○一萬田国務
大臣 御質問につきましては私は三つの観点から申し上げるのがいいと思います。
一つは国内の態勢、言いかえれば国内的に見た日本の経済は、どういうふうになっていくだろうか、それからもう
一つは国際経済はどういうふうな動きをするであろうか、さらにその二つの、国内並びに国際経済の総合の上に立った日本経済というものが、どういうふうな行き方をするであろうか、結局それが一番大切な
結論になるのでありますが、そういうふうに
考えてみたいと思います。むろんこれは相関連をいたしておりまするから、そんなにはっきりした区分を申し上げるわけにもいきません。
第一の国内の経済でありますが、これは先ほどから申しましたように、昨年の五月から景気の行き過ぎと申しますか、具体的には投資の行き過ぎを是正する緊急施策を強くとって、金融引き締めを
中心とする施策をとっておることは御
承知の
通りであります。これが三十三年度においてどういうふうな経過をとるであろうかということが
一つであります。私の
考えでは、むろん私は
一つの政策として
考えております。こういうときまでにこうしたいという、政策者としての
一つの希望があります、あるいはまた政策として
国民に示すという意義がありますから、そのこと自体が
ほんとうにこうなるであろうということとは一致しないかもしれませんが、こういうふうにあるべしというふうな気持から申しますから、世間ではそれは甘過ぎるとかどうとかという批判はあるかもしれませんけれ
ども、しかしポリシイ・メーカーとしてそういう態度も私はやむを得ない、こういうふうに
考えておるのであります。そういう
意味から申しますれば、私は生産の調節、いわゆる物の需給の基盤を確立するのは、三十二会計年度、言いかえれば三月ごろまでには調節を終りたい、これは私の
一つの目標であります。こういうことについて世間では、やはりそれは甘い、やはり年度過ぎ四、五月までいくぞというふうに言う人もあります。しかしそういうふうにだらだらと政策者が言うておっては結末がつかないのでありまして、実際の見通しとしては私は一応そういう目標を立てるのであります。そして四、五、六月というところで、そういう需給の調節の済んだところの跡始末でならしていく。いろいろと需給調節ができても、まだ滞貨があるじゃないか、その滞貨はどういうふうに消費市場を見出すのか、あるいはその間におけるファイナンスはどういうふうに
考えるのか、いろいろ問題はあると思います。私はそういうことを
考えていこうと思います。そして七月以降になれば私は、国内態勢が経済の基盤において均衡を得た形において、一応の新しい出発をなし得る状況に持っていきたい、こういうことが若干延びるかもしれません。しかしこれは実際とポリシイとの相違になるのでありまして、私はそういうふうな
考えでおります。
それから国際経済の動向でありますが、これは私はやはりあの人工衛星というものが大きな影響を世界経済に
考えておると思います。これは今日の国際情勢を動かす上において、あの人工衛星がソ連において打ち上げられたということが、経済的に大きな影響を持っているというのが私の
一つの
考え方のもとでございます。それは、こういうふうな状況ですから、アメリカとしては自由国家というこの一群との
関係において、どうしても経済力を動員をするということは当然
考えなくてはならぬ、またそうあるべきだと思います。これが
一つ。それから世界経済の客観的情勢がどうしても、従来のようなアメリカの経済とか、あるいは西ドイツの経済とか自国だけの経済を
中心として
考えていくということでは、もはや世界の経済は動かない。特に人工衛星がまたそこにからんで来ますが、ああいうふうな事態があった以上においては、どうしても西ドイツにしてもアメリカにしても、世界の経済をよりよくするために、
自分たちは力を従来よりも一そういたさねばならぬ、こういう具体的な環境になってきておると思います。それが私の
一つの
考えです。そういうふうなことを、アメリカの政府は今日政策の上において具体的に実現をしつつあることは御
承知の
通りであります。特にアメリカにおいては、これは金融政策としてやっておりますが、目ざすところはやはりアメリカの経済を繁栄させてそうして輸入力をふやしていく。いわゆる物の輸入という形において世界の経済に寄与していこう。同時にまた対外援助もふやすという機運があるということも御
承知の
通りであります。こういう点は私は今後いい影響を与えると
考えます。
次は、しかしヨーロッパその他を見た場合に、通貨の安定ということが一番今大事な問題になっておりますから、こういう国々において緊縮的な政策をとることは間違いありません。従いましてこの面からくるのは、いわゆる貿易が非常に激しい競争にさらされるということであります。
次は、東南アジアの国々。東南アジアの国々は購買力が足りませんから、日本が
考えておるような、この方面において貿易の拡大が急に行くであろうということは、これは日本がクレジットでもよほど与えない限りはできませんが、その力は今日日本には十分ありません。こう見てくると、いい面と悪い面とが国際的にあります。国内的のものはさっき申し上げた整備の問題、これと今言った国際的な
関係とからみ合してみました場合に、私はやはり七月以降漸を追うて徐々に世界経済としてもいい方に向くであろう、こういうふうに
考える。従いまして、これに対応して、できるだけすみやかに日本の経済を整備するということに力を注ぎたい、かように
考えます。