○島上善五郎君 私は、ただいま
議題となりました
政府提案にかかわる
公職選挙法の一部を
改正する
法律案に対し、
日本社会党を代表して反対の
討論を行わんとするものであります。(
拍手)
まず、この
改正案について総括的に指摘するならば、新聞その他の世論がきびしく非難しておりまするように、選挙を前にしたどろなわ的
改正であり、内容がきわめてずさんなものであり、真に必要な
改正を避けていることと、選挙運動期間を短縮することによって、金と地盤のある保守党の古い
議員諸君に都合がよくて革新的な新人の進出の道をふさごうとする改悪案であると断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
以下、少しく具体的に反対の理由を明らかにいたします。
政府案のうち、町内合併に伴う都道府県
会議員の選挙区画定の原則の問題、選挙の管理、執行に関する事務的
規定の整備の点、並びに、ポスター、はがきの枚数を増加する点等についてもなお論議の余地がないわけではありませんが、われわれの断じて承服し得ない点は、選挙運動期間の短縮の点でございます。
政府は、最近における交通、宣伝等の選挙運動手段の発達の
状況にかんがみて運動期間を二十日に短縮することが妥当である、こう
説明しており、また、五日間短縮することによって経費も少くて済むし、候補者のからだが大へん楽になるとも言っております。そうして、これは大した
改正ではないかのように装うているのでありますが、しかし、その真の意図には実におそるべき反動的な党利党略がひそんでおることは見のがすことができません。(
拍手)
申し上げるまでもないところでございますが、
民主政治を真に確立しようとするには、まずその基礎ともいうべき選挙をきれいに正しく行うことが何よりも必要であります。そうしてこのためには、不正、腐敗の選挙運動を徹底的に防止すること、選挙の公営を拡大し、公然たる場において選挙民に政策と候補者の人物を十分に理解し、あるいは批判せしめる
機会をできるだけ外く与えることでなければなりません。
わが国の今日の
公職選挙法は、告示前のいわゆる事前運動をきびしく禁止しておりますことは、皆さん御
承知の
通りであります。従いまして候補者として政策を訴える
機会、また、
国民の側からいえば候補者から政策を聞く
機会は、選挙運動の期間しかないわけでありまして、この大事な選挙運動の期間を五分の一も短縮するということは重大な問題であります。交通や宣伝の機関が発達したからというけれども、少い区でも有権者が三、四十万、多い区では百万以上の有権者を
対象にして広大な地域にわたって、中には、北海道のように、山村から山村へ、漁村へと、交通が不便な地域を運動するのでありますから、顔を見せるだけでも、声を聞かせるだけでも、二十日や二十五日ではとうてい行き届かない地域もあるのであります。むしろ、これらの地区においては、選挙運動期間の延長をすら要請されておるのであります。公然たる運動の期間を短縮することは、勢い事前運動が激烈となり、あるいは悪質となるという反作用を起しまして、今でさえ法網をくぐった悪質な事前運動に
国民の非難の声が高まっておりまする際に、もしこれ以上露骨、悪質な事前運動が盛んになりましたら、一体どうなるでございましょうか。選挙の腐敗は政界の腐敗、堕落に通じ、
汚職、疑獄に通じるのであります。そして、ひいては
民主政治そのものをも大きく虫ばんでしまうことを、私ども心配しないわけには参りません。
私がここで特に声を大にして強調したい点は、選挙法を
改正する際に、候補者や運動員あるいは現職
議員の都合ばかりを考えて
改正すること自体が根本的に間違っておるということであります。(
拍手)選挙は、主権者たる
国民がその主権を行使する大事な
行為であります。主権者たる
国民の都合、便宜、こういうものをまず考えて法
改正に臨むべきものであります。
今回の
改正に際しまして自民党の中には、立会演説会をやめてしまおう、街頭演説もやめてしまおうという有力な
意見がありましたことは、新聞紙の報ずるところによって明らかであります。ところが、そこまで一挙に
改正しようとすると、世論の非難を浴びる、来たるべき総選挙にも悪影響を及ぼす、また、
法案の通過が困難になる、こういう配慮から、今度は期間の短縮だけにとどめたのであって実はこの期間短縮の
改正案の意図の中には立会演説会廃止、街頭演説廃止という底意があることは、おおいがたい事実であります。(
拍手)これは、私が前申しました主権者たる
国民を全く無視したものであり、
国民の望む選挙公営の拡大、公明選挙とは全然逆行する反動的改悪といわなければなりません。今回は期間の短縮だけで、立会演説や街頭演説には何ら触れていない、影響を及ぼさない、こう言うかもしれませんが、これもとんでもない欺臓でございまして、昨日の公聴会においても、選挙管理
委員長たる公述人が、選管ではどう
努力しても従来に比べて四日間だけは立会演説会の日数が減るということを明らかにしております。
要するに、この期間の短縮は、主権者たる
国民から選挙運動を受ける
機会、政策や候補者の人物を知る
機会を大幅に奪ったものであることは明らかでありまして、(
拍手)私どもの断じて
賛成し得ない点であります。
また、この
改正は、新人の進出を困難ならしめ、名の売れた古い人々、現職
議員に都合のいい
改正であることも事実で、世論はこれをきびしく非難しております。科学の飛躍的な進歩、人工衛星、ミサイル時代といわれる今日、内外の政局は大きく変化し、発展しております。この新しい時代には、私は新しい時代の要請をになった新人がどんどん政治舞台へ出てくるようでなければほんとうではないと思う。(
拍手)今回の
改正は、新人の進出を食いとめ、
日本の政治を動脈硬化に陥れて、歴史の流れをはばまんとする、おそるべき反動的改悪と断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
なお論じたい点はたくさんございますが、お約束の時間もありまするから、私の
討論は以上をもって終りますけれども、今日からでもおそくないという言葉がありますように、あやまちを改むるにちゅうちょすることなかれと自民党の諸君に言いたいのであります。どうか私どもの反対に胸に手を当てて静かに耳を傾けていただきまして、
政府提案を
全会一致をもって否決されんことを望む次第であります。(
拍手)