○藤山国務大臣
アメリカの経済の今後の動向でありますが、御承知のように、一昨年あるいは一昨々年と申しますか、
アメリカの景気が非常な勢いをもって上昇してきております。ところが、昨年に参りましてこれが停滞して、鉱工業の生産指数におきましても、あるいは失業者数につきましても、最近では前年度に対して百五十万以上の失業者がふえておるというような状態でありまして、昨年の秋以来
アメリカの景気は停滞ぎみであるということを申し上げられると思うのであります。むろん、その原因は、
世界経済の一環はヨーロッパにおきます
イギリスあるいはフランスの財政事情その他の経済上の困難な事情が反映しているということ、あるいは
アメリカ、ドイツ等以外の国におけるドル不足の問題というような、いろいろな
世界景気の中におきます影響もあるのであります。一方におきましては、上昇過程にありまして、生産活動の盛んであった軍需生産も一時停滞ぎみでありましたし、あるいは
アメリカ経済におきます
一つのガンと申しますか、月賦販売制度その他の行き詰まり、また一方では農業生産力の非常な上昇によります農業問題というようなものが重なり合いまして、景気が停滞してきたのだと思うのであります。しかしながら今日では
アメリカの
政府が、先ほど太田
委員が御指摘になりましたように、財政の上におきまして一応こうして停滞した経済活動を若干刺激する
方向に向って
政策を変えつつあるように、私どもには
考えられるわけであります。五十億ドルの公債発行限度の引き上げというようなものも要求しておりますし、また先ほど御指摘になりましたように、一月には連邦準備制度
理事会が公定歩合の引き下げをいたしました。引き続いて二月に準備金制度の割合を引き下げるようになったわけでありまして、これらの
政策をながめておりますと、
アメリカの
政府として、また有力な経済の指導者としては、若干景気を刺激して、そうしてこれ以上に沈滞しない
方向に経済を進めていこうという
考え方があるように
考えられます。従いましてそれらの状況とにらみ合せながら
考えて参りますと、おそらく下半期には
アメリカの経済というものは今日よりも一そう活撥になってくるのではないかということが推測されますので、まずこの辺以降今年の下半期にかけては逐次
アメリカの経済が好転していくのではないか、そして
日本との輸入貿易その他についても、民間的な資金の流動によって購買力がふえてくるのではないか、失業者も減ってくるのではないかというふうに観測されるわけであります。
第二点の御質問は、
アメリカの
日本商品に対する問題であります。御承知のように
アメリカは
民主主義の国家として、
アメリカにも多くの中小企業者がおります。従いまして、それらの人人の
意見が議会に相当反映してくるということも事実でありまして、私の記憶に間違いなければ、この七、八年あるいは十年間に、
日本商品のみを対象としないのでありますけれども、関税引き上げというような問題で議会で取り上げられた問題が七、八十件あると思っております。ただ議会の関税
委員会等でそういうものが採択されたものは二十四、五件であって、最終的に実施されたものは十件以内だと思っておりますが、
日本商品につきましても、九種類ほどのものについて関税引き上げの案が議会で審議され、議会の関税
委員会を通過したものは三件であると思っておりますが、その三件がことごとく大統領の拒否権によって消えておるような状態であります。従いまして、いろいろな意味において、
アメリカが民主国家として関税問題その他が一般的に取り上げられることは当然でありますけれども、
政府の首脳部の
考え方としては、やはり
アメリカが今日経済的な大きな力をもって、
世界に寄与していかなければならぬという建前から、そういう意味において良識を働かして最終的判断をしておると思っております。なお輸入制限の問題等につきましても、個々の商品に対する輸入制限の法律案あるいは一般的な総合的な輸入制限に対する法律案等も議会に出ております。現在出ておりますそういう輸入制限の問題についての
日本に関するものは、たとえば手袋でありますとか、その他七、八件出ておりますが、個々の商品に対する輸入制限というものは、最近ほとんど議会を通過していないように思うのであります。しかしながら、
アメリカにおきましても本年は中間
選挙のときでありますし、また互恵通商法の改訂期にも当っておりますので、こういう運動は相当活発になり、また議会等も通過し、あるいは
政府にもこれに対して同意を求めることが多くなってくると思うのでありまして、われわれは決してこれを楽観しないで、そうして十分な手を打って参らなければならぬと思うのであります。ことに
日本の商品につきましては、対米輸出のおもなものは中小企業の製品でありますので、
日本としてはこれらの人の生活の大きな問題として、
アメリカの
政府要路また一般有識者、民間の人々に訴えていかなければならぬのでありまして、その意味においては、
アメリカの中小企業者と同じ
立場というよりは、
アメリカの中小企業者よりより悪い
立場に
日本の中小企業者がいるということを了解してもらわなければならぬと思うのであります。そういう意味におきまして
政府としては公式の
外交ルートをとり、絶えずワシントン
政府と接触をいたしまして、それらの
立場を十分に説明もし、また抗議もし、話し合いもいたしておるのでありますけれども、同時に
アメリカにおきます世論の力というものが強いのでありまして、新聞雑誌等を通じまして、そういう意味のPR活動を展開して参らなければならぬと思うのであります。従いまして機会をとらえて、外務省の仕事の上においてもそういう面について最大の
努力を払って参りたいと思います。ことに通産、農林両省が、優良な品質のものを作り、あるいは商標等も時宜に適した斬新なものを作られ、またオーダリー・マーケット等を、通産行政あるいは輸出農林商品等において十分
努力をしておられるのでありまして、その実情等もわれわれは両省の方々とともに十分外国に知らせまして、そして
日本が秩序ある輸出をやるのだ、しかも
日本の品質は優良なものだということをやって参らなければならぬと思うのでありまして、国内的にはそういう緊密な連絡をとりながら、その面において進んで参りたいと思います。なおこれらの問題につきましては、民間それぞれの経済界の方々と十分連絡をとりまして、その面からも個々にあるいは団体としてそれぞれの
アメリカの団体もしくは有識者に連絡をとっていただくことが必要なのでありまして、そういう面についてできるだけの連絡を民間業者の方々、また経済界の指導者の方々ととることによって万全を期して参りたい、こう思っております。