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1958-02-11 第28回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十一日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 江崎 真澄君    理事 今井  耕君 理事 川崎 秀二君    理事 重政 誠之君 理事 橋本 龍伍君    理事 川俣 清音君 理事 柳田 秀一君       安藤  覺君    植木庚子郎君       内田 常雄君    小川 半次君       大橋 武夫君    太田 正孝君       上林山榮吉君    北澤 直吉君       河本 敏夫君    周東 英雄君       須磨吉郎君    中曽根康弘君       永山 忠則君    楢橋  渡君       野澤 清人君    野田 卯一君       福永 一臣君    船田  中君       古井 喜實君    松浦周太郎君       南  好雄君    宮澤 胤勇君       八木 一郎君   山口喜久一郎君       山崎  巖君    山本 勝市君       山本 猛夫君    井手 以誠君       井堀 繁雄君    今澄  勇君       岡田 春夫君    小平  忠君       小松  幹君    河野  密君       島上善五郎君    田原 春次君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       辻原 弘市君    成田 知巳君       西村 榮一君    古屋 貞雄君       森 三樹二君    門司  亮君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  前尾繁三郎君         運 輸 大 臣 中村三之丞君         郵 政 大 臣 田中 角榮君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         国 務 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 河野 一郎君         国 務 大 臣 郡  祐一君         国 務 大 臣 正力松太郎君  出席政府委員         内閣官房長官  愛知 揆一君         法制局長官   林  修三君         調達庁長官   上村健太郎君         防衛庁参事官         (経理局長)  山下 武利君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    稲益  繁君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月十一日  委員安藤覺君、草野一郎平君、松浦周太郎君、  勝間田清一君及び田原春次辞任につき、その  補欠として山口喜久一郎君、野澤清人君、竹山  祐太郎君、辻原弘市君及び多賀谷真稔君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員竹山祐太郎辞任につき、その補欠として  松浦周太郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算  昭和三十三年度特別会計予算  昭和三十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 江崎真澄

    江崎委員長 これより会議を開きます。  この際御報告申し上げます。先日委員長に御一任願いました分科会の区分及び主査の選任につきましては、次の通り決定いたしました。  第一分科会皇室費国会、裁判所、会計検査院、内閣経済企画庁を除く総理府、法務省、外務省及び大蔵省所管並びに他の分科会所管以外の事項、主査須磨吉郎君。  第二分科会、文部省、厚生省及び労働省所管主査山本勝市君。  第三分科会経済企画庁、農林省及び通商産業省、主査八木一郎君。  第四分科会、運輸省、郵政省及び建設省所管主査山本猛夫君。  以上の通りであります。  なお分科員の配置は公報をもってお知らせいたします。     —————————————
  3. 江崎真澄

    江崎委員長 昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を議題といたします。質疑を続行いたします。滝井義高君。
  4. 滝井義高

    滝井委員 昭和三十三年度の予算を審議するに当りまして、最も国民的な批判を受けております社会保障に関する重要な諸問題について、岸総理質問をしてみたいと思います。  岸総理も御記憶にあると思いますが、昨年一月石橋湛山老が日比谷の公会堂で演説をいたしまして、五つの誓いというものを立てられました。この五つの誓いの中には、生産を増強し雇用を同時にふやしていく、そしてあわせて福祉国家建設をやるんだということを立てられたわけです。そして日比谷公会堂での演説を契機として、全国的に遊説をいたしました。その結果石橋ブームが起ったことは、われわれの記憶に新たなところでございます。その石橋内閣の衣鉢を継いだところの岸内閣というものは、当然昭和三十三年度の予算においては福祉国家建設の理想と言わなくても、少くともその一歩を踏み出すくらいの意気をもって予算を作られておると確信しておったのでございます。しかるに、この予算を見てみますと、一番冷遇されておるのは何だというと、世間では一般社会保障だ、こういっている。すなわち冷たい社会保障予算だ、こういうことがいわれておるのでございますが、一体岸総理政治主眼というものをどこに置かれておるのか、これをまず第一にお聞きをいたしたい。
  5. 岸信介

    岸国務大臣 政治主眼は言うまでもなくわれわれは国民全体の生活が安定向上し、それによって福祉が増進されるということが政治の眼目といわざるを得ないと思います。そういう意味においてわれわれは一方において経済の正常なる拡大繁栄考えていく、同時にまたこれと並んで社会保障制度を拡充していくということによってその目的を達しよう、かように考えております。
  6. 滝井義高

    滝井委員 政治主眼が、民生の安定、同時に民生の安定を通じて経済繁栄がもたらされる、具体的には社会保障制度を拡充強化する、こうおっしゃいます。総理は本会議を通じて、社会保障制度というものは何としても国民保険と、それから国民年金制度という二本の柱を中心として推進をしていくのだというようなことを言明をせられました。同時に、国民保険昭和三十五年度を目標として完成をしていく、同時に国民年金は、この五、六月ごろになりますと、内閣にできております社会保障制度審議会が大体答申を出してくれるだろう、そうすればその答申にのっとって国民年金制度を実施して参りたい、こういうきわめて大胆な御答弁をされておる。私はその答弁には敬意を表したいと思いますが、ほんとうにその通りやっていかれる御所存であるのかどうか、これをお尋ねしておきたい。
  7. 岸信介

    岸国務大臣 社会保障制度につきまして、医療保障制度として国民保険実現及び国民所得保障といいますか、生活保障と申しますか、その意味において国民年金制度を実施する、この二つ中心の柱としてやっていくというのがわれわれの社会保障に対する根本考えでありまして、しこうして前者については今年度を第一年度として四カ年の間にこれを実現するということで進んでおりますし、国民年金制度の問題につきましてはすでに調査を始めておりますが、さらに今おあげになりました社会保障制度審議会にもこの問題を諮問したり、政府としても各般の調査資料を整えて、この答申を待って十分に検討して、これが実現をはかるというのが私どもの根本考えでありまして、それにつきましては何ら間違いございません。
  8. 滝井義高

    滝井委員 今の総理答弁の中で、国民保険は、本年を第一年度とするというのじゃなくて、昨年を第一年度として、昭和三十二年から三十五年までに完成する、こういう御確認を得たわけであります。そこで国民保険なり国民年金制度確立していくためには、やはり現在ある日本制度自体についても、私たちは一つの反省がなくちゃならぬと思うのです。総理御存じのように、わが国の現在の社会保障と申しますが、世にいわれておる社会保障というものは、制度的に見るときわめて貧困でございます。学者の意見をかりれば、日本には社会保険とかあるいは厚生年金というような社会保障的なものはあるけれども、社会保障そのもの日本にはまだないんだということを言う学者が多いのです。すなわちまだ日本社会保障というものは体系ができていない。すなわち体系立った社会保障というものはまだ明日のものなのだ、今日のものではないと、こういうことを言う学者が多い。これはなぜか。日本社会保険を例にとってみても、継ぎはぎだらけのばらばらなのです。いわゆる一貫された精神で貫かれておる制度として確立をせられていない。こういうところに実は問題がある。従ってそこには、事務能率の点から見ても、経済的な面から見ても、非常にロスが多い。むだが多い。そこで私は、国民保険熱意を持っておられる総理に伺いたい。一体現在の日本国民保険を推進する上において、現在の制度そのままにしておっていいのかどうかということなのです。何らか既存の制度にメスを加えて、これを整備統合する意思があるかないか。これをまずお尋ねしたい。
  9. 岸信介

    岸国務大臣 御指摘のように、日本の現在まで行われておるいわゆる社会保障制度は、健康保険に関する制度をとって考えてみましても、いろいろに分れておりまして、その間における給付内容が違うとが、運用その他いろいろな面において、御指摘のように根本的な体系が立っておらないことと同時に、能率の上からいっても非能率的であり、また給付の点においても、はなはだ不統一であるというそしりは免れないと思います。従いまして、この制度確立する、同時に給付内容を漸次整備してこれを充実するということは、社会保障制度の見地から最も必要であると思います。ところが、これらの制度がそういうふうに複雑になっており、いろいろな状態にあるということについては、日本社会事情にも一面理由があり、また発達の沿革もございますので、これが今申しますような体系を作るということにつきましては、相当な困難もあり、またこれについて十分な慎重な調査と研究を必要とするものと思いますが、しかしいずれにしてもわれわれが社会保障制度確立拡充ということを考える以上、今御指摘になっているような不統一ばらばらの点はこれを体系づけ、そして十分にその内容について検討を加えて、これが充実をはかっていくことが必要である、かように考えます。
  10. 滝井義高

    滝井委員 その必要性は認めたようでございますが、皆保険政策を三十五年までに実施せられる過程において、それらの機能と性格が不ぞろいである日本社会保険なり、あるいは所得保障的な年金制度、いわゆる厚生年金のようなものを、具体的に熱意を持ってやっていく所存なのですか。必要性は今お認めになったのですが……。
  11. 岸信介

    岸国務大臣 私は、この問題はわが内閣の最も大きな使命考えておりますから、十分な熱意を持って当りたい、かように思っております。
  12. 滝井義高

    滝井委員 岸内閣社会保障を重要な使命としておるので、継ぎぎだらけのばらばらな社会保障制度を整備統合する方向に、少くとも皆保険実施とともにやっていくという、きわめて明快な御答弁をいただきました。  そこで次にお尋ねをいたしたい点は、日本には社会保障という言葉が非常にはんらんをいたしております。しかし一たび社会保障とは何ぞやというと、なかなか明快な言葉が出てこない。昨年の予算委員会でも、ここにおられる大蔵大臣萬田さんに、一体日本にある社会保険社会保障なのが、労務管理なのか——ある厚生大臣は、労務管理でございます。——萬田さんはなかなか答弁ができなっかたが、ようやく、まあ社会保障日本社会保険は進化しつつあると、ダーウィンの進化論みたいなことを答弁した。私が岸総理お尋ねしたい点は、現在日本社会保障というものは二つ要因から成り立っておる。一つ社会保険一つは公的な扶助なんだ。これら二つ要因からなっておりますけれども、それらのものがきわめてうまく統合をされた第二の体系であり、社会保障というものになっていないということなんだ。なっていないばかりでなくして、日本社会保険を見ると、その社会保険というものは、依然として保険という契約の原理によって貫かれておるということなのです。そこには冷たい保険者と被保険者との関係があります。たとえば一人の労務者労務災害で死亡いたします。そうしますと、その労働者を雇っておる事業主労災保険料を納めていないとするならば、その労務者には保険金がやってこない。なぜか。それは保険原理が貫かれているからです。保険料を納めない人に生命保険保険金が来ないのと同じなんです。これが日本社会保険の姿なんです。そこには保障原理というものが欠けておる。事業主保険料を納めなかったために、無辜の全く罪のない労働者労働災害で死んだ場合に、事業主保険料を納めていないためにもらえないという事態は、明らかに日本労災、いや健康保険においても保障原理がないということだと思うのです。一体岸首相は、そのような現在の日本社会保険、いわゆる社会保障の一番基礎をなす社会保険保障原理をもって貫いていく意思があるかどうか。
  13. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど申し上げましたように、日本の現在の社会保障制度というものは、いろいろ内容におきましても、態様におきましても、これが十分望ましいところまで行っておらないということを申し上げたのであります。今のお話になりました社会保険日本に現在あります制度は、御指摘になりましたような保険の本質を持っておりますから、その保険に伴うところのいろいろな法律関係というものが基礎をなしておることは言うを待たないと思います。しかしそれでもって十分われわれが望んでおる社会保障目的を達成し得るがどうかという点については、今お話のような事例においてきわめて不満足な事態もあると思います。しかしそれが今の保険の形態をとっております何でもって、日本制度保障意味を加味していくことが直ちに法律的に可能であるが、適当かというようなことは、十分に研究しなければならぬ。しかし精神の上から、今までのような保険制度だけでもって社会保障が満足にいくのだとして、そこで安んじておるわけにはいかないと思います。今のような場合に応ずるような内容を持ったものを、どういう形において、どういう制度の上において組み立てるがということは、十分これは一つ研究して、そういうものを包含し、そういうものを十分かばうように将来制度を持っていかなければならぬ、かように考えております。
  14. 滝井義高

    滝井委員 次に私は社会保障をささえる基礎的ないろいろな条件について質問いたしたいのですが、これはあとで具体的に国民保険政策を御質問するときにあわせて質問いたします。それに先だってもう一つぜひ岸首相お尋ねしたい点は、社会保障制度というものが成立をしていくためには、同時にそれと並行的にいろいろの関連する諸政策が行われなければならぬ。一方に社会保障があり、同時に他方には完全雇用政策あるいは最低賃金制度あるいは団結権保障というような、こういうものがなくちゃならぬと思うのです。およそ近来の社会立法というものは、いわゆる最低賃金を含んだ労働基準、それから団結権社会保障、こういう三つ要因他方にある。一方に社会保障があり、一方にはそういう三つ要因があって、こういう三つ要因の上に橋渡しとしてずっと大きくかぶさっておるのがいわゆる完全雇用政策だと思うのです。ところが現在そういう意味から日本社会保障制度を見ると、きわめて社会保障制度が貧弱だ、ということは同時に他の関連する諸制度というものが貧弱であることを意味するわけだ。カニはおのれの甲らに似せて穴を掘るといいますが、まさに日本社会保障が貧弱であるというのは、それらの関連する諸制度がきわめて貧弱であるからということと歩調を合せておるわけです。総理は、少くとも岸内閣使命としては、民生安定の政策、すなわち社会保障制度確立唯一使命とするのだとおっしゃったのだが、それをほんとう唯一使命とするならば、今申しました、他の方にある最低賃金とかあるいは完全雇用政策とか、勤労階級団結権保障するという諸政策をあわせて同時にとらなければならぬと思うのだが、こういう点についてはどういうお考えを持っているのですか。
  15. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん社会保障制度充実確立につきましては、いろいろその国における他の関連したいろいろな政策基礎的なものもありますし、あるいはこれに関連してのものもありますし、いろいろなものと総合されていかなければならぬということは言うを待たないのであります。今おあげになりました最低賃金の問題につきましても、われわれはとにかく日本の国情と日本産業の実態に即応した最低賃金法というものを本国会に提案する運びに準備を進めております。近く提案されることと思います。これももちろん必要である。またいわゆる完全雇用を目ざしては、どうしてもこれは経済拡大繁栄を期さなければならぬという考えに立って、われわれは新産業経済五カ年計画というものを立てて、そうして昭和三十七年には約四、五百万人の就業者のできるような産業の基盤を作り上げるということを目標に進んでおります。  さらに今お話にありました団結権の問題につきましては、これは一般労働政策勤労者勤労条件の改善また労使の間におけるところの公正な関係を作り上げるという意味において、憲法においても保障されておることでありますから、これは十分にすでにいろいろな方面において立てられておりますが、当然考えていかなければならぬものである、かように考えております。
  16. 滝井義高

    滝井委員 きわめておざなりな御答弁をいただきましたが、社会保障制度ほんとう確立しようとするならば、やはり関連する諸制度その他に金を重点的につぎ込んでいく姿を実際にとっていかなければならぬと思うのです。岸内閣のとっておる政策を見てみますと、高らかに掲げておるものは金のかからない政策ばかりだ。たとえば勤務評定の問題、道徳教育の問題、紀元節復活の問題、こう考えてみると高らかに掲げるものは、金のかからないものばかり。道徳教育を言い、勤務評定を言うならば、義務教育の水準を確保するために、学校の教室がすし詰めにならないように金をつぎ込まなければならない。そういうことはあとまわしにされておる。だから社会保障制度確立するんだとかねや太鼓をたたくならば、まず社会保障制度にもまた金をつぎ込む、同時に関連する諸政策にも率先して金をつぎ込むという方向にいかなければならぬと思う。そういう点が非常に欠けております。  今、私は大まかに日本社会保障制度の中に宿っておるいろいろの矛盾や、関連する制度について簡単な質問をいたしましたが、よく考えてみると、現在日本の皆保険政策というものは、いよいよ困難な段階がやってきております。また所得保障国民年金の問題は、これからスタートの段階です。いわば日本社会保障制度確立は、胸つき八丁といいますか、一萬田さんがいつか言われた、もう八合目に来て、ミルクを飲ませなくてはならぬ段階に来て、八合目ミルク論をやられたのだが、今まさに日本社会保障制度は、胸つき八丁に来ておる。今から私はその具体的な問題について、その困難な段階に当面をしておる、日本社会保障制度の支柱である、健康保険国民保険の問題について、総理大蔵大臣、それから新たに臨時大臣になられておる郡さんにお尋ねをしたいと思うのです。  まず第一に具体的な問題でお尋ねをしたいのは、社会保障制度の中核であるといわれておる、政府管掌健康保険についてであります。まず大蔵大臣お尋ねいたします。大蔵大臣としては、本年度の予算編成の一番最後にまで、軍人恩給とともに問題になったところの、政府管掌健康保険財政見通しというものを、特に三十二年度の財政見通しというものを、どういう工合にごらんになったのか、一つ大蔵大臣の御答弁をいただきたい。
  17. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府管掌健康保険財政のことでありますが、御承知のように、いろいろな施策を講じた結果、この財政もよほど健全化方向に向っております。三十一年度では四十八億、三十二年も相当大きな——これは推算ですが、おそらく六十億に近いものが出ておると考えます。
  18. 滝井義高

    滝井委員 厚生大臣お尋ねいたしますが、厚生省の見た三十二度の保険経済見通しは、どういうことになりますか。
  19. 郡祐一

    郡国務大臣 大体六十億くらいの黒字を三十二年度において見ると考えております。
  20. 滝井義高

    滝井委員 六十億の黒字が三十二年度に出るということでございますが、一体赤字々々だと言われておった政府管掌健康保険が、六十億の黒字が出るに至った理由というものはどういうところにあると思いますか。
  21. 郡祐一

    郡国務大臣 保険料率引き上げをいたしましたこと、またその後における、広く見ますならば経済状況好転ということも考えられますが、一部負担等それぞれの措置をいたしました結果、今日の黒字状態に相なったと考えております。
  22. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一番おもな理由保険料率引き上げと、その後の経済情勢好転、それからいろいろ健康保険改正等措置をやられたためだ、こういうことでございます。そうしますと、次にお尋ねをいたしたい点は、今年の一月二十日の夜中午前一時ごろに今年度の予算が決定したのですが、各新聞は、医療費改訂に四十三億五千万を出すことになった、こういうことを報じたのです。実際に四十三億五千万円を医療費改訂に出すことになったのかどうか、これを一つ大蔵大臣お尋ねいたします。
  23. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体その金額を出しております。
  24. 滝井義高

    滝井委員 四十二億五千万円が医療費改訂に出されることを確認いたしました。  そうすると郡さんにお尋ねいたしますが、四十三億五千万円は医療費改訂にどういう工合に使われましたか。
  25. 郡祐一

    郡国務大臣 各種の保険にわたりましてそれぞれ出しました国の補助、負担、これらのものがただいま申しましたように約四十数億に達しております。
  26. 滝井義高

    滝井委員 できれば、四十三億五千万円が具体的にどういう工合医療費改訂になったのか、お示しを願いたいと思います。
  27. 郡祐一

    郡国務大臣 医療費改訂をいたしましたためにまず各管掌制度におきまして予算措置が講ぜられるわけでありまするが、それに対しまして国庫負担等措置が講ぜられておるわけであります。国民健康保険につきまして約十八億が調整交付金等を含めて出されておりまするし、その他、組合管掌健康保険日雇労働者健康保険生活保護結核予防などそれぞれに出しておりまするのと、医療費措置に直接伴ってはおらぬ分でもその他の国庫負担、これらを合せますと約四十数億にただいま申した通りになっております。
  28. 滝井義高

    滝井委員 私がお尋ねしているのは四十三億五千万円が医療費改訂に具体的に幾ら使われておるのかということなんです。今のは、今年度、国民健康保険やあるいは健康保険結核ばらばらっと四十三億が配られたことだけを御説明になったのですが、医療費改訂一体幾ら使われたのかということなです。医療費というのは御存じのように点数単価によって支払われるわけなんです。この点数単価というものを政府は今回どういう工合にするか、あとで聞きますが、その点数単価に関連してどういう工合に四十三億五千万円が配分されたのか。大蔵大臣は、医療費改訂に四十三億五千万円出しました、こう言っている。今のあなたの御答弁は、医療費ではなくて各保険に金が配られていることを御説明になったにすぎない。四十三億五千万円はどういう工合に使われておりますか。
  29. 郡祐一

    郡国務大臣 診療報酬引き上げとそれに伴います費用を私は申したのでありまするが、大蔵大臣の申しましたごとく、直接診療報酬引き上げ関係した額といたしまして申しますならば、これは本年は六ヵ月分を見ておりますものと五ヶ月分を見ておりますものとがそれぞれの保険によって分れておりますことは御承知の通りであります。従いまして、これをそれらの月分にしてみますると十八億五千万円になっておりまするから、平年度化いたしました場合に約四十数億という大蔵大臣答弁は、私は、そのような意味合いで直接の医療報酬に関しまする部分といたしましたならば合っておると思っております。
  30. 滝井義高

    滝井委員 もう少し具体的に説明して下さい。あなたの言う診療報酬改訂分というものは、健康保険に幾ら、国民健康保険に幾ら、結核予防法で幾ら、精神衛生で幾ら、生活保護で幾ら、この五つ一つ具体的に……。
  31. 郡祐一

    郡国務大臣 ただいま申しました六カ月分または五カ月分という意味で申しますならば、国民健康保険において六億二千八百万、組合管掌健康保険におきまして一億、日雇労働者健康保険におきまして一億四千三百万、生活保護において七億六千三百万、結核予防その他において一億一千六百万、これが先ほど申し上げました月分で十八億五千万という内容であります。
  32. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、それは一カ月分ですか、月分というのは。
  33. 郡祐一

    郡国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、六ヵ月を見ておりますのは六ヵ月分、五ヵ月を見ておりますのは五カ月分であります。
  34. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、昭和三十三年度の予算には医療費改訂として四十三億五千万円を出しておるのだが、いわゆる診療報酬の改訂分としては十八億五千万円だ、こう理解して差しつかえありませんか。
  35. 郡祐一

    郡国務大臣 そのような意味合いで、直接診療報酬引き上げというような意味合い——これはたとえば国民健康保険の調整分などにつきましては、その考え方は、調整分というのが医療費に流れて参りますから、十分おわかりの通りだと思います。しかしただいま申しました数字は、きわめて直接的なものを申し上げまして、十八億五千万円と申し、これが平年度化いたしますと、約四十億というお答えをいたした次第であります。
  36. 滝井義高

    滝井委員 どうもはっきりしないのですが、もう一回はっきりしておかないといかぬと思うのです。今回政府は十月一日から八・五%の医療費改訂をやるのだ、こういうことなんですね。そうしますと、十月一日から五カ月ならば来年の二月まで、六カ月ならば三月まで、それだけの予算をお組みになっておるわけです。その予算医療費改訂の中の診療報酬改訂に当る分が十八億五千万円、いろいろ調整交付金とかなんとか言わずに、その中に入っておることは当然なんだから、それらのものを全部ひっくるめて十八億五千万、こう考えていいのか、こういうことなんです。
  37. 郡祐一

    郡国務大臣 調整交付金の中にもそういうものが入っておるということは今滝井委員のおっしゃった通りであります。私が申しました数字は、国民健康保険の場合だと調整交付金の分を除きまして従来の二割という程度でその分を加算した、それだけを申しておる次第でございます。
  38. 滝井義高

    滝井委員 国民健康保険の中についておる調整交付金五分分に含まれておる診療報酬改訂分は除いて十八億五千万円、こう理解いたします。よくわかました。  そこでお尋ねをいたしたい点は、先般診療報酬を改訂するために中央社会保険医療協議会が答申厚生大臣に出しておるわけです。ところがその答申は、いろいろの意見がたくさん分れておって、一本にまとまった答申ではなかったわけです。聞くところによりますと、何か政府の方では、具体的に診療報酬を決定するために十五人くらいでなる委員会を作るというお話があるようでございますが、そういうものを作る御意思があるかどうか。
  39. 郡祐一

    郡国務大臣 そういうようなものをこしらえたらどうかという御説のあることは承知をいたしております。しかし、政府といたしましては、実施をいたすまでにまだかなり時間もございまするし、実際各関係方面、特に関係方面と申しますと医師会、歯科医師会等がきわめて重要な部分であります。それらの意見を十分徴するということは考えておりまするが、どういう形のものをすぐこしらえるかということについては、御説を承わっただけでまだ決心をきめておるわけではございません。
  40. 滝井義高

    滝井委員 そうすると療養担当者の団体の意見というものは聞きたいと思うが、そういう診療報酬を決定する具体的な委員会というものは、今の段階では作るとも作らないともきめていない、こういうことのようでございます。そう理解いたしました。  次にお尋ねをいたしたい点は、これは大蔵大臣にです。今回政府管掌健康保険に十億円の国庫の補助金が入っておるようですが、その十億円は一体いかなる性格のものであるか、御説明願いたい。
  41. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、政府管掌健康保険の会計を強化したい、かような考えでございます。
  42. 滝井義高

    滝井委員 十億円は政府管掌健康保険を強化するため、こういうことでございます。一萬田さんにお尋ねいたしますが、一萬田さんも御存じのように、健康保険法が問題になったのは、お隣りの川崎さんが厚生大臣のときからでございます。当時多分鳩山内閣における大蔵大臣は、あなただったと思います。健康保険黒字になっても赤字になっても、政府健康保険の健全な発達をはかるために、三十億というものは出していくのだという言明をされてきました。お隣りの川崎さんもされたし、それに続く小林厚生大臣もされたし、それに続く神田厚生大臣も、みなされてきました。あなたもされた一人です。ところが突如としてこれが十億になった。一体どうして公約を違反して、三十億出しておったものを、二十億削って十億にされたのが、その理由大蔵大臣から伺いたい。
  43. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 国庫から三十億を入れました当時の政府管掌健康保険は、御承知のように赤字になっておったのであります。苦しい状態であったのであります。それで、政府から三十億円を入れるとともに、他の関係の方面の負担をふやしまして、この政府管掌健康保険財政健全化をはかったわけであります。そういうような関係から、徐々に財政状態がよくなりまして、先ほど申しましたように、三十一年度では四十八億、三十二年度では六十億に近い黒字になった。こういうふうな状況でありますので、政府としても、むろん従来三十億入れておるのでありますから、政府がそういうような黒字になったからといって、これから全然補助はしない、こういうふうなことは考えておりません。それで十億にとどめたのでありますが、しかし他方におきまして、たとえば国民健康保険、日雇い保険などにおきまして財政が苦しくなるので、その引き揚げた二十億をそちらの方に回しまして、健康保険全体として健全な発達をはかっていこう、こういうふうな考えであります。従いまして、十億にとめおいたことは、むろんこれは多い方がいいでしょうが、そういうふうな情勢で、健康保険全体としての強化をはかるという意味におきまして、十億にとどめたわけであります。
  44. 滝井義高

    滝井委員 今の理由では納得がいきません。大蔵大臣御存じのように、政府管掌健康保険に加入している事業場の従業員の数は、平均二十一人です。いわば零細企業なんです。そして、しかもその従業員の労務管理、衛生管理というものはきわめて悪い。所得も標準報酬が一万二千円程度、今年は一万三千円くらいになっておりますが、一万二千円程度である。従って、政府は中小企業対策という意味もあって、三十億というものを最小限度として入れたのだということが今までの答弁だった。与党の諸君は、健康保険法が通過するときには、三十億の補助ということではだめだ、少くとも健康保険社会保障制度の中核をなすのだから、国庫負担の理念というものを政府管掌健康保険に入れなければならぬということをみな主張した。ところが三十一年度と三十二年度の二カ年だけ三十億出して、三カ年目には二十億削るということは、いかにあなた方の政治というものが冷酷無情な政治であるかということを示しておる、それ以外の何ものでもありません。そうすると、大蔵大臣は、さいぜん六十億の黒字政府管掌にできているというが、その六十億の黒字は、三十億の補助金を下に敷いて六十億の黒字なのか、それとも三十億をどけて六十億の黒字なのか、どっちですか。
  45. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、三十億をのけて六十億の黒字だと思っております。——三十億は入っております。
  46. 滝井義高

    滝井委員 法衣の下からよろいが見えるという平清盛のことわざじゃないけれども、まさに語るに落ちて真実を語った。六十億の黒字があるというけれども、それは政府の補助金三十億を下に敷いておったということなんです。  そうしますと、もう一つ関連してお尋ねいたしたい。今回、政府管掌健康保険は依然として六十億円借入金を借りておるが、一萬田さん、どこからお貸しになりましたがか
  47. 江崎真澄

    江崎委員長 必要があれば、あとから大蔵大臣にも答弁をさせます。
  48. 石原周夫

    ○石原政府委員 資金運用部から出しております。
  49. 滝井義高

    滝井委員 資金運用部から貸したそうです。大蔵大臣、三十三年度の資金運用部の運用計画の特別会計貸付百三億の中に、六十億は入っておるか、入っていないか。
  50. 石原周夫

    ○石原政府委員 お答え申し上げます。現在は、御承知のように国庫余裕金が相当ございますので、国庫余裕金で年度間を泳ぎまして、年度末にごくわずかの日数だけ借りるものでありますから、資金運用部の分としては、ごく短期間のものでありますので、入っておりません。
  51. 滝井義高

    滝井委員 特別会計の中に百三億入れることになっておるが、その中には、健康保険のものは入っていないそうでございます。私は、これで三回この予算委員会で忠告をいたしております。資金運用部から財政の苦しい健康保険に六十億の金を貸しておきながら、その特別会計に貸す金の運用計画というものを、資金運用部の計画に載せていないということなんです。毎年載せない。もうこれで忠告は三回目ですよ、なぜ載せないのですか。大蔵大臣、なぜですか。もう事務的な答弁じゃいけません。三回目なんです。
  52. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それが財政資金の通常の運用になっておりますから……。
  53. 滝井義高

    滝井委員 私は、そういう運用の仕方をしていくから、いろいろ問題が出てくると言うのです。だから健康保険が苦しいならば、はっきり長期借入金をきちっと借りて、利子を計上していく形を作るべきだと思う。これは明らかに財政法違反とまではいかなくても、財政を紛淆するものです。  そうすると、お尋ねいたしますが、六十億の借入金を、毎年十億ずつ一般会計から払ってやることになっておりましたが、今年は払いますが、払いませんか。払ってくれますか、大蔵大臣
  54. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、私先ほど申しましたように、政府管掌健康保険財政状態がよくなったから、この健康保険自体の力で払っていける、かように考えております。
  55. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、これも公約違反です。厚生保険特別会計法の一部を改正する法律を昭和三十年の七月に一回やりました。当時正示さん——おらぬですか。これは毎年入れる約束をしておった。当時の保険局長と正示さん、それから私の党の横路君と私の四人がこの法案の具体的な審議に当ったのです。そうして毎年十億ずつ入れますということを約束せられておった。これも公約違反じゃないですか。一体法律を作るときは、必ずそうしますと言って約束をして通しておいて、そうしてやらぬとはおかしいです。大蔵大臣、それじゃ法律の改正というものを出すのですか、十億をこれに出さなければ。大蔵省の予定法案の中を見ると、厚生保険特別会計法の一部を改正する法律の予定はありませんよ。どうするのです、一体
  56. 江崎真澄

  57. 江崎真澄

    江崎委員長 事務的に一応答弁させます。
  58. 石原周夫

    ○石原政府委員 法律を出す予定で今相談を厚生省といたしておるところであります。
  59. 滝井義高

    滝井委員 厚生大臣お尋ねいたします。一体今のようなことであなた了承するのですか。
  60. 郡祐一

    郡国務大臣 事柄といたしましては、取り入れて参るということは適当だと存じまするけれども、会計の財政状態好転いたしておりまするから、大蔵大臣から協議がありました場合には、三十三年度においては三十一年、三十二年と同様に取り扱っても差しつかえなかろうかと考えております。
  61. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、結局十億円というものは今年は入れないという法律改正をあなたも進んでやられる、こういうことなんですか。
  62. 郡祐一

    郡国務大臣 先ほど申しました通り、特に進んでというわけではございませんけれども、過去二カ年やって参りましたことでもあり、本年の会計の状態は、これを可態であると思いまするから、そのために特に困難な事態が起るとも存じませんから、さよう政府部内で意見をまとめるつもりでおります。
  63. 滝井義高

    滝井委員 厚生大臣お尋ねします。そうしますと、診療報酬の改定によって、政府管掌健康保険は幾らの支出増になりますか。
  64. 郡祐一

    郡国務大臣 約十八億と考えております。
  65. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、六十億の黒字というものは、三十億の借入金を下に敷いておるから、三十億を引くとあと三十億になってしまう。そしてそれから十億払う。十億を今度は借入金六十億に払っていく。そうするとあと二十億になってしまう。それに十八億が今度診療報酬の改定で出ていくならば、これは大へんなことになる。そうすると、またさいぜんあなたの言われたように、被保険者諸君に約束をして、診療報酬の改定をやるということになれば、当然保険料率の引き下げをやらなければならぬ。あるいは一部負担、入院やら初診の際の一部負担というものを増加しても、当然これを引き下げなければならぬ。引き下げる意思があるかどうか。
  66. 郡祐一

    郡国務大臣 本年度におきまして、余裕金が四十二億ございまするし、それらのすべてを勘案いたしまして、可能だと申しておるのでありまするが、根本問題といたしましては、保険料率を引き下げ得る状態に相なりますれば、まずもっていたしたいことは、保険料率の引き下げであることは申すまでもございません。
  67. 滝井義高

    滝井委員 それを一体やられる意思があるのかどうかです。もうあなたは進んでやらなくても、とにかく三十億を二十億削られて、十億でもやむを得ませんと泣き寝入りしてしまった。それからもう一つは六十億の借入金に対して、毎年一般会計に入れる十億円もあきらめてしまった。そうすると、そういうように自分の方の会計に都合のいいか悪いか、大蔵省に都合のいいことは、先にあきらめてしまったのだが、今度はあなたの足下に集まっておる零細企業の勤労者諸君のためのことをまず厚生大臣考えなければならぬが、それを一体どうしてくれるのか、下げないのか下げるのかはっきりここで言明して下さい。
  68. 郡祐一

    郡国務大臣 ただいまの状態で直ちに下げるということは申せませんけれども、なるべくすみやかに状況を整えまして、引き下げることにいたしたいと考えております。
  69. 滝井義高

    滝井委員 岸総理お尋ねをいたします。昨年の三月の九日に、社会労働委員会で岸総理と当時の大蔵大臣池田さんとに来てもらって私は質問をいたしました。当時この三十億がやはり問題になりまして、そこでこの三十億というものは、毎年当然これは赤字であろうと黒字であろうと、政府管掌健康保険に入れるか入れぬかという問答をやった。ところが当時の池田大蔵大臣はどういう答えをしたかということを、私はまずもって岸総理に読んで聞いていただきたいと思います。「御承知の通り健康保険につきましては、多分昭和二十五年くらいから事務費を一部負担するようになったと思います。しかし今では事務費は全額負担するようになった。政治方向といたしまして、今さら健康保険については何もしないのだというふうなことはもう言わずもがなで、そういうことはできるものじゃないと私は考えております。どちらかといえば、三十億円を云々するよりも、将来は黒字が出たらまず標準報酬を下げるとか、」——ということは保険料を引き下げるということなんです。「あるいは医療費をどうするとが、」——もっと上げるがどうするかということです。「あるいは医療の拡充強化をはかる方に」——いわゆる診療内容の向上をはかるということなんです。「はかる方に向うべきである。今大蔵大臣として、こういうものは出さないのだというふうな時代錯誤の考えは持っておりません。」と言明した。そして今度は私があなたは——一体岸総理はどう考えるのだという質問をいたしましたら、「わが岸内閣の施政方針としまして、私ども申し述べておることの一つの大きな何としましては、この健康保険の健全な発展をはかり、国民保険に持っていかなければならぬという意味で、この医療保険の全体についての所信を考えております。従って健康保険の健全な発達をはかるために、政府としては当然相当の程度において予算的にも考えなければならぬと考えるということを、明確に申し上げます。」こういうことをはっきり裏づけた。ところがもはや三十億では少いという当時の世論を無視して、二十億削って十億にしてしまった。どうですか、総理、私はこの際社会保障熱意を持っておられる総理の所信として、政府熱意を持って少くとも最低の要求として、今の十億をさらに予備費か何かで近く二十億ふやして三十億返すという御言明ができるかどうか。
  70. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来厚生大臣大蔵大臣から数字的に、また内容的にもお答えをいたしておりますように、最近の健康保険の会計経理の状況がだんだん改善されてきております。われわれはもちろん究極の目的として考えなければならぬことは、その内容充実して給付内容をよくするとか、あるいはまた保険料を安くするとか、あるいは診療費の改善をして十分な医療が行われるようにするという方向にいかなければなりません。われわれ根本的にそう考えております。しかし本年度にどうするかということにつきましては、今申すように、従来からの経緯をずっと見、財政一般の何を見て、健康保険の経理内容等を見て、これに処する適当な方法を立てておくというのが今年度の予算内容であると思うのです。先ほどこの意味において厚生大臣が言っておるように、将来できるだけ早い機会に保険料等を安くする方向に努力をするということはわれわれとしてもさように考えております。
  71. 滝井義高

    滝井委員 次にお尋ねしたい点は、十億の補助金を政府管掌健康保険に出したと並んで、二億円の補助金を今回増加をして組合管掌に出しておるのですが、この二億はいかなる性格のものなんですか、大蔵大臣
  72. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今度組合管掌の分で二億出しておるのは、この組合管掌のうちで財政の特に弱い団体があります。それに対して出したのであります。
  73. 滝井義高

    滝井委員 それはいかなる法律上の根拠によって出されたのであるか。
  74. 石原周夫

    ○石原政府委員 この二億円の関係につきましては、法律に基きませんで予算だけで出しております。
  75. 滝井義高

    滝井委員 特別会計に金を出すのに、昨日も問題になっておりましたが、ピッチャーがあってキャッチャーがなくて出すことができますか。
  76. 石原周夫

    ○石原政府委員 これは組合管掌でございますので、特別会計の方には関係がございませんので、一般会計から出したわけであります。
  77. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと私は間違っておりました。その二億円を出す法律上の根拠はどこから出てきておりますか。
  78. 石原周夫

    ○石原政府委員 予算に計上されたところに基きまして、予算に基きましていたすことでございますので、法律を必ずしも必要といたしません。
  79. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、健康保険の事務費は、組合管掌は法律がなくてできますか。
  80. 石原周夫

    ○石原政府委員 現在組合管掌に対しまする事務費の補助は、法律に基きまして出しております。御承知のように政府が出しまする補助につきましては法律の基礎をもちまして出しまするものと、政府予算に基きまして法律がなくて出しますものとございまして、臨時的なものあるいは暫定的なもの、いろいろな事柄の違いがございますので、法律を出します場合もございまするし、出さないで補助を出す例もたくさんあるわけでございます。
  81. 滝井義高

    滝井委員 あなた方は都合のいい解釈を自分でやられる。それならば事務費も法律がなくて出せるはずなんです。ところが、いいですか、七十条の三を作るときにはそういう経過ではなかった。七十条の三をよく読んでごらんなさい。わざわざ政府管掌健康保険の事務の執行に要する経費と書いてあるはずなんです。そしてそれをわざわざ政府管掌と書いた理由はどこにあるかというと、当時あなた方の説明はこうだった。同じ健康保険でありながら、というのはすなわち組合管掌のことなんですが、組合健保に補助しない理由は、政府健康保険は平均二十一人の零細企業で、標準報酬が低く、財政基盤が貧弱だが、組合は平均標準報酬も高いし、衝生管理もよくいくし、事業主の協力も非常にうまくいっておる、事業が円滑にいく、独立してやっていける、だから組合には補助金を出さないのだということで、七十条の三はわざわざ政府管掌とこう切った。そしてやがて国民保険の構想が固まったならば、それに見合って組合管掌にも補助金を出すような法律改正をやるのだと言っている。与党の諸君は、組合管掌に金を出しなさいという付帯決議を、健康保険法が通るときにつけた。だから、今になって事務当局が勝手に、そのときには法律を改正しなければ工合が悪いと言っておったくせに、今になって臨時のものだとかなんとか言って勝手に出しておる。それならば法律を改正すべきじゃないですか。健康保険法の改正をやる意思があるかどうか。これは大蔵大臣、どうですか。厚生省と相談をして、当然これは健康保険法の改正をやらなければならぬと思いますか、どうですか。
  82. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私はその必要はないと思います。
  83. 石原周夫

    ○石原政府委員 政府管掌、組合管掌を通じまして、事務費につきましては、ただいまお示しの第七十条に、「国庫ハ毎年度予算ノ範囲内二於テ健康保険事業ノ事務ノ執行二要スル費用ヲ負担ス」ということがございまして、これは負担という建前になっております。従いまして、これは法律の規定に基いてやっておるわけであります。  それから先ほど申し上げましたように、今回組合管掌に出します分は、これは予算に基きまして当面診療報酬の引き上げなどの関係におきまして、資金上の操作が非常に苦しくなるものがあるかと思われますので、それに対する対策として出します補助でありますから、これはここにいう負担というものと性質を異にいたしまして、予算に基きましたものとして出しておるわけであります。
  84. 滝井義高

    滝井委員 私も負担論と補助論についてはずいぶん論議をしたことがあるのです。当時においては森永さんが主計局長だったのですが、やはりこれは法律に基かなければだめだということだった。それならば組合管掌の強い要望があるときに、三十一年から出したはずなんです。ところがそうはいかなかったのだ、組合管掌経済等の関係から国民保険の構想のときにやるのだということを言っておったのです。従って私は当然こういう親心があるならば、法律をもって出す方向にやはり行くべきだと思いますが、岸総理はどうですか。
  85. 岸信介

    岸国務大臣 今までの論議を聞いておりますと、私はこれは立法の技術の問題であって、政策として法律を出さなければいかぬとか、法律によっちゃいかぬとかいうような性格のものではなしに、やはり従来の法律、予算の扱い方からくる、技術的に考えていい問題であって、そういう点については十分事務当局に相談させまして、その結論を待って処置したいと思います。
  86. 滝井義高

    滝井委員 それは岸総理の認識不足です。あなたがほんとう社会保障制度確立して、ばらばらになっている日本社会保険を整備統合しようという冒頭の発言とは違う。もしそれをやろうとするならば、まず政府管掌と組合管掌とをいかに整備統合していくかということが一番今の問題点です。社会保障確立する一番の問題点です。それを整備統合していくためには、両方にやはり適当の国庫負担というものをつけていくことによって初めてそれが可能になってくる。法律技術上の問題ではない。この法律の規定をやるかやらないかということは、日本の皆保険政策を遂行していく上にきわめて重要な一つのポイントなんです。そういう点はもう少し岸総理、認識を新たにしてもらわなければならぬ。  そこでこれは厚生大臣お尋ねいたしますが、今の二億円の中には、今非常に苦難の道にあえいでいる駐留軍の健康保険組合に対する補助金が入っているのか入っていないのか。
  87. 郡祐一

    郡国務大臣 その点につきましては政府委員をして答弁させます。
  88. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。駐留軍の健康保険組合につきましても、実情をよく検討いたしまして、その対象になると判断されますれば考えて参りたいと思っております。
  89. 滝井義高

    滝井委員 大臣にお尋ねいたします。今回組合管掌健康保険政府医療費の一部を負担する制度を、これは臨時的かもしれませんがとったことは、日本社会保障の前進のために画期的なことなんです。そうすると一体弱小組合を補助する基準はどういうところに置くと大臣はお考えになっておりますか。
  90. 郡祐一

    郡国務大臣 およそ百に近い弱小組合がございまして、これに対して国が負担をいたすことによってそれらの弱小組合をささえて参りたい。しかしこれにつきまして滝井委員の言われますように、国庫負担によってそれらのささえができて参りますことを、そして早く立ち直りますことを希望するのでありますが、その基準につきましては、組合の実情をよく見きわめてきめることにいたしたいと思います。
  91. 滝井義高

    滝井委員 弱小組合に二億円を出すのに、その基準をどこに置くかということです。
  92. 郡祐一

    郡国務大臣 標準報酬が低く、料率が高い、これらの点を検討して参ります。
  93. 滝井義高

    滝井委員 標準報酬が低くて料率が高いということになりますと、駐留軍の健康保険組合は日本一料率の高い組合です。一対一で勤労者負担が非常に高いところなんですが、それは十二、三万ぐらい多分含まれていると思いますが、人数は多いのです。しかしこれは御存知の通り雇用の形態は国が雇用主なんです。そして国の政策によってどんどんアメリカへ帰ることによって、そこに失業者ができてくるわけです。ところがその失業者諸君というものは健康保険法の五十五条によって継続給付をどんどん受けていく。普通の組合では継続給付を受ける組合は二%しかない。ところがこれは三割三分くらいある。非常に多いのです。そういう点から考えて、当然駐留軍の労働組合については、国家公務員とむしろ同じような形態であるので、国が相当責任を持たなければならぬと思うのだが、今のような料率が高いということを基準にし、特殊事情から考えれば、当然この二億の対象になると思うのだが、大臣どうです。
  94. 郡祐一

    郡国務大臣 よく検討いたしまして——加えるべきものかと考えますが、さらに検討さしていただきたいと思います。
  95. 滝井義高

    滝井委員 どうもはなはだ自信がないので、やむを得ません。  次にお尋ねをいたしたい点は、今簡単に私は政府管掌健康保険の問題について見てきました。岸内閣は、社会保障制度を拡充強化すると言いながらも、実際は法衣の下によろいが見える形を私たちはまざまざと見た。いわばバターというものを大砲が食ってしまった形が出てきてしまっておる。そこで私は今からそのバターを食った大砲の腹を一つ解剖してみたいと思う。  そのように非常に冷酷無情な政策健康保険にとった政府は、一体防衛費にどういう態度をとっておるかということです。一昨日の成田さんの質問に対して、今までの防衛庁の繰越費というものは二百億をこえておりましたが、三十二年度の繰り越しは三十億だと、こう言明されましたが、その通りであるかどうか。
  96. 石田博英

    ○石田国務大臣 私は補欠のことでありますから、その意味でお聞きとりを願います。  津島長官の答弁通りでございます。
  97. 滝井義高

    滝井委員 三十二年度の三十億の繰越額の内訳を一つ御説明願いたい。
  98. 石田博英

    ○石田国務大臣 政府委員答弁させます。
  99. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 お答えをいたします。三十億と申しますのは、契約未済の繰り越しの予定でございます。おもな内訳は航空機建造費並びに艦船建造費でございます。
  100. 滝井義高

    滝井委員 飛行機の製作と艦船の建造費であるということでございます。  そこで、三十億の中に入っております艦船建造費についてでございます。大臣にお尋ねしますが、たぶん海上自衛隊に切りかえられたのは二十八年からだったと思います。二十八年以来の艦船の建造状態一体どういうことになっているか。これは百隻も二百隻も作っているわけではありませんし、毎年実績が十五、六隻しか作らぬわけですから、二十八年のはどういう工合、二十九年、三十年はどういう工合になっておるのか、御説明願いたい。
  101. 石田博英

    ○石田国務大臣 政府委員でよろしければいいのですが、ここにどうせ書いたものがありますからお答えいたします。  昭和二十八年度船として、警備艦五隻、敷設艦一隻、敷設艇一隻、掃海艇三隻及び魚雷艇六隻、合計十六隻、九千三百三十トンを随意契約により三菱造船、新三菱重工業、石川島重工業、川崎重工業、三井造船、三菱日本重工業、浦賀船渠、日本鋼管、日立造船及び東造船において建造しております。三十一年十二月までにいずれも竣工を見ております。昭和二十九年度船として、駆潜艇八隻、掃海艇三隻、魚雷艇二隻、計十三隻、二千九百三十四トンを随意契約により浦賀船渠、藤永田造船、飯野重工、呉造船、日立造船、日本鋼管及び三菱造船において建造し、三十二年三月までにいずれも竣工を見ております。なおこのほか魚雷艇一隻を英国サンダース・ロー社より三十二年に輸入いたしました。それから、三十年度船として、警備艦四隻及び掃海艇三隻、合計七隻、七千百八十二トンを随意契約により三菱造船、新三菱、川崎重工業、三井造船、日立造船及び日本鋼管において建造を開始し、近く七月までにはいずれも竣工する予定でございます。それから、三十一年度船といたしましては、警備艦二隻及び潜水艦一隻、合計二隻、四千六百トンを随意契約により三菱造船、石川島重工及び川崎重工業において建造を開始し、警備艦は三十三年度中に、潜水艦は三十四年度中に、いずれも竣工する予定でございます。それから、昭和三十二年度船として、警備艦二隻、駆潜艇二隻、掃海艇五隻及び高速救命艇二隻、計十一隻、四千五百九十四トンについては、いまだ契約に至っていないのであります。
  102. 滝井義高

    滝井委員 今の御説明を大蔵大臣お聞きの通りでございます。いいですか。三十二年度の計画は一隻も契約していない。私は昨年の予算委員会でもあなたに警告をいたしました。艦船の建造費は毎年、昭和二十八年は繰り越しが三十五億円ありました。昭和二十九年は九十一億、三十年度は六十四億、三十一年度は五十四億、このように防衛費の繰越額の四分の一は艦船建造費が占めておった。今年も三十億ならば、おそらく飛行機を作るよりが艦船が多いと思う。しかも、現在三十三年一月一日の調査をやってみると、防衛庁のまだ使い切れぬ残高は五百十八億円ありますよ。そうして三十二年度の計画船というものは一隻も契約は行われていない。わずかに六十億の黒字が三十億の政府補助を下に敷きながら出たといって、七百万の日本の零細な勤労階級のための健康保険の補助金を断ち切る政府は、なぜ三十二年の契約が一隻もできておらないのに予算を削らないのですか。
  103. 石田博英

    ○石田国務大臣 理由を申し上げます。三十二年度間の発注がおくれておりますのは、御承知のごとく三十二年度前半におきまして諸資材の値上りが相当ございました。また艦種の変更をいたさなければならないような事情もございましたために、三十二年度予算内にては発注できませんでしたので、本年度予算にその不足分を計上していただきまして、すみやかに発注する予定でございます。
  104. 滝井義高

    滝井委員 大蔵大臣一つぜひ……。
  105. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私としては、この防衛庁費の繰り越しが多いということについては常に注意を払っておるのですが、この三十二年度の防衛庁の予算できわめて明白でありまして、この繰り越しを使うことによって防衛庁費の新しい増加をとめておるということにも現われておると思います。むろん今御指摘の点も十分注意を払っておるのですが、これもこの年度内には契約は私は完了すると考えておる次第であります。
  106. 滝井義高

    滝井委員 年度内といったって、もう二、三ヵ月しがないんですよ。完成は絶対にしません。今言ったように造船単価が上っているのです。契約不可能になっておるのです。それでもあなたはできると言うのですか。
  107. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この契約は、これは防衛庁関係であると思いますが、私は、年度内に契約は完了する、かように考えておるのであります。
  108. 石田博英

    ○石田国務大臣 先ほど申したような事情でございましたが、年度内において契約は行うつもりでございます。
  109. 滝井義高

    滝井委員 さいぜんの石田さんの答弁でも明らかなように、造船単価が上ったために契約ができなくなっている。従って、三十三年度の予算が通って、そして追加が成立しなければこれはどうにもならないのです。それは石田さん認めるでしょう。そうでしょう。
  110. 石田博英

    ○石田国務大臣 三十二年度成立予算の範囲内では不可能でございましたが、しかし、三十三年度予算に計上していただいて今御審議中でございますが、その見通しに従って三十二年度中に契約を完了いたしたいと思っております。
  111. 滝井義高

    滝井委員 年度内というが、この予算は三月三十一日でなければ成立しないのがわかりませんか。だから、三十二年度の計画というものは、とにかく現実においてはこの二月十一日現在においてはできていないということは確実なのです。しかも三十一年度の計画というものは非常に進捗がおそいのです。まだ初期の段階です。そうしますと、造船単価が上っておるならば、三十一年度の分も上っておるはずなのですが、これは一体どうなのですか。石田さん、三十一年度分はどうなっておるのですか。
  112. 石田博英

    ○石田国務大臣 今私は言葉が足りませんでしたが、三十二年度で二隻予定のものが、その二隻の分全部を発注することは既定成立予算内ではむずかしいので、発注し得られるものは三十二年度中に発注するということでございますから、三十二年度成立予算内で処理できる範囲にいたすということでございます。  それから、三十一年度の分でございますが、三十一年度も、御承知のようにやはり資材その他が値上りをいたしましたために、同時にもう一つは建造計画に変更を来たしたこともございますので、従って一部工事が遅延をしておる事実もございます。
  113. 滝井義高

    滝井委員 三十二年度はとにかく契約ができないのです。これはもう予算が通るまでは絶対にできない。どうしてかというと、造船単価が高くなっちゃって、三十二年度予算の追加を今要求しているのです。これが通らなければだめなのです。それから三十一年度もまだ造船は初期段階です。従って、これももはや単価が上ってどうにもならぬところに来つつある。それから三十年度もまだだいぶ完成していないのです。こういう段階でことしも依然としてあなたは予算を出しておる。造船単価が上って困っておる。三十年度も三十一年度もまだできていない。こういう段階で、あなたはそれじゃめくら判じゃないですか。岸総理大臣、あなたはこの状態一体何と見ますか。私はこの問題については昨年もあなたに警告をしておる。そうしたら、あなたは、こういうことは改めますと言っておるのです。これをどうしますか。こういう実態を作っておるではないですか。今年度の防衛庁予算くらい非科学的な時代錯誤の予算はないです。鉄砲かついでオッチニの兵隊を作って何の役に立ちますか。そういう金があったら科学技術につぎ込んだらいい。三十三年度はできていないではないですか。この実態をどうしますか、あなたは。
  114. 岸信介

    岸国務大臣 ただいま防衛長官からお答えいたしておるように、今年度の足らないものにつきましては三十三年度に要求いたしておりますし、本年度の範囲内において発注可能なものについては発注するということを申しておりますから、さように御了承願いたいと思います。
  115. 滝井義高

    滝井委員 長官にお尋ねしますが、三十三年度にはどういう艦種の予算が不足で、どういう項目で要求しておりますか。
  116. 石田博英

    ○石田国務大臣 どうも私補欠のことでありますから、事務当局に説明いたさせます。
  117. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 三十二年度には、甲型警備艦で申しますと、総額、これまでは予算国庫債務を含めまして三十六億六千九百万円というワクがあったわけでございます。ところが、この警備艦は、先ほど大臣からも御答弁ありましたように艦種を変えました。初めはDDAと申しまして対空を専門にする種類の駆逐艦と、もう一つはDDCといいまして指揮艦を作る予定でございましたが、指揮艦の方は城外調達の船をもってこれに当てるということにいたしまして、このDDCを、DDKといいまして対潜を主眼とするものに変えることにいたしました。そのために単価の増額を必要としますので、総額約三十八億七千万円くらいの金を必要とします。従って、契約のワクが二億ばかり足りないわけであります。これを今回の予算で追加をお願いしておるわけであります。従って、今年度中に契約いたしますためには予算が通らなければできませんが、われわれの今考えておりますやり方といたしましては、エンジンを二隻とも発注し、船体の方は一隻だけ発注しよう、一隻は今回の予算通りましてワクができました上で発注しよう、こういうもくろみにいたしております。
  118. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、大臣、造艦単価が上って契約が不可能なのは、今言った甲型警備船一隻だということなんですか。
  119. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 値上りは全体の問題でございます。艦種の変更は一隻の問題でございます。
  120. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、さいぜん大臣の答弁では、契約単価が上って契約ができないものだけを残して、あとはみな契約をするのだと言ったけれども、実際には全部単価が上っておるのですから全部できないはずなんでしょう。それも、三十三年度の作る数は九隻ですよ。それから三十三年度は十隻ですよ。十隻の大部分というものは全然契約をしておらないのですよ。そうして三十一年度は七隻ですよ。七隻は建造にかかったばかりです。そうすると、単価が上ってくると当然追加予算が要る。補正予算が要ることになる。一体こういう関係はどうなっておるのか。実は艦船建造費を調べてもわからない。わかるところがない。誰も知らない。あるいは防衛庁に行ってもよくわからない。あとでもっと詳しく尋ねますが、わからない。そうして、この予算の組み方は、継続費と国庫債務負担行為になっておる。このまた関係が実に複雑です。一体この国庫債務負担行為の関係と艦船建造費とはどういう関係になって出しておるのか、方針があるはずです。大蔵省としての方針を大蔵大臣に説明してもらいたい。
  121. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 建造費は言うまでもなく艦船等については、むろん長期間を要しますから、これは継続費とする。債務負担行為は、具体的に期限が継続されていくというよりも、むしろ初めから期限が先に延びていくということがはっきりしておる、こういうものについて考えております。
  122. 石原周夫

    ○石原政府委員 防衛庁の艦艇のうち、継続費にいたしておりまするのは、三十一年度から発足いたしました潜水艦、三十二年度以降におきまする甲型警備艦という大型のもの、それだけが継続費でございまして、あとの艦艇で翌年度にわたる分についてはすべて予算国庫債務負担行為であります。
  123. 滝井義高

    滝井委員 その関係予算書を見てもよくわからないのです。われわれのもらっている予算書の範囲では、一体国庫債務負担行為というのは、どういう艦種にいくのか、さっぱりわからない。だから、こういう予算の組み方をしておれば、国民は何のために予算の審議をするのかわからぬことになってしまう。だから、大蔵大臣としては、今言った継続費は潜水艦と甲型警備船だけが継続費で、あとは債務負担行為だというが、あとまだたくさん船を作っている。だから、その関係をもっと財政的に明白にしなければ大へんです。大蔵大臣、明白な方針はありませんか。債務負担行為も継続費も、財政法上では五ヵ年間やっていい。五ヵ年以内でやることになる。そうすると、多く船の契約を見ると、みんな一年くらいになっていますよ。一年くらいでできることになっている。ところが、納期にできている船はありはしない。たとえば甲型千六百三号、船体十一億四千三百九十万、三菱造船工業株式会社、契約年月日三十一年十月二十三日、こう契約している、そして契約の納期は三十二年十二月二十八日となっている。ところがこれはできていない。みんな納期を変えてある。そうして、こういうものが債務負担行為になってみたり継続費になってみたり、今まではわからぬ。こういうものは内閣はやはりきちんと方針を立てて、われわれしろうとの国会議員にもわかるような方針でやらなければいかぬ。大蔵大臣は説明できないじゃないですか。今のように、三十年も三十一年も三十二年も船はまだできていない。ずいぶんまだ残って造船所に横たわっている船が多い。そういう横たわっておりながら、毎年繰り越しをして、その上に予算を積み重ねてきておる。われわれの血税を積んでおくだけじゃないですか。現実にまだ五百十八億も残高が一月一日現在ある。そして、われわれ国会議員には、繰り越しは三十億でございますという説明をやっていく。こういうからくりが日本の保守党の政治のもとにおいては行われている。けしからぬことである。そうして、わずかに三十億の社会保障費は削っていくということです。  そうすると、もう一つお尋ねをいたしますが、一体船を作るときの原価計算というものはどういう方向でやっておりますか。
  124. 石田博英

    ○石田国務大臣 二十八年度初めて発注をいたしましたときは、戦後初めてのことでございますし、旧海軍時代は、海軍工廠で一隻作りまして、そうしてそれに基いて他へ注文をするということをいたしておったのでありますが、それもできませんし、実績値がつかめず、非常に予定価格と実際価格との間に差を生じたことは事実でございます。しかし、それも最善の努力をいたしまして、あるいは戦前における造船価格と戦後の造船価格との間の関連値を求めたり、あるいはそのほかのいろいろの努力をいたしましたが、何しろ初めてのことでございましたから、だいぶそこを来たしました。その後は逐次それは改善されておりまするし、今事業場に監督官を派遣いたしまして遺漏なきを期しておる次第でございます。
  125. 滝井義高

    滝井委員 遺漏なきを期しておると申しますけれども、現実に船ができていないことは確実なんです。石田さん、一体船の原価計算というものはどういう工合にやられておるか。どうもしろうとで、これはわかりにくいと思うのですが、どういう工合にやられておるのです。
  126. 石田博英

    ○石田国務大臣 先ほど申しましたように、原価計算をやりますに当りましても、何しろ始めたのが最近のことでございますから、先ほど御説明を申し上げましたような事情でありまして、具体的にどういう方法でやっておるかは、事務当局から答弁をいたさせます。
  127. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 原価計算と申しますのは、われわれが発注いたします際には、予定価格というものを作ります。これの積算の方法は、船体部、機関部、電気部、兵装部というふうに分けまして、それぞれの材料費を積算いたしまして、それに対して工費、間接費と工数を出しまして、その工数が、先ほど大臣が言われましたように、初めのときには実績がありませんので、つかみにくかったわけであります。工数を出しまして、それに賃金及び経費のレートをがけまして、それを両方足しまして総原価を出します。それに対しまして設計費その他の直接経費を出しまして、それに一般管理費、利益等を足しまして、見積りまして総合船価を算定する、こういう方法であります。
  128. 滝井義高

    滝井委員 私が調べたところでは、どうも防衛庁では原価計算の方式がはっきりしていないようだ。いろいろ尋ねてみたけれども、原価計算の方式は納得のいくような説明ができないような感じがした。一体船の利潤というものは、発注をせしめるときにはどれくらい見積っておるのか。——委員長、こういう日本の防衛力の漸増計画の根本をなす問題、しかも幾らの予算を組んで、それは一体どの程度の利潤を見込んで造船所に渡すということ、これはやはり内閣の基本的方針としてきめられていなければならぬ。一官僚がここに出て答弁したことが真実のような状態で報道されるということは許されぬと思う。だから、これは当然大蔵大臣なり岸総理が責任を持って答弁してもらわなければ困ると思う。一体どういうことになっておるのですか。そういうことは閣議で御相談されたことはないですか。岸総理、ありませんか、そういうことは。第一、あなた方は自衛力を漸増せられると言うくせに、一体われわれ国民の税金をどういう工合に使うのですか。当然明白に、軍艦一隻作るならば幾らくらいの金だ、かれは各造船所にはどの程度の利益を得させるというくらいのことは、やはり基本的に考えておかなければならぬと思う。どういう方針でやられるのですか。方針が今なければ、将来どういう方針でやられる所信なんですか。
  129. 石田博英

    ○石田国務大臣 お答えをいたします。管理費五%、利益率七%、かれは飛行機の発注の場合も同様にやっております。
  130. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、利益率は七%だ、こういうことがようやくわかりました。管理費というのはおそらく本社費だろうと思うのです。そういうものを入れて大体一二%、こういうことがわかった。岸さん、こういうことは一体内閣の基本方針として決定しなくていいのですか。A造船会社、B造船会社、みんな勝手な作り方をして違ってもいいのですか。同じAならAという船がイという造船会社では十億でできた、ロという造船会社では十二億でできたという、それを黙って受け取るのですか。どうです。内閣の方針として、今後こういう建造の方針というものを打ち立てる必要があるんじゃないですか。総理、どうですか。
  131. 岸信介

    岸国務大臣 従来内閣として、これは防衛庁だけでなしに、いろいろな関係もございますから、一々そういうところまで閣議で方針をきめるということにはいたしておりません。
  132. 滝井義高

    滝井委員 その通りだと言っておりますが、実際には一隻の船が大体十七億くらいかかるんです。たとえば千七百トンくらいの「ゆきかぜ」とが「はるかぜ」というのが十七億くらいかかる。十七億もかかる船を作らせる場合に、内閣はその造船の基本的な方針も定めておらずに、一官僚にまかして、そしてよきにはからえということでは、これは私は済まないと思うんです。だからこういうことは防衛大臣が責任を持っておるというけれども、津島さんがおったらおそらくこういうことは知らないでしょう、答え切らぬ。従ってこういうことはもう少しやはり大蔵省なり総理なりが注意しなければならぬと思う。大蔵大臣は何も知らぬじゃないですか。そういうことは私は許されぬと思うんです、どうですか。今後艦船の建造については債務負担行為、継続費、あるいは基本的な方針、こういうようなものを打ち立てる意思があるのかないのか、これを一つ総理から御答弁願いたい。
  133. 岸信介

    岸国務大臣 私から申し上げるまでもないことでありますが、今日の内閣制度におきまして、重要なことはもちろん閣議できめなければなりませんし、また内閣統一していく上におきまして、各省大臣の意見の不統一という場合におきましては、これはもちろん閣議においてきめるということになっております。各省を担当しておる国務大臣はそれぞれその権限に基きまして、責任において、自分の所管の仕事をやっていくという建前が今の、申し上げるまでもなく、内閣の建前でございます。従いまして一々そういう防衛庁長官の権限である艦船の発注につきまして、方針を内閣においてきめるということではなしに、やはり防衛庁長官が責任を持って各種の事情を判断してきめる。それについては国会を通じて国民にも十分に責任を明らかにする——批判もありましょうし、いろいろなこともありましょうが、こういう建前が私は今日の内閣制度の建前であると思います。ただ、先ほどお話しになりました予算の建前において、継続費あるいは予算国庫負担の契約になるべきものの基準をどういうふうに定めるかということにつきましては、先ほど主計局長も一々説明をいたしておることで明瞭でございますが、なお不明の点があれば、そういうことを予算を編成する場合にはっきりするということは、これは財務当局の当然考えなければならぬことである、こういうふうに思っております。
  134. 滝井義高

    滝井委員 艦船建造については内閣はきわめて自信がない。そういう点で、バターを食った大砲の腹の中というものは、満腹をしておってどうにも身動きのならぬ状態になっておるということだけは、これで明白になったと思うのです。そこで私は本論にもう一ぺん返りますが、時間の関係がありますので、国民健康保険のことは少し抜かしまして、国民年金の問題についてお尋ねをいたします。  恩給問題が政治の脚光を浴びるに至って、急激に国民年金の問題が国民的な世論になって参りました。総理御存じのように、現在日本においては非常に老人人口が増加をして参りました。同時に一方においては平均寿命がずっと延びて参りました。新しい憲法によって家族制度そのものも幾分がたつく状態が出て参ったのでございます。そしてわれわれがかつて貯蓄しておった貯金というようなものも、経済の変動によって必ずしも老後を保障する状態でなくなって参った。従ってここにどうしても国民年金を作らなければならぬという要望が非常に強くなって参ったのでございます。ところが今回この予算を見てみますと、平年度になっていきますと、大体恩給費と防衛関係費というものが、おそらく三千億くらいになるだろうと思われる。そうしますと、岸内閣所得保障の形として国民年金を作るんだということを打ち出しておるんですが、そういう状態のもとで、一体国民年金ができますか。いかなる具体的方法と構想をもって岸総理は公約した国民年金をやっていかれるつもりなんですか。今度は内閣にできている社会保障制度審議会の御意見もいろいろ聞かれるでしょうが、まず自分の腹がまえというものがなければならぬ、自己の基本的な構想というものを持っていなければならぬ、内閣の最高責任者ですから。一体どういう基本的な構想をお持ちになっておりますか。
  135. 岸信介

    岸国務大臣 今滝井委員の、国民年金制度を樹立するについての必要性がいろいろな方面において強く認識されておるということのお話でありますが、私はそういうふうなところまで日本の各界の意見、世論というものが参ってきておると思うのです。ただ恩給の問題、また本年われわれが提案しておりまする遺族扶助料を中心としておりまする改正等をみな含めまして、平年度化すならば相当な額になるだろうということも当然考えなければなりませんし、また同時に、今回の改正につきましては、遺族扶助料、軍人恩給については過去の事態から生じておるもので、毎年これが死亡その他によって数も減っていくという事態もございます。従いまして財源的に今どういうふうになるということを見通しすることはできませんけれども、私はどうしても国民が、先ほどおあげになりましたような理由から見て、老年に達した場合におけるその生活を国家として保障する建前の国民年金というものができるべきことは当然であろうと思う。ただ一方恩給という制度につきましては、国家として国民全体を考える以外に、国家が一つの使用者として、被用者の立場にある公務員その他に対する特別の使用関係から生ずる義務というものももちろんありますけれども、しかし国民年金制度を作る場合におきましては、この恩給制度と十分調整を考えるということが必要であろうと思います。恩給制度そのものを今のままにしておいて別に考えるということでなしにですよ。しかし恩給制度というものを全然なくして、それに全部包括するということは、国家と公務員との使用関係という特別の関係に基いているところがありますから、そういうことを無視することはもちろんできないと思います。それらのことも十分に調整をして考えなければならぬと思います。従って社会保障制度審議会にわれわれはこれを諮問し、各方面のこういうことに関する有識者の意見も広く聞いて、そうしてこれに対する具体的の方法を考えていくということが最も必要である。方針としては私は、ごくラフに言えば、やはり一定の老年に達した国民を広く全体としてこれが生活保障するという考えを盛った国民年金制度を作らなければならぬ。それについては今ありますところのものとの調整その他財源の問題については十分考えて参りたいと思います。
  136. 江崎真澄

    江崎委員長 滝井君にちょっと申し上げますが、申し合せの時間もだんだん迫っておりますから結論にお入りを願います。
  137. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今の総理の御答弁によれば、今の恩給制度がそのままの姿でずっと行ったのでは、国民年金制度というものはできないのだ、こういう御議論なんですか。
  138. 岸信介

    岸国務大臣 必ずしもそういう意味ではございませんが、この恩給制度国民年金を作る場合にはその調整を考えていかなければならぬ、こういうように考えております。
  139. 滝井義高

    滝井委員 恩給制度国民年金制度とを調整するということは、では具体的にどういうことかということに実はなるのです。総理は元商工省でずっとお育ちになったのだから、日本経済見通しについては医者の私より詳しいだろうと思う。そこで私は総理に一番近いところで一つ見通しを聞きたいと思う。日本経済昭和三十三年には三%そこそこの伸びがある。長期経済計画で平均して六・五%の伸びがあるということになっておりますが、今予算を審議しておる三十三年度に一番近い三四年度の状態を一応考えてみることが必要だろうと思う。そうすると、三十四年というものは、今年のように税の自然増が千億もあり、剰余金が千億もあって、たな上げは四百三十六億もできて、減税は地方、中央を通じて三百億もできる、そして国債の償還に三百十億も充てて、なお一千億円近い金ができてくる、総予算のワクの拡大ができるというようなことはなかなかむずかしいのではないかという感じがするのです。そうすると三十四年度の経済の伸びというものは六・五%でもいいと思いますが、そういう場合に、来年度は一千億を下回るような予算の規模の拡大しかできないということになると、現在地方自治体においては人件費がすでに四割を占めて参りました。国家においては人件費は一割五分です。そうしますと人件費だけでも、あるいはその他の義務的な物件費を加えても、三百五、六十億から四百億というものはもはやどうしても来年度三十四年度は義務的に出さなければならぬということになる。そのほかに恩給というものは来年度百五十億出すことになります。そのほかに社会保険その他皆保険政策の進行によって八十億や百億はすぐ取られてしまう。そうすると六百億前後の金というものはもはや必然的に、義務的なあるいはそれに近い経費として食われてしまうことになるのだが、そういう中で今度は国民年金制度というものを恩給と調整して作っていくことが一体可能なのかどうかということなんです。これは総理が打ち出の小づちを持っておられるならば可能かもしれぬが、そうは行かぬと思う。一つ三十四年度の経済との関係において、国民年金というものは可能がどうかということをお教え願いたい。
  140. 岸信介

    岸国務大臣 これは私が申し上げるまでもなく、国民年金制度を立てた場合においても、経済の発展の工合とにらみ合せて漸進的に実現しなければとうていできないことは言うを待たないと思います。案を得ましても、やはり一定の年次計画を立てて、漸進的にこれを完成していくということにならざるを得ないと思います。しこうして私どもの見通しから言えば、いわゆる新経済五カ年計画によって三十七年度には国民の総生産も四〇%ふえ、消費も三七・八%伸びるというふうな見通しを立て、それだけの経済の拡大を考えて、それに向って全力をあげてやるということが、日本の人口の増加の上から行きましても当然やらなければならないことでございますし、そういう経済の拡大、発展と見合せて国民年金制度というものを漸進的に完成する、こういう考えでおります。
  141. 滝井義高

    滝井委員 どうも総理答弁はポイントをはずすのですが、私は今のような私自身の考え方から考えて、これは恩給と年金とを総理の言うように調整する、内容は問題ですが、とにかく言葉で現わせば調整しなければ国民年金はできないと思います。そこで恩給は一体いつピークになるのか、今度の内閣のとる方針でいくと、いつが恩給支払いのピークになるのか、これを一つ御説明願いたいと思います。
  142. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 昭和三十六年です。
  143. 滝井義高

    滝井委員 総理御存じ通り大蔵大臣答弁では三十六年がピークになります。そうしますと、六月ごろに制度審議会の答申ができても、三十六年までは国民年金というものはなかなかむずかしい、こういう問題が出てくるわけです。そこで私は一つ総理の腹の中からの御意見をお聞きしたい。現在日本においては、国民年金を作れという世論が圧倒的に強いことは、総理御存じ通りでございますが、そうだとすれば、当面の問題は恩給と国民年金を調整しなければならぬという問題です。そこで恩給の問題で自由民主党と社会党がしのぎを削って争うことは、もはや現在はやめなければならぬ段階が来たと思うのです。そこで私が総理に意見を聞きたい点は、国民年金を作るという点については、保守党も革新政党も同じスローガンであるとするならば、そのスローガン達成のために、この際恩給問題については共通の広場として、過去における日本の戦争犠牲者に何らかの形で報いなければならぬことは当然ですから、そのためには与党と野党とが共同の広場で、この恩給問題について政策協定をやって、ざっくばらんに話し合って、統一した見解で国民年金への道を切り開くために、この問題を解決する意思があるかどうか。
  144. 岸信介

    岸国務大臣 私はきわめて適切な御意見であり御質問であると思います。こういう問題については私は二大政党ともほんとうに胸襟を開いて国民のために論議をし、またそれを実現することに協力すべきものであると思います。社会保障制度審議会にも、御承知の通り与野党の人も入っておりますし、またこれをいよいよ実現するという場合におきまして、こういう問題に関して両党の間において十分話し合って、その成立を期するという方向は私はぜひとりたい、かように思っております。
  145. 滝井義高

    滝井委員 きわめて明快な御答弁をいただいて敬意を表します。恩給の問題については岸総理も非常に御心労のことだと私はお察しいたします。従って私たちはやはり大局的な見地に立って、少くとも国民年金への道を開くために、遺族の補償を考慮しながら恩給問題を考慮することについて御賛意を得たことで、この質問は終ります。  次に大蔵大臣お尋ねをいたします。大蔵大臣御存じ通り、今度の予算に農協を初め、農林漁業関係の職員が共済組合を作る、いわゆる年金制度を作る予算が一千万円入っております。私は給料の安い農協の職員の皆さんにとっては非常な福音だと思います。そういう点については私は賛成でございます。しかし高い国民年金の立場から考えてみると、幾分問題が出てくるところだろうと思います。従ってこの問題についても、将来国民年金との調整というものをやはり今から考えておかなければならぬ。この問題でどういう点に一つの隘路が出てくるかというと、それはこういう人たちは今まで厚生年金に入っておりました。厚生年金に入っておったので、その掛金は安かった。ところが今度は自分で共済組合を作るということになると、掛金は高くなります。その退職年金を受ける額は、おそらく厚生年金の三倍ぐらいになります。それともう一つ利益がある。それは自分の出した保険料がだんだんたまっていきますと、すでに共済組合がやっておるように運用することができる。現在の厚生年金大蔵大臣御存じ通り、二千億をこえる積立金ができて参りました。年々これは八、九十億くらいの利子をおそらく生んでおります。そうして積立金は三百億から四百億ふえております。ところがその厚生年金に加入しておった人たちが、われもわれもと共済組合を作るために脱退をしていったら、一体厚生年金はどうなるかということです。こういう問題について、一体大蔵大臣は今度の予算編成に当って、どういう基本的な考えを持って処置されたのか。私はこの政策そのものは悪いとは申しません。しかし、すでに政府自身に国民年金制度へのしっかりした腹がまえがないところに、こういう政策がどんどん出てくるということなんです。ますます日本社会保障をつぎはぎだらけのばらばら状態にしてしまう。そればかりではない。すでに問題になっておる国家公務員の新しい退職年金制度、今までは恩給制度のワクの中にあったものが、今度出ていって新しい退職年金制度を作るとするならば、一体これはどういうことになるのか、こういう点を大蔵大臣一体どうお考えになっておるか、一つ答弁を願いたい。
  146. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この農林漁業共済の職員の年金でございますが、これは私の考えでは、今お話のありましたように厚生年金に入り得るものもあり、また五人未満で入れないものもあり、いろいろありますので、この職員を一体として共済組合を作ってやる、かように考えておるわけであります。従いまして共済組合の年金制度ということになった場合に、すでに入っておる他の年金制度にそれぞれ影響がある程度及んでくるということもやむを得ないと考えております。
  147. 滝井義高

    滝井委員 どうも大蔵大臣国民年金に対する基本的な腹がまえがちっともできていないことは、岸総理今の御答弁を聞いておわかりの通りです。こういう工合に官吏は官吏で別なものを作っていく。非常に高いものを作っていく。あるいは共済組合やその他農協や農林漁業関係者も作っていく。なぜか、現在の厚生年金のいわゆる老後になってもらうお金が月額フラットで二千円、比例報酬についても二千円、月額四千円そこそこではどうにもならぬからこそ、われもわれもよりよきものを作る。これは政府年金制度に対する基本的な考えをきちっと打ち出してないところに、そういう国民的な要望が別の形になって現われるのです。これは共済組合なり官吏のこういう新しい退職年金制度については、やはり内閣として国民年金制度とともに基本的な考え方をきめなければならぬ時期がきていると思うのです。この点岸総理はどういうようにお考えになりますが。
  148. 岸信介

    岸国務大臣 最初に滝井委員も御指摘になりましたように、現在の日本社会保障制度が非常にばらばらである。不完全であり、不十分であるということから、今申したようにいろいろ現在あるところの制度をそれぞれのなにで拡充して、それに入っておる人たちだけが一応の安定を得るような制度の拡充というようなことがまちまちに行われております。しかし先ほど申し上げましたように、やはり社会保障制度の根幹は、一方において健康保険国民保険の問題と、一方国民年金のこの二つを二本の柱として日本社会保障制度というものを系統づけ、整備充実していかなければいかぬというのが私の考えであります。従いまして国民年金の問題につきましては、先ほど来お話通り非常に従来の制度も複雑になっておりますので、また大きな意味における財源、また日本経済力というようなものとの関係もありまして、非常に困難はございますけれども、一つあらゆる知能を集めてこれが方針を決定したい。特に社会保障制度審議会答申というものには政府は非常に大きな期待を持っておるということを申しておりますように、これを中心として、これに関連するところの年金的な性質を持っておる諸種の制度統一していき、整備していくということが必要だろう。しかし、まだそれができておらない現状におきまして、それぞれの必要から各種の組合等においてこれに加入しておる者の年金制度と類似のものを拡充していくということは、やはりこれを今押えるということは適当でない。官吏自身の問題につきましては、なおいろいろ政府部内にも議論がございまして研究をいたしておる段階でございます。いずれにしても将来国民年金という一つの大きな柱を立てて、これに統一していく、またこれを中心として各種のものを調整するという建前を堅持していきたい、こう思っております。
  149. 江崎真澄

    江崎委員長 滝井委員にちょっと申し上げますが、あと二問ということですからお許し申し上げます。ただし時間が経過しておりますので、どうぞ要約して御質問願います。
  150. 滝井義高

    滝井委員 今の答弁はどうもやはり自信がないのです。やはり岸総理も、社会保障経済繁栄というこういう二本の柱を政治主眼としていかれるのには、もう少し民生の安定の面を御研究いただきたいと思います。今のようなばらばら状態では非常に困る。  次に、私はあと二問で終りますが、この長期経済計画と社会保障関係です。ここに「昭和三十三年度経済計画の大綱」というものをいただいておりますが、社会保障に関することは、十一ページに「民生の安定」ということがちょっと書いてあります。これはきわめておざなりなことが書いてあるにすぎない。私はやはり長期の経済計画というものの、その基盤にはしっかりした社会保障の計画というものがなくちゃならぬと思うのです。お隣りの川崎さんが厚生大臣のときに、やはり社会保障五カ年計画というものを経済五カ年計画とあわせて作らなければいけないという主張をされておった。されておったがいつの間にか川崎さんがやめてしまったらそういうものは消えてしまった。その後に厚生省医療保障四カ年計画、それから結核半減五カ年計画、国民年金の実施のいろいろな計画、こういうものを立てられたが、みな絵に描いたもちなんです。今のような姿では三十五年までには皆保険は絶対に実施できません。従ってやはり内閣がこういう長期の経済計画を立てられるならば、防衛庁にも防衛五カ年計画があると同じように、やはりこういう経済計画のうしろには、きちんとした民生安定の計画というものも載せていただきたいのです。こういう点について岸総理はどういうお考えを持っておりますか。
  151. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん経済五カ年計画というものの内容は、一面において経済繁栄を作り上げる。それはとりもなおさず国民民生の安定、その生活充実ということにあるわけでありますから、当然経済五カ年計画を立てます場合においては、あるいは失業者の完全雇用の問題はもちろん、一般民生の向上につきましても十分に意を用いて考えなければならぬことは言うを待たないと思います。
  152. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つ計画を立てて、そうして予算の配分その他もきちんと考えてやはり計画的にやっていかないと地方自治体が非常に迷惑するんですよ。実は私は国民健康保険は時間がありませんので抜かしてしまった。日本の皆保険政策にない手というものは政府管掌健康保険国民健康保険ですが、地方財政が逼迫のために基本的な計画が立たないところに問題がある。私はそれをきょうはやむを得ず抜かしましたが、最後にもう一つ質問申し上げたい点は白書についてです。現在白書あるいは白書類似のものが総理一体幾ら出ておると思いますか。私は白書を全部調べてみました、驚くなかれ三十出ております。白書が三十出ている。しかもその出ている白書の内容を見ると、みんな行き違いがあります。たとえば厚生白書が出たときには——これは今度の厚生白書ではなくて前の厚生白書ですが、明らかに戦後はまだ続いておると発表して、そうして現在の日本の貧困層の状態を赤裸々に分析してくれました。ところが同じときに出た経済白書は何と書いたかというと、もはや戦後は終った、国民生活は非常によくなったと言っておる。これは私は非常に端的なところを出したのですが、ほかに計数その他を見ると各白書はいろいろまちまちなんです。しかも多いものは六百ページ、少いものでも二、三百ページ、私は全部ここに持ってきておりますが、三十出ております。昭和三十二年度一年間に三十。おそらく白書は閣議了解をして出しておるはずです。憲法の九十一条のいわゆる「内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。という、この九十一条に基いて出しておるものではないと思うのです。これは常識的におそらく出しておるものではないかと思うんだが、閣議了解で出しておるはずです。前に出しておる厚生白書なんか、私調べたら閣議にかけておると言っておる。そうして三十も出て、その内容はみんなばらばらなんです。少くとも政党内閣であって、そうして多数党に基盤を置いておる内閣ならば、やはり内閣の施政的な方針というものは、各白書の中にも一貫をして躍動してこなければならない、それがばらばらなんです、これではいかない。これは人物経済の上からいっても国家財政の上からいっても、これほど不経済なことはないと思う。この調査がまちまちなことは、もしこれが閣議了解で出されたとするならば、ぜひ一つ十分それらの基礎的なものは調整をしながら検討をして、同じ内閣のもとで行き違いのないようなことにしてもらいたいと思うのです。これは質問といってもきわめて常識的なものですが、どうお考えになりますか。
  153. 岸信介

    岸国務大臣 実は今おあげになりまして、初めて白書の数が三十あると知ったのであります。実は各省ともいろいろな見地から調査をいたしまして、国民に事情を明らかにするという意味でこういうものが出たものだと思います。一々実は閣議の了解をとって出しておるわけではございませんが、閣議では多くの場合配付いたしまして、主管大臣からその概要についての話はいたしております。もちろんそういう何百ページにわたるものでありますから、詳細に検討しますと言葉の上ではいろいろな矛盾したような、あるいは意見の違うような点もあろうかと思いますけれども、私は個々の概要の趣旨においては大体統一がとられておるものだと思います。なお、しかしそういうふうな印象を与えるような意味につきましての御注意につきましては、十分一つ内閣としても今後注意いたしたいと思います。
  154. 滝井義高

    滝井委員 私、これで時間が参りましたので質問を終らしていただきます。私は今回の昭和三十三年度の予算を見ていろいろ批判しなければならぬ点があります。しかも世の中でも今度の三十三年度の予算に対して、よろめき予算とか精神分裂予算とかいろいろ名前が十くらいあげられております。しかし私は名前は幾らあろうと、その予算がいい予算であればけっこうだと思いますが、とにかく社会保障に関する限りは不満足きわまる予算であることは確実なんです。岸さんは朝日新聞をいつかごらんになったと思いますが、あなたの内閣の人気というものは、昨年の七月ごろは支持率が四割くらいありました。ところがこれが最近になりますと、もう三六%に減ってきました。さらにおそらくこの国会予算審議の状態を見た国民というものは、もっとあなたの内閣の支持が減ってくるのではないかということを、むしろ私社会党として心配申し上げております。しかしあなたがその人気を挽回しようとするならば、やはり社会保障をやらなければならぬ。私は心からあなたに一つお願いをしたい点があります。それは岸さんが青年の時代に歩いた道は、上杉慎吉博士とともに国家主義の道を歩みました。そしてあなたが壮年になって、商工省の次官になり大臣になり、軍需省の次官になり国務大臣になったときに、すなわち壮年に達したときには、東条さんとともに戦争の道を歩んだ。そして今よわい六十歳になって、日本政治の脚光を浴びて宰相の印綬を帯びられました。スズメ百まで踊りを忘れずということわざがありますが、老年になった岸信介氏が再び戦争の道を歩まないとは、だれも保証できないと思う。それをもしあなたが身をもって保証せられるとするならば、社会保障の道を堀木厚生大臣とともに——今病んで鉄道病院でこの様子をじっと見ておられる堀木さんとともに、福祉国家建設への一筋の道を歩むこと以外には私はないと思います。私はそれをあなたに——若い滝井が非常に僣越でありますが、お願いをして、まず一つ岸内閣の人気を上げることを要望いたします。
  155. 江崎真澄

    江崎委員長 この際、柳田秀一君より議事進行について発言を求められております。これを許します。柳田秀一君。
  156. 柳田秀一

    ○柳田委員 本予算案が提出されましてから、閣僚諸公も精励恪勤、熱心にわれわれの質疑に応答されたことに対しては深く敬意を表するものであります。またわれわれも国民の負託を受けておりますがゆえに、この予算委員会を通じて国民生活に最も直接関係のある予算案を克明に分析して、その審議を通じて国民諸君に予算案の国民生活に及ぼす影響を訴えたいと思っております。従いましてこの予算委員会におきまして総括質問をやっておる間は、従来の慣例からいたしましても、閣僚諸公は予算内閣全体の責任で出されておる以上は、全部出席されることが当然であります。しかしながら、われわれも他の委員会の審議の進捗もありますので、あとう限り与党の理事諸君と協議いたしまして、便宜をはかってきております。本日におきましても、同僚滝井委員質問にはたまたま藤山外務大臣と赤城農林大臣に対しては質疑はございません。従いまして与党理事を通じて藤山外務大臣と赤城農林大臣はそれぞれ他の委員会に出席方要請がありましたときには、われわれは国会の審議の進捗——岸さんと鈴木委員長との話し合われました国会運営の正常化の趣旨に沿って、われわれは大局的見地から、進んで退席を求めまして他の委員会に出席していただきました。ところが本日午前十一時前に、決算委員長を通じまして行政管理庁長官の石井副総理の出席要求がございました。滝井委員に聞きますと、石井長官には答弁を求める必要がないそうでありますので、与党の理事諸君と協議いたしまして、石井長官は決算委員会に出席していただいてもけっこう、こう申した。そういうわけで石井長官はここを退席されました。ところが決算委員会には、待てど暮せど石井長官はお越しになりません。調べてみますと、本日の決算委員会は、例の「不正者の天国」といって今日の官僚の汚職、疑獄の内容国民の前に刊行して明らかにしたところの一公務員を首にした事件を取り上げまして、決算委員会が開かれております。そこで行政管理庁長官としての役職上、石井副総理の出席を要求されておるのもこれははなはだ当然のことだと思います。ところが決算委員会には待てど暮らせど石井副総理はお越しにならない、ここはわれわれの許可を得て出ていかれた、ところがいつまでたってもお越しになりませんので、決算委員会は暫時休憩になったようであります。このように、与党の都合の悪いときはみずからの大臣を出席せしめない、都合のよいときはわれわれに頼んで出席せしめる、こういうような不見識、不まじめな党利党略に類するようなかけ引きで国会政治をおやりになるならおやりなさい、われわれも覚悟がございます。従いまして、決算委員会におきましてこの問題がはっきり解決いたしません限り、午後の再開には応じませんから、その点はっきり申し上げておきます。
  157. 江崎真澄

    江崎委員長 ただいまの御発言につきましては、いずれ、早急、調査をいたします。もしそういう事実がありといたしますならば、委員長から十分注意をいたすことにいたします。  午後一時半より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後二時四十二分開議
  158. 江崎真澄

    江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  今澄勇君。
  159. 今澄勇

    今澄委員 私は防衛並びにこれに関連する外交の問題をお聞きしたいのでありますが、その初めに日韓問題について一言聞いておきたいことがあります。  これはわれわれ野党ではあるけれども、問題の重要性にかんがみて、昨年一年間、国会においてこの問題をあまり取り上げなかったのは、慎重を期して、政府がぜひ一つ問題の解決に努力をしてもらいたいというわれわれの日韓対策特別委員会の考えでもあったわけです。そこで総理から第二次、第三次の送還について、今後の見通しをちょっと聞いておきたいと思います。
  160. 岸信介

    岸国務大臣 昨年暮れ、十二月三十一日に調印をいたしました両国間の従来の交渉の結末によりまして、いわゆる予備会談をこれによって妥結をいたしまして、両国間おのおのその抑留しておる者の釈放をし合うということで、御承知の通り第一回の釈放ができております。第二回、第三回の分が十四、五日までに行われるという予想のもとに、両国の間においてその後具体的な話を進めておりまして、私の承知いたしております限りにおきましては、予定の通り今月の半ばまでには二次、三次の釈放があるものと、かように期待いたしております。
  161. 今澄勇

    今澄委員 そこで外務大臣に聞きますが、私どものところで得ました情報では、昨年の暮れ、韓国との間に取りかわしました取りきめの中の一項目に反し、アメリカの財産請求権に関する見解については、これを公けにしないという取りきめがあったにもかかわらず、某新聞社にこれが漏れ、「世界資料」といろ資料の中に詳細これが流れたために、今日まで十五日近くなるのに、まだ第二次の船の話し合いもできないという状態であると私どもは承知をしておるのです。ほかにいろいろ問題がありますが、ほかのことは、この際微妙な段階であるから申しません。けれども、そういうよその国と約束をした一つの取りきめが、新聞社を通じて「世界資料」というものに出てくる。アメリカ大使館もこれを持ち、韓国もこれを手に入れるというような状態は、これは外務省としては非常な失態であって、われわれ野党が協力をしてきたにもかかわらず、最後のどたんばでそういうようなことでは、非常に私は外務省の外務大臣としての監督不行き届きだと思いますが、外務大臣は一体どういうふうに考えておられるか。
  162. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカの財産請求権に関する覚書というものは、御承知の通りわれわれそれを解釈してやるわけであります。通信社にこれが出て、そうして資料室から回ったということについて、われわれ取り調べてみたわけでありますが、昨年の六月中ごろ前後に、某通信社がそういうものを入手して、そうしてわれわれとしては今回の日韓会談の予備交渉においても、当分の間、向うと話し合いがつく間、この問題を発表しないことになっておりますので、新聞社等にも、たといそういうルールから入手されても、そういうものは発表されては困るということを言っておるわけです。たまたま資料室にありましたものが出たということを通信社は言っております。それは今回出たのじゃなくて、六月の中ごろに入手したものである、こう言っております。われわれの調査によりまして通信社も非常に恐縮をいたしておるようであります。われわれに対してそれだけの弁明をいたしております。
  163. 今澄勇

    今澄委員 私は、微妙な問題ですからこれ以上追及しませんが、内閣官房室は大野次官の責任であるといい、外務省は内閣官房室の責任者の責任でふるといい、日韓問題をめぐって外務省と内閣の意見が対立いたしておることは、岸総理御存じ通りであります。これは一例ですけれども、少くとも人道的な諸般の問題から野党であるわれわれが協力をして、一年間日本の態度というものは最小限譲ってもこれだけである、これこれであるということで皆さん方に強くやっていただいたのに、そういう閣内における不統一なことから、もしこれが所期の、総理大臣の言われた通りならばいいですけれども、言われた通りにならなくて、問題があとに残った際においては、私どもはあらゆる観点から掘り下げて日韓問題というものをお伺いしなくちゃなりません。私はきょうは、どうぞ内閣は十分気をつけられましてそういうことのないよう、人道的立場から抑留者が予定通り帰ってくるよう万全の努力をしていただくように希望をして、この問題の質問を終ります。  第二番目は、先般岸さんが自由党の大会に出られるとき、旅行先で防諜法並びに警察官職務執行法の問題について語った談話が出ております。もともと今の防衛庁がアメリカにナイキほか七つの誘導兵器を要請いたしましたときに、アメリカ側が秘密保護法がなければこれらの誘導兵器、ミサイルを日本に入れることはだめだということで、防衛庁は秘密保護法の事務的な必要を力説して、これはずっと問題になっているのです。さらに今度岸さんが防諜法について、これはさらに大きな範囲に属するのですが、見解を述べておられますけれども、岸総理にお伺いしたいことは、そういう秘密保護法、防諜法等の法律を、国会に出す出さぬはとにかく別として、立案し、整えなければならないと判断せられる条件は、一体何と何であるかということを岸総理から一つ伺っておきたいと思います。
  164. 岸信介

    岸国務大臣 私の車中談が新聞に伝えられて、いろいろな論議があるようでございますが、私の申したことはこういうことであります。いやしくも一国が独立しておって、そしてその独立を維持し、独立の国家として国内における治安を維持し、また国の重要な問題についてスパイされるようなことのないようにするというのは、各国がいずれも努めておることである。しかして日本においてこういうような趣旨をもってのいろいろな法律もあるけれども、これらのもので十分であるかどうか、またこれをどうすればいいかというようなことは、私は検討中である。従ってその検討の結果を待っていずれとも決定すべき問題であるが、それがこの国会の開会中にその検討の結論が出るがどうかということは、まだ自分としては何ら結論的なことは考えておらない、こういうことを申したわけであります。私の考えは全くそういうことでございます。
  165. 今澄勇

    今澄委員 そのとき船田代議士も同行しておりますが、自民党の千葉さんが担当でやっておられますそれらの部会並びに船田さん等の見解は、こういう法律がなければやっていけないという結論となった。だが国会対策その他の関係から、今日こういうものを取り上げることは適当ではなかろうという幹事長等の意見もあったことは、私ども承知しておるのです。ただ岸さんに伺いたいことは、そういうものを検討しなければならないとお認めになる諸条件は何か、これをお伺いしたいのです。
  166. 岸信介

    岸国務大臣 いろいろこの防衛の問題につきましても、御承知の通り、われわれは質的にこれをできるだけ充実していくという考えのもとに、いろいろな研究も開発も努めております。こういう問題について、その道程において、その秘密が保護されなければならぬことも言うを待ちませず、一般的に申しまして、さらに独立国家として重要な外交政策を行うというような場合において、その途上においていろいろ国の基本的な不利益に関するような問題が諜報として流れるというようなことも、独立の国家として当然これを保護防衛するという必要がある、こういうふうに考えております。しこうしてこれらのことはいずれもいろいろな国としましては各種の法規がございまして、それで十分であるかどうか、また足らないところをどうするかというようなことは慎重に研究し、検討を加える必要があるというのが私の考えでございます。
  167. 今澄勇

    今澄委員 そこで公安調査庁の担当大臣、おられなければ長官でもけっこうですが、お伺いします。破壊活動調査に関する公安調査庁の費用は、昨年の三億八千四百万円から、ことしは四億六千七百万円と、大体一億近く増加しているのです。この増加の理由はどういうわけで計上せられましたか、ちょっと御答弁を願いたいと思います。
  168. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいまのお尋ねでございますが、三十二年度の予算では、非常に不足を感じまして、調査をいたしたいと思っておりますることにも手が伸びないのでございます。ことしは一億足らずの増額を要求して認められた次第でございます。
  169. 今澄勇

    今澄委員 しからばお尋ねしますが、昨年一年で破防法関係の事件が何件ありましたか。
  170. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 これは御承知の通り、すべて基礎調査をいたしておるのでございまして、破防法関係の事件がないから調査の金が要らないという種類の費用ではございません。
  171. 今澄勇

    今澄委員 あったですか、ないですか。破防法関係の事件は何件ありましたか。
  172. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 破防法関係の事件はございません。
  173. 今澄勇

    今澄委員 とにかく破防法関係の事件は一つもない。人数も非常に削減しておる。しかるに予算は一億近く増加しておるというこの現実一つを見ても、自民党の当該委員会においては、容共勢力が持っておる運動活動費五十億、これに対して政府の持っておる費用は微々たるもので、何ら対策が立たない、防諜法をどうしても出さなくちゃならない、こういうような意見のように私は聞いておりますが、今の政府予算を見ても、この防諜法なりあるいは秘密保護法なり、その他そういった、昔の治安維持法、国防保安法に近いような性格のものが、どうも常にこの国会に問題になっては、政府はそのつどはっきりしたことを言っておりませんが、総選挙があるから総選挙前にはこの国会には出さないが、選挙が終れば国会に出すのではないかと勘ぐる向きもある。私は岸総理に、基本的にはそういう法律を作る必要があるのかどうか、それから国会へは、この国会にお出しになるのかどうか、この国会の会期末までにこれは出さぬのなら出さぬ、出すのなら出す。基礎的には必要があるのならあるという、はっきりした御答弁を願いたいと思います。
  174. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げましたように、政府部内におきましても、いろいろ関係省庁において研究をいたしております。私は今日のところにおきまして、本国会に間に合うように成案を得てこれを提案するということはむずかしいであろうと、こういうふうな見通しはしておりますが、何分にも今検討中でございますから、はっきり出さないとか出すとかということを申し上げることはできませんが、今言ったような検討の途中でありますし、その進行状況から見ると、本国会にこれを提案することはむずかしいであろう、こういうふうに見ております。
  175. 今澄勇

    今澄委員 そこでもう一つお伺いいたしますが、本国会末期までに提案することはむずかしいが、今のあなたの答弁だというと、その基本的な必要性は認めておる、だから出す場合もあり得るかもしれない、こういう意味ですか。
  176. 岸信介

    岸国務大臣 今申しましたように、根本的なこの必要は、私は独立国として大事なことが、国の利益に反して他に諜報されるということは防がなければならぬことだと思っております。それが現行法で適当にできるものであるか、あるいはできないとすれば、現行法のどこを改正すればいいか、あるいは別途の法律で立法を要するのか、こういうことは慎重に検討をしなければならない。調査研究の結果から生まれてくることでありまして、従いまして、必ずこの国会には出さないが次の国会には出すということを、私は申し上げておるわけではございませんで、一体必要があるかどうか、必要ありとすれば、この現行の法律をもっては足らない。どうしてもこれを改正するとか、また別個の何をする必要があるかどうかということを検討しておるわけでありまして、それが必要あり、こういう法律が適当であるという要綱を得れば、さらに提案するということがあるかもしれませんが、私は今そういう前提に立って話をしておるのではなしに、その前の状態においていろいろと検討をしておるのでございます。
  177. 今澄勇

    今澄委員 大体要綱はほぼ固まっておって、閣内においては、法務省の見解が憲法の規定等を定め、裁判公開の原則等にからんで、これに対しては慎重である、こういう態度なんですね。私は岸さんに、そういう問題は大体御答弁で基本的必要性を認められておることは明らかだが、はっきりしてもらわなければいかぬと思いますが、法務大臣に伺っておきますけれども、これらの秘密保護法、その他裁判公開の原則、裁判進行状態の速記録の公開の原則というものと照らし合して、これらの防諜法、秘密保護法というものは一体どういう関係にあるかという法務省の見解を、ちょっと聞いておきたいと思います。
  178. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 防諜関係におきまして、新たに立法する必要があるかどうかという問題につきましては、法務省におきましても、従来から調査をいたしております。しかし先ほど総理からもお答えのありました通り、法務省ではまだ結論を得ておりません。もう少し詳しく申し上げますと、御承知のように戦前の防諜関係の法規は一切解消になりまして、新しい法律体制になっております。それでその新しい法律体制で、果して国家の機密が十分に保護されるかどうかという問題がございます。そこでそれでは法規によって保護すべき国家機密はどこにあるかと申し上げますれば、私が申し上げまするまでもなく、防衛庁関係あるいは外交上の機密というものが想像されるのでございます。法務省関係におきましては、従来の刑法にありました八十五条でございますか、防諜関係の処罰規定が削除になっております。防諜利敵の罪といわれておりました規定が終戦と同時に削除になっております。そういう関係でもし防衛庁関係で防衛上の秘密を守るために、現行法では不十分であるということでございますれば、まず防衛庁でお考えをきめられるのでございます。外務省でも同様なことになりますると、各省にわたりまするから、法務省も立案に参加するというようなことになります。法務省だけといたしますると、刑法全体についての改正の研究をいたしておりまするものですから、そのうちの一端といたしまして、やはり各国にありまするような刑法中の防諜の規定が果して削除されたままでいいかどうかということが一つ研究問題にはなっておりますが、まだ法務省といたしまして、新しく立法する必要があるかどうかということについても、結論を得ておりません。なお先ほど御指摘の憲法八十二条でございますか、これらとの関係もございまして、慎重に研究をいたしておるところでございます。
  179. 今澄勇

    今澄委員 憲法八十二条との関係について法務大臣の見解を聞きたいのです。
  180. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 憲法八十二条との関係と申しましても、あの条文にありまする通り、すべて裁判は公開である、ときに例外として秘密に行うことができても、政治関係その他二、三ありますが、政治関係の裁判は必ず公開にしなければならない、こういう御承知のような規定でございまして、かりに防諜関係の犯罪がありました際に、その裁判がこの政治に当るかどうかというようなことについても非常にむずかしい問題のようでございまして、これら学説その他の意見も徴して研究をいたしておるところでございます。
  181. 今澄勇

    今澄委員 この問題はまた他の機会に徹底的にお聞きするとして、担当の大臣の防衛庁長官がかわられました。どうも急にかわった方に、あれこれ質問するというのも残念ですけれども、ほかにおられないのですから、一つ石田長官に、防衛庁としてはこの防諜法あるいは秘密保護法というものに対して、どういう考え方、態度をとっておられるかということを聞いておきたいと思います。
  182. 石田博英

    ○石田国務大臣 米国から貸与されたりあるいは供与されたりする武器の秘密保護につきましては、日米相互防衛援助協定に基きます秘密保護法がございます。それから米軍の装備、配置その他につきましては、御承知の刑事特別法がございまして、秘密保護の立法措置はとってあるのでございますが、日本側の研究、あるいは日本側の諸点につきましては何らの立法規定が現在ございません。従って秘密保持という点については不十分であると考える、それに対する対策は検討中でございますが、それがおっしゃるような秘密保護法、防諜法というような法律を別に制定する必要があるかどうかという結論にまでは、まだ達していないのであります。
  183. 今澄勇

    今澄委員 昨年八月の十八日、防衛庁技術研究所は非公式にアメリカ側がら誘導兵器七種類の青写真の提供を受けてこれが研究に当っている。しかしこれはラスでありまして、最も重要なりと思われる秘密事項の点は、従来秘密保護法なり秘密の漏れない法律を日本が作ったときにアメリカ側からこれを提供する、こういうことになって、研究所がこれらの誘導兵器について重要秘密部分を除いて現に研究をしておられるのです。私はだから今の防衛庁長官のような、そういうあいまいな話ではなしに、防衛庁側の基本的な見解としては一体どうなのかということを、これは防衛庁の立場から聞きたいのです。
  184. 石田博英

    ○石田国務大臣 ただいま御指摘のような、米軍側から青写真を受け取ったといわれることは防衛庁としてはございません。それから防諜法あるいは秘密保護についての防諜庁の見解はどうかということですが、ただいま申しました通り、米軍から供与を受けたり貸与を受けた点についての秘密保護については、立法の規定がございますが、日本側の独自の研究あるいは日本側の防衛機密の保持について立法措置はございませんので、これについて不十分だと感じております。しかしそれを特別の立法措置にすべきであるか、特別の単独法を作るべきであるか、あるいは現行法規の範囲内の運用において処置すべきであるか、あるいは現行法規の改正によって行うべきであるか、そういう点についての結論はまだ得ていないということでございます。
  185. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は今の防衛庁内の問題については、新機種の決定、P2V、レーダー・サイトあるいはその他いろいろの問題とからんで重要ですから、あとでお聞きをいたします。そこで日本防衛の基本的な立場は、今日陸上自衛隊を三十三年度において一万ふやし、さらにもう一万ふやして十八万にするということになっておる。大体私は今日の日本の国防のあり方というのが、そういう陸上部隊の増加というようなことが、世界の大勢と比べて一体どう判断されるべきものであるか等々の重要な問題をお聞きしなくてはなりません。なおその日本防衛の基本的な態度は、津島防衛庁長官から答弁をいたしましたように、日米安保条約、行政協定に伴う日本側の責任として、日本の防衛方針を立てておる、こういう答弁がこの委員会でありました。そうすると、問題は日本防衛の根本問題は、さかのぼって日米安全保障条約、行政協定、今回岸総理が取りきめて帰られました安保委員会、こういうものに日本の防衛の根本の問題は、どうしてもかかってくることになるのであります。そこで私はこの根本の問題について、岸さんがアメリカに渡られて、昨年八月六日、共同声明が発表せられ、安保委員会が数回にわたって開かれております。だがその安保委員会の規定を見ると、日本における配備及び使用について実行可能なときはいつでも協議することを含めて、安全保障条約に関して生ずる問題、こういうことになっております。ここに日本において——イン・ジャパンというのが入っているのです。それから共同声明の中では、合衆国によるその軍隊の日本における配備及び使用について実行可能なときはいつでも協議することを含めて、安全保障条約に関して生ずる問題を検討するため、政府間の委員会を設置することに一致した、こういうことになっておるのです。この日本におけるというのは、岸さんとアメリカ側との会談の最終段階において、ダレス国務長官みずからが筆を入れて、イン・ジャパンという言葉を入れられたという情報がアメリカから出ておるが、岸さん行かれたのですが、そのときの模様はどうですか。
  186. 岸信介

    岸国務大臣 日米共同声明の案文につきましては、私並びにダレス長官、両国の首脳部が十分に鳩首協議した結果、でき上ったものでありまして、今お話しのようなことは、私は全体を今検討をいたして、われわれの意見なり、あるいはダレス氏の意見によって、最初作った素案がだんだん修正されたことはございますけれども、今御指摘のような事実は私は一向に記憶ございません。
  187. 今澄勇

    今澄委員 私は記憶がなければ無理に聞くわけではありません。とにかくそれほどこのイン・ジャパンという言葉は重大であるということを私はお聞きしたいのです。この安保条約、行政協定に伴う今度できました日米安保委員会では、とにかく日本においてですから、この日本においてという項目の中には、沖縄は含まれるのかどうか、御答弁を願いたいと思います。
  188. 岸信介

    岸国務大臣 安保条約の内容としておる関係は、日本のいわゆる領土でありますが、沖縄は私は含まないものと解釈しております。
  189. 今澄勇

    今澄委員 安全保障条約第一条の規定も、岸総理はこの前本委員会で、沖縄は含まない。そうすると、今度の日米安保委員会もイン・ジャパンですから、これは沖縄は含まない。そうすると、沖縄駐在の軍司令官が沖縄における軍隊の配備、使用については、当然日本側はこの相談にはあずからない、こういうことになりますね。
  190. 岸信介

    岸国務大臣 日米共同声明で作りました日米安全保障に関する日米委員会というものは、今申しますように、安保条約の適用範囲について、それから起ってくるいろいろな問題を協議するということになっておりますから、沖縄の問題は、これは含まれておらない、かように私は理解しております。
  191. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、沖縄からの飛行機のわが日本の上空の通過、哨戒、離着陸等も、当然日米安保委員会の議題にはなりませんね。どうですか。
  192. 岸信介

    岸国務大臣 今御質問の点は私にはよくわかりませんけれども、沖縄にいる航空機等が他に行く場合に、日本の領土の上を飛ぶというような場合にこれがどうなるかという御質問だとしますと、そういうことは私はあれにはっきり書いている配備というような問題とはならぬと思いますから、そういう問題は委員会の問題にはならないのじゃないかと思います。
  193. 今澄勇

    今澄委員 岸さんの答弁を待つまでもなく、沖縄の軍司令官が沖縄の軍隊の使用、配備のいわゆる行動権でこれを動かす場合においては、当然日本の安保委員会の議事にはならぬわけですね。そうすると、沖縄から沖縄基地の飛行機が水爆を装備して日本の上空を通過しようとも、あるいは日本の飛行場からこれに給油をいたそうとも、あるいは日本の上空をパトロールいたそうとも、これは安保委員会における第一、議題にならないということになるじゃありませんか。この点についての岸さんの見解はどうです。
  194. 岸信介

    岸国務大臣 今申しておりますように、お話のおあげになったような事例だと、直ちにこれを委員会で取り上げて、委員会の問題にするということにはならないと思います。
  195. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、ビルマのミラー紙が、沖縄駐在米軍飛行基地の那覇から香港へ飛んだ飛行士の談として伝えられている、日本上空を沖縄の戦術空軍が——グァムは戦略空軍ですがこういう戦略空軍、戦術空軍が、わが日本の上空を核兵器で装備してパトロールしたところで、それは日本総理大臣として何ら阻止する条約上の根拠はないということに結果が相なるわけであります。総理の見解はどうですか。
  196. 岸信介

    岸国務大臣 条約上はそういうことになるだろうと思います。
  197. 今澄勇

    今澄委員 しからばこのビルマのミラー紙が伝えたそういった事件が、これが条約上の根拠がないということになると、私は日米安全保障条約、行政協定に伴う防衛を、国民としては非常に不安に思わざるを得ない。あなたは日本が核非武装地帯であることを宣言するということについては、なかなかこの国民会でそういうことはだめだ、だめだと言ってあれしないが、ところが今までいわれている核兵器は持たない、核兵器の保有もいたさない、製造ももとよりやらない、持ち込みもこれを許さない、こういうことになると、当然これはもう非核武装地帯宣言のすべての条件はそろっておるのだが、非核武装地帯の宣言ができないのは、アメリカとの関係における日米安全保障条約その他の条約上の根拠が、日本の周辺にあるアメリカの空軍基地からそういうものを載せて、警戒、哨戒あるいは飛行した場合に、これに抗議する何らの条約上の根拠がないということが、非核武装地帯宣言をやり得ない最大の理由ではないか。ところがこれまで述べられております、日本の自衛隊に核兵器を持たせない、あるいはアメリカ軍に核兵器を持たせないけれども、沖縄から出発いたしました飛行機が、核兵器を装備して日本の上空を警戒することについて、何らの法的根拠がないのですから、私は日本が当然核兵器によるいわゆる警戒武装のもとにあると諸外国が判断するのは、当然だと思うのです。これは今までのあなたの国会答弁における最重要な答弁でして、私はこの点を一つきょうの予算委員会の審議を通じまして国民の前に明らかにできたことは、これは十分われわれとしても考えなくちゃならぬと思います。  そこで、私がもう一つあなたに聞かなくちゃならぬのは、今度は国内の問題です。あなたは、日本の国内におけるアメリカ駐屯部隊の配備及び使用と、こう言っておりますが、その明文を見ると、日本国内における配備と使用は相談することになっている。そうすると、配備というものの中には、あなたは常識的に、これは装備も含む、こういう答弁を従来国会でいたされております。だがしかし、もしこれが装備を含むものとすれば、配備というディスポジションという英語の表現のほかに、イクイプメント、装備という字がつかなくちゃならぬ。だから、日本言葉で配備というといかにもあるようだけれども、英語にすれば、イクイプメントという字が入らないことには、何としても日本国内の配備の中に装備が入っておるとは考えられないのです。そこで私は、この日本国内の配備及び使用について実行可能なときはいつでも協議すること、実行可能というのは問題ですが、いわば当面の配備について、あなたはアメリカのダレス国務長官なり、その他のだれかと、この配備というのはイクイプメントも含むのであるという覚書をかわされたか、それとも了解事項としてこの点が出たかどうか、なぜイクイプメントという表現がこれに入ってないかということについて、岸さんの責任ある答弁を聞いておきたいと思います。
  198. 岸信介

    岸国務大臣 私は、この軍隊の配備ということは、当然装備は含む、これは常識だと思います。装備なま軍隊の配備なんということは、およそ考えられないことでありますから、当然これに必要な装備というものは含まれておるもの、これは、事の性質上当然であるというのが私の解釈でございます。
  199. 今澄勇

    今澄委員 そのあなたの解釈はあなたの解釈で、内閣がかわったときに——日本岸内閣が永久に政権を相川当するわけではありません。内閣がかわったときに、向うからイクイプメントという字はないじゃないか、日本に駐在するアメリカの軍隊が核兵器で装備されたところで、それは問題とするには足らない、こういうふうになったときには、これはもう国家の重大な損失であります。鳩山内閣が防衛分担金削減の方式をきめたときも、あるいはアリソン・重光会談も、これがあと内閣に拘束力を及ぼすかどうかという点について聞きましたが、いわゆる鳩山内閣の防衛分担金削減一般方式は、これは次の内閣に拘束力を持たないといった。それは、すなわち共同声明の形で案文になっておるけれども、次の内閣に拘束力を持たないのである。そうすると、あなたの今きめられたイクイプメントという字のない、この向うとの解釈問題ですね、装備の中に核兵器は含むかどうかという解釈問題は、これは歴代の内閣を拘束するはずは全然ないと思いますが、どうですか。
  200. 岸信介

    岸国務大臣 共同声明が発せられました経緯から見ましても、私が参りましたときも、アメリカのアイゼンハワー大統領との間に話をし、各項目につきましては、向うの首脳部との間に検討して友好裡にきめられたことでもあります。従いまして、その意味において、われわれがこの大統領と私とが意見の一致したところのものを声明したということは、これは私は、両国間においていわゆる法律的拘束力があるか、効果がどうなるかということは別として、両国の理解と親善の上に立っておるもので、その精神は、私はやはり両国がこれを守り抜くべきものである、かように全体として考えます。従いまして、今私が申し上げました事柄は、ただ単にわが内閣だけを拘束するとかなんとかという問題じゃなしに、その声明が出ました各種の雰囲気と一緒に解釈をして、両国のこれが理解の基礎に立つものと私は考えております。
  201. 今澄勇

    今澄委員 これは、もう私に言わせれば、歴代の内閣どころではない、岸内閣は、アメリカ軍隊の核兵器の装備を阻止する法的権限はありません。私は、この安保委員会というのは、津島さんがきょうは休んでおられるので残念ですが、内閣委員会で津島さんの言われたことが正しいのであって、これは、ほんとうの友好的会談の場であるということが正しいのであって、岸さんが言われるような法律的根拠がなければ、相談してきまらなければ行政協定に戻るのですから、それはもう全然進歩発展はないから、国内におけるアメリカ軍隊の核兵器の装備についても、私は一まつの不安がここに残るまである。沖縄からのものについては、これはもう全然主張する条約上の根拠がない。それから国内の核兵器の装備については、解釈上核兵器の装備を阻止する何ものもない。日米安保条約、の行政協定にそういう規定は全然ない。行政協定二十四条の規定も、これは適用されることはないと思います。そうすると、この安保委員会の規定だけですが、この安保委員会の規定も危うい。ただ一つ残っておるのは重光・アリソン会談において、アメリカが核兵器を日本に持ち込むときには、日本側に相談するというのがありました。これが、今重光さんが死なれ、アリソン氏はもう本国に帰って、御両所ともに関係者ではない。このアリソン・重光会談における了解事項は、アメリカ国防当局の意見によって、これはとりやめてもらいたいということになったということですが、これはどうですか、一つ総理大臣から責任ある答弁をお願いしたいと思います。
  202. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、この声明が出ました基礎は、日米両国の首脳部が胸襟を開いて話し合い、完全な理解と、将来の対等の立場に立っての協力ということからこの声明が出ております。従いまして、この日本の核兵器に対する考えについても、アメリカ側は十分に了承してくれておりますし、あなたのおっしゃるような条約上、法律上どういう権限があるかということは、先ほど法律上の解釈として、そういうことは法律上の権限とか、あるいは権利義務の関係はないということを申し上げましたが、共同声明ができたその基礎になっておる両国の理解と両国の親善関係の上に立って、この日米安全保障条約というものの運用をこの委員会において協議して、重要な問題は協議して運営していくということをきめました趣旨は、私から見れば、外交上におきましても、法律的な効果がないから勝手なことをしてもいいという性質のものでは全然ない。従って、両国がこれを実際道義的に守り、両方が協調し、理解を深めていくということは、この委員会の運営において十分果せる。従って私は、しばしば国会その他を通じて、日本が核兵器の武装をしない、またアメリカ軍の持ち込みを認めないということを責任を持って声明いたしておりますから、その趣旨に基いてあくまでもこれが運営されていくもの、かように御理解願いたいと思います。
  203. 今澄勇

    今澄委員 時間がないので、この問題はこの程度にしますが、これは、日米安保委員会で話し合いのつがないときには行政協定、安全保障条約という条約、協定上のものが厳としてあるのであるから、これが適用されるのであるという参議院本会議におけるところのあなたの答弁がすべて適用されるものであって、あえて食い違いを追及はいたしませんが、これは、当然な条約上、法律上の根拠である。  ついでにお伺いしておきたいのは、今問題になっておる沖縄には、日本は潜在主権を持っておるわけである。自民党の方におかれましても、沖縄問題についていろいろ言っておられるが、この潜在主権について、岸内閣としての公式な見解をいまだに一度も聞いたことがありません。沖縄における日本の潜在主権というものは、一体どういうものであるか。外大臣からでも総理大臣からでも、一つきかせていただきたいと思います。
  204. 岸信介

    岸国務大臣 これは、従来もそう解釈されておると思いますが、いわゆる根本的に、領土権は日本の領土権がある。しかし現実の立法、司法、行政、この施政権というものは、一切日本が持っておらない。本来からいえば、言うまでもなく領土権を持っておるところには、施政権を持つことは当然でありますけれども、これを持たない意味において潜在主権がある、こう言っておるわけであります。
  205. 江崎真澄

    江崎委員長 法制局長官が補足説明をするそうですから……。(「それは必要ないよ」と呼び、その他発言する者多し)せっかくそう言っていますから……。
  206. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいま総理の御答弁で、大体趣旨は尽きておるわけでありますが、御承知のように潜在主権と申しますのは、日本において領土主権を持ち、従ってそこの住民は、日本国民と申しますか、日本の国籍を失っておらない、こういう点は問題ないと思います。しかし現実の統治権、いわゆる行政、司法、立法の統治権は、現在の平和条約三条のもとにおいては、完全にアメリカが持っておる。従いまして、現実においては、日本といたしましては、そういう統治権の行使についての権限は法律的にはないわけであります。いわゆる潜在主権というのは、結局向うが統治権の行使を廃止した、あるいは平和条約第三条の信託統治という問題がなくなった、そういう場合にあいては、日本が領土権を持っておりますから、当然に何らの措置を要せずに、日本が完全な統治権を行使する、こういうことだと思います。
  207. 今澄勇

    今澄委員 そこで、これを端的に表わせば、領土の最終処分権は日本にある。それから外交保護権はどうですか、外務大臣。
  208. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 行政、司法、立法の権能がアメリカにあるわけですから、外交の権能は日本にありません。
  209. 今澄勇

    今澄委員 いやそれは——外務大臣でも総理でもいいです。これは国の大事なことなんですよ。今沖縄のこれだけの大事な問題が、総理や外務大臣が法制局長官から詳細なあれをやってもらわなければわからぬようなことで、一体どうして沖縄の行政権を日本に返してもらうなんということができますか。沖縄における、いわゆる講和条約第三条が規定しておりますこの規定というものはどうであるかぐらいのことは、私は総理大臣、外務大臣から直接答弁があってしかるべきだと思います。「合衆国は領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するもの」である。「及び一部を」というのがある。これは、全部行使するなら、何もそれは最終領土の処分権があるだけだが、及びその一部を行使するというのだから、この「一部」とは一体何であるが、日本の外交保護権は何であるかということを、では総理から一つ答弁を願いましょう。
  210. 岸信介

    岸国務大臣 いわゆる今お話しの関係は、法律問題としては、相当議論があることだと思います。しかし実際のなにから申しますと、施政権をわれわれが持っておりませんから、そういう意味において、外交の面におきましても、完全なる領土のような場合のように、日本があらゆる点においてこの保護に当るというわけにはいがないことは当然だと思います。なお、なかなかこの点は法律的には相当微妙な議論があるようですから、あと法制局長官をして答弁いたさせます。
  211. 林修三

    ○林(修)政府委員 今御質問のうちの「全部及び一部」あるいは全部または一部というのはどういう意味がとおっしゃる意味であります。まずこの点をお答えいたしますが、これは、全部でも一部でもという意味でございまして、現実には今全部向うが施政権を行使いたしております。従いまして、現在日本で施政権を行使しておる部分はないわけであります。しかし、あるいはこれは日米間の協定によって、一部分を日本側に移すということはもちろん可能だと考えるわけであります。御承知のように、英文は、オール・オア・エニイでありまして、これはいろいろ解釈上の問題がありますが、すべて何でもという意味が強いのではないかという点もございます。日本語から申せば「全部及び一部」でございまして、これは全部でも一部でもという意味であります。  それからもう一点の外交保護権という問題であります。外交保護権という問題は、実は定義としてはなかなかむずかしい、必ずしも明瞭な内容を持っていない点がございます。つまり、普通外交保護権と申せば、自分の国民が第三国に行っておる場合に、この第三国に対して自国の国民を外交上いかに保護するが、あるいは自国の国民がその外国から非常に差別的な待遇を受ける、あるいはいろいろの虐待を受ける、そういう場合に、その国民が属してある国が外交的な保護権を発動してその国民を守る、そういう権利だと普通は思います。そういう権利から申せば、沖縄の住民は沖縄に住んでおるわけでございまして、これは、第三国に行っておるわけではございません。従いまして、そういう意味で、いわゆる普通の外交保護権という言葉をすぐそこに適用することは若干問題があると思います。よく言われております沖縄についての外交保護権という問題は、沖縄の住民は日本の国籍を持っているのだから、日本政府としてその保護について発言権を持つべきじゃないか、こういう御議論だと思います。普通にいわゆる国際法上いわれておる外交保護権とは、内容が私違うと思います。そういうものは、これは施政権を持っておりますから、アメリカが第一次的に住民の福祉を向上する責任を持っておることは当然でございます。しかし、日本としては国籍、日本国民であるという立場において、これについて何らかの要望をする、希望をするということは、当然認められてしかるべきものだ、かように考えております。
  212. 今澄勇

    今澄委員 それは、ハワイの裁判所で問題が出て、ここにも載っておるけれども、これは大へんな、あなたの意見は違うのです。これは一九五四年七月二十九日、ハワイ司法裁判所の判決です。原籍沖縄県中頭郡西原村の城間牛という人がずっとアメリカに行っておったけれども、アメリカの移民国籍法が規定する通り、外人登録法であれしてないじゃないかということであれしたが、自分は沖縄に在住しておる者だからアメリカの市民権がある、アメリカ人として取り扱ってもらいたいと言ったところが、これは日本人である、アメリカの国民ではない判決が下りまして、これは全然——それでは日本もやらない、アメリカもやらない、そういうことで、沖縄は一体どこがめんどうを見るか。私はここで時間がないから、何もあなたと法律論争をやろうとは思いません。ただしこの重大な沖縄の問題について、とにかく総理大臣も外務大臣も、このくらいのことも法制局長官答弁させなくちゃならない。貴重な時間を私法律論争で過ごそうとは思いませんが、これは、内閣が考うべき重大な問題で、岸内閣総理大臣は、ここで日本の沖縄に対する潜在主権というものはこういうものである、そこで、自分はこの点とこの点をこういうふうにして改めたいのだ、そういう御発言があってしかるべきであると思います。私はもう一度岸さんに聞きます。
  213. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来お答えをいたしておりますように、日本が潜在主権を持っておるということは、領土主権は日本が持っておる。ただし、一切の現在の現実面からいいますと、施政権というものはアメリカがこれを行使しておる。従いまして、日本自体は、そこの領土におります日本人である沖縄の住民に対しまして、一切のこれに対する施政、いわゆる立法、行政、司法の三権によるところの統治的作用を一切アメリカにゆだねておるという結果といたしまして、当然、われわれがここにおけるところの住民の事情に対して、他の日本人同様に日本人が発言権を持つというわけにはいかぬと思います。  しかしながら、私は、法律的の構成については先ほど法制局長官も述べましたが、そういう法律的なことは別として、われわれとしては、これが人道的な立場から、もしくはここにおけるところの施政なりなにに対しましては、われわれの見解を述べ、またわれわれの希望を言うということは、これは当然すべきであり、また日米の友好関係もしくは協力の関係から申しましても、これを述べることは当然であると思います。しかし、それが、いわゆる権利の関係において、日本人が他の場合におけるところの外交保護権であるとか、あるいは住民に対してわれわれが責任と権利を持ってするというようなわけにはいかないことも、これは実際上やむを得ない、こういうふうに解釈すべきであり、実際取り扱っていく以外には方法がない、かように考えております。
  214. 今澄勇

    今澄委員 本委員会で、行政権の回復に自分は努力した、こういう話がありましたが、それはどうされましたか。
  215. 岸信介

    岸国務大臣 今申しましたようなきわめて遺憾な状態でありますから、私どもは一日も早くこの施政権の返還を得て、そして、われわれが持っておる領土権に基く、また日本人であるところの住民に対して、われわれが施政できるようにすることは住民の願いであり、国民の要望でありますから、当然、私としては、アメリカに参りました場合にもそのことを主張し、またその後におきましても機会あるごとにその実現に努力をしておるということは、この席で申し上げておる通りであります。
  216. 今澄勇

    今澄委員 日本に施政権がもし返されれば、アメリカが沖縄に核装備をする——これは今ソーアが七月ごろ大体くることになっておる。IRBMが装備されますが、そういうアメリカの装備については、日本総理大臣は施政権を返せば異存はなかったと伝えられておる。施政権が日本に返ればアメリカの核装備を認めるか。日本の駐屯軍に核装備を持ち込ませないという言明はくずれるのですが、そことの関係をちょっと……。
  217. 岸信介

    岸国務大臣 私は、施政権を日本に返してもらえば、あそこに原子部隊の駐屯やあるいはそういう装備をしても差しつがえないというようなことを申した覚えはございませんし、またそういう考えは持っておりません。
  218. 今澄勇

    今澄委員 しからば、アメリカは沖縄を戦略の基本的中心としておるのであるから、核装備をすることは既定の事実であって、沖縄における核装備の——私は現実論を申しているのです。理想論を言ってもしょうがないが、沖縄の核装備の問題について、総理が腹を割って話すことなしに、沖縄の施政権を返してもらうことに努力したなどということは、全く児戯に類することであるとしか思われません。私は、この際国民に対する宣伝をやめて、沖縄に対する核装備の現状、アメリカの軍備というようなものを十分ながめて、日本国民を保護する道はどこにあるかということを政府は真剣に一つ考えられる必要があるのではないか、こう申し上げておきましょう。  そこで、時間もありませんから、藤山外務大臣に、あなたが日本側の責任者となって運営されております今度できました委員会、国連憲章との関係についてお伺いをいたします。今度の安保委員会並びに安保委員会の国連憲章に関する交換公文の中で、三つの点が述べられております。その第三番目に、安保条約に基いてとられる措置、行政協定に基くものも含むが、自衛権に関する憲章五十一条の規定が適用さるべきものであるときは、というのはおかしいのですが、適用さるべきものであるときは、いつでも同条の規定に合致しなければならない、こういう条項があります。これは日米安全保障条約に基いて駐留米軍が出動する際の国連憲章との関係を規定したものであるが、外務大臣はなぜこういう交換条文を安保委員会において発行し、国連憲章五十一条と日本の安保条約、行政協定のどこを一体調整しようとしたのですか。
  219. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国連憲章の精神に沿って安保条約を運営することは当然のことであります。また国連憲章の規定に従って日米安保条約が運営されるということも当然のことだと思います。従いまして、その趣旨において交換公文を取りかわしたということであります。
  220. 今澄勇

    今澄委員 それならば、もう平和条約の条文にもあるし、今さら何も国連憲章と日本の条約との関係を交換公文を取りかわすまでもないと思うのですよ。これには、外務大臣として、日本の部隊が出動する場合の、これは大きな問題ですから、この場合はどうなる、この場合はどうなる——第一番の場合は、日米安全保障条約の第一条によると、極東における平和と安全のためにアメリカ軍隊は出動いたします。第二番目に、一国または二国以上の教唆扇動によって国内擾乱があるときに日本の明示の要請によって出動いたします。第三番目に、日本が直接攻撃を受けたときに出動いたします。この三つの出動と、国連憲章第五十一条との関係において疑義があるのです。だから、外務大臣は安保委員会を主宰されて、これらの問題についての交換公文を出されたと思うのだが、そういうおのおのの場合と国連憲章について、あなたはどういうふうに考えているか。私は疑義があるから聞いているんですよ。
  221. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 安保条約と国連憲章の五十一条というものの運用について、ちょっと今の御質問は私には了解しにくい点があるので、もう一ぺん言っていただければけっこうなのですが……。
  222. 今澄勇

    今澄委員 それは、日本に駐屯するアメリカ部隊が、安保条約の規定に基いて、直接日本が攻撃された場合はアメリカ軍は出動いたします。けれども、これは国連憲章の日本国有の自衛権、アメリカとの集団——発動する自衛権に基いてアメリカ軍が動くのだが、このアメリカ軍の動く場合と国連憲章五十一条の規定は抵触するかどうか。第二番目に、アメリカが極東の安全維持のために出動する場合、極東の安全維持に出動する場合に、国連憲章の五十一条には、そういう場合は勝手に自衛行動を許しておらぬのですよ。しかし、安全保障条約はこれを認めているんですよ。だからあなたはその交換公文をやったわけなんだな。その関係で私は疑義がある。
  223. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その場合は国連の決定を待つわけです。
  224. 今澄勇

    今澄委員 今の国連の決定を待つという外務大臣のそのお話は、それでよろしゅうございますか。国連の決定を待つということは重大なことだが、いいですか。
  225. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 法律問題は、はなはだ不得手ですが、自衛権の場合は問題ないと思いますし、侵略の場合には、発動の場合には国連の憲章に従ってやるわけです。
  226. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 ちょっと補足的に説明させていただきます。日米安保条約と国連憲章の関係に関する交換公文でございますが、これは安保条約の問題に非常に関係があるわけでございます。従来アメリカも日本も同じく国際連合の加盟国であります。従いまして、その関係におきまして国際連合加盟国として当然持っている権利義務をここで安保条約との関係において再確認したというふうに私どもは考えておる次第でございます。すなわちアメリカの軍隊が極東の安全及び平和維持のために出動する、または日本に武力攻撃が起った場合は、これは必ず国連憲章によりまして個別的であるかまたは集団的な自衛権の発動の場合であると考えております。この場合は憲章第五十一条に従いまして国連に通告し、また国連の措置を待つ。国連に報告いたしまして、また国連がこれに関して処置をとることについては従わなければならない。そのように、国連の措置について従うし、その国連の措置があるまでに集団的または個別的自衛権を発動するという規定であろうと考えております。
  227. 今澄勇

    今澄委員 そこで聞くが、今の個有の権利、自衛権が発動する場合というのがある。いわゆる直接侵略が日本に加えられた場合、アメリカ軍は出動するし、日本はこれに協力する義務を負う。今あなたの言った通りですが、その範囲に沖縄を含むのかどうですか。
  228. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 御質問の趣旨が実ははっきりわからないのでございますが……。
  229. 江崎真澄

    江崎委員長 今澄君、もう一ぺんわかりやすく言ってやって下さい。
  230. 今澄勇

    今澄委員 今条約局長が説明をしましたね。国連憲章との関係において——まだ国連憲章との関係に疑義がありますから聞きます。疑義があるというのは国連憲章の関係においていろいろの問題が出てくる。第一番に国連憲章の関係に疑義はないが、国連が認める個々の自衛権を発動するという場合、日本の領土をアメリカが守ってくれる、他国からの攻撃があった場合というのは範囲があるわけだ。日本の国土を攻撃されたのですから、範囲があるんだ。その範囲には一体沖縄を含むか。
  231. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 お答え申し上げます。沖縄につきましては施政権を現にアメリカが持っておりますから、その場合には含まないと考えております。
  232. 今澄勇

    今澄委員 それは大へんな問題だと思うのです。そうすると外国の侵略が沖縄にあったときは、日米安保条約に基くアメリカ軍の出動はないわけですね。
  233. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 お答え申し上げます。沖縄に攻撃がありました場合には、アメリカが自衛権を発動してこれを防衛することができます。
  234. 今澄勇

    今澄委員 この問題では条約局長はうまくのがれたが、私はこの問題では、日米安全保障条約第一条の日本及び日本周辺に関する規定というものに沖縄を含むと思っておるのです。少くとも総理はアメリカに施政権がいっているものだから含まないと言っておるが、それを攻撃された場合は、アメリカがアメリカの基地を攻撃されたがら発動するので——しからば条約局長に聞きますが、ヴェトナム、朝鮮、これらはみなアメリカとの条約でアメリカがその防衛に任じておる。その場合アメリカが攻撃を受けて出動すれば、日本はこれに対して安保条約によって協力の義務を負わなくちゃならぬ。それらのケースと沖縄が攻撃された場合のケースとは同じケースであるか。条約局長に聞きます。
  235. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 お答え申し上げます。非常にむずかしい、法律問題の事実問題に対する適用でございますが、今ちょっと私が考えます場合におきまして、ヴェトナムとが極東にアメリカがそのような場合に出動するかどうかということは、やはり国連憲章に第一に拘束される次第でございます。そうなりますと、そこはアメリカの個別的かもしくは集団的な自衛権に基く以外は出動はできないことになる次第でございます。そしてその自衛権に基く行為は直ちに国連に報告する、そして国連の処置を待つ。従いまして、単に恣意的に出動するということはできない、やはりそのような国連憲章の規制を受けることになると思います。
  236. 今澄勇

    今澄委員 そこで総理大臣に聞きますが、条約局長の今の説明をお二人ともお聞きになったからだいぶ勉強されたと思います。私の言わんとしておるのは、日米安全保障条約で出動する場合、第一の日本が直接侵略を受けた場合における出動は、国連憲章五十一条が認める個有の自衛権、アメリカ軍が動いてくれるのは日本とアメリカの集団に対する集団の自衛権の発動だから、国連憲章五十一条は国連の安保理事会その他が決定するまではその自衛権を認めておるのです。ところが、アメリカが東洋の平和と安全に寄与するために出動する場合においては、国連の憲章では、国連理事会がまず開かれて、あるいは国連の総会が開かれて、これから勧告ないし命令が出るまでは軍事的動きをすることは禁止せられておるのですね。だから日米安全保障条約の冒頭にある、これは最も重要なところだが、極東の平和と安全のためにアメリカが出動するという場合において、日本はこれに協力の義務を負うておる。これは国連憲章五十一条の規定に抵触するのではないか、これに対する政府考え方・政府はこの安保条約のここのところを国連憲章に合うように改正する意思があるかどうか、ここのところを私は岸総理大臣にお聞きをしておるのです。
  237. 岸信介

    岸国務大臣 日本自身に対するそういう侵略があった場合に、日本及びアメリカが安保条約に基いていわゆる自衛権の発動としてこれに対してとる行動と国連憲章五十一条の関係につきましては、先ほど来質疑応答のあった通りであります。極東の場合につきましては御承知のように、台湾とかあるいはフィリピンについては、アメリカはやはり集団的安全保障の条約を作っておりますから、もしもこれに対する侵略があった場合には、アメリカの立場からいえば集団的自衛権の発動ということが考えられましょう。あるいはヴェトナムの場合は様子が非常に違っておると私は思います。いずれにいたしましても、この安保条約と国連憲章五十一条との関係を明確にし、この関係を再確認するというのがあの交換公文の趣旨であったと私は了解いたします。
  238. 今澄勇

    今澄委員 私は今の岸さんの答弁——私はこれを何も問題にしてあげ足をとろうというわけじゃないが、大事な問題ですから……。国民が聞きたいのはヴェトナムあるいは朝鮮その他台湾等とアメリカが条約を結んで、集団自衛権の発動でアメリカが動いたときに、日本はこれに無条件で協力の義務を負わされるように、現在の日米両国の間に取りかわされておる条約は、国連憲章の条章に違反しておることは明らかですよ。私は岸さんはこの点をアメリカで修正され、交渉されるのかと思ったが、これは安保委員会においては全然問題が今取り上げられておりません。それからもう一つは、日本が直接攻撃を受けた場合も、日本の船が海外へ出ているときは一体どうなるのか。その領土の範囲は一体どこどこにあるのか。まさかアメリカ戦略空軍の基地グァムが攻撃されれば、これはアメリカが直接動くでしょう。しかしそれは直接日本の本土じゃないわけだ。だが日本はアメリカに協力の義務を負わなければならぬのですから、これは岸総理、相当重大な問題で、これはあなた、安保条約のこういう矛盾点、並びにそれに対する改正の方向、どういうように処理せられるか。これはただ単なる協議だけではどうにもならぬ問題です。
  239. 岸信介

    岸国務大臣 今澄君の御質問でありますけれども、そういう場合に日本が協力の義務があるというように前提されて御議論がありますけれども、私は安保条約上、日本にそういうことを協力する義務があるとは考えておりません。
  240. 今澄勇

    今澄委員 それは安保条約第一条に極東の安全に寄与しとあります。これはもう安全保障条約の第一条で、安保条約を発動する場合に極東の安全ということを言われておるのですから、安全に寄与するということになれば、日本は寄与しなければならぬと思うが、どうですか。
  241. 岸信介

    岸国務大臣 それは安保条約の第一条は、米軍が出動する場合の条件をきめているものだ、私はこう解釈いたします。
  242. 今澄勇

    今澄委員 安全保障条約の一条で米軍が動けば日本——この日米安保条約、行政協定によって、極東の安全に寄与し、あるいは日本の国内侵略、あるいはもう一つは直接の侵略、この三つの場合においては、アメリカ軍が動き、かつ日本はこれに協力の義務を負う、こうなっておるのです。
  243. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日米安保条約は、日本が直接脅威を受けたときと国内における問題、これだけしか規定しておりません。
  244. 今澄勇

    今澄委員 日米安全保障条約というのは、今あなたの言われた日本が直接の侵略を受けたときに発動せられるという解釈、岸内閣はその解釈でよろしゅうございますか。
  245. 岸信介

    岸国務大臣 第一条に明確に書いてありますように、日本が「アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じょうを鎮圧するため日本政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。」ということであって、これはアメリカ軍隊が駐在し、これがどういう場合に使用されるかということを書いてあるわけであって、極東の平和安全というようなことのために出動する場合に、日本も一緒にこれに協力しなければならぬということは、ちっともこれからは出てこないと思います。
  246. 今澄勇

    今澄委員 そこの点は、この日米安全保障条約を取り扱う上の重大な論点です。第一条は駐留アメリカ軍を使用し得る場合を規定してきめたもので、その第一が極東における国際の平和と安全の維持、この場合にアメリカ軍は出動し得る。並びに外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与する場合。そうして第三番目に、一または二以上の外部の国による教唆または扇動の場合である。私はここで条約論をやろうとは思いませんが、外務省の条約局長にちょっと尋ねますが、今私が述べた日米安保条約の発動の場合はその三つだと思うが、外務省の担当者はどうですか。
  247. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 お答え申し上げます。確かにこの三つの場合がございます。その第一の場合は、極東における国際平和と安全の維持に寄与するために日本におけるアメリカ軍が使用されることができる、これが一番問題であろうかと思います。ところがアメリカも日本も国連の加盟国でございます。従いまして、国連の加盟国として武力の使用をなすときは、個別的または集団的な自衛権の場合しか武力の行使をなすことはできないのでございます。従いまして、極東の安全と平和のために使用すると申しましても、これは自衛権の発動の場合にこれが限局されたものであるというふうに解釈しております。
  248. 今澄勇

    今澄委員 そこで、総理大臣お聞きになったでしょうが、あなたの先ほどの説明は、第一条の極東の平和と安全に寄与する場合はアメリカが出動しないのだ。あと二つは出動するが……。
  249. 岸信介

    岸国務大臣 私の申し上げたことは、第一条に書いてある三つの場合に日本に駐在するアメリカの軍隊が使用される。しかしあなたの御質問でありましたのは、その場合に日本が当然一条によって協力の義務があり、協力するものだというふうにお話になったけれども、そのことは一条にきめておるものではない。従って第一の場合のごとく、付近において何が事が起って、アメリカの自衛権の発動で出動する場合に、日本が当然協力して日本も一緒に出てくるというふうなことを前提にしての御質問であったから、そういうことはないということを明瞭に申し上げたのであります。
  250. 今澄勇

    今澄委員 これは国際法学者の高野さんその他、学説の分れるところで、政府はそういうふうに解釈をしておるが、この安全保障条約、行政協定が発動する際、力でこれがゆがめられてはいかぬからというので、日本政府は今度の安保委員会で、国連憲章との関係をお取りきめになったと私は思うのですよ。その取りきめられた日米安保委員会としても、この日米安全保障条約、行政協定が持つ、国際法学者がいろいろ議論をしておるこれらの点について明らかでないから、私が言わんとしておるところは、内閣総理大臣はこれらの点を今後具体的にはっきりさせるような方向へ進まれたい、こういう意味なんです。  そこで、私はいろいろ親切に教えておりましたが、今度は一つお聞きするわけだ。防衛庁長官にお聞きしますが、自衛隊の行動というのがある。これが防衛出動の場合、第七十六条に「内閣総理大臣は外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合には云々」で出動する、こういうことになっている。これはさっき申し上げました国連憲章第五十一条、これを読むと、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和」何々ということで、自衛権の行使に当っては侵略が直接なければだめなんだ。ところが日本自衛隊のやつは「侵略のおそれある場合」となっているのです。これは国連憲章の規定に違反すると思うが、どうですか。おそれがある場合と侵略をした場合と違うのだよ。
  251. 石田博英

    ○石田国務大臣 お答えをいたしますが、防衛出動命令、これはおそれがあるときには出します。しかし実際、武力をもって侵略を防ぐという行為は、侵略行為が現実に行われなければいたしません。すなわち準備のための防衛出動は、おそれがあるときでもやっておかなければなりませんが、しかし現実の武力行使は武力侵略が行われたときに出動するわけであります。
  252. 今澄勇

    今澄委員 それは明瞭でないのだ。それは私はだめだと思う。これは私は今度日本が国連に入って国連憲章を日本の安保条約の検討とともに合せて、この自衛隊の出動条項については国連憲章の規定に合うようにこれを改める必要がある。少くとも国連憲章に違反するものを持つということはいかぬと思います。それはどうですか。
  253. 林修三

    ○林(修)政府委員 日本は国際連合に加入しておりますから当然国連憲章の権利義務もかぶっておることは当然であります。それから今の自衛隊法七十六条の解釈でございますが、これは防衛庁長官からお答えいたしました通りでございます。現実の武力行使は外部からの侵略行為があった場合、それを排除する場合に行う。それ以外に行い得ない。そういうおそれのある場合の準備のための防衛出動、これは七十六条でできるわけであります。これは国連憲章に違反するものとは私は思わないのであります。この点は自衛隊法制定のときにも非常に議論がございまして、そういう解釈は確立しているはずでございます。
  254. 今澄勇

    今澄委員 ではその点については一応この程度でやめて、今度は防衛庁の問題についてお伺いをいたします。  そこで石田防衛庁長官に、日本の新機種決定、今度F104、それからF100、それからF11—1F等のいろいろの新機種の決定について、防衛庁は二年越しでやってなかなかきまらないのですが、現在どういう情勢になっておりますか。
  255. 石田博英

    ○石田国務大臣 今F86Fというのを製作中でございますが、これが昭和三十五年に予定数ができ上ります。その次にどういうものを採用すべきかという点につきましては今検討を加えておるのでございますが、現在のわが国の周囲にありまする航空兵力の状態その他を勘案いたしまして、検討中でございます。
  256. 今澄勇

    今澄委員 私どもが聞いておるところでは、ここ二年間、この新しい機種の決定がもめて、いまだにきまっておらぬが、その裏にはいろいろ多くの問題が介在していると思います。新機種の決定はもう二年も論争して、私は日本の防衛上からはF104のような遠くへは行かれないが、行動半径は短かいがスピードのあるもの、あるいはF11—1Fのようにスピードはないが遠くに行けるもの、日本防衛の基本方針から二年も論議して日本の新機種の決定がきまらないというのは単なる論争だけではないと思いますが、どういう観点から二年間もきまらないのですか。
  257. 石田博英

    ○石田国務大臣 航空機の発達の状況は非常にめまぐるしいものがあります。それから経済力、訓練の状況あるいは採用いたしました以上はできるだけ長く第一線機として使えるものでなければなりませんし、そういう点から現在はF86Fというものを作っておりますので、そのでき上りはまだ昭和三十五年までかかりますから、その間に慎重を期して決定をいたしたい、こういうふうに考えております。
  258. 今澄勇

    今澄委員 そこで今防衛庁が対象として取り上げておるのはF104、F100、F11—1F、F86F、その四種ですか。
  259. 石田博英

    ○石田国務大臣 そういう種類も検討いたしておりますが、それに限られておるというわけのものでもございません。
  260. 今澄勇

    今澄委員 私が聞きたいのはノースロップのN156、これはロス前国防次官補が顧問をしておる会社であって、このロス前国防次官補の圧力で日本に持って来ておるのです。これはまだ試作機で青写真だけなんです。しかも飛行機はできておらない。だからNという名前がついておる。一九五一年型で、これは後進国向けにできておる。どういう理由で防衛庁はこれを新しく入れようとする新機種の中に入れておるのですか。
  261. 石田博英

    ○石田国務大臣 検討の対象としていろいろのものをあげて検討しておりますが、その中に特別にワクをきめて今の四つだけをどうする、こうするということはありません。ましてやその背後にどういう人がおられるか防衛庁としては関知するところではありません。
  262. 今澄勇

    今澄委員 もう一つお聞きいたします。F86F、これのイニシアル・ペイメント、これを作るに当っては特許の頭金その他ロイアリティが要るわけなんですが、これは幾らですか。
  263. 石田博英

    ○石田国務大臣 そういう専門的なことになりますと、事務当局から一つ答えさせます。
  264. 今澄勇

    今澄委員 それならよろしい。私がそれを聞いたのはF86Fを作るためにも、三百機で約九億三千万円のロイァリティを払っておる。イニシアル・ペイメントが百万ドル。ロイアリティが一次の生産七十機で三百五万円、二次、三次三百三十機で三百四十二万円とアメリカの特許料を非常に払うわけです。そういうアメリカの特許料と関係のあるこれらの新機種の決定がこんなに長引いておる裏には、ノース・アメリカンも全力をあげて運動をしておるし、日本の週間雑誌にまでこれらの飛行機の宣伝用の広告が出ておるわけです。もう国をあげて日本に防衛庁の新機種決定のためにあらゆるアメリカの力が動いておる。F11—1Fもこれは海軍用ですが、試作機が二機完成しただけで、アメリカ軍の試験に失敗をして、アメリカでは不採用になっておる。これをどうして日本の防衛庁が新機種採用の中に入れておるのですか。
  265. 石田博英

    ○石田国務大臣 新機種の決定に当って、慎重に検討を加えておりますというものの中には、財政的あるいは経済理由がございまして、できるだけ安いものを手に入れなければならないということでやっておりますので、従って今おっしゃいましたような一定のワクをきめて、そのワクの中だけでやっておるというわけではございません。
  266. 今澄勇

    今澄委員 それでは聞きますが、P2Vというものを日本の防衛庁は、これは未決定でなしに、決定いたしました。このP2Vは、二年間にわたって取り扱ってきた新明和興業を今度やめさせて、川崎へ発注をいたしております。その二年間手がけた新明和興業をやめて川崎に発注した理由はどうですか。
  267. 石田博英

    ○石田国務大臣 これは通産省と協議をいたしました結果そういうことになったのでありまして、主として何か資金関係のことだと承わっております。
  268. 今澄勇

    今澄委員 P2Vの最初の契約は、日本側が四三・二%、アメリカ側が五六・八%を受け持って、二百八十六億で新明和興業にきまるようになっておったのです。それが今度川崎へ幾らできまったのですか。
  269. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 日米間の分担の割合は、きまりましたところは、アメリカ側が五〇・六七%、日本側が四九・三三%でございます。今申されました数字は、途中でそういう案はございましたが、その飛行機のP2V—7と申しましても、型が新しくなっておりまして、諸材料等高くなっております関係上、きまりましたところは今申し上げましたような数字で、総額は二機種合せまして三百七億でございます。
  270. 今澄勇

    今澄委員 防衛庁長官、お聞きのように、二年間新明和興業が、日本負担はわずか四三%の負担で、しかも総額二百八十六億で大体やるようになっておったものを、一ぺんにこれを取りかえて、川崎に総額三百七億、日本負担は四九%、三十億もふやしてこれをかえたからには、それ相当の理由がなくては私はかなわぬと思うんです。どうですか。
  271. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 今申されました数字は、途中そういう仮定の数字が確かにございましたが、われわれの交渉する前の心組みとしましては、半分よりは向うが多く持ってもらいたいということで、意識的にそういう数字を作ったことはございます。それで向うが五六、こっちが四五くらいな数字で、それから86等の実績によって、最終的にはこちら側が五十数%、少しアメリカ側としては日本側がたくさん持ってくれ、少くも半分持ってくれという議論がありますので、そういうことに交渉の結果落ちついた次第であります。
  272. 今澄勇

    今澄委員 私は今から二、三あげますから、総理にも聞いておいてもらいたいと思うのですが、軍艦の方で「いかづち」「いなづま」というのがある。これは同じに川崎重工業と三井造船に発注した。昭和二十八年最初の値段は、「いかづち」が七億七千万円、それから実績値段ででき上った値段が七億七千三百万円、「いなづま」の方は三井造船、これは最初の値段は七億六千四百万円、同じ諸元、同じトン数、同じ発注であります。これが実績価格で五億七千二百万円ということででき上っているのです。同じく乙型警備艦が、三井造船では五億七千二百万円、川崎重工業では七億七千三百万円、こういう、五億でできるものが、一体二億も違った値段で防衛庁がこれを認めておるなどということは、常識では判断できないが、これはどういう理由です。
  273. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 「いかづち」の契約価格は、七億七千何がし、多少端数が違いますが、大体プライスは同じくらいであります。コストは、今御指摘になりました数字は、契約しまして、工事の進捗に伴いまして、原価監査官をやりまして、いろいろコストを調べております。会社が当時一番初めに出してきましたコストは、今言われましたように、両社非常に開いておりました。約二億ばかりの差がございます。その原因をいろいろ調べました結果、ちょっと話がこまかくなりますが、間接費の振りかけその他で三井が独特の計算をやっておったわけです。要するに、この船にかぶせるべき間接費を全般に振りかけてきたというような点、それから駆逐艦ですから、非常に職工の熟練工をたくさん使う、それもプールして計算していたというような点、そういう点を是正いたしますと、利益率も初めの計算では、一般管理費と利益率が四〇%近くになりますが、最後の修正した計算では二十数%足らずでございまして、これは一般のものと変らないということで、何べんも調査いたしまして、そういうふうにいたした次第であります。
  274. 今澄勇

    今澄委員 とにかく、それは三井造船の方だけを徹底的に調査をして、値段の安かった方を徹底調査をして、そしてどういうわけでこんなに安くなったかということは調べたが、値段の高かった方は、まだその報告書が来ておらないで、どういうわけで値段が高かったかということはあとから調べる。安い方と高い方とをくっつけるために防衛庁が努力していることは、今の答弁でおわかりの通りです。私はこういうずさんなことは、およそ国民の税金でできておる防衛庁としては大へんなことだと思います。川崎の方は調べましたが。
  275. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 川崎の方も調査いたしました。ただそのときは、「あけぼの」と「いかづち」は全く同型艦でございますが、似たような船、「はるかぜ」と「いかづち」を作っておりまして、そのバランスから見まして、大体順当だ、三井だけがえらい不合理な数が出ているような感じがしまして、三井だけを徹底的に調べました。ほかのものも一応全部精査いたしました。
  276. 今澄勇

    今澄委員 まだついでにもう一つ聞くが、レーダー・サイト、これを去年の私の質問で、四カ所返還する、さらにあと続いて返還する。こういうことになっておったが、今日まだその返還がありません。これもその背後には、私はいろいろ問題があると思うが、どういうわけでレーダー・サイトの返還は今日までおくれているが、簡単に報告を願いたい。
  277. 石田博英

    ○石田国務大臣 お答えをいたします。一つには用地の関係、第二には機器のライセンスの関係、第三は補給の関係、そういう点についての話し合いが最終的にまとまるのがおくれましたためにおくれておりますが、近く協定を得まして、返還を実行することができると思っております。
  278. 今澄勇

    今澄委員 そのレーダー・サイトの部品の機械関係が問題なんでして、その機械を作っておるアメリカの会社にベンディックスとジェネラル・エレクトリックとある。その二つの会社は、ベンディックスの方は防衛庁は話がついた。これは東京計器が代理して話がついた。ところがジェネラル・エレクトリックは、ペンディックス・プラス・アルファをもらわなければだめだということで、その方の関係でアメリカ側は一体どういうふうに調整してくれるかということが、レーダー・サイトが今日日本側に返還されない大きな理由ではないか。私はそういうアメリカの軍需工業会社の利益、アメリカの各社のロイアリテイ、特許料にからむいろいろな問題、これがアメリカ側から日本側にそういうものが返還されるのがおくれている大きな原因になっていると指摘したい。防衛庁長官はどうですか、幾らできまりましたが、ジェネラル・エレクトリックとの間の相談はきまりましたか。
  279. 石田博英

    ○石田国務大臣 そういうことは事務当局より答弁いたさせます。
  280. 江崎真澄

    江崎委員長 装備局長、こういう事務的な問題はよくわかるように、しっかり説明してもらいたい。
  281. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 従来米軍が補修しておりましたのは、・ペンディックス、ジェネラル・エレクトリックで、ベンディックスは東京計器、ジェネラル・エレクトリックは東芝、従来の関係でそういうことになっております。両方ともまだ話は妥結しておりません。私の聞いておりますのでは、ベンディックスはライセンスが要る、ライセンス料を出せ、こう言っておりますが、GEの方は要らないのではないか、ライセンス料は要っても、多少少いというような話で交渉が進んでおる次第であります。
  282. 江崎真澄

    江崎委員長 今澄君に申し上げますが、だんだん申し合せの時間が迫っておりますから、結論にお入り願います。もう十分です。
  283. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は最後に、防衛関係で一番問題である誘導弾サイド・ワインダーについてお伺いしますが、サイド・ワインダーは予算には載りましたが、この入ってくる品物は、ジェネラル・エレクトリックから入るのか、それともこれはフィルコ社の品物が入るのか、事務当局からでもけっこうです。
  284. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 サイド・ワインダーは、フィルコがGEの部分的な応援を得て作っております。
  285. 今澄勇

    今澄委員 そこで私はわかりましたが、ラドフォード前アメリカ統合参謀本部長が先般、日米安保委員会が十九日ごろ開かれる前に来朝いたしました。この方は今フィルコ社の顧問であります。日本はゼネラル・エレクトリックとは、これまでずっと代理店もあれば取引もしておったが、フィルコ社というのは今まで全然取引はないじゃありませんか。その全然取引のないフィルコ社から、ラドフォード顧問が見えたからといって、とたんに一夜にしてサイド・ワインダーの受け入れが日本できまったということは、私は防衛庁の今日の兵器の導入、今日の運営のあり方に大きな問題を投げるものだと思います。しかもこのラドフォード氏に外務省で勲章を出されました。この勲章は、外務省があわてて閣議を開いて、勲章の現物も間に合わぬのに無理をしてこれを出されたそうですが、外務大臣、どういうわけでこういうことになったのですか。
  286. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 勲章をやりましたこととサイド・ワインダーと何らの関係もありません。今日までの功績に対して出したのであります。
  287. 今澄勇

    今澄委員 私が聞いたのは、外務省では、これに対して非常に反対の意見が強かった。ラドフォード氏は顧問として、その前の前の日、吉田前総理を訪問せられておる。吉田前総理から日本のイギリス大使の問題についてもいろいろと発言があって、外務省はその決定が非常に延びました。今度のラドフォード氏の勲章の問題についても、前総理とはいいながら外務省に電話がかかる。それでなければ品物もそろわないのに、そんなにあわてて閣議を開いて優遇するわけがない。しかもサイド・ワインダーは、このラドフォード氏が来るや、一夜にして日米安保委員会において決定したのである。しかもその買い入れの会社は今言ったようなフィルコというラドラォード氏が顧問をしておる会社から買うということに、なりますと、少くとも一国の防衛というものを、少くとも日本の防衛庁から、どういうふうな割合で要るかということから割り出さないで——これは値段が二億円も違う。すべてのこういった今日の防衛庁の問題というのは、多くの疑惑に私は包まれておると思います。時間がないからあまり詳しく申しませんが、防衛庁がこれらのいろいろの疑惑に包まれておるその原因というのは、今日の日本の防衛は、歩兵部隊その他をふやすような時代ではないと思う。アメリカのこういういろいろな圧力で、もうアメリカの軍人さんというのは、みんなアメリカの財閥の系列割に割ってきっちりしているのです。それが日本がまたアメリカの兵器会社の代理会社となって、そうして今日非常に軍需工業を育成するために、日本国内における兵器産業というものができておるから、私はこれらの問題が非常に混迷しておるのだと思います。  そこで私がもう一つ聞きたいのは、F86Fを、河野さんあたりは、もう少しこれを作らせたらどうかと言っておられるそうですけれども、だんだんと使いものにならない飛行機がどんどん出てくる。そこで日本の航空機産業は東南アジアにT33、F86F等の売り込みをオファーしたことがある。私は日本の兵器産業がアメリカの圧力によってアメリカの中古を引き受け、そしてまたそれを日本の兵器産業がやる。これを東南アジアにまた持っていくということになると、これは非常に大問題であって、通産大臣の日本の兵器工業に対するお考え一つ聞いておきたいと思います。
  288. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 日本の兵器産業は、御承知のように特需の修理というところから出発してきておるわけでありまして、ただいまのところ飛行機につきましても、非常に部分的な、まだ産業と言い得るかどうかというところにしか来ておりません。今後むしろわれわれとしましては、中型輸送機その他の試作をやりまして、そして将来は輸出もできるというふうに持っていきたい、かように考えておりますが、アメリカの飛行機を譲り受けて、またそれをまねて海外に出すというようなことは全然考えておりません。
  289. 今澄勇

    今澄委員 そこで防衛庁長官にお伺いいたしますが、米軍が飛行場施設を日本に返還するということが申し出されております。そこで安保委員会においても、米軍の撤退が議論せられましたが、いついかなる規模において撤退せられるか、なお特に重要な米軍の空軍が撤退するのはいつごろになるのか、その空軍の撤退に見合う日本側の態度はどうなのか、わが日本の防衛庁側は用意ができておらないから、あわてて帰ってもらっては困るという意見を述べたそうですが、この空軍の撤退あるいは空軍の第二次防空計画について伺いたい。
  290. 石田博英

    ○石田国務大臣 まだ聞いておりません。
  291. 今澄勇

    今澄委員 どういうわけですって……。
  292. 石田博英

    ○石田国務大臣 そういうことについて聞いておりません。米軍から連絡を特に受けておるわけではございません。
  293. 今澄勇

    今澄委員 それは、あなた急にかわったのだから、そんなことが言えると思うけれども、今米軍が一番大きく問題にしておるのは、飛行場並びに航空関係です。米軍としては日本の自衛隊の増強に伴い、昭和三十二、三十三年度の両年に、航空基地の返還があるが、特にその中で問題なのは、新潟の飛行場を初め、行政協定第二十四条の規定により、日米両国政府が協議する建前になっておるけれども、実戦の際はなかなかそういうわけにはいかないので、日本に戻した飛行場については、あとで一朝有事の際は、無条件で米軍に使わせるとの協約を、米軍側から日本国に申し出ておるというわけですが、防衛長官どうですか。
  294. 石田博英

    ○石田国務大臣 そういう事実はございません。
  295. 今澄勇

    今澄委員 私は、そういう事実がございませんというわけで、簡単に答弁をせられるような問題じゃないと思います。これは現に新潟においても、現地においていろいろ折衝が行われ、今日本の防衛庁当局と折衝が行われておらなくてはならぬと思いますが、外務省どうですか。
  296. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そういう問題、聞いておりません。
  297. 今澄勇

    今澄委員 それではもう一つ。今度は調達庁長官にお伺いいたします。この米軍の撤退に伴なって、アメリカ側から日本側に戻されるもの、相馬ヶ原の演習場、三城ヶ原の演習場その他相当の飛行場が日本に戻されております。どれだけの程度のものが米軍から返還になったか、調達庁長官からお示しを願いたい。
  298. 上村健太郎

    ○上村政府委員 お答え申し上げます。提供施設の返還につきましては、昨年の共同声明以来逐次撤退が行われて、これに伴なって、昨年の七月以降本年の一月までに、施設の数におきまして五十三件、土地面積におきまして七千六百八万坪、建物におきましては三十一万坪が返還せられております。
  299. 今澄勇

    今澄委員 その中で閣議の決定がなされないで、米軍提供基地の一部分または大部分が自衛隊に使用せられておるものがありますか、調達庁長官
  300. 上村健太郎

    ○上村政府委員 現在演習場、飛行場その他におきまして、自衛隊が使用しておる施設がある程度ございます。
  301. 今澄勇

    今澄委員 そこで、防衛庁長官に伺いますが、その自衛隊が使用しておるという演習場はどことどこですか。
  302. 上村健太郎

    ○上村政府委員 飛行場といたしましては岩国、板付等でありまするし、演習場としましては、おもなるものは東富士でございます。
  303. 今澄勇

    今澄委員 これらの演習場が日本に返されれば、これは一応国有財産になるわけであります。それで、閣議の決定を経てどこどこを使う、こういうことにならなくちゃなりません。しかるに、相馬ヶ原演習場にしても、その他のいろいろな演習場にしても、閣議決定を経ないで使われておるということですが、どうですか。
  304. 上村健太郎

    ○上村政府委員 これは、閣議の決定をいただいておりませんが、米軍が施設及び区域につきまして管理権を持っておりまして、その管理権の範囲内、申すなわち行政協定第三条によりまして、自衛隊が使用しておるわけでございます。
  305. 今澄勇

    今澄委員 私は、これで防衛に関する個々の問題を一応終りました。最後に、問題の、予算面から落ちておりますインドネシアの焦げつき債権について、大蔵省に伺います。インドネシアの焦げつき債権は、一般会計から外為資金の中に入れた金の中から落ちるわけでありますから、当然国民の血税であるといわなくちゃなりません。そこで、私は、インドネシアとの間に、昭和二十六年度から年次別で今日に至るまで、一年にどれだけの金額が焦げついたかということをお聞きしたいと思います。
  306. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 数字でありますから、政府委員から答弁させます。
  307. 石原周夫

    ○石原政府委員 現在額につきまして、は、この間申し上げました六百四十億の予算でございますが、毎年の数字につきましては、早急に取り調べまして御報告申し上げます。
  308. 今澄勇

    今澄委員 それはそういうわけにいかないのです。これは重大な問題でして、賠償で焦げついたから落したわけですから、この問題については、私はこれから私の調べたところによって一つ聞きます。昭和二十七年の末に焦げつきの総数は六千万ドル、昭和二十八年、二十九年の七月までで一億五千万ドル。昭和二十九年一年で九千万ドル焦げついておるわけです。それから昭和三十二年の五月、六月で二千万ドル、これは通産関係の外貨の問題に関係がある重大問題ですから、大蔵省でちょっとその数字を言うてもらいたいと思います。
  309. 石原周夫

    ○石原政府委員 今電話で聞き合せておりますので、しばらくお待ちを願います。
  310. 江崎真澄

    江崎委員長 今澄委員にちょっと御相談しますが、どうでしょう。年次別の焦げつきの債権は、一つあとから資料としてお手元へ至急届けさしたらいかがでございましょう。
  311. 今澄勇

    今澄委員 いや、これは賠償で、今度の予算書の中で最も問題になっておる点なんです。これは、当然国会質問があるわけです。それが、月別に出せというわけじゃないんで、今言った二十七年、二十九年、三十二年の五、六と、これは日本経済が非常にデフレで輸出を押えておるときの重大な数字であるから、通産との関係もあって、この数字が出なければ質問ができないのです。
  312. 石原周夫

    ○石原政府委員 お答えを申し上げます。二十七年の六月末に旧勘定から六千万ドルで引き継ぎまして、これが二十八年度に千二百二十三万六千ドル、二十九年に九千八万一千ドル、それから三十年に千四百九十三万八千ドル、そこまでで一応締めまして一億七千七百二十五万五千ドル、その後に増減がございまして、それを詳しく申し上げますれば、いろいろ数字がございますが、最後の数字で一億七千六百九十一万三千九百五十八ドルというふうに相なっております。
  313. 今澄勇

    今澄委員 私の出した数字と今のお答えの数字は、端数は違いますが、大体一致しております。そこで、これは、大蔵省がとりました為替の政策に重大な関係があるが、どうしてインドネシアにこんなに焦げついておるのか。これはインドネシアだけでなしに、韓国もアルゼンチンも台湾、エジプトもみなケースは同じようなケースです。その総計は三億もあるのでして、滞貨融資を大蔵省がやらぬというときに、業者が、生産過剰だからといいながら、一割も時価より高い値段でどんどん売り込んで、それが何百億も賠償のときにみんな国が背負って、そうして焦げつき債権で処理するということになると、これは大へんですから、私はこの問題についてもう少しお聞きをしたいと思います。大蔵省はどうしてこんな焦げつきが次々と出るのをほうっておいたのですか。大体二十七年に六千万ドル焦げつきが出たら、そういう焦げつきを次々とふやさないで何とが手を打ってとめるという対策に出なかったのですが。
  314. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、御承知のように、清算協定といいますか、一九五三年に一時非常に巨額の向うの輸入、こちらの輸出が出たわけです。これは従来決済しておりましたから当然決済を受けるものと思って輸出が出た。ところが、その年の決済になって向うは決済を渋った。そこで翌年の五四年において調整を加えまして日本からの輸出を制限する。これは為替というよりも輸出政策、貿易政策であります。
  315. 江崎真澄

    江崎委員長 今澄君、申し合せの時間がだいぶ過ぎましたが、あと何問くらいですか。
  316. 今澄勇

    今澄委員 あともうちょっと……。
  317. 江崎真澄

    江崎委員長 それではあと簡潔に願います。
  318. 今澄勇

    今澄委員 今まで大蔵省がこれに対してなぜ輸入証明書制をとるなり、あるいは焦げつきを防ぐために繊維なら繊維、その他品目別に制限するなり、そういう処置をとらなかったのですか。担当の局長、見えておるならば一つ……。
  319. 板垣修

    ○板垣政府委員 主管ではございませんが、当時の事情を多少知っておりますのでお答えいたします。御承知のように、インドネシアとはオープン・アカウント勘定を締結しておりましたので、その結果ことにインドネシアに対する日本の輸出が非常に好調であった。特に朝鮮事変後のブームによって非常にふえた。一方インドネシアからそれに見返る買い付ける物資が相応しなかったというために、焦げつき債権ができた次第であります。従いまして、大蔵省でもこの点を特に心配いたしまして、通産省とも相談をいたしまして、今お話しのような輸出調整措置をとったわけであります。従いまして、その後においてはそうふえてはおりませんが、それでもなお日本の輸出の方がインドネシアから物を買う力より大きいものでありますから、多少ともふえまして、結局のところ一億七千万ドルという焦げつき債権ができたような状況であります。
  320. 今澄勇

    今澄委員 私の調べたところでは、大蔵省は二十九年の七月輸出調整のために輸入証明書制をとって、それで繊維は別ワクで百万ドルを限度に押えておる。それだけ大蔵省が押えておるのに、昭和二十九年一年で九千万ドル、邦貨に換算して三百二十四億、そういう調整をしておるのにもかかわらず三百二十四億もインドネシアに焦げついておる。それから、もう一つ問題なのは、岸内閣ができてからの昭和三十二年の五、六月で二千万ドル焦げついておる。これはもう賠償が近いというので、清算勘定だから国内の販売価格よりも一割くらいは高く売れる。そこで一割高くどんどん売り込んで、あと賠償に国家がかぶって一々落したのではこれは大へんなのではないか。私は、大蔵省がそういう処置をとったのは、昭和三十二年の六月にインドネシアとの為替については打ち切ったと聞いておったのですが、大蔵省は打ち切ったのはいつですか。
  321. 稲益繁

    稲益説明員 お答えいたします。正式に勘定を打ち切りましたのは昨年の六月であります。勘定と申しますが、新たに清算勘定を通じて取引を停止いたしましたのが昨年の六月末であります。勘定を正式に締め切りましたのが十月末であります。
  322. 江崎真澄

    江崎委員長 今澄君、もうだいぶ時間が経過いたしましたが、もうあと何問ですか。
  323. 今澄勇

    今澄委員 もうあと二、三問です。
  324. 江崎真澄

    江崎委員長 それじゃあと二問ということで……。
  325. 今澄勇

    今澄委員 そこで、問題なのは、六月に打ち切ったというのに、この五月、六月で二千万ドル、これは邦貨に換算して七十二億円、いよいよ賠償の問題でこれは打ち切らなければならぬとわかっておりながら、一体どういうわけで二千万ドルも焦げつかせたのです。大蔵大臣はこれに対してどういうお考えだったのでありますか。もう賠償で打ち切らなくてはならぬ、打ち切らなくてはならぬのに二千万ドルも焦げつかせるということは、これはもう国家としてこれより大きな怠慢はないと私は思うのです。もし賠償が近くなるのでみんなそういう焦げつき債権でとれそうもないところにどんどん品物を売って片っ端から焦げつかせるということになると、これは幾ら滞貨融資の制限をしても国家買い上げにひとしい結果になりはしませんか。大蔵大臣、どうです。
  326. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、先ほどから話がありましたように、インドネシアに対しては、まず向うから輸入する輸入権がくる、この輸入権を買いましてそれから輸出する、こういうふうにしてバランスをとっていた。その輸入権の整理に関連をいたしまして、その際に二千万ドル認めるというふうになったのであります。なお詳しいことは事務当局に答えさせますが、これは通産省と十分合議の上でそういうふうな措置をとったのであります。
  327. 今澄勇

    今澄委員 私は大蔵大臣に再度念を押しておきますが、こういう大蔵省のずさんなやり方、それから通産省のずさんなやり方——話はさかのぼるが、二十九年といえば日本の為替が危機に陥ったというのでいわゆる超均衡予算をとったときです。これはあなたが大蔵大臣のときなんです。だから非常に外貨不足である。その外貨不足のときにどうせ売りつけたところで全然回収のできないこのインドネシアに九千万ドルも一年間に焦げついていくのをそのまま見ておる。そして今度は再び超均衡予算で非常に不景気になった。昭和三十二年の五月、六月で二千万ドルもまた焦げつくのをそのまま見ておるということは、特にこれは丸紅、三菱、あるいは第一物産、東棉等の貿易業者の救済策になったのか、それともその背後にある多くの——これは繊維がだいぶ中心になっておりますが、繊維会社の圧力に屈したのが。今の日本の外貨保有量は九億七千万ドルと先般来言っておりますが、そのうちの三億がこげついておる。こういう外貨の不足時代にこういうずさんな、もう回収の見込みのないところとわかっておるところに次々とこういう割当をやるのは、大蔵省と通産省に外貨に関する権利が全然別になっておるのがその理由ではないかというのが第一点。それから、もう一つは、賠償に事寄せてこれらの業者の滞貨を国が買い上げると同じ効果のものを今日まで内閣がとってきたのではないか。それだけの便宜を、三百億、四百億という便宜を業者に国家が与えることは、表向き輸出産業振興の名によるけれども、その背後には大きないろいろな問題があることが私は予想せられます。私は、こういう防衛庁の問題、問題になっておるインドネシアの外貨の問題、これを掘り下げてみると非常に疑惑が多いのです。通産大臣から三十二年五月、六月、それから二十九年の一年間にふえた品目の一番大きなものを五つ、大きな取引会社を五つ、ここに報告してもらいたいと思います。
  328. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 あとで調べて御報告いたします。
  329. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ちょっと一言申し上げておきますが、いかにも繊維業者その他の要請に応じて特に輸出してきたかのようなお話がありましたが、そういうことはないのであります。大蔵省としては、むろんああいう際でありますから、特に厳格な態度をとって、そういう焦げつきがふえないことに努力いたしたことは言うまでもありません。ただ、先ほど申しました輸入権をもって輸出をさせるということがありました。前に輸入はさせましたが、輸出はそれに伴ってしてなかったということがありました。それがいよいよこれで打ち切るということになった場合に、この輸出権を伴った輸出の問題が表面化したという事情もありまして、その部分がつまりふくれ上ってきたわけでございます。
  330. 今澄勇

    今澄委員 それでは、結論としては、清算勘定というのがあるからそういうように最後に焦げつきになると思うのです。清算勘定というのがある。これがやはり賠償のときにいろいろ問題の根底になると思います。大蔵省は、この清算勘定というものを今後全部現金勘定一本にすればこういう問題は全部なくなると思うが、どうです。
  331. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大蔵省としては清算勘定廃止ということに極力努めております。特殊の事情がない限り、この残存はいたさない。
  332. 江崎真澄

  333. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は質問時間が五時二十分までだそうで、あす継続質問をするそうでありますので、区切りのいいところで一、二点お尋ねいたしたいと思います。  御存じのように、わが国の経済が復興をいたしまするにつれて、あるいはソーシャル・ダンピングの再現をするのではないか、こういうような危惧が各国においてされております。危惧だけではなくて、現実に日本の輸出品に対していろいろな制限をせんとする動きのあることは御存じ通りであります。そこで、私は、今まで採択されました条約、すなわち国際労働条約について総理一体どういう考え方を持っておられるか。私は、現在採択されまして日本でまだ批准をされておらない条約につきましても、国内法を少し改正をいたしますれば、批准できる条約もあると信じております。こういう問題について今までほとんど放置されてきておるのでありますが、一体どういうお考えを持っておられるか、御所見を承わりたいと思います。
  334. 岸信介

    岸国務大臣 ILOで採択された条約案等におきまして、従来批准されたものもありますが、なお批准を見ないものも相当ありますので、これらにつきましては、今多賀谷委員お話もありましたように、国内法との調整を考え、できるだけ早くこれらの条約が批准できるように、あらゆる面から検討いたしております。
  335. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それで私お尋ねいたしたいと思いますが、今国際的労働運動の中でも非常な環視の的になっております日本の公企労における団結権制限の問題でございます。そこで、国際自由労連並びに国際運輸労連におきましてはすでに日本調査に参っております。また本部に報告書も出しております。やがてILOにも正式に報告されることと思います。そういう状態の中で、一体日本の問題になっております公企労法第四条第三項の、組合員は従業員でなくちゃならない、こういう規定について労働大臣はその削除の意思があるかどうか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  336. 石田博英

    ○石田国務大臣 ILOの結社の自由及び団結権の擁護に関する条約の批准の問題及びこれに関連する公労法四条三項の問題でございますが、前段の条約批准の件につきましては、ただいま労働問題懇談会に御協議を願っておるのでございまして、労働問題懇談会におきましては小委員会を設けて今御審議継続中でございます。その結論を待って政府としては善処いたしたいと存じております。これはもとより御指摘通り公労法四条三項との関連がございますが、それでは政府として四条三項についてどう考えているかという点についてお答えを申し上げます。これについて各種の議論があることは承知いたしておるのでございますが、しかし、現在の状態におきましては、まず労使双方とも公労法の現在の状態を守るという建前を貫くこと、その土台をつちかうことが私は第一の前提であろうと考えておるのでありまして、法改正を考える前に、とにかく現行法規を守るという建前を貫くことをやって参りたい。政府は仲裁裁定の完全実施を前提といたしまして、国鉄の労使双方に対してこの公労法の順守を強く要求いたしておるわけでございます。  それから、いま一つ、四条三項につきましては、わが国の労働組合、特に国鉄の組合は、これは企業別組合でございますから、従って、その四条三項を削除いたしました場合における担保の問題がやはり考究されなければならないのでございます。これらと関連をいたしまして研究課題にいたしておるのでありますが、今直ちにこれを改正するという意思はございません。
  337. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ILOの結社の自由及び団結権の擁護に関する条約というのは、当然公労法の第四条三項を削除しなければ批准できないと思います。これはいかに労働問題懇談会でいろいろ御審議なさいましても、現存として日本の国内法に抵触すれば、それを改正する意思がなくては私は批准できないと思います。そこで、私は、なぜ政府がこれほどこの問題に固執されるのか、この点について非常に疑問を持っておるのであります。何となれば、民間の労組に対しましては政府では通牒を出されておる。これはかつて昭和二十五年に労働協約の締結促進に関する通牒というのが指導通牒として出されておりまして、そうしてこの中に次のように指導せよと書いております。  組合員は従業員でなければならないという条項を協約に規定することは、組合の純粋な内部組織問題を協約で拘束することになり、不当である、これを強要することは使用者の不当労働行為になる、こういうことを通牒でおっしゃっておるわけであります。ところが、民間の労組にはそういう指導を出されまして、政府みずからはその不当労働行為をあえておやりになっておる。ここに私は根本的な問題がありはしないかと思うのでありますが、労働大臣はどういうふうにお考えでありますか。
  338. 石田博英

    ○石田国務大臣 公労法四条三項にいろいろの議論があり問題があるということについては、承知をいたしておりまするし、それに耳を傾け検討する用意はございます。しかしながら、公労法が制定せられるに至りましたときの公労協の状態あるいは公企業体の労使関係、そういうものの根底をなしまする法に対する順守の精神というものが、貫かれることが前提でございまして、それがなくして法改正を今急にいろいろ扱ってみましても、悪い法律なら守る必要がないのだという考えが横行しておるのでは意味をなさない。それからもう一つは、公労法というものが制定せられたときの公労協あるいは公企業体の労使関係が、だんだんと改善されつつあるとは思いますけれども、その改善されるのを待って考究する問題でございまして、今直ちにそれを改正する意思はないということを申し上げたいのであります。また労働問題懇談会の結論がどう出ますか、結論が出ましたとき、その結論に従ってこれを尊重して善処したいと政府考えておりますが、その結論に従って行動いたします場合に、わが国の国内法との調整を必要とするなら、そのときそれが当然問題になると考えておるわけでございます。
  339. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 政府が公労法四条三項の削除の意思なくして、いかに懇談会にかけても、私は意義がないと思います。そこで問題は、その団結権をどういうようにして扱うか、ことにこの四条三項の解釈については裁判所も非常に困っております。労働省もお困りであります。労働組合も困っておる。さらにまた当局も困っておる。これは現状であります。困っていなければあっせんなんということは出っこないのですが、現実に困っておる。これは私はすみやかに改正されてしかるべきではないか、かように思うのです。この前被解雇役員を含む組合に対する団体交渉拒否は正当かどうかということで、御存じのように、機関車労働組合からそれは不当であるという意味の申請をしております。その原告組合長の黒川与次郎君、これを原告として訴えておるのですが、今負けたというお話がありましたけれども、この判決女を読んでいただきたい。負けたということを言う人は判決文を読んでいない。いかにこの法律が不合理であっても、何とか立法の意思を体して解釈してやらなければならぬという裁判所の苦労がこの判決に現われていると思うのです。私はこの判決を読みますと、裁判所がいかに立法府は無理なことをしているけれどもやむを得ない、何とか解釈をしてやりたい、こういう気持が条文の中にあるいは理由書の中に脈々として私は流れておると思います。たとえばこの機関車労働組合というものは、これは被解雇者を含んでおるから組合でないのだ、こういう訴えをしておる。そこで当事者能力がないということを被告側から出しております。しかしそれは裁判所では、この機関車労働組合はたとい被解雇者を含んでおろうとも、当然憲法に認められた組合であるという判決をしておるのであります。そうすると、一体団体交渉の問題はどうなるかといいますと、機関車労働組合は憲法に認められた組合であるけれども、公労法にいう職員の団体ではないんだという、苦しい二つの組合を裁判所は認めざるを得ない状態でありま す。これについてどういうようにお考えですか。
  340. 石田博英

    ○石田国務大臣 公労法四条三項についていろいろ問題があり議論があることは、私も先ほどから認めております。認めておりますが、これを現実にどう取り扱うかということは、やはり公労法が現在あるのですから、——成規の手続で立法された公労法があるのでありまするから、この公労法について労使双方が公労法を守るという建前を貫くことが前提であります。悪法であるかいい法であるかは別といたしまして、悪法であろうと何であろうと、成規の手続で国会の議決を経たものは、日本国民は法治国として守るのであるという建前が前提とならない限りは、法改正を議論するということは何の役にも立たない。従って、私どもが国鉄労使あるいはその他公企業体の労使双方に望みたいことは、やはりこの公労法という建前を両方とも守っていただくことが前提である。従って四条三項の削除の問題について議論をされるならば、やはり関係労働組合においては、とりあえず現行法規を守ってもらうことによって世論の支持を得られることが必要である。特に公労法で規定せられてある争議類似行為の禁止、これもやはり組合自身が守るという建前に立たなければ、それが守られない場合において、四条三項がなければ、いわゆる組合役員というものは一般国民の犠牲に対して担保がない、私はやはりこの法の建前を労使双方が守るということによって、四条三項の問題を解決する世論の喚起が行われるものと信じ、それに期待をいたします。
  341. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 悪法を作っておいて、そうして悪法を守らなければならぬ、まず悪法を守ってからやってこい、こういう議論は私は成り立たぬと思うのです。これはいやしくも憲法が保障しておるところの団結権の問題であります。しかも非常にお困りの法です。悪法が悪ければ、お困りの法です。だれも取扱いに困っておるのです。でありますから、これは面子の問題じゃないと思うのです。石田労働大臣は非常に果断のある方でありますから、こういう点は率直にお直しになった方がいい、かように考えるわけでありますが、どうでしょうか。
  342. 石田博英

    ○石田国務大臣 多賀谷君は悪法とおっしゃる。悪か、善かということは、一体だれがきめるか。とにかく国会の議決を経て成規にきまったものは、厳として犯すべからざる国家の法律であります。その法律を国民は法治国として守るという建前に労使双方が立つことが前提であります。  それから公労法は憲法に違反するという御議論がございます。あるいは公労法は憲法に規定されてある権利を侵害するのだという御議論がございますが、憲法十三条は、憲法に規定せられておる権利はすべて公共の利害との関係において規定せられていることをはっきり申し上げておかなければならぬことだと思います。
  343. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 公共の福祉によっても団結権は制限できないということを、裁判所はこの機関車労働組合の判決で言っておる。ですから労働大臣の言うことが逆なんですよ。公労法全般の話をしているのではない。私は四条三項の話をしておるのであります。しかも悪法でないと言うけれども、あくまでも国際労働条約に違反しておる。しかも民間にはどうかというと、民間に対しては、それをやると不当労働行為になりますよと言っておる。ところが政府がみずからやっておって、そしてこれは悪法でない、こういうことは言えないと思うのです。政府みずから率先してやるべきだ、かように考えますけれども、どうですか。
  344. 石田博英

    ○石田国務大臣 ILOで決議をせられたいろいろな条約案にいたしましても、たとえば労働時間についての条約案は、わが国の基準法の建前と違っておる。どちらがより進んだもので、どちらがより労働者のためになるかということは、議論が別です。そういう建前が違っておるために批准をしないものがございます。私どもはILOの決議を尊重し、できるだけその決議に近づくようにいたしたいと思っておりますけれども、それにはやはりその国々の持っておりますいろいろな諸条件を加味して、やはりその国の労働政策というものがその国によって立っていくことが前提でございます。私は先ほどから申し上げておりますように、団結の自由の今の条約案と同時に問題となっておりました最低賃金に関する条約案につきましては、これを批准せられるような基礎措置を作る立法を準備いたしまして、今次国会に提出するようにいたしておるわけでございます。従って漸次わが国の諸条件の整うのを待って近づいていくということが現実的であり、四条三項について問題があることはわかっておりますけれども、しかしその問題を解決する前提は、やはり公労法なら公労法の建前を守る、公労法全体を言うのではない、四条三項だけだとおっしゃいますが、四条三項はやはり全体との関連においてある条項でありますから、公企業体の労使双方が、とにかく法治国でございますから、この建前を守るということに徹底していただきまして、それが再検討せられる客観的情勢を作っていくことが私は必要であると考えておるわけであります。
  345. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は四条三項の問題は民間企業と何ら異なることはないと思いますが、公務員であるという身分によって四条三項というような規定があるのは非常におかしい。私はこれは民間とも同じであると思う。かように考えておりますが、どうですか。
  346. 石田博英

    ○石田国務大臣 公務員については御承知のように憲法十五条であるかと思いますが、特別の規定がございます。公務員には特別の憲法上の規定があることは御承知の通りでございます。それからもう一つは、非常に大きく公共の利害に影響を与えるからでございます。
  347. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国際労働条約の問題に入りましたから、ついでに一言お尋ねしておきますが、それは国際労働憲章の第十九条には、条約が採択された場合には各国において権限ある機関に提出することを約束すると書いてあります。一体こういう手続を今までとられたことがあるかどうか、これをお尋ねしたい。あなたの方はとったとおっしゃるでしょう。それは報告書という条文だけ、あるいは勧告だけがボックスの中へ入っておる。これで一体実質的な提出になりますか。昔は御存じのように条約の批准は天皇の大権でありますから、枢密院の諮詢事項としてかなり協議をされておるのであります。ところが今日は権限ある機関は当然国会でありますから、当然国会においては批准を前提としなくても、一応審議をする、こういうような形式を前提として提出されるべきが至当ではないか、かように考えますが、どうですか。
  348. 石田博英

    ○石田国務大臣 その点につきましては御意見を尊重いたしまして、これから政府の意見を付して国会に提出する手続を慎重にとって参りたいと思っております。
  349. 江崎真澄

    江崎委員長 多賀谷君に申し上げます。石田労働大臣は渉外関係で退出いたしますので、残余の質疑は御留保を願いたいと思います。  明日は午前十時より委員会を開会いたします。なお理事の諸君は散会後理事会を開きまするので、お残りを願います。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十三分散会