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1958-03-26 第28回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十六日(水曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 江崎 真澄君    理事 今井  耕君 理事 川崎 秀二君    理事 重政 誠之君 理事 田中 久雄君    理事 橋本 龍伍君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君       植木庚子郎君    小川 半次君       大倉 三郎君    大橋 武夫君       太田 正孝君    上林山榮吉君       北澤 直吉君    北村徳太郎君       河本 敏夫君    坂田 道太君       周東 英雄君    須磨彌吉郎君       中曽根康弘君    楢橋  渡君       野田 卯一君    船田  中君       古井 喜實君    牧野 良三君       松浦周太郎君    南  好雄君       宮澤 胤勇君    八木 一郎君       山崎  巖君    山本 勝市君       山本 猛夫君    伊藤卯四郎君       井堀 繁雄君    今澄  勇君       岡田 春夫君    勝間田清一君       小平  忠君    小山  亮君       河野  密君    島上善五郎君       田原 春次君    楯 兼次郎君       中村 高一君    成田 知巳君       西村 榮一君    古屋 貞雄君       三鍋 義三君    門司  亮君       森 三樹二君    森島 守人君       山口丈太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松永  東君         厚 生 大 臣 堀木 鎌三君         通商産業大臣  前尾繁三郎君         運 輸 大 臣 中村三之丞君         郵 政 大 臣 田中 角榮君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         国 務 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 河野 一郎君         国 務 大 臣 郡  祐一君         国 務 大 臣 正力松太郎君         国 務 大 臣 津島 壽一君  出席政府委員         内閣官房長官  愛知 揆一君         法制局長官   林  修三君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (矯正局長)  渡部 善信君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (国際協力局         長)      宮崎  章君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         水産庁長官   奥原日出男君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 三月二十六日  委員山口喜久一郎君、伊藤卯四郎君、勝間田清  一君、島上善五郎君、成田知巳君及び森三樹二  君辞任につき、その補欠として大倉三郎君、小  山亮君、三鍋義三君、楯兼次郎君、森島守人君  及び石野久男君が議長の指名で委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  閉会中審査に関する件  昭和三十二年度一般会計予算補正(第3号)  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第5号)      ————◇—————
  2. 江崎真澄

    江崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十二年度一般会計予算補正(第3号)及び昭和三十二年度特別会計予算補正(特第5号)を議題といたします。  愛知官房長官より発言を求められております。この際これを許します。内閣官房長官愛知揆一君
  3. 愛知揆一

    愛知政府委員 かねて当委員会においてお尋ねがございました報償費等につきまして御説明申し上げます。  警察庁及び防衛庁報償費並び公安調査庁調査活動費について申し上げます。なお以下申し上げます区分は、明年度におきます現実の事件または事案の発生状況のいかんによりまして、それぞれの区分間に若干の変動があることは当然でございますので、ただいま申し上げますことは一応の見込みでございますので、その点を御了承願いたいと思います。  まず警察庁関係で申し上げますと、その一つ警察職務の遂上行、一般の模範と認められる職員及び部外協力者に対する報償費でございまして、その額が二千三百三十万円でございます。その二つは、職務遂行につきまして危害をこうむった職員に対する傷恤金でございまして、その額が五百五十万円でございます。以上合せまして警察庁関係が二千八百八十万円でございます。  防衛庁関係について申し上げますと、その一つは、殉職者等に対する傷恤金見舞金等でございまして、百五十万円、その二は、情報、資料の収集、整理、その他これに関連する経費でございまして、四千三百五十万円でございます。  公安調査庁関係は、予算書の上で公安調査官調査活動費ということに相なっております。これは破壊活動防止法に基いて行います調査関係費用でございまして、その中身を三本に区分して申し上げます。  一つ公安調査庁の本庁の関係で、一億三千六十八万円、その二が、公安調査局関係が一億五千三百六十万円、その三は地方公安調査局関係で一億一千五百九十二万円、こういうふうな区分を一応予定してございまして、公安調査庁関係の総額が四億二十万円ということに相なるわけでございます。  次に、本委員会におきましてお尋ねのございました総理大臣秘書官安倍君、山地君の両君に対します私事旅行の点につきまして、御報告申し上げます。今日までに両秘書官とも二、三回にわたりまして私事旅行願が出ておるのでございます。極力日曜、祭日等を中心に利用することにいたしておりまして、公務にできるだけ支障のないように留意いたしまして、許可をいたしたわけでございます。その日数は、いずれも、本年一月以降通算いたしまして二十日足らずでございます。  以上、御報告申し上げます。
  4. 江崎真澄

    江崎委員長 川俣君より、議事進行に関し発言を求められております。この際、これを許します。川俣清音君。
  5. 川俣清音

    川俣委員 補正予算もきょうをもって大体終了する予定でございますので、二、三この補正予算を審議する上に重要だと思われる点について、政府所見をただして、議事運営をはかって参りたいと思うのでございます。  第一は、ただいま官房長官から報償費等の御説明がございましたが、なお不満でございます。この問題は、後刻理事会等において、さらに検討をいたしたいと思いますから、委員長において適宜取り計らいを願いたいと思います。  次に、糸価安定法に基くところの特別会計について、二点ほどお尋ねいたしたいと思います。  第一は、昨日の本会議で、政府が提出されました借り入れ限度五十億をさらに二十億上回りまして、七十億の限度まで借入金をふやそうという修正案政府が出されたのでございますが、このことは、今日の蚕糸業界にとりして非常に問題でありました点を、さらに業界の要望を入れまして修正いたしたものといたしまして、その点は了とするのでありますけれども、初めから糸価安定について政府見通しが誤まっておったところにあると思うのでございます。この見通しの誤まりにつきまして、政府はいかなる見解をとられますか、この点を第一点としてお尋ねをいたします。  第二の点は、三月十八日石井農林大臣代理は蚕糸価格安定について農林大臣談話を発表いたしております。これによりますと、一時蚕糸の買入れ保管をせしむる等万全の措置を講ずることとし、もって内外生糸価格に対する不安を除き、生糸の輸出の促進と農家経済の安定をはかる方針であると説明し、三月二十日に閣議決定をもちまして、さらに修正をいたされたのでございます。これはいわゆる借入金五十億、剰余金十六億、合せて六十六億余円を、歳出に見合いをいたしまして、歳入をはかっておるのでありますが、剰余金の十六億が、閣議決定によりましても、または農林大臣談話を見ましても、あるいは修正案説明からいたしましても、その後糸価の混迷に伴って予想以上に生糸の買入れを行なったため、これにより、三十三年度の予定歳入のうち、前年度からの剰余金を全く見込むことができない事態となったということでありまして、明らかに剰余金はゼロになるのであります。従いまして、歳入は大きな欠陥を生ずるのでありまして、この欠陥を補うための借り入れ限度引き上げでございます。こうなりますと、財政法上、当然の修正をしなければならないと思うのでございます。歳入内とはいいながら、歳出項目変更でありますから、財政法上に基くところのこれは修正であります。従いまして、内閣におきましては、借り入れ限度引き上げに伴う予算修正をしなければならないと思うのでございます。この点について、ほおぶりで過ごそうとするようでございますので、この点につきまして、政府答弁を求めたいと思うのであります。
  6. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の関係で二点御答弁いたします。いずれ農林大臣代理から御答弁があると思いますが、一つは、生糸買い入れについて見通しを誤まっていなかったか、こういう質問でございますが、これは御承知のように、ことしの二月ごろから急に糸価が下ってきて、そうして買い入れをしなければならなくなりました。こういうことから、借り入れ限度をふやすということで、これは予算編成後において、事情が非常に急変した、こういうことに基くものでありまして、御了承いただきたいと思います。  それからもう一つ、仰せのように予定してあります剰余金の繰り越しでありますが、剰余があるかないかといえば、ないと思います。従いまして、ここに借入金を二十億円ふやすというわけであります。これは御承知通り歳入費目変更であります。特に歳出をふやすのではないのでありますから、予算補正は必要ない、かように思います。
  7. 石井光次郎

    石井国務大臣 予算補正の必要はないかというお話については、今大蔵大臣が申し上げた通りでございますが、私ども調整資金を二十億増した、この補正でいって、ほんとうに糸価の維持ができるのかという問題であると思いますが、今までの経過をずっと見まして、私どもは、この二十億をさらに追加いたしまして四十億にすれば、これで大体系価を維持することができると思います。もしこれができないような場合におきましては、またさらに今後適当な手段をとりたいと思っております。そして糸価はぜひ維持していくという方針であります。
  8. 川俣清音

    川俣委員 横浜における市場在貨がたしか六千二、三百俵だったと思います。神戸における市場在貨が千四、五百俵かと思うのであります。八千俵内外市場在貨があるわけであります。従いまして、さらに二十億程度では糸価を維持するということは非常に困難であろうとも思われるのでございます。その点について、なお政府検討を要すると思いますが、そのことよりも、どうも政府はやはり歳入の中の項目変更にいたしましても、当然成規の手続を経まして、補正予算と申しますか、——補正予算というのは、必ずしも増額ばかりを意味しません。款項目移動等による修正案を当然国会に提出して、その承認を求め、そうして糸価の安定に対して十分なてこ入れをするという用意がなければならぬと思うのであります。特に日本蚕糸は主要な貿易品でありまして、単なる国内品ではないのであります。将来の貿易バランスの上にも大きな影響を与えるものでありますから、特に糸価の安定につきましては努力を払わなければならぬ。それを予算ほおぶりで済まそうというところに、私は財政法上から見ても無理があると思います。これに対してさらに政府の善処を要望いたします。私は議事進行でありますから、これ以上追及はしないでおきますが、これは政府みずからが大いに反省を要する点だと思います。これに対して大蔵大臣答弁を求めまして、私の質問を打ち切ります。
  9. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまの御意見は、私も一つの御意見として考えてもいいのでありますが、しかし今回はさような予算補正ということは、いずれから見ても必要としないという考えであります。なお今後については、各般の情勢に応じて考えていきたいと思います。
  10. 江崎真澄

    江崎委員長 質疑を続行いたします。中村高一君。
  11. 中村高一

    中村(高)委員 総理大臣解散の問題について、二、三御所見を承わっておきたいと思うのであります。大体議論をしておりますうちに、この問題は世論というか、あるいは輿論というものが、だんだん具体化してきたようでありますが、総理からは国会を通じてまだこの問題についてはっきりした答えは一回もないのであります。私はそういう見通しとか、あるいは総理のお考えを聞くと同時に、一つ憲法上の建前を総理大臣に聞く必要があると思いますのは、この解散権につきまして憲法上のいろいろの議論もありまして、この点については、憲法の六十九条による規定によらなければならないという議論や、あるいは憲法の第七条による解散もできるのだというようないろいろな議論がありまして、現にこの前吉田内閣抜き打ち解散のときには、当時の野党の苫米地議員から憲法違反だという訴訟まで起きて、この問題については抜き打ち解散というものが憲法上疑義がある、こういうことに現在なっております。もちろんわれわれも憲法規定されたような、不信任を問うとか、あるいは信任を問うとかというような問題が出れば、これはもちろん明らかであります。また第七条による解散にいたしましても、たとえば予算が不成立になるとか、あるいは条約承認をせられないとか、あるいは重要法案が否決されるとか、あるいは先般来問題になっております政権の移動があるとか、それぞれ解散が、これならばもっともであろうというような議論のあります場合は別でありますけれども予算が通って、あるいはこうした問題がなくなったという場合に、憲法上今日非常に議論のあるところでありまして、この点について、憲法上から総理大臣解散権に対して、どういうふうな御見解を持っておられるか、この点をお聞きいたしたいと思うのです。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 憲法解釈として、いわゆる六十九条による場合に解散ができることは当然でありますが、その場合だけに限るという一部の学説もあるようでありますが、しかし議院内閣制度の本質から見て、憲法七条の規定による解散政府においてできるということにつきましては、私は憲法解釈上の学者の通説だと思います。多数の学者がそういうふうに説いておりますし、また従来からの慣行もさようになっております。私は憲法解釈としてはそういう一般解釈と、それから慣行を尊重して参りたい、こう思っております。
  13. 中村高一

    中村(高)委員 解散の問題が議論をされますると同時に、最近与党の方では解散に備えて選挙法改正案を出そうというようなことが、新聞にも伝えられておるのでありますけれども、その与党側で放送をされております選挙法改正案を見ますと、たとえば選挙運動期間を二十日に短縮するとか、あるいはまた立会演説会を廃止するとか、あるいはトラックを廃止するとか、こういうような議論が行われておるのでありますけれども、これに対してはいずれも議論のある問題ばかりでありまして、今日選挙を前にしてそういう従来なれておった選挙法改正することがいいのかどうか、これは非常に問題だと思うのでありますが、もしそれが選挙を運営する上において非常にけっこうなものであるというならば別でありますけれども期間を五日ぐらい短かくすることによって、与党の方の意見を見ると、何か費用が少くなるんだというようなことを言うておりますけれども総理大臣も御承知通りに、選挙費用というものは、表に見える費用はごく限られたものでありまして、こういうようなものはそれほどわれわれは重大だとも思わない。そればかりでなく、かえって新人の運動を妨げるとか——また立会演説であるとか、あるいはトラックを使用するというようなことはいずれも公明な選挙方法で、かえってこういうような、与党の諸君が考えるような改正案というものはむしろ選挙を陰に追いやるような改悪だとわれわれは思っているのでありますが、もっと選挙は公明にして、そして堂々と表で戦えるような形に改正をするのならばいいけれども期間を短かくして、そして立会演説を廃止するとか、あるいはまたトラックを廃止するとかいうようなことをすることは、結局陰の運動をよけいにふやすというような形になることは明らかでありまして、こういう点については政府も十分にお考えになっておると存じますけれども選挙法改正についてはどういうふうな御所見でありますか、承わりたいと思います。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 選挙法改正はもちろん重大な問題でございますから、慎重に検討を要する問題であることは言うまでもありません。私の聞いているところによりますと、市町村合併等がありまして、当然今の選挙法は技術的に改正をしなければならない点があるように聞いております。今おあげになりました選挙技術の問題についても、あるいはトラック問題等がどういうふうになっているかということは、まだ聞いておりませんけれども、従来ありました議論の何を見ますと、参議院議員選挙の期日をたしか三十日を二十五日に短縮いたしたときに、衆議院の方は二十日にしろというような議論がありましたことは承知しております。また成立を見ませんでしたけれども、小選挙区制の何はそれを取り入れておったと思います。またトラックの問題については、大体トラックというものは御承知通り荷物を積むようにできているものでありまして、ここに乗っかってやるという風景は、実はちょっと世界各国においても珍しい風景でありますので、これに対してもいろいろ議論のあることは私承わっております。しかし立会演説をやめるとか、あるいは制限をするというような議論は、私は聞いておりませんけれども、そういうような点が、今申し上げますように技術的に当然改正をしなければならない点が市町村合併その他におきましてある。その際に従来からあります議論がいろいろ論議されているのではないかと思います。しかし党としてははっきりした結論が出ているわけではありませんし、従って政府として、それをはっきりどういうふうにするという方針を持っているわけではありませんが、従来からそういう論議があったということだけを申し上げておきます。
  15. 中村高一

    中村(高)委員 外務大臣に先にお伺いをして、あとは総理大臣にもお聞きしたいと思うのでありますが、今度の三十二年度の補正予算の中に、国際連合分担金国連警察軍スエズ派遣費負担金というのが出ておりますけれども、これに対して国連警察軍スエズに派遣された費用日本負担をするという請求、おそらくこれはスエズ動乱のときに派遣された部隊費用分担だと思うのでありますが、これは一体どんな部隊であったのか、いつからいつまで派遣されておった分であるのか、どこの国の軍隊が派遣されたのか、外務大臣から先に御説明を願いたい。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように一昨年スエズ動乱がありまして、そのために国連軍が派遣されたわけであります。従って国連に加盟しております以上は、国連軍スエズ派遣分担金を持つことになっております。スエズに派遣されました軍隊国名と時期等につきましては、事務当局から御説明いたさせます。     〔私語する者あり〕
  17. 江崎真澄

    江崎委員長 私語が多いようですから御静粛に願います。
  18. 中村高一

    中村(高)委員 派遣されたものの内容を聞いておる。
  19. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連軍の総数、派遣国名別及び何月から何月までということにつきましては、後刻文書をもって御説明申し上げます。
  20. 中村高一

    中村(高)委員 現在審議しておるのですから後刻ということは——もしこまかいことがおわかりにならぬということでしたら、よく相談をして御答弁願います。     〔「休憩々々」と呼び、その他発言する者あり〕
  21. 江崎真澄

    江崎委員長 中村君に申し上げます。ただいま国際協力局長が詳細な資料を持って来るそうでございますから、しばらく御留保願います。
  22. 中村高一

    中村(高)委員 それではこまかいことは協力局長が来てから説明を受けるとして、現在国連警察軍というものが一体あるのかないのか、外務大臣お尋ねいたします。
  23. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連は御承知のように何か事変が起りますと、総会決議によって国連警察軍を出すことになっておるのであります。常時国連警察軍というものはございません。
  24. 中村高一

    中村(高)委員 今のあなたの御説明によると、必要に応じて国連警察軍というものを出すというのでありますけれども、現在この予算に請求されておる国連警察軍というものが国連にありますか。方々の国連に加盟している国の兵隊を時には出すことはあるけれども、それが国連警察軍ですか。
  25. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、国連警察軍という常備のものはないわけでありますが、事変が起りまして国連総会決議によって各国からそういうものを集めまして出すことになっております。スエズのときに国連警察軍という名前を使いました。
  26. 中村高一

    中村(高)委員 これは国連警察軍という名前は使っていないはずであります。国連で使っておりましたその派遣軍名称を英語ででもお調べになって……。警察軍と言うておるものはないはずです。現に国連事務総長のハマショルド氏が現在ヨーロッパに行っておりますが、国連警察軍をぜひ自分は作りたい、現在国連警察軍がないため国連でも非常に困っているんだ、それで将来は各国の了解を得て、自分各国に説いて国連警察軍というものを作りたいということを言っている。現在事務総長ヨーロッパに出かけてそういうことを一生懸命説いておる。まだできてもいないのに、日本の国だけが国連警察軍というものを先に作ってしまっている。あなたの頭で国連警察軍なんというものができるものでもないし、現在は、事務総長でさえも早く作りたいと言うておるのであります。あの派遣したときには決して国連警察軍なんと言っていないはずであります。国連に加盟しておる国々の軍隊を、臨時に緊急の必要に応じて派遣すると言うておるけれども、ここに明確に記載されておるような国連警察軍なんというものは、まだ世界中どこにもありませんよ。国連にもないはずです。この点をもう一度お答え願いたい。
  27. 高橋通敏

    高橋政府委員 私から補足してお答えさせていただきたいと思います。御指摘の通りこれは一つ名称の問題でございまして、国連軍といいましたり、国連警察軍というふうな正式の意味における国連軍隊は、まだ成立しておりません。これは御承知のように、国連憲章の四十三条の特別協定ができまして、その特別協定に基いて置かれた場合にこれが本来の意味における国連軍あるいは国連警察軍、こういうふうになるかと思っております。しかし実態的にはこの協定の四十三条で正式に置かれる軍隊もございますが、これは正式の軍隊でございます。ところが今度のスエズの場合はユナイテッド・ネーションズ・エマーシェンシー・フォースといっておりまして、これをわれわれは一般国連警察軍あるいはそういうような意味合いで呼んでおる次第でございます。
  28. 中村高一

    中村(高)委員 それはあなたが勝手に翻訳している。警察軍ならポリス・フォースとか何とかいうて、これはもうはっきりした言葉じゃないですか。それを外務省はどういう意味国連警察軍というておるのか。これは非常に問題になって、現在これから警察軍を作ろうということで、事務総長各国に一生懸命呼びかけておるのに、日本だけが先にもう便宜上国連警察軍なんというものを作って予算書に載せて、そして請求をするということは、世界の諸国に対してもまた国連に対しても問題だと思うのです。まだまだ国連警察軍じゃないじゃないですか。今の説明によっても、これからそういう規定に基いて国連警察軍を作ろうという規定のあることは明らかであります。現に、スエズに出ておるのは、イギリスとフランスの軍隊を、何とかしてあの土地から帰そうということで国連で非常に協議をした結果、仕方がない、何とかして国連の名による派遣をしなければ、イギリスとフランスの軍隊を帰すことができないということから、小国だけを十六ヵ国か集めて軍隊を出しておる。国連の中心になっておるアメリカ自身が軍隊を出してないじゃないですか。こういう特殊な一時的な派遣を国連警察軍というて、堂々と日本予算に載せて請求する。これは私は行き過ぎだと思うが、何かこれは間違いなら間違いであるとはっきりしないというと、国連の問題になると思う。現に事務総長がこれだけ苦労して一生懸命やっておるのに、日本だけが先に国連警察軍ができたようなことを言って予算をとるということは、国連に対しても私は問題だと思う。何か書き方を違えるとか、国連派遣軍とか、国連部隊とかというならいいけれども、現在固有名詞として使われて、しかもまだこれができていないので国連総会で苦労してやっておるものを、先にもうできたことにして日本が使うということは問題だと思う。
  29. 高橋通敏

    高橋政府委員 先ほどの御説明が不十分だったかと思いますから、補足させていただきますが、なるほどわれわれは国連警察軍ということをよく言っております。しかし、国連警察軍という観念が国際連合憲章上の一つの固定した観念として成立したということはまだ言えないと思うのであります。まだ、実体的に機能的にわれわれは俗称として言っているのでございますので、国連憲章上はあくまでも国際連合軍とか、こういうふうな呼び名をしておりまして、国連憲章国際連合の制度上——国際警察軍、ポリス・フォースと俗称は言っておりますが、それが一つの既成観念として、条約上の概念として成熟したものであるということは、ちょっと言えないのじゃないかと思っております。
  30. 中村高一

    中村(高)委員 そうすると、国連警察軍というものが現在ないということだけは、外務大臣もお認めになるだろうと思う。国連軍隊とか部隊とか、いろいろなことは言えるかもしれませんけれども、こういう国連警察軍という固有名詞に該当すべきものは、現在ないということは明らかで、今局長の答弁によってもそういうものはない。通称だとするならば国連警察軍と言わないで、これは別の名前で使わなければ、予算書としては私は無理だろうと思う。
  31. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私が先ほどから答弁しておりますように、国連警察軍というものが現実に憲章上の問題としてないということは、先ほど申し上げた通りであります。ただ、スエズに派遣しますこういう部隊について通称国連軍と言っておるわけでありまして、それを用いておるわけであります。
  32. 中村高一

    中村(高)委員 そうすると、外務大臣答弁によると、今は通称国連軍。それならいいんですよ。外務大臣が言われるように国連軍であれば、私はいいと言う。予算書を見てごらんなさい。国連軍なんて書いてないじゃないですか。国連警察軍とちゃんと明確に書いてあって、これは国連の固有名詞であって今一生懸命作ろうとして努力しておるのであるということはさっき申し上げたのであるから、外務大臣も、国連軍だ……。  それじゃ、もう一つ、朝鮮に国連軍というのが派遣されておりますね。南鮮に現在国連軍というのがある。あれとこれと、性格の上において一体条約上どこに違いがありますか。朝鮮の派遣軍に対しては、国連警察軍なんていうことは一ぺんも言っていませんよ。どの外交文書を見ても、どこの文章を見ても、朝鮮に国連警察軍が派遣されたなんて書いてない。しかし、これは国連から派遣された形になっておる。一体、今度のスエズのと朝鮮のと、性格上、条約上、あるいは国連規定の上においてどういう違いがありますか。
  33. 高橋通敏

    高橋政府委員 お答え申し上げます。朝鮮に派遣された軍隊と、スエズに派遣されている部隊とは、私は性質上違いがあると思っております。朝鮮の場合は、これは戦闘に従事するため国連から派遣された軍隊であります。ところが、スエズの場合は、戦闘に従事するために派遣されたという目的を持っておるのでなくて、あそこの、何といいますか、停戦だとか治安の維持だとか、そういうふうな、いわば、実体的に言いますと、警察的な機能を持つものである、こういうふうに考えております。
  34. 中村高一

    中村(高)委員 どうもそれはあまり準備をしておられる答弁ではないようであります。スエズに派遣されたものは戦闘をしない、——派遣して、もし問題が起ったときに戦闘をしないということが言えますか。軍隊が出ていて、暴動が起った場合の鎮圧とか、あるいはあの当時ソ連からも、場合によったならば、もしイギリスとフランスの軍隊が引かなければソ連が出るかもしれないということさえ言われておる。その場合にも戦闘しないんだという、そんな一体部隊があるかどうか。いやしくも国連から派遣された軍隊を、戦闘しないんですというようなことを、局長はどうしてそんなことを——言い過ぎではありませんか。国連軍隊に対して、朝鮮のは戦闘するのだけれどもスエズのは戦闘しない軍隊なんだということは、あなた、何を根拠にしてそんな——せっかく国連が派遣された軍隊を、あなたが勝手に解釈しちゃいけませんよ。もし自分で苦しまぎれにそういうふうに答えられたならば、それはその通りに言うた方がいいのであって、それじゃ、スエズに派遣される軍隊の内容、どことどこの軍隊が出ておって、どんなことをしたか、お答え願いたい。
  35. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国協局長が参りましてから御答弁申し上げます。
  36. 江崎真澄

    江崎委員長 ただいま局長は参議院の委員会に出ておりますから、そういうわけで、今呼んでおりますから、御了承願いたいのであります。     〔「予算審議じゃないか、局長じゃない、大臣だ」「休憩、休憩」と呼び、その他発言する者多し〕
  37. 江崎真澄

    江崎委員長 今のは事務的な説明に属しますから、局長を呼んで答弁させる、こういう意味です。     〔「休憩、休憩」と呼び、その他発言する者多し〕
  38. 江崎真澄

    江崎委員長 御静粛に願います。藤山外務大臣、どうぞ補足答弁を願います。
  39. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申しましたように、常時に国連警察軍というものは現在まだ組織されておりません。しかし、事変が起りましたときに国連総会決議によって出すことがあるわけであります。スエズの場合も同様であったわけであります。従って、これを国連警察軍と一応われわれは呼んでおるわけであります。
  40. 江崎真澄

    江崎委員長 政府委員から補足説明させます。国際協力局長宮崎君。
  41. 宮崎章

    ○宮崎政府委員 これは国連緊急軍というのがほんとうの名前であります。この緊急軍を出しておる国は、ブラジル、カナダ、コロンビア、デンマーク、フィンランド、インド、インドネシア、ノルウエー、スエーデン、ユーゴスラビア、それだけの国でありまして、その人員は、ブラジルが、将校が四十四名、兵員が五百一名、カナダが、将校百十三名、兵員が千五十九名、コロンビアが、将校三十一名、兵員四百九十一名、デンマークが、将校二十五名、兵員三百九十九名、フィンランドが、将校十五名、兵員二百四十名、インドが、将校二十七名、兵員九百三十名、インドネシアが、将校三十七名、兵員五百四十五名、ノルウエー、将校が七十一名、兵員四百二十七名、スエーデン、将校二十七名、兵員三百二十二名、ユーゴスラビア、将校五十五名、兵員六百十八名であります。合計いたしますと、将校、兵員入れまして全部で五千九百九十七名になります。(「名前は何というのだ、もう一度」と呼ぶ者あり)英語で申しますと、ユナイテッド・ネーションズ・エマージェンシー・フォースと申します。
  42. 中村高一

    中村(高)委員 エマージェンシー・フォースというなら緊急な軍隊。あなたは今エマージェンシー・フォースと言うたのだが、あなたはどうしてそれを国連警察軍と訳せるか。
  43. 宮崎章

    ○宮崎政府委員 国連の緊急軍の事務は、これは戦争でありませんで、その地域の警察をするということが主目的でありますので、そういう名称を使っておるわけであります。
  44. 中村高一

    中村(高)委員 そういうはっきりした名称国連で使っておるのに、なぜ通称を使わなければならないのか。こういう予算に出す書類に通称の方を使って、ほんとうのエマージェンシー・フォースという本格的な名前があるのに、あなたはなぜ一体通称の方を予算書に出すか。しかもこれは固有名詞であって、そうして、国連警察軍というものは、先ほどあなたがおられないときに私は言うたのだが、ハマーショルドが、国連警察軍を作りたいというて、非常に熱心にあらゆる機会にこの議論をして、いまだにできないということを残念がって、今ヨーロッパを旅行しておる。それを、通称こう言うんだといって通称の名前などを予算書に出すということは、一体適当であるかどうか、あなた、もう一ぺん答えていただきたい。
  45. 宮崎章

    ○宮崎政府委員 その軍の内容をよくわからすということを主目的にいたしまして、そうして書いたわけであります。
  46. 中村高一

    中村(高)委員 だめです、そんなことは。国連で使っている名称を出さないで——それならば、国連で使っておる名称を出して、その説明の中に、通称こうである、こうも呼ばれる、あるいは目的はこうであるということならばわかるけれども名称を勝手に変更して、国連警察軍なんていうものを、ないものを出すということは、予算の請求としては不都合じゃないか。訂正する意思があるかどうか。これは、外務大臣あるいは総理大臣からも、訂正してこれをお出しになるというならば、これは議論は別であります。
  47. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日まで明確な名称がないわけでありまして、一応国連警察軍と言う方がわかりやすいと私どもは存じております。
  48. 中村高一

    中村(高)委員 今協力局長が答えたように、実際に名前があるじゃないですか。実際にエマージェンシー・フォースというて国連で使っておる言葉を使ったらいいじゃないですか。国連の正式の文書に出ている言葉をなぜ使わないで、そんな通俗的な言葉を使うのかということを私は責めているのであって、国連の使っておる、派遣した部隊名称というものがはっきりあるんじゃないですか。今あなたが自分で緊急の部隊というて名称を述べておるのに、こういうまぎらわしい名称を使う必要はないと思う。この点についてはどうです。直す意思があるかどうか。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 一番内容に適すると思ってわれわれは採用いたしておるわけであります。
  50. 中村高一

    中村(高)委員 国連警察軍なんというものがないものを予算に載せるというようなことは、われわれは承服することはできない。どうしてもこれは訂正をしなければならぬと思います。質問はまだあるので聞きますが、今、国連部隊を派遣する場合には、国際連合憲章の四十三条による特別協定があった場合にはこれに兵力を出すことができるということになっておるが、日本特別協定には入っていないということを言われたようでありましたが、この点をもう少し明確にしてもらいたい。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本としては特別協定に入っておりません。
  52. 中村高一

    中村(高)委員 特別協定に入っている国は兵力を派遣することができるとあるけれども特別協定に入ってないとすると、兵力を派遣する義務もないし、兵力を派遣する義務のないものが金を出す義務がどこから生じてくるのですか。
  53. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 言葉が足りなかったわけであります。特別協定自身ができておりませんし、従って、入っておりません。
  54. 中村高一

    中村(高)委員 特別協定がない場合、おそらくこれは国連決議か何かで派遣したのだろうと思うのですが、どうですか。
  55. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連総会決議によって派遣しております。
  56. 中村高一

    中村(高)委員 一体この特別協定もないし、そうするというと、日本の派遣の費用負担するという根拠は、どういうところから出ておるか、御説明願いたい。
  57. 宮崎章

    ○宮崎政府委員 国連総会決議でこのことがきまっておるのでありまして、第十二総会決議が四つございます。それから緊急軍につきまして特別の決議が三つできております。総会決議によりまして、加盟国全部がこれに対して協力することを決議しておりまして、そしてその中でまた自分は幾ら出すということを約束しておる国もあるわけであります。
  58. 中村高一

    中村(高)委員 この負担金によりますというと、二億六千万円かに今度追加になっておるのでありますけれども国連負担金は一億八百万円ばかりになっておりますが、これは一体どういう割合でこういう数字が出てきたのか、伺いたい。
  59. 宮崎章

    ○宮崎政府委員 国連分担金は、各国の国民所得等を標準にいたしまして、そして割当をきめておるのでありますが、最近、加盟国がふえましたために、これを変更する必要が起りまして、そして日本の加盟の分担率が一・九七%から一・九二%まで下ってきておるのが現状でございます。
  60. 中村高一

    中村(高)委員 この国連決議に従って日本がこういう軍隊負担金を出すということが、日本憲法の上から言って一体できることかどうか、日本は御承知通りに、戦力も持てないし、交戦権もないのでありますが、この制約を受けている日本が、国連に加盟したというけれども、直ちに外国の交戦権に該当すべき、このスエズ派遣軍に金を出すということが、日本憲法等の上においては非常に問題になると思うのであります。この点については、交戦権あるいは戦力というようなものが持てない日本が戦争に参加するというような、こういう形を総理大臣は一体どういうふうにお考えになっておりますか。
  61. 岸信介

    岸国務大臣 私は、日本がいかなる目的をもっても外国に軍隊を出す、自衛隊を出すということは、憲法上また自衛隊法の建前から言って、これは認められないと思います。しかし、国連に加盟して、そして国連憲章を尊重して世界の平和に貢献するという立場から申しますと、そういう軍隊を出すことはできませんけれども、私は、経済的援助やあるいは国際的の義務の分担としてその費用の一部を分担するということは、決して憲法その他に違反するものではない、かように思っております。
  62. 林修三

    ○林(修)政府委員 今総理からのお答えで大体尽きておると思いますが、これは御承知通りに、国際連合日本が加盟いたします際にも、いろいろ国会でも問題がございまして、結局国際連合に加盟した場合に、いわゆる制裁行動というものに、日本国連安保理事会であるいは総会でそういうことをきめた場合に参加できるかどうかという問題と関連しての議論がございました。そういう場合に、日本として武力が出せない場合は、もちろん経済的な援助の道はある、そうすれば国連上の義務を履行することもできるのだ、そういうように政府考えておった。こういう点は国会でも御了承願っておったものと実は思っております。憲法九条に直接関連する問題ではないと思っております。それで、国際警察行動それ自身の問題はまた別問題でありまして、これは憲法九条あるいは関連条文の解釈上問題があると思います。この経済的な協力という問題は、いずれにしても憲法九条の問題とは関係ない、かように考えております。
  63. 中村高一

    中村(高)委員 日本憲法からいきますならば、こういう非常にまぎらわしい、憲法に違反するような金のこ支出でありますけれども、もしこのスエズの問題で日本費用負担するということになれば、今後もずっとこういう事態に対しては、日本負担をしなければならぬという問題が出てくると思うのであります。これは将来、今問題になっております国連警察軍というようなものが実際に生まれて、そして国連から警察軍が派遣される、こういうような場合の負担というようなものは私はあり得ると思う。こういうような場合においては今の軍隊とは性格が違う。各国軍隊を寄せ集めて、ただ便宜上国連名前によって派遣をするという形の軍隊と、各国のワクを全部はずした国連警察軍というものとの性格は、われわれは非常に違うと思う。そういう場合に日本が金を負担するということは、これは性格がはっきりいたしておりますから問題ないけれども、現在のように、各国軍隊をそのままの状態にしておいて、そして国連の名を使っておるものに日本が参加をすることは、明らかにこれは交戦権に違反するものであり、戦力を持てない日本憲法規定からいきますならば、少くとも現状においては憲法に違反する、かように思っておりますが、国連警察軍というものと現在の軍というものとの間に何らの違いがないという、さような解釈でありましょうか。
  64. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、一般に国際警察軍と呼ばれておりますものについても、実は内容もいろいろ違いがあると思います。御承知のように、今御指摘のあったように、国際連合自身が持つ場合もございましょうし、国際連合の安保理事会なりあるいは総会決議に基いて、各国がそれぞれの国の軍隊の性格を維持しつつ連合的に作るという場合もございましょうし、また、その目的から申しましても、ある一国に対して国際連合として制裁行動をやるという場合の警察軍もございましょうし、あるいはスエズのように、ある程度の地域の警察権を維持する警察的な目的のために出す場合もございます。あるいは、問題になっておりますカシミールの選挙というようなことで、国際警察軍を全く治安維持のために派遣する、あるいは休戦監視のために派遣する、いろいろな目的があり得ると思います。従いまして、その国際警察軍それ自体の性格と日本憲法との違いは一がいに言えない問題があると思います。しかし、いずれにいたしましても、今度のエジプトの関係から考えますならば、これはまさに国際警察活動でもありますし、いわゆる治安維持の目的を持ってやっておることでございますし、また、そういうものに対して国際連合決議があり、それが各国に勧告された場合に、国際連合の加盟国としてそれに応分の負担をするということは、私は、憲法九条にすぐ入ってくる問題じゃない、かように考えております。
  65. 中村高一

    中村(高)委員 その議論は私も承服するわけではありませんけれども、ここで憲法論だけをやっておっても結末がつきませんが、この問題についてだけ一つ総理大臣——国連でぜひ将来は国連警察軍を作らなければならないということが真剣に討議されておるときでありまして、各国が今日のよううな軍隊を作って競争をしておるといようなことは、新しい科学兵器の非常なおそるべき時代になってきて、さらにまたこうした軍隊各国が持つということに対して、多くの真剣な批判が行われておるときでありまして、われわれも、国連日本も加盟をいたしました以上は、将来世界各国部隊国連のもとに統一された国連警察軍というものを作るべき熱意を日本も持たなければならぬことだと思っておりますが、この際総理大臣国連警察軍の将来についての所見を承わりたいと存じます。
  66. 岸信介

    岸国務大臣 私は、世界各国の強固な集まりとして国連が今後発展していくという上におきましては、やはり国連自体がこの世界の平和を維持し、加盟国におけるところの治安を維持する意味において、ある実力を持つということは望ましいことであると思います。しかし、現在の状況から、これが直ちにできるかどうか。また、そういうものができても、やはり各国が別々に軍隊はその国の中に持っておるというような事態であっては、ほんとうの目的は達せられないと思うのであります。今中村君のお話のように、各国が全部軍隊というものを国連の管理のもとに置いて、一国のなにというものは持たせないというようなこと、あるいは、過般ここでも議論がありましたように、いわゆる世界国家というような考えにまでいくようなことは私は、世界の理想、また平和の上から言って、望ましい一つのわれわれの理想だとは思いますが、現実は遺憾ながらまだそれに非常に遠い、こういうように考えております。
  67. 中村高一

    中村(高)委員 今の問題につきましては、われわれは、確かにこういう国連警察軍というようなものが現在ないものを、こういう予算の提出についての取扱いについてどうすべきかを相談をいたしたいと思っておるのでありますが、暫時その取扱いについて相談をいたしたいから、一つ休憩をしてもらいたい。
  68. 江崎真澄

    江崎委員長 いや、これは御質問を続行していただいて、取扱いの問題はそちらの方のお内輪の話でございますね。(「動議の扱いだからだめだよ、動議の扱いをきめなさい」と呼ぶ者あり)ちょっとこのままの姿で理事で懇談願います。ちょっと理事の方、懇談していただけませんか。——それじゃ始めて下さい。
  69. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、国連警察軍というものは常備されておらないことは申すまでもないことでございます。今回のスエズの紛争の場合に国連総会決議によりまして派遣したものの内容から申しまして、私どもはこれを国連警察軍と呼んだわけであります。その方が明瞭になるかと思ったからであります。
  70. 中村高一

    中村(高)委員 委員ただいま外務大臣から答弁がありまして、国連警察軍というものはないことが明確になりましたから、後刻取扱いについてはまた協議をいたすことにして、質問を進行いたします。  防衛問題に関しまして、総理大臣防衛庁長官にお尋ねをいたしたいのは、いわゆるミサイル時代を迎えまして、最近の各国の情勢を見ますると、刻々としてミサイルあるいは核兵器を各国とも取り入れるというような形になりつつあるのでありますが、日本がこのミサイル時代を迎えて一体どう対処していこうとせられるのか、この点を明確にしてもらいたいと思うのであります。昨日も、西ドイツでは、国会で非常な議論の結果、核兵器を受け入れることになったという報道であります。しかも、これに対して、野党である社会民主党の方は、国民投票によるべきだ、かくのごとき重要なことを国会の多数決によって一挙にきめるというようなことは、国の運命に関することだということが、非常に議論されたようでありまして、国民投票の結果を待つのが当然だという提案さえなされておるようであります。イギリスとアメリカとの間においても、御承知のように、ミサイル協定が成立をいたしております。また、アメリカ大統領の教書によりましても、アメリカの友好諸国と協力をして今後は弾力性ある武力機構を作りたい、こういうアメリカ大統領の教書の趣旨によりましても、少くとも、友好国といわれるのは、おそらくMSAの協定などをやっておる国などはこれに該当するものだと思いますから、極東においても、朝鮮あるいは日本、台湾、フィリピンというような国をアメリカの大統領の教書はさしておると見られるのでありますが、そうした友好諸国と協力してミサイル時代を迎えようといたしておることも明らかであります。しかも、三月十一日のアメリカの下院の外交委員会では、通常兵器に割り当てられました軍事援助資金の一部がIRBMに切りかえられたということが報道をせられておるのであります。こういう非常に差し迫ったミサイル時代に当って、おそらくはアメリカから日本に対しても何らかの話し合いがないはずはございません。外務省から出しましたこの文書によりましても、第四次の安保委員会日本がサイドワインダーの供与を申し入れて、これに対してアメリカの了解を得たことが決定をせられたということが書かれております。しかも、その後、新島にミサイルの自衛隊の基地を置こうという具体的な問題が出ておりますし、何か埼玉県の熊谷にもそういう基地を作ろうとするんだといううわさも出ております。そうするというと、だんだん日本もこのミサイル兵器を迎えるというような形に追い込まれつつあるような感じがするのでありますけれども、これについてアメリカ側から日本に対してどんな申し入れをせられておるのか、まずこの点をお尋ねいたしておきたいと思います。
  71. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。  ただいまの御質問の要点は、今日のようなミサイル時代において日本の防衛をどうするか、特にその点について米側から何らかの申し入れがあったか、また第四回日米安保委員会における決定ないし新島試射場の問題等についての御質問でありまして、これを各項目について簡単にお答えをいたします。  ミサイル時代において、わが国の防衛上、装備の改善をして、近代科学を研究開発をして、その増強をはかるということは当然のことでございます。その意味におきまして、私どもは、通常兵器によるこの装備を、でき得る限りこういったような研究開発の経過によって逐次質的の改善をはかりたい、こういう考えでやっております。この点につきましてはすでに当委員会においてもお答えしたのでありますが、さしあたり、各自衛隊の装備の改善、同時に基本的並びに当面必要とする技術の改善につきましては、防衛庁の技術研究所においてあらゆる部面から研究を進め、また試作をやっておるわけであります。この点につきましては、三十三年度においては大体技術研究所の予算十九億一千百万円の計上をいたしたわけであります。なお、陸海空自衛隊からのこれらの研究のために、大体十数億円の金がこの方面に利用される、こういうことに相なっておる次第でございます。御指摘の、米国側からミサイル関係、防衛関係においての日本側に対する申し入れ、話がないかということでございます。これは、今までのところ、われわれは全然聞いておりません。そういった話し合いはいたしたことはございません。なお、御承知のように、わが国の方針が核装備はしないのだ、これは一貫しております。これは十分了承しておるわけでございまして、自然、こういった面について、NATO諸国その他の諸国との同様な関係においてこの問題を取り扱うということはなされてないと私は了解しているわけでございます。  なお、日米安保委員会第四回において、サイドワインダーの受け入れについての協議がございました。これは、この委員会は協議機関でございまして、正式の受け入れをするということにつきましては、日本政府と先方政府との間に、受けるとすれば具体的の折衝を行う、そういうことになる段階でございます。これは、もうたびたび申し上げましたが、核弾頭等の装備が不可能なところの空対空の誘導弾でございます。核装備の問題とは全然関係ない。ただ、F86等の飛行機の装備を強化していくという、効率を上げるための一種の武装機関銃の優良なる性能を持ったものと御承知を願いたいのであります。来年度の予算におきましては、これを約十発ばかり実射するというために約五千万円ばかりの予算を計上し、予算の通過を待ちまして先方と具体的にこの実行の話し合いを進めていく、こういうことになっておるわけでございまして、日米安保委員会の協議というものが出発点でございますが、政治的には、正式のルートによる双方の協議による一種の実行の話し合い、並びにその結果を得たい、こう思っておる次第でございます。  新島の問題は、基地という言葉で御表現になりましたが、われわれはこれを試射場ということになっております。これは、諸外国で言われておるミサイル基地とか、その言葉に一種の意味があるわけでございますが、そういったものでは全然ないわけでございまして、これは、技術研究所におきまして研究の結果得たところの試作品の空対空または地対空、それらの誘導弾またはロケットの試射をするわけでございます。現在の計画においては、大体三十四年秋から始めまして、月に一発か二発、約五分間でこの試射は終了するような程度のものでございまして、これを混淆してミサイル基地だというようなことは、非常な誤解を招く言葉であろうということを憂慮しているわけでございます。このミサイルの関係におきましては、現状においてはこういった状況でございます。  なお、熊谷ということがございましたが、これも全然問題がない点でございまして、こういったミサイルをここで試射するとかいうようなことも、目下のところ想定しておらぬわけでございます。  以上のようなわけでございまして、今日の防衛のために、要すれば質的の改善をはかり、武装の刷新をはかるということは内外の情勢上非常に必要なことでございまして、国防会議におきましてもこういった方針が立てられ、それに即応していろいろと工夫しておる、こういったことでございます。
  72. 中村高一

    中村(高)委員 今の兵器を非常に何か長官は簡単なもののように極力答弁をいたして、ロケットであるとかいって簡単なもののように持っていこうと努力をしておられるようでありますが、このサイドワインダーなどの現在使われておりますのを調べてみると、相当にこれは強力なものであって、今長官が言われるように、非常に簡単なもので核兵器には関係ないようなことを言っておりますけれども、現在西太平洋の第七艦隊や地中海の第六艦隊で使っておりますサイドワインダーなどは、非常に威力を持ったものであります。こういう点について極力おそるべき兵器でないということを言おうとしておるようでありますが、アメリカの方針などは、私は長官が今御答弁になっておるのとはちょっと違うと理解されるのでありまして、もっと強力なものを日本に装備しようということは、明らかにいろいろの観点から見えるのであります。そうすると、長官は、この程度以上の強力なものはもう持ち込まないということを断言できるのか。たとえば、今のサイドワインダーならば空対空でありましょうが、今度は地上から空に向ける誘導弾、あるいは軍艦から空に向ける誘導弾というようなものもあるのでありますが、一体、長官としては、アメリカからどういう要請があっても、この程度以上のものは持たないのだということを断言できるのか、あるいは今後の推移によってはもっと強力なものを持つ用意があるのか。自衛隊の方針からいきますならば、近代兵器を持とうとしておるのでありますからして、おそらくはそんな遠慮したものではないと思うのでありますが、今の長官の答えからいきますと、どうもその辺があいまいであります。今後サイドワインダー以上の強力なものは核兵器に接近してくるので持たぬというのかどうか、この点をはっきり答弁してもらいたい。
  73. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。サイドワインダーは優秀な性能を持っておるということは御説の通りでございます。これは、航空機の今日の防衛の能力から見まして、わが国を自衛防御をする上において、私は、非常に有効なものとして、わが国の自衛隊設置の目的、使命に反しない、しかして、核装備をしないという基本方針と相待って、これを装備することが適切であろう、こう考えた次第でございます。  今後の問題につきましては、今日ここで申し上げますことは差し控えたいと思います。しかしながら、内外の情勢、またそういったようなわが基本方針に沿い、防衛の目的のためにこれが限られるというような用途のものであって、また財政上の見地からいってもこれは受け入れることが可能であり妥当であるといったような場合は、その個々の場合において慎重に考慮すべきものであります。ただ外国からこういうものを強要されて、これをわれわれは持たなければならぬという事態は、私は、それは避けるべきであり、またわれわれの自主性というものを必ずや保持すべきであるという方針でございまして、サイドワインダー以外のものは絶対ない、こういうことを今日ここで申し上げることは、私は、適当でない、こう存ずる次第でございます。
  74. 中村高一

    中村(高)委員 そうしますと、今後はどんな事態が起るかわからぬというようなことも、今の答弁から想像できるのでありますが、そうすると、私は総理大臣にこの点をもう少しはっきりさせていただきたいと思うのは、一体、日本で戦力を禁止されておるというこの事態からいたしますと、従来の戦力問答からいくと、近代戦を完全に遂行できるようなものは、そういう戦力は禁止されておるので、近代戦を遂行することができるかできないかというところのせとぎわまではいいのだということが、従来憲法上の戦力論でありましたことは御記憶の通りでありますが、そうすると、このぐらい近代的な最優秀の武器を持つということになれば、憲法の戦力は持てないなどというようなところは、全く超越した程度まで来てしまっておるのでありますが、それならば、これは誘導弾でありますから、いつでも核兵器を装備し得る状態にある兵器だと私は解釈して間違いないと思っておりますが、そうすると、そういうような兵器で、この日本にもミサイル時代を迎えてきて、一体戦力問答というようなものが、従来のものを全く越えた形になってきておりますけれども、それでも憲法に禁ぜられた戦力の許される範囲内だと言われるのか、それとも、自衛のためであるならば何を持ってもいいという、そういうお考えでありましょうか。どうも重要な段階に入ってきましたので、総理大臣の御意見をお聞きしておきたいと思う。
  75. 岸信介

    岸国務大臣 憲法で自衛権が認められておるということは、これは何人も疑わないところでありまして、従って、その自衛権ということは、これを裏づける実力を伴わなければ自衛権とは言えないわけであります。その自衛権を裏づける実力として最小限度のものは、これはいわゆる憲法の戦力として禁止しておるものじゃない。そうして、その最小限度の実力というものは、これは、いろいろな科学の発達や時勢の変化等によって、固定しているものではないことも当然でありまして、私どもは、できるだけ自衛の目的を達するために必要最小限度の実力というものを、近代科学の発達等から十分に研究開発して、有効なものを考えていくということは当然であろうと思う。ただ、私は、しばしば申し上げておるように、核兵器で日本の自衛隊を武装することはしないということをはっきり申しております。この点については、日本が世界に向って核兵器の製造禁止や使用禁止を目途としてのいろいろな場合において努力してきておるこの精神から申しましても、将来も核兵器で武装することはしないという、この一線を置いて考えて参りたい、こう思います。
  76. 中村高一

    中村(高)委員 自衛のためであるならば、どういうような兵器を持っても、核兵器でなければいいのだというような答弁でありますけれども、われわれのおそれておりますことは、それがだんだんに核兵器を持つような既成事実に突っ込みつつあるような危険を感ずるから、私たちは申し上げておるのでありまして、イギリスとの間のミサイル協定などをわれわれは現実に見て、しかも外務省から発行しておりますこの文書などにも、南鮮で着々ミサイルの基地が進行しておるということも載っております。こういう事態を見ると、将来どんな事態が起るかわからぬというような、非常な危険な事態に日本が来つつあるような気がするのであります。この点についてはわれわれは所見が違いまして、あるいはこの点についての一致を見ないかもしれませんが、私たちは、こういう行き方、だんだん既成事実を作っていって、追い込まれていって、しまいにはどういう事態が起きるかわからぬということが予想されますので、非常にこの点はがんばらなければならぬ事態だと思っておりますが、この点については十分に一つ考え直してもらわなければならぬと思っております。  それから、さっき私は安保委員会のことを触れておきましたが、確かに、この安保委員会ができたときには、岸総理大臣がアメリカに行って、そうして不平等条約についての改訂あるいは調整というようなことを目的としてできたはずの安保委員会でありますが、この委員会は四回だけで、その後わかりませんけれども、その委員会の内容を見ますと、不平等条約の改訂の問題なんかは一回も議論をされないで、ほとんど全部が米軍の配備と使用について協議をされ、しかも、何か日本がいずれも頼んだような形ばかり記載されておりまして、どこにも安保委員会というものを作った——総理大臣がアメリカから帰国された当時は、不平等条約の改訂は直ちに目的を達することができなかった、しかし安保委員会というものを作って、それで不平等条約の足らざるところはこれで補っていくのだというような説明をされましたが、今日になってみると、これはあなたがだまされたのか、それともあの当時の声明が欺瞞なのか、一つもそういうことについて議論されないで、毎回、米軍の引き揚げとか米軍の配備とか、米軍の使用とかいうことだけが議論されておって、どこにも不平等条約についてこういう点が悪いから改めてもらいたいというような議論が一回もされていない。防衛庁長官も委員のはずでありますけれども、あともう一人の委員外務大臣ですか、ちっともそんな発言されてないじゃないですか。一体これは何の委員会ですか。アメリカの軍隊のことを協議する安保委員会ですか。それならば委員会を作ったときの総理大臣の声明はまるで偽わりだというようなことが——現に外務省の報告書から、一回もそういうことをやってないのはどういうわけです。総理大臣の前の声明と違うじゃないですか、安保委員会の行動というものが。
  77. 岸信介

    岸国務大臣 安保委員会の目的につきましては、安保委員会の設置のなににはっきり書いてあります。今までのところは、あるいは国連憲章との調整の問題であるとか、あるいはその後米軍の引き揚げ等の問題が緊急問題として話をされたことも事実でありまして、私は、この安保委員会が、その設置の目的の一つであるところの、両国の国民の感情や利益に合致するように安保条約を運営していくというこの目的に対して、いろいろな問題を今後取り上げてくることは当然でありまして、今日までのところをもって、直ちに安保委員会の性格がどうと云々することは適当でないと思います。
  78. 中村高一

    中村(高)委員 これからそういう議論が出るということでありますけれども、あなたがお帰りになったときのあの声明の、不平等条約の改訂はできなかったけれども、しかしこの委員会議論するのだというならば、帰って来たならばさっそくその問題が委員会に出るのが当りまえで、もうあなたが、帰ってきてから一年以上たっていて、それでまだ一つ議論していない。これから出るかもしれないというようなことは、これからと化けものとは出たことがないというようなことで、そんなことはわれわれは信用できない。あなたが委員会に直接出られないなら、外務大臣がそういう不平等条約のことについて一ぺんくらい議論したらどうです。これからおやりになりますか、外務大臣どうですか。
  79. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保委員会の運営につきましては当然岸・アイゼンハワー共同声明にあります三つの目的を持ってやっておるわけでありまして、両国民の願望に沿うように安保条約そのものを再検討していくということはわれわれ考えておるわけであります。今後ともそういう問題について安保委員会の席上で論議して参ることは当然であります。
  80. 中村高一

    中村(高)委員 今後ともというから、この次ぐらいの委員会には一ぺんくらい発言して下さい。まるでアメリカの兵隊の配備のことばかり押しつけられて、ぐうもすうもなくて、一言半句も言えないで、びくびくしながら出る安保委員会なんというものは意味ない。そんなものはなくてけっこうだとさえわれわれは思っている。岸総理大臣の立場を作るための安保委員会は必要ないとわれわれは思っておるのでありますが、次の委員会には外務大臣から堂々と不平等条約の改訂について所見を述べて、そうして外務省から報告して下さい。そういうやる意思があるなんということばかり言っておられたのでは信用できません。  それから今私兵器の問題を申し上げたから、あとで通産大臣に聞こうと思っておったのですけれども、この際の方がいいと思いますので、通産大臣にココムの廃止あるいは解除の問題についてお尋ねいたしておきたい。今ココムの会議をやっておりますが、この結果がどうなるのか、中共貿易が成立をいたしましてまた問題になってくるのは、チンコムがなくなってもココムによっていろいろな制限を受けて、たとえば船であるとか、あるいは大型の自動車であるとか、あるいは電動機であるとか、そういう肝心かなめのものが入らないのであります。ところがココムができたのは、いわゆる共産圏の戦力を強めてはならないのだ、こういうことがココムのできた理由であります。共産圏の戦力を強めるこういう前時代の兵器を目的にして、自動車をやればこれは共産圏の戦力を増強するのだとか、あるいはこういうものはいけないとかいう、前の戦力時代の兵器を標準にしてやっておったのでありまして、最近のココムの会議などでは、イギリスもフランスなども今日のようなミサイル時代になって、自動車を送ったから、ブリキを送ったから、これが戦力だなんということはもうおかしいじゃないか、そんな時代ではないのだ。ココムなんというものは、今日のミサイル時代になれば、戦力をふやすとかなんとかいうことは、けたはずれの議論だということでやめようという議論が出ておる。そこで日本の代表はこの会議にどういう主張とどういう方針で出かけられておるのか、この際お尋ねしておきます。
  81. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ココムの制限が、現在の時代に応じないということにつきましては全く同感であります。そういう意味におきまして先般も申し上げましたように、これを縮小するという方針をもちまして、いろいろせっかく努力をいたしておるわけであります。われわれも今後積極的に推進していくつもりであります。
  82. 中村高一

    中村(高)委員 せっかく努力していることはわかるのです。これは大ぜいの人間がパリに遊びに行っているわけではないでしょうから、そういうことは答えてもらわなくてもわかるのだが、今私が言うたように、このココムができた当時の目標は、共産圏の戦力という問題であったのに、今日の兵器が変ってきた時代には、もうおかしいじゃないかという議論があって、あなたは出先の人にこれの廃止に向えとか、あるいは廃止に近いような解除をしろとかいうような方針を出したか出さぬかということを聞いているのであって、せっかく努力してこいなんて、そんなことを言うたのではないと思いますけれども、もうココムというものが時代おくれだということを私は言っているのです。こんなものがあることがおかしいじゃないかということを世界各国で言っているのに、日本の通産大臣だけは、どうもせっかく努力しているという程度では、まるで認識が足りないから私は聞いているのであって、一体どんな趣旨を出先に伝えておりますか。
  83. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 大体私どもとしましても相当広範囲に解除すべきだというふうに考えておりますが、詳細につきましては、ただいま申し上げる段階でありませんので御了承願いたいと思います。
  84. 中村高一

    中村(高)委員 しようがないから、通産大臣に出てもらったから関連して便宜上お聞きいたしますが、日中貿易協定が成立をいたしまして、あとに残っているのは政府が同意するということでありますけれども、どういう形で同意することになるのか、いつごろそれが本ぎまりになるのか、問題でありますからお尋ねいたします。どなたでもよろしゅうございます。
  85. 愛知揆一

    愛知政府委員 日中貿易の民間の第四次協定につきましては、一昨日三団体から一件の書類を具して政府検討を求められているわけであります。ただいま鋭意検討中でございますが、なるべくすみやかに三団体に対しまして政府としての意向を表明するつもりであります。
  86. 中村高一

    中村(高)委員 なるべく近いうちにという程度なのは、おそらくこれは台湾との関係があるから、その話し合いをつけてからという趣旨だと思うのでありますが、けさの新聞を見ると、自由民主党の三木政調会長の意見として国旗掲揚は反対だというようなことが出ておって、国旗としては認めない、旗だ、旗ならいいけれども、国旗ではいけない、これは政府が発表しているわけでも何でもありませんけれども、せっかくまとまった協定に、与党の自民党としては重要な地位にある三木政調会長がああいうようなことを言うことは、非常に悪い結果を来たすのではないかと思ってびっくりしたのであります。きのうも総理大臣は国旗の問題は今までも見本市などに出ておって、大して神経をとがらす必要はないというようなお答えをしたかと思ったら、国旗というものは国交回復したときに出すのであって、しかも刑法に規定されている国旗の安全を保障するというそういうものだけが国旗であって、あとは旗だとかなんとかいう、そういうことをおそらく政府の方では採用するとは思いませんけれども、あんな議論が出るということは、常に両国の上に悪い結果を与えると思っておるのであります。それからもう一つ、法務大臣来ておりませんでしょうか。——いなかったらどなたかお答え願いたいのでありますが、身分の安全保障も法務省などでは、大へん議論しておるようであります。  私は悪い影響を与えるようなことでございますれば、答弁を無理にお願いしなくてもいいのでありますけれども、国旗の問題など、近いうちに代表の人が何名か来るのです。そのときに問題の起らないようにしておいてもらわないと、非常に困る事態が起るので、政府としては国旗の問題などに、昨日総理大臣が答えられたような態度であるかどうか、けさ新聞に出ておりましたので、はっきりさせていただきたいと思います。
  87. 愛知揆一

    愛知政府委員 お答えいたしますが、国旗の問題につきましては、昨日当委員会においても総理から御答弁を申し上げた通り政府としては考えております。  それから法務大臣がおりませんから便宜お答えいたしますが、この日中貿易の民間協定につきましては、御承知のように、中共政府日本としては承認するものではない。従って、この考え方から当然と思いますが、外交官的な特権というようなものは考えておらないわけであります。しかしながら日中間の貿易が拡大され、かつこれが円滑に施行されることは、私どもも望んでおるところでございますから、現行の法令その他の範囲内におきまして、あとう限りの協力はいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、具体的には政府部内の意向を取りまとめまして、先ほど申し上げました通り、三団体に対する回答というような形を中心にして、なるべく早い機会において、政府の態度をはっきりいたしたい、こういうふうに考えております。
  88. 江崎真澄

    江崎委員長 中村高一君に申し上げます。すでに申し合せの時間から十五分経過しております。先ほど両党協議の場面もありましたので、御注意を申し上げなかったわけでありますが、結論をお急ぎ願います。
  89. 中村高一

    中村(高)委員 それは私の責任ではなくて、政府答弁の時間が……。
  90. 江崎真澄

    江崎委員長 それで十五分間黙っておったわけでありますから、どうぞ。
  91. 中村高一

    中村(高)委員 日中貿易につきましては、まだいろいろ申し上げたい点がありますけれども、微妙な関係もありまするし、われわれも成立を願っておるのでありますから、不利益な結果を招来してはならぬと思いますので、なるべくその問題についてはすみやかに、せっかく結ばれた協定が動力を発生するような努力を賜わりたいと思うのであります。委員長からも催促がありますからこまかいことはやめますが、日ソの漁業条約の問題も非常にデリケートな段階に来ておるようでありますけれども、昨日もこれは伊藤委員から質問をされましたので、私は質問されなかったことについてだけ補足して質問しておきたいのでありますが、一体毎年々々こういうような漁業協定をやらなければならぬかどうかであります。実に、昨年もそうでありますけれども、ことしも漁業協定となると難航をして、日本政府も非常に苦心をされるのでありますが、毎年々々一体こんなことを繰り返すというようなことは、どこかに私は欠点があると思うのであります。毎年漁獲量をきめる協議をする、そうしてその場合に話がつかぬということではいけないのではないか。何かそこには、条約の上にも非常に無理があり、欠点があるのだとわれわれは考えております。たとえば漁獲量をきめる問題などについてもそうでありましょが、あんな出たとこ勝負の議論をして漁獲量をきめるというところに、私は無理があると思う。ことに今度行かれた赤城君にしても、魚のことなどおそらくわからない方だと思います。土浦のワカサギぐらいのことは知っているかもしれませんけれども、サケやマスなどはおそらく知らない農林大臣を派遣をして、そうして漁獲量をきめる協議をするということ自体がおかしい。何かこれは日本政府から提唱をして、もっと科学的に漁獲量をきめるような共同調査の機関を作るとか、これも一つの方法でありましょう。あるいは一定の基準をきめる。河野君とイシコフ氏との間にきめたとかきめないとか言われる、いわゆる漁獲量について、たとえば豊漁のときはどうとか、不漁のときにはどうするということをきめたとかきめないとか言っておりますけれども、一定の基準というものが全然ない。科学的調査がなくて、基準がなくて、年限がない。昔、戦争前にはあの漁区の貸付が一年とか二年とか三年とか、長いものは五年とか、貸付契約をしておった事実を見ても、毎年々々こんなことをやることは、はなはだまずいやり方だと思うのでありますけれども、こういう具体的なことについては提唱をしないで、ただしろうとを派遣して何か議論をするというようなことは科学性がないじゃないかと思う。毎年々々こんな苦労をすることはばかばかしいと思うが、どうでございましょうか。
  92. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 漁業条約によります委員会の性質は、御承知のように資源保護のために科学的調査をいたしまして、その基礎の上に立って話し合いをするというのでありますけれども、今日まで両国の専門家がそれぞれ持っておりますデーターは出しておりますが、また共同調査はいたしておりません。ただいま御指摘の通り、共同調査をやればいいわけであります。先般日本側からも共同調査の問題につきまして話し合いをいたしましたところが、イシコフ漁業相は、実は昨年はゴスプランの組織の関係や何かで共同調査はできなかったが、来年は共同調査をしようじゃないかということになって、返事もいたしておりますので、おそらく本年は両国の専門家による共同調査ができると思います。そういたしますと、両国の持っております科学的な調査が、だんだん一致してくると思うのであります。そうすれば自然的に問題が解決していくということになろうかと存じております。
  93. 中村高一

    中村(高)委員 日本とソ連との間にはありませんけれども、例のアメリカとカナダとの間の漁業協定の中には、もし話し合いがつかなかった場合には、第三者の調停機関を作って、これにまかせるというような規定があるのであります。またかりに科学的調査ができても、やはり私はそこに問題が出てくると思う。そういう場合に、現にカナダとアメリカとの間に、そういうようなことについてあらかじめ調停の機関を置くというようなこともあるけれども、そういうことは一体考えないかどうかという点が一つ。  それから、急ぎますからもう一つ大車輪でやりますが、今ジュネーヴで国際海洋法の会議が開かれておって、日本の代表も相当多数行っておるようでありますが、あの会議で今ソ連との間に問題になっております領海の問題というようなものが、はっきり国際法できまるならば非常にけっこうであります。私たちも早くソ連との間に領海の何海里かというようなこともきまればけっこうでありますが、あの原案を見ましても、何海里という領海がきまっても、さらに公海だからというて自由ではない、沿岸国は沿岸国のそれぞれの発言権があるというようなことが原案に載っておって、今議論をされておるようであります。そうすると、あの国際法が成立しますと、あの中には仲裁委員会というものを設けるということになっておるようでありますから、あの法案が出れば、万一日本とソ連との漁業干渉で問題になったときには、仲裁委員会に付するというようなことができると思いますけれども、この仲裁委員会とは別に日本とカナダというように当事者の間でも調停機関を設けることは不可能ではないと思いますが、いかがでございましょう。
  94. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま御答弁申し上げましたように、科学的調査を根拠にし、ことに共同調査ができて参りますれば、両国の専門家がそれぞれ話し合いをし、お互いの研究を検討していくことでありますから、従ってそう大きな開きがない結論がだんだん出てくるのではないかと存じております。しかしながら、もしそれでも困難な場合には、現行の漁業条約その他につきまして、ただいま御指摘のような点もいろいろ考慮して参らなければならぬか、こう考えております。
  95. 中村高一

    中村(高)委員 何か漁業交渉の最中に、場合によったならば公海の自由の原則が出られるのだというようないろいろの議論も行われておりますけれども、こういう問題はなかなか複雑な事態でありますが、今まで漁業交渉が非常に停頓しておったということの理由の一つに、平和条約をソ連側がからませてきたことが原因だというふうに、もっぱら日本の国内では報道をされておったようでありますが、最近の報道によると、平和条約をからませては、いないのだということが出ておりますけれども、これはどちらがほんとうなのか。この点は非常に誤解が多いようでありますから、はっきりさせていただきたいと思います。
  96. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 漁業条約によります漁業委員会の運営につきまして、その結論を得るためには平和条約に対して何も関係はございません。
  97. 中村高一

    中村(高)委員 それでは労働大臣も来られておるようでありますから、労働大臣にお尋ねをいたしますが、労働大臣も御承知のように、今労働組合の春闘の問題がだいぶこじれてきたようなところもあるのでありますけれども、数日前に行われましたあの私鉄の争議を大臣もごらんになっておると思うのであります。ぴったりと電車がとまっておりましたけれども、昨年の国鉄の争議などと比べまして、非常に平静であったことはお認めになると思うのであります。争議権のない全逓の方には非常に問題が起っておるようでありますが、しかもけさでしたかきのうかの新聞によりますと、全逓は、四百人を取り調べるので、警察庁と警察で手配をしておるというようなことが出ておったようであります。今ILOの協定批准の問題なども出ておるときでありますが、あの争議を許された私鉄の非常に平静に行われておりますることと、争議権のない全逓のある実情を比較せられて、労働大臣としてはどんなお考えを持たれたか、まずその点をお聞きしておきたいと思います。
  98. 石田博英

    ○石田国務大臣 労働問題が適法に、冷静に、そして国民諸君に御迷惑をかけることなく処理されることが一番望ましいのでありまして、私鉄の争議と引き比べまして、全逓もまた法律のワクの中で冷静に公労委の調停を待たれて、それについての使用者側の態度を待っているべきものと私は考え、冷静な、国民に迷惑をかけない行為を希望するわけでございます。
  99. 江崎真澄

    江崎委員長 中村君、どうぞ結論をお急ぎ願います。
  100. 中村高一

    中村(高)委員 けさの新聞に全逓の四百名を調べるとかなんとか、警察庁方針をきめておるというようなことが出ておりますけれども、これはどういう根拠から出たのか。おそらく政府一つ方針だろうと思うのでありますが、そんな事実があるのか、承わりたい。
  101. 石田博英

    ○石田国務大臣 大へんうかつでありますが、私はまだその新聞記事も読んでおりません。従ってそういうことにどういう関連があるのか、どういう原因に基くものか知りませんけれども、少くとも労働省は関知いたしておりません。
  102. 中村高一

    中村(高)委員 もう時間だそうでありますからやめますが、国家公務員の共済組合法の改正案でありますが、この問題について政府部内でもいろいろ議論が繰り返されておったようでありますが、その内容を私はもう承知しておりまするし、聞こうとはいたしません。結局のところこの次の閣議できめて提出するということに、政府では方針がきまったというようなことが言われておりますけれども、明確にお出しになるのか出さないのか、一つお伺いしたい。
  103. 林修三

    ○林(修)政府委員 御承知のように、国家公務員につきましてこの共済年金の制度を適用するかどうかということについて、政府部内にもいろいろ議論があったわけでございますが、去る十日前後だと存じますが、閣議でこのことについての大体の取扱いの方針がきまっております。それに従いまして関係省におきまして法案の立案を急いでおったようなわけであります。私の方もそれに関与いたしてやっておりますが、多少問題点がございましたけれども、これも昨日の閣議で大体方針がきまりましたので、ただいまのところでは事務的に申せば、この次の閣議にかけ得るという見込みのもとに、今法案の調整をやっております。
  104. 江崎真澄

    江崎委員長 委員会再開前に理事会を開きますから、理事の諸君はお含みおき下さい。午後一時半より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後一時二分休憩      ————◇—————     午後二時十七分開議
  105. 江崎真澄

    江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします、岡田春夫君。
  106. 岡田春夫

    ○岡田委員 社会党を代表して外交関係について総括の質問をやるわけでありますが、その前に、昨日も意見が出ましたが、岸総理大臣答弁はそつがないと言われておるけれども、私はそのそつのないところが岸さんには災いをしているのじゃないか。耳ざわりはいいけれども、どうも具体性がない、いわゆる八方美人主義で核心がないという感じがする。たとえばこの予算委員会の劈頭、社会党の第一陣で西村委員が沖縄問題に対して質問をいたした、これに対する答弁を聞いておりますと、岸さんがアメリカに行かれた経過について詳しく話しました。具体的にどうするのだというと、岸さんの答弁は、朝海大使を初めあらゆる方法を通じてあらゆる機会においてあらゆる努力をいたしたい、これは結局何のことかわからない。私はきょうここで具体的な点について伺って参りたいと思いますので、具体的に、一つ簡明直截に御答弁願いたいと思う。  第一点でありますが、岸さんはあらゆる機会に平和外交ということを言っておられます。この、平和外交というのは、現在におきましては、東西両陣営の緊張を緩和するために役立つような外交政策が、平和外交だと私は考えるのですが、まずこの点からお話を伺って参りたいと思いますが、この点はいかがでありますか。
  107. 岸信介

    岸国務大臣 現在世界の一番大きな平和に対する不安は、東西両陣営の間に非常な緊張があるということであります。従ってそれを緩和することは、現在のところにおきまして、平和外交の一番大きな使命の一つである、かように思います。
  108. 岡田春夫

    ○岡田委員 東西両陣営の緊張緩和が平和外交の要諦である、こういうことであるならば具体的に伺いたいと思うのですが、平和外交を唱道されている場合に、今度の外務省で発表された外交青書を見ても、平和三原則ということを言われておる。この平和三原則の中には国連中心主義、自由諸国との協力、それからアジアの善隣友好、こういうのを三原則であると言われているが、ほんとうに平和外交を進めるのであるとするならば、この間において東西両陣営における緊張の緩和、たとえば東西の両陣営における平和共存とか、そういう何らかの具体的な原則が出てこなければならないにもかかわらず、こういう点が三原則の中に全然掲げられておらない。こういう点で平和外交というのは言葉だけであって、実際にどの程度まで平和外交という点を考えておられるかは、実は私たちから見ると疑問な点もあるわけです。またそればかりじゃなく、この平和三原則というようなことを言っておられるが、従来の岸内閣あるいは藤山外務大臣の外交政策等を見ておると、三原則ということは、何かアメリカヘの追随外交、対米従属外交の隠れみのに三原則を使っているのじゃないか、ほんとうのねらいは自由諸国との協力なのであって、それ以外の二原則、すなわち国連中心主義とかアジアの善隣友好というのは、単にその隠れみのに使っていこうと考えているのじゃないかというような印象を私は受けるのであります。こういう点については、今度発表されました外交青書においても、外交三原則は矛盾がないんだというようなことを盛んに書いておりますが、矛盾がないと弁解すればするだけに、そういう点をわれわれは疑念として持つのであります。外務大臣としてはこういう点についてどのようにお考えになりますか。
  109. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話のありましたアジアの善隣外交、それから自由主義陣営との協調、国連中心主義、その中において矛盾があるのではないかというお話でありますけれども、私は矛盾がないとかたく信じております。日本が自由主義陣営におりますことは当然でありまして、共産主義と考え方を異にしておるのもまた当然であります。従いまして自由主義諸国と十分善隣友好の関係を保っていく、同時にアジアとの諸国におきましても私どもは友好関係を保持していくということについて、何らその間に矛盾があろうとは思っておりません。しかも国連を中心にしてこれらの外交を展開していくということにおいて、何か矛盾があるようにお話でありますけれども、われわれは公正な立場に立って国連において発言をし、行動もしていくつもりでありますから、そういう意味においては全然矛盾がないと思っております。
  110. 岡田春夫

    ○岡田委員 もう一度これは総理大臣に伺っておきたいと思うのですが、平和外交というのは、先ほど御答弁通りに、東西両陣営緊張緩和のために役立つような政策を行うのだ。それから今三原則を通じて外務大臣からも御答弁があったのでありますが、何も自由諸国の協力ということだけを考えているのではなくて、日本の自主独立の外交を進めようというのが岸内閣の外交政策である、こういうような意味の御答弁があったと思うのであります。大体そういう意味であるというように解してもよろしゅうございますか。
  111. 岸信介

    岸国務大臣 ただいま外務大臣が申し上げた通りであります。
  112. 岡田春夫

    ○岡田委員 最近の情勢について二、三伺いたいのですが、最近の国際情勢は、部分的にはたとえばインドネシアとかアルジェリアにおいて小ぜり合いがあるというような事態はありますけれども、世界全体の方向は緊張緩和の方向に向いている、こういうように私は解釈をしております。特に首脳会談の問題が日程としてあげられるというような状態であるとするならば、やはり世界全体の方向は、緊張緩和の方向に向いていると私は考えますが、いかがでございましょう。
  113. 岸信介

    岸国務大臣 私は、大きな趨勢としては、今岡田君の言われるように、東西両陣営ともいたずらに緊張の度を強めることに対して、いろいろな世界的の世論もありますし、また国内におけるところの国民世論もありまして、これを緩和しなければならないというような動きがだんだんと持ち上ってきておるというように見ております。これが今おあげになりました両巨頭会談に対する両陣営の非常に熱心な研究なり、それを進めようとしておる努力等に現われておるのがそれであると思うのであります。
  114. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで極東の問題について二、三承わりたいと思うのでありますけれども、まず第一に、これは日ソ共同宣言ができた当時に、その当時の鳩山総理大臣は、共同宣言の特別委員会で私の質問に答えられてこのように言っておられる。というのは、私はソビエトは日本に対して敵対感情を持って、事があらば日本を侵略するというようなことを考えている国であると総理大臣はお感じになりましたかどうですか。それは鳩山さんは向うへ行ったからですね。そういうことを言ったら、そういう感じは持ちませんでした。敵対関係というものを作ることはよくないし、日本の国に対して侵略するという危険性はないということを、鳩山総理大臣は当時断定をされたわけです。それでは岸総理大臣は極東の情勢において、現在ソビエトは日本の国を侵略するというような状態にあるとお考えになるか、あるいはまたこの鳩山総理大臣意見のように侵略しない国であるというようにお考えになるか、この点をまず伺って参りたい。
  115. 岸信介

    岸国務大臣 私はソ連との間におきましては、日ソ共同宣言の趣旨に基いて、友好関係を進めていくということを念願といたしております。従いましてそういう国が侵略の意図があるというようなことを毛頭考えておるわけではございません。
  116. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは伺いますが、あなたが去年アメリカに行かれまして、アイゼンハワー大統領と会議をされて共同宣言を結ばれた。この共同宣言の冒頭に、大統領及び総理大臣は、全面戦争の危機は幾らか遠のいたが、国際共産主義は依然として大きな脅威であるということについて意見が一致した、このようにはっきり言われているのですが、この国際共産主義というのはソビエトの侵略の脅威ということを言っておられるのではありませんか。この点との関係はどのようにお考えですか。
  117. 岸信介

    岸国務大臣 私から申し上げるまでもなく、岡田委員も御承知通り、この国際共産党の活動というものは、世界を通じて決して私はその活動が弱まっておるとは見ておりません。具体的に今の国際共産主義なりあるいは国際共産主義の脅威というものとソ連とか中共とかいう国と結び合せて考えることは適当でなかろうと思います。
  118. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではソビエトの場合、ソ連という国の場合は、鳩山さんの言われたように侵略するということを考えておらない国である、侵略しない国だ、しかし国際共産主義というものは共同宣言にあるような趣旨である、このようにはっきり区別するのであるというように言われておるのですが、その点非常に重要な点だと思いますので……。
  119. 岸信介

    岸国務大臣 今もお答え申し上げましたように、ソ連という国と日本という国との間には、共同宣言に盛られておる両国との友好親善関係を深めていこうということを誓い合っておるわけであります。これとの間における友好関係というものは、われわれもあらゆる面においてこれを進めていこう、こう考えております。従ってこの国が日本を侵略している、あるいは侵略する意図を持っておるということは、私自身としては想像もいたしておりません。しかし国際共産主義の脅威というものについては私ども考えておる、こういうことであります。
  120. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで藤山外務大臣に先ほどの外交三原則の問題に関連してもう少し伺って参りたいのです。先ほどは、矛盾しないというお話ですが、これは私この間の十二回国連総会の模様等を調べてみると、具体的な国連総会の中における日本代表の活動を見ると、その矛盾が私は現われていると思うのです。たとえば例をあげて申しますが、原水爆の実験禁止の問題です。これについては、この前、去年の暮れに私予算委員会で御質問いたしましたが、第一委員会、すなわち政治委員会において日本は独自な案を提出した、そしてこれによって採決をしたが、八十二ヵ国のうちで賛成者は十八票である。ところが、その後、すなわちその日にちをはっきり言いますと、十一月の十九日に、国連の本会議で原水爆実験禁止の提案について再度採決が行われている。その場合においては、日本代表としては政治委員会に提出をした日本案というものの提出を断念いたしました。その場合の採決としては、インドが即時禁止の提案を実は行なっているわけです。即時禁止の提案は実はインドがなぜ行なったかというと、政治委員会の採決に少数意見の留保をしていた。インドのこの提案に対して日本がどういう態度をとったかというと、あらためて申し上げるまでもなく、岸総理大臣がニューデリーに行かれたとき、あるいはネール首相が日本に参りましたときに、インドと日本は原爆実験の禁止について協力をするという声明を二回にわたって行われたのでございます。日本国民の立場としても原爆実験の禁止というのは、非常に強い要求であるということになるならば、国連総会の本会議日本の提案が出されないで、インドの提案だけが出されておるとするならば、インドの提案に賛成すべきであるにもかかわらず、これに対し棄権している。こういう点から見ても、それからその他の例を見ますと、私ここに外務省のあなたの方から出された資料を持っておりますが、政治委員会に出されたいろいろな提案がございます。この提案の中で、AA諸国と行動をともにして賛成をするというような提案に対しては、日本の代表が行いましたのは西イリアンの問題だけで、それ以外は全部反対か棄権をしているのであります。そしてこの採決に当っては、アメリカのとった行動と、常に日本——偶然か意識的かは知らないが、ともかく全部アメリカの行動と同じ態度を日本代表はとっている。こういう点から見て、AA諸国の提案については今申し上げたように行動をともにしておらない。西イリアンの問題を除いては、行動をともにしておらない。アメリカとは行動をともにしているということになると、先ほどから申し上げたように、自由諸国との協力という点については三原則は生かされておるけれども、アジアの善隣外交という点については、国連におけるこの採決において、政治委員会の採決において、アジアの善隣外交という態度は表わされておらなかったと見ざるを得ないと思うのですが、この点は外務大臣いかがお考えですか。
  121. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連におきまして日本のとりました行動についていろいろ岡田委員からお話がございましたが、しかしながらわれわれとしては自由主義陣営と協調する、アジアの人たちと友好に善隣関係を持っていくということにおいて、少しも矛盾はしておりません。しかしながら国連の中でいろいろな問題を扱いますときに、日本独自の立場から問題を考えていきますれば、ある場合には、アジアの人たちの提案であっても反対をする場合もありますし、棄権をする場合もある。またアメリカの提案に対しても、われわれは自分たちの考え方を申し述べておるのでありまして、すべてがアメリカに追随しておるとか、あるいはすべてがアジアの諸国に反対しているということは毛頭ないわけであります。
  122. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかしそうおっしゃいますけれども、第一委員会で、AA諸国と一緒に賛成、あるいは行動を一緒にして反対をしたという例がほかにございますか。私はこういう資料をあなたのところからもらっているのですが、西イリアンの問題以外については、すべてAA諸国とすべて反対の態度をとっているじゃありませんか。たとえばアルジェリア問題についても、AA諸国の十七万国共同提案に対して反対、サイプラスの問題についても棄権、あるいは西イリアンの問題は別ですが、朝鮮の問題についてはインドの提案に反対、それから南北朝鮮、南北ヴェトナムの加盟に対するインド、インドネシアの共同提案についても反対、どれも賛成のものは一つもないじゃありませんか。AA諸国と行動を一緒にしたという例はないのであります。
  123. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもはAA諸国のグループの連中と絶えず接触を保っておりまして、そうして話し合いを続けております。むろんAA諸国の中におきましても、それぞれの国の立場によりまして、それぞれの問題について違った立場をとっている国があるのでありまして、そういう意味におきましては、AAグループとの協調を私どもは破っているとは考えておりません。
  124. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし協調というのは、話し合いばかりでなくて、採決の場合に一緒の行動をとることも、それが協調だと思うのですが、話し合いはするけれども、採決の場合には常に正反対であるということならば、私は協調していると思わない。しかしこの問題ばかり触れているわけにもいきませんので、今度は、国連においてソビエトの提案の場合にはすべて反対をしている。アメリカの提案の場合にはすべて賛成をしているのですが、そうすると、先ほど総理大臣の言われたように、両陣営の友好関係を強化する、緊張緩和のために努力するというようなことを言うのは、これは単に言葉だけであって、国連における採決においてはそういう態度は全然見られない。ソ連の提案にたまに一回ぐらい賛成して、アメリカに反対してみたって、アメリカに別に怒られないだろうと思うのですが、怒られるからこれは一緒に行動しているのですか、どうなんですか。これは政治委員会の内容をすべて一々申し上げてもけっこうなんですが……。
  125. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、われわれは自由主義陣営との協調を主眼といたしております。従いまして、ソ連との関係におきましても、自由主義陣営の立場をとっております。しかし、むろん問題によりまして、適当な提案でありますれば、賛成しても一向に差しつかえないわけありまして、そういう点についてわれわれとして日本独自の判断のもとにやって参っております。
  126. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、適当な提案ならば、ソヴエトのものであっても賛成されるわけでございますか。
  127. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、日本独自の判断から見まして適当なものであるとすれば、賛成します。
  128. 岡田春夫

    ○岡田委員 こういう点についてあとでまた伺って参ります。  岸さんに今度は伺って参りますが、やはり、先ほどからの外交政策で、平和外交を進めるという場合には、国内においてもそれに相応した態勢がとられていかなければいかぬと私は思う。国内態勢において少くとも反ソ的な宣伝、扇動を行うということは、これはたとえば一つの党が行うとか、一つの団体が行うというならば別でありますけれども、少くとも政府が反ソ的な宣伝、扇動を行うというようなことは、平和外交の趣旨からいってこれは好ましくないと思いますが、この点はいかがですか。
  129. 岸信介

    岸国務大臣 ただいま岡田委員のお話はきわめて抽象的なお尋ねでありまして、どういう問題であるか、具体的な問題に当りまして——私は先ほど言っているように、ソ連という国に対して一つの反感を持ってこれに反対の空気をあおるというような考えはございません。しかしソ連と日本との関係において、ソ連の主張が日本としては受け入れられないとか、あるいはその態度に対してわれわれが正当でないと考える場合において、これに批判を加えることは、独立国として当然だと思います。
  130. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは御趣旨はよくわかります。いわゆる日本の立場とソヴエトの立場が違うというようなことにおいては、これは立場が違うという、そういう点に立って日本意見を主張する。しかしことさら反ソ的な言動をもって宣伝をするというようなことが、これは特に政府の機関でそういうことをやるということは、慎しまなくちゃならぬと思うが、この点はいかがですか。たとえば政府の一官庁においてこういうことをやるというのは、私はおもしろくないと思うのですが……。
  131. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げましたように、一つの意図を持ってソ連を誹諦するといようなことは、友好関係の国々の間にあるべきことじゃないと私は思います。ただ今申しましたように、具体的な事態を見ませんと、議論が誤解されるおそれがあると考えます。
  132. 岡田春夫

    ○岡田委員 唐澤法務大臣に伺いますが、法務大臣の方の公安調査庁で出しておられる「月間国際情勢展望」というのが毎月出されております。これは、失礼でございますが、大臣は毎月目を通しておいでになられますか。
  133. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいまのお尋ねでございますが、目を通す場合もございますが、全部残らず目を通しておるということではございません。
  134. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、ごらんにならないにしても、責任はお持ちになるわけでございましょう。
  135. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 御指摘の通りでございまして、公安調査庁から出されておるものでございますから、私の責任でございます。
  136. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは岸さんに伺いたいのですが、先ほど具体的なというお話もありましたし、私は具体的に申し上げたかったのです。この「月間国際情勢展望」というものは、これはたとえば自民党がこれを出しているというならまだわかるのです。これは公安調査庁という政府の一機関が、反ソ宣伝扇動のためにいろいろな悪態の限りを尽して出されているのです。こういうことが適当であるかどうか。私具体的に例をあげて申し上げますれば、たとえばあなたが回答をされたブルガーニン書簡について、これについても岸内閣の親米政策に対する国民の反感をあおることがソ連の対日宣伝の主眼として、そのためにブルガーニン書簡が出されているとか、そればかりじゃない、ソヴエトに対するこういういろいろな誹諦ばかりじゃなく、イギリスに対しても、これは誹諦を加えている。それからこの間インドネシアのスカルノ大統領が来たのでありますが、このスカルノ大統領に対しては、これは十一月であったと思いますが、これを見ると、スカルノ大統領は容共的現政権云々というわけで、容共的現政権がスカルノ大統領であるというようなことを盛んにこれは書きまくっているわけです。こういう点は、あなたが先ほど平和外交を進めるために宣伝扇動を行うことは好ましくないという御趣旨のお考えであるならば、こういう「月間国際情勢展望」というものが政府の一機関において出されて、これを国民に配付されるというのは、少くとも適当でないと私は思うが、この点はいかがです。
  137. 岸信介

    岸国務大臣 今おあげになりましたことは、私聞いておったわけでありますが、これは批判ということはもちろん意見がありましょうし、何かの批判をするということは出てくるわけでありますが、特に何か誹謗している、反ソ的宣伝なりなにをしているというように、今のおあげになっただけでもって論断することは、少し早いのじゃないかと私は思いますが、まあ政府機関で出すなにでありますから、他の自由な批判とは違って、用語等においても注意すべきことは当然であろうと思いますが、特に何か一つの目的を持ってこれが公けにされておる、こう私は今の質問だけでは解釈をいたしません。
  138. 岡田春夫

    ○岡田委員 時間が制約されておりますので、具体的には私申し上げかねますが、少くとも私はこの点を伺わなければならないと思うのですが、一行政機関が政治的な批判を行うことが妥当であるかどうかということです。行政機関が政治的な批判を行なっているのですが、この点は妥当ですか、どうですか。
  139. 岸信介

    岸国務大臣 政府の機関が一切何か政治的な批判が許せないものであるかどうかということについては、私は批判は一切していかぬとまでは考えておりません。
  140. 岡田春夫

    ○岡田委員 いわゆる国務大臣として政治的な批判をするということならば、これは政治的に私は許されると思う。しかし単に一行政機関の地位において——具体的に国家公務員法に政治的な批判、政治的な行動をやってはいかぬという規定がある。そういう点から見て、一行政機関が政治的な批判、行動をとるということは、私は明らかに国家公務員法の違反だと思いますが、その点はいかがですか。
  141. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいま御指摘の刊行物でございますが、もし公安調査庁が独自の判定を下し、そうしてこれを広く宣伝するというような場合でございますれば、今お尋ねのような議論も出てくるかと思うのでございますが、この刊行物は、庁内におきましてこういうふうに考えておるということを庁内の者に知らせる、それから特に要求がございますれば、法務委員会には配っておりますけれども、それ以外には出さないことになっております。ただ法務委員会で御注文がありました場合に出しておるだけで、公安調査庁として各種の情報を判断いたしまして、そうしてかように判定をするということを庁内の者に知らせておるということでございます。
  142. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは時間もあまりありませんので、具体的に伺いますが、私はそういう面において見のがし得ない点が一つあるのです。というのは、この「月間国際情勢展望」の二月号でありますが、これには日本社会党を誹謗する言動についてまではっきり書いてあるのであります。漸次日本社会党支持の態度を明らかにする共産中国の対日宣伝云々ということで全文にわたって書いてあります。一行政機関が社会党についてまで誹謗、宣伝するということが、果して総理大臣は妥当だとお考えになりますか、どうですか。
  143. 岸信介

    岸国務大臣 私は今おあげになりました論文は読んでおりませんから、内容的には知りませんが、公務員として一つの政党を支持するような言動をするとか、それを誹謗するとかいうようなことは、これは国家公務員法からいって私は許せないことだろうと思います。しかしその今の論文自身の内容がどういう内容であるか、私は読んでおりませんから……。
  144. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは一般論で伺いましょう。今大臣の御答弁通りに、国家公務員法からいえば、当然一つの政党を支持する、あるいは政治行動をやってはいけない、厳にそういう点を戒められて、たとえば労働組合なんかにおいてもそういう態度をとったような場合には、国家公務員法に抵触するというようなことで、ときどき問題があるわけです。それならば一行政機関が、このような社会党に対する政治的な誹議というようなことをもし行なったとするならば、これは国家公務員法違反だと思うが、この点はいかがですか。
  145. 岸信介

    岸国務大臣 公務員が公務員個人としてもしも今お話のような、仮定のようなことがあれば、国家公務員法の違反である、こう思います。ただ一つの行政機関といいますか、その点は、私は法律論として公務員と一つの機関の行動というものはちょっと違う点があると思いますが、いずれにしても、公務員が一つの政党を誹諦するとか、一つの政党を支持するとかいうことは、許せないことである、こう考えます。
  146. 岡田春夫

    ○岡田委員 時間がありませんので、進めて参りますが、新聞の報道するところによると、岸総理大臣は経済関係の最高顧問に二月に、三井銀行の佐藤頭取、大阪商工会議所の杉会頭、それから鮎川義介氏並びに賀屋興宣氏を委嘱したという事実を報道しておりますが、そういう事実はございますか。
  147. 岸信介

    岸国務大臣 最高顧問としてというようなことではありませんが、私の経済的ないろいろなアドバイスを得るための顧問として、その四人にお願いしたことは事実であります。
  148. 岡田春夫

    ○岡田委員 それから岸さんが自民党総裁の立場として伺いたいのですが、賀屋興宣氏は自民党の重要政策諮問委員になっておりますか。役員でございますか、どうなんです。
  149. 岸信介

    岸国務大臣 政調の諮問委員会委員になっておるそうであります。
  150. 岡田春夫

    ○岡田委員 同じくこれも賀屋さんの話なのですが、藤山外務大臣も御懇意なようでありますけれども、外務省の外郭団体にアジア協会があって、その顧問に賀屋興宣氏がなっておると伝えられておりますが、この点事実でありますか。
  151. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 賀屋興宣氏が顧問になっておるかどうかは私存じておりません。しかし何かの経済問題の委員に御就任願って、委員会等に出ていただいた事実はございます。
  152. 岡田春夫

    ○岡田委員 田中郵政大臣が来ないのでわからないのですが、私のところで入手いたしております資料を見ると、賀屋興宣氏の後援会というものができて、その後援会の世話人には岸信介、津島壽一、藤山愛一郎、佐藤榮作、その他たくさんの人がありますが、こういう人がなっておられるという話も聞いておるのですが、こういう事実は、総理ございますか。
  153. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと私具体的に承知いたしておりませんけれども、賀屋君と私とは長い間の友人でありますから、あるいは後援会等において世話人になっておるかもしれません。明確にはいたしておりません。
  154. 岡田春夫

    ○岡田委員 正力国家公安委員長に伺いたいのですが、昨年の末に賀屋興宣氏が選挙の事前運動という容疑で、後援会の事務所を家宅捜索された事実があるようでありますが、こういう点について何か調査をされた事実は御存じございませんか。
  155. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 ただいまの事実はまだ聞いておりません。
  156. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ時間がありませんので進めますが、これは総理大臣、重大な問題ですから伺いますが、賀屋興宣氏はA級の戦争犯罪人として現在おるわけであります。現在は仮出所中であって、犯罪人としての身分というものはそのまま続いているわけです。こういう事実についてどのようにお考えになりますか。
  157. 岸信介

    岸国務大臣 A級戦犯の何として拘置され判決を受けた人が仮釈放され、もしくは拘置されておりましても、日本の国内法におきましては一切法律的に何らの制約を受けておらない、こういうふうに解釈いたします。
  158. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは大へんな問題です、総理大臣。それじゃ賀屋興宣氏は公民権はありますか。——公民権はありませんよ。たとえば事例をあげて——法務省の保護局長見えておりますか。——公民権がありますか。これは刑法の第五条の法規に適応して公民権がないのですよ。公民権のない人が第一政治活動をしてよろしいのですか、  ですか。大体公民権があるのですか、どうですか。法務大臣から伺います。
  159. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 はっきりしたお答えはもう少し調べて申し上げますが、私が従来承わったところでは公民権があると承わっております。今政府委員が出て参りますから、もし誤まっておれば訂正いたします。
  160. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは公民権があるかないかで問題が違うわけですね。  それじゃ、外務省に伺いますが、賀屋興宣氏は今仮出所中である。従って、岸さんの場合は違うのです。はっきり申し上げますが、岸さんの場合は、容疑が釈放になったから、これはいわゆる戦争犯罪人の資格ではなかったわけです。賀屋興宣氏の場合には、法的にはっきりと宣告をされて、無期という宣告をされておるわけです。戦争犯罪人という地位なんです。その点は何といっても見のがすことができないのです。そこで、この戦争犯罪人という地位について、刑の減刑その他については、連合国の許可なくして行うことはできないのです。これはアメリカ自身がはっきりと態度を明らかにしておる。そうすると、仮出所という現在の地位は、戦争犯罪人という地位なんです。その戦争犯罪人に公民権があるなどということはナンセンスですよ。いいですか、たとえば、国内において、どろぼうの場合において、それは刑の執行中において公民権がありますか。その点ははっきりしておるのです。しかもこの賀屋興宣氏の戦争犯罪についての宣告は、平和侵犯に関する罪ということは、極東軍事裁判の判決によってはっきりしておる。その事実を認めながら、その刑の執行中の者が、公民権があるということをおっしゃるならば、具体的におっしゃって下さい。
  161. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは純粋に法律的な見解を申し上げます。御説のように、これは連合国軍の法廷あるいは連合国側の法廷によって、いわゆる戦犯としての刑を受けた場合につきまして、占領中におきましては先方の特別な指令的なものがありまして、これを日本の国内法上やはり犯罪として扱うということがありましたけれども、占領後においては、日本の国内法には何ら根拠がない。占領中においてはやむを得なかったのでございますが、占領が済みましたあとにおきましては、何ら国内法上人の資格に関する制約はございません。
  162. 岡田春夫

    ○岡田委員 林さん、またそういうことを言う。私は前に、あなたは八百と言うて問題になったけれども、あなたはそういうことを言うから、私は具体的に言います。  平和条約の十一条を見てごらんなさい。十一条には、今までの通り続けるという意味のことが書いてあるじゃないか。あなたは平和条約の十一条を読んだことがありますか。この十一条におきましては、減刑と仮出所に関しては、極東軍の関係の裁判に参加した国国の承認と、日本の勧告がなければだめだということになっておるのですよ。それならば、戦争犯罪人の地位は、占領中と、その後においても継続されておるのです。それをあなたは、平和条約ができてからそういう状態はなくなったから、どうでもいいなどとおっしゃる。——保護局長見えておりますか。これは保護局長の答弁を伺いますが、戦犯に対して保護局長が、これは保護局の仕事として扱っておるはずだが、どうですか。
  163. 江崎真澄

    江崎委員長 保護局長見えておりますか。——それじゃ、唐澤法務大臣。
  164. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 今事務当局にもよく確かめてみましたが、先ほど私のお答えいたしました通りでございまして、公民権を持っております。
  165. 岡田春夫

    ○岡田委員 公民権を持っておるとおっしゃるならば、その論拠をはっきりおっしゃって下さい。具体的に伺いたいのでありますが、平和条約十一条との関係並びに刑法第五条との関係、外国判決におけるところの効力の問題との関係において法律的に明快に一つ答弁を願いたい。
  166. 林修三

    ○林(修)政府委員 法律の解釈の問題でございますから私からお答えいたしますが、平和条約十一条はおっしゃる通りでございまして、平和条約締結後においていわゆる戦犯として日本国が拘禁を続ける、それの赦免、減刑等につきましては、日本国の勧告に基いて当該戦犯を引き渡した国の承認に基いて釈放する、あるいは減刑するときまっていることはおっしゃる通りでございます。しかしこういうふうに戦犯として拘禁する、あるいは同時に戦犯を中途において釈放する、あるいは減刑する、仮出所するということと、他の法令においていわゆる人の資格に関して、つまり刑の宣告を受けた者あるいは刑の宣告を受けてなお執行を終らない者、あるいは執行猶予中の者ということで、いろいろな法令で人の資格の制限を日本の国内法できめておりますが、その場合の刑というものは連合国の法廷によって与えられた刑は含まない、これははっきりそう解釈しております。日本の裁判所によって受けた刑をさしておるわけであります。
  167. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ具体的に林さんに伺いましょう。林さんは専門家なんだから……。今賀屋興宣氏は仮出所中なんですか、減刑をされて出ているのですか、どうなんです。
  168. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は実は私所管のことでございませんで法務省の方が所管でございますが、私の聞いております範囲では仮出所であると聞いております。
  169. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたはあまりわからないくせに答弁をしないで下さい。仮出所中であると言うが、仮出所中なんですか、これは法務大臣に伺っておきましょう。
  170. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 お答えいたします。仮出所中だそうでございます。しかし先ほど来法制局長官からも申し上げました通り、これは国際裁判の法廷における刑罰でございまして、それが仮出所中でございましても、減刑でございましても、日本の法律における公民権を停止するようなその原因には国内法で扱っておりませんですから、さように解釈をいたしております。
  171. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ仮出所中であるならば、公民権の停止がないから選挙に立候補できるわけですね。
  172. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 お言葉の通りでございます。
  173. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ今減刑の要求をしているのはどういう意味なんですか。
  174. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 私は賀屋君が今減刑の希望を述べているかどうか、それはつまびらかにいたしておりません。かりにそういうことがありましても、それは立候補の問題——法律上制限を受けておるから立候補できない、従って今のような減刑の運動とかいうようなことがあるということにはならないのでございまして、法律的には全く別個の関係に立っておるのでございます。
  175. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃこれは岸さんにはっきり伺っておきますが、今の法解釈から言うと、賀屋興宣氏は終身禁固なんです。戦争犯罪人として終身禁固の地位で、公民権があるので衆議院議員に当選して、場合によってはこの終身禁固の犯罪人は大臣にもなることができる、こういう解釈ですか。     〔「総理大臣にもなれるよ」と呼ぶ者あり〕
  176. 岸信介

    岸国務大臣 法律上の解釈は、今岡田委員の言われる通りであります。そこでこの問題については、実はこの前の参議院選挙に橋本欣五郎君がやはり同じ立場にありまして立候補いたしまして、これは落選はいたしましたけれども、やっております。私の聞いているところによりますと、この平和条約締結後におきましては、巣鴨に拘置されておる人々も選挙権を行使さしておるというふうに私は聞いておりまして、法律上公民権の何らの制限はない。
  177. 岡田春夫

    ○岡田委員 今法律上の問題については関係ないという話ですが、それじゃ一般的な道義的な問題として伺いましょう。これは国民が納得するかどうかなんだが、戦争犯罪人で終身禁固の者が、どなたかが言ったように総理大臣にもなることができる、日本国は戦争犯罪人が終身禁固の犯罪人のままで総理大臣になることもできる、こういう点について岸さんは賛成された、こういうように私は了承してもよろしいですか。これは岸さんが最高顧問に賀屋興宣氏を選んでいるということからいってもあなたは答弁しなければならぬ。戦争犯罪人で終身禁固の者を自民党では幹部にし、しかも総理大臣の最高顧問にしている。これはあなたの内閣の性格を表わしていると思うのだが、これは道義的にも非常にけっこうなことだと思いますか、どうですか。
  178. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来法律の解釈についていろいろ御質疑があり、これに対して私は今明確に応答いたしております。やはりこの民主主義のなにから申しまして、人権の問題はきわめて重要な問題であり、またいろいろその人の持っている才能等を国の繁栄のために利用することは、私は差しつかえないとかように考えて、党内におきましてもまた私個人といたしましても、同君の意見を聞くような地位にお願いをしている、こういうことでございます。
  179. 岡田春夫

    ○岡田委員 岸さんがそういうことを答弁されると、岸さんの株はますます下りますよ。岸内閣の本質というものは、戦犯内閣であるということをかねがね言われておった。ところが私はさっき言ったように、岸さん自身については、戦犯という容疑はあったけれども、これはパージ解除とともになくなったのだということを言っている。しかしあなたの内閣総理大臣の最高顧問に現実に戦争犯罪人と法的に国際法上きめられた人をするというのは、これは何ら支障のないことだし、こういうことは当りまえのことだということは、一体何を意味するか。国民から言わせれば、岸内閣はさすがに言う通りだ。戦争犯罪人を最高顧問にしている。これは田中さんが来ないから質問しなかったのだが、官吏にしている。郵政審議会の委員にしている。戦争犯罪人を公務員にしていいのですか。皆さんの方は答弁はうまく逃げるかもしれないが、そんなことは国民は許しませんよ。そんなことは国民は納得しませんよ。戦争犯罪人である。あなたのように容疑があっただけとは違うのですよ。戦争犯罪人それ自身を、しかも終身禁固刑の保釈中の者を——たとえば例をあげてみましょう。日本の国内でどろぼうして仮保釈になった。三分の一の刑期が済めば仮保釈になる。この仮保釈中は国内法では刑の執行中で、刑の執行中には公民権がないのですよ。公民権がないのにこのどろぼうが代議士に当選した。代議士に当選しなくてもこれをあなたが最高顧問にして、国民の常識が許しますか。道義的にどうなんですか。問題は違うと言うけれども、それはこの間の侵略戦争の意義がわかっていないから違うと言うのです。これは平和を侵害したのです。まさに憲法違反ですよ。
  180. 岸信介

    岸国務大臣 これは先ほど来申しているように、日本国内の法律によりまして刑の宣告を受け、その執行中であるとか、あるいは保釈中であるということと、私は法律上の扱いが全然違っていると思います。従いまして、今どろぼうをした場合にどうだとかいうようなお話がありましたけれども、国内法から見ると、先ほど来法律的な解釈を申し上げましたように、何ら制限を受けているわけではございませんから、そのことが違法になる、あるいは許されないという性質のものではないと考えます。
  181. 岡田春夫

    ○岡田委員 もう一点だけ伺いますが、それでは減刑嘆願なんかは必要はないですな。今政府は盛んに減刑嘆願をアメリカを通じてやっているわけですが、減刑嘆願をする必要なんかないですよ。堂々と代議士に当選するし、総理大臣にもなれるし、総理大臣の顧問にもなれるし、何も減刑嘆願なんかする必要はないということになりましょう。たとえば減刑嘆願を懇願しても、実現しなくてもかまわない、どっちだっていいんだ、そういうことですな。
  182. 岸信介

    岸国務大臣 法律的に申しますと、公民権の関係からいえば、その通りであります。しかし岡田委員のような御質問も出る場合がありますから、減刑された上の方が問題は少いのではないかと思います。
  183. 岡田春夫

    ○岡田委員 私のような質問がありますからと言うが、これは私一人じゃないのです。国民の意見なのです。国民の大半は、総理大臣の顧問に戦争犯罪人という刑の終身禁固刑の者があるということを知ったならば納得しませんよ。こういう点は道義的な面として——私はこの問題ばかりやっていると時間がなくなるから次に進みますが、これは岸内閣の汚点の一つになりますよ。これははっきり言っておきますが、戦争犯罪人内閣ということがよく言われるとすれば、そういうことも裏づけの一つになりますよ。これは十分お考えを願いたいと思う。  そこでその次に巨頭会談の問題ですが、ソビエトの十二月十日のブルガーニン書簡に対して政府が回答されたのは、三カ月もおくれてこの間回答された。その間にアメリカ、イギリスでは、もう盛んにソビエトとの間に書簡の交流をやってどんどん進んでおるのですが、その書簡を見ても、外交青書を見ても、巨頭会談はけっこうだが慎重な準備が必要であるということしか言っていないのですね。具体的に巨頭会談についてどうなのですか。たとえば議題などについて——具体的に伺いたいのですが時間がないから控えますが、議題などについては、たとえば原爆の実験禁止とか軍縮問題とか、こういう点はこれはダレスも要求しているのです。アメリカが原爆実験の禁止や軍縮問題については取り上げるべきだ、こういうことを言っているのですが、この点については日本政府としてはどうなんでございますか。こういうことを議題に取り上げるのは賛成なのですか、反対なのですか。
  184. 岸信介

    岸国務大臣 日本は従来、原爆の実験禁止の問題、軍縮の問題等について、強く日本意見を主張いたしております。そしてまた、この東西緊張の一つの焦点がそういうところにあるわけでございますから、これが東西両巨頭の話し合いに乗せられて、そうしてこれらに対する一つの平和共存的な方向に解決が見出されるということは望ましいと考えております。
  185. 岡田春夫

    ○岡田委員 軍縮問題については巨頭会談で取り上げるのは望ましいと言われるのだが、藤山さんは先月の十日に、アメリカ、イギリス、フランス、カナダに対して、軍縮討議をやろうじゃないか、その場合にソビエトを除いてでもやろうじゃないかという覚書を出されたというのですが、こういう事実はありますか、どうなのですか。
  186. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 覚書を出したことはございませんが、国連の軍縮委員会が、二十五名の委員で成立しておりますけれども、開かれておりません。開かれておらぬのは、ソ連が二十五名の拡大委員会について反対をいたしたからなのであります。そしてソ連がそれに参加しない。しかしながら軍縮問題を進行させるためには、何としても国連にあります軍縮委員会を再開して、ソ連がもう一ぺんそこに戻ってくるような方向を軍縮委員会考えることが必要だと思うのです。従いまして私どもといたしましては、国連における軍縮委員会を開いて、そういう問題を一つ討議してみようじゃないかということは、提案をいたしたわけであります。
  187. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、われわれの聞くところによると、ソ連がたとえば軍縮委員会に参加しない場合でも委員会をやろうじゃないか、こういうことをあなたの方で提案されたといわれているし、現実に軍縮委員会にはソビエトは参加しない、こう言っているのであるから、これは参加する見込みがないのに、アメリカ、イギリス、フランス、カナダに対してそういう書面を出したというのだが、参加するように努めるならば、なぜソビエトにも要請しなかったのですか。ソビエトを除いて四国にこの覚書を出したのは、参加しなくてもやろうじゃないかということを言ったからですよ。しかもそれに対する回答は、アメリカを除いてイギリス、フランス、カナダは、ソビエトが参加しないでこういうことをやっても無意味である、巨頭会談でこういうことを近いうちにやることになっているから、日本よ早まるなと言ってきている。藤山さんあわてたわけだが、何のためにこんなものを出したのです。
  188. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、軍縮委員会にソ連が参加いたさぬことは非常に不幸でございます。従いましてソ連が参加していない軍縮委員会を開いて、ソ連はどうしたら参加するのか、そういうものをソ連以外の軍縮委員会で研究することは、私は非常に必要なことだと思います。その結果を考えていきたい、こういうふうに考えましたから、われわれは有力なそれぞれの国に対して、軍縮委員会を開いて、そうしてソ連も入るような方法はどうしたらいいか——ソ連は昨年三十四名までの委員を主張したのでありますから、そういう人数の問題でソ連が参加しないのか、あるいはどうかということも軍縮委員会検討する必要がある、こう思って、ソ連が参加しない場合における今の軍縮委員会でも開いて、そうして話を進める方がいいのではないか、こう考えたのであります。
  189. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではソ連に対して参加してくれという要請を出したことがありますか。
  190. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ソ連にはまだ出しておりません。しかしながらそういう委員会で話し合いをして、ソ連が参加する方法を研究することが、私は早道だと考えたのであります。
  191. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし参加してもらいたいというのが日本政府の態度でしょう。それなのに、参加してもらいたいという希望を出さないで、アメリカとイギリスとフランスとカナダ、この四国で軍縮問題について討議しようなどということは、これは明らかにアメリカを除いて二国から日本政府が笑われているじゃありませんか。はっきり回答が出てきているのですよ。当りまえなのです。これは笑われますよ。ソビエトを除いて軍縮の会議をやってどんな意味があるのですか。両陣営の緊張と言っているのに、アメリカ、イギリス、フランス、カナダ四国で軍縮会議をやって、ソビエトを除いた軍縮会議にどんな意味があるのですか。どういう意味があるのか、その点を一つ伺いたいのです。
  192. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 岡田委員と大して説は違わないのですが、ソ連の入らない委員会では軍縮の意味がないから、それでどうして入れるかという方法を軍縮委員会で研究してみようじゃないか。それにはやはり軍縮委員会を一ぺん開いてみることがいいのじゃないか。そうしてそこで相談して、どう方法ならソ連が入れるか。ソ連は昨年三十四名を主張したのですから、あるいは二十五名を三十四名にすれば入れるのか、そういう問題を一ぺんソ連が入らないところでも相談してみようということであったのです。
  193. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし何人にしたら入るか入らないかというのは、アメリカに聞いたってわからないですよ。ソビエトが入るか入らないかというのは、ソビエトに聞かなければわからない。方向が違うですよ。東の方に行くといううのに西の方を走っているようなものですよ。そんなことは意味がないと思うのだが……。  それから原水爆禁止の問題ですが、これは日本政府は本気で実験禁止をしようとしているのですか、どうなのですか。
  194. 岸信介

    岸国務大臣 これはしばしば私がお答えし、私の所信を明らかにしておるように、私はこれはぜひとも真剣に禁止しなければいかぬと思っております。そうしてこの新しいエネルギーというものは、人聞の繁栄、福祉のために用いらるべきものであって、これを破滅に導くような武器に使ってはいかぬということは私の信念であり、これを困難があっても実現しようという精神でやっております。     〔委員長退席、田中(久)委員長代理着席〕
  195. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでそのためには、得意の総理大臣答弁で、あらゆる方法において努力をするということだと思うのですが、去年日本提案が国連で失敗したというのは、これは去年の予算委員会でいろいろ伺いましたが、その場合に総理大臣のお話では、結局、西欧陣営の方は軍縮と結びつけておるからだ、ところがソビエトの方は結びつけないで即時実験を禁止しろと言っているから、その二つの意見の対立を縫って、日本の提案というのは両方を包摂したような形で、そうして西欧の方にも受け入れられ、それからソビエトの方にも受け入れられるような独自の提案を出した。それが十八ヵ国の支持を得たけれども、全体として認められなかったんだ、こういうことを言われましたね。去年の状態としては、西欧というのは軍縮と結びつけたんだ、ソビエトは結びつけないんだ、その間における努力であったのだというように言われたと思うのですが、その点そういう御苦労だったのじゃなかったのですか。
  196. 岸信介

    岸国務大臣 お話の通り、東西両方の主張が真正面に違っておる。これを何とか両方とも歩み寄るにはどうしたらいいかという意味でこういう提案をいたしたわけであります。
  197. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで伺いますが、この間ダレス長官がはっきり言っているのです。今度はアメリカとしては軍縮と結びつけなくてもいいと言っている。それからスタッセンがこの間上院において核実験は二年間停止しても、これは軍縮とは結びつけなくていいと言っても、軍縮と結びつけないで核実験の禁止についてそういう提案をされる御意思はあるのですか、どうなのですか。
  198. 岸信介

    岸国務大臣 この軍縮及び核兵器の問題につきましては年々国際的の各国考え方も進歩してきております。やはりわれわれが念願しておる、これを禁止しなければいかぬということはどこの国の何であっても、私は人間のほんとうの良心に響いておると思います。従いまして情勢が変ってきておるのでありまして、去年出したからそれに拘泥するということは、もちろんわれわれは考えておりません。何とかして一日も早くこれの禁止を実現するということについて、私は世界的に見まして情勢を十分判断をして、最も有効な適当な提案をするのがいいと思います。
  199. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ続いて伺いますが、要するに去年は軍縮と結びつけた点で苦労があった。ところが今度は情勢が変ってきたと思う。軍縮とは結びつけないでもあくまでもこれを出していきたいのが、今度の政府考え方である、こういうように私は解釈したいと思います。よろしゅうございますね。
  200. 岸信介

    岸国務大臣 私は今の岡田委員のお話のように思っております。
  201. 岡田春夫

    ○岡田委員 ブルガニーン書簡もこれは切り離して、国際的管理機関、査察機関を置いて、二年間停止しようではないかというのが、ブルガーニフ書簡の趣旨でありますが、これにも賛成でございますね。
  202. 岸信介

    岸国務大臣 今お答え申し上げましたように、情勢が変ってきておりますし、それから両方の主張もまた新聞等に表われているところを見ますと、よほど接近した状況があると思います。従いましてこの情勢を十分把握して、私どもとしては一日も早くやめるというところを目標としておりますから、それに向って適当な努力をしたい、こう思っております。
  203. 岡田春夫

    ○岡田委員 アメリカが四月の五日からエニウエトクで実験をすると思うのです。エニウエトクは公海上の実験になるのだが、公海自由の原則に反すると思うが、この点はどうですか。
  204. 岸信介

    岸国務大臣 これはすでにクリスマス島の実験の場合にも、その及ぼすところの影響が公海に影響を持ち、また一定の期間公海上における航行やその他のものを禁止するというような措置をとることは、私どもとしてはやはり公海の自由の原則から見ると、好ましいことじゃないと思う。ただ御承知通り、この原爆の実験というようなことは、従来ありましたところの国際法上の観念では、まだ扱うことのできない一つの事態ができておりますから、それが法律的に言ってどういうふうな扱いになるかということにつきましてはなお国際法上研究すべき問題があると思いますが、精神から言うと、私どもは公海自由の原則に反すると思います。
  205. 岡田春夫

    ○岡田委員 今公海自由の原則に反するというお話ですが、きょうの新聞等によると、外務省は、今御承知のようにジュネーヴで海洋法に関する国際会議が行われておる。この国際会議の条章の中に、これは私持っておりますが、四十八条に、原爆の実験については公海を汚濁するから、これを使わさないようにするという条項があるのだが、これをソビエトはもう一本はっきりした形でやろうじゃないかという。要するに今総理大臣の言われたように、公海自由の原則に反するというのを明文化しようじゃないか、こういうことが出ておるのに対して、何か日本政府、外務省は、ソビエトの提案に対しては趣旨は賛成だけれども、ソビエトが提案するから賛成しないのだ、棄権するのだというようなことを通達したと伝えられるのだが、さっきから総理大臣にしてもあなたにしても、いいものはソビエトだろうが何であろうが賛成するのだと言ったのに、今度の場合にどうしてこうやって逃げるのです。
  206. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま御指摘になりました四十八条の汚染の問題については、原則としてわれわれも賛成いたしております。今回のソビエトが公海の上で原爆を禁止しようというのは、二十七条の「公海の自由」のところに提案をしてきておる問題だと思います。日本としては、これが議題になることに賛成をいたしております。しかし議題になりまして討議をしてみまして、ソ連の言うところがどういうところであるかを十分聞かなければ、日本の態度というものはきめられません。ことに現在のような事態におきましては、公海上において禁止すると同時に、やはり大陸においても禁止しなければ、ほんとうの原爆の禁止の意味は立たないのでありますから、こういうような永久法典を作ります場合に、そういう点も十分考えて参らないといけないのでありまして、討議に入りまして、ソ連の提案を十分吟味しました上で、われわれとしては態度を決することにいたしております。
  207. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたの答弁はナンセンスなんです。なぜならば、今会議をやっておるのは、陸上の法律をやっておるのではなくて、海の上だけの法律をやっておるのです。陸上のことについてここできめろといったってきめようがない。海洋法です。海の上の法律で陸のことをきめなければ賛成できないなんて、そんな話はありますか。海洋法という法律の実定法を作るのに対して、海上で実験するのはいけない、総理大臣だってあらゆる方法でやるというのなら、これに対してはこれで反対だ、陸上については反対だという措置をとればいいのじゃないですか。陸上の方は書いていないから、これに対してはあいまいな態度でいくというのはおかしいと思うのだが、どうですか岸さん、今会議をやっておるのは海洋法という海の上の法律なんです。それを趣旨は賛成だけれども、陸の方が書いてないから、これは棄権するんだとかいうのはおかしいと思うのだが、どう思いますか。
  208. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん私の申したのは海洋法としての会議であることは間違いないのでありまして、従って「公海の自由」という二十七条に、原爆の問題を追加するかしないかという問題であります。日本の代表団といたしましても、インドの代表団その他の代表団とも連絡をいたしておりますが、多くの国が追加しないでも、現在準備された公海自由の原則によって、それは取り締れるのじゃないかということを言っておる国が多いわけであります。しかしながら日本といたしましても、やはりよくソ連の言うことも聞いてみまして考えなければならぬということを申し上げたわけであります。しかしながら政治的に考えてみますと、これはやはり海上における原爆ということだけを禁止するということは、陸上における原爆の実験がひんぴんとして起っております今日、必ずしも適当でないのではないかというふうに考えられます。
  209. 岡田春夫

    ○岡田委員 大体法律をきめる会議に、政治的な判断をすること自体が間違いです。法律については法律上の決定をするのが当りまえです。そういうことを言うからあなたには日ソの漁業交渉ができないのです。隣に河野さんいますが、河野さんおそらく笑っています。ああいう非常識なナンセンスを言っておると思っていますよ。そんなことで魚なんかきまるもんかと思っていますよ。  ともかく話を続けますけれども、今度は条約局長に伺いますが、私が今公海自由の原則に反するというのは、これは岸さんは反するとはっきり言った。ところが私はエニウエトクの四月五日のアメリカの実験は、国連憲章の信託統治制度の規定にも反すると思うがどうですか。
  210. 高橋通敏

    高橋政府委員 この点は信託統治協定の趣旨から見れば、そのようなことはさるべきでないと思っております。しかし法律的な点で考えますと、私ちょっと今資料を持っておりませんが、たしかこの点は信託統治理事会で非常な問題となったかと思っております。その結果、信託統治地域で原爆実験をするのが適法であるかどうかということで、国際司法裁判所の意見を聞こうかということになりましたが、聞かずにそのままになっている状況ではないかと思います。
  211. 岡田春夫

    ○岡田委員 日本は安保理事会の非常任理事国になったのですが、この問題を信託統治協定違反であるという意味なり何なりで、安保理事会で取り上げるおつもりがありますか、どうですか。
  212. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保理事会の一員でありますので、将来にわたってこの問題は研究して参るつもりであります。
  213. 岡田春夫

    ○岡田委員 将来にわたってじゃないのですよ。条約局長解釈も聞違っているのですが、一九四七年の四月にきめられた南洋諸島に関するアメリカ信託統治協定、これの第六条にはっきり書いてある。第六条は一、二、三、四とあって、言っていると長くなるから簡単に言うけれども、「住民の健康を保護し、」云々と書いてある。原爆の実験は住民の健康を保護することにならない。これは考えてみてもわかるわけだ。原爆実験はこの信託統治協定に反するのですよ。信託統治協定に反するということがはっきりしているのなら、藤山さん、この問題を取り上げるおつもりはありますか、どうですか。
  214. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 信託統治の問題につきましては、機熟して参りますれば当然取り上げます。
  215. 岡田春夫

    ○岡田委員 ですから第六条に反するということを言ったのだが、この点について取り上げますかと私は言っているのです。
  216. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いろいろ検討いたしました上で、反しておりますれば当然取り上げていくべきだと思っております。
  217. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは条約局長に伺いますが、信託統治制度の南洋のエニウエトクの問題は、信託統治理事会でやるのですか、どこでやるのですか。
  218. 高橋通敏

    高橋政府委員 たしか戦略的信託統治ですから、安全保障理事会だと思います。
  219. 岡田春夫

    ○岡田委員 総理大臣、覚えていて下さい。これは信託統治理事会でやるのじゃない、安全保障理事会でやる問題なのです。日本は安保理事会の非常任理事国なんだから、この問題は取り上げなければならない義務があるのです。藤山さんの言っているように、いずれ取り上げますという問題じゃありません。安保理事会がやらなければならない義務がある。なぜやらないのですか。藤山さんは、安保理事会の非常任理事国としてエニウエトクの実験問題については取り上げるという訓令を出しておりますか。訓令を出していないのなら義務を怠っているじゃないですか。
  220. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今お答えいたしましたように、この問題は十分研究いたしました上で、取り上げる場合には取り上げていきます。
  221. 岡田春夫

    ○岡田委員 研究いたしましてと言ったって、四月の五日ですよ。あと十日しかない。実験が済んでから研究するのか。安保理事会の取り上げなければならない義務ですよ。訓令しないとしたら日本政府は怠っているのですよ。なぜこれを取り上げないのですか、取り上げるつもりはありますかどうですか。総理大臣、あらゆる方法においてやるというお考えならば、安保理事会の義務であるこの実験問題について禁止しろという訓令を政府はお出しになる考えがありますか、はっきりして下さい。今訓令を出さなかったら間に合わないのですよ。安保理事会は何ヵ国か集まらなければならない。訓令を出すつもりですか。この点くらいははっきりお答えなさったらどうですか。
  222. 高橋通敏

    高橋政府委員 ちょっと補足さしていただきたいと思います。先ほどの原爆の実験禁止の問題でございますが、信託統治地域で行うということはもちろん私ども全般的な禁止の建前から、また特に信託統治という見地から考えても、趣旨としては好ましくないとは考えております。ただ法律的な点になると、特に戦略的信託統治という場合でありますが、戦略的信託統治であるがゆえに絶対禁止になっているかどうか、法律的に見るとその点はなおいろいろ疑問が起ってくるのじゃないか、かように考えております。
  223. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ条約局長に伺いますが、安保理事会の任務としてはこれはやらなければならないでしょう。国連憲章の八十三条、林さんは答えたくてしようがないらしいから答えて下さいよ。
  224. 高橋通敏

    高橋政府委員 実は先ほど申し上げましたように実例がございまして、法律的にそのような問題が起ったことがあるのであります。その法律点で必ずしもその場合に決定にならなかった。ということは、その点法律上のことを問題にいたしましても、割り切って信託統治協定またはその関係規定上できないんだということを断言することは、もちろん法律解釈の問題になりますが、多少疑問があるのじゃないかと思っております。
  225. 岡田春夫

    ○岡田委員 そんなことを言っておるのじゃない。私の言っておるのは、安保理事会では取り上げなければならない義務が八十三条にある。これが適当であるかどうかというのは会議の結果ですよ。会議の結果としてそれがどうなるかというのは別問題として、日本が安保理事会に入っておる限りは、これは取り上げなければならない義務が八十三条であるのですよ。それなら取り上げるのが当りまえじゃないですか、取り上げたらいいじゃないですか。取り上げないとすれば、あらゆる努力ということは看板だけということになる。総理大臣どうですか、法律問題は別として道義的に考えても、安保理事会で取り上げたらいいじゃないですか。そういうことを安保理事会でやらないような日本が安保理事会の会員だったら意味ないじゃないですか。
  226. 高橋通敏

    高橋政府委員 たびたび立って恐縮でございますが、八十三条でそのような規定がございますけれども、これはそういう場合に取り上げなければならないという義務ではない。もちろん取り上げることができると思いますが、しかし義務ということで書いてあるのではないと思います。
  227. 岡田春夫

    ○岡田委員 義務ではないとしても、取り上げられるのですから取り上げたらどうですか。総理大臣は原爆実験にはあらゆる努力をするとおっしゃった、なぜ取り上げないのですか。取り上げて下さいよ。日本の国民の要求じゃありませんか、取り上げたらいいじゃないですか、政府が訓令を出したらいいじゃありませんか。
  228. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来外務大臣がお答えしておるように、私は十分に研究してそしてこれの処置をきめたいと思います。
  229. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはやっぱりあらゆる努力の中に入らない。あらゆる努力をしてないということですよ。研究しますなんて四月五日まで研究したら、実験が済んでそれで終りですよ。そういうことになります。国民はそう思いますよ。四月五日前にそういう決定をしますかどうですか。
  230. 岸信介

    岸国務大臣 至急に研究すべきことは当然であります。私はあらゆる場合にあらゆる努力をするということを申しておりましたが、しかしそれは何かそれに対して根拠のあるもので、今私は法律的の解釈その他について十分な確信を得ておりませんからここで回答を避けておるわけでありまして、決してそれを怠るとかそれをしないとかいう意味で申し上げておるのではありません。十分にそれを研究して至急に処置を考えます。
  231. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃこれは至急やっていただきたいということを希望いたしまして話を進めます。  サイドワインダーの問題が先ほど中村さんから出ましたが、津島さんはサイドワインダーは核兵器ではない、そういう政府答弁なんです。これはわれわれ反対なんで、サイドワインダーは核兵器だと思うのですが、しかしその点は政府との見解の相違があるとしても、それじゃ一つ伺いますが、IRBMは核兵器でありますかどうですか。
  232. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。サイドワインダーは核兵器では絶対にございません。装備のない構成になっております。IRBMは弾道飛翔体でございまして、これに核兵器をつけるかどうかという問題はあると思います。これは単純なロケットで、弾道的に長距離行くものでございます。弾道弾に核装備をするかどうかということになるわけで、またそれが可能であると思っております。
  233. 岡田春夫

    ○岡田委員 これはいろいろ意見があると思いますが、可能であるというならば核兵器でもあり得るわけですね。
  234. 津島壽一

    津島国務大臣 BMという言葉は弾道飛翔体という意味であります。それ自体が核兵器であるという断定はできないのであります。ただし核兵器としてこれを利用し得るような構成であろうと私は考えております。
  235. 岡田春夫

    ○岡田委員 津島さんは防衛庁長官だが、アメリカとイギリスのIRBMについての協定を読んだことがおありですか。
  236. 津島壽一

    津島国務大臣 ただいまの御質問協定というのは、最近のミサイル基地に関する米英協定ですか。——これはよく読んでおります。
  237. 岡田春夫

    ○岡田委員 読んでいるならわかるでしょう。核兵器だということがはっきりしているじゃないですか。アメリカが核弾頭を持ち、イギリスがIRBMを持って、核兵器の核弾頭を使う場合にはアメリカとイギリスが合意する、それによって使うと書いてあるじゃないですか。あなた読んでいて理解できなかったのですか。
  238. 津島壽一

    津島国務大臣 それは用語の問題だろうと思いますが、核弾頭をつけなければただ飛翔体というものにとどまるわけでございます。ただし、そういうような核弾頭をつけ得る装置なり、またそれがそれなくしては有効に使えない場合には、あるいは通俗的にそれを核兵器だということも、表現上はあり得ると思います。
  239. 岡田春夫

    ○岡田委員 あまりナンセンスな答弁はよしてもらいたいと思うのです。というのはIRBM戦争になったときに、核兵器をつけないでコンクリートの頭をつけて飛びますか。国民が常識で考えたってわかるじゃないですか。核兵器の弾頭をつけないで、かわりにコンクリートの頭をつけて飛びますか。これはこの前重光さんがオネスト・ジョンについて言った答弁なのでありますが、あなたはそれと同じことを言っている。国民は納得しませんよ。あなたがここで言いくるめるつもりだってわれわれは納得できませんよ。ここでそんなことばかり言っていても仕方がないからやめますが、原爆持ち込みに岸さんはあくまで反対なんですか。
  240. 岸信介

    岸国務大臣 しばしば私が声明している通り、反対でございます。
  241. 岡田春夫

    ○岡田委員 岸さんに伺いますが、原爆の持ち込みに反対ならば、今度の国会で社会党が原爆持ち込み反対の決議案を出した場合に、自民党総裁として岸さんは賛成されるでしょうね。これははっきり伺っておきます。
  242. 岸信介

    岸国務大臣 これは党としてどういうなにをするかということは別です。私は総裁といたしましては党のそれぞれの機関に諮らなければなりませんから、議案の問題としての扱いにつきましては、私はここでなにしませんが、私自身の考えは、従来から言う通り、持ち込みには反対であります。しかし議案の扱いにつきましては、これは党との関係がありますから……。
  243. 岡田春夫

    ○岡田委員 そんな技術的なごまかしを言ったらだめですよ。それがそつのない答弁だというなら国民は納得しないですよ。原爆持ち込みに反対という趣旨なら、社会党がどういう扱いでもいいから一緒にやろうと言った場合に、賛成するのは当りまえじゃないですか。手続の問題で賛成するかしないかわからない——中曽根君がそこにいるが、この前ラジオの討論会のときに、最後に自民党は賛成するかと言ったら、それは考えてみなければわかないと言った。もし自民党が賛成だというなら——実際に社会党が提案したときに賛成するか反対するかわからないのですよ。ごまかしなんです。岸さんの本質というのはこれなんですよ。なぜはっきり言わないのですか。そつのない答弁というのは——そういう八方美人的な答弁ではだめだ。あなたが反対なら確信を持って反対だとおっしゃったらいいじゃないですか。持ち込み反対の提案に賛成すると言ったらいいじゃないですか。それを総裁としてはっきりすれば、中曽根君もはっきり答弁ができたのですよ。あなたがはっきりしないから、中曽根君もはっきり答弁できなかったのですよ。あなたはなぜはっきりしないのですか。それがそつのない答弁というならだめだと言うのですよ。     〔田中(久)委員長代理退席、委員長着席〕
  244. 岸信介

    岸国務大臣 今申しましたように、私自身自衛隊を核兵器で装備しない、核兵器の持ち込みを認めないということは、一貫して申し上げておるところであります。これはそつがあるとかないとかいう問題ではないのでありまして、議案を両方で出し得るかどうかという問題になりますと、議案の内容だとかあるいは理由だとか、いろいろな事柄を党としては十分審議しなければならぬ問題であって、ここで内容も見ずに議案として賛成だとかどうとかいうことを岡田君が私に求められても、それは無理だろうと思います。それは私一の言うておる精神、一貫して言うておることを御了解いただいて、私が考えておるような理由なり扱いでもってやられるということであるならば、当然賛成すべきものでありましょうし、それが違っておるような内容であれば、これは困る。それは内容を十分見なければ、ここで答弁することはできないと思います。
  245. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういう言いくるめを言ったらだめですよ。要するに社会党が提案した内容なんかどうでも、ともかく私が言っておるポイントは、日本の国に原爆は持ち込まないということが書かれてあって、内容は自民党にまかせるという場合には、自民党は賛成しますか、原爆持ち込み反対の提案に対して、社会党と自民党が一緒に決議しますかどうですかという問題ですよ。場合によっては自民党から提案をしたらいいじゃないか。この前原爆禁止のあれを満場一致でやっておるじゃないですか。それをあなたが賛成するのだかしないのだかわからないと言ったら、やはり原爆持ち込みを許すかもしれないという意味にみんなとりますよ。
  246. 岸信介

    岸国務大臣 これは私はやはり内容を見なければわからないと思う。たとえば話は別でございますけれども、私がいろいろな情勢上解散するかしないかということと、社会党が出した解散決議に賛成するかしないかということとは違うように、内容を見なければわからない。
  247. 岡田春夫

    ○岡田委員 はっきりしておるじゃないですか。岸さん、あなた自身出したらいいじゃないですか。自民党は国会において多数党なんだから、あなたの趣旨に基いて原爆持ち込みに反対だという決議案を出したら社会党は賛成しますよ。なぜ出さないのですか。そんなこともできないのですか。
  248. 岸信介

    岸国務大臣 それは私は国会の責任のあるまた国民に対して最も厳粛な本会議その他において、私の声明をいたしておるところでありまして、特にそれを持ち出す必要はないと思います。そのために私がそれに反対であるとかなんとかいうことではない、私は責任を持ってその点を明瞭にいたしております。一片の決議でなしに、私の政治的のこの責任ある地位において申しておるのでありますから……。
  249. 江崎真澄

    江崎委員長 岡田君に申し上げますが、申し合せの時間がすでに来ておりますので、すみやかに結論にお入り願います。
  250. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは私は委員長にきわめて協力的ですから協力しますが、しかし大蔵大臣に前から質問するというのでだいぶ待機しておるから質問しなければならない。大蔵大臣に伺いますが、外貨予算は近いうちに決定になると聞いておるのですが、外貨予算はきまりましたか。その点が一点と、それから外貨予算予算としてきまったのに、撹乱されるような要素があった場合には、これは当然取り締らなければならないと思うのですが、そういう点はどうでございますか。
  251. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 外貨予算、上期ですが、これは今事務当局で相談中であります。近いうちに閣僚審議会を開いてきめたい、かように考えております。
  252. 岡田春夫

    ○岡田委員 外貨予算関係するのですが、蓄積円ですね。外国映画の蓄積円なんかを見ますと、月に二億五千万円くらいの蓄積円がたまっておる。ところが昨年末の蓄積円を見ると、二十七億円くらいにしかなっていない。そうすると月に二億五千万円ずつたまっておって、もう約十年近くたっておるのに、二十七億しかないということになると、どこかに使われておるということになるわけですね。そういうことを言うと、おそらく電源開発とかそういう面に使われているという御答弁なんでしょうが、その内容を少し詳細に伺いたいのです。たとえば電源開発に幾ら、それから合作映画に幾らとか、そういう点について、今為替局長がおられればその数字も伺いたいわけであります。
  253. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この蓄積円は、今お話のように電源開発に使っております。約五十数億になると思いますが、詳細なことは為替局長からお答えいたさせます。
  254. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 数字のことでございますから、私から申し上げさせていただきます。蓄積円につきましてはお話がありましたように、最近において二十六、七億であります。これに対して毎月二億数千万円蓄積円が残っているということはその通りでございますが、これは御承知のように電源開発に対しまして二回に分けて四十一億でございましたか、貸付をいたしました。それから国内におきまして外国の会社が合作映画を作ります、その合作映画の経費に充てることをいたしております。そのほか外国会社が本邦内におきましていろいろ必要な経費を支払うということを認めておりますので、毎月二億数千万あることは御指摘の通りでありますが、それを除きまして、結局現在蓄積円が二十七億程度ということになっておるのであります。
  255. 岡田春夫

    ○岡田委員 時間がありませんから、簡単に一、二伺って参りますが、外国映画の輸入、特にアメリカ映画の輸入で外国為替の予算が事実上擬乱されているわけです。撹乱されている数字はあとで申し上げますが、こういう撹乱されている実態について、この間の予算委員会で何人かの人が取り上げているわけです。今度大蔵省では外国映画の輸入割当については、輸入部会の増員なり何なりをして根本的に再検討するという話が出ているように聞いておりますが、この点はいかがでございますか。大臣が御存じなければ局長からでもけっこうです。
  256. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 委員会を強化いたしまして、新たにこういう方面に最も適任と思われる方五人の委員を増員いたしております。
  257. 岡田春夫

    ○岡田委員 根本的に再検討するのですか。
  258. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 根本的に検討いたしたいと思っております。
  259. 岡田春夫

    ○岡田委員 根本的に検討すると、三十三年度からの割当も変ってくるわけでございますね。
  260. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは検討してみた結果によらなければなりませんが、一応白紙の形で検討いたします。
  261. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは総理大臣にもよく聞いておいていただいた方がいいと思うのです。というのは、規定としては外国の映画を入れるのについては、大体一本輸入する場合に一千万円、三万ドルくらい。ところがアメリカの場合の歩合制という制度の入れ方でいくと、一本平均十二万ドルないし十五万ドルくらいになる。三万ドルくらいであったものが、アメリカ映画の場合においては十二万ドルないし十五万ドルくらいになるのです。そういうのが認められているわけなんです。しかもこれは具体的に申し上げますが、去年、おととし一年間で、アメリカの日本にある映画会社の輸入のものがどのくらいもうかっているかというと、昭和三十一年では七十五億円ももうかっているのです。それから去年の場合は七十四億五千万円もうかっているのです。そのうちで税金が幾らか取られますけれども、全体で大体千二百三十万ドルくらいのドルを向うへ送らなければならないのです。こうなると、これは大蔵大臣御存じのように、去年の外貨予算の割当は映画関係は八百万ドルなんです。八百万ドルに対して、アメリカだけでこの歩合でもうけているのが大体千二百万ドル、外貨予算自身が完全に撹乱されているのですよ。これ以外のフランスとかその他の国を合せると、大体千五百万ドルくらいになるのです。そうすると外貨予算の八百万ドルなんというワクがあっても、千二百万ドルはアメリカへ行っておるということで、外貨予算は完全に撹乱状態になっておる。この点はやはり根本的に再検討しなければならぬ。たとえば、例をあげて申し上げますが、これは取っつきやすい話ですが、「風と共に去りぬ」が何ぼ日本でもうけたかというと四億一千万円ですよ。「砂漠は生きている」というのが三億一千万円、「ローマの休日」は二億九千万円、それから「シェーン」というのは二億二千万円、全部何億台ですよ。これは税金を一五%除いた残りは、アメリカへ金が行くのです。これはやはり日本の最近のように外貨が赤字だといっているときには、私は根本的に再検討しなければいかぬと思うのです。こういう意味で再検討をされることが必要であるし、こういうような実態であるために、日本の業者が非常に苦しい状態にあるのですよ。日本の産業を育成するという意味においても、これは根本的に再検討をされることが必要だと思いますが、この点について総理大臣から一つ意見を伺っておきたいと思います。
  262. 岸信介

    岸国務大臣 私よく事情を明らかにいたしておりませんが、今岡田委員の御指摘のようなことであると、外貨の点から考えましても、日本の産業育成の上から考えましても、相当重大な問題だと思いますから、事務当局に命じまして十分に検討して是正するようにしたいと思います。
  263. 岡田春夫

    ○岡田委員 これで終りますが、特にこの点は非常に重要なんです。たとえばこういう形でありながら、日本にあるアメリカの会社で法人税をのがれておるような実例がたくさんある。たとえばフォックスという会社は去年百五十万の赤字だというので法人税をのがれているのです。ところが今いったように七十五億円ももうかっておる。こういうもうけがあるというからくりがあることを御認識を願いたい。話によると、大映の永田社長あたりは岸さんと非常に懇意で、岸さんや河野さんの方へ頼みに行くといっておるそうですよ。(川崎(秀)委員「頼んだってだめだ」と呼ぶ)あなたは頼まれて、そんなときに選挙が近いからといって、そうかそうかといって承知してはだめですよ。こういう実情においては、これは川崎君がこれほどはっきりと言っておるじゃないですか。川崎君もわれわれも、こういうことでは日本の産業は守れないという正義感の上に立ってやろうとしておるのです。これはやはり根本的に超党派的にやらなければだめですよ。超党派的におやりになるお考えがあるかどうかという点について、日本の産業をよくするという意味で超党派的にやっていかれるというお考え——永田社長なんかにだまされないで、また一萬田さん、ジョンストンが来るのだが、危ないということになったら、ジョンストンがこれはいいおみやげだから一萬田さんどうですかと言ってくる。あれはこのワクを減らさないようにやって来るのですから、こういう外からのいろいろな圧迫をはねのけて、日本の産業を守るように一つ御努力を願いたいと思うのでありますが、その点よろしゅうございますか。
  264. 岸信介

    岸国務大臣 今申しました通り、私自体がよく実情を知りませんでしたが、そういうような事情であるということであれば、十分に一つ考えてこれに善処するようにいたします。
  265. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは私はまだあるのですが、時間が過ぎちゃったからもうこの程度にいたします。
  266. 江崎真澄

    江崎委員長 以上をもって質疑は終局いたしました。  これより討論に入ります。古屋貞雄君。
  267. 古屋貞雄

    ○古屋委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府提案にかかる、昭和三十二年度一般会計予算補正(第3号)及び昭和三十二年度特別会計予算補正(特第5号)に対し、反対の意思を表明せんとするものであります。以下、その理由を陳述いたします。  第一に、補正予算に充当する財源の問題に難点があるのであります。政府説明によりますと、三十二年度末において、いまだ歳出の使い残りが約二百億円、特に防衛費の繰延費は三十五億円あるわけであります。政府は、当然にこれらの財源を先に使うべきであります。わが党は特に再軍備反対の立場から、防衛費使い残りの削減を要求するものであります。しかるに政府案はこれらの当然使うべき財源に手をつけることなくいたしまして、税収自然増を無理してやりくり、使用しておるのであります。しかるにその三十二年度の税収でございますが、それは当初自然増収一千億円が見込まれていたのでありますが、二月分の収入実績及び三月以降の収入見通しでは、一千億円を約五十億円くらい下回るとさえ見込まれておるのであります。政府の経済見通しによれば、デフレ調整の時期はずれて引き延ばされたのでありますから、税収の伸びの回復は時間がかかる。三十三年度税収の自然増収は低下せざるを得ないのであります。このような税収の見通しにおいて、政府は第二次補正で法人税、相続税、関税合計三百九十四億円の自然増収を先食いし、第三次補正で物品税三十億円、官業収入一億七千余万円、雑収入四十五億円などを先食いして無理をするわけであります。このことは当然に税金や罰金などの苛斂誅求をしいる結果となるのであります。かように無理な税収自然増を財源とするよりも、むしろさきに指摘いたしましたように、三十二年度に使い残したもの、特にむだな、不当な防衛費の使い残りをもって、これらの支出増加に充てるべきことはきわめて当然のことというべきであります。  第二に歳出面におきましては、わが党は当面緊急を要する次の費目の増加を要求するものであります。すなわち国民健康保険助成費についての国庫補助は、補正によりますと二割でありますが、最近の健康保険の会計の実情にかんがみまして、これはぜひとも四割負担引き上げるべきであるのであります。  次に駐留軍労務者の離職問題はきわめて重大な社会問題でありまして、非常に大きな問題になっております。これに対する特別給付金はきわめて低額であって、こればかりでは何らの対策とはなっておりません。少くとも最低一人当り五万円になるように追加増額すべきであると存じます。  以上二費目の増加に要する財源は約七十七億円に上りますが、これはさきに指摘いたしました三十二年度末支出の使い残りを充当いたしますならば、容易に捻出し得ることが明らかであります。このような当然な措置がなされていない点を遺憾と存ずるものであります。  特に歳出面における国連警察軍スエズ派遣費分担金についてであります。ここにいう国連警察軍は現存いたしておりません。このことは政府においても明らかに認めておるところであります。ゆえにかかる不存在の国連警察軍に対する支出を認むるがごときにおいては、将来にその悪例を残すものでありますから、断じて反対するものであります。かりに百歩を譲り、該支出がスエズに派遣せられた国連緊急軍の費用分担金であるといたしましても、右はわが国が国連加盟以前の国連総会における決議に基くものでありますので、果してその後に加盟いたしましたわが国が、その費用分担の義務がありやいなや、大いに疑問のあるところであります。それのみならず、戦争を放棄し、戦力を保持することができないわが国においては、いかなる事情に基こうとも、交戦を主たる目的とする国連緊急軍の派遣費を分担するがごときは、憲法違反であることは明らかであります。  よって本案に反対する次第であります。以上であります。(拍手)
  268. 江崎真澄

    江崎委員長 今井耕君。
  269. 今井耕

    ○今井委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和三十二年度一般会計予算補正(第3号)及び特別会計予算補正(特第5号)の政府原案に賛成の意を表するものであります。  本補正予算昭和三十二年度の予算作成後に生じました義務的経費の不足額を補うとともに、本年度内にぜひとも支出を必要とする若干のものについて、予算措置を講じたものでありまして、その総額は七十七億二千二百万円となっております。  補正の内容は、昭和三十一年度の精算の結果明らかとなりました義務教育費国庫負担金の不足額四十二億四千五百万円、国民健康保険療養給付費補助金十六億円、旧軍人遺族等恩給費六億円、国際連合分担金等二億六千万円、国立学校運営費二億円の義務的経費の追加と、新たに羽田空港内にある土地買収費三億三千四百万円、学童に対する牛乳、乳製品給食費補助金約三億円、その他一億七千万円等、いずれも必要最小限度の措置を講じたものでありますから、今さら特に多くの意見を述べる必要はないと存じます。  また特別会計予算補正につきましても、中小企業信用保険特別会計において、国が信用保証協会を相手方とする普通保険の契約限度額を引き上げる措置を講ずるものでありますが、ただいま社会党の方からいろいろ反対の御意見がありましたが、われわれいずれも最も適切妥当なものと考えまして、政府原案に賛成するものであります。  以上簡単でございますが、私の討論を終ります。(拍手)
  270. 江崎真澄

    江崎委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。採決は一括してこれを行います。昭和三十二年度一般会計予算補正(第3号)及び昭和三十二年度特別会計予算補正(特第5号)に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  271. 江崎真澄

    江崎委員長 起立多数。よって昭和三十二年度一般会計予算補正(第3号)及び昭和三十二年度特別会計予算補正(特第5号)は、いずれも原案の通り可決いたしました。(拍手)  委員会報告書の作成につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  272. 江崎真澄

    江崎委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————
  273. 江崎真澄

    江崎委員長 この際お諮りいたします。本会期中におきましても、予算の実施状況につきまして国政に関する調査を行うため、議長に対し所要の手続をとりたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕     —————————————
  274. 江崎真澄

    江崎委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————
  275. 江崎真澄

    江崎委員長 次にお諮りいたします。閉会中審査申し出の件及び閉会中委員派遣に関する件につきましては、その手続等はすべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  276. 江崎真澄

    江崎委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時十九分散会      ————◇—————