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1958-03-14 第28回国会 衆議院 本会議 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十四日(金曜日)     —————————————  議事日程 第十四号   昭和三十三年三月十四日     午後一時開議  第一 企業合理化促進法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二 合成ゴム製造事業特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第三 理化学研究所法案内閣提出)  第四 繭糸価格安定法の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第六 日本道路公団法の一部を改正する法律案内閣提出)  第七 道路法の一部を改正する法律案内閣提出)  第八 道路整備緊急措置法案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日ソ漁業問題交渉における日本政府代表任命につき外務公務員法第八条第三項の規定により議決を求めるの件  日程第一 企業合理化促進法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第二 合成ゴム製造事業特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 繭糸価格安定法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第五 国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第六 日本道路公団法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第七 道路法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第八 道路整備緊急措置法案内閣提出)  国民健康保険法案内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑  公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  日本国インドネシア共和国との間の平和条約締結について承認を求めるの件  日本国インドネシア共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件  旧清算勘定その他の諸勘定の残高に関する請求権の処理に関する日本国政府インドネシア共和国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出)     午後一時四十分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、日ソ漁業問題交渉における日本政府代表に本院議員高碕達之助君を任命するため、外務公務員法第八条第三項の規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。      ————◇—————
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一、企業合理化促進法の一部を改正する法律案日程第二、合成ゴム製造事業特別措置法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。商工委員会理事笹本一雄君。     …………………………………     〔笹本一雄登壇
  6. 笹本一雄

    笹本一雄君 ただいま議題となりました合成ゴム製造事業特別措置法の一部を改正する法律案外一案について、商工委員会における審議経過及び結果の概要を御報告申し上げます。  まず、合成ゴム製造事業特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律は昨年の第二十六回国会において制定され、三十二年六月一日施行され、この法律に基いて同年十二月日本合成ゴム株式会社が設立されたのであります。現行法は、この法律によって設立される会社に対し日本開発銀行出資することを定めておりますが、一方、その附則において、法律施行後一年を経過したときは政府出資による方式に切りかえられなければならないことを規定しているのであります。今回の改正要旨は、この附則規定に基いて改正を行おうとするものであります。なお、このために要する政府出資金につきましては、昭和三十三年度予算に十億円が計上されているのであります。  次に、本法律案内容につきまして、その概要を簡単に申し上げます。第一は、現行法第二条を改正して、日本開発銀行出資方式政府出資方式に改めることであります。第二は、政府出資への切りかえに伴いまして、監督規定を強化し、会社の重要な財産の譲渡、社債の募集、長期借入金等については、通商産業大臣の認可を受けなければならないこととしたのであります。第三は、政府は、会社経理的基礎が確立されたと認めたときは、有価証券市場状況を考慮して、なるべくすみやかに政府の所有する株式を処分する旨の規定を設けたことであります。第四は、この法律の題名を日本合成ゴム株式会社に関する臨時措置に関する法律に改めたことであります。  本案は、二月二十七日当委員会に付託され、翌二十八日前尾通商産業大臣より提案理由説明を聴取いたしました。その後、三月十二日質疑を終了いたしましたので、討論を省略して直ちに採決に付しましたところ、全会一致をもって可決すべきものと決した次第であります。  次に、企業合理化促進法の一部を改正する法律案について申し上げます。  科学技術振興一環として、わが国で考案された新技術をすみやかに企業化することは、現下の急務でありまするが、御承知通り、この新技術企業化するに当りましては通常多額資金を要し、かつ、企業化について相当の不安を伴うものが多いのでありますから、資本蓄積の乏しいわが国企業は、これが企業化への踏み切りに相当の危険を感ずる例が少くないのであります。かかる状況に対処いたしまして、新技術企業化促進するため、その企業化に必要な機械設備等について新たに特別償却を行う道を開く必要があるのであります。  次に、改正の要点は、第一に、わが国で行われた試験研究の成果である新技術企業化しようとする者は、主務大臣及び大蔵大臣に申請して、その企業化国民経済上緊要な新技術企業化であり、かつ、その取得する機械設備等当該技術企業化する場合欠くことのできないものである旨の承認を受け、第二に、申請者は、この承認にかかる機械設備等承認一定期間内に当該企業化の用に供したときは、当該設備承認内容に合致している旨の主務大臣の証明を受け、これによって租税特別措置法の定めるところにより特別償却を行うことができるようにしたことであります。  本案は、二月十五日当委員会に付託され、十八日小笠通商産業省政務次官より提案理由説明を聴取し、二十八日及び三月十一日慎重審議を行いました。  次いで、十二日質疑を終局し、討論を省略して直ちに採決に付しました結果、全会一致をもって可決すべきものと決した次第であります。  右両案に関する審議の詳細は会議録を御参照願うこととしまして、以上をもって御報告にかえます。(拍手
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  9. 山中貞則

    山中貞則君 日程第三は延期せられんことを望みます。
  10. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程第三は延期するに決しました。      ————◇—————
  12. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第四、繭糸価格安定法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。農林水産委員長中村寅太君。     …………………………………     〔中村寅太登壇
  13. 中村寅太

    中村寅太君 ただいま議題となりました、内閣提出繭糸価格安定法の一部を改正する法律案について、農林水産委員会における審査経過及び結果について御報告申し上げます。  糸価安定特別会計は、現在六十億円、うち自己資本三十億円、借入金三十億円の原資をもって繭及び生糸価格安定を行なっておりますが、現下の順調な生産態勢糸価の低落に対処し、輸出促進蚕糸業の経営安定のため特別会計法実体法たる本法を強化する必要があり、本案提出されたのであります。  その内容について概要を申し上げますと、第一に、現行政府の直接買い入れ、もしくは売り渡し、または特別買い入れによって防止することができない安定価格帯内の異常な価格の変動を抑制し、安定させるため、日本輸出生糸保管会社特別買い入れ制度を拡充することとしております。第二に、右の会社法律に基く特別会社に改組し、業務の適正な運営をはかることとしております。第三に、政府保有生糸の価値を保持するため、買いかえができることとしております。  なお、本改正法案と並行して、別途糸価安定特別会計法の一部改正法案提出せられ、同会計負担することができる証券発行または借入金限度額を二十億円引き上げて五十億円とすることとしておりますが、両々相待って、今後の蚕糸対策に対処しようというのであります。  本案は、二月二十一日政府から提出され、三月十二日審査を行いましたところ、委員諸氏より最近における生糸先物相場の暴落に関連して熱心な質疑があり、これに対し、政府からは、特別会計の保有する買い入れ資金が不足する場合には、今後さらに引き続いてその増額を行い、現行繭糸価格最低価格の堅持に遺憾なきを期するものである旨の答弁があり、翌十三日討論を省略して採決しましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決した次第であります。  以上をもって御報告を終ります。(拍手
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  16. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第五、国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。大蔵委員長足鹿覺君。     …………………………………     〔足鹿覺登壇
  17. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいま議題となりました国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審議経過並びに結果について御報告申し上げます。現在、国及び公社等会計事務簡素化につきましては、国庫出納金等端数計算法により、収入金及び支払金金額についての端数計算方法が定められておりますが、本改正案は、これを債権債務金額についての端数計算方法に改めるとともに、その端数計算方式につきましても、現行方式原則として円未満四捨五入でありますものを円未満全額切り捨て方式に改める等、金融機関などの一般取引慣行にもかんがみ、会計経理事務の一そうの簡素化をはかろうとするものであります。  本案につきましては、質疑及び討論通告がありませんので、昨十三日直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決いたしました。  右、御報告申し上げます。(拍手
  18. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  19. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  20. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第六、日本道路公団法の一部を改正する法律案日程第七、道路法の一部を改正する法律案日程第八、道路整備緊急措置法案、右三案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。建設委員長西村直己君。     …………………………………     〔西村直己登壇
  21. 西村直己

    西村直己君 ただいま議題となりました日本道路公団法の一部を改正する法律案道路法の一部を改正する法律案及び道路整備緊急措置法案の三法案につきまして、建設委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、日本道路公団法の一部を改正する法律案について申し上げます。  現在、日本道路公団におきましては、小牧—神戸間の高速自動車国道建設につきまして、目下用地買収の折衝を進めているのでありますが、この建設費は約八百億円の巨額に達しますので、国内資金の調達とあわせて外貨資金を調達する必要が認められるのであります。従いまして、この際、国際復興開発銀行から外貨資金を借り入れるための必要な措置といたしまして、日本道路公団国際復興開発銀行締結する外貨資金借り入れ契約に基き外貨で支払わなければならない債務につきまして政府が保証することができることとするとともに、利子に対する所得税を免除するものといたそうとするものであります。  次に、道路法の一部を改正する法律案について申し上げます。  最近におきまするわが国道路輸送量増加、なかんずく長距離道路輸送量増加の傾向に対処する必要上、幹線道路網、特に一級国道整備をはかることとし、これがため従来原則として都道府県知事が行うことといたしておりました一級国道の新設、改築は原則として建設大臣が行うこととするとともに、特に指定しました区間につきましては維持管理についても建設大臣が行うことといたしたのであります。これに要する費用負担割合等につきましても所要規定整備いたしまするとともに、二級国道地方道もあわせまして道路網整備をはかろうとするものであります。  最後に、道路整備緊急措置法案について申し上げます。  御承知通り現行道路整備費財源等に関する臨時措置法は、昭和二十九年度を初年度とする道路整備五カ年計画を樹立いたしまして、その実施に要する費用財源として揮発油税収入を充てる措置を講じてきたのでありまして、この法律わが国道路整備促進に対して果してきた役割はまことに重大なものがあったのでありますが、最近におきまする産業経済の急速な発展に伴い、この程度道路整備計画の規模をもってしては、とうてい激増する今日の道路輸送の需要に応ずることが困難となって参りましたので、この際、この道路整備費財源等に関する臨時措置法を廃止いたしまして、新たなる構想のもとに、わが国道路画期的整備促進をはかるため、本案提案されるに至ったのであります。すなわち、昭和三十三年度を初年度とする道路整備五カ年計画の樹立、その実施に要する費用財源措置、国が直轄で行う道路整備に要する費用についての地方公共団体負担金の額の特例、及び国の負担金割合または補助金の率の特例等に関し規定をいたしておるのであります。  右三法案中、日本道路公団法の一部を改正する法律案は二月二十一日、道路法の一部を改正する法律案並びに道路整備緊急措置法案は二月二十二日、それぞれ本委員会に付託され、三月十三日に至る間、地方行政委員会との連合審査を行う等、慎重に審査を進めたのであります。  その詳細は速記録に譲りますが、二、三の質疑の重要な点を申し上げますと、まず、「今回の道路整備五カ年計画構想はいかなるものか」との質疑に対しまして、当局は、「昭和三十三年度以降五カ年間の総道路投資額はおおむね九千億円を目標とし、その内訳としては、一般道路事業五千六百億円、有料道路事業一千五百億円、地方単独事業一千九百億円を予定している」旨の答弁がありましたが、各委員より熱心にこの内容財源措置見通し等につき質疑が行われたのであります。  次に、国が道路工事を施行した場合、その一部を地方公共団体負担させるのでありますが、「この負担金を分割払いした場合、利息全額地方公共団体負担とさせるのは酷ではないか」、また、「昭和三十四年度以降における国の負担金割合または補助金の率については別に法律をもって定める旨を規定し、なぜ本法において五年間にわたってはっきり定めないのか」との、主として地方財政の見地に立つ質疑が行われましたが、これに対しましては、「昭和三十三年度については、道路整備費財源等に関する臨時措置法において、高率の負担金割合補助金の率が定められているため、これを踏襲したのであるが、本法時限立法であり、かつまた、昭和三十四年度以降については、国と地方との財政区分について根本的に再検討される時期に当るので、道路事業についても、これらの一環として考慮さるべきものとして、その際別の法律で定めることとしたものであって、この点については、地方公共団体負担金にかかる利息負担の問題とともに、今後関係各省間において十分検討の上措置したい」旨の答弁がありました。  また、「一級国道直轄管理に関する指定区間は、東京—大阪間を初め、大都市の付近に集中するので、大都市の所在しない財政力の貧弱な県との間の不均衡がますますはなはだしくなるのではないか」という質疑に対しましては、「諸般情勢により、昭和三十三年度においては指定区間を一千五百キロに押えざるを得なかったため、自動車交通量の多い、維持にきわめて費用のかかる区間を選んだのであるが、今後五カ年計画の進展に伴い、年々この直轄管理区間は延長していくこととする」旨答弁されたのであります。  その他、最近における自動車交通の急速な発達に対処するための高速自動車国道中心とする道路網整備問題等についても、熱心に質疑が行われました。  次いで、日本社会党を代表して、三鍋義三君より、道路整備緊急措置法案に対する修正動議提出されました。その修正案内容は、原案第五条第一項中「昭和三十三年度」とあるを「昭和三十三年度以降五箇年間」に改め、同条第二項を削ることにより、昭和三十四年度以降においても昭和三十三年度におけると同様の国の負担金割合等についての特例を設けようとするものであります。  かくて、三鍋義三提出道路整備緊急措置法案に対する修正案並びに原案及び日本道路公団法の一部を改正する法律案道路法の一部を改正する法律案を一括して討論に付しました後、まず三鍋義三提出道路整備緊急措置法案に対する修正案並びに原案について採決に入りましたところ、修正案は少数をもって否決され、原案全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。次いで、日本道路公団法の一部を改正する法律案道路法の一部を改正する法律案につきまして一括して採決に入りましたところ、いずれも全会一致をもって可決すべきものと決定した次第であります。  右、御報告申し上げます。(拍手
  22. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 三案を一括して採決いたします。三案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、三案は委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  24. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際、内閣提出国民健康保険法案趣旨説明を求めます。厚生大臣堀木鎌三君。     〔国務大臣堀木鎌三君登壇
  25. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 国民健康保険法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  福祉国家の理想を実現して参りますために、政府はつとに社会保障向上及び増進に努力して参ったところでありますが、各種の施策のうち、最も緊急を要するものが疾病に対する医療保障整備にありますことは、広く一般認むるところであります。このため、政府は、昭和三十二年度予算編成に際しましては、最重要施策の一つとして、昭和三十五年度を目途とする国民保険の達成を掲げ、国民健康保険普及中心諸般基礎的条件整備を進めて参ったのであります。この法律案は、さきに、社会保障制度審議会が行なった医療保障制度に関する勧告にこたえて、現行国民健康保険法を再検討し、財政上の裏づけとともに、国民保険基礎法として、現行法を全面的に改正しようとするものでありまして、社会保障制度審議会におきましても、慎重審議の結果、原則的に賛成を得、さらに答申の線に沿って所要整備を加え、ここに提案をいたした次第であります。この法律案要旨は、第一に、国民保険態勢の確立のため国の責任明確化いたしたことであります。現行法では、療養給付費の二割と事務費全額に対しまして補助金を交付しているのでありまするが、療養給付費補助金は総額で療養給付費の二割とし、そのうち二〇%を財政調整に充てて交付しておりましたため、療養給付費最低一割二分程度から二割五分程度までその交付割合市町村によって相違し、概して申し上げますと、地方財政の良好な市部には不利となっておったわけであります。これからの普及の重点は大都市を含む市部にありますので、普及の障害を除去するとともに、国民健康保険に対する国の責任明確化をはかるため、従来の補助金負担金に改め、療養給付費の二割はどの保険者に対しても負担することとし、事務費につきましても負担金とするのほか、新たに療養給付費の五分に相当する調整交付金制度を設けて、国民健康保険財政を調整し、負担の公平及び内容充実をはかることといたしたのであります。  第二に、給付内容充実であります。従来の国民健康保険は、健康保険と比較いたしますと、給付範囲の面でも著しく劣っていたのでありますが、これを健康保険同一とし、また、給付割合も大多数の保険者が五割にすぎなかったのでありますが、財政充実とともに、これについても漸進的に向上を期することができるようにした次第であります。  第三に、国民健康保険における療養担当者制度につきまして、最近の医療の実情に応ずるとともに、この事業に協力を希望しているすべての私的医療機関が参加し得ることとするとともに、各般の規定におきまして、公私医療機関を差別せず、全く同一法律的取扱いとし、指定の拒否、取り消し等につきましても地方社会保険医療協議会の議を経ることとし、さらに弁明の機会を与え、診療報酬につきましても、保険者療養担当者が協議して定めるため、割引等が見られたのでありますが、健康保険同一とする等、その地位の安定をはかったことであります。  第四に、昭和三十五年度まで及びその後の例外的な経過規定を設けまして、市町村国民健康保険実施する建前を明らかにしたことであります。  政府は、この法案の成立によりまして、いまだ医療保険の対象となっておらない約二千万人の国民に一日も早く医療保障を及ぼしたいと念願いたしておるものであります。  以上がこの法案趣旨でございます。(拍手)      ————◇—————
  26. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑通告があります。順次これを許します。  野澤清人君。     〔野澤清人登壇
  27. 野澤清人

    野澤清人君 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となりました国民健康保険法案に対し、そのおもなる事項に関し、岸総理初め関係閣僚に対しまして質疑をいたさんとするものであります。  この国民健康保険法案は、被用者保険である健康保険法とともに代表的な医療保障制度でありまして、いわゆる岸内閣社会保障政策一大主柱とも称すべき、きわめて重要なる施策であります。ことに、昨今の国内情勢は、岸内閣貧乏追放とともに、社会保障政策の強力なる推進を熱望しているのでありまして、国民年金早期実現とともに皆保険対策に万全を期することは、歴代の内閣に見ざる国民の世論が熱狂的に岸内閣に集中せられ、渇仰の的として自民党政府に絶大なる信頼と期待とが寄せられておるのであります。(拍手)従って、わが自由民主党は、昭和三十二年度の予算編成に際し、最重要施策としてこの国保問題を大きく取り上げ、次いで、今次の昭和三十三年度の予算においては、いわゆるきびしい予算であったにもかかわらず、優先的に考慮されたことは、あまねく国民の知るところであります。ことに、財政的な裏づけを得まして、ここに、政府がかねてからの公約通り昭和三十六年度を目途とし逐次給付内容充実し、国の責任を明らかにするために国民健康保険法案提出したことは、わが党の社会保障に対する熱意を具体的に立証したものでありまして、ほとんど大部分の国民が、まず病気に際し安くてよい医療がどこででも安心して受けられる、いわゆる医療保障の完璧に邁進しているのでありまして、比較的低調な所得保障、つまり老齢、廃疾、遺族等に対する国民年金へ突入する段階の第一ステップを踏み出したものと言うことができるのであります。(拍手)  そもそも、社会保障は、すべての国民の経済的苦難に対処せんとするものでありまして、近代国家の本質的な使命の一つでありますが、近代国家は国民の一人々々の負担によりまかなわれ、かつ、その総意によって運営されていくものでありまして、この意味において、社会保障国民の総意によって組み立てられ、かつ、一人々々によって積極的に負担されることによってのみ、その健全な運営が期待されるものと信ずるのであります。巷間、ややもすれば、社会保障とは、国民のふところとは何ら関係がなく、むしろ国家から保障をただで受けられるものだというような間違った風潮が見受けられるのであります。国家の財政国民のふところから出たものでありまして、保険料といい、国庫負担というも、それは単に負担方法の相違にすぎないのであります。もとより、所得の再分配をはかり、あるいは低額所得者階層に国民生活の最低限度を少くとも享受させようとする場合、受益者の負担ともいうべき保険料だけではまかない切れず、他の方法、つまり、一般課税によってまかなわなければならないが、社会保障というものの観念の仕方を、ただでもらうものだというような考え方ではとうていうまくやっていけるものではないのであります。(拍手)この点に関し、総理大臣はいかような所見をお持ちになっておられるか、率直に御答弁が願いたいと存じます。  第二に、本法案によって国民保険のレールは敷かれ、医療保障は達成されようとしているのでありますが、国民保険の達成までには幾多の難関があると思うのでございます。ことに、本法案の重要な骨子ともいうべき、市町村に対する実施義務とか、給付範囲の統一をはかるために健康保険同一にしたとか、給付割合向上を策した等々を初め、近代医学、薬学の進歩に伴う医療担当者に課せられた単価の値上げ、点数の改訂、支払い方式整備等を含む医療機関の保護にも万全の努力を払うべきであると信ずるのであります。ことに、国民健康保険の消長に最も重要な役割を果した直営診療所と一般私的医療機関との差別待遇が国民保険基礎的条件の一つにも数えられておるのでありますが、本法案の成立とともに、国保の発展のため、全国の公私の医療機関に対する基本的な構想をどのようにお考えになっておられるのか、また、どういうふうな取扱いをされ、指導せられるお考えなのか、総理大臣並びに厚生大臣の所見を伺いたいと思うのであります。  第三点は、給付範囲並びに給付の割合を統一して、給付範囲健康保険並みとし、給付割合を単一化して最低五割としているのでありますが、総理の諮問機関である内閣社会保障制度審議会では七割給付の答申をしております。この事実に対しまして、総理大臣は、いかように理解せられ、今後どのように対処するつもりであるか。また、厚生大臣は、皆保険を前提として、あくまでも本法案趣旨通り五割の原則を持ち続けるのか、あるいは漸進的な考え方としてこの提案をされたのか。明確に御答弁願いたいと思うのであります。  第四点は、先にも指摘いたしました通り、あらゆる医療機関に対する政府の態度であります。従来の市町村長の権限を都道府県知事に集約して一本化し、医療機関の指定に踏み切ったことは非常に国民健康保険としては画期的な大英断であり、ややもすれば、健康保険の場合と異なり、医療担当者に差別的な取扱いをしいるがごとき感じを与えておったのでありますが、全国的に見て直営診療所四千カ所、一般診療所四万カ所といわれる医療機関の完全利用に対し、果して国保が医療機関について機会均等の原則のもとに自信が持てるかどうか、また、これらによる赤字克服が維持できるかどうか、厚生大臣の決意のほどを承わりたいのであります。  第五点は公私医療機関に差別を設けるべきではないことはもちろんでありますが、国民保険とともに、医療担当者の地位の保障または安定策をいかように考えておるのか、これまた厚生大臣にお答えを願いたい。  第六点は国の責任に帰すべき財政措置についてでありますが、特に大蔵大臣にお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。すなわち療養給付費及び事務費の補助は当然精算さるべきものと思いますが、本法案で新たに示された調整交付金は、市町村における療養給付費の見込額の百分の五としているのであります。国の負担といい、調整交付金の百分の五といい、いずれも国庫よりの国保に対する義務支出と考えられますが、一体、見込額に相当の相違が生じた場合には、いかなる御処置をおとりになるのか。また、この際は当然補正さるべきであると考えますが、大蔵大臣の所見を示していただきたいのであります。  第七点は、自治庁長官にお尋ねをいたすわけでありますが、国民健康保険特別会計として、原則的には保険給付費は保険料と国庫負担金でまかなわるべきでありますが、なお、市町村地方自治の精神にのっとり、市町村議会の決定によりまして、市町村段階で所得の再分配を行うことを禁止するいわれはないと思いますが、健全な国保の発展のために、明確に御所見を発表してほしいのであります。また、さらに、建前としまして健全化の線をたどるとするも、これを急激に行うことは地方団体にいたずらに混乱を生ずるのみと考えられますが、この点に関し、重ねて自治庁長官の御答弁を承わりたいのであります。以上は国民健康保険法案提出に際し、重要な事項について質疑をしたのでありますが、最後に、岸総理大臣に、総括的な事項として、もう一点だけ伺っておきたいのであります。つまり、岸内閣国民保険政策の推進は基礎的条件の最大課題であるとまで指摘せられるこの国民健康保険法案が本日提案されたのでありますが、解散気がまえの本国会において成立が危ぶまれるようであってはせっかく国民の多くが絶大なる信頼と期待とをささげております自民党内閣に一大汚点を残すものと思われます。この重要法案審議に当っては当然、厚生大臣はもちろんのこと、総理大臣みずから陣頭に立って早期成立をはかるべきだと思われますが、岸総理大臣の本案に対する決意のほどをお聞かせ願いたいと思うのであります。そして、国民保険に対する総理の熱意を天下に明示していただきたいことを期して、私の質疑を終りたいと存じます。(拍手)     〔国務大臣岸信介君登壇
  28. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 野澤君の御質問にお答えをいたします。  第一点の、社会保障制度に対する考え方でございます。言うまでもなく、近代国家はあらゆる面において社会保障制度を完備して参っておりまして、われわれも、医療保障中心として、これを確保するための国民保険制度実施、並びに老齢、廃疾等のための経済的困難に対して所得保障を考える、国民全体を対象とする国民年金という、この二つを社会保障制度の二大柱として社会保障制度の完備を期するということは、わが党並びにわが岸内閣の最も重要政策といたすところでございます。そこで、国民保険の問題については、御意見にもありましたように、すでに、三十二年度を初年度といたしまして、これが完成のために第一歩を踏み出しております。本年度におきましても、すでにこれがために必要な三十三年度の予算措置を講じております。社会保障制度の健全な発展を期するためには、国民全体が、いわゆる社会連帯の観念に徹して、これを盛り立てるということでなければならぬと思います。今お話しのように、社会保障制度というものは、国民に何ら関係のない第三者のポケットから、ただでもらうものだというような考え方ではなく、言うまでもなく、国家の一般会計負担と申しましても、これことごとく国民のふところから出ておる租税でありますし、また、保険料も個々の人から徴収するところの国民負担であります。要は、この場合において、国が責任を持って全国民の健康を保障するという立場の責任を尽すということと、負担の公平なる分担を考えていくということが大事なことであろうと思うのであります。負担及び分配の公平を期するということが、国としてやらなければならないことである。そして、国民の諸君がよくその趣旨を理解して、私の申し上げましたように、社会連帯の気持で、これが健全な完成に向って御協力あらんことを切に願うわけであります。  第二はいわゆる直営診療所と他の一般の私営の医療機関との関係でございます。従来、国民健康保険の実例を見ますると、ある地方におきまして、いわゆる直診のみを対象として、例外的に扱っておるところもあります。また、この公私の間においては十分な調整がとられず、公平な取扱いになっておらない。いわゆる私営の方については非常に限られた利用しか認められておらないような事態もございます。これらに対しましては、やはり、この国民保険実施された場合を考えてみますと、医療機関の立場は、公営、私営ということによって、その本質に何らの変りはないわけであります。従いましてもこれに対する取扱い措置等につきましても、また考え方につきましても、全上然同様な考え方に立ってやらなければならぬと思います。ただ実際上、四千に上ろうとしておる直営の診療所がございまして、今申しましたような考えでもって医療機関を拡大していくということになりますと、これはやはり保険財政の問題の上においてどうなるかという問題も考えていかなければならぬと思います。これにつきましては、特に今回定率の二割の国庫負担の上に五分の調整交付金制度を設けまして、これの運営によってその万全を期して参りたい、かように考えております。  国民健康保険における給付金の割合が五割となっておるが、これは社会保障制度審議会においても七割ということを答申しておる、これに対してどう考えるかという問題でありますが、七割の方が五割よりも望ましいことは言うを待たないのであります。ただ、これは、各般の財源措置、また保険財政の基礎を強固にいたしまして、漸次こういうふうに改善していくべきものである、かように存じております。  次に、あらゆる医療機関に対する取扱い、すなわち、医療担当者の地位の保障及び安定をどう考えるかという御質問であります。御指摘の通り国民保険を進めていく上におきまして、医療担当者の地位の保障、安定ということは、最も大事なことであると思います。そのためには、まず、国民健康保険に参加を希望される医療機関のすべてに、その機会が保障されるということであります。第二には、参加を拒否された場合における取扱いが慎重でなければならぬ。第三は保険者負担金たると一部負担金たるとを問わず、その支払いが確保される。この三点が大事だろうと思います。これらにつきましては、それぞれ今回の改正におきまして適当な措置を講じております。  最後に、本法案の成立について政府の所信を問うということであります。本国会に提案をされて、すでに衆議院を通過いたしました予算案は、目下参議院で審議されておりますが、その他にも重要な法案をわれわれは本国会に提案をいたしておりまして、これが成立を期することはわれわれに課せられておる最も重大な任務であり、これが必要であるということは一月に私の所信を明らかにいたしております。今回提案いたしております諸法案のうち、本日上程になりました国民健康保険に関するこの改正案は、その重要中のまた重要なるものでございまして、これが成立につきましては、政府としてはあらゆる努力をいたすつもりでありますし、議員の皆様も十分御審議をいただきまして、一日も早くこれが成立して、国民にその福祉が及ぶように、御協力を切に願う次第であります。(拍手)     〔国務大臣堀木鎌三君登壇
  29. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 総理大臣から、給付の割合、直診と私的医療機関の関係、市町村から都道府県知事指定をまかした点について詳しく御説明がありまして、ほとんど私の説明は要らないと思うのであります。  ただ一点だけ申し上げておきますと、最近の国保を推進いたして参ります上において一番大切なのは、医療機関の態勢の整備であります。こういう医療機関の整備をはかります上において、広域的にものを考えて参らなければならね。また、専門医制度等が行われるようになりますと、やはり、この広域な区域においてものを考え、これを国保に対して全面的に協力する態勢を整えることが必要である、こう考えておる次第であります。  その他につきましては総理大臣からの御答弁通りであります。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君壇〕
  30. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私に対します御質問は、国民健康保険財政強化のために今回新たに設けました調整交付金の性格についてであったと思うのであります。この調整交付金は国の義務ではありません。しかしながら、療養給付費の総額の五%に当るものを調整交付金として交付するという方針を明らかにいたしておりますから、もしもこの見込額に相違を生ずるというような場合におきまして、補正等、適当な場合にこれを是正いたしますことは、私は当然であると考えております。(拍手)     〔国務大臣郡祐一君登壇
  31. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 第一点は、御指摘のように、国民健康保険会計保険料と国庫負担金を建前とすべきものでありまするから、それにのっとって赤字を生じないように十分指導いたしまするが、もっとも、直営診療所でありまするとか、保健婦でありまするとか、一般会計で持つべきものについては、はっきり市町村責任を負うことにいたしたいと思います。  第二の、健全化をはかる余り、急激な変化を来たさないようにという点につきましては、十分留意をいたし、かつ、すでに発生しております赤字については、一般会計からの借り入れ等によって措置をしまして、順次健全化に進んで参りたいと思います。
  32. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 岡本隆一君。     〔岡本隆一君登壇
  33. 岡本隆一

    ○岡本隆一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました国民健康保険法について、岸総理、一萬田大蔵大臣並びに堀木厚生大臣に若干の質問を行わんとするものであります。(拍手)  岸総理は、昨年の春首相就任とともに、貧乏の追放を国民への公約とされました。まことに大胆にして率直なその所信の披瀝には、私どもは心より尊敬の念を抱きました。そして、貧しさにあえぐ国民のために、その成果の結実の一日も早からんことを祈りました。しかしながら、その後の岸内閣の諸施策を見て参りますと、だんだん私たちのその希望は薄らいでいくのみか、岸総理が初めてその責任において編成されました本年度予算を見るに及びまして、私たちは大いなる失望を感ぜざるを得なくなりました。(拍手)  貧乏の追放には、何をおいても、貧窮の一番大きな原因となるところの疾病の対策といたしまして、医療保障こそ第一義的なものと考えなくてはなりません。国民保険の声に、国民の目に大きな輝きが出て参りましたのも、けだし当然といわなくてはなりません。しかるに、大いなる期待の的となっておりました国民健康保険法改正案も、その財政的な面における進歩といたしましては、わずかに本法案においては五分の調整交付金の制度が設けられたほか、現行制度に比しまして、さしたる進歩の跡を見ることができません。  国民保険推進のための基礎的諸条件のうちで最も重要な問題は、国民健康保険地方財政に及ぼすところの財政的圧迫の排除であります。昨年十月末の自治庁の発表を見ましても、昭和三十一年度の国民健康保険事業の決算状況は、全国約二千六百市町村のうち二千二百までが赤字を出し、国民健康保険組合の八割強が、市町村一般会計よりの繰入金によって、ようやくその命脈を保っているというのが、その実相であります。(拍手国民健康保険の被保険者の八五%が月収二万円以下の低額所得層であり、保険料の負担能力に乏しい人たちであることは、御承知でありましょう。国民健康保険財政が、医療給付費の二割国庫負担をもってしてはその運営の不可能であることは、すでに社会保障制度審議会を初めとして、いやしくも社会保障に関心を持つ者の間に定説となり、与党内部においてすら、その声がようやく高まりつつあるときに、今回の改正案においては、これを従前通りの二割にとどめ、わずかに五%の調整交付金でお茶を濁しておられるのは、全く岸総理医療保障への無理解を暴露したものと断ぜざるを得ません。(拍手)  社会保障制度審議会は、総理によって委嘱された社会保障制度に関する最も権威ある機関というべきであります。日本社会党は、すでに早くより医療費の三割国庫負担の必要を強く主張し、社会保障制度審議会もまたこれを勧告しているのでありますが、岸首相は何ゆえにこれらの正しい声に耳を傾けようとされないのであるか。冷たき心もてわが道を行くと言われるのであれば、地方公共団体の経済的事情は、いかに法をもって強制しようとも、皆保険を推進せしめ、昭和三十五年度をもってそれを完了せしめることは不可能であると思うのでありますが、岸総理並びに大蔵大臣財政的な観点からの御所見を伺いたいと思うのであります。(拍手)  次に、吉田元総理は結核撲滅五カ年計画を立て、昭和二十八年、結核予防法が施行されました。自来五年、結核の死亡数は半減いたしましたが、結核患者は依然として減少せず、その数三百万と称せられております。そして、その猛威は相変らず多数の国民を窮乏の道へ追い立てているのであります。岸首相は、本年度予算編成に当って、それを忘れたかのごとき態度をとっておられるのは、まことにわれわれの遺憾とするところであります。  社会病としての結核の治療を個人の責任に帰することなく、国の責任において治癒せしめんとして乗り出した結核予防法は、まさに画期的な政策であり、吉田反動内閣のただ一つの好ましき落し子であったともいうべきでありましょう。しかるに、その後、この法律はきわめて冷たく育てられ、五カ年を経た今日、なお、おびただしい結核患者を温存し、国民は常に結核感染の危険にさらされて、結核医療費が今日の社会保険財政を著しく虫ばんでいることは、岸総理もすでによく御存じのはずであります。結核医療費の解決なくして保険経済の健全化なきは、今日だれ一人疑う者はありません。ことに、財政的基盤のきわめて弱い国民健康保険制度財政的に強化する道は、結核医療費の重圧排除以外に道はありません。しかるに、岸総理はその声に耳をおおい、しかも、本年度は、厚生省よりしたところの結核医療費の公費負担増額要求をにべもなく断わられたのは、いかなる理由に基くものでありますか。(拍手)国策としての結核撲滅を放棄されたのか。また、これには一萬田大蔵大臣が最も強い抵抗を示されたように聞いておるのでありますが、大蔵大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。(拍手) さらに、また、結核医療費の社会保険財政に占める位置をどのように理解しておられるのか。今後も、相変らず、結核医療保険財政におんぶの形でやっていこうとされるのか。重要な国策としての結核の医療は、自今、政府責任において、別個の独立した財源を充て、国が責任をとってやっていこうとされるのか。結核医療についての基本的な考え方を、総理並びに大蔵大臣からお伺いいたしたいと存じます。  先ごろ、厚生省は、国民健康保険に関する実態調査を行いました。昭和三十年に行いました調査の結果を見まするに、年収十五万円、月収一万二千円未満の低額所得者が被保険者の六三%を占めており、所得階層別にその利用状況を見ますとき、その受診率及び一件当りの給付点数は所得の低い者ほど低いことが示されておりまして、貧しい人たちは、せっかく保険料を払いながら、医療費の半額の一部負担の支払いの困難のゆえをもって医療を受けることをちゅうちょしているという事実をうかがい知ることができるのであります。毎月苦しい世帯の中から保険料を支払っておる主婦が、愛児の病気を前にして、乏しい財布の中を思い浮べ、お医者にかけようかどうかと思い迷っている姿を想像するとき、何人といえども、胸の痛みを覚えざるを得ないでありましょう。貧しさのゆえに、わずかな医療費の出費をためらったがために、愛児を手おくれとして失い、悲しみに打ちひしがれている母親を想像するとき、週末には箱根にゴルフを楽しんでおられる御身分の岸総理といえども、その母親の悲痛な心境は察していただけると思うのであります。(拍手)  医療制度は、そのように冷たいものであってはなりません。何人といえども、何の不安も、ためらいもなく、今日の進歩した医療の恩恵を受けられるものでなくてはなりません。国民保険へと新たに船出せんとする国民健康保険法が、従前の通り医療費の五割を被保険者負担とし、そのような矛盾と悲しみに満ちたものであることは、まことに残念でございます。さればこそ、社会保障制度審議会も、去る三月三日、本改正案の諮問に答えて、給付率はすみやかにこれを七割とすべしと答えました。岸総理は何ゆえこの答申を尊重されないのか。国民保険への道は、日本の医療制度が、医療保険より医療保障への発展の段階というべきでありましょう。せっかくの法改正にこのような冷たい風を吹き込ませる一部負担制度をいま一歩踏み切って七割九分に引き上げ、その矛盾の解決をはかるべきであると存ずるのでありますが、岸総理及び堀木厚生大臣の御所見を承わりたいと存じます。  さらに、従来の個別契約方式でありますと、多くの場合、一部負担金の支払いの最終的義務は保険者にあったのでありますが、今般の法改正により、貧乏にあえぐ被保険者にそれが転嫁され、その一切のしわ寄せが医療担当者に来るものと考えられるのでありますが、これは著しい法の改悪であり、逆コース的措置であると考えるのでありますが、堀木厚生大臣から、あわせてその御見解を承わりたいと存じます。(拍手)  岸総理の、汚職の追放、政治の清潔化なる合言葉には、すでに、今日、国民の間では、なまぐさ坊主のお説教との批評が出ております。貧乏の追放という、ありがたがるべきスローガンも、このような、あなたの冷たい施策の前には、鬼の念仏と酷評されても、また弁解の余地はありますまい。(拍手)七割給付が本年度より出発不可能とするなれば、いつごろまでにこれを実現したいと考えておられますのか、御所信のほどを承わりたいと思います。  先般、私は、大ぜいの日本赤十字病院の院長の大挙しての陳情を受けました。現在の診療報酬をもってしてはどうしても病院の経営が成り立たないとのことでありました。昨年、私は、社会労働委員会より派遣されて、各地の国立病院、その他の公的医療機関を視察して参りましたが、その場合にも、各病院長は、異口同音に、早急なる診療報酬の引き上げを要望しておりました。免税措置を受け、赤い羽根募金の配分を初め、幾多の国家的、社会的援助を受けている日赤病院ですら、その運営が困難をきわめ、従業員は国家公務員よりもはるかに低い給与をもって生活の困難にあえいでいるのが実相であります。中には、生活の苦しさのあまり他の内職に従事せざるを得ない羽目に陥っている者も多数にあるありさまであります。医療担当者がみずからの職務に全身を打ち込むことができないようなことで、どうしてりっぱな医療が行われるでありましょう。  公的医療機関にしてかくの通り、全面的な保険診療の中にあって、村落の民間医療機関は、まさに荒廃の一途をたどりつつあります。さればこそ、診療報酬の引き上げが昨年来の社会保険制度の中の重要な課題となっているのでありますが、これが今日なお解決を見ず、その実施がおくれているのはまことに遺憾というほかありません。医療費問題の一日も早き解決なくして、国民保険の車は軌道に乗りません。総理は、この医療費問題の紛糾を早期に解決し、適正なる診療報酬をもって円滑なる医療保険の運営をはかるため、いかなるお考えを持っておられるのか。  今日、医療費問題の紛糾するゆえんのものは、これを解決するための制度的の欠陥にあるといわなくてはなりません。国民保険のもと、今日のごとき診療報酬をもってしては、医療担当者は重労働と低賃金に苦しめられる準公務員といった立場に立たされざるを得ません。そして、その給与の一切が健康保険診療報酬に依存せざるを得ないとき、その報酬の決定をめぐり、保険者療養担当者との間に、労使の関係もしくは政府と公務員との関係に似通った形で大きな紛争の起ってくることも、またやむを得ずといわなくてはなりません。  従来、政府は、この問題の処理に当り、常に、保険者として、また監督者として、二重の人格を持って臨み、それが一そう問題の解決を困難にする原因となりました。また、数年の歳月をもってしてもその懸案を解決し得なかった中央社会保険医療協議会、臨時医療保険審議会にも大きな制度的欠陥のあることは、長期にわたって小田原評定を続けて参りましたその実績に徴しても明らかであります。政府は、この際、これに対する抜本的な対策を立て、保険者と被保険者、さらに医療担当者の立場を乗り越えて、厳正なる中立の立場に立つ学界、学識経験者を中心とした権威ある診療報酬の裁定機関を設け、今後の医療保障制度の円滑なる運営を期せられることが喫緊の重要事であると思うのでありますが、総理のこれに対する御見解のほどを承わりたいと思うのであります。(拍手)  最後にお伺いいたしたいのは、五人未満の零細事業場に働く人たちの取扱いについてであります。この零細事業場の中に働き、不安定な経営のもと、低賃金にあえぎつつある大群の勤労者を、社会保障制度の中でどう取り扱うかについて、政府はきわめてあいまいな態度をとっておるのであります。これらの人たちは、任意包括の形式で、現行健康保険制度の中にその半数を吸収するのだと申しておられますが、私はここに見のがすべからざる政府の非情を指摘しなければなりません。この零細企業の従業員諸君は最も激しい生活困難の波に洗われている人たちであり、これらの人々こそ社会保障の最も強靱な網をもって救われなければならない人たちであります。五割の給付率を七割といたしましても、なおかつその一部負担に苦しむボーダー・ライン層の低額所得者群であると見なければなりません。それが、脆弱なる零細企業に働くのゆえをもって、さらに不安定な生活に脅かされつつ働かざるを得ないというゆえをもって、さらに健康保険の網の目からもはずされ、傷病手当金によるところの療養期間中の生活の保障もなく、さらに一部負担にもたえなければならないような処遇を受けなければならないとするならば、これらの人たちは政府のあまりにも冷たい措置に悲憤の涙を催すでありましょう。徴税の場合には、あらゆる困難を排して、すべての零細企業者から仮借するところなく税をとり立てておられる政府ではありませんか。社会保障の恩恵もまた、徴税に劣らざる努力をもって、あまねく国民に均霑すべきであると思うのでありますが、岸総理の御所見のほどを承わりたいと思うのであります。(拍手)  さらに、また、現行健康保険の中にありまして、五人以上の健保適用事業場の従業員が、健康保険制度の網の目から漏れて、当然健康保険で療養できる身を、その恩恵を受けることができす、不当なる病苦に悩んでいる者がきわめて多いという事実を、私たちは見のがすことはできません。先日も自治庁の事務官の発表された文書の中に、五名以上十名未満の健保適用事業場の六〇%が健康保険に加入していないという事実があるのを見て、私は一驚を喫しざるを得ませんでした。政府は、五人未満の事業場に働く人々に手をつける前に当然健康保険が適用されておらなければならないこれらの大群の人たちを今日まで放置してきた、その怠慢の責任を、一体、だれが、どのようにしてとるのか。(拍手)従来は、これらの勤労者は、標準報酬が低く、かつ保険料徴収に手数がかかるのをきらって、政府みずからが、健康保険の赤字対策の一環として、これらの人たちの不幸をわざと見のがしてきたのではありませんか。今これら五人以上の事業場の未加入者を健保に速急に加入せしめるだけでも大事業であり、また、現在の社会保険出張所の陣容では、とうていその事務処理は不可能といわなければなりません。しかも、さらにより一そうの膨大な、しかも困難な五人未満の事業場の従業員の健保への吸収などとは、現在の末端の役所の機構では、夢の夢とより考えることはできないのでありますが、厚生大臣には、果してこれが達成の自信がおありになりますか。また、いかなる形のてこ入れをその末端機構に行なって、これが完遂を期せられようとするのか。そらぞらしい、はったり的な答弁でなく、具体的に、納得のいくように御説明願いたいと存ずるのであります。  岸総理は、昨年、長期政権担当の決意を表明されました。しかるに、国民岸総理に対する信頼の度は次第に薄らぎつつある模様であります。総理が、現在のごとく、確たる信念なく、ただ国民に笑顔を送ることのみに終始しているだけでは、両岸、無岸の声はますますかまびすしくなっていくでありましょう。国民の支持を長期に得る道は、鼓腹撃壌の日本を作ることであります。完全な社会保障のある日本を作ることであり、一切の政策に社会保障を優先せしめることであります。総理は、今こそ、虚心担懐、わが日本社会党及び社会保障制度審議会の主張に耳を傾け、国民健康保険を真の社会保障一環として恥かしからざるものに仕上げるため、大幅なる修正に応ぜられることを切望いたしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)     〔国務大臣岸信介君登壇
  34. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 岡本君の御質問に対してお答えを申し上げます。なるべく前質問者との重複する部分はこれを省略いたし、簡単にいたしたいと思います。  第一の、結核対策についてはなはだ薄弱であり、不十分であるという御批判であります。これをどう考えるか。これは、言うまでもなく、結核対策の問題は、患者それ自身に対する問題だけではもちろんないのでありまして、あるいは国民経済の上から、あるいはまた健康保険の運営の上から申しまして、きわめて重大な関係を持つ問題でありますから、これに対する対策を強化していくということは、これは最も力を入れなければならぬことであると思います。すでに社会保障制度審議会におきましても、予算制度を一本化して、これを一貫した方針のもとに強くやるべきだという意見が答申されております。私は、この問題に関しましては、具体的に、慎重に検討してこれにいきたいと思います。本年度の予算におきましては、われわれは、結核予防法を中心として、その改善によって目的を達するように努力をしたいと思います。言うまでもなく、この問題は、なるべく結核にかからないような環境を作り、また、早期にこれを発見して、早期に診療をし、さらに隔離の施設を充実する等、いろいろ方策はたくさんありますので、相当財政的の支出も要するわけであります。従いまして、あるいはいろいろな御批判もあり、私も本年度の結核対策をもって十分だとは思いませんが、われわれとしては、この問題に関して真剣にそういうような点において努力しておるということを御理解願いたいと思います。  それから、給付の内容を五割から七割にしろということに関しましては、先ほどもお答え申し上げましたように、七割の望ましいことは言うを待ちません。しかし、それに対しましては財政の面も考えなければなりませんから、われわれは、将来、この七割を目標に財政の基礎を固めて、これを実現するというふうに進んで参りたいと思います。  それから、診療報酬の問題につきましては、御承知通り、この問題は相当多年の問題でございますし、また、診療を担当しておられる人々の実際の勤務の状況を見ますると、これが非常に過当な負担になっておるということもよくわかります。そこで、これが報酬の改善につきましても、本年度の予算におきまして、私どもは、これの改善に向って相当予算的支出をすることにいたしておるのであります。中立的な中央医療協議会等の審議を見ると、利益の対立しておる人々の間の意見が対立しておって、さらに中立的な立場を持っておる人が、中立的な立場からこれらの問題を決定するような構成を考える必要があるじゃないかという御意見に対しましては、私も大体岡本議員のお話に対しましては共鳴するものがあります。従って、十分に一つ検討をいたしてみたいと思います。  五人未満の事業所に勤務しておるところの者に対する健康保険の問題に関しましては、本来それが被用者であるという立場からいうと、健康保険の方に包摂するということが望ましいと私は考えます。しかし、日本のそういう小さい零細企業の実態というものは御承知通り、非常に複雑であり、内容、実質を把握することが非常にむずかしい状況にございます。従って、従来もこの賃金の上におきましても十分な保障ができておらないというので、今回われわれは最低賃金法を出して実情に合ったものを作ろう、こういうような状態でありますので、今いった理論通りの形で一本の健康保険に包摂するということは理論的であるけれども、それだけではなかなか解決できない。そこで、地域団体の国民健康保険の方へ入れてこれをやるということが実際の実情に適しているという分も私は少くないと思います。従いまして、実情に即して、健康保険なりあるいは国民健康保険の方へ包摂していくようにしたいと思います。  五人以上のものについて、なお健康保険に入っておらぬ者があるじゃないかという実態につきましては、これは一日も早くそういう事態がないようにしなければならぬということは言を待ちません。社会保障制度に対しての社会党のお考えとわれわれの考えとの間には多少の開きがありますけれども、しかし、日本が福祉国家としてこれを完成しなければならない、それは第一に今の国民保険の問題であり、国民年金の問題であるという結論においては、私は両党とも考えを同じくしていると思う。その内容をいかにして完備していくか、また、現実に財政の現実とどういうように調和して実現するかということについての意見の相違だと思うのです。私どもは、責任あるこの政局を担当いたしております立場から、十分に国家財政地方財政等もにらみ合せまして、現実的にこれを解決していくという立場をとっておるわけであります。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  35. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 結核の問題ですが、これは私に御質問があったのでありますが、今、総理大臣がこれについては御説明に相なったのであります。何か私が結核医療について非常に抵抗をしておるかのようなお言葉がありましたが、これは大へんな間違いなんで、私は結核医療については非常な熱意を傾けておることを、はっきり申し上げておきます。ただ、結核につきましては、国の財政力も考えて、今何をしなくちゃならぬかということについて、私は若干申し上げるのでありますが、御承知のように、結核がやはり社会保険の対象になって今までずっと来ておりまして、そうして、この結核予防法による施策と相待ちまして、私は相当なる効果をあげておると思うのです。それで、今当面の問題は、私の考えでは、結核をわずらっておるが、社会保険の恩典に浴せない、言いかえれば、社会保険に未加入となっておる結核患者をどうするかということが、当面の問題だと思うのです。それで、私は、こういう方々がすみやかに社会保険に入れるように、言いかえれば、医療保険が全国に普及するように努力することが今一番大事じゃないか、かように財政的見地からも考えておる次第でございます。  それから、国民健康保険に対しましての財政負担でありますが、これは二割五分では少いじゃないか。これは私どもとしても、財政が許せば、国民保険というような見地からも、できるだけ補助をいたしたいのであります。これには少しもやぶさかではありません。しかし、同時に、今申しましたように、財政上の限界もありますし、また、社会保険全体の均衡の点も考えてみなくてはならないのでありまして、それで、今回は従来の二割以内の補助ということを、今後は個々の市町村医療給付費の二割、明確に二割を給付する、こういうようにして、これを国の義務とすることも明らかにいたしました。それから、さらに、先ほども申しましたように、医療給付費の見込み額の約五%に当るもの、調整交付金というものを持つ、そうして保険財政を助けるようにいたしたい、充実するようにいたしたい、そうして、できるだけ力をいたしております。これは、昨年に比べると、ずっと財政を国から補助したということに相なると思います。こういうふうに財政の許す限りにおきまして力をいたしていくということを申し上げて御了承を得たいと思います。(拍手)     〔国務大臣堀木鎌三君登壇
  36. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 結核に関しては、総理大臣から詳しく答弁がございました。私も、この席から、三十三年度の予算では健康診断の充実だとか、医療範囲の拡大であるとか、化学療法の期間の延長をいたしましたことは、御報告申し上げた通りであります。なお、結核が比較的低所得階層に多いということは事実であります。従いまして、これに対しては、医療保護の制度、低所得者階層に対する貸付金制度をもってまかなって参っておるのであります。なお、社会保険と結核との関連におきましては、むろん、理想的には、私ども社会保障制度審議会の御答申が非常にいい案であるということは考えております。ただ、現実の問題として、財政と調整いたしました場合に、この問題は、先ほど総理大臣が申し上げましたように、現行制度を強力に推進するということを三十三年度の予算においては盛ったわけでございます。  それから、お尋ねの一部負担金について何が誤解があるのじゃなかろうかと思うのでありますが、今回の法律で、市町村がその負担の困難な被保険者に対しまして減免または徴収猶予等の処置をいたしました場合に、被保険者にかわって支払うところの処置を講じておりますので、この点は医療機関から見れば非常にいい制度ではなかろうかというふうに考えております。  診療報酬につきましては、今回、たびたび申し上げましたように、八・五%を上げる。これは六年前にきめましたものの単純な物価の引き延ばしでないのであります。最近の医療の進歩、科学の進歩に応じたもので、社会保険を通じて国民の健康を守りたいということで考えておるのでありますが、岡本さんの、制度的な問題としてもう一つ考える面がなかろうかとおっしゃる点につきましては、私もその点で御同感であって、いわゆる差額徴収その他の方法について考慮して参る余地があるのじゃなかろうか、こう考えておるのであります。  それから、五人未満事業所の問題につきましても、なるほど、岡本さんのおっしゃるように、五人以上で未適用者もなおある。それから、五人未満のものに任意包括の制度を適用して参ることは実際問題として相当困難だとおっしゃることは事実であります。しかし、三十一年にすでに相当数の解消をしておるのであります。七万人を解消しておる。三十二年度中にも、二十一万人は、五人以上の事業所ですでに解消して健保に入っておるような次第でありまして、私どもとしては、社会保険出張所におきまして、この点について、事務の合理化でありますとか、機械化等、あるいは三十三年度の予算におきましても、不十分ながら定員の増加をいたしまして、解消に努めたいと考えておるような次第でございます。  以上が私への御質問に対するお答えでございます。(拍手
  37. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  38. 山中貞則

    山中貞則君 議事日程追加の緊急動議提出いたします。すなわち、この際、内閣提出公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  39. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。地方行政委員長矢尾喜三郎君。     …………………………………     〔矢尾喜三郎君登壇
  41. 矢尾喜三郎

    ○矢尾喜三郎君 ただいま議題となりました公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審議経過及び結果の概要を御報告申し上げます。  本案は、昨年の第二十六回国会において制定されました公営企業金融公庫法の一部に改正を加えて、本公庫に対する政府出資金を増額し、これによって公庫の基礎を強化して、その本来の使命遂行に便ならしめようとするものであります。すなわち、昨年四月本法の施行によって設立された本公庫は、地方公共団体がその住民の福利増進のために経営する水道、交通等の公営企業整備のために必要とする低利かつ安定した資金を供給することを目的とするものでありますが、昨年六月発足以来、公営企業地方債につき資金を融通して短期間に相当の成果を上げた実績にかんがみ、今回政府はその出資金を従前の五億円より十億円に倍加せんとするものであります。  本案は、二月十九日本委員会に付託、翌二十日郡国務大臣より提案理由説明を聴取し、自来慎重審議いたしましたが、論議の中心は、地方財政並びに公営企業の現状にかんがみ、かつは、昨年本法制定の際本委員会が行いました附帯決議の趣旨にのっとり、本公庫の機能を高め、活動を促進するため、さらに政府において本公庫の基礎の強化と業務の拡大につき努力すべきであるということでありました。  本日質疑を終了、その際、委員亀山孝一君外二十八名の共同提案にかかる本案に対する修正案提出され、同君よりその趣旨説明が行われました。修正案内容は、本案第十九条に規定する公庫の行うべき業務の範囲に公営企業にかかる一時借入金資金の貸付を加えて、公庫資金の活用をはかり、かつ地方の要望にこたえんとするものであります。  討論を省略して採決に付し、右の修正案並びに修正部分を除く政府原案はいずれも全会一致可決され、従って、本案はこれを修正可決すべきものと決しました。  右、御報告申し上げます。(拍手
  42. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告修正であります。本案委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告通り決しました。      ————◇—————
  44. 山中貞則

    山中貞則君 議事日程追加の緊急動議提出いたします。すなわち、この際、日本国インドネシア共和国との間の平和条約締結について承認を求めるの件、日本国インドネシア共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件、旧清算勘定その他の諸勘定の残高に関する請求権の処理に関する日本国政府インドネシア共和国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件、右三件を一括議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  45. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  日本国インドネシア共和国との間の平和条約締結について承認を求めるの件、日本国インドネシア共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件、旧清算勘定その他の諸勘定の残高に関する請求権の処理に関する日本国インドネシア共和国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件、右三件を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。外務委員長床次徳二君。     …………………………………     〔床次徳二君登壇
  47. 床次徳二

    ○床次徳二君 ただいま議題となりました日本国インドネシア共和国との間の平和条約締結について承認を求めるの件、日本国インドネシア共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件並びに旧清算勘定その他の諾勘定の残高に関する請求権の処理に関する日本国政府インドネシア共和国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。インドネシア共和国は、サンフランシスコ平和条約に署名いたしましたが、これを批准せず、また賠償問題が解決されるまでは、わが国との平和関係を回復しないという方針をとって参ったのであります。よって、わが国は、賠償問題の解決をはかるため、昭和二十六年末以来、同国政府と数次の交渉を重ねました結果、ようやく賠償問題に関する基本的了解が成立し、これに基き両国間に平和条約賠償協定等の作成に意見の一致を見、本年一月二十日、ジャカルタにおいて藤山外務大臣とスバンドリオ外務大臣との間で、平和条約賠償協定及び旧清算勘定に関する議定書が署名調印されました。これらの文書のうち、平和条約は、さきに結ばれましたビルマとの平和条約と大体同様な内容を持っておりますが、賠償条項につきまして、賠償金額を、十二年間、二億二千三百八万ドルとしております。その他、両国間の貿易、海運等の経済関係につきまして、通商航海条約が締結されるまで、相互に無差別待遇を与える旨規定されております。  次に、賠償協定は、この二億二千三百八万ドルに相当するわが国の生産物及び日本人の役務の供与につき細目を定めておりますが、これはさきに締結されましたビルマ及びフィリピンとの賠償協定と大体同様な内容であります。  第三に、請求権の処理に関する議定書は、昭和二十七年八月七日に締結されましたインドネシア共和国との間の支払い取りきめ及びその他の関係文書によりまして、両国間の貿易の決済方式が定められたのでありますが、その後、インドネシア側におきまして、一部を除き、これらの方式による支払いを履行いたさなかったために、日本政府の債権が累積する結果となり、その額一億七千六百九十一万三千九百五十八ドル四十一セントに達するに至りましたが、平和条約賠償協定締結を機会に、一括この累積債権を放棄しようとするものであります。  わが国は、これらの条約、協定、議定書締結によりまして、賠償金額の限度において負担を負うことにはなりますが、他面、インドネシア共和国との間の正式の国交が回復し、わが国の対東南アジア外交を大きく一歩進めることとなる次第であります。  この平和条約賠償協定並びに旧清算勘定に関する議定書の三案件は、二月六日本委員会に付託されましたので、会議を開き、政府提案理由説明を聞き、質疑を行い、本件の重要性にかんがみ慎重審議を重ねましたが、その詳細は会議録により御了承を願います。  かくて、本三月十四日質疑終了の後、討論に入り、自由民主党山本利壽君及び日本社会党田中稔男君から、それぞれの党を代表して賛成の意を表明され、直ちに採決を行い、本三月十四日、三案件はいずれも全会一致承認すべきものと議決いたした次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  48. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 三件を一括して採決いたします。三件は委員長報告通り承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、三件とも委員長報告通り承認するに決しました。      ————◇—————
  50. 山中貞則

    山中貞則君 議事日程追加の緊急動議提出いたします。すなわち、この際、内閣提出国立学校設置法の一部を改正する法律案議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  51. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  国立学校設置法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。文教委員長山下榮二君。     …………………………………     〔山下榮二君登壇
  53. 山下榮二

    ○山下榮二君 ただいま議題となりました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、文教委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、本案内容を簡単に申し上げますと、第一に、東京大学に薬学部を設置すること、第二に、弘前大学、信州大学及び鳥取大学に大学院を設置すること、第三に、国立久留米工業短期大学及び大阪外国語大学短期大学部を設置すること、第四に、大学付置の研究所として東京大学に航空研究所を、東京工業大学に工業材料研究所を、大阪大学にたんぱく質研究所を、それぞれ設置する規定を設けまして、本年四月一日より施行することになっております。  本案は去る二月三日文教委員会に付託となり、同二十七日政府より提案理由説明を聴取し、自来、慎重に審議を進めて参りました。  委員会における質疑のおもなものとしては、改正案の目的は科学技術教育振興の線に沿って提出されたと考えられるが、本法により所期の目的が達せられるかどうか、また、科学技術に関する一般予算に比べて科学技術教育の予算が少い、教育という基本的な面を重視すべきではないか、さらに、久留米工業短期大学設置についての将来の構想いかん等、きわめて熱心な質疑があり、これらに対し政府より懇切な答弁がありましたが、その詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。  かくして、三月十四日本案に対する質疑を終了し、討論を省略、採決いたしました結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上をもって御報告を終ります。(拍手
  54. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  56. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十六分散会