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藤田公述人 私にきょう与えられました課題は、地方
財政の面から三十三
年度の
予算案について
意見を申し述べるようにということでございます。研究をいたしておる者といたしまして、第三者的な客観的な立場から
意見を申し上げてみたいと思います。
御
承知のように地方
財政あるいは地方行政に一番
関係の深い問題は、何と申しましても国家
予算のうちの民生
関係の経費でございます。まず今回の国家
予算の社会保障
関係の経費について見てみますと、そのうちの中心であります生活保護費、これは今
年度三百八十二億円計上されておりまして、昨年に比べて十五億円ばかりふえております。そして保護人員として予定されておりますのが、月平均百五十万二千人、昨年に比べて五万二千人ばかりふえております。パーセンテージにいたしますと、約三%強の増大であります。ところが御
承知のように、
昭和三十三年は大体一般の
景気の動向もあまり思わしくないというのが一般の見通しであります。ところが
昭和三十一
年度の、これは今日と比べますと、
かなり景気のいい時代でありますが、このときにも前年に比べて二・五%の保護人員の
増加を見ておった状態であります。そういたしますと、今度の三%の
増加というのは果して
経済の不況の時代に十分その機能を発揮し得るかどうかということが問題になると思います。私よく地方へ調査に参りますが、地方へ参りますと、現在実際に保護を受けております受保護者というのが実際に保護を要する人のわずかに四分の一か五分の一にすぎないということをよく耳にするわけであります。
それからなお保護基準の問題でありますが、
昭和三十二年十月に改訂されました全国平均の五人世帯当りの保護基準は八千四百五十五円になっております。ところがこれは厚生省の発表いたしております厚生白書によりましても、全国の
国民一人当りの平均の必要家計費というものの約四〇%にすぎないのであります。こういうふうに保護基準も実際に必要な額のわずかに四〇%であります。今回の
予算では学令前の児童に対する諸費を幾らか引き上げておりますが、それくらいの手当であって、こういった生活保護というものが人員の面においてもまた保護の
内容においても十分とは言えないというふうに思うのであります。
それから失業対策の問題でありますが、これは今
年度三百九十六億円を計上されて、昨年に比較いたしまして四十八億円ふえております。そうしてこれによりまする吸収人員が一日平均二十五万人予定されておりまして、昨年と比べて約一〇%吸収人員をふやしております。ところが昨年の吸収人員というのが三十一
年度に比べますと一〇%減っております。これは昨年の
予算審議の際にはいわゆる神武
景気が予定されておったわけでありまして、従って一〇%減らしたわけでありますが、この減らしたものを基準にして今回一〇%ふやしている、こういう状態で果して将来
経済界の不況の予想される場合に、十分な失業対策ができるかどうかということでありますが、官庁の失業者の推計はよく低いと言われておりますが、これによって見ましても完全失業者が
昭和三十一年中の平均で六十四万人で、従って二十三年はこれは予想でありますが、おそらく八十万人ははるかにこえるだろうと思われるのであります。それに対して二十五万人の吸収人員であるという状態であります。
次に住宅対策について見たいと思いますが、地方団体に
関係の深い地方の公営住宅に対する補助金、これは大体昨年と同じ百六億円であります。そうして戸数は昨年と比べますと四万六千戸から四万七千戸に、一千戸だけふやされておりますが、その
内容を調べてみますと、国の補助率の低い第二種住宅というものを二千戸ふやしまして、補助率の高い第一種住宅というのを一千戸減らしております。こういう状態で第二種住宅というのは御
承知だと思いますが、木造で八坪という非常に貧弱な零細住宅であります。こういうのが今回の住宅対策でありまして、現在住宅の全国的な
不足数は二百八十万戸だと言われております。今度の
政府の
予算によりますと、公営住宅、公庫公団、その他の住宅を全部加えまして十九万九千戸でありますが、これも二百八十万月に対しては
かなり貧弱な対策ではないかというふうに思われるのであります。
次に文教
関係の
予算を見てみますと、本
年度は一千四百三十八億円で、昨年に比べて九十一億円ふえております。ところがこの九十一億円の
増加のうちで八十八億六千万円というものは、教職員の給与費の増とそれから国立学校の経費の
増加に充てられているのであります。現在問題になっております文教施設の拡充ということにつきましては昨年の八十八億円から八十九億円、わずか一億円の増にすぎないのであります。今最もやかましく取り上げられておりますすし詰め教室というふうな問題に対処するために、不正常授業の解消というので七億三千万円計上されておりますが、現在中小学校の不正常学級というのが約三万五千学級あるというふうに言われております。これに対して七億三千万円の手当という状態であります。また危険校舎につきましては二十億五千万円計上されております。これも小学校の校舎の総面積の約二〇%が危険校舎である。私が地方へ行きました東北のある都市などは、三六%まで危険校舎だと言われておった状態でありますが、これに対して二十億五千万円の経費が計上されているという状態であります。
それから地方の経費に非常に
関係のあります
公共事業費でありますが、これが今回一千七百四十一億円で、昨年に比べまして九十六億円の
増加でありますが、その大部分は道路の整備あるいは港湾、漁港の整備、そういうことに振り向けられております。そして地方の住民が一日も早く復旧を望んでおります災害復旧費というものについては、昨年の三百九十八億円に対して本年は三百六十四億円で三十四億円の減であります。これについては
政府の方では二十九
年度以降最近はあまり災害がないということのようでありますが、しかし御
承知のように
日本の災害復旧というのは非常におくれておりまして、
昭和三十二
年度末、この三月末の予想でも二十八年に起りました災害の七九%がやっと復旧するという状態であります。こういう場合に災害復旧費が
かなり大幅に減少されている状態であります。
以上民生
関係の経費について一あたり見て参ったわけでありますが、今試みに社会保障
関係の経費が今度の
予算総額に対して何パーセントを占めているかということを見てみますと、九・五%であります。昨年はこれが一〇%強であったので、パーセンテージにおいて低下しております。また文教
関係の経費も昨年の一一・九%から一〇・九%に減っております。こういうふうに見て参りますと、現内閣は当初今度の三十三
年度の
予算においては財界との
関係もあって緊縮政策をとるんだということを強く主張せられておったわけでありますが、その後いろいろな
関係で
かなり経費がふえたようでありますが、その緊縮の方針が民生
関係の経費に非常にしわ寄せされているということが言われるのではないか。民生
関係の経費が果してこれで十分であるかどうかということについては、十分御審議を願いたいと思うのであります。この民生
関係の経費が地方
財政に補助金等を通じて御
承知のように非常に大きな影響を与えるということでありまして、こういう状態では地方の住民の要求に応じて民生行政の水準を十分維持することは困難ではないかというふうに思われるわけであります。
第二番目に、税制問題について
意見を申し述べたいと思います。今回の
政府案によりますと、
法人税、相続税等が中心になって
減税が行われたのでありますが、これは私の
考えでは間接税を中心に
減税を行うべきではなかったというふうに思われるのであります。それはとにかく、地方税の
関係といたしまして御
承知のように
法人税が二%今回軽減されております。そうして軽
減税率の範囲の拡大その他で大体平
年度において二百二十億円の減少ということになるようであります。ところがこれが地方へはね返りまして地方の
法人税割その他に対して影響を与えて、大体二十九億円ばかりの減収になるようであります。この国税において一定の、そのときの
政府の方針に基いて
減税政策をとられることも場合によってはいいかと思いますが、それが地方団体にはね返ります場合においては、地方団体は御
承知のようにそれぞれの団体として独立の
財政を運営いたしております。従って地方団体に対して他の財源の手当をせずに、これを国税の政策によって減収のままに置いておくということは、地方
財政の運営を脅かすものとして
考えるべき点じゃないかと思います。今度はこの
法人税の
減税を埋め合わすための
法人税割の税率を引き上げることを見送られたように伺っておりますが、これは
法人を軽減するということの趣旨を地方でも徹底したいという意向のようでありますが、昨年の一千億円の個人の
所得税の
減税の場合には、個人に対する地方税の所得割の税率を引き上げて埋め合せをやったのでありますが、こういう点において、
法人と個人との地方税の負担
関係が果して均衡を保得るのかどうかという点を十分お
考えを願いたいと思うのであります。
それから御
承知のように先ほど
藤井さんも御触れになりましたが、おそらく
昭和二十五、六年ごろからだと思いますが、
貸し倒れ準備金、価格変動準備金その他社内の内部留保あるいは特別償却の範囲の拡大による
設備の
近代化、
重要産業の保護、その他の名目で国の
法人税、
所得税、登録税等について、いわゆる
租税の
特別措置が行われておりまして、さきの臨時税制調査会の答申によりましても、平
年度これによる減収が一千億円近くあるというふうなことが指摘されておったのであります。これにつきましては世論にかんがみて、昨年平
年度約四百億円近い整理をされたのでありますが、なおここに六百億円の
特別措置というものが残っております。これがまた地方団体の
法人税割あるいは
事業税等にはね返っておりまして、大きな
法人のありますような府県、市町村においては、税収入の上に大きな制約を加えられている状態であります。また地方の固定資産税にいたしましても、
企業合理化のための大
規模機械
設備だとか地方鉄道用償却資産、発送変電用の家屋償却資産その他につきまして、この資産の評価を二分の一または三分の一にするというふうなことで、実質上いろいろな
減税が行われております。これもやはり地方団体の税収入の上に非常に大きな影響を与えているのであります。
日本経済が
昭和二十五、六年から七年ごろにかけまして、何としても一日も早く
資本を蓄積する必要がある、そして
企業の収益を相当高める必要があるということはこれは当時の
日本経済の自立あるいは安定のためには、こういった
特別措置というものも必要であったかと思いますが、今日
かなり資本の蓄積が進められて、また
企業の収益も高まってきている。昨年からことしは幾らか
事情が違うかもしれませんが、これは特殊な理由だと思います。こうして
日本の
経済の自立が達成されつつあるという時代においてはこういった
特別措置については負担公平の見地からも十分検討を加えられて整理をする必要があるのではないか。今日わずか五反の田畑を持っている貧農、あるいは十坪の住宅を持っている一般の都市の庶民たちもそれぞれ重い固定資産税を負担している状態であります。従ってこういった
特別措置をこの際十分再検討していただく必要があるように思うのであります。ところが今度の地方税法の改正におきまして、固定資産税についてさらにその
減税の範囲を拡大いたしまして、新技術
企業化用の機械
設備についてはその評価を三年間二分の一に低めるというふうな措置がとられるようであります。これは私が今まで申し上げましたことを反対した行き方でありまして、この点十分御審議を願いたいと思います。
それから地方税制の問題でありますが、今回自転車荷車税が廃止されたということは、非常にけっこうなことだと思うのであります。しかし一面において木材引取税の税率を四%から二%に半減するということが
計画されております。そしてその理由といたしまして、今まで木材引取税があまり厳重に徴収されておらなかった、これを厳重に徴収することによってこの税率の低減分は十分埋め合せるのだというふうなことをいわれております。しかしこれは税金を厳重に徴収するのは当りまえの話でありまして、それによる収入が、厳重にやったから収入がふえる、だから当然税率を下げるべきだという議論は成り立たないように思うわけでありまして、大体山林業者というのは農業と一緒に、御
承知のように今日
中小企業者等が相当重い負担をしておりまする
事業税を免税されている状態であります。その上になぜまたこうした木材引取税の半減ということを
考えなければならないのか、この点理解に非常に苦しむわけでありまして、率直に申し上げますと、何か政治的なにおいがするような
感じであります。
第三番目に
財政投融資計画と地方債の問題に移りたいと思います。
昭和三十三
年度の
財政投融資計画は三千九百九十五億円で、昨年の実行額と比べますと四百七十二億円、大幅に
増加いたしております。ところが先日発表されました地方債
計画等によりますと、地方債の
ワクは昨年の一千七十億円から一千億円に、七十億減少をいたしております。そのうちでも収益的な
建設事業あるいは公営
企業分については、昨年に比べて十億円ずつふえております。これも十億円の
増加でいいかどうかということには相当問題があると思いますが、一番重要な点は一般会計分、つまり一般行政をまかなうための地方債というものが、五百二十億円から四百五十億円に、非常に大幅な減少をしているのであります。もちろんこの地方団体の起債ということも、それが地方の一般財源の赤字の補てんのために発行されるというふうなことは避けるべきでありますし、また地方債は言うまでもなく
借金なので、地方団体としてほかに財源があれば
借金をすることはできるだけ押えるべきだと思います。しかし他に十分な財源も与えられなくて、単に公債の
ワクだけを締めるということになると、地方行政の上に重大な影響を及ぼすのであります。特にこの一般会計分の公債のうちで注目されます点は、一般補助事業というものについての地方債の額が、昨年の百九十億円から百億円に、ほとんど半減されているのであります。この補助事業、そのうちには現内閣が看板とされております道路整備事業その他も入っておるわけでありますが、そういうもので補助金をもらった残りは、やはり今日の地方
財政の状況としては
かなり起債に待たなければならないという実情であります。そういう起債が半分に減らされるということで、果して国が
計画されております道路整備その他の補助事業が、今後一年間その
期待通りにうまく実現されるかどうかということに対して、非常に大きな疑問を抱くわけであります。
三十三
年度の本
予算につきましては大体以上申し上げた通りでありますが、地方
財政計画の
内容について
意見を申し上げたいと思います。地方
財政計画が国の本
予算との
関係でことしは
かなりおそく、まだそれも厳密な
計画までいっていないようですが、作成されたのであります。総額は一兆二千三百七十二億円、昨年と比べますと約九百億円ばかりふえておりますけれ
ども、国の
予算と比べますと七百五十億円ばかり少くなっております。国の
予算よりも少いというのは、二十九
年度以来今回が初めてでありますが、この地方
財政計画のうちで問題になりますおもな点を拾って申し上げますと、これはいつでもそうでありますが、補助金を伴う経費の見積りでありますが、これは補助金を伴う消費的経費あるいは
公共事業費あるいは失業対策費その他に
関係いたしますけれ
ども、自治庁が地方
財政計画を作成いたします場合には、補助事業については国の法律できまりました補助率から逆算をして、そうして事業費の総額を算出しているようであります。補助事業については一応そういう方法より仕方がないかと思います。ところが国が補助をします場合の補助単価というものは、実際の実情よりも少いという場合がよく見受けられる例でありまして、特に学校の校舎あるいは住宅についてそういう例が多いのであります。その結果は一定の単価に基いた補助率の補助金は交付されるわけでありますが、実際はそれではやっていけないということで、地方団体が超過負担をいたしております。この超過負担が今日の赤字の
一つの大きな原因になっておりますが、今回の国庫補助金を伴う事業の見積りにおいて、再びこういうことが繰り返されていないかどうか、これは補助金全体の問題にもなるわけでありますが、この点十分御審議を願いたいと思います。
それから消費的経費のうちに補助金を伴わないものというのがございます。これは主として地方の物件費
関係の経費でありますが、これが昨年に比べましてわずかに三億円よりふえておりません。三十二
年度の場合は、三十一
年度に比べて四十八億円の増を見込んだのでありますが、本
年度はわずかに三億円であります。これは国が節約方針をとっているので、大体それに見習ったということのようであります。これは総額で申しますと一千七百億円くらいのものでありますが、それについてわずか三億円くらいの
増加で、人口増によるところの物件費の
増加ということさえもこれでは十分まかなえないのではないか、地方団体は、過去すでに相当経費の節約を続けてきております。経費の節約分もおそらく見込まれていると思いますが、これ以上大幅に経費を節約して、そうして人口増を見込んでわずか三億円で果して足りるかどうかという点が非常に疑問とされるのであります。
それから今度の地方
財政計画で、国庫補助金を伴わない
建設事業費というものが、二百三十億円の
増加で一千三十四億円計上されております。これはあとでも申し上げますように、現在地方団体の事業の水準が
かなり低下しておりますので、こういった投資的経費を
かなり多く見積られた点は私も非常に喜びとするところであります。しかしこれにつきましては、これはあとの地方税の見積りと
関係はいたしますが、前に申しましたように、この一般行政費その他の公債、地方債の
ワクが非常に縮められたのであります。地方債がこういうふうに縮められて、しかも地方税が私の見通しでは、財界の昨年の不況の影響もありまして、そんなに伸びを
期待できないと思いますが、それで果して財源の上でこの二百三十億円というものの
建設事業が実施できるかどうかという点に大きな疑いを持つのであります。それから地方
財政計画の歳入の面でありますが、この歳入には地方税が五千四百二十七億円で、昨年に比べまして五百二十五億円、
かなり大幅な約一一%の増が見込まれております。御
承知のように地方税に対する財界の
景気の影響というものは大体において一年おくれるのでありますが、そうなりますと、三十二
年度の神武的なと悪口を言われている、不
景気の影響が三十三
年度に現われてくるわけであります。また一方から申しますと、
法人税の軽減その他によって住民税の減収も
考えられるわけであります。こういう場合において、果して昨年に比べて一一%の五百億以上の税収入の増を見込んでいいのかどうか。これがくずれて参りますと、地方
財政計画全体の実施に大きな影響を与えるわけでありまして、私としては五百二十五億の増というものの見積りは、相当無理があるというふうに思うのであります。
それから収入の面の雑収入でありますが、これは御
承知のように、手数料、使用料あるいは財産の売却とか寄付金とか、こういうものが含まれております。ところがこれについて新
年度において二十九億円の増が見込まれているのであります。昨年は十二億円の増しか見込んでいないのでありますが、この雑収入のうちに、最近地方団体の
財政が苦しいために、いろいろな県有林だとか村有林を売却する、それの売却収入が入っておりましたり、御
承知のようにPTA会その他の住民の税外の寄付金というものが、これも三百億円くらいといわれておりますが、そういうものが大幅に入っております。こういうものを土台として、さらに昨年よりも二十九億円の雑収入の増を見積るということも、これはいろいろ問題を含んでおり、相当これは検討を要する見積りではないかというふうに思うのであります。
以上地方
財政計画の個々の問題について申し上げたのでありますが、この地方
財政計画について、全体として私の希望したい点が二点あるのであります。
その第一点は、御
承知のように地方団体と申しましても、四千からのおのおの特殊な
事情があり、また
財政力も貧乏な団体あるいは富裕団体等いろいろあるわけでありまして、それについてこの地方
財政計画が、全体として収支のバランスが合うということも必要でありましょうが、それだけでは実際の個々の団体についてはなかなか収支のバランスが合わない。実際地方の決算額と地方
財政計画とを比べると、いつも相当大きな開きが出ているのであります。従ってこれは技術上いろいろな困難もあるかと思いますが、大体大まかに
財政力によって幾つかの団体に分けて、それについて地方
財政計画を立てていただくということが、ほんとうの地方
財政計画といたしまして、地方の
財政の実態に対する指針としての価値が高まるのではないかというふうに思うのであります。
それから第二点は、今日御
承知かとも思いますが、国の一般会計の歳出の四二%というものが地方団体に流れ込んでおります。補助金あるいは地方交付税その他の形で四二%、しかもこれは年々その地方に流れ込む率は高まってきております。こういうふうに国家
財政と地方
財政というものは、今日ではどこの国でもそうでありますが、非常に密接な
関係を持っております。また地方団体のやっておりますいろいろな行政にいたしましても、今日では国の施策と非常に
関連が深く、また地方行政自体が
かなりナショナルな国家的な性格を持ってきております。こういう場合において、国の
予算を審議される場合には、十分その
予算と地方
財政計画との
関係がうまくいっているかどうか、あるいは地方債
計画ともにらみ合せて御審議願いたい。そうでないと、国でせっかく立てられた施策、事業というふうなものが、実際それを担当してやる地方において実現されないということも起るわけであり、また地方団体の側からいいましても、国の
予算のあり方によって非常な影響を受けるわけであります。その点十分国家
予算と地方
財政計画というものをあわせて、同時に地方
財政計画を十分重視されて御検討を願いたいと思うのであります。
以上、三十三
年度予算の民生
関係費それから税制改正、
投融資計画、地方債
計画、地方
財政計画等について一通り見てきたわけでありますが、最後にここで申し上げておきたいことは、最近新聞雑誌その他で地方
財政が
かなり改善されたということがいわれております。この点につきまして、果して地方
財政が改善されたのかどうかということについて、国会で十分
一つお
考えを願いたい。御
承知のように、
昭和三十年の暮れに地方
財政再建促進法というものができまして、その後地方団体の側で極力
予算を圧縮して、次第に数字の上では赤字が少くなり、たとえば
昭和三十
年度の単
年度だけで見ますと、赤字がわずかに十五億円に減っている。従来は大体二百億近くも毎年出ておったのですが。それから三十一
年度には、単
年度だけをとってみますと、実質的に約二百五十億くらいの黒字が出ているというふうに言われております。ところがこの二百五十億の黒字というものも、ちょうど三十一
年度には財界の好況などがありまして、地方税の収入が五百億以上増収になっております。これが相当黒字に影響したと思われるわけでありまして、こういう状態はこの三十三
年度にはもうすぐに消えてしまうわけであります。それからなお赤字団体は千二百六十七団体も残っているわけであり、また
財政再建債というこの赤字の
借金を五百億以上かかえ込んでいるわけであります。従って数字の上でもそう簡単に、この地方
財政の改善ということについて安心することはできないと思いますが、なお地方の行政の実態を少し申し上げたいと思います。
この地方
財政再建促進法には、御
承知のように、赤字の各地方団体が
財政再建
計画というものを立てることを要求しております。その
内容は、非常に強い事業費の圧縮、人員の整理、徴税の
強化または
増税というふうなことを要求しております。これに基いて再建団体その他が地方
財政の引き締めをやったのでありますが、その結果は、私もよく地方へ参りますが、地方の実情は非常に事業を圧縮し行政を押えまして、地方の公共団体としての機能が麻痺するのではないかというふうな状態であります。
少し例を上げて申し上げたいと思いますが、たとえば河川の改修というふうなものも地方では非常におくれております。これは公表されておりますので名前をあげてもいいと思いますが、たとえば新潟県では、
昭和三十一
年度に実施した河川の改修費が一億一千六百万円、わずかこれだけの改修費しかあの大きな県で使えない。そのために改修を要する河川を完全に改修するためには六十九年を必要とする。こういう状態であります。また橋梁にいたしましても、自動車の交通のできない橋、あるいは重量制限をやっている橋というのが、これは私も実際上そういう経験をしたのですが、至るところにあるのであります。たとえば栃木県では自動車交通不能の橋が木橋の二〇%、あるいは重量制限の橋が三六%というふうな状態であります。それから学校
関係で見ますと危険校舎が非常に多くて、これは現に私が北陸のある県で見たのでありますが、県立の高校でもって、十日に一度くらい上の方から分銅を下げまして傾斜の
程度をはかる。そして十日くらいは大丈夫だろうということで学生を入れているというふうなこともあります。また小学校の危険校舎というのも先ほど申しましたように相当多いのであります。それから保健所な
ども職員を
極端に整理しました結果、実際の定数の七〇%しか職員がいない。そのために保健所の機能が麻痺しているという状態であります。さらに県立の工業試験場などへ行ってみますと、全く今日の
近代化された実際の
産業技術とはかけ離れた時代物の機械を置いておりまして、博物館にでも持っていけばいいような機械が並んでいるような状態で、地方の
産業の振興にはあまり役立っていないという状態であります。こういうふうに行政水準が地方において
かなり低下しております一方、県民税あるいは
事業税、不動産取得税等が、超過課税が行われ徴税が行われております。さらにPTAその他の税外の負担がどんどんふえているのであります。こういう状態を見てみますと、地方
財政がたとい計数の上で改善され、幾らか黒字が出たと申しましても、それはやるべき事業を繰り越し、中止し、あるいは行政水準を切り下げてこういう状態が生まれてきたのでありまして、こういう状態をいつまでも放置するわけにいかないのはもちろんであります。そういう繰り延べが山積いたしますと、数年後にはどっと多額の経費を必要とするというふうな状態も出てこざるを得ないのであります。従って、実質的に果して地方
財政が改善されたかどうかということについては十分に吟味を願いたいと思います。
それからこういう状態についてもう一点心配になります点は、
財政再建をやり、経費を圧縮しております貧乏な団体と、そういう必要のあまりない富裕な地方団体との間の
財政のアンバランスが非常に強くなっているということであります。先ほ
どもちょっと話が出ましたが、
日本の
経済の底は浅い、従って
日本では後進地域の
開発、地方
経済の振興ということが、
日本の
経済の将来にとっても、市場の面からいいましても、原料、材料の面からいっても必要だと思われます。現内閣でも
経済基盤の
強化というふうなことをうたっておられるわけでありますが、果してこういうふうにして——再建団体とか赤字団体というのは後進地域の地方団体あるいは災害を受けた地方団体に多いわけでありますが、こういう団体において、事業施設が低下し、行政水準が著しく切り下げられていくという状態を放置していいのかどうかということも十分に御審議を願いたいと思います。こういった地方
財政行政の実態を十分御認識願って、新
年度の国家
予算あるいは地方
財政計画を十分御検討願えれば幸いだと思うわけであります。
以上で私の公述を、時間の制限もありますので、終りますが、最後に一点これはちょっとお願いをしておきたいのです。これは公述の範囲からそれるので、
委員長さんの御指示にそむくかもしれませんが、昨年参議院の
予算委員会に私が要求されて出まして、一昨年は衆議院の
予算委員会でここへ参ったのであります。大てい毎年御要求によってこちらへ来てお話し申し上げておるわけでありますが、そのお話を申し上げる場合に、常々気をつけてはおりますが、
政府予算、あるいは私の
関係でいいますと自治庁の
予算とかその他いろいろの
財政関係の資料を集めるのに相当苦労するわけであります。こういう
公聴会へ出て私がお話し申し上げることは、名誉でもあり、非常にけっこうではありますが、どうか
一つ財政学者には客観的な立場から国家
財政、地方
財政に絶えず具体的に
関心を持ち得るように、
政府関係からもそういう資料をできるだけ御交付を願いたい。これはきょうの公述の外で、恐縮でありますが、お願いいたしておきます。