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1958-02-27 第28回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十七日(木曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 江崎 真澄君    理事 今井  耕君 理事 川崎 秀二君    理事 重政 誠之君 理事 田中 久雄君    理事 橋本 龍伍君 理事 川俣 清音君    理事 柳田 秀一君       小川 半次君    太田 正孝君       北澤 直吉君    河本 敏夫君       坂田 道太君    須磨彌吉郎君       野澤 清人君    野田 卯一君       松浦周太郎君    南  好雄君       宮澤 胤勇君    八木 一郎君       山崎  巖君    山本 勝市君       山本 猛夫君    井手 以誠君       井上 良二君    井堀 繁雄君       今澄  勇君    岡田 春夫君       小松  幹君    島上善五郎君       田原 春次君    楯 兼次郎君       辻原 弘市君    成田 知巳君       古屋 貞雄君    森 三樹二君       森本  靖君    門司  亮君  出席国務大臣         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  前尾繁三郎君         運 輸 大 臣 中村三之丞君         郵 政 大 臣 田中 角榮君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         国 務 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         内閣官房長官  愛知 揆一君         法制局長官   林  修三君         総理府総務長官 今松 治郎君         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局長)  高柳  保君         公安調査庁長官 藤井五一郎君         公安調査庁次長 關   之君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         労 働 技 官         (労働局長)  亀井  光君         建 設 技 官         (道路局長)  富樫 凱一君  委員外出席者         会計検査院長  加藤  進君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本電信電話公         社総裁     梶井  剛君         日本道路公団副         総裁      井尻 芳郎君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月二十七日 委員植木庚子郎君、久野忠治君、井手以誠君勝間田清一君及び島上善五郎君辞任につき、その補欠として櫻内義雄君、古井喜實君、森本靖君、井上良二君及び楯兼次郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件 昭和三十三年度一般会計予算  昭和三十三年度特別会計予算  昭和三十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 江崎真澄

    江崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を議題といたします。質疑を続行いたします。古屋貞雄君。
  3. 古屋貞雄

    古屋委員 行政管理庁長官にお尋ねいたしますが、従来、行政管理庁はとかくの批判がございましたので、はっきり申し上げますと、もう要らない機関ではないかという世論が非常に強くなっておるのです。行政管理庁主要目的を達しておるかという一つ中心から考えて参りますと、どうも目的を達していない。いないのではなくて目的を達することのできない状況に置かれておる。こういうように考えておるのですが、やはり長官の方ではこれは必要な機関であるとお考えになるかどうか。その点をお尋ねしたいと思います。
  4. 石井光次郎

    石井国務大臣 結論から申し上げますと、行政管理庁は存続すべきものだと思っております。行政管理庁仕事は、御承知のように、行政組織その他一般のことをやります局、統計の問題を扱う局、それから監察をする局、この三つの局に分れております。一番問題にされますのは、最後に申し上げました監察の面だと思うのでありますが、これは過去七年間にわたりまして、この役所ができて仕事をやってきたのでありますが、それには相当成績を上げ、これから先も上げ得るものだと思うております。
  5. 古屋貞雄

    古屋委員 私があえてお尋ねしたいということは、岸内閣が三悪の追放を公約されておりまするけれども、何と申しましてもこれを御主張あそばすには、まず第一に内閣中心とする官吏綱紀粛正ということが一番必要だと思うのであります。みずからその範を示さずいたしまして、汚職追放と申されましても、国民は信用しないわけであります。ことに行政監理庁行政監察をされておりまして、今の御答弁によりますると、相当成績を上げていらっしゃるような御答弁なんです。従ってこれは必要である、こういうようにお考えになっておりますけれども、この綱紀粛正が実際は行われておらないのです。最近になって岸内閣になりましてからは、むしろ役人犯罪がふえておる。この事実は、御承知通り、従来は防衛庁であるとか、農林省であるとか、その他の方面にも汚職は出ておりましたけれども岸内閣になりましてから後は、ほとんど各省汚職の出ない役所はないのです。おそるべきことは、法務省にまで及んでおるというこの現実の事実から考えまして、果して行政監察というものが行われておるのかおらないのか、行われておりますというならば、具体的にこういう工合に行われておるのであるから必要であるという、この事実をお示しになって御答弁願いたいと思います。
  6. 石井光次郎

    石井国務大臣 行政監察を始めまして約七年間、その間に取り上げまして監察いたしました数が、項目別にいたしまして百二十一件でございまして、これの監察の結果に基きまして、相手方機関勧告した事項の数が千百八十六件ということに、ことしの一月まででなっておるわけでございます。そうしてこれによりまして勧告を受けました機関は、それぞれこれに対して回答をよこしております。これはその通りにやるということを答えて参りましたものは、その通りやっておるかどうかということを推進してさらに検査をいたします。そうでない場合には、さらに厳重な注意を与えましてだんだんと直していく、これによりまして汚職温床となるようなことのないような方向に、私どもはいろいろな仕事を持っていっておるわけであります。そのものずばりというようなことで、汚職そのものを排除するというような直接的ではないのでありますが、大きい意味におきまして真の行政が公正に行われ、そうして国の金がむだに使われないようにするというようなことで、ただいまおっしゃったような汚職の起る温床をだんだんなくしていく、そうしてりっぱな基礎の上において行政が行われて汚職が全滅するような方向に指導していかなければならない、こういうふうに思うておるわけであります。もしどことどことやったかとおっしゃれば、事務当局からお答え申し上げます。
  7. 古屋貞雄

    古屋委員 勧告をされて回答を受けておるというのでございますが、その中に監察いたしまして犯罪になるような疑いのあった場合には、これに対する御処置はどういうことをなさっておるのでしょうか。刑事訴訟法によりますと、役人は業務上犯罪ありと思量した場合には告発をしなければならぬという規定があるわけです。従って行政管理庁監査をいたしました場合に、犯罪疑いがあるというような場合には、官吏告発をする義務があると思うのですが、さような義務を感じられて行使したことがあるかどうか、その点をお伺いいたします。
  8. 石井光次郎

    石井国務大臣 問題があると思いました場合におきましては、個々の場合も含めまして、当該責任官庁注意を与えまして、こういう問題があるからしかるべく取り扱えということを言うのでございます。この行政監察仕事は、政府部内の自己反省の大きな一つの道としてやっておるわけでございますが、私どもが直接にそのまま訴追するというようなことは、私ども仕事としてはやってないのでありまして、それはただいま申しましたように、当該部局注意を促しておるわけでございます。
  9. 古屋貞雄

    古屋委員 そこに私は問題があると思うのです。注意を促すという程度じゃなくて、犯罪があると思量した場合には、一般国民でもこれは告発する権利を持っておる、しかも役所監査をいたしまして犯罪が思量せられるという場合には、これは国民の立場から考えますならば、行政監察監察官刑事訴訟法に基いて告発をすべきだと思う、注意ではなくして告発をする義務があると思うのです。告発をしなければ監査する必要はない、問題は犯罪ありと思量した場合には告発義務があるわけです。この義務を履行された事実があるかどうか、あったら一つ具体的にお示しを願いたいと思うのです。
  10. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えいたします。これは告発個々の人の問題になるのでありまして、行政管理庁としてはそこまではやってないのでありまして、ただいままで公務員告発した例はないのであります。
  11. 古屋貞雄

    古屋委員 そうしますと、刑事訴訟法の二百三十九条に基く告発をしないということになれば、これほど無責任なことは私はないと思う。公務員にはそういう義務があると思うのです。なるほど行政管理庁目的は、その運営によろしきを得ているかどうか、行政作業上、少くとも行政というものが適正に行われておるかどうか、こういうことが主たる目的ではございますけれども、その監査過程において犯罪ありと思量した場合には、当然告発すべき義務がある、それをやっていないから目的が達せられないと私は思う。そういうことだけがすべてではございませんけれども、やはりそういう工合に事実を発見した場合には、一方においては行政処分を行い、一方においては告発をして司直の捜査を受けるということは当然だと思います。それをおやりにならぬということになりるから問題があると思いますが、いかがでしょうか、おやりにならぬでもいいかどうか、やるべき義務がないかどうか、その点を御答弁願いたいと思います。
  12. 石井光次郎

    石井国務大臣 これは怪しいというだけで行政管理庁が訴えるわけにはいかないのであります。公務員に対しまして疑いありと思いました場合には、ただいま申しましたように、当該官庁に私どもの方から注意を促して、そこでしかるべく取り扱ってもらう。ただ問題としてお出しになりました、わかっておるものを、なぜ公務員をやらないかということでありますが、わかっておるかわかってないかは、もう少しほんとうに詳しく調べなくちゃならないのでございます。訴追する権利行政管理庁は持たないのでございます。ただこういうことらしいから訴えるというようなことでは、非常に軽率のそしりがあるので、私ども行政管理庁扱い方は、ただいま申しましたように、当該官庁注意を促すという点だけやっておるわけでございます。
  13. 古屋貞雄

    古屋委員 そうしますと、刑事訴訟法の二百三十九条、これによって義務づけられた義務を履行しなくてもいい、こうおっしゃるのでしょうか。この点は告発しなければならぬ、こう言うのです。訴追をしろと私は聞いておりません。訴追検察官がやる。検察官捜査した結果、犯罪ありとした場合にはこれを起訴するのです。ただ告発をするということをしないか、こういうことなんです。ここに問題があると私は思うのです。従いまして重ねて私は御答弁をいただきたいと思うのです。これは重大な問題なんです。これは告発すべき義務を持っている、これは何も行政監察官だけじゃありません。公務員自分仕事をする場合に、犯罪疑いを持った場合においては告発する義務を持っている、告発しなければならないと書いてある。しかも行政監察をします過程において犯罪疑いがある、しかし今の御答弁によりますと訴追義務はない、こうおっしゃるけれども訴追義務じゃない、私の申し上げておるのは告発義務がある、この点はどうでしょうか。それでも告発をしなくてもいいとおっしゃるのですか、その点はどうですか。
  14. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまおっしゃった、訴追はしないが告発しなければならぬということでありますが、私どもは今までそういうことをやったことがない、この行政監察仕事の実効を上げていく全体的な見方からいたしまして、そこまで至らぬ方がいいというやり方でやってきたわけでございます。なお政府委員をして補足説明いたさせます。
  15. 高柳保

    高柳政府委員 補足して説明申し上げます。ただいまの刑事訴訟法公務員義務は、もちろんよく存じているわけであります。そういう場合には告発をしなければならぬのでありますが、監察をいたしまして、われわれとしては、犯罪ありと思量するという確信に至るまでの捜査権限というものは実は持っておりませんので、疑いありというような場合はさらに深く突っ込んでいただくように、当該責任官庁に通告するというのが今の階段におけるやり方でございます。
  16. 古屋貞雄

    古屋委員 そこで承わりますが、かつて行政管理庁の職員でおった高田君は「不正者天国」という本を出している。これはこの前の臨時国会で私は総理に質問いたしたのでありますが、この中で、監査をいたしました報告書の内容がたくさん書いてある。それでうそだといって高田君を罷免するということになって罷免の処置をとり、これに対して高田君から異議が出ておる。しかもこれは決算委員会において、この中でどれだけ違っておるか、どこを誇張しておるかということを、あなたの方ではっきりと詳しく説明を書いてありますね。これ以外のことは事実ですね。従いまして、この点について私は承わりたいのは、ここに書いております「不正者天国」は、捏造があり歪曲された点がある、こういうことを指摘しております。これ以外のことは、これは報告書ですから、この報告書の事実があったということは、否認いたしますか、この点を聞きたい。
  17. 高柳保

    高柳政府委員 決算委員会に報告いたしました捏造、歪曲、誇張は一つ事例でありまして、これは本人を免職いたします理由としてこれで十分である、ただ出所不明のものであるとか、本人の推測であるとか意見というものについては触れない、ということをそこに書いてございます。
  18. 古屋貞雄

    古屋委員 これを拝見いたしましたり、決算委員会で調べた事実によりますと、犯罪疑いがあるものは、うんと山のようにある。それを告発しないのです。そこに私ども疑いを持つ。役人役人監査したってだめなんですよ。そこで私は聞くのですが、こういう事実なり犯罪疑いがうんとある、ことにきのうかおととい問題になった防衛庁くつの問題。防衛庁くつの問題については、三年ばかり前に決算委員会で私はやったんだ。不正のくつを納めたというので、調べてうんとやったが、今度はまた同じ会社が不正のくつを納めておる、こういうことで一体綱紀粛正が行われますか、これが問題なんです。総理の御答弁をいただきますよ、副総理答弁して下さい。
  19. 石井光次郎

    石井国務大臣 私どもは、いろいろ問題になるような事件がどこでも行われぬようにということを念願して、政治をやっておるものでありますが、不幸にしていろいろ問題になっておるようなことも私どもは聞きます。まことに遺憾です。しかし、どういう問題が起っておるか、個々の問題につきましては、今くつの話等出ましたが、私は今までのことは存じませんので、これはその当該の方に事実は聞いていただきたいのでありますが、いろいろ起る問題がたくさんある、だからもうだめじゃないか、やっておってもこんなだから、行政管理庁なんか無用の長物だということは、少し飛躍し過ぎるのではないかと思うのであります。こういうことが起ることはまことに遺憾でありますが、遺憾であるだけに私どもはそういうことの少しでもなくなるような方向に運んでいくという努力を続けたい、こういうふうに思っております。
  20. 古屋貞雄

    古屋委員 そういうなまぬるいことですから何ぼやっても効果は上らぬと思うのです。いやしくも経費を十五億使っています、千六百人が専門にやっている、その結果が何もなってない。私どもが申し上げますことは、役人同士の間には役人仁義がある、官吏仁義がある。あるから勧告程度で終っている。勧告される方ではまたやかましく管理庁が言ってきたな、承わっておきます、ということで済んじゃっている。これじゃ国民承知しませんよ、その点はどうなんです。役人役人が調べて、役人の穴を出してきて、それでほんとう目的が達せられるでしょうか。私どもは少くとも役人を離れた別の機関が調べて、別の機関でやらなければならぬと思う。しかも行政管理庁の人の身分保障がない。だから身分保障がない役人が同じ役人を調べて、だんだん調べてみたならば、それは自分長官であったという事例はたくさんあるじゃありませんか。自分長官を調べていく監査なんか実際私はやっていないと思うのだ。つかまえてみたならば、どろぼう自分長官であったということになり得るおそれがある場合、告発しないのが当りまえなのだ。だから私は役人役人のやったことを調べるというのは、ここに矛盾があると思うが、この点はどうなんですか。もっと改めて、独立機関で調べることにしたら、私は真相が発見されると思うが、これは長官の御答弁をいただきたい。
  21. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えする前に、ちょっと何でもないことのようでありますが、数字の間違いがあるようでございますから、申し上げます。行政管理庁が年に十五億使っているとかいうのは、おそらく半分の間違いじゃないかと思います。八億足らずだと思います。それだけ申し上げておきます。  それから役人役人を調べたってだめだ、それは外から役人の行動を調べるのと中でやるのとではおのずから差異はありましょう。しかし各省には各省自身反省をするという心持ちのために、各役所にも監査の係を置いております。そうして国全体の問題となりますと、行政管理庁監察をしている。そうしてこういう機関が互いに励まし合って、少しでも機構が正しくなり、その上において経費の乱費がなくなるようにということ、そして不正が起らぬようにという線を出そうと努力いたしておりまして、これは私はそれの同じ仲間だからやったってだめだといって捨てる前に、こういうあらゆる機関を公正に、力強く動くように、省内にあります機関はその大臣が、また私ども行政管理庁では私ども初めみなが力を合せて、そういう不正等の起らないようなことに努力するということは、これは私はどういうほかの機関ができても、やった方がいいと思います。ほかの方からやった方がいいのじゃないかどうかという問題は、私は、必ずしもそれがどういうものをお考えになっておるか知りませんが、今ちょっと申し上げかねます。
  22. 古屋貞雄

    古屋委員 それでは現在の管理庁構成のことについて承わりたいのですが、役人役人を調べることについて、徹底した真相の発見は困難であるということを私は考えております。さらにもっとつっ込んでお聞きいたしますならば、この中には各省から監査官になる人が吸い上げられてきているわけですね。これは技術関係があるのでしょうそういう各省から吸い上げられた人たち一つの班を作ってこれを監査するそうですね。そうしてその作った人々は何年か管理庁仕事をするとまた元に戻ってくるのですね。そういうような班組織構成が行われている事実はどうなんでしょうたとえば農林省からも来る、建設省からも来る、そうしてそれらの人々が出てきて、班に加わって行政監察をしておる、何年か勤めるとまた元の省に帰る、こういうことに相なっておりませんか。その点は、この事実だけを承わりましょう。
  23. 高柳保

    高柳政府委員 お答えいたします。ただいまお話しになりましたのは、われわれの方の技術班というものだと存じます。これは技術班でございますので、おっしゃる通り農林省なり建設省なりから割愛されてきております。この監察の結果につきましては、われわれ非常に慎重に審議いたしまして、部内の機関でございますが、監察審議官五名と、監察局長と合せて監察会議というものを作りまして、これで合議制でその結論をつけるという意味で、そのために歪曲されるとかいうようなことは絶対ないと信じております。
  24. 古屋貞雄

    古屋委員 私は歪曲される、されぬということを承わっておりません。そういう構成があるかどうか。構成されておることは事実なんです。そうするとあまり自分の属する省の事実をやかましくやっていると、もとの古巣へ帰るときに帰りづらい。これは人情です。技術にしてもそうでしょう。そういうような不合理な組織のもとにおいては、行政監察の真の目的は達せられないと思う。この点は長官はいかがお考えになりますか。そういうようになるのが人情でしょう。たとえば私なら私は建設省から出て、建設省監査をやっている。その中で、実際こういうことは言いたいのだけれども、言わずに遠慮しようという気持になるのが人情じゃないでしょうか、どうでしょうか
  25. 石井光次郎

    石井国務大臣 そういう人情を私は否認はいたしませんが、私どもの方でそれならばそういう人たちをやめて、ほかの方、かりに技術の面であれば、民間の人にあるいは出てもらうというようなこと等も考えられないことはないのでありますが、さっき申しますように、これはいわゆる政府部内の反省機関、平たく言えば、そういうものであるのであります。技術面人たちがよくなれておらなければわからない、監査が上すべりしてしまうという場合に、その技術を用いてこまかくこっちの安心できるまで調べてもらうというのでありますが、その人が勝手にやめたり、勝手にむずかしくしたりすることなく、どういう点はどういうふうになっておるのだということを初めから打ち合せをいたしまして、それではこういう点はどうなっておるかということを調べる。そういうような点になりますと、技術的な面は機械的に調べることになる。それからそれを持ち寄りまして、局長中心にいたしまして、それに判断を下して勧告をするということになりますから、それがどうにもこうにもならないような組織であるというふうには思っていないのであります。私ども管理庁の心持として、その仕事をやるのがその人の当然の職務でございます。技術の面においては、さっき言ったように、機械的にきちんとやれる、こういうように思っておりまして、大きな弊害を起しておるとは思いません。
  26. 古屋貞雄

    古屋委員 今の御答弁を承わっておると、弊害がないようなことをおっしゃっていますけれども、私は大ありだと思うのです。改められたらどうでしょう。今言ったように、相当の金を使うならば、監査目的を達せないような不十分なものであれば、結局私どもはない方がいいと思う。ほかに会計検査院というものがあるのですから、独立機関になっている会計検査院を強化されても、これは目的は達せられると思う。やはり技術者が出て参りまして、技術者意見というものは、相当結論を出す上に私は重大な影響を持つと思う。こういう点を改める意思があるかどうか。  さらにもう一つ承わりたいことは、大体「不正者天国」の二十五ページを拝見すると、三十億の損害を国有林野払い下げで国に与えておる、こういうことを書いてある。これを見ると、統計がここに出ているけれども払い下げにおいて半分以上が任意契約になっている。それは上官からの推薦であるとか、かつては上官であった人の名前の払い下げの申請であるとかいうことがここに書いてある。こういうものをけ飛ばして、はっきりと公正に、国の財産をむだに使わせないようにするには、こういうことが行われた場合に、これを監察するのが管理庁仕事だと思う。ところが役人仁義があり、武士の情というような関係で、かつての同僚であるということで考えますならば、これはとうていこの真相というものは発見されないと私は思うこれが一つ真相の発見をいたしましてこれを勧告いたしましても、勧告を受ける行政庁は、勧告を受けたらそれでおしまいなんです。また今度勧告する。数回勧告いたしましても、今のようなことでは、長官のおっしゃるように告発しないというのですから、告発をしないというなら、十回も二十回も勧告を受けても、それを実際行わなかった場合にはどうするかという問題が出てくる。その徹底した追及が行われていないから、高田君がこういう本を出した。高田君は何回も何回もこれに対して自分たちは上申もするし、相談もするし、いろいろ苦心惨たんしたけれども、これを日本の主人公である国民に知らせるよりほか仕方がない、官庁内におけるこういう不正な事実というものは綱紀粛正を徹底的にやってもらいたい、今の行管では行われない、今の制度はだめなんだ、従って主人公である国民に訴えようとして出したのがこの本だと思う。本人はそういっている。それを官吏の服務紀律で首をちょん切る。ちょん切るということのいい悪いは今日は質問いたしませんが、少くともこれだけの財産、これだけの不正と思われるような、勧告をしなければならぬような行政運用の行われている事実は明らかである。これを国民に知らせるということは、国民に忠実な人間だと私は思う。長官、これに対してどういうお考えですか。
  27. 石井光次郎

    石井国務大臣 行政監察の結果は当該行政官庁に伝えまして反省を促し、そうしてすみやかに行政の正しい動きをするようにというのが目的でありますが、それには国民の支援もあってそうしてこの仕事が公正に行われ、国民の監視のもとに行政が行われているという自覚のもとに、犯罪と申しますか、綱紀が乱れるような方向に進むのを自制するというためにも、できるだけのことを知らせることが必要でございますから、国民に知らせるために毎年年報を発行いたしまして、相当こうかんなものが皆さんのお手元にも渡っているような次第で。またときによりまして新聞その他にも適当な方法によって随時発表等をやりまして、国民監視のもとに役人すべてが正しい道を歩くようにという努力をいたしているわけであります。
  28. 古屋貞雄

    古屋委員 端的に聞きますが、二度も三度も勧告してそれが実行されぬ場合にはどうなさるお考えですか。どういう処置をとっていますか。
  29. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいままでは、一ぺん勧告いたします、それに対して返事が参ります、その通り果して行われているかどうかということをまた検査してみますと、大体におきましてほとんどわれわれの言うたことに近く行われていることを聞いております。まだ三回も四回もやってというような事例は私承知いたしておりませんので、局長から御答弁いたします。
  30. 江崎真澄

    江崎委員長 補足説明はいいですか。
  31. 古屋貞雄

    古屋委員 いいです。  そこで私は承わりたいのですが、勧告をされた、たとえば防衛庁の問題についても、決算委員会であれだけ防衛庁くつの問題を追及し、会社の責任者まで呼んで私ども調べた。その会社がまた不正のくつを納めている。その会社と契約すること自体が問題なんです。こんなばかなことはないですよ。少くとも国会の決算委員会で調べて、会社の社長まで呼んで調べて、けしからぬということで反省をさせた。あなたの方でやったわけじゃない。これは告発されてもいます。また二、三日前の新聞をごらんなさい。防衛庁くつの問題が出ている。この汚職事件まで起きている。それはそのときの会社と同じ会社と防衛庁が契約している。こういう問題はどうお考えになりますか。あなたの方の勧告はから念仏で、何にもならぬ証拠じゃありませんか。
  32. 石井光次郎

    石井国務大臣 この問題は、この前起りましたときも、予算に関連いたしますことで会計検査院におきまして調べまして、今度も会計検査院でやっております。これは私どもの方では扱ってなかったのであります。
  33. 古屋貞雄

    古屋委員 そうじゃないのですよ。あなたの方で監査いたしますならば、そういう不正があった、だから相手に請け負わせるとか、作らせる契約をやってはいけないと勧告するのでしょう。違いますか。刊事事件は法務省でやりますよ。これは会計検査院でやるのが当りまえだ。だけれども、この三十億の国有財産の払い下げに不正がある、損害を与えたという中にも、年次的にちゃんと統計が出ている。毎年毎年少くとも六割以上の払い下げについては任意契約をしている、任意契約をして損害を与えているから勧告をしておるはずなんです。それが四年も続いているのに改められないという事実は、行政管理庁勧告なんというものは、今の悪人のお役人さんには綱紀粛正の必要どころではない、刑務所にひっぱられている連中がたくさんふえている。そういう連中にこういう勧告をしたって何らの効果がないから私は聞いている。
  34. 高柳保

    高柳政府委員 ただいまの林野庁の払い下げの問題でございますが、当初おっしゃる通りに五九%、六〇%の随意契約。随意契約が不正というわけではございません。ある条件があればそれでいいのでありますが、極力公入札あるいは指名入札にせよという勧告をいたしておるのであります。その結果ただいまの統計では、三十一年度でございますが、これがだんだん減って参りまして、随意契約が四四%まで減って参りました。林野庁では相当努力してやっているものと思います。今後もその通り続けるということをいっておりますので、そういったように改善の実は着々上っておるとわれわれは考えております。
  35. 古屋貞雄

    古屋委員 これはやはり告発をされたらどうでしょうか。当然告発をする義務があるのですから……。告発をする程度までいかなければ、私は万全を期せられないと思うのですが、どうなんです。告発はしないとおっしゃっているけれども、いわゆる官吏刑事訴訟法の二百三十九条ですか、ちゃんとここに義務づけられていますよ。「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、」ですから犯罪がなくてもいいわけです。犯罪がありと考えられるような状況にあるときは告発をしなければならない、これはやらなければならないということになっている。これは今まで一つもやっていないところに、あなた方が役人としての責務を完全に果していないということに規定づけていいのですが、これは長官にお尋ねいたします。長官の御答弁を願いたい。
  36. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまのお話を私どもここですぐどうする、告発をするという心持ちは持っておりません。これに関連いたしまするいろいろな行きがかり等もございますので、なお局長から補足説明をいたさせます。
  37. 高柳保

    高柳政府委員 ただいまのお話でございますが、従来われわれが関係して参りました事案につきまして、犯罪ありと思量するまでに至らないうちに、相手方に早く知らせまして、なお詳細に責任者において追及をしてもらうという手段をとって参りました。もしこれが責任者において何らこれを顧みずして放置しているような場合がございましたら、その場合には当然やらなければならない事態に立ち至ると思います。
  38. 古屋貞雄

    古屋委員 そういうような生ぬるいことだから効果がないのです。それだから国民の方から管理庁は要らぬということを言われるのです。今までにも思量されるのがたくさんありますよ。この中にもたくさん書いてある。私は高田君に聞きましたけれども、ある農林省役人が金時計までもらった事実がある。問題になりそうになった、行管で調べたものだから、すぐ金時計を返したという事実がある。もらえばあとで返したにせよ、犯罪でしょう。これこそ明らかに犯罪ありと思量する顕著な事実だと思う。安く払い下げてもらって、三分の一の材木を売ったらば、材木払い下げ代金におつりがくるような金ができ上った。そこで金時計を買って、農林省役人にお礼をしている。そうして問題になりそうになったものだから返したという事実がはっきりこの報告書の中に書いてある。ですから、もらったものを返しても犯罪なんです。常識上考えてもそうでしょう。こういう問題を管理庁告発しないというところに管理庁が何ぼやっても効果がない。だから綱紀粛正されないのです。毎年々々官公吏の汚職がふえてくるということは、こういうような欠陥があるからであって、むしろ国民から言わせますならば、行政管理庁国民をごまかすところの機関だ、ちゃんと監査したのだ、犯罪も不正も何もないのだという太鼓判を押したということで、行政管理庁自分の責任を免れておる。こういう判を押すということ自体が、国民をごまかす機関である、こういうふうに見ようによっては見られる。これは国民が疑っておる。役人役人のやったことを調べて、それで万事終れりということになって、実際に調べてみると行政管理庁役人の悪いこと、不正な作用をやったことに太鼓判を押してカムフラージュする機関である。それに金を使われては困るということの不平が起きておる。私が先ほど申し上げましたように、十五億ということが八億ならけっこうですが、八億の金がそういうことに使われるならば、逆に役人をして不正当な行政運営をしてもいいぞということの確信を持たせる、この点をぼくは非常に憂える。従いまして、まず第一に内部の問題について長官に承わりたいが、身分保障をする御意思があるかどうか。身分保障がないものですから、高田君のように何ぼ真相国民に知らせよう、あるいはほんとう真相監査しようといたしましても、それができないということになる。繰り返して申しますけれども、だんだん調べていくと、自分より目上の人が問題になってくるという場合に、これは人情として調べませんよ。おしまいになってしまうですから、この監察官には身分保障として、官庁とは別な独立した権威あるものに監査させるということの方が真相をはっきりさせることができる。これが私は行政管理の真相であり、目的達成には一番近道だと思いますが、この点は長官どうお考えになりますか。
  39. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまのところ身分保障ということは考えておりません。一般官吏のままでやって、そうして行政管理庁仕事をよりりっぱにする方向にみなが一生懸命努力するようにしたい。さっきお話がありましたように、上役云々の問題でありますが、上役の問題がありましても、上役にもさまざまございますので、これをぜひこうりっぱに直さなければならぬということであれば、私どもにも相談をする道もありましょうし、そのほかいろいろなことによって、その人が正しく動くように私どもは協力できるはずでございますから、その心配はおっしゃるほどにはないと思っております。
  40. 古屋貞雄

    古屋委員 事例をあげるとどうかと思いますけれども、今大臣をやっておる河野さんの競馬馬の問題があったでしょう。外国為替の違反問題があったでしょう。ああいう問題は、だんだん調べていけば河野農林大臣関係を持ってくる。だんだん監査をしていくと、はっきりあんなものは——犯罪にはならなかったけれども行政上からいけば問題になる。僕らは犯罪になると思って告発した。しかし不起訴になったけれども、一部の人は問題になった。やはりだんだん行管が調べて参りますと、ああいう種馬を輸入しようとして外貨をとっておりながら、競馬馬を輸入したことは事実である。行管がああいうものをだんだん調べていって、最初に問題をはっきりしておけば、私はああいう問題は起らぬと思いますけれども、ああいう場合でも行管で監査ができますか。やったかやらないか聞いてみましょう。自分よりもえらい大臣だから私はできないと思う。下っ端の官吏大臣様の悪いことを調べるといったって、それは計画をするときから押えられてしまう。これは悪い事例かもしれませんが、一つ事例です。下っ端のお役人さんのこと、そういう下っ端のこまごました行政の運営については完全に監査されるかもしれないが、えらい人が不正をしたり、悪いことをしたりするような、いわゆるその地位を利用してやった場合の行政上の不公正な運営についての監査というものはできないと思いますが、どうなんですか。私は絶対にできないと信ずる。おそらく国民の大部分の人がそう信ずると思うが、そういうことはいかがでしょうか、長官自分の上役の問題についてそれを監査することが完全にできるかどうか。理論上はできますよ。しかし、今の機構においては、計画を立てても計画のときに押えられてしまう。そこに行政管理庁のいわゆる無用論、必要でないという論が出てくると思うのですが、どうなんでしょうか。上役でもちゃんと計画してやるような事実がありますか。
  41. 石井光次郎

    石井国務大臣 たとい大臣でありましても、不正だと思うことがありますれば、これを調べるのが当然だと思います。しかし、自分の直属の人に何か問題が起ったときに調べにくいということも、それも人情上当然おっしゃる通りのようなことがないとは申しません。そのために、会計、予算等に関連していろいろおかしいことがあれば会計検査院の動きもありますし、一般行政上の問題については、さっきから申し上げておる通りども仕事の範囲であります。さらに、問題が進んで司直をわずらわすような問題になりますれば検事局、警察の手もありまするし、また世間という大きな批判の眼もあることでありますから、そういうものがすべて集まって、そして公正な道に進ませることができる、こういうふうに思っております。
  42. 古屋貞雄

    古屋委員 私は時間がありませんから簡潔に申し上げまするけれども会計検査院を拡大強化して、これをやめられたらどうでしょうか。会計検査院の予算と人員をふやしてやる。会計検査院の方では、院長は、この前私ども決算委員会で尋ねるというと、人員あるいは予算、能力には限度があります。今の人員において、今の予算において完全な国の予算の検査はできませんというお話をされた。従いまして、私は、こちらの方に予算を持っていって、そちらにこの監査を移管して拡大強化されていけば、完全にとは申しませんけれども、ある程度まで真相が発見され、効率的だと思うのですが、いかがでございましょうか、長官
  43. 石井光次郎

    石井国務大臣 会計検査院仕事の重大なることは、私もその通りと思います。できるだけの予算をつけて、会計検査院がりっぱに今よりいい成績をあげることに私ども努力しなければならぬと思いますが、行政管理庁をやめまして、それを会計検査院に持っていったらより効果的であろうということは、私は意見が違います。両方でやって、そしてそれによって比較的にいい行政監査ができておる。これから先は、もっとよくするためには、会計検査院の方は金の問題があれば金の問題も考えるが、私の方は、金の問題だけでなく、人間のいろいろな、今あなたのおっしゃるような考えなくちゃならぬ点も相当あると思います。私どもは、これから先の庁内におきまする人事問題についても十分な考慮を払っていかなければならぬ、そして効果をあげたい、こういうふうに考えます。
  44. 古屋貞雄

    古屋委員 法務大臣に承わりたいのですが、数年以来役人で起訴された事件がふえておるという傾向にあるのですが、この点はいかがでございましょうか。ふえる傾向であるということの事実は。
  45. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 公務員綱紀はどこまでも厳正でなければなりませんので、公務員犯罪傾向につきましては法務省としても特に重大な関心を持っておるところでございます。これがふえつつあるか減りつつあるかということにつきましては、これは簡単に計数の上では申し上げかねるのでありまして、一人が行いました犯罪でも非常に影響が大きいこともありまするし、人数等で、あるいは件数等でなかなかこれをはかっていくことはできないのでございまするけれども、いずれにいたしましても、公務員犯罪は徹底的に検束をし追放したいと考えて、鋭意努力いたしておるところでございます。
  46. 古屋貞雄

    古屋委員 数の問題は統計でわかるはずですから、これは私は承われなければよろしゅうございます。ところで、今までかって法務省の職員に汚職がなかったと私は心得ております。裁判所の職員に汚職が起きたということは心得ておらぬけれども、最近起きましたね。法務省の中、裁判所の中からあなたの方で起訴された事実があるでしょう。こういうことを考えますときに、ただいまお聞きのように、行政管理庁では告発をなさらないという御意思のようらしいけれども、これでいいのですか。私は、二百三十九条は公務員義務づけられた一つの規定であると思う。それは、行政管理庁が、犯罪疑いのある事実はないという観点から告発をしないということなら、私は承わりますけれども、今お聞きのように、告発をするお考えはないという長官の御答弁です。これは私の聞き違いならば訂正いたしますけれども告発をしない、訴追をするのは別だというお考えらしい。一体、告発する義務はあるわけでしょう。法務大臣、どうでしょう。役人監査いたしましたとき、あるいは職務執行の過程において犯罪ありと思量いたしました場合には公務の運営上から知り得たところの事実もこれは告発をする義務があると思うが、法務大臣、いかがにお考えになりますか。
  47. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 この問題は石井副総理からお答えのあった通りでございまして、おそらくは、犯罪の芽ばえがございますれば、すぐに内部的の連絡でこれを事前に防いでいることと思います。また、検察庁といたしましては、行政管理庁関係なく、公務員でありましょうと公務員以外の者でありましょうと、およそ犯罪の容疑がございますれば、それぞれの法律上の手続をとらなければなりませんから、従来からそれをとっておる次第でございます。  なお、御指摘の条文につきましては、仰せの通り告発しなければならない義務があると考えるのでございますが、一部の考え方では、この規定は一種の訓令的の規定ではないかという解釈をする人もあるようであります。とにかく、法律に「ならない」と書いてあるのでありますから、義務づけられておると考えております。
  48. 古屋貞雄

    古屋委員 石井長官、どうですか。そういうようなことに義務づけられているわけですが、おやりになる意思はありますか、ありませんか。それを承わりたい。さっきは、やるお考えはないということですが、考えがないということでありますれば、これは重大な問題になると思う。少くとも役人が、しかも責任のある大臣が、長官さんが、日本の法律を守らずにいいということになれば、これは重大な問題であるから、私は承わるのですが、はっきり御答弁願いたい。
  49. 石井光次郎

    石井国務大臣 さっき私はそうでないとはっきり申したわけでなく、それはちょっと誤解があったと思います。それは、私どもが、訴追という言葉を使いましたが、告訴でも何でもするまでの調査をする権利がないのです。(「告発だ」と呼ぶ者あり)それを実際上やるなにはないのです。そうして、各省に、未然に防ぐように、また、疑わしいものは、こういうものがあったがどうなっておるのだ、こういうふうにしろという勧告をする範囲以上に出ないということであります。
  50. 古屋貞雄

    古屋委員 そういうようななまぬるい考えを持っておるから、岸内閣の公約にもかかわらず汚職事件は根を絶たないのです。これは当然に義務があるのです。行管の長官までその義務をはっきり認識されていないようなあいまいなお考えだから、国民に言わせればこんな官庁は要らないのだということになり、何らの効果がなかったということになる。それは酷評かもしれませんけれども、そういう感情を持つのが国民人情です。従って、あなた方の方で職務執行の過程においてそういうことを知り得たと思量した場合にはどしどし厳重に告発するということにならなければだめです。犯罪の芽ばえが出たときに勧告するとおっしゃいますけれども、そういうことが実際に行われて効果があればけっこうですけれども、効果をあげていない。だから私はしつこく申し上げているのですが、どしどしこの点については告発処置をとっていただきたい。なお重ねて私はあなたの御答弁を聞きたい。
  51. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えはただいま申したことを繰り返すことになりますが、御趣旨の点はよくくみます。私どものやっておる仕事が今の範囲の仕事ではまるでだめじゃないかというお言葉でございますが、私は今やっておることにおいて相当大きな効果をあげておるはずだと思っております。現にどういう計算で出ておるか知りませんが、私ども報告を聞いておるところによりますと、たとえば国の使いまする金の面において、われわれの方からいろいろ御注意を申し上げ、またそこでも考えておられたでありましょうが、そのためにこの七年の間にいろいろうまい工合に使われるようになった金にしても相当大きな金額に上っておるというようなこと等も聞くのでございます。私どもは今の線をさらにできるだけ強めていくということには努力をいたします。そして少しでも妙な問題が起らぬようにしなければならぬと思います。おっしゃるようにたくさんの事例が次々に起ることはまことに遺憾千万でございます。それは、私どもがさらに力を入れまして、そういうものを未然に防ぐ方に努力いたしたいと考えております。
  52. 古屋貞雄

    古屋委員 まことにそういう答弁では国民は納得がいかないと思うのですが、もうやむを得ません。そういうだらしのない答弁では、私はほかに移ります。時間がありませんから……。  そこで、法務大臣に御質問申し上げるのですが、公安調査庁の長官はいらっしゃいますか。——そこで、承わりますが、私は結論だけを申します。詳しいことは申しませんが、御承知通り、基本的人権の尊重、思想及び結社の自由、こういう憲法の保障を持っております人間に対して、公安調査庁が金をくれて、ある人の行動を監視さして、それから報告を受けておる、こういう事実はお認めになりますかなりませんか、どうですか。公安調査庁においては、金を与えて、ある団体、ある人の行動を探査して、報告さしておる事実があるかどうか、この点をまず聞きたい。
  53. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 公安調査庁におきましては破防法関係の調査はいたしております。これは、公安調査庁関係の者が直接調査もいたしておりますし、あるいは、第三者の協力を得まして、第三者から情報を提供してもらって調査もいたしております。
  54. 古屋貞雄

    古屋委員 そこで、第三者の報告というのはまことに体裁はいいのですけれども、いやがる者に金をやって報告をさしておる。このことはしばしば従来法務委員会におきましてもやっておりますから、詳しいことは申し上げませんけれども、そういう現実の事実がある。金をもらった人は何らかの報告書を書かなければならぬという義務づけられた問題がここに起きてくる。従って、うその報告をすることによって相手の被報告者に与えるところの人権じゅうりんという大きい問題が出てくると思うのです。こういう現実の事実がある。国の金を使って、基本的人権の尊重をくずすような人権侵害をするようなことに相なっておるということも、事実でありますならばこれは重大な問題だと私どもは思います。このことは、福島大学の学生においても、東大の学生においても、和歌山県における問題のごとく、いやがる人間に金をくれて、何々の情勢を調査して情報を集めて報告しろと、義務づけさしておるという事実がある。この人権侵害の大きさというものは、日本の治安の上に驚くべき悪影響を及ぼすと思うのですが、法務大臣、いかがでございましょうか。
  55. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 公安調査庁では破防法に基いていろいろの調査をいたしておりますことは、先ほどお答え申し上げた通りでございます。この調査を行うにつきまして、破防法は何にも調査上の権限を与えておりません。権力行動を許しておりませんから、全く相手方の自由意思に基いて協力を依頼しておるわけでございます。相手方に協力を強要したり、相手方の自由を制限し束縛したり、極端に言えば人権にも触れるような、そういうことは絶対にいたしてはならぬことに相なっております。厳に戒めておるわけでございます。
  56. 古屋貞雄

    古屋委員 実際にあった場合にはどういう責任をおとりになりますか。事例をあげませんが、いやがる本人の留守に、女房に金をくれて、そうして、おやじにこれを渡して報告してくれ、それから、いやがる学生に、とにかくお前に金をやるから——事実はありますけれども、時間がありませんから結論だけ。法務大臣は知っているはずなんだから。そういう事実が行われている。しかもこれは相当たくさんな事例があるのです。今法務大臣がそういうことはさせないとおっしゃっておるけれども、実際はあるわけです。公安調査庁ではことしも予算を一億ふやしております。だんだん金をふやしておる。そういう金がそういう面に使われる。しかしこれは領収書も何も取ってないはずなんです。あとから私は会計検査院に承わりますが、これは領収書も何もない。いわゆる地方における公安調査庁の役人がわれわれの税金を非常に乱費しているという非難が国民の間にあるわけなんです。その非難のカムフラージュをするために、二、三の者に金をやって情報を集めているということに相なったように私は疑われるのです。法務委員会でも法務大臣は具体的事実の質問を受けておるのですから、そういう御調査をなさった事実があったかどうか、絶対ないとおっしゃるのかどうか、その点を伺います。
  57. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 公安調査庁の調査は、先ほども繰り返して申し上げました通り、全く自由な立場において調査をいたしておるのでございまして、相手方の自由を制限したり、人権に触れるような、そういうことは絶対させないようにいたしております。もし誤まってさような事実があることが明らかになりましたならば、これは相当の処分をしなければならぬと考えておりますけれども、これは事実を究明してみなければわからないことでございます。
  58. 古屋貞雄

    古屋委員 この点は時間がありませんから追及いたしません。あとで同僚に譲ります。  そこで、私は会計検査院長さんにお尋ねしたいのです。  一体、会計検査院では、公安調査庁の検査をする場合に、ほんとう会計検査院のあらゆる規則に基く検査をなさっておるかどうか。この点を承わりたいことが一つ。もう一つは、当予算委員会で横路君から要求いたしました書類の問題がありますけれども官吏の職務執行に関する秘密と称して、どういう方面にどういう金を使ったということの明確な報告をこの委員会にもいたしておりません。従いまして、会計検査院では厳密に会計法に基く検査が行われておるかどうか。これは法務委員会で私は二度も三度も質問したのですが、簡易処理をしているとおっしゃる。簡易処理というものはどういう法規に基くかという質問を畳みかけますと、はっきりした御答弁がない。きょうは会計検査院長がいらっしゃるが、一体公安調査庁だけは特別扱いの検査をしているのかどうか。どういう検査をしておりますか。具体的な御説明を願いたいと思うのです。
  59. 加藤進

    ○加藤会計検査院長 公安調査庁の調査について、他の官庁と異なった取扱いをしておるというような事実はございません。法規に基いておるかどうかというお尋ねでありますが、検査院からお答えいたしました簡易証明と申しますのは、会計検査院においては証明規則はこれをみずから定めるとなっておりますが、その十一条によりまして証明の手続を簡略にいたしております。簡略にいたしました事由は、情報収集というような性質上、書類を会計検査院に取り寄せまして、これを精査いたしましても、その価値判断が非常にむずかしいので、その証拠書類は各官庁にとめ置きまして、実地検査の際これに基いて検査をいたすということにいたしております。検査は全く一様でございます。
  60. 古屋貞雄

    古屋委員 そうしますと、他の官庁と区別はないことは当然のことなんですが、実際あなたの方で検査をいたします場合に、公安調査庁ではあらゆる資料を提供してやられておるかどうか。従って、どこにどういう工合に支出したか。金を渡した場合に、スパイを使う場合においては領収書はないはずなんです。単なるまとまった報告書類でごまかしているはずなんです。そういう点について明確な御検査をやられておるかどうか。この点、スパイなんだからそういういう領収書のないというものに対する検査はどうなっておるかということ、それから、どこの公安調査局あるいはどこそこの公安調査局で幾らどういう工合に使ったという明細書をちゃんと検査をされておるかどうか。そういうような書類があなたの方にあるならばこれは問題ないと思うのですが、あなたの方で厳格にそういうような検査をされておるかどうか。私があなたの方の下僚から承わりますと、公安調査庁は明確に検査することを拒否しておらないけれども、他の行政官庁において検査をすると同じような書類の提出を求めても、なかなかそういうものを出さないということを承わっておりますから、私はしつこく聞くのでありますが、そういうような場合があるかどうか、そういう事実があったかどうか、承わりたいと思います。
  61. 加藤進

    ○加藤会計検査院長 私、公安調査庁の実地検査に際しまして、公安調査庁の態度によって特に検査に支障を来たしたことがあったという報告は受けておりません。お話のように、情報を収集するような際は最終受領者の受領書がない等の場合もあると存じますが、これは、われわれといたしましては、ある段階これを取り扱いますものにつきましての収支は常に明確にしておる次第でございまして、これは物件の購入とか工事の施行とかと違いまして、事柄の性質上やむを得ざる取扱いであると存じております。公安調査庁のさらに小さな区分の役所につきましてどういうことになっておりますか、これは私ここでは現況を明らかにいたしておりませんが、検査院の職員は必要と認める調査はいたしておると考えております。
  62. 古屋貞雄

    古屋委員 今の院長の御答弁の中に、やむを得ざる処置として処理すると言われましたが、やむを得ざるというのはどういうことを基準にやるのですか。これを承わりたいと思う
  63. 加藤進

    ○加藤会計検査院長 情報の提供を受けるような場合、この情報がどれだけの価値があるだろうかというようなこと、あるいはその最終の受領著がだれであるかというようなことは、これは、先ほど申しましたように、物件の購入でありますとか工事の施行であるとかとは違いまして、客観的には非常に判断のしにくいものでありますから、検査院の職員が検査をいたします際に客観的標準を持ち得ませんので、収支を明確にするという程度にとどめておくことを相当とお答えした次第であります。
  64. 江崎真澄

    江崎委員長 ちょっと古屋君に申し上げますが、あとお申し合せの時間に十分しかございませんから、お含みおき願います。
  65. 古屋貞雄

    古屋委員 今のような御答弁があるから、公安調査庁が今言ったようなことを平気でやるのですよ。そこに問題があるのです。それをほんとうにあなたの方でできるなら、この予算委員会なり法務委員会に実際にあそこの公安調査庁の係の方に出てもらったら一番わかると思うのです。そこまでやってはと思って遠慮をして、あなたに私は聞いておるのです。ちゃんとあなたの方を調べていますよ。この価値判断の問題なんです。それはどこに基準を置くかという問題なんですよ。今度は会計検査院汚職が出たでしょう。これは国民が納得しませんよ。国民の血の出た税金を使われたのです。ただむだに使ったというばかりではない。それがために国民の人権を侵害するというような結局大きな問題であるから、しかも日本の治安に関係のある問題だから、やかましく言っておる。どうぞ、この点については、そういう書類があなたの方にあるはずだから、あるならばこの予算委員会に出してもらえれば、先日の横路君の問題も解決がつくわけです。両方から出してもらいたい。そういう公安調査庁の検査の資料をお出しになれるかどうか、承わっておきたい。
  66. 加藤進

    ○加藤会計検査院長 先ほど申し上げましたように、領収書と証拠書類は各庁にとめておきまして、実地検査の際これを検査いたすことにしておりますので、会計検査院の手元には置いてない次第でございます。さよう御承知を願います。
  67. 古屋貞雄

    古屋委員 私の聞いておるのは、そうじゃないのです。領収書のないものが検査の結果どのくらいの件数、金額があったかということを資料に出してもらいたい。
  68. 加藤進

    ○加藤会計検査院長 その結果は調べておりません。
  69. 古屋貞雄

    古屋委員 今の答弁では、少くともそういうような領収書のないものの検査をどうしてやったか、どれだけそれがなかったかという書類が出なければ、会計検査院の検査の仕事は勤まるわけはないと思うのですが、違いますか。少くともあなたの方から検査したいという報告を決算委員会に出しておるのですよ。決算委員会に出す基礎になる書類がありますね、それを出してもらいたいと言っておるのです。いかがですか。
  70. 加藤進

    ○加藤会計検査院長 私どもは検査の段階について申し上げましたが、領収書はおそらく各地の出先の方にあると思います。まだ集計をいたしておりません。
  71. 古屋貞雄

    古屋委員 私の聞きたいのは、そういうあなたの御答弁じゃないのです。私が質問をしておるのは——そういうように領収書のないところの支出に対して検査をした、その内容の書類があなたの方にあるはずです。その書類がなければ、あなたの方は決算委員会に報告ができないのです。そうでしょう私の申し上げておるのはこういうことですよ。あなたの方で公安調査庁の検査をしたのでしょう。したときの、領収書に基かないところのものが何件で幾らあったということがはっきりわからなくちゃならぬはずです。そういう証拠の基礎書類を出して下さいということです。ありますかありませんかじゃないのです。あるはずだから出してもらいたい、これだけのことなんです。地方における領収書を出してもらいたいということじゃない。領収書のない、あなたの今言ったような、やむを得ざると認定されて検査を済ました件数と、その金額というものはあなたの方の書類にあるはずなんです。その基礎となった書類があるはずです。その書類をここにお出しになるかならないかを聞いておるのです。
  72. 加藤進

    ○加藤会計検査院長 これは、先ほどから申し上げております通りに、実地検査の際検査をいたしておりますので、実地検査に行かない個所も行った個所もございますが、その際に書類検査をいたすのでありますから、これを全体的に集計してお答えすることはただいまはできかねる、かように考えておる次第であります。
  73. 古屋貞雄

    古屋委員 そうしますと、会計検査院の報告はそういうでたらめな報告ということになるのですか。あなたの認定され基礎だが——たとえば一億なら一億の金はこういう処理をしたのだということの検査をあなたの方ではしたのでしょう。私が申し上げているのは、それの基礎となるべき、領収書をとらずに公安調査官が他に委託した場合に払った金が何件で幾らかということがあなたの方になければ、決算委員会の報告はでたらめということになりますね。いかがですか。
  74. 加藤進

    ○加藤会計検査院長 検査院の検査は、御承知通り全部の検査をいたすわけではございません。その一部について検査をするよりただいまのところは仕方がございませんので、一部について申し上げた次第であります。
  75. 古屋貞雄

    古屋委員 それではこう聞いておけばいいのですね。能力がないから一部において検査をして報告したものを決算委員会にお出しになるのだ、こう承わってよろしゅうございますか。
  76. 加藤進

    ○加藤会計検査院長 これは書面検査は全部いたしてっおるのでございますが、今申し上げましたのは、実地検査をいたしたところはその一部分であるということを申しております。
  77. 古屋貞雄

    古屋委員 これはあとで記録を拝見してから問題にいたしましょう  それで、私は農林大臣に簡単にお答えを願いたいと思うのですが、日本では今人口がふえておる。しかも一方においては従って食糧の需要がふえてきておる。反面においては住宅公団あるいは工場敷地その他災害による壊廃地がふえてきておる。これは、公団並びに壊廃された農地の転用されております面積は何町歩くらいあるか。それから、開拓、開墾においてはどのくらいのものが行われておるか。そのアンバランスというものが現われてくると思うのですが、その大略でけっこうでありますから、その点の御答弁を願いたい。人口がふえてどのくらいの需要がふえてきたか、一方では反対に農耕地が他に転用されてしまって、たとえば住宅公団では百五十万坪もでたらめのところへ住宅公団の敷地が計画されておるようですが、それと今の災害による壊廃した土地の面積はどういうことになっておりますか、一つそこで区別してお示しを願いたいと思う
  78. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 大体壊廃地と新たに造成する土地の面積とは同じくらいの程度で、大へん壊廃地が多いような状態であります。毎年の壊廃地面積が約一万五千町歩くらいになっておりますが、正確な数字につきましてはなお調査して後刻申し上げます。
  79. 古屋貞雄

    古屋委員 そこで、今百五十万坪の農地が住宅公団のために使用されることになりまして、農民との間に非常に相剋が行われておることは御承知通りなんです。従って、一体住宅公団法というものは農地のまん中に持っていってもあの法律が適用されるようなことに考えられるのであるかどうかということと、あなたの方が農地の転用について許可をしなければそれはできないということに相なるのか、この公団法と自作農創設特別措置法ですか、あるいは農地保護の諸般の法規との間の食い違いがあると思うが、こういう問題があるのかどうか、ある場合にはどういう調節をされてこれを解決されておるか、その点を承わっておきたい。
  80. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今お尋ねの住宅公団等の土地区画整理の問題と農地の転用の問題にお答え申し上げます。今、都市計画法とか首都建設法によって指定された地域内におきまして、土地の転用をするという場合には、具体的な問題につきましては農林省がこれを許可する、こういうことになっております。住宅公団の区画整理の場合には、その区画の中におきましての転用につきましては農林大臣関係なしに区画整理を施行する、こういうことになっております。そういうことでありますので、実は問題も二、三起きたのであります。そういうようなことで住宅公団で区画整理をするというときに、私どもといたしましては、自作農の維持創設という関係もあるし、全般的な見方から見てそれが適当であるかということにつきまして農林大臣が全然関与しないということについては不当であるというような見方をいたしまして、現実に起きておる問題につきましては、その工事施行とか調査につきまして、話し合いがつくまで調査をやめてくれということで、停止をしておるのであります。いずれこの問題は区画整理法の改正等につきましてお互いに研究してみなければならない問題である。私の方から見れば、やはり国全体の耕地の保全というような問題もありますし、区画整理内だから農地の転用は無関係にやってもいいわけには参らぬと思うので、法律改正というような場合にこれを改めるようにしたい、こういうように考えております。
  81. 古屋貞雄

    古屋委員 その点は、法律の食い違いについてはぜひ万全のお考えをもって改めてもらいたいと思うのです。これは大きな問題になっておりますから、その点は御要望申し上げておきます。  そこで、もう一つ、何と申しましても、農民の仕事というものは、天候、いわゆる大自然を相手にしておる仕事なのでありまして、これは日本の人口の四〇%ないし四三%を占める農民でありますから、その生活安定は政治上の重要な社会問題になっておる。そこで、私お尋ねしたいのは、時間がございませんから簡単に結論だけ申し上げますが、今の災害補償法、ああいうような共済制度と保険制度のこんがらかったような複雑な制度ははっきりおやめになられて、もっと一本なら一本の保険制度にするか、それとも、天災地変による不可抗力、しかも異常天候のような損害の場合においては、政府が社会保障政策的にこれを補償するようなはっきりしたものにされたらいいと私は思うのですが、農林大臣のお考えはいかがでございますか。
  82. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 共済制度につきましてはいろいろな御意見があります。ことに病虫害による被害が非常に少くなってきたわけです。あることはありますが、少くなってきました。平年作も七千三百万石ぐらいになるという見込みでありますし、御承知通り去年なども三年続きの豊作、こういう関係でありますので、農民といたしましても、掛金がかけっぱなしになって、これが戻ってこない。こういうことで、共済制度につきまして、あるいはこれを変えてみたらどうか、あるいは中には極端なものは、やめたらどうかというような意見もわれわれ聞いております。しかし、せっかく昨年国会の議決をもちまして農業共済制度の法律改正もされまして、本年一月一日から施行されております。そういう点で、今まで言われた点につきましては相当是正して、今その趣旨徹底をさせまして施行をはかっておるのであります。でありますので、いろいろ御意見もありましょうけれども、今直ちにこれを改正するとかいうような考えは持っておりません。ただ、これを廃止するという意見に対しましては、やはり今お話しのように、一面においては、共済制度というものは、社会保障制度的な意味もありますが、国といたしましても相当額の負担をしております。多いくらいの負担をしております状態であります。これを廃止することは私どもとしては考えておりませんが、せっかく今この法律改正をして施行をしている最中でありますので、いろいろ御意見もありましょうけれども、今直ちに改める考えはありません。また改めるべきことについては検討をしたい。こう考えております。
  83. 江崎真澄

    江崎委員長 古屋君、申し合せの時間がすでに経過しましたから、結論にお入り願います。
  84. 古屋貞雄

    古屋委員 ことしの予算を拝見いたしますと、昨年度よりも予算の比率においては少くなっているわけなんです。しかも小団地の基金を取ってしまうと非常に少くなったようになっている。あなたの方の構想としては、生産規模を拡充する、この点についてはわれわれは同感なんです。それから従来の農業政策を多角農業に持っていくんだ、畑作の転換をするんだ、酪農振興だ、こういうことについては非常に私どもは賛成をいたして、その構想はまことにいいと思いまするけれども、遺憾ながらことしの予算がこれに伴っていないのですね。まことにわずかばかりの予算で、しかも酪農振興に対する予算のごとき、またあなたのお考えは牛乳業者を保護することによって、一方生産者である農民保護の上に非常に欠けていると思うのです。この予算についてあなたの方では相当要求されたらしいのですけれども、大蔵大臣から削られたのだ。これは大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、どうでしょう大蔵大臣、日本の一番大きな問題は、防衛の問題は大事かもしれませんけれども、防衛予算はだんだんふえていく。はるかに農林予算が減っておる。昭和二十八年から見ますと、農林予算は半分になってしまった、補助政策から融資政策にかわるということをおっしゃるけれども、これは笑って押し通すわけにはいかぬと思うのですが、どうでしょう大蔵大臣。防衛の方の予算を削っても、四三%の農民生活安定の方へ先に重点を置くべきだと思うが、これに対する大蔵大臣のお考えはどうなんでしょうか。
  85. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 防衛に比べまして決して農業を軽視しておるということはありません。農林省の予算につきましては、最近災害の関係で費用がよほど減っておるということが一番大きな原因になっておりまして、三十三年度の予算につきましても、今度は一千億以内ですべての歳出をまかなうということの関係もありまして、そうどこにも万べんなくやるというわけにもいきませんが、農林予算につきましては、前から農林大臣も主張されておる通りに生産基盤を拡大強化する、農業を多角的に持っていく、あるいはまた自作農の助成にも特に金を回す、あるいは港湾、漁港、こういうものも整備する、大体こういうような方向に資金を特に回しているつもりでありまして、またたな上げ資金についても十分に農業の方面に割愛しておる、かようにいたして、必ずしも御満足はいかないかもしれませんが、しかし今日の事態においては農業にできるだけの力をいたしたつもりであります。
  86. 古屋貞雄

    古屋委員 統計を拝見しますと、昨年は農林予算は総予算の七・九あったのです。ことしは六十五億加えても七・六になっているから、減っているわけなんです。六十五億の小団地の改良基金というものを取ってしまうと、七・一になってしまう。減ってしまうのですよ。しかし防衛予算がふえているわけです。私どもは今のようなミサイル時代になっては、防衛予算というものはこんなものはなくしたって、日本の国民生活の安定の上から考えて不安はないと思うのです、常識的に……。しかも一万人の自衛隊をふやす、これはナンセンスです。ナンセンスには使うけれども国民の食糧自給問題、食糧安定問題の予算が削られておる、これじゃ国民は安心をしないのです。はっきり防衛予算とにらみ合せるならにらみ合せて、こっちをふやしてもらったらいい。ところが減っている。これじゃ今の大蔵大臣のお考えは事実と逆になっている。笑いごとじゃない。この点はあなたの腹を聞かしてもらいたい。これは農林大臣を代弁することになりまするけれども、これは国民ほんとうの要望なんです。しかも私ははっきり申し上げましょう。毎年の零細農が転落農になって、しかも転落農が農業を捨てて、やむなく農業が副業に転落しておる。しかも農業の生産が非常に低下している。そのことは女と子供しかほんとうに農村を守ることがないような——そうしなければ食えなくなったんだ、こういうことで、防衛予算を削っても農民生活の安定のために思い切った予算を出せるか出せぬか、聞きたい。
  87. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは防衛ということについての考え方が根本においてあるいは違うかもしれません。それでこれは結局議論倒れになると思いますから、あまり時間を取りませんが、防衛につきまして私どもも決して過大なものを考えていない。最小限度やむを得ない、これなくしては民生の安定はできない、農民も安心をして耕作をし得ない。ですから均衡を得た上で考えなくてはならぬと私は思います。ただ問題になりますことは、防衛費をふやすために、特に農業に必要とする国のり補助その他を削るとかあるいは農林省の予算を特に小さくする、そんなことは絶対に考えておりません。
  88. 古屋貞雄

    古屋委員 これは議論の違いだとおっしゃって逃げていますから、これ以上時間がないから追及いたしませんが、大体国民から申しますならば、自衛隊を一万人ふやす予算なんというものはナンセンスであるということは、国民の世論なんです。これは議論の余地がないと思うのです。こういうものを御主張になって国民の食生活の不安をこれによって保護することができないことになれば、重大な問題でありますから、これは同僚の井上君からおそらく質問が出ると思います。  なお最後に農林大臣に承りたいのは、酪農振興の問題にいたしましても、畑作転換にいたしましても、申し上げた通り今年の予算の裏づけは全然ゼロといっていいくらいしかないのです。これじゃ絵にかいたもちなんです。この点についてははっきりと予算を十分に取れるように努力を願いたい。われわれも協力を申し上げます。  それからもう一つお尋ねしたいことは、そういうふうにして農村の行き方が補助政策から融資政策に変ってくる、水田政策から多角経営に変ってくる、こういう場合において問題になりますのは、今の資本主義経済のもとにおいては、生産はふえるけれども農民のふところに逆に金が入らない。いわゆる収穫逓減法の原則が考えられているわけです。だから農産物をたくさんとれば国民は助かるけれども、農民の方ではかえって赤字になるという悪循環をどうして解決するか、農林大臣に伺いたい。
  89. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 畑作振興、酪農等に大いに力を入れるべきだ、こういう御激励の意味もある御意見がありましたが、私も同感であります。それにつきまして予算が全然ないじゃないかということでありますが、御承知通り従来水田に力を入れておりまして、畑作——酪農は力を入れておりましたが、そういう方面が欠けておりましたので、その方に力を入れようということで予算の要求をいたしたのであります。十分とは申し上げられません。しかし全然ないというわけじゃなくて、畑作は新しい方面でありますので、たとえば技術研究方面とかあるいは特技技術員とかあるいは畑地灌漑におきましても、昨年度より相当盛っております。各方面の予算に散っておりますので、一括して畑作の予算ということでは思うようにはいっておりませんけれども、予算は昨年よりは相当つけております。酪農につきましてもお話がありましたが、私は業者保護というような気持は全然持っておりません。中心はやはり生産者を中心としてやっていくということで、それにつきましても、消費の拡大とかあるいは生産コストの低下という問題がありますので、酪農基金等につきましても、これは生産者を中心としてやるし、また学校給食等によりまして消費の方面を伸ばすとか、全然予算がないというわけではありませんから、御了承願いたい。  そこでいろいろ生産を進めていっても、生産がふえてふところ工合が悪くなるということは、労して功せずで何にもならぬじゃないかという御意見であると思います。しかし御承知通り、今農産物等につきましては食糧管理制度等も私は継続していきたいという気持でありますが、これは一面におきまして価格支持制度にもなっておるわけであります。でありますから、米、麦とか、あるいはまた農産物価格安定法による作物、こういうものを全部持ってきますと、大体農産物の七割程度は価格支持をしておりまして、その価格支持に関係している農産物につきましては、価格の下落ということがあまりないのであります。ところがあと三割の牛乳とか果実とか野菜、こういうものにつきましては流通市場における価格操作に従来まかしておるという格好でありましたので、あるいはでき過ぎて安くなる、不足して高くなるというような傾向もあります。これを直接価格支持に持っていくか持っていかないかという問題では、私はまだ直接価格支持に持っていくということは考えておりません。しかしこのまま捨てておいてはいけないということで、牛乳等につきましても間接的には支持をしておる——支持といいますか、価格の維持をはかっていく方策を考えておりまするし、また一般流通対策につきましても、新たに省内に流通対策委員会を置き、また外部の意見も聞きまして、消費の面を拡大し、あるいはまた価格の面を早くキャッチし、あるいは直接統制による制度ではありませんけれども、需給の状況に見合わして、作付等につきましてもみずからこれを調整していくというような方法をとるように、いろいろ手段を講ずるつもりでございます。私どもといたしましても、でき過ぎたから安くなったということでは、せっかくの政策がむだになりますので、十分に注意してその対策を講じていきたい、こう考えます。
  90. 古屋貞雄

    古屋委員 それが一番大事な点なのですがね。悪循還をどうして切るかという問題、それから特に最近具体的な事実がある。御承知通りマル東という神田の問屋さんが破産したら、農民は自分の一年の収穫一切と、それに運賃なり箱代まで入れて一文もとれない。これは東京都が監督し、あなたの方で監督しておるけれども、最終的に言うと補償というものは受けられない。従ってこの農民の生産された品物に対する問題の解決というものは、これは通産大臣の方の所管だと言ってあなたはお逃げになるかもしれませんけれども、少くともそれより先に、どうしたらこの悪循還を切って農民をあなたの方で完全に保護できるかということになれば、アメリカのように、政府が全部の農産物価についてはある程度の補償をするという制度に切りかえて参りますならば、私はこの問題は解決がつくと思う。従って農民は計画経営ができる、こういうように思うのですが、この点の悪循環を解決するにはどういう方策があるか、具体的な対策があれば承わりたい。私どもは、価格支持の問題にあらずして、いわゆる資本主義経済下におけるところのこういう悪循環を切るには、政府が農民の生活安定と国民の食糧安定を考える場合においては、これは計画経営でなければならない、計画生産でなければいけない、もうかるから生産をするということでは相ならぬと思うのでありますが、そういう資本主義制度の中における必要生産ということを前提にして考えれば、この自由主義経済と必要生産との食い違いを何かの政策によって解決しなければ解決つかぬと私は思うのです。そういうことについての農林大臣の解決法がございますならば御決意を承わりたい。
  91. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知通り、先ほど申し上げましたように、農産物の相当部分は価格支持をしておりますが、全体の経済政策といたしましては、今、自由企業、自由市場という状態でありますので、これを全面的に農産物だけを統制して、農産物の価格下落について補償するということまでは、今考えておりません。しかしながら、需給の関係や作、不作の関係等によっていろいろ変化がありますので、それに対しましては、先ほど申し上げましたいろいろな方法によって、その被害を少からしめるという手段をとっているわけであります。今ここに出ましたマル東の問題等につきましても、実は農林省として直接責任があるというわけではございませんけれども、市場開設者に対しては監督権があるわけでありますし、生産者に被害を与えたというわけでありますので、私どもの方であっせんをいたしておりまして、この解決も近く見られると思うのであります。  先ほどの御質問にお答えを忘れたのでありますが、補助の面を少くして融資の面に転換するという傾向があるのじゃないか、こういうことでありますが、私どもは必要な補助というものはぜひ残しておかなければいかぬと思っております。しかし補助だけでも非常に仕事が進みませんので、やはり融資の面は融資の面でやっていくという面を拡大しているわけであります。先ほどちょっとお話に出ましたが、六十五億の小団地の土地改良なども実は今までおくれておった小団地の土地改良を進めていこうというので、その方に融資を進めましたので今度は特定土地の改良といいますか、積寒地帯とかあるいは急傾斜地帯とか、そういう方への補助に小団地の融資に回った分だけ回していくというわけで、両々相待って農業政策を進めていこう、こういう方針で進めておるわけであります。
  92. 古屋貞雄

    古屋委員 いま一点で終ります。養蚕の問題をちょっとお伺いしたいのです。蚕糸局が全国に流したところの指導方針が、結局独禁法にひっかかるような結果を来した事実が今ある。従って繭の売買を禁じたりあるいは独占さしたりということによって、養蚕家が非常に憤慨して、養蚕家国民大会まで開いた事実がある。従って蚕糸局の地方への指導の流し方について、農林大臣から厳重な御注意を願って、最近養蚕に対するところの独占禁止法に対する申し出がたくさんございますから、この点に十分御留意を賜わりまして万遺憾なきを期されたいことをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  93. 江崎真澄

  94. 井上良二

    井上委員 今日まで本委員会で同僚並びに先輩各位から、明年度予算の編成の問題につきまして諸般の角度からいろいろ質問をされておるのでありますが、それらの質問のうちで、特にわれわれ国民全般から見まして、なおかつこの点、この点と思われる点が二、三抜けているようにも考えますから、それらの点について時間の許す限り二、三質問をいたしたいと思います。  その第一は、われわれ本年度予算の全体を受け取りまして、これを審議する立場に立つ者といたして考えなければなりませんのは、明年度予算が一体どういう規模の上に組み立てられているかということでないかと思うのです。そこでその明年度予算の規模を考えます場合には、本年度、現に執行しております予算が、どういう性格の上に組まれたか、これはすでに同僚各位からいろいろな角度から批判をされました通り、前石橋内閣のもとにおいて、未層有の好景気が日本を取り巻いてきたこのチャンスを逃さずに、この際設備を拡大し、大々的に輸出を振興してこの際経済全体の発展を期待したい、こういうところから一千億の減税、一千億施策という大規模的な宣伝をいたしまして、それによって予算が編成された。ところが予算を実施してもののみごと二カ月もたたぬうちに緊急経済政策によって、その世界的経済の動きに対する見誤まり、さらに国内における過当投資競争をあおった結果が、直ちに国際収支に大きな赤字を見ることになって、このままでは大へんな事態になるというところから、金利の引き上げに伴う金融の引き締め、これらが直ちに中小企業から一般下請関連産業へ全部影響してきて、商品価格は暴落を始める、その結果延べ手形がどんどん出てくる、不渡りになる。ついに破産倒産、かかえきれない家は、やむなく一家心中をしなければならぬものさえ出てきた。政府はこの国際経済の見誤まりから国内における急激なデフレ政策をとったその結果、国民に与えた経済的打撃に対して、一体どういう政治的責任を負おうといたしますか。この政治的責任については一向明らかにされておりませんが、これは政府は負わないでいいと大蔵大臣はお考えになっておりますか。この点に対してどういうお考えを持っておりますか。まずこの点に対する政府の政治的責任を明確にされたいと思います。
  95. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 こまかい議論はいろいろあると思いますが、大筋に申しまして、三十二年度の予算につきましても、世界の経済の動向を見誤まったというのでは私はないと思います。これはいわゆる世界的な波動を持っておる景気の循環でありまして、むろんこういうふうな事態の場合におきまして、いろいろな施策を敏活にとらないと、投資の行き過ぎということから、ほっておけばインフレ的な傾向をとるということは考えられるのでありますが、予算自体からいうと、昨年度の予算にしても、やはり私はいろいろな均衡を保っておる予算であると思います。ただ全体との関係において、もう少し投資の抑制ということが、すみやかに行われればよかった、かように考えておるわけであります。これがおくれた結果、しかも投資の行き過ぎが主として外貨——従来戦後長い間蓄積されておった外貨でもって輸入されてきた。そこで外貨事情が急激に悪くなった。ある限界を越えてはいけないという見通しが立ちましたので、昨年の五月以来緊急対策をとりまして投資の抑制をはかった。その間においてもう少しうまくやるべきでなかったかという議論は十分立つと思います。私は率直に認めます。しかし日本の経済の動かし方といたしましては、やはり輸出等におきましては大体予定通りいっておりまして、そういう観点からすれば、経済の見通しというものは必ずしも誤まりではなかった、ただ行き過ぎが生じた。この行き過ぎということが経済的にいえばいわゆる景気の波になるわけであります。自由経済においてはある程度これはやむを得ない。特に国際的な影響を多く受ける日本の経済としてはまた免れがたい点でもある、かように考えておるわけでありまして、従いましていろいろと意見はありましょうが、今申しましたような現実に立って事を運んでおるわけであります。
  96. 井上良二

    井上委員 問題は昨年の予算の立て方、つまり本年度の予算、この結果から非常な打撃を経済界に直接及ぼしておることは、見逃がすことのできない事実であります。政府はあの緊急施策をやりまして以来、漸次貿易は好転してきたということを盛んに宣伝をして赤字から黒字に好転しておるということが、九月から十月に放送されてきたのでありますが、その内容は輸出が積極的に伸びていったのではなしに、輸入を極端に抑制した結果から起っておるのであって、これは人為的な黒字をことさらに表面上作ろうとする、こそく的な黒字政策といいますか、国際収支の改善政策というよりほかに私どもは見ることはできない。それよりももっとわれわれが見逃がしてならぬ問題は、いわゆる政府のこの緊急施策によって、最初直接被害を受けたものは、資本力と実力の弱い中小企業や一般勤労者でありますが、これが次第に問屋に影響してくる、さらにメーカーに影響してきた。去年の暮れからことしの春にかけては、御存じの通り繊維を中心にするものあるいは機械、造船、鉄鋼、これらの各産業は、それぞれ軒並みにデフレの影響を受けて、繊維産業のごときは、ことしの春には五、六千人の失業者を正月早々から出さなければならぬ事態になっている。あるいはまた造船においてもまた鉄鋼においても、それぞれ需要が急激に激減いたしまして、生産制限をやらなければならぬ事態に追い込まれつつある。その結果全国的には、失業者だけでも十四、五万も出ようかという事態になってきておる。そして一方滞貨はどんどんふえつつある、こういう事態に追い込んでおるのは事実であります。従ってこれは当然政府が昨年春とりましたところの、あの緊急施策による結果から生じてくることであることは明らかでありますから、これらの政策の結果デフレの影響を受けておる各産業に対する対策を、当然政府は立てなければならぬ責任が起っておると思うのです。そうお考えになりませんか大蔵大臣
  97. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今のお説について、若干私御説明を申し上げます。この緊急対策の結果輸出は伸びぬじゃないか、ただ輸入を押えただけだ、そういう御説でありますが、実際はそうではないのでありまして、三十二年度の輸出の増勢を統計にとってみましても、当初は毎月一億八、九千万ドル、それから二億ドル台に上ぼせまして、最近では月に二億五千万ドル台になるというような輸出の歩みを示しておるのでありまして、輸出が伸びないということではないのであります。ただ先ほど申しましたように、投資が非常に急激に行われ、それを外貨でまかなって、外貨がぐっと減った、投資を押えたから外貨の輸入のところがずっと減ってきた、輸出は割合によかった、こういうふうな関係から、予期以上に国際収支は早く改善を見つつある、かように申していいのであります。従いまして経済の歩みが非常に悪くなっておる、国際的に見た場合に悪いという状態ではないと、私は判断をいたしております。それからこういう緊急施策をとった場合に中小企業にしわが寄るではないか、これは政府としても当初から意を用いたところであるのであります。今日の社会の構成において中小企業は弱い。どうも力関係から不利をこうむるおそれがある。これは政治として直していかなければなりませんが、現実においてはなおやむを得ない。そうすると、これに対して政府として手を差し伸べるべきが当然であります。従いまして金融その他の措置によりまして、当初から中小企業については、これを助けるあらゆる施策をとって参ったことも御承知通りであります。それからこういう施策をやった結果、たとえば繊維等においては滞貨も生じて、非常に困っておるのじゃないかという御意見、その状況は、経済において、生産の調節をしなくてはならないという事態においては当然起るやむを得ない過程であります。特に繊維につきましては、これは井上さんは私よりも御承知通り、特に大阪地方でありますが、これはもう今日の問題でありません。これは数年前、私が鳩山内閣におりました中ごろから、生産過剰を早く調整をしなければいかぬじゃないかと言いましたが、今日におきましてはどうも業者自体が生産を調節する機能を失っておるのです。いわゆるり独禁法というものが特に幅をきかしておりまして、それで競争心々という、こういう行き方が強過ぎる。従いまして繊維におきましてはいかに金融をしてみても、金融すればするほど過剰生産になる。金融がつけば作る、そして物が売れない。それではとうていいかぬから、早く生産調節をするようにということを、私は大阪の人にはくれぐれも言うたのでありますが、やはりそれが思うようにいかなかったことを、今日において私は特に遺憾といたしております。しかしながらそういう生産調節も最近に至りまして、繊維においては、ものによっは二割から五割に及ぶ生産制限、いわゆる操業の短縮をやっております。また鉄鋼についても五割程度もやっておる。こういうふうに生産調節が軌道に乗ったばかりでなく、もう大体終結に近寄りつつあると私は思っております。従いましてここに滞貨問題もありますが、根本において生産の調節がここで確立いたしますれば、今日ある滞貨は消費されることが明確になってくるから、もはや滞貨という範囲に入らなくなってくる。作ることが制限されて、需給が確立する、これは時間をかければ必ず消化される、こういうような状況に今日あるのでありますから、こういうところに金融の道が適切にいきますれば、経済が均衡を得た需給の上にだんだんと回復していく、こういうふうに考えておるわけであります。
  98. 井上良二

    井上委員 いずれ当面しております操業短縮なり滞貨対策については、それぞれ質問いたしたいと思いますが、今国民が一番政府に、また国会を通して望んでおりますことは、この三十三年度の予算編成を通しまして、この年度間の景気の見通しがどうであるか、政府は明年度の世界経済を一体どう見きわめておるだろうか、この世界経済の一環として立っております日本経済の今後の動きというものに対して、どうお考えになっておるだろうかということでありますが、大蔵大臣は、明年度予算編成に対する立場に立って、この一カ年間の経済の見通し、世界経済の動向をどうお考えになっておるかということを、端的に表明していただきたいと思います。
  99. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御質問につきましては私は三つの観点から申し上げるのがいいと思います。一つは国内の態勢、言いかえれば国内的に見た日本の経済は、どういうふうになっていくだろうか、それからもう一つは国際経済はどういうふうな動きをするであろうか、さらにその二つの、国内並びに国際経済の総合の上に立った日本経済というものが、どういうふうな行き方をするであろうか、結局それが一番大切な結論になるのでありますが、そういうふうに考えてみたいと思います。むろんこれは相関連をいたしておりまするから、そんなにはっきりした区分を申し上げるわけにもいきません。  第一の国内の経済でありますが、これは先ほどから申しましたように、昨年の五月から景気の行き過ぎと申しますか、具体的には投資の行き過ぎを是正する緊急施策を強くとって、金融引き締めを中心とする施策をとっておることは御承知通りであります。これが三十三年度においてどういうふうな経過をとるであろうかということが一つであります。私の考えでは、むろん私は一つの政策として考えております。こういうときまでにこうしたいという、政策者としての一つの希望があります、あるいはまた政策として国民に示すという意義がありますから、そのこと自体がほんとうにこうなるであろうということとは一致しないかもしれませんが、こういうふうにあるべしというふうな気持から申しますから、世間ではそれは甘過ぎるとかどうとかという批判はあるかもしれませんけれども、しかしポリシイ・メーカーとしてそういう態度も私はやむを得ない、こういうふうに考えておるのであります。そういう意味から申しますれば、私は生産の調節、いわゆる物の需給の基盤を確立するのは、三十二会計年度、言いかえれば三月ごろまでには調節を終りたい、これは私の一つの目標であります。こういうことについて世間では、やはりそれは甘い、やはり年度過ぎ四、五月までいくぞというふうに言う人もあります。しかしそういうふうにだらだらと政策者が言うておっては結末がつかないのでありまして、実際の見通しとしては私は一応そういう目標を立てるのであります。そして四、五、六月というところで、そういう需給の調節の済んだところの跡始末でならしていく。いろいろと需給調節ができても、まだ滞貨があるじゃないか、その滞貨はどういうふうに消費市場を見出すのか、あるいはその間におけるファイナンスはどういうふうに考えるのか、いろいろ問題はあると思います。私はそういうことを考えていこうと思います。そして七月以降になれば私は、国内態勢が経済の基盤において均衡を得た形において、一応の新しい出発をなし得る状況に持っていきたい、こういうことが若干延びるかもしれません。しかしこれは実際とポリシイとの相違になるのでありまして、私はそういうふうな考えでおります。  それから国際経済の動向でありますが、これは私はやはりあの人工衛星というものが大きな影響を世界経済に考えておると思います。これは今日の国際情勢を動かす上において、あの人工衛星がソ連において打ち上げられたということが、経済的に大きな影響を持っているというのが私の一つ考え方のもとでございます。それは、こういうふうな状況ですから、アメリカとしては自由国家というこの一群との関係において、どうしても経済力を動員をするということは当然考えなくてはならぬ、またそうあるべきだと思います。これが一つ。それから世界経済の客観的情勢がどうしても、従来のようなアメリカの経済とか、あるいは西ドイツの経済とか自国だけの経済を中心として考えていくということでは、もはや世界の経済は動かない。特に人工衛星がまたそこにからんで来ますが、ああいうふうな事態があった以上においては、どうしても西ドイツにしてもアメリカにしても、世界の経済をよりよくするために、自分たちは力を従来よりも一そういたさねばならぬ、こういう具体的な環境になってきておると思います。それが私の一つ考えです。そういうふうなことを、アメリカの政府は今日政策の上において具体的に実現をしつつあることは御承知通りであります。特にアメリカにおいては、これは金融政策としてやっておりますが、目ざすところはやはりアメリカの経済を繁栄させてそうして輸入力をふやしていく。いわゆる物の輸入という形において世界の経済に寄与していこう。同時にまた対外援助もふやすという機運があるということも御承知通りであります。こういう点は私は今後いい影響を与えると考えます。  次は、しかしヨーロッパその他を見た場合に、通貨の安定ということが一番今大事な問題になっておりますから、こういう国々において緊縮的な政策をとることは間違いありません。従いましてこの面からくるのは、いわゆる貿易が非常に激しい競争にさらされるということであります。  次は、東南アジアの国々。東南アジアの国々は購買力が足りませんから、日本が考えておるような、この方面において貿易の拡大が急に行くであろうということは、これは日本がクレジットでもよほど与えない限りはできませんが、その力は今日日本には十分ありません。こう見てくると、いい面と悪い面とが国際的にあります。国内的のものはさっき申し上げた整備の問題、これと今言った国際的な関係とからみ合してみました場合に、私はやはり七月以降漸を追うて徐々に世界経済としてもいい方に向くであろう、こういうふうに考える。従いまして、これに対応して、できるだけすみやかに日本の経済を整備するということに力を注ぎたい、かように考えます。
  100. 井上良二

    井上委員 大体大蔵大臣の、この年間の見通しは三、四、五、この辺が不況の最終だ。それから四、五、六と調整期を経まして、七月以降になれば、大体均衡的な上昇経済へ進んでいくことになりはせぬか、こういう一つの見通しを立てられている。また明年度予算の前提になっておりますこの経済計画でも、上期は全体的に低迷を続けるが、下半期に入って大幅に伸びる、こういうことが説明されておる。そうするためには、一番、今日本経済の発展の上に解決しなければならぬ問題は、一つは滞貨の問題であります。滞貨処理をどうするかという問題がございます。繊維を中心として莫大な滞貨がございまして、この滞貨のために、今大臣もお話しの通り、業界の方では自主的に操業短縮を実施して生産調整を始めてきた。それから政府の方にも働きかけまして、滞貨を輸出の方に振り向ける、あるいはこれを賠償物資として活用してもらいたい。一方、その健全な内需の増大をもう少しはかったらどうか、こういうような大体三つの大きなワクによって滞貨処理を考えておるのではないかと思いますが、そこで第一の操業短縮に対する通産省の考え方について伺いたい。またこれは後ほど伺います滞貨の救済金融について関係がございますから……。この操業短縮は現在まで大体政府等の意見もございまして、業界の方では自主的にやって参っておるようであります。すでに大臣お話しの通り繊維産業界の一部におきましては、実に操短五割以上というような大きな率で操業短縮を実施しておりますが、これは一体いつまでこの操業短縮を続けさせれば、完全な生産調整ができ得るという見通しをお持ちになって、政府は今後行政指導をいたしますか、いたしませんか。それらに対する対策は、どういうお考えをお持ちになっておりますか。通産大臣に御答弁願いたいと思います。
  101. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 先ほど来お話がありますように、実際を申しますと、輸出は繊維品につきましても、一昨年から比べますと、減っておらぬのです。減っておらぬどころでなしに、人絹、スフ等は多少減りましたが、それ以外はふえておるのです。しかもなおかつ非常な滞貨ができ、また価格が下落する、これは根本原因は生産過剰ということなのです。どうしても主産調節をやらざる限りはどうにもならぬということでありまして、対策としましては、先ほど来お話のように一手買取機関を設けあるいは過剰織機の整理あるいは繰短に伴う金融も考えて参っておるのであります。大体最初の目標は、ただいまお話のありましたように三月まで今の操短をやっていきましたら、四月ごろから大体調整された結果が出てくるのではないかと思っておりましたが、多少これは延びるようであります。さらに場合によりましては、操短をきつくやらなければならぬというような問題もあり、あるいはまた原料の輸入につきましても、価格の調節を考えていかなければなぬ面もありまして、従ってただいまのところ、いついつまでに処理が終るということにも参らぬと思います。これは率直に申し上げますと、その原因はインドネシアの政情不安で、おそらく輸出がなかなか回復しないのじゃないかというような問題、また暖冬異変によりまして、国内需要も存外にいかなかったという新しい要素が加わりました。こういう要素がなかったら、三月までで済んだのじゃないか。そういう要素が加わりましたために、これはただいますぐ直ちに四月一ぱいで調整が終るとも私は申し上げる段階でないと思いますが、いずれにしましても、延びたことは事実であります。しかしそう長い期間にわたってやらなければならぬというふうにも考えておりません。多少三月までの予定が先に延びてきた、こういうふうに考えておるわけであります。
  102. 井上良二

    井上委員 この際ちょっとお伺いいたしますが、政府でお調べになっておわかりになっております最近の繊維及びその他の産業の滞貨の滞量、それからその大よその価格といいますか、大体総額どのくらいになっておりますか、それをお伺いしたい。
  103. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 インドネシアにつきましては、これは非常に悪いのですが、それ以外はそんなに悪いことはないように思っております。むしろ順調にいっておるというふうに考えておりますが、詳細につきましては、政府委員からお答えいたさせます。
  104. 小室恒夫

    ○小室政府委員 在庫の状況は、生産者が持っておるものもあり、流通段階にあるものもありますから、なかなか実は把握しにくいという実態でございますが、しかしながら私どもの報告等で見ておりますところでは、綿製品については、操短を相当強化して参りましたけれども、わかっておりますのは、十二月の末まで少しずつ綿製品の国内の総在庫はふえております。十二月の末では五十四万三千コリというような糸換算であります。それから各品目別に一々申し上げるのもいかがかと思いますが、大ざっぱに申しまして、正常在庫と現在の在庫とがどういう関係になっておるかということを申しますと、たとえば人絹糸でありますと、四割八分だけ正常在庫より多い。また人絹織物は八割六分、ちょっと倍近い異常在庫になっております。あるいはスフ糸に至っては二一七%でありますから、二倍以上の異常在庫であります。梳毛糸については二三八%、これは正常在庫に対して、こういう比例になっておるということでありまして、こまかい数字は一々申し上げることは省略いたします。
  105. 井上良二

    井上委員 それの推定の滞貨の金額、生産原価といいますか、それはわかりませんか。
  106. 小室恒夫

    ○小室政府委員 これは綿製品の在庫の例で申しましても、実は糸換算になっておりまして、織物もあり、糸もある、そういう関係で実は非常に推定がむずかしいのですが、相当莫大は金額になるということは申し上げられますが、ある程度推定になりますので、ここで直ちに何億ということを申し上げるのはちょっと差し控えたいと思います。
  107. 井上良二

    井上委員 伺うところによりますと、この深刻な繊維関係の滞貨の実情に伴い、大幅な操業短縮の現実に伴って、政府は救済融資をやりたいというところから、日本銀行に対して資金手当を要請したということが伝えられておりますが、さような事実がありますか、もしありとすれば、一体いかなる見通しの上に立って、いかなる資金手当を要請したか、その総額を一つ御説明願いたい。
  108. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 繊維の業者から滞貨について金融上何らか考えてほしいという陳情があったことは事実でありますが、私はそれについて今融資をするということは考えておりません。先ほどから申しますように、繊維についてはどうしても生産の調節を確立をしていく、言いかえれば、需給の均衡を得るという見通しをするということが必要である。そうしてさらにその上で現在ある滞貨について、これをどういうふうに売りさばくか、処理するか、この見通しも立てなくてはならぬ。そういうふうなことを考えて金融も考えていきたい、かように考えておるわけであります。
  109. 井上良二

    井上委員 滞貨融資、操業短縮等に対する救済融資はやらないと、こういうのですが、そうしますと、先般北陸三県の人絹業に対して、中小企業金融公庫から四億円貸し出しをいたしておりますが、これは救済融資ではありませんか。これは何のために貸したのですか。
  110. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 救済融資というような考え方ではなしに、操短に伴う必要な金につきましては、これは考えなければなりませんので、そういう意味合いで四億貸すことにいたしました。
  111. 井上良二

    井上委員 そうしますと、中小企業等で増加運転資金を要求されます場合、この増加運転資金は貸し付けますか、貸付いたしませんか。それから単に人絹産業のみならず、ただいま御説明によりますと、他の産業においてもそれぞれ操短を始めておるわけでありますが、他産業に対しては、いかなる貸付をいたしますか、いたさないのでありますか。この点も明確にされたい。
  112. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただいま大蔵大臣から御答弁がありました通りに、操短をやらなければならぬものは操短をやってもらう。操短にどうしても必要な金につきましては、一応考えなければなりません。しかしいわゆる滞貨金融というようなことをいたしましたのでは、むしろ操短に阻害がある。従って今後の見通しをつけたものにつきまして、ケース・バイ・ケースで考えてみたい、これが現在の政府の一致した金融に対する考え方であります。
  113. 井上良二

    井上委員 大蔵大臣お話の通り、この繊維界を中心とする滞貨の問題は、最近特にひどくなりましたけれども、これは早くから滞貨が生じてきておる。全体の生産がオーバーしておるという実情になってきておりまして、このままではとうてい繊維界全体が立ち直ることが困難でありますので、ここに政府として思い切った滞貨処理の措置を講ずる必要がありはせぬかと思う。そこでまず第一は、滞貨を買い上げる意思があるかりどうか。そうしてこれを賠償の物資に振り当てる、あるいはまた全体が生産を制限しなければならぬ状態になっておると考えますから、世界の大体の繊維の需給関係考えまして、過剰生産設備に対してどうこれを処理しようとするか。これは過剰であっても宝の持ち腐されてさびさしたまま、カバ一を着せたままほうっておきますか、それともこれを何か賠償物資とかその他に転用いたしまして、繊維界の大きなガンを何とか処理する思い切った手が打てぬかどうか、これを伺いたいのです。
  114. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど申しますように、滞貨について救済的な融資をするということは考えておりません。先ほど申しますように、まず需給の調節をする、いわゆる生産の制限ということに今日は具体的にはなります。そうした場合に、過剰な生産設備をどうするかという問題でありますが、これはやはりできるだけ生かして使うようにすることが適当と思いますので、国内において転業をはかる、あるいはまたそういう設備が海外に輸出ができるのなら、これを輸出することを考えることも私は適当であると思います。なおかつ中小企業等の小さな企業においての過剰な設備をどうするかということについては、具体的な事態に対応して政府としても考えなくてはなるまいかと考えておる次第であります。要は設備についてはさようでありますが、過剰になっているもの自体は、私若干補足しますが、根本になる生産の調節ができて、今後これ以上需給のバランスが破れることはない、言いかえれば滞貨がふえることがないという事態が来れば、そこにある滞貨を処理することは比較的容易——容易とも言えませんが、処理しやすいのでありまして、もはや滞貨ということもなくて、時間をかくれば消費の見通しがつく、そういう場合については個々の事態に応じて金融も考えていいと私は思っております。これは資金的な関係になると、それぞれみなポジションが違い、あり方が違いまして、あるものはそれほど必要でないが、あるものは必要である、これは具体的なケースとして処理していきたい、かように考えます。
  115. 井上良二

    井上委員 それからいま一つ、この滞貨を何とか処理しませんと、大蔵大臣みずからお考えになります七月以降の均衡経済から上昇経済へ伸びていくということは、実際困難になりはせぬか。そこでこの際思い切って政府はこの滞貨を海外に積極的に輸出する、輸出の措置を講ずるために必要な特別な措置を何とか考えてみるということを御検討願えるかどうかという問題であります。それからいま一つは、この滞貨商品の輸出や、あるいはまた国内においていろいろ消費する場合、これと競合しますものを輸入するということは、この際極力やめるという、二つの手を講じる。輸出に特別な措置を講じて、積極的な振興措置をとり、それから輸入について競合するものは一切輸入させない、こういう処置がとれませんか。通産大臣どうですか。
  116. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 先ほどから申しておりますように、輸出は、インドネシアを別にいたしますと、決してそんなに悪くない。順調にいっておるのであります。従ってまず国内の生産調整ということが、根本原因になって参ります。これはもちろん先ほど来申しておりますように、進めていかなければなりません。もちろんまた輸出につきましても、積極的に宣伝をするなり、そういう面を考えまして、今度はジェトロの予算をとって大いに海外宣伝をやりたいと思っております。また賠償等につきましても、向うの要求もあり、またそれが現地通貨として必要な場合なら、もちろんこれに応じていいのでありますが、もとよりわれわれとしては積極的な宣伝をやり、輸出をふやしていくということもやります。またこれの代替物で輸入をしておるようなものがありましたら、輸入をする必要がないのでありますから、これは極力削減したいと思っておるのでありますが、今のところ、ただいまお話のように、それを入れるから困るのだというようなものは、あまりないのではないかと思っております。その点十分検討して、御趣旨に沿うようにいたします。
  117. 井上良二

    井上委員 ちょっと通産大臣に伺いますが、あなたの考えでは、相当輸出が伸びておる、またそんなに特別な手当を講じなくても、何とか生産制限さえいたして生産調整をしていけば、そう滞貨は心配ないのだ、こういうお話ですが、そうすると操業短縮は、繊維界においていつまで続けていくのですか。いつまで続けていったら、この滞貨はなくなるのですか。
  118. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 先ほど申し上げておきましたように、大体われわれは三月までの調整でいい、正常に返る、こう考えておりました。ところが先ほど申し上げましたように、インドネシアの政情不安、それから暖冬異変という問題が起りまして、それで三月には調整が終らぬ。さらに四月あるいは五月までも延ばさなければならぬという新しい事態で、そういうふうなことになって参りました。しかしそんなに長い期間であるとは、われわれは考えておりません。もとより御承知のように、一昨年生産設備が急に、われわれとしましてはむしろ意外にふえておりますので、それらのかけ込み増設と称せられるものに十分な稼働をしてもらう、そういうわけにはいかぬと思いますのは、そういうことで大体調整が終る、こういうふうに考えております。
  119. 井上良二

    井上委員 そうしますと、大体滞貨に対しても政府は、さほどこれが日本のデフレ調整の支障にはならない、こういう一つの見通しを持っておるように私ども承わるのでありますが、そうなりますと、ここでさらに私ども、さきに大蔵大臣が申しました、三月一ぱいに大体難問題はすべて解決して、それで四月、五月、六月と調整をして、七月以降においてどうにかつり合いがとれるというところへ持っていきたい、こういう一つの期待を持っているのです。それをやるためにはここに政府として、七月以降日本経済が好況への一歩を踏み出すという手を打つためには、今からそれに対応する対策を立てておかなければならない。その一番大きな問題は、金利の問題でございます。金融緩和の問題であろうと思います。この金利の問題と金融緩和の問題について大蔵大臣は、あるときはもうその時期がきたという、ウナギ屋の門を通って、おなかのすいた人にいいにおいをかがすような発言をしておるから、それを追及していくというと、いや、そうじゃないのだ、まだあかんのや、こういうことで逃げてしまって、さっぱりつかみどころのない答弁をしておりますが、私どもうかがい知るところによると、アメリカにおきましても、昨年の十一月から一月にかけて、公定歩合の引き下げをいたしておる。さらに最近米連邦の準備制度理事会では、支払い準備率の〇・五%の引き下げを決定した。このことはアメリカにおける金融緩和、デフレ措置に大きく踏み切って、これで米国の投資に非常に大きな刺激を与え、これがまた米国の景気を建て直し、また日本へこれがはね返って、日本の経済にプラスとなってくるということは予想され得る。そこヘアメリカの新年度予算が成立するという関係もありまして、七月以降のアメリカを中心とする景気というものは、非常に変ってくる。そのときになって金利引き下げ及び金融緩和をするというても、非常なズレが出て参りますから、大体今大蔵大臣がお話しになりましたように、四月、五月、六月をいよいよデフレの調整の段階とするというのならば、この際思い切って金利を引き下げる、そうして金融を緩和するという、この二つの大きな手を打つ必要があろうと思いますが、大蔵大臣、率直な御意見を伺いたい。
  120. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 まず第一に、私は金融の点についてあいまいなことを言うたことは絶対にありません。きわめて明確に私はこの点については話をしておるつもりであります。それから今金利を引き下げてはどうかという、これは具体的な問題ですが、今はさような時期ではないのであります。それは先ほどから申し上げますように、私の希望を含めた政策といたしましても、少くともこの三月、これは若干おくれるかもしれませんが、三月、これは調整、特に生産の調整ということを目途にしておるのでありますから、ここで金融をゆるめるという施策をとることができないことは、言うまでもないことであります。ただ今まで金融が引き締っておりました大きな一つの原因は、むろん財政の引き揚げもあります。これは今後においても、三十二年度ですからなお続きますが、もう一つは外国為替輸入が非常に急速にふえてきた。それで締っておったのでありますが、これは最近では出超であります。このプラス、マイナスの限度におきましては、この面からは金融が今日緩和しつつあるということは言うまでもありません。しかしながら日本銀行の貸し出しが、今日なお五千億に近いものがあると思うのでありますが、これは異常貸し出しであります。ですからこの異常な貸し出しはやはり回収しなければならない。そうしますと、外国為替からくる金融の緩和というものは、今日なおそれほど市場を潤わすに至っていないと考えていい、また潤わすべきではない。当然これは引き揚げなければならぬ。そうしますと、金利を下げるべき条件は何もありません。今後金融は、来年度に入るにつれて外国為替並びに財政資金から緩和していくと思いますが、しかしそれはやはり日本銀行の貸し出しの減少ということでバランスがとれていく、そうして金融が正常化していく、こういうふうに考えております。  それからアメリカが金利を非常に下げて、景気をよくする施策をとっておるじゃないかということですが、これは日本とは全然趣きを異にしておる。アメリカが今日ああいう施策をとりますのは、むろん国内施策もありますが、同時にこれはやはり世界経済をになっておるという、そういう立場から来る政策、同時にまたそういうことをやり得る経済力をアメリカは持っておるのであります。日本はそういう経済力を持っておりません。いわんや世界の経済について指導的な政策をとろうということなんか、とうていなし得るところではございませんで、今日日本としては、日本の経済を立て直していくということにもっぱら主力を注がなければなりませんから、アメリカの例は当らないと考えております。
  121. 井上良二

    井上委員 その問題については私ども相当意見もございますけれども、時間が非常に限られておりますから、次に私伺いたいのは、私ども考えますのに、政府が本年度国際貿易の帳じりを黒字一億五千万ドルを期待しますために、輸出を三十一億五千万ドルという目標を立てた。ところが実際は、そこに行きますのには政府の本年の世界経済の各般の検討の結果から申して、なかなか容易ならぬということは政府もお考えのようであります。また国内的には何としてもこのデフレを調整をしなければならぬという事態になっておるときでありますから、どうしても健全な国内の需要をもっと増大さすやり方をとった方がいいのではないか。そのために一番健全なやり方としては、大衆課税を軽減するという方向を打ち出す、これはいろいろな角度から、各方面でいろいろ議論がされておるところでありますが、大蔵大臣、率直に伺いますが、明年度予算において租税の総収入は実に一兆円を突破いたしました。一兆二百五十九億一千三百万円という、今までにかってない大きな税収になっております。この税収のうちで、直接税の勤労所得税、それから最も勤労国民大衆が多く利用いたしますところの間接物資にかかります間接税、この両方を合せますと、租税額のほとんど八割を占めるに至っている。間接税だけで総額の約半分を占めている実情になっております。非常に税が大衆のふところをねらってきているということがいわれるのでありますが、かような税の取り方に対して、大蔵大臣は租税負担が過重でなくかつ公平であるとお考えになっておりますか、この点を一つお伺いしておきたい。
  122. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今日税負担が重いということは、これはもうその通りで否定すべくもありません。ですからできるだけ税の負担を軽減したいというのが歴代政府の願いでありまして、従いましてこれは大小にかかわらず毎年減税をいたしておるわけであります。  それから税の負担の公平の点につきましては、これはむろん税の根本義に触れることでありまして、公平を期さなくてはなりません。しかし敗戦後における税制は、シャウプ博士が来られて、一応直接税を中心に税制を立て直して、それ自体としては私は理論的な体系をなしておると思うのでありますが、しかしまた日本の実情に果して適応しておるかどうかという点については疑問がある。従ってその後において次々と私は改善ではありますが、手を入れております。それだけまた税の体系がゆがめられているとも言えると思うのであります。それから敗戦後の日本の国情に応じまして、これは税としては好ましいことではありませんが、政策的な税がある。言いかえれば、あることをなすために税の減免というものが税法上の特別の措置という形で行われております。これなんかもやはり税の本来ある姿をゆがめていると私は考えますので、こういうのはできるだけすみやかに廃止しなくてはならぬのでありますが、こういうのが残っておりますから、そういう意味におきまして、今後税全体について検討を加える必要はあると考えております。
  123. 井上良二

    井上委員 税全体について検討を加えると言いますが、すでに大蔵大臣の諮問機関として税制調査会が、現行税制について非常に大衆負担が重いからこれを軽減する措置を講じろという答申を数次しておる。しかるにそれをやろうとしない。しかも単に税金が、大衆の負担過重というだけではなしに、その取り方がきわめて不公平であります。税はできるだけ公平で担税力のある者から取るということが建前になっておる。ところが日本の税は、担税力のない者から、そして不公平に税を取るということが建前になっている。こんなべらぼうなことは許されませんよ。  現にここに勤労所得税の所得袋がありますが、大学を出まして役所へ勤めて三年になる人で本給が一万三千円、これに諸手当を加えて一万六千円、これに対して税金を何と千五百六十円取っている。ところが一方、株券を持って株の配当によって所得を得ている人は、百四十九万円までは税を取っていない。これは一体どういうことです、大蔵大臣。そんなべらぼうなことが一体許されますか。株を持ってその配当で所得を得た者は百四十九万円までは税を取らぬでほっておきながら、一カ月三十日間、弁当を持って営営として働いて、諸手当を加えて一万六千円、この者には千五百円も、本人が払う意思もないのに源泉徴収として取っているじゃないか、こんなべらぼうなことがあるかね。そういうことは許されますか。しかも農業所得が、所得税率に比べると〇・四、その他の所得者は一・九。ところが給与所得者に至っては三・九の重税が課せられている。これはどういうことです。直接税においてそうなんです。  さらにはなはだしきは間接税でどういうことをやっているのですか。間接税の一番大きいのは酒の税金です。この酒です。この酒は年間約米を百三十万石つぶして、その中にアルコールをぶち込んで、これを米で作った酒として売っている。ところがこれは特級から一級、二級と分れておって、特級酒千七十五円のうち、六三%、この紙の張ってある下全部は税金です。そんなむちゃなことがあるか。これから上しかほんまものはありませんぜ。しかもこの青い紙を張ってある二級酒は、一升五百五円で四四%六かかっている。約半分が税金です。しかもこの二級酒にはアルコールが半分入っているのだ。米で作ったと称しながらアルコールを半分ぶち込んでおきやがって、それでもって税金を半分巻き上げて、税が安いというておる。この酒の方が高いからこっちやめたといってビールヘいったらビールはどうです。ビールはこの紙を張っただけが税金です。小売価格百二十五円のうち、七十円二十銭の税金がかかっている。こんなべらぼうな話はありませんぜ。こういうべらぼうなことをして——これはほんまのビールが入っているのじゃ。このビールをあけてごらんなさい。コップに一ぱいも入らないうちに、これだけがほんとのビールの元金やがな。あほらしい。これからあと全部は税金やがな。そんなべらぼうなことがありますか。しかも今度の減税においては、この二級としょうちゅうと合成酒と負けておいて、ビールの税金を負けておらへんじゃないか。どういうわけで負けられへんのか。これだけ重たい税金をかけておいて、この方の税金は負けないという。おれは酒飲まぬで、それじゃ甘口にいこう。これは砂糖一斤だ。市場価格で一斤八十一円、税金は一斤に対して二十八円かかっている。これが角砂糖だったら三十四円取られてしまうんだぜ。それからラムネ飲んだら一本十円だ。その十円に一円二十銭の税金を取っている。むちゃくちゃやないか。そういうべらぼうなことをして、それで片方では株を持って百四十九万円までは税金を取らぬのです。これであんた大蔵大臣の役割を果しておると思っておりますか。民主国会から公選されておる岸内閣の大蔵大臣として、この事実をどうお考になりますか国民が聞いておりますから、国民一つ答弁して下さい。この不公平はどういうんですか。
  124. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 税金が重いということにつきましては、先ほどから申し上げた通りでありまして、歴代の政府が減税について意を用いておることも言うまでもありません。ただ大蔵大臣としてお願いをしなくてはならないことは、何さま戦争に負けたのです。そしてすべてが破壊をされ、国民生活のために一つ一つ今からまた築き上げて、少しでも住みよい社会にしたいということが当面されておる問題なんです。従いまして政府がまたいろいろと仕事をしなくてはならぬ。予算を見ましても、大蔵大臣はできるだけ緊縮予算を組んで、歳出を少くして減税に向けたいといっても、なかなかそういかないというのも、やはりこれは単に意見ではなくて、国の実情がそういうことを要請しておると見なくてはなりません。そうしてみると、税も負けたいのだが、同時にしかしああいうこともしてあげなければならぬということもありますので、今はそういうところに悩んでおるということを申し上げて、しかしながらお説の通り税は高いのでありますから、一日も早く減税ができますように、これには何としても日本の経済を繁栄をさせて、そうして財源を培養して税率を低くして、しかも税は上る、こういうふうに持っていくことが一番適切であって、単に税は負けて税は取らない、そのかわり政府も仕事をしない、これではやはり大きな人口をかかえてどうにもなりませんから、そういう点は一つあまり短気を起さずにいかなくてはなるまい、かように考えております。
  125. 井上良二

    井上委員 私は何も短気を起して大蔵大臣を責めておるわけではありません。われわれ国民としましては、われわれの住んでおるこの国が平和で豊かで住みよい国家になるためには、それが多少自分の生活に食い込んでも、重たい税金であっても、そのためには払いましょう。ところがその税の取り方が不公平で片ちんばであるというようなことではがまんできないのです。あなた方が乗り回しておるところのあの乗用自家用自動車には、税率は五〇%ですぞ、物品税は。このビールを見てごらんなさい。なんぼ取っておりますか。五六%取っておる。自動車よりもこの税率の方が高いのだぜ。働いている者は、これを一ぱい飲もうと思って楽しみに帰ってきているがな。さて帰ってきて飲んだが最後、自動車よりも高い税金を取られてるじゃないか。時計を買うてごらんなさい。楽器を買うてごらんなさい。それぞれ免税点というものは、千二百円以上の免税点がちゃんとあるんですぞ。ラムネ一本十円です。その十円のラムネに一円からの物品税を取っているじゃないか。そんなべらぼうなことが許されますか。片一方、法人その他に対しては、御存じの通り租税特別措置というありがたい法律を作っていただいて、一年間に約九百億、一千億に近い免税がされておるじゃありませんか。そういうような不公平をなくしてくれと言っている。何で不公平をなくすことができませんか。同じ物品税を取るなら同じ率で取っていただいたらいいのじゃありませんか。同じ率で取るなら何も文句を申しませんよ。テレビやカメラを買う裕福な人が納めておる税率は三〇%です。テレビ一台三割しか税金はかかっておりません。ところがこの二級酒を飲んだら四割四分五厘という税金がかかるのです。そんなべらぼうなことが許されますか。そこを私はあなた方に聞いていただくために、わざわざこれを持ってきている。ゴルフや高級自動車は五〇%もかけることは当然であっても、これから何で一体そんな高い税金を取らなければならぬか。そこを私はあなた方に真剣にお考え願いたい。そしてこの特別措置を改め、物品税の不合理を是正し、そうしてこの間接税の大幅な減税をいたしまして、生活に食い込んでおるところの所得税を減税をしていただきますならば、どれほど大衆は助かるかわからぬ。それをあなた方は何でおやり下さらぬか。そうすれば全体的に国民の生活は高まってくる。いや、そんな財源はありませんと言うかわかりませんが、そうは言わしません。御存じの通り三十一年、三十二年、三十三年、この見込みを合せると四千億円ほどの税の自然増になっているのです。このうち三十一年度補正予算で使った七百億を除いても三千五百億の自然増がある。このうち減税として国民に直接与えたものは本年度の予算であります一千億の減税である。私どもの計算によりますと、政府がやろうとすれば一千三、四百億というものが国民に返すべき減税財源となり得るのです。それを何でおやり下さらぬのか。それをやらずに、大蔵大臣は別途租税特別措置法をいろんな面でこしらえ、あるいは余裕財源としてこれをたな上げするというような行き方をおとりになって、この不公平には知らぬ顔、それで済みますか。
  126. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 税の負担が公平でなくてはならぬことは申すまでもありません。それで税制調査会を作りまして特に専門家の意見を聞き、税制の改正を逐次やっておるわけであります。しかしなお一挙にいきません関係もありまして、今お説のようなことがあるとも思います。これらについては今の御意見はごもっともなことでありますので、今後におきましてなるべく早く一般にわたって是正をいたしたいと考えておるわけであります。
  127. 江崎真澄

    江崎委員長 井上さん、あなたの持ち時間はあと十分しかございませんので、結論にお入り願いたいと思います。
  128. 井上良二

    井上委員 大事な問題は、自然増収の見積りについての問題であります。政府では毎年税金徴収の算定の基礎といたしまして、鉱工業生産の伸び、物価の状態、国民所得というものを見まして、ことしはこうだというふうに算定をしてくるわけであります。ところがそれが毎年狂っておる。予定よりも租税をよけい取るというような算定をすることは許されぬ。少いことも見込み違いでありますから困りますけれども、予定よりもよけいに徴収するという算定をいつも持ってくることは許されない。どういうわけで自然増の見積り違いが毎年そう出てきますか、この点を伺いたい。
  129. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 決して特別によけいに取るというわけではないのでありますが、大体年度におきまして経済の伸びが生ずるのであります。経済がそれだけよくなる。また所得関係にしても、勤労者が給与を上げてくれぬでもいいとおっしゃれば別でありますが、やはり上げるということになると所得もふえる。こういう関係から法人税にしても、所得税にしても、また経済の状態がよくなるにつれて物の流通もよくなるのでありますから、どうしても間接税もふえる。こういうものもある程度見込むのでありますが、見込み通りには必ずしもならないのであります。最近においてはだれもが予定しないようなああいう大きな経済の伸びをした結果、特に目立って自然増収も多いのでありますが、経常的に非常に大きな自然増収が見込まれる場合には、これは私は減税に持っていくべきだと考えております。
  130. 井上良二

    井上委員 その点について最後に伺っておきますが、どうですか大蔵大臣、現在の税金は大衆負担が非常に過重である、そして税の徴収内容を調べてみると、いずれも非常に不均衡だ、公平でないということがいわれるのでありますが、そうすると、来年度の歳入予算の編成におきましては、この税の不公平を大胆に直す意思がありますか。そこを伺いたい。
  131. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 三十三年度の予算編成に当りましての歳入の見積りは、三十二年度の予算編成当時に比べて千五十億余ふやしておるのでありますが、これは三十二年度のその後の実績に徴しまして考えておるわけであります。従いまして、三十三年度におきましては、私は大きな自然増収はないと考えております。
  132. 井上良二

    井上委員 次に、内需の一番大きなお得意先は、何と申しましても日本の国民の約半分を占める日本農村で、この農村経済が確立し発展していかなければだめであります。ところが、昨年政府がお出しになりました農林白書を見ますと、昭和二十八年以来三十二年までの約五年間のあとをたどっていろいろな資料が出されておりますが、これによると、都市の経済と農村経済とのおそるべき不均衡が出て参って、このままでは容易ならぬ事態になるから、ここで他の都市産業部門と均衡のとれる新しい農業経済の計画を一体どう総合的に打ち立てるかということで、問題点をいろいろお出しになっておるようでありますが、私どもこの白書を見まして、まことに容易ならぬ事態を痛感し、特にこの際政府が新しい日本農業の向うべき方向を抜本的に打ち立てられる政策をお出しになるであろう、その政策に基いた新しい農林予算が国会に提案されてくるであろう、こう私どもは期待をいたしておったのであります。ところが、さいぜん古屋君の御質問にもありました通り、全く私どもの期待はずれの現状に陥っております。この二十八年から三十二年に至る五年間というものは、あなた方の政党内閣当時のことでありまして、その間に都市と農村との非常な経済的隔たりが出てきたということは、いかに保守政党が農林政策に場当り的な、その場のつじつまを合せる政策を打ち立てて、基本的な農業政策が確立されてなかったかを物語っておるのであります。今日わが国農業の一番の弱点とする点は土地が狭い、そこえもってきて稼動人口が多い、そこえ非常に原始的な生産方法をやっておる、この三つが重なり合って他産業との経済的競争にも、また外国農業との競争にもたえ得ない状態になっておる。それは耕種の改善とかあるいは耕地の改良とか、いろいろ新しい農業の行き方についての科学技術の方法が打ち立てられておりますけれども、この根本の問題をどう解決するかということでないと、私は日本農業の他産業との太刀打ちできる態勢が整わないと考えておるのであります。そういう観点から、私どもは一番日本農業のガンでありますところの耕地の狭いということ、それから非常に原始的な農業生産をやっておるということ、多数の人口を養わなければならぬということ、これを解決することが、何よりも必要であろうと思う。そこで、政府はこの問題について、積極的に一体どういうお考えをお持ちになっておるか、この問題が一番、予算的にも、実際的にも取り上げられて、解決の方途を打ち出されなければならぬ問題だと私は思うが、政府はどうお考えになっておるか伺いたい。
  133. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話のありましたように、農林白書におきまして、従来の農政に対して批判をいたすとともに、われわれとしても反省を加えたわけです。しかしながら、今御指摘のように政府が何事もしないでおったからというわけではないことは、御承知だと思いますけれども、昨年の三年続きの豊作を見ましても、あるいは土地改良とか農業技術とか、いろいろな面からああいう生産ももたらされた、これはもちろん農民の努力によるものと思うのですが、そういうふうに私ども考えております。ただあの中に指摘しておりますように、農業の関係の伸びが鉱工業の伸びに比較いたしまして、格差が出てきておるということは、これは統計上も、実際上も事実であります。     〔委員長退席、川崎(秀)委員長代理着席〕  でありますので、こういう格差というものをなくしていきたい、こう考えておるのでありますが、農業の本質から申し上げて——これは申し上げるまでもないのでありますけれども、鉱工業と同じような生産の伸びとか、あるいは所得の伸びということは非常にむずかしい問題だと思うのであります。しかし、その格差を広げていかないように伸ばしていきたい、こういうことで政策を立てておるのであります。そこで御承知のように、長期計画等におきましても、いろいろな面から、農業の伸びあるいは農林水産業者の生活の水準の向上ということにつきまして、目安を立て、目標に従って予算あるいは政策を進めていくということにいたしております。  そこで今、土地が狭い、人口が多いんだ、こういう根本的な問題の解決に手を触れなければだめじゃないかという御指摘であります。私どももそう考えておりますので、本年度の予算千八億におきましても、十分とは申し上げられませんが、従来よりは予算もずっと計上いたしました。土地の生産性といいますか、この基盤をやはり作っていかなければ近代化もむずかしいのではないか。農業は申すまでもなく長期にわたって成果が上ってくるわけでありますが、そういう点で、今すぐというわけではありませんけれども、効果を上げるためには、従来もやってきたのでありますけれども、土地生産、土地の基盤を確立していく、こういう点につきましては非常に力を入れまして、これは三十七年度の計画につきましても、作付面積を六・二%まで上げるという計画を立てておりますけれども、土地改良、開墾、干拓——新しい土地も造成いたしますと同時に、既耕地につきましても生産が上るように、生産が上ると同時に、土地改良をすることによりまして近代化も進むんじゃないか、こういうふうに考えておりますので、土地改良、土地の造成、あるいはまた土地の利用を拡大して、生産基盤を拡大していくということに力を入れるまた農家経済の所得の面に触れないでその方面だけを進めていくということも遺憾でありますので、農家の所得を増していくということにつきましては、農業生産の多角化といいますか、健全化から考え、食糧の総合的自給という面から考えまして、畑作とかあるいは畜産というような面に力を入れて、農家の——あるいは水産業者の方にも関係がありますが、所得をふやす方向考えていく。それから、そういう方向に持っていくといたしましても、今統制経済ではありませんので、生産が多くなって価格が高いということでは困りますので、流通あるいは加工対策の方に力を入れていくというようなことで、流通、加工あるいは価格の支持といいますか、そういう対策に力を入れていっておるわけであります。農業関係に非常に御造詣の深い井上さんでございますから、また御指摘をいただいて、足らぬようなことがたくさんあると思いますが、私はこの予算を進めていけば、三十七年度の計画に沿うていける、こういうふうに考えております。
  134. 井上良二

    井上委員 時間がありませんから、ごく簡単に要点だけを伺い、要点だけ答弁を願いたい。あと二点ほど伺います。  私の聞いておりますのは、農林白書によりますと、都市と農村が非常に不均衡な状態になってきた。これは日本の農村の生産の上らない現実の姿を露呈しておりますが、その生活もまた経済的に成り立たない。そこで兼業農家がふえてきて、農村に残りますのは全く老人と婦人になってきたということで、日本農業自体の問題としてもゆゆしい問題になってきた。そこで、全体の耕地の中の約七割というものは零細農でありますが、この七割の零細農を一体どうすれば経済的に成り立っていくような方法が編み出されるかということであろうと思います。これを経済的に成り立つようにすることと、他の産業との関係で一体これをどう均衡をとらすかというような大きな問題が横たわってきますから、そこでこの生産の面においては、積極的に共同化の方式を進めてはどうか、それから、それと結んだ農村工業の兼業化の方向への指導を積極的にやられたらどうか。それと結びつかずに、あなたが今お話しになりましたような、たとえば酪農を振興させまして乳価を安定さす処置を講ずる、あるいはまた余剰牛乳を学童に飲ますというような措置が新しくとられておるようでありますけれども、これらもよほど注意いたしませんと、少数の牛乳会社のために役立つ施策となって、牛の乳をしぼっております貧農や零細農の利益を真に守ることにならぬ結果が起ることがありますから、やはり農家と直接結んだ農村工業、これと結んだ流通秩序の確立ということが、側面的にとられて打ち立てられなければならぬのじゃないか、こう私は考えておるのであります。  河野経済企画庁長官が見えましたから、この際伺いますが、はなはだ私ども遺憾に思いますのは、さいぜん申します通り、経済白書によれば、二十八年から五年間非常に不均衡が出てきたというて指摘しておきながら、昨年の暮れに経済企画庁が出しました経済自立五カ年計画によりますと、鉱工業生産の年率の伸びは八・二%になっている。これに対して農業生産の伸びは三・三%しか伸びない。三十一年を基準にして五年後の農業の状態を見ますと、鉱工業に比べて三分の一の状態にしか伸びぬということになっている。このような開きの大きいのをそのままに認めておいて少しもこれを改めようとしない、また改めるところの対策を総合的に立ててないという点が私どもに理解できないのであります。これはどういうことでこういうふうに放任をしようといたしますか。農村と都市の大きなふつり合いを現実に知りながら、さらに今後五年間また経済的に農村は都市の三分の一の状態に置かれる、そういうことを経済企画庁長官は知りながら、これに対する総合的な対策をなぜ立てないのか。それからまた農村から八十五万人からの余剰労働を都市に吸収する、他の産業やサービス業に吸収するというておりますが、一体それは都市の要求によってそうなるのか、農村がやむにやまれぬようになって外へ出ていかなければならぬようになるのか、それは一体どちらの経済的要素によってそうなってきておるのかということを一つ御説明願いたい。
  135. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ただいまの井上さんのお述べになりましたことは多少誤解がありはしないかと思うのであります。あるいは私が間違っておるかもしれません。と申しますのは、長期経済計画におきまして鉱工業生産の伸びと農村の伸びとの比率が違うじゃないか、農村の方がたださえ所得が少いのにその方に力の入れ方が少いじゃないか、こういうお話のように承わりました。今長期経済計画におきまして施策をいたしますところのものは、御承知通りわが国の農業は国際的に見ましても非常に技術が優秀でございましてしかも集約農業でございまして、これはこれ以上伸ばすことはなかなか困難でございます。今後相当の施策をいたしましても、現在の米麦を中心にいたしました農業といたしましては、なかなか伸ばしていくことが困難でございます。しかも一方鉱工業の面におきましては国際的にも伸びていくでしょうし、また日本の置かれている地位からいたしましても、今後の施策によりましては伸びが相当早いということでそういう計画をいたしております。ただ今お示しになりますように、農村所得が鉱工業、都市の所得に比べて少い、この点についてはまた別途考究いたす問題でございます。お示し通り、確かに最近の傾向といたしましては、都市と農村の所得の不均衡はますます幅を広げていく傾向にあるのであります。従いまして農村には農村の労力をなるべく集約いたしまして、機械を入れるとか動力を入れるというようなことにして、なるべく生産費の引き下げをやる、労銀の引き上げになっていくということにいたしていかねばなるまいと思うので、そういう施策を農林省においてもいたしておられると思うのであります。そういうことからいたしまして、一方生産はふやしつつも労力をなるべく減していくような傾向にある。その傾向が今お話しの通り昨年度におきましては七十万人からの人が都市に来ておる。これはどういうわけか、いずれにいたしましても都市の方が農村よりも所得が多いものがある。それが最近の傾向としてまた一部都市から農村に移行するものも出てきておりますが、これらを今後われわれといたしましては長期経済の計画によりまして順次安定した傾向に、都市に来つつ農村に流れつつということのないようにいたすことが必要であろうということで、なるべくそういうことのないように計画的に運ぶようにいたしていきたいということをねらっておるわけであります。
  136. 井上良二

    井上委員 最後に、総理大臣の出席を求めておりますけれども来ませんから、官房長官に伺うのですが、予算書の百四十六ページ、内閣所管の中に内閣官房の各費目が計上されております。その第九番目に庁費というのがありまして、この庁費に内閣総理大臣公邸借料百八十五万九千円というのが本年初めて新規予算として計上されております。この公邸の借先はどこですか。
  137. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 お答えいたします。所在場所は渋谷区南平台四十一番地、所有者は渋谷区原町三十六番地鈴木三枝子、これが貸主であります。
  138. 井上良二

    井上委員 これは岸総理の私邸の隣と違いますか、そして所有主は映画女優の高峰三枝子とかいう人のうちではなかったのですか。
  139. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 その通りでございます。
  140. 井上良二

    井上委員 総理大臣の私邸の隣に月約十五万円でありますが、ここに総理は住んでおりませんね、公邸は新聞記者のたまり所になっておりまして、総理はここに住んでおられずに、私邸からここへ横から入っていくといわれておるのですが、その通りですか。
  141. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 それにお答えいたします前にちょっと申し上げておきたいと思いますが、御承知のように戦争後——戦災後と申しますのが正確かと思いますが、内閣総理大臣官邸はよく御承知のように住むような施設その他が全然ございません。この現状におきましては総理大臣としての活動上まことに困るわけでございまして、実は住めるような場所でかつ法律上予定されておりますような公邸というものが実は政府としては非常にほしいわけでございます。これについてはだいぶ前からいろいろと候補地を物色しておりましたことは事実でありますが、なかなか適当なところがございません。たまたまただいま御指摘のようなところにともかく暫定的に総理大臣の公邸としても使い得るようなところがございますので、これを暫定的ないわゆる公邸として借用をするということにいたしたわけでございます。その施設は、ただいまお話がございましたが、新聞記者のたまりというようなものだけではございません。それも一部にございますが、さらにそれ以外の施設があるわけでございます。
  142. 井上良二

    井上委員 この公邸はもと総理が個人的にお借りになっておられたうちで、それが昨年総理内閣を組閣されまして、ずっとそのままそれが総理の私邸の続きの借家として使われておって、そしてだれがどういうことで入れ知恵をしたか知らぬが、途中からこれを公邸ということにして、昨年、多分半分くらい——本年度の予算で全部お出しにならずに、多少見積っているのでしょう。総理があなたの方にこれを借りてくれと言ってきて借りたのではなくて、自民党総裁になられていろいろな人がたくさんやってくるし、家は狭いし、そして幸い隣の女優さんの家があいたので、そこなら便利がいいというのでそこを借りておった。ところがそのうちに総理大臣になり、また人も多く来るようになってきて、いろいろ出入りが多いから、いっそのことこれを公邸ということにしようということでやられたのと違いますか。
  143. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 先ほど申し上げましたように、総理大臣としての活動を十分にいたしますためには、実は率直に申せば、私としてはもう少し大きなりっぱな公邸がほしいわけです。しかしこれは実際問題としてなかなかございませんので、昨年の十月に、私どもとしても、どうしてもほかに適当な場所もございませんので、成規の手続によって暫時これを借用することにいたしたわけでございますから、たしか昨年の十一月から公邸として成規の手続によって借用いたしておるわけであります。
  144. 井上良二

    井上委員 そこで困るのですが、その前は総理が個人的にお借りになっておったのですか。その前はだれがお借りになっておったのですか。
  145. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 ただいま申しましたように、昨年の十一月から国として借り上げたわけであります。
  146. 井上良二

    井上委員 しつこいようですけれども、あなたはただいま私の質問に対して、総理として公用その他で非常に出入りが多いし、適当な公邸がほしい、今すぐといっても見つからないから、十一月からあれを借りたと言うのですね。そのことは私ども認めます。ところが総理大臣になったのはいつです。その間どうしておったのです。
  147. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 御承知のように約一年前に組閣をしたのでございますが、前半におきましては外務大臣を兼任いたしております。従って、白金の外務省の施設、これを外務大臣公邸と言っておりますが、そこにずっと住居して、そこで執務しておったわけでありますが、七月改造後に、これはどうしても外務省の方に返さなければならないという事情になりましたので、先ほど申しましたような経過から、十一月からこの施設を活用することになりました。
  148. 井上良二

    井上委員 そうすると、岸内閣が倒れた場合はどうなる。岸さんが内閣総理大臣をやめた場合は、あすこはどうしますか。
  149. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 そういうこともございますので、借り上げということにいたしておるわけでございまして、買い上げというようなことはいたしておりません。
  150. 井上良二

    井上委員 そうすると何か別にいいところがあればそれに移って、向うはやめるつもりですか。それとも岸さんが内閣総理大臣をお勤めの間はここを借りておくつもりですか。
  151. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 これはなかなかむずかしい御質問なんでありますが、先ほど申しましたように、内閣としては、もっと恒久的な、たとえば社会党が天下をお取りになったようなときにも十分使える総理大臣公邸がほしいというのが実情だと私は思うのであります。ところが今まで現実の状態ではなかなか見つかりもしませんし、また新しく建てるということも現下の財政状態からいっていかがかと思いますので、暫定的に借り上げた、こういうふうな実情でございます。
  152. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員長代理 午後二時半より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後一時五十六分休憩      ————◇—————     午後二時四十七分開議
  153. 江崎真澄

    江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。森三樹二君。
  154. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は先だって来の委員会におきまして、日ソ交渉におきまするところの総理並びに藤山外相の御答弁等を承わっておりますと、全く日ソ交渉については、政府もこれ以上はどうにも手の出しようがない。ソ連の言うところの、領土問題と安全操業と不可分であるというような主張に対しては、これを可分である、あるいは不可分であるというような、最初いろいろな見解がありましたが、終局的には政府側としては、これは可分でもって、領土問題と安全操業と漁業問題、この三つは切り離して交渉すべきものだ、こういうようにだんだんと政府の態度が明らかになりました。しかし私どもの感ずるところでは、そのような現在の政府のお考えによっては、日ソの外交問題というものはどうにも発展できないような段階じゃないかと思うのであります。しかもこの領土問題については、岸総理並びに藤山外相も、政府の見解としては、あくまでもこれは国後、択捉島を返還しなければ、絶対に応じないのだ、これは日本の固有の領土であるから応じないという見解を強く表明されておるわけであります。しかしながら現実の問題としては、安全操業の問題ともからみますが、日ソ共同宣言によるところの文面から言うならば、共同宣言が成立しました暁においては、その後にはやはりこの日ソ平和条約締結に関する交渉を継続していくということが文面に現われているわけです。従いまして、いつでも双方から平和条約を締結しようというところの申し出はできるわけでありまして、こちらが応ずるとか、向うが応じないとかいうような問題でなくして、いずれからでも随時平和条約の締結を提案できるものだ、私どもは、この日ソ共同宣言の文面からいたしまして、そのように考えているのですが、この点はいかがですか。
  155. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日ソの関係につきまして今漁業の問題のお話がありまして、安全操業の問題は、最初の経緯とソ連側の意向と違いまして、平和条約の問題にからんで参りますことを遺憾に思っているわけであります。共同宣言によりまして、領土の問題は継続的に審議をして平和条約というものを作っていくのだということになっていることは、お説の通りであります。従いまして、両者の会議が成るような時期がありますれば、いつでも会談を開くということを申しておるのであります。
  156. 森三樹二

    ○森(三)委員 従いましてこの共同宣言の第九条といいますか、ここには「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。」こうなっております。従いましてソ連からも日本からも、いついかなるときにおいても平和条約を締結しようという申し出はできると思うのです。それに対しまして、ソ連側から平和条約を締結しようというような意向を門脇大使を通じて正式な交渉があったわけでありますが、これに対して正式交渉ではないのだとか、あるいは正式交渉であるのだというような見解が述べられておりますが、その点はいかように外相はお考えになっておられますか。
  157. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいまのお話の通り、日ソ共同宣言におきまして継続的にこの問題をお互いに話し合うということになっておりますので、今お話のようにどちら側からいっても話し合いの会議を開くということはできるわけであります。先般のソ連側の申し出は、暫定的な安全操業の問題に関連しまして、ソ連側が従来のそういう話し合いに応じて乗っていってもいいという八月十六日の口上書に対して、方針を変えたことを説明したものだと私どもは了解いたしております。
  158. 森三樹二

    ○森(三)委員 そうしますと、正式な平和条約締結の意思を日本政府に対して行なったものであるというような解釈はそこに出てきませんか。この点はいかがですか。
  159. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先般の門脇大使が次官に尋ねました範囲内におきましては、安全操業の問題はその前のときに漁業委員会で並行してあの場でやろうということであったわけです。また今回は、そういうことでこの問題が平和条約が締結されてそういう状態のもとに考えらるべきものだ、こういうことを言ってきているわけでありますから、正式に条件を具して平和条約を作ろう、会談を再開しよう、その意味での会談を再開しようというよりも、日ソの安全操業の問題に対するソ連側の態度を表明したものだ、こう考えております。
  160. 森三樹二

    ○森(三)委員 そうあなたがおっしゃると、私はまたお問いしなければならないのだけれども、要するに平和条約の締結と安全操業とは不可分なものであって、従って安全操業の話を進めるとするならば、平和条約を締結しなければならぬじゃないかというソ連側の申し出である、このように私は理解しておるのですが、そうしますと、ソ連の申し出というものは、日本政府に対して安全操業問題を解決しようとするならば、平和条約を締結すべきじゃないかという、いわゆる不可分といいますか条件つきといいますか、この二つの問題の処理を日本政府に正式に申し出てきたものである、このように私は解釈できるのですが、あなたはその点をぼやかしておっしゃっておられるようですが、いかがですか。
  161. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お話のように安全操業の問題について私が申し上げましたように、今までのように話し合いをしていこう、協議をしていこう、あるいは昨年の九月ごろには現地に調査員を出して、その返答を待ってから回答しようというような回答をしてくれておったわけなのですが、それがそういう意味で変りましたことに対する一つの意思表示ではあると思います。ですから私どもはそうとるのが正当だと思うのでありますが、しかしお話のように共同宣言において、いつでも開けるのだということでありますから、開けるという事実については、ちっとも変ったことはないわけであります。まだ安全操業の問題を離れて、一つ基本的な問題としてこれを解決してから、安全操業にいくのだという意味での正式な表現は受け取っておらないというように考えております。
  162. 森三樹二

    ○森(三)委員 どうもその問題を今あなたと押し問答しても、正式な申し出であると考えてないというような印象を非常に受けるのでありますが、そこで私はすでにわれわれの同僚委員から質問いたしました部分は、なるべく重複しないようにいたしまして質問を続行したいと思います。  そこで日本は国後、択捉は固有の領土であって、当然にこれを返還しなければならないということを、盛んに最近新聞あたりでもいっておるわけですが、これを返還するのにつきまして、ソ連としては、この国後、択捉のような小さな島嶼は、あの地球の半分を占めるような大きな面積のソ連としては、経済的な価値というものはあまり高く評価しておらない。しかしこれを軍事的に見るならば、極東における大きな一つの軍事的な拠点を作ることもできましょうし、またこれを返還した場合には、逆に日本がここに軍事基地を設定するというようなことを非常に考えておるわけでありまして、このことは昨年朝日新聞の広岡編集局長がフルシチョフ書記長と会見した際においても、そういうことが言われておる。その地われわれの知り得る範囲の人々の、モスクワにおけるフルシチョフその他のソ連側との会見において、やはり国後、択捉というものを軍事的に非常に高く評価しておるのだということが言われておるのです。従いまして私はこれが返還された場合における軍事基地という問題が大きな問題ではなかろうかと思うのでありますが、この領土が返還されました場合に、安全保障条約あるいは行政協定は、この返還された領土に当然適用されるのかどうか。日本はサンフランシスコ条約によってこれを放棄しておるわけでありますが、この放棄された土地が日本に返還された場合において、日本とアメリカにおけるところの安保条約あるいは行政協定というものが新しく返還されたその領土に当然に及ぶのか及ばないのか、この点を一応私は明確にしていただきたいと思うのです。
  163. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国後、択捉につきましては日本の固有の領土だということを主張しておるわけであります。日本の領土につきましては安保条約が適用される、こう考えます。
  164. 森三樹二

    ○森(三)委員 適用されるとするならば、私はまた非常に考えなければならぬと思う。一応適用されるというあなたのお考えを了承いたしまして、その返還さるべき領土に対して軍事基地を設定するとかしないとかいう問題がここに出てくるわけであります。従いまして、私はここに岸首相がおらないことは遺憾でありますが、岸首相やあなたがアメリカに渡りました場合、こうした日ソの平和条約にからむところの、いわゆる国後、択捉その他の一連の島々が返還された場合に、安保条約あるいは行政協定をそのままそこに適用されるか、あるいはこれを除外して、アメリカとの間に、これが軍事基地を設定しないというようなお話をされたかどうか、これはこの領土問題の解決のキー・ポイントになると思うのです。
  165. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 過去におきましてソ連側に対して、国後、択捉に対しては非武装地帯にしてもよいということを申し出ております。
  166. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は非常に重大な発言をなさったと思うのですが、いつどういうルートを通じて——あなたの時代じゃないと思うのですが、いつなさったかということです。
  167. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私の時代じゃございません。交渉の過程で、そういうことを話し合っておることを承知しております。文書ではございません。
  168. 森三樹二

    ○森(三)委員 今横からも声がありましたが、それは日ソ共同宣言を交渉している途中においてですか、あるいはその後においてですか。これは確かめておきたいと思うのです。
  169. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ロンドン会議におきます松本全権が向うと話し合いをしているときに、そういう意図があるということは、交渉の過程において話し合いがあったそうであります。
  170. 森三樹二

    ○森(三)委員 松本・マリク会談において、そういうことを松本全権からマリク全権に対して申し出されたというように理解するのですが、そのお考えは現在藤山外相、また岸政府として明確に委員会の席上であなたがおっしゃることはできるのですか、どうですか。
  171. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国後、択捉が日本の領土になりました後の全体の問題につきましては、今後の問題として考えていくわけであります。過去においてそういう経緯がありました以上、それを相当尊重していくことは当然であると思います。
  172. 森三樹二

    ○森(三)委員 今藤山外相はきわめて重大な御発言をなさっておるのでございますが、しからば日本政府はそういうようなお考えを持っておられる、すなわち日米間におけるところの安全保障条約、あるいは行政協定というものがあるのでございますが、あなたは先ほど領土が返還された場合は、当然新領土に対しても安全保障条約並びに行政協定が適用されるのだ、こういう御答弁をなさったのです。しからばソ連と交渉する前においてアメリカ側とそういうような取りきめといいますか、正式な話し合いというものをきめてあるのかどうか。アメリカと日本との間においてその話し合いというものができておらなければ、日本が幾らソ連に言ったところで、ソ連が信用するわけはありません。ソ連が信用して、そこに軍事基地あるいはミサイル基地を置かないという確信を与えるためには、一方のアメリカとの話し合いをはっきりと私は確定しなければ、この交渉というものはできないと思うのです。ところがその点について、あなたは先ほどから御答弁がありませんけれども、藤山外相あるいは岸総理がアイゼンハワー大統領と会見した際に、こうした問題に触れておるのかどうか。従来の岸さんの口ぶりでは、どうもそうした問題については、あまりはっきりしたところの考え方を述べたということを私は聞いておりませんが、ソ連に対してそういう交渉をする以上は、返還された国後、択捉等に対しては絶対にそこを軍事基地に使わないというところの確約をする、それは口頭であったかもしれませんけれども、そういうことの意思表示をする以上は、日本が安保条約、行政協定におけるところのアメリカの軍事基地を設定することについて、これを排除してもいいかどうかということを、アメリカ側と十分私は話し合いができておらなければならぬと思うのです。この点について私はあなたがほんとうに確信あるところの御答弁を願いたいと思うのです。
  173. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま私は過去の経緯について申し上げたのでありまして、私として今後アメリカとどうこの問題について話し合いをしていくか、またどう日ソ交渉の上でやっていくかということは、今後の問題として私は善処していきたいと思っております。
  174. 森三樹二

    ○森(三)委員 先ほどから政府委員が後から援助しているようでありますが、そうしますと、先ほどあなたが御答弁なさったロンドン会議の問題——と私はどうもあなたの信念というものがさっぱりないと思うのです。あなたはそういう話を松本・マリク会談において行なっておるという御答弁をなさっておるのでございますが、その会談をする以上は、当然にアメリカとの話し合いをつけておかなければ、身勝手に——日本はアメリカの従属国家のような形においてこの条約を締結しておるわけです。従ってアメリカとの理解なくしてそういう言葉は出てこないと思います。その点あなたや岸総理はアメリカとの間において軍事基地設定、あるいは、ミサイル基地設定ということをやらないんだという話をなさっているのかどうか、私は当然それはされているものだと考えるのです。それがされておらなければ、ソ連に対してそんな話し合いができるはずがないと思う。そういう話ができていないでソ連に対して松本全権がそういう話をしたというならば、いささか外交上のミスができてくるんじゃないかと思うのです。一方日本とアメリカとの条約関係を調整しなければ、そういう話し合いはできてこないじゃないですか。いかがです。
  175. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私まだ就任日が浅いので、日ソの実際の平和条約の交渉を直接いたしておりません。しかし今後当然やらなければならぬと思っているわけであります。今日までは日ソ間の友好関係を打ち立てるために、通商条約を作り、貿易協定を作る、そういうことに専心してきたわけであります。しかし将来平和条約を作るということを考えて参ります場合においては、当然それらの問題について十分研究をした上でやっていくという気持でございます。
  176. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたは将来の問題としてお話しになっておりますけれども、もうすでに日ソ共同宣言が行われてから一年以上もたっております。あなたが外務大臣になってからも相当たっているわけです。しかもこの日ソ問題というものは、日本の将来に非常に重大な問題でありまして、国民の関心もこれに非常に集中されているのです。従ってあなたがここで私が質問してから将来その問題を検討するとおっしゃることは、私はいさきか外務大臣としての職責上足らざる点があるのではないかと思うのです。藤山外相としては当然にそういう問題について十分考慮している、アメリカとの間において話し合いをしているとかいう問題が私はできてくると思うのですが、いかがです。
  177. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げましたような過去の経緯等を十分了承して、今後の交渉をいかにするかという問題を考えていきたい、こういうことであります。
  178. 森三樹二

    ○森(三)委員 くどくは言いませんけれども、ともかくも私はアメリカとの話し合いを前提として、それを早く取りきめて、ソ連に対するところの安心感というものを与えて、領土の返還に対する交渉をしなければならぬと思うのです。そうしなければほんとうの領土返還の交渉のルートというものは開けない。そこで藤山さんは今そういうようなことを考えていると言われるのでありますが、こうした返還される地帯に対して軍事基地を作られないというだけの確約をソ連に対してしなければならぬ。同時にその地帯に対して中立地帯の設定、そういうような考え方が外相にあるかどうか。いずれの国からも侵略されないというような考え方によりまして交渉してもいいんじゃないかと思うのです。そういうお考えはございませんか。
  179. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私といたしましては、日本が完全に世界の脅威から免れるということを望んでいるわけでありまして、そういう意味において今後の外交上の施策についていろいろ考慮していかなければならぬということは考えておりますが、現在とかくのことを申し上げるわけには参りません。
  180. 森三樹二

    ○森(三)委員 先だって同僚の松本君が、この委員会においてブルガーニン書簡に対して日本政府の回答を出すのかどうかという質問が行われましたが、それに対しては近いうちに出すんだ、こういうお話があった。そこで昨日の新聞には政府はブルガーニン書簡に対する回答というものを正式に発表しました。私もそれを一応読んでみたのです。ところがわれわれから見るならば、このブルガーニン書簡に対する回答というものは非常にソ連を刺激する。日本がほんとうに平和的な友好的な外交を展開するという文面に私はとれないと思うのです。私は非常にしばしばこの新聞を見まして遺憾にたえませんのは、国後、択捉は日本の固有の領土であって、ソ連が不当に占有している。不当に占有しているという言葉が使われている。昨日のブルガーニン首相に対するところの回答書を見ましても、やはりそういう字句が使われている。すなわち回答の要旨の第三には、NATOその他の集団安全保障機構に非難が集中されているが、緊張の緩和は、対立する一方が他の一方を非難攻撃し、かつすべての事態に対する責任をこれに転嫁することによってもたらされ得るものではない、こういうようなことが書いてあります。またその第五項のしまいの方には、この機会にソビエト連邦政府が日本国民一致の願望をいれて、日本国の固有の領土である島嶼の不当なる占有を中止し、すみやかに両国関係の一層の正常化のため措置をとられることを希望する。最近の新聞では政府の見解としてはとにかく不当な占有を中止しという、不当という言葉が政府の正式の見解のようになっておるのですが、私はこういうような不当という言葉は——友好的な外交を積み上げて、そうして平和条約を締結したいということを先般来岸首相もしばしば言っているわけです。ところが不当な占有ということは、これは過去の日本の強力外交の場合におきましては、ほんとうに相手方が不法な占有をしている場合は、実力でもこれを返還させる、実力によってこれを取り戻すというような時代の文言であると私は思う。この不当なる占有ということについて藤山外相はどのようにお考えになっておりますか。私は日本の固有の領土であるから返還せいという言葉づかいならまだしも、お前の方で占有しているのはまことに不当である、許しがたいものだという非常に語句の強いものだと思うのです。これ以上の強い言葉はないと思う。果してこれは妥当なりとお考えになっておるかどうか。もちろん妥当だと思うからお出しになっておるのでありますが、私がこういう質問をしても、なおかつあなたはそれに対して何ら考慮するお考えがないかどうか。
  181. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国後、択捉は、日本の固有の領土であるということは、これは日本国民がみなそういう意味において強く主張をしておるところであります。従いまして、現在の段階ではソ連がこれを占有していることは適当でないことはむろんでありまして、従ってその主張から申しますれば、不当な占有であるということを申して差しつかえないと思います。私どもとしては、友好関係を樹立すると同時に、やはり日本の主張すべきことは主張するのが適当であろう、こう考えております。
  182. 森三樹二

    ○森(三)委員 とにかくそういうような回答を出したのでありますが、やはり外相としては不当という言葉を使われるのでありますが、このブルガーニンに対するところの回答というものは、英文でもって回答したのですか、ソビエト語でもって回答したものですか、その場名につまりどういう英語を使い——私もソ連語はわかりませんけれども、どういうような言葉を使っておりますか。一応相手に対する影響というものは、私は甚大だと思うのです。
  183. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ブルガーニン書簡の返書につきましては、日本語で書きましてモスクワに送りました。モスクワにおいてロシヤ語に翻訳をいたしまして向うに渡したわけであります。なおその字句等につきましては事務当局から申し上げます。
  184. 金山政英

    ○金山政府委員 ただいま大臣が御答弁なさいましたように、正文は日本文であります。その日本文をモスクワにおいてロシヤ語に直して先方に提出したわけであります。その翻訳は最も正確なものであることを信ずるのであります。またその英語はどういう言葉で表現できるかという御質問でありますが、私といたしましてはアンプロパーという言葉が適当ではないかと考えております。
  185. 森三樹二

    ○森(三)委員 英文で渡したのならばアンプロパーという言葉ですが、あなたがソ連語に翻訳してソ連に渡したというのなら、私もソ連語はわかりませんけれども、それは将来の参考として、今あなたにお聞きしてもわからなければ、あとでもってお示し願いたいと思います。
  186. 金山政英

    ○金山政府委員 翻訳はあとで到着いたしましてからお届けいたします。
  187. 森三樹二

    ○森(三)委員 私がこのような質問をすることは、要するに現在モスクワにおいては漁業交渉もやっておるわけです。その漁業交渉の問題もあとでお聞きいたしますけれども、これもはなはだ難関にぶっつかって進捗しない。また安全操業の問題も領土問題と並行しなければできないというように、ソ連側の態度というものは、藤山外相から言えば非常に気に食わぬでしょう。どうもソ連側も日本の言うことを聞かないという態度をとっておる。私は、こういうような、つまりお前のやっておることは不当だ、不当だという態度によって、いわゆる岸首相の言うところの友好的な外交を積み重ねていくという言葉の裏から、その友好をぶちこわしていっておるではないか。要するに日ソ交渉のあらゆる問題を、漁業交渉であろうが、安全操業であろうが、そういう問題を解決するところの大きな弊害になっておることは、日本政府がこのような領土問題についても、お前のやっておることは不当きわまるものだ、個人で言えばいわゆるけんか口調ですね、こういう言葉を使っておったのでは、漁業交渉も安全操業の問題も順調に進まないのではないかということを私は非常に考える。ところが日本政府は、今後もこういうような言葉を使っていく以上は、やはり外交上決してプラスにならない。もう少し言葉の使いようがある。日本の固有の領土であるという言葉を使えば、そこに不当という言葉をあえて付加しないでも話がわかるのではないか。それに対して外相はどうお考えになりますか。領土問題だけならあなたが不当であるという言葉を使うのはよろしいが、その言葉を使うことは、日ソ間の漁業交渉、安全操業という問題を解決するのに非常にマイナスになるのではないか、ソ連を非常に刺激するのではないかということを私は申し上げるのです。
  188. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 外交の折衝におきましては、友好的な雰囲気の中でやることは当然でありますけれども、しかしながら主張すべき場合には、相当強い言葉を用いて主張することもまた外交交渉の一つでありまして、ある場合には弱い言葉を使うときもありましょうし、ある場合には強い言葉を使うときもありましょう、これはそれぞれその時宜に応じて使って参りたいと考えております。
  189. 森三樹二

    ○森(三)委員 その点はその程度にしますけれども、とにかく私はあまりこういうような強い言葉を使うことによって、今後のソ連に対するところの外交というものが決してプラスにならないと思うから十分に一つ御考慮願いたいと思います。  それからブルガーニン回答が出ましたから、参考にもう一つお聞きしたのですが、いわゆるNATO機構に対して、これがいわゆる侵略または攻撃を目的としておるものではないと言って、ソ連の主張にまっこうから反対しておるわけでありますが、このNATO機構については、御承知通り、ミサイル基地まで設定しようとしておるわけです。それに対してノルウエー、オランダ等が反対をしておりますが、とにかくミサイル基地を設定することはもう明らかです。ところが外相や総理は、日本には核兵器は入れない、こういうことを盛んに言われておるわけでありますが、そうしますとやはりそういうような核兵器をNATO機構の中において取り入れるというような機構を日本が当然に認めるようなこの回答は、私は納得できないと思うのです。これに対しても、日本がほんとうに平和を愛好する国家とするならばこうした書き方どいうものは私は出てこないのじゃないかと思うのですが、当然NATO機構というものが正当なものであるというような書き方をしておる。これに対して外相の御所見をお伺いしたいと思います。
  190. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国際間の緊張が今日激しくなる。そこでNATO機構というものは私の理解する限りにおいては、積極的にソ連をたたきつける機構ではなくて、消極的な防衛体制の機関であるというように了解をいたしております。
  191. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は、見解の相違といえば見解の相違になってくるでありましょうけれども、しかしいやしくも核兵器をそこに設定するような機構は平和の維持にはならないと思うこれは藤山さんも総理も先般来たびたび認められておるわけです。そうした機構を正当化するような、ブルガーニン書簡に対する回答は、これは日本政府としては核兵器を日本に持ち込まない、日本に核兵器の基地を作らないといっているところの答弁相当矛盾するのじゃないかと思うのですが、その点はいかがです。
  192. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 核兵器を用いないことを日本は希望しておるわけであります。国連におきましても核爆弾の実験を中止してもらい、生産使用等も禁止するということに主張いたしております。従いましててNATOであるとソ連であると問わず核兵器を用いないことを日本は希望いたしておるわけであります。
  193. 森三樹二

    ○森(三)委員 どうも藤山さんの御答弁を聞いておると、日本の領土に対しては核兵器を持ち込むことは絶対にしない、そういうような危険なことはしないというような御答弁がいつもありますが、NATO機構に対してだけは、あなたがそれを正当化するということは矛盾しませんか。
  194. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どもは日本を守る立場から言いまして日本に核兵器を持たない、武装させないということを主張しておる、御承知通りであります。ヨーロッパの問題につきましても、われわれはNATO機構及びソ連圏、ワルシャワ機構と申しますか、そういうものがお互いにそういうものによって装備されないことを希望することにおいては人後に落ちないわけです。
  195. 森三樹二

    ○森(三)委員 藤山さんの話は、お互いに相対立したところの国際間において、そうしたもの、NATOを作ることは、ソ連をあえて侵略するものではなくて、かえってそれらの国々の安全を保障するというような考えで作っておるのだという御意見ですが、最近北鮮から中共軍が撤退しておる。しかるに南鮮においてはアメリカは撤退する意向を示していないわけですが、こういうようなことについて共産圏が平和に対して非常に協力といいますか、占領政策というものを早く解消しようというような考え方を持っておる。しかるにアメリカは南鮮から撤退するというようなことは発表しておりません。こういうことからいって共産陣営においても強く平和の維持ということ、あるいは占領政策をとめるということを言っておるわけでありますが、私はそういうことからいっても、日本の駐留軍というものを一日も早く撤退させなければならぬのじゃないかという考えを強く持つわけでありますが、これに対して藤山さんはどういうようにお考えですか。
  196. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 北鮮から中共軍が引き揚げるという報道は、先日からも入っておるわけでありまして、御承知通りであります。アメリカ政府もこれに対して、国連軍関係と相談をしようというような態勢にあるかと考えられます。今後共産諸国と自由諸国とが平和にいくことはわれわれ望んでやまないのであります。お互いに平和攻勢というようなものを不信なく理解するような道が開かれますれば、それはおのずから平和に通ずるわけでありましょうが、お互いにそれぞれの主張を不信を持って見るということはまことに残念だと思います。一日も早くそういう状態から脱却することを望んでおります。
  197. 森三樹二

    ○森(三)委員 そこでこれは日本の防衛問題にも関連してくる問題でありますが、これは岸総理答弁を求めた方がいいだろうと思うのですが、日本の防衛体制からいって、日本が将来アメリカの地上部隊あるいはその他の海とか空、こうしたものを撤退する計画はどういう構想のもとに、いつごろをめどとしてこれらのものが撤退することをお考えになっておるか、お尋ねしたい。
  198. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この問題については防衛庁長官その他からお答えする方が適当かと思いますが、日本の自衛力が漸増し、また同時に国際情勢が好転していくというようなことにおいて、アメリカの撤退計画も進んでいくのではないかと思います。昨年岸総理がアイゼンハワー大統領との共同コミニュケにおける以後の状況から見ますと、日本における地上軍の撤退は相当大幅に行われておると思います。そういう状況になりますことによって今後のことは考えられると思います。詳しい点につきましては防衛庁長官からお答えする方が適当と思います。
  199. 森三樹二

    ○森(三)委員 大体昨年は三万程度撤退するものだと言っており様したが、今後かりに二万ずつ撤退しても五年やそこらかかると思うのです。ところが撤退するのは地上部隊だけに限っておるわけでありますけれども、海や空については、政府のそうした見解は全然発表されておらない。この問題については日米間の安保委員会その他においても討議されると思うのでありますが、岸総理は国防会議の長でもありますが、問題については岸総理から答弁される筋合いかと思いますが、しかし渉外的な問題としては、外務大臣もやはり外相としてのそうした見解を持たなければいかぬと思う。将来海空についてのアメリカの撤退ということはどのようにお考えになっておりますか。
  200. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本の国防会議の決定に基いて自衛力が増強するにつれて撤退が行われることを希望いたします。
  201. 森三樹二

    ○森(三)委員 そうしますと、あなたの御答弁としても、やはり海空についても将来撤退してもらう時期の考え方を持っておる。日本の防衛がそれだけ整備されれば、海空についても撤退されるのだというように承わってよろしいのですか。
  202. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 軍事上の問題に関しましては、日本の空軍がどれだけ充実するのがいいか、また海軍がどれだけ充実するのがいいかということを私から申し上げかねます。従いまして私は政治論として、そういうものが充実した暁には、日本自身が日本の防衛をやりますことは当然でありますので、そういう時期になればアメリカ軍も日本から引き揚げるだろうということを考えております。
  203. 森三樹二

    ○森(三)委員 次に、この問題は同僚議員からも触れられた方もあるかと思いますが、簡単に申し上げます。外相としては日本の安全保障と国際緊張緩和のために、日本及びアジアの安全保障を推進する、いわゆる核兵器の実験の即時停止、さらに進んでその製造、使用、貯蔵の禁止を英米ソ初め各国に強く訴えるだけの決意がなければならぬと私は思うのです。これについては岸総理もり若干これに触れた御答弁をしたようでありますが、外相がやはり先頭に立ってこうした問題を強く主張していかなければならぬ立場にあると思うのですが、この点はいかがですか。
  204. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 核実験を初め、核兵器の生産、使用禁止というものは、日本の念願でありますので、この点については私もできるだけの努力を払って参りたい、こう考えております。
  205. 森三樹二

    ○森(三)委員 そこで私はさらにお尋ねしたいのですが、だんだん時間も切迫してきますし、外相も外務委員会においでにならなければならぬというお話でありますから、次の質問に移ります。  昨年岸総理は二回にわたって東南アジアを歴訪いたしまして、いわゆる東南アジア開発の基金を、アメリカの資金を導入するというようなことによって各国と話し合って参ったのでありますが、この岸さんの、アメリカのドル資金をはき出して、基金の名でもってこれを使おうというならば、他人のふんどしで相撲をとるようなお考えであったのですが、これがどうもワシントンに行って話しはしたけれどもうまくいかないというので、結局日本独自の資金を一時提供しようというので、経済基盤強化の資金として五十億円を組んだわけです。ところがこの問題について、外務省あるいは大蔵省のお考が非常に食い違っておる、このように考えておるわけです。岸総理はその考え方としては、いわゆる多角的運営の方式によって各国の出資、各国代表の理事による運営をもって、そうしてこの資金を貸し付けていこうというようなお考えを持っておるようでありますが、しかし大蔵当局としては、岸総理考え方に対して同調をしようとしているのかどうか。ところが外務省はこれとまた反対に、各国から資金を集めて、そうしてこれを貸し付けようというような非常に見解が違ったところの東南アジア開発基金を御構想になっておるように聞いているのですが、この点に関しても外務大臣と大蔵大臣からお伺いしたいと思う。
  206. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 大蔵省と外務省との考え、あるいは総理との考えに食い違いはないと思います。総理大臣が昨年この問題を提唱せられました。御承知のように、非常に大きな構想を打ち出されたわけでありますが、その後各国の反響等も聞きながら、われわれもこれが具体的実現の方法を考えて参ってきております。もちろんこの種の機関が東南アジア各国の経済建設のために必要であるということについては、だれも異議はないところでありますが、しかしこれらの問題を実現して参りますためには、資金の面もあります。なお方法論につきましても、バイラテラリーで、今日まで出ているものに対してどういう影響を与えるかということも、受け入れ側においてはいろいろ問題を考えておるようであります。こういう問題を取り上げて参ります上に、われわれとしましては、できるだけ実際的に各国の考え方を入れて、そうしてみんなのものだという立場に立って進めていこうというわけでありまして、総理が示された各国の理事も集まって話し合いをしていこうという構想に、われわれとしては何の違いもないのであります。同時にただこういう問題が進んで参ります上において、やはり日本も提唱者であるから、若干の金であろうと、財政上許される範囲内において、日本みずからもフアンドを積んでいくというようなことをやって参りますことが、各国に対して日本がこれを提唱しました責任の上からいいましても、あるいは各国に対する日本の熱意を示す上からいいましても、必要であると考えておるわけであります。従って、そういう意味において今後これらの日本が出しました基金を中心にしまして、さらに各国とも相談をしていく。そういう機関が一日も早くできるように進めて参るようにいたしておるわけであります。その意味において総理考え方も、大蔵大臣考え方も、違っておらぬと私は思います。
  207. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大蔵省も外務省も総理の意向も違っておるとは思っておりません。これは申すまでもありませんが、東南アジア諸国の今日の後進性といいますか、開発を非常に急がなくてはならぬ状況にある。これにはしかし非常な資金が要る。そうして同時にこれはやはり民族意識等の観点からしても、インターナショナルの機構が要るというような基本的な点があると思います。従いまして、そういう意味において一つこの経済協力の基金を置いていこう。日本がまず今回の予算でこれを組みましたのは、先ほど外務大臣が御説明申し上げましたように、まず日本としてこういう点についての熱意を示しまして、そうして具体的な形において各国の、同じ考えを持っておる国々を導いていく機縁にもなる、かように考えておるわけであります。
  208. 森三樹二

    ○森(三)委員 岸構想というものは、アメリカの資金を利用してやろうとしたのであって、金額の上でも相当大きな構想であったと思いますが、とにかく予算の面において五十億程度のものを組んで東南アジアの開発云々といったところで、私はできっこないと思います。大蔵大臣並びに外務大臣はどの程度の資金というものを考えておられるのか。将来、かりに五十億にしたところで、日本の国民の税負担ということから見るならば莫大なものでありますが、しかし一面東南アジア開発ということも、これは日本の今後の東南アジアに対するところの援助としてはやらなければならぬことであるが、一体大蔵大臣はこの構想としてどれだけの金額をお考えになっているのか、一応私はお二人からお聞きしておきたいと思うのです。
  209. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろん東南アジアの経済協力あるいは開発資金として五十億というような金で足る、そういうことは毛頭考えておりません。これは非常に小さい金です。しかしこれは俗語でいえば火種になるのであって、こういうところから出発いたしまして——むろん日本の経済力というものを考えずして東南アジアの経済協力といっても、それは実を結びません。従いまして日本としては、今可能な限りにおいてこういう考えを持っており、しかも実行に移す熱意もあるということをここに示しておるわけで、今後どういうふうにこの資金をふやしていくか、これは今後のいろいろな情勢の変化もありましょうが、私はあの広大な地域等、未開発の状況の場合に多ければ多いがいいと考えております。
  210. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたは多ければ多いほどいいというような御答弁ですが、しかし予算に五十億の金を計上する以上は、今後において大体どの程度のものをあなたがお考えになっているかということを、やはり明確にしなければならぬのではないかと私は思うのです。今後毎年東南アジア開発基金というものを設定するとしてもですよ。ただことしだけの五十億を予算に組んで、それでできるはずがないと思うのです。今後におけるところの見通しというものは、大蔵大臣として当然なければいけないと思いますが、この点いかがですか。
  211. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御承知のように東南アジアの経済の開発ないし経済協力につきましては、日本の賠償も具体的に払われましょうし、この賠償に関連いたしまして巨額な経済協力というものをやっておるわけであります。さらに円借款というものもしばしばいたしておることは申すまでもないのであります。また日本輸出入銀行が多額の延べ払いをして、東南アジアと経済協力をしてやっておるのであります。従いまして東南アジアの経済に協力するという場合には今回の東南アジア開発基金というものが唯一じゃないのです。これはむしろ国際的な意味を持つ基金に発展せしめたいという考えを私は持っておるわけであります。
  212. 森三樹二

    ○森(三)委員 そうしますと、ことし五十億円組んだわけでありますが明年もまた五十億、その次も五十億というような構想によって開発基金というものを設定していこう、あるいはまたアメリカあたりからも、その資金を入れられれば入れるという構想を持っておられるのですか。
  213. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今申しましたように、東南アジアの経済協力の資金は非常に多種にわたっております。何もこの基金をふやさなくては東南アジアの経済協力ができないという情勢にはないのでございます。これは主としてこれをもとにしまして、国際的な東南アジア開発の基金制というものができるように願っておるわけで、目的はむしろそちらにあると考えていいと思うのです。むろん今後財政が許し、必要があればこの基金に入れることも可能であると思いますが、問題は国際的な経済協力に発展せしめなければ、この基金を置いた目的は達しないわけで、これは岸総理の構想でもあると思うのです。従って日本の予算から東南アジアに次々に金を入れることは、そういうこともなすことはありますけれども、必ずしも私はおもな目的ではないと思う。なぜかと言えば、先ほど言いましたように、東南アジアについては巨額の経済協力関係があり、賠償を結んだ国には大きな経済協力が別個に出てくるわけであります。同時にまた、先ほど言うたように、円借款もやっており、輸出入銀行の延べ払いもある。日本の経済力から見ればいろいろな口を通して東南アジアの経済開発には相当に協力いたしておるのであります。それとはまた別に国際的に東南アジアに資金を供給する火元にしようという構想でありますから、その性格は一つ御理解を願いたいと思います。
  214. 森三樹二

    ○森(三)委員 そこでいわゆる岸構想によるところのアメリカのドルを持ってきて東南アジア開発をしようというような計画は、結局アメリカの方針とマッチしないところからだめになった。その肩がわりを日本がやるということになったのですがそれについては日本の国民の了解ということは相当問題だと思うのです。従いまして、政府はもっとしっかりした計画を立てないと、東南アジア開発というような構想を拡げてみたところで、その跡始末は結局国民の大きな負担ということになるのじゃなかろうか、この点についての大蔵大臣の御所見を承わりたいと思います。
  215. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは他の面から御説明申し上げれば御理解いただけると思います。今日世界の経済関係において大きな資金を出し得る国は、私は自由国家においてはアメリカをおいてないと思う、ありましたらお聞きしたいと思います。そこで東南アジア諸国がアメリカの資金に対してどういう感情を持っておるかということも再検討する必要があると思うのです。それは民族意識といいますか……。あの世界銀行の三分の一の金はアメリカの出資です。この世界銀行の金に対して東南アジア諸国がいかに熱意を持ってこれを導入しようとしておるかは、世界銀行の総会に出て記録を見れば、明白なんです。インターナショナルな機関がインターナショナルな性格を持つ場合においては、その資金は別にどこの国の金ということはないのであります。そうしてインターナショナルな機関によってこれが運営されるのですから、そう民族意識を刺激されることはない。従って私は、何もこの基金に将来アメリカの資金が入ったからといってこれを排除することもないし、またアメリカ以外の国の金が入ったからといってこれを排除することもない、みな入れれはいいと思う。人類の福祉向上のために寄与しようというその気持を排除する必要は私はごうもないと思う。
  216. 森三樹二

    ○森(三)委員 蔵相の御答弁については私ども相当納得できない面もありますが、これは国の予算を使う面においては相当重大にお考えになってそのプランを立てていただきたいと思います。  次に農林大臣にお尋ねしたいのでありますが、農林大臣もこの委員会においてしばしばお聞きの通り、安全操業という問題は全く行き詰まっておる。私の見るところでは、岸政権下においては、安全操業問題も領土主張の問題も解決つかないと思うのです。そこで、あなたも御存じだと思いますが、歯舞、色丹の復帰、いわゆるその海面におけるところの漁民たちは、政府の手ぬるい安全操業の話し合いに対しては期待できないという考えにおきまして、先般も歯舞、色丹だけの返還でもって平和条約を締結してもらいたいという漁民大会を開いておるわけです。実際零細漁民は今や生活の苦境に立ち至っておるのでありますが、これに対して農林大臣はどうお考えになっておるか。実際食えない零細漁民たちに対して、政府がある程度生活の保障をしてやるとか、あるいは資金を貸し付けてやるとかいうようなお考えはあるのかないのか、大臣に一応伺っておきたいと思うのです。
  217. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 安全操業の問題で北海道の漁民が領土を放棄してもとかあるいはソ連側の領海の十二海里というものを認めても、漁業に従事をさせてくれという声があったんですが、そういうことは根本的な問題であって、漁業をしたいということで領土を放棄するとか、あるいはソ連側の領海主張を認めることはまずい、こう思いまして、私どもはそういうことは取り合わなかったのであります。そこで、安全操業の問題は見通しがないじゃないかというような御意見もありましたが、外務大臣からもたびたび話がありましたように、昨年におきましては、とにかく安全操業の問題を交渉の場に上せようということが、ソ連側からもきておったわけでありけす。ところが今年に入りまして、平和条約締結の時期が熟してないから安全操業を取り上げるのも尚早だ、こういうことをソ連側はいってきたのであります。安全操業問題をここで放棄するというようなことは、私どもとしては考えていなのであります。またこれが全然見通しがないというふうにも私ども考えておりません。しかし今お話の漁業の問題でありますが、これにつきましては、国家保障はできないというようなことを私は言ったんであります。というのは、安全操業問題は、御承知通り終戦後十二年にわたってあそこでは漁業ができなくなってきておるので、去年あるいは一昨年から急に漁業ができないという問題じゃないのであります。しかしながら、あそこに入っていきましたために拿捕されるようなことがありまして、それだけ日本の漁業者の漁区が狭くなっておりますので、今お話のように、別途生活の問題とかあるいは沿岸漁業としての対策につきましては私ども考えておりますし、事実そういうことについて施策を施しておるのであります。ただ、国がこれを保障するということは、日本の各方面にもあります問題でして、あるいは李承晩ラインに入れないからといって保障しているという前例もない、そういうことでありますが、漁業対策についてはそれぞれ適当な措置を考えていきたいと思います。
  218. 森三樹二

    ○森(三)委員 農林大臣は安全操業は全然できないものじゃない、やろうと思っているのだというようなお話ですが、私どもの受ける印象では、現在の政府の手によっては安全操業は絶対できないと思う。いわゆる領土と不可分の交渉に対しては応じないというようなことでありますが、領土問題と重要な関係があるのであって、もしもソ連が領土問題とからんで安全操業問題の話をしようという場合があるならば、やはりその糸口に乗って話を進めていくならば打開の道もあるかもしれませんが、とうていそのような考えでは話はできない。いわゆる岸政権の手によっては安全操業の解決はできないと思うのです。そうなる以上は零細漁民は——もちろん拿捕された以上は大きな船は損害保険等によって保険料が入る。保険によって損害をある程度まで埋めておりますが、結局コンブにしてもその他魚介類を取らなければ今日日常の生活ができないわけです。従いまして生活できなければ生活保護法の適用という問題もありますが、しかしそれだって手続をするのは容易じゃありません。働き手のある者でありますから、直ちに生活保護法の適用を受けるということにいかない。従いましてそれに対しては政府が特別の援助資金を貸してやるとか、あるいはその他の職業を与えてやるとか、そうした手を農林大臣としては打っていただきたいと思います。  そこで時間がありませんから質問を転じますが、現在の日ソ漁業問題ですね。漁業交渉はモスクワにおいて行われておりますが、これも私の見解によりますと、日本の態度は、領土問題についても不当なる占有だ、藤山外相はそれは当然だというような答弁をされておりますが、そういうようなことでもって友好的なソ連との漁業問題解決の見通しというものは立っていないじゃないかと思うのです。赤城農林大臣も先般来苦慮されておると思いますが、これに対してどのようにして打開するか、巷間伝わるところによりますと、有力な閣僚を送るとか、また河野企画庁長官をモスクワに送るのだというようなことが、いろいろ取りざたされておりますが、政府としては、この漁業問題解決のために、どのような手を打って早急に解決されたいと思っているのか、漁期もだんだん迫ってきます。これに対しまして、農林大臣の御答弁を願いたいと思います。     〔委員長退席、重政委員長代理着席〕
  219. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 漁業交渉につきましては、御指摘のようになかなかむずかしい点もあります。しかし昨年度の漁業交渉の経過をよく調べてみますと、ことし問題になっているようなことは実は昨年も問題になったのであります。たとえばオホーツク海の全面的漁業禁止というような問題も出ております。それから距岸四十海里の問題について、これは六十海里というような話も今度はあったのですが、去年も問題になったわけであります。それからはえなわ禁止というような問題につきましても、これは話がつきました。そういうふうに今全権団も向うと交渉をしてだんだん解決に近づいております。カニの問題等につきましても、相当歩みよって解決が近づいております。でありますので、これは御承知通り新たに交渉をするというようなことでなくて、両方の条約に基いての交渉でありますので、技術委員会等において個個的にきめるべき問題はだんだんきまっております。最後に大きな問題は、総漁獲量をどのくらいにするかということでありますが、向うの総漁獲量の案の提示はまだありません。目下のところ代表団あるいは委員が非常に熱心に問題を縮めて解決をはかっております。こういうことでありますので、もう少し向うの動きといいますか、交渉の経過を見てから、こちらの動きを考えるべきだ、こういうふうに考えております。
  220. 森三樹二

    ○森(三)委員 そこで、要するに農林大臣は、この漁業交渉は現在の状態において打開できるとお考えになっているのか、あるいは有力な閣僚級の人をモスクワに派遣して、そうしてこの事態を収拾して早思に解決するお考えがあるのか、この点はいかがですか。
  221. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 わが方の主張とソ連側の主張とが平行線で、どうしてもきまらぬ、こういうような事態でありますならば、こちらからも特に、閣僚ということもないでしょうけれども、出して交渉解決の政治的きっかけを作っていくということは私は必要だろうと思うのです。しかしその時期、その段階がいつになるかということは向うの交渉の経過——もう交渉の経過によってはそろそろ考えなくてはならぬと思いますが、その経過によってきめるべき問題だ、こう考えます。
  222. 森三樹二

    ○森(三)委員 時間がありませんからだんだん進めますが、次は通産大臣にお尋ねするのでありますが、いわゆる日ソ間の通商協定も締結されたわけでありますが、日ソ問の貿易に関しまして、ソ連においては、非常に大きな国でありますから、石油とか木材とか石炭などたくさんの物資があります。これを日本に輸出して、その反面日本からも輸入したいということであります。しかし聞くところによりますと、ソ連においては石油などは百五十万トンくらいのワクをもって日本に輸出してやろうという考えがあるようでありますが、通産当局は十万トンくらいソ連から買い付ける考えがあるかないかの程度だということであります。また新聞等の報ずるところによりますと、ソ連としては、日本が木材や石炭を買わなければ、日本からソ連に対する輸出の物資も非常に制限するというようなこともいわれております。これに対しまして通産大臣はどういう御所見でありますか。しかも、時間がないから簡単に申し上げますが、シベリアの五ヶ年開発というような問題もあって、日本から、たとえば機械類とかあるいはセメントとか、そうしたところの物資を相当ソ連としては買い付ける可能性があるわけであります。しかし現在のような行き詰まった段階においては、日ソ貿易は非常に楽観できない、むしろ悲観的のものである。ソ連側に対して日本政府は、腹をきめて貿易をしようという考えが見えないと思うのです。この点はいかがですか。
  223. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 われわれは熱意を持ってソ連貿易を推進し、また期待もいたしておることは事実であります。また昨年末まではこちらがむしろ輸入超過なのであります。最近におきましてどうもこちらの輸入がうまくいかない、と申しますのは、木材につきましてはこれは推進できると思います。ところが石油につきましては、御承知のように、黒海の石油を持ってこなければならぬ。ところが黒海の石油はフレートの関係で値段が高くなる。従ってこれは一般の普通の取引ではだれも買いたがらぬ、こういうような問題にかかっておるのです。それにつきましては、われわれとしても一応の見積りを十万トンといたしておりますが、それくらいは何とかして、多少のインセンティブを考えて輸入したいと考えておりますが、何しろ値段が全然引き合わぬものでありますから、そこへ問題はぶつかっておるわけです。しかしそれにつきましては、私ただいま申し上げたようなことで、極力推進したいと思います。それから石炭につきましては、昨年まではかなり入っております。ところが御承知のように、現在一般用炭につきましては、内地の貯炭が非常にふえており、国内で処理に困っておるというような状況であります。従ってこれを入れますことは、国内のいろいろな石炭の価格その他につきまして非常な圧迫にもなり、われわれとしましては粘結炭なり無煙炭、またできましたらガス用炭、そういうものを極力入れていきたいと思っておりますが、こういう状況がある程度緩和しませんと、なかなか入りません。しかし決してわれわれとして熱意を持っていないわけではない。その事情は十分ソ連側の方々も了解してもらっておると私は思っておりますが、今後極力推進する努力はいたします。
  224. 重政誠之

    ○重政委員長代理 森君に申し上げます。お約束の時間が参っておりますから、どうぞ結論を急いで下さい。
  225. 森三樹二

    ○森(三)委員 日ソ貿易の問題をもう少し詳しくお尋ねしようと思いましたが、この程度にいたします。  外務大臣がお忙しいそうですから、私一点外務大臣に対して質問いたします。アメリカに対する核実験中止の要請、これは松本君もこの間質問しましたが、きわめて簡単であったのであります。これに対しまして政府は、アメリカにその中止の要請等をしているようでありますが、国際連合憲章国際信託統治制度の七十六条ですね、「信託統治制度の基本目的は、この憲章の第一条に掲げる国際連合の目的に従って、次のとおりとする。」となっておる。「国際の平和及び安全を増進すること。」ずっと書いてある条項によると、当然南太平洋のエニウエトック環礁は信託統治地域であって、この国連憲章の規定からいっても、当然日本は国際連合に提訴できるのではないですか。アメリカ政府だけに対して要請すべき問題ではなくて、国際連合に対して、日本は当然加盟しておるのでありますから、正式に堂々と国連の力をもって核実験の中止を要請できる、かように解釈するのでありますが、そうした手続上の問題につきましては、外務大臣はどのようにお取り計らいになっておりますか。
  226. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 核実験の禁止は、総理も言われておりますように、われわれとしてもできるだけこれをわが方の希望が達せられるようにやってもらわなければならぬ。従いまして日本としてはアメリカ政府に対して抗議をすると同時に、あらゆる角度から問題を研究して、今後とも世界の各地でそういうことの起らぬように、また日本がその谷間になった場合は、特にそういう面について日本には影響があるわけでありますから、この問題につきまして今後解決の方法を考えていきたい、このように考えております。
  227. 森三樹二

    ○森(三)委員 アメリカに対する要請は、この間松本君の質問に答弁しておりますよ。手続上国際連合の規定によって日本は当然に加盟国として要請すべきではないかと聞いておるのです。この点だけ簡単に答弁して下ざい。
  228. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 可能な限りにおいては国際連合を通じてもむろんやります。
  229. 森三樹二

    ○森(三)委員 次に私は通産大臣にちょっとお尋ねしたいのですが、政府は独占禁止法の緩和のために、不況カルテル並びに合理化カルテルを行おうというような意図があることを聞いておるのですが、これについて簡単に結論だけ答弁して下さい。
  230. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 従来からわれわれは輸出振興のためには、どうも輸出入取引法だけの緩和では処理できがたい、独占禁止法の問題も触れてくる問題があると考え、またもう一つは、昨年のように投資が集中的に行われますと、ああいう問題を引き起しますので、何らか設備投資につきましても話し合いの場をこしらえたい、こういうような考えを持っておりまして、御承知のように独占禁止法の審議会を作りまして、その意見を求めたわけです。それにつきましては従来から御承知のように、不況カルテルはできておりますが、非常に条件がきついものでありますから、実際には一つきりできたのでありますが、なかなかできがたい。こういうような事情も勘案されまして、不況カルテルにつきましても、ある程度緩和するという意見の答申がありました。その反面におきまして、御承知のように、不当な取引に対する制限を強化する強く行く面と、緩和する両面の意見の答申がありました。それに基きまして、政府部内でいろいろそれを許可することについて作業なり協議をいたしておるわけであります。
  231. 森三樹二

    ○森(三)委員 独禁法の改正案というものを政府はお出しになるのですかどうですか。と同時に時間の関係でまとめてお尋ねしますが、カルテルの法案が国会に提案されるということになると、当然に中小企業の問題にも影響してくると思うのです。中小企業問題としては、中小企業団体法ができまして、いよいよ六月から実施されるわけでありますが、しかしそうした場合、独禁法を緩和することによって、結局また中小企業の圧迫にならないか。せっかく中小企業団体組織法が施行されても、カルテルによって中小企業というものは高いものを買わされて、そのためにまた一般消費者というものの受ける被害も大きいのではないか、こういうようなことも考えておるわけでありますが、これに対して通産大臣はどういう御所見でありますか。
  232. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 先ほど来申しておりますように、意見書は非常に抽象的でありまして、これを具体化しますについては、今政府部内でみんなが寄り寄り研究なりまた立案をいたしておるのでありますが、かなりの検討が行われております。われわれとしましては、極力提出して御審議願いたいと思っておりますが、これらも今後の進歩状況がどのようになるかわかりません。  また独禁法の改正の眼目は、先ほど来申し上げましたようなことであります。これは中小企業者なり一般消費者に悪影響のあるようなことであってはなりません。極力条件もしぼり、そういうような心配のないものを作りたい、こういうふうに考えておりますので、そういう御心配はないと思います。
  233. 森三樹二

    ○森(三)委員 以上をもって終ります。
  234. 重政誠之

    ○重政委員長代理 楯兼次郎君。
  235. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は交通政策について若干の質問をいたしたいと思いますが、その前に鉄道営業法の改正案が提出されるという話を聞いておりますので、運輸大臣にお伺いいたしたいと思います。時間がございませんから端的に質問をいたしますので、要点だけ一つ端的にお答えを願いたいと思います。  二月九日の読売の夕刊に出ておったのでありますが、宇都宮に岸総理がお見えになりまして、今国会における鉄道営業法の改正は重要法案である、政府としてはあくまでも鉄道営業法を今国会において改正させなくてはならない、こういうように演説をなさっておるわけです。私はこの新聞記事を読みまして、一体鉄道営業法の改正というものは、そんなに重要だとはわれわれ社会党としては考えておらないのでありまするが、岸総理はこの席にお見えになりませんからお伺いをすることはできませんけれども、当然総理の意向を運輸大臣はよく御承知だと思いまするので、一体なぜこの鉄道営業法の改正というものが重要であるのかという点について、まずお伺いをいたしたいと思います。
  236. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 御承知のように現在の鉄道営業法は非常に古いものであります。     〔重政委員長代理退席、田中(久)委員長代理着席〕  明治三十三年にできたと記憶いたしまするが、その後一、二回の改正はございましたが、旧態依然たるものがございます。それがゆえに社会、経済の発展にそぐわない、こういうふうに思っておるわけです。従って鉄道輸送の完全と適正を期するために、鉄道営業法を近代化して鉄道運輸の完璧を期したい、こういうことでございます。従って見方によりましては日本の輸送政策の上におきまして重要なものであることは、私は総理の言われた通りであると思うのであります。
  237. 楯兼次郎

    ○楯委員 今運輸大臣答弁を聞いておりまするともっとものように聞えまするけれども、それならなぜ今までに国会に御提出にならなかったか。明治三十三年に制定をされたのでありますから、法文の体裁からいって非常に時代がかった文字が使われておるということはわれわれも肯定をいたします。しかし突如として今国会に重要法案として提出をされるような情勢の変化はない。今大臣の言われましたようなそれほどの重要法案なら、明治三十三年から数えまして大正が十四年、昭和三十三年でありまするから四、五十年あったわけです。なぜ今までにそういう字句なり、あるいは重要と思われる個所を直されなかったのか。終戦を境にいたしましてもすでに十二年であります。その間になぜそれを直されなかったか、もう一回お伺いをいたします。
  238. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 今まで改正案が出なかったということは、率直に申しまして運輸行政の怠慢であったと思います。この改正案は昨年以来企図されておるのであります。ただこれは私の方から申し上げまするが、何か罰則についてこれを強化するとか、あるいは労組対策に利用するとかいうような、そういう考えを私どもは持っておるのじゃございません。ただ鉄道輸送の近代化をはかっていく、こういうことでございまするから、見方によりましては運輸政策の重点のものであるということは申して差しつかえなかろうと思うのであります。
  239. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は運輸大臣にこういうことは言いとうもないのです。というのは、新聞によりますると、盛んに鉄道営業法の罰則の項を強化して、来たるべき総選挙対策あるいは鉄道労働者の弾圧に用いよう、こういう意図を持っておる。ところが良心的な運輸大臣はそういうことであってはならないというので、どこまで抵抗を完遂されるかわかりませんけれども、抵抗をされてりおる。こういう新聞記事を読んでおりまするので、こういう質問はしたくないのでありますが、今の大臣答弁では国民大衆の受けておる感じとは非常に遠いと私は思います。突如として今国会に出してきた、もうだれが考えても罰則を強化して労組弾圧、ひいては総選挙対策に用いようとする意図は明らかであるわけです。では私は時間がございませんから大臣の言葉をそのままそっくりとって、一体鉄道営業法の中で、抽象的には現在の輸送に対応するとおっしゃいますが、一つの例でよろしい、これは法案が提案になってからわれわれ審議をいたしまするが、一体どこが現在の輸送にマッチしないのか、この点最も大きいと思われる点を一つあげていただきたい。
  240. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 まず条文の体裁などは、これはもう時代おくれでございますことは申すまでもありません。あるいは施設の安全をはかって、あるいははっきりと職員の規制もされなければならない、また代行輸送等の集約輸送と申しますか、こういったこともやっていこう、全体として輸送の安全をはかっていく、的確をはかっていく、こういうことでございまして、鉄道営業法でございますから一つのビジネス、一つの営業、商業、こういう法律の改正をしていこうというのでございまして、これは別に突如として現われたのでないのでありまして、昨年以来自由民主党においても、そういう考え方を持ってきておるのであります。どうぞ一つあまり邪推をせずに御解釈をお願いいたしたい。私はたんたんたる心境でこれが改正をはかろう、こういう以外に何にも考えておりません。
  241. 楯兼次郎

    ○楯委員 罰則の強化をやらないとすれば、この鉄道営業法の中で最も改正をしてもらっては困るという、これは国民が今日鉄道に対して唯一の最高の望みであるわけですが、定員乗車ができるようにしてもらいたい、この項目が私は全国民の要望であろうと思うのです。ところが聞くところによりますと、罰則を強化する、これは運輸大臣によって今否定をされましたから率直に私はやらないというふうに受け取りましょう。しからば次の改正点は時代に合わない定員乗車の条項を削る、こういうことをおっしゃっておるのです。ところが今日国民が最も鉄道に要望いたしておりますのは、定員乗車の項をやがてお出しになります改正案の中に織り込まれるのかどうか。そのほかに代行輸送というような改正点もあります。しかし代行輸送は私の知る範囲においてはすでにやっておる。これはどういう法規に基いてやっておられるのか知りませんけれども、すでにやっておるのです。罰則の強化をしなければ、今多くの疑惑を持たせながら改正をするという根拠は何にもない、私はこう思います。定員乗車の項を削られるのかどうかどうか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  242. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 今原案を法制局に回しておりますが、これができ上りません、今検討中でございまして、一々それを今ここで申し上げることはお許し願いたいのでありますが、全体として私は近代的の形に合うようにするのでございますから、その点は御了承を願いたいと思うのでございます。
  243. 楯兼次郎

    ○楯委員 文字を近代化といいますか現代語に合せるということは、私は大した問題じゃないと思うのです。繰り返して申すようでありますが、内容を見ても支障はないのです。支障がないどころか国民が熱望しておる定員乗車をやってもらわなければ困ると思うのです。  そこで私はもう一言運輸大臣に言っておきたいと思います。あとでお伺いをいたしますが、今までの政府の交通政策というのはばらばらです。私は国会に参りまして五年間、こんなことばかり言っておりましたが、いまだに一元的な総合交通計画というものはできておらない。今日東京の国電あたりは三倍も四倍も定員以上に詰め込んでおるのでありますが、政府に終戦以来定員乗車の営業法の十五条を実施をする意図があったならば、もう解決をされておると思うのです。今日解決をされておらなくとも解決の峠がもう見えておる。ところが今日ただいまの段階ではまっ暗やみです。しかもこれがあると罰則規定がありますから工合が悪い、ついでに削ってやれ、何たる言語道断だと私は言いたくなるのであります。そこで大蔵大臣にこの点についてお伺いしたいと思いますが、これは国民から非常に熱望をされておるにもかかわらず、この輸送の緩和に対する、今までの国鉄に対する投融資が非常に私は少かったと思います。なるほど本年度は運用部の方からの二百億も入っておりますし、公募債と合計いたしますると、日本経済の三大隘路でありますか、その一つとして本年度からやや認識はして参りましたけれども、終戦以来非常にまま子扱いされておった、こういうふうに私は思うのでありますが、大蔵大臣はどういうふうに認識をされておるか、お伺いしたいと思います。
  244. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは交通、特に国鉄は非常に重大な仕事をやっておるのですから、予算の上で特にこれらの仕事の遂行に困難をさせるという考え方は全然ありません。ただ従来、ずっと前のときにおきましては、あるいは予算自体、国の財政自体が必ずしも十分でない上に持ってきて、国鉄自体の破損も非常なものであったような関係から、思うようにいかない点もあったと思いますが、今のお話のように特に三十三年度におきましては、国鉄の工事予算については特段の配慮をいたしております。
  245. 楯兼次郎

    ○楯委員 時間の関係で私は具体的に大蔵大臣一つお伺いしたいと思いますが、これは社会党のわれわれもそうでありますが、岸総理初めわれわれ陣がさに至るまで、三月になりますと新線を建設してもらいたいという猛運動を起すのです。ところが国鉄の方にいわせると、とにかく新線というのは全部採算が赤字であるから困るというのです。ところが、困るといって建設をしないということでは、これまた選挙区その他で困るというわけで、どんどんと新線建設の決定をいたします。総理以下われわれを含めて、作れ作れとは言うのです。ところが赤字であるから、それでは一つ財政的な裏づけ、めんどうを見てやろうという点については、私どもが国会に出て参りましてから一向に御熱心でない。それはことしも要求から四十億削っております。昨年も数十億削っております。ところが作れという方は、これは党派をあげ、幹部から陣がさに至るまできわめて熱心である。こういう点についてどうお考えになりますか。
  246. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私はやはり国鉄にいたしましても採算の合うような線路を選ぶべきだと思います。むろん交通のことでありますから、単に採算のことばかり言うわけにもいかないかもしれません。しかしそれは何らかの理由で、国家的に非常に必要であるというような意味を持たないと、ただ採算はとれないが作つた方が便利だからここにも敷こう、そこにも敷こうというのでは、国鉄の財政の健全性を害して、かえって総体の施設なんかを悪くしまして、それが負担になる、それだけに全体の国鉄の運営に支障を来たすということは私はあるだろうと思う。それで、ただむやみに新線をふやすことは、私はあまり賛成いたしておりません。
  247. 楯兼次郎

    ○楯委員 大蔵大臣の立場からいえばそうだと思います。ところがそれはあなただけの御主張でありまして、あなたを除く以外は作れ作れと言うのです。私は作ることは、これは国民の強い要望でありますから、けっこうなことだと思うのです。ところが作れということは押しつけるが、さて金の方のめんどうは見てやらない、こういうことでは円満なる輸送の運営ということはできない、こういうふうに私は思いますので、この点は一つよく御研究を願いたいと思います。  それから法制局の方にお伺いをいたしたいと思いますが、この鉄道営業法という法律は、昭和二十四年に国鉄が公共企業体に切りかわりましたときに、当然廃止すべき法律であったと思います。それをたまたま残しておきましたから、今疑惑を受けながらあるいはこの法律を利用して労組弾圧対策をやる、こういう原因が生れてきたと思いますが、どうですか。
  248. 林修三

    ○林(修)政府委員 お答え申し上げます。鉄道営業法も内容は御承知通りに、必ずしも国鉄が今の形に直ったときに、すべてそっちの方に吸収していくべきものではないと思っております。これはやはり鉄道の営業の仕方について、いろいろ規定した法律でございますので、独立して存在する価値を持っておると思います。御承知のように国有鉄道のみならず、私鉄にももちろん適用がある法律でございます。公労法によってとってかわられるような労働法規的なものではなかろう、かように考えるわけであります。
  249. 楯兼次郎

    ○楯委員 私のお伺いするのは、なるほど仕事の内容は幾分違うと思いますが、たとえば一つの例を申し上げますと電電公社ですが、これは公共企業体です。ここに鉄道営業法のような商法の特別法ですか、こういうものがあるか、私はないと思います。だから、当然、公企体になったときに日本国有鉄道法が制定されましたので、この中にこれらの商行為を規制する条文をうたい込んで、営業法は廃止すべきであった、こういうふうに考えるわけです。こういう見解についてはどうですか。
  250. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は、電電公社については御承知通りに公衆電気通信法という法律が別にありまして、電電公社が使っております公衆電気通信についてのただいまおっしゃいました商法上の特例あるいはそういう契約上の特例についての規定があるわけでございます。従いまして国有鉄道につきましても、日本国有鉄道法というのは御承知のように日本国有鉄道組織、財務あるいはそういう面についての規定でございまして、いわゆる営業面におきましてのいろいろの面は、私鉄の分を合せまして、やはり鉄道営業法、こういうものが存立の価値を持っておる、かように考えるわけであります。
  251. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は国鉄の職員に対する罰則についてお伺いしたいと思いますが、運輸大臣は先ほど罰則の強化はやらない、こういうふうにおっしゃいましたので、ぜひ一つその意図を今国会で一つ突っぱっていただきたいと思います。どうも運輸官僚、国鉄というのは、他の官僚に比べると私は力が弱いような気がいたしますので、一つ負けないようにがんばっていただきたいと思いますが、運輸大臣の先ほどの御答弁をそのまま受け取りましても、なおかつ罰則の調整であるとか、運輸大臣の罰則認可制をとる、こういうようなことを言っておる、こういう点はより以上多くの罰則を作って職員を威嚇する、あるいは必要以上の刑罰に処す、こういうことになるのじゃないですか、こういうおそれは全然ないのですか。
  252. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 私は罰則を強化して従業員を圧迫するというようなことはやるべきではないと思います。ただ営業法などの中には科料三十円とか五百円とか、貨幣価値から言って直さなければならぬところは、これはあなたも御了承下さることだと思いますが、ことさらに弾圧をするということは私は考えておりません。しかしながら国鉄従業員も義務に違反せず、その職務を完全に遂行していただくということは要求せざるを得ません。たとえばこの間の無賃乗車の問題とかあるいは寝台の無断使用、こういうようなことにつきましては、国鉄におきましてはその懲戒規定とかその他によってそれぞれの処分はいたしましたことは事実でございます。決してことさらに弾圧をするというべきものでは私はないと思います。
  253. 楯兼次郎

    ○楯委員 大臣がそういうことを言われるから、反論したくなるのです。たとえば寝台車の問題にいたしましても、これは突き詰めていけば当然監理局の課長なり部長なりあるいは当局側と言われるあなたの部下が判こを押さなければできないのです。やっておると思いますが、しかし、私は今ここでそんなことをやりたいとは思いませんけれども、今の御答弁はちょっと見当違いだと思います。これは監督上の不行き届きの一言に私は尽きると思います。  そこで、その問題は別といたしまして、一体、国鉄職員の行為、行動あるいは職務を規制する罰則というものがそれじゃどのくらいあるか、大臣御存じですか。
  254. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 私は的確な数とかいうことは存じませんが、国有鉄道法にもあります。あるいはいろいろそれによる内規もあるようでございます。規程でございます。それから、今言う鉄道営業法にもあるわけでございまして、いろいろ部分的にあるいは部門別にそういう規定のあるということは、これは私はやむを得ないことだと思います。しかしながら、そういう従業員諸君に対して弾圧をもって罰則をことさらに強化して臨むということは、これはなすべきことではりない。しかし、大きな世帯を控えておるのでありますから、管理体制の立場からして、私はただすべきものはただすことが必要であるということは考えております。
  255. 楯兼次郎

    ○楯委員 大臣に罰則規定はどれだけあるかとお伺いしても、ちょっと無理だと思いますが、まず公労法十八条でこれは首切りがあります。解雇があります。それから、今営業法で私どもが論議をしておりますところの職務に違背した場合には、日本国有鉄道法の三十一条によって、これは免職、停職、それから減給、戒告という四つの罰則がございます。それから、鉄道は業務上過失致死あるいは業務上過失傷害罪の司法罰にも相当数の人が問われておるのです。そのほかに、去年の春闘においては、あなた方内規をお作りになっておると見えまして、厳重注意であるとか、あるいは訓告でありますか、そういうような罰則まで用意をされておる。これじゃ二重、三重、四重じゃないですか。その上になおかつ鉄道営業法の罰則を強化するなり、あるいは種類を多くしてさらに五重にこれを縛ろうとしておる。先ほどの運輸大臣の御答弁を信用をして、ぜひ一つ罰則の強化をしないように、こういう改正がないように、一つあなたの意思を突っぱっていただきたいと思いますが、さらに進んでは、このような疑惑を招く改正案を何も——どうせ何十年というほど延びてきたのだから、この国会に無理をして提出をする必要は私はないと思いますが、今国会の提出を見合せる意思があるかないか、一歩進んでその意思をお持ちになっておるかどうか、こういう点をお伺いしたいのです。
  256. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 目下法制局において二週間ほどかかりますならば大体仕上げができると思います。従って、私は、その仕上げができましたものを国会に出すという順序になると思います。今これを見合わすということは、私は考えておりません。繰り返して申し上げまするが、今お尋ねの鉄道営業法は、鉄道営業の近代化をはかって社会経済の発展に沿うていくということでありますから、どうぞ一つこの点でお考えを願っておきたいのです。
  257. 楯兼次郎

    ○楯委員 納得をしませんけれども、だんだん私の与えられた時間が少くなって参りますので、運輸委員会においてこの続きは論議をいたしたいと思います。大体、幾ら否定をなさいましても、そういう意思があるということと、予算の審議中は紛糾を避けるために予算通過後国会に出す、春闘が盛り上る、国会の中ではこの法案を中心として社会党と対決をしながら解散に導く、もう筋書きはきまっておるのです。一つ巻き込まれないようにやっていただきたいと思います。  そこで、交通一般についてお伺いをいたしたいと思います。これは常識でありますが、自動車が最近激増をいたしました。従って、今までは道路というのは人馬の交通路であったと私ども考えておったのでありまするが、自動車が激増し、自動車輸送というものが毎年ふえて参りまするから、道路は旅客、貨物の輸送路として考えていかなくちゃならないと思います。こうなりますと、今まで大体、陸上運輸の定義、基本方針というものは、中、長距離の輸送は鉄道だ、短距離の輸送は自動車だ、こういうことに大体定義づけられておったのでありまするが、昨年の国会で自動車の激増に対応いたしまして高速自動車道の法律が制定をされましてから、今や日本には交通の一大革命が起ろうといたしておるわけです。こういう時期に、私どもが見ますところによりますと、先ほど申し上げましたように総合的あるいは一元的な交通対策というものが立っておらないように私は思います。将来の陸上交通というものは、どうしても高遠自動車道がその背骨となって、これに連絡して支線をつける、また鉄道との調整をどういうふうにしていくかという基本線をまず立って、それから年度予算の使用方法等を考えていかなくてはならぬと思うのでありますが、そういう考え方で今日の行政というものは行われておらない。ちょうどさか立ちになってあと一年、二年たちますと歩くような状態になると思いますが、ただいま私が申し上げました、陸上輸送が大きく変革をしようとしておるという考え方について、運輸、建設両大臣がいかに考えられ、どのように対処されようとするか、お伺いいたしたいと思います。
  258. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 道路等における交通、それからレールによる交通、これをお互いに調整していかなければならぬと存じます。ただ、最近この高速道の国道が発展してそこへ自動車が通る、これとたとえば東海道などの新幹線ということも考えられますが、やはりそこへ転移する量というものを考えてみますと、パーセンテージより見ますと、やはり国道に行く率等はそう大したものではないのでございますから、従って、やはり東海道などが昭和三十六、七年ごろになりますと相当行き詰まって参りますし、あの東海道線を一つ改めていく、あるいは新たに別に設けるとか、そういうような方法を考えていかなければならないと思いますが、大局といたしまして、やはり調整していく、お互いがその特質を発揮していく、こういうことは、私は交通政策の大きな立場から必要であると感じておるのであります。
  259. 楯兼次郎

    ○楯委員 あとで建設大臣の御答弁を伺いますが、運輸大臣に、それは私は答えになっておらぬと思います。今あなたは鉄道のことばかりおっしゃいますが、私の聞いておりますのは、鉄道と道路と自動車道は、どういう連絡、協調を保ち、どういう見通しに立ってやっていくのかという点をお聞きしておるわけです。だから、やはり今までの考えと同じように、鉄道は鉄道だけ作っておればいい、道路は道路だけ作っておればいい、いやそれはこっちによこせ、いやそれはこっちによこせというなわ張り争いでは、国民がはなはだ迷惑であると私は考えております。だから、鉄道と道路の関連、特に一番輸送が輻湊いたしておりまする東海道等に対する両省の今後の処置というようなものについてお伺いしたい。
  260. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。基本的に申しまして、日本の道路、鉄道、海運、これが総合的に、バランスのとれた政策をとらなければならないという楯さんの御意見には全く同感でございます。特に、そのうち、最近道路輸送に対する需要が非常に多くなって、しかもこれが従来の短距離から長距離になってきておる。こういう事態から見まして、道路整備はいわゆる従来の馬車道とか人道というものから自動車の道路を中心とする整備計画を立てなければならぬということも全く同感でございます。その見地に立ちまして、今回、道路五カ年計画、これに伴うところの諸法案並びに特別会計を設けたわけであります。御指摘のように、従来ややもしますれば鉄道は鉄道、道路は道路、港湾は港湾というふうにそれぞれの審議会もしくはいろいろの機関がございまして、その全体のバランスが必ずしも満足にとれていないということも事実でございます。そういう観点からいたしまして、今回政府が交通関係の予算並びに計画を立てるに当りましては、経済企画庁が中心となりまして、長期経済の見通しを立て、これに伴うところの輸送の錯綜の状況あるいはこれに対するいろいろの需要、こういうものを一応検討の上これを立てたのでございます。しかし、これも必ずしも満足でございませんので、去る二月二十五日の閣議におきまして、交通関係の閣僚協議会を内閣に設けまして、従来の計画をさらに綿密に検討、調整して、その間バランスのとれた政策を重点的に施行する、こういうふうな方針になっておる次第でございます。
  261. 楯兼次郎

    ○楯委員 長期経済の見通しに立って交通政策をお立てになるということ、これは毎国会の建設大臣並びに運輸大臣の御答弁です。それから数年前から私どもがやかましく言っておりましたが、なるほど、はっきり記憶いたしておりませんが前には経済企画庁に交通審議会等を設けられたことがございます。それから、最近建設委員会においてわが党の議員がやかましく言うのでかどうか知りませんが、きのうの夕刊では、交通関係閣僚協議会を設置される、こういうことでありますが、何年そういう委員会をやっておりましても、何も結論が出てこないのです。というのはどこに原因があるかという点を私どもは究明していかなければ解決にはならないと思うのです。そこで、私は端的に申し上げますが、それは、先ほど申し上げましたように、道路が人や馬や荷車の道路ではない。自動車輸送路である。だから、考え方を変えてしまわなければいかぬ。そういたしますと、人や馬の通る道路を規制するために作ってある法律あるいは行政組織というものを根本的に変えなければ、この打開策なんというものはないということを私は考えておるのです。ちょうど、今ある輸送関係に対しまする法規制あるいは行政機構というのは、子供が大人になった、着物がちんちくりんになった、ここも破けたからここもほころびを縫う、そういう状態で、ちょうどぞうきんを着ておるような状態ではないか。だから、人馬に対する道路の考え方をここで変える。これに対する法規制を根本的に改める。これに対応してできた行政組織を根本的に抜本的に改めなければ、日本の交通というものは発展をしていかない。ひいては日本の経済の発展はないし、国土の総合開発というものはない。こういうふうに考えるわけです。だから、私は、時間があれば、今いかに日本の交通関係に対する法律というものが重複し矛盾をしておるかという点を申し上げたいのでありますが、今ここで一々申し上げておることはできませんけれども、たとえば、自動車道一つ作るにも国土開発縦貫自動車道法があるでしょう。高速自動車国道法があるでしょう。これを経営し建設するのに、道路法があり、道路運送法がある。一体これは、こっちのなわ張りだ、いやこれはおれの方のなわ張りだといってけんかするだけです。だから、根本的に法規制を改め、あるいは行政機構を改めなければなわ張り争いというものの根本的解決はできない、こう思うのです。こういう点について、本年度あたりは根本的に考えてもいいと私は思うのです。いわゆる人馬の道路に対する法規制となわ張り争いにのみ終始される行政機構を一元化する必要がある。この点いかに考えるか。この点について両大臣の見解を一つ承わりたいと思うのです。
  262. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。輸送問題について、特に道路の錯綜しておる現状を打開するために根本的の法並びに行政機構の改革をすべし、こういう議論は前からわれわれも聞き、またいろいろ研究してみたのでございます。実は鳩山内閣当時におきましてもこの問題が提起されまして、一部では運輸交通省とかいうような意味において、運輸に関することは運輸行政のみならず建設までも一緒にしてやったらどうかという議論もございます。あるいはまた内政省のような形において、あるいはまた国土開発省という形において、むしろ建設を中心として、そうして日本の輸送問題、国土開発の問題をやるべきだとか、いろいろ、な議論がございます。しかし、行政のことは、一つの観点に立って、その観点だけから貫くということは、別の意味においてさらに困難な問題が出るわけでございます。そこで、これは、内閣一体の形において、おのおの所管の問題はございますけれども、最後的には調整していくというより、現在いろいろと案はありますけれども、実際的には困難である、かように考えておるわけでございます。従いまして、今直ちにこのために、交通省とかそういうものを作るという意図は現在内閣にも持っておりませんし、われわれ関係閣僚の中でもそれは議論にはなっておりません。しかしながら、御指摘のように、現在道路輸送に関しましてかなり錯雑な状況になっておることは事実でございます。そういう問題がありますがゆえに、先ほど申しました交通関係閣僚協議会を今回は常置しておるわけであります。今までは問題があるたびごとに協議したのを、今度は常置しております。しかも、その組織の事務機構としましては、各省事務次官を幹事役にいたしまして、そうして庶務事項は経済企画庁の方でやるというふうに整備をいたしまして、そうして従来の欠点を是正して参りたい。御指摘のように、日本の交通関係は全く成長に対してそれに対応するところの制度ができていない。これは、一面におきましては、日本の道路政策が欧米に比べて、ある者は三十年、五十年と言うけれども、最も端的に言う人は百年以上もおくれておると言われておる状況下においてこれは整備しなければなりませんので、若干その理想通りいかないと思いますけれども、漸次お示しの点をわれわれも考えて実施して参りたいと考えております。
  263. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 大体建設大臣が申し上げました通りでございます。目下私は、建設省と運輸省がなわ張り争いをしてはいかぬ、これは私は極力努めておるところであります。
  264. 楯兼次郎

    ○楯委員 建設大臣は、あなたの立場がおありになるので、一本にはなかなかすぐにいかない、こういうことをおっしゃいますが、これはもう常識からいっても、だれが考えても、建設省の道路局と運輸省とは一体にしなければ、これはもうやっていけないと思います。しかしこれをいくら根本さんにお伺いをいたしましても、あなたの立場上、今そうだとはお言いにならぬでしょう。ならぬでしょうけれども、もうそういう政治的な考えでやっていく時期じゃないと私は思います。ここらでからを破って、悪いものは一本にしてやっていかなくちゃいけない、こういうふうに思います。  そこで時間を食いますから、今度は端的に一つお伺いいたしたいと思いますが、二十六国会で、三カ年東海道か中央道かというのでけんかをやりまして、論争をやりまして、国土開発縦貫自動車道が通りました。あなたもこれは御署名なさった、賛成をされたと思います。ところがその後法律が通った経過を私ども今日まで見ておりますると、非常に建設省も、運輸省でもそうでありますが、熱意がない。過去大方の議員立法というのは、そのときには通っても、予算の裏づけをやらないから、だんだんと影が薄くなってしまう、今こういう傾向をたどろうとこの法案がしておるのではないかと思いますが、もしそうではない、楯の言うように熱意がないことはないとおっしゃるならば、一体今までどれだけこの法案の実施について御尽力になつたかという点を、一つ飛んでお伺いしたいと思います。
  265. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。中央縦貫道路の問題については御指摘の通りいろいろの経緯がございました。しかしながらその一部をなすところの、いわゆる神戸—名古屋間は、すでに具体的に設計もでき発注しておるわけであります。ところが非常に膨大な資金が要るのみならず、用地問題等かなり複雑な問題がございまするので、今計画よりは少しおくれておりますが、しかしようやく最近におきましては、この問題は明るい芽を持っておると思います。これに関連していわゆる名古屋から東京間の問題でございます。これにつきましては、これは楯さんも御承知のように、これは非常に大きな事業量であるとともに、技術上非常に難点があることは御存じの通りであります。そこで従来は、この問題に関連して、直ちに着工並びに具体的な路線の事業計画が立たないためにいろいろうわさされておりますが、建設省としましては、法律の趣旨に従いまして、今までは航空写真などでやっておりましたのを、三十三年度からは現地の実地の調査をいたして参りたいと思って、予算措置を講じておるという状況でございます。それからいわゆる東海道線につきましては、これは今度も道路五カ年計画の線に沿いまして、あれはいわゆる一級の一号線でございます。一号線は、従来のものを、これは既定の方針によって改良整備いたす、こういう方針になっておりますが、これについては、いわゆる中央道にかわって東海道にそれと同様なる措置をとるための予算措置は何らいたしておりません。従いまして中央縦貫道路については、法律の趣旨に従って措置をしておるという状況でございます。
  266. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは建設大臣よくおわかりであると思いますし、私もここで必要以上のことは申し上げたくないのでありますが、先ほど来から繰り返しておりますように、将来日本の交通というものは、国鉄並びにこの高速自動車が根幹とならなければ計画が立たないというふうに私ども考えておるわけです。だから、すぐ建設をやるかどうかということは別として、一応あの法案が、建設法が通ったのでありますから、これは机上プランでも何でもよろしい、一つ作って、これに連絡させて、路線はここはこうなるのだということにして、これを根幹とする計画が立てられなくてはならない、こう思のです。ところが、こういうことを建設省の方はあまりやっておられることを聞いておりません。であるから、そういうことであろうと私ども考えまして、あの法案を提案をするときに、政府はすみやかにこの調査を行い、計画を立てよ、第三条にはっきりうたってあるのです。ところが、これは余談になりますが、建設省のある事務官あたりは、あの法案が通ったにもかかわらず、ある個所へ行って反対の演説をやっておる、こういうふうなことを私聞いておるわけです。こんな人は——なるほど三カ年はいろいろわれわれは論争したでしょうけれども、とにかく三年間の成果としてあの法案を通した。これは官庁としては忠実に第二条に基いて実施していかなくちゃならないと思うのでありますが、まだ反対のような演説をしておる。こういう人は厳重な注意なり何らかの大臣は態度をとってもらわなくちゃ困ると思うのです。  それから端的にお伺いをいたしまするが、この建設省の道路整備五カ年計画が大体九千億かの計画でできておると思います。そこで国の直轄工事費が五千六百億、それから地方道の整備費が千九百億、有料道路が千五百億というふうになっております。ところが国の直轄工事費と地方道路整備費は大体私どもでも予想ができます。資料の状態で予想ができます。ところが有料道路の千五百億は、今建設をされようといたしておりまする名古屋—神戸間を除いて一体どこに使われるのか、この計画が明示されておりません。大体七百億になると思いますが、五カ年間に名古屋—神戸間に使う以外の有料道路は、法律によって中央道に建設をやる七百億であるのか、あるいは他に使用をする予算であるのか、こういう点をお聞きしたいと思います。といいますのは、五カ年間でありますから、私も自動車審議会の委員の一人でありますが、もう本年度調査を終って、来年度基本計画を出し、整備計画を出し、国会の最後の決定を受けるわけでありますが、整備計画を出さなければ建設にかかれないわけです。今のような状態では、これは五年間に有料道路七百億の金の使い道に困ってしまうのじゃないかと思うのです。どこに使われるのか、どういう意図を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。
  267. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。有料道路千五百億の配分の問題でありますが、これは厳密にどこそこの地点にどれほどということにはまだ参っておりません。これは総体の事業量として見たのでございます。今回五カ年計画を策定するに当りまして、御承知のように長期計画の見通しにおきましては、道路需要の問題と、財政規模、それから国の経済の発展の速度というものを勘案して作られたのであります。経済企画庁におきましては、六千六百億から九千五百億の幅をもってこれをきめておるのであります。     〔田中(久)委員長代理退席、川崎(秀)委員長代理着席〕  われわれ建設省といたしましては、現在の交通の非常に錯綜しておる状況を打開して、しかも将来さらに増加するであろう需要を満たしていくという観点からすれば、九千五百億にどうしてもなる。ところがそこまでいけないので、九千億にしたのでありますが、そのうち大ざっぱな従来の経緯並びに統計等から見て、地方道単独の方が千九百億、それから一般道路について五千六百億、千五百億程度は有料道路をもってやる。これは大体の全体の輸送のバランスをとってやる場合の計画である。従って、その千五百億のうち、どの路線に何ぼということはまだ策定いたしておりません。これは今度新たに法律ができますれば、この五カ年計画の事業計画を立てなければなりません。それに伴って、これは出ているのでありますが、現在のところは御指摘のように、常識的には名神国道、これは全面的にやりますが、実はこの算定についても議論があると思いますが、楯先生専門的に御存じのように、大蔵省の見ておる費用とわれわれの見ておるものと違いますが、これのほかに現在有料道路を継続事業としておるところがございます。これはもちろんやります。それから新規の要求もありまするが、それをも一部見ております。さらに全部ではございませんけれども、もしこの中央道についての調査が完備し、着工し得る状態になりますれば、これは相当時間がかかりまするけれども、その一部にももちろんこの千五百億のワクから、実施するということになりますれば、当然これはその中にいく、こういうことでありまするが、現在中央道をさらに延長して、何ぼどこそこにいくということまでにはまだ策定はできておりません。
  268. 楯兼次郎

    ○楯委員 大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、もう時間がないそうでありまするから、そういう大つまみの予算を大蔵大臣は出しておられないと思いますが、相当綿密な資料が出ておるような気がするのです。これは時間がございませんから、お伺いいたしません。  そこで建設大臣に一言この点について、お伺いを繰り返すようでありますが、お伺いしたいと思います。東海道と中央道ですね。これは私どもがもみにもんで通した法案であるが、その過程においてはいろいろ論議もあったと思いまするけれども、通過した今日においては、全力をあげてこれの建設にかからなくてはならないと思うのです。ところが、私どもはそう考えておるのでありますが、いまだに、やれ東海道か中央道かというようなばかげた話をいたしておりまするから、これはお伺いをしなくても、御返事を聞かなくても、法律に基いて当然であると思うのでございまするが、念のためにはっきりと中央道を、これは時期はかかるであろうけれども、建設するんだ、こういうことを一つ聞かしていただきたいと思います。
  269. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。楯さん御自身が言われておるごとくに、これは聞かなくてもいいことでありまして、法律上これが規定しておることを、今法律の改正なくしてあそこをやらないということは、政府としては考えておりません。ただし御承知のように、これは非常に大きな事業量になりまするので、いつからどの地点という綿密なことができていないので、いろいろな御疑問があるだろうと思います。それからもう一つ、有料道路としてやるかやらぬかが非常に問題であります。われわれの現在の想定からするならば、これは非常に工事費がかかるところで、しかもかなり採算のとりにくいところを、有料道路でやるとすれば、これは不可能になるだろうと思います。従いましてあの路線は全部有料道路にしてやるということになれば、非常に困難なのでございますので、これはやはり公共事業と有料道路とかみ合せてやらなければ、あそこの開通は実施化が困難ではなかろうか、そういう問題を精密に現地を調査の結果いたさなければならぬかと思っております。東海道線については、先ほど申したように、現在の行き詰まりを打開するために、従来の道路を整備強化する。さらにまた必要とあればハイパスも通さなければならぬ場所もあるわけであります。たとえば名四間の道路とか、そういう問題、あるいは第二京浜、いろいろありまするが、これはいわゆる中央道と置きかえてやるところの構想ではない、これだけははっきり申し上げておきます。
  270. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、端的なお答えでけっこうでありまするから、一つ有料道路の料金ですね、これはわが党のここにお見えになりまする代議士諸君も盛んに関係委員会で質問をしておりましたので、私ちょっとお伺いしたいと思います。有料道路は全国二十二カ所ありますが、料金が高い、困るという声が起きておるわけです。特に今度関門のトンネルが通りまして、これではというので、反対の声が非常に多いのでありますが、この高い料金、各地まちまちである料金を——大臣答弁を速記録で読んでみますると、将来、考慮すると、こういうような御答弁になっておりますが、どういうふうに考慮されようとするのか、時間がないそうでありまするから、簡単に一つ答弁願います。     〔川崎(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  271. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。有料道路は、御承知のように、以前各地方自治体が作ったものを引き受けたものが相当ございます。従いまして、これは初めから非常に無理がございます。有料道路は公団の方でやっておるのでありまするが、公団は原則として採算制をとっております。もちろん利益は必要ではありませんが……。そういう関係上、やはり採算のとれるということを原則として考えなければなりません。そこで今後有料道路を作る場合におきましては、十分調査の上、採算がとれ、かつ一面においては利用者に高い負担をさせなくてもよろしいというものについてのみ、有料道路として着工していきたいと思います。その他のものはやはり一般の公共道路としてやるのが本体であると考えております。それからもう一つは、高いということと、非常にアンバランスだということ、これが問題になっておるのであります。また償還期限についても非常にアンバランスであるという点から考えまして、私は、補助制度をやめて、出資制度にいたしまして、そうして一応の基準を作って、二十年なら二十年間に全部償還し得る、しかも料金についてもあまり格差のない、一応のバランスがとれるという基準において、今後やっていかなければならない、そういう基準ができ、そういう運用ができるとしますれば、今度はこれをプール制にいたしまして、場所によって非常な不便や不満のないようにしたい、こういう方法で今後検討をいたしたいと思います。
  272. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は過渡的措置としては、プール制でもいいと思います。しかしこれはやはり一般旅客運賃あるいは貨物運賃と比較して、そういう面から将来は制定をしていかなくてはいけないと思います。こういう点について、過渡的措置としてプール計算ということもやむを得ないと思いますが、そういう点を将来はそうでない、一般旅客貨物運賃等とにらみ合してやっていかなくちゃならぬと思いますので、考慮していただきたいと思います。特にこの関門の料金が非常に高いというのは、通過台数の算定基礎を、公団が非常に低くしておる、こういうことを聞いております。一昨日の朝日の夕刊でありましたかに出ておったのは、たしか昭和二十七年に算定した半分である。二十七年から今自動車は激増しておりまするから、相当通過台数がふえなければならぬのでありまするが、二十七年の算定の基礎の半分にこれを公団で計算をしてとるから、べらぼうに高いのだ、こういうふうになっておりまするから、この点も一つ、これは建設省の工事事務所が昭和二十七年に百二十六万台、公団がその半分に計算をして料金を出しておる。これはあまりに懸隔がひどいので、これを一つ検討をしていただきたいと思います。  それからこの料金についてもう一つお伺いしたいと思いますが、高速自動車国道に、今お伺いをいたしましたこの普通の有料道路の料金を当てはめるということはちょっと理屈に合わぬと思いますが、これはどうお考えになりますか。
  273. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。一つは関門の隧道の料金の問題についてでありますが、これは本年初頭から、関係者からいろいろと御要請もあり、また陳情がありました。今御指摘のように、通行台数の問題が論争の点であります。しかしこれは公団並びに事務当局においてはそれ相当の理由がある。それからまた地元の方面にもいろいろの理由がありますが、これは一つの想定だけの論争でありまして、今はっきり判定はいたしかねます。なおまた料金については、すでに私の前任者においてこれが認可をしておりまするので、これを変更するわけにはいきませんが、相当政治的にこれは考慮しなければならない事態であると考えまして、私は最近委員会の分科会その他においても、いろいろ御質疑がありましたので、これに対応いたしまして一応の措置をとっております。それはこの関門隧道が開通するということは、日本の道路の政策上から見ましても、また工事上から見ても、これは画期的な事業でございます。その意味において、これを慶祝する意味において、一定期間中暫定料金を申請いたさせまして、それに基いて従来認可しておるよりは若干実質上軽減した形において実施する予定であります。しかもこれは正式に両県の県議会の承認を求めてやらなければ、会計法上、あるいは会計検査院に不当な処置とし問題を起してもいけませんから、正式に手続をとりまして措置いたしたいと思っております。大体これによって今地元からも喜ばれておるような状況だと思っております。  その次に一般の有料自動車道の料金と高速自動車道路の料金が別建てで考えなければならぬということでありますが、これは十分研究してそうなさなければならぬと思います。御承知のように、高速自動車道は相当の長距離になります。従いまして現在使われておる一般自動車道路の標準でいきますと、相当高いものになっていくと思いますが、一面におきましては、工事費並びに償還年限、それから通行料、そういうものも勘案してやらなければなりませんが、今のところ具体的なものはございませせんが、御趣旨に沿うように十分検討して措置いたしたいと思っております。
  274. 楯兼次郎

    ○楯委員 高速自動車国道の料金の計算の基礎でありますが、道路整備特別措置法の第十一条の一項が、この高速自動車国道が通過したときに、料金算定の条文が改正になったわけです。ところがこれは幾ら読んでも、われわれにはわからないわけです。というのは、大体この有料道路の料金というのは、建設費の何割かを通過台数によって償還するようにできておると思うのです。ところが十一条の第一項に「高速自動車国道に係る料金の額は、高速自動車国道の新設、改築その他の管理に要する費用で政令で定めるものを償うものであり、かつ、公正妥当なものでなければならない。この場合における料金の徴収期間の基準は、政令で定める。」こうなっておる。これは今すぐと言ってもおわかりにならぬかと思いますが、どうやって計算するのですか。私は幾ら読んでもどういうふうに計算してよいのかわかりません。道路局長でもよいから、どういう計算の仕方か承わりたい。
  275. 富樫凱一

    ○富樫政府委員 高速自動車国道の料金でございますが、これの算定方法は、ただいま申されましたような条項によってするわけでございますが、これは一方に建設費なり高速自動車国道の管理費を償うということが一つの条件でありますのと、それから公正妥当であるということを言っておりますが、これは他の輸送機関に比べまして、適当であるという意味に解してるわけでございます。従いまして、この償還期限が問題になってくるわけでございますが、これは高速自動車国道の耐用年数というものもあるわけでございますが、それらを勘案してきめることにいたしたいと思っております。
  276. 江崎真澄

    江崎委員長 楯君に申し上げますが、申し合せの時間がすでに経過しておりますから、結論に入って下さい。
  277. 楯兼次郎

    ○楯委員 字句の解釈はあなたのおっしゃる通り。ところがここに当該高速自動車国道にかかる料金云々とあるならわかる。当該という字句がないのですから、一体どの範囲から償還するのか、どの範囲の建設費を償還するのか、これは算定基礎が出てこないのです。時間がないそうですから、これは答弁は要りませんが、ここで答弁をされても、いろいろなことを言われるでしょう。しかしこの当該という字句を除いたについては、これはいろいろな裏があると思うのです。この点は一つ運輸大臣とあとで御相談なさって、こういう不見識な条文を残しておくことは私はけしからぬと思うので、あとで御検討を願いたいと思います。  それからこれは社会党として、この一点を質問をしなければ結論にならぬので、お伺いいたしたいと思いますが、国土開発縦貫自動車道建設法の第九条に(損失補償と相まつ生活再建又は環境整備のための措置)という項目があるのです。これはこの自動車道の建設によって農地を失う者、土地を失う者の生活が再建できるようにという条項です。ところがこれは当然第九条に基いてそれらの措置の政令を作らなくてはならないのでありますが、われわれは今日までその政令を見ておらない。ところがその政令はないのであるが、名古屋—神戸間の工事はどんどんと進められようとしておる。私どもはどうも不可解にたえないのでありますが、この第九条の政令化は一体いつお定めになって、工事に着手されておるのか、お伺いしたいと思います。
  278. 富樫凱一

    ○富樫政府委員 お話のように、第九条の政令をすみやかに定めなければならぬわけでございますが、この政令につきましては、昨年の暮れから関係各省とも協議を進めております。これは総理府の審議室に中心になっていただきまして、関係各省関係者にお集まりを願って、だんだんに協議を進めておるわけでございますが、早急にまとめたいと考えております。
  279. 楯兼次郎

    ○楯委員 大体江崎委員長の御承知のように、今名古屋—神戸間の土地をとられる農民はあげて反対しておるのです。私はどんな補償をしても反対があるということは、これは否定いたしません。しかし当然第九条にきまった、この法律に基いて、生活の再建、環境がよくなるように政令をもって定めて、それの提示をして納得させて、工事を始めていかなければならないのに、政令も作らずにおいて、工事だけどんどん始めるなんということはないと思うのです。だからこの点は、私はあなたの方で幾ら御答弁なさいましても答弁にならないと思います。時間がないそうでありますから、これ以上追及をいたしませんが、それは道路は必要でしょう。しかしそれによって泣く農民の立場を十分お考えになって、少くとも法律できまったことだけはこれは措置をして、そうして工事を進めていくようにお願いを申し上げたいと思います。  それから最後に、もうこれで結論に入りますが、きょうは道路公団の総裁をお呼びいたしたのでありますが、所用があってこられぬそうでありますから、私は建設大臣に申し上げておきますから、一つ措置をお考え願いたいと思うのであります。道路公団の事務所の中に高速道路調査会というものがございます。これはどういうものかといいますと、岸総裁があいさつ状を土建、セメント、石油、自動車、タイヤ、運送業者等の方々に送って、ぜひ一つこの道路調査会に御協力を願いたい、セメント業界には百万円寄付金を出せ、こういうようなことで、寄付金を多額に集めて、自分の公団の事務所を貸して、何だかわけがわからないような——まあ調査会でありますから、公団の力が足りないから一つ調査を頼む、こういうことか知りませんけれども、いやしくも政府機関の公団がこんなばかげたことをやるのは、私はけしからぬと思う。今はこれは小さい問題でしょう。しかしこれを野放しにしておきますと、これはもう日本のいつも国会で繰り返されまする汚職温床になると思いますので、一つ十分注意をしていただきたいと思います。  それからいま一つは、私の聞いておりますところでは、道路公団の理事の方が昨年の暮れ、石油連盟とかいう会合があるそうですが、そこへ行って、高速自動車道の付帯施設事業は別会社を作ってやる、こんなことを言っておるのです。ところが道路公団の付帯事業というものは、政令でありますか、日本道路公団法の改正に基く業務の取扱い方針であるとか、日本道路公団法の一部を改正する法律というものではっきりきまっておるのです。それにもかかわらず、会社を作ってやる、こんなばかげた演説をしておるのです。だからこんなことをほうっておいたのでは、これは将来日本の一大汚職温床になる、こういうふうに思いますので、芽のうちに断ち切っていただくように、関係者に厳重なる注意をしていただきたいと思います。時間がないそうでありますから、これで私の質問を終ります。
  280. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御注意の点は、十分事務当局並びに公団に対して注意をして、あやまちのないようにいたしたいと思います。実は先般の、たしか分科会だと思いまするが、そういうことを聞きましたので、事務次官並びに道路局長をして実態をよく調べた上、世間から誤解を受けるようなことは断じて訂正すべきである、このように指示しております。なおまた道路公団の行うべきところの事業は、ただいま御指摘のように、法律をもって明定されておりまするので、これは勝手にやることはできないのみならず、そういうことは言うべきではありませんから、これも十分に注意いたします。
  281. 江崎真澄

    江崎委員長 副総裁がおりますから答弁させます。井尻道路公団副総裁
  282. 井尻芳郎

    ○井尻説明員 道路公団の井尻でございます。お答え申し上げます。  ただいま御質問になられました高速道路調査会の件でございますが、御承知通りに、高速道路は日本でこれから初めて作られるものでございまして、これが建設に当りましては、あらゆる方面の知識を集結いたしまして作らなければならぬと存じております。一例をあげますれば、外国のいろいろな例をとりますとか、あるいは国内におきましても油の問題であるとか、あるいは建設の問題であるとか、あるいは経済調査の問題であるとか、こういった点につきまして、あらゆる知識を集結いたしたいと存じております。従いまして道路公団といたしましても、こういった点につきまして研究いたしておりまするが、これはなかなか万全を期するわけにいきません。従いまして民間の方々にも、学者の方々にもいろいろお願いをいたしまして、知識を拝借いたしております。現にワトキンスの調査報告にいたしましても、これは公団自体ではなしに、学者、実際家の方々と一緒になってこの効果をいろいろ研究いたします。そういった観点からいたしまして、ことに政府におかれまして道路の重要性を強調いたしておりますので、そういった点からいきまして、よそから盛り上りました力によりまして、この調査会というものができたのでございます。ただいま建設大臣が言われました通り、公団といたしましても重々——その点につきましては、公式に少しもこれは関係がないのであります。それから事務所の点が今お話しにありましたけれども、この事務所も公団の方にはありません。その点も一つお含みおきを願いたいと思います。
  283. 楯兼次郎

    ○楯委員 そういう事務所がないとか、そういうでたらめなことを言っているから、私は——なるほど調査会に協力をしてもらいたいということはいいと思います。ところが自分が機械を買う、あるいはセメントを買う、入札させるという、密接な関係のある業者に対して、とにかくセメント業界あたりへ、岸総裁の名前で百万円寄付を出せと言っているじゃないですか。今持っておらないけれども、そういう文書を見せろというなら持ってきます。だから私は、今あなた方がどうこうということを言っておらない。これをほっておいたら一大汚職温床になるので、今のうちにそういうことのないようにしてもらいたい、そういうふうにやってもらわなければ困る、政府機関が法律できまった付帯事業をするために会社を作ってやるとか、一体何のためにこういう演説をしておるのか。そんなことで金を集めてもらっては困る。
  284. 井尻芳郎

    ○井尻説明員 お話の趣きは十分にわかりましたので、十分慎重にやります。どうぞよろしくお願いいたします。
  285. 江崎真澄

  286. 森本靖

    森本委員 まず最初に農林大臣にお聞きしたいと思います。  新聞で見ますと、農業協同組合並びに漁業協同組合関係の職員の共済年金制度を設ける、国会にその法案を提出するというふうに載っておりましたが、これは事実その通り行われるわけでありますか。
  287. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農業団体の共済年金につきましては、今法案を準備中であります。あとまだ多少まとまらないところもありますので、近く提案して御審議をお願いしたい、こういう段階にきております。予算は来年の一月からになっておりますが、御審議の上実行したいと考えております。
  288. 森本靖

    森本委員 それで、その問題についてはわかりましたが、もう一度農林大臣に聞いておきたいと思います。それに関連をいたしまして、この問題とは全然性質は違いますが、あなたの部下でありますところの農林省の職員の現在の恩給、退職年金、こういう制度を共済年金に切りかえる、こういうことを計画しておると思いますが、それについての予算措置を農林省としては行なっておりますか。
  289. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農林省内の、私の管轄といいますか、公務員について、厚生年金に切りかえるということは考えておりません。農業団体のことだけで進めておるわけであります。
  290. 森本靖

    森本委員 あなたの方の職員については今の恩給法、退職年金制度を変えて、新しく全体の公務員の退職年金制度に切りかえる、こういう構想のもとに、あなたの省においては一応千分の八というものを、国家公務員共済組合負担金として増額して、今次の予算に提案してあるはずです。これは平常の共済年金の補助金からそれだけ、来年度の一月から三月までを計画して、そうして千分の八というものを組んでおるはずであります。確かにあなたの省で組んであると思いますが、組んでおりませんか。
  291. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは全体の各官庁公務員等が、大きな線で共済制度が変っていくということになりまするならば、同調していくつもりでありますが、農林省だけでやろうというふうには考えておりません。
  292. 森本靖

    森本委員 いや、農林省だけでそれを考えているということでなしに、全体でそういうことを考えているということで、農林省においてもその予算の中に、平常の国家公務員共済組合の負担金以外に、やはり千分の八というものを増額をして、今次の予算に出しているんじゃないか、こういうことを聞いているわけです。
  293. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは国家公務員の共済年金の法案が出されることになっておりまして、それに関連を持つ予算を計上したい、こういうことであります。
  294. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、大蔵大臣にお聞きいたしますが、今農林大臣が言われましたように、共済年金制度に切りかえる、こういうことで農林省考えておるということでありましたが、大蔵大臣としては、これを切りかえる法案を今次国会に出す、こういう御意思がありますかどうか。
  295. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この国家公務員の現在の恩給を、共済組合の年金に切りかえるための予算は組んでおりません。
  296. 森本靖

    森本委員 それは非常におかしいと思います。これは各省庁とも今度は国家公務員の共済組合の負担金というものを、例年ならば昇給原資が四%であるから、だから、それだけの昇給の四%を見込んで、そうしてさらに若干の人員の異動とか、そういうものを見越しての増額を組むのが普通であります。ところが今回の各省庁におけるこの国家公務員共済負担金を見た場合は、それ以外にさらに今申し上げましように、千分の八を増額したところの予算案を組んでおる。これはあなたの部下の事務当局に聞いてもらってもわかると思いますが、確かに組んでおるはずであります。総額で四十五億円程度になると思いますが、組んでいないはずはないと思いますが、どうですか。
  297. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この恩給につきましては、死亡率等の関係から若干のゆとりを持って組んであります。
  298. 森本靖

    森本委員 そういうふうな若干の死亡率等を見て、これが増加になっておるということを言われるけれども、この国家公務員の共済組合の負担金というものを予算書で見た場合においては、大体来年の一—三月間を千分の八、これを増加するということを大体予想して、そうして国家公務員の共済組合の負担金のものをこの予算には各省とも全部組んである。今農林大臣もその予算については組んでおる、こういうことを言っておる。あなたは組んでおらぬと言っておりますけれども、今農林大臣は組んでおるりと言っている。これはどうなんですか。
  299. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは農林大臣は詳しくないと思います。これは全体の国家公務員の恩給制度の改善であります。各省にみなわたっておりますから、これは大蔵大臣答弁が一番正しいと思います。それで先ほど私が答弁した通りであります。なお詳しいことは主計局長から答弁いたします。
  300. 石原周夫

    ○石原政府委員 技術的なことでございますから私からお答え申し上げます。共済組合の負担金が各省の予算に組んであるのでありますが、本年いささか増額をいたしておりまする分は、近年御承知のように、相当人間の命数が延びております。従いまして、その計算からいたしますると、責任準備金に若干の不足を来たしております。従いまして、その責任準備金の不足を補てんいたしまする意味で若干の金をふやした。従いまして、その額が先ほど来大蔵大臣のおっしゃった、あるいは農林大臣のおっしゃっておられる数字になるわけでありまして、つけ加えて申し上げますれば、現在まだ国家公務員に対する退職年金の法案は検討中でございますが、もしそれが提案をせられまして成立いたしました場合、この時期その他の関係がございますので、その内容等にもよりますが、今申し上げましたところの責任準備金等の関係におきまして、実行上処理が可能であるというような趣旨を言っておられたように承知いたしております。
  301. 森本靖

    森本委員 それでは大蔵大臣にお聞きしますが、郵政の特別会計においてはこれは組んでおりませんか。郵政省の特別会計の予算には今申し上げましたこの共済の増額については組んでおりませんか。
  302. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 主計局長から答弁いたします。
  303. 石原周夫

    ○右原政府委員 制度といたしましては、国家公務員全体を考えるということに責任準備金の問題にしても相なりますので、同じような考え方で郵政省の分も考えております。
  304. 森本靖

    森本委員 それは非常に重大なことで、私は政府のいわゆる大臣間の意見の不統一だと思う。郵政大臣は明らかに予算委員会の第四分科会において、自民党の上林山榮吉君が質問をしたことに対して、四億一千万円この会計に組んでおるという答弁をしておる。それは速記録に載っておる。それを組んでおらぬということがありますか。主計局長、そんなあほうなことはないですよ。
  305. 石原周夫

    ○石原政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、精算のいたし方につきましては私が申し上げた通りであります。ただ後段で私がお答えいたしましたように、もし退職年金の法律を提案して、それが成立いたしまして、そうして共済組合の会計で行うということに相なりますれば、その場合の処置はただいま申し上げたようなことで可能であろうかということを申し上げたのでありまして、そういうような趣旨に御了承願います。
  306. 森本靖

    森本委員 今私が言っておるのは、あなたの方は各省の予算に今回の共済組合の年金の切りかえの千分の八という予算は、大蔵省から各省に頼んで組んだはずです。それを今になって、それはその予算ではないということを答弁するから、それなら郵政大臣は分科会において上林山分科員の質問に対してこういうことを言っておる。「第四、四半期分の増額分として四億一千万円現行の提出予算に計上してございます。だから、三十四年一月一日から実施する場合には予算上不足はありません。」これは、はっきり共済年金の原資である、こういうことを言っておる。ところが先ほどの大蔵大臣主計局長答弁ではそれは組んでおらぬ、こういうことを言っておるから、大蔵大臣と郵政大臣との意見の不統一だ、さらに農林大臣も先ほど組んでおるということを言っておる、各大臣みな意見が違うから、それはどういうのか、こういうことを聞いておるわけです。
  307. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは先ほど私から答弁した通りでありまして、これは全体の公務員の恩給をどうするかというそれに対する予算でありますから、大蔵大臣答弁通りであります。
  308. 森本靖

    森本委員 だから、そういう答弁を大蔵大臣があくまでもするとするならば、そういう答弁の食い違いは大蔵大臣としてはどう考えるか、こういうことです。
  309. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは私実際に速記録をまだ読んでおりませんが、これはやはり表現の言葉の使い方の相違であろうと思います。
  310. 森本靖

    森本委員 それが言葉の使い方か何だかわからないというのなら、あなたの今の答弁でいいかもしれませんが、これははっきり上林山分科員がこういうふうな予算かどうかということを聞いておるわけです。それに対して郵政大臣は、はっきり四億なんぼ組んでおるということを言っておるわけです。だから、あなたは組んでおらないと言うし、郵政大臣は組んでおるというが、一体どういうことか、それを聞いておる。これは大体各省において今言ったように千分の八の予算は全部組んでおるわけだ、これはこの予算を全部見ても明らかに各省ともそのパーセンテージが出てくる。ところがあなたの方は閣内において総務長官あるいは大蔵大臣、それぞれの各大臣意見が不統一でいまだにこの法案が出せない。出せないから、今になってこの答弁をどういうふうにしょうかということで、この共済組合の負担金が増額になっておる分については、死亡者がふえるとか云々ということを言っておるが、実際は今言いましたように、共済年金に切りかえの予算を各省とも組んでおる。それは大蔵省の事務当局各省事務当局にそういうことを頼み込んでわざわざ組んだ。それを今ごろになって閣内が不統一だからそれは組んでおりません、しかも郵政大臣は組んでおるという答弁をはっきり分科会において行なっておる。その間の見解の不統一ということになりますと困りますから、よく統一をして意見を聞かせてもらいたい。
  311. 田中角榮

    田中国務大臣 お答え申し上げます。私が分科会で申し上げた通り、初めは昭和三十三年の第四四半期から退職年金制度を切りかえたいということで、私の方から強く要求をして郵政特別会計への四億一千万円の計上がいたしてございます。この四億一千万円の問題について私が分科会で答えた後において、大蔵事務当局との話し合いの結果、郵政大臣は四億一千万円が退職年金法に切りかえるための単独経費を盛られておるということを明確に答弁されたが、大蔵省としては退職年金法に切りかえられる場合は、各省とも処置ができるように幅を持たせてあるが、その金が退職年金法だけのために計上したとは私の方は考えておりませんからと、こういう話が私にございました。ございましたが、郵政は一般公務員とともに退職年金法に切りかえらるべきだと私は考えておりますから、現在は大蔵省の考えに対して私の意見は言いませんが、郵政関係は三十三年度からは退職年金法に切りかえたいという意思はごうまつも変っておりませんから、それだけの金が計上せられておる以上、法律制定に対しては支障がないという考えを私は現在でも持っているわけであります。
  312. 森本靖

    森本委員 郵政大臣答弁は私はけっこうだと思います。この前の分科会の上林山委員の質問に対する答弁と何ら変っておらぬわけです。ただ私が聞いておるのは大蔵当局の態度です。わざわざ頼み込んでそういうような予算を組んでおるにもかかわらず、それが今年度死亡する人員がどうだこうだとかいうことをひねくり回して、何だかわからぬ理屈を言うのはおかしいのです。これは各省の国家公務員の共済組合の積算根拠というものを、一省一省全部聞いてみたら明らかに私の言う通りなのですよ。それを今ごろになってそういう答弁をするということはおかしい。郵政大臣は明らかに四億一千万円というものは、今言ったように共済年金の金である、こういうことを言っておる。にもかかわらずあとから大蔵省の方が一つこういうことになったから、こういうふうに一つ意識を統一してもらいたい、こういうことを頼み込んでおるわけです。それで今郵政大臣が言ったように、郵政大臣としては考えは変らない、まことにりっぱな考え方だ、郵政大臣は。大蔵大臣がそういうことでお茶を濁すということはまことにけしからぬと思う大蔵大臣はこの問題ははっきりしてもらいたい。
  313. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 郵政の方は三公社との関係もあって若干事情も異なるものがあると思います。一般公務員についての考えは先ほどから申した通りであります。
  314. 森本靖

    森本委員 それでは農林省の国家公務員共済組合負担金の積算根拠を一ぺん詳細に説明して下さい。今言った千分の八というものは必ず出てくるはずなのです。各省庁ともそういうことで予算を組んであるはずです。どうですか、農林大臣
  315. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 積算の根拠につきましては非常に数字的で私も承知しておりませんから、政府委員答弁いたさせます。
  316. 石原周夫

    ○石原政府委員 先ほども申し上げましたように、国家公務員なかんずく現在の年金の対象でございます雇用人の残存命数の計算をいたしまして、それに対しまする金額を、これは各省同じような考え方で組みましたので、今御質問のような数字が結果において出ているわけであります。しかしながら筋道におきましては、私は申し上げましたような筋道でございまして、ただ結果的にもし成立を見る暁には、退職年金の方の金がそれに使えるように相なるということを申し上げておるわけでございまして、これは各省を通じて共通でございますので、農林省だけがどうこうという意味ではございません。
  317. 森本靖

    森本委員 だからこれをこまかい積算根拠をやってみて、このうちで一番少い数量の国家公務員共済組合負担金の積算根拠を順番についていったら、非常に軽い金額だからすぐわかると思いますが、今言いましたように、平常の国家公務員共済組合負担金以外に千分の八程度というものは増額になっているということは事実ですね、大蔵大臣
  318. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 こまかい数字になりますから主計局長答弁させます。
  319. 石原周夫

    ○石原政府委員 先ほどお答えを申し上げましたように、雇用人に対しまして今年金が出ておるわけでございますが、こういう人たちの残存命数というものを、ある期間を通じて見まして、計算をいたすわけであります。従いましてこれは一般の生命保険などについてもそういうふうな問題があるわけであります。残存命数の計算し直しをいたしてみますと、現在の命数の見方では足りないという結果が出ますので、それに基きまして計算をいたしたわけであります。各省全体を通じまして四億五、六千万円に相なるかと思っております。
  320. 森本靖

    森本委員 そうすると大体共済組合の負担金は一体どうなっておりますか。政府は、普通積算をする場合、長期、短期、甲種、乙種についての積算根拠はどうなっておりますか。あなたが今言ったようにふえておるという金額は——人の質問を聞かなくて答弁しようといったってだめですよ。今言ったように積算根拠というものは、あなたはあくまでも千分の八はそういうことでふえておらぬ、こう言うけれども、平常の年度の共済組合の負担金の予算の組み方からいった場合には、今共済組合を年金制度に切りかえてもできるだけの金額がここに予算に組んである。こういうことをあなたも今言っておるわけであります。そうするとこれは年金制度に切りかえなかったならば、それだけの予算が余ってくる、こういうことになってくるわけでしょうが。
  321. 石原周夫

    ○石原政府委員 お答えを申し上げます。今の掛金率が千分の三十八に相なっておりますので、大体余命の関係で組んでおります額が千分の二見当になるかと思います。
  322. 森本靖

    森本委員 それは短期、長期に分けたらどういうふうになりますか。
  323. 石原周夫

    ○石原政府委員 残存命数の関係でありますので長期だけであります。年金の長期給付の問題でありますから、長期だけの問題であります。
  324. 森本靖

    森本委員 そうするとあなたが今言われたような積算根拠であっても、いわゆる命数というものを延ばす、延ばさぬとかいうことでなくして、実際には千分の八程度というものは予算には組んである。共済組合年金制度に切りかえた場合は来年の一—三月間から実施ができる、そういう準備はできておるわけでありますね。
  325. 石原周夫

    ○石原政府委員 冒頭にお答え申し上げましたように、今のようなことで組んでございますが、現在退職年金の制度はどうするかということは未定でございます。この案のでき上り方いかんによりますし、施行時期のいかんによりますが、ある施行時期、ある案のもとにおきまして共済組合が担当者であるということに相なりますれば、相当程度のところは実施可能であるということを冒頭に申し上げた次第であります。
  326. 森本靖

    森本委員 だから今問題になっておる、たとえば次官会議においても相当問題になっておるこの共済組合の年金制度に切りかえるということについては、来年の一月から実施するということになればこれは可能である、そういう予算を組んであるかどうか、こういうことを聞いておるわけであります。
  327. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今度共済組合の年金制に切りかえるとすれば、先ほどから答弁がありましたように、何とか予算的の裏づけはできる、かように考えております。
  328. 森本靖

    森本委員 何とかできるということでなしに、実際にそれを見越してそれは組んである、こういうことなんでしょうが、どうですか、大蔵大臣
  329. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その点につきましてはしばしば御答弁申し上げた通りであります。
  330. 森本靖

    森本委員 しばしば答弁したことがわからぬから聞いておる。もう一回。だから今言ったように千分の八程度を予算に組んでおるだろう。それを今になって閣内が不統一だから、都合が悪いからそういう言い回しをしておるだろう、こういうことを聞いておるわけです。
  331. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは御意見でありますが、私どもはそれを共済組合の年金に切りかえるという目的を持って、予算を特に組んであるわけではないということは繰り返して申し上げた通りであります。
  332. 森本靖

    森本委員 それでは郵政特別会計の四億一千万円というのは、それだけは三公社五現業というふうな形で関係があるので、郵政は三公社との関係があるので、特にこれは共済年金に切りかえの予算である、こういうことですか。
  333. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その点については、ほぼさように先ほど答弁いたしたつもりです。
  334. 森本靖

    森本委員 だからそれを確認する意味で聞いておるので、もう一ぺんそれをはっきり言ってもらいたいのです。
  335. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 郵政大臣答弁に関連しての御質疑でありましたから、郵政は他の三公社とも関連がありますから、さように考えられる。このことは他の省とは事情が違う、かように申し上げたのです。
  336. 森本靖

    森本委員 だから他の省とは違う、違うからこれは共済年金の四億一千万円である、こういうことですか。
  337. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 金額については私つまびらかにしませんが、私の考えでは、郵政についてはいろいろの考慮を払わなくてはなりませんから、私は必ずしも結論的に申すのではありませんが、郵政だけについては他の公務員と切り離して、こういう年金制度を実施することは可能ではあろう、かように考える次第であります。
  338. 森本靖

    森本委員 その可能であろうとかなかろうとかいうことを聞いておるわけじゃない。今言った四億なんぼという金は、共済年金のために組んだ、こういうふうに郵政大臣が言っておる。あなたは初めはそういうものは一つも組んでおらぬ、各省庁とも、こういうことを言ったけれども、今の郵政大臣の言った通り、この四億なんぼというものは、共済年金の切りかえのための予算である、こういうことを大蔵大臣は確認するかどうかということを聞いておるわけですよ。
  339. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その間のやりとりは、私は必ずしもつまびらかにしておりませんが、私は公務員の恩給を、共済組合の年金制度に組みかえる。そのために特に予算を計上するということはいたしておりません。
  340. 森本靖

    森本委員 だからさっきから聞いておるように、大蔵大臣と郵政大臣意見が違うじゃないですか。郵政大臣は明らかに四億なんぼというものは、共済年金の切りかえのための予算である。これはここにおられる川崎さんもそのときの委員会の委員に出ておりますから、よく記憶しておると思うそういうふうにはっきり郵政大臣は言っておる。あなたはそういう予算じゃないと言っておるから、大蔵大臣と郵政大臣の予算についての見解が違うのでおかしいから、どういうわけだと聞いておるわけです。明らかにして下さい。
  341. 田中角榮

    田中国務大臣 私からお答えいたします。私は先ほど申し上げた通り、郵政現業は少くとも昭和三十三年度のうちに退職年金法に切りかえたい。また切りかえなければならないということで、予算折衝をいたしておったわけでございます。そういう意味で郵政特別会計関係の最後の予算が決定いたしましたときに、私たちが考えておったよりも四億一千万円多く計上せられておりましたから、私の立場からいうと、当然私の意見通り退職年金法に切りかえるために、第四・四半期からこれを行う金とぴしやり合いますから、私の意見が通った、こういうふうに考えておったわけであります。でありますからその通り第三分科会で弁明をいたしました。ところがその日でございますか、その翌日でありましたか、こういうことをあなたは明確に申されたが、大蔵省は退職年金法に切りかえをすれば、あなたの言う通りあなたのところも金に不足なくやれますが、あれは退職年金法というあなたの意見通りに、退職年金法に切りかえるためにそれだけで計上したのではございませんから、一つそういうふうにお考え願いたいということでありましたが、私は郵政関係は少くとも昭和三十三年度のできるだけ早い機会に、退職年金法に切りかえるという意思を強く持っておりますし、また国会の会期もありますから、そういうことは十分可能であるという考えを変えておりませんので、私の省の四億一千万円は少くとも退職年金法に切りかえたときには不足なく使える、こういうふうに申し上げておるわけでありまして、大蔵大臣と私の間に完全に意見が違うということはないと存じます。
  342. 森本靖

    森本委員 郵政大臣が非常に苦しい言い方をしておるわけですが、そういうことで、郵政省の方が単独においても共済年金制度に切りかえるという意思を郵政大臣が持っておるということについては、私はそれは大いに歓迎をいたします。しかし私が言っているのは、大蔵大臣と郵政大臣答弁がはっきり食い違っておりますけれども、そんなことを追及したところで、大蔵大臣はさっきから煮えたか煮えないかわからぬ、とぼけたような顔をして答弁をするので、これは時間をとるだけでありますので、やめますけれども、しかしほんとうを申しますならば、主計局長もこれははっきりと頭の中に入れておると思いますが、この千分の八というものは、大蔵省が各省に事務的に頼んで、ぜひ今年度の予算には千分の八を入れておいてもらいたい、こういうことを頼んで各省の予算に組んで、ここにはっきり千分の八というものが各省の予算に出てきている。時間があればこれははっきり一つ一つこまかく積算根拠をやったら、必ず各省の経理局長答弁に困るはずだと思う。それを今ごろになって大蔵大臣は、そういうことを組んでおらぬというような答弁でありますが、そこでこの共済年金制度の切りかえについては総務長官は一体どう考えておりますか。あなたが一人反対をしておるというふうに新聞には載っております。大蔵大臣も各大臣もみな、職員がよくなることであるから賛成である、こういう意見にもかかわらず、総務長官がおれの在職中に恩給局が要らぬということになると、まことに恩給局の者に対して申しわけがない。総務長官の在任中だけはぜひともこれはやらぬでおいてもらいたい、総務長官をおれがやめたらこれは切りかえられてもいい、そういうようなことを総務長官は言っておるということが、うわさ記事として新聞に出ておる。だから総務長官は実にけしからぬ男だというふうに、私はこのことについては考えておりますが、総務長官は一体どういう見解ですか。
  343. 今松治郎

    ○今松政府委員 恩給を担当いたしております私が、恩給局がなくなると困るから公務員の共済方式による退職年金に反対しておるということを言われますが、そういうことは毛頭ありません。ただ私は、まだ政府部内で今検討をしておる最中でございます。にわかにただいまここで賛成をすることはできませんが、将来恩給制度は年金制度に移行するものである、このことについては意見が一致しておるのであります。
  344. 森本靖

    森本委員 そうすると総務長官もだんだん頭が進歩してきて、とにかくそういうふうに切りかえるということについては賛成である。しかし結局理由としては、さっき私が言ったように、自分が総務長官のときに自分の部局がなくなるということは、まことに官僚に対して申しわけがない、しばらく待ってもらいたいということではないかと思いますけれども、しかしそれは想像でありますので、とにかくあなたはこの案については賛成である、こういう意向を表明しておる。さらに予算的な措置としては一応できておる。こういうことになって参りますと、あとは閣内を統一をすれば、全部の公務員がこぞって待っておるところの退職年金制度が共済年金制度に切りかえられるということができ上るわけです。だからこのことについてはぜひとも一つ早急に意見の統一をして、そうして私はぜひともこの国会にこれを、全公務員のものを提案を願いたい。と申しますのは、現在恩給問題については非常に世論がきびしく当っておるわけです。軍人恩給を中心としての世論が非常にきびしくなった、ただ一般の世論としては、公務員の場合は実際にただで恩給をもらっているというような解釈をしておる者が非常に多い。ところが現実に今日の公務員というものは百分の三を、それだけのいわゆる恩給奉納金というものを取られて、そうしてはっきりいえば、その奉納金に対して利子がついて、年がいって返ってくる、こういうのが今日の国家公務員の恩給制度です。それをただで恩給をもらっているというような世論があるわけです。さらに恩給奉納金も、三年間かけても、これは一応三年以下でやめた場合には全部国庫に没収される。さらに恩給がつくということについても、国家公務員になって、そして任官をしてから十七年たたなければ、これは実際に恩給はもらえない。要するにそうなって参りますと、これは労働省に勤めている者あるいは総理府に勤めているところのいわゆる公務員においても差がある。片方ではわずかに十八年で恩給がつく。片方では三十年勤めても恩給がつかぬ。ところが今回の共済年金に切りかえていった場合には、各省に入って二十年になったら全部共済年金という形になる。自分がかけた金が、それに国庫補助が若干せられて、これが年金制度として返ってくる。これは今日公務員の恩給制度というものもそういう方向に変えていかなければならぬ時期が来ておるわけです。だからこのことについては総務長官も全く反対ではない、こういう御意思を表明されましたので、一つ早急に閣内の意見を統一して、今次国会にその法案を出してもらいたい、こう思うわけですが、どうですか。
  345. 今松治郎

    ○今松政府委員 もし今研究の結果そういうような結論を得ましたならば、もちろん提出をすることになると思います。
  346. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、内閣としては全部の公務員の問題については、今言いましたように結論がつけば出す。私の要望としては、早急に結論をつけてもらいたい、こう思うわけです。もしそれが間に合わぬということになった場合、田中郵政大臣は郵政省だけは三公社との関係があるので、何とか日の目を見たい、こういうことを言っておるわけですが、これについては今次国会に提案せられる意思があるかどうか、郵政大臣一つこの際はっきり言っておいてもらいたい。
  347. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。私は先ほど来申し上げております通り、郵政現業はもうすでに三公社が退職年金制度に切りかえられておりますし、予算上から見られてもおわかりになる通り、いつも郵政は三公社一現業ということで律せられておりますから、当然退職年金法に切りかえらるべきだと考えておりますし、私も提案をいたしたいという考えでございます。ただ私が申し上げておりますのは、郵政だけになるよりも、機運もだんだん盛り上ってきておるのでありますから、できれば私たちだけが先がけをしないで、一般公務員もともにできるならば、私の方も譲るものは譲ってともに退職年金法に切りかえたいということを念願いたしておりますので、私だけが先行することによって、できる一般公務員も一年おくれるというようなことになっては困りますので、まだ会期もありますし、できるだけ早くまとめて、やむを得ざる場合は私の方だけでもぜひ出さしてもらいたいということを、関係当局と打ち合しておるわけでございます。だから早急に郵政を含めた一般公務員のを出してもらいたいということで進めておりますが、やむを得ざる場合といえども、私の方だけでも出したいという熱意を持っておることを率直に申し上げます。
  348. 森本靖

    森本委員 確かに今郵政大臣の言われる通りでありまして、これは郵政省だけが現業ということで出すだけでなくて、できれば全公務員を出すということが一番いいわけでありまして、特に今度の岸内閣は労働者に対していいことは一つもやっておらぬ。ただこの公務員の共済年金に切りかえるということについては、よくぞ一萬田大蔵大臣はこれだけ予算を組んだもんだということで、われわれはこれを感心して見ておったわけでありますが、たまたまそれはそういう予算でないというような答弁でありましたけれども、現実に予算はありまするし、これは全公務員が喜ぶことでありまするので、早急に一つ閣内の意見を統一をして、会期はあるといっても、四月になったら解散になるかもわからぬ。だから早急にこれを一つ提案をしてやってもらいたい。そうすればわが党はこういう法案についてはこれを早急に通過さすことについては大いに努力をしたいと思いますので、政府として早急に意見を統一して、すみやかに国会に上程をする、こういう方向でやってもらいたいと思いますが、これについての最後の見解を担当大臣から聞いておきたいと思います。
  349. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は今お話もありましたように、また郵政大臣も話しておったように、単に郵政省だけではなくて、やれば公務員一緒に一つ共済組合の年金制度に変えたいという希望は持っております。これについては努力をいたします。
  350. 森本靖

    森本委員 まだこの問題について追及したいと思いますが、時間がありませんので、次の問題に移りたいと思います。  労働大臣にお聞きいたしますが、現在総評その他の労働組合が、かなり賃上げの問題についての闘争で新聞面をにぎわしておりますが、これについての現在の公労協の調停状況、これをちょっと簡単に説明願いたいと思います。
  351. 石田博英

    ○石田国務大臣 公労協、これは御承知のように独立機関でございまして、私の方では公労協が今調停進行中だということしか承知いたしておりません。
  352. 森本靖

    森本委員 調停の進行中ということは、それはだれしもわかりますが、ただそれが直接、調停委員会というものについては、労働委員会というものについては、あなたの権限の及ぶ範囲ではない。ないが、しかしこれは労働省の管轄の一つ機関ではある。だからそういうところでどういう組合がどういう調停をやっている、こういうことは言えると思うのです。だから公労協においては今大体どういう問題が主要な問題になって調停を行なっているか、このことを聞いているわけです。
  353. 石田博英

    ○石田国務大臣 各組合の調停申請の状況は労政局長からお答えいたします。
  354. 亀井光

    ○亀井政府委員 今調停の主題になっておりますのは、御承知通り賃上げでございまして、三公社五現業おのおの違う額ではございますが、大体三千円から——機労はまだ調停申請の対象になっておりませんが——四千三百円というふうな賃上げの要求であります。現在の段階におきましては、調停が一月から二月の初めにかけまして三回行われまして、その後引き続き各三公社五現業につきまして、四回目あるいは五回目というような段階を終えまして、調停が目下進行をいたしている段階でございます。いつごろ調停案の提示になるかということにつきましては、もう少し調停の経過を見なければお答えができかねる次第でございます。
  355. 森本靖

    森本委員 今の調停は主に賃上げの問題であろうというふうに解釈をいたしておりますが、特に三公社五現業の問題について私はお聞きしたいと思います。昨年臨時国会においてもやみ給与の問題が問題になりまして、あれも相当問題がありますけれども、そのことは私は本日は抜きにいたしまして、現在の三公社五現業の組合が調停申請を行なっておりますところのこの賃上げについては、各公社あるいはまた政府当局が拒否をした結果によって、この調停申請を行なっているわけです。これについては、現在の公社の職員の賃金というものは、特に例を電通の職員にとってみた場合においては、果して今日の賃金が妥当であるかどうか、このことについての答弁を願いたいと思う。
  356. 石田博英

    ○石田国務大臣 労働省、特に私の立場といたしましては、労働問題についての労使の紛争はでき得る限り自主的に解決せられることを望むのであります。今その労使の間の問題の重点はお説の通り賃金で、この賃金が中心となって争われておりますときに、私が現在の賃金の状態について意見を申し述べることは差し控えたいと思います。
  357. 森本靖

    森本委員 なかなか上手に答弁をします。私は労働大臣が向う意気の強い人でありますので、こういうふうな賃上げについても、向う意気の強い答弁があるだろうと思いましたが、低姿勢で——そういうことになりますと、これは相手の公社当局に聞かなければならぬわけでありますが、ただ労働大臣にこの際私は特にただしておきたいことは、労働大臣も今申しましたように、こういう公社関係、公労協関係の労使の紛争ということについては、労使がお互いに自主的に解決をつけるべきである、こういう意見を明確に言われましたけれども、しかし今日の公社制度、公共企業体のあり方、そういう面からいった場合においては、実際には予算の権限というものは公社にはない。ほとんど政府当局がこれを握っている、あるいは給与総額制度においてもしかり、そういう点から考えた場合に、実際にあなたは紛争の当事者でないと言われるけれども、具体的にはこれはやはり政府当局の責任になってくる。そこであなたは公共企業体が自主的に解決をつけるのが望ましい、こう申されましたけれども、現在の公共企業体のあり方からした場合においては、これは自主的に解決をつけるような段階には機構がなっていないのではないか。そういうことについてはあなたはどう考えますか。
  358. 石田博英

    ○石田国務大臣 公共企業体のあり方につきましては、いろいろ議論がございますので、公共企業体審議会におきましても答申はすでに出され、政府はそれに対する対策、処理の方法を研究中でございます。この段階におきまして、公共企業体における労使の紛争を政府の部内としてどうして解決するかということになりますと、それは仲裁裁定が出ましたらそれを完全に実施するということによって解決するつもりでございます。
  359. 森本靖

    森本委員 仲裁裁定が出た場合には完全に実施する、これは当りまえのことなんです。当りまえのことではこれはなかなかその通りに労使の紛争が解決つかぬわけでありまして、何もしちめんどうくさい調停、仲裁ということをやらなくとも、それまでにすでに労働組合と公社当局あるいは政府当局が交渉する際にこの賃金の問題について交渉して妥結がつけば、これはいいのです。ところが、各公社あるいは政府の方は申し合せたように全部拒否をする。そこにやはり問題があるわけであって、私は、そういう問題よりも、特に今三公社五現業の場合は自主的に解決をつけろということを労働大臣が言っても、今の公社制度においては、労働組合から賃上げの要求があった場合に自主的に解決をつけることが不可能ではないか、そのことを聞いておるわけですよ。
  360. 石田博英

    ○石田国務大臣 各公社の予算内で処理できる範囲においてはできるわけであります。しかし、それを越えなければ話がつかないという場合においては、先ほどから申しました通り、公労協に持ち出していただきまして、調停、仲裁の手続をとって、そうして仲裁裁定が出ましたら政府はこれを完全に実施する、その場合には現在の公社の予算の範囲を出ることがあってもやむを得ない、こういうことであります。
  361. 森本靖

    森本委員 だから、労働大臣としては、今回の賃上げの要求については、これは無理である、あるいは妥当であるというように考えるかどうか、こういうことを聞いておるわけです。
  362. 石田博英

    ○石田国務大臣 先ほどから申し上げておりました通り、私どもは、労使の紛争が法規のルールの中で、原則としては自主的に、しかも平穏裏に解決することを望み、それのための善良なる管理者であるべきことを心がけておるわけでありますから、紛争の中心点である賃金の問題についての私の意見は差し控えておきます。
  363. 森本靖

    森本委員 これは、労働大臣意見というよりも、それでは大蔵大臣意見になりますが、大蔵大臣は今の公労協の賃上げの要求についてはどう考えられますか。
  364. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、今調停にかかっておるのだから、調停にゆだねるべきである。私から意見を申すことは差し控えます。
  365. 森本靖

    森本委員 調停にかかっておるから調停にゆだねるというお話ではどうにもなりませんが、賃上げについてはどう考えておるかということは、あなたがこの予算を一応上程しておるわけだ。この予算には各公社の職員の給与その他については一応きめて出しておるわけだ。だから、そういうことについては、あなたは現在こういう予算を出しておるけれども、実際に今要求されておるところの賃上げについてはある程度認める必要があるというように考えるのかどうか、全然考える必要がないかどうか、こういうことを聞いておるのです。
  366. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 わかりました。昨年仲裁裁定がありまして、これに応じまして公企業の諸君につきましては給与の改訂もいたしたわけであります。その後物価、一般賃金の推移を見ましても、さらに特に上げなくてはならぬという情勢は私はないと考えております。
  367. 森本靖

    森本委員 そうすると、昨年の臨時国会以来の物価の値上りその他というものについては、現在の三公社五現業については絶対に賃上げをする理由はない、こういうことですか。
  368. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今私の意見を聞かれたから、私としてはさよう考えるというわけでありまして、しかし、それだからといって、今行われておる調停の結果について私がかれこれ言うわけではありません。
  369. 森本靖

    森本委員 調停の結果についてかれこれ言うということになりますと、先ほどの労働大臣意見と違ってくるわけですから、これは当然言えぬわけですが、私が聞いておるのは、直接の関係者ではないにいたしましても、各公社の予算についてはあなたが責任を持ってここに上程されておる。そこで、われわれの考えるところによりますと、あなたは、物価もそう上っておらぬ、こう言っておるけれども、かなり物価も上っておる。下ったものはほとんどない。こういうふうな今日の状況において、この問題についてどう考えておるか、こういうことを聞いておるのです。
  370. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 昨年仲裁裁定に応じまして給与べースを上げておるのであります。むろん若干のいろいろな推移もありますが、しかし、大勢といたしまして、物価の推移並びに一般の賃金の上昇から見まして、私は、上げなくてはならぬほどの理由は乏しい、かように先ほど答弁したわけであります。
  371. 森本靖

    森本委員 物価の推移と申されましたが、何かあれからこっち物価が下ったのがありますか。
  372. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 物価については今統計事務当局に説明させますが、私は大きく特に給与べースを変えなければならぬほどは騰貴いたしておらないと考えておりす。
  373. 江崎真澄

    江崎委員長 森本君に申し上げますが、申し合せの時間があと十分か十五分、その程度ですから、どうぞ結論にお入り願います。
  374. 森本靖

    森本委員 時間が非常にないので、まだたくさん政府を追及することがありますが、非常に残念であります。  そこで、この物価の値上りについては、あなたは、全然賃金の引き上げには影響がない、こういうようにお考えですか。
  375. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 影響がないというのじゃありません。物価が特に家計に響くほど上る場合には、むろんこれは考慮しなければならぬと思います。しかし、今のところそれほど大きな影響を与えるほどには物価は上っていないというように私は考えているわけであります。
  376. 森本靖

    森本委員 あなたは、物価は上っていない上っていないと言うけれども、毎日新聞の資料によりましても、昨年の九月二十日現在で、配給米、やみ米、それから、そば、うどんから、牛肉、しょうゆ、ソース、砂糖、パーマネント、クリーニングから国鉄の運賃まで相当上っているわけです。これは全部統計をとってみると五人世帯で千四百円程度上った。それから、その他についてもかなり値上りをする傾向にある。値下りになったものはほとんどない。そういうふうな物価の値上りの情勢に応じて、今のままで賃金を据え置くということはちょっとおかしいのじゃないですか。
  377. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、昨年仲裁裁定に応じて給与ベースも上げておるということを御考慮願わなければなりませんが、なお、それについては、これは抽象的に議論をしても仕方がありませんが、統計的にいろいろの推移があると思いますので、事務当局から説明をいたさせます。
  378. 石原周夫

    ○石原政府委員 CPI数字のことをおっしゃっておられるかと思います。CPIの数字で申し上げますと、本年の四月が一二二・六であります。それがだんだん上りまして、八月に一二三・七、十月に一二四・七、それが十一月には下りまして一二三・〇、大体一二二から三ぐらいのところを動いておるわけであります。大体本年の四月以降卸売物価は上っていることは御承知通りです。CPIにつきましても、今申し上げましたような数字でございますので、横ばいと申しますか、一時上りましたがまた下りぎみの趨勢にあるわけであります。
  379. 森本靖

    森本委員 どうせあなたはそういう答弁をしてくるだろうと思って、私は毎日新聞の値上りの統計を言っているわけです。そういう統計を言っているわけじゃなしに、現実に配給米が一升で八円五十銭上っておる。それから、やみ米がやはり相当上っておる。それから、はっきりしておるものだけでも、そば、うどんが五円上っておる。牛肉が百匁について十円上っておる。それから、しょうゆからソースから砂糖から、さっき言うたように全部現実に上っておる。そういう物価の値上りを全部見た場合には、千四百円程度は優に上っておる。だから、それだけのものが上っておるし、さらに今年になってあと値上りを予想されるものが生活必需品でもかなりある。そういうことを見た場合に、現実の問題としてこういう値上りをどう考えるか。私はそんな理屈を言っているわけじゃない。実際おかみさんがこういうおかずを買うなり米を買うなりソースを買うなりした場合に、それだけのものが上っておる。家計に直接こういうものは響いてきておる。そういうふうな値上りをどういうふうにとっておるか、こういうことを聞いておる。私は高等の理論を聞いておるわけではない。
  380. 石原周夫

    ○石原政府委員 お答え申し上げます。ここにCPIの分類したものがございますからそれについて申し上げますると、主食は本年十月で一〇一・八、一月が一〇三・三、その前が一〇三、その前が一〇一というように、大体このところ一〇〇ないし一〇一のオーダーであります。時によって上下があります。非主食の方で申しますと、十一月が一〇〇でありますが、十月が一〇四、九月が一〇七、八月が一〇八というふうに非主食の方は下っております。被服費は九月まで九九でありましたのが一〇〇、一〇一ということになっております。以下大体光熱費が八—九月が一〇九、一一〇でございましたのが一一四となっております。住居費が九月一一五くらいであったのがこれがずっと一一五でほとんど動いておりません。  今のようにして見まして数字的に申し上げますると、先ほど申し上げたように、大体四月以降CPIの総合指数で一二二という数字から三までの間を往復しているということを申し上げたのであります。
  381. 森本靖

    森本委員 あなたは官僚だから、そういう答弁をするだろうと思った。私はそういう統計を聞いておるわけではない。総理府が調べたかどうか知らぬが、そういうことでなしに、現実におかみさんが各市場へ行って当ったところの値上りを私は言っておるわけです。あなたが下った下ったと言っておるがちっとも下ったものはない。上ったものだけだ。配給米でさえ上っておる。牛肉だって現実に上っておる。あなたは少な目に買ったことはないからわからないかもしれないが、少し買ったら値上りはよけいわかるのです。こういうふうに値上りしておる。そういうものについては政府の方は賃上げの意思は全然ないということで、いわゆる賃上げ闘争というものが今日起っておるわけです。これについてわれわれとしては、少くともこの労働争議というものが円満に妥結をするということを望んでいるわけであります。  そこで事務当局の諸君に聞いたところで何にもなりませんので、私は特に現業公社関係の従業員についてお聞きをしておきたいと思います。一体公社の職員というものの賃金の水準、これは要するに公務員並みに考えるということもあるし、あるいはまた類似産業並みにこの賃金を考えるということもあるし、あるいはまたその事業のいわゆる収入の度合いによって考えるということもあろうと思いますが、そういう点を一体大蔵大臣はどう考えているか。
  382. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 公企業の職員の給与の問題ですが、なかなかこれはむずかしい問題でありまして、一つには業績賞与の制度もありますので、業績によっては給与をよくするということにもいかなくてはなりません。しかしそれかといって、やはり公社でありますから、公務員との関係において、給与も定められなくてはならないだろうと私は思っておるのでありまして、おそらく今日の給与制度も、そういうふうな立場から成り立つと思うのですが、結果的にいって、公務員よりも若干いいというようなところが妥当ではないかと考えております。
  383. 森本靖

    森本委員 最後のその答弁通り、公社の職員は一般公務員よりも若干いいということだけ答弁してもらったわけですが、それはそれとして、そういうことになった場合、その産業の類似産業との問題についてはどうお考えですか。たとえば電信電話公社なら電信電話公社の職員が、それと同じような職業に類似しておるところの産業、たとえば国際電信電話株式会社というものがあるわけです。これは電信電話公社から分離して会社になって、実際の仕事の内容は全く同一の内容になっておるわけですが、こういうものはどう解釈しますか。
  384. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 同種の一般産業の職員に比べれば、それは悪いわけです。これはむしろ国際的な状態であって、どこの国に行っても公社的の職員は同種の一般事業の職員よりも悪いということは否定すべくもありません。それで私は一般の事業の職員、それから同種の公社、それからさらに公務員、こういうふうに三段階に分けて考えておるのであります。
  385. 森本靖

    森本委員 一般の同類似産業よりも若干下るということを言われましたけれども、実際問題として公社の職員というものは、その公社が非常に収益を上げておるという場合でも、公務員並みの賃金でしんぼうしなければならぬ。それから、それだけ労働力というものもさらにオーバーしておるという場合でも、とかく奉仕者としてがまんして低賃金でやらなければならぬ、こういうことですか。
  386. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 公社でいい業績を上げておる場合は、これは業績手当というものがありますので、その辺で相当に補いができる、かように考えております。
  387. 森本靖

    森本委員 今年度の電電公社の予算を見てもかなりの収益が上って、そしてそのかなりの収益というものは、電電公社自体が大蔵省に要求しておったところの外部資金というものを、全部削減をしてしまって、その収益を全部建設資金に投入しておる、そしてその実際の従業員の待遇改善というものは、一つ考えておらない。さらに公社というものは、これは政府は検討しておるかどうか知りませんけれども、将来さらに第二次五カ年計画を考え、その計画の中でも莫大な収入というものをあげておるにもかかわらず、実際には従業員の給与改善について一つ考えていない。こういうことでは実際に一生懸命働くところの従業員の意欲というものがどこから出てくるか、こういうことになる。それから現に電信電話公社なんかでは、だんだん経営の合理化という点で、非常に経営が合理化されていく速度が早い。特に自動化の問題、あるいはマイクロの問題、そういうような科学技術の進歩に従って、経営の合理化というものが急速に進んでいく、そして人員はだんだん縮小する、その割に一つも賃金は上らない、こういうことでは実際に従業員はこの企業に対する意次というものを全然なくしてくるんじゃないか、こう考えるわけですが、これは大蔵大臣に聞いてもとぼけた答弁をいたしますので、電電公社の総裁がおられますので、総裁にその見解を聞いておきたいのですが、どうですか、公社の総裁は……。
  388. 梶井剛

    ○梶井説明員 お答えいたします。私ども電信電話公社の従業員の待遇という問題につきましては、先ほど来大蔵大臣がお答えになりましたように、公務員あるいは民間の類似の企業等との権衡を考えてやらなければならないということは事実であります。またそれに対して私どもは生産性を向上し、能率を向上してという従業員の努力に対して、これは報いなくちゃならないということは、私ども常に念頭から離れないことであります。従って能率の向上をいたしました場合においての対策といたしまして、収入増が相当ありました場合においては、その一部を従業員に報いるという制度によっていたしております。今その金額が多いとか少いとかいう問題はあると思いまするけれども、全然労に報いる方法がないというわけではないのであります。
  389. 森本靖

    森本委員 政府の閣僚がおりますので、大体差しさわりのない答弁総裁としても行わざるを得ないとは思いまするけれども日本電信電話公社が出しておるところのこのパンフレットによっても、これははっきり書いておる。現在の公社制度においては労使の正常なる紛争の解決はできない。給与の総額制度についてもあるいはまた今の予算制度についても変えていかなければ、いたずらに労使の紛争というものは政治闘争化していくだろう。この機能を変えない限りにおいては従業員の問題についても考えることは不可能である。労使が協調してやっていこうとするならば、そういうことについては当然考えなければならぬということをパンフレットには書いておる。だけれども総裁の今のここの答弁は、それにだいぶ遠いような答弁をしておるわけであります。  それはそれとして、私は時間がきておりまするから時間を守りたいと思いますので、この程度で一応残念ながらやめますけれども、特に私は労働大臣と大蔵大臣その他の閣僚に望みたいことは、この春闘という問題をいたずらに政治的に取り扱わぬようにお願いしたい。労働者というものは率直に賃上げというものを要求しておる。その要求というものを曲げて曲げて、そして労働攻勢を激化させておいて、それをきっかけに国民諸君に労働組合はこうだ、またまたストライキをやっておるじゃないか、それを応援するのが社会党だというて、これを政治的に利用するのはややもいたしますと政府当局なんであります。私はこのことを強く政府当局に戒めておきたい。ことに労働大臣は向う意気の強い方でありますので、そういうことの決してないように、一つ十分に誠意を持ってこの解決には当ってもらいたい。それから大蔵大臣も木で鼻をくくったような答弁をいつもいたしますけれども、あなたも予算については責任があるわけでありますから、この予算については鼻で笑うというようなことは決してせずに、一つ労働組合の要求については真摯に取り上げてもらいたい。調停委員会等については、調停委員会の決定が実のある回答をしてきた場合には、政府は仲裁裁定ということまでいかずに解決をつけるというくらいの意気込みを持って、労働者に対してはあたたかい気持を持って当られることを特に要望しておきたい。昨年のような労使紛争が起って、それを政治的に利用するということは、政府もゆめゆめやらぬように一つ要望して、私の質問を終ります。
  390. 江崎真澄

    江崎委員長 明日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後六時三十三分散会