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1958-03-25 第28回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十五日(火曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 江崎 真澄君    理事 今井  耕君 理事 川崎 秀二君    理事 重政 誠之君 理事 田中 久雄君    理事 橋本 龍伍君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君       植木庚子郎君    小川 半次君       大橋 武夫君    太田 正孝君       北澤 直吉君    北村徳太郎君       坂田 道太君    周東 英雄君       須磨彌吉郎君    中曽根康弘君       楢橋  渡君    野田 卯一君       牧野 良三君    松浦周太郎君       南  好雄君    宮澤 胤勇君       八木 一郎君    山崎  巖君       山本 勝市君    山本 猛夫君       井堀 繁雄君    伊藤卯四郎君       今澄  勇君    岡田 春夫君       勝間田清一君    小平  忠君       河野  密君    島上善五郎君       田原 春次君    中村 高一君       成田 知巳君    西村 榮一君       古屋 貞雄君    門司  亮君       森 三樹二君    山口丈太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松永  東君         厚 生 大 臣 堀木 鎌三君         通商産業大臣  前尾繁三郎君         運 輸 大 臣 中村三之丞君         郵 政 大 臣 田中 角榮君         労 働 大 臣 石田 博英君         国 務 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 河野 一郎君         国 務 大 臣 郡  祐一君         国 務 大 臣 津島 壽一君  出席政府委員         内閣官房長官  愛知 揆一君         法制局長官   林  修三君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    大堀  弘君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 三月四日  委員松浦周太郎君、井手以誠君井堀繁雄君、  辻原弘市君及び門司亮辞任につき、その補欠  として竹山祐太郎君、原彪君、西村彰一君、松  岡駒吉君及び三宅正一君が議長指名委員に  選任された。 同月六日  委員小川半次君、田原春次君及び古屋貞雄君辞  任につき、その補欠として千葉三郎君、鈴木義  男君及び風見章君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員鈴木義男辞任につき、その補欠として田  原春次君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員千葉三郎辞任につき、その補欠として小  川半次君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員北澤直吉君及び松岡駒吉辞任につき、そ  の補欠として小坂善太郎君及び山口シヅエ君が  議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員宮澤胤勇君及び岡田春夫辞任につき、そ  の補欠として佐伯宗義君及び八百板正君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員佐伯宗義辞任につき、その補欠として宮  澤胤勇君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員川俣清音君及び原彪辞任につき、その補  欠として永井勝次郎君及び鈴木義男君が議長の  指名委員に選任された。 同月二十日  委員永井勝次郎辞任につき、その補欠として  川俣清音君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員小坂善太郎君、竹山祐太郎君、永山忠則君、  風見章君、北山愛郎君、小松幹君、鈴木義男君、  西村彰一君、三宅正一君、八百板正君、柳田秀  一君及び山口シヅエ辞任につき、その補欠と  して北澤直吉君、松浦周太郎君、牧野良三君、  門司亮君、勝間田清一君、中村高一君、井手以  誠君、辻原弘市君、古屋貞雄君、岡田春夫君、  伊藤卯四郎君及び井堀繁雄君が議長指名で委  員に選任された。 同日  委員辻原弘市君辞任につき、その補欠として山  口丈太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  川俣清音君が理事補欠当選した。 同日  理事柳田秀一委員辞任につき、その補欠とし  て井手以誠君理事に当選した。     ————————————— 三月二十日  昭和三十二年度一般会計予算補正(第3号)  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第5号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  昭和三十二年度一般会計予算補正(第3号)  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第5号)      ————◇—————
  2. 江崎真澄

    江崎委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。委員の異動によりまして理事が二名欠員となっておりまするので、その補欠を選任いたしたいと存じます。先例によりまして委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 江崎真澄

    江崎委員長 御異議なしと認めます。よって理事井手以誠君川俣清音君を指名いたします。     —————————————
  4. 江崎真澄

    江崎委員長 昭和三十二年度一般会計予算補正(第3号)及び昭和三千二年度特別会計予算補正(特第5号)を議題といたします。  まず提案理由説明を求めます。大蔵大臣萬田尚登君。     —————————————
  5. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府は今回、昭和三十二年度一般会計予算補正(第3号)及び特別会計予算補正(特第5号)を国会に提出いたしました。ここに予算委員会の御審議をお願いするに当りまして、その概要を御説明いたします。  一般会計予算補正(第3号)は、三十二年度の予算作成後に生じました事由により当面必要とされる最小限度の措置を講ずるためのものでありまして、歳入歳出とも約七十七億円の追加を行うこととしております。これにより、さきに成立いたしました予算補正(第2号)による追加分も合せまして、三十二年度一般会計予算総額は一兆一千八百四十六億円となる計画であります。  歳出のうち、義務教育費国庫負担金は、三十一年度の精算の結果明らかとなりました教職員給与費国庫負担金不足額と、昨年十一月に成立いたしました一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律の施行に関連する期末手当引き上げ等による 三十二年度の教職員給与費国庫負担金不足見込額とを補うために必要な経費追加であります。国民健康保険療養給付費補助金、旧軍人遺族等恩給費等はいずれも当初予算で予定いたしました経費不足を生ずる見込みでありますので、この不足見込額追加計上するものであります。  以上はいずれも義務的経費追加でありますが、このほか東京国際空港敷地買収費牛乳乳製品学校給食費補助金その他最近までの事情に基きましてぜひとも本年度内に支出することを必要とする若干の経費計上することといたしております。  歳入につきましては、物品税増収見込額のほか、日本銀行納付金その他租税以外の歳入における収納済増収額計上することといたしております。  特別会計予算補正(特第5号)は特別会計予算総則のみにかかわるものであります。すなわち中小企業信用保険特別会計において国が締結する保険契約のうち、信用保証協会相手方とする普通保険につきまして、三十二年度特別会計予算総則で規定されております契約限度額が、最近の実績に照らして不足を生ずるものと見込まれるに至りましたので、この限度額を引き上げることといたしておるものであります。  以上、三十二年度予算補正につき概略を申し述べましたが、なお政府委員をして補足説明いたさせます。
  6. 江崎真澄

    江崎委員長 次に補足説明を求めます。石原主計局長
  7. 石原周夫

    石原政府委員 ただいま御説明のございました昭和三十二年度の一般会計の第3号、特別会計特第5号の補正予算につきまして補足をいたしまして御説明を申し上げます。  お手元に昭和三十二年度予算補正説明というものを差し上げてあるはずでございますが、それをごらんいただきながら申し上げたいと思います。  一ページの下の欄から二ページの初めにかけまして数字が載っておりますが、歳入歳出ともに七十七億二千二百七十二万三千円という数字に相なっておるわけであります。このうち歳入につきましては三ページから四ページにかけまして数字が出ておりまするが、税収について申し上げますると、ただいまの御説明にございましたように、物品税におきまして三十億の増収を見込んでいるわけであります。それ以外の歳入といたしましては、官業益金及び官業収入におきまして一億七千九百万円、雑収入におきまして四十五億四千三百万円、いずれも予算計上額に比しまして現在までに収納済みであります金額で、超過をいたしておりまする額を計上いたしております。一番大きな金額日本銀行納付金の三十四億円でありますが、すべて今申し上げましたように、現在までに収納済額計上いたしたわけであります。  次に歳出でございまするが、歳出は二ページから三ページにかけまして御説明がいたしてございます。第一が社会保険費でございまして、これは国民健康保険に対しまする助成、御承知療養給付費補助というものが二割一般会計から補助いたすことになっておりまするが、これの三十一年度の精算額でございまして、十六億三百万円という額に相なるわけであります。  次は義務教育費国庫負担金でございまするが、これが四十二億四千五百万円。これは御承知義務教育費国庫負担法というものに基きまして教員の給与実施額の二分の一を負担するということになっておるわけでありますが、これに基きまして三十一年度の精算の結果の不足額三十億五千七百万円、そのほかに三十二年度におきまする暫定手当あるいは期末手当〇・一五カ月分、こういうようなものの不足分がございまして、それが十一億八千九百万円、合計いたしまして四十二億四千五百万円という数字に相なっております。  次は国立学校運営費でございまするが、国立学校運営費は二億二百万円でございまして、これは国立学校の病院に保存しておりまする血液、これが足りなくなりました関係と、それからもう一つは、国立学校における退官退職手当不足分であります。以上二件を合せまして二億二百万円。  第四番目が旧軍人遺族等恩給費でございますが、これは公務扶助料新規裁定見込みよりも超過をいたした、その関係でふえまする関係と、三十一年に法律で御議決を願いましたいわゆる特例扶助、内地におきまする営内居住者公務関連死亡等に伴いまする扶助料、その裁定がおくれました関係とがありまして、その差引におきまして六億七百万円という数字に相なっておるわけであります。  以下雑件といたしまして、第一が国際連合分担金及び国連警察軍スエズ派遣費負担金、いずれも精算がつきまして、はっきりとした額が確定をいたしました。その結果二億六千万円の計上をいたしたわけであります。  その次が牛乳乳製品学校給食費補助、これが二億九千九百万円。これは当面の過剰乳処理対策といたしまして、学校給食用牛乳乳製品特別価格で供給いたしまする所要経費であります。  最後に東京国際空港敷地買収費が三億三千四百万円。これは東京国際空港羽田におきまする民有地、これの買収請求がございまして、従来通りの賃貸借をやるわけには参りかねるので、話し合いのつきました額で、話し合いのつきました相手方との間に買収をいたします金、これが三億三千四百万円。  以上のほかに、雑件が一億円以下のものが四件ほどありまして、合計が一億七千万円。  以上を合計いたしましたものが七十七億二千二百万円という数字に相なっております。  次に特別会計でございますが、これは五ページにございます。これは予算総則だけの補正に相なるわけでありまして、中小企業信用保険特別会計におきまして、先ほど大臣からも御説明がございましたように、この特別会計信用保証協会との間に営んでおりまする保険契約、これが十二月末で現在の百八十億に対しまして約百六十億という額に相なりましたので、今後におきまする保険契約の引き受けが円滑に参りまするように、百八十億に対しまして六十億を追加いたしまして二百四十億という数字にいたしました。  以上が特別会計補正であります。  以上をもちまして補足説明を終ります。
  8. 江崎真澄

    江崎委員長 以上をもちまして提案理由説明は終りました。  これより質疑に入ります。伊藤卯四郎君。
  9. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 まず本日の私の質問はほとんど総理大臣にお伺いをしようと思っております。それは最近の外交問題の若干についてであります。  岸首相は、本国会が開かれて以来、多くの同僚各位から外交、防衛問題について質問、追及を受けますと、国連主義によってやります、こういうことを二口目には必ず言って、そこに逃げ込もうとしております。国連憲章御存じのように、軍備を縮小して世界の平和を達成しよう、これが精神であることは論ずる余地がありません。しかるに日本がその反対に、事実上再軍備を着々と増強しつつあることは、これは岸総理十分御存じである。この状態は、国連主義とおっしゃるあなたの考え方と全く相反し、矛盾しているものをあなたは国内に推し進められつつあると思うが、この点に対しては一体どういうようにこの矛盾をお感じになっておるか、まずこの点を伺いたい。  それから日本国連憲章以上に世界に誇るべき平和憲法を今日持っておるのである。これを国連、いな世界民族に訴えて、そして世界平和を達成するということに熱意を持つべきであると思うが、あなたがそういう熱意を持って世界民族に働きかけられたということを、私は不幸にしていまだ知りません。  それから、さらにあなたの責任において起ったさきのあの悲劇なる大戦争、無謀なる戦争によってこの日本を滅ぼしてしまいました。そして広島、長崎等原爆の洗礼を受けて、名状しがたいあの悲劇、不幸を受けて、今なおその不幸の人々は数知れず悩んでおることを、あなたも十分御存じであると思うのです。こういう点からしても、あなたはだれよりもこの原水爆禁止日本の平和、世界の平和に対しては、一番責任のある熱意をお持ちにならなければならぬはずである。しかるにそういう点がどうもお持ちになっておるのかどうか、私は存じません。さらに軍縮の問題、原水爆禁止世界平和運動世界に訴えるということは、これは日本国民のみならず、おそらくはアメリカ、ソビエトの国民の大多数というものも、平和を願っておると思います。いわんやその以外の各国の国民大衆は、これはもう論ずるまでもなくして、いかにして原水爆使用禁止して世界平和を達成するかということは、これは非常に念願をしておるのである。それについてはまずあなたが音頭とりになっておやりになるということが、責任の上からも、また世界を動かす上から見ても、私はきわめて当を得ておると思うが、そういう点に対してあなたの熱意をわれわれ一向知らないのであるが、一つ、その熱意があるか、またどこかにそういうことをやることに差しさわりがあって、おやりになることができないのか、率直に心境を発表願いたい、こう思います。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 お答えをいたします。私が従来日本外交基本方針として、平和外交を推進する、世界の恒久的平和をこいねがって、これがために日本努力をあらゆる面においてするということは、伊藤委員は、いまだかつて私の言葉を聞いたことがないとお話しになりますけれども、私は国会施政方針におきましても、その他あらゆる委員会におけるところの論議におきましても、一貫して強く、私の信念を申し上げておるわけでございます。  それにつきまして、今一、二の具体的の事例をおあげになりまして、私に対する御質問でありますが、私は決して日本の再軍備をいたすということを考えてはおりません。しかし日本の防衛、祖国の安全に寄与するために、自分たちの力でもって日本自衛を全うするということは、独立の国家として当然のことであり、また国民がそれにおいて安全を感じてこそ、初めて平和の生活ができ、文化国家福祉国家ができるわけでありまして、この自衛のことは、憲法が許しておる範囲内において、国力及び国情においてやるということで進んで参っておるのであります。これが国連精神と相反するものでもなければ、また私どもがかつて犯したところの過失を再び繰り返す考えでないことは言うを待たないのであります。  また私個人のことにつきましては、かねて私が戦争中の指導者の一人であり、そのためにこの戦争の惨害というものを人一倍私みずから反省もし、痛感もいたして、そうして平和な国家日本福祉ということを考えて、再び日本戦争に突入することのないように、また日本が他から侵略されず、平和な生活民主政治を完成することにおいてできるという考えに徹して、今日まで参っておるわけであります。  また原水爆の問題に関しましては、おあげになりました通り、私は日本というものが特別この問題についての発言権を持っておる、また言うということにつきましては全然感を同じくするものでありまして、私が原水爆禁止問題に関して、あらゆる機会にあらゆる方法を通じて強く世界に訴え、また国連等におきましてもその実現を促進するように努力してきておることも御承知通りであります。私は終始一貫そういうつもりで、ほんとうの平和を、また日本みずからがその平和の中心になるように進めていくという念願のもとに、今までも努力してきておりますが、もし努力が足りないことがあるならば、今後一そうその努力を強めていく考えでおります。
  11. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 あなたのそつのない言葉は耳にタコの寄るほど私もずいぶん伺いました。私はそれを伺っているのじゃない。あなたが国連に、世界民族に対して、みずから熱意を持って率先してどれだけの行動をとられたかということを聞いておるのであります。口頭禅を伺っておるのではないのである。具体的におとりになった行動と、それから今後さらにどういうことをやろうとしておられるかを伺うのである。これを一つお聞かせ下さい。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 国連に向って私は過去二回も日本提案をいたしております。このことにつきましてはいろいろなお考えもあろうかと思いますが、私は一日も早く原爆実験禁止し、また製造、使用というようなことをなくしようという念願のもとに、国際現実に即してこういう提案をいたしております。また私はイギリスクリマス島における実験に関して特使を送って、そうしてイギリスの朝野に向って日本のわれわれの考えを徹底せしめることに努力したことも御承知通りであります。  私はまた今回の施政方針におきましても、東西巨頭話し合いによって、今のような状態でなしに、世界の恒久平和のためにそういうことが推進されることを強く希望しておることも述べ、またその方向に努力いたしておることも御承知通りであります。私はこれはあらゆる機会にあらゆる問題に関連して、国際連合という機関を通じ、できるだけ世界の世論に訴えてこういう問題は実現しなければ——東西巨頭が互いにそういう軍備の強大を競うており、また最近の軍事科学の発達をほとんど独占的にいたして、そして世界に脅威を与えているという現実の前に立って、国連というものが行うべき使命につきまして、十分に今後においてもこれを通じての努力をいたすということが最も有効であり、またそうすべきものである、こう思っております。
  13. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 これ以上あなたと論議をしてもこの問題はらちがあきませんから、一言あなたに御注意を申し上げておきたい。あなたの一番欠点は、行動力決断力がないことであります。これが何となくどうもたよりない、そつなくしゃべられているけれども、どうもごまかされているというような感じを持つ、これが国民のあなたに対する共通の疑惑である。この点今後行動力をもってお示しを願いたいということを苦言を申し上げておきます。  それから、目下最大外交問題となっているのは、御存じのように、日ソ問題であります。これはその当時鳩山総理大臣が病躯をひっさげて日ソ国交回復のために行かれた。これはある意味において非常な悲壮なものがありました。私ども社会党もまた大いにこれを鞭撻激励して協力したつもりである。そこで当時の鳩山首相目的を達してお帰りになったが、その後相当の月日がたっております。ところが、それに対して岸首相は、これをどのようにして実を結ばすかということについての努力は、いささかも積極的にされておらぬように思うのであります。こういう点は私は非常な怠慢であると思うのであります。せっかく前鳩山首相がそういう努力をされたのであるから、それを継承して目的を完成さすために岸首相はさらに努力をさるべきである。同じ保守党でありますから、なおさらこれはやられねばならぬはずである。ところがサボって一向おやりにならぬ。これは何かサボらざるを得なかった理由がどこかにあるのか、積極的にやれないというちょっと胸に感じさせられるものがあるのですか、そういう点を一つお聞かせ願いたいのであります。何のために積極的に自分が動けないか、そういうこともあわせて伺いたい。  それからこれは毎年年中行事のようになっておりますが、春になればただ漁獲量交渉だけをやっている。まるで商取引のようなことだけを年に一回ずつやるというようなことである。ところがこれはもろもろの政治問題というか、外交問題を含んでおるのであるから、ただ漁獲量商売取引のようなことだけでやろうとしても、だんだんだんだん行き詰まってくるというか、窮地に陥るということはきわめて明瞭である。そこで岸首相は、こういう問題の解決についてはきわめて楽観的なことをお考えになっておられるのかどうか。しかも今度の漁業交渉代表に初め業者代表の平塚氏を派遣しておられる。これは業者代表である。ところが問題は政治問題を含んでおるのである。しかも政府政府の重大なる問題を含んでおるのである。そこへ単なる業者代表を送って、それで一体交渉解決ができるとお考えになっておったとするならば、あまりに私は一国の総理としてのこの問題に対する考え方が無責任である、こういうように思うが、どうです。それは私が今申し上げる通りに現に失敗して帰っているじゃありませんか。そこで政治的に解決する以外にはないということが、今日になって農林大臣をやらざるを得なくなっておるではありませんか。時間をだんだん引き延ばしてくるような事態になったということは、これまさにあなたの責任である。この間——これは名前を私きょう申し上げるのはちょっと御遠慮申し上げるが——伊藤君言ってもいいというなら申し上げても差しつかえないが、この間あなたの代表として向うへ行かれる人が、こういうことを私ども社会党幹部会にあいさつに来られたついでに雑談をしておられました。漁業交渉の問題というだけでは、これはやっぱり握手だけじゃいけませんよ、接吻をしに行くのには、結婚の問題もある程度ほのめかして進めなければ、問題は妥結するものじゃありませんよ、私はこのつもりでやります、こういうことを言っていました。われわれも、あなたのそのお考えはきわめて聰明である、しっかりやっていらっしゃい、こういうことでわれわれは激励をしたのであるが、あなたの代表として派遣された人のその話と、岸総理のお考え方とは一致していますか、食い違っていますか、この辺の点をひとつお聞かせ下さい。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 日ソ共同宣言によって、日ソ両国の国交が正常化されたわけでありますが、しかし御承知通り、これには平和条約を締結する方式において、両国の国交を正常化するために、政府としては非常な努力をし、鳩山前首相もその意図のもとに行かれたのであります。しかるにそれができなかった。それはなぜかといえば、領土問題に関する両国の意見が真正面から衝突して一致しないがゆえに、これができなかったことは、伊藤委員も御承知通りであります。そうしてこの領土問題に関するソ連側の意向もありますけれども日本国民として、日本の主張である国後、択捉が日本の固有領土であって、これを日本の領土に返還してもらわなければいかぬということは、一貫してこれを譲ることのできない領土問題に関する日本の立場であると私は信じております。また私はその考えの上に立っておるわけであります。しこうして今サボっておるというお話でありましたが、私はサボっておることは全然いたしておりません。この国交正常化のときは、私自身も党の幹事長としての責任もございまして、私は一貫してこれをやっておる。それは要するにこの問題に関する平和条約の決定、すなわち領土問題の解決というものは、ソ連が日本国民の感情、日本国民のほんとうの気持、要望、これに対して深い理解を持ち、同情を持ってということでなければ私はできないと思います。従ってそのためには両国の友好関係を積み重ねていくことが必要であり、理解を深めていくということが必要であるという見地に立ちまして、あらゆる努力をいたして参っております。昨年の秋に通商貿易に関する協定をいたしたこともその一つであります。またその領土問題に関するソ連側の意向と、日本側の強い国民的要望との間の食い違いが少しもまだ接近しておらない。これを何とか接近させようという意味において、その領土問題が解決せられるまでの暫定措置として、あの北海道の多数の小さい漁民の安全操業の問題を提案いたしたのも、この積み重ねの一つの何であり、ソ連との間の友好関係を増進し、この平和条約を締結する雰囲気を作り上げるための一つのわれわれの努力であります。こういうように私としては誠意を持ち、熱意を持って、両国の間のむずかしい領土問題に関する理解を深めて、そうして日本国民の要望を達するように努力をいたしてきているわけでありまして、今お言葉がありましたが、決してサボっているというようなことは全然ないのでございます。  また年々、漁業問題に関する両国の委員の間の交渉の問題についてのお話でありましたが、これは伊藤委員、何かの誤解じゃないかと思うのでありますが、両国の間において正常に調印され、実行されております漁業条約に基いての委員会で、専門家が科学的根拠において、年々の漁獲量を定めることに条約でなっております。この条約の義務を履行するために、両国が専門家を出してそうして年々の漁獲量をきめるということは、昨年も東京でやりまして、本年モスクワでやっているわけです。この問題は、両国の今言う国交正常化の際に調印され、発効を見ましたところの漁業条約によるものである。その何は、いわゆる日ソ間の交渉という問題じゃなしに、日ソ両国の間における専門家が科学的根拠によって、今のような漁獲量を定めるということであります。従ってわれわれがそれに出すところの代表は、相当な専門家としていろいろな体験を持ち、またいろいろなデータを持っている人を派遣するということは、これは私は当然であると思う。普通の外交交渉であるならば、外務大臣がみずから当るべきものでありますけれども、そういう性格のものではありません。昨年も当時の農林大臣の井出君が日本代表として当ったことも、御承知通りであります。従ってこの問題を解決するのにいわゆる政治的な考慮とか折衝とかいうことが言われておりますが、それは今日科学的根拠と申しましても、両国が共同調査をすることに漁業条約ではなっておりますけれども、それがまだ実現を見ておりません。従って両国の持っているデータというものが、日本は沖取りのデータ、向うは陸地におけるデータで、それが合わないというところに一つの食い違いが出ている。昨年はいろいろな事情でできなかったのであるが、本年からは条約に基いての共同調査をするということになっておりまして、共同調査をすれば、科学的根拠という、科学的の資料というものが同じになって、こういう漁業条約に、おけるところの委員会の問題というものは、非常にスムーズに年々きまり得る性質のものであると私は思います。従ってそれが両方で食い違っているとすれば、やはり漁期に間に合うように、何とか両方で——ただ単に科学的根拠が今言うように食い違っているということで、両国がおのおの主張をしただけではまとまりませんので、そこに歩み寄りというような妥協ということが、自然行われなければならない。昨年もそういうことで十二万トンというものがきまっております。これは科学的根拠でなしに、むしろ一つの歩み寄りであり、妥協であり、それが政治的考慮であるということを申しているわけでありまして、この問題が、領土問題やあるいは平和条約の問題と何ら関係のない、そういうことについての交渉と関連をしなければならないという性質のものでないことは、漁業条約を御研究下さればきわめて明瞭であろう、またそのことは、イシコフ漁業相関と赤城農林大臣との間における数回の会談で、そういうことについては両国でもって十分に理解がいっているようでありまして、当然のことだと思う。そういう趣旨のものでございます。
  15. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 あなたは二口目には、熱意を持っている、熱意を持っているとおっしゃるが、腹の中に熱意を持っておっても、行動に現われなかったら、意味はありませんよ。それからさらに鳩山前首相が行かれた。それはある意味においてわれわれはこの第一段階としては成功と思っておる。ところがその後の状態を見ると、大体自民党の中で首を引っぱる者と足を引っぱる者とあるんだ。これでは一体どっちへ行ったらいいかわからぬことになる。こういうことで、大体日ソ問題はもちろんだが、外交問題について、ことごとくそういう点が自民党内が一致せない、政府との間において一致せない、政府の中においてまたいろいろ各人各様の意見がある、こういう状態でどうしてできますか。これを統括し、そしてこの決断をしてやるのが岸総理、あなたでしょう。ところがあなたが決断を下してやられないところに問題があるのです。  それから条約による専門的なものだとおっしゃるが、そんなことは初まりから政治問題であることはわかっておるじゃありませんか。だからして平塚代表では、これは私の領域じゃない、政治問題である、政治的に解決してもらわなければ、満たさるべき点が満たされない、こういうことを言っておるのであります。いたずらに時期がずれてきているのはあなたの責任である。そのときに今度農林大臣をやったような日本政府の全権を託して、それに専門家をつけてやればいいじゃありませんか。そうすれば、こういういたずらに時期を一月以上もだんだんおくらかしてくるということはないでしょう。もしこの時期がだんだんずれてきたらどうするつもりです。そういうことをだんだんとっちめておったら、それだけで時間がかかりますから、あまり言わないが、もう少しこの点に対して政治的責任を持っておやりになり、それから答弁もしてもらいたい。あなたは大へん答弁がうまくて、そつのない答弁をするということで、これは有名になっておりますけれども、政治はそつのない答弁だけではいけません。やはり信念と決断です。この点があなたに欠けておる点でうまくいかぬのです。そこで御存じのように赤城農林大臣を全権としてモスクワに今おやりになっています。それで日ソの交渉が漸次これはだんだん行われてくることになりましょうが、岸首相のこの交渉についての見通し、これを伺いたい。それから特に北洋漁業のうちにカニ漁業は申すまでもなく季節的なものでありまして、四月の上旬には出漁しなければならないことになっておる。四月の上旬までに日ソの漁業交渉が妥結をしない場合には、これはどうしますか。出漁は延期をいたしますか。そうすると、これは時期をおくらかしてしまうことになりますが、こういう点についてのあなたの腹がまえは一段、二段、三段というような行動力に対する腹がまえができていますか。これを一つはっきりお聞かせ下さい。そうしないと、これは必ず問題になってきますから、私がここで明言しておく。岸内閣が日ソ交渉に当面して常に領土問題のことを言われておるのであるが、この領土問題というのは、これは千島だけの問題じゃないのです。これは御存じのように小笠原、沖縄の返還問題と相関連をしておる問題なんです。そこで小笠原、沖縄の問題が片づいて参りますなら、従って私はソ連との関係の領土問題も前進すると思うのであります。それでなければ、ソ連側としては私はこう思っておると思うのです。自分の方から領土を返したからといって、アメリカが千島に軍事基地を、あるいは大陸間弾道弾、そんなものを作ったら、これはえらいことになるぞ、こういう一つの問題があるのです。だからあなたはむしろ小笠原、沖縄の問題に非常に熱心に区取り組んで力を入れている。これがソ連側に反映するところに、千島の領土問題というものは、おのずから向うもこれにある理解を持って私は交渉が進められるものだと思うのです。こういう点についてあなたはどのようにお考えになっているか、こういう点もきわめて当面の問題あるいは将来の外交交渉上において重要であると思うから、あなたのほんとうの責任のある信念をお聞かせ願いたい。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 私は日ソの漁業条約に基くところの折衡は、必ず漁期までにこれをまとめる意味におきまして、これを期待いたしております。今まとまらなかったらどうするかというお話でありましたが、私はぜひともまとめるという立場に立って代表を出しておりますし、また赤城農相もそのことについては責任ある農林大臣として漁期に間に合うように、ぜひとも結論に達するという強い考えでもって交渉をいたしている最中であります。  第二の領土問題についてのことはお話の通りあるいはソ連から言うならば、沖縄、小笠原の問題に関連さしての考えがあるかもしれませんが、表面的には御承知通りこの問題はすでに解決済みであって、自分たちはこれを日本に渡すとか、あるいは日本に認めるという考えは毛頭ないということをいろいろな機会に、あるいは新聞等を通じていわれていることも伊藤君御承知通りであります。そうしてこの両者の間におきましては、一つのステータスとして非常に違っているところがあると私は思う。それは沖縄及び小笠原につきましては、日本の潜在主権というものが認められておりますが、千島等においてはソ連の言い方はそういうものでなしに、もうこれは解決済みで、おれの方のものだということを言っているので、これは私は非常に国際的に見てステータスが違うと思う。しかし日本国民は北の千島の問題も、あるいは沖縄、小笠原の問題も、ことごとく日本の固有の領土としてこれが一日も早く日本に返還され、日本の領土となることを強く要望していることは、伊藤委員のお話の通りであります。私どもはこの沖縄及び小笠原につきましては、その施政権の返還を目途として、アメリカとの間にいろいろな場合において交渉をしていることも、委員会等において申し上げた通りでありまして、私どもはあくまでもこの沖縄及び小笠原におけるところの施政権の返還を一方においては主張し、これに対して熱意を持って努力すると同時に、これと今言ったようにステータスは違いますけれども、当然固有領土としてわれわれが考えているところの南千島の問題については、強く日本の領土権を主張して、それを実現しようとはかっているわけであります。
  17. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 一言はっきりしておいていただきたいと思うが、岸総理は相当妥結に確信を持って今明言されましたが、もし国民が理解できるような妥結ができなかった場合には、政治的責任をおとりになりますか、あなたはそのときどういうような政治的責任をおとりになるか、その一点だけはっきり伺っておかないと、だらだらしておったのでは漁期を逸してくる。(「相手があるんだよ」と呼ぶ者あり)相手があったところで、その国の政治をやる上については、当然政治家としては責任を持ってこれに当るということは、常に心がけなければならぬところじゃないか、その点を伺いたい。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく私は内閣の首班として、政治のあらゆる問題に関して私のやりますことについては、すべて民主政治家としての責任を明確に考えております。ただ外交交渉の途中におきまして、いろいろなことを仮定して、こういう場合にはどうするか、こうするかということは、私は交渉の道程においては、責任ある地位に立つ者としては、何も明言できないのは当然だと思います。
  19. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 相手のあるということは逃げ道である。相手のあることだからということは、それは逃げ道であって、常に政治家としては、自分の所信についてはやはり重大なる決意と責任を持って当っておるのであって、それ自体が国民を動かし、相手との間に強い交渉のできることである。相手があることだから、どうなるかわからないというふうなふらふら腰でできるか。(「その通り」と呼ぶ者あり)自民党の諸君がそういうことを言っておるから、だらしがないんだ。  第二には、日中貿易の第四次協定締結についての点を伺いたいと思います。これは自民党並びに社会党の日中議員連盟、その他の民間団体などが非常に協力をしてくれまして、一応の妥結に至っておるわけであるが、これはまことに喜ばしいことである。ところが政府の方では国旗掲揚問題等で、とかく何だかんだと言っておるのである。こういう点から、なお不愉快な問題を残しておるのである。このために日中貿易の新しい拡大は、事実上阻害されんとしつつある一つの暗い影があります。すべてに戦前の外交慣習で律しては割り切ることのできない新しい一つ状態が、日本、中国、アジア、アラブというか、そういう方面には起っておるのである。外交の上においてこの新しい息吹きを理解して進めていかなければ、これは妥結ができないのである。こういう点においては、外務省当局の諸君の頭も大体において古過ぎるのである。そういう点から、たとえば社会主義と名を聞いただけに、共産圏と名を聞いただけに、もうとにかく臆病になってしまっておる。これは幾らきらっても、憶病になっても、その多くの国々にそういう事態ができておるのである。これを認めないわけにやはりいかぬのである。それから中共にしても、アジアにしても、アラブにしても、新しい民族主義という立場から、新しい一つの方向というものを外交の上に確立したいという、この強い熱意と要求があるのである。これをやはり理解されなければ、この外交上の問題はもちろん、あるいは経済交流、そうゆう問題等の上においても、私はうまくいかぬと思うのである。こういう点について岸総理は一体どのようにお考えになられ、見ておられるか。それからさらに従来から日本においても日中との見本市の問題をやっておる、それからまた中国におきましても、この見本市の問題こついては、あなたの責任であったさき戦争において、あの悲惨なる惨害を負わされて言い知れない悪感情はあるけれども、なおかつこれを忘れたようにして厳然として日本の国旗を掲げて守ってやっておるのである。こういう事実については、戦争責任者であったあなたは人一倍に何か胸を打たれるものがあるであろうと私は思うのであるが、そういう点について、国旗掲揚の問題について、あなたは一体どういうようにお感じになっておられるか、こういう点も一つ伺いたいのである。  それから今申し上げましたこのアジア・アラブの新興諸国との関係においては、今度のこの中共との問題というものが、ひいては自分らのところに日本がどういう態度に出てくるかという、これは一つの試金石といってもいいのである。こういう点について、あなたはこの問題を非常に関心を持って十分にお考えにならなければならぬと思う。それから中共貿易等の問題についてはこれはあなたが虫が好かぬとおっしゃっても、またサボっておられても、またどこかのさしがねで牽制されておっても、日本民族は狭い領土の中で生きるためには、どうしても四億からの人口がおるところの中国との経済交流、原料を買う、製品を売る唯一の大きな市場として求めたいというのは、日本国民の切々たる気持です。たとえば御存じのように鉄鋼代表が行った。鉄鋼代表は相当多量の輸出契約あるいは鉄鋼原料を買うという約束をしてきておる。さらには今度は人絹の問題あるいは機械類等の問題、こういう問題が次から次へと私は発展していくであろと思うのである。まことにこれは喜ばしい次第であるとわれわれは思っておるのであるが、こういうことについて、これをさらに積極的に政府が力を貸して推し進めて、さらにはもっと友好関係を深くして、さらには平和条約というようなものにまで漸次推し進めていく密接な関係というものも、経済交流を通じながら作っていこうという積極的なお考えがあるかどうか。これは非常に重大な問題でありますから、こういうことについての具体的なあなたの信念を伺っておきたい。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 いろいろなお話がございましたが、言うまでもなく、私も二回にわたって東南アジアを旅行いたしまして、これら新興国における民族主義の勃興や、またそれらの国々の民族が、その独立完成のために実に涙ぐましいような努力をされておることに対して、日本としてできるだけの努力もし、これに同情を表すべきであるということは、二回の旅行を通じまして私も痛感したことであり、またその方向に努力を払って参っておるわけであります。この日中の関係につきましては、これもまたしばしば私がその所信を明らかにいたしておりますように、私どもはあくまでも貿易関係、経済関係における関係は、これを増進する、しかし現在のところにおいては、この中華人民共和国政府を承認するという段階ではない。従ってこれが承認はしないというところに一線を引いて、そうして貿易、経済の関係は、これをあくまでも増進するという立場をとって、おるわけであります。この立場は従来とって来ておると同様に、私は今後においても堅持して参るつもりでおります。
  21. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 国旗掲揚の問題についてどういうお考えですか。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 国旗掲揚の問題につきましては、今おあげになりましたように見本市等において、日本が向うに行っても日本の国旗が上っており、また中共側の見本市の場合におきましても中共側の国旗を掲げておるというのは、これは従来もやっておることでございます。別にその点においてはなにはありませんが、ただ今度の通商代表部を設けるについて、民間の間の協定と、相互に国旗掲揚の権利を認めるという問題は、民間の協定としてそういうことに落ちついたようでありますが、私どもが先ほど申しておるように、国がそういうふうなある国を独立国として承認をし、そうして国と国との間に正常なる国交が開かれておるところにおいては、国と国との間においてそういう権利を認め合うというのは、私は、国際通念であり、国際上の儀礼であると思いますけれども、そうでない国に対してこれを国として認めるというわけにはこれはいかないということを従来も申しておりますし、そういう意味においてこの問題は処理していくつもりでおります。
  23. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 あなたの今の御答弁を伺っておると、どっちがどっちだか、どうもはっきりしない。そこで、これは追及しなければならぬところですけれども、他に質問の条項がありますから、まあ何事もはっきりしないところが、岸さん、あなたの常にモットーとせられているところだろうと思うのですが……。(笑声)  それから、日中国交に対する平和条約への促進ということについて、これはやる意思がないと言われておるが、これは、あなたの独自のお考えとしてやる意思がないのか、アメリカからの牽制というものが相当あってやれないのか、これは大体識者はあなたが何でやれぬかということは大体わかりますけれども、あなたの独自ということではなくて、そういう諸般の牽制があってやれないと、私はこう思っておるのであるが、あなたがあくまで自分日本国の外交上の信条としてやれぬ、こういうようにお考えになるのか、その辺は後日のことがありますから私はちょっと伺っておきたいのであります。  それから、今度の日中第四次貿易協定について台湾蒋介石政権が相当横やりを入れてきていますが、この問題についてはあなたはどうお考えですか。これはまあこんなものは問題にすることはないということで耳をかさずしておやりになるという強いものをお持ちになっておるか、またここでもよろめくということになるか、その辺の点をちょっと、一つ蒋介石政権との関係についてあなたの信念のほどを聞かして下さい。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 第一点は、何か私がアメリカから牽制をされてこれができないのではないかというふうなお考えを持って御質問のようでありますが、絶対にそういうことはございません。私はしばしばここで申し上げている通り日本の立場というものを考えなければならない。それは、日本は一面国連に入っております。また、国民政府との間においては御承知のような終戦のいきさつ並びにこれとの間の平和条約、友好関係というものが出ておる。こういう立場にある日本がどういう政策をとるべきかということは、国際的の立場から言って、私は当然出てくることだと思います。決して一、二の国から牽制を受けてどうだということは絶対にないことを明瞭にしておきます。  それから、国旗の問題に関して国民政府から抗議が来ておりますことは事実でございます。私は、この点に関しては、日本政府の真意を十分に誠意をもって国民政府に現在いろいろとこれを説明をいたしており、理解をさせるように努力をいたしております。必ず誠意をもってわれわれの真意のあるところを誤解なく正当に理解するように今後も努力していきたいと思っております。
  25. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 その点についても実はいろいろまだ問題があります。今岸総理のおっしゃった日・中との問題については、必ずや明日あなたがお困りになる、自分が誤まっておったということを深くざんげせなければならない事態がきわめて近い将来に起ってくることを私はここで明言をしておきます。  さらにお伺いをしたいのは日韓の問題であります。昨年の十二月であったか、政府側の発表によれば、韓国に抑留されておる日本の漁業労働者全部を帰国さすことは責任をもってできる、こういうことを明言をされました。ところが、その後日韓交渉は行き詰まり、問題がだんだんもつれてきております。最近韓国から釈放されておる漁業労働者諸君の苦労というか、あの犠牲というか、全くわれわれは気の毒で忍びないものを感ずるものがございます。日韓交渉の円滑な展開を妨げておるものはもちろん韓国側の政府にも相当あるとわれわれ見ておる。やはり対日悪感情の問題もあろう、それからまた韓国側の政治指導者が国内統一の一つの手段に使っておるということもありましょう。いろいろそういうことはありましょうけれども日本と韓国との関係というものは、これはもう言うまでもなく、その大多数が日本語あるいは日本の文学等をもってやっておるのであって、ここにおいてはもう両国の国民国民との間においては非常に親しみ、相通ずるものがあるのです。そこで、私は、これもまたあなたがなかなかふん切りをつけない、努力が積極的にされない、あるいは形式上のことだけしかやっておられないということになるのであるが、もっとこういう点においては民間関係というものはどうです。お互いに話し合いをやらすようなこと、たとえばあなたが矢次一夫君を代表としてやろうとされたようだが、これも大体さたやみになってしまった。そういうことで、形式上の点はおやりになろうとしておるようであるが、実質上において、民間同士の関係というか、国民国民との関係というか、そういうことについての交流の関係を通じて日韓問題を解決しようということについて、少しも努力をされておらない。ただ一方的に押しつけられてくる、いかんともしようがない、全くお手上げの形である。これなどは、岸総理、あまりだらしないではありませんか。お隣りのことであるし、内輪同士のことであったのであるから、もう少し積極的にあなたが配慮してやれば解決できないことはないのだ。こういう点においてもあなたは全く優柔不断というか、方針を示して決断を下してやるというか、そういうことになっていないではないか。この点について一体どうするつもりですか。政府はしばしば漁民を送還すると言いながら、一向解決しない。そういうことを発表しながらこれができないでおるが、一体この責任はどう感じておるのか。妥結しようとしておるのか、見通しはどうなんですか。この点についても一つはっきりして下さい。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 日韓の問題につきましては、戦後における日韓の関係というものは両国にとって非常に遺憾の状態があって、一日も早くこの間の国交を正常化させたいという考えでございます。伊藤委員も福岡県であられたようでありまして、私も山口県でございますので、特に韓国の問題というものはいろいろな意味において身近く感じておるわけであります。従いまして、今お話しになりました点について決して私は何人にも劣らない熱意を持っておるわけでありまして、私が石橋内閣の外務大臣に就任いたしましてから、この日韓の交渉をまとめるために努力をいたして参ったのであります。しかし、両国の間の関係は、またある意味から言えば、近いだけに、そのもつれもきわめて複雑であり、感情的の問題もありまして、なかなかむずかしいことも、これまた伊藤委員も御承知通りだと思います。幸い、昨年暮れ、予備会談として、要するに、両国で抑留し合っておる人を釈放して、そうして正式会談に入ろうという話し合いができたわけであります。日本側としては、すでに大村の収容所に収容しておりました者を全部釈放いたしております。韓国側から日本に帰ってくる八百数十名のうち、約半数は日本に釈放されて帰って参りましたが、あとの半数が今のところまだ向うに抑留されており、それがいつ帰されるかということがまだ明瞭にされておらない状況であります。そういうことのために、今日正式会談を開くことができなくなっておるわけであります。しかし、われわれとしては、こういう状態を一日も早く解消して正式の会談に入り、その前にこの抑留漁民が日本に帰ってき、もしくは帰ってくることが明確に責任をもって明らかになるというふうな状態を作って正式会談に入りたいということで、いろいろと努力をいたしております。  また、この問題について、今伊藤委員のお話のように、ただ外交のルートだけじゃなしに、民族的の深い関係があるのだから、そういう民間の関係なり、いろいろな関係を動員して、そうしてこれを解決するように努力すべきじゃないかというお話につきましては、私はその御趣旨については全然賛成でございます。ただ、その時期、方法等につきましては、なお現在のところは考えなければならぬ問題があると思いますが、御趣旨については、私はその点は賛成であります。
  27. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 どうも外交問題はことごとく明るい答弁はない。何かどうも申しわけと、入梅どきのような感じのするような答弁だけしか総理もできない。いかに岸総理また藤山外相ともあわせて外交について弱体であるか。独立国家というなら、何で厳然としておやりにならぬのですか。何かのどに物がひっかかったように、何かうしろからあやつり者でもあってやっておるようなことで、一向独自性がないじゃありませんか。独自性があるならやってごらんなさい。だらしがないじゃありませんか。  さらに私は、実は外交問題についてもたくさん山ほどあるのだけれども、同じような弁解、申しわけばかり聞いたって、聞いておる私自身も不愉快でたまらぬ。もう少し明るい外交上の答弁なり方針を聞かしてもらうのなら愉快になってやるけれども、何だかじめじめした申しわけばかり聞いておったって、だらしなくて聞いておられぬ。さらに私は、一つ最後に外交問題について沖縄の問題を伺いたいのであるが、沖縄領土の返還に関する問題であります。岸総理は、沖縄の問題について、最近羽田空港における、宮良君という立法院のなんでありますが、これに対する不当な身体検査をやって非常に問題を引き起しておることをお聞きになっておられると思いますが、どうです。これについて、実は、過般の沖縄立法院の選挙に、わが社会党から宮良君に託しまして、新聞とそれから鈴木委員長と淺沼書記長の演説のテープ・レコーダーを託してやったのであります。これを沒収してしまった。そして、さらに、どうかといえば、どこかのどういうような情報によってやったものか知らないけれども、とにかく聞くにたえぬような身体検査というか、そういうことをやっておる。これに対しては一萬田大蔵大臣が参議院側においてこの追及に陳謝をしたらしいが、これは陳謝だけでは解決できぬので、この問題はさらにわれわれは相当発展さして、この東京税関との関係——単なる税関だけの問題じゃない。これは背後に問題があるので、税関官吏が情報を棒のみにして、そうして宮良氏を不当検査をしたというだけでは済まぬものがある。そういうことをやるということについては、背後に、これはわれわれはわかっておる。また日本の識者もこれを知っておるのである。そういうことでやって、一体沖縄に対する日本政府としてこれでよろしいのか。沖縄は内輪ではありませんか。ちっとも日本国民らしいあたたかさというか友情の厚さというか、そういう態度をとっておらぬじゃありませんか。こういうことは断じてわれわれは許すことはできない。そこで、岸総理は沖縄の住民が日本復帰について血の出るような叫びをしておることが耳に入りませんか。さらにまた、さきに瀬長市長の問題についてもああいう追放事件等が起っております。そういうように、今度の立法院の選挙においても、いかに沖縄住民が日本復帰を熱望してあの選挙をやっておるかという結果が現われておるじゃありませんか。あの沖縄住民が不幸な状態に陥っておることは、これは岸総理はだれよりも一番真剣でなければならぬと私は思う。沖縄住民を不幸な状態に陥れたのは、あなたがやはり戦争責任者として一番責任があるじゃありませんか。従って、だれよりもこれについてはあなたが真剣でなければならぬはずである。その真剣さと熱意とを傾けて、自分の一命を奉じてでも、この復帰に対して、一日も早からんことをということで一体努力をされておりますか。私はこれを聞かない。私はこの点についてははなはだ遺憾に考えておる。いかにあなたが冷酷であるかと私は義憤を感じておる一人である。さらに、たとえばジラード事件があった。あるいは私の福岡の芦屋という飛行場があるが、ここではジラード事件以上のことで二人を銃殺しておる。しかもこれが、夜十二時過ぎておそくなって、日本の駐留軍に働いておる労務者に、アメリカの兵隊が酒を買ってこいと言った。そして酒買いに行ったところが、もう夜おそいもので起きない。そこで酒を買ってこなかったというばかりに、それだけで二人を銃殺にしておるじゃありませんか。これは政府にちゃんと何回も血のにじむような血書をもって陳情しておるではありませんか。これをどうしましたか。こういう問題について、独立国家政府として、どう一体厳然としてやったということがありますか。これでも追従政権でないと言えますか。これらについて、一つはっきりしたあなたの、これらの問題の扱い方、どうやったかをここに示して下さい。
  28. 岸信介

    岸国務大臣 羽田の、沖縄の宮良氏に対する事件は、私大体の報告は聞いております。これは法律上の扱いとしては私は手落ちはなかったと思いますが、事態自身としては宮良氏に大へんお気の毒な結果になったことを私ども遺憾と考えるものでございます。  沖縄のお話でありましたが、沖縄の住民の強い祖国復帰の念願、またそれは同時に沖縄の住民だけじゃなしに九千万日本民族全体の強い要望というものにつきましては、私どもも十分強くこれを感得いたしておりまして、従いまして、アメリカ側に対する日本への施政権の返還という問題に関しましては、昨年私がアメリカへ参りましたときにも、またその後におきましてもいろいろの機会においてわれわれの要望を強く向う側に理解せしむるように努力はいたしております。しかしながら、結果としてその実現を見ないことは、これまた非常に遺憾でありまして、私どもとしては今後も一そう努力をいたすつもりであります。  最後の点につきましては私その事実を承知いたしておりませんので、関係大臣からお答えいたさせます。
  29. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 さっき私が申し上げた、芦屋の飛行場における、二人の労務者を銃殺して、そして十万円ずつやって、これを公けにしたら身のためにならぬぞと言っておどかされたという、その血書ともいうべきものが政府にそれぞれ出されてあるのであるが、これらについてどうしましたか、だれがこれを処理しておるか、ここではっきりして下さい。
  30. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 ただいま御指摘の事件は占領中の事件かと思いますが、ただいまここに詳細の資料を持っておりませんので、後刻取り調べましてお答え申し上げます。
  31. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 占領中であろうと……。その後のものもあります。あのさくの中で行われたからといって、それが全然日本政府に知らされてないのならともかく、それは十分それぞれの機関を通じて政府に陳情しておるじゃありませんか。そういうこともやはりはっきりし得ないということはどこからかの牽制を受けて、気がねをして、やる気がないのだ。そういうことでどうして日本国民民族としての誇りと、あなた方政府を信頼、期待をし得ますか。もう少ししっかりして下さい。だらしがない。  さらに私は、時間の関係もだんだん出てきますから、岸首相の政治信念について二、三点伺います。  岸総理が昨年の秋に全国遊説をやられた折に、三悪追放ということを一枚看板として大いにおやりになったわけであります。岸総理はこの三悪追放は相当大向うに受けるものと思っておやりになったところが、あなたが三悪追放と言うと、拍手かっさいでなく、聞いている聴衆が一斉に何かひやかすような冷笑をしたというので、新聞の伝えるところによると、あなたは三悪追放を言う勇気が、演説する勇気がなくなったとかいって笑われたということなども聞いておりますが、私は、なぜ三悪追放というりっぱなだれでも賛成せなければならぬことに、聞いている聴衆が冷笑したのだろうかと、実はいろいろ不思議に考えた。そこで、私は、ここで三つばかり、あなたがせっかくおやりになるのに、岸ブーム、人気のわかないことを発見したので、それを申し上げて、あなたに対して一つの反省であるが、さらにまたあなたはどうお考えになっておるかをあわせてお伺いしたいのです。  それは、昨年長崎県の諌早に大水害が起って、御存じのように名状しがたいような悲惨な状態が起りました。そうしてあなたもお見舞に行かれました。それから社会党からも浅沼書記長が見舞に行きました。そのときの写真が出ております。あなたが飛行機で見舞に飛んで歩いておられるところを、浅沼君がゴムの長グツをはいて被害の泥田の中から見ているところの写真が出ている。それで、飛行機で飛んだってわかるかい、やっぱりゴムグツをはいて泥田の中に入ってみなければわからぬよと浅沼君が言っている言葉が出ておりました。そこで、総理大臣は忙しいからということでした。それももっともだろうと思っておりました。ところが、お帰りになってからすぐ今度箱根のゴルフ場にあなたは行っておられました。そんなことなら、ゴルフ場へ行かれないで、やっぱり泥田の中にお入りになって、そうして総理大臣が親しく見舞ってやるこの気持、これが私は大事じゃないかと思う。新聞が翌日何と書いておったかというと、岸さんは飛行機で見舞をされた、その翌日箱根のゴルフ場へ行かれて、なかなか総理も忙しいと書いてありました。こういうことがこの被害民というか、あるいは三悪追放に対する国民感情を打つものがないのじゃないか。問題は私はここにあると思う。この点は私はあなたも深くお考えになる必要があると思いますがどうですか。  さらにもう一つ申し上げると、あなたは汚職追放、三悪追放に非常に力を入れておやりになっておるわけであるが、あなたの党の中で、売春汚職、あるいは北陸電力、あるいは石狩湾底びきと、数え立てると幾つも幾つも事件になって、気の毒だが、検挙されておる諸君がある。ところが、こういうことについて、自民党総裁として、また総理大臣として、汚職追放の見地から断固たる処置をおとりなったということを私は聞かない。ここにもやはり、岸総理は貧乏追放を言われ汚職追放を言われるけれども、みずから何もやらぬじゃないか、こういうことがあると思う。古い本の話でありますけれども、二宮尊徳の時代に、ある漢学者が塾生がたくさんおったがだんだんいなくなってしまうので、二宮尊徳に、おれほどの漢学者のもとに塾生がいなくなるとははなはだけしからぬがどういうわけだろうと聞いてみたところが、二宮尊徳いわく、こやしおけの中に米の飯を入れたって食えるかと言った。私は、幾ら口頭禅を言っても、みずから身をもって実踐するということでなければいかぬと思う。  それからさらに、ついでながら、これはあなたに大いに反省さすために言うのですが、福岡県であなたが演説会をおやりになったときに、ちょうど土屋知事のリコール問題がありました。そこで自民党の福岡県の幹部から士屋弁護論をやってくれということを頼まれたそうだけれども、さすがにあなたはおやりにならなかったらしい。そこで地元の自民党の幹部は不満だったらしいが、あなたはここでは汚職追放をおっしゃらなかった。それから大分においでになったときにあなたは暴力の追放をおっしゃらなかった。それは別府博覧会のときに警察を動員するほどの暴力事件があったからだ。それから宮島においでになったときに貧乏追放をおやりにならなかったらしい。それはなぜかというと、貧乏農民がたくさん歓迎に出迎えておったからだ。これを称して新聞は何と言っておるかというと、さすがに岸総理そつがないと言っておる。こういうところから、あなたがせっかく三悪追放をおやりになっても、国民の胸を打つものがないのじゃないか。やはり身をもって実踐する、これこそが人を動かすものじゃないか。その勇気、その決断、それこそが私は非常に重要であると思いますが、あなたのその後の三悪追放を通じての心境を一つお伺いしてみたいと思います。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 三悪追放ということは、私が国民の前に政治上の信念として私の心境を述べ、私が政治の責任をとる以上、この問題に対して力強く私の信念を推し進めていこうという意味において国民に公約をいたしておるつもりでございます。従いまして、あらゆる機会に私はこの点に関して私の信念を国民の前に申し述べてきております。今いろいろ私の演説等についてそつのない云々というようなお話がございましたが、一切そういうことはない。私は全国におけるなにを通じて同じような——これは私の信念であります。ただ、今伊藤委員からのいろいろ反省すべき点等についての御忠告はありがたく承わって、私も反省をいたします。しかし、私は、これを決して大向うのかっさいを得るために言うておるつもりではないのであります。私は政治家として、こういう政治の最高責任をとる以上、いかにむずかしくとも、あるいは至らぬところがありましても、この三つの悪についてはあらゆる面からこれをなくしていこうというつもりでおります。  なお、至らない点等についての御注意につきましては、十分反省いたしますが、決して私自身としてこの問題を口先で大向うのかっさいを得るために言っておるというような軽薄なつもりは毛頭ないということを申し上げておきます。
  33. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 さらに伺いたいのは、岸総理大臣が昨年六月アメリカを御訪問になりました折に、ちょうどそのときアメリカでは両院議会が開かれておりまして、あなたがそこで演説をされた内容が全世界の新聞に非常に大きく出ておりました。日本においても朝日新聞などは第一面に五段か六段抜きで写真入りで大きく書いておりました。その中にこういうことが書いてありました。岸総理大臣がアメリカ両院でやられた演説は、アメリカの方針に沿って百パーセントの優等生として卒業した、こう書いてありました。これは一体どういうわけだろうか、私にはなかなか意味が解せませんでした。そこで、われわれがあなたに率直にアメリカに行かれた折に言ってもらいたかった国民の声は、あなたが約束をされておりました安全保障条約の改訂の問題、あるいは駐留軍等の問題、あるいは原水爆持ち込み反対あるいは実験禁止の問題、あるいは小笠原、沖縄の返還の問題、あるいは、御存じのように、日本は毎年十億ドルもアメリカから買っておるのに、アメリカは日本からその半分の五億ドルしか買わない、こういういろいろな問題について、日本国民としてはアメリカにあなたを通じて大胆率直に無遠慮に言ってもらいたかった。ところが、そのことの言われたことは新聞に一つも出ておりませんでした。ただアメリカの方針に沿って百パーセントの優等生として卒業したということだけしか書いてありませんでした。これは一体どういうことでしょう。そこで、やはり日本の、一国の、われわれが信頼し期待をする総理大臣でありますから、日本国民の言わんとするところは大胆率直に言ってもらうところに、あなたに対する非常な信頼と尊敬と期待が起るのじゃないか。そういう点が全然なかった。これは私ははなはだ遺憾に思っております。そこで、どういう関係で、今私が言ったような、日本国民が切々として訴えてもらいたかったことをおっしゃらなかったのか、おっしゃったのか、そういう点について一つ今後のこともありますから伺っておきたいと思います。  それから、あなたがアメリカからお帰りになるときに、ハワイに寄航されて、そこで、これも新聞全部に出ましたが、今度日本に帰ったら社会党と対決をして戦うということを声明されました。そこで、どういうことをもって社会党と対決して戦われるのか、われわれも大いに期待をいたしておりました。ところが、これをもって社会党と対決して戦うぞということをあなたは一回もお示しになりませんでした。そこで、私は考えた。一体何でハワイでそんなことを言わなければならなかったのか。羽田の飛行場に帰ってきて、アメリカへ行ってきて心境が変化した、今度社会党と対決してお前らと戦うから覚悟しておれと言うならわかるが、ハワイでおっしゃったのはどういうわけだろうか。これは日本の方へ向っておっしゃったのではなくて、アメリカでいろいろお世話になったから、アメリカの方に、ワシントンの方に向ってゼスチュアとしておっしゃったのじゃなかろうかという、私は実は疑いを持ったのです。そういうことについて、あなたの心境と、なぜ社会党と対決して戦うものをお出しにならぬのか、何をもって戦おうとしておられるのか、いずれ選挙も間近いと思いますから、これを一つお示し下さい。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカにおきまして、私はいろいろな人々とも会いましたし、またいろいろな機会に私の所信を述べて参りました。今お話しのような点に関しましても、私は、私が適当と思う場所におきましては、そういうことを十分に日本国民の意思としてこれをアメリカ人に理解せしめ徹底せしめることに努力をいたしてきたつもりであります。社会党との対決云々のお話は当時いろいろ新聞に出ましたために、今日までだいぶ時間がたっておりますが、その間に国会もございましたので、いろいろその点に関する質問もあったのであります。私は、二大政党である以上、その立場、その政策というものはおのおの党が責任を持って綱領としあるいは政策として国民の前に示している。社会党がいかなることを考え、いかなる考えに立ってどういう政策を考えておるかということは、社会党の綱領やあるいは政策のうちにはっきり示している。自民党もまた天下の公党としてそういうことをはっきりさせております。そうして、それらの違いにつきましては、国会を通じて、国会の審議あるいは国会のあらゆる場において論議され、それを明確にすること、そうして国民がそれに対して正当なる判断をし、主権者として審判を下すのが民主政治の運営の根本であり、また二大政党としてわれわれがそれぞれ国民責任を持つ立場から言えば当然であろうと思います。それで、よく、一体何でもって対決するのだというお話もございます。しかし、外交、内政を通じて、社会党がお考えになり、社会党が天下に声明されておりますものと、われわれ自民党が天下に声明をいたしておりますものとの間におきましてはいろいろ考えが違う。同じものもあります。これは同じものもあることは民主政治として当然である。その違うところのものを国民の前にはっきりするということが、国会の審議を通じて行われ、あるいは総選挙の場合において国民の前に述べられて、国民がそれに対して審判を下すということが民主政治の根本である。私が対決という言葉をその後ずっと用いておるのはそういう意味であります。何か戦うとかあるいはその当時言ったことが非常に威勢のいい意味においていろいろとられておるようでありますが、私は民主政治の根本についてはそういう考えを持っておるのでありまして、これはあらゆる機会にできるだけ紳士的にお互いに議論を戦わせ、国民が十分に理解し、国民が判断をするというように、今後といえども国会運営を初めすべてを持っていきたい、こう思っております。
  35. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 最後に解散問題の何点かについて一つお伺いをいたします。  民主政治の本来のあり方から言えば、総選挙の結果によらずに政権をとれば、直ちに議会を解散して民意に問うのが正しいことであることは言うまでもなかろうと思うのです。岸内閣は、御存じのように、石橋首相のあとを受けてできた内閣でありますので、その後数回にわたって解散をされる機会があったと私は思っております。それを、だんだんのがれたというか、機会を逸したというか、そういうことでずるずるべったりに来ておるのが、実は今の岸内閣の現状ではなかろうかと思っておるのであります。私は、岸総理がしばしば新聞等でもおっしゃっておられることを見まして、総理自身は議会を解散することに反対ではないのだ、ただ自民党の反岸派というか反主流派というか、そういうところに牽制をされて解散ができないでずるずると来ておるのじゃなかろうかと思うのです。たとえば、一月解散のときに新聞などにも出ておりましたように、何か岸総理は一月解散をやるのじゃないか、こういうことが相当盛り上っておりました。ところが、副総理石井光次郎氏、それから河野企画庁長官、大野副総裁、こういうところが集まって一月解散反対ということを先手を打ってやってしまったものだから、とうとうあなたもどうも押し切ることができないというようなことになってしまったのが、一月解散をやれなかった理由であると世論は見ております。そこで、こういうことでずるずるべったりにあなたがやっておられると、あなたの総裁、総理大臣としての自主性、決断力、こういうものについてだんだん疑いが起ってくるのでございます。最近におきましては、はなはだこれはどうも失礼な言い方になるかもしれませんけれども、始まりは岸総理のことを両岸と言っておりました。それからその後は八方岸と言っておりました。このごろは無岸というように新聞などが書くようになりましたが、これはやはりあなたが自主性と決断の勇気を持って指導的立場でおやりにならぬところからそういうように酷評をされるということになるのじゃなかろうか。岸政権は常によろめいているということも言っておりますが、そこで、一体このよろめきのない、おれはこういう信念と決断と勇気を持っておるぞということを一つはっきりここでお示しになると、こういうちまたのうわさも消えるかもしれませんから、一つはっきりおっしゃって下さい。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 解散の問題につきましては、いろいろな論議が従来から行われております。私に対してもしばしば国会の席上で質問がございましたが、私自身は、最近の心境としては、この国会提案しておる、岸内閣としては国民に公約し、国民の最も期待しておる三十三年度の総予算を初め重要案件がなお審議中でありまして、これを審議し、成立せしめるということを現在の自分としては唯一に考えておるということを申し上げてきておるのであります。今日の私の心境もまたこういうことでございます。
  37. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 世論がふらついておると言っておると今私が申し上げたのは、経過があったことは岸総理御存じであろうと思うのであります。たとえば、一月解散ができなかったら、今度は予算を通すことに全力を注ぐ、ところが、今度四月予算が通ったら、すぐやるのかと思ったら、今度は重要法案を通すことに全力を注ぐ、こういうことで、予算通り、重要法案が通ったらということになってくると、だんだん解散をするというきっかけ、理由、そういうものが今度立たないようなことを、あなたおっしゃるのじゃありませんか。たとえば予算が通った、重要法案が通った、執行の責任があるから今度はまたやらぬ、こういうことも言われぬとも限らぬ。そこで一体重要法案とおっしゃるが、重要法案というのは、どういうものを称して重要法案ということに大体見当をおつけになっておるのか、そういう点について一つ具体的に伺いたい。  それからさらになにしたいのは、重要法案を通す通すとおっしゃっても、今の与党の登院の現状で重要法案が一体通りますか。この間、議院運営委員会総理は出席をされて、与党議員に責任を持って登院さす、そうして本会議委員会等に出席をさして責任を持ってやる、こういう言明をおやりになったが、その翌日の本会議ではどうですか。翌日の本会議では三分の一に達せないで、とうとう本会議が開けなかった。そこで村上国会対策委員長ども一生懸命に骨折られておるんだから、そこでまあ協力をせざるを得まいと思って社会党も出ていきまして、かろうじて開いたということじゃありませんか。それから委員会等をごらんなさい。委員会において、一体定足数に達しておるなにがありますか。本来からなら、委員会においては与党のみで常に定員数に達しておらなければならぬはずであります。ところがそれがないじゃありませんか。それで、聞くところによりますと、こういうことがいわれております。何かあなたの自民党の中に、ますらお派出夫部隊というものがあるらしい。(笑声)ますらお派出部隊、これが三十名おるらしい。そしてその三十名だけは特別な手当をするから、選挙区に帰るな、そして遊撃隊として各委員会にすぐ入れかえをしていけ、するとそれで過半数になる、開会する、引き揚げる、またあそこにもやらなければならぬ、またそこに動員する、こういうことをやっておられるのである。一体、こういうことをやっておるということを、あなたは総裁、総理として恥かしいとお思いになりませんか。常に与党というものは過半数でありますから、予算においても、重要法案においても、これを通過さすところの主導権を持っておる、責任がある、これをおやりにならぬじゃありませんか。常にその定数が足らないから、野党の社会党に米つきバッタのように拝みます、頼みますというようなことで、かろうじてとにかく運営しておるというようなことじゃありませんか。これで一体重要法案を通すということを言えますか。一体通りますか。(「通してみせるから心配するな」「通してみろ。」と呼び、その他発言する者あり)そういうことをおっしゃるなら、あとで米つきバッタのように、われわれの方に頭を下げないようにして一つやって下さい。今そういうことを言っておると、あとで頭を下げてもなかなか聞きませんぞ。  そこで総理大臣、一体この重要法案とは具体的に何であるか。それから、今のような登院に対する状態、与党の出席、それからますらお派出なんという、これははなはだ名前が悪いから、こういうものについて何とお考えになっておるか。もっと責任を持って、与党は主導権を持って議会運営に当るというようなことについて、総裁、総理責任があると思うが、こういう点についてどう考えるか。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 現在重要法案は何と何だとお話になっておりますが、これは今私ども提案をいたして、御審議を願っておるものを重要法案というのであります。  それから国会運営について御指摘になりましたが、これは与党として、また政府といたしましても、審議を促進することにつきましては、万全を尽すつもりでおります。今日までのなににはずいぶん遺憾な点が私もあると思います。万全を尽すつもりでおります。
  39. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 まさかどうも岸総理も、ますらおを認めておるというような答弁もできますまいから、これは一つ私が大いに総理に同情いたしまして、それは追及しないことにいたしますけれども、事実あることだけを一つお含みおきを願いたい。  それから解散の問題については、御存じのように何というか、浮き足立ってしまっておる。そこで聞くところによると、赤城農林大臣がソ連に行かれるときに、総理大臣との間に、おれがソ連に行っておる留守中解散はやらぬだろうな、解散をやるというならおれは行けぬ、だからそれを確約してくれということをあなたに、赤城農林大臣が約束をしたということを聞いておるのであるが、そうすると、赤城農林大臣がお帰りになるのは、おそらくは四月のどんな早くても二十日過ぎ、あるいはまた問題が込み入ってくれば四月一ぱいかかるかもしれぬ、そういうことになってくるのでありますが、一体解散の時期については、どのようにお考えになっておるか。この時期の点について、これはもうざっくばらんにおっしゃった方が、かえって私はすっきりすると思う。だからそういう点を一つ、あなたがもうそつのない、要領のいいという答弁ばかりじゃなくて、ざっくばらんに一つ言って下さい。  それから法案通過、法案通過とおっしゃいますけれども、法案はまことに遅々として通過をいたしておりません。御存じのように、内閣の今度提出された法案の案件は百四十二件ですか、それに継続審議のものも加えますと、二百何十件になります。予算関係の法案も八十件くらいあるはずです。その全体を通じて、いまだ三十件くらいしか通過しておらぬでしょう。予算関係というものは、まだ十件に達するか達せないかでしょう。もう会期はほとんど下り坂になっておるじゃありませんか。解散が目の前にあると、盛んに浮き足立っておるという状態です。そういう現状にあるので、一体重要法案の通過々々とおっしゃるけれども、こういうような審議の状況をもって、一体重要法案の通過に責任を持てますか。この今までの成績の状態から見て、抽象的にはおっしゃっても、具体的に重要法案通過ということを、あなたが責任を持っておやりになるということは、自民党全員、党員全部に禁足令をお出しになっておやりになるというなら別です。ところがあなたがなかなかその点をはっきりされぬので、大体四月二十日ころから月末ころまでに解散するであろうというような空気が伝わる。あなたがおっしゃらぬでも、あなたのところのそれぞれの派閥の親分連中は、それぞれ勝手なことを言っておる。それだからそれがまことしやかに伝わって、これをどうすることもできぬ。むしろあなたがここではっきり言明されることによって、私はそういうことが一掃されて落ちつくものであると思うから、重要法案の通過と、それから党内においてそういう百鬼夜行のごとくいろいろ言っておるから、こういう点に対してあなたはどれだけの統御力をもってやろうとしておられるか、こういう点を一つお聞きかせて下さい。
  40. 岸信介

    岸国務大臣 法案の成立の状況は、実は私も非常に気になりますので調べてみておるのでありますが、例年に比して本年が特に成績が悪いという状況ではございません。なお会期としては、四月と五月の中ごろまであるわけでありますから、今後十分に努力をいたして参りたいと思います。  解散の問題に関しましては、今伊藤委員が、赤城君と私との話として、(笑声)これは全然根も葉もないことなのでありますが、そういうことすらまことしやかに伝わるような状況であることは、私非常に遺憾に考えております。しかし私はやはり議員として、政府といたしまても国民の負託を受けて、こういう重要案件を審議たしておる際には、それに全力をあげることがわれわれの務めである、かように考えておりますので、特にその責任は与党においてその責任の大部分を負担しなければならぬ問題でありますから、与党の総裁とし、総理といたしましては、特にその点についてはこれから万全を尽すように努力をいたします。
  41. 江崎真澄

    江崎委員長 伊藤君に申し上げます。申し合せの時間が経過しておりまするから、結論にお入りを願います。
  42. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 この解散問題は、自民党側の同僚諸君にも重要であるから、やっぱりはっきりせなければならぬ。そこで私は、あなたが解散になかなか踏み切られない党内事情において、これはあるいはあなたの耳に入らないかもしらぬが、われわれの耳には入っていますから、率直にお聞かせを申し上げるが、自民党の中の現議員の諸君は春の解散反対であるというのが圧倒的です。それはなぜかというと、落選議員あるいは今度新たに立とうというものが、四月解散あるものなりということのもととに、あき巣ねらいをやってしまっておる。そこで今度四月解散になったら、落選をしたり、新しく立とうとするあき巣ねらいに、すっかり地盤を荒されておるから、それをやられたら現議員は困る。だから一応会期が終って、休会になって、休会中に国会報告という特権をもって事前運動をやれば、落選議員や新しく立とうというものは金を使い果して息切れになっておる。そこでやれば現議員に有利だから、春の解散は反対だ、こういうものが一つある。これは大きい勢力です。それからまたあなたは御存じかどうか知らぬが、反岸派というあなたの方の勢力は、なるべく解散をやらせないように長引かせておいて、岸勢力をジリ貧に陥れて、そうして一つやろうじゃないか、こういうこともある。あなたも御存じであるかどうか知らないけれども、そういうこともある。そういう点から、あなたがやはり踏み切りのつかない、右往左往というか、無岸であるという性格を出さざるを得ないということにまたなってしまう危険性もある。だからおれは断じてふらふらしておらぬぞ。無岸ではない。おれは断じておよそいつごろやるぞということを、はっきり明言される方が私はいいと思うのです。最近どうもあなたの考えは、今のまま選挙をやっては——これはあとでわが党の専門家の勝間田政調会長が、財政経済政策については質問申し上げるから申し上げませんけれども、とにかく経済問題で行き詰っておる。外交問題で八方ふさがり、党内はてんやわんや、こんなことで選挙をやったんじゃ、社会党にとても勝てないから、これはもう困る、こういうのが偽わらざるところの岸内閣、自民党の内情です。そういうことであるところから、一体どういう機会をつかまえて解散しようか、何か社会党に一太刀浴びせかけてやる方法はなかろうか。今のままでやったんじゃ、社会党から総攻撃を食ってくる、弁解ばかりしておったって選挙にならぬ。これじゃ社会党に勝てぬ。社会党にしてやられてしまう。だから何か社会党に一太刀浴びせかける与党に有利な選挙のスローガンはなかろうかということで、苦心をしておられるというのも、これは偽わらざるところの心情だと私は思うのです。そこでそういうことばかり考えておられるなら、公明正大な、正々堂々とやるべき選挙を私物化する——選挙を私物化するということは、これはまことに許されません。こういうことについて一つあなたのお考え——こういう選挙対策について、自分は選挙を私物化するようなことはない、悪ければ悪いなりで、一つ国民にあやまってでも、選挙をするというような考えがあるかどうか、こういう点も一つはっきりして下さい。
  43. 岸信介

    岸国務大臣 解散の問題につきましては、今伊藤委員もお話しのように、選挙、解散というものは、もちろん私物化して考えるべきものでないことは、言うを待たないのであります。私はやはり民主政治の運営の上から申しますと、議員の任期は四年ですから、原則はやはり四年やるということが憲法上、法律上の原則であろうと私は思います。しかしいろんな意味において、解散をして民意に問わなければならない事情があり、国民の世論がそれを強く要望するような事態には、これは政治の運営として、そうやられるということは当然のことであろうと思います。そういうことで、われわれは——ことにその解散の最後の決定をしなければならない地位にある私といたしましては、私に課せられているきわめて重大な政治的の責任の問題として、慎重に考慮して考えるべきものであって、決して私物化するとか、あるいは自分の都合のいいような解散をするとかというような考えは毛頭持っておらないのであります。
  44. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 もう一点だけ……。時間の関係もありますから、もう一点だけで終ることにいたしますが、新聞などで見たり聞いたりするところによりますと、この会期中に選挙法の改正案を出して、そうして政府側、与党に有利な選挙をやろうということをお考えになっているということが伝わってきております。たとえば選挙運動期間を短くする、あるいは立会演説をやったんじゃ社会党にかなわないから、これも少くしよう、あるいはトラックで街頭をやっておったんじゃ、これも野武士のような向う気の強い社会党にはとてもかなわないから、これも一つやめよう、そういうことで政府与党に有利なように、この選挙法改正案を出してやること、それからたとえば学校長、教頭、こういう人を非組合員、管理職にして動きがとれないようにしようというようなことで、とにかくだんだん、だんだん、社会党をがんじがらめ、手足をもぐようなことをこの会期中にやって、それらを整えて、この解散、選挙をやろうということを考えておるということが伝わっておりますが、この会期中にそういうことをおやりになるというお考えがありますか。この点を一つはっきりしておいてもらいたい。
  45. 岸信介

    岸国務大臣 選挙法の改正の問題につきましては、私何も聞いておりません。それから管理職の問題につきましては、御承知のように、管理職手当を本年から出すということで、やはり管理職というものを考えたらどうだという議論があり、党内においても研究しておるということは私承知いたしておりますが、結論を得るに至っておりません。そういう情勢でございます。
  46. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 今の点についてちょっと誤解が——総理が十分のみ込んでおられない点があるのじゃないかと思いますのは、この非組合員にしてしまうということで、その手足をもぐようなことに持っていって、動きのとれないようにしてしまおう、たとえば教組の組合員はやはり校長が非組合員でにらみをきかすというようなことになりますと、これはやはり有形、無形の干渉になる、そういう点でこの問題になるわけであります。そういう点において、たとえばそういう問題が出てきても、総理はもう余すところ幾らもない国会であるから、自分はそういう誤解を受けるようなものは断じて出す意思がない、こういうお考えですか。その点はっきりしておいていただきたい。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、これがそれぞれ党に機関がございまして、それで研究しておるということは私は承わっておりますが、まだ結論を得ておらないというのが、今の実情でございます。それ以上のことはこの際申し上げることは差し控えます。
  48. 江崎真澄

    江崎委員長 先ほどの伊藤委員の御質問に関連しまして、愛知官房長官より発言を求められております。これを許します。愛知揆一君。
  49. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 先ほどお尋ねの芦屋の事件につきまして、ただいま取り調べましたところを、とりあえず御報告いたします。  この事件の発生の時は、昭和二十四年八月六日でございます。被害者は本田肇君外二名でございます。賠償につきましては、御承知のように占領期間中は日本政府に支払い義務なしということになっておりました。しかしながら事件当時に、厚生省が見舞金を特に支給いたしました。またその後福岡県庁より追加支給したものもございますが、この日本側で見舞金として出しましたのは、各人それぞれ十五万円でございます。なお米側から直接に出しました金額は、ただいま明確でございません。それからこの加害者はリトレートという者でございまして、ただいま米国の刑務所に服役中、刑期は当初三十年であって、その後二十五年に減刑せられて服役中である。こういう状態であります。
  50. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 今の愛知官房長官の御報告の通りでございます。そこで非常な深刻な陳情というか、なにが出ておる。これに対して日本政府側としても——そういう占領下の事態でありましても、日本国民ですから、それで切切として、今ジラード事件以後特に訴えておる。だから日本政府として、これらの被害者に対して、今後どのようにこれらを取り上げて補償してやるか、あるいはいたわってやるかということについては、アメリカ側との間に当然交渉する権利がある。何も一つも不都合はないのです。酒買いに行って、買ってこなかったというだけで銃殺されておるのですから、これについては日本政府として相当交渉して、これらを弁償するというか、補償するというかいたわってやるということは、当然日本政府の権威にかけてもやらなければならぬと思うのです。そういうことについて十分おやりになるというお考えであるかどうか、この点を一つ岸総理からはっきり伺っておきたい。
  51. 岸信介

    岸国務大臣 この事件は、今官房長官から報告いたしましたように、一応私は処理済みの事件であると思います。しかしこれらの被害者の遺族等について、なおこれをいたわる方法を政府としても考えるべきではないかというようなことにつきましては、事情を取り調べました上において善処いたしたいと思います。
  52. 江崎真澄

    江崎委員長 午後一時四十分より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ————◇—————     午後二時十六分開議
  53. 江崎真澄

    江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。勝間田清一君。
  54. 勝間田清一

    ○勝間田委員 日本社会党を代表いたしまして、岸内閣に対して総括的な質問をいたしたいと思うのでありますが、主として経済、外交、労働等の諸政策をただしたいと思うのであります。  まず経済の問題からお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、昭和三十三年度の予算は、すでに衆議院を通過いたしたわけでありますけれども、目下参議院においては審議中であります。しかしながらここ数カ月の予算審議の過程において、日本の経済は非常な大きな変化を遂げつつあるわけであります。これはちょうど石橋内閣の財政から岸内閣の財政に移る過渡期においても、別な形で大きな経済の変更があったわけであります。当時社会党はこの経済の変更に対して、岸総理に対してこの際に予算を一応撤回をして、新しい情勢を加えて出してくる必要はないかという点を鋭く要求申し上げたのでありますけれども、不幸にして取り上げられることができなかった。しかし今日三十三年度の予算がまさに通過せんとする際に、財政経済の基礎が大きく動いておるということが事実であるとするならば、これに対する何らかの処置を加えることなくしては、真に責任ある政府というわけには参らぬと私は思うのです。従ってここに若干の時間をかりて、私はまず現在の経済惰勢というものどういうように把握したらよろしいのであるか、どこに予算の編成当時との大きな違いが生れてきておるのであるか、これを明らかにして、その上で政府の善処を要求いたしたいと思うのであります。  そこで言うまでもなく第一点の問題は、国際収支の見通しが変って参ったと考えておるのであります。少くとも今日までの財政のあるいは政策の基本は国際収支の赤字をいかにして克服するかという点に、あらゆる施策がこれに集中をいたしておったわけであります。だが国際収支は御存じ通りに、昨年の五月に総合緊急政策を立て、その後九月に至って国際収支は改善の方向をたどって参りました。そこで昭和三十二年度について見ましても、当初政府は約四億ドル程度の赤字になるのではないかということがいわれておったが、漸次これが修正を加えられて、最近の一月当りの状況を見れば、おそらく年度末の国際収支の赤字は一億三千万ドル程度ではないかと今日いわれておるのであります。これらの数字が変化を来たしたのは、過去の数字をとって統計がとられたために、前向きの数字がなかなかとりがたかったというところにも私は原因はあろうと思う。しかしここではやはり明らかにしておかなければならぬと思うのは、国際収支の問題が三十二年度末において一体どの程度になると経企長官は考えておるのか、これをまず第一にお伺いをして、三十三年度の状況に一つ入りたいと考えております。
  55. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまお話のうちにもありました通り、大体一億三千万ドル程度の赤字になるというふうに考えております。
  56. 勝間田清一

    ○勝間田委員 三十二年度末の一億三千万ドルの赤字にとどまるというのが経企長官のお答えでありましたが、この三十二年度の赤字が一億三千万ドル程度にとどまったというのは、一体どこにその大きな原因があったと考えるか、この点を私はまず一つ経企長官にお尋ねいたしておきたいと思う。
  57. 河野一郎

    河野国務大臣 当初予定いたしましたように、輸出の面におきましては大体所期の予定通り、それは反面輸入の面におきまして当初考えましたよりも順次縮小いたして参りまして、そのバランスがそういう数字になってきた、こういうふうに考ております。
  58. 勝間田清一

    ○勝間田委員 輸出は比較的順調であったが輸入が漸次減少した、この漸次減少したということは、これは私は通常答えられる意味での問題ではないと思う、非常に急速な低下に実はあると考えておるのであります。これは今日まであるいはブームの現象というものが設備投資の面にあったのか、あるいは在庫投資の面にあったのか、この点の認識にかなり今まで違いがあったと私は考えるのである。もとより設備投資が多く行われたということは言うまでもありません。しかし最近の輸入の状況を見ると、私はそれ以上の大きな思惑輸入あるいは在庫投資、これが非常な大きな財政的な作用をしておったのではないか、これを考えるのでありますけれども、経企長官は一体どう考えておられるか。
  59. 河野一郎

    河野国務大臣 お話の通り、設備投資もある程度行き過ぎがあったが、これに伴うて思惑という言葉はどうかと思いますが、一方において設備を大きくいたします反面、原料資材においても相当の手持ちをするというようなことがあったと思うのでありまして、ただいまお話の最近の輸入の減少は国内の原材料の在庫を食いつぶして生産に充てておるということに数字は出ておるように思います。
  60. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今御答弁がありましたからお尋ねをいたしておきますけれども、在庫投資の相当の食いつぶしというものをあなたは考えておられるとすれば、実際の数字とは私は違うと思う。現在輸入在庫は減っていないと私は見るものであります。もちろん若干の輸入在庫は減っておりますけれども、その面は製品在庫の面に一部移されておる。従って在庫が相当減っておるという形では私は説明がつかぬと思う。現在の在庫統計というものを、私ははっきりあなたから一つ説明をしていただきたいと実は思うのです。在庫は私はさほど減っておらぬと考えておるものでありますが、経企長官はどう考えるか。
  61. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまお話の中にもございましたが、原材料の在庫が減って参りまして、これは製品の在庫にかわっております。事実数字につきましては、事務当局から説明いたさせます。
  62. 大堀弘

    ○大堀政府委員 ただいまの大臣の御説明補足して御説明申し上げます。  在庫につきましては、原材料の在庫のうちで、国内全体の原材料在庫につきましてはあまり減少いたしておりませんが、輸入原材料につきましては、昨年の六月をピークといたしまして、そう急速な下落ではございませんけれども、この一月までに二〇ポイント近く下っております。二〇〇ポイントから一八二、三ポイントまで下っておりまして、輸入原材料につきましては、若干の減少が見られます。ただ生産者の製品在庫につきましては十二月まで依然として下っておりません。これは生産調整が多少ずれておりまして、製品在庫は十二月、一月まで上りカーブは停滞いたしておりますけれども、減退という形まではなっておりません。今後生産調整が行われますれば、逐次これも下って参るかと思います。現状ではそういう数字になっております。
  63. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今の政府委員の答弁は、若干私は政治的な粉飾が実はあると考える。やはり数字数字らしく正確に言うことが大切だ。私は輸入在庫の面が、なるほどお話の通り二〇五・四から本年の三月一日には一八六ポイントに、若干の下りがある、これはまことに軽微な下り方だと考えております。しかし政府委員の、製品在庫は減ってはおりませんという答弁は、私は妥当でないと思います。製品在庫は明らかに急激な増加をいたしておるのであります。すなわち御承知通り六月の一二四から本年の一月は一四八・五に実は上っておるのであります。これは着実な製品在庫の増加であります。こういう点を何か粉飾した形でものを答弁されることに対しては、私はきわめて遺憾にたえないのであります。しかしいずれにいたしましても、ここに製品在庫や輸入在庫の対比から若干の減少が見受けられるけれども、私は製品在庫の面にかなり移っておるというふうに考えますならば、輸入在庫の大きな減少を見るのは大きな間違いではないだろうか、判断の上において私は間違った考え方じゃないだろうかと考えておるのであります。そこでそういう状態のもとにおいて現在の輸入規模というものが、大体二十二億一千万ないし二千万程度のところにあると実は考えるから、この状態が一体ノルマルの状態であると考えるのか、これは非常に少いと考えるのか、これを私はあなたに一つ考えていただきたいと思うのだが、今後の三十三年度の輸入の将来の見込みを律する上においてはきわめて実は重要だと思うのです。この点に対するあなたの見解を伺っておきたいと思うのであります。経企長官の答弁を求めたい。
  64. 河野一郎

    河野国務大臣 お話の通り、輸入は異常にと申します言葉はどうかと思いますけれども、少な過ぎる、これはたとえば保証制度等につきましても、引き上げをやって輸入をなるべく押えるような傾向をとってきた、しかしそういったようなことは、この際はやめたらどうかというような話も、実は寄り寄りいたしておるようなわけでございまして、なるべく平常の状態において輸入をあるがままにすべきだ。すべて輸出については極力これを奨励して、輸入についてはこれを押えるというような傾向ではなしに、要りようなものは普通の状態に入れていいじゃないか。ただし、繊維品のような特別に原材料が多いとか、もしくは需給が非常にアンバランスであるとかいうようなものについては、特に考える必要があると思いますが、総じて申しますれば、ただいまお話のような方向にやっていくべきものだと考えております。
  65. 勝間田清一

    ○勝間田委員 河野経企長官は、輸入を押えるべきではない、今のお言葉によりますと、若干輸入は奨励してもよろしいというような意気込みに実は聞える。もちろん繊維その他の過剰生産になっておる部分は若干の調整を加えるともお話しになりましたが、輸入について今の二億二千万ドル程度のものは少な過ぎると見ておられるのか、あるいは、だからこそ今後はこの輸入の面がふえることを希望されておるのか、政策の面においてもう一度あなたの確答をお聞きしたい。
  66. 河野一郎

    河野国務大臣 しいて輸入を奨励するということは申したわけではないのでございますが、御承知通り、長期経済計画におきましては輸出入それぞれ予定を持っておるわけであります。この線に参りますことが日本経済の成長率、経済の運営に一番妥当であろうということを考えております点から見まして、現在の輸入につきましては、輸入の原材料についても先ほど数字説明しました通りに、その面に食い入っておる、しかしこれもどこまで食い入ってよろしいかということは限界があるので、ある一定量の原材料の保有は当然必要でございますから、それ以下に輸入の面が減少して、その入ったものを使うということは妥当でないというふうに考えますので、決して奨励するという意味ではございませんけれども、平常の状態において輸入も必要なものは入っていいじゃないか、こういうふうに考えております。
  67. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は若干見解を異にいたすのであります。河野長官に私はお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、当初政府の予定された生産計画四・五といいあるいは六・五といわれるいわゆる生産計画なり国民所得の計画から申しますならば、三十二億四千万ドルの輸入が必要である、こういう計画があなたの御説明であったわけでありますし、政府の根本であったと実は考える。しかし現在の輸入が二億一、二千万ドルの輸入状況にあって、在庫はさほど減らないという状態にある、デフレ政策は依然として強行しようという状態にあり、しかも製品在庫は今日ふえておるという状態から考えて参りますと、現在の生産規模においてはほぼ見合った二億二千万ドル程度の輸入ではないかと私は考える。これがもし生産をもっと増大しなければならないというならば、それについての輸入の増加が当然予定されると私は考えておるのだけれども、現在の状況は少くとも現在の生産にほぼ見合っておる輸入だと私は考える。ある意味ではノーマルに近い輸入だと私は実は考えておる。この点についてあなたはどう考えられますか、もう一度お尋ねをいたしたい。
  68. 河野一郎

    河野国務大臣 昨年からとって参りました政策が大体所期の通りに進んで参りました。そして先ほどもお話のありました通りに、生産資材の卸売価格については大体九・七%程度の値下りになっておる。ただしこの内容についてはむろん考慮しなければならない問題がありますけれども、総じて現在の卸売価格については国際的に適当な価格にきておる。そういう状態でありまして、一たん下げ足にきたものでございますから、その間にいろいろな関係もありますし、影響もありますので、今このままの輸入の状態、これが平常の状態でいいじゃないかというお話でございますけれども、私はそれは好ましい状態じゃないと思う。デフレを強行しようとしておる現内閣だとおっしゃいますけれども、あえてこれ以上デフレを強行しようという考えを持っておりません。これはすでにこの程度の状態にきた以上は、ここで繊維その他のものについては多少一つこれを値の上るようにすべきものもあるだろう、また一部値の高いものについてはこれを是正するように考えていかなければならぬものもあるだろう、こまかく手直しをしまして、そうして年度末までにはおおむね三%程度の上昇のカーブをとっていくように経済は持っていきたいものだ、こういうふうに考えておるわけでございますから、このままの萎縮均衡の状態を保っていくことは適当でない、こう考えております。
  69. 勝間田清一

    ○勝間田委員 年度末までに三%の上向きな状態一つ作り出していきたい、このまま緊縮を続けていきたくはない、こういうお話が実はあったのでありますが、大蔵大臣のこれに対する見解は同じと見てよろしゅうございますか、あなたの御見解を一つ聞かしていただきたい。
  70. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私も五カ年計画初年度の計画に基いた考えをもって進んでおりますから、見解の相違はないと思います。大体今お話のありましたように——しかし経済の問題というものは、一面政策の面とそれから実際の経済の推移というものを、これは別個でありませんが、一応詳細に考えなくてはならぬ。政策をやる者といたしましては、ただ経済がなるがままにまかせるわけにいきませんから、大体こういうふうな政策でこういうふうに持っていこうという、ここに意欲があります。これが一応れわわれがこういうふうに経済を持っていきたいという考え方、しかし経済は国際的な関係もありますし、またいろいろ複雑な条件がありますから、実際はそう思う通りにむろんいくものではございませんので、ここに経済の実際はあるいは若干テンポが早まるあるいはおくれる、これは私はやむを得ないことだ、そういうふうな前提に立ちましてお話したようなわけであります。私は日本の経済の持っていき方としては、上期中に一応の調整を終る、それから徐々にこの経済をよくしていく、またそういうふうな条件が国際的にも整備していくだろう、こういうように考えておりまして、結果としては経企長官の考えと同じであります。
  71. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今大蔵大臣は経企長官と大体同じだろう、こう言われますけれども、大へんな違いなんです。いわゆる年度末といえば私は三月三十一日だと考えておるのだが、年度末に三%程度の経済の上向きの状態を作っていこうという考え方でございます。ところが過般参議院における山際日銀総裁の話を聞くと、四月——六月に大体底をついて、その後調整過程、地ならし工作をとって、年末には大体アメリカの景気も若干よくなるであろうから、そこに景気回復のきざしを見得る程度のところに持っていきたいと思う、これが日銀総裁の見解であります。今あなたの見解は、上半期に調整過程をとる、そうなるとおそらく九月以降のことになるだろうと私は思うのでありますが、上半期までに調整過程をとって、それから景気を回復していく方向にとろう、こういうわけであります。ところが河野経企長官はもっと気が早いのであります。もう少し早くこれをやらなければならぬ、もうデフレ政策などこれ以上とるのは、早く言えば困る、若干物品によっては差異があるかもしれぬけれども、本年の年度末からはもう少くともいこう、だからこそ輸入ももうそう押えるべきでないという考え方をお持ちになっている。ここに大蔵大臣と経企長官と日銀総裁との間における経済政策の大きな食い違いがあるのであります。私はここに今日経済政策が混迷を来たしておるところの根本が実はあると思う。これに対する大蔵大臣考えを経企長官の考えをもう一度私はお尋ねをいたしたい
  72. 河野一郎

    河野国務大臣 私の言葉が足りないで、年度末はこの三月三十一日を言うたのではないのでありまして、今お話になっておりますのは、三十三年度のお話でございますから、三十三年度の年度末ということで申したのでございますから、これは大蔵大臣と違わない思います。
  73. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは言葉の争いになってはつまらぬと思います。私と山際君の見解がそう相違しておるわけではない。これは要するに言葉の使い方によるのだろうと思います。大体山際君も上期において一応調整を終るとは言っておる。ただし山際君は景気がよくなるというそのときを、年末ぐらいでほんとうによくなる。私は一応調整を上期に終ってさあそれから先は悪くなるかといえば、それから先は悪くならぬが、よくなるという程度のものである。なぜそれなら七月というときをとったかといえば、これはやはりアメリカの経済政策、財政政策というものが世界経済に大きな影響を持っておる。そうするとアメリカのそういう施策が具現するのは、どうしてもやはり会計年度の初めから考えなくちゃならぬ、一応何かの区切りをとって、この辺から少し上向くだろうというのが、わかりやすく区切りをとれば、やはりアメリカの会計年度の七月というふうにもっていくのが妥当ではないか。それから七月から急に景気がよくなるというのではない。アメリカの来年度の予算が実行されて、契機として、徐々に景気も悪い方には少くともいかぬだろう、これは私もアメリカの大統領ではありませんから、(笑声)これは今まで入手し得た材料と、アメリカから来ておる責任者の言葉をよく翫味いたしまして、さように判断するのが妥当であるという考え方のもとに、そういう程度で判断する以外に仕方がない。それにしましても、たとえば今問題になっておる公共事業をやる、財政面からやる、あるいは減税をやる、これは国会の問題がアメリカにもおそらくあると思う。それがいつ実行に移されるかということによっては、同じ公共事業をやり、減税をやるといっても、その時期によって若干のずれも生ずるのでありますから、そういう点はやはり経済の今後の推移を見る場合には頭に入れて、いつ幾日からこうというようなことはとうてい考えられない。そういうようなことがもしも人間の意思でもってできるのだったら大へんなことです。そういうことはできるものじゃないので、方向が誤まらないということが一番大事で、たとえば景気がよくなると見ているのに悪くなれば、あるいは悪くなるべきものがいいというのは見方が間違いです。
  74. 勝間田清一

    ○勝間田委員 大蔵大臣の最近の答弁というものはだんだん混迷をいたしてきたように思う。今日人為的にどうのこうのすることはできないということをよくいわれますけれども、いつ、どういう現在の認識の上に立って、どういう金融政策、財政政策をどうとっていこうかということは、政治としてははっきりきめておかなければならぬことだと私は思う。責任大臣である大蔵大臣としては、特に私はそう考えるので、現在このデフレの状態をどう見ていくかということは、この段階をどう認識するかということは、あなたが引き締め政策を、さらに生産調整の面まで、たとえば山際氏の通りに四——六さらにやる、そうして滞貨を一掃する、経済のアクを抜いて、最も底に落して、そうして整理した後に出発していこうという財政のとり方というもの、現在の認識の上に立ってはそういう行き方はもうこの際にやめよう、ここにやはり将来の有効需要その他の問題を考えてみて、金融面においては、たとえば公定歩合をどう考えるとか、あるいは日銀の引き締め政策をどう考えるとか、あるいは滞貨金融をどうしなければならぬとか、こういう問題は、今日の右するか左するかの一つのけじめのときであります。こういうときに対するあなたの認識の違いがあるならば、それは私は今日こそ論議しなければならぬと思うのであります。しかも予算が今日通ろうとするときに、そのけじめがなければならぬと私は思う。現在までの日銀の考え方というものはアクを抜いてやろう、四——六までにとにかく底をつかせよう、その上に整理過程、地ならしをやって、あなたのように年末に好景気がくるなんて言っているのじゃない。景気のきざしがくればいいと思っておると答弁しておるのです。だからあなたの今の答弁と山際さんの答弁とはかなり違って、あなたは粉飾されておるのです。でありますから、そういう政策のポイントをどこに置こうとしておるかということを私はお尋ねをいたしておるのでありますから、今後そういう立場からあなたはお話を願いたいと思う。これは一つ要望いたしておきます。  そこで河野さんに、先ほど急に三十三年度末ということになりました。年度末に対して三%程度の生産増加のところに持っていこうという考え方のようであります。そうすると、これはえらい過小であります。今日までの説明から見ますと、それの半分程度の生産力ということになるわけであります。それでは国民所得にも大きな影響があるのでしょう。また雇用にも大きな影響があるでしょう。だから私はここで期待して聞きたいのは、その三%の生産力の増大のために、輸入原材料はどの程度必要だと考えるか。これを私はあなたから答弁を願いたいと思う。
  75. 河野一郎

    河野国務大臣 すでに御説明申し上げております通り、長期経済計画の線を厳守して参りたい、こういたしておるわけでございまして、その経済政策の線に沿って私は御説明を申し上げたのでございます。従って明年度におきましては、おおむね三十二億四、五千万ドルのところに持っていくように輸入の面においてはしたい、こういうふうにして、せっかく今外貨予算についても予算割当をしておる、こういうことでございます。
  76. 勝間田清一

    ○勝間田委員 三十三年度の年度末において生産三%増のところにものを置いて三十二億四千万ドルの輸入が必要だ、こう考えておられるとすれば、これは非常に大きな間違いです。私はこの三十二億四千万ドルの輸入は必要がないと考えておる。あなたが三十二億四千万ドル輸入が依然として必要だという認識を持たれるならば、本年度中の計画は、全く的はずれの結果になるだろうと私は思う。一体、一萬田さん、三十三年度三十二億四千万ドルの輸入が必要でしょうか。
  77. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 さらに精細に検討しなくちゃなりませんが、私の一応の考えでは、在庫のストックも、いわゆる原料的な物も、ある程度私はあると思います。従って、どちらかといえば、三十三年度における原料の輸入は、考えておるよりも少くて済むだろうという想像はいたしております。ただ問題は、日本が今後東南アジア経済にどういう踏み出しをするか、あるいはまた従来動かなかったフィリピン、それからインドネシア、今度さらにビルマ、こういうところの経済協力がどういうところに軌道に乗ってくるか。経済協力は今全然動いていないと見ていいでしょう。賠償は大体御承知のようにやっておりますが、そうして見まして、同事に東南アジア諸国に延べ払い、これを今日拡大——これは日本の貿易を伸長する上から、私はやはり輸出入銀行を通ずる延べ払いの行き方は、西ドイツの例にならうような形になりますが、事情の許す範囲においては適当であろう、こういうような考えを持っております。そういうものを総合して見ます場合におきまして、私は当然日本の経済だけを考えておるときに必要とするよりも、やはり相当輸入というものが増加するので、まあ私は総じて計画通りの輸入は必要と考えるのが妥当ではないかと考えております。
  78. 勝間田清一

    ○勝間田委員 大へんの問題であります。それならば数字的に一つお尋ねをいたします。まず河野長官に一つお尋ねいたしますが、現在の二億二千万ドル程度のものが輸入されるとして、これを年率に計算をすれば、おそらく二十六億ドル程度のものになる。生産が増大することによって、さらにどの程度の輸入が必要であるかということを考えてみた場合に、いろいろこれについては見解があるようであります。大蔵省の係官の中にもいろいろの見解があるようであります。たとえ生産を一〇%増大をいたしましても、おそらくその程度のものであれば、約二億ドル程度の輸入で済むのではないか、原材料としてはその程度のもので済むではないか。これが大きく違ったところで、そう大した狂いはないと私は思う。ましてやあなたの三%の生産増大であるということでありますならば、私は輸入原材料はさほど多くのものを必要としない、そう考えて参りますると、ことし、昭和三十三年度の輸入の見込みというものは、一体どの程度のものであるかといえば、まず第一にいい得ることは、三十二億四千万ドルは絶対必要でないということがわかる。それならばどの程度かということになると、私はいろいろの議論があろうと思うけれども、現在のベースを年率に分けて二十六億ドル程度にして、それに二、三億ドル程度のものが加わっておるところのものが、大体本年の三十三年度の輸入の見当ではないか。そこに東南アジアのクレジットなり延べ払いというものが、どの程度政府で計算されておるか、この際一萬田さんに私はその数字を聞かしてもらいたい。今日どの程度そういうことが計画されるのか、聞かしていただきたい。でありまするから、まず輸入が三十二億四千万ドルは私は絶対必要でないと思うけれども、それが必要なゆえんというものを、私のこの見解に対して、あなたはあなたの数字をもって、私は説明していただかなければならぬ。これは重大な今後の見通しに関する問題でありまするから、もう少しはっきり聞かしていただきたいと私は思う。
  79. 河野一郎

    河野国務大臣 この輸出入の数字を詰めて参りまして、一応輸入を三十二億四、五千万ドル、輸出を三十一億五千万ドルということにいたしますには、各方面それぞれ十分検討いたしまして、おおむねこの程度の所要の輸出入の数字が妥当であろうということで計画したわけであります。従いましてむろんこれには、内容は御承知通り詰めてあるわけでございます。ただそれが先ほども大蔵大臣から申しましたように、石炭の関係にしましても、重油の関係にしましても、国内の生産の変更等によって、状況の変化等によって、多少の変化はございますが、しかし経済計画の面から申しまして、三十一億五千万ドルの輸出を達成するには、三十二億四、五千万ドルの原材料が入用であろうということに、数字上相なるわけでございまして、これは勝間田さんの今のお話でございますけれども、現状は確かに二十五、六億あればよかろうということになりますが、これは先ほどもお話がありましたが、滞貨の原材料を一部消費しておるということもございますしいたしますので、これはさらに今後伸びていくためには、こういうものを入れておかなければ、そこに原材料の価格は上っていくだろうということもございます。これは私は、先ほど申し上げておる自然の姿にしてやっていく方がいいのではないか、そういうふうにすれば、この程度の数字になるだろう。なおこまかい数字につきましては事務当局から申し上げますが、今せっかく明年度の割当をしておるときでありまして、年間を通じて、大きなワクの数字ならば御説明ができると思いますが、こまかなものは今月末発表することにいたしております。大ワクでしたならば、今御説明できると思います。
  80. 勝間田清一

    ○勝間田委員 輸入計画についての、特に三十二億四千万ドルどうしても三十三年度に必要であるという、今経企長官のお話がありましたが、それがどうして今日の経済情勢の上において必要なのか、同時に貿易計画がおありになるようでありますから、その貿易計画の大きな数字を、ここで明らかにしていただきたい。
  81. 河野一郎

    河野国務大臣 今日の情勢においてという意味でなしに、いろいろ経済企画庁におきまして長期経済計画の初年度の数字として御説明申し上げたい。それが今お話にありました通りに、現状は輸入がこういう数字になっておる、滞貨をこの程度見るというような現在の実情との間には、多少の説明を加える必要があるかもしれませんが、一応三十二億四、五千万ドルという数字の出た、その積み上げの基礎の数字はあるわけでございますので、それを御説明いたします。
  82. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は予算編成当時におけるあなたの計画の三十二億四千万ドルの積算基礎を聞こうというのじゃないのです。現在の情勢分析の上に立って、新たな条件の上に立って、私は三十二億四千万ドルの輸入は必要でないと見ておる。私はまたそういう上に立った今後の経済政策は間違いだと考えておりますから、今日のこのデフレなり、今日の輸入状況なり滞貨の状況などから見て、まだそれでも三十二億四千万ドル依然として必要だというのが、あなたの見解でありまするから、私はその見解の根拠をこの際聞かしてもらいたい、こういうわけです。
  83. 河野一郎

    河野国務大臣 見解の根拠は数字ではないのであって、経済の見通しであります。また今後の経済の運営の方針であると私は思うのであります。従ってわれわれといたしましては日本経済を今後一カ年にわたって輸入においてはおおむね三十二億四、五千万ドル、輸出においては三十一億五千万ドル程度の数字を実現するように持っていくことが、日本経済の安定的発展の一番いい方法であるというふうに考えて、ぜひこういうふうにいくように諸般の施策を進めて参りたい、こう考えております。
  84. 勝間田清一

    ○勝間田委員 依然として河野さんは現在の経済情勢から目をおおうて、ただ計画だけを云々されようというわけであります。これが目標だと、こういうわけであります。目標ということはわれわれは単なる目標ではなくて、本年度の計画としてあなたの三十三年度の計画案というものを見て、それの裏づけとしての予算として、われわれは審議いたしたのである。しかし三十三年度の輸入の見込みを三十二億四千万ドルに見る必要は、今日なくなったのではないか。現に現在輸入しておるのは二億二千万ドル程度のものであって、これを年率に直せば二十六億ドル程度のものではないか。同時に輸入在庫は今日一八六の指数を持ったほどの状況である、しかも製品在庫は月々増大をいたしておるという状況である、そういう状況において今後の生産の増大を見ても、たとえば生産力が一〇%増大しても、それに対する原材料は二億ドルないし三億ドル程度で済むのではないかというならば、現在の二億二、三千万ドルを年率に直した二十六億ドルに三億ドルを加えたところの二十九億ドル前後あるいは三十億ドル前後のものが輸入としては適正な輸入ではないかという感じがするのです。そういう状況が今日現われておるのに、依然として常識はずれの三十二億四千万ドルを今日固執されるあなたは、私はこの根拠をそもそも現在の経済に対する認識を欠いておる結果だと思う。この点についてはあなたの見当ではなくて、ただ目標々々ということで、この際あなたの答弁を許すわけには参りません。
  85. 河野一郎

    河野国務大臣 現在の経済の状態が適切な状態であるとは勝間田さんもお考えにならぬでしょうし、われわれもこの状態はあまり好ましいと思っていないわけであります。これはこういうふうにこの状態に持ってきて、ここで先ほどから大蔵大臣との間にお話がありましたけれども、ここで手直しをやる、その時期がいつからいつまでというお話がありましたが、いずれにいたしましてもここに十分に底固めをして、そうして底固めの上に発展をしていくということでございまして、一方において三十一億五千万ドルの輸出目標の達成が絶対に必要である。三十一億五千万ドルの輸出目標を達成するためには、輸入の原材料においてここに三十二億四千万ドルというものの必要が起ってくる。ただし滞貨の関係等について多少の違いはあるかもしれませんが、私はこれをしいて少く予算を組んで、そうしてそこにまた思惑等が起るとか、さらにまた国内の原材料に不足を来たすとかいうようなことをむしろおそれるのでありまして、従って心要なものは入れることにした方がいいじゃないか、三十一億五千万ドルの輸出をぜひ達成するということになれば、この程度のものは入れようではないかということで、為替の割当をしていきたいと考えます。その目標を持ってやっていきたいと考えております。
  86. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私はしつこいようでありますが、河野さんのそういう答弁の仕方には不満足であります。これは算術であります。それならば河野企画庁長官にお尋ねいたしますが、とにかく現在の二億二千万ドルの輸入というものは年率に直して大体二十六億ドル程度ではございませんか。これは計算ですね。それから生産を現在よりもさらに増大をする。大体生産力を一〇%増大するために輸入原材料は二億ともいわれ、三億程度ともいわれておる。もし先ほどの河野さんの議論でやって三十二億四千万ドルの輸入が必要だというならば、現在の輸入の二十六億を引いた大体六億程度の輸入を今後していくということになる。六億程度の輸入に見合うところの生産というものは幾らになるか、生産力の約二〇%の増大になる。生産力の二〇%の増大を年度末に考えておるか、そうじゃないでしょう。あなたは三%の増大ということを言われたじゃありませんか。それならばこれ以上の、三十二億四千万ドルの輸入は必要ないということは算術上出てくるじゃありませんか。その事態をあなたは見失って、ただ当初の計画の予算の編成当時のことにとらわれて、三十二億四千万ドルを固執するというのは、現在の経済を無視した考えだと私は思う。これは当然修正すべきじゃないですか。生産の面から見たって、何の面から見たって三十二億四千万ドルの必要はないじゃないですか。もしそれが必要だということになれば、その根拠を示してもらいたい。あなたの当初の計画じゃないのです。現在の見通しから見て、誤まりなら誤まりとしてここで修正すべきでしょう。そうしてことしの国際収支が幾らになるかという見通しを立てるべきでしょう。その上に立ってあなたは財政金融の政策をやるべきでしょう。私はこの一番大きな根拠について依然として三十二億四千万ドルを固執されて経済政策をやられておったのでは、日本経済はたまらぬと思う。そんな経済なら日本経済はこわれてしまうと私は思うのです。一体どうでしょう。大蔵大臣いかがですか。
  87. 河野一郎

    河野国務大臣 今の年間に直しまして二十六、七億の輸入量は、これは平常のものとは勝間田さんもお考えにならぬと思います。これが平常のものであるならば、この上に増加率を積み上げていくということになりますけれども、これは平常のものではない。これはむしろ申しますれば、一部においてわずかとはおっしゃいますけれども、原材料の状態、現在の経済事情も沈滞しておるという状態においての数字でございますから、われわれはこの状態、この数字を妥当なものと考えていないのであります。     〔委員長退席、川崎(秀)委員長代理着席〕 一面において輸出は御承知通り大体においてわれわれが意図いたしました通り、大体二十八億以上の、年間において予定した通りのものが大体続くと確信しております。してみれば、輸出の面においてわれわれの計画とまた経済の過去におきます実勢におきましても、われわれが所期した通りに物価の引き下げ、その他のものも大体そういうふうにいっておる。しかし底固めについては不十分の点がありますから、これを三月とか半年とか、その間において十分手直しをして、そこに打ち立てていくのだということにいたしておりますので、われわれといたしましては当初の計画がそんなにそごしておる、今までのこの半歳においてそんなにひどく見通しが間違ってきておるということには考えていないのであります。ただし輸入の面におきましては、国内の原材料等の値下りもありましたし、その他において輸入のいろいろの面からこれは押えることができて、外貨の面においては改善された。でありますから、もうこの辺で平常の状態に復してよかろうということにいたしておるのでございまして、今お話のようなことにはわれわれとしては考えにくいのでございます。
  88. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今河野長官がお話しになりましたことにつけ加えることもないのですが、私はこういうふうな考え方をいたしております。この三十三年度において三十二億四千万ドルの輸入量のことが問題になっておるのですが、率直に言って、日本経済のいわゆる生産調整過程が、当初私が考えておったのよりも若干ずれておるというところが、一つまた輸入が若干少くてもいいのじゃないかということになろうかと思います。それにまた違って、先ほど申しましたように、ほんとうに東南アジアというような国々に対する経済協力、これはやはりあまり長くそのままにしておくことは適当でないと思うので、これは今後着々と実行していく、こういう面から日本経済が刺激を受けて、いわゆる生産を増大するという形になりまして、原料を必要としていく、こういうことであります。それからもう一つは、三十三年度の成長率が約三%である。しかしこの三%は私は非常な特別の意義を持っておると思っておる。それは普通のときの三%でないので、三十二年度にしても相当大きな——むろん中途からはいわゆる総合的な対策も立てまして押えましたが、しかし年間を通じて一〇%に近い成長率を示しておる。そこにやはり相当大きな成長率の年の三%でありまして、普通たとえば経済の成長に対して輸入がどのくらいあるという、そのときの基準年度というものは、そういう特別の年はとってない、大体成長率の平均年度の途中のときをとっておる。従って三十三年度の三%というのはおそらく五カ年計画において基準年度の、たとえば六・五%くらいの平均に年間なっていますから、大体それくらいあるいはそれ以上の成長を絶対額では示しております。かように考えて、そういうことを勘案いたしまして、これは商売、仕事でありますから、きちっといくことはともかくとして、一応の計画として輸入が三十二億四千万ドルというのは、私は今すぐにでもよろしいのではないか、かように考えます。
  89. 勝間田清一

    ○勝間田委員 依然として政府の見解は従来の数字にこだわっておって、現在の経済情勢なり、その後の変化なりについて何ら修正しないという態度で実はおるようでありますが、こういう経済の見通しの上に立って、依然として政策が続けられていくということでありますれば、ことしの経済というものは非常な大きな間違いを起すことが明らかになると私は思う。私はここに総理大臣の見解を問いたいと思うのでありますけれども、われわれ社会党は、今日の状況をもっていたしましては、輸出はアメリカの、あるいは国際関係の不況という面があって、三十一億五千万ドルの輸出というものはなかなか困難ではあろうと思うけれども、最近の情勢なり、また今後の若干の景気調整等を考えてみると、おそらくこれに近い数字のものが私は予測できるように考える。しかし輸入の面の最近の特に顕著な減少を来たしたのは、かつての大きな投資ブームと同時に見込み輸入あるいは思惑輸入の結果であって、最近の二億二千万ドル程度の輸入というものは、最近の在庫状況、原料在庫、製品在庫の面から見て、それはほぼノルマルに近い輸入である。これに生産調整の見合ったものを加えて参りますると、私は少くとも三十億あるいは二十九億ドル程度の輸入貿易で済むのではないか。ましてや今日三十二億四千万ドルも輸入が必要などと考えておる人があるとするならば、それは私は気違いざただと実は考えておるのであります。そういう状態の見通しの上に立って、依然として金融財政政策を遂行していこうという考え方でありまするならば、私は重大な誤まりを実は犯しておると考えるのであります。私は今日のこの判断から見て、そうすべきでないと考えるのであります。でありまするから、ここに一体こういう現在の大蔵大臣及び経企長官の見通しの上に立って、依然として従来の数字に固執して政策をやっていこうとされるのですか。岸さんも単なる総理大臣ではない、経済財政にも通ぜられておる方であります。私は二度と誤まりを犯さないように、この際あなたの所信を一つ承わっておきたいと思います。
  90. 岸信介

    岸国務大臣 経済の見通し、またその推移というようなものにつきまして正確な把握をすることは、あらゆる場合におきまして非常に困難を伴うものでありますけれども、しかしこれに対してはあらゆる面から検討して、そうして常に動いており、発展の過程にあるところの経済に対応するように諸施策を立てるということは、言うまでもなく必要なことであります。しかしその根幹をなすものは、やはり長期の一応の見通しを立て、計画を立てていくことで、ことに日本のごとく人口が常に増加していき、労働人口を吸収し、産業の拡大をしていかなければならないという立場にある国としては、やはり長期計画を立てて、安定した基礎の上に一つの目標を置いて運営していくということが必要であることは、言うを待たないのであります。それと同時に、先ほどお話のありましたように、ことに日本の経済は貿易に依存するところが大きいのでありますから、国際経済の推移ということ、またこれに対応しての国内の各般の経済事情の変化というものに対して、常に正確な実状を把握して、それに合うように長期の一本の柱を置いて、しかも調整をとっていくというのが、経済政策を施行していく上のわれわれの根本的の心がまえでなければならぬと思います。  今議論になっております来年度の輸出入の問題につきましては、これはいろいろな観点から私どもが立てておる五カ年計画の一環をなす一つの目標に到達するという上に立っております、と同時にいろいろの国際情勢の変化等を十分に見て、それに合うような調整も加えていかなければならないと思います。ただ先ほど来勝間田君と関係大臣との質疑応答を通じて私の感じますことは勝間田委員予算編成の当時に政府考えており、頭に置いたことと非常に大きな、根本的な変革が来つつある、また来ておるというようなお考えの上に立っての御議論のように思います。私ども政府としての考えは、そういう大きな根本的に考え直さなければならぬような事態には来ておらないという、この見解の相違であろうと思います。たとえば最近における輸入が月に二億二、三千万ドルの状況にある、これが日本にとって、日本の三十三年度の各月を考える場合において、大体ノルマルの輸入額であるというふうな勝間田さんの御意見でありますけれども、われわれ政府としては必ずしもそう思っておらないのです。それは昨年の緊急対策をとりまして以来、相当程度にこの輸入を押えて参っております。なるほど過去におきまして、そういうことが適当であるかどうか知りませんが、ああいうように景気が急速に上昇し、産業が拡大をするような場合におきまして、原材料等につきましていわゆる思惑的な輸入が相当されるということは、経済の各場合における状態として、そういうことはあり得るのでありますが、しかし結局は産業設備が拡大される、この状況につきましてもある程度緊急対策でもって、中途半端に押えられているものもあります。そして同時に日本の貿易を将来拡大していく上からいって、機械設備を生産性の高い新設備にかえるとか、あるいは日本の貿易拡大のために設備を拡大するというような必要がとにかく日本の経済にあるのです。それがただあまりに急速に行われ過ぎたということで、昨年押さえたようなこともありますので、その後に現われております状況は、私はこれがノルマルな状況だと言うのは早いと思います。先ほどからこの調整の期間が上期がどうだとかあるいは五、六月にどうだとかいうような多少説明の仕方は違っておりますけれども、私はあれだけ大きな拡大が急速に行われようとしたのに対して緊急対策で押えてきて、それから現われている情勢というものはノルマルな状態ではない、従って今二億二、三千万ドルの輸入をもって直ちに来年度の輸入の基礎として、これが正常なものであると判断することは、私はまだ早きに失すると思います。従いましてわれわれとしては、当初に立てました来年度三十一億五千万ドルの輸出を、日本経済の発展の過程から申し、人口の増加の意味から言って、どうしてもやるとしますと、従来輸入と輸出の面の経過を見ましても、それをある程度上回る輸入をしなければ日本の経済——そういう輸出がなされておらないという結果から見まして、三十二億四千万ドルという輸入の目標を立てたということは大きな誤まりがある、従ってこれを修正しなければならぬというような情勢では今のところないと思っております。
  91. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これ以上論議をいたしましても、まだこの面だけでは解決がつかないと私は思います。この問題についての見解は全く相違する。私は今日貿易じりの、国際収支の赤字を克服するという面に財政政策の中心を置いた政治は、もはや必要がなくなった、むしろ現在の状態から見ますならば、私は景気回復政策に重点を置いて政治を行うべきである、この見解を今日明らかにいたしておきたいと思うのであります。そういう見解なくして、いたずらに三十二億四千万ドルの輸入が必要だとか、これが目標だとか言う反面において、四—六に底を入れて、暮れまでには地ならしをやって、暮れには景気の回復のきざしを見るであろう、こういう政策の根本をとる、こういう政策をとれば岸総理大臣の言うような三十二億四千万ドルの輸入は必要でなくなるのです。あなたの希望と現に政府なり日銀なりがやろうという政策は逆なんです。だから私は、大蔵大臣なりがあくまで生産調整の達成をやろう、アクを抜こう、そしてその上に漸次景気回復をやろうが、暮れまでに若干景気がよくなるだろう、こういう見通しの上に立って政策を立てていくやり方と、三十二億四千万ドルの輸入は必要だという行き方とは、全く逆な考え方をおやりになっておるわけであります。でありますから、私は従来の資料にこだわらずにお話をなさいというのだけれども、依然として総理大臣は従来のことにこだわって、三十二億四千万ドルを固執されておる。全く経済と岸内閣の目標とは雲泥の違い、右と左との違いというような状態に実はなっておる。これは一つ今後改めていただかなければならぬと思いますが、今度は産業の実態について、われわれは認識を深めたいと思うのであります。  今日通産大臣にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、昭和三十二年が設備投資のブームの時代と言われておった。また三十一年度が御存じ通り相当の新規投資が行われておったのであります。三十三年の生産設備は一体三十二年に対してどの程度の能力、規模の増大が見られておるか、この点を明らかにしていただきたい。
  92. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 数学的にはただいま持っておりませんが、昨年におきましても、上半期においては御承知のように生産設備が相当ふえております。下期におきましても、まだその余波でかなりふえてきていると思います。最近におきましてはそういう意欲が非常になくなりまして、従って三十二年度ほどではないと思いますが、かなりの設備がふえたかと思います。
  93. 勝間田清一

    ○勝間田委員 最も新しい数字があったら、通産大臣はこの際に明らかにする必要がありますから、一つ政府委員から資料をもって御説明を願いたい。     〔川崎(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  94. 齋藤正年

    ○齋藤(正年)政府委員 三十三年度につきましては御存じのようにまだ計画が十分固まっておりませんが、三十二年度につきましてはある程度見込みも入れまして、設備能力の比較を出しております。もちろんこれは業種によりまして基準が非常に違うものでありますから、全く統一的に、能力についてどれだけという比較をすることは非常に困難でありますけれども、一応作成しましたのは、三十一年度に比べまして三十二年度は四割程度設備がふえているということになります。
  95. 勝間田清一

    ○勝間田委員 大体四割程度の設備能力が三十二年度に増大をいたしておる。このことは同時に、それが三十三年度の生産能率となって現われてくるということは言うまでもありません。そういう状態下において今日の操短の状況を考えてみると、これまた実におそるべきものが実はあるのであります。その操短の状況を、通産大臣はまた一つ数字をもって明らかにしていただきたい。
  96. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 操短につきましては御承知のように九月以来極力進めておりますが、繊維関係におきましては最初にやりました。ただいまでは三割ないし五割というような操短をやっておるのであります。ただ率直に申し上げますと、われわれの考えておりましたより少しずれておりまして、三月までに大体の調整を終るというふうに考えておりましたが、さらにまだ三カ月くらいはかかると思います。またこれも率直な話でありますが、監督といいますか監視をまださらに強化いたしませんと、個々の問題につきましては脱法的な行為も行われていたのではないか。それが大きな原因をなしているように私も考えておるのであります。それから鉄鋼につきましても、これまたものによって違いますが、大体三割の操短をやらなければならぬというふうに考えておるのであります。これも実は需要の調査が昨年と本年では——昨年の十一月でありましたか、調査したときと需要家の気分が非常に違っております。昨年はまだかなり強気で鋼材が必要だと考えておりましたような面が、逆にただいま非常に弱気になっております。そういうような面で食い違いができておりますために、早急に三割程度の操短をやりたい、こういうふうな状態であります。
  97. 勝間田清一

    ○勝間田委員 経企長官、目がさめましたか。お尋ねいたしますが、設備能力は四割の増大、最近の操短は繊維にいたしましても三割ないし五割の操短をやっておるのであります。これは目下進行中であります。なお鉄鋼についても通産大臣は三割の操短をやりたいと考えておられる。これを今日のあらゆる産業の稼働率について考えてみれば、紙、パルプ等は三十二年の九月において、すでに四割何分に稼働率が下っておる。またその他繊維についてあるいは鉄についていろいろのものを見ますと、ここに二割ないし五割の稼働率に今日陥っておるのであります。設備は過大である。同時に需要が伴わなくて今日操短が続けられておる、この現実の姿は数字ではごまかすことのできない事実だと私は思うのであります。こういう事態の上において新たな生産を二割増大し、あるいはまた輸入貿易を三十二億四千万ドルに確保していこうという条件を作るには、一体どういう有効需要が今日期待されるのか、今日どういう生産が行われるのか、単にあなたが目的と言われましても、それを裏づける有効需要をあなたはどういうように考えておられるのか、私はこれをはっきり聞きたい。これがなければ実際に画に描いたもちになるわけであります。私は今日の過剰設備の恐慌の懸念濃厚と見るのです。この状態に対してあなたは認められますか、認められませんか。これはアメリカにも起きており、イギリスにも起きており、東南アジアにも起きておる、今日の恐慌の特色が日本にも現われておると思うのです。これに対するあなたの認識をここで承わりたいのであります。いかがですか。
  98. 河野一郎

    河野国務大臣 私と勝間田さんの意見の違いますことは——繊維類等について設備が過大であり、これを操短しなければならぬという状態にある。またこれらの産業が非常に異常な状態にあるということから、原材料の輸入等についてはこれを押えていかなければならぬ、同じように考えております。ただし先ほど総理からもお話がありました通りに、一方輸出の面におきましては勝間田さんもお認めになりますように、現に今年度において二十八億四、五千万ドルというものは達成できる。この伸びはこれからの国際経済の動向等に関連はいたしましょう。しかし私は悲観をすれば悲観の材料は非常に多いけれども、また一面において必ずしも日本経済の特異性からいたしまして、努力して努力のあとが実現できないものじゃない、こう考えておるのであります。従って三十一億四、五千万ドルの輸出目標を達成していこうという一点に政治の諸施策をしぼって参りますならば、今年二十八億幾らの輸出ができて、これをさらに三十一億幾らの輸出に持っていく、そういうことにしますれば、そこに今の原材料の滞貨の面をのけて考えますれば、三十二億幾らという輸入が必要になってくるだろうという計数的な積み上げはできていくだろうと思うのでございます。でございますから、問題はここに今までの景気の上において、今までの設備において、今までの滞貨において、いろいろのことはあります。この原材料の滞貨につきましても、どのくらいに持っておることが一番公正妥当な滞貨であるか、原材料の在庫であるかということにつきましては、いろいろ見方があるでございましょう。それが景気に向うときと、これが不景気に向うときとによってまた違うと思います。しかし、これらは先ほど来お話のありました通りに、一時の非常に多かったときから比べれば、たとい二〇%にしても下っておるわけであります。それだけ下ってきておるのでございますから、これをどの程度に見るかということによって見方は違うでしょうけれども、私は依然として今まで見てきたことをこのままこの計画を進めていくことが、日本の経済の将来のために一番実現しなければならぬ道ではないか、ということを確信いたしまして、これに向って政治は精進をしていくべきものだ、こう考えるのであります。ただ精進するといたしましても、間違ったこと、あまり無理なこと、むちゃなことが悪いことはわかっておりますけれども、決してこれが無謀な案でもなければ、政府の一存でやったことでもないということで、原因がそう違ってきているとは考えていないのであります。
  99. 勝間田清一

    ○勝間田委員 通産大臣にお尋ねをいたしますが、あなたの先ほどの御説明通りに、設備も四割程度の増大を三十二年度はすでに経ておる。三十二年度の新規の設備投資の継続事業が、本年度も相当行われると私は思うのでありますが、ほぼ今年の九月程度のところで日本の新規更新の設備は終るでありましょうけれども、その際における設備能力というものは、私は相当に過大なものと実は思うのであります。さるがゆえに、今日これに対する需要が見合っていないから、ここに御存じ通りの操短をあえて実行しなければならぬような事態が生まれておるのだと私は思うのであります。こういう状態を回復し得る今後の需要という面をどう考えていくか、財政需要の面をどう考えていくか、あるいは新規投資をどう考えていくか、あるいは個人消費をどう考えていくか、あるいは輸出の需要をどう考えていくかということを考えてみますると、今日この設備に見合った需要の裏づけというものが、私はまことに乏しいと思う。ただ今日あり得るのは、貿易の黒字から来るところの外為の支払い超過、本年当初から言われている千二百億の支払い超過、あるいは産業基金特別会計の財政の放出等の若干の面の購買力の増大の面は見えるけれども、それも日銀がオーバーローンの解消にこの金を吸い上げていくということになりますれば、その面はかえって逆にデフレ的な性格を持ってくる。でありますから、私は今日の状態をもっていたしますと、過剰恐慌の懸念が濃厚であり、過剰恐慌を克服し得る条件というものに非常に乏しいと実は考えておる。現在の産業の実態を受け持たれておるところの通産大臣は 一体今日のこの産業の実態をどう考えておられるか、私はあなたの良心的な答弁を一つ聞きたいと思う。
  100. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 先ほど申しておりますように、確かに過剰設備でありますし、また過剰生産が続けられましたために滞貨がある。従って先ほど申しましたように、三割ないし五割の操短をやれば三月中に一応調整を終る、こういうふうに考えて参りましたが、それは遺憾ながらできません。従ってただいまのところは、輸出はずっと大体において横ばいであります。また滞貨におきましても、微増しておりますが、現在におきましても、昨年の下半期以降横ばいというような格好になっております。これはあくまで輸出によってその滞貨をはけさしていかなければなりません。しかしその反面におきまして、これは繊維品とか、あるいは鉄鋼とかいう問題につきましてはそうでありますが、いわゆる基幹産業に対する設備投資ということにつきましては、これは五ヵ年計画の線に沿って考えていかなければなりません。こういうような際におきましては、むしろ財政資金をそういう面に投入して、そうしてその面において事業をやっていくという必要があるのであります。この点は昨年もちょっと触れたのでありますが、民間資金の足らざるところは財政資金によって補って、一割五分の繰り延べはいたし方ないと思いますが、残余の八割五分は遂行しなければならぬ、こういうような関係におきまして、すでに実行したことは御承知通りであります。今後におきましても国庫資金を導入して、基幹産業その他の設備につきまして経済を動かしていく、それによって補完していくというような考え方を持っておるわけでございます。  さらにまた先ほど来輸入の話が出ました。確かに現在におきましては輸入意欲が非常に減退いたしておりますが、私はこれはまた多少減退し過ぎておるのではないか。それで先へ参りまして調整も終り、さらに景気も上向きになりますと、今度は逆に少し輸入意欲が出過ぎるというような場合が起ると思います。三十二億四千万ドルにつきましては、私は必ずしも実際それだけが必要かというと、ややあるいは必要に乏しいかもわかりませんが、その際におきまして非常に価格が上るというようなことを考えますと、三十二億四千万ドルくらいが適当ではないか、こういうふうに以前から考えておるのであります。
  101. 勝間田清一

    ○勝間田委員 当事者の方が若干事実に近いと私は思うのでありますが、いずれにいたしましても、こういう際に基幹産業なりあるいは巨大産業と申しますか、そういう面の投資あるいはそういうものの資金の確保という点に重点を置くのではなくて、やはり有効需要、特に最近の製造工業部門、あるいは機械工業部門、こういう部門に現在の操短なり、過剰滞貨なり、あるいは失業なりが波及していこうとする今日においては、私は日本の産業の二重構造を是正する面に資本投下を助長していくという政策が正しいと思うのです。すなわち設備は過大になり、しかもそれは優秀になっております。特に最近の新規投資の性格というものは、技術の革新でありましょうし、設備の近代化の証拠でありましょう。私はそういう設備の増大あることは、きわめてけっこうでありますけれども、この面のさらに拡大という方向ではなくて、真に有効需要を求めて参りますならば、中小企業の設備の近代化あるいは産業の二重構造の解消、この面に投資を集中していって有効需要を維持し増大して現在の恐慌を救う一助にするのが私は正しいと思う。この見解に対して一体通産大臣はどう考えるか。特に最近資金需要の調節の委員会も開かれておるようでありますが、あの委員会の運営の内容を見ますと、あるいは五十億あるいは数十億という資金を大量に一部の産業に動員しようとしておる。私は資金の需給調整などを考える場合においては、こういう面こそ今日重視すべきではないかと考えるのでありますが、通産大臣のお考え一つ聞かしていただきたいと思う。
  102. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 先ほど申し上げましたように、いわゆる基幹産業に対して資金を動員して、その面を動かしていくというふうに考えております。また中小企業の設備の近代化につきましては、こういう問題がなくても極力やらなければならぬと思っております。従って本年度の設備近代化補助金につきまては六億でありますが、それに府県負担分、さらに自己調達分、これはやはり政府関係の金融機関から出ると思いますが、それを入れますと四十五億以上の設備の近代化ができると思います。また中小企業金融公庫、商工中金その他の面におきましても、やはりそれを動員して極力設備の近代化に努めて参りたい。輸出品の六割を中小企業の製品が占めております現在におきましては何としても国際競争力をつけていかなければならぬ。それにつきましては、いろいろ指導もやり技術の向上もやるという面を考えまして、極力その方向で推進いたしたいと考えているわけであります。
  103. 勝間田清一

    ○勝間田委員 わずか六億の費用で四十数億の設備の近代化をはかりたいというまことにつつましやかな数字が発表されたわけでありますが、最近の機械の受注状況には私はまことに寒心すべきものがあると思います。これも数字をもって明らかにしておいていただきたいと思います。
  104. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 機械の受注状況につきまして、最近非常に減りましたことは確かであります。数字は後ほどまた御説明申し上げますが、現在はすべて手控えに考え過ぎておるように思うのであります。その面につきましても、先ほど来申しておりますように、基幹産業等の設備近代化を急ぐことによって有効需要を起し、現在いろいろと工作いたしておりますような経済協力、輸出の振興によって極力その面も動かしていきたい、かように考えております。
  105. 勝間田清一

    ○勝間田委員 最近の機械の受注状況等にはまさに寒心すべきものが今日あるわけでありますが、輸出の振興または基幹産業の設備の増大等によって、有効需要を喚起していこうというまことに不十分な対策しかここに講ぜられておらない。こういう政策は私は日本の完全雇用政策に完全にぶつかると実は考えておるのであります。そこで今日の雇用の状況をこの際労働大臣から御説明願いたいと思う。雇用の状況の判断をいたしてみましても、最近のあらゆる統計は、まことに予算の編成当時から著しく異なった傾向に今日見受けられるのであります。たとえば職業安定所のいわゆる職を求める諸君に対して職を与えておる率はわずか一四・八%ではないかと私は考えております。非常に就職率は低いのであります。同時に、今日の状況を見ますと、整理人員が非常に増大をいたしておる。最近の状況をもっていたしまするならば、一月において約四万一千の増大ではないかと私は考えておる。こういう状態を今日までの労働大臣説明から考えてみると、予算の編成当時とは想像以上に失業者が増大をするのじゃないかと考えるのであります。たとえばまず常雇いの面から見ますと、十二月は〇・二%、特に製造工業は大幅に落ちまして〇・五%。また臨時雇いなどについては一〇・二%前月同比で下っておる、特にその中でまた製造工業が顕著に目立っておるのであります。整理人員は、先ほど来申した通りに十二月が三万一千、一月が四万一千という状況であります。こういう雇用の状態が現われて、人員整理の状態が顕著になって参ってきておりまするから、ここで政府にも——予算編成当時失業者の吸収人員を一日平均二十五万人といたしましたが、三十二年は御存じ通り二十二万五千、また失業保険の人員をあなたは今度月平均三十七万三千にされまして、三十二年度よりも約七万人は増大をいたしておるのであります。しかし一つの例をもっていたしますると、失業保険の人数だけで一月にはすでに四十四万になっておるわけであります。あなたの計画は予算審議中にすでに破れたわけで、三十七万が四十四万になっております。ここに今度の失業に対する政府の見通しがかなり誤まっておる、恐慌が早く進み過ぎた、こういう現象が顕著に現われておると思うのであります。こういう事態に対してあなたはどういう雇用政策をとられようとするのであるか、この事態に対してあなたのまじめな答弁を聞きたいと思うのであります。あなたは長く秋田に帰っていらっしゃったようでありますけれども、秋田に帰っておる最中に失業者はどんどんふえておるのであります。こういう労働政策をほうっておいて秋田に行かれることについては、いかがかと私実は考えるのであります。一つこの際における完全雇用政策についてのあなたの見解を聞きたい。
  106. 石田博英

    ○石田国務大臣 私は休みのときだけ帰っておりまして、決して長く帰っておるわけではございません。  今のお尋ねでございますが、一月に出ました四十四万という失業保険受給人員は、おっしゃる通りでございますが、大体毎年一月という月は新規の失業保険の受給人員が非常にふえるときでございます。三十一年におきましても、初回の受給者は十万九千人に上っております。そして一月に六万八千、三月に六万人というふうにだんだんと落ちついて参ります。三十二年におきましても初回の受給者は十万三千で、二月になりますと五万七千、三月には五万一千というふうになって参ります。三十三年すなわち今年の一月の初回の受給人員は十四万九千人、例年に比べますと約四万人増加いたしたということになっております。それから十二月はたしかにおっしゃいます通りに急激にふえました。これは化繊関係の企業整備その他で出た数字も相当ありますから、従って、単に季節的なことだけだとは申しませんけれども、しかし季節的に一月という月はそういう月であると考えておる次第であります。今年度は、年平均の失業保険の受給人員は三十万少しでございますが、一月に四十四万くらいになりましても、本年度はこの平均で大体間に合って参ります。それから三十三年につきましては、三十七万三千人を予定しておるわけでございますが、一月に急激に出てきた数の通り参りますと、それはなにでございます。しかしながら今までの例から見まして、それから一応企業整備その他操業短縮等が次第に浸潤して参っておるというような情勢から見ましても、決して楽観はいたしておりませんけれども、三十七万という数をもって、あるいは失業対策事業対象人員二十五万という数をもって大過なきを期していきたい。しかしながらこれは予測でございますから、必要の際にはもとより補正等の措置をいたさなければならぬことは申すまでもないことでございます。
  107. 勝間田清一

    ○勝間田委員 先ほど通産大臣は、いわゆる生産整備というか、企業整備というか、三月末に終ると考えておったものが若干ずれるという考え方はお述べになったわけでございます。また今日政府がとりつつある経済政策の状況を考えてみますと、とても三十七万の数字では解決がつかない。はしなくも労働大臣が言われた通りに、三十三年度について足らぬところがあれば補正予算を組まざるを得ないだろうということは、私は必至だと実は考えておるのであります。しかし私は、そうした失業保険に対する予算の編成ではなくて、あるいはそういうことが予測されるというならば、それ以前に私はもっと雇用政策をとるべきだと思う。その雇用政策を今日考えてみると、私どものきわめて遺憾な一つの傾向が現われてきておる。それは何か。たとえば某有力繊維工場というものがある。そういうものは首を切る。首を切って、そして結局そのしわは失業保険に持っていく、そういう形で自己の責任をのがれて、国の政策である失業保険等に進んでおおいかぶせていこう、負担を転嫁させていこうという傾向が今日は顕著ではなかろうか。この際やはり産業の完全雇用の面を増大すると同時に、労働条件についても今日考えるべきときではないだろうか。それをやらずして、いたずらに失業保険のみの予算考えていっても、それは決して救済にはならない。特に私は今日労働時間というものを問題にせざるを得ない。今日あるものは、再雇用をするという条件で農村の婦女子を都市に帰す連中もある。これは体のいい一つ責任転嫁の方法だと私は思う。また同時に私は別に、現在のオートメーションあるいは機械の近代化ということのために、生産性というものが非常に高まってきておるが、そういう面は、労働条件特に労働時間の改善に振り向けられていくのではなくて、失業者なりあるいは首切りになりに転嫁されて、失業保険という形に持っていかれる傾向が今日あるのではないかと私は思う。このオートメーションの時代において、しかも過剰生産恐慌のような状態が起るという際においての労働者の一つの正当な権利として考えるベきことは、労働時間の短縮であると私は思う。これは基準法にも関係する問題でありますけれども、真剣に考えていい問題だと私は思うのであります。この労働時間を短縮し、雇用量を増大し、労働者の生活の向上をはかっていくという政策がなければ、今後もいたずらに失業者は産業予備軍となり、失業保険でこれを救恤せざるを得ない状態になると私は考えるのであります。労働時間短縮の立法化というものが要請されていくのではないかと思いますが、これに対する労働大臣のお考え一つ聞かせてもらいたい。
  108. 石田博英

    ○石田国務大臣 今日のような雇用の状態、さらにオートメーションが進行しておる過程におきまして、労働時間短縮の問題を考慮しなければならないという点については、私は勝間田委員の御意見に賛成であります。また雇用対策審議会におきましても同様の意見の具申がございましたので、労働省といたしましては、使用者団体に呼びかけて、協議を進めて理解を深める努力をいたしておる次第でございます。ただこれを画一的に立法化するという点については、にわかに賛成いたしかねるのであります。
  109. 江崎真澄

    江崎委員長 勝間田君に申し上げます。申し合せの時間がすでに経過いたしましたから、結論にお入りを願います。
  110. 勝間田清一

    ○勝間田委員 まだ二十分あるじゃないですか。
  111. 江崎真澄

    江崎委員長 二時十五分から三時五十五分まで、こういうことですからお含み願います。
  112. 勝間田清一

    ○勝間田委員 いつ短縮したのですか。私は二時十五分から始まって二時間と聞いております。
  113. 江崎真澄

    江崎委員長 理事会の申し合せは一時間四十分ということになっているわけです。どうぞ結論に入るつもりでお続け下さい。
  114. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は最後に大蔵大臣一つお聞きしたいと思います。幾多の条件は私はあると思いますが、あなたがこの前大蔵委員会質問をされて、若干訂正されたようでありますけれども、やはり現在の公定歩合の問題というのは、現在の景気の底入れをいたしておるという状況にかんがみて、またあなたの先ほど来申されました景気上昇の方向を見出していこうという考え方に対して、私は近い将来における公定歩合の引き下げという問題は当然考慮してもよろしい問題だと考えるけれども、あなたはどう考えておられるか。
  115. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は日本の金利が世界的に見まして非常に高いということを認めるものであります。従いまして金利はなるべく下げるように指向しなくてはならぬというふうに考えておるのでありますが、しかし今日本の経済は、私どもから言いますれば、先ほどからお話がありましたように、生産力が非常な急テンポで伸びておる。従いまして内外の有効需要と均衡を得るようなところに持っていかなければならぬという努力を今やっておるのでありまして、だれも今日の日本の経済の状況は前予定しなかったものではありません。われわれが総合対策をとる場合、若干のずれは先ほどから申しましたようにありますが、大体大らかに言えば、三十三年の六月くらいまでに生産調整をやろう。三月までに一応政策としては終るようにしたいが、しかし実際はあと四、五、六というものに調整期間が継続するであろうということをしばしば申し上げたのでありまして、大らかに言えば、六月くらいまでは生産の調整という形でやる。こういうときにはこれはどうしてもやってもらわなければならぬと私は思っております。そしてこの生産調整ができて、有効需要にマッチするような生産基盤になりますれば、そこでむろん滞貨もありましょうが、この滞貨については私は何もこれを安く——むろんその商品の価格が国際的にどういうふうな地位にあるか。国際価格水準より非常に高いものは別個でありますが、そうでないような状況にありますれば、こういうふうな滞貨については金融の道も考えてよい。そして将来の有効需要に備えて、何も投げ売りする必要はない。そういう施策を今後とっていこうと思っております。そして需給の均衡を得た経済の基盤の上において、輸出に専念をする。滞貨もむろん輸出に出していく。輸出に出していくことから、むろん国民所得もふえてくる。国内経済がさらに刺激を受けて、国内の需要もふえる、こういうふうな形になり、それが徐々に経済の拡大になっていくのであります。そういうふうな状況になって、輸出が持続的に増加していくという見通しが立つことが、日本経済をほんとうに健全な基盤の上で拡大する必須の条件だと考えております。従いまして、そういうふうな、輸出が継続的に見込まれるという事態がくれば、むろんそういう事態になれば、市中金利も当然輸出超過という形からきてゆるんでくると思います。そういうふうな状況がくれば、公定歩合も考えていく、こういうふうに考えておるのでありますが、今の過程において、公定歩合を引き下げるということは考えていないわけであります。今は何としても、早く生産調整の過程を終らせたい。そして先ほども申し上げましたが、きめのこまかい金融措置というものを打ち出していきたい、かように考えております。
  116. 勝間田清一

    ○勝間田委員 見解は異なりますけれども大蔵大臣考え方の全貌が初めて明らかになったわけであります。もう時間がないようでありますから、経済問題については以上で一応終らしていただきたいと思うのであります。  私は外交問題について、二、三の点だけをお尋ねをいたしてみたいと思うのであります。総理大臣並びに外務大臣にお尋ねをいたしたいのでありますけれども一つ気がつく重要な問題は中華人民共和国の周総理が、しばしば、岸内閣は非友好的であるという演説をされておるのであります。これは、中国内における公式の会合において、これが表明されたのみならず、かつ過般の朝鮮の撤兵の際において、金日成との間においても、特にこの点が取り上げられて、岸内閣は非友好的であるということが共同声明の中にうたわれておる。私はこのことはきわめて重大な意味を含んでおると思うのであります。われわれは中国を訪問した際に、気がつくことでありますけれども、鳩山内閣は何とか前向きであった、しかし岸内閣は非常に非友好的な内閣である、この話をしばしば聞くのであります。私は、この疑惑なり、この不信というものが一新されていかなければ、中国はもとより、共産圏に対する諸懸案の解決というものはきわめて困難であると見ておるのであります。こういう考え方が今日生まれてきておるという根本の原因は、もとより岸内閣というものがアメリカのひもから断ち切ることのできない内閣である、むしろそれを強めていこうとする内閣であるという一つの基本的な考え方と、また岸総理大臣並びに藤山外務大臣がしばしば言われたような、たとえば台湾における岸総理の態度であるとか、あるいは外務大臣が新聞記者に、中共貿易はネセサリー・イーブルであるというようなことを、言ったか言わないかわからぬけれども、新聞にははっきり書いておる。ネセサリー・イーブルだと言って、中国と貿易の振興ができようはずがないと思うのであります。にもかかわらずそういう発言をいたした。また政治と経済とは別だという考え方を持っておる。これも私は非常におかしな、不信の念を与えるものだと実は思うのであります。また里帰り、遺骨の問題についても、ああも言い、こうも言って、なかなか船を出さなかった。なるべく乗れないように、なるべく不便なようにものをいたしていこうとする態度に対しても、私は非常に不信の念を買った根本の問題があると思うのであります。私は、岸内閣が保守党内閣として、できない面があることは了承するものであります。しかしできないということと、誠意を尽してできることは実行するという態度とは、私は違うと思うのであります。限界の中においても、誠意を尽して、前向きになって、これらの諸国と、少くとも友好的にものを解決していこうという態度がない限り、私はこれらの諸国との懸案は解決がつかないと実は思っておる。この、岸内閣は非友好的であるという考え方に誤まりということがあるならば、一体どこに誤まりがあるのか、それを払拭すべきものがあるとすれば、どこを払拭しなければならぬのか。私はこの点をほんとうに岸内閣が考えてもらわぬと、中国との間の懸案というものは前進しないと考えておるのであります。これに対する総理大臣の基本的な考え方を聞かしていただきたいと思うのであります。
  117. 岸信介

    岸国務大臣 私は中共の責任者が岸内閣を非友好的なりといわれる根拠がいずこにあるか、自分としては理解に苦しむのであります。私は、しばしば申し上げた通り、中共との関係におきましては、貿易その他の関係はこれを増進する、しかし現在の段階においてはこれを承認する意思は持たない、承認はしないという線でもってきているわけであります。これはなるほど、すぐ承認しろといっている日本社会党の立場と私どもの立場は違うのでありまして、中共側から見ますと、日本社会党の方がより友好的であるというふうに考えられることも、私はそれは無理もなかろうと思います。しかしわが保守党内閣として、わが自由民主党の立場におきまして言っていることが、特に中共政府に対して不信であり、もしくは非友好的であるという考えは、私自身は少くとも持っておりませんし、今お話の遺骨や、その他人道的立場からやるべきことにつきましてはほんとうに誠意を持ってこれをやろうと言っておりますし、その他の問題につきましても、私の今申しました基本方針の線において、少しも非友好的な立場を持つものでもなければ、そういう考えでもっていろいろな問題、懸案を処理しようというような意思は毛頭持っておらないのであります。これは私どもがいろいろ中共との間の諸問題を扱う上におきましても、また今日までいろいろな問題を解決してきた上から申しましても、決して非友好的だとか、あるいは特に今一部にいっているような、何かアメリカというひもがあって、そしてそれが断ち切れないというような考え方では毛頭ないのであります。しかし私が、外交基本方針として、日本国連中心の考え方を持つとか、あるいは自由主義の立場をとっておるということに対して、あるいは中共側の考え方とそごしている点があるかもしれません。そういうことが中共側から見れば、自分たちとしては都合が悪いという見地から、いろいろな意見の発表も出ておるのじゃないかと思います。私自身は非友好的なような考えは、繰り返して申しますけれども、持っておらないということを明らかにしておきます。
  118. 勝間田清一

    ○勝間田委員 第四次日中貿易協定が民間において締結をされたのでありますが、これに対して過般の田中稔男君の本会議における質問に対して、通産大臣は、支持と協力を与えるという点を明確にされましたが、総理大臣は、支持と協力を与えるということに異議はないでしょうね。
  119. 岸信介

    岸国務大臣 実は正式に、この前民間の代表が私のところに来られて報告をされました。書類が出ましたのは昨日でございます。いろいろな関係省でこれを検討をいたしております。しかし私は、従来とも日本国民が要望しており、われわれがかねてとっておる貿易を増進するという趣旨において、民間の協定であるけれども、その趣旨の実現に対してできるだけの支持と協力を与えて、そうして貿易の関係を増進したいという考えは、変らず持っております。書類につきまして、私どもが報告を聞いておる通りの事情になっておるかどうか等を、専門的に検討いたしておるのが今の段階でございます。
  120. 勝間田清一

    ○勝間田委員 中国から今度、約二千数百体の遺骨が帰るわけであります。これは戦後における初めての大きなできごとであろうと実は考えております。日本からも、遺骨の送還が今日までしばしば試みられて参ったわけでありますが、私は、岸内閣が今日まで行方不明者の調査等の問題について、あるいはジュネーヴを通じ、その他を通じて、中国に働きかけのあったことも承知をいたしておるのであります。ここで、私は外務大臣一つお尋ねをいたしますが、中国の、日本国内における戦時中の行方不明者等を調査し——あるいはその調査があると私は思っておりますけれども、そうしたものをもって、やはり中国に協力することなくしては、中国の未帰還者あるいは遺骨等を円滑に帰すことはできない、こう考えるのでありますが、この行方不明者の調査を、日本国として当然やる義務があると思うけれども、調査をする意思があるかどうか、これを明らかにいたしたい。
  121. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 遺骨の収集なりあるいは行方不明者の調査というのは、人道上の問題でありますので、われわれとしても極力、そういう問題については今後とも努力をして参りたい、こう考えております。
  122. 勝間田清一

    ○勝間田委員 戦時中のこの調査があると思いますが、この調査がありますならば、これを公式に政府は提出する意思がありますか。
  123. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 戦争中の問題につきましては、書類が散乱しておるようであります。そういう点について、十分今後調査いたして御報告申し上げます。
  124. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私はやはり人道上の問題は日本だけの主張ではなくて、双方がこれに誠意を尽して行うということが基本だと思う。こういう点が、簡単な問題であるけれども解決つくということが、すなわち非友好的でなくなるわけであります。私は保守党の限界があることも了承する。しかし、前向きになって誠意を尽すということが大切である、このことを私が申し上げるのでありまして、特に岸総理も、異存はないと思いますから、ぜひそういうような態度をとっていただきたいと思うのであります。ただ書類の散佚ということを言われましたけれども、私はあると考えます。私はそれに十分な根拠があると思うのであります。従って、これは十分政府は調べられて、この資料を一つ早く発見されて、正式に出されることを私は期待いたすものであります。  それから、従来積み重ね方式というものが常に主張されておったのでありますけれども、この積み重ね方式は、あるいは気象協定、漁業、郵政協定その他の協定というものが、当然問題になってくる。私はこれに対する岸内閣の希望はわかるけれども、この問題の一番大きな、重要な点は何にあるかといえば、おそらく北京あるいは東京以外においてこれを開くということは困難であるというところに、私は実はあると思う。この点について日本政府はいかに考えておられるか、私は外務大臣にお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。
  125. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 郵政協定等につきましては、ジュネーヴの総領事館によって話し合いが進められております。まだ向う側から、開催地等の問題で返事をいたしておりません。ただいまの御指摘では、北京もしくは東京以外の土地で開催をすることは困難だろうという御説でありますが、われわれとしては、やはり中立国と申しますか、日本以外、あるいは北京以外のところで開催することが適当だと思っておるわけであります。
  126. 江崎真澄

    江崎委員長 勝間田君、まだ相当ありますか。
  127. 勝間田清一

    ○勝間田委員 もう二点でありますから、お許しを願いたいと思います。  漁業交渉の問題については、しばしば論議がなされ、岡田春夫君からも明日あろうかと思いますが、今日私はどうしても懸念にたえないと思いますことは、日ソ共同宣言の九条の解釈を一体どう見ておるのかということであります。御存じ通り、現在安全保障の問題あるいはその他の問題について、平和条約の締結と関連させていきたいという考え方が、ソ連からも伝わって参ったし、また昨日は、この面は撤回をされたということも、私は新聞で見ておるのであります。また、社会党の今日の考え方からいたしますならば、漁業協定については、漁業協定のワク内において当然交渉をすべきである。従って、他の問題と関連をして解決をすることは好ましくないと、私は考えるのであって、その点はもとより明白であります。でありますけれども、ちょうど岸内閣が中国にとっておる外交的立場と同様に、ソ連から見ると、日本は食い逃げするのではないか、たとえば、共同宣言でしばしば交渉のあった際に、これが冷たい講和にならないようにということを、ソ連側で非常に懸念をされておる。特に西ドイツのアデナウアーとソ連との国交回復の際においても、引揚者は済んだ、あとは冷たい講和だというのでは、これは承知ができない。こういうところが問題になったから、日本の平和回復の問題の際においては、あとは冷たい講和にならないようにということが、根本問題である。その後、ソ連における一番不満の中心というものは、共同宣言ができたところが、直ちに日本政府は、ソ連との経済交流を過小評価しておる、日本はソ連から買う物はあまりないんだ、売る物もないんだという点を、日本は主張しておる。これは、シベリア開発をやって日本と経済提携をしていこうと考えておるソ連とは、全く違う、非常に失望を感じたというのが、ソ連の意向であったように私は見受けるのであります。今度の漁業交渉のイシコフあるいは赤城さんの、一回、二回の会談を見てもよくわかる通りに、この前は豊漁年であったが、これを十万トンとすべきところを十二万トンにしたのは、友好関係を求めたいと思ったからであるということを言っておる。また今度のオホーツク海の問題も、量の問題ではない、感情の問題である、目先で魚をとられるのはしゃくだと、こう言ったならば、赤城さんも、日本国民の感情からの問題であるから、お互いに感情問題はやめましょう、これは数量の問題ではなくて、お互いの気持の問題であるということを表明したものだと私は思う。ここで現在一番懸念をされておるところは、日本は食い逃げ外交をやるのではないかというところに、私は一つの疑点があると思うけれども、その面から今日これを考えてみて、この第九条というものを、私は再びここに考えるのであります。共同宣言の第九条には「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。」と書いてある。すなわち両国が共同宣言によって大使館の交換を行なって、正常になったその後において、平和条約の締結について交渉を継続することに同意するということになっておるんだが、今日一年五カ月たって、依然として行われていない。ここに私は、あなたの外交が食い逃げ外交になっておるのではないかというところの疑念の根本があると思う。私は、今日領土問題が大きな困難な壁に当って、平和条約の締結が困難であることは認めます。それならば、その困難な平和条約に見合った他の方法による友好関係の促進というものも、真剣に考えていいのではないか、こう私は考えるのであります。これがなければ、あなたは真の信頼を得ることはできない、そう私は考えるのであります。この九条の関係と平和条約との関係と、平和条約にかわる方法があるならば、かわる方法というものを、あなたはここに御明示を願いたい。
  128. 岸信介

    岸国務大臣 平和条約の問題は、今勝間田委員も御指摘になりましたように、困難なる領土問題に関する両国の意見の根本的相違というものが平和条約の締結を妨げておることは、ロンドンにおける交渉以来の懸案の問題でございます。そうして鳩山総理がモスクワをたずねて、あの共同宣言に署名したときにおきましても、その問題における意見がついに調整されず、従って、われわれとしても、平和条約を締結して国交を正常化する、それには、領土問題についてのわれわれの主張をソ連側に認めてもらって、これを解決しようという意思であったにかかわらず、それができなかったわけであります。私は、この問題に関する解決は、よほど困難であると思います。しかし、これは国民的の要望であり、この点に関しては、われわれ自民党だけではなしに、私どもの聞いているところによりますれば、社会党においてもまた国後、択捉は日本の固有領土であって、日本に帰属すべきものであるという御見解であり、国をあげての御要望である。この点に関してソ連側が理解を深めてこなければ、私は話し合いを始めてもまとまらないものだと思う。それについては、お説のごとく、両方の友好関係を深めていって、そうして両国の間の友好親善の関係、またそれによるところの相互の理解を深めていくことが必要であり、そのためにいろいろな問題を解決していく。たとえば貿易の問題、経済協力の問題、またシベリヤの開発の問題につきましても、われわれは向うからの具体的の案というものに接しておりません。しかし、趣旨として、そういうものに協力しようということをわれわれも考えており、それは、日ソ両国の共同の利益になる問題であり、両方の友好関係を深める問題であって、望ましいことであると私は考えております。また文化協定等につきましても、これを結んで文化の交流をして、両方の理解を深めて、そうして願わくば、ソ連がこの日本国民の一致した要望であり、また歴史的の事実等に対しまして十分な理解を深めて、そうして領土問題を解決して、平和条約が締結されるという日が一日も早く来ることを、私どもも望んでおるわけであります。それには、今お話しの通り、平和条約にかわるというわけにもいきますまいけれども、経済、貿易の関係、あるいは文化の関係、その他あらゆる面において、われわれは両国の友好親善の関係を深めていくということには、誠意を持って努力をするつもりでありますし、努力をしておるつもりであります。また私どもが、実は今日停頓しておりますこの北洋における安全操業の問題につきましても、ソ連側において、われわれはこの領土問題を解決することはなかなかできない、またその段階ではない、そこで、暫定措置として、少くともあの零細な漁民が、とにかくソ連の近海、あるいは領水内におけるソ連の非常な利益を害するというような漁業の性質のものでない漁業に従事する、それが安全に操業できるようにということは、もしもこれが結ばれれば、両国の関係は一そう友好親善が増されるのではないか、またぜひそうしてもらいたいという意味において話を持ち出しておるのであります。ソ連側で、今プラウダ紙等に、わが国を非難するような言葉が出ておりますが、われわれは、そういう問題ではなしに、これの解決に向ってあらゆる面から努力をしておるわけであります。しかし、ソ連側の言われるように、領土問題はすでに解決した問題であるということであるならば、実は共同宣言ではなしに、あのときに平和条約ができたはずであって、平和条約をさらに継続審議するという共同声明になっておるということは、この問題が未解決である、懸案になっておることであることは、私はソ連側の幾たびかの声明にかかわらず、私どもの確信するところであり、ソ連側の声明は、私は間違っておるものだ、こう思っておるものであります。そういうことを十分にソ連が理解するためには、なお私は長い間国交が断絶しておって、それが回復して、両国の間に行き来が盛んになり、両国の友好親善を進めるような経済、文化、その他の面における協定や、それの実施が円満にいくならば、今までむずかしかった領土問題も解決するところの機運ができることになるだろう、またそういう意味において、そういうことを積み重ねていきたいというのが、私の考えであります。
  129. 江崎真澄

    江崎委員長 ちょっと勝間田君に申し上げますが、もう三十分経過しましたから……。
  130. 勝間田清一

    ○勝間田委員 時間が足りませんので、津島長官には大へん気の毒でありますが、ずっといていただいたんですけれども質問を割愛さしていただきますので、あしからず御了承願いたいと思います。  最後に、総理大臣に見解をお尋ねをいたしておきたいと思うのでありますが、今日まで、あるいは超党派外交と言われたり、与野党の外交のお互いの協力という問題がしばしば口にされたのであります。私は、総理が幹事長時代におきましても、よき慣行を作り、よき政治の道を作るというためには、この問題は重要であるということをしばしばお話しをいたし、また御見解を承わったことがあると私は思うのであります。今日世界が大きな変化を遂げ、アジアの情勢についても、きわめて困難な問題がたくさんあるわけであります。岸内閣が三つの原則に立っておやりになるにいたしましても、その中には、多くの矛盾がしばしば出て参るのであります。こうした問題を解決していく上において、与野党がともに外交の本筋について語り合っていくということも、私は非常な大きな意味を持ったものだと思うのであります。ただ私が今日言いたいことは、超党派外交と申しましても、なかなか一時にそこまで到達することは困難であります。困難であるならば、私は、そのプロセスというものを当然踏むべきだと思う。たとえば現在外交の情勢等について、野党の、反対党の党首に外交のいろいろの情報を提供をする、野党の党首は、その秘密を厳守するというような義務を負いつつ、お互いに国家の諸問題について理解を深めていくということは、これは、私は第一段階でとり得ることだと思うのであります。そういう状況が生まれて、初めて外交について彼我それぞれ得るところがあるでありましょう。そこから次第に外交の妙味というものが発揮できて、そして誤まった外交も是正され、またいろいろの点が教えられて、ここに外交の筋というものが通っていくのではないだろうか、私は、そういう考え方が最も現実的な考え方であると思っておる。その現実的な考えに従って、私はいわゆる超党派外交というものを漸次盛り上げていくというところの努力がなければならぬように思うのだが、今日岸総理大臣が、この問題について、単なる答弁でなくて、実際に実行される気持があるかどうか。あるならば、早急にそういうことは実現さるべきであると私は思う。でありますから、少くとも情報の提供、そうしてある重大な場合においての意見の交換、こういうことを与野党の間で行う慣習を作っていただきたいと私は思う。これに対する一つ総理大臣の見解を最後に聞いて、私の質問を終る次第であります。
  131. 岸信介

    岸国務大臣 最後の勝間田委員の御見解は、私全然同感であります。これは、今御指摘のありましたように、私が幹事長時代にもしばしばそういうお話があり、そういう趣旨において、私は全く賛成であります。ただ問題は、これを実現していくのに、実際の時期と方法というものについては、十分考えなきゃならぬと思います。というのは、一面から申しますと、対外的に及ぼす影響も、与野党でもってそういうことをいたす場合においては、相当な影響もございます。ある具体的の外交問題が持ち上っているときにそういう問題を話すということは、そういう点において考慮すべき節もあると思います。しかし、一般的に、まず外交の一般情勢等の情報を提供し、またそれに対する一般的の意見を交換するというようなことから始まって——これは、超党派と申しましても、私は外交の問題は、国論を統一しろということは当然のことであり、また望ましいことでありますが、立場があり、意見の違う具体的の問題の処理については、これは、両党において意見を異にする場合も、私は必ずしも少くないと思います。また、ある点においては意見を異にするということも、決してそれが悪いことじゃないと思います。少くとも外交の問題あるいは外交の問題だけに限らず、国内問題にいたしましても、与野党が対立して、ただ国会だけにおいて論議されるというだけでなしに、ある程度のそういう意見の交換が党首の間にされるということは、私は、民主政治の運営の上からいって好ましい格好で、それによってできるという考えでありまして、十分に一つただいま勝間田委員のお話しになりましたそれを実現することについて、私としては真剣に考えてみたいと思います。
  132. 江崎真澄

    江崎委員長 ちょっと速記をとめて……。     〔速記中止〕
  133. 江崎真澄

    江崎委員長 速記を始めて下さい。  この際理事の諸君に申し上げますが、委員会散会後、第一委員室におきまして理事会を開きますから、お残り願いたいと存じます。  明日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十八分散会