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1958-02-28 第28回国会 衆議院 本会議 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十八日(金曜日)     —————————————  議事日程 第十号   昭和三十三年二月二十八日     午後一時開議  第一 母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  第二 郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  第三 簡易生命保険法の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 農業協同組合整備特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 水防法の一部を改正する法律案内閣提出)  第六 日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の通商に関する条約締結について承認を求めるの件     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第二 郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律の一部を改正する 法律案内閣提出)  日程第三 簡易生命保険法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 農業協同組合整備特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第五 水防法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第六 日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の通商に関する条約締結について承認を求めるの件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑     午後二時七分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一、母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。社会労働委員長森山欽司君。     〔森山欽司登壇
  4. 森山欽司

    森山欽司君 ただいま議題となりました母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会における審査経過並びにその結果を御報告申し上げます。  昭和二十八年四月本法施行以来、都道府県は、母子家庭や父母のない児童に対し、生業資金修学資金等八種類の資金を貸し付け、その経済的自立を助長して参ったのでありますが、その金額は今や四十八億円に達し、わが国における母子福祉対策に多大の寄与をいたしているのでございます。  次に、本改正案のおもなる内容について申し上げますれば、第一は、生業資金貸付金額限度現行の五万円から十万円に引き上げ貸付資金によって開始し得る事業の範囲を拡大したことであり、第二は、高等学校や大学に就学中または実地修練中は修学資金の償還について支払いを猶予できることとしたことであり、第三は、児童が二十才に達した後においても修業資金継続貸付ができることとしたほか、急を要する場合には都道府県都道府県児童福祉審議会意見を聞かないで貸付金貸付を決定し得る道を開いたこと等であります。  本法案は二月十二日本委員会付託、十四日政府より提案理由説明を聴取した後、本法運用母子福祉総合法母子年金及び母子住宅等の諸問題について連日熱心なる審議が行われたのでありますが、その詳細は会議録について御承知願いたいと存じます。  ついで、二十一日の委員会において質疑終了採決に入りましたところ、本案全会一致原案の通り可決せられ、続いて自由民主党及び日本社会党共同提案にかかる次の付帯決議が提出され、山下春江君よりその趣旨説明がありました。朗読いたします。     付帯決議   母子家庭住宅事情は、現在著しく困窮した状況にあり、この問題の解決母子福祉対策において極めて重要な地位をしめていることにかんがみ、第二種公営住宅につき母子家庭のために一定の枠を設けること等によりその優先的入居を確保するとともに、さらに母子家庭のための低家賃住宅対策につき、すみやかに適切な措置を講ずることを強く要望する。   右決議する。 以上でありますが、本決議もまた全会一致可決すべきものと議決いたした次第でございます。  以上、御報告いたします。(拍手
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第二、郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律の一部を改正する法律案日程第三、簡易生命保険法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。逓信委員長片島港君。     〔片島港君登壇
  8. 片島港

    片島港君 ただいま一括議題となりました二つの法律案について、逓信委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法案の主眼とするところは、郵便切手類及び印紙の売りさばき人に対する売りさばき手数料率を改訂しようとするものであります。すなわち、現行の売りさばき手数料率昭和二十九年四月に改正実施されたものでありますが、その後における売りさばきに要する経費増高その他の変移を勘案して、手数料率を買い受け月額十万円以下の金額に対しては百分の一、十万円をこえる百万円以下の金額に対しては百分の〇・五を引き上げ、また、従来手数料対象とならなかった買い受け月額百万円をこえる金額に対しても百分の一の手数料を支払うとともに、買い受け月額三千円未満のものは、これを三千円とみなして、手数料最低保障をいたそうとするものであります。  このほか、本法律案には、新たに売りさばき所において郵政省発行現金封筒の売りさばきができる旨の規定、売りさばき業務を円滑にするため、郵政大臣が、売りさばき人に対し、切手類及び印紙の常備数等に関し指示を与えることができる旨の規定等がございまして、実施期日は本年四月一日となっております。  以上が、この法律案内容であります。  逓信委員会におきましては、二月四日本案付託を受け、同七日政府より提案理由説明を聴取し、引き続き郵便事業のサービスの改善等に関連し活発なる質疑応答が行われたのでありますが、その詳細は会議録に譲ります。  かくして、委員会は、二月二十一日質疑終了し、討論を省略して直ちに採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決した次第であります。  次に、簡易生命保険法の一部を改正する法律案について御報告申し上げます。  この法律案内閣提出にかかるものでありまして、その内容のおもなる点は、簡易生命保険保険金最高制限額引き上げであります。すなわち、簡易生命保険保険金最高制限額は現在二十万円を限度としておりますが、最近における経済事情変遷からいって、これを相当程度引き上げなければ制度本来の使命である保険的保護を十分に果すことができないので、今回その最高制限額を二十五万円に引き上げようとするものであります。  その他、本法案は、一、告知義務違反により保険契約を解除した場合に還付金を支払うこと、二、一定廃疾状態となった場合、保険金支払いをすること、三、昭和三十年八月三十一日以前に効力が発生した保険契約についても、被保険者が三カ月以内に死亡したときは保険金倍額支払いをすること等に関する改正規定を含み、施行期日は本年四月一日となっております。  逓信委員会におきましては、二月八日本案付託を受け、同十四日政府より提案理由説明を聴取し、引き続き質疑応答を行い、慎重審議を続けたのでありますが、その詳細は会議録に譲ることといたします。  かくして、委員会は、二月二十一日質疑終了し、討論を省略して採決の結果、全会一致をもって本案を可決、次いで、自由民主党竹内理事より、自由民主党日本社会党共同提案として、本法律案に次の附帯決議を付する動議が提出され、これまた全会一致をもって可決せられたのであります。     附帯決議  一、最近における経済情勢の推移にかんがみ、今回の簡易生命保険保険金最高制限額引き上げをもつてしては、なお簡保事業使命を果すにじゆうぶんでないと認められる、よつて政府は、なるべく近い時期に、右最高制限額を更に引き上げるよう措置すべきである。  二、現在、簡易生命保険事業民間生命保険事業とは事業経営上競合するところがある、よつて政府は、両者の事業性格の差異を検討し、各その性格に合致する経営方式につき研究を進めるべきである。  右決議する。 というのであります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第四、農業協同組合整備特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。農林水産委員会理事吉川久衛君。     〔吉川久衛登壇
  12. 吉川久衛

    吉川久衛君 ただいま議題となりました、内閣提出農業協同組合整備特別措置法の一部を改正する法律案について、農林水産委員会における審議経過及び結果について御報告申し上げます。  わが国農業を振興するためには農業協同組合整備強化をはかる必要があることは申すまでもないところであります。そこで、昭和二十六年には農林漁業組合再建整備法を、また、昭和二十八年には農林漁業組合連合会整備促進法を制定し、これが整備強化に努めて参ったのでありますが、特に経営の不振な農業協同組合につきましては、別途、昭和三十一年度から農業協同組合整備特別措置法を制定して、強力にその整備促進をはかってきたのであります。しかして、本法により整備を行おうとする農業協同組合整備計画を樹立しなければならない期限並びに都道府県知事農業協同組合に対し合併について協議すべき旨を勧告することができる期限は、いずれも昭和三十三年三月三十一日までとなっているのであります。しかしながら、経営不振組合の現状から見まして、本法を適用すべき農業協同組合の数を当初予定したところより若干増加する必要がありますし、かつ、本法実施状況からすると、すべての経営不振な農業協同組合につき右の期限までに所要措置をとらせることが困難な向きもあるので、右の期限をさらに一年間延長しようとして、本案が提出せられたのであります。  本案は、去る二月十七日政府から提出され、二月二十一日質疑を行いました後、討論を省略して採決しましたところ、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決した次第であります。  以上をもって御報告を終ります。(拍手
  13. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  15. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第五、水防法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。建設委員長西村直己君。     〔西村直己登壇
  16. 西村直己

    西村直己君 ただいま議題となりました水防法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法案は、水防活動強化をはかるため、水防組織に関する現行水防法規定整備せんとするものであります。その主要なる点の第一は、水防についての一般的責任市町村にあることを明らかにしたこと、第二には、水防事務組合の設立について特例を設け、その運営のために議員選挙についての特例を定め、経費関係市町村に対する分賦について所要規定整備したこと、第三には、水害予防組合の区域について水防事務組合が設けられる場合の特別措置について定めたこと、第四に、指定水防管理団体水防協議会委員の数二十人以内を二十五人以内に改めたことであります。  本法案は、一月三十日本委員会付託せられ、二月六日政府説明を聞き、二月十八日質疑を行なった後、これを終了いたしたのでありますが、その詳細は会議録に譲ることといたします。  二月二十一日討論に入り、日本社会党を代表して三鍋義三君から発言があり、本改正案水防組織を実情に即せしめ整備強化するものであるが、水防事務組合の議会の議員選挙についての特例運用に当って、市町村の長が推薦する者を党派に片寄ることなく公正ならしめるよう政府の指導を強く要望する旨、意見を付して賛成の意が述べられたのであります。  かくて、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  右、御報告申し上げます。(拍手
  17. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  19. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第六、日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の通商に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。委員長報告を求めます。外務委員長床次徳二君。     〔床次徳二登壇
  20. 床次徳二

    床次徳二君 ただいま議題となりました日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の通商に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  昭和三十一年十月に署名されました日ソ国交回復に関する共同宣言第七項におきまして、日ソ両国は、貿易海運その他の通商関係を安定した基礎の上に置くために、条約または協定締結交渉をできる限りすみやかに開始することを約束いたしました。また、それと同時に署名されました議定書におきまして、両国は、右条約または協定締結まで、関税通関手続等に関する最恵国待遇及び船舶に対する最恵国待遇相互に許与することを約束いたし、ここに両国間の通商海運関係正常化への第一歩を踏み出した次第であります。その結果、両国間の貿易量も次第に増加の傾向を示して参りましたので、今般、さらにその発展を促進するために、昨年九月から、東京において、ソビエト連邦側全権団との間で、前に述べました共同宣言第七項に予想される条約締結交渉が開始され、三カ月を費し、十二月六日にこの条約が署名されました。  この条約の骨子は、関税通関手続に関する最恵国待遇船舶出入港及び船舶の取扱いに関する最恵国待遇内国税に関する最恵国待遇、為替及び貿易制限に関する無差別待遇等相互許与について定めますとともに、貿易実施に関連して問題となる仲裁判断の執行、ソビエト連邦通商代表部の設置、法人の相互承認身体財産保護等を定めております。なお、この条約批准書交換の日から五年間効力を有し、その後も、六カ月の予定をもって廃棄しない限り、効力を存続することとなっております。また、この条約の不可分の一体として付属書がありまして、日本に設置されるべきソビエト連邦通商代表部法的地位を詳細に規定しております。  この条約は、二月六日外務委員会付託され、政府提案理由説明を聞き、質疑を行いましたが、その詳細は会議録により御了承を願います。  かくて、質疑終了の後、討論に入り、日本社会党松本七郎君から賛成の意を表明され、続いて採決の結果、この条約は二月二十二日全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕  以上、御報告申し上げます。(拍手
  21. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本件委員長報告の通り承認するに御異議ありませんか。
  22. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本件委員長報告の通り承認するに決しました。      ————◇—————
  23. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際、内閣提出恩給法等の一部を改正する法律案趣旨説明を求めます。総理府総務長官今松治郎君。     〔政府委員今松治郎登壇
  24. 今松治郎

    政府委員今松治郎君) 恩給法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  戦後における退職公務員、すなわち、軍人文官及びその遺族に対する恩給上の処遇につきましては、いわゆる軍人恩給の廃止ないしは復活、あるいは給与ベースの改訂に伴う恩給年額増額等、戦前には見られなかった消長と変遷を経てきたものでありまして、いろいろと検討を要するものが残されている状態にあったのであります。そこで、昨年六月臨時恩給等調査会を設置し、御検討をお願いした次第でありますが、調査会においては、慎重審議した結果を昨年十一月十五日政府報告されたのであります。  政府は、今回、この報告をもととしつつ、戦後処理重要課題でもあり、かつまた恩給法それ自体における懸案でもあった戦没軍人遺族並びに戦傷病者処遇改善老齢退職公務員処遇の向上に重点を置いて、問題の総合的解決をはかろうとするものであります。  その第一点は、国家財政その他諸般の状況を考慮して、これがために急激なる財政負担を来たさぬよう、四カ年にまたがる漸進的な計画のもとに所期の目的を達成しようとする点であります。  第二点は、その実施緩急順序において、戦没軍人遺族重傷病者、高年令者を先にした点であります。  第三点は、処遇改善対象を六十才以上の老齢者、寡婦、遺児、傷病者としたことであります。  第四点は、上に薄く下に厚くするという精神に立脚し、重点下級者に置いたことであります。すなわち、仮定俸給引き上げにつき強い制限を設けて、上級者の引上率を抑制いたしますとともに、傷病恩給におきましては階級制を撤廃することといたしたのであります。  以上が、この法律案趣旨でございます。(拍手)      ————◇—————
  25. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告があります。順次これを許します。  渡邊良夫君。     〔渡邊良夫登壇
  26. 渡邊良夫

    渡邊良夫君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま上程いたされました恩給法等の一部を改正する法律案につきまして、いささか質疑をいたしたいと存ずる次第でございます。(拍手)  申し上げるまでもなく、恩給は、公務員が、その在職中、特別な勤務条件のもとにおきまして、永年忠実に勤務し老齢となり、あるいは公務のため負傷し、または死亡したことに対します補いといたしまして、国が、これらの人々に対しまして、使用主としての立場から、公務員またはその遺族に、退職後または死亡後、適当な生活を維持するに必要なる所得を与えることを目的といたすものでありまして、いわば国家補償の観点から支給されるものと考えられるのでございます。また、一方におきましては、国民一般対象といたしますところの社会保障制度整備拡充につきましては、わが党といたしましては実に異常なる熱意を持っておるのでありまして、当面の問題といたしましては、国民年金制度の創設につきましても、着実に一歩々々とその実現を期して参っておるのであります。(拍手)しかして、軍人文官等公務員対象といたしますところの恩給制度は、今申しましたように、国家補償精神に立脚いたしまして、これら社会保障制度と並行いたしつつ、戦後処理並びに公務員制度の支柱としての使命を果すべきものと考えるのでございます。今回の政府案におきましても、恩給の理念を堅持いたしつつも、なお社会政策的な色彩を加味いたしまして、時代に即応するところの熱意を示しておるのでありますが、この際、数点につきまして、政府に対しましてお尋ねいたしたいと存ずるのでございます。  第一に、今回の恩給増額措置終戦以来のわが党の主張であり、特に、昭和二十七年完全独立以来の努力がようやくわずかに実を結びまして、いわゆる戦争犠牲者たる戦没軍人遺族傷痍軍人老齢軍人動員学徒徴用工看護婦等に至るまでに重点を置いて、上に薄く下に厚くの精神に基いたところの恩給上の処遇改善と見受けられるのでございまして、おそまきながら、われわれといたしましては喜びにたえないのでありますが、世間の一部に与えておりまする印象は旧職業軍人のみの優遇案であるとの声もあります。これに対しまするところの総理大臣の御所見を承わりたいのでございます。  第二に、今回の恩給増額措置をするに当りましては、一方、国民年金制度のすみやかなる実現を期待されるところであります。政府は、これに対しまして、どの程度の熱意を有するものであるか。また、今回の増額措置社会保障制度強化拡充に対しまする障害となるという声も聞くのでありまするが、これに対しまする総理大臣並びに厚生大臣の御見解を伺いたいのでございます。  第三に、今回の恩給増額措置は、平年度におきまして三百億を要するものとされておりまして、将来の国家財政に大きな負担となって、恩給亡国との声もあるのでありまするが、この増額案によりまして、これらの心配はないものでしょうか、以上の諸点につきまして大蔵大臣の御所見を伺いたいのでございます。(拍手)  第四に、わが党の外交政策は、しばしば総理大臣が声明いたしましたごとく、国連中心自由民主主義国陣営との提携の強化原水爆実験禁止提案のごとく、人類の平和主義を強調いたしておるのでございまするが、今回の恩給措置があたかも軍国主義の前提なりと批判するような俗説につきましては、当らざるもはなはだしきものと思うのでございます。(拍手)  日本社会党の諸君が、旧軍人等恩給は再軍備を推進しようとする保守党政府の手により創設されたものであり、従って、それは、終戦によって消滅いたしました旧陸海軍制度の部分的な復活であり、再軍備政策の一環であるといたしまして、旧軍人恩給制度に対する改革案を発表されておるのでありまするが、社会党恩給制度改革案なるものを拝見いたしてみまするに、同党は恩給制度をもって国民年金に移行するための過渡的な措置というておるにもかかわらず、逆に今日の国家財政を無視するような案を発表しておるのでございます。すなわち、現在の年金恩給につきまして最低保障額を定め、遺族については五万四千円、生存者につきましては三万六千円に引き上げ、この引き上げ是正後の恩給は、すべて交付公債を発行することによりまして打ち切り補償を行おうとするもののようであります。かりに、この案によりますると、政府は一兆四、五千億の交付公債を発行しなければならなくなるのみならず、その利子だけでも毎年八百四、五十億を支給しなければならないことになるのでありまして、これはわが国現下財政事情を全く無視いたし、財政を危殆に瀕せしめるものというべく、他面、憲法第二十九条にいう財産権の侵害問題とも考えあわせまして、とるに足らないものと私どもは考えるのでございます。(拍手)  以上をもちまして私の党を代表するところの質疑とし、あわせて所見の一端を申し上げた次第でございます。(拍手)     〔国務大臣岸信介登壇
  27. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 渡邊君の御質問に対しましてお答えいたします。  渡邊君の御指摘になりましたように、恩給制度は、国が、使用主として、その使用しておる人が退職または死亡等の後において、これに対する生活をある程度保障する意味において行なっておるものでありまして、その考え方は、文官に対すると軍人に対すると同じ考えが中心になっておると思います。ただ、軍人に関しましては、二十八年にこれが再出発する際に、いろいろな点においていわゆる戦後処理意味を含まして再出発されたということも、御承知の通りであります。今回の改正主眼が、公務によって死亡いたしました下士官以下の遺族扶助料中心として傷痍軍人その他の者に対する恩給をきめておるわけでありまして、世間で言っておりますように、生きておる、いわゆる職業軍人といわれるところの者に対する恩給額を引き上げるところのものでないことは、案自体を御検討になれば、きわめて明白であると思います。(拍手)  また、この改正がいわゆる軍国主義の再現であり、再軍備のためにこれが行われるような議論に対しましては、私どもは全然さようには考えておりません。(拍手)言うまでもなく、この問題が二十八年に再出発いたしまして——今回の改正の一番要点は、文官と武官との間に非常な不均衡があり、これを是正するというところに主眼があるのでありまして、決して一部で批評しているようなものでないということを明確に申し上げておきます。(拍手)     〔国務大臣堀木鎌三君登壇
  28. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 生活保障をその性質といたします国民年金というものを創設するに当りまして、いろいろの問題が考えられるのでありますが、この恩給法の問題のみならず、各種共済組合年金との調整について、むろん、技術的にもやり方にいろいろ困難は当然起って参るのであります。しかし、いずれにいたしましても、これらを総合的な観点から解決して参らなければならないと考えておるのであります。これらにつきましては、社会保障制度審議会または厚生省にございます五人委員会の答申が間もなく出ることと存じますので、その御答申を待って具体的に考慮いたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  29. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今回の軍人恩給増額平年度三百億円が財政上相当の負担になりますことは、これはいなむべくもありません。が、しかしながら、この平年度化は四カ年をもって行うことになっております。また、平年度化後は年々逓減を見る性格を持っております。かつ、その大部分は公務扶助料及び傷病恩給に充てられるのでありまして、下に厚く上に薄い扱いをいたしております。これは社会保障的な経費と申してもよかろうと考えるのであります。かような見地からいたしまして、今回の増額が財政的に見まして恩給亡国というようなことは全く当りません。(拍手
  30. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 受田新吉君。     〔受田新吉君登壇
  31. 受田新吉

    ○受田新吉君 私は、ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案に対しまして、特に重要な問題点につき、日本社会党を代表いたしまして、岸総理並びに関係閣僚に質問を試みんとするものでございます。(拍手)  さて、わが国恩給制度というものは、先ほど提案者の御説明にもありましたけれども、明治維新を契機として出発した近代国家におけるいわゆる官吏制度の発達と表裏一体の形で変遷をしたものでございまして、ことに明治八年に軍人恩給が出発をし、重ねて十七年に文官恩給に及び、さらに大正十二年に総合的に恩給法が確立いたしまして、自来、そのときどきの軍事的要請あるいは財政的要請で、多彩な変遷を経て今日に至ったものであります。しかも、これら恩給法上の多くの歩みきたった道は、大東亜戦争の終結のその瞬間まで、要するに天皇の軍人、天皇の官吏のための恩恵的特権であったことは、議論を差しはさむまでもないところであります。(拍手)従って、恩給受給権は、先ほど総理も言われたように、公務員が、長年公務に従事して、老齢となり、傷を受け、あるいは死亡して、その経済取得能力を喪失した代償として国がこれを補うものだというせっかくの精神も、戦前の軍人、官僚万能時代のそういう形式を今日も持ち続けて、ちょうど、よろいの上に衣を着せたような、ごまかしの実態によってこれを隠されるものであると思うのであります。(拍手)私は、特に新憲法下におきまして、主権在民の旗のもとの国民全体の奉仕者としての公務員時代において、すでに新時代からは抹殺されているはずの旧軍人の階級差が依然としてそのままの形で温存されているということや、公務員の範囲、遺族の範囲等がきわめて厳格なワクの中にはめられておる恩給法が、旧態依然とした姿で現在の退職処遇の王座をなお占めておるということに対しては、はなはだ奇異の感じを抱かざるを得ないのであります。(拍手)ことに、現実の問題として、大東亜戦争という国家総力戦の形態から発生したところの数知れぬ犠牲者の処遇というものは、単に恩給法だけでは救済できない。従って、戦傷病者戦没者遺族等援護法という、新形態の、いわゆる援護の形態を有する法律が生まれて、これが恩給法の補完作用をなしておりまして、今日恩給法と援護法と並んで多くの人々を救済する形になっておることを、十分確認していただかなければならぬことだと思うのであります。(拍手)  政府与党は、こうした重大な戦争犠牲者処理の問題につきまして、昨年の国会で、何とか解決のめどを見出したいと、ずいぶん苦労されたようでございまするが、党内紛争をいたしまして、ついに解決を見ず、党派を越えた臨時恩給等調査会なるものを総理の意思でここに設けられ、その答申を待つという、まことに哀れなお姿であったのであります。(拍手)ところが、政府与党の責任で法律を出し得なかったという責任はお免れではないと思うのであります。従って、私たちは、ここに政府与党の責任でなし得なかった問題を党派を越えて御相談にあずかるということに対しては深い敬意を払って、この調査会にも代表者を送って、その審議に応ぜしめたのであります。その結果、この答申がどのような形で政府に採用されたか。ただいまより具体的な例をもって総理並びに関係閣僚にお尋ねを続けます。特に、私自身岸総理に御答弁を要求する際には、岸総理御みずから、また、関係閣僚の方に対しては、それぞれの立場で御答弁を願うことをお願いいたしておきます。  第一に問題として指摘いたしたいことは、今回の改正案を拝見しますると、先ほど申し上げました古典的恩給法の牙城が微動だもしておらぬということであります。その第一は、公務扶助料の金額は、兵の場合に五万三千二百円、少尉が五万三千五百円と、階級差を極度に圧縮した努力の跡が見えておりまするけれども、小刻みながら、兵は兵としての階級差がそのままに残されております。既得権尊重の精神から、上級者の場合は別といたしましても、こうした改正の機会に下級者の階級差を漸次廃していくという努力をなぜなさらなかったのでありましょう。赤紙一枚で国家の意思のままに強制的に動員せしめられ、ついに英霊となられたこれらの方々に対しましては、私たちは原則として階級差を認めたくないのであります。なくなられた、かつての上官とせられましても、なくなられた部下の遺族への処遇が階級によって差等のあることを必ずや悲しまれておることだと信じます。(拍手法律技術上の理由があるにいたしましても、新しい民主主義国家の政治において、旧軍人の階級がそのままの形で生きており、わけて戦死せられた方々の遺族にまで差等の存在をそのままにされたという、今回の改正案精神を了承することができないのであります。(拍手)  私は、一昨年の十月二十六日、ソ連地区より帰国いたされました未帰還者千二十五名の方々を舞鶴にお出迎えに参りましたけれども、大雪の降る舞鶴の埠頭において、後宮元大将たちがいずれも作業服で上陸せられまして、痛ましい姿を拝見して、私たちの胸を打ちました。同時に、この人々の口から次のような感銘深い言葉を聞くことができたのであります。すなわち、日ソ交渉成立後初めての帰国のこの人々のうちで、ソ連当局は将校には別に新しいせびろを贈ることを申し出られたが、その厚意を謝しつつも、戦後十年以上も極寒の地に苦労をともにした裸一つのお互い同士に、昔の階級差を思い起させるような服装はとうていできないので、これをお断りしたということであります。(拍手)筆舌に絶する労苦の中から生み出された人生観は、往年の現役軍人間においても、かくも民主主義の真髄に徹せられていることを銘記すべきであります。この点につきまして、特に岸総理の御答弁を願いたいと思います。  次に、公務扶助料の倍率問題であります。総理は文官との比較において三五・五割を裁定せられました。その根拠は、先ほどの御説明を聞くと、文武間の均衡と言われておりますけれども、文官の特別公務四十割、普通公務三十三割の平均ということでありましょうけれども、はなはだこれはあいまいであります。もともと、文官と武官の恩給の比較論は、よほど問題がそこに残されております。文官は十七年で恩給年限に達するが、軍人は、准士官以上は十三年、下士官以下は十二年で到達し、仮定俸給は武官の方がはるかに本俸より高い額をいただいておりまするし、恩給納金は、武官においては、ただわずかの期間だけこれを徴収しておっただけでございます。また、仮定俸給のうち、特に兵の場合は、戦前五円前後であった一、二等兵の給与が月五十円の計算に引き直されているということも、これは忘れてはなりません。こうしたところから、戦前の文官の中には、給与制度、任免制度の犠牲となった人々がたくさんあって、たとえば、台湾で生蕃事件で殉職せられた特別公務の巡査で二万円台、普通公務の巡査が一万円台という公務扶助料を受けている人がたくさん残っておるということをお忘れになってはならぬのであります。いわんや、二十九年以来の、しばしばの恩給法改正で、責任自殺の方々や、戦地において故意または重大な過失による死亡確認のない病死者、内地職務関連死の方々まで公務扶助料の支給を受けることになりました関係上、公務性格文官のきびしいのに比較してすこぶる寛大になっている事実を考慮して、裁定をせらるべきではなかったかと思うのであります。また、文官制度上の犠牲として著しく低位にある受恩給者、先ほど来申し上げた公務扶助料等受給者の取扱いをお忘れではないと思うのでございますが、御所見を伺いたいのであります。私は、十個に余る意見を付した臨時恩給等調査会報告内容とあわせて、総理のこの問題に対する明確な御答弁を要求してやみません。  次に、いわゆる傷病恩給関係の処置でありますが、階級差の撤廃という点で、いささか共鳴する点がございますけれども、これも兵の階級に統一するというところに問題がある。もう一つは、外形上の症状のみでなく、内部疾患も十分考慮すべしという答申のその趣旨にどうこたえようとされるのであるか、御答弁願いたいのであります。  この機会に、私は、大局的見地から、政府与党の立場からせられまして、近代国家の常識とされておる国民年金制への移行のための経過措置として、現行恩給法、援護法等に大幅に社会保障の性格を織り込ませる努力を払われようとする用意があるかないか、お尋ねいたしたいのであります。(拍手)  先ほど、渡邊君から、この問題で政府与党に熱意のあることを示されましたけれども、今日私がお伺い申し上げたいことは、現に、恩給法においてすら、若年停止規定あるいは公務扶助料受給者への家族加給制度もしくは未帰還者に対する恩給制度などという、いわゆる社会保障の性格を帯びたものがたくさん入っておるのであります。こういう意味からも、この際、如上の階級差撤廃、すなわち、五十円、百円の刻みさえも全部捨てるような努力をなぜせられないか。同時に、思い切った高額所得制限をなすべきでございます。恩給外所得制限をなすべきであり、また、税法上の制約等によって、収入ある家庭の大きな増額分を押えるという努力をなぜされようとされなかったか。あるいは、公債発行によるところの打ち切り補償制度の加味等、いろいろな方法、社会立法の要素を十分採用せられる方法があると思うのでございますが、これらに対するお考えを伺いたいのであります。(拍手)  そこで、先ほど渡邊君からお尋ねのありました、社会党におけるこの問題についてのお答えをいたすと同時に、質問を試みんとするものであります。  社会党におきましては、職業軍人中心とする軍人恩給のうちから公務扶助料及び傷病年金部分を分離して、別個の法律といたしまして、これらの人々に対しましては、いわゆる軍人恩給の批判や恩給亡国論の対象の外にあるものという、そういう処遇を考えておるのであります。すでに、社会党の予算案におきましては、昭和三十一年度から公務扶助料の部分を恩給費のうちからはずして、厚生省所管のうちの遺家族援護費として別個にこれを取り扱っておることは、御承知の通りでございます。(拍手)また、収入の低い下級者公務扶助料を将来の国民年金に移行させる過渡的措置という立場から、わが党の一般国民年金額三万六千円案の五割増しの五万四千円案といたしまして、それ以下の階級の人は一律に五万四千円の線に統一して、しかも、これらの人々には、四年計画ということなく、即時全額実施をはかるという原則を確立しておるのでございます。軍人恩給は、同時に、平均余命率等を根拠にした公債による打ち切り補償制度を考えておりまするが、これも毎年支給せられる恩給金額、扶助料金額を公債にするのであって、一挙に一兆五千億になる心配もなければ、下級者は即時公債を買い上げる措置をとるのでございますから、利率も低率でありますので、御心配のような点はございません。(拍手)従って、低収入の遺族に対しましては、その生活を守るためには、直接現金化による措置でありますから、むしろ自民党の下級者優遇案よりも高い線で処遇されておるということを、お忘れなくお考え願いたいのであります。(拍手)同時に、収入の多い人々や職業軍人の方々には、はなはだお気の毒でございますが、がまんをしていただく以外には道がないという案であります。(拍手)こうして、当面の財政負担をできるだけ軽減しながら、全国民的な年金制度への移行に役立てようとするのが、わが党の案であることを、十分お考えを願いたいのでございます。  総理は、さきに、この本会議場で、恩給を含む各種年金制度については、これは当然国民年金への移行をなさなければならぬと御共鳴になりました。また、予算委員会においても、滝井委員の質問に答えて、それが具体化を社会党と話し合おうではないかと約束せられておるのでありますが、以上申し上げましたような与党と野党の見解の相違点等を十分調整して、その間の話し合いをなす可能性をお認めでありまするかどうか、お答え願いたいのでございます。(拍手)  現に、恩給法以外に、われわれは、国家公務員共済組合法あるいは厚生年金保険法等のごとく、国家、民間のそれぞれのところに七つも八つも年金制度ができておりまするが、これらの諸法律が——昭和三十七年をもって厚生年金保険の年金が開始せられることになり、相次いで他の法律の年金が支給せられるということになるのでありますから、既得権を発生する以前において、この問題の処理をはからなければならぬという、早急に年金制確立の要請に迫られていることも、お忘れではあるまいと思います。こうした既成の法律の取扱いと、新しい制度のまだ恩典に浴しない方々との調整、及び、現に既得権を持っている人々のそういう取扱い等を、どういう形で調整して、かつ早急にこれを実現されようとするのか、その構想を伺いたいのでございます。  いま一つ、ここで問題にいたしたいことは、国家公務員の新しい退職年金制度の確立でございます。すでに、人事院は、昭和二十八年に、内閣及び国会に対しまして、健全なる保険方式によるところの国家公務員退職年金の勧告案を出しておられます。ところが、大蔵省は、さらに、このほかに、共済方式によるところの国家公務員共済組合法の改正と、国家公務員退職手当暫定措置法の改正を用意せられておると伺っておりまするが、この調整をどうするかで、閣内不統一で紛争を生じておるとも聞いております。さきに公務員制度調査会で答申をした中には、共済方式による退職年金を考慮するようにも答申されておるのでございまするが、政府はどの形式をもって退職年金制を国家公務員及び地方公務員等にしこうとするのか、構想を伺いたい。ことに、松浦前給与担当国務大臣は、先国会で、この国会中に退職年金制を実現するという明言をされておるのでございますから、国民年金への移行の過渡的措置として、こうした年金制度をどういう形で実施しようとせられるのか、御構想を伺いたいのでございます。  最後に、私は人道的見地から一つお尋ねしたい問題がございます。それは、恩給法に関連する一つの問題として、国家の公務のため、とうとい生命をささげられて、一家の柱を失われたという遺族の方々に対する国の処遇が、単に法律上の問題だけでなくして、たとえば就職その他の精神面の協力がこれらの人々にどんなに希望を与えるかということを忘れてはならぬのでございます。(拍手)資本家群を握っておられる政府与党の諸君が、その経営者の経営方針として、不幸な遺家族の子供さんや、あるいは傷病者等に対して、優先的に雇用をさせるというような確固たる方針を打ち立てるために、なぜ努力を惜しまれておるのでございますか。(拍手)企業関係に雇用される人々に、こうした不幸な人々を優先せしめるための法律の制定など、幾つも道があると思うのでございますが、これらに対する御見解を伺いたいのでございます。  いま一つ、恩給法上の問題点として重大な人道問題は、未帰還公務員処遇でございます。現に、ソ連、中共等には五万人に近い生死不明者を中心とする未帰還者が残されておるのであります。これらの人々の家族の心境は、形容もできない苦痛の状況にあることは、皆様御承知の通りであります。ところが、その人々は、未帰還公務員恩給によっても、若年停止の規定で、救われておりません。留守家族援護法においても、生計主体者以外には手当が出ておりません。国の責任で未帰還の状況に置いておられるこの人々に、死亡推定をして措置しようというお考えもあったようでございまするが、公務員として、あるいは留守家族としての給与もしくは手当の支給方法を十分考慮して、国家の公務員でありながら、一文の手当も給与ももらっていないというこの方々に対する救済措置をどうしようとせられておるのか、明言をここで願いたいのであります。  以上、きわめて簡単でございまするが、要点をかいつまんで恩給法に対する質問を申し上げ、御答弁のいかんによっては再質問をお許し願いたいことを御了解願って質問を終ります。     〔国務大臣岸信介登壇
  32. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 受田君の御質問にお答えをいたします。  第一点の、恩給制度において階級差をなくするということを考えるべきじゃないかという点でございます。御承知の通り、恩給法性格は、受田君は明治時代の特権階級の特別なる特権のように解釈されておりますが、私は、先ほど渡邊君の質問に答えたように、そうではなくして、国家が、使用主として、この使用の関係に基いての償いであるという性格が、その根本であると思うのであります。そうして、それをやる場合におきまして、やはり、退職したとき、あるいは死亡したときの現在受けて、おった待遇というものを基礎に考えるというのが一応の常識になって、それが根本をなしておると思います。しかしながら、今回の改正につきましては、今受田君のお話のような御議論も、私ども大いに頭に置きまして、いわゆる上に薄く下に厚くという考えでこの案を立てております。従って、たとえば、将官級の人にはこれを一切上げてない、佐官級の人のなには非常に抑制している、その下の下士官以下については、いわゆるベース・アップの問題も、あるいは比率の問題につきましても、特別に考慮しておるということをごらん下されば、そういう方向に頭を持って今回の改正をしておるということは御了承願えると思います。  また、第二に、いわゆる三五・五にきめた理由はどこにあるんだ、こういうお尋ねでありますが、これも、受田君よく御承知のように、現在兵の受けておる遺族扶助料は、三万五千二百四十五円になっております。これに対して文官は五万三千二百円になっておりまして、今回の改正によって一万二千円のベースを一万五千円に上げて、三五・五という数字の倍率をかけますと、ちょうど五万三千二百円になりまして、従来強くいわれておりました文官と武官との間の不公平、不均衡感が、これによって除かれるということになると思います。  次に、社会保障制度との関係についての御意見並びに御質問でありましたが、私は、恩給制度というものは、それ自身が先ほど申したような性質を持っておりますから、全部社会保障、いわゆる政府が国民全体を対象にしての考え方とは違った意味があると思います。しかし、文化国家として、国民全体について、それが老齢に達しもしくは災害を受けた等の場合において、所得保障の意味における国民年金制度というものは、どうしてもこれを確立しなければならない。政府社会保障制度審議会に諮問をいたしておりまして、その答申も五月には出るはずであります。十分そういうことを頭に置いて、これが確立をできるだけ一日も早くすべきものである、かように考えております。その際に、今いろいろありますところの年金制度やあるいは恩給制度というようなものとの間にどういうふうに調整をはかっていくかという問題につきましては、技術的にいろいろと研究すべきものが多々あると私は思います。ここにどういうふうにするのだということを明確に申し上げるまでにいっておりませんが、これはやはり調整して、この基本であるところの国民年金という制度を確立することに、政府としてはこの上とも努力をしたい、かように思っております。  最後に、いわゆる人道的見地から、遺家族の人々に対して、その就職等について特に意を用うべきではないか、手を差し伸ばすべきではないかというお考えにつきましては、私もその御趣旨については同感であります。しこうして、どういう制度を立てるかということにつきましても、十分一つ研究をいたして参りたいと思います。  未帰還者の問題につきましては、実は、公務員の問題もありますし、さらに公務員でない人々の未帰還の問題につきましても、政府としては、とにかく、未帰還の、消息不明の人々の、生死が不明であり、状況がわからぬということが、こちらに残っておる留守家族の人々の最も納得できないことであろうと思います。しかしながら、これを突きとめるということは現在において非常に困難がございます。しかし、日ソの間におきましては、両国の間の国交正常化とともに、ソ連の協力を得て、われわれの方も特殊の役人を駐在せしめまして、極力これを明らかにすることに努めております。また、中共地区につきましては、これも政府としてはあらゆる努力をいたしておりますが、私ども、まだ、これでもって十分だとは思っておりません。従って、これが措置につきましても、政府としては、私は、やはり、これに関係しておられる有力な人々の審議会を作りまして、これの方法を検討し、また、これに対する措置、すなわち、今お話しになりましたような、今未確定の状況にあるということが、留守家族の人々にいろいろな御迷惑をかけていると思います。しかし、それを、今度は留守家族の人々からいうと、早く死亡推定をされることも決して感情的には満足しないという事情もありますから、そういう事情を十分に検討し、大所高所からこの留守家族の人が満足されるような方法をとっていきたい、かように思っております。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  33. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私からお答え申し上げることは、国家公務員の新退職制度を共済年金方式によるか恩給方式によるかという点であったように思うのであります。これについて政府部内の思想が不統一であるとかいうようなお言葉がありましたが、さようなことはありません。ただいま慎重に検討中でありまして、近いうちに結論を出したいと思っております。(拍手)     〔国務大臣堀木鎌三君登壇
  34. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 受田さんが最後におっしゃいました、留守家族援護法の適用についての問題でありますが、これは、御承知の通り、未帰還者と生計関係、依存関係のない留守家族等に対しては、留守家族手当を支給することが現行法では困難であると思うのであります。ただ、今おっしゃいましたような趣旨をくみまして、たとえば、長男が不具等のため扶養ができない場合は、現在でも、手当を支給するというふうなことを講じておるのでございます。(拍手
  35. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて質疑終了いたしました。      ————◇—————
  36. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。     午後三時十五分散会