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1958-02-22 第28回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十二日(土曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 江崎 真澄君    理事 今井  耕君 理事 重政 誠之君    理事 田中 久雄君 理事 橋本 龍伍君    理事 川俣 清音君 理事 柳田 秀一君       内田 常雄君    小川 半次君       大橋 武夫君    太田 正孝君       上林山榮吉君    坂田 道太君       周東 英雄君    中曽根康弘君       永山 忠則君    楢橋  渡君       野澤 清人君    野田 卯一君       古井 喜實君    松浦周太郎君       南  好雄君    宮澤 胤勇君       八木 一郎君    山崎  巖君       山本 勝市君    山本 猛夫君       井手 以誠君    井堀 繁雄君       今澄  勇君    岡田 春夫君       春日 一幸君    小平  忠君       河野  密君    成田 知巳君       西村 榮一君    古屋 貞雄君       門司  亮君    森 三樹二君       横路 節雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  前尾繁三郎君         運 輸 大 臣 中村三之丞君         労 働 大 臣 石田 博英君         国 務 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 河野 一郎君         国 務 大 臣 郡  祐一君         国 務 大 臣 津島 壽一君  出席政府委員         内閣官房長官  愛知 揆一君         法制局長官   林  修三君         警察庁長官   石井 榮三君         防衛庁参事官         (経理局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (経理局長)  山下 武利君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  大來佐武郎君         公安調査庁長官 藤井五一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月二十二日  委員小坂善太郎君、岡良一君及び松前重義君辞  任につき、その補欠として北澤直吉君、春日一  幸君及び横路節雄君が議長の指名で委員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算  昭和三十三年度特別会計予算  昭和三十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 江崎真澄

    江崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を議題といたします。  川俣清音君より議事進行に関し発言を求められております。この際これを許します。川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 一般会計で三号、特別会計五号の補正予算が用意せられておるはずでございます。それは当然法律に伴う義務支出があるはずでございまして、その金額は相当な額に上るのではないかと予想せられます。最初政府の案によりますると、五十三億ともいわれておったのでありますが、百億に近いのではないかと思われます。しかもその中に含まれまする案件は非常に多いようであります。もちろん過年度支出であるから、予算全体に対するウェートが非常に低いとも称せられておりまするけれども、当然政府といたしまして、補正予算準備ができておるはずでありまするから、私どもといたしましては、本予算にどの程度の関係を持つかということを明らかにして、議事を進めていきたいと思うのであります。もはや予算審議の経過も相当進行いたしておりまして、やや最終段階に近いのでありますから、政府はこの際その所見を明らかにしてほしいと思うのであります。
  4. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。この国会に三十二年度の第二次予算補正として提出を予定しておりますのは、義務教育国庫負担義務費、それと国民健康保険助成金、これが三十一年度の精算の結果に基きまして計上いたしたい。それから旧軍人恩給関係、これが従来の三十二年の今までの実績から見まして、計上する必要がある、かように考えておりまして、その他若干ありますが、要するにさしあたり緊急を要する経費だけを計上いたしたい、そして御審議を願いたい。これらは三十三年度予算と切り離して考えられないというような問題は含まれていないと考えております。今日どういうときに提出ができるかという点につきましては、ただいまこれらの経費のうちで予備費やあるいはまた三十二年度のワクのうちで移流用がどのくらいできるだろうかというような点を事務局当に精査させております。なるべく早く出したいとは思っております。金額等は百億を相当下回るというような状況にあるのであります。以上お答え申し上げます。
  5. 江崎真澄

    江崎委員長 質疑を続行いたします。井手以誠君
  6. 井手以誠

    井手委員 本日は財政投融資財政の今後の見通し中心にお尋ねいたしたいと思います。大蔵大臣にお尋ねいたす前に、事務当局にお尋ねいたします。  来年度に持ち越される見込み財政投融資余裕金はどのくらいございますか。
  7. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。財政投融資原資といたしまして、産業投資特別会計及び資金運用部におきまして持ち越しとなる原資見込みは大体五百億余りでございますが、御承知通り準備金といたしまして経常的に持っておらなければならないものを差し引きますると、これが大体四百億くらいになります。しかもこのうち御承知のように中小企業向けに……。
  8. 井手以誠

    井手委員 それでよろしい。大臣はこの委員会において財政投融資の増額を追及されますと、いや財政投融資は大した問題ではない、こういうふうに事もなげに今までおっしゃってきておったのであります。あなたは一昨年この委員会において、民間資金を動員して財政金融の一体化を強調されたことをお忘れではないと私は思っております。そう簡単な問題じゃないと思います。そこで私は事務当局にお尋ねいたしますが、財政投融資原資、たとえば産業投資特別会計、あるいは郵貯簡保厚生年金等数字をこの際あげてもらいたい。
  9. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答えを申し上げます。ただいまの御質問に二つ答えようがあると思うのでございます。まず三十三年度の財政投融資計画に見合いました原資を申し上げます。産業投資特別会計から二百七十七億円、資金運用部から二千四百三十七億円、簡保資金から八百五十八億円、合せまして三千五百七十二億円、これに公募債借入金が四百二十三億でございまして、その総額は三千九百九十五億となっております。これに対しましてもう一つ答えでございますが、先ほど私が申し上げましたように、若干の持ち越し原資になることは申し上げた通りでございますから、これに見合いまして産業投資特別会計ではどのくらいの金があるか、この点は……。
  10. 井手以誠

    井手委員 私が質問した分だけお答え願いたい。私がお尋ねしましたのは、産業投資特別会計簡保年金郵貯厚生年金回収金等は幾らかと、私はお尋ねしただけであります。簡単にお願いします。
  11. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。産業投資特別会計でございますが、ただいま申し上げましたように、計画に見ました数字は二百七十七億でございますが、このほかに約百二十億ほどの残がございます。資金運用部では、ただいま計画見込みました数字は申し上げたのでございますが、このほかに約五百二十億くらいの残がございます。簡保資金はこのほかになお三十五億くらいの残がございます。
  12. 井手以誠

    井手委員 理財局長は尋ねたことを的確にお答え願いたいと思います。郵便貯金原資は幾らか、簡保年金原資は幾らかと私は聞いておる。大体わかっておりますから、この際大蔵大臣にお尋ねいたしますが、産業投資特別会計は、御承知通り一般から回った国民税金であります。さらに運用される郵便貯金簡保年金厚生保険、こういったものはすべて勤労大衆の零細な預貯金であります。その金額は三千九百九十五億円の資金計画、しかもただいま理財局長が申しましたように、余裕金が五百億以上に上っておる。さらに来年はたな上げ資金運用もできるかと思うのであります。それほど大きな金額から考えますと、またその性質から考えますと、私はこの財政投融資というものは、一種の国家予算だと考えておるのであります。なるほど税金ではございません。税金ばかりではございませんけれども、国民大衆から集めた預貯金一般会計から回ってきた産業投資特別会計の金を運用するのでありますから、私は一つ国家予算だと考えております。従ってこれを運用する場合には、きわめて慎重を要すると私は信じております。それでも大蔵大臣は、財政投融資は大したことではないというふうにお考えになっておりますか。また零細な勤労大衆預貯金であることをお認めになりますか。
  13. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は財政投融資が何でもない、そういうふうに考えたことは一度もございません。どういうときにそういう言葉が出ましたか、今思い出せないですが、財政投融資は非常に意味が重大であるということ、また仰せられるように、これは国民大衆から出た金でもあるし、また同時に一般会計からの金でもある、こういう金は国家目的、あるいは国民生活のために使わなくてはならぬ。そういうような意味を持っておる、かように考えております。私、事もなげに取り扱った感じは全然ありません。もしそういうような印象を与えたことがありますならば、ここでつつしんでおわびをいたします。
  14. 井手以誠

    井手委員 先日の委員会で、いや大した問題のものではございませんというような意味をおっしゃったから、私は特に申し上げたわけであります。  そこで私は、こういう性質金額を持っておる財政投融資ということを前提として、その運用根本方針を承わりたいと思うのであります。戦後、復金であるとか、見返り資金開発銀行、それに数年前からは産業投融資特別会計という、財政規模財政法に煙幕を張るトンネル機関ができまして、財政投融資がどんどんと大企業の方に回されておるのであります。終戦後、二十一年以来三十二年まで、投融資金額を合計いたしますと、一般会計から千九百七十二億円、これに準ずる見返り資金並びに産業投融資特別会計から四千四百八十九億円、その他資金運用部資金など公募債以外の財政資金は、実に二兆二千五十三億円に上っておる。それだけ投融資が行われまして、そのうち民間設備資金に調達された金が実に、電力であるとか、あるいは石炭であるとか、海運であるとか、そういう方面に一兆二百億円に上っておる。大臣はこの数字をお考えになったことがありますか。一兆二百億円に上っておる。従って日本開発銀行は今日四千億円をこえる資金をもって、三十三年度においては電力海運石炭等に六百二十億円、輸出入銀行は七百三十億円の貸し付けを計画しておる。こういうふうに財政投融資が、大企業の方にどんどんと回されておる。もちろん私は戦後の戦災復興経済再建には国家資金が必要であったこと、そういう時期に必要であったことは認めるものであります。しかし一応戦災復興役割を終ったならば、私は資本主義本来の姿に返って、民間設備資金などというものは、民間蓄積資金によってまかなわるべきがほんとうだと考えておるのであります。ところが最近経済基盤拡大という名のもとに、財政投融資はさらに拡大されて参りました。大企業への設備投資供給財政投融資の本体になって、臨時的な性格から半恒久的な性格を最近帯びて参りました。しかも大企業神武景気によって、私の計算では、九千億円という莫大な利益を上げておる。かように考えて参りますと、国民大衆税金あるいは零細な預貯金で、大企業がこんなにもうけておる、大きくなっておる、こういうことを考えて参りますと、一応戦災復興が終った今日、経済白書にも書いてあり、あるいは新たに作られた新長期経済計画にも書いてありますが、今や安定成長時代になったとはっきりと書いてある。こういう段階になりましたならば、この財政投融資と、うものの性格は、変えるべきではないか。私は根本的に再検討する時代がきたと考えておるのであります。すなわち財政投融資に回される金は、筋が通ったものでなければならぬ、国民の納得する運用でなければならぬ。あるいはまた預貯金者への還元ということも、もっと考えなければならぬじゃないか、あるいは融資先に対する経理監査、こういうことも考えなければならぬじゃないか、こういうふうに私は根本的な再検討の時期に入ったと考えておりますが、これに対する大臣考え方を承わりたいと思います。
  15. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 終戦以来の財政投融資の経緯並びに財政投融資に対する考え方につきましては、私今の井手さんのお考え——私も大体そういうような方向に進むべきだと思っております。ただ問題は、もう今日においては、財政投融資経済基盤拡大にそう使わなくてもいいのだ、大体これは民間資金にまかしておけばいいのだという段階にあるかどうかという点に、やはり意見の相違があると思います。この問題はなるべく政府関係から日本経済を動かしていくというよりも、民間の活動に待つ、民間資金に待つという方向に持っていきたいというふうに努めておるわけでありますが、まだその段階までいっていないと私は思っておるわけでありまして、今後も国民生活の向上、同時に海外債務のたくさんありますのを整理していくというような見地から申しますれば、やはり経済基盤拡大ということは必須の要素である。特に最近の状況を見ましても、経済拡大するのに隘路となっておるのが交通機関、いわゆる交通というものがすぐ行き詰まる。あるいはまた電力というものが非常な隘路になっておる。その他エネルギーとかいろいろありますが、そういうふうに基盤をどうしても拡大していかないと、一方人口は増加する。雇用というものがとても大きく問題になってきます。その間のかね合いであります。お考え方については承わっておきます。
  16. 井手以誠

    井手委員 経済基盤拡大ということは必要であることは私も認めております。経済基盤拡大というものを、それじゃどこまで続けていったらいいのか。なるほど大企業は金がほしい、資金が不足しておることは知っておりますけれども、しかし中小企業にいたしましても、あるいは農村金融にいたしましても、国民庶民金融にいたしましても、これは生活を維持していくための切実な金融の要請が多いことは大臣も御承知だと思う。従って経済基盤拡大が必要であるからといって、どこまでそれを続けていったらいいのか。私は国民の零細な預貯金であるとか、税金をもって運用されるならば、どこまでこの事業は拡大しなくちゃならぬのかという見通しを立てて運用されることが必要だと考えております。たとえば海運の場合、電力の場合、あるいは石炭の場合、二、三年前は石炭石炭合理化法というものまでできた時代がありました。これには一つの時期があると思います。国家資金をどこまで運用しなくちゃならぬのか、国家でめんどうを見なくちゃならぬのか、その限度というものは私は定むべきだと考えております。その点についてのお考えはどうですか。
  17. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その点につきましても私異論ありません。従いまして、政府といたしましては長期経済計画を立てまして、さらにこれを五カ年計画というような形にもいたしますし、年次計画も作る、そうして大体今後あるべき日本経済の姿をここに立てて、そして電力はどういうふうにする、鉄鋼はどういうふうにする、石炭はどう、石油はどうというような計画をいたしておるわけであります。それらのかね合いを見つつ——それだからといって、今後財政資金をそういう大企業にばかりというわけではございません。これは中小企業その他にもできるだけ向けておることは御承知通りであります。そうして考え方としては、財政資金は特別に日本産業基盤を急速に拡大する必要がないというような場合におきましては、なるべくこれを補完的に持っていきたい、こういうふうな考え方から、従来も造船にいたしましても、あるいは鉄鋼その他におきましても、民間資金といわゆる財政資金との割合ですが、だんだんと財政資金の方を低めていくべきだということは御承知通りであります。ただ最近御承知のように財政面において引き揚げが多くて、民間において資金蓄積が不十分である。このために中央銀行短期資金長期設備等に多く回っておらぬという現状に照らしまして、三十三年度には財政資金融資割合をふやしまして民間に還元しよう、こういう政策をとっておるというわけでございます。
  18. 井手以誠

    井手委員 新長期経済計画によると——これはあとで経済企画庁長官にお尋ねしますが、これには莫大な資金が要る。それではこれが完成するまでやはり財政投融資というものをお続けになるのですか。今すでに安定しておるじゃございませんか。完全に安定とは申しませんが、政府が言っておるように、安定正常の時期にいっているのです。あなたがおっしゃるように、財政投融資というものは資金誘導補完役割を持っておる。資金誘導補完ということは、大体済んでおるじゃございませんか。さらに今後も経済基盤拡大のために、五カ年計画を達成するためには続けなければならぬ、そういうことでは、私はこの零細な預貯金というもの、あるいは国民税金でまかなうということは簡単に許されないと思う。もっと国民の納得のいく御説明を願いたい。いつごろまで必要であるか、どのくらいの資金が必要であるか。
  19. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろん経済並びに国民生活均衡を得た形でいかなければならぬことは言うまでもありません。従いまして、そういう均衡ということを考え経済計画というものも成り立っておるのでありますから、従いまして、この経済計画を実現するための資金の使用というものも、単に大企業に偏するというふうに考えることは適当でない。これはやはり均衡の上に私はあると思う。特に今後われわれが注意しなければならぬことは、今のお言葉の中にもその片りんをうかがうことができるのでありますが、日本経済あるいは国民生活のあり方が、一方においてやはり大企業系列と他方において中小企業並びに農業というもののこの系列間の格差というものが、ここにやはりほうっておいては拡大する傾向をたどる。そこで今後のやはり経済政策重点は、一方における大企業、他面における農業中小企業との格差をだんだん是正していくという政策は、どうしても取り上げられていかなければならぬと私自身考えております。従いまして、資金運用においてもそういう面についてやはり留意をしたい、経済計画を立てる場合においても、そういう面を十分留意していかなければならぬ、かように考えておりす。
  20. 井手以誠

    井手委員 大臣がおっしゃるように、大企業中小企業農村との格差がついておる、この傾向が著しくなっておる、私はそれをおそれるものであります。今までの政府のやり方は、大企業中心であった、生産復興のときまではやむを得なかったけれども、安定した今日までなお大企業中心財政投融資運用されておる。そして一方中小企業なり農村金融は非常に逼迫しておる。あなたがおっしゃるのは、それは逆になっております。あなたがおっしゃるようなことになりますならば、この財政投融資というもののほとんどは農村金融なり、あるいは中小企業金融なり、あるいは国民金融に向くべきではございませんか。その原資から考えますならば、ほとんどあげて私は中小企業金融国民金融農村金融に回すべきであると思う。それがあなたの今おっしゃった政治なんですよ。
  21. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は今申しましたような考え方で、むろん一挙にそういう方向に実現も——これはやはり歴史的な傾向をたどりますとできませんが、しかし今政府といたしましても、そういう方向、特に中小企業に対しては留意をする、かような行き方というものもその現われであると考えております。
  22. 井手以誠

    井手委員 一挙にいかないことはわかりますけれども、依然として大企業中心財政投融資運用ではありませんか、資金計画ではありませんか。それでは三十四年度からことしと変った財政投融資計画をお作りになる御用意がございますか。いわゆる原資性格から考えて、地方に戻すのか、あるいは中小企業並びに農村に戻す、そういう方面重点を向けられるお考えがあるわけでございますか、重ねてお伺いいたします。
  23. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは一面において農業政策、それから中小企業政策、いろいろありますが、そういう実態について今私の考えとしては、先ほど申し上げましたように、均衡のとれた経済の姿でなければならぬ、それには大企業と先ほど申し上げました中小企業農業との格差というものが、ほうっておけば拡大する、これを是正する、そういう政策は今後実態面においてやはり政府としても強くとっていかなければならぬと思っております。従いまして、そういう実態面政策に相応じまして、資金もそういう方面に流すべきであるということは当然なことであると考えております。
  24. 井手以誠

    井手委員 言われることとなさっておることが全く私は逆であると思う。格差がひどくなっておるから財政投融資運用は、中小企業なり、国民金融なり、農村金融重点を置くべきではないか、私はこう申し上げておるのです。あなたは是正します、是正します、それがほんとうだと言っておりながらも、依然として財政投融資重点は大企業に向いておる、これは事実なんですよ。  もう一つ私は事実をあげて申し上げましょう。政府が出されました新長期経済計画によりますると、三十三年度は三十二年度に比して鉱工業生産は四・五%、農林水産は一・四%の増し、これが当るかどうかこれは別の問題ですよ。計画として私は申し上げておるのでありますが、三十七年度には鉱工業は六〇%の増し農林水産は一五%の増し計画自身がますます格差を広げるようなことになっておるではありませんか。だから、あなたは是正する、是正するとおっしゃいますけれども、この格差をなくするためには、財政投融資重点を、先刻から何回も申し上げますように、農村金融なり、中小企業金融なり、国民金融に向けるべきではないか、その点を間違いのないようにお答えを願います。
  25. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは単に私はそういうふうな割合だけでは考えられないので、今後の日本の、たとえば今農業が問題になりましたが、やはり農業というものがどういうふうにあるべきかということも、基本的にもう少しやはり今後は掘り下げて考えていく必要があるんじゃないかと考えております。むろん今日単に貿易という点だけをとりましても、農産物の輸入は非常に巨額に上っております。できるだけ自給度を高めるということは私も異論はありませんが、しかしそれも日本の国土からすれば、やはり適地というものも自然私は限界があると思います。そういうふうなことを考えてみると、しかも一方人口は相当長い期間は増勢をとるというような情勢下において、どうしても貿易に依存しておるというような関係からも、鉱工業を伸ばしていく、そしてふえる人口に対して雇用の機会を与えるということもどうしても考えなければいけない。これは私はやはり与えられたる条件というものがありますものですから、こちらが考えておるようにものを持っていくということも困難ではなかろうか、かように考えておるわけなので、私が先ほどから申しますのは、そういうふうな与えられたる条件下においてどういうふうな考え方で進むべきかということを申し上げておるつもりであります。
  26. 井手以誠

    井手委員 大臣も御承知のように、まかぬ種ははえぬのでありまして、財政の援助なりあるいは資金計画がなくては、幾ら増産しようとしたって、精神だけで増産ができるものではございませんよ。その点は十分御留意願いたいと思う。あまり議論にわたりますので、この程度にとどめておきますけれども、一つ財政投融資というものは、この性格というものを十分お考えになって、大企業中心——もうすでに安定成長期に入った今日ですから、これから国民金融なり、農村金融なり、中小企業金融に変えられるように、特に私は要望いたしておきます。  そこで重ねてお尋ねをいたしますが、これほど大事な国民の金を大企業に回してやっておる、その融資先の経理状態をあなたはお考えになったことがございますか。たとえば日本開発銀行から電力会社なりあるいは海運会社、石炭会社に融資されて、金利も安い、条件も非常に安い、ほかに回さねばならない金を無理に無理してその方面に回しておる、その回した電力会社なりあるいは海運会社なり石炭会社などの経理運用について、あなたはお考えになったことがございますか。  あわせてこの機会にお尋ねをいたしますが、先日川崎委員からもお尋ねがありました山下太郎会長の、社長ですか、サウジ・アラビアの油田開発、その海のものとも山のものともわからない、その後新聞の発表によりますると、条件はさらに悪くなっておるようでありまするが、こういう会社に、この大事な財政投融資を融通した電力会社とか——そういう会社から出資されるようでありますが、こういうことも許されますか。今投機的な事業に資金が投ぜられるように、それほど電力会社なりそういうその他の会社は余裕があるわけですか。私はこれほどいい条件で融資を受けておる会社であるならば、そういう投機的な事業に投資すべきではないと考えますが、そういうことまであなたはお考えになったことがありますか。またこれをどうなさるおつもりですか。
  27. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 財政投融資をいたしておりまする先の会社については、直接間接にできるだけの監督をいたしておるわけであります。ただいま具体的におあげに相なりましたサウジ・アラビアの石油会社に対して、財政投融資を受けておる会社が相当な出資をしておるのではないかというお問いでありまするが、これはいろいろと考え方はあると思います。単に財政投融資を受けておるから、その会社がさらに何らかの形において出資をするというようなことは適当でない、またそれがある程度投機的であるから一層いかぬじゃないか、こういう意見も、私は十分成り立つと思います。こういう点については、私の方としても非常な関心を払っておるのであります。ただ問題は、日本経済と油田の獲得ということとの問題で、それがどういうふうな重要性を日本経済に持つかというところの判断によってこれは違うので、こういうふうな投機的な、しかも海外において仕事をするのですから、十分な注意をしなくてはならぬが、しかし日本経済の将来あるいはまた日本経済拡大というようなことを考えます場合に、私は相当な条件で油田が手に入れば、これは日本経済に対してやはり大きなプラスであると思う。今日泊の輸入は、私の頭にあるところによれば、おそらく二億ドルないし二億五千万ドルにも及んでおると考えます。従いまして安い油が買えるということになれば、必ずしもそう責むべきことでもないのではないか。問題はそのかね合いになりますので、今日では、非常に慎重にやるということで、少くとも財政投融資によってこの事業をやるということは、それは油でもほんとうに的確に出て、それが採算のべースに乗るということでもはっきりしない限りは、これはとうてい期待することはできない、そういう考えで対処していくようにという注意も与えておるような次第であります。
  28. 井手以誠

    井手委員 それでは大臣は、そういう石油会社に投資する会社は資金が相当潤沢だとお考えになっておりますか。よその会社に出資するほどでありますならば、何も私どもの零細な預貯金なり税金から投資する必要はないと私は思う。それではもう今後はそういう電力会社などには出資する必要はないのじゃないかと思いますが、どうですか。よその会社の投機的事業、投機行為に投資するような会社にこれ以上金を回す必要はないと考えます。
  29. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、私の考えでは、やはり程度の問題でもあろうかと思うのでありまして、財政投融資を受けておる会社がそういうふうな、たとえば自分の本来の仕事でないものに大きく出資をする、そういうことは私はとうてい許さるべきでない、これはもう異論はありません。ただ問題は敗戦という結果、日本経済、特に基幹産業等が崩壊をいたしまして、今日の主要な会社というものは大体において財政投融資を受けておるわけでございます。従いまして、何らかの仕事を民間でする場合に、そういう主要会社が若干の助力をする、その結果、財政投融資を受けておるにかかわらず、そういう会社が出資をするということは、どうも日本の今の現状ではやむを得ない状態にあると考えますので、それである程度そういう会社が力を合せて、そして今後日本経済のために大きくプラスになるという仕事に携わることはやむを得まい。しかしそれには十分な限界がある、また業者自体も、その点については十分な反省をいたしておるということを申し上げたいと思います。
  30. 井手以誠

    井手委員 どこに反省しておりますか。私は反省の事実を発見することができないと思うのです。国家資金にって生産が復興された、設備が拡充された、それにもかかわらず国家資金を融通された——資金を返してからならばこれはいたし方ないかもしれません。しかし返さぬ前によその会社に投資をするということはけしからぬことだと思う。一つ十分に御監視を願いたい。  そこで、重ねてお尋ねをいたしますが、日本開発銀行の経理状態、これは政府機関ですけれども、私の調査によりますと、日本開発銀行は百三十億円以上のこげつき債権があります。延滞金が百三十億円にも上っておる。あなたはこれを御承知ですか。その滞納した海運会社とかあるいは炭鉱、そういう方面に、半分も返さないのに、次々に金が貸し出されておる、こういう事実をあなたは御存じですか。
  31. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これには理由はありますが、そういう事実があることは承知いたしております。
  32. 井手以誠

    井手委員 はっきり聞き取れませんので、済みませんがもう一回。
  33. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 たとえばこの海運並びに石炭その他において開発銀行の融資の返済が滞っておるということは承知いたしております。しかし、これについてはいろいろと事情やむを得ない理由もあります。こう申し上げたのであります。
  34. 井手以誠

    井手委員 やむを得ない事情とはどういうことですか。大体今の金融難下でそういうことが許されておりますか。民間金融においても、また農村政府が貸す金においても、前の貸金が回収されないと次の資金は貸してくれませんよ。それはきびしい条件がついている。それはそこにいらっしゃる赤城農林大臣がよく御承知のはずであります。いろいろの事情があるといって、たとえば海運会社、石炭会社あたりは百五十億を回収しなくちゃならぬのに、半分しか返ってこない。そういうものに次々にお出しになる。海運会社にはまた三百五十億か幾らお貸しになるようですが、そういうことが許されてもいいものですか。しかも神武景気のときにはこういう会社はずいぶんもうかっていますよ。もうかったときには若干よけいに返しはされておるでありましょうけれども、そういうことが許されてもいいですか。
  35. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはやはり戦争に負けたというこの事実を認識するところから始まらなくては正当な理解ができないと思うのです。石炭に今日相当開発銀が滞り貸しがありますことも事実であります。しかしながら敗戦直後においてどういうふうな政策をとったかといえば、これは何といっても石炭を出さなくちゃというのが当時の占領政策でもあったわけです。そうしまして、復金を通じていわゆる傾斜生産という形におきまして石炭の増産を行なったことは事実であります。これについてはたとえば労務者の住宅もあるいは子供の遊び場も作れというような意味合いで、日本としては相当にぜいたくな行き方もした、このことがいいか悪いかは別ですが、当時の政策であった。従いまして、その後の経済の情勢において、こういう行き方をしておると、石炭業者等において、十分払えなくなることがあり得ることもまたある程度やむを得ない。しかしながら、その後において経済情勢のいいときに返還を急いで、今日ではやはりよほど滞りは減っております。これは海運についてもやはり同じことが言えるのでありまして、日本貿易に依存しておる、どうしても海運というものを持たなければならぬ。が、しかし船は一そうもなくなった。そこでやはり国際収支をよくする上からも、いわゆる計画造船というものをやりまして、船をどんどん作っていった、こういう経過から、いわゆる一種の国策という見地において仕事を進めたこともあります。従いまして、経済の消長いかんによりまして、返済が若干計画通りにいかない特に外航の船については、国際競争あるいは国際経済の動き等においてやむを得ないものもあります。そういう見地から滞っておるのでありますが、しかしそれも今お話のように景気のいいときにできるだけ早く返済を急がすようにいたしまして、今日ではその残高はよほど減少しておると考えておるわけであります。
  36. 井手以誠

    井手委員 減っておることは私も知っております。しかし三十三年度も減る見込みはございませんよ。終戦以来の事情は私もよく知っております。傾斜生産のあったことも知っております。しかし石炭合理化法という法律ができねばならなかった時代もございました。零細な国民には少しばかりの滞納であってもびしびし差し押えをする。若干の延納があってもびしびし催足して取り上げる。そうしないと、あとの金を貸さないのが常でございます。戦争の被害は国民全部が受けておりますよ。大企業だけではございませんよ。大企業だけが戦災を受けて復興しなければならなかったから、やむを得ない、そういう大臣考えは直してもらいたいと思う。
  37. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いや、大企業だけ考えておる、そういうことは絶対にございません。いやしくも政治をする以上は、やはり国民生活の安定向上を目ざす。何も物さえ作ればいいのではない。物を作ったそのことが、国民生活の向上に役立たなければ意味がないのでありますから、多くの人々の生活の向上、そういう見地からいたしまして、大企業で必要なところはむろん育成強化していかなければならぬのであります。それだからといって、他面において、零細な企業あるいはまた特に社会的に手を差し伸べなければならぬ階層について、資金的に特に困難な状態に置く、そういうことはゆめつゆ考えておりません。政府がそういう政策をとっていないことをここではっきり申し上げておきます。
  38. 井手以誠

    井手委員 国民はその日その日の生活に追われておる、金融を非常に欲しておる、そのことを十分お考え願いたい。私は財政投融資の問題については、この程度で終りますが、先刻からいろいろ申し上げました通り国民の金である、これを十分念頭において、今後大企業中心ではなく、大企業中小企業、農民との格差を縮めるために方針を変えてもらいたい。そうしてまた融資先の経理などについても、十分監督してもらいたい。これを強く要望しておきます。  そこで、企画庁長官がお見えになりましたから、お急ぎのようでありますので、特に間にはさんでお尋ねをいたしたいと思います。新しい長期計画によりますると、経済の成長率は三十一年度の基準状態から年率六・五%の成長を見込んでおる。ところが三十三年度の経済計画の大綱によりますれば、国民総生産が二・三%、国民所得が二・二%の成長になっている。毎年六・五%ずつ、こんなに上っていかねばならないあなたの方の長期計画が、初年度において二・二%、二・三%になっておる、これはどういうわけでございますか、どちらが正しいのでございますか、どちらも正しいわけでございますか。
  39. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、三十一年から順次五カ年計画を立ってやって参りましたが、昨年度におきまして、これが上期に非常に膨張いたしまして、そうして八%以上の成長を見たわけでございますが、これをそのまま続けていきますということには日本の国力が耐えられないと申しますか、輸出入の、バランスが合いかねる事態になりましたので、そこで遺憾ながら緊急施策をとりまして、一応地ならしをいたしたわけであります。そこで、基礎を強固にして再出発をする必要があるということからいたしまして、昨年の五月の緊急施策以来、物価の引き下げをやり、財政投融資や設備の投資等につきましても、これを押える方向にいたしまして、そして三十三年度におきましては、もっぱらこれらの地固めをして参るという施策をとって参りたい。これを要するに、従来の傾向からいたしまして、わが国といたしましては、おおむね今後五、六カ年の長期にわたって、六・五%程度の経済の成長をしていくことは可能であろう、この程度は安定した成長ができることになるだろう。たびたびお話が出るのでございますが、完全雇用の点から参りますと、さらに成長率が増大して参ることは必要でございますけれども、そうもいきません点もありますので、一方に民生の安定、完全雇用というような理想を持ちつつ、これに到達する意味において、すべての計画を、まず一方に安定しつつ成長するということも考えつつやりますると、おおむね六・五%程度に成長していくことが安全であるという結論から、御承知通り、六・五%という数字を出してあるわけであります。ところが今、くどくなりますが、昨年と今年とを見合いまして、そして今年——今年と申しますと、三十二年度と三十三年度と見合いまして、これを合せますと、三十三年度の終りにおおむね三%、実質三%程度の成長をいたしますれば、これをならして大体長期的に一定のカーブで、あまり変動なしにいけることになる。従って三十三年度は、上半期におきましてはもっぱら地ならしに重点を置き、下期において、安定のうちに成長していくということをやっていきたいと考えておるわけでございまして、大体この辺がいいのじゃないかと思うわけであります。
  40. 井手以誠

    井手委員 今後五カ年間六・五%ずつ伸ばさなくちゃならない計画に、初年度から計画が非常に落ちておる、これを私はお尋ねしておるわけであります。大体この計画が、最近数年間の成長率九%、戦前成長率四%、これを足して二で割った六・五%を作ったところに私は問題があると思う、ずさんになっている根拠があると思う。  そこで私は、この数字だけで問答しましても時間が長くかかりますから、この経済成長率の柱になっておる二、三の問題について、お尋ねをいたしたい。  計画の成長率達成には、輸出を八二%増加しなければならない。それは世界貿易の全体に予想される発展率四・五%に対し、年率一〇・五%になる、二倍以上になる。これはネズミ算のように大きくならなければならぬ。そういうことが果して可能ですか。毎年貿易を一割以上伸ばさなくてはならない。そういう科学的な根拠を承わりたい。
  41. 河野一郎

    河野国務大臣 今申し上げますように、科学的の根拠というものは、別にこれは持ち合せているわけではないのであります。結論として、政治の理想とするところは民生の安定、雇用の完全な状態に置くことになければならぬ。これは理想でありますけれども、しかし実情は、人口の増加率等から考えまして、なかなかそういきにくい点があるし、しいてこれをやりますれば、また再びいたずらに経済の膨張になりすぎるということになりますので、ただいまも申し上げました通りに、安定のうちに成長を期していくことが必要である、なるべく行きつ戻りつしないようにしなければならぬというような点から申しまして、それならばどのぐらいの経済の成長が、日本の現状において、安全性を見つつ可能であろうかということをいろいろそろばんを入れてみると、まずただいまお示しがございましたが、この程度に見ることが一番安全だろう、この程度ならまずいけるだろう。ただし、これ以上やっちゃいかぬというのではないのでありまして、いき得るならばいき得るほど私はけっこうだと思います。しかし一応全体の国民諸君の指針になることを作るのだから、ただいたずらに理想にばかり走るわけにいきませんから、そうして、この程度ならまずいけるだろうということを考えつつやっていると同時に、何さま御案内の通り、世界の経済がどうなるかということも、大きく波打ってくるわけでございますから、それこれいろいろのことがあるでしょうが、常識的に考え、また各方面の方々の御意見も伺ってしんしゃくしつつ、一応決定したのがこれでございまして、その辺は、一つそういうふうに御了承願いたいと思います。
  42. 井手以誠

    井手委員 大きくなることはだれでも願うことでありますが、一〇・五%という成長率、毎年一割以上ふえていかなければならない、こういうことができるかどうかという現実の問題であります。世界全体の貿易の成長率、あるいは世界の経済状態から考えますと、これが果してできるかどうか。それは大きくなるに越したことはございません。しかし、現在政府でも言われますように、また新聞が報道しておりますように、世界の経済情勢というものは、そう楽観されるものではございません。そういうときに、一〇%以上も伸びるかということでございます。そこをお尋ねしている。
  43. 河野一郎

    河野国務大臣 これは、ただいまお話しの通り、非常に困難があるということはわれわれも十分認識いたしております。しかし、さればといってこれを一割、一〇%はできぬ、ことしは二十八億二、三千万ドルであるから、来年は一億五千万ドル増、半分ぐらいでどうだ、これは、それが安全であると思います。しかしわれわれとしましては、今お話しの通り、やればこのぐらいはできるだろう、各般の施策を講じましてやったならばできるだろう。世界全体の貿易の中で、日本貿易がこのくらいに変る実勢、また国内の態勢の整備、もしくは各種の施策を講ずるならばできるだろうということで、種々検討といたしました結果、この程度のことでいくことは、まずまずやればいけるだろうということになりまして、一応この数字をとったのでございます。しかし、これは安易な道を歩むことではなく、むろんいろいろやらなければならぬわけで、施策といたしましても、貿易振興、輸出奨励、輸出振興を第一に重点的にわれわれは考えていくということで、国民諸君の深い御理解と御協力の上に立ってやっていきたい。これをもしこの程度までやりませんと、雇用の面におきましても、すべてにおいて、さらに一そう国内的に困難な問題が起ってくるという点に立ちますので、予算の編成におきましても、なるべく消費を刺激しないようにしつつ、輸出の奨励をする。物価の面におきましても、物価の引き下げをいたしつつ、輸出の奨励をするということで、私といたしましては、あらゆる角度からこの輸出の目的達成のために努力を払うということに、かたい決意をもって実は臨んでおるわけでございます。ぜひ達成いたしたいと考えておるわけでございます。
  44. 井手以誠

    井手委員 希望を持っておることは、差しつかえございませんけれども、しかし、計画というものは、やはりかたく作らなければならぬと思う。計画のもとに完全雇用の問題なり、あるいは経済基盤拡大なり、民生の安定というものが実現していくわけでありますから、そういう大事な内容を含んだ計画に、ただ希望々々といって大きな数字を並べることは、私は慎しむべきことだと思う。  続いてお尋ねいたしますが、もう一つ経済成長率の柱になっておる総貯蓄、設備とか、投資、あるいは原材料をまかなう総貯蓄というものは、三十七年度に三兆八千九百億円に上っております。これは、三十一年度よりも一兆九百億円多く、国民所得の三六%、国民総支出の三〇%に当っておるわけでありますが、かりにあなたが希望されておるように、計画通り所得がふえるといたしましても、ふえた所得はそっくりそのまま貯蓄に回さなければならぬ、そういうことは、実際問題としてあり得るでしょうか。この五カ年計画を達成するためには総貯蓄、設備とか、あるいは原材料をまかなう総貯蓄が三兆八千九百億円も要る。それだけふえる、一兆何千億円も総貯蓄というものがふえる。ふえた所得をそっくりその方に持っていかなければならぬという計画が立てられておる。そういうことが実際できますか。
  45. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 経済規模が六・五%で、伸びて参りますので、現状でも大体総生産の三〇%が総貯蓄に向いておりますから、三十七年度におきましても、同様に、ある程度の努力は必要と存じますけれども、貯蓄も所得も両方ふえるわけでございまして、経済拡大した分が全部貯蓄に回るという計算にはなっておりませんで、それぞれ経済規模の拡大に比例して、貯蓄も所得もふえる計算になっております。
  46. 井手以誠

    井手委員 計画書によりますと、国民所得の三六%に当っておるわけです。個人貯蓄では四〇%に当っております。これは、経済計画に載っておる。総貯蓄の欄の中に載っておる。だから私は申し上げておるのです。
  47. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 この経済計算では、総貯蓄は、減価償却分とか、自己蓄積の分、それから普通の預金から回る全部が入っておりまして、総支出の三〇%という計算をいたしまして、国民所得に比較いたします場合には、これは純所得になりますので、総貯蓄の方も償却分を引いて考えなければなりませんので、国民総生産の三〇%というものは、国際的に見れば高いようでございますけれども、最近の数年間の実績を見ましても、昭和二十六年と三十一年度と三十二年度は三〇%をこえる総貯蓄が現実にあったわけでございます。まあ、数字的に見て、それほどとてつもないことになってはいないかと考えております。
  48. 井手以誠

    井手委員 私がお尋ねしておったのは、国民所得に対する比率でございます。しかし、もうお答えは要りません。あまりにも総貯蓄を大きく見過ぎておる。大体常識でもわかるように、所得がふえた分だけそっくりそのまま貯蓄に回さなければならないような計画というものがあり得るかどうか、これを私は聞いたわけであります。  続いてお尋ねいたしますが、計画書によりますと、計画の確実な達成を期するためには、政策の手段、すなわち減税と行政投資、民生の安定に支出を増大しなくてはならないと書いてある。それでは、この計画を達成するために、どれくらいの減税をどれくらいの行政投資、行政支出、あるいは民生安定、社会保障に金が要るのか、この点を私はお尋ねいたしたいと考えておりますが、まず企画庁にお尋ねする前に、大蔵省にお伺いをいたします。この長期計画によりますと、今後の税の増収は、毎年二八%ずつ伸びるようになっておりますが、それほど伸びる見込みがございますか。それが第一点。次には、減税の計画がこれには書いてありませんけれども、当然これを書いてある以上は、減税の計画があると思っておりますが、その二つをお伺いいたします。
  49. 原純夫

    ○原(純)政府委員 この長期経済計画におきましては、税の方はこういうふうに見込んでおります。現在の法律を動かさないで、これは、三十三年度分として御提案申し上げておる分はもちろん加えてでありますが、そのままでいった場合に、三十七年度の税収は、中央地方を通じて二兆三千八百億程度になっております。(「国税だけでは幾らか」と呼ぶ者あり)国税、地方税の区分はいたしておりません。それのうち財政投資、こういうような数字が別途出ております。そういうものがうらはらとなって、財政が広い意味で使うというものが一兆九千三百九十億というふうに見ております。従いまして、相当その間に減税と申しますか、幅があるということに相なっております。差額が約四千億あまりございます。なお冒頭におっしゃいました、二八%ずつ税が伸びるというのは、ちょっと了解いたしかねますが、おそらくこうであろうと思います。ただいま国税、地方税を通じまして、国民所得に対する税の負担割合は二〇%になっておる。そこで、国民所得が毎年ふえて参ります、五%ふえる、あるいは六%ふえるというような場合に、そのふえるのと同じ割合で税収もふえるということになりますと、ふえる所得分の二〇%が税収になる、こういうことになります。その場合に、御案内のような累進効果その他によりまして、ふえる部分については二〇%でなくて、二八%とか三〇%とか、その辺の数字が出てくることがあると思いますので、私、卒爾でございますから、多分そういうことであろうと思います。つまり、それは毎年二八%税がふえていくというのではなくて、毎年国民所得がふえますと、そのふえたうち、二八%か、そのくらいが税になっていくというふうなことではなかろうか、急ですので、十分念査しておりませんが、大体そういうことだろうと思います。
  50. 井手以誠

    井手委員 計画書によりますと、あなたは税金は伸びるとおっしゃいましたけれども、国民所得に対する負担の割合は、現在の一九・五%から一八%に軽減すると書いてある。軽減してなお税の増収が二八%ずつふえていかなくては、この経済計画は達成できないはずです。それをお伺いしておるわけです。むずかしいことは要りません。私は、この前の経済自立五カ年計画にありますように、国の分は幾らか、地方の分は幾らか、社会保障に幾ら回さねばならぬのか、その数字を私はお伺いしておるのであります。一緒にぼうっとした数字をお伺いしようとは考えておりません。国が幾ら、地方が幾らということはわかっているはずだ。この前の経済五カ年計画には、その数字がちゃんと出ておる。だから、私はそれをお尋ねしておるわけであります。
  51. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいま申しましたように、現在の法律を動かさないで参りますと、三十七年度には、全体で二兆三千八百億というような税収になる。これは、ただいまおっしゃっております、現在二〇%という見当の負担率に対しまして、十兆七千億という三十七年度の国民所得に対しましては、二二%一の割合になるのです。つまり負担率は、税法を変えないでいきますと、累進効果等によりまして、負担率はふえて参ります。二二%、二兆三千八百億というような数字になる。それを一兆九千四百億程度で財政はまかなうといたしますと、その間に相当額の減税と申しますか、あるいはほかの特別な項目に充てまするか知りませんが、そこは相当額の、全部減税に充てようとすれば減税できるという数字が出るわけであります。計画としては、その時分における負担率は一八・何%ということになるということで、国民の税負担の軽減ということにも、相当強く意を使ったものになっておるはずでございます。
  52. 井手以誠

    井手委員 一向わかりませんな。そういう計画は、国民のだれにもわかるようなものでなくちゃならぬ。はっきりした数字が書かれないから、ぼうっとしたものになってしまう。私は、時間の都合がありますので、これ以上お尋ねいたしませんが、一番大事な経済計画に、最も必要な資金の裏づけがございません。  そこで続いてお尋ねいたしますが、最近自然増収が毎年一千億をこえておる。その中で源泉所得税も、昨年度は三百五十億円の増収、三十二年度、本年度もおそらく百五、六十億の増収になろうといわれております。すでに一月末では九五・五%の徴収になっておる。こういうふうに、予定された予算よりも税の徴収実績がうんと多いということは、どうしたことでございましょうか。三%か五%までの違いはいたし方ないでございましょう。収入はかたく見積らなければなりませんから、三%前後はやむを得ないと思います。これは、財政上の常識であろうと思っておりますが、初めから税収はわからなければならぬ。しかるに一千億減税しても、なお一割近い自然増収が本年度見込まれておる。これは、最初なるべく過小に見積ったためであるのか、徴税を強化したためであるのか、その点を一つ大臣から……。
  53. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御承知のように、最近の自然増収が多いことは事実でありますが、三十年、三十一年にかけまして、三十二年もむろんそういう影響を受けてきたのですが、経済の伸びが格段のテンポを示した。その結果、自然、所得関係がふえるということに起因いたしておると私は考えております。従いまして、こういうふうな自然増収が、今後においても持続的にあるとは私は考えておりません。むろん税の歳入見積りというものは、できるだけ正確にいたすべきであると考えております。
  54. 井手以誠

    井手委員 最近いつも異常な経済の成長を理由になさっておりますが、それでは、来年度はどうでございましょうか。
  55. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 三十三年度におきましては、今回の予算の編成において、すでに三十二年度の歳入見積りに比べまして千五十億も多く見積っておりますから、そう大きな自然増収は、三十三年度においては出ない、かように考えております。
  56. 井手以誠

    井手委員 三十三年度は見込めないということを前提にして、私は、今から今後の財政見通しについてお尋ねをいたしたいと思います。人口増などによりまする義務的経費の支出は、大体どのくらいでございますか。概算でけっこうです。恩給とか、防衛費とか、あるいは国債というものは別にした自然にふえる義務的経費、これは毎年三百億くらいですか、五百億くらいですか。
  57. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 三十三年度予算編成当時には、およそ三百億程度と考えました。
  58. 井手以誠

    井手委員 国債の償還が、三十五年度には一千億をこえることになっております。元本と利息の償還が一千億円をこえると聞いておりますが、これは、大臣承知ですか。
  59. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 最近過年度の余剰金が繰り越してきて、法定の国債繰り入れがふえる結果、主としてさようになっております。
  60. 井手以誠

    井手委員 防衛庁長官にお尋ねいたしますが、防衛庁は、五カ年計画をすでに立てられておりますが、来年度以降の防衛庁費はどのくらい膨張する見込みですか、年次別にお示し願いたい。
  61. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。国防会議の基本方針並びに防衛整備目標というもので、一応の目標がきまっております。三十七年度までに、陸は十八万人ふやす。(井手委員金額だけでいい」と呼ぶ)金額については、年度別に、また個々の年次予算を編成するに当って策定するという建前でございまして、年次別予定というものは、今日はきまっておりません。
  62. 井手以誠

    井手委員 現在わかっておる、たとえば国庫債務負担行為、もう契約をしておるようなものを見込んで、最小限度、すでに三十三年度は陸上十七万人になるでありましょう。その今後の増強費は別にいたしまして、陸上十七万になったときの現勢の費用と、国庫債務負担行為、あるいは継続費を加えた現在見通される数字はいかがでございましょうか。
  63. 津島壽一

    ○津島国務大臣 三十三年度は、御承知のように千二百億円でございます。三十四年度以降につきましては、いかなる程度に新増勢を加えるかということによって予算が変って参ると思います。ただ現勢を維持する維持費だけの関係で、三十四年度は、おそらく千五十億程度のものでないかと思います。
  64. 井手以誠

    井手委員 それは間違いです。それは、従来の実績を考えますと、現勢費と増勢費を加えたものが、翌年度における現勢費になっておる。あなたのおっしゃる千五十億というのは、先日政務次官がお答えになった千百五十億よりも百億円あなたは少く見ておる。私ども予算委員会の分科会で調査しましたところによりますると、少くとも来年度は、国庫債務負担行為が非常に多額に上っておりますので、三百億近い増加になってくると私は思っております。時間がありませんから、これ以上聞きません。  そこで大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今後の見通しといたしまして、国債の償還が非常にふえて参ります。国債償還は、三十四年度には八百八十億円、三十五年度には一千百四十八億円にも上ります。あなたは御存じないかもしれませんが、こんなにふえて参ります。恩給も、今から毎年百億円以上ふえて参ります。防衛費も、おそらく私の計算では、防衛支出金を差し引いても、なお百五十億円ずつくらいは少くとも膨張すると思う。義務的経費はどんどんふえていく。義務的経費は、大体自然増収によってまかなわれるでありましょうけれども、このふえる国債償還、あるいは防衛費、あるいは恩給費、こういうものをどうしてまかなわれるお考えでございますか。来年は自然増収があまり見込めないとするならば、今後の国家財政をどういうふうに切り盛りなさるお考えでございますか。
  65. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 自然増収のなには、来年度というのは三十三年度の意味でありますから、三十三年度の予算は……。
  66. 井手以誠

    井手委員 三十四年度です。
  67. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 三十四年度は、これは、日本経済は相当伸びなければならぬ、また伸びると考えております。これは、五カ年計画によりましても、平均して六・五は伸びるということになっておるのでありまして、私は、そういう程度の伸びは十分に可能である。平均ですから、これは事実どういうふうになりますか、もう少し見なければなりませんが、そうしますと、やはりそれによって相当税収も上る。先ほどからお話がありましたように、大体国民所得において六・五とか七・六とか、大よそそれに対して三%程度の税収が、今までの実績から見るとふえるという状況にあるようでございます。むろん私は、それで今後の財政が楽であるとか、あるいはまた、そういうことがあるから今後の歳出については抑制をするとか、そういうことではございません。一方そういうような歳入もありますので、他面において、やはり情勢の変化に応じて歳出を切り詰めることもむろんやらなければならない。特に御例示の防衛庁費につきましては、これは、もう国の経済が許すその力の範囲内において増強するということは、これは基本的態度で、基本的方針であるのでありますから、経済が十分それを許されないのに、あえて防衛庁費を増額するということはあり得ない、私どもの態度は、そういう態度でございます。
  68. 江崎真澄

    江崎委員長 井手君に申し上げますが、すでに申し合せの時間が経過しておりますから、結論にお入り願います。
  69. 井手以誠

    井手委員 そういうふうに、出たとこ勝負ではいけないと思うのです。私が数字を申し上げたように、恩給もふえる、防衛費もふえていく。防衛費は、債務負担行為の契約をすでにやっておる。当然金は払わなくてはなりません。その数字は幾らと私は申し上げたのです。国債もふえていく。そうしますと、一カ年間に義務的支出の自然増加を加えて、なお一千億近い金を出さねばならぬと私は申し上げておる。それをどうまかなわれるのか。時間がございませんから、これ以上申し上げませんけれども、将来の見通しについては、もっとはっきりした、こういう場合にはこうするという計画をぜひ立てていただきたいと思います。
  70. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、若干ラフな計算になりますが、数字的に申し上げると、大よそ三十三年度の国民所得は、八兆四千億になるだろうと思うのであります。それに対して、国民の伸びが六・五あるいは七・六の伸びと考える。そうすると、九兆として七%の伸びだとすれば、六千三百億の増加になる。そうして、それに対して約三%近く税収がふえると見れば、これは、やはり三千億に近い税の増収ということが考えられないことはない。これらについては、今私は、ごくラフなことを数字で申し上げたのですが、他方において歳出は緊縮の方針をとっていく。歳出というのは、これはいろいろと今後整理し得べき歳出がある。他面増加するが、一面減少する歳出がある、かように見ておる。他面、今申し上げましたように、経済の伸びによる税の増収ということを考えてみた場合に、今後の予算編成については、むろんいろいろと苦心しなければならぬが、予算編成に大ワクを設けるという事態にはならぬ。ことに恩給ということについては、これはまた今後社会保障に切りかえていかなければならぬと思うが、恩給については、ある一定のピークに達すれば、その後は徐々ではありますが、やはり逓減の方式にいく。それらを勘案いたしまして、今後の財政見通しについては、私自身としては確信を持っておるわけです。
  71. 井手以誠

    井手委員 国民所得が七%ふえたから税収が三%、二千億をこえるという、そんなでたらめな話はございません。十分一つ今後の財政については、御研究を願いたいと思います。  最後に、一点だけ外務大臣にお伺いをいたします。お疲れになっておりますから、一言だけにとどめておきますが、いわゆる賠償の問題、世間では、この賠償について、賠償ブームとか、あるいは賠償はもうかるものだといういろいろなうわさがございます。私は、ここに一つの資料を持っておりますが、お隣にいらっしゃる大蔵大臣の記者会見の言葉が、この本に載っております。こういうことが書いてある。これはフィリピンの賠償のときであります。「賠償の解決をおくらせていいとはわしも考えてはおらぬ。しかし何でもいいから急げというのはむちゃだ。賠償がまとまれば、自分たちのふところがあたたまる、賠償はいい金もうけになると考えている人が多過ぎやせぬか。賠償は国民税金でまかなうということを、そういう人たちは忘れとる。」これは大蔵大臣のお言葉でございます。この通りお話しになったかどうか、私はそばに立ち会っていないからわかりませんが、この通りだとすれば、これは大蔵大臣の卓見であると思っております。同感申し上げます。ただ残念ながら、私はあなたがこの見識を実行なさる勇気に欠けておったと存じます。こういう賠償ブームとか、賠償はもうかるものだといういろいろな世間のうわさがある、不安がある、そういうときに、私は大臣に所信をお伺いしたいのであります。フィリピンの賠償にしても、ビルマの賠償にしても、インドネシアの賠償にしても、日本政府にはりっぱな外務省があるはずであります。通産省があるはずであります。しかるに、この交渉には、ほとんど民間代表がおいでになっておる、特使がおいでになっておる、商社の代表である一—あなたは日本商工会議所の会頭でございました。この会議所の会頭ぐらいは、私はいいかと思っておりますが、某々重工業会社の社長であるとか、某々商社の代表取締役とかいう者が政府代表の資格としてどんどん乗り込んで交渉なさっておる。こういうことは、いいものでございますか。外務省は何のためにあるのでありますか。そういう国家国家の大きは交渉には、政府の代表が、外務省の代表が一—今あなたが外務大臣でいらっしゃるから、そんなことはないと思いますが、通産大臣が行ってもよろしいでしょう、そうして政府政府の話し合いが行われるのが当然ではございませんか。ここに商人が暗躍をするとか、猛烈に動いておるとか、賠償ブームといういやらしい言葉が出て参るのであります。決して火のないところに煙は立たないと私は思っておる。しかも、今日ビルマとか、あるいはフィリピンの賠償について申し上げますならば、向うのビルマ賠償ミッションとか、あるいはフィリピン賠償ミッションとかいうのが日本に駐在いたしまして、日本の商社と直接に契約をしておる。契約したものを、通産大臣というか、政府のいろいろ機関がありましょうけれども、そこで判をべたべた押して、そのまま通っていっておる。こういう賠償の物資ということは、これは通産省がいいかもしれませんが、向うのミッションと通産省が交渉して話をきめて、公入札をしてこそ、私は明朗な賠償物資の取引ができると信じております。商社が勝手に取引をしてきめたものを通産省が判を押すということでは、これはどうもおかしいのです。聞くところによりますと、今日まで公入札になさったことは、ほとんどないそうであります。私は、一々詳しいことは申し上げません。いろいろ材料は持っておりますが、時間がございませんから、詳しいことは申し上げませんが、この資本賠償、これについて、今後こういう商社間の直接取引方式ではなくて、政府政府の、向うのミッションと日本の通産省と、間接的取引と申しますか、こういう方式に改められる御意思はないかどうか。あるいは今後の賠償交渉に、堂々と日本の外務省の代表なり通産省の代表が向うに出向くなり、あるいは向うに来てもらったりして交渉する。民間はそのあとに控えておるのがいいと思いますが、その点についてのお考えを、この際外務大臣から承わりたいと思います。
  72. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 賠償に当りまして、直接賠償か間接賠償方式かという問題は、いろいろ議論のあるところだと思います。今日までビルマ賠償協定におきましても、あるいはフィリピンの賠償協定につきましても、また最近締結しましたインドネシア賠償にしても、先方側は、強く直接賠償の方式を主張いたしております。直接賠償と間接膳償については、それぞれ一長一短があるわけでありまして、そういう点を勘案すると同時に、先方側の意向も考えて、今日そういう協定が結ばれておりますので、その協定を今後変更いたしますということは非常に困難なことだと存じております。  なお、賠償交渉その他の場合に、民間人を使うというのはどうかという御意見かと思います。私どもといたしましては、むろん外交の折衝でありますから、外務省が責任をもって担当いたすのは当然のことだと思います。ただ、賠償の折衝のような場合、あるいは他の外交交渉の場合でも、民間の右能な方々が側面からいろいろやっていただくことも必要であります。ある場合には、民間の方々の知識を動員して外交部面に新しい活力を入れて参りますことも、私は必要だと思っております。従いまして、そういう意味において、民間の方々の知識と経験とを活用いたして参った場合があるわけであります。それは決して単に資本家の横暴、資本家の利益のためにそういう方々を活用したのではなく、そういう方々の経済的な知識が全体としての日本の交渉の上に役立つという観点からやったわけでありまして、御指摘のような事柄は起らないと考えております。
  73. 井手以誠

    井手委員 最後ですが、賠償交渉に民間人の知識——もちろん知識は、広いに越したことはございませんけれども、それを借りなくては交渉ができないようなことでは、情ない日本政府だと思います。今外務省無能という声が出ておりますが、こういうときに当ることこそ、外務省の務めではございませんか。先日来問題になりましたインドネシアの焦げつき債権の問題にいたしまても、あれほどたくさんの焦げつきがあるにかかわらず、昨年の五、六月ごろには、六千九百万ドルのかけ込み輸出を行なっておる。どうしてそういうことが起ったかと申しますと、繊維業界、各方面から動いて、そうしてかけ込み輸出をどんどんやっておる。焦げつきがふえることはわかっておる。それにもかかわらず、それを政府が許しておる。こういう事実があるからこそ、私は申し上げておるのであります。もう過ぎたことはしようがありませんけれども、今後の交渉には、厳として日本政府があるはずでありまして、外務省も通産省もあるはずでありますから、堂々と交渉をやってもらいたい。それと、できますならば、ミツションと商社が取引をきめて、どんな値段か知りませんけれども、そのきめたものをめくら判を押すようなやり方ではいけません。これは、大蔵大臣がいみじくもおっしゃったように、賠償は国民税金です、国民が払うのです、こういうものについては、もう少し政府が責任を持ってやってもらいたいことを強く要望いたしまして、質問を終ります。
  74. 江崎真澄

  75. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣にお尋ねをしますが、賠償問題で、今度の予算にも、インドネシアの賠償の金額が出ておりますけれども、アメリカから参りました対日援助費ですね、あの点については、国会でもだいぶ、あれは贈与だ、あるいは政府の方では、その点はどうも借款らしいとか、はっきりしないのですけれども、二十八年の二月の国会で、予算委員会で論議をしたままになっておりますが、一体政府の方では、アメリカは日本に対しての援助費はもう全然打ち切った、これは贈与だから打ち切ってしまったのだということなのか、まだ債権として残っていて、幾らにしろという交渉をしているのか。わが国も、他の国に対する賠償はどんどん今やっているが、この問題はどうなったのか。私ども国民は、もうこれは打ち切ったものだ、そういうように政府の方ではもう態度をおきめになっているんだろう、こう思いますが、念のためにお尋ねしておきたい。
  76. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、御承知のように、昭和三十年になくなられた重光外務大臣がアメリカに行きましたときに、共同声明で、この援助資金については、なるべく早い機会に一つ解決しようじゃないかということに意見が一致したということがございました。その後は、そのままになっております。これは、われわれとしては債務、アメリカとしては債権である、早く返せという催促はあるわけであります。ただ、しかし日本としては、賠償も払わなくちゃならぬ、いろいろと財政負担が多いときであります。しかも、金額も相当なものになりますから、慎重に今後の処理を考えて推移いたしております。
  77. 横路節雄

    横路委員 そうすると、大蔵省としては債務である、アメリカとしては債権である。大体折衝をなすっているのでしょうが、それならば、大蔵省が一応債務と考えている金額は幾らなんです。
  78. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、御承知のようにガリオア、イロア及び余剰物資の払い下げという形で、占領軍がおやりになったことであります。これらについては、必ずしもつまびらかでないと私は思っております。ただ昭和三十一年の二十二国会におきまして、時の通産大臣、通産省から約十九億六千万ドル程度の債務であるという報告があったように思います。しかし、これは今全額をきめておりません。この金額をどういうふうにきめるかということが、まず日米間の折衝の中心の第一になるわけであります。
  79. 横路節雄

    横路委員 今のお話だと、二十二国会に通産大臣から、政府の方では、債務だと心得ておるのは大体十九億六千万ドル。しかし今大蔵大臣から、これはどうも怪しいのだ、品物については、受け取りその他で怪しいのだ、これは、大蔵大臣がおっしゃった通りなんです。たとえば小麦について、横浜に一万トン来た、受け取りに行ってみたら七千五百トンしかない、ところが七千五百トンしかないけれども、一万トン書けと言われて書く、セメントが一万袋来たからといって受け取りに行ってみた、ところが七千袋しかない、だけれども、占領中だから、これは一万袋と書けと言われて書いた。あなたのおっしゃる通りなんです。非常にこれはあいまいなんです。そういうあいまいなものを、何で政府の方で、債務は十九億六千万ドルであろうとおっしゃるのですか。そういうように、あなたの方でも、今大蔵大臣がおっしゃった通り、これはあいまいなんです。占領中でごまかしが多いのです。どうしてそれを十九億六千万ドルの債務と心得るのですか。
  80. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、通産省から一つお話しを申し上げればいいかと思いますが、私の考えでは、十九億六千万ドルと思いますが、あるいは何千万ドルの若干記憶違いがあったかもわかりませんが、十九億六千万ドルとした場合に、大体推算して、この数字は、まあそうではなかろうかという考えでおるわけでありまして、十九億六千万ドルに非常な食い違いが日本側にあるというのでは私はないと思います。ただ、これをさらにどういうふうに返済するかという問題が残るわけであります。
  81. 横路節雄

    横路委員 委員長、大へん恐縮ですが、委員部の方から、通産大臣をこれが終るころまででけっこうですから、呼んで下さい。
  82. 江崎真澄

    江崎委員長 わかりました。
  83. 横路節雄

    横路委員 これは、アメリカの方で全部書類を持っていっておるわけですね。つき合せもできない。つき合せもできないような状態で十九億六千万ドルであろうということははなはだ私はふに落ちない。大蔵大臣として、この十九億六千万ドルについてはどうなさるのです。十九億六千万ドルは、まさかみなみなこれは債務だとして払うなんてことは、日本の乏しい財政状態から、考えていないでしょうし、アメリカの要請に従って、あなたの方ではどんどん再軍備を進めておる、これはどうですか。帳消し、棒引き——あなたの方では、よく棒引きをおやりになることがはやっておるがどうですか、これは棒引きなさっては。
  84. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 十九億六千万ドル払うなんということは、考えておりません。ただ一応の推定として、これは、御承知のようにガリオアといいまして、食糧等で民生安定のために持ってきた、それからイロアといって、原料等で日本経済復興の用に持ってきた、こういうふうな、おそらく占領政策から見まして、対日関係において非常に性格を異にする物資が入っておる、その総計がそうでありますから、むろんこれは、先方も払えというわけではありません、こちらも払う意思はありませんが、特にその点について考えられることは、西ドイツ式の——西ドイツは、御承知のように、そういう債務を一応確定をいたしまして、その三分の二を棒引きして、三分の一について低い利子をつけて、大よそこれもやはり五カ年据置、三十年賦くらいで払うという、こういう案をアメリカ側は持っておるわけであります。ただ、しかしそれにしても、こちらは西ドイツ式にやるわけにはいかぬから、日本の負担をなるべく少くするために交渉に努力をして、なおそのために話をしておるという現状であります。
  85. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣の、これに対する確たる方針をお聞きできなくて非常に残念です。これは、ただ十九億六千万ドルについて向うと折衝して、あなたの方ではこれを減額してもらう、その一つの方法としては、西ドイツで三十二億ドルであった、二十億ドル落してもらって、十二億ドルについては、五年据置の三十年で二分五厘で払ったからということをおっしゃるのは、大体西ドイツのようなやり方でやるというのか、これはどうなんですか。ただひとの国のことを言わないで、あなた自身はどうなさるのですか。
  86. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いや、私自身考えがおわかりになるように、実は話しておるわけなんです。これは相手がありますから、私がいかに力んでみても、やはり債務を負うておる以上は、これはいたし方ないことで、できるだけそれを減額をして、有利な条件で、国民負担を少くするような方向にいく以外にないのでありまして、その場合に、アメリカとしては、大体西ドイツ式ではどうだという提案が私はあったと承知いたしておるわけであります。しかし、私は、今それでも困る、もう少し国民負担を軽くしたいということで、その折衝をやっておるということであります。
  87. 横路節雄

    横路委員 私は、十九億六千万ドルの基礎数字に、あなたはもっと明確な態度を示すべきだと思う。たとえば二十四年から対日援助資金特別会計ですか、それが持たれた。その前のははっきりしないのだ。あれは軍からの払い下げで、一般国民はみな払ったのですから、あれはもう対象にならないのだ。十九億六千万ドルだが、その分については対象にならぬのだ。あれはおそらく十二億ドルくらいあるでしょう。それを頭から落してしまって、その他二十四年以降なら二十四年以降について西ドイツ方式をとるとかなんとか言わなければ、あなた自身があいまいであるとおっしゃる十九億六千万ドル、これをもとにして折衝なさるというのは、無理ではありませんか。
  88. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、この十九億六千万ドルも、それを勝手に確定した債務というのではありません。そういうふうに一応推定された数字が二十二国会に出されておるということを、私は引証しただけでありまして、何もそれをとるわけではありません。私としては、今申しますように、あらゆる努力を払って、国民負担を小さくすることに努力をいたしておる。これは、ただそんな抽象的なことを言ってもいたし方がないというお話でありますから、大体の考え方を今言っておるので、それ以上のことは、今後の折衝に待たなければならぬ。また折衝中であるから、あまり大蔵大臣が何もかもさらけ出すということは、これは国のために適当でない、かように考えております。
  89. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、この折衝のあれですが、中心は外務大臣ですね、これはどうなるのですか。
  90. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろんこの折衝の窓口は、外務大臣がおやりになることは間違いありません。
  91. 横路節雄

    横路委員 それじゃ外務大臣にお尋ねします。この点は、あなたとしてはいつからなさるのですか、いつから一体この折衝をなさるのか、外務大臣としては、どういう方針でおやりになる考えか、その点を一つ明らかにしていただきたい。
  92. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この問題については、重光さんがワシントンに行かれましたときに、話し合いをすでに始めておられます。しかしながら今日まで——そのときも解決しない問題であった、それは、ちょうどここでも出ておったかと思います。今後この問題は、絶えずわれわれ日米間の問題として折衝して参らなければならぬわけであります。そういう面につきまして、財政当局とよく相談しながら、今後折衝を強力にやって参りたい、こういうように考えております。
  93. 横路節雄

    横路委員 それでは、大蔵大臣にこの点もう一つだけお尋ねしておきますが、大蔵大臣は、先ほど西ドイツの方式をお話しなされて、自分の意見を述べたというようにおっしゃったのですが、そうすると、大蔵大臣としては、今お考えになっておるのは、西ドイツの方式によりながら、なお西ドイツよりは有利に一つやりたい、こういう考え方ですか。
  94. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いや、西ドイツ式話があったということで、それに私は一応じないいうので、まだこれはどういう方向になるか、今後のことであります。
  95. 横路節雄

    横路委員 今今の点は、通産大臣が来ましてから、さらにお尋ねをしたいと思います。大蔵大臣に私はお尋ねをしますが、実は今度提案された予算書の中に、内閣官房に報償費一億九千二百八十万円、警察庁で報償費二千八百八十万円、防衛庁で報償費四千五百万円、公安調査庁で公安調査官調査活動費四億二十万円、法務省関係には最高検二百三十三万、地方検察官署で三千百六十四万円、その他こまかなものがございますが、外務省で報償費三億一千万円、在外公館の報償費四億九千万円、大蔵省には税関、国税庁等でございます。それから労働省まで報償費が三百八十九万ございまして、公安調査官の調査活動費を入れますと、十四億三千六百三十六万円になる。報償費とは一体何でしょうか。各省にずっと入っている。外務省に至っては、七億幾ら入っている。この報償費というのは何ですか。これは十四億にわたるものですから、大蔵大臣にお尋ねします。
  96. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは私から説明せぬでもおわかりになっておると思うのでありますが、国政を運営していく上において、その長官が特に必要とする経費、かように私は考えております。
  97. 横路節雄

    横路委員 それでは、私はあなたにお尋ねしますが、それは交際費とは違うのですか。特に大臣として運営する、長官として運営する、見ますと、交際費はたくさん入っています。交際費とこれとはどこが違う。交際費も運営上必要だから組んであるのでしょう。私は交際費は、これはそれぞれ今あなたがおっしゃっている通り、必要なものは必要だと思うが、報償費は、これは何なんですか。
  98. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、今申しましたように、この報償費を持っておる行政長官が自由に使い得る経費と申しますか……。
  99. 横路節雄

    横路委員 そうすると大蔵大臣、自由に使える経費ということになると、これは、金を出して、あとで会計検査院が調べる場合には、必ずあらゆる官庁では、全部その証憑がついていなければならぬ。そうすると、この報償費にはそれは要らないのですね、自由に使えるのだから。これはどうなるのです。
  100. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、もしも規定の上で何らかの制約があれば、これは事務当局からあとで補足答弁をさせますが、私の考えを率直に言いますと、やはり国政を運営していく上においては、非常に多岐にわたっておりまして、必ずしも一々受け取り——どういう範囲になりますか、どういう程度になりますか、必ずしも明確にしさいにそれをとることを適当としないというようなこともあると思います。そういうような国政運用に関しての経費、かように私は考えております。なお、私の答弁がおわかりにくくて何でございましたら、事務当局から答弁いたさせます。
  101. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、これはわずかな金ならば問題は別でしょうが、十四億円にわたっている。私が今あなたに聞いているのは、実際には、払ったら必ず受け取りがあるはずなんです。それは、とっていることになっているのかということを聞いているのですよ。これはどうなんです。
  102. 石原周夫

    ○石原政府委員 受け取りは徴収いたしております。
  103. 横路節雄

    横路委員 それでは、主計局長に尋ねますが、これは、国会で要求した場合には、受け取りを持っている以上は必ず出ますね。
  104. 石原周夫

    ○石原政府委員 お答えを申し上げます。当然会計検査院の検査に服している書類がございますので、その書類は各省において持っているというふうに考えます。
  105. 横路節雄

    横路委員 主計局長、私がお尋ねしているのは、これを国会で要求すれば出しますかと聞いている。
  106. 石原周夫

    ○石原政府委員 これは、各省でお持ちの書類でございますので、私がかわってお答えをいたすことは必ずしも適当でないと存じますが、会計検査院の検査に服しまする書類でございますので、この書類につきましては、各省がお持ちだということを重ねて申し上げます。
  107. 横路節雄

    横路委員 主計局長にお尋ねしておるのは、会計法や予算、決算、その他の法令でどうなっておるかということです。わからなければわからないでよいのですよ。
  108. 石原周夫

    ○石原政府委員 会計法並びにこの付属法令におきまして、特別の取扱いをいたしておりません。
  109. 横路節雄

    横路委員 今の主計局長の答弁は、それは間違いですよ。会計検査院に、この内訳の提出を三十一年度の決算について決算委員長から要求したら、これは出せないという、会計検査院は出せないという。当該主務大臣との協議においては出せないことになっております、こう言う。あなたは今出せると言ったじゃないか。僕は、今ここで読んでみますが、会計検査院の事務総長から決算委員長に出ている書類がある。それを今あなたに読んでみる。あなたが出せるというようなことはおかしい。「昭和三十三年二月十二日会計検査院事務総長池田直、衆議院決算委員長坂本泰良殿。内閣等の報償費および捜査費の支出に関する資料について、昭和三十三年二月十一日付をもって提出方御依頼のあった標記の件について左記のとおり回答します。」「支出の内容を明らかにすることのできる明細資料は提出いたし難いから御了承願いたい。」制規の証拠書類は、本院に提出することができません。だから、決算委員長からいかに要求があっても、三十一年度の会計決算については、内閣の報償費——今官房長官に聞きますが、出せないという。今あなたは出せるという。これは一体どういうのです。
  110. 石原周夫

    ○石原政府委員 私が申し上げましたのは、会計法並びにこの法令に関しまする取扱いといたしまして、別個の規定があるわけじゃないということを申し上げたのであります。現実の内容等に関連をいたしまして、会計検査院がそういう書類を提出することが適当であるかどうかということは、会計検査院長の判断によりますので、私が先ほど申しましたように、書類は各省で持っておることでありますし、大蔵省の方から私が一括してお答えすることは適当でないということを申し上げたのは、その趣旨であります。
  111. 横路節雄

    横路委員 主計局長、私は今法規のことをお尋ねしておるのですよ。あなたは、会計法その他の付属法規で、そういうようなものは出せないという法規はないということを今申された、それは違いますよ。報償費、捜査費等については「計算証明規則第十一条の規定により、制規の証拠書類は、本院に提出することを要せず、」従ってできないのだ。そうして計算証明規則の第十一条に、特別の事情がある場合においては、主務大臣と相談してやることになっておる。あなたの今の答弁は違う。  そこで、私は大蔵大臣に重ねて言いますが、十四億円ものものを——なるほどあなたは大蔵大臣ですから、一兆以上の予算をきめるのですから、十四億というものは小さい金かもしれませんが、国全体の国民生活に及ぼす影響から言えば重大ですよ。あなたは、大臣が適当に使ってもいいだろう——これは機密費ですね。証憑が要らないということになれば、機密費なんです。十四億円も一体機密費をお認めになっておるのですか。大蔵大臣、これは、一体査定のときにそうお考えになって査定したかどうか、私はあなたのことを聞いておる。
  112. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大蔵大臣がさような機密費に寛大な態度をとることは、絶対にありません。これはむしろしぶ過ぎる。けれども、大体金額の大きいのは外務省所管になるのですが、これは外務省の各公館において日本の国勢の伸長のためにいろいろ所要するわけであります。十四億といえばいかにも大きいのでありますが、外務省だけをとりましても、それがずっと世界各国にそれらの公館が分れておりますから、およそ分けてみますと、海外に御旅行になったときにお聞き下さればわかりますが、私なんか行くと向うでは非常に不平が多い。こんなことでは国威の伸長なんかできぬじゃないか。まあ財政が苦しいからがまんしてほしいというような状況で、そういうふうな態度で臨んでおることだけは一つ御了承を願いたいと思います。
  113. 横路節雄

    横路委員 では外務大臣にお尋ねしますが、今大蔵大臣からお話しのように、これは交際費なら交際費にお組みになったらいい。去年は、本省は一億八千万だったのが三億一千万を組んだ。在外公館については、四億九千万組んである。ところが在外公館には交際費は二億四千七百六十二万組んである。交際費ならなぜ交際費一本にしないのですか。交際費になさったらどうですか。外務大臣、あなたの方でお使いになっておるのですよ。あなたの方では約八億使っておる。そのほかに、あなたの方では交際費を約二億五千万持っておるのです。その八億の報償費というのは、一体何にお使いになるのですか。
  114. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、交際費は宴会その他諸般の交際に必要な経費であります。なお報償費は八億でありまして、大体その内訳としては五億を在外公館の報償の予定に使い、三億を国内に使用するというような大体の分け方をいたしておるわけであります。そしてその内容でありますけれども、これは外交工作上種々の費用が要りますので、そういう費用に使っております。
  115. 横路節雄

    横路委員 外交工作上いろんな費用が要る、それならわかりますよ。それなら交際費にお組みになったらいい。外交が招待をすることが主であれば、交際費の中にお組みになればいい。外務大臣、そのほかに何が必要なんですか。
  116. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 各地の在外公館におきまして、各方面からいろいろな資料、情報等をとる必要もあります。また招待外交を展開していく上にも必要です。こういう意味におきまして報償費を組んだのであります。
  117. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、あなたも御存じのように、財政法の三十三条かにきめてありますが、目の移用については大蔵大臣の承認がなければできないのです。今お話のようにどんどん交際費に使っているならば、これは明らかに財政法違反ですよ。外務大臣、私が実におかしいと思いますのは、この間総理が東南アジアにおいでになりましたね。あのときに内閣から予備費が三千八百九十六万五千円出ておるわけです。そのうち報償費が千七百七十四万使っておる。そうして飛行機の借上料が三千十九万使っている。その報償費を見ますと、まずパーティの金、パーティの金ならばなぜ初めから在外公館の交際費で出さないのですか。なぜ必要ならばこれを外務省の方で交際費で出さないのですか。今度は贈りもの代となっている。九カ国で四百万とか、四百五十万円。そのほか寄付金とか見舞金まで報償費に入っている。これは大蔵大臣、内容については財政法できまっているのですよ。たとえば交際費なら交際費というものは目できめて、目間の移用はできない。今度なんかあなた公共企業体の労働者にはどうしたのですか。基準内賃金、基準外賃金ときめて、この目の移用ですらあなたと当該大臣の協議がなければできないほど締めておいて、一体こういうように十四億にわたる報償費については勝手に交際費の中に繰り入れて使用するようなことを、あなたは承認しているのですか。そういうことをあらかじめ承知の上でこの予算をお組みになったのですか。大蔵大臣知らなかったら知らないでいいですよ。
  118. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 財政法に違反するような使用は私はしてないと考えます。
  119. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、しているわけですよ。今ごらんなさい、それは交際費に大かた使っていると言っておる。交際費というのは組んであるのではないですか。  今の点と関連して公安調査庁関係について法務大臣にお尋ねしたいのですが、この公安調査官の活動費というものを調べてみましたところが、私は初め旅費かと思った。旅費はちゃんと団体調査旅費で入っている。それで公安調査官の活動費は何かと思ったら、これは情報提供費なんです。そうでしょう。これは一件にわたって最高十万円を限度にして渡すことになっている。言いかえたらこれはスパイ費ですね。機密費です。大体年に数千円渡していると言っておる。この間は、本委員会であなたの答弁だったかと思う、うちの今澄委員の質問に答えて、破壊活動防止法による対象団体は昨年は一件もありませんでした、と言っておる。一件もないのですよ。一件もないのに、昨年は三億一千六百万の公安調査官の活動費が、ことしは四億二十万にふえているじゃないですか。大蔵大臣そういうことを知っていますか。破壊活動防止法によるところの対象団体は一つもない。ないからほんとうは減らすべきなんですね。これは社会党はみんななくした方がいいと思うけれども、あなたの方はそうはいかぬかもしれない。一件もないのに、わざわざあなたの方では約一億近くふやしている。しかも一件当り最高十万円で、数千円個人に対して渡しているじゃないですか。一体こういうことはあなたは承知してやっているのですか。どうなんです、これは。
  120. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはあるときになかったからといって、この次はもう安心していいというわけにはいかない。国際情勢は最近特に複雑でありますから、それで私はこれを組んでおるのであります。
  121. 横路節雄

    横路委員 あなたの方は今何です、破壊活動防止法対象の団体はないけれども、普段から用意しておかなければならぬ。あなたの予算の編成から見れば、対象団体がないのだから、これはだんだん減らしていくのが至当じゃないですか。今年これをふやす根拠は何です、これは法務大臣にお尋ねします。
  122. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 過般の委員会で私がお答えいたしましたのは、破防法容疑の団体がないとは申しておりません。法律に明らかに定めてありまする通り、公安調査庁といたしましては破防法容疑の団体を常に調査をいたしまして、もしその活動が破防法に禁止しておりますような破壊活動をする疑いが濃厚でございますれば、その際に公安審査委員会にその団体の規制の申請をいたすのでございまして、前回私が申し上げましたのは、破壊活動容疑の団体の行動について昨年じゅう調べたところでは、この審査委員会に対して容疑濃厚として規制を申請する、その事件が一件もなかったということでございまして、これがなかったからといって、破壊活動容疑の団体についての調査の必要がなくなったというわけではないのでございます。この事件があるなしにかかわらず、私どもは先ほどお言葉にありました四億円くらい、破壊活動の容疑団体の調査の費用として、それだけの金を使って常にこれを調査いたしておるわけでございます。
  123. 横路節雄

    横路委員 法務大臣、今の四億円の内容ですが、これは報償金、それから今あなたが言う調査委託金、この調査委託金は最高十万円を限度として個人に渡しておる金ですね。それをちょっとはっきりしてもらいたい。
  124. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 公安調査庁で使っております四億円前後の調査活動費は、これは地方の調査官自分自身が情報の収集のためにも使います。それからまた情報を提供してくれる人に対する実費弁償あるいは謝礼という意味でも使います。しかし最高十万円を限度としておるかどうか、その点までは私詳しくは存じませんから、もし必要でございますれば長官からお答え申し上げます。
  125. 横路節雄

    横路委員 それでは長官からお答えしていただきたい。     〔委員長退席、重政委員長代理着席〕
  126. 藤井五一郎

    ○藤井(五)政府委員 お答えします公安調査庁の年四億円余りの費用は、公安調査庁の調査活動費でありまして、容疑団体である日本共産党、朝鮮総連その他内外の共産勢力の動向について調査する費用であります。そうして十万円を限度として使っておるということはありません。
  127. 横路節雄

    横路委員 もっと高いのですか。
  128. 藤井五一郎

    ○藤井(五)政府委員 高いのもあります。また少いのもあります。さまざまであります。
  129. 横路節雄

    横路委員 長官にお尋ねしますが、そうすると日本共産党というのは破壊活動の容疑団体なんですね。今あなたから非常に重大な発言を聞いたわけですが、その点だけはっきりしておいていただきたい。破壊活動の容疑団体ですね。
  130. 藤井五一郎

    ○藤井(五)政府委員 容疑団体であります。
  131. 横路節雄

    横路委員 それからもう一つ、朝鮮人の団体は何ですか。
  132. 藤井五一郎

    ○藤井(五)政府委員 在日朝鮮人総連合会と申します。
  133. 横路節雄

    横路委員 法務大臣にお尋ねしますが、日本共産党も政党として認められて、そうして国会に議席を持っておる。今長官から日本共産党は破壊活動の容疑団体なんだ、だからあれの調査のためにこんな金がたくさん要るのだというが、あなた自身もやはり日本共産党は破壊活動をする容疑団体であるというようにお考えかどうか、その点ただしておきたいと思います。
  134. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいま長官からお答えのあった通りでございまして、日本共産党は過去において、あるいは将来、破壊活動をする危険がありはせぬかという疑いを起すような業績があったというかどをもちまして、容疑団体ということに相なっております。
  135. 横路節雄

    横路委員 石井副総理にもお聞きをしておいていただきたいと思います。私も国会の正式の委員会で、日本共産党が破壊活動の容疑団体であるというように国務大臣からの答弁があったのは初めてではないかと思います。これは非常に問題が重要でございまして、この問題についてはさらにあとでよくお尋ねをしたいと思いますが、そこで私は官房長官にお尋ねしたい。あなたの方で報償費につきまして一億九千二百八十万円、そのほかに情報調査委託費、これもおそらく今法務大臣と同じです、何とか情報を持ってくれば——私は十万円が最高だと思ったら、公安調査庁の長官によるともっと高いものがあるという話です。去年あなたの方では九千二百八十万円しか組んでいないのが、ことしは一億ふやしておる。大蔵大臣はこの点はよく思い切っています。養護すべき、要注意の児童に対するわずか六十円幾らのおかず代を一円ふやしたかと思ったらふやさないで、こういうところだけはあなたはよく思い切っていらっしゃる。そこで私は官房長官にお尋ねしたいのですが、内閣調査室の定員は今まで二十八人だったが、今度十五人置くのだ、そこでより的確な情報を集めるのだ、こういうのですが、あなたの方でこの内閣調査室にさらに十五人ふやさなければならなくなった、的確な情報その他を取るように至った事情は何なのですか。さらに、あなたの方で報償費九千二百八十万を今回さらに一億もふやして、情報調査委託費と合せて約三億、あなたの直属に置いてあるのはどういう判断のもとにしたか。ますます国内における治安関係がうまくないというようにあなたは判断をされておるのか、その点あなたもこういうように直接予算要求をされたわけですから、定員を十五人もふやし、予算も去年よりはそういう機密費を一億円もふやさなければならなくなったのは、去年の倍以上です、どういうあなたのお考えに基いているのですか。
  136. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 ただいまのお尋ねは、私どもの方から申しますと二つないし三つに分けてお答えをいたさなければならぬと思います。一つは内閣調査室の問題であります。これは御案内の通り大体四つの部門に分けて、政府政策に参考となるような資料の収集と連絡調整、総合的な判断の資料というようなものを作っておるところです。これは大別して四つの部門に分れまして、総務的な部門と国外的なものと国内的なもの並びに資料、大体四つの部門に分けて現在仕事いたしておるわけであります。これは内閣法によりましてその任務がきめられてあるわけでございますが、実はこういう事情にあるわけでございます。今回の増員等につきましては、各省庁あるいはその他の委託調査をいたしておりますところから、いろいろの情報がたくさん入ってくるわけでございますし、今後とも必要によりましては直接にも資料の収集に当らなければならぬものもあるかと思いますが、せっかく総合された資料を的確な政策に反映するという意味において分析したり、あるいは総合的に大所高所からさらにこれを見直していくということが必要でございます。それから各省庁の連絡調整ということが非常に大事なことでございますので、今回の増員の主たる理由といたしましては、そういったような総合調整あるいは資料の分析判断というような点に重点を置いて、この増員分を大いに活用いたしたいと思います。これも実はもっと非常にふやしたいところでありますが、現下の財政事情から申しまして、必要の最小限度に大蔵省の査定に服したというような経緯でございます。  さらにもう一つの報償費の問題でございますが、これは先ほど来いろいろとお話も出ておるわけでありますが、内閣自体といたしましても、最近のように国際的にもこちらも再々出ていかなければならない、また向うからもできるだけ積極的に呼びたい、これは単なる交際費というようなもの以外に相当の経費がふえておりますことは、三十二年度の予備費も数回にわたって出していただいたという経緯から申しましても、むしろ最初からそういう必要に充当させますために、相当額をふやしていただく必要があると認めたわけでございまして、直接にそういうような費用が、原則的に各個人々々に国内で渡るような使い方ということは考えておらないわけでございますので、こういう関係を御了承願いたいと存じます。
  137. 横路節雄

    横路委員 官房長官は今お聞きのように、法務省関係の公安調査庁では一人一人に渡しておる。今あなたからのお話で、あなたの方では渡さないというのですが、これは今あなたの方で国内のいろいろな治安関係を各省へ連絡するために増員したというが、そうすれば当然その上の、たとえば官房長官あるいは公安調査庁長官あるいは石井警察庁長官、こういうような関係の人々がさらに集まっていろいろ情報交換をしてやる、それは正式の機構ではないかもしれませんが、そういうことも当然起ってくるわけです。その点はどうなんですか。
  138. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 ちょっと私の説明で足りなかったところがあるかと思いますが、内閣関係においてこれらの経費を、特に治安関係のいわば情報とか牒報とか、そういうところに活用しようということで経費の増額をいたしたということはないのであります。先ほども申し上げましたように、調査室に例をとりますれば、総合的な情報を整理する部門、それから国内的な情報を収集あるいは整理をする部門、あるいは国外の、たとえば最近におきましてはラジオ放送その他が非常に各国入り乱れておりますが、こういう点を聴取し翻訳し、そしてこれを国会の方面にも御用立てをいたしておるかと思いますが、特集といたしまして海外情勢の資料というものも作ってお配りをいたしておるようなわけであります。こういう活動をより充実せんとするわけでありますから、性質上公安調査庁の活動とは全然別なのであります。従ってこういったような経費の使い方ということもおのずから別になっておる、こういうふうな関係にあるわけであります。  それからもう一つお尋ねの点について、この際はっきりさせておきたいと思いますが、ちょうど事務次官会議を定例にやっておると同じような趣旨におきまして、治安関係の長官あるいは次官クラスの方々とときどき情報の交換をする連絡調整をよくやるということで、これは岸内閣の改造以後ずっと定例的に開催せられておりますが、その費用のためにこういうものが必要であるということは全然ございません。
  139. 横路節雄

    横路委員 そうすると治安関係というと、官房長官、法務次官それから防衛次官、警察庁長官公安調査庁長官、警視総監ということになるわけですね。実は官房長官からは非常にきれいな答弁がありましたが、しかし今までこの内閣調査室でとかくのうわさがあるんですよ。たとえば鳩山内閣時代に日ソ交渉をやろうとした。また事実やった。ところが内閣調査室においてはある一つのグループがそれに反対して、それぞれの情報を集めてこれに反対しようとして、逆にその中で推進しようとした者は突如首を切られておる。こういうことをあなたは承知のはずなんです。内閣調査室というのはそういう意味で、かつての特高のような感じをわれわれは受けるのです。今あなたからお話がございましたが、この問題についてはそういように一般では印象を受けているが、今の情報調査委託は、私もここに三十一年度決算をいただいておるから、あなたの答弁でよいのですが、一億九千二百八十万という報償費はそうではないわけです。これはやはり工作費ですから機密費に属するのでしょう。調査委託ならばここにある団体調査その他でいい。わざわざ報償費を持っておる以上は、やはりそういうふうに使われるものだと私は思う。大蔵大臣聞いておいて下さい。個人に渡しておるのですよ。経理局長にお尋ねいたしますが、そうですな。あなたの方にございます四千五百万の報償費の中には、いろいろな情報を提供してくれるというので、一件四万か五万くらいで個人に渡しておるのがありましょう。経済局長ありますね。
  140. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 個人に渡しておる例もございます。
  141. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣どうですか。それは公安調査庁で最高が十万円だと思ったら、それ以上も渡しておる、一件についてです。そうしてこの中には調査委託費というものが中に入っておる。調査委託費ならば初めからあなたの方で組んでおる目の中に入れておけばよい、交際費なら初めから入れておけばよい。あなたは初めてこういう話を聞いたのではありませんか。初めから承知して報償費をお組みになりましたか。予算では交際費は交際費に組み入れ、調査委託費は調査委託費に組み入れて、その上でどうしても必要であるという機密費であるというならば、そこに組んだらいいじゃないですか。私はこういう関係で調査委託関係に流し、交際費に流すことは財政法の違反だと思う。ほんとうからいえば拒否しなければならぬですよ。あなたはそう思いませんか。大蔵大臣どうです。
  142. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御意見のように、きちきちものが割り切れまして、これは調査、これはこうというふうに整理といいますか、行政がほんとう国家目的に沿ってうまくいくような世の中になることは私は希望いたしますし、大蔵省としてはそういうふうにいくように努力を払っておるのでありますが、しかし今の行政の実態から見ますと、そこにやはりそういうふうにもいかない。しかしそれだからといって財政法等に違反することを認めておるわけではない。違反せぬ範囲内においてこれをやっておると考えます。
  143. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、それは違いますよ。全然目の違うものを他に移用したならば、これは刑法上の問題になるでしょう。交際費は交際費、調査委託費は調査委託費として組まれたらいいのです。これは外務省などではわざわざ八億近いものを交際費に組んだらよいのです。それから今公安調査庁の方では三十一年の決算についての活動費は出せますか、出せませんか。内訳についてはどうなんです。
  144. 藤井五一郎

    ○藤井(五)政府委員 公安調査庁の活動費の使途についての、具体的な内容についての受け取りは、すべて法規に基いて徴収しておりますが、この内容は調査の秘密に属することでございますから、遺憾ながらこの席で申し上げることは遠慮させていただきとうございます。御了承を願います。
  145. 横路節雄

    横路委員 あなたの方で秘密だから容赦してくれと言うが、私の方では出してもらいたい。出せないという法規があればそれを言ってもらいたい。こういう法規があるから出せませんと、それならわかるが、秘密だから何とか勘弁してくれというのではできない。出せないという法規があるならば出せないと言ってほしい。その法規の根拠を示してもらいたい。
  146. 藤井五一郎

    ○藤井(五)政府委員 職務上秘密の事項に関することでございますから、これは提出することはできません。
  147. 横路節雄

    横路委員 法規の根拠は何なんです。
  148. 藤井五一郎

    ○藤井(五)政府委員 今条文の何条かは忘れましたが、公務員法に規定があるはずでございます。
  149. 横路節雄

    横路委員 法務大臣、答弁ありますか。
  150. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいま長官からお答えのありました通りでございまして、これは職務上の秘密に関することで、これを一切申し上げますることは調査活動に支障がございまするから、長官といたしましては公務員法に基いて職務上の秘密だから申し上げられないということを申しておるわけであります。これは今公務員法に明らかに、公務員は職務上知り得た秘密を申すことができないということになっております。条文は何条か今すぐ調査いたします。
  151. 横路節雄

    横路委員 法務大臣、公務員が知り得た秘密については、それは公務員法によってできないということもあるでしょうが、これは国の予算なんですよ。国の予算について、三十一年度の決算が確定したものについて、それに対して国会が出せというのに出せないという根拠は、そんな公務員法によるところのものではないのです。何によって出せないのですか。今秋は、三十一年度の決算の確定したものについて、三十三年度の予算審議するのに必要があるから出してもらいたいと言っている。これは何もあなたばかりではないのですよ。今みんなおるのだから、外務大臣にも官房長官にもみんな関係があることでは、私は要求しようと思う。出せないという根拠は、それは何ですか。
  152. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいまのお尋ね、決算報告という意味でございますれば、私どものお答えが誤解をしてお答えをしておったわけでございまして、先ほど藤井長官の申し上げましたのは、昨年度の三億円、あるいはそれ以前の調査活動費の支出された内訳の詳細についてお尋ねと、かように心得まして申し上げましたのでございますが、この調査活動がどういうふうに細分されてどういうふうに使われたかという内容になりますと、これは職務に関する秘密でございまして、申し上げかねるということを申したのでございます。
  153. 横路節雄

    横路委員 法務大臣、三十一年度決算の内容なんです。それをあなたの方では公務員の知り得た秘密だから出せないと言っても、あなたの方ではみんなとっているじゃないですか、ちゃんと会計検査院が行ったときに、ほんとうに支出したかどうか見せろという場合には何年何月何日だれに幾ら支出したとあるのです。それをなぜ集計して出せないのです。なぜできないのです。情報提供費一件幾ら、それが何百件、一件幾ら、それが何千件、それが合計幾ら、そういうことが出せないのですか。どうなんです。それまでが秘密ですか。
  154. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 これは程度の問題でございまして、会計検査院に全部これは報告して、会計検査院の会計法に基く審査を受けております。その内容についてどこまで発表するかという問題でございますけれども、公安調査庁の立場といたしましては、これは調査の秘密でございまして、調査に支障を来たしまするから、その内容について発表することは職務上の秘密で困る、かように申し上げておるのでございます。
  155. 横路節雄

    横路委員 法務大臣、あなたの方は、委員会が決議された場合にあなたは拒否できますか。予算委員会で決議をしてあなたに出せ、こうなった場合にあなたは拒否できますか。もしも拒否できるとすれば何で拒否なさるのです。
  156. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 この点は非常に法律的な問題になりますから、いずれ法制局長官からお答えをいただきたいと思いますが、私の存じております限りにおきましては、委員会の決議がございますれば、一応内閣に諮って、内閣がもしそれを発表することが適当とすれば発表しなければならない、もしそれが国家の重大な利害に関係するとすれば、それを声明して発表しないでよろしいという制度になっておると私は存じておりますけれども、その正確な点は法制局長官からお答えをいただいた方がいいと思います。
  157. 林修三

    ○林(修)政府委員 結局今の問題は国会法第百四条の「内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求め」るという問題だと思います。御承知通り国会法第百四条は議院としての権限だと思うのでございまして、議院として御要求があればまさにこの百四条にひっかかって参ります。ただしこれにつきましては、ここには直接の条文はございませんが、ただいま法務大臣からお答えがございました——議院における証人の証言に関する法律、これでは国家の重大な秘密に関するものは内閣の声明をもって場合によっては拒否できると規定してございます。証人でさえこれについてのこういう規定がございます。国会法百四条も同様の趣旨に解釈し得るもの、かように考えております。
  158. 横路節雄

    横路委員 それならば私は政府に要求します。私は議員として、この三十一年度決算についての公安調査庁の長官の活動費、それから私が指摘した各省の報償費について出してもらいたい、出せないというならば、今あなたが言ったように閣議を開いて、そうして十日以内に声明書を出してもらいたい。
  159. 林修三

    ○林(修)政府委員 私が申し上げましたのは、国会法第百四条を申しました。これは御承知のように議院と申しますのはハウスという意味であります。院の決議で御要求があれば御要求に従う、さように御了承願います。
  160. 横路節雄

    横路委員 私は今の点、外務大臣にお尋ねしておきます。あなたのいわゆる報償費は、三十一年度決算について出せませんか。今と同じように私も秘密があるから出せない、官房長官も秘密があるから出せない——法務大臣は秘密があるから出せないと言われましたが、私は外務省やその他についてはあまり秘密がないだろうと思うけれども、それも出せないなら出せないと言って下さい。
  161. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 外務省においては秘密がそうあると思いませんが、内閣の方針に従って善処いたします。
  162. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 内閣といたしましては法律の解釈は法制局長官の申し上げた通りでございます。  それからただいままで各大臣が言われましたことと私の見解も同様でございます。
  163. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは過去においても問題になったことかと思うのでございますが、御承知のように、委員会における御要求あるいは委員会における議員の御要求については、もちろん政府といたしましては、御要求の趣旨に沿える限りは、従来法規をたてにとってどうこうということは申しておりませんので、事実上なるべく御要求に沿うように取り扱っておったことは御承知通りであります。ただ問題が今申したような問題であり、ぎしぎしと法律はどうだということになれば、さっき申し上げたようなことになる、こういうふうに申し上げたわけであります。
  164. 横路節雄

    横路委員 そうすると今の法制局長官の答弁で、私は委員として三十一年度決算の公安調査庁の長官の活動費その他報償費について出していただきたい。これは今に始まったことではないのです。もしも政府側で、いやこれは出せない、しかし秘密会に付するならば政府としては全貌を明らかにするとかなんとかいうならば別だけれども、これは前々からの問題なんです。だんだんこの費用が減少すればともかく、ふえてくるのですから、そういう意味で私は、わざわざ法制局長官委員の要求があれば当然出すべきだと言うから、私は出していただきたいということを委員長にお願いをしておきます。
  165. 江崎真澄

    江崎委員長 承わりました。(「確認しておけ」と呼ぶ者あり)
  166. 横路節雄

    横路委員 次に長官は……。
  167. 江崎真澄

    江崎委員長 法制局長官から発言を求められております。
  168. 横路節雄

    横路委員 今あなたはわざわざ訂正というか、補足して……。官房長官が一括して出すか出さないか——私は委員長政府側に出すことを要求することを要求しておけばいいでしょう。
  169. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 先ほど申し上げましたように、法律的な見解は法制局長官の申し上げた通りでございます。それからただいまのところ報償費というものの性格にかんがみまして、私はこの内容を全部公表するということはできないということを遺憾ながら申し上げます。
  170. 江崎真澄

    江崎委員長 この際関連質疑の申し出があります。これを許します。柳田秀一君。
  171. 柳田秀一

    ○柳田委員 先ほど法制局長官は、国会法百四条でもって院はハウスだと言うが、百四条はハウスだけじゃない。各議院の委員会も入っておる。「各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。」、ここにはっきり出ている。だから、私は委員会としてただいま横路委員の要求しました資料を全部出されることを要求いたします。法制局長官は法律の解釈だけだ。私は委員長に要求している。あなたはそんなところに手を出す必要はないのだ。私は法律の解釈に基いて国会法に基いて委員長に要求している。あなたは勝手に手を出して何ですか。あなたに要求したのではない。法律の解釈に基いて百四条に基いて、この委員会から内閣に対して今横路委員の言ったような資料を全部出されることを要求している。あなたは要らぬことを言ってはいかぬ。
  172. 江崎真澄

    江崎委員長 今の百四条の解釈のあり方について法制局長官からもう一度答弁をしたいということでありますから、これを許します。
  173. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまの百四条と衆議院規則の関係は、おっしゃる通りに、衆議院規則にそういう規定がございます。しかし衆議院規則はあくまでこれは院の御委任できまっているものと思いますが、法律の上から申せば、議院ということになっておる。政府に拘束のあるのは実は法律でございます。法律で議院の方から特別にこういうことを御委任になって御要求があるということになれば、また別問題でございますが、法律の建前はあくまで議院、つまりハウスの決議ということになっております。ハウスの決議があれば、先ほど申し上げましたような意味において、政府としては拘束力を受ける、かように考えております。委員会関係のことにつきましては、今までもちろん政府は十分御協力を申し上げ、個々の議員の方々の御要求に対しても、もちろん資料の提出はいたしておるわけでございます。しかしいろいろな問題で差しさわりがある、秘密でできないというような問題になれば、さいぜんから申すように、最後は法律の問題になるわけであります。
  174. 江崎真澄

    江崎委員長 それでは今の柳田君の質疑に関連しての御要求ですね、これは委員長に一任をされておる形でありますから、後刻開かれます理事会において御協議することにいたしたいと思います。
  175. 横路節雄

    横路委員 防衛庁長官にお尋ねをいたしたいのです。実はこの間予算の分科会で質問しまして資料の提出を要求しましたところ、出していただきましたが、これによりますと、今防衛庁が考えている防衛計画昭和三十七年度で大体完成をする。その完成をするときの数字は、陸上自衛隊が十八万人、それから平服職員が一万五千、それで十九万五千、それに予備自衛官がたしか一万五千、それで二十一万。海上自衛隊については、警備艦艇八万四千トン、掃海艦艇一万六千トン、海峡港湾防備一万三千トン、その他一万一千トンで十二万四千トン。それから航空自衛隊については迎撃戦闘部隊が二十七隊、偵察機隊が三隊、輸送機隊が三隊、計三十三隊で九百機、練習部隊が第一操縦学校、第二操縦学校、第三操縦学校その他で約四百機、合計千三百機、これが昭和三十七年度に完成ををする。そこでこれの人員については、海上自衛隊は三万八千四百二名、航空自衛隊は三万六千八百一名。そこで今の自衛隊を見ると、大体昭和三十八年の四月一日からは人員は二十八万五千人と、こうなるわけです。そこで私はあなたにお尋ねをしたいのは、この陸上自衛隊十八万はこれからふやすのかふやさないのか、この点はどうなっているのですか。
  176. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。陸上十八万に増加するということは、一応の整備目標として国防会議において決定を見た数字でございます。実際の問題になりますと、各年度の状況または国情、国力その他財政の事情を勘案してこれを実行する、こういうことが基本的の方針になっておるのでございます。さしあたり三十三年度においては一万の増勢を計上しました。あとの一万をいつやるかということは、これは一応目標として十八万にしようということが決定を見たわけでございます。こういうわけでございまして、その時期その他については財政その他と見合ってあらためて個々の年度に決定される、こういうことに相なっておる次第でございます。
  177. 横路節雄

    横路委員 陸上自衛隊は来年一万人ふえるかどうか、あなたは今わからぬと言うが、私もそうだろうと思う。しかし岸総理が去年アメリカに行かれたときは、三十五年の終りまでには陸上自衛隊を十八万にするということですから、これは来年するか再来年するか別ですが、私はあなたにお尋ねしたいのは、国の財政との関係で今の志願制度では私は十八万以上は困難でないかと思う。あなたはどう思っているのですか。二十万までは陸上自衛隊は今の志願制度でやれる、あるいは十九万までならいいのだ、そこら辺のことはどう思っているのですか。財政との関係で全然無関心ではあり得ないはずです。
  178. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問は二点あったと思います。一つは募集の関係において十八万以上は可能であるかどうか、こういう問題と、財政上十八万以上は可能であるかどうか、こういう問題、二つあったと思います。十八万以上にするかどうかということについては、何ら決定したものがないのでございます。十八万までは一応の目標としてきまっておる。この程度ならば募集には相当の困難あると思いまするが、可能な限度である、こういう見通しを持っております。また財政上の問題は、十七万人の予算については、三十三年度はすでに御審議を願っておるわけでございます。あと一万についてどの程度の経費がかかるか、その他の問題は今後検討されるべき問題でございまして、これは財政全般と見合って決定さるべき問題だ、こう思っております。
  179. 横路節雄

    横路委員 私も長官は大体そういうお考えだろうと思う。今の募集制度、志願制度では十八万が限度である。私もそう思います。そうすると、十八万をこえるということになると、志願制度、募集制度ではできない。従ってその段階に来れば徴兵制度でやる以外にはない。こういうように今あなたは私どもが考えている陸上自衛隊のあれと大体同じです。私も大体あなたはそう答弁するだろうと思ってお聞きしたら、そう答弁したから次に移りたいと思います。今あなたはそう答弁した……。
  180. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ちょっと補足します。ただいまの私の答弁について多少誤解があったように思いまするから、一応補足的に説明をいたしておきます。ただいまの答弁は十八万以上は困難であるから、何か他の方法を講じなければ不可能であるというようなことに了解する、その点に私は触れておりません。十八万の目標に対しては、これが募集の関係においては可能である——限度とは申しません。もしあればそれは補足してただいま答えておきます。十九万は不可能であるというようなことは申し上げません。これはやるかやらぬかというようなことは別でございます。十八万は可能である、こういうことだけを申し上げた次第でございます。
  181. 横路節雄

    横路委員 長官にお尋ねしますが、やはりこの防衛費というものは国の財政上非常に大きな地位を占めているのです。私は前に木村さんが防衛庁長官のとき、大体二十万になれば、それはやはり今の志願制度ではだめだと率直に言っておるわけです。長官はどうですか、今の国の財政その他国民の所得のふえ工合等からいっても、なお陸上自衛隊は十八万をこえても志願制度で——志願制度でいくということは俸給を払うことなんです。ことし現に私は調べてみたが、俸給だけで四百六十億払っていますよ。今あなたの方で出された計画によると、これだけで俸給費は約八百億になりますよ。だから私はあなたに聞いているのです。今あなたは、十八万は限度だとは言わないで可能だと直されましたが、一体志願制度というものの限度はどうなんです。そういうことは考えたことがあるのですかないのですか、長官にお尋ねします。
  182. 津島壽一

    ○津島国務大臣 十八万以上の場合については想定いたしておりません。従って今後の情勢で、果して募集が最高限度どこまでいくかという見通しは立っておらぬわけでございます。従って二十万になれば不可能であるということを断言するのも、あるいは時期尚早であろう、こう思っております。
  183. 横路節雄

    横路委員 長官にお尋ねしますが、この海上自衛隊の装備の計画というものは、もちろんあなたの方では海峡、港湾の防備等もございますが、実際には甲型警備艦その他は船団の護衛が主たる任務です。船団の護衛はどこまでが可能な範囲なのですか。いわゆる海上輸送が危険な状態に立ち至った場合を想定して、甲型警備艦その他を用意されている。その任務は船団の護衛なんですが、輸送船団の護衛というのは、どこまでが海上自衛隊の護衛する範囲になっているか。まさか遠くサンフランシスコまで行くわけじゃないでしょう。どこまでになっていますか。
  184. 津島壽一

    ○津島国務大臣 現在の十二万四千トンの海上自衛隊の計画においては、日本の近海、ある一定の距離というものについて、外航船団の護衛が可能である、こういう建前になっておるわけでございまして、従って仰せのごとく、ごく外洋を離れて船団の護衛が可能であるということにはなりません。ただ護衛船団の数を非常に少くすれば、あるいはこの船でもって遠くの距離に行くということも可能である。これはその場合々々に応じて検討さるべき問題である、こう存じております。
  185. 横路節雄

    横路委員 防衛局長にお尋ねしますが、今長官はあまりよく御存じないのかもしれませんが、船団護衛の場合の海上自衛隊の範囲ですが、どこまでが限度ですか。ただ近海だ近海だと言っても、近海にも限度がある。これはどこまでが限度ですか。そういうものがしっかりしていて、おそらく十二万四千トンの艦艇の計画が立っておると思うのですが、防衛局長にお尋ねします。
  186. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 お答えを申し上げます。十二万四千トンの中の甲型の警備艦艇の今の比率をもってしますれば、これは大臣のおっしゃる通り運用の仕方でいろいろあるわけでございますが、一つ考え方といたしましては、分散してやれば短かい距離にいきます。一つのルートでしぼって考えますれば、三千キロぐらいまでのところは相当量の護衛ができるということであります。
  187. 横路節雄

    横路委員 わかりました。大体今防衛局長の答弁で、護衛船団、警備艦のそれは三千キロメートルぐらいまで。そうなると大体パラオとかサイパン、その辺ぐらいまでは船団護衛の海上自衛隊の責任の範囲になるわけですね。おそらくアメリカの艦隊がパラオかサイパンまで持ってきて、危険な状態の場合に海上自衛隊が護衛をしていく、そういうことになるのですね。まさかまっすぐ日本船団がサンフランシスコや向うまで護衛にいくわけじゃないのでしょう。そういう意味ですね。
  188. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 三千キロと申しますと大体サイパンくらいではないかと思います。それもしぼった場合でございまして、運用によっていろいろ貨物の量をふやしますればもっと短かい距離になると存じます。
  189. 横路節雄

    横路委員 次に、これも長官にお尋ねするより、だんだん時間もなくなりましたから局長にお尋ねして、あとで長官にお尋ねしますが、P2V、対潜水艦の哨戒機ですね。これは同じように私はやはり哨戒する範囲があるだろうと思う。この点私どもいろいろな調べによりますと、大体グアム島までは日本のいわゆる今度供与されているP2Vの対潜哨戒機十機、やがて生産で上ってくると四十二機、これの日本の危険な状態の場合における哨戒の範囲である。こういうように言われておるのですが、そういうように了解しておいていいですか。
  190. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 P2Vの性能でございますが、航続距離が六千五百キロメートルくらいございます。私どもが今考えております能力といたしましては、P2Vの能力をもちまして、周辺約三百海里くらいの哨戒を一日三回実施し得る、こう考えております。これは全力を上げた場合でございまして、そのうち内航、外航の護衛に振り向けますればそれによってまた変ってくると思います。
  191. 江崎真澄

    江崎委員長 横路君にちょっと申し上げますが、既定の時間がきておりますから結論にお入り願います。
  192. 横路節雄

    横路委員 次に外務大臣にお尋ねしますが、大体外務大臣の専門外のことになって恐縮ですが、今まで日本が防衛援助協定によってやって参りましたF86Fの第三次生産が、大体来年の六月には終る予定なんですね。そこで当然三月の終りまでには新たにF100かF104の超音速のジエツト戦闘機についての契約を防衛援助協定でやるという。調印をなさるのはあなたの責任ですが、それはそうですね。三月末までに機種をきめておやりになるのですね。これは外務大臣が調印なさるのだから聞いているのです。
  193. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 防衛庁の方針並びに国内における軍事生産の方針がきまりません現在の段階において、三月末まで待ってみなければやるかやらないかということについては私申し上げかねます。
  194. 横路節雄

    横路委員 これは三月の終りにおやりになるのでしょう。大体一台の価格は三億二千万、防衛庁が要求しているのは三百機、日本とアメリカとの比率は五十対五十で五〇%ずつ、完了は三十八年の六月、これは第三次のF86Fのジェット戦闘機の国内生産が完了すると直ちにやる。そこでこれは大体一年半くらいに準備がかかるので、従っておそくもこの三月の末には、相互防衛援助協定によって調印しなければならない。もちろん今のお話のように、F100かF104か、機種については問題がありましょうが、これはそううことになっていましょう、三月末までに。あなたの方の計画はどうなんです。
  195. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問は、ただいま生産中のF86Fのあとに次ぐべき新戦闘機の問題であったと思います。これはただいまいかなる機種を選ぶかについて鋭意検討を重ねておるところでございます。なるべく早くきめたいと思っております。しかしながら新機種は三十五年度において生産さるべき予定でございまして、必ずしも本年の三月末までに米との援助協定に基く契約に調印する必要はないのでございます。その意味においてはなるべく早くきめたいと思いまするが、その必要という意味が、三月末に決定する必要がある、こういうことには相なっておらぬ次第でございます。
  196. 横路節雄

    横路委員 防衛局長にお尋ねをしますが、サイドワインダーの購入がきまって、予算が五千四百三十万ですか、組んであるわけです。そこで、伊豆七島の新島には御承知のように、あなたの方で計画されているスイスのエリコン社からエリコン、これは総額で、全部あれを入れて三億三千九百二十八万で、これを入れるようになっておる。私があなたにお尋ねしているのは、去年政府の方ではフアルコン、スパロー、ナイキ、テリヤ、ボマーク、タロス、オネストジョンを要求した。ところが去年は、これはいわゆるMSA協定の秘密保護法でなしに、新たなる秘密保護法ができなければ出せない。こういうことで去年は断わられたのだが、サイドワインダーについては、これもやはり私は秘密に属すべきものだと思うが、これがいわゆる有償、金を払う一つの有償援助ということに、あなたの方ではなると思う。そこでこれは日本に来た。ところがあなたの方で要求したフアルコン、スパロー、ナイキ、テリヤ、ボマーク、タロス、オネストジョンというものは来ていないのだが、なぜサイドワインダーが来てこれらが来ないのか、その間の事情を明らかにしてもらいたい。できるだけ簡潔にやって下さい。
  197. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 今御指摘になりました七種類の誘導兵器は、われわれの方で研究開発用として要求したのでございます。ただいまのサイドワインダーは、研究開発用ではございません。装備用として向うの方で有償援助を決定してくれたわけでございます。
  198. 横路節雄

    横路委員 そうすると、防衛局長にお尋ねしますが、サイドワィンダーは有償援助、そのままこれはF86の下へつけるのだ。だからこれはMSA協定の秘密保護法でいいのだ。そうするとフアルコン、スパロー、ナイキ、テリヤ、ボマーク、タロス、オネストジョン、これも研究開発用でなしに直ちに、これはF86でなしにF100になるかF104になるかは、当然あなたの方でやるわけです。その場合にこれを要求されて、それが研究開発用でなしに——研究開発用ということになれば、おそらく部分を全部解体するのだろうと思う。部分を解体するから秘密に触れるという。そのまま来ればMSA協定の秘密保護法でいいのだというので、もしもこれが研究開発用でなしに、それが即時使える、こういうことで向うに援助の要求をした場合には、来る可能性はあるわけですね。これはどうなんです。  もう一つ、そのことと、サイドワインダーやエリコンはあなたの方で入れる。この段階からいけば、当然あなたの方では、去年の二月向うから断われているが、この七つについてはやはり要求し、また援助されることを私は期待しているだろうと思う。その点について御答弁していただきたい。防衛局長の方がいい。
  199. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 七種類の誘導兵器につきましては、サイドワインダーとの比較を考えてみましても、私ども詳細なことはわかりませんが、秘密の程度に相当相違があるんじゃないかと思います。ただ米国の方も、最近誘導兵器類の発達が非常に早いのでございますから、向うの方で秘密の程度をどういうふうに考えるかということによりまして、供与するかどうかということがきめられると思います。  それから、依然として七つの誘導兵器の供与を期待しておるかということでございますが、この前の政府の御説明のごとく、七種類の誘導兵器につきましては、研究開発用として依然向うに申し入れがつながっておるわけでございます。
  200. 横路節雄

    横路委員 してあるわけですか。
  201. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 してあるわけでございます。
  202. 横路節雄

    横路委員 防衛庁長官にお尋ねしたいのですが、F86よりもさらに進んで、F100かF104機種はどちらかにきまるでしょう。それから今防衛局長から言われたように、七種類についてはやはり要求し期待しているわけです。これは全部誘導弾で、こういうものがそれぞれつけられるようになっていく計画であろうと思う。今サイドワインダーが入った。今度はエリコンが入ってくる。これは地対空です。それから今防衛局長の言うように、七種類については要求している。また膨大な研究開発費も持っておるということは、やがて昭和三十七年度末に完成するF100かF104等を中心にする千三百二十機、戦闘機九百機ということになれば、当然この誘導弾が主たるものになる。これだけの超音速のジェット戦闘機に、火砲を積んでもしようがないのですから、その点はそうなるでございましょうね。そういう計画のもとに、この千三百二十機の中の九百機についてはF100かF104を主体にしてお作りになった。まさか火砲を積むのじゃないと思う。そうでございましょう。
  203. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。戦闘機の装備については、極力その性能を上げるために、サイドワインダーのようなものを装備したいという希望は持っております。しかしながら、ただいまお話しの、全体の戦闘機に何らかの誘導兵器を装備するかという問題は、いまだ決定しておらぬ問題でございます。ただF86Fにつきましては特に上昇距離の関係その他において、単純の機銃では防備に事欠けるものがあるというので、サイドワインダーを要請する、こういうことにいたしました。なおこれらの誘導兵器の装備ということは現在の戦闘機においては、そう困難な操作をする必要はないという実情でございまして、そのときに決定してそれがつけられなくなる、こういったような事情はないと心得ております。
  204. 横路節雄

    横路委員 長官、F86Fはアメリカが朝鮮戦争のときに使ったあのお古なんです。それで、これらも火砲はだめでサイドワインダーをつけるわけですね。F100ないしF104というものは、このF86Fとは比較にならない。もう火砲は積めない、積まない、全部誘導兵器になる。誘導兵器というけれども、これはミサイルですね。ただ、ここで総理が何べんも答弁しているように、それは核弾頭はつけないのだ、通常弾頭だと、こう言っている。今度アメリカは、今度の国会に対してアイゼンハワー大統領は、対外援助に関して三十九億ドル、軍事援助十八億ドル、その中には近代兵器、全部ミサイルですね。二十日の東京新聞にこういうことが出ている。私はこれを見て非常に驚いた。自民党の国防部会で、十九日の朝、岸首相との懇談会で、こういう文書を提出した。その中にたくさんありますよ。その中にこういうこともある。「敵機が高空超音速で大量、集団的に侵入した場合、また敵が核攻撃を加えてきた時、特に敵が弾道弾や誘導ミサイルなどで相当の距離を直接攻撃してきた時は防御用ミサイルでは防御困難であり、アンチ・ミサイル・ミサイルが相当進歩するまで敵ミサイル基地をたたく以外に効果」はないのだ。これは実に勇敢な自民党国防部会の発表だと私は思う。実に勇敢ですね。自民党が今までのように、海外に派兵するとかしないとかいう問題でなしに、いよいよもってミサイル基地をたたくのだ、それ以外に防御の方法はないと言う。長官もやはりそういうお考えですか。
  205. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答え申します。これはしばしばお答えしたと思いますが、防空の関係においては、日米安保条約の規定によりまして、わが方とアメリカとの共同的の措置によって対処したい、こう考えておる次第でございます。わが航空機はわが上空を防備し、敵の領空といったようなものを防いでいくという建前になるかと思います。そういった意味における共同的の措置ということは、当然万一の場合にとられる次第でございます。
  206. 江崎真澄

    江崎委員長 横路君、簡潔に願います。
  207. 横路節雄

    横路委員 長官に伺います。いよいよ超音速のジェット戦闘機の国内の生産が開始される。それには全部誘導兵器、ミサイルが搭載される。その頭には核弾頭がつけられるのです。それをただ通常弾頭でやろうと、こう言うだけです。私はあなたの方で何べんも答弁しているように、絶対核兵器は持ち込まないのだ、こう言っても、核弾頭をつける装置があるのですから、ただつけるかつけないかだけで、核弾頭にいつでも切りかえられる。そういう小型のミサイルがずっと装備されたときに、いかに政府の方でこれを拒否されても、やはり核弾頭をつけた核兵器というものが実際に自衛隊の根幹をなすときが、私は来るだろうと思うのです。  それからもう時間がありませんから、防衛局長にお尋ねしておきますが、先ほど大蔵大臣から井手委員の質問に対して、国民所得についてはだいぶ何か間違った答弁があったように、私はうしろで聞いておったのですが、私どもの判断でいけば、六・五%ずつ国民総所得がふえていけば、三十七年には大体十兆七千億くらいになる。私は予算の第一分科会で防衛庁の方に尋ねたら、防衛予算国民総所得の大体二%を要求している、こういうわけですね。そうすると十兆七千億に三十七年度になった場合における防衛費は、その二%ですから、二千百四十五億くらいになる。私の計算に間違いがないかどうか。その点一つお尋ねしておきます。
  208. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 国民所得の伸びにつきまして、資料を持っておりませんので、これは横路先生の御説明の通りたと思います。ただ私があのときに申し上げましたのは、防衛予算見通しが立たないということに関連をいたしまして、それはなかなかむずかしい問題でありますけれども、大体国民所得の二%くらいということを目標にして要求をしていきたいということを申し上げたわけでございます。
  209. 横路節雄

    横路委員 長官、実は予算の第一分科会で答弁があったのです。二%ということであった。六・五%ずつの伸びを経済企画庁では見ているのだから、三十七年度の国民総所得は十兆七千億くらい。だから二%かければ二千百億で、だから三十七年度の防衛庁の予算は二千百四十五億くらいになるだろう。要求しましたこの資料に合せて計算するとそうなるのです。  時間がありませんから、続いて副総理にお尋ねいたしますが、実は公職選挙法に衆議院並びに参議院の国会議員の選挙については国と請負契約をする者から金をもらってはならぬ、寄付をしてはならぬとなっておるわけです。また罰則規定があるのです。地方公共団体の選挙についても、地方公共団体と請負契約する者は、地方議会の議員並びに長に立候補する者については寄付をしてはならぬとある。それを受けておるのだろうと思うのですけれども、地方自治法の中には、明確に、地方公共団体と請負契約をする者については議員たる資格はない、長になる資格はないとある。こういうので、地方自治法の改正があったためにやめさせられた。これは公職選挙法の適用もあろうと思うのですが、私は副総理にお尋ねしたいのは、国会議員はどうなんです。地方公共団体の議員については、地方公共団体と請負契約をする者は議員をやめろという。国会議員たる者が国と請負契約をする会社の責任者になっていいのでしょうか。これはどうでしょうか、地方公共団体の方だけは罰をもってやっておいて、国の方だけは逃げ道を作ってあるのでしょうか。私は公職選挙法の適用からいけば、これは道義的に国との契約はやるべきでないと思う。この点、総理がおいでになりませんから、副総理からお伺いしたい。
  210. 石井光次郎

    石井国務大臣 この問題は一律には判断できない問題と思うのでありますが、私は国会議員がそういう国と直接契約をするような会社の責任者になっている場合、これは原則としてその人その人の責任で考えて、それが適当であるやいなやということは、最も良識の発達している国会議員でありますから、その人の考え方できめるべきものだというふうに了承しておりますし、また政府の側から申しますと、国家に関します仕事の請負等を頼む場合には、御承知のように原則は競争入札であります。その場合においてその資格等がはっきりいたしておりまして、皆の大っぴらに見ている中でやることでございますから、これらについて私は今までいろいろな問題について考えまして、北海道の場合等も考えましても、あまりこれによって悪声を放たれたという例も聞いてないのでありまして、これは自分の良識による判断に待ちたい、こういうふうに思っております。
  211. 横路節雄

    横路委員 私は副総理にお尋ねしますが、地方公共団体についてはそういう適用をされている。議員たることができなくてやめたのです。あなたは良識に待つと言うけれども、私は政府としては好ましいか好ましくないかは答弁できると思う。私は全国に相当あると思う。そういう方が民間の会社と請負契約をすることは、それは当然ですよ。しかし国との請負契約をするということはどうなんでしょう、これは好ましくないとかなんとかいう場合ができるだろうと思う。その人の良識による判断に待つべきだという答弁では、地方議会の議員についてはそういう規定を設けておるし、矛盾でありませんか、どう思いますか。ただ好ましいか好ましくないかということです。
  212. 石井光次郎

    石井国務大臣 ちょっと簡単に言えないので、国の方の側として契約をそういった場合にするのは、今申し上げましたように競争入札が原則でございますから、競争入札によっては、一番安くて、そして一番正しくやっていくというところにおろすのでありますか ら、むしろ国会議員であろうとなかろうと、それを優先的に扱うということはないのでございます。これで大っぴらに皆の前でやれると思う。かりにまた指名入札の場合もあるのでございますが、これは建設業法で業者の登録が実施されておりまして、その人の経験、能力等を一般に認められた者に対して、中へ入れるということにしておりますのでありますから、不公正なことが行われることは、皆の見ているところでありますから、ほとんどできないと思う。私はさっき申し上げましたように、その人たちの考えによりまして、国と契約することは、自分は国会議員だからしない方がいいとお思いになればおやめになるし、自分の方の会社はほかの者よりも安く、そうしてりっぱにして国のためになるのだという御判断で競争入札等にお入れになれば、これもかまわない、かように私は思っております。
  213. 横路節雄

    横路委員 副総理にお尋ねしますが、地方公共団体はそれじゃなぜやったのです。なぜ政府の方で地方自治法の改正をしてやったのです。地方議会の議員は悪いやつなんだ、必ず地方団体の長をおどしつけて談合をやるに違いない、だから地方自治法の改正をやって全部やめさしたのだ……。おかしいじゃないですか。あなたは地方議会の議員はみな悪いやつだ、こういうのですか。それはおかしいじゃありませんか。あなたの説からいえば地方議会の議員だってやれることになるのが当然じゃありませんか。どういうのです。石井さんのお話からいうとおかしいことになるのですよ。
  214. 石井光次郎

    石井国務大臣 私は地方の議員諸君が危ないから押えておくとかどうとかいう問題とは思っておりません。そういう規定ができております。それならば国会議員の方はどうだという問題になれば、これは国会議員そのもので、これを考えてやっていけば、私は地方と同じような状況になるとは思わないのであります。
  215. 横路節雄

    横路委員 石井さんにお尋ねしたいのは、政府はどうなんですかとお尋ねしているんです。あなたたち国会議員がそんなら法律を出せばいいじゃないか、法律できまったらその通りやればいいじゃないかと言うのでは、私は答弁にならぬと思う。政府の方のお考えはどうなんですかということを私は聞いておるんです。
  216. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまお答え申し上げた通りでございまして、私どもは、政府といたしまして今どうということは考えておりません。
  217. 横路節雄

    横路委員 これで終りますが、ただ最後に副総理に、いろいろ関係もあって、そういう御答弁をなすったんだろうと思います。それは私もわかります。副総理もいろいろな御事情があってそう答弁されたと思いますが、これは片手落ちですよ。もしそうであるならば、地方自治法をもとに戻して、地方議会の——長はおかしいですが、地方議会の議員はもとに復させるか、そうでなければ国会議員についても同様にするか。そうでなければ私は法律上おかしいと思うし、公職選挙法との関係からいってもおかしいと思う。ほんとうは、時間があれば、こういうときにこそ法制局長官に聞いた方がよろしいと思うが、この点は石井さん、私はあなたがそういうふうに答弁せざるを得ない立場はわかりますよ。だけれども、せめてあなたから、好ましくないのだ、こういうお答えがあるものと私は期待しておった。やはりお答えはできませんか。——じゃ、これで終ります。
  218. 江崎真澄

    江崎委員長 休憩中理事会を開きますから、理事の方はお残りを願います。  午後二時二十分より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後一時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時五十四分開議
  219. 田中久雄

    ○田中(久)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。春日一幸君。
  220. 春日一幸

    春日委員 私は第一番に中小企業関係の諸問題について通産大臣にお伺いいたしたいと思います。  まず第一番に、政府はさきに施行されました中小企業団体の組織に関する法律を、いつごろ実施する御決意であるか、まずこの点を明らかにしていただきたい。
  221. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 御承知のように六カ月となっておりますが、これは早急にやらなければならぬ問題だというふうに考えておりまして、ただいまのところ四月一日を目途として、鋭意いろいろ法制局で準備をいたしております。
  222. 春日一幸

    春日委員 重ねてお伺いをいたしますが、四月一日に必ずこれを実施することができますか。
  223. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただいまのところ法制局が非常に込んでおるのですが、三月に入りましたらいろいろな政令の制定の準備ができると思いますから、大体四月一日には施行できるものと思っております。
  224. 春日一幸

    春日委員 この法律は申し上げるまでもなく臨時国会まで召集をいたしまして、特に早期に成立をはかる必要があるというので、第二十七回臨時国会において成立をした法律であります。法律には六カ月以内とありますけれども、これは大体第二十六回通常国会において成立が期せられておったものでありますけれども、諸般の事情があって成立ができなかった。だといたしますれば、これをできるだけ早く実施することによって、中小企業者が当面いたしております諸困難を克服するの措置を講ずる政府の責任があると思うのであります。ただいま御答弁によりますと、四月一日を目途とされておる様子でありますが、できるだけすみやかにこれを実施されたい。  関連してお伺いをいたしますが、この法律は各条文の中に、政令にゆだねられておる場所が非常に多いのであります。特にわれわれが銘記しなければならぬことは、この法律は、政府が団体法原案を国会に提出をいたしまして、その後両党によって換骨奪胎と称しても過言でないほどこれを修正いたしました。従いましてそのゆだねられております政令案の内容というものは、立法者特に共同修正の責任を負った議会側において、重大な関心が持たれておるところであります。当時衆参両院における審議の過程において、これらの事柄が強く指摘されました。この政令なるものが国会の修正者たちの意思に合致するものであるかどうか、非常に懸念が持たれるのであります。従って政令案は、すべからくその発令前に国会にこれを内示して、そうして国会側の意思と調整をはかるべし、こういう事柄が当時強く強調されておったのでありますが、この政令案を国会に示し得る時期はいつごろであるか、この点重ねてお伺いをいたします。
  225. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 政令につきましては、かなり困難な問題はあると思いますが、もうすでに御承知のように要綱で趣旨はお見せいたしておる。大体三月十五日ぐらいを目途としてこれも努力はいたしておるのでありますが、特別にこれをお見せする必要があるかどうか、まだ政令案ができておりませんので、よく見てからにいたしたいと思います。
  226. 春日一幸

    春日委員 当時あなたもその答弁に立たれて御銘記があろうと思うんだが、とにかくこの団体組織法とそれから協同組合法とは随所に政令にゆだねられておりますので、従ってこの政令の内容というものが共同修正の責任を負うた国会側の意思に沿うものであるかどうかということは、これは非常な大きな問題であります。従いまして法律がゆがめられて執行されるようなことがありませんように、一つこの問題については万全を期していただくことを強く要望いたしておきます。  それから私はこの際特に申し上げておきたいのでありますが、この法律は非常にむずかしい段階がとられておりまして、たとえば法律が実施されますと、実施されてから中小企業安定審議会が結成される。結成されてから、この法律の第九条の不況事態というものがどういうものであるか、認定の基準をこの安定審議会が協議して、政府に答申しなければならぬ。答申を受けた政府はこれを判断して、そうして政府としての不況事態の認定の基準を策定し、これを公布し、そうして今度は不況事態が現存するとおぼしきそれぞれの業者団体からこれが申請されて商工組合の設立認可、こういう段取りになっておる。そういたしますと、四月一日に実施されても、現実に商工組合が結成されるのは相当の将来であることが考えられる。一方不況事態は一そう深刻化せんといたしておるのでありますが、こういうような法律の構成の実情等から勘案して、一体現実に四月一日にこの法が施行されて、この法律に基いて商工組合が結成し得るという日取りは、大体その後何カ月くらいの将来であるか、この点通産大臣の大体の目途といいましょうか、それを一つお述ベ願っておきたいと思います。
  227. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただいまお話しの通りのような手順を踏んでいかなければなりませんし、従って四月一日に施行いたしますとしましても、実際動き出すのは五月——まあ一カ月あるいは一カ月半かかるものと思います。
  228. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、この法律の施行は全国の中小商工業者が待望いたしておる事柄でありますので、特に本委員会における質疑を通じて明らかにいたしておきたいと思うのでありますが、四月一日に施行する、そうすると、あなたは大体一カ月の間においてまず中小企業安定審議会を成立せしめ、審議会は不況事態の認定の基準を策定し、答申をした場合、あなたはそれによって政府の態度を決定し、これを公布する、そうして申請を受理して商工組合が結成できるという日取りは大体五月一日ころである、かくのごとくに理解して差しつかえありませんか。そういうことが実施可能な状況において、諸般の準備を遂行できるか、この点あらためて御確答願っておきます。
  229. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 五月一日からというわけにいかぬかもしれません。五月の中ごろになるかもしれません。しかしこれは早急にやっていかなければならぬ問題でありますので、着々準備をいたしております。
  230. 春日一幸

    春日委員 それでは次に移りますが、第二十七国会で、この団体組織法と一体うらはらの関係をなす形において、中小企業等協同組合法が改正されました。しこうして、この法律によって零細業者のために小組合ができました。すなわち中小企業等協同組合法の中に、事業協同小組合という協同組織が新しくできました。二十三条の三は、政府はこの小組合の組合員に対して税制上、金融上特別の措置を講じなければならない、このことを政府に義務づけておると存ずるのでございます。従いまして、これらの零細業者に対して、政府は税制上あるいはまた金融上特別の措置をとらなければ相ならぬのでございますが、しかるところ三十三年度の予算において、あるいはまたその法的措置において、これに該当するとおぼしき施策が何ら講じられてはおりません、これは一体どうしたことでありますか。この点御答弁を願いたい。
  231. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 小組合の組合員に対する処置としましては、実はいろいろ研究いたしておりますが、困難でございます。従って今回、あの当時からすでに問題でありましたが、まああの組合員に該当されるような零細業者の方に対する措置を考えていきたい、こういうことで、実は事業税の控除額の引き上げとか、そういうこともいろいろ考えたのでありますが、御承知のように地方公共団体の財政上の関係もありまして、事業税は見送らざるを得なかった。むしろああいう零細な業者の方々に一番恩恵になります自転車及び荷車税の廃止というようなことを税制上考えたわけであります。  それから金融につきましてはこれもいろいろ検討中で、これはまた今後の国民金融公庫等の貸し出しにつきましても考えていかなければならぬ問題があると思います。しかしわれわれが今回考えました信用保険公庫、これは全く零細業者の方々に一番の適用が多いわけであります。さらにまたこの保険料率等につきまして、五十万円以下の保険というようなものにつきましては、保険料を一定額でやるというような、いろいろな考え方によって、零細業者の方々に特典になるようにというような配慮をもちまして、今度の保険公庫を創設したわけであります。
  232. 春日一幸

    春日委員 そういうばかげた御答弁はなさるべきではないと思う。  これは今自転車税、荷車税を減らしたと言われるけれども、自転車税というものは何ですか、零細業者が持っておるわけではない、農民に限定をして保有しておるわけではない。そうだといたしましても、こんなものは一年間に百円じゃないか。一年間に百円まけたことによって、この二十三条の三にこたえたとか、そんなばかげたことを述べられるべきではない。特に委員会における審議の過程において、この問題は特に重視されて、しばしば繰り返し繰り返し論議せられたところなんです。私はこの際大蔵大臣とも御一緒に、特にこの問題について——すなわち三十三条の三の、こういう零細業者に対して政府は税制上、金融上特別な措置を講じなければならないという、この法律の内容は何を示すものであるか、そしてまたこの法律が成立したならば政府は一体どういう決意を持ってその責任をとるか、こういう質問に対して、政府を代表した通産大臣は述べられておる、これを私はこの際速記録に基いて申し上げます。一つ大臣は十分御銘記を願いたい。すなわちこれは三十二年十月二十四日の参議院における商工委員会の速記録である。「中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案の第二十三条の三の趣旨につきましては、もとより政府としましては、極力その実現に努めたいというふうに考えておるのでありまして、政府が小組合の組合員に対して特別な措置を講じますことは、今までのいろいろ税制上の体系から見まして非常にむずかしい、いろいろ工夫をしなければならぬことが多いと考えております。」そういうふうに述べて、「あくまで政府といたしましては極力法文に従いましてその実現に努めたい所存でありますので、その点御了承願いたい」と、答弁をされておるのであります。従いまして私は今日零細業者たちがはなはだ重税と金詰まりにあえいでおる、だからこういうような人々、特にこういう人々——中小企業者の中でもなかなかいろいろな階層がある、今日の中小企業団体組織法に規定されておる中小企業の定義は、すなわち従業員三百人以下、商業については三十人以下といわれておるが、工業関係で三百人の職工を使っておる者と、一人の親方で旋盤を動かしている町工場のおやじと、これを同一の法律で処理するということは実情に適さないであろう、こういう立場から特に零細業者のこういう協同組織を作ったのである、こういうような人々には税が重い、金融がついていない、だから特別に中小企業の中でも、なかんずく零細業者のための特別な金融措置、税制措置、これを政府に義務づけておるのが二十三条の三である。政府はこれに対して極力善処する、そうしてこれの実現をはかると言っておるではないか。本三十三年度の予算の中あるいはまた法的措置の中において、これに該当する事柄が一つでもありますか。今自転車税をどうこうと言ったけれども、そんなことではないのだ、この点一つ御明確に願いたいと思います。
  233. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 小組合の組合員が非常に零細な業者で、こういう方に対して税法上並びに金融上の特別な配慮を加えてほしい、私はこういう規定であると承知いたしておるのであります。むろん春日委員の言われるように、だれもが深い関心を払わなくてはなりません。ところがまたなかなかれずかしい金融や、あるいはまた税の上においても、特別な計らいというものがなかなかむずかしい、これもまた春日委員の御承知通りであります。それでこれにつきましては、やはり私はできるだけ中小企業、特に零細な企業者に関連の深い金融機関について、その貸付資力を増すような配慮が金融上では必要である、かように考えまして、特に国民金融公庫の貸付資力を今回ふやしておるわけであります。なおこれは組合でありますから、商工組合中央金庫の資力もふやす。この双方は貸付限度で、今私、はっきり数字を覚えておりませんが、おそらく四百億くらいふえておりはせぬかと考えております。税については今後なお十分検討を加えなければならないと思いますが、今回は財源の関係もありまして、そう大規模の減税をいたしておりません。がしかし今回やりました減税は、すべて中小企業というものを対象にいたしまして、たとえば法人税の減税といえば、すぐ大企業の減税のように言われるのでありますけれども、しかし今回は特に軽減税率の適用範囲を同時に引き上げまして、所得百万円というものを二百万円までは軽減税率が適用できるというふうにいたしました。それから先ほどおしかりを受けたのでありますが、やはり私は自転車にせよ、荷車にせよ、これはほんとうに小さい組合等が一番関係が深い、そういうふうに私も考えて、これらの減税もやはりやる、その他今回の税は、相続税にいたしましても、従来問題になっておる農村中小企業の相続税を解決したと私は考えておるので、決してこういう零細な業者の状況を等閑に付しておるわけではありません。できるだけ政府としては努力をいたしておるつもりであります。
  234. 春日一幸

    春日委員 御答弁はできるだけ一つ簡単に、私は一時間三十分しか時間をもらっておりませんので、私の時間を食いつぶさないように頼みます。  そこで、私も簡単にお伺いをしなければならぬのだが、これはこの法案審議の過程において、政府からのいろいろの打ち合せもあったが、また議会側からもこの修正案提案者に対して、二十三条の三項とは具体的に何をかさすと質問があったのです。だから私どもはこれに次のように答えておる。今一萬田大蔵大臣金融上の問題についてちょっと述ベられたが、そういうことを希望しておるのじゃありません。それは今政策金融機関がさまざまある。中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工組合中央金庫がある。なかんずく国民金融公庫は庶民金融ということで零細企業にウエートを置いておりますから、これはしばらく別として、商工組合中央金庫と中小企業金融公庫は、中小企業の中でもなかんずく有力な中小企業者にいつしか重点的に金が借りられてしまって、零細業者には資金量の関係でそのフェーバーが及んでいない。やはりこれらの両公庫は金融ベースで金を貸すものだから、従って信用度の高きものから優先的にこれをとっていくと、信用度の低き零細業者は金を借り得ない。だからこの零細業者にも、この政策金融が及ぶように、何らかの方策を講ずべきではないか、こういうことが強く強調されまして、ならば具体的にはどうしたらいいか。そこですなわちこの中小企業金融公庫と商工組合中央金庫の年間総資金量の中で、この協同組合もしくはこれに該当する零細業者にその資金量の何%かを、二〇%にするか、三〇%にするかは論議のあるところでありましょうけれども、とにかく計画的に零細業者にもこの政策金融の恩恵が及ぶように、こういう工合に資金計画を立てるような法的措置をとってはどうか、これがすなわち零細業者に対する金融の特別措置である、それから税法上の特別措置は、本日この事業者の中には非常に資本金が大きいのと小さいのがある。資本金の大きい三井、三菱のような財閥系統のものを例にとれば、資本力だけでも設備からあるいは従業員、社長から管理者に至るまでこの資本力によって調達して、資本の自主的回転によって事業所得を生じておる。けれども、零細業者は、たとえば八百屋さんとか、自転車屋さん、とうふ屋さんとか、うどん屋さんとかいう零細業者は、自分で働かなければならぬ。店舗を自分で出して、自分の労働力をあわせて出さなければ、これは事業所得を生んでこない。そういうような労働力を提供して、労働の対価として発生した所得すらもみんな事業所得の概念によって所得税、事業税の捕捉の対象になっておる。これは矛盾ではないか。だから、こういうような勤労性の事業、すなわち働いて金をもうけておる事業所得者に対しては特別勤労控除をやってやるべきではないか。これがすなわちこの法律案を提案した者の意思であると、かくのごとくに具体的に述べておる。そういうことをやってもらうのが二十三条の三項の中身であって、そんな自転車税を年間百円まけたり、あるいは金融補完措置を講ずることではない。中小商工業者の中でも比較的零細なものに対して、政策の恩典の及ぶような具体的確実的確な措置を講じよう、これが二十三条の三項です。これを何もやっていないから、これを質問しておるのです。やっておるのですか、やっていないのですか、その点をお伺いいたします。
  235. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 国民金融公庫の資金の何%をこういう零細な方に回せ、そういうことをいたすことは私は今考えておりませんが、しかし国民金融公庫等の金をできるだけ御趣旨に沿うて運用するように、指導はいたすことにしたいと思います。  それから税のことについて事業税をお話になっておるのでございますが、これは地方税でありますので、私から申さぬ方がいいと思いますが、私としてはやはり事業税は十分検討を加えて、そうしてなるべく軽減をはかるように持っていくのがいい、かように考えております。
  236. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいまの税の方に関係いたします事項は大事な点でございますから、補足して申し上げます。  勤労性の事業について勤労に当る部分の控除をするのが、この条文の趣旨であるということでありますが、私どもそこまでこの条文が言っているものとは考えておりません。また前国会における春日委員自身の参議院における御答弁におきましてもはっきりとそうまで言っておられない。これは私何もその趣旨が非常に悪いことだといって言っておるのではありませんが、こういうことは経緯をはっきりしておく必要があると思うので申し上げるわけであります。昨年十月二十三日参議院商工委員会における春日委員の提案者としての御答弁の中で「頑迷な」と言っておられます。「非常にその頑迷な租税法定主義とか、またその他その考え方だけで、この法律をまあ御検討願うとすれば、非常にいろいろな面から非難が出てくる」、これは規定があいまいで何をいうておるのかよくわからぬというような御質問があったあとのお答えだと思います。「非難が出てくるとは思うのですが」云々というのがあって、「冒頭に申し上げました通り、これはあくまでも宣言規定でありまして、そういうような中身をも含んで」云々、「これは別に時間的な制約も何もありませんので、大まかな期待が持たれておると、こういうことでございまして」、云々、私どもはただいまのような具体的な中身を、これが持つんだと将来言われては非常に困るので、ずいぶん御主張申し上げ、春日委員からもそういうふうに御答いた、だいております。おっしゃいましたところが全然間違っておるとか、いかぬとかいうのではございませんが、この法案の意味につきましては、十分私どももこの経過においていろいろ申し上げ、はっきりお言葉もいただいておると思いますので、事柄の内容を検討することは別にいたしまして、これがそういうことを規定してあるからやっていなければいかぬという点については、そういう意味で御了承願いたいと思います。
  237. 春日一幸

    春日委員 今原君が述べられたことは、それはそういう一部もあります。けれども他の部分をよく調べて下さい。それは一体どういう内容であるかと質問されたことに対して、私は時間をかけて、すなわち両党の代表者会議において具体的に述べられた事柄はこれこれだ、これこれの事柄が実現されなければならないけれども、しかし今この団体法を早期に成立せしめる過程において、この作業がタイミングに間に合わない。従ってこれを政府に対して宣言しておるのだ。宣言規定というものを軽く見ておるけれども、宣言規定はそんな軽いものではない。およそ宣言規定の定義というものは、条理上、法律の全体から考えて、これは当然の事柄を規定しておるのであって、従って当然の事柄を法律に、条文に明記したからには、政府にその義務を負わしてくる。ただ問題はタイミソグ——第二十七臨時国会において同時にその措置をせよということについては、これは可能性、不可能性ということがあるであろうが、最もすみやかな機会において、これが実現されるということが政府に期待されておるということは当然のことなんです。従いまして、第二十八国会、今次国会こそはこれが最終の段階ではないか。私が申し上げたいことは、私たちも政府の諸君をも加えて、われわれの任期はまさに終ろうとしておる。従いましてこの国会が終ると、四月解散がいわれておるし、あるいはおそくとも九月解散がいわれておる。そうすると通常国会はないではないか。従ってあなた方が前尾さんを通じて政府の所信を明かにされておる。その明らかにされておるということは、私のそういうような意味における回答も一部にあったが、他にはまたさらに強い強調の意見もあった。それらの事柄も含めて、あくまで政府としては極力法文に従ってその実現に努力したいと言っておる。法文に従って実現のために努力したいということは、今次国会をおいては他にないではないか。これが最終国会で、法的にも財政的にも措置する事柄の最終の国会である。そういう意味で実現を迫っておるのです。だからあなたの方がこれをやらないというならば、団体組織法というものの一部しか執行しないものである、私はそういう非難が政府に寄せられても抗弁なきものと思うが、この点前尾さんはどう思うか。
  238. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 決して検討を怠ったわけではありません。いろいろ研究をいたしたのであります。ただ当時も言われておりましたように、ぴったりくるような措置がなかなかできない。しかも法人税につきましてはただいまお話のありましたように、全般的に二%を引き下げ、また逓減税率の適用範囲を広げるというようなこともいたし、また先ほどの地方税の自転車荷車税が一番適用範囲が多い、こういうような判断のもとに、これは十分とはもちろん言えませんが、御趣旨に従って極力努力してきた跡だけは御了承願いたいと思います。
  239. 春日一幸

    春日委員 ただこの点で強調されておることは、一萬田大蔵大臣が十分私の質問をお聞きとりにならなかったと思うのですが、こういうことなんです。もう一ぺん申し上げますから、よく検討願いたい。政策金融機関のうち、なかんずく国民金融公庫については、庶民金融重点的に行っておるから、零細業者に貸し出しておる率も多い。だからこのことはしばらくおくとして、中小企業金融公庫と商工中金については、やはり中小企業の中でも比較的信用度の高いものから先に選んで貸し出しをするので、従って零細業者が貸してくれと言うたときには金がなかったり、また順位が下についたりして、なかなか借りられないから、この二つの公庫については、資金計画を、零細業者のために、法的なりあるいは何らかの形によって、そういう零細業者にある一定限を貸し出さなければならないような法的措置を講ずる必要があるであろうということ、それから税法上の問題は、事業所得は商売でもうけるのだ。事業所得というのは、地方税の事業税のことを言っているのではありませんよ。すなわち所得税の中の事業所得というものは、商売でもうけるのが、これが大体原則である。しかるに働いてもうけておるところの、たとえば八百屋さんが車を引く。魚屋さんが魚を並べて売っておる。うどん屋さんがうどんを売っておる。こういうような働いてもうけた所得に対して——さらにわかりやすく言えば、大工さんや、とびや、左官さんや板金、そういうような人々の働いて得た所得に対して、商売でもうけたという形になっておることが不当ではないか。たとえば三井や三菱が大会社によって事業経営を通じてそこに所得が発生したやつを、これを所得の概念で一括押えていくのはいいが、そんな考え方で、大工やとびや八百屋を押えるのは間違いであろう。働いて勤労の対価として発生した所得は、これは特別な勤労所得として、それに要する経費を見ることのための控除制度をしくべきである、こういうのがあの当時の私の、提案者の一人として、両党の間で話し合った、二十三条の三項の具体的内容である。政府はそれに答えて、善処する、実現すると言っておる。今日なされていないから、そのことを私は尋ねているのです。地方税の問題はあとで聞くから……。そうではなしに、このことについて御答弁願いたい。
  240. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 わかりました。国民金融公庫のことはしばらくおかぬでも、これも一つ大いに中小企業のために、零細の方に行くようにいたします。こういうふうな指導をいたします。  それから、中小企業金融公庫と商工組合中央金庫等がどうも大きな金額で、小さい金額はめんどうくさくてやらないというようなあれがある。これも商工組合中央金庫は若干性格を異にしますが、少くとも中小企業金融公庫については、御趣旨の点を十分公庫にも、金庫にも浸透させまして、一つできるだけ努力させることにいたします。  それから、ちょっと税金のことですが、これは私は、働く、それによって所得税の性格を異にする、これは困難と思う。そういうことをしておったら複雑きわまるので、これはやはり所得で、それは八百屋で働くのも、お互いがこういうところで働いて月給をいただくのも、やはり所得ですから、これはむしろ零細といいますか、低所得者の控除を、基礎控除をふやすということで、解決するのがいいので、そういうことは今後財政状況を見合って、できるだけ努力をいたしたいと思います。
  241. 春日一幸

    春日委員 八百屋で働くのも、それらの零細業者が働くのは勤労所得だとこう言っておられる。ただ私が申し上げたいことは、勤労所得者については、勤労控除という控除が引かれておる。百分の二十引かれておる。月給取りは引かれておる。働いて所得を得る者にはそれに要する経費が必要であろうというので、百分の二十引かれておる。それにもかかわらず、八百屋さんや自転車屋さんや、大工や左官屋さんには特別勤労控除が引かれていないからこれは不合理である。だからこの際それをやるべきだ、こういうのだが、しかし問題は幸いに大蔵委員会もお互いに担当いたしておりますから、これは大蔵委員会で専門的に一つ検討いたしまして、適当な結論を得たいと思います。そこで、私は問題を進めて参りまするが……。
  242. 田中久雄

    ○田中(久)委員長代理 春日委員大蔵大臣が発言を求めておりますが……。
  243. 春日一幸

    春日委員 答弁したってだめなんだ。解決はつかない、全然税制はしろうとだから。これは大蔵委員会に出て、それぞれのオーソリティを集めて、この問題は論議を通じて結論を得なければならないので、これは大蔵委員会に譲るといたしまして、そこで、私は通産大臣にお伺いしたいが、通産大臣中小企業振興審議会が答申したことを実施していない。私はこの点を非難されなければならないと思う。この中小企業振興審議会こそは、さきに鳩山内閣が、中小企業のこの不況事態を克服するための政策いかん、この点を三十一年の七月に諮問して、十二月に答申しておるのです。ここにこの答申がずっとありまするが、その中で政府が実施に移したものはほんの一部分である。大部分のものは、何らそれが実現されていない。私ははなはだ遺憾に思う。そこで私は一、二、三と九項目にわたって重要な施策を政府に要望しておるのだが、なかんずく私が特にお伺いをいたしたいのは、この答申の中で、大企業中小企業の産業分野の調整をやれという答申をしておる。それから政府が官公需品の発注を中小企業者に行えという答申をしておる。この二つの事柄こそは、これは即効あることである。特にまた中小企業者が待望してやまない事柄である。一体この中小企業の産業分野の確保に関するこの施策、それから官公需品の一定歩合を中小企業に発注するというこの事柄、これを一体なぜ政府は実現しないのでありますか。それを答申されて一カ年も経過しておる今日まで、それをなさざる理由は何であるか、御答弁を願いたい。
  244. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 中小企業振興審議会の答申につきましては、私も十分承知いたしております。そしてその重要な問題につきましては、御承知のように先般の臨時国会で通過いたしました団体法、それから今度の信用保険公庫、これの中小企業者に対する金融の信用補完というような大きな項目については、私実現しておると思います。ただいまお話しのような産業分野の確立という問題につきましは、春日委員も御存じの通り、社会党から法案が出ております。ただ私は、法律上これを規制するのがいいかどうか、これはかなり問題でありまするし、また実質問題としては、困難な問題もたくさんありまして、これらは国民経済全般からして考えていかなければならぬ問題だ。ただ単に法律だけで簡単にできる問題ではないと思うのであります。また官公需の中小企業者に対する買い取りの問題にいたしましても、努力はいたしておるのでありまして、御承知のように、防衛庁なんかの、協同組合なんかから競争入札でなしに買えるというような規定も、改正しておるのでありますが、これも大体におきましては、御承知のように、中小企業の製品が一般には買われておるのでありまして、ただこれを何割というような法律的な規制をするということは、これは非常に困難でありまして、これは閣議の申し合せにおきましても、広く中小企業者から物を買おう、こういうようなことできておるのであります。われわれとしては、答申の趣旨には沿って、あくまで努力はいたしておるつもりであります。
  245. 春日一幸

    春日委員 私が申し上げたいことは、今まで団体法といい、その他の金融措置といい、あなた方がこの答申案に基いて実施された事柄は、私がつらつら判断をしてみるに、これは、そのことをやっても、大企業に対して大した御迷惑にならぬというような事柄、あるいはまた、そのことをやっても国の財政負担がそんなにかからないというような、まあそういう事柄は、何となくやっておられる気配がある。ところが、もしその事柄をやることによって大企業に対して相当の不利益をもたらすような政策については、何らやってはいない。あるいはそのことを行うことによって、国の財政負担をふやすような事柄は、何にもやってはいないのです。そこで、私は、この際この答申の特に重要な個所を読み上げて、国民の前に明らかにしてみたいと思うのだが、政府が内閣の諮問機関として、とにかく権威あるこの中小企業振興審議会は、こんな答申をしておる。組織法ができて、これによって一部の問題は解決できるけれども、これのみをもってしては全般的な解決がつかぬ、そこで政府としては、大企業中小企業の生産分野の調整をはかり、中小企業の振興と雇用力の培養をはかることが必要である、このために、政府は、国民経済的見地から中小企業の生産分野として好ましい分野を明らかにするとともに、これらの分野に対して、大企業が進出し、または進出するおそれがある場合には、その調整のために必要な勧告をする等適切な措置をとれと書いてある。実際問題として、だから、これは審議会が、大企業がどんどん中小企業の産業分野を侵す、そこからはみ出てくる中小企業者の行く道はない、どこへ入ろうと思っても、いずれのところもメジロ押しで、中小企業の介在する余地はない。こういうわけで、大企業の奔放無拘束な経済活動が中小企業を非常に圧迫しておる。この問題は、団体法では解決できない、だから、産業分野の確保、あるいは調整のために善処せよと政府に言っておる。なぜこれにこたえないか。この団体組織法が審議される過程において、早くこれを出せと言ったら、あなたの方は、目下研究、考究中であるから、早期にこれを提出するということを約束しておる。自来二十七国会も過ぎた、二十八国会もまさに会期が半ばになってきておるのに出さないじゃないか。なぜ出さぬか、この点を伺いたい。
  246. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 答申にもありますように、これは単なる法律一本でやる問題ではない。
  247. 春日一幸

    春日委員 何でもいいからやりなさい。
  248. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 そこで、われわれは御承知のように、昨年から中小企業者に対する統計が全然ないのであります。従って、昨年、本年度もですが、来年度にも予算をとりまして、そうしてその統計の調査をいたしまして、それに基いてやっていかなければ、一朝一夕に簡単に片づく問題ではないのであります。努力いたします。
  249. 春日一幸

    春日委員 私は、一朝一夕にやれと言っておるのではないのです。これは、一昨年の十二月に答申された、自来一年三カ月経過しておるではありませんか、実際問題として。私はきょう言うてあしたやれと言うのじゃない。一カ年も余裕があって、この間に議会側からやいのやいの、早く出せ、政府何をしておる、社会党の考え方はかくのことし、そうして中小企業の窮乏を救おうじゃないか、こういっているのに、一年たって何にもやらぬから、これについて文句を言っておるのである。法律であろうと、行政措置であろうと、勧告措置であろうと、これにかわるところの何でもいいから答申を実施したらどうであるか。私が申し上げたいことは、あなた方がやることは、そのことをやることによって、大企業の不利益にならぬような、そういうことを選んでちょびちょびやっておるのである。それが中小企業の利益の伸張であり、そのことが正比例して大企業の圧迫になるとか不利益になるようなことは、何もやっていない、このことを非難しておる。私は、特に申し上げたいことは、政府がやる気になるならば、政府独自の見解でやれることをやっていない。そうして、それは中小企業に対する官公需の確保の問題、答申はこんなことを述べておる、すなわち現在国の調達方式は、経済性、安全性、公正性確保の見地からとっておるけれども、しかし実際問題としては、中小企業が大企業と平等な立場で官公庁契約に均霑する機会は、きわめてまれだ、だから、政府がこの機会に調達配分計画を樹立して、中小企業への情報の提供、それからあっせん機関の整備、調達方式の改善、こういうようなものをやって、計画的に中小企業に発注できる立場を作る。政府は、一般予算、あるいは特別会計、その他三公社五現業の需品費、建設費、こういうものを加えれば、私は相当の額になると思う。七千億か八千億くらいになるかもしれない。そこの中で、かりに二割でも一割でも中小企業に対して発注できるという態勢が確立されれば、かれこれ一千億近いところのこういう官公需用というものが中小企業のために確保され、よってもって中小企業のこれが繁栄の基礎になるのではないか。政府が単独でやろうと思えばやれることすらもやっていない。しかも、この振興審議会は、それをなす必要があるといっている。私が申し上げたいことは、この中小企業振興審議会というものは、公正な内閣の諮問機関である。この諮問機関に道を尋ねて、人に道を尋ねて、教えたら全然そういう教えてくれた方向にいかない、ばかにした話じゃないですか、そんなばかなことはないですよ。政治道義に照らしても、私はそういうむちゃなやり方はないと思うのです。一体政府がやろうと思えばやれることをなさらない理由というものは何であるか、この点を伺います。
  250. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 大企業が困るからやらぬとかやるとか、そういうことは全然考えておりません。むしろ大企業が困りましても、中小企業が喜ぶべきことはやっていかなければならぬということもわれわれは考えておる。ただ、一朝一夕にはできない問題が多いのでございまして、ただいま申しましたように、中小企業者の統計を整備しまして、その結果にまたなければやれない。これは一年で調査が完了しないのでありまして、来年度にもかかる、こういうような問題であります。また官公需の問題につきましても、これは先ほど来申しておりますように、極力中小企業者の商品を買うことにいたしておりますし、その中小企業者の製品が大部分を占めておると思います。ただいまお話しのように、一割とか二割という問題ではないと思います。ただ、これを何割といって限定しますことは、ただいまの財政法等の建前から考えましても、またアメリカで現実にやっておりまするのは、なかなかそう簡単にはいっておらぬのであります。それらについて、十分御趣旨なり答申の趣旨は実行に移すように、絶えず努力をいたしておるわけであります。
  251. 春日一幸

    春日委員 アメリカの調達方式についての批判がありましたが、アメリカの国防省の予算決算会計令か何か、そういうような該当する法律では、やはりその需品費の一割以上を中小企業者から買わなければならぬというような規定もあるように聞いておる。そのことは、やはりアメリカにおける中小企業の振興という中小企業政策から、そういう法的措置が講ぜられておると聞いておるのです。私は、とにかく中小企業の弱体性がアメリカに比べてもっとひどいから、アメリカにおいてすらやっておるのだから、日本だってやったらいいと思う。そして、振興審議会がこういう点を強調しておるのです。だから私は、せっかく道を尋ねて教えてくれたら、教えてくれた方向へ歩いていって、何とか一つずつこれを実現してもらいたい。今あなたのおっしゃったことは、大企業のためにするようなことはやめぬと言っておるが、結果的にはそうなっておる。今の官公需の問題だって、そういうような法律を作れば、今大企業が独占しておるその分量が減ってくる。減ってくれば、大企業として不利益になるから、野放しにして行なっておる。そうすると、競争すれば、大企業の生産はやはり大規模生産であるから、合理的に安い値段で、競争には大企業はことごとく勝っておる。だから、経済ベースでは競争に勝てないものを、政策的なささえをもって、その注文が中小企業者にいくようにしろ、こう言っておるのです。また答申も、その点を強調しておる。だから、善処されんことを強く要望する。  それから次は、税金問題についてお伺いしたいのでありますが、総理は、一月二十九日の本会議における施政演説の中で、「国民の税負担と経済の現状にかんがみ、産業の振興、費本の蓄積及び大衆の租税負担の軽減を目的とする減税を行うこととしました。」とあるのですが、この大衆の租税負担の軽減とは、一体何をさしたものか。
  252. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどもちょっと触れましたが、今回の減税は、ほとんどが大衆負担の軽減と私は心得ております。法人税につきましても、先ほど申しましたように、減税率の適用範囲を引き上げて、百万円のところから二百万円までは軽減される税率が適用されるというのも、これはその一つであります。さらにまた荷車にしても自転車にしても、あるいはまたごく大衆的な低額所得者の嗜好品である酒税の軽減にいたしましても、あるいはまた相続税の今度の改正にいたしましても、これは、多年農村中小企業者等の相続の上において問題であったのですが、これにも軽減税率を適用するようになっておりまして、これは、大きな減税ではありませんけれども、いずれも低額所得者の税負担の軽減である、かように考えております。
  253. 春日一幸

    春日委員 本昭和三十三年度の税制改革による減税見込額二百六十一億円、これはなるほど今あなたがおっしゃった、相続税制度改正で二十億、法人税の軽減でかれこれ百二十五億、酒税が五十六億、貯蓄奨励が五十億、科学技術振興が十億とあるのですけれども、この中でしいて大衆性のあるものということになれば、酒税と地方税の自転車荷車税の廃止なんです。相続税なんというものは、相続するときでなければその恩典は受けられない。それから法人税といったって、三井、三菱、住友、大企業、大財閥にほとんど及ぶのであって、これはもう大衆といって、ことさらにうたうほどの事柄ではない。そういうわけで、これをそろばんをとってみると、かりに夫婦子供三人の標準家計費を二万五千円と押えても、二万五千円の中で、今度政府のとったところの大衆的減税というものを、一ぺん具体的な数字に直していってみる。かりに酒を晩酌一合飲んだとする、そうすると、これは一月に三升だ。そうして今度酒の減税で、二級酒が一升について二十円下るとする。そうすると、これは一カ月には六十円の負担軽減になる。それから自転車を一台持っておっても、これは二百円だから、月額にすると十七円、この十七円と酒三升の六十円を加えると七十七円、二万五千円の生活費の中で七十七円軽めたからといって、これは一体率はどのくらいになりますか。わずかに〇・三%、しかも、これは酒を飲まぬ人や、自転車を持たない人には全然恩典が及ばないのですよ。     〔田中(久)委員長代理退席、委員長着席〕 だから申し上げたいことは、私のはこの間国鉄運賃やその他の税金が上ったときに、大衆負担を増大するじゃないか、こう言うたときに、こんなわずかばかり上ったところで、こんなものは生活費の中に埋没してしまうから、そんなに実際に負担を感じさせるほどのものではないと、大臣はみずから答弁された。ところが、二万五千円の生活実費を要する標準家庭において、かりに一カ月七十七円ぐらい下ったところで、いやしくも総理大臣が本会議の議場において、大衆負担の軽減をはかったなどといって、ぎょうぎょうしい大演説をぶつほどの中身ですか。私はいただけないのですが、何かはかにあるような気がしてならぬのですが、このほかには何もないのですか、伺います。
  254. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今回特に減税を大規模にやるということは、考えていなかったのであります。二百六十一億が大体本年度の減税額になっておりますが、その乏しい減税の中でも、今言うたように、すべてが大体低額所得者を対象といたしまして、その税負担を軽くしてやる。その努力は大いに認められてほしいのです。何だか保守党は、中小企業なんかについて心配せぬかのような印象を与えておるようですが、そういうことは絶対ないのであります。いろいろ先般から言いますように、われわれの政策としても、要は大企業に対して中小企業の所得の格差の広がることを是正するというのが、大きな政策であります。最近においては、中小企業の対策をわれわれは最も重要な政策として取り上げておるのでありまして、ひとり税ばかりではありません。金融その他について、中小企業については、今春日さんのようなお説をよく私たちも勉強しますし、よく御趣旨も体しまして、保守党としてどしどしやるつもりでございますから、どうぞ御了承いただきたい。
  255. 春日一幸

    春日委員 それは、将来のことは、やられることは当りまえのことであり、そうあらねばならぬと思うのだが、本年度において、とにかく総理大臣は本会議の議場において、その施政方針演説の中で、大衆負担の軽減をはかったと言われたけれども、実は夫婦子供三人の標準家庭二万五千円の生活費の中において、七十七円しか下らない。しかも酒を飲まぬ、自転車を持たない家庭は、一銭も減税は及ばないのだから、これは大体不実の事柄であるということを申し上げておる。だから、すみやかにこの大臣の施政方針にこたえて、またそれを裏づけするための税制措置、税制改革、これをやられることを、私はこの際強く要望しておきます。  そこで、私はこの際さらに進んでお伺いをいたしたいのでありますが、私はこういう工合に理解しておる。およそ徴税行政の基本的なあり方は、所得のある者に課税する、担税力の強い者から漸次これを弱きに及ぼしていって低めていく、こういうことでなければならぬと思っておる。この考え方に、大臣としては異論はありませんか。
  256. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 担税力のある者からとるということは、異論はありません。ただ、それは公平にやらなければならぬと思います。
  257. 春日一幸

    春日委員 だから、公平にやらなければならぬ。税の公平の原則を貫かねばならぬ。そこで、本年度の税制改革を通じて、あまりに不公平だと思う。私が申し上げたいことは、担税力の弱い者に漸次低めていかなければならぬ。だとすると、現実に現在の税制が生活費に食い入っておる面が相当あると思う。それを立証するならばここにこういう資料がある。総理府統計局の調査によりますと、昭和三十二年の十一月中の家計費をこういう工合に見ておる。これは全国平均が標準四・五六人になる。そうするとこれが生活実費の月額が二万四千七百五十円となる。これをわかりやすく五人世帯に換算すると、月あたり二万七千三百八円となる。それは年収三十二万四千五百円となる。現在の非課税点、免税点というものは、これはあなたの方でわかっておる通り、勤労所得において二十七万何がし、事業所得者において二十万何がし、こういうわけでありますから、この内閣総理府統計局の指数によると、生活実費というものは三十二万四千五百円なんです。そこの中には税金は含んでいない。含んでいない諸君が税金を納めるの義務を負わされておるのです。だからこれは公平の原則を欠いておるのですよ。だからこういうような諸君は今申し上げましたような、要するに担税力の乏しきものだから、これに税金をかけてはならぬ。今かかっておるんだからこれは最優先的に負けなければならぬ。ところがこれらの諸君には基礎控除、扶養控除を引き上げれば負かるんですよ。今回あなたはそれをやりましたか。やらなかったでしょう。やらないで百何十億という法人税の軽減を優先的に行なっておる。大、中、小さまざまな法人があるけれども、法人税というものの担税力は、これはこういう生活費に税金が食い入っておるような事態から比べれば、担税力あるものと判断しなければならぬ。これは何人が考えたって常識的にそう思えるでしょう。だから今回この法人税で本年度において百二十五億、平年度において二百億の減税をやるという、そういう余裕財源があるならば、私はこういうような生活実費に食い入っておるところのこれらの人々に対する減税、これを公平にやることのためになぜ基礎控除、扶養控除の引き上げを行わないか。前後の序列が違っておるじゃないか。あとにやるべきものを先にやっておるではないか。どうしたことですか、御答弁願いたい。
  258. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 所得税につきましては、昨年一千億の減税を断行しまして、ことし平年度化しますが、本年度でなお二百億の減税にもなるのであります。そして、昨年所得税の減税の際に、税制調査会では、もしもそれ以上に余裕があれば、法人税で二%程度は少くとも早く減税するようにというような答申もありましたが、一方また法人税は安い税率であるかといえば、そうではないので、法人税も非常に高い。法人税が非常に高いということは、やはり民間における資本蓄積を阻害して、それが経済の発展を阻害する。そのことが雇用を悪くして、またそれぞれの人々の所得関係を悪化する、こういうふうにそれぞれ因果を持っておる。従いまして、やはり私は勤労所得税もむろん下げなくてはならぬが、法人税も高過ぎればこれもやはり他面において下げていく。そしてつり合いをとりつつ、全体として税負担が軽くなってすべてが均衡を得てうまくいく、こういうふうに持っていくべきだと考えております。
  259. 春日一幸

    春日委員 少くとも申し上げたいことは、徴税行政の基本的なあり方というものは、やはり担税力のある人から先に取っていく。弱い人からはちょびっと取っていく。それだから私は法人税も軽減するということは、そういう必要があるならば、なすべきだ、なすべきだけれども、その前にやらなければならぬことがあるではないか。すなわち生活実費に食い込んでおるところのそういうような負担を軽減して、それからさらにそういうような方向へこれを及ぼしていく、これがすなわち税の公平なる負担の原則であって、こういう執行をして初めて立証できるやり方ではないか。あなたのやり方は不公平な執行である。担税力のあるものをいよいよ低めて、担税力のないものを見殺しにする。こんなばかなことがありますか。  それはそれとして、さらにあなたにお尋ねいたしますが、あなたは大蔵委員会で事業税を減免すると言った。今日税を軽減するならば法人税、事業税を減税するのが第一番にやるべきことだ、こういうことを述べられている。一月十三日の朝日その他の大新聞が報じたところによりますと、大蔵大臣は八日の閣議で事業税の減税を行いたい方針であると述べた。それから大蔵省の方でこれに対する基本的な一つの案を閣議に諮られた。すなわち初年度において百億、平年度において百五十億の法人事業税、個人事業税については初年度百六十億、平年度二百十億という減税案を持っていかれたのだが、あなたは大蔵委員会その他の機会で、今減税するとすれば法人税、それから事業税と公約しておる。ところが今度事業税については何にも出してない、どうしたことですか。お伺いいたします。
  260. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 事業税の減税ですが、これは私としてはやはり中小企業というようなことも考えまして、地方税でありますからいろいろと考慮を加えなければならぬ点が多々あるが、私としてはやりたい、かように考えておったのであります。しかしこれを実行するにつきましては、また各般のことを慎重に検討することが必要であるという情勢もありますので、今回は見送ることにいたしまして、次の機会には一つ関係方面とも十分御相談もして、私としては地方税の減税はなるべく早く実施したい、かように考えております。
  261. 春日一幸

    春日委員 とにかく政治家はその言動に対して責任を負わなければならぬと思う。でたらめのことを言うならば、漫才や浪花節と同じことではありませんか。だから今度あなたは一番に事業税を減税すると言っておいて、今の答弁でいうと、将来研究して——それだったらああいうような言葉を吐いちゃいけませんよ。十分言葉を慎しんで、一たん言ったからには実施する、こういう政治家的良心に基いて今後御発言を願いたい。  それから、今度私がお伺いいたしたいことは、対外収支の問題について伺いたいのです。これは、政府昭和三十三年度における政府予算編成に関する基本方針、この中で特に対外収支の改善、ここへ一切の方針を集中するということを述べられている。すなわち、昭和三十三年度におけるわが国経済運営の第一義的目標は、国際収支を大幅に改善することにあり、そのためにこういうこういう政策を講じていくのだ、ということを述べられておるが、その基本的な構想、そういうものは今変っておりませんか。
  262. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一口に言って、国際収支改善、これが基本方針であることは変りありません。
  263. 春日一幸

    春日委員 そこで私は具体的に伺いますが、わが国が当面いたしておりまする経済諸情勢に照らして、わが国が今保有しなければならない外貨の最低限度額、これを一体政府はどのくらいに目標を置いておりますか。
  264. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府が最低限度、どの程度の外貨を持つべきか、これを金額で表示するということは非常に困難であります。これは何も自分一存できまるわけではありませんで、取引量の消長も考えなければなりませんし、また国際的ないろいろな諸情勢も考えねばなりませんから、幾らというようなことは私は申し上げかねると思うのであります。しかしながらどんなことがあってもこれはそういうふうな金額でなくちゃならぬというのではありませんが、最低使える金は五、六億というようなものは取引の上からどうしても必要であろう。これは私の一つの勘でありますから、これについて科学的な意味をお持たせ下さらぬことを希望いたします。
  265. 春日一幸

    春日委員 少くともそんなばかな答弁はありませんよ。それは正直でいいかもしれませんけれども、そういうむちゃくちゃなことはいけない。少くとも予算編成の基本構想の中に、対外収支の逆調を改善すること、これに一切の政策を集中するといっている。集中するからには、わが国の外貨保有高というものの適正量、これがあなたの腹づもりの中になければならないじゃないですか。一体外貨はどれだけ持たなければならぬか、そのためにはこういう金融政策、税制政策財政投融資予算の編成と、みなこの一点に集約されてくるじゃありませんか。従って外貨保有の適正量というものは、これは理想的なアマウントもあるだろうし、あるいは限界アマウントもあるでありましょうが、少くとも理想的にはこれこれ、そうしてわが国が国際経済の中に対処して国際貿易を行なっていく、あるいは不時の災害に対処する、あるいは世界の不況に対処する、いろいろな場合を想定して、なくてはならぬところの最底限度額というものがあり得るはずです。これを述べなくてどうしてこういう基本構想を述べたのですか。
  266. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは外貨をいかほど持てばいいかということをきめる基本的条件というものが動いているから、これは神様でないとわかりっこありません。そうしてそれは非常に動いているということを私は申し上げる。そうして外貨の保有量は、たとえば日本みたいに非常に食糧を輸入しなければならぬ国とすれば、一体今後における食糧事情をどう見るかということによっても、また一たん米ができそこなうとか、風が吹いて不況ということにでもなれば、米の緊急輸入ということで、数億ドルに及ぶ外貨を考えなければならぬ、そういうものを常に保有する、準備に持っておるほど必要であるかどうかという点も、やはり考慮していかなければならぬものである。ちょうど適正な通貨の流通量というものを幾らにするかということをきめると同じように、すべてこれに関連する経済の諸条件が動いておるのですから、何人もそう的確に言えるものではない。しかし従来の経験等から徴していけば、そういう食糧事情なんかをしばらくおけば最低五、六億ドルくらいは持っておらなければいけないのじゃなかろうかと思うということを私は申し上げておるわけであります。
  267. 春日一幸

    春日委員 それは経済は変転きわまりないものである、生きたものであるということは、お互いにそんなことはわかっておるのですよ。だからあらゆる事態を想定して、日本経済と国際経済の中に対処して健全に運営できる、そうして国民生活の安泰を期し得る、その備えをするための適正外貨保有量というものがなければならぬ。そんなことはそうむずかしい問題ではないと思う。少くともわが国の貿易計画からして輸入規模というものがあろうから、決済資金についてはこれくらい要るだろう、あるいは大きな不況のために緊急食糧を輸入するのだから、そんなときに金がなければ大へんだから、そのときに備えるためにこのくらい要るだろう、あるいは世界が不況になってきて、そこでもって輸出計画ができない場合に備えるためにはこのくらい金が要るだろうという、要素は三つか四つだ。そのくらいのものを集約していけば、その適正保有量というか、あるいは必要欠くべからざる保有量というか、そういうようなものが出てくるであろうし、またそれに見合せていろいろな予算の編成だとかあるいは財政投融資の編成だとか、こういうものが出てくるのじゃありませんか。それはあなたが責任ある額を大蔵大臣の見識において述べられて、そして全国民がそれに協力するという態勢を作るべきだ。幾らかわからぬ、成り行きまかせだ、こんなことではめちゃくちゃじゃありませんか、おっしゃって下さい。
  268. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 春日さんはそうおっしゃいますけれども、それはなかなかむずかしい問題なんです。そうして外貨をどのくらい保有していればいいかは、また一国の経済政策の上でいろいろ違うのです。たとえば日本あたりでは外貨が少しあれば、もうそんなに外貨を持たないでもいいじゃないか、もういいかげんなところで外貨を使うような方向に向ったらいいじゃないかというような説も多いのです。しかし西ドイツを見ると五十億ドルくらい使っておりますけれども、やはり外貨を蓄積するような経済政策をどしどしとっていくという、そういう行き方もあるのであって、だからどれが適正というか、私は適正という言葉をお使いになっているから、なかなかむずかしいというふうにお答えしておるのです。これはいろいろな広い見地から考えなくちゃならぬ。手ごろにこのぐらい持っていたらいいだろうというような意味だったら、私はさっき言ったように従来の経験から使い得る金は少くとも最低五、六億はなければいかぬ。しかしそれで日本の外貨保有量が十分であるかというと決してそうではない。そういうものではとても対外信用を維持していくという上においては不十分であると私は申さなければならぬ。やはりもう少し持っていかなくちゃならぬ。かように考えて、そういうような努力をしていかなくちゃならぬと思う。そういうふうに幾ら外貨を持っておるかということについては、非常に世間に誤解を招きまして、五、六億あればそれ以上はためぬでもいいのか、それではそんな政策をとればいいじゃないかということになると、私どもの考えは違うのでありまして、少くともそのくらいはなければならぬという意味で申しておるのでありますから、誤解のないように願います。
  269. 春日一幸

    春日委員 それは私は少くとも国の経済に責任を持つ大臣の答弁としては適当なものじゃないと思う。少くとも輸入計画について、食糧なんというようなものは天候によって左右される。国際経済なんというものはとうとうたる海のごとき流れで、日本経済のような小川の流れみたいなものではどうにも左右できるものじゃないのです。だからあらゆる最悪の事態を予想して、外貨をもってそのような場合に対処するだけの備えが大蔵大臣になければならぬと思う。そういう意味において、たとえば輸入決済のためにはこれこれならこれこれ、あるいはそういうような不況対策のためにはこれこれ、あるいは世界経済が非常に不況に転落をしたような場合の備えに対してこれこれ、そういうようなものを示して、そして国民をして理解せしめて、その方向に協力せしめるという態度が私はなければならぬと思う。  それはそれといたしまして、ならば私はお伺いをいたしますが、本年度の財政規模拡大に伴うて、一体このことがドル消費にどのくらいの影響を持っていくか、すなわち本年度の予算の執行並びに財政投融資の実施、このことはどの程度ドルを消費していくであろうか、その見込み額はどれだけあなたは読んでおられるか、伺います。
  270. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この財政投融資、この予算を遂行した結果、われわれの目標としておることは、年度末において一億五千万ドルの外貨の額がふえるということであります。
  271. 春日一幸

    春日委員 それは財政投融資貿易計画や、その他の要素をいろいろと加減乗除して、その結果一億五千万ドル黒字が出るであろうという一応の構想が立てられておるということなんです。私が伺っておるのはそんなことじゃないのです。私が伺っておるのは貿易計画も何も全然別個に切り離して、貿易計画は別に批判をするとして、この予算の執行と、財政投融資の実施によって外貨が相当消耗するであろう。その消耗する見込み額は一応立てられなければならぬわけです。それでなければいろいろの対外収支を通じて一億五千万ドルめ黒字が出るであろうという答えは出てこない。従いましてあなたは、財政規模が今度相当拡大しておるのたから、これが外貨消耗につながっておる、そのアマウントというものはどのくらい想定されておるか。これはあなたの方の三十三年度の純計から、ずっとそろばんをはじいても、経済白書に書いてあるところの限界輸入性向の指数をかけていけば私は出てくると思う。どのくらい見ておるかお伺いいたします。
  272. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私御質疑の趣旨がよく了解しにくいのですが、三十三年度の予算並びに財政投融資の実行の結果、それが日本経済にどういうふうな刺激ないし影響を与えるかという御質疑でございましょうか、そうしてその結果がどういうように外貨上に響くか、こういうことでよろしいのでございますか。
  273. 春日一幸

    春日委員 さらに申し上げるならば、私はこういう工合に判断をせざるを得ないのです。と申しますのは、昭和三十三年度の予算の純計予算は三十二年度に比べて二千二百十五億の増となっておる。ですからかりにこれが消費に振り向けられるものと想定すれば、これに対する三十二年度の限界輸入性向が一九%と経済白書ですかに出ておるので、かりにこの一九%をこれにかけていけばこれは四百二十一億、従って一億一千七百万ドルのドル消耗ということを来たす計算になる。それから次に、三十三年度の財政投融資計画は、三十二年度に比べて三百九十四億の増となっておるから、かりにこれが設備投資に振り向けられると想定すれば、あの経済白書に書いてあるところの限界輸入性向は二九%とあるから、大体同一条件下にあるものとすれば、これは百十四億すなわち三千二百万ドルのドル消費、従いましてこの予算統計の増加額と財政投融資の増加額が、この限界輸入性向の指数をかけた合算額は、この財政の膨張だけでもってかれこれ一億五千万ドルの消費をもたらす役割を果すことになるのではないかと私たちは案じておるのだが、そういう心配はないかどうか、この点を一つ伺いたいのです。
  274. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。これは経済計画とも関連してきますから経済の伸びが三%、大体総生産が十兆とすれば三千億程度の増になるのですが、他面この計画によれば、一般の個人消費が五%程度に押えられる。そうしますと今の国民消費が約六兆とすると三千億の伸びと見る。そこへ持ってきて財政からくる物資サービスに対する需要が千二百億くらい、それに賠償その他あるいは貿易の黒字等からくるのが数百億、これは正確にどうなりますか。少くとも八、九百億になると思うのですが、そういうふうに見てみますと、それならどこでこれをカバーするかといえば、結局民間の投資、その民間の投資が二千数百億減という形において、いわゆる民間投資からする物資の需要の減少ということで、物に対する需要が均衡する、そこに経済の伸びが大体……。そうしてもおそらく二千数百億足りない、それがこの三%の経済の伸びというようなことで、結局埋まってくる、こういうふうに私は考えておるのですが、結局これは民間の投資が押えられるということで、物の需要が減るということで、日本経済は今後均衡を得た形でいく、かように考えております。
  275. 春日一幸

    春日委員 それは予算の執行や財政投融資が積極性を持てば、これは過去の実績にかんがみましても民間投融資を随伴してきて、これは景気を刺激する。さればこそ三十二年七月にはあの一五%をぶった切って、そうして財政投融資を繰り述べて、それから民間投融資を押えたわけですね。ところが本年度は今申し上げたように統計で二千二百何十億、それから財政投融資で三百何億、さらにそのほかに世界銀行からの借款が四百何十億かあるのだが、こういう工合で経済白書に書いてあるところのそういうようなものが限界輸入性向というような指数にそのそろばんをはじいていくと、これは実に一億五千万ドルないし一億七千万ドルの外貨消耗に直結していくんですね。だから私は伺いたいことは、政府予算編成に関する基本方針は対外収支の逆調、この一点にしぼっておる。これを至上命令としておる。こういう状態でドルをふやそうということを至上命令として予算を組んで、結果はこの面における判断では結局一億数千万ドルの外貨消費に直結する、あるいはそういう方向へこれを刺激を与えていくということになる、こういう積極財政がとられておるんですね。だから私は向うへ走ろうとしてえらい権幕でスタート・ラインにすわって、号砲一発、すなわちこの予算が組まれたら逆の方向へ走って行っちゃったようなもので、まるでふまじめきわまる編成方針じゃないかと思う。私は対外収支の逆調を克服するということが予算編成の基本方針であり、わが国財政に課せられておる至上命令であるならば、こういうような膨張予算とか、あるいはこういう積極財政投融資というものは厳に慎しまなければならぬはずのものであると思うのだが、結果的には逆な形が描かれており、昨年度のそれよりも逆にプラス一億五千万ドルというような、この外貨の消耗に直結するの心配ありと思うが、この点はどういう工合か。
  276. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 日本経済が非常に伸び過ぎたから、財政においても財政投融資においてもこれを押えるように緊縮していかなければならぬ、これは当然です。私たちとしてはそれをできるだけやったのであります。しかしながらそれだからといって財政投融資も全然やらない、財政にしても全然増加を見ないということにすれば、これは日本経済は縮小均衡になる、おそらく経済の伸びというものはないと見なければならない。そうした場合に人口問題は一体どうする、新しい雇用というものを一体どう解決するか。私は非常な失業者を持っていると思う。そうすると一面において財政というものは、失業対策の面から非常な膨張を余儀なくされるという状況なのです。ですからこれは、やはり日本の今日の人口問題が解決せぬ限りにおいて年々ある程度、これは全然伸ばし得ない場合でも、財政等において若干の増大をするということは、日本が今背負っている一つの宿命であるといわざるを得ない。従って、それをインフレにしないようにどうすればいいかというのがむしろとるべき道なので、その点において、この経済の伸びが、インフレ化の主因が民間における投資の膨張にあったのでありますから、しかもこれが非常に急激な、また過大な伸びにあったのでありますから、そこにメスを入れて、それを大きく削減をしてバランスをとるというやり方は、決して間違っていないと考えております。
  277. 江崎真澄

    江崎委員長 春日君、ちょっと申し上げますが、もうだんだん経過しておりますから、結論にお入りを願います。
  278. 春日一幸

    春日委員 それでは、この話は何となく押し問答になるようだから、私の見解を述べて、よく御検討を願いたいと思うのでありますが、これは政府の方が積極財政をとっておいて、そうして民間だけ押えていく、こういうやり方は経済の有機的な現象としてできることかできないことかということなんです。民間投融資というものは、ある一定量の歩合に応じて随伴していくのです。だからそういう積極財政があれば、そのことはやはり民間景気に大なり小なり刺激を与えて、限界輸入性向という係数のあれをかけていけば、結局外貨が減ってくるのだ、だから予算編成に対する基本方針と、そうして組まれたその結果というものは全然逆のものだ、だからこの点を大いに注意してもらうのでなければ、対外収支の逆調をさらに激化せしめるという結果になりはしないか、この点を私は非難的に今質問をしているわけであります。そこで、私はさらにもう一問お伺いをいたしておきたいのでありますが、経済基盤強化資金、それから五種の特別法人、この性格をお伺いしたいのでありますが、これは余裕財源のたな上げをしたのでありますかどうでありますか。
  279. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 まあたな上げというは俗語でありますが、俗語の意味におきましてたな上げであります。
  280. 春日一幸

    春日委員 私はこの一点を明らかにしておかなければならぬと思うのでありまするが、わが国の財政法では、別にそういうことはあるいは禁止していないかもしれませんけれども、少くとも財政の基本的な原則というものは、歳入と歳出の均衡、これは私は自明の理として、この財政法はそこからスタートしていると思うのです。すなわち国民税金を納めることによって感ずる負担の量と、施策を行うことによって受ける福祉の量と量と量と合致した一点において、均衡した線においてのみ予算を組むべきである。赤字公債の発行を禁止したのも、その精神に基くものであると思うし、従ってこの概念からすれば、使いもできないところの税金は、国民から取ってはならない。私は、これは財政法の基本原則である、こういうふうに考えておるのだが、こういうような使えない税金、だからこそ俗の意味においてたな上げされておる。使えば景気を刺激してインフレになったり、外貨を消粍したりするから使えない。使えないからたな上げした。使えないような税金国民から取るということは、これは財政法の精神が、また直接ではないけれども、各条項がそれを禁止しておる。これは、一体どうお考えになりますか。
  281. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 問題は、主として経済基盤強化のための資金の設置にあると考えるのであります。この資金は、今回こういう資金を設置する必要が生じたのであります。こういう資金を設置する必要が生ずれば、そこに経費が要るのは当然であります。そこで、その経費は、三十三年度の経費として計上をして、それの財源は、三十三年度の歳入をもって充てておるのであります。これは、何も財政法上の年度独立を犯してはおりません。なおこれが次の年度に繰り越されるのは、これは資金のそういう性質でありまして、こういうことができるのが資金なのであります。
  282. 春日一幸

    春日委員 私は伺いますが、資金の必要が生じたからこの資金を作った、こう御答弁になっておりますが、前には、これはたな上げだと言われた。たな上げというのは、使えないからたな上げをしておくのでございましょう。資金というものは、これは財政法四十四条がきめておるのだが、必要な場合資金を設けることができるのだ。ところが資金の定義とは、これは回転して、そしてこれを運用することができるものが資金なんです。これは、回転したり運用したりすることはできないじゃありませんか。また現にできております資金は、いろいろあるでありましょうけれども、それは、ことごとくその資金の必要があるから、特に法律を設けて資金の制度ができておる。ところがこの制度は、出された法律の中にも書いてあるけれども、あらためて予算措置を講じなければ取りくずすことができない、回転することも運用することも禁止されておる。こんなものは資金じゃないじゃありませんか。一体何のためにこの資金が必要になったのですか。経済安定のための資金を必要とする理由をおっしゃって下さい。
  283. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、日本経済の現状に照らしまして、特に財政面から刺激を与えない。従いまして、歳入があってもこれを歳出に充てることは適当でない。そして、資金を設置して、これに繰り入れることが適当である。こういうふうな、財政経済についての必要性に基いておるのであります。
  284. 春日一幸

    春日委員 そんなばかな答弁はないと思う。大体四十四条は、これは資金を設けることができるけれども、その資金というものは、自主的機能を通じて、それぞれの効果を上げるものでなければならぬ。回転して運営して、そうした資金というものがそれぞれの経済効果、財政効果、とにかくそういう効果をおさめなければならぬのですよ。ところが、これは回転することも運転することも禁止されておるのでしょう。この資金は、回転したり運転したりすることができますか、伺います。
  285. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、使うことを適当と認めれば、あの目的にはっきり書いてありますように、予算に計上して、補正予算としていつでも使えることになるわけであります。いつ使うかということは、まだ未決定であります。かようにお考え願いたいと思います。     〔田中(織)委員「そんな、補正予算でなどというむちゃな予算があるか」と呼ぶ〕
  286. 春日一幸

    春日委員 今田中君が言われたように、もう一ぺん補正予算を組んで資金の使途を明確にして、その運営の方式をあらためて再議しなければならぬような、そんなばかな予算のきめ方がありますか。私が申し上げたいのは、四十四条が、特に資金を必要とする場合は、法律によってこういう資金を設けることができるというのは、こんなものをさしておるのではありませんよ。その法律の中に実例がありましたように、これはいろいろある。そういうような資金を設けることはできるけれども、このような凍結資金、たな上げ資金は、法律違反ではないかもしれないが、これは明らかに脱法行為である。わが国の財政法をじゅうりんするものである。あなたは最も悪い前例を作った。あなたの罪は万死に値するものと思う。私はこの際総理に出てもらいたい。とにかくわが国の憲政の歴史初まって以来、こういう財政法をじゅうりんし、そうしてこんなむちゃなことをやった大蔵大臣はいまだかつていない。あなたはとにかくむちゃをやった人だ。私は、そこであなたにお伺いしたいが、こういうようなたな上げをする財源、使えないような金は、国民から取ることを許していないのですよ。申し上げたいことは、やはり要るだけの金は税金でとるべし、けれども、余分の金はとってはならぬということだ。要するに税金による犠牲の量と行政によるところの福祉の量、量と量との合致の一点、これの均衡というものが自明の理として財政法にきめられておる。の自明の理を無視して、そうしてこんな四十四条をことさらに解釈して、こういう不当な執行をなされておる。これは許すべからざる事柄である。四百三十六億も、少くともそのうちの二百何億の資金は、減税に回さなければならぬ性格のものであると思う。使えない金は国民から取るべきではありません。どういうわけでこれを減税に回さなかったか。回し得なかった理由をこの際明らかにしていただきたい。
  287. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、御承知のように三十一年の決算の千百億の中からきておりまして、この据置金は、私からくどくど申し上げるまでもなく、日本経済が異常な伸びをした。その結果生じた増収とみなさなければならぬ。ところが、こういうような世界に類例のないような経済の伸びは、始終起るものではないのであります。これは、まさに異常な事柄だと私は思います。従いまして、これは正常な歳出や、あるいはまた追加の減税に充てる財源としては不適当である、かように考えて、これは歳出には充てがたいという関係にありますので、これは使わない。しかし、必要があればいつでも使い得る状態にあると思います。
  288. 春日一幸

    春日委員 そういう詭弁は許されません。と申しますのは、たとえば、少くともその四百三十六億を減税に回せば、これは、異様な神武景気によってもたらされた特殊の現象だから、恒常年度においてそれだけ減収を来たすおそれありということだが、そんなことはありませんよ。昭和三十二年度の税の自然増収を一千百億円に見込まれておる。それから三十三年度の上期は悪いが、下期はよいということは、河野さんも述べられており、各閣僚も述べられておるところだ。これは、相当の自然増がある。それから経済計画によりますと、三十一年を基準年度として七兆三千八百四十一億円とみなして、毎年上昇率六・五%、かくして二十七年度においては、十兆七千七百二十億の国民所得が見込まれておるのですよ。こういう工合でありまするから、かりに本年度四百三十六億の減税を行なったとして、このような財政法をじゅうりんした異様な措置をとらなくったって、この額というものは、来昭和三十四年については、三十二年度の自然増収の財源がこれまた繰り入れられますし、それからその後においては、経済が平常化して、六・五%ずつの健全なる発展を遂げていって、今原さんも述べられたように、三十七年度においては少くとも三千億近いところの減税をしなければならぬという経済計画になっておるじゃありませんか。だから、その減税をなし得るところの客観情勢、並びに将来への見通しというものは、この経済計画に明確に示されておる。今日このことをなさなかったということはどういうことですか。少くとも国民負担の軽減々々ということをしょっちゅうあなた方は叫んでおって、財源の使えない金が四百三十六億もあって将来が保障されておる、こういうようなときは減税を行うの絶好のチャンスではないか。この時期をおいていつの日にか減税を行うことができますか伺います。
  289. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は減税をなし得べきかどうかということについては常にまず最初に考えるのでありますが、三十一年度の決算から繰り越してきておるこの金は減税に充つべき性質でないということは、先ほど申した通りでありまして、そういう見解をとっております。また違った見解もありましょうが、それは承わっておきます。
  290. 江崎真澄

    江崎委員長 春日君に申し上げますが、もう二十分超過しておりますので結論にお入りを願います。
  291. 春日一幸

    春日委員 それでは私はことごとくその御答弁は満足し得られないものでございまして、まことに遺憾やる方ない思いであります。現実の問題としまして特に重視すべきは、あなた方は予算の編成方針を、対外収支の逆調、そのためには緊縮、一切の既定経費を切り詰める、こう言っておいて、二兆何千億の大膨張、財政投融資においてはまたしかり、こういうような方向と違った逆の方向に向って歩いておる。しかもその減税し得るというこういう財政状態にありながら、減税したい、減税するといってしばしば公約しておきながら、特に本年度においては大衆の租税負担の軽減をはかるなんて、あの本会議の議場において大ぼら吹いておいて、そうして現実には酒を一升二十円下げて、それから自転車の税金を下げた、それだけであと何もやらない、こういうばかな苛斂誅求至らざるはなし、私はきわめて遺憾の意を表して、私の質問は他の委員会に譲るごとといたしまして、終ります。(拍手)
  292. 江崎真澄

    江崎委員長 井堀繁雄君。
  293. 井堀繁雄

    ○井堀委員 政府政策の立案の根拠になり、予算編成の基礎をなします政府の三十三年度の経済計画なり見通しについていろいろな疑問があり、ごとにその疑問は枝葉末節に位するものが数多いのでありますが、基本的な点について非常に大きな矛盾を感ずるのでありまして、この点をまず経済企画庁の責任者から明らかにしていただいて、順次お尋ねをいたす所存でありましたが、長官の御都合が悪いそうでありますので、多少質問の順序を変更いたしまして、この点は後日に保留いたしておきたいと思います。  そこで先ほど春日君の質問がございましたので、これと多少関連を持つ問題から先にお尋ねをしてみたいと思うのであります。春日君は中小企業の重大な危機に当面しての喫緊な対策についてお尋ねがあったようでありますが、いずれも満足すべき答弁がなかったことを御本人も認め、私どもも遺憾に思うのでありますが、ここで一、二の具体的事例をあげて御答弁をいただきたいと思うのであります。中小企業の問題はかなり古くから叫ばれておるのでありますけれども、核心をついていないことを私は残念に思う一人であります。毎回企画庁長官に資料の提出方を希望して参ったのでありますが、漸次改善されておるという傾向は認めるのでありますけれども、その核心に触れる基本的なものが今日まだ出てこないのであります。たとえて中小企業と一口に言いますけれども、三百人未満の事業所であるとか、あるいは商業部門では三十人未満といったような規定が存するのでありますけれども、これをやはり本質的に分析して、その実態を正確に把握しないと調査が出てこないのではないかと思うのでありまして、この点をたびたび主張して資料の提出を迫ってきたわけであります。この点については資料の提出を求め、かつそれに対する御意見をお伺いしてから質問をすると、きわめて明確なお答えが願えると思いましたが、順序が狂いましたが、私どもの得られる資料の中で大別してみますと、中小企業、零細企業という言葉が今出てきておりますが、零細企業というふうにもし分けることができるならば、三十人未満あるいは十人未満といったような統計が漸次明らかにされつつありますから、ある程度論議を進める論拠は出たと思うのであります。  こういう点から私は通産大臣にまずお尋ねしてみたいと思うのでありますが、通産行政の中で中小企業というものを一本にして対策を立てる場合に矛盾が出てくるのではないか。ことに零細企業の分野に属する統計上の事業所の数というものは圧倒的に多い。この零細企業の分野にまかされておりますものを、通産行政の中でどのように処理されようとするか、まずこの点に対する基本的なお考え方を伺って、順次お尋ねしてみたいと思います。
  294. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 中小企業と称しますものの中にむしろ零細企業が数におきましては圧倒的に多い、こういう事実は確かにあるわけであります。また実は中小企業に対する統計は、先ほど来から申し上げております通りに、遺憾ながら今までしっかりしたものがないのであります。本年度調査をいたしておりますし、来年度に完了する、この基礎調査ができますと、非常にはっきりしてくると思いますが、それが今までないことは非常に遺憾でありますけれども、しかしその観念は従来からあるので、たとえば金融につきましては、国民金融公庫の対象になっておりますものと、中小企業金融公庫の対象になっておりますものとこれはダブっております。ダブっておりますが、中心重点の置き方というものが、国民金融公庫は零細企業というものにぴったりすると思います。中小企業の中にはもちろん零細企業も入りますが、いわゆる中企業といいますか、そういうにも重点というところまでは参りませんけれども、そういう方面も扱ってきておる、こういうふうにまあ今までも事柄によりまして中小企業と言っております場合に、零細企業重点を置いての話の場合もあります。また中企業に対する重点を置かれた施策もあります。はっきりはいたしませんが、大体重点の置き方というものはわかり切っておると思います。
  295. 井堀繁雄

    ○井堀委員 わかり切っておるとおっしゃるのでありますからお尋ねをいたしますが、今統計の分け方の中にいろいろあるようでありますが、常時雇用される従業員の数で規模別を定めている統計の中で最も新しいものによりますと、四人未満、たとい一人でも使っているのはすべてそれに上っておりますが、それから五人から九人、十人以下といったようなものが統計の上で明らかになっておる。圧倒的な数に上っております。ここに雇用されておりまする従業員の数、すなわち雇用の問題から見ても非常に大きな問題になってきておるのであります。これはあとでお尋ねをしますが、一体一人以上五人以下、これは必ずしも零細企業と的確に言うことができるかどうかは別として、一応零細企業と見ていい。これに対して通産省は何か具体的な政策をお持ちでございましょうか。たとえば具体的に御答弁願うために聞きますが、先ほど春日君から追及されました金融の問題と税の問題だけについてお答えをいただきましょう。
  296. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 四人以下あるいは十人以下、これは私は十人以下でも零細企業と言えるのではないかと思います。そういう人数ではっきりした区別をして施策をやっておるというのは今までありません。ただ三百人以下というのは中小企業の団体法等におきまして、あるいは中小企業安定法の取扱いとして一応中小企業者の定義になっておるに過ぎません。
  297. 井堀繁雄

    ○井堀委員 一向はっきりしておらないのでありまして、一応許される範囲でいきますならば、三百人未満という中小企業に対する定義を法律の上で引いておる。もしこの考え方を延長してくれば、零細企業に対する一応の線が引ける。そこで数をちなみに見てみますと、事業所の総数が、最も新しい三十二年の七月の総理府の事業所統計調査でありますが、三百五十四万弱であります。それに対して十人以下が三百十四万七千、でありますから、もう九割であります。それからこれに雇用されておる労働者の数、これが経済上占める地位もかなり大きなものが統計の上である程度つかめる。ところがこの実態をどのようにつかんでおるかということを、実は経済企画庁のデータの中で私は明らかにしたかった。これは零細企業とはいいながら、実は労働行政の分野に足を踏み込んでおるものもあるし、あるいは社会政策の中でめんどうを見なければならぬものもある。こういうものを十ぱ一からげにして論議をするところに混迷があるし、またそこに隠れみのが生ずるのであると思うのであります。ここで具体的に実はお考えをお述べいただこうと思ったのでありますが、こういう点を明確にしてないのであろうことが明らかになりましたが、たとえば金融問題についても、零細企業に属する九〇%の事業所には、正規の金融機関を通じて流されておる資金というものはどのくらいあるとお思いでございますか。この間から資料を方々からちょうだいいたしておりますが、この点に対しては明確な資料を私はまだちょうだいすることができない。しかし通産行政をお握りになるあなたとしては、この点をはっきり握らなければ、抽象的に中小企業に融資をすると言ってみても、一応資金プールを予算上に組んでみたところで、実際そこの手元に流れるかどうかという実態が問題なんです。この点に対してあなたはどうお考えになりますか。
  298. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 先ほど金融の問題で申し上げましたが、国民金融公庫と称するものは、おそらく全部零細企業だと思います。あるいは十人以下とか、そういうような程度のものだと思います。中小企業金融公庫におきますと、必ずしもそうはいっておらぬと思います。しかし、パーセンテージからいえば、むしろ零細企業の方が多いというくらいだと思います。
  299. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私が聞いているのは、ここに資金がどう流れているかということをあなたが承知しているかということを聞いているのです。一体機関が幾つもあるのでありますが、中小企業向け金融機関がかなりあります。それだけを聞いてもいいのですが、全国の一般の市中銀行から流れている金というものは、これは想像するにかたくない、ほとんどありません。そうすると中小企業向けの特別の金庫がこれだけの貸付をしたという統計が出ている。その貸付にあずかったという実態について、今私のあげた十人未満でもけっこうです、五人未満でもけっこうです、これだけの大半の事業所を占めるところへどれだけの割合の金が流れているかということをあなた御存じかどうかということを聞いている。
  300. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 実はそういう統計がありませんので、遺憾ながら承知いたしておりません。ただ傾向を申し上げただけであります。
  301. 井堀繁雄

    ○井堀委員 傾向で水かけ論をいたしたくないと思いましたから申し上げたのであります。私の方で多少調べたものがあります。ありませんよ。ここで私は大蔵大臣にちょっとお尋ねしておきたい。問題は、金利と中小企業の経営、そのもとに働く労働者の労働条件へしわ寄せされるところの問題の一つの点であります。  金利の点で、三つの段階一つ伺っておきましょう。中小企業向けのたとえば金融としては、中小企業金融公庫、商工中金、国民金融公庫、相互銀行、信用金庫、信用組合等のデータはあります。これはもちろん先ほど三百人未満の中小事業所にあてて出すわけであります。信用力補強のためには信用保証協会なり信用保険の制度が考えられておりますが、一体それが中小企業のどの部分に日が当っているか。勉強していただきたい。この実態をもう少し正確につかむ必要があります。今日いわれております中小企業の危機の一番深刻な面は、十人未満の事業所であります。あるいは五人未満、小さくなればなるほどひどくなってきている。これは大蔵大臣がいつもお話しになりますように、賃金格差の顕著な開をここに見せております。  そこで金利の面であります。大蔵大臣、あなたはこういうところにどんな金利が使われておるか御承知ですか。一応その点に対して伺います。この二つの全国の市中金融機関の金利と、中小企業向けのこれらの特殊の機関の金利についてもかなりの幅を見せております。ところがそういう機関によって金融を受けられない、俗にいう高利貸し、貸金業者やあるいは親工場やその他の取引関係から融資を受けている人たちの金利が一体どんなふうになっていると大蔵大臣はつかむのですか。
  302. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私どもとしては、中小企業等につきましては、金利もなるべく低くなるように努力いたしておるのでありますが、しかし実際から見ますと、信用の厚薄もあり、あるいはいろいろと融通の過程における手数というようなこともありまして、通常の金融に乗りますところについては、遺憾ながら小口であります。中小企業金融の金利は高いだろうというふうに思っております。これはしかしできるだけ是正いたしたいと思うのでありますけれども、やむを得ない点もあると思います。ただしかし政府機関の中小企業向けの融資の金利につきましては、私はなるべく低下するように努力を払っておる次第であります。
  303. 井堀繁雄

    ○井堀委員 実態をつかんでなくて対策は立つものですか。私は大蔵省はよほどこの点は責任があると思う。私の方で調べたものが必ずしもどれだけの信憑力があるかは別といたしまして、あとう限りの既存の統計なり資料なりをあさったつもりであります。これによりますと、今日東京の組合銀行関係の一応の資料というものは、これは毎月統計が出てきておるからある程度正しいと思いますけれども、ここにも歩積みのようなものがあったりして私は仮定の金利をそのまま統計の上に見ることはできぬと思いますが、そういうものを割引してみてみましても、中小企業向けのものの平均金利と、俗にいう正常な金融機関のルートを経て融資を受けている、一般には大手筋の金利の幅でも、大きなものが出ている。最も新しい統計を計算してみますと、これが金融機関の中でも多少違いがあるにいたしましても、全国の銀行関係からしていいますと、平均九分四厘九毛というのは相当かたいところだろうと思います。ところが中小金融公庫、これの九分八厘六毛はまだ近いからいい。ここにもまだ問題がありますが、商工中金に至りましては、個人貸付を組合を通してという、まあ組織を育成しょうという別な政策があるのでありますから、ここにもかたい門があるのでありますが、それに制限されながらその利息は一割一分六厘八毛になります。これ、違っていたらあとで事務当局でもいいから反駁してもらいたい。相互銀行関係でいきますと、一割一分六厘八毛、信用金庫につきましては一割一分六厘八毛、信用組合になりますと一割三分五厘、これでも借りられればいい方です。ところが一般貸金業者の関係、これも政府にはある程度数字は握れるはずだと思います。私どもが握りましたにいたしましても、一般の貸金業者からいいますと、今十一錢七厘、ずいぶんいいところ、もっと高く四割三分です。もう一つ注意を要すべきことは、最近のあなたの責任の一番大きな問題の一つ金融引き締めのためにどういう形で金融中小企業、零細企業にしわ寄せされたかという一番わかりやすい面は、この金利の上に出てきている。今の手形の親工場から下請けに出している実情をごらんなさい。だんだん長くなっいる。四カ月か五カ月というのはもう常識になって、六カ月から七カ月なんというのが出てきた。そしてその割引は銀行ではいたしません。その割引なども、四銭五厘から八銭、十銭なんというのがある。こんな金を使って事業が成立するはずはありません。私が大体そういうものを積算して統計に合せて計算して見ると、違っていたらそちらで反駁していただきたい。これを今いう中小企業庁の金融実態調査によるものをデータにいたしてみますると、金融機関の貸出総額が五兆九千三百三十三億と見て、中小企業向けのものが二億六千九百九十一億円という数字が出ている。この二兆六千九百九十一億という中に一般の市中銀行から受けているものは、この中の上の部です。あとのさっき申し上げた比較的金利の高い中小企業向け政府の自慢にする機関を通じて貸し付けたものが、その約六七%を占めている。そういたしますと、そういう計算の上からここに公けになっておりまする市中銀行と中小企業向け金融機関の平均利回りのそれを一段の上に持ってきますと、一年間で平均三分高利を使っておる。これが今の計算からいきますと七百九億円の負担になる。それからもう一つの段にいきますと、一割と平均見ていきましても二千六百億から二千七百億近くの金利の負担のギャップが中小企業と大企業の間に出てきている。これが労働条件にしわ寄せされている。決して中小企業が過度の搾取をしているのではない。あくどい労働者の搾取をやっているのではない。金融機関と親工場にしぼり取られている。ここを断たなければ日本中小企業、零細企業の問題は一歩も進まぬ。これに対するあなたの所見を一つ伺いたい。
  304. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 日本中小企業、特に零細企業の問題ですが、今お話しのような点が私全部そうとも必ずしも一思いませんが、しかしそういう傾向を持っておることも否定できないと思います。これを金融面から何とかやれということもやはり私無理じゃないかと思う。これは日本中小企業の現状をよく把握して、企業実態からやはり入っていかないと、普通の金融に乗る中小企業というものは、さほど金融面からも憂うべき状況にないと私思うのであります。問題はやはり零細な企業で、普通の金融に乗らないで、無理な金融をしなくてはならないというところに問題があるのであって、そこには多分に私は社会政策的な意義と扱いを必要とする状況があると思う。こういうものについては、私はやはり中小企業の基本的な対策として考えていって、言いかえれば、中小企業が少し多過ぎる。ここで、こういうふうな形において生活する人が多いのだ。これはやはり人口問題からも入らなければならないし、同時に中小企業に従事する人をなるべく少くして、むしろこういう中小企業から人口を減らして、普通の雇用関係に持っていくというような基本線をとりつつ、金融の上からもそれが正常な金融に依頼していくことができる、こういうふうな形に持っていくべきではないか。むろんそれだからといって、そういうふうな状態が急にできるのではありませんから、今後におきましても、金融上からできるだけの処置は講ずるつもりでありまするが、しかし金融に社会政策的なことをやれというようなことは、特に通常のときにおいては求め得ないことだと考えております。
  305. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたの御答弁からいたしますと、人口問題、特に労働人口の問題が解決しなければどうにもならぬという、この事実は私も認めます。しかし、それでは政治がない。そういう困難な実態があるから、何も本人の責めに帰する問題ではないじゃないか、私はむしろここに政治が必要ではないか、そこにこそ政策というものが打ち出されていかなければならぬのじゃないかと思う。なるほど今日の自民党の政策をもってしては、金融を社会政策的に置きかえるということは一むずかしいことかもしれない。しかし、むずかしいことを現在の社会の実態は迫っておるということを認めなければなるまい。それに対する対策が出てこなければ、中小企業対策などというものはうそっぱちだ、見殺しじゃないか。金利の問題を引き下げればいい。一つには信用保証の問題が出てきている。ないとは言いません。信用補完の制度として信用保証協会を考えたり、信用保険の道を開いたりしたことは、一つの突破口を見つけようとする努力の表われとしては認めるのでありますけれども、これも時間がありませんから多くは述べませんけれども、信用保証協会の実態を調べても、なるほどそのねらいはよろしいのでありますけれども、結果は負担を加重することになっておる。一般の金利の上にプラスすること信用保証料が、全国の五十三の保証協会を見ますると、低いところで一分八厘から三分の範囲内において保証料を付加さしておる。それを五十三のうち三十八までが二分五厘以上をとっておる。二分五厘以上の金利プラス保証料の負担がかかってきておりますから、ここにも零細企業金融の面において決して公正なスタートの上に立っておりません。自由主義経済の基礎の上に立っておらぬのです。優勝劣敗の法則は最初から手かせをつけ足かせをつけておるという事実が明らかになっておる。信用保険制度に至ってもなおさらその通り。実際そのケースに乗らぬのです。あなたも社会政策的な金融政策の道をここに打ち立てなければならぬということについてはお感じになっておるようでありますが、それをどうして立てるかということについては、責任ある者の考え方でなければならぬと私は思うのですが、こういう点について何か通産大臣、答弁をしたいようでありますから……。
  306. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 中小企業あるいは小口金融というものについて金利が高いということは、現実問題としてまさにその通りです。その根本原因はどこにあるかといえば、結局信用力が薄弱で回収が非常に困難である。もう一つは、調査に手間取るといいますか、割合に割り高になる、こういう関係があります。そこでこれをどこからほぐしていくかという問題は、結局根本には信用力を補完していくということでなければなりません。それでただいまお話しの通りに、信用保証について、今度の金庫は保証料を引き下げるということが一つの大きなねらいになっております。そしてこれを包括保険に持っていきたい、こういうのが一つのわれわれのねらいなのです。包括保険に持って参りますと、信用保証協会自身が非常に強くなる、従って銀行も安心して貸し出しができる。銀行も金利を下げるようじゃないかという機運が出ております。これは私は今度のねらいとして非常にいいところだと思っております。  もう一つは、結局また中小企業のいわゆる体質の改善をやらなければいかぬ。これは何としましても設備の更新、設備の近代化、それから技術の向上、こういう問題を根本から解決していかなければならぬと思います。今度の予算におきましては、近代化の補助金は従来の五割増しというので、結局において自己負担分なんかをいろいろ入れますと四十五億以上の設備の近代化がやれるのでありますが、さらに技術の向上という面におきまして、従来の府県の指導が非常に弱体でありました。これに根本的にメスを入れて、そして技術の向上に乗り出してもらいたいということや、企業診断というような面におきまして、従来とははるかに、また新規の予算もとり、また従来の予算をぐっと増しておる。結局体質の改善と信用補完、この二つの方面から押し進めていくよりほかに道はない、かように考えております。
  307. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私の質問に対する御答弁で明らかになったように、実際においてはもう行き詰まっておる。私はこの制度では中小企業対策はできない。それは今あなたがお答えになりました、金融の一例をあげたのですけれども、なるほどあなたがおっしゃるように、零細企業中小企業はどうしてもコスト高になる。でありますから、金融機関が営利追及のための事業であったのでは、これは最初から採算に合わぬのですから、ほっとくより仕方がない。水が低いところに流れるのと逆な意味において、利潤の高いところへ融資されてくるというこの必然な勢いをそのままにしておくならば、何も政治は要りません。大蔵省の金融に対する役割などというものは、ここにおいては、強者の前には大いに働くけれども、弱者の前には一こうに働きをなさぬということを意味するだけです。金融が公的な性格をやかましく言ってきているのはここにある。口では念仏を唱えながら、実際においてはどこにもそのはけは出てきていない。信用力補強の問題については、なるほど信用保証協会その他の手当も必要でありますけれども、基本的には通産大臣のおっしゃられるように、中小企業の弱点をどう解決していくかということでありますから、通産行政の分野においては設備の近代化、あるいは技術の問題その他がいろいろ指摘されておりますけれども、こういう問題もさっきの金融と同じことなんです。こうすればいい、ああすればいいというだけの話なんだ。それを実際にどう解決するかという問題を、今の金利のような形で掘り下げていったらお手あげです。そういう政策を具体的に出してこなければ、それが予算の中へ出てこなければ、われわれは予算審議する意欲が起ってこない。社会主義を背景にする社会党と資本主義を背景にする自由党の立場の違いはやむを得ぬでしょう。しかしここには政策上の近似性——かって鳩山さんが説いておったが、近似性が出てこない。われわれ接近しようとしても、あなた方が一向に現場におりてきていない。これはひとり金融の問題を例にあげてみて追及しただけであります。いずれをあげてもこういうことが言えるのであります。もっとこういう問題に対して真剣な態度で論議のできるようなデータを出していただきたいということを企画庁に要求する意味で、また後日質問ができますからそのときに譲りたいと思いますが、せっかくの機会でありますから、もっと中小企業問題に熱意を持つものなら、金融の面のように、だれかが言ったように、一応人気取り政策としては、中小企業向け資金を増額するということについては、与野党ともすぐ一致する。タンクに水を張ることはできますけれども、肝心かなめの必要なところに、のどをかわかして待っておる中小企業、零細企業のところには流れてこない。すなわち途中のパイプがとまった。ここが政治が眠り、行政が怠慢をそしられる理由になるのであります。こういう問題をもっと具体的に出してもらいたい。大蔵大臣、だめです。中小企業のために一生懸命やります。金利を下げます。どうして下げるかということを言わなければだめなんです。この点はどうして下げるかということでなくて、どうして上ってくるかということを、あれよあれよで見ていくか、あるいはそうなることは必然だということで横着にかまえておるかという違いになってくるわけですが、もっと真剣にこういう問題について真剣な討議のできるような場を作ってほしいことを要望いたして、この問題はきょうの私の質問の中心ではありませんから、この程度にいたしておきます。  次に税金の問題について、さっき春日君も言っておりましたが、ことに今回は勤労所得税を中心にして徹底的な税制改革をやるチャンスではなかったかと思う。いろいろな条件をあげてこられる、私は多く申し上げる時間がありませんけれども、税制調査審議会の答申の中にもこのことを大胆にうたっておりますから、私がここで贅言を要しない。そこで私どもは非常に矛盾を感ずる。この問題はあらゆる政策の上に影響してきます。ただ税金をよけい出したくないといったような功利的な考え方にくみするような気持は私はごうもございません。応能課税の原則に基いて、能力に応じて税は負担すべきである。しかし能力のない者に——私は一例を具体的にサラリーマンの月給袋の中に税がどうなっておるかということを見せてもらったのです。この人は大学を卒業されて、一つの職場に八年も勤続されて係長クラス、その人の実収は十一月分の給料袋であります。二万二千六百七十一円の収入になっております。それから所得税が五百五十円、税制改革で安くなって、一番恩恵を受ける。ところが住民税が六百四十円、ここは比較的地方でも安いところであります。そのほかに厚生年金と健康保険料が九百二十円、失業保険が百八十四円、それに共済会が四百十一円、でありますから、ここで手取り一万九千六百三十三円、この人の家計費を私は見てみました。政府が一番低額の家賃だと誇っております公営住宅の二種に入っております。この家賃を差し引いて持っていきますと、一万六千円足らずになってしまう。親子三人です。でありますから、こういう実態を見ていきますと、税をここでかける限界などというものは、これも国が終戦後のように、戦争に敗れて、あと建て直しをやるというような、何もかもさらけ出してやらなければならぬという状態ではもうないはずである。これは大蔵大臣、非常に責任があると思うのでありますが、ほかの税金も、中小企業 の事業税その他もありますけれども、源泉徴収によってきびしく差っ引いている勤労者の生活費の中に食い込んでおる税金は改める御意思はありませんか。
  308. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 所得税、税一般もそうでありますが、所得税が決して安いというようなことは考えておりません。できるだけ所得税等の直接税も減税をいたしていきたい、さように考えておるのでありますが、しかし、税になりますと、どの方面もやはり今日税は高いのであります。公平に均衡をとりつつ、財政の許す限りにおいて税負担等も軽くしていきたい、かように考えております。
  309. 井堀繁雄

    ○井堀委員 税全体が重いということを言っておりますけれども、税制調査会の答申の基本的な方針の中では、そう言っておりませんよ。これはよほど考えていただかなければいけません。こう言っておりますよ。税金は確かにあなたが言うように全体に高い。高いけれども、とりわけ問題は、国税及び地方税を通じて負担が一体に重いということは言っております。しかし、ここで特にあげております。個人所得に対する課税は、一人当りの負担額について見ても、国民所得に対する比率について見ても、また租税収入総額中に占める比率から見ても、戦前に比べて著しく重くなっていると述べておる。そしてその弊害をあげております。その弊害は、それが勤労意欲や事業意欲に重大な悪影響を与えているということを指摘しておるのです。税金はもちろんここに秘訣があるのじゃないか。応能課税の原則を抽象論でやる必要はありません。生産意欲を減退させたり、事業意欲を減退するような税金がかけられてきたときには、それはもう公正な課税ではないということを専門家は上品に警告をしておるのであります。これは味わうべきことだと思う。ことにさっき春日君も言っておりましたけれども、ことしは減税をなすべきことをここで指摘しておるのであります。それは租税の上からくる自然増収を指摘しております。こう言っております。自然増収分は一般的には財政支出の増加に充てるか、あるいは減税によって国民の手元に還元するか、いずれかの方法によって処理することが考えられる。しかし、われわれはこの際まず減税を選ぶべきことを主張する、租税の予期していない自然増収は、まず国民の手元に返す必要がある、のみならず、現行税制に幾つかの欠陥が指摘される。この欠陥が指摘される状態にあるから、まずこの際減税をやれということを言っておるじゃないですか。そのなまなましい事実を、私は一サラリーマンの生計費の中から御紹介したわけであります。こういう民主的な機関によって真摯な態度で検討された結論が、要するに政府にこういう形で答申された場合は、それを一ぺんでやれないまでも、大蔵大臣としては予算編成の上にどうお考えになったか。この点は非常に大事なことだと思いますから、一つお答えを伺っておきたいと思います。
  310. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 自然増収があります場合に、まずこの増収を減税に充つべきではないかということを考えるのは当然でありまして、大蔵大臣のむしろそれは義務にすら属すると私は思っておるのであります。ただ、しからば自然増収があれば、すぐに減税に振り向けるかどうかという点は、そういう増収額が持続的にあるかどうかということも当然考えなくてはなりません。また他方、そのときにおける国の財政的需要、言いかえれば、国民生活全体のためにどうしても歳出に立てなくてはならないもの、それが一体どうなのか、こういうことも考えなくちゃなりません。一度減税すれば、むろんそれだけ財源が減るのでありまするから、その後において財政的支障を与えることは適当でないのでありますから、それらを考えましてあんばいをいたしておるのであります。私は、自然増収が継続的にあり、しかも財政需要をまかなってなおかつ余りがあるというような見通しの場合に、減税をやることにちゅうちょいたすものではございません。
  311. 井堀繁雄

    ○井堀委員 議論にわたることは避けたいと思いまするけれども、あなたは自然増収が継続的に考えられるかいなかの見通しについて逃げを打とうとしております。そこで私は、先に企画庁長官に伺えば、そういう議論はできなくなると思う。これは根拠が非常にぐらついておりますから、あるいはどうなっているか知りませんけれども、過去の実績なり、それから将来の見通しは、ただ思うというのではなくて、三十一年の実績に基いて三十二年度の実績を予定し、あるいは三十三年の見通しを立てておるわけであります。これをついていけばわかるのです。だから、そういう答弁をあなたなさることは、一応予算を出したのですから、それを守ろうというための立場でしょうが、立場の相違になってきますから言いませんけれども、もっと良心的であるべきであると思います。そういう逃げ方ではなくて、これは政府の出している資料で、過去の実績からいっても、それは神武景気のようなものが永続するとかいうなことはだれも考えておりません。私もそういうことは言っておるんじゃない。そのために自然増収が出たんじゃない。そのために私はあなたの方から統計をとっておる。時間がありませんから、抽象論はやらないが、そういうデーターの上に立ってあなたの説明を聞けばでたらめということになるのです。
  312. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 数字的に申しますと、三十三年度の予算編成に当りましては、三十二年度の予算編成当時に比べまして、税収入がおよそ千億増、こういうふうな見地に立っております。そうしたならば千億減税するかといえば、どうしても財政の上において当然増の歳出がこういうふうにある。そうすると、残り新政策費としては、あの場合に、おそらく四百億とか五百億とか、こういうふうになる。そういう程度のものは新たな政策として歳出に立てないと、これは経済自体がやはり縮小均衡に陥いるおそれもある。需要問題等において、また財政支出がかえって多くなるというような事態、そういうふうな見地から、一千億の三十三年度における自然増の場合においても、私は減税の余地はないという判断、むろん三十一年度から千億ばかりの剰余金がやってきましたが、これは法定においてそれぞれ処分する。残りが御承知のように四百三十六億はあるのでありまするが、これは先ほどからしばしば申し上げますように、私は、これは継続的な歳入と見るのは適当でないという見地に立ちますがゆえに、これを保留する措置をとったのであります。
  313. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今の予算提出して、その原案を通そうとする立場からの主張で議論をしたのでは、私の質問の真意は解していただけないと思うのです。非常に大事な点は現在のこの数字が示しております。だから、あなたと局長、長官を一緒にして伺えば、どっちの言うことが信を置くことができるかどうかということによってきまる事柄の答弁なのです。これまた保留をいたしまして、その節、今あなたがおっしゃったことは速記にも残っておりますから、その点ははっきり両方の考え方を聞いてみてただしたいと思いますので、これは留保いたします。  そこで最後に労働関係について一、二お尋ねをいたしてみたいと思います。先ほど来の論議の中で、労働大臣お聞きでありましたからおわかりであろうと思うが、日本の労働問題の焦点は二つにしぼることができます。一つは、日本の労働慣行というものをいいものにしていくためにには、今組織されておる労働者とその経営者との間によき慣行を積み上げていくという点に国民のすべてが関心を持ち、また当事者が努力されなければならぬことは言うまでもないことであります。このことが大きな問題になってきております。いま一つの問題は、そういう労働運動、労働問題の軌道に乗らない、それ以前の問題に取り残されております組織すら困難、また組織をしても維持ができないといった、民主主義の恩恵からこぼれておる零細企業のもとにある労働者及び零細事業家の問題を、私は労働問題として大きく取り上げてこなければならぬと思う。むしろこの問題は、労働問題というふうに考えるよりは、もっと大きな社会的な諸問題をいざなって現われてきている問題だと思うのでありまして、この二つに対する労働行政というものは、重点的に、そうして決定的な方針が迫られている時期だと思うのであります。あなたがせっかくいろいろ御努力している一、二の問題についてはわからぬわけではありせんけれども、どうもそれをさっきのように掘り下げて検討していきますと、見せかけの労働行政ではないか。他の部門と違いまして、労働行政は労働者に対するサービス庁であり、ことに資本主義経済を背景として成り立っておる政党から出ておる労働大臣としては、他の閣僚に先がけてこの点については強い御意見を主張し、また抵抗の一番強いところに立たれ、またその抵抗が、押し切られれば押し切られるほど、私は保守党のほんとうの議会における政策中心にする政党の行き方を示すバロメーターにもなろうと思うのであります。こういう意味であなたのこの問題に対する所見をただしていこうと思うのであります。  まず第一の問題については、国鉄の総裁にもおいでいただいて、具体的な事実を通じて検討を試みたいと思います。その前に、先ほどの質疑応答の中に関係がありますから、零細企業の労働問題について、この予算の中にも、政府政策の中にも、最低賃金法を除けばこれと思うようなものが見当らないのであります。最賃法は、この問題だけではありません。全体の問題に関係がありますから、最賃法の問題は別に論議をする機会がありますからその時にお聞きしようと思っております。この零細企業の圧倒的な数の上、それからそれが日本経済の上に占める地位、あるいは労働問題としての重要性などから考えて、具体的な対策というものがあるはずだと思う。それをまずあなたから伺って、また一、二お尋ねしたいと思います。
  314. 石田博英

    ○石田国務大臣 ただいまの御意見の通り、労働問題の一つ重点は、組織された労働組合と使用者の間の関係を正常化する。いま一つは、組織されない零細な企業に働いている人たちの労働条件をどう向上させるかということであると思います。特にわが国の現在の労働者諸君全体の状態を見てみますと、後者に対する具体的な施策が一番必要であるということも全く同感であります。この賃金格差を縮小いたしますためには、まず第一に、賃金格差が何によって生じてくるかということを検討しなければならぬのではないかと思います。やはり私は、その賃金格差の生じてくるのは幾つかの原因がございますけれども、その企業の原始性、生産性の低さというようなところに非常に大きな原因があると思います。これは直接的には労働行政の範囲ではありませんが、そういうことを配慮しつつ、しかも、よく世間にはそういう条件を整えていかなければ労働者の向上を考えてもむだなんだ、第一前提はそれを作り上げることに努力をすべきだという議論もありますけれども、私はやはり積極的な労働政策と申しますか、現状に即した労働者の生活向上と、条件の確保ということを行うことによって零細企業の近代化を促進する契機ともなり得るという観点から、先ほどお話にもありましたように、最低賃金制をあえて法案として提案いたしておる次第であります。また、まだ提案準備中でございますが、弱小企業に働いている、五人未満の事業場の労働者諸君に対する失業保険の拡張適用についての立法措置も急いでおるようなわけであります。また同時に、賃金の格差がひどく、生産性の低い、また職業の安定性の乏しい原因の一つは、技術がこれに伴っていないということにもございますから、職業訓練法を提案をいたしまして技術教育の普及拡大をはかって参ろう、こう思っておる次第でございます。
  315. 井堀繁雄

    ○井堀委員 零細企業の事業場の一番大きな問題については——最近雇用がまことに不安定であります。労働条件のうちで雇用が不安定だということほどみじめなものはありません。大きな事業場でありますならば、一応採用されますならば、就業規則その他あるいは労働団体などの力によって雇用の安定性を確保し、あるいはそれを改善していくという道が一方に行われていることは、これは民主主義の当然のならわしであります。零細企業の場合は、冒頭に述べたごとく、組織が困難であります。また、組織しても維持がむずかしい。でありますから、ここに労働行政の——保護行政、特に保護行政の要するに重点が向けられねばならぬと思う。ところが、最近中小企業、零細企業問題を見当違いなところから持って来て——あえて私は見当違いということを申し上げる。先ほども言うように、中小企業自体の根本的な問題に対しては、何も対策を持たない。そこからしわ寄せされてくる、必然的に低いところに水が流れてくる悪いところの基本問題、それを保護してこそ——政府は労働基準法を中小企業には緩和せよなど、あるいは労働省はこの誤まった世論の前に、声におびえて、中小企業、零細企業における基準法というものはから回りをしている。これは私は保守党内閣としては重大なことだと思うのであります。あなたは今日の基準行政に対して、もっと徹底した保護行政をおやりになる考えがおありになりますかどうか。
  316. 石田博英

    ○石田国務大臣 労働基準法はわが国の経済の実情、特に中小企業、零細企業の実情にそぐわない面があるのだ、従ってこれを現状に合うように改正しろという議論があることは承知しておりまするが、私は労働基準法というものが、わが国の中小企業の実情から進み過ぎている面があるということは認めますけれども、しかし、この間のギャップは指導啓発によって埋めていくべきであって、法を改正して後退すべきではないという立場を堅持いたしております。しかしながら、罪原を作るのが目的ではございませんから、でき得る限り告発等は避けまして、指導啓発によって効果をおさめるようにやっておりますが、しかし、それもでき得る限り速度を早めて態度を厳正にして行うように指示をいたしておる次第であります。具体的に申しますと、私が就任をいたしまして以来、特に商店街等にございました勤労者の休暇制度、中小商店にはほとんど休暇制度というものが確立されていなかったのでありますが、東京におきましては、まず中心的な問屋街を手初めといたしまして、週休制の実施を勧奨して参りました。すでにこれは四カ所におきまして実現を見ておるわけであります。最近二月一日からは大阪においてもそういう情勢が行われつつあります。これはほんの一例でありますが、そういう態度をもちまして、具体的に実績を積み重ねて法の精神を生かすようにやって参っておるつもりでございます。
  317. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そこで最近の問題は、今政府が提案されておりますが、本会議におけるあなたの質疑応答の中で、また与党、野党の質問の中で、ある程度意見が出ております中で、私はこういう日本の客観的な条件、その中から最低賃金を考える場合には、あなたは何か全国一律の賃金が、諸外国における例が乏しいということを理由にされて、不適当だということを言っておられた。私は金額の問題については、あるいは地域における金額の誤差をつけるとかいうような、いろいろな操作上の問題はあるかもしれぬと思う。しかしここで最低賃金制度の必要だというのは——ここに零細企業の問題をあなたも指摘しておる、この場合は私は、今の政府のお考え方は今のあなたの御答弁との食い違いがあると思うのです。あなたの御意思じゃなく自民党の考え方が出たのであるかも、その辺はわからぬにいたしましても、あそこらがこういう問題を解決するための最低賃金法の考え方だとするなら、全国一律一本という考え方にもいろいろな思想がありますけれども、零細企業に対する保護政策一つの目的であるとするならば、私は全国一本にいかなければ、ここでまた零細企業が社会保険や労働保険の網の目から漏れていると同じように、漏れると思う。あなたのこれに対するお考え一つ聞いておきたい。
  318. 石田博英

    ○石田国務大臣 社会保険や失業保険については、現在漏れておることは私も認めます。従ってその網の目を狭めてできるだけ漏れないようにその実態をつかみ、そしてまたそのつかんだ実態に沿って実施して参りたいと思って、その準備を行なっております。先ほど申しましたように失業保険の場合には必要な立法措置をとるつもりでございます。最低賃金制の場合に同様のことが起らないか、私は零細企業、中企業、小企業そういう企業別の規模において、そういうものがあの法律の上からは出てこないと思いますが、実際問題としてなかなか一ぺんに普及することはむずかしい面もございましょう。しかしこれはやはり積極的に勧奨していきますとともに、必要の場合は法案十六条の規定しております職権の決定の条項を生かすこともあわせ考えまして、そしてそういうことのないようにして参りたい、こう思っておるわけであります。最低賃金法を出しました根本的な考え方は、およそ人を使っている者は、その使っている人の生活権を保障する義務がある、それをなし得ずしては人を使う資格がないんだという考え方に出発をし、それを確立することによって、逆に各企業の労働条件というものを正常化することによって勤労意欲の発揚をはかりまして、企業の安定にもあわせて資する、こういうことを期待しておるわけでございます。  それから諸外国の例を引いて、全国一律例を否定しているということではないのでありまして、諸外国の例も一つの実情でありますが、わが国の各般の実情が全国一律を進めることは困難である、その困難である証拠には、日本よりより以上、はるかに比較にならないような産業の基盤を持ち、かつ特に中小企業においてはその経営の基礎が確立されて、その生産性も大企業とそう隔たりのないアメリカにおいてさえ、全国一律ということは州際産業以外には行われていないのだということを申し上げた次第であります。
  319. 井堀繁雄

    ○井堀委員 最低賃金法の問題についてはかなり私どもの考え方と距離があるようであります。いずれ議論する機会が別にございますから、その節に譲りたいと思います。  そこで時間もございませんからあと二問で終りたいと思います。一問はこれは分科会で法務大臣と労働大臣お二人おそろいのところでぜひ結論を与えてほしいという問題で、きょう保留してこの機会を得たわけです。これは予算委員会で三回取り上げ、あるいは社会労働委員会でも一回か二回取り上げて政府の決意を促しておった問題で、これはすでに行われた労務に対する賃金であります。これが今特に不払い賃金事件といわれているのでありまして、あとを断たないのであります。これほど私は法治国における残忍なできことはないと思う。この労働者の唯一の生活のかてである労働賃金が支払いを受けられない。今日基準法を引例するまでもありません。通貨をもって限られた期日に必ず支払いをするようにきびしく法律は命じている。にもかかわらず、毎月々々多くの不払い賃金事件が発生をし、また未解決のまま繰り越されてきている。十一月分の労働省の報告を見ますると、十一月末の不払い賃金がその金額において四億五千九百万円、件数において四千九十九件、被害を受けている労働者の数が四万七千三百三十五人となっている。この内訳を見てみますと、二つに区分することができやせぬか。これが今日の労働問題の焦点になっておりまする中小企業、零細企業関係に非常に件数が多いということ、まさにこれは無政府状態、低い賃金。賃金格差が物語るように、他の一般の労働者のレベルに比べて低い収入、きっと労働条件も悪い。全額もらってもなおかつ最低の生活が困難な者に賃金が不払い事件として残されている。他の一つの例は、経営者の経営のあやまちから、他の債権者に、当然賃金に支払わるべきものが横取りをされている。この二つのケース。この問題を解決できないような労働行政は国民から信を失うと思うのであります。労働大臣のこれに対する具体的な方策を一つお聞かせ願いたい。
  320. 石田博英

    ○石田国務大臣 賃金債権と他の債権との関係の解決ということは実は非常にむずかしい問題であります。実は私も議会であなたと牧野前法相との応答の速記録を全部調べて参りました。私は私の立場、労働省の立場としては、賃金債権を確保するということに努力しなければならない。これは抽象的な努力ではなくして——抽象的な努力という言葉で解決しないのは民法、商法上における登記された債権との関係また国税との関係、この解決というものは、ただ努力するという抽象的な言葉だけでは、今までいろいろやられているようではありますが、なかなか困難である。しかしわれわれは賃金債権を確保しなければならない。そこに何か賃金債権確保のための別途の方法を講じなければならない。今まだ考えている途中でありまして、内容は今ここで申し上げるわけに参りませんけれども、そういう別途の方法について現在研究中でございます。それまでの私どもの方としての経過措置といたしましては、労働基準局あるいは基準監督署等に命じまして、現在の状態においても、法律上の知識の乏しいことからみすみす賃金債権を確保し得ない勤労者諸君の状態を緩和いたしますために、そういう人たちの相談に乗れるような法律上の知識を基準監督署の一線の職員に付与して、そうして善導に当らせるということをいたしたいと思っておるわけであります。法務省との折衝は今後も続けて参りたいと思いますが、「しかしいつまでもそういう論議をしておるわけにも参りませんので、それ以外の方法をも目下考究中でございます。
  321. 江崎真澄

    江崎委員長 井堀君に申し上げますが、だいぶ時間が経過しておりますし留保分もありますから、結論にお入り願います。
  322. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今別の方法をお考えのようでありますが、私も別な方法を必要とすると思うのであります。というのは、ほかの問題と異なりまして、すでに支払われた労務です。しかもそれが最低の生活を維持するに足るか足りない少額の生活費であります。これが保障されないという手はないと思う。でありますから、債権として保護を受けると同時に、他面できない場合は——今日、他の理由によって生活の困難な者については生活保護法がございます。あるいは今日社会保障制度の中で、国民生活を保護しようといういろいろな政策考えられようとしておるときでありますから、この未払い賃金に対する保障の道を、こういうやむを得ない事情によっておるなら、企業が支払い能力を失った場合国がめんどうを見る、あるいは他の政策をこれに補てんしてやる、そうしてこそ政治があると思うのであります。このことはあなたはお察しになっておると思うが、この点について何かお考えがございますか。
  323. 石田博英

    ○石田国務大臣 具体的な方法ということは、今私も具体的に考えておりますけれども、まだまとまらないうちに申し上げる性質のものでないと思いますから申し上げませんが、それを考える趣旨はおっしゃる通りであります。
  324. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そういう趣旨をお考えいただいておるということで了解いたしたいと思います。  次に、法務大臣せっかくおいでになっているのに時間がなくて何ですが、あなたに私はぜひはっきりした見解をお述べいただこうと思っておるのです。前任の牧野法相はこの事件について二つのケースを述べました。二つとも共通した問題ですが、一つは、雇い主が支払い能力を喪失した場合、不可抗力に近いといいますか、そういう場合については、今言うように保障の道を考えるということを労働大臣がお考えの由でございますから、この国会中にぜひ一つ芽を出していただきたいと思います。  それはそれとして、しかし当然労働者の債権というものが法律的にも現実的にも存在しておる、架空のものではなく、すでになされた債権なんです。それは財産なりあるいは財産の対象になるべきものがあるはずです。それが公租公課もしくは他の抵当権などによって労働者の権利がみすみすじゅうりんされておるというこの法的盲点、これに対するあなたのお考えが前法務大臣と一致しておられるか、または異なるか、そういうことについて、重要なる問題ですからきっとお受け継ぎをなされておると思いますが、端的に一つお答えを願います。
  325. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 賃金債権につきましては、国家としてこれを法律的に保護し保障しなければならぬということはもう御意見の通りでございます。この問願は井堀委員の年来の御主張でありまして、牧野前法務大臣との間のことも承わっております、法務省におきましては、この問題をそれ以来慎重に研究をいたしておりますけれども、まだ結論に達しておりません。御承知のように、民法第三百六条ございますか、これでは、一応賃金債権に対して先取特権の制度が認められております。しかし、井堀委員とされましては、これでは不満足であるからさらに進んでの保障を立案しろという御注文と承わっております。この点につきましていろいろと研究はいたしておりますけれども、これはわが民法における先取特権の制度、その他抵当権の制度等に関する根本的な変革のものですから、いろいろむずかしい研究問題が包蔵されておりまして、今法務省におきましては鋭意検討を加えておる過程でございますが、まだ結論を得ておりません。
  326. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私の持ち時間がないのでまことに残念でございます。この問題は今の御答弁では、また何か元の通り同じことを言っているようでありますが、こういう問題についてはもう三年越しですから——もっとも大臣がかわられたのでありまするけれども、大臣がかわられてもその背景をなす政党は同一の政党でありますから、そういう問題はやはりてきぱきと解決をしていく努力をなされなければ、議会における権威をみずから失墜せしめてしまうことだと私は思うのであります。できなければできない、こういうわけでできないとおっしゃって下さい。こういう問題はそう何も研究々々で三年も四年も研究しなければならぬというものではない。労働者が未払い賃金のままで三年も四年も指をくわえて待っておられるものではありませんよ。一方に適切な暫定的な保護政策を講じながら考えるというならばわかる。それも今大臣が言うのには、これから準備をなされるようでありますが、もう三年もこうなっている。こういう点は、大臣がおかわりになっても、迷惑かもしれませんけれども、やはり大臣を引き受けられるときには、こういう点に対してははっきりして、できないときは大臣を引き受けられないというくらいの気迫があってこそ政党政治の実態があると思うのであります。  時間がありませんから、最後に機労の関係で、これもけつに火がついている問題であります。国鉄の総裁もおいでになっておりますけれども、国鉄の労働組合の中で、労使関係の基本的な問題について……。  それでは時間がないそうでありますから、いずれまた機会を得ていたしたいと思います。
  327. 江崎真澄

    江崎委員長 そうですね、留保されたということで……。ただし国鉄総裁がせっかく来ておられますから、やられますか。よほどかかりますか。
  328. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それでは一問だけ。
  329. 江崎真澄

    江崎委員長 せっかく来ておられるから、そうして下さい。
  330. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それではもう二、三分だけで一応おしまいにいたしたいと思います。  これは企業体の中でも一番大きな企業体で、しかも日本の労使関係の中においてその範を示していただきたい事業場であるだけに、われわれは強い関心を持っております。何か労使関係の間にうまくいかないことがあるということを方々からいろいろな情報を得ておるのでありますが、私の情報でお尋ねするよりも、時間の関係もありますから、国鉄総裁としてお困りになっている点があるだろうと思いますので、その点を一つ率直にお述べいただきたい。
  331. 十河信二

    ○十河説明員 労使慣行の正常化ということは私も心から望んでいるところであります。それにはまず法律の規定を守って違法状態を解消するということが基本的の前提条件ではないかと思います。その前提条件がちょっと欠けておりますので、団体交渉によって平和裏に問題を解決したいと思いながら、できないで困っている組合があるのであります。しかしながらそれらの組合の中でもおそらくはすみやかに違法状態を解消して、正規の団体交渉のできるようになってくれることと期待いたして、しんぼうして待っているような次第でございます。
  332. 井堀繁雄

    ○井堀委員 国鉄総裁が、お困りになっていることを率直にお認めのようであります。これは、労働省が一役買っているようでありますが、これをやっておると、また相当時間がかかるようでありますから、簡単にもう一度国鉄総裁にお答えをいただき、運輸大臣も、監督の立場でお聞き願いたい。まあ原因がどこにあるかということまで、私はせんさくしようとは思いませせん。しかし、この大きな事業場において、労働者の組織と経営者との間に正常なる労使関係の運営ができないということは、民主主義のもとにおいて、これほど大きな社会的損失はないと思う。その受ける弊害が、私企業でありまするならば、それは営利の上に影響し、打算の問題になって、ある程度個人なり、その営利団体が責任をしょえば、社会的には一応認められるケースであるかもしれません。少くとも国鉄のように、公共企業体の中でも多くの国費をつぎ込んでおります事業場で労使関係がうまくいかないということが、たとい暫時の間でもその企業に与える利害関係、あるいはそれを通じて公けに迷惑をかけるようなことがあるといたしますならば、それは、私は争いがいずれに理があるか非があるかということをここで問おうとするのではないのであります。けんかですから、いずれにも言い分があるでしょう。その言い分をどうして処理するかというのが公労法の精神で——合法的にということをあなたが言っておられたのは、きっと公労法のことをおっしゃられたのだと思う。公労法の法律的な解釈をたてにとって論議をされることはけっこうです。しかし、そのために、労使関係があなたがお困りのような状態にあることは、これは重大だと思うのであります。少くとも運輸大臣は、監督の地位にあって、こういう状態を一刻も早く解消せしめるための行政的な、それぞれの指導なり監督権というものを発動されてしかるべきだと思う。何かこれに対して名案をお持ちですか。
  333. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 国鉄の労使関係の正常化ということは、私も監督の立場から、常に熱意を持ってこれを見守っておるのであります。しかしながら、今日の労組、ことに機関車労組のこういう違法状態を解消していただくということは、私は必要だと思います。その意味におきまして、この五月の中央委員会、あるいは大会、こういうものに私は期待をいたしまして、良識ある解決を望んでおります。要するに国鉄を監督する私たちといたしましては、労使関係の正常化と運輸業務の安定ということを熱望し、またそれがために、私どもは国鉄が自主的努力をするというふうに監督するように考えております。
  334. 井堀繁雄

    ○井堀委員 抽象的にはそれでけっこうでありますが、それをもう一歩進めて、具体的に答弁いただかぬと、国民の側からいいますと、安心できない。というのは、労使の間で争いのあることは、これはやむを得ぬ。資本主義のもとにおいては、これは必然のものとして、病的なものとして、世界共通した見方であります。およそものの争いというのは、どちらに理があるというよりは、鐘と撞木のようなもので、どっちが音を発するかということは、ぶつかったときに発するというのが常識であると同じように、これは両方にあると思う。意見が一致しなかった、そういう状態を解決できない場合に、どうすればいいかということが公労法の精神で、両者の誠意ある努力を法律は命じておるわけであります。そこを監督されております運輸大臣でありますから、今国鉄総裁もおっしゃっておるような、困っておいでになるということはほんとうの声だと思う。決して労働者の方も——私は議論になりますから避けますけれども、言い分のいかんについては、これは、今日聞くところによりますと、裁判所をわずらわして、法律解釈を明らかにするような争いになっておるようであります。これは一つの行き方であります。しかし、それが解決がつくまで、多数の労働者の組織と経営者との間に話し合いができないような状態でありますなら、それは大へんなことです。何もそういう法律の命ずる団体交渉という形によらなければ、労使関係というものは進まぬわけではありません。われわれ、戦前労働者に団結権もございません、罷業権もなかった時代に、労働争議が、公然とあった、そうして問題を解決しておる。こういう点については、運輸大臣としては、一刻も早く、根本的な問題については根本的な問題として、当面の問題についてはしかるべく話し合いの方法を講ぜしめて、そうして国民に、あるいは国家全体に迷惑のかからないようにするように、しかるべく具体的指導をなさるべきではないか、そういうお考えをお持ちでしょうか。具体的なこまかい問題については、両方の言い前その他については、いずれ別な委員会においてお尋ねする機会があると思いますが、時間的に急を要すると思いますので、運輸大臣としての、こういう問題に対する御処置を具体的に御答弁いただきたい。
  335. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 私は、この藤林あっせん案が実行されるということを希望するのであります。それは、機関車労組におきましては、あっせん案をけっておられる。最近藤林委員長に対して申し入れをせられたようでありますが、私は、この示されたる定期大会、そこにおいて、解雇された人を役員にするとかいうことをすっかりやめてもらって、そうしてすっきりした状態に置いていただきますならば、ここに国鉄との話し合いが私はでき得ると思う。そして正常なる労使関係、すなわち労働者のこの団体交渉、おそらくこの団体交渉というものは、主として賃金問題だと思います。いずれにいたしましても、私は団体交渉というものが復活する、関係が正常化していくということは、現在の情勢におきましては、今申し上げましたごとく、約束を守ってもらうということであります。こういうふうに思って、今のところ、五月、六月に行われます定期大会に私は期待をいたしておるのです。
  336. 井堀繁雄

    ○井堀委員 この問題で、もう一つお答えいただきたいと思うのです。私の心配いたしていることは、今あなたの御答弁は、そのあっせん案について、両者が忠実にこれを守ってくれれば、一番いいに違いない。うまくいかぬから争いになっておるわけです。だから、これは当事者の言い前について、私はここでどっちがいいとか悪いとかいうことを今あなたから聞こうというのではない。とにかく国鉄当局としては、国民の立場からいえば、少しでも労使関係のごたごたがあることは好ましくないのでありますから、そういう問題を早く解決させるためには、言い前は、今言うように、裁判所で何か法律解釈の問題で争っておるようでありますから、その間全然労働者の組織を無視して、労働者と団体交渉を——法律的言葉で言えば、団体交渉です。団体交渉の資格がないからといってやらない。資格がなければ汽車はとまってもいいのか。そういうことではないはずなんです。私は、法律解釈についてけじめをつけていくということは大切だと思う。それを軽視したり無視していいと言っているのじゃない。そういうことにけりがっかなければ、事業体は停滞しても、あるいは後退してもかまわぬというなら別です。そんなことは運輸大臣考えておらないでしょう。でありますから、とりあえず、とにかく片っ方は団体を持っておるから、その団体が法律的には疑義があったにしても、実体はあるのです。だから、その組織を否認するという議論でやるなら、これはもう何をか言わんやでありますけれども、しかし、現実において組織的な労働を使わなければ企業はやれないのであります。また動いている。いびつにならないで、正常なものに動かすようにしていかなければ、事故があったらどうするか。しかも機関車だ。その事故が起ったときに、こういう問題が全然関係がないなんということは言い切れますまい。そのときに、お前が悪いのだ、おれが悪いのだと言い争ったところで、被害を受けた者に対しては何らの弁済にはならない。こういう意味のことをあなたにお尋ねしておるのでありますから、どういう手を打つかということを私は聞いているのじゃない。労使の間について即刻問題を解決するようにあなたが御警告なさって、その結果をお待ちになる立場ではないかということを聞いたわけです。何だかあなたまでが当事者になって、あっちの言い前が悪い、こっちの言い前が悪いというようなことになりそうですから、それでは、運輸大臣の立場ではないではないかということをお尋ねしたわけであります。まあ、そうではない、おれは仲間に入ってやるのだというのであれば、これはやむを得ません。まさかあなたがどっちかの仲間に入って、旗を振るようなことはおやりにならぬだろうと思う。それでお尋ねをしたのです。どうも今の御答弁では国鉄総裁の方に角に肩を持つような御答弁のように聞えたものですから、それで伺ったのです。もう一ぺん答弁をして下さい。
  337. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 私は争議に対して介入をする、そんな考えを持ちません。またすみやかに正常化されるということを、私は期待いたしておるのです。従いまして、国鉄総裁の肩を持つとか組合の肩を持つとかいうようなことを、監督上すべきものではないと思います。ただ両者の間において話し合いをしてもらう。また繰り返して申しますが、私は、この五月、六月の大会において、労働組合側が正常なる、すっきりした態度をとっていただけば、問題はそこから好転していく、そういうことを期待しておる次第でございます。
  338. 井堀繁雄

    ○井堀委員 時間がありませんので、大事なところを残念でございますが、そういうお考えだったら、四月の大会までの間に事故が起きたら、あなたがしょい込まなければならぬ。そういう答弁になるので、これ以上何でしょうが、せっかく立場を公正にして解決下さるよう希望いたします。
  339. 江崎真澄

    江崎委員長 明後日は午前十時より公聴会を開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時二分散会