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1958-02-28 第28回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十八日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 江崎 真澄君    理事 今井  耕君 理事 川崎 秀二君    理事 重政 誠之君 理事 田中 久雄君    理事 橋本 龍伍君 理事 川俣 清音君    理事 柳田 秀一君       小川 半次君    大橋 武夫君       太田 正孝君    北澤 直吉君       坂田 道太君    櫻内 義雄君       須磨彌吉郎君    永山 忠則君       楢橋  渡君    野澤 清人君       野田 卯一君    船田  中君       古井 喜實君    松浦周太郎君       南  好雄君    宮澤 胤勇君       八木 一郎君    山崎  巖君       山本 勝市君    山本 猛夫君       井手以誠君    井堀 繁雄君       今澄  勇君    岡田 春夫君       小平  忠君    小松  幹君       河野  密君    島上善五郎君       田原 春次君    辻原 弘市君       中居英太郎君    成田 知巳君       西村 榮一君    門司  亮君       森 三樹二君    八木 一男君  出席国務大臣         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松永  東君         厚 生 大 臣 堀木 鎌三君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  前尾繁三郎君         運 輸 大 臣 中村三之丞君         郵 政 大 臣 田中 角榮君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         国 務 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 河野 一郎君         国 務 大 臣 郡  祐一君         国 務 大 臣 正力松太郎君         国 務 大 臣 津島 壽一君  出席政府委員         内閣官房長官  愛知 揆一君         法制局長官   林  修三君         警察庁長官   石井 榮三君         法務事務官         (入国管理局         長)      伊関佑二郎君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月二十八日  委員井上良二君、井堀繁雄君、今澄勇君、楯兼  次郎君及び森本靖辞任につき、その補欠とし  て中居英太郎君、岡良一君、井手以誠君島上  善五郎君及び八木一男君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員岡良一辞任につき、その補欠として井堀  繁雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件   昭和三十三年度一般会計予算   昭和三十三年度特別会計予算   昭和三十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 江崎真澄

    江崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を議題といたします。質疑を続行いたします。辻原弘市君。
  3. 辻原弘市

    辻原委員 最初に外務大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、それはただいま現地において交渉が行われつつある漁業交渉の問題に関してであります。  本朝共同通信を経て入りました情報によりますると、昨日の平塚イシコフ交渉の際に、ソ連側から重大な発言発表が行われておるのであります。その内容は、先般来からの当委員会におきましても、わが党としてもきわめて重要な問題であり、また今日国民が最も焦点的な問題として政府に期待をかけておる、いわゆる公海安全に関するオホーツク海の領海の区域についての問題でございます。ソ連側イシコフ発表によりますると、オホーツク海についての領海公海の問題は、先般行われた日ソ交渉の際に、河野イシコフ会談の結果として、すでにこれは交換公文として、成文をもってオホーツク海は公海とせずという協定成立をしておって、今日かかる問題が日本側から持ち出されることはきわめて不当であり、かつおかしい問題であるということを申しておるるのであります。政府はこの情報についてタッチをしておるか、またさような取りきめが今日まで行われてきておったのか、この点を国民の前に事態明らかにしていただきたいと思う。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまのお話は、私も新聞のニュースは見ましたけれども、モスクワからまだ公電はこの時間まで入っておりませんが、私としては、そういう交換公文外務省にはないということを申し上げておきます。
  5. 辻原弘市

    辻原委員 外務大臣が、ただいま私が申し上げたような情報についての入手もしておらないし、かつまたそういう協定ないしは交換公文成立をしているということもないということを申されたのでありますが、今私が申し上げました情報は、これは共同飼手特派員からの入電であります。従ってこれは外務大臣だけではなくして、当時この交渉責任者であった河野国務大臣にもこの機会にたださなければなりませんので、河野大臣出席を私は求めておりますが、もし外務大臣が言われた通りでありますると、この情報の有無は別にいたしまして、イシコフ現地において平塚さんにそのことを申し、ソ連側が正式にその態度として発表したということは誤まりである、イシコフの言っていることはうそである、こういうふうに私はなると思うのでありますが、そのようにわれわれは了解して差しつかえないのであるかどうか、この点を外務大臣から一つ正確に承わっておきたい。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日まで公電が入っておりませんから、公電がどういうふうに入りますかはわかりませんが、今日までのところはそういう会談が行われたかどうかということの公電には接しておりません。公電が入りますれば、その点につきましてはいさいわかると思います。それから過去のそういう取りきめがあった、オホーツク海が公海でないということを、日本が認めたということはありませんし、またそういう交換公文もないのであります。
  7. 辻原弘市

    辻原委員 前者の、情報について正確にまだ聞いてないから、これは調査をするというお話はわかります。しかしながら後段の、かような公海でないというソ連発表について日本側が了承したという経緯がない、こうはっきり断定されるについては、私はいささか外務大臣としては早計ではないか、従ってあなたの言うことがその通りであるとするならば、私が逆に言葉をかえて申しましたところの、それならばソ連側イシコフの言っていることがうそか、こういうことになるのであります。その点についてはどうかと私はお尋ねをしておるのであります。いま一度外務大臣からお聞きいたしたい。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 公電が入ります前に、新聞等情報によってイシコフがどう言ったかということは、私は判断いたしかねます。
  9. 辻原弘市

    辻原委員 さらに具体的にお伺いいたしましょう。そのイシコフが言う公海ではない、この話とは別に、それに関連をいたしまして、日本側として、サケマス船団オホーツク海から締め出すという約束を、いわゆる交換公文として行なったのではないかという疑いがあるのであります。この点に関しては外務大臣はどういうふうにお考えですか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういう交換公文があることを承知いたしておりません。
  11. 辻原弘市

    辻原委員 外務大臣はこの点についてすべてを否定いたしました、従って私どもはかように了解をいたします。今日入りました電報に基くイシコフ・平塚交渉の際におけるイシコフの言は、これは日本側としてはうそである、かように藤山外務大臣発言をした、従って私はさらに事態を明らかにするためには、どうしても立ち会われた河野さんからこの点について正確に伺う必要があると思いますので、委員長河野さんの出席一つ督促をしていただきたいと思います。
  12. 江崎真澄

    江崎委員長 ただいま河野国務大臣新聞記者会見をしておるそうでありますから、それが済み次第こちらに来るように、今要求をしておるわけであります。
  13. 辻原弘市

    辻原委員 それじゃなお大臣に伺いたいと思うのでありますが、あなた方はよく言葉じりでもって答弁をされる傾向がありますので、そういう誤まりを犯さないために、少しく私も言葉の範囲を広げましょう。私がただいま申し上げましたような、公海でない、ないしはサケマス船団オホーツク海から締め出す、そういったようないわゆる正式に約定せられた交換公文の別に、かりに——あなたは交換公文がそういう経過にはない、こういうふうに言われておるのでありますが、正式にそういう交換公文の取りかわしが行われなくても、これは会談でありますから、あるいはそれとは別個に、そうした約束があるかもわかりません。約束交換公文ではないという三百代言式答弁も、これはあり得ますから、その点も私は確かめておきたいと思います。そういう何がしの約束もなかったのかどうか、この点について伺っておきたい。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういう約束があったとは信じられません。
  15. 辻原弘市

    辻原委員 だいぶ外務大臣、その辺になると自信がないようでありますが、あったとは信じられません、否定の中でもきわめて弱い否定でありますので、この点についてはさらに河野大臣出席を待って伺いたいと思います。  委員長あと何分くらいですか。
  16. 江崎真澄

    江崎委員長 今督促しておりますから、間もなく来ると思いますが、どうでしょう、その分だけ留保を願ってお進み願えませんか。
  17. 辻原弘市

    辻原委員 それでは時間の関係もありますから、後刻に譲ります。  それでは外務大臣通産大臣に伺いたいと思います。それは日米貿易についてであります。日米貿易の今日の焦点は、アメリカ国会を中心として動いている、対日輸入品アメリカ側制限に関する問題であります。私が申し上げるまでもなく、アメリカ市場日本輸出入貿易にとってきわめて重要な位置を占めておるということは、これはもはや論を待ちませんが、その中で特徴的なことは、やはり輸出入アンバランスの問題であります。——河野大臣が見えたようでありますから、先の問題を済ましたいと思います。  それでは漁業交渉の問題について、今外務大臣から承わったのでありますが、けさほど共同通信の飼手特派員のもたらした情報によりますと、昨日の平塚イシコフ会談において、ソ連側漁業交渉の、オホーツク公海領海の問題について、重大な発言発表をしておるということであります。その内容は、すでに河野さんが向うに参られての日ソ交渉の際に、オホーツク海はこれは公海としない、あるいはオホーツク海から日本サケマス船団を締め出す、こういった約束、あるいは交換公文が行われておる。従って今日の漁業交渉にあらためてこの問題を日本側から持ち出すことについては、はなはだ了解に苦しむ、ソ連側発表はこういうのであります。この情報をあなたはお聞きになりまして、またそういった約束ないしは交換公文というものが当時成立をしておったのか、この点を担当者であられました河野大臣からしさいに一つ明らかにしていただきたいと思います。
  18. 河野密

    河野国務大臣 ただいま御発言のような趣きのことを、私もけさ新聞社の方から連絡を受けました。これは非常な誤解があると思うのでありまして、そういう交換公文があるというようなことはもちろんないことは明瞭であります。ただしこれはその当時からソ連側——つけ加えておきますが、これを公海であるとかないとかいうようなことは、われわれはこれを公海でないというようなことをきめるとかきめぬという筋合いのものではないと思いますので、そういった趣きの話があったことはございません。ただしソ連側は、日本側出漁をいたしておりまするオホーツク海の母船につきまして、これを撤収してほしいという要望は非常に強くあったのであります。これはソ連側としましては、御承知通りオホーツク海と申しますか、カムチャッカの各沿岸で、それぞれ漁場別計画生産をしておりますので、日本母船がその沖合いに出て大量に漁獲いたしますことは、漁場によって漁不漁があることは計画生産の上に非常に困るから、何とか配慮してほしいということは、事情を尽してソ連側からいろいろ御要望がございました。しかしわが方といたしましても、何分東海岸の方へあまり多くのものが出ることは困難である。従ってオホーツク海の方に出漁する船の数は、たしか当時四船団か五船団予定しておったのでございますけれども、これを二船団に縮めまして、そして話を取りまとめしたのでございますから、そこにこれをやめようとか、公海を云々とかいうような、けさほど伝えられておるような事実は全然私はなかったと記憶いたします。特にソ連側けさの話で矛盾がありますことは、現に昨年度の交渉の際におきましても、ソ連側は重ねてオホーツク海から撤収してくれということを、引き続き強く要望しております。ところがわが方といたしましては、当時の当局はこれに対してそれは困るということで、私も外部からソ連側にいろいろ談合いたしまして、そして現に昨年の出漁に当りましても、オホーツク海の出漁ソ連側は認めておるのでございますから、今突如としてそういうことを言うならば、昨年の交渉の際に、ソ連側が引き下って帰るべき筋合いのものでもない。これはソ連側の方でそういうことでなしに、引き続き昨年度同様に、両国親善のもとに十分談合して、一日もすみやかに結果の出るように期待いたしておるのでございます。今言われたような事実は私は全然ないということで、御了承願って差しつかえないと思います。
  19. 辻原弘市

    辻原委員 けさほどもたらされた情報については、河野さんもお聞きのようであります。その内容については、今のお話を反復いたしますると、当時ソ連側からオホーック海日本母船についての撤去方を強く要請せられ、その点に立っての交渉の結果、四船団ないし五船団の当初の予定が二船団ということで約定成立した、こういうことであります。それで先方イシコフ発表は、その後においてもオホーツク海の船団撤去についての交渉向う側からも行なったので、従って昨日のイシコフ発表はきわめて矛盾しておる、こういうようなお話であります。そういたしますと、結局あなたの御見解によると、きのうイシコフの言っておる発表はこれは事実であります。私もそう思う。(「事実かどうかわからんじゃないか」と呼ぶ者あり)まあ事実であるかないかは、これは仮定といたしましても、かりに発表が行われたとするならば、今当事者の河野さんから、そういう経過がない、こう申されたのでありまするから、従ってソ連側発表うそである、また交換公文でそういうことを約束したということもこれは全くでたらめである、こういうふうに受け取ってよいわけですか。
  20. 河野密

    河野国務大臣 イシコフがどういうことを発表したか私存じません。その内容がわからぬのに、相手方が言うておるのはでたらめだとか何とかいう言葉は少し工合が悪くはないかと思う。向うが正式に発表したものを、われわれの政府として正式に通告を受けますれば、それに対しては、私並びに外務当局としては、これに対して明確な反駁をすることは十分できる、こういうことは申し上げていいと思います。交換公文があるというようなことは、御承知通り交換公文のようなものは、私が単独で作るべきものじゃないのでございまして、外交文書はむろん当時の外務当局並びに本省との打ち合せの上でなければやっておりませんから、そういったものがあるとすれば、こちらの外務省にもあるべきものでありますから、これはもう全然私はないと思います。そういう約束をしたとかせぬとかいうようなことは、今申し上げましたように、その当時いろいろ向うに強い要望がございましたが、これは既定の事実にあります通りに、四船団か五船団かちょっと記憶がはっきりしませんが、それが二船団出漁いたしておるのでございます。昨年も引き続きその交渉の結果、ソ連側はこれを了承して二船団出漁いたさしておるのでございます。それを今年になって突如、そういう交換公文とかなんとかいう事態に結論がなるのは少しおかしいというのでございまして、なお事態が明確になりました上で申し上げた方がはっきりするだろうと思います。
  21. 辻原弘市

    辻原委員 うそであるとかうそでないという言葉は穏当でないということであれば、そういう事実ががあったかなかったかという言葉に訂正してもよろしい。しかしあなたが今言われたのは、そういう事実がなかったということですが、ただしそのあとにあなたのお言葉が続くので、どうも私には不審にたえないのであります。交渉の際に四船団ないし五船団を二船団にした、あるいはまた二船団が出ておるじゃないか、その際にさらにその点についての交渉向う側からもあった、ないしはことしも向うからそういうことを言っておるというふうな経過から、今さらそういうことがあったというのは矛盾しておるという議論をあなたは言われておるのでありますが、少し回って考えると、去年はあるいは二船団ということで、あなたが行かれたときにその点の約定が行われた、しかし向う側了解として、本年はこういうこともあり得ると思う、従ってあなたの取りかわされた約束の中に、二船団出漁については去年はやったが、ことしは撤去するのだ、ことしはオホーツク海は全然日本側の船は行かない、もしかりにこういうような約束があったということになれば、これまた重大な事態なんです。そういう心配もございます。そういう約束もございませんかということをさらに念には念を入れて伺っておきたい。
  22. 河野密

    河野国務大臣 昨年は、ただいまも総理大臣にも伺ったのですが、総理大臣御自身で昨年の交渉をなさったわけであります。その際にもそういうことは一切なかったということでございますので、去年限りというようなことはありません。私が申し上げてもし誤解を招くようであるといけませんから、はっきり申し上げておきますが、先方から情を尽していろいろやめてほしいという要望がございましたが、私の方はこれを譲るわけには参らぬということで、二船団でとりきめをいたしました、とこれで切っておきます。
  23. 辻原弘市

    辻原委員 はっきり言明されましたので、ああでもないか、こうでもないかの憶測も今の場合としてはおかしいと思うのです。ただ確認しておきたいことは、先ほどから申しました内容について、すべて交換公文もまた非公式な約束約定も何ら取りかわされていない。しかもそれは昨年のみならず、今後一切に関するオホーツク海のいわゆる公海領海の問題、あるいは出漁に関してそういった制約を受ける事柄は、何ら約束はしていないと、はっきり否定されたとわれわれは確認しておきます。もし今後この発表が正式に確認をせられ、さらにソ連側がこういった約束があったぞという証拠書類を持ち出すならば、これは重大な事態が発生すると私は思いますから、その点はあらかじめお含みおき願いたいと思います。  次の問題に移りますが……。
  24. 河野密

    河野国務大臣 私はこの機会に特に発言をお許し願いたいと思いますことは、今まで私の発言いたしたことはその通りでけっこうでございます。その通りでございます。ただ私が申し上げておきたいと思いますことは日ソ友好の上に立ちまして、ソ連側ソ連側としての意見もあるだろうと思います。イシコフが非常に努力をせられたということは、私は今ここでつけ加えて申したようにあるのでございます。しかしわが方として、あと制約を受けるような事実は全然ございません。文書その他もありません。しかしこのことをその後も引き続き先方は強く要望しておられるという事実は、ここに明瞭にいたしておいた方がよろしいということで、決して是正する必要はないのでございますけれども、今あなたのおっしゃいますように、木で鼻をくくったように、相手友好のうちにまとめてきたことを、そのときはそのとき、今はこうだといってはっきりあまりしますことは、今現に向う友好的に話の取りきめをいたしておりますものが、先方が出したとかなんとか、まだその事態が明確になっておりませんものを、あまりここでけじめをつけ過ぎることはどうかと思いますので、特に発言を求めたのでございますが、向うから今おっしゃるようなことが出てくれば、わが方としてはこれに対してはっきり明確にする用意はございますということで、御承知おきを願いたいと思います。
  25. 江崎真澄

    江崎委員長 辻原君に申し上げますが、外務委員会から外務大臣を要求されておりますので、先に願います。
  26. 辻原弘市

    辻原委員 先ほど申し上げました対米貿易の問題でありますが、特徴になっている形は、輸出入アンバランスが非常に大きいということ。数字をしさいに申し上げる時間はありませんが、簡単に申しますと、わが国入超額は一昨年が約五億二千万ドル、昨年の上半期だけでも約六億五千万ドルに上っておるのであります。この不均衡を打開をするということになりますと、勢い対米輸入商品の構成から見て、わが国の思い切った輸入市場転換策をとらない限り、輸入の対米依存度は変らないと思います。さらに輸出の面をながめて見ましても、対米依存度は五四年の一七%、五五年の二二・三%、五六年の二一%、五七年上半期の一九・五%、かなりの高い依存度を持っておるのであります。輸入の問題はさておきまして、ここで輸出の問題をとらまえてみますと、最近現われている傾向は、五五年を頂点にいたしまして、その依存度かなり低下しつつあるということであります。そこで私は伺っておきたい問題は、この輸出依存度停滞傾向というものは一体どういった原因から起きておるのか。これはいろいろな原因があるであろうと思いますが、特に私はこの点について、通産大臣としては何がしかの考えがあるはずだと思いますので、その点を承わりたいのと、それからやはり同様外務大臣にもその点に触れていただきたいと思います。まずこれを伺っておきたい。
  27. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまお話通りに、アメリカ輸出につきましては、かなり日本輸入制限の問題もあります。さらにわれわれは輸入制限につきましては、従来より倍とか十倍とかいうような式の輸出が行われますために、向うの同種の業者、中小企業者でありますが、そういう関係から輸入反対をしまして、いろいろ関税委員会への提訴とか、あるいは法律案の提出とか、そういうような問題があります。従ってわれわれとしましては一歩一歩、一割とか二割とかいう増加でありますと、これはそう刺激しないので、そういうような規制を一面に行いますと同時に、できるだけ新規の商品輸出する。これはできるだけデザインその他につきましても考えまして、新しい商品輸出するということを考えていかなければなりません。さらにお話通りに、アメリカに対しましては輸入超過であります。かなりの差があるのでありますから、極力アメリカ当局に対しましても輸入制限の緩和ということに努力をいたさなければなりません。ただこの問題は、政府当局はよくわかっておるのであります。しかし先ほど申しますように相手中小企業者でありますために、その反対はなかなか根強いものがある、こう考えております。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 対米貿易の伸張につきましては外務省といたしましても最大の努力をいたしておるわけであります。むろんこれは通産行政におけるオーダリング・マーケットその他によりまして、日本商品の適当なる増加進出というものを考えていく必要があります。同時に政府当局を初め、国会、地方の議会等に対しても、十分日本としては働きかけて参らなければならぬ。ただいま通産大臣が言われました通り、ワシントン政府当局者は相当この問題について理解があると思うのであります。しかしながら最近の日本輸出商品アメリカの中小企業と競争の立場にあるようなものもありますので、そういう点については、地方的な問題あるいはそういう業種団体等の利害等に対する呼びかけもいたします。これらの問題については単にワシントン政府交渉いたすばかりではなく、民間とも協力いたしまして、各地方でそれぞれの民主的な立場に立ってこれらのものが論議されている組合その他にも働きかけて、そうして日本の実情をよく知らせることも必要だと思います。そういう意味で、われわれとしてはPR活動その他を通じ、また民間の有力な人々にもそういうことをお願いして、そしてその方面の努力も続けて参りたい、こう考えております。
  29. 辻原弘市

    辻原委員 先ほど私が不均衡の問題で、輸入国としての対米関係については除きたいと申しました趣旨は、これは従来いろいろ当委員会でも論議せられましたけれども、おそらく岸内閣の、特に藤山外相がやっておられる外交の路線においては、根本的に輸入市場を転換するという思い切った政策はとれまいと思う。それにはおのずからなる限界がある。従ってその限界内においては大した成果は期待できないから、私はこの問題については深く触れなかったのでありますが、ただ一つ外務大臣がおられるときに聞いておきたいのでありますが、今すでに中国との四次協定成立する直前にあります。これが成立を見ました場合、輸入輸出ともかなり中国貿易についてはワクが広がる。こういったことについてアメリカ側がどういう認識を持っているか、この点が心配される一点であります。いわゆる四次協定成立については、アメリカが裏面的にも表面的にも干渉はしない、あるいは成立後かりに——たとえば今向うで鉄鉱石の輸入とそれから鋼材の輸出についての取りきめが行われて、それに関する在外支店等がアメリカにあるはずでありますが、そういったところが、何か私の聞くところによると、アメリカの国内法でそういった場合に若干の支店の営業活動を制限するやのなにがあるのではないか、こらいった向きも聞いておるのでありますが、そういうアメリカの出方について何か関知するところはないか、全然中国貿易を現状の形で推進していく上に、アメリカ側からの干渉は何も行われなかったか、この点も御答弁を願っておきたい。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本におきまする輸入原料の確保ということのために、単にアメリカだけではなく、各方面に広く産地を選ぶというようなことは、これは各国との経済外交を推進して参ります上においても非常に必要なことであります。たとえば綿花のごとき、相手方が木綿を買うというような問題も考えられるわけであります。ことに日本の将来の貿易を考える場合においては、そういう現地で要請しておる問題については、できるだけわれわれも注意して参り、また各国政府の意向も体して、国内各官庁に連絡もし、その希望の達するように努めております。  中共貿易に関しましては、御承知のように最近鉄鋼使節団が参りまして、鉄鋼に対する長期の契約もできたかに聞いております。こういう問題について今日までの経過から申しまして、アメリカが特に何らの干渉をいたしておるとは思っておりません。
  31. 辻原弘市

    辻原委員 そこで輸出に関する制限の問題でありますが、この経過は時間がありませんので申し上げないことにいたしますが、ともかく今外務大臣通産大臣から話があったように、アメリカ側が、政府を中心とする自由貿易派が一つの抵抗ラインになっていることは事実でありますが、最近特にアメリカの中間選挙を控えて、動きをそれぞれの情報によって察知いたしますと、どうもいわゆる保護貿易といいますか、制限派がかなりの力を占めて、そうしてかなりの圧力をかけておる。しかも五月にはアメリカの議会が開かれ、それには二年前から問題になっている各種のより強い制限法が提案をせられる、今日こういった状態にあるわけであります。今までの政府のやり方を見ておりますと、いわゆるPR活動をやる、了解を求める、あるいは民間の業者が直接向うに参って実情を訴えて折衝する、こらいった程度であります。ところがその程度でもって果して予定をされている次の議会におけるこの制限法、あるいは互恵条約の延長に関するこの法案を通すことがアメリカ議会において可能なのか、あるいは関税に対する関税機構の友好関係アメリカが敢然と参加をする態勢が作れるのか、われわれとしては、はなはだその点について杞憂を持っておる。一体政府としてのこの点に関する見通しはどうなんですか、これを承わりたい。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 対米関係のただいま御指摘の問題は、われわれも非常に重要に考えております。ことに今年はアメリカの中間選挙が秋に行われる。そういうものを目前に控えて、通商互恵条約等の問題も起って参るわけでありますから、従って日本としてもただいまのお話のように、油断なく各方面に、政府に対しても民間世論に対しても、また米政府の活動に対しましても、十分にその点を努力して参らなければならぬのであります。決して政府は楽観をいたさないで、最善の努力を尽して参りたい、こう思っております。
  33. 辻原弘市

    辻原委員 通産大臣にもう少しの認識を持ってもらいた出いのでありますが、事の起りはアメリカ中小企業者の保護から、いわゆる保護貿易ということが、これをバックにして強引に圧力をかけてきているのであります。その被害はどこに及んでおるかといえば、これは向うが対象としている品目を詳細にながめてみれば一目瞭然であります。ほとんど日本中小企業者の生産をするものであります。アメリカ中小企業者の保護からその被害が日本に及んでおるということにおいては、これはわれわれは黙過するわけには参らる。また長い目で見れば、アメリカ側にとってもかような制限日本側に課するということ、しかも非常に数の多い日本中小企業者、むしろ端的な言葉で申すならば、商売上の敵に回すということは、これはアメリカ日本との友好関係に大きなひびを将来入れるものだと思う。そういう認識に立てば、もっと私は藤山さんあたりにもお願いしたいのでありますが、政府全体として大きな外交の線の上で、これこそ解決しなければならぬ問題だと思う。絹か木綿か知りませんけれども、あなたに期待された外交上の手腕がこういうところにあると思う。経済界から出られて外務大臣という立場におられるあなたが、今日これらの問題を解決する格好の場合だと私は思う。このことを強調して将来日本アメリカが長きにわたって友好関係を持続するためには、かかる制限、かかる圧力を日本中小企業者にかけることはもってのほかであるという所論をなぜ政府が大きな声で言わないのか。通産省の役人に聞けば、やはり微妙な問題でありますから、今政府はこれについてかなりの認識を持っておりますから、なるべくそれはそっとして触れないでおいてもらいたい、こういうようなことでは私は根本的な問題は解決するわけには参らぬと思う。また事実そうでありましょう。  時間がありませんから端折って申し上げますが、自主規制だ、私はこの自主規制だという言葉の裏には屈辱的な外交の姿が現われておると思う。その自主規制がどういうところに影響しておるかと考えてみれば、単にアメリカだけではありません。アメリカの貿易だけではありません。アメリカとの貿易が、自主規制という姿において、協定されるワクが縮まるということではなくして、さらに第三国を経由して入ったと称する品物についてまで圧力がかかってきておる。そういうことは何かといえば、対米貿易のこの制限のために、日本自体が第三国との貿易もあわせ制限を受けておるという事態、それが逐次こういったいわゆる日本アメリカヘの対米輸出依存度というものが低下しておる主たる原因だとわれわれは見るのであります。政府は一方において輸出振興だ、中小企業の保護育成だと強調しながら、こういうところにしわが寄っておる。こういうところに貿易の大きな隘路が今日広がっておることをもう少し深く認識して、もう少し的確な大きな外交上の手を打たなければならぬと思う。今日国内の世論においても、直接の業者はこの問題を非常に大きく非難しております。しかし政府のPRがどっちを向いているか知りませんけれども、国民の中にも深くこれを認識しておる層が比較的少いということを嘆くのであります。輸出に依存しなければならない、しかも高い依存度を持っているアメリカ貿易の中で、さらにまた根本的にいわゆる市場の転換をはかることのできない岸保守内閣において、とるべき手というものは、こういう隘路を打開していくよりほかにない。なぜこれを積極的におやりにならないか。PRをやりますと口ではいろいろなことを言いますけれども、しかし私は大きな折衝がこれについて行われたということは今日まで聞かないのであります。通産大臣の御意見をこの機会に聞いておきたい。
  34. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 先ほど来申しておりますように、確かに日本におきまして制限を受けておりますものは中小企業者であります。また向らも同様なんです。従ってこれは向うの業者が圧倒されるような数量を一時に出そうとあせるとにつきましては、われわれも自主的に考えていかなければならぬと思います。従って一割なり二割なり——これは何もアメリカに限りません。ほかの国におきましても同様な問題が起るのであります。これは結局新しい市場を開拓し、また新しい商品を売り出すということで国内態勢を整えていかなければなりません。さらにまた従来われわれももう少し早く向うの動向を察知しまして、そしてそれに対処していかなければならぬ、こういう点につきましては今後も、ことに本年度は従来よりもはるかに多くの予算をとりまして、留意をしていく。その反面におきまして、先ほど来申しておりますように、強硬にアメリカにPRもし、また外交によりまして打開していく。ただいままでは率直に申し上げますと、関税委員会で取り上げられましても拒否されてきておる、こういうような情勢でありましたが、先ほどお話のありましたように、本年は大統領選挙の関係とかあるいは互恵通商協定法の延長の関係とかいうので、かなり熾烈になっておりまして、これに対しましては従来以上に強力に外交の折衝をやつていかなければならぬ、かように考えておるわけであります。
  35. 辻原弘市

    辻原委員 政府としても楽観はしていないようでありまするから、せっかくやってもらいたいのでありますが、もう少し認識を持っていただくために一、二申し上げておきましょう。それは外国も同然だと通産大臣軽くいなされましたけれども、外国は少し違うのじゃないかと私は思う。それはもちろん規制をしていこうということは同じかもわからぬが、受ける場合の態度が日本側よりももう少しはっきりしている。一つの例を自主規制にとってみても、先ほど私が言いましたように、自主規制は当事者同士の問題だ。アメリカ日本協定をしてこれ以上のものを向うには送らない、ところがかりに日本が第三国に輸出をした、それが回り回ってアメリカへ入ったといたしましても、それはあずかり知らぬぞというのがおそらく私は外国の態度じゃないかと思う。ところが日本側はそれも全部締められて悲鳴を上げて、それに対しても日本側自体自主規制の範囲に入れて一つの徴罰方法をとる。それだから、極端に申せばうかつにどこの国にも出せない。通産省の役人に聞けばそれにはいろいろ理屈はあるかもしれませんが、私は大ざっぱに言って、そんなばかなことがあるかということなんです。なぜアメリカとの約束は守りますが、ほかの国に売るのは日本は責任を持てませんというくらいの腹をきめて外交をやらぬかというのです。だからうかつに送れないうかつに送れないということが積り積って、日本全体の輸出貿易が全部この自主規制の名においてだんだんとしわが寄ってくるという傾向を生むのじゃないか。この点を私は心配をしておる。また中小企業者の中には、もうこんなややこしいことなら、この品目についてはアメリカに送らぬという人もあるのです。送らなかったらどうかといえば、アメリカには安くてよい日本のそういう中小企業者商品を待ち受けている購買層があるのであります。ほしいほしいというから送るのです。困るのは日本中小企業者も困るが、一つも送らないとなれば困るのもアメリカです。だから一ぺんそういう味も知ってもらおうじゃないかという声も悲憤の中に起っておる。私は中小企業者存立の重大問題として、この問題についてはもう少し腹を持ってアメリカとの折衝をやってもらいたい。もう少しきぜんとした態度でもって外交をやってもらいたい、こうした経済問題についての取りきめをやつてもらいたい、こういうふうに思う。通産大臣いかがお考えになりますか。
  36. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 第三国を経由して参ります場合に、明らかにアメリカにいくことがかっきりしてあるものにつきましては、これは当初から自主規制の対象となるべきものです。従ってその点につきましては、かっきりしてあるものにつきまして勢い自主規制を促さなければなりません。先ほど来由しておりますように、何も従来以下にしろと言っておるわけではありませんので、一割なり二割なり漸進的にふやしていく、こういうことでありましたら何も刺激しないのであります。ただ従来はあまりに多く輸出し、しかもあとからくるものが結局次第に安値でくるというような過当競争が行われますために、勢い日本商品の価値も下り、輸出をかえって阻害しておる、かように考えますので、もちろん外交としてはあくまで強い外交をやっていかなければなりません。しかしその反面におきまして、結果においてどういう点が最も有利かということを考えながら輸出をしていかなければならぬ、こういう状況にあると思います。
  37. 辻原弘市

    辻原委員 この問題についてさらに通産大臣に伺いたいと思いますが、今行われておる繊維関係の本年度のワクについての交渉は、予定よりもはるかに長引いておるようであります。いつごろ成立する見通しか、ないしそのワクについて前年度の実績に比してどのくらいになる見通しかこの点について承わりたい。
  38. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 協定は別に改訂するとかそういう問題ではございませんので、その限度等につきましては何も従来と変らぬ、ただ少し内容を改善しようじゃないかというので、例年につきましてこまかい問題を、たとえば綿製品と綿二次製品との融通率をもう少し広げていこうじゃないかということで、向うもそれに応じてきております。またこまかいギンガムの定義だとかいろいろなことが話題になると思います。まだきょうにも終結というところまではいっておりませんが、遠からずできると思います。
  39. 辻原弘市

    辻原委員 それでは時間がありませんので、次の問題に移りたいと思います。私は最近の交通事故の頻発に対処する政府の施策を伺っておきたいと思います。これは私のみならず、ともかく今日生活をしておる者のすべてが毎日交通事故のために脅かされておるのであります。しかしながら昭和二十年から今日までの十二年間に数々の交通事故が起り、また車両の増加も著しいが、それに対処する交通事故防止の具体策というものはほとんど進歩を見ていないと私は考える。これはかなりむずかしい問題でありますが、しかし事人命に関し、われわれ日常生活のかなりの部分を占める重要問題であるだけに、知能をしぼってこの対策を立てるべきである。そういう意味合いできょうそれぞれ私は担当の大臣なり係に詳細に承わりたいと思うのであります。 統計を見てみますと、車両の増加とそれから交通事故は比例をいたしております。しかもその統計の中で顕著に現われておることは、交通事故の九〇%は自動車による事故であります。昭和二十年からの交通事故の増加系数を全国的に見てみますと、まことに驚くべきものがある。昭和二十年を一〇〇にいたしますと昭和三十二年度は、一七〇〇をオーバーしております。一〇〇に比較して、一七〇〇という高い急角度のカーブを描いておる。これほど今日交通事故が私どもの周囲を取り巻いておる。そこで私はこれらの集計された十年間にわたる資料を検討すれば、そこに何がゆえに交通事故が頻発をするのか、その交通事故の傾向は何か、それを防止するための対策は何か、私はおのずからしぼられてくると思う。そこで私がささやかな頭をもってしぼった点を申し上げてみると、まず統計上現われた特徴からとらまえてみて、一つは先刻申し上げましたように事故の大半は自動車でありますが、さらにその自動車のうち、自家用車と営業車との比率を見ますと、営業車による交通事故は自家用に比較いたしまして著しく大きいのであります。さらにそれはいわゆる貨物、乗用車、なかんずくいわゆる小型乗用車による事故というものが非常に大きな部分を占めておる。言いかえてみますと、この事故というものはタクシーによって引き起されているものである。これが一つの特徴、次の特徴の原因は、いかなる形において事故が起っておるかということ、それは運転手の心身関係、注意力の欠除、これといわゆるスピード関係であります。スピードが出過ぎたために引き起される事故、これがその大半であります。いま一つの問題はこれは自動車の側ではなくして歩行者の側にある。私はこの三つの特徴からその対策について政府にも承わりたいし、私の考えも述べてみたいと思うのであります。  第一のタクシーの問題であります。最近神風タクシーと呼ばれて、私ども毎日これを経験しておりますが、決して全部が全部ではありませんけれども、中にはちょっと乗っても腰を据えかねるような、まことにおそろしいスピードで走る、あるいは昔は曲芸団でしか見られなかったような運転方法をやってくれる運転手もおる。こういったいわゆるタクシーの問題について、なぜああいうようなスピードの出し方、なぜあのような危険な運行までして、車を先にくっつけなければならないか、こういった原因をわれわれはいろいろ探求しなければならない。一体取締り当局としてはすでに統計も出され、かなり結論も出されておると思いますが、なぜそういうような無理なかせぎを今日タクシーの運転手がしなければならないのか、この原因をどう把握されておるか、これはおそらく警察庁であろうと思いますが、担当者から承わりたい。
  40. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 お答えいたします。最近交通事故が激増いたしておりますことは、ただいま仰せの通りであります。まことに憂慮にたえない状況にあるのでございます。この交通事故発生の原因につきましても、ただいま御指摘のありました通りであります。そこで私ども交通取締りを担当しております警察側といたしまして、この問題につきましては深く関心を持ち、あらゆる研究、工夫をこらしまして事故防止のために最善を尽して参りたいと思っておるのでございますが、この交通事故を防止するには、ただ単に警察取締りのみをもって全きを期することはとうていできないのでございます。ただいまお話のありました通り、交通事故発生の原因はきわめて多いのでございます。従いましてこの交通事故防止のためには、いろいろな観点から総合的に施策が推進されなければならないと思うのでございます。たとえばまず道路の問題を考えますならば、年々車が非常にふえ、交通量が激増しておるのに対しまして、道路はそれを十分にはかすだけの収容力がないと申しますか、こういう点で道路の補修、改善、整備を必要とする。また交通安全施設の点につきましても不備な点が多々あるという点、さらにまた先ほども御指摘になりましたように、交通道徳を守るといいますか、これは軍の運転者も歩行者もあわせて交通道徳を守る、道義の高揚、こういう点につきましても、いまだしだという点が多々あるのであります。またさらに営業用の運転者の労務管理の適正という重大な問題もあるのであります。こうしたいろいろな問題がすべて総合的に適切なる対策が立てられ、これが推進されることによって初めて交通事故の防止はできる、かように考えるのでございます。ただいま特に御指摘のありました運転者の労務管理の問題につきましては、これは運輸省の所管でありますので、私どもの直接の関係ではございませんが、今申しましたような観点から、政府におきましては昭和三十年四月に内閣に交通事故防止対策本部を設けて、各関係機関が常に集まりまして緊密な連絡をとり、交通事故防止のための対策を研究いたしまして、着々その実行に移し得るものを行なっておる、こういう状況にあるのであります。今後ともさらに関係各省庁緊密な連係をとりまして、この激増する交通事故の防止のために一そう努力をいたして参りたい、かように考えます。
  41. 辻原弘市

    辻原委員 通り一ぺんの御答弁でございましたが、最後に言われた——私は時間の関係上私の申した質問にお答えを願いたいと思います。最初に私は営業車、タクシーの問題を申し上げた。あなたが言われた労務管理にもやはり問題がある、私もそう思うのであります。そこで所管の運輸省、これは労働省にも関係がありますので、その所管から伺いますが、私はいろいろ日常気をつけて運転手の諸君にも聞くのであります。何でそんな無理なかせぎをするのか。私はそれに原因が二つあると思う。一つはいわゆる勤務体制の問題、いま一つは給与の体制の問題、それについて私の調べた範囲によりますると、全部でありませんが、大体こういうケースのものが勤務体制には多い。朝七時半ないし八時に出勤をして、勤務は夜半に至る、拘束は十八時間、それから昼食一時間、夕食一時間、従って実働が十六時間というのが大体普通であります。午前の二時以降は仮眠して午前の八時に次の者と交代をする。二人一車制でありますから、従って一昼夜の交代、二日で十六時間、従って算術的な計算をすれば、二日で十六時間ですから一日八時間、こういう計算が出るのでありますが、人間は機械のようなわけにはいきません。一日働けばあと一日休みがあってもそこには疲労というものが生まれる。操車をしている間に疲労が生まれる。こういった勤務体制に一つの問題があるのじゃないか。それからいま一つは、給与の制度を見ますると、賃金でありますが、大ざっぱに言いまして、三十二年二月都内の六十社の調査の結果でありますけれども、総収入平均して二万八千円のうち固定給は一万五百円、すなわち固定給は収入の約三八%になっておる。その内訳は本給と称するものが四千五百円から五千五百円であります。従いまして総収入に対する本給ないしは固定給の割合というものがきわめて低いということ、言いかえてみると、歩合制度というものがこの賃金制度の中に大きなウエートを占めておるということ、従って収入を多くしようとするならば、勢い固定給以外の歩合を上げなければならぬ、そこに無理なかせぎを行わなければいかぬという問題が発生するのであります。これらについて所管大臣はどういうような考えと、どういうような指導を今日行われておるか、この点について承わりたいと思います。
  42. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 タクシーとハイヤーを区別いたしますと、大体今仰せになりました通りであります。つまり固定給の割合というものが大体一七%から二五%、あとは歩合給が七〇%くらいなものでございます。これは仰せの通りでございます。なおほかにいろいろな手当がございまするけれども、タクシーの運転者の収入は歩合ということになっておることは御指摘の通りでございます。そこでこういう体制を改善をしていくということも大きな問題であると思いますが、これらは今度内閣の事故防止対策本部の中に自動車部会を設けまして、労働省と協力いたしまして、これらをどういうふうに持っていくかということを、今いわゆる労務管理の上から考えておる次第でございまして、これは改善をして運転者の生活の安定とその再生産力と申しますか、労働力を的確にまた安全にしていくということを私の方は考えておる次第でございます。
  43. 石田博英

    ○石田国務大臣 最近非常に自動車の事故が多くなったことにかんがみまして、ただいま運輸大臣の御答弁さいましたように、運輸省と連絡をとり、あるいは今度内閣に設けられまする審議会等の活動を待ちまして、給与体系の改善、それからいま一つは労働時間の問題、この二つに重点を置いて処理をいたしたい、こう考えておるわけであります。現状につきましては、たびたび改善の措置をとって参りました。先年までは十時間ずつ実働二十時間という状態でございましたのを、現在では今お話のように八時間というふうに改められまして、順次改善の途上にはございますが、まだまだであります。特にその基本的な給与体系と労働時間の問題については、ぜひ改善を要すべきものだ、こう考えております。ただ今労働基準法違反かということになりますと、基準法に違反するということはちょっと言えないんじゃないか、こう思っておるわけであります。
  44. 辻原弘市

    辻原委員 私もそこまで申しておるのではございません。また今労働大臣も言われましたように、労働省としてはかなりの指導を行なっておる形跡があります。従ってさらにそのことを徹底せられて、もちろんタクシー会社は営業でありますから、営業というものと見合っての給与体系ということになるであろうと思いますので、行政指導としてはかなりむずかしい問題がひそんでおりまするが、やはり事故防止の、特に統計から見た傾向としてのタクシーの問題は、何といっても運転手自体の生活の安定と勤務体制のいわゆる正常化、このことに尽きるんじゃないか、実はそういう深い認識を今日私はとっておるのであります。従ってそれについての行政指導、幸い審議会を設けられておるそうでありまして、まあおやりなすって効果が上った話をあまり聞きませんので、あとでいやみを少し並べたいと思いますけれども、幸いこれらの問題を具体的に持ち込まれるということでありまするから、これは期待をいたしております。  それからいま一つ、この問題に関連をして、運転手自身が車を自分で大事にする形になればかなり違うと思う。それは現在のいわゆる免許基準から申しますると、これはどうにもならぬ問題でありますが、もしでき得べくんば、やはり運転手が将来にわたって自分が個人営業でもしたいという場合は、その自分の車をもって自分が営業をするというような仕組みも考慮していいのじゃないか、そういうことになりますると、かなりこの事故という面においては防止できてくるんじゃないか、こういうことも私はひそかに考えるのでありますが、一体運輸大臣はこれらについてはどうでありますか。
  45. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 御指摘のことは個人の営業者ということの問題になる、まあ打ち砕いて申しますと、一両持ちということが言われておるようであります。これは都会におきましては、そういうことは今実情に即しましてやっておりませんが、郡部等では一両持ちというのが行われておることは御承知通りであります。  これは一面から見ますと、自分の車である、自分が営業の危険性を持っておるのでございまするから、車を大事にする、あるいは自分で手かげんをして働くということもあり得ますが、また他面におきまして、自己の危険性をカバーするために、あるいは無理に働くという点もあり得るんでございます。この点につきましては私どもも非常に考えておるのでございまして、一利一害もございますから、私は今研究中でおるわけでございます。長所もあれば短所もあることは私は認めざるを得ないと思います。しかし今申しましたごとく、郡部等におきましての一両持ちは、かなりの成績を上げておるように報告を受けておる次第でございます。
  46. 辻原弘市

    辻原委員 その点について議論がありますが、議論はいたしません。しかし大よその世論を微してみましても、そういうケースを開くということは、もちろんそれがすべてではありませんけれども、現在よりも効果を上げるということは間違いのない事実だと思います。しかし一面既存の業者等の関連から、なかなか決断を下せないという実情にあると私は思う。それを許すか許さぬかは、それについて効果が上るか上らぬかとは別個の問題で、おそらく考えられておるのではないかと私は判断をしております。しかしこの点は事故防止に関する限り重要な一つの方法だろうと思うので、これは一つよくお考えを願いたい。  次にスピード違反の対策でありますが、取締りの当局はときどき思い出したように、と言ってはしかられるかもわかりませんが、時期を設定して取締りをやられております。もちろんそのこと自体は効果があります。いわゆる戒めのための効果は上りますけれども、これによってスピード違反を根絶するということはおそらく不可能でありましょう。しかも見ておりますると、的確にそのスピード違反をとらまえるとなると、非常に数多くの係官が必要だと私は思う。数多くの警察官が必要だと思う。技術的に見ても、端と端とに二人を並べておいて、さあ何キロで走ったか、ストップ・ウォッチを押してはからなければならない。そうして初めて違反だということが正確に確認できるのである。そういうことでありますから、私は取締りということだけでは、これはとうていその目的を達することはできないと思う。先ほど長官も言われておった通りだと思うのです。そこでどうするかということでありますが、私は今日のこの科学の進歩した世の中でありまするから、もう少し進歩した機械装置をもって、いわゆるスピード制限が行われないか。月の世界まで行けるというような世の中ですから、もっと合理的な進歩したやり方があるはずだと思う。聞いてみますると、運輸省等でも研究を進めておるようでありまするし、民間のかなりの有識者もこれらの点に着想いたしまして、いろいろ工夫をこらしております。もうすでに私は機械だけの段階では、このスピードを標示できる装置が作れるという段階に達しておると思うのであります。ただ問題は、スピード制限自体の規定が各地まちまちである。都道府県の条例においてこれが規制をせられておるために、まちまちである。東京を一歩離れれば、もう制限が違う。東京都内においてもかなりの種類がある。これでは幾ら車に標示をしてみてもだめです。やはり的確なことは取締りの警察官によってそれをなくすということでは、警察官がおるときだけはゆるく走る。たまたまうかつなのが、それを知らぬで走っていってつかまるのです。賢いのはつかまりません。そういうことでありまするし、しかもまた少々走ってもまあ罰金ともうけを考えみれば、罰金の方が安上り、そんな極端な考えはないと思いますけれども、そういうことになると、まあまあスピービ違反を一々気にしておったのではどうも商売にならぬ、こういうことにもなりかねないと思う。そういうことを、全体の一つの世論、利用者国民の力によって防止をする。その一つの考えとしては、かりに機械装置によってそれが標示をされると、それを国民が全部見ておる、通行者が見ておる。いわゆる違反を犯して車が走っておるということが大衆に認識せられれば、おそらくスピード違反というものは自主的に規制されていくのではないか。また取締りの方もその標示を見れば、あああの違反をしておる車のナンバーは何番だと、直ちにわかる。それらのことを私はやり得るのじゃないかと思う。しかしそれをやる前提としては、先ほど申しましたように、やはりこのスピード制限というものを全国的にかなり統一する必要があるということであります。その前提がなければ、いかなる装置を車にしても、それは繁雑なだけで効果を現わさないのでありますから、従って、そういう進歩した方法を採用するための各地のスピード制限についての規則というものをある程度統一されるお考えが今日当局にはないか、これを承わりたい。  いま一つは、そういう進歩した機械装置を、私はしろうとでありますからわかりませんが、おそらく専門的な運輸省の研究機関においては検討もされておると思う。そういうものがつけられないのか、そういうものが装置できないのか、この点を承わりたい。
  47. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 運輸省では、今おっしゃった機械は技術的に可能であると今判断をいたしておりますが、なかなか簡易にはできないようでございますが、技術的にできた場合につきましては、私は考えていきたいと思います。  それから、今おっしゃった、制限について統一をしろということは、私は望ましいことであると思っておるのでございます。
  48. 辻原弘市

    辻原委員 可能ならしいではなしに、これは可能です。私が調べた範囲においても、すでにこれはでき上っておる、でき上ります。従って、いろいろな問題というのは、結局いかなる形においてスピードの制限を行うかという一点に私は尽きると思うのです。その点についての関係各省の統一と、全国的な統一、これが行われれば、私は遠からずそのことは実現するのではないかと思う。また、そのことはぜひとも実現をしていただきたい。その点について一つ担当大臣にももっと積極的な御発言を願いたいと思います。今まで私はこの問題を国民の一人として、やってほしいと思っていろいろ調べてみました。しかし、各省それぞれ、取締りは取締りだけ、そういうような装置は運輸省の所管。そこで、取締りの方が希望しても、運輸省の方は別の観点からまたそれはいろいろ工合が悪い、むずかしい、そういうことです。今大臣はやりたいと仰せになりましたけれども、私はなかなか容易ならぬ問題だと思います。やるとなれば、全国の車にそれを取りつけなければいかぬ。自家用であれ、営業用であれ、金のかかることはなるべくやりたくないということになりましたならば、かなりの抵抗もある。しかし、事故を防止するためには、決断をもってこれをやらなければならない。従って、幸いに事故防止対策審議会が設けられておるならば、そこで総合的に各省の見解を統一して、甲はやれ、乙はあまりやりたくないということでは、足元を見透かされて実現はできませんから、そこで統一して、これをできるだけ早い期間に作り上げて、こうした装置によって交通の安全をはかる、こういうことを一つやってもらいたいということでありますが、国家公安委員会の担当大臣からも一つ積極的な御発言を願いたい。
  49. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 ただいまのお話は、おっしゃいました通り、交通事故が毎年増加することは遺憾なことでありますが、これも、先ほどお話がありましたごとく、自動車の数が非常に激増するためついこういうことになるのであります。それについては、先ほどお話がありましたように、どうしても全国的に統一することが必要と私も考えております。いずれにしても、これは各種にわたって対策本部でよく練りたいと思っております。
  50. 辻原弘市

    辻原委員 次に、大型バスのはんらんでありますが、私はどうも不思議にたえないのであります。よくくつに足を合わすという話があります。足にくつを合わすのではなしに、くつに足を合わす。私は、今の日本におけるバスと道路との関係は、ちょうどそういうことではないかと思う。道路は依然として昔ながらにきわめて狭隘である。ところが、バスだけは遠慮会釈なしにどんどん大型になって、どこで許可するのか知らぬけれども、それがどんどん許可されて走っておる。こういうところにも、日本の道路行政とマッチしない運輸行政があるのではないか。次第に人間が肩身が狭くなっていくような傾向がある。車におびえ、大型バスにおびえてなにする。一体この大型バスについての規制はどうしているのですか、運輸大臣
  51. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 運輸省令によりまして、保安基準を立てて、それによって大きさを制限いたしております。
  52. 辻原弘市

    辻原委員 私は保安基準を知りませんけれども、そういう保安基準なら改めたらよろしかろうと思います。これは一目瞭然ですよ。通れるだろうではいかぬのです。バス自体に危険性も伴うし、歩行者も困るし、道路の両側にある商店も困るし、困るものばかりです。いいのは運転手ひとり、そして大量のお客を運んでいけるバス会社だけはそれはいいでしょう。しかし、多くの者が困るということになれば、これは公共事業でありますから、公益性を持つものでありますから、やはりもう少し幅を持った制限が私は望ましいと思います。できるだけ近代化していくためには大きなものがもちろん必要でしょう。走れるところはいいが、しかし、無理無体に通っているところが全国かなりの数ではありませんか。そういう点について、もう少し日本の実情に合うような運行基準というか免許基準というか、そういうものを再検討する必要があると思いますが、大臣個人としてもそういうことをお気づきになりませんかどうか、お答えをお願いします。
  53. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 私も、そういうことは聞いて、今考えているのです。しかし、たとえば路線バスなども、許可いたしまする場合は厳重な注意をさしております。ことに、観光バスなどにつきましても、その路線については調査をいたしておるのでございまして、この点は注意を重ねている次第でございます。
  54. 辻原弘市

    辻原委員 私は、こういう席でありますから、無理なことは、きょうは申さないつもりであります。耳ざわりなことは申しませんけれども、そういうような注意を払い、指導をしておるのに、なぜどんどん大型バスがふえたり、常識的にはむずかしいというようなところでも運行許可が出たりするのでしょう。私は少し考えてもらいたいと思うのです。もちろん交通を発達させるためにはできるだけ多くのものを許可しなければいかぬが、しかし、それには限界がある。こういう点については運輸大臣としてももっと注意をして考えていただきたいと思います。  建設大臣はどうですか。バスに道を合せるような道路行政をやられますか、その点を承わりたい。
  55. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答えいたします。道路政策は、国道一級、二級、地方主要道路、行路と、いろいろございますが、これはおのおのその需要に応じて一応計画を立てているのでございます。ただし、今御指摘の通り、大型バスあるいは大型トラックは私の方の認可の対象にはなっておりません。従いまして、ただいま申されているように、道路の許容量を越えて運行されるためにいろいろの障害が起きているということについては、われわれも非常に重大な関心を持ちまして、運輸省と常に連携をとって、道路の許容量に対応する許可をしていただくように連絡をしている次第でございます。
  56. 江崎真澄

    江崎委員長 辻原君に申し上げますが、すでに申し合せの時間でありますから、どうぞ結論をお出し願います。
  57. 辻原弘市

    辻原委員 この問題の最後に、先般分科会の節、わが党の井手委員からも指摘をせられておりますが、二年前にできました自動車損害賠償制度の問題についてでありますけれども、分科会における運輸省の説明によりますと、この特別会計によって支払われました実績は、法律に規定されている死者に対して一人三十万円の範囲であります。同時に、重傷、軽傷いずれもその範囲内において支払われておりますが、この特別会計の運用について私は今云々するのではなしに、この補償制度ができてすでに二年であります。これができたことだけでも私は非常な進歩であると思うのであります。しかし、諸外国のそれと比較をしてみましても、まだかなり遜色があります。その第一は補償金額が少いこと、それから、最近の新聞にもいろいろ出ておりますが、せっかく制度ができたのに、それについての利用方法を一般が知らないために、もらえる金がもらえないということもあります。それから、調べその他で非常に遅滞をしている問題そういうことで、せっかくの制度が生きて活用せられておらない。これは十分行政指導を行う必要があります。それと、もう一つ、法律的にはもう少し人命を尊重するという立場から死者に対する限度を引き上げる必要があると思うのであります。アメリカ等の資料を見れば、普通において五万ドル、最高は三十万ドルを支払ったことがあるとさえいうのであります。それに比較をいたしますると、日本の三十万円、人一人がひき殺されて、ひき逃げをされて三十万円では、これは私は補償制度としてはいささかさびしい限りだと思うので、これはもう二年の経験を経ておるのでありますから、一つ引き上げてもらいたいと思うのだが、担当の大臣からその見解を聞いておきたい。
  58. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 わが国のこの制度は、アメリカと違いまして、強制加入になっております。現在のところ正式には八四%という数字が出ております。これを限度を上げるということは私は好ましいことと思いますが、そうするとやはり保険料を上げるということにもなりますので、この点は彼此考究を要すると思います。この制度が仰せのように一般に周知されて、そういう不幸な場合にこの賠償が適当になって善後策ができるということを私は希望いたします。  なお、数字によりますと、最近の死亡者の場合の平均は二十四万八千円、この低い数字でございまして、これは私も仰せのごとく考えたいと思いますが、何分強制加入になっておりまして、アメリカとは多少制度が違うのでございまして、その保険料とどういうふうにつり合いをとらしていくかということを私は考えなければならぬと思います。しかし、これは徹底的に普及さして、こういう不幸な人たちに対して善後策を講ずるということは、この保険の趣意といたしまして私は徹底しなければならぬと考えておる次第であります。
  59. 辻原弘市

    辻原委員 総括いたしまして、官房長官に承わりたいと思いますが、あなたの所管でございました交通事故防止対策審議会、これが作られまして、毎週火曜日には自動車部会が開かれるようでありますが、各省ばらばらでは、今問題に取り上げておりますこの事故防止は行い得ません。幸いに政府がそういう機関を作ったのでありますから、一つこれを活用していただいて、そうして、世論の中でいろいろな意見があると思いますので、そういうものも徴して、すみやかに総合的な事故防止対策をこの審議会でまとめていただきたいと強く希望いたしますが、官房長官として早急にそういうものをまとめられる意気込みがおありになりますか。すでにかなりの具体案があります。今私が申し上げた、疑質応答いたしました中にもかなり具体的なものがあります。そういうものをさらに検討して、すみやかにまとめる、こういうことをやって国民に安心感を与える。これこそ重要な内閣の責務だろうと思う。官房長官から承わっておきたい。
  60. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まことにごもっともな適切な御意見と存ずるわけであります。すでに、審議会が置かれましてから、御承知かと思いますが、答申が出ております。その答申でも、現在やっておりますものに対しまして相当の示唆やあるいは改善のためのよい御意見も出ております。これをまず政府部内で早急に取りまとめて実施に移す。なお、今後におきましても、さらに一段と審議会を活用いたしまして、政府全体として大いに意気込みを新たにいたしたいと思います。
  61. 辻原弘市

    辻原委員 最後に一問だけ。文部大臣お見えになっておりますか。通告しておいたのでありますが……。
  62. 江崎真澄

    江崎委員長 すぐ呼びましょう。
  63. 辻原弘市

    辻原委員 それでは大蔵大臣に伺います。私が時間があれば関係大臣に承わりたいと思った問題、それは部落解放の問題でありますが、昔から同和教育あるいは同和運動の名でもって呼ばれてきた全国三百万人に及ぶいわゆる未解放部落の人たちに関する問題を承わりたいのであります。  政府は、昨年の十一月でありましたか、閣議においてこの部落解放の問題を取り上げられ、推進をするという申し合せをせられているようであります。そこで、私が承わりたいのは、一体この部落解放に対する政府のよって立つ認識であります。どうお考えになっているか、この点を承わりたいのでありますが、大蔵大臣に一つ見解を承わりたい。
  64. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、基本的な考えとしましては、あまりそういう特別な部落というものがあるような解釈を第一持たない、そうしてそういうふうな社会的な情勢もなくなるようにしていくというのが、私の基本的な考えです。
  65. 辻原弘市

    辻原委員 どうも大蔵大臣は直接の所管でないのではっきりいたしません。幸い副総理がお見えでありますから、これは内閣全体の問題でもありますので、副総理から、閣議の申し合せをしたゆえんのものはどういうところにあったか、その点について承わりたい。
  66. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えいたします。閣において話し合いましたことは、部落の改善をする、そうして同和政策に移行していくようなことで、その政策を実行に移すためには、強力になるべく早くそういう問題の解決の方途を講ずべきだというような申し合せをいたしました。私どもの内閣としての考えは、ただいま大蔵大臣も申しましたが、特殊な地帯が日本にあるというのは非常に残念なことでありますが、現実にそういうところの不自由な困っておられる方々がある、こういう方々の問題をできるだけ早く総合的に話し合って解決する道はなかろうかというようなことも話し合っているわけであります。
  67. 辻原弘市

    辻原委員 特殊な部落が今日存在しているということは非常に遺憾であるということ、特殊な部落、気の毒な人たち、こういう言葉は、現実に部落というものが今日のこの民主的な日本の国内において依然として差別される立場に放置せられているということをお認めになって、そういうような施策を樹立していこう、こういうふうに考えられたものかどうか、いわゆる差別が今日の社会においても現存をしている、こういうような前提をもって対策を進めようというふうにお考えになられたのかどうか、この点を承わりたい。
  68. 石井光次郎

    石井国務大臣 現実に、たとえば学校の問題はどうであるとか、住宅の問題はどうであるとかいうような問題を取り上げて、こういう地帯に実際こういう不自由な、そうして困っておられる状態がある、それを政府といたしましてはできるだけ除くような方向に持っていく、これはどの方面でも政府は注意をいたさなければならぬ問題でありますので、実際上困っておられます問題をわれわれは解決しようという意味でございます。
  69. 江崎真澄

    江崎委員長 辻原君、ちょっと申し上げますが、文部大臣八木君も要求しておられまするので、そのときに関連して一つ御質問をお許しいたしますから、どうぞよろしくお含み願います。
  70. 辻原弘市

    辻原委員 副総理から非常にお気の毒な問題であるという言葉で表現をせられました。私は部落解放を政府に推進してもらわなければなりません。その推進をしていただくための前提となる観念については、きわめて重要な意味合いがあると思うので、時間があればそれについて十分掘り下げて検討をしていただきたかったのでありますが、あとでわが党の八木君もこの問題について触れると思います。  ただ申し上げたいことは、大正十一年の水平社の宣言以来、この解放運動というものがわが国において起って参りました。その過程においてもいろいろ変遷がありましたが、今日私どもが把握している限りにおいては、少くともこれは長い封建的な遺制として今日この部落が存在しておる。しかも貧困あるいは就職の障害、結婚の障害、社交上の障害、いろいろな形において現実に差別が残存をしているということ、従ってこの差別が残存をしているその根元を取り除くための施策が、わが国の民主化を推進するためのきわめて重要な意味合いを持って現われてくると思うのであります。そういう、立場で総合的な政策をわれわれは政府に望みたい。今まで同和教育ということで文部省がやったことは、たった一回の通牒とたった一冊の指導要領のシリーズであります。そういうような浅薄な手ぬるい対策でもっては、長い間の封建的遺制として残っているこの問題は解決いたしません。国内には数多くの困った人たちがあります。長い伝統から、いわれなき差別に苦しんでいるこれらの人々を救うためには、そこに的確な総合的な施策というものを建設大臣あるいは厚生大臣あるいは労働大臣等々、それぞれの所管にわたって樹立してもらわなければならぬ。今日そういう事態であろうと思います。そういった意味合いで、幸い閣議決定をしておるのでありますから、その線に立って推進をしてもらいたい。  ところが本年度の予算を見ますると、あと八木君から触れられますが、わずか厚生省所管の二億四千万円であります。隣保館、公衆浴場、こういった在来のものしか認められておらない。これと閣議決定の食い違いはおびただしい。全国三百万人の未解放部落の人たちはこの政府の施策に大きな失望を今日感じております。そういう点でもう少し深い認識を持ってこの問題に対処していただきたいということだけ希望して、詳細な点は他日に譲ることといたしまして私の質問を終ります。
  71. 江崎真澄

  72. 八木一男

    八木一男委員 私は今辻原君がお触れになりました部落問題について、これから副総理初め関係の各閣僚にお伺いをしたいと思うわけでございます。  日本の憲法では、社会的の身分による一切の差別を禁じておりますし、基本的人権の尊重をその根本精神としております。ところが今副総理も大蔵大臣も認められたように、差別が非常にあるという現状にございまして、三百万といわれ六千部落といわれる人々が、いわれのない差別で非常な苦しみを受けておられるわけでございます。この問題は非常に大事な問題でございまして、私どもは日本の全国民、与野党ともにこの問題の解決に当らなければならぬと思うわけでございます。私どもの属しております日本社会党では、真剣に取り組みまして部落政策の解決要綱というものを昨年の十月初旬に発表いたしました。幸いに政府の方も昨年十一月十二日の閣議で、この問題の推進に当る御決定をされたということを伺いまして、非常に喜んでおるわけでございます。そういう問題と取り組んでいただくのは非常にいいことだと思うわけでございますが、ほんとうに真剣に取り組んでいただきたいと思うわけでございます。その点についての御決意があるかどうか、一つ石井副総理から内閣を代表して御答弁を願いたいと思います。
  73. 石井光次郎

    石井国務大臣 この問題はさっきも申し上げましたように、昨年の秋の閣議に諮りまして、内閣といたしまして、政府といたしまして、できるだけ早い機会に、総合的な案をこしらえるように、総合的に施策をいろいろ進めていくような方向に進んでいきたいということで、私どもその熱意を持っておるわけでございます。  それでただいままでのところは、御承知のように厚生省においてこの問題を取り上げ、そして各省との関係は、厚生省における協議会において話し合いをいたしております。各省出てもらって話し合いをしておったのでありますが、総合的にもっと強力に進めるという問題になりますと、これは厚生大臣が非常な熱意を持っておられますから、今の厚生省の中にある協議会でも、私は進められると思いますけれども、さらに政府がこれに力を入れるという心持ちを強く現わす意味におきましても、厚生省でやっております協議会、あるいはそれをもう少し強力にいたしたものを、内閣に置くというようなことで進んだらどうだろうか、それはどういうふうな組織にするかということは、まだせっかく今研究中でありますが、その方に進みたいと思っております。
  74. 八木一男

    八木一男委員 部落問題というものは、いわゆる差別の問題といわれておるわけでございますが、差別と貧困は無関係ではございません。差別が貧困を生み、貧困が差別を払拭するのに非常な障害になっておる。かえって貧困のために昔ありましたような、形式的な差別の言辞を弄せられなくなりましたけれども、実際上にはそれが内訌いたしまして、より以上の差別を生んでおような状態でございます。この問題につきましては、東日本には現象が少くて、北海道にはほとんどありません。東北、関東にも薄い状態でございます。関西以東に薄いので、非常に政治に熱心な方でも、東日本の方はそういう問題は大した問題じゃないではないかという御意見の方がございます。おそらく人口の分布からいいますと、どの内閣にいたしましても、閣僚の半分は東日本から出る。その半分の人は大したことではないということで、問題推進が妨げられるおそれがあると思いますが、三百万人の人たちにとっては実に大へんな問題であります。その問題は日本国民全体の問題でございますから、そういうことをどの内閣になっても、みんな本腰で考えていただくようにしなければならないと思います。わが党の内閣になったらもちろんそうするつもりでございますが……。そういうことで貧困が差別を再生産しておるということについて、石井副総理に御認識があるかどうか。御理解の程度を教えていただきたいと思います。なければないとおっしゃってけっこうでございます。
  75. 石井光次郎

    石井国務大臣 私は福岡県でございますけれども、割合にこういう問題は身近かに接する機会が多いのでございます。そこの部落におられます方々が、仕事の関係もあります、またそこでほかから離れたような生活が長い間行われておりましたために、だれでもどんな仕事でも、その能力に応じて働ける今日の自由な経済組織のもとにおいても、非常に不幸な点があって、そういうように制限されておるということが事実上行われておると思います。これは総合的に解決しなければならない問題でありますが、この経済の面からいたしまして特に政府がやっていく問題は、授産場的なるものを設けるとか、あるいは職業のいろいろな広い指導の面で、地方の役所でもいろいろなことを考えておりますし、御本人たちもいろいろな方向に進みたいという問題等もありましょうけれども、こういうことについて、広い仕事の世界に出ていかれてそこに溶け込まれるように、そうして多くの人が仕事によって選択できるような状態にだんだん進んで参るように、私どもは目下推し進めるべきじゃないかと思っております。
  76. 八木一男

    八木一男委員 今の御答弁は、率直に、真剣に取り上げる気持で御答弁をいただいたと思います。その点は敬意を払うものでございますが、まだほんとうに差別と貧困の実態についての実感を持っておらないように思います。今貧乏の程度を簡単に例をもって申し上げますと、部落の人の中で大ぜいの人が生活保護を受けておるわけであります。生活保護を受けておられる人が部落の中に非常に多く、国全体の平均の数倍といった比率であります。また、その生活保護を毎年ずっと続けて受けておられる人がその六〇%もあるというような状態で、部落の人々の貧困の程度はおわかりかと思います。住宅の例で申しますと、四畳半に十三人住んでいるというような例がございます。六畳に七、八人というような例はざらでございます。そのようなことでも石井副総理の想像の及ばないくらいの貧困の程度があると思います。そういうような貧困から差別が再生産されてくる。今までこの問題に関心の薄い人は、そういう問題はもうないのじゃないかということを言われるわけであります。ところがそうではなしに、貧乏でそういう現象がふえてきておるというのは、そういうふうに狭いところに大ぜい住んでおられましたら、結局子供たちも勉強できない。また子供であるけれども、狭い部屋でおとなも子供もそんなに大ぜい住んでいたら、いろいろおとなびてくるという現象もございます。そういうことが結局未解放部落であるからというような差別の再生産の原因になっておるわけであります。現在大企業では就職の差別が実際上行われておる。たとえばこういうことがございます。大体部落では貧困でございますから高等学校、大学に行ける人は非常に少い。中学校で終る人が多い。しかもその中学校にも入れない人が多い。というのは、両親の手伝いをしていろいろの内職をしなければ家計がささえられないということがありますから、未就学児童が非常に多い。わずかに就学してもお父さんお母さんが両方働き、小学校の学童が赤ん坊のお守をしなければならないということのために長欠児童となる。そういうことでありますから、能力があり勉学に一生懸命であっても、成績は条件が悪いのですから悪くなることが多い。ところがその条件を乗り越えて一生懸命勉強して、中学校でほかの生徒よりも成績がいい子がたくさんございます。ところがその子が就職するときに、大企業では——官庁でもそういうところがあるのじゃないかと思いますが、大企業では表向きには申しませんけれども、親の身元引き受けの条件が悪いとか、そういうことではねてしまう。一生懸命勉強して成績がよくなって、からだも丈夫でその仕事に適当であるのに、そういうことではねてしまうという現象があります。そうなりますれば、まじめに苦難に耐えてやった者が入れないで、自分よりも成績が悪くて健康その他の条件の悪い者がどんどんいい会社にいくということになったら、今まで人間は平等であるという概念がいかに広まっておりましても、実際はそうではないということから、非常に虚無的になるというのは当然のことでございます。それはその子供の責任じゃない。ところが虚無的になれば、何かのときにいさかいをすれば声が荒くなるという現象が当然起ります。そういうことを見て、またそういうことになって、けんかをして問題を起してはいけないから近づくなとか、そっとしておけというようなことが起きている。そういうことが差別を再生産していって、差別の現象をふやしている。貧困が差別の現象をふやしているわけであります。ですから、ちっとやそっと人権教育をする、平等教育をする、民主主義国家だからこのままにしていけばだんだん直っていくという問題ではなしに、ほんとうに貧乏の根源を断つことをしなければならぬ。そうしてまた一方では人権教育をし、平等の概念を広める。そういう両面でやっていかなければならないのでありますが、どうも一般にこの問題に関心のある人が、これはただ観念上の問題であるというふうに認識しておられる方が多い。しかも閣僚の方々もそうではなかったかと思います。ただいまの石井さんの御答弁で、問題がそうじゃなくて経済の問題であるという御認識が、高まっておるように思われますことは非常に喜ばしいことでありますが、その問題についても、ほんとうに突き詰めてそこまで考えておられるかどうか少し疑わしいと思うわけであります。どうかその認識を高めていただいて、ほんとうに突き詰めてこの差別の根源である貧乏、差別を再生産されておる貧乏を直すつもりでやっていかれる御決意があるかどうか、もう一回伺わせていただきたいと思います。
  77. 石井光次郎

    石井国務大臣 この問題につきまして、さっき仕事を与えるための問題の話をしたのでありますが、仕事だけの問題ではなくて、ただいまお話がありましたように、住宅の問題、あるいは衛生の問題、学校の問題いろいろな問題が集まって、そうしてその結果それがうまくいって、みんなの仕事のバラエティも出てその仕事につく率も大きくなってくるということで、だんだん貧乏追放がそこに出てくると思います。何か一つの仕事を与えるといっても、今お話のように、そういう仕事において身元引受人が悪いとかなんとかいう問題がいろいろ起ってくるでありましょう。しかし生活環境すべてを総合して今よりよい状態に持っていってそうしてその人たちも何らほかに卑下するところがなく、よくできるのだ、そうしてほかの人から何も言われるものがないという自信も持ち、世間もそれを尊敬するというようなところまでいかなければ、私は解決せぬと思います。それで私ども先ほどから申しておる総合的な問題をいろいろ相談しようじゃないかというのも、そこからくるわけであります。
  78. 八木一男

    八木一男委員 世の中にこの部落問題が昨年の秋からいろいろと新聞、雑誌で報道されておる。この問題を論議されておる形が方々に広まっておるわけであります。そこで、よく、眠った子供を起すなというようなことを言う人がございます。それを起さない方がよいのじゃないかというようなことを言う人がございますが、それについては石井先生のお考えを伺わなくてもよいのでありますが、聞いていただきたいことは、眠った子を起すなと言われる人は、これは部落民の中では、いろいろと自分の御努力にもより、いろいろな幸運も手伝って、社会的にあるいはまた経済的に進出された人で、あまり差別を受けておらない。だんだんこの状態ならば直ってくるであろうというようなことを考えられて、そうして眠った子を起さなくてもよいのじゃないかというお考えを持っておられると私どもは認識をいたします。それからまた、そういう社会的、経済的に進出された部落出身の人につき合っておる一般民の人、この人たちはまたそういう現象を見ておりますから、自分は差別概念を持っておらない、あの人とは心からつき合っておる、一緒に協力して仕事をやっておる、だからわれわれの間ではそういう問題はないのだ、だからそういう問題は起さなくてもよいじゃないか、そういう問題で眠れる子を起すようなことを言わなくてもよいのじゃないか、もうすぐ解消する問題ではないかというふうに思われておる方があります。ところがそのような部落問題は、かような社会的に進出した人々の問題ではなしに、その人々とつき合っておる一般民の問題ではなしに、そこに進出できなかった大ぜいの人の問題なんです。部落民三百万人という中には非常に有能な人がたくさん出ておりまして、進出された方もございます。しかしやはりその九割以上の人は猛烈な貧困の中にある。その貧困の問題を解決しなければ、この問題は長く続いてなかなか根本解決ができません。そういうことのために、私どもはこの問題を大きく取り上げて——別に眠った子を起すような言辞を弄する必要はないけれども、政府がほんとうに取り組んでいただけばそう言わなくてもいいのですけれども、取り組んでいただくためには大きく叫び、またこういうことを何回も繰り返し申し上げなければならない。だけれども、ほんとうに政策に載せて、貧困を根絶する政策に載れば、無理にそういうことを言う必要はないのだろうけれども、やられるまでは言い続けなければならないと思うのです。石井さんのお考えも同じであるかどうか、それを一つ伺いたいと思います。
  79. 石井光次郎

    石井国務大臣 私どもがどういう形かにおいて政府に総合的な施策のための協議会を設けようということは表向きに取り上げることにもなるわけでございます。私どもはそれの影響するところは十分に注意しなければならぬと思いますが、陰でこそこそとやる必要もないと思います。またそれを誇張する必要もないというつもりで、じっくりとこの問題と取り組みたいと考えております。
  80. 八木一男

    八木一男委員 副総理は、今の部落民の貧困の状態がどういうところから来ているかという御認識、ございましたら一つ教えていただきたいと思います。
  81. 石井光次郎

    石井国務大臣 さっきもちらっと触れましたが、これは長い歴史のもとに仕事の分野というものが非常に局限されておる。そうして、その仕事に多くの人が全部働けるならよろしいのでありますが、それがない。ほかの方においては、実際上の問題として、理屈ではもうそんな差別なんかないのでありますが、さっきお話のような点もいろいろあるでございましょう。それで生活ができない人が多くなっておるということでございまして、こういう人たちがやはり仕事につけるようにするには、さっきのようないろいろな総合施策によってその人たちの発展進出を待って、われわれが世の中に出ることをお手伝いするという線で、だんだん生活をよくしていきたい、こういうふうに思います。
  82. 八木一男

    八木一男委員 今の結論のお話は、大体その趣旨で私どもは満足でございますけれども、そういう筋でいいのですけれども、その程度を非常に急速に強力にやっていかなければならぬと思うのです。  その場合の、貧困の原因について、簡単に私たちの考え方を申し上げて御理解をしていただきたいと思う。今の部落問題の根源がどうであるかということはいろいろと学者に説がございます。しかし、その中の一番おもなものは、宗教起源説というようなものでございまして、たとえば、牛、馬の屠殺をして製革とかそういうことをやっていられた人々に対しまして、仏教思想が入ってきまして、殺生戒を犯すということは非常に罪が深いのだということも一つの原因であるといわれておりますし、またそのほかの原因もたくさんあって、複雑混淆してはっきりわからない状態にございますけれども、大体はっきりわかりますることは、戦国時代には実力時代になってそういうことがだんだん薄れて参っておったのです。ところが、徳川時代からそれがさらにひどくなった。徳川時代に、徳川家康の末期と秀忠の最初のころに、ほんとうに実際的の政治をやったのは本多正信でございますが、本多正信が、徳川幕府をささえるために、一番多くの大衆でございます日本の農民を収奪して、その権力をささえようといたしました。百姓をして食わしむべからず飢えしむべからずという方針で、百姓から収奪をしようとした。その代償として農民に非常に高い名目的な地位を与えて、そうしてその収奪を容易にしようとした。士農工商という階級がそれでございます。士農工商の下に、えた、非人という階級を置いて、さらに百姓の名誉心だけをおおって、その不満を押えて、ぎりぎりの線までしぼり取ろう、それがありましたために非常にその差別がひどくなった。そうして、そのときに、えた非人と呼ばれた人たちは、人間扱いされなかったわけです。  そういうような状態で、今の観念的な差別の大きな強い原因は徳川時代から始まっておる。ところが、徳川時代には別にましなことがあった。というのは、斃獣処理権という独占権がございました。牛や馬が死ぬと、馬の主人である武士も、牛の持主である農民も、それの処理ができない。近くの部落に通報して、その処理は未解放の部落の者が全部処理した。製革なりそういうことをやった。それだから非常に身分的に差別された。人間扱いされなかったけれども、そういうような独占産業によって生活はやや保障されておった。こういう例がございます。和歌山藩のいろいろの通達に、近ごろえたども風儀よろしからず、百姓、町人どもとまぎらわしき風体をし、というような文言がございます。そのときは結局農民や商人と同じような服装をするだけの経済力がある程度あったわけです。経済力はあったけれども、身分的差別で、そういうことをしてはいけない、明らかに百姓や町人と違う服装をしなければならない、一緒に同火同席相まかりならぬというような非常な身分的差別があった。ところが、一方、生活はそういうことである程度ささえられておった。ところが、明治の解放になって万民が平等になりました。非常によいことでございますが、そのときの処置が悪かったために、部落の人は今までより以上に貧困になった。明治の解放で身分制度がなくなって、その影響を受けた人は何かというと、まず武士階級でございます。武士階級はどういう処置を受けたか、二億一千万円の秩禄公債というものがあのとき発行されました。現在の貨幣価値に換算すると、最小に見て四千億円に達すると思います。かような金が武士階級に分けられた。そうして、土地を買って大きな農民になることも、あるいは自分で商売するという道も開かれておった。そうしてまた、新しい開墾地を開くためにも非常な便宜が与えられておった。ですから、武士階級はそういうふうに経済的にあとの立つ道があるように保障されておった。ところが、部落民の方は経済的特権がそこで奪われた。職業は自由になりましたから、強い者は勝ってきます。製革とか屠殺というものは全部ほかの方に移った。現在の屠殺業は地方自治体で公営でやっておるのが九割以上だ。製革もそうです。明治製革とか日本皮革とかいう大企業が全部これを押えておって、そういうものもだめになった。それならば、部落民がほかの方に、たとえば農民になる道、実業家になる道が開かれておったらそれでいいのですけれども、それが閉されておった。明治の部落解放では、部落の人に土地を与えるような処置は何もとられていない。しかも、今まで入れた山林の入会権すらそのとき締め出されてしまったというようなことがございます。農業地帯に住んでおる部落民は、入会権は締め出されて、土地は与えられないというようなことで、農民として立つ道が与えられない。といって、商売人になろうかと都会に出てくるが、都会に出ていったら、まだ身分的差別は太政官布告で消えておりません。御承知通り、位階があった。また、華族がある。士族というものがある。それで平民がある。平民でありながら新平民というような名前で呼ばれておる。そういうわけですから、なかなか家を貸してくれない。就職に行ってもほかの人を雇う。その人を雇ってくれない。商売をしようと思っても、一緒にやろうとしてくれない。おまけに、そう初めから金持でありませんから、資本を持っておりません。ですから、商売人として立つ道も実際上ふさがれておった。労働者として、サラリーマンとして出る道、また官吏になる道も実際上ふさがれておった。ですから、今までの特権が奪われて、そうして、身分的差別は、士農工商でなく、士族とか華族とか、そういうもののために、また依然としてそれの反対の者として観念的に蔑視を受けておる。それで生活の特権も奪われた。明治解放からかえって悪くなった。その状態がずっと続いてきました。それで、資本主義が発展してきましたけれども、そういう状態ですから、部落民は半永久失業者。そういう半永久失業者があることは、資本主義にとっては非常に工合のいいことです。就業労働者を低賃金に押えるために、失業者がいつでもかわりがあるといえば押えやすい。そういうことですから、明治以後の政府は全然この問題についてはほったらかしてずっときました。ところが、米騒動のときに、あの大事件のときに、貧困な部落民は一番しわ寄せを受けて、たまりかねて立ち上りました。米騒動のときにそれで問題が大きくなりました。その後差別撤廃を推進する団体の全国水平社というものが結成されました。そういう状況で、今度は政府の方では改善事業ということで少しいろいろのことを取り上げられたわけでございますが、戦争でつぶれてしまって、その後そのまま放置の形です。今度それでは終戦後の改革でどうなったか。農地解放が行われました。しかし、農地解放は、小作権をたくさん持っておるものでなければそれを与えるような処置をとらなかった。部落の農民は、手伝いという形で小作権を持っていなかった人が多いのです。小作権を持っていても、ちょっとしか持っていなかった。ですから、農地解放の恩恵にほとんどあずかっていない。日本全体が零細農でございますから反別は少い。だけれども、部落の農民の持っている反別の平均は四反歩。関東の方は割にいい。五反、六反というところがございますが、関西以西になると、持っている者でも二反から二反半というような耕地しか持っておりません。しかも、その耕地が、あとから苦心惨たんして手に入れた耕地ですから、悪いところです。川のすぐそばで、はんらんがあると流れてしまう、山の上で交通不便である、土地がやせている、日陰が多いというようなところで、同じ二反でも普通の熟田の二反とは全然違うところです。耕作の条件でも、耕地へ行こうとしても、こっちに離れ、あっちに離れて、日に片一方の一反歩から片一方の二反歩に行くのに一里も歩かなければならないというふうに離れたところに土地を獲得している。そういうような状態です。ですから、農民としても立っていきにくいわけです。それで、おまけに、世の中がずいぶん進歩したはずなのに、今言ったように、労働者として生活していこうとすれば、大企業は実質的な差別をして雇ってくれない。もちろん、貧乏だから、高等学校、大学に行って、いい条件で就職をするというようなことはほとんどできない。そういう状態だから、非常に貧困なわけです。商売人では、さっきも繰り返し申しましたけれども、進出しておる人もございますけれども、大部分は進出をしていない。部落産業はどんどんとだめになってきておる。製革やそれから皮革はみな大企業にとられておる。そのほかのもう一つの特殊産業であるはきもの、げた産業とか鼻緒産業は、生活様式が変りましたので、げたも鼻緒も需要が減っております。そういうことでだめになっている。それで貧困の度がますます加わっておる。それで、生活保護をそれだけたくさん受けるとか、四畳半に十三人も住まなければならないというような条件になっておる。  これを解決するには、——石井さんはほんとうに良心的に言っておられることはわかります。また岸さんも良心的に閣議できめられたこともわかりますけれども、その決心の度合いです。度合いが、ちょっとやっておけばいいだろうというような度合いでなく、本腰に決心を固めてやっていただかなければならないことです。これは部落民の問題じゃなしに日本国民の問題です。何百万人の人が何百年間人間らしい扱いを受けておらなかったということは、差別を受けた人にとっても、差別をした人にとっても重大な問題です。われわれの先祖が差別をしたならば、その先祖のことを考えましたならば、われわれはそれを今からおくればせでも解決するために全力をあげてやらなければならない。これは岸内閣の責任とは言いません。明治以降のすべての内閣の責任であります。そうして、これから後のすべての内閣が取っ組んで、どのようにむずかしくても、できるだけ早く解決しなければならない問題でございます。部落民にとっては、これを早く解決するようにいろいろなことをしてくれというのは、これは権利であって、政府としてはそれをやるのは義務の問題であると思うのでございます。その点について石井さんのお考えを承わりたいと思います。
  83. 石井光次郎

    石井国務大臣 詳しいお話をいろいろ承わって、私もすべて同感の心持をもって承わりました。さっきから申し述べますように、政府のこれに対する心持はしっかりときまっております。ものの順序がありますので、急激にどうということが——このくらいなことではいかぬじゃないかと言われることもいろいろ出てくるかもわからぬと思いますけれども、これを少しずつでも早くしていく、よくなしていくというように私どもは努力するために協議会等も開きたいと思います。
  84. 八木一男

    八木一男委員 石井さんの御誠意はわかりますけれども、実は、十一月十二日に閣議決定をされて、非常に期待を持っております。予算編成は各省で毎年六、七月のころから準備を始められるというわけで、十一月十二日にそういうことをやられても、各省の予算の組み立てがほんとうは間に合わなければいけないけれども、実際上今の状態では間に合いにくいということは私どもはわかっております。しかし、各省がその問題を取り上げられるまでに組まれた予算、それが、そういう御決心であれば、少くとも全額通るべきだと思った。ところが、そうじゃなくて、大なたをふるわれております。この部落関係の予算が出たのは何かと申しますと、三つの省しか今度は出ておりません。厚生省と建設省と文部省。厚生省は一億一千万円ぐらいの要求をしておられます。これを大蔵省は大なたをふるわれました。いろいろの御努力があって、少しまた復活はいたしましたけれども、約二千四百九十万円というような予算を組んでおられる。昨年度より一千万円ほどふえております。これが、すでに閣議で御決定になったそれを実行するという良心の発露かと思いますが、一千万円厚生省関係でふえております。次に、建設省関係で約二十億の予算を出しておられるのに、三億七千万円にこれが削られております。それから、文部省関係の五百五十万円ほどの要求は全部削除されております。ほんとうに取っ組まれるならば、意地の悪いことは申しませんけれども、ほんとうに来年度の予算ではこの問題を解決するために各省で本腰を入れて予算を組まれなければならない。それを大蔵省でなたをふるわれるようなことをしてはいけない。ところが、そういう準備のないごくわずかなものですから、大蔵省は削っておられる。先ほどの大蔵大臣辻原君に対する答弁は認識がまだ十分でないということを現わしておられますけれども、これは、大蔵大臣が何と言われましょうとも、内閣で取り上げられるときまった以上は、内閣総理大臣なり副総理なりがそのつもりで、財政的な点で大蔵大臣あるいはまた大蔵省の主計官の諸君がいくら言われましても、その中でこういう内閣の方針だということで、削ったりするようなことのないようにしていただかなければならないと思いますが、副総理の御決意を一つ伺っておきたいと思います。
  85. 石井光次郎

    石井国務大臣 この問題に限らず、私どもがやりたいと思う問題はたくさんありまして、それには各省大臣が熱意を込めて予算はいつでも組んでおるわけでございますが、いつも話の出ますように、思う存分やるだけの財源がないということがいつも最後の答えになって、逃げ口上になる形になるのでございます。この問題につきましても、みんなそういうふうな話し合いをいたしまして、何とかして少しでも前進するという心持でやったわけでございますが、結果は、まだまだ、そう査定されました大蔵大臣もおそらく不満な予算だと思うのでございます。これらの問題につきまして、どれからどういうふうに進んでいってどういうふうな順序でやっていくとかいうふうな総合的な意味でいろいろ話し合いをこれからまた進めていく。これは、さっきおっしゃったように、一年、二年の問題で解決する問題では私はないと思います。長い目で解決しなければならぬ大きな問題でありますから、そのつもりで根強く話し合いを続けていきたいと思います。
  86. 八木一男

    八木一男委員 実は、大正年間にこの問題が取り上げられたわけでございます。地方改善事業費という名前で取り上げられました。最初に大正九年では年額五万円出ました。それから、大正十一年から五十万円に増大をいたしました。昭和十年から融和事業完成十ヵ年計画というものが行われました。それは、一年に五百万、十カ年で五千万円という計画ができて、戦争の途中でつぶれたわけでございますが、その当時の金でございますから、今換算いたしますと、一年で約二十億、それから十カ年で二百億というくらいに当ると思います。これは環境改善の部門でございまして、それで隣保館を作るとか共同浴場を作るとか、あるいは道をよくするとか住宅を改善するとかいうような部類のものでございます。その範囲のことで大正年間にこれだけの予算が組まれております。ところが、それから全然放置されておる。ほんとうにこれから取っ組まれる場合に、大正年間に組まれたものを、やはりそれ以上のことをしていただかなければならないわけでございます。それをはるかにオーバーしたもので考えていただかなければならないと思うわけでございます。しかも、大正年間は、これは環境の改善に関係のある部門だけがおもに取り上げられております。しかし、先ほど申し上げたことで副総理も御理解いただいたと思いまするが、根本の解決は、環境の改善はもちろん大事でございまするが、生活の根源を作る問題、この問題が大事でございます。その問題にも大きく取っ組んでいただかなければならない問題でございます。生活の根源を作るためには、ほかの貧乏な人たち、ほかの職業のない人たちと同じやり方でやっていただいて、もちろんけっこうなんです。けっこうなんですけれども、そういう人が、たとえば関西の何々県には多い、たとえば九州の何々県では多いということを配慮の中に入れて、そういう予算を組んでいただかなければならないのです。しかし、その問題で逆に一般民が差別を受けるような特別なことを法律でまでしていただこうとは考えておりませんけれども、確かにそういうところは一般の貧困の階層よりも貧困の程度が多い。それから、部落地区が多いところはそういう貧困な人が多いわけでございます。ところが、いろいろな予算の配分や何かを見ますると、画一的に、人口割とか面積割とか、今までのいろいろな配分の基準に比率をかけて行われるわけです。それではこの問題の解決にならない。といって、今の貧乏をなくす政策は非常に乏しいですけれども、その政策の中に部落の問題を取り上げたためにほかへ食い込んでしまって、ほかの人の分が少くなるのではいけない。そういう貧乏追放政策に、部落の問題が今まで忘れられてきた、それを取り上げるのですから、それだけのワクをふやすということで、貧乏解決のいろいろな政策を大きなワクでやる。そうして、その配分は、そういう貧乏な人の多いところにたくさん配分をする。従って、貧乏な人が多い部落に多くの配分がくるというような方式を考えていただく必要があると思う。今のワクを同じにしておいて、部落対策をやるのだから配分をこっちへ多くすると言ったら、全体がふえなければ片方が減る。こういうことではいけない。そういう現象が起らないように、貧乏追放政策にたくさんの金を出さなければいけない。しかも、その配分が画一的なものじゃなしに、実質的に貧乏な人の多いところに行くような配分をなしていただきたい。そういうような方針でそのことを考えていただく必要があると思いますが、この点について石井さんのお考えを伺いたい。
  87. 石井光次郎

    石井国務大臣 これは、今日ここで大蔵大臣初め関係の閣僚方もあなたのお話を聞いております。そういう心持でいろいろ扱うべきだと思いますが、これは実際これから先のいろいろな問題に総合的な研究を進め、今のような御趣旨も頭に入れながら研究を続けていきたいと思います。
  88. 江崎真澄

    江崎委員長 八木君に申し上げますが、だんだん申し合せの時が迫っておりますし、あなたの要求の大臣もそろっておりますから、どうぞ論旨をお進め願います。
  89. 八木一男

    八木一男委員 一時十五分過ぎまででやめます。  次に、大蔵大臣にお伺いをしたいわけでございますが、ただいま大蔵大臣初め各大臣に並んで聞いていただいて、非常に失礼な状態でございまするが、各省に関係のあることで、総括的にあとで副総理にお伺いをすることがございますが、ただいま石井さんに申し上げたことも、一万田さん初めほかの方々にも同じように申し上げたつもりでございます。石井さんがおっしゃったような考え方で大蔵省としても一つ積極的に坂っ組んでいただきたいと思いまするので、大蔵大臣一つ……。
  90. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いろいろお話を承わりまして、感銘もいたしておりますが、政府としましても、この同和の事業につきましては、厚生省に対策協議会を置きまして、各省とも緊密な連絡を取りまして、総合的に施策を進めることにいたしておることは御承知通りであります。大蔵省としても、予算編成に当りまして、同和の事業につきましては決して粗末に扱っておるわけではございません。できるだけ力をいたしたいと考えておるわけでございまして、来年度、三十三年の予算におきましても、先ほど御質問がありましたように、むろん御満足を受けるというわけにもいきますまいが、これは他の歳出との関係もありまして思うようにいかないわけでございますが、それにしても、厚生省の予算で隣保館や共同浴場等について昨年度よりは一千万円はふやしております。なお、建設省におきまして、不良住宅の改良事業費につきまして、昨年と比べると、昨年度が二億五千万円程度だったと思いますが、おおよそこの倍、また戸数にしますと、昨年六百戸三十三年度は千百戸、そういうふうにふやしております。そのほか、労働省の関係におきましても、諸般の情勢も勘案しまして失業対策費をふやしておる。こういうふうに、できるだけ各省にまたがりまして総合的に対策を立てておるわけでございます。なお、お話しの趣旨も十分了承いたしておりますので、今後とも努力をいたしたいと考えております。
  91. 八木一男

    八木一男委員 大蔵大臣には各委員会で同僚または自民党のこの問題に熱心な方々からいろいろとお話を申し上げ、また各省大臣も熱心に取っ組んでいただいて、本年度の予算をどう変えるか、来年度の予算をどう組むかということを要請することにうまくいけばなると思います。そのときに、今申し上げたことを頭に入れておいていただいて、今まで大蔵大臣——率直に申し上げますと大蔵大臣だけじゃありません。この問題に対する御認識は高くなかったと思います。この認識を頭の中にしっかり入れていただいて、一般的にふわっと考えないで真剣に取っ組むようにお願いいたしたいと思います。総括的に大蔵大臣に申し上げたいことは——各省にまたがっておりますから、全部言えば十五時間くらいかかります。それを五分間で要約いたしますので、よくお聞きを願いたいと思います。  まず第一に、三つほどに分けて考えますと、今までやったことは環境改善の部門が多い。これは、今申し上げましたように、住宅も非常にひどい、トラホームも多い、いろいろな状態にございますから、隣保館を建てるなり共同浴場を建てるなり、住宅改善をするなり道をよくするなり、今まで細々やられたことは大幅に広げていただかなければならない。これはおもに厚生省、建設省の関係でございます。それは当面すぐたくさんふやしていただかなければならない問題でございます。また、それは地方でもやっております。地方自治庁の方で今後必ずいろいろな要望があると思いますが、その点についての御配慮もぜひお願いしたいと思うのでございます。  次には生活の問題に入るわけであります。生活の問題に入りますと、いろいろの問題がございます。当面の生活問題ということになりますと、零細農の問題であるとか、零細企業の問題であるとか、あるいは労働省関係の失業対策の問題であるとかいう問題が大きくこれに関連をしてくるわけでございます。農林省からも、労働省からも、あるいは通産省からも御要求をしていただくように、自民党の熱心な方々と御一緒に社会党のわれわれがいろいろとお話をしたいと思うのですけれども、そういうお話がありましたときに、今のような理解を進めて、環境改善の問題だけではなく、生活の問題が根本的に大事であるという考え方でこの問題を受け入れていただきたいと思います。生活の問題も、今の失業対策の問題であるとか、あるいは零細農の問題であるとか、零細企業者の問題であるとか、そういう問題だけではなしに、もっと積極的に、そういうものを直す、貧乏を直すという政策に移らなければならない。それにすぐ取っ組まなければならない。それは岸内閣の貧乏追放を掲げられた公約と一致しているはのずものであります。それには、将来に無醵出の年金を作るとか、あるいは完全雇用を進めるとか、あるいは医療保障を完全にするとかいう問題とも関連してきます。あるいは義務教育の問題とか、ほんとうに貧困で有能な人がどんどん上の学校に行くようになり、あるいは上の学校に行かないで義務教育で終る人が就職できるようにしなければならないという問題、あるいは、学校のことでは貧乏のために勉強が妨げられるような未就学児童や長欠児童をなくする問題も考えなければならない。学校に行くのは教科書がないからいやだというようなことのないために教科書を無料配付するとか、あるいは給食の問題を全部片づけて、貧困の部落の子供が隣りの子供よりもいいおかずが食べられないかと、あるいは給食費について父兄が負担にたえないとか、そういう問題も関係してきます。ありとあらゆる問題が関係して参りますので、ここで五、六分でいかに有能な大蔵大臣でも頭にたたき込んでいただくことは無理だと思いますから、逐次どんどんと申し上げますので、これを解決するという観点で財政的な受け入れをしていただきたいと思う。それについて総括的な御答弁を伺いたいと思います。
  92. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 申すまでもなく、政治の目的は、一口に言えば貧乏の追放である。これさえなしとげれば、私は、政治はうまくいっておる、こういうふうに言っていいと思います。また、貧乏のうちで、特別な環境から生ずるとすれば、それに対応した施策を講ずることも当然のことであります。いろいろと御注意がございましたので、よく拝聴いたしまして、今後十分参考にいたしまして努力をいたします。
  93. 八木一男

    八木一男委員 次に労働大臣にお伺いをいたします。  今一番当面の問題といたしますると、失業対策事業の問題でございます。失業対策事業に働いている人の中で、関西以西では、その大部分が未解放部落の出身の人たちなんです。失業対策事業のいろいろの法の制定当時のことを考えると、今政府なり労働大臣なりは、摩擦失業のためにやっているというお考えが、半分か一部か知りませんけれども、まだあると思う。ところが、法の形式的なことは別といたしまして、半永久的な潜在失業者が関西以西の部落地区に多く残っているわけです。そういう問題になりますと、失業対策事業ということを法的な形式的な概念でやるんじゃなしに、半永久的な失業者がどうして暮らせるかということに、失業対策事業が非常に大きな関係があるわけでございます。そういう点で、失業対策事業のワクを広げることも、賃金を上げることも、いろいろの条件、たとえば適格要件をやめるというような問題について考えることもやっていただかなくてはなりません。本問題を解決するための現在の具体的な一つの焦点に失業対策問題がなっているのでございますから、失業対策事業を観念的に形式的に考えられないので、部落問題解決の一環としてじっくりとお考えいただいて、ワクを広げるとか、あるいは賃金を上げるとか、問題を一つ推進していただきたいと思いますが、その点について労働大臣の御意見を承わりたい。
  94. 石田博英

    ○石田国務大臣 部落問題解決の根本は、貧困の追放である、これは全く私もそういうふうに認識をいたしております。従って、さしあたって、私どもの方でやっております失業対策事業の実施につきましては、失業の多発地帯あるいは特殊地帯について、現状に合うような処置を講じて参りたいと考えております。  それから、固定されてきております状態を少しでも緩和いたしますために、技術の付与、半日訓練というものが、今まではどうも、東京、長野、岡山と、全般的ではなかったのであります。特に今八木さん御指摘の対象地にはあまり行われていなかったのでありますが、本年度からはそういう点につきましても実施面において特別の配慮をいたしたいと存じます。ただ、各県におきまして実際上奨励措置をとっておっても、なかなか所期のように応募者がうまくいかないという事情も方々にありますので、それの改善のためにはこの訓練種目に考慮を払うとか、あるいは訓練を受ける条件の整備をするとか、配備もいたしたいと思っておる次第でございます。
  95. 八木一男

    八木一男委員 そういう御配慮で進んでいただくのは非常にけっこうだと思います。先ほど申し上げましたように、貧困な状態が非常に多いから、失業対策事業に働かなければならない人が多い。ですから、一般的失対を拡大強化するとともに、部落の失業者の分だけ分量がふえるということを頭に入れていただいて、失業対策事業の拡大をしていただいて、そうして拡大をしたあとで配分をうまくしていただくように、先ほど申し上げましたようにお考えをぜひいただきたいと思います。  それから、もう一つ、臨時工と社外工の問題でございます。たとえば、神戸地区を例にとりますと、社外工の六割方は部落民でございます。非常に劣悪な労働条件で搾取をされているという状況でございます。臨時工、社外工の問題のために、立法措置を考えるなり行政上の指導をするなり、そういうことはぜひしていただきたいと思います。  それから、もう一つは、大企業などで採用のときに差別がございます。そういう状態は、労働教育、ことに雇用問題の労働教育上で、特に資本家を教育をしていただきたいと思います。そういうことがあってはならないということを教育していただきたい。  それから、もう一つ、これは副総理と両方にお願いしなければならないが、官公庁ではそういうことは一般の民間産業より少いと思うけれども、官庁関係でも絶無と言えないと思う。そういうような採用に当って不平等のないように御配慮いただきたいと思いますが、時間もありませんので、御熱意だけを披瀝していただければ非常にありがたいと思います。
  96. 石田博英

    ○石田国務大臣 社外工、臨時工の問題につきましては、私は就任以来この処理、保護について研究を命じております。しかし、御承知通り、なかなかむずかしい問題でありまして、今直ちに立法措置ができるかどうか、具体策の点で非常に苦慮いたしております。しかし、ぜひ当然処理しなければならない。部落民の問題だけでなく、非常に劣悪な条件にある勤労者の生活を守る建前から申しましても、考慮しなければならぬ問題だと考えておる次第でございます。それから、雇用者の場合において、その人の出生によって差別をつけるというようなことが事実でありますならば、これは憲法上からも非常に問題としなければならないことであります。実情はおそらく表面上そういうものが出ないようにやっているだろうと思いますが、結局は先ほどお話しのような労働教育の普及によって、雇用者の自覚を促して参らなければならぬと思います。本年度の予算で計上され、かつ特別の立法をいたしまして提案をいたしております労働協会の活動にも、そういう面で期待をすべきであろうと思っておる次第であります。
  97. 八木一男

    八木一男委員 労働大臣にさらに、今時間の関係がありますから、私の要望だけ申し上げておきますが、この問題の根本的な解決は完全雇用です。完全雇用が一ぺんにいくとは思いませんけれども、雇用の増大を一生懸命に進めていただいて、完全雇用に持っていっていただかなければならぬ。完全雇用の問題については、自由民主党の考え方、岸内閣の考え方と、社党の考え方はいささか違いますが、そういう点はきょうは省きまして、とにかく、雇用の増大を急速に進めていたいて、完全雇用に近づけていただかなければなりません。そうでなければほんとうの根本解決はございませんので、この問題の推進のために特に御努力を願いたい。これは御答弁は要りませんけれども、一つお願いしたいと思います。  次に文部大臣にお伺いいたしたいと思います。  今申し上げた以外に、同和教育の推進ということが非常に大事な問題でございます。そういう教育を、今までの概念でなしに、もっとこの問題に根本的に取っ組んで、さっとなでておけばいいというのじゃなしに、ほんとうに取っ組んで、ほんとうに差別待遇がなくなるような御研究をしていただいて、そういうような教育上の配慮をぜひ願いたい。先ほど辻原委員が述べられましたように、文部省から二回通達が出ておりますけれども、守られておりませんし、通達自体もずさんなものです。この問題については文部委員会でとっくり意見を申し上げます。また文部省の御意見も伺いますが、ぜひこの問題について総括的に、熱意を持って当るという御返事を願いたいと思う。  もう一つ、未就学児童の問題、長欠児童の問題の解決のために強力にやっていただきたい。特に、教科書の無償配給、給食の全部の解決の問題あるいは父兄負担を絶無にする。部落の父兄は父兄負担ができない。そのために子供が肩身の狭い思いをするということは非常に害になっておりますので、そういうことのないように。それから部落民がもし能力があればどんどん高等学校、大学校にいけるようなことを考えていただかなければならないと思いますが、文部省でもいろいろとお考えのことはわかっておりますが、一つこの問題を今よりも数倍の勢いで取っ組んでいただくようにお願いしたいと思う。総括的に御答弁をいただければけっこうです。
  98. 松永東

    ○松永国務大臣 ただいまの八木君のお説、まことにごもっともであります。ふだんから私は同様の考えを持っております。もちろん憲法上国民は平等であり、基本的人権を尊重しなければならぬことは当然のことであります。一体今ごろそうした差別待遇とかなんとかいうことが議論になるということが実におかしい、不思議に考えられるくらいです。しかし御指摘になりましたような点があることを耳にいたしております。従ってそうした差別待遇が全然ないように一つ根本からそれを払拭していきたいというように考えております。  さらに先ほど来承わっておりますと、相当貧困な人々が多いようであります。こういう人々の家庭に対しましては、未就学の児童等についてもいろいろ研究を要する問題がある。これはひとり文部省だけの考え方ではいきません。社会保障等の問題も関連いたしております。関係当局とよく協議をいたしまして善処するつもりでございます。  最後に、意見をお尋ねになりました育英事業の問題、すなわち家貧なるがために、せっかくのいい頭脳を持っておりながら進学の気持があってもそれを達成することができないような子供、これを何とかしなければならぬと存じまして、今日まで御承知通り育英法によって救済はいたしておりましたが、それだけでは足りません。従って進学保障制度法を設けまして、この国会に提出いたすつもりでございます。すでに原案を得まして御協賛を仰ぐようになっております。それは要するに、どんな貧乏なうちに生まれても、どんな家柄であろうとも、そんなことはとんちゃくいたしません。優秀な青年を国家が手を差し伸べて、あらかじめ中学校の時代からすなわち進学させるという保障制度を作りまして、そうして希望に燃えながら勉学にいそしむ、こういうことにしたいと存じておる次第でございます。
  99. 八木一男

    八木一男委員 文部大臣にまだまだ申し上げたいことはございまするが、文部委員会でさらに申し上げたいと思います。特に一つだけ、御答弁は要らないのですけれども、お願いしたいことは、中学校の卒業生が就職できないことが非常に害になっております。これはどこの官庁に属するか、文部に属するか、労働に属するか、自治庁に属するか、研究を要しますけれども、とにかくそういうことで中学校の卒業の際に学校が就職の世話をできるように、特段の御配慮を一つ願いたいと思います。  次に郡さんに簡単に伺います。非常にお待ちいただいて恐縮でございますが、なお副総理に重大な問題で申し上げる点がございますので、恐縮でございますが、簡潔な御答弁でけっこうです。それは地方の方で具体的にやらなければならない問題が非常に多いわけです。また現にやっている府県もあるわけです。やっている府県は、その問題に一生懸命取っ組んでいるために、財政上も非常に負担を感じているわけです。そういうことで隘路があるわけです。それを一つ自治庁の御配慮によって——たとえば交付税の問題も配慮の中に当然入ってないのです。それから起債の問題にしても、金融の問題は大蔵大臣にお伺いしなければならないけれども、そういう問題で地方の行政官庁が取っ組もうと思っても、金の問題で頭がぶつかっている問題が非常に多いのです。ぜひこれを頭に入れていただいて、金の問題で地方が取っ組む意欲が阻害されないように一つお願いしたい。市町村の場合ですと、部落民は貧困階層が多いから部落地区の多い市町村は税収入が少い。税収入が少いところがこの問題解決のため財政支出をしなければならない、二重に財政問題になってくる。この問題が今までのいろいろな地方財政計画にはほんとうには入っていなかったと思う。それを一つ頭に入れてそういうことをやっていただくようにお願いしたいと思います。一つ総括的に御答弁をお願いしたいと思います。
  100. 郡祐一

    ○郡国務大臣 府県や市町村が非常に熱意を持ってこのことに当りますことは大へん大事なことでありまして、実は特別交付税の中にも一億数千万円昨年も入れたつもりでおりますので、本年はこれをもう少し見ることにいたし、また市町村の合併促進等に要する経費もそうした点に重点を入れて、あらゆる面から財政力をつけて参るようにいたしたいと思います。
  101. 八木一男

    八木一男委員 通産大臣にお伺いをいたします。零細企業の問題でありますが、零細企業の問題も今の趣旨で一つ取っ組んでいただきたいと思うのです。実際協同化といってもなかなか問題がむずかしいのですが、協同組合を進めること、それからいろいろの補助を出す、あるいはまた融資を出すというような問題があります。ここで言い切れませんが、中小企業の融資と言ったって、それが中小企業の中の大きなものにいってしまうということは、言わなくてもおわかりの通りであります。特に部落の企業者は零細中の零細なんです。実際上今の中小企業のそういう問題の対策は、非常にいいことが言われておる向きもありますけれども、下まで浸透していないことは言うまでもないのであります。  その下の下におりますから立ち上れない。それについて通産省としてはぜひ御配慮を願いたいと思います。  それから一例を申しますと、たとえばはきもの産業などは、東南アジアとかそういう方面でサンダルをはくところが多いから、そういうものに切りかえるということも考えればできないことはないと思う。ところが部落の企業者には、国外の貿易事情を調べるという能力はありません。そういう時間的な経済的な能力もない。またそれをやっても取付をする機会もございません。そういうことについてもやはり国家が取付をして、またそれに切りかえるだけの資金を与えていただく必要があると思う。これは一例であります。たくさんの、百も例はありますが、時間がありませんから申し上げませんが、そういうことで部落問題の解決のために通産省として本腰で取っ組んでいただけるかどうか、それだけのお返事を一ついただきたいと思います。
  102. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実は府県を通じましてただいま部落の中小企業の実情について調査をいたしております。そうして来年度におきましては御承知のように技術の向上の問題、あるいは設備の改善の問題、それらも本格的に取っ組んでいくつもりでありますが、その際に十分に考慮をいたしますとともに、御承知のように企業診断という制度を持っております。来年度は相当額を取るつもりであります。従って企業診断をぜひ一度各地にわたりましてやりたい、こういうふうに考えております。ただいまお話のように海外にどういうものを出すか、どういうものを作ればいいかというようなことについて十分善処いたしたい、かように考えます。
  103. 八木一男

    八木一男委員 具体的な問題で一つだけ申し上げたいのですが、部落の企業の中には皮革企業が非常に多い。ところが皮革企業については大きな企業に原皮の輸入の外貨割当が行われておるわけであります。これは通産省と大蔵省と両方にまたがるかもしれませんけれども、原皮の輸入の割当がそういう人たちにないために非常に困っておるわけであります。大企業にばかり割当がある。そういう問題について一つ割当ができるようにしていただきたいと思いますが、簡単に一つ御答弁願います。
  104. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 原皮の外貨の割当につきましては商社割当と製造者割当と両方やっておりますが、商社割当が多いのであります。従いまして特殊な方だけにどうこうというわけにはいかぬと思います。しかし実情を調べまして、お困りのような方面には十分配慮をしたい、かように思います。
  105. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣にお伺いいたします。厚生大臣には前に社会労働委員会で十分申し上げましたからあれでございますが、本年度熱心にやられたのに一千万円しか環境衛生改善がふえなかったことは非常に残念であります。こういうことではいけないと思うので、厚生大臣は特に熱心に取っ組んでいただいた一番最初の方でありますので、非常に感謝いたしておりますが、今後大いに取っ組んでいただけるかどうか、一つそのことだけお伺いいたします。
  106. 堀木鎌三

    ○堀木国務大臣 同和事業として予算上は少うございますが、私どもの方も公衆衛生の面、環境衛生の面等もありますので、それらを考慮して御趣旨に沿うようにぜひ努力いたしたいと思います。
  107. 八木一男

    八木一男委員 実は総理以下各大臣に聞いていただきたいのですけれども、今取り組もうという考え方を示していただいたことは非常によいことだと思うのです。しかし今まで取り組んだことは一つもない。ちょっとやっている厚生省関係、建設省——建設大臣に伺わなかったのですけれども、建設省関係も非常に手ぬるい。今まで申し上げたことで言えば、そういう手ぬるいことを一割増し、二割増しというようなことでは解決がつかない。非常に根本的に解決していただくためには、今のお考えでは非常に不十分なのですけれども、きょうは積極的に取り組むという答えを伺うだけで満足をいたしまするけれども、ほんとうにこれから本腰で取り組んでいただきたいと思う。そういう問題に取り組み、もっとさらに強くしていただくためにもいろいろの部落問題を根本的に検討して、そうして各省でどういうふうにやるべきだ、まとめてどういうふうな施策をすべきだということが必要だと思う。その点で内閣にこの部落問題を、各省にわたっております各面のことを調査、研究して、そしてその問題を内閣の諮問に対して答申し、積極的に監督し、その他いろいろのことをやるような機関がぜひとも必要だと思う。今まででも厚生大臣が大蔵大臣にいろいろと要求された事実がございます。一万田さんとは申しません。歴代の大蔵大臣が、厚生省一省の要求だと、ほかとのバランスがあるから、言われてもこのくらいしか認められないと言われる。これは特に一万田さんにいや味を言うわけじゃありませんけれども、大蔵省としては普通そういう立場だ。内閣自体としてはこの問題にはどう取り一組むべきか、その生活の根源を建て直すためにはどうすべきか、現在の環境が悪い点を改めるにはどうすべきか、教育の点はどうすべきかということが内閣自体で統一されておりましたならば、大蔵大臣としてもそれを受け入れられるし、また大蔵省がいろいろのことを認められるにも都合がいいので、そういうことでぜひ内閣にそういう機関を置いていただきたいと思う。厚生省に今まで各省の連絡機関がございましたが、一年に二、三回やられましたけれども、これは担当官は一生懸命やっておられますけれども、担当官が一年に二、三回集まったようなくらいでこの大きな問題が解決するものではありません。厚生省一省に正式の審議会を設けても環境改善のみにとどまってしまいます。先ほど申しましたように、石井副総理もお答えになりましたように、この問題は生活の根源を直していくということを考えなければならないわけであります。そういう点でぜひ一つ、内閣に審議会を置いていただきたいと思うのでありますが、その点についてのお考えを伺いたいと思います。
  108. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいままではお話のように厚生省に協議会があって、これで各省の連絡をし、仕事の推進をはかったわけでございますが、先ほどからお話の趣旨もいろいろ承わりまして、私どもみなお答えいたしましたように、もっと強いものにしていきたい。そうして総合的な施策についていろいろ話し合い、これを実際に移すようにしなければならぬということを考えまして、それは今まで厚生省にあります連絡協議会よりも強力な協議機関を設置しなければならぬ、こういうように思っております。これについて今せっかく相談中であります。
  109. 江崎真澄

    江崎委員長 もう一問だけに限りお許しします。
  110. 八木一男

    八木一男委員 農林大臣に御質問するのを時間がなくなってしまって……。  今の強力な審議会をぜひ作っていただきたいと思います。その審議会はぜひ内閣に置いていただきたいのです。今申し上げたことをほんとうにすなおに聞いていただいたならば、厚生省に置くというようなお考えにならないと思う。生活の根源を直すためには、各省に関係がある。厚生省、労働省、文部省、建設省、それから農林省、通産省、地方自治庁、大蔵省、法務省にも関係がございます。それだけの各省に関係のあるものを、いかにどんなに考えられても厚生省に置いてはほんとうの問題解決はいたしません。内閣自体に審議会があるものがたくさんあるわけでありますから、内閣自体に強力な審議会をぜひ置いていただくことをぜひともお願いしたいと思います。  社会党は、この審議会についての法案をただいま用意しております。しかし内閣の方で、あるいは自民党の方でお考えになるならば、その点について法案の内容についても御相談して、与野党一致で法案を出すようにしていただきたいと考えるわけでございます。それでどうか一つ急速にそのことの考えをまとめていただいて、それを実施していただくようにお願いしたいわけでございます。それについて石井副総理の積極的な、熱心なる御答弁をぜひお願いしたいと思います。
  111. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまお答え申しましたように、厚生省の中にありまする協議会よりも強力なものを作ろうというのでございますから、厚生省の中へそのまま残すという考えでないことは御了承願います。どういうふうに運ぶかということは、さっき申しましたように、せっかくいい成績が上るようにしたいというつもりで考えておりますので、そのときには御相談することがあるかもしれませんが、ただいまのところは研究中であるということでお許し願いたいと思います。
  112. 江崎真澄

    江崎委員長 本会議散会後再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後一時二十七分休憩      ————◇—————     午後三時三十三分開議
  113. 江崎真澄

    江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中居英太郎君。
  114. 中居英太郎

    ○中居委員 私は漁業問題について二、三点関係閣僚にお伺いいたしまして、政府の所信をただしたいと思うのでありますが、すでに日ソ漁業交渉あるいは北洋近海における安全操業等の問題につきましては、各氏から論議が出尽したようでありますから、私は主といたしまして抑留された漁民並びに漁船の処置についての政府の見解をただしたいと思うのであります。  御承知のように、第二次大戦後の特異な現象といたしまして、わが国の漁船が海洋において拿捕されるというような不詳事態が今日なお続けられておることはまことに遺憾にたえないところでありまして、日本の漁船が韓国あるいはソ連あるいは中華人民共和国——以下中国と申し上げますが、これらの国々の警察権によって拿捕せられておるということは御承知通りであります。     〔委員長退席、重政委員長代理着席〕  そこで私は外務大臣に申し上げたいのであります。農林大臣でもけっこうですが、この三国に拿捕された漁船の漁夫の処遇につきまして、相手国によって日本国内の処置が非常に差別的な待遇を受けておる。この点についての所見をお尋ねしたいと思うのであります。たとえて申し上げますならば、韓国に抑留された漁夫に対しましては御承知のように差し入れ金の補助金、あるいは月々一万五千円を限度といたしましての生活費、あるいは家族手当、あるいは一時金、こういう処置が講ぜられておるのでありますが、一方ソ連の抑留者あるいは中国の抑留者に対しましては政府では何ら処置を講じていない。私は韓国に抑留された漁夫あるいはこの留守家族に対する政府の処置が、決して手厚いものであるというふうには考えていないのであります。むしろこの人たちの物心両面に与えた影響を考える場合に、もっと手厚い処置を講じてやってもいいと思っておるわけであります。しかしそれなればこそ、なおそれに数倍するような数を持っておるこのソ連抑留者あるいは中国に抑留された漁夫あるいは家族に対し、何らの処置も今日まで講ぜられていない、こういう政府の方針に対しまして、納得のいかないものがあるのでありますが、どういう根拠に基いてそういうような差別待遇をしておるか、この点についてお伺い申し上げたいと思うのであります。
  115. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 韓国に抑留された方方に対しましては、今お話しのような措置をとってきておったわけであります。それからソ連に抑留されておる者でありますが、韓国に対していろいろな措置をとるころにおきましてソ連の抑留者というものは、ちょうど二十八年ごろでありましたが、その当時未帰還とか、船で向うに押収拿捕されたものがなかったのであります。その後ときどき拿捕された船があるのであります。現在におきましては拿捕された船はソ連の方で百十四隻であります。人数といたしましては二人、こういうことになっておるのであります。それからまた中国の方につきましては、拿捕されておる船が百四隻、拿捕されておる人は現在ないのであります。韓国の方に非常に多くの船が拿捕され、また多くの人々が抑留されておる、こういうことでありましたので、韓国の方に援護といいますか非常に力を入れてきたのであります。数が少いからほかはどうこうというわけではなかったのでありますけれども、韓国に対していろいろな措置をとるころにおきまして、ほとんど拿捕された人がいなかったり、あるいはまた船がなかったというような状態のものですから、実はそのままにしてあったわけであります。こういう事情であります。別にこれを区別するという根拠があったのではありません。そういう状態でございます。
  116. 中居英太郎

    ○中居委員 それならば続いて農林大臣にお伺いしますが、韓国の抑留家族に対する手当というのは、私の承知しておる限りにおきましては、抑留期間中の月日を勘案いたしまして、一カ月一万五千円というものを基準にして、しかも遡及してこれを支給しておると私は承知しております。いかにもこの韓国の抑留者に対する政府の処置が決定した当時においては、ソ連の抑留者は日ソの国交回復等の客観的情勢の変換で全員釈放せられておった、こういうこともこれまた事実であります。しかしながら、今あなたが言われましたように、韓国に比してソビエト関係の抑留者が少かったということは当らないと思うのでありまして、私の調べておる数字によりますと、韓国関係に倍する数がソ連関係で抑留されておる。船におきましては六百六十隻、抑留船員は実に五千八百九十一名に及んでおるわけであります。しかもこの抑留漁夫は領海侵犯あるいはスパイ行為等々の罪名によって、相当期間中向うの刑務所において禁固刑に服して帰って来ておる者が大半を占めておる。こういう事情を政府当局においてもよく察知しまして、そしてこれらの人たちに対する援護処置を韓国の抑留者同様、これに準じて支給すべきが当然のことではないかと私は思っております。ことにソ連関係に抑留された漁夫は、北海道あるいは東北の零細漁民でありまして、韓国に抑留された漁夫よりももっと深刻に経済上困窮しておる漁夫の方方が多いのであります。従いまして、現在抑留者があるとかないとかということではなく、過去におけるこの人たちの抑留生活に対する援護の処置を今講じても、私は決してこれは間違っておる方策ではないと思うのでありますが、遡及してこのような処置を中国関係あるいはソ連関係の漁夫にも及ぼす、こういうことを検討してもらいたいと思うのでありますが、御所見はいかがでありますか。
  117. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ソ連関係に抑留されて、向うの刑法上刑に処せられているのは船長とか漁撈長、こういうのが多いようであります。一般の漁夫はそう長く抑留されておらないというふうに私どもでは承知しておるのでございますが、それは別といたしましても、今御指摘のように五千八百何人になっております。これをさかのぼって韓国のような措置をとるかどうかという私の所見をお尋ねでありましたが、これにつきましてはいろいろなお検討さしてもらいたい、こう思っております。今直ちにそれを行うと申し上げるわけにはまだ参りませんけれども、検討は続ける、こう思っております。
  118. 中居英太郎

    ○中居委員 時間的の余裕を与えてくれ、こういうことでありますが、韓国の抑留者に対しましても、先ほど申し上げましたように、政府の方針がきまってから遡及してこれを適用しておる。こういう現状にかんがみまして、その他の国に対する抑留者に対しても適当な処置をすみやかに政府の方針として決定してもらいたい、こう思うわけであります。  さらにもう一つ、次は外務大臣にお伺いしますが、漁夫と一緒に漁船が拿捕せられております。拿捕せられた。漁船の数は相当数に上っております。しかしいまだ帰ってきていない漁船は、先ほど農林大臣が言われましたように、中国では百四隻、ソ連関係では百十数隻に及んでおるわけでありますが、このいまだ帰ってきていない漁船の返還方について、日本政府相手国に対してどのような交渉をしておるか、そしてどういう結果になっておるか。私どもは昨年モスクワに参りまして、この未帰還の漁船の調査をソビエト政府に依頼いたしたことがあるのであります。その際ソビエトの外務次官のフェドレンコあるいはパトリチェフの両氏が、私どもに対しまして、この未帰還百十数隻の漁船の消息について、正式な回答を寄せました。この正式な回答によると、ソビエトの裁判によって沒収の決定したものが九十三隻、沈没を確認しておるのが三隻、その他のものについては消息がわからない、こういう報告を私どもにいたしておりました。このフェドレンコの報告をソビエト政府の正式な回答と見なしていいか、こういう質問に対しまして彼はその通りであると答えたのであります。そこで私どもはこの没収された漁船を何とかして返還する方法はないか、こういうことを重ねてお伺いしたのでありますが、これに対しまして彼はこう答えました。この没収した日本の漁船はすでに公売に付されてコルホーズ等にもう売り渡してしまってあるから、今さらどんな交渉があってもこれを返すわけにはいかない、返す方法がない、こういうことを彼は答弁しておったのであります。日本政府はソビエト政府に対しましてどのような交渉をして、どの程度の回答を得ておるか私は知りませんが、もしも私どもが受けた回答がその通りであるといたしましたならば、日本政府はそのような事態に対しまして賠償交渉を行う意思があるかどうか、どういう考えを持って、この未帰還の漁船の事後処理をしようとしておるのか、この点について外務大臣の所見を承わりたいと思うのであります。
  119. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 拿捕されました漁船の返還に対しましては、今日まで外務省としては極力ソ連側交渉いたしております。お話のような事態がありますれば、当然賠償を請求する覚悟でおります。
  120. 中居英太郎

    ○中居委員 いや先ほど私が申し上げましたように、私どもにさえソ連政府は正式に没収して、しかも公売に付してしまってもう返す方法がない、こういうことを答弁しております。日本政府の問い合せに対しましてはどのような答弁をしておりますか、それをお伺いしたいと思います。交渉中ではこの問題の解決は期することはできないと思うのですが、重ねてお伺いします。
  121. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話のような返答をわれわれは正式に受け取っておりません。従いましてわれわれといたしましては極力現状において交渉をいたしておるわけであります。
  122. 中居英太郎

    ○中居委員 いや私どもの依頼に対してもソビエト政府はこのような返答を出しておるのです。フェドレンコ氏はこういう内容はすでに外務省を通じて日本政府に通告しておる、こういうことを私どもに言っております。この点いかがですか。
  123. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ございません。
  124. 中居英太郎

    ○中居委員 そういった問題を論議すると水かけ論になりますから、この点についての正式な回答をすみやかに得て、そうしてこの問題についての処理に対する方針を明らかにしてもらいたいと私は考えておるのであります。  第二点として私がお尋ね申し上げたいことは、このような事態が今後も繰り返されるということに対しまして、政府は万全の措置を講じて防止しなければならない、これは当然のことであろうと思うのであります。ところがこのような事態を解消するために、日本政府は北洋における操業の安全交渉を申し込んだ、ところがこれに対してソビエト政府は応ずるかのごとくあるいは応じないかのごとく、いまだこの交渉が軌道に乗っていないということは、私はまことに残念に思うのであります。ただこのような事態を引き起した、こういうことに対しましては、私は国内的に政府に非常に大きな責任があると思う。先ほど申し上げましたように、漁夫に対する補償の問題にしても、あるいはすでに没収せられてしまった漁船の補償の問題にいたしましても、私は直接政府に責任があるのではないかと思っております。なぜならば、日本政府は御承知のように領海三マイル説を主張しております。ソビエトはこれまた御承知通り十二マイルを主張いたしております。この日本政府の主張が正しいのか、ソ連政府の十二マイルの説が正しいのか、その是非はともかくといたしまして、私が申し上げたいことは、領海に対する一致した国際的な取りきめというものがあいまいとしておるということだけは言えると思うのであります。  そこで、日本政府は三マイルを主張しております。しかし北洋に出かせぎするところの零細漁船は、現実の問題として十二マイルより近接すると、ソ連の警察権によって拿捕せられる危険があるということも、これまた彼らは知っております。しかし十二マイルよりももっと接近しなければ、そして漁獲しなければ食うことができないというのが、北洋における零細漁民の現実の姿であります。しかしもう一つ私が申し上げたいことは、政府が三マイル説を主張しておる、このことを漁民は知っておりまして、三マイルまでは領海なんだ、三マイルまで入ることは当然なんだ、こういう考え方が潜在意識として漁民の頭の中に入っております。そしてそれが、拿捕せられるかもしれないという危険感をともすれば麻痺さしておる。そして十二海里からさらに接近してあのような事態を引き起しておる。こういうことが私はほんとうの姿ではないかと考えておるのであります。従いまして、あくまでも領海三マイル説を主張しておるところの日本政府領海に対するそのような定義が、このような事態に対する責任を引き起しておるとも言いたいのであります。従いまして、そのような事態によって惹起せられたもろもろの問題について補償の点については、政府は十分に配慮してもらいたいと思うのでありますが、この点について、どなたでもけっこうですから、御見解を承わりたいと思うのであります。
  125. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 領海の問題につきましては、日本は三海里を主張しております。ソ連は十二海里を主張しております。この問題は非常に大きな問題でありまして、各国におきましてもいろいろその主張が違っております。御承知のように最近ジュネーヴで海洋法についての会議が開かれまして、これらの問題が討議をされることになっております。将来適当な解決が得られれば幸いだと思っておりますが、日本としては三海里説を主張しております。従いまして、日本が三海里説を主張しております関係上、日本国民領海というものに対して、そういう認識を持っておることは当然のことだと思うのであります。ただソ連が十二海里説をとっており、従って十二海里以内に接近することについて、今のような拿捕事件が起るということがありますので、われわとしては、そういう点につきましては、漁業組合その他にこういう状態にあるんだということを周知させることに努めております。
  126. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどのお話の中で、ちょっと私の方で申し上げ足らぬことがございました。それは韓国の抑留者に対して、見舞いその他は漁船乗組員の給与保険に入っていない人に出しておるということが一つ、もう一つはさかのぼって渡しておる、こういう点だけをちょっと申し上げておきたいと思います。  それから今の三海里、十二海里説は、両方主張を譲らないような状態でありまするし、外務大臣からの御答弁があったような次第で、海洋法の会議等におきましても議論になっております。そこでこの点についての議論は、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、私の方といたしましては安全操業という形で、ソ連との交渉を進めるということで進んできたようなわけであります。その後の経過等につきましては御承知通りであります。
  127. 中居英太郎

    ○中居委員 外務大臣にお伺いしますが、ソビエトが領海十二マイル説を唱え出したのはいつですか、御存じですか。いつごろからソビエトはそういう態度をとっておるか。
  128. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府委員から答弁をさせます。
  129. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 お答え申し上げます。この十二海里の説と申しますのは、ソ連側は相当古くからこの説をとっているようでございます。そこでどうもはっきりしたことはわかりませんが、ソ連側の主張によりますと、帝政時代からそういう主張であったというようなことも言っておりますが、そういう古くから自分の主張であるということを述べておることをお答え申し上げます。
  130. 中居英太郎

    ○中居委員 私もソ連がいつを契機にこの十二マイル説を唱えたか、はっきりしたことは知っておりません。ただ一九二〇年代であることは確かであると思っておるのであります。なぜならば、そのソ連領海説に呼応いたしまして、イギリスでは一九三〇年にソビエト近接の三マイルから十二マイルの区間における操業安全のイギリスとソビエト連邦との漁業協定というものを結んでおるのであります。さらにまた日本政府に対しましては、ソビエト政府は、一九二六年九月、当時の駐日大使を通じまして、日本漁船のこの区間における操業の安全を保障する、こういう回答を寄せておる。こういうソビエトの過去における日本政府に対する態度は現在どうなっておるのか死文に化しておるのかどうか、この点についての政府の見解をお尋ねしたいと思います。正しくは一九二六年九月、当時の駐日大使ヴェセドラスキー氏、この人が日本政府に対しまして、この区間における日本漁船の拿捕はしない、操業の安全を保障する、こういう回答を寄せておる。このソビエトの当時の回答は現在死んでおるのか生きておるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  131. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 私どもも当時のことを研究しましたときに、そのような当時のやりとりがあったということを承わっております。しかしそれが果して現在まで——その後非常に紆余曲折がございましたし、これは単なる漁業とかいう技術的な問題と違いまして、相当重要問題でございますので、そのころのやりとりまたは了解とかそういうのが、現在までそのまま生きておるのだというようなことは、その後いろいろな問題がでございましたので、私は何とも確認できないと思うのであります。
  132. 中居英太郎

    ○中居委員 外務大臣に別の観点からお尋ね申し上げます。一九二六年におけるソ連の回答はともかくといたしまして、今日現在の事態に至って日本政府は、北洋近海における操業の安全を保障してもらいたい、こういう交渉をソビエトに持ち出した。ところがソビエト政府はこれに対して平和条約をからましてきた。これは御承知通りであります。そうしてこのソビエトの態度に対しまして、日本政府は、全然この二つの問題を分離しなければ、いずれの交渉にも応ずるわけにはいかない、こういう態度を決定したこともこれまた御承知通りであります。そこで私が外務大臣にお尋ねしたいことは、ソ連政府が安全操業の問題と平和条約の問題をからまして同時審議を主張してきた、この根拠を政府はどういうふうに解釈しておるのか。たとえて申し上げまするならば、安全操業と平和条約は不可分のものなんだ。従って両方同時に締結しなければ、この二つの条約は締結するわけにはいかないんだ、こういうことを意味しておるのか、あるいは安全操業の交渉を一つの動機といたしまして平和条約の審議を始めたい、こういうソビエト政府の意図なんだ、こういうふうに解釈したのか、どのような解釈のもとに政府はあのような態度を決したか、この点について外務大臣の御見解を承わりたいと思うのであります。
  133. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 昨年六月日本が安全操業の問題を申し出しまして以来、ソ連政府は、これだけに対して、暫定的な日本の要求に対して審議をする意思を持っていたと思うのであります。従いまして八月十六日の例のメモワールもそうでございますし、その後もソ連から、調査員を出して実情を調査している、その報告を待って、それらの回答をするというような返事も来ております。従いまして私どもとしましては、今日までのソ連の態度というものは、これを分けてやることも可能だと考えておったわけでありますが、今回そういうことが起きてきましたことは意外だと思っておるわけであります。従ってお説のように、あるいはこういう問題を契機にして、日本に対して平和条約の交渉をするというチャンスをつかまえることも考えられるわけであります。
  134. 中居英太郎

    ○中居委員 すなわち政府は、今回のこの日本の安全操業の申し入れに対しまして、平和条約の問題を持ち出してきたことは、ただ単に単純な意味で平和条約交渉再開の動機にしようとしておるという解釈をなさったのか。もしそうだとするならば、なぜこのようなソビエトの申し出を政府は拒否したか。平和条約に対する交渉をすみやかに開始して妥結に努力しなければならないことは、これは共同宣言で日本政府が義務づけられておる問題であります。そういう前提に立って、ただ単に平和条約交渉再開の動機であるというふうに解釈したならば、なぜ安全操業の交渉の問題を同時に審議するということを拒否したか。私は政府の今回とった態度は非常にあいまいであると思っておるのであります。しかし、もし、今回ソビエト政府が提出してきたこの二つの問題が、不可分のものでありまして、平和条約の締結ができなければ、安全操業の妥結もあり得ない、こういう前提であるといたしましたならば、あるいは今回政府のとったような態度というものも、ある意味ではうなずける点があると思うのであります。従いまして、ソビエト政府の意図が那辺にあるかということに対する根本的な検討が、まず政府にあってしかるべきだ、ソ連政府の意図もはっきりしないままに、そのようなものは初めから分離すべきものであるというような態度で、この安全操業の問題をそのままに放置しておくということは、私は許されない問題であろうと思うのでありますが、この点についてのあなたの見解を、重ねてはっきり承わりたいと思うのであります。
  135. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれといたしましては、暫定的な安全操業の問題を問題として、引き続きソ連と極力折衝して参る、こう考えております。
  136. 重政誠之

    ○重政委員長代理 中居英太郎君に申し上げます。もはやお約束の時間は経過いたしましたから、これで一つやめてもらいたいのですがね。
  137. 中居英太郎

    ○中居委員 もう一点だけ……。
  138. 重政誠之

    ○重政委員長代理 それではもう一点だけお許しいたします。
  139. 中居英太郎

    ○中居委員 もう一点だけ外務大臣に御質問申し上げます。明確な御答弁を願いたいと思いますが、先般の予算委員会で岸総理大臣は、こういうことをわが党の松本七郎君の質問に対して答弁しております。それは領土の問題であります。サンフランシスコ平和条約で日本は千島の領土権を放棄した、その範囲にはいろいろな解釈があるが、少くとも明らかな固有の領土である南千島はこれに含まれていない、こういう回答をいたしております。しかし私どもの見解ではあの平和条約の問題が国会で論議された昭和二十六年当時の速記録等を調べてみますと、政府は明らかに、千島列島の中には南千島も含まれておる、こういう答弁をいたしておることが明らかになっております。ところが今日の岸内閣は、千島列島の中には南千島は含まれていないのだ、こういう御答弁をいたしておりますが、この間の経緯について外務大臣はどのような見解を持っておるか、お尋ねしたいと思います。
  140. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国後、択捉の問題につきましては、総理大臣の見解と全く同じでございます。
  141. 中居英太郎

    ○中居委員 委員長、もう一度……。
  142. 重政誠之

    ○重政委員長代理 一度とさっき言ったのだから、あとは長くなってしまいますから……。  岡田春夫君。
  143. 岡田春夫

    ○岡田委員 時間が制限されておりますので、私はきょう質問したいと考えておりますのは、賠償問題、特にヴェトナムの賠償問題、それからもう一つは原爆兵器の持ち込み並びにアメリカの原爆実験の問題、大体こういう問題に触れて参りたいと思います。  それについて岸総理大臣発言にも私の質問は関連いたしますので、岸総理大臣出席を求めておったのでありますが、あなたは委員長代理だから、あまりよく御存じないだろうと思いますけれども、ほんとうの委員長は御存じなんでありますので、その経過についてまず委員長から御報告を願いたいと思います。
  144. 重政誠之

    ○重政委員長代理 それでは今委員長とあなたとの話を、打ち合せて聞いてきますから……。
  145. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは岸総理大臣出席を求めるように重ねて要求をいたしておきます。  まず第一点は賠償問題、特にヴェトナムの賠償問題から伺って参りたいと思いますが、この点は勢い平和条約の十四条との関係が出てくるわけであります。もちろん平和条約十四条との関係以前に、平和条約を締結いたしましたサンフランシスコの会議にヴェトナムが参加するに至った経過が、まず第一に問題になるわけでありますが、この点から一つお伺いをして参りたいと思います。     〔重政委員長代理退席、委員長着席〕 サンフフンシスコ条約にヴェトナムが参加することについては、その当時だいぶ問題がありました。最初に招請国として招請されておらなかったのでありますが、最後にこれは招請されております。この点ヴェトナム国が参加するに至ったいわゆる法的地位と申しますか、この点はどういう関係になっておりますか。林さんでもけっこうでありますし、どなたからでも御答弁をいただきたい。
  146. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 お答え申し上げま関す。当時ヴェトナムがずっとフランスの植民地と申しますか、仏領インドシナにおいてフランスの植民地になっていたことは御承知通りでございますが、自後一九四九年でございますか、昭和二十四年はフラフンス連合のワク内において独立を認められまして、そこでフランス本国とヴェトナムとの条約で独立を認められた。その結果、五一年のサンフランシスコ条約に招請されたということであります。
  147. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは端的にもう一度条約局長に伺いますが、フランス連合内の主権を認められて、その立場においてヴェトナムが参加した。すなわち、別な言葉でいえば、フランスのサクセサー・ステートとしての地位でヴェトナムが参加を認められた、こういうことになりますか、どうですか。
  148. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 お答え申し上げます。そのように考えております。
  149. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ平和条約十四条の解釈を続いて、これは林さんに伺った方がいいのじゃないかと思いますが、あなたはなかなか法律の権威者だから、林さんに伺って参ってもけっこうですが、十四条の解釈です。これは端的に申し上げますと、平和条約の調印後において、昭和二十六年の十月に、平和条約の特別委員会が衆議院、参議院で作られた。そのときに当時の西村条約局長答弁をいたしております。その速記録もここにありますけれども、十四条の規定というものとは(a)としては、賠償の概念がまず規定してある。賠償の概念としては、戦時中に起った損害及び苦痛に対して、日本国は連合国に賠償をしなければならない。しかしこの賠償は、現在日本の資源が非常に乏しいので、そのために完全賠償はやれない。存立可能の経済を維持する程度において賠償をすることが許されるということが、まず大前提としてきめられておる。その二つの矛盾する規定、この規定に基いて今後日本が行うべき賠償というものは二種類ある。一種類は、十四条の(a)の1に規定するところの賠償、もう一種類は2に規定する賠償、すなわち連合国内における日本の財産の処分の問題、この二つの賠償だけに限るというように規定してあると思いますが、この点はいかがですか。
  150. 林修三

    ○林(修)政府委員 平和条約の関係におきましては、ただいまおっしゃいました通りに、第十四条の(a)のところで、賠償あるいは請求権の問題について、あるいは日本の在外財産等のことについて規定してあるわけであります。従いましてこの賠償条項が入りましたのは、今おっしゃったような経緯だと思います。御承知のように、最初にはアメリカの案には賠償条項はなかったのでありますが、この1の関係はそれがあとから入ったような経緯になっております。それで1があとから入ってきたわけであります。1はいわゆる普通の賠償でございますが、賠償の関係を、ここに書いてあるような賠償に限る。これは日本の存在を可能にするという意味で、今日本が持っておる生産設備等を持っていく、あるいは現金を取るというようなことはしない。要するに生産あるいは沈船引き揚げその他の作業における役務で払う。そういう賠償を日本の経済の存立可能な範囲内で取る、こういうことでございます。2はほんとうの意味の賠償と言っていいかどうかこれは問題でございまするけれども、要するに日本の戦争中の行動に対する一つの向う側の言い分として、在外財産をみんな向うが処分する、こういうことを言っている、かように考えます。
  151. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこでもう一点だけ解釈の問題を伺いたいと思うのですが、今御説明の十四条の(a)の1ですけれども、この1の賠償を払う場合において、これは長々と書いてあるけれども、要旨というのは、日本の軍隊が占領して損害を与えた連合国の中で希望する場合においては、与えた損害を修復する費用を補償するために賠償を行う、こういう趣旨であると私は考えますが、この点はどうですか。
  152. 林修三

    ○林(修)政府委員 普通の意味の賠償はお説の通りに、やはり戦争によって生じさせた損害を戦敗国が償うという意味であります。ここに書いてあります通りに、日本の軍隊によって占領され、すでに日本国によって損害を与えられた連合国に対して、日本が、そういう日本の占領あるいは日本の軍事行動ということに伴って与えた損害を修復することに資するため、もちろんそういうものの損失の範囲内で、その損失を補償するために賠償するんだ、こういうふうに考えます。
  153. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこでもう一点伺いたいのですが、その賠償の対象になるべきものは、与えた損害を修復する費用を補償するということであると思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  154. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は、しかしいわゆる原状回復をするとか、あるいは元の通りに直すというものでは必ずしもないと私は思います。これは御承知のように、ここでお読みになってわかる通りに、この賠償の内容はいわゆる生産物を含んだ役務賠償、従いましてその相手の国に対して、そういう国内において損害を修復するために必要なものを日本側が提供する、こういうことで、必ずしも原状回復そのものという意味ではない。全体として損害の範囲内で、そういう意味ではないと私は思います。
  155. 岡田春夫

    ○岡田委員 私の伺った点はその点もありますが、もう一点あるのです。与えた損害というものが、賠償の基礎になるのではないかということを言っているのです。
  156. 林修三

    ○林(修)政府委員 もちろん与えた損害だと思います。けれども、与えた損害というのは必ずしも物的のみならず精神的損害というふうなことも、これは結局ネゴシエーションの問題でありますが、連合国としての言い分だ、かように考えます。
  157. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで伺いますが、たとえばその精神的な損害も含んだとしても、これはヴェルサイユ条約以降における戦時賠償の概念としては、与えた損害というものは間接的な損害、一般的な損害というものを含むものではない、直接的な損害をもっていわゆる賠償の対象にするというのが、ヴェルサイユ条約以降における一般通念です。あなたの場合には、これはそうでない間接的なものも含むという意味で、精神的なものということを今お話しになったのかどうか。
  158. 林修三

    ○林(修)政府委員 これはヴェルサイユ条約以降においても損害ということの観念の問題になると思うのでございます。結局これは連合国側の要求及び日本側のこれに対するいろいろな考え方、こういうようなネゴシエーションの結果で損害というものはきまってくるわけで、ここでは必ずしも直接的損害ということを言っておりませんので、もちろん日本側としては少いことを希望するわけでございますが、その点はやはり両国の主張がそれぞれ対立する点だと考えております。
  159. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると、あなたはヴェルサイユ条約以降における賠償概念を訂正されるというお考えなんですか。直接的な損害の中には精神的な苦痛ということも入るのですよ。私はそういう点を否定しているのじゃありません。私の言っている間接的な損害というのは、たとえば戦闘行為があるために、通商関係について第三国が損害を受けた、こういうことが間接的な戦争の損害です、これがいわゆる国際法の通念としての間接的な損害ですよ。そこであなたのお話は間接的な損害も含めてというふうにもとれる御答弁なんだが、そういう通商上の問題に対する第三国の損害も含めてというような意味で、間接的な損害も含めるのだ、こういう御解釈でありますか。
  160. 林修三

    ○林(修)政府委員 今おっしゃったようなことになりますと、実は言葉の問題だと思うのでございますが、いわゆる損害賠償という観念は相当因果関係というような点がございますから、次の次の次という間接的なものは当然含まないと考えていいのじゃないかと私は考えます。
  161. 岡田春夫

    ○岡田委員 林さんは国内法は権威なんでしょうが、国際法においては必ずしもあなたの答弁は正確とは言えない。というのは、国際法上における損害賠償の場合は、私法上の場合と違って賠償は直接損害に限っているのですよ。間接損害という例があるなら、一つ例を具体的にお話いただきたい。
  162. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 お答え申し上げます。損害という問題でございますが、国際法上の直接損害だとか間接損害ということは、これは国際法上の観念としても非常にむずかしい問題であり、学問的にも相当問題にされてきたところだと思っております。従いまして直接とか間接とかいう言葉でははっきりした概念というのが、今果して成立しているかどうか、その点私は非常に疑問に思っている次第でございます。たとえば国際司法裁判所の裁判に持ってくる法律問題といたしましても、損害賠償の性質及び範囲ということが非常な問題にされております。従いましてその点において、これが裁判所における法律問題として最も考えられている点ではないかというふうに考えております。
  163. 岡田春夫

    ○岡田委員 では、その点は概念問題ばかりやっていてもしょうがないので、一点だけ、これは与えられた損害という場合には、先ほどお話のような具体的な事例として、精神的苦痛とかいうようなものもあるのでしょうが、少くとも具体的に現われたところの損害というものは当然含む、こういうように解釈すべきでしょうね。この点は言うまでもないと思うのですが、先ほどの御答弁が抽象的であったので、林さんでけっこうですからどうぞお答え下さい
  164. 林修三

    ○林(修)政府委員 いわゆる具体的に現われた損害を含むかとおっしゃいますが、当然これは含むと思います。
  165. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこでこの前の統一見解等を伺うと、今度のヴェトナム賠償の最大の基礎は、全地域にわたる損害賠償であるという意味の答弁があったが、その中に地域という言葉がはっきり出ているわけです。そうすると、具体的な損害として北の地域、北という表現が不明確ならば、十七度線以北における地域の具体的な損害も、今度の賠償交渉の対象の基礎になっているかどうかということです。
  166. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 賠償の問題でございますが、この地域と申す場合でございますが、これはここに起った地域であるとか、あるいはここの地域であるとか、そういうことはあるいは交渉経過においてはいろいろ問題にされることがあるとは思うのでございますけれども、この賠償そのものの考えは、直接地域に結びついたものであるかどうかということは、私は必ずしも結びついていないのじゃないかと思います。
  167. 岡田春夫

    ○岡田委員 概念としてはそうかもしれませんが、今度は具体的に藤山さんに伺います。今賠償交渉をやっておりますが、私は交渉経過について伺うのではなく、交渉をするに当っての日本政府の態度です。その場合に、この前再三あなたの御答弁になっていることは、ヴェトナムとの交渉においては、南ヴェトナム政府が全ヴェトナムを代表する正統政府考えて、そして全ヴェトナムにわたる賠償の問題について交渉している、こう御答弁になりましたね。これは速記録がありますが、この点は答弁されたことは間違いございませんね。
  168. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本は平和条約調印国であります。従いまして南ヴェトナムを相手にしてヴェトナムを代表する政府として交渉しております。
  169. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこをあいまいにしないで。全ヴェトナムという点が重要なんです。全ヴェトナムを対象としているのでしょう、日本政府としては。
  170. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ヴェトナムを代表する政府としてやっております。
  171. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたは全ヴェトナムとこの間答弁しているじゃありませんか。速記録にある。それを取り消されるのですか。ここに書いてあるじゃありませんか。全ヴェトナムを対象にしております、これは二月七日の成田君の質問に答えている。読んでみましょうか。あなたはこう言っているじゃありませんか。「従いまして私どもは全ヴェトナム人に対して賠償を支払う」云々と全ヴェトナムの問題だと言っているじゃないですか。違うのですか。
  172. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ヴェトナムを代表するというのは、全ヴェトナムでありまして、二月七日のものとちっとも変っておりません。
  173. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは全ヴェトナムならば、十七度線以北における損害の問題についても賠償の交渉の基礎になっているのでしょう。どうなんですか。
  174. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 南ヴェトナム政府が必ずしも全地域にわたって権力を持っておらぬという事実をもって私ども交渉をいたしております。
  175. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかしあなたは全ヴェトナムの問題を交渉の対象にしているならば、あなたは全ヴェトナム問題について賠償と交渉をしているのでしょう。それなら北の方の損害の問題についても一緒に触れているということでしょう。そうじゃないですか。
  176. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げましたように、全ヴェトナムを対象にしてやっておりますから、ヴェトナムに与えました損害というものを念頭に置いて、やっております。
  177. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは必ずしもまだ明確ではありませんけれども、時間の制約があるから進めて参ります。そこでこの前の統一見解やその他を伺ってみると、いろいろな点で答弁はきわめて支離滅裂なんです。それで私は具体的な点を伺って参りますが、藤山さんと林さんがきょう見えておられるので、岸総理大臣答弁しておりますけれども、岸さんはいないから岸さんの点は省きまして、藤山国務大臣は、先ほど継承国との関係について私が質問して政府側として答弁されたと同じように、「ただいまインドネシアとオランダの関係で申し上げたと同じような意味で、フランスと仏領インドシナにやったわけでありまして、その点で国としては義務があると思います。」ということを十四条を履行するについての義務として解釈をされておられるわけですね。それから林さんは「今のフランスと日本との関係でございますが、第二次大戦中におきまして、ヴィシー政府日本に対して中立であったと思います。しかし、ド・ゴール政府は、日本に対して宣戦の布告をしたわけであります。これは、占領後におきまして、結局ド・ゴール政権のあとを継いだフランス国がずっとあとを継いでおりまして、日本とのサンフランシスコ条約にも、フランスが戦勝国側として参加しております。フランスが日本との間において戦争状態にあったということは、この平和条約に参加したことによって、一応フランス側としてはそう考えておるということは当然出てくると思います。」こういうふうに答弁をしております。この点はどうなんですか、これは同じなんでしょう。
  178. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は別に私は違っておらないと思います。ただ補足いたしますと、その点はフランスの地位を申し上げたわけでございまして、先ほどから条約局長、あるいは前に外務大臣お話しになったヴェトナム、これはフランスの地位を承継したサクセッサー、こういう意味でございまして、私はそこまでは申しておりませんけれども、当然その内容を含んでおるとお考え下さってけっこうであります。
  179. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで伺いますが、そうすると、これはフランスと日本関係においても、日本が連合国の一国であるフランスとの間に戦争状態があり、それに従って、いわゆる十四条の規定を受けると思いますが、そこで具体的に伺いますが、それじゃヴェトナムは戦争はいつから行われたということになっておりますか。
  180. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は先ほど条約局長がお答えしたことと関連すると思いますが、ヴェトナムのフランス連合内における独立は、御承知のように一九四一年でございます。そのときは実は戦争は済んでおります。戦争状態は平和条約ができませんから、まだ続いてはおりましたが、しかしそのヴェトナムの地位は、いわゆるフランスのサクセッサーとしてということでございまして、ヴェトナムの領域、これは旧仏領インドシナでございまして、この地域におけるサクセッサーとしてのヴェトナムが日本に対して連合国、あるいはこの十四条(a)項の1の地位を主張する、こういう関係だと私は思います。
  181. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで具体的に伺いますが、継承国としてのヴェトナムとして連合国の地位がある、これはもうお説の通りです。平和条約の二十五条にありますから。そこで、それじゃ継承国としてのフランスにおいて連合国の地位があり、それを継承したヴェトナムとしては、日本との間の戦争状態はいつから始まったというように御規定になるのですかということを伺っておる。この点については、この前の政府の統一見解を聞くと、藤山さんはこういう答弁をしておりますよ。最初の統一見解ですよ。ド・ゴールの方では十二月八日以降と言っております。しかしあなたの御意見としては、戦争の終る年の三月に松本大使を通じまして、軍事政府の設立と軍事占領を仏印政府に申し渡したわけで、それ以降戦争状態は続いておった、こういう点で二つの例をただあげて、それじゃ戦争状態はいつからかということについては、「そこでそれの見方につきましては、ただいま申し上げたように、日本とヴェトナムとフランスの間に全部の期間を通じての戦争状態というものには同意しがたい点もあるのでありますが」、こう言っておる。じゃ同意しがたい点があるのなら、いつから戦争になったのですか。
  182. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は実はなかなかむずかしい問題でございまして、御承知のように、日本は、当初はヴィシー政権をフランスの代表者と認めて、これとなお中立関係にあったわけであります。しかし御承知のように、ド・ゴール政権はロンドンにおりまして、日本に対して宣戦を布告しております。これはまた一九四一年十二月八日でございますから、一日ぐらいの違いでございますが、その前後に宣戦を布告しております。それでド・ゴール政権としては、日本に対して戦争状態にあったと考えておったと思うのでございます。ただ御承知のように、ド・ゴール政権は、初めは一種の亡命政権的な地位であった。一九四四年にいわゆる第二戦線ができまして、連合国軍がフランスに回復したわけでございますが、ド・ゴール政府はフランスに政権としての地位を回復したのは一九四四年八月でございます。そのあとに、仏印の問題は、翌年の三月の問題でございますけれども、そこでいつをもって日本とフランスとの間の戦争状態が始まったか、これは必ずしも日本とフランスとの意見は一致しておらないわけでございます。フランス側はやはり今はド・ゴール政府あとを受けておりますから、一九四一年十二月ということを言っておりますが、日本側としては必ずしもこれは承服できない。しかし少くともここにいろいろ問題がございまして、多少の留保をおかなければいけないと思いますが、フランスのパリを回復し、ド・ゴール政府がフランスの正統政府的な地位をとった一九四四年八月末でございます。そのころからは、やはり日本としては、フランスは日本に対して戦争状態にあったと認めざるを得ないのじゃないかと思うわけでございます。
  183. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではフランスとの関係を藤山さんにはっきり伺っておきますが、今の答弁を聞くと、その点についてはフランスの方と日本と意見の食い違いがある。フランスの方は、昭和十六年の十二月八日と言っておるが、日本の方は、今の答弁を聞いていると、大体四四件の八月、すなわち昭和十九年八月以降戦争状態である、このように日本側の態度をとっているのだ、こういうふうに御答弁になっておりますが、藤山さんもそれでよろしゅうございますか。
  184. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それでよろしいわけでありますから、われわれは交渉に当って、そういうことを念頭に置いて交渉しております。
  185. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは昭和十九年の八月以降が戦争状態である。それ以前は戦争状態ではないというのですね。
  186. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この点については、先ほど法制局長官から申しましたように、フランス側と日本側と見解が異なっております。しかし日本側としては今申し上げたように、アフリカにおけるド・ゴール政権というものとヴィシー政府との問題がありますから、従って正統政府としてド・ゴール政権が樹立されたという時期をもって見るのが適当であると考えております。
  187. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は日本政府の態度を聞いているのです。日本政府としてはどうなんだ、そして昭和十九年の八月以降が戦争状態なら、それ以前は日本政府としては戦争状態でないというのでしょう、どうなんですか。そこの点、イエスかノーか、答弁はあまり長くなくて簡単にやって下さい。時間がないのだから……。
  188. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申したことではっきりしていると思いますが、一九四四年八月、ド・ゴール政権が回復した以後があれでございまして、以前は平和進駐という問題と考えております。
  189. 岡田春夫

    ○岡田委員 今平和進駐と言われたのですが、これは戦争状態ではないと私は言わなければならないと思うのです。そこでいつからそういう態度に変ったのですか。昭和十九年八月から戦争状態であると言っているのだが、こういうのは外務省はいつからそういう態度をきめたのですか。というのは、私伺いますが昭和二十八年にヴェトナムとの間に沈船協定をやっているでしょう。沈船協定のときのあれを思い出してごらんなさい。そこにアジア局長がおられるから——その当時今のアジア局長はいなかったのだけれども沈船協定は今の大野次官です。もしあれだったら大野次官に来てもらったらいいのだけれども、あのときに、昭和二十八年六月二十五日から九月十六日まで両国間において交渉が行われた。その中で一番問題になったのは、これは外務省の世界月報にも書いてあるのだが、戦争被害の概念について討論をし合って、これについてなかなか意見がまとまらなかった。最終的にきまったのは、九月八日に戦争被害の概念についてきまっているのですよ。これに書いてあります。そこで何と言っていますか。きまった点は、昭和十六年十二月八日以降をもって戦争状態とするという意味のことがきまっているのです。それでは、さっきとどういうわけでそういうふうに外務省は変ったのですか。
  190. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 ちょっと補足して申し上げさせていただきたいと思いますが、御承知通り実は戦争の開始の時期がいつであるかという問題は、これもまた非常にむずかしいいろいろな法律問題になりまして、この問題はまさしく法律問題でもありますが、政治的な個々の問題についても考慮しながら考えていかなければならない問題じゃないかというふうにわれわれ考えておる次第でございます。たとえばド・ゴールが亡命しましたときに、十六年十二月八日という宣戦布告の日を言っておりますが、一方ヴィシー政府とはわれわれは平和的な関係を続けておったということもまた事実でございます。それからその後一九四四年になりまして、ド・ゴールがまたパリに復帰た、そしてヴィシーを追っ払ったわけでございます。そこで、それでは実際的に見ますと、それによって実質的にド・ゴール政権が実力を持ってきた。そうすると、そのことを考えて、そのときそこと日本とが戦争状態にあると考えるのが穏当ではないか。そうしますと、そのように戦争状態を考えますときは、ド・ゴール政権の宣戦布告はその日からか、またさかのぼる問題ではないかというふうに、非常にこの点、はっきり申し上げますと、法律的には非常な問題点がたくさんあるところで、なかなか一方的に——一方的と申しますか、一律に割り切ってしまうということは非常に困難だと思うのでございますが、やはりそういう法律的な、まさしく御指摘の通り法律的な点を考えつつ、この実際の交渉というのは考えていかなければならぬかと思っている次第でございます。
  191. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは高橋条約局長答弁は、藤山外務大臣昭和十九年八月以降が戦争状態で、それ以前は平和進駐であるとはっきり答弁をして、条約局長否定されたのですか。そうじゃないでしょう。日本政府の態度であります。
  192. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 補足申し上げたわけでありまして、否定ではございません。
  193. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは平和進駐であるということなんですが、臨時政府ができたときに戦争状態があったとして、そのときに何か戦争宣言でもやったのですか。どうなんですか。藤山さん、いかがです。
  194. 江崎真澄

    江崎委員長 関連して先に一つ政府委員答弁します。
  195. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 別に宣言があったわけではございません。ただド・ゴール政権が一番初め昭和十六年の十二月八日その意思を表明しておりますし、その後たびたび意思を表明している次第でございます。そこでパリに帰りまして以来、その実力を持ってパリに復帰しまして、そこを把握しましてこのような意思が実効を持ってきた。そこでやはりどちらかといえば、この表現が一番妥当じゃないかと思います。
  196. 岡田春夫

    ○岡田委員 私はその論拠については賛成しない。それは国際法的な基礎がないからです。どうしてかといえば、もし昭和十九年の説をとるならば、フランス共和国が国連のいわゆる連合国共同宣言に署名したときをもって連合国の地位を確立したと考えるべきである、とすれば、ここに国際連合のイヤー・ブック、四六年から九年のものがありますが、これはあなたのところにあるはずです。これによると、昭和十九年の十二月十六日になっている。そのとき以降が戦争状態と判断すべきだと思います。林さんどうですか。法律の権威だから一つ。
  197. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど私からお答えいたしましたことと、ただいまの高橋条約局長からお話ししたことで大体尽きると思うのでありますが、結局ド・ゴール政権は、これは御承知のように初めから日本に対して宣戦を布告いたしております。この政権がやはりフランスにおいて中央政府たる地位を獲得した、こういうときに、実際上私としては、そのフランス側の主張を認めざるを得ないだろう、その意向は認めざるを得ないだろう。日本としてはもちろん一回も宣戦布告はやっておりません。やっておりませんけれども、向う側は一九四四年の十二月から宣戦を布告しているわけです。しかしそれはまあ亡命政権時代のことでございますから、日本としてもちろんなかなか話はつきませんけれども、それを一々認める必要もまあないではないか。しかし向うのド・ゴール政府が中央政府の位置を獲得した以降は、日本としてそれ以上のことはなかなか主張できないじゃないか、こういう意味で申し上げておるわけです。
  198. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは林さんもう一つ。十二月八日のときにド・ゴールは亡命政権だというのですか。はっきり言って下さい
  199. 林修三

    ○林(修)政府委員 私もはっきりは記憶いたしておりませんが、あの当時はロンドンにおったはずであります。
  200. 岡田春夫

    ○岡田委員 亡命政権ですか。
  201. 林修三

    ○林(修)政府委員 亡命政権という言葉のよしあしは、これはちょっと言葉の使い方については御容赦願いたいと思いますが、当時ド・ゴール政府は、ロンドンにおいてフランス政府と称していたわけです。これを何と見るかはいろいろ御議論があると思いますが、日本としては、当時フランスにおりましたヴィシー政府交渉したわけでございます。
  202. 岡田春夫

    ○岡田委員 フランス政府なんてそのとき言ってないですよ。あなたフランス政府と言っているけれども、フランス政府なんて言ってませんよ。自由フランス委員会と言っていたんです。政府なんて言ってないですよ。しかもあなたは政府と言うが、亡命政府であるかどうかということはいいとしても、政権であるかどうか。何でもない団体が日本に対して戦争宣言をやったって、そんなものは効力がないのですよ。亡命政権であるかどうかということが問題なのです。その点はどうなのですか。林さんどうですか。林さんが亡命政権と言われたのですから、林さんお答えなさいよ。亡命政権なんですか、どうなんですか。
  203. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは日本側として正統の政府としてはその当時認めておらなかった、そういう意味で、あの当時連合国側とロンドンにおいて活動しておった、その言葉を何と申しますかという問題でございますが、とにかくド・ゴールという政府日本に対して宣戦を布告しておったが、これを何と規定するかという言葉の問題になるわけでございます。日本としてはもちろん当時正統政府として認めておらなかったのでありまして正統政府でないという意味でああいう言葉を使ったのでございます。
  204. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは連合国は亡命政権として認めておったのですが、林さん答えて下さいよ。
  205. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 お答え申し上げます。これは歴史的な問題でございますが、当時フランスから追っ払われまして、ロンドンに亡命——という言葉を使うと何でございますが、ロンドンの方にいて、そこで一つの団体を構成しておったわけでございます。そこでなかなか初めは各国から認められず、各国の関係も自由にいかなかったのでございますが、漸次その実力を得て、その団体が各国に実力を認識されて、最後にはフランスを回復するところの実際的な力を持ってきた。私は、いろいろのあれがございますが、実際的のことを見ますと、たとえばド・ゴールがその意思がずっと続いて、パリに復帰まではその意思を持っていたというように実際的に見た方がよいと思います。
  206. 岡田春夫

    ○岡田委員 林さんの発言の問題だから林さん答弁して下さい。その当時の連合国というものを具体的に制限しましょう。アメリカ、イギリス、ソビエト、この三つの国は昭和十六年の十二月の八日のときに亡命政権として承認していたのですか、どうなんですか、その点はっきりして下さい
  207. 林修三

    ○林(修)政府委員 私ははっきりは記憶しておりませんが、アメリカは少くとも承認しておらなかったと思います。ですから亡命政権という言葉を使ったということのよしあしということになるのでありますが、正統政府としては日本としては認めていなかった。
  208. 岡田春夫

    ○岡田委員 アメリカ、イギリス、ソビエトは……。
  209. 林修三

    ○林(修)政府委員 確かに私の記憶ではアメリカは承認していなかった……。
  210. 岡田春夫

    ○岡田委員 イギリスはどうです。
  211. 林修三

    ○林(修)政府委員 イギリスはちょっと記憶ございません。
  212. 岡田春夫

    ○岡田委員 認めておるのですか。それはどうなんです。
  213. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいま条約局長に聞きますと、イギリスは当時認めておらなかった。
  214. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは亡命政権じゃないじゃないですか。どうですか。ただ団体じゃないですか。団体か何か、あなたの林党という党がロンドンにあって、それが日本と戦争だと言っておるのと大して違いないじゃないですか。どんな違いがあるのですか。林政権という政権をあなたがかりに潜称して、林政権というものが日本と戦争だと言っておるのと違いないじゃないですか。どういうように違うのですか。
  215. 林修三

    ○林(修)政府委員 そういう意味で、先ほどの言葉については私は正統政府じゃないという意味で亡命政権という言葉を使ったわけでございますが、それがいいか悪いかという問題はございますが、しかし少くともただいまのフランスの立場で言うておるわけじゃないのですが、フランス政府が一九四一年十二月八日に日本に宣戦を布告して、日本と戦争状態にあったと現に主張しておるわけでございますが、この主張はフランス側の主張でございまして、日本政府としてはそれを必ずしも認められない。しかし少くとも名実ともにフランスの主人となって、一九四四年八月以降は、これはやはり日本としても承認はしておりませんけれども、あとから考えれば、戦争状態にあったといわざるを得ないだろう、こういうことで先ほどから申し上げたわけであります。
  216. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではもう一点伺いますが、これも法律の専門家だから伺うのですが、あなたの今のあれなら、ずっと前に団体があって、それがいつの間にか正統政府になった、そのときから内閣が認めた、こういう答弁ですね。戦争宣言に対して遡及力はありますか、遡及できますか。たとえば敵対行為のないところに遡及性の行為があったら具体的におっしゃいよ。ユーゴスラビアは第二次世界大戦のときに、当時日本に対日宣言したのだが、その宣言の効力として、ユーゴスラビアは十二月八日以降戦争状態であるということを宣言した。ところがこれは認められなかった。だからユーゴスラビアは桑港条約の調印のときに、参加してない。遡及性があるというならそういう例をおっしゃい。そういう例はないはずだ。
  217. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは私の言うことで私は尽きると思います。結局フランスは連合国の一員といたしまして、もうすでに一九四四年八月には実はド・ゴール政府は連合国の一員として活躍しておったのでございます。それ以後において、日本が今の立場で考えれば、日本は宣戦の布告はしておりませんけれども、戦争状態にあったという向うの主張を日本としてむげにしりぞけるわけにいかない。こういうことを私は申しておるわけであります。
  218. 岡田春夫

    ○岡田委員 この問題ばかりやっていても仕方がないのですが、亡命政権ではないのかあるのか、その点だけはっきりしておいて下さい。十二月八日現在、亡命政権というのは国際法上の概念であるのかないのかわからないけれども戦争したのだといっても困る。それだけははっきりしておいて下さい
  219. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは言葉の使い方の問題であります。当時はまだアメリカ、イギリスは承認しておらなかったと思います。しかし当時そういう団体がおったことは事実でございます。しかし日本としては当時としては、フランスのド・ゴール政府と一九四一年十二月八日から日本と戦争状態にあるということを認めているわけではないのでありまして、日本としては少くとも一九四四年八月以降はこれはどうも向う側の主張を退けるわけにいくまい、こういうことを言っておるわけであります。
  220. 岡田春夫

    ○岡田委員 これで終りますが、あなたがいかに間違っているかということを一点だけ教えておきます。法律の権威だから、あなたは一つ覚えておいて下さい。連合国共同宣言が署名されたのは昭和十七年——一九四二年の一月一日です。このときにはド・ゴール派は入ってないのです。ところがこのときにはベルギー、オランダ、チェコ、ルクセンブルグ、ポーランド、ユーゴスラビア、これは入っておる。これは亡命政権なんです。亡命政権としてオランダも、全部ロンドンにあったのです。亡命政権であっても連合宣言に署名できるのです。それなのにド・ゴール派が署名してないというのは、亡命政権としてまだ承認されてないということなんですよ。いいですか。わかりましたか。もっと具体的に申し上げますと、一九四二年七月の十三日に、イギリスは承認したのです。九月になってアメリカとソビエトが承認したのです。それ以降が亡命政権ですよ。よく覚えておいて下さい。あなたは法律の権威だから、こういう点はわからなくちゃ困る。日本の法律を代表する人なのだから、こういう点はっきりしておいてもらわないと、何が何だかわからないですよ。
  221. 林修三

    ○林(修)政府委員 お言葉を返すようでございますが、亡命政権の言葉の使い方だと思います。結局外国が承認した以後亡命政権と呼ぶか、実際そこにおいて政治活動をしていたものをそう呼ぶかというそ言葉の使い方だと思います。
  222. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは次に進みます。一点だけ伺っておきたいのは、あなたの今の御答弁藤山外務大臣の御答弁によると、——あなたにあまり聞かないからだいぶ退屈らしいから、今度はあなたに聞きますが、あなたのさっきの答弁では、昭和十九年の八月以降がいわゆる交戦状態に入った。それ以前は平和進駐だとお話しになったのだが、ヴィシーとの中立宣言は有効であると見るべきでしょう。どうなんですか。有効じゃないのですか。それまでは有効だったのでしょう。どうなんです。もう一回言いましょう。いいですか。昭和十九年の八月から交戦状態である。それ以前は平和進駐だというが、平和進駐の基礎になっておるのは、ヴィシーのペタン政権が中立宣言をやった、その中立宣言が、この交戦状態までは生きておるということを意味するのでしょう、というのです。
  223. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ヴィシー政府日本とは、ヴィシー政府が倒れる時期まで友好関係にあった。いわゆる中立政権だということです。
  224. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではどんどん進めますが、愛知官房長官に伺いますが、愛知さんのこの間の統一見解によると、特別円の処理協定というものは金融協定に基いた一般的な債権債務である、こういう意味のことを御答弁になっておるのだが、その点はどうでございますか。
  225. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 お答えいたしますが、先ほどの場合の御質疑にも関連しておるかと思いますが、いわゆる仏印の特別円処理のための支払いの問題につきましては、日仏間の開戦の時期、あるいは条約の解釈、あるいは金約款の問題というようなものがいろいろ複雑な、当時申し上げましたように、関係があったわけであります。それらを私の言葉で言えば、彼此勘考してこの支払い方を終戦後におきまして結着をした、こういうことを申し上げたのであります。
  226. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、特別円の性格は一般的な債権債務というものでございますか。これは両銀行間に——横浜正金銀行とインドシナ銀行との間の金融協定に基くいわゆる政府の債権債務ではない、一般的な債権債務という意味の御答弁でございますか、どらですか。
  227. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 その点についてお答えいたしますが、これは日本政府とフランス政府の間の協定に基くものであって、同時に当時の横浜正金銀行とインドシナ銀行との間に協約ができまして、その資格は何であったかというと、インドシナ銀行と横浜正金銀行はそれぞれの政府のエージェントとしての約定をやったのでありますから、この特別円の債務と申しますものは日本としての対外債務である、こういうふうに私は考えております。
  228. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると、日本としての対外債務というのは国家間の条約に基く国家の負うべき債務、このように解釈してもよろしゅうございますか。
  229. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 私は法律の専門家でございませんから、常識的にお答えいたしますが、その通りと思います。
  230. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、国家間の債務ならば、特別円の処理協定について国会の承認をお求めになりませんか。
  231. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 その点につきましては、過日の当委員会におきまして、法制局長官から、あるいはその他の政府委員からお答えいたしました通りでございまして、これは賠償等特別何とかいう会計で処理いたしたのでありますが、これは既存の対外債務の処理でもあります。それからそのとき直ちに年度内に処理ができるものであって、私は今その特別会計の正確な名前をちょっと失念いたしましたが、特別会計の各条項により、あるいはそのときの予算の立て方からいい、法理的に十分の根拠があるものであって、タイの特別円等の取扱いは違えたわけでございますが、結論として国会の承認がこのために必要とするものではない、こういう政府の確定解釈によったものであります。
  232. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは今財政支出の問題についての御説明でございましたね。私が伺っておるのは、日本とフランスの間における国家間の条約に基いて起った債務を、協定という形で結ばれたいわゆる債務の履行ですね。国家の債務の履行については、その協定は当然条約であるべきである、こういう解釈になるのだが、条約については、これは国会の承認を経ておらないのはどういう事情ですかと聞いておるのです。
  233. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 非常に具体的なかつ法理論的な御質疑でございますから、法制局長官から御答弁をいたしたいと思いますが、私が政治的に考えまして、先ほど申しましたように、あえて支出の問題だけでなく、既存の債務の返済であって、そしてその既存の条約に基く返済でございますから、私はその協定自体についても国会の承認は必要でない、こういうふうに解釈しております。
  234. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではこの特別円というものは、国家間の債務であるということが明確になった。そうすると、国家間の債務の場合に、先ほど藤山さんがお話になった、昭和十九年の八月以降は戦争状態にあったのであるから、国家間の債務の中で、十九年八月以降の部分については平和条約十四条の(b)項に従って、これは戦争行為に基くところの、日本の戦争のための経済行為であるから、十四条の(b)項に従って、連合国はこれ以降の間については求償権を放棄するという規定になっているはずです。この点はいかがですか。
  235. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 その点に触れて先ほどお答えしたつもりなんでありますが、日仏間の開戦の時期あるいは平和条約第十四条の解釈、あるいは金約款の問題、こういうようなきわめて複雑な問題がございまして、率直に申しますと、当時のことでありますし、私当事者でないからわかりませんが、私の研究したところによりますると、交渉の話し合い中には、必ずしも日仏間の解釈は一致しなかったようでございます。しかしながら、いずれにいたしましても、この金額が、もし金約款が生きているとするならば、その額はきわめて膨大なものになる。そこで日本政府といたしましては、戦前の債務の処理である、こういう建前によって処理をいたしたわけであります。
  236. 岡田春夫

    ○岡田委員 ですから、国家間の債務であり、戦前の債務であるけれども、事実上戦争状態があった場合には、これは戦争行為によるところの損害じゃないのですか。
  237. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 でありますから、開戦の時期ということで私は表現をいたしたわけであります。それを両方の交渉のいろいろな経緯にかんがみまして、こちらとしては開戦の、つまり——これは常識論でごかんべん願いたいのですが、たとえば大東亜戦争前に起った債務の処理としましても、非常に膨大な額でありますから、これは両方の話し合いで、わが方としては開戦前の債務であるという建前において、前回にも申し上げましたように、比較的少額のところで妥結ができた、こういうふうな経緯になっております。
  238. 岡田春夫

    ○岡田委員 きわめて話がおかしいじゃありませんか。戦争中のものは戦争中。あなたの方で、この交渉の始まる前にフランスに対して、日本外務省は書簡を出していますよ。その書簡は、昭和十六年の十二月以降は戦争状態であったために、その以降におけるところのいわゆる特別円である十三億円については、十四条の(b)項の規定を適用することによって、これを払う必要はないという書簡を出しているじゃないですか。あなたの解釈は違うのですか。それは交渉経過ではないです。日本政府の態度なんです。
  239. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 私は、これはやはり一つの交渉経過における、当時の日本政府の態度である、こう考えております。ただし当時の折衝の経過については、私は当事者でもございませんし、責任者でもございませんから、その辺につきましては政府委員から御説明をお聞き取り願いたいと思います。
  240. 岡田春夫

    ○岡田委員 もう一点愛知さんに伺っておきますが、そうすると、交渉の妥結の結論としては、戦争中のものも、これは戦争行為に基くいわゆる経済行為ではないという結論として協定が結ばれた、そういう協定によって結ばれたということになりますか。
  241. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 そうではないと思います。
  242. 岡田春夫

    ○岡田委員 戦争行為ですか。
  243. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 その点は、従って十四条の解釈等につきましては、必ずしも日本側とフランス側の間に完全に一致した解釈というものはなかったのではないかと思いますが、その点は今も申しましたように、もう少し正確にお聞き取り願いたいと思います。
  244. 岡田春夫

    ○岡田委員 けれども、協定はできたのでしょう。協定ができたときに、意見は食い違ったけれども、協定はできたという話はないじゃないか。その協定はどういうふうに解釈になっていますかということを、私は伺っている。
  245. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 どうも質疑応答の角度が違うように思いますから、あなたの正確に補足なさりたい点につきましては、一つ他の政府委員から答弁をお聞き取り願いたいと思います。
  246. 岡田春夫

    ○岡田委員 私はもっと質問をやらなければならないですが、時間の制約があるので非常に残念ですが、これは協定の中に、条約の中に、軍費と書いてあるじゃありませんか。書いてありますよ。明らかに軍費ですよ。なぜ軍費であるものを軍費でないものとして日本政府は払ったんですか。払うべからざるものを岸内閣は払った。
  247. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 そういう点なら、私が聞き違えました。これはこの前確定解釈として申し上げた通り、これは当時軍費とか、あるいはゴムの代金等として調達せざるを得なかったピアスト貨の調達から発したものであるということを申し上げた通りであります。ちょっと聞き違えましたから……。
  248. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、軍費なら当然戦争行為に基くものとして、十四条の(b)項に該当するんじゃありませんか、違いますか。
  249. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 お答えいたします。その点は日本側が調達せざるを得なかった軍費でありますが、その調達を必要とした軍費の期間がもう一つの要素になるわけであります。
  250. 岡田春夫

    ○岡田委員 期間は。
  251. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 ですから期間は戦争前です。要するに——期間はそれでは先ほどから申しておりますように、もう少し正確に御答弁をお聞き取り願いたいと思いますが、日本とフランスとの間のやはり開戦の時期をいつに見るかという点にも関連しておると思いますが、こちらとしては、その開戦の時期前に実際上の軍費として必要であったものである、こういうふうに解釈をするわけであります。
  252. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、愛知さんが配付した資料を見てごらんなさい。開戦以後においてこれは軍費として出していると書いてあるじゃありませんか。開戦中の戦争の費用ですよ。なぜならば、具体的に申し上げますが、あなたはもう少し——林さんも法律の専門家なんだから、各閣僚に教えなければだめです。今になって教えていたんでは。昭和十八年一月二十日に結ばれた協定によって、初めて軍費の性格が出てるんです。ですから、それ以降の軍費です。従って先ほど言ったように、私は多少藤山さんの解釈についてはまだ疑問があるのだけれども、百歩譲って、藤山さんが正確だとしても、一月二十日以降において戦争状態です。昭和十九年の八月以降における軍費について払ってるんですよ。これは戦争の経費じゃありませんか。そうじゃありませんか。
  253. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから質疑応答を伺っておりますと、多少角度が違っていると思うのでありますが、仏印の特別円の発生した原因は、日本の軍事行動に基くものでございます。日本の軍事行動は、必ずしもこれはフランス、仏印に向けたものではございませんで、北部仏印あるいは南部仏印に日本が進駐した、その作戦上の必要から起った軍費であります。当時御承知のように、ヴィシー政府との間に平和的な進駐で日本は進駐しております。それに伴いまして、特別円協定を結びました。その前に金を払っておりますが、そういうものを結びまして、仏印において必要な軍費を調達し、あるいは仏印において日本の必要とする物資の調達をはかった。これは、その意味において日本は戦争状態に入っておりますけれども、対仏印あるいはフランスの関係では、日本はまだ戦争状態とは考えておらないわけであります。従いまして、この仏印の特別円について払いました金額は、日本としては十四条(b)項の戦前債務に属するものと観念して払っているわけであります。     〔委員長退席、川島(秀)委員長代理着席〕
  254. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういう牽強附会なことを言う。あなたはフランスに対して戦争をやっていないと言うけれども、さっき藤山さんが言ったじゃないの。十九年八月から戦争状態だと言っているじゃないですか。それ以降は当然フランスと戦争状態にあったのだから、仏印と事実問題として戦争状態であり交戦状態であるならば、それは戦費じゃありませんか。あなた、そういう牽強付会なことを言うから、八百とはきょうは言わないけれども、(笑声)そういういいかげんなことを言うのはいかぬですよ。われわれは税金を払っているのだから、国民承知しませんよ。うまいことを言って言葉でだまそうといったって、岸内閣は超過払いを、払わなくてもいいものを払っているのですよ。そういう点を私は言っているのです。払わなくてもいいものをなぜ払うのだと言っているのですよ。
  255. 林修三

    ○林(修)政府委員 詳しいことは他の関係政府委員からお答えいたしますが、私が申し上げますのは決して牽強付会ではございません。先ほどから申し上げましたように、日本とフランスあるいはヴェトナムとの軍事行動が、あるいは戦争行動が始まったといわれるのは、一九四四年八月以降だと申しました。結局、仏印特別円として日本側が払いましたものは、それ以前の日本の仏印における軍費あるいは物資調達の関係の特別円、かように考えております。ただ、その点の解釈については、先ほど官房長官からお話がございました通り、日仏間には必ずしもはっきりした意見の一致はしておりません。しかし、日本側としてはそういう見解のもとにこれは処理したものでございます。
  256. 岡田春夫

    ○岡田委員 林さんがそうおっしゃるならば、もう一度伺いましょう。それ以前に払ったのだというならば、最初に払ったのはいつですか。軍費でいつ払ったのですか。そういう点も立証しないで、ただ言葉だけでごまかしてもだめですよ。これは大蔵大臣に聞いておきましょう。
  257. 林修三

    ○林(修)政府委員 実際に日本の特別円が累積していった過程は、私は一々詳細には存じませんし、これは関係政府委員から必要があればお答えしますが、御承知のように、昭和十五、六年以降仏印特別円協定は結ばれております。しかし、それ以降仏印において日本が使った軍費あるいは物資調達の代金が累積して、かの特別円になっております。そこで、今おっしゃいますように、戦争中の債務ではないかとおっしゃる点は、少くとも一九四四年八月以降ではないか。それ以前は対フランスとの関係においては日本は戦前のものである。もちろんこれはシナ事変あるいは大東亜戦争という戦争を遂行する過程において生じた問題でございます。しかし、対フランスの関係におきましてはそれは戦前のものである、かように解釈すべきであると思います。
  258. 岡田春夫

    ○岡田委員 それが牽強付会だと言うのですよ。具体的な例で言いましょう。大蔵省のこの担当局長はどなたですか。具体的に伺いましょう。昭和十九年の八月以降において仏印に軍事行動は一切なかったというのですか。どうなんです。
  259. 林修三

    ○林(修)政府委員 私の申し上げた答弁はそのこととは全然関係がないのであります。関係がないことを言っておりまして、これは実際の軍事行動を——仏印のフランス軍と日本が交戦したかどうか、これは外務省が御存じだと思いますが、私が申しました戦前という意味は、一九四四年八月以前の特別円について言っているわけでございます。
  260. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはそうでしょう。戦争前のことを私聞いているのじゃないのです。意識的に、私が聞いているのと違ったことをあなたは答えているのですよ。大蔵省に伺いますが、大蔵省は昭和二十八年の当時において特別円——これはヴェトナムばかりでなくて、タイ国もあるいはイタリアも特別円、こういうものの統一見解として、大蔵省としてはどうですか、これは十四条(b)項の適用を受けるものという方針を決定して、外務省と見解の相違だといってずいぶんいろいろやったんじゃないですか。こういう間における経過を大蔵省関係で一つ御報告を願いたいと思います。
  261. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。ただいまいろいろお話がございました通り交渉の過程等におきましては、開戦日がいつであるかという議論もあったことは事実でございますが、最終的な決定は先ほど来政府側からお答え申し上げている通りでございます。  仏印特別円につきましては、ただいま岡田委員の御質問は、十九年八月二十五日以後、しからばそういう取りきめに基く勘定のオペレーションはなかったかというような御趣旨のように拝聴いたしておるのでございますが、どこまでも、支払いましたものはこの十九年八月二十五日以前の、すなわち平和条約十八条に定める戦前債務についてのみ払ったわけでありまして、これが第一点。  次に、タイ国との関係でございますが、御承知のように、タイ国との関係は終始友好関係にございましたので、この点につきましては平和条約云々の問題はございません。これらにつきまして、いずれも国際的に、また平和条約の条項から見まして適正なる支払いをいたしたわけであります。
  262. 岡田春夫

    ○岡田委員 この問題ばかりやっていたのではあれですが、もっと続いて大蔵大臣に伺いますが、この特別円の支払いは十三億円と米ドル四十八万ドル、これなんですよ。これを合せて計算すると十六億七千万円という支払いにならないのですよ。十四億七千万円なんですよ。二億円が割増しになっているのはどういうわけですか。二億円わけのわからないものが加わっているのですが、これはどういう根拠なんですか。
  263. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは主として金約款の問題がありまして、先ほどからいろいろお話がありましたが、たとえば、開戦日をいつにとるにしても、戦前の債務は数十億の巨額に上るわけであります。それらのすべての点を総合いたしまして十五億円と四十八万ドルというので解決したわけであります。
  264. 岡田春夫

    ○岡田委員 金約款はそれじゃ認めたのですか。
  265. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは非常にむずかしい問題で、むろんこれは裁判まで持っていかなくてはならぬ問題でありますが、しかし、当時の情勢として、この金約款が国際裁判まで持っていったときに必ず勝つだけの確信が持てない。そうして、戦前の債務になればなるほど金約款がつくという解釈のもとに、そういうような事態をすべて勘案をして、最も日本に有利な解決方法をとったわけであります。
  266. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、金約款には、おそらくこれはその当時フランスから国際司法裁判所に出すぞとおどかされて二億円を理由もないのにプラスしたのですよ。四十八万ドルに十三億円、それに根拠のない二億円を加えて十六億七千万円をフランスに払ったのです。
  267. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いやしくも政府が根拠のない金を払ったというようなことが速記録に載ることははなはだ遺憾でありますから、根拠のないような金は一文も払っていないことを明らかにいたしておきたいと思います。
  268. 岡田春夫

    ○岡田委員 根拠があると言っても、根拠がないじゃありませんか。金約款を使ったのならば、金約款だとお話しになればいいし、金約款でないというようないわくであって金約款でないならば、それじゃ二億円はどうやって払われたか。そういう政治的妥協の産物として払った、こういうお話ですか。
  269. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 すべてこういうふうな戦争中のいろいろな問題、たとえば、今の議論を見ても、開戦日が幾つも幾つも考えられるというような複雑な状況、異常な状態のときに生じましたいろいろな債務、そういうものの解決というものはそう簡単ではない。これは、具体的な関係から見ましても、いろいろな条件をよく考慮して、そうしてわが方に最も有利な解決をする、これが正しい解決なんで、あなたがおっしゃるように、やらなくてもいい金は絶対にやっていません。それは国民に対しても申しわけないことであると思います。
  270. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういうことをおっしゃるならば、さっき言った戦争中以降のものは軍費であって、それを払った政府がいいかげんな支払いをしたということは問題になるじゃありませんか。この前岸総理大臣答弁では、経済的な損害もベトナム賠償には含む、こういう答弁をされているのならば、経済的な損害は十四条(b)項において特別円に関する限りは払ら必要のないものを払っているじゃないか。それを払っておきながら、そういうことを言うのは迷惑だと言ったって、事実そうじゃありませんか。大蔵省の方で戦争以降のものについてはこれははっきりしていますよ。戦争以降のものについては、十四条の(b)項で、これは払う必要はないという態度をとってきたんじゃありませんか。それを、今になって、外交交渉の結論としてそうなったからといって、それがどうだこうだと言うのはおかしいじゃありませんか。
  271. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私どもあくまで戦前の債務という考え方で、これを払っておるのでありますが、この既往の債務についてどういうところで最終的に支払額をきめて、そして双方で妥結するかということは、これはやはり妥結する以上はある程度、双方の言い分を考えなくては妥結はできません。そういう意味で日本に最も有利な、たとえば賠償の支払いを考える場合におきましても、やはり双方の言い分は対立するのでありますが、それはある程度厳格に一応きめるというような考え方で、これは既往の債務についての問題でありますが、そういうふうな関係から私としては日本に最も有利な金額にきまった、かように考えます。
  272. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではもう時間もありませんので、まだ問題はあるのですけれども一萬田さんには別の機会に伺います。  藤山さんにもう一度戻りますが、この前の二月八日の藤山さんの答弁によると、現在はヴェトナム賠償の交渉では、南ヴェトナムを正当政府として交渉しているけれども、「その後いろいろヴェトナム国内の事情が変っております。しかしジュネーヴの巨頭会談におきましても、将来これが統一されることになっておりますので、日本が外方関係を持っております政府と折衝することは、将来統一政府ができましたときにも引き継がれるものと私どもは考えております。」とこう御答弁になっておりますね。それじゃこの統一ということについて、統一されることになっているという限りにおいて、ジュネーヴ協定を認めているんでしょう。
  273. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ジュネーヴ協定については日本は参加はいたしておりませんけれども、それが指針になっておりますことを認めます。
  274. 岡田春夫

    ○岡田委員 ジュネーヴの休戦協定の十四条には、南の政府というものはあくまでも南に関する——文書を正確に読んでもいいけれども、時間がないから簡単にしますが、ヴェトナムの統一を実現する総選挙が行われるまでに——いいですか、南の方は南の民事行政の遂行を行うということになっておる。これは政府じゃないのですよ。ジュネーヴ協定においては南ヴェトナムは民事行政を行う機関なんですよ。これはお認めにならざるを得ないでしょう、ジュネーヴ協定をお認めになるなら。どうなんですか、これは。
  275. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもは賠償の相手としてサンフランシスコ条約に調印しております南ヴェトナムを対象にしているわけであります。将来南北が統一される、あるいは単一の政府ができるというジュネーヴ協定の精神はそこにあると思うのであります。単一政府ができますれば、どちらが主体政府かということは別で、単一政府ができればそれに引き継がれる、こう考えております。
  276. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや私の伺ったのは違うのだけれども、時間がないからどんどん進みますが、ジュネーヴ協定では政府ではないといっているんです。民事行政機関だといっているんですよ。十四条ですよ。あなたは政府々々と言っているけれども、それには民事行政機関だといっているんですが、これはどうなんですということを伺っているんですよ。どうなんです。政府なんですか、民事行政機関なんですか、どっちなんですか。英語でいうとはっきり違うんです。
  277. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 サンフフソシスコ条約に調印している以上は、私どもは政府考えております。
  278. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではジュネーヴ協定は認めないのですか。
  279. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 私から補足させていただきます。ジュネーヴの文書は、日本は参加していませんから、実はあれに法的に拘束されないということは御承知通りでございますけれども、ただいま御指摘の通り、一つの国際文書としてはやはり尊重さるべき文書だと思っております。  それからただいま御指摘の点は、これはヴェトナムの休戦協定の問題じゃないかと思っております。ジュネーヴの宣言ではなくて休戦協定の問題でございまして、休戦協定は、この協定の性質上やはり両方の相争っている団体に対する休戦という問題でございますから、あるいはそういうふうな文字も使っているかと思いますけれども、それはあくまでも休戦協定、両方の戦闘行為の停止という問題ではないかと思っております。
  280. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはまだいろいろ私は意見がありますけれども、これをやっていると時間がないからこれは外務委員会に譲ります。  そこで一点これは外務大臣に重要な点だけ伺っておきますが、それじゃ統一されたヴェトナム政府にこれは継承されるとおっしゃるが、統一されたヴェトナム政府は、かつて南だけと交渉したそういう協定を破棄する権限があるのだが、破棄された場合どうするのですか。破棄する権限はないとおっしゃいますか。
  281. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ヴェトナムとはただいま交渉をやっておるわけでありまして、どういうふうに最終的に決定するかは今のところわかりません。
  282. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは違う。統一された政府ができた場合に、その統一政府はかつての南ヴェトナムとの間における協定を破棄することができるのですよ。これはもう当然の常識なんです。破棄した場合に、今協定したのはむだじゃありませんか。その点はどうですかということを伺っておる。そういう法解釈はできないんですか、できるでしょう。
  283. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、交渉をいたしておるわけでありまして、今後南ヴェトナム政府との交渉の最終的決定においてそういう問題は判断していく問題だと思います。
  284. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういうことを言っているのではない。それじゃ林さんか高橋さんにまた法律解釈として伺いましょう。統一された政府がかつての領土の一部分に関する政府との協定を守らなければならないという法的義務がどこにあるかというのです。破棄することができるじゃないか。できないのですか、できるのですか。
  285. 板垣修

    ○板垣政府委員 お答えをいたします。ヴェトナムの統一につきましては日本政府としましても非常に関心を持っておるわけでございますが、これがいかなる形で統一されるかはもちろん将来のことで予断はできませんけれども、おそらく私どもの想像するところによりますれば、やはり統一されるとしますれば、自由なる選挙によって和平的に統一されると思います。従って御指摘の通り必ずしも統一したヴェトナム政府が、南ヴェトナム政府が行なった賠償交渉を必ず破棄するとは考えられないと思います。
  286. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は戦争状態において破棄するとかなんとか言っていませんよ、板垣さん。平和的な話し合いで統一選挙をやるのです。そんなことは私知っていますよ。平和的な話し合いにおいても、賠償問題については破棄する可能性があるから言っておるのです。これは、もう時間がありませんから、多分に意見を交えて、藤山さんによく聞いておいていただきたいのだが、私は去年の七月四日にハノイにおいてホー・チミン主席と会見している。ホー・チミン主席の意見によれば、ヴェトナムにおける日本が与えた戦争損害に対する賠償請求権は、ホー・チミン主席としては持っているとわれわれは考えている。しかし、もし日本の国が統一されたヴェトナムに対して国交回復を行う場合においては、過去の問題についでは放棄する意思があるということをはっきりと言い切っているのです。だから板垣さんが今言ったように、平和的な状態で、たとえばホー・チミン政権が統一された政府としてできた場合に、これが賠償交渉は要らないという、破棄する可能性はあるじゃありませんか。そういう点についてあなた方は、そういう事情はないといって、なぜ賠償交渉を急ぐのですか。賠償の交渉なんか急ぐ必要ないじゃありませんか。賠償は放棄してもいいといっている。請求権はあるけれども、ホー・チミン主席は放棄してもいいといっている。それなのに、何がためにあなたは賠償交渉を急いでいるのですか。しかもそればかりじゃない。沈船協定のときには、日本側の妥結したのはたった二百二十五区刀ドルじゃないか。その後において今ヴェトナムから難くせをつけられて交渉しているのは何ぼです、四千万ドルあるいは五千万ドルじゃありませんか。こんな金を払う場合に、北ヴェトナムにおける戦争損害分まで含めて南と交渉する、何のためにそんな必要があるか、何のためにこんな交渉をする必要があるのですか。しかも特別円との二重関係があるかもしれないといわれているときに、何のためにわれわれの税金を使って、政府は南ヴェトナム賠償を払いたいのですか。払いたい必要はないじゃないか。税金ならばなるべく払わないようにするのが当りまえじゃありませんか。統一後に交渉を引き延ばしなさいよ。沈船協定は仮調印されたけれども、ヴェトナムが破棄したのですよ。今度は南ヴェトナムとの交渉は、日本交渉に応じない態度をとったらいいじゃありませんか。国民の税金は、国民は疑惑をもって見ていますよ。こういうことは世論が許しませんよ。あなたはなぜヴェトナムの交渉を急ぐのですか、その理由を一つ言って下さい
  287. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ヴェトナムの賠償につきましては過去数年問題になっております。ヴェトナム側からの申し入れもあります。従ってそれらに対して交渉をいたすことは当然のことだと思うのです。従って最終的に、われわれとしてはもちろん国民の税金をもって払うわけでありますから、十分慎重な態度をもってやらなければならない、そういう意味において交渉をいたすのであります。
  288. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは答弁にならないのですよ。藤山さん、いいですか。そういうように北の方は請求権があるけれども放棄すると言っている。それなのにあなたは今交渉しているのは、南の政府と北の分の賠償の分まで交渉している。しかも沈船協定関係から見ても、あなたがさっき答弁しているように、戦争状態の時期の問題についてもあいまいしごくではありませんか。そういうものをなぜ賠償の交渉をする必要があるかというのです。あなたは今ここでうまく答弁をのがれたって国民承知しませんよ。世論はこれを見のがさないですよ。われわれの税金を岸内閣はうまいこと言ってそして賠償に金を払ったと言いますよ。これははっきりしている。あなた方はなぜ急いでいるか。理由を言いましょうか。はっきりしている。南ヴェトナム政府が、もし賠償交渉をやらないとICAの五千万ドルを打ち切るといっておどかされているからでしょう。どうです。五千万ドルを打ち切ると言っているということは、アメリカICA資金によって、日本の死の商人である戦争屋の兵器を南ヴェトナムが五千万ドル買うと言っているんだ。去年の実績は五千万ドルなんだ。この五千万ドルを打ち切るぞと言われるから、藤山さんにも関係のないわけではない、植村という経団連の兵器関係の担当の責任者交渉に行っているじゃありませんか。ICAを打ち切られるのがこわいから賠償交渉をやっているじゃないですか。死の商人のために賠償交渉をやっているじゃありませんか。戦争の挑発のためにやっているじゃありませんか。軍事ブロックを作るためにやっているじゃありませんか。そのためにあなたは急いでおるのです。軍事ブロックを作るために国民の税金を払おうとしているのですよ。こういうことで国民が納得するかというのですよ。どうなのです。
  289. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いれいれの御説を伺いましたけれども、ICAの資金が打ち切られるためにやるというようなことを全然考えておりません。
  290. 岡田春夫

    ○岡田委員 ともかくこれで終りますが、あなたはどう言おうと国民——これはあなたの選挙に関係しますよ。(笑声)あなたの選挙のところでは、新聞の記事を見たら、あれは戦争の死の商人の手先になっておれらの税金を使ったんだといって、こんな藤山なんか当選させられないと言いますよ。あなたの選挙のことを考えても、これはやめた方がいいですよ。あなた自身一つ選挙運動をやるなら、そういうことも考えた方がいいと思うのだが、何はともあれ、賠償交渉を一時中断されることを私は強く希望しますが、この点について最後の御意見を伺って、私は終ります。
  291. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもといたしましてはできるだけ賠償交渉を円満に片づけるように、また日本のためになるように考え交渉をいたすつもりであります。
  292. 岡田春夫

    ○岡田委員 これで終ります。私はこの点についてまだまだ不満な点がたくさんあります。岸総理大臣にも出ていただいて、岸総理大臣発言した問題について伺わなければならぬ問題がだいぶあるわけであります。岸さんはきょうこれへ出ておりませんから、岸さんへの質問並びにその他不十分な点については発言を留保いたしまして、きょうはこれで終ります。
  293. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員長代理 田原春次君。
  294. 田原春次

    ○田原委員 私は一般質問の最後でございますが、今までこの委員会で論議されなかった問題、質疑応答のなかった問題及び一応論議はされましたが、深く追及されなかった問題等をここに集めまして、大体三つに分けましてそれを各大臣に聞きたいと思うのです。  第一点は、平和共存に関する問題で、スポーツ、映画、芸能その他文化協定に関する各省の意見を聞きたいと思います。これは外務大臣、大蔵大臣、文部大臣、農林大臣、運輸大臣、郵政大臣、それから法務大臣、これに関連がありますから、各大臣がそろうまで話は進められぬかもしれません。それから第二点は独立完成の問題でありまして、これは防衛庁長官に主としてお尋ねいたしたいと思います。第三点は国内問題でありますが、これを二つに分けまして、焦げつき債権の処理の問題等でございまして、これは主として通産大臣に聞きたいと思います。それからもし時間があれば第三の第二といたしまして、人口問題については経済企画庁長官、それから副総理大臣通産大臣、厚生大臣、文部大臣に聞くわけであります。これだけであります。しかし質問はなるべく簡単にいたします。
  295. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員長代理 経済企画庁長官と厚生大臣は見えておりませんが、御所望の大臣あとは全部出席しております。
  296. 田原春次

    ○田原委員 御承知通りことしの一月二十七日にアメリカとソビエトとの間に文化協定成立したのであります。これは昨年の十月二十八日から両国の代表において慎重に相談を進められ、そうしてこの一月二十七日に協定成立いたしましたことは御存じの通りであります。これは十月二十八日というところが問題でありまして、その月の十月四日には人口衛星が飛んでおり、世界の全人民が非常な心配をしておったのでありますが、その月の二十八日から資本主義の代表国と言われるアメリカと共産主義の経験を持っておるソビエト社会主義共和国連邦とが文化協定の話を進め、そうしてラジオ、テレビ、あるいは映画の上映等の交換をすること、そのほか科学、技術、文化、教育等の問題、広範な協定をやりまして、向う二カ年間この協定を続けるということであります。しかもこの協定の最後にはこういう言葉があります。この協定は米ソ両国民間の相互理解を高める重要な第一歩と見られるものであり、その実施によって両国の関係が著しく改善されるとともに国際間の緊張が緩和されることを心から期待するものである、こういう文章をもって結んでありまして、非常に意義の深いものであると思う。ついてはこの協定内容によりまして、逐次関係各省大臣にお尋ねいたしたい。この米ソの協定ができたということは、日本といたしまして、従来話題になっておりますが、実現進行しておりません日本とソビエトとの間における文化協定の問題、それから国交は回復しておりませんけれども、長い数千年の同文同種の関係にあります中華人民共和国と日本との文化協定の問題、私はこれらを各大臣にお尋ねいたしたいと思うのでございます。  まず外務大臣にお尋ねいたしますが、米ソ文化協定成立の精神をさらに拡張して、国際緊張を緩和するためにも役に立つと思うのでありますが、日本とソビエトとの間において文化協定を結ぶ計画はないか、話は進んでおるかどうか、これをこの機会に一つ発表してもらいたいと思います。
  297. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 文化交流というものが国際の親善、理解に役立ちますことは申すまでもないところであります。従いまして、平和的な世界を庶幾する日本としては、またそれを支持するのであります。しかも二国間の友好関係を増進する意味におきましても文化協定が必要であるわけでありまして、現在でもすでに十一の文化協定を締結いたしておるわけであります。今後日本といたしましてはできるだけ多くの国と機会をとらえつつ文化協定を作っていくことに努力して参りたいと思うわけでありますが、ソ連に対しましても文化協定を締結する考え方を持っております。
  298. 田原春次

    ○田原委員 外務大臣がそういうお気持で日ソ間の文化協定の締結に努力されるということは、われわれとしても非常に期待するところであります。その場合米ソ文化協定内容が参考になることと思いますので、関係大臣にこれに関連いたしましてお尋ねいたしたいと思います。  それは非常に長文でありますから全部は読めませんが、たとえば農業に関しましては米国とソ連との双方で農業専門家代表団を交換して、お互いに相手の国の農業状況を知りたいという計画で、これは今年と来年の二カ年にわたってソ連の方からは九つの代表団がアメリカに入ります。農業機械化、牧畜、獣医学、混合食糧、綿花栽培、農業土木及び電化、園芸、水理工学(灌漑)及び開拓、林業製材等がソ連側からアメリカに行くのであります。今度は同じく今年、来年の二カ年に米国からは農作物研究、獣医学、土壌及び水源の利用、農業機械化、農業経済、綿花栽培及び植物生理学、羊の飼育、農業病虫害の生物学的除去、林業製材等の九つの代表団を作りましてソ連に行くわけでございます。もし順調に日ソ間の文化協定が進む場合に、農林省はやはりこういう面について、日ソ間における農業専門家の相互交換視察をやることが当然日本のためになると思いますがどういう考えでございますか、この際農林省の方針も明らかにしておいてもらいたい。
  299. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農業の技術等の交流は好ましいことだと思っておりますが、まだ締結の時期に至っておりませんから今申し上げるわけには参りませんけれども、文化協定が締結される際には技術的に慎重に考慮したい、こう考えております。
  300. 田原春次

    ○田原委員 その精神からいけばもちろん農林省の所管であります漁業専門家の相互交換、視察等はできるわけですね。いかがですか。
  301. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そういうことも出てくると思いますので、これまたその時期に検討したいと思っております。
  302. 田原春次

    ○田原委員 次は医学の問題でありますが、これは多分文部省になりますか、やはりアメリカソ連の間におきまして、向う二カ年間に二週間ないし六週間の期間をもちまして八組の医学代表団を交換してお互いに調査することになっております。新抗生物質、微生物学、神経系の生理学及び薬学、放射線生物学、生化学、新陳代謝病、内分泌学、社会及び産業衛生等にわたって相互に相手の事情を調べるわけでありますが、先ほどの農林大臣の御答弁と同様、日ソ文化協定成立すれば、文部省としても当然こういう医学代表団の相互交換はされるであろうと思いますが、いかがでありますか。
  303. 松永東

    ○松永国務大臣 仰せの通りそうした文化協定ができますと、ぜひ一つそういう交流をしてお互いの共栄共存に役立たせたいというふうに考えております。
  304. 田原春次

    ○田原委員 同じくこれも文部大臣じゃないかと思うのですけれども、米ソの協定の例にならいますと、作家、作曲家、画家及び彫刻家等がこれまた数組向う二カ年にわたりまして米ソ双方が招待視察するようになっておりますが、これももちろん賛成だろうと思いますが。
  305. 松永東

    ○松永国務大臣 仰せのような点は、これはもうどことでもそうした文化協定を締結いたしまして、お互いに裨益するようにしなければならぬと考えております。
  306. 田原春次

    ○田原委員 次はこれは映画の問題でありますが、日本は映画はやはり輸入面は大蔵省のようでありますが、製作面は文部省だと思います。前の例にならいまして、これまた米ソの協定内容によりますと、平等の原則と相互に受諾可能な支払い条件のもとに両国の映画業者が映画の売買を行うことになっております。これは貿易面であるから、通産省は、文化協定ができた場合に、映画の相互交換に対しまして、平等の原則でもっと積極的に進めるというようなことは当然と思いますが、いかがでございますか。
  307. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 映画の輸入につきましては大蔵省が所管しておりますが、今われわれも外貨の面で所管をしておるわけであります。ただいまお話通り、交流は非常にけっこうだと思っております。
  308. 田原春次

    ○田原委員 次はスポーツですね、スポーツに関しましては、これも向う二カ年に、アメリカソ連の間に、少くとも協定成立当時に八組のスポーツ選手の交換が発表になっております。ことしは四月にアメリカからバスケット・ボール・チームがソ連に行きます。それから来年は今度はソ連からバスケット・ボール・チームがアメリカに行きます。ことしの二月には米国にソ連のレスリング選手が来るわけです。来年の七月には、ソ連でこの両国のレスリング選手の試合がある。ことしの八月にはトラック、フィールドの試合がソ連で両国間に行われる。来年は米国におけるトラック、フィールドの試合が交換的にある。ことしは五月にアメリカで両国の重量あげ選手の試合があります。それから三月から四月にかけては、ソ連でカナダ式のホッケー試合が行われることになっております。もちろん文化協定成立いたしますと、日本ソ連との間においても——過去においても多少ケース・バイ・ケースでやっておるようでありましたけれども、一定の計画のもとにスポーツ選手の交流があるものと思いますが、その点はどうでございましょう。これは文部大臣に伺います。
  309. 松永東

    ○松永国務大臣 御説の通り、文化協定ができ上りますれば、ぜひ全世界の国々とそうした交流をいたしまして、お互いに裨益したいというふうに考えております。
  310. 田原春次

    ○田原委員 文部大臣は、前からお答えに全世界とか、どこの国とでもと言っておるが、私は日ソ文化協定成立した際におけることを聞いておるのであります。もちろんあなたのお答えは、私の質問の趣旨のように、ソ連と文化協定を結んだ場合には、当然ソ連との間のいろいろな交換をやる、こういうことですね。  次は、航空協定の問題ですね。これもアメリカソ連との間には直接航空路が開設される準備が進められておるようでございます。日本も当然文化協定の中に含めるか、もしくは単独に日ソ航空路開設相互協定のごときものを結んで、お互いに利益を得るというのが当然と思いますが、運輸大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  311. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 まず航空協定の締結が必要であると思います。それから進めて参らなければならぬと思いますが、現在ソ連、中国は国際民間航空機構の中に入っておりませんので、今日の航空交通管制であるとか、あるいは飛行機はどういうものを使用しておるかというようなことはちっとまだわからぬので、この辺の情報の交換ということが一番必要であろうと思います。それから距離の関係もございまして、これはやはり航空利益という点から考えなければなりませんから、これは順を追うてそういう方向に努めたいと思うております。
  312. 田原春次

    ○田原委員 次は郵政大臣にお尋ねいたします。この米ソ相互文化協定の第二条にラジオ及びテレビ放送の交換というのがありまして、相当長い規定がある。第一は科学、技術、工業、農業、教育、公衆衛生及びスポーツに関するラジオ及びテレビ放送の交換を手配する。第二は古典音楽、民謡、現代音楽の磁気テープ及びレコードの交換並びに音楽、文学、演劇などに関するテレビ用フィルムの交換もやる、こういうことなんです。そうして続いてラジオ及びテレビ番組の定期的交換も手配する。第三は米ソ両国間の相互理解を強化し、友好関係を発展させる目的のため、両当事国は双方の間で合意を見ることあるべき国際政治問題の討議に当てられた放送の交換を時々組織的に準備することに同意する。もちろん交換の細目は作業段階で決定する。第四は両当事国は録音及びテレビ放送設備の見本並びにその技術的明細書の交換についての取りきめを行う。第五はラジオ及びテレビ番組作成、録音技術、ラジオ及びテレビ・スタジオの設備、フイルム、録音テープ、テープ録音機及びレコードの製造を視察するために、相互に専門家の視察団を交換する、こういうふうになっております。日本においても、もとより協定ができれば、郵政省としてはこのくらいのことは当然であると思うのですが、どういうお考えですか。
  313. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。日ソの間にそのような協定ができれば、当然アメリカソ連との間に結ばれておるように、番組その他の交換等ができると思います。なおこの国会に提案いたしております放送法の改正にも、NHKをして外国の放送会社に対しても、番組の提供をすることができる道を開いておりますので、協定ができれば自然そういう道が開けるということを申し上げておきます。
  314. 田原春次

    ○田原委員 次はスポーツ行政一般に関する質問でありますが、これは今度の予算にも、文部省に体育局が用意されておりまして、通過すれば四月から発足することと思います。私どもも原則において別に異論はありませんが、ただし体育局といいますと、教育面を重視するような感じがするのであります。むしろこれはスポーツ局または競技局というような、少し範囲を広めていくべきではないか。どちらかというと、娯楽ないし興味等をそそるような方向に進むべきではないかと思うのです。そうして今並立しております多くのアマチュア・スポーツほか、セミ・プロ、ノン・プロあるいはプロ・スポーツ等を一括して包括的に進んではどうか。このことはイギリス、ドイツ、フランス、ロシヤ、ポーランド、イタリアその他の各国とも大体そういう方角にいっておりまして、包括して一元行政でやっておるのです。問題は、御承知のように競輪、オートレース等は通産省所管となっておる。それから競馬は農林省の所管となっておる。モーターボートレースは運輸省所管になっておりまして、いずれもスポーツというよりか、ばくちの方に重点を置いているような印象で、われわれはこれに反対しておるのであります。せっかくできた設備でもありますので、これの内容を改善いたしまして、スポーツ行政を一元化し、見て楽しめるプロ・スポーツとして、むしろ見るべきものではないかと思うのです。従って体育局の発足に当り、これら関係各省にわたっておる各種のプロ・スポーツを一元化してその局の中に入れるべきものと思うのでありますが、そこまでの計画を持って発足するものであるかどうか、文部大臣に聞いておきたいと思います。
  315. 松永東

    ○松永国務大臣 御趣旨の競輪とか競馬とか、それからボートレース、オートレース、そういういろいろな競技が他方面の省に関係いたしております。しかも半面において賭博、営利ですか、一時の僥幸を夢みて、それがために非常な弊害をもたらしているということも承知いたしております。しかしながらこれは長い間いろいろな伝統と歴史を持っておりますばかりでなく、それがやはり諸方面に有利に行われているということも承知いたしております。しかしながらスポーツの一元化という点から、何とかできれば御説のようにしたいというふうに考えております。
  316. 田原春次

    ○田原委員 何とかできればお説のようにしたいといいますが、それはまことに消極的な考え方であって、熱意の足らぬことである。むろん各省とも、自分のところで管理しておりますそういうプロ・スポーツは、なかなか容易なことでは放したくないと思うのです。けれどもこれは、せっかくスポーツ行政が局として発足する以上は、積極的に話を進めて一元化した方が、たとえばいろいろなスケジュールを作る場合においても、またその他一元化することによる利益は非常に大きいと思うのです。これについて通産大臣にお尋ねいたしますが、競輪やオートレースは自転車工業の振興というようなことで始めたのでありますけれども、自転車の工業の振興はもう相当進んだと思う。従ってこれを純スポーツ、プロ・スポーツに返すという意味で、あなたの所管になっております二つのプロ・スポーツを文部省の体育局に統合することに進んで賛成されてはいかがだろうと思うのでありますが、どうでありますか。
  317. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 通産省において競輪を所管いたしております。そうして自転車工業の振興ということでずいぶん寄与いたしておるのでありますが、さらにもっと広い意味で機械工業全般に対する振興費に経費を使っております。     〔川崎(秀)委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味からいたしますと、また自転車工業自身の振興ということとあわせて考えますと、現在の機構そのままでこれを最も明朗化していくということで、昨年も法律を改正いたしましてやって参ったのであります。ただいまのところ通産省に所管いたしておりますのが適当だと考えております。
  318. 田原春次

    ○田原委員 スポーツの面で特にわれわれが心配しておりますのは、この五月に東京で第三回アジア・オリンピックと普通いわれますアジア競技大会があります。そしてアジア二十万国から千二百名の選手が来ますし、これに伴って大ぜいのニュース、ラジオあるいは見物客等も来ることと思うのであります。独立後の日本のこの立ち直った姿を見せる非常ないい機会だと思うのであります。ところが一つの問題は、中国のチームが来ないことと、それから朝鮮のチームの来れないという問題でございます。これは体育協会を中心としてアジア・オリンピック組織委員会が学識経験者によって作られております。オリンピック・ルールに従って一国一チームということでやっておるのであります。現に国際オリンピック・ルールには即応いたしますけれども、またアジアはアジアということで、地域的に作る大会たはその地域だけの独得の味も加味されるわけです。そこで、韓国と朝鮮とは不幸にして統一民族が二つに割れており、中国と台湾も割れておるが、これは政治上の問題であって、スポーツまでがこれに巻き込まれてはならない。従って何とか一国一チームにして招待すべきものではなかろうかと思うのであります。文部省は所管でありますし、相当の補助を出してアジア・オリンピック大会をやるのでありますから、中国チームの一本化、南北朝鮮の統一による一本化を進んであっせんする用意ができておるか、その間の経過等も聞かしていただきたいと思うのであります。
  319. 松永東

    ○松永国務大臣 御説の点につきましては、現に本年の五月挙行せられるアジア・スポーツ大会あたりでも、アジア地域の各国が集まって大いに競技を進めてもらいたいというふうに念願をいたしております。しかしながら今御指摘になりました中共の問題は、これはIOCのメンバーではありますけれども、アジア競技連盟のメンバーではございません。従って加盟の手続をとりませんと、アジア競技大会に出ることができないようにルールの上でなっているそうであります。従って招請状を出さなかったということを聞いております。さらにまた北鮮の国内オリンピック委員会は、現在国際オリンピック委員会から国際的活動をする資格を認められていないのです。ですから現状のままではオリンピック大会にもアジア競技大会にも参加することができないような状態にある。従って北鮮としてはまずIOCから資格を認められるための手続を進める必要がある。そのことにつきましては現在日本体育協会内にあるアジア競技連盟事務局からもいろいろ助言をしておるような次第であります。私どもといたしましては、この日本体育協会内のそうした運動に助言いたしまして、何とか一つ全アジアの人々が集まって競技ができるようにしたいというふうに考えます。
  320. 田原春次

    ○田原委員 それは大臣、実はあまり御存じないと思うのです。大臣を責める意味ではないけれども経過は多少違っている。昨年の九月にブルガリアのソフィアでIOCすなわち国際オリンピック委員会が開かれまして、日本体育協会からも東会長が出席した。その席で朝鮮民主主義人民共和国の参加が問題となりまして、その際朝鮮のNOC、国内オリンピック委員会が国内活動をその名においてやることを認められたわけです。それから一つの条件がついて国際オリンピックにも出場できるという決定がなされておるのです。この経過は体育協会に出ております。これは別にあなたに質問するわけじゃない、経過を話しているのです。そこでこれには南朝鮮と北朝鮮とが一本になって出席することを条件として認めるという一つの条件がついておりますけれども、国際オリンピックにも、その地域的な主催形式になるアジア・オリンピックにも、その条件さえ満たされるならば出席してよろしいということが認められておる。これはぜひはっきり御了承願っておきたいと思うのです。  そこで問題は一本化の努力をだれがするかということです。そういう決定はブルガリアでされても、それだけではそのままになってしまう。従って主催国である日本がこの際韓国のスポーツ代表と朝鮮のスポーツ代表を東京に呼びまして、三者で懇談をして一本化の機会を発見する努力をすべきだと思う。意見が合わなければしょうがないけれども、これはできると思う。それをおやりになってはいかがであろうかというのであります。現にこのことにつきましては、すでに今日までのニュースによりますと、四つの国際団体から日本の体育協会に勧告の電報が来ておる。第一には国際バレーボール連盟、第二には国際自転車競技連盟、第三には国際テニス連盟。文部大臣、あなたの得意とするテニスの方も勧告をいたしておる。第四は国際陸上競技連盟からも来ております。内容は相当はっきりし、かつ強いものであります。たとえば国際バレーボール連盟からは、朝鮮民主主義人民共和国のスポーツ委員会からアジア大会に参加したいという申し込みをバレーボール連盟は受けた、これが参加できるように要望するということが日本側の準備委員会に来ておる。また中国の問題もついでに申し上げますと、国際テニス連盟には中国の方が入っておって台湾は入ってない。そこで、アジア大会には中国の方が参加資格があるのであって、台湾は参加資格はないということをテニス連監から言うてきておる。第三の国際自転車競技連盟では、もっと親切に、一つの民族が二つの団体として争うことは認められないから、わが自転車競技連盟には北京側——中華人民共和国が加入しておるので、台湾側は認めない、中国側を参加させなさいという強い勧告が来ておる。第四の国際陸上競技連盟、これも、本部はロンドンでありますが、これには北京側も台湾側も入っておるのです。しかしその勧告は、台湾は台湾として出なさい、台湾が中国を名乗ることはよろしくない、なぜならば、われわれの競技連盟には北京側も入っておるから、という意味の電報が来ておるわけですね。でありますから、五月のアジア・オリンピック大会は、歴史的なものであり、日本の多くの人々も待っており、アジア各国の人々も待っておる非常な祭典なんですから、北鮮と韓国に対して、単に電報や文書の往復や陳情だけの努力では足らないと思う。進んで日本側で熱情をもって、一本になっておやりなさいというだけの親切と努力をもって進めるべきだと思う。なぜならば、先ほど私が申し上げました米ソ間の文化協定さえ結ばれておる。あの非常に対立しておる共産主義と資本主義の両陣営もスポーツによって国際間の緊張を緩和しましょうという、先ほど読んだような協定ができておる。これは実現には相当時間はかかります。しかし、これは相当大きな歴史的なものだと思う。そこへ持ってきて解釈すれば解釈できるような電報も来ておるし、IOCの決定もあるのですから、問題は文部省なり外務省なりの関係諸省で親切に努力されれば実現するのじゃないか。朝鮮民衆は日本にも約百万くらいおりますが、みんな見たい、一国に偏したくないのですから、日本側努力を待っていると思うのです。松永さん、どうでしょう、あなたの御在任中にたまたまアジア・オリンピック大会が東京で開かれます。この次はどこになるかわかりませんし、次に日本にくるのも何年か後でありましょう。この大きな民族の祭典に際して、政治的に割れております韓国と朝鮮も、この際スポーツだけは一緒にする努力がほしい。これはやっている例があります。ドイツをごらんなさい。東ドイツと西ドイツは割れております。自分たちの民族の意思でなく割れた。しかしながら、スポーツ面においては一緒に出ます。私は四年くらい前に、ルーマニアのブカレストで、ヨーロッパ・スポーツ競技大会のときにたまたま通り合せて見ておったのですが、出ます。同じ百メートルなら百メートルに東ドイツも西ドイツもどっちも一緒に出ます。それからメルボルンのオリンピックの大会にも出ます。それじゃ国旗はどっちの国旗を立てるかといいますと、一番になった者が東ドイツだったら東ドイツの国旗を出すのです。それから二番が西ドイツなら西ドイツの国旗を出す。西ドイツが一番なら、西ドイツの国旗を出します。国歌はどっちの国歌を歌うかというと、ドイツに関しては東ドイツも西ドイツも国歌が違うのですから、国歌だけはやめてベートーベンの名曲を歌う。(笑声)これはいかにもユーモアがあって、さすがはドイツだと思ったのであります。ちゃんとやっております。そのくらいのことをやっておる。だからもうちょっと努力をすれば韓国と北鮮との統一問題も、スポーツが取り持つ縁でうまくいくのじゃないかと思うのであります。絶好の機会でありますから、たまたまこうやって四つの国際競技連盟からも勧告電報が来ておるのですから、あなたが決心されればできるのじゃないかと思うのですが、あなたの御決心を伺いたい。
  321. 松永東

    ○松永国務大臣 スポーツを愛好する一人といたしまして、田原君のお話しごくごもっともだと思います。ただ仰せになりました通り、南鮮と北鮮とは同一の条件として参加するということになっております。さらに中共。アジア連盟に加入いたしておりませんので招請をしなかった、こういうのが実情であります。しかし先ほども申し上げました通り、体育協会が骨を折りまして、いろいろ動きかけてやっております。従って今御指摘の点もありますので、体育協会とよく相談を重ねまして、さらに一つ努力してみたいというふうに考えます。
  322. 田原春次

    ○田原委員 さすがやはり松永文部大臣で、近来にない名答弁だと思って、深く感謝をし、また期待をいたします。ちょうど五月でありますから、ただ答弁だけがうまいということでなくて、事務的に進めてもらわなければならぬと思うのです。それには方法としまして、韓国の方は東京に代表部がありますから、それで代表されて意見が聞かれますので、北鮮側からスポーツ委員長もしくは通訳二名くらいを、この打ち合せのためだけに臨時に一週間ほど東京に呼ばれたらどうかと思うのです。そうしてともかくにらみ合っている南北を、スポーツ関係だけでも歩み寄らせる努力をする、こういうふうに進めてもらいたい。従来朝鮮民主主義人民共和国からは赤十字の方が来るとしても、どこかに困難があって来れない。あるいは原水爆禁止大会に向うの文部大臣の韓雪野さんという日本大学を出たりっぱな方ですが、来ると言ったのにこれも来れなかった。もうそういうことを繰り返さずに、この機会にアジア・オリンピック出場に関する打ち合せに代表を呼ばれたらどうかと思うのですが、あなたのお考えはどうでしょう。
  323. 松永東

    ○松永国務大臣 この点については、私の気持としては先ほど申し上げた通りでございますが、いろいろ国際情勢その他の関係がありますので、さっき申し上げた通り、今まで体育協会がやっておりましたその経緯等を承わりました上で、一つ善処していきたいというふうに考えます。
  324. 田原春次

    ○田原委員 入国問題になりますと、やはり一番問題は法務省です。特に入国管理局考え方なので、これは文部省あたりが相当やりましてもなかなか了解点に達しない場合が多いのです。この機会に私は法務大臣もしくはその代理の方に聞いておきたいのでございますが、このアジア・オリンピックの朝鮮側の参加に関する打ち合せに限り滞在一週間くらいで呼ぶということを、体育協会やあるいはその他の団体並びに文部省が決意された場合、それをそれでもいかぬと言われるかどうか。これは法務省の方の入管関係の見解を私は聞いておきたいと思う。単に聞くというよりか、イエスというような意味の御返事を一つ聞きたいと思う。
  325. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 そういう申し出がありましたら、関係機関がございますので、よく協議しました上でなければきめかねると思います。
  326. 田原春次

    ○田原委員 これでスポーツに関する質問を終ります。私はアジア・オリンピック大会が契機となって、南北朝鮮の統一の機会を早めるようにするために、きょうは法務大臣来ておりませんけれども、文部大臣、法務大臣、必要であれば総理大臣等でよく相談されるようにお願いいたしまして、スポーツ問題の質問は終ります。  次は映画の問題であります。先ほどの米ソ文化協定でも映画を大規模に——私は読まなかったけれども、映画週間、試写会、あるいは劇映画、科学映画、医学映画、スポーツ映画等のこまかい規定まであるのです。大蔵大臣に去年私は聞いたのです。その前も聞きましたが、そうすると何か二行ぐらいの答弁ではっきりしておらないのですが、日本の映画政策というのは一言にして言うと、金を払ってアメリカ文化を押しつけられているような格好なんです。これはこの際私の手に入っております資料だけで申し上げてみましても、外国から来る映画の中で年間に長篇物が百八十五本来るのですけれども、このうちの百二十四本というのはアメリカのものなのです。その他は六十本しか入ってこないのです。しかも大体ピストル・チャンバラあるいはキス。たいていしまいがキスなんです。それからはなはだしきは、西部劇ですとインデアンをまるで悪党みたいにやっつけて、いわゆるホワイト・シュプレマシーというか、白人優越という考えをもってインデアンをみな殺す。これを有色人種たる日本人が金を払って見て拍手喝采しているなんということは、実際悲しいことだと思う。優秀なアメリカ映画もありますから、それを入れることはよろしいと思うのですが、大体足りないという外貨の中で、去年一年間に外国から来る映画に払ったドルは七百三十万ドルなのです。その中長篇物で四百八十五万ドル、二、三巻の短篇物が三十五万ドル、ニュース映画が四十五万ドル、合計五百六十五万ドルという金をアメリカのみに払っておるのです。もちろんわれわれはニュースは希望いたします。また科学技術等の短篇映画もいいでしょう。しかしながら何ゆえにアメリカ本位に作ってある長篇映画を百二十四本も入れなければならないか。日本には多くの映画会社がありまして、それぞれ——日本の映画はあまりよくありませんけれども、こんなものを入れないで、もっと日本の映画を日本人が多く見るようにしたらいいと思う。あなたも御旅行になって知っておると思いますが、外国では、たとえばソビエトに例をとりましょう。ソビエトにはフランスの映画やアメリカの映画も来ておりますが、スーパー・インポーズでないのです。英語を全部のけまして、ロシヤ語で発音する。フランスの映画もロシヤ語で発音します。ちょうど口が合うようにしてやる。ところが日本ではアメリカの映画が来ましても英語で発音してスーパー・インポーズで日本語の文字を入れておる。これはあまりにも態度が卑屈だと思うのです。なぜ一体そうかということをいつも聞くのです。一つは大蔵省が大体持っておるというのが間違いだと思うのです。ドルの輸出入関係で大蔵省が映画を持っておるなんというのはおかしい。おかしいけれども、持っておるならば、いっそのことドルの見地からまた大蔵省がやれる余地もある。なぜならば五百六十五万ドルも外貨を捨てる必要はありませんから、大蔵省としては映画を管理されるならば、少くともドルを使わないような方法があると思う。それは昨年私が言いましたように、バーター制度、日本の映画を一本買う相手から映画を買う、こうすればドルは全然払わぬで済むのです。もちろん日本の映画を買いたくない国もあるでしょう。そういうところからはこちらは買わなくていいのだ。そういうふうにしますと、日本映画を外国に出すためには、国際性を持ったりっぱな映画を作りますから、その上でどちらもバーター・ベースでやればドルは一銭も使わぬでいい。必要なニュース映画だけを入れてくればいい。あれほどドルのことをやかましく言う一萬田さんが、不思議に映画だけは実に乱費する。どうもその気持が私はわからぬ。あなたは何ゆえに年間七百三十万ドルもドルを払って外国の映画を今なお入れておるか。特にアメリカの映画を全体の金額で言うて約七割、本数で言うて約八割くらい依然として入れておるが、この点を明らかにしてもらいたい。
  327. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 アメリカ映画を無理して入れておるとか、あるいはまた押しつけられておるかの印象を与えておるようでありますが、実は私もよく調べてみましたところが、戦前の実績などをとってみますと、アメリカの映画が非常に多い。やっぱり八〇%以上占めております。それで戦後におきまして、もしこれをグローバルにしまして自由に入れさせますと、今の割当以上にアメリカの映画が入るおそれは多分にある。むろんこれを統制しまして、こういう映画以外は入れないということにすればまた別個です。それから今同じようにバーターといいますか、自分のところの映画を買うてくれるところだけからしか入れない。これでいくならこれはもうおそらく外国の映画は少いものになるでしょうと思います。それはこれから一つの意見として考えられるのでありますが、しかし今のところそこまでいっておりません。これはどちらかというと一種の社会的な状況——アメリカの映画は今世界各国同じような状況で、これは要するに私の考えではやはり国民の嗜好というところからもきておる。映画会社にしても国民が見ないようなものを入れても、収支が償うものではないのですから入れない。やはりアメリカの映画というものを国民が好むところに問題点があると私は思う。こういう点について深い検討を加える必要がある、かように考えます。今のところ私はむしろ今の程度割当でいった方がアメリカ映画は入り方が少い、グローバルにしたら多い、こう思います。
  328. 田原春次

    ○田原委員 戦前からの実績と言いますが、これはそうではないのです。マッカーサーの占領中にCIEという機関がありまして、ここで勝手にクォーター制度をきめてどんどん入れた。そうしてアメリカの映画だけを普及した。それがいよいよ独立するというときになりまして、普通にこれを吉田・シーボルト協定といわれておりますが、当時の吉田外務大臣とそれからアメリカ大使館のシーボルト氏との間に協定を結びまして、今日の日本に入っている外国映画を実績として認めろ。今日までは占領中であったからたくさんアメリカものが入っておった。それを独立後も既存の権利として認めさせたところに大きな悲劇があるわけなんです。だからこれを改めたらよろしい、これはドルの見地から改めたらできると思う。  それから第二点は、アメリカの映画はおもしろいからというのでありますが、アメリカのUSIAという機関があることは御承知でしょう。これが年に一億四千万ドルの金を使って、主として海外の自分のところの従属国か属国に対してアメリカの宣伝をするのです。第一にはアメリカヘの信頼を高めていく。第二は共産主義の悪口を繰り返し繰り返しやる。第三点は中立主義をけなす。この三大方針のもとに、USIAなりUSISの活動は、日本においても二十数カ所のアメリカ文化センターを持っておるのです。そうしてまず憲法改正の方の機運を作る。それから英語教育を普及させる。それからアメリカ映画を買わせてアメリカナイズさせる。スポーツでも盛んにアメリカのスポーツを普及するようにする。これに東京だけでも年間に約一億円からの金を使っておるのです。結局はそれにうまうまと乗っておるのです。でありますから、この辺できゅっと切り離して、表面上は私はバーター・べースでいいと思うのです。第一南米のブラジルはバーター・ベースです。日本から容易に映画は行きません。あれほど四十万も日本人がおるのに入らない。なぜかというとブラジルの映画を一本買う国から、その国の作った映画を向うが買うというのですから、日本とブラジル間においては、少くとも日本の映画が百本以上行かなければならないにもかかわらず、年に十本以下です。それは要するにブラジル国内で映画に関する厳重なバーター方針を立てているからです。私は、日本は映画に関しまして、全世界に向って日本の映画を買うところから入る映画だけでよろしい、科学技術映画やニュース映画は別といたしまして、長編ものに関してはもうこの辺で切りかえた方がよろしいと思うのです。そのことがほんとうに思想的にも、または教育の面におきましても、独立心というものが高まってくるのじゃないか、こう考えるのに、うまうまと独立直前のシーボルト・吉田協定に乗り、その後何らの改訂をなさず、血の出るような外貨を七百三十万ドルも使うということは、もはや国民は許せないと思うのです。私はあなたにこれは引き続き三年間質問していますが、いつも答弁を適当な時期に打ち切られてしまって実績が一つも上っていませんから、この機会に、来年度は、外国映画の輸入に関する従来ありました専門家の審議会でなくて、むしろ労働組合であるとか、あるいは婦人団体であるとか、学者の団体等から委員を出しまして、本式に映画独立国策を立つべきものじゃないかと思うのです。どうでしょう、この辺で決心されたらいかがでしょう。
  329. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 映画は、今日社会教育として非常に重大な役割りを果しているわけでありますから、私の方は主として為替管理の面から、外貨割当の上からこの映画を扱っておるのでありますが、しかしこの映画の質というものも十分考えなくてはなりません。今映画の優秀なものにボーナスを出して、新しくまた新たな映画を入れていいという権利も与えるというようなことで、幾らか質にも関心を払っておるのでありますが、しかしなおそういう点については文部省あたりとも十分相談いたします。また映画の質という点になってくれば、映画の輸入の仕方についても、あるいはまた輸入の地域についても、検討を加える必要も当然起ってくるだろうと思って、お説もありますので今後研究いたしたいと思っております。
  330. 田原春次

    ○田原委員 少しも要領を得ませんが、この内閣の性格として、アメリカには気がねをするという人々の作られておる内閣ではなかなか容易なことではないでしょう。しかしながら国民がこれを希望しておりまするから、私はそれを伝えるだけであります。以上をもって第一の質問を終ります。  次は独立完成の問題で、主として防衛庁長官に聞きたいのであります。「防衛庁の現況」というパンフレットから引いてお尋ねするのでありますが、防衛庁設置法第四条には「わが国の平和と独立を守り、」と書いてあるのですが、この独立ということはどこからの独立を意味するのですか、防衛大臣にお尋ねしたい。
  331. 津島壽一

    ○津島国務大臣 一国としての独立でございます。それ以外に別に意味はございません。
  332. 江崎真澄

    江崎委員長 田原君に申し上げますが、石井副総理はちょっと渉外関係で時間が迫っておるそうですが、よろしゅうございますか。
  333. 田原春次

    ○田原委員 重要な問題がありますから……。
  334. 江崎真澄

    江崎委員長 それではけっこうです。それをちょっとお含みの上で御質問願いたいと思います。
  335. 田原春次

    ○田原委員 私は現在の日本の状況は、独立ではなくてアメリカに従属していると見るのです。それは特に防衛庁においてその形がはなはだしいと見るのです。たとえば防衛庁の武器はアメリカ側のものか、もしくはアメリカから指導されて日本で作っているものなんです。なぜ一体ソ連の武器を使わぬかということが言えるのです。アメリカのものだけ使うということは、結局アメリカの従属国なんです。それから顧問団もアメリカの将校の顧問団を置いておるのです。なぜ一体中国の顧問団を置かぬかということです。置いておらぬのです。それから研修留学と称して、これもアメリカだけに行くのです。なぜ一体ハンガリーやブルガリアへ行かぬかと言っておるのです。全く片寄っているのです。それから服装もアメリカの兵隊と同じ服装なんです。第一、防衛庁の幕僚長の記章に至るまで同じなんです。ただ違うところは、背が低くて、顔の色が黄色くて、足が短いだけなんです。あとはみな同じですよ。服装までみな一しょにしなくてもよかろうと思うのですが……。次は用語もほとんど英語の翻訳にすぎないということです。この点から見ますと独立とは思えません。なお階級を見ましても、陸将、陸将補、海将、海将補、空将、空将補というのがあって、それから上がないのです。陸将というのは大体中将です。陸将補というのは昔でいうと少将なんです。大将がないのです。大将は極東空軍司令官。その下に入るものだから、大将は作らせないのです。中将までです。中将以下は気をつけというような格好で並べさせられているだけなんです。だから私は、自衛隊設置法第四条に、わが国の平和と独立を守るのにあらずして、アメリカの平和と繁栄を守るとはっきり書いた方が国民には納得がいくと思います。あなたはいつまでも日本が独立しているというふうに言われますけれども、私はそうは思わない。これは私の解釈であります。なお、特にひどいのは海上部隊の問題です。昨年秋私は観艦式と称するのによばれて行ってみました。見ますと、千七、八百トンの昔流でいう駆逐艦です。だんだんずっと奥まで行って調べてみますと、しまいにはこれは護衛艦なんですね。何を護衛するかといったら、輸送船を護衛するというのです。どこの輸送船を護衛するかというと、アメリカのハワイから東京までの間を護衛するのだそうです。あるいはフイリピンから神戸までを護衛するのだそうです。すなわち独立して自分が戦闘する力はあまりにもないので、アメリカから運んでくる部隊を自己の危険において——護衛艦というものは一番先にやられるのですから、自己の危険において千九百トンぐらいな小さな船で、アメリカの部隊をただ護衛するというだけなんですね。どこに一体独立の事実がありますか。しかも自衛隊法の第九十九条によりますと「海上における機雷その他の爆発性の危険物の除去及びこれらの処理を行うものとする。」こういうのです。戦闘するというのじゃないのです。アメリカの軍艦が行くのにじゃまになるから機雷をのけて歩けというわけなんです。これではどこに独立の事実がありますか。私はそう解釈しているのだが、あなたはあくまで独立と言われますか。もう一度はっきり聞かしてもらいたい。
  336. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまいろいろ御意見も交えての御質問でございました。今の自衛隊の装備または武器等においてアメリカのものが供与されて、これを持っているということは否定もしません。しかしながら自衛隊がほんの数年間にある一定限度の、国を守る体制を作り、しかも国力、国情に応じて、その限度においてやっていこう、これは民生の安定、経済の発展といったようなこと、並びに財政事情というものを勘案しなければいかぬわけでございまして、われわれはそういった面も考慮して、一定の方針のもとに今後の国防整備計画を立てているわけであります。だんだん今おっしゃったような、武装その他においてもまた戦艦においても国内で作るという方針に向ってやっておるわけであります。飛行機についても同様でございます。でありますから、ただ今の状態で、相互援助協定によってやっている部分が独立を害するということであれば——世界の諸国において国防上の相互の援助ということが独立を害しているという観念だとは私は思っておりませんが、しかしながら今度はそういった田原委員の御意見もあり、われわれは財政の許す限り自立の防衛ということに向っておるわけでございまして、どうぞそういった意味に御了解を願いたいと思います。
  337. 田原春次

    ○田原委員 防衛はどこからの侵略を防衛するかということです。これを見ますと、あなたの方で作られた自衛隊法第三条は、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛するというのです。そうすると、直接侵略は武力でくる直接の侵略ですね。間接侵略はいつの間にかきておる侵略です。アメリカが今日本に横須賀やその他を借りておる。国内に七百カ所の飛行基地その他を持っておるのは、一体侵略ではないかということです。私は間接侵略ではないかと思う。当時の戦争を日本から先に仕向けさせるようにしておいて、数年の後についに日本に進駐してきた。それからずっと居すわりです。戦闘行為の継続で進駐してきて、いろいろ上手なことは言いますけれども、最後まで同じところにおるのです。従ってこれは間接侵略だと思う。このアメリカの間接侵略に対して、自衛隊法第三条によって、直接侵略及び間接侵略に対してわが国を防衛するわけですから、これこそ独立の軍隊でなければなりませんが、いつ一体わが光栄ある自衛隊では、アメリカの駐留軍に対して、早く帰れ、ヤンキー・ゴー・ホームと言ったか。その事実をあなたから聞かしていただきたい。
  338. 津島壽一

    ○津島国務大臣 自衛隊法における直接侵略とは、外国からくる侵略であります。また間接は国内の内部における暴動その他の治安を害する行動に対して、自衛隊はこれを防止し、これを排撃する、こういう趣旨でできておるわけであります。
  339. 田原春次

    ○田原委員 これはちょっと問題なんです。間接侵略は外国勢力ではなくて国内だけの勢力である。そうすると侵略手段の進化ということは大体お気づきにならぬと思う。最近の侵略方法は、相手をやっつけるといって武力でくるのは少い。いろいろな方法で占領とか、相互の協定とか、安全協定とかいってくるわけです。現在の姿からいけば、私はアメリカの駐留軍に対してこそ日本は確たる決心を持たなければならぬと思っておる。これが第一点。  第二点は、しからば現在の自衛隊が一朝事ある場合——どういう場合が起るか別といたしまして、その侵略に対抗し得るかということです。これはあなたが防衛長官になる前のケースでありますが、一昨年だったと思いますが、私は内閣委員会で質問して、ある数字を聞いた。それは簡単に言いますと、内部からの扇動によって思想的にとうてい自衛隊の隊員に適しないというのが、六百人ばかり出て除籍されておる。しかしそれは氷山の一角でありまして、深く中に入っておる。しかも共産党の指導勢力は相当強いのです。これらの人々は一朝事あるときには、回れ右して銃を内部に向けよということを盛んに教育しておる。だから間接侵略やその他に役に立つというのは大きな間違いでありまして、今の自衛隊はいざ事があったら役に立たぬと思う。またそう言っております。私どもが会う人もみなそう言っておる。自分は今仕事がないから失業救済で入っておるのであって、もしも戦争があったらまっ先に降参しますよというようなことを言っておりますから、これは多数ではないでしょうけれども、少くともそういう傾向があります。従って自衛隊を頼むというのはあなたのお人よしの考えでありまして、こんなに多額の金を使って養っておりましても、どちらを向いていくかわからない者が出てくる。その一例といたしまして、一昨年の夏、北海道の帯広で高級将校の参謀演習があった。その参謀演習をするときまった翌日、共産党の出しております赤い星という自衛隊専門にふれ込みます新聞に、何月何日何時から北海道の帯広で高級将校の作戦参謀演習があるということが発表になって、自衛隊の連中がみな敬服した。陸将、陸将補、一佐、二佐、三佐、この辺に相当しっかりした共産党員がおるということは、それでわかるわけだ。従いまして直接侵略には間に合わぬが、間接侵略はやりますと言ったって、間接侵略はどちらからくるかわからない。私は自衛隊は今のような格好で教育すれば費用を使うだけで、ちっとも役に立たぬと思いますが、あなたはどうお考えですか。
  340. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。今御引用になりました自衛隊内部のあるいは危険の思想であるとか、そういったようなお話は、国会においてもあったと思いますが、今の御引用になったケースは、外部の者が部隊内部に働きかけた件数、あるいはいろいろなパンフレットを送ってくるとか、そういうものでございまして、自衛隊自身がそういったような思想を持ち、あるいはいろいろな不都合なことをするという件数ないしは人でないと思います。私は最近の自衛隊の実情を見まして、規律も厳正で士気も上り、りっぱにやっていけるということを確信いたしております。
  341. 田原春次

    ○田原委員 自衛隊問題についてはこの程度にしておきます。  次は国内問題で二、三ありまして、これはぜひ明らかにしておきたい。第一は、インドネシアそれから最近は韓国、アルゼンチン等に対する焦げつき債権の問題ですね。このうちでインドネシアの焦げつき債権は、賠償で日本政府は肩がわりいたしました。私がこの際承知したいことは、一体インドネシアの焦げつき債権を持つに至らしめた商社の名前、どの会社とどの会社が、そういうことをやったかということを公表してもらいたいと思う。
  342. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまお話しの焦げつき債権は、商社がやったというふうにお考えになっておるようでありますが、そうではありませんで、御承知のように輸出をいたします際に、これは外為会計で買い上げて、そしてそれがインドネシアなり外国に貿易債権としてくるわけです。焦げつきになる債権とかそういうような意味合いのものではなしに、結局オープン・アカウントの制度をとっておりますので、そのときそのときによってバランスしない。それがすでに焦げついた問題があります。しかしその後においては輸出入の調整をいたしておりまして、先般もお話のありました、この六月末にオープン・アカウントを向うでやめて参りまして、その際にこの輸出権を持っております二千万ドルくらいのものについて、まず中小企業の輸出権を持っておりますもの全額四百六十万ドルでありましたかを認め、さらに今度は向う輸入と見合いをいたしまして四百六十万ドル。これは平均で輸出権を切りまして、そうして輸出をさせた、こういうようなことであります。従ってどの商社がどうこういうというわけではありません。ただその当時のおもな輸出商社につきましては、すでにこの委員会に名前を掲げて差し出しておりまするから、それをごらん願いたいと思います。
  343. 田原春次

    ○田原委員 私はやはり貿易をやるからには、貿易商社があって、そうして見込みで輸入したりあるいは三社、三社と三角貿易のようにやるのでありまして、商社の名が出ないのはおかしいと思う。先ほど通産大臣の言われましたように、商社の名前がここに出ております。それには、アルゼンチンの焦げつきを来たした商社は三菱商事、岩井産業、三井物産、日商、木下商店、伊藤忠、第一物産、兼松、安宅産業、野崎産業、東棉、丸紅、それからインドネシアの焦げつきを来たすに至った商行為をやったのは、オープン・アカウントであろうと、これを扱ったのは商社でありまして、三菱商事、伊藤忠、第一物産、丸紅、大綿商事、日綿実業、野村貿易、東洋棉花、兼松、又一、関西貿易、日商このほかに明らかに第三国人の会社と思われるのに泰豊、それからラムチャンド、香港太平洋、華東連合、こういうのがある。  それから韓国の焦げつきを来たらしました商社は三菱商事、第一物産、住友商事、江商、丸紅飯田、伊藤忠、堺商事、日立製作所、岩崎商事、八洲竹材、薩摩木材、東芝商事、日本紙業。韓国、アルゼンチン、インドネシアともみな出ますのは三菱商事、江商、第一物産、丸紅、伊藤忠、日綿実業、いずれも有力な商社でございまして、自由民主党の中には多くの友人を持っておられます。しかも経団連の会長であります石坂さんの関係されました東芝商事もこの中に入っておる、これは注意すべき事実だと思うのです。もちろん商社が初めから政府に損をかけようと思ってやったこととは思いませんけれども、やっておるうちに、ついそうなった。自分のところでインドネシアにかりに百万ドルのものを売って、これが正常に取引決済できれば一割の十万ドルもうける。そのもうけをつけて売っておる。それが焦げついてしまって、今度は利益ぐるみ全部政府にめんどう見てくれという格好になった。あなたは答えられておるが、結果においてはそうなっておる。商社が損せずに国が損しておる。私がこれを特に出すゆえんのものは、今後の貿易のあり方を考え直してはどうかということです。すなわち戦時中はそのときの必要でもありましたが、十三くらいの貿易公団があった。そこでこうやって国に迷惑をかけるようなものがたくさん出るならば、貿易の国家管理を強化する、貿易国営に持っていく、もしくは貿易公団方式ではどうかということです。現在エジプトに対してもまだ問題になっておるのでありますが、こういう例が次々に出てきますと、特に商社に親切な自由民主党の内閣におかれては、よしそれはめんどうを見てやろう、こういうことになると、じゃ次の選挙には幾らかサービスいたしましょうということになっておもしろからぬことになることを心配する。ですから思い切って国家がめんどうを見るのはこの程度にいたしまして、今後は原材料貿易公団とか食糧貿易公団とかいうような、窓口一本にしてはどうか。窓口一本論というのは、経済企画庁長官の河野一郎氏もちょっと出して、また引っ込めたようでありますが、何で引っ込めたかどうか知りませんが、通産大臣か経済企画庁長官に、今後の日本の貿易のあり方について、従来通り貿易商社の併立を認めるか、約三千あります。北京だけでも七十社行っております。香港に至っては百社近く行っておりまして、どんどん値段を切っておるから、相手から全然なめられております。これはまことに残念なことと思います。そこで貿易商社のあり方について、この政府は何を考えるのか。今まで通りどんどん商売をやらして、損をしたらそのつど国がめんどう見るのか、この基本的な方針について通産大臣と経済企画庁長官の見解をこの機会に聞かしていただきたい。
  344. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 オープン・アカウントをとっております関係で、特に焦げつきのことが今まであったのでありますが、これはできるだけそういうものは整理していきたい、かように考えております。と申しまして、貿易の円滑な運営を考えますと、清算勘定をとった方が有利の場合もあるのでございまして、これは具体的に考えていかなければなりません。そしてその国その国の状態を考えながら、焦げつきにならぬように収支のバランスをとるということで、考えていかなければなりません。しかし貿易を国営式にやっていくことが、われわれいいと思っておりません。これはやはりある程度の競争をさせ、また海外において努力をしてもらわなければなりません。と申しまして、いわゆる過当競争が行われることは好ましくありません。それをいかに調節するかにつきましては、従来から御承知のように、輸出入取引法というようなものを作りまして、それによってできるだけ過当競争を避けておるのでありますが、ただいまお話しのように、商社がかなり多く、ある面には多く行き過ぎている、と申しまして、またわれわれの出てもらいたいところには出ておらぬ、こういうような状態があります。それにつきましては、最近いろいろ海外支店の規制ということに留意をいたしまして、極力自主的に、また本社同士の話し合いによって、多過ぎるところは規制する、また出てもらいたいところにはわれわれの方で励奨して出てもらう、こういうような方法をとっておるわけであります。窓口の一本化ということで直ちに公団方式をとることは、われわれはかえって能率を阻害する、かように考えております。
  345. 江崎真澄

    江崎委員長 田原君に申し上げますが、あと五分程度しかありませんので、結論にお入り願いたいと思います。
  346. 河野密

    河野国務大臣 通産大臣と同意見でございます。
  347. 田原春次

    ○田原委員 それでは、まだいろいろありますが、最後に一問だけ、石井副総理にお尋ねしておきましょう。それは東京に偏在する人口に対する対策が、この予算に見られておらない。首都圏整備委員会なんかありますけれども、これは東京付近にある人口をどうするかという問題でなくて、ここにある設備をどうするかということです。私はこれは人口の地方分散、もしくは転入の防止ということを考えなければいかぬ、ひとりこれを東京都庁や首都圏整備委員会等にまかしておくべきものじゃないと思う。時間が制約されておりますので、質問の資料は用意しておりますが、たとえば東京には国立大学が十三校、学生が約二万おる。私立大学が七十五校ありまして、約三十万おるのです。短期大学が五十校あって十万、そのほかパーマ学校、英語学校とか入れますと、学生が約四十万おるのです。この中で東京の学生は約一割でありまして、九割は地方から来ております。一人が平均一万円使うと見なければいけません。そうすると月々に約四十億、年間に四百八十億という金が、地方から東京に入っております。たとえば地方の学校の校長をやっておる人が、地方で働いて子供を東京にやっておりますと、地方の月給を東京に送ってやらなければいけない。ひとりこれだけではありません。各種の病院あるいはその他政府で支弁する、維持管理する施設について、東京に絶対置かなければならぬものと、地方に置いてもかまわぬものとがある。ごっちゃになって、東京が八百五十万という人口になっておる。このままでいきますと、あと数年すれば一千万の人口になるといわれております。この辺で東京の人口の地方分散——ちっともそういうじみな政策はこの内閣に見ることができませんけれども、だから聞いてもむだかもしれないが、何か対策を立てるべきじゃないかという点が第一点。  第二点は、中央官庁があまりにも権力を持っておるために、地方から上京陳情する者が非常に多い。市町村会議員、市町村長あるいは農業委員、あるいははなはだしきは保育所の予算陳情等も来ます。大体年に十万の人が来る。一人が二万円平均使うとしまして、約二百億円という金は、地方の陳情のために東京で使われておる。たとえば溜池を一つ作るにいたしましても、農林省まで来なければいけない。小学校の校舎を増築するについても、文部省まで来なければいけない。保育所の予算の増額も来なければいけない。こういうふうに何でもかでも東京中心になるために、ますます地方は財政的にも窮乏し、そうしてまた東京は東京で、住宅難とか、あるいは水道だとか、ガスだとか、あらゆる問題で閉口しておる。だから首都圏の構想をやめて、東京の人口を減す、少くとも北海道あるいは四国、九州等へ、東京に置かぬでもいいような施設を移す。こういうふうな思い切った政策を立てるべきであるが、少しもそういうことがない。なぜ東京に学生が集まるかというと、東京の学校を出た方が就職に便利である、こういうことなんです。でありますから、その就職に便利な、東大なら東大とか、あるいは一橋大学というものを地方に移せば、私はやはり就職はそう困難でないと思う、先輩がおりますから……。こういうような東京の人口の地方再配分計画というものが、少しもうたわれておりませんが、このままでいいのかどうか。これを石井副総理と、それから経済企画庁長官並びに大蔵大臣にも聞いておきたい。あなたもせっかくおられるのであるから、一言これに対して言ってもらいたいと思います。
  348. 石井榮三

    石井国務大臣 東京都にたくさんな人があふれておる状態は、御説の通りでございます。これをどうやっておさめていくかという第一のものは、今お話のあった首都圏整備委員会でいろいろ案を考えておるのでございますが、東京にあふれる人口をこれ以上に、ここに工場を持ってくるとかあるいは住宅を持ってくるようなことはしないで、衛星都市計画を立てて、衛星都市をこしらえて、それと東京都との連絡、あるいは衛星都市同士の連絡のための交通施設等も考えてやっていくということが、第一のものであります。第二は、この中にあります学校の数が、今たくさんだとおっしゃいましたが、これから先できようとする大きな工場であるとか、あるいは学校であるとか、人口の増加になっていくような設備のものをここへ持ってこないようにすること、第三番目は現にあるものをできれば地方に移すことができるかどうかという、この三つの方法だと思うのであります。特に私どもが考えなくちゃならぬと思いますことは今おっしゃった、地方からいろいろな陳情なんかに来ることも大へんなものであります。この問題に関連することでございますが、行政事務を地方出先関係または地方の公共団体に委譲するという問題、これは相当考えなくちゃならぬじゃないか。そういう方向を考えるべきだといいながら、これは実はまだ具体的に、それじゃこれをというまでは、現在のところ私まだお答えするようなものを持っておりません。しかし、これは私の所管の行政管理庁の仕事としても考えるべきじゃないかと考えておりますので、この問題とも私も特に取っ組んでみたいと思います。  そのほかの問題は、一朝一夕にはなかなかできないことではありますがその方向へ進むように、各省間でよく話し合いをして、東京都にむだに人口が集まるのを防ぐようにしたい。  学校の問題、卒業生の問題も、おっしゃる通りであります。東京の卒業生の方が就職しやすいというのも、これは実際であります。私どもが就職の世話をするとしても、九州大学の卒業生よりも東京の大学の卒業生の方が世話がしやすいという問題等も—一しかしいい大学だといい先生がおって、あそこの卒業生ということであればやはり就職もしやすいわけであります。こういう問題等についても、いろいろ考えなければならぬ問題がたくさんあると思いますが、順次解決していきたい。いかにもまどろっこしいようでありますが、だんだん話を進めていきたいと思います。
  349. 田原春次

    ○田原委員 最後に経済企画庁長官にお尋ねしますが、経済の字を削って企画庁ということにして、たとえば行政機構の改革であるとか、文官任用令の改正であるとか、あるいは海外移民だとか——狭義の経済以外の計画はこの内閣はやらぬというようにしか見えない。これを純然たる企画庁、すなわち国家計画をする機関にしたらどうかと思うのですが、そういう構想はないか。
  350. 河野密

    河野国務大臣 御承知通り、各省所管大臣におかれまして、それぞれの必要な事務は管理して万全を期しておりますので、経済企画庁におきましては、経済に関する企画にもっぱら専念いたして参るということにしているわけでございます。
  351. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 もう副総理が詳しく御答弁になったようでありますから、私からは……。
  352. 江崎真澄

    江崎委員長 明日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後六時五十九分散会