造の問題も、これから起ってくる問題であろうと考えます。
  13. 久野忠治

    ○久野委員 その時期はいつごろになっておるかということを私はお尋ねいたしたいのであります。
  14. 藤井丙午

    藤井公述人 私ども計画から申しますと、先ほど申しましたように、三十四年、五年、六年とだんだん鉄鉱石の輸入が増大して参りますので、要すればインドの資源開発も早急に着手をしたい。三十四年、五年ごろから段階的に輸入がふえるわけでありますけれども、その三十四年以降から鉱石が入ってくる、こういうふうな一応のめどを立てております。インドの例を申しましたが、インドは現在百三十万トン、ゴアが百四十万トン入っております。三十三年度はインドが百四十万トン、ゴアが百五十万トンであります。三十四年度からインドが二百万トン、五年度が二百二十五万トン、それから三百万トン、三百七十万トンというように、年々増加していく、将来は五百万トン見当のインド鉱石を輸入する、実はこういう計画になっておりまして、従って船舶の建造も今申しましたような年次に応じて、輸送が確保できるようになると考えるわけであります。
  15. 久野忠治

    ○久野委員 さようにいたしますと、港の整備にいたしましても、タンカーの建造あるいはインド等の製鉄事業場の開発につれて、並行してやっていけばよろしいと私は思うのであります。さよういたしますと、来年度いわゆる二十四年度あたりから産業関連のための港湾整備事業を行なってもおそくはないと私は考えますが、その点いかがでしょうか。
  16. 藤井丙午

    藤井公述人 その通りでございますが、港湾の設備というような問題は、やはり前広の拡充整備をいたしませんと、間に合いません。現在の港自体が、現在の船舶等に対して小さいために、一部は沖で瀬取りをして船舶が出入をしておるというような例すらあるわけであります。しかしながらお説のように大型の鉄鉱専用船等の問題につきましては、今申しましたような年次に照応して整備していただけば差しつかえないということであると思います。
  17. 久野忠治

    ○久野委員 もう一点だけお尋ねをいたしますが、昨年私たち中共の第四次貿易協定改訂のための代表団の一員としてあちらに参ったのでありますが、そのとき中共側の提案をいたしましたことは、海南島の鉄鉱石を開発をして、そうしてぜひ日本にこれを売りたい。少くともこれを売るためには五カ年間くらいの年次計画を立てて、そうして日本が必要とする量さえきめていただけば、その要望に応ずる用意はある、かように向う側は主張されたのであります。さような観点からいきますならば、遠い、しかもカナダとかインドとかマレーあるいはフィリピン等の遠方から、大型のタンカーをこれから作って、わざわざ港の整備までして輸送に充てるというようなことをしなくても、手近かに海南島の鉄鉱石を大量に入れることができるというのであるならば、なぜこれに手をつけられないのであるか、もう一度はっきりしたお答えを承わっておきたいのであります。
  18. 藤井丙午

    藤井公述人 先ほど申しましたように、中共側の申し入れはもっともでありますけれども一つには中共との関係は政治的な関係かなり重大なものでございますので、そういった関係を十分見きわめる必要もあったのであります。そこで大体そういった関係が見きわめがつきましたので、今回は出かけていきましたわけでありますが、もう一つの問題は、海南島の問題でございますが、これは先ほど申しましたように、埋蔵量が大体今の調査では田独がほとんど掘り尽されて、石碌の方は千二百万トンといい、千五百万トンといい、あるいは二千万トンといいますが、大体の数量はその辺でございます。先ほど申しましたように、三十七年度におきましては、輸入鉱石だけで千六百万トンいくわけでございまして、量的にあまり長期の買い入れを期待することができない。従ってやはり無尽蔵といわれるインドの鉄鉱石等を今から着目して開発をする計画を立てないと、量的に間に合わないと思うのであります。
  19. 柳田秀一

    ○柳田委員 先般中国へ鉄鉱使節団がお行きになりまして、大へんけっこうなことだと思っておるのでありますが、一九五五年と一九五六年を見ますと、日本から対中共への輸出量は急激にふえております。これは二千八百万ドルぐらいから六千なんぼでしたか、六千万ドル以上にふえております。そのふえたのは主として鉄鉱石が非常に原因しておると思うのです。また今のお話のように、向うから開らん炭を入れるとか、海南島鉄を入れるとか、輸入する方も、日本にとっては戦前の実績から見ても、非常に大事な基礎産業の物資を入れて、また輸出する方も、中国が消費財はあまり買いたがらない。第二次五カ年計画をやっているので、建設財が特に今後日本の貿易において占める比重が非常に大きいと思うのです。ことに本年度経済計画を見ますと、輸出三十一億五千万ドルというのは、目標達成努力はしておりますけれども、これはなかなか至難なわざだと思うのです。そういう意味でこの輸出目標額を達するには非常に大事だと思う。ところが問題は、こういうバーター貿易で、しかも甲類同士というようなワクもあるわけです。そこであなた方としては、これを長期的に計画的におやりになるようにしていくには、やはりこちらから買うものあるいは出すもの、しかもそれが甲類同士とかいって、また向うから買うもの、出すもの、非常にむずかしい問題があると思うのでありますが、そういうむずかしいことを勘案して長期的な計画が輸入輸出ともにお立ちになりますかどうか、その点が第一点。  時間の関係でみな申し上げます。第二点は、中共貿易の問題は、最近与野党を通じて問題になっておりますが、与党の中でも非常に熱心にこれを推進される方もあれば、できればこれをチェックしたいという動きも最近特に動いておる。ことに第四次貿易協定でも、一昨日出て参りましたが、もうこれは昨年の十一月に付属協定書ができて、ただ問題は人数だとかあるいは外人登録法の指紋の問題だけに限られて、そしてあとはただ人数の問題で話し合いがつくというようになっておって、しかもあれからもう半年近くになって、出発二日ほど前にまた与党から横やりが入って、これも必ずしも与党全部の意思とは私思いませんか、そういうふうに中共貿易に対しては与党の中にも、推進しろ、いや推進する必要がない、こういう問題になっているわけです。われわれ野党の方は絶えず叫び続けておりますが、こういうのはどうしてもやはりもう少し業界からも——この問題は国家的に非常に大きな前進になり、ことに日本輸出の隘路を打開していくためには非常に必要なことになると思いますので、やはりこれは一つ産業界からももっと声を大にして、あなた方に政治をやっていただくというわけではありませんが、やはりこういう声はもっと大にしてやっていく必要があるのではないか、その考え方からミッションをお出しになったのであり、またそういう点では敬意も払っておりますが、さらにもっと強くそれを推進される必要があると思うがどうか、これが第二点であります。  それから第三点は、先般日ソ間に通商協定が結ばれたわけです。それによりソ連は極東海運公社というのが貿易に当るらしいのですが、日本の方からも運輸省に各社が定期航路の申請を出しております。その各社の配船の寄港地を見ますと、釜石、広畑、八幡、そういうところをみな入れておるわけです。そういうところを入れておることを見ると、鉄鋼業界も日ソ貿易に対して非常に関心を示しておられることは、そのあけておられる寄港地の中にそういう特に鉄鋼業界に関係の深いところの港を入れていることからもわかると思うのです。ことにシベリア開発五カ年計画というものをやっておって、そういう関連で私はそういうことも予測されると思うのですが、そういう意味でこのシベリア開発関連して、今度の日ソ通商協定、これはやがて国会で承認され批准書が交換されると思いますが、それに対して鉄鋼業界としてはどういうような御期待を持っておられるか、またその期待だけではなしに、それに対してある程度の、何といいますか、その期待を入れて輸出入において相当増大する見込みがあるかどうか、これを伺いたい。  その次は、西ドイツが最近非常に好調にどんどん輸出をやりまして、外貨も六十億ドル以上、これは日本と西ドイツを比較しますと、西ドイツがヨーロッパの十字路にあって、立地的条件もよろしい、あるいはヨーロッパの市場を控えており、日本とは問題にならぬほど立地的条件がよい。あるいは工業原料が日本と西ドイツと比べて、西ドイツの方がはるかに有利な立場に立っておることはわかりますが、その輸出内容を見ますと、日本輸出は主として消費財が多い。西ドイツの輸出生産財が多い。そこが西ドイツと日本輸出面におけるところの非常に内容的に違う点になると思うのですが、日本においてはどうして生産財が伸びないか、主として輸出が消費財の方に重点が置かれておる、こういうことの原因はどういうようにお考えになりますか。時間の関係であわせて全部御質問いたしましたが、簡単にお答え願いたいと思います。
  20. 藤井丙午

    藤井公述人 中共貿易の長期的な見通しとこの拡充についてのお話でございましたが、私ども中共貿易は先ほどるる申しましたように、原料輸入の面と製品のマーケットの面で相当大きく期待しておりまして、できればバーターのみならず、普通の貿易の正常化と申しますか、そういったことが実現すれば、さらにこの貿易量は増大すると思うのでございますが、そこは非常なデリケートな政治関係でございますので、民間側としては何とも申し上げられません。ただむしろ先方は外貨不足でございますので、日本が鉄鉱石、原料炭、塩、大豆、こういったものを大量に買い付ければ買い付けるほど日本からの輸出は増大するわけであって、これは鉄鋼のみならず先方で相当日本からの輸入を期待されるものが多いわけでございまして、要は、日本の中共からの原料等の購入の限度、購入力というものに関連がございますので、われわれ鉄鋼業といたしましても、先ほど来申しますように、たとえば中南米あるいは北米等から相当鉄鉱石を輸入しておりますから、海南島の開発が進みますれば、そういったものを切って海南島に切りかえる、こういったような具体的な方法と実績を積み上げていくほかなかろう、かように考えているわけでございます。  それから民間側で中共貿易をさらに促進するように、もう少し積極的に動いたらということでございますが、これは鉄鋼業のみならずその他の産業におきましても、中共の市場に期待するところは相当大きいわけでございまして、日中関係の政治問題のいろいろな具体的関係から非常にむずかしいとすれば、せめて貿易だけでも切り離して、一日も早くはっきり正常化の方向に進んでいただくようにしていただきたい、そういうふうに考えておるわけでございます。  ソ連との貿易でございますが、ソ連は今のところ樺太炭を——これは戦前も入っておりましたが、樺太炭をたとえば本年度は十五万トン入れる予定でございますが、三十三年度は二十二万トン、三十四年度は三十万トン、炭質、数量等の関係から、将来三十万トン程度の樺太炭の輸入を計画しておるわけでございまして、これに見合う鋼材輸出、特に珪素鋼板等が最近ソ連から相当の発注もございまして、相当輸出することになっております。この方面も、政治的な問題は別として、まだまだ拡大の余地があろうかと存じますが、しかし地域的に見てそんなに、これは中共ほど巨額のものを期待することはむずかしかろう、かように考えておるわけでございます。  それから西ドイツは生産財を輸出して、日本は消費財の輸出が重点であるということでございますが、これは戦後日本もよほど貿易の内容が変って参りまして、先ほど申しましたように、一昨年、その前、鉄鋼だけでも二百万トン以上輸出しております。造船は、御承知のように、世界第一の造船国でありまして、また輸出国であります。機械関係でも立ちおくれておりますけれども、相当輸出して参っております。これに化学工業、つまり今後の貿易の中心は重化学工業の方に移行しつつあることは、これは数字の上にはっきりしておりまして、われわれといたしましては、ぜひそういった方向で一そう努力すべきであると考えております。
  21. 江崎真澄

    江崎委員長 他に御質疑がなければ、藤井公述人に対する質疑は終了いたしました。藤井さん、どうもありがとうございました。(拍手)  次に立教大学教授藤田武夫君に御意見開陳をお願いいたします。
  22. 藤田武夫

    藤田公述人 私にきょう与えられました課題は、地方財政の面から三十三年度予算案について意見を申し述べるようにということでございます。研究をいたしておる者といたしまして、第三者的な客観的な立場から意見を申し上げてみたいと思います。  御承知のように地方財政あるいは地方行政に一番関係の深い問題は、何と申しましても国家予算のうちの民生関係の経費でございます。まず今回の国家予算の社会保障関係の経費について見てみますと、そのうちの中心であります生活保護費、これは今年度三百八十二億円計上されておりまして、昨年に比べて十五億円ばかりふえております。そして保護人員として予定されておりますのが、月平均百五十万二千人、昨年に比べて五万二千人ばかりふえております。パーセンテージにいたしますと、約三%強の増大であります。ところが御承知のように、昭和三十三年は大体一般の景気の動向もあまり思わしくないというのが一般の見通しであります。ところが昭和三十一年度の、これは今日と比べますと、かなり景気のいい時代でありますが、このときにも前年に比べて二・五%の保護人員の増加を見ておった状態であります。そういたしますと、今度の三%の増加というのは果して経済の不況の時代に十分その機能を発揮し得るかどうかということが問題になると思います。私よく地方へ調査に参りますが、地方へ参りますと、現在実際に保護を受けております受保護者というのが実際に保護を要する人のわずかに四分の一か五分の一にすぎないということをよく耳にするわけであります。  それからなお保護基準の問題でありますが、昭和三十二年十月に改訂されました全国平均の五人世帯当りの保護基準は八千四百五十五円になっております。ところがこれは厚生省の発表いたしております厚生白書によりましても、全国の国民一人当りの平均の必要家計費というものの約四〇%にすぎないのであります。こういうふうに保護基準も実際に必要な額のわずかに四〇%であります。今回の予算では学令前の児童に対する諸費を幾らか引き上げておりますが、それくらいの手当であって、こういった生活保護というものが人員の面においてもまた保護の内容においても十分とは言えないというふうに思うのであります。  それから失業対策の問題でありますが、これは今年度三百九十六億円を計上されて、昨年に比較いたしまして四十八億円ふえております。そうしてこれによりまする吸収人員が一日平均二十五万人予定されておりまして、昨年と比べて約一〇%吸収人員をふやしております。ところが昨年の吸収人員というのが三十一年度に比べますと一〇%減っております。これは昨年の予算審議の際にはいわゆる神武景気が予定されておったわけでありまして、従って一〇%減らしたわけでありますが、この減らしたものを基準にして今回一〇%ふやしている、こういう状態で果して将来経済界の不況の予想される場合に、十分な失業対策ができるかどうかということでありますが、官庁の失業者の推計はよく低いと言われておりますが、これによって見ましても完全失業者が昭和三十一年中の平均で六十四万人で、従って二十三年はこれは予想でありますが、おそらく八十万人ははるかにこえるだろうと思われるのであります。それに対して二十五万人の吸収人員であるという状態であります。  次に住宅対策について見たいと思いますが、地方団体に関係の深い地方の公営住宅に対する補助金、これは大体昨年と同じ百六億円であります。そうして戸数は昨年と比べますと四万六千戸から四万七千戸に、一千戸だけふやされておりますが、その内容を調べてみますと、国の補助率の低い第二種住宅というものを二千戸ふやしまして、補助率の高い第一種住宅というのを一千戸減らしております。こういう状態で第二種住宅というのは御承知だと思いますが、木造で八坪という非常に貧弱な零細住宅であります。こういうのが今回の住宅対策でありまして、現在住宅の全国的な不足数は二百八十万戸だと言われております。今度の政府予算によりますと、公営住宅、公庫公団、その他の住宅を全部加えまして十九万九千戸でありますが、これも二百八十万月に対してはかなり貧弱な対策ではないかというふうに思われるのであります。  次に文教関係予算を見てみますと、本年度は一千四百三十八億円で、昨年に比べて九十一億円ふえております。ところがこの九十一億円の増加のうちで八十八億六千万円というものは、教職員の給与費の増とそれから国立学校の経費の増加に充てられているのであります。現在問題になっております文教施設の拡充ということにつきましては昨年の八十八億円から八十九億円、わずか一億円の増にすぎないのであります。今最もやかましく取り上げられておりますすし詰め教室というふうな問題に対処するために、不正常授業の解消というので七億三千万円計上されておりますが、現在中小学校の不正常学級というのが約三万五千学級あるというふうに言われております。これに対して七億三千万円の手当という状態であります。また危険校舎につきましては二十億五千万円計上されております。これも小学校の校舎の総面積の約二〇%が危険校舎である。私が地方へ行きました東北のある都市などは、三六%まで危険校舎だと言われておった状態でありますが、これに対して二十億五千万円の経費が計上されているという状態であります。  それから地方の経費に非常に関係のあります公共事業費でありますが、これが今回一千七百四十一億円で、昨年に比べまして九十六億円の増加でありますが、その大部分は道路の整備あるいは港湾、漁港の整備、そういうことに振り向けられております。そして地方の住民が一日も早く復旧を望んでおります災害復旧費というものについては、昨年の三百九十八億円に対して本年は三百六十四億円で三十四億円の減であります。これについては政府の方では二十九年度以降最近はあまり災害がないということのようでありますが、しかし御承知のように日本の災害復旧というのは非常におくれておりまして、昭和三十二年度末、この三月末の予想でも二十八年に起りました災害の七九%がやっと復旧するという状態であります。こういう場合に災害復旧費がかなり大幅に減少されている状態であります。  以上民生関係の経費について一あたり見て参ったわけでありますが、今試みに社会保障関係の経費が今度の予算総額に対して何パーセントを占めているかということを見てみますと、九・五%であります。昨年はこれが一〇%強であったので、パーセンテージにおいて低下しております。また文教関係の経費も昨年の一一・九%から一〇・九%に減っております。こういうふうに見て参りますと、現内閣は当初今度の三十三年度予算においては財界との関係もあって緊縮政策をとるんだということを強く主張せられておったわけでありますが、その後いろいろな関係かなり経費がふえたようでありますが、その緊縮の方針が民生関係の経費に非常にしわ寄せされているということが言われるのではないか。民生関係の経費が果してこれで十分であるかどうかということについては、十分御審議を願いたいと思うのであります。この民生関係の経費が地方財政に補助金等を通じて御承知のように非常に大きな影響を与えるということでありまして、こういう状態では地方の住民の要求に応じて民生行政の水準を十分維持することは困難ではないかというふうに思われるわけであります。  第二番目に、税制問題について意見を申し述べたいと思います。今回の政府案によりますと、法人税、相続税等が中心になって減税が行われたのでありますが、これは私の考えでは間接税を中心に減税を行うべきではなかったというふうに思われるのであります。それはとにかく、地方税の関係といたしまして御承知のように法人税が二%今回軽減されております。そうして軽減税率の範囲の拡大その他で大体平年度において二百二十億円の減少ということになるようであります。ところがこれが地方へはね返りまして地方の法人税割その他に対して影響を与えて、大体二十九億円ばかりの減収になるようであります。この国税において一定の、そのときの政府の方針に基いて減税政策をとられることも場合によってはいいかと思いますが、それが地方団体にはね返ります場合においては、地方団体は御承知のようにそれぞれの団体として独立の財政を運営いたしております。従って地方団体に対して他の財源の手当をせずに、これを国税の政策によって減収のままに置いておくということは、地方財政の運営を脅かすものとして考えるべき点じゃないかと思います。今度はこの法人税減税を埋め合わすための法人税割の税率を引き上げることを見送られたように伺っておりますが、これは法人を軽減するということの趣旨を地方でも徹底したいという意向のようでありますが、昨年の一千億円の個人の所得税減税の場合には、個人に対する地方税の所得割の税率を引き上げて埋め合せをやったのでありますが、こういう点において、法人と個人との地方税の負担関係が果して均衡を保得るのかどうかという点を十分お考えを願いたいと思うのであります。  それから御承知のように先ほど藤井さんも御触れになりましたが、おそらく昭和二十五、六年ごろからだと思いますが、貸し倒れ準備金、価格変動準備金その他社内の内部留保あるいは特別償却の範囲の拡大による設備近代化重要産業の保護、その他の名目で国の法人税所得税、登録税等について、いわゆる租税特別措置が行われておりまして、さきの臨時税制調査会の答申によりましても、平年度これによる減収が一千億円近くあるというふうなことが指摘されておったのであります。これにつきましては世論にかんがみて、昨年平年度約四百億円近い整理をされたのでありますが、なおここに六百億円の特別措置というものが残っております。これがまた地方団体の法人税割あるいは事業税等にはね返っておりまして、大きな法人のありますような府県、市町村においては、税収入の上に大きな制約を加えられている状態であります。また地方の固定資産税にいたしましても、企業合理化のための大規模機械設備だとか地方鉄道用償却資産、発送変電用の家屋償却資産その他につきまして、この資産の評価を二分の一または三分の一にするというふうなことで、実質上いろいろな減税が行われております。これもやはり地方団体の税収入の上に非常に大きな影響を与えているのであります。日本経済昭和二十五、六年から七年ごろにかけまして、何としても一日も早く資本を蓄積する必要がある、そして企業の収益を相当高める必要があるということはこれは当時の日本経済の自立あるいは安定のためには、こういった特別措置というものも必要であったかと思いますが、今日かなり資本の蓄積が進められて、また企業の収益も高まってきている。昨年からことしは幾らか事情が違うかもしれませんが、これは特殊な理由だと思います。こうして日本経済の自立が達成されつつあるという時代においてはこういった特別措置については負担公平の見地からも十分検討を加えられて整理をする必要があるのではないか。今日わずか五反の田畑を持っている貧農、あるいは十坪の住宅を持っている一般の都市の庶民たちもそれぞれ重い固定資産税を負担している状態であります。従ってこういった特別措置をこの際十分再検討していただく必要があるように思うのであります。ところが今度の地方税法の改正におきまして、固定資産税についてさらにその減税の範囲を拡大いたしまして、新技術企業化用の機械設備についてはその評価を三年間二分の一に低めるというふうな措置がとられるようであります。これは私が今まで申し上げましたことを反対した行き方でありまして、この点十分御審議を願いたいと思います。  それから地方税制の問題でありますが、今回自転車荷車税が廃止されたということは、非常にけっこうなことだと思うのであります。しかし一面において木材引取税の税率を四%から二%に半減するということが計画されております。そしてその理由といたしまして、今まで木材引取税があまり厳重に徴収されておらなかった、これを厳重に徴収することによってこの税率の低減分は十分埋め合せるのだというふうなことをいわれております。しかしこれは税金を厳重に徴収するのは当りまえの話でありまして、それによる収入が、厳重にやったから収入がふえる、だから当然税率を下げるべきだという議論は成り立たないように思うわけでありまして、大体山林業者というのは農業と一緒に、御承知のように今日中小企業者等が相当重い負担をしておりまする事業税を免税されている状態であります。その上になぜまたこうした木材引取税の半減ということを考えなければならないのか、この点理解に非常に苦しむわけでありまして、率直に申し上げますと、何か政治的なにおいがするような感じであります。  第三番目に財政投融資計画と地方債の問題に移りたいと思います。昭和三十三年度財政投融資計画は三千九百九十五億円で、昨年の実行額と比べますと四百七十二億円、大幅に増加いたしております。ところが先日発表されました地方債計画等によりますと、地方債のワクは昨年の一千七十億円から一千億円に、七十億減少をいたしております。そのうちでも収益的な建設事業あるいは公営企業分については、昨年に比べて十億円ずつふえております。これも十億円の増加でいいかどうかということには相当問題があると思いますが、一番重要な点は一般会計分、つまり一般行政をまかなうための地方債というものが、五百二十億円から四百五十億円に、非常に大幅な減少をしているのであります。もちろんこの地方団体の起債ということも、それが地方の一般財源の赤字の補てんのために発行されるというふうなことは避けるべきでありますし、また地方債は言うまでもなく借金なので、地方団体としてほかに財源があれば借金をすることはできるだけ押えるべきだと思います。しかし他に十分な財源も与えられなくて、単に公債のワクだけを締めるということになると、地方行政の上に重大な影響を及ぼすのであります。特にこの一般会計分の公債のうちで注目されます点は、一般補助事業というものについての地方債の額が、昨年の百九十億円から百億円に、ほとんど半減されているのであります。この補助事業、そのうちには現内閣が看板とされております道路整備事業その他も入っておるわけでありますが、そういうもので補助金をもらった残りは、やはり今日の地方財政の状況としてはかなり起債に待たなければならないという実情であります。そういう起債が半分に減らされるということで、果して国が計画されております道路整備その他の補助事業が、今後一年間その期待通りにうまく実現されるかどうかということに対して、非常に大きな疑問を抱くわけであります。  三十三年度の本予算につきましては大体以上申し上げた通りでありますが、地方財政計画内容について意見を申し上げたいと思います。地方財政計画が国の本予算との関係でことしはかなりおそく、まだそれも厳密な計画までいっていないようですが、作成されたのであります。総額は一兆二千三百七十二億円、昨年と比べますと約九百億円ばかりふえておりますけれども、国の予算と比べますと七百五十億円ばかり少くなっております。国の予算よりも少いというのは、二十九年度以来今回が初めてでありますが、この地方財政計画のうちで問題になりますおもな点を拾って申し上げますと、これはいつでもそうでありますが、補助金を伴う経費の見積りでありますが、これは補助金を伴う消費的経費あるいは公共事業費あるいは失業対策費その他に関係いたしますけれども、自治庁が地方財政計画を作成いたします場合には、補助事業については国の法律できまりました補助率から逆算をして、そうして事業費の総額を算出しているようであります。補助事業については一応そういう方法より仕方がないかと思います。ところが国が補助をします場合の補助単価というものは、実際の実情よりも少いという場合がよく見受けられる例でありまして、特に学校の校舎あるいは住宅についてそういう例が多いのであります。その結果は一定の単価に基いた補助率の補助金は交付されるわけでありますが、実際はそれではやっていけないということで、地方団体が超過負担をいたしております。この超過負担が今日の赤字の一つの大きな原因になっておりますが、今回の国庫補助金を伴う事業の見積りにおいて、再びこういうことが繰り返されていないかどうか、これは補助金全体の問題にもなるわけでありますが、この点十分御審議を願いたいと思います。  それから消費的経費のうちに補助金を伴わないものというのがございます。これは主として地方の物件費関係の経費でありますが、これが昨年に比べましてわずかに三億円よりふえておりません。三十二年度の場合は、三十一年度に比べて四十八億円の増を見込んだのでありますが、本年度はわずかに三億円であります。これは国が節約方針をとっているので、大体それに見習ったということのようであります。これは総額で申しますと一千七百億円くらいのものでありますが、それについてわずか三億円くらいの増加で、人口増によるところの物件費の増加ということさえもこれでは十分まかなえないのではないか、地方団体は、過去すでに相当経費の節約を続けてきております。経費の節約分もおそらく見込まれていると思いますが、これ以上大幅に経費を節約して、そうして人口増を見込んでわずか三億円で果して足りるかどうかという点が非常に疑問とされるのであります。  それから今度の地方財政計画で、国庫補助金を伴わない建設事業費というものが、二百三十億円の増加で一千三十四億円計上されております。これはあとでも申し上げますように、現在地方団体の事業の水準がかなり低下しておりますので、こういった投資的経費をかなり多く見積られた点は私も非常に喜びとするところであります。しかしこれにつきましては、これはあとの地方税の見積りと関係はいたしますが、前に申しましたように、この一般行政費その他の公債、地方債のワクが非常に縮められたのであります。地方債がこういうふうに縮められて、しかも地方税が私の見通しでは、財界の昨年の不況の影響もありまして、そんなに伸びを期待できないと思いますが、それで果して財源の上でこの二百三十億円というものの建設事業が実施できるかどうかという点に大きな疑いを持つのであります。それから地方財政計画の歳入の面でありますが、この歳入には地方税が五千四百二十七億円で、昨年に比べまして五百二十五億円、かなり大幅な約一一%の増が見込まれております。御承知のように地方税に対する財界の景気の影響というものは大体において一年おくれるのでありますが、そうなりますと、三十二年度の神武的なと悪口を言われている、不景気の影響が三十三年度に現われてくるわけであります。また一方から申しますと、法人税の軽減その他によって住民税の減収も考えられるわけであります。こういう場合において、果して昨年に比べて一一%の五百億以上の税収入の増を見込んでいいのかどうか。これがくずれて参りますと、地方財政計画全体の実施に大きな影響を与えるわけでありまして、私としては五百二十五億の増というものの見積りは、相当無理があるというふうに思うのであります。  それから収入の面の雑収入でありますが、これは御承知のように、手数料、使用料あるいは財産の売却とか寄付金とか、こういうものが含まれております。ところがこれについて新年度において二十九億円の増が見込まれているのであります。昨年は十二億円の増しか見込んでいないのでありますが、この雑収入のうちに、最近地方団体の財政が苦しいために、いろいろな県有林だとか村有林を売却する、それの売却収入が入っておりましたり、御承知のようにPTA会その他の住民の税外の寄付金というものが、これも三百億円くらいといわれておりますが、そういうものが大幅に入っております。こういうものを土台として、さらに昨年よりも二十九億円の雑収入の増を見積るということも、これはいろいろ問題を含んでおり、相当これは検討を要する見積りではないかというふうに思うのであります。  以上地方財政計画の個々の問題について申し上げたのでありますが、この地方財政計画について、全体として私の希望したい点が二点あるのであります。  その第一点は、御承知のように地方団体と申しましても、四千からのおのおの特殊な事情があり、また財政力も貧乏な団体あるいは富裕団体等いろいろあるわけでありまして、それについてこの地方財政計画が、全体として収支のバランスが合うということも必要でありましょうが、それだけでは実際の個々の団体についてはなかなか収支のバランスが合わない。実際地方の決算額と地方財政計画とを比べると、いつも相当大きな開きが出ているのであります。従ってこれは技術上いろいろな困難もあるかと思いますが、大体大まかに財政力によって幾つかの団体に分けて、それについて地方財政計画を立てていただくということが、ほんとうの地方財政計画といたしまして、地方の財政の実態に対する指針としての価値が高まるのではないかというふうに思うのであります。  それから第二点は、今日御承知かとも思いますが、国の一般会計の歳出の四二%というものが地方団体に流れ込んでおります。補助金あるいは地方交付税その他の形で四二%、しかもこれは年々その地方に流れ込む率は高まってきております。こういうふうに国家財政と地方財政というものは、今日ではどこの国でもそうでありますが、非常に密接な関係を持っております。また地方団体のやっておりますいろいろな行政にいたしましても、今日では国の施策と非常に関連が深く、また地方行政自体がかなりナショナルな国家的な性格を持ってきております。こういう場合において、国の予算を審議される場合には、十分その予算と地方財政計画との関係がうまくいっているかどうか、あるいは地方債計画ともにらみ合せて御審議願いたい。そうでないと、国でせっかく立てられた施策、事業というふうなものが、実際それを担当してやる地方において実現されないということも起るわけであり、また地方団体の側からいいましても、国の予算のあり方によって非常な影響を受けるわけであります。その点十分国家予算と地方財政計画というものをあわせて、同時に地方財政計画を十分重視されて御検討を願いたいと思うのであります。  以上、三十三年度予算の民生関係費それから税制改正、投融資計画、地方債計画、地方財政計画等について一通り見てきたわけでありますが、最後にここで申し上げておきたいことは、最近新聞雑誌その他で地方財政かなり改善されたということがいわれております。この点につきまして、果して地方財政が改善されたのかどうかということについて、国会で十分一つ考えを願いたい。御承知のように、昭和三十年の暮れに地方財政再建促進法というものができまして、その後地方団体の側で極力予算を圧縮して、次第に数字の上では赤字が少くなり、たとえば昭和三十年度の単年度だけで見ますと、赤字がわずかに十五億円に減っている。従来は大体二百億近くも毎年出ておったのですが。それから三十一年度には、単年度だけをとってみますと、実質的に約二百五十億くらいの黒字が出ているというふうに言われております。ところがこの二百五十億の黒字というものも、ちょうど三十一年度には財界の好況などがありまして、地方税の収入が五百億以上増収になっております。これが相当黒字に影響したと思われるわけでありまして、こういう状態はこの三十三年度にはもうすぐに消えてしまうわけであります。それからなお赤字団体は千二百六十七団体も残っているわけであり、また財政再建債というこの赤字の借金を五百億以上かかえ込んでいるわけであります。従って数字の上でもそう簡単に、この地方財政の改善ということについて安心することはできないと思いますが、なお地方の行政の実態を少し申し上げたいと思います。  この地方財政再建促進法には、御承知のように、赤字の各地方団体が財政再建計画というものを立てることを要求しております。その内容は、非常に強い事業費の圧縮、人員の整理、徴税の強化または増税というふうなことを要求しております。これに基いて再建団体その他が地方財政の引き締めをやったのでありますが、その結果は、私もよく地方へ参りますが、地方の実情は非常に事業を圧縮し行政を押えまして、地方の公共団体としての機能が麻痺するのではないかというふうな状態であります。  少し例を上げて申し上げたいと思いますが、たとえば河川の改修というふうなものも地方では非常におくれております。これは公表されておりますので名前をあげてもいいと思いますが、たとえば新潟県では、昭和三十一年度に実施した河川の改修費が一億一千六百万円、わずかこれだけの改修費しかあの大きな県で使えない。そのために改修を要する河川を完全に改修するためには六十九年を必要とする。こういう状態であります。また橋梁にいたしましても、自動車の交通のできない橋、あるいは重量制限をやっている橋というのが、これは私も実際上そういう経験をしたのですが、至るところにあるのであります。たとえば栃木県では自動車交通不能の橋が木橋の二〇%、あるいは重量制限の橋が三六%というふうな状態であります。それから学校関係で見ますと危険校舎が非常に多くて、これは現に私が北陸のある県で見たのでありますが、県立の高校でもって、十日に一度くらい上の方から分銅を下げまして傾斜の程度をはかる。そして十日くらいは大丈夫だろうということで学生を入れているというふうなこともあります。また小学校の危険校舎というのも先ほど申しましたように相当多いのであります。それから保健所なども職員を極端に整理しました結果、実際の定数の七〇%しか職員がいない。そのために保健所の機能が麻痺しているという状態であります。さらに県立の工業試験場などへ行ってみますと、全く今日の近代化された実際の産業技術とはかけ離れた時代物の機械を置いておりまして、博物館にでも持っていけばいいような機械が並んでいるような状態で、地方の産業の振興にはあまり役立っていないという状態であります。こういうふうに行政水準が地方においてかなり低下しております一方、県民税あるいは事業税、不動産取得税等が、超過課税が行われ徴税が行われております。さらにPTAその他の税外の負担がどんどんふえているのであります。こういう状態を見てみますと、地方財政がたとい計数の上で改善され、幾らか黒字が出たと申しましても、それはやるべき事業を繰り越し、中止し、あるいは行政水準を切り下げてこういう状態が生まれてきたのでありまして、こういう状態をいつまでも放置するわけにいかないのはもちろんであります。そういう繰り延べが山積いたしますと、数年後にはどっと多額の経費を必要とするというふうな状態も出てこざるを得ないのであります。従って、実質的に果して地方財政が改善されたかどうかということについては十分に吟味を願いたいと思います。  それからこういう状態についてもう一点心配になります点は、財政再建をやり、経費を圧縮しております貧乏な団体と、そういう必要のあまりない富裕な地方団体との間の財政のアンバランスが非常に強くなっているということであります。先ほどもちょっと話が出ましたが、日本経済の底は浅い、従って日本では後進地域の開発、地方経済の振興ということが、日本経済の将来にとっても、市場の面からいいましても、原料、材料の面からいっても必要だと思われます。現内閣でも経済基盤の強化というふうなことをうたっておられるわけでありますが、果してこういうふうにして——再建団体とか赤字団体というのは後進地域の地方団体あるいは災害を受けた地方団体に多いわけでありますが、こういう団体において、事業施設が低下し、行政水準が著しく切り下げられていくという状態を放置していいのかどうかということも十分に御審議を願いたいと思います。こういった地方財政行政の実態を十分御認識願って、新年度の国家予算あるいは地方財政計画を十分御検討願えれば幸いだと思うわけであります。  以上で私の公述を、時間の制限もありますので、終りますが、最後に一点これはちょっとお願いをしておきたいのです。これは公述の範囲からそれるので、委員長さんの御指示にそむくかもしれませんが、昨年参議院の予算委員会に私が要求されて出まして、一昨年は衆議院の予算委員会でここへ参ったのであります。大てい毎年御要求によってこちらへ来てお話し申し上げておるわけでありますが、そのお話を申し上げる場合に、常々気をつけてはおりますが、政府予算、あるいは私の関係でいいますと自治庁の予算とかその他いろいろの財政関係の資料を集めるのに相当苦労するわけであります。こういう公聴会へ出て私がお話し申し上げることは、名誉でもあり、非常にけっこうではありますが、どうか一つ財政学者には客観的な立場から国家財政、地方財政に絶えず具体的に関心を持ち得るように、政府関係からもそういう資料をできるだけ御交付を願いたい。これはきょうの公述の外で、恐縮でありますが、お願いいたしておきます。
  23. 江崎真澄

    江崎委員長 御苦労様でした。  ただいまの藤田公述人の御発言に対しまして、御質疑がありますれば、この際これを許します。
  24. 門司亮

    ○門司委員 藤田先生に一点だけお聞きしておきたいと思いますが、それはさっき先生がお話しになりました地方財政の再建整備を受けております団体の行政水準の将来についての先生の御心配の点であります。この点は非常に重要な点でありまして、私どもも気をつけてはおりますが、しかし幸か不幸か一応地方の財政がことし五百二十七億でありまするか五億でありまするか、ふえたということには間違いないのでありますが、これらの増収の使い方であります。これは実は再建整備団体にとっては非常に大きな問題だと考えます。今政府のとっております態度というのは、増収があった場合に六割くらいのものは使ってもいいが、あとの四割くらいのものは、やはり借金を早く返すことのために努力してもらいたいという注文をしておるようであります。このことは、再建整備自体が約束の年度通りに完成されれば大体いいのであって、その完成を急いで、そうして早く借金によって縛られておる準禁治産みたいなものから解いてやった方が楽ではないかという意見もあります。これも一つ意見だとは思いますが、実際地方の実態を見ると待っておられぬ、やはり金があればできるだけ早く行政水準というものを上げていきたい。そうすることによらなければ、その次にくる今先生のお話のような問題のときに、非常に大きな負担を要求されることになりはしないか。ことしやっておけばよかったものをやらなかったために、二、三年後には非常に大きなそれに負担を要するような結果が必ず私はくると思う。従ってこの再建整備団体に対する増収分の使途については、やはり再建整備の計画通りにこれを行なっていくということであって、増収分はその団体の行政水準の上昇に充てていくということの方が筋も通るし、私は将来の財政計画あるいは行政水準の維持にも必要である、こういうふうに解釈するのですが、その点をもう一度一つ先生から御説明願っておきたいと思います。
  25. 藤田武夫

    藤田公述人 ただいまの御質問ですが、政府の方といたしましては、再建債の発行を認めて金を貸しておるという関係もあって、増収になった場合にはできるだけその借金を返せというふうな考え方をするのも無理のない点もあるかと思いますが、しかし私も先ほど申し述べましたように、地方団体の行政水準、事業の状態というものは非常に今日哀れなもので、非常な切り下げが行われておる。従って再建団体等におきましては、地方の住民の不満等も非常に強いものであります。従ってそういう場合にたまたま増収があれば、事の緊急性からも考えまして、まず第一に住民が強く要求しております現在の事業の切り下げの回復、たとえば先ほど申しましたように学校の校舎が傾いているというふうな場合には、これは当然にまずその事業を充実する、行政水準を引き上げていくということを、今日はせなければならない事態に来ている。それをやってなお——これも程度があるかもしれませんが、一応住民の満足する程度にやって、なおそこに余裕が出た場合には借金は返すというのが、順序ではないかというふうに私は考えます。
  26. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 私は地方財政の問題について、これは専門家ではありませんのでなんですが、少し平素から思っておりますことについて、御教示を得たいと思っております。それはまず第一は、今いろいろ地方財政の赤字がだんだん解消して健全化してきておるけれども、実際的には地方団体が無理に行政水準を落しておる、それは御指摘の点が多々あると思うのでございます。その点について、たとえばもう少し掘り下げて、日本は将来社会保障国家、福祉国家としていく場合は、単に保険とかあるいは年金とかいうような社会保障制度の中核体になるものだけでなしに、環境衛生の面においても、もっと衛生的な国家にしなければならぬと思うのです。たとえば東京都の下水道計画あるいは糞尿処理というようなものについても、相当大きな財政が要ると思うのですが、今日の状態ではとうてい一都市、一地域でこれを処理することができないわけですから、国家が相当長期にわたる計画を立てなければならない。そういう一つの面から見た財政学者としての地方財政のあり方をお聞きしたいことが第一の点であります。  それからこれはちょっと論点が逆になると思うのですが、今あなたが申されたことに同調しておる面も私ございますけれども、近ごろ学者の一部には地方財政が漸次膨張してきておる、昨年から比べると国家財政との比率は、昨年が一番地方財政がふくらんだ——国家財政財政規模との比率からいうと一〇〇対一〇六くらいで、昨年は一兆一千三百七十四億の予算に対して、地方財政全体では一兆一千七百億です。ことしは幾らか地方財政の方が少くなっておるわけですから九七、八になっておると思うのですが、こういう国というものは世界中にないということですね。アメリカはもとより州制度をとっていますから、私詳しいことは知りませんけれども、逆に国家財政よりも地方財政を全部総計すればずっと高いですけれども、フランスにしても、ドイツにしても、ベルギーにしても、オランダにしても、あるいはソビエト連邦はもとよりあらゆる国々は、国家財政規模に対して地方財政規模が大体七〇%から七二、三%までが限度です。ということは、国防費が非常に国家財政に大きく含まれておる。日本も国防費が非常に問題になっておるけれども、もとがないわけですから——だんだんふえてきておるのは、一時肯定しなければならぬ議論だと思うのですけれども、それにしても地方財政規模が大きくなってきておって、しかも国家財政のうちの四二%は、地方財政に対する国庫の補助金ないしはそれに類似するものだということになると、その面から一つ財政学的にはどういう理論が成り立ち得るのか。これは税収を地方で押えておらぬという点もあるのではないかということも一面考えられます。考えられますが、地方財政が非常にふくらんで来ておるということに対して、行政水準を落さずして何か大きな工夫をすることはできないか、圧縮することはできないか。ということは、つまり私は率直に言えば、日本は教育が非常に発達し過ぎておるとさえ思っておるのです。内部的に非常に充実しておるかどうか知らぬけれども、制度的には強硬にアメリカの教育委員会考え方を入れて、それに伴って教員の数をふやし過ぎた、ここに非常に重大な問題があるのであって、地方の市町村の合併が行われるとすれば、この際思い切って教育を統一をして、教員の数を整理統合するということも必要なんじゃないか。そういう発言がちっともなされないのはどういうわけか。結局選挙の人気取りあるいは地方の長、いわゆる首長というものが民選になっておる関係で、それに手がつけられない、そして末端のむしろ保健所の人数を減らすというような、あべこべの整理対象というものがあげられておるというところに重大な問題があるのではないかというふうに、私は私なりに考えておるわけであります。そういう問題について議論をどんどん発展をしていけば、これはやはり道州制の実施ということになるのではないかと考えておるのですが、これは財政学者のあなたでありますから、思い切って言われてもいいと思うのですが、道州制を日本にしいた場合においては、財政は非常に大きく圧縮される可能性があるかどうかという点も伺っておきたいと思うのです。
  27. 藤田武夫

    藤田公述人 川崎委員からの御質問、いずれも非常に重大な、かつ、困難な問題かと思いますが、お答えいたします。  第一点は、地方財政について長期計画をどういうふうに立てるかという問題だったと思うのですが、御承知のように、地方財政計画というのは、何しろ四千もある団体をひっくるめての計画で、なかなか計画通りはいかないと思います。しかし先ほども申しましたように、現在計数の上ではだんだん黒字がふえてきている。しかしこれでは実際の地方財政の改善、実質的な意味での改善とは言われない。そしてそのあとに、国家予算と地方財政計画というものをひっくるめて、一つ十分慎重に御審議を願いたいと申し上げたのですが、従ってこれはほかの国でもそういう問題が問題になってきております。何しろ国家財政に匹敵するくらいの大きな規模を持った地方財政を、とにかく財政問題全体を考える場合には、何とかそれについて計画的な長期の見通しを持つ必要があるということは、確かにそうだと思うのですが、そういう場合に国家財政と地方財政とをひっくるめて、全体の財政規模、またそれと国民経済との関係の問題ということを考えなければいけないと思います。これは今までも国家予算編成されるような場合によく言われたのですが、地方財政が非常にふくれ過ぎて困る。だから、国家財政の方はこういう方針だからこうしろというふうに言われて、主として国家財政の方の立場から問題が出て、そして全体の計画がやはりどうも国家財政中心に問題が考えられている。  全体を計画化する場合に私の希望したいことは、地方財政計画その他に表われる地方財政側の要求というものを十分入れて、両方を同じレベルに置いてよく問題を考えていただいて、その全体の大きさ、またその中に占める地方財政の地位というものをよく検討していただく、そうして全体の財政の大きさと国民経済の大きさというものを考えていただきたい。その場合、結局問題は、一緒に考えた場合に、民生関係の地方財政——というのは、御承知のように、民生関係の経費が主なんですが、民生関係の経費が国、地方全体をひっくるめた財政規模のうちで、どれだけの比重を持つのがいいか、そのときの政府としてどういうふうに考えるかということになると思うのですが、この場合も私から言いたいことは、民生関係の経費を十分重視していただきたいということになるのです。非常に抽象的な返答になりましたが、長期計画としてはこれはいろいろ問題があると思うのですが、一応それくらいにさせていただきます。  それから地方財政規模の問題でありますが、これはただいま御指摘のように、日本の地方財政規模というのは——これはなるほどアメリカはお話にもありましたように州が非常に強い。州をどっちに入れるかで問題が違いますが、イギリス、ドイツその他、私も昨年ずっと欧米を回ったのですが、確かに日本の地方財政規模というのはほかに比べて大きい。しかしそれは、ただ今の数字の上で大きいということだけで、それがいいか悪いかということは判断できない。その地方団体が担当している行政の内容、量が、果してイギリス、ドイツの場合とどうかということになるわけで、これも御承知だと思いますが、たとえばイギリスなどは今まで地方団体の中心の行政であった社会保障——パブリック・アシスタンスというのを、四八年に国の方へ移しまして、現在は国家経費でまかなっております。そういう社会保障——これは日本も相当補助金は出しておりますが、やはり地方で相当金を出しているということもありまして、行政内容がどういうふうに分担されているかということと関係させないと、財政規模の問題は簡単に判断できないと思います。  それから日本の地方財政規模が大きく、また補助金が多いということのうちには、これは一つは国でやるべき仕事を、これからはなるたけそうでなくやった方がいいかと思いますが、明治以来軍備その他に非常に金を使ってきたので、国でやる国内行政を地方団体に押し付けるというのですか、やらせる。しかもその場合に、きょうは政府関係の方が来ておられるかもしれませんが、政府の官僚統制というふうなものが、相当補助金とからんで地方団体の行政を制約——制約というと悪いのですが、左右するといいますか、関係が深いということでありまして、そういう関係から、つまり国でやるべき仕事が相当地方団体にまかされている。そしてしかも地方に十分独立財源を与えないで補助金を交付し、補助金を通じて中央の各省の統制がきいているというのが日本のあり方なんで、そういうところに日本の地方財政規模、あるいは構成というものが、外国と違った点があると思うのですが、これはそのままでいくかどうか問題だと思うのですが、御検討願いたいと思います。  それから道州制の問題でありますが、これは道州制もいろいろな形があるので、すべて賛成とも反対とも言えませんが、昨年地方制度調査会で答申されたような道州制には、私は反対であります。そして今お尋ねの点は、道州制になって地方経費が節約できるかどうかという問題ですが、これも道州制の内容によると思いますが、昨年の第四次地方制度調査会で答申されましたような形だと、地方経費はあまり節約できないと思います。それはなぜかといいますと、道州制というものを関東なら関東、あるいは関西なら関西に置くわけですが、そうしてそのもとに、大体府県を一つの地域として出張所を置くというようであります。そうなりますと、府県の通りの経費が必要でないかもしれませんが、大体府県単位のそういう役所ができまして、そこで相当人員も要し、またいろいろな経費を必要とする。さらにその上に、全体を九ブロックに分けますか、八ブロックに分けますか、その道州の役所にまた金が要るというふうな関係になって、道州制が必ずしも経費の節約になるとは考えられないのです。  それから道州制によって、これは御質問の外へ出ますが、地方の財政のアンバランスがなくなるといいますか、非常に緩和されるだろうという話もありますが、これについても私は疑問を持っておるのであります。  以上であります。
  28. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 学校の統合はどうでしょうか。
  29. 藤田武夫

    藤田公述人 学校の統合は、町村合併その他でかなり進んでいると思いますが、先ほど川崎さんのお話の、教育の水準が制度的に少し上り過ぎたという御意見、これは私はそうだとは思わないのです。最近は相当教育の方も押えられてきておりますので、文化国家という以上は、決して今のが進み過ぎているというふうには私は考えておりません。
  30. 江崎真澄

    江崎委員長 他に御質疑もなければ、藤田公述人に対する質疑は終了いたしました。藤田さん、どうもありがとうございました。  すでに午後の公述人の方も来ておられますので、委員の方には御勉強を願うことにいたしまして、午後一時半より再開することとして、暫時休憩いたします。     午後一時十一分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  31. 江崎真澄

    江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  公聴会を続行いたします。  御出席公述人各位にごあいさつ申し上げます。本日は御多忙のところ貴重なるお時間をさいて御出席いただきまして、まことにありがとうございました。委員長といたしまして厚くお礼申し上げます。  公述人の方に申し上げますが、申すまでもなく、本公聴会を開きますのは、目下本委員会において審査中の昭和三十三年度予算につきまして、広く各界の学識経験者たる各位の御意見をお聞きいたしまして、本予算審査を一そう権威あらしめようとするものであります。各位の忌憚のない御意見を承わることができますれば、本委員会の今後の審査に多大の参考になるものと存ずる次第であります。  議事は、時子山さん、伊原さんの順序で、御一名ずつ順次御意見開陳及びその質疑を済まさせていただくこと、といたしまして、公述人各位の御意見を述べられる時間は、議事の都合上約三十分程度にお願いいたしたいと存じます。  なお念のため申し上げておきますると、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また発言内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならないことになっております。なお委員公述人に質疑することができまするが、公述人委員に対して質疑することができませんから、さよう御了承をいただきたいと存じます。  それではまず早稲田大学教授時子山常三郎君に御意見開陳をお願いいたします。
  32. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 時子山でございます。連日予算の審議に熱心な御討議を重ねておられます委員の皆さんに対しまして、国民の一人として衷心敬意を表したいと思います。  本日は、主として制度的な問題に焦点をしぼりまして、四つほどの点をあげまして、私の考えておりますところあるいは疑問としておりますところについて申し述べたいと存じます。  まず第一に、予算編成権の所在に関連して申し上げたいと思います。予算編成の担当者は、憲法第八十六条によりまして、政府であることは明らかであります。そして大蔵大臣が、日本では国庫大臣として現実の編成の任に当っておることも、もちろん実際に行われておる通りであります。学校教師風に申しますと、予算編成権が政府にあるということは、もうすでにストルムやゼーズの時代から、世界予算学者によって認められておることでありますし、また歴史的に見ましても、議会は予算審議権獲得闘争史ともいうべき発達を遂げてきておりまして、結局納税者の代表者が予算編成権を持つべきだというように決定してきておるのであります。ところが、たまたま議会に多数を占めた、その多数党の首班が内閣を組織する議院内閣制が確立するに及びまして、予算編成権が政府の手にあることが実際上も理論上も正しいとして、今日まで承認されてきておるのであります。ところがわが国では、この明らかな合理が、最近の予算編成では必ずしも事実において示されていないかに見えるのであります。予算編成権が政府にあるのか党にあるのか、あるいは有力な陳情団体にあるのかといったふうな感じをぬぐい得ないといっていいのじゃないかと思うのであります。もちろん関係者からいたしますと、いろいろな言い分があろうと思うのでありますが、とりわけ三十三年度予算編成に現われました事態から見ますと、今にしてこの予算編成権の所在を明確にしておく何らかの措置を、とる必要があるのではないかと考えられるのであります。もっともこういう予算編成権の問題は、今日日本で初めて起ったのではないのでありまして、御承知のように、戦争中あるいは戦前に一部の軍の圧力を利用して、予算のぶんどり競争が強行されたことがございます。従いまして今日私はこの問題を考えるに当りまして、当時とった措置を一応想起して、新たに問題を解決するように進めていったらどうか、こう考えたわけであります。昭和十六年七月に財政金融基本方策要綱というものがきめられまして、翌十七年の予算編成から、予算統制大綱という規定のもとに閣議でまず予算化すべき重要国策というものをきめておるのであります。これがいわゆる当時の予算の先議画定、すなわち閣議におきましてこれだけは予算化すべきであるという重要国策を決定しておきまして、それを大蔵省に回して予算化する、それを予算化してなおかつ余裕のあった場合においては、他の予算化に移る、こういう措置がとられたかに記憶しておるのでございます。今度の場合にいたしましても、政府といたしましては、どうしても予算化しなければならないとお考えになる重要国策がおありのはずでありますが、それらの点につきまして、まず閣議で御決定になりまして、閣議御決定の前にはもちろん党や各方面の注文を聞くべきでありましょうが、一たび政府自身のイニシアチブで、断固として予算化すべき重要国策をきめれば、その決定をどこまでも貫くべきであろう、こう思のであります。この意味で新しい閣議における予算の先議画定という方式を、何らかの形で合理的に打ち出していただきたい、これはこれに関する私の念願でございます。予算編成のまぎわになりまして、国民多数の意思にかかわらず、ある一部の団体の圧力によりまして予算が動かされるということは、ある意味においては民主政治の破壊に至る。いかにそれまでの審議を重ねておりましても、その直前になりまして一部少数の圧力が予算を動かすということは、民主政治の上から見て重大問題だと思うのであります。  御承知のように予算政府の政策を、物の形でこれを表わしたものでありまして、いかに政府が美辞麗句をもって政策綱領を述べたとても、これを予算に組まなければ、またかりに組んでもわずかな経費であれば、それは何ら実際に行われ得る政策でないのでありまして、単なる画餅というほかないのであります。そういう意味におきましては、この予算編成におきます政府の閣議決定というものは、まず何よりも重要な問題としてここで考えていただく必要があるのではないか、こう思うのであります。以上の理由から、まず新しい予算の先議画定の方式を樹立することをここに要望いたしたいと存じます。  第二には、財政法上の疑義について申し上げたいと存じます。まずインドネシアのこげつき債権の棒引きに対する穴埋め措置として、政府は外国為替資金特別会計に減資処理をすることにしているのでありますが、ここに私は若干の疑点を抱かざるを得ないのであります。終戦後日本は為替管理の一環として、外国為替の集中制度をとっております。従いまして、焦げつき債権の棒引きは、この会計が管理しておる外貨債権の棒引きとして現われるのはこれは当然であります。これを忘れていたとすれば重大な経理上のミスであることは言うまでもありません。しかし同時に、この焦げつき分相当額をこの会計の資金から棒引きするというそのことだけによって、この焦げつき債権に対する予算措置が終ったということはできないのじゃないか、こう考えるのであります。政府は、この棒引きで六百三十六億の減資処理が行われても、この会計の運営に差しつかえないから、別に予算措置の必要がないとしておられるのではないかと思うのでありますが、実はその六百三十六億の減資処理で、会計の運営に差しつかえあるかないかというその以前、減資処理そのことが問題でないかと思うのであります。御承知のように、外国為替資金特別会計は、外国為替等の売買を業とする一種の事業体の会計であります。この事業体の損益を予算の形式で規制するために設けられたのがこの場合の予算であります。このように事業体の会計でありますがゆえに、その特別会計の歳出歳入予算には、この事業の一定期間における成果を示す損益計算書と、一定時におけるこの事業体の構造をわからせるための貸借対照表との添付を必要としておるのであります。従って政府の措置のように、この事業体と何らの関係のない焦げつき債権棒引きの穴埋めのための減資処理ということを、単なる手続問題としてやっていいかどうか、この減資処理が、もしこの会計の事業による赤字であるならば、直ちにその手続はなされてよろしいと思うのであります。この焦げつき債権の棒引きによる赤字埋めというのは、この会計の仕事とは何ら関係がないのであります。それをただ手続上の問題として減資処理で片づけて、それで予算措置ができたと考え得るかどうか、ここに私は疑問があると思うのであります。  本来特別会計には、財政法第十三条の規定によりまして、三つの場合に限定されておるのであります。すなわち国が特定の事業を行う場合、また特定の資金を保有してその運営を行う場合、その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合、この三つの場合に新財政法が特別会計を設けることをきめておるのであります。これは旧会計法から見ますと、この特別会計の場合をはっきりと明記したというところに特徴があるのでございまして、旧会計法はその第三十九条で「特別ノ須要ニ因リ」という、きわめてあいまいな事由で特別会計の設置を認めておって、そのためにいろいろな弊害が出たのでありますが、そのために新財政法におきましては特別会計を設ける場合を三つに明確に規定したはずでございます。このいきさつから見ましても、外為特別会計の中から全くそれと関係のない事由によって生じた焦げつき債権を、単に棒引きして予算措置が済んだといい得るかどうか、ここに私は問題があろうと思うのであります。減資処理をすべきかどうかということは、実は外国為替資金事情による。そういう事情によってこれは決定がなされるべきものであろうと思うのであります。ことにこの減資処理をされましたその資金が、どうしてできたかということを考えてみますと、その処理については、やはりこれは国民の長年の苦心の結果蓄積された資金たるものとして、十分国会の皆さんの審議を経て、初めていずれかに決定さるべきかと思うのであります。たとえば減資処理の形で棒引きした資金の大部分、これは一般会計から繰り入れられたはずであります。いずれも外国為替資金の必要が認められて繰り入れられておることは言うまでもないのであります。たとえば棒引き前の資金二千二百七十四億円のうち、千五百十億円というものはドッジ構想による財政の総合的均衡政策によって、二十五年度に三百六十億円、二十六年度に八百億円、二十七年度に三百五十億円というふうに、一般会計から繰り入れられてきておるのであります。インフレを重税に置きかえたといわれたドッジ・ラインに沿う政策によりまして、強制貯蓄の形で国民が粒々辛苦して蓄積して、これをあえて一般会計からこの外国為替資金特別会計に繰り入れたというのは終戦以来の外貨事情を考慮して外国為替資金特別会計における必要が国会によって認められたために、ここに繰り入れが行われたと、こう解釈しなければならぬと思うのであります。しかるにそれを、この外為会計の事業と何の関係もない事由から生じた焦げつき債権の棒引き穴埋めに対しまして、ただ手続の問題としてだけこれを棒引きしていいのかどうか、いろいろ問題を考えてみますと、疑点が多くならざるを得ないのであります。この焦げつき債権の棒引きで賠償交渉の妥結が行われたかに伝えられておると思うのであります。また実際賠償協定と同時に棒引きの調印が行われておるはずであります。この棒引きによって現金で受け取る債権を放棄するという、その点からしましたならば、これは現金賠償と同様な結果をもたらすものである、こういうふうに考えざるを得ないのであります。こうして結局その棒引きが国民の負担に帰するものである。相当巨額なものにもちろんそれがなっておるのでございますが、従いまして、これは当然賠償と同様に、一般会計の経費として予算措置を行うべきじゃないか、こういうふうに考えられるのであります。賠償につきましては、政府はすぐ債務処理の財源に充てるため賠償等特殊債務処理特別会計法というものを制定して、これに基いて必要な経費を一般会計に組んで、それを賠償等特殊債務処理特別会計へ繰り入れるという財政措置をとっておるのでありますが、焦げつき債権の棒引き措置についても、一般会計に棒引きのための必要な経費を組んで、それを外為資金特別会計へ繰り入れるという予算措置が、当然要求されるのではなかろうか、こういうふうに考えるのであります。これが財政法上の疑点の第一であります。  次に財政法上の疑点の第二について申し上げたいと存じます。いわゆるたな上げ資金の中の経済基盤強化資金として措置されている二百二十一億円についてであります。これは財政法第四十四条の資金として設置されているものであり、また一般会計に所属し、その管理は大蔵大臣がこれを行うとされておるのであります。それはもちろんけっこうでございますが、こういう措置をとるように今日の財政法は果してできているかどうか、問題はむしろそこにあろうと思うのであります。歳入歳出を押え、国際収支に不当な刺激を加えないようにするとともに、不況に対する景気調節的な役割を、できれば期待したいという点で、このやり方は確かに一つの構想でありまして、最近の新しいフィスカル・ポリシーの線に沿うものがあるのであります。しかし現行の財政法からいうと、こういう資金の設定には疑義があるといわざるを得ないのであります。すなわちこの資金を使用するには、その使用する部分を一般会計の歳入にあらためて組み入れて、歳出予算に計上してこれを使用するということになっております。このために補正予算が必要とされておるのであります。ところがこれはまた使用する場合のことでありまして、使用しないこともあり得る予算編成になっておるのであります。そういたしますと、時期も経費目的もその額も明確でない予算編成というような事実が、ここに考えられるのであります。ここにまず第一に現行の財政法上からの疑点があろうかと思うのであります。またこれを使うときに予算を組むといたしまして、果してそれが財政法上にいう補正予算に該当するような措置をとり得るかどうか、ここにも問題があると思うのであります。財政法によると、補正予算を組み得るのは、第二十九条によって、予算作成後に生じた事由に基いて経費に不足を生じた場合に限る、すなわち追加予算を作成して国会に提出する場合と、いま一つ予算の成立後に生じた事由に基いて、すでに成立した予算に変更を加える必要があるとき、その修正を国会に提出する場合、この二つの場合以外にはないのであります。旧会計法は第七条で、必要避くべからざる経費及び法律または契約に基く経費に不足を生じたる場合にのみ、追加予算を提出することができる、と規定していたのであります。ここではただ必要避くべからざるというような時間的にあいまいな規定をしておりましたために、当初予算で組み得る経費をわざわざ残しておいて、あとで追加予算に組むというような政略に悪用されることがありましたので、新財政法は明らかに、追加予算については予算作成後に生じた事由でなければならない、修正されるについては、予算成立後に生じた事由に基くのでなければならないと規定しておるのであります。従ってこれ以外には補正予算は出せないというのが財政法の解釈ではないかと思うのであります。ところがこのたな上げ資金二百二十一億円は、予算作成のときにすでに補正予算の必要を予想しておるのであります。予算作成後の事由でも、予算成立後の事由でもなく、初めから予想しておる補正というようなことが、果して現行の財政法上許されていいものであろうかどうか。これでは財政法が旧会計法の不備を補うために、わざわざ予算作成後、あるいは予算成立後の事由に基かなければ、補正予算が組めないとした意義が失われてくるのじゃないか、こういう懸念がするのであります。また財政法上の規定によりますると、追加予算を出せるのは、先ほど申し上げましたように、既定の経費に不足を生じた場合に限られていますが、この二百二十一億円についての補正は、その資金を使用するときに経費目的をきめることになっておりますから、既定の経費に不足を生じた場合に該当しないのであります。また修正予算を出せるのは、すでに成立予算に変更を加える必要がある場合に限っておるのでありますが、この場合のたな上げ資金のように、最初から変更を予想しておるというのも矛盾しておるといわざるを得ないのであります。要するに、このたな上げ資金のねらいは、事実としてはよいのでありますが、現行の財政法は、こういう景気調整的な経費の計上を予想しておらないのであります。問題はむしろ実際の必要に応じて、財政法を合法的になし得るように改正する必要があるのじゃないか、こういうふうに考えられるのであります。しかるに予想していない事実を無理に現行の財政法のワク内にはめようとして、政府が苦心しておられる。野党の方はまたこれに対していろいろな質疑をなさっておられます。ここに私はこの国会において財政法の問題として考えていただく必要があるのじゃないか、かように存ずるのであります。  第三には、旧軍人恩給について申し上げたいと存じます。旧軍人の恩給につきましてはいろいろな論議が行われております。論議の焦点は、文武官均衝という名目で旧軍人恩給の引き上げの要求が起ったのに対しまして、この限られた財政のもとでは、そうした国民の特殊な一部との均衡というより、多数国民との均衡をはかって社会保障制の確立に向うべきではないか、こういうところに議論がしぼられてきておると思うのであります。そこでこの点につきまして、まず旧軍人の恩給を根本において規定した、旧憲法の条章を一応考えてみたいと思うのであります。旧軍人の恩給、ついでに文官恩給にも関連して参るのでございますが、旧憲法下における法律上の根拠は、明治憲法の第六十七条に規定されておるのであります。すなわち、旧軍人につきましては、新憲法のもとには何らの規定がないはずでありますので、この点から考えていきたいと思います。旧憲法第六十七条は「憲法上ノ大権ニ基ツケル既定ノ歳出及法律ノ結果ニ由リ又ハ法律上政府ノ義務ニ属スル歳出ハ政府ノ同意ナクシテ帝国議会之ヲ廃除シ又ハ削減スルコトヲ得ス」と規定しておるのであります。ここにいう憲法上の大権に基ける既定の経費とは、官制の制定とか、陸海軍の編成とか、条約の締結等、これはすべて大権に属するとされておるのでありますから、従いましてここから文武官の俸給や陸海軍の軍事費、条約に伴う支出というようなことが、ちょうど大権に基ける既定の経費ということになるのであります。次に、法律の結果による歳出とここでいっておりますのは、法律の実施によってその結果として、政府が支払いの義務を負うべき歳出でありまして、従って恩給法が実施されますならば、その結果、退職した軍人や官吏あるいはそれらの遺族に対し政府が支払うべき恩給、扶助料等に関する歳出が、ここにいう法律費と呼ばれるものとなっておるのであります。この旧憲法第六十七条の規定によりまして、文武官の俸給や退職後の恩給、遺族に対する扶助料等が一度きめられると、政府の同意がなければこれを議会が削除したり廃除することができなかった、これが旧憲法下におけるあり方であったのであります。ところがこの旧憲法第六十七条が旧日本に特有な官権的勢力を温存するための物的基礎を与える根本規定となっていたのであります。これは旧憲法のお手本であったプロシャ憲法にもない官権的、専制的規定であるとされてきたのでありまして、従いまして新憲法のもとにおいては全面的にこの条項が廃除されておるのであります。  次に、国民主権を明記しておる現行憲法は、軍人や公務員に対して——ついでに申しますと公務員もそうなりますが——いかなる特権をもこれらの人たちに認めていないのであります。これは当然だと思うのであります。新憲法は、いかなる条章でも、旧軍人あるいは公務員を含めて、これらの人たちを、他の一般国民と区別して、これらに対してのみ恩給を支給する権利を認めておりません。いわんや旧軍人に対して、一般国民に比して特別に恩恵をもって遇する憲法上の根拠は、問題なく存在していないのであります。第二次大戦は近代戦の様相を一変いたしまして、前線と銃後の区別をなくしてきているのであります。軍人軍属のほかに一般徴用工や動員学徒は、全く同様な危険にさらされてきておるのでありまして、あるいは戦災で家を焼かれ、親兄弟を失い、扶養してもらうべき子供を失うという多数の一般市民もあったわけであります。あるいは徳川三百年来の企業を整備されたり、あるいは強制疎開をさせられたり、外地からの引揚者に至っては、粒々辛苦して作り上げた生活の根拠を完全に失ってしまう、あるいは引き揚げに当って生命を落すというような不幸な犠牲を重ねてきているのであります。いわば一億総被害であります。一般文官との均衡よりは、これら多数の国民との均衡こそが問題であります。一千万人をこえる生活困窮者を控えておる日本の現状からしますれば、旧軍人のみの恩給増額よりは、国民大衆のための国民年金制度への切りかえこそが、急務であるといわなければならないのではないか。慎重なる御審議をお願いする次第でございます。  第四に、実は陳情めいて恐縮でございますが、科学技術の振興に関連いたしまして、私学への補助増強の必要について申し上げさせていただきたいと存じます。  科学技術教育の振興に関連して、文部省予算に組まれておる私立大学のための経費項目は、私立大学理科特別助成補助金と私立大学研究設備助成補助金との二つに上っておるのでありますが、この二つの実情について申し上げますと、理科特別助成補助金、これは主として実験、実習にかかる経費でありますが、私学側の要求五十四億円に対しまして、この三十三年度では、文部省予算の要求では六億七千万が組まれていたのであります。ところが、それが結局一億七千八百万円と査定されているわけであります。また、研究設備助成補助金は、主として図書設備に対する経費でありますが、私学側の要求四十五億円に対しまして、文部省予算の要求では四億五千万円と組まれております。それが査定では一億九千七百万円となっておるのであります。この一億九千七百万円を私立大学百二十四校に分けて考えますと、一校当り百五十万円見当にしかならないのであります。イギリスのような私学万能の国でさえ、第二次大戦後は巨額な財政資金を大学経費に充てておるのであります。一九五四年から五五年にかけての会計年を見ますと、イギリス全国における大学会計における総収入のうちの七〇・四%が、政府からの補助金となっておるのであります。オックスフォードやケンブリッジなどは一九二三年から四年にかけての年次から初めて補助金を受け始めたのでありますが、一九五四年から五年にかけましては、ケンブリッジは国庫から七二・四%、オックスフォード六五・六%の補助を受けております。これは全く第二次大戦後の世界情勢の変化と、それからいま一つ、社会風土といいますか、英語でソーシャル・クライメートといっておりますが、ソーシャル・クライメートの変化、すなわち大学教育を受ける才能ある者が、財力の不足のために大学に進めないようなことがあってはならないという社会の空気が、国庫補助の大きな原因をなしておるというふうにいわれておるのであります。アメリカのような国でも、第二次大戦後政府の補助が大きくなって参りまして、今から三十数年前の一九二二年ごろにおきましては、私立大学への連邦からの補助金は、経営収入の総額のわずかに〇・七%にすぎなかったのでありますが、一九五二年には一九・四%、すなわち二割近い補助となっておるのであります。これを一般的に見ますと、生産手段、生活手段あるいはマス・コミの手段等の発達で、生活条件がいよいよ画一的になって参りまして、たとえば地方財源にいたしましても、地方経費が画一的に要求されるのに対して、財源がこれに伴わない。そのために中央からの交付金や補助金がますます大きくなってきておるというような、同じような事情が学校教育におきましても現われてきておる、こういうふうに言うことができるのではないかと思うのであります。教育の画一化という点から申しますと、これは私の経験でまことに恐縮でございますが、戦前と今日とでは全く事情が違ってきておるのであります。事実私は戦争前から終戦直後にかけまして、早稲田の専門部で教務主任や課長をやったことがあるのであります。その際意外に思ったのでありますが、当時の早稲田の専門部の政経や法律科では、専門学校令の規定によらないで全く自由に学科配当ができ、また教員の任命も全く独自にできたのであります。いわゆる自由なる大学の名が、このような実態からもふさわしかったと思うのであります。しかも卒業生の資格については、専門学校の卒業生と同じものが認められていたのであります。ところが今日では、新制度によります学科配当については、一般教養学科として、人文、社会、自然の三系列から、少くとも三科目を選択できるように準備しなければならぬ。教員についても、その教歴や業績を基準として、官公私立全く一様に審査を経なければ任命ができない。施設その他についても、官公私ともに一定の条件を満たさなければ設立が許されないのであります。今日官私大学の異なるところは、国民の税金で学校の経費がまかなわれているかいないかだけの差である。極論すればそういう事態になっておるのであります。日本では特に第二次大戦後の事情の大きな変化によりまして起ってきておるのでありますが、最近におきます私学授業料の値上げも、このように一方において画一的な教育の必要と、他方における財源がこれに伴わないというところにあると申し上げざるを得ないのであります。  科学技術振興の急務がいよいよ認められてきておるのでありますが、そのためには、この際国の学術研究並びに高等教育の過半を担当する既設の私立大学を充実活用するということが、きわめて経済的、効果的なのではないか、こう申し上げられようかと思うのであります。私学への研究助成補助が世界的な趨勢となっておる第二次大戦後の実情を御考慮下さいまして、世界の科学技術水準の向上への努力におくれないように、深甚の御配慮を仰ぎたいと思うのであります。  本日は主として制度的な観点から、予算に関する疑点あるいは所見を申し上げたのでございますが、庶政一新の時期にあることは以上の諸点からも言えるのではないかと思うのであります。古い亡霊にとらわれることなく、新時代を一つ開くように、予算の成立を念願いたしまして、私の公述を終りたいと思います。ありがとうございました。
  33. 江崎真澄

    江崎委員長 ただいまの時子山公述人の御発言に対しまして、御質疑があればこの際これを許します。
  34. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 先生は予算編成権の問題に関連して、今後の政党政治との関係をまず第一点に指摘をされ、それからたな上げ資金の問題、軍人恩給の問題、この三点、非常に今度の予算で重要な問題について御指摘があったのであります。私は最初に編成上の問題につきまして、先生の御指摘のことはよくわかっておるのですけれども、むしろ少し先生の御議論が足りないのではないかと思うのです。というのは、戦時中あるいは戦前の例を引かれまして、閣議で最初に予算編成の基本政策というものを、あるいは基本大綱というものを決定して、これで画定してほしい、画定の画は計画の画だということまで言まれましてお述べになりましたが、そのことは本年の予算につきましても、党の意見に基いて昭和三十三年度予算編成要綱なるものが決定をいたし、科学技術の振興、中小企業の振興、道路の全国的普及という三つの政策を中心にしまして、その他十数目にわたり政策が確立をされて、これに重点を置けということが出たわけであります。ところが問題は、十二月の末になりまして、ざっと大蔵省で事務的に予算編成してみろというようなことが——これは党の意見がそこまで反映をされておりながら、やや逆転をいたしたような形で、一月の八日に大蔵原案なるものが示されて、そこに政策的な経費がほとんど入っておらなかったということのために問題になったわけであります。私がもう少し先生の意見を補足するというのじゃなしに、先生の言われんとするところはこういうことでないかということで質問をしてみたいと思うのです。  つまり、政党内閣でありますから、政党の意見予算編成の基本的段階で反映をすることは、私は当然だと思う。それでなければ、政党内閣の意味もなければ、民主政治は根本から破壊されるわけでありますから、予算編成の大権よりも、さらに政党内閣、民主政治の基本というものは重いというふうに私は考えておるのであります。ただ、あの予算が最後的に決定をされる前に、確かに圧力団体の陳情によってどさくさのうちに採用される、これがいけないのであって、編成の基本的段階では、むしろ与党意見が反映をし、与党が送っておるチャンピオンであるべきはずの各閣僚の意見によって、予算編成の大幅な数字がまず示されるならばそれでいいのではないか、その後に大蔵省がイニシアチブをとって技術的な取りまとめをする、こういうふうに進むのが今後の予算編成の大筋ではないか。従って、議論をさらに詰めるならば、政策的経費を決定する場合には、大体明年度の政策予算は、社会保障費は千四百億、教育文化費は千三百億、あるいは軍人恩給は九百億のワク内にとどめるということで、そのことは、つまり正確なる積算の基礎によってでなければなりませんが、その作業が毎年十二月の中旬くらいまでにできておって、その後において大蔵省が取りまとめるということの方向に、日本財政編成方針がいけばいいのではないか。やはり与党は民主政治の多数を制しておるわけでありますから、その意見が基本になって、そうしてその代表である閣僚が連帯責任を持って、閣議で最初に政策経費を決定しさえすれば、この点は救われるのではないか、こう私は解釈をいたしておるのでありますが、さらに先ほどの御議論を精密にお述べいただきたい、かように存ずるのであります。
  35. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 お答えいたします。  ただいま川崎委員のおっしゃる通りでございまして、私も各党からいろいろな政策についての資料をいただいておりまして、与党の方でもどういうことを決定しておられるかということは、大体承知しておるのでございますが、結局与党の方で予算編成の基礎となる政策を御審議なさいます。今日は議院内閣制をとっておるのでございますから、与党は国会における多数党のはずでございます。ところが、先ほど申し上げましたように、予算政府の政策を物の形で具体化するものでございますので、これを実行する政府編成権を持つのでなければ、正しい予算編成というものはでき得ないのでありまして、結局編成権は政府の手中にある、従いまして、与党の方でいろいろ議論をされます。これだけは予算化そうじゃないかという議論が熟したところで、それを閣議におきましていろいろ政策の問題として議して、これを決定する、閣議決定した予算化すべき重要国策を大蔵省の方に回されまして、大蔵省が財源と見合ってその重要国策予算化していく、こういうことが必要ではないだろうか、こういうふうに考えるものであります。
  36. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 その他にも伺いたい点がありますけれども、同僚の議員からも質問があるという予定でありますので、私はもう一点だけ伺っておきたいのです。  先ほどこのたな上げ資金の問題に財政法上疑義があるということは、財政法第二十九条の点をつかれての御議論だと思いますが、これは今度の国会においても、財政法違反という議論でなしに、むしろ景気調整資金としてリザーブしておくが、必要のないと思われるものは減税として回すべきじゃないかというような議論の方が国会では——野党側はおられませんが、野党側からそういう議論が多かったわけであります。先生はむしろこれを積極的に改正せよとおっしゃるのでありますが、たとえばこれを景気調整資金として、歳出予算として使わぬという場合もあり得るのでありますね。そういうふうな場合には、財政法を改正する必要がないということにもなるわけでありますから、従って財政法を改正せよと言われるのは、どういうふうに改正をせよと言われるのでありますか。これらのことをもう少し明確にしていただきたい、かように思います。
  37. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 お答えいたします。  現行の財政法の規定を見ますと、財政学者、たとえばケーンズあたりから主張され始めておりますフィスカルポリシーの採用というようなことを予想していないのじゃないか。たとえば景気調整資金というふうに、そういうたな上げ資金のようなものを作ることを予想しないで、財政法ができておるのじゃないか。従いまして、今年度の経費は今年度の収入をもってまかなうというふうな、そういう原則に対しまして、場合によっては、このたな上げ資金のような財政措置もとり得るという改正をむしろ行なっておくべきでありまして、今までのようなことでありますと、財政法上疑問のあるものも、無理に何らかの解釈を加えようとしなければならなくなるし、またそれが問題になりますので、それに対していろいろな疑義がはさまれるということになる、これを私は問題としたいと思うのであります。どういうふうに財政法上規定をするかということにつきましては、たな上げ資金は今日問題になっておりますが、これからいろいろな財政調整資金のような予算編成の必要が起ってこようと思いますので、これは一つ事務当局の方で御研究をしていただきたいと思うのであります。私こういう規定にしようという用意を持ち合せておりません。御了承いただきたいと思います。
  38. 中川俊思

    ○中川委員 私はちょっとおくれて参りましたので、あるいは時子山先生のおっしゃったことの趣旨をはき違えておるかと思いますが、軍人恩給の問題についてちょっとお尋ねしたいのであります。  時子山先生は、先ほどお述べになったそうでございますが、軍人にだけ恩給をやる必要はないじゃないか、一億総被害じゃないか、よろしく全部の国民に恩恵が施されるようになるのが至当じゃないかというお話のように承わったのでございますが、もしそうであるといたしまするならば、一応先生にお尋ねしておきたいと思うのであります。実はこの問題は御案内の通りずいぶん世論を喚起した問題でございます。中にはいろいろに意味をはき違えられておる方もあるのであります。新聞、雑誌等に現われた議論を見ましても、私ども考えております点と、ちょっと異なったような議論もあるわけであります。  そこで、そういうことは別といたしまして、まずお尋ねをいたしたいのでありますが、俗称いわゆる軍人恩給、軍人恩給といわれておりますが、これは単なる軍人だけに今回の措置が講ぜられるようにお考えになっておるのでございましょうか。まずそれからお伺いしたいのであります。
  39. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 お答えいたします。軍人以外の徴用工とか、学徒とかいうような人たちも問題になっておるように承わっておるのでございます。従いまして、ただここで私は軍人恩給ということで、明治憲法下の規定を申し上げましたが、そういうものが決して問題になっていないわけじゃないし、また、してはいかぬということを決して申し上げているわけではないのであります。
  40. 中川俊思

    ○中川委員 文官の方にも、このたびの恩給の改正は及ぼされているということは、御存じでございましょうか。
  41. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 存じております。
  42. 中川俊思

    ○中川委員 そこで、私どもは、俗称軍人恩給といわれているのですが、ただ問題は、御案内の通り、その戦死者遺家族に対する公務扶助料の数があまり多いものでございますから、そこで一番ウエートの重い方をとって、俗称いわゆる軍人恩給といわれているのだろうと思うのです。このたびの恩給法の改正は、ただいま先生もお述べになりましたように、単なる軍人ばかりじゃなく、文官、徴用工、学徒動員、その他一切に及ぼされておる改正でございますが、戦死いたしました者のいわゆる戦死者遺家族に対する公務扶助料というものと、一般の——一億総被害というお言葉から聞きまして、一般の戦争による被害者たちは、いずれも被害をこうむったことは同じでございますが、赤紙一枚によって召集されました者との間に、多少そこにハンディキャップをつけるべきが当然でありましょうか、あるいはそういうことはどうでもよろしい、とにかく戦争による被害は皆同じだ、いろいろな点から考えて、同列に扱うべき性質のものでごさいましょうか、まずこれを伺ってみたいと思います。
  43. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 お答えいたします。これは、旧日本におきましては、赤紙一枚によりまして軍人は召集されておるのであります。従いまして、他の一般の国民大衆とは、その点は明らかに事情が違うのであります。従いまして、その区別を全くなくしなければならないというようなことは考え申さないのでございます。ただ先ほども申し上げましたように、日本には、今日生活困窮者が一千万人以上に及んでおるのでございます。こういう人たちを、何とかわれわれ国民といたしましても手を加えて、社会保障の制度を作っていかなければならない。その必要が、同時に、今日の問題としては、きわめて大きい問題と思うのでございます。ところが、あまりにこの現在のある一部の国民のために、恩給資金を持っていきますと、日本の今日の財政需要からいたしまして、そういう国民のための、大衆のための社会保障制の確立ということがおくれる、あるいは阻害が起るのじゃないかということが問題にされていいのじゃないか、こう考えます。
  44. 中川俊思

    ○中川委員 お説は、よくわかるのであります。ただ、そういう生活困窮者に持っていかなければならない財源を、ただいまのお話のように、恩給費だけからさかなければならないかどうか、たとえば他にさく部面はないかということ。また西ドイツにおきましては、戦争直後におきまして、国家予算の約二〇%というものが、恩給に該当するものに充当されておるのでありますが、今回の日本の三十三年度予算を見ましても、そこまではまだ達していない。しかし、私は決して恩給費が少いとは申しません。予算の一〇%以上を占めておるのでありますから、かなり膨大な額に達することは御案内の通りでございますが、しからば恩給費が多いから、そういう生活困窮者に対しては、恩給費だけを犠牲にして生活困窮者の方へ向けなければならぬかどうかという点でございます。これについては、先生はどういうふうにお考えになっておりますか。
  45. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 お答えします。恩給費だけを犠牲にするというようなことは、これはだれも言えないと思うのであります。しかし、相対的な問題といたしまして、他になお非常に元気でおられる軍人さんたち、もしこの人たちが、戦争に勝っておるならば、何百人の公、侯、伯、子、男爵ができたと私思うのであります。ところが敗戦しますれば、今度は、それだけ重大なる責任を持っておるということを考えるのでございます。私の心から申し上げることを許されるなら、私は、そういう責任のある、今日元気でおられる軍人さんが、この軍人恩給の問題について、もう少し慎重に、国民のためにお考えいただけないだろうか。実は私の申し上げたいのは、こういう点なんであります。
  46. 中川俊思

    ○中川委員 それならお尋ねいたしますが、元気でおる軍人に、このたびの恩給費のうちからどのくらいいくとあなたはお考えになっておりますか。
  47. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 お答えいたします。今度の改正では、これは、問題になっておらぬことを承知しております。
  48. 中川俊思

    ○中川委員 それならば、元気でおる軍人の者は十分考えなければならぬとおっしゃるが、考えておるのです。これは、あなたもし誤解があったら、ここで訂正してもらいたいと思うのです。元気でおります軍人は考えております。現に自由民主党におきましても、このたび生きておる、いわゆる普通扶助料である者は、中尉以上とか、あるいは佐官以上の者には出さぬでもいいじゃないかという議論が当初からございました。私どももその主張であった。このたびはただ一般兵の階級の者で、しかも戦死した人の遺家族と、それから手足をなくした傷痍軍人だけにしようというのが、自由民主党のこの恩給の問題についての最初からの話であったのであります。元気な軍人、生きておる軍人は、しばらく遠慮してもらおう。先ほどお話がございましたように、生活困窮者もかなり多いのであるから、そういう方面に回さなければいけないから、元気な者は遠慮してもらおうじゃないかということが主張でございました。しかし結論におきましては、今政府が出しましたのは、御案内の通り尉官まで、佐官以上は遠慮してもらおうということになっておる。従って、あなたが今お述べになりましたようなことは、あなたの言を待つまでもなく、わが自由民主党においては、その点は考えておるはずなんですが、あなたは、これに対してどういうふうなお考えから、そういう御意見があったのでしょうか、何か誤解なさっている点があったのじゃないでしょうか、伺います。
  49. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 お答えいたします。自由民主党の中でどういう御議論があったかについては、私は詳しく存じ上げておらないのでありますが、私どもの知り得る範囲内の情報によりますと、相当強い圧力団体と申しますか、働きかけがあったのじゃないか、その辺のところが問題じゃなかろうか、私こう考えるのであります。予算編成は、先ほど申し上げましたように、多数の国会議員の皆様方が御言議なされて決定なさるのでありますが、それが予算編成のまぎわになりまして、いろいろ伝えられますようなことで予算が動くというようなことになりますことは、これは民主政治の上から好ましくないのじゃないかという懸念をいたすわけであります。
  50. 中川俊思

    ○中川委員 時子山先生には初めてお目にかかるのでありますが、早稲田大学の先生をしていらっしゃるあなたのような立場におられる方が、詳しく党内の事情をあまり研究なさらないで、単なる風説から、こういういわゆる公開の席上、あるいは新聞雑誌等公器の面において軽々しく議論を述べられますことは、まことに私は及ぼす影響が多いのではないかと思うのです。ただいまあなたのお話を伺っておりますと、党内にはそういう事情があったかもしれぬがとおっしゃいましたが、党内は最初からそういう議論でございました。このたびは、わが国の財政はきわめて苦しいときであるから、とにかく戦死した人、自分のかわいい一人息子を失った老父母、あるいはたよりとするところの主人を失って、子供を二人も三人もかかえておる未亡人、これが現在二千九百円しか月にもらっていない。これらと同じケースにある者で、生活保護をもらっておる者よりまだ少い。それなら生活保護をもらったらいいじゃないかというが、国のために戦死した者の遺族が生活扶助をもらっているということになると、対社会的にいかにも不面目であるからというので、これをしも忍んで公務扶助料でがまんしているのであるから、これは何とかして救わなければならぬのじゃないかというのが、私どもの党内における大勢でございました。従って、私は先ほど申し上げますように、高級軍人、将校以上、これに該当する文官も、一応そういうものは遠慮していただいて、そうしてこの方へ回していただきたい、こういうことを私どもは当初から主張しておったのであります。決して世間で一部で唱えられておりますように、大将とか中将とか、——新聞を見ましても投書欄に、自分のうちの隣に元大将とか、中将をしておった人がおって、きわめてぜいたくな生活をしておる。こういう人になぜ恩給を増さなければならないのかというような投書が新聞に平気で載っておるのであります。私どもは、そんな主張をしたことは一回もない。そういう方々には遠慮していただいて、そうしてただいま申し上げますような気の毒な方々にだけ少しふやそうじゃないかというのがこの恩給問題の発端であったのでございますから、どうかもし先生が今日までそういう党内の事情を御存じなかったといたしますならば、党内の事情はそこにあったということを、一つこの機会にあらためて御認識を願いたいと思うのであります。予算を見ていただきますれば、そういうふうになっておるのであります。  それからこの恩給法というものが、御承知の通りあるわけです。この恩給法は、御承知の通りいろいろ改正しなければならない点がたくさんあると思います。私どもは現在考えております点でも、まだ今回政府が出しました以外に改正しなければならないという点があるのでございますが、しかし恩給法に基くところの恩給制度というものを——根本的に恩給法を改正すればまた別でありますが、恩給法というものが現存しております以上は、恩給というものを全然無視することのできないことは申し上げるまでもないわけでございます。そこで、年金制度に移行いたしました場合には簡単にこの恩給法を改正して、恩給制度をないものにして、年金一本でいくことができるというふうにお考えになっておられるのでございましょうか、いかがでございましょうか、伺います。
  51. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 お答えします。恩給法は、一度法律として実施されますと、これは一種の財産権となるのでございますので、これを軽々になくするということは、もちろん申し上げられないと思うのであります。方向といたしましては、そちらの方向になるべく早く持っていかなければならぬのじゃないか、こういうのが私の考えでございます。
  52. 中川俊思

    ○中川委員 今、時子山先生のおっしゃいます通り、これは憲法二十九条の財産権じゃないかと思うのですが、そういうわけでありますから、私は簡単に年金に移行いたしましても、現在の恩給額にプラス・アルフアというものがつく結果になるのじゃないかというふうに考えております。従って、国民年金に根本的に憲法から改正してかかりますれば、確かにそういうふうな方向もあるだろうと思いますが、ただ国民年金に移行すれば国家財源はきわめて少くて済むというような、このきわめて軽率な意見が世間では流布されておりますけれども、私は、ただいま申し上げます憲法二十九条に基く財産権というもの、いわゆる既得権というものを認めております以上は、そう国民年金に移行したからといって、国家財源というものが手のひらを返すように半額で済むとかいうようなことは、簡単には考えられないのじゃないかと思うのですが、先生はいかにお考えですか。
  53. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 私は、社会保障制度をいたしますれば、国家資金をそれよりもっと増さなければならぬ、国家資金がこのために節約されるということは考えておらないのであります。
  54. 上林山榮吉

    ○上林山委員 時子山公述人に対しまして、少しばかりお尋ねをいたしておきたいと思います。先ほど川島委員の質問で、ある程度明らかになったのでありますが、たな上げ資金は、本質的には大体この方がいいのだ、今の日本財政経済の状態から見て、この制度をとったことはけっこうなことであった。ただ、しかし財政法から見ると、補正予算なんかに移行する場合に疑わしい点なんかがあるから、この本質はいいことだから、これにピントを合せる意味で、財政法の改正をやった方がいい、こういう意味にとっていいのでございましょうかどうか。一説には、予算規模をもっとふくらまして、そうしてこれを減税に回した方がいいというふうな意見を述べる人々も一部にはあるわけですが、その辺の事情を、とらわれないでお答え願いたいと思います。
  55. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 お答えします。私は、本来は減税に回すべきであると考えておるのであります。今までシャウプ勧告以来、税制改正が行われてきておりますが、たとい税法上の減税といえども、毎年所得税、大衆税の減税が行われてきておりますが、今年度は、それに向けておられないのであります。私は、基礎控除の引き上げ、その他の減税をもう一度行う、そうして、税における戦後をなるべく早く解消するというふうに進むべきではないかと思うのであります。しかしながら、政府といたしましては、たな上げ資金の方法をとっておられるのでありまして、私どもそれに対しまして、今いい悪いを申し上げるのは実は差し控えまして、政府の政策の前提に従いまして、そういう政策もまた考え得るわけであります。いろいろな政策上の立場から、そういうフィスカル・ポリシーの政策もこれは考え得るし、今後おそらくもっと大規模に問題になると思うのであります。ところが現在の財政法は、そういう事実を予想しないできておる。従いまして、もし政府がそういうたな上げ資金のような方策をおとりになるならば、むしろ積極的に財政法を改正されたらいかがであろうか、こういうふうに考えるわけであります。
  56. 上林山榮吉

    ○上林山委員 先ほどの御答弁があいまいであったので、私もその点をあらためてお尋ねしたわけでありますが、そうすることになりますと、結局減税に回すべきであるというのがあなたの御主張である、こういうことになりますと、非常に長く問答に時間がかかりますので、私も節約して一言お尋ねいたしておきたいのですが、もちろんシャウプ勧告があった昭和二十四年度でございますが、このときが一番税金の高かったときでございます。それから政府は七、八回減税をいたしておりますが、ことに低額所得、大衆課税というようなものに大部分意を用いまして、その総計は、私の推算したところでは、約七千五、六百億の減税をいたしております。しかも納税者は、当時は大体一千八百万人、それが今ちょうど一千万人とんとんでございまして、約八百万人が納税をせざる階級になったわけです。これは、主として国税を言うておるわけでございますが、そういうような方向に進んで、今回も、大衆課税に何ら触れていないような誤解を国民に与えておりますので、申し上げるわけですが、酒税にしても、これは大衆課税でございます。あるいは地方税にいたしましても、自転車税、荷車税で約一千六百万人の人々が影響を受けるわけです。そういうように一面考えられるし、ことに相続税がいわゆる中産以上、これは大企業の相続税の減税であるというふうにのみ、もしお考えになっているとすれば、私は、数字や改革案をもう少しお調べになっていっていただくといいのではないかという気がするのでございます。これはことに農家にとってみますと、適正規模農家というのがあるのです。その辺を大体めどにいたしまして、この改正の焦点を合したのです。今、たとえば農家に三人の子供がおりますと、財産を三つに細分化しなければならぬ。これは、法律上一応できるわけでありますが、そうしたようなものをある最小限度に縮めたいという意味で、相続税というものを中産以下の者に、いわゆる適正規模農家というものを維持する上から、あるいは同時に、中小企業の営業規模を維持する上から、相続税のピントを合したのであって、大企業に対する相続税の減免というようなことは決して考えていないのであって、これは、数字が明らかにしておるのであります。なるほどその総額においては、初年度は地方税、国税を通じて三百十億円、平年度は四百五、六十億円に大体なると思いますが、そういうように考えてきて、去年も一千円億やった。ついでに、しかもいろんなことをやらなければならぬ今日、平年度で四百四、五十億円の減税、しかも大部分大衆課税に向けておるということは、ある程度前進をお認めに——まだあなたの理想には遠いでしょうけれども、相当やったけれども、まだ不足であるという程度の御議論が願えると、私どもは非常に穏健な見方ではないだろうか、こういう気持がするのですが、しかし、減税問答は、これ以上やるとまた時間がお互いにかかりますので、一回くらいのお答えでけっこうだと思います。どうぞお答え願いたいと思います。
  57. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 お答えいたします。私は、所得税減税について申し上げたのでございまして、それ以外の減税についてなさっておりますことは、私も、多少調べて存じ上げておるわけでございまして、減税はしておらぬということは、決して申し上げていないわけでございます。
  58. 上林山榮吉

    ○上林山委員 大学の教授であられるわけですから、先ほども中川君が言われたように、発言されたりお書きになったりする場合は、国税、地方税を通じて、この程度減税はしておるが、所得税を中心にして考えるとこの程度であって、また足らない、こういう御議論をしていただかないと、これはお互いの政治ですから、とかく国民は誤解をするんです。その点は、私の要望でございますから、公述人には気の毒でありますけれども、その点、私は付加して申し上げておきたいと思います。  次に申し上げたいことは、これは大蔵省でもあるいは政府でも、文官の恩給は、国民年金なり、あるいは退職年金なり、ことに退職年金を中心として制度の移行を考えておるようでございますが、先ほどのあなたの御議論によりますと、旧憲法から新憲法を論じられて、新憲法を基礎にして考えると、俗にいう軍人恩給、これは、内容は決して軍人恩給じゃございません。主として遺家族の扶助料なんです。同時に学徒動員なり、あるいは徴用工なり、あるいは傷痍軍人なり、下の方に厚くしようとする考えであります。形式論としては、これは軍人恩給という名前で呼ぶ場合もあり得るでしょうけれども、ことさらにニュアンスをそういう方向に持っていこうとする偏向的な考えを持った人々が、学者グループの中にあられるのですよ。だから、そういうようなことを、もっとこの内容をよく解剖してみなければならないのでございますが、その場合、新憲法からいうて、俗にいう軍人恩給のみならず、並びに文官恩給も、これはできるならば、あなたは、やるべきではない、戦争の影響というもの、あるいは日本財政の状態から考えて、国民が総貧乏なんだから、急速に一つ国民年金制度にこの際切りかえなければならない、こういうような考え方ですか、お考えの方向は。     〔委員長退席、川崎(秀)委員長代理着席〕
  59. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 お答えします。できるだけその方向に進むべきだと、こう考えております。
  60. 上林山榮吉

    ○上林山委員 そこで、私はお尋ねいたしますが、まずその文官の問題は、政府としてもいろいろ考えてはおりますが、現在の状態で、現在ある法律を基礎にして考えなければならぬわけですね。その場合に、文官恩給を上げたのはいけない、あるいは軍人遺家族の扶助料などを上げると同時に、文官恩給というものを上げたのはいけない、こういうようにお考えになりませんか、同時に上げたということ……。あるいは文官恩給を、日本財政関係から考えて、将来、今あなたの言うように国民年金に移行しなければならぬという点から考えて、一歩進んで文官恩給の、たとえば一万五千円ベースをいわゆる一万二千円ベースなり一万三千円ベースに引き下げるべきだ、そういうところまでお考えになってはおられませんかどうか。財政の都合から——結局その社会保障の精神と、いわゆる恩給ないしは特に軍人恩給の精神とは、立法の理由が違うのです。立法の精神が最初から違うのです。これを適当な時期に調節をとるという方向は、人によって賛否こもごもでありましょうが、違うのですが、そういう場合に、今私の言う、ただ単に財源の都合上ということだけであるならば、しぼって、文官恩給というのが非常に高いのでありますから、これを低めて、今の国家財政の都合から、今の軍人恩給のレベルに引き下げるべきであるというような議論をお考えになったことがありますか。あるいは、同時に軍人恩給といっていますけれども、文官恩給も一緒にやっておるのだ、この矛盾を何とかお考えになりませんかどうか。
  61. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 お答えいたします。今日、恩給法というものがございまして、また人事院の勧告によりまして、生活のベース・アップというものが妥当と認められます限りにおいては、これは法の命ずるところに従いまして、私は、やはり恩給にはそれだけの財源を向けなければならないのじゃないか。法律を改正すれば別でありますが、法律が存在しておる以上は、当然ベース・アップは、人事院の勧告があれば、それに応ずるほかない、こう考えております。
  62. 上林山榮吉

    ○上林山委員 恩給関係の問題は、中川君も論ぜられたので、この程度にいたします。  そこで、最後に、私は私学振興の関係であなたが非常に熱心に主張せられたことは、大賛成です。われわれも協力を惜しまない一人でございますが、この点はそうでございますが、たとえば三十三年度の社会保障が、ことしは百二億円増額をいたしまして、総額一千二百五十八億になっておるのです。これは、今までに比べて相当の前進だと思います。あなたが——これは少し無理だと思いますけれども、やはり一つの指標になると思いますからお尋ねするのでございますが、社会保障は、今の予算規模、現在の予算規模、あるいは日本の現在の財政の状態、あるいはここ一、二年後の日本財政の見通しに狭い範囲で基礎をおいてお考えになって、あなたが理想とする社会保障は、一体金額がどれくらいあれば大体適当であるか。これは少し無理です、無理ですが、さっき言った通り、どうも社会保障が少いじゃないか、こういう理由で少いということを論じないで、多くの人が、ただ抽象的に社会保障が少い、こう言っておられる、この点を私はちょっと承わっておきたいと思います。
  63. 時子山常三郎

    ○時子山公述人 どのくらいの額が適当かどうかというようなことは、私は簡単に比率などで申し上げられないと思います。これは政策全体から考えまして、そのときの政策全体を考えまして、そして社会保障の問題を同時に考えて、資金の割当をすべきでありまして、ただこれだけを総予算の何割だというふうな軽卒な判断あるいは主張はできないと考えます。
  64. 上林山榮吉

    ○上林山委員 ごもっともな御答弁だと思います。その通りです。しかるに、それを基礎に置いて、そういうふうに認識しておられるならいいのだけれども、そういうはっきりとした認識の上に立たないで、いわゆる思いつきというか、自分の思想にマッチしたような議論を往々にしてされることが、世の中に迷惑を及ぼすわけなのです。もちろんわれわれとしてもそれははっきり言えません。ただ国民年金というものを三十四年度あるいは三十五年度に切りかえるとすれば、われわれは千五、六百億が、ここ一、二年を見通しての日本の社会保障としては適正規模である。大体多くて千六百億、これくらいがここ一、二年の日本の社会保障としてのこれは適正規模だというようなふうに、これはまあ常識論でございますが、そういうふうに考えておるのです。  いろいろ申し上げたい点もありますが、少し立ち入ったようなことを申し上げましたけれども、御了承願いたいと思います。
  65. 川崎秀二

    ○川崎委員長代理 時子山公述人に対する質疑は終了いたしました。時子山さん、まことにありがとうございました。(拍手)  次に東京銀行常務取締役伊原隆君に御意見開陳をお願いいたします。伊原隆君。
  66. 伊原隆

    ○伊原公述人 東京銀行の伊原でございます。私に与えられました課題は、主として貿易と為替、それから金融等の面でございますので、三十三年度予算案関連いたしまして、いささか私の考えておりますところを申し述べさしていただきたいと存じます。もし御参考になりましたならば、私の最も光栄といたしますところでございます。  予算と為替、貿易それから金融の関係につきまして、直接間接注目すべき問題といたしましては、第一に、予算編成の背景になりました経済及び財政政策、それから予算規模、性格というふうなことが第一に問題だろうと思います。それから第二には、予算の具体的の内容に関しまして、直接に為替とか貿易、金融等に関連いたしました項目につきましての問題であると思うのであります。  私はこの二つを念頭に置きながら、まず第一に、日本国際収支の回復の状況と申しますか、現在の日本外貨事情というふうなものをどう判断するか、と申しますのは、世界景気とも関連いたしまして、日本経済の体格といいますか、抵抗力をどの程度に見るかということを申し上げたいと思います。それから第二に、これは世間で始終言われているのでありますが、来年度日本経済を取り巻きます世界経済の環境というふうなものをどう判断するか、それが日本経済にどういうふうに影響を持つだろうかということにつきまして、私の考えを申し上げたいと思います。それから第三に、この段階におきまして、とるべき対内対外の経済政策というふうなものを一体どう見たらいいかというふうなことを、簡単に申し上げたいと思うのであります。  まず第一に、日本外貨事情の現状をどう判断するかという問題でございます。これは昨年の五月以来国際収支の急激な悪化に伴いまして、いわゆる経済緊急対策というふうなものを政府がおとりになりまして、これが効果を表わして、昨年の秋ごろから国際収支は改善の方角に向って参りました。しかしながら現在の段階ではまだ失いました外貨を十分に回復するには至っておりませんので、この程度外貨では日本の国際信用を維持したり、日本経済世界経済の不況に耐えていくに十分であるかどうかという点につきましては非常に問題があると思うのでありまして、外貨の保有というものは、今後とも増加をしていかなければならぬというふうに私は考えるのであります。保有外貨につきましては、十五日の日かにこの委員会で大蔵大臣の御説明がありまして、一月末で九億六千万ドルである、しかしその実質は四億九百万ドルであるという御説明あったのでありますが、一昨年の末、昭和三十一年の末に十四億二千百万ドルありましたものを、結局三十二年中に四億七千百万ドルというものを使いまして、昨年末が九億五千万ドルに減少したわけであります。私ども考えでは、この一月から三月にかけまして五千万ドル程度増加すると思いますので、結局年度末の三月の末には約十億ドル台になるのではないかと思うのであります。この十億という数字を見ますと、実は昨年の五月に緊急対策を講じます直前の数字が、外貨手持高十億ドルとなっておったのでありますが、しかし内容からよく見ますと、今度の十億ドルの中には国際通貨基金と、それからワシントンの輸出入銀行から借りました金というふうなもの、一億一千二百万ドルというものが入っておりますから、差引き実力は結局八億ドル足らずということになると思うのであります。そうなりますと、これは二十九年の外貨が少くなったときの数字になるわけであります。結局昭和三十年と三十一年というふうな世界の好況に乗じまして日本輸出が非常に伸びて、外貨がたまったという直前の姿でありまして、結局は昨年の上半期におきまして、この二年間でために外貨を使ってしまった、もちろんむだなものを買ったわけではありませんけれども外貨としては使ってしまったという形になるわけであります。しかもこの実力の八億ドル足らずというふうなものの中には、大臣の御説明にもありましたように、清算勘定の焦げつきでありますとか、外銀からの借り入れ、そんなものも入っておりますので、これらを考慮に入れますと、二十九年の上半期より少くなる、それから逆に日本経済規模というものは、その当時より増大をいたしたのでありますから、日本が円滑にこの増大した貿易をまかなっていきます金というふうなものを考えますと、それからまた世界景気に耐え得るところの外貨の保有量というふうなものを考えますと、現在の数字というものは非常に少いものだという感じがいたすのであります。一体幾ら外貨を持っていたらいいかという問題につきましては、いわゆる一国の適正外貨の保有量というふうな問題につきましては、私自身も実は研究したこともあるのでありますが、これはなかなか数字が出て参らない。しかし常識といたしましては、それからまた世界の各国の例というふうなものから考えますと、日本といたしましては、私はやはり外貨の危機の起ります以前の数字、すなわち表面上十四、五億ドルは持っているのが適当である、従って現在からなお六、七億ドル程度増加する必要があるのじゃないかと思うのであります。もっとも、外貨は幾ら持っていなければならぬかというふうなことにあまり拘泥いたしますと、たとえば英国は二十億ドル持っていなければならぬ、そういうことをいいますと、二十億ドルを割りますとすぐポンドが危なくなるというふうなことがありますので、数字に固着するという考え方は非常に間違いかと思うのでありますが、大体の目安といたしましては、やはりあと六、七億ドルは増加をした方が、現在の世界経済の中で円滑に貿易をやり、また世界景気の変動に備えるという意味で適当であると思っておるのであります。はなはだ卑近な例でございますけれども、飛行機にたとえますと、二十九年から三十年、三十一年というふうにずっと外貨をためて、飛行機が国際経済社会を安全円滑に航行し得るだけの高度に上げていったのでありますが、昨年、国際収支の危機で急下降をした。しかし幸いに何とかして地面をぶたないで飛行機が昨年の秋からまた上昇には転じたのでありますけれども、何分にもまだ徐々にしか飛行機が上っていっていない。しかも国際通貨基金とか輸出入銀行から一億ドル借金があるのでありますから、いわば補助翼を飛行機が出しておる段階でありまして、まだ十分に自分の浮力がついておらないというふうな感じがいたすのであります。従いまして、今後これから飛行機がますます上っていかなければならぬし、しかもこれから申し上げますように、世界景気、つまりこれから上っていく空というものが、相当荒れておるような気がいたすのでありまして、かたがた非常な慎重な態度をとる必要があるというふうに判断いたすわけでございます。  しからば第二に、世界経済をいいますか、日本を取り囲む世界の環境はどうかという問題であります。これにつきましては、もうすでに新聞、雑誌その他で論じ尽されておりますので、私がここでいろいろなことを申し上げる気はないのでありますけれども、かいつまんで申し上げますと、世界景気の支柱であるアメリカ景気が、昨年の秋以来非常に下ってきた。もちろんアメリカとしましては、昔と違いまして、不景気に対して打つ手も十分に持っておりますし、現に公定歩合を引き下げたり、預金の準備率を引き下げたりしまして、主として金融面でありますけれども、着々として手を打っておる。従ってアメリカにおいてはもちろん、世界的にもアメリカが深刻な不景気になると考えておる人はないと思うのであります。ただ一体どの程度になるものであるか、それからまたこの不況というものが一体どのくらい続いて、いつごろまた上昇に転ずるかということにつきましては、いろいろな議論が分れておると思うのであります。私自身もアメリカの不況がそうひどいものではないというふうに思うのでありますけれども、いかにも大きなずうたいの経済でありますから、これが回復に向うにいたしましても、そんなに急に上ってくるわけではありませんので、徐々にしか上ってこない。従って本年中はそう明るい部面を考えるのはよくないのじゃないかというふうに私は考えるのであります。しかも今度の不景気世界的であって、欧州が悪いし、それから東南アジアその他の後進国も悪い。欧州におきましても、西ドイツ以外はみんな外貨が足りないというふうなことでありますし、アメリカの不景気に対しまして抵抗力が非常に弱くなってきている。東南アジア等の後進国は、これはもちろん自分の売ります国際商品が非常に値下りをいたしましたりして、また自分の国の開発計画等のために外貨を使ってしまって、みんな苦しい状態になっておるということであります。英国などでも世界景気の先行きにつき今非常に心配をしておるようであります。自分自身に対する直接の影響と、それからインドその他を通じての英国への影響というふうなことで、非常な心配をいたしておるわけであります。世界の貿易量を調べてみますと、一九五〇年に五百七十億ドルの輸出があったのでありますが、これが五六年には九百三十五億ドルになり、五七年の第一、第二・四半期では年率にいたして千億ドル台を突破したのであります。しかし第三・四半期からは世界の貿易量自身が減って参りまして、年率に直しますと千億ドルを割るというふうなことになって参ったのでありまして、この中で日本輸出を伸ばすというのは、なかなか困難であると思うのであります。ことに日本輸出の四割以上を買ってくれておりますアジアの諸国というものが、国際収支が先ほど申し上げましたように非常に悪いということで、フィリッピンとか、インドとか、ビルマ、インドネシアというふうな国がどんどん輸入制限を強化してきておる。ちょうど昭和二十八、九年のころ、英国を初めポンド地域が日本に対して輸入制限をいたしまして、そのときに日本はちょうど三億ドルほど失ったのであります。こういうことを考え合せますと、今度の世界不況の、ことにアジア等の輸入制限というふうなものの日本に対する影響は、かなり心配をすべきものがあるのじゃないかと思うのでございます。それから先進国向けの輸出も、御存じの通りアメリカは保護主義が台頭してきて、輸入を制限するとか、それから欧州等もなかなか振わないというふうなことで、日本を取り巻いておる環境というものは本年は非常にむずかしいと思うのであります。日本輸出が伸びました時期をいろいろと見ておりますと、よその国が多少インフレぎみであるときが日本輸出が振うのでありますが、今度は逆に各国とも不景気ぎみであるというところに、問題があるのじゃないかと思うのであります。  こういうわけで、私は日本自体国際収支並びに外貨の状況をこういうふうに判断をし、また今年から来年にかけましての世界経済というものをこういうふうに判断をいたしますと、政府財政演説とか経済演説において、今年の経済政策の基調というものは、財政、消費、投資というふうなものを通じて、あくまでも健全な基調を堅持して、いやしくも国内需要のために輸出を阻害しないようにしたいのだということを言っておられます。この経済政策の基本というものは、私は正しいし、またこれ以外の方法はあり得ないのだと思うのでございます。世界のどの国も不景気になることを望む国は一つもないのでありまして、どこの国の政治家も景気をよくし、また景気を維持することに骨を折っておることは当然でございますが、ただいまの段階におきましては、日本だけではないのでありますが、日本としましても、財政を膨脹させたり、投資を膨脹させたり、消費をふやしたり、こういう方法による景気対策というものは、非常に危険であると思うのであります。従いまして、さっき申し上げましたように、飛行機がまだ補助翼を出しながら、自分の浮力がつかないで、これから高度を上げていこうとしておるときでありますから、たばこものまないで、座席のベルトを締めておるというふうな段階であろうと思うのでありまして、ひたすら輸出の増進ということによって、一面外貨を獲得し、また一面国内の景気を維持していくということが、最も正しい方法であると存じます。  従いまして、こういう経済政策を前提として、三十三年度財政政策、予算編成方針というものが、やはり国民経済を刺激しないような堅実基調を維持するのだ、しかも将来における国民経済の安定的成長の基盤を養う経費を重点的に入れるのだというふうなやり方につきましては、これも私は為替とか貿易という観点からは、特に歓迎すべきことだと思っております。  財政規模と性格でございますが、規模につきましても千億昨年度よりふえたということでございますが、千億で増加がとどめてありまして、国民所得との比率を調べてみますと、三十二年度の当初予算が一三・七%というのに比べまして、三十三年度は一五・五%ということに増加はいたしておるのでありますが、一体どのくらいの国民所得との比率が正しいのかというふうな数字は出るものでありませんので、大体この辺が穏当なところではないかと思うのであります。それからもう一つは、予算の性格が収支均衡の予算であって、いわゆる赤字財政でないという点も、これも世界的に見て、貿易、為替という観点からは非常にけっこうなことであると思うのであります。  それでは全体の経済政策、予算編成方針、規模、性格ということのほかに、個々の具体的の貿易振興に関する経費の問題でございますが、私は大体輸出の振興というふうなことには、あまり人為的な手段をとるということは、各国の例から見てよくない、国の財政経済を健全にして、輸出がしやすくなるようにする基盤を作っておくということが、一番正しい常道であると思うのでありますけれども、同時に足りない点について、いろいろ施策を盛っていくということは当然であろうと思うのであります。今度の予算におきまして、ことに日本貿易振興会、ジェトロの経費を拡充して、市場の開拓だとか、調査、宣伝というものに当てられるというような点につきまして、われわれは大きな期待を持っております。それから予算の直接の関係はございませんが、為替貿易管理法令を改正をして、簡素化していくということになっておるのでありますが、これも非常に歓迎をいたすのでありまして、この為替、貿易管理令につきましては、制定後約八年ほどたっておりまして、簡素化と同時に根本的にもやはり直していく必要があると思います。私も実は役人をしておりまして、この法令の制定には関係した一人でありますけれども、当時外貨が非常に少い当時にできました法令を、八年後も同じことをやっておる。冬どてらを着て、夏になってもなかなかぬがないということはいけないのでありまして、やはりそのときどきに応じていく。私どもも役人としての経験があるのですが、どうも法令などはあとからあとから出しますけれども、過去のものを一向整理していかないということで、現在民間では、貿易管理法令は法律そのものは簡単なんですが、規則だの告示が何か積み重ねると三尺以上もあるというふうなことでありまして、非常に困っておりますので、大英断をもってこういう古いものを掃除していただくということはぜひ必要であろうと思うのであります。ただ簡素化をいたしますと、これは技術的なことですけれども、中小の輸出貿易業者が多少心配しておられますのは、LCがなくなってもいいというふうなことになりますと、輸出金融の面で多少の心配がありますので、この点についての調整は必要であろうと思います。それから、輸出振興につきましてはいろいろ申し上げたいこともあるのでありますけれども、その一つは、これは世間でやかましく言われる過当競争の排除ということでございます。私も海外におりまして、日本人同士がお互いに競争しまして、輸出品を安く売る。安く売るだけならいいのですが、そのために市場を失ったり、いやがられて輸入制限のもとを作る。それから、逆に買う方は、みなで買い争って高くしていくというふうなことにつきましては、これは原因がなかなか深いところにありますので、そう簡単に一面だけ見て対策を立てるわけにはいかないのでありますけれども、どっちにしてもこれをこのままにしておくということはいけないと思うのでありまして、官民の努力によりまして、何とかして解決をしていかなければならぬ問題であると私も思っておるのであります。今ちょうどガットの事務局の人が見えておりますけれども日本品は輸出する場合に、洪水という字で、フラッドするということを言って、いやがる国々がある。すなわち日本の品物は、輸出をすると急激に、ふえるふえ方がものすごく急であって洪水のようになる。従って他の国の産業に壊滅的の打撃を与えるので、三十五条を適用して、日本とガット関係に入るのを拒んでいる国が依然相当多いということを言うのであります。これは日本人の一億の働く力というものがほとばしり出る場合にはそういうこともあると思うので、しかたがないといえばしかたがないし、そのために進歩発展もあるわけでありますけれども、そういうふうに突然に浅く広く広がる洪水でなくして、やはり深いみぞとなり、川となり、流れとなって日本輸出がだんだんにふえていくというふうにすること、相手があることですから、少くとも相手国がいやがらない方法で輸出を伸ばして行くことが、私はこの際ぜひ必要であると思います。  なお、時間もございませんので簡単に申し上げますが、貿易の伸張の基盤を作り出すことに関連しまして大切なのは、投資及び消費をも健全な基調に置くということであると存じます。三十三年度財政投融資というものは約四千億でありまして、政府の御説明によりますと、本年度と実行額においてあまり変りはない。しかし何とかして民間資金への依存度というか、期待度を少し減してやろうというお話であります。ただ実際におきまして、財政投融資資金が出ますと、逆にそれに引っぱられて民間資金というものが要望されるというふうな懸念もございますので、この点は政府の御説明の通り民間資金の軽減ということについて御配慮をわずらわしたいと思うのであります。  私はよく考えるのでありますが、輸出の振興ということと同時に、日本にとって非常に大事なのが、資本の蓄積であると思うのでありまして、日本経済が、戦後十数年を経ているのでありますが、統計を見ますと、生産は指数で二倍半になっている。国民所得は二倍になっている。しかし輸出は、やはり伸びたとはいえ、戦前のいまだ九三%を出ません。もう一つ注目すべきことは、資本の蓄積というものが戦前の水準に達しておらない。銀行預金は四兆三千億といわれているのでありますつが、これが戦前の貨幣価値から見ますと百三十億くらいにしかならないのでありまして、やはり戦前の九〇%くらいにしかなっておらないのでございます。私はどうもいつも思いますのは、日本輸出を伸ばすということと、資本を蓄積するということによって——国民の生活水準を上げるということは、これ以外にないと思うのでありまして、もう少し輸出と、それから資本の蓄積ということに対する国民運動のようなものを起す必要があると思っているのでございます。今度の予算でもそれが盛られていることは大へんけっこうだと思うのでありますが、たまたま私は英国におりました当時、英国の外貨準備が十五億ドル台になりまして、危機であるといわれた当時でありますけれども、女中でもタクシーの運転手でも、今月の外貨準備は幾らになった、今月は幾らふえたろうか、輸出が幾らふえたろうかというので、非常な関心を示しておったのを思い出すのであります。ある玩具の輸出商の方が言うのでありますが、日本でも政府輸出振興を言っていただくのは大へんけっこうだけれども、それが一つ政府の末端まで、それから国民の末端までそういう気になってもらいたいものだ。たとえばおもちゃの見本なんかを外国から送ってくる。この通り作ってくれといって送ってくる場合には、郵便局かと思うのですが、見本であるのに、それを国内に売るんじゃないかということで、いろいろと調べに時間がかかって、なかなかくれない。しかたがないから、ばらばらに分けて送ってくるというふうな話もあるのです。日本としては輸出のための見本であるから早く手に入れたいのに手間がかかる。それから横浜にクリスマスの荷物を出すので、大急ぎでトラックに積んで行くというふうな場合でも、多少トラックの積み込み方がよけいな場合にも、輸出のためならということで警察官も多少大目に見てくれるとか、それから外国からエア・メールでいろいろな注文が来るのですが、輸出がたくさんある地域にかかわらず、郵便局でエア・メールが中央局からしか配達してくれないということで、大へんにおくれる。政府機関も末端まで、また国民全体がもっと本気になって、輸出の大切なことを認識して、それを日常の仕事の上に現わしてやってもらいたいというのであります。私もこの際日本としては輸出と貯蓄に対しては、昔の非常線突破的な気持で不公平の中の公平といいますか、そういうような取扱いをしないといけないのじゃないかと思うのであります。さっきもちょっと申し上げましたように、日本輸出はまだ戦前の水準に達しておらない。ドイツは三倍近くなっておりますし、オランダとかイタリアとかフランスは、みな二倍以上になっておる。試みに一人当りの輸出量をとってみたのでありますが、国連統計で一九五六年について見ますと、人口の少いカナダなんかが三百二十ハドル、それからスイス、スエーデン、オランダ、デンマークなどはいずれも二百ドル以上になっております。     〔川崎(秀)委員長代理退席、委員長着席〕 それから人口の多い英国が百八十一ドル、ドイツが百四十二ドル、アメリカが百十三ドルというふうなことでありますのに、日本はわずか二十八ドルであるのでありまして、日本世界の相当な工業国でありながらこんなにスイスの十分の一、ドイツ、アメリカの五分の一というように一人当りの輸出が少いというのは注目すべきことだと思うのであります。私はこれは日本世界の貿易の中で正当な分け前にあずかっておらないという気がしてならないのでありまして、日本としても、先ほど申し上げましたように、みずから正すべきことは正していくということは必要でありますけれども、逆に世界の人をして、日本の貿易は伸ばす権利といいますか、伸ばすのが当然だということを十分に認識させて、堂々たる主張をする必要があると思います。アメリカの輸入制限というふうなものも論じ尽されておるのでありますけれども、決して陳情ではなくして、正当な要求として日本輸出品を入れてもらわなければ困ると思うのであります。アメリカの大統領並びに行政府は良識を持って処理してくれておるようでありますけれども、一部の業者の人がいろいろ反対をするということは、何とかして日本の立場をわかってもらう必要があると思うのであります。  それからもう一つは、ついででございますが、世界の不景気の対策としまして、アメリカでありますとか、ドイツというふうな持てる国が世界経済の責任を自覚して、そしてもっと他の国々から物を買う。それから後進国へ資本輸出をする。それからIMF等国際機関資金を充実して、ドルの再分配をするというふうなことをしてもらわなければならぬと考えるのでありまして、世界の金ドル準備は今アメリカとドイツで、三百五十五億のうち、アメリカに二百二十八億、ドイツに二十五億ということで、七割がアメリカとドイツに集まっております。これでは世界経済が循環しないのでありまして、これらの国が何とかして世界経済における循環をよくするように協力してくれるということを望まなければならぬと思うのでございます。  時間もたちますので、私の公述はこの辺で終りたいと思うのでありますが、私は先ほど申し上げましたように、ことしは日本自体経済のからだ、それから世界経済の成り行きというふうなことから、非常にある意味で低い姿勢でやっていかなければならない、本年はそんな意味であまり明るくない、ぱっとしないような感じの年かと思うであります。けれども、よく考えますと、長期的に見ますとアメリカ経済にどこも根本的な悪いところ、危ないところがあるわけでもありません。また日本経済でも、別に悪いところがあるわけでもないのでありまして、碁で言うと、伸びんがためにはたまには石を継ぐ必要もあるかと思うのであります。私は、いつも日本の将来というものは、長い目で見て非常に明るいのだという信念を持っております。よく日本へ来る外国人等に対して申すのですが、日本は一億の単一民族であって、しかも勤勉で能力があって、それから教育の普及度というものは九八%に及んでおる、しかも通信、交通ラジオ、テレビなどというふうなものが開けておって、言葉も単一の言葉を使っておるということでありますから、大きな国の力を一体として発揮し得る基礎を持っている。足らないのは資本だけであります。しかし世界の交通が非常に発達して距離の摩擦というものがだんだんに減ってきたわけでありますから、私は日本人のわれわれの働きが世界的の評価を受けるようになる時代の方に進むのだと思うのであります。一九五六年の統計で見ますと日本人の一人当りの所得は二百三十ドルということでありまして、アメリカの十分の一、イギリスの四分の、ドイツの三分の一というふうになっておりますけれども、何とかして貿易を輸出入とも伸ばしていく。またみずからも国内で資本の蓄積にも努力するが、もう少し広々した気持で、外国から資本を出そうというなら、外資導入するというふうなことで、日本経済世界経済の中に溶け込んでいけば、所得の国際的差異が少くなって行く、日本人の働く力が世界的評価を受けて、日本人自身の国全体の所得が非常に上って、総理大臣の言われる貧乏の追放というふうなことは、長い目で見て可能でありますし、必ずできるというふうに私は考えておるのでございます。  長時間御清聴をわずらわしまして、ありがとうございました。(拍手)
  67. 江崎真澄

    江崎委員長 ただいまの伊原公述人の御発言に対しまして、御質疑があればこの際これを許します。
  68. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 先ほどからしさいに聴取をいたしておりました。第一にお尋ねをいたしたい点は、外貨の適正保有量は大体十四、五億ドルがよかろう、こういうお話であります。これを勇敢にお示しいただいたことは非常にけっこうだと思うのであります。私も同席しております柳田代議士とともに、昨年諸外国を回りました際にも、各方面で外貨の適正保有量というものの考え方をその国々において聞いたのでありますが、やはりこれは一定の基準というものはないけれども、貿易量と見合わして、この程度がよいというようなことは聞いたことがあるのであります。イギリスでは二十億ドルということが相当波紋を描いたようでございまして、昨年の三月にもそういうことのために金利の新しい措置をとらなければならなかったとも聞いておるのであります。そこで今お示しいただいたのは、ずいぶん長い間御研究になった結果だろうと私は思うのですけれども、その対象になったものは、やはり貿易の量によるものか、あるいは国民所得とか国民生産、それから世界的な貿易事情というような各種類がありましょうけれども、こういう問題を大体研究しますときには、どういうところに一番大きな基準を置くのでありましょうか。
  69. 伊原隆

    ○伊原公述人 お答え申し上げます。ただいま先生の仰せになったように、外貨の適正保有量というのはずいぶんむずかしい問題だと存じます。そしてこれは時代によりまして、また目的によりまして非常に違っておると存じます。たとえば戦前英国はポンドで世界じゅうの貿易を相当まかなっておったのですが、そのときに自由金としてたった二千万ポンドしか持っておらなかったということなんでありますが、戦後におきましては、私が先ほど申し上げた数字は、実は二つの方角から考えてみました。一つ世界諸国における貿易の輸入量と外貨の保有量との比率、それからもう一つは必要な額を積み上げて大体どのくらい要るだろうというように考えてみたのでございます。まず第一に世界的に見まして、みんな大体輸入年額の半分くらい持っておるのがいいんだというのが常識のようでありますけれども、実際に数字に当ってみますと、ドイツでありますとかスイスは別でございますが、今のところ欧州等の国では輸入年額の三割程度外貨を持っております。従いまして日本の輸入年額を三十二、三億ドルといたしますれば、三割で正味千億ドルというふうなものは必要であろうと思います。日本外貨の出し方は実は世界の出し方と多少違うのでございまして、さっき申し上げたのは公称十五億くらいというのでありまして、これは正味からいうと十一億かそこらにしか当りません。  それからもう一つ積み上げの方でございます。積み上げはさっき申し上げましたように日本の輸入をまかなっていく運転資金がどのくらいかというのが第一でございまして、これは切り詰めて申せば大体輸入の一割くらいでいいようであります。従って三億五千万ドルくらいが輸入の運転資金、それから日本はさっき申し上げましたように、世界の不景気とか景気の変動を一番受けやすい地位にございますので、それに対してどのくらい用意しておけばいいのかというのは、過去の経験等から三億ドル程度は持っていなければいけないだろう。それから食糧の輸入国でございますので、いつか米の不作で自給食糧が非常に悪くなりましたときに二年続けて合計三億ドルくらいを失ったことがございます。この食糧の輸入に三億ドルくらい、それから私はいつか円のいわゆるコンバーティビソティ、円の交換性を考えなければいかぬというふうに考えるのでありますが、そういう目的のためであったらなおほかに二、三億ドル持たなければいかぬというようなことで、かたがた表面では十五億程度、実質は十億ないし十一億ドル程度持つのがいいのじゃないかというふうに考えております。
  70. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 それから先ほど御公述の中にもありましたが、世界景気が下降期である、それで日本輸出は過去には各国の景気がよかったインフレ状態のときに大きく伸びた、こうおっしゃったわけですが、私はその点で非常に心配しておりますのは、経済企画庁が立てました本年度輸出計画のうちで、アメリカに対して七億七千五百万ドルの輸出見込みをしておるわけです。これは去年に比して七千五百万ドル、七億ドルに対して七千五百万ドルも多いわけですが、アメリカが相当な輸入制限をして、そして景気もアイゼンハワーが七月から立ち直るということもいっておりますし、また現に一応停滞しておったものがさらに高原景気へ上昇する可能性はあると私どもも思っておりますけれども、しかし悪条件が今出ておる際でありますから、その二つの条件の中を切り破って、果してこの程度のものができるかということについては非常に心配をいたしておるわけであります。従って第三者的立場にある伊原さんの方ではどういうふうにこの問題を御観測いただいておるか、これを承わっておきたいと思います。
  71. 伊原隆

    ○伊原公述人 ただいま川崎先生の仰せの通り、私も実は来年度の目標の輸出三十一億五千万ドルというものが達成できるかどうかということについては非常に心配をいたしております。ただいまもお話いたしましたように、どうも日本輸出は、他国の人手が不足でインフレぎみであるときに、日本は人手がたくさんありまして物価も安いということで出ていくのでございます。しかるに他の国が輸入制限を始めるというようなときは、日本品はまつ先に輸入制限を食うのが過去の例でもありますので、この中において輸出を伸ばすことは非常にやさしいことじゃない。英国あたりも最近まではあまり感じなかったようですが、そろそろアメリカの不景気の影響を受けてドル輸入が減って参ったようであります。従ってアメリカヘの輸入を七億七千五百万ドルと今仰せがあったのですが、これもなかなか並み大ていじゃないと思います。さっき申し上げましたように、私はああいう持てる国が輸入を制限するというのは、言葉は悪いですが非常に理不尽だと思うのでありまして、日本の方も悪い点はやり方も改めますけれども日本輸出をしなければ生きていけないのでありますから、買ってくれるべきであると思います。それにもっと心配なのはアジアに対する輸出でありまして、アメリカに対してもむずかしいのでありますが、これは何とかして買ってもらわないと困るというふうに感じております。
  72. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 今のお話の最後にありましたアジアの問題を非常に心配しておられるというのですが、私もその点非常に重大な問題があると思うのです。それは最近韓国がいろいろ域外調達をしたり、あるいは輸入をしたりする相手国というものがずいぶん変ってきまして、対日政策の関係もありましょうけれども、西独あるいはベルギーなんかが相当そういうものを落している。それから西ドイツは私が申し上げるまでもなく、ヨーロッパだけで足りなくて、中近東から東南アジアにかけて相当各種の品目を輸出して幅を広くしているようなふうにも見られるのであります。その点で、この外貨を常に扱っておられるから、他国の進出の状況も知っておられると思うのでありますが、主として西ドイツあるいはベルギー、この二国が非常に顕著な動きをしていると思いますけれども、何か、お手もとには数字はございませんでしょうけれども傾向がおわかりになりましたらお知らせ願いたい。
  73. 伊原隆

    ○伊原公述人 ただいま十分な資料もございませんが、先生の仰せの通り、西ドイツの輸出というものは非常にふるって、外貨がどんどんたまってきておる。それもEPU諸国だけでなく、東南アジアの方まで出ておる。インドなどにおきましても、プラント輸出などについて現実の商売で日本の出ておるものと相当せっているということであります。それからまたいろいろの条件が日本よりよくて、延べ払い等でいたすこともあると聞いておりますが、日本も長い目で見て貿易を伸ばすために、ある程度この際は条件についても考えなければならぬ時期かと思っております。
  74. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 それから為替銀行の立場から、最近在外商社の手持ち外貨が全部でどれくらいあるか、ちょっと数字を忘れましたが、かなり許しておるわけでございます。これは当然な措置だと思うのですけれども、昨年の一つの事件として、ニューヨークのある商社が上半期だけで九万ドル以上の赤字を出したということがいわれております。それからタイやビルマの商社が、非常に商社が多くて競争が激しいものですから全部赤字だ、こういうことになってくると、非常に外貨政策は問題になりはしないか。これは為替銀行なんかの立場から見られて、どういう措置をとったらいいかということを伺っておきたいと思います。
  75. 伊原隆

    ○伊原公述人 非常にむずかしい問題であると存じますが、保有外貨の問題は、実は日本商社が外貨を保有しまして、輸入については、非常に有利なときに買い付けておいて輸入に回す。輸出にしましても、しばらく向うへ持っていなければならぬというようなことで、為替銀行の現地貸付の先駆をなすようなものとして認められた制度であると思うのでありますが、何分去年非常な国際価格の変動があり、日本では輸入のラッシュがあるというようなことで、仰せのようなことが起った例もあるかとも思うのであります。保有外貨の制度は商社が機動的に活動するため必要なものですが、ある程度検討しなければならぬという声もあるのではないかと思います。  もう一つ、タイのお話ですが、私もタイに参りましたときに、日本の商品を扱うと破産をするというようなことまで言われておるという話を聞きましたが、これはやはり過当競争で日本品があとからあとから値を下げる、従って前に買った人がみんな損をしてしまうという点にあるといわれておりますので、先ほど申し上げましたように、何とかしてこの過当競争という問題は適当な処置をお考えいただくことが必要であると存じます。
  76. 久野忠治

    ○久野委員 ただいまのお説の中にありましたが、過当競争の弊害についてるる述べられました。しかし現実の問題としては、なかなかこれは困難な事柄であろうと思うのです。しかしながら、そのことによってお互いに切瑳琢磨し、貿易が伸展するという、いい面も私はあろうと思うのでございますが、具体的にいって、この弊害を除去するためにはどういう方法がとられたらいいのでしょうか、その具体的な案でもあればお示しを願いたいと思います。
  77. 伊原隆

    ○伊原公述人 お答え申し上げます。実際仰せの通り弊害ばかり言いまして、処置があるかといいますと、これはなかなかむずかしい問題なのであります。しかし、たとえばカン詰などではすでにやっておられると思うのですが、独占禁止法等で多少の障害があると思いますけれども輸出につきまして組合を作っていかれるとかいうようなことも、一つじゃないかと思います。それから商社の過当競争といいますけれども、やはりそのもとにはメーカーの競争がございますので、その辺から手を打っていかなければならぬということになるので、なかなか名案はない。しかし、といってこれでどんどん市場を失っていっていいかということになりますと、何かしなければならぬということになって、やはり業者の自主的な自覚によるということを何とかして、やっていかなければならぬのじゃないか、私は民間におりましてそう考えております。
  78. 久野忠治

    ○久野委員 さよういたしますと、共産圏がとっておる手段と同じように、国家統制一本やりでやる以外に道はなくなって参ります。さような意味合いから、お説はあまりにも過当競争の弊害だけを誇大に言っておいでになるように私は思うのでございますが、そういうことはないでしょうか。
  79. 伊原隆

    ○伊原公述人 私の御説明の仕方があるいは悪かったのかと思いますが、国家統制というより、民間で自主的にやるべきものだと私は心得ております。もとより共産圏の輸出や輸入につきましては、向うが一つなんでございますから、こっちがいろいろとたくさん出て競争するということになると、ますます不利になります。その辺のこともあわせて、業界で自主的な方法を講じていくということが、一番いいのではないかと思っております。
  80. 柳田秀一

    ○柳田委員 あとから来まして、先生の御公述を途中から聞いたのですが、ことしの財政投融資にいたしましても、あるいは経済計画成長率にしても、従って雇用の関係でも、やはり出発点は、川崎委員の仰せの通り、輸出が三十一億五千万ドル、そうして年間収支一億五千万ドルの黒字という目標、これは目標ですが、そういうことになって、理論的には予算規模もすべてそれに基いておるのです。理論的と申しましたのは、全く理論的で、現実の予算はそうなっておりませんけれども、今おっしゃるように、三十一億五千万ドルの達成はなかなか容易ではない、こういうように思うのですが、それならば、ことしの三十一億五千万ドルという輸出の伸びを——これは政府の方ですから、先生にお尋ねするのはおかしいのですが、先生はこの財政計画を見られて、一体何を目安に大蔵省なり経済企画庁では積算せられたか、先生があの予算書を見られて、一体何を目安にして三十一億五千万ドルとされたとお考えになりますか、その点を率直に伺いたいと思います。
  81. 伊原隆

    ○伊原公述人 ことしの目標として、三十一億五千万ドルは何が基準かというような点については、実は私もわからないのでございますけれども、これはやはり一つの勘でございましょうし、目標というものですから、そう科学的にも出ないのではないかと思います。ただ日本輸出というものが、ほかの国が伸びておるのに戦前の水準に達しないというようなことから考えても、伸ばすべきだし、また何とかして伸ばさなければならぬということではないかと、私は心得ております。
  82. 柳田秀一

    ○柳田委員 おっしゃる通り、これは目標でございまして、あえてこれは一つの努力目標だといえばそれまでですが、しかし目標にしても、輸出の伸びは国民経済成長率に関係して参ります。国民経済成長率をうんと上げるならば、上げることによって、雇用力も増大するでしょう。あるいは国民生活もそれだけ上っていくでしょうが、逆に言うと、何とか輸出を伸ばさなければならぬ、あるいは貯蓄をふやさなければならぬという圧力もかかってくるというようなことで、ただ目標といっても、その目標が実際に国民生活の上に、予算の上にびしびしと響いてくるわけです。また財政投融資の面についても、去年に比べて財政投融資をどれだけ持ってくるんだというわけで、目標といっても、そう当てずっぽうに三十一億五千万ドルというものをきめられるということはあり得ぬと思います。ことに長期計画を見ますと、五カ年計画の三十七年には、輸出は約二十八億ドルが四十四億ドルほど、年間成長率が、つまり輸出の伸び率が、一〇%以上になっているわけです。ところがそのときの世界の大体のそういう伸び率は、どのくらいかというと、四・五%しかない。世界がそれくらいの伸び率のときに、日本だけが倍以上も伸びるということは、これは一つの目標だといえばそれまでのものですが、達成できるかできぬかあやふやな目標が、今日の実際の現実の政治の上にも、予算の上にも、びしびし響いてくるわけです。そう当てずっぽうの目標と言うわけにいかぬと思いますが、そこで金融、貿易、財政等の専門家でいらっしゃる先生は、私は政府にいずれ尋ねますが、あなたは第三者的に、何を基準にして三十一億五千万ドルというものをきめたんだろう、そうして輸入はまず横ばいだろう、年間一億五千万ドルほどの黒字が出るだろう、こういうような発表をしているわけでしょう、政務次官がおりますが、大蔵省の方はいずれまたお尋ねするとして、先生は第三者的の立場からどういう御批判をされるか、それを聞かしていただきたい。むしろ今日の公聴会は、そういう意味でわれわれは、先生のお考えを聞かせていただきたいと思うのでございます。
  83. 伊原隆

    ○伊原公述人 三十一億五千万ドルというのは、私も、おそらくは今年の一割増し程度の事柄としてきめられたものじゃないかと思うのであります。ただ先ほど申し上げましたように、私の今の感じでは、努力して何とかしなければならないけれども世界経済の情勢というものが非常にむずかしくなってきておる。従ってこの目標を達成するには、ずいぶん努力が要るのじゃないか。ことに世界中の貿易量が、自由諸国の方が千億ドル台に乗ったのが、また逆に九百億ドル台に落ちてくるような様子もありますので、容易なことじゃないというふうには考えております。しかし先ほど申しましたように、何とかして輸出だけは伸びないと、日本の生活水準も上りませんし、あらゆる努力を込めて、非常線突破的な考え輸出には私どもとしても努力を傾けたい、こう考えております。
  84. 柳田秀一

    ○柳田委員 経済人でいらっしゃる先生の方で非常線突破的な意気込みでやっていただくのはけっこうですが、またそうでなければならぬと思うのですが、ただし政策の担当者としての政府はそうはいかないので、たとえば三十一年から三十二年に関しては、大体輸出の伸び率は約一三%くらいだったと思う。三十二年から三十三年に関しては、配られた資料によると、今数字は忘れましたが、一一・三%ぐらいになっておるのではないかと思います。しかし経済成長率を見ますと、昨年は七%以上なんです。本年は二・三%というようなことで、そこにも私はバランスが合っておらぬと思う。輸出の伸び率が二%と一一・何%ですから、経済成長率も七・何%と六・何%なら話がわかるんですが、経済成長率がパラレルになってないんじゃありませんか。複雑な相関関係のあるものでありますから、そんなに簡単に割り切れないものですが、そういう点から見ても、少しおかしいと思うのですが、いかがですか。
  85. 伊原隆

    ○伊原公述人 おっしゃる通り、三十一億五千万ドルというのは、ことしは、今の様子だけでは達成するにもずいぶん困難があると思います。ただ、私ども期待いたしておりますのは、アメリカ景気がほんとうに早く立ち直るかどうか。それからまた、たとえばアメリカの対外援助が、議会を予定のように早く通って、東南アジアの国等に出ていくというようなこと、それからまた、アメリカとかドイツがよき債権国としての協力関係を国際経済の上にすみやかに打ち出してきて、ことしの日本輸出というふうなことにまで間に合う程度に早く効果が出てくるかどうかというふうな点が、かぎではないかというふうに私は考えておるのです。
  86. 川俣清音

    ○川俣委員 時間がないので、一点だけお尋ねしたいのですが、昨年の夏に外貨事情が非常に悪化いたしましたために、日本銀行がアメリカ輸出入銀行との間に借款をいたしたのでありまして、これが一億一千五百万ドル、その中で農産物の買付、円貨で百六十億、綿花、小麦、大麦などが入っているわけですが、外貨事情が非常に悪くなったときに、なぜ大麦などを買い付けなければならなかったのか、この点、おわかりになりましたらお知らせ願いたい。御承知のように、小麦は国内でも需要がありますが、大麦は、国内の麦が相当出ておりますのに、まだ買付の余地があるわけですか。外貨事情が非常に悪くなったときに、一体なぜ国内で生産されるような大麦を買わなければならなかったであろうか、どうも私疑問なんですが、為替業務を扱っておられる東京銀行として、どういうふうにこの点を見ているか、お知らせ願いたい。
  87. 伊原隆

    ○伊原公述人 お尋ねでございますが、ちょっと私にはお答えがうまくできないような気がするのでありますが、余剰農産物の買い入れというのは、外貨としては、何か負担にはならないのではないかという気がいたしますが、またほかに、その見返りの円をどう使うかというようなことが主眼に置かれているのではないかというふうに思います。今のお尋ねに十分なお答えができないことを申しわけないと思います。
  88. 川俣清音

    ○川俣委員 それではもう一点。これは、余剰農産物の買付と違いまして、外貨事情が非常に悪化したために、ドル資金がなくなって借款をいたしたようでございます。従って、ドル資金不足して借款をしたのでありますから、あまり必要でないものを買い付ける必要はなかったのではないかというのが、私のあなたに対するお尋ねの点なんです。そうであれば、いよいよもって悪化することになるのではないか。この事情がおわかりにならなければ、いずれお調べになってから、文書でお知らせ願ってもけっこうでございますが、お知らせ願いたいと思います。
  89. 伊原隆

    ○伊原公述人 承知いたしました。
  90. 江崎真澄

    江崎委員長 他に御質疑がなければ、伊原公述人に対する質疑は終了いたしました。  伊原さんどうもありがとうございました。  明日は午前十時より開会し、公聴会を続行することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十五分散会