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岸国務大臣 日ソ共同宣言によって、日ソ両国の国交が正常化されたわけでありますが、しかし御
承知の
通り、これには平和条約を締結する方式において、両国の国交を正常化するために、
政府としては非常な
努力をし、鳩山前首相もその意図のもとに行かれたのであります。しかるにそれができなかった。それはなぜかといえば、領土問題に関する両国の意見が真正面から衝突して一致しないがゆえに、これができなかったことは、
伊藤委員も御
承知の
通りであります。そうしてこの領土問題に関するソ連側の意向もありますけれ
ども、
日本国民として、
日本の主張である国後、択捉が
日本の固有領土であって、これを
日本の領土に返還してもらわなければいかぬということは、一貫してこれを譲ることのできない領土問題に関する
日本の立場であると私は信じております。また私はその
考えの上に立っておるわけであります。しこうして今サボっておるというお話でありましたが、私はサボっておることは全然いたしておりません。この国交正常化のときは、私自身も党の幹事長としての
責任もございまして、私は一貫してこれをやっておる。それは要するにこの問題に関する平和条約の決定、すなわち領土問題の
解決というものは、ソ連が
日本国民の感情、
日本国民のほんとうの気持、要望、これに対して深い理解を持ち、同情を持ってということでなければ私はできないと思います。従ってそのためには両国の友好
関係を積み重ねていくことが必要であり、理解を深めていくということが必要であるという見地に立ちまして、あらゆる
努力をいたして参っております。昨年の秋に通商貿易に関する協定をいたしたこともその
一つであります。またその領土問題に関するソ連側の意向と、
日本側の強い
国民的要望との間の食い違いが少しもまだ接近しておらない。これを何とか接近させようという意味において、その領土問題が
解決せられるまでの暫定措置として、あの北海道の多数の小さい漁民の安全操業の問題を
提案いたしたのも、この積み重ねの
一つの何であり、ソ連との間の友好
関係を増進し、この平和条約を締結する雰囲気を作り上げるための
一つのわれわれの
努力であります。こういうように私としては誠意を持ち、
熱意を持って、両国の間のむずかしい領土問題に関する理解を深めて、そうして
日本国民の要望を達するように
努力をいたしてきているわけでありまして、今お
言葉がありましたが、決してサボっているというようなことは全然ないのでございます。
また年々、漁業問題に関する両国の
委員の間の
交渉の問題についてのお話でありましたが、これは
伊藤委員、何かの誤解じゃないかと思うのでありますが、両国の間において正常に調印され、実行されております漁業条約に基いての
委員会で、専門家が科学的根拠において、年々の
漁獲量を定めることに条約でなっております。この条約の義務を履行するために、両国が専門家を出してそうして年々の
漁獲量をきめるということは、昨年も東京でやりまして、本年モスクワでやっているわけです。この問題は、両国の今言う国交正常化の際に調印され、発効を見ましたところの漁業条約によるものである。その何は、いわゆる日ソ間の
交渉という問題じゃなしに、日ソ両国の間における専門家が科学的根拠によって、今のような
漁獲量を定めるということであります。従ってわれわれがそれに出すところの
代表は、相当な専門家としていろいろな体験を持ち、またいろいろなデータを持っている人を派遣するということは、これは私は当然であると思う。普通の
外交交渉であるならば、外務
大臣がみずから当るべきものでありますけれ
ども、そういう性格のものではありません。昨年も当時の
農林大臣の井出君が
日本の
代表として当ったことも、御
承知の
通りであります。従ってこの問題を
解決するのにいわゆる政治的な考慮とか折衝とかいうことが言われておりますが、それは今日科学的根拠と申しましても、両国が共同調査をすることに漁業条約ではなっておりますけれ
ども、それがまだ実現を見ておりません。従って両国の持っているデータというものが、
日本は沖取りのデータ、向うは陸地におけるデータで、それが合わないというところに
一つの食い違いが出ている。昨年はいろいろな事情でできなかったのであるが、本年からは条約に基いての共同調査をするということになっておりまして、共同調査をすれば、科学的根拠という、科学的の資料というものが同じになって、こういう漁業条約に、おけるところの
委員会の問題というものは、非常にスムーズに年々きまり得る性質のものであると私は思います。従ってそれが両方で食い違っているとすれば、やはり漁期に間に合うように、何とか両方で
——ただ単に科学的根拠が今言うように食い違っているということで、両国がおのおの主張をしただけではまとまりませんので、そこに歩み寄りというような妥協ということが、自然行われなければならない。昨年もそういうことで十二万トンというものがきまっております。これは科学的根拠でなしに、むしろ
一つの歩み寄りであり、妥協であり、それが政治的考慮であるということを申しているわけでありまして、この問題が、領土問題やあるいは平和条約の問題と何ら
関係のない、そういうことについての
交渉と関連をしなければならないという性質のものでないことは、漁業条約を御研究下さればきわめて明瞭であろう、またそのことは、イシコフ漁業相関と赤城
農林大臣との間における数回の会談で、そういうことについては両国でもって十分に理解がいっているようでありまして、当然のことだと思う。そういう趣旨のものでございます。